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1975/04/23 第77回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第077回国会 法務委員会 第5号
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1975/04/23 第77回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第077回国会 法務委員会 第5号

#1
第077回国会 法務委員会 第5号
昭和五十一年四月二十三日(金曜日)
    午前十時三十五分開議
 出席委員
   委員長 大竹 太郎君
   理事 小島 徹三君 理事 小平 久雄君
   理事 田中伊三次君 理事 田中  覚君
   理事 保岡 興治君 理事 稲葉 誠一君
   理事 吉田 法晴君 理事 諫山  博君
      小坂徳三郎君    松浦周太郎君
      松永  光君  早稻田柳右エ門君
      中澤 茂一君    山本 幸一君
      青柳 盛雄君    沖本 泰幸君
 出席国務大臣
        法 務 大 臣 稻葉  修君
 出席政府委員
        法務大臣官房長 藤島  昭君
        法務大臣官房司
        法法制調査部長 賀集  唱君
 委員外の出席者
        最高裁判所事務
        総局総務局長  田宮 重男君
        最高裁判所事務
        総局人事局長  矢口 洪一君
        法務委員会調査
        室長      家弓 吉己君
    ―――――――――――――
委員の異動
四月二十三日
 辞任         補欠選任
  細田 吉藏君     松永  光君
  矢野 絢也君     山田 太郎君
    ―――――――――――――
三月十三日
 民法の一部を改正する法律案(佐々木静子君外
 一名提出、参法第一二号)(予)
同月二十二日
 最高裁判所裁判官国民審査法の一部を改正する
 法律案(稲葉誠一君外二名提出、衆法第三号)
同月九日
 最高裁判所裁判官国民審査法の改正に関する請
 願(加藤清政君紹介)(第一二五五号)
同月十一日
 民法第七百五十条及び第七百六十七条の改正に
 関する請願(土井たか子君紹介)(第一三七八
 号)
同月十八日
 最高裁判所裁判官国民審査法の改正に関する請
 願(井上普方君紹介)(第一五〇三号)
 同(佐藤観樹君紹介)(第一五〇四号)
 同(柴田健治君紹介)(第一五〇五号)
 同(野坂浩賢君紹介)(第一五〇六号)
 民法第七百五十条及び第七百六十七条の改正に
 関する請願外一件(土井たか子君紹介)(第一
 五五五号)
 法務局、保護観察所及び入国管理事務所職員の
 増員等に関する請願(中路雅弘君紹介)(第一
 六五〇号)
同月二十五日
 民法第七百五十条及び第七百六十七条の改正に
 関する請願外三件(土井たか子君紹介)(第一
 八六五号)
同月二十七日
 裁判傍聴者のメモ禁止撤廃に関する請願(赤松
 勇君紹介)(第二一一五号)
 同(日野吉夫君紹介)(第二一一六号)
 同(横山利秋君紹介)(第二一一七号)
同月三十日
 裁判傍聴者のメモ禁止撤廃に関する請願(稲葉
 誠一君紹介)(第二三二一号)
四月八日
 最高裁判所裁判官国民審査法の改正に関する請
 願(青柳盛雄君紹介)(第二六三九号)
同月十四日
 裁判傍聴者のメモ禁止撤廃に関する請願(八百
 板正君紹介)(第三二一〇号)
同月二十一日
 最高裁判所裁判官国民審査法の改正に関する請
 願(寺前巖君紹介)(第三五三六号)
 裁判傍聴者のメモ禁止撤廃に関する請願(吉田
 法晴君紹介)(第三五三七号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
四月九日
 民法等の一部を改正する法律案反対に関する陳
 情書(東京都港区赤坂五の一の二六長谷田義
 元)(第一六四号)
 犯罪による被害者補償制度確立に関する陳情書
 (大阪市福島区野田三の一の二三神原郁子)(
 第一六五号)
は本委員会に参考送付された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内
 閣提出第六号)
     ――――◇―――――
#2
○大竹委員長 これより会議を開きます。
 お諮りいたします。
 本日、最高裁判所田宮総務局長、矢口人事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○大竹委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
     ――――◇―――――
#4
○大竹委員長 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 質疑の申し出がありますので、これを許します。青柳盛雄君。
#5
○青柳委員 ただいま議題となっております法案に関連いたしまして、私は主として簡易裁判所のあり方に関連して職員の充足の問題などについてお尋ねをいたしたいと思います。
 戦後、簡易裁判所制度というものが新しい構想をもって発足をいたしまして、それは従来の裁判所構成法によって設置されておりました区裁判所とは全く性質の違うものであるということが言われております。と言いましても、それが従来の区裁判所と同じように、第一審の裁判所といたしましてある種の案件を担当する裁判権を持っておるという点では別に変わりはない、共通しているわけでありますけれども、従来の区裁判所は、要するに地方裁判所と大体において同じ性格のものであり、ただ裁判権の範囲が地方裁判所とは違う。その点は簡易裁判所も同じなんでありますけれども、どうも今度新しくできた簡易裁判所は、民衆のために親しみやすい、利用しやすいもの、そういう点では従来の区裁判所とは性格が違うんだということで、何か学者の説明などによりますと、アメリカの小額裁判所を見本にして導入されたもののようでありますけれども、その後の経過を見ますと、実質的には従来の区裁判所と余り変わりがない状況に変わりつつある。現に臨時司法制度調査会などの意見書では、簡易裁判所という名称を区裁判所、まあ仮称ではありますけれども、そういうふうに改めてもいいんじゃないか、改めるべきではないかというようなところまで意見が出ております。
 そこで、果たしてこのような状況のままでよろしいのかどうか、これが法曹界で相当問題になっているわけでございます。昨年の十一月に日本弁護士連合会では司法シンポジウムを開きまして、簡易裁判所をめぐる諸問題を十分に討議したようでございます。まだその討議の結果は印刷文になって発行されておりませんから、詳しいことはわかりませんが、基調報告はすでに「自由と正義」の昨年の十一月号に載っております。それを見ても、大体の在野法曹の考えていることが明らかなような感じがいたしますが、まず最初に、最高裁判所として、この簡易裁判所について日弁連あたりが問題提起をしていることをどのように理解されるか。評価するという言葉が少し大げさであれば、これに対する受けとめ方といいますか、このシンポジウムの方向というものには何か意味があるとお考えであるのか、大した意味もないのだ、あるいは消極的な意味はあるのだというような考え方を持っておられるかどうか、それをお尋ねしたいと思います。
#6
○田宮最高裁判所長官代理者 お答えいたします。
 御指摘のありましたように、昭和三十九年に臨時司法制度調査会が意見書を発表しておりまして、その意見書の中では簡易裁判所につきまして、簡易裁判所判事制度、簡裁の名称とか配置それから事物管轄等について種々意見が述べられておるのでございます。これらの意見は、公的な機関の司法制度に関する貴重な意見として私どもとしてもこれを十分尊重すべきものというふうに考えておりますけれども、しかしこれらの中には、直ちにこれを実施に移すということにつきましては種々困難な問題もございますし、それからまた御承知のように、日弁連等におきましても非常に強い反対もございますので、現在この意見書どおりの線に沿って私どもどうこうするということは考えておりません。
 なお、弁護士会で行いましたところの簡裁シンポジウムでございますが、そのシンポジウムの際にどういう討議がなされたかという詳細については存じませんが、「自由と正義」に載っておりますところの基調報告の中には、種々参考にすべき点もあるというふうには考えております。
 ただ、私どもといたしましては、先ほど青柳委員が御指摘になりましたように、簡易裁判所制度は戦後発足いたしまして、比較的軽微な少額な民事事件、比較的軽微な刑事事件を簡易な手続によって迅速に処理をして、国民に親しまれる、国民の身近な裁判所、手軽に利用できる裁判所として、それを通じて国民の権利を擁護するという面があるわけでございまして、そういう趣旨のもとに発足した簡易裁判所でございますので、その設立の趣旨の線にのっとって、簡易裁判所が十分今後とも機能し得るよう私どもとしてもその充実に努めたい、こういうように考えておるものでございます。
#7
○青柳委員 そもそも簡易裁判所制度の設立の趣旨を無視して、全くもとの区裁判所の構想の方へ戻るというようなお考えを持っているようにはおっしゃられないわけでありますけれども、現実はその方向を向いているのではないか。
 たとえば事物管轄について見ましても、インフレーションによる価値の変化というようなことももちろんありますけれども、最初は五千円以下の民事事件ということであったのが二十五年、三年後には三万円になり、その四年後には十万円になる。それから、少し時間がたちますが、ごく最近、四十五年には三十万円、このように拡大されてきております。二十九年のときの十万円というのは、原案は二十万円であったけれども、国会の方の審議の中でこれは十万円というふうに低くなった。四十五年のときも五十万円ぐらいに上げたいという希望があったのだけれども、これも三十万円でとまった。最近では、七十万円から百万円くらいにまで上げてもいいんじゃないかという意見も出ておるというように、決して少額と言えるような事案ではない。また軽微とも言えないような事件を扱うようになった。刑事事件の方でも、業務上横領とか詐欺とか恐喝とかいったような案件で、宣告刑が三年以下ならばもう担当してもいいというような傾向もありますし、いずれにしても、かつての区裁判所と同じような裁判権の拡張が現実的に施行されているというところから見ると、もう思い切って区裁判所並みにしてしまったらどうか。そうすれば、第一審を担当している主力であるところの地方裁判所の裁判官や職員の不足というものを幾らか緩和することができるし、また職員不足に基づく訴訟の遅延というものも解決する方向へ行くだろう。つまり臨時司法制度調査会を設けられた主たる目的、訴訟遅延をどうするか、裁判官等の不足をどうするかというようなことにこたえる一つの道にもなるんじゃないか、こういう考え方が根深く存在するのではないかと思うのですが、思い切って、この簡易裁判所というものの名称まで変えるくらいにもう構想を、区裁判所にしてしまうというようなお考えはあるのかないのか。これはもちろん、最高裁判所で一方的に決められることではありませんが、国会でそういう方向で合意ができるならば、それも結構なことだというふうに積極的に考えておられるのかどうか、この点率直にお答えをいただきたいと思うのです。
#8
○田宮最高裁判所長官代理者 裁判所制度の問題でございますので、ただいま御指摘のありましたように、簡易裁判所をどうするかということは、最終的には政府並びに国会のお考えいただくことだろうと思いますが、先ほども申しましたように、臨時司法制度調査会の意見書はそれなりにやはり尊重しなければならないものというふうに考えております。ただ、現状はなかなかその実現がむずかしいのではないかというように考えておる次第でございます。
#9
○青柳委員 これは委員会でもすべておわかりのことでありますから、くどく紹介をするまでもないと思いますが、昭和三十九年に出された臨時司法制度調査会の意見書の簡易裁判所に関係のある部分が九項目ございます。これを一応御紹介いたしておきますと、
 1、簡易裁判所判事には、できる限り、判事定年退官者等法曹有資格者を充てること
 2、いわゆる選考任命の簡易裁判所判事は、各方面から人材を求めるとともに、その素質の向上を図ること
 3、一定年数の経験を有する選考任命の簡易裁判所判事で一定の考試を経たものは、判事補に任命することができる
 4、右3による判事補の制度が実施された場合には、この判事補に法曹資格を付与すること
 5、一定期間簡易裁判所判事の職にあった者について、一定の選考手続を経て弁護士となる資格を付与すること
 6、簡易裁判所の名称を「区裁判所」(仮称)に改めること。
 7、人口、交通事情等の社会事情の著しい変動に伴い、簡易裁判所を整理統合することを考慮すること
 8、最高裁判所は、簡易裁判所の調停を除く事務の全部又は一部を他の簡易裁判所に取り扱わせることができるものとすること
 9、簡易裁判所の裁判権の範囲を次のとおり拡張すること
  (1)、民事事件については、訴訟の目的の価額の上限をある程度引き上げること
  (2)、刑事事件について、簡易裁判所が地方裁判所と競合して裁判権を有する罪の範囲をある程度拡張することなどということになっているようであります。
 なお、ついでに申しますと、このうちの第三項の一定年数の選考による任命判事で考試を受けた者を判事補にするということ、第四項、その場合この判事補に法曹資格を与えるということ、第五項、一定期間簡裁判事をした者を選考の上、弁護士資格を与えるということ、最後の第九項の裁判権の範囲を拡大すること、これに対しては、その当時日弁連が臨時総会を開いて、絶対反対するという決議をしたという事実があります。
 いま最高裁の方で、臨司意見書というものは尊重はするけれども実情はなかなかそう簡単にいかないと言われたのは、こういう反対もあるのだということも踏まえての上かもしれませんけれども、いずれにしても、相当この臨司意見書というのは問題をはらんだ内容をいろいろの面で持っているし、この簡易裁判所に関する部分でも持っているということが明らかだと思います。先ほど述べました日弁連の簡裁問題に関する司法シンポジウムの討議などもこの反対の意見を貫いているものではないかと思います。
 したがって、臨司の意見は尊重するが実情はできない。実情ができるようになれば臨司の意見のとおりにするということになれば、結局は区裁判所に舞い戻るということにならざるを得ないわけでありますが、どうも私どもは、それで果たしていいのか。つまり戦後新しく発足した簡易裁判所構想というのは、日本の土壌においては余り育たないような内容のものであって、結局は戦前の裁判所構成法当時の区裁判所制度に戻るべき運命を持っているのだというふうに思っておられるのかどうか。この点は全然考えておられないのかどうか。くどいようですけれども、最高裁の意見を聞きたいと思います。
#10
○田宮最高裁判所長官代理者 私どもといたしましては、現在の制度のもとにおきましては、やはり簡易裁判所の設立の趣旨にのっとって、簡易裁判所が十分その機能を発揮し得るように今後とも充実強化していきたい、こういうふうに考えております。
#11
○青柳委員 きょう審議されている法案は、職員の定員をふやすということでございますので、もっぱら職員の問題に関係して簡易裁判所の制度の現状を検討してみたいと思うわけであります。
 その職員の重要な部分を占める裁判官でございますが、簡易裁判所の裁判官は、それ以外の裁判所の裁判官とは性格を異にしている。つまり、法曹有資格者という言葉がありますが、そういう者でなくともよろしいのだ。もちろん法曹資格を持っている方がなってはいけないという意味ではありませんが、そうではない人でもやることができるのだ、つまり簡易裁判所の裁判官の給源は、普通のそれ以外の裁判所の裁判官の、実情としてはキャリアシステムをとった、そういう法曹有資格者以外の者にも及んでおる。その点で違いがあるのですけれども、これについて一般に問題はないのかどうか。
 つまり、先ほどの臨時司法制度調査会の意見書でも、簡裁の判事はできる限り判事の定年退職者などをもって充てたい、それから、選考任命による判事も判事補にして、そして法曹資格を与えるというような構想を見ていきますと、大体法曹資格を持っている者をもって簡裁判事を充当するという方向が望ましい、いまの法曹有資格者以外の者で充足するというような考え方は好ましくないというように考えられるわけであります。それは簡易裁判所だからといって、余り優秀でない、一般の判事と比べてすぐれていると言うより、むしろ能力的にも、その他の点でも劣っていると思われるような判事を簡裁の判事にしておくことは好ましいとは思えないという考え方が貫いているように思えるのですが、この点は最高裁としてはどう考えておられるのでしょうか。
#12
○田宮最高裁判所長官代理者 簡易裁判所が国民に近しい、また手軽に利用できる裁判所ということで、かつての区裁判所の数の倍以上の裁判所が各地に設けられたわけです。あくまでもそうした簡易裁判所の設立の趣旨から申しまして、当該裁判官は、厳密な意味での法曹有資格者ではなく、徳望、良識、人格円満で法律知識のある者も、また簡易裁判所判事になれるということで、特に簡易裁判所の判事の任命資格を有資格者に限ったものでないことは、簡易裁判所の本来の設立の趣旨からは当然だろうと思うわけでございます。
 ただ、臨時司法制度調査会でもいろいろ指摘されておりますけれども、やはり事は人権に関する重要な仕事でございますので、法律的な知識というものもかなりの程度ありませんと、十分な人権擁護ができないといったような観点から、臨時司法制度調査会におきまして、なるべく有資格者をもって充てるべきだという意見が出されたものと思っておるのでございます。しかしながら、反面また簡易裁判所が国民に親しまれる国民の身近な裁判所であるためには、片方で有資格者でない裁判官というものも、ある程度必要ではないかというふうに思うわけでございます。
 したがいまして、私どもといたしましても、資格のない裁判官が現在おりますけれども、それらにつきましては、十分な選考、厳密な選考を行いまして、裁判官になった後におきましても、研修とか研究会といったようなことで、その法律的な素養の充実には鋭意努めている状況でございます。
#13
○青柳委員 簡易裁判所の裁判官に限らず、すべて裁判官は、その地位についた後も絶えず勉強して、また制度的にも研修を行わせるようにして、経験を生かす、能力を高める、そういう努力が必要であることは言うまでもありませんが、ただ、この臨司意見書の第三項あるいは四項で、考試を経た者を判事補として、しかも判事補には法曹資格を与えるというように、何か出世をさせるような感じがする、また五項では、選考による任命判事が一定期間簡裁の判事として職についておったら、これは試験なんかしないで選考して弁護士資格を与えるというようなことも考えて、弁護士の方では、何か素質の悪いのを出世でつって弁護士の質を低下させるための下心があるのじゃないかというような考え方も、この意見書に対しては批判的に出ておるのですが、いずれにしても、ただその素質をよくするというために法曹有資格者にする道を開くという、そういう積極的な面だけでなしに、何かしら全体として法曹資格者の質を低下させる、そういうのにこれは逆用されるのではなかろうかというような心配すらあるわけです。私どもは、これが単なる思い過ごしであれば別に問題はありませんけれども、もしこういう制度ができ上がると、簡易裁判所の判事というものは、ただ出世するためのステップとしてだけ悪用されるのじゃないかというような心配を持たないわけにはいかぬと思うのですが、それにしても、簡易裁判所の裁判は、それ以外の裁判所の裁判と比べて、公正でなくともいい、どうせ簡易なんだからというような考え方はだれも承認しないと思います。
 そこで勢い裁判官の素質を高める。この点は、簡裁判事というものを何か法曹有資格者と区別しておくことの合理性がないのじゃないかという議論も出てくる可能性があるわけです。だから、これを区別しておくことの方に積極性がないとすれば、全く同じもので充足するということの方がすっきりするのではないか。簡易裁判所だから、まあ言ってみると、格の低い裁判官で間に合わせておくというようなことでなしに、最高裁の裁判官も簡易裁判所の裁判官も、法曹有資格という点では全く同等であるというように改めることの方が、簡易裁判所の本来の趣旨にも合致するというような議論、どうも私はそういう考え方が一方に強いように思うのです。これは訴訟関係者として見れば当然のことだと思うのです。人権にかかわる問題を、下級審だからいいかげんな裁判官がやっておる、上級審ならば優秀な裁判官がやるというようなことはあってはならないのじゃないかというふうに思うのですが、この点はいかがでしょうか。
#14
○田宮最高裁判所長官代理者 これも制度の問題でございますので、私どもの方からとやかく申すべきことではないとは思いますけれども、しかし、決して簡易裁判所判事とそれから有資格の判事との間に上下といったような関係はないと私ども思っております。簡易裁判所判事は、簡易裁判所の制度本来の機能を果たすにふさわしい人として簡易裁判所判事というものがあるわけでございますので、簡易裁判所の仕事に関する限りは、地方裁判所の判事と全く同等だというふうに考えたいと思うわけでございます。
 簡易裁判所の設立の趣旨から申すならば、これは有資格の裁判官というよりは、当該国民に、地域の国民皆さんに親しまれる裁判所ということで、むしろ常識豊かな、識見のある人をそれに充てるということも、これは制度として一つの考え方ではなかろうかと思うわけでございます。現に、先ほど青柳委員がちょっとお触れになりましたけれども、この簡易裁判所がアメリカの小額裁判所を模範にしたということも言われておりますが、アメリカにおきましては、小額裁判所の裁判官は有資格のローヤーではございませんで、地元の人から選ばれるというふうなことで、そういうような点から考えますと、簡易裁判所においてそうした有資格者でない簡易裁判所の判事が裁判をするということも、簡易裁判所の制度本来の趣旨からいって、これは決して間違っている方向ではないというふうに考えております。
#15
○青柳委員 いまお話しのような、確かに構想が違うのだから、ただ法律専門家ということだけにウエートを置くのじゃなくて、その地域の実情によく通じているとか、人格などの点でもすぐれていて、尊敬の的になっているような方が、法律の専門家ではないけれども選ばれるというところに、この簡易裁判所の特色があるのだという、私も、もう簡易裁判所というものの本来の性格からいってそれでおかしくないのだというふうに思うのですけれども、現実には、簡易裁判所の裁判官に対する不満といいますか、少なくとも在野法曹の間からはいろいろな意見が出される。簡易裁判所に配置される判事補、有資格の判事補なども、若年であるとか未熟であるとかいうようなことで、非常に官僚的になったり、しゃくし定規の話で融通がきかないとか、いろいろ批判があります。また一方、選考による任命の判事は、どうも選考手続の不備というようなこともあるのかもしれませんけれども、余り常識的でもない、法律ももちろん知らないというようなことで、評判がよくない。
 私は、そこで選考によって任命される簡易裁判所の裁判官の制度についてお尋ねしたいと思うのでありますが、昭和二十二年最高裁判所規則第二号簡易裁判所判事選考規則、これによりますと、各地裁ごとに簡易裁判所判事推薦委員会というのがある。最高裁判所には簡易裁判所判事選考委員会というのが設けられている。この選考委員会は、原則として推薦委員会の推薦した者の中から選ぶことにするが、必要あるときは、それ以外の者から最高裁に対して簡易裁判所判事候補者を選考してもらうようになっている。こういうことなのでありますが、実情を言いますと、裁判所職員などからこの推薦委員会で推薦を受けるのには地裁所長の推薦がなければならぬ、こういうことで、地裁所長の覚えがめでたくないような人物は排除されてしまう。言ってみると、職制的な上向きの人は文句なしに所長の推薦が受けられて、場合によっては選考委員会の方で筆記試験を免除するような特典まで与えている。これでは果たして憲法感覚や人権感覚の豊かなすぐれた人物が選考にパスするだろうか。そういう人は案外だめで、上司に従属するような型の、言ってみれば立身出世型の、人権よりも自分の立身出世の方を主にするような人物が選考される可能性があるのじゃないだろうか、こういう懸念が表明されているのです。この点はどうでしょう。
#16
○矢口最高裁判所長官代理者 お尋ねの、まず地裁に推薦委員会というのがございまして、そこで推薦をしていく、その過程において所長がいいと思う方でないと推薦委員会にもかけられないのだという点でございますが、それはそういうことではございませんで、あくまで推薦委員会で希望者の中から推薦するかどうかということをお決めいただくわけでございます。推薦委員会の構成員の中には所長、検事正等も入っておられますが、そのほかに現地の弁護士会長等もお入りになっておりまして、十分その間の事情はおわかりいただいておるものと考えております。
 それからまた、そういうふうにして推薦をされてまいりました中で、選考委員会、これは最高裁判所の中に設けられておりますが、この選考委員会で選考がされるわけでございますが、これも御承知のように、弁護士会からも日弁連の御推薦になった方が二人お入りになっておりまして、厳重な選考をしていただいておるということでございます。
 選考の仕方としまして、筆記試験を事前にする方と、筆記試験を免除する方、そういう方がございますが、これもしばしばお尋ねがあってお答えを申し上げましたように、長年司法行政事務に従事しておったごく限られた人について筆記を免除するというやり方でございまして、裁判所のために長年お尽くしになった方、そういうごく限られた方について筆記を免除する、それ以外の方には平等に筆記試験も受けていただく、こういうふうにやっておりますので、そういった御懸念の点はないのではなかろうかというふうに考えております。
#17
○青柳委員 いまの御説明では、決してそういう懸念はないというようにも受け取れるわけでありますが、裁判所法四十五条の運用として、在職十三年以上、年齢三十五歳以上の書記官などから相当厳格な試験によって選抜する場合と、それから裁判所事務局長、首席書記官等の司法行政に携わっていた者の中から推薦によって、形式的な選考を経て選抜する場合がある。後者の方で任命される簡裁判事の数は決して少なくない。
 このように、裁判における実務能力よりも司法行政における実力を重視する選考方法は、簡裁判事に求められる豊かな人権感覚と練達な実務能力において問題の多い任命結果をもたらしている、これは改正されなければならぬ。こういう意見も出されているのですね。この点はくどいようですけれどもどうですか。後の方が案外多いのだという、つまり厳格な試験ではなしに、推薦によって形式的な選考を経る司法行政に堪能な方が多い、この点はいかがですか。
#18
○矢口最高裁判所長官代理者 司法行政に堪能と申しましても、それはやはり法律を取り扱う裁判所における司法行政でございまして、司法行政をやっておる者は、法律は全然やってないのだということではございません。具体的に申しますと、各地方裁判所、家庭裁判所の事務局長とか首席書記官、あるいは高裁の次長、そういったような方があるわけでございまして、そういう方もその直前の職務は司法行政である場合がございますが、書記官等を長くやられて、そういう意味で裁判実務に十分携わったという方が大部分であるわけでございます。そういうことでございますので、決して司法行政の担当者であるということだけから、それだけを重視いたしまして、他の法律的な素養というものは一切見ない、そういうことではございません。
 それからもう一つ、選考でございますが、筆記試験を免除いたしまして選考いたしましても、その選考という過程においてやはり法律ということを前提とした口述試験は実施をいたしておるわけでございまして、選考は単なる書面選考とかあるいは簡単な面接とか、そういうものでやっておるものではないわけでございます。ただ、大部分の方が筆記試験を経てこられるわけでございますが、そういった方の年齢は大体四十歳前後、場合によっては五十歳を少し過ぎておる方もございますが、そういう若い段階において試験を受けてこられるのに反しまして、司法行政事務をやっておった方は六十歳前後ということで、かなり年配の方でもございます。そういうことを勘案いたしまして、この社会的な経験といったようなことが、ある程度いま申しました法律技術的な知識といったようなものをカバーしてくれるであろう、そういうふうに考えて、筆記試験の免除ということが行われておるわけでございます。
 また、そういうふうな筆記試験の免除が行われております方々の占める割合でございますけれども、御承知のように、年々大体選考で五十名前後の方を簡裁判事にいたしておりますが、その中に大体十名ぐらいが入っておるだけでございまして、いまごらんになっております「自由と正義」等にパーセントが出ておるように記憶いたしておりますが、決してそう高いパーセントのものではない、こういうふうに御了解をいただきたいと思います。
#19
○青柳委員 今度は簡易裁判所の一般職員の配置でございますけれども、どうも職員の不足は、裁判所全体を通じて慢性的に不足しているわけでありますけれども、特に簡易裁判所の場合、事務量は非常に多い、事件量も多いにもかかわらず、これに見合うだけの職員がいない。たとえば裁判官一人に対して職員は平均して四名であるけれども、この四名の職員といっても庶務課長が書記官の中から任用されているとかいうことで、裁判の現場での実務がなかなか担当し切れないというようなこともあって、とにかく労働過重もひどいし、それから関係者、国民に対するサービスにも不行き届きの点がある。これは地裁と簡裁が定員法では込みに扱われていて、実際上は地裁分が優先をされ、簡裁の一応の予定されておる定員というものは充足されない原因になっている。また予算の面でも簡裁は完全に地裁の管轄下に置かれ、予算編成について簡裁は関与させられていない。積算の基礎も地裁民事を一とすれば簡裁は〇・三として差別的に評価される。一方、簡裁の仕事は督促とか即決和解とか略式命令などなど各種の特殊なものがたくさんあって、本来分業化しなければならないのだけれども、数の少ない人たちがこれを全部消化しなければならぬ、担当しなければならぬ、そういうようなことで矛盾が非常に激化しているようでありますが、この現状はどうお考えになっておられますか。
#20
○田宮最高裁判所長官代理者 簡裁の職員の配置でございますが、これは地、家裁に一括して人員を決めまして、それを支部、簡裁にどの程度ずつ配置するかということは各裁判所にお任せしているのでございます。最小限、ただいま御指摘ありましたように、裁判官一人に四名ないし三名ということが全国的な実情でございますが、もちろん事務量によっては、一人の裁判官であってもそれ以上の職員が配置されているという庁もございます。
 なお先ほど簡裁の庶務課長は事件を全然やらないというふうにおっしゃいましたけれども、この点は簡易裁判所の場合、庶務課長は書記官を兼務をしております。当然書記官の仕事ができるわけでございます。また簡裁の庶務と申しましても、それほどたくさんの仕事がございませんので、半分ないしは三分の二以上書記官事務を担当しておりますので、簡裁判事が裁判をやる上において何ら働いていないということはありません。
 それからまた、あと予算の点でございますが、これは下級裁判所ということで高等裁判所、地方裁判所、簡易裁判所、全部一緒に予算が組まれておるのでございます。この予算をどういうふうに配るかということも、これは支出官がそれぞれ地裁の所長、家裁の所長ということになっておりますので、当該支出官の判断によって、各簡裁、支部等に必要経費をその都度分けるということをやっておるのでございます。
 簡易裁判所の場合には、地理的にも離れておりますので、いま必要だからといってすぐさま予算が送られるわけにはいきませんので、おおむね一カ月ないし二カ月程度の見込みを立てまして、それを地裁の方に出しまして、所長がその額をあらかじめ簡裁の方に送るということをやっておりますので、ごく一時的な急な支出ということでない限り、簡易裁判所の方が予算的に地方裁判所よりも非常に窮屈で虐待されているということはまずないというふうに考えております。
#21
○青柳委員 予定の時間も参りましたので、私の質問は非常に不十分でありますけれども、これで終わりますが、やはり簡易裁判所の問題は、よほど国会でも研究をしなければならぬことだと思います。
 先ほど触れました日弁連のシンポジウムの詳細な資料が、いずれ六月ごろには発表されるそうでありますから、それをまたよく読んで、この問題は、また別の機会にもっと深めて質問をいたしたいと思います。
 きょうはこれで終わります。
#22
○大竹委員長 沖本泰幸君。
#23
○沖本委員 私も、青柳先生の御質問に重複するようなところがあると思いますが、できるだけ避けながら御質問していきたいと思います。
 まだ実際に法曹に携わってはいないものですから、理解度が低いわけですけれども、その中で、先ほど青柳さんがお触れになりましたシンポジウムのいろいろな内容を読んでみまして、もっともだと思った点からお伺いしていきたいと思います。非常に初歩的なことからお伺いすることになりますが、お許しいただきたいと思います。四十五年の簡裁の事物管轄を引き上げた点について、当委員会において附帯決議がつけられたわけでございますが、その点について、いろいろと食い違っている点があるのじゃないかと思われる点もあるわけでございます。
 質問は、ばらばらになるかわかりませんが、まず私は、書記官の居残り、持ち帰り等についてのアンケート調査をなさったところがありますので、その点について申し上げます。
 時間の関係で飛ばすところがあるかもわかりませんが、全体の傾向として、調査した対象の八七%の人が勤務時間内での仕事の処理ができない実態があるということで、時間外仕事をしている七十五人のうち五十七人の人、約七六%が居残りと持ち帰りと昼休みと三つを行っておるか、あるいは居残りと昼休みの二つを行っており、さらに、居残り、持ち帰り、昼休みの三つをやっている人と、そのうちの二つをあわせて処理している人を合計してみると六十四人で八五・四%、全部の回答者の比率で七四・三%に達しているということになって、これは重大だという点を指摘しております。
 居残りについて全般的に見てみると、回答した人の八〇%の人たちが居残りをしており、その人たちは一人平均月五・一回の居残りをしておる。そして一回の居残り時間は約五十五分となっているから、それを月に直すと四時間半以上になり、居残りについては、時間が少なければ問題は余り起こらないと見られがちであるけれども、これはとんでもないことで、最近は遠隔地からの通勤者が多い中で、非常に高い率で居残りが行われているという事実が問題である。
 持ち帰りについて見ると、回答者の半数の人が持ち帰り仕事をしており、その人たちは月平均四回強で計八時間半の仕事を家で行っていることになる。このようなことは、単に能力差などではとても片づけられない根本的な問題点を含んでおる。
 昼休みの仕事については、回答者全体の四分の一以上が、大体または毎日のように昼休み仕事をしていることになり、内容的には、和解や証拠調べといった拘束的な要素を伴うものだけでも五〇%近くに上って、ここでも昼休みの和解、あるいは昼休みにかかる証拠調べの問題点が浮き彫りにされている。
 「次回期日が早いため」、「証拠調べが遅くまでかかる」、「三十五部方式を採用しているため」など、役所側の事情を理由とするものは低い順位であって、むしろ「尋問速度が早くなり録取量がふえているから」、「複雑な事件がふえ処理に時間がかかる」、「録音機を使用せざるを得ないため」など、事件及び証拠調べの質的な変化を理由または原因として指摘するものが高い順位を占めている。
 だから、アンケートの数字の示すとおり、これだけの人がこれだけの量の仕事を時間外に処理せざるを得ないということは、個人の能力とか仕事の仕方などではとても説明できるものではなく、仕事の質や量の問題に起因することは明らかで、「仕事量が多すぎる」、「書記官の業務量の確定を」という指摘がある。勤務が終わって、家族が待つ家にも帰れず、居残りをして仕事を処理し、それでも間に合わず、家に持ち帰って仕事をし、その上、役所では昼休みも休めないというのが偽らざる書記官のいまの実態と言えます。
 こういうことで、書記官の仕事の実態の一面をよくあらわしているアンケート調査であったという点を指摘しておるわけで、単なる合理化だけでは困るという問題点を指摘しております。
 それから、もう一つの点は、これは東京高等裁判所管内の各地方裁判所の甲号支部の表玄関に、案内人としての守衛が配置されているかいないかという点でございますが、八王子支部は配置されている。各独立簡裁は、十数庁の中で半分くらいに一般職員の窓口がある。あるいは横浜地裁の川崎支部とこの独立簡裁とは、運転手や庁務員など、いわゆる守衛以外の人が時間内に勤務している。バツ印はだれも窓口にいない、やっていないというところが川越、松戸、木更津、八日市場、土浦、それから足利、栃木、桐生、浜松、上田、飯田、松本、諏訪、こういうことで、配置されている例が数として非常に少ないわけで、配置されているのは八王子、小田原、下妻、高崎、新発田、長岡、高田各支部ということで、守衛はいるが玄関には配置されていないのが浜松と沼津、こういうふうなことが出てきて、これもやはり人不足なのか、配置の様子が悪いのか、こういう点が指摘されておるわけです。これは後、実際の定員の問題にいろいろ絡んでくるということになるので、私の方でいろいろ伺って、こういう実態を調べていただいたわけですけれども、この点についてどういうふうなお考えなんでしょうか。
#24
○田宮最高裁判所長官代理者 いろいろ細かいアンケートのようでございますが、その内容について詳細存じませんので、そのアンケート自体について直接お答えはただいまのところできませんが、ただ書記官の事務量でございますが、書記官が持ち帰りをしているというのは、恐らく裁判を行った場合に書記官が調書を作成しますので、その調書を作成するのが役所の時間内では書けないので持ち帰るということだろうと思うわけでございます。
 ただ、全国的に見まして、本体書記官は一週間のうち平均して一・五開廷、要するに一日半、一週間のうち一日半の立ち会いをやっているのが通常でございます。一日半のうちでございましても、証拠調べをすると、証人を調べて長い調書を書かなければならない、そうした証人調べの時間というのは、一日半のうちでもせいぜい二時間ないし三時間でございます。したがいまして、そのような調書を作成するためには、一週間の勤務時間内で十分やり得るというふうに私ども考えておりますので、書記官が役所では調書が書けないので家へ持ち帰っているというようなことがもしあるといたしますならば、それは時間が足りないからというだけの理由ではなくて、他に何らかの理由があるのではなかろうかというふうに推測せざるを得ないわけでございまして、その点は、今後ともまたよく調べてみたいというふうに思っております。
 それから窓口、入り口のところに案内人がいるかどうかという問題でございますが、これも人が足りないためであるのか、それとも人の使い方が悪いのかという面の二つが考えられるわけでございます。支部、簡裁等におきましては、裁判事務そのものもそう多くはございませんので、多少余裕はあるのではなかろうかというふうに考えます。もしそういうようなことで一般の人に迷惑をかけるというような実情でありますならば、そうした人の使い方の面につきまして今後指導していきたい、こういうように考えております。
#25
○沖本委員 窓口というのは非常に大事なところでございまして、一般の地方自治体の行政面においても、窓口業務が一番大きな役割りを果たす。それが手抜かりになるために利用する人が非常に困るということがあるわけで、結局窓口にいらっしゃらないために、繁雑をきわめている中に入って自分の目的の場所を伺うと、ただ言葉の上だけで言われるのであっちこっち探し回ったり、そういうことだけで訪ねた人の能率を低下させていき、気持ちを悪くさせたり、あるいはぞんざいに扱われたように感じさせたり、いろいろな点が出てくるわけです。ですから、窓口であなたの用件はここへ行きなさい、ここのだれを訪ねなさいとか、丁寧に教えられると真っすぐ行かれるわけですね。そういうことで、簡裁のような小さいところであればすぐわかるわけですけれども、それでなくても一面は非常に暗い面があるわけですから、こういう点を改善していただくところに重要な問題点があるのではないかということになり、後から指摘いたしますけれども、速記官などは非常に欠員があるわけですね、数の上からいきますと。
    〔委員長退席、保岡委員長代理着席〕
そういう点はやはりそういう問題にまで響いていくのではないかということが考えられており、結局足りないので運転手さんが窓口におったりということに実際にはなっておるということになれば、運転手さん自体がいつまでも窓口におるわけじゃありませんし、そういう点で機能が整っていないということになり、訪れる人をぞんざいに扱っているというそしりを受けるということになると思います。そういう点はやはりよくお調べになっていただいて改善をしていただかなければならないと考えるわけです。
 そこで「裁判所職員定員法の一部を改正する法律案関係資料」の十九ページの中で、「その他」の欠員が二百八十二というふうに最後の方に出ているわけです。前の年は、この下の説明で見ますと、「簡易裁判所の職員については、地方裁判所の職員と一括して「地方裁判所」の項にその員数を計上した。」、「「欠員」の項の△印は、過員を示す。」ですから事務官の方はふえておって、「その他」という点が欠員二百八十二ということになるわけで、事務官から書記官に入る人や、また兼務している人がおるという点であり、速記官については二百二、三十人欠員があるわけですけれども、この点は「その他」の項の中で言えるわけなんです。
 この速記官が足りないということは、結局弁護士会のシンポジウムの中でも指摘しておりますけれども、事件が非常に複雑になってきたというような事柄から、事務量が非常にふえてきているということ。それで結局は速記官がいないし、先ほどのアンケートの中にもありましたとおりに、録音機を使わざるを得ないという点から、そういう点のよけいな事務量がふえていくということにもなっていくことになるわけです。こういうふうな非常に速記官が足りないというような点はどういうふうにして補充していかれるのか。あるいは業者をお使いになっていくのか。そうしないと、今度はそのほかの点についての仕事の量を補ってあげていくことはできないし、このアンケートで示されている問題がやはり現実の問題として考えられていくということになります。その点についてはいかがですか。
#26
○矢口最高裁判所長官代理者 沖本委員御指摘のように、事件の記録ということでできるだけ逐語的な記録が必要である、そういった需要は非常にふえてきておるわけでございます。それで速記官の果たす役割りというのは大きくなってまいっておりますが、現在御指摘のような欠員がございます。何とかこれを早急に埋めていきたいというふうに考えまして、これまでずっと速記官に養成するために部内からのみ募集をいたしておりましたが、昨年から部外からも募集をするということを始めまして、昨年それから本年、いずれもこれまでの倍以上の職員を養成いたしておりますが、何分にも養成期間が二年ございますので、昨年募集いたしました者も来年の春になりませんと卒業しないという状況でございますが、できるだけそういうふうにして速記官をふやしていきたい、こういうふうに考えております。
    〔保岡委員長代理退席、委員長着席〕
しかし、そういたしましてもなかなか需要を満たすということができないかという感じがいたします。そういったものにつきましては、部外の速記等を利用できるものは利用をいたしていきたい、現在のところこのように考えておるわけでございます。
#27
○沖本委員 「昭和四十七−四十九年における地方裁判所の行政訴訟事件の新受件数及び平均審理期間」という表が二十六ページにありますけれども、この期間が非常に長くなってきている。これは行政訴訟、税務の問題が非常にふえてきているという点は弁護士会の方からも指摘されておりますし、アンケートの中にもそういう問題が出てきておるわけです。そういうことですから、やはりこういう点は根本的に実態をよく見ていただいて、それに合ったような体制をとっていただくことでなければならないのじゃないかと考えるわけです。
 そこで「下級裁判所の裁判官の定員・現在員等内訳」が十六ページにありますが、この欠員というのも合計いたしますと百十四名ということになるわけですけれども、この百十四名の欠員はどういうふうにして補充なさるわけですか。
#28
○矢口最高裁判所長官代理者 裁判官の充員計画、充員状況でございますが、まずこの四月の初めに十年の期間を経過いたしまして判事補から判事になりました者が五十五名ございます。それから判事補あるいは簡易裁判所判事といたしまして新規に任官いたしました者が七十九名ございます。そういった方と、この春の機会にいろいろ御自分の御都合等でおやめになった方、あるいは定年退官をされた方等いろいろと差し引きをいたしますと、現在のところ大体百名の欠員がございます。
 その百名の内訳でございますが、判事が七十名、残りが簡易裁判所判事の欠員でございます。簡易裁判所判事は毎年八月の時点で相当数の方を任命いたしておりますので、この欠員は八月の時点で埋まるというふうに考えております。結局、判事の欠員というのはこれはどうしても埋まらない状況であるわけでございますが、これは判事の供給源が非常に限られておりますためにやむを得ず欠員として残ってくるものでございますが、来年以降、判事補から判事になる方の数がおいおい増加いたしてまいりますので、これはそういったものによって埋めていくよりほかしようがないのではないかというふうに現在のところ考えております。
#29
○沖本委員 十五ページの「裁判所職員の増員内訳」で判事補が七名、裁判官以外の裁判所職員が十三名、これが今度の法律の改正の骨子になるわけですけれども、この備考のところで「地方裁判所における特殊損害賠償事件の処理」に三名、それから「地方裁判所における行政事件の処理」に四名、これは地方裁判所の判事補ということになるわけですけれども、今度は裁判官以外の裁判所職員、裁判所事務官が(7)の「簡易裁判所における司法行政事務の簡素化、能率化に伴う減員」ということで四十八名が減員されておるわけで、そのほかの振り分けは、「地方裁判所における特殊損害賠償事件の処理」に六名、「地方裁判所における行政事件の処理」に十二名、「家庭裁判所における寄託金事務の処理」に三名、「家庭裁判所における家事調停事件の処理」に十八名、「簡易裁判所における民事調停事件の処理」に十五名、「簡裁判所における交通事件(道路交通法違反)の処理」に七名ということで、七番目の「簡易裁判所における司法行政事務の簡素化、能率化に伴う減員」――むしろ簡裁の仕事の方がだんだんふえてきていると指摘されておるわけですけれども、なぜここだけにしわ寄せをされたような形になっておるのでしょうか。
#30
○田宮最高裁判所長官代理者 御指摘のように、この表によりましても、何か簡裁に人員のしわ寄せが行っているのではないかという御疑問も当然だろうと思うわけでございます。簡易裁判所でございますが、簡易裁判所は全国で約五百七十ばかりございます。全国にそれだけ数がございますので、その中から、全体として四十八名の減員をいたしましても、各庁ごとで見ますと、特にそのために支障を来すことはないというふうに考えております。もちろん簡易裁判所の中には、先ほど御指摘のありました四名ぐらいしかいないというふうな庁もございます。そういうようなところから人員を減らすということはすぐ事務に支障を来しますので、この場合の減員というのは、かなり大きな地方裁判所の所在地にある簡易裁判所というふうな大きな裁判所で、一名程度そこから割いても事務に支障はないと思われる庁からこれを減員いたしますので、これによって簡易裁判所の事務が支障を来すことはないというふうに考えております。
 この減員でございますが、閣議決定によりまして、第三次削減計画ということで、昭和五十年度におきまして四十八名、五十一年度におきましても四十八名削減することで政府に御協力申し上げるということで、四十八名の減ということになったわけでございます。
 この減員をするのにつきましても、裁判事務の担当者を減員するということは裁判に支障を来しますので、この点につきましては種々折衝の結果、司法行政事務という面、これは他の官庁の行政事務と特に大差はないわけでございますので、こうした行政事務の関係でございますと、いろいろ計算機とか複写機といったような能率機具を整備することによって、ある程度人員の減をカバーできるという面もございますので、司法行政面から減員をいたした、こういう次第でございます。
 その反面、当面簡易裁判所の事件処理に必要な人員、ここに挙げておりますところの調停事件が調停法の改正によりまして徐々にふえておりますのでその人員、また簡易裁判所において道路交通法違反事件が急激にふえておりますので、その事件処理に充てるための事務官というものを増員をしているということでございまして、事件の処理の方の手当てはこれによってする反面、司法行政面においては、この減員によって特に支障を来すことはないというふうに私ども考えておるものでございます。
#31
○沖本委員 やはり最高裁の方で机上プランで物事をお決めになって、実態に即した御検討をしていらっしゃらないように見受けられるわけです。前の委員会でも、職業病であるとか女性の職員の生理に関する休暇であるとか、いろいろな点について問題点を御指摘もしましたし、その点についてはいろいろな問題で改善していこうというお答えもあったわけなんですけれども、そういう実態から見ていきますと、何も閣議決定にサービスして従わなければならないという問題ではなくて、もっと実態に即したことで検討していただくということでなければ、いわゆる公正、迅速に処理していただかなければならないお立場のところなんですから、その辺が非常にいびつになってくるというふうに私は考えるわけです。この辺はやはり考えていただかなければならないわけですけれども、これに対する予算は全部含めて出ているわけなのでしょう。――と思うのですが、それは別のときにまた伺うことにいたします。
 そこで、増員の経過をたどっていきますと、私、いろいろお伺いした面で見てみますと、裁判官の場合は、四十七年に六十六名要求してそれが九名であり、四十八年には六十一名要求して七名、四十九年には三十六名が五名、五十年には二十六名が三名、昨年は非常に少ないわけですけれども、五十一年度は四十五名要求して七名、その内訳は判事補が三十三名、簡裁判事が十二名で、簡裁判事の十二名は全然認められていない。さらに、今度は裁判官以外の裁判所職員では、四十七年は四百七十七名要求して三十一名、四十八年は五百十七名要求して二十八名、四十九年は四百七十八名要求して二十五名、五十年は四百二十名要求して二十三名、五十一年は三百九名要求して十三名。五十一年度の増員要求数は書記官が五十九名、家裁の調査官が二十名、事務官が二百七名、医療関係の職員が二十三名、計三百九名というのが五十一年度。要求数と実数との問の隔たりが非常に多いわけですね。
 結局これは、欠員的なものが問題になっていき、要求するということは必要だから要求なさるわけであって、それが削られてこういう形の数になってしまったということで、その数に合わせたようなやり方をしていっているということになれば、振り返っていきますと、いままで申し上げたようなことが全部そこの中に出てくるということに当たるのではないかということになるわけですけれども、こういうふうな不足という問題、これはやはり国民に影響していく問題になっていくわけですから、それが先ほどから申し上げたアンケートとかいろいろな形で出てきている。それから事件が複雑だ、非常に長くかかっていくような内容ということにかかってくるのじゃないかと思うのですね。
 この二十五ページにも四十七年から四十九年における地方裁判所の特殊損害賠償訴訟事件数というのがあって、この質問は飛んでいるわけなんですけれども、この備考の欄で「「公害」の欄には大気汚染、水質汚濁、騒音、震動、地盤沈下等を理由とする事件数を、「その他」の欄には医療、薬品・食品、航空機・船舶、労働災害、自動車(欠陥)等に係る事件数を計上した。」ということになっておって、非常にたくさんふえておる。それで平均した審理件数がなくて事件数だけが計上されているわけですけれども、公害等、最近の有名な事件等が非常に多く上ってきているということは、全くこの内容が複雑になっているということを示していることにもなるわけですから、この辺はいままで申し上げたこととすべて関連していくことになっていき、それがこういう形で出てきているということは否めない事実であると私は思うわけです。こういう点をよく御検討していただいて、実際に合った内容で中身を整えていただきませんと、いろいろなところへしわ寄せが起こってきている。それは裁判所を信頼して解決を図っていただく、あるいはいろいろな判断をしていただこうとする人たちの上にのしかかってくるということになるわけですから、この点は十分お考えになっていただいて検討していただかなければならないと思うのですね。
 そこで、足りないということですけれども、事件がどれだけ多くなっているかということで、私が伺ったところでは、東京簡易裁判所の実態からいきますと、裁判官数が十名で、民事訴訟事件は、一年間の処理件数が五十年度一人当たり五百八十二件、現在の手持ち件数が一人当たり百四十二件、刑事訴訟事件は、一年間の処理件数が五十年度一人当たり二百九十三件、手持ち件数が百十三件、こういうふうな数字をいただいたわけです。簡易裁判所の全事件としては、昭和四十九年度は民事関係新受が六十一万一千七百七十二件で、刑事関係新受が二百五十万三千三百九十一件、合計三百十一万五千百六十三件、全事件の簡裁判事一人当たりの負担量は定員比で三千九百九十九件、現在の員数での比率は四千百十五件、こういう数字が出ておるわけです。こういう点からいきますと、もう確かにこれは重たい比重で、すべてのところに重さがのしかかってきておるということになってくるわけですけれども、これでは人事局長がおっしゃっていたような、まあまあ何とかなっていくんじゃないかということで済まされない件数ではないかということになり、ある方の御批判ですけれども、裁判官の方は、一つはもうノイローゼぎみではないだろうかということで、そういうこともあるし、そういうふうな状態になった方に判断していただいて判決をいただくというところに疑問が出てくる、こういうふうな指摘をなさる方もいるわけです。
 そういう点を考えていきますと、これは現状では確かに重大な事態に問題が至っていると私は考えるわけですけれども、その点いかがですか。
#32
○田宮最高裁判所長官代理者 簡裁の事件数は御指摘のとおりでございますが、確かに数の上から申しますと、お手元の資料の二十三ページにありますように、昭和四十九年では二百五十万件ということで膨大な数字でございます。ただ、その内訳を見ますと、その大半は道路交通法それから交通即決といったような関係でございまして、この道路交通法関係の事件の処理でございますと、いわゆる切符制ということで、仕事は単純ではございますが、短時間にかなりの処理をすることができるという面がございます。
 そのほか簡裁には、督促とか公示催告、それから和解、調停――調停なんかはかなり時間がかかりますけれども、督促事件等は、普通の訴訟事件に比べればかなり短時間で処理ができるというようなことでございます。したがいまして、簡易裁判所の場合には全体の総数、と申すよりは、その中心をなすところの訴訟事件の負担がどうかということになるわけでございますが、この表にもございますように、民事、刑事とも訴訟事件は漸減傾向にあるのでございます。そのようなことで、簡易裁判所の判事は完全に人員が足りていると断言できるわけではございませんが、現状でもある程度はやっていけるのではないかというふうに考えるわけでございます。
 先ほど来、裁判官、書記官が足りないという御指摘がございました。私どもの方といたしましても、毎年これだけの裁判官、書記官が必要だということで予算要求をしておりますが、一番の隘路はやはり欠員があるということで、補充できる限度において増員を重ねていくということをやっておるわけでございますが、裁判官、書記官とも、これは一定の資格を要しますので、一挙にこれを充足するということもなかなかいかない面もございますが、今後とも欠員を埋めまして、その上でさらに必要な人員の予算を獲得するという方向に努力していきたいというふうに考えております。
#33
○沖本委員 そこで、もう余り時間もありませんので、青柳先生は後で全般的に簡易裁判所をめぐる諸問題の面でのシンポジウムの内容が出るからということをおっしゃっておられましたので、部分的に私なりにとらえたところを申し上げてみたいと思うのです。
 「審理手続の実態」で、
 簡易裁判所創設時における民事訴訟取扱の理念は、「少額軽微な事件の簡易迅速な処理」であった。しかし現実には、必らずしも「少額軽微」とはいえない事件が簡裁に流入している現状にあっては、簡易迅速な処理にふさわしい事件も、それに応じた取扱をうけるのが困難となっている。
  口頭起訴はごく一部の簡裁で実施されているほかは、例外的に年数件以内の取扱例ある庁が散見されるのみである。任意出頭弁論の実例は絶無といってよい。また起訴手続の便宜のための訴状様式の記載例の備付は、最高裁の通達にもかかわらず、励行されていないところが少なくない。
  簡裁としては事件数と職員配置の現状を前提とする限り、口頭受理制の拡充に対しては消極的たらざるを得ず、訴訟提起を求める本人に司法書士を利用しても訴状を提出するよう指示するということになりがちなわけである。いわば「当事者・国民にとっての簡易迅速」よりも「裁判所にとっての簡易迅速」が優先するのである。
  同様なことは審理の内容についてもいえる。簡裁民事訴訟の問題点として、裁判官の本人訴訟の取扱方が不適切(ないし不親切)と指摘する声が意外に多いのは深刻な問題である。現実に簡裁事件のうち、双方を弁護士が代理しているのは約一割内外で、約七割は双方共本人の事件である。もちろん、裁判官の立場からすれば、法廷において素人の錯雑した陳述を即座に整理し、不公平感を与えないように必要な釈明を加えることは相当な努力を要するであろう。管轄拡張により間口を拡げ、小型地裁化した現在の簡裁にあっては、いわば手数のかかる本人訴訟の存在は審理の流れを妨げるものと感ぜられ、いきおい本来簡裁に要求さるべきキメの細かな審理とは逆に、一方的独善的とも評されるような審理態度となってあらわれるのではなかろうか。
  簡略判決はかなりの範囲で利用されているが、なかには複雑な事案について簡略判決をし、いわば裁判官の判断のあいまいさをカムフラージュするような事例もいくつか報告されている。本来簡略判決とは、いわゆる筋の明らかな事件について、簡易迅速な裁判を可能ならしめるものであろう。右のような事例はまさに「裁判所のための簡易迅速」が当事者の利益を無視した実例といえよう。
こういう点の指摘、それから、
 交通事故関係の事件の増大により、新受人員は、著しく増え、昭和三〇年には二〇〇万人の大台に乗り、昭和四二年には、四七六万人余を数えるにいたった。昭和四三年七月、いわゆる交通反則通告制度が施行され、その結果、翌四四年には、一九二万人と減少したが、その後再び漸増の傾向をたどり、昭和四九年には、二、五〇三、三九一人にのぼっている。この年の地方裁判所の第一審としての新受人員が二三五、二一八人であるから、この対比だけでも、簡易裁判所は地方裁判所の一〇倍以上の刑事事件を扱うことになってきている。
それから、
 簡裁発足の年である昭和二二年は罰金以下の刑しか科することができなかったが、昭和二三年と二五年の二回にわたる刑事事物管轄拡張により、窃盗罪等につき三年以下の懲役刑も科することができるようになった。
  科刑状況をみても、管轄拡張前の昭和二二年における訴訟事件の科刑はすべて罰金以下であったのに対し、昭和四七年における通常第一審訴訟事件の有罪総数二〇、六三六人のうち、罰金以下のものは三、五六五人にすぎず、残りの一七、〇七一人(八二・七パーセント)は懲役であり、しかもそのうち三九・五パーセントに該る六、七四九人は実刑である。
  これらの事実は、簡裁が軽微事件を取扱う裁判所としての性格を変えていることを如実に示している。
 ここで大事なことは、「審理の実態」として、アンケート調査で得た内容が報告されているわけですけれども、この辺が私の問題にしたいところであります。
 (1) 被告人を「お前」とあたかも罪人と決めつけた態度で臨み、有罪推定の原則に立っているとしか理解できない裁判官がいること。
  黙秘権を告げず審理をするということで弁護人から抗議を受ける裁判官、黙秘権の告知が適切でなく、黙秘は不利益とのみ被告人に理解させる裁判官、審理の冒頭に被告人質問を強行し、特に否認する被告人には執拗に質問する裁判官等が全国的に存すること。
 (2) 検察官の証拠調請求の供述調書等の取調べに同意しないと弁護人に対し執拗に理由を尋ね結果的に同意を強く求め、また、検察官の法三二八条にもとづく請求は安易に採用する裁判官が全国的に存すること。
 (3) 公職選挙法違反被告事件で、裁判官が争点についての理解が充分でなく、それが審理の長びく一因ともなっている事例があり、裁判官の中にも公選法関係事件につき管轄を有することに疑問をいだいているという事例が存すること。
 (4) 検察官に再三にわたり訴因の変更を促がし、有罪判決形成に最善を尽しているとしか考えられない裁判官がいること。しかも、控訴審で無罪になりこれが確定した例もある。
 (5) 前科のない被告人の執行猶予の判決に必ず保護観察を付す裁判官、検察官の求刑意見どおりの量刑に終始する裁判官の存すること。
 (6) 略式命令に対し、異議申立をし、正式裁判の結果無罪になった事例で、当初から略式命令不適当の事案と考えられるものが存すること。
それから「令状事務の実態」として、
 (イ)、逮捕状発付の必要性が明らかにないと考えられる事件につき逮捕状が発付され、また、地方裁判所で一度却下され、その直後に簡裁で、これについて逮捕状が発付されているという事例の存すること。勾留状についても、勾留の必要性がないと考えられる請求について安易に決定され準抗告で取消されるという事例があること、そして、これらが特定の簡裁に極く限定されるというものでないこと。
 (ロ)、保釈については、第一回公判前は、検察官の意見に盲従し、却下という原則に立って処理しているとしか解せられない裁判官が全国的にいること。このような裁判官は、被告人が否認し、また、弁護人が検察官の証拠請求につき同意しない部分が存すると保釈請求は却下するという傾向を有していること。
  保釈保証金は、一般に高額化の傾向にあり、権利保釈の場合でも、保証金の捻出に家族が苦労する例の存すること。具体的に三〇万円から一〇〇万円の間で決めることを明らかにしている裁判官、一〇万円以下では出廷確保が心配であると述べる裁判官のいることも指摘されている。
「問題点」として、
 (1) 令状事務についてみれば、令状裁判所といわれた簡易裁判所の令状事務における司法抑制機能は、その実質を失っていると考えざるを得ない。
 (2) 裁判官の審理態度についても問題であり、簡易裁判所裁判官としての基本的資質を問われていると考えざるを得ない。本来簡易裁判所裁判官には、庶民の立場に立った常識豊かな、資質に富む裁判官が期待されていたにもかかわらず、現状は必ずしもそうではない。現在の簡易裁判所裁判官の登用・処遇等に問題があろう。
 (3) 裁判官が、検察官の意見を容易に容れる傾向にあり、科刑においても、実に多くの比率で懲役刑、しかも実刑を言渡していることは極めて問題である。この点からも簡裁刑事事件の科刑限度は罰金刑以下という、創立当初の形に戻すべきではないかとの問題を指摘せざるを得ない。
 それから略式命令のことにも触れておるわけです。
 これはさらさらっと、私自身が疑問に思い、これはこうあるべきだと思ったような点について拾って申し上げた点でありますけれども、やはりここには人をふやしていき、質を向上していただく以外にないんではないか。これはいわゆる裁判官、職員すべてに触れる問題だ、こう考えます。
 そうしてきますと、この事物管轄を引き上げた点についての附帯決議については実行されていないということになるわけですけれども、この点についてお考えをお述べいただきたいと思います。
#34
○田宮最高裁判所長官代理者 前回の昭和四十五年の事物管轄の改正の際の附帯決議にはいろいろな点が指摘されておるのでございますが、そのうち先ほど沖本委員が御指摘になりました簡易裁判所の訴訟手続に関する特則の活用をしろという部分がございます。この点につきましては、先ほど御指摘がありましたように、必ずしもそう活発ではございません。しかしながら、最高裁の方といたしましても、この特則の活用をすることによって簡易裁判所がその設立の趣旨に沿った働きをするようにということで、簡易裁判所の訴訟手続に関する特則の実施要領というものをつくりまして、それを全国に流し、また口頭受理をふやすということで、口頭受理調書の用紙等を配付しております。その後、これらの特則の活用につきましては、全般的に各種の会同、研修等を通じて、各簡易裁判所の裁判官にその趣旨の徹底を図っておるのでございます。その実態等についても詳細私どもの方で調べておりまして、その都度改善すべき点は改善し、この手続に関する特則が大いに活用されることを今後とも期待し、その方向に向かって努力したいと思っておるのでございます。
 ただ、この特則の活用の問題でございますが、私どもの調べによりますと、必ずしもこれは裁判所が人手が足りないからとか、それから裁判官が好まないからといった面ばかりではございませんで、やはり当事者とか当事者の代理人等がこうした手続を好まれないという面もなきにしもあらずでございます。そうした面につきましては今後とも弁護士会等とも十分話し合った上、簡易裁判所におけるところのこの特則を十分活用し、簡易裁判所本来の機能を果たし得るよう今後とも努力したい、こう考えております。
#35
○沖本委員 私なりにもっともだと思って拾ってみたということになるわけで、決してすべてを言い尽くしておるということではないわけです。特にアンケートをとってお調べになった中から問題点を指摘してきているという点等は、これはやはり相当検討しなければならない問題だと考えられるわけです。
 要は、やはり国民に信頼される裁判行政を行っていただきたいというところにあるわけですから、十分簡裁の役割りを果たしていただき、また職員の方々が無理な条件のもとに置かれないように十分その機能が発揮できるような体制に持っていっていただきたいことをお願いいたします。
 終わります。
#36
○大竹委員長 稲葉誠一君。
#37
○稲葉(誠)委員 法務大臣、いま問題となっている刑事訴訟法の四十七条の問題ですが、大臣としてもあれを聞いてもらいたいでしょう。――と思いますけれども、きょうはやめますから、大丈夫です。
 きょうは別のこと、法案のことを聞きますが、ことし修習生から判事補を希望した人が何人くらいいて、それから何人くらい入ったのですか。何か四名ぐらい入れなかったということも聞くのですが、その間の経緯はどういう状況でしょうか。
#38
○矢口最高裁判所長官代理者 二十八期の修習生でございますが、裁判官を希望された方は延べで八十六名でございます。その中で最終的に任官された方は七十九名でございますので、結局七名の方が採用願を撤回され、あるいは私どもの方で来ていただかないことに決めた、こういうことでございます。
#39
○稲葉(誠)委員 いまの四名というのは、あれは二回試験に入れなかった人が四名だ。
 そこで、そうすると、八十六名希望して七十九名ですね。撤回したというのは、裁判所の方から勧告か何かをして撤回したわけですか。
 それからもう一つは、なお裁判官になりたいと言うんだけれどもなれなかったという人は、その内訳はどういうふうになっているんでしょうか。
#40
○矢口最高裁判所長官代理者 七名の中で四名の方が最終的に希望を撤回されたわけでございます。それで三名の方をいわゆる来ていただかなかった、不採用ということにさせていただいたわけでございます。
#41
○稲葉(誠)委員 余り個人的なことを聞くとかえって本人の迷惑になりますから、名前とかなんとか一切伏せますからそれは聞きません。
 そこで、青年法律家協会、よく世間では青法協、青法協と言うでしょう。これは一体何なんですか。よくわからないもんだから、知っておる範囲で説明を願いたい、こう思うのですがね。
#42
○矢口最高裁判所長官代理者 青年法律家協会でございますが、これは二十九年の四月に設立されたものでございます。現在の組織でございますが、四十五年の七月の総会で弁護士・学者合同部会、それから裁判官部会、それから司法修習生の各期の会というふうな職能別の部会制をとっておりまして、その目的とされるところはいろいろあるようでございますが、大体まあ表向きに掲げておられますところ、憲法を擁護し民主主義を守るということで活動をしておられるというふうに承知をいたしております。
#43
○稲葉(誠)委員 表向きといういま話が出ましたね。表向きというのはわかったけれども、そうすると別のところが何かあるのですか。――いや、表向きはそうだと言うから、裏の方も知っておられて言っておられるんだろうと思うんだけれども、そうすると裏の方は一体何ですか。
#44
○矢口最高裁判所長官代理者 実は、これまでの長い間の青年法律家協会の活動しておられた状況、それから活動方針等を伺ってみますと、かなり政治的なものが含まれておるように思われるわけでございます。たとえば昭和三十五年から四十年までの間は安保改定阻止をする、あるいは四十年には日韓条約の調印に反対する、四十一年には小選挙区制に反対する、そういったような活動方針等もあったようでございますが、現在のところはそういった活動はなくて、むしろ憲法擁護の基本理念を守っていく、それから裁判の独立を守る、不当な再、新任拒否に反対する、司法研修所における自由で民主的な法曹養成理念を実現する等々の活動方針があるようでございます。全体的に見てまいりますと、中心として掲げておられるところが少し変わってきておるようにも思われます。そういうふうに申し上げたわけでございます。
#45
○稲葉(誠)委員 いま日韓条約だとか安保改定だとかなんとかいろいろなのがありましたね。そういう運動をしたとかなんとかということがどうして最高裁にわかるのですか。
#46
○矢口最高裁判所長官代理者 青年法律家協会は、機関誌「青年法律家」というのをお出しになっております。そういったものが当時においては、自由にと申し上げると非常に失礼かもしれませんが、私ども容易に見得る状態にあったわけでございます。
#47
○稲葉(誠)委員 その青年法律家協会の裁判官部会というのがありますね。メンバーもぼくの知っているのが大分いるのであれですけれども、いま名前を言ったりなんかしませんが、それは何人ぐらいいるのですか。
#48
○矢口最高裁判所長官代理者 私ども現在の人数というものは承知いたしておりません。と申しますのは、十七、八期ぐらいまでは、裁判官で青年法律家協会に入っておられる方の名前が、青年法律家協会の側から名簿といったような形で出ておりまして、それによって承知することができたわけでございますが、その後だれが入っておるのかということの発表が一切ございませんので、私ども正確な数字は把握いたしておりません。
#49
○稲葉(誠)委員 最高裁の事務総局では、一括か個人かは別ですけれども、前に青年法律家協会に入っていた人は全部内容証明か何かで脱退の通告か何かしたことがありますね。その問の事情はどうなんですか。
#50
○矢口最高裁判所長官代理者 最高裁に勤務する裁判官の中にも青年法律家協会の会員が相当数あったわけでございますが、昭和四十五年の終わりごろから四十六年の初めにかけてでございますが、そういった人たちがいろいろと話し合ったようでございます。それでいろんな状況から、この際出た方がいいのではないかということで脱退した、こういうふうに承知しております。
#51
○稲葉(誠)委員 脱退しようと入会しようと個人の意思ですから、それは自由ですからね。そうすると最高裁の事務総局には、いまは青年法律家協会に入っている人は一人もいないわけですか。
#52
○矢口最高裁判所長官代理者 この点も先ほどちょっと申し上げましたように、客観的にだれが会員であるかということを知り得ない状況でございます。それからまた、私ども偶然の機会に御本人の口等から知るような場合が決してないとは申しませんけれども、こちらから積極的にあなたは会員であるかどうかということを聞いたこともございませんので、そういった意味では正確なお答えはちょっといたしかねる。入っておられる方があるのかもしれません。
#53
○稲葉(誠)委員 最高裁の事務総局では、青年法律家協会に入っていることがわかるとぐあいが悪いというか何というか、最高裁の事務総局にはいられなくなるのですか、これは。いられなくなると言うと言葉がおかしいけれども、ちょっとぐあいが悪いのか、やはり最高裁としては。
#54
○矢口最高裁判所長官代理者 青年法律家協会に現に入っておられるかどうか、そのことで、あるポストについていただくかどうかを左右するというようなことはいたしておりません。
 ただ、一般的な問題としましては、最高裁が公式見解で表明いたしておりますように、青年法律家協会はかなり政治的色彩の強い団体であると思われるので、裁判官は入らない方がいいのではないか、裁判官のモラルとして入らない方がいいのではないかというふうにはいまでも考えておりますけれども、現実に入っておられる方があった場合に、その方をそのことによってどうこうするということは一切いたしておりません。
#55
○稲葉(誠)委員 今度、いま言った七名、実際には撤回された人もいるけれども、拒否をされたというか、それは全部が青年法律家協会の会員であったということがいろいろ世上言われているわけですよ。そうすると、やはり青年法律家協会の会員に入っている人は裁判官として採用するについてはできるだけ避けたい、こういうことに聞いていいわけですか、入っていることがわかった場合には。
#56
○矢口最高裁判所長官代理者 青年法律家協会に入っておられることがわかった場合――わかるということが一つ問題でございまして、これは正確には現在わからないわけでございます。したがいまして、私どもは、わかった場合にどうするかということについては、非常に仮定的な問題でございますので、ちょっとお答えいたしかねますが、そのこと自体で採否をどうこうするということはいたしていない、こういうふうにお考えいただきたいと思います。
#57
○稲葉(誠)委員 ただ、修習生が裁判官になりたいというときにどういうふうにするのか。希望を出すのか。――履歴書を出すでしょう。非常に詳しい履歴書をこのごろ書いていますね。たとえばどういう政党に属しているとか書いたのがありますよ。――いやいや、それは詳しく書いてありますよ。それは合法なんだから構わないもんね。特定の政党、どこの政党かは別として、そういう政党に属しているということを修習生の履歴書にちゃんと書いてありますよ。ぼくは何回も見て知っていますがね。それはありますよ。非常に詳しく書いてある。それから青年法律家協会に入っているということも書いてある履歴書、それはちょっとないかもわからないな。それはないかもわからぬが、履歴書で政党に入っているということは書いたのがありますよ。そういう場合には、判事としては――特定の政党と言いますよ。どこの政党かということは差しさわりがあるから言わぬけれども、それは政党によってはぐあいが悪いの。
#58
○矢口最高裁判所長官代理者 その前提として御指摘になった点でございますが、どういうのをごらんになりましたかちょっとわかりませんが、現在履歴書は学歴と職歴だけでございます。それから賞罰はもちろん書いてございます。あと出してもらいますものは身上調書でございますが、身上調書の中にも団体加入、政党加入等を一切書く欄がございませんし、またそういうものも、私もう数年採用事務をやっておりますが、まだ団体加入あるいは政党加入等を入ってないと書いたものもございませんし、どこどこに入っておると書いたものもまだ見ておりませんので、それは何かのお間違いじゃないでしょうか。
#59
○稲葉(誠)委員 これ以上言うと各方面に迷惑がかかりますから言いませんけれども、それは書いてあるのもありますよ。それはだって合法政党なんだから構わないですもの。これ以上ここで言いませんわ。
 そうすると、採用にならなかった人は、そういう青年法律家協会とかなんとかというところに入っているということとは別というふうに承ってよろしいですか。いや、みんな青年法律家協会に入っていて、しかも修習生時代に活動していた、そういうことで裁判官に採用にならなかったんだというふうに言う人もいるわけですよ。そういう見方もあるから、そこで聞くわけですが、結論的にはそれとは関係ないというのか、あるいはあるというのか、全くわからないというのか、そこら辺はどうなんですか。
#60
○矢口最高裁判所長官代理者 結論を明確に申しますと、一切関係ございません。
#61
○稲葉(誠)委員 それから別の話になりますが、廷吏の人のいろいろな問題を聞くわけですね、聞くと言うとおかしいのだけれども。この前ぼくはある裁判所へ行って、向こうでもおじぎするから、こっちも丁寧におじぎしたわけよ。やけにりっぱな人だから、ぼくは若い判事補だと思っていたの。そうしたらその人は廷吏だったのです。後で法廷に入ってみたら廷吏の人だった。とても品のいい、りっぱな人なのでいろいろ話をして聞いてみたら、皆大学を出ているんですね。
 それでいま廷吏の人、廷吏という名前があるかどうかよくわかりませんが、どういう形で採用しているわけですか。どういうふうな学歴の人やなんかがいまは多いのですか。
#62
○矢口最高裁判所長官代理者 廷吏は裁判所事務官でございまして、事務官の中から廷吏を命じておるわけでございます。昔は、稲葉委員よく御承知のように、年配の方が廷吏をしておられた例が非常に多かったわけでございます。近時、廷吏の仕事自体の重要性ということもございますが、いろいろの点を勘案いたしますと、むしろ若い方、将来事務官、書記官等に十分なっていただける方に廷吏をやっていただくのがいいのではないかというふうな考えをとりまして、現在のところ、そういう意味で高校出、大学出等の方を事務官として採用し、当初数年廷吏をやっていただき、その後事務官、書記官等に抜けていくと言うと変でございますが、抜けていっていただく、そういう扱いをいたしております。したがいまして、大学出の廷吏も確かに多くございます。大体全体の二〇%ぐらいは大学出じゃないかと思います。
#63
○稲葉(誠)委員 そこで、警備員というのがいますね。これは二百何十名いるとかなんとか聞きましたけれども、それはどういう職種というか資格なんですか。それとその調整の問題。
#64
○矢口最高裁判所長官代理者 警備員が二百名おりますが、これも事務官でございます。警備員を命ずるということでございます。
 俸給の調整でございますが、警備員は八%の調整を受けております。
#65
○稲葉(誠)委員 そこで、いま廷吏の人からたくさん手紙が来るわけですよ。はがきや詳細な手紙もあるのですが、いっぱい来ています。ぼくもこの人たちの言うことでよくわからないのは、こういうことがあるんですね。廷吏の職務内容を明確にしてくださいというのがずいぶん入っているんですね。職務内容は明確になっているのだとぼくは思うのですが、これは一体どういうふうな意味なんでしょうか。
#66
○矢口最高裁判所長官代理者 私もちょっとそれだけではどういうことがねらいなのか、正確に捕捉いたしかねます。恐らく廷吏は、あくまで法廷における仕事というのが中心の問題になろうかと思いますが、現実には訟廷的な事務もやっておる、その辺のところのことを指しておるのではなかろうかという感じがいたします。しかしこれはあくまで想像でございます。
#67
○稲葉(誠)委員 廷吏のことは裁判所法のどこにどういうふうに書いてあるのですか。
#68
○矢口最高裁判所長官代理者 六十三条でございますが、「廷吏は、法廷において裁判官の命ずる事務その他最高裁判所の定める事務を取り扱う。」裁判所法の六十三条の二項でございます。
#69
○稲葉(誠)委員 いまのその後段ですね、「最高裁判所の定める事務」というのは何になるわけですか。
#70
○田宮最高裁判所長官代理者 この第二項で「最高裁判所の定める事務」となっておりまして、最高裁判所が定める場合には、通常は最高裁判所規則もしくは規程で規定するわけでございますが、必ずしもそれに限らず、最高裁判所の裁判官会議の議決によって、またはその委任によって、たとえば通達等によって決めるということも可能であろうということでございます。ところが、現在この規定に基づいて特に最高裁判所規則というものができておらないのでございます。
 ただ、法廷の秩序維持の関係でございますが、法廷の秩序維持等に当たる裁判所職員に関する規則というのが昭和二十七年にできておりまして、これによって裁判官または裁判所が、法定の秩序維持のために特定の職員に秩序維持のためのことを命ずるということができることになっておりますので、この規則の運用上は裁判所もしくは裁判官が適宜命令できるわけでございますけれども、現実問題では廷吏に命じて、たとえば審理の妨害をした場合にそれを防ぐというようなこともこの規則に基づいて、当該裁判所または裁判官が命令する、こういうことになっておるわけで、一般的には規則は現在ないというのが実情でございます。
#71
○稲葉(誠)委員 そこら辺のところを言っているのかもわかりませんけれども、法廷の秩序維持ということの中で、廷吏の果たす役割りというのはどういうことになるのでしょうか。具体的に言うと、どういうことですか。わかっているようなことですけれどもね。
#72
○田宮最高裁判所長官代理者 現在、先ほど御指摘になりましたように、警備員がございますので、第一次的には警備員がその職務に当たるわけでございますが、警備員だけでは足りないとか、警備員がいないといったような場合には、先ほど申し上げました法廷の秩序維持等に当たる裁判所の職員に関する規則に基づいて裁判所もしくは裁判官が、実際には多くの場合には当該廷吏に命令して秩序維持に当たらせる、こういうことで運用している実情だろうと思います。
#73
○稲葉(誠)委員 警備員が行くという場合は、あらかじめそういうふうな法廷の秩序が混乱するというか、混乱するかしないかは別として、そういうふうなことが予期されるということで、警備の要請があった場合でしょう。これは、東京なんかの場合は多いかもわからぬけれども、地方の場合はそうめったにあるわけじゃありませんね。突発的ないろいろなことが起きた場合には、普通廷吏がやるわけでしょう。だから、廷吏のやることとそれから警備員のやることとは具体的な何かが、法廷秩序が仮に混乱したか何か知りませんが、そういったときに同じことをやるんじゃないですか、内容的には。そこはどうなんですか。多少の主従はあるのかわからぬけれども、実際には同じことじゃないんですか。具体的にどういうことをやるんだ、そうすると。
#74
○田宮最高裁判所長官代理者 第一次的には警備員が警備するわけでございますが、警備員がいない場合にどういうふうにやっているかということでございますが、先ほどの規則によりまして裁判所または単独の裁判官が職員の中から警備を命ずるということになっておりますので、その際に、廷吏にその警備面を担当させるか、それとも訟廷の事務官なり書記官なりにその警備を担当させるかということで、その当該裁判所によって運用は違うと思いますが、仮に警備を廷吏が命ぜられたというような場合には、やる仕事は警備員とは変わらないであろうというふうには思いますが、廷吏はもっぱら警備に当たることを職務としておるわけでございませんので、そうした頻度等ははるかに警備員の場合とは違うだろう、こういうふうに考えております。
#75
○稲葉(誠)委員 だから警備員が前もって予期されて配置されている場合はいいのですよ。突発的にそういうことが起きるだろうと考えられる場合があるわけですね。そういうときには廷吏は一体何をやるのかということですよ。警備員と同じ仕事を結局裁判長の命令によってやらざるを得なくなってくるのではないか、こういうように思うのですがね。
 そこで私が聞きたいことは、結局廷吏の人から出てくる要望というものは、警備員には八%の調整がついていて、それから廷吏の場合にはそれがついてないじゃないか。結局やることは同じなんだ、危険にさらされる場合も多いんだから、だから調整を自分たちにもつけてほしいということを盛んに言ってくるわけですよね。
 そこで一つお聞きしたいのは、廷吏に調整をつけたいということについては、これは最高裁としては大蔵省に要求はしているんだけれども大蔵省が認めてくれないというのか、あるいは最初から最高裁として要求をしていないというのか、そこはどういうことなんでしょうか。これは廷吏の間に非常に不満が強いのですよ。
#76
○矢口最高裁判所長官代理者 廷吏の号俸調整は、昭和四十五年以来要求いたしてきております。もっとも要求の中身は四%調整ということで要求しております。ただ、数年にわたって要求しておるにかかわらず、これが認められないということでございますが、御指摘のように荒れる法廷ということをとらえて、その時点でごらんいただきますと、確かに廷吏も身を挺して法廷の秩序を守る、裁判長の命令に従って法廷秩序を守るという面もございます。警備員と、その面だけを見ますと差がないわけでございますが、荒れる法廷というのは、全国のたくさんある法廷のごくごく一部でございます。警備員は重点的にそういう法廷にだけ配置されるわけでございますが、廷吏の場合は、一般の大部分の事件というものは、平穏なそういういわゆる身を挺して法廷の秩序を守るというような職務というものは現実にはないわけでございます。ことに、刑事の場合にはまだあり得るとしましても、民事の場合などほとんどないわけでございます。
 そこで廷吏の仕事の全体を見てみますと、警備員と類似する面というのは非常に限られたものにしかならない。そこのところで、ある廷吏には調整をつける、ある廷吏には調整をつけないということが技術的にも困難でございます。そこのところがなかなかわれわれの主張が通りにくい、そういうことで今日に至っているものでございます。
#77
○稲葉(誠)委員 刑事と民事とは確かに違うのですが、民事でも離婚事件だとかそういう事件の場合にはどういうことが起きるかわからない場合もあるので、理屈のつけようで、出そうと思えば出すような理屈はつくし、出すまいと思えば出さないような理屈はつくので、理屈なんて後からつくのでどうでもあれですが、最高裁としては、四%の調整を必要だという理由はどういう理由なんですか、考えている理由はどういう理由なんですか。あなたの話を聞くと、まるで四%の調整というものも必要ないんだけれどもというふうにもとれるし、最高裁としては必要だと考えているんだというふうにもとれる。必要だと考えているならば、必要だと考えている根拠はどういう根拠なんですかね。
#78
○矢口最高裁判所長官代理者 これは廷吏が事務官として行政職(一)表の適用を受けておる、これは当然でございますが、そういういわゆる事務的な仕事ということで評価を受ける者と、それからああいう公開の場であります法廷等に列席いたしまして、しかも裁判長の指揮命令に完全にその内部において従う、そういう仕事を毎日やっていくという面とではこれはやはり相違があるわけでございます。そういった事務的な仕事をするということを前提にした行政職(一)表に、加うるに公開の法廷で仕事をする。事務官の場合ですと、まあちょっとたばこが吸いたいということになれば、事務室でたばこを吸うことも結構でございますけれども、実際には廷吏はそうするわけにもいかない、そういった特殊性といったようなもの、そういったものを私どもは主張して、四%の調整ということで来たわけでございまして、警備的な問題を前面に押し立ててきておるわけのものではないわけでございます。
#79
○稲葉(誠)委員 それから警備の場合に、その裁判所で一般の書記官だとか事務官だとかみんな警備に駆り出しますね。駆り出すという言葉は悪いけれども、そうしてほかの裁判はほとんど休んでしまうわけだ。休む場合もあるし休まない場合もあるけれども、そのときに警備に行く書記官なり事務官、これは経理局呼んでないからわからぬかもわかりませんが、これは一体幾らぐらい金を払っているのですか、一日五十円しか払わないという話もあるのだけれども、幾ら払っているのですか。
#80
○矢口最高裁判所長官代理者 警備手当というふうに呼んでおりますが、一時間百円でございます。
#81
○稲葉(誠)委員 一時間百円で寒いところへ立たされて――一時間百円というのは、このごろでしょう。前は百円じゃなかったのじゃないのかな。何かぼくは五十円という話も聞いたけれども、五十円は大分前の話かな。いつごろから百円になったのですか、どうでもいいんですけれどもね、それ。何か非常にみんな、率直な話、不平というか不満も多いですね。その費用は予算上はどこから出てくるのですか。
#82
○矢口最高裁判所長官代理者 先ほど申しました諸手当の警備手当でございますが、百円になりましたのは昨年からです。
#83
○稲葉(誠)委員 そうでしょう。それは何だかやけに安いんですよね。長い間立たされていて、外で立っているのもいるわけだよね。これではとてもかなわぬとか言っている。そこら辺のことについても、答えはいいですから、今後いろいろ考えてほしいと思うのですね。余り額が少な過ぎるから、これは。
 大臣、それに関連するのだけれども、あなた刑務所に――きょう官房長いるな。官房長知っているかな。特殊面接委員というのがいるんだ。知っているでしょう。あれは一年間たつとお礼くれるわけだよね。あれ幾らくれるか大臣知っていますか。これは後でいいよ。これは薄謝って書いてくれるのですね。寸志と書いたら、寸志というのは一寸だから少し厚いのだけれども、薄謝だからもっと薄いわけだよな。これは後で研究してごらんなさいよ、とにかく少ないものだから。特殊面接委員だから別に欲しいわけじゃないから構いませんけれども、こういうことも余りに少な過ぎるからね。常識外れに少ないのです。だから寸志とは書いてない、寸までいかないのですよ。これは別なことですから後でいいのですがね。
 そこでその廷吏の人は、これは何年ぐらい――内部の試験があるのですか。内部の試験があって書記官研修所へ入るのですか。書記官研修所で二年のと一年のとありますね。そこら辺の書記官研修所の制度というか、廷吏の人ばかりじゃなく事務官の人も入るのもあるでしょうけれども、どういうふうにして内部試験や何かやって入るのですか。
#84
○矢口最高裁判所長官代理者 入所試験というのを毎年一回行っております。それから書記官任用試験というのも毎年一回行っております。その両方が行われておるわけでございます。
#85
○稲葉(誠)委員 廷吏の人とか事務官の人がいますね。それで書記官研修所に入る試験というのをやるわけでしょう、ちょっとぼくはよくわかりませんけれども。それは内容が人によって違うのですか、余り細かいことを聞いて恐縮ですけれども。
#86
○矢口最高裁判所長官代理者 一般の事務官の方と同様に入所試験も受けられますし、それから任用試験を受けることもできるわけでございます。
 入所試験と任用試験が分かれておりますのは、これは年齢とかいろんな関係で任用試験で、書記官研修所に入らなくても書記官資格を与える方が、そういう道をつくっておいた方がいいということで、両方が行われておるわけでございます。
#87
○稲葉(誠)委員 だから任用試験というのは、書記官研修所に入らないで内部の試験で書記官になる人ですね。大体事務官を長くやっている人が多いですね。そうすると、この前に書記官補というのがありましたね。書記官補から書記官になるときに、なれなかった人がいますね、ざっくばらんな話。そういう人たちでまだ残っているのがあるのですか。それは全部事務官になっちゃったのですか。事務官になっちゃって、事務官で今度は任用試験で書記官になったのですか。まだなれない人もいるのですか。余り細かいことを聞いて悪いですけれども。
#88
○矢口最高裁判所長官代理者 もう大部分の人が書記官になっておるわけでございますが、当時事務官兼書記官補ということであった人で一部残っておる人もあろうかと思いますが、それはごくわずかな数だと思っております。
#89
○稲葉(誠)委員 その書記官研修所で大学の法学部を出た人は一年間か、そうでない人は二年間ということでしょう。ここで書記官の人のいろいろな話を聞いてみると、二つ意見が分かれるわけですよ。
 一つの意見は、書記官研修所の内容が、入ってからが非常にむずかしいという人があるわけですね。それから、特に家族と離れて来る人が非常に多いわけだから、北海道とか鹿児島とかそれから遠いところの人、そういう人たちが、どういう内容のことをやるのかよく知りませんが、ノイローゼみたいになって、いろいろ廊下をはだしで駆けめぐったり外をはだしで駆けめぐったり何かしているというのが大分あるという、いろいろ配慮をしているのでしょうけれどもね。それから、そういう見方の人と、一面において書記官研修所のあの程度の内容、試験じゃなくて中へ入ってからの勉強、これはあたりまえだという見方をしている人と、二通りあるのですがね。これはどうなんですかね、実際は。
 それから家庭生活に対する配慮、これは皆中年の人が多いわけでしょう。中年というか、大体三十代を過ぎてからの人がほとんどですかな。まあいろいろな人がいると思いますが、そこら辺のところはどうなっているのですか。
#90
○矢口最高裁判所長官代理者 研修所における生活あるいは教科の中身でございますが、一般的には一日四時限ということになっております。四時限というのは、ただ一時限を一時間二十分でやっておりますので、結局五時間二十分講義を受けるということになるわけでございます。それで、大体日曜、祭日あるいは自由研究日という何もしないときが百日前後年間にあるわけでございまして、その他体育とか見学とかいろいろございますので、これは見方によりまして非常に充実しておると言うこともできるかと思いますし、あるいはもう少し充実さした方がいいんじゃないかということも言えるのじゃないか。ただ一般的には、入所試験がかなり高度の試験でございまして、それに合格して来るような方ですと平均的には十分ついていける、しかも余裕があってついていけるということだと思います。ただ、中にはやはりちょっとついていけないという方があり得るわけでございまして、そういう方で日ごろ気の弱いような方について二、三ノイローゼ的になった方があるということも聞いておりますが、ここ数年の間で、一名を除きましてあとは大体治療をしたり少し静養した結果修了するということで、無事修了をいたしておるという状況でございます。
 それから年齢でございますが、これは一部、いわゆる大学卒業生で入ってきますのは平均年齢が二十六、七歳でございまして、若うございます。ただ二部の中にはちょっと年配の方があり、そういう方が二年間でございます。二年間家族と離れて寮の生活をされるというのはお気の毒な面がございますが、ただ実際のなにから見てみますと、そういう年配の方のほうがむしろ張り切ってやっておられるというふうな状況にあるように聞いております。
#91
○稲葉(誠)委員 いまの大学の法学部を出た人はたしか一年間ですかね。そうでない、それ以外の人は二年間ということになりますね。二年間というのは少し長過ぎるのじゃないですか。そんなに勉強というか、しなくちゃいけないものなのかな。ぼくらが見ていて、書記官の人には悪いけれども、一番むずかしいのはやっぱり検証ですね。検証はむずかしいけれども、余りほかのことを言っては悪いけれども、その他はそんなだとは思わないのですけれどもね。そうすると二年間もやる必要があるのかな、書記官に怒られるけれども。どうなんですか。
#92
○矢口最高裁判所長官代理者 その点でございますが、現在でも厳格に申しますと、たとえば大学法学部卒の人でもまる一年やっておるわけではございませんで、一カ月半ぐらいは現地でまず実務の修習をする、見習いをするというようなやり方をいたしております。書研に入りますのはその残りの十カ月半ということでございます。そういった点をもう少し加味していって、書記官研修所に入っておる期間というものを再検討してみてもいいんじゃないかということはかねがね私どもも考えておりまして、検討はいたしております。ただしかし、研修所の側といたしましては、やはり書記官のレベルを落としたくないというような、これは教育者として当然だと思いますけれども、気持ちが強うございますので、その辺のところはもう少しいろいろの観点から研究さしていただきたいと思っております。
#93
○稲葉(誠)委員 いまちょっとお話ししたとおり、非常に遠くから来ている人がいますね、九州だとか北海道だとかそれから新潟の僻地から来ている人もいるわけです。僻地じゃないか――来ている人もいるわけだけれども、家族と会えなくて、帰るのがなかなか帰れないんだ、旅費がなくてというので。五月の連休なんか別として、ふだんの土曜、日曜なら近くなら帰れますけれども、そうでないと帰れなくて非常に困っているというのがいるんですが、そこら辺のところはどうなっているのですか。それから給与はどういうふうになるのですか、その間の給与は。家族との関係、それから給与の関係はどういうふうになるんですか。
#94
○矢口最高裁判所長官代理者 夏休みは帰っておるわけでございますし、連休が続いたような場合には帰れるわけでございますが、御指摘の遠くから来ておる方は、旅費も確かにかさみますので、そうしょっちゅう帰るということもできないであろうというふうに思われます。その間の給与は現地で勤務しておりましたと同様の給与を出し、なお低額ではございますが、東京滞在費を出しておるということでございます。
#95
○稲葉(誠)委員 いま書記官、それから裁判所関係のいわゆる管理職ですね、管理職というのは何を管理職と言うかというのはちょっとよくわかりませんけれども、非常に管理職が多いということを聞くわけですね。それはたとえばこの前あるところへ行ったら訟廷管理官というのがいるわけだ。訟廷管理官だけかと思ったら訟廷管理官の次長というのか次席というのか、そういう人もいるし、それから首席もいる、次席もいる、主任もいる、そういうのが非常に裁判所関係は多い。ほかの行政官庁と比べて、行政官庁と平均的に比較するというわけにいかないかとも思いますが、非常に多いということですね。ことに管理職だから管理職手当というか調整手当をもらっているのを管理職と言うのかちょっとわかりませんが、どうしてそういうふうに首席だ、次席だ、主任だ、それから訟廷管理官だ、訟廷管理官の次長だとか、そういういろいろなものが必要なんですかね。
#96
○矢口最高裁判所長官代理者 裁判所の最終の仕事の単位が裁判体ということになりまして非常に細分されておりますので、行政官庁等が課とか部という一つのまとまった組織で仕事をしておられるのと違いまして、極端に申しますと、裁判官一人が行政官庁の課に当たるといったようなことになっておりますので、勢いその裁判官に対する主任書記官というようなことで数名の裁判所の職員を取りまとめていくポストというものが必要になってくるわけでございます。そういうことで管理職員の数、管理職手当受給者の数というものが他の官庁に比してやや多くなっておろうかと思いますが、これは一面、表向き申し上げられるかどうかは別といたしまして、やはり職員の給与等における待遇の改善問題にもつながりますので、ある程度のことはやむを得ないのではないかというふうに考えております。
#97
○稲葉(誠)委員 訟廷管理官というのは何をやるのですか。訟廷管理官、副管理官ですか、東京地裁だけですか、ほかにもあるのですか。これは何をやるのです。普通のところでは訟廷課長というのでしょう、訟廷課長と訟廷管理官というのはどういうふうに違うのか。
#98
○矢口最高裁判所長官代理者 昔は訟廷課長というふうに言っておったこともございますが、現在では全部訟廷管理官というふうに言っております。これは全国の問題でございます。それから副管理官というのは現在非常にけた外れに大きい東京地裁と大阪地裁だけに置いております。
#99
○稲葉(誠)委員 東京地裁の場合は、もとは東京刑事地方裁判所と民事地方裁判所とに分かれておりましたね。いまは一本でしょう。一本というのはいつごろから一本になったのかちょっと忘れましたが、これはどういうことから一本になったのですか、それからもとはどうして二つに分かれていたのですか。
#100
○矢口最高裁判所長官代理者 構成法時代は民事地方裁判所、刑事地方裁判所というふうに分かれておりました。戦後の新憲法下の裁判所法になりまして、やはり非常に組織が大きい場合に分ける必要も一面には出てまいりますが、また分ければ分けたことによって民事、刑事ということで非常に融通がきかなくなると申しますか、一方に偏し過ぎるというようなことも出てまいりますので、この際やはり一つにした方がいいのではないかということで、新しい裁判所法からは一本になった、こういうことに聞いております。
#101
○稲葉(誠)委員 いま何とか官補というのがありますね。官補というのは家裁の調査官補、それから速記官補もあるね。官補というのは、どうして速記官補なり家裁の調査官補だけ置かれているわけですか、それが一つ。
 それから官補から官になるときのなり方ね、たとえば家裁の場合は試験があるわけでしょう。この試験が非常にむずかしいというのは、それは家裁の場合は法律をやっていない人が調査官補、ほとんどですね。大学は心理学とか社会学を出た人がほとんどだから、そういう関係もあって、法律のことをやっていないから法律の試験がむずかしいのかもわかりませんが、ずいぶん何か官になれなくておっこちる人がいるわけですか。
#102
○矢口最高裁判所長官代理者 現在官補というのがございますのは調査官と速記官でございますが、調査官の場合は、最初から官補ということで採用いたしまして、そして三年たったところで調研の入所試験を受けるわけでございます。そして調研に入って一年研修しますと官になるわけでございますが、大体採用された者は専門家でございますので、入所試験ももちろん専門的な試験でありますし、専門的と申しましても、そんなにむずかしい試験をやるわけではございませんので、当然のコースとして三年たてば調査官研修所に入り、そこで一年研修してみんな官になるということで、その点は問題はないというふうに承知いたしております。
 それから速記官の場合は、外部募集もいたしますし、一般事務官からもとりますけれども、速記養成部で二年やりまして、その上で官補になり、半年いたしますと官に任命する、そのときに一応技能テストはいたすようでございますが、これも特段のことのない限り大体官に任命されておるということで、それほどむずかしい問題はないというふうに考えております。
#103
○稲葉(誠)委員 いまの家裁の調査官補が調査官になるときに何か法律の試験をやるわけでしょう、これはなかなか調査官補には苦手なんじゃないの。だから問題は、調査官補は心理学とか社会学の人がほとんどでしょう、家庭局長いないけれども、あなたの方の管轄でしょうけれども、そこら辺のところはどうなんでしょうか。それは心理学も大事だと思うけれども、法学万能でもいけませんけれども、それにちょっと偏り過ぎているのではないですか、家裁の調査官補の採用というものが。だから法律、ことに民法のあれが必要ですね、遺産分割でも相続でも問題になってきますから、そこら辺のところで何か非常にむずかしくて――むずかしい方が悪いという意見もあるのですよ。むずかしいわけがないので、よく勉強していないからむずかしいのだという説もあるのだけれども、それで何かこの間も試験に受からなかったり白紙答案を出したり何かしたのが大分いましたね。そこら辺のところがどういうふうになっておるのか。どうも家裁の調査官補というのはもう少し最初から法律的な素養のある人を採るなり、それからその過程の中で順次法律的な勉強をするようにしていった方がいいんじゃないか、こう思うのですがね。それが一つ。
 それからもう一つの後の速記官ですね。速記官と書記官との待遇が非常に違い過ぎるんだということを言う人もいるんですがね。それは役割が違うんだと言うんだけれども、ただぼくは、検証の場合は確かにあれは非常にむずかしいと思うのですよ。このごろは、民事でもそうだけれども、刑事だってほとんど要領筆記でしょう。全部書いているわけじゃない、要領筆記だし、あれだと思うのですがね。それで、民事訴訟法でもそうでしょう、公判調書の記載の異議の申し立て、あれをどんどんやられたら、あなた、裁判所は非常に困ってしまうんじゃないですか、実際違うかどうかということの証拠の問題があるかもわからぬけれども。だから、待遇はどうなっているんですかね。その二つの問題です。
#104
○矢口最高裁判所長官代理者 いずれも考えようによっては非常にむずかしい問題でございまして、まず最初の、調査官研修所に入所中の者に法律の試験をするということはどうだろうかということでございますが、そんなにむずかしい講義をしておるわけではございません。ただ、専門が心理学、社会学、教育学等の方でありましても、裁判所に職を奉じていただく以上は、最小限度の法律の知識というものはやはり持っておいていただかなければ困るんじゃないかということで、少年関係ですと少年法の講義をやる、それから家事関係でございますと、親族、相続、それから家事審判法ということで講義をしておるわけでございます。これも聞きますとそんなに、いわば裁判官が必要とするような高度のものをしておるのではなくて、ごく常識的なことをお話ししておるんだということでございますが、ただ、これまで少しも法律をやっておられない方から見ますと、あるいは非常に取っつきにくいというような面があろうかと思います。かつてそのことで問題があったことは御指摘のとおりでございますが、その後一向にそういった点で問題が起こったということも聞いておりませんので、研修所側も十分その点を留意してやっておられることと考えております。あの程度の法律知識はやはり持ってもらわなければ困るという感じでございます。
 それならば最初からそういう知識のある人に来てもらえるように法律の方の試験も採用試験の中に入れたらどうだろうか、あるいは法律の専門家を調査官に採るということにしたらどうだろうかというような意見もございますが、当分の間はやはりいまのような状況でいって、部内に入ってから少し法律の教養、常識といったものを身につけていただくということでいいのではなかろうかというふうに考えております。
 それから、後段御指摘の書記官と速記官の待遇の比較の問題でございますが、これは非常にむずかしい問題でございまして、確かに、速記官は同年齢の人たちに比べていい待遇を受けております。しかし、あの速記の技術というのは、修得するのはやはり大変なもののようでございまして、それはそれなりにやはり必要なことではなかろうかというふうに思います。
 それから、書記官の場合は、これは号俸調整等を受けておりますし、個々の点で細かに言っていきますと問題はあろうかと思いますけれども、速記官、書記官の関係の方はむしろまだ問題がない。それよりも、一般の事務職員とこれらの人との関係の問題、こちらの方がどうも大きな問題のようで、非常に頭を痛めておりますが、現在のところ、総体的にどの職種についてもやはり十分の待遇をしていくように努力をするという以外に解決策はないのではなかろうかというふうに思っておるわけでございます。
#105
○稲葉(誠)委員 いまの事務官で、課長とかなんとかにならない場合でも、古い人に対しては何か名前をつけて特別な手当を出しているのですか。書記官じゃないですよ、事務官ですよ。
#106
○矢口最高裁判所長官代理者 これはやはり事務官の系列におきますと、役付ということでございませんと、それなりの給与が与えられないわけでございますので、順次上の級の定数をふやしていくという形で努力しておるわけでございます。
#107
○稲葉(誠)委員 締めくくりみたいになるのですけれども、ことし七十九名の人が判事補になったわけですね。七十九名の人が判事補になって、なおかつ裁判所の裁判官の定員とのその差というのはどういうふうになっておるのですか。
#108
○矢口最高裁判所長官代理者 先ほどもちょっと申し上げましたように、この春に判事補で十年たった方が判事になられ、新たに七十九名の新任の方を採用した。その結果、きょう時点の数でございますが、欠員が百四名でございます。
 その内訳でございますが、判事に七十名の欠員がございます。正確に申しますと、判事補の欠員は三名、それから簡易判事に三十一名、そういう欠員の内訳でございます。
 それで、簡易判事の方はこれからいわゆる選考していただきまして、大体四、五十名の方に例年簡易判事になっていただいております。ことしは欠員がちょっと少のうございますが、ただいま御審議いただいております定員法が通りますれば、またそれだけの余裕が出てくるわけでございます。そういうことでまた四月以降、そのときまでに定年等でやめる方もございますので、大体四、五十人の簡易判事を採用することができ、そうすれば、簡易判事は完全に埋まる、また判事補の欠員も完全に埋まる、こういうことでございます。ただ、埋まりませんのは判事でございまして、判事のところはいま供給源がございませんので、ちょっとこれを大幅に埋めていくということの見通しは現在のところはない、こういう実情でございます。
#109
○稲葉(誠)委員 ちょっと素朴な質問で、あるいは間違っておるかもわからないのですが、今度の法案で判事補を七名ふやそうというわけでしょう。現在、判事補の欠員が三名あるというわけですね。そうしてこの七名というのはどこからどういうふうにして補充しようということになるわけなんですか。
#110
○矢口最高裁判所長官代理者 実は判事補のところが非常に窮屈になってまいっておりましたので、私ども裁判官希望者の最低数というものをにらみ合わせておりまして、採用面接をいたしましたのが結局八十二名でございますが、そのうちの一名の方は実は当初から簡易判事希望の方であったので、判事補としては八十一名の希望でございました。そこで八十一名の欠員を用意いたしておったわけでございますが、結果的には判事補としては七十八名しか採れなかったということで、そこで三名の欠員が出てきたわけでございます。
 増員をお願いしておりました七名というのは、当初は四月一日までに法案を御可決いただくというふうに考えておったのですが、どうもいろいろな情勢で間に合わないというふうに思いまして、急遽七名分を判事補本務から簡易判事本務に切りかえまして判事補の欠員をつくったわけでございます。そういうことでございますので、今度増員ができますれば、切りかえました七名の方、まあその方をそのまま元へ戻すかどうかは別問題でございますが、簡易判事本務になっておられるいわゆる判事補の方に判事補本務に切りかわっていただくということで判事補の方は定員どおり埋め、簡易判事のところの本来の欠員をつくっていく、こういうふうな作業をいたさなければならない、そういうふうにしたいと思っております。
#111
○稲葉(誠)委員 そうすると、新たに七名の人を採用する、こういうことではないわけですね。それが一つですね。
 それと、現在、判事補であって、それを資格の上では簡易裁判所判事の方を本務にしておるわけでしょう。辞令は簡易裁判所判事兼判事補という辞令でしょう。同じ辞令なわけでしょう。その人が判事補本務の場合と簡裁判事が本務の場合と仕事の内容が変わっているんですか、変わってないんでしょう。同じことをやっているんでしょう。本当のことを言ってくださいと言っても悪いけれども……。
#112
○矢口最高裁判所長官代理者 その庁で決められましたところに従いまして、本務、兼務は実は実際には影響がないわけでございます。ただ、定員上は本務で参りますので、あくまで本務に欠員がございませんと採用できないということになっておるわけでございます。そういう点からいいますと、裁判官何名ということであれば、判事、簡易判事、判事補、そこである程度融通がきくわけでございますが、現在のところ判事何名、判事補何名、簡易判事何名というふうに区別して法律ができておりますので、そういった本務に拘束される、こういうことになっておるわけでございます。
#113
○稲葉(誠)委員 だから、実際に新たに採用するわけじゃありませんから、この法案は別に急いで通らなくたっていいということなんじゃないですか。実際はそういうことになるんじゃないですか。
#114
○矢口最高裁判所長官代理者 先ほども申しましたように、簡易判事は簡易判事で充員計画、それから任命計画というものを立てざるを得ないわけでございます。簡易判事にもやめていかれる方もございますし、しばしば御指摘ございますように、事件の増に伴う専任の簡易判事を置かなければいけないところというものもあるわけでございます。そういったものはそこの充員計画と見合って決めていかなければいけない。そのことのためには、どうしてもできるだけ早く、ことし何名採るかということについての決定をいたしませんと、やっていけないわけでございます。そのためにはやはり判事補の増員をできるだけ早く御可決いただくようにお願いを申し上げたいと思います。
#115
○稲葉(誠)委員 私は、七名ふやすというから、ことしの採用のときにいままでの採用分プラス七名を採用するのかというふうに思っていたわけです。だれでも常識的にそう思うわけです。どうもそうでもないらしいから、まあそう急ぐこともないでしょうということになるわけですがね。
 それから途中で――途中でというのは、定年間近の一月ぐらいか二月ぐらい前にやめた人は別として、裁判官でことしの三月にやめた人が大分いるのじゃないですか。何人ぐらいいますか。――わからなければいまでなくてもいいですよ。
 それで、裁判官なりあるいは書記官なり、三月でやめる人に対して、これは決してかれこれ言う意味ではないのですが、裁判所の方は四月一日現在でやめるように辞令を出していますね。
 法務大臣、法務省の場合はそうじゃないのです。検察事務官でも何でも、いままで三月三十一日付で辞令を出していたのです。それで検察庁の事務官なんかは非常に不満があったのです。ことしから直ったかな。
 ちょっと、人事局長から先に答えてください。法務省はたしか後から変えたわけだ。裁判所と同じように直したわけだけれども、いままでは非常に不満があったのです。待遇がそこで非常に違ってくるのですよ。
#116
○矢口最高裁判所長官代理者 私どももかつては三月三十一日にいたしておりましたが、人事院勧告等の関係もございまして、四月一日というふうに切りかえたわけでございます。やめられた方の数は、正確には記憶いたしておりませんが、特段に多かったということもないというふうに思っております。
#117
○藤島政府委員 法務省におきましても、私が人事課長をいたしておりました五年ほど前は三月三十一日付ということにいたしておったのでございますが、各省の取り扱いをいろいろ見ますと、大体四月一日ということでございまして、当時、人事課長会議でそういう話になりまして、大体各省四月一日ということでいきましょうということになりましたので、いまから三年か四年ぐらい前から四月一日付で退職していただいております。
#118
○稲葉(誠)委員 これで大体質問は終わりますが、いまお話ししました廷吏の人ですね、この要望は非常に強いものですから、それは全部が正しいというか、全部が受け入れられるものだとは私も思いませんけれども、その調整の問題については今後も大蔵省と折衝して、何とかできるように、それと同時に、昇格の問題で、廷吏の場合は何か非常に幅が狭いようなことを言うのですね。最高裁の廷吏の人はずっと上まで行くのだけれども、そうでないところの方は非常に幅が狭いということを盛んに言われておるので、そういう点についても考慮してもらいたいということで、一応質問を終わります。
#119
○大竹委員長 次回は、来る二十七日午前十時理事会、午前十時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後一時三十六分散会
ソース: 国立国会図書館
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