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1975/05/20 第77回国会 参議院 参議院会議録情報 第077回国会 法務委員会 第7号
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1975/05/20 第77回国会 参議院

参議院会議録情報 第077回国会 法務委員会 第7号

#1
第077回国会 法務委員会 第7号
昭和五十一年五月二十日(木曜日)
   午前十時十二分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 五月十八日
    辞任         補欠選任
     近藤 忠孝君     橋本  敦君
 五月二十日
    辞任         補欠選任
     橋本  敦君     須藤 五郎君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         田代富士男君
    理 事
                大島 友治君
                平井 卓志君
                佐々木静子君
                原田  立君
    委 員
                梶木 又三君
                斎藤 十朗君
                林  ゆう君
                町村 金五君
                安永 英雄君
                須藤 五郎君
                下村  泰君
   国務大臣
       法 務 大 臣  稻葉  修君
   政府委員
       法務政務次官   中山 利生君
       法務大臣官房長  藤島  昭君
       法務省民事局長  香川 保一君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務
       総局家庭局長   裾分 一立君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        二見 次夫君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○理事補欠選任の件
○民法等の一部を改正する法律案(内閣提出、衆
 議院送付)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(田代富士男君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 理事の補欠選任についてお諮りいたします。
 委員の異動に伴い、現在理事が一名欠員となっておりますので、この際理事の補欠選任を行いたいと存じます。
 理事の選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○委員長(田代富士男君) 御異議ないと認めます。それでは、理事に原田立君を指名いたします。
    ―――――――――――――
#4
○委員長(田代富士男君) 民法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#5
○佐々木静子君 それでは、前回に引き続きまして、民法等の一部改正に関しまして質問をさしていただきたいと思います。
 まず、先日も民法の一部改正に関してお尋ねさしていただいたんでございますが、この民法の七百六十七条、離婚による復氏の場合についての規定が今度改正されるわけでございますけれども、これに関連いたしまして養子縁組みの場合、民法八百十六条の離縁による復氏について、これは法務省とするとどのようにお考えになっていらっしゃるのか。これは大体、この民法の規定を見ますと、離縁の規定は離婚の規定に準用されている部分が非常に多いわけでございますが、今回七百六十七条の改正のみが行われるとなりますと、離縁による復氏の場合とのバランスを考えてみると多少いかがかと思われる点と、やはり人権の保障、離婚とか離縁によることによって不利益を受ける人を救済しようという立場に立つならば、やはり離縁による復氏の場合についても同様な改正というものが必要となってくるんじゃないかと思うわけでございますので、その点についてまず法務当局の御意見を伺いたいと思います。
#6
○政府委員(香川保一君) 御指摘のとおり、養子縁組みのいわゆる離縁――婚姻で申しますれば離婚に相当するわけでございますが、今回の離婚復氏の例外措置を設けるのと同じような必要性も一方で考えられるわけでございます。しかし、佐々木委員御承知のとおり、この養子縁組みにつきましてはいろいろ再検討しなきゃならない問題がございまして、法制審議会の民法部会におきまして養子縁組みの、養子制度の種々の問題について検討が進められておりまして、それとの関連もございますので、今回の改正では離婚の場合に比較しまして養子縁組みの場合の同様の必要性というものが余り数的には多くないと考えられますので、養子制度全般についての改正の際にあわせて検討したいということで、まあ今回は見送った次第でございます。
#7
○佐々木静子君 今回は見送られたわけでございますけれども、養子制度全体についてもこれは非常に改善すべき点がたくさんあるということを私も痛感するわけでございますが、やはりせっかく七百六十七条の改正をされれば、やはりこの部分だけでも考えていただいたらいいのではないかというふうに思うわけなんです。この七百六十七条の改正につきましては、これは国際婦人年に際しまして、婦人の権利を守るとか婦人の地位の向上を図るとかいう意味の一環といたしまして、これは大臣も局長も御承知のとおり、多くの婦人団体からの強い要望で今度の七百六十七条の改正ということに踏み切っていただいたわけでございますけれども、これは婦人にとってもまた離婚によって不利益を受けることの多い子供の救済ということから考えても、大変に結構な規定であるわけですけれども、この法務省の統計で見て、数はきわめて少ないですけれども、男の人方が、夫が妻の名字を唱えている場合も、これは皆無というわけじゃない。やはりそれも同時にその不便が救済できるのではないか。これは私は思うんですけれども、婦人の場合は離婚をしたために名字が変わって非常に困っているのだということをこれは訴えることもできるけれども、実際問題としていまのように男と女の社会的力の非常に差のあるときに、男の方が実は女房に逃げられて、自分は名字が変わったのだ、困っているのだということを余り訴えることもできずに困る場合も多いのじゃないかと思いますので、やはりこれは婦人の地位の向上と同時に、離婚とか離縁によって不利益を受ける人の人権を救うという意味で、ぜひとも七百六十七条の均衡上この離縁による復氏ということについても強く御検討をいただきたい。そうして、養子制度全部についての改正も必要ですけれども、とりあえずこれの改正ということも早急に考えていただいたらいいんじゃないか、いかがでございますか。
#8
○政府委員(香川保一君) 今回、離婚復氏の例外措置のこの改正法案は、先ほどお話のありましたように、国際婦人年もあり緊急に改正を要する事項で、しかも他と関係なく独立してこれだけ改正しても心配ないというふうなものを、緊急に改正するということで御提案いたした次第でございまして、方向といたしましては養子制度についていろいろ再検討され、改善すべき点いろいろ考え方もございますが、養子縁組み離縁の場合の復氏の関係については、私の個人的な見通しといたしましては、養子制度がどのように改善されましても、方向的には離婚復氏の場合と同じようにいくのではないかというふうにも考えられますけれども、この辺やはり法制審議会におきまして若干いろいろ問題があるようでございまして、早急に提案するまで結論が得られなかったものでございますので、均衡上あるいは若干問題があろうかと思いましたけれども、それを待っておったのでは離婚復氏のこの関係の改正法案の提案ができないことにもなるおそれがございましたので今回は見送った、かようなことでございます。したがいまして、十分御質問の趣旨を踏まえまして法制審議会においても同じような方向で検討されるように私どもとしてもお願いしたい、かように考えます。
#9
○佐々木静子君 これ、ちょうど養子縁組みについての検討ということで、たまたま御答弁がございましたけれども、大筋で言いますと問題点を、この事柄に関連いたしまして若干法務省でいま考えていらっしゃる養子縁組みの改正の主な点、御指摘いただきたいわけですが。
#10
○政府委員(香川保一君) ちょっと手元に資料がなくて、養子制度について身分法の小委員会で検討されている事項、詳細ちょっと申し上げかねるのでございますけれども、一番根本的な問題は、現在の養子制度の実態というものが法律が考えているように運用されてるかどうかということからの再検討というのが一番の問題点でございまして、いろいろの事例、先生も御承知だと思いますが、養子制度の乱用と申してはちょっと言葉が過ぎるかもしれませんが、さような点に中心を、スポットを当てて検討されているということでございます。
#11
○佐々木静子君 話は離婚の氏の問題に戻りますけれども、この法務省の、いただいている本件法律案関係資料の十四ページを見ましても、「戸籍法第百七条による氏の変更・離婚後の婚姻中の氏への変更、許可申立事件数」というものが、これは数がきわめて少ないわけでございますね。そしてこの統計で見ますと、これは最高裁の調査による統計として書いてございますが、認容率が大変に高いわけでございますけれども、私はこれはもちろん一応の資料として添付していらっしゃるのだと思いますが、これは要求している人の数というものは、とうていここに出てくるような微々たるものじゃなくて、ここへ出すまでには相当多くの人たちが研究もし、そしてまたこの手続で自分の方の申し立てはかなり認容されるであろうという場合だけにしぼって、これは申し立てをしている。これは私ども法律実務を扱っております者から考えましても、非常にこういう相談は多いけれども、なかなか氏の変更というものはむつかしいんじゃないかということで、結局申し立てをしないであきらめる場合というのがいままで大変に多いわけだったわけでございますから、だから申し立てをする人の数も非常にしぼられているし、しかも認容されているケースが非常に多いけれども、これは大変にしぼられた、認容されるであろうという蓋然性のきわめて高いときに初めて申し立てをするわけだから、本当はもっともっとたくさんの人が氏の変更を求めているのだということ。私のわずかな例から考えましても求めている人の例が多いということ。だから、これがそういう意味での希望者が余りないんだというような資料にはならないんじゃないかということをちょっと申し上げておきたいと思うことと、それから、これは最高裁の方へお伺いしたいのでございますけれども、この戸籍法の百七条のこの氏の変更手続でございますけれども、これは以前に当委員会で私お尋ねしたことあるわけでございますが、なかなかこの氏の変更の手続というものが実際はそう簡単でないというふうに私は思うわけなんですが、現実に氏の変更の手続、特に時間的に申し立てをしてから結論が出るまで、取り下げたりしているのもかなりありますけれども、ともかく認容にしろ、却下にしろ結論が出るまで大体平均してどのぐらいの日数を要しているかということを、ちょっとお述べいただきたいと思います。
#12
○最高裁判所長官代理者(裾分一立君) いま佐々木委員の御質問の点でございますが、この氏の変更の審理期間だけということになりますと、大体私どもはその審理期間についての正確な統計というものを持っておりませんが、甲類審判事件が大体一・四ヵ月ぐらいということになっておりますが、恐らくこの氏の変更はそれよりもっと短い期間じゃないか平均が、このように考えております。
 それから、特に事案を見てみますと、この氏の変更というのは、よく子供さんが学校へ行く、つまり就学する直前ごろに出てきたりする場合がかなりあるようでございまして、そういうふうなのは特に早く審理をするという傾向にあるというふうに聞いております。
#13
○佐々木静子君 早く審理をするという傾向にあるというお話ですけれども、無論、司法のことですから、最高裁の方で何日以内にやるようにというようなことも言えないとは思いますけれども、非常に手間取ってごたごたしている。これは、たとえば学校へ行く子供さんでも、入学の手続までに変更しようと思っていても、裁判所がそれに間に合わしてくれなければ、最初違う名前で入って、またすぐ名前が変わるというふうなことになって、何のために氏の変更をするかわからないということになるわけでございます。氏の変更というものは、私は資料さえ整っておれば、むしろ即決ででもやっていい問題じゃないか。これはごたごた長いことかかるくらいなら氏の変更などしてもしないでも同じ結果になってしまうんじゃないかと思うので、どうも裁判所では実際に即さない、スピードの点において間に合わないように思うんです。この点、再三申し上げておりますけれども、特に法律がこのように変わって、前回の法務委員会の法務省の御答弁でも、たとえば婚姻中の氏を唱えるというときには、その離婚届の欄に書き入れることによってそれができるというふうな簡便な方法がとられているときに、一たびその手続から外れて三ヵ月後になれば、裁判所へ持っていくとなればいろいろ書類をつくって、しかも一ヵ月以上もかかるというふうなことでは全然実情に合わないんじゃないか。ひとつ、そこら辺を思い切って手続的に大きく御検討なすったらどうですか。少なくとも即日に認容していいんじゃないか。認容に限りませんけれども、認めていいんじゃないかというふうに思うわけなんですが、そこら辺は最高裁の方で何とかできないわけなんでございますか。
#14
○最高裁判所長官代理者(裾分一立君) このたびの法案が提案される模様が私どもにわかりましてから以来、そういう点をいろいろ検討しましたし、また今年度に入りまして会同その他の際に、この問題を現場の家裁の方々に周知徹底するような趣旨で、早く審理をするようにということについて私どもから要望をしてきております。大体、第一線の家庭裁判所の意見というのは、申し立て事件について資料が十分整っている場合はその書面だけで審理をするということは可能だけれども、書面だけで足りない、やはりこれは子供の復氏のことに関係する事案でございますから、そういう点についてどうしても調査しなければ判断できないという事案がやはりあるように申します。そういうふうな事案は、ただいま佐々木委員の御要望のようになるべく早くやる、おくれてはやはり非常に迷惑かけるというようなことで極力早くやろうというような、そういうふうな意見でございました。私どもも今後もまた重ねて同様のことを第一線の家庭裁判所の実務の方々に要望していきたいと、こういうふうに思っております。
#15
○佐々木静子君 これは、再々くどいようでございますけれども、国民の方の要求していることが、行政の方で受けとめる受けとめ方と、家庭裁判所の方で受けとめる受けとめ方というものが、私は非常に感覚的に違うと思うんです。違ってあたりまえだと思うんですけれども。それで、ともかくちゃんとやっていただくということのほかに、簡単にスピーディーにやっていただくということが非常にこういうことには要求されるんじゃないかと思うわけなんですね。そういう点で、これは後で質問もさしていただこうと思っているんですけれども、行政の方で考えている速度と家裁で考えているスピードというものが実際合わない面がいろいろ出てきている。たとえば、認知とかあるいは裁判、あるいは調停事項の場合もそうでございますけれども、離婚が決まってから十日以内に届け出なければならない。しかも、これは確定判決の謄本を添えなければならないというふうになっているんでございますけれども、これなんかも私が実務家としての経験から言いましたら、家裁の謄本が十日以内にできないわけなんですね。ですから私もそういう苦い経験を味わっているわけで、私ばかりじゃない、いろいろそういうことが起こるわけですね。一方では法律で十日以内に――これは後で私質問しようと思ったことですけれども、戸籍法の七十七条第一項で、これは認知による、「第六十三条の規定は、離婚又は離婚取消の裁判が確定した場合にこれを準用する。」となっておって、この戸籍法六十三条の規定を見ますと、「認知の裁判が確定したときは、訴を提起した者は、裁判が確定した日から十日以内に、裁判の謄本を添附して、その旨を届け出なければならない。その届書には、裁判が確定した日を記載しなければならない。」、この「裁判の謄本を添附して、」というのが要件になっていますけれども、それまでに裁判の謄本ができないことがあるわけですね。それから、また仮にできても、これはまあちょっと論点が外れますけれども、謄本をもらってきた、あるいは送達を受けて、よく見ると当事者の名前が間違っているとか、いろいろそういうことがあるわけでございまして、これは実は私も離婚の調停を代理人でやって、届け出はこちらの方でちゃんとやっておくからと引き受けて、ところが謄本を何回催促に行ってもできておらない。それで結局謄本を持っていったところが十日を過ぎておった。そしてそれは市役所で受理してもらったけれども、謄本がおくれたという話もそのときはしたんですけれども、ところが後で市役所から当事者の方に過料の通知が行ったということで、非常に代理人として困った立場に追い込まれるというようなこともなきにしもあらずで、これは私はこの十日という規定が短過ぎるというよりも、やはり裁判所も大変にお忙しくてお気の毒だとは思うんですけれども、ただ慎重に裁判をするというだけじゃなしに、もう少し時間ということも考えて実際の実情に合うだけのスピードを備えていただかないと困るんじゃないか。
 そこら辺で、氏の変更の手続を一方では一片の離婚届の用紙に丸なり何なり書き入れればもう認められる。同じことですね。子供にとって――いや子供じゃない、これは離婚する場合の氏をどうするかという問題だけれども。ところが、それが三ヵ月を過ぎて家庭裁判所へ持っていけばいろいろ書面もつくらなければならない、かなりの日数も要する。私はそこで非常にバランスを失していると思うわけなんですね。ですから、どういうわけでこれはすぐにでもできないわけなんですか、出したらすぐに。しかももっと簡単な資料で。今度の法改正を待ってからでもいいですから。それは何かどうしてもできないという理由があるわけですか。
#16
○最高裁判所長官代理者(裾分一立君) ただいまの御質問ですが、家庭裁判所の審判の対象となっている事項が非常に画一的で、同じような因子を拾い上げてそれでもって画一的に判断してもいいということでありますれば、仰せのように取り運ぶことも可能かと思いますが、やはり具体的な事案を適正に判断しようとすると調査という段階を手続上考えざるを得ませんので、そこでなかなか画一的にやりにくいという面が本質的にあろうかと思います。しかし、もちろんただいまの離婚復氏の場合の事件について、今度のような法案が出ますと、それは一つの重要な判断のモメントになりますから、仰せのように迅速にやれるように努力していきたい、こういうふうに考える次第でございます。
#17
○佐々木静子君 ぜひ考えていただかないと、この問題だけじゃなしに、家庭裁判所へ出てきて自分のことをやっていただくんだから、そしてまた余り文句を言って不利益を受けるとつまらないから、みんな黙ってまずまずおとなしくしているわけですけれども、やっぱり家庭裁判所で余りいろいろと手数を重ね、これは一般調停事件も同じことですけれども、調停委員の方はさしあたり生活にいま困ってないし、少ないとはいえ日当も出るけれども、調停を受ける方にすると、これは一般調停事件ですけれども、これはみんな生活がかかっているのに、その時間を呼び出されたからということで仕事を休んで来ている。そのために、これが何回も重なってくると収入も大変に少なくなってくる。職場でももういいかげんにしろと言われる。非常に肩身の狭い思いをしなければならないというようなことで、調停自身における利益よりもそれを受けるための不利益というものの方が非常に多いというふうな苦情も、実は婦人団体などの集まりへ行っても非常にたくさん聞かれるわけで、もう少し家庭裁判所が、裁判所という世間から全く隔絶されたところでやっていられるわけだけれども、家裁の仕事には行政的な面が非常に多いわけですから、もう少し実情に即した、申し立てをする人の側に立って、申し立てをする人が申し立てをしやすいように、審判を受けやすいような状態というものをもっと――普通の刑事事件やらそういう普通の裁判とはまた全く違うんですから、本来行政的な仕事をやっていらっしゃる部分が大変に数から言えば多いんですから、そこら辺はもっと根本的に考えていただかないと、国民が家裁を信頼しなくなるんじゃないか。信頼しないと言ったって、これはやっぱり三ヵ月過ぎれば家裁へ持っていかないといけないんですから、結局そういうことになってくると不利益を受ける人は救済されなくなる。そのあたりは前々からお願いしていることなんですけれども、家庭局長さん、もうちょっと根本的に、裁判は独立しているからとか、一々の裁判は干渉できないからと、これわかりますけれども、制度的にもう少し国民の要求にマッチするような受け入れ体制というものをもっと根本的に考えられたらどうですか。
#18
○最高裁判所長官代理者(裾分一立君) ただいまの御要望についてでございますが、離婚復氏のこのたびの改正につきましては三ヵ月さかのぼるということになっておりまして、恐らくいま佐々木委員がおっしゃいましたのは、それよりも前の分が家庭裁判所に出た場合のことを主として対象としておっしゃっておられるやに伺うのでありますが、私どもといたしましてはその法の及ぶそれより前、さかのぼるそれより前の事案については、一般の戸籍法百七条の改氏改名の通常の事件にそれが埋没いたしますので、おっしゃられるように、私どもは先ほどもお答えいたしましたが、ことしの初めから第一線の方々に、そういうこのたびの改正のねらいとする趣旨なんかを説明いたしまして、迅速に審判がなされるようにということを要望をしてきておるわけでございまして、その具体的な個々の手続の細部に至って運営をどうするかということは、いろいろ検討して見なければなりませんけれども、全然調査をしないで審判をしてよろしいということは事務当局として申せませんので、そこら辺をなるべく迅速に、その両方調和しながら努力していきたい、こういうふうに思っております。
#19
○佐々木静子君 これも何回ものことになりますけれども、一応の書面が整っておれば、それでもうぽんぽんと出していいんじゃないか、よっぽど特別な場合を除いて。非常に手間がかかっています、いままでの例では。もうとっても実情に即さないことを、国民の側に負担がかかっている。家裁の趣旨から言ってもこれはおかしいんじゃないかというふうに思いますので、これはさらに検討事項として、またこれが法改正になっていろいろそういう問題が私はかなり家裁にどっと来るんじゃないか。また、これは法改正以前の離婚というふうに局長は限定されておっしゃったけれども、私は前回の委員会の審議の中にも出ておりました三ヵ月の間を徒過してしまった人もこれからまだまだ出てくるんじゃないか。その人たちがいまからだったら家裁へ持っていかなくちゃならないというケースもいろいろ出てくるんじゃないか。ですから、やっぱりこういうことに対して受け入れを考えていただかないといけないんじゃないか、制度的に。これを重ねて申し上げて、またこれは法施行になった後に、その実情などについていずれ質問をさせていただく機会があると思いますが、余りそれが暇がかかって困るということにならないように重々お願いしておきたいと思います。
 それから、きょうは前回質問なすった近藤先生がいらっしゃらないのでございますけれども、若干、この離婚に際して氏の変更というようなことから、この親権者と子とが同一戸籍の方がいいのではないかというふうな議論が展開されておりましたので、そのことにも若干触れてみたいと思いますが、まず、離婚に際して親権を行うべき子供がいる場合に、母親が親権を行っている場合がこれは何%ぐらいになっているか、これは法務省の方でおわかりでございますか。この資料の十三ページを見ますと、「離婚後に妻が親権を行う子の数」というのが載っているわけでございますけれども、妻が親権を行うのが全体の何割になっているのかとか、そういう統計がないわけなんですね。これは戸籍の面を計算すると当然出てくると思うんでございますが、そういう統計はないわけですか、いかがですか。
#20
○政府委員(香川保一君) ただいまの御指摘の点は、的確な統計をとっておりませんので、正確な数字を申し上げかねると思いますが、いろいろの資料から推計いたしますと、約六割から七割ぐらいがさような事例になっているんじゃないかと、かように考えている次第でございます。
#21
○佐々木静子君 これは離婚による復氏の人が九八%ぐらいを占めている。そして子供の親権者になる母親が六割から七割ということだとすると、これはいまのところでは子の氏の変更の手続をとらない限りは、この六割ないし七割の人が親権を受ける子供と親権者である母親と別戸籍になっていると思うわけでございますね。これはそうすると、子の氏の変更によって何件ぐらいがその親権者の戸籍に入ってきているのか、それはおわかりでございますか。これは家裁の方でおわかりでございますか、年間何人ぐらいの子供がその親権者の戸籍に、親権を受けるべき子供が入ってきているのか。
#22
○最高裁判所長官代理者(裾分一立君) ただいまの御質問でございますが、家庭裁判所の統計を見てみますと、子の氏の変更の許可を求める件数が昭和四十九年は六万六千件ぐらいございました。五十年は若干ふえまして六万九千件余り、七万件足らずというところになっておりますが、この既済の事件を見ますと、大体九十数%認容しておるようでございます。これがその親権者との組み合わせの統計をとっておりませんので、子の氏を変更することによってその親権者と同じ籍に入れているかどうかということの数字は、私どもちょっと把握できないのでございますが、大体氏の変更を求めているような事案はほとんど親権者の方から求めているんではなかろうかというふうな感じ、これはほんの感じだけでございますが、そういうふうに見守っております。
#23
○佐々木静子君 それでは、この間の近藤委員の御質問によりますと、これは親権を行うべき者が決まった場合には、むしろ子の戸籍は親権を行うべき者の戸籍の方に当然に入るようにすることもひとつ検討してみてはどうかという趣旨の質問であったと思うわけなんですけれども、私はこれは非常に問題があると思うんです、もし、そういうふうな向きで法務省が検討されるというようなことが起こると。といいますのは、これは親権、まあ原則として、一般論とすると、父親が仮に親権者でなくなっても、自分の戸籍の中に子供が入っていると、これは日本人の感情として、やはりこの子供は自分の子供だから生活のめんどうも見なくてはならないし、父親としての義務も果たさなければならないということが――これは別に戸籍がどっちになっても父親としての義務は同じことだけれども、いまの日本人の感覚からすると、同一戸籍にある以上自分に責任があるというふうな感覚が非常に強い。ところが、いまの御質問のように母親が親権者になった場合に、もう自動的に子供の戸籍は母親に移るとなれば、これはさなきだに母親が親権者になった場合に父親が子供の扶養料を――養育料を払わないとか、あるいはいろいろの問題が起こってくる場合に、特に父親が再婚したような場合は邪魔になってくるというふうな問題が起こりがちなところに、これは拍車をかけるようなことになって、いわゆる形式的平等の行き過ぎであって、結局自主的平等がそれによってますます阻害されるんじゃないか。しかも、親権者が母親になった場合にそのまま子供の戸籍も親権者の戸籍に当然に入るようなことにするということは、これは男女の平等の問題よりも親族法においてはもっと基本的である子供の利益ということがいまの議論の中では非常に薄れてしまうんじゃないか。ですから、これは父親の戸籍に入れておいた方が子供が不利益を受けるということもたくさんのケースの中にはこれは無論あると思うので、そのときは親権者である母親が子供の戸籍を自分の戸籍に入れればいいのであって、これは一般的にいまの日本で母親が幾らがんばってみても、父親の戸籍に子供があった方が子供が経済的にも就職とか結婚とか、まあ結婚は未成年者がやる場合は少ないけれども、何かの場合大変に子供の利益にいまの日本の現状においてはつながる場合が多いんじゃないか。そういうふうに考えると、私は先日の法務委員会で出された近藤委員の質問に対しては非常にこれは形式論であって、子供の利益を損なうことになる、あるいは母子家庭というものが置かれている母親とその子供の苦しみと非常に大変なことであるということについての実情と、それから頭の中に描いた男女同権ということにおいての認識等の間にかなり実情に大きなずれがあるということを見落としていらっしゃるのではないかというふうに思ったものですから、これは法務省当局とすると必ずしもそのように検討するという御答弁ではなかったように思うわけですけれども、これはやはり子供の利益ということから考えるとそう簡単に母親が親権者だから自動的に子供を親権者である母親の戸籍に入れるというふうな改正というようなことは、これはもうよほど慎重に考えていただかないと子供が大変な不利益を受けるということを私の意見として申し上げたいんですが、これは法務省としてはどのようにお考えですか。
#24
○政府委員(香川保一君) 離婚いたしました場合に、子供の親権者が母親になっておる事例が先ほど申しましたように非常に多いというのは、結局は離婚の実態が婚姻後五年ないし六年ぐらいのところで非常に集中的に多い。したがって、子供が小さいわけでございます。その場合に母親が親権者になっておるというのは、つまり小さい子供の養育ということを考えますと、籍は父親のもとに置いておいても、実際問題として子供の養育は父親では容易でないということから、子供の幸福を考えての母親を親権者にするという現象だろうと思うんであります。お説のとおり子供の将来の幸福をいろいろの面から考えますと、やはり母親が親権者になって成年になるまで母親が子供の養育をするということは必要でございますけれども、さればと言って子供を父親の籍から抜いて母親の籍に入れるということは、具体的な実態の調査をしたわけではございませんけれども、およそわが国の社会の実情を考えますと子供として決して幸福なことではない。むしろ小さい子供を是が非でも母親の籍に入れるというふうなことは、むしろ母親のエゴではないかというふうにも思うのでございまして、確かに今回の離婚復氏に関連しまして民法の七百九十一条の規定との関係から、一部には当然子供を母親の籍に入れるようにした方がいいじゃないかという御意見もございますけれども、私どもとしてはちゅうちょせざるを得ない。やはり子供の幸福ということから考え、わが国の社会の実情から考えれば、養育は母親がするとしても、籍は父親のもとに置いておいた方が大多数の子供にはかえって幸福じゃないかと、かように考えているわけでございます。
#25
○佐々木静子君 その御答弁を聞いて大変にありがたいと思いますが、本当は母親の戸籍に入れても子供が不利益を受けないところまで本当の意味の男女同権というものが実現するということが全く望ましいわけですけれども、きわめてごく特異な例を除いては私はそういうことはほとんどまれな例ではないか。私など離婚事件の代理人をやって、かつ婦人の側から頼まれるケースが非常に多いし、離婚のときには子供の母親は子供の親権者になりたい、子供の戸籍もこっちに持ってきたいという主張が大変多いわけですけれども、少なくとも子供の籍は子供が大きくなってから考えたらいいのではないかということで説得して、結果的に喜ばれていることが多いわけで、私の経験から、わずかな千件か二千件の経験ではございますけれども、これはやっぱり法務省の方で、まず婦人の権利も大事ですけれども、結局そういうことで子供を抱え込んで母親が大変に苦しまなければならないということは、結局そう権利を守ったということにもならないわけだし、やはり離婚の方においては子供の利益ということを中心になってぜひとも今後もお考えをお進めいただきたいということをお願いいたしたいと思います。
 それから、いまの今度の改正で離婚による復氏というものが自由になったということの改正でございますけれども、これはすでに新聞とかあるいは雑誌などにも載せられておりまして、中にはもうそうなったのだと思っている人も大分にいるようでございますけれども、まだそういうことになってるということは、今度そのように改正になるということを知らない人もずいぶんいるわけでございます。そういうことから考えますと、今度この法改正ができましたならば相当力を入れて国民にPRしないことには、せっかくのこの改正による恩典に浴するチャンスを失う人も多いだろうし、また逆に同じ名字であればまだ婚姻中である場合にのみ限られるんだと思い込んでおる人もあって、中には取引の安全というものを、一時期混乱が起こらないとも限らないというふうにも考えられるわけでございますけれども、この法改正を国民に全面的にPRして、しかも国民の意識の中に定着さしていこうという場合ですね、これはいま法務省とすると具体的にどういうふうな方法を考えていらっしゃるのか。これは大臣いかがでございますか。
#26
○国務大臣(稻葉修君) 政府の施策についての国民へのPRは、総理府に広報室というものがありまして、これが主としてつかさどっておりますので、この制度をフルに活用して大いにPRをしたいというふうに考えております。
#27
○佐々木静子君 局長とするとどのようにお考えでございますか。
#28
○政府委員(香川保一君) 一般的なPRの方法としては、いま大臣が御答弁になったことでございますが、最小限こういうことを知らないために離婚届だけ出しちゃって三ヵ月たってしまったというふうな当事者と申しますか、直接関係人の知らないための不都合ということも十分予想されますので、きのうも御答弁申しましたように、大半である協議離婚の場合の届け出書におきましてそのような欄を設けまして、それによってぎりぎりのところで十分そういうことが認識できるようにしておこうというふうなこと。それから、事柄は戸籍届け出と密接な関係を持つことでございますので、市町村の窓口におきましてそういったPRの手段を講じたい、かようなことを考えております。
#29
○佐々木静子君 せっかくのこの婦人の地位の向上と権利を守る規定でございますから、この恩典に一人でも多くの人が浴することができるように、落ちこぼれがないようにぜひとも万全を期していただきたいというふうに思うわけでございます。
 それから、前回人事訴訟法についてお尋ねいたしましたが、時間の都合で十分に質問さしていただいておらないわけでございますけれども、この人事訴訟法の管轄の規定が非常に複雑だということを前回も質問したわけでございますけれども、この人訴の管轄、これは確定判決が一つの婚姻事件について幾つも出ては困るということから、専属管轄ということにしてらっしゃるというふうに承ったわけでございますけれども、これはやはりなぜ専属管轄にしなければならないのか、私は一応の論拠はわかりますけれども、たとえば家庭裁判所で婚姻事件が審理されるとき、たとえば家事事件で、家事審判規則の百二十九条では「調停事件は、相手方の住所地の家庭裁判所又は当事者が合意で定める家庭裁判所の管轄とする。」というふうになっているように思うのでございますけれども、これにしたところで結局調停離婚が成立、まあたとえば離婚のケースを考えますと、調停離婚が成立すればこれは確定判決と同一の効力を持つわけですね。このように非常に緩やかな、当事者の便宜ということにウエートを置いた家事審判規則というものが一方にある。ところが一方では、これが一たび地裁へ人事訴訟ということになれば、同じ婚姻事件でも専属管轄ということで大変に縛られる。私は、これは地裁の判決であっても家裁の調停であってもこの効力は異なるわけじゃないわけでございますから、やはりもっと柔軟に考えてもいいんじゃないかというふうに思うわけですが、なぜ家事審判規則と異なってこれだけ厳格な専属管轄という規定をことさらに設けなければならなかったのか、その点を伺いたいと思います。
#30
○政府委員(香川保一君) 婚姻事件につきまして、理論的に絶対専属管轄でなきゃならぬというふうなことではないと思うのでありますが、やはり人事訴訟法によるこういった身分関係の変動を伴う訴訟事件につきましては、一般の訴訟事件と異なるいろいろの特殊性、たとえば公益性が強いということとか、あるいは裁判所の職権調査、職権証拠調べが前面に出るとかいうふうなこと、さような特殊性があることから、やはり当該事件が適正迅速に処理されるという観点から考えると専属管轄の方がベターであるというふうな政策的な配慮だと思うのであります。で、ただいまお話にありましたような、仮にこれを一般事件と同じようにもっと管轄を広げるというふうなことになりますと、かえって離婚事件で考えますれば相手方の不利益と申しますか、不便につながるおそれもありますし、あるいは証拠収集が困難だということから事件の処理がおくれるというふうなことにも相なろうかと思うのでありまして、さような意味で、この婚姻事件の特殊性と当事者の便、不便あるいは証拠収集の難易というふうな観点から考えまして、理論的には専属管轄をとった方がよかろう。ただ、現在の人訴の規定のように婚姻中の氏を称するものの住所地のみの専属管轄ということでは当事者の不便な場合もあり、また証拠収集がむつかしいという場合もございますので、その面の是正を図るということが今回の改正でございまして、これを一般事件と同じような専属管轄の制度をやめてしまうということにはちょっとちゅうちょを感ずる次第であります。調停事件の方は、これは御承知のとおり調停の制度は当事者の話し合いによって事件の円満な解決を図るというところに力点があるわけでございますので、一応相手方の住所地あるいは合意による土地の裁判所の管轄ということに原則的にはなっておりますけれども、それよりももっと広くどの裁判所に申し出てきても自庁処理ということでその裁判所が管轄を持つようなこともございますし、また移送も非常に広範に認められておるわけでございます。審判による場合も同じようなことになっておるわけであります。これはやはり当事者の話し合いによる互譲の精神に基づく事件の円満解決ということに力点を置くといたしますと、この裁判所でなきゃならぬというふうな専属管轄というふうなものを設けることはその趣旨からいかがかという配慮だろうと思うのであります。したがって、それぞれの人訴による訴訟事件と調停の特殊性と申しますか、制度の趣旨に応じた裁判管轄ということを配慮している、かようなことになると思うのであります。ただ、今回の改正で考えておりますのは、一応専属管轄としまして第一順位から第三順位までの裁判所を考えておりますけれども、その中でやはりどの裁判所で審理するのが適正、迅速な処理にふさわしいかということの問題もあろうかと思うのでありまして、さようなときに備えて当事者の申し立てた裁判所にだけ専属するということではなくて、裁判所の職権移送というふうな道も設けてケースごとに妥当な裁判所で裁判ができるようにという配慮もしておるつもりでございます。
#31
○佐々木静子君 いまのお話のように、できるだけこれは便宜的に考えていただきたいと思うわけです。というのは、これまだ法改正にはなってないですけれども、いまの法律による人訴法によっても、調停はわりと緩やかですから、わりに便利な家庭裁判所で行われる。ところが、不調になったら普通一般の調停を受けている当事者はそこに対応するそこの所の地方裁判所で当然受理してもらえるとみんな頭から思い込んでいるわけでございまして、それが法律がこうなっていてこうなっていて、これがここではだめなのだという説明をすると、非常に一般の国民は大変に奇異な感じを受けるわけでございますね。今度法律、人訴の改正になって、そこでできる場合も前よりも多くなってくるというふうに思うわけですけれども、やはり余り一般の国民感情と食い違わないように、ひとつできるだけこの専属管轄というような規定は今後の立法の趨勢とするとできるだけ余り取り入れないように、主権者である国民が便利に裁判を受けることができるように、管轄についても国民主権主義にのっとって、国民の便利ということにウエートを置いて改正を進めるというふうに今後の法改正を考えていただきたい。この問題だけじゃなしに、いろんな法律の問題において。これは専属管轄というものを、一般事件とおっしゃったけど、専属管轄と決まっている事件は特別な事件で、普通はそう裁判の管轄が専属管轄じゃなくて、一般的に緩やかにされておるし、これから先はもっともっと緩やかになっていっていいんじゃないかというふうに思うものですから、私の意見を述べているわけですが、そのあたりはいかがでございますか。
#32
○政府委員(香川保一君) 当事者の便利なようにということ、これはしかし推し進めてまいりますと、やはり裁判なり調停なりによって事件の解決をするということでございますので、その事件の解決が適正、迅速にされるということが一番当事者の望むところだと思うんであります。したがって、単に距離的に、たとえば住んでおるところから一番近い裁判所が便利だから、その裁判所でもできるようにというふうに単純にいかぬ面もあると思うんでありまして、やはり単なるそういう距離的な近さということだけではなしに、それぞれの事件に応じた、当事者が一番望んでおる事件の適正、迅速な処理ということを中心にして管轄を考えるということになるわけでありまして、佐々木委員の御質問の趣旨もそういうことだと思うんでありまして、そういうふうな観点から考えました場合に、理論的に専属管轄を貫かなきゃならぬかどうかというふうな問題は確かにあると思うんでありまして、さような趣旨で当事者の最も望んでおる適正、迅速な処理にふさわしい裁判所はどこへ持っていけばいいかというふうな観点から管轄を考える必要はあるということは同意見でございます。
#33
○佐々木静子君 ぜひ当事者の便宜ということもさらに御検討いただくということでお願いしたいと思います。そして、今度のこの改正というものが、まあ実に多くの婦人の期待が寄せられたものであって、私の方の手元にもう大体三十万ほどの請願書とか、あるいは嘆願書というものが集まった。これはほかの方々についても大体同じことが言えるんじゃないかと思うし、法務省の方にもいろいろの要望とかあるいは嘆願が寄せられたというふうに思うわけでございますけれども、この民法の一部改正というものが本当にこの千何条ある――親族法、相続法だけをとらえるとまあ三百条ほどだと思いますけれども、その中の部分的にはごくわずかな問題ではございますけれども、しかしこれが大きく婦人の地位の向上ということの確かに第一歩ということで意味を果たすのではないかというふうに、私ども婦人の一人として大きな期待を持っているわけでございますし、また総理府のこの婦人問題企画推進本部で、婦人に関する政策の中にも、この家族法における男女平等というものが大変に大きなウエートを占めて、特に今度の民法改正というものが評価されているということを、私も要望してきた者の一人として、また早速に取り組んでいただいた法務省の当局の方々にもこの機会に心から敬意を表したいと思うわけでございますが、それと同時に、まあ実は大臣も御承知のとおりに、この氏の問題ばかりじゃなしにいろんな問題が婦人団体から寄せられているわけでございまして、まあ一番多くの婦人が強く切望しておることと言えば、婦人の権利を守るための、特に婚姻が継続している場合はまずとりあえず、法的にはともあれ婦人の生活が一応守られている場合が、一部の例外を除いてはまず守られている場合が多い。一番婦人として関心があるのは、その婚姻関係が終了した後の婦人の財産権の問題ということになってくるんじゃないかというふうに思うわけでございまして、まあ、婚姻関係が終了するかっこうとしては生別と死別とがある。生別の問題についても、いま氏の復氏の問題という問題で確かに前進はしたけれども、この生別後の婦人の財産権の確保ということについても本当はもっともっと考えていただきたい。これはいろんな政党でも御討議なさっているわけでございますけれども、これは法的にももっときっちりしたものにしていきたいということが私どもの切望でございますけれども、特にいま一番一般的な問題として、大ぜいの婦人が夫に先立たれることが非常に多い。まあその場合に、その後の、夫に死に別れた後の老後の生活ということが大変にいま関心が深いんじゃないか。しかも、いま社会福祉というようなことがいろいろ叫ばれておりますけれども、社会福祉のうちの最も主な問題を占めるのは、婦人の老後の生活保障というようなことにつながっていくんじゃないか。そういうことになってくると、もうやはりこの相続法の改正ということこそ一番望まれているんじゃないかというふうに思うわけでございます。そういう意味で、私ども社会党もあるいはいろいろな婦人団体からも、またそのほかの政党からも、相続法を改正してもっと妻の地位を高めてほしいという要望がいろいろと出されており、また私も先般本委員会に相続法の改正案を、いま妻の相続分をもっと引き上げる、そうして相続順位を兄弟姉妹よりも上位順位にするという改正案をいま提案しているわけでございますけれども、現実に相続の問題についてこれはどこへ行きましても一番関心の深いのは、まあ相続財産がたくさんある場合はともかくとして、自分のいま住んでいるところしかない。あるいはまあそれも持ち家であればまだある方でございまして、何もない。とりあえずはこのいま住んでいる借家権しかないというようなところが非常に多いわけでございますけれども、ところが、いま夫が死亡して、たとえばその財産といえば自宅しかない。それが三分の一しか妻が相続できないということになってくると、子供たちが遠隔の地に住んでいたり、あるいは別に住んでいるような場合は、もう家を売ってお金で三分の一と三分の二とに分けていかなければならない、こういう問題が非常に多くて、結局夫に死なれたということのほかに、いままで住んでいたところも失わなければならないという婦人がこれは実に多いわけでございますね。まあ昔から女三界に家なしという言葉がありますけれども、文字どおり物理的に三界に家がないという状態に追い込まれるわけでございますけれども、この相続法の改正の中で、私は特に強くお願いしたいと思いますことは、とりあえずですね、この婚姻生活中に居住していた家、これは持ち家であろうと借家であろうと、そこにその権利をですね、他の相続人が仮にあっても妻がこれが優先的に独占的に――独占的というとちょっと言葉はきついかもわかりませんが、その居住権を、この家の権利を、持ち家の場合は当然所有権ということにもなってくると思いますけれども、保障することができるようなことをぜひともひとつ考えていただかないと、これは幾ら三分の二、二分の一と言ってみたところで、これは家しか財産のない人あるいは特に借家権しか財産のない人の場合には、この小さいものを三分の一にするか二分の一にするかと言ってみたところで、ともかく家を売って、あるいは家を明け渡して出ていかなくちゃならないということで、結局家がないことになる。そういうことから考えますと、住んでいるところの居宅の所有権なり賃借権ということは、妻が相続できるように、何とかとりあえずその問題に取り組んでいただけないか。その点について法務当局はどのようにお考えでございますか。
#34
○政府委員(香川保一君) ただいま御指摘の問題が、まさに相続法の再検討の場において最も考えなきゃならない問題の一つだと思うのであります。相続法の改正、特に配偶者の相続分について現行の三分の一を二分の一に引き上げる、あるいは三分の二に引き上げるというふうなことでの議論が非常に多くなされておりますけれども、それもそれなりに十分意義のある、検討しなきゃならない問題だと思いますけれども、わが国の相続の実態から申しまして、さような画一的なと申しますか、単なる相続分をどうするかということだけではとうてい解決できない、これはまあ積極財産がたくさんございまして、そういうふうな場合にはそれで十分妻の生活安定と申しますか、法的地位の向上が図られるだろうと思いますけれども、大半の国民の場合には、さようなプラスの財産がたくさんある場合だけではなくて、場合によればマイナスの財産の方が多いという場合もあるわけでございまして、さようなときに単に妻の相続分を三分の二に引き上げてみたところで、借金ばかりたくさん背負い込むというふうなことになったんでは、これは決してそのケースにおいては妻の生活安定というふうなことにはならないわけでございます。さような意味で相続法の、特に配偶者の相続分の問題を考えます場合に、そういった画一的な単なる相続分の引き上げというふうなことで、私は問題は決して解決しないというふうに思うのでございまして、いま例示されましたように、借家権がある、あるいは住んでおる家の所有権があるということになりましても、それを仮に三分の一あるいは三分の二相続してみましても、相続人間でだれがその家に住むか、遺産の分割というふうな問題になってまいりますと、切実に配偶者がその家から出ていかなきゃならぬというふうな問題にもなりかねないわけでございまして、さような意味で配偶者の相続法における地位の向上と申しますか、真の解決になるような方途といたしましては、いまおっしゃったような借家権の場合には、少なくとも妻はその夫を失った場合にその家に借家権を承継して引き続き住める。しかもそれが持ち家である場合には、所有権はともかくといたしましても、妻がその家に住み続けることができるというふうな、少なくともそういう保障は、これは生活の本拠の問題でございますので、必要ではなかろうかというふうに考えるわけでございます。そういうことのほかに、いろいろきめの細かい問題をやはり考えなきゃいけないことでございまして、昨日も申し上げましたように、法制審議会におきまして最も要望の多いこの相続法の再検討の問題に精力的に取り組んでいただくことにいたしておるわけでございまして、その場合に、いま申しましたようなことを十分踏まえて精力的に検討していただきたいというふうに思うのでありますが、先生御承知のように、相続法の改正というのはいろいろの問題が絡んでおりまして、全体的な再検討の結論を得るというには私は一年やそこらではちょっと無理ではなかろうかというふうに思うのでございますが、しかし、全体との関連なしにこれだけは切り離してもやってもいいと、改正してもいいというふうな結論を出していただくことも当然考えられるわけでございまして、さようなことで幸いにも本年中に、いまおっしゃったような問題も含めまして、それだけ切り離して早急に緊急の改正の必要があるということで法制審議会の方で結論をいただきますれば、それに応じてできるだけ速やかに国会にさような案を提出するということもいたしたいと、さような方向でできるだけ法制審議会にもお願いいたしまして、少しずつでも善は急げで解決してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。さようなことでひとつ御了承願いたいと思います。
#35
○佐々木静子君 これは大変に前向きの御答弁をいただいて感謝したいと思うわけでございますけれども、大変にいろいろな点でむつかしい問題があろうと思うんですけれども、一番切実な問題は、夫が死んだ後、そこに引き続いて住めるかどうかということが一番妻にとっては基本的な問題でございますので、ともかくその問題を、相続法の全部の改正に先駆けてその問題だけでも改正することができましたならば、これはそれを前提に踏んまえて、他の問題の相続法をどうするかということもまたおのずから変わってくるわけでございますので、ともかくまずその問題を早急に鋭意取り組んでいただきたい。法制審議会でもいろいろと御議論があろうとは思いますけれども、ぜひともこの問題は前向きにお願いしたいと思うわけでございまして、たとえばこれは税金の面においても、夫婦間の財産の贈与については、居住用の財産については、これはつとに免税の特例が早くから設けられておるというようなことも、その配偶者の一方が死亡した後に、その残存配偶者がその居住する場所を確保することにおいて何とかしなければ――他の財産権に優先して考えなければならないという一つの考え方のあらわれだと思いますし、また特に、これは昭和四十一年でございますか借家法の改正で、本来相続権のない、婚姻当時にまだ届け出が出てなかった内縁の妻とかあるいは事実上の養子に対しても、借家権の相続を認めているというような改正が行われている、非常に社会的な立法が行われているというような趣旨から考えましても、これは当然その内縁の妻とか事実上の養子にまでそこまで幅広く、これは当然のことだと思いますけれども、その居住の権利を与えようとしている立法の趣旨から見ますと、これは当然に残存配偶者、特に妻の場合が多いと思いますが、妻が夫が死んだ後その居住権を、あるいはその夫の所有しておった居宅の所有権あるいは借家権を確保できるということは、老後の生活をはかる意味で一番の大前提になると思うわけですので、いま重ねてお願い申し上げておきたいと思いますが、ぜひとも鋭意お進めいただきたい。そして、いまのお話で大変意欲的に取り組んでいただけるという趣旨のように承ったわけでございますが、大体法制審議会にお諮りになってどのぐらいの時間で法務当局としたらこの問題を取り組めるか、成案が得られるか。私はこれはもういますぐにでもやっていただきたいというふうに思うわけですが、もう国会がこれで終わるというときに、いますぐと言っても無理なことだと思いますが、次の通常国会には間違いなく御提出できるでしょうか。これはもうぜひともそのぐらいにやっていただかないと、これは世界行動計画、国内行動計画にしても、婦人の権利を守るスケジュールというものは十年間に限られておるわけですし、もう五年後には中間報告もしないといけない、二年ずつには国連に報告もしなければならないというような差し迫った状態にいまあるわけですから、これはいかがでございますか、秋ぐらいには成案を得れると――ぜひとも私はそのようにお願いしたいんですが、いかがでございますか。これは局長もそれから大臣からもお答えいただきたいんですが。
#36
○政府委員(香川保一君) 法制審議会の中で民法部会の身分法小委員会におきましてこの問題を議論していただくことになるわけでございますが、私どもといたしましては、今回この改正法案の関係、それ以外の相続のいろいろの問題につきましても国民の要望が非常に強いわけでございますが、やはり民法の相続法という基本法でございますので、全体的な問題としては相続法の全面的な改正案というものは、先ほど申しましたようにことしいっぱいでまとまるというふうな自信は、率直に申し上げまして私にはございません。恐らく法制審議会におきましても、問題がむつかしいだけに、急いでやるといたしましてもやはり慎重な審議がされることは必然でございますので、全般的な改正はそう簡単にはいかないだろうというふうに思うのであります。しかし、これだけは切り離しても全体との関連上問題がないというふうなこと、いま御例示になりましたような問題は、あるいはその一つかと私は思うのでありますが、そういう問題も含めまして、実は近々身分法小委員会における審議のスケジュールを部会長、小委員長とも御相談して小委員会に諮って決めていただくことをいま手続的に進めておるわけでございまして、さような意味でこれは私どもができるだけ早く、少なくとも結論が切り離してでも得られるものは得たいということで極力お願いいたすわけでございますが、法制審議会のことでございますので、しかし問題が問題でございますので法制審議会におきましてもできるだけ速やかに結論を出すように、言いかえれば今年いっぱいかかりまして、さような緊急の問題について結論が得られるように精力的に御審議が願えるというふうに思っておるわけでございまして、さような結論が出ますれば、全般的な改正はしばらく御猶予願わなければと思いますけれども、改正して差し支えない分は切り離してでも、一番早いところと申しますればこの次の通常国会ということになるんでございますが、さような方向で極力努力したいというふうに考えております。
#37
○国務大臣(稻葉修君) 民事局長の御答弁で大体御了解していただけるとは思いますが、憲法第三章の二十四条等を中心といたしまして、内閣憲法調査会におきまして第一委員会、委員長は真野毅さんだったと思います。亡くなられた坂西志保さんとか中川善之助さんとか私ども、この第一委員会に属しておりまして、十四条や二十四条を中心として憲法の命ずるところがわが国の民法、ことに身分法等においてはいろいろ問題があると。佐々木先生先般来貴重な御意見の御開陳がございましたが、それらの点についても、佐々木先生の御意見全部ではなかったかもしれませんけれども、三十九年に答申をした、報告書を出した内容を覚えているわけではありませんから、みんな。そういう点で佐々木さんのおっしゃるそのことについては、国際婦人年を機会に大いに盛り上がってきたことは事実でございますけれども、当時の憲法調査会の中でも大いに議論されたところであります。おかげをもちまして、佐々木議員を頂点とする衆参両院の婦人議員の非常に精力的な御努力の結果、法制審議会におきましても、ただいま局長の申し上げましたとおり、まあ不十分ではありますけれども、今回の改正が一方、それから、先ほどの相続法における改正の検討を鋭意進めておる次第であります。私は法務大臣であるのみならず、法制審議会の会長でございますから、興味深く佐々木委員の御意見や質問を聞いておりました。そういう段階にきまして、いまとりあえず早急に行うべき相続法の改正部分につきましては、さらに法制審議会身分法部会長にも局長からよくお願いをして、次の通常国会になるべく間に合わすように促進いたしたいと存じます。
#38
○佐々木静子君 大変に心強い御答弁をありがとうございました。大臣が昨年秋の予算委員会におきましても、自分は常に妻の味方に立ってがんばるとおっしゃっていただいて、私ども大変に心強いと思っておるわけでございます。何だか三木内閣はあやしい、屋台骨が危ないというような話もあるわけですけれども、大臣、これだけはぜひとも御在任中に、まあずっとがんばって大臣でいてくださるといいわけですけれども、ともかくこの問題は大臣が極力推し進めていただきまして、この次の通常国会に必ず政府案として提案していただけるように、重ねて強く要望しておきます。民事局長、大丈夫でございますね。いかがでございますか。
#39
○政府委員(香川保一君) 御要望の御趣旨、これは婦人のみならず一般国民の非常に関心の強いところだと思うわけでありまして、御趣旨を踏まえまして、法制審議会にも十分御尽力願うようにお願い申し上げたいと思います。
#40
○佐々木静子君 大変に私も心強い答弁をいただいて喜んでおります。この民法の一部改正案、これも婦人の権利を守るためにぜひとも大事だし、また同時に、これから質問さしていただく戸籍法の改正についても、これは男女同権を実現する意味においても大事な規定だということで、これ鋭意取り組んでいるわけでございますけれども、それではまあごく一部、続いて次の国会でまたその相続法において婦人の権利を守るために政府が御努力いただくと、政府案として提出できるということ、まあ確約していただきまして非常にうれしく、法務当局にもぜひとも今後ともがんばっていただきたいということを申し上げてお願いしておきたいというふうに思うわけでございます。
 そのように改正できますと大変にありがたいわけでございますが、この戸籍法に今度問題を移すわけでございますけれども、いま物理的な家のことを申し上げたわけでございますけれども、これはまあ日本では昔から女三界に家なしと言われるけれども、この戸籍法を見ておりますと、私は実にそういう感じがするわけです。この法律の規定から言うと、生まれたときに親の戸籍に入っておって、それから婚姻するときに婚姻当事者が別の戸籍をつくるというふうになっておるわけでございますけれども、また事実そうですけれども、この戸籍の氏が、大体九八%以上が夫の氏に変わるということは、戸籍の筆頭者が夫になるということになるわけでございますから、結局この戸籍を見ておりましても、女は初めは生まれた父親のうちにおり、それから夫の戸籍に入り、そしてそのまま終わることもあれば、離婚とか何とかいうことになれば夫の戸籍から出てまた親の戸籍に入る。結局、戸籍法の規定は男女同権ということになっているけれども、実際の日本の戸籍を見ると、男は余り変わらないけれども、女の一生というものは戸籍によって振り回されておるし、そして夫が筆頭者である限り、その夫の同一戸籍に載っておる者は、その夫を中心に筆頭者との続柄として出てくる。そういうことになってくると、やはりこれは夫中心のもとの家父長的家族制度というものが、形の上ではもう家はなくなったと、封建的な家族制度はなくなったのだと言いながらも、戸籍を見ると厳然とここにもとどおりの家族制度というものが残っていると思うわけなんですね。ですから、私はもうかねてこれは言っていることなんですけれども、本当に戸籍法というものを改正するなら、いまとりあえずの改正も決して反対ではありませんけれども、これはやはりこの最初の戸籍法の改正が中途半端になったからこういうことになってしまったので、戸籍というものは、人間が個人として尊重されなければならないという法の精神から考えても、当然一人一枚の戸籍というものに切りかえなければならない。そして、その戸籍を見るならば、一人一人の、男であろうと女であろうと、いつ生まれて、いつ結婚して、そしていつどうなったというふうな、これは個人個人の履歴として戸籍に書かれるというふうに、一人一枚の戸籍法にならなくっちゃ私は本当は家族制度もなくならないし、婦人は解放されないと、私はそういう考え方を昔から持っているわけなんで、これは家の制度がなくなったとは言い条、やっぱりここに戸籍法を見ると、これはやはり家の制度がある。戸籍の法律のたてまえから言うと、何の何がしという男と何の何がしという女が結婚して新しい戸籍をつくるわけですけれども、やはり筆頭者が夫になり、そしてその次の欄をめくれば夫の半分の幅で妻が出てくる。そして、それから後、婚姻によって生まれた子供があればそこへ載ってくるでしょうけれども、たとえば夫が筆頭者でそして婚姻――前婚で生まれた子供がそこにあれば、これは本当のところはこれ、どうなるんですか、やはりその戸籍に載る場合があるわけですね。ともかく、夫を中心としていろんな戸籍が出てくるわけです。ですから、やはり私はそこで家族制度というものがなくなったなくなったと言いながら、戸籍を見ればはっきりここに残っているんじゃないか。そもそも昔家族制度があったと、家があったと言うけれども、家とは何ぞやというふうに突き詰めてみると、結局、いわゆる物理的な家、何かといえば結局、これは中川善之助先生の本にも書いてあったけれども、古い民法でも、家を大事にしなければならない、個人より家を大事にしなければならないと言っているけれども、家とは何かといえば、結局、突き詰めれば一枚の戸籍になるというふうな表現が中川善之助先生の著述にもあるわけですけれども、結局、それはいまも余り変わってないわけですね。この点をまずやはり本当に根本的に考えなければならなかったんじゃないか。これは最初に戸籍法を戦後つくるときに、我妻先生が一人一枚の戸籍にすべきじゃないかというような御議論もお出しになっていたことがあるやのように承っておるわけでございますけれども、これはどうせ婚姻によって新しい戸籍をつくる、また子供が出生したのを機会に新しい戸籍をつくるという作業をするときに、一遍には変わらなくても、どうしてその一人一枚の戸籍のところまで踏み切らなかったのか。私は、いまこの全部の一億一千万の戸籍を書きかえるということは大変だと思いますけれども、やはり今後の展望とすると、人間が人間として解放されていくためには、やはり一人一枚の戸籍じゃないといけない。自分の戸籍謄本を就職先へ出さないといけないと思うときに、夫と夫につながる親族――まあ妻が戸籍謄本要る場合ですね、全部がこれは数珠つなぎに出てくる。これはその夫以外の者が戸籍謄本が要るときですね。やはりこれはまさに家制度そのものだと思うんですね。ですから、これから先の展望として、これは出生したときにはどのみち戸籍をつくらないといけないんだから、何年か後から生まれた人については、一人一枚の戸籍というものに切りかえていくということは、私はこれは長期計画に立てばそれほどたくさんの費用を要するものじゃないと思うわけでございます。百年もたてば皆死んじゃうんですし、戸籍というものが一人一枚のに変わっていくんじゃないかと思うわけですが、なぜ日本はそういう家族単位の戸籍というものに固執しているのか。外国の例なんかは家族単位の戸籍になっているのかどうか。何かというと、すぐにアメリカではこうなっている、イギリスでは、欧米ではこうなっていると言うけれども、戸籍は私詳しくは調べておりませんけれども、これは私は外国へ行くたびにそこの国の戸籍謄本がどうなっているかと聞きますと、大抵が――大抵って、聞いたところではどこでも一人一枚だと。いや日本は家族ぐるみの一枚になっているんだというふうに言うと、ほうっという珍しい話に――これは専門家同士の話じゃなしに、雑談的な話ですけど、なるわけなんですね。私の知っているところでは、韓国は家族の戸籍になっておりますが、これは恐らく日本が韓国を併合していたときに日本の戸籍法を押しつけた結果、それが残っているんじゃないかというふうに思うわけです。これはほかの国の立法例はどうなっているんですか。普通の近代国家と言われる国は大抵一人一枚の戸籍なんじゃないですか。
#41
○政府委員(香川保一君) まあヨーロッパ、アメリカ等の西欧諸国におきましては、日本の戸籍のようにはなっていない。むしろ個人の身分登録証というふうな制度が多いわけでございます。しかし、日本の戸籍制度を逆に諸外国から見ました場合に、日本の戸籍制度というのは非常にすぐれておるというふうな評価すらあるわけでございまして、これはいろいろの見方があると思いますけれども、決して現在の戸籍法――これは民法をうけてのものでございますけれども、決して家とかというふうなものを中心にしたものというふうには考えないわけでございまして、夫婦子供を一つの共同体としましてそれを登録しておくというふうなことでございまして、決して往昔の家族、家の制度というふうなものが戸籍法になお残っているというふうには見る必要はないのではないかというふうに思うのであります。
 筆頭者というふうなことも、これも実は戸籍の索引上のことでございまして、戸籍の初めに書いてある、あるいは終わりに書いてあることによって、そこに序列をつけておるようなことでは毛頭ないわけでございまして、実態が先ほどおっしゃったように夫の氏を称する婚姻が多いために、夫が一番先に書いてある。つまり、氏というもので索引の役を果たしておりますので、夫が一番最初に書かれておるというにすぎない。そういうふうに理屈の上では単純に割り切った考え方ができると思うのでありますけれども、決してそれを家の温存だというふうに理解する、考える必要は少しもないのではないかというふうに思うのであります。ただ、戸籍というのは個人の身分関係を公証する唯一の制度ということでございますが、西欧諸国におきましては、身分登録証というふうなものが個々の人の身分を公証するという機能は確かに持っておりますけれども、一番そういうことが問題になる相続の場合におきましては、遺言の制度が非常に発達しておりまして、日本流の、そういう身分登録証を中心にしての相続関係がどうなるかというふうなことは余り機能的には働いていないわけでございます。したがって、個々人の身分登録証というふうなものでもさして不便はないと思うのでありますけれども、わが国の戸籍の身分関係の公証と申しましても、最も役に立つ戸籍が機能しておりますのは相続関係を明らかにするという点にあるかと思うんであります。さような意味から申しますと、それだけの観点から考えますと、現行戸籍よりは昔の戸籍の方が相続関係は一目瞭然であったわけでありまして、さような意味で、夫婦子供中心の現在の戸籍は、相続関係を明らかにするという面ではむしろ不十分だという非難すらあるわけでございます。これはいろいろの取引の場面、登記とか、あるいは銀行預金の名義書きかえというふうなこと、株券の名義書きかえというふうな場合に相続関係を明らかにするために実に多くの方がいろいろの戸籍をとらなきゃならぬというふうなことで、非常に不便をかけておるわけでありまして、一番機能的に役に立つべき相続関係を明らかにする、さような戸籍でありながら、その場合に非常に不便が多いという非難すらあるわけでございます。それが、日本の場合に、さらにこれ、個人中心のといいますか、個々の人ごとに身分登録証のようなものをつくるとなりますと、遺言の制度がもっと発達すればその面の不便さは緩和されるのでございますけれども、わが国におきましては遺言制度は全く余り利用されていない現状でございまして、そうなりますと相続関係を明らかにするために身分登録証のような個人個人の戸籍ということに相なりますと、相当これは相続関係を明らかにする場合に不便といいますか、非常な手数、費用がかかることに相なるのではなかろうかというふうに思うんであります。したがいまして、現行の夫婦子供中心の戸籍というものを理念的にどういうふうに見るかという見方はいろいろあるといたしましても、役に立つといいますか、役に立つときに役に立てるようにしておくという観点から考えますと、私は個人個人に戸籍をばらしてしまうというのはむしろ逆ではないかというふうに思うのでありまして、特に現在夫婦子供中心に戸籍が編製されていることによって個人が非常に侵害されるとか、あるいは女性の地位が低下させられるというふうなことがあればともかくも、さようなことまでになっているとは考えないわけでございまして、いろいろの面から戸籍制度は検討しなきゃならぬと思いますけれども、ただいまのところ、これを個人にばらした一人一人のものにしてしまうというふうなことは、私どもとしてはやはり問題が多過ぎて、いまのところはさようなことにするようなつもりはないわけでございます。
#42
○佐々木静子君 これは、いまの御答弁で、夫婦と婚姻前の子供だけいる家族では確かに一枚の戸籍謄本で相続関係というものがわかりやすいかしらないけれども、現実に、相続登記一つしようと思ってもそんなのはまずむしろ少ないのであって、もう子供はみんな結婚している、それから戸籍はいろいろ移っている、除籍謄本をいろいろ調べてほかに婚姻外の子供がないかも全部さかのぼって探究しなければ相続登記一つできない、いまの銀行預金の名義書きかえ一つできないという意味で、私はいまの御答弁で、いまのだと相続関係の手数が旧戸籍よりは一遍にはいかないけれども、やはり一人一人の戸籍と比べると楽だとおっしゃったけれども、私はその御答弁は必ずしも当たっておらないと実は思うわけです。どのみち、夫婦と婚姻前の子供だけいる家族で相続始まった場合はそれで足りるかしらないけれども、普通はなかなかそうじゃないわけですから、それにしたって、まだ婚姻する前の除籍謄本も調べないと、たとえば夫の場合、婚姻前の子供がいるんじゃないかとやっぱり調べないと、これは相続登記一つ、銀行の名義書きかえ一つできないわけですから、だから私は、必ずしもいまこれだと相続上便利だということ――私はむしろ重婚を避けるにはこの戸籍は便利だと思うわけです。これは無論一枚一枚の戸籍でも結婚しているかしてないかということは載るでしょうけれども、これは登記官吏が誤って一枚一枚ごと配偶者がいないと思って婚姻届を受け付けるケースが、これはいまよりは多少多くなるんじゃないかということを思うわけですけれども、やはり、だから私は相続の便宜ということは余り当たらないんじゃないかと。これは大変失礼な言い方ですけれども、やっぱり、将来の展望とすると、これは一人一人の戸籍というふうに私は恐らく世界の趨勢――世界の趨勢といっても日本だけがこういう変わった戸籍を持っているわけですけれども、なってくるんじゃないかというふうに考えているわけですけれども、これは一遍に何もかもお願いするといっても無理だと思いますので、今後の展望としてひとつお考えになっておいていただきたい。これは終戦直後の戸籍法改正のときにやっておいていただければそのようになったんだと思うんですけれども、ぜひとも考えておいていただきたいと思うわけなんです。
 それから、いまの身分登録簿の公証制度ですね、それについて、法務省からいただいている本法律案の関係資料を見ましても、たとえば西ドイツなどでは――これは資料の六十ページ。非嫡出子、嫡出子とかあるいは養子などについての記載は閉鎖登録ができる、というふうなことになっておるわけですね。これは西ドイツですね。「子の請求に基づき閉鎖登録を右登録簿に記入するものとする。」というふうなことになっているわけですけれども、閉鎖登録というのは、これは一般に見れないようにするという意味なわけなんですか。私ちょっとこの閉鎖登録の定義がよくわからないんですが、そういうことなんですか。
#43
○政府委員(香川保一君) これは正確にどういうふうなことになっておるかよく存じませんけれども、少なくとも公開はしないというために閉鎖登録簿に入れると、こういうことのようでございます。
#44
○佐々木静子君 私は、この戸籍法改正に際してぜひお願いしたいと思うのが、日本の戸籍法の施行規則三十九条の新戸籍に記載される事柄ですね、これに、「一」が「出生に関する事項」、「二」が「嫡出でない子について、認知に関する事項」というのがあるわけですね。これが新戸籍をつくる場合にもついて回るというところに、私は非常にいまの日本の戸籍法の人権擁護に対する配慮が乏しいんじゃないかと。たとえば、西ドイツのこの例などを考えても、非嫡出子とか養子というものは、必ずしも私は嫡出子と比べて差別されるべき立場の人間であるなどとは毛頭思っておりませんけれども、しかし、現実の社会で余り知られたくないということであるというふうに考えるならば、やはり西ドイツでもそのように配慮をしていらっしゃるのに、日本では戸籍法の施行規則になぜこの認知の事項を載せるのかということを、私は非常にこれ矛盾を感ずるわけなんです。というのは、これは法律実務に携わっておりまして、特に婦人弁護士ということであれば認知の事件を非常によく頼まれるわけなんで、認知の事件は大変に代理人として苦しまなければならないわけなんです。というのは、いまの民法の根本的な規定から言いましても、子供の人権ということはまず第一に考えなければならないから、本当の子供であるならば、これは当然に子供は認知される権利を持っているんだから、当然認知をさすように一生懸命努力をしなければならないし、といって、さりとて、妻の方は心おもしろからぬことは言うまでもないことだし、それから、婚姻によって生まれた子供がそれによって不利益を受けるということがあっても困るという、この両者の板ばさみになって大変に苦しむわけなんですけれども、結局いろいろと説得したり、とことんまで行って認知の裁判で確定判決まで行くこともありますけれども、私はそこまで行ったことはないんであって、大抵この利害の対立する関係者の方を説得して、結局任意認知ということに持っていく。そして、その任意認知をするについて、これは別に認知であれば妻の同意というものは法律上は必要でないけれども、しかし、妻が何かで戸籍謄本をとったときに夫が認知しているということになれば、これはやはり大変な問題であろうと思うので、やはりできるだけ妻に了解を得るように、最大限努力しても得られない場合もあるけれども、努力をするということになると、やっぱり特に婚姻によって生まれた子供が就職とか結婚とかあるいは進学のときに戸籍謄本が要る、そのときに自分の父親がほかの子供を認知しているということになると、これは進学などは大して影響ないかしらないけれども、婚姻なんかのときには大変に不利になるであろうと思うので、結局それは何とかその婚姻による子供の戸籍謄本の上には載らないようにしたいと思っていろいろと考えるところが、結局だれしも考えつくところは同じようなことであって、本籍地を移動して、そして夫は結婚以外の子供を認知する、そしてその認知した戸籍をまたもとの本籍地へ持ってくる、そうすれば今度は認知事項は消えてもとどおりの戸籍で戻ってくるというふうなことで解決していることが大変に多いわけですね。現実には大変多いと思います。それしかいま方法がないわけですね。ですから、そうすると一応妻の体面も保てるし、そして夫は一応父親としての責任も果たせるし、そして婚姻によって生まれた子供がそれに不当に損失を受けることがないし、また婚姻以外に生まれた子供も認知されないよりも認知された方がいいであろうということで、一応これで一件落着ということになるわけですけれども、本当のところはちっとも一見落着してないわけでございまして、後で必ず認知された子供か子供の親が、おれの戸籍に認知されたところが載っているけれども、これを消す方法はないかと、これはもう必ず言ってくるわけでございます。もう言われること百もわかってそのとき言うわけにいかぬというのが実際の現実だと思うんですけれども、ところが、戸籍法の施行規則によりますと、三十九条で嫡出でない事実はこれはどこまでも戸籍を変えてもついて回るということになるとすれば、結局このことによって不利益――責任のあるのは父親であるのに、その責任のある父親自身の戸籍からは何とか消えるわけですね、認知の事実は。ところが、全く責任のない婚姻以外によって生まれてきた子供自身がその十字架を負って、自分は認知をされた人間であるという戸籍を持って一生歩かなければならないというのは、これは私は大変に不合理なことだと思うわけなんですね。この施行規則のうちで嫡出でない子についての認知の事実というのは、これはなぜ私は新しい戸籍のときに載せていかなければならないのか。これを除こうと思うと、これはその母親と実の父親とが婚姻届を出して準正にすればこれは婚姻によって生まれた子供で、出生届の欄からこの事実は消えますね。それしか方法がないわけですね。だから、結局それしか方法ないとなると、結局本当の正妻との間で一時的にしろ離婚届を出さないといけない。それをやって解決した件も私は実は何件かあるわけですけれども、これは大変に危険なことであって、両三者がどれだけ話を詰めておいても、その段階になって離婚届は出す、その後婚姻届を出して半日後に離婚届を出して、すぐにまた婚姻届を出すからというふうに両三者がどれだけ話し合いをしても、やっぱり一たん離婚届を出した瞬間に当事者の気持ちが変わればこれはどうにもならないことなので、今度は妻の権利がどうにもならなくなるし、大変に困る問題が起こるわけなので、問題は、この施行規則三十九条というものがなければ、こうした不幸というものは救われるんじゃないか。これはいつでもジレンマに立たされる問題なんですね。一遍この点を法務当局で考えていただきたいと思うわけですが、これはなぜこの施行規則三十九条にこの認知の事項を一生ついて回らすようになっているのか、これはいかがでございますか。
#45
○政府委員(香川保一君) 新戸籍をつくります場合に認知事項を記載するというのは、これはもう端的に申し上げまして、父子関係を明らかにしておくということに尽きるわけでございます。で、これは非常に問題があるわけでございまして、本来言えば、本質的に認知された子であろうとなかろうと、そんなことはちっともだれも何とも思わないという世の中になれば一番結構なんですけれども、現実はなかなかそうはいかないという点は確かだと思うのであります。さような現実を踏まえますと、戸籍といたしましては、実体法上あるいは手続法上、必要最小限度の記載にとどめるということになるわけでございますが、この点はお説のようないろいろの問題ございますので、十分検討したいと思いますけれども、そのほかにも、いろいろ現在の戸籍に書いておる事項で必要最小限度という観点からいかがかと思うものもほかにもあろうかと思うのでありまして、いま総ざらい検討しておるのでございますけれども、ただ、もう十分御承知と思いますけれども、認知事項を書かなくても父親の名前と子供の名前、氏が違うわけでございますね。そうすると、これはどうしてだろうかという疑問がそこに出るわけでございまして、その面までわからぬようにするというわけにはなかなかまいらない。したがって、この認知事項の二をやめましても、全くそれじゃそういった事柄がわからなくなってしまうかというと、さようにはまいらぬ面があるわけでございます。しかし、その辺のところも、これはさらにいろいろ氏の変更というふうなことでわからぬようにする方法もそれはあると思いますけれども、この事項の記載をやめるだけでは解決しない問題でもあるわけでございまして、その辺も踏まえて十分検討いたしたいと思います。
#46
○佐々木静子君 これはいまの父と子供の氏が違うというのは、これは養子にやっても違うし、それから嫡出であっても両親が離婚すれば違うし、違う場合は幾らでもあると思うし、氏が違ったって、どっちみち結婚とか何とかいうことで氏が変わる場合は幾らでもあるんですから、氏が違うということはそれほど差別につながらないと思うわけなんですね。しかし、もちろん嫡出子と非嫡出子というものが全く平等に何ら偏見なく取り扱われるという社会が実現するということが最も望ましいわけですけれども、そこまで至らぬとすれば、この認知をされたという事項を戸籍に残す、しかも今度閲覧制度を禁止したとか何だかんだ言っても、戸籍謄本というものは、これは就職にしても結婚にしてもやれ何にしても、いろいろ要るわけですね、先ほどおっしゃったように。そのたびにその認知されたという事項は、その人が死ぬまでついて回るわけですね。そうしてそのついて回る子供自身は何ら罪がないわけなんですから、むしろその父親について回るというならこれはまだ制裁的な意味もあるかもしれないけれども、生まれてきた子供は何にも知らないで生まされているんだから、それが一生ついて回るというのは、私はこれは大変な人権問題だと思うわけですね。ですから、ほかのいろいろ言われましたけど、そういう説明とは本質的にこれは意味が違うと思うので、これは明らかに差別を残す規定だと思いますね。ですから、これは法律じゃなくて規則でもありますし、ですから、何とかこれは早急に御検討いただきたい。これは大変に不幸な運命を背負って、一生そのために不利益を受ける子供の――子供というか、その人の一生の立場を考えてあげたときに、当然これは考えていただかなければいけないというふうに思うわけなんで、ぜひともそれは強くお願いしたいと思います。
 それからだんだん時間がなくなってまいりましたので次の問題に移りたいと思いますけれども、今度出生届、これが父親のみならず母親からも提出できる、これは大変に喜ばしいことで、これは非常に婦人団体あるいは一般の婦人からも男女同権の規定をそのまま実現した、当然の規定とは言いながら、改正とは言いながら大変に結構であるというふうに歓迎されているわけでございます。ただ、問題はこの出生届を遅滞した場合の過料の問題ですね、それは結局どのようになるのかちょっと御説明いただきたいと思います。
#47
○政府委員(香川保一君) これは形式的にと申しますか、法文上から申し上げますと、当然届け出の権利があるのみならず義務があるということになるわけでございますので、したがって過料の制裁はかぶってくるわけでございます。ただ、母親の場合には、出産いたしましてすぐに届け出をみずからするというふうなことが容易でないことも当然あるわけでございまして、さような特殊性も十分考えて処理されることでございますので、一律に単に期間を徒過したからということで過料の制裁を受けるというふうなことは、まず実際問題としてなかろうというふうに思うのであります。
#48
○佐々木静子君 それから、今度の死亡届についての届け出の改正も、これもいままでの改正のように親族の届け出が同居に限られているということは、大変に国民感情からも同居の親族がなければほかの他人が届け出るということを考えるようなことになっておったことから考えましても、大変に好ましい改正であるというふうに思うわけで、実情に合った結構な改正だと思うわけですが、これはまた話がもとに戻りますが、この出生届け出が十四日以内でございますね。これが私外国を旅行しておりますときに、よく陳情というかそういう話を聞くわけで、法務当局ももちろんその点についていろいろと御把握なさっていると思いますけれども、戸籍法百四条に国籍留保届け出の規定がございますね、「国籍法第九条の規定によって日本の国籍を留保する意思を表示しようとするときは、第五十二条第一項又は第二項に規定する出生届出義務者は、出生の日から十四日以内に、出生の届出」と同時にその戸籍留保の届け出をしなければならないという規定があるわけでございますけれども、これがたとえば私この間アメリカへ参りましたときも何人かの人から陳情を受けたわけです。というのは、これは旅行者がお産をするということはまれでございますけれども、商社などの駐在員で一年とか二年とか外国へ居住するという人がだんだんふえているわけでございますけれども、その人たちがなれない言葉も不自由なところで子供を産むということは産むだけで精いっぱいでございまして、その十四日以内に出生届を管轄の総領事館へ届けるということまで気がつかないケースが大変に多いようでございます。私はニューヨークの総領事館でもそれがどのくらいあるかというような話も聞いたのでございますけれども、かなり日本と関係の深いアメリカにおいても総領事館の数は六つか七つぐらいで大変に広範な地域を管轄している。そうすると、日本の何層倍もある地域で、そして出産後十四日以内に総領事館に国籍留保の届け出をすることにまで思い至らぬ夫婦が非常に多いわけでございますね。総領事館が大体どこにあるかも、どこの総領事館へ行けばいいかも知らないような場合もあるようでございまして、そうなってくると、アメリカのように出生主義をとっている国では親が二人とも日本人で日本からちょっと一年ぐらい行って、その間に産まれた子供だから当然日本人だと親は思い込んでおるのに、十四日の期限を過ぎたばかりに日本国籍を喪失してしまっているといようなことで、大変に大騒ぎをするというようなケースが大変多いという話を聞いたのでございますけれども、これは大変に不便な国へ行っている国では、交通機関の悪い国などではなおそういう問題が頻繁に起こってきているんじゃないかと思うんですが、これは日本人だと思い込んで産んだ親も産まれた子供にとっても、自分だけは日本人でないということは大変な不幸な事態だと思うんですけれども、ここら辺のところはどのように法務当局で考えていらっしゃいますか。
#49
○政府委員(香川保一君) 確かに百四条の一項、十四日以内というのは、場合によっては短きに過ぎるということも考えられないではございませんけれども、しかし、通常は十四日あれば総領事館に届けられるのに期間としては決して不十分ではないと思うのであります。ただ、いまお話もありましたように、十分そういうことを知らないということから届け出をしないということになるケースが多いと思うのでありまして、これはこういう国籍留保の手続があるということをやはりPRすることが必要だと思うのであります。いろいろの事情によって知っておりながら届け出ができなかったというふうな場合には、百四条の二項の規定を活用いたしまして、期間徒過後の届け出について弾力的な運用をするということも配慮しなければならぬと思いますけれども、実態、果たして日本の総領事館に届ける距離的な意味、いろいろのことを考えて十四日で十分かどうかということはひとつ再検討いたしたいと思います。
#50
○佐々木静子君 もう余り時間もございませんので、十分に質問さしていただく何が残っておりませんけれども、その点についてぜひ国民サイドでお考えいただきたいということと、それから前回大臣にも御質問さしていただいた人権侵害そのものにつながる興信所の行き過ぎ調査、あるいは先日来問題になっている地名総鑑の発売問題などにつきまして、大変にいまの憲法下考えられないようなことが起こっているわけでございますけれども、差別をすることによって金もうけをするというような者を厳重に規制していただくということを、具体的な話を質問する時間がもうございませんが、ぜひともこれ大臣積極的に今後取り組んでいただけますね。
#51
○国務大臣(稻葉修君) しばしば申し上げましたとおり、真剣に取り組んでいくべき問題だと考えております。
#52
○佐々木静子君 それではこのあたりで質問を終わりますが、今度の多くの婦人の要望をいち早く取り上げていただいて、そうして国際婦人年の国内における婦人の地位向上の第一号の改正案をいち早く法務当局がお出しになったということに心から敬意を最後に表さしていただくと同時に、いまお約束いただいた、続いて相続問題について全体の問題は無理にしても、妻が夫の死別後その居住する家を失うことがないように、立法の改正を早急に責任を持って取り組んでもらう、いただくということをここに強く要望いたしまして、私の質問は終わることといたします。
#53
○原田立君 前回質問して若干残っておりましたので、その点でお伺いしたいと思いますが、改正案関係資料の中にある昭和四十八年の離婚件数の総数は十一万一千八百七十七件に対して、戸籍法第百七条による離婚前の氏への変更に関して争われた件数は一体どのぐらいあるのか。また、その過去の実態はどのようになっているのか。それに対し、このような件数に対して法務省当局はどのような見解を持っているのか、お伺いいたします。
#54
○政府委員(香川保一君) 戸籍法百七条の氏の変更の許可事件の総数はちょっと私ども統計とっておりませんのでよくわかりませんが、今回の改正の資料という意味で、サンプル的に調査いたしました結果をちょっと申し上げます。これはサンプル的と申しますのは、主な家庭裁判所について調査をしたわけでございます。これは昭和四十九年度に受理された事件でございますが、東京家裁で百二十八件、大阪家裁で九十三件、福岡家裁で二十四件、仙台家裁で四件、合計二百四十九件になっております。この中で離婚いたしまして婚姻中の氏を、名を称したいということでの変更の許可申し立て事件の中身を見ますと、先ほど申しました数字のうちで東京家裁におきましては合計三十一件あるわけでございますが、そのうち認容されておるのが十八件でございます。それから大阪家裁では合計三件でございますが、これは三件全部認容されております。福岡家裁におきましてはゼロでございます。仙台家裁では一件ありまして、一件認容されておるというふうな状況でございます。これ以上の詳細のことはちょっと手元に資料がございませんので、御了承願いたいと思います。
#55
○原田立君 それで、その数字に対して法務省当局はどのような見解を持っているか。
#56
○政府委員(香川保一君) この離婚の場合に婚姻中の氏を称したいという実質的な必要性のあるのは、このような数字よりはもっとはるかに多いと思うんであります。ただ、家庭裁判所に申し立てて審判を受けるというふうな手続に一般的にちゅうちょされると申しますか、あるいはそういう制度のあることを知らないために申し立てないというふうなこともあろうかと思うんでありまして、まあさようなことから、本来百七条の規定は離婚後に婚姻中の氏を称する場合に備えての氏変更の規定ではないわけでございまして、現在これを活用してそういった切実な必要のある場合に対処しておるということでございますので、百七条のそういう弾力的な運用ということによってこの問題は解決しないというふうに考えまして、今回の民法の一部改正を提案した、かような次第でございます。
#57
○原田立君 同じく資料の中に、愛知教育大学の久武教授による氏に関する意識調査の結果が掲載されておりますけれども、認容の関係についてお伺いしたい。この欄外にありますけれども、戸籍時報205号から引用してあるということなんですが、大体一般には出さないような資料であるようにお聞きしておりますけれども、権威ある数字なのかどうか、その点はいかがですか。
#58
○政府委員(香川保一君) こういったアンケート調査というのは、やはりそれなりの意義があると思うんでありますけれども、やはりこれは全部そのままこれが実態だというふうに受け取ると危険な場合もあるかと思うんでありますが、この調査の数字を見ますと、どこまで質問と言いますか問い自身を理解して、アンケート調査に応じられたかということが、若干ちょっと疑問があるように思うんでありますけれども、大方の考えとしては十分権威があると申しますか、実態に合ったような数字ではなかろうかというふうに受け取っております。
#59
○原田立君 法務省では今回の法改正に当たり、国民世論の意見を反映するためにどのような調査活動を行ってきたのか、意識調査の内容等、具体的な調査内容、もしありましたらばお知らせいただきたい。
#60
○政府委員(香川保一君) 特に全国的にそういった意識調査をいたしておりませんので、まあこういった資料から見、あるいは一般のいろいろの要望を分析いたしまして検討した次第でございまして、ただこの問題は離婚復氏の原則に対する例外措置を設けます場合に、そういった子供と母親の氏が違うことによる子供に対する悪影響というふうなことを配慮しなきゃならぬわけでございまして、この辺の面はむしろ現在母親が、そういう関係で困っておるというふうな事例の調査あるいは意識というものは、なかなかこれ容易にアンケート調査的なものでは把握しがたい面もございまして、むしろこういうふうな制度を設けることによって、そっとと言ってははなはだ言葉が悪うございますけれども、さような問題を積極的に母親の側から解決するように取り組んでもらいたいというふうな考え方であるわけでありまして、しかし、これは別に意識調査をいたしませんでも、母親とその養育している子供の氏が違うということが、たとえば子供が小学校に入学するというふうな時点以降考えますと、これは相当深刻な問題だということは容易に想像できるわけでございまして、さようなことは特に全国的に意識調査をしなくても、当然解消してしかるべき問題だというふうに考えた次第でございます。
#61
○原田立君 ただいまのお話によりますと、意識調査は具体的に行っていないというようなお話でありますが、やはりこういう根本の法律の問題の解決に当たっては、国民の間で十分なる論議も行われることが必要ではないかと。世論の反映がなされないことになるおそれがあるんじゃないか、こう思うわけであります。また、このように改正が急がれる理由、理解しないわけでもありませんけれども、まだ多くの調査、世論の反映という面で少し早過ぎたのではないか、こんなふうな感じもするわけであります。確かに職業的な関係あるいは子供を引き取る女性の場合等、女性が不利益をこうむることが除かれるということは、大変好ましいことであると思うのでありますが、しかし、このような不利益の改善ということと、十分なる論議が尽くされたかどうかということは別の問題であろうと思うのであります。やはり十分なる議論を尽くし、世論に基づいて初めて改正されるべきが本筋ではないかというふうに私は思います。この点どのように対処するつもりなのか、具体的措置をお伺いしたい。
#62
○政府委員(香川保一君) 今回の民法の改正につきましては、法制審議会の身分法小委員会におきまして実に精力的に審議を重ねていただきまして、その小委員会の結論が民法部会に報告されまして了承を得ておるわけでございまして、期間は――この問題はずっと以前から論議はされておるわけでありますけれども、結論を早急に出す意味での精力的な審議はずいぶん熱心におやりいただいたわけでございます。ただ今後、いろいろこの身分法の改正の関係で確かに国民の意識がどうかということを踏まえなければ右左することができないような種類の問題もたくさんございます。私どもといたしまして、御案内のとおり、いままで身分法小委員会におきましていろいろ身分法の改正――相続を中心にした改正等の意見、これを取りまとめて昨年の八月に公表いたしまして、関係方面にも配付して意見をお寄せいただきたいというふうにお願いいたしておるわけでございますが、遺憾ながら今日、十ヵ月ばかりたつんでございますけれども、その中で寄せられている意見はごく少数でございまして、この辺のところは、なかなか問題がむつかしいためにこうすべきだというふうな意見が寄せにくいということも確かにそうだと思うのでありますけれども、何といいましても、単に意見照会をするというふうなことだけでは、なかなか国民全体が、大多数がどういうふうに考えておられるかということの意識把握はむつかしいわけでございまして、その面につきまして、さらに工夫して国民の多くの意見がどういう方向であるかということを十分把握できるような方法もぜひとも考えなきゃならぬというふうに思っておるわけでございます。したがいまして、いろいろ民間の団体等もあるわけでございますけれども、やはり慎重に御検討願ったその結果をできるだけ早く寄せていただくというふうなムードづくりも必要かというふうに思っておるわけでございます。
#63
○原田立君 民法七百六十七条の改正は、離婚のみが復氏の変更の対象になっておりますが、離縁の場合は適用されないのかどうか。先ほど佐々木委員からも質問がありましたけれども、再度お伺いするわけでありますが、法改正による七百六十七条の二項の新設以前にあっては、従来、復氏の変更は戸籍法百七条による離婚の氏への変更に関する審判例がありますが、今回新設された七百六十七条第二項とはどのような関係になるのか、その違いについて具体的にお伺いしたいと思います。
#64
○政府委員(香川保一君) 最初の御質問の養子の離縁の場合、七百六十七条と同じような縁組み中の氏を称する改正が今回はされていないわけでありまして、これは先ほど申しましたように、養子制度全般についての検討の中で検討していただくということで、法制審議会の身分法小委員会におきましてはこの点について結論が留保された次第もあるわけでございます。
 それから、七百六十七条二項の規定を新たに設けて、婚姻中の氏を称する道を開くという関係と、戸籍法百七条との関係でございますが、七百六十七条二項は三ヵ月以内――離婚の届け出をしましてから三ヵ月以内あるいは離婚の判決が確定してから三ヵ月以内に戸籍法の定めるところによって届け出をすることによりまして、婚姻中の氏を称するということになるわけであります。したがって、三ヵ月を徒過した場合にはこの七百六十七条の二項の手続にはよれないわけであります。大半の場合には、婚姻中の氏を称する必要性のある場合にそれを救済しようということでございますし、その必要性というものは離婚の時点において全部と言っていいくらいはっきりしておるわけでございますので、ほとんど全部はこの七百六十七条の二項の規定によってしかるべき処置がされるというふうに考えておりますけれども、場合によってこの期間を徒過するということもあるわけでありまして、さような場合にはやむを得ませんので、必要のあるときにはこの百七条の規定によって裁判所の許可を受けるということになるわけでございまして、七百六十七条の二項の規定が新設されたことによって、戸籍法百七条の規定による氏の変更ということがこの場合にできなくなるという筋合いではないと、かように考えておるわけであります。
#65
○原田立君 人事訴訟手続法の第一条において、夫と妻のいずれの住所地でも訴訟を起こせることになれば、たとえば夫は札幌で妻は鹿児島で、それぞれ離婚訴訟を起こすという事態も起こり得ると思うんでありますが、このような場合、離婚事件の性質上一括同時解決を要請されるが、どちらかに併合という困難な問題を抱え込むことが予想されるのでありますが、このような制度的障害については、どのような解決策を立てられるのか。
#66
○政府委員(香川保一君) そういった同じ離婚事件につきまして二重に訴えが異なる裁判所に提起されたというときには、この人事訴訟手続法の一条の規定の専属管轄の順位によりまして事が決せられるわけでありまして、裁判所においてそのことがわかりますれば、後順位になる管轄裁判所はその訴えを却下するということになるわけでございます。ただ、裁判所がどのようにして二重に訴えが提起されている、よその裁判所にもすでに提起されておるということを知るかということでございますが、これは全く当事者が同じでございますので当事者が一番よく知っておるわけでございます。したがって、どちらかの当事者から、この訴訟はどこどこの裁判所ですでに提起済みであるということは、当然、後の裁判所に申し立てられるであろうというふうに考えますので、それを機縁にして管轄のおくれる方の裁判所におきましてはその訴えを不適法ということで却下する、こういうふうなことになろうかと思うのであります。
#67
○原田立君 新設された改正案一条ノ二に、「裁判所ハ」 「必要アリト認ムルトキハ申立ニ因リ又ハ職権ヲ以テ其事件ヲ他ノ管轄裁判所ニ移送スルコトヲ得」と、こう規定されておりますけれども、ここで言う「申立」とは夫と妻のどちらの申し立てによるのか、また「他ノ管轄裁判所ニ移送スル」と、こうありますが、どのようなことか、具体例をもって御説明願いたい。
#68
○政府委員(香川保一君) これは原告の方は、夫が原告で訴えを提起いたしました場合に、夫はその裁判所に訴えを提起しているんでありますから、通常その原告たる夫の方から移送してくれというふうな申し立ては通常は考えられない。むしろ被告の方から申し立てることが多いと思うのであります。しかし、理屈はどちらの申し立てによっても移送すべきものは移送される。つまり、この規定は申し立てがなくても職権でも移送できるということにいたしておりますので、したがって、原告が一たん申し立てて、さらに移送の申し立てをするというのは奇妙なことではありますけれども、それによって裁判所が移送すべきものであると考えればやはり移送するということに相なろうかと思うんであります。で、この移送の規定は、たとえば現在、夫婦が共通の住所、埼玉県なら埼玉県に住んでおるというときには、夫も妻も埼玉県に住んでおる、そして、そこが婚姻の継続中のいわば住所であるということになりますれば、これは移送の問題は恐らく起こらないと思うんであります。つまり、当事者はそれで便利でありますし、証拠収集の面からも容易でございますので移送という問題は起こりようがない。考えられますのは、婚姻中に住んでおったところを両方とも離れまして、たとえば埼玉県で婚姻生活を続けておったのが、一方は鹿児島、一方は横浜というふうなところに現在住所がある。その場合に、鹿児島で訴えが提起されたというときになりますと、鹿児島に住んでおる夫、あるいは妻の立場から言えば便利であるということは言えるわけでありますけれども、当該離婚事件の裁判をいたします場合の証拠収集の面から考えれば、鹿児島でははなはだ容易じゃない、したがって訴訟がおくれるというふうなことになるわけでありますから、その場合には埼玉により近い横浜の地方裁判所に移送する、一方の当事者が住んでおる横浜の地方裁判所に移送するというふうなことが考えられるわけでございます。
#69
○原田立君 戸籍法第十条第二項に「前項の請求は、法務省令で定める場合」とありますが、この省令の内容はどの程度まで規制を強化する考えで進めておられるんですか。
#70
○政府委員(香川保一君) 改正案の十条第二項の「法務省令で定める場合」と申しますのは、一般的には謄抄本の交付を請求する場合には、その請求の事由を明らかにしていただく、それを例外的に請求の事由を明らかにしなくてもいいという除外例を設ける場合でございまして、したがって何と申しますか、手続を緩和すると申しますか、さような意味で法務省令に委任していただきたいということなんでございます。法務省令で現在いま規定する場合を考えておりますのは弁護士、それから司法書士、こういった一つの業法によりまして職務上謄抄本が必要とされる場合が当然予想される、そういった業法による職務を行っている人たち、これは当該業法におきまして守秘業務も課しておりますので、この公開を一部制限すると申しますか、請求の事由を明らかにしていただくという趣旨から言って、除外例を設けても差し支えないと、こういうふうなことが考えられるわけであります。
 それから、もちろん当該戸籍に本人が記載されておる、あるいは本人の親族が記載されておるというふうな場合、それから、国または地方公共団体がそういった国あるいは地方公共団体の仕事の面から必要とされる場合に請求するというときも、この除外例として法務省令で規定したいと、かように考えております。
#71
○原田立君 第十条一二項に「第一項の請求が不当な目的によることが明らかなとき」と、こうありますが、窓口での事務レベルでは判断が困難ではないかと、こう思うのであります。この不当な目的が明らかなときとはどのような形で明示するのか、具体的方法をお伺いしたい。
#72
○政府委員(香川保一君) これも市町村長が請求に対して、その目的が不当かどうかということを判断するのは、何も請求の際にたとえば請求書に記載された事由だけによって判断するというわけではございませんけれども、多くの場合は形式的にその事由によって判断するということに実際はなろうかと思うんであります。ただこの不当ということは、いわば戸籍に記載されておる他人の秘密を公表するというふうなことによりまして、その者の。プライバシーを侵害する、あるいは人権を侵害するおそれがあることにつながる、そういうふうなときにまで戸籍の公開の制度を利用させることはおかしいと、こういうふうな趣旨で、その場合にそれを不当として請求を拒むと、かような趣旨であるわけであります。したがいまして、さようなことを市町村長が判断する手がかりといたしまして、請求者の方におきましてなぜ謄抄本が必要なのかというその請求の事由を明らかにしていただくということであるわけでありますので、したがって、この請求の事由はできるだけ的確、具体的に明らかにしていただくことが望ましいことは言うまでもないわけであります。ただ、さような戸籍公開の制度を、他人のプライバシーの侵害等に悪用すると申しますか、さような事例というのは全体としてはきわめて微々たるものだと思うんであります。さような意味から多くの場合には必要があって、それが当然戸籍公開の制度を利用して差し支えない場合が大半でございますので、さような実態もよく考えまして、一部のそういった者をチェックするために全体にきわめて窮屈なことになるというふうなことのないように配慮をしなきゃならない、その辺の兼ね合いが、非常に窓口事務の処理としては市町村におきましては相当御苦労があることだろうと思うんでありまして、この面の運用に遺憾のないように、この規定の施行までの間に一線事務を担当していただいている市町村側と十分協議を重ねまして、遺憾のないように処してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
#73
○原田立君 その点も非常に心配しているわけなんです。戸籍公開について、現行では正当な理由については従来主として市町村側の事務上の都合、たとえば災害等により執務困難な場合とか、あるいは多人数の戸籍を一時的に請求された場合等を予想したものであり、請求者側の請求目的によってその当否を判断することは念頭になかったというのが実情であろうと思うんであります。ところが、今回の場合には、改正案では現行と反対の請求者側の不当な目的、すなわち請求目的の内容を厳格に審査し確認することが課せられているわけでありますが、各市町村窓口では実際上困難ではないかと、こう思うんです。局長はその運用についてもっとその係と打ち合わせしたいと、こういうふうに言うけれども、実際上なかなか困難ではないかと心配するんですが、いかがですか。
#74
○政府委員(香川保一君) この問題に対するいろいろの意識が地域によって相当違いがあると思いますのみならず、請求される戸籍によっても相当違ってくるわけであります。先ほどもちょっとお話がありましたような、たとえば非嫡の子供の記載のある戸籍というのを、そういうことを悪用して人のプライバシーを侵害するということが予想されないではないわけであります。しかし、戸籍の面から見まして、記載事項上そういうプライバシーの侵害につながるようなおそれが全然ない戸籍、これが大多数でございますが、そういったものは不当の目的に使おうと思ってもまあ通常は使いようがないといいますか、そういう戸籍の方からくる市町村側として慎重に対処しなきゃならないものとそうでないものというのもあろうかと思うんでありまして、その辺のところをいろいろ協議いたしまして、どういうふうな扱いにするか、これは何と申しましても主眼は一般の方が、十分正当な理由があって戸籍の公開の制度を利用される方に少しでも余分な迷惑をかけるということがあってはならぬわけでありまして、その辺にまあ力点を置いて各市町村の窓口事務が処理されるようにということで、いろいろの面を具体的な事例にも即して打ち合わせをし、遺憾のないようにしたいと、こういうことでございますが、率直に申し上げまして、なかなかいろいろの事例が出てまいると思うのであります。したがって、施行になりましてからもその面での取り扱いが国民に不便をかける、あるいはせっかくの改正が骨抜きになるというふうなことのないように、両面からやはり行政先例を積み重ねていかなきゃならぬと、かように考えておるわけでございます。
#75
○原田立君 具体的なことになりますけれども、請求の場合は現行どおり用紙書き込みの方法で行われるものと思うのでありますが、不当な目的の判明のためには、窓口で何らかの口頭尋問的行為を行うことになるのかどうか、改正に伴い請求者は身元証明のために何らかの証明書を携帯するような形式をとるのか、その点はどうですか。
#76
○政府委員(香川保一君) 原則的に申し上げますと、身分証明書の提示を求めるとかいうふうな、あるいは根掘り葉掘りいろいろなことを窓口で聞くというふうなことは、原則的には私は避けるべきだろうというふうに思うのであります。これは先ほど申しましたように、一律にそういうことになりますと、大半の国民に迷惑をかけることにも相なりますので、さようなことはできる限り避けた方がいい。しかし、その当該戸籍とそれから請求者いかんによりましては、やはりそこで慎重に市町村としては対処しなきゃならない事例も考えられるわけでございまして、したがってケース・バイ・ケースでよろしきを得る、非常に無責任な言い方でございますけれども、さような態度で臨まざるを得ないというふうに思うのでありまして、一律におっしゃるようなことをやるというふうなことは避けるべきだろうというふうに考えております。
#77
○原田立君 不当な目的の判明のためといっても、窓口での口頭尋問等の行為は窓口での混乱を招くと、こう思うわけであります。やらないようにするということですから、そういう混乱は起きないだろうと思いますが、また、説明したくもない場合にも強要を強いられることになるおそれもなきにしもあらずではないのか、そうなると人権の侵害にも及びかねないと、こう思うわけでありますけれども、この点の見解はいかがですか。
#78
○政府委員(香川保一君) 結局、原則的にはおっしゃるように請求者の方の人権侵害になるというふうなことは、これはもう絶対避けなきゃならぬことは言うまでもないわけでありまして、そこまでいかぬ場合でも、やはり不当の目的によるチェックと、請求者の方のそういった、言いたくないことを言わなきゃならぬというふうなこととの不利益等十分勘案して、これは考えなきゃならぬわけでございましょうけれども、相手方の人権侵害になるおそれがあるというふうなところまで調査をするというふうなことは、これはもう絶対避けるべきものだというふうに考えております。
#79
○原田立君 第三項のところにもありますが、各市町村は窓口でのトラブルが発生した場合の処理については、市町村長の判断により最終結論とするのかどうか、この点はどうなんですか。
#80
○政府委員(香川保一君) これは法律的に申しますれば戸籍事務、この謄抄本の交付事務も市町村長の管掌事務でございますので、最終的に責任は市町村長にあることになるわけでございますけれども、そんなこと一々市町村長のところに行って許否を決めるというふうなことは実際はされていない、されない、だろうと思うのであります。ただ、問題になるおそれがあるというふうなもので、窓口で事務の処理に当たっておる者といたしまして問題があるというふうに考えれば、市町村長の判断を仰ぐというふうなことは、これはもう当然あり得ることだというふうに思うわけでございます。
#81
○原田立君 市町村長の場合にはなかなかそんなふうにはないだろうというようなお話でありますが、窓口でのトラブルの処理は迅速を要するものであろうと思うのであります。戸籍問題に関するトラブル処理の機関として、各地方法務局等に特別の処理機関の設置を考える必要があるのではないか。また、この点に対する措置をお伺いしたいのでありますが、民事行政審議会での意見ではこの点どのようなぐあいになっておったのか、その点はいかがですか。
#82
○政府委員(香川保一君) 戸籍事務――この謄抄本の交付事務を含めまして戸籍事務全般につきまして、各地方法務局あるいはその支局におきまして管轄市町村長の指導監督の責任があるわけでございます。したがいまして、特別にそういった法務局側の方で何らかの機関を設けるということは私は必要なくて、現行法上認められておる指導監督の点を十分利用するということで足りると思うのであります。もちろん、これを活用いたしまして、今回の場合も地方法務局等が市町村に対しましてこの改正法によります事務処理について十分指導を尽くしていきたいというふうに考えておるわけでございます。したがって、さようなことに現在制度的になっておりますので、民事行政審議会においては指導監督機関については特に議論はされておりません。
#83
○原田立君 法改正により新設された罰則規定第百二十一条の二に、「偽りその他不正の手段により、」「若しくは証明書の交付を受けた者は、五万円以下の過料に処する。」と、こうありますが、この場合「偽りその他不正の手段」とはどのようなケースが想像されるんですか。
#84
○政府委員(香川保一君) 先ほども御質問ございましたように、たとえば十条の二項の規定で、法務省令で弁護士が請求する場合には請求の事由を明らかにしなくていいと、こういうふうなことになったといたしますと、弁護士でない者が弁護士だということで身分を偽って請求した、そして謄抄本の交付を受けたというふうな場合がこれに当たると思いますし、まあそのほかのあれとしましては、たとえば結婚要件を調査するために必要だというふうな請求の事由で謄抄本の交付を受けて、実はそうじゃなくて、それをあるたとえば雑誌等に公表して他人のプライバシーを侵害したというふうなことがございますと、これもやはり百二十一条の過料の制裁規定に当たるというふうに思うわけであります。
#85
○原田立君 この新設に伴い、公開の原則が大きく後退するのではないかという意見もあるわけでありますが、この点に関する見解をお伺いしたい。
 それから、「偽りその他不正の手段により、」云々と、こうありますけれども、どの段階で「不正の手段」と断定するのか、その点はいかがですか。
#86
○政府委員(香川保一君) この戸籍法百二十一条の二の規定の新設によって、戸籍の公開制度が著しく後退するおそれはないかという第一点でございますが、もともと偽ったり不正の手段をとるということは、過料の制裁あるなしにかかわらずこれはよくないことであるわけでありますので、現在におきましてもこういうこと自身が過料の規定はもちろんございませんけれども、大半のものはそんなことをやって謄抄本の交付を受けているわけではないわけでありますので、したがって、この過料の規定を設けたからといって、正当の理由がある、必要性があって戸籍の謄抄本を請求するのに何らちゅうちょを感ずることはないわけでありますので、この新設規定によって公開の制度が事実上後退するというふうなことはないように思うのであります。それから、偽りその他不正の手段という断定と申しますか、それはどの段階でされるのかという御質問でございますが、これはもちろん過料の制裁でございますので、裁判所におきましてさような過料の構成要件の認定がされるわけでございます。ただ、この過料の制裁ございますのは、いま謄抄本の交付を受けた段階でいわば既遂に達すると、こういうことでございまして、偽りその他不正の手段を用いて請求はしたが、それに市町村側が気がついて請求を拒否したということになりますと、この百二十一条の二の制裁規定は適用されないわけでございます。そういう構造になっておるわけであります。
#87
○佐々木静子君 一言ちょっと質問が……。一昨日のこの質問で戸籍法改正案の十条及び十二条の二で法務省令によって除外される職業名を、私、数が多かったので一つ抜かしておったわけでございますが、弁護士、税理士、公認会計士、計理士、司法書士、行政書士、土地家屋調査士、社会保険労務士、海事代理士、弁理士、及びその他追加できる職業があるという、ふうに承っていいわけでございますか。私の記憶では社会保険労務士を脱漏しておりましたので、重ねて追加質問さしていただきたいと思います。
#88
○政府委員(香川保一君) 現在この省令で規定しようとしているのは、いま挙げられたものでございますが、このほかに公認会計士をどうするかと、まあ、この公認会計士の仕事から考えますと謄抄本が職務上必要になるという場合はまずないんじゃないかと思うんでありますが、税理士はところがあるわけでございますね。だから、税理士を入れるとしますとそれとの均衡上公認会計士がそのような面の仕事をされる場合に必要になってくるということが考えられますので、これも十分検討いたしまして入れるような方向で考えてみたいというふうに考えております。
    ―――――――――――――
#89
○委員長(田代富士男君) 委員の異動について御報告いたします。橋本敦君が委員を辞任され、その補欠として須藤五郎君が選任されました。
    ―――――――――――――
#90
○委員長(田代富士男君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#91
○委員長(田代富士男君) 御異議ないと認めます。
 それではこれより討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。――別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
 民法等の一部を改正する法律案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。
  〔賛成者挙手〕
#92
○委員長(田代富士男君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#93
○委員長(田代富士男君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後一時五分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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