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1975/04/27 第77回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第077回国会 外務委員会 第5号
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1975/04/27 第77回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第077回国会 外務委員会 第5号

#1
第077回国会 外務委員会 第5号
昭和五十一年四月二十七日(火曜日)
    午前九時二十五分開議
 出席委員
   委員長 鯨岡 兵輔君
   理事 坂本三十次君 理事 中山 正暉君
   理事 水野  清君 理事 毛利 松平君
   理事 河上 民雄君
      粕谷  茂君    木村 俊夫君
      小坂善太郎君    竹内 黎一君
      原 健三郎君    福田 篤泰君
      松永  光君    三池  信君
      山田 久就君    赤松  勇君
      江田 三郎君    川崎 寛治君
      土井たか子君    松本 善明君
      大久保直彦君    渡部 一郎君
      永末 英一君
 出席国務大臣
        外 務 大 臣 宮澤 喜一君
 出席政府委員
        防衛庁長官官房
        長       玉木 清司君
        科学審議官   半澤 治雄君
        外務政務次官  塩崎  潤君
        外務大臣官房長 松永 信雄君
        外務省条約局外
        務参事官    伊達 宗起君
        外務省国際連合
        局長      大川 美雄君
 委員外の出席者
        外務委員会調査
        室長      中川  進君
    ―――――――――――――
委員の異動
四月二十七日
 辞任         補欠選任
  正示啓次郎君     松永  光君
  金子 満広君     松本 善明君
同日
 辞任         補欠選任
  松永  光君     正示啓次郎君
  松本 善明君     金子 満広君
    ―――――――――――――
四月二十六日
 千九百七十五年の国際ココア協定の締結につい
 て承認を求めるの件(条約第八号)(予)
 アジア=オセアニア郵便条約の締結について承
 認を求めるの件(条約第九号)(予)
同月二十四日
 ILO条約第百十一号、第百三号及び第八十九
 号の批准等に関する請願(石田幸四郎君紹介)
 (第三六三九号)
 同(上原康助君紹介)(第三六四〇号)
 同(川崎寛治君紹介)(第三六四一号)
 同(川俣健二郎君紹介)(第三六四二号)
 同(河上民雄君紹介)(第三六四三号)
 同(山口鶴男君紹介)(第三六四四号)
 同(横山利秋君紹介)(第三六四五号)
 同(川俣健二郎君紹介)(第三六六八号)
 同(木島喜兵衞君紹介)(第三七一〇号)
 同(赤松勇君紹介)(第三七五八号)
 同(木原実君紹介)(第三七五九号)
 同(佐藤敬治君紹介)(第三七六〇号)
 同(佐野進君紹介)(第三七六一号)
 同(坂本恭一君紹介)(第三七六二号)
 同(島田琢郎君紹介)(第三七六三号)
 同(日野吉夫君紹介)(第三七六四号)
 同(米内山義一郎君紹介)(第三七六五号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 核兵器の不拡散に関する条約の締結について承
 認を求めるの件(第七十五回国会条約第一二
 号)
 核兵器の不拡散条約に関する件
     ――――◇―――――
#2
○鯨岡委員長 これより会議を開きます。
 核兵器の不拡散に関する条約の締結について承認を求めるの件を議題といたします。
 本件に対する質疑は、去る二十三日終了いたしております。
 これより討論に入ります。
 討論の申し出がありますので、順次これを許します。中山正暉君。
#3
○中山(正)委員 私は、自由民主党を代表いたしまして、核兵器の不拡散に関する条約に対し賛成の討論を行うものでございます。
 日本が生みました脳生理学の権威であります時實利彦という先生が、私お目にかかりましたときに、憲法の前文に、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼をして、日本の安全と生存を保持しようと決意したとある。しかし、脳生理学的見地から、一体諸国民が平和の原則というものを持っておるかどうかということに関して、自分が脳生理学的に見た限りでは、人間の本能の中には闘争の本能しかない。ライオンはライオンを殺さない、オオカミはオオカミを殺さないが、人間だけが親を殺し、子を殺す。この悲しい本性を何とかわれわれは克服をしなければならないが、非常にそういう意味での脳生理学的な見地から見れば悲しい一面が人間にあるということでございます。
 私どもは、平和な三十年の生活をここに保ってきたわけでございます。これからの世界、特に各国に戦争を放棄したことを宣言をする憲法を持っておる私ども日本といたしまして、どうしてもこの核の不拡散に関する条約は、不完全ではありますけれども、特に核大国が核を独占をする、そういう意味で中華人民共和国はこの核防条約を批准をいたしておりません。全く私どもの日本にとりましては一衣帯水という言葉で呼ばれるように近接の地域にある核大国、特に一九六四年以来十数回の実験にすべて成功しておる。日本には弾道弾は二分で到達をするという至近の距離にあります。またフランスは、ヨーロッパの中央部にありながらこの核防条約を批准をいたしておりません。アメリカはフランスの安全のために核を使わないであろうというアメリカの軍事的な孤立化傾向に対する、別の意味でのアメリカの軍事上への信頼を全くアメリカに対して持っていないという姿、その中で私どもは、アメリカとの安保条約によって、アメリカの核のかさの中に入って日本の安全を保とうといたしております。自由民主党の中にも、非核三原則というものを言って、後は死んでしまわれました、棺おけの中へ入ってしまわれました方は結構でございます。私どもこれから伸びていく日本の大きな若い勢力を持っております者が、この持ち込まずという原則を堅持をしておれば、ある意味で日本の危機が迫ったときに、アメリカに安保の発動を要求したときに、アメリカが非核三原則を利用して、持ち込まずという項目を利用して、日本に対する安保を発動をしないという可能性も私は考えられると思います。その中で一体日本は、アメリカからもらったことがはっきりしております憲法、この憲法の中には、旧憲法十四条にありました戒厳令規定はありません。日本が混乱をしたときにどうするかという法律的な規定は一切ありません。特に軍事法廷はもちろんありません。それから海軍刑法、陸軍刑法、何もありません。二十三万の自衛隊、陸上自衛隊は八割の充足率しかないと言われておりますが、国民の安全を一体どう守るか、特に局地的な戦闘がありましても、恐らく、国民に大変迷惑をかける動労のストを見ましても、あの動労が武器弾薬を運ぶはずがありません。その中で一体日本の安全をどう確保するのかということがわれわれ政治家にとりまして大変大きな課題でございます。
 世界観の違う人との協調ばかりを旨として、国会の運営のために私どものいろいろな条件を抹殺をされるといいますか、われわれが主張をしておかなければならない、特に私は、この際に、日本も核を捨てるならば、その核が降ってきた場合の防御の措置として、アメリカのシェルターのように大防空壕を大都市には掘るというくらいの国民に意識を植えつけるべきであると考えておりますが、とにかく神に祈るような気持ちで私どもはこの核防条約を批准をいたしたい。世界に対して私ども日本の大和魂といいますか、日本人の心の中には特に武士道――武というのは「戈を止める」と書いてございます。「戈を止める」ことが武士道でありますが、その武士道の中にも「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」という言葉があります。剣の道の極意は、自分の身を捨てることによって相手の存在も尊重するということが日本の武士道の精神であろう。その意味で、私どもは神に祈るような気持ちでこの核防条約を批准をいたしたい。
 これからの世界に対する感覚として、人間の本性には大きな不信感を持っておりますが、歴史は悪から始まって善に向かって進んでいると思います。社会主義国同士でも、社会主義国同士には戦争はないという話でございますが、中ソ論争があり、アメリカは六十万の軍隊を十数年かかってベトナムに送りましたが、ソビエトはわずか二週間で六十万の軍隊でチェコスロバキアという自分傘下の国家を暴力によって抑圧をしたことさえあります。その中で、われわれの安全をどう確保するか、国会での今後の大きな課題にしていただきたい。かようにお願いをいたしまして、私の討論を終わりたいと思います。ありがとうございました。
#4
○鯨岡委員長 中山正暉君の討論は終わりました。
 河上民雄君。
#5
○河上委員 私は、日本社会党を代表いたしまして、当委員会において長く論議をいたしてまいりました核防条約に対して、最終的に党として賛成いたすことをここに申し上げたいと思います。
 わが党は核の全廃を目指し、これまであらゆる運動を積み重ねてまいりました。いかなる核実験にも反対し、非核三原則の確立にあらゆる努力を傾けてまいったのでございます。全地球から核がなくなる日を目指して、その一歩として部分核停条約にも、多くの問題点がありながらこれに賛成をいたし、また、今回の核防条約につきましても慎重に討議を進めてまいったのでございます。それも、核全廃へ向かう長い道のりの、千里の道の一歩として評価できるかどうかということで考え抜いてきたのでございます。
 今回の核防条約につきましては、これはいろいろの点に問題があることは事実でございまして、この条約の不平等性あるいは核大国の核拡散のこの現実というようなものを踏まえますときに、われわれとしては多くの憂慮を表明せざるを得ないのでありますけれども、しかし、この条約において、日本が独自の核武装をする道を閉ざすというその一点が、他のいろいろな条件とのかみ合わせの中で核全廃への道に一歩進めるものであるという判断をいたした次第でございます。
 今日の国際的な状況をつぶさに考えますときに、国際核軍縮の一環としてこの条約を評価するといたしましても、この条約がもとよりすべてではないと思うのでありまして、唯一の被爆国としての原点に立って、わが国は、さらに国際的な核軍縮を実現する努力を、あらゆる瞬間にあらゆる方法において進めなければならないと考えるものでございます。
 そのような意味におきまして、非核三原則は、三木総理も言われたように、有事、平時を問わず、いかなる場合においてもこれを忠実に厳守することは言うまでもございませんし、また、非核兵器国に対し、核兵器国の核不使用協定を今後とも実現するように努力すべきことは言うまでもございません。また、地下核実験を含む全面的な実験の禁止、また、核兵器国がいま進めております核の現状というものに対し、核軍縮のための忠実な努力を要請することも一つでありますし、特にわが国としては、アジアにおける非核武装地帯の設定、日本を中心とする非核武装地帯の設定について、政府は本当に勇気と良心を持って当たるべきであるというふうに私は考えるものでございます。
 この機会にそのことを強く政府に要望し、この条約が核全廃への大きな日本の努力の一つであるという認識に立って、さらにこれをいろいろのものとかみ合わせながら、本当に、核全廃の運動の先頭に立って、唯一の被爆国としての国際的な、歴史的な責任を果たしていただきたいと思うものでございます。
 そのような見地に立ちまして、この条約批准に際し、今回決議がなされますけれども、その中に多くのわれわれの主張も盛り込まれたことを高く評価いたしまして、私どもの討論にさせていただきたいと思います。
#6
○鯨岡委員長 河上民雄君の討論は終わりました。
 松本善明君。
#7
○松本(善)委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して、核兵器の不拡散に関する条約に反対の討論を行います。
 本条約に反対する第一の理由は、この条約が現在の核保有国の核軍備を何ら制限、縮小しようとせず、アメリカを初めとする核保有国による核独占体制を合理化するものとなっている点にあります。
 本条約第六条において、核保有国の核軍備拡大の制限について締約国の交渉がうたわれていますが、条約発効後五年の間に、米ソの核ミサイル弾頭が約三倍になっていることで明らかなように、米ソを中心とした核軍拡競争の際限ない拡大が行われており、第六条が全くの空約束であることを証明をしております。
 第二の理由は、アメリカその他の核兵器保有国が、その核兵器を外国に持ち込むことには何ら制限もつけず、完全に野放しになっている点であります。
 核保有国による非核保有国への核持ち込み問題は本条約では最初から全く取り上げられておらず、他国への核保有国による核持ち込みは自由だとする論理が事実上とられているのであります。核保有国による他国への核持ち込みは、核保有国の増加とはまた違った、別の形の核拡散と言うべきものであります。
 しかも、たとえばアメリカによる他国への核持ち込みは、アメリカの公式の核戦略に従えば、通常戦力の相手に対しても必要ならいつでも引き金を引く、先制核攻撃をするという原則に沿って運用されているものであります。これを野放しにしておくことは、片手落ちであるばかりでなく、アメリカを初めとする核保有大国本位にこの重大な核問題を処理するものであり、また各国への核持ち込み反対の国際世論をあえて無視するものでもあります。そして、このことは、日本においてはきわめて重大であり、日本への核持ち込みの疑惑は、政府答弁や国会決議によっても解消されていないのであります。
 第三の理由は、この条約は、核保有国の核のかさの提供を正当化している国連安保理事会の非核保有国の安全保障決議と相まって、核軍縮どころか、むしろ相対する軍事ブロックを核軍事同盟化することに道を開くからであります。
 いま必要なことは、このような条約を批准することではなく、国会及び列国議会同盟で決議されているとおり、核兵器完全禁止のための国際協定と、核兵器の使用禁止国際協定の成立に全力を傾けるべきであり、わが党が提出をしております核兵器禁止法案の速やかな実現を図ることこそが、この問題について日本の世界に対する発言力を強め、原水爆を許すなという日本国民の念願に真にこたえる道であります。
 以上、わが党の本条約の承認に反対する討論を終わります。
#8
○鯨岡委員長 松本善明君の討論は終わりました。
 渡部一郎君。
#9
○渡部(一)委員 私は、公明党を代表いたしまして、ただいま議題となっております核兵器の不拡散に関する条約の締結について承認を求める件につきまして賛成の意を表明するものであります。
 一九七〇年、本条約が発効し、それと相前後して行われたわが国の条約署名以来、すでに六年の年月が経過しております。その間、核兵器は実に人類を三十六回も滅亡せしめるほどの規模に達し、またミサイル等の運搬手段は実にここに三倍になったのであります。平和を願う人類の期待を担って、本条約には賛否はともかく、強い要望が寄せられてまいったのであります。また、本条約に対するわが国の態度については、世界各国皆等しく注目をいたしているところであります。ところが、わが国内においては、いわゆるフリーハンド論という強硬な力に押され、主として自民党の党内事情により、今日まで審議がおくれたことはまことに遺憾なことと言わなければなりません。と同時に、このことにより、あらぬ疑惑と不信を諸国に与えた醜態の責任は重大であると思うのであります。これはひとえに政府及び自民党の責任であると言わねばなりません。
 本日、ここにこの条約の意思を表明するに際し、私たちは、改めて世界唯一の被爆国として、二度と核の使用を許すまじという国民的悲願の誓いを新たにすべきであると思うのであります。
 戦い敗れた廃墟の中から厳粛な誓いをもって採択した日本国憲法の精神にのっとり、平和愛好国として、世界の平和の維持に貢献することを決意したわが国が、きわめて部分的で不平等な条約とは申せ、本条約に参加することは、核兵器の拡散に加担することをみずからとどめる側に立つことであり、国際社会において名誉ある地位を占める道であるとともに、広義の国益にかなうものであると信ずるものであります。
 しかしながら、政府は、この条約の批准に当たり、国是である非核三原則を時として高度の政治判断と称し、この原則の運用について弾力的などというような発言をいたしております。
 私たち公明党は、去る六十七国会において、非核三原則の決議に賛成し、本日もまた、外務委員会において核兵器の不拡散に関する決議を行おうといたしており、非核三原則の不変の堅持をいかなる場合においても求めているのであります。しかしながら、ロッキード問題における国会の決議の無視のように、必ずしも政府がそれを守り通すことができるかどうかについては、私たちは、国民とともに、今後政府の行動を十分監視したいと思うのであります。
 公明党は、本条約を、核全廃への終着点ではなくスタートラインとすべきと考えているのであります。すなわち、軍事同盟のたぐいに安全保障を頼るのではなく、あらゆる国々との等距離完全中立政策を推進し、核保有国を除いたアジア・太平洋地域に非核中立地帯を設置し、これを世界の諸国が認めるよう外交努力をすることから始め、勇気を持って核軍縮の推進を進めていく必要があると思います。本条約の数々の不満足なポイントを、まさにそうした形で今後埋め尽くすことなくしてはならぬと考えるものであります。世界唯一の核被爆国であり、戦争放棄という世界に類例を見ない平和憲法を有する日本こそ、国際社会において真に軍縮について発言の資格を有する立場にあるはずであります。
 すでにわが国は、軍縮委員会のメンバーとして軍縮問題について発言の場を確保しており、委員会での実りを少しでも大きくするために、米ソ以外の参加国の発言力を強める工夫をいたすべきであります。そのことは、わが国が思い切って活躍できる分野であり、今後の政府の軍縮問題に対する対応を深める必要があると考えるものであります。
 最後に、私どもは今日、戦後開発された史上空前の技術革新の生産物の恩恵を広く享受いたしておりますが、一方みずからが開発した科学技術の産物により、その使用いかんによっては人類の滅亡を招く、まさに究極的とも言える恐るべき兵器までをつくり出してしまったのであります。人類の子孫のために、かかる危険物の存在を野放しで傍観することは、だれにも許されないのであります。
 いまこそ私たちは、核戦争による惨禍を未然に防止するために立ち上がり、人類の英知を結集し、みずからつくった核兵器の全面廃棄を実現させ、より平和と繁栄の中に来るべき二十一世紀を迎えることが、現代世界の指導者に課された崇高な使命であり、根本的、政治的指針でなければならぬと確信するものであります。
 かかる見地から、政府は、世界の良識と世論に訴えて、核兵器全面禁止条約締結の実現に向かって力強く前進することを切に要望いたしまして、公明党を代表する私の討論を終わるものであります。
#10
○鯨岡委員長 渡部一郎君の討論は終わりました。
 永末英一君。
#11
○永末委員 私は民社党を代表して、核兵器不拡散条約に対し賛成の討論をいたします。
 本条約は、今後二十年間、しかも核時代に突入することが確実なこの期間、わが国が核兵器を持たないことを各国に対して約束する重要な、しかも歴史的な条約であります。
 この条約は、アメリカ、ソ連、イギリス三国の核兵器保有独占を認め、他国に核非保有を義務づける不平等な性格を持っております。それだけに、後発核保有国であるフランス、中国、また国際紛争のるつぼにある諸国やウラン原料国などからも批判されているものであります。とりわけ、核兵器開発能力を持ちながら、非核保有国としてこの条約に加盟しようとしている国々においては、多くの議論があることもまた当然のことと言わねばなりません。いまわれわれは、この条約批准に賛成するに当たり、次の三点をわが国政治の重要課題として強調しておかねばならぬと考えます。
 第一点は、核時代におけるわが国の開発におくれをとってはならぬということであります。本条約加盟の非核国の核開発が平和利用の名において厳重に査察されるのに反し、核保有国の核開発が軍事機密の名において見逃されるという状態を放置しておいてはなりません。核保有国であれ非核保有国であれ、核の平和利用の道には差別なく邁進できるよう措置すべきであります。
 第二点は、核時代における非核保有国としてのわが国の安全保障力を強め、国民の安心感を高めることであります。核時代における最強の破壊力が核兵器であることは、すでにわれわれ日本民族は三十年前、広島、長崎において身をもって体験したことであります。この最強の兵器をみずから放棄して国の安全を考えなければならぬとすれば、何よりも必要なことは、この道がわが国にとって最良の道であることを国民全般に理解してもらうことであります。
 もともと一国の安全は、その国の力と相手国の力とのバランスにおいて保たれます。いまわが国の周辺の三大国が核兵器で武装しているとき、わが国が非核武装でおれば、わが国の安全はどうなるのかという危惧が国民の中にあります。もちろんわが国の外交が絶妙をきわめ、絶えず周辺国との間に完全な融和と平和が保たれれば言うことはありませんが、国際社会の現実からすれば、力の要素を抜きにしては国際間の融和もまた生まれないというのが真実だとわれわれは判断しております。しかしこの力は、核兵器の本質を正確に判断すれば、核兵器の保有のみによって生まれるとは限らないものであります。幾ら核兵器を保有しても、他国の核攻撃による被害を免れることはできません。防御でき得ない兵器として核兵器の持つ抑止力は、相互の心理的バランスが崩れれば直ちに崩壊するものであります。核兵器の本質がそうである以上、膨大な核兵器を保有してもわが国の安全を保つことはできません。しかも、唯一の被爆国であるわが国では、一九七六年の現在、核保有の国民的条件はありません。だとすれば、非核保有による安全保障の道を選択することが最良の道であります。このためには、国民の国家防衛への合意の上に、国会と政府との防衛責任体制を確立しなければなりません。これとともに、核保有国からする非核保有国への核攻撃の禁止を本条約上の義務として定め、非核国の安全保障の道を開かねばなりません。
 第三点は、核兵器不拡散条約が世界平和を保持するために有効に機能するようわが国が努力することであります。そのために、第一に、すべての核保有国がこの条約の加盟国になり、この条約が普遍性を持つことが必要であります。さらに第二に、全核保有国をして野方図な核競争をやめさせ、核管理から進んで、核軍縮、核全廃に進ませることが必要です。核保有国と非核保有国との格差を平準化する努力の中に、世界平和の確度が強まるとわれわれは確信します。
 以上、核兵器不拡散条約が世界平和を維持し得るよう、有効に機能するため、わが国の政治が果たすべき三つの目標を明らかにして、民社党はこの条約批准に賛成いたします。
#12
○鯨岡委員長 永末英一君の討論は終わりました。
 これにて討論は終局いたしました。
    ―――――――――――――
#13
○鯨岡委員長 これより採決いたします。
 核兵器の不拡散に関する条約の締結について承認を求めるの件は、承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#14
○鯨岡委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。
 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました本件に対する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#15
○鯨岡委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
    ―――――――――――――
   〔報告書は附録に掲載〕
     ――――◇―――――
#16
○鯨岡委員長 次に、国際情勢に関する件について調査を進めます。
 ただいま委員長の手元に、坂本三十次君、河上民雄君、渡部一郎君及び永末英一君より、核兵器の不拡散条約に関する件について、本委員会において決議されたいとの動議が提出されております。
 この際、本動議を議題とし、提出者から趣旨の説明を求めます。坂本三十次君。
#17
○坂本(三)委員 私は、自由民主党、日本社会党、公明党及び民社党を代表して、ただいま議題となりました動議について、その趣旨の御説明をいたします。
 案文の朗読をもって趣旨の説明にかえさせていただきます。
   核兵器の不拡散条約に関する件(案)
 核兵器の不拡散条約の批准に関し、核拡散の危機的状況にかんがみ、政府は、左の事項につき誠実に努力すべきである。
一、政府は、核兵器を持たず、作らず、持ち込まさずとの非核三原則が国是として確立されていることにかんがみ、いかなる場合においても、これを忠実に履行すること。
二、非核兵器国の安全保障の確保のため、すべての核兵器国は非核兵器国に対し、国連憲章に従って、核兵器等による武力の威嚇または武力の行使を行わざるよう我が国は、あらゆる国際的な場において強く訴えること。
三、(イ)唯一の被爆国として、いかなる核実験にも反対の立場を堅持する我が国は、地下核実験を含めた包括的核実験禁止を訴えるため、今後とも一層の外交的努力を続けること。
  (ロ)我が国は、すべての核兵器国に対し、核兵器の全廃を目指し、核軍備の削減、縮小のため誠実に努力するよう訴えること。
四、我が国の原子力の平和利用の前提条件として安全性の確保に万全を期し、政府は、自主、民主、公開の原則にたち、原子力の平和利用の研究、開発及び査察の国内体制の速やかな整備をするとともに、核燃料供給の安定的確保に努めること。
五、世界の平和維持に非核化地帯構想が重要な意義を有していることにかんがみ、我が国はこの為に国際的な努力をすること。
以上であります。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願いをいたします。
#18
○鯨岡委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
    ―――――――――――――
#19
○鯨岡委員長 この際、松本善明君から発言の申し出がありますので、これを許します。松本善明君。
#20
○松本(善)委員 ただいま提案されました決議案について意見を述べますが、わが党は核防条約の批准に反対であり、決議案の文章については若干の意見があります。特に第三項は次のように改めるべきであると思います。
 わが国は唯一の被爆国として、すべての核兵器の製造、実験、貯蔵、使用に反対し、全面的な禁止協定が締結されるよう、一層の外交的努力を続けること。
 これは、すでに決議をされました衆参両院での核決議の文章をそのままとったものであり、本決議案は、この文章よりも狭いものである。しかもこの案文につきましては、一たん理事会におきましてもこのようにしようとする手はずになっておりましたにもかかわらず、この趣旨の提案がされなかったことは遺憾であります。
 そのために、わが党は共同提案することができなくなりましたけれども、そしてまた、個別的な条項や文章には若干の意見がありますが、全体としては賛成をするという意見を述べておきたいと思います。
    ―――――――――――――
#21
○鯨岡委員長 他に発言もありませんので、直ちに本動議について採決いたします。
 坂本三十次君外三名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#22
○鯨岡委員長 起立総員。よって、坂本三十次君外三名提出の動議は、本委員会の決議とすることに決しました。
 この際、宮澤外務大臣より発言を求められておりますので、これを許します。宮澤外務大臣。
#23
○宮澤国務大臣 ただいま核兵器の不拡散に関する条約につき、本外務委員会の御承認をいただきましたことを厚くお礼を申し上げます。
 この条約の審議に当たりまして、長い間あらゆる角度から御熱心な議論を尽くされました各位の御努力に対しまして敬意を表したいと存じます。
 ただいま採択されました御決議につきましては、政府としては、本件決議が委員会の全会一致をもって可決されたことを十分踏まえて施策を講じてまいるべく最善の努力を払う決心でございます。
#24
○鯨岡委員長 お諮りいたします。
 本決議の議長に対する報告及び関係各方面に対する参考送付等の取り扱いにつきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#25
○鯨岡委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
 次回は公報をもってお知らせすることとして、本日はこれにて散会いたします。
    午前九時五十八分散会
ソース: 国立国会図書館
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