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1975/02/13 第77回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第077回国会 本会議 第6号
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1975/02/13 第77回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第077回国会 本会議 第6号

#1
第077回国会 本会議 第6号
昭和五十一年二月十三日(金曜日)
    ―――――――――――――
  昭和五十一年二月十三日
    午後一時 本会議
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 議員請暇の件
 租税特別措置法の一部を改正する法律案(内閣
  提出)の趣旨説明及び質疑
    午後一時七分開議
#2
○議長(前尾繁三郎君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 議員請暇の件
#3
○議長(前尾繁三郎君) 議員請暇の件につきお諮りいたします。
 二階堂進君から、海外旅行のため、二月二十三日から三月三日まで十日間、請暇の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○議長(前尾繁三郎君) 御異議なしと認めます。よって、許可するに決しました。
     ――――◇―――――
 租税特別措置法の一部を改正する法律案(内
  閣提出)の趣旨説明
#5
○議長(前尾繁三郎君) 内閣提出、租税特別措置法の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。大蔵大臣大平正芳君。
    〔国務大臣大平正芳君登壇〕
#6
○国務大臣(大平正芳君) 租税特別措置法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
 租税特別措置につきましては、最近における厳しい財政事情等に顧み、その全面的な見直しを行い、企業関係税制を中心に大幅な整理合理化を推進するとともに、自動車関係諸税の税率を引き上げることとするほか、所要の措置を講ずることといたしております。
 すなわち、まず、企業関係税制を中心とする整理合理化につきましては、第一に、長期外貨建債権等を有する場合の課税の特例制度、新技術企業化用機械設備等の特別償却制度等十一の制度を廃止することといたしております。
 第二に、増加試験研究費の税額控除制度について、五〇%の割り増し控除率を廃止するとともに、二五%の控除率を二〇%に引き下げる等、税額控除制度及び所得控除制度について控除率の引き下げ等を行うことといたしております。
 第三に、特定設備等の特別償却制度について、償却割合が三分の一のものは四分の一に、四分の一のものは五分の一に引き下げ、特定備蓄施設等の割り増し償却制度について、倉庫等の割り増し率を五割から四割に引き下げる等、各種の特別償却制度について償却割合の引き下げ等を行うことといたしております。
 第四に、価格変動準備金について、積み立て率を通常のたな卸し資産にあっては三%から二・七%に、公害防止準備金について積み立て率を〇・三%から〇・一五%にそれぞれ引き下げる等、各種の準備金制度について積み立て率の引き下げ等を行うことといたしております。
 第五に、登録免許税の減免措置についても見直しを行い、電源開発株式会社が受ける登記に対する登録免許税の免税措置を廃止して税率軽減措置とする等、その縮減を行うとともに、適用期限のない措置について適用期限を設ける等の整理合理化を図ることといたしております。
 第六に、交際費課税の強化を図るため、損金算入限度額の計算の基礎となる資本等の金額の一定割合を千分の一から千分の〇・五に引き下げるとともに、損金不算入割合を七五%から八〇%に引き上げることといたしております。
 その他、企業破産等に係る退職勤労者が弁済を受ける未払い賃金に対する課税の特例制度を創設し、中小企業の貸倒引当金の特例制度の適用期限を延長する等、中小企業関係、農林漁業関係、土地住宅関係等の租税特別措置について、それぞれ実情に応じ所要の改正を行うことといたしております。
 次に、自動車関係諸税につきましては、自動車に係る税負担の現状等に顧み、資源の節約、環境の保全、道路財源の充実等の観点から、二年間の暫定措置として税率の引き上げを図ることといたしております。
 すなわち、揮発油税及び地方道路税につきまして、その税率を現行の二五%程度、自動車重量税につきまして、その税率を、営業用自動車は現行の一二・五%程度、自家用自動車は現行の二五%程度、それぞれ引き上げることといたしております。
 以上、租税特別措置法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げた次第であります。(拍手)
     ――――◇―――――
 租税特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
#7
○議長(前尾繁三郎君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。大石千八君。
    〔大石千八君登壇〕
#8
○大石千八君 私は、自由民主党を代表して、租税特別措置法の改正案について質問いたします。
 趣旨説明により明らかにされたところによりますと、五十一年度税制改正として、政府は、現行税制の仕組みの中で若干の選択的増税措置を講ずることとし、その対象として、揮発油税、地方道路税及び自動車重量税について税率の引き上げを行うこととする一方、各種の政策目的から設けられている租税特別措置について、特に企業関係の措置を中心に、例年に比べ大幅な整理合理化を行うことといたしております。
 まず、私は、このような内容を持つ五十一年度税制改正案についての政府の基本的な考え方を伺います。
 景気の停滞を反映して税収は大幅に落ち込み、五十年度においては、一般会計で当初予算に比べ三兆八千億円余りの特例公債を発行し、五十一年度ではさらに三兆七千億円の発行を予定するものとなっております。
 このような厳しい財政事情のもとでは、一方では、できるだけ後顧に憂いの残る心配のある借金財政を少なくいたしまして、そのためには、一般的な増税を行い財政バランスの回復を図るよう努力すべきであるという考えがあり、また、一方では、設備投資の不振、そのほか最終需要の伸び悩みの中で、経済活動の水準はいまだに低い状態にあるところから、景気回復の促進を図るために、むしろ一般的に減税を行うべきであるという考えもあります。
 ところで、政府は、今回一般的な増税を行わない反面、一般的減税も見送り、一部選択的な増税と租税特別措置の整理合理化を行うにとどめております。
 財政の正常なバランスの回復と当面の景気回復の促進という、二つの矛盾した経済運営の中でぎりぎりの選択を迫られているわけですから、現下の経済情勢のもとでは、このような選択以外あり得なかったと考えられますが、それらの諸点についてどのような判断をされたか、今回の税制改正案についての基本的な考え方を明らかにし、また、今回の改正において特に租税の整理合理化に力を入れた理由をお尋ねいたします。
 次に、国民の最も関心の深いと思われる所得税減税は、三十五年以来十六年ぶりに見送られることとしておりますが、所得税減税については、二つの観点からこれを実施すべしとの意見もございます。
 まず第一に、景気政策の観点から、消費需要を喚起し、景気回復を促進するために、特例公債の発行を増大してでも大幅な減税を実施すべきであるとする意見がございます。景気対策として減税対策がとられた例は、アメリカなど諸外国においても見られますが、現在のわが国の場合は、国民貯蓄の動向から見て、減税を行っても多くは貯蓄に回り、景気刺激効果を上げるには少し乏しいのではないか、あるいは、同じだけの財源があるならば、減税に充てるよりも公共投資をふやした方が景気刺激効果はより大きいのではないか、このような反論もございますが、これらの点について、大蔵大臣のお考えをお伺いいたします。
 次に、景気対策として減税は見送るといたしましても、せめて中小所得者を中心に物価調整減税ぐらいは行うべきではないかとの意見もあります。確かに、従来の高度経済成長のもとにおきましては、毎年相当多額な自然増収を期待することができましたので、一方では福祉の向上を図りつつ、他方ではほぼ毎年減税を実施することが可能でした。しかし、安定成長下の経済では、このような二つの要求を同時に満たすことはむずかしい問題であります。私は、高福祉高負担の原則に立ち、福祉の向上を望みながら、その費用を進んで負担するという原則が望ましいと考えますが、果たして、国民の税負担の現状、特に低所得者層の負担がたえがたく高いものであるのか、またそのような危惧があったならば、どのような処置をとられようとしておられるのか、伺ってみたいと思います。
 次に、租税特別措置の整理合理化についてですが、一口に租税特別措置と言われますが、その内容は実に多様で、個人に対して少額の貯蓄を奨励するもの、持ち家を助けるもの、また企業に対して公害防止費用の負担をしやすくするもの等、いろいろございます。そしてそれぞれの措置は、そのときどきの重要な政策目標の推進のために、それなりの役割りを果たしているものと認められます。それぞれの一つ一つの措置の評価はいろいろございますが、ただ租税特別措置をすべて一まとめにして大企業優遇措置ときめつけ、これをすべて廃止しなくては課税の公平は確保されないといった批判は当を得たものとは言いがたいと思います。
 しかし、租税特別措置は、特定の政策目的のために課税の公平を何がしか犠牲にするものでありますので、その政策目標が社会経済の進展に即応して合理的なものであるかどうか、また、その優遇の度合いが課税の公平の原則に照らして過度なものでないかどうかの見直しが常に行われなければならないものと考えます。今回、これまで以上に公平の視点を重視してその見直しを行い、積極的に整理合理化に努めたことは、時宜を得た適切な措置であったと思います。もちろん、改正はこれにとどまらず、今後とも社会経済環境の変化に即応してこのような見直しを続けるべきと考えますが、政府の御決意を伺います。
 次に、自動車関係諸税の税率引き上げについてでございます。自動車関係諸税、すなわち、揮発油税、地方道路税及び自動車重量税の税率引き上げが予定されておりますが、これも国民的関心のきわめて高いものであり、この時期に選択的増税の対象として自動車関係税を選んだ理由について伺います。
 さらに、今後の財源対策についてですが、今後における経済の成長速度が、従来と異なり安定的に推移するとするならば、今後、財政収支が自然増収によってバランスが保たれることは、きわめてむずかしい問題と思われます。
 一方、公債の償還、あるいは福祉や社会資本の充実等のために、財政需要は増加を続けるものとなるでしょう。これによる財政ギャップは当面公債によって埋められるでしょうが、公債への依存をいつまでも続けることは、健全な財政運営とは言いがたく、できるだけ早期に特例公債から脱却すべきであります。特例公債からの脱却のためには、歳出の面において、既存の制度、慣行の見直しを含め、極力歳出の合理化、効率化が進められなければならないのは当然ですが、同時に、歳入の面でも、必要な負担を国民がどのような形で分かち合うかという問題について、真剣な検討が進められなければなりません。
 過日の予算委員会において、五十四年度もしくは五十五年度には特例公債から脱却することを目標にした財政収支試算が提出されましたが、そのために税制面でどのような対応策を講ずるおつもりか、大蔵大臣のお考えを伺います。
 最後に、総理に伺います。
 政府は、現在、困難な経済情勢のもとで、国民生活に与える影響を最小限にとどめながら、新たな発展を目指して、この租税特別措置法を初めとして経済運営をされている努力は十分に評価ができると思いますが、一方、国民の側からすれば、決してそのような信頼感を抱いてばかりいるとは限らない面がございます。
 それには、一つには、たとえ石油危機がなかったとしても、資源が乏しく立地条件に恵まれないわが国が、高度経済成長を今後も続けるということは、きわめて困難な道のりであったにもかかわらず、その説明が十分されていなかったという点も認めなくてはならないと思います。
 しかし、たとえ高度経済成長ができないとしても、総理の考えておられるライフサイクルの構想にもあるように、まじめに働く意欲のある者が、老後においても、あるいは万一の病気のときにおいても、心配なく生活できるという最低限の保障を得られるような健全な社会を築くためにも、社会福祉や社会資本の充実はさらに進めていかなくてはなりません。これに対してぶつかる財政の厚い壁との問題を総理はいかに克服しようとしておられるのか、御見解を伺います。
 さらに、最後にもう一つ重要なことがございます。
 たとえいかにりっぱな政策が立案され、施行されても、国民が政治を信頼し、それに協力しなければ、政策が健全に機能し、国民生活には役立ち得ないのであります。(拍手)それには、総理がよく言われるように、政治に対する信頼を高める努力がさらに必要であります。そのためには、国民の疑惑を生むような問題は、政府みずからの手で徹底的に調査し、国民の前に明らかにすることによって、政治に対する信頼を回復できるよう最大の努力を払うべきだと考えますが、総理の御決意のほどをお伺いして、私の質問を終わらせていただきます。(拍手)
    〔内閣総理大臣三木武夫君登壇〕
#9
○内閣総理大臣(三木武夫君) 大石君の御質問にお答えをいたします。
 大石君は、今後政治は国民の福祉の増進を目指さなければならぬ、それにはやはり国民の協力を求むべきではないかというお話でございました。確かに今後の政治の目標は、国民福祉の増進にあることは申すまでもないわけでございます。いま大石君の御指摘になった、私の言う生涯福祉計画のごとき施策を充実するためにも、どうしても今日は国民の理解を得て、福祉の増進については国民も応分の御負担を願うということに理解を得なければいかぬわけでございまして、今後日本が福祉の増進を進めていくためには、どうしても国民の応分の負担ということの協力も得なければなりませんから、政府は、今後、国民の理解を得るためにあらゆる努力を行って、日本を福祉の面においては世界にひけをとらぬような状態に持っていきたいと考えておる次第でございます。
 第二に、政治の信頼を取り戻すためには疑惑は一掃されなければならぬという御指摘でございます。大石君の御指摘のように、政治は国民の信頼に結ばれるものでありますから、それを根本から揺るがすようなことであっては、民主政治は成り立たないわけであります。ことに政治が問われておるのはやはり道義的責任であります。法律的に抵触しないというようなことは言うまでもないことで、道義的責任が政治には問われておるわけでございますから、われわれが自粛自戒しなければならぬことは申すまでもないわけで、そのためには、政治に対する疑惑というものは、これはもう政府は積極的にその疑惑を解明して、国民に対して疑惑のない政治を行うということが信頼の第一歩であると、強い決意を持っておる次第でございます。(拍手)
    〔国務大臣大平正芳君登壇〕
#10
○国務大臣(大平正芳君) 第一の御質問は、来年度の税制改正の基本的な考え方についてでございます。仰せのように、厳しい財源事情でございますので、来年度は一般的な減税をいたさない、しかしながら、景気対策上の配慮から一般的な増税も考えないという基本方針で臨んでおるわけでございます。しかしながら、特別措置の見直しにつきましては、従来もやってまいりましたけれども、今日のような厳しい財源事情もございまするし、社会的公正という視点からも、今回におきましても、一層厳しく見直す必要を感じまして、きょう御提案申し上げましたような法案を用意いたしたわけでございます。
 また、自動車税でございますが、これは諸外国の同種の税金に比較いたしまして、相対的にまだ低い状況にございまするし、燃料課税のうち従量税方式をとっておるものにつきましての見直しの必要もございましたし、また、先ほど説明もいたしましたように、環境の保全、資源の節約あるいは道路財源の充実というような見地から、若干の増税を考えることにいたしたことを御理解賜りたいと思います。
 第二に、所得税減税をなぜ見送ったかという御質問でございました。とりわけ、一般的な減税でなくとも物価調整減税程度はやるべきであるということは、確かに説得力のある考え方だと思うのでございますけれども、政府としては、所得税減税というものは、何も単年度で勝負をすべき性質のものでもなく、長い間減税を積み重ねてまいりましたわが国におきまして、この財源事情が厳しいときに、来年度所得税減税を見送らしていただきましても、非常な不当な措置であるとは考えていないのでございます。また、今日、景気対策上の配慮からいたしましても、所得税減税によるよりは、たびたび申し上げておるように、端的に需要の喚起につながる公共投資によるべきであると判断したためでございます。
 それから第三の御質問は、国民の所得税負担というのは、一体高目なのか低目なのか適正なのかという御質問でございますが、一般にわが国の租税負担は、先進諸国に比べまして比較的低い水準にありますことは幸せだと考えております。そのうちの大宗でございまする所得税負担も、私は諸外国に比べまして低目に決められておると思います。課税最低限百八十三万円というものも、先進諸国と比較いたしまして相当高目に課税最低限が設定されておることからも御理解いただけると思うのでございます。
 それから、特別措置の見直しの問題でございますが、これはもとより大石さんおっしゃるように、政策的目的を達する一つの手段としていろいろ特別措置が考えられたわけでございますけれども、これが間々すれば既得権化する、あるいは慢性化する傾向を持っておりますので、毎年これを見直してまいる必要が強く叫ばれておりますし、政府も事実毎年これの見直しをやってきておるわけでございまして、今後も、残された問題につきまして、さらに事態の推移等に即応いたしまして見直してまいる方針でございます。
 最後に、中期の財政展望と増税との問題についてのお尋ねでございました。
 この間、予算委員会に政府が出しました試算は、いわば五十年代の前期の経済計画の概案をベースにいたしまして、国民生活の安定充実を図りながら特例公債からの脱却を図るにはどういうような姿になるかという試算を試みたわけでございます。五十四年度に脱却できる案と五十五年度に脱却できる案と、両方を提示申し上げたわけでございます。
 この両案におきまして、もとより若干の増収が期待されておるわけでございますが、それをどういう税目でいつこの増収を図ってまいるかということにつきましては、これは国民の負担に係る問題でもございますし、今後の財政の推移にまたなければなりませんので、税制調査会初め各方面の真剣な御検討をいただかなければならぬわけでございますので、いまどういう税目を考えておるかということをお答え申し上げる段階でないことは御理解を賜りたいと思います。(拍手)
    ―――――――――――――
#11
○議長(前尾繁三郎君) 村山喜一君。
    〔村山喜一君登壇〕
#12
○村山喜一君 私は、日本社会党を代表して、ただいま上程されました租税特別措置法の一部を改正する法律案について、政府の所信をたださんとするものであります。
 五十一年度の税制改正案は、三木内閣と自民党の反国民的性格が浮き彫りにされたものであります。ミニ改正にとどまった案の内容は、総選挙を意識して、税調の答申さえ一部を削り取り、政治的摩擦は回避し、企業税制の改革は見送り、租税特別措置等、不公正税制改革はお茶を濁した程度にとどめ、巨額の歳入欠陥を埋めるための増税も、選択的増税といった、いわば取りやすいところから取り、国民には実質的増税を強制しようとするものであり、長期的展望を欠いた税制改革であります。
 今日の財政危機は、単に不況による経済動向にのみ帰せられるものではなく、大企業優遇、資産所得軽課の不公正税制によっていることは明らかであります。日本経済の低成長過程への移行に伴い、高度成長型税制の改革がいまこそ必要になっております。政府にはこのような事態の認識も見られず、抜本的税制改革に着手しようとする姿勢が全く見られないのは、日本の財政の危機をさらに深みへ追い込むのが必定であり、もはや許されるべきことではありません。
 三木総理にただしたいことは、あなたの公約である社会的不公正の是正を財政面でどのようにして確保していくのかということであります。それに取り組む政治姿勢について伺いたいのであります。
 収入を考えない財政運営はないのであります。財政資金の確保は増税か借金によるしかないと言われるときに、三木内閣は、だれも腹の痛まない、その実は勤労国民にしわ寄せされる借金の道をとり、公債への依存率を三〇%に高める放漫財政でピンチを切り抜けようとしております。
 インフレ利得を放置し、税源のあるところから税収を求めず、安易な国債発行で財源を得ることは、税の不公正をさらに拡大することであります。(拍手)財政による景気対策はうまくいっても、景気回復とインフレの同時進行を引き起こすのが今日的フィスカルポリシーの限界だと言われております。
 あなたは、最悪の間接税増徴とも言えるインフレに逃げ込み、社会的不公正をさらに拡大しようとしているのではないか、社会的不公正の是正という言葉だけの三木内閣ではないのか、あなたの決意を伺いたいのであります。
 大平蔵相にただしたいのは、借金財政からの脱出という課題から見て、今回の税制改革、特に租税特別措置法の改正に対していかなる基本的考え方をしているかということであります。
 さきに予算委員会で、あなたは財政の中期見通しを発表したが、政策的に見て、公債を抱いた財政の中で、政府活動のウェートは高めなければならない、振りかえはあっても支出はなかなか削れない、一方、公債依存財政から脱出はしなければならないとなったら、増税に踏み切らざるを得ない。しかし、一般的な増税は総選挙を前にしてできない、本格的な増税は総選挙が済んでからにしたい、ことしはその地ならしのために所得減税は見送る、物価調整減税もやらない、地方税の住民税均等割も引き上げておく。しかし、増税に踏み切るためには、不公正税制の見本のように言われる租税特別措置法にはメスを入れないと増税への地ならしができない。ところが、企業は不況で困っている、余り大きなことはやれない。
 このような背景のもとに、あなたの行ったことと言えば、全面的に見直しを行い、整理合理化を図ったと言いながら、結果は百五十億円の増徴にとどめ、反面、会社臨時特別税の継続は、期限が来たから取りやめにして、九百五十億円は税金として取らないで、大企業には差し引き七百億円の減税の恩恵を与えようということでありますか。
 あなたは、かつて、日本の軍部が横暴をきわめ、満州事変を引き起こし、戦時体制下にあって三二%の国債を発行した高橋財政の教訓を、どの程度くみ取っておられるのでありましょうか。一時の便法が何をもたらしたか。歴史的な反省の上に税制改正を進めていこうとするのか。その立場から今回の税制改正案を提出されたのか。租税特別措置の整理合理化がなぜこの程度にとどまったのか、追加四項目を含めてなお百八十九項目が温存されることになったが、今後どのようにするのか、明らかにされたいのであります。(拍手)
 法人に対する減免税措置という不公正税制は、租税特別措置法にとどまらず、法人税法の本法にある配当軽課制度、法人受け取り配当の益金不算入制度及び配当控除制度、または各種の引当金等の再検討を初め、法人の実効税率、減価償却率等のあり方についても検討を加えなければなりませんが、その改正への意思があるのか、あるとするならば、どのようにするのか、明らかにされたいのであります。
 わが党は、今日の段階では、租税特別措置を全廃にするとの基本方針に立つとともに、法人には利潤税的発想のもとに、大法人にはより多くの税負担を求めるため、法人税率に超過累進税率を採用すべきだと考えております。それによって法人関係の各種の減免税措置は廃止されます。大蔵大臣の決意のほどを示されたいのであります。
 次に、大平蔵相並びに田中厚生大臣に伺いたいのであります。
 医師の社会保険診療報酬課税の特例についてであります。
 わが党は、七二%の一律経費控除方式は廃止すべきであり、同時に医療の抜本的改正を行い、医師の技術料の評価を高め、国民福祉の中における医療の正しい位置づけを行い、医療制度の抜本的改革を行うべきであると考えております。
 日本医師会は、予算編成で九・一%の診療報酬単価のアップを予算に計上した田中厚生大臣を信頼せずとの態度を決定したと聞いております。
 医療費改定のための中医協も再開されておりますが、田中厚生大臣は、言われるように、医療の本質を無視しているのか、医師会が言うように、低医療が強制され、社会的公共性の任務が強要されている限り、七二%の特別措置、一千三百二十億円の減税は当然であるという考え方を持っているのか、それとも、医療の正しい評価によって、不公正税制によらなくてもよいようにしようという考え方なのか、所信を伺いたいのであります。
 大平大蔵大臣は、税調の答申を二度にわたって無視し、次回診療報酬改定のとき是正すると表明をしておりますが、次回とはいつなのか、本当に是正する意思があるのかないのか、答弁を願いたいのであります。(拍手)
 次に、自動車諸税の引き上げについてであります。
 自動車関係諸税引き上げの内容は、二五%ないし二一・五%の大幅引き上げになっておりますが、税の理論から言って肯定できないものになっております。
 道路損傷負担金的性格を持つ自動車重量税が、年間三百キロメートルしか走らない町村消防車については二五%引き上げられ、数万キロも走る運輸業者の大型トラック等は、自家用車の半額しか払っていないのに、今度も一二・五%増にとどめられているのはおかしいではないか。農家、中小企業者、勤労者等は中古車しか購入できないのに、自家用車だからといって二五%も引き上げるというのでは、担税力を考えないで、取りやすいから取るという発想ではないか。
 自動車関係諸税の大半を道路目的財源として中央に吸い上げた結果、生活道路である市町村道の整備が立ちおくれ、道路整備が進めば自動車の増加という悪循環を繰り返しております。
 自動車関係税の一般財源化、市町村への配分割合の引き上げなど、抜本的改正を考えるべきであります。安易な財源確保のための増税は、不公正税制の拡大にもつながりかねないと考えるのでありますが、政府の基本的な考え方を示してもらいたいと思うのであります。
 第五に、所得税制の不公正是正のために、わが党は、標準世帯で、配当所得者は四百四万九千円でも所得税がかからないのに、給与所得者は百八十三万円からかかる。企業は四十九年度で交際費として一兆三千百三十八億円を損金として落としているのに、給与所得者には必要経費控除制度さえも認めず、源泉徴収で先取りをして、自主申告権を奪い取っている税法のあり方に疑問を持っております。同時に、株の売買による利益や架空名義による預金金利の税金逃れ、過少申告による脱税等の横行を防止することが、国民の税制に対する信頼を回復する道だと信じております。その立場から、土地再評価税、所得税法の改正案等の法案を提出しますが、政府は、野党の提案に留意し、尊重すべきであります。
 今日の政治構造は、与野党の合意なくしては、新税の創設はできない状態にあります。全野党が反対をする付加価値税等の創設は断念して、いまの税制を手直しし、活用を図ることが政府の任務であると考えておりますが、いかがでありますか。(拍手)
 最後に、今回の政府税制改正案で所得税減税が見送られたことは、依然として高い消費者物価の上昇率のもとで、勤労者には実質増税を押しつけることであり、さらに問題とすべきは、不況克服という政策目標にとっても誤った政策手段となったことであります。
 まず、物価調整減税について言えば、政府の試算でさえ、現行四人家族の課税最低限度百八十三万円を五十一年度物価上昇率相当の八・八%引き上げると二千五百億円の財源を要するという数字が出されております。これは二千五百億円の物価調整減税が必要なことをあらわしているものであります。減税見送りはこれだけの増税であり、勤労者にこの負担を強いる理由を明確にされたいのであります。
 第二に、減税政策と景気対策との関連であります。
 景気回復のおくれている原因の一つは、個人消費支出の停滞にあることは明らかであります。減税の効果は、アメリカの例を引くまでもなく、学者、専門家、さらに財界人でさえもその必要性を認めているではありませんか。日本の需要構造では、個人消費支出の比率は高度成長過程で低下してきておりました。消費構造を変え、当面の景気対策のためにも所得税減税を実施すべきであり、経済政策としても正しいと信じております。
 私は、以上の二点から、低所得者層中心に一兆円の所得税減税の実施を要求するものでありますが、政府の率直な見解を求めたいのであります。(拍手)
 なお、政府は財源不足を指摘するかもしれませんが、租税特別措置による減免税額は五十一年度幾らに上ると見込んでいるのか。五十年度は、国税で七千九百六十億円、交際費課税による増税分を控除しても純減免税は五千六百十億円に達し、地方税ともでは九千五百九十二億円と、約一兆円にも及んでいるのであります。財源は十分にあるのであります。要は政府の姿勢のいかんにかかわっているわけであります。総理並びに関係大臣の所信を伺いまして、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣三木武夫君登壇〕
#13
○内閣総理大臣(三木武夫君) 村山君の御質問にお答えをいたします。
 五十一年度の税制改革案、これはインフレ利得を放置して安易な赤字公債に依存している政府の姿勢を示すものだというようなお話でございましたが、村山君も御承知のように、今日求められておるものは景気の回復であり、景気の回復を図らなければ、雇用の安定も期しがたいのであります。しかし、さりとて今日、一般的な増税を行う情勢ではございません。あえて多額の特例公債を発行して、財政面から景気の浮揚を図ろうとしたことは、これはやむを得ない処置であると存じます。
 また、厳しい財政事情や国民負担の現状を考慮して、所得税減税を見送ることにしましたが、景気対策に矛盾しない範囲内で、選択的な増税措置を講ずることにしております。
 このような時期であるだけに、これまで以上に、村山君の御指摘のように、課税の公平を重視することは、これはお説のとおりでございます。そういうことから、租税特別措置に対して全面的な見直しを行ったわけでございます。
 来年度の税制改革は、まことに困難な財政経済の状態のもとにおいては、考えられる最善のものであると考えておる次第でございます。
 次に、現在のような状態で新税で増税を図るようなことは不可能に近い、現在の税制を見直してみる必要があるというような意味の御質問がございました。
 将来において国民に負担の増加を求めることとなる場合においては、現行の税制を改めて見直すことが必要であることは申すまでもございません。そして新税の創設などの場合には、幅広い検討がなさるべきであって、そういう場合には、どのような形でそれを求めるのが適当であるかということは、単に政府の判断ばかりではいけない、税制調査会を初め関係各方面に慎重な御検討を願うばかりでなく、今後において新税を創設するということは、国民の協力を得なければできることではない、かように政府は考えておる次第でございます。
    〔国務大臣大平正芳君登壇〕
#14
○国務大臣(大平正芳君) 村山さん仰せになるように、現行税制の根本的な見直しという課題は確かにあるわけでございます。けれども、たびたび政府が申し上げておりますように、いま経済情勢が大変流動的でございますので、根本的な改革に手を染めるような時期でございません。したがって、一般的な増税あるいは一般的な減税は差し控えるという態度をとらしていただきましたことは、先ほど大石君の御質問にお答えいたしたとおりでございます。
 しかし、といって、あなたがいま御指摘の租税特別措置につきまして、おざなりの見直しをやるというようなことではいけないわけでございますので、この問題につきましては、先ほど総理も仰せになりましたとおり、特にことしは力点を置いたつもりでございます。
 企業関係の租税特別措置で、いま減税額が、御案内のように、約三千億ばかり残っておるわけでございますけれども、これは平年度千百五十億ばかりこれを整理するという措置をいたしたわけでございますので、これまでの見直しからいたしますと、私は相当程度評価していただいてよろしい措置でないかと自負をいたしておるわけでございます。
 しかし、これは村山さんに申し上げるまでもないことでございますけれども、配当軽課の問題でございますとか、あるいは配当金の益金不算入措置の問題でございますとか、あるいは各種引当金の問題あるいは各種減価償却制度の問題等は、私どもは租税特別措置とは考えていないわけなんでございます。これはいわば課税所得の計算上の問題でございまして、企業会計の原則に従いまして、どの程度課税所得として見るかという問題でございまして、こういう問題は、それぞれの制度の本旨に従いまして、政府はそれぞれ適切な措置をとってまいってきましたし、今後もとってまいるつもりでございます。
 残された租税特別措置につきましては、約二千億企業関係が残っておるわけでございますが、先ほど大石君にもお答えいたしましたように、今後なお厳しく見直していくつもりでございます。
 それから、自動車関係の税金の引き上げの問題で、営業車、自家用車ということで、営業車を特に低目にしたことについての御指摘がございましたが、これは輸送の効率のことも考え、あるいは料金が認可制になっておるというようなことも考えての政策上の配慮でございますことを御理解いただきたいと思います。
 それから、所得減税一兆円という提案に対しての見解を求められたわけでございます。
 冒頭に申し上げましたように、いま大きな税制改革を行えるような環境でないと、まず私どもは判断いたしておりますことをお断りしておきたいと思いますが、さらに、来年度所得減税を考える、来年度の時点に限って所得減税の是非を問われるならば、先ほど大石君にもお答えいたしましたように、私どもといたしましては、来年度は所得税減税は差し控えさせていただきたいという考えを持っておりまするし、また、景気対策的な問題といたしましても、来年度は所得減税によるべきでないという判断をいたしておりますことも、たびたび本院で政府が述べておるとおりでございますので繰り返しませんけれども、御理解をいただきたいものと思います。
 それから、土地再評価の問題でございますが、これはこの土地再評価ばかりじゃございませんで、まだ実現していない利益に対する課税の問題といたしまして、課税技術上大変むずかしい問題を含んでおりますので、私どもにわかに賛成できないという趣旨のことは、本院におきましても、また各委員会におきましても、たびたび申し上げてあるところから御理解を願いたいと思うのでございます。
 それから、付加価値税の問題でございますが、これは先ほどの中期財政展望との関連で増税をどう考えておるかというところからもお答え申し上げたところでございますが、いま政府の頭に、どういう税目をどのようにいつからふやしてまいるかという具体的な構想は、まだないわけなんでございます。今後こういった問題は、来年度以降真剣に検討しなければならぬ課題だと思っておりまするけれども、付加価値税という問題について、いままで税制調査会に御審議をお願いした覚えはないわけでございます。増税の問題というのは非常に重要でございまするので、あらゆる観点から十分な検討を遂げなければならない課題でございますので、ただいままだ政府として全く白紙でおりますことを御理解をいただきたいと思います。
 それから、社会保険診療報酬課税の問題でございますが、これはたびたび申し上げているように、政府といたしましても、次期社会保険診療報酬改定の際考えさしていただくということに相なっておりますことは、御指摘のとおりでございます。
 しかし、いずれにいたしましても、この問題は大変経緯のある問題でございますし、重大な問題でございますので、政府といたしましては、国民の御納得がいくような措置は何としても講じなければならない課題であると心得ておるつもりでございます。(拍手)
    〔国務大臣田中正巳君登壇〕
#15
○国務大臣(田中正巳君) 社会保険診療に関する特別措置は、診療報酬の適正化が行われるまでの特別な措置として発足したことは、当時の議員立法の会議録等で明らかなところであります。その後、幾たびか診療報酬の改定がありましたが、今日なお、適正化が達成されたものとの完全な国民的合意を得るところまでは至っておらないことも事実であろうと思われます。今後とも、診療報酬の適正化につき、中医協等の御協力を得て努力する所存であります。
 また、予算に九・一%の診療報酬アップを計上したのは、当時、中医協内部の意見の調整ができないために、中医協の再開がおくれておって、たまたま予算編成期が来ましたので、五十一年度予算の総合予算主義の事情もありますので、やむを得ずとった措置であります。その後、こうした措置はこれを先例にしないということで、この問題は解消をいたしました。
 御承知のとおり、去る十日、中医協が再開されましたので、近々行われる中医協に対する諮問案では、できる限り疾病構造の変化に対応し、医学、医術の進歩に即応した医療の近代化を図る方向で目下鋭意検討中でありますし、今後ともその方向で努力をいたしたと思っております。(拍手)
    ―――――――――――――
#16
○議長(前尾繁三郎君) 瀬崎博義君。
    〔議長退席、副議長着席〕
    〔瀬崎博義君登壇〕
#17
○瀬崎博義君 私は、日本共産党・革新共同を代表して、租税特別措置法の一部改正案につき、総理並びに関係大臣に質問いたします。
 三木内閣は、今日のわが国経済を未曾有の危機に陥れた重大な政治責任をとろうとせず、不況と物価高に苦しむ国民に対し、福祉を切り捨てる一方、新たな増税と高負担を押しつけ、それを財源として大企業奉仕の景気対策を大規模に推し進めようとしています。
 国鉄運賃、電報電話料金を初めとする公共料金の連続大幅値上げや各種保険料、診療費の引き上げに加え、税制面では勤労所得者に対する実質増税、自動車関係税の増税など、勤労国民は昭和五十一年度だけで実に三兆円近い大幅な負担増を強いられようとしています。ところが、大企業には、会社臨時特別税の廃止など、実質的にも減税をしているではありませんか。
 国民負担の不公正をさらに拡大した三木内閣の財界本位、国民犠牲の政治姿勢は、断じて容認できないものであります。(拍手)その根幹が、大企業に対する特権的減免税であり、わが党は、直ちにその根本的な再検討を強く主張するものであります。
 そこで、まず第一に、租税特別措置の改廃をめぐる当面の措置について、総理に質問をいたします。
 わが国の租税特別措置法による各種準備金、特別償却、税額控除など大企業に対する減免税措置は、数の上でも内容の点でも世界に例を見ないものであり、税制の不公正を拡大し、大企業の横暴を許し、今日の不況、インフレをもたらした大きな原因の一つであります。国民が、税制改正の第一の要求として、この租税特別措置の厳格な改廃を求めているゆえんもまたここにあります。
 総理、もしあなたが、国民のこの正当な要求と世論に謙虚に耳を傾け、不公正の是正を名実ともに実行しようとするのならば、このような租税特別措置については、少なくとも、第一に期限が来たものは原則として廃止する、第二に期限未到来でも国民生活にとって政策効果のないものは直ちにやめる、第三に新規の特別措置は認めないという三つの観点を明確にすべきであります。
 つとにわが党が、最低限の措置として主張し、税制調査会も最近ようやく認めたこの三つの観点について、総理の明確な答弁を求めるものであります。(拍手)
 第二に、今回の政府改正案を中心に、租税特別措置に関する政府の基本的方針について質問いたします。
 今回の改正案では、廃止されたものは、沖繩海洋博出展準備金など、今日では存在意義を全く失ったものに限られており、縮減されたものもその実態は小幅であって、とうてい根本的な見直しなどとは言えないものであります。しかも、海外投資損失準備金の対象に、海外向けの大規模プロジェクトを加えたばかりか、不公正税制の典型である利子配当・所得の分離課税は全く手をつけておりません。
 その結果、政府改正案による増収は、わずかに初年度百四十億円にすぎず、逆に大企業には、会社臨時特別税の廃止によって、八百億円の減税措置を行っているのであります。これでは中小企業と大企業との実効税率の逆累進は全く解消されず、勤労所得者と大資産家との税負担の不公正もさらに拡大されるではありませんか。
 総理、このような世界にも例がない大企業、大資産家優遇税制こそ、今日の財政危機の根源であります。
 いま重要なことは、わが党が主張するように、税金は付加価値税のような大衆課税に財源を求めるのではなく、大企業と大資産家から適正に取って、それを国民のために使う立場を貫くべきであります。その立場から、大企業向けの準備金、特別償却を廃止すること、法人税法の貸倒引当金、退職給与引当金の繰り入れ率を大幅に引き下げ、配当軽課、受け取り配当の益金不算入をやめること、利子・配当所得の分離課税を廃止して総合課税にするとともに、給与所得控除の青天井をやめ、さらに、高額所得者に対する課税の適正化を図る方針を打ち出すべきではありませんか。(拍手)総理の見解を求めるものであります。
 第三に、租税特別措置の改廃の具体的内容について、当初に触れた幾つかの観点から、大蔵大臣に質問いたします。
 その一は、国民の立場で政策効果を全面的に見直すことであります。減税効果を持つ法人税関係の特別措置は九十八項目に上り、実績値との対比や政策効果も検討されないまま、ひとえに大企業の内部留保の蓄積に奉仕してきました。
 たとえば、公害防止準備金は、大臣みずから、この準備金の積み立てと具体的な公害防止支出との結びつきが不明確で、単なる利益留保的な準備金となっており、感心できない制度であることを認めているのであります。また、貸倒引当金を初め各種引当金について、三木内閣は、これを政策税制とは別個のものとして今回の見直しの対象から除外をしましたが、都市銀行の貸し倒れ実績は、昭和四十九年度千分の〇・〇二であり、銀行の貸倒引当金は実にその五百倍に達するものであります。さきに政府は若干の手直しを行いましたが、それでもなお四百倍を超えており、しかも貸倒引当金の八割近くは大金融機関の利用するところであります。歩積み両建てで勤労国民を苦しめ、しかも不況下で巨額の利益を上げている大金融機関に係る特別措置や公害防止準備金を初め、各種準備金、引当金などの特別措置の全面的な実績対比の検討と、国会への報告を要求するものであります。(拍手)
 特に、これら特別措置は、ほとんど大企業に利用されており、昭和四十八年度末残高、公害防止準備金の九二%、海外投資損失準備金の九七%、試験研究費の税額控除の九六・一%、技術等海外所得の特別控除の九五・八%など、ほとんど大企業の内部留保に奉仕し、既得権と化していることに照らして、大蔵大臣の明確な答弁を求めるものであります。(拍手)
 その二は、特別措置の期限についてであります。
 三木内閣は、大企業に奉仕する海外投資損失準備金を初め、多数の項目の特別措置を、本年度末期限が到来するにかかわらず、さらに延長したばかりか、電力大企業に奉仕する渇水準備金、原子力発電設備の特別償却など、高度成長下で設けられた、大企業のみが利用する特別措置を無期限に続けようとしております。
 他方、会社臨時特別税については、期限到来を理由に廃止しようとしていますが、これこそ、三木内閣の大企業奉仕の姿勢を露骨に示したものと言わなければなりません。(拍手)石油危機に便乗した大企業は、現在でもなお、大銀行など、当時の買い占め売り惜しみ資金の提供によって巨額の利子収益を上げており、前九月期決算の上位十社のうち八社まで大銀行が占めた事実を見ても、なお存続の必要があることを十分証明しているところであります。
 政府みずから、転換と見直しを言うのであるなら、税制調査会答申すら指摘するごとく、租税特別措置の新設中止はもとより、期限を重視し、大企業の特別措置の延長を廃止し、会社臨時特別税こそ延長すべきです。
 以上二点について、大蔵大臣の明確なる答弁を求めるものであります。(拍手)
 第四に、所得税減税についてお伺いいたします。
 大企業には手厚い減税を、勤労国民には実質増税を押しつける三木内閣の税制改正は、不公正の拡大以外の何物でもありません。
 総理は、課税最低限が国際的に高いと強弁していますが、国民一人当たりの可処分所得はアメリカの六割弱、西ドイツの七割にすぎず、しかも、高額所得者と低所得者の格差が著しく拡大し、あまつさえ、所得税においても実効税率の逆累進が生じているとき、勤労国民に対する所得税減税なくして不公正是正なしと言わねばなりません。総理の明確な答弁を求めます。(拍手)
 第五に、自動車関係税について質問いたします。
 本税は道路財源とされてきましたが、道路整備は、高度成長の破綻に照らし、生活道路を中心とすべく、したがって、その配分も地方税の比重を高めるべきものであります。自動車による地域の社会的費用がますます増加している実情を見ても、この際、自動車諸税の地方税への配分を強化すべきと思うが、この点について自治大臣の答弁を求めます。
 最後に、税務行政の不公正是正について、総理にお尋ねいたします。
 今日、ロッキード社の献金問題をめぐって、右翼団体の幹部である児玉譽士夫氏が、合計二十一億円、特に昭和四十七年十一月一日から六日までの短期間に六億円を超える工作資金を受領したと、アメリカ上院多国籍企業小委員会で証言されています。これは、伝えられる児玉氏の昭和四十七年度申告所得額四千三百二十二万円と対比すれば、明らかに所得脱漏の強い疑惑が生じています。時効期限を目前にして、税務当局はいまだに、証拠書類の調査など、迅速な効果ある措置をとった形跡も見られません。他方、零細業者は、わずかな申告差額でも、単に税務職員の心証のみで厳しい立入調査や質問検査を受け、税務行政に対する不服申し立ては、昭和四十八年度一万一千件から、同四十九年度二万二千件へと激増しております。
 もし総理が不公正の是正を言うのなら、これこそ是正すべきであり、納税者の権利を尊重して民主的な税務行政を確約すること、また、ロッキード献金問題に絡む児玉氏など疑惑のある人物の所得脱漏の調査を行うこと、さらにアメリカ政府に対し、ロッキード社からの工作資金を受け取った政府高官名を含む一切の関係資料の送付を求めるなど、この問題について徹底的な糾明を行うべきでありますが、政府はいかなる措置をとったか、これからいかなる措置をとるかについて、国民の前に納得のいく答弁を求めます。(拍手)
 わが党は、国民の輿望にこたえて、わが国の主権と民主主義にかかわる黒い金脈の疑惑を徹底的に追及するとともに、大企業本位の不公正税制の是正のため奮闘する決意を述べて、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣三木武夫君登壇〕
#18
○内閣総理大臣(三木武夫君) 瀬崎君にお答えをいたします。
 三木内閣の税制は大企業優遇ではないかという、いつもの御主張でございましたが、そういうことはございません。国民全般の税制の公平な負担を考えてやっておるわけでございます。五十一年度の税制改革に当たっても、租税特別措置については全面的な見直しを行い、企業関係税制を中心として大幅な整理合理化を行おうとしておるのでございます。今後とも税の公平というものは三木内閣としても最も重視する点でありまして、税制の見直しを行っていく所存でございます。
 さらに、今回の租税特別措置法改正について、特別償却あるいは税額控除、各種引当金について御批判がございましたが、特別償却、税額控除など各種の租税特別措置につきましては、特定の政策目的に資する目的で認められているものであるところから、従来から絶えずその見直しを行ってきておるところであります。特に、来年度の税制改正に当たっては、現下の厳しい財政事情などにかんがみて、企業関係税制を中心として大幅な整理合理化を行うこととしております。
 また、各種の引当金制度について、瀬崎君はいろいろ御批判がございましたが、これは、貸倒引当金制度であるとか、退職給与引当金制度であるとか、やはり会計原則で認められているものであって、制度自体が不当であるというものではございません。また、租税特別措置と同一視することは適当ではないのでございますが、まあしかし、繰り入れの率については、今後とも必要に応じて見直しをしてまいりたいと思っております。
 それから、所得税減税についてでございますが、経済の高度成長に伴う大幅な自然増収に支えられて、これまで毎年のように実質的な減税を行ってきたことは御承知のとおりでございます。その結果、所得税の課税最低限は百八十三万円と、諸外国と比較しても非常に高い一つの最低限となっております。また、最近の消費動向からも、所得税を払っていないような低所得層に対しては、社会保障などの施策の充実を図ることが重要と考えまして、今年度は社会保障関係費で二二・四%伸ばしたところでございます。したがって、ことしは所得税減税を行わないことにしたということは御理解を願いたいわけでございます。
 また、納税者の権利を尊重して民主的な税務行政を確立せよということは、これはわれわれも当然に考えておるわけでございまして、税務の執行に対しては、税収を円滑に確保することを使命として、課税の公平あるいは税務行政の民主的運用、これを重視していくことは申すまでもないことでございます。
 ロッキード社からの工作資金の問題について、いろいろ御質問がございました。このロッキード問題に対して、この真相を究明するということは政府の責任であるとわれわれも考えておりますから、このロッキード事件が起こりました直後に、日本政府はアメリカの政府に対して、いろいろうわさされておるような政府高官名と言われるようなものの内容も含めて、米国政府の持っておるあらゆる真相究明のための材料を日本政府に提供してもらいたいという要請をいたしたわけでございます。国民の前に、このような疑惑は、できる限りの努力を払って真相を究明しなければならぬというのが強い政府の決意であることを申し上げておきたいのでございます。(拍手)
    〔国務大臣大平正芳君登壇〕
#19
○国務大臣(大平正芳君) 特別措置の問題につきましては、いま総理からあらましお話がございましたが、ことしは、御承知のように、五十九項目にわたりまして改廃を加えたわけでございます。この措置は、なまぬるいという御批判もございますけれども、いままで行いました見直しの中では、一番彫りの深い見直しだったと私ども考えておるわけでございますが、残された問題につきましても、今後一層見直しを加えてまいることに変わりはないわけでございます。しかしながら、先ほど村山議員にも申し上げましたように、準備金でございますとか、あるいは引当金でございますとか、あるいはその他、会計制度上の問題といたしまして、特別措置と言えない所得計算上の技術問題は、商法あるいは会計規則等、税務の実態に即しまして鋭意考えていくつもりでございます。したがって、あなたが御指摘の引当金と実績の対比ということにつきましても、今後、実態を見きわめながら漸次是正してまいるつもりでございます。
 それから、給与所得控除の問題あるいは法人の配当軽課の問題、あるいはキャピタルゲイン課税の問題等、いろいろ御指摘がございましたけれども、これらの制度につきましては、先ほどもお答え申し上げましたとおり、私どもといたしまして、合理的な見直しを行いながら、課税の充実に努めてまいることに変わりはないわけでございます。
 とりわけ、利子・配当所得の総合課税でございますが、これは今後、いま五年間の猶予をいただきまして、総合と分離の選択課税を認めていただいておりますけれども、実際、総合課税ができる条件の整備ができますならば、総合課税に踏み切るつもりで用意をいたしておるところでございます。
 それから自動車課税につきまして、中小企業に圧迫を与えるのではないか、これをやめるつもりはないかということでございますけれども、これは自動車課税は時限立法でございましたので、期限が参りました機会に見直しました結果、諸外国に比べまして若干低目にございまするし、また各種の政策目的からいたしまして、この税目は若干増税をお願いしても差し支えなかろうという判断で今度の改定をお願いいたしておるわけでございます。しかし、これは一般財源として取り入れるつもりは当分ないわけでございまして、道路財源はまだ当分必要なわけでございますので、引き続き特定財源として活用さしていただきたいと考えております。
 また、これと同時に、地方のこれに相当する軽自動車税等も若干の税率の改定をいたしておりますので、地方財源におきましても、いままでよりは割合のいい自主財源が保障されておりますので、中央、地方の財源の配分上、このために不公正を来しておるとは考えていないわけでございます。
    〔国務大臣福田一君登壇〕
#20
○国務大臣(福田一君) 瀬崎さんにお答えを申し上げます。
 ただいま道路関係諸税についての自治省の方針を御質問になりましたが、すでに御案内のように、道路につきましては、国道は九〇%ほど整備が進んでおります。府県道は六五%くらい、それから市町村道は二〇%でございます。しかも府県道の場合は十二万キロくらいでありますが、市町村道はまだ九十万キロあたり整備をしなければならない面があるのでありますから、これはどう考えてみても、この市町村道というか、この地方自治体の財源というものを考えて、自動車関係諸税の配分をしなければならないというのが自治省の考えでございまして、この点は強くこれを要請いたしておりまして、ただいま大蔵大臣からもお答えがありましたが、そういう意味合いにおいて、今回のこの法律におきましても、明年度においては、軽油引取税の税率の引き上げ、自動車取得税の暫定税率の延長、また、国税においても、その収入額の一部が地方道路財源となるガソリン税及び自動車重量税の税率を引き上げることとして、地方道路財源の充実を図るということにいたしたわけでございます。
 以上のようなことでございまして、ただいますぐに国と地方との配分関係を更改するということは困難であると考えておりますので、ただいま提案したような内容にいたしたわけであります。
    ―――――――――――――
#21
○副議長(秋田大助君) 坂口力君。
    〔坂口力君登壇〕
#22
○坂口力君 ただいま議題となりました租税特別措置法の一部を改正する法律案について、公明党を代表して、総理並びに関係大臣に質問をいたします。(拍手)
 昭和四十九年、五十年の税収不足に引き続き、五十一年度も、政府予算案では、赤字国債三兆七千五百億円を含み、七兆二千七百五十億円の国債発行を予定しております。きわめて深刻な歳入不足が予想され、いまや税制度の抜本的な改革が急務であります。したがいまして、租税特別措置法を中心に、五十一年度税制改正全般にわたって質問を行うものであります。
 まず最初に、三木総理にお尋ねいたしますが、昭和五十一年度に予想される七兆二千七百五十億円という巨額な歳入不足は、百万人もの失業者を発生せしめ、多くの企業倒産を続出せしめている政府の経済政策の失敗の一断面であり、これにほおかむりをすることは、決して許されないはずであります。総理は、この政治責任をどう感じておみえになるか、まず明らかにしていただきたいのであります。
 五十一年度の税制改正については、わが国の経済財政事情から考えて、歳入の確保、総理の公約である社会的公正を図るための不公平税制の是正、景気対策としての税制改正など、解決をしなければならない重要な課題があったはずであります。しかしながら、政府の改正案は、歳入の確保は安易な赤字国債を初め国債の発行に頼り、不公平税制には根本的なメスを入れず、わが国経済の現状から、景気対策上最も効果的であると考えられている所得税の減税を見送るなど、直面する課題について明確にすべき政策や手段を何一つ具体化していないのであります。
 こうした政府のあいまいな税制改正の態度が、歳入不足をますます深刻化し長期化するものであり、国民の納税意識に悪影響を及ぼすことは必至であります。私は、今回の租税特別措置の整理合理化について、大蔵大臣が財政演説でみずから述べられた高い評価とは全く逆で、きわめて糊塗的なものであると断ぜざるを得ないのであります。
 以下、大蔵大臣に質問をいたします。
 質問の第一は、租税特別措置法の改正項目を見ますと、その対策となったものは、百九十六項目のうち、廃止十一項目を含めて約七十項目であり、金額にすると、五十一年度の税収はわずか百五十億円であり、租税特別措置全体による減収額や歳入不足額から見ると、まさに爪上の土であるということであります。
 大臣は、このことについて、企業の事業年度が云々と言われるかもしれませんが、しかし、わが国の歳入不足の深刻さは、そんなに悠長なことを言っていられないはずであります。
 また、今日の歳入不足は、昭和四十九年度末から明らかなものであり、わが党の再三再四の要求にもかかわらず、いたずらにその時期を引き延ばしたのも政府であります。
 さらに、今回の対象にならなかった所得税の利子・配当所得者に対する課税の特例を初め、大企業の優遇措置の廃止や、ようやく手をつけた交際費課税などもきわめて糊塗的な改正に終わったことなどを含めて、早急に租税特別措置全体について、さらに徹底的に洗い直すことが緊急であると考えます。この点について大臣のお考えを伺います。
 加えて、政府が法人税本法の中に組み込まれているからとして、全く手をつけていない各種引当金、配当軽課、法人の受け取り配当の益金不算入制度なども、その実態が大企業の優遇制度となっていることは明らかであり、廃止及び縮小の方向で見直す必要があるものであります。あわせて答弁をお願いいたします。
 質問の第二は、会社臨時特別税についてであります。これについて政府は、期限が来たとか、議員立法であるとか、また不況の中で利益を上げるのは企業努力によるものであるとかの理由で廃止することにしています。しかし、その実態は、依然として大銀行がベストテンの上位八位まで占めていることや、物価の先行きが懸念されていることなどから見て、その立法の趣旨や背景がすべて解消したとは考えられないのであります。
 また、その税収額から見て、大企業にとっては、租税特別措置の整理合理化の相殺というより、むしろ実質的減税と言わざるを得ません。そこで、この税制度の存続を主張するとともに、再び議員立法で提案された場合、いかなる態度をとられるのか、御答弁を賜りたいのであります。
 第三に、自動車関係諸税の引き上げについて伺います。
 自動車関係諸税を見直すということについては賛同するものであります。しかしながら、政府のような安易な引き上げは、大衆課税の強化や物価押し上げ要因となり、ひいては雇用問題まで発展することは明らかであります。
 また、政府の提案理由である資源、環境、道路財源問題などは、単に税制度にしわ寄せするのではなく、総合的な見地から早急に解決を図るべき重要なものであり、この点について大臣の答弁を願うものであります。
 質問の第四は、所得税の減税を全く行わなかった点についてであります。
 所得減税の見送りは、政府の租税及び印紙収入の資料では、所得税の歳入が五十年度の補正予算に比べ一兆一千億円の増収となり、見えざる増税となっていることが明らかであります。この見えざる増税の被害者の大多数が、いわゆるサラリーマン階層であり、学識者等の試算によりますと、たとえばベースアップ率が政府の言う一けた台と仮定しても、年収二百万円の標準家庭では対前年に比べ負担割合は八〇%もふえ、年収三百万円で二七%、四百万円で二四%、五百万円で二〇%と負担増となるばかりか、低所得者ほど負担割合がふえるという逆累進の形となってくるのであります。
 わが国の国民生活は、政府資料でも明らかなように、インフレ、不況の最大の被害者は低所得者層であり、高所得者との格差は開く一方であります。実質的増税に加え、消費者物価の上昇と社会保険料の引き上げのために、生活破綻を招くことは必至であります。
 また、政府関係者は、わが国の租税負担率は国際的に見て低いことを唯一の根拠に減税の見送りを主張されますが、これもまた余りにも国民生活から遊離した一方的な見方であります。
 すなわち、政府資料による国民一人当たりの可処分所得の国際比較は、一九七三年において米国の四千百八十一ドル、西独の三千四百五十二ドル、フランスの三千百九十八ドルに比べ、わが国は二千四百九十二ドルとはるかに低いものであり、先進諸国と生活水準の格差はまだまだ大きな開きがあると考えるものであります。
 このような実情から勘案しますと、租税負担率のみをもって減税見送りの根拠とすることは、きわめて不当であると言わなければなりません。大臣の明確な答弁を伺うものです。
 質問の第五は、景気対策と所得減税についてであります。
 大蔵大臣は、減税をしても貯蓄に回るから等の見解を示されていますが、私は、なぜ国民が衣食住を節約して貯蓄しなければならないかに思いをはせるのであります。
 言うまでもなく、社会保障の後進性が将来の生活不安を呼ぶ最大の原因であり、ここに政治の貧困があると言わざるを得ません。もし減税分が全部貯蓄に回るとすれば、それは三木内閣の示す政策がいかに国民に受け入れられていないかを示すものであります。将来への展望を示す政策と減税をセットにして国民に示すことこそが急務であると考えるものであります。
 さらに、政府経済見通しによると、国民総生産に占める個人消費支出の割合が約五七%になっていることから、個人消費支出の帰趨が五十一年度経済に及ぼすウエートはきわめて大きいと言わねばなりません。したがって、減税を抜きにした景気浮揚は考えられないのであります。
 政府の主張する公共事業投資一辺倒の景気対策と、わが党がかねてから主張する社会保障計画に所得減税を加味した景気対策との違いについてどう考えられるか、納得のいく答弁を伺いたいのであります。
 質問の第六は、物価調整減税についてであります。
 政府は、五十一年度の消費者物価の上昇率の見込みを八・八%としながら、これに伴う調整減税すら全く行おうとしておりません。政府は、少なくとも四十年度から四十七年度の間は、五十一年度予定よりも低い消費者物価の上昇率であっても物価調整減税を行ってきたにもかかわらず、昭和五十一年度はなぜ行わないのか。また、四十九年度の減税が大幅であったからという理由は、その後の物価上昇や国民生活の可処分所得の推移から見て納得のいく理由にはならないのであります。
 この点について答弁を求めるとともに、私は、ベースアップ率が政府の予想する一けた台であった場合、個人消費支出の伸びが政府見通しの一三・七%を達成できるとは、過去十年間の政府統計から見てどうしても不可能であると断ぜざるを得ないのであります。
 政府は、みずから見通した個人消費支出一三・七%の伸びが不可能となった場合、減税を行う意思があるかどうか、あわせて伺うものであります。
 最後に、総理にお尋ねいたします。
 総理は、過日、わが党の竹入委員長の代表質問に対して、付加価値税の導入は検討に値するとの答弁をされましたが、私は、わが国の税制度の実態や、すでに実施をしている先進諸国の実情から見て、物価を押し上げ、大衆課税の強化と現在の不公平をますます拡大するなど、現状では百害あって一利なきものと考えます。したがって、総理の考えている付加価値税はいかなる点において検討に値するのか、その理由を具体的にお伺いいたします。
 また、その理由が言えない場合には、付加価値税の導入をしないことをここで確約されんことを望みまして、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣三木武夫君登壇〕
#23
○内閣総理大臣(三木武夫君) 坂口君の御質問にお答えをいたします。
 歳入欠陥などに関連をして政治責任をお問いになりましたが、坂口君も御承知のように、突如として起こった石油危機、これを契機として発生した狂乱的な物価の高騰、これを鎮静させなければ日本経済はもう行き詰まっていくことは明らかでございます。全力を尽くしてその物価の高騰を鎮静いたしたわけでございますが、その過程で、景気が予想以上の停滞をした、税収も予想以上に落ち込んでいる。けれども、一方において、物価の鎮静の傾向、これが定着しつつありますので、今回は思い切って景気浮揚の政策をとることにいたしたわけでございます。
 日本経済は高度の成長から適正な安定成長への大きな転換期である。いままでかつてこういうことは経験したことはない。したがって、財政面にもいろいろな困難が生じてくるわけでございまして、当面、財政面からの景気浮揚に努力するとともに、今後できるだけ早く、こういう特例公債のようなものに依存しなくても財政がやっていけるような状態に復帰しなければならない。こういう、いままで歴史上かつてないような難局を担当する者としての重い責任を常に感じながら、その衝に当たっているわけでございますが、大きく言って、日本の経済政策の方向を誤っておったとは私は思ってないわけでございます。
 最後に、私に対しては、付加価値税の問題について御質問がございました。
 坂口君御承知のように、日本の税体系というものは、約七〇%が直接税、三〇%が間接税で、七、三の割合でありますが、これはヨーロッパ諸国は、あべこべの七、三になっていると言ってもいいと思うわけであります。だから、日本の将来の税制というものがどういう税制の体系、直接税と間接税との割合がいまのようなままでいいんであろうかどうか、この点は検討に値する問題だと私は思う。
 そういうことで、間接税というものにもう少しのウエートを置くべきだというようなことになれば、付加価値税というものも研究の一つの項目ではありましょうけれども、大蔵大臣もお答えしておりますように、いま政府は付加価値税というものを、これをひとつ取り上げて検討するというような状態ではないわけです。
 付加価値税は、確かに税収は上がるけれども、坂口君も御指摘になっておったように、いろんな弊害も伴いますので、この導入については政府は慎重に考えざるを得ない。したがって、これを取り上げて、付加価値税の導入を考えて政府は検討するというような段階でないことを御理解願いたいのでございます。
 お答えをいたします。(拍手)
    〔国務大臣大平正芳君登壇〕
#24
○国務大臣(大平正芳君) 特別措置の見直しでございますが、百九十六項目のうち、手をつけたのは七十であり、百五十億の成果を上げたにすぎないではないかという坂口君の御指摘でございます。けれども、御承知のようにこれは初年度百五十億でございまして、平年度は、交際費課税の強化も含めまして千百五十億円になりますことは、御承知のとおりでございます。
 各法人の事業年度が最近多く一年になりましたので、この税制改正案が国会で御承認をいただきました日の属する年度の法人税は、大方来年の五月の税収に結実してまいるわけでございまするので、初年度はいかにも少ないように見えますけれども、平年度は千百五十億になるということは御承知のとおりでございます。
 それから、今後の残された問題の見直しでございますが、これはたびたび申し上げておるように、この制度が慢性化する、あるいは既得権化するということは極力避けなければならぬことは当然でございまして、今後も精力的に見直してまいりますことは申すまでもございません。
 それから、引当金でございますとか法人の受け取り配当の取り扱いというような問題は、これは所得計算上の技術問題でございます。したがって、特別措置とは関係ないことは、村山先生にも申し上げたとおりでございます。
 それから、会社臨時特別税の問題でございますが、これは、国会でお決めいただきました当時、物価の高騰その他わが国経済の異常な事態にかんがみて、向こう二年間の時限立法として設けられた特別税でございます。そういった異常な事態が解消いたしましたことでございますので、これが廃止になりますのは、立法の趣旨から見て当然と心得ておるわけでございます。
 それから、自動車税の問題でございますけれども、これは先ほどもお答え申し上げましたように、諸外国の例に比して、わが国の自動車関係の諸税は低目になっております。それから、従量税方式をとっておるのが多うございますので、この際見直させていただく。それから、その他、道路財源の充実、環境の保全というような立場から、資源の愛護というような立場から、この程度の税金は取らしていただいてしかるべしと判断したわけでございます。これによって物価に及ぼす影響でございますが、卸売・消費両物価に対しまして〇・一%程度の影響があろうかと見ております。
 それから、可処分所得が少ないわが国におきましては、所得減税をもっと大幅にやるべきでないかというお説でございます。わが国の課税最低限は、先ほど申しましたように、夫婦と子供二人の場合は百八十三万円になっておりますが、これば最近アメリカが日本を抜きましたけれども、ただいままで世界一であったわけでございます。つまりこれは、実額がそれより高い国はアメリカだけだというのが現状でございまして、わが国の現在の可処分所得の状況におきましての課税最低限がそういう程度であるということからいたしまして、私は、いましばらく所得減税を見送らしていただきましても、国民の理解は得られるのではないかと判断いたしておるわけでございます。
 それから、景気対策としての所得減税の問題でございますが、これにつきましては、いろいろ御所見がございまするし、また有力なる学者その他のお説も、坂口さんと同様に、そういう御主張がありますことは、政府もよく承知いたしておるわけでございますが、本年度の問題といたしましては、所得減税によるよりは公共投資に期待するという選択を政府がいたしたことは、御理解を賜りたいと思うのでございます。
 しかし、少なくとも物価調整減税程度はやるべきじゃないかというお説でございますが、私は、減税の問題は、たびたび申し上げておるように、単年度だけで御判断いただかずに、ここ数年来政府がやってまいりました減税との対比におきまして、問題の評価をしていただきたいと思うのてございまして、すでに二兆円の減税をいたしたのがついこの問でございますので、ことしは御遠慮さしていただきましても、あえて不当な措置とは考えていないわけでございます。
 最後に、しかしながら、個人の消費の伸びが政府が予定いたしておる一三・七%に達しない場合は減税をやるかということでございますが、政府は、いませっかく財政上、経済政策上いろいろな措置をいたしまして、個人消費の伸びを一三・七%に持っていく努力をいたしておりまするし、またそれが可能であるという見通しに立っておるわけでございますので、これが達成できない場合のことは、目下全然考えておりません。(拍手)
#25
○副議長(秋田大助君) これにて質疑は終了いたしました。
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#26
○副議長(秋田大助君) 本日は、これにて散会いたします。
    午後二時五十四分散会
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 出席国務大臣
        内閣総理大臣  三木 武夫君
        大 蔵 大 臣 大平 正芳君
        厚 生 大 臣 田中 正巳君
        自 治 大 臣 福田  一君
 出席政府委員
        内閣法制局第三
        部長      茂串  俊君
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ソース: 国立国会図書館
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