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1975/05/10 第77回国会 参議院 参議院会議録情報 第077回国会 本会議 第9号
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1975/05/10 第77回国会 参議院

参議院会議録情報 第077回国会 本会議 第9号

#1
第077回国会 本会議 第9号
昭和五十一年五月十日(月曜日)
   午後一時三分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議事日程 第九号
  昭和五十一年五月十日
   午後一時開議
 第一 核兵器の不拡散に関する条約の締結につ
  いて承認を求めるの件(趣旨説明)
 第二 国務大臣の報告に関する件(昭和五十一
  年度地方財政計画について)
 第三 地方交付税法等の一部を改正する法律案
  (趣旨説明)
    ━━━━━━━━━━━━━
○本日の会議に付した案件
 議事日程のとおり
     ―――――・―――――
#3
○議長(河野謙三君) これより会議を開きます。
 日程第一 核兵器の不拡散に関する条約の締結について承認を求めるの件(趣旨説明)
 本件について提出者の趣旨説明を求めます。宮澤外務大臣。
   〔国務大臣宮澤喜一君登壇、拍手〕
#4
○国務大臣(宮澤喜一君) 核兵器の不拡散に関する条約の締結について承認を求めるの件につきまして、趣旨の御説明を申し上げます。
 核戦争が人類にもたらす惨害にかんがみ、核軍縮を進めることが人類の一致した希望であることは言をまちません。他方、今日の世界にあって直ちに全面的核軍縮を実現することが不可能であることもまた現実であります。各国は、この現実の中で核軍縮を、可能なものから段階的に実現するために、じみちな努力を重ねてまいりました。一九六三年の大気圏内、宇宙空間及び水中における核実験を禁止する条約、一九七一年の核兵器及び他の大量破壊兵器の海底における設置の禁止に関する条約等は、この努力の成果たるものでございます。
 核兵器の不拡散に関する条約も核軍縮推進の一歩として、国連及び十八カ国軍縮委員会において検討、作成されたものであり、核兵器を有する国が増加するに従い核戦争の危険が増大するとの認識に立ち、核兵器の拡散を防止することを目的とするものであります。すなわち、この条約は、核兵器をすでに保有している国が核兵器その他の核爆発装置またはその管理をいかなる者にも移譲しないこと、及び核兵器を保有していない国が核兵器その他の核爆発装置またはその管理を受領せず、また、核兵器その他の核爆発装置を製造その他の方法によって取得しないことを主たる内容としております。核兵器を保有するすべての国が核兵器の移譲を行わず、かつ、核兵器を保有していないすべての国が核兵器を受領せず、かつ、取得しないならば、核兵器を有する国の数が増加することはありません。この条約は、この段階を実現し、もって一層の核軍縮への道を開こうとするものであります。この趣旨から、この条約には、締約国が核軍縮及び全面的かつ完全な軍縮条約に関して誠実に交渉を行うことが規定されております。また、この条約は、非核兵器国がその義務の履行の確認のみを目的として保障措置を受諾することを定め、また、締約国は、保障措置が適用されない限り、核物質及びその利用のための設備、資材をいかなる非核兵器国にも供給しないことを定めております。他方、原子力は、核兵器の製造に利用されると同時に、いまや重要なエネルギーとして平和的に利用され、かつ、利用の必要が増大しているものであります。この条約の定める保障措置等が、この原子力の平和的利用を妨げるものとなってはならないことは当然のことであります。この条約は、右の点を勘案し、締約国が原子力の平和的利用の権利及びそのための設備、資材等の交換の権利を有する旨を確認するとともに、締約国が原子力の平和的利用の一層の発展のために協力することを定めております。
 政府は、核軍縮の一歩としてのこの条約の精神に賛同し、一九七〇年二月三日この条約に署名いたしました。署名に当たり政府といたしましては、右のような条約の内容にかんがみ、批准に当たっては、核軍縮の進展及び非核兵器国の安全保障の問題に注目するとともに、わが国が締結する保障措置協定の内容が、他の国に比し不利なものとなってはならないことを強調いたしました。
 軍縮の進展に関しましては、政府は、各国が二国間及び国連、軍縮委員会等の場において行ってきた努力とその成果にそれなりの評価を下すことができるものと考えております。軍縮の推進には各国の息の長い努力が必要でありますので、政府といたしましては、引き続き各国に強く呼びかけるとともに、軍縮委員会等を通じてその実現に寄与していきたいと考えております。
 非核兵器国の安全保障の問題に関しましては、近年核大国間の対話を中心に国際関係安定化のための努力が行われていることを評価し得ると考えますが、政府としては、この条約にできるだけ多くの国が参加することを確保するためにも、非核兵器国の安全保障の確保が必要であり、引き続きこの問題に強い関心を払っていきたいと考えております。政府は、わが国の安全確保のためには米国との安全保障体制を堅持しつつ、わが国みずからも有効な防衛力を保持していくことが最善の道であると考えております。保障措置に関しましては、政府が国際原子力機関との間で行いました予備交渉の結果、昨年二月協定案文が作成されましたが、この結果、わが国が締結する保障措置協定の内容は、他の締約国が個別的に、または他の国と共同して締結する保障措置協定の内容に比し、実質的に不利な取り扱いとならないことを確保し得たと考えております。
 世界平和の実現、そのための軍縮の推進は、わが国が強く希求するところであります。軍縮を世界に訴えるためには、まずみずからがその実現のために貢献し、かつ、実践をもってその姿勢を示さなければなりません。また、わが国が核兵器を受領、取得しないことを国際的に約束することは、わが国の安全保障上特に重要なわが国周辺の国際関係の安定に一層の貢献を行うこととなりましょう。さらに、われわれの生活において原子力の平和的利用の占める重要性がますます強くなることが予想されている現在、この分野における国際協力に参加する権利を確保しておくことはきわめて重要なことと考えられます。これらの諸点からしてわが国がこの条約を締結するととは、わが国の安全と繁栄のために大きく資するものと信じる次第でございます。
 以上が核兵器の不拡散に関する条約の締結について承認を求めるの件の趣旨でございます。(拍手)
#5
○議長(河野謙三君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。秦野章君。
   〔秦野章君登壇、拍手〕
#6
○秦野章君 私は、今回提案された核兵器の不拡散に関する条約について、自由民主党を代表して、三木総理並びに関係大臣に若干の質問をいたします。
 本条約に反対する中華人民共和国とフランスは、その理由として、この条約自体が核軍縮への効果が乏しいということを指摘しております。特に北京政府は、超大国の核独占体制に反発し、アジア・アフリカ諸国までがみずからの国の防衛のために核兵器を保有することをむしろ歓迎しているのであります。このような中・仏両国の大国主義に反対する立場、一種の平等主義からくる意見はそれなりに一つの見識だと思うのであります。ただ、こうした立場に立てば、核兵器の保有国が限りなく広がる方向に加担することになりましょう。それが人類の平和にとって大きな脅威と危険を増大させることは明らかであります。本条約は核兵器のこれ以上の拡散を防ぐ精神に立っておりますが、核拡散そのものについて完全な抑止力を持っているわけではなく、また、核軍縮という観点からも、過大な期待を寄せるほどのものがないことも残念ながら事実であります。しかし、この際、人類唯一の被爆国という歴史的事実を背に受けつつ、日本を取り巻く国際環境を勘案し、政治的にも経済的にも核兵器保有国への道を選ばないことを改めて決意し、原子力の平和利用の道を確保する必要からも本条約を批准する時期が来たのではないか、こう思うのであります。ただ、本条約の批准がわが国民族の将来を拘束していくだけに、この際わが国の安全保障上の諸問題に対し政府の明快な見解と対策を伺ってこれを再確認する必要があるのであります。
 さて、いまから三十年前にアメリカはアジアの一国に二つの原子爆弾を投下いたしました。そのアメリカが、わが国が核攻撃を含む侵略の危険を受けたときに、自分の国のニューヨークやシカゴが灰じんに帰するような犠牲を払ってまでわが国を守ってくれるでありましょうか。そういう事態に際し、果たして日米安保条約、アメリカの核のかさのもとにあるという日米間の仕組みが有効に働くのであろうか、そういう一抹の不安、これは日本人がひそかに抱いている懸念であると思います。もちろん、戦後三十年の歳月を経て、日米両国間の情勢は驚くほどに一変をいたしました。確かに日米は相互に雄なる同盟国であります。したがって私は、単純に対米不信の声を述べているのではありません。そうじゃなくて、そこに冷厳な国家の論理があるのではないかという心配があります。これに対して政府は重ね重ね米国当局者の言葉を信頼するをもって足るがごとくでございます。フォード大統領、シュレジンジャー前国防長官を初めとする防衛発言に、わが国としてそれなりの政治効果と信頼を寄せることは当然だと私も思っております。しかし、同盟国の論理が国家の論理を乗り越えることが果たして可能でありましょうか。もとより安全保障を論ずる場合、根拠なき恐怖感は全く有害無益でありましょう。しかし、まじめにわが国の安全保障を考える場合、もっと国民を納得させるに足る論点と対策が示されなければ十分ではありません。これらの諸点に対し、三木総理と関係大臣の率直な答弁を求めたいと存じます。
 次に、わが国が非核三原則を持っている。この非核三原則に関連してお尋ねをいたします。
 日米安保条約、アメリカの核のかさのもとにあるわが国が、わが国を守る限度において米軍の戦略に協力することは当然でありましょう。この点についてでありますが、わが国と同じようにアメリカと盟約関係にありまする国々、特に韓国、西ドイツには米軍管理のもとに戦術核がすでに装備されておるようであります。そこで、わが国の国土にも戦術核の展開が必要ではないかという意見もあります。わが国には非核三原則があるから、わが国土に核の展開はあり得ないという説明だけではとうてい納得できるものではないと存じます。韓国、西ドイツの核装備は肯定されてもわが国はその必要がなしというなら、その必要なしとする軍事的、戦略的な論点が明らかにされなければならぬと思います。このことは、日本の非核三原則と米国の戦略体制との間にそご、食い違いがあれば、それはやがて安保空洞化の懸念につながるからであります。防衛当局は、米国の核戦略の感触の上から、同時にわが国の安全保障の立場からもこの点を明確にする責任があると存じます。
 戦後三十年、ようやく空想的平和主義は退潮の兆しを見せております。いまや国家間の相互扶助、国際協調の外に、手前勝手な孤立主義では国際間に生き残れないという自覚が高まってきたという現実を直視すべきだと存じます。われわれは現実的な立場に立って、多面的な安全保障の道を追求しなければなりません。この意味でも、特に日米関係は国の安全保障の上からきわめて重要な意味を持っております。
 そこで心配になることが二つあります。その一つは、経済面において日本経済の巨大化に伴って、たとえば過去の繊維問題のように、日米間にあつれきを起こす懸念が増大していないかどうかということであります。その対策におくれがあってはならない。アメリカは時に恫喝もいたします。しかし、過去のそれらの事例をつぶさに見れば、わが国側からの配慮と努力が大変必要ではないかと思うのであります。
 二つには、防衛分担について、近来アメリカの議会その他で日本の安保ただ乗り論ないしそれに近い声も出始めておることも事実であります。われわれがわれわれ自身の国を守るという立場からわれわれの側の責任を果たす上において、こういう意見に全く耳をふさぐわけにはまいらぬと思うのであります。日本は日本としての節度ある専守防衛という限界のもとに、その質的な内容を充実し、日米防衛協力に亀裂が生じないような不断の努力が必要と存じます。しかし、数多くの防衛専門家から指摘されている現在の防衛力の弱体の部分、後方支援体制あるいは対潜警戒、また老朽化した部分の実態に一体どのように今後対処していくのか、政府の決意とその具体的な対策をお聞きしたいのであります。次いで、防衛の基本的な姿勢に関連してお尋ねをしたい。
 端的に言って、防衛はいかにすぐれた装備を整えても、ただそれだけで真の力になるものではないと思います。それを支える人間の精神的支柱に影がさすようでは、防衛体制の万全を期すことはできないはずであります。この観点からもろもろの対策が講ぜられるべきだと思いますが、その一つだけをただしておきたいと思う。それは、防衛力の整備を図るために、一部の装備は引き続き外国に依存しなければならないのが実情でありましょう。大型ないし巨額の装備を外国から輸入する場合、商社等の介入を排して政府間の直接交渉、米軍あっせんの方法等で手に入れるシステムを考慮する必要はないか。すでに西ドイツでは、米軍との協定によって一九五七年から装備調達について米政府、米軍当局とじかに折衝し調達する方式を実行しております。西ドイツのいわゆるFMS重点方式は、このような方式はわが国においても十分に参考にすべきではないか。防衛庁長官の見解をお聞きしたいと存じます。
 最後に、わが国が六年前、本条約の調印に当たって政府声明で指摘した三つの事項、つまり、一つは核軍縮の進展、二つは非核兵器国の安全保障、三つは原子力平和利用の平等性、この二点のその後の実践には、少なくともその大部分について、果たしてわれわれ国民を納得させるものがあるかといえばはなはだ疑問であります。これについてその評価と今後の宿題として、総理の所見とその決意のほどを伺いたいと存じます。
 本条約の批准に当たっては、条約そのものよりは、以上に述べた条約と関連する諸点、ことに安全保障上の疑点を晴らすことが断じて必要であり、それによってこの条約批准はようやく妥当性を獲得するものと信じます。今後なお十分審議を尽くすは当然として、この際政府はこの条約批准に秘められたわれわれの苦悩を十分に認識し、誠意ある政府の答弁を期待して私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣三木武夫君登壇、拍手〕
#7
○国務大臣(三木武夫君) 秦野君にお答えをいたします。
 秦野君は、わが国の防衛というものに対して常に深い関心を持ち、しかも思慮深い方でありますが、その秦野君が核防条約は批准の時期に来ておるという判断に対しては、私どもも強く同感の意を表するものでございます。
 幾つかの理由がございますが、一つには、核兵器を保有する国が世界にもう五つの保有国があるだけでもたくさんですから、これ以上拡大していくということは、核戦争の危険を増大することは、これはもうそういう危険が私はあると。それから、日本のような核兵器を開発しようとすれば開発の能力を持っておる国がここで核兵器を開発しないと、核非武装の条約であるこの条約に参加するということは大きな歯どめの役を持つと、核開発の意図を持つ国々に対して大きなやはり歯どめの意味を私は持つと思う。
 もう一つの問題は、やはりフォード大統領と八月に私が日米首脳会談をいたしましたときにも、核防条約の批准というものが大きなやっぱり議題の一つになった。また最近はニュージーランドのマルドーンという首相、私と会談しました。これもまた核防条約というものはやっぱりどういうことになるのかということが大きな議題になった。最近は皆さんも御承知のように、カナダの国会議員団、日本の両院議長の招待でやってまいりましたが、これもまた第一番に私に質問をしたことは、核防条約、やはり第二次世界大戦というものが、まだ世界には日本の軍国主義の時代のイメージというものが消えていないということである。日本の中には戦争の時代を知らぬ人が大半を占めてきましたけれども、世界には生き残っておる。そのイメージと、やはり核防条約に調印しても五年も六年も批准しない日本というものとを、こう何か日本が核兵器の開発を考えておるのではないかという、この第二次戦争のときのものとが、一つのイメージとがこう二重映しになって日本の将来を世界は見ておる目があることをわれわれは知らなければいけない、第二に。
 第三には、日本は平和国家であるということを、非核三原則、厳しいものを持っておるということを常に日本は世界に向かって言ってきておる。それに従って世界の軍縮会議などにも日本は行って大いに活躍をしておるんですが、そういうととを言いながら、厳しい非核三原則を持ちながら、もう世界の大半ですよ、九十五カ国が批准している。それにまだ日本が批准をちゅうちょするところに日本の核軍縮に対する説得力というものが迫力を失っている、これは。日本が本当にこれから平和国家として核軍縮のイニシアチブをとろうとするならば、国際的に説得力のある立場を日本はとるべきである。たてまえと本音が違うのではないかということを一部の人が疑念を持つということで平和外交のイニシアチブをとれるものではない。第三点。
 また第四点には、やはり最近は核の平和利用ということはこれから日本はやらなければならぬ。新しいエネルギーができるまではやはり原子力の平和利用、原子力発電というものは大きなエネルギーをつなぐ日本のエネルギー源になる。そういう点に、平和利用のためにこの条約というものが支障を来してはいけないということは国民すべての懸念であるわけですね。そのために昨年長い予備交渉を続けて、昨年の一月に核の保障措置協定に対してまあ妥結をしたわけであります。これは日本の言うておることがほとんど通ったわけですから、国際原子力機構の核の平和利用に対する査察が、ヨーロッパの原子力機構と同じにすると、平等が確保されたんですからね。そういう、これだけの日本の懸念、一番の国民の懸念というものは国際的に解消しておる。恐らくこのために努力してきた国々は、これによって日本は核防条約の批准をするであろうという期待でしょうね、世界は。それでもこの批准がでけぬということになってくると、われわれ日本は原料――燃料、まあ食糧までを外国から輸入して、それを加工して外国へ輸出して日本の国というものはやっておるわけで、平和国家としての日本の将来に国際社会で疑念を持たれるということが日本の国益に合致するでしょうか。私は合致しない。だから、これは慎重に重大に、将来に向かってこれからまだ二十年国を拘束するわけですから、こんな拙速主義はいけないことはだれが見てもこれはわかる重大問題でありますが、これまでいろんな点で日本が持ってきた疑念というものがある程度解明をされた機会に、この際、との国会の承認を得て批准を行って、日本が言っておることが裏も表もないんだと、平和国家として日本が世界の平和に寄与していくという道を誤りなく歩んでいくのだということを内外に明らかにすることは、私はまことにいまその時期に来ておると。秦野君の意見に全く同感でありますので、どうか参議院においても――いろんな御意見があることは当然だと思いますよ、長期にわたって拘束するのですから。そう言うけれども、しかし、皆さんの御理解を得て、やはり国益というものを守る点からいったならば、この国会において御承認を受けることが日本の国益を守るゆえんだと思いますので、この点を特に申し添えておくわけでございます。
 しかし、さりとて日本の安全というものに対しては、われわれがこれはもう政治の第一義的責任ですから、国民への。これに対しては、当然に日本が国力に相応した一つの最小限度の自衛力を持つことは当然である、憲法の枠内で。しかし、どの国でも一国だけで自分の国を守れる国はありませんよ。みんな国際的に集団安全保障の時代ですよ。どこを見たって皆そうですからね。したがって、日本は、この国際的ないまの安全保障のシステム、この国際的なシステムにのっとって日米安保条約を結んでおるわけです。この日米安保条約は、条約の上において、日本に対して脅威や攻撃を与えるということに対してアメリカは安全を保障しておるわけですから、秦野君の言われるように、何もアメリカの大統領が言うからというのでなくして、いわゆる条約に基づいての保障ですから、友好国の条約というものを、言ったっても信用せぬというのでは国際社会の秩序は維持できない。そのことは何もアメリカに隷属しておるわけじゃない。北大西洋条約をごらんになっても、ヨーロッパは皆北大西洋条約に大なり小なり、相互防衛条約でありますから、アメリカがヨーロッパの脅威や安全に対して守るんですから、これをヨーロッパはアメリカの隷属だとはだれも考えていない。アメリカもとのことは国益にかなうからアメリカ自身が日米安保条約を結んでおるんで、日本のために何も国益に合致しないことを、日米安保条約を結ぶ理由はない。だから、日本が、そんなことを言ってもいざというときに守ってくれるかということは、やっぱり条約上の義務があるゆえんですよ。日本を守るということが、日本を守ることがアメリカの国益に合致するんですから、そういう点は、私はそういう点の心配は要らないんでないかと。われわれは日米安保条約というものを信じて、しかし、そればかりでは、軍事的面ばかりではありませんから、国内体制の強化――あるいはまた堅実な国内体制の強化、あるいはまた、そういう国際環境を安定さす外交的な努力、こういうものを積み重ねて、秦野君の一番御心配になっておるわが国の安全保障政策を推進して、そして日本の平和を維持していきたいというのが政府の方針であるわけでございます。
 第一問と第三問と合わせてお答えをしたわけでございますが、さらにまた、日本が核を持ち込まさなくても日本の安全は守れるのかというお話でございましたが、私は、核というものは、核兵器というものは、実際に核兵器で核の世界的規模の戦争というものが起こる場合を考えたときに、もうそれは人類の終わりのときだと思う。核兵器の威力というものは核兵器の抑止力にあると思いますから、日本のようなこういう狭い、人口の稠密しておるところに、核を持ち込まなければ日本の安全が守れぬとは私は考えない。むしろ、核の抑止力のところに核の威力があるわけでございますから、わが国に持ち込まなくても、これは韓国とか西独とかいう例もお引きになりましたけれども、非核三原則を堅持して日本の安全は守れるという考えでございます。
 また次に、日本の防衛について日米の防衛協力というものが必要であると、これが亀裂を生じないように努力をする必要があるという御意見には全く同感でございます。こういう問題についていままで少し話さな過ぎたと私は思っておりますから、積極的に話をするようなことを指示しておるわけでございまして、との点については防衛庁長官から補足して説明をいたします。
 また、わが国の自衛隊の装備の点でございますが、装備品の購入については、ロッキード問題というものが非常な疑惑を国民に与えておるわけでございますから、自衛隊の装備品に対して国民に疑惑を持たすということは絶対にあってはならぬことでございますから、今後とも十分にこの点に対しては留意いたしてまいります。この点についても防衛庁長官から補足をいたすわけでございます。
 また、この条約というものが、いろいろ政府の声明の中に指摘されたこと、指摘された条件というものが満たされておるかというような御質問があったと思いますが、この核軍縮の問題でありますが、それは大きな進展があったという評価はできないかもしれませんが、核防条約というものが調印されまして、そして、相当核軍縮あるいは核戦争の防止に対する協定、条約、合意というものが米ソ間の間に成立したことは事実です。私がいろいろ計算してみると、八つばかりできているんですね。昔はなかったことですよ。核防条約というものができて、そして、こういう核軍縮の問題というものが――私は初めてのことだと思いますね、米ソの合意が、あるいは条約や協定が成立をしたこと。もし核防条約というものがなかったならば、私は核による世界の軍事競争というのはもっと激しくなっておったのではないかと。これはできなくなったですからね。したがって、軍縮への歩みはあるいは遅々としておるという評価もありましょうけれども、その方に向かって動いておるという評価はある。これはやはり核防条約以後の米ソ間の話し合いの結果によるものでございますから、これはやはり核防条約というものが、核軍縮、これは誠実に交渉することを約束しておりますから、効果は出てきつつあると見なければならぬと。
 また、日本の原子力の平和利用については先ほど申し述べましたごとく、ユーラトム諸国と平等の待遇を確保することになったと。また非核保有国の安全保障の問題については、この条約が調印される前にも安保条約の決議もございますし、また、昨年の再検討会議においては、日本の努力によって非核保有国の安全保障についての最終宣言というものもできておりますが、しかし、何といっても、これはやはり国連の決議であるとかあるいはまた最終宣言といっても、実質的に日本の安全というものに対しては日米安保条約、これによる日本の安全確保ということが中心になることは当然でございます。われわれが日米安保条約を堅持しようという理由もここにあるわけでございます。
 御答弁申し上げます。(拍手)
   〔国務大臣宮澤喜一君登壇、拍手〕
#8
○国務大臣(宮澤喜一君) 大部分総理大臣が御答えになりましたので、二、三点補足をいたします。
 秦野議員の御指摘は、日米間に首脳部の約束あるいは条約等があっても、最終的には国家の論理というものはなかなかそうはいかない場合があるのではないかという御指摘でございます。確かに私はそういうことも考えておかなければならないことだと存じますが、終局のところは、総理大臣がお答えになりましたように、日米間の友好というものがわが国にとってはもとより、米国にとっても、米国の利害得失から考えて必要なものである。また、わが国はそれに値する国であると考えるかどうかという問題に帰着をいたすであろうというふうに考えます。私はわが国はそれに値する国であると考えておりますし、また、そのような友好関係は今後とも一層大切にしなければならないというふうに考えるものでございます。
 次に、非核兵器国としてのわが国の安全というものが客観的にどのようになってきておるかというお尋ねであったわけでございますが、われわれは過去三十年間、歴史に例のないこのような憲法を守って今日までともかく平和のうちに過ごしてきたわけでありますが、これは決して安易な、いわば空想的な立場から生まれたものではないと思います。われわれの先輩並びにわれわれが、国会におきましても常に平和論争、防衛論争というものが行われ、そうして真剣に自分の国の平和と安全を守るということに努めてきましたからこそ、この二十年間われわれは平和を全うできたと思います。そのことは今後とも私は同じことであろうと思います。恐らくわれわれは今後とも、最大の軍備を維持するのと同様に、あるいはそれ以上に、いわば息を詰めた周到な対処をすることによってのみこの平和を全うできるであろう、決してそれは安易な道だというふうに考えてはならないものだと思います。幸いにして過去三十年間、今日になってみますと、このような平和憲法を定着させ、守っていくための国際情勢は私は決して悪くなってはおらないと思うのであります。客観的には情勢はよくなってきておると考えてもいいのではないだろうか。また、わが国のような行き方について、もしこれにわれわれが成功していくならば、世界の中でもまた追随をしようという者もあらわれないとも限らない。そうなりますと、本当にわれわれの憲法が所期しているような事態というものに向かってわれわれは進んでいける、そのような可能性は増大しておると判断してよろしいのではないかと考えます。しかし、くれぐれもこれは決して安易な道だと考えるわけにはまいらないというふうに私としては考えます。
 次に、日米経済の関連について、友好の立場からのお尋ねがございました。確かに日米間には過去においても経済問題が起こり、また現在も何がしかの問題が起こっております。経済の問題は経済の論理でというだけではまいらないようなやはり問題が時として起こるわけでございますので、われわれとしては両国間で絶えず問題の先取りをし、協議をして、それがむずかしい政治問題に発展をして、秦野議員の御指摘の基本的な友好関係にひびを生じないようにという努力は常にいたさなければならないと思います。現在特殊鋼について起こっておりますような問題についても、そのような立場から対処をいたしたいと考えます。
 最後の問題は、このようなわが国の体制の結果、アメリカから見ればこれは一種のただ乗り論――フリーライド論というものが時として起こるではないかと言われることも、まことにそのとおりであります。過去においてしばしばアメリカからそういう議論が起こっていることをわれわれは知っておりますが、結局、それに対処するわれわれの道というのは、わが国がわが国独自の立場から、世界平和が危殆に陥らないようにどのような貢献ができるかということに尽きていくであろうと思います。すなわち、一番大きな世界平和の危険はやはり南北問題というようなところから起こり得るのでありまして、われわれとしては、防衛の必要最小限度から生じますところのある程度の経済的な余裕というものは、そのような形で南北問題等々のためにわが国が貢献をすることによって世界の平和が破れる危険を防いでいく、そのような努力をわれわれが払うことによって、いわゆるただ乗り論というものに答えるべきであり、また答えられるのではないかというふうに考えております。(拍手)
   〔国務大臣坂田道太君登壇、拍手〕
#9
○国務大臣(坂田道太君) 秦野議員にお答えを申し上げたいと思います。
 わが国が核攻撃を受けたと仮定した場合に、米国の核報復力に全面的に依存し得ると考えるか、単なる日米信頼関係のみならず、客観的な論拠を問うということかと思います。わが国は、日米安保条約によりまして、わが国に対する核の脅威に対しては米国の核抑止力に依存しておりますが、この核抑止力は、米国の戦略核を初めとする一連の核戦力の整備と、日本防衛に関する明確な意思のたび重なる表明とによって有効に作用しておると考えます。昨年八月の三木・フォード会談における共同新聞発表におきましても、核兵力であれ、通常兵力であれ、日本への武力攻撃があった場合米国は日本を防衛するという、相互協力及び安全保障条約に基づく制約を引き続き守る旨確言をいたしております。そういうふうに言明されているとおりでございます。
 米国の軍事戦略ないしは国際政治は、欧州、アジアその他の同盟国と信頼関係に基づいて成り立っておりまする以上、仮にわが国への核攻撃が行われました場合、万が一にもこれに報復を行うことなく黙過をするということになるといたしまするならば、米国の国益上重大な私は要域を失うおそれがあるばかりでなく、世界に対する米国の核のかさへの信頼性が失われ、他の同盟国の従来の信頼関係は崩壊することになり、自後の米国自身の安全保障にも重大な影響を与える結果となるものと思われますので、したがいまして、平素からその同盟国に対しまして核のかさという保障を与えておる以上、単にわが国のためばかりじゃなく、同時に米国自身のためにも、核報復攻撃を実行する決意を当然持たざるを得ないものと考えるものでございます。現実に米国は、戦略核戦力につきましても、核弾頭力、制度、指揮、統制、目標、抗たん能力等のコンビネーションによりまして、柔軟性のある核反撃能力を整備し、同盟国に対する信頼性を高めることに努力しております。本来、同盟国に対する米国の核抑止力とはこのような厳しい責任が付随しておるものであると考えます。したがいまして、核攻撃能力を有する国が万一わが国に対する核攻撃を考える場合には、以上のようなことを当然計算に入れなければならないのでありますから、米国の核報復攻撃が絶対にないとの確信は持ち得ないこととなり、ここに米国の核抑止力が成り立つゆえんがあるものと考えるのであります。
 次の第二問でございますが、アメリカと同盟国の韓国、西ドイツとでは、その国土の中に核の装備が存在をする。非核三原則堅持のわが国が韓国、西ドイツと違ってその必要がないという軍事的、戦略的根拠を説明せよというお尋ねかと思います。米国は海外の核兵器の配備につきましてはその存否を明確にしないのがかねてからの政策であるとしながらも、欧州と韓国につきましては、例外的に戦術核兵器の存在を明らかにしております。シュレジンジャー前国防長官も昨年八月の訪日の際の記者会見におきまして、核兵器の展開についてどこであろうと肯定も否定もしないのが米国の一貫した政策である。陸上の境界線をはさんで軍事的に対峙しているヨーロッパや朝鮮に前進配備している米軍に関しては、従来この政策に対する例外があったと述べております。近年の米国国防報告で明示されておりますとおりに、米国は欧州と北東アジアを軍事戦略上最も重要な地域と考えておりますが、これらの地域に属しておる西ドイツと韓国に核兵器を配備していることを明らかにいたしまして、核兵器配備の重要性を強調することにより戦争の抑止効果を図っております。このように、米国の海外における核兵器の配備は、陸続きで境界線をはさんで大規模な通常兵力が直接対峙しておるような軍事的要域について行われているものでございますが、他方、わが国は非核三原則を堅持しており、地政学的に見て米国の核抑止力が有効に作用するために核兵器がわが国の国内に存在している必要はないと、シュレジンジャー前国防長官も前述の記者会見におきまして、米軍は世界全域に配置されており、したがって日本以外に展開する米軍によって、核の分野において十分な対応ができないような場所や任務は存在しないというふうに言明をいたしておりますし、このことを裏づけておると思うのでございます。
 それから、装備関係といいますか、あるいは防衛の今後の方向と申しますか、そういうことにお触れになっての御質問だったと思いますが、特に後方支援体制や老朽化をどうやるかという、どういうふうに補充していくかという御質問でございますが、特に私といたしましては、今後の防衛力の整備につきましては、正面兵力の増大よりも質的な向上がこの後方支援その他にあるというふうに考えております。そのために、具体的に申しますと、人的基盤の確立――よい隊員を採用するというようなこと、すぐれた指揮官を持つというようなこと、あるいは技術者を養成するということ、そのための処遇改善、生活改善あるいは教育訓練もとよりでございます。また基地対策も欠くことのできない問題でございますが、いままでより一層に地域住民に対する施策を深めていかなければならないというふうに考えております。その他港湾施設、石油タンク、弾薬庫の老朽化したものの改修、取りかえ、レーダーサイト、航空基地の抗たん性の向上がやはり重点になっていかなければならぬというふうに思っております。
 最後に、専守防衛の節度の中で、その装備につきまして外国から輸入するような場合に、商社などの介入を排して政府間で直接購入する西独方式のような仕組みは考えられないかというようなお尋ねでございます。従来からも、戦闘機のような主要装備品の外国からの導入は主といたしましてライセンス生産によっております。近時、商社の手を通じて輸入した例はRF4E等きわめて一部のものに限られておりまして、商社が介入をする余地はほとんどなかったのでございますが、今後もその徹底を期しますとともに、仮に主要装備品を輸入するというようになった場合でも、FMS方式あるいは外国メーカーとの直接契約方式など、商社が介入することのない方式をあわせて検討し、適切な調達に全力を尽くしたい、かように考えておる次第でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#10
○議長(河野謙三君) 戸叶武君。
   〔戸叶武君登壇、拍手〕
#11
○戸叶武君 私は、日本社会党を代表し、核兵器の不拡散に関する条約の批准について三木総理及び関係閣僚に主要な問題点を質問いたします。
 まず、第一に、三木総理から日本の外交方針と安全保障の基本政策について承りたい。
 三木総理は、核防条約の批准を求めるに当たって、核兵器を開発するフリーハンド論にくみしない、核兵器の開発は事実上不可能だ、これなくとも日本の国防に重大な支障はないと述べています。そして、平和憲法の精神を忠実に継承した非核三原則の国会決議は不退転の国策であると受けとめ、日本の平和外交の基調を国際的に明確にする道は核防条約を一日も早く批准することだと断言しております。私は三木首相とはその政治的立場を異にしていますが、この見識は高く評価します。しかしながら、私には気にかかることが一つあります。それは日本国憲法の、国際紛争を解決する手段として、永久に戦争を放棄し、陸海空軍その他の戦力を保持しないという精神の尊重と、アメリカの核戦略のかさのもとにあって日本の安全を保とうとする日米安保条約との調整をどうやってやっていくかの問題です。具体的な事例としては、宮澤外相の、事前協議の際に核持ち込みに対してイエスもあればノーもあるとのあの答弁です。これは形式的法理論からすればあたりまえの解釈かもしれませんが、事は有事の場合です。これが核戦争勃発の引き金となったらそれこそ大変だと世間の人々は心配しております。
 内閣総理大臣の三木武夫さん、あなたはすでに祖国と世界の平和を守るため一身を投げ出すとの心の用意ができていると思います。私はちゃんと人相的にあなたの顔にはそれがにじみ出ているような気がいたします。しかし、とのことは国の安危にかかわる重大な問題で、最終的に国の最高意思の政治的決断を必要とします。心境推定から一歩踏み込んで、改めて三木総理の口から御答弁を願います。
 しかし、この問題は、冷静に考えればノーだけの答えでは済まされません。国の政治責任者は、人類の破滅を誘発させるような核戦争への道を選ぶべきでなく、ぎりぎりの最後まで事前に平和的解決のために粉骨砕身すべきであります。死をいとわないことです。粘りの三木さんにはそれはできると私は確信します。
 第二の問題点は、わが国の政府は、いまから六年前の核防条約署名に当たって、一、核軍縮の促進、二、わが国を含む非核兵器国の安全保障、三、原子力の平和利用の面における平等性の確立、この三点について強い関心を有することを表明しています。この三つの問題はいずれも重要問題ですから、三木総理並びに宮澤外相だけでなく、防衛、科学技術、通産の関係大臣から、過去六年間にかち得た成果について、それぞれの責任ある答弁を簡単にお願いしたい。
 核軍縮に関し、世界に対して道義的責任を一番持たなければならないのは米ソ両大国です。それなのに米ソ両国はSALT交渉後、戦略核兵器削減の基礎ができたと称しているが、ICBM及び潜水艦積載のSLBM、新兵器のMIRV等の核兵器その他の軍備を事実上増大している一方ではありませんか。米ソ両国は核抑止力の実力を具備し、超大国に物を言わせ、世界各国の核拡散、核開発、核移動の管理、査察を行っています。それなのに、みずからは核戦力の均衡を主張し、依然として軍縮の実績を示しておりません。これでは、世界各国からその独善的覇権主義の専横に対して不信感がつのるのはあたりまえであります。わが国を含む非核兵器国としては、核攻撃からの安全保障を取りつけられねば核防条約批准の意義はありません。また、石油ショック以後の重要課題であるエネルギー資源の確保のために、原子力の平和利用の面における平等性の確立にどれほどの明るい見通しがついたでありましょうか。
 第三の問題点は、核兵器の全廃を目指しての核軍縮の具体的プログラムについてであります。三木総理は、国連が全世界的安全保障の役割りを果たすことを理想としています。それなのに自民党のいまの現状は何たることでありますか。他党には干渉いたしませんが、自民党の向米一辺倒的な日米安保体制のみに依存した足踏み状態のこのていたらくで、どうしてあなたが唱えるような理想に到達することができるでありましょうか。
 三木総理にこの際要望したいことは、最近の世界の潮流を見誤ってはならないということです。発展途上国の声を率直に聞く耳を持たなければ、ベトナムに敗戦したアジアにおけるアメリカの失敗の悲劇をもろにわが国がかぶることになります。三木総理は、米軍が原爆を広島、長崎に投下したあのキノコ雲に対する民族の憤りと、原爆許すまじの国民的決意と、戦争反対の全人類の訴えを寸時も忘れてはなりません。戦争放棄、再軍備否定の平和憲法と非核三原則の原点は実にここにあるのであって、核防条約批准こそこの精神を発展させるものでなければならないのです。三木総理は、日本の政治指導者の責任において、国連憲章にのっとり核戦争による人類の破滅を救うべく、超軍事力を保有する米ソ両大国及びその他の核兵器国に対して、核兵器による武力の威嚇または武力の行使を行わざるよう、福国連その他の国際会議の場において強く働きかけてほしいのです。
 第四の問題点は、日本が核防条約に批准後、政府は具体的にまず何をなすべきかであります。三木総理は、核開発の能力ある日本が核開発を断念して核防条約批准に踏み切ったことは、世界の日本に対する疑惑を一掃し、これが日本の平和外交展開の出発点となったことを強調しています。まさしくそのとおりです。それであればこそ、世界の眼は日本の創造的平和外交の第一歩に注目しておるのです。日本の政府は、政府の責任で直ちに具体的に回答を行うべきです。世界を見渡せばわかるように、非核保有国の数は圧倒的に多い。日本がこれらの国々とスクラムを組んで、世界の核戦争反対の声を結集していけば、核軍縮、核兵器の国際管理、核武装の完全廃止の実現は可能であります。日本政府は、核防条約批准を転機として平和外交を積極的に展開し、日米安保条約、米ソ両大国の覇権主義の外交を自発的に解消させ、グローバルな時代にふさわしい、全人類的スケールの、世界の平和共存達成の世界新秩序建設を目指すべきです。
 第五の問題点は、日本が核防条約国に正式に加盟したことを意義あらしめるため、国会で非核宣言を行うこと、また、日本国の政府は、世界及びアジアの平和確立に貢献するため、速やかにアジア・太平洋非核化国際会議を開催すべく関係各国に呼びかけ、アジア・太平洋地域に非核化地帯設置の実現を図ることを提言します。地下核実験禁止協定並びに核保有国との核不使用についての一国間の取り決めも、すでに手の届くところに来ております。いまこそわが国が独自の創造的平和外交を積極的に展開すべきチャンスが到来しています。三木総理に与えられた任務は、これからは理想を説くことでなく、理想を地上に実現するため捨て身になって世界史の転換をさせることであります。
 日本社会党は、党内で活発な論議を重ね、核防条約批准を決意しました。世界の中の日本の主体性を、この平和達成の真剣な戦いの中からみごとに確立して見せます。(拍手)私たちは与党の混乱には触れませんが、国際信義を重んじ、平和外交に貢献するために全責任を持つことを誓います。平和を熱愛する日本の全国民は一丸となって、再び政府をして戦争への過ちを犯させないようにすべきです。
 最後に三木総理に、真理は常に具体的であらねばならない。この一語を呈し、私の質問並びに提言を結びます。
 再質問する場合もあります。(拍手)
   〔国務大臣三木武夫君登壇、拍手〕
#12
○国務大臣(三木武夫君) 戸叶君にお答えをいたします。
 日本の非核三原則、これを不退転の国策として内外に明示すべきだということを最初にお述べになりました。この非核三原則は、国民の総意を体する国権の最高機関である国会の決議にもあらわれておりまして、また、この非核三原則というものが、これを最も具体的に日本の決意を表明するのは、私は核防条約に対する国会の承認だと思う。これが批准をされれば、千万言を費やさずとも、核武装をしないという決意のこれほど端的な世界に対しての日本の方針の明示はないわけでございますから、どうかこの国会で、参議院においても承認をしていただきたいと願うものでございます。
 また、核戦争の防止に対して、それに対して全力を尽くす心の用意があるかという御質問がございましたが、これは私はもう核戦争を防止するということほど何物にも増してこれが政治が取り組まなければならぬ課題はない。これは人類の生存がかかっておるわけですから、そういう意味におきまして、このことに対しては最善を尽くしますし、またそういうことに至らないために、国際的環境の安定化を図るために外交があるのだと思いますから、戸叶君の御指摘のように、日本は平和の維持と国際環境の安定のために一段と日本の平和外交を積極的に展開する責任があると考えております。
 また、いままでの政府が六年前に調印したときに、いろいろ申しておることの条件についてお話がございました。先ほど核軍縮の問題については、もしもああいう核防条約がなかったならば、私は、もっと核軍備競争が行われておる。それに歯どめの役を与えて、なおかつ核軍縮といいますか、核戦争防止に対する米ソ間の協定や条約、合意というものはある程度進んできたと、核防条約というものによる軍縮への努力というものは歩み始めておる、こう評価いたすものでございます。
 また、平和利用の問題については、これはもう日本がユーラトムと同じような、戸叶君御承知のように、平等な待遇を確保することができており、これが今回国会において御承認を得ますならば、原子力平和利用の上においても非常にやっぱりプラスになるんです。いままで日本が核防条約に対して批准を行いませんから、核燃料の供給の協定をする場合に、日本がもしも、こういういつまでも批准をしないということは、核兵器開発の、日本はそういう考えを持っておるのではないかと、そうなってきたら、核燃料を供給する場合に、戸叶君御承知のように、原子力発電によるプルトニウムができますから、これは核兵器開発の大きな原料になるわけですから、核燃料の協定を少し考えなければならぬという空気が世界に起こっておることは事実ですよ。日本がこれから核というものの平和利用、原子力発電なんかに非常にウエートをかげていくのに、燃料協定に懸念をあらわしておりますね。カナダの議員の方が来て、私に第一の質問をするというのは、核の燃料協定に関連をしておるからですね。そういうことを考えますと、やはりこの核防条約の承認を受けますことが平和利用における燃料の供給というものに対する世界的な疑念を一掃することにもなると私は思います。この点について、査察については欧州の原子力機構と平等であると、それからまた、戸叶君が非常に強調をされた点は私も全く同感でありまして、いままでは、核防条約を批准をしないということは、非核三原則ということを世界でいろんな会議の場で強調いたしますし、もう歴代の外務大臣が国連で核防条約の早期批准というものを演説しない外務大臣は一人もないですからね。全部皆各外務大臣は、これは大きなやっぱり演説のテーマにしておるわけですから、佐藤さん自身もノーベル賞までこういう非核三原則というものを理由にしてもらわれたと、こういうふうなことで、それをもう端的に表示するものは、やっぱり核防条約に参加ですからね。そのものが、いつまでも日本がちゅうちょしているやに世界的に映りますことは説得力がないですね、日本の平和外交に対しての。こういう一つの世界の疑念が一掃するわけでございますから、戸叶君の言われるように、これは新しい日本の外交、平和外交の出発点だと受け取るべきでしょうね。こういうことで、やはり米ソの間の問題に限らず、米ソの一つの核軍縮、これに対しては日本もやっぱり強い立場をとるべきでしょう。その他の核軍縮に対して日本は一段と強力に外交を展開していく必要があると思います。
 また、非核地帯をアジア・太平洋においてつくれというお話でございました。私も、適切な条件を持っておる地域では非核地帯を設定するということは、やはり核拡散を防ぐという意味において一つのやはりこの条約の趣旨にも合致すると思いますから賛成ですよ。しかし、これは非常に安全保障の問題がからんでおるだけに、現実にそういう情勢がないと、なかなか言うだけでは実現しないと。アジア・太平洋地域ではまだ現実にそういう国際環境というものは生まれてはおらないと思いますが、戸叶君言われるように、こういう地帯が設置されることは、これは好ましいことでございますから、今後そういう努力はいたしますけれども、いまアジア・太平洋に現実的な条件が整っておるとは見ておらないわけでございます。
 また、核の実験の禁止であるとか、いろいろお話がございましたし、こういう点については全面的な核実験の禁止というものは日本もいままで努力をしてまいったわけでございますが、一層とこの問題に対してこれを推進するような努力をいたします。また、日本は地震国としてこういうものに対していろんな過去の経験は寄与する面もございますから、これは努力をいたします。
 また最後に、発展途上国の声を聞くべきである、こういうことを強調されましたが、私は、やはり核戦争を防止するためには世界の環境というものが安定した国際環境を持つことが必要でございまして、そのために必要なことは、発展途上国と工業先進国との調整だと思う。今後、これから二十一世紀にかけて世界の最大の課題は、工業先進国と発展途上国の格差がだんだん拡大していくことを、どうこの格差を縮めていくかというところに世界の平和の問題が大きくかかっておると思いますから、発展途上国の発言に耳を傾げて、でき得べくんば日本は工業先進国と発展途上国との調整的な役割りを国際的に果たしていく面が大いにあるのではないかと、戸叶君の御意見に対しては傾聴をいたした次第でございます。
 お答えをいたしました。(拍手)
   〔国務大臣宮澤喜一君登壇、拍手〕
#13
○国務大臣(宮澤喜一君) 戸叶議員から、政府がこの条約を署名いたしましたときに声明いたしました三つの事柄がその後どのように進展をしておるかというお尋ねがございました。
 まず、第一の核軍縮の具体的成果につきましては、総理も御答弁になり、先ほどはまた秦野議員に対して、本条約が成立しましてから数個の米ソ間の取り決め等が成立したということを総理から答弁をせられました。それに加えまして、先月のことでございますが、長い間の懸案でありましたいわゆる地下核爆発について米ソ間の合意が実質的にできたという報道がモスクワの側からございました。してみますと、これは、長い間問題でありましたいわゆる現地査察についてソ連側が譲歩をしたということを意味するものと思われますので、これはやはり画期的な一つの進展ではないかというふうに考えるわけでございます。
 なおまた、昨年の再検討会議の際に米ソ両方から、とにかく米ソ間で軍縮、核軍縮の話をするというようなことはこの条約以前には考えられなかったことであるという発言が期せずして両者からあったのでありますが、これは額面どおり受け取ることができるかどうかはともかくといたしまして、米ソ両国にとって、これ以上核兵器保有国がふえないという前提で物が考えられるということは、将来どうなるかわからぬという場合に比べまして、両者の合意を見やすい状況であることだけは言えるであろうと思うのであります。SALTの交渉などを見ましても進展は遅々としておりますし、また、設けられる天井も必ずしもわれわれが希望するほど低くないということは事実であります。しかし、いわば天井のない青天井の状態よりは、ともかく天井を設けようということは、不満足ではあっても多少の進歩と考えていいのではないか。ことに米ソ両国ともいわゆるオーバーキルになっておることはよくお互いに知っておるわけでございますから、お互いの財政の限界もあって、できればある程度の軍縮に向かっていきたいという利己的な動機も働いていくものではないかと考えるわけでございます。
 それから非核兵器国の安全保障につきましては、先ほど客観的には情勢は決して悪くなっていないと思うということを秦野議員にも申し上げたのでございましたが、昨年の再検討会議等の機会を通じましても、わが国は何度もこれを強調しておりますし、また今後とも強調いたさなければならないと思います。
 第三の平和利用につきましては、先ほど保障措置協定について総理から御答弁がございましたので省略をいたします。
 それから次に、わが国はこの条約の後何をなすべきかというお尋ねでございました。それは先ほど戸叶議員が幾つかの問題を、構想をお挙げになりまして、総理大臣から、原則としては自分は賛成である、そのための条件が直ちに整っているとは言えないかもしれないというお答えがあったわけでございますから、そういたしますと、われわれはそういう条件をこれから整備するために努力をするということがわれわれの態度でなければならないと思います。具体的にわれわれがすぐにでも着手いたしたいと考えますのは、核実験の包括的な禁止でございますが、ことにその中で検証の問題につきまして、先ほど申し上げましたモスクワからの報道等による検証、査察の問題につきまして、わが国としては地震探知技術をもって相当の貢献ができると思います。また、いわゆる平和目的の爆発と称するものがしばしば必ずしもそうであるかないかわからないという問題を生んでおるわけでございますので、やはりこれは規制をするという方向に当面行かなければならないのではないかとわが国としては考えます。
 なお、それに加えまして、先ほど申し上げました非核兵器国の安全保障についてさらにいろいろな機会に強調をし、また確保してまいりたいと考えておるわけでございます。(拍手)
   〔国務大臣坂田道太君登壇、拍手〕
#14
○国務大臣(坂田道太君) 戸叶議員にお答えを申し上げたいと思います。
 核軍縮の評価のことについてのお尋ねでございますが、SALTIを初めといたしまして米ソ間における縮軍縮への努力は、非常に困難な状況を背景と考え考慮に入れますならば、それなりに評価さるべきものというふうに考えております。
 それから核防批准後における非核兵器国としてのわが国の安全保障についてのお尋ねでございますが、これは私、しょっちゅう申し上げておりますように、わが国国民の一人一人がわが国を守る、わが国民を守る、自分の手によって守るという、そういう強いまず意思がなければならない。それから意思だけあっても、それを裏づけるところの能力、つまり憲法の制約のもとでございましても、その一定の必要最小限度の防衛力は常にこれを保持し、そしてこれに対する努力を怠ってはならぬということでございます。
 それからまた、今日のような核時代でございますから、この核の脅威に対しましては、非核三原則を持っておりますわが国といたしましては、どうしても安保条約に頼らざるを得ないと、米国の核抑止力に依存をするということを基本といたしておるわけでございまして、この国を守る意思、防衛力、そしてこの安保条約、この三つががっちりと組み合わされて初めて日本の独立と安全というものが保てるというふうに私は考えるわけでございます。最近国民の間におきましても、わが自衛隊に対する信頼関係も非常に高くなりまして、昭和四十百年の総理府統計の際に七三%でございましたのが、この一月十六日の発表によりますと七九%に上がってまいりました。
 それからもう一つは、先ほど申しました三原則と申しますか、わが自衛隊と、そして安保条約と、この二つでもって国を守るということに対する国民の信頼関係が、かつて四十七年度におきましては四一%でございました。それが今日、一月十六日には五四%に、初めて五〇%を超えてまいりました。このことは、やはり国の安全についての日米安保条約とわが自衛隊の存在というものについて国民がわかってきたということではないかと思っておる次第でございます。(拍手)
   〔国務大臣佐々木義武君登壇、拍手〕
#15
○国務大臣(佐々木義武君) 私に対する御質問は、原子力平和利用を今後どういうふうに進めていくかという問題かと存じますが、資源に乏しいわが国がエネルギー問題に適切に対処いたしまして将来にわたってエネルギーの安定的確保を図っていくためには、原子力発電を中心とする原子力開発利用を強力に推進していく必要があると存じます。
 わが国は昭和二十九年に最初の原子力予算が成立いたしましてから、これまで原子力基本法の精神に従いまして一貫して平和の目的に限って原子力の研究、開発及び利用を進めてきておりますし、今後もこの方針を堅持していく所存でございます。近年、特に原子力の安全性につきまして、必ずしも国民から万全の信頼を得ているとは言いがたい現状にありますので、原子力の開発、利用を円滑に進めるに当たっては、原子炉施設等の安全規制の充実強化、原子力の安全研究の推進、放射性廃棄物の処理、処分対策の確立等によりまして原子力の安全確保に万全を期し、国民の十分な理解と協力を得るよう努力してまいりたいと存じます。
 このような原子力の安全確保体制のもとに、政府といたしましては、今後長期的観点から天然ウウラン資源及び濃縮ウランの確保、ウラン濃縮技術の研究開発の促進、使用済み核燃料の再処理施設の建設等、原子力発電を取り巻くいわゆる核燃料サイクルの確立に努めるとともに、現在の軽水炉に引き続き、近い将来原子力発電の中心となり、燃料の利用率を飛躍的に改善することが期待される高速増殖炉等の新型原子炉の開発、さらには、人類究極のエネルギーとして期待され、世界の先進諸国が強力に進めている核融合の研究開発も鋭意推進してまいりたいと存じております。(拍手)
   〔国務大臣河本敏夫君登壇、拍手〕
#16
○国務大臣(河本敏夫君) 原子力の平和利用についての御質問でございますが、原子力の平和利用の最大の課題は、先ほどの答弁にございましたように、原子力発電の推進にあると考えます。また、この原子力発電を進めるということが日本のエネルギー問題を解決をする有力な手段である、こういうふうに理解をいたしております。現在わが国の原子力発電はいろいろ困難はございますけれども、大勢としては順調に進んでおると言えると思います。現時点で稼動中のものは最近大分ふえまして六百万キロでございます。それから、建設中のもの及び近く着工予定のものが千五百万キロございます。さらに、五十一年度及び五十二年度に電源開発調整審議会にかける予定になっておるものが合計一千三百万キロございまして、その総合計は三千四百万キロでございます。したがいまして、昭和六十年度の目標であります四千九百万キロの達成は今後の努力によりまして実現可能である、こういうふうに考えております。(拍手)
#17
○議長(河野謙三君) 戸叶武君。
   〔戸叶武君登壇、拍手〕
#18
○戸叶武君 三木総理に一点だけ質問いたします。
 それは、三木総理は東南アジアにまだ非核地帯をつくるだけの備えができていないというようなお話ですが、備えができているかできていないかということを私は尋ねたのではないのです。あなたは外務大臣として東南アジアから豪州に旅行したときにおいても、きわめてハイモラルな理想を説いております。太平洋というのは平和の海です。もう大西洋時代から太平洋時代に来たというところに、ここにどうやって名実ともに平和の海をつくるか。この東南アジアなり、アジアの苦悩というものを身をもって受けていないからで、先般シンガポールの南洋大学の国際関係学の教授の蕭博士が来ましたときにも――いま三木さんは東南アジアに行かない方がいい。田中さんがタイやインドネシアで突き上げられたように、田中さんだけではない。あの感覚では東南アジアの苦悩は日本は本当に理解していないという思想が東南アジアの中にあるんです。現実においてまだそこで成熟していないものに対して手を差し伸べるというのが新しい積極的な平和外交の行き方じゃないか。三木さん、そういう点において、あなただけでもせめて東南アジアに希望をつなぐような、理想を語るだけでなく、熱意を示さなければ日本の将来というものは孤立すると思いますから、ぜひその点を改めて質問いたします。(拍手)
   〔国務大臣三木武夫君登壇、拍手〕
#19
○国務大臣(三木武夫君) 戸叶君にお答えをいたします。
 戸叶君の答弁の中にも申し上げたように、核戦争を防止するということ以上に優先する私は政策はないと思うんです。したがって、そのために地域的な非核地帯というものの設定は、私は核戦争防止に役立つという基本的な考えでございます。したがって、アジア・太平洋地域においてもそういう非核地帯というものが設定されることに賛成でございます。ただ、ヨーロッパあるいはラテンアメリカと多少アジアとの地域は異なる点もございますので、これは、戸叶君、私は努力をせないということではないんです。努力はいたしますが、なかなかちょっとラテンアメリカあるいはまたヨーロッパの諸国とはいろんな事情の違うような点もあるということを考えたわけでございまして、いまできておるのはラテンアメリカでございますが、そういう点で今後努力はいたしますけれども、だからすぐに実現ということはむずかしいんじゃないか。しかし、努力はいたすということでございます。
    ―――――――――――――
#20
○議長(河野謙三君) 塩出啓典君。
   〔塩出啓典君登壇、拍手〕
#21
○塩出啓典君 私は、公明党を代表して、ただいま議題となりました核兵器の不拡散に関する条約の承認を求めるの件に対し質問を行います。政府の簡潔にして要を得た答弁を求めます。
 恐るべき核兵器を全廃し、軍備なき世界平和を実現することは全世界人類共通の願望であり、だれ人たりとも異論のないところであります。にもかかわらず、現実は米ソ三大国を中心として武器輸出競争、核兵器開発競争はとどまるところを知らず、米国だけでも広島原爆六十一万発分を保有し、全人類を十数回も殺戮できる量となり、現在も毎日三個の核兵器が製造されていると言われ、まさに人類の運命はダモクレスの剣のもとにあると言わなければなりません。このような核の脅威から人類を救うことこそ、最大にして最重要の緊急の課題というべきであります。ただいま提案されましたいわゆる核防条約の本当の意図はここにあるべきであったのであります。しかし、でき上がった条約は、核大国のエゴイズムによって曲げられ、不完全、不十分なものであったことはまことに遺憾という以外にありません。
 まず、核軍縮に対するわが国の今後の姿勢の問題をお伺いしたいのであります。御存じのとおり、核防条約の内容を見るときに、核保有国と非核国との不平等性は明らかであります。すなわち、非核国は核兵器をいかなるものから受領することも製造することも禁止されておりながら、一方、核保有国の核軍縮の義務については努力規定を設けたのみであります。核防条約が発効してすでに六年余を経ているにもかかわらず、核軍縮に見るべき成果なく、米ソ間で行われている戦略兵器制限交渉も、核軍縮交渉というよりは米ソ両国の拡大均衡のための交渉にすぎず、この六年間で米ソ両国とも保有する戦略核ミサイルの核弾頭数が数倍にふえていることからも明らかであります。政府はこの核軍縮の問題について具体的にどう取り組むのか。核兵器保有国の見るべき成果を上げていない核軍縮をどう考えているのか。先ほどの答弁を聞いておりますと、現在の米ソの核軍縮に非常に満足をしているかのごとき答弁でありますが、重ねてお伺いしたいのであります。
 わが党がかねてから提案をしておる核兵器保育国の首脳会談の実現、国連核問題特別総会の開催実現等、全世界に強く呼びかけ、積極的努力をいたすべきと思うが、政府の決意を伺っておきたいのであります。
 次に、非核国の安全保障についてお伺いします。本条約は、さきに述べたとおり、非核国が核兵器を持つことを厳しく禁止しておきながら、核保有国が非核国を攻撃しないという何らの保証もないのであります。少なくともすべての核保有国が核兵器を使用しないという内容の核兵器不使用協定の締結が必要であります。すでにラテンアメリカにおいては、昭和四十二年二月にラテンアメリカにおける核兵器の禁止に関する条約を作成し、現在までに二十三カ国がこれに署名、三十一カ国が批准を完了しています。この条約は核兵器の実験、使用、製造等一切を禁止し、締約国内に核兵器の配備をも禁止することを約束しており、ソ連を除く四大国の核保有国がこの条約の内容に従うという保証を与えており、核兵器不使用の点で核防条約よりも一歩前進した内容であります。
 アジア・太平洋地域においても、このような非核地帯をつくる多国間条約を結ぶことは、わが国政府の積極的姿勢があれば十分可能な情勢であります。ラテンアメリカでできたものがアジアでできないわけはありません。全世界的な核兵器不使用協定への第一歩として、かかるアジア・太平洋地域の核兵器禁止の条約をつくり、核保有五大国の保証を求めるため、日本こそ立ち上がるべきであります。先ほどの答弁のようなことではなしに、政府の決意を伺っておきたいのであります。
 また、核防条約は、核保有国が自国の核兵器を他の国へ持ち込むことが禁止されていないことは大きな欠陥であり、まことに不合理なことと言わなければなりません。この欠陥を是正するため、政府は今後どのような積極性を持って取り組むのかお伺いしたい。
 次に、わが国における非核三原則の問題について政府の姿勢をただしておきたい。今日まで政府の非核三原則を守るとの表明にもかかわらず、米軍による核持ち込み、さらに船艦、航空機による核通過の疑惑は依然として消えていないのであります。日本政府が非核三原則を守り、米政府がこの日本政府の方針を理解、尊重すると言うだけでは不明確であります。米国とスペインとの友好協力条約は米国がスペインに核兵器を貯蔵しないことを約束しております。このことは、米国の基本政策は核兵器の有無を明らかにしないものであると言ってきたわが国政府の説明が完全に覆されたことを示しております。政府は国民の核持ち込みの疑惑を一掃するため、直ちに対米交渉を行い、交換公文によって米軍のわが国への核持ち込み禁止の取り決めを行うべきであります。このような当然のことをしようとしない政府の姿勢に国民の疑惑は生じているのであります。政府の見解を伺いたい。もし、政府がそれを行わないとするならば、その理由は何か、明確に説明していただきたいのであります。
 また、国家の危急存亡のときでも非核三原則を堅持すると政府は理解しているのか、政府の決意を聞きたい。
 さらに、国際海洋法会議におけるいわゆる国際海峡の問題でありますが、わが国は例外をつくらず、国際海峡においても核通過を禁止、非核三原則を堅持すべきは当然であります。すなわち、無害通航を主張すべきであります。政府はどのような姿勢で取り組んでいるのかお尋ねしたい。
 また、核防条約を批准するに当たり、この際、わが国が非核武装宣言を行い、全世界の国に対してわが国の恒久的な非核政策を公式的に通告すべきであると思うが、政府の見解を聞きたいのであります。先ほど総理は、核防を批准することは最高の通告であるとの意見でございましたけれども、核防では核持ち込みは禁止されておらず、なお不十分である意味から、重ねて質問するものであります。
 次に、原子力平和利用に対する国際原子力機関による保障措置の問題に関連して伺いたい。原子力の平和利用は、エネルギー問題の将来を考えるとき、当然推進さるべき課題でありますが、そのためには安全性の確保と国民のコンセンサスを得ることが必要であることは論を待ちません。わが国は、原子力基本法で自主、民主、公開の三原則が明記されているにもかかわらず、現実には企業秘密という名のもとに全資料が公開されず、原子力委員会関係者以外の専門家はこの資料のすべてを見ることができず、その結果、第三者による安全性の十分なチェックができなくなり、一方、このことが国民の不信を招いているのであります。原子力の平和利用はあくまでも徹底した公開を原則とすべきことを主張いたしますが、政府の決意ありや否やを伺いたいのであります。
 最後に、核兵器を地球上から絶滅し、軍備なき世界平和の実現に向かって飽くなき努力を続けることは日本民族に課せられた嵩高な使命であり、この闘いの原点はあの広島、長崎における悲惨な被爆体験の認識にあると思います。毎年わが国を訪れる各国の首脳はかなりの数になりますが、その大半は、東京周辺や京都等を訪問することはあっても、被爆の地広島、長崎を訪れる人は少ないのであります。広島、長崎で一瞬のうちに二十数万の生命が失われてよりすでに三十余年、いま人類が滅亡の危険に迫りつつあることを思うとき、勇気をもって原爆の悲惨を世界に訴えることは日本の責務であります。広島、長崎に国際会議を開催できる国際平和文化センターを建設して、世界の各界の指導者を広島、長崎へ招く機会を多くつくることも一つの方法であり、また国連に原爆資料館をつくることも一つの道であります。原爆の悲惨さを世界に訴えるために先頭に立つべき政府が全く消極的で、その多くは民間団体に任せられてきたことは紛れもない事実であります。
 政府の積極的な見解を伺い私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣三木武夫君登壇、拍手〕
#22
○国務大臣(三木武夫君) 塩出君にお答えをいたします。
 塩出君は、核兵器を地上から――核兵器ばかりでなしに、武器を地上から完全に除去することこそ平和の最終目的ではないかという御意見でございますが、理想としては私はそのとおりだと思います。しかし、この問題は、各国の安全保障という、国としての第一義的な国益といいますか、こういう問題が、やっぱり安全保障の問題というものは非常に深く関連をしておりますから、だから一気に理想まで持っていくことは非常にむつかしい問題ですね、これは。やはり一歩一歩、現実に即して塩出君の言われるような理想に近づけていくということがやはり一番実際的であり、また現実的である。そのために日本の考えておる――日本政府の考えておる方向は、包括的な核実験の禁止であるとか、核軍縮、こういう問題について今後取り組んでいくことが現実的外交の姿である。いままでは日本は核防条約というものにも五年――六年になりますか、国会の承認も与えていませんし、批准も終えてないわけですから、なかなか世界に対しての説得力がなかったわけですが、幸いにこの国会で御承認を得て批准をいたすことができれば、一段と国際的発言に対して一つの迫力ができるわけですからね。今後この問題に対して一層の努力をいたしたい所存でございます。
 また、この条約は核保有国に対して核兵器の使用を禁止してないではないか、こういう条約が――核兵器を使用しないという協定を締結する必要があるのではないかという御意見ですが、どうも御趣旨としては全く理解できることでございますが、この核兵器を持っておる、しかし使用はしないという国際的協定というものはなかなかむつかしいわけですね。それは核は抑止力ですからね。実際にだれも核戦争をしようとは思ってないわけです。すればどういう運命になるかということは皆知り尽くしておるのですから。抑止力として戦争を防ごうというところに、核戦争を防ぐところに核というものの効果というものがあるわけですから。持っておるけれども使わぬという世界的な協定というのは、実際国際的な世界戦略のバランス全般の問題としてなかなかそういうことの実現はむつかしいと思います。実際問題として。塩出君の言われることは私もよくわかるのですが、実際問題としてはむつかしい。そうなってくると、現実的には核軍縮を推進していくという方法が、一番それが有効な手段ではないかと思うわけでございます。
 また、核持ち込みを禁止してないということでございますが、この核防条約というのは、核の保有国が次第次第にふえていくことを防いで、核戦争の勃発の危険を少なくして、国際関係の安定度を高めようということでございまして、塩出君の言われるように、核をよその国に持ち込むことは禁止してない。管理は認めないですけれども、持ち込むことはこれは禁止をしてない。そこまでねらった条約でもなかったわけで、この問題もなかなか、この問題も各国によって、やっぱり安全保障というものは皆一番その国の政治が頭を砕く問題ですからね。国によったならば持ち込んだ方が安全だという考えもございまして、これもなかなか実際問題としてはむつかしい問題である。しかし、塩出君の言われる趣旨は私もよく理解をできるわけでございます。お答えをいたします。
 あとは各省大臣からお答えいたします。(拍手)
   〔国務大臣宮澤喜一君登壇〕
#23
○国務大臣(宮澤喜一君) 三点ございます。
 第一点は、ただいまの管理権を譲ってはならないが、管理権を持ったままであれば持ち込みは禁止してないではないかと言われることはそのとおりでございます。これはただいま総理が御答弁になりましたように、ヨーロッパなどの場合においては、現に管理権を持ったままで持ち込みが行われているというようなことがあるように存じますが、これはやはり通常兵器と核兵器とのバランスにおいてヨーロッパの国々の中にそれを希望しておる、自分の国益に合うと考えておる国がある。また、米ソのバランスからもそのようなことが生まれてくるということから来るまあいわばやむを得ない事情かと考えられます。わが国の場合にはもとより三原則がございますので、持ち込みを一切禁止するということ、一向に差し支えのないことでございますが、国際的には必ずしもそれがそのようでないということが事実のように存じます。
 それから、国際海峡につきましてお尋ねがあったのでありますが、海洋法会議が先般の会期を一応終わったところでございます。次は八月の二日からもう一度開かれるわけでございますが、わが国としましては、いわゆる国際海峡というものがどのような形で新しい国際法の中で定義づけられるかということを考えつつ、全体の国益を見て対処したいと考えておるわけでありますけれども、いずれにいたしましても、わが国の固有の権限の及ぶ限りにおきまして三原則というものは貫いていくべきものである、さように考えておるわけでございます。
 それから最後の、いわゆる広島、長崎のわれわれの体験をどう生かすかということで、外国人との関連でお尋ねがあったわけですが、確かにこのような生きた歴史というものは、これを見ることによって外国の人々に反省、自戒を起こさせます非常に何よりも雄弁な生きた歴史でございます。そういう意味で、近年訪れる人も多くなっておるようでございますけれども、そういうことはできるだけ私どもとしても意識的に進めてまいりたい。国際会議場というようなことも一案であるかとも存じますが、そのようなわれわれの持っておる貴重な歴史というものを各国の人にもできるだけ分かち合ってもらわなければならないと思います。また、国連との関連につきまして、かつて国連事務総長から核兵器白書が出されましたときに、わが国の広島、長崎等の体験はこの白書の中にかなり生かされまして、わが国も積極的にこの白書づくりに貢献をいたしました。われわれの持っております非常に悲惨なしかし貴重な体験は、今後とも国際的に生かすために努力をいたさなければならないと思います。(拍手)
   〔国務大臣佐々木義武君登壇、拍手〕
#24
○国務大臣(佐々木義武君) 私に対する御質問は、原子力の平和利用は原子力基本法の自主、民主、公開の原則を守って、企業機密の存在するような技術は採用しないで、公開の原則に徹すべきではないかという御質問でございました。原子力基本法第二条は、御承知のように、「原子力の研究、開発及び利用は、平和の目的に限り、民主的な運営の下に、自主的にこれを行うものとし、その成果を公開し、進んで国際協力に資するものとする。」という「基本方針」を規定してございます。わが国の原子力の研究、開発及び利用は、この方針に従いましていままで進めてまいりました。今後もこの方針は堅持してまいる所存でございます。
 問題の公開の原則につきましては、原子力の平和利用を担保するとともに、原子力研究、開発の成果を広く利用することができるようにとの意味があると解釈されております。広く安全性についての国民の不安を払拭するためにも、政府といたしましてできる限り安全性に関係する資料は公開してまいりたいと考えてございます。
 なお、公開の原則は、公開によって研究、開発の促進が阻害されるような場合、あるいは財産権保護の原則に抵触するような場合にまで公開すべきことを意味するものではないとただいままでは解釈されてございます。念のために申し上げておきます。(拍手)
    ―――――――――――――
#25
○議長(河野謙三君) 立木洋君。
   〔立木洋君登壇、拍手〕
#26
○立木洋君 私は、日本共産党を代表して、核兵器不拡散に関する条約の批准承認案件について総理並びに外務大臣に質問いたします。
 日本共産党は、当初から核防条約の重大な問題点を指摘し、批准反対の態度をとってまいりました。この条約の発効から六年間の内外情勢の経過は、わが党の指摘と批判の正しさを立証していると考えています。
 第一に、核防条約の基本的な性格は、新しい核兵器国はつくり出さないというだけであって、
   〔議長退席、副議長着席〕
すでに核兵器を持っている国については全く手を触れず、核独占の維持、強化をねらうものであります。本条約で述べている核軍拡競争の早期の停止及び核軍備の縮小に関する効果的な措置についても、この六年間全く放置され、今日では明らかに空文に等しいものであります。すでに核防条約が発効した一九七〇年から五年後の一九七四年末まで、米ソ両国の戦略核弾頭数はアメリカで四倍強に、ソ連では約一・五倍に増強されており、質的にも多核弾頭化や命中精度の向上など、核保有国の核軍拡競争は一層激化し、核の軍縮は何ら成果がないのであります。しかも、非核保有国である非同盟諸国は核保有国の核軍縮を強く要求し、非核保有国への核兵器不使用の要求を出しているにもかかわらず何ら具体的な措置も顧みられず、核防条約への不満と不信が高まっていることはきわめて注目すべきことであります。
 総理、このように本条約の発効後も核軍拡競争が激化している事実を何とお考えでしょうか。先ほど核防条約がなかったならもっとひどくなるであろうというふうに言われましたが、このようなことで核防条約を是とする議論はまさに欺隔的な論理と言わなければなりません。総理はこの条約が真に核軍縮の一歩になり得ると考えておられるのかどうか、明確な御答弁をいただきたいのであります。
 第二に、核防条約では、アメリカなどの核保有国が自国の核兵器を外国へ持ち込むのに何ら制限をつけず、完全に野放しにしているという重大な問題があります。この条約では一部の国の核独占を事実上容認し、核軍拡競争を放置しているだけではなく、核保有国が非核保有国のどこに核を持ち込み、どこに配備をしょうが、また、他国に対しどのように核による脅迫、干渉の政策をとろうが、何らこれを禁じていないということを見れば、事態は明白であります。このことはまさに日本にとって重大であります。先ほど総理は、非核三原則の厳守は核防条約批准によって最も確実なものになるとの趣旨を述べられましたが、このような核防条約は非核三原則の核を持ち込ませずとは全く相入れないものではないでしょうか。この点でまずお聞きいたしますが、アメリカが核をいかなる形でも一切日本に持ち込まないと公式に言明したことがあるでしょうか。また総理は、今日アメリカに核を持ち込ませずと明確に確約させる御意思がおありかどうか、総理の御所見を伺います。
 さらに、政府は国連海洋法会議において、国際海峡は一般領海に比してより自由な通航を支持するとして、十二海里領海内の核の自由通航を認めると報道されておりますが、この際、いかなる形でも領海内の核通過を認めないかどうか。また、唯一の被爆国であるわが国が率先して世界に国際海峡の核通過禁止のために強く働きかける用意がおありかどうか、御所見をお伺いいたします。
 わが党は、非核三原則を法的拘束力のある確固たるものとするために、その立法化である核兵器禁止法案を今国会に提出いたしております。この法案の成立は国の内外に日本の非核化の決意を最も明確にするものであると考えますが、総理、この核兵器禁止法案に賛成なされるかどうか、御答弁をお願いいたします。
 第三に重要なことは、この条約がアメリカなどの核保有国による非核保有国への核使用、すなわち核攻撃を禁じていない問題であります。フォード米大統領を初めとするアメリカ政府高官らは、現在でも核先制使用を一度ならず公言し、通常兵器による局地戦においても核先制使用を否定しないなど、核兵器による威嚇を繰り返しておるのであります。これは国連憲章にも明白に違反するものと言わざるを得ません。このことは、アメリカの核戦略に深く組み込まれつつある日米関係にとって重大な影響を与えております。
 昨年の日米首脳会談で三木首相は、核防条約批准の促進と引きかえに、核兵力によるわが国、いわゆる防衛をアメリカに明言させました。これは日米軍事同盟の核軍事同盟化への重大な取り決め以外の何物でもありません。アメリカの沖繩での核兵器投下訓練は依然として繰り返され、核輸送部隊の駐留、核貯蔵庫の存在は明らかであります。当然こうした訓練をやめさせ、第一八戦術戦闘航空団、第三海兵隊、第三四五空輸中隊の日本からの撤退を要求すべきであると考えますが、総理にその御意思があるかどうか答弁を求めたいのであります。
 現在、アメリカの議会の一部に核先制使用禁止の動きが生まれています。日本政府がアメリカに対して核の先制使用を許さないと主張することはきわめて当然なことであります。アメリカに対しても、国際的にも核の先制使用を許さないと明確に主張する意思がおありかどうか。その意思が仮にないと言われるのなら、三たびにわたる原爆の被害を受けたわが国の総理として、その根拠が何であるか明確にお答えをいただきたいのであります。
 さらに、総理、国連安保理事会の非核保有国の安全保障決議と関連して、非核保有国へ核のかさを提供することを正当化していますが、これは事実上軍事同盟の核軍事ブロック化に道を開くものであります。あなたはこのような事態の進行を望ましいと考えておられるのかどうか御答弁を求めます。
 最後に、わが国がいま核の問題でなすべきことは、何といっても第一に、三たび原水爆の被害を受けた日本国民の願いにこたえて、核兵器の完全禁止の国際協定の成立を積極的に促進させることであります。すでに国会で決議されたように、その決議に基づいて総理は核全面禁止協定締結を広く国際的に呼びかけ、それを果たすべき責務があると考えます。これは努力をすれば実現可能な道であります。いままで総理はこの責任をどのように考えてこられたのか。国会決議に基づいてなぜ総理は努力、実行されないのか。責任をもって明確にお答えいただきたいのであります。
 今日わが国が行うべき第二の点は、いかなる事態においても核兵器の使用を禁止するための諸措置を全世界に積極的に呼びかけることであります。このことは世界の多くの国の要求でもあります。総理はこの緊急の課題となっている使用禁止のための諸措置を促進するため、総理は核保有国に断固要求すべきであります。
 この点について総理の決意を国民の前に明確に行っていただくよう強く要求して、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣三木武夫君登壇、拍手〕
#27
○国務大臣(三木武夫君) 立木君にお答えをいたします。
 第一番に、核軍備競争が激化しておると、こう現実を判断されておりますが、私は先ほども申したように、核防条約というものが調印されて、米ソ間の核軍縮に関する幾つかの条約、協定、合意が成立したことは事実でございます。軍縮への努力というものがどうも大きくないではないかという御批判はありましょうが、核軍備競争激化の一途だというふうには思っておりません。いままでにこういうことはないことでございます。また、こういう条約というものが成立してなかったならば、もう少し核軍備競争というものが行われたんではないかと。米ソとも核軍縮に対して誠実に交渉を行うという義務をこの条約で持っておるんですから、大手を振って核軍備、核保有競争はできませんね。そういうことで、この核防条約の調印というものは、少なくともそれをスタートとして核軍縮への一歩を踏み出しておると評価することが正当な評価ではないかと思うわけでございます。したがって、われわれは今後とも核軍縮に対して、いろんな軍縮の委員会もございますし、国連の場もございますので、積極的な努力を積み重ねていく所存でございます。
 また、この条約は核保有国の核独占に対して余り制限していないではないかと。確かに、核保有国への核保有に対する制限というのは少ないことは事実でございますが、各国とも最も基本的な国益である安全保障と密接に関連する問題でありますから、一気にこの問題を理想的な方向に解決することはむずかしい。それならば、核保有国の核保有に対する制限が少ないから、野放しでもう世界は核兵器を皆各国が競争して持つようにしたらいいんだという立論は、立木君、成り立たぬと思うんですね。これは理想からすればいろいろ問題はあるけれども、世界でいま各国が核兵器を開発するということになりますならば、核戦争の危険というものは機会は増大しますよ。だから、やっぱりこういう安全保障に関係する問題は、一気に理想的にはいかない。現実的に一歩一歩問題を処理するということでなければ、理想論は述べるにしても、それは意義あるにしても、現実の問題の解決にはならぬということでございます。したがって、われわれとしてはやはりこの核軍縮というところからこの問題に対し対処していきたいと考えておるわけでございます。
 また、この核防条約は他国への核兵器の使用を容認しているではないかということ。先ほど申しましたごとく、これは核兵器が世界に拡大していくということを防ごうという条約でございまして、いま御指摘のような問題には、これはこれに対して何らの制限は加えておりませんが、この問題は各地域における戦略のバランスの維持という国際政治の現実も背景として考えんならぬ面があって、立木君の言うように、この問題を直ちに解決するということはむずかしい問題だと思います。
 また、非核三原則を立法化して核兵器禁止法というものをつくれという御意見でございましたが、非核三原則を堅持するというのが政府の一貫した方針で、そしてまた、衆議院の決議も行われた。国権の最高機関で、国民の総意を代表してこれは決議も行われておるわけでございますから、いまさらこういう立法化という必要はないと考えるわけでございます。
 それからまた、日本政府はアメリカに対して核の使用は許さないという通告をせよということでございますが、やはり核というものは、私はしばしば申し上げますように、実際に使うということは、これは実際、核兵器を実際に使って戦争をもう一遍やったら、これはもう人類共滅の運命になるわけですから、核の威力というものは、もしそういうことをやれば、たとえば日米安保条約の場合でも、日本を攻撃すればアメリカを敵として戦うだけの覚悟を持ってくださいと。それはもう核の攻撃に対しても通常兵器の攻撃に対してもアメリカは日本を守るんだという、この誓約が大きな戦争の抑止力になっているので、アメリカは日本へ来て核戦争をやろうというようなことは、そういう、論理的にはあり得ましても、現実の問題としてはそういうことのないようにしたいための安保条約に対する日本の安全を保障するという約束でもあるわけでございますから、日本がアメリカに対して核の使用を許さないという通告を政府がする考えはございません。
 また、私が八月のワシントンでフォード大統領と核防条約に批准するというのと引きかえに、核攻撃に対して守るという約束を取引したんだという、そんな約束をしなくても日米安保条約は日本に脅威を与えたり日本を侵略したりすることに対してアメリカは守るという約束をしておるのですから、去年の八月に私が取引するような必要は毫もないわけでございます。
 それから、核の軍事ブロック化、こういうものが世界に進行しているということでございますが、これはやはりまあわが国を初め多くの国は、東西間の相互の抑止力のもとに集団安全保障体制に参加しておるんです。一国だけでは国を守れないですから。そして自国の安全確保というものを図っているというのが現実なんですね。その結果として、東西間の均衡が国際平和を支えておる基盤になっておるという現実も、これは否定することはできません。このような相互抑止関係の一層安定化をさすということであって、そういう努力を、進展を望んでおるわけでございまして、これが核軍事ブロック化の強化というふうには、私は国際情勢を見ていないわけです。
 それから、日本は唯一の被爆国家として核兵器の全面禁止協定、核兵器使用禁止協定、こういう締結のために積極的なイニシアチブをとるべきだということでございましたが、まあ理想論としてはわかりますよ。しかし政府は、まあ核理想論をすぐに唱えましても、なかなか一気にはそこに参りませんから、政府が考えておることは、まず核の現状を凍結して、これを次第に縮小していって、そしてだんだんとこう核兵器を全廃するという一つの方向に向かって進んでいくことが理想的だと考えておりますので、まあ理想論としてはよくわかるんですよ。それで理想論どおりに、こんな安全保障に関係するものが理想論のように一気にいくものではございませんから、現実的に一歩一歩そういう方向に近づけていく努力をするというのが政府の方針でございます。
 先ほど、公明党の御質問に対して、私、答弁漏れがあってまことに失礼をいたしました。これはお答えをいたします。
 先ほど、塩出君の御質問の中に、国連の核問題特別総会の開催を図って、日本は核軍縮を強く要求せよと。国連の核問題特別総会の開会の動きもあるんですよ、現に。しかし、まだそこは実現するまでには相当の私は紆余曲折もあると思いまして、いきなり日本が開催のイニシアチブをとって核軍縮を要求するというところまでの国際情勢は熟していないと。御提案のことは、その趣旨はわかります。
 また、すべての核保有国の首脳会談を提案する考えはないかということですが、塩出君も御承知のように、米ソ英に対してフランス、中国などは核軍縮に対する基本的な考え方も多少違っておるようですから、そういう核保有国の首脳会談を提案しましても、これがいますぐに開かれるという期待は持つことは私はなかなかむつかしいと。しかし、塩出君がとにかく核保有国というものがやはり一番の大きな核問題に対しての実力と責任を持っているんですから、そういう首脳会談を開いてみたらどうかという御提案はよく理解できますけれども、現実はまだそこまで国際情勢は、それが開かれるような情勢にはないというのが政府の判断でございます。
 お答えをいたします。(拍手)
   〔国務大臣宮澤喜一君登壇、拍手〕
#28
○国務大臣(宮澤喜一君) 立木議員の御指摘は、要するに、この条約によっては大国間の核軍縮を規制する効果的な措置はとれないし、また、核兵器の持ち込みを禁じていない以上、核軍事ブロック化というものも防げないではないかというお話でありました。それは私は御指摘のとおりであると思います。が、この条約そのものは、全体の核軍縮、平和というものの中で、一つの限られた、与えられた目的を達成しようというのがこの条約でございます。すなわち、核兵器国の数をふやさないことが核軍縮に役に立つと、核平和に役に立つと考えるがゆえに、それを達成しようという条約でございますから、この条約が立木議員の言われるような目的をも含んでいないからといって、この条約そのものが意義を持たないということにはならないというふうに私ども思うわけでございます。そこで、立木議員のおっしゃいます米ソ――いわゆる核軍縮というものは、実際はこれは多国間の話ではなくって、事実上米ソ間の話になるわけでございますから、もし米ソ間でそのような条約が結べるものであれば、SALTの交渉がこんなにぐずぐずしておるはずはないのでありまして、現実には米ソ間の核軍縮の話し合いというものは条約が結べるような状態にはない。そうでありますからゆえに、SALTの交渉があれだけ時間をかけて行われておるわけだと私ども思うのです。かといって、SALTの交渉が私は無意味だと思っておりませんことは先ほど申し上げたとおりで、私どもが希望するほど低い天井にはなりませんけれども、ともかく天井を設けようという話が第一段階、第二段階と進んできておるわけで、また、米ソには財政上の都合もあって、これ以上オーバーキルになることは困るという、それなりの理由もあるわけでございますから、やはり私どもは、不十分ではあっても、そういう進行に期待をかけていいのではないかというふうに考えるわけでございます。(拍手)
#29
○副議長(前田佳都男君) 答弁の補足があります。三木内閣総理大臣。
   〔国務大臣三木武夫君登壇、拍手〕
#30
○国務大臣(三木武夫君) 立木君が、在日米軍の日本での核訓練をやめさせろと、だからその部隊の日本からの撤退を要求すべきであるという御質問がございましたが、まあ米軍がその要員に多種多様の訓練を行う必要があり、核攻撃をもし受けた場合の対処訓練なども、核兵器を持ち込まないで行うものであるならば、安保条約上問題になるとは思わないわけでございます。米軍としても、核攻撃を受けた場合の対処訓練で防御的な訓練であると、攻撃的な訓練ではないと、核兵器を取り扱わないと、安全対策に対しては一層十分に留意をするというようなことを確約しておりますので、いまこの米軍の部隊を撤退を要求する考え方は持っておりません。
 お答えをいたします。(拍手)
#31
○副議長(前田佳都男君) 答弁の補足があります。宮澤外務大臣。
   〔国務大臣宮澤喜一君登壇、拍手〕
#32
○国務大臣(宮澤喜一君) 領海内の核通過を認むべきでないと思うがどうか。領海内の核通過を認めるつもりはございません。国際海峡の問題については、先ほどお答えをいたしましたので、省略をしたわけでございましたが、これはつまり海洋法会議において国際海峡というものがどのようなものとしてつくられるかということに問題はかかるわけでございますが、わが国の権限の及ぶ限りにおいて、非核三原則というものは適用してまいる考えであります。(拍手)
    ―――――――――――――
#33
○副議長(前田佳都男君) 田渕哲也君。
   〔田渕哲也君登壇、拍手〕
#34
○田渕哲也君 私は、民社党を代表して、ただいま上程されました核防条約の批准に関し、政府の所信をただしたいと存じます。
 すでに、ローマクラブ等の提言にもあるとおり、いま地球は英知による管理により人類の生存を永続させることができるか、あるいはエゴイズムと無知によって破滅への道をたどるかの分かれ道に立っております。そして、資源の枯渇や公害による汚染などの脅威よりも、はるかに急激に徹底的な壊滅をもたらすおそれがあるのが核兵器であります。核防条約は、いわば米ソの核軍備拡張の手詰まりと、米ソ体制固定化のもくろみの産物であり、したがって、核保有国と非核保有国との不平等性は否定できないし、また種々の面で不完全であることも事実であります。しかし、それが核兵器の国際的な管理とその制限、抑制への第一歩となる可能性を持つならば、われわれはこれに対し前向きに取り組むことが必要でありましょう。また、わが国が平和憲法と政策としての非核三原則を持ち、そして今後もそれを堅持するとするならば、核防条約の批准はわが国の方針に基本的に背馳するものでないことは言うまでもありません。私はそのような姿勢に立ちながら、以下数点について質問をしたいと思います。
 まず、核防条約にわが国が調印して以来六年も経過しながら、なお批准に至っておりません。その理由は一体どこにあるのか。私は、基本的には、この条約の持つ不平等性、不完全性に原因があると考えますが、政府がそれらの諸矛盾の是正への努力も見通しも不十分なまま無準備に調印したこと、また、調印後もそれらの解明への努力を怠ってきたことなどを指摘しなければなりません。この点について政府の見解を求めたいと思います。
 次に、わが民社党はかねてよりこの条約を批准するための条件として、核軍縮の進展、非核保有国の安全保障の確保、原子力平和利用における平等性の保持を確認することを主張してまいりました。また、政府としても、これら三条件を満たすことが必要との立場をとり、今日これらについてある程度の進展を見たことは事実でありますが、しかし、なお完全にその条件が具備されたとは言えません。総理は、批准した方が諸外国のわが国に対する警戒心を解き、核軍縮等世界平和に関するわが国の発言が重みを増すと述べておられますが、その点から見ても、核防条約の批准によって問題が解決するのではなく、将来への一歩を踏み出したにすぎないということになりましょう。核防条約を核による破滅から人類を救うための有効な手段たらしめるか否かは、むしろ今後の努力にまつところが大きいと言わねばなりません。この点について、今後政府のとるべき方針についてただしたいと思います。
 まず第一の問題は、核軍縮の推進についてであります。核防条約の発効後、この点についての核保有国の努力と見られるものには、米ソ偶発戦争防止協定、米ソ間ホットライン改善協定、米ソABM制限条約、米ソ間戦略攻撃兵器制限暫定協定、米ソ間核戦争防止協定など一連のSALT交渉の成果と、海底非核化条約の成立があります。これらは米ソが軍拡競争の重圧に耐えきれなくなって生まれた制限交渉であり、核兵器の管理という面では一つの前進と見られますが、われわれが求めてきた核保有国の核軍縮はいまだ達成されておりません。そこで私は次のことを進める必要があると思います。
 第一は、すべての核保有国が核防条約に加盟するよう働きかけること。第二は、非加盟国に対しては、国際的に核エネルギー資源の供給停止を行うこと。第三は、核保有国の核軍縮を義務づけること。第四は、あらゆる核兵器実験を禁止することでありますが、これらについて政府の見解を求めたいと思います。
 第二の問題は、非核保有国の安全保障についてであります。わが国を含む非核保有国に対する安全保障については、核兵器による侵略または脅威を受けた核防条約締約国に対して、国連憲章に従って直ちに援助を与える旨の来英ソ三国宣言や、国連安全保障理事会の第二百五十五号決議がなされたことは周知のとおりであります。しかし、これらはいずれもきわめて不十分なものと言わざるを得ません。われわれは少くとも核保有国は非核保有国に対して、核による攻撃や威嚇を行わないという核不使用条約の締結に進まなければならないし、また同時に、非核クラブを結成し、非核保有国が結束して核保有国の横暴をチェックすることが必要と思いますが、この点はいかがですか。
 第三の問題は、原子力の平和利用の平等性についてであります。原子力の平和利用の平等性と、具体的にそれを裏づける査察の平等性については、これまで国際原子力機関との予備交渉で、わが国の計量管理体制が整備されればユーラトムと同様になる旨の原則的合意を取りつけております。また、アメリカ、イギリスも自発的に国際原子力機関の査察を受ける旨の宣言をするなど大きな前進が見られました。しかし、ソ連はいまだこのような意向を表明しておりませんし、査察が完全に平等に行われるかどうか、なお問題点を残しております。したがって、われわれは、第一に、核保有国に対しても国際原子力機関の査察の義務づけを行うこと。第二に、核保有国、非核保有国を問わず、平和利用の核爆発の査察を義務づけることを要求すべきだと思いますが、政府の見解を求めたいと思います。
 次に、科学技術庁長官にお伺いをいたします。伝えられるところによりますと、原子力委員会はそのもとに核物質防護専門部会を新設し、いわゆる核ジャックの防止策を検討することになったと言われておりますが、その経緯と今後の方針についてこの際明らかにしていただきたいと思います。
 また、この問題は、技術的に見ても、わが国だけで解決し得るとは考えられません。政府として今後各国に対し、これについて働きかける用意があるのかどうか、この際あわせて承りたいと思います。
 最後に、我が国に対する核兵器の持ち込み禁止についてお伺いいたします。先般、アメリカとスぺインがその友好条約の中で、アメリカがスペイン本土に核を貯蔵しないことを明記していることが明らかになりました。これは核の存在の有無を明らかにしないという従来のアメリカの政策から一歩前進したものと言えましょう。
 わが民社党は一九六九年以来、米艦船の寄港等によるわが国への核兵器持ち込みを排除するため、アメリカとの間に核兵器持ち込み禁止協定を締結するよう主張してまいりました。いまやアメリカの核政策の変化から見て、この協定を結び得る条件が生まれたと考えられますが、政府として、我が国の非核原則をより明確にするためにアメリカとこのような協定締結について話し合いを始めるべきだと思いますが、いかがですか。
 以上、政府の明確な答弁を期待して私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣三木武夫君登壇、拍手〕
#35
○国務大臣(三木武夫君) 田渕君にお答えをいたします。
 これが非常に批准がおくれましたのは、この問題は安全保障の問題、軍縮、原子力の平和利用等非常に広範な重要な問題を含んでおりますので、国民的な合意を取れることが望ましい、こういうことでいろいろ国民の御理解を得るための努力をいたしたわけでございましたが、今回は自民、社会、公明、民社各党の御賛成を得て、国会で、衆議院では承認になり、また参議院の御審議を願うことに至ったことは、これはやはり一つのそういう時間を置いたことにも原因があるのではないかと思うわけでございます。また、このことによって日本が一番この問題で懸念をいたしておったのは、この条約に加入することによって原子力の平和利用の面に非常に支障を来すのではないかという懸念でございましたが、これは国際原子力機構との間にヨーロッパのユーラトムと同じ平等ないわゆる保障措置協定、まあ査察の一つのシステムでございますが、これ同じようになって、そういう懸念が解消されたということも、この時間があってそういうことができたということも一つの、まあおくれた原因とも言えないかもしれませんが、そういうことで、そういう余裕もできたということもこれは事実でございます。
 また、その間にいろいろな軍縮も、まあその速度は速くないまでも、軍縮への努力というものは続いておるわけでございまして、安全保障の問題についてもこれは再検討委員会、国連の場においてもこれは大きなやっぱり問題として提起される――非核保有国の安全保障の問題、こういうことも事実でございます。
 それからまた次には、この批准のための条件のこういういろいろな問題も含んでおるので、これはやはり核防条約の批准というのは、問題の解決というよりかは将来への一歩を踏み出したものではないかという、私もそのように考えます。すべての問題がこれで解決したというわけではないわけで、たとえば核軍縮の問題などは、こういう日本がみずから核武装の道を断ち切ったわけですから、それは相当な発言力を持ちます。核兵器を開発できない国なら発言力もないけれども、一番核兵器を開発する能力を持っておる国が核武装の道を断ち切って、そうしてその発言をするのですから、説得力が違うわけでありますから、核軍縮などに対しても今後日本は一層努力をしていく一つの立場もできたし、努力もしなければならない。
 また、非核保有国の安全保障の問題これ一番具体的には日米安保条約があるわけですが、しかし日本はまあそれで一つの保障はあるにしても、非核保有国全体から考えたらもう少しやはり保障を求めたいということが非核保有国共通の願望でもございましょうから、こういう点は今後国際政治の面で努力をすべき点ではございましょう。
 また、その次には、幾つかの田渕君が御希望を交えながら御質問がございました。一つには、核保有国がこの核防条約の加盟を促進せよと、私もごもっともに考えますし、まあフランス、中国などが入るわけでございますが、今後とも政府はその実現のために努力をしたいと思います。
 それから、非加盟国における国際的のウラン供給の停止を呼びかけろということ、まあこのウランという問題につきましては、単にこう核軍縮の見地ばかりでなしに、各国のエネルギーとか通商とか政治情勢というものを十分に考慮に入れる必要が私はあると思うのです。核軍縮だけの問題でなくして、いまのような問題も頭の中に入れなければならぬ問題だと思います。
 それから、核保有国の核軍縮の義務づけをしたらどうかと。この条約の中にも核軍縮に対して誠実に交渉しなければならぬ義務づげはあるわけでございまして、再検討、その成果をもう一遍レビューする再検討会議もございますので、相当なやはり義務を背負っておることになっておるわけでございまして、あの条約を基礎にして今後実際に核軍縮を進めていくことをわれわれとして努力をしていけば、あの条約にそれを義務づけるということをしなくても、相当なやっぱり義務を感じさせておる条約になっておることは事実でございます。
 それから、あらゆる核兵器の実験の停止、これが必要であるという御意見ですが、私どももさように考えて、まず核軍縮、それには核兵器の実験禁止、この問題はぜひとも、国際的にもそういう世論が強く起こっておりますし、この問題の実験停止については、日本としても当面一番努力をしなければならぬ点だと思うわけでございます。
 また、核兵器の保有国が条約を締結して核兵器を使わないような条約はできないか。なかなか核というものは戦争の抑止力として働いておると、そういう場合に、核兵器は持っておるけれども使わぬという世界の協定というものは、現実政治の面でなかなかむつかしいと思いますね。言われるお気持ちはわかるけれども、これを現実政治の上で推進していくことはむつかしいと思います。
 またもう一つは、非核保有国の安全保障の問題というものは、もう少し非核保有国が皆もっと安心のできるような実効のある処置をとるようなことについては、今後非核保有国、日本もその最たるものの一つですから、こういう国々との間の連絡を緊密にして、そういう点についてはもう少し世界的規模で実効のある処置をとるような努力はいたしたいと思います。(拍手)
   〔国務大臣宮澤喜一君登壇〕
#36
○国務大臣(宮澤喜一君) 大部分総理がお答えになりまして、二点残っております。
 一点は、平和利用に関する問題でありますが、田渕議員からいわゆる平和利用のための核爆発というものがいろいろの抜け道に使われているのではないかという御指摘はごもっともだと思います。私ども平和利用というものは大事なものだと思いますが、どうも現実にはこれが抜け道になっておるきらいがございますので、やはりこれは規制とか監視とかいうものを、どちらかといえば狭く、きつくいまの段階では考えていかざるを得ないのではないかと考えておりまして、先ほども御答弁いたしましたように、わが国としては着手すべき一つの大事な問題であるというふうに考えております。
 それから、核保有国といえども、平和利用の問題についてはIAEA等の査察を受けるべきではないかと言われる点も、これも筋道の通ったお話でありまして、現に米国とイギリスはそのような方向で、ボランタリーサブミッションと俗に言われておるようですが、米国はそういう協定はIAEAとすでに事実上合意に達したというふうに聞いておりますし、英国もその途次にあると、中途にあるというふうに聞いておりまして、ソ連の問題が実は残っておるということでございますが、この点はやはり核兵器保有国といえどもそうあるべきではないかと、わが国も主張をしておるところであります。
 もう一つの問題は、スペインの問題でございますが、アメリカとスぺインとの友好条約の附属規定の中に、スぺインの領土には今後核兵器を貯蔵しないという取り決めがある、わが国も同様にすべきではないかという御主張であるわけです。この点はスペインの場合には過去においてそのようなことがあったということから、今回、今後という協定ができたというふうに考えるのでありますが、わが国の場合には御承知のように、いわゆる沖繩以前の本土については事前協議が働いておりましたし、沖繩返還の際には、沖繩について改めて確認をしておるということがございますので、非核三原則がはっきりしておることでもあり、現状の運用でまず十全、間違いがないのではないかというふうに私どもとしては考えております。(拍手)
   〔国務大臣佐々木義武君登壇、拍手〕
#37
○国務大臣(佐々木義武君) 私に対する御質問は、核ジャック防止のための核物質専門部会に対する御質問でございますが、核物質の防護につきましては、従来から原子炉規制法等で、警備体制の整備とかあるいは出入管理の徹底等所要の規制指導を行ってきたのでございます。しかしながら、原子力開発利用の進展に伴いまして、わが国核物質の取扱量は今後とも急速に増大することが予想されますので、これに対処いたしまして核物質の防護に関する施策の一層の充実強化が非常に重要な課題となってきております。一方、昨年九月には国際原子力機関は、各国がそれぞれの国の核物質防護体系を検討、確認する上での一つのガイドラインといたしまして、それまでの作業結果を発表いたしました。わが国といたしましては、前に述べましたとおり、いままで所要の規制は行われてきておるところでございますが、そのような国際的な国際原子力機関の作業結果を踏んまえまして、今後一層この充実を必要とされるところでございます。そこで、先般原子力委員会において、核物質防護専門部会を設置した次第でございます。本部会におきましては、わが国の国情に即した核物質防護のあり方、基本的な方針、核物質防護のあるべき水準、さらにはそのような水準を達成するための方策等につきまして調査、審議を進め、できるだけ早い機会に中間的にでも結論を出したいと考えております。その結論に沿って逐次具体化を図っていく所存であります。また、本問題に関しましては、国際協力が大変必要なことでございますので、お説のように必要でございますので、今後ともその面で努力いたしたいと存じます。(拍手)
#38
○副議長(前田佳都男君) これにて質疑は終了いたしました。
     ―――――・―――――
#39
○副議長(前田佳都男君) 日程第二 国務大臣の報告に関する件(昭和五十一年度地方財政計画について)
 日程第三 地方交付税法等の一部を改正する法律案(趣旨説明)
 以上両件を一括して議題といたします。
 まず、自治大臣の報告及び趣旨説明を求めます。福田自治大臣。
   〔国務大臣福田一君登壇、拍手〕
#40
○国務大臣(福田一君) 昭和五十一年度の地方財政計画の概要及び地方交付税法等の一部を改正する法律案の趣旨について御説明申し上げます。
 昭和五十一年度の地方財政につきましては、最近における経済情勢の推移と地方財政の現状にかんがみ、国と同一の基調により、地域住民の生活安定と福祉充実を図るとともに、景気の回復に資するため、地方財源の確保に特段の配慮を加えつつ、財源の重点的な配分と経費支出の効率化に徹し、財政の改善合理化を図る必要があります。
 昭和五十一年度の地方財政計画は、このような考え方を基本とし、次の方針に基づいて策定することといたしました。
 第一は、地方財政の状況を踏まえ、住民税均等割り及び自動車関係諸税の税率の引き上げ、事業所税の課税団体の範囲の拡大、地方税の非課税措置の整理縮小等により地方税負担の適正化と地方税源の充実強化を図る一方、個人住民税、個人事業税、ガス税等については住民負担の軽減合理化を行ったことであります。また、地方道路目的財源の拡充に伴い、地方道路譲与税の一部を市町村に譲与することとしております。
 第三は、所要の地方財源を確保するため、臨時地方特例交付金を交付税及び譲与税配付金特別会計へ繰り入れるとともに、同特別会計において資金運用部資金から借り入れを行うことによって地方交付税の増額を図り、あわせて財源不足に対処するための地方債を発行する等の措置を講じたことであります。
 第三は、地方債の増加に対処し、公営企業金融公庫資金を大幅に増額するとともに、地方債計画総額の六〇%に相当する額については、政府資金引き受けまたは政府資金並みの金利負担とするよう措置したことであります。
 第四は、地方交付税、地方債、国庫補助負担金等の効率的な配分を図ることにより、地域住民の福祉充実のための施策を重点的に推進しつつ、あわせて景気の着実な回復に資するとともに、生活関連社会資本の充実の要請にとたえるための諸施策を実施することとしたことであります。
 このため公共事業及び地方単独事業を増額するとともに、社会福祉施策、教育振興対策等の一層の充実を図ることとし、また、人口急増地域及び過疎地域に対する財政措置の拡充を図ることとしております。
 第五は、地方公営企業の経営の健全化を図るため、引き続き交通事業及び病院事業の再建を推進するとともに、公営企業債の増額を図ったことであります。
 第六は、引き続き超過負担の解消のための措置を講ずること等により地方財政の健全化及び合理化並びに財政秩序の確立を図るとともに、地方財政計画と実態との乖離の適正な是正を図るためその算定内容について所要の是正措置を講じたことであります。
 以上の方針のもとに、昭和五十一年度の地方財政計画を策定いたしました結果、歳入歳出の規模は、三十五兆二千五百九十五億円となり、前年度に対し三兆七千七億円、一七・二%の増加となっております。
    ―――――――――――――
 次に、地方交付税法等の一部を改正する法律案の趣旨について御説明申し上げます。
 昭和五十一年度分の地方交付税の総額は、さきに昭和五十一年度の地方財政計画の概要で御説明申し上げましたとおり、現行の法定額に、一般会計から交付税及び譲与税特別会計に繰り入れられる六百三十六億円及び同特別会計において借り入れられる一兆三千百四十一億円を合算する特例規定を設けることといたしました結果、総額五兆一千八百七十四億円で、前年度当初に対し七千五百七十八億円、一七・一%の増加となっております。
 また、昭和五十一年度の普通交付税の算定に当たっては、地方財政計画の策定方針に即応して、社会福祉施策の充実、教育水準の向上、住民生活に直結する公共施設の計画的な整備の推進に要する経費の財源を措置するとともに、過疎過密対策、交通安全対策、消防防災対策等に要する経費を充実し、あわせて投資的経費については地方債振りかえ後の所要経費を措置することとしております。さらに、昭和五十年度において、法人関係税の減収補てんのため特別に発行を許可された地方債に係る元利償還金を基準財政需要額に算入するため、地方税減収補てん債償還費を設けるとともに、特別交付税について、その算定及び交付を毎年度十二月中及び三月中の二回に分けて行うこととしております。
 なお、昭和五十一年度においては、地方財源の不足に対処するための地方債を発行することといたしておりますが、この場合において地方団体は、地方財政法第五条の規定により起こす地方債のほか、適正な財政運営を行うにつき必要とされる財源に充てるための地方債を起こすことができる旨の特例を設けることとし、また、公営競技を行う地方団体の公営企業金融公庫に対する納付金の納付期間を延長する等の措置を講ずることといたしております。さらに、新産業都市建設及び工業整備特別地域整備のための国の財政上の特別措置に関する法律並びに首都圏、近畿圏及び中部圏の近郊整備地帯等の整備のための国の財政上の特別措置に関する法律に基づく関係地方公共団体に対する国の財政上の特別措置を引き続き講ずるため、その適用期間を五年間延長することといたしております。
 以上が昭和五十一年度の地方財政計画の概要及び地方交付税法等の一部を改正する法律案の趣旨であります。(拍手)
#41
○副議長(前田佳都男君) ただいまの報告及び趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。赤桐操君。
   〔赤桐操君登壇、拍手〕
#42
○赤桐操君 私は、日本社会党を代表し、昭和五十一年度の地方財政計画及び地方交付税法等の一部を改正する法律案に対し、地方財政の危機を克服し、地方自治発展の基盤の確立を求めるわが党の立場から、政府の所信をただしたいと思います。
 地方自治は現在財政状況が極度に悪化し、政府による行政介入と相まって、自治の本旨そのものが危機に直面いたしております。戦後の民主的自治制度が発足して三十年、地方自治はいま最大の危機を迎えたと申しても過言ではありません。地方自治の健全な発展を実現するためには、自主財源の充実を中心とした財政基盤の強化を図ることが必須の要件であります。すなわち、財源対策には量の問題とともにその質が問われていると思うのであります。昭和五十一年度の政府の地方財政施策は、昨年度同様、この点を強く指摘しなければなりません。昭和五十年度は、地方税収の減及び地方交付税減を合わせて二兆一千六百三十七億円の収入不足に対し、政府のとった措置は地方交付税会計における巨額の借り入れと地方債の増額、すなわち借金によるものでありました。また政府は、昭和五十一年度においても二兆六千二百億円に上る一般財源の不足をまたしても借入金と地債によって穴埋めようといたしております。
 もともと政府による地方財源の不足見積額は現実の不足額よりはるかに少なく見積もられております。しかし、そうした過小見積額に対してさえ政府は地方交付税率の引き上げ等による一般財源の充実をもってこたえようとせず、その大部分を交付税源の先食いと自治体の借金によって処理しようとしているのであります。今後の日本経済の動向を考えるとき、現在政府がとっている借金依存政策をなお将来自治体に押しつけていくならば、地方自治の崩壊は明らかであります。地方財政はいままさに暗い、そして長いトンネルの中に停滞いたしておるのであります。
 わが党は昭和五十年度の地方財政の財源不足に対し、地方交付税率を現行の三二%から三五%に引き上げること、国税三税の八%に相当する額を第二交付税として配付すること、すなわち地方交付税率を四三%とすること等の措置を提案いたし、また、地方税制については、大衆負担の軽減を図る一方、大企業等に対する課税の適正化による税源の強化を求めてまいりました。いまこそこの主張を積極的に受け入れるよう政府の善処を求めるものであります。
 以下、具体的に質問いたします。
 まず、最初に伺いたいことは地方税制の改革についてであります。昭和五十一年度の地方財政計画の歳入面を見ますると、地方税においては住民税法人税割り、法人事業税において約六千七百億円の自然減収等があるにもかかわらず、財政計画では個人住民税均等割りの三倍引き上げ、住宅用土地の評価がえによる固定資産税の増などを含む増税政策によって前年度当初並みの税収が確保できるようにいたしております。地方財政の基盤を確立するために税源確保に努めることは必要でありますが、問題は租税の負担をたれに求めるかにあると思うのであります。負担能力の大きい大企業等に対し適正なる税負担を求めず、また、産業用電気税の非課税措置の廃止等特別措置の整理を徹底して行わずに、大衆に安易にその負担の増加を求めることは許されないところであります。
 昭和五十一年度の個人住民税所得割りの標準的給与所得者の課税最低限は百三十万九千円でありますが、これは所得税における課税最低限の七〇%程度の低い水準であります。物価の上昇率は一けたとは言え、依然預金金利を超える高水準にあり、また、最近の資金動向は実質賃金の低下の傾向をうかがわせております。私はこの際、所得税などとともに低所得者に対する住民税の減税こそ急務であると思いますが、政府としては全くその意思がないのかどうか、まず総理大臣及び関係大臣の所信を伺いたいと思います。
 第二は、地方交付税率の引き上げについてであります。地方交付税法の規定によれば、地方財政に引き続き財源不足等の事態が生じた場合は、地方交付税率の変更を行うものとしております。そして自治大臣は、当院予算委員会を初め、再三にわたり、五十二年度においては地方交付税率の引き上げを含む財源措置を検討することを明らかにしておりますが、上げ幅何%を用意されるか、総理大臣、大蔵大臣、自治大臣の明確なる御答弁をお願いいたします。
 第三は、基準財政需要額を大幅に削り、その経費の財源の地方債への振りかえについて伺います。地方交付税法は、その立法の目的及び運営の基本として、地方交付税制度は、自主的に行政を執行する権能を損なわずに財源の均衡化を図る制度であること。基準財政需要額というのは、自治体が標準行政を行うために必要な経費を合理的かつ妥当な水準で算入すべきものであることなどを規定しております。
 しかるに、本改正案は一兆二千五百億円に上る巨額の経費について基準財政需要額を削り、一般財源で措置すべきところを特定財源である地方債に振りかえております。これは地方行政の自主性を侵し、交付税法の根幹を否定する不当な措置であると思います。自治大臣の見解を求めます。
 第四は、地方債の元利償還費に対する国の財政措置について伺います。基準財政需要額を大幅に削って地方債に振りかえる措置の不当性はただいま指摘したとおりでありますが、ざらに、これら地方債の元利償還費に対する国の財政援助はきわめて不十分であることを指摘せざるを得ません。私は、本来ならかかる地方債の元利償還費は全額国の責任において措置すべきであると思います。政府は、一兆二千五百億円の振りかえ地方債のうち二千億円分についてのみその元利償還費を国で措置するにとどめておりますが、この国の援助措置の枠はざらに拡大されるべきであると思いますが、大蔵大臣、自治大臣の所見を求めます。
 第五は、地方債の許可制度の廃止に関する問題について伺います。たとえば、高等学校を建設する経費は地方交付税の基準財政需要額に算入されて交付される場合は一般財源でありまするから、その財源を自治体の自主的判断で他の経費の財源に充てることもできます。しかし、地方債によって措置される限り、その財源の確保は国による許可を要し、また、その使途は厳しい国の監督のもとに、高等学校を福建設すること以外の経費に充当することは許されません。したがって、私は、すでに国による自治体統制の手段と化している地方債の許可制度はこの際廃止すべきであると考えます。自治大臣、大蔵大臣の所見を承りたいと思います。
 第六は、単独事業費の確保等、自由財源の問題について伺います。昭和五十年度及び同五十一年度において、地方交付税会計は二兆四千三百四十億円に及ぶ大量の資金を他会計から借り入れることとなり、そのため交付税会計は昭和五十三年度から八年間にわたり毎年巨額の資金の返済を行わなくてはなりません。本年度の振りかえ地方債のうち一兆五百億円については国の補てん措置がなされないので、昨年度の地方税減収補てん債の分と合わせて、交付税総額の相当部分が将来の地方債の元利償還費に振り向けられ、実質的に交付税総額が減額されたと同じ結果になります。したがって、過年度分の借入金の処理等に多額の資金が必要となり、結果的には単独事業等、自主行政に要する経費を圧迫せざるを得ません。自治体財政の独自性が失われることは明らかであります。自治体が自由財源を確保し、単独事業等の実施が十分できるよう将来にわたって配慮さるべきであると思いますが、自治大臣の所見を求めます。
 最後に、自治行政に対する政府の不当介入についてお伺いいたします。政府はみずからの失政をたな上げして、地方財政悪化の原因があたかも自治体財政の放漫、特に人件費にあるかのように宣伝してまいりました。しかし、地方公務員の給与は本来地方自治体において独自に決定さるべきものであって、国が介入する筋合いのものではありません。そしてまた、今日の地方財政の悪化の原因が挙げて人件費にあるのでは断じてありません。国、地方を通ずる税、財源配分の適正化を初め、地方財政の構造それ自体に抜本的な改革を加えなければ地方財政の好転は望めないのであります。私は、政府は明らかにこの努力を怠っていると判断いたしますが、いかがでありますか。
 また、政府は、自治体の財政健全化計画に協力するという名目で地方債の許可権を悪用し、人件費その他への介入と相まって、自治行政に不当に介入しております。中央政府がその行政権力によって自治行政に干渉することは、まさに地方自治の本旨にもとる行為と言わなくてはなりません。この地方自治に対する政府の基本姿勢につき、総理大臣の明確な見解を求めて私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣三木武夫君登壇、拍手〕
#43
○国務大臣(三木武夫君) 赤桐君にお答えをいたします。
 赤桐君はいろいろ広範な問題に触れましたので、根本的な、基本的な問題についてお答えをして、その他は各省担当大臣に譲りたいと思います。
 一つの点は、こういう状態では地方自治は崩壊するじゃないかと、地方交付税率を三五%に引き上げるとともに、八%の第二交付税を創設せよという、そして地方財政に対して自主的な財源の強化を図れと、こういうお話でございました。最後にもお尋ねがございましたが、私も、これからの日本の政治の方向が国民の福祉、国民の生活、この充実を図っていかなければならぬことは、これはだれの目にも明らかでございますから、そうなってくると、地方の公共団体の受け持つべき役目というものは非常に多くなってくる。なぜならば、やっぱり一番地域住民と密着しておるのは地方のそういう自治体でございますから、したがって、やはり権限とかあるいは財源というものは強化していく方向にあると思います。しかし、この問題というものは、こういういま大きな変動期でもありますから、この地方行政、地方財政のあり方というものは、私は根本的に検討することが必要だと思う。しかし、いまのこの時期、こういう変動期の時期というものが根本的改正の適当な時期かどうかということには多少の疑問がございます。経済情勢の安定を待って、国、地方を通ずるこの行政、財政状態というものを根本的に検討する必要がある。それまでの間に各方面の意見も徴する必要がございますから、地方制度調査会とか税制調査会等の意見も徴しながら、こういう一つの経済の、高度経済成長で何でも要求が満たされていた時代から、こういう安定成長の時期における地方財政、地方行政のあり方というものは、根本的にいまから検討の準備を進めて検討をいたさなければならぬと考えておる次第でございます。
 お答えをいたします。(拍手)
   〔国務大臣福田一君登壇、拍手〕
#44
○国務大臣(福田一君) 赤桐さんにお答えを申し上げます。
 御案内のように、地方の財政問題を論ずるときには、どうしても歳入の面と歳出の面と両面から見ていかなければならないことは国の場合と同じでございます。ただいま総理大臣も仰せになりましたけれども、いまは高度成長からいわゆる低成長といいますか、非常に大きな変化が起きておるときでございまして、したがって、その変化に応じながら、しかも住民の福祉を十分に見ていく、こういうような物の考え方に立っていかなければなりません。そうして地方の財政というものは決して国の財政と離れてやっていけるものではないのでありまして、国の方において非常に困っておりますときには、やはり地方においてもそれに応じて、国が非常に不足しておるのに多くを国から取ってそして地方に回すということで、それで国民全体の利益が守られるということには私はならないんじゃないかと思っておるんでありまして、こういうような変化の、非常に変わり目のときでございますから、いまいろいろの問題を御指摘になりましたが、なかなかごもっともな御意見が多くありますけれども、しかし、それにそれでは対応するだけの財源があるかということになるとなかなかむずかしいということでありまして、その点御不満の点もあろうと思いますが、われわれとしてはこの地方自治を拡充するというか、充実するというか、同時にまた福祉の問題も考えるという、こういうような点も十分踏まえながら今度のこの法案を提出さしていただいておるということをまずもって御理解を賜りたいと思うのであります。
 そこで、具体的な問題についてお答えを申させていただきたいと思います。
 まず第一には、地方の自主財源を強化するために交付税率の引き上げを行うか、いま第二交付税制度を創設してはどうかというお話でございます。御案内のように、今回の国の財政におきましては、財政特例法をつくらなければならない、そうして三兆数千億円の赤字公債を出さにゃならぬというようなときになっておりますので、そのときにいわゆる交付税率を引き上げて、国から多くをまた取り上げ地方に回すということになりますというと、国の予算編成というものも非常にむずかしいことになってくるわけでございます。でありますからして、自主財源を強化するという意味におきましては、これは考えなければなりませんが、交付税法によりますというと、二年以上赤字が相当程度続いた場合には交付税率の問題を考えるか、あるいはまた国の補助金制度、補助財政の形にメスを入れるか、こういうことで処理をしていかなければいけないということがあるのでありますが、ちょうどこの五十一年度は赤字が二年続きまして、そうして五十三年度もいまの見込みではやはり赤字になる公算が多うございます。それを言うことになれば、どうしても私は、今年の九月か十月ごろの時期においては交付税率の問題を検討しなければならないときに来ておると考えるのでありますが、その税率をどのくらいにするかということは、今後の経済の発展、あるいは国の財政状況等も十分見合わせた上で、大蔵省とも話をすべきではないかと考えておるわけでございます。
 次に、地方税制の改革については、大企業への適正な課税を怠っているじゃないか、そうして大衆への課税に転嫁しておると考えるがどうかということでございますが、これもいままでの大企業への課税という問題につきましては、私も、ずいぶん昔のことでございますけれども、通産大臣をいたしておりまして、何としても国民のいわゆる生活を充実すると、そして国民の生活を豊かにするにはやはり輸出を伸ばさなければいけないというようなことで処置をいたしてまいりまして、それがある程度その形として残っております。ところが、高度成長の時代が終わったというときでございますから、こういう面を、税制を直さにゃならぬという御指摘はごもっともであり、政府もまたそのような措置を本年度においてもとっておるわけでございます。
 それからまた、住民税の軽減の問題にもお触れになりましたけれども、住民税につきましては、御案内のように、給与所得の平年度化によってある程度最低限を引き上げる、それからガス税率などの引き下げもやったり、具体的にいろいろやっておるわけでありまして、この点も御理解を賜りたいと思うのであります。
 次に、地方交付税率の問題は先ほど申し上げたとおりでありますので、この点は今後の問題として御理解を賜ったと思うのでございますが、一兆二千五百億円の地方債の振りかえ措置をしたと、これは大変法律違反のようなことになりはしないかというお言葉でございますが、実は法律においてそういうことが書いてないのでございますから、今度の法律案を出しまして、ひとつ今回だけはこういうようなやり方をお認めを願いたいということをお願いをいたしておるということを御理解を賜りたいと思うのでございます。これによってこういう地方の自主性が損なわれ、地方自治の崩壊につながると思うがどうかということでございますが、これらの点は先ほど総理がお答えになりましたように、地方行財政の抜本的なこの見直しというものもしながらこれらの諸点を改めてまいらなければならないかと考えておるのでございます。
 なお、この一兆二千五百億円の元利償還の方法でございますが、これはだんだんなだらかに返すというやり方をいたしておりまして、今後地方財政の圧迫要因にならないようにいたしますには、まあ年度で返していくわけでありますが、しかし、後年度においてそれを返す時期が来て地方財政が非常に困るという場合には大蔵省の方でも十分めんどうを見るということで、大蔵大臣と自治大臣の間で、そのときには地方財政に余り影響を与えないようにするんだという約束ができておりまして、署名をいたしておるような次第でございます。
 なお、地方債の許可制をもう廃止してはどうかというお言葉でございますけれども、これはなかなかいろいろの問題があります。たとえば公共部門と民間部門の資金の調整をどういうふうにするのがいいかとか、それからまた同じ地方でも、自由に起債ができるということになりますというと、地方公共団体の間の均衡を失うというような問題も出てくるでございましょう。そういう意味から言って、公平な配分をするということを考えていくという意味から言っては、やはり当分の間この地方債は許可制にするとは言うておりますが、いまのような段階ですぐこれを改めるべきではないと考えておる次第でございます。
 なお、自治行政に対して大変不当な給与の指導などしておるが、いかぬじゃないかというお話でありますが、これは昨年、一昨年暮れからの大きな問題になっておるわけでございますけれども、公務員法によりましてこの人件費の問題は生計費が幾らかかるかとか、国及び地方公共団体の公務員の給与がどうなっておるかとか、それから、その地域における民間事業の従事者の給与がどうなっておるか、こういうところを十分に勘案して、そして市町村の議会において決定をする、こういうことに法律で定まっておるわけでございまして、それが十分行われておるかどうかというようなことにつきまして指導あるいは助言を行っておることは事実でございますけれども、私たちはこれは政府の介入というような、権限によってやるというような意味でやっておるわけではございません。公平の原則というものをできるだけ充実をというか、守っていかなければならない。しかし、私は何と言ってもやはり国民の生活を守るという大きな義務があり、自治体のまた財政を守っていくという立場もあります。したがって、そういう意味で権力的に物事をやろうというような考えは私には一つもございません。もし十分に私たちがこの理解を得ますれば、当然そういうことについても適正に処置をしてまいりたいと考えております。(拍手)
   〔国務大臣大平正芳君登壇、拍手〕
#45
○国務大臣(大平正芳君) 地方交付税率の問題でございますが、自治大臣は明年度の予算編成時期が参りますと検討をするにやぶさかでない旨の御答弁がございましたが、大蔵省としても検討することに反対ではございませんけれども、こういう内外の経済が大変流動的な時期でございますので、ただいまの時期は財政制度にかかわる基本的な改定をするということには必ずしも適当な時期であるとは考えていないわけでございます。仰せのように、二兆六千億に上る財源不足を、資金運用部から交付税特別会計に対する貸し付けでございますとか、地方債による調達とかで当面賄うことにいたしまして、大変不自由をかけておるわけでございますけれども、国の方がもっと不自由をしておるわけでございまして、中央、地方憂えを分かちながらこの危機を克服してまいりたいものと念願しておる次第でございます。地方の公債依存率は二一%程度でございますけれども、国は御案内のように、三割近くが公債に依存しているような状態にありますことは、赤桐さんも御承知のとおりでございます。
 地方税の改革の問題、それから地方債の許可制の問題についてのお尋ねでございますが、自治大臣から詳細に御説明がございまして、私といたしましても全く同感に存じます。(拍手)
#46
○副議長(前田佳都男君) 答弁の補足があります。福田自治大臣。
   〔国務大臣福田一君登壇、拍手〕
#47
○国務大臣(福田一君) 補足答弁をさせていただきます。
 単独事業の確保等自由財源の確保を図って、言うなれば自治というものを充実していかなければいけないのではないかという御趣旨でございますが、これは私はごもっともな御意見だと思うのでございます。しかし、その単独事業をやるには、御指摘のように、やはり財源というものが必要になります。そこで、財源とにらみ合わせながらこの単独事業ができるような仕組みというものを考えていくということについては、私はもちろん反対ではございません。今後考慮をさせていただきたいと思っておるところでございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#48
○副議長(前田佳都男君) 阿部憲一君。
   〔阿部憲一君登壇、拍手〕
#49
○阿部憲一君 私は、公明党を代表いたしまして、ただいま御説明のありました昭和五十一年度地方財政計画並びに地方交付税法等の一部を改正する法律案につきまして、総理並びに関係大臣に質問をいたします。
 今日、地方自治体が立ち向かっておりまする深刻な財政危機は、政府の経済政策の失敗による狂乱インフレと、その後の長期的不況によってもたらされたものであることは言うまでもありません。しかし、この危機をもたらした根本的な原因は、現在の地方行財政制度そのものの構造的、体質的な問題にあると指摘せざるを得ないのであります。そして、この根本的な原因を改めることが今日の危機脱出のために最も望まれることであり、真の地方自治を確立する方策でもあります。
 ところが、国がさきの五十年度補正予算に関して行いました地方財政対策は、地方交付税や地方税の減収を地方債などの借入金で糊塗するという一時的な対策をとったにすぎないのであります。国と地方との財政関係の根本的な再検討を行わず、地方自治体の自主財源である交付税や地方税の拡充を放置したまま、国家財政のやりくりを地方にしわ寄せするだけのこうしたやり方は断じて許すわけにはまいりません。しかも、政府には不況対策を理由として大企業優遇、福祉冷遇という高度成長時代への復帰志向すら顕著になっていると断言せざるを得ないのであります。
 従来まではともかく不況の後には高度成長が見込まれ、地方財政も何とかしのぎ得ることができましたが、今回はこれまで同様のびほう策が通用するときではありません。もちろん、当面の財源措置を行うことは必要でありましょう。しかし、その場合も、将来において地方財政を圧迫するような一時しのぎの対策をとるべきではありません。今日最も必要なことは、民主主義の基盤である地方自治のあり方を全面的に検討し、その上で当面の対策がいかに地方行財政の抜本的、恒久的な改革に結びついていくかを明確にすることであります。
 そこで、まず総理にお伺いしたいことは、総理はかねてより地方税財政制度の全面的な改革を断行すると言明されておりますが、その実施時期と具体的内容を明確にお示し願いたいのであります。
 次に、将来において地方財政を圧迫するであろうと懸念される地方交付税特別会計の資金運用部資金からの借り入れ措置についてお伺いいたします。
 昭和五十一年度地方財政計画によりますと、二兆六千二百九十七億円の財源不足が見込まれております。この不足額のうち一兆三千百四十一億円を地方交付税特別会計が資金運用部資金から借り入れて地方自治体に貸し付けることになっております。しかし、この借り入れば地方自治体にとってはあくまでも借金であり、五十四年度から八年間にわたって返済をしなければなりません。この返済が地方財政を圧迫することは火を見るより明らかであります。要するに、このやり方は、現在の地方財政の困難を単に将来に延期しただけの操作にほかならないのであります。この資金運用部資金からの借り入れ返済が将来の地方財政を圧迫する要因とはならないとお考えになるならば、その裏づけを明確にされるべきであると思いますが、いかがですか。政府はこの際、このような一時しのぎの対策ではなく、交付税率を引き上げ、地方交付税交付金を増額するというオーソドックスな方法による根本的な解決策をとるべきであると考えまするが、関係大臣の明確な御答弁を求めます。
 さらに、将来において地方財政を圧迫する第二の要因は、地方債の増大による借金財政であります。財源不足分一兆二千五百億円は地方債の発行によって補てんされることになっておりまするが、これも問題です。この財源補てん地方債も含めて、五十一年度の普通会計債は二兆九千百六十九億円、地方債依存度は五十年度五・九%から一一・五%へと大幅に上昇しております。これに公営企業債と準公営企業債が加わり、地方債総額は実に四兆八千十億円に上ります。これは前年度比六九・三%という大幅な増加となっております。しかも、この地方債の消化方法を見ますと、政府資金は二九・六%、縁故債が五八・三%と実に半分以上を縁故債に頼っております。このことは自治体、特に貧困な自治体にとって起債難による財政困窮化が懸念されます。との五十一年度地方財政の最大の難問とも言える膨大な地方債が果たしてスムーズに消化することができるかどうか。関係者の間では、市中消化を促進するための税制優遇措置や縁故債を日銀の適格担保にするなどの、地方債発行消化の新しいルールづくりを求める声も強くなっておりますが、関係大臣の御所見を伺います。
 さらに、五十一年度以降の問題として、当然公債費の膨張という地方財政硬直化を招くのであります。この将来に懸念される財政硬直化をいかにして打開していくのか、明確な方策を示す責任が政府にあると思いまするが、いかがですか。
 さらに、この財源不足対策債の大きな問題は、従来地方交付税交付金の基準財政需要額の算定を通じて財源措置が行われていました公共事業費及び高等学校新増設費や投資的経費の包括算入分さえも起債により振りかえられている点であります。本来、地方交付税交付金は、合理的な基準によって算出されたあるべき一般財源としての基準財政需要額のうち、税収入によって賄うべき部分の不足額を補てんするものとしての機能を有しているものであります。そして、その配分を通じて地方行政の計画的な運営を保障し、地方自治の本旨の実現と自治体の独立性を強化しようとするものであります。しかるに、今回の一般財源にかわるものとしての地方債への振りかえ措置は、地方交付税法の立法の趣旨に反するものではないかとさえも疑われますが、関係大臣の御見解をお伺いいたします。
 次に、新産業都市建設及び工業整備特別地域整備事業の財政援助措置の期間延長に関連してお伺いいたします。
 新産・工特地域の建設整備が始められて以来、本年度ですでに十年余の歳月を経ました。しかしながら、現状においては各種施設の整備事業の進展が相互に均衡を欠く面もあり、また、公害や自然環境の保全に関して問題を生じている地区も多々見られるのであります。新産都市の模範と言われた水島の重油流出事件をまつまでもなく、東予、徳島の二新産都市、播磨、備後、周南の三工特地区に囲まれた瀬戸内海がここ十年ほどで急速に汚染されてしまったことも周知の事実であります。また、基礎産業の関連産業や地場産業への波及効果が十分あらわれるまでには至っておらず、地区内の人口も当初計画されたほどには増加せず、地区によっては地方財政構造の悪化を招くなど新産・工特地域は多くの問題を抱え、全般的に目標達成に至っていない実情であります。この間地域開発のあり方についても、その後の社会経済情勢や国民意識の変化に伴って、従来の開発理念や開発の方法、手法に対する評価も大きく変化しております。新産・工特地域につきましても、住民本位の発想による地域の実情に応じた抜本的な基本計画の見直しが不可欠であり、その上に立って、限られた財源を生活関連や公害防止施設へ重点的に配分していく姿勢が必要ではないかと考えます。そこで伺いますが、今回の財政援助措置の期間延長に対する政府の基本的な考え方及び今後経済社会の進展に即した各種地域開発立法の全面的な見直しが必要となると思われまするが、この点についてどう対処されるお考えですか。またその中で新産・工特をどのようにして位置づけていこうと考えておられるか、政府の御所見をお伺いいたします。
 最後に、地方超過負担の解消措置について伺います。国庫補助事業にかかる地方超過負担は毎年巨額に上り、地方団体の行政水準の低下と住民の税外負担の原因となっており、早急な是正が望まれます。昨年地方六団体が共同で行った実態調査によりますると、事業費べースで六千三百六十億円の膨大な額に上っており、その完全解消を要求しております。これに対し政府は、同じ四十九年度決算について三事業のみの調査を行い、それに基づいて事業費べースで警察施設について三十五億円、保健所運営費で九十二億円、統計調査委託費で百億円の解消措置を行いました。ところが、地方六団体のこれらの三事業の調査結果は実に千三百三十三億円となり、政府の解消措置はわずかに九分の一にすぎません。そこでお伺いしますが、何ゆえこのような大幅な差額が生ずると考えるのか。どこに問題があるのか。今後国と地方とが一緒になって現地で確認し合い、場合によっては客観的な物差しとなる基準づくりを両者で行ってはどうかと考えまするが、政府にその意思がおありになるかどうかお尋ねします。また、今後さらに実態調査の対象範囲を拡大するとともに、超過負担の大きな要因である数量差、対象差についても社会情勢の変化に適応するよう定期的に見直しを行うべきであると思いまするが、これに対する自治大臣の御決意をお伺いして私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣三木武夫君登壇、拍手〕
#50
○国務大臣(三木武夫君) 阿部君にお答えをいたします。
 地方財政の制度、これを全面的に改革する時期、内容を示せという趣旨の御質問であったと思いますが、先ほども申し上げましたように、これはやらなければならぬことでございますが、いまこういう大きな変動期にこういう根本的な問題に取り組むことは、いますぐ取り組むということについては、これは時期が適当でないのではないか。しかし、これは大問題でございますから、いまから十分な各方面の意見も聞きながら検討はいたしますが、この時期で、時期と内容というものをお示しするまでには至ってはおらないわけでございます。
 さらに、包括算入分の起債振りかえ措置は、地方交付税法の立法の趣旨に反しはしないかという御質問であったと思いますが、今年度の地方財政処置として従来地方交付税に包括算入されていた四千五百億円を地方債に振りかえたが、その配分は交付税の算定の方式に準じたものである。また、その元利償還の全額を後年度の交付税で措置するということにしておりますので、実質的には地方交付税として配分するのと全く同じ効果のものであると考えまして、地方交付税法の立法の趣旨に反するとは考えていないわけでございます。
 お答えをいたします。(拍手)
   〔国務大臣福田一君登壇、拍手〕
#51
○国務大臣(福田一君) 阿部さんにお答え申し上げます。
 地方交付税の問題につきまして、今回相当額の不足があり、そして資金運用部から借り入れをしておる。それが地方財政を圧迫しないか、将来に圧迫しないかということでございますが、この返還については八年間ぐらいでこれを返済するということにいたしまして、そうしてそれがその年度において非常に地方財政が苦しいという場合には大蔵省においてもめんどうを見るということについて大蔵大臣と話し合いがついておりますので、この点はそのような措置でやらしていただきたいと思っておるものでございます。
 それから、借金よりも交付税率を引き上げて措置をすべきであるということについては、いま総理からもお答えがございましたが、とにかく国が非常にいま財政的に困難を来しておりますような状況でございますので、まあ法律では二年間以上赤字が相当程度続いたら税率を変えろと、こうなっておりますので、今年度はこれは見送らしていただいたということを御了承願いたいのでございます。
 それから地方債につきまして、非常にたくさん地方債を発行することになって、それが消化ができないんじゃないかということでございますが、ごもっともな御心配でございまして、実はもう縁故債が六兆円以上あるわけであります。今度また相当な地方銀行がこの縁故債を引き受けるということになりますというと、銀行が引き受けるということになりますというと、これは非常に地方における中小企業の金融にも影響することになりますので、この際担保適格債にしてもらいたいという御要望が非常に強いこともよく理解をいたしておるのでございますが、まあ今年度はとにかくすぐにこれをするというところまで話が煮詰まらなかったわけでありますけれども、今後もわれわれとしてはこの方向でいろいろ政府部内の調整をいたしてまいりたいと考えておるところでございます。
 次に、公債費が膨張して非常に財政を硬直化さすということでございますが、まあこれも自治体にとっては大変心配の多い点ではございますが、われわれとしてはこういうような大きな時勢の変化のときでございますので、今後の財政、経済のあり方をにらみ合わせながらこの問題についての処理も考えてまいらなければならない、かように考えておるわけでございます。
 それから、新産・工特の財政措置でございますが、これはもう阿部さんも御案内のように、人口が大都市に集中してきておりますので、地方分散を促進しようというような考えでこの新産・工特の措置がとられておるわけでございますけれども、ある程度は効果を上げておりますので、これからもやってまいりたいと思っておるわけであります。地方都市整備のあり方については、第三次全国総合開発計画との関連などを見ながら、阿部さんの御意見等も十分意識をいたしまして、新産・工特法を今後も延長した間においてどのように措置していくかということも研究をさしていただきたいと思っておるのでございます。
 さらに超過負担の問題でございますが、御指摘のように、警察施設費とか保健所運営費、統計調査費等について地方六団体と政府の調査額が四十九年度において六千三百億円も違っておるじゃないかというようなことでございますけれども、これは地方団体は実際に支出した額を総計して出されたものとわれわれは認定をいたしておるのでございまして、政府が当然補助をするというこの質と量、価額の三面から見て、果たしてこれが妥当なものであるかどうかということについてはもう少し研究をさしていただかなければなりません。それと同時に、今後の問題には私はもう全力を挙げて超過負担の解消は行うべきである。やはり政治というものは不信を来すことが一番いけないので、国が補助すると言ったら、その分だけは補助するという姿勢を貫いていかなかったならば、地方と国との信頼関係というものも出てこなければ、地方住民の国の政治に対する信頼感も出てこないと私は考えておりますので、今後も数量差とか対象差というような点については一層見直しを図りまして、そうしてこの問題の解消に当たると同時に、御案内のような知事会とか市長会とかいうような六団体とも十分話し合いをいたしまして、そうして場合によっては各省の係官にも出てもらって十分話を詰めながら今後の予算編成に当たらしていただきたい、かように考えておるわけでございます。(拍手)
   〔国務大臣大平正芳君登壇、拍手〕
#52
○国務大臣(大平正芳君) 交付税率の問題につきましては、総理並びに自治大臣からお話がございましたので割愛させていただきます。
 地方債の消化問題でございますが、第一は、地方債の消化促進のために減税あるいは免税を考えるべきではないかという御意見でございます。御案内のように、地方債は預貯金、国債と同様に三百万円までは少額貯蓄非課税制度の適用対象になっておることは阿部さんも御承知のとおりでございます。こういう租税特別措置はいま整理の方向にあるわけでございますけれども、こういう制度はそのまま存置することにいたしておるわけでございますが、さらにこれを拡充するということについては政府は消極的に考えております。
 それから第二の、縁故債を日銀の適格担保債にすべきではないかという御意見でございます。御案内のように、縁故債は発行条件が均質性を持っていませんで、引き受ける金融機関とその発行する地方団体との相対の信用関係で発行される場合が多うございまして、やや市場性が希薄でございまして、ただいままでこれを適格債にするという考え方は持っていないわけでございます。地方債は、公募地方債の場合は適格性を与えておるわけでございますけれども、いろいろ検討はいたしておりますけれども、ただいまのところ適格性を持たすということにつきましては、これはまだ消極的に考えておりますことを御理解いただきたいと思います。(拍手)
   〔国務大臣金丸信君登壇、拍手〕
#53
○国務大臣(金丸信君) 阿部先生にお答えいたします。
 新産業都市の建設、工特地区の整備は御指摘のように約十年を経過しておりますが、この間、各地域における施設の整備や工業の立地は、地区によりまして差はありますが、おおむね着実に進展してまいったわけでございます。現状におきましては、生活の環境の施設や整備の立ちおくれ、関連産業の発展のおくれ、環境問題など各種課題を抱えておりますが、全般的には所期の目標の達成に至らず、なお整備の途上にあるわけでありまして、したがって、今後とも当面する課題に適切に対処いたしまして地方発展の中核となる地域を形成するよう建設整備を進めていく必要があると考えております。また新産・工特を含めた各種地域開発立法のあり方については、新たな経済社会環境や国民意識の変化に即応するように、第三次全国総合開発計画の検討とあわせまして十分検討してまいりたいと考えておる次第であります。また、長期にわたって全国土に活力のある地域社会を形成、維持するためには、大都市への集中を抑制し、地方の振興、整備を図るという基本政策課題の重要性は今日においても変わらないと考えておりますが、このような政策課題にこたえていくためには、新産都市・工特地域のあり方については、これまでの各地区の整備の成果を踏まえまして、また各地区ともいまだ整備途上にあることに十分配慮した上で、新しく策定される第三次全国総合開発計画あるいは地方都市整備の構想等との関連におきまして慎重に検討してまいる所存でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#54
○副議長(前田佳都男君) 神谷信之助君。
   〔神谷信之助君登壇、拍手〕
#55
○神谷信之助君 私は、日本共産党を代表して、昭和五十一年度地方財政計画及び地方交付税法等の一部を改正する法律案について総理並びに関係閣僚に質問いたします。
 今日、地方財政はかってない危機に陥っています。五十年度赤字団体は、昭和三十年の三十六都道府県を上回る三十九都道府県に及び、黒字見込みは三、四団体にすぎないという戦後最大の危機にあります。この危機の内容はしさいに見れば見るほど深刻であります。たとえば学校や住宅用地など、自治体にとっては、これまでのどから手が出るほど欲しくても手に入らなかった公共用地をいま財源確保のために総売却しつつあります。埼玉県吉川町では四十七年以来開校中の県立高校の敷地を町財政救済のために住宅公団に売却したため、移転の見通しもないまま校舎が取り壊されようとしているのであります。このように、この危機によって直接的に甚大な影響を受けているのは一般住民であります。役所の窓口手数料から、保育料、住宅家賃、高校授業料、国民健康保険料、霊園使用料等の値上げ、また自治体独自で行ってきた生鮮食品の安定供給事業の縮小など、いわば「ゆりかごから墓場まで」三十ないし六十種類にわたる値上げの洪水が不況とインフレに苦しむ国民生活を直撃しているのであります。総理並びに自治大臣、このような地方財政危機をもたらした真因は何であるとお考えですか。一つは、自民党政府が大企業の高度成長を進めるために極端な大企業本位の税財政制度を地方財政に押しつけてきたことであり、もう一つは、戦後最大の経済危機ではありませんか。すなわち、大企業に対する産業用電気税非課税措置や固定資産税の軽減措置など、各種の特権的減免税制度や新産・工特地域などに重点的に配分してきた事業費補正などによって高度成長政策への地方財政の誘導を強行する一方、都市問題の解決のための財政需要の増大と過疎地域における財源難を激化してきたのであります。このような構造的、政策的財政危機に加えて、今回の不況とインフレの同時進行という経済危機による税収減と支出増が重なって未曾有の地方財政危機に至ったことは明白ではありませんか。今日のインフレと不況のもとだからこそ、住民福祉の増進と中小企業や農林漁業の振興などを強化し住民生活を擁護すべき自治体の果たす役割りがきわめて重要であり、憲法に規定する地方自治の本旨を実現するためにも、地方自治体の税財政制度の抜本的かつ民主的改革を断行すべきであると考えますが、その決意がありますか。
 第二に、大企業、大資産家に対する特権的減免税の問題であります。五十一年度予算において若干の措置をしたと政府は言っていますが、地方税については、国税のはね返り分を含めてもわずか平年度で四百九十七億円にすぎず、依然として三千八百五十七億円にも上る減免措置はいまもなお温存されているのであります。昨年七十五国会で福田副総理が廃止を約束した電気税非課税措置も何ら措置されていません。しかも、国民には住民税の均税割りの三倍引き上げや使用料、手数料の引き上げを強制しているではありませんか。ますます大企業本位、国民無視の地方財政対策を推し進めるものと断じざるを得ません。大企業に対する特権的減免税措置についての根本的改革と住民に対する均等割りや使用料、手数料の引き上げをやめる意思はありませんか答弁を求めます。
 第三に、地方債の問題であります。当分の間、自治大臣の許可を要すると規定されてすでに三十九年を経過しています。そしてこの権限をてこにして、地方行財政への支配介入を進めてきたことは歴史の示すところであります。総理並びに自治大臣、地方自治三十年を迎えた今日、地方自治発展のためにも、地方債の発行に当たっては、健全財政の範囲内で都道府県については知事が、市町村については知事の同意を得て発行し得るように改めるべきだと考えますが、どうですか。
 第四に、超過負担問題であります。政府が本年度解消措置をとったのはわずかに八項目にすぎません。超過負担の解消は国の責任であり、地方財政を困難に陥れている主要な原因の一つであることは周知のところであります。政府は政府関係機関代表、自治体代表、学識経験者代表による調査委員会を設置し、その完全な解消を行うべきであると思うが、その意思があるかどうか伺いたい。とりわけ超過負担は、法的に自治体への負担の転嫁を禁止している国の委託事務についてすら発生しているのであります。自治大臣、これは明らかに違法行為ですから、直ちに解消すべきであると思うが、いかがですか。また労働大臣、十一都県に委託している国立身体障害者職業訓練所の超過負担について直ちに改めるべきだと思うが、答弁を求めます。
 次に、地方交付税法改正案及び地方財政法特例法案についてお尋ねします。今回の改正内容は、交付税法と地方財政法の精神を真っ向から踏みにじる重大な改悪であり、断じて容認することはできません。すなわち、交付税法の改正は、交付税の一部を地方債に振りかえるというのであります。これは自治体の一般財源である交付税を特定財源化することであり、交付税率の事実上の引き下げであり、その自主的財政運営を破壊するものであります。その償還を自治体に義務づけ、財源保障機能としての交付税制度を否定するものと言わねばなりません。今日のきわめて不十分かつ不当な地方税源のもとでは、交付税制度は、交付税法第一条に規定するごとく、憲法にいう地方自治の本旨の実現のために設けられた重要な制度であります。本改正案は、この第一条及びその使途制限を禁止した第三条に実質的に違反するものと思うが、明確な答弁を求めます。
 また、地方財政法第五条特例による赤字地方債の発行は、大企業本位の税財政制度の改革、超過負担の解消など政府の行うべき当然の努力と措置を何ら行わずに、国の財政難を口実に一方的に自治体に赤字公債を強制するものであり、政府の責任を回避し、地方自治の精神を踏みにじるものと言わねばなりません。自治大臣、これは、国は地方財政の自主的かつ健全な運営を助長することに努めることを規定した地方財政法第二条の精神から言っても改めるべきものと考えるが、答弁を求めます。
 最後に、未曾有の地方財政危機を真に地方自治の本旨の実現の方向で解決することが今日きわめて重要であることを指摘するものであります。すなわち、公共投資の重点を生活基盤の強化に向け、国民生活に立脚した不況、インフレの打開を図るには、何よりも地方財政の強化が必要であるからであります。わが党は、事実上の交付税率の切り下げと借金財政の押しつけという大企業本位の地方財政対策を直ちにやめることを政府に要求するとともに、交付税率を四〇%に引き上げ、さらに不足する分については財政投融資会計からの借り入れによって確保し、返済は国の一般会計で行うべきことを主張していますが、総理並びに自治大臣の見解を求めて私の質問を終わるものであります。(拍手)
   〔国務大臣三木武夫君登壇、拍手〕
#56
○国務大臣(三木武夫君) 神谷君にお答えをいたします。
 神谷君の高度経済成長がすべて悪だという評価には同意いたしません。高度経済成長によって所得の増大、生活水準の向上、雇用の機会の増大を図った等、いろんな点で高度経済成長はそれなりの役割りも果たしたと思いますが、しかし、一面において弊害もあったことは事実でございます。とにかくその高度経済成長の財源の伸びに支えられて地方財政が膨張をしたということは、これは否定することもできません。こういう経済の変動期に非常に大きな税収入の不足を生じたということになったわけですが、これからの地方財政というものは、私は大問題だと思う。ここでやはりどのように地方の行財政制度を改正していくかということは、これはなかなかこれからの民主政治の根幹にも触れるような問題でもございますから、もう少し情勢が落ちついたときに見計らってやる必要もございましょうが、いまからこれは検討する必要ございます。神谷君は学識経験者等で何か審議会のようなものをつくれというお話もございましたが、さしあたりは、地方制度調査会とか税制調査会などもすでにこの問題を検討いたしておるわけでございますから、そういう各方面の意見もこれは徴しながら、行財政の根本的改正には取り組まなければならぬという考え方には、同じように考えております。
 また、今回の交付税の起債の振りかえは地方交付税法の第一条、第三条に違反すると考えるがどうかというお話でございましたが、本年度の国、地方を通じての多額の財源の不足を見込まれたために地方交付税の一部を地方債に振りかえたものであって、そのために今回法律の改正をお願いしておるところでございます。
 それから次には、いろいろと地方交付税の税率などに対して共産党の御意見を述べられまして、したがって、そういうものを中心にして地方財政というものを根本的に改正し、そして地方財政の不足分を処理するべきだという御意見でございます。この五十一年度急激な変化に即応して地方財政の運営が困らないような暫定的な処置を講じたわけでございます。それによって地方財政の運営には支障を来さない予定でございます。また、この問題は、しかし一般の地方自治体の財源を充実するということがどうしても必要である。いまのような状態では地方自治体というものの機能を発揮する上において十分でないことは御指摘のとおりでございますから、共産党の御提案には賛成であるとは申し上げません。しかし、いろんな、充実をするのについてはどういうふうに今後この地方財政というものの運営をしていくかという具体的な処置については、地方行財政の根本的な検討等加えて、こういう問題については各方面の意見を聞きながら、検討を将来の課題としていたしたいと思う次第でございます。
   〔国務大臣福田一君登壇、拍手〕
#57
○国務大臣(福田一君) 神谷さんにお答えをいたします。
 いろいろの点を御指摘いただいたんでありますが、私は高度成長からこういうふうに変化の時代に入ったということを申し上げておるんでありますが、もう一つわれわれとしていま考えなければならないことは、国連加盟国百五十幾つというものがありますが、そのうちで生活程度の面から言いますと、われわれは百五十二のうちで十番目前後まで伸びてきておるということであります。そうして第三世界の動きというものを無視するわけにはまいりません。原料を生産しておる国々が非常に困っておるじゃないかというようなことになりますというと、それに対する手当てというようなことも考えなければならない。これが国の大きなこれからの課題になると思っておるのであります。
 それから、よく大企業とか金持ちがむやみに大変な、何と言うか、利益を得ておるというようなお話もありますが、これは神谷さんもお読みになったかと思いますけれども、日本に十七年間おったフランス人のポール・ボネという人が「不思議の国ニッポン」という本を最近お出しになりました。それでそのフランス人が言われるには、自分が不思議な国ということを言った言葉のうちの一つに、日本ほど富が平均しておる国はないと思っておるのに、どういうわけであんなにそういうことを言われるのか、これはまことに、(発言する者多し)いやいや、私は――まあまあちょっと待ってくださいよ。聞いてからにしてくださいよ。私は何も、外国人がそういうことを言っているということも一つのあれとして、一遍まあ読んでみて、間違っておればもちろんいけないんでありますけれども、私たちはそういう意味で、やはり反省すべきことは反省しながら、実情に応じて政治をやっていくという勇気が必要だと私は申し上げておるんであります。われわれはそういう意味で処置をしてまいらなければならないと思っております。
 そこでこの地方財政の危機について高度成長政策をとったためであるということは、私たちも確かに、いまこういうふうな事態になったんでありますから、それが一つの原因であるということについてはあえて否定はいたしませんけれども、この際一遍に根本的に改革しようと言っても、生活環境、国の置かれておる事情が変わってきた現段階において、どう対処していくかということを一朝一夕に急に変えるということはなかなかむずかしい。そこで、総理が言っておりますように、慎重にこれから前向きに検討するということを言っておるんであります。
 それから、大企業に対して特権的な減免税をやっておるということでございますけれども、確かに十分ではございませんが、今度でも電気税の非課税は八品目を今度追加したようなことをしたり、いろいろわれわれはわれわれなりに努力をいたしておるわけでございます。
 それから地方債が地方財政が健全に運営されるようにして、自治大臣が許可権などを持っておるのはもうやめたらどうかということであります。この点については、先ほど社会党の方からも御指摘をいただいておるわけでございますけれども、やはり地域的な公平の原則であるとか、あるいはまたその他の面から見て、これを急にいま改めるということは決して適当な施策だと考えてはおりません。
 超過負担について、大変もう皆さんから御指摘をいただいておりまして、この点については私はもうずいぶん前から超過負担だけは何としても解消してもらいたいということで努力をいたしておるわけでございまして、御趣旨に沿って今後も大いに努力をいたしてまいりたいと思っております。
 それから、交付税の起債振りかえは法律違反ではないか、法律の精神を無視しておるというお言葉でございます。私は、この法律も出さないでこういうことをすることは当然できませんが、それだからこそ、今度ひとつお願いをいたしますと言って法律の改正案を出しておるのでございますから、ひとつこの点は御理解を賜りたいと思うのでございます。
 次に、特権的な減免税とか超過負担解消等、そういうことをいろいろやって、そうして地方自治が十分に行われるように運営を図っていくべきである、こういう御趣旨の御質問でございます。これは今後われわれとしてはそのような方針に従って措置をいたしてまいりたいと思いますが、常にその場合には、自分の身の回り、ほどほど、それから世界並み、こういうことも考えながら物事を処理していきたいと思っております。
 それから、大企業本位の財政制度を改めて交付税率を四〇%にしろと、こういう御指摘でございますが、これはわれわれパーセンテージの問題はここで申し上げるわけにはいきませんが、しばしば申し上げておるように、法律の精神から見て、来年度の予算編成に当たっては、パーセントの問題は別として、これは考慮をしなければならないのではないかと、こういう考え方を持っておるということを御理解を願いたいと思うのであります。(拍手)
   〔国務大臣長谷川峻君登壇、拍手〕
#58
○国務大臣(長谷川峻君) 国立身体障害者職業訓練校につきましては、四十九年度に労働省では大蔵、自治、労働省の三省共同の実態調査を行いまして、その結果に基づきまして五十年度予算から改善を行っておりますが、今後とも実情に即して対処してまいりたい、こう思っております。(拍手)
#59
○副議長(前田佳都男君) これにて質疑は終了いたしました。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後五時十七分散会
ソース: 国立国会図書館
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