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1975/05/10 第77回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第077回国会 社会労働委員会 第5号
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1975/05/10 第77回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第077回国会 社会労働委員会 第5号

#1
第077回国会 社会労働委員会 第5号
昭和五十一年五月十日(月曜日)
   午前十時三十分 開議
 出席委員
   委員長 熊谷 義雄君
   理事 住  栄作君 理事 竹内 黎一君
   理事 戸井田三郎君 理事 葉梨 信行君
   理事 山下 徳夫君 理事 枝村 要作君
   理事 村山 富市君 理事 石母田 達君
      大久保武雄君    大野  明君
      大橋 武夫君    加藤 紘一君
      瓦   力君    小林 正巳君
      菅波  茂君    田川 誠一君
      野原 正勝君    羽生田 進君
      橋本龍太郎君    稲葉 誠一君
      川俣健二郎君    多賀谷真稔君
      田邊  誠君    八木  昇君
      田中美智子君    寺前  巖君
      大橋 敏雄君    岡本 富夫君
      和田 耕作君
 出席国務大臣
        労 働 大 臣 長谷川 峻君
 出席政府委員
        労働政務次官  石井  一君
        労働省労働基準
        局長      藤繩 正勝君
        労働省労働基準
        局安全衛生部長 中西 正雄君
 委員外の出席者
        議     員 川俣健二郎君
        総理府人事局参
        事官      柳  庸夫君
        環境庁企画調整
        局環境保健部保
        健調査室長   五十嵐 衛君
        厚生省年金局年
        金課長     坂本 龍彦君
        労働省労働基準
        局監督課長   倉橋 義定君
        労働省労働基準
        局労災管理課長 田中 清定君
        日本電信電話公
        社厚生局長   小澤 春雄君
        社会労働委員会
        調査室長    濱中雄太郎君
    ―――――――――――――
委員の異動
五月七日
 辞任         補欠選任
  瓦   力君     徳安 實藏君
同日
 辞任         補欠選任
  徳安 實臓君     瓦   力君
同月十日
 辞任         補欠選任
  稲葉 誠一君     多賀谷真稔君
同日
 辞任         補欠選任
  多賀谷真稔君     稲葉 誠一君
    ―――――――――――――
五月八日
 建設労働法案(川俣健二郎君外九名提出、衆法
 第一五号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 建設労働者の雇用の改善等に関する法律案(内
 閣提出第二五号)
 建設労働法案(川俣健二郎君外九名提出、衆法
 第一五号)
 賃金の支払の確保等に関する法律案(内閣提出
 第二六号)
 労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律
 案(内閣提出第一二号)
     ――――◇―――――
#2
○熊谷委員長 これより会議を開きます。
 まず、建設労働者の雇用の改善等に関する法律案を議題とし、その提案理由の説明を聴取いたします。長谷川労働大臣。
    ―――――――――――――
#3
○長谷川国務大臣 ただいま議題となりました建設労働者の雇用の改善等に関する法律案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
 わが国の建設業は、国民経済に大きな比重を占めておりますが、雇用面につきましては、出かせぎをめぐる問題を初めとして、数々の問題点が指摘され、早急に対策を講ずることが必要とされており、第七十四回臨時国会における雇用保険法案の御審議に際し、衆議院及び参議院の社会労働委員会でその旨の附帯決議をいただいているところであります。
 また、昨年には、関係審議会からも建設労働者の雇用改善対策の強化に関する建議等が政府に提出されております。
 政府といたしましては、このような背景のもとに、中央職業安定審議会に諮り、その答申に基づいて、この法律案を作成し、提案した次第であります。
 次に、その内容の概要を御説明申し上げます。
 第一に、この法律案は、建設労働者について、その雇用の改善、能力の開発及び向上並びに福祉の増進を図るための措置を講ずることにより、その雇用の安定に資することを目的としております。
 第二に、労働大臣は、中央職業安定審議会の意見を聞いて、建設労働者の雇用の改善、能力の開発及び向上並びに福祉の増進に関する建設雇用改善計画を策定することとしております。
 第三に、建設労働者についての雇用管理の改善のための措置を講ずることとしております。
 その一は、建設事業の事業場ごとに、雇用管理責任者を選任させ、現場での雇用管理を適正に行おうとすることであります。
 その二は、建設労働者の募集を行う場合に、一定の要件のもとに公共職業安定所長に届け出をさせることにより、建設労働者の募集活動の適正化を図ることであります。
 その三は、建設労働者の雇い入れに際し、雇用期間、仕事の内容などを書いた文書を交付させ、雇用関係を明確化することであります。
 その四は、下請関係が複雑な建設工事において、元方事業主が、その現場で建設労働者を雇用する関係請負人の氏名、作業期間等を明らかにした書類を備え、下請の雇用の実態を把握するとともに、指導援助に努めるようにすることであります。
 第四に、政府は、雇用保険法による能力開発事業及び雇用福祉事業として、建設業の事業主に対して、建設労働者の技能の向上、研修の実施、作業員宿舎の整備改善などについて助成を行うこととし、雇用促進事業団において、これらの助成事業のほか、雇用管理研修の実施及び雇用改善指導員による相談業務を行うこととしております。
 また、これらの事業に要する費用に充てるため、建設業の事業主から徴収する雇用保険の保険料率を千分の一引き上げることとしております。
 なお、この法律案は、昭和五十一年十月一日から施行することとしておりますが、雇用保険の保険料率の引き上げに関する部分は、公布の日から三年を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとしております。
 以上、建設労働者の雇用の改善等に関する法律案の提案理由及びその内容の概要につきまして御説明申し上げました。
 何とぞ、御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
     ――――◇―――――
#4
○熊谷委員長 次に、川俣健二郎君外九名提出の建設労働法案を議題とし、その提案理由の説明を聴取いたします。川俣健二郎君。
    ―――――――――――――
#5
○川俣議員 私は、提案者の日本社会党を代表して、ただいま議題となりました建設労働法案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
 日本経済は大変な発展を遂げ、今日ではアメリカに次いで、資本主義国第二位の生産力を持つに至っております。ところがその陰には、建設労働者に典型的に見られるように、雇用関係がきわめて不明確な下請や、重層下請が横たわっておるのであります。
 三百数十万人を数える建設労働者の多くは、不明確、無責任な雇用関係のもとで、不況の折にはあっさりと職を奪われたり、賃金不払いに泣かされたりするばかりか、常に危険な作業環境にあって、無理な労働を強いられることにより、多くの命と健康を奪われております。
 今日、建設労働者の労働災害は全体の三分の一をも占めておると推計されておりますが、たとえば、東海道――山陽新幹線を一つつくるのにも、隧道工事等で数百名もの命が奪われているありさまなのであります。
 また、健康管理や福祉がきわめておろそかにされ、しかも、少なからぬ人々は長期間にわたって家族から遠く離されたまま、非人間的な生活を強いられております。
 このような状態が放置されてよいはずはありません。日本社会党は、すべての建設労働者に適用する建設労働法を設けることによって、この人々の雇用を安定化させるとともに、命と権利を守り、労働条件を改善する必要があることを痛感し、ここに建設労働法の制定を提案する次第であります。
 次に、この法案の内容について御説明申し上げます。
 第一に、この法律の目的と申しますと、建設労働者の雇用関係の明確化、安全衛生の確保、手当の支給その他の労働条件の改善を図り、もって建設労働者の雇用の安定と、労働災害の防止、福祉の向上に寄与することにあります。
 第二に、雇用関係の明確化のための措置として、事業主による建設労働者についての公共職業安定所長への届け出と、安定所長からの建設労働者手帳の交付、事業主による雇い入れ通知書の交付と届け出を義務づけることといたしました。賃金支払い等に関する元請負人の責任も明確化することといたしました。
 第三に、安全衛生上の措置としましては、建設労働者として雇用されようとする者に対する国による安全衛生教育と、国による健康診断、請負代金、工期等を決定するに当たっての安全衛生経費の分別等を義務づけることといたしました。
 第四に、支給すべき手当として、悪天候手当、安全衛生教育手当、職業訓練手当、特例休暇手当、帰省手当を設けることといたしました。
 以上、この法律案の提案理由及びその内容につきまして御説明申し上げました。
 十分に御審議の上、何とぞ速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
     ――――◇―――――
#6
○熊谷委員長 次に、賃金の支払の確保等に関する法律案を議題とし、その提案理由の説明を聴取いたします。長谷川労働大臣。
    ―――――――――――――
#7
○長谷川国務大臣 ただいま議題となりました賃金の支払の確保等に関する法律案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
 賃金は、労働契約の基本的な要素であり、また、労働者とその家族の生活の源資でありますから、賃金未払いという事態は本来起こってはならないものであります。そのため、労働基準法におきまして、使用者の賃金支払いについて各種の規制を加え、その履行について、労働基準監督機関が監督、指導を行ってきたところであります。現に、それによって解決された賃金未払い事案も少なくないのでありますが、企業の倒産により事業主に支払い能力がない場合はどうしても解決できなかったのが従来の実情であり、これに対する救済措置の創設が必要であるとされてまいりました。
 特に、第七十四回臨時国会における雇用保険法案の御審議に際し、中小企業の倒産による不払い賃金救済制度の確立について、衆議院及び参議院の社会労働委員会におきまして附帯決議がなされた経緯もあり、また、昨今の景気の停滞は、その期間が長く、景気回復の足取りが弱いこともあって、企業倒産及び賃金未払いの発生は依然として高水準で推移しているという実情にあります。このため、政府といたしましては、この際、賃金の支払いの確保等に関する諸般の措置を講ずべきであると考えた次第であります。
 そこで、まず、企業の倒産に伴う未払い賃金の救済措置を創設することとし、あわせて、賃金の支払いは本来事業主の基本的な責務であることから、賃金支払いについての規制を民事的にも刑事的にも強化するとともに、事業主の責任で退職手当の未払い等を予防するための措置を講じさせる等、賃金の支払いの確保等に関する所要の施策を展開することとし、中央労働基準審議会にもお諮りした上、具体案を取りまとめ、ここに賃金の支払の確保等に関する法律案を提案いたした次第であります。
 次に、この法律案の内容の概要を御説明申し上げます。
 第一は、貯蓄金及び退職手当の保全措置でありますが、これは、企業の倒産により、貯蓄金の返還不能、退職手当の未払いという事態が生ずることを防止するために、事業主に対して、所要の保全措置を講じさせようとするものであります。
 第二は、退職労働者の賃金に係る高率の遅延利息制度の創設であります。
 すなわち、事業主が退職労働者に賃金を支払わなかったときは、所定の方法で計算した高率の遅延利息を支払わなければならないこととしております。これは、賃金未払い事案のうち、その大部分を占める退職労働者に係る賃金未払いについて、民事的側面からその支払いの促進を図ろうとするものであります。
 第三は、未払い賃金の立替払事業の創設であります。
 企業の倒産により事業主から賃金を支払われない労働者に対して・未払い賃金のうち一定の範囲のものを事業主にかわって立てかえ払いをすることとしたものであり、政府は、この事業を、今国会に提案している労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律案による労働福祉事業として行うこととしております。
 なお、未払い賃金の立替払事業によって立てかえ払いされた賃金につきましては、今国会で改正されました租税特別措置法において、課税上の特例措置が講じられることとされております。
 そのほか、この法律案において、船員につきまして所要の特例措置を規定しますとともに、その附則において、労働契約の締結に際し、賃金に関する事項については所定の方法により各人に対して明示することを義務づけ、さらに、賃金未払いに対する罰則を強化するため、労働基準法等について所要の改正を行うこととしております。
 以上、この法律案の提案理由及び内容の概要につきまして御説明申し上げました。
 何とぞ、御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
#8
○熊谷委員長 これにて各案の提案理由の説明は終わりました。
     ――――◇―――――
#9
○熊谷委員長 労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。枝村要作君。
#10
○枝村委員 今回の法改正の内容を見ますと、まず第一に制度の目的の改正が挙げられております。それで次に給付内容の改正、労働福祉事業の拡大、メリット制の拡充が提案されておるのであります。確かに、給付部分の引き上げ、スライド制の改善など、幾つかの前向きの部分もあります。しかし、中には反面、幾つかの不安と疑惑を持たれるような部分もあるわけです。したがって、この際、これらの点につきましてひとつ正確に解明していただく、明快な答弁をしていただく、そして労働者や労災の被災者の不安などを除去いたしまして、近い将来、本法目的が完全にかなえられるよう法律内容を前進させる、その基礎をつくり上げていただかねばならぬ、こういうふうに思っております。
 そこで、労働大臣にお伺いするわけでありますが、この労働者災害補償保険法の基本的な取り組み、その姿勢についてひとつ伺ってみたいと思います。
#11
○長谷川国務大臣 ただいま枝村さんおっしゃるとおり、この労災保険制度というものにつきまして、発足以来、何といっても保険給付の引き上げ、それから給付対象あるいは適用対象の拡大等幾多の改善を続けて今日に至り、そしてまたこのたびの提案になっておりますので、こういう御審議を通じて、よく御理解なりあるいはまた御協力いただくことは非常に大事なことだと思っております。
 現在、労災保険は労働者を使用するほとんどすべての事業に適用されまして、その給付の水準は、災害補償についてのます国際的水準であるILO百二十一号条約あるいはまたILO百二十一号の勧告の水準まで達していることは御承知のとおりだと思います。しかし一方、最近の実情を見ますと、長期の傷病者、重度の障害者、それから被災者の遺族等の年金受給者が累増いたしました。そうしてまた、年金給付の内容とか年金受給者に関する福祉対策のあり方についても、実情に即した改善をすべきじゃないかという御要望がよく出てまいりました。最近の労働災害の発生状況は、件数の減少にかかわらず、職業病疾病の漸増が非常にあります。こういうふうな状況の変貌にありますので、この対策が望まれているところもまた、御審議いただいている場合のいつでも問題になるものでありまして、こういう諸般の情勢の変化に応じまして、労災保険給付の内容、それから今後における労災保険事業のあり方等に関しまして、保険制度全般にわたって整備を図ることが必要である、こういうことで御提案申し上げ、御審議をお願いしているところであります。
#12
○枝村委員 今回の改正は制度上の目的にも及んでおるのでありますが、従来の業務災害についての保護を目的とする労災保険の性格が変わることにはならないかという心配が出てくるわけなんですね。本法の改正の本当のねらいはどこにあるかという点も、こういうところからいろいろ推察して、少しおかしいなという疑念が生まれてくるわけです。
 そこでお伺いしたいのは、労災保険は目的を変更して、災害補償以外の分野に事業を拡大しようとしております。ですから、いま言いましたように、改正のねらいは実はここにあるのではないかというように思うのであります。そういたしますと、労災保険と労働基準法との関係については一体どうなるのか、どのように考えていいのか、こういう点についてお伺いしていきたいと思います。
#13
○長谷川国務大臣 そういう御疑問などについて御審議いただいて解明していただくことは非常にありがたいことでございまして、原則論から言いますと、業務災害やら通勤災害をこうむった不幸な方々に対しまして、何回かにわたって保険給付の改善を重ねてきました。同時にまた、いまの社会的要請からいたしまして、労災病院とかリハビリテーション施設の整備とか、各種の援護措置の充実も図ってきたことは御理解のとおりでございます。
 また一方、繰り返すようになりますけれども、何といいましても、最近の労働災害の動向とか、毎年毎年増加しているところの労災年金受給者の実情などを背景として、いろいろな面から新しい解決を図る問題が生じておりまして、このために、今回まず年金給付の内容を改善整備する、そして従来の保険施設を整備拡充して、労働福祉事業も行うための改正法案を提案したのでありますが、このような今回の改正においても、労災保険というものは保険給付の事業とあわせて労働福祉事業を行うことは明らかにしておりまして、その積極的な推進を図ることとしております。しかし、御疑問を持たれておりますが、労働者の業務災害についての保険給付を行うことが保険事業の基本的な使命である、これはゆるがすことはできません。そこで、主たる内容でありますところは従来と格別違ったものはないと考えていただいていい、こう思うのであります。この福祉事業の運営につきましては、今後とも労災保険本来の性格を考えながら、保険審議会の御意見を尊重しながら将来とも適切な運営を図ってまいりたい、こう思っております。
#14
○枝村委員 大臣が従来と変わらないと言われました。そのとおりかもしれぬのですけれども、しかし、事業を拡大すれば、使用者責任といういわゆる根っこの点から見て、次第にその点が薄れていくようになりはしないか、こういう心配があります。本来、使用者側が責任を持ってやるべきものが、こういう労災法で事業を拡大いたしますと、政府の手でやるか下請がやるか知りませんけれども、いわゆる使用者側の責任が薄くなるというようなかっこうになりはせぬか、こういう心配がまずあるのですね。
 それから、労働基準法の二十四条に賃金支払い義務がありますが、支払いの救済は関係ないとは言えないことはないのでありますけれども、これが直ちに労災保険の分野、その事業としてやられるということに対して、やはり一つの問題が残されるのではないか、こういうふうに見られるわけでありますが、その点についてちょっと……。
#15
○藤繩政府委員 先ほど大臣からお答え申し上げましたような趣旨で今回の改正が行われているわけでございまして、諸般の問題につきまして労災保険審議会で長らく御検討をいただいたわけでございますが、労使公益三者一致した御答申をいただいて、それに基づいて今回改正が行われたわけでございます。御指摘のように、労働基準法と労災保険法とは切っても切れない縁があるわけでございまして、労働基準法でまさにいま御指摘のような事業主の労働災害に対する責任、いわゆる無過失賠償責任というものが明らかに規定をされておるわけでございまして、それを担保する意味で当初労災保険法というものが発足をいたしました。しかし、最近におきましてはさらにそれを乗り越えて、たとえば年金制度の導入でございますとか、特別加入制度の創設でございますとか、あるいは通勤途上災害保護制度の創設でございますとか、その他もろもろの福祉施設の拡充でございますとか、そういう災害の周辺にまつわるいろいろな問題にまで労災保険事業というものが漸次拡大をされているわけでございます。
 そこで、そういう労災保険制度の発展はございますけれども、またその発展の線の上でさらに今回大きな発展がなされるわけでございますが、しかし基本は、業務災害については事業主が責任を負うということは基準法にいわゆる労働憲章的な意味で明記されていることであり、またそれを受けての労災保険法であるという基本的性格は、ただいま大臣からも強調されましたように変わっておらないということでございまして、その点はぜひ御理解をいただきたいと思います。ただ、目的規定の改正につきましては、今般建議をいただきました労災保険審議会の建議の中にもそこを改正すべきであるという御提案がありまして、そういうことにいたしたわけでございます。
 それから、最後に御指摘になりました、例の賃金不払いについての救済制度を今回労災保険の枠の中で労働福祉事業の一環としてやるということにつきましては、いろんな経過がございまして、また後ほど詳しく御説明を申し上げる機会があろうかと思いますけれども、一言で申し上げますと、とにかくこの事業を今回やらなければならない、不況の深化に伴いましてどうしてもこういう制度を創設しなければならない。ところが、それについて諸外国の例あるいはわが国の実情等からいって、とにかくたとえ拙速であってもこの場に間に合わすというような意味からも、とりあえず労災保険の事業としてこれを行うということが適切であるということで、いろんな議論を経ました過程でそういう御答申を得てこれをやったというわけでございます。
#16
○枝村委員 労働福祉事業として実施される事業の内容は具体的にはどのようなものかという点の質問になるわけなんですけれども、私は時間を節約したいと思いますから、そういう問題と、これはどこで行うかということなんです。この法案によりますと四つの事業に分けております。そこで、本来ならば被災労働者に対するリハビリテーションなどの各種の社会復帰及び補償措置、あるいは労災、職業病の防止その他の確立等を直接的に行政部分でカバーしなければならないものが、今回の法によりますと、まあ従来もでしたが、労働福祉事業団とか中央労働災害防止協会などのいわゆる外郭団体に下請化させる、こういう点から見て、先ほどちょっと質問しましたように、労働基準法との関係とは別に、政府がやるべきものの責任をそういうところに請け負わせて責任を分散化させていくのではないか、こういうふうにも一つの心配としてあらわれてくるわけなんですが、その点はどうですか。
#17
○藤繩政府委員 先ほども御説明しましたように、労災保険制度は労災に対する補償が根幹であるということは言うまでもないことでございますけれども、それに関連する災害の予防でございますとかあるいは災害の治療でございますとか、さらにはリハビリテーション、社会復帰、あるいはさらに今回は災害の根幹に横たわっておる労働条件の問題にまでこの事業を広げていこうというふうに考えるわけでございます。そういうもろもろのいわゆる事業的側面につきましては、政府が直接やるということが全部可能であればそれが一番望ましいと思いますけれども、事の性格上、たとえば労災病院の運営というようなことにつきましても、これは別途の人格を持った労働福祉事業団というようなものをして代行させた方がより効率的に運営できるというような趣旨から労働福祉事業団法というものが制定されまして、その法律でそのことが明記されておるわけでございます。それからまた、各種の災害予防活動につきましても、法律の規定に基づきましてできております各種災害防止協会というものが民間団体として自主的に活動しておりますけれども、そういうものに対する助成を行うことによって災害防止活動の効果が高まるならばそれもまたよろしいのではないか。したがいまして、労災保険で支弁しております経費の中で、直接政府がやっておる仕事ももとよりたくさんございます。しかし、一部そういったところに助成をして仕事をしてもらっているということもございました。それぞれ所要の監督を通じまして、政府と一体になって行政の効果を上げていきたいというふうに思って運営をしているわけでございます。
#18
○枝村委員 それと、今度新規にできました賃金不払い救済などの適正な労働条件の確保のための事業、これを労働福祉事業の一環として労災保険において実施することにした理由ですね。あなたは後から詳しく述べると言われましたが、その理由は一体何か。それからまた、これに要する財源などは幾らかという点について伺っておきたいと思います。
#19
○藤繩政府委員 先ほども御指摘がございましたので、その前に、なぜ労災保険でこの賃金不払い事業をやることになったかという点について一応申し上げてみたいと思いますけれども、賃金不払いが不況の深化に伴いまして非常に重要な問題になりまして、そしてさきの国会でも雇用保険法の審議にも関連いたしまして、これは早急に何らかの措置を講ずべきであるということが言われたわけでございます。
 そこで私どもとしては寄り寄り検討したわけでございますが、従来長らく、こういった救済制度があればいいということは言われながら、現実にはなかなか実現しなかったわけでございます。それはそれなりに大変むずかしい理由があったわけでございますけれども、今回これを踏み切りましたのは、一つは、こういう緊急事態に対して何らかの救済措置をとる必要がある。その場合に、やるとすればこれは保険的なシステムでやらざるを得ない。ところが私的保険としてはこれはどうもなじまないということから、公的保険ということになるわけでございますが、その場合に、わが国の場合では雇用保険とか労災保険とかあるわけでございますけれども、どっちでやるかというような議論があるわけであります。
 その前に、そもそもそれでは独立の保険でやったらどうかという議論もあったわけでございます。しかしながら、独立の保険でやるということになりますと、一つは、新たに事業主に何がしかの保険料を負担させなければならない。それからまた、新たな保険運営のための事業体を必要とするというようなこと。それから外国の例から――外国に、実は最近フランス、ドイツ、オランダ等にこういう事業ができたわけですけれども、そういう例に徴しましても、保険料は非常にわずかであるというようなことから、独立の保険料を取り立てて独立の体系でやるということが実際問題としていかがかというようないろいろな観点から、やはり既存の保険制度を利用した方がいい、フランスやドイツでも既存の保険制度を利用しております。
 そこで、雇用保険にするか労災保険にするかということも検討いたしましたけれども、まあ、事業主が全額負担しておって、災害補償の制度となって確立されてきましたこの労災保険ということが、事業主負担という意味から言うと賃金不払いは事業主の責任でございますから、そういう意味でもなじみやすいのではないかというようなことでこれに踏み切ったというような経緯でございます。
 なお、御質問の、どのくらいの予算を必要とするかという点につきましては、私どもは来年度予算に五十一億予算を計上しております。これは年度後半、半年分でございますから、年間ベースですと約百億の財源をこれに充当させるというつもりでこの制度を考えております。
 それから、この制度を実際に動かします場合には、労働基準監督署長の証明等の事務もございますが、支給額の決定、計算、調査、支給等は労働福祉事業団をしてこれを行わしめるということを考えております。
#20
○長谷川国務大臣 私の方から申し上げますと、この委員会で、こういう不況のときですから未払い立てかえ払いというものは五十一年度から一部開始したい、こういうふうに御答弁申し上げて御理解をいただいておりましたけれども、時期が時期ですから、いまのような手続などをとり、そして簡素にして早くやれる、そして労働者の福祉を守るという意味からしまして、五十一年度から全面的にとにかくやってみよう、こういうところにこのたびの法案を提出したゆえんがあるということも改めて御理解いただきたい、こう思います。
#21
○枝村委員 この問題は、私ども、これではいかないという、真っ向から反論していく立場に立つことはなかなかこれも困難なような気がいたしますが、しかし、正直に言って、いままで給付の面でもう少し上げろという要求がしばしばされたけれども、その都度、政府とすれば財源がないからというような理由で国会では答弁されておる。たとえば今度五十一年度で五十億でしょう。五千人おったら百万円上げられるということになるわけですね。労災被災者は、こんな金があれば直接こちらに回せばいいじゃないか、こう率直に受け取る向きも、視野は狭くてもやっぱりたくさんあるわけですね。その点、あなた方ももちろん十分そういう声も聞きながら決定されたとは思うのですけれども、われわれはそういう声もやはり当然だというような受けとめ方をしておるのです。
 そこで、いろいろありますけれども、今回の法で制度改正を必要とする目的は、いままでの答弁を聞いておりますと、事業分野を拡大するといっても、その中のいまの新規に設けられた賃金不払い救済、これが一つの大きな目的であったと私どもは受けておるわけですね。そのほかいろいろあるでしょうけれども、事業分野拡大という部面についての主要な目的はここにある、こういうふうに見ておるわけです。先ほど局長も大臣も答弁されましたように、このような財源を労災保険財政からすることはやっぱり本来の目的を逸脱しておるような気が私はいたしますが、当面緊急にやらねばならぬという理由でここに求めたことの理解もできますから、これは新たに賃金不払い基金制度なりその他の法制定でもして、労災保険にしわ寄せしないような措置を近いうち、あるいは少し時間がたつかもしれませんけれども、本格化したら措置すべきではないか、こういうふうに考えておるわけなんですけれども、その点についていかがなものですか。
#22
○藤繩政府委員 お言葉でございますが、今度の改正は賃金不払い事業を労災保険でやるためだ、それがほとんど主な目的ではないかというお話がいまありましたので、その点は釈明をさせていただきたいと思います。
 労災保険に関しましては、最初に大臣から申し上げましたように、ここ数年逐次改正をいたしてきまして、給付の水準もILO条約、さらには勧告の水準にまで及んだことは先生御承知のとおりであります。しかし、労災保険審議会では、いままでもっぱら水準の引き上げあるいは年金の導入とか通勤途上災害とかをやってきましたけれども、いろんな問題を残しておる、やはり制度の整備ということを重視する必要があるということから、四十八年以来審議会の中に懇談会を設けまして、自由な活発な討議をずっと非常に精力的に重ねてこられました。その中で、年金とか、今度御提案しておりますいろんな改善が考えられたわけでございまして、賃金不払い事業は、率直に申しまして、昨年のああいった背景を受けまして、むしろ急遽途中からお願いをするというような形になったわけでありまして、これがそもそも今度の改正を行う中心的な契機だという点については、いささか釈明をさせていただきたいというふうに思うわけでございます。
 しかしながら、先ほども申し上げましたように、いろんな経緯でこういうことを行っておりますけれども、これが必ずしもすっきりした、理論的にも体系的にもベストな案だとは、私ども率直に申し上げて思っておりません。しかし、先ほど申し上げたような理由で、むしろ今回拙速をとるという形でこれを御提案をいたしておるわけでございますから、いま枝村先生が御提案なさいましたように、これは将来十分基本的な検討をすべきものだと思います。ただ、何せ外国でもここ一、二年初めて始めたような経緯がございます。わが国でもこれからやるわけで、どういうような経緯をたどりますか、どんな財源関係になりますか、その辺も明確でございませんので、いわばエラー・アンド・トライアルを重ねた上で、将来必要があれば基本的な検討をすべきものだというふうに考えるわけでございます。
#23
○枝村委員 それで一つ聞いておきますが、労働福祉事業として今後新たに実施を予定しておる事業はありますか。
#24
○藤繩政府委員 今回御提案をしております法案の中の労働福祉事業は四つに分かれておりまして、被災労働者の円滑な社会復帰を促進するための事業ということで、これは主として労災病院でございますとか、そういうような治療の問題あるいはリハビリテーション施設というような問題でございます。第二は、被災労働者及びその遺族の援護を図るための事業ということで、各種援護金を従来も支給してまいりましたが、そういうものをさらにやっていこう。第三は、労働者の安全及び衛生の確保を図るために必要な事業でございまして、これは特に職業性疾病、職業がん等によって最近非常に注目を浴びております今後の重大な問題に対処して、基礎的な研究から予防、治療等にわたる諸般の事業をやっていかなければなりません。そういうものに思い切った経費の支出ができれば大変いいことだというふうに思っております。第四として、いま御議論がございますこの賃金不払いの事業になっておるわけでございます。
 そこで、一から三までのことは従来もやってまいりましたし、今後も特に職業性疾病の防遏ということに主力を注いで大いにやっていきたいと思っておりますが、第四の労働条件に関連する労働福祉事業につきましては、実は先ほど来御議論がありますように、労災保険審議会でもいろいろ議論がありまして、さしあたってはこの賃金不払い事業以外は考えていないということをお答えをしてまいりましたし、また実際に私どもとしてもいま頭の中には新しいものはございません。将来いろいろ検討されるべきものと思いますけれども、現在はこの事業だけでございます。
#25
○枝村委員 次に、給付内容等の改善について若干伺っておきたいと思います。
 長期療養者に対する取り扱いですが、法改正は、「傷病が療養の開始後一年六箇月を経過しても治らず、その廃疾の程度が労働省令で定める程度に該当する場合には、引き続き療養補償給付を行うとともに、その廃疾の程度に応じ障害等級第一級から第三級までの障害補償年金の額に準ずる額の傷病補償年金を支給すること。」こうなっておる。この中の療養開始後、現行三年が一年半に繰り上げられた理由は一体何か。昨年末の労災審議会の建議の中にはこの問題は載っていなかったと思うのですが、どうしてなのか、この点をお伺いしたいと思います。
#26
○藤繩政府委員 このたび、現在まで行っております長期傷病補償給付というものにかえまして傷病補償年金の制度をつくったわけでございます。これは補償の体系として、通常の療養給付、休業補償給付でいくものと、あとは治った後の障害補償年金でいくものとの間に、かねては三年たっても治らない場合には打切補償というような制度があったわけですが、それではいけないということで年金化したわけでございます。その年金が何年かいろいろな経過をたどりまして、現在の長期傷病補償給付に至っていることは御承知のとおりでございます。現在は三年たって治らない場合にそういうことでいくということでございますが、今度はこれを一年半にして、そして傷病補償年金という制度にした。
 その一年半というのは唐突に出てきたようだけれども、それはどういう理由か、こういう御質問だと思いますけれども、実は従来の労災保険で被災者の療養期間を見てみますと、約一年で九七・三%という統計がございますが、ほとんど一年未満で療養ないし休業補償という形で治っていくわけであります。治った後で障害が残ればもちろん、御承知のように障害補償が一時金あるいは年金の形で支給されるわけでございますが、しかし三年たっても治らないというごく例外的な事例の場合に、従来長期傷病補償給付というものをやってまいったわけです。そういう長期にわたってなお治らないというような場合に、どういう形で療養をし補償をしていくのがいいのかというのは基本的な議論があるところでございまして、できることならば、もう相当かかっても治らないわけでございますから、安定した年金の形でこれを支給するというのがやはり望ましいというふうに思うわけでございます。そこで従来も年金スタイルがとられておったわけでございますが、いま申し上げましたように、ほとんどが一年ぐらいで治るというようなことから見ましても、できるだけ早く年金に移行するということが望ましいわけでございますから、一年半というような時期はより改善ではなかろうかというふうに私どもは考えたわけでございます。
 それから、率直に言いまして、一年半というのが出てまいりましたのは、いま唐突に出てきた感じもするではないかという御指摘もございましたが、実は厚生年金の方の改正が同時に進められておりまして、厚生年金で今回一年半という制度をとろうということでございます。そこでやはりそれとの平仄を合わすという意味からも、それは改善ではなかろうかと私ども思ったものですから一年半にしたという経緯がございます。
 なお、後ほども御議論があろうかと思いますが、これに関連して解雇制限の問題が出てまいりますけれども、解雇制限の関連は、したがいましてこれとは直接の関係がないことでございますから、従来どおり三年ということを動かさないということで今回措置をいたしたわけでございます。
#27
○枝村委員 ちょっと聞いておきますが、現在の長期傷病補償給付を受けている状況を知らせていただきたいのです。三年以上六年未満の数、それから六年以上最高はどのぐらいのところなのか、その病状をできるならば若干知らせていただきたい。
#28
○田中説明員 ことしの三月末の数字でございますが、三年たっても治らないで休業補償を引き続いて受けているという方が千四百八十六名おります。長い方は五年以上にわたっておりますが、五年以上何年の方がおられるか、ちょっと統計的に把握しておりませんけれども、五年以上の方が百六十二名というような状況でございます。
 病気の中身としては、一番多いのが頭頸部外傷症候群、いわゆるむち打ち症でございますが、その方が四百六十二名、その次に頸肩腕症候群の方が二百二十六名、あと外傷性の脳中枢障害、交通事故その他で頭を打って神経障害を起こしたという方が百十六名おります。その他、じん肺の方、脊損の方、一酸化炭素中毒の方、その他でございます。
#29
○枝村委員 こういう方々は依然として治癒認定をせずに、解雇されずにおるわけなんでしょう。
#30
○田中説明員 さようでございます。
#31
○枝村委員 そこで考えられるのが、治癒認定をせずして、一年半という期間のみで傷病補償年金を支給することが、そういう人々にどのような不安とか疑念を抱かしているかということになるわけなんです。現在の三年を経た段階で政府が必要と認めた場合にのみ給付される長期傷病補償給付、これと労基法の先ほど言われました十九条の解雇制限の関係で、そういうのは関係はないと言われておりますけれども、一年半に縮めたということで、治癒認定の一層の促進が行われるのではないか、そういうふうに考える。そしてまた、三年になったらそういうことから解雇が使用者側、資本側によって厳格に実施されるのではないか。法的にはそのようになっておりませんけれども、そういう心配があるわけなんです。それは三年であろうが一年半であろうが、厳格に認定する場合には一年半縮めたって同じことでありますけれども、三年を一年半に縮めたということによって促進が強化され、使用者側がそういうことを厳格にするんではないかという精神的な圧力をこういう関係者の間には受けるということは、これはやはり否定できないと思うんですね。その点の配慮はあるのですか、どうですか。
#32
○藤繩政府委員 現行の長期傷病補償給付は、療養の開始後三年を経過しても治らない労働者に対して、政府が必要と認めるときに行うということになっておるわけでございます。それに対して、今回設けられる傷病補償年金は、基本的な考え方は変えておりませんで、従来ただ「政府が必要と認める場合」というそこを具体的に明確にして、廃疾の程度が一定の状態にある労働者に対して廃疾基準を明らかにして支給するということにしたわけでございます。傷病年金の受給者となるのは、傷病が治らないために常態として労働することができない状態にある労働者に限られるということでございまして、それは従来とも変わらないわけでございます。
 労災補償のたてまえから言いますと、症状の状態に応じてその都度適切な治療を施し、それに見合った補償をするというのがたてまえでございまして、従来とも、先ほども申し上げましたが、約九七%の人が一年未満のうちに療養を終わり、休業補償も終わって、つまり治癒していくというのが現状でありますけれども、その都度、つまり必要な都度そういうものを判断して適切な補償をしていく。したがって、従来長期傷病補償給付という制度がありましたから、それは三年たっても治らない場合にそれに移行するということでございますけれども、しかし、移行した後でも、症状が非常に軽くなっていけば、それは普通の療養、そして休業補償というような状態に返るというようなことも従来から通達の上でも明らかになっておることでございます。今度の場合も、したがいまして同じような状態の者に対してその都度判断をしていく。そしてできるだけ早い機会に、つまり一年半のところで年金を差し上げるというようなことにいたしたわけでありまして、年金を受領されましてからのいろいろな変化に対してもその都度判断をしていくということでございますから、基本的には考え方は私どもは変えていないというふうに思っているわけでございます。
#33
○枝村委員 そうすると、現在の長期傷病補償給付への移行の条件と今度の傷病補償年金支給の要件とは、実質的には異ならないということですね。
#34
○藤繩政府委員 従来の長期傷病補償給付に移行する場合の要件といたしましては、四十一年に通達を発しておりまして、「労働者が療養補償給付を受けていること。」これは当然でございます。そして「三年を経過してもなおなおらないこと。」これも当然でございますが、第三の要件として、「長期傷病補償給付を行なう必要があること。すなわち、当該傷病がなおらないため労働不能の状態が、その後長期間にわたって継続すると認められること。」という基準でやってきたわけでございます。その点は、今度私どもが予定しております廃疾基準でございますが、これはまあ正式に言えば政省令でございますから、今後労災保険審議会で御議論いただいた上で御納得をいただいて制定をしてもらいますけれども、いま考えておりますこの一級から三級までの廃疾基準を御披露申し上げますと、一級は、負傷または疾病が治らないで労働することができず、かつ常時介護を受けることを必要とする状態、まあこれが一番重いといいますか、そういう状態の者を一級とする。それから二級は、負傷または疾病が治らないで労働することができず、かつ随時介護を受けることを必要とする状態、こういう状態であります。三級は、負傷または疾病が治らないで労働することができない状態ということでございますから、現在の長期傷病補償給付の対象と、その対象の範囲は変わらないというふうに私ども考えておるわけでございます。
#35
○枝村委員 傷病補償年金の支給の対象となる労働省令で定める廃疾等級はいま言われましたとおりを予定されておるのですけれども、しかし、治癒した者は障害年金を受けるのですね。これはあたりまえのことなんです。治癒しない者で年金受給対象者は、いま大体のこういうふうにやるという構想だけをお話しになった、障害年金に準じた一級から三級までに分けるというのですが、具体的にはどのようになるのか。いまの説明だけでは、いまから決めるのですからわかりませんけれども、大体分けてやるのですが、しかし、ぼくらから言うと、これもやはり大ざっぱに決めて、後は運用の問題として取り扱われるようになるのではないか。そんなことはありませんか。はっきり言えば、労災被災者と当局との間のいろいろ力関係か何か知らぬが、そういうことで決めさせていくという、従来のやり方と言ったら悪いのですけれども、そういうのから脱却できるようになるのか、いままでどおりになるのか。そういう一級から三級の範囲の決め方になるのか、いやそうじゃない、全然もう考慮の余地のないほどぴしっと決めるものかという点ですね。この点だけちょっと伺っておきたいと思います。
#36
○藤繩政府委員 いま問題になっておりますのは、長期傷病補償給付という制度があるにもかかわらず、従来長期傷病補償給付に移行しないで、先ほど御質問がありましたような何人かの者が休業補償給付のままずっと推移しているという点に関してであろうと思うのですけれども、元来、療養補償をし、そしてそのために休業して賃金が得られないということで休業補償をする、これは一番初期の補償の体系でございまして、長期にわたってなかなか治らないという場合には、できるだけ早くやはり安定した年金に移行するということがむしろ望ましいわけでございます。したがいまして、長期傷病補償給付に移行するということが望ましいし、今度の場合で言えば傷病補償年金に移行するということが望ましいわけでございまして、そこのところが混淆されますと議論が不明確になるということがあるわけでございますが、そういう体系上の考え方に立脚をいたしまして、その間の補償の切りかえといいますか、適用といいますか、それにつきましては、もとより被災労働者の実情というものに十分な配慮を払わなければならぬことは言うまでもございません。しかし、保険者は政府でございまして、やはり全国的に統一的な運営をする必要がありますし、また、いま申し上げたような保険の本来の考え方に立脚して、やはり筋の通った処理をしていかなければならぬというふうに思いますので、いま御説明しましたような廃疾基準が将来決められれば、そういうことによって進めていく。これは現在も、先ほど御説明しましたように通達で明らかになっておることでございます。ただ、現在の運営に若干の問題が場所によってはあることは事実でございますけれども、それは制度が改正されようとされまいと、運営は厳正に公平に行わるべきものであることは言うまでもないことであろうというふうに思うわけでございます。
#37
○枝村委員 もう少し質問しておきたいのですが、労働不能の状態の範囲が拡大されますと、解雇制限との関係で被災労働者の不安が当然生まれてくると思うのですね。それから、特に現在休業補償給付を受けて解雇されていない人たちが、労働不能の拡大によって年金に切りかえられる心配を当然してくるのではないかと思うのですね。その点、いまあなたが本人に納得できるような十分な配慮をしてやるというようなことを言っておりますから、これはひとつ十分やってもらわなければいけない。とりわけ、むち打ち、頸肩腕症候群ですか、などもあるし、いわゆる神経系統を冒されておる被災者はこの問題で非常に心配をしております。これは認定いかんによってはどうにもなるのですから。その中で特に病状が軽くなっている者は解雇されることを一番心にかけておるようであります。ですから、先ほど言いました廃疾等級等を定めようとする場合、当然審議会に諮られていくと思いますけれども、ひとつその際十分労働者側の意見も聞いていただいて、慎重に決めるように望んでおきたいと思います。
 その次に、傷病年金の受給者の病状が軽くなって廃疾等級に該当しなくなったときは休業補償給付へ戻ることになるのかどうか、この点についてお伺いしておきたいと思います。
#38
○藤繩政府委員 いまの言われましたことで一つ申し上げておきたいと思いますが、最後に言われました点は、もちろん、傷病年金を受給されておりましても、症状が軽くなって廃疾等級よりもずっと軽い状態だということになれば休業補償に戻ることは、従来もそういう通達でございますから、その点は回しでございます。
 ただ問題は、症状の重い者、なかなか治らないというような場合には、できるだけ年金を支給して手厚い補償をする。しかし、もうすぐ治りそうだというような者は、従来も、三年たってもうこれはすぐ治るということであれば、療養し休業をするということがベターであろうということでそういう措置をとってまいりまして、大体六カ月ぐらいのめどをつけてそういう運用をやってまいりました。しかし、それはずっとそういう状態が続くことが望ましいということでやっているわけではございませんで、むしろ、療養補償、休業補償というスタイルでいく場合にはできるだけ早く治療がなされて復職がされるというのが本来のたてまえなんです。休業補償というのは、やはりときどき療養を受けられる、そして療養のためにその間賃金がもらえないから休業補償が出る、こういうことでございますから、できるだけ復職を早くしていただくというのが休業補償の基本的な考えであるということをぜひ御理解を願いたいと思います。
#39
○枝村委員 法のたてまえとすればこれは戻ることはあるということですが、しかし、実態としてはいままで余り例はなかったということなんです。しかしあるかもしれませんから、その点は法のたてまえで運用していただかねばならぬと思います。
 それからその次に、長期傷病補償給付にかえて今度は傷病補償年金が設けられるようになったのですが、長期傷病特別支給金が廃止されることになっております。その結果、従来からの長期傷病補償給付を受けていた者の中には、労災保険から受ける給付の合計額が下がる者が出てくることになりはせぬかということです。それからまた、今後休業補償給付の受給者が傷病補償年金を受けることになった場合にも同様の問題が生まれてくると考えますが、これに対してどういうふうに措置をしていくのか、それをお伺いしておきたいと思います。
#40
○藤繩政府委員 長期傷病補償給付あるいは休業補償給付の給付内容というものは、給付基礎日額あるいは給付基礎年額の六〇%ということになっておりまして、これらの給付の受給者が今度の傷病補償年金に移りました場合には、廃疾等級第一級の者は三百十三日分、つまり八六%になる。二級の者は二百七十七日分、七六%になる。三級の者は二百四十五日分、六七%という給付率になることになっておるわけでございます。したがいまして、六〇%であった者が六七から八六になるわけでございますから、非常に改善されるわけでございます。ただ、いま御指摘がありましたように、従来休業補償給付あるいは長期傷病補償給付は、この六〇%に加えて二〇%の特別支給金が事実上支給されておりました。したがって八〇%の支給であったということから、八六の一級の場合はいいけれども、二級、三級については八〇よりも下がるではないか、こういう御議論であろうかと思います。
 その点につきましては私ども、今度は特別支給金をこの制度改正を機会に、これは政省令で行う事項でございますが、いわゆるボーナスというようなものの一部を特別支給金という形でこれに反映させるということを考えておるわけでございます。そういう制度がこれに乗っかってまいりますとかなりそれで埋められるわけでございまして、大体平均的には従来よりよくなると考えておりますけれども、なお、ボーナスというようなことになりますと、もとより業種業態によってはいろいろ格差があるわけですから、場合によっては従来より低くなるというようなこともこれはないわけではない。そこでそれに対しては当然措置をしなければならないというふうに考えておりまして、長期傷病補償給付及び長期傷病特別支給金の受給者、つまり現在長期傷病補償給付を受けておられる者、その受給総額が今度の傷病補償年金及びボーナス特別支給金の合計額との間で差ができてしまう、つまり下がるというような場合にはその差額を特別支給金で支給することを考えておりますし、それから先ほどお挙げになりましたような、事実上三年を超えて休業補償給付を受けている者がありますが、そういう者が傷病補償年金を受給することとなった場合においてもやはりその差額を見ていく。こういうことは当然、この法律の施行を予定しております五十二年の四月一日現在でやらなければならないというふうに考えております。
 なお、その先の問題につきましても、理論的に申しますればそういう問題がないわけではない。その辺につきましては、これは特別支給金の今後の問題でございますから、政省令の制定の場合あるいは来年度以降の予算編成の場合、やはりいま申しました法施行時の者に対すると同様な考え方で何らかの措置をしたいというふうに考えております。
#41
○枝村委員 詳細については多賀谷委員が質問するかもしれませんのでその方におまかせいたしまして、あと時間がありませんから急ぎますが、傷病補償年金の受給者についてのいわゆる解雇制限はどのように取り扱いますか。
#42
○藤繩政府委員 先ほどお答えしましたように、解雇制限の条項は現在、今度の改正で全然触れておらないわけであります。それで、今度の改正法の十九条を見ていただきますと、今度の十九条では、「業務上負傷し、又は疾病にかかった労働者が、当該負傷又は疾病に係る療養の開始後三年を経過した日において傷病補償年金を受けている場合」つまり一年半で傷病補償年金に移行して、もう一年半たって三年が来た場合、「又は同日後において傷病補償年金を受けることとなった場合」、これはずっとそうでない補償、たとえば休業補償等をやってきて、ある時点で傷病補償年金になったというような場合でございますが、「には、労働基準法第十九条第一項の規定の適用については、当該使用者は、それぞれ、当該三年を経過した日又は傷病補償年金を受けることとなった日において、同法第八十一条の規定により打切補償を支払ったものとみなす。」ということで、後段は従来と同じでございまして、つまり解雇制限という点についてはやはり三年という従来どおりの措置を動かしておりません。
#43
○枝村委員 そうすると、見方によれば、現在の長期療養者にとってはこういう条項があると酷になるんじゃないですか。いままではこの問題についてはずっと延ばしていくことができたんですけれども、こういう条文があると、その経過した後には自動的に解雇制限というものがなくなっていくから首を切られていくというのじゃないですか。そういう理屈にはなりませんか。
#44
○藤繩政府委員 従来も三年たってなお治らないという状態の場合には、政府が必要と認める場合には長期傷病補償給付に移行するのが本来のたてまえでございまして、その場合にはいまの十九条の現在の規定でやはり解雇制限が解かれるわけでございます。しかし、いわば例外的に休業補償という形でくれば、休業補償でございますのでいまの解雇制限の条項が動かないということで、解雇制限が続けられるということになっておったわけでございますが、その点は今回も、長期傷病補償年金に移行する場合に、非常に症状が重くて治らないということで廃疾基準に該当すれば、従来であれば長期傷病補償給付に移ったものが今度は傷病補償年金に移るということであります。それからすぐにでも治りそうだということになれば、それは場合によっては休業補償のままいくということも考えられるわけでございます。それが一年半の時点で行われるか三年の時点で行われるかということで御議論がございますけれども、先ほど申し上げましたように、それは三年目にやるとか一年半のところでやるというのがたてまえではありませんで、常時そういうことをやってきて、そして必要があれば必要な措置をする。それで、年金というものは本来できるだけ早く支給した方がいいということから、一年半たてば大部分のものは一般の給付は終わるわけでありますから、そこで今度年金たる傷病補償年金を支給しようということでございます。しかも、長期傷病補償給付に移行した場合の水準と今度の傷病補償年金に移行する場合の状態の水準というものは、従来の通達どおり私どもとしては廃疾基準をつくりたいと考えておりますので、その点は変わらない、こういうことでございます。
#45
○枝村委員 最後に一つだけ、そうすると、傷病補償年金の受給者が療養開始後三年を経過したため解雇をされた後に、その病状が軽くなって廃疾等級に該当しなくなったときも休業補償給付へ戻るわけなんですか。
#46
○藤繩政府委員 これは先ほどもお話があったと思いますが、現行の長期傷病補償給付の場合でも、長期傷病補償給付に移行した、したがって解雇制限が解かれたというような場合でも、症状が非常に軽くなって、療養給付、休業給付という体系の方が補償の体系としては望ましいということになれば、それはそういうふうに変えるべきものであることは従来の通達でも明らかにしておるわけでありまして、今度の傷病補償年金でもその点は同じございます。ただ、三年たって解雇制限が解かれるというと、これは労使の関係でございますが、法律上、事業主は解雇をしてはならないという規定の適用がなくなりますから、場合によっては解雇ということが起こるかもしれません。その解雇が行われた後で症状が軽くなってこの療養補償、休業補償ということに戻りましても、それでまたその雇用状態が復活するということ、こういうことは理論的に考えられないわけでございます。
#47
○枝村委員 これで終わります。
#48
○熊谷委員長 次に、多賀谷真稔君。
    〔委員長退席、竹内(黎)委員長代理着席〕
#49
○多賀谷委員 いまの枝村委員の質問に引き続いて、今度の長期傷病補償給付から傷病補償年金に切りかわる場合について質問をしてみたいと思います。
 そこで、実はあなたの方が出されました労災補償保険法の一部改正の法律案の資料に、大事な傷病補償年金支給の基準がないのです。その条件は、提案理由にもありますように、「療養の開始後一年六カ月を経過しても治らない病状の重い長期療養者に対しては、従来の長期傷病補償給付にかえて、引き続き療養補償給付を行うとともに、障害等級第一級から第三級までの障害補償年金の額に準ずる額の傷病補償年金を支給することとしたことであります。」こう書いてあるのです。そこで、あなたの方の通達がないものですから船員保険法を読んでみました。船員保険法に廃疾の程度が一級、二級、三級とずっと書いてありまして、そこに今度は、船員保険法は法律事項でありますから、別表の中に入っている。すなわち、たとえば「廃疾ノ程度」の一級の者は、従来の番号のほかに「一〇」を入れまして、「傷病が治癒セズ身体ノ機能又ハ精神ニ前各号ト同程度以上ノ障害ヲ有スルモノニシテ厚生大臣ノ定ムルモノ」こういうようになっておるわけです。これは六十二ページです。そういうことで一級、二級、三級と、こう書いてあるわけです。
 そこでまず私ども疑問に思いますのは、もし治癒する、あるいは症状固定をした場合、あるいは五級に該当する者はその対象にならないのか。要するに傷病補償年金の対象にならないのじゃないかという疑問がまず出てきた。ところが、先ほどからお話を聞いてみますると、いや、そうではない、この廃疾の程度、要するに障害補償年金の場合の等級と傷病補償年金の場合との等級のやり方がどうも違うようだということに、先ほどからの答弁でまずやや問題が解明したと考えられる。ただし、等級による補償の額は、一級、二級、三級で同等ですね。
 そこでまず私が聞きたいのは、たとえば神経症状で「特ニ軽易ナル職務ノ外服スルコトヲ得ザルモノ」、これは現在における障害補償年金では五級ですね。五級の者がその一年半のときには労働不能である、こういう場合は一体どういうようにやられるのか。いや、そういう概念とは全然違うのだ、廃疾の等級とは。これは状態として、常時介護を要するもの、随時介護を要するもの、労働不能のものというだけで分ける、こういうようになるのか、あるいは現在の廃疾基準の中にやはり、各号と同程度の障害を有する、とこういうようになるのか。これが、あなたの方からの通達が出ておりませんから疑問になってくるわけです。ですから、それはあくまで別個のものであるかどうかということをまずお聞かせ願いたい。
#50
○藤繩政府委員 先ほども申し上げましたが、長期傷病補償給付、今度の改正で傷病補償年金でございますが、これは先生よく御承知のようにほかの制度にはないものでございまして、通常でございますと療養補償、休業補償、それで治れば障害補償、障害年金というものが出ますけれども、長期にわたって治らない状態に対してどういう給付をするかということは、従来は打切補償であったものを、それではいけないということで三十五年から労災においてこういう独特の領域を確立してきたと思います。その間に、考え方として年金ということにしましたけれども、これは一体障害年金の系統でものを考えるのか、あるいは障害補償の考え方でこれを考えていくのか、あるいは休業補償の延長線上でものを考えるのかというような点についても、いままでの沿革を見ますといろんなものの考え方の間を動揺しておったようなところがあろうかと思います。結局は、その都度の各障害補償、休業補償とのバランスをとりながらこの長期傷病補償給付の水準というものが決まってきたというのが実情であろうと思うのでございます。
 そこで、今回基本的にこの制度をどうするかという議論が審議会でなされまして、やはりこういった長期のなかなか治りにくいという者に対する年金というものは、どちらかといえばやはり障害補償という考え方に立脚すべきではなかろうか、しかも、この前の改正で障害補償年金が大変改善されましたからそれとのバランスも実際問題として考慮する必要があるというようなことから、先ほど申し上げましたような一級、二級、三級というようなところの水準を割り出したわけでございます。
 そこで、従来は通達で一つの基準というものをつくりまして長期傷病補償給付に移行してまいりましたが、いまお尋ねの根幹の問題でございますけれども、これは一言で申し上げますと、障害補償のランキングとは一応関係がないというふうに御理解をいただきたいと思います。と言いますのは、従来も療養補償、休業補償ということでまいりました。八〇%補償を受けておりました。そして治って障害補償に移ります場合には、ものによってはもちろん下がるということは幾らでもあるわけでございます。それはやはり補償の体系が違うからということであって、別に観念をしているわけではない。今度の傷病補償年金というのは、障害補償給付でもない、さりとて通常の療養補償、休業補償の体系でもない、別な体系でございますから、いままでと同じようなことでこれを処理していきたいと思っております。法律の条文といたしましては十二条の八を改正いたしまして、「当該負傷又は疾病が治っていない」ということと、それからその「廃疾の程度が省令で定める廃疾等級に該当すること」ということで傷病補償年金を支給するということにいたしておりまして、この等級につきましては、先ほど申し上げましたように、今後関係審議会で十分御討議をいただいた上で決定をいたしますけれども、私どもの考え方としては従来の通達と同じようなことで、三つの区分を置きましてやってまいりたい。障害補償年金の三級がいわば完全労働不能というところでございますから、それとの関連があるといえばありますけれども、しかし具体的に先ほどお挙げになりましたような、それでは五級とはどうだとか、いろんな問題があります。そこでさっきはっきり申し上げたように、一応観念としては別にそこは割り切ったということで御理解をいただきたいというふうに思うわけでございます。
#51
○多賀谷委員 わかりました。その障害補償年金と傷病補償年金の基準は一応別個である、こういうようにお話がありましたから、概念としては別個である、こういうように理解をしたいと思います。ただ、いま申しましたように、船員保険法の方が法律事項でありまして、それが廃疾の程度として同じようなところに入れてあるものですから、しかも「前各号ト同程度以上ノ障害ヲ」云々と、こうあるものですから、どうも障害補償年金と関連をして行われるのじゃないかという危惧があったわけですけれども、いま局長のお話で、概念は別である。ですから、傷病補償年金の一級はこういうものである、二級はこうだ、三級はこうだということを明確に規定をされるものだと理解をいたします。そうしてその骨子は、先ほどお話がありましたように、常時介護を要するものが一級で、随時介護を要するものが二級で、労働不能というものは三級だ、こういうように理解をしたいと思うのですが、よろしいですか。
#52
○田中説明員 ちょっとその点で補足さしていただきたいと思いますが、船員保険法の方では、御指摘のように法律の中に新しい廃疾に見合う規定を入れているわけでございまして、先ほど局長が申し上げましたように、従来の労災の障害等級表と新しい廃疾の等級表とは一応別個に考えておりますが、共通する点といたしましては、障害補償の一級から三級まではいわば労働不能一〇〇%以上、こういう考え方で、具体的な機能障害なり器質障害なりに基づいて規定がしてあります。新しく予定しております廃疾等級表の方は、具体的な機能、器質の障害は特定いたしませんけれども、労働不能状態というものをとらえて、その中でランキングを設けるという意味では、労働不能の一〇〇%以上という観念においては共通しているわけでございますので、労災保険法上考えております廃疾の程度の問題と船員保険法上の規定の仕方の問題と、書き方は違っておるかもしれませんけれども、考え方においてはまあ共通しているというふうに御理解いただきたいと思います。
#53
○多賀谷委員 と申しますのは、いまの長期傷病補償給付は御存じのようにランクがないわけですよ。
    〔竹内(黎)委員長代理退席、葉梨委員長代理着席〕
それに今度はランクをつけるということですから幾多の疑問が出るわけです。たとえばここに「廃疾ノ程度」が書いてありますが、その「廃疾ノ程度」で、ある程度固定をすれば五級ぐらいになるのじゃないかという者については、現時点、一年半の時点においては労働不能ですけれども、しかし将来においては、あるいは症状固定という形になった場合にはこれは五級くらいになるのじゃないかという者は非常に不安なんです、これはもう一年半のところで区別をされて。ですから、現在の長期傷病補償給付をもらっている人は、いわば症状固定をした後、治癒でも、四級以下になる者はここでランクをつけられて、これは長期療養給付から逆に休業補償、療養補償に落とされるのじゃないか、こういう心配がまず理論的に出てくるわけです。ですから、そういう心配があるのかないのか。
#54
○藤繩政府委員 心配があるかないかということでございますが、先ほどもお答えしておりますように、従来もそうでございますが、長期傷病補償給付に移行いたしましても、もうずっとそれでいくということではございませんで、症状の程度によっては休業補償、療養補償の水準に変わるということもありますし、それからもとより、症状が固定して治癒すればその時点で治癒になり、障害補償に移るということは当然でございます。したがいまして、いまでも通常の療養補償を行い、休業補償ということで来まして、治りますれば、そして障害が残れば障害補償給付を受けるわけです。現在の休業補償は、御承知のように六〇%プラス二〇%でございますから、かなり十分な給付が行われておる。今度は治ったところで障害補償ということになれば、いま御指摘のような障害等級表による給付が行われる。それはそれぞれ別体系の補償でございますからある程度それはやむを得ない。それは旧制度であろうと新制度であろうとその点は同じでございます。
#55
○多賀谷委員 あなたの方の提案理由の説明にわざわざ「障害等級第一級から第三級までの障害補償年金の額に準ずる」というようなことを書いておるから、そこに疑問がまず起こったわけです。
 そこで給付の関係を聞きますが、そういたしますと、原則的にまず確認をしたいのは、現在の長期傷病補償給付をもらっておる人はとにかくこの際全部傷病補償年金に移るものであるかどうか、まずこれを確認したい。
#56
○藤繩政府委員 現在の長期傷病補償給付をもらっている方は、先ほど言いましたような通達の基準によってそうなっておるわけでございますから、今度傷病補償年金の基準も通達の基準と同じような基準にするわけでございますから、それはそのまま移行するというのが原則でございます。
#57
○多賀谷委員 原則を聞いておるのじゃないのですよ。原則はそのとおりです。ですから、認定する場合に、いままでの長期傷病補償給付をもらっておる人は、これは全部傷病補償年金に移るのですかと、こう聞いておる。
#58
○藤繩政府委員 原則はそのとおりなんでございまして、ただ、先ほど来お答えしておりますように、長期傷病補償給付といえども、その都度、症状というものによって必要な補償をやっていく。したがって、長期傷病補償給付で来た者が軽くなれば休業補償に移ることもありますし、治癒されれば、そして障害が残っておれば単なる障害補償給付が支給されて治癒として完結するということもあるわけでございますから、そういう意味では、いま長期傷病補償給付をもらっている者が漏れなくそのまま移行するかという点につきましては、それはいろいろそのときの症状の判断によることだと思いますけれども、原則として、同じ基準で長期傷病補償給付に移っている者が、事態に変化がなければ今度の制度の傷病補償年金の対象になるということは当然でございます。
#59
○多賀谷委員 そういたしますと、現在長期傷病補償給付をもらっている人、これは今度年金に切りかえるときに一回全部認定を改めてするのですか、どうですか。
#60
○藤繩政府委員 その点は一々認定をいたしません。
#61
○多賀谷委員 わかりました。傷病補償年金に移るということで特に一々認定をしないということですから、まさに特殊な、症状が変わったという方だけが、これはいままででもそうですか、当然扱いが違うことになる、こういうように考えていいわけですね。
#62
○藤繩政府委員 ですから、対象となるかならないかということについては一々はやりません。いまのような例外はありますけれども。ただ、今度はランキングが一から三までありますので、そのどれに当てたらいいかというのはやはりやってみないといけないということになります。
#63
○多賀谷委員 そうすると、ランキング一級から三級までの該当の者を決めるときにやはり査定が行われる、こういうことになるのですね、事実上。
#64
○藤繩政府委員 査定という言葉が適当かどうか知りませんけれども、そういうことで区分けしないと適正な格づけができないという点では、そういう作業が要るかと思います。
#65
○多賀谷委員 では次に、現在休業補償をもらっている療養患者、これはもう一応一年半という時点で認定が行われるわけですか。
#66
○藤繩政府委員 それはその時点で認定が行われますが、先ほどもお断りしましたように、一年半で認定するとか三年で認定するという固定的な考え方ではなくて、常時症状というものを見て、治癒したか、あるいはそうでなければどういう補償が適当かということは、私どもとしては当然やらなければならない。ただ、制度的にそこで移行ということが起こりますから、少なくとも三年のとき、今度の制度であれば一年半のときには少なくともそれはやらなければならぬという意味ではそのとおりございます。
#67
○多賀谷委員 そこで、先ほどから議論のありました解雇の問題との関連ですけれども、先ほどは、一年半で大体九七%程度が長期に移るかどうかということがわかるという話でしたけれども、この長期傷病補償給付を三年の時点で認定をしておって、どうしてそういう九七%という統計が出るのですか。
#68
○藤繩政府委員 先ほど申し上げましたのは、制度が三年で、そこで切りかわるからということでとった統計ではございませんで、被災労働者の療養期間の状況というものをとらえてみたわけでございます。したがいまして、一カ月未満が幾ら、三カ月未満が幾ら、六カ月未満で治る者が幾らということでやってみますと、ちょうど一年半という切れが実はこの調査はございません。一年未満で治癒をされて労災保険の対象にならなくなったという方が九七・三%、二年になりますと九九・二%という数値になります。一年半がその中間にあると思いますけれども、そういう特別調査をしましたものの結果ございます。
#69
○多賀谷委員 そうすると、現在長期傷病補償給付を受けている人はどのくらいいるのですか。
#70
○田中説明員 昭和四十九年度末で一万一千七百二十五名でございます。
#71
○多賀谷委員 そこで、一年半という数字は、先ほど厚生年金の障害年金の関係とおっしゃいましたけれども、実は健康保険が半年しか傷病手当をくれない。ところが障害年金が出るのは三年後である。これは結核の場合は三年あるのですけれども、健康保険の方は半年で切れる。そこで何とか短くする工夫はないかと言って一年半が出たのが、厚生年金の一年半の障害年金なんですよ。ですから、論理的に一年半というのが出たのじゃなくて、むしろ、本来健康保険で三年くらい見ればいいのですけれども、健康保険の方が半年しか見られぬ、こう言う。ですから、厚生年金が三年という線がある、そこのブランクを何か埋めようというので一年半というのが出たのですからね。余り科学的な根拠のような話をされますと……。とにかく現実には三年で一万一千七百二十五名もおるわけですから。パーセンテージが少ないか多いかといいましても、該当者が一万人以上おるわけですからね。ですから私は、そういう数字は一年半で固定するんだというふうには病状によっては必ずしも言えないのじゃないか、こういうように考えるわけです。
 その議論は別にして解雇との関係ですが、なぜ私がさっきしつこく認定を聞いおったかといいますと、実際問題として三年という時点で長期療養給付になるかどうかというので認定をするわけですよ。ですから、三年も同じ症状が続いて労働不能であったという場合には、少なくとも一年半で認定するよりもより確実であることは事実ですね。そこで一年半で認定をした、そしてそれが自動的に一年半延びて三年目に来ると解雇される。要するに解雇制限条項が解除されるということになると、いままでよりもそれは自動的に解雇されていくのじゃないかという不安が残るわけです。というのは、いままでですと三年の時点で審査をして、これは長期療養給付に移るか、あるいは療養しながら休業補償までやるかという、そこでそのときは解雇の時点と関係しますから労働者の方も真剣でありますし、また使用者の方も十分注意をするし、また監督署の方も解雇につながる問題ですからそれは十分認定してくれる。ところが、一年半という時点で認定をしておって、自動的に一年半たてばもう解雇制限条項は解除されるんですよということになると、どうも解雇制限条項が弱められるのじゃないかという不安があるわけですね。そこでやはり、三年という時点で解雇という場合には、それは常に監視しておかなければならぬことは事実ですけれども、特に三年目というときには十分診断をする必要があるのじゃないか、私はこういうように思うのです。
 と申しますのは、その後三年たって後に症状が軽くなって職場復帰ができる、しかし解雇されておるからもとの職場には復帰できないのです。それは社会的には復帰できるけれども、解雇されておるからもとの職場には帰ることができないわけです。その診断をいつしたかというと、実は療養開始後一年半の時点でしたんだということになるわけですね。ですから私は、症状が一応固定して、そうして軽い作業ができるという状態になってももとの職場には帰れぬ、そのときにはもう解雇されておるという状態がやはり起こるのじゃないか、こういう心配があります。
 そこで、三年という時点について、これは行政ですけれども、もう一回認定を十分する、そこで解雇というものが制限をされるかどうかということが問題になる、こういうように思うのですけれどもね。そこで私は、もし三年目においてこれは近く治りそうだと思ったら、そのときにおいて療養給付と休業補償に切りかえればいい。そうすると解雇制限条項の解除はなくなるわけですね。私は一つこの点の心配が非常にある、盲点が。ですから、私は厚生年金が一年半で障害年金をよこすとか、あるいはその関連において傷病年金に切りかえるということに反対しているのじゃないのです。問題は、そこの解雇のところを三年目にもう一回審査してもらって、これは近く症状が固定して軽い作業ができるというならば、解雇制限条項も残しておいてもらいたい、こう思うのですが、どうでしょうか。
#72
○藤繩政府委員 解雇制限とかあるいは特別支給金二〇%とかいう問題があるものですから、いろいろ議論が混淆いたしますけれども、本来のたてまえからいえば、非常に労働不能の状態で重篤だというような場合には、一日も早く安定した年金を差し上げるということが望ましいわけで、休業補償、療養補償ということになれば、その都度いわば出たり入ったりといいますか、療養していても休業を要しないときには休業補償は支給されないわけですから、そういうような状態よりも手厚い年金を支給するということが望ましいわけでございまして、その点では三年より一年半というようなことは私はやっぱり改善ではなかろうかというふうに思います。それから症状の状態も、先ほど申し上げましたように、一年半という時点では通常の被災者は九九%治っておるというような状態でございますから、やはりその辺でそれほど無理はないというふうに思うわけでございます。
 ただ、解雇制限との関連では、いまいろいろおっしゃいましたような懸念といいますか、そういうことが考えられることは事実でございます。先ほど来強調しておりますように、労災補償を行っております場合は、常に症状を見て、適切な、それに見合った補償をするというのが本来のたてまえでございますから、したがって、いま御提案のように、三年目はもとより、常に私どもは症状調査というものを行って、それに見合った適正な補償ということをしてまいりたい。ですから、一たん傷病補償年金に移りましたけれども、その後非常に調子がよくて、治癒まではいかないけれどもまあ外へ出られるというような形になれば、これは療養補償、休業補償ということで復帰していただくということはもちろん望ましいことであります。そういう実情に合ったような措置がとれるように、私どもも症状調査その他をしっかりやってまいりたいというふうに思います。
#73
○多賀谷委員 常に症状の観察をやられるのは、それは結構なことなんですよ。けれども、三年目という一つの解雇制限条項が解除される時期があるわけですから、ことにこの時期には私は十分な診断をしてもらいたい、こう思っておるわけです。手おくれになると非常に困るわけですよ。私は、早く年金に移ることもそれは賛成なんです。ただ問題は、解雇制限の解除がやっぱり労働者としては非常に心配な点。ですから、その点は従来は三年で診断をしたわけですから、一年半でもちろんおやりになるわけでしょうけれども、三年という時点は特に診断をしていただきたい。そうしないと、職場復帰をやがてしようとするような状態になった、しかし残念ながらもとの職場は解雇されておるから帰れないと言う。なぜ言うかといいますと、日本の場合は退職金とかなんとか全部関係してくるわけですよ。ですから、おまえ、よくなったからもとの職場へ帰してやろうと言われても、給与体系から、それから退職金から支給されておるわけですから、もうそれは中年で入るというのは惨めな、ましてや障害者ですからね。ですから、私はその点は、ひとつ三年目というものについては特に自動的に解雇制限が解除されないような処置を行政処置としてやってもらう方法はないか。これはひとつ大臣から御答弁願います。
#74
○長谷川国務大臣 こうして御議論をされている間に、だんだんわれわれの気がつかない実情などもまたわかってくることでして、今度の労災改正案というのは勤労者諸君の問題についてやっていることでございます。いまおっしゃるように一年半ということで私どもの方もやっておりますが、いまお話しのような一年半あるいは三年というふうな点もいろいろ考えてみたい、こう思っております。
#75
○多賀谷委員 ひとつその区切りの時点は特に十分観察し、診察をされることを要望しておきます。
 そこで、今度は給与の関係ですけれども、八〇%特別支給金を含めてもらっておりました受給者が、今度はこの傷病補償年金に移りますと、一級は確かに八〇%より多いんですが、二級、三級は下がるわけですね。その補てんをどういうようにされるのか。
 それから、従来、三年後においても休業補償をもらっておった人は厚生年金が支給されていた。この人は今度は調整をされることになるが、その点はどうか。
 それから、将来にわたってその制度は特別支給金によって補てんをされるものであるかどうか。この点をお伺いしたい。
#76
○藤繩政府委員 従来、休業補償あるいは長期傷病補償給付が六〇%でございますけれども、それに特別支給金が二〇%乗っておりましたから実質八〇%。そうすると、今度傷病補償年金が六七から八六でございますので、一級のところは文句なくいいんですけれども、その他は下がるじゃないか、その差はどうするんだというお話でございますが、先ほども枝村先生にお答えしましたように、必ずしも全部二級、三級は下がるとも限らない。今度はボーナスを対象とする特別支給金を支給いたしますので、私ども試算しましても、それを加えれば大方は三級でも現在のものよりは若干よくなるという試算を持っておりますけれども、しかし、ボーナスが全部の事業場にあるわけではありませんので、場合によってはやはり下がるということが起こり得るということは否定をいたしません。そこでそれにつきましては、先ほどお答えしましたように、この法律を施行します来年度の五十二年四月一日の時点で長期傷病補償給付を受けている、あるいは休業補償を受けている者につきましては、その差額を補てんできるような、つまり、いままで受けておった実額を下回るようなことのないような特別の支給金をぜひ設定をしたいというふうに考えております。関係審議会とも御相談をして、そこは補てんをしたいというふうに思っております。
 それから、厚生年金との調整でございますが、これは従来年金についてやってまいったわけでありまして、ただそのやり方について、今度、基本的な考え方は変えませんけれども、少し合理的に調整をしたいと思っております。休業補償給付を三年を超えて非常に長いこと受給をしていらっしゃるという方が、非常に例外的ではありますが、若干見られる。これは先ほど来御議論がありましたようないきさつで、長期傷病補償給付まではいかないけれども、しかしかなり長期にわたってそういった給付が継続されるというような場合に、片方で厚生年金の障害年金等が支給されます場合、従来そういうことを予想もしておりませんでしたので、調整が行われませんでしたけれども、この改正を機会にそれも必要な調整を行わせていただきたいというふうに思って、この改正案を出しているわけでございます。
 それから最後に、一応その補てんはわかったけれども、将来それが起こった場合はどうするかという御質問でございますが、これは今後、来年度予算あるいは特別支給金の規定を決めていきます場合の問題でございまして、政府部内でも率直に言いましてそこのところはややペンディングで経過いたしてまいりましたけれども、私ども、実情もよくわかりますし、それほど多い数でもございませんので、現に支給を受けている者については先ほど申し上げました例に準じた措置をぜひとりたいというふうに、今後財政当局その他とも折衝してみたい、このように考えております。
#77
○多賀谷委員 大臣、いまの点はよろしいですか。
#78
○長谷川国務大臣 前々から議論が出ておりますから、こういう改正の機会に労働省は前向きの姿勢でそういうふうにやっていきます。
#79
○多賀谷委員 では、将来にわたって下回ることのないようにしたいということですし、大臣も前向きに対処するということですから、その方向で努力をしていただきたい、こういうように思います。
 そこで、若干従来の懸案でありましたのが改正されておりまして、たとえば、長期傷病給付に移りました脊損やけい肺の患者で、切りかえた時点で一時金をもらっておりましたので四十日分ずっと差し引いておりましたのが、これが解除された、あるいは葬祭料とかその他も支給を受けることになるという点は非常にうれしく思います。確かに前進をしていただいてありがとうございました。
 そこで、従来から問題になっております年金のスライド制の問題については、これは従来二〇%であったのが年金については一〇%、休業補償は依然として二〇%ですが、これはなぜ休業補償が二〇%にされたのか。それから、人事院勧告は、五%民間給与に変動があった場合には勧告をするということになっておる。厚生年金は物価でありまして、消費者物価に五%変動のあった場合はスライドになるということでございますが、なぜ一〇%という数字を持ってこられたのか。これはやはり五%にすべきではなかったか、こういうように思うのですが、その点をお聞かせ願いたい、かように思います。
#80
○藤繩政府委員 休業補償のスライドの手直しは今回しないで、主として年金につきまして、従来二〇%のスライドを一〇%に改善をしたということでございます。これは端的に言えば、審議会でもその点が御議論になりまして、審議会の答申でも休業補償の点については今後の論議に譲られておるわけでございまして、それに従ったというわけでございますが、その背景になっております御議論は、結局スライドというのは、年金というような非常に長期にわたる給付がありまして、そして物価、賃金等が変動していく場合にそれに追いつけない。そこである程度の期間を見て、安定的な状態をとらえて、変動があればそれに手直しをしていく、こういう性質のものではなかろうかと思います。そういう意味ではやはり年金のスライドというのが本来スライドのあり方だろうと思います。むしろ休業給付は、先生御承知のように現在は基準法の規定によっているわけですが、休業給付の場合は、療養のために働けない、働けないから賃金がもらえない、その場合にそれを補てんしようというわけですから、できるだけ本人のおります職場の周辺の労働者の状態というものにスライドしていく必要がある。そういう意味では四半期ごとのスライドを考えて、しかもできれば企業ごと、小さい場合には産業ごとということでできるだけ細かく実態をとらえまして、そこで見ていくというたてまえをとっておりますことは御承知のとおりであります。そういうふうに細かく労働者の周辺の状態を見ていきますと、余りスライドのパーセントを小刻みにいたしますと、過去においても幾つかの例がございますが、賃金の変動が非常に激しいときに、場合によっては下がるというようなこともございまして、短期給付については必ずしもその辺は改善にすぐつながるというわけでもないのではないか、なお今後ひとつ慎重に検討をする必要があるのじゃなかろうかというのが審議会の結論でございました。それからもう一つ、基準法の規定を援用しておるということからも、やはり労働基準法自身の問題でもあるということでございますので、労災保険だけで判断できないということもありまして、今回は先に譲ったような次第でございます。
 それから、公務員は五%ではないか、あるいは人事院勧告は五%ではないかというお話がございましたが、これを幾らにするか。二〇%はいかにも幅が広いということで改善をするという方向を出したわけですが、御承知のように厚生年金は物価スライドでございます。物価がいいか賃金がいいかということになれば、事の性格上、労災というのは被災者の稼得能力の補てんでございますから、やはり賃金によるべきであろうということは考えられます。最近はやや状況は変わってまいっておりますけれども、少なくとも過去ずっと見ますと、物価よりも賃金の上昇幅の方がはるかに大きいので、やはり賃金スライドにした方がベターであるというようないろいろな判断から、審議会におかれましても今回、物価スライドではないということで、賃金スライドで二〇%を一〇%にした、こういうような経過でございます。
#81
○多賀谷委員 賃金スライドの方がよろしいことは明らかです。ただ、年金スライドについて五%という線までなぜ踏み切れなかったのかという疑問を持つ。われわれとしてはこれは非常に不満でありますが、将来はやはり五%に前向きで検討してもらいたい、こういうように思います。
 そこで、従来非常に問題になっておりました例の見習い大工ですが、見習いのときにけがをした者は生涯見習いの賃金でスライドするか、これが一番大きな非常にむずかしい問題であります。非常に若い時期、十九歳ぐらいのとき、非常に給与の低いときにけがをした者は一生低い賃金補償しかもらえないという点が非常に大きな問題だと思うのですよ。
 そこでまず第一は、日本のはまさにそういう意味では年功序列型賃金になっておりますし、あるいはまた若いときは技能が十分熟練をしていないということもありまして非常に低い。それからもう一つは、相当前にけがをされた当時は初任給が平均賃金に比べて非常に低かった。最近はわりあいに初任給も上がってきた、いまであるとそれほどの差がつかなかったかもしれないという問題もあるでしょう。たとえば、あなたの方で試算をした資料によると、三十五年四月、十九歳で罹災をした人で障害等級の三級に該当する者、この人の昭和五十年度障害補償年金の給付基礎日額は三百八十円。現在はその人は三十四歳になっておる。そういたしますと、年齢調整があった場合とない場合とは非常に違うのですね。たとえば年齢調整があって――年齢調整といいますと、三十四歳の人はどうなっているかというと、大体三十五年から五十年度までの間に賃金スライドが五・六七、それから年齢スライドでいくと二・二ぐらいになる。ですから、五・六七でありますと三級の人で五十二万七千八百七十七円なんです。ところが年齢調整率を掛けると、二・二でありますから百十六万になる、こういうように倍以上違うのですね。何かこれは工夫はないのですかね。
 というのは、公務員共済がいままでずうっと平均スライドをしてきたのですけれども、ことしは低額者のスライドを多くしてきたのです。たとえば、これは金額をべたに掛けますから率ではいきませんけれども、給与の低い人の場合は、六十五万二千円未満は一一・五%にしております。それから三百三十二万円以上の人は一・〇二、若干の定額を入れております。これは年齢じゃないのですが、こういうように給与の非常に高いところと低いところというので調整をしているのですよ。ですから、長期療養給付の場合もやはり年齢でいくか金額でいくか、何らかの調整をしてやらないと非常に不合理が出てくるのじゃないか、ただ一律スライドというのが不公正を拡大するという形が出てくるのじゃないか、こういうように思うのです。それを一体どういうようにお考えであるか。それから最低補償給付基礎日額をどのくらい引き上げられるつもりであるか。これらを御答弁願いたい、かように思うわけです。
    〔葉梨委員長代理退席、戸井田委員長代理着席〕
#82
○藤繩政府委員 スライドの場合に、その賃金の年齢的推移を反映させる必要があるのではないかというのは大変大事なスライド制のポイントでございまして、労災保険審議会でも実は非常に活発な論議が行われました。ただ結局、いろいろな議論が出ましたけれども、非常にまだ問題があるということで将来の問題としてこの際は先に譲られたわけでございますが、どういう問題があるかというと、一つは、そもそも年功賃金体系というものが一般的であるかどうか。いま公務員の例をお挙げになりましたけれども、公務員はこれはもう大体において間違いないわけですけれども、建設業とかあるいは非常に職人的な職種でございますとか運転手さんだとか、そういうところまで含めて考えます場合に、年功序列賃金体系が一般的であるかどうかという点。それから、仮に年功的な要素を考慮するとしても、どんな方法で賃金の年功的要素を把握するか、あるいはどの程度までスライドにそれを反映させるか。それから、受給者が非常に高齢になると今度受給額が下がるという場合もあるけれども、それはそれでいいのか。あるいは学歴別、男女別、産業別、職種別で年功要素に与える影響が非常に区々であるという場合、非常に難問がたくさんございまして、問題意識は私ども持っておるのでございますけれども、なお慎重に検討を要するということで先にやられたような次第でございます。
 なお、最低保障額につきましては課長から……。
#83
○田中説明員 給付基礎日額の最低額につきましては、現在一日千八百円ということで決めてございます。この制度が設けられましたのは昭和四十年の改正以来でございますが、逐次情勢の推移に応じて引き上げてまいりました。現実に引き上げの際の考え方の基準と申しますか、計算の基準としては、やはり同じ労働保険といたしまして失業保険の最低の賃金日額とのバランスを考慮して決めてまいったわけでございます。そういう意味で現在は双方とも最低額が千八百円ということでございますが、さらに賃金動向その他の情勢の判断の上で、必要に応じてまた改正してまいりたい、このように考えておるわけであります。
#84
○多賀谷委員 どうも日本の場合は最低賃金というのが非常に低いものですから、もうあらゆる点に行き詰まるわけですよ。後からもちょっと質問しますけれどもね。たとえばボーナスといいましても、ボーナスを入れていただくのは非常に結構なんですよ。結構なんですが、むしろ格差の拡大の面もあるのですよ。ですから、いつでも言っておる日本の雇用形態、それから賃金形態というのが非常にアンバランスになり、賃金市場というのが確立されていないものですからこういう場合には非常にやりにくいと思うのです。けがをするような職種ですから、普通の最低賃金を持ってきてそうして当てはめるというのはぼくはいかがと思うのですよ。もう少し労災の最低給付基礎日額を上げてもらいたい、こういうように思うのです。これはひとつ大臣、ここらをちょっと上げてみたらどうですかね。ただ最低賃金がこれだから千八百円ぐらいというのは、労災の場合どうも軽労働をしている最低賃金の基礎日額を持ってきて最低補償給付基礎日額にしておるというのはどうかと思うのですがね。
#85
○長谷川国務大臣 お話のとおり、日本の賃金体系というのはなかなか複雑多岐であります。しかし、いまのようなお話もありますし、それから雇用保険との関係を見まして来年また考えてみましょう。雇用保険との関連においていろいろ研究してみます。
#86
○多賀谷委員 雇用保険との関係じゃないと思うのですよ、これは。けがをするというような職種、けがをした実態ということですね。余りにも低いのじゃないか。何か別の要因を入れて最低補償給付基礎日額を決めていただきたい、こういうように思うのですよ。ですから、各地域別のいまの最低賃金制あるいは雇用保険というものとは少し労災は観念を変えて最低補償給付基礎日額を定めてもらいたい、こういうように思います。
 そこで次は、一つは、大きな問題ですけれども、労災と厚生年金の調整問題ですね。これは従来から議論のあった問題です。ドイツのように、まず労災が全国的に先行する。ですから、けがをした場合はまず労災は全額払う。そうしていわば日本でいう厚生年金のようなのが補完的に調整をする。日本の問題は逆ですね。厚生年金が先行するわけですよ。そうして今度は労災の方がさらに補完をする、こういう形になっているのですね。この日本のも私はちょっと不思議だと思うのですよ。結局経営者の方はそれによって義務を免れるわけですよ、逆に言うと。今度はそうでしょう。まさに今度の場合だってそうですよ。いままでは三年でいっておったのが今度は一年半と、こう言う。そうすると、一年半から厚生年金が出てくるわけですから、厚生年金の障害年金はまるまる払う。それから傷病年金は労災と厚生年金を調整した額を出すということでしょう。ですから、経営者の方から言えば今度は一年半もうかったというか、それだけ義務を免れた。ですから厚生年金の方はたまらぬのですよ、逆に。今度は逆に労災の方が一年半にしたために、労災が払うべき性格のものを今度は厚生年金が払うという形になるのですよ。法律が最初できたときは必ずしもそうでないのですよ。労災の一時金をやる、たとえば遺族年金は千日分というのは六年くらいの生活保障給だったから、厚生年金をストップしたわけです。厚生年金が調整になっていたわけです。それは不合理じゃないかという問題が起こって、今度厚生年金を併給するようにしたのです。併給じゃなくて、今度厚生年金は前に出たわけですよ、先行したわけです。今度は労災の方が調整になったわけです。ですから、年金会計というのは今後ますます窮屈だというのに、年金会計はまるまる労災のものも厚生年金を払って、後から労災の方が調整するというのは、日本の今後の年金財政から見ると大変なことなんです。
 ですから、公務員の方はちゃんとそういうところはしかるべくやってあるんですよ、公務員共済の方は。すなわち、公務員の今度出ました公務員労災補償法ですね、これは公務による疾病の場合はまるまるまず公務によるものが支払われる。その後共済が給付金額を低くして払っていく。ですから共済の方が調整用になっておるのですよ、公務員の場合はですよ。ところが民間の場合はなぜ逆になるのですか。それはどういうことでこういうようになっておるのか。大体厚生省はこういうのを一体どういうように論議をしておるのか、金がない、財政がないと言っておるのに。これをひとつまず厚生省からお伺いしたい。
#87
○坂本説明員 厚生年金と労働者労災補償保険の調整でございますが、先生が御指摘になりましたように、従来は労働者労災補償保険というのが一時金の形でございましたので厚生年金をストップという形をとっておりましたが、労働者労災補償保険の方で給付を年金化するときに現在のような形に改められたわけでございます。いろいろ議論はあったわけでございますけれども、やはり両制度の目的あるいは給付の性格というようなものを考えまして、厚生年金が直接にその生活安定のための所得保障を行った、労働者労災補償保険の方は損失補償という形でそれ以上の給付を払う、こういう点から考えますと、厚生年金が業務上外を問わず社会保障としての基本的な給付をまず行うということは、実際に受給者の立場に立ってみたときには非常に効果が大きいのではなかろうかというような考え方で現在の制度が成り立っておるようでございます。先生の御指摘のように、財源面での問題点は確かにございます。私どももその点の問題というのは理解しておるわけでございますけれども、現在の制度から考えまして、一応この生活安定のための所得保障部分というのを業務上外を問わずとにかく一律に給付するという形にしておくことが妥当ではなかろうか、こういう考え方で現在整理を行っておるわけでございます。ただ、先ほどおっしゃいましたようなこの調整をどうするかというのは、確かに大きな問題でございまして、私どもの方でもいろいろまた検討をしていかなければならない問題であるという意識は持っております。
#88
○多賀谷委員 そうすると――人事院見えておるでしょう。人事院の方はこれはどうなんですか。公務による疾病年金の方は全額くれるわけですよ。それで公務員共済の方は、これは百分の三十とか百分の二十とか百分の十というのによって停止をされるわけです、その分だけ。これは一体どうなっておる。だれか答弁を……。
#89
○柳説明員 国家公務員災害補償法に基づきます年金たる給付と国家公務員共済組合法に基づきます年金との間の調整につきましては、過去の恩給の時代からの流れがございまして、いろいろ議論もあったようでございますが、特に国家公務員災害補償法の方で遺族補償の相当分が年金化されました昭和四十一年の改正当時には相当検討が行われたようでございますけれども、結果的には、これまでの沿革的な理由というものを考慮いたしまして、恩給の場合を参考にして、補償法の方では全額支給、共済の方で上積み分を減額するという現行の規定ができたように承知をいたしておるわけでございます。なお、この関係につきましては、昭和四十一年の同改正の際、附則三十三条におきまして、なお長期的に検討するというような規定もございますので、人事院におかれまして現在なお継続的に調査研究を実施されておられるというように伺っている次第でございます。
#90
○多賀谷委員 これは大臣、政府といいますか、政府の公務の場合は災害補償法によるまず全額支給で、あとは職員も出している年金の方でその上積み分を出す、こうなっておるのです。民間の方は、経営者から頼まれたと私言いませんけれども、厚生年金の方が、これは労働者の掛金もあるわけですが、全面的に支払う、そしてその上積み分を今度は労災の方で出す、こうなっているんですよ。ですから、これは私は立て方が違うんじゃないか。同じ日本の法律の制度の中で制度が二つある。全然異なった制度が行われておるわけですね。こういうところにどうも私どもは解せない点があるんです。これはどういうようにお考えですか、大臣と局長。
#91
○藤繩政府委員 この点につきましては、先ほど厚生省からも答弁がございましたように、従来いろいろな議論がございまして、本来は、労災がまず払って、そうして厚生年金を払うということで一貫してきたわけでございます。ただ、年金化の場合に、そもそもわが国の社会保障制度の中でこれを解決する場合に、厚生年金が社会保障制度としては根幹であるということで、それが先に出たわけでございます。これは実は大議論があるわけで、率直に申し上げまして私どもと厚生省でずいぶんやり合った結果、現在のような状態に定着しているわけでございます。そこで、実は労災保険審議会でも、これはこういう際にやはり基本的に論議をしてほしいという要望もございまして、私どもも、今回の措置の場合にはこれは従来どおりしておりますけれども、これで終わったということには考えておりませんし、また現に昭和四十年の労災保険法の改正のときに、附則の四十五条に「厚生年金保険その他の社会保険の制度との関係を考慮して引き続き検討が加えられ、」という条項が残っておるわけでございまして、私どもとしてはこれでよし、終止符を打ったというふうに考えてはいけない、今後とも十分検討しなければならぬ問題だというふうに考えております。
#92
○長谷川国務大臣 年金問題で非常に詳しい多賀谷さんの御指摘ですが、いま局長からも話しましたように、何といいましても、年金問題は不公正是正といいますか、こういうときには非常に考えなければならぬ問題でございますから、私の方は私の方として審議会等々でこういう議論のあったこと、またいままで持っている気持ち、それらを反映しながら将来とも研究してまいりたい、こう考えております。
#93
○多賀谷委員 なぜ私が言うかといいますと、今度一年半ということで障害年金が厚生年金から出るわけでしょう。厚生年金はまるまるその分だけ余分な支出になるわけですよ。ところが、労災の方はいままで休業補償をやっておったわけでしょう。この休業補償が要らなくて、今度は傷病年金になるわけです。傷病年金になりますと、その分はまるまる払わなくて、厚生年金の上積み部分だけでいいということになるのですよ。だから、もうすでに今度の処置で厚生年金の方の会計は支出が多くなり、労災の方は免れるのですよ。早くしたような顔をしておるけれども、実際は免れるのですよ、いままでは休業補償を出しておるわけですから。今度は休業補償を年金に切りかえて、その年金の分は上積み部分だけですから。何か今度はあなたの方は前進をしたように思うけれども、会計から言うと逆になるのですよ。それで今度現実に労災の会計はそれだけ得するわけですよ。払っておるのじゃないのですよ。いままで払っておった休業補償が年金に切りかわることによって、その調整部分だけ出せばいいということになるのですよ。ですから私は、どうも制度がおかしいんじゃないか、こういうように思うのですよ。大臣、どうですか。
#94
○藤繩政府委員 先ほどもお答えいたしましたように、それは基本的な論議のあるところでございまして、ですから私どもとしては、先ほども読みました前の法律の附則もございますし、今後なお引き続いて十分検討しなければならない点だというふうに思っております。
#95
○多賀谷委員 これは厚生省、何しておるのかね。もう少しがんばらないと、金がない金がないと盛んに言っておるのでね。(「厚生省はがんばっておる」と呼ぶ者あり)厚生省、どういうようにがんばっておるのだ。
 次に、これは具体的な問題ですけれども、一つは医師の選択の自由権です。実はもう時間がありませんからごく簡単に申し上げますと、北九州の新日鉄の八幡で労災認定を受けた。受けたけれども、製鉄病院に行かないからといって、就業規則違反じゃないかというので会社がやかましく言ってきておる。というのは、指定した病院じゃない、こう言っておる。そこでこれは法務局北九州支局の人権擁護委員会に救済の申し立てをしておる。そうしたら、こういうことで指定病院への強制転院は人権侵犯の疑いがある、そういう勧告がなされておるわけです。労災の方としては一体どういうように考えられておるのかというのが一つ。
 それから、やはり北九州ですが、公害の患者認定を受けておる。それはベンツピレンなんかつくっておる、そういうベンツピレンなんかがある、職業病のある化学工場です。ところが労災の認定はしないのですよ。公害病の認定はしたわけですよ。ところが労災の方は認定しない。その公害のもとは、その職場からいろいろな粉じんやその他が出て、そして公害の患者の認定を受けておるわけです。ところが労災の方は認定しないのですよ。これは一体どういうことなのか。これは具体的な問題ですから後からでもよろしいですけれども、わかりましたら御答弁願いたい。
#96
○藤繩政府委員 労災におきましては、被災者がどういう医師を選んで療養を受けるかということはもとより自由でありまして、私どもとしてはそれをとやかく言うわけではございませんけれども、しかし、業務との因果関係があるものが当然のことながら労災の補償の対象になる。そこで間々、先生御承知のように、医学論争的なボーダーラインについては医者の判断というものが非常に重要なことになる場合が多いわけでございます。したがいまして、私どもは通常、重要なものにつきましては、各専門家のお医者さんにたくさん集まっていただきまして、いわば医学界のコンセンサスというようなものを得ながら共通の認定基準というものを設けて、それで処理をするというのが通常でございます。したがいまして、通常の場合は医師の診断書その他で労災認定をしてまいりますけれども、認定基準等から見ましては、はなはだしく判断に問題がある、業務上の関係その他に問題があるということになれば、私どもとしては保険者たる立場から、やはり労災病院その他の専門医の診断を仰ぐということもやらざるを得ないわけでございます。ただいまお挙げになりました具体的な事例につきましては、いま初めて伺いまして、はっきりいたしませんので、後ほど調べて御報告をさしていただきたいと思います。
 それから、公害認定につきましても、一般論としては確かに問題があろうかと思いますけれども、ただ、公害の認定基準と労災の認定基準とは必ずしも一緒のものではございませんので、その辺も具体的な問題に照らしてみませんと何とも申し上げられませんので、後刻至急調査をさしていただきたいというふうに思います。
#97
○多賀谷委員 これは時間がありませんから別の機会に具体的に例を挙げて質問をしたいと思います。
 それから最後に、いつも頼まれ、そして問題になるのですが、例の脊損患者等の付き添いですね。これは社会保障等が全然ないのですね。社会保険が全然適用されないのですよ。患者さんが雇ったことになる。これは何か工夫ないですかね。率直に言うとこれは日本の雇用形態の悪いところですけれども。この前も病棟間、病棟から病棟へ行っておったときに車にはねられたという事故があった。これは労災にも何もかからないのですね。これは雇用関係にない。こういったものをどういうように扱うか。もちろん厚生年金もない、それから一般の健康保険もないわけでしょう。二十年もその人を看護しておる。しかし社会保険はほとんどないという。こういう労災を扱っている場合にたまたま出た問題ですけれども、ひとつ何らかここを工夫してもらいたいと思うのですよ。それは付添婦の家政婦協会が雇用するようにするのか、何らかの処置をとらないと、とにかく事業主ですからね、付き添いさんは。ですから、患者の仕事をしておった場合に、途中で車に飛ばされたなんというのでも、何も労災の恩恵を受けぬ。これもきょうは答弁は結構ですから、ひとつぜひ検討してもらいたい、こういうふうに思いますが、どうでしょうか。
#98
○藤繩政府委員 先般も車いすの方々がお見えになりまして、いろいろな陳情を受けまして、その中には先ほどのような四十日の減額でございますとか、いろいろな陳情がありました。今度の改正でその陳情された部分が相当実現をしていると私ども自負いたしておりますが、その中で私どもも胸を打たれ、なおどうもいい工夫がないと思って頭を痛くしている問題は実はいま御指摘になった問題でございまして、何とかしなければならぬ。しかし、現行法制下ではどうにもならないという問題でございます。実情はよく伺って承知をいたしておりますので、今後ひとつ詰めて研究をさしていただきたいと思いです。
#99
○多賀谷委員 終わります。
#100
○戸井田委員長代理 この際、午後一時三十分まで休憩いたします。
    午後一時休憩
     ――――◇―――――
    午後一時三十四分開議
#101
○熊谷委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律案について質疑を続行いたします。村山富市君。
#102
○村山(富)委員 先ほど来、労災改正案につきましてはいろいろ御審議がございましたので、私はむしろ、いまの労災法やあるいは労働安全衛生法あるいはじん肺法等が現実に適用されている部面で若干の問題がありますから、そういう問題を、二つの事例を挙げて御質問申し上げたいと思うのです。
 一つは、これは最近の新聞で報道されて大体明らかになっているわけですけれども、大分県の佐伯市と、南海部郡というところがありますが、この地域一帯に異常にじん肺患者が発生している、こういう事実が明らかになってまいりました。私が調査したところによりますと、大体現在把握されている数は千三百六十人ぐらいである。これはどうして把握したかと申しますと、保健所が結核検診をやりますけれども、その結核検診で明らかになった者、あるいは入院して治療を受けておって、そして病院からカルテをもらってきたというような者を合わせて大体千三百六十名。ですから、この保健所の結核検診にかからなかった者、検診を受けなかった者が相当数あるわけですから、いろいろなお話を聞いてみますと、大体三千人近くじん肺患者があるのではないかというふうに言われているわけです。これは実際には把握されておりませんから明らかになっておらぬわけでありますけれども、現在入院して加療している者が百三十人ぐらいある。この中で管理区分管理四のものが大体四百四十一名ぐらいある。五十年にじん肺で死亡した数は大体二十二名ぐらいある。こういう実態を見てみますと、明らかになって治療を受けている者はいいのですけれども、そうでなくていまだにまだ出かせぎに行って同じような職場で働いている患者もおるわけですから、したがって、こういう実態を見た場合に、これは恐らくもう労働省の方も調査をしていると思いますけれども、労働省の方で調査をしてつかんでいる実態があれば明らかにしてもらいたいというふうに思うのです。
#103
○長谷川国務大臣 数字とかいろいろなことは局長から答弁させますけれども、大分県の南部の佐伯市あるいはいまおっしゃった南海部郡ですか、そういうところに、トンネル工事に従事している諸君で、長年にわたって働いている労働者諸君の中にじん肺患者が多数いるという御指摘が前にもたしかあったように聞きますので、直ちに私の方では現地大分労働基準局長に対して、関係行政機関とも十分連絡をとりながら実態を把握するように実は指示したところであります。
 役所といたしましては、従来からも本件に関する多数のじん肺患者についてすでに補償なども行ってきておりますけれども、その他の者についても、就業状況、あるいは健康診断実施の有無あるいはその結果などの実態が明らかになり次第に必要に応じて適切な措置を講じたい、こう思っておりますが、労災補償の必要あるものがあれば直ちに補償を迅速に行うような気持ちで対処してまいりたい、こう思っているところであります。
#104
○藤繩政府委員 五十年の三月に地区の学会で、ここの佐伯保健所の三浦先生という方がこの問題について発表をされたわけでございまして、私どもとしては直ちにそれに応じて現地で聞き取り等をやらしておるわけですが、大体の概要は先ほど先生がお挙げになったようなことでございます。三浦さんの方で千三百六十名のレントゲン写真を持っておられるそうでございまして、そのうち四百四十一名がじん肺結核ではないかということを言っていらっしゃるわけですが、私どもの方では、管理区分四の三百五十名については、すでにそれぞれの地区で申請をして、労災補償を受けているというふうに把握をいたしております。
 問題は、この被災者の方は出かせぎの方が多うございまして、それぞれの地区で特にトンネル工事なんかに従事していらっしゃるわけですから、通常はそこの事業場で被災されて労災申請ということで、現にそれだけの被災者が労災手続をとっておるのでございますけれども、なお、これだけの問題になっておりますし、漏れがあるかもしれませんので、私どもとしては重ねて実態の把握に努めてまいりたいということで、先ほど大臣からお答えいたしましたような現地に指示を行っているところでございます。十分現状を把握したいと思っております。
#105
○村山(富)委員 いま御答弁がございましたように、私は、まず実態を把握することが大事だと思うのですね。先ほどもちょっと触れましたけれども、現実に本人は幾らか自分でも悪いと知っておるわけですよ。知っているけれども方法がないものですから、しかも生活がかかっているものですから、同じような職場に出かせぎに行っている、こういう実態がありますから、そういう実態をどういうふうに把握するのかという把握の仕方ですね。これは県の方でも大変問題にいたしまして、県でも住民の健康診断をやろうとかいうふうな方向を決めていますから、私は、この際労働省も県と協力をして、そういう全住民の健康診断なりあるいは検診をしてみる必要があるのではないかと思う。
 同時に、これは相当以前から、恐らくじん肺法ができる以前からあったのじゃないかと思うのです。大体あの地区は伝統的に、背景がすぐ山ですからたんぼも少ないし、それから沿岸漁業が不振で、出かせぎに行かなければ生活ができぬという実態ですから、先輩から後輩にずっと引き継いで世話をして働きに行っている。ですから、言うなれば隧道工事が多い。しかもその隧道も余り大きな隧道でなくて、水路みたいな小さな隧道工事が多い、やっている作業は掘進作業が多い、こういう事実も大体明らかになっているわけですよ。しかも、この作業場で働いている労働者の雇用関係を見てみますと、大体大手の企業が請けて、孫請あたりからあっせんをしてもらって雇われるという実態になっていると思うのですが、まず実態をどうして把握していくかということが一番大事ですから、その実態を把握していく上に、いま申しましたように県の方もそういう段取りをいたしておりますから、県と協力してやるとか、あるいはそういう工事をやっている作業現場あたりを徹底して調べるとか、そういうかっこうでやる以外にないのではないかと思うのですけれども、実態調査をやる上において、やり方ですね、それはどういうふうに考えていますか。
#106
○藤繩政府委員 いまおっしゃいましたように、トンネル工事を主としてやってこられた方であり、しかも就業場所が必ずしも地元ではないわけでございます。ただ幸いなことに、この三浦先生は非常に御熱心で、それだけの人を調査して一応掌握していらっしゃいますから、とりあえずは、県の保健所でございますから、県とよく協力をいたしまして、それらを一つずつ当たっていきたいと思います。
 問題は職歴でございます。労災保険ということになれば、当然のことながら職歴が把握されて、そしてどこで働いてどういう作業に従事していたかということでございます。実は住民の中には職歴が必ずしもはっきりしない方もいらっしゃるということで、なかなか調査は、今後問題がある人もあるのではないか。必ずしも全員がはっきりしない状態があるのではないかというようなことで心配しておりますけれども、できるだけそれをつかまえまして、そして最終職歴がわかれば、そこからまた関係の全国の基準局、監督署に照会をして、なるたけ最終就業事業場を掌握をするということをある程度粘り強くやっていく必要があると思います。
 労働省で独自の健診といいますか、そういうことをやるかどうかについては、もう少し実態を掌握しませんと何とも申し上げられませんが、一応は健康診断の義務は各事業場にあるわけですから、そういうたてまえで進みたいと思いますが、なお今後の現状掌握のいかんによっては、私どもは次の手段を考えなければならぬと思うわけでございます。
#107
○村山(富)委員 さっき言いましたように、県の方も全住民の健康診断をやろう、こう言っているわけですね。だけれども、それはあくまでも県がやる健康診断なんですね。いま局長からお話が出ましたように、仮に労災認定をするとすれば職歴が必要になりますが、そういう職歴の調査なんというのは県がするわけではありません。したがって、県がやるのなら監督署の立場で一緒にやったらどうか、そうすれば早くわかるし、つかみいいのではないか、そういうことを私は申し上げたわけなんですね。
 もう一つは、いま局長からもお話が出ましたけれども、粉じん現場で働いておったという最終職場の証明か何かがなければなかなか申請手続ができない、こういうことになっておりますけれども、私もさっきちょっと触れましたけれども、相当以前からやっていることなんで、そこらはなかなかっかみにくい点があるのではないかと思うのですよ。したがって、そういう点はさらに粘り強く探求していくことももちろん必要でございますけれども、いまの労災申請の手続からしますと大変困難な条件がたくさん出てくるのではないかと思われますから、そういう点はひとつ特殊な事例として、もっと申請手続の方法を簡素化するなり、何かそんなことも必要ではないか。私はむしろ地元の監督署の中に、この際ですから窓口でも設けて、そして親切な指導、相談に応じますというぐらいの姿勢を示せば、いろいろまた事例が明らかになるのではないかと思いますから、そういう考えがあるかどうか聞きたいと思うのです。
#108
○藤繩政府委員 現在の労災補償の請求手続から申しますと、これは省令で決まっておりますが、一応事業場を管轄する署の方で取り扱う、こういうたてまえになっておりますものですから、いまお話がありましたような出かせぎ労働についてはやはり多少問題があるわけでございます。従来からそれでもそれぞれの事業場で手続をとって、先ほど申し上げましたようなかなりの数の方が労災補償を受けておられますけれども、もう帰ってきてしまった、そこで事業場といっても、私どもが調べましたところ、たとえば兵庫県なんか多いのですが、新潟県というような例もあって、なかなか連絡がとりにくいだろうということも想像がつきます。そこで私どもとしては、全国に基準局、監督署がございますから、できるだけそういう組織網を通じてそういった掌握に努めたいと思います。いま御提案がありましたようなことも、私ども労働基準監督機関の仕事の許す範囲でどの程度やれますか、できるだけ前向きに検討さしていただきたいと思います。
#109
○村山(富)委員 それはぜひとも地元の監督署に窓口を設けて、そして親切に相談に応じてやるというぐらいの構えをしてもらいたいと思うのです。
 そこで次に、こういう悩みがあるのですね。たとえば申請手続をしますね、そして労災認定を受けるまでに大概の場合は少なくとも半年以上かかるわけですよ。ある人なんかは申請手続をして認定されるまでに三年かかった、そして認定がおりる一年前に本人は亡くなった、こういう事例もあるのですよ。これは佐伯の場合、いま言っている地域の場合ですよ。したがって、私は、これはやはり認定の手続にも若干問題があるのじゃないかと思うのですけれども、その半年の間、仕事ができない。認定申請しますね、そして認定がおりるまで仮に半年かかるとします。一年かかる場合もある。その半年、一年の間、仕事ができないわけですから、生活に困る、こういう事例があるのです。その点は何かひとつ検討の余地はないですか。
#110
○藤繩政府委員 労災補償はできるだけ迅速に支給することが必要であることは申すまでもないわけであります。ただ、事例によっては、大変むずかしい疾病の場合にいろいろ審査等に時間がかかるということでございますが、じん肺の場合も、先生御承知のように、管理区分四について療養するということがたてまえでございますから、その管理区分を見つけるためには、最小限レントゲンのフィルムも要るわけでございまして、そういったものを読み取ったりいろいろなことで若干の時間がかかることは、これはやむを得ないと思いますが、できるだけ早くするということはそのとおりだと思います。いま、申請をして相当期間がかかって、その間仕事ができないというお話でございましたが、私どもは、申請は申請でなさって、仕事は仕事だというふうに思いますけれども、なお具体例についてわれわれの方で措置すべきものがあれば、これは十分検討さしていただきたいと思います。
#111
○村山(富)委員 その認定に関係して若干お尋ねしたいのですけれども、中央労働保険審査会が審査に当たりますね。その場合に公開審理をした以降、新しい資料が出たとかあるいは新しい状況が見出されたとかいう場合に、参与制度がありますが、公開審理が終わった後は参与というのは全然関係ないわけでしょう、いまの仕組みから言いますと。そうしますと、これは審理の公平を期するという意味からも、私はやはりいまのような審査会のあり方は若干問題ではないか。これはもともと三者構成みたいなもので審査をするわけですから、したがって、参与制度なんというものはこの際やめて、そうして審査委員制度に切りかえて、そうして最後まで審査に公平が期されるような仕組みに変えていく必要があるのではないかというふうに思いますが、その点はどうでしょう。
#112
○藤繩政府委員 労災の支給決定は、それぞれの監督署長が諸般の事情を考えて、認定基準に照らしてこれを決定するというのが普通のやり方でございます。それに不服があります場合に、いまの審査制度でいきますと二審制になっておりまして、一審は、労働保険審査官というのが各基準局にございます。そこに出てまいりまして、さらにその決定に不服がある場合には、中央にございます労働保険審査会に再審査の請求が出る、こういうことになっております。その際、審査でございますので、これはいわば第三者の判定的機能ということで、審査官あるいは審査会とも、いわゆる公益委員といいますか、審査官は公務員でございますが、審査会の場合もいわゆる第三者委員で構成されているというのが現状でございます。しかしながら、御説のように労使の実態に触れる必要がありますし、またそういう意見を十分尊重しなければいけませんので、参与制度というのがとられているわけでございます。
 そこで私どもとしましては、審査の公正を期するためには今後ともこの参与の御活躍に期待を申し上げるわけでございますが、いまお話しになりました、その審査の公開ということと参与ということについては、私は、直接関係はない、別なことだと思います。しかしまあ、一応その審査手続が進んでまいりますので、事実の認定に必要なものはどの段階までにする、それから先はその理論的な検討に入って裁定をするというのが通常の手続でございましょうから、ある段階以降、それはもう今度は理論的な検討に入ろうというようなことになると思いますが、しかし、場合によりましては、非常に重大な、また新しい事実が発生したとかいうようなときには、それはまたそれを参考にすべきこともこれは当然であろうと思います。事は、特に審査会の段階での審査手続だと思いますので、私どもも、これは一応独立の機関にもなっておりますから、よく御趣旨を伝えまして、公正な審査が行われますように今後とも努力をしたいというふうに思います。
#113
○村山(富)委員 ちょっと私の質問が舌足らずだったと思うのですけれども、この審査会にかかるというのは不服の申請があった場合だけかかるわけですからね。ですから問題があるものだけかかるわけですよ。その場合その審査会で審査をする。その前段の分については参与の意見を述べたり聞いたりすることがあり得る。しかし、それ以降の分については、参与というのは全然関係がないというかっこうになるので、それではやはり公正を期せられぬのではないか。これは最近の最高裁あたりの判例を見ましても、単に自然科学的な結論だけでもって認定するとかしないとかいうことをするのではなくて、やはりその状況とかそういう諸般の情勢を類推しながら、だれが考えたってこれはそうじゃないかと思うようなものについては適用すべきだ、こういう判例も出ておりますから、そういう意味からしますと、やはり経営者なら経営者の意見、あるいは労働側の意見というものが公平に開陳されて、十分審査がなされていくというような仕組みのものとに最終まで決めていく必要があるのではないか。だから、そういう意味からしますと、いまの参与制度というものは、これは何といいますか、悪く言えばまあ隠れみのにつくったようなものだというふうに言われぬこともないわけですから、参与制度なんというものはやめて、そしてあくまでも三者構成で審査会をやっていく、こういうたてまえにすべきではないかというふうに思うのですが、どうです。
#114
○藤繩政府委員 労働保険審査官あるいは審査会の組織は、御承知のように法律で決まっておりまして、いま先生がお述べになりました点は、いわば一種の立法論にもかかわる問題だろうと思います。三者構成でなくて、いわば公益委員だけで構成しておるというのは、先ほど申し上げましたように、裁決というものは一種の判定的な機能である。労働委員会の例で言えば不当労働行為みたいなものでありまして、労働争議の調整は労使公益三者でやりますけれども、不当労働行為事件は第三者委員だけでやるということは御承知のとおりでありまして、言ってみれだそういうような性格を持っておるということで現在の体制がとられておるわけでございます。しかしながら、それだけではもちろんいけませんから、参与制度ということで労使の意見が反映されるということでございます。ただいま最高裁のお話も出ましたけれども、十分労使、あるいは労使のみならずいろんな方々、学者その他の意見を反映するということは、これは大事なことでございますから、審査会の審理の手続等について検討を要するものがあれば、これは審査会にもよく連絡をいたしまして検討を願いたいと思いますけれども、いまの審査会の組織を三者構成にしてはどうかという御提案については、ちょっと私どもとしては問題があるのじゃなかろうかというふうに思います。
#115
○村山(富)委員 そういう意見もあるし、問題もありますから、要するにこの機構の運営が公平に迅速になされればいいわけですから、そういう面から問題があれば十分検討をしてもらいたいというように思います。
 これはずっと以前から、冒頭から申し上げておりますように単に労災の認定を受けるというだけの問題ではなくて、やはり生活にもかかっているし、現に、これは先ほども触れましたけれども、悪いと承知しながらやはり生活のために行っておる者もあるわけですから、したがって、県なりそれから職安なり、そういうものともやはり連携をとりながら、適当な職場に転換させてやるとかいうような指導も含めて私はやってもらいたいと思うのです。これは単に労災を認定すればそれで救われるというだけのものではありません。したがって、まあ管理二ぐらいの者であっても、あるいは三の者もあるかもしれない、そういう者も、やはりやむにやまれず同じ粉じん職場に働いておるというような事例もあるわけですから、そういう場合にはやはり適当な職場の転換を図ってやるとかいうような指導も、職安等と連携をとりながらあわせてやってもらう必要があるというように思いますが、その点はどうですか。
#116
○藤繩政府委員 じん肺患者に代表的に見られますような重篤な職業性疾病の被災者につきましては、単に労災給付をすればいいというものではもちろんない。そのために、午前中も御議論ありましたけれども、労働福祉事業というようなことで私どもは労災病院その他の施設を持っておりますし、特にリハビリテーション、いま申されました社会復帰というようなものについては今後もなお力を入れていかなければならぬ点だと思います。じん肺法におきましても、じん肺患者につきましては管理区分等を決めて健康管理をする、それから必要なものは補償するということのほかに、職場の転換とかあるいは必要な職業訓練というようなことまで規定されておるわけであります。ただ問題は、実効がどれだけ上がっているかということであろうと思います。いま御指摘の点もございますから、私どもはさらに関係機関とも十分連絡をとって、実効の上がるような運営に努力をしたいというふうに思います。
#117
○村山(富)委員 私がいま申し上げましたことは積極的に取り組んでいただくようにお願いしておくのですが、どうしてそういうじん肺患者がいままでこういうかっこうで野放しにされていたかという原因をいろいろ探ってみますと、やはり一審大もとは、その作業場に働く前に健康診断が十分に行われなかったというところに一番問題があると思うのですね。これは固定した職場の場合にはもう大分進んでいますから比較的徹底しますけれども、半年ごとに職場を変わっていく、新潟に行ったり富山に行ったり、あるいは京都に行ったり何かするようなかっこうで職場を転換していきますから、そういう職場の場合には、やはり作業に従事する前の健康診断なり何かが徹底してないのではないか、手抜かりがあるのではないかというように思いますが、そういう部面についてはいまどういうふうに指導していますか。
#118
○中西政府委員 じん肺法におきましては、先生御承知のように、使用者は、常時粉じん作業に従事する労働者について、新たに就業する際、それから定期に健康診断を行うことが義務づけられております。これらの規定を遵守させることによりまして一般的には健康診断は徹底し得るわけでございますが、御指摘のように、建設業のように雇用期間が短期であるというような場合にはやはり問題がありまして、就業時の健康診断というものについては特に留意をし、徹底を図らなければならないと私ども考えているわけでございます。そこで、最近におきましても、隧道工事、建設工事等を中心としまして、建設業におけるこのじん肺健診の徹底について通達をいたしておりますし、また、災害防止計画における建設業の重点対策といたしましてもじん肺健診を挙げております。今後ともこのじん肺健診の徹底につきましては努力をいたしてまいりたい、かように考えております。
#119
○村山(富)委員 じん肺法に、就労する際あるいは定期健診等の規定があることは十分知っていますけれども、しかし、実際に行われてない職場がたくさんあるのではないか。だから、そこらの徹底方をどういうふうにやっておるのかというのが私は問題だと思うのですよ。さっきも言いましたように、固定している職場なんかは比較的やりいいのですけれども、移動する職場なんというものはなかなか徹底ができませんから、したがって、そういう職場のじん肺法の適用、施行について徹底した指導が必要ではないか、こういうところに抜かりがあるからやはりこういう問題が起こるのではないかというふうに思われますから、そういう点についての指導方を徹底してやってもらいたいということが一つです。
 それからもう一つは、比較的健康診断もやれないというような実態の中ですから、したがって就労する場合も予防対策というものにやはり手抜かりがあるのではないか。たとえばいま、マスクを使ってやらせるとか、そういう点の手抜かりがあれば、やはり患者は生まれてくるわけですから、したがって、前段の健康診断をやるということが一つ。それから、作業に従事する場合の予防措置を十分講じさせるというような点もやはり問題があったのではないかというふうに思いますが、その点はどうなんですか。
#120
○中西政府委員 その点は御指摘のとおりでございまして、いずれにしましても、建設業におきましてはこのじん肺の予防並びに健康管理につきましては重点としているわけでございますが、特に予防につきましては、御指摘のこのマスクの使用については監督指導等に当たって特に重点的にチェックをすることにいたしているわけでございます。しかし、そうは言いましても、監督の結果から見ましても必ずしも十分ではございませんので、今後さらにその徹底に努めてまいりたいと思います。
#121
○村山(富)委員 時間もございませんからこれで切りますけれども、要するに、実態把握を早くやってもらいたいということが一つ、それから、その実態把握に基づいて、そういう患者に対しては労災認定の手続なりあるいは粉じん職場の最終職場の究明なり、そういう問題等々ありますから、出先の監督署で親切に指導をやってもらいたい、相談に応じてもらいたいということが一つと、同時にまた、転職等についても十分の配慮をしてもらいたいということを特に要望をしておきたいと思うのです。
 それから次に、私どもはことしの三月八日に昭和電工の大町工場の調査に参りました。ここで驚くべき実態があることが明らかになったわけであります。私どもは三月八日に行ったのですが、私どもが調査に入る前に、三月五日に地元の監督署が強制立入調査をやっております。この強制立入調査で明らかになった点があれば御説明をいただきたいと思うのです。
#122
○倉橋説明員 先生御指摘のように、昭電大町工場におきまして監督機関で捜査をしたわけでございます。これによりまして判明したといいますか、被疑事実といたしましては、じん肺法におきまして所定の健診がなされていなかったという、じん肺法八条の違反が発見されたわけでございます。第二点といたしましては、過去の健診結果におきまして適切な報告がなされていなかった、じん肺法第四十五条の違反があったわけでございます。それから第三点といたしましては、捜査当日までに専任の産業医を配置してなかったという事実があるわけでございます。
 以上の点が捜査の結果判明いたしました。
#123
○村山(富)委員 会社がじん肺法にどういう違反をしておったかということだけでなくて、実際にじん肺患者がどういう扱いをされ、どういう実態に置かれておったのかということはわかりませんか。
#124
○倉橋説明員 本件捜査前、昨年の九月におきまして長野局及び大町監督署が昭電大町工場に対しまして合同監督をいたしたわけでございますが、その際、じん肺健診におきまして有所見者があったことが把握されております。具体的な氏名、また健診の内容につきましてはそのときには明確ではございませんが、数名の者について所見があり、その後の精密検査が行われていなかったという事実が判明いたしております。したがいまして、会社に対しまして、さらに精密検診を実施するように、必要があらばじん肺健康管理区分の決定申請をするようにという勧告をいたしております。
#125
○村山(富)委員 そういうことだけでなくて、私どもが調査した範囲ではこういう経過になっているわけですね。これは会社側にも会って、会社側からも説明を聞いたのですから間違いないと思うのですが、五十年の十月に実施した健康診断の結果、千二百八十四名中、疑わしい者八十二名があった。したがって、その八十二名を選び出して、そして労働科学研究所の佐野医師に見方を教えてもらった。ところが、その佐野医師の判断では、八十二名のうち九名の有所見者があったことが明らかになった。この事実から組合の方は疑念を持ったわけですよ。じん肺患者なんというものはそうすぐに生まれるものではない、だから相当以前からやはりあったのではないか、こういう疑念を持って、そして会社の方を追及して、いままで検査をしたフィルムを全部出しなさいと言って全部出させたわけです。そして労働科学研究所の佐野医師に読影をしてもらったところが、千二百八十四名中――これは五十年に実施した健康診断の結果ですよ。千二百八十四名中九百九十三名の有所見者があった。一型が七百二十三名、二型が二百六十六名、三型が四名、こういうことが明らかになったわけですよ。そこで組合の方は、五十年のフィルムだけでなくて、それ以前のフィルムも全部出しなさい、こう言って会社側を追及して調査をしましたところが、四十八年に行ったじん肺の健診では、会社は監督署に千百九十三名全員異常なし、こういう報告をしている。ところが実際に調査をしてみますと、千百九十三名というのはうそであって、八百十二名しかやられていない。黒鉛工場と電極加工職場が除外されておる、こういう事実が明らかになったわけです。また、ずっとその以前をさかのぼって調べてみましたところが、三十五年に一型が二十六人、二型が八人、計三十四名の有所見者があった。四十三年までに百五十人ぐらいの疑わしい患者があったということも明らかになっているわけですよ。こういう実態は労働省はつかんでいないのですか。
#126
○倉橋説明員 いま先生が御指摘のような事実といいますか、情報につきましてはつかんでおります。ただ、フィルム等につきましての具体的な症状、そういうものの判定はまだ正確にいたしておりませんが、事実関係がそのようだということに
 つきましては、会社及び労働者の方から聴取をいたしておりますし、関係医師からの報告も受けております。
#127
○村山(富)委員 私は、やはりそういう実態を正確につかんで、そうして会社に非があれば改めさせるというところまでいかなければならぬと思いますから、あえて申し上げたのです。会社の方は、これは労使関係で組合の方からもいろいろ問題を提起され、追及されていますから、したがって私はこれ以上申し上げませんけれども、きわめて悪質な行為だと思うのです。あったものを隠して、ないという報告をして澄ましていたのですから、これはもう人命に関する問題ですから許されない問題だと思うのですよ。その点はやはり厳しく追及する必要があると思うのです。
 同時に、私は、監督署の行政なりあるいは監督署長なんかのいろいろな話を聞いてみましても、労働省の姿勢にも問題があるのではないかということをこの事件を通じて感ずるわけです。どういう点で問題があるかといいますと、さっき課長からも答弁がありましたように、監督署は五十年九月に局と合同で直接監督を実施したわけですよ。そのときに初めて会社からじん肺患者がおるらしいということを聞いて知りましたというのが監督署長の説明なんですよ。ところが、実際は大町工場の中で作業をしている下請関係の事業場から、四十五年に一人、四十六年に七人、四十八年に九人、これは若干のダブリもありますけれども、こういう方々のじん肺の管理区分の決定申請が出ているわけですよ。大町工場の中で働いている下請の事業場からいま申し上げましたような管理区分の決定申請が出ているのですよ。この決定申請が出れば、ああ、これはじん肺患者が出ているんだなということはだれでもわかるわけでしょう。四十五年から出ているのですよ。それが、五十年九月に局と合同で監督に行って、そして、おるらしいということを聞いて初めて知りましたというようなことが通りますか。この点はどうですか。
#128
○藤繩政府委員 こういった事件に関連いたしまして、厳重な措置をとらなければならないという点では全くそのとおりでございまして、先ほど御報告をしましたような捜査を行いました結果、じん肺法八条、四十四条、安全衛生法十三条違反ということが明確になりましたので、四月九日に大町区検に事件を送致いたしたわけでございます。こういう事件については厳しい態度で臨んでおります。
 それから、以前に下請等でじん肺患者が発生しておることを監督署が承知していながら、五十年九月に入るまでわからなかったという点は怠慢ではないかというような趣旨のお話でございますが、この点は私ども率直に言いまして、そういう御批判を受けてもある程度やむを得ないということを反省いたしております。ただ問題は、従来監督機関の能力にも限界がございますので、どちらかといえば私どもは、中小企業あるいは下請、社外工というような、問題の多いであろうような点に重点的に監督をするというたてまえをとってまいりまして、したがって、一流の大企業というようなところでは、特に安全衛生の場合には、先生御承知のように安全委員会、衛生委員会というようなものが中に設けられておりまして、労働組合からも半数が参加するということが法定上義務づけられておるようなことでございますし、当工場におきましても、後に調べましても非常にきちんと毎月毎月衛生委員会も開かれてきておる経過がございます。そういう意味で、まあ大企業についてはそういう自主調整能力もございますし、というようなことも若干私どもとしてはあったのではなかろうか。その点は、たとえ大企業でも、特に最近は六価クロムあるいは塩ビ等の問題も出ておりますけれども、有害物の問題につきましてはむしろ大企業にも非常に問題がある。この点は監督の態度というものをやはり変えていかなければならぬというふうにいま反省をいたしておるところでございます。いずれにしましても、下請にあったにもかかわらず五十年九月まで見過ごしたという点については、これは御批判を受けてもやむを得ない点であろう、私どもは大いに反省をして進まなければならないというふうに思っております。
#129
○村山(富)委員 これは具体的な事例ですから、具体的な事例としてお尋ねしたいと思うのですが、たとえば大町工場なら大町工場の中で働いている下請の事業場からこういう申請があった。そうすると、ああ、これはじん肺患者が出たな、職場環境が悪いんじゃないかというので当然監督やら指導に行くんじゃないですか。そうすれば、大企業だから小企業だからというんでなくて、そのときに問題は発見されたはずですよ、同じ工場の中ですからね。ところが、申請が出ているにもかかわらず、五十年の九月に検査に行って会社から聞いて初めて知りましたというようなかっこうでは、これはどんな説明があってもちょっと理由にならぬと私は思うのですよ。ですから、そういう申請があれば、ああ、あの職場はやはりちょっと悪いんじゃないかということで、指導に行くなり検査に行くなり何かするんじゃないですか、通常の場合は。どうなんですか。
#130
○藤繩政府委員 それは先生御指摘のとおりでございます。現にこの監督署でも毎年監督をしてきておるわけでございます。ただ、これは監督官の能力にもよりますけれども、大変医学的な専門的な事項でございますから、臨検監督をしてすぐじん肺患者を発見できるというわけにもなかなかまいらない。特に、こういうところではちゃんとした産業医というものを置くことにもなっておりますし、そういった企業の報告を重視する。監督官としてはやはり報告を全部見てみる、あるいは安全衛生委員会の記録を徴取するとかいうようなことでやってきたという点で、本人の申請がなかった、あるいは会社の報告がなかったという点で見落としがあったということは、監督官の能力にも問題があるかもしれませんけれども、従業員の健康の問題は事業主の責任でございますので、やはり何をおいても事業主においてちゃんと報告をしていただきたいし、健康診断もきちんとしていただきたい。それから安全衛生委員会においても十分なチェックがなされるように進めていかなければならない。もちろん監督官ももっとしっかりと現状を把握するような勉強なり努力はしなければならぬ、かように思うわけでございます。
#131
○村山(富)委員 しかも、昨年の十月に全下請の事業場に対して健康診断をやっているかどうかという監督を実施していたわけですね。そうしましたら、事業場数は二千三あって、そのうち十七の事業場が全然実施をしてなかったということも明らかになっているわけですね。こういう点は、いま局長も言いましたけれども、監督署長も、まさかああいう大きな工場でそんなことがあろうとは夢にも思わなかった、こう言うのですけれどもね。もしそういう考え方でおるとすればそれは間違いではないかということが一点。
 それから、私どもが調査から帰った後で長野の基準局長が記者会見をやっているんですよ。その記者会見の中でこういうことを言っているわけです。「労働者の権利を守る法規はぼう大なもので、しかも県下には約六万の事業所がある。すべての問題をしらみつぶしに監督するのは、いまの労基局の能力では不可能だ。」これは、そんなことが起こるのはもう当然ですと言わんばかりでしょう。開き直っていますよ。私どもは、六万ある事業場全部をシラミつぶしに調べなさいとは言ってませんよ。じん肺患者が出るような工場というのは大体わかるわけですから、そういう特徴のある工場、起こりそうな工場については目をつけて検査をするとか監督、指導するとかいうことは当然のことであって、基準局長のように、不可能であります、不可能だからできません、こう言っておるんならもう必要ないんじゃないですか、ある意味からしますと。皆さんこういう姿勢でずっとおるわけですか。どうなんですか。
#132
○藤繩政府委員 いまの発言がそのとおりであるとすれば、これは適当でないと私も思います。有害物質を取り扱っているような事業場をできるだけ把握して、重点的に監督を施すべきものだろうというふうに思います。ただ問題は、じん肺等は比較的古い職業病でございますからまだそれでも掌握できますけれども、最近の新しいさまざまなガン原性物質その他の有害物につきまして、それを取り扱っている事業場を把握するということが実際問題としては非常にむずかしいことでございまして、私どもとしてはいまそれを最重点に現地を指導いたしております。そして、御指摘のように、問題のあるところに焦点を向ける。監督機関があり、監督官がおり、臨検監督をやっておりましても、ただやみくもにやったということではいけないのでありまして、やはり問題点を十分的確につかむということが大事であることは、これは言を待たない。問題は、いかにすれば特に職業性疾病の場合にそれを的確につかむことができるかというのがなかなかむずかしいところでありますが、その点を特に私どもとしては努力をしたいというふうに思います。
#133
○村山(富)委員 管理区分を決めたり適切な治療をやらせるようにしたりなんかすることも大事でありますけれども、そういう患者が起こらないように安全衛生を徹底してやるということが全体として一番大事ですからね。何か問題が出てくれば受けてやるのだというかっこうだけでは、いままで審議されている、労働者の健康を守り、職場の安全を守っていくという法の徹底はできないと思うのですよ。そういう意味で、もっと積極的な姿勢が欲しいと思うのですけれども、ぼくらが調査に行って帰ってきた次の日、十日ですからね、こうして信濃毎日に出ていますよ。頭から、そんなこと言われてもできません、不可能です、こういう態度で監着行政をやっておられるとすれば、私はやはり問題があると思いますよ。人が足りない点も十分承知しておりますから、したがって何も無理を言っているわけじゃありません。そういう申請があった職場なんかは起こっておるわけですから、環境が悪いんではないかと言って調査に行って、そして監督をするというのは当然の話であって、こんなこともできない、不可能ですと言うなら、監督署なんか要らないじゃないですか、極端に言えば。ですから、人が少なければ必要な人員を確保するとか、抜かる点があれば抜からないように積極的にやっていくとか、こういう姿勢を示されなければならぬのであって、ぼくらが調査に行っていろいろ新聞に報道された、その直後にわざわざ記者会見をやって、こんな開き直ったようなことを言うような労働省の指導であり、姿勢であるとするならば問題ではないか、こう言っておるわけですよ。大臣、どうですか。
#134
○長谷川国務大臣 監督官の少ないことは皆さんおわかりのとおり。そしてまたこれだけ産業が伸びますれば事業所はどんどんふえる。そういうことですから全部回るわけにいきませんが、やはり重点的に回って、それがほかのものも刺激をしていまある法規を守らせるというところに監督行政がある。そしてそれが命と健康を守る。いまの新聞記事の話も出ましたが、趣旨徹底していないうらみがございます。しかし、私たちは、いまの昭和電工大町工場の問題にいたしましても、この委員会などでもたまに話も出ますから毎年毎年監督もやっておることでございますが、どうも十分な情報がっかめないのじゃないか、あるいはまたいままで指導したことをそのとおり行っていない向きもありはせぬかということで、先生のお話もありましたように、先生方がおいでになることはわかってはおりませんけれども、私の方はそこを強制立入捜査をやる、そして、いままで守っていないものに対しては地検に対して書類を送致しているというふうなことで、大企業といえどもこんなものは遠慮いたしませんから、言うことをやらないやつはそのとおりどんどんやりますから、そういうことでひとつ将来を御信頼いただきたい、こう思います。
#135
○村山(富)委員 私は、もう少し積極的な姿勢をとってもらいたいと思うのです。
 そこで、この事件と関連をして二、三お尋ねしたいと思うのですが、一つは、先ほど問題になりました産業医の問題ですね。この大町工場の場合は産業医が以前おって、そして健診もやっているわけです。ところが、異常なし、異常なしという報告が出ている。これは、その読み方が間違ったのか、何かいろいろあると思うのですけれども、しかし、えてして産業医というのは、これは会社が雇ったお医者さんですからどうしても姿勢が会社寄りになるのではないか、こういう疑念が一つあります。それからもう一つは、なかなか産業医が得られないという問題もあるでしょう。したがって、工場によっては地元の開業医に委嘱をするということもあるわけです。ところが、実際問題として開業医は忙しくてなかなか手が回らない。しかも、用事があれば相談に応じるとか見てやるとかという程度であって、実際に職業病が起こったとか労災があったという場合に、その職場環境なりいろいろなものから類推をして原因を探究していく面からすれば大変問題があるのではないか。そういうものを含めて、産業医のあり方について検討し直してみる必要があるのではないかと思いますが、その点はどういうふうにお考えですか。
#136
○藤繩政府委員 労働安全衛生法におきましては、産業医の職務は、労働者についての健康診断、衛生教育、職業性疾病の原因の調査、そういうものを行うことになっておるわけであります。また、医師としての専門的知識、経験等に立って事業主に対して助言、勧告をする権限を持っておるわけでございます。つまり、医師は本来専門的な立場にあるものでございますので、企業寄りとか労働者寄りということがあってはならぬ性格のものでございます。その点は今後も産業医の研修等の機会を通じまして十分徹底をしていかなければならないと思うわけであります。
 それから、そういうことで、安全衛生法の規定で産業医は置かなければならないことになっておるわけでございますけれども、全体として医師が非常に足りない、特に職業性疾病に関する専門医が足りないということがございまして、各事業場でも非常に苦心をしていらっしゃる。実は労働行政の中でも医師たる監督官を得るのに大変四苦八苦をいたしておるわけでございます。そこで勢い、事業場では開業医の方々に産業医として御苦労いただいている場合がかなり多いということは事実でございます。そこで、私どもとしては、そういう方々に対してできるだけ産業医としての本来の使命なり職責を理解していただくために、四十八年度から医師会の協力を得まして全国的に産業医研修というものをやっております。これはなかなか盛会でございまして、今後とも大いに努力をしていきたいと思っております。それでもなかなか満足のいくところまでいきませんので、何とかして専門の産業医の養成機関を持ちたいということから、実は現在北九州市に産業医科大学というものを建設をいたしておりまして、五十三年の四月には開校したいと思っております。これは息の長い話でございまして、卒業生が出てきて第一線につくには十年近くの日数がまだかかりますけれども、産業医の充足、さらにその質の向上、そういうものに努力をしてまいりたいと思っております。
#137
○村山(富)委員 これは、いままで申し上げました昭電の大町工場の場合が適切にそのことを証明していると思うのです。産業医というのは、会社から給与をもらって、会社が雇っているわけです。したがって、どうしても企業寄りになるというのは人情としてやむを得ぬと思うのです。ですから、幾ら工場規程とか、いま局長から説明があったような条文に照らして産業医はこうあるべきだと言ってみても、実情として無理があるのではないかと思いますから、そういうものを含めて、産業医のあり方についてはそういう意味からしても検討を加えてみる必要があるのではないかというふうに思うのです。この点は宿題として今後十分検討してもらいたいと思うのです。
 それからもう一つは、こういうことが言われるわけです。たとえば慢性の気管支炎を患っている、こういう人が粉じん工場で働けばじん肺に進行していく、併発する心配があるわけです。いまのじん肺法でいう管理区分の一、二、三、四。これは四だけが治癒を要するわけです。したがって、三は職場転換をやる、もちろんそれも必要ですけれども、しかし、併発するようなおそれのある患者に対しては何らかの適切な処置をする必要があるのじゃないかというふうに思うのです。いまのじん肺法からいいますと慢性気管支炎の者なんかはそのままになっていますからね。管理四にならなければ治療を受けられない、こういう仕組みになっていますからね。したがって、そういう点は全体的に見て、じん肺を併発するような可能性がある病源を持っておるというようなものについては適切な指導をする必要があるのではないか。そういう意味からしますと、いまの管理区分等も含めてもう一遍検討し直す必要があるのではないか。これは早期に発見して早期に治療するということが大事ですからね。早期治療するというのはいまのじん肺法から言えば、管理四になって初めて治療するわけですから、ちょっと無理があるのではないか。そのことがじん肺患者をつくり出す要因にもなるのではないか。ですから、できるだけ早期に治療することが大事ですから、そういう点を含めて検討する必要があるのではないかと私は思いますが、その点はどうですか。
#138
○中西政府委員 現在、じん肺につきましては結核だけが合併症として補償の対象となっておるわけでございますが、しかしながら、最近の医学の知見によりましても、その他にもこのじん肺と相当関係の深い疾病があるのではなかろうということが言われておりまして、この点については現在じん肺健康管理専門家会議におきまして、果たしてどういうものがじん肺と関係が深い疾病か。当然それは業務上の疾病ということになり、補償の対象になるわけでございますが、そういうものは一体どういうものがあるだろうかということを現在検討しております。この結論を待って、じん肺法の改正なりあるいは補償の対象にする等の措置を講じたいと考えております。
#139
○村山(富)委員 もう時間も参りましたのでやめますけれども、以上二つの事例を申し上げました。これは要するに、法律はあるけれども、その法律が完全に実施されておらないというところに問題があってこういう問題が生まれてくるわけですから、したがって、特に落ちこぼれそうなところに注意を払って、またそういうところは職場環境が一番悪いわけですから、そういうところに重点を置いた監督指導もやり、同時に、仮にじん肺患者になったという場合には速やかに手続をとって、認定もして、生活に困らないように、健康がこれ以上悪くならないように措置することが大事ではないかと思いますから、そういう点は抜かりないように積極的な取り組みを心から御期待申し上げまして、終わります。
#140
○熊谷委員長 次に、寺前巖君。
#141
○寺前委員 りっぱな法律なり、あるいはまた労働者にとってそれなりに役に立つ法律があっても、実際にそれを執行する上において誠実に、そして労働者のお役に立つように考えなかったら、せっかくのものが実らないではないかという御批判が先ほどの御批判であったと思うのです。そこで私も二つの事例を通じまして、現実にどのようになっているのかについてきょうはお聞きをしてみたいというふうに思います。
 まず第一に、京都府下で日吉町を中心として、戦前からマンガン鉱山と関連事業所がありました。一番盛んなときには、昭和三十四年ごろですが、九十一事業所で千百人の労働者がいたと言われております。昭和四十年ごろになりますと、ほとんど鉱山、事業所が休廃止になっております。
 ところで、日吉町内の旧鉱山関係で働いておった人々から、昭和四十九年以後じん肺患者が発生し、最近は管理四で療養中の者が二十人もいるということが言われ始めました。さらに昨年の十月と十一月に日吉町役場による自主検診が行われた際には、三十一名の受診者の中からマンガン中毒で重症とされた人が五人も出てまいりました。こうした疾病については古くからの職業病として、労働基準法施行規則の第三十五条の七ではじん肺症が、同十六ではマンガン中毒が掲げられております。それにもかかわらず、休廃鉱後十年余りもたってからでないと発見ができないという事態が生まれているわけです。これは一体どういうことでこんなに時間がたたなければ発見することができなかったのでしょうか。それについてまずお答えをいただきたいと思います。
#142
○藤繩政府委員 いま御指摘の鉱山につきましては、大変古い時代のことでございまして、そういう意味で監督指導というものが徹底していなくて、行政の方からこの実態を承知するに至らなかったということであったのではなかろうかと思います。ただ、いまお話しのように、その後実態が出てきておりまして、私どもとしては、京都労働基準局が中心になりまして健康診断等を進めるという動きをいまいたしておるところであります。実態をできるだけ早く把握しまして、必要な措置をとりたいというふうに思います。
#143
○寺前委員 マンガン中毒については、この日吉町の自主健診の結果から、日吉町だけではなくして、近隣市町村の旧鉱山関係に働いていた人々に大きな不安を与えました。日吉町で開業しておられる藤岡先生など三人のお医者さんによって京都労働基準局あてに報告が出されて、適切な措置を要望された。その結果、いま局長さんのお話のように、一市六町の自治体当局にマンガン中毒の住民健診の希望者を募るという措置がとられました。日吉町では百六十五人、その他近隣を入れると二百二十九人の希望者が出されました。さらに三月中旬にはこのうち京北町、美山町、和知町の五十一人の個人あてに、三月二十六日、二十七日の両日、和知町福祉センターなどを指定して健康診断の実施をするということを労基局長の名前によって案内状が発せられました。ところがその直前になって健康診断の中止が通知され、以後現在まで来ているわけであります。中止された健診について、いまも強い要望が出されていますが、希望者全員に対して速やかに実施すべきであるというふうに私は思いますが、これに対してどのような措置をとられるのか、お聞きしたいと思います。
#144
○藤繩政府委員 いまお話しの、京都府北部地区における弥谷鉱山などの廃止鉱山の元労働者に対する健康実態調査につきましては、京都労働基準局が関係市町村並びに京都府医師会の協力のもとに実施するということに一たん決定を見たところであります。それはいま先生がお述べになったとおりであります。ところが、調査の実施の直前になりまして、調査対象者の指名した医師の健診への参加をめぐりまして意見の不一致が生じました。このために、京都府の医師会はこの健康調査から手を引くということになってしまいまして、その実施が不可能となっているというふうに聞いておるわけでございます。こういう調査はやはり関係者の協力がなければ実施することができませんので、現地の京都労働基準局におきましては、いままでのような経緯もありますから、適切なタイミングをとらえながら調査対象者や京都府医師会との意見の調整を行って、何とか実現をしたいということでいろいろ努力をいましているところでございます。
#145
○寺前委員 対象者というのは直接受けたいと言っておられる方々、すなわち二百二十九人の希望者が出ているのですから、その希望者にこたえるというのが基本でなければならないと思うのです。その間に介在する諸運動の問題があります。諸運動がどうあろうとも、受けたいという人が出てきている以上は、行政官庁としては関係者の協力を得て速やかに対策を組んでいかなかったならば、運動論だけで患者が放置されてしまったんではたまったものではないというのが、いまのこの患者さん方の中における大きな意見なんです。特に、こういう要望を地元のお医者さんと相談をしてお願いを始めた方々は、自分が多くの友達の中で今度労働省がやってくれるそうだということで呼びかけをやって、自分の顔がつぶれているということで非常に困っていると言っているんです。ですから、関係者といっても、一番の中心の関係者はだれかと言ったら、そこで受けたいと言っている人たちが一番の関係者ですから、その人たちの期待にこたえるように、速やかに当初計画されたとおりの健診を行われるように改めてもう一度お答えをいただきたいと思います。
#146
○藤繩政府委員 京都の労働基準局がいろいろ苦労いたしまして、関係者の調整をいたしておることは、先ほど申し上げたとおりであります。しかしながら、何といっても健診でございますから医師の協力が得られなければいけない。特に地元医師会が全面的にこれに協力してくださらなければこの健康診断はできないわけでございます。確かに、先生がおっしゃるように調査対象者が一番重要な関係者であり、その指名された医師というものを重点に考えなければならぬということもありましょうけれども、医師会としてそれを受け入れ、そしてこの健診をやろうという空気にならなければ、実際問題として公正な健康診断というものはできにくいというふうに思いますので、御主張の点もよくわかりますけれども、それぞれ関係者の主張もありますから、なお引き続き京都基準局において熱心にこの問題に取り組むように、改めて私の方からも指示をしたいというふうに思っております。
#147
○寺前委員 自主健診結果によって重症者が明らかになってきましたが、そのうち三人の人が二月にマンガン中毒による労災補償の申請を行いました。このうち二人は現在もただ一ヵ所残っている昭和精鉱というマンガン精鉱工場で最近まで働いていました。他の一人は十年余りも前に鉱山でマンガン鉱石の採掘をしていました。いま住民の健康診断をしようとする人も、その大半が十年余りも以前にマンガン鉱の仕事から離れているのが実情であります。ところが、マンガン中毒の認定基準を決めている昭和三十八年五月六日の基発第五百二十二号の通達を見ますと、「当該業務を離れて後おおむね三カ年未満」に「該当する症状を呈し、」云々となっています。就業当時はマンガン中毒などという知識もなく、健康診断もほとんど行われなかった人たちが長い間苦しんできて、現在に至って職業病だとわかってきているというのが客観的な実情であろうかと思います。
 そこでまず第一に、すでにいま出されている三人の労災補償の申請については一体どういうことになるのか。これはみんなに影響するだけにまずお答えをいただきたい。
 第二番目に、その基発第五百二十二号の通達で「三カ年未満」云々という問題が出てきます。そうすると、古いことの話でありますから、どうしたって、その認定基準の三ヵ年云々が一つの障害になる可能性を持ってくると思います。そういうことから考えたときに、弾力的にこれを取り扱われるのか、三年というのは厳しく取り扱われるのか。そこがこれから古い段階の話では大きな問題になると思います。それについてどう措置されるのか、お聞きをしたいと思います。
#148
○藤繩政府委員 職業性疾病の認定につきましては、業務との因果関係が存在するということが前提でございます。そこで、その認定に当たりましては、できるだけ最近の医学の知見というものを得まして、それに照らしてやっていきたいということでございます。
 マンガンにつきましてはいま御指摘の通達がございまして、「マンガン又はその化合物を取り扱い、あるいはそれらの蒸気もしくは粉じん等にさらされる業務に従事するか、または当該業務を離れて後おおむね三ヵ年未満の労働者が」次のような条項に該当した症状を呈した場合にはと、こうなっておるわけでございます。「パーキンソン症候群が認められる」というようなこととか、あるいは「発汗異常、睡眠障害、記憶障害、性欲減退または性的不能等のマンガン中毒を疑わしめる症状が持続している」というような、非常に医学的な専門的な基準があることは御指摘のとおりでございます。これは専門家の中で研究をしていただいた結果、医学経験則上、マンガンまたはその化合物に暴露されたことによる疾病というものは、遅くとも暴露環境離脱後三年以内には発症するものであるというふうにされていることに基づくものでございます。したがいまして、暴露環境離脱後十年以上経過して突然発症するということは、現在の医学常識上は考えられないのであります。ただし、過去において暴露環境離脱後三年以内に発症しておった事実がありまして、そして現になお療養を要するというような者につきましては、その症状と業務との因果関係が認められれば補償の対象にするということは当然でございます。
 そこで、いま具体的にお挙げになりました申請者の問題でございますが、三人のうち一人につきましては本省にも稟伺が来ておるように承っております。これらは早急に内容を検討いたしまして決定しなければならないというふうに思っております。
 それから第二点の三カ月云々のことでございますが、いまるる申し上げましたように、この基準も「おおむね三カ年未満」と、「おおむね」ということを使っておりますので、これはまあ三ヵ年前後のやや弾力的な判断の余地があるというふうに思います。しかしながら、先ほど来言いましたようなおよその医学上の常識というものがございますから、その範囲でわれわれとしては公正な認定をしていかなければならぬというふうに思います。
#149
○寺前委員 どうしても古い話になると、三年以内に起こっておっただろうということが予想されても、現実に証拠としてつくれと言われると困難な事態というのが出てくると思うのです。ですから、客観的に監督署の方でずっと分析をするようにして配慮を考えるというように、柔軟に対応するということが古い問題としてはどうしても出てくる問題じゃないだろうか。そこを十分にお考えをいただきたいということと、それから、先ほど申し上げました三人、すなわち日吉町の栃下春雄さん、清水ぎんさん、磯部外雄さん、こういう人たちは一日千秋の思いでこの認定の下ることを待っておりますので、あわせて再度審査を急いでいただくことをお願いしておきたいというふうに思います。
 旧鉱山労働者の中からはすでに多数のじん肺患者が出ております。しかし、最盛時千百人と言われた数に比べればごく一部の人が健診を受けたにすぎません。じん肺法によれば「随時申請」として、管理区分によっては労災補償も行えることとなっているが、管理四以外には定期的な健診も行われないで、自己負担による健診をしなければならないことになっています。また、管理三については健康管理手帳が交付されるとなっていても、離職後六ヵ月以内の申請に限られています。日吉町など旧マンガン鉱山関係については、マンガン中毒だけでなく、じん肺の住民健診も行う必要があると思います。じん肺の所見のある人には、管理三はもちろん離職後六カ月という制限を外して健康管理手帳を交付して、じん肺の健康管理を全面的に確立する必要があるのじゃないだろうか、私はそういうふうに思うのですが、この点についていかがお考えになっているでしょうか。
#150
○中西政府委員 お話しのように、健康管理手帳の交付要件につきましては、じん肺については管理三の者を対象にしているわけでございますが、これは離職の時点で管理三の者は、離職後療養を要する管理四になる危険性が大きいという医学の専門家の意見に基づいてそうしているわけでございます。しかしながら、最近の医学的な知見等の進歩によりまして、いろいろじん肺にも種類がございまして、非常に進行の早いものもあるということもありますので、現在じん肺健康管理専門家会議を持っておりまして、この専門家会議で総合的な検討を行っておりまして、その中で健康管理手帳の交付要件につきましても検討いたしております。その結論を待って対処してまいりたいと思っております。
 それから、すでに離職してしまった方々の健康管理手帳の交付については、法律の施行後六カ月以内に申請しなければならないということになっておりますが、これは規定はそうなっておりますが、実際上は労働基準法施行以後の関係労働者であれば便宜申請を認める取り扱いをいたしております。
#151
○寺前委員 環境庁おみえですか。――日吉町では、基準局の健診に対して二十人ぐらいの人から、旧鉱山関係事業所周辺の一般的な健診を受けたいという意見が出ております。こうした事態は、古い鉱山の実情から見て一般住民の間に大きな不安があるからであります。たとえば、現在も唯一の精錬工場となっているそこの近くに住んでいる山本作次郎さんというお宅は、家の屋根もそれから洗たく場の物干しも粉じんで真っ黒になっております。数年前に亡くなられたこの山本さんの奥さんの病状について、現在マンガン中毒と町の人々の間では言われているわけであります。マンガンで殺されたんではないか。一般の町民が日常生活でじん肺やマンガン中毒になることはあり得ないことだが、すでにほとんどの事業所のなくなっている現在、町民の間では、そういう鉱山の周辺においてはそういう不安を持っているのが実情であります。健診と、被害があった場合の補償、こういう問題について村の人は強く要求しているわけですが、環境庁としてはどういう対応をしておられるのか、お聞きしたいと思います。
#152
○五十嵐説明員 ただいま先生から御質問ございました日吉町につきましてのじん肺、マンガンに関しましての廃止鉱山周辺での地域住民におきます公害にかかわります健康影響問題という形で私どもは京都府当局からも報告をいただいております。ただ、私ども、京都府から報告をいただいております状況といたしましては、いま先生御指摘のように、住民の方々の不安の声もあり、現在、先ほど労働省当局に御質問ございましたその労災に関連いたします健診の状況、これを踏まえた形で京都府の衛生部局も判断したというふうに伺っておるわけでございます。
 なお、地域住民に関連いたします環境汚染物質による健康被害の問題につきましては、すでに御承知のように、いろいろな汚染物質に関連いたしまして、特に環境汚染に関連いたしまして、非常に重篤なる病気と申しますか、そういう状態になりました場合には、健康被害補償法という体系での損害賠償の仕組みがあるわけでございますが、先生の御指摘のように、現在まで私どもといたしましても、地域住民の中でマンガンにかかわります健康被害の問題という事例はまだ存じておりません。ただ、私どもとしては、いわゆる地域住民の中でマンガンに関連してどのような状態にあるかという意味での調査研究を現在続けているところでございますし、いまの日吉町の問題につきましても、十分京都府衛生部局を通じまして調べまして、私どもその状況を踏まえて対応していきたい、そのように考えております。
#153
○寺前委員 一通りマンガンの開発をめぐっての事態についての質問を行ったわけですが、先ほど大分県の南部のじん肺が問題になりました。労働大臣にも地元の方が陳情を申し上げられました。佐伯市周辺の多数のじん肺患者の発生というのは、私も見て、これはきわめて異常な姿だというふうに思うわけです。
    〔委員長退席、住委員長代理着席〕
先ほどお話がありました三浦先生の一九七五年三月十六日の第二十一回大分県公衆衛生学会での報告書、これを見ると本当に大変なものだと思います。千三百六十名、そのうち四百四十一名の人が治療をされている。そのうち労災補償はすでに三百五十名に達している。あとまだ九十一名の人が未処置のままになっているわけですが、しかし、先ほども話を聞いておって思うのですが、国鉄日豊線の工事を大正年間にやられた人はもちろんのこと、全国各地に、特に高度成長の中で飛躍的に手仕事の隧道掘りから全面的に変わってきているという状況のもとにおけるところの豊後土工と言われる方々の事態だけに、事は日本の政治経済の高度成長という政策に従属した形で生まれてきているだけに、私はこれに対する事後措置の問題についても真剣に考えなければならないと思うわけであります。
 そこで、先ほどの御答弁を聞いておりますと、全国的に重点項目として指導していくのだというお話でございましたが、少なくとも、この三百五十名の労災を補償したところの事業所ないしは現に隧道工事をやっているところ、ここが本当に健康診断についても事前にちゃんとやっているのかどうか、その職場におけるところのマスクその他の労働安全衛生上の措置が一体どうなっているのか。単に通達だけではなくして、現実的な調査をやっておられるのかどうか。私は、こういうふうに全国に散らばってずっと移動される労働者だけに、特別に注意を払ったところの措置をとられるべきだと思うのですが、労働大臣御存じでしょうか。おわかりでなかったら担当官でも結構ですが、お答えをいただきたいと思います。
#154
○長谷川国務大臣 私は、こういう地域だけに千数百名、しかもそのリポートが二、三年前出た。私は地方の大変な特殊事情だというふうな感じを持って、しかもこれが全国に散らばっているという話なども聞いて、非常に注目しているものです。私はわりに問題というのは追っかけて歩く方ですから、新幹線で爆発事故あるいは公害などが起こった場合にも入ってみたり、それから、二、三日前からよく新聞に出ている青函トンネル、これは十年ぐらい前に私は与野党の議員一緒に水面下百十六メーターまで入ったこともあるのです。そういう気持ちもありますから、ひとつ地方のそれぞれの監督機関等と、いまそういうふうな申請を出している人、あとまた心配している人、こういう方々に対しては、先ほど局長が答弁したことをさらに推進し、熱心にやらしていきたい、こう思っております。
#155
○寺前委員 この季節の出かせぎ地域というのは集中的にかたまっているところが多いと思うのです。大分県のみでなく、九州各地や東北地方に多いということは一般的に言われている。いま大臣は引き続いて調査をやらせて指導していきたいというお話でありましたが、大分県以外にも、たとえば長崎県でもこういう事態が出ているということを聞いているのです。いま労働省で、集中的にこういう事態が発生している地域はどこだということを具体的につかんでおられるならばひとつ御報告をいただきたいというふうに思います。
#156
○藤繩政府委員 出かせぎ労働者で炭鉱あるいはトンネル工事等に入って、粉じん職場に長く働いた者という場合にはこういう事態が起こるであろうということは、今度の大分のこの問題でも明らかになったわけでございます。私ども具体的に、いま先生御指摘になったように、どこの地区にどうあるというようなことを十分承知いたしておりませんけれども、この大分の例のほかには、最近、いまおっしゃいました長崎県の高島炭鉱あたりにも類似の状況があるんじゃないかというニュースをキャッチしておりますが、今後なおその点も十分調査してみたいというふうに思います。
#157
○寺前委員 私は、速やかに全国的調査に取り組んでいただきたいと同時に、問題になっているところについても積極的にやっていただきたい。先ほど申し上げました四百四十一名の中で、現実に労災補償を受けていない人は九十一名という算術計算になって出てきます。そこで、この九十一名の人についてじん肺法による管理区分を判定するためには、地方じん肺診査医に診てもらわなければならない、こういうことになりますね。さて、この九十一名が、すでに問題になってから一年近くなってきているんですが、管理区分を明らかにして労災への道が進んでいるのかどうなのか、一体どういうことになっているでしょうか、私はそこをお聞きしたいと思うのです。
#158
○藤繩政府委員 佐伯の保健所長さんのやられました調査では、千三百六十名というのが職歴を有する異常者だということであります。そのうち、いまおっしゃいましたように三百五十名は労災補償を受けておりますから、したがってあと九十一名が残るわけであります。これは現在結核予防法の対象ということで治療していらっしゃると伺っておりますが、問題は、その職歴が、果たしてどこでどういう職歴があったかという点がはっきりいたしておりません。現在調査を実施しているところでございまして、調査の結果を待って早急に措置をいたしたいと思います。職歴がはっきりいたしますれば、そこの事業場の関係の基準局、監督署の方で手続しまして、必要があればじん肺診査医等の診査を待つ、こういう手続になろうかと思います。
#159
○寺前委員 職歴の問題もそうですか、管理区分としてどうなんだという診査をしてやらなければいかぬのじゃないですか。積極的に、どういう実情にあるんだろうかと見てやる必要があるのじゃないだろうか。私は、このことを早く手を打つべきじゃないだろうかというふうに思うのですが、いかがでしょう。
#160
○藤繩政府委員 労災補償をするということになれば、当然現在のじん肺法では管理区分四の者が療養補償の対象になります。そういう意味では管理区分の判定というものを当然しなければならないわけでございますから、調査がはっきりすればそういうぐあいに進めるということになろうかと思います。
#161
○寺前委員 ところが、この九十一名の人について、それじゃ大分県では地方じん肺診査医というのはだれかということを調べてみたら、佐伯市とは正反対の、百三十キロ離れたところの県北部の豊後高田保健所長がそのお医者さんだというのです。ものすごく離れたところにおる。そうすると、そのことを一々診るのに大変な事態が一つは生まれてくる、そこへ出ていくのに。
 もう一つは、レントゲンのフィルムなど、まだこの診査医のお医者さんの手元には渡っていないということです。ですから、話題になってからすでにこの労災補償の対象になっている人が一年余りたっているのに、全然そういうフィルムの問題についても診査医さんのところにも行っていないということになると、これはぼくはやはりおくれていく対策になるだろうと思うのです。そういう意味では、少なくとも明確に現在治療中の人については、早く管理区分の問題も明確にさせながら、健康管理手帳その他の問題も、先ほどの話じゃないけれども、意味を持ってくるだけに、早いことフィルムを取り寄せて、そうして指導する方向を確立していく必要があるんじゃないだろうかというふうに思うわけです。しかし、それにしても、それを進めていこうと思うならば、こういう特殊に大量に発生している場合には、そういう診査医もふやして、そうしてそういう対応策の準備に入っていくということをやらないと進まないんじゃないだろうかということを強く私は感ずるのですが、いかがでしょうか。
#162
○藤繩政府委員 先ほどもお答えしましたように、このじん肺に限らず、労災補償は、それぞれの働いておりました事業場を管轄する監督署、基準局において所定の手続をとるというのがたてまえでございますから、いま三百五十名の労災補償を受けておる者も原則的にはそういう、たとえば兵庫なら兵庫で働いておりました場合には兵庫の基準局に手続をとり、そうして兵庫の基準局のじん肺診査医がフィルムを読影して判定をしたということであろうと思います。なお、じん肺診査医は、健康診断のフィルムが各事業場で撮られれば、それを読影することによって判定するということをやるわけでございますから、非常に離れてるじゃないかという御指摘がありましたが、これはどこの局でも、局の診査医というものが県下のものを読影をし判定していくというたてまえになっているわけですから、必ずしも距離の問題は一概には言えないと思います。手続はそういうことでございます。
 したがいまして、この残りました九十一名については、先ほど来お答えしていますように職歴がよくわからない。大変古い話であり、どうもいろいろ回ってきていらっしゃるために、労働者の方もどこの事業場でじん肺に罹患したという点について、恐らく自分としてもよくわからないというような点もあるいはあろうかと思いますが、そういう意味で職歴の調査をいま鋭意進めているわけであります。それがわかればその所定の手続がとられるわけであります。ただし、やはり非常のときには非常の手段も要るかと思います。実際問題として、そういう手続だけでこの九十一名の全員がはっきり掌握できるかどうか、疑問があろうかと思いますから、私どもは、一応の調査が終わった段階で、必要があれば応急な措置もこれは考えてみなければならぬだろうというふうに思っておりますが、いまのところはとにかくその職歴把握ということを一生懸命やるように、この間も実は大分の局長及び安全衛生、労災補償両課長を呼びまして、直接に指示をいたしたようなわけでございまして、その結果を待ちたいと思っております。
#163
○寺前委員 いまの局長さんのお話にあったように、特殊な事情にある。したがって、先ほどの質問にもありましたけれども、それだけに特別の窓口をつくりなさい。それで簡便な方法で、労働者の立場に立ってやる。それぞれのおったところの事業所を中心にして申請してどうのこうのという、一般的労災の申請はそういうことになっているけれども、転々と回ってきて、昔の話だ、どこに自分がおったかも、いつの時期にどうだったかも忘れてしまっているというような状況になっている人がたくさんおる。ただ結果だけは、じん肺であるということは明確に治療の中でわかってきているというたら、その治療を基本に据えて特殊対策をしなかったらだめじゃないか。そのために、管理区分の医者の問題もそうだし、手続のあり方の問題も、全面的にひとつその地元を中心にして申請活動をやる、そういう特別体制を考えることはできぬものだろうか、既存の体系だけではなくて。そういうふうに物事を、それこそ合理的にこの問題に対応するという措置をとることはできないものだろうか、私はそのことを強く感ずるわけなんです。いかがなものでしょう。
#164
○藤繩政府委員 ただいまもお答えをしましたように、非常の場合には非常の措置ということも私どもは考えなければならないであろうというふうに思いますが、現時点ではまず現状の掌握を急遽命じておるわけでございますから、その実態の把握を待ちまして、必要があればそのような措置もとらなければならない。その結果による判断ということになろうかと思います。
#165
○寺前委員 それは局長さんにすれば、この間指示されたところだからうまくいくことを期待しておられるのでしょう。ですから私もそのことを期待したいと思います。だけれども、現実はなかなかむずかしい状況にあるということもやはり考えておかなければならない。
 しかも、こういう例もあるのです。米水津村というところに岡田茂さんという人がおられまして、現在の五洋建設の前身の水野組というところに常用に近い形で昭和二十五年から四十一年まで働いておられた。小倉の石炭がらの捨て場の擁壁工事や、各地の海岸、河川の護岸や防波堤の工事で働いてきたと言われるのです。ところが、最近保健所の健診を受けたところ、じん肺管理四と判定された。そこで五洋建設の支店がある八幡の労基署を通じて最終の粉じん職歴を証明してもらう段階になったが、五洋建設側は、じん肺法による粉じん事業所でもないし粉じん作業でもないとして証明を拒否されてしまった。補償がされないということになってしまう。医師の診断ではじん肺が明確である。事業所が指定されていないからといって、これはじん肺に後でなる原因というのはほかに考えられないではないか。こういう事態が生まれるわけです。大分からかなり離れたところの問題で、往復文書ばかりやっていなければならない、こういう不幸な事態が現実に起こるわけです。
 こういう話は、先ほども出ましたように三年かかったとか、いろいろな形で起こってくる原因というのも、事業所が遠く離れているということが非常に災いをしているので、局長さんが期待をしておられるように、現実的な解決として地元の監督署が十分にお世話をするということをもう一度私は確認をとりたいということ、そして、いま申し上げましたように、こういうように粉じんの事業所ではないのだということの位置づけから、現実にはじん肺であることが明確である、じん肺の経路と言えば二十五年から四十一年までそこで作業をしておった中以外にあり得ない話だということになっても、指定工場でなければ対象にしないということでは労働者の権利は守れないのじゃないだろうか。そこは一体どうされるのか、お聞きしたいと思う。
#166
○藤繩政府委員 いまお挙げになりました具体例につきましてはただいま初耳でございますので、それについてどうということは申し上げにくいかと思いますけれども、地元の監督署ができるだけのお世話をしなければならぬということは、これは当然でございますからそういたしたいと思います。けれども、ただ問題は、じん肺でございましてもその他の疾病でございましても、労災補償をするというからにはやはり業務との因果関係的なものを一応確認をした上でやらなければならぬ。それには最小限度の手続が要るわけでございます。いま挙げられましたものは、まことにどうも距離も遠いし、あるいは事業場も恐らく転々としてこられたというようないろいろ悪条件が重なってのことであろうと思いますけれども、できるだけ私どもは、地元の監督署のみならず、関係の基準局、監督署その他の行政機関にもお願いをいたしまして、そういった事実の掌握に努める、そして早急な補償ができる、そういう努力をやはりすべきだろうと一般的には思うわけでございます。いまの具体的問題については少しく調査をさせていただきたいと思います。
#167
○寺前委員 この問題の最後に、こうやって保健所が中心になって積極的な労働災害の被害についての対応策をやられてきたわけです。こういう保健所の皆さんや、あるいは三浦先生というような、個人的に情熱を傾けて、必要な文献なども自分のポケットから出して、そうして研究をされたとおっしゃっていますが、こういう御努力によって支えられてきたと私は思うのです。さらに肺機能の検査の設備ができたら、もっと効果的な対策ができるのだということも御本人はおっしゃっております。県では百五十万円からの予算を最近お組みになって、地域住民の対応策の問題だということで対処しておられるわけですが、労働行政の側から見ても、せっかくこういう情熱を傾けてやっておられる方々に対して、労働行政として本来行われていなければならなかった問題をそちらの御厄介になったんだという立場から考えたときに、県や保健所の問題だということだけでは済ましておけないんじゃないだろうか、何らかの積極的な措置をとられなければいけないんじゃないかと思うのですが、その辺はどういうふうにお考えになっているのでしょうか。
#168
○長谷川国務大臣 けさから御審議に出ていますように、大量なもの、しかも非常に一区画に限定され、それが全国的に働かれておられて、その長い間に積もったいろいろなものが、そういう三浦先生初め特殊な方々によって非常に解明され、それが勤労者の生活あるいは福祉の向上に役立つ、これは私は大変すばらしいことだと思います。いつの時代でもそうですけれども、政府自体が全部やらず、世の中の文明開発というものは、民間のいろいろな人々がいろいろなことをやったものを、政府が時にそれを激励し、あるいはそれを発展させるようなかっこうになってくると思いますので、大分県でもいろいろ手配をされているということでありますし、また大分県の方々とよく御相談しながら、そういう問題についてさらに発展し、そうした力をいたすような方々に対してまた県と相談してみたい、こう思っております。
#169
○寺前委員 次に移ります。もう二、三分質問しますが、今回の法改正の主要な事項の一つは、法律の目的条項に労働福祉事業を明記して、従来まで保険施設として行われている分野を四つの事業にまとめて法文に明記しようとしていることであります。すなわち、社会復帰、労働者あるいは遺族の援護、安全衛生、あるいは賃金未払いその他労働条件というような内容が出てきます。このことは、この法律が、労働者の労働災害による傷病の療養と生活の保障を主眼とした、資本家の補償責務を果たすための保険給付の制度であるにもかかわらず、保険給付以外の事業を制度化することであり、法律の性格に大きな変化を与えるものであるということが社会保障制度審議会でも問題になり、明確を欠くという指摘がついたところであります。
 四つの福祉事業の中には、法定外の各種給付金も含まれていると思いますが、未払い賃金の立てかえ払いの資金支出や、医師養成のための大学設置運営の経費まで支出することにこの分野はなるのではないでしょうか。この種の事業が無制限に拡大することは、この法律の本来の目的である、資本家の補償責務の実行である保険給付の比重が相対的に縮小されかねないという問題に直面すると思うのです。政府は現在、労災保険財源について、保険施設あるいは今後の福祉事業に対しては一体どういうふうな制限をするつもりなのか。法律上明確なものがそこにはありませんけれども、将来にかかわっていく問題だけに、その点についてお聞きしたいと思います。
#170
○藤繩政府委員 労災保険事業としては、従来から業務災害に関する保険給付の事業と通勤災害に関する保険給付の事業、さらに保険施設として各種の事業を行ってまいりました。これらの事業の財政的取り扱いとしては、保険給付に関する部分と保険施設及び事務費に関する部分とを財政運営上区分をいたしまして、保険料収入のうち、百十五分の百に相当する部分を保険給付の原資とし、それから百十五分の十五に相当する部分を保険施設と事務費に充てるということで、従来から一貫して運営をしてまいっております。今回の改正で労働福祉事業というものに保険施設を変えてまいりますけれども、その点は変えるつもりがございません。その百十五分の百、つまり保険給付の原資がもし不足するというようなことがあれば、これは料率を引き上げてこれを賄うということでありまして、したがって、労働福祉事業の規模が大きくなる、あるいは内容が変わるというようなことで保険給付事業そのものの運営に財政的支障を生ずるというようなことは全くないと私どもは考えております。これを法律的に区分をしてその点をもう少しはっきりさせてはどうかという御意見でございますが、現在の財政運営上の私どもの見通しといたしましても、十分その点は余裕がある、必要はないと考えますけれども、実はこの点につきましてはいま御指摘のように社会保障制度審議会でも御議論がありました。労災保険審議会でも御議論がありましたので、今後とも関係審議会の御意見を聞きながら、運営については慎重を期してまいりたいというふうに思います。
#171
○寺前委員 現在法定給付を上回る給付、これについては保険施設ということになっています。今度の法改正によって、保険施設に入っておったこの分野は先ほど言いましたこの福祉事業の中に入ることになるんじゃないだろうか。間違いありませんか。
#172
○藤繩政府委員 そのとおりでございます。
#173
○寺前委員 そうすると、たとえば今度の予算で言いますと、特別給付金として五百五十七億五千四百万円というのが予算の中にあります。これはそうすると百十五分の十五の中から支給されるということになりますね。
#174
○藤繩政府委員 少しく説明が舌足らずで恐縮でございました。原則は先ほど御説明したとおりでございますが、特別支給金として上積みをしている分につきましては、これは非常に保険給付に実態が近いものでございますから、百十五分の百の方で従来からも処理してきておりますし、今後もその中で処理をするということでございます。
#175
○寺前委員 そうすると、法律的にはこちらの事業の中に入れてしまって、そうして百分の十五の範囲内で支給すると言っておきながら、現実的には給付の方の中で計算すると言ったら矛盾してくるのではないでしょうか。ですから、そういうものだったら明確に法定化してしまえばいいことじゃないですか。どうもそこがあいまいではないですか。
#176
○藤繩政府委員 先ほど御説明しました百十五分の百あるいは百十五分の十五という区分は、別に法律上定められているものではございません。法令上のものではございませんので、従来から予算上そういうことで一貫してきておるということでございますから、法定上のたてまえと予算上の実際の運営が食い違うということはないわけでございます。なお、その点を制度的にもっとはっきりすべきではないかというのが先ほどからの御指摘でございます。それは先ほどお答えしましたように、そういう御意見もございますし、今後慎重に検討いたしたいと思いますけれども、現段階では、それが入り乱れて非常にマイナスの問題が生ずるというふうには私どもは考えていないわけでございます。
#177
○寺前委員 質問を終わります。
#178
○住委員長代理 田中君。
#179
○田中(美)委員 職業病の認定のことについて質問いたします。
 まず、労基署では十分に御存じのことですけれども、名古屋にあります市外電話局の三名の婦人が非常に長い間頸腕で苦しめられているわけです。この方が公社の中でたびたび申請をしたわけですけれども、これが業務外になった。これは三回ほどやっております。昭和四十七年と四十九年、五十年には通達五十五号の見直しということでもう一度見直してもらっているわけです。その中で業務外になったということで、北労働基準署にこれを申請したわけです。そのことについて御存じだと思いますので、このことについてまず質問したいと思います。
 この北労基署がこの申請を受けて審査及び仲裁をする、その公正な結論を出すというためには、まず公社の資料が要るわけです。この資料が実際には十分に渡されていないというふうに思うわけですけれども、この資料を要求するということに対して、労働省としてはどういうふうにお考えになっていらっしゃるのでしょうか。
#180
○藤繩政府委員 いまお尋ねの電電公社名古屋市外電話局の交換手の方の審査の申し立てでございますが、五十年の十二月二十六日に名古屋の北監督署に出ておりまして、これを受け付けております。その後二月四日に公社に対して監督署としては資料を要求いたしました。三月二十二日に公社から資料が出てまいりました。ところが、四月八日になりまして申請人から調査をさらに要求してきたわけでありまして、そこで、四月十二日に監督署としては公社に対して追加資料を要求いたしております。四月二十八日に公社から一部提出がございましたが、残りは五月中旬に提出をしたいということでございますので、私どもとしましては、資料を精査の上、六月に作業実態の現場調査を行って結論を出していきたいというふうに運んでいるところでございます。
#181
○田中(美)委員 いまの三人の御婦人というのは、瀬間都美子さん、山内満寿美さん、清水美智江さんという三人の方です。いま名前申しませんでしたので、この三人の資料で間違いございませんね。
#182
○藤繩政府委員 いまここで実は名前を持ってきておりませんので、確認はできませんけれども、名古屋の電電公社の市外電話局の三名ということでございますから、恐らくはそうではなかろうかと思います。
#183
○田中(美)委員 こういうやり方をしたということは、過去には余りなかったというふうに思うのです。そういう意味で間違いないというふうに思います。私の要求しているのは、この瀬間さん、山内さん、清水さんですので、このことで話を進めていきたいと思います。
 いま申しましたように、資料を請求しても結局その資料が十分に出ていない。労働者が、こういう資料が要るじゃないか、こういうものがなければ幾ら公正に仲裁を出そうとしても出せないじゃないかというので要求しましたら、北労基署はこれを認めて資料を請求したわけです。そのときに電話で口頭でしているわけですね。これは、やはり文書ですべきではないんでしょうか。どうお思いになりますか。
#184
○藤繩政府委員 やや基本的な問題でございますけれども、現在労災の給付につきましては、強制適用がほとんど行き渡りまして、労災保険でこれを賄っておるわけでございます。しかしながら、三公社につきましては、労災保険が適用されておりませんので、労働協約によって、労災保険と同じようなものをそれぞれの公社で行っておられるわけです。したがって、法制的に言いますと、労働基準法の適用に相なるわけでございます。そこで、労働基準法八十五条一項の規定によりまして、審査、仲裁ということで出てまいったのだろうと思いまして、実は労働基準行政の上でも非常に珍しいケースでございます。現在ほかではほとんど死んでおる規定でございます。その場合に、この審査、仲裁という行政作用につきまして、従来学者の専門家の方々等の御意見を聞きましても、まあ行政官庁の勧告的な性質のものである、行政処分ではなかろうというのが通説でございます。したがいまして、労働基準法の規定の上でも、民事訴訟の提起があればこの審査、仲裁はやらないことになるわけでございまして、そういういわば監督署が現場の行政官庁として当事者に勧告する、こういうような性格のものでございますから、裁判所でございますとかあるいは労働委員会でございますとか、そういうところで行われますような厳格な意味での処分とはいささか趣を異にするというふうに私ども思っております。
 そういう中で、しかし現実に権利の擁護ということが必要であれば、こういう制度があるわけでございますから、その中で私どもとしてはいろいろな手続を進めてまいる必要があろうかと思いますけれども、まあ文書で官印をつかなければ、したがって文書提出の請求にはならないとか、そういうようなかた苦しい考え方は私どもむしろとるべきではない。実際にこの中をあっせんして円満に労災補償ができれば一番望ましい。元来問題は電電公社でございますから、電電公社はりっぱな日本の代表的な企業、しかも公企業でありますし、また全電通というような公労協の雄たる組合もついていらっしゃるところで協約の遵守が問題になっているわけでございますから、地方の監督署長が一々出張るまでもなく、普通の場合は労使団体交渉で処理される性格のものだというふうに私どもは思っておりますが、どうしてこういうものが監督署に出てまいりましたか、首をかしげておるのございますけれども、しかし出てまいりました以上は、できるだけ解決のために努力をしたいということで、先ほど申し上げましたような手続を進めておる次第でございます。
#185
○田中(美)委員 時間が少ないものですから、労働基準法の八十五条に基づいてやっているわけですので、これは全部私わかっておりますので、余分なことは一々御説明いただかなくて結構です。質問したことに簡潔に的確に答えていただきたいと思うのです。
 いま言葉じりをつかまえるようですけれども、これは死んでいるようなものだ、そういうふうな規定だと言われたのはちょっと撤回していただきたい。法律としてあるもので、いままでこれは、あなたがおっしゃるように、電電公社は非常にりっぱな企業であるから、労使の中で話し合いができていたのかもしれません。これはわかりませんけれども、それでこういうことが起きなかった。しかし起きた場合には、この法律というものはきちっと生きているのであって、死んでいるものではないということをもう一度ちょっと確認していただきたいと思います。
#186
○藤繩政府委員 死んでいるようなものであるという点は撤回をいたします。しかし実際の例は非常に乏しいということでございます。先ほども強調しましたように、出てまいりました以上は、行政官庁としては所定の手続を進めているということでございます。
#187
○田中(美)委員 労使の間で長い間話し合いしても、どうしても意見が合わないでこういう状態になったから、それで珍しいケースということであって、これは非常に大切なケースだと思うのです。電電公社が、あなたがおっしゃるように、本当に労働者に対してりっぱなことをしているかどうかということが試されることだと思うのです。そういう点で労働省がしっかりと今度の問題を調査していただきたい。そのためには綿密な資料が要るわけですね。そのためには、いまもう一度私、申し上げておきますけれども、いま来ておりませんのは――業務外の資料、この三人の資料というのは届いたわけです。なぜ業務外であるかという資料は来たわけですね。しかし一緒に申請している人で業務上になった人がいるわけです。ですから、相対的に見ていかないと、こういうあれをするときに、御存じのように不公平というか、非常にむずかしいわけですね。ですから、やはり業務上になった人の資料というものも一緒に出していただいて、そうしてそれと比べてみて、同じようならばこっちも当然上じゃないか、ましてこっちの方がひどかったら、当然上じゃないかというふうな判断もできるわけですね。そういうことも必要でございますので、この資料がまだ未提出になっているということですので、これをぜひ提出させていただきたいと思います。
 それから、服務線票というのがあるわけです。それから業務概要が昭和四十九年分は来ているわけです。しかし業務概要は三十五年から四十八年分というのを北労基署は要請しているわけです。この三人の病気というのは昭和四十二年ごろから、もっと前からかもわかりませんけれども、一応二年から、四十年前後に発病しているわけですね。ですから、四十九年の概要では足らないわけです。ですから、やはりそこに焦点を合わせたものが要る、この資料が要ります。それから国立名古屋大学の前田先生の医師の意見書というものも出ているわけです。こういう権威ある医者の意見書というものも、やはり労基署は一応目を通していただきたい。その資料がまだ出ていません。
 それから、交換室の温度調査というのがずっとなされているわけです。ですから、その当時に交換室の温度調査がなされているわけですので、そのときにどういう温度であったかということで、やはり仕事が非常に忙しかったというだけでなくて、冷房やいろんな温度の調整が、そのときには果たして適切な温度になっていたかどうかということでもまた関係してくるわけですね。ですから、こういう温度調査というものもしているわけですから、これも資料としてとっていただきたい。
 それからもう一つは、昭和四十八年に健康調査を公社がやっているわけですね。ですから、この健康調査結果というのもとりまして、大体全体の労働者の健康状態がどうなっているかということで、これも全体大ざっぱに、マスとして職業病が出るような状態であるかどうかということも推測はできるわけです。ですから、こういう資料もやはり必要であるというように思いますので、これを未提出になっているのを至急提出するようにさせていただきたいというふうに思います。
 いま五月中旬ごろにこの資料をというふうに言われましたので、これは一応要請していただけるものというふうに思いますが、よろしいでしょうか。
#188
○藤繩政府委員 いまいろいろお挙げになりました点は、恐らく現地では監督署にその話が出ていると思いますけれども、重ねて先生のお申し出でございますから、今日の速記録を現地にも送りまして、よく監督署長にわかるようにいたしたいと思います。なお、もしそれでなかなか話が進まないという場合には、電電公社のことでございますから、本省ベースで話をするということも考えられるかと思いますが、先ほど申し上げましたように、整々と進んでおるわけでございますから、その結果を待ちたいと思います。
#189
○田中(美)委員 電電公社の方にちょっとお尋ねしたいのですが、この資料の問題ですけれども、この資料は、最初の資料というのはもう二月四日に請求しているわけですね。それで不足だということで、いまのような資料というものをまた後から請求しているわけです。最初に請求したのは二月四日です。それなのにどうしていままで資料が出ないのかということですけれども、いまの話を聞いていますと、非常に電電公社は誠実に、りっぱにやっていらっしゃるというふうに評価されているのですけれども、事実というのは、どうしてこういう資料がいかないのかというふうに非常に不思議に思うわけです。その点を簡潔にお答え願いたい。
#190
○小澤説明員 昨年の十一月二十九日にその話を私、聞きまして、すぐ東海電気通信局長に私が電話で、基準監督署の方から申し出のあった資料はすべてお出しするようにということを指示いたしました。それで監督署の方から逐次資料の提出要求がございまして、三月九日に六種類、それから四月二十八日に五種類の資料を提出済みでございます。その後二、三の追加資料要求がありましたのは、いま労働省の方からお答え申しましたように、私ども二種類と聞いておりますが、いま先生のお話ですと、もっと多いように承りましたので、これは現地の基準監督署とそれから電気通信局の方でよくコンタクトをいたしまして、監督署の方から要求のありました資料は、速やかにお出しするというふうに指導いたしたいと思います。
#191
○田中(美)委員 そうすると、北監督署が要請した資料は、全部出していただけるということですね。
#192
○小澤説明員 物によりまして、あるいは私どもの本社の方でつくらなければならないものもあるかもしれませんが、できるものから速やかにお出しするというようにいたしたいと思います。
#193
○田中(美)委員 できるものからということですけれども、出すことはみんな出すわけですね。
#194
○小澤説明員 監督署の方から要請のありました資料は、すべてお出しいたします。
#195
○田中(美)委員 それでは、その資料をできるだけ現在あるものは速やかに出すということ、そしてこれからつくらなければならないものは、大体何日ごろに出せるということで出していただきたい。それ以外に北労基署がもし落としているものでも、公社の中でこういうものは参考資料であるというように思うなら、積極的に出すべきではないかというように思うのですけれども、こういうものをいままでちっとも出していないというのは非常に遺憾だと思いますので、一応出していただけるということですので、次に質問をしていきたいと思います。
 それから、北労基署の労働者に対する応対の仕方なんですけれども、これは公社とも関係がありますので、公社の方もよくお聞き願いたいというふうに思います。たとえば三月の十二日に、実は職場に立ち入り調査をやってきたわけです。立ち入り調査をできるだけ早くやってほしいというのは、現場をそのままの状態で見てもらいたいということなわけです。それに対して労基署は、そう急がなくてもいいという形でなかなか立ち入り調査をしない。労働者がそれを何遍も言うという形で説得をする、一日に四時間も説得をしたというふうな形でやっと立ち入り調査をしますということになったのですけれども、これはどこに争点があったかと言いますと、回線収容がえ工事というのが始まるから、いままでの作業内容が変わってしまう。すっかり作業内容が変わってから立ち入り調査したってわからないじゃないか、だから早くしてくれ、こういうように現場の労働者が言っているわけです。働いている労働者ですのでよくわかるわけです。それに対して労基署は、公社の方に聞いたのかどうかわかりませんけれども、公社の方では作業内容は変わらないと言っているからそんなに急ぐことはない、こう言っているわけです。現実に四月一日にこの作業内容が変わっているわけなんです。
 両方に伺いたいのですけれども、そういうことは私は、労働基準監督署の非常な不親切、不誠意というふうに感ずると同時に、なぜ北監督署に対して公社の方ではそんなうそを言うのか。これが事実ならばうそになるわけですので、なぜそういうふうなうそを言うのかということを、お二人に一つずつお聞きしたいと思います。
#196
○藤繩政府委員 その事実もいま伺いましたので、先生がお述べのとおりであるとすれば首をかしげますけれども、監督署は他にたくさんの業務も持っておりますから、なかなか日程のやりくりがつかないこともあったかもしれませんが、できるだけ現場の変わらないうちに実態を見た方がいいということはおっしゃるとおりだと思います。よく調べてみたいと思います。
#197
○田中(美)委員 お願いします。
#198
○小澤説明員 先ほど申し落としましたが、本年の一月六日付で西井東海電気通信局長から山口愛知労働基準局長あてに文書を出しております。その中の最後のところに「今後、名古屋北労働基準監督署のご調査等につきましては、当公社として十分御協力申しあげる所存でありますので、よろしくお申しつけくださいますようお願い申しあげます。」こう書いてございますので、これに基づいていろいろと資料要求、御調査等がありました場合は、東海電気通信局としては御協力するということにやぶさかではございません。
#199
○田中(美)委員 ちょっと私の質問と違います。そういうちゃんとした誠実なお手紙が出ていることは大変結構なことですけれども、実際上は作業内容が変わると一生懸命労働者が北署に言っているにかかわらず、公社の方はまだ変わらない、こう言っている、こういう事実はあるわけですか。これはおかしいと思うのですけれども……。
#200
○小澤説明員 そのお話は、まだ私ども報告を受けておりません。
#201
○田中(美)委員 それでは、一応それはちょっと調べてみてください。だれが、そういう電話なり言ったのかどうか知りませんけれども、労基署に対してそういううその報告をしているのか。実際に作業内容が四月一日から変わっているわけですから、そこのところを調べて、そういう事実があったかないかということを御報告していただきたいと思います。
#202
○小澤説明員 そういう事実調査をしたいというお話が監督署からありましたものを、公社がその必要ないとかそういうことを言ったことがあるかどうかという事実につきまして調査いたしまして、別途先生の方に御連絡をいたします。
#203
○田中(美)委員 私、いま言いましたのは、少し飛躍していらっしゃるように思います。もう一度言い直しますけれども、立ち入り調査をする必要がないと公社が言われたのでなくて、現場が変わるから――変わらなければ、少し早くなったり遅くなったり、いまおっしゃったように、忙しければちょっと遅くなるとかいうことも事によってはあるわけですが、そうではなくて、作業内容が変わらないと言ったから、北労基署の方ではそんなに急がなくてもいいというふうに考えたというのです。そういうところです。ここだけ訂正しておきますので、そういうことがあったかどうか調査していただきたいと思います。
 その次に、これもお二人に伺いたいというふうに思うのです。大臣、眠らないで聞いていてくださいね。この三月十二日に立ち入り調査をしましたときに、瀬間さんと山内さんのいろいろな調査はできたわけです。しかし清水美智江さんは、清水さんの職場である即時部というのがあるのですが、この即時部長、この方が一々労基署の調査を妨害した。立ち入りに必要な調査ができなかったと、北労基署の大河内課長が三月二十三日にこのように回答しているわけです。これは重大の問題だというふうに私は思いますので、こういう事実があったかどうかということを、まず公社の方にお伺いしたいと思います。
#204
○小澤説明員 そのような報告は受けておりません。
#205
○田中(美)委員 受けていなければ、早速にこういうことがあったかどうかということをお調べいただきたいというふうに思います。よろしいですか。
#206
○小澤説明員 監督署と公社とは非常に密接に意思の疎通ができておりますので、いまおっしゃったようなお話があるとはとうてい考えられませんが、いま先生のお話でございますので、すぐ戻りまして調べてみます。
#207
○田中(美)委員 労働省の方としては、私のところに訴えのありましたのは、大河内課長がこういうふうに言っているという訴えが来ているわけです。日にちも三月二十三日というふうに言っておりますので、果たしてこういうふうに妨害をされたのかどうかということと、それから調査ができているのかできていないのかということです。そこの事実をお調べ願いたいと思いますけれども、よろしいですか。
#208
○藤繩政府委員 いま伺いましたので、後でよく調査をさせていただきたいと思います。
#209
○田中(美)委員 このことは、調査をして報告をしていただきたいと思うのですけれども……。
#210
○藤繩政府委員 調査をしました上で御報告をいたします。
#211
○田中(美)委員 先ほど、これは裁判所でないのだからというふうなことをおっしゃられましたけれども、それはよく存じております。労働省と裁判所とは全く違うわけです。しかし裁判所でないから言うことを聞かない場合にはどうしようもないのだ、こういう結論になるのでは労働省の存在は要らなくなってしまうわけです。これは大臣よくおわかりですね。労働省というのは、最初の目的のところにも書いてありますように、労働者のためになるように労働省が監督し、指導するというあの役割りを持っているわけです。ですから、指導というのは、いつまでが指導かということで、指導というのは非常に深いわけです。学校の先生が子供を教育するというのは、非常に幅の広いものです。ですから、子供が言うことを聞かないから学校の先生が子供をお巡りさんのかわりに罰するというようなことはあり得ないのと同じように、労働省が裁判所のかわりをしてくれというふうに私は言っているわけではないわけです。ただ労基法の八十五条の一項で、そういうものではないにしても、労働者が職業病だと医者も言っているわけですし、そういうふうに言っているということが公社との意見が違っているわけですから、ここのところは公平にたくさんの資料の上にこれを認めまして、きちんとした指導というものをしていただくということではないかと思うのです。それに対しての応対の仕方、そういうものが、いままでのところでは、公社の言うことを非常に聞いたりというようなことがあったということですので、この点を十分に、私の方でもわかっておりますので、その点をきちっとした、だれが見ても公正である、本人たちも公正にやられたのだと納得いくような御指導をしていただきたいというふうに思います。
 非常に長い間、青春を本当に奪われるような形でこの人たちは苦しめられているわけです。頸腕がどんなに苦しいものであるかということは、初めのうちは理解されなかったわけですね。しかし、いまは相当理解されてきているわけです。むち打ち症と似ているわけですね。むち打ち症も、初めは怠け病じゃないかということを言われたわけですけれども、頸腕もそうです。しかし、いまはこれは非常にわかってきているわけですので、この点を十分に調査していただきたいというふうに思います。早急にやっていただきますと大体いつごろにこの結論が出るか、大まかなことをちょっとお聞かせ願いたいと思います。
#212
○藤繩政府委員 これは先ほどお答えいたしましたように、新しい資料のお話も出ましたから、なおその後の状況が変わるかもしれませんが、いままでの状況では、五月の中旬までに資料が全部出るということでございますから、六月には実態調査を最終的に行って結論に持っていきたい、こういうことで取り運んでいるわけでございます。
    〔住委員長代理退席、戸井田委員長代理着席〕
#213
○田中(美)委員 そうすると、実態調査をすれば大体六月にはすぐにその結論が出るということですか。
#214
○藤繩政府委員 そのつもりでやってまいりますけれども、調査資料の内容あるいは実態調査の結果を見なければ、的確なことは申し上げられないわけでございます。
#215
○田中(美)委員 これで終わりにしますが、最後に、いまちょっと新しい資料、新しい何かがとおっしゃったのですけれども、それは何ですか。
#216
○藤繩政府委員 先ほど先生がいろいろお挙げになりました中で、電電公社の方が承知していらっしゃらないものもあったかもしれない、現地であるいは承知しているかもしれませんが、そういう追加資料があればということでございます。
#217
○田中(美)委員 それでは速やかにお願いいたします。そして報告すべきことをぜひ報告していただきたいと思います。質問を終ります。
#218
○戸井田委員長代理 石母田達君。
#219
○石母田委員 きょうは労災補償法案についての質問を行いたいと思いますが、初めに法案について若干の質疑を行いたいと思います。
 最初に、今度の法案の改正で目的条項の変更があったと思いますけれども、その点についてどういう点の変更があるか、現行法と比べての違いを明らかにしてください。
#220
○藤繩政府委員 現行の労災保険法では、目的条項は「労働者労災補償保険は、業務上の事由又は通勤による労働者の負傷、疾病、癈疾又は死亡に対して迅速且つ公正な保護をするため、保険給付を行ない、併せて、労働者の福祉に必要な施設をなすことを目的とする。」とございます。これが今度の改正では、前段は同じでございますが、「公正な保護をするため、必要な保険給付を行い、あわせて、業務上の事由又は通勤により負傷し、又は疾病にかかった労働者の社会復帰の促進、当該労働者及びその遺族の援護、適正な労働条件の確保等を図り、もって労働者の福祉の増進に寄与することを目的とする。」というふうに目的条項をやや詳しくしたのが改正でございます。
#221
○石母田委員 詳しくしただけなのかどうかということは、私は見解を異にするわけであります。福祉事業という中で幾つかの事業の内容があるわけですが、この後審議されるいわゆる賃金の不払い法案の財源、これが福祉事業の一つになってこの法改正の中にも加えられていたわけです。この福祉事業というのは、賃金不払いの財源になるようなものを福祉事業に適切なものとして出しているのか、それともほかに財源が適当にない次善の策というか、もっと言えば、やむを得ない処置としてこうなっているのか、御説明願いたいと思います。
#222
○藤繩政府委員 端的に結論を申し上げますれば次善の策、むしろいま先生がおっしゃいましたように、やむを得ない措置というのが適正な表現になろうかと思います。賃金不払いにつきましては、午前中にも申し上げましたように、いまの不況に伴いましてどうしても何らかの救済手段をとらなければならない、しかしながら大変むずかしい問題だ、しかもわが国においては、前からその必要性が言われていながら今日までできないというのにはそれなりの理由があったわけでありますけれども、しかし最近におきまして、ヨーロッパ等の事例を見ましても、何らかの保険的なシステムを利用することによって、必ずしも理論的、体系的にはベストのものとは言えないまでも、拙速であってもこれを生み出す必要がある、こういう認識から、先生御承知のような諸般の先国会以来の事情も踏まえまして、関係労使の御了解も得ながら、審議会でもいろいろな御議論ございましたけれども、結論としては、現段階としてはやむを得ない措置ではなかろうかということで御了承いただいて答申をちょうだいした、その答申に基づいて措置をしたというのが実態でございます。
#223
○石母田委員 そうしますと、やむを得ない処置あるいは次善ということになれば、ほかに適切な財源がもし見出されれば、福祉事業としてこの賃金不払いの立てかえの財源にするということは再検討される、あるいは不払いの財源としては恒久的な処置というふうには考えられないけれども、どうですか、そういうことは当然あり得るわけですね。
#224
○藤繩政府委員 賃金不払いの立てかえ払いが問題でございますが、この立てかえ払いの原資をどこに求めるかというのは、非常にむずかしい問題でありまして、先ほど申し上げましたように、従来の難問をこの際やってみようということになりましたのは、ヨーロッパ各国で二、三年来こういう制度ができてきたということが一つの端緒にもなったわけでございます。しかしながらヨーロッパの例を見ましても、保険システムを使っておりまして、一応独立の保険料を取り立ててはおりますが、しかし機構としては、従来の労災保険あるいは失業保険の機構を使いながらやっているというのが実情であります。理論的にすっきりした筋を通した形で言えば、やはり独自の保険料を取り立てて、そうしてこれをもってこういう事業をやれば一番すっきりすると思います。ただ、これにつきましては、保険料率が当面予想されるところでは非常に低い。一万分の一からせいぜい四か五ぐらい。労災保険、失業保険の場合には、御承知のように一番低い単位で千分の一でございますから、そういう非常に低い単位の保険料率というものが独立のものとして成り立つかどうか。それからまた、そういうものを別建てにしてということになれば、徴収機構も支払い機構も、別な事業団なり何なりをつくり、特別の職員を採用してというような形がこの急場に間に合うか、また、それが現実的であるかどうか、いろいろなそういう配慮をいたしまして、今回、一応こういうことで発足をしてみたい。したがいまして、将来その辺の収支関係が明らかになり、実態が変わってまいりますれば、いろいろな考え方が出てまいるであろうというふうに思っております。
#225
○石母田委員 いまの最後の一言がほしかったわけですが、大臣にその点、再確認してもらいたいのですけれども、やむを得ない処置ということですから、いま言われたように、ほかに適切な、これに当たるような財源が見つかった場合には、当然検討されるというふうに理解していいわけですね。
#226
○長谷川国務大臣 局長から答弁しましたように、その保険金がまた一万分の一とかなんとかで別に新しくつくるというふうなそういうことよりは、いまのやつの方がいいんじゃないかというふうなことと、もう一つは、やはりこういう経済不況のときでございますから、この委員会、参議院の委員会等々で御要望のあるところ、また私たちも考えている大事なこと、それは使わないで済めば一番いいんですが、予算を用意しました。これは、そういうふうに事前にいろいろな手当をするところに政治的な配慮があるということでやっておりますので、その辺はひとつ御了承願いたいと思います。
#227
○石母田委員 だから、盛んに連発されている次善の策とかやむを得ない処置ということで、これが福祉事業の、いまあなたたちが提案されている最も適切な事業の内容なんだということでやっているんじゃないということははっきりしているわけでしょう。ですから、当然将来適切な――というのは、私、福祉事業の解釈がこういうものであって、こういう種類のものがどんどんふえるのだということであっては、法の趣旨から言っておかしいのではないかということでいま申し上げているので、その点で大臣の方からもう一度……。
#228
○長谷川国務大臣 先ほどからお答えしておりますように、こういう問題をこの場で取り上げられ、国会で取り上げられ、そしてまた三者構成の委員会でも、それぞれ利益の代表をされている方々さえも同意されていることですから、別個理解をいただき、そしてこれが日本の勤労者の未払いの場合に役に立つというところの政治的意義というものをお認めいただきまして、それはベストではないけれども、政治的にベターをお互いに選んで対応したい、こういう気持ちだけは、ひとつ御理解いただきたいと思います。
#229
○石母田委員 じゃ、もっとはっきり――私の疑念も類推してそうなっているのではなくて、この審議の過程の中では、労働省内部の意見も含めまして、基本問題懇談会か、そういうところでの論議の中で、この労災補償法案の補償という字を削ったらどうか、こういう御意見もあったというふうに聞いておりますけれども、そうでしょう。
#230
○藤繩政府委員 労働福祉事業について、賃金不払い事業が典型的な例だということでは困るという御議論を踏まえてのいまの御質問でございますが、その点について一言申し上げますが、この改正法の二十三条をごらんいただきましても、労働福祉事業としては一、二、三、四と踏まえておりまして、一は例の社会復帰、労災病院等の事業でございますし、二は被災労働者の援護の事業でございますし、三は最もいま緊急の安全衛生、なかんずく職業性疾病の予防の問題を大いに取り上げていこう、こういうことでございまして、四に「賃金の支払の確保、労働条件に係る事項の管理に関する」云々という規定があるわけでございます。労働福祉事業としては、本来、労働災害の周辺にありますいろんな問題というものに力点を置いてやっていこう、こういう考えでございます。
 そこで、そういった場合に、御承知のように労災保険は、当初労働基準法にあります事業主の無過失賠償責任を担保するという形で責任保険として誕生いたしましたけれども、その後たとえば年金制度の導入でございますとか、あるいは通勤災害の導入でございますとか、あるいは各種の特別加入の制度でございますとか、いろいろ幅広く事業をやってまいります。そういう意味では、必ずしも基準法で言っている最低基準の保障だけにこだわらずに、労働者の保護のために幅広い事業をやっていくべきではないか、そういう発想からいろいろ御議論があったことは事実でございます。ただ最終的には、そうは言っても、やはり補償というものが根幹でなければならない、その点は私ども全く異論がないのでございますが、それを明らかにするために、法律名は現在のままの方がいいじゃないかという結論になって、かようになったわけでございます。
#231
○石母田委員 若干答弁が長いので、私、時間的に、協力しようと思ってもあれですから、あなたの方も協力してください。
 そのとおりだと思うんです。やはり補償法案ですから、補償が根幹でなければならぬ。そういうところから見ると、リハビリとかそういうものは、災害の防止というような範疇のものとしてあるけれども、賃金の不払いまで出すということになると、これは、どんどん広がるんじゃないか。それだったら、もっと補償が十分にされておって、そしてこれが私どもの要求するような八〇%以上になってきちんと補償されているという状況であって、なおかつという問題なら、まだいろいろ検討される余地もあると思いますけれども、御承知のように、この補償の問題については、かなりのいろいろの改善がまだまだ必要だという段階において、こういう不払いというようなものにまで広げて、それが福祉事業なんだ、こういう解釈については同意しかねるわけであります。
 したがいまして、いま言われましたように、これはやむを得ない、あるいは次善の処置だというふうに理解してほしいということですから、そういうものだということでやっているのだということだけはわかります。決して賛意を表しているわけではありませんけれども……(長谷川国務大臣「まあそう言わんで」と呼ぶ)不規則発言が大臣席から出るようではしようがない。
 さて、次に進みます。今度の改正で、いわゆる傷害補償年金の中で、現在の人たちが給付が低下するんじゃないかという部分があるわけですね。それは一時金をもらってない人で二級、三級の人は、私どもの計算によると、若干現行よりも給付が低下するんじゃないかというふうに考えているわけですけれども、この点についてはどうでしょう。
#232
○藤繩政府委員 これも午前中の御論議で大分出たわけでございますが、現在の休業補償給付あるいは長期傷病補償給付は、六〇%に二〇%の特別支給金が出ている。今度の傷病補償年金でございますと、六七から八六%までいきます。しかし、それだけじゃございませんで、ボーナスを対象とする特別支給金がそれに加わりますので、必ずしも低くなる者がたくさん出るということには私どもはならないと思っておりますが、しかしボーナスは、産業により事業により区々でございますからいま先生がおっしゃいましたような例が皆無だというふうには私ども思っておりません。
 そこで、それらにつきましては、五十二年四月一日において、現に給付を受けている者の実額を補償するという措置を、特別支給金という形でぜひこれは実現をしたいというふうに思っておりますし、なお将来のそういう問題についても、そのような考え方に立脚した何らかの措置を講じたいということを、午前中にもお答えをしたような次第でございます。
#233
○石母田委員 そうしますと、現在の受給者あるいは四月一日の者については、これは低下させない処置をとる。新規の将来の部分についても、特別支給金というようなもので善処したい、対処したい、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
#234
○藤繩政府委員 できるだけそういうことで特別支給金というものは組んでまいりたいというふうに考えております。
#235
○石母田委員 次に、この法案の中で非常に関心の深い問題の一つに、解雇制限の解除の問題があるわけです。
 御承知のように、現行法では、三年たちまして長期傷病補償制度に移行する段階で十九条の解雇の制限が解除されることになっておるわけですね。今度の場合には、一・五年ということで年金ということになりまして、そして三年までは解雇の制限は受けるわけであります。この三年たった後の問題で非常に私どもが心配しているのは、三年たったらすぐ機械的に解雇になるのかどうか、そういう事態が来るんじゃないかということがあるわけです。特にそれが病気が、もう少したてば治るというような、実際にはいま療養中というような場合、そうしたときに失業の不安が療養中の方にかかるということは、精神的に言っても、あるいは病気を治すという点から言っても、非常に否定的なものになるのじゃないか。
 これは、この前の問題にもありましたけれども、その場合にはいろいろケース・バイ・ケースで機械的にやらないように善処したいというような労働省の方のお考えもあったようですけれども、今度の場合も、そうした精神で、三年たったからといってすぐ機械的に解雇制限の解除ということで解雇ということじゃなくて、その点については十分あのとき、労働者と資本家の労使の良識ある話し合いによってそうした問題を解決する、あるいは労働省としても側面から、すぐそうした人たちに解雇というようなことがならないように協力したい、こういう御答弁がありましたけれども、これは、こういう制度になっても変わりはありませんか。
#236
○藤繩政府委員 制度の運用については、できるだけ関係者の理解を得ながら進めたいというのはそのとおりでございます。
 現在行われています長期傷病補償給付も、三年を経過してもなお治らないというときに必要があればということで、一つの判断基準を設けてやっております。それは労働不能の状態がずっと続くであろう、少なくとも六カ月程度では治らない、その後もずっと続くであろうというときに長期傷病補償給付に切りかえる、そうすると解雇制限がなくなるということでございます。それが今度は、一年半の時点で傷病補償年金にかわるわけでございますが、その労働不能の状態の判断につきましては、廃疾基準の内容といたしまして現在と変わらないようなものを考えたいということを、午前中にも申し上げたわけでございます。
 そこで問題は、疾病に対する補償のあり方としましては、いつの時点でも常時被災者の状態を見まして、そしてそれに適切な補償を施していくということが必要でございますから、現在の制度でも、たとえば長期傷病補償給付を受けられても、その後症状が軽くなるというような状態の場合には、休業補償に移るということが当然予定されておりまして、通達にもそのことが明らかになっております。ただケースとしては、非常に少ないわけでございます。それと同じで今度の傷病補償年金でも、症状が軽くなれば、三年待たずに治れば、それはその時点で休業補償に切りかえていくというようなことは、これは当然でございまして、いずれにしましても、一年半あるいは三年というところに重点はございましょうけれども、たてまえとしては、常時被災者の状態をよく見まして、症状調査を十分行いまして、それによって適切な補償を講ずるようにしていくという方針でございます。
#237
○石母田委員 このことが非常に不安になった大きな原因には、先ほどと同じように、この法改正の審議の過程の中で、労働基準法の第八章の問題ですね、これの所要の整備を行って、一定の条件、たとえば一定期間福利厚生施設を利用させるということであれば、制限の解除をしてもいいんじゃないか、つまり一・五年ですね、そういう論議があったように聞いているのです。
 ここにあるこれは、労働省の内部の「労災保険制度の改善について(案)」という文書だそうですけれども、その中にもそうした内容のものが書かれているのです。こうしたことが検討されているということがあったので、なおさらこの一定期間というのは一・五年ではないかというふうにわれわれは解釈して、一定の条件、たとえば一定期間福利厚生施設を利用させることによって解雇制限の解除という御意見があったように聞いていますが、この点はどうですか、聞いたことはないですか、全然。
#238
○藤繩政府委員 いろいろな人がいろいろな勉強をしていると思いますが、私自身は、実はいまその意見を初めて伺ったようなことでございます。
 いずれにしましても、解雇制限の問題は非常に重要でございますから、三年という基準法の原則というものは、この際一切手を触れないということで割り切ったわけでございます。扱いとしては従来どおりでございます。
#239
○石母田委員 ここに「労災保険制度の改善について(案)」五十年七月二十一日という文書があります。その九項目の中にその他の問題について、「労働基準法との関係1労災保険の全面適用にともない、労働基準法第八章の規定について所要の整備を行う。2解雇制限と保険給付との関係を切り離し、一定の条件(例えば、一定期間の福利厚生施設利用)の下で解除できることとする。」こういうことの文書について、労働省のどの段階でも出ていない、こうしたことはなかったというのですか、それともあなたが知らなかったというのですか、課長さんでもいいですよ。
#240
○田中説明員 今回の改正の問題につきましては、労災保険審議会の中の懇談会で二年余りの期間いろいろな角度から検討したわけでございますが、その際に大きな問題点の一つとして、労災保険が全面適用になった場合に、労働基準法の第八章の規定が具体的には動かなくなってくる、その場合に、労働基準法の規定について何らかの立法技術的な整理が要るか要らないかということの事務的な検討をいろいろやってみたわけであります。
 結局、現段階でそこまで手を触れるには、さらに慎重な検討が必要であるということで見送られたわけでございますけれども、事務的な段階では考えられ得るあらゆる可能性についていろいろ資料もつくり、研究もした。先生のお手元の資料も、あるいはその一つかと思いますが、議論は事務的にした経緯はございます。
#241
○石母田委員 そのとおりだと思います。それが、局長が非常に偉過ぎて、そこまで届かなかったという意見だと思いますね。私は、局長もそういう意見があることぐらいは、是非は別として承知しておくことが重要だと思いますよ、こういうときは。
 私は、こういう問題がやはり論議の中でいろいろ出てくるということから、先ほど言ったような解雇制限の解除についてのいろいろな不安が出てくるというのも、一定の根拠があったと思います。しかし、いま出された今度の法改正については、三年ということになっておりますし、その後においても、先ほど局長が答弁した、たとえばこれはむち打ち症とか頸肩腕症候群とかいろいろ、もう少しで治るんだけれども、三年たってしまったというような場合に、機械的な解雇制限の解除ができることを、解雇するというのじゃなくて、そういう労使の良識を持った処理のできるように、そして療養中にいわゆるできるだけ早く治して職場に復帰できるようにという精神と立場から、こうした問題について善処するよう政府としても援助していくというふうにぜひやってもらいたいと思います。これは、よろしゅうございますね、局長。
#242
○藤繩政府委員 改正法の施行につきましては、できるだけ実情を配慮いたしまして、また関係者の理解を得ながら進めらるべきものだというふうに思います。
#243
○石母田委員 もう一つ、今度の法改正の中でメリットの拡大があるわけですね。つまり労災の度数率が少なければ少ないほど、いろいろなところから出てくる保険金の保険料の問題についていろいろな便宜を図るようになっているわけです。この幅が現行法よりも広く拡大されたということで、私は、現行の実態から見ると、そのことが逆に、労災隠しという言葉が当たるかどうか知りませんけれども、なるべく労災扱いにしたくない、こういうことを奨励する結果になりはしないかということを恐れているのです。
 といいますのは、中小企業で言いますと、労災を起こしますと、監督署からそれなりの措置の要請もあるし、それよりも、マークされるという言葉があるそうですけれども、いろいろとマークされて、何かあるとすぐそこが目をつけられるわけですね。これは考えられることですよ。
 それからまた、私この間、横浜銀行の問題でやりましたけれども、金融機関では、やはりお金もあるせいか、できるだけ労災扱いにしないで、それと同等あるいはそれ以上の補償をやって解決してしまうとか、あるいはまた大企業などでよくやっていますが、いわゆる無災害運動というのがありますね。そうしますと、労災を起こしたというのじゃ、当然一遍でその運動に傷がつくというので、私から見ると過当な無理な無災害運動というものが、何か労災というものを隠していくという傾向がある。
 たとえば、私の知っている例でも、ある大企業の中で下請の人たちが事故を起こした。そうしたら、すぐ企業から、この中で起こったというのじゃ困るから、よそで起きたということにしてくれと言ってきた。そう言ったって、そこで起きたものはどうなるわけでもない。結局、下請企業が泣いて労災扱いにしなかったというような相談を受けたことがありますけれども、こういうような実態からいいますと――このメリットの拡大というものがただ労災をなくすという方に作用する場合もあるでしょう。全然ないとは言いません。しかし同時に、労災を隠して労災扱いにしないということをかえって助長する結果になりはしないかということを恐れているのですが、その点については検討されたことがあるのですか。
#244
○藤繩政府委員 いま御指摘のようなことは、私どもも時に耳にするわけでございまして、率直に言って、メリット制というものは、そういうもろ刃の剣のような要素があると思います。たとえば、いま先生もお触れになりました表彰制度なんかも、無災害を表彰するということは、それ自体結構ですけれども、そういう傾向をまた逆に助長するというようなことがありまして、大変私どもも頭を悩ますところでございます。しかしながら最近では、労働者の皆さんの権利意識も非常に高くなってきておりますし、それから各労働法規の徹底ということも行われておりますから、往年とその辺はずいぶん変わってきていると私どもは思っております。
 隠し災害というようなことがあってはなりません。そのようなことのないように十分注意しながら、いま先生もお認めになりましたように、メリット制の災害減少の効果というプラス面を生かすような監督、指導を私どもとしては行ってまいりたいと思います。
#245
○石母田委員 では具体的な例を申し上げましょう。それは横浜の白鳥運輸という港湾関係の運輸のところで起きた事件です。ここでフォークリフトの運転手をやっている人がおります。赤石滋という人です。この人が現在、頸腕症候群で休業しておりますけれども、この人は五年五ヵ月フォークリフトの運転手をやっているわけです。発病してから一年半ぐらいになって、四月十五日から現在まで休業しておる方であります。この人が労災の申請をしたいということで――横浜の南基準監督署でいろいろのそうした扱いをしているわけですが、初めこの会社は労災扱いにということで返事をしていたのが、最近、横浜の南基準監督署の指導で労災扱いを認めないという返事に変わっている。こういう中でその理由にしているのは、まあこういう頸腕症候群がこのフォークリフトということではまだ恐らく認定されたあれはないと思いますけれども、そういうことで全国でも珍しいから、初めてになるから労災扱いにしない方がいいということを会社に指導して、会社も労災扱いとして申請はしない、こういうふうになっているのだというふうに聞いているのです。
 そうしますと、これは後で申しますいろいろ職業病の認定の問題とも関係するのですが、それと別個に、基準監督署ができるだけ労災扱いにしないような指導をするというようなことは、私の言う労災隠しというものに結果としてなるわけなんですが、こういうことはあり得ることなんですか。
#246
○藤繩政府委員 いま伺いまして、実はびっくりしているわけです。関係者も初耳だということでございますが、そういうようなことはあってはならないわけでありまして、労災請求は言うまでもなく労働者の権利でございますから、労働者が自分でそうだということで、そういうふうに思えば、関係資料をそろえて監督署にひとつ請求をしていただきたい、そういうふうに思います。
#247
○石母田委員 それでは、こういうところに名前出すのは余り好ましいことじゃないけれども、あなたの方で調べる必要もあるから名前を言っておきましょう。労働事務官の倉下勝司という人だそうです。この人が会社側に対して、いま言ったようなことで、全国でも初めてになるからということと、やはりこの労災扱いにするといろいろ今後困ることがあるというような注意があったそうで、会社側としてそうしたいということで、判こをゴム判だけ押すけれども角判は押さないとか、いろいろなことを言っているらしいのです。こうしたことが事実かどうか、私は、ぜひ調べてもらいたいと思うのです。あり得べからざることだと思います。
 この事実はどうか知りませんけれども、私は、やはり労災の申請というものはきちんとさして――それを認定するかどうかは、また別の問題だと思いますよ。しかし、こういう申請自体にこのような指導を監督署が与えるということは、明らかに間違いであり、こうした実態があるから、こういう問題まで出されているから、このメリットの拡大というものが果たしていい面だけに作用するかどうか、むしろ逆に、こういう労災隠しを助長する結果になりゃしないかということで、いまの行政指導の中で善処していきたいという答弁だけでは非常に私は不安です。
 この点について大臣の方からもう一度、そういうことのないような保証について大臣としての見解をお伺いしたいと思います。
#248
○長谷川国務大臣 これは、ただいまうちの局長が答弁したとおり、さらにはまた石母田さんがおっしゃるとおり、労働者の権利でありますし、その認定は認定として正確にやっていくというところに労働基準法に対する信頼が出てくる、労働者の権利が守られる、私は、こういうことだと思っております。
#249
○石母田委員 それでは次に、フォークリフトの運転手さんの腰痛症の認定問題についてお伺いしたいと思うのです。
 これは、ここに一つの具体的な例がありまして、私も、その相談に乗っておるのですが、私自身も、どうしてこういう人たちが認定にならないのだろうかというふうに考えておる件の一つです。それは横浜に笹田実業というところがあります。これもやはり港湾関係です。そこに入社されて以来かなりの長い期間にわたってフォークリフトの運転手をやっている方です。この方が腰痛症で非常に困っているわけです。この人は渡辺正雄という人であります。この人は、この中でも現場作業が八時間、そのほとんどがフォークリフトの作業乗務であったというような人です。初めは一日も休まないで出勤できるほどの健康状態だったのですが、これで見ますと、港湾や、それから鉄鋼会社に行った中で、かなり無理な、徹夜したり、夜勤から続いてまた翌日の明けを働いたとか、そういう続いて十何時間フォークリフトに乗ったとかいうかなり激しい労働をしているわけです。このような中で、現在腰痛症で非常に困っているわけなんですが、この人が申請すること自体に会社がなかなかうんと言わぬということで、これは基準監督署の指導もありまして、申請に対する会社の同意がなくても個人でできるということで、現在、船員病院を通じていろいろな手続をとっているわけです。ところが、そういう指導で相談に行ったのですが、これは相当長くかかりますよ、こういうお話を受けたというのです。これは、こういう問題が起きてから、いろいろの経過がありましたけれども、六年ぐらいになっているのです。正式に出したのはそう時間がたっているという問題ではないかもしれませんけれども、長くかかるぞと言われて、もうすっかりしょげ返っているわけです。私などずっと書類を見ても、明らかにこれは業務上の認定とできるものじゃないかと思うのだけれども、なぜこういうものが長くかかるのか、あるいはこの件については、すでに調査を依頼している点もありますので、この点についての御説明を願いたいと思うのです。
#250
○藤繩政府委員 いまお話しの渡辺さんという方の状況につきましては、お話しのとおり、かなり古い時代から出てきておる問題でございますけれども、正規には五十年の十二月十七日に南の監督署に来られまして、そして本人が業務と関連があるというふうに主張するならば、労災保険の請求書を出すようにということで指導を行いまして、五十一年三月二十六日に請求書が出されましたので、いまおっしゃるように、主治医である横浜船員保険病院の医師に意見書をいま依頼しておりますので、調査を早急に行いまして、判断をいたしたいと思っておりますが、私ども、できるだけ労働者の保護のために適正な指導を行いたいと思っております。
 ただ腰痛につきましては、先生も御案内のように、腰痛、頸肩腕症候群とか、こういうものは、最近、いわゆる神経症状を伴う疾病ということで非常に限界がむずかしい問題でございまして、腰痛なんかでも非災害性の疾病ということになるとなかなか業務上になりにくいというようなこともあるわけでございまして、担当者としては頭の痛い問題で、いろいろ自分たちの承知している知識なども、あるいは御披露したことがあったかもしれません。しかし結果的には、いま申し上げたようなことで処理を進めておりますので、早急に決定をいたしたいと思います。
#251
○石母田委員 これは、この方の認定の問題についても、実は監督署に相談した過程の中で、この前の話と同じような、むしろ労災扱いにしない方がいいというようなこともあったということ、これは具体的には調べを依頼してありますから、まあこうしたことがあったということを――これは前人者です、いまの方じゃないですから誤解のないように。そういうこともあったということで、決して申請が本人の意思でおくれていたというだけではないということを申し添えておきたいと思います。そういうことでそれは否定されて、早速いま適切な指導を受けているようでございますけれども、そういうことがあったからこそ、この認定については、できるだけ早くしてあげていただきたいというふうに考えております。
 それで、この問題と同時に、この人たちが、本人の話を聞くと、一番つらかったのはバック走行、後ろ向きで後ろへ下がる場合、後ろに物を積んだり、そのときに座席が固定していることが腰痛症に非常に大きな関連があったのじゃないかと言われているのです。その後改善されて、これは回転するようにしなければならぬようになっているらしいですね。最近そういうものに改められているのだけれども、聞くとまだ港湾の中にも、いや、そういうふうになっていない、不況のためにその改善がおくれて、固定した座席のままでやっているということから腰痛症に、治って行くとまたすぐなってしまうというような問題があるそうです。
 ですから、これは労働安全衛生の方だと思いますけれども、そうした腰痛症を防止するためにも、何かいわゆる固定されたものが回るようにとか、あるいはその下にスプリングが入るようにとかいうようにいろいろの処置があるそうですけれども、そうしたものの改善措置をぜひ企業に対しても促進させるように指導を強めていただきたい、こういうふうに思いますが、この点での見解をお願いします。
#252
○中西政府委員 現在、フォークリフトの座席につきましては、構造規格で緩衝材を使うというようなことは規定されておりますが、ただいま先生のお話ありましたような、自由に回転できるいす、これが腰痛症の予防に非常に役立つということであれば、これは構造規格の中に入れることについて十分検討いたしたいし、また業界を指導いたしたい、かように考えます。
#253
○石母田委員 そこで、いま局長の答弁の中にもありましたけれども、特にこうした非災害性の腰痛症の問題については、非常に認定がむずかしいという問題があるわけです。この点については、四十三年二月二十一日にこの取り扱いについての基準が書かれておりまして、その第二項目か何かに、災害性の原因によらない腰痛についての認定基準が書かれているわけですね。この問題について特にこのフォークリフト関係の労働者、それから港湾のいろいろな荷役作業をやっている人たちにこの腰痛症がありますね、どうしても腰を使いますから。それから長距離運転手、それから、ここでもたびたび問題になります保母さんの腰痛症の問題、こうした人々や、あるいはもっと言えば大工さんとか左官屋さんとかいう特殊な作業に従事している方の腰痛症が非常にふえているわけですが、こうした人々の非災害性の腰痛問題の認定基準について、いま四十三年二月二十一日の通達だけでは、先ほど申し上げましたような非常な困難さが出ているので、この改善をぜひお願いしたい、こういうふうに思います。この点についての政府の見解をお聞きしたいと思います。
#254
○藤繩政府委員 腰痛につきましては、いまお述べになりましたような経過でございますが、確かにその後の医学の進歩あるいはいろいろな実例等から見まして、この認定基準を再検討する必要がある。特に先般、大阪高裁でこの非災害性の腰痛についての一つの判断が下りまして、こういったことも踏まえて、私どもはこれを検討しなければならぬというふうに思っております。
 実は、四十八年十一月にこの腰痛等の業務上外の認定基準の検討に関する専門家会議というのを設置いたしまして、現在まですでに八回開催をいたしております。そこで、先般のそういう大阪高裁の判例などもありましたから、なお精力的にこれを進めまして、新しい認定基準をつくっていきたいというふうに思っております。
#255
○石母田委員 そうしますと、その専門家会議で検討されるのは、一つには、この災害性の原因によらない非災害性の腰痛症の認定基準と、それから当然、労働基準法の規則の三十五条にあります業務上の疾病の問題ですね、この点についての、さっき言ったような職種についての腰痛症についてどうするかという問題も検討されるわけですか。
#256
○藤繩政府委員 この腰痛症の認定基準の検討に当たりましては、具体的には大工、左官、フォークリフト運転手、保母、港湾労働者、電気工事というようなことが非常に問題になっておりまして、それをいま鋭意やっております。
 それから、規則三十五条の問題は、たびたびこの委員会でも御指摘ございました。単に腰痛や頸肩腕症候群だけの問題でございません。あらゆる職業性疾病について、いかにもあれは古いじゃないかという御指摘がありましたので、これは別途三十五条についての専門家会議というものを最近起こしまして、ぜひこれは全面的に検討したいというふうに思っています。その中でこの問題も処理をいたしたいというふうに思います。
#257
○戸井田委員長代理 速記をとめて。
    〔速記中止〕
#258
○戸井田委員長代理 速記を始めて。
#259
○石母田委員 じゃ、ここでちょっと発言者かわります、大臣が退席されるそうですから。
#260
○戸井田委員長代理 次に、瓦力君。
#261
○瓦委員 大臣が参議院の本会議で、そちらの方に向かわれましたので、はなはだ残念でございます。しかし石井政務次官、非常に労働問題、勤労者対策に熱心なお方でございますので、いろいろ質問をさせていただきたいと思います。ことに政務次官、外務委員会におきましてILO百二号批准につきましては、最低基準の批准について大変お骨折りをいただいたわけでございます。また、いろいろ勤労者政策につきましても、石井政務次官の論文を方々で見るところでございますが、まず初めに、すでにさきに質問された方にそれぞれ答弁がなされたことでございますが、改めて重複する部門もあるかと思いますが、お許しをいただきたいと思います。
 労災保険制度の改正、ことに長期療養者に対する年金の給付というような面、いろいろ改正点の盛られた本法の改正でございますが、まずお尋ねをいたしたいことは、保険給付に並列する事業として労働福祉事業を実施することとされております。労働福祉事業の一部として労働災害とは関係のない適正な労働条件の確保のための事業を実施することが予定されておるわけでございますが、この結果、本来労働災害の場合の労働者保護を目的とした労災保険の性格が変化するものであるかどうか、こういった点について労働省の見解をお尋ねしたい、そしてまた労働災害の保護を基本目的とする保険制度として今後維持する考えは当然あろうと思うわけでございますが、労働者保護を目的とした総合的な保険制度へこれを広げていく、発展させていくというようなそういったお考えをお持ちかどうか、こういったことをまず最初にお尋ねをしたい、こう思うわけでございます。
#262
○石井(一)政府委員 御質問の要点は、労働福祉事業が新たに加わったということにおいてその保険制度自体の性格というものが移行するのではないか、一見そういうふうに見える面も確かにあるわけでございますけれども、御承知のように、本来労働者の業務災害について保険給付を行うということが、この保険事業の基本でございますし、さらに使用者の納める保険料で賄われるという趣旨も体して拡大的、前進的に内容の改善を整備する、こういうことが今回の法改正の趣旨でございますので、従来の目的から特に遊離するというようには本省としては考えておりません。
 御承知のように、保険給付の改善に関しましては、過去たびたびその改正を行ってまいりましたわけでございますけれども、今回は、その給付の内容を改善するとともに、御指摘のように労災病院、リハビリテーション施設の整備あるいは各種の援護措置というものに関して、さらに充実を図ろうというところが目的でございます。
 御承知のように、最近特に労働災害が年々増加しつつあるというのが現状でございまして、労災年金受給者の現実的なその背景等々をも配慮いたしまして、具体的に解決をするためには、今回の改正というふうなものが必要だというふうに考えており、さらに長期的な見通しを考えた場合には、この労働福祉事業というふうなものをつけ加えるということが、労働者の福祉の前進のために特に必要だというふうに考えております。
 したがって、この労働福祉事業を行うことを積極的に推進するということを今回明らかにしておるわけでございます。けれども、この点は冒頭にも申し上げましたように、労働者の業務災害について保険給付を行うということが保険事業の基本的な方針でございますので、その事業内容について格別異なるものではない、そして方法として福祉事業の分野も使用者の納める保険料で賄われるわけでありますので、おのずから事業主が負担すべき事項は、それを負担すべき、またはそれになじむ事項のみに限られてくる、こういうふうなことになろうかと思うのであります。
 なお、補足いたしますと、これらの新しい福祉事業の施行、運営に関しましても、今後労災保険の本来の性格を考えまして、労災保険審議会の御意見も十分尊重して適切な運営を図ってまいりたい、このように考えております。
 なお、将来の問題に関しましては、当然総合的な観点から今後漸次前進を図っていかなければいかぬというふうなことは考えておるわけでございますけれども、いろいろ諸制度の関連もございますので、前向きにかつ慎重に対処していきたい、このように考えておるわけでございます。
#263
○瓦委員 ただいまの政務次官の答弁で、これから労働福祉事業というのは、五十一年労災勘定の歳出総額で見ますと、労働福祉事業九・七%ぐらいを占めるわけでございますが、今後さらにその発展も望み得る、こういうわけでございます。
 それで、この第三章の二、労働福祉事業の一番にございます療養に関する施設及びリハビリテーションの問題についてお尋ねをしたいと思うわけでございます。
 五十年の九月、リハビリテーション研究会で労災労働者に関するリハビリテーションのあり方に関する中間報告、五十一年度においてはこの報告に基づいて実現のための長期計画を検討する、当面拠点施設の整備に着手するというようなことでございますが、現在、社会復帰の促進を図る上で医療施設であるとかリハビリテーション施設の整備拡充というのは非常に大切な意味を持っておる、五十一年度にはその拠点的な整備に着手するということでございますが、まず労災保険のこうした施設の現状はどうなっておるかということについてお尋ねをしたいと思います。
#264
○藤繩政府委員 労災医療を行う施設といたしましては、都道府県労働基準局長が指定をいたします医療機関、これが全国に約一万八千ございますけれども、より直接には、いま御指摘の、今度の改正法案によれば労働福祉事業でございますが、その一つといたしまして労災病院というのがございます。これが全国に三十四ヵ所ございます。そのほかに、現在新潟県の燕市、それから茨木県の鹿島にさらに新しい病院を建設中でございます。このほか、労災病院が置かれていない地域を中心に労災病院の活動を補完し、地区サービスの充実を図るということから、労災委託病棟というものをやっておりますが、全国に十一カ所ございます。
 それから、リハビリテーション関係の施設といたしましては、労災病院はそれぞれリハビリテーション部門を持っておるものが多いのでございますが、そのほかに脊損患者に対しまして健康管理を行いながら適当な作業に従事させる、そして自立更生を図るという意味におきまして、労災リハビリテーション作業所というものを全国に九カ所持っております。
 それから、いま御指摘になりました中間報告の中に出てまいります拠点のリハビリ施設ということの一環といたしまして、主として脊損者を対象としました施設を福岡県の飲塚市に建設を予定して進めております。
 以上のほか、いろいろな労災福祉事業といたしまして、義肢等の補装具でありますとか、車いすの支給でありますとか、社会復帰資金あるいは自動車購入資金の貸し付けだとか、いろいろなことをやっておるような現状でございます。
#265
○瓦委員 三十四カ所でございますから、労災病院を将来各県に一つずつ配置をしていくというようなことでさらに努力をお願いしたいわけでございますし、また総合脊損センター、ただいま局長からのお話も伺いましたが、全国にブロックをつくりまして、総合脊損センターの配置、各県に労災病院を設置していくというようなことにつきましては、現在計画か何かお持ちでございますか。
#266
○藤繩政府委員 理想から申しますと、できるだけ多くの労災病院あるいは委託病棟、あるいはいまのリハビリテーションの施設というものを持ちたいと私どもも考えておるわけでございます。しかしながらこれらはなかなか金のかかることございまして、むしろ現実には、当面持っております既設の労災病院の設備が大分老朽化してまいりました、その計画的な整備をやる必要があるということを考えておりまして、これは計画的な整備ということを来年度から進めたいと思っております。
 それから、労災病院を建てていきます場合に、医師会その他地域の民間医療機関との調整といいますか、これも非常にむずかしい問題でございます。いろいろそういうことがありますので、理想は理想といたしまして、現在、先ほども御説明しましたように燕と鹿島でやっておりますが、その先どんどん労災病院を建てるというような状況には、実は率直に申し上げてなかなかなりにくい状況にございます。
#267
○瓦委員 次に、労働者の安全及び衛生の確保の問題でお尋ねをしたいと思います。
 中小零細の事業主に対して、安全衛生関係法令を守らせるということが非常に大切なことであることは申し上げるまでもないのですが、現在、大企業はともかくといたしまして、中小企業において安全衛生関係の法令を守ることについていろいろ困難な事情があると思うのです。こういった中で、安全衛生の問題について実効あらしめるためには、専門的な指導であるとか、あるいはまた安全衛生施設を設けるための融資の問題、こういった経済的な援助が不可欠である、こういうぐあいに思うのであります。今後どういうような考えで対策を進められるか、そのことについてお尋ねをしたいと思います。
#268
○石井(一)政府委員 お答え申し上げます。
 御指摘のように、労働行政の中で安全衛生という問題、これを最重点に置き、今後も総合的な対策を推進していくことを考えておるわけでございまして、現に、昨今労働災害による死傷者の数は逐年減少の一途をたどっております。昭和五十年には死傷者が百十五万人であったわけでございますけれども、そのうちの死亡者数が三千七百二十五人にとどまったというふうに推定されております。昭和四十九年、四十八年は五千人、六千人という推定でございましたので、千人近い単位で逐年減少をしておる、こういう情勢になっておるわけでございます。今後も、非常にむずかしい職業がんの問題であるとか、あるいは大規模のコンビナートにおける爆発の問題であるとか、科学技術の伸展とともにそういう形での新しい災害がふえていく傾向ではございますけれども、これらに対しましては、できるだけ科学的な防止措置を推進していきたい、かように考えております。
 なお、ただいま御指摘がございました中小企業に対する安全衛生対策の問題でございますが、これは御指摘のように、大企業に比べて行き届かない面もございますし、予算的な問題等々でやはりどうしても政府の援助なり政府の強力な施策の推進というものが要請される分野であろうかと思います。もちろん労働災害の防止は、本来事業者当事者の責任であって、中小企業者といえどもみずからの努力を怠るということは、責任を全うしたと言えないわけでございますけれども、御指摘のように、労働省といたしましては、あらゆる面でこれらの弱い点と申しますか、それを補っていきたい、そういうふうに考えております。
 そこで、具体的に実施いたしております問題を申し上げさせていただきたいと思うのでございますが、まず最初に、中小企業に対する巡回健康診断、これは昭和五十一年度に約七千百万円の予算を計上いたしております。それから巡回安全点検、これに関しましては、わずかでありますけれども、三百六十万円の予算計上を昭和五十一年度にいたしており、これらはいずれも中央労働災害防止協会に実施を委託いたしております。
 それから第二に、労働安全衛生融資の、先ほど御指摘がありました問題でございますけれども、五十一年度の融資枠として九十五億円を計上いたしておる現状であります。
 それから、安全衛生教育センター、現在ここで安全衛生管理者に対する教育を、東京都下の清瀬市において行っているわけでございますけれども、今後二年間の計画によりまして、関西にも新しい安全衛生教育センターの建設を推進していきたい、そのために五十一年度の予算に第一年度建設費として三億円の計上をいたしておるような現状でございます。
 第四に、労働衛生検査センターによる化学物質等の有害性の調査、環境の測定というふうなものも新たに実施をいたしております。
 第五に、中央労働災害防止協会の地区サービスセンター、これは全国に七カ所現在設置されておるわけでございますけれども、これらに委託いたしまして、環境の測定なり教育あるいは講習の実施というふうなこともやっております。
 以上申し述べましたように、労働省といたしましては、中小企業に対しまして特に重点を置いていろいろな施策を講じてまいったわけでございますけれども、今後さらに必要に応じて施策を強化していきたいと思っております。
 現に御審議いただいております労災保険法の一部改正案の中にも、新たに労働福祉事業の一環といたしまして、中小企業に関連する専門的、技術的援助はもとより融資であるとか経済的な援助であるとか講習の実施であるとか、そういうふうな積極的な充実を図ってまいる、こういう計画をいたしております。
#269
○瓦委員 末端におきまして、労働保険を中心とする公的保険の事務が特に中小企業にとっては繁雑な問題になっておるわけでございますが、この問題についてちょっとお尋ねをしたいと思います。
 現在のところ、商工会等を通じて事務組合をつくらせてお世話いただくというような形でやっておるわけですが、雇用保険も整備され、労災保険も一歩前進をした、こうなってまいりますと、さらに事務組合を強化していくことが、事業主にとりましても、また労働者にとっても大切な意味を持ってくる。これに対する施策について、まだ手ぬるいのではないかという気がするわけでございますが、この実態と対策、こういったことについてお尋ねをしたいと思います。
#270
○藤繩政府委員 労働保険の全面適用の円滑なる推進に当たりまして、いまお話がありましたように、中小零細企業の保険事務を実際に行います事務組合の果たす役割りが非常に大きいことは御指摘のとおりであります。そこで私どもは、その育成強化のために事務担当者に対する労働保険事務の指導、研修の実施あるいは報奨金の交付というような助成策を実施してきたところでございますが、さらに五十一年度からは報奨金の引き上げを行いますとともに、労働保険事務組合指導員を設置いたしまして、保険事務について事務組合に対する指導及び相談などの業務を行わせることとしておるような次第でございます。報奨金は五十年度二十四億でありましたものを、今度の予算では三十億計上いたしておるというようなことで、今後ともさらに事務組合の育成には努力をしていきたいわけでございます。
#271
○瓦委員 その問題でございますが、事務組合において実態は現在のところ女性の事務職員がお世話をしておるというようなことでございますので、さらにこれから業務上の災害であるとかあるいは通勤途上の災害、こういったことでいろいろ相談が持ちかけられても、十分それにこたえ得るような体制をとっていくためには、報奨金制度もさることながら、さらに専門的な知識を有する指導員というものを労働省独自で考えていくというような意思はお持ちですか。
#272
○石井(一)政府委員 この労働保険事務組合がいま約一万一千ございまして、そのうち商工会議所なり商工会が約三千、重複して同じところに二つの看板を掲げておる、こういうふうな情勢になっておるわけでございますが、私などの体験から申しましても、いろいろのサービスがございますけれども、たとえば金融だとか融資とかいう問題、これは中小企業者にとって非常に深刻な問題ですが、その次に税制上の問題、それから雇用の問題もございますけれども、最近の労働保険の全面適用と、しかも、その円滑な推進というふうなことを考えますと、今後、労働保険の事務の遂行ということが中小企業者にとって特に重要な問題になってきておる、そういうふうに認識をいたしております。
 御指摘のように、今回新たに労働保険事務組合指導員というのに二十二名分、約一千六百万円の委託費と申しますかそういう費用を計上して専門家を派遣するというふうな形になってきたわけでございますけれども、これは、あくまでもスタートでございまして、今後この数を増強するとともに、予算的な措置も強力に行っていきたい。また、その点におきましては、ひとつ超党派で委員各位の御協力を賜りたいと考えておるわけでございます。特に大都市の商工会議所等では、やや大企業に偏向したサービスが行われておるという一面がございますけれども、非常に数の多い地方の商工会の仕事の内容などを見ておりますと、最近はやはり労災保険等の事務が、特に専門的な知識が要請され、また、それらを中小企業主が求めておるというふうな情勢でございますので、今後これらの施策に対しましては、積極的に取り組んでいきたいと考えております。
 ただ、事務的と申しますか行政的な欠陥と申しますのは、これらの商工会なり商工会議所なりの機関は、通産省の管轄下にあり、どちらかと申しますと、経営の指導であるとかその他の融資というふうなものが重視されておる場合に、労働省のプロパーの予算をそこに流すということは、行政上非常に混乱を来すというふうなこともございますので、現時点においては、労働保険事務組合という制度を強化し、その事業内容を充実せしめ、できるだけ指導員を多くし、それを特に商工会等に派遣することによって事業主等の要望に手の届くようなものに前進をせしめていきたい、こういうふうに考えております。
#273
○瓦委員 政務次官の大変な熱意に感謝をいたします。
 さて次に、今回の改正によって設けられる労働福祉事業の一環として、企業の倒産により賃金の支払いが受けられなくなる労働者のために、政府が事業主にかわって未払い賃金の立てかえ払いを行う、この事業を五十一年から発足させるわけでございますが、これから賃金の支払いの確保に関する法律案がまた審議されるわけでございますが、この未払い賃金の立てかえ払いは、この財源を労災勘定によることとした、その考え方を局長にお尋ねしたいと思います。
#274
○藤繩政府委員 現在の不況の中で賃金不払いは非常に重要な問題になっておりまして、かねて当委員会でも何らかの救済手段を講ずる必要があるという御議論が非常に強くございました。付帯決議等も先般出たわけでございます。また労働省といたしましても、未払い賃金の立てかえ払いというものが何らかの形でできないものかというのは長年の懸案でございました。しかし実際問題として、そういったものを肩がわりをするといいましても、結局そこで焦げつきが生じてしまうというようなことから、なかなか実際の政策に乗りにくいという事情がございました。これをどうしてもやるということになれば、やはり保険的なシステムを使わなければならない。しかも、それは私的保険にはなじまない、公的保険ということになろうかと思います。その場合に、先ほども御議論がありましたが、新たな保険としてこれを設立させるということが一番すっきりした形ではございますけれども、使用者の中には、失業とか労働災害と違いまして、倒産による賃金不払いというのは、事業の経営が下手だから起こるのだ、そういう人の企業のしりぬぐいをどうしてわれわれがしなければならないのかというような御議論もかなり強うございまして、こういった不況の中で新たな財源を求めて独立の保険制度をつくるという点につきましては、むずかしい事情がいろいろございました。
 外国の最近できました例でも、労災保険あるいは失業保険というような既存の保険制度を利用している例が見られましたことから、先ほども御議論がありましたが、ベストの案とは私ども思いませんけれども、現状で、しかもこの不況のさなかに早く施策を実施に移すという必要からいっても、拙速をむしろ尊ぶという意味で、全額事業主負担であります。この労災保険というものを、やはり事業主の責任であります賃金不払いに活用する方法を見出せないかということで関係者の間にいろいろの議論もございましたが、結論といたしまして、今回の労働福祉事業の中でこれを割り切って始めたい、こういうことで、今回関係法律案を提案し、また予算にも半年分として五十一億の予算を計上した、かような次第でございます。
#275
○瓦委員 二年を超すという大変な不況であり、倒産件数も非常に多い、よって賃金不払いも非常に多かったと思うわけでございますが、この法律がもっと早い時期に成立をしておればよかった、こう思うわけでございます。しかし国会の空白もこれあり、今日になったわけでございますが、これは、いろいろ事務手続が繁雑でございますから、私は、そう簡単にはできないと思うのですが、多少さかのぼってこれを適用していくというような考えはお持ちでございますか。
#276
○藤繩政府委員 いま先生御主張のように、できるだけ早くこれを適用していくということが必要でございます。ただ新制度でございますので、事の性格上、その倒産の事実が法律施行前にあるものにまでこれを及ぼすということはなかなかむずかしいことであろうと思います。
 ただ、これは別途関係法令の審議の際に申し上げたいと思いますけれども、施行日以後の倒産につきましても、それ以前六カ月の間に雇用関係が切れた者につきまして、さらにその前六カ月の不払いについてこれを見ていくということでございますから、実際の労働者の、しかも個々の不払いということになれば、かなり既往にさかのぼるということになろうかと思います。そういう点で一刻も早く施行期日を迎えたいという気持ちでおりますので、よろしくひとつ御審議をお願いしたいと思います。
#277
○瓦委員 今回の改正で、国内の事業から海外の事業に出向するといったいわゆる海外派遣者を労災保険の保護の対象に加えようということでございますが、これは従来の考え方から大きく一歩踏み出すわけでございますが、海外の事業なるがゆえに、相当困難な問題もあろうと思うわけでございます。この制度を実施するについて、その中身をどういうぐあいに考えておられるか、その中身を少しお聞かせいただきたいと思います。
#278
○石井(一)政府委員 御指摘のように、この問題は大変重要な問題でございますが、これまでの保険制度にはカバーされておらなかった問題でございます。最近、景気の動向がかなり好転しておるという中に輸出の振興ということがあるわけでございますが、その大部分はやはりブラント輸出等の輸出が非常に大きな部分を占めておるわけでございまして、それなりに日本の労働者が海外に出向し、そして技術の指導をするというふうな必要性というものはますます高まってきておる、こういうふうに申し上げてもいいと思います。
 労働省におきましては、対外経済協力政策の一環といたしまして、外務省なり国際協力事業団と緊密な連携を持ちまして、発展途上国におけるいろいろ国際的な技術協力というふうなものの推進に努めてきたわけでございますけれども、この点が欠けておりましたので、今回特にこの改正に当たりましてこの点を配慮いたしたわけでございます。そして今回の労災法の改正の機会に、このような海外に出張される方々に対しては、独自の特別加入という制度を導入いたしまして、できるだけの救済を図りたい。海外のことでございますし、全く国内と同様に取り扱い得るかどうかという面は、技術的な面でむずかしい面もあるわけでございますけれども、特別加入の制度を今後活用して整備することによって、これらの事業が円滑に推進できるように配慮していきたい、このように考えております。
#279
○瓦委員 海外派遣者を労災保険の保護の対象に加えるにいたしましても、料率の決め方によってはカバーできない、保護を与えられないというようなことになるわけでございますが、海外派遣者についての特別加入、この保険料率をどのようなところに置くのか、具体的にお考えがあればお聞きしたいと思います。
#280
○藤繩政府委員 特別加入でございますので、特別の料率を設定していかなければならないというふうに思います。内容的には、今後、労災保険審議会の場で御審議をいただいた上で労働省令で定めるということになるわけでございますが、現在概略考えておりますことを申し上げますと、賃金総額につきましては、海外派遣労働者の賃金が国内の労働者に比して高い場合が恐らく多かろう、そこで実質賃金に基づいて保険給付を行うこととする国内の労働者との均衡問題が生ずるということ、それから為替相場の変動等によりまして、外国通貨によって支給される賃金額を国内通貨に換算する際に複雑な問題が生じるであろうということ、そういう理由によりまして、労働大臣が一定の範囲内で定める給付基礎日額のうちから、海外派遣労働者が選択する給付基礎日額を三百六十五倍した額ということで海外派遣者の賃金総額といたしたいと思っております。そして料率につきましては、いままでの特別加入のものとは違う特別の料率を設けまして、業種が特定しがたいというような事情もございますから、まあ国内の労災保険の平均というところで、千分の十あるいは十一くらいのところで決めてはいかがかというふうに思っております。具体的には今後審議会でよく御議論いただいた上で決めたいというふうに思っております。
#281
○瓦委員 では最後に、今回の法改正で多方面にわたる給付が行われる、労働福祉事業も展開されるということになってまいりますと、これに要する費用というものも非常に大きなものにふくらんでいくわけでございますが、やがてはこの保険料の引き上げというようなことに相なりますと、中小の事業主にとりましても、これは荷の重い課題になるわけでございまして、そういったことはできるだけ避けていかなければならぬわけですが、もしやその料率を上げるというような考え方、そういったことはございますか。
    〔戸井田委員長代理退席、委員長着席〕
#282
○藤繩政府委員 今回の改正法のうち、まず五十年度中に施行が予定されるものは、いわゆる五十自減額をやめるという規定と労働福祉事業に関する規定でございます。これらについては、もう現行の保険料で賄えるという見込みを持っておりますので、少なくとも五十一年度中に保険料を引き上げていくという考えはございません。
 それから、五十二年度中には、年金給付の改善等々の規定が施行されていきますし、またボーナス等の特別支給金というようなものも新設をする予定でございますので、かなりの財源が必要と考えられますが、しかし具体的な見通しにつきましては、今後の全体の保険料収入の見通しを立てませんとなかなか見通しがつけにくい、経済情勢が御案内のようなことでございますので、もう少し推移を見た上で見通しを立てまして、その上で必要があれば関係審議会の御意見を十分伺って慎重に検討していきたいというふうに思うわけでございます。
#283
○瓦委員 以上で終わります。
#284
○熊谷委員長 次に、石母田達君。
#285
○石母田委員 先ほどの質問の継続をしたいと思います。
 最後のところで、政府の方からの答弁で、現在、非災害性の腰痛症の認定基準について検討されているというお答えがありましたが、その職種は、私の聞いたのでは港湾労働者、電気工事、大工、左官、フォークリフト運転手、保母というふうに聞きましたが、これは長距離運転手などは含まれていませんか。
#286
○藤繩政府委員 いま検討が進行している最中でございますので、長距離運転手等も私どもは検討の対象に加えてもらいたいというふうに考えております。
#287
○石母田委員 タクシー労働者はどうです。それから大型建設をやっている、大工、左官もそうだけれども、その点についてはどうですか。
#288
○藤繩政府委員 いま非災害性の腰痛全般について検討していただいておりますので、専門家会議では恐らく関係のものはできるだけ広く対象に入れて検討するということになると思いますが、いま御提案もございましたので、十分検討さしていただきたいと思います。
#289
○石母田委員 ぜひその点も検討していただきたいというふうに思います。同時に、規則の三十五条、業務上の疾病の問題ですね、これは全面的に見直しをされるということでありますけれども、これは当然、いま言ったような職種の非災害性の腰痛症の問題というものも含まれて検討されるわけですね。
#290
○藤繩政府委員 それは当然含まれて検討をされます。ただ問題は、三十五条は御承知のように具体的に、たとえばクロムあるいはその化合物による職業性疾病というものを職業病とする、それからまた、先ほど御議論がありましたマンガンというようなものは職業病とするというようなことでずっと来ているわけでございます。それが何せ終戦直後の規定でございますので非常に古い、その後医学も進歩した、産業も進歩したということでございますから洗い直そうということなんでございますが、もちろん災害性のものを中心にいたします。限界的な非災害性の問題をそういうふうに独立の条項で一々掲げられるかどうかというのが実は問題点の一つでございまして、もとより検討の対象にしますし、それから職業病であればこれは包括的に取り扱うわけでございますが、個別に柱を立てていけるかどうかというような点は非常に問題のあるところでございます。
#291
○石母田委員 全体としてのものは当然現在の非災害性の認定基準を決めた通達を見直して改善する、そして認定ができるだけ早くできるようにするということで理解していいですね。
#292
○藤繩政府委員 腰痛の問題につきましては、先ほどお答えしましたようなことでございますが、各種の専門家会議は何せたくさんございまして、それぞれの認定基準はそれぞれの専門家会議でやっております。しかし全体として職業性疾病を規定しました労働基準法施行規則三十五条がいかにも古いではないか、最初に制定以来ノータッチではないかという御批判がたびたび起こったわけでございます。それはそれでひとつこの際、全部見直すようにしようということでございます。
#293
○石母田委員 古くさいと言えば、たびたびここでも論議されている電話交換手だとか保母さんの頸肩腕症候群など、そういう問題は当然実態に即して反映できるように検討するわけですね。特に頸肩腕症候群について……。
#294
○藤繩政府委員 検討の中に当然加わってまいります。ただ先ほど申し上げましたように、そういう非災害性のものが独立の職業病としての項目を挙げ得るかどうかという点はかなり問題がございます。しかし、たとえば「電信手」でございますとか、「書痙」でございますとかいう表現自体がもう時代おくれではないかという御指摘もありまして、そういう点はもう当然改正していかなければならぬと思っております。
#295
○石母田委員 次に私は、日立の水沢製作所に起きた問題について質問したいと思うのです。
 これは新聞にも報道されましたけれども、日立の水沢製作所――岩手県の水沢市にあります。これは日立製作所の横浜工場の系列の下請であるというふうに聞いております。そこのフライバック課というとところでテレビのブラウン管に取りつけるトランス用のコイルの固定及び絶縁にエポキシ樹脂というものを使用しているわけです。そのとき硬化剤を使用しているそうです。これを取り扱っている労働者の中に、いわゆる皮膚炎を起こして現在川崎市にある関東労災病院に入院している人がいる、こういう事件でありますけれども、このことについては承知していますか。
#296
○中西政府委員 現在、御指摘の障害を受けている労働者五名が入院しております。また十名が通院治療中という状態でございます。
#297
○石母田委員 私どもの聞いているところによれば、そのうちの二人の症状は手足の皮膚がケロイド状になって、ズボンすら自分でははけない、ボタンももちろんかけられない、こういう状況になって、たとえとしてはいいことじゃないのですけれども、まるでマネキン人形のように皮膚がつるつるになっている。そのうちの一人は体が短期間に十七キロもやせている、白血球にも異常があると言われているわけであります。このエポキシ樹脂を使うときに、非常に危険な作業なのでいやな人は申し出なさいという指示がその工場の職制からあったということです。この硬化剤については、できるだけ手に触れるな、目に入ると失明することもあるからというので、ラロミンCという硬化剤については、注意を受けたということも労働者は言っておるわけです。
 そうしたことで、いまお聞きしますと五名の入院、あるいはまた十名が通院するというような状況が出ているわけですけれども、この問題について一体労働省としてはどのような対策と指示を行ってきたか、この点について御説明願いたいと思います。
#298
○中西政府委員 エポキシ樹脂が皮膚障害を起こすということにつきましては、もう前々からわかっておりまして、これは安全衛生法に基づきまして関係事業所に対して作業方法または作業環境の改善とか保護衣、保護手袋の使用等について指導をしてまいっていたわけでございます。したがいまして、最近ではエポキシ樹脂を取り扱う労働者から障害が、昭和三十年代は相当多数発生しているという情報を得ておりましたが、ごく最近はほとんどその報告を聞いていなかったのでございます。
 日立の水沢製作所における発生状況につきましては、去る三月二十九日に会社側の申し出がありまして初めて知ったわけでございまして、その後必要な対策を講じているわけでございます。
#299
○石母田委員 その必要な対策というのをもう少し具体的に言ってください。
#300
○中西政府委員 三月二十九日、この情報を受けまして直ちに岩手労働基準局に職業性疾病対策協議会を設けまして、四月二日には花巻労働基準監督署が中心となりまして発生原因の調査並びに災害防止のための監督指導を行っております。さらに四月十六日には岩手労働基準局に同製作所の所長ほか幹部五名を呼びまして、防止対策を講ずるようにいたしております。
 その内容としましては、有害性の調査あるいはエポキシ樹脂の注入工程における樹脂の注入設備の改善、また有害性の少ない代替物の使用について検討すること、関係労働者に対する健康状態の把握、それから他の日立製作所の同系列の同種災害の防止対策についても、必要な措置をとるようにという指導をいたしているわけでございます。
 なお、五月四日には同製作所で使っております樹脂の製造業者を労働省に出頭させまして、有害性の少ない代替物の開発、それから適切な取り扱い注意書をつくって、それを配布するようにという指示をいたしておるわけでございます。
#301
○石母田委員 私は、大臣に聞きたいのです。
 いま言われているように、こういうエポキシ樹脂というのは、皮膚炎を発生するということは前々からわかっているわけなんですね。ですから、あなたがよく言うように、起きてからじゃ遅いのだ、起きないようにするのだ、私は、このことが非常に大事だと思うのです。このエポキシ樹脂が使用を禁止されていない限り、こういうものをたくさん使っている工場があると思うのです。こういうことについては、特にこうした皮膚炎が起きて、もしいま言われたような重症の患者になるというのは大変な問題ですから、これの防止策について今後使っているところについて特に徹底してやるように、私は、大臣のはっきりした答弁を願いたいと思うのです。
#302
○長谷川国務大臣 水沢は東北でございます。昭和三十年代にそういうものが出て、ほかのところはほとんどやってないのに、いまごろ水沢あたり、東北にそういう被害者がたくさん出るということは非常に残念なことです。そういうことからしましても、労働省が責任者やらいろんな者を呼んでやかましく言うているそうですか、一層徹底させて、こういうことのないように特に推進したい、こう思っております。
#303
○石母田委員 私も、宮城県出身ですから、あなたと同じ東北の出身ですけれども、これが今度は横浜工場に水沢製作所で使っていた機械の十台のうち四台が来て、四月二十日ごろから操業に入っている、これは事実ですか。
#304
○中西政府委員 水沢の機械を移設したということはまだ聞いておりませんが、この情報を入手しまして、直ちに横浜工場に対しまして皮膚障害予防の指導をいたしまして、対策を講じさせております。
 なお、横浜工場では日立水沢製作所で使っていた樹脂とは別の組成のものを使っているということでございます。
 なお、設備の密閉化とか、あるいは一日の作業時間を四時間にするとか、その他労働者が樹脂に暴露することをできるだけ少なくする、そのための保護具の装着、手洗いの励行等を実施させております。したがいまして、これらを完全に実施する、守ることによって横浜工場においては皮膚障害は防止できる、このように考えているわけでございます。
#305
○石母田委員 私は、それではきわめて不完全だと思う。それは、こういう重大な事態を起こさせないことが大事なんだけれども、起きたことに対しても、私は非常になまぬるいと思うのです。それはすぐ調べたらいいと思うのですが、水沢製作所より四台の機械を、三月末に同じ機械を移設しているというのです。そして三月二十日から四月二十日まで横浜工場から水沢製作所に十人が出張している。そして四月二十五日から操業したいということでその人員配置をやっている。それで、岐阜工場から二十人、高山工場から五人、横浜工場から十五人、合計四十人で操業するというのが会社の計画だそうであります。このことは四月下旬にそれぞれの部課長に説明会で言われたそうであります。そして五月一日、二日、三日の三日間部課長が実作業をしてみた、こういう事態になっておりますので、あなたたちが四月十六日に製作所の所長ほか幹部を呼んで、いろいろ防止対策を講じさせたと言っているけれども、これが一体どういうふうになっているのか、それによって防止されたのかどうかというところまで点検しなければ、これは横浜でやった場合に、当然同じようなことが起きるのじゃないか。ですから、少なくとも水沢問題が明確になり、そしていま言ったようなこれと全然別な問題であることが明確になって、横浜工場で操業しても全然そういう心配がないというまでは、十分この横浜工場においての実施の問題についても監督署が立ち入って検査するとか、あるいはそういう水沢の問題についてはその後どうなったか、こういうものをきちんと調査してぜひ私のところに報告していただきたい。こういう点について大臣の答弁を求めます。
#306
○藤繩政府委員 先ほども安全衛生部長からお答えしましたように、水沢の被災者も実は関東労災病院の医師がこれをカバーしておりまして、入院先も関東労災病院でございます。関東労災病院は神奈川県にございます関係で、わりと地理的には近いことでもございますから、私の方から神奈川労働基準局と十分連絡をとりまして、組成が違う樹脂だというふうに私ども聞いておりまして、心配ないと思いますけれども、念のために十分調査をいたしました上で、また御報告をさせていただきたいと思います。
#307
○石母田委員 いま基準局長が立たれたからあわせて、この人たちは労災認定はどうなっているのです。
#308
○藤繩政府委員 五月八日現在で確認をしたところでは、労災補償費の請求書はまだ出ておりません。ただエポキシ樹脂による皮膚炎の疑いのある患者ということでございますので、補償費請求の手続を行うように指導をいたしておるところでございます。
#309
○石母田委員 恐らくそういう病人ですから、いろいろ請求や申請する場合に困難があるからだと思いますので、そういう気の毒な方で、いまここで討議されたように明らかに私は業務上労災の問題だと思いますので、ぜひ早くそういう手続をとってほしいというふうに思います。この点について大臣……。
#310
○長谷川国務大臣 いま局長も答えましたが、こういうものが出た機会に予防措置を講ずると同時に、いままでおくれたものの対策を一層厳重にやるようにして守ってあげたい、こう思っております。
#311
○石母田委員 労災の認定について、局長の方でそれを促進するように、その請求の事務も含めていま指導しているということですけれども、ぜひ請求を出させて、そしてその認定についても促進できるように私の方からお願いしたいと思います。
#312
○藤繩政府委員 御趣旨に沿えるようにさらに努力をしてみたいと思います。
#313
○石母田委員 最後に、私は、こういう限られた時間でしたけれども、労災問題についていろいろ質問いたしまして、その中で先ほどから再三強調されておるように、この労災というのは出さない、事故を防止するということが何よりの大事な、先決の問題だと私は思うのです。そのために、そうした体制の問題で、現在の職員で十分であるかどうかということは、私ども昨年幾つかのところを見まして、特に人口急増地域のところでこういう新しい薬品とか、あるいはまた、そういう災害の出る危険性の多いようなところでこれに対する職員の数が非常に少ない、いろいろ困難があるでしょうけれども、労災防止のための職員増については、私は格別の労働大臣としての努力をしてほしい、こういうことを要請したいと思いますが、大臣の御見解をお願いしたいと思います。
#314
○長谷川国務大臣 おっしゃるように、労働省のいろいろな施策の中で、労働者の安全というものは重要施策の一つでございます。そして事業所がどんどん伸びてまいりますし、また、いろいろな有害物質、私たちの知らない物がどんどん生まれる時代でございますから、そうした係官の増員というものは心にかけてもおりますが、微力でありますが、いまから先も懸命に推進してまいりたい、こう思います。
#315
○石母田委員 以上で質問を終わります。
#316
○熊谷委員長 次に、大橋敏雄君。
#317
○大橋(敏)委員 午前中からずっと続いております労災保険法の一部改正の質疑ですけれども、お疲れになっておると思うけれども、大事な法案でございますので、そしてまた公明党といたしましては、私だけがこの法案に対しての質問者でございまして、あるいは午前から続いている質疑者の質問と重複する点もあるかもしれませんが、そういう意味も含めて新たな気持ちで答弁をしていただきたいと思います。
 先ほども申されましたように、労災保険というものは、労働者にとってきわめて関心の深い法案であります。同時に、今回の法改正がある意味では画期的といいましょうか、思い切った内容になっておりますだけに、いろいろこの法案に対して疑問が出てきております。不安を抱いたり、あるいは不信を抱いたり誤解をしたり、さまざまな内容を含んでいるようでありますので、いまから具体的に一つずつお尋ねをしてまいります。
 まず最初に、今回の改正法案の趣旨というものを見てまいりますと、年金給付の内容の充実、それから保険施設の整備拡充ということがうたわれているわけでございますが、中でも年金給付の改善というものを見てまいりますと、要するに特別支給金の改善整備にすぎない、いわゆる労災法本体の改正ではないではないか。確かに数字の上からいけば、パーセントやその他の数字の面からいけば、あるいは改善されたかに見えるわけでございますが、これは、いわゆるつじつま合わせ的である、あるいはごろ合わせ的であるという批判も出ております。また数字というものは、数字のマジックと言って、その数字だけを見ていくと、なるほど改善されたように思われますけれども、実質的に中身を見てまいりますと、大変誤解があったとか、あるいは思い違いであったとかいうことが出てくるわけです。
 申し上げるまでもなく、保険給付というのはいわゆる権利義務の関係から出てくる問題でありますが、特別支給金というのは、これは福祉事業ですね。要するに見舞金だとかお恵みだとか、あるいは贈与だとか、そういう立場から出てくる問題です。ということは、性格的な違いといいますか、異質なものを金銭的に単純に合算をして、その多寡を云々するというのは筋違いではないだろうか。むしろ今回の改正案のねらいを見てまいりますと、いわゆる労働福祉事業の拡充強化にある。しかも、その内容をじっと見てまいりますと、いわゆる実質的な内容が、事業主に対する援助につながっていっている。すなわち従来の労災法の目的が、つまり労災患者に対する政府と事業主の責任が大きく変質されていっているのではないだろうか。すでに労働省の皆さんも言っているように、今回の法案が補償中心の保険から総合的な保険への拡充だと言っておりますとおり、かなり問題が指摘されてきているようでございます。
 そこでまず第一点、具体的にお尋ねしますが、新しく設けられることになっております労働福祉事業の一環といたしまして、賃金不払い救済事業の実施が今度予定されているわけでございますけれども、労働者の災害の保護を本来の目的とする労災保険で、このように災害の保護とは無関係な事業を実施するのは、制度的に見てきわめて不自然ではないか、またその結果、労災保険の本来の目的が見失われて、むしろ労働者の災害の保護以外の面に重点を置いた保険制度に変質することになるのではないか、このような疑問を抱いているわけでございますが、これについて労働省の見解をまずお尋ねいたします。
#318
○藤繩政府委員 最初にお触れになりました、この改正法では給付水準の引き上げはほとんど行われていないではないかという点でございますが、わが国の労災保険給付の水準は何回か改正されてきまして、特に最近では、四十五年にはILO百二十一号条約の水準に達しました。四十九年の改正では百二十一号勧告の基準を満たすに至ったわけでございまして、水準としてはかなり高い、国際的なものに到達したというふうに私どもは思っております。しかし、もとよりこれで満足をしているわけではございませんで、今度労災保険審議会から出ました建議におきましても、なお給付水準につきましては、引き続き検討をするということになっておるわけでございます。
 そこで、特別支給金というものは、給付水準の改善ということにはならぬじゃないかというお話でございますが、特別支給金の性格については、いろいろ御議論もございますけれども、諸般の事情によって、たとえば今度のボーナスのような問題も本体給付というところまではいきませんでしたけれども、特別支給金という形で支給する、それもまた一つの改善につながるのではないかというふうに私どもは評価をいたしておるところでございます。
 そこで、いまお尋ねの賃金不払い救済事業を労災保険でやるということは筋違いではないか、そのことがまた保険制度の性格をゆがめやしないかという御指摘でございますが、これは先ほど来お答えしておりますように、賃金不払い救済事業というものは、最近の不況の中で起こっております賃金不払い事件の深刻さというようなものに対処いたしまして、緊急にやらなければならないという認識を私ども持っております。また国会の要請も、さようなものであったのではなかろうかというふうに思っております。しかし長年にわたって何とかこういう形のものをつくりたいと思いながらできなかったというのは、やはりそれなりにむずかしい問題があるということでございまして、やる以上は、事業主の共同負担による保険方式によらなければならない、その場合に、独立の保険料を取り立てて別途な体系で、理想はそのとおりでございますが、現実には急場に間に合わないということから、やむなく、いわば改善の措置として同じ使用者の共同責任でありますところの労働災害防止というこの保険の中でこの制度を実現していこうという考えでございまして、私ども決してこれがベストな案だとは考えておらないのであります。しかしながら、それはいわば労災保険の基本的諸問題を検討する中で、昨年の夏ごろから出てきた問題でありまして、今度の改正に盛りましたいろいろなものはもっと前から、数次の改正の後を受けまして、残っている諸問題の改正について御議論が行われて、その結果が今回集大成して盛られておるわけでございます。何もこの賃金不払い事業だけが、今度の改正の眼目でも何でもないと私どもは思っているわけでございまして、また、それが労働福祉事業に繰り入れられたからといって、この制度の根幹が影響を受けるというようなことはさらさらないというふうに私どもは考えておるわけでございます。
#319
○大橋(敏)委員 いろいろ御説明になりましたけれども、単純な物の言い方になりますけれども、労災患者に対する政府あるいは事業主の責任のもとに保護が行われてきたわけですが、そのための労災保険の財源ですね、労災保険勘定、それをさいて労働福祉事業に持っていくわけですから、単純な考えからいくと、労災保険本来の労災患者に対する保護の方がそこから削られていくではないかという考えにならざるを得ないわけですね。ですから、筋違いだと言うのは、そういうことから言うわけであって、本来別のたてまえでこれを実施すべきではないかということを私はいま言っているわけです。
 そこで、先ほどの労災保険の改正案が大きく変質されるのではないかという不安の中に、これは故意になさったのかミスプリントなのか知りませんけれども――法律の第一条というのは目的を示すわけですね。ですから、この法律はこうこうこういう目的で施行するのだということになれば、その一条に基づいていろいろな対策が考えられていくわけですね。したがって、その一条の条文というものは、きわめて慎重に配慮された内容にならざるを得ないわけです。ところが今回労働省から「労災保険の制度改善案概要」として参考資料をいただいたのですが、「現行制度」と「改善事項」と二つに分かれてわかりやすく示してあるのですけれども、この「目的」の中に現行法にない言葉が入っているわけです。そして改正事項の中には、その言葉がきちっと入っている。たとえば「労災保険は、労働者の業務災害及び通勤災害について必要な保険給付を行い」、「必要な保険給付を行い」とここに書いてある。「現行制度」に書いてあるのです。しかし実際はないはずです。法律を見てください。そこで、なぜ「必要な」なんという言葉を入れたのだ、こうなるわけですね。
 いろいろと疑問を抱いてる人々から見ると、わずかな言葉ですけれども、こういうところがひっかかってくるわけです。一体これはだれのために「必要な」となるのだろうか、こうなるのですけれども、これはミスプリですか、それとも「必要な」という言葉に余り関心を持たせないために、うまく擬装させたのかどうかということですが…
#320
○田中説明員 別表にまとめました御指摘の資料の「現行制度」の「目的」のところに「必要な」と書いてございますのは、これは現行法の一条にはない字句でございますので、これは資料を作成する上で大変まずかったというふうに考えており、申しわけなかったと思うわけでございますが、「必要な」という字を改正法案の中では入れてございます。これは、ただ裸で保険給付を行うということでは、条文の規定として舌足らずではないか、目的規定の字句整理をする際、あわせて字句整理的な意味で挿入したということでございますので、「必要な」という字自体に格別意味があるわけではございません。
#321
○大橋(敏)委員 大臣、今度の法改正の内容、第一条の中に「必要な」という言葉を入れた。いま、従来、本当はこれがあるべきだったのだけれども、なかったのだというような答えだったわけですが、実は「必要な」という言葉のとり方次第で、よく玉虫色という言葉を使われますけれども、仮に労災法に関係してある事故が起こった、事態が発生した、その場合、これが正しいものかそうでないものかというのは、常に一条の「目的」に照らして判断されていくわけですね。そのときに、この「必要な」という言葉があるなしでは、とらえ方はかなり違ってくると思うのです。これが悪用されない限り、決して問題はないとは思いますけれども、いま言うように、今回の法律改正に対して、かなり疑問を抱いた人がこういう点を見たときに、何かねらいがあるのじゃないかということなんです。もし本当に何ら意味がないものならばつける必要もないわけですね。その点もう一度、大臣からお答え願いたいと思います。
#322
○長谷川国務大臣 何でもそうですか、第一条は、その法律の基本をうたうものでございます。そういうことをまずお互いが認識してかかるわけでございます。
 その次に、いまの「必要な」というのは、これは、そのときそのときの前進するものを見ていく構えが必要だと思うのです。ですから、通勤災害というようなことを、よくお互いが何でもなく言っていますが、これだって始まったのは、たしか昭和四十八年からでしょう。この通勤災害ができてからというものは、この労災というのは、われわれ地方へ帰っても非常に喜んでいますね。そういうことでして、それからあなたのおっしゃるように、何もかも枠を外して、むちゃくちゃにいきやせぬかという御心配は、これは、これだけの社会労働委員会のベテランがそんなことさせますか、仮にそんなことを考えた者がおるとしても。審議会がちゃんとあるのですから。やはり第一条に基づいて、そしてまた時代的要請なり、その必要に応じて政治的な配慮もときには必要だ、こういうところもあっていいんじゃないですか。
 私は、基本は第一条をしっかりしていく、それに時代的要請に応じ、しかもILOでさえも、その上をいっている、こういう自信の中に、いろいろ政策をやるところにお互いのおもしろみといいますか、動きというものがあるんじゃなかろうかと思います。
#323
○大橋(敏)委員 大変な御自信でございますが、では、一つお尋ねしますけれども、今度の労災法の改正を見てまいりますけれども、療養給付あるいは休業補償給付、これには、いわゆる今度言われておりますボーナス等の算入は除外されているわけです。ぼくは先ほどから、労災法本体の改善は少しもなされていないじゃないかと言うのはここなんです。局長は、国際水準までいっているんだから、そこに触れなくたって問題ないじゃないかと言わんばかりの答弁をしておりましたけれども、いわゆる今回の労働省の宣伝というのは、あくまでも年金給付の改善であるぞ、こういうふうに宣伝してきたわけですが、よくよく見ると、肝心な本体は何にも変わっていないということですよ。すなわち、給付基礎日額は従前どおり平均賃金によるものである、こうなっているわけですよ。この限りにおいては、現行のままで何ら改善されたものはない、私はこう言い切れるんですよ、そういう意味から言って。これは間違いないでしょう。どうですか。
#324
○藤繩政府委員 給付基礎日額の条文につきましては、現状では「平均賃金に相当する額を給付基礎日額とすることが著しく不適当であるときは、」別に定めるという規定がございましたが、その「著しく」を今回外しまして、その「額を給付基礎日額とすることが適当でないと認められるときは、政府が算定する額を給付基礎日額とする。」という改正が行われております。これは大変目立たないところでございますが、これ一つとりましても、これは私傷病たると公務災害たるとを問わず、疾病のために休んでおるというようなときを分母から除こうということでありまして、それだけでも非常に給付基礎日額が改善されると私どもは見ておりまして、全然そういうものがないという御指摘については、私どもも、そうではないと申し上げたいところでございます。
 それから、特別支給金につきまして、休業補償給付の中に入ってないじゃないかという点は御指摘のとおりでございます。年金を中心に私ども考えましたが、その理由というものは、休業補償給付の受給者というのは、通常雇用関係の存続を伴っておるわけでございまして、定期給与が支払われない場合に、そのかわりに支給されるものが休業補償でございますから、そしてまた先ほど来申し上げておりますように、大部分の者は短期間で職場復帰をするというのが実情でございますから、災害によって賞与というような特別給与を失うとは限らないという点が一つございますし、それからまた休業補償給付者の受給額は、特別支給金と合わせますと現在実質的に八〇%になっておるわけでございまして、これにさらにボーナスを加えるというようなことになると、災害前に受けていた賃金を超えるというような場合も生ずるというようなことから、審議会でもいろいろ御議論がなされました結果、休業補償給付にボーナスの導入をするということについては、今後の検討課題ということで残されました。そういう事情を受けて、今回は主として年金というところにボーナスを導入したわけでございます。
#325
○大橋(敏)委員 今回、労働省の改善の宣伝の中に、今度はボーナスも含めてやっているのだというような大変な話があるわけですけれども、これを、いま言うようによく見てまいりますと、要するに特別支給金の問題であって、その本体そのもののいわゆる平均賃金の中にボーナスが盛り込まれるかどうかという基本的な問題とは全然違うわけです。ですから、いま私がその点を指摘したわけであって、本当はその本体の改善がなされないと、仮にパーセントはよくなってみても、それは百万円収入のある人と十万円の収入のある人、同じパーセントであっても、受け取る額が違うわけですから、パーセントは幾らよくなってみても、本体が改善されない限りは、本当の意味の改善にはつながらないということをここで指摘しているわけです。
 それから、平均賃金全く改善してないのじゃないですよ、今度は労働省令で定めるところによって政府が算定する額を給付基礎日額とすることができることになったと、なるほどそれはわかります。じゃ、これを、もう少し具体的にどういうものを労働省令で定めるのか、はっきり説明してください。
#326
○田中説明員 現行法で給付基礎日額の計算をする場合には平均賃金の計算の仕方をそのまま使っておるわけでございます。平均賃金の計算をする場合には、その間に業務上の傷病で休業した場合には、その休業した期間あるいは休業中の賃金あるいはその賃金を計算から除くということで処理をしているわけでございますが、通勤災害あるいは私傷病で休業した期間につきましては、その休業期間も算定の計算の分母に入れてしまうということになりますので、分母の方が大きくなりますから、その分子であります受けた賃金の額の答えが非常に小さくなるということで、業務災害で休んでいる場合とそうでない場合との間が非常に不均衡であった、そこで、平均賃金の計算に当たっては、給付日額の計算に当たっては、要するに健康な状態で受けておりました一生活日当たりの賃金を基礎にして、これを保険給付の計算基礎にしたいということで、病気をしている間の部分は分子、分母から除こう、それには従来の規定ではやはり無理があるので、今回このような改善をしたということでございます。
 これにつきましては、労災審議会の建議におきましても「給付額の算定基礎の計算にあたっては、傷病の療養のため休業している期間」これは業務上外を問いませんが、「及びその期間申受けた賃金は、その計算に含めないこととする。」ということで、その方向で規定の改正をしろ、こういう建議がございました。そういう意味で、先ほど局長の申しました規定の字句の改正をしたわけでございます。
#327
○大橋(敏)委員 では、先ほどの話に戻りますが、休業補償給付、これにはボーナスの問題は算入されてない、これは短期間だからと。いわゆる休業補償給付を受けている人の疾病というものは短期間で大体治るから、そのボーナスの問題まで波及しないだろうという答弁だったと思うのですが、これは一概にはそうは言えないと思うのです。というのは、現実にこれまでの長期傷病給付に移行する人たちも、三年目からそういう判断のもとになるわけですけれども、それでも治るかもしれないというような人に対しては、特例を設けてもう少しもう少しということで引っ張られていきますね。解雇制限の解除もなく、そのままずっといくわけです。そういう人々に対しての配慮からいきますと、余りにも冷酷な言い方ではないだろうかというような気がしてならないわけです。
 そこで、もう一つお尋ねいたしますが、療養開始後一年半を経過しても治らない者は、いわゆる傷病補償年金を支給することとしておりますけれども、これに伴って療養開始後一年半で年金に移行できないときは、治癒認定をされて補償を打ち切られるのではないか、こういう不安を抱いている患者がたくさんいるわけでございます。これは、これまでの質疑者の答弁も聞いておりましたけれども、もう一度明確にこの点を答えていただきたい。
 また、年金の開始時期を現行の三年から一年半に繰り上げる理由、これもあわせてお答え願いたいと思います。
#328
○藤繩政府委員 まず、休業補償について、ボーナスの特別支給金を導入しないのは、やはり納得ができないという御主張でございますけれども、先ほどから非常に議論になっております。例外的な三年を超えても休業補償をもらっておるというものについての御議論だと思いますが、しかし元来、休業補償というのは、療養を受けるために労働ができない、そのために賃金がもらえない、そこで、それを補てんするというのがたてまえであり、そして現実には九九%の者がもう二年以内には治っておるという状態にあるわけでございますから、そういう日々の賃金を補てんするという意味においては、しかも、それが現実には八〇%までいっているわけですから、それにボーナスを乗せるという点については、やはり相当な議論がまだ残っておると私どもは思っております。今後とも審議会で検討する、こういうことでございます。
    〔委員長退席、竹内(黎)委員長代理着席〕
 それから、一年半で治療認定をされて、もうそこで打ち切られてしまうのではないかという御懸念でございますが、そういうようなことは、さらさらないわけでございまして、現行制度でも、三年の時点でなかなか治らないということであれば、長期傷病補償給付に移行をするということでございます。しかし元来、考えてみますと、そういう状態にある場合には、できるだけ手厚い年金の保護というものを早期に開始する必要があるわけでありまして、実態からいいましても、一年半で九七、八%の人が治癒されている現状から見ると、その辺で制度的な区切りをつけるということが一案であろうかと思いますし、まあ厚生年金の今度の制度改正とも関連して一年半にしたわけでございまして、そこで治癒認定をするというようなことは、さらさら考えておらないのでございます。
 ただ、先ほど来お答えしておりますように、元来、被災者に対しては常時これを観察いたしまして、その被災労働者の疾病の状態に最も適した補償給付をしていくということ、これが一番望ましいわけでございまして、そういう意味では、行政能力の可能な限り、症状調査その他の努力をいたしまして、一年半とか三年とかいうところが重点にはなりますけれども、理想としては常時そういう判定をして、それに見合った適切な補償をしていく、こういう心構えでやってまいりたいと思います。したがって、治癒された者は、何も一年半にならずとも、半年であろうとも一年であろうとも、現に九七%の方は、一年半までに治癒認定をされておるわけですから、治癒をしていくということでございますが、治癒になってない者は、一年半の時点で傷病年金に移っていく、そこで治癒認定をして打ち切るというようなことは考えられないところでございます。
#329
○大橋(敏)委員 それでは、立場をちょっと変えてお尋ねいたしますが、今度、療養開始後一年半経過後は厚生年金の併給調整が行われるわけですね。これは、いま言った傷病補償年金はもちろんですけれども、休業補償給付を受けている者も、一年半になると併給調整されるわけです。こういうことが出てきました。
 そこで、休業補償給付は、従来の立場から見た場合は、そういうことになると相当減額になるのではないかという心配をしている方がかなりいるわけです。というのは、現在、療養を開始して三年間は併給調整なんてなかったわけですから。今度は一年半すれば併給調整されるわけでしょう。それだけ減額になっていくのではないか、こういう不安を抱いた患者はかなりいるのですけれども、この点についてお答え願いたい。
#330
○藤繩政府委員 現在でも、長期傷病補償給付あるいは年金と厚生年金との併給については、調整が行われているわけでございまして、その点については、今後とも、調整のやり方は若干改定いたしますけれども、厚生年金との間に調整を図るという点では同じなわけでございますが、休業補償につきましては、御指摘のように、従来実は三年たっても治らないというような場合には、これはもう長期傷病補償給付に制度の考え方としては移行すべきものだ、したがって、そう休業補償を三年を超えてなおずっと受給するというような者がたくさん出てきて調整が必要だというようなことは、実は想定をしていなかったというのが実情でございます。しかし昨今の実情から見ますと、神経症状を伴うような疾病の場合に、やはりそういう実態が起こってきたということでございますから、これは従来やらなかったからという点から見れば、確かに先生御指摘のようなことが言えますけれども、従来はむしろそういうことは予想もしなかったために調整がされていなかったという点でございまして、この際、原則に立ち返りまして調整をしよう、こういうことでございます。
#331
○大橋(敏)委員 大臣、これは非常に大事な問題になると思うのですが、今度長期傷病補償給付というのが廃止になるわけですね。それに伴いまして、いわゆる傷病補償年金に移行する場合、または休業補償給付になる場合といろいろ出てくるわけです。逆に今度は休業補償給付から傷病補償年金に移行した場合、いわゆる現行受給額よりもそれが下回らないという保証が法的には何にもとられていないわけです。そこを非常に皆さん心配しているわけですが、これは何とかはっきりとしていただきたいのです。
#332
○藤繩政府委員 原則は、先ほどお答えしましたとおりでございまして、従来、予想しなかったいわば制度的な欠陥があったものを、今回軌道に乗せたいということでございます。しかしながら、改正法の施行の際に、現に休業補償給付と、それから厚生年金保険の年金を併給されている者につきましては、これは現実に減額をされる、将来、制度的な観念的な話ではなくて、現実に減額されるというところは、非常に問題であることは御指摘のとおりであります。それにつきましては、そういうことのないように、もし調整後の休業補償給付の額が、法律の施行前に最後に支給された休業給付の額を下回ることとなる場合には、その最後に支給された休業補償給付の額と同額の休業補償給付を支給するということで、附則の三条にその関係の経過措置を設けたところでございます。
#333
○大橋(敏)委員 それでは、また具体的にお尋ねしますが、いま長期療養者には八〇%の支給が行われているわけですね。その者の中から、症状によっては、いわゆる省令の廃疾等級が一級から三級に決まるわけですが、その三級にもしなったとすれば、八〇%から六七%にダウンするのではないかという見方ですね。いま長期療養を受けている人は八〇%の給付を受けていますね。それが認定の仕方では、今度廃疾等級の三級になる。そうなれば六七%の支給になるわけです。ダウンするのではないか。ましてや、厚生年金との併給調整をされた額になるので、かなり下回るものが出てくるのではないかという心配なのです。これについて、何かはっきりしたお答えをお願いしたいと思います。
#334
○藤繩政府委員 現に長期傷病補償給付を受給しておられる方につきましては、傷病補償年金に移行するというような場合にも、水準としては同じものを予定していくわけでございますが、本体給付からいいますと、従来六〇%一律であったものが、六七から八六ということで改善を見るわけでございますけれども、実際問題としては、二〇%の特別支給金がありますから、そうすると八〇%から下回るではないか、その点をどうするのかというお尋ねでございますが、それにつきましては、今度ボーナスの特別支給金が加わりますので、一般的には必ずしも下回るというふうには私ども思っておりませんけれども、しかしボーナスは業種、業態によって一律でもございませんので、そういうものが全然出ないということは考えられないが、場合によっては起こるかもしれないというふうに思っているわけでございます。その場合には、そういう下回ることのないようなふうに工夫をする必要があるということで、この施行を予定しております五十二年の四月一日現時点でもし下回るようなことがあれば、その差額はまた別途の特別支給金で担保するような、そういうものをつくり出したいというふうに考えているわけでございます。
#335
○大橋(敏)委員 傷病補償年金は、労働省令で定める廃疾等級に該当することとなったわけですが、この長期療養者が、いわゆる傷病補償年金を受けるか、あるいは休業補償給付を受けるかは、この省令の定め一つで変わっていくことになるわけでございますが、この廃疾等級の内容は、実際にはどのようなものにしようと考えておられるのか、これをはっきり示していただきたいと思います。
#336
○藤繩政府委員 原則としては、現状と変えないということでございます。現在は、三年たっても治らないというような場合に、政府が心要と認めるときは、長期傷病補償給付に移すということでございますが、それに対しては通達をもってその基準を示しておりまして、その通達は、もちろん「労働者が療養補償給付を受けていること。」それから「三年を経過してもなおなおらないこと。」という条件に加えまして、「長期傷病補償給付を行なう必要があること。すなわち、当該傷病がなおらないため労働不能の状態が、その後長期間にわたって継続すると認められること。」こういう通達で運用をしております。
 そこで、今度の廃疾基準でございますが、これは、もとより政省令の問題でございますから、これから労災保険審議会等の御意見を伺いまして決めていくわけでございますが、私どもがいま考えておりますことは、一級から三級までありまして、その額は障害補償年金の額に均衡させたいと思っておりまして、その内容といたしましては、一級は、負傷または疾病が治らないで労働することができず、かつ常時介護を受けることを必要とする状態、二級は、負傷または疾病が治らないで労働することができず、かつ随時介護を受けることを必要とする状態、三級は、負傷または疾病が治らないで労働することができない状態、こういうふうに規定をしたいというように思っておりますので、原則的な考え方は全く同じだというふうに考えております。
#337
○大橋(敏)委員 それでは、ちょっとまた前に戻ると思いますが、現行法では、療養三年目に政府が認めたときは長期傷病補償給付が行われて、解雇制限が解除されることになっておりましたね。そうでない者は、仮に三年を経過しても雇用関係が生きたまま休業補償給付が受けられてきたんですね。こういう特例があったでしょう。
 そこで、今度の改正案を見てまいりますと、いわゆる長期傷病補償給付を廃止して、傷病補償年金制度を設けることとなっているわけでございます。しかも、この年金は療養開始後一年半から支給される。そのため、一年半を経過したときから解雇制限が解除されることとなるのではないかという不安ですね。
 そこで、これは先ほども答弁があっていたと思いますが、もう一度この点について、一年半で実質的には解雇制限が解除されるのじゃないかという関係者の不安を取り除くしっかりした当局の見解を述べていただきたいと思います。
#338
○藤繩政府委員 現行の長期傷病補償給付は、いまお述べになりましたように、療養の開始後三年を経過しても治らない労働者に対して、政府が必要と認めるときに行うこととされておるわけです。今回設けられる傷病年金は、従来政府が必要と認めるべき場合を、先ほど御説明しましたように具体的に明確にして、廃疾の程度が一定の状態にある労働者に対して支給することとしたものでございます。しかし傷病補償年金の受給者となるのは、傷病が治らないために常態として労働することができない状態にある労働者に限られるわけでございますから、療養開始後三年を経過した時点において、近い将来社会復帰ができそうな状態にまで回復している労働者は、元来、傷病補償年金の受給者とはならないような性格の者、あるいはまた一たん傷病補償年金の受給者になっても、傷病の回復によって、そこまで回復するならば休業補償給付に切りかわることになるわけでございますから、療養開始後三年を経過した日にそういう休業補償状態にある者が、直ちに解雇制限が解除されるということにはならないわけでございまして、この点についての取り扱いは現行と同じだ、こういうことになるわけでございます。
 つまり、先ほど来言っておりますように、それぞれの時点で症状調査その他から見て、被災労働者の状態に最も適した補償を行うということが労災保険のたてまえでございますから、その時点その時点で対象にしていくということでございますから、今度一年半となりましても、その時点ですぐに治りそうだということであれば、それは元来、傷病補償年金の対象にもならない、あるいはなってもまた軽くなれば変わる、しょっちゅうそういうふうにむしろ変わる性質のものであるというふうに私どもは考えております。
#339
○大橋(敏)委員 要するに療養開始して、これまでは三年目にまだ治らない者は長期に移行した。三年が来ても治る見込みのある者は継続させて休業補償給付を支給した。今度は、一年半たちまして治らないと見込まれた者は年金に移行するわけですね。ずっとたっていって、三年たってなおかつ治らないと見込まれた人はそのまま続いていくわけですけれども、もし仮にその三年前に軽くなると、年金が今度は中止されて、休業補償給付に戻るわけですね。ここはまあいいとする。ところが実際三年を過ぎてしばらくして症状が軽くなった、こうなった場合は、もうすでに解雇制限が解除されておりますから、実質的には首を切られたのと同じ状態になりますね。そういう者がかなり出てくるのではないか。
 実は、全国交通・労働災害対策協議会の代表者の方が私たちのところに要請書を持っていらっしゃったのですけれども、その一部を読み上げますが、「わたしたちは、一日も早く再起の道を追及するため、根本的な治療法の確立や職場復帰の制度化を真剣に訴え続けてまいりました。その結果、」これからが大事です。「昭和四十八年十一月になって、いわゆる職場復帰通達を労働省から出させることができました。今回の法案審議に際しては、むちうち症、頸肩腕障害、諸有機溶剤中毒症などの神経障害の被災者が完全に治り働けるようになるまで、被災労働者を救済する法の基本精神にもとづいて慎重な審議とその運用についても充分な配慮」をしていただきたい、このようなことを言っておりますね。先ほど話しましたように「従来休業補償給付は、療養開始後三年を経過しても労基法第十九条にもとづき解雇制限があったが、内払いのみなし制度によって解雇されると、軽作業を通じての職場復帰訓練の基発第五九三号通達、 (いわゆる職場復帰通達)が適用されなくなります。」今度の法改正のために、せっかくかち取ったものがだめになる。「さらに、職場復帰訓練を療養開始後三年間に限定される危険性が予測される。」ということで、この点について労働省の見解をしかと承っていただきたい、こういうことなんです。この点について……。
#340
○藤繩政府委員 いまお述べになりました点は、現行の長期傷病補償給付制度でも、それに移行すれば解雇制限が解けるわけですから、その後症状が軽くなって休業補償になっても、それは解雇されてしまった後ではないかという点では、いまの問題と本質的には変わらないわけでございます。ですから、職場復帰はできるだけ早くしてもらいたいというのは、私どもも全く賛成でございますから、むしろいま御指摘になったような点であれば、たとえば一年半になる前にできるだけ職場復帰をするように努力をする、あるいは今度の傷病補償年金に移りましても、職場復帰ができるような状態になるならば、それは大変結構なことですから、その程度に軽くなれば、これは休業補償、療養補償に切りかえていくということで、それに切りかえられれば三年がこなければ解雇制限は先に伸びるわけでございます。
 ですから問題は、先ほど多賀谷先生もおっしゃいましたが、一年半の時点、それから三年になる前の時点、そういうようなところで十分観察をすべきだという点は、私ども全く同感でございます。その辺の時点、あるいはそうでなくても元来、しょっちゅう症状調査その他をきちっとやりまして、そして休業補償にふさわしいものは休業補償に切りかえるべきだし、年金がふさわしいものは年金にしていく、実情に合った補償をすることによって解雇制限の運用も適正にしていきたい。解雇制限そのものを今回全然いじっておらないわけですから、むしろ補償の適用というものを適正に行うことによって、実情に合った措置をとるように努めていきたいというふうに思うわけでございます。
#341
○大橋(敏)委員 いま私が言わんとしたのは、全国の交通・労働災害対策協議会の皆さんの要請なんですよ。彼らは大体三年過ぎると解雇されるだろうという立場にいたのだけれども、職場復帰のための訓練をするということで、労働省の基発第五九三号通達のおかげで解雇制限が解除されないままずっと休業補償給付をいただいてきた、今回の法改正でそれがだめになるのじゃないですか、こう言っているわけです。というのは、一年半から三年きますと、そこでもうはっきりしますので、そこのところが、いままでのいわゆる既得権みたいなものがそのまま続くかどうかということなんですよ。
#342
○藤繩政府委員 いま御説明になっている点は、恐らく長期傷病補償給付に移らないで、むち打ち症というようなことで休業補償のまま推移しておられる方だろうと思います。ですから、労働不能の状態でなければ、元来、長期傷病補償給付の場合もそうでございますし、今度の傷病補償年金の場合もそうでございますが、そういう年金に移行しないわけでございますし、仮に一たん移行しても、そういう状態になれば、これは治癒が近いということで休業補償、療養補償にしていくわけでございますから、私どもとしては、重篤な方はできるだけ年金に、しかし軽い方は早く療養して治っていただくというのが趣旨でございますから、それは、やはりそういった状態を絶えずとらえまして、それにふさわしい措置をしていくということに尽きると思うのでございます。
#343
○大橋(敏)委員 私の質問の仕方が余りうまくないので、なかなか理解されてないようなんですが、結果的にはいままでの状態からは決して後退するものではないのだ、こう理解しておっていいですね。
#344
○藤繩政府委員 制度的な意味において後退するということはございません。
#345
○大橋(敏)委員 それでは、次に移りますが、労災の長期療養者の中には、けい肺患者あるいは脊損患者のように一生治る見込みがないまま療養している気の毒な療養者が多数含まれているわけでございますが、これらけい肺患者やあるいは脊損患者の間では、今回の法改正が実施された場合、年金の受給権を失って休業補償給付へ移されるのではないか、安心して療養ができなくなるのではないかと深く心配している者がいらっしゃるわけですが、法が改正されて実施された場合、このような心配が事実となってくる恐れはないかどうか、この点を明快に答えていただきたいと思います。
#346
○藤繩政府委員 現在、長期傷病補償給付を受けて年金によって療養を続けておられるという方につきましては、現在の通達の基準によって労働不要の状態にあるということであるために、そういう状態が続いておるわけでございます。先ほどもお答えしましたように、そういう方でも症状が軽くなって療養補償、休業補償でいける場合には、そちらにバックすることがあるというのが現在の通達でございます。その例は非常に少のうございますけれども、現在もう一生その制度を動かさないということではないわけでございます。それと同じ意味で傷病補償年金も運用されるわけでございますから、そこで現在、長期傷病補償給付を受けておられる方、つまり労働不能の状態にある方、これは、そのまま長期傷病補償給付に移行していくということになるわけでございます。ただ一級、二級、三級のどれにランクされるかということは、制定を要しますけれども、いずれにしても、そこでいままでの長期傷病補償給付が打ち切られるとかなんとかいうことは考えられないところでございます。
#347
○大橋(敏)委員 それでは、けい肺患者の管理区分四というのは、今度の労働省令で決めようとしている廃疾等級の一級から三級までのうちのどの辺に該当するのですか。
#348
○藤繩政府委員 先ほど廃疾等級につきまして、いま考えておるところを申し上げましたけれども、これは今後、関係審議会の御意見を伺って最終的には決めなければならぬ、いま私どもの頭の中にある問題でございますけれども、それも一級から三級まで、先ほどお読みしましたように、一級は労働することができず、かつ常時介護を要する、二級は随時介護を要する、三級はそこまではいかないけれども労働することができない状態、こういうことでございます。
 そこで、いま御指摘のものがそのどれに当たるかということは、それはケース・バイ・ケースで判定をしていかなければなりませんけれども、いまの常時介護なのか随時介護なのか、それほどでないのかというようなことによって、それぞれのところに格づけされていくということだと思います。
#349
○大橋(敏)委員 けい肺患者の管理区分四というのは、ほとんどだめな人なんですよね。ですから、ぼくら単純にこれを見た場合、当然一級から三級の間にはみんな該当するだろうと思うわけですけれども、いま厚生年金の廃疾等級の一級が労災の障害等級の一級、二級に大体見合っていますね。それから厚生年金の廃疾等級の二級が労災障害等級の三級、四級、五級に該当しております。それから厚年の廃疾等級の三級が労災の障害等級の六級、七級と、大体こういうふうなつながりになっていますね。そこからいくと、けい肺患者の管理区分四というのはどこになるのだろうかという心配を実はしているわけです。ある労働省の役人の話を聞いてみると、それはまだとてもはっきり言えませんが、それ以外になる場合があるんじゃないですかなんという話も聞いたものですから、そうなるとまたけい肺患者が心配するはずだ、こうも思うのですが……。
#350
○藤繩政府委員 先ほど多賀谷先生からも、その点は非常に念を押されたわけでございますが、今度のこの傷病補償年金の一級から三級までは、額として現在の障害補償年金に合わしているわけでございます。障害補償年金が厚生年金と労災保険の間で大体同じような水準を保っているということはそのとおりでございます。しかし、それは額をそこになぞらえたわけでございまして、廃疾の程度ということになると、おのずから別でございまして、廃疾等級の設定は、先ほどお読みしましたようなことで、労働が不能であれば三級にしていく、ただ労働が不能というものは何であるかという点は、やはり医学的ないろいろな判定が残るかと思いますけれども、その点は現在も変わらないわけですから、現在、長期傷病補償給付に移行した人は、その時点では少なくとも労働は不能だと判定されたものだというふうに私どもは理解しております。
#351
○大橋(敏)委員 それでは、全国のじん肺患者同盟の代表の方がわれわれのところに参りまして、今回の法審議に当たって次のことを確認しておっていただきたいということでしたので、それを具体的に二、三申し上げますから、よく聞いて返事をしていただきたいと思います。
 「長期療養者に対する給付の改正について」まず「(1)廃疾等級の基準を設定する場合は、療養者の意見を充分に聞くこと。」これが一つですが、これに返事をしてください。
 それから二つ目「休業補償給付に代えて傷病補償年金を支給するにあたっては、当該労働者の充分な理解を得るべく配慮すること。」これが二つ目です。
 それから、大きな二つ目になって「他の社会保険給付との調整部分について」その(1)として「現行の労災保険の各年金・休業補償の各受給額が新法によって絶対に下回ることのないようにすること。」これは、もうすでに答弁がありましたけれども、改めて……。
 それから、大きな三として「特別支給金制度について」「新法による障害補償給付・遺族補償給付・傷病補償年金給付受給者に対して支給されることになった特別支給金については更に改善すること。」
 それから、同じく(2)として「今回の改正によって現行の長期傷病補償給付・同特別支給金の受給者及び休業補償給付の各受給者に対する支給額が現行より下回ることのないよう、充分な措置をすること。」
 大体以上です。すでに答えをいただいたものもありますけれども、もう一度改めてお答えを願いたいと思います。
#352
○藤繩政府委員 廃疾等級の設定につきましては、先ほどお答えしましたように、今後これは政省令に属することでございますから、労災保険審議会にお諮りをするわけでございます。
 そこで、労使の代表も多数参加していらっしゃることでございますから、十分御意見をお伺いをしたいと思います。まあ療養者の方からの御意見ということも、私どももおいでになれば伺いますけれども、恐らく労働側委員を通じて十分反映をされることではなかろうかと思いますが、なお十分その点は配慮をしたいと思います。
 それから、傷病補償年金の運用につきまして、労働者の理解を得るようにということでございます。これは、あらゆる制度につきまして関係者の理解を十分得ながら適正な運用をするということはあたりまえのことでございます。私どもは、その点に十分配慮をいたしたいと思います。
 それから、厚生年金との調整は、原則は原則でございますが、現に支給を受けておる休業補償の方につきましては、現在の水準を補償したということは、先ほど附則の三条に関連して申し上げました。
 それから、特別支給金については、これはボーナスのことでございましょうが、これらについての改善については、先ほど申し上げましたように、審議会でも今後なお検討するということがございますから、検討を続けてまいりたいと思います。
 それから、休業補償給付あるいは長期傷病補償給付を現に受けている者が、新しい制度に切りかわる場合にダウンすることのないようにというお話でございますが、これも先ほどお答えしましたように、それぞれの手当てをいたしたいというふうに考えておるところでございます。
#353
○大橋(敏)委員 それでは、時間もだんだん迫ってまいりましたので、少しスピードを上げますが、脊損患者の問題も出ましたので、この際、聞いておきたいのですけれども、昭和五十年四月十七日付で労働基準局長名で通達が出ておりますが、看護給付の一部改正ですね。つまり「労災看護給付の取り扱いについて、緊急かつやむを得ない場合は看護担当者にかわって親族友人も認めるものとする」というすばらしい通達が出て、関係者は非常に喜んだわけでございますが、しかし実態は、なかなかこれは現地に行きますと認めないんですね、看護協会との関係等もあって。近親者の看護をなかなか認めようとしない。これは、もちろん地元の労働基準監督署長の決裁によるわけでしょうけれども、この点もっとこの通達が生かされるように指導していただきたいということです。
#354
○藤繩政府委員 そういう通達を出してあるわけでございますから、それができるだけ生かされるように努力をすることは当然でございます。いま先生もおっしゃいましたように、看護協会等々のいろいろ利害関係が絡んでおるやに伺っておりますが、行政としては通達の趣旨が生かされるような努力をさらにしたいと思います。
#355
○大橋(敏)委員 先ほど局長は、労災保険の水準は、わが国は国際的にもかなり高い、ILO百二十一号条約あるいは百二十一号勧告、それらから見ても決してひけをとらない内容だ、こうおっしゃったわけですが、今回の障害補償の給付は現行のままとなっているわけですね。
    〔竹内(黎)委員長代理退席、山下(徳)委員長代理着席〕
給付改善をうたったというならば、当然障害給付の改善を図るべきではないか、私はこう思うわけですよ。
 そこで、私たちの意見としましては、いま言ったILO百二十一号条約の十四条二項、三項あるいは百二十一号勧告の十項一、二等から見てまいりますと、障害等級の十級以上は年金の対象とすべきではないか、いわゆる年金支給範囲の拡大をする必要がある、また、それ以下の一時金もその三年分程度は支給するように改善すべきではないかという意見を私たちは持っているわけですが、この点について結論だけで結構です。
#356
○藤繩政府委員 結論だけということになれば、今後十分検討しなければならぬと思っていますが、障害等級表については、先般改正をしたわけでございます。しかし、これは中間的な改正でございますから、今後なお検討をするわけでございますが、いまおっしゃいましたけれども、わが国では必ずしも年金を歓迎しない、むしろ一時金の方がいいという空気もまだなかなか強うございまして、そのために前払い一時金というような制度もつくっているような状態が一つあるということでございます。
 それからもう一つは、各等級が外国の場合に比べて評価がかなり違うということがありまして、それが年金化をした場合に、国際的な低い評価に連なって給付が低くなるというようなことも懸念されるわけでございます。いろいろな問題がございます。今後慎重に検討いたしたいと思います。
#357
○大橋(敏)委員 今度の法改正では、労災年金と他の社会保険年金が同一の事由について支給される場合には、労災年金額が政令で定める率だけ減額されることになっております。この政令の定め方によって各年金の受給者の今後の生活にきわめて重大な影響があると思うわけでございますが、政令では具体的にどのような率を定めるお考えであるか、これもお尋ねします。
#358
○田中説明員 今回の厚生年金との調整の規定の改正の考え方でございますが、従来は個別的に個々の受給者が厚生年金を幾らもらったかということを一々確認しながらその半分を調整する、こういうやり方でございました。ただ、そういうやり方の場合には、労災保険の給付の給付率の決め方と厚生年金の給付の給付率の決め方がかみ合わないということから、個別的な調整の結果が非常に不合理な結果が出てくる。これを改めるために、総体として厚生年金の給付水準、労災保険の年金の給付水準を比較いたしまして適切な率を定めて調整をしたい、こういうことでございますが、考え方は、従来の厚生年金の半分を調整するという考え方をマクロで見て、平均額をとらえて調整する、こういうやり方をしたいと思っております。
 具体的には五十二年四月一日からの実施でございますので、一番近い状態における給付保険の関係、各年金の比較をした上で具体的な率を定めるわけでございますが、これは労災保険審議会にお諮りいたしまして適切な率を定めたい、こういうことでございます。ただ具体的に何%というところまでは……(大橋(敏)委員「大体どういう腹組みでいるか」と呼ぶ)これは審議会の御議論の過程では、たとえばおおむね〇・七から〇・八ぐらいではなかろうかという試算をしたこともございます。ただ、その時点での試算は、若干データが古うございますので、最近のデータに従ってもう一度試算をした上で、審議会に慎重に御検討いただきたい、こういうふうに思っております。
#359
○大橋(敏)委員 では次に移ります。
 改正法案では、年金給付額のスライドの要件について改善が図られておりますけれども、賃金水準が一〇%以上変動した場合に年金額がスライドされることになっております。休業補償給付は相変わらず賃金水準が二〇%以上変動した場合にスライドされることになっておりますが、このように年金額のスライドの要件のみを緩和して、むしろ肝心の休業補償給付のスライド要件を緩和しないのは片手落ちではないかという意見がかなりあるわけでございますが、納得いく答弁をお願いしたいと思います。
#360
○藤繩政府委員 それは先ほどお答えをしたと思うのでございますけれども、スライドというものは、元来年金になじむということもございますし、それから休業補償につきましては、先ほどもお答えしましたように、一年以内で治られる方が九七、八%でございますから、そういう意味では非常に短期給付であって、そして療養のために労働することができない、そのために賃金がもらえない、それを補てんするというのが休業補償でございまして、年金とは少し性格を異にしているという点が一つと、それから現在六〇%でございますが、特別支給金で実際は八〇%になっておるということもございまして、そういうような関連からいいまして、やはりスライドというものは、現在のままで休業補償はいいのではないかというふうに割り切ったわけでございます。
#361
○大橋(敏)委員 それはそれで次に移りますが、現実問題としてこういう矛盾を感ずるのです。たとえばことしの春闘の賃金のあれは大体九%でしたかね。労災の方は賃金スライドですから、これによると一〇%以上変動した場合はスライドする。厚生年金の方は物価スライドで五%ですね。物価一けたで抑えたとは言っていますけれども五%以上ですから、当然厚生年金の方はスライドしますね。非常にまた開きが出てくる感じを受けるのですけれども、この点はどうですか。
#362
○藤繩政府委員 御指摘のように、今回の法改正では従来の二〇%を一〇%にしていくということでございます。これは労災保険というのが、被災労働者の稼得能力を補てんするという意味から、労働者の賃金にリンクすることが必要であろうということで、厚生年金は五%ですが、これは物価スライドでありますから、物価スライドじゃなくて賃金スライドにしよう、しかし二〇%は余りにも現状に合わないから一〇%にしようというのが今度の改正であります。また従来の実績から見ましても、物価の変動よりも賃金の変動の方がずっと多いわけでございますから、現実問題としてもその方が有利であるというふうにも思うのです。ただ問題は、ここへ来まして御指摘のように、春闘の賃上げとそれから物価との関係ということになると、その辺がいま御主張のような議論が出てくるわけでございますが、春闘の賃上げがこれからどうおさまりますか、今後の傾向を見なければわかりませんけれども、しかし、そういう一時的な現象は別といたしまして、理論的にも長期の傾向から見ても賃金スライドでいくということ、それからその幅といたしましては、それは低ければ低いほどいいということもございますけれども、いままでに二〇%であったものを一〇%まで改善するということは大きな改善ではなかろうかと思っております。
#363
○大橋(敏)委員 いずれにしましても、大変な矛盾がこれであらわれたことを理解してもらって、今後の改善、検討に大いに参考にしていただきたいということです。
 それから、スライド率の算定基礎期間が暦年単位から年度単位に改められることになっているわけですが、実施されるのは来年の八月からということになっておりますね。この間、つまり来年の四月から七月までの間の年金額のスライドは一体どうなるのかという疑問が出てくるのですが、いかがですか。
#364
○藤繩政府委員 その点は経過規定を設けまして、従前の例によるということにいたしております。
#365
○大橋(敏)委員 では、その間の問題をきちっとカバーされるということですね。
#366
○藤繩政府委員 そうでございます。
#367
○大橋(敏)委員 では、次にいきますが、今度の改正で外国の支店等に派遣される労働者等を特別加入対象者の範囲に加えることとしているわけでございます。ところで、これら海外派遣者の災害は外国で発生するものでありますから、その災害の認定のための事実調査等については多くの困難が予想されます。また、その処理のいかんによっては不適正な給付が行われるおそれも高いと考えるわけでございますが、これら海外派遣労働者に対する事務は実際にはどのように処理するつもりなのか、これもお尋ねいたします。
#368
○藤繩政府委員 海外派遣労働者が海外で事故に遭った場合の保険給付の請求手続につきましては、改正法が国会を通過した後、労働省令をもって定めることにしておるわけでございますが、国内で労働者が事故に遭った場合とほぼ同様のものとする予定でございます。すなわち海外で起こった事故の調査、認定等については、国内に比べまして種々困難な問題があることは、いま御指摘のとおりでございます。しかし現行制度におきましても、海外出張者が海外で事故に遭った場合、これは業務上ということで国内と同様の手続で行っておりますので、現在までに経験がございます。現地の大使館等の証明書とかいろいろな経験がございますので、現在行われている海外出張者の例にかんがみまして、新しい取り扱いを考えてまいりたいというふうに思っております。
#369
○大橋(敏)委員 今度の改正で特別加入者のうち通勤災害について保護を与えないものを労働省令で指定することができるとしておりますけれども、つまり一人親方等が通勤災害について保護を与えられるかどうかは、すべて労働大臣の考え一つによって決まってくることになっておるわけでございますが、労働省令では実際にはどのような範囲の特別加入者を通勤災害の保護の対象から除外する考えなのか、これをお尋ねいたします。
#370
○藤繩政府委員 一般的に通勤の実態があると認められる種類の特別加入者に対して通勤災害保護制度を適用するのでございまして、通勤の実態がない、あるいは明らかでないというようなものに対しては適用がないということになるわけでございます。
 そこで、いま私どもが考えておりますものは、一人親方等の特別加入者につきましては、たとえば家内労働者というようなものは、やはり通勤の実態がないのではないかというふうに考えておりますし、それから、いま議論になりました海外派遣労働者につきましては、どうも海外の通勤の実態というようなことはわかりにくいので、これは除外をしなければならぬ。いずれにしましても、関係審議会の御意見を伺いながら、後で政省令の段階でこういう処置を講じたいというふうに思っております。
#371
○大橋(敏)委員 メリット制については、事業主の災害防止意欲を刺激するため収支率に応じての保険料の調整幅の限度が拡充されることとなっておりますが、しかし一方では、特別支給金が収支率の算定基礎に加えられて収支率がその分だけ高くなるように仕組まれております。これでは保険料の調整幅の限度を拡充することが無意味になると思うわけでございますが、この点についてお答えを願いたいと思います。
#372
○藤繩政府委員 メリット制につきましては、やはり関係者の努力を喚起して災害防止に役立てるという意味がございますので、今回これを改正したいと思うわけでございますが、確かに御指摘のように、特別支給金を今度入れるということから、その意味が半減するといいますか、そういう御批判があることは認めざるを得ないわけでございますが、逆に言いますと、特別支給金を今度入れるということになれば、やはりそれを収支率に反映していく、そうなれば現行のメリットではいよいよ気の毒だということもございますし、あれやこれやを考えまして、やはり適正な改正をすべきであるというふうに判断をしまして、このような措置をとったわけでございます。
#373
○大橋(敏)委員 それじゃ最後に、労災法の改正の中ですので、職業病に関係した問題を一つ取り上げて終わりたいと思います。
 実は先般、日本中央競馬関東労働組合の代表者の方が私のところに参りまして、いろいろと実情を訴えられました。いま全国的な競馬ブームといいますか、そういう華やかな催しの裏に、実は労働者が非常に低劣な労働条件のもとに大変な苦労をし、職業病とも思われるような状態にあることを訴えてまいりました。要するに代表者の訴えは、作業の性質から、また、その実態から腰痛あるいは骨折等が多発しておりますが、腰痛等の腰部障害というものについて、この実態を調査していただいて、職業病に認定して保護してもらいたいものだということなんです。
 ここに、後でこれをおあげしますが、これは「厩務員作業実態報告書」なんですが、この中で特に腰痛等を受ける実情が示されておりますから二、三読み上げてみたいと思います。
  寝藁上げ作業、汚れた寝藁を取り出し二頭分を中腰で行う。
  馬の手入れ、馬体をブラシする、その後、布等で馬体を拭き取る、その作業中に馬が移動するので、馬房の側板に強く押しつけられて腰を圧迫し、場合により骨折等も起る。
  調教前の準備に乗り運動をする、若馬が特に荒動するので、厩務員の身体と馬体とのバランスを失ない、腰をひねる場合が多い、引き運動の場合、競走馬は神経質で敏感なので、横跳びや後退を激しくするので厩務員の腰をひねる。
  その馬を厩舎に連れて帰り、調教で発汗した馬体を布又は特殊な藁で摩擦し乾かす、その間に馬体の移動で馬房側板に腰を圧迫され腰痛を起す。
  馬の足を洗う、片方の蹄を上げて洗うが、馬体重が厩務員の身体にかかる、又、夏期には蝿などが馬体につくと足の伸縮があり、馬力が加わり厩務員の腰部に重みがかかる、後に足を摩擦し乾燥させる。
等、いろいろとずっと列記してあるわけですよ。そして現実に健康調査をやってアンケートをとっております。確かにこれは問題だなというところがありますので、これは、やはり労働者保護の立場からこの実態調査をしてもらいたいのです。あるいは健康診査といいますか、労働省としてこれをしていただいて、一日も早く、こういう立場に立って働いている人のために対策をしていただきたい。ここには寝わら上げはこういうものだとか、あるいは引き運動はこういうものだ、馬の足洗いはこういうかっこうになる、あるいは乾燥草運び作業はこういうことだとか、あるいはかいばおけは二十五キロから三十キロもあるので大変腰を痛めるというように、それぞれその実態を写真まで撮って訴えてきております。これは真剣な問題でございますから、ひとつやっていただきたいと思います。これは大臣からも一言。
#374
○藤繩政府委員 まず厩務員が労働者であるかどうかという点につきましても、若干問題があるかと思いますが、最近では労働組合を結成して競馬会に雇用されているということが常態のようですから、そうであればもちろんこれは労働者でございます。そういった点もまず実態を調査しなければいかぬと思います。
 それから腰痛につきましては、先ほどもいろいろ御議論がありましたが、災害性のものは、これはもちろん業務との関係がはっきりしておりますから補償の対象になりますが、非災害性の腰痛というのも非常に多いので、年をとってまいりますと、いろいろ腰を痛めるケースが多いわけでございますから、そこのところが判定が非常にむずかしいというわけでございます。東京の例を調べますと、四十九年度以降、東京局の管内でも砂川署で四名、立川署で七名、いずれも腰部捻挫あるいは打撲、腰椎骨折というような非常にはっきりした災害原因によって事故が起こっております。これは補償をいたしております。なお、実態については十分見てみたいと思います。
#375
○大橋(敏)委員 もう時間が参りましたのでこれで終わりますが、雇用関係がまだはっきりしてないというようなお話がありましたが、私も、それを心配しまして、ちょっと調べてみたのですが、日本調教師会というのがあって、その調教師によって雇用関係ができているようです。そこで賃金体系等も決まって出されておりますが、確かにその問題も含めて根本的な救済対策を講じていただきたい。最後に大臣から一言。
#376
○長谷川国務大臣 菊花賞、天皇賞の陰にそういう人々がいるということがよくわかりました。勉強したいと思います。
#377
○大橋(敏)委員 終わります。
    〔山下(徳)委員長代理退席、委員長着席〕
#378
○熊谷委員長 次に、和田耕作君。
#379
○和田(耕)委員 もう同僚委員の質疑によりまして、重要な問題点はほとんど質問をされて、答弁も行われておると思います。また早くやれという声も大分出ておりますので、簡潔に御質問申し上げたいと思います。
 職業病の範囲という問題を、もうこれは大分古い規定になっておると思いますから、やはり再検討してみるということが必要な時期に来ていると思うのですけれども、いかがでしょうか。
#380
○長谷川国務大臣 古い法律でございますから、まず第一にいろいろな職業病の病名でさえも違ってきておりますから、ひとつ全部洗い直してみようという感じでいまやっております。
#381
○和田(耕)委員 たとえば過度に精神を集中するとか、また非常な単純作業とか等のことで精神的ないろいろな障害も起こっておる、ノイローゼとかいろいろな原因があるでしょうけれども、こういうふうな場合に、労災というものがどういうふうに現在適用されておるのか、ちょっとその問題をお伺いしたい。
#382
○藤繩政府委員 先ほど腰痛の問題が出まして、災害性の腰痛はわかりやすいのだけれども、非災害性はむずかしいということを申し上げましたが、いま御指摘の神経症状を伴うような種類のものも現代病ではございますが、さて、それが業務との因果関係がどの程度立証されるかというのは、大変微妙かつ困難な問題でございます。そのために、われわれも専門家等々に委託をしたり、いろいろな研究をいたしておりますが、この際、先ほど大臣からお答えしました職業病の範囲の洗い直しの際に、また改めて十分検討したいと思います。
#383
○和田(耕)委員 病気の種類も発生の原因も非常に多種多様になっておるというのは事実でございますし、また、いまの医学その他の学問を総合的に適用してみると、災害というものも、その根拠がわからないこともないという感じもするので、少し本格的にこの問題を検討してみたらどうだろうかと思うわけでございまして、その点を一点質問をいたしました。
 それからもう一つは、今回の改正で目的を大分広くとっておられるようですけれども、特に従来の目的と違って真ん中の「あわせて被災労働者の社会復帰の促進、被災労働者の援護、適正な労働条件の確保等を図ることにより、」という言葉が入っているわけですね。この三つの条項を入れたのは、たとえば今回の改正でどういうことをしたいからこういうことを入れたのかという問題について、簡潔にお答えをいただきたい。
#384
○藤繩政府委員 今度の改正で労災保険制度の性格が変わるのじゃないかという御議論がけさほど来ございますが、補償を中核とするという点では、基本的には変わらないということをお答えしてまいりました。それならば、なぜ目的を改正したかということでございますが、いまお読みになりましたような点を従来も保険施設として行ってまいりましたけれども、なお一層拡充したいという考えでございます。
 ただ、たまたま賃金不払い救済事業が労働福祉事業の一環として行われることとなったために、その点が何といいますか非常に注目を浴びまして、そこの御議論が盛んでございますが、それも先ほど来お答えしましたように、やむを得ない事情でこれを行うということにいたしましたけれども、本来のねらいは、いま御指摘になりましたような労働者の社会復帰の促進、これは労災病院とかリハビリテーションとか、そういうことでございます。それから遺族の援護、被災労働者の援護、これも各種の援護をいままでやってまいりましたが、これを拡充しなければなりません。それから労働条件の確保の中で一番大事なことは、安全衛生の確保でございます。なかんずく職業性疾病の予防、健康管理、それからさらに治療、補償、リハビリという一環した政策を展開するためには、こういった事業で思い切った投資をするということも必要がなかろうかというふうに私ども考えておりまして、その辺を拡充したいという考えでございます。
#385
○和田(耕)委員 私は、これは非常にいいことだと思って質問をしておるのですけれども、別の法案に出ております。つまり賃金不払い等の災害の場合の手当ということも、当面こういうふうな労災の枠でカバーするということも必要だと思うのですが、ここでぜひとも考えていただきたいことは、リハビリの問題と関係するのですけれども、労働災害によって心身に障害を受けるということになると、身体障害者のもうほとんど全部の状態を持った人が多いと思うのです。この方々に対してのいろんな生活上の給付等については、当然大事なことでございますけれども、社会復帰、やはり仕事をするということが一番の生活上の励みになると思うわけでございまして、社会復帰の問題について、ひとつ大臣、総合的な調査研究機関をお考えになってみたらどうだろうか。たとえば自動車の排気ガスという問題があって、電気自動車を開発しようという問題がある。あるいはまた厚生省の関係の救急医療という問題について、いろんな関係の人が集まって、これをできるだけカバーをするというような考え方もあるわけで、こういうところには一つのプロジェクトチームのようなものができまして、そうしてその目的に集中して、お医者さんとか科学者とかあるいは経験者とか学識者とかいうものが集まって対策を決めることが、かなり大きな役割りを果たしてきていると思うのですけれども、身体障害を持っている方の社会復帰といいますか、労働戦線に復帰をしてくるということを目的にして、必要な設備、機械、器具あるいは指導の仕方等の問題を開発するような一つの機関を設けてみたらどうだろうか。それにお医者さんもあるいは技術者も科学者も経験者も、すべての関係の人が集まって、やはり三年なら三年なりの期間をもって本格的にひとつ研究して、そして身体障害者、耳の聞こえない人もあれば目の見えない人もある、手足の不自由な人もある、いろんな人をできるだけ労働戦線といいますか社会復帰の場に帰してあげる、そのお手伝いをしてあげるということを考えてみる必要がありはしないか、そういうふうに思うのです。
 今度また、たとえば役所とか会社で身体障害者を一定の率で雇用するというような案も出るようでございますけれども、そういうものも結構ですけれども、結局もっと内容的に見て社会復帰ができるようなものを、いまの知識経験のレベルを総合してつくり上げるということが、私は非常に大事だと思うのですけれども、いかがでしょうか。
 労災の方はかなり大きなお金――大きなというよりお金の余裕もあるし、また事業者の負担のものですから、これは当然事業者が負担してやるべきものだと思うし、そういうことでやれば、国もそれ相当の援助をするということも必要だと思うのですね。そういう構想を持って、ひとつぜひともそういう機関を設ける時期ではないだろうか、こういうふうに思うわけですが、いかがでしょう。
#386
○長谷川国務大臣 いまの時代は、やはり先取りが大事、しかも、わが国の行政というのは、大体縦割りが多うございますが、そういう意味からしますと、労働省の立場からしますと、わりに人間相手ですから、横断的にやる性格があるし、また、それを人に認めてもらうというメリットがあると思います。まさにおっしゃるとおり、従来のように労災病院に入れば入ったで、ただ、そこにずっと長くいるということじゃさびしい人生でございますから、今度はもう入った途端に、いつ社会復帰できるか、こういうふうなシステムで私の方は取り組んで、労災病院とか総合せき損センターとか、そういう考えでやっていることが一つ。
 もう一つは、まさに先生のおっしゃるように、大きく物を考える時代だと思いまして、中山伊知郎さんとか武見太郎さんあるいは井深君、それから永野重雄さん、内田俊一さん、こういう方々にお集まりいただいて、いま先生のおっしゃるような問題の実は勉強会をやって、その下にいろいろな部会でも開いて諮問機関として御研究願う、まさに先生のおっしゃるような傾向に私たちも進む。
 それから、小さい一つの例でございますけれども、まさに日本の医学の開発にも労働省は役に立とう。だから、産業医大なんというのは、世界に一つしかないけれども、これだけ産業が伸びる時代に産業医の問題がなかなか解決されない。しかし、そういう専門家の大学もつくってみよう。
 それから最近は、今度の予算で、実はそこに菅波前政務次官などもいますけれども、お互いが健康診断に行っていろいろやりますね、精密検査。まだ外国にもっともっといい機械があるというので今度買いまして、アクタ・スキャナーといって一台二億円、これを二台買いました。これは全身カラーで映ってくる。これは日本の医者は余り持っていないらしいのです。そういうふうなことをとにかくやって、大きくひとつ刺激をしてやろう、こう思っております。
#387
○和田(耕)委員 まだ項目別にいろいろと質問しようと思っておりましたけれども、先ほど申し上げたとおり、同僚委員がほとんど全部御質問をしておると思います。それで、前向きの質問は全部私の質問だとお思いいただいて、そしてがんばっていただきたいと思います。
 これで終わります。
#388
○熊谷委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。
    ―――――――――――――
#389
○熊谷委員長 これより本案を討論に付するのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#390
○熊谷委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。(拍手)
    ―――――――――――――
#391
○熊谷委員長 この際、住栄作君、村山富市君、石母田達君、大橋敏雄君及び和田耕作君から、本案に対し附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
 その趣旨の説明を聴取いたします。村山富市君。
#392
○村山(富)委員 私は、自由民主党、日本社会党、日本共産党・革新共同、公明党及び民社党を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。
 案文を朗読して説明にかえさせていただきます。
    労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議
   政府は、次の事項に関し所要の措置を講ずべきである。
 一 傷病補償年金制度の運用にあたっては、特に頸肩腕症候群、むち打ち症、腰痛症等の職業性疾病患者の療養の実情に即して、適切に行うよう努めること。
 二 未払賃金立替払事業のあり方については、今後、その実績に照らし、かつ、労災保険制度の建前とも関連して更に検討すること。
 三 特別加入対象者の範囲は、実情に即して拡大を図るとともに、その運用についても改善を検討すること。
 四 新制度への円滑な移行を図るため、長期傷病補償給付、休業補償給付等の受給者については十分配慮すること。
 五 厚生年金等との調整率を定めるにあたっては、受給者の保護に欠けることのないよう十分配慮すること。
 六 給付水準については、スライド制、最低額の引上げ等今後ともその改善に努めること。
 七 特別支給金については、今後ともその改善に努めること。
 八 リハビリテーションに関する措置の充実に努めること。
 九 労働福祉事業として行われる各種の給付金と保険給付との関係については、今後更に検討するとともに、これら給付金をめぐる論議の処理について、適切な方途を検討すること。
以上であります。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
 終わります。
#393
○熊谷委員長 本動議について採決いたします。
 本動議のごとく決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#394
○熊谷委員長 起立総員。よって、本案については、住栄作君外四名提出の動議のごとく附帯決議を付することに決しました。
 この際、労働大臣から発言を求められております。長谷川労働大臣。
#395
○長谷川国務大臣 ただいまの附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重し、関係各省とも協議の上、善処してまいる所存であります。
    ―――――――――――――
#396
○熊谷委員長 なお、ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#397
○熊谷委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。
    ―――――――――――――
#398
○熊谷委員長 次回は、明十一日火曜日午前九時四十五分理事会、十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後七時二十八分散会
     ――――◇―――――
ソース: 国立国会図書館
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