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1975/01/27 第77回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第077回国会 本会議 第4号
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1975/01/27 第77回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第077回国会 本会議 第4号

#1
第077回国会 本会議 第4号
昭和五十一年一月二十七日(火曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第四号
  昭和五十一年一月二十七日
    午後二時開議
 一 国務大臣の演説に対する質疑(前会の続)
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 国務大臣の演説に対する質疑  (前会の続)
 井上泉君の故議員仮谷忠男君に対する追悼演説
   午後二時六分開議
#2
○副議長(秋田大助君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 国務大臣の演説に対する質疑  (前会の続)
#3
○副議長(秋田大助君) これより国務大臣の演説に対する質疑を継続いたします。紺野与次郎君。
    〔紺野与次郎君登壇〕
#4
○紺野与次郎君 私は、日本共産党・革新共同を代表して、政府の内外政策に対して、三木総理及び関係閣僚に質問をいたします。
 三木総理の施政方針演説を聞いて、多くの国民は、不信からの脱却どころか、新たな混迷といら立ちを感じております。国民が日々に体験している現実は、日本の政治、経済、外交から、教育、文化、道徳にまで及ぶ危機の深さと、そこから生まれてくる苦しみであります。
 いま、三木内閣に求められているものは、この深刻な危機からいかに脱出するか、その方向と内容であり、政治転換の具体的な中身であります。しかるに三木総理、あなたが示したものは、美辞麗句と根拠のないバラ色の未来像であり、しかも許しがたいことは、その言葉の裏で、国民に一層重い犠牲を強いる反動的な危機打開策を強行しようとしていることであります。(拍手)
 いま最も重要な問題は、直面しているこの危機を、対米従属、大企業奉仕、自民党政治延命の立場で打開するのか、それとも真に国を救い、国民を救う国民的立場で打開するのか、この二つの道のいずれを選ぶかの問題であります。(拍手)
 私は、まず、経済の危機打開について質問いたします。
 まず第一に、深刻な経済危機の原因と責任についてお聞きしたい。
 周知のように、いまわが国の経済は戦後最悪の不況、インフレに直面し、中小企業の倒産、失業者の増大、さらには著しい食糧自給率の低下、エネルギーの対外依存、それに加えて日本列島全域にわたる公害の激発、大型災害の頻発に見舞われております。この深刻な危機の原因は、単なる景気循環などによるものではなく、まさに日本経済そのものの構造的要因に基づくものであり、戦後三十年にわたる自民党、保守政府の対米従属と大企業中心の高度成長政策の結果であることは、いまやだれの目にも明らかであります。(拍手)
 総理、あなたは施政方針演説で、高度成長路線の転換のために国民の協力を呼びかけられたが、それならば、まずこの対米従属と大企業中心の高度成長政策を長年続けてきた自民党政府の責任を明確にすべきであります。その点について、総理の見解を求めます。一第二に、不況打開の方法と、そのための路線転換の内容についてお聞きいたしたい。
 総理、あなたは高度成長路線を適正な安定成長路線に転換すると言われました。しかし、その内容を見るならば、路線の転換などということはどこにもないではありませんか。あるのはただスピードの減速、つまり経済成長率を下げるというだけのことであります。これが路線転換などと言えないことは明白であります。なぜならば、大企業本位のパターンには何の変化もないからであります。
 その証拠に、来年度予算は相変わらず財界奉仕であり、国民にかつてない高負担を強要しておるのであります。国鉄運賃を初めとする電報、電話、塩、国立大学授業料など公共料金、年金、保険料、医療費の患者負担の大幅引き上げ、これだけで二兆二千億円、所得税の減税見送りによる実質増税などを加えると総額三兆円、国民一人当たりまさに三万円もの負担増となるのであります。
 国民の購買力が低下しているこの時期に前代未聞の高負担を強いるならば、より一層大きな購買力の低下をもたらし、中小企業の倒産、失業の増大を生み、経済危機を一層強めることになるのではないか。総理の所見を伺いたい。(拍手)
 また、今次予算の目玉とされている公共事業と輸出振興は、二つとも大企業のための景気対策であります。
 高速自動車道、新幹線、本四架橋など大型プロジェクトを次々と浮上させたものであります。花形の本四架橋を見ても、工事の性格上中小企業にはほとんど無縁のものであり、発注はすべて大手の造船、建設業にされており、鉄鋼、セメント、自動車業などには事業総額二兆一千億円の需要を約束しているのであります。
 輸出振興も、大型プラントに重点を置くもので、あくまで大企業本位のものであります。
 総理、あなたは転換と言うが、このように大企業本位のパターンを継続しておきながら、どこを転換したというのか、具体的事実を挙げて説明をされたい。(拍手)
 さらに、独禁法についてお尋ねしたい。
 総理、あなたは施政方針演説で「関係者の納得のいく形で再度改正案を提案する」と言われたが、その関係者とは一体だれなのか。すでに七十五国会では、自民党を含めて五党がすでに一致して改正案は衆議院を通過させたのでありますから、結局この関係者というのは財界のことではないのか。この点を明らかにされたい。
 私は、当面すでに五党が一致している独禁法改正案を政府の責任において出すべきだと思うが、総理の答弁を求めます。(拍手)
 いま明白なことは、もはや大企業中心の高度成長政策の延長線上での景気浮揚策では、経済の危機は打開できないということであります。
 当面する危機打開の抜本的、具体的方向は次の四点であります。
 第一は、物価の安定を取り戻して、国民の購買力を高めることであります。第二は、投資の流れを変えて、生活基盤整備などの公共投資を優先的に進め、バランスのとれた産業構造の転換を図ることであります。第三は、大企業本位の税制、財政、金融を民主的に改革することであります。第四は、自主的な経済外交への転換を図ることであります。
 私は、以下、こうした危機打開の総合的見地から、具体的に質問を進めてまいります。
 まず、第一の柱である国民の購買力を高める問題についてであります。
 言うまでもなく、購買力を高める上で物価、インフレ対策は不可欠であります。総理、あなたは物価対策は成功したと言われたが、国民生活の現状から言えば、成功などと言えるものではありません。仮に消費者物価上昇率が本年三月一〇%以下になったとしても、これは昭和三十五年から四十二年の八カ年平均六%よりまだ高いのであります。加えて、四十八、四十九、五十年にわたる二けた台の狂乱物価の上に一〇%前後の物価上昇が続くことは、低い基準から同じ率の上昇が続くものとは違って、より大きな打撃を国民生活に与えるものであります。総理は物価上昇率八%を云々しておりますが、これで国民生活が安定するとでも言うのですか。この際、明確な答弁を求めます。(拍手)
 しかも、公共料金の未曾有の大幅値上げ計画が、大企業製品価格のつり上げを促進することは明らかであります。もし国鉄運賃が五〇%連続して上がれば、東京−博多を往復するのに、夫婦子供二人で今年は九万八千円、来年は十四万七千円となり、まさに労働者の平均賃金一カ月分に匹敵する驚くべき額になるのであります。この値上げが国民生活に急激な重大変化をもたらすことは明らかであります。
 いま国鉄や電電公社等公共企業体の財政破綻に関して政府に求められているものは、大企業本位の料金体系を改め、公共企業にふさわしい費用負担方式を確立することであり、列島改造型の設備投資計画の規模や内容を根本的に再検討して、値上げ繰り返しの根源を取り除くことであります。政府は、公共料金の値上げを中止し、これらの再検討を直ちに行うべきであると考えますが、総理の見解を求めます。
 また、インフレについて言えば、膨大な国債を発行し、日銀による国債の大量の買い入れや、大口融資規制も緩和して、第五次公定歩合の引き下げを計画し、大企業への資金の集中を図りながら、もし政府が本気でこれでインフレを招かないと思っているとしたら、これは余りにも非常識であります。これでもインフレにはならないというのであれば、具体的に論拠を挙げて説明されたい。(拍手)
 次に、国民の購買力を高める上でも社会保障の充実は重要であります。ことしになってからも、老人の悲惨な死が連日のように伝えられて、総理の言う個人の努力ではどうにも解決できない人たちが増大しており、福祉の充実が強く求められております。
 総理は、個人の意思と努力次第という独立、自助の精神を強調しておりますが、これは結局、行き倒れするまで自分のことは自分でやれということであって、これを日本型福祉というのであれば、まことに重大であります。
 政府は、保険財政の赤字を口実に保険料引き上げ、初診料、入院時一部負担、高額療養費限度額の引き上げなどを国民に押しつけようとしておりますけれども、総医療費約四兆円のうち約四割は薬剤費が占めております。この独占薬価に思い切ったメスを入れて、これを引き下げに使う。そうすれば、患者の負担を上げずに保険財政を健全化することができるけれども、政府は、国民の医療よりもあくまで大企業の利益を優先させるつもりかどうか、はっきり答弁を求めます。(拍手)
 さらに、政府は、ことしは老人医療の有料化を見送ったが、この老人医療無料化は今後とも継続すべきであり、総理は、このことを全国の老人に対し断言できますかどうか、明確な答弁を求めます。(拍手)
 次に、不況の最大の犠牲者は失業者であります。政府統計によっても、完全失業者は十一月に九十八万人に達し、三月には百三十万人になると言われております。実質は三百万、あるいはそれ以上であります。さらに、今後首切り、合理化が予想されるなど、深刻な事態が予想されます。私も実際に職安に行ってみましたけれども、月に三日の就業で、インスタントラーメンだけで生命をつないで、栄養失調になっている者が多いのであります。これらの失業、半失業者に対して仕事を与え、人間らしい飯が食えるようにすることは緊急の問題であります。ところが、中高年齢者雇用促進法附則第二条が壁となって、失業者に対する緊急の失業対策事業が不可能になっているのであります。総理、直ちにこれを撤廃し、緊急失対法を全面的に復活させて、積極的な失対事業を起こすべきではないか。また、失業給付を賃金の八〇%に引き上げ、給付日数を百八十日間延長することを要求いたします。
 また、海の方でも、日本の大手海運業者による便宜置籍船の増加に伴って、日本人船員の排除が進んで、深刻な雇用不安を引き起こしております。この反国民的なやり方を政府は規制し、改めさせるようにすることを私は要求いたします。総理の答弁をいただきたい。
 危機打開の第二の柱は、公共投資の流れを産業基盤優先から生活基盤優先に大胆に変える問題であります。
 総理は、景気回復のため公共事業と住宅に重点を置いたと述べましたけれども、大型プロジェクトの華々しい復活に比べて、下水道は高速道路建設費を下回り、住宅も公営・公団住宅は昨年に比べて一戸もふえておりません。依然として産業基盤優先であります。福田経企庁長官は、経済運営を成長中心から生活中心に切りかえると言っているが、もしそうなら、当面の不況対策からいっても、国土のつり合いのとれた発展、公害防止の見地からしても、本四架橋などという大型プロジェクトについては抜本的に再検討し、公共投資の最重点を国民が真に要求している住宅、学校、保育所や公害防止環境改善事業、地震など災害防止事業など、生活基盤の整備に発想の転換を行って、そこに資金を向けるべきであります。(拍手)総理並びに経企庁長官は、この立場に立って公共投資の内容を再検討する用意があるかどうか、お伺いいたします。(拍手)
 ここで、公共事業を含む官公需発注について政府にただしておきたい。日本共産党は、昨年、官公需を中小企業に五〇%以上出すよう要求いたしました。私も運輸委員会で問題にして、金属部品類については、国鉄に弾力的な形で共同受注方式を認めさせて、中小企業発注への道が開かれました。だが、たとえば国鉄職員の制服十万から二十万着については、大紡績会社と大商社が生地を独占しているために難航しているのであります。中小企業向け発注をせめて五〇%にしたいという総理発言が言葉だけのものでないならば、こういった条件を改善し、具体的に中小企業が受注しやすいようにすべきであります。また、中小企業の防衛のため、中小企業固有の分野への大企業の進出を規制することを法的に行うべきであるが、政府にその具体策があるのか、お尋ねしたい。
 危機打開の第三の柱は、財源の問題であります。
 七兆二千七百五十億円にも上る国債発行によって、一兆数千億円の国債費を必要とし、五年後には発行残高七十二兆、利子だけでも六兆円に達する、こういうふうになっております。これは財政を極端に硬直化させる。それだけではなくて、将来にわたって国民に高負担を押しつけるものであります。さらに、付加価値税導入をたくらんで国民収奪を強化しようとするに至っては言語道断であります。まず、赤字公債発行を再検討すること、付加価値税導入は行わないことを言明するように総理に答弁を求めるものであります。
 公共料金の大幅値上げ、赤字国債の大量発行など、ただひたすら国民の負担に財源を求めるやり方は根本的に改めなければなりません。大企業は赤字と言いながら高度成長期に大きなもうけを上げてきたことは、昨年三月末に大企業五十社だけで八兆円の内部留保を蓄積していることを見ても明らかであります。現在の経済危機の中でこそ、国民への膨大な負担ではなくて大企業に一定の負担をさせるべきであります。
 財源措置の第一は、大企業、大資産家、高額所得者に対する特権的減免税を真剣に洗い直して、適切な課税を行うことであります。たとえば会社臨時特別税の延長、給与所得控除の頭打ち制度の復活など、すでに実施されていた制度を延長、復活させるだけでも、約四千億円以上の新しい財源を得ることができるのであります。さらに、欠損大企業に対する法人税還付の一時停止、大企業の各種引当金、準備金など、特権的減免税措置の見直し、また、有価証券の取引に伴う不労譲渡益の吸収や交際費課税の強化、さらに、積年の大企業優遇税制によって非課税のまま大企業の内部に留保されてきた積立金増加額に対する臨時非課税積立金増加税の創設、これらの措置によって数兆円に上る財源を得ることが可能であります。
 総理は、昨日、税制を見直して、十一項目の廃止、五十八項目の縮減合理化をされたと言われましたけれども、これは金額にして、租税特別措置の改廃百四十億、交際費課税を含めてもわずか百五十億円にすぎません。
 もともと大企業に対するわが党の主張は、大企業をつぶすなどということではない。ぼろもうけのぼろの部分を取るということであって、それは決して全体主義的統制経済でもなければ社会主義経済でもなく、まさに現状のもとにおける経済民主主義の措置をとれということであって、当然のことではありませんか。(拍手)
 財源措置の第二は、不急不要な歳出の削減であります。大企業奉仕の大型プロジェクトの公共事業費や石油備蓄費の削減、また、四次防に含まれる重要装備など防衛費の削減、さらに、警備公安警察、公安調査庁の民主勢力に対するスパイ、謀略、挑発、買収などの憲法違反の活動の不当な費用を廃止することによって、さらに財源を捻出することができるのであります。また、大企業の負担による年金特別税の創設や公共事業予備費を国民生活安定のために活用するならば、福祉財源や住宅建設、地方財政の危機打開などの財源を得ることができます。
 財源措置の第三は、財政投融資の民主的改革であります。郵便貯金の利子を銀行預金よりも優遇することによって、五十年度末で四十二兆円を超す資金運用部資金をふやすことができ、地方債の引き受けや中小企業資金など、国民本位に活用することが可能であります。
 これらがわが党の財源対策であり、自民党政府の高度成長を支えた税財政の仕組みを取り除く真の政策転換でありますが、以上の財源対策について、総理、大蔵大臣の明確な答弁を求めるものであります。(拍手)
 次に、地方財政の財源問題について質問いたします。
 いま地方自治体は、事業や福祉の削減を行わざるを得ない危機に瀕しております。この危機打開のため、私は次の提案を行います。大蔵大臣の所見を承りたいと思います。
 第一に、地方自治体の財源の柱の一つである交付税率を四〇%に上げ、超過負担を年次計画で速やかに解消し、資金運用部資金を地方債に大幅に振り向けることであります。
 第二に、大企業への特権的減免を見直し、地方税源の充実を図ることであります。東京、大阪などの財源調整、都区合算規定を廃止すること。
 第三に、国と地方自治体の仕事と税財源の配分に根本的な検討を加え、地方財政の確立を図ることであります。
 次に、わが国経済の自立の基礎の一つであるところの農産物の自給の問題についてであります。
 総理、あなたがこの一年間やってきたことは、穀物自給率を十年後にはさらに五%下げて三七%にまでするという驚くべき計画でありました。その一方でフォード大統領に農産物貿易の拡大を懇願して、穀物や大豆の年間千四百万トンにも上る輸入契約を結ぶなど、アメリカヘの食糧依存の拡大に狂奔したことであります。
 ところがアメリカは、さきに明らかになったCIAの秘密報告によると、食糧を武器に、日本や低開発国の生殺与奪の権を握り、世界に対する支配的地位を確保することを強調しているのであります。
 総理、あなたは、こういうねらいを承知の上で、なお糧道を一層アメリカにゆだねて、自給率を低下させ続けるつもりなのかどうか、お答えを願いたい。(拍手)
 また総理は、他方では自給力向上のための基盤整備を重視したと述べておられるけれども、予算全体に占める農林予算の割合は、ふえるどころか、逆に、ついに一〇%を割ったばかりか、いわゆる宅地並み課税の拡大意図と相まって、拡大される農用地面積は、つぶされる面積よりもはるかに少ないのが実態ではありませんか。さらに、食糧管理費を据え置いて、生産者米麦価を抑え、消費者米麦価の大幅引き上げをねらい、米の買い入れ制限を強め、農産物価格保障制度全体の改善を何一つやろうとしておりません。
 いま必要なことは、農業を国の基幹産業として、農民の経営が成り立つ価格保障制度を実施する、農地に対する反動税制を撤廃する、初年度十五万ヘクタール、三年で五十万ヘクタールの農地を拡大するために思い切った財政投資を行って、農業再建の第一歩を踏み出すことであります。この点について総理の見解を求めます。
 次に、当面の日本外交の問題について質問いたします。
 ベトナム侵略戦争の結果とインドシナ情勢の発展は、民族自決を目指す諸国民の闘いがだれも阻み得ないということを明白に示しております。(拍手)この侵略戦争を正義の行動として、アメリカに追随し協力してきた日本外交の破綻は明らかであります。このことは、今後の日本外交の痛切な教訓としなければなりません。
 ところで、総理は施政方針演説で、日本外交の基軸は強固な日米関係の推進、発展であると述べ、日米安保条約に基づく日米関係強化路線を改めて日本外交の基本に据えることを明らかにしたことは、きわめて重大であります。
 昨年十二月、フォード大統領は新太平洋ドクトリンを発表し、ベトナム以後のアジア・太平洋地域に対するアメリカの戦略を定式化いたしました。それは、この地域におけるアメリカの力の存在、つまり核兵器を含む膨大な軍事力による力の政策をあくまで放棄しない態度を強調したのであります。
 総理が言う強固な日米関係の推進なるものは、新太平洋ドクトリン、フォード政権のアジア新戦略への積極的な協力を意味する以外の何物でもないが、この点について明確に答えていただきたい。(拍手)
 三木総理は、昨年の訪米で、日米安保条約の円滑かつ効果的な運用を目的として、日米軍事協議機関の設置を取り決めました。そして、近く発足を予定している日米軍事協議委員会の任務について、十二月十一日の衆議院内閣委員会で防衛庁の丸山防衛局長が、極東に出動する在日米軍基地問題の検討、米軍増援部隊派遣の際の自衛隊基地、演習場の提供を挙げ、さらに、この委員会対策を含む各種小委員会を設置することを答弁しておるのであります。これらが日米軍事同盟強化の策動でなくて何でありましょうか。
 そこで、次の諸点について総理に伺います。
 まず第一に、新設される日米協議機関では、当然、協議の結果、日本が軍事上の責任分担を義務づけられることは明白です。このように、国民に軍事上の重大な義務を負わせる新軍事協議機関の性格と任務について、日米政府間でどのような合意が行われているのか、具体的に明らかにされたい。
 第二に、この委員会の構成について、丸山防衛局長の答弁は、有事の際の輸送、緊急物資調達、治安対策などの小委員会を設置することを述べておりますが、有事とは一体どういう状況を有事とみなし、それをだれが判断するのか、輸送とはどのようなものをどこに運ぶのか、さらに治安対策とは何を対象と考えているのか。この際、わが国の安全と平和にとってきわめて重大、不可欠の問題でありますから、包み隠さず明確に答弁を願いたい。(拍手)
 さらに、新太平洋ドクトリンについての重大問題は、アメリカが新たな核戦略強化を打ち出して、シュレジンジャー前国防長官を初め米政府首脳が、朝鮮半島での核先制使用を公然と宣言していることであります。
 総理は、前国会でのわが党の追及に対し、シュレジンジャー前長官の発言手直しを取り上げて、しきりに弁護をいたしました。ところが、ラムズフェルド新国防長官は、核先制使用戦略を再確認しているのであります。この関係を総理はどう見ているのか。
 いま緊急に必要なことは、アメリカを先頭とする核大国の核独占体制を合理化し、他国への核持ち込みを野放しにした核拡散防止条約の承認などではございません。総理自身、その堅持を強調した非核三原則をいまこそ法制化して、核持ち込みを一切禁止する措置をとることであります。(拍手)この法的措置について、総理の見解を求めます。
 総理は、施政方針演説で、「協調することを自主的に決めることも自主外交である」ということを述べました。しかし、総理が協調するというのは、アメリカ主導の軍事ブロックであります。ところが、多くの世論調査が示すように、国民の七割以上は、軍事同盟からの離脱と中立を求めているのであります。総理が自主外交を口にするなら、この国民世論に従って安保条約を廃棄し、日米軍事同盟、軍事ブロックから離脱し、非同盟・中立の道を歩むべきであります。これこそ真の自主外交であります。(拍手)今日、非同盟・中立路線は、非同盟諸国会議に約百カ国近い国々が参加していることが示すように、世界の有力な流れとなっております。総理は、この非同盟諸国会議についてどのように考えているか、所見を伺いたいと思います。
 次に、教育問題、主として主任制度について質問いたします。
 主任制度の導入は、主任を新たに中間職制化して教育への国家統制を強化し、教育現場に対立を持ち込むものであって、教師や子供が互いに援助、協力し合って民主的な教育を発展させるという方向とは全く相入れないものであります。これは都道府県教育長会議でも反対や難色が示されていることによってもあらわれております。私は、父母や教師の願いに逆行する主任制度の導入に反対して、その撤回を断固として要求するものであります。(拍手)また、あくまで主任が職務命令を出せる上司でないと強弁するのなら、現行の主任さえ中間職制化してきたこれまでの指導文書類を撤廃すべきではないか。総理の明確な答弁を求めるものであります。
 次に、民主主義についての基本的態度についてお聞きします。
 総理は、政治不信の解消に真剣に努力すると誓いながら、真っ先に公労協スト問題を取り上げ、悪循環を断ち切るためと言ってストライキを犯罪視する攻撃を行いました。政府は、違法を言う前に、まず二十八年前の占領下でとられたスト権剥奪が憲法違反であることを明らかにすべきであります。(拍手)近代社会では国際的常識となっているスト権を、経営形態とは無関係に直ちに回復すること、これがいわゆる悪循環を断ち切る道であります。総理の明確な答弁を求めるものであります。
 次に、国会の民主的運営について、自民党総裁でもある三木総理に質問をいたします。
 言うまでもなく、国会が国権の最高機関としての役割りを真に発揮するためには、次の措置を最小限実行することが必要であります。
 まず第一番に、約束を守って質疑打ち切りや強行採決などの暴挙をしないこと、議員提出法案についても審議するルールを確立すること。第二に、国会の政府に対する監督権と国政調査権を尊重し、要求した資料は提出するなど、審議を尽くすこと。第三に、憲法が国民に保障する請願権を尊重し、国会の会期末に短期間に処理する悪い習慣を改め、少なくとも毎月一回以上審査すること。以上の三点を明確に答えていただきたい。(拍手)
 さらに、小選挙区制の問題について伺います。
 総理は、二十三日のテレビで、政党政治には小選挙区制が一番よい、小選挙区制によって、野党のイデオロギー的政策も影をひそめるなどと公言し、小選挙区制の導入に異常なまでの執念を示されました。改めて言うまでもなく、国民の意思が国会の議席に正確に反映することこそ議会制民主主義の最も重要な基礎であります。しかるに小選挙区制は、自民党と政治理念の異なる政党には政治参加の道を閉ざそうとする恐るべきファッショ的制度であり、議会制民主主義に対する挑戦であります。総理、あなたは直ちにこの策動をやめるべきであるが、あくまでもやろうとするのか、この本会議場で明らかにされたい。(拍手)
 なお、政治反動と民主主義の問題で軽視できないのは、戦後にとられた民主化措置を逆行させようとする動きであります。その一つとして、一部の勢力の間に、戦時中の暗黒裁判の不当判決を絶対化し、それをもとに、今日の日本共産党の幹部に対して誹謗、中傷を加え、あまつさえ、ポツダム宣言受諾後の政治犯釈放やその人権回復などの措置がなされたことを、無効だなどと称する動きがあります。これは、戦前の暗黒政治をあくまで維持するための治安維持法という世界にもまれな悪法を根幹として、日本共産党などに加えられた特高警察の残虐な迫害や暗黒裁判の不当判決などを正当化し、それらが戦後なくなったことを大いに不満とする立場を示すものではないか。これは単に日本共産党の幹部に対して向けられたものではない。戦後の一定の民主化措置を逆行させることをひそかに念願する立場と言わなければなりません。(拍手)
 日独伊防共協定を見てもわかるとおりに、反共はファシズムの前夜であるということは、歴史の教訓の示すところであります。その意味で、わが党は、このような攻撃に断固として闘うことが、日本の民主主義を擁護するためにきわめて重要なものと考えるものであります。
 最後に、田中金脈の問題について聞きたい。
 あなたは、田中金脈の疑惑について、党の名誉にかけて明らかにしなければならないと言いながら、守秘義務を口実にして、国会でさえこれを隠し、金脈の疑惑を残した人物が政界に復帰することを許そうとしているのであります。あなたは、田中金脈の疑惑を今後どう国会で解明するつもりか、責任ある見解を求めます。
 もう一つ、大企業からの政治献金の問題について伺いますが、総理は、これまでしばしば政治献金は個人献金に限るべきだと言明してきましたが、いまやこれは完全に消え去り、現在あなたが総裁である自民党は、報道されているだけでも、財界四団体に企業献金を要請し、昨年は自民党の百数億の借金のうち五十億を財界に肩がわりをしてもらい、ことしは総選挙に百数十億の企業献金を受けようとしております。これこそ金権政治と財界まる抱えの政治をつくり上げようとしているものであり、三木内閣の本質を端的に示すものにほかならないのであります。総理は、みずからの恥ずべき言行不一致に対してどのように責任を感じているか、国民の前に明らかにすべきであります。
 これをもって、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣三木武夫君登壇〕
#5
○内閣総理大臣(三木武夫君) 紺野君の御質問に答えます。
 紺野君の質問の一つの底を流れている考え方、外交はアメリカ隷属である、経済政策は大企業奉仕である、これが全体の質問の根底にあるわけで、これに対する幾つかの項目の質問もございましたので、最初にこれに答えをすることが、幾つかの御質問に答えるゆえんだと思いますので、お答えをいたします。
 紺野君の御質問を聞いて、私の率直な感じは、イデオロギーというものが先であって、そして、そのイデオロギーに対して、何かこう後から説明をつけている、そういうふうな感じであります。たとえば、アメリカに対しての隷属と言いますが、十九世紀じゃあるまいし、植民地時代ではあるまいし、今日のような国で、有力な独立国が一国に隷属するなどという国際関係はあり得ようはずはないのであります。(拍手)今日の世界は、国際的相互依存関係が深まって、人類は運命共同体に向かって進んでおるときでありますから、何か一国が一国に隷属するというようなことはない。たとえば、安保条約にしたところで、安保条約を締結することが日本の国益にかなうから、自主的な判断で安保条約を結んでおるのであって、何もアメリカに隷属するために安保条約を結ぶのではない。何かよその国と協力すればそれは隷属であって、反対すれば自主であるという考え方は、捨てなければならぬ考えだと私は思う。(拍手)
 たとえば、大企業に隷属と言われますが、自民党のような長期な政権を持ったこの責任ある政党が、大企業に奉仕しようという政治をやって、今日まで国民の支持を受けるはずはないのである。(拍手)たとえば、今日の日本の経済を見ましても、やはり中小企業というものは大きなウエートを持っておる。生産の上で五〇%、雇用の上で七八%の雇用というものが、中小企業によって行われているわけです。大企業もまた、生産の五〇%あるいは雇用の二二%、大企業も中小企業も、ともに相協力して日本の経済を支えておることを、忘れてはならぬということであります。それを、何か大企業と中小企業を分けて、大企業は悪で中小企業は善だという考え方は、日本経済の実態に即した議論ではないということを明らかにしておきたいのであります。(拍手)これはお互いに大企業と中小企業は、やはり下請関係などを通じて相互の依存関係を持っているのですから、大企業がつぶれて中小企業が生きるわけが絶対にない。(拍手)日本の経済というものは、中小企業も大企業もともに、お互いに協力しながら日本経済の発展をさすというのが、経済の実態であることを申し上げておきたいのであります。(拍手)
 そういうことを考えてみると、今回の――それに付属して、中小企業の問題にしましても、この機会に申し上げておきたいのでありますが、中小企業の――いろいろと後の質問にお触れになりましたが、大企業の進出というものに対しては、これは立法的な処置で抑えたらいいではないかというお話がございました。立法的な処置は考えてはおりませんが、しかしながら、大企業と中小企業との間に調和のとれた協力関係を持たなければなりませんから、行政指導によって中小企業の分野を確保していきたいと考えております。
 また、官公需の発注については、現在は三二・九%でありますが、できれば五〇%にこれを持っていきたい、今後努力をいたす所存でございます。
 また、大企業奉仕という点から今回の予算についていろいろお話がございました。大平大蔵大臣から後で御説明があると思いますが、しかし、今回の予算は、何も大企業奉仕のために大型プロジェクトが中心の予算ではありません。全体で三千四百七十億円、これは大型プロジェクトと言われるようなカテゴリーに入りましょうが、そのほかは、大部分のものは、住宅とか下水とか環境衛生とか公園とか離島とか生活環境整備であるし、産業基盤の整備といっても、市町村道でありますとか、港湾であるとか、あるいは農業の基盤整備とか造林とか治山治水とか、そういうふうな、産業基盤の整備といっても、日本経済の発展のためには、どうしても基盤をなすものですから、公共事業としては、こういうものに対して重点を置いたわけであって、大型プロジェクトだけを中心にして今回の予算は組まれておるということは、余りに独断でございます。こういうことで、自民党の経済政策が、自民党は階級政党でありませんから、国民全体を考える政党でありますから、バランスのとれた政策を行う、その端的なあらわれが今回の五十一年度の予算であると御理解を願いたいのでございます。
 政府の責任をいろいろ言われましたが、今日の経済的な混乱というものは、石油の大幅値上げというものに端を発したわけでございまして、政府も責任は感じますけれども、これはいろいろのこういう問題もあって、単純に今日の経済的不況を招いたのを全部政府の責任であるという独断には、政府は承服いたしかねるのでございます。
 それから、公共料金のことについていろいろお話があり、これはストップせよ、あるいは国鉄の運賃とか電報とか電話とか年金、保険、医療費の問題をお挙げになって、ストップせよということでございましたが、私はやはり、公共料金というものは、国民の皆さんは、これは安いにこしたことはないのでしょうが、もし公共料金を随時必要に応じて上げていかないで、そんなに赤字を積んでいきますと、結局は負担は国民にかかってくるわけです。そうなってくると、公共料金たとえば汽車なら汽車にしても、乗る人と乗らぬ人があるのですから、乗らない人までに全部国鉄の経営というものに対して責任を持たすということは、私は公平でないと思う。
 やはりこれを利用する人が、その利用度に応じて公共料金というものは負担をするという、何ですか、受益者負担といいますか、こうした方がいいのと、もう一つは経営体にしても、採算を度外視して、欠損が出れば、皆国の税金によってこれを穴埋めしていくんだといったら、責任というものは生まれないですね。やはり事業が採算をとれるということによって、経営者というものの一つの大きな責任というものの歯どめができるわけですね。しかし、幾らでも赤字になれば、国全体がこれは負担すればいいという考え方では、どうしても経営が安易になりますから、どうしても公共料金というものは、これは一遍に値上げをすることは物価にも影響しますから、値上げの時期とか幅とかいうものには慎重でなければならぬと思いますが、やはり必要な経費は利用する人ができるだけ御負担を願うということにしていただかなければ、これはどうしたって公共企業体というものは成り立たないのであります。どうか国民の皆さんにもこの点を御理解願いたいので、自民党は好んで公共料金の値上げをしようとするのではない。国鉄だって三兆一千億円の赤字が累積しておるのですからね。三兆一千億円の赤字を、そのまま置いて、また一年に何千億という赤字を積み重ねていったのでは、国鉄の健全な経営は成り立たぬのですから、そういう意味であるということを御理解願いたいわけでございます。
 それから独禁法の改正は、これは私は、自由経済の体制を維持するためには、やはりルールが要る、そのために独禁法の改正は必要であると考えておりますので、現在の調整といいますか、いま検討を加えておるわけですから、これが済み次第、国会に提出をして御審議を願いたい。
 そして、関係者の納得というのはだれかというような御質問がございましたが、それは党もございますし、あるいは公取もございますし、国民全体であると御理解を願いたいのでございます。
 それから物価の問題あるいはまた予算に関しては、大蔵大臣あるいは福田副総理がお答えをいたします。
 薬価の問題について御質問がございましたが、保険で使用する医療品については、薬価調査の結果に基づいて薬価基準の改正を行っておるわけで、その適正化を図っているところでございます。
 今回、予定している一部負担金の改定は、昭和四十二年度以来、据え置かれておりますので、それを、経済も変動しましたので、いわばスライド的に改正をいたしたというものでございますことを御理解を願いたいのでございます。
 老人医療の無料化の継続の問題について、私にここで明言せよというお話でございました。
 老人医療の問題というものは、老人に対しての一つの大きな社会保障的な意義を持っておることは事実でございますが、紺野君も御承知のように、大変にこの問題については議論があるのですよ。だから私は、その議論で、老人医療というものに対しての、いろいろな問題点もあるわけですから、これを実態の調査をしてみようと思う。実態の調査の結果で、この老人医療費の制度を、これを改革するものがあったら改革をいたすようにしたいと思いますので、近く実態調査をいたしたいと考えておる次第でございます。
 それから、失業対策事業についていろいろお話がございました。政府は、この失業問題を考える前に、雇用を確保したいということで、景気の浮揚のために全力を挙げておるわけですが、それでも失業になった方々、これに対しては、雇用調整給付金、あるいはまた失業対策の一つの事業、あるいは失業給付、こういうものによって、できるだけそういう人々の生活の安定を期していきたいと考えておるものでございます。また、現に就労しておる人たちの仕事は、今後とも継続をいたしてまいりたいと思っておりますが、全面的に失業対策事業を拡大するという考え方は持っておらないわけでございます。
 また、失業給付を賃金の八〇%に引き上げろというお話でございました。給付日数もふやせということでございましたが、現在、失業給付の基礎となる賃金には賞与なども含まれておりまして、実際の給付は在職時の手取り賃金の九〇%近くになっておりますので、これ以上給付率を引き上げる考えはございません。
 また、高年齢者に対しては三百日とするなど、就職の困難な者に対しては日数は長くしておりますが、さらに、この制度というものは今後とも整備拡充を図っていきたいと思っております。
 次に、何分にも質問が多岐にわたっておられますので、地方財政については、大蔵大臣に答弁を願うことにいたしまして、食糧については、これはやはりしばしば申し上げますように、食糧というものについては自給力の向上を図る。輸入食糧に対しては、輸入の安定確保を図るということで、国民の生活というものを確保していくことに対して、政府は万全を期したいと考えております。
 アメリカに依存する点が多いのでありますが、これをアメリカは何か日本を支配する武器にしておるというような御発言があったと思いますが、そういうことはアメリカにあり得るはずはないのでございまして、それは紺野君の独断に過ぎると思います。
 それからまた、日米の関係の推進というものに対して非常に御異議がございました。しかし、紺野君もお考えになってもわかりますように、日本とアメリカだけの深い関係を二国間で持っておる国際関係は、ほかにないわけです。貿易や経済の上からいっても、あるいはまた安全保障の上からいっても、共通のデモクラシーという思想の上からいっても、この日米両国だけ近い国際関係を持っておる国はないのでございまして、日米関係が安定しているということ、これは日本の平和と安定の大きな基盤である、支えである。そういうことで、私どもは、紺野君の言われるような日本外交のあり方に対しては、賛成はいたしません。日米の関係をますます強固にしていきたいと考えておるわけでございます。
 それから、日米の協議機関についていろいろとお尋ねがございましたけれども、これは、アメリカ側との間にいろいろ話し合いはしておりますけれども、まだ具体的な合意には達しておりませんので、この機会に申し上げる段階にはなっていないわけでございます。
 それから、非同盟諸国についての私の考え方でありますが、今日、非同盟諸国会議というものは、発展途上国が共同の行動とか方針を策定するような場になっているようでございまして、すでに八十カ国余を数えるに至っておりまして、第五回の首脳会議も本年八月にコロンボで開催される予定であります。やはり八十カ国もこれに加わっておるのでございまして、世界の政治、経済の上で大きな影響力を持っておるわけでございますから、今後、相互の理解を深めてまいりたいと思っておりますが、日本が非同盟・中立の国に加わる考えはございません。そういうふうな方向を日本はとる意思はないのでございます。
 また教育の問題に対して、主任制度というものについていろいろお話がございましたけれども、しばしばお答えしておりますように、やはりこの主任制度は、教育の質的な充実、内容の向上というものを願うものでありまして、教育の権力的な支配など、こんなものでわれわれは考えておるわけではないわけでございます。
 それから官公労のスト権の問題でございますが、しばしば申し上げますように、政府としても、この問題については十分専門家等の意見を聞いて、最終方針を決めたいと思っております。
 また、国会の運営について強行採決をすべきでないというお話がございましたが、われわれも何も好んで強行採決というわけではございません。どうか野党の皆さんにもお願いをしておきたいのは、国会の運営にも期限があるわけですから、いつまでも結論が出ないというのでは議会の運営は困難になりますから、自民党が単独でも採決をせなければならぬというところへ、自民党を追いやらないように、ひとつお願いをしておきたいのでございます。(拍手)
 それから、国会の御審議に対しては、政府としてはもうできる限り協力いたします。あるいは請願権の尊重ということも、これは審査を毎月一回行えということは、国会の問題にしていただきたいと思うわけでございます。
 それから、小選挙区制度に対して、何も私が騒動、策動しておるわけではないので、私は、やはり小選挙区という制度というものは非常に長所を持っておると思いますが、これは与野党間の一つの選挙という大きなルールでございますから、自民党だけで力で押し切るという性質のものではないと思っております。
 それから田中氏の問題については、国会においても、ずいぶんいろいろな場においてこの問題が取り上げられて議論もされておりますし、田中氏自身も、いずれの日か、これはみずから国民の前で解明をすると言われておるわけでございますから、これを期待しておる次第でございます。
 それから、企業家の献金ということが、私の日ごろの言論と違うではないかというお話がございました。私は、政治資金規正法というものをみずから提案をしたわけでございまして、あの政治資金規正法というものは、皆さんお読みになれば、現在の時点ではきわめて厳しい政治資金の規制であります。こういうものを私は推進しようとするわけでございますから、私が何も大企業と結んで、そうしてもう無制限な政治資金を大企業から受けようとしておるというようなものでないことは、御理解ができると思うのです。やはり企業から、献金は政党の政治活動には必要ですから受けますが、やはりその献金に対してはあくまでも節度を持つということと、自民党の政治が企業の献金によっていささかも影響を受けるものでないことを明らかにしておきたいのでございます。(拍手)
    〔国務大臣福田赳夫君登壇〕
#6
○国務大臣(福田赳夫君) お答え申し上げます。
 大規模の公共事業を起こすとか、大量の国債を発行するとか、あるいは公定歩合を引き下げて金融の緩和をいたすとか、それらはいずれもインフレ政策じゃないか、インフレ政策をとりながらどうしてインフレの退治ができるのかという御趣旨のお尋ねでございます。
 これは私は、紺野さん、大変誤解があるのじゃないかと思うのです。私どもは決してインフレ政策はとっておりません。私どもがとっているのは、インフレのない景気浮揚政策というのに取り組んでおる。そういう立場から、公共事業を起こしたり、あるいはそれが財源としての大量の国債を発行したり、また金融の緩和政策をとっているのであります。
 私は、いま日本の国の政治、経済、社会、これの全体を通じての最大の課題は何であるか、こういうことを考えてみると、とにかくインフレの基調が固まってきた、この際、景気政策をとれ、こういうことじゃないかと思うので、私どもはそのインフレのない成長政策に取り組んでおるんだということを、しかと御理解を願いたいのであります。
 確かに公債は発行しておる。この公債を抱いた財政の運営というものは気をつけなければならぬと思います。しかし、その発行する公債が、これは適正な規模の財政の裏づけをなすものであり、国民経済全体の中における位置づけや、これは過大のものでないという限りにおきまして、また同時に、財政政策運営の上におきまして、公債の完全消化ということが、これが実現されるという限りにおきまして、これが直ちにインフレになるというようなおそれはないのです。インフレを頭から恐れるという考え方では適正な財政運営はできない、かように考えます。
 それから次に、大型プロジェクトを根本的に再検討すべきじゃないかというお話でございます。
 私もそういう考えでございます。政府におきましては、五十一年度を初年度といたしまして新しい長期計画を立てる、そのことにつきましてはすでに発表しておりますが、その新長期計画のねらうところは、成長中心から生活中心だ、そしてインフレのない成長を実現するのだというところにあるわけでありまして、事実、その内容を見ましても、いままでと長期計画の内容というものは大変変ってきます。つまり、下水道、上水道、簡易水道、福祉、それから教育、農林漁業、さようなものに対する公的資金の配分というものをかなり厚くしておるわけであります。これが生活中心だと言わぬで何であるか、こういうふうに思うのでありますが、正真正銘、成長中心から生活中心という心組みを持ちまして経済運営に当たってまいりたい、御安心願いたい、かように思います。(拍手)
    〔国務大臣大平正芳君登壇〕
#7
○国務大臣(大平正芳君) 第一の御質疑は、公債政策についての御質問でございまして、この問題は、いま副総理からもお話がございましたけれども、当面の経済の状況におきまして増税をお願いするわけにもまいらない、といって中央地方を通じまして行財政の水準を下げるわけにもまいらないという状況でございますので、しばらくの間、公債の発行によりまして財政を賄わしていただくということでございますけれども、しかし、これをいつまでも続けるつもりはないのでございまして、できるだけ早く公債からの脱却を図ってまいることを財政運営の基本にいたしてまいる所存でございます。
 しかし、この公債発行につきましては、あくまでも市中消化の原則を堅持してまいりまして、これがインフレを招来することのないように、十分注意してまいるつもりでございます。
 それから第二に、そういう公債発行よりも、むしろ財源をあさりますといろいろあるではないかということで、若干の御提案がございましたので、お答えをしておきたいと思います。
 第一は、会社臨時特別税をやめる必要はないじゃないかということでございますけれども、この税金は二年前に臨時的な措置として立法されたものでございまして、この立法が予想いたしておりましたような事態が解消いたしたわけでございまするので、これを廃止するのは当然と心得ております。
 それから第二に租税特別措置でございますけれども、企業関係の租税特別措置、多岐にわたっておりますけれども、今国会に臨むに当たりまして、政府として鋭意これを見直しまして、その約三分の一程度の改廃をいたしたつもりでございます。紺野さんは百五十億円の増収にすぎないではないかという御指摘でございますけれども、これは初年度のことでございまして、約千億円の増収を平年度は確保できるつもりでございます。
 仰せになりまする給与所得控除の頭打ち復活でございまするとか、法人税の還付の停止であるとかいう御提案でございますけれども、私は、税制のあり方といたしまして、いずれにも賛成いたしかねるのでございます。
 それから大企業の内部留保の規制でございますが、臨時非課税積立金増加税というようなものを設けるのが適切でないかという御提案でございまするけれども、私は、企業を健全に維持していく上から申しまして、また企業会計原則というものを尊重してまいる上から申しまして、そういう御提案は、せっかくでございますけれども、賛成いたしかねるものであります。
 また、年金の財源に充てるために法人の特別税を設けるべきでないかという御提案もございましたけれども、ただいま日本の法人税負担は、先進諸国に比較いたしまして決して安いわけではない。バランスがとれた状態でございまするので、そういう特別税を設けるつもりはございません。
 それから歳出の削減につきまして、石油の備蓄でございますとか、警察、公安調査庁の経費でございますとか、そういったものを削減すべきでないかということでございますけれども、にわかに賛成いたしかねます。
 それから地方財政でございますが、地方財政の交付税率の改定というようなことは、私はいまのような過渡期には行うべきではないと考えておるわけでございます。
 また、財政投融資、とりわけ政府資金の使用につきましては、地方債の消化その他国民生活に密着した方向に使えということでございますが、これは紺野さんの御指摘のとおり、政府も、地方債の消化に一兆四千二百億円、国民生活環境の整備に財政投融資計画におきまして六六・一%を充当いたしておりますことを御留意いただきたいと思います。
    ―――――――――――――
#8
○副議長(秋田大助君) 竹入義勝君。
    〔副議長退席、議長着席〕
    〔竹入義勝君登壇〕
#9
○竹入義勝君 私は、公明党を代表いたしまして、三木総理の内政、外交にわたる方策について質問をいたします。
 まず指摘したいことは、現在の経済社会の混迷と国民生活の不安と不公平の拡大についてであります。これは明らかに、戦後三十年にわたる自民党政治の破綻以外の何ものでもありません。
 一九六〇年代以降の政府・自民党の施策は、いわゆる高度経済成長政策のGNP至上主義による生産拡大一辺倒でありました。したがって、経済成長の中心に重化学工業を置き、大資本による効率的な経済成長のために他の一切を切り捨て、特に、税の優遇措置、産業基盤造成のための公共事業推進など、大企業優位の政治的配慮を行うという調和を失った政策が実行されてまいりました。
 重化学工業立地のために海が埋め立てられ、経済効果を上げるために、生産性向上につながらない公害の防除施設は見送られ、いわゆる公害のたれ流しが公然と行われることになりました。労働力の不足を補うために、農村の労働力が都市に吸収され、これによって人口は都市に集中し、近郊農地は工場と住宅によってつぶされ、国際分業論による主要食糧の輸入拡大など、事実上、日本農業は切り捨てられる状況になりました。
 海の汚染と海岸の埋め立てによって沿岸漁業は壊滅し、政府の経済政策の失敗と、高度成長政策が本来内包するインフレ刺激と、企業の独占、寡占、カルテル、買い占め売り惜しみなどの大企業の経済ルール無視の行動によって狂乱物価が引き起こされました。この結果、富の偏在と所得格差による社会的不公正は拡大し、国民、特に社会的弱者は一方的に犠牲を強いられてまいりました。
 石油ショックを契機として、政府の政策は、百八十度転換する総需要抑制政策に一転をいたしました。ここでも政府は、高度成長期の経済構造、社会構造をそのままにして、経済抑制一本やりで極端な引き締め政策をとったのであります。この結果生まれた不況の深刻化、企業倒産、失業の激増、しかも一〇%前後の物価上昇など、これまた社会的弱者に一方的な犠牲が強いられるという悲惨な状況を生み出しているのであります。
 この高度成長政策と総需要抑制政策は、政策目的それ自体は百八十度違うものでありますが、その政策実行に当たって受ける犠牲者の層は、常に低所得者や福祉対象者であり、企業では中小零細企業であるということであります。
 自民党政治の誤りと罪は、実にここに存在すると言っても過言ではないと思うのであります。(拍手)
 政策選択に当たっては、いかに善なる政策であったとしても、必ずそれにはマイナス面がつきまとっていることを考慮に入れ、政策実行に当たっては、そのマイナス面をいかに補い少なくするかを忘れてはならないのであります。(拍手)
 高度成長政策、総需要抑制政策などにおいて、自民党政治が、この政策実行に当たって当然とらなければならなかったマイナス面を補う政策を、全くと言っていいくらい放置したこと、これによって国民の多くに大きな被害を与え、不安に追い込んだその責任は、厳しく追及されなければならないのであります。(拍手)
 さらに加えて、わが国は今後、好むと好まざるとにかかわらず低成長時代となり、わが国の財政は、かつての高度成長時代のような税の自然増収など、財政上の余裕が望めない窮屈なものになることは当然であります。したがって、限られた財源による政策選択はきわめて限定されることは当然でありますから、おのずから政策選択に優先順位が付されてしかるべきであります。
 大事なことは、その政策選択が、従来の自民党政治がとったような大企業、大資本優位の立場ではなく、福祉社会建設と社会的弱者の立場でなされなければならないのであります。(拍手)この基本認識は、きわめて常識的かつ妥当なものと私は考えておりますが、総理の御見解を承りたいのであります。(拍手)
 さて、当面日本経済が解決を迫られている課題の第一は、不況の克服と景気の回復、インフレ再燃の防止であります。
 三木内閣は、この緊急課題を解決するための経済成長率を五・六%と予想し、そのために個人消費を前年度比一三・七%増、民間設備投資七%増、輸出二二%増と見通されておられるようであります。しかし、景気回復のための輸出の増大、民間設備投資の増加、公共事業の拡大による財政支出の増加、さらに、個人需要の増大の四つの手段のうち、五十一年度予算案においては、産業基盤造成のための大型プロジェクトを中心とする公共事業の拡大のみに重点が置かれています。
 もちろん、政府の財政措置として、輸出と民間設備投資には直接手が伸びないことは承知いたしております。当面、世界的不況の中での輸出の拡大は期待できず、また、生産設備の稼働率七五%という現況では、民間設備投資の増加も期待できません。景気の下支えに大きなウエートを持ち、国民総生産の五〇%を超える個人消費の喚起は、政府の施策が可能であるにもかかわらず、何ら措置を講じていないのは全く不可解であります。
 所得減税はしない。本年の春闘で、仮に経団連が言う一けた台の賃金上昇であれば、物価上昇分を差し引くと、実質上昇ゼロ。さらに、公共料金値上げ、社会保障での負担増等により、個人消費はかえって萎縮こそすれ、拡大は不可能ではありませんか。政府は、減税、社会保障の充実など、個人消費の喚起策を放棄した理由を明確にしていただきたいのであります。(拍手)
 公共事業は、波及効果の少ない大型プロジェクト中心となっていることは、きわめて不可解であります。五十一年度予算の大型プロジェクトは、高速道路、本四架橋、東北・信越新幹線など、きわめて限定された地域に施行されることによる地域的偏差があり、鉄鋼、セメントなどに集中する経済的波及効果の少ない大型プロジェクトの側面から、業種間に大きな偏差が見られ、他産業への経済波及のための時間的ずれが大きく、特に大企業優先で、中小零細企業はその恩恵が直接及ばず、現在直面している景気対策としては、その需要創出効果が偏るなどの疑問点が少なくありません。むしろ、政府が積極的に、超過負担の解消、地方債の大幅発行、一定範囲内での地方債の利子負担などの地方財政の立て直しを大胆に行い、公共住宅、学校、保育所、下水道、福祉施設、中小河川の改修、地方道路など、国民生活関連の公共事業を地方自治体を通じて優先的に施行する方向を採用すべきであると思うのであります。これによって、社会・公共資本の向上と、地方自治体を通じての施行によって、窮迫する中小企業にその仕事を与え、しかもその事業は、地方偏在から全国に均てんするものとなるでありましよう。
 この底辺からの景気回復と多面的な経済波及効果こそ、いま求められているものであります。この見地から、政府は、公共事業の実施に当たって、産業基盤造成のための大型プロジェクトから国民生活関連公共事業に重点を大幅に移すことを考えてはどうか。総理の明確な見解を承りたいのであります。(拍手)
 また、本年度予算案に対する私のもう一つの心配は、景気回復が行われないまま再びインフレが襲いくるのではないかということであります。それは、国鉄、医療費、電報電話などの公共料金や一般製品の値上げ、特に赤字国債の大量発行、金融超緩和からくる過剰流動性等に起因するものであると考えます。
 そこで私は、物価情勢のきわめて悪化要因となる公共料金値上げに対し、政府は慎重な態度でなければならないと思いますけれども、その具体的方途をお示しを願いたいのであります。(拍手)
 続いて、赤字国債の大量発行の問題に触れたいと思います。
 今日の財政事情の中では、赤字国債の発行はきわめてインフレ再燃につながる危険な要因を含んでおり、われわれはこれを安易に認めることはできません。しかし、景気対策上万々が一避けられないとしても、その管理政策と財政再建のための方途を具体化することがきわめて重要であると指摘せざるを得ないのであります。つまり、赤字国債の発行に当たっては、いかにインフレを招くことなくそれを行うかがこの問題の出発点であります。
 現在のような、御用金的割り当てでの市中銀行引き受けによる消化、一年後の日銀引き受け、通貨膨張というインフレ要因を抱えたやり方ではなく、個人消化を完全にすることのできる公社債市場の整備、国債金利の引き上げを含む発行条件の改正など、市中消化の徹底について、総理は何ゆえこれを実行の方向へと努力をなさらないのか、お伺いをいたしたいのであります。(拍手)
 さらにまた、償還計画、償還財源が明確にされずに大量の赤字国債を発行するのは、世代間の富の分配にかかわる問題であり、きわめて重要であると考えますが、総理はいかがお考えになっておられるか、明らかにしていただきたいのであります。
 また、赤字国債の五十二年度以降の発行についての見通し、並びに五十二年度以降赤字国債を発行しないための財政再建策について、この際お伺いをいたしたいのであります。
 さらに、財政再建に当たって、間接税の増税や付加価値税の導入などを企図されていると伝えられておりますが、政府の見解を明確に問いたいのでございます。(拍手)
 また、今後、金融政策の機動性や民主化を高めるために、金利の自由化、あるいは日銀政策委員会、金利調整審議会の改組を初めとする金融制度の改革を図っていくことが、きわめて重要な課題であると考えますが、総理の見解を承りたいと思います。
 また、きわめて重要な課題の一つは地方行財政問題であります。
 現在、極度の窮乏を告げる地方自治体の財政危機の原因が、過度の中央集権的な行財政構造にあることは周知のとおりであります。そのために、現行の租税体系、国、地方の財源配分方式の財政制度や、地方行政における国の機関委任事務などを抜本的に改革すべきであります。
 公共事業の超過負担は一向に解決されないばかりか、公営企業財政及び国民健康保険財政の悪化は、ますます深刻化しているのであります。
 さらに、地方税は、国税より一年おくれて不況の影響を受ける関係上、五十一年度の地方税はさらに減収が予想されます。それにもかかわらず、政府は、地方交付税交付金を前年度当初予算に対して約六千億円もの削減を強行するなど、この状態では地方財政は再起不能の状態まで追い込まれることは明らかであり、住民の生活不安をますます増大させるものでしかありません。
 総理は、この地方財政の危機を一体どのようにとらえておられるのか、当面の措置並びに将来の展望について明確な見解を承りたいのであります。(拍手)
 次に、第二の課題でありますが、長年の高度成長政策と、その後のインフレ、不況によって拡大された社会的不公正の是正と、それに連動されなければならない福祉政策の推進についてお伺いをいたしたいと思います。
 総理、あなたもお認めになっているように、わが国には相当深刻な社会的不公正や富の偏在が現存いたしております。これらの是正については、最小限、次のことを早急に実現ないしは実現の方向に向かって誠意ある第一歩を踏み出すべきであります。
 社会的不公正の第一は、住宅、上下水道、病院、都市環境などの国民生活関連施設の貧困さと、生産効率第一、経済躍進のための産業基盤整備という、社会資本充実面における極端な格差であると言わなければなりません。
 先進諸国と比較した場合、たとえば西ドイツ、イギリスでは、GNPにおいて現在はわが国より下位でありますが、国民生活関連の公共施設水準は、ともにわが国の二倍であります。だれの目にも明らかなように、わが国の富の大部分は大企業とその周辺に偏在し、一般国民の資産と、国民がともに利用できる公共資産はごく僅少でしかありません。
 建設省の調査結果によれば、大都市地域を中心に約一千万世帯の国民が住宅の困窮を訴えております。一方、公共住宅の家賃も、公団住宅の三DK、傾斜家賃方式の場合、当初家賃五万九千六百円、それが十年後には何と十二万円にもなるという状態になっております。大企業が保有している土地のうち、全く利用されていない土地だけでも、何と一千万人以上が住む東京都の面積より広いのであります。しかも、この土地取得の過程における土地ブームは、今日において高騰した地価を残したままで、一生まじめに働き続けた国民がささやかな住宅も持てず、また持ったとしても、その借金を払うために、責め立てられる思いで働かなければならないのであります。住宅は福祉充実の基礎条件であります。このような現状は、いかに過去の政治が国民生活を軽視してきたかを象徴的に示すものであります。(拍手)
 家があすの活力を生み、また人間形成の場であることからも、総理は、国民世帯の三分の一の住宅困窮をいかに考え、いかに対処しようとするか。わが党は、かねてから公共住宅を中心にその解決を図るべきであると要求してまいりましたが、住宅問題とともに、その表裏一体となっている土地問題について、総理の考え方を明確にお示しをいただきたいのであります。(拍手)
 第二は、所得分配における不公正の是正、特に高度経済成長推進のために体系化された大企業、有資産者優遇の租税特別措置の撤廃など、不公平税制の改革はいまや急務であります。
 たとえば、利子・配当所得者の場合、源泉分離課税、配当税額控除などの特例制度があるため、五十年度のみで利子・配当所得者から六百六十億円、特定の政策目的実現のために大企業等の税を優遇、軽減した租税特別措置が存在することから二千六十億円など、また、交際費課税、有価証券取引税が低いことから、大企業や有資産者に対して、それぞれ一千億円にも及ぶ優遇措置となっております。
 このような所得の分配に大きな不平等があるにもかかわらず、その再分配機能を持つ税制における優遇措置によって、不平等の拡大が行われているのであります。これらの是正についていかに取り組むか、これまた明確な御答弁をいただきたいのであります。(拍手)
 次に、社会保障について伺います。
 総理は、「経済的、社会的に弱い立場の人々の生活の安定と福祉を図ることには、来年度予算でも特に配慮しました。」と述べられましたが、私は、五十一年度の福祉関係予算は、昨年来の福祉見直し論に悪乗りした福祉後退予算であると言わざるを得ないのであります。
 たとえば、老齢年金のアップは、日額にしますと一日五十円、生活保護では、東京の標準世帯で一人当たり日額七十八円、社会福祉施設入所者の生活費は、いずれも一日百円に満たない、こういうものであります。今日の物価情勢の中で、実質的には福祉後退予算であります。
 また、政府は、従来からの、成長なくして福祉なしの論理から、財政難を理由に高福祉、高負担をあおり、高負担だけを国民に強要しているのであります。
 年金について言えば、国民年金において、五十一年四月には千四百円、五十二年四月には二千二百円に引き上げるとしておりますけれども、それでも、十年年金で月額二万五百円、五年年金で一万五千円にしかならず、安心して生活できる年金とはならないのであります。この低い年金水準と、いまもって年金権に結びつかない脱漏者もあり、この小手先の改正では年金制度の改革とは言えないのであります。
 国民が要望する年金制度の改善とは、すべての国民が老後において生活できる年金を受けたいということであります。この際、わが党が主張するように、ナショナルミニマムとして国民基本年金構想を具体化して、年金の統合整備を図る考えはないか。
 医療保険については、受益者負担を強調して初診料等を引き上げたが、これは受診抑制であるばかりでなく、病人を抱えた家庭の経済を一層悪化させ、重大な社会不安を醸しており、われわれは断じて認めることはできません。(拍手)
 保険の目的は、不測の疾病に備えて保険料を納付しているものであり、受益者負担論のみでは国民を納得させることはできません。
 医療保険制度の問題である医療給付の格差と保険料負担の不公正是正を図るため、医療保険制度の統合整備を図る考えはないか、この点も総理の明確な答弁を要求いたします。(拍手)
 不公正是正での第四は、独禁法の改正であります。
 総理は、今国会に再度改正案を提出すると言われますが、その内容は、公正取引委員会の権限の縮小など、七十五国会において衆議院で全会一致で修正通過した改正案から後退する内容を持つものであると伝えられておりますが、その点について、再度提出される総理の所信をこの際明確に伺っておきたいのであります。(拍手)
 日本経済が解決を迫られている大きな第三の課題は、高度成長から低成長への移行期に当然発生する種々の摩擦、すなわち二百万とも三百万とも言われる余剰労働人口や、昭和五十五年には二百二十万人もの失業者が発生すると言われている問題、激増が予想される中小企業の倒産、莫大な生産設備の余剰等につき、どう予測しておられるのか、説明を承りたいのであります。
 また、こうした問題とあわせて、省資源型、知識集約型産業への移行などの産業構造の変革に対し、政府はどう対処しようとしておられるのか。
 さらに、主要食糧の自給率向上のための日本農業の再建、漁業、林業の発展的確保など、いわば農林漁業は民族生存のための基礎産業と位置づけるなどの基本方針のもとに、計画的に進めるべきであると思いますが、これらの諸点について明確にお答えをいただきたいのであります。(拍手)
 さて、大きく第四の課題は、高度成長から低成長への移行の際、日本の進む方向、将来への展望と、どの部分がいつ、どのように変革され、その結果、制度や枠組みがどんな形になるのか等のビジョンとプログラムを、できるだけ明確な形で国民に提示されなければならないと思いますが、まずその点について、総理はいかなる見解をお持ちなのか、お伺いをいたしたい。
 これまで持続してきた秩序や制度が無原則に変革を余儀なくされるときには、社会は混乱し、国民は戸惑い、不安がふくれ上がるのが常であります。それを正しくリードし、国民の安寧を確保することが政治の重大な使命であると私は信じておりますし、これまでもそのつもりで努力をいたしてまいりました。
 いま日本が直面している変動と混乱は、いずれも構造的なものであり、それを短期間のうちに解決することは、きわめてむずかしいと私は認識をいたしております。したがって、それらを展望した中・長期ビジョンを明示し、それを実現するための国民的合意を形成しなければならないと思います。
 こうした中・長期ビジョンがこれまでもなかったなどと、私はあえて申しません。しかし、それらは内容も貧弱であり、しかも実行責任を伴わないペーパープランの気休めにしかすぎなかったのであります。ここらあたりにも、国民や企業等が、政府の経済政策運営に対し、不信がつのってきた原因があるように思われます。
 今日、日本の混乱と激動が続く中で、経済計画への要請は高まっております。したがって、総理、あなたにまず尋ねておきたいことは、五十年代前期経済計画が、これまでの計画案のようにいいかげんなものではなく、今後の日本の進む方向を指し示したものであり、それを中期的に計画化したものであると国民は受け取っていいのか、責任あるお答えを願いたいのであります。(拍手)
 また、この五十年代前期経済計画については、その実施、運営、そして結果に対し責任をとっていただきたい。今後は結果責任を明確にするための制度化を確立すべきであると考えますが、三木総理の御見解を承りたい。(拍手)
 今日の困難な経済情勢の中で、中小企業はきわめて厳しい環境に直面していることは言うまでもありません。仕事量の激減や大企業の力任せの中小企業分野への進出、親事業所の不法な下請代金の支払い遅延等の打撃によって、いまや中小企業は瀕死の状態に追い込まれているのが実情であります。
 ところが、政府自民党は、経済政策の失敗によって、みずから中小企業を苦境に追いやった責任にほおかぶりし、来年度政府予算案に見られるように、中小企業の救済を置き去りにし、大企業本位の景気対策に重点を置いているのであります。
 私は、中小企業を今日の事態から救済し、中小企業の経営の安定化を実現するには、抽象的な景気回復後の循環論を述べる前に、このための具体策を提示し、その実行を遂行する以外に道はないと思うのであります。(拍手)
 わが党は、その意味で、まず、中小企業の仕事量を確保するためにも、来年度はもちろん、本年度内にも、中小企業向け官公需の増大を図るべきことを主張したい。また、さきに述べたとおり、公共事業を地方自治体を通じるなど、中小企業向けの事業量増大に直接結びつけるプロセスを採用すべきことを要求するものであります。同時に、下請企業振興協会の下請あっせん業務を強化すべきであると考えますが、総理の決意を伺いたいのであります。(拍手)
 また、今日大企業は、不況下であっても一定の利潤を確保するために、威圧的な中小企業分野への進出を画策しているのであります。財界は、分野調整を法律で規制されることを恐れてか、自粛を申し合わせているようでありますが、今国会において、大企業と中小企業の分野調整を円滑に行う法律の制定が必要であると思いますが、政府にその用意があるかどうか、明らかにしていただきたいのであります。(拍手)
 さらに、深刻な問題になっている下請代金支払い遅延について、具体的にどのような対策をとろうとしているのか。下請代金支払遅延等防止法の運用強化とともに、下請代金のうち現金部分の支払いを法定化するなどの考えがあるかどうか、この際伺っておきたいのであります。
 中小企業は、年度末を控えて、金融、税制面でもさらに厳しい条件を迫られようとしているのであります。中小企業の法人税軽減税率適用区分の引き上げ、税率も多段階方式に改めるなど税負担の軽減や、個人事業者の税負担の軽減、さらには、小規模事業者生業資金として無利子無担保の金融制度の創設を初め、政府三機関の金融枠の拡大など、政府に年度末融資や延納期間の延長などきめ細かな対策を要求するものでありますが、総理の所信を伺いたいのであります。(拍手)
 昨年の通常国会における総理の所信表明に、教育は政争の外に置かなければならないとし、民間文相永井氏を起用した理由を明らかにしました。わが党は、過去に教育が政争の具とされてきたことに対し、大きな危惧を抱いてまいりました。しかしてその総理の決意を見守ってきたのであります。
 ところが、昨年末の主任制省令化という事態を見、本年に入り、教育問題を選挙スローガンとする旨の新聞報道がなされたのであります。政争の外に置くということは、政党の主義、主張を超えた話し合いの中で、お互いに納得する形をつくり、その努力を重ねる以外には行えないことであります。
 もし、総理の言う政争の外とは、自民党政府の教育政策に文句を言うな、反対するなということであれば、独善以外の何物でもありません。総理の言う政争の外とは、一体何を意味しようとしているのか、この際、明確にしていただきたいのであります。もしも政争の外に置く決心があるならば、主任制度の一応白紙撤回を行い、話し合いを改めて積み上げる必要があると考えますが、この点について、総理はいかがお考えか、伺いたいのであります。
 総理が強調する教育の機会均等も、実情においては、本人の能力にかかわりない教育外的な経済的、社会的な条件によって、それが保障されておりません。昭和四十九年の学生生活調査結果でも、低所得家庭の子弟が大学から締め出されつつあることが示されており、さらに、本年は、国立大学、私立大学の授業料、入学金等の学生納付金の大幅値上げによって、こうした機会均等が阻まれている傾向は、ますます著しくなっているのであります。機会均等の確保のためには、育英奨学金の充実、拡大を初め、私学助成の拡大などの、教育外条件による不均等を補完する方途を実現すべきでありますが、総理の見解を伺いたいのであります。
 また、高校は国民共通の教育機関となり、国民の多くは全入制を望んでいるのであります。ところが、五十一年度予算では、高校新設補助金はたった四十億円、これでは高校一校分の建設費程度であります。地方財政窮迫のとき、高校新設は進まず、深刻な社会問題となっていくでありましょう。教育は美辞麗句のみでできるものではありません。総理はどのように国民の期待にこたえようとするか、明確に伺いたいのであります。(拍手)
 次に、外交、防衛問題について質問をいたします。
 現下の国際政治は、ますます複雑多様化の度合いを深めております。こうした中にあって、わが国は、資源や食糧の大部分を海外に依存しており、アジアはもとより、世界の平和なくしては存立し得ないことは言うまでもありません。したがって、平和のためにわが国がどうあるべきかという点こそを、わが国外交の基礎に据えなければならないと私は思うのであります。
 日本政府のこれまでとってきた国際経済協力は果たして正しかったか、南北問題に取り組む姿勢はどうであったか、さらに、アラブ諸国、アジア・太平洋諸国、第三世界諸国との相互理解、連帯と協力に、積極的かつ誠実な態度で臨んできたと言えるでありましょうか。また、海外における日本企業のあり方は適切であったか等々の諸問題を思い起こすなら、残念ながらきわめて否定的な答えしか生まれてこないのが現実であります。
 複雑化する国際社会の中で、主体性もなく、大国間の抗争や対立のもとで右顧左べんするような外交は、かえって混迷を深めるだけであることを、私は三木総理に厳しく指摘したいのであります。
 いまこそ、わが国が古めかしい冷戦構造や軍事同盟にしがみついた発想と訣別し、平和のための長期的展望に立った自主平和外交を確立し、推進することこそ、わが国に求められている最大の外交的課題であると思うのであります。
 私は、当面の外交、防衛の若干の問題にしぼって総理の見解を伺いたいのであります。
 第一に、日米関係についてであります。
 日米関係の重要さは、私も否定するものではありませんが、そうなればこそ、真の平和と友好の日米関係確立のためにも、軍事同盟的な日米安保条約の軍事的側面を除いた日米友好不可侵条約に締結し直すことが必要であると思うのであります。日中、日ソとともに友好不可侵の関係を結ぶ構想のもとに、わが国の平和保障を確保することは、まさに検討に値するものと思いますが、この点、総理はいかがお考えか。
 第二に、日中平和友好条約の締結交渉は、すでに議論の段階ではなくして、総理の決断にかかっているというべきでありますが、これに対する総理の決意、また、その決意のもとに日中友好平和条約を締結するべき時期を明確にしていただきたい。同時に、この際、覇権問題を含めたこれまでの日中交渉の経過、双方の見解の相違等を報告をしていただきたいのであります。
 第三に、北方領土返還、日ソ平和条約の締結に対する見通しと政府の態度を、この際、再度明らかにしていただきたい。
 第四に、朝鮮半島の平和を口にするだけではなく、平和実現のためには日朝関係の改善しかないと思いますが、その決意があるかどうか、また、いかなる条件が満足すればこれに取り組むつもりであるのか、その点についても伺いたい。
 第五に、領海十二海里宣言を早急に行う考えがあるかどうか、この際、この本会議を通して明確にしていただきたいのであります。また、この際、無条件で非核三原則を堅持することを確約をしていただきたいのでありますが、この点についても明確な御決意を承りたい。(拍手)
 第六には、政府は核軍縮に取り組む決意が決して十分であったとは言えないのでありますが、米ソ両国に、より強い態度で核軍縮を要求すべきであります。特に、核兵器先制不使用協定の締結、アジア・太平洋非核地帯の設置を積極的に推進する考えはあるのかどうか、この際、明らかにしていただきたいのであります。
 さらに第七として、総理は、アジア諸国、ASEAN諸国、大洋州諸国との関係強化を図ると言っておられますが、具体的には何を行おうとしているのか。また、あわせて、経済協力のあり方並びに南北問題に取り組む政府の具体的な見解を、この際、伺いたいのであります。
 三木総理は、施政方針演説において、国の守りの基本として四点を挙げ、量より質を重視し、基盤防衛力を整備しようとする新しい防衛構想を推進するとしておりますが、この中身を明らかにせず言葉を並べても、国民の理解は得ることはできません。量より質の防衛力とは何か、基盤防衛力とは何か、新しい防衛構想とは何か、ここに明確に示していただきたいのであります。
 さらに、最近、防衛産業界におきましては、不況や、諸外国からの引き合いなどを背景として、武器輸出を求める動きが活発となっております。こうした動きは、きわめて危険な産軍複合体の形成への道につながるものでありますが、政府は、この問題に対してどう対処しようとするのか。わが党がかねてより提案し、本院にも提出しております武器輸出禁止法案を成立させるべきであると考えるものでありますが、政府の明確な答弁を要求するものであります。(拍手)
 以上、総理に質問を続けてまいりましたが、このような歴史的転換期の中で、多くの社会的矛盾が一挙に噴出し、国民生活は極端に疲弊しており、その改革は急務であります。
 当面する政治革新、すなわち、政治的、経済的、社会的な諸問題を解決するためには、緊急な課題に優先順位をつけ、国民の積極的な参加と発言を求め、綿密かつ大胆に実行する政治のリーダーシップを必要とするのでありますが、総理、現在のあなたは、残念ながら、この一年間の実績を見ても、常に言葉あって実行なき宰相であり、今後もその域を出ることに期待を持つことはできません。であるならば、混迷からの脱出を願う国民にとっては、三木内閣はもはや迷惑この上ない存在であり、ますます政治への不信感を深め、混乱に拍車をかけることになるでありましょう。
 私は率直に申し上げたい。今日、人心一新を期するために、総理、あなたのとるべき道はただ一つ、衆議院の解散、総選挙によって国民に信を問うべきであります。(拍手)
 三木総理の決断を要求いたし、この点について明確な答弁を求め、以上をもって私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣三木武夫君登壇〕
#10
○内閣総理大臣(三木武夫君) 竹入君にお答えをいたしますが、竹入君の御質問は約四十項目、三十九項目あるわけでございまして、どうしても答弁というものは、そう長く答弁をするわけにもまいりませんので、要点だけを答弁することをお許しを願いたいわけでございます。
 第一の問題は、これからの政治の方向として、福祉社会の建設、社会的弱者の立場でなければならぬというお考えを述べられて、私の考え方も問われたわけでございますが、高度経済成長に対する評価については、竹入君と私と違いがございますが、これからの政治の方向としては、福祉社会の建設に向かって努力をしなければならぬということは、同じように考えておるわけでございます。
 それから、景気浮揚という今日の問題について、減税やあるいは社会保障の充実などで個人消費を喚起せよということでございましたが、減税という点については、今日の場合には、減税というものは貯蓄に相当部分回るわけです。だから、景気の浮揚対策として減税をするということはとらなかったわけでございます。むしろ、景気浮揚のためには、公共投資のように、すぐにそれが需要の増大を呼ぶような、そういう方が非常に効果的であると考えましたので、公共事業を中心にしたわけでございます。減税は行いませんでした。
 それから、社会保障については、五十一年度予算でも、厳しい財政事情のもとではございますが、予算全体の伸びが一四・一%でありますが、社会保障関係は二二・四%の伸びでございまして、これは相当な力を入れたことはおわかりを願えると思うわけでございます。
 また、五十一年度の予算が大型プロジェクト中心であるということでございましたが、これはやはり実際をよく御検討願いますならば、住宅とか生活環境施設などに対しては特に力を入れてあるわけでございまして、また、産業の基盤整備と申しましても、農業の基盤整備であるとか、あるいはまた漁港の問題であるとか、あるいはまた治山治水であるとか、とにかく日本の経済の発展の基礎になるような問題に特に力を入れたわけでございまして、今度は、大型プロジェクト中心の公共事業というものに一番の重点がかかっておると考えることは、少し事実と違うように思います。
 それからまた、インフレの再現があるのではないかという御懸念でございましたが、今回の公債、七兆三千億円近くになるわけでございますが、相当需給のギャップもございますし、また、貯蓄の順調な伸びなどを見まして、この程度の公債を発行することによって、即インフレとは考えていないわけでございます。
 公共料金の値上げなども、しばしば申し上げますように、公共料金は安いにこしたことはないのでございますが、その公共企業体が採算のとれるような経営をいたしませんと、公共企業体としては健全な責任のある経営はできぬわけでございますから、受益者に対して応分の負担を願うという、いわゆる受益者負担の原則というものをやはり貫いていきたいと思っておるわけでございます。
 しかし、国鉄とか電信電話とか、こういうものの値上がりによって、今年度一%ぐらいの消費者物価へのはね返りがあると考えておるわけで、それでも、五十一年度の経済見通しである年間の物価上昇率八%の中におさまると考えておるわけでございまして、公債の発行あるいは公共料金の改定というものがインフレを招くとは考えておらないわけでございます。
 また、その中で個人消化に力を入れろというお話でございましたが、個人消化の場合は、一挙に増加するということはなかなかむずかしい面もありますが、今後とも、竹入君御指摘のように、個人消化には力を入れてまいりたいと思っております。
 また、その償還計画というものでございますが、これは借りかえを行わないわけですから、六十一年度には全部償還をする。その公債を減債をいたしますのにはこのような方法でやりますということも明らかにいたしておるわけでございます。
 それから、財政というものに対しての見通しでございますが、これは予算審議の過程において、できるだけ明らかにしたいと存じておる次第でございます。しかし、できるだけ政府は、特例公債のようなものに依存しないで財政がやっていけるような状態に、一日も早く復帰したいと願っておるわけでございます。
 また、将来、間接税、ことに付加価値税の導入についていろいろお話がございました。日本は世界で、アメリカを除きますと、間接税が一番少ないわけです。ヨーロッパでは間接税が中心と言うてもよろしかろうと思う。そういうことで、日本の税体系の中で直接税と間接税というものはいまの状態でいいんであろうか、これは検討に値すると思います。もし間接税というものをもう少し増徴することが、税の体系からもいいのだということになれば、付加価値税などは確かに研究すべき税制の一つだとは思いますが、これはやはり重大な問題でありますので、今後税制調査会などにおいて十分御審議を願いたいと思っております。
 金利の問題についてもお触れになりましたが、やはり金利は、預金の金利についてはいま直ちに自由化に踏み切ることは問題がございますが、預金金利を除いておおむね自由化されておる状態でございます。
 それから、地方財政でございますが、今年は、竹入君も御承知のように、地方交付税及び地方債については特別の措置を講じて、地方財政の運営が今年は支障を来すというようなことはございません。
 しかし、私はこれではいけないと思うので、やはり今後、地方財政のあり方というものは、国との業務分担といいますか、そういうふうなことも含めて、負担とか業務とか、こういうものに対してもう一遍考え直して、地方自治体のあり方というものは、今後十分検討すべき課題を含んでおると考えます。今年は処理しましたけれども、将来確かに問題点があることは事実でございます。
 それからまた、竹入君は、非常に住宅の建設が立ちおくれておるではないかというお話がございましたが、政府も同じような考え方を持ちまして、これから住宅に力を入れていこう。五十一年度を初年度として、第三期になりますが、住宅建設の五カ年計画というものを策定したわけです。全体としては八百六十五尺その中で公的な資金によるものは三百五十万戸でありますが、これもやはり、いままでのようなものでなくして、相当質をよくした、こういう住宅の建設というものを、今後公共事業の中においては特に力を入れて、今後少なくとも五年の間に、住宅で非常に困っておる人たち、そういう人たちをなくしたいというような考え方で、この計画を今後進めてまいりたいと思うわけでございます。
 また、大企業の持っておる土地というものに対して、いろいろ御指摘になりました。政府は、税制の整備とか、土地関連融資の抑制であるとか、国土利用計画法の施行などによって、地価も少し安定してまいりましたが、やはりこの国土利用計画法というものを適確に運用いたしますならば、未利用地の有効な利用というものは促進を図れると思っております。そうして大都市地域における住宅地の供給促進策を講じて、国民のために住宅地をできるだけ確保するようにしたいと考えておるわけでございます。
 また、税制についていろいろお話しになりましたけれども、昭和五十一年度の税制改正に当たっては、租税特別措置については全般的な見直しを行い、企業関連の税制を中心として大幅な整理合理化を行った上、税というものは国民の公平を確保する上においてきわめて重要な問題でございますから、税の公正化ということに対しては今後とも特に力を入れてまいります。
 また、竹入君は、公明党の年金に対するナショナルミニマムという案をお出しになりましたが、これはやはり私も、いまの年金制度というものは全面的に検討すべき時期に来ておる、こういうことで、政府におきましても、関係審議会を初め関係する各界の御意見も聞いて、年金制度というもののあり方については十分検討を加えたいと思っております。
 また、医療保険制度についても検討をして、今後あらゆる制度に対して、いろいろとこれを整備することができないかということで検討を加えてまいりますが、これはなかなかむずかしい問題を含んでいることは事実でございます。
 独禁法については、これはできるだけ国民の納得のいくような案をつくって、再度提出をするということにいたしたいと考えております。しかし、いま、いつということをお約束はできませんが、できるだけ作業を急いで、そして再提出できるような状態に持っていきたいと思っております。
 それから中小企業についていろいろお話がございました。中小企業というものは、日本は欧米諸国と違って、日本の経済に占めるウエートというものは非常に大きいわけですから、中小企業というものが、経営が安定しないと日本経済は本当に安定してこないわけですから、今年度の予算においても、融資であるとか、あるいは小規模事業、あるいはまた中小企業の近代化、高度化というものに対して予算的な配慮をいたしましたが、今後とも、中小企業というものが安定してやっていけるような、非常に基盤の強い中小企業の育成に努力をいたしてまいりたいと思っております。
 また、産業構造の変革についていろいろお話がございましたが、一つには、日本が石油というものにこんなに依存しておるわけですから、もう八〇%エネルギー源は石油であって、その石油はほとんど日本は産出をしないというわけでございますから、やはり省資源、省エネルギー政策というものは推進していかなければならぬと思っております。
 また、これからは、日本人の持っておる優秀な頭脳というものが、これがやはり日本のこれからの産業発展の大きな原動力になるわけでございますから、知識集約型と言われておる、日本人の知恵をしぼって、付加価値の高いようなものをつくるという方向に、日本の産業というものは高度化されていかなければならぬものだと思うわけでございます。そういう産業構造の高度化のための諸施策というものは、積極的に進めてまいる所存でございます。産業構造審議会より「産業構造の長期ビジョン」というものを報告されており、やはりこの問題は日本の将来の大きな課題だと思うわけでございます。
 食糧の自給率の向上を図らなければならぬということは、竹入君と同じように考えております。まあ中小企業と同じく、日本の農業というものが経営が安定していかないと、日本の国の安定にならぬわけですから、農林漁業などに対しては、日本安定の基盤である、こういう考えのもとで今後とも力を入れてまいりますが、その大きな政策の柱は、生産基盤の整備、生産対策の強化、それから非常に活力のある担い手を育成するということを基本として、各般の対策を講じてまいりたいと思うわけでございます。
 それから、将来の長い長期ビジョンのお話がございましたが、昭和五十年代の前期経済計画として中間答申を受けておりますが、この春には、この中間答申でなしに、今後の五年間における経済運営の基本的な指針というものが最終計画として経済審議会から出ることになっておりますので、長期ビジョンはこういう点もにらみ合わせて考える必要があると思うわけでございます。
 それから、大企業と中小企業の分野については、先ほどお答えしたように、これは事業の分野というものを立法的な措置で決めようとは考えておりませんが、現行法の運用によって適切な処置をとりたいということでございます。
 それから、下請代金につきましては、下請代金の支払い遅延を防止するために、立入検査を強化する等、下請代金の支払い遅延防止法の厳正な運用に努めてまいりまして、この下請代金の支払いの遅延というものが下請業者に対しては致命的な影響を与えるわけでございますから、今後下請代金の支払いの促進を図ってまいりたいと思うわけでございます。
 また、中小企業の法人税の軽減税率適用区分の引き上げ等、いろいろ税のお話がございましたが、中小企業に対しては種々の特別措置を講じてきているわけでございまして、今後とも中小企業の税負担の軽減ということには努力をいたします。いままでもこの点については配慮してまいったわけでございます。
 また、教育についていろいろお話がございました。私は、教育というものを政争の外に置くべきであるという考え方で今日まで参ったし、いまも変わらない。どうも日本の教育というものが政治の争いの場にあるということは、教育の環境が静かでなくなるわけでございますから、そういう点でやはり政争の外に置かなければならぬということは、教育に対する強い私の方針でございまして、主任制度というものも、これは教育の内容、質的な充実というものを図ろうとするものであって、そして、これで教育を権力的に支配しようなどという考え方は持ってないわけですから、どうかこの点については、その主任制度を置いた政府の考え方というものを素直にひとつ受け取っていただきたいのでございます。
 育英奨励事業については、今年度も前年度に比べ四十八億円増額いたしまして三百七十八億円計上したわけでございまして、この教育の機会均等のために育英奨学金の役割りというものは大変大きな役割りを持っておるわけでございますから、今後ともこれを充実してまいる所存でございます。
 それから、高等学校は、もう九二%の人が高等学校に入学するようになってきて、日本の義務教育化してきておるわけでございまして、高校の校舎の増設というものに対しては、これは人口急増地帯などではやっぱり大きな問題を投げかけておるわけでございまして、今年は四十二億の政府の補助を出したわけで、竹入君はこれに対して、たった四十二億ということでございましたけれども、しかし、これはいままで出してないものを初めて新設をしたということでございますから、そういう意味で、これは政府としては一つの大きな政策の決定であると評価を願いたいのでございます。
 それから、日米の関係についていろいろお話しになりましたが、私どもは、日本の安全を確保するためには自衛隊が必要である、自衛隊だけでなくして、国際集団安全保障、日米安保条約、こういうものと両々相まって、日本が他国の軍事的脅威というものに対して国を守り得るという考えでございますから、この安保条約を廃棄して日米不可侵条約というものを締結するというふうに変えようという考え方は持っておらないわけでございます。
 日中間では、日中の共同声明に基づきまして、できるだけ早く平和友好条約を結びたいと思っております。現在、日中間にそんなに大きな考え方の隔たりがあるとは思いませんので、これはできるだけ早く条約締結にこぎつけたいと思っております。
 日ソ関係については、日ソの、領土の返還を願わなければならぬわけでありますが、この領土関係、領土問題を解決して平和条約を締結したいというのが政府の基本的考え方で、この基本的考え方に沿って、今後は日本とソ連との間に、相当時間もかかると思いますけれども、しんぼう強き外交交渉を続けてまいりたいと思うわけでございます。
 朝鮮半島については、われわれは朝鮮半島の平和の実現というものに対しては非常な関心を持ち、そして、できるだけ朝鮮半島の平和が実現するような国際的環境をつくることには、われわれとしても努力をしなければならぬと思っておる次第でございます。
 それから、そのほかに、国の守りの防衛問題について、いろいろお話がございました。この防衛問題については、わが国がみずから保持しなければならぬ防衛力を基盤的な防衛力と申し上げておるので、それは、いたずらに防衛力の量的な増大を求めるのでなく、小規模な侵略事態に対して即応力を持つ、全体とした、均衡のとれたものを基盤防衛力と呼んでおるわけでございます。
 また、武器輸出については、しばしば申し上げてございますように、武器輸出の三原則を設定しておるわけでございまして、この方針を変更する意図は持ってないわけでございます。
 それから、核の問題についてお話がございましたが、ぜひとも核拡散防止条約はこの国会で批准を願いたい。そして、その批准をもとにして、竹入君の御指摘のような、核軍縮というものに対しても強く訴えていく日本の道義的な力というものは、それによって生まれると思うのでございます。
 それから、非核の地帯設置については、アジア・太平洋でそういう地域を設けてはどうかという御意見のようでございますが、まだアジア・太平洋でそういう地帯を設けられるような国際的環境の現実的な条件は整っていないと思うわけでございます。
 また、日本の領海の問題につきましては、近く開かれる海洋法会議の決定によって、日本はこの問題をあわせて考えていきたい。現在のところ、領海を十二海里にしたいという政府の方針は決まっておるわけでございますが、それだけでは済まないわけですから、これからの世界のこの海洋の秩序というものを考えたときに、あるいは経済水域二百海里という問題もございますし、そういうものをあわせて、海洋法会議の結果にまってこういう問題を処理してまいりたいと考えておるわけでございます。
 多岐にわたっておりますが、大体御質問のあった個所はこれに触れたと思いますが、南北問題のお話がございましたが、南北問題に対しては、この問題はやはりこれからの大きな問題でございますから、日本は、発展途上国の民生の安定と経済の発展のためには、二国間とか多国間の協力を積極的に推し進めてまいるわけでございます。
 それから、最後に解散の問題のお話がございましたけれども、解散は、竹入君も御承知のように、十二月で任期が切れるわけでございますから、それまでの間には解散を行って、すべての問題について国民の審判を受けたいという考え方でございます。
 先ほどの紺野君の御質問の中で、便宜置籍船増加によって、日本の船員が非常に排除を受けておる、こういうことで、これを規制せよというお話がございましたが、紺野君も御承知のように、便宜置籍船というものに対しては、現在のわが国の輸出入の輸送でも二五%の便宜を受けておるわけでございまして、海運の分野においても、国際的にも海運自由の原則というものがとられておって、わが国が一方的にこれを規制するということは問題がありますので、規制することは不適当だと考えておるわけでございます。
 竹入君の御質問、大体お答えをしたと思いますが、もしお答え漏れがあればお答えをいたします。(拍手)
    ―――――――――――――
#11
○議長(前尾繁三郎君) 春日一幸君。
    〔春日一幸君登壇〕
#12
○春日一幸君 私は、民社党を代表し、わが国政が当面する内政、外交上の重要問題について、政府の対策、方針をただしたいと存じます。(拍手)
 われわれは、ここに激動の七〇年代も第七年目を迎えました。平和と繁栄を希求する人類の願望はいまだ満たされず、世界も日本も、いまなお政治的に経済的に長くて暗いトンネルの中にあり、かくてわれわれは、戦後かつてない試練の関頭に立たされております。
 現に、米中ソの三極構造のパワー戦略は虚々実々に展開されて、国際政局は依然として不安定の様相をたたえております。このような国際情勢に対処して、わが国の外交並びに安全保障政策はいかにあるべきか、いまこそ政府は想を新たに決意を固めて、ここに当面する諸課題について、確固たる態度、方針を固め、自主外交を積極的に展開すべきであると考えます。
 まず、その第一は、日中平和友好条約の締結を促進することであります。
 この条約は、日中友好の前進のために、最も速やかに締結されなければなりませんが、本日なおそれを妨げているものは、あの覇権条項の位置づけの問題であるとされております。一体、この覇権条項に対する政府の方針はどのようなものか。
 昨年十一月七日、宮澤外相は、参議院予算委員会で覇権問題について四項目の原則的理解を示し、すなわち、一、覇権反対は特定の第三国に向けられたものでないこと、二、覇権反対は中国との共同行動を意味しないこと、三、これは世界のどこでも覇権を求める試みには反対するものであること、四、覇権反対は国連憲章の精神と同じものと理解することという、これらの趣旨が中国側に確認されれば、この覇権条項は条約本文に明記してもよいとの見解を示されておりますが、これは政府の方針としてこのまま受けとめてよろしいか、この際、三木総理より改めて言明していただきたい。また、宮澤外相のこのような見解に対する中国側の反応はどのようなものでありますか、あわせて伺っておきたいと存じます。
 なお、この覇権条項の処理をも含めて、政府は、日中平和友好条約締結の時期をいつごろにめどを置いておるか、その他、本条約締結に関する政府の態度、方針を三木総理よりお示し願いたい。
 第二の問題は、ソ連に対し速やかに北方領土の返還を求めることであります。(拍手)
 このほどのグロムイコ・ソ連外相の訪日を機会に、北方領土問題は、解決に向かって何らかの接近が図られるものと大きく期待しておりましたが、この問題が一切サイレントにされて、何ら発表の行われなかったことはまことに遺憾に存じます。ここに、北方領土の処理については、あの戦争状態終結宣言が署名された直前の一九五六年九月二十九日、日本を代表する松本俊一全権委員と、ソ連邦を代表する時の第一外務次官グロムイコ氏との間に、両国間の外交文書によって、すなわち、日ソ「両国間の正常な外交関係が再開された後、領土問題を含む平和条約締結に関する交渉を継続する」と、このことが厳然として確認されているところであります。しかるに、今回の日ソ会談の共同声明に、この肝心の領土問題に関する事項がことさらに隠蔽された理由は何か、われわれはとうてい理解できません。
 およそ北方領土問題についての法理論や歴史的事実の論証は、すでに出尽くしております。北方領土の返還なくば、なお戦後は終わったとは言えません。しかるに、この日ソ間の最大の懸案が依然として解決されず、昨今においては、日中平和友好条約の締結に対する牽制の態度、また、ソ連漁船の日本近海における恣意的な活動など、これでは国民の対ソ感情は勢い冷却の方向に傾斜せざるを得ません。政府は、この際率直に対ソ友好の真意を披瀝し、速やかに日ソ平和条約の締結を目指し、まず歯舞、色丹、国後、択捉、四島の一括返還を求めるため、総理がみずから身を挺してソ連首脳との間に強力なる交渉を展開なさるべきであると思うが、総理の御所信のほどをここに改めて伺っておきたいと存じます。(拍手)
 第三は、日米安保条約の運営上の問題点を是正することであります。
 日米安保条約は、アジアの平和とわが国の安全について、有効にその機能を果たしておりますが、それにしてもこの条約は、なお、その事前協議制度の明確化とともに、その過大な在日米軍基地を整理縮小することが、緊急に解決を要する重大な課題となっております。
 すなわち、在日米軍基地は現在百三十九カ所に上り、特に沖繩には過大な基地群がいまなお惰性的に存在し、その整理縮小は遅々として進まず、これが住民福祉を大きく妨げております。第六十七国会における沖繩施政権返還協定批准に当たっての附帯決議にも徴し、政府は積極的に基地の整理縮小を米国に要求すべきであると考えるが、政府の方針はどうか。また、事前協議制度におけるわが国の発議権、拒否権は、条約上有権的に確立しているかどうか、あわせて総理より御答弁願いたい。
 第四は、朝鮮問題を平和的に解決するために、わが国は進んでそのリーダーシップを発揮することであります。
 歴史的、地理的に見て、朝鮮半島の平和は日本にとって密接なつながりを持つものであります。この見地から、われわれは、朝鮮半島の平和維持と、さらには南北朝鮮の平和的統一を心から期待するものであります。
 そこで私は、この際、わが国の今後とるべき朝鮮政策について、以下具体的にその大綱を提示し、これに対する政府の見解を伺いたいと存じます。
 その第一は、わが国は、韓国との関係を十分に配慮しつつ、北鮮との接触をも図ること。第二は、朝鮮半島の緊張緩和を促進するため、中ソ両国に働きかけること。第三は、南北朝鮮の国連への同時加盟を促進すること。第四は、南北の国連加盟とともに、わが国は北朝鮮を承認する方針に立ち、その場合、アメリカが北朝鮮を、中ソが韓国を承認するというクロス承認を実現するよう努力すること、第五に、国連軍解体後の朝鮮半島に日米中ソを含む新たな安全保障機構の樹立を推進すること。
 わが党は、以上の五項目をわが国の朝鮮政策の主柱としてこれを積極的に推進すべきであると考えるが、政府の御見解はいかがでありますか。あわせて、朝鮮問題に対する政府の態度、方針を総理よりお示し願いたい。
 次は、わが国の安全保障政策について質問いたします。
 そもそも、政治の目的は国民福祉にあり、国民福祉の基盤をなすものは国の安全保障にあることは申すまでもありません。しかるに、わが国会における安全保障論議と言えば、野党の多くは、これを日米安保条約の危険性、侵略性を部分的に摘出することによって、これを安保廃棄論に結びつけることに傾倒し、また自衛隊については、その装備や演習、研究をとらえて、その攻撃性を非難することに終始し、一方、これに対する政府・与党は、常に紛糾をおそれて、ことさらに本格的な防衛論議を回避し続けてまいりました。
 かくて、シビリアンコントロールという最高の責任を担う国会は、その機能を十分果たし得ないままに、自衛隊の規模はいつしか無性格に増大し、また在日米軍基地は、ともすればアメリカのアジア戦略によって一方的に使用される危険性をも内包する状態に置かれております。
 ここに、ベトナム以後におけるアジア情勢は、わが国がその安全保障をこのようなその場しのぎのあいまいな状態にとどめ置くことを許すものではありません。いまこそ政府は、国政の大本とも言うべき国の安全保障政策について、その構想を国民の前に提示し、国会の論議を通じ、もって国民的合意の形成に当たるべきであると思うが、総理の見解はいかがでありますか。(拍手)
 そのためには、まず国会に防衛委員会を設置することが先決の要件であります。(拍手)私はこの認識に立って、昨年七月末、総理訪米に先んじて持たれた党首会談において、このことを提議し、総理もまた、これに全面的に賛成されました。
 総理は、あのとき私との間に交わされたこの公的な約束を実行するために、速やかに所要の措置をとらるべきであると思うが、これに対する総理・総裁としての御方針はいかがでありますか、責任ある御答弁を願いたい。
 次は、財政問題について質問いたします。
 その第一は、明年度予算案についてであります。
 すなわち、予算総額の二九・九%に当たる七兆二千七百五十億円を国債に依存するということは、戦時にも匹敵するほど、これは赤字財政もまさに極端をきわめたものであり、何としても納得することができません。
 言うまでもなく、赤字国債の発行は、これ以外の手段をもってしては緊急不可欠な財源を確保できない場合に限ってのみ許される非常措置であるべきであります。
 そのためには、まず既往の歳出歳入を徹底的に洗い直し、行政費、補助金、その他万般にわたって極力歳出の削減を図るとともに、不公正税制を是正して財源の確保を図るなど、これらの措置が徹底して断行されなければなりません。政府は、この点についてどのような措置をとられたか、総理よりこれを具体的に御説明を願います。
 なお、この際伺っておきますが、政府は、新規財源確保の手段として、新しく付加価値税の五十二年度創設を目指して、近く税制調査会に諮問することになったと伝えられるが、その真相はいかがでありますか。かねがね論及されているとおり、付加価値税なるものはまさしく大衆課税であり、わけても中小企業者に及ぼす影響は最も大きく、これは国民生活を著しく圧迫する悪税中の最たるもので、さればこそ、このような課税は、かつて国家存亡の非常事態においてさえも、これが導入は厳に差し控えられてきたものであります。
 これらの理由にかんがみ、政府は付加価値税の導入は今後とも断じて行うべきではないと考えるが、政府の方針はどうか、総理より明確なる御答弁を願います。(拍手)
 次は、経済改革の主柱とも目すべき独禁法の改正について伺います。
 独禁法の改正は、前通常国会において不幸にして廃案にされてしまいましたが、今後の安定成長路線を確保するためには、この際、独禁法を強化することが必須不可欠の要件であります。私的独占、不当、不公正な取引方法のごとき、弱肉強食的な経済活動は、今後絶対に許してはなりません。これを防止するには、現行法の不備を是正し、公正取引委員会の権限を強化することが必要であります。
 政府は、独禁法改正案を今国会に必ず再提出されますか。また、それは公取の機構を弱体化したり、独禁法を逆に骨抜きにするようなものであってはなりませんが、ここに独禁法改正に関する総理の御決意とその改正案の骨子を承りたいと存じます。
 次は、食糧、農業政策について伺います。
 従来の選択的拡大を柱とする基本法農政は、その結果として、主要食糧の自給を極端に低下させ、中核的農業者の近代化意欲を減退させるとともに、それを農業の域外に流失し、兼業化を増大させるなど、これは明らかに失敗でありました。主要食糧の国際的な先行き不安に照らしても、これからの農政は、総合的な食糧自給度の向上を明確に位置づけることが肝要であり、そのために必要な農地、漁場の拡大、確保に努め、その高度利用を実現するよう、この際、諸制度の改革と、それに要する財政の裏づけを行わねばなりません。
 わが党は、この見地に立って、いち早く食糧基本法の制定を提唱してまいりましたが、わが党は、このような政策転換によって、湿潤に恵まれた国土に、適地適産による計画的生産を推進し、日本農業の真髄を発揮して、農林漁業の健全なる発展と、あわせて食糧の安定的確保を図るべきであると考えるが、(拍手)政府の見解はどうか、あわせて総理より今後の農政に対する構想をお示し願いたい。
 次は、中小企業政策について質問いたします。
 経済的弱者の立場にある中小企業は、ここに長期にわたる深刻な不況の犠牲者となり、現に倒産が続出しております。このような中小企業の危機を救い、進んでその安定と振興を図るためには、従来の政策のほかに、根本的施策として、それは、中小企業の事業分野の確保法、下請取引の適正化法などの制定とともに、銀行法を改正してその資金の確保を図るべきであると思うが、総理より、これに対する政府の対策、方針を伺いたい。
 次は、税制改正について質問いたします。
 政府は、本年度予算において、所得税減税を見送るばかりか、逆に住民税均等割りと固定資産税を引き上げ、また、一方では、自動車関係諸税の引き上げを行おうとしております。五十年度は九・九%、五十一年度は八%という消費者物価の上昇予想を立てながら、物価調整減税すら行わないというならば、それは実質的に増税の結果を生じ、国民生活にそれだけの重圧が加わります。かくては国民の個人消費はますます圧縮され、景気回復は一層後退することになりましょう。
 政府は、この際、民生の安定を図るとともに、景気浮揚に資するため、少なくとも一兆円規模の所得減税を断行すべきであると思うが、これについて再考慮する意思はないか。(拍手)
 また、自動車関係諸税、すなわち揮発油税、地方道路税及び自動車重量税の増徴は、それはことごとく自動車利用者に転嫁されるものであり、他の物品に比べ余りに課税の公正を損なっております。この現状に照らし、この上さらに自動車関係諸税を増徴することは、政府として慎むべきであると思うが、再検討する意思はないか。
 以上の二点について、総理より御見解をお示し願いたい。
 次は、教育問題について質問いたします。
 人間の幸福は、物質的福祉だけでなく、精神的福祉が充実されなければ、満たされるものではありません。戦後の日本は、あたかもやせた豚から太った豚になることだけを志向したような傾向があり、そのゆえに精神の荒廃が進み、いまやわれら国民は、物心両面にわたって重大な危機に立っております。この危機を克服するには、改めて人間モラルの原点に立ち返り、そこから教育行政を再出発させるべきであると考えます。
 わが国の教育体制の現状を見るに、それは学校教育のみが教育であるかの観を呈し、ために、学歴偏重社会の出現と相まって、人間形成に不可欠な家庭教育や社会教育がほとんど顧みられておりません。しかも、学校教育においては、生徒、学生の知識だけを対象にして選別が行われ、また、一方においては、教育の場がしばしば政争の具に用いられ、かくて、これら教育制度のあり方が相絡んで、国民モラルの荒廃の原因となっております。
 政府は、速やかに教育改革の理論と原則を明確にして、この際、教育と政治を分離して、教育は司法、立法、行政の三権に準ずる国の第四権として文部省から独立せしめ、これを国民的規模に立つ中央教育委員会のごとき機関にゆだねることとし、国はそれに必要な機構を新しく組織すべきであると思うが、このような構想に対する総理の御見解はどうか。なお、この際、総理の教育改革に関する具体策をあわせて伺っておきたいと存じます。
 次は、福祉政策について伺います。
 政府は、明年度予算案で、厚生年金、国民年金などでその給付の増額を図っているとはいえ、その反面において、これら福祉掛金の増徴とともに、健康保険の初診料や入院費用の自己負担を大幅に引き上げていることは、これは歴然たる福祉の後退であります。所得税減税ゼロの中で、受益者負担という名目でこのように各種の社会負担が増額されることは、福祉は常に改善、充実を目指して前進させるべきもので、途中で後退さしてはならないとする社会福祉の原則的戒めにもとるものであるが、政府はこれらについて改めて考慮する意思はないか、総理より御答弁願いたい。
 次は、行政改革について伺います。
 わが国財政は、いまや中央、地方ともに膨大な借金を抱え、その運営はますます困難を深めてまいりました。ここに、国民生活の安全を確保しつつ、行財政の健全なる運営を図る道は、もはや、行政費の節減を目指し、この際、思い切って行政機構の大改革を断行するしかありません。(拍手)この行政改革は、多年にわたるわが国政の懸案であり、国会においても行政簡素化がしばしば強調されてまいりましたが、いまだ根本的な改革は何一つ実現しておりません。のみならず、各省庁のなわ張り争いによって、行政機構は逆に肥大化の傾向にあります。もはや、冗長な行政機構をこのままにして、膨大な国費をこのために消耗させておくことは許されません。いまこそ政府と国会はこの問題を真剣に考え直すべきであります。(拍手)
 また一来年度予算案において七兆円近くに上る各種補助金についても、そのあり方には幾多の問題があります。政府は、これを総点検し、思い切って整理または廃止の断をとるべきであります。
 また、現在、政府関係の公団、公社は、その数百十三の多数に上り、これまた、役人の天下り領地として整理縮小が叫ばれて久しいのに、いまだそれらしい実行はなされておりません。政府は、この際、この公団、公社に対しても、整理統合の大なたをふるうべきであります。(拍手)
 なお、この際、総理は国会運営改革の試案をまとめられ、この問題は、きのうきょう、議運においても問題になったようでありまするけれども、とにもかくにもその中で、「行政部に対する国会の監督機能を高めるため、国会に行政監察委員会の制度を新設する」ことを提唱されておりますが、これは今後どのようにして具体化される御所存か、以上、まとめて総理より御答弁願います。(拍手)
 次は、物価政策とともに、公営企業の経営合理化について質問をいたします。
 インフレはやや鎮静の方向に向かいつつあるとはいえ、一面、物価値上がりの趨勢は根強いものがあります。政府は、かねて物価安定が最大の政策課題であると言いながら、昨年は酒、たばこ、郵便料金の値上げを強行し、さらに本年は、国鉄運賃、電信電話料金、国立大学授業料、それに塩の専売価格などの大幅引き上げを断行しようとしております。ここに、公共料金の値上げは便乗値上げを誘発し、物価の上昇を刺激する要因を持ち、その波及効果の大きさは容易にはかり知れないものがあります。政府が真剣にインフレと闘う決意ならば、この際は、まず政府みずからが公共料金を凍結して、不退転の方向を国民に示し、その上で諸般の物価政策をこれに並べて強化すべきであると思うが、政府の態度は全くそれとは逆であります。
 特に納得できないものは、あの国鉄の大幅な運賃値上げ要求であります。すでに国鉄運賃は、昭和五十年度に特急料金など三二%の値上げを強行し、相次いで本年度はざらに五〇・四%の運賃引き上げを求め、明五十二年度においても、その上に引き続き五〇%以上の運賃値上げを行うことを予定しているとのことであります。まことに国鉄当局の態度は、相手は日の丸式の典型で、現に従業員の管理統率もろくに行えず、企業としての合理化も生産性の向上もほとんど投げやりで、その経営赤字は借金や国の助成におんぶして、その上、鉄面皮にも何はばかるところなく毎年大幅な運賃値上げを要求するとは、彼らは一体その公的責任を何と心得ておるか、まさに憤激にたえません。(拍手)
 いまや国鉄の経営建て直しは緊急焦眉の急務であるが、政府は、この際、国が政策上負担すべきものはこれを負担することとし、一方、合理化すべきものはちゅうちょなくこれを整理することとし、速やかにその経営の近代化、合理化を断行させるべきであると思うが、政府の方針はどのようなものか。(拍手)
 また、わが党が昨年来提唱しているこの公営企業体合理化審議会設置に対する政府の見解はいかがでありますか。
 以上の諸点について、この際、総理より責任ある御答弁を願いたい。
 次は、公企体労働者のスト権問題と違法スト処分について質問をいたします。
 公企体関係労働者のスト権については、わが党は、労働基本権と公共の福祉との調和を図る見地に立って、一定の規制のもとにこれにスト権を付与すべきであると考えます。
 したがって、国は、この場合、当事者能力や経営形態の問題に籍口していたずらに解決を遷延することなく、速やかに公労法を改正して、これが全面的解決を図るべきであると思うが、これに対する政府の見解はいかがでありますか。
 しかしながら、国労、動労、全逓などによってしばしば繰り返されてきたあのようなストライキは、明らかに違法ストであって、事情はいかがあれ、断じて許されてはなりません。(拍手)現に、昨年十一月二十六日から十二月の三日にわたって行われた国労、動労のゼネストによって、あのとき、全日本の交通は麻痺し、通勤、通学は足を奪われ、私鉄は悲鳴、怒号の混乱の中でけが人を続出し、滞貨となった野菜、魚介類は腐敗し、わけても日給労働者らは就労できずして糊口を断たれ、特に中小企業者は致命的な打撃を受けて、塗炭の苦しみをなめさせられました。まさに反国民的暴挙と断ぜざるを得ません。(拍手)
 これに対し、特に注目すべきことは、あのような無謀な違法ストの渦中にあって、同じ立場にある鉄労、全郵政らの組合員が、遵法の精神に徹し、断固として変わりなくその職務に精励されたことであります。(拍手)
 政府は、この両陣営のこのような対照的なあり方を何と見られておるか。もしそれ、法治国において、法律が無視され、それがじゅうりんされて何のとがめも受けないならば、その国の秩序はやがて崩壊し、かくて国民生活は大いなる混乱に陥ることになりましょう。(拍手)
 一殺多生の剣なるものは、政道のとうとき戒律であります。政府は、この際、「法律を誠實に執行し、國務を總理する」との憲法の条章に従い、厳然として関係当局を指揮し、違法ストの処分を断行すべきであると思うが、この際、総理より政府の態度、方針を明確にお示しを願いたい。(拍手)
 次は、昨今、雑誌「文芸春秋」を初め、その他マスコミを通じ報道せられ、現に深刻な国民的疑惑を呼び起こしている、いわゆるリンチ共産党事件について質問をいたします。(拍手)
 申すまでもなく、本件は遠く既往にさかのぼる事件とはいえ、本日この問題が公然とかつ深刻に論議せられ、なおその真相が不明であるということにかんがみ、本件はいまだに今日的な問題であります。(拍手)
 すなわち、評論家立花隆氏は、このほど雑誌「文芸春秋」に「日本共産党の研究」と題する論文を発表し、その中に、昭和八年十二月二十三日、時の日本共産党中央委員宮本顕治氏らによって行われた、あのいわゆるリンチ共産党事件を取り上げ、それを浩瀚な記録に基づいて論述されておりますが、これに対し日本共産党は、これを反共デマ宣伝ときめつけ、現に「赤旗」を中心に全国的な一大キャンペーンを展開されているのであります。
 この論争の焦点は、あのとき、時の日本共産党中央委員小畑達夫氏の査問に当たった宮本顕治氏らにリンチ行為があったのか、それともそのような暴力行為は全然なかったのか。また、小畑達夫氏はそこで死亡したが、それは、医学博士古畑種基氏の死因鑑定に示されたような、リンチによる外傷性ショック死であったのか、それとも小畑達夫氏は査問やリンチに関係なく、異常体質のために忽然と死んでしまったのか、問題はこの二点に集約されるのであります。(拍手)
 立花氏は、これについて数々の資料と証言に基づいて検討された結果、それは当時、裁判所が判決で示したとおり、そこではリンチが行われたものであり、小畑氏の死因は傷害致死であるとの判断を立て、これに対し日本共産党は、リンチはなかった、そして小畑氏の死因は特異体質によるショック死であると抗弁されているのであります。いずれにしても、真実は断じて一つのものでしかあり得ません。(拍手)
 すなわち、裁判所の判決に示されたものが真実であるならば、日本共産党の抗弁はうそであり、日本共産党の主張が真実ならば、あの判決は宮本氏らに無実の罪を科したことになりましょう。すなわち、裁判所のあの判決は真実に即した正当なものであるのか、それとも日本共産党が主張するがごとき、それは当時の特高警察によってでっち上げられ、かつ、その言う天皇制裁判によるでたらめな判決であったものか、このことは、本件がいかに戦前の司法機関の責任に属するものとはいえ、問題の重大性にかんがみ、その真相をこのままあいまいにしておくときは、本件に対する国民の疑惑はますます大きくなるばかりであります。(拍手)
 したがって、国はこの際、ここに論争の焦点となっているあのリンチ共産党事件なるものの事実関係を、改めて国民の前に明らかにする必要があると思うが、政府の見解はいかがでありますか。
 次に、この際、特に政府の責任において御解明願いたい問題点は、昭和二十年十二月二十九日公布せられた政治犯人等の資格回復に関する勅令第七百三十号と、その後宮本顕治氏に与えられた東京地検による公民権回復の措置との関係についてであります。
 すなわち、勅令七百三十号はその別表二において、刑法第二編の罪に該当する者は、その項の適用から除外された者以外はこの勅令による資格回復の対象にしないことを明記しております。
 すなわち、宮本顕治氏が受けた確定判決に示されたその罪名は、治安維持法違反、監禁、監禁致死、監禁致傷、傷害致死、死体遺棄等の観念的競合であって、これは勅令七百三十号が資格回復の対象外に置いているものと見なければなりません。(拍手)このことは、宮本顕治氏が昭和二十年十月九日、網走刑務所において刑の執行停止を受けた後も、昭和二十二年五月二十九日、東京地検より改めて公民権回復の証明書を受けるまで、この間、その公民権は回復されていなかったことに徴して明らかであります。
 問題は、この昭和二十二年五月二十九日、東京地検が宮本顕治氏に交付した公民権回復の行政措置についてであります。
 以上の経緯を踏まえて判断するとき、この東京地検のとった資格回復の措置は、一体いかなる法律に基づいて行われたものかと、ここに重大なる疑義を抱かざるを得ません。(拍手)もし、これが法律、命令の定めによったものでないとするなら、それは、当時の連合軍司令部が、宮本顕治氏の復権について特に別個の指令を発したものか、それとも、そのほかに何か特別の事情があってのことか、この事実関係を把握することなくしては、本件に対する疑義を解消することはできません。
 したがって、政府はこの際、わが国政の権威のためにも、また、本件の実態を国民が正確に判断するためにも、その経緯と真相を厳格、公正に国民の前に御説明願いたい。(拍手)
 また、本問題の重要性にかんがみ、国会は国権の最高機関たるの立場に立って、われわれはなお調査を進める必要があると考えるので、この際、宮本顕治氏に対する裁判所の判決原本及び同氏が網走刑務所において刑の執行停止を受けることになった医師の診断証明書、並びに同氏に交付された公民権回復に関する文書等の写し、その他本件に関連を有する連合軍司令部より発行せられた関係文書等を、一括して国政調査用資料として本国会に提出を願いたい。(拍手)
 以上三点について、三木総理より明確なる御答弁を願います。
 最後は、三木総理の政治姿勢に関連して、この際、改めて御所信のほどを伺っておきたいと存じます。
 そもそも、あなたは金脈問題で倒れた田中内閣の後を受けて、あのとき、対話と協調による新規まき直しの改革路線を推進することを言明して、総理の座につかれました。しかるに、その後一年余のあなたの足跡を顧みるとき、そこには余りにも公約の破綻が目立ち過ぎます。
 スタグフレーションのもと、不況は依然として深刻であり、企業倒産と失業が猛威をふるい、戦後最大の歳入欠陥によって、国家財政と地方財政は極度に窮迫し、これが公共料金の値上げや福祉行政の足踏みとなって、国民生活はここに大いなる脅威にさらされております。
 これは端的に申せば、三木総理が、党内諸勢力に右顧左べんされて、事ごとに公約の改革路線を後退させ、ひたすら政権の座を守ろうとされている結果にほかなりません。まことに総理の責任は重大であります。
 かくて世論は、三木内閣はすでに政策遂行能力を喪失して、もはやその実体は死に体同様のもので、いまはただ政権の座に無重力状態で浮遊しているにすぎないものであるとさえ酷評しております。特に、三木内閣は、成立後一年余を経過し、その間、年度予算を二回も重ねて編成しながら、いまだに主権者国民の審判を受けていないということは、憲政史上きわめて異常なことと批判されております。
 もとより、あなたは自民党の総裁であられまするけれども、憲法に基づき、一たび内閣総理大臣に選ばれた上は、あなたは全国民の運命をその双肩に担われる日本の総理大臣であられます。望むらくは、党内派閥の間隙を縫って危うく余命を保つような、そんな弱々しい態度は、もはや総理の権威において潔くこれを一てきされるべきであります。
 政情は煮詰まって、解散、総選挙の機運はすでに熟し切っております。初心忘るべからず、総理はこの際、一日も早く厳然として衆議院の解散を断行し、もって人心を一新して政局の転換を図らるべきであると思うが、総理の御所信はいかがでありますか。このことをお伺いして、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣三木武夫君登壇〕
#13
○内閣総理大臣(三木武夫君) 春日君にお答えをいたします。
 第一番は、日中の平和友好条約について、日本の政府の考え方を御質問になりましたが、しばしば言っておりますように、日本は覇権には反対。覇権反対ということは、日本もこれは賛成であります。しかしながら、その覇権反対ということは、世界のどこにいっても通用する平和原則であります。したがって、地域とか国とかに関係なく通用する平和原則の一つである、こういうふうに覇権反対というものを理解しておるわけでございまして、この点が中国との間に完全な理解を得るならば、日中平和条約というものは、大して大きな支障は私はないと思う。無論、日中平和条約の中に、この覇権反対というものは入れてよろしいという考えでございますから、そのことに対して大きな支障はないと思います。できるだけ両国民の本当に理解された形で、この条約の締結が行われることを心から願っておるものでございます。われわれも努力をいたしたいと思っております。
 それから日ソの問題でございますが、御承知のように、領土問題があるわけで、この問題は二十年来、外交交渉をいたしてまいったのですが、いまだに解決ができない。春日君は、私がソ連でも行って日ソ首脳部で話し合ったらどうかということでございましたが、私は、もうソ連に行くことはやぶさかでないわけですけれども、やぶから棒に私がソ連に参りまして、この問題が解決できるほど簡単な問題ではないわけですから、やはり事前の努力というものがなされないと、いきなり私がソ連に参りまして解決するというような形は、やはり慎重を欠くと思うわけでございます。しかし、この問題は、日本の大きな外交上の懸案でございますから、北方領土問題を解決して、日ソ平和条約を早く結びたいと考えておる次第でございます。
 次に、アメリカの基地、特に沖繩の基地の縮小を積極的に要求すべきではないかというお話がございました。わが国における施設とか区域の存在もございますが、特に春日君御指摘のような沖繩の軍事基地というものは、相当広範囲にわたっておる。密度も高い沖繩において、整理統合を求める声が強いことは、私もよく承知しております。沖繩県民の民生の安定及び県の開発計画等に十分配慮しまして、一方においては、安保条約の目的達成というものもあるわけですから、この県民の願望と安保条約上の目的、これを調整を図りながら、施設とか区域の整理統合は今後推進してまいりたい、推進していくという考えでございます。
 それから、同じく事前協議制の問題というものを取り上げられまして、日本の発議権、拒否権というものを条約上有権的に確立しておるかというお話でございましたが、事前協議の発議権は米国によって行われるということが日米安保条約上に確立をしておるわけでございます。
 事前協議においては、わが国がノーと言える権利があることは当然のことでありまして、常にイエスと言う事前協議は、それは事前協議ではないわけですから、事前協議においてノーと言う場合があるし、イエスと言う場合がある。これはやはり事前協議という制度として当然のことでございます。まあしかし、日米の間には相互信頼というものを前提にしておるのですから、この問題で非常に両方の間に協議自体が困難に陥るというようなことは、私は考えていないわけでございます。
 それから、朝鮮半島の問題について、いろいろお話しになりました。恐らく春日君の考え方の中には、朝鮮の南北は平和的に統一されることが望ましいけれども、すぐにはそうはいかない、ある時間は、南北が平和的に共存できるような、そういう時間を持たなければならぬ、そういう南北の関係に朝鮮を持っていく方が朝鮮半島の安定に役立つというお考えが背景にあって、クロス承認とか国連の同時加盟とか、いろいろな案を提案になったわけでございまして、私もその考え方には賛成であります。いきなり南北の統一というものはできる状態ではない。そうなってくると、それができるまでの間は、やはり南北の間で平和的に共存し合うというような状態ができれば、一段と朝鮮半島の安定度は高まるわけでございますが、それを春日さんのお話は、国際的にそういう状態をつくれというお話でございました。これはやはり主体は南北の朝鮮ですから、朝鮮半島における南北なんですから、それが主体ですから、両方がその気にならないとそういうことにならぬわけで、どうしても、朝鮮半島における韓国と北鮮との間に対話が始まって、そうしてそういう両国の間の対立というものが緩和せないと、春日君の言われるような朝鮮の状態というものはできない。やはり朝鮮における南北が主体になる。しかし、われわれは、そういうふうな状態をつくり出すことに役立つような国際環境をつくることは必要である。われわれもそういう立場に立って努力をいたしたいと思いますけれども、やはりその周辺諸国の力には限界があるわけで、どうしても朝鮮半島における南北自体がその気になるということが必要であるというところに、この問題のむずかしさがあるわけでございます。国連に対する同時加盟といっても、両方が国連に入ろうという気持ちにならないと実現しないわけですから、そこにやはり問題のむずかしさがある。
 それから、安全保障の問題について、政府の安全保障に対する基本的考え方というものは、私は、施政方針演説でも申しましたごとく、国を侵すものには断固として抵抗する、その国民的決意のあらわれが自衛隊、この自衛力を保持していく、日本を取り巻く国際環境というものを安定化せるための外交的努力を払う、日米の安保体制を堅持する、これが日本の安全保障に対する基本的な方策でございます。これは国民の理解というものをだんだん得てきておると私は考えますけれども、しかし、今後とも一層国民の理解を得るように努力をしたいと思うわけでございます。
 それから春日君は、防衛委員会というような、安全保障に対する政策を本格的に論議をできるような国会の場をつくるべきだというお考えでございまして、これは党首会談においても、私は春日君から承ったわけでございまして、私も、この提案に対しては心から賛成をするもので、防衛問題に対して意見の違いが政党間にあっても、意見の違いは違いとして、これを論議する場が国会にないということはおかしいことであります。だから、この防衛問題とか外交問題とか、教育問題もそうでありますが、国の運命に関係をするような問題については、できるだけ党派の感情を捨てて話し合うような場面をつくることが、国会のあり方として国民も安心をすると思うわけですね。こういう国の基本的な問題について、距離があるのはまだしも、話し合いも各党間でできる場がないということは、私は、これは防衛、国の安全保障の問題の重要性にかんがみて、国会としては、やはりそういう場がないことは考えなければならぬじゃないかと私自身も思うわけでございます。そういうものをつくって意見を統一しようというわけでないですから、違いは違いとして、話し合える場面をつくることが必要でありますから、こういうふうな委員会を設置するのは、各党間の賛成が要るということが一つのたてまえになっておるところに、春日君は、どうしたというお話でございますが、むずかしさがあるわけですが、どうか各党においても、こういう安全保障に関する委員会を持つということについては御賛成を願って、これが実現をすることを願うものでございます。(拍手)
 それから付加価値税について、これは天下の悪税であるというお話でございましたが、ヨーロッパなどにおいては、もう春日君御承知のように、付加価値税がやっぱり税の中の非常な中心になってきておるわけですね。付加価値税に対するヨーロッパの人々の不平、不満というのは、そんな強い不平、不満は、私は行っても聞かない。だから、天下の悪税ときめつけるのは、私は早いと思うのです。これは、政府が一つの付加価値税を実施しようという考え方を、いま持っておって言うのではないのですよ。しかし、研究してみる税の一つであることは間違いがないと私は思いますので、やる、やらぬということはいろいろ次の問題として、これは検討は加えるべき税の一つだと考えております。
 それから、独禁法の改正案でございますが、しばしば申しておりますように、われわれは自由経済というものを維持していきたい。そのためには、やはり公正な競争のルールというものは確立してないと、自由経済体制は維持できるものじゃないと私は思うのです。そういう意味で、独禁法の改正の必要性というものは、私は考え方は変わってない。春日君は、私が公約をいかにも破る内閣のように言われますが、まあ私自身では、これだけ公約に忠実な内閣はないと思っているのです。ただ、言ったことがすぐに実行されないで時間がかかることはありますよ。時間がかかることはある。私は一遍公約したことは忘れないのですから、だから、何とか時間をかけてでもこれは必ず実行したいと言っている。そういうことで、公約というものを言っておいて、それをすぐに忘れてしまうような無責任な政治家ではないということは、よく知っておいてもらいたいのであります。(拍手)
 そういうことで、独禁法もできるだけ成案を急ぎまして、国会に御審議を願いたいと思っておりますが、いま何日ということを言うと、また公約違反と諸君は言われますから、時間は言いませんが、この国会に提出をいたしたい所存でございます。
 それから、食糧の問題についていろいろお話がございました。やはり食生活を確保するということは、これはもう国という人間生存の基本でありますから、食糧の確保というものについては、これはわれわれとして第一義的に考えなければならぬわけであります。その食糧の確保というものに対しては、やはり自給力を向上しなければならぬことは、だれも異存がない。また、輸入の食糧というものも、できるだけ安定的に供給を受けられるよう確保をするということでございます。自給力の向上のためには、生産基盤の整備とか、生産対策とか、あるいは次の担い手の育成とか、こういうものに力を入れていきたい。そういう点で、今後、農業というものが持っておる一つの地位というものの重さ、こういうことから、農業には特に力を入れてまいりたいのでございます。
 中小企業も、これはもう農業と同じように、日本の安定の基盤をなすものでありますから、今後、中小企業が安定して経営がやっていけるようなところへ持っていかなければならぬ。そのためには、近代化促進法に基づいて、新しい中小企業の高度化といいますか、そういうことに対しての促進をするし、小規模企業とか、下請企業の対策の強化とか、あるいは中小企業に対する融資の枠を拡大をして金融面から助けていくとか、まあきめの細かい措置を行いまして、今後の中小企業の育成といいますか、これに対しては国政の中においても重要な課題として取り上げていきたい。
 また、春日君は、行政機構と申しますか、税の問題についていろいろお触れになりましたが、歳出の削減、不公平税制の是正、こういう点については、今年も一般行政費の節減、機構の膨張抑制、定員の抑制というものをある程度やってまいりましたが、これはさらに厳重に行われなければならぬことは、春日君の御指摘のとおりでございます。
 また、租税特別措置法の見直し整理を行って、その三分の一程度の改廃を行いましたが、今後とも、この問題については、これですべて終わったというものではないと思うわけでございます。
 また、春日君は、一兆円程度の所得税の減税を行えというお説でございますが、やはりわが国の租税負担というものは、他の先進諸国に比べましても相当低位にあるわけで、税金は相当高いとは思われましょうけれども、国際的に比較してみると、日本の税金は相当先進国の中では低い。相当な低位にありますし、非課税の限度も、アメリカを除くと日本が一番先進工業国の中では高いというわけで、まあ今年は減税を見送ったということについても、国民に理解していただけると思うのであります。もし減税をやるとすると、それだけ公債をよけい発行しなければ、今日われわれが編成いたしました予算のような、そういう財政の水準は維持できないわけですから、そういう意味で、これは所得税減税は行えないことに御理解を願いたいと思うのです。
 今後とも、行政機構あるいは行財政の根本的見直しということは、御指摘のとおりこれは大きな課題でございます。
 自動車諸税の増徴でございますが、二年間の特別税率の期間到来に当たって、中央や地方の財政事情、資源の節約、環境の保全、道路財源等の要請を考慮いたしまして、この際、特別措置を二年間延長して、若干の税率の引き上げを行うことが適当であると提案をいたしたわけでございます。
 それから教育というものについて、教育を国の三権分立の一つとして、第四権として位置づけて、文部省から独立して、中央教育委員会を設置して教育行政を運営すべきではないかという御提案でございますが、われわれも教育の改革というものは大きな政治の課題であるとは思いますが、いま言ったような四権として教育を位置づけて、そして文部省から独立した機構をつくるという、そういう考え方は持っていないのでありますが、春日君の言われる気持ちはよくわかる気がするわけでございます。ただしかし、実際にはそういう考え方はいまは持っていない。
 福祉の点についてもいろいろ熱心なお話がございましたが、やはり福祉というものは不景気になったからといって後退さすべきではないわけです。やはり福祉の問題は、不景気、景気にかかわらず前進をしていかなければならぬ問題である。いろいろ社会保障の制度全般の検討も必要でありますから、そういうこともにらみまして、福祉の充実ということは今後も力を入れてまいりたいと思う次第でございます。
 それから、行政部に対する国会の監督機能を高めるということについて私が提案しておる――まあ私の提案というところに行ってないので、ある一つのグループに研究をゆだねておりましたら、そういう研究の一つの中間的な報告を受け取ったわけで、その中にそういう問題があるので、私自身が提案をしておるということではないわけでございます。これはこれからの研究の課題の一つではあろうと思いますが、私自身の提案ではございません。
 それから、国鉄の運賃とか電信電話料金、その他公共料金を凍結すべきではないかというお話でしたが、これは非常に物わかりのいい春日君、よくわかっていただけると思いますが、もし公共料金というものをいま凍結をしますと、いつか上げるときには、非常な急激な、大幅な値上げをしなければならぬですから、どうしても、何といいますか、公共料金というものは、人件費も上がってきますし、物件費も上がってくるのですから、余り一遍に大きな値上げにならないように、ときどき値上げをしていく方途が好ましいと私は思う。これは上げないでそのまま置いておけと言えば、それは赤字が累積するわけですから、それを国の財政で見よということになってくると、私は、どうも経営というものの、経営者としての、国鉄の経営の任に当たる者に対する責任というものが、非常にぼやけてくると思いますね。だから、事業は採算のとれるような事業をやる、こういうことで、やはり利用する人が応分の負担をするということの原則がよろしいので、どうしても政府が財政的にめんどうを見る理由があるものは出してよろしいけれども、その経営の基本的な経費というものは、やはり料金で支払うということが健全な社会の姿であると考えておるわけでございます。
 そういう意味から、今回、国鉄公社の経営の立て直しというものを図るという決意のもとに、ことしと来年とかけて国鉄を再建しようという決意のもとにこの案を、いろんな場面で御審議をこれから願うような法律案にもなってくると思うわけでございます。
 それから、ストの問題についていろいろお話がございましたが、三公社五現業のスト権の問題は、政府としても、経営のあり方、当事者能力、あるいはまた公労法の改正の問題、これはお互いに関連をするわけでございますから、専門家等の意見も十分聞いた上で、最終方針を決めたいと考えております。この問題については、やはりこの際にこの問題を根本的に解決する時期だと考えておりますので、これは政府は努力をいたします。
 また、違法ストに対する処分の問題をお話しになりましたが、とにかく違法ストというものに対して処分をされることが当然であると考えております。やはりお互いに社会の秩序を維持するためには、その法律に対していろんな意見を持っても、現在に法律がある以上はその法律を守るということでなければ、これはやはりその国の秩序は維持できないわけでございまして、やはり違法ストをやった場合には、処分を受けるということは、法治国として当然だと思うわけでございます。
 それから最後に、共産党の問題を取り上げられましたが、この問題は私も突然にお話を承ったのでございまして、この問題は余りにも突然のことでございますから、よく調査をいたしまして、報告すべきものがあれば報告をいたしますが、調査をいたします。
 実際の、現在のこの状態については、現段階で判明しておる点については、法務大臣から答弁をいたすことにいたします。
 最後に、解散の問題、いろいろお話しになりましたが、解散について、いろいろな春日君の御意見は、ありがたく感謝をいたします。
 私も、これはもう本年十二月で議員の任期がないのですから、その間に解散をやらなければならぬことは明らかでございますから、すべての問題について国民の審判を受けたいと考えております。(拍手)
    〔国務大臣稻葉修君登壇〕
#14
○国務大臣(稻葉修君) いわゆる日共リンチ事件に関し、現段階で判明している点についてお答えいたします。
 御質問は三点にわたりますから、まず第一に、事実関係についての御質問に対して申し上げます。
 御質問の事件に関し、当時、東京刑事地方裁判所において審理がなされ、宮本氏に対し、治安維持法違反、監禁、監禁致死、死体遺棄等の罪名で昭和十九年十二月五日に有罪判決が下され、右判決は、昭和二十年五月四日上告棄却により確定し、これに基づいて刑の執行がなされた事実はあります。
 この判決によれば、昭和八年十二月下旬、宮本氏らは、当時の日本共産党中央委員であった小畑達夫氏ほか一名にスパイの容疑があるとして、これを査問するため、ほか数名とともに、右小畑氏らをアジトにおいて針金などで縛り、目隠し、さるぐつわをして押し入れ内に監禁したり、さらに殴る、ける等の暴行を加え、右小畑氏を外傷性ショック死により死亡するに至らせ、その死体を床下に埋めた等の事実があったとされております。
 第二に御質問は、宮本氏に対する公民権の回復についての御質問でありますが、御指摘のとおり、同氏については、勅令七百三十号による資格回復者としての取り扱いがなされていると承知しておりますが、何分にも古い話であり、連合軍占領下でもあり、種々経緯があったようでありますので、なお十分調査してお答えすることといたします。
 さらに、第三に、文書の提出についてでありますが、宮本氏に対する判決の原本は現存していますので、もし国会からの正式の御要求があれば、質問者の御要望になりました文書等につきましても、可能な限り提出することを考慮いたします。(拍手)
#15
○議長(前尾繁三郎君) これにて国務大臣の演説に対する質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
#16
○議長(前尾繁三郎君) 御報告いたすことがあります。
 議員仮谷忠男君は、去る十五日逝去せられました。まことに哀悼痛惜の至りにたえません。
 同君に対する弔詞は、去る十七日贈呈いたしました。これを朗読いたします。
    〔総員起立〕
 衆議院は多年憲政のために尽力しさきに農林水産委員長の要職にあたられた建設大臣議員正三位勲一等仮谷忠男君の長逝を哀悼しつつしんで弔詞をささげます
    ―――――――――――――
 故議員仮谷忠男君に対する追悼演説
#17
○議長(前尾繁三郎君) この際、弔意を表するため、井上泉君から発言を求められております。これを許します。井上泉君。
    〔井上泉君登壇〕
#18
○井上泉君 ただいま議長から御報告のありましたとおり、高知県選出議員仮谷忠男君は、去る十五日、心不全のため赤坂病院において急逝されました。まことに痛惜の念にたえません。
 私は、諸君の御同意を得て、議員一同を代表し、謹んで哀悼の言葉を申し述べます。(拍手)
 仮谷君は、大正二年五月、四国の最南端に位する足摺岬に近い土佐清水市以布利に呱々の声を上げられました。
 半農半漁の家にお生まれになった仮谷君は、高等小学校を終えると、直ちに御両親を助けて農業に打ち込み、あるいは夜半、漁船を駆って漁に出るなど、労働の厳しさと生活の辛苦を身をもって味わわれたのであります。この生活体験が、保守政治家でありながらも、農山漁村の人たちの心情にこたえる政治の道を歩ましたものと思われます。
 新憲法施行に先立って行われた第一回地方統一選挙に際し、先生は周囲の人々から推されて高知県議会議員選挙に立候補し、初当選されました。以来、県会議員四期、十三年余、この間、仮谷さんは再度にわたって県会議長に御就任、超党派県政をモットーとし、公正円満な議会運営を図って与野党議員の信望を集め、いよいよ地方政界の重鎮としての名を高められたのであります。(拍手)
 やがて郷党の人々の熱心な推挙により、仮谷さんは、昭和三十五年十一月の第二十九回衆議院議員総選挙に立候補されました。
 そのとき、高知県のあの澄み切った青空を背景に、「政治に私はすべてをささげます」と、きりっとした表情で県民に訴えられたあの仮谷さんのポスターは、強烈で、しかもすがすがしい印象を私に与えました。仮谷さんのこの情熱と真摯な姿勢は、選挙民の絶大な支持を得るところとなり、この信頼は仮谷さんを最高点で国会に送りました。
 年功序列や学歴が重視される現代社会であるにもかかわらず、出馬以来連続五期、常に高位当選を続けられ、小学卒でありながら重要な任務につかれた仮谷さんでした。努力の人、信念の人、勇気の人と言われ、その公約どおり、私心なく誠実に国家、国民のための政治に命をささげられたのであります。(拍手)
 仮谷さんと私との交わりは、昭和二十六年四月、私が県議会に出たときから今日まで、二十五年間の思えば長いようで短い人生の一こまでありました。私とはもちろん政治的立場は異なりましたが、終始、党派を超えての温かい親交の情をお互いに抱いておりました。
 仮谷さんは県政当時からよく超党派ということを言われました。「県政でも国政でも党派意識を強く出して政治はなすべきではない、まずどうすることが県民、国民の幸せになるかという面から判断しなくてはならない」という仮谷さんの政治信念でした。
 また、官僚主義を否定し、議会政治を尊重するというこの信念は、官僚の議会答弁を戒める表現としてのいわゆる青森発言となり、そのこともいまや故人の率直な党人政治家としての思い出を残すこととなりました。(拍手)
 よく、議会の子だとか対話と協調という言葉を耳にする中、仮谷さんこそ、議会制民主主義に徹し、実践された政治家として高く評価されるべきではないでしょうか。(拍手)
 仮谷さん急逝の一月十五日、私は、党の議員総会へ出席のため上京する際、郷里土佐の昨年の五号、六号の台風による被害を受けた地域の人たちから、仮谷大臣がこのたび激甚災害地緊急整備事業費を特別に予算化されたことに対し、感謝のあいさつをぜひしておいてもらいたいという意を受けて上京しました。
 ところが、赤坂宿舎に着くと、大臣急逝の悲報を受け、私は茫然としました。そしてこの人生の無常さを思わずにはいられませんでした。
 仮谷さんが長期にわたり推進してこられた本四架橋に、一ルート三橋といういわゆる仮谷方式による決定を下され、みずから、昨年の末、大三島橋起工式に出席をされ、歴史的なくわ入れをなされたものですが、このときの寒風のさなかでの起工式は、皮肉にも仮谷さんのかぜをこじらせました。加うるに、政府・自民党の景気浮揚を公共事業に求めることに重点を置いたこの五十一年度予算編成に当たり、その所管大臣として陣頭に立たれるなどの激務は、ついに仮谷さんの命を奪うに至りました。しかし、仮谷さんの名は日本の国土建設史上深く刻み込まれるに違いありません。(拍手)
 仮谷さんが亡くなられた翌々十七日の芝増上寺における告別式、続いて十八日の高知市、さらに翌十九日の故郷土佐清水市における市民葬がいともしめやかに行われましたが、この仮谷さんを追慕し、仮谷さんの功績をたたえるために集まられた各界各層の参列者は、延べ実に万余を数えました。仮谷さんにささげられた数々の弔詞は、故人のありし日をしのぶ心からの友情と思慕にあふれたものであり、それらの言葉の一句一句が参列者に新たな悲しみと無念さを与えたものであります。
 そして、仮谷さん、あなたは眠れる姿そのままで、潮の香りのただよう故山でとこしえに私たちと幽明境を異にしたのであります。
 私は、土佐清水市の市民葬から清水を離れるとき、仮谷さんの生宅である以布利のその地におって、仮谷さんの生宅を見て涙が滂沱たらざるを得なかったということを、いまさらながら思い出すものであります。
 仮谷さんが大臣になられたとき、「忠男は上の学校にもやれなかったし、苦労させるなあ」と、常にその身を気遣っておられた老母様に、いまは黄泉の国でやさしくねぎらわれていることでしょう。
 しかし、きょうは違います。お母さんのお許しを得て、仮谷さんはこの議場に参っております。政治にすべてをささげられた仮谷さんの熱き魂は、この動乱の時代に国家、国民の繁栄と幸せを願いつつ、その家族に遺影として抱かれ、この議場をじっと見詰めております。
 私は、この悲しみを決意に変え、仮谷さんの「政治にすべてをささげる」との信念をもって邁進することを、同席の諸先生方とともに誓いたいと思います。(拍手)
 仮谷さんよ、安らかに眠られんことを、そして、御遺族はもちろんのこと、この国家、国民の上にいつまでも御加護あらんことを祈りまして、心より追悼の言葉といたします。(拍手)
     ――――◇―――――
#19
○議長(前尾繁三郎君) 本日は、これにて散会いたします。
    午後六時五分散会
     ――――◇―――――
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  三木 武夫君
        法 務 大 臣 稻葉  修君
        外 務 大 臣 宮澤 喜一君
        大 蔵 大 臣 大平 正芳君
        文 部 大 臣 永井 道雄君
        厚 生 大 臣 田中 正巳君
        農 林 大 臣 安倍晋太郎君
        通商産業大臣  河本 敏夫君
        運 輸 大 臣 木村 睦男君
        郵 政 大 臣 村上  勇君
        労 働 大 臣 長谷川 峻君
        建 設 大 臣 竹下  登君
        自 治 大 臣 福田  一君
        国 務 大 臣 井出一太郎君
        国 務 大 臣 植木 光教君
        国 務 大 臣 小沢 辰男君
        国 務 大 臣 金丸  信君
        国 務 大 臣 佐々木義武君
        国 務 大 臣 坂田 道太君
        国 務 大 臣 福田 赳夫君
        国 務 大 臣 松澤 雄藏君
 出席政府委員
        内閣法制局長官 吉國 一郎君
        外務省アメリカ
        局長      山崎 敏夫君
ソース: 国立国会図書館
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