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1975/05/06 第77回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第077回国会 本会議 第15号
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1975/05/06 第77回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第077回国会 本会議 第15号

#1
第077回国会 本会議 第15号
昭和五十一年五月六日(木曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第十二号
  昭和五十一年五月六日
    午後一時開議
 第一金属鉱業事業団法の一部を改正する法律案
    (内閣提出)
 第二 昭和四十二年度以後における国家公務員
    共済組合等からの年金の額の改定に関す
    る法律等の一部を改正する法律案(内閣
    提出)
 第三 昭和四十二年度以後における公共企業体
    職員等共済組合法に規定する共済組合が
    支給する年金の額の改定に関する法律及
    び公共企業体職員等共済組合法の一部を
    改正する法律案(内閣提出)
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 日程第一 金属鉱業事業団法の一部を改正する
  法律案(内閣提出)
 日程第二 昭和四十二年度以後における国家公
  務員共済組合等からの年金の額の改定に関す
  る法律等の一部を改正する法律案(内閣提
  出)
 日程第三 昭和四十二年度以後における公共企
  業体職員等共済組合法に規定する共済組合が
  支給する年金の額の改定に関する法律及び公
  共企業体職員等共済組合法の一部を改正する
  法律案(内閣提出)
 健康保険法等の一部を改正する法律案(内閣提
  出)の趣旨説明及び質疑
    午後一時十六分開議
#2
○議長(前尾繁三郎君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 日程第一 金属鉱業事業団法の一部を改正す
  る法律案(内閣提出)
#3
○議長(前尾繁三郎君) 日程第一、金属鉱業事業団法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 委員長の報告を求めます。商工委員長稻村左近四郎君。
    〔稻村左近四郎君登壇〕
#4
○稻村左近四郎君 ただいま議題となりました金属鉱業事業団法の一部を改正する法律案につきまして、商工委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 最近の金属鉱産物の需要は、現下の経済情勢の中で、史上最大の需要減退に見舞われております。このような状況の中でわが国金属鉱業は、未曽有の過剰在庫を抱えて危機に直面しており、これを放置しておけば鉱石輸入削減等の問題が深刻化して、資源輸出発展途上国との友好関係に影を落としかねない状況となっております。これはひいてはわが国の金属鉱物資源の安定的供給の確保を危うくすることにもなりかねません。したがいまして、今後の金属鉱産物の安定供給を確保するためには、大部分を海外に依存しているわが国としては、需要の変動にかかわらず輸入量を安定させることが絶対に必要であります。
 本案は、このような要請にこたえるため提案されたものであり、その主な内容の第一は、金属鉱業事業団の業務に金属鉱産物の備蓄に必要な資金の貸付業務を加えること、第二は、政府は事業団の長期借入金または債券に係る債務について保証することができること等であります。
 なお、本年度は、三百億円の原資をもって備蓄業務を行うこととしております。
 本案は、去る二月十九日当委員会に付託され、四月二十三日河本通商産業大臣から提案理由の説明を聴取し、以来、参考人から意見を聴取する等、慎重に審査を行い、四月二十八日質疑を終了し、採決の結果、本案は多数をもって原案のとおり可決すべきものと決した次第であります。
 なお、本案に対して、国内鉱山保護育成のための鉱業政策の確立と備蓄制度の拡充強化等を内容とする附帯決議が付されました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#5
○議長(前尾繁三郎君) 採決いたします。
 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#6
○議長(前尾繁三郎君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
     ――――◇―――――
 日程第二 昭和四十二年度以後における国家
  公務員共済組合等からの年金の額の改定に
  関する法律等の一部を改正する法律案(内
  閣提出)
 日程第三 昭和四十二年度以後における公共
  企業体職員等共済組合法に規定する共済組
  合が支給する年金の額の改定に関する法律
  及び公共企業体職員等共済組合法の一部を
  改正する法律案(内閣提出)
#7
○議長(前尾繁三郎君) 日程第二、昭和四十二年度以後における国家公務員共済組合等からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案、日程第三、昭和四十二年度以後における公共企業体職員等共済組合法に規定する共済組合が支給する年金の額の改定に関する法律及び公共企業体職員等共済組合法の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。委員長の報告を求めます。大蔵委員長田中六助君。
    〔田中六助君登壇〕
#8
○田中六助君 ただいま議題となりました共済年金関係の二法律案につきまして、大蔵委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 この二つの法律案の主な内容を申し上げますと、
 まず第一に、別途今国会に提出され、すでに本院を通過いたしております恩給法等の一部を改正する法律案による恩給の額の改定措置に準じまして、国家公務員の共済組合及び公共企業体の共済組合の既裁定の年金について、その年金額の算定の基礎となっている俸給を、昭和五十年度の公務員給与の改善内容に準じて増額することにより、昭和五十一年七月分以後、年金額を引き上げることといたしております。
 第二に、通算退職年金等の額の算定方式中の定額部分の額を引き上げるとともに、その加算期間の上限を五年間延長して三十五年とすることといたしております。
 第三に、廃疾年金及び遺族年金等の受給資格を緩和するほか、夫の死亡に係る遺族年金を受ける妻に遺族である子がいる場合、またはその妻が六十歳以上である場合には、遺族である子の数等に応じた加算を行うことにより、遺族年金の給付水準の改善を図ることといたしております。
 第四に、通算退職年金の受給権者が死亡した場合には、その者の遺族に対して、新たに通算遺族年金として通算退職年金の額の百分の五十に相当する額を支給することといたしております。
 第五に、恩給公務員期間等を有する者に対する特例措置の改善として、恩給における措置にならい、七十歳以上の老齢者等に対する年金額の割り増し措置の改善、公務関係の年金等の最低保障額の引き上げ等を行うことといたしております。
 このほか、退職年金等の最低保障額の引き上げ、遺族年金の扶養加給額の引き上げ、任意継続組合員の組合員期間の延長等、それぞれ所要の措置を講ずることといたしております。
 以上が両法律案の概要でありますが、両案につきましては、審査の結果、去る四月二十八日質疑を終了し、直ちに採決いたしましたところ、いずれも全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。
 なお、両法律案に対しましては、共済組合の給付に要する費用の負担とその給付内容の改善等八項目にわたり、全会一致の附帯決議が付せられましたことを申し添えます。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#9
○議長(前尾繁三郎君) 両案を一括して採決いたします。
 両案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#10
○議長(前尾繁三郎君) 御異議なしと認めます。よって、両案とも委員長報告のとおり可決いたしました。
     ――――◇―――――
 健康保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明
#11
○議長(前尾繁三郎君) 内閣提出、健康保険法等の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。厚生大臣田中正巳君。
    〔国務大臣田中正巳君登壇〕
#12
○国務大臣(田中正巳君) 健康保険法等の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。
 医療保険制度につきましては、昭和四十八年の改正により、大幅な給付改善が図られるとともに、保険財政の健全化のための諸施策が講ぜられたところであります。
 しかし、御承知のとおり、その後のわが国における社会経済情勢の変動はまことに著しいものがあり、医療保険におきましても、財政状況が再び悪化の様相を呈する等、その影響を看過することができなくなってきております。医療保険制度の健全な維持発展を図っていくためには、この際速やかに適切な対応策を講じていくことがぜひとも必要であります。
 今回の改正は、このような事情を考慮し、経済情勢の変動等に応じて手直しを行う必要がある事項を中心に、最小限のスライド的措置を講ずるものであり、標準報酬及び一部負担金について必要な改正を行うとともに、現金給付の水準を実情に合わせて改善するほか、任意継続被保険者制度の拡充を図ることとした次第であります。
 以下、この法律案の内容について概略を御説明申し上げます。
 まず、健康保険法の改正について申し上げます。
 第一は、現金給付の改善でありまして、本人分娩費の最低保障額及び配偶者分娩費の額を現行六万円から十万円に引き上げるとともに、本人埋葬料の最低保障額及び家族埋葬料の額につきましても、現行三万円から五万円に引き上げることといたしております。
 第二は、標準報酬の上下限の改定でありまして、最近における給与の実態にかんがみ、被保険者の保険料負担の公平を図る見地から、標準報酬の上限を現行二十万円から三十二万円に、下限を二万円から三万円に改定するものであります。
 第三は、一部負担金に関する改正でありまして、その額は昭和四十二年以来据え置かれておりますが、その間医療費、所得等が大幅に伸びていることにかんがみ、初診時一部負担金の額を現行二百円から六百円に、入院時一部負担金の額を現行一日当たり六十円から二百円に改定するとともに、入院時一部負担金を支払うべき期間を一カ月から六カ月とすることといたしております。なお、継続療養給付を受ける者の入院時一部負担金の額は、一日当たり百円とすることといたしております。
 第四は、任意継続被保険者制度の拡充でありまして、この制度を高齢退職者等にも利用しやすいものとするため、その制度の拡充を図ることといたしております。
 まず第一点は、任意継続被保険者制度に加入できる期間を現行一年から二年に延長することであります。
 第二点は、任意継続被保険者の標準報酬を、その者の保険者の管掌する全被保険者の標準報酬月額の平均額またはその者の退職時の標準報酬月額のいずれか低い額とすることにより、保険料負担の軽減を図ることであります。
 第三点は、任意継続被保険者が加入期間中にかかった疾病について、一定の条件のもとに資格喪失後も継続して給付が受けられるようにすることであります。
 第四点は、現在政府管掌健康保険においてのみ実施している任意継続被保険者制度を健康保険組合においても実施することであります。
 次に、船員保険法の改正について申し上げます。
 第一に、現金給付の改善でありますが、健康保険と同様に、分娩費の最低保障額及び配偶者分娩費の額を十万円に、葬祭料の最低保障額及び家族葬祭料の額を五万円に引き上げることといたしております。
 第二に、標準報酬の上下限の改定でありますが、上限を現行二十万円から三十四万円に、下限を現行二万四千円から三万六千円に改めることといたしております。
 第三に、一部負担金につきましては、初診時一部負担金の額を、健康保険と同様に、現行二百円から六百円に改定することといたしております。
 第四に、任意継続被保険者制度の導入についてでありますが、健康保険における任意継続被保険者制度の拡充と相まって、船員保険にも健康保険に準じた制度を新たに設けることといたしております。
 また、社会保険診療報酬支払基金法につきましては、基金の業務の範囲を改める等、所要の改正を行うことといたしております。
 なお、この法律の実施時期につきましては、本年七月一日からといたしておりますが、船員保険法の標準報酬に係る改正につきましては本年八月
 一日から実施することとし、また、社会保険診療報酬支払基金法の改正は公布の日からとしております。
 以上が健康保険法等の一部を改正する法律案の趣旨でございます。(拍手)
     ――――◇―――――
 健康保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
#13
○議長(前尾繁三郎君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。村山富市君。
    〔村山富市君登壇〕
#14
○村山富市君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま趣旨説明のありました健康保険法等の一部を改正する法律案について、総理並びに関係閣僚に質問をいたします。
 歴代自民党政府による国民生活を犠牲にした大資本本位の経済成長政策は、人間の生存に必要な自然環境を破壊し、各種の公害を引き起こし、合理化による低賃金、労働強化は新しい職業病をつくり出し、その上、頻発する交通事故など、国民の命と健康は、時、所を問わず常に脅かされているのであります。
 しかも、厚生省の発表によれば、四十九年の国民医療費は五兆三千二百億円と推計されており、五十年には六兆四千億円に達すると言われております。その他、この推計に算入されていない自己負担分を含めますと、実に莫大な医療費となるのであります。国民は大変な医療費の負担をさせられているのであります。
 にもかかわらず、医療を保障する国の責任は、全く果たされていない現状であります。すでにわが国の医療は多くの国民の批判の的となり、たとえば、保険あって医療なし、あるいはまた売薬医療とか、さらには人体破壊の医療とまで糾弾されているのであります。
 しかるに政府は、これほどまでに不信を買っている医療の現状に対して、抜本的な改革に手をつけようとしないのみか、健康保険財政の破綻をひたすら国民の負担によって切り抜けようとしているのであります。
 医療保障の責任、すなわち、すべての国民にいつどこでも適切な医療を保障する責任は、言うまでもなく政府にあります。このことは、世界保健機構の憲章においても、「各国政府は、自国民の健康に関して責任を有し、この責任は、充分な保健的及び社会的措置を執ることによってのみ果すことができる。」と宣言しているのであります。
 翻って、わが国の現状を見ますと、たとえば病院、診療所総数の実に九五%余りが私的経営にゆだねられており、国公立療養機関はわずかに四%という実態であります。しかも、医療機関は都市に集中し、無医地区は依然としてなくならない現状であります。
 さらに、提供される医療は、より点数の高い医療、より利ざやの大きい薬剤を選択される、いわゆるそろばん医療に走る傾向になっているのであります。
 こうした実態は、どこから見ても、医療保障に対する政府の無責任ぶりを示すものと言わなければなりません。この点について、総理、あなたはどのような認識をされておるのか、また、責任をお感じになっておられるか、まずお尋ねをいたしたいと思います。
 このような医療の荒廃をどう克服していくかについては、何らかの抜本的改善のためのプランを示さなければなりません。働く国民と患者の拠出によって保険財政を賄おうとしても、それはざるに水を注ぐような結果になると断ぜざるを得ません。負担する国民の側から見れば、うかうか病気にもなれないような不安な医療制度では拠出する気にもなれないというのが、ごく当然の論理ではないでしょうか。
 この観点から、次の諸点についてお尋ねをいたします。
 まず、救急医療についてであります。
 昭和四十八年に内閣広報室が行った世論調査によれば、国民の医療に関する不安と要求のトップは、この救急医療対策にあります。このことは、本年二月にいわゆる急患たらい回しの訴訟が行われていることにもあらわれていると言えましょう。確かにこのような怒りと不安は、医療砂漠の実態をよく反映しています。救急告示医療機関の数について見ましても、昭和四十八年を境に減少の傾向にあります。また、消防庁の調査では、実に十一回以上も電話で問い合わせをしなければ医療機関に収容されなかった救急患者が四十九年中に四千人以上もあり、同じく十一回以上も転送されてやっと診てもらえた者が百五十七人もあったというような恐るべき実態が広がっているからであります。助かる命も助からなくなるという、このような実態を政府はどのように克服しようとしているのか、十分確信の持てる施策を行っているのか、この際明らかにしていただきたいと思います。(拍手)
 特に、救急出場件数の五〇%以上が急病による出場であるにもかかわらず、救急業務を定める唯一の根拠法は依然として消防法のみであり、しかも、これは事故による救急患者を搬送することを規定したものにすぎません。これは明らかに政府の怠慢と言わなければなりません。たとえば救急医療整備特別措置法といったような新規の立法が必要ではないかと考えますが、いかがお考えでありますか、お尋ねいたします。
 また、せめて国公立医療機関や大学附属病院などは、結核、精神病院など特殊な医療機関を除いて、救急病院としての役割りを果たすべきだと思いますが、現状では、国公立医療機関のうち救急医療機関になっているのは三割にも満たず、また、二十七の国立大学附属病院のうち救急病院になっているのは東大附属病院のみであります。高い性能と最も近代的な研究施設や医療器具を備えているこれらの医療機関を救急医療機関として緊急の要請にこたえさせることは、むしろ当然ではないかと存じますが、その意思があるかどうか、総理並びに文部大臣にお尋ねをいたします。
 また、こうした施策を推進するためには当然国の財政措置が必要でありますが、大蔵大臣の見解もこの際承っておきたいと存じます。
 国民負担の増大に合意を得るためには、救急医療対策に次いで、いわゆる保険外負担となっている差額徴収の解消が必要であります。
 まず、差額ベッドについてお尋ねをいたします。
 国公立病院においては差額ベッドを完全撤廃せよという行政指導をとるべきではないかと存じますが、なぜこれができないのか、納得のいく御答弁をいただきたいと存じます。
 ちなみに、大阪市においては、差額ベットは差別ベッドであるとする住民運動が起こり、市当局との話し合いの結果、市立病院の差額ベッドは三年間で解消するとの方針を明らかにしました。国公立病院から差額ベッドを全廃せよという方針が決して不可能なことではないと存じますが、いかがでしょうか、明確な答弁をいただきたいと存じます。
 次に、基準看護病院でさえ付き添いが置かれている実態についてであります。全医労の調査によれば、本年二月一日現在、国立病院、療養所のうち、調査対象五十二施設のすべてに何らかの形で付き添いがおり、その数は合計二千六百名余りに及んでおります。利用者から見れば、このような医療機関が基準看護病院を名乗ること自体、詐欺にも等しいと言わなければなりません。政府はこれに対してどのように対処する方針でありますか、お尋ねをいたします。
 なお、この問題は、医療従事者、なかんずく看護婦の増員問題と密接な関係があることは言うまでもありません。複数夜勤、月八日以内という人事院の判定は昭和四十年のことでありますが、それから十年たった今日、なお国立病院、療養所でさえ一人夜勤の病棟が四割も占めているというのであります。これは政府の看護対策がほとんど実効を上げていない証拠であると見なければなりません。この際、すべての医療従事者に週休二日制を保障し、あるいはまた准看制度を廃止すべきであるという強い要請がありますが、これらの問題について、政府はどのような計画、方針を持っているか、明らかにしていただきたいと存じます。(拍手)
 さらに、歯科における差額問題も、何ら解決に向かっていないではありませんか。昨年の第七十五通常国会においても、歯科における差額診療及び自由診療について、歯科医師会等から参考人の出席を求めて解明に当たってまいりましたが、今日に至るもなお、基本的には何ら解決されていないのであります。政府はこの問題をどう解決するお考えであるか、方針を承りたいと存じます。
 次に、提案された法案の内容についてお尋ねをいたします。
 まず、一部負担の引き上げについてでありますが、被保険者の負担能力がきわめて脆弱であること、保険以外の自己負担を余儀なくされていること、もし受診の抑制を期待しているとするならば、それは国民の健康権を侵害するものであり、特に低所得者層に最も影響が大きく、早期発見、早期治療という医療原則に反する結果ともなりかねません。まず私は、これらの一部負担をなぜとる必要があるのか、その目的は何か、その根拠についてお尋ねをいたしたいと存じます。
 今回の引き上げは、初診時現行二百円を六百円に、入院時一部負担一日六十円を二百円に、負担期間一カ月を六カ月に延長するというきわめて大幅な引き上げとなっております。とりわけ入院時の一部負担引き上げは、仮に六カ月以上入院した場合、千八百円で済んだものが三万六千円という実に大幅な自己負担となるのであります。その上、すでに申し述べましたように、差額料や付添看護料などを考えますと、実に莫大な自己負担となるのであります。
 不況で苦しんでいる中小企業やそこで働いている労働者は、仮に春闘で若干の賃上げがあったとしても、減税なし、各種公共料金の引き上げ、物価の値上がりなどにより、実質賃金は低下させられているのであります。一度入院でもすれば、途端に苦境に落とし込まれてしまいます。これでは保険があっても、うかうか入院もできないではありませんか。
 厚生大臣、撤回される意思はありませんか、お尋ねをいたします。
 次に、高額療養費についてお尋ねをいたします。
 各種の年金が個人単位を原則としているのに対し、健康保険は世帯を単位といたしております。にもかかわらず、高額療養費の公費負担が個人単位であり、レセプト単位になっています。したがって、二つ以上の医療機関で治療を受けた場合、自己負担の総額が三万九千円をはるかに超えても支給の対象にはならない。さらに、同一家族で二人以上が同時に疾病にかかり、仮に一人が三万五千円、他の一人も三万五千円、合計七万円の自己負担があったとしても、高額療養費は支給の対象にならないのであります。
 世帯を単位にしている健康保険制度からすれば、明らかに矛盾であります。これらの療養費を負担する家計は同じであります。療養費の家計に及ぼす負担の軽減を図ることを目的とした高額療養費公費負担のたてまえからするならば、全く不合理であります。検討する意意がおありかどうか、厚生大臣の見解を承りたいと存じます。
 最後に、近年、地域医療や住民医療ということが強調されるようになりました。これは、患者と各種医療担当者が一体となって、言いかえますと、医療現場を構成する人々が一体となって、一人一人の患者に最も適した医療の創造を目指す理念であります。しかし、この場合、これらの医療を構成する人々の相互の信頼関係が成立していることが、最も大切な欠くことのできない条件となるのであります。しかし、今日の医療の荒廃は、最も大切な信頼関係を築くことが困難となっていることを示しております。
 その基本的な原因は、医師または医療機関と患者との間に営利的な動機が介在していることであります。特に、患者が薬を飲めば飲むほど医療機関の収入がふえ、薬に頼らず治療をすれば経営が成り立たないというこの仕組みは、患者にとっても、医師にとっても、これほど不幸なことはありません。しかも、薬の副作用による各種の悲惨な薬害患者が発生し、社会問題となっているのであります。しかし、製薬企業にとってはこれほど好都合なことはなく、このような構造の上に大手製薬企業の高いもうけが保障されているのであります。このようなシステムを放置してきた政府の責任は重大であります。厚生大臣の所見を承りたいと存じます。
 以上、医療荒廃の実態について幾つかの問題点を指摘してまいりましたが、当面の大きな政治課題として、医療制度全般に対する検討と抜本的改革が強く要請されております。いまや避けて通ることはできません。ロッキード問題で大企業と政府高官との癒着が明るみに出されようとしていますが、国民に背を向け、医療の抜本的改革をサボっている三木内閣の姿勢は、厳しく追及されなければなりません。(拍手)
 総理の医療改革に取り組む決意と構想について責任ある答弁を要求して、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣三木武夫君登壇〕
#15
○内閣総理大臣(三木武夫君) 村山君にお答えをいたします。
 第一問は、医療の供給体制の不備に対してどうするのかという御質問でございます。
 医療体制の整備については、医学が時々刻々に進歩するものですから、その成果を速やかに国民が享受し得られるよう、従来からも積極的に推進をしてまいったわけでございまして、今日の日本の医療水準はかなりな水準に整備されていると考えます。しかし、村山君の御指摘のように、いろいろ問題は抱えております。たとえば、僻地の医療、あるいは救急医療の確保とか看護婦の不足の問題などがあり、当面する医療行政の重要な課題としてこれらの問題に取り組んでいるところでございます。
 第二の御質問は、医療保険の根本的な改正という問題でございます。
 医療保険制度については、これまでも、家族給付率の引き上げ等、逐次改善は行ってきたところでございますが、村山君御指摘のごとく、いろいろと医療制度というものにも欠陥があることは事実でございます。しかし、医療制度というものに対しては、関係者の立場によって意見が非常に分かれておることは御承知のとおりであります。しかし、全般的に検討をしなければならぬことは事実でございますので、国民各層の理解を得てこの問題と取り組んでいく所存でございます。
 次は、国民医療の確保を図るために公的な医療機関を中心にするというふうな御意見が村山君の御意見の中にあったと思いますが、自由主義社会を基調とする今日のわが国においては、医療制度の面においても、開業医制のもとに公私の医療機関がその機能に応じて役割りを果たしていくことを根本にすべきである。公的な医療機関を中心にした医療制度をそれに組みかえていくということは適当でない。
 社会保険における診療報酬については、いろいろ医学の進歩、社会経済の変動等に応じて改善を図ってまいって、今後とも適正な水準を確保したいと考えております。
 なお、医療保障全般について私がどういう構想を持っておるかというお尋ねがございましたが、医療体制の整備の目標というものは、すべての国民がいつでも、必要な予防、あるいはまた治療、リハビリテーションに至るまで、医療を享受できるということにあると思いますが、国としては、医療関係者の養成確保であるとか、医療機関の整備であるとか、医学研究の促進等、積極的に進めてきたところでありますが、今後とも着実にこういう施策を積み重ねて、国民がいつでも必要に応じて医療の機会を持てるように、国民医療の確保のために努力を払っていくということが大きな医療に対する基本的な考えでございます。
 また、国とかあるいは公立の大学附属病院、救急医療の機関としてこれを整備すべきであるという御意見もあったと思いますが、大学病院は、これに対しては、救急を要する患者については、告示の有無にかかわらず受け入れておるところでございまして、厚生省所管の国立病院とかについては、がんとか小児、リハビリテーションなどの特殊病院を除けば、おおむね全病院が救急病院としての役割りと取り組んでおるところでございまして、今後とも積極的に取り組むように指導してまいる所存でございます。(拍手)
    〔国務大臣田中正巳君登壇〕
#16
○国務大臣(田中正巳君) 質問が多岐にわたっておりますが、順次御答弁申し上げます。
 まず第一に、救急医療についてお話がございました。現下の実情にかんがみ、救急医療の円滑、適正な実施ということは最も大切な課題であるというふうに考えておることは、村山さんと御同感であります。救急告示施設の設置あるいは休日夜間急患センターの設置、当番医制の普及、また、今年度は救命救急センター等を設置してまいりましたが、問題はなおたくさん残っているわけであります。今日、たらい回し事件等が起こるたびに、私は身を切られるように責任を痛感するわけでございますので、したがいまして、この問題について今後改善を図らなければならないということで、いろいろ今日問題を検討し、前進させるべく努力をいたしているところであります。
 具体的には、こうした近年の疾病構造の変化や交通事故等の実情に即応した施策を講ずるために、各界各般の有識者の意見を取りまとめたいと考えており、また、関係するお医者さんたちの協力も得たいと考えましたものですから、先般、救急医療対策についての懇談会を私の私的諮問機関として設置をいたしまして、いろいろな意見やいろいろな施策というものについて意見をくみ上げ、これを昭和五十二年度の予算の最も大きな眼目にいたさなければならないというふうに考えておるわけでございます。そういうことをやりまして、救急医療の確実、円滑な実施というものが一日も早くできるように努力をいたしておるところでございます。
 これについて、法律を必要とするのではないかという御意見がございますが、法律も場合によっては制定をすることも必要であろうかと思いますが、しかし、実際には、救急医療体制の体制づくりをどうしたならば円滑かつ確実にできるかという実態をつくり上げる方が先だと私は思っております。立法については、今後の検討課題といたしたいというふうに思っております。
 国公立医療機関について差額徴収を全廃してはどうかという御意見がございました。いろいろ考えてみますと、国公立病院の入院患者でも、その人の職業や地位によって、やはり特別なベッドに入らなければならない人がおるだろうということは、皆さんも御想像ができるだろうと思います。したがいまして、国公立病院なるがゆえに差額徴収ベッドを全く廃止することは実態としていかがかと思われますが、しかし、差額徴収ベッドによって病院の収入を上げるというふうな手だてになってはいけないということであろうと思われますので、そうした方向で今後改善を図っていきたいと考えております。
 基準看護の問題でございますが、基準看護については、やはり人員の確保と給与の引き上げという二つの面からこれを改善していかなければなりませんが、今回の診療報酬の改定に当たっても、民間の人件費を上回った看護料の引き上げをいたし、基準看護加算の傾斜的配分を行ったものでありまして、今後、この問題は、中医協においていろいろ御討議もしておるところでありますので、さらに前進をいたしたいと思っております。
 次に、歯科差額問題についての御質問がございました。これはかねがねの問題でございまして、先般、三月二十三日に中医協の答申をいただいておるところであります。しかし、私としては、歯科差額問題の解決を図るというのも私の仕事でありますが、国民の歯科医療の円滑な実施ということも私の重要な職責でございますので、こうした歯科医療の混乱を避けながら、この問題の適切、妥当なる解決を図るべく、今日、日本歯科医師会といろいろと協議をいたしておるところでございまして、できるだけ早い機会に、過去の経緯を踏まえまして、実はいろいろ複雑な過去の経緯がございまして、問題は簡単ではございませんが、適切、妥当なる措置を講じたいというふうに思っております。
 一部負担の目的及び機能についていろいろ議論がございました。私は、健康保険制度における一部負担の機能あるいは目的というものはいろいろあると思うのですが、給付を受ける者と受けない者との負担の均衡、あるいは健康に対する自己責任の自覚等々、いろいろ学者等においても議論されているところでありますが、今回の一部負担の改正は、現行制度を前提とした社会経済情勢の変動に応じたスライド的な改定でありまして、一部負担に関する考え方の違いをここに具現したものではございません。
 入院時一部負担の引き上げについていろいろ御意見がございましたが、これは昭和四十二年以降据え置かれているわけでありまして、この間に、皆さんも御承知のとおり、経済事情はかなり変わっているわけであります。また、期間を延長したことは、傷病手当金の支給期間を勘案してやったことでございます。
 高額療養費制度について、家族単位にしたらどうかという御意見でございますが、高額療養費制度は最近始まった制度でございまして、いろいろ問題があることは、委員会においても皆さんからいろいろ御質問があり、私どももいろいろと考えているところでありまして、いまや、これが完成した制度でないことは、お互いに承知をしているところであります。したがいまして、今後検討をいたしていきますが、しかし、現在やっているレセプト単位を家族単位にすることについては、かなり事務的にむずかしい問題があるのではなかろうかというふうに考えられます。
 医療費の中における薬剤費の問題につきましては、いろいろ御意見がございました。最近、医療費に占める率は、昭和四十八年から四十九年というふうに、相対的には減少をしているわけでございます。しかし、必要以上に薬が投与されることのないような制度というものは考究をしなければならないと考えております。
 したがいまして、薬によって保険医療機関が収入を上げるという仕組みというものは、これをぜひ排除しなければならないというわけで、薬価基準は実勢価格とできるだけ近寄ったものにしなければならないということだろうと思います。かような意味で、今回の薬価基準の改正には銘柄別薬価方式を採用いたす等、実際の薬価と薬価基準との乖離というものをできるだけ縮めて、薬によって保険医療機関が収入を上げるということを避けるように、目下努力中でございます。
 以上です。(拍手)
    〔国務大臣大平正芳君登壇〕
#17
○国務大臣(大平正芳君) 私に対しましては、救急医療に対する財政措置についてのお尋ねでございました。
 昭和五十一年度は、前年に対しまして約二倍に当たる約二十億円、一般会計、特別会計を通じまして救急医療に対して財政支出を考えておるわけでございますが、これによりまして、救命救急センターが新設され、それに国立病院を参加させる、あるいは自治体病院の救急機能に対する助成範囲を拡大するというような措置を考えておるわけでございます。
 今後、仰せのように、各種の医療施設を地域的な医療体制に有効に組み込みまして、救急医療の要請にこたえるということが必要だと思いますが、これに対する財政需要につきましては、各省庁と協議いたしまして、可能な限り善処をいたしたいと思います。(拍手)
    〔国務大臣永井道雄君登壇〕
#18
○国務大臣(永井道雄君) まず、大学病院が救急医療に役立つべきであるという御質疑でございますが、私ども全くそう考えます。積極的に役立っていかなければならないと考えております。そこで、そのために、まず現状はどうなっているか、実情の問題、それから、文部省としてこれについてどう考えているかという今後の対策の問題、その二つに分けて申し上げたいと思います。
 まず第一に、現状を申しますと、御指摘のように、国立大学の病院で救急病院を定めます省令に基づく告示のある病院というものは、一病院、一つしかないというのが状況でございます。しかし、公立の中では八病院中四病院、私立は二十八病院中十病院が、救急病院の告示をいたしております。
 しかしながら、大学病院の場合に、告示の有無にかかわらず地域の医療に協力すべきでございますから、有無にかかわらず救急をいたして受け入れをやっておりますので、四十九年度の統計を見ますと、国立大学附属病院につきましても、三万八千人の救急患者を取り扱っているわけでございます。
 しかしながら、第二点、今後の対策として、これを一層強化していく上でどう考えるべきかという問題があるかと考えます。そこで、私どもが考えておりますのは、大学の附属病院というものには一つの役割りがありますが、それと地元の医師会とかあるいは公共団体等がどういうふうに協力をしていくかということで、救急医療についての十分なネットワークをつくっていくことが必要ではないか、こういう考えで国公立大学の病院に指導をいたしているわけでございます。
 その際、大学附属病院というものは、このネットワークの中でやはり特別な役割りを果たすべきでございますが、およそ三点にわたって重要な役割りがあるのではないか。第一は、高水準な医療機関として救急、災害医療に協力すること。つまり、最寄りの医療機関に行きまして、さらに大学に移らなければならないという、そういうふうな事態に対応すること。第二点といたしましては、災害時等の医療班の組織等を行うこと。次に、救急、災害というものは重要な問題でございますから、これを教育、研究の上からも取り組んでいくこと。この三点を積極的に大学病院は役割りを果たしまして、ネットワークの中で役立っていくようにすべきであるという考えでございます。
 こういう考え方に基づきまして、必要な看護要員を増員いたさなければなりませんし、また、大学におきまして救急部というものを整備していきたい、かように考えている次第でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#19
○議長(前尾繁三郎君) 寺前巖君。
    〔寺前巖君登壇〕
    〔議長退席、副議長着席〕
#20
○寺前巖君 私は、日本共産党・革新共同を代表し、ただいま議題となっています健康保険法一部改正案について質問をいたします。
 戦後三十年余りたった今日、国民はかつてない深刻な不況と物価高という二重の困難なもとで生活を脅かされています。また、歴代自民党政府の大資本優先の高度成長政策の結果、世界最大の公害、世界最大の交通事故、労働災害、薬品や食品添加物による被害、そして健康破壊が進行しているのであります。そのことは、千人当たりの有病率が昭和三十年、三七・九あったものが、四十七年には一〇一・二となっていることからも明らかであります。
 国民は万一を考え、毎月平均八千円からの多額の健康保険料を払っています。ところが、いざ病気やけがになったとき救急車のめんどうになっても、病院をたらい回しにされ、助かるべき命を失うという事態が枚挙にいとまありません。また、大都市においてさえ、休日や夜間は医療砂漠と言われ、辺地、離島の国民にとっては、文字どおり、保険あって医療なしと言われる状態に置かれています。老人の疾病の三分の一を占める脳卒中は、かつては半身不随や寝たきりとなるとされたものが、いまでは適切な治療とリハビリテーションさえあれば、社会復帰を可能にしています。しかし、その体制がほとんどないため、せっかくの医学の成果が生かされていません。いまや、すべての国民は、いつでも、どこでも安心して医療が受けられることを切実に望んでいるのであります。
 そこで私は、まず総理並びに関係大臣に、医療保険の前提とも言える国民の医療を受ける権利をどうするのか、そのことからお尋ねをいたします。
 その第一、救急車のたらい回しを解消するため、救急病院の指定が約五〇%と言われる文部省、三公社を含む国立病院、また約四〇%と言われる公立病院を救急の角度から見直し、それらの公的病院に、いつでも対処できる必要なベッドと医療要員の配置を行うべきであると考えます。いまも御答弁がありましたが、いつから具体的にどのようにされるか、御答弁をさらに求めるものであります。
 第二にお尋ねしたいのは、休日、夜間の診療体制についてであります。
 厚生省の五十年度の補助事業は、全国で百四十カ所、しかも大半が休日だけという実情であります。少なくとも、人口十万人当たり一カ所の休日と夜間をあわせた診療体制を確立するために、必要な施設と経費補助の大幅引き上げをすべきだと思いますが、いかがでしょう。第三に、立ちおくれているリハビリテーション医療の改善のために、国立大学医学部にリハビリテーションの講座を設け、また、大量の技術者を養成し、脳卒中患者などに行う運動療法などを含めて、全面的に保険を適用し、診療報酬を大幅に引き上げるべきであると思いますが、答弁願いたいと思います。
 第四に、難病患者の期待にこたえ、発病原因や治療法の研究、開発を図るため、わが国の最高スタッフによる大規模な研究者のチームをつくり、必要な財政援助を行うべきであると思いますが、どのような見解を持っておられるのか、お答え願います。
 さて、第二に質問したい点は、お年寄りの医療についてであります。
 昨年十二月、老人医療有料化への動きが伝えられ、国民の間に大きな不安を与えました。ことしは一応現状維持になったものの、昨年七月の財政制度審議会の中間報告あるいは八月の大蔵省広報誌論文などで、一部負担の導入をすべきだとの趣旨が述べられているだけに、国民の不安は解消しておりません。
 現在のお年寄りは、三十年余り前に戦争に駆り出され、戦後は混乱した社会で子供を育て、働き続けてこられた方々であります。しかるにわが国では、アメリカやヨーロッパと比べて二倍も三倍も多い約五〇%のお年寄りが、いまなお生活のために働いているのであります。それを見るにつけ、安心して老後を暮らせる保障を確立することは、日本の政治の重要な課題であると思います。(拍手)
 この際、三木総理に、老人医療無料化を後退させないということを、この場で明確に答弁していただきたいのであります。
 第三にお尋ねしたいのは、保険給付以外の患者の自己負担を解消することについてであります。
 その一つは、入院室料差額負担であります。
 厚生省が室料差額を患者の二〇%以下に抑えるよう指導していると言われているにもかかわらず、最近、健康保険組合連合会が発表したところによりますと、患者の五一%が室料差額を徴収されており、国公立病院でも三九・二%、民間病院では何と五七%の患者が負担を強いられているのであります。さらに、一日五千円前後もかかる付添看護料を、基準看護病院である国公立で六四%、民間で二六%の患者に負担を負わせているのであります。こうした患者負担を放置することは、金がなければ入院できないということであり、高い保険料を何のために払っているかわからないのであります。
 少なくとも、直ちに国公立病院から、特別の場合を除き室料差額負担と付添看護料の患者負担を一掃する具体的な措置をとるべきであると思います。明確にお答え願いたい。
 二つ目の問題は、歯科医療の差額についてであります。
 政府は、三月二十三日の中医協の答申を受け、歯科技術料の差額徴収公認の通達を廃止する態度を決めました。これは三十万円、五十万円という法外な差額負担に苦しめられている国民にとっては当然のことであります。歯の痛みほど耐えがたいものはありません。ところが、いまだにこの問題の解決を見ないのは、一体どうしたことでしょうか。これは政府が、昭和三十年、四十二年と二度にわたる通達により、歯科治療に公然と差額徴収を導入し、歯科医の経営が国民の自己負担による差額収入に依存せざるを得ない状態に長年にわたって追い込んだ、その結果であります。それだけに政府の責任で措置をとることが必要であります。
 歯科医が良心的な治療ができるよう、歯科医療技術の進歩にふさわしい診療報酬の適正な改善を図ることが緊急を要する課題だと思いますが、お尋ねいたします。
 最後にお聞きをしたいのは、健康保険財政についてであります。
 政府は、三年前の健康保険法の一部改正により、保険料率を国会審議抜きで引き上げるいわゆる弾力条項を導入し、四十八年十月に七%であった保険料率を、ことしの十月には何と七・八%にも引き上げようとしているのであります。そして本法案においては、初診時二百円の一部負担を三倍の六百円、入院時一部負担、一日当たり六十円を三・三倍の二百円、期間延長を含めると実に二十倍の三万六千円に、さらに高額療養費は三〇%も引き上げようとしているのであります。
 そこでお尋ねしたい第一の点は、保険料率や一部負担の引き上げをしなくてもよいように、医療費中に占める薬剤費を抑える問題についてであります。
 厚生省の調査によれば、政府管掌健康保険における医療費中の薬剤費は、昭和三十四年には一八・六%であったものが、四十八年には四六・四%と、全体の半分近くに達し、保険財政を圧迫する大きな原因となってきているのであります。この数字は、諸外国の二倍、三倍にもなる異常な高率であります。
 わが国の医薬品販売の実情を見ると、製薬企業がたった一種類の新薬を販売するだけで年間百億円とか二百億円とかの売り上げを得ており、その上、三年間は事実上競争品なしの独占的な販売が保障されているのであります。この際、薬価問題に根本的なメスを入れ、速やかに現行の薬価決定方式を、イギリスやフランスで行われている製造原価を基礎にした薬価決定方式に転換させるべきだと思いますが、お答え願いたい。(拍手)こうすれば、二割から三割、薬価を低く抑え、国民の負担増なしに、政府管掌健康保険で二千億から四千億円の財源がつくられ、医療給付の改善をすることができるのであります。
 さらに二つ目の問題としては、健康保険財政対策を初め、医療体制について全面的に国会で審議できるよう、政府が一方的に値上げを押しつける、保険料のいわゆる弾力条項を撤廃することであります。
 三つ目の問題は、保険料の負担割合についてであります。すでに医療保険を含む社会保険の労使負担は、フランスやイタリアではほぼ一対四となっており、先進諸外国の医療保険は、国と資本家を中心とする負担が趨勢となっています。わが国でも、春闘共闘など広範な労働者が、いま政府に、労働者三資本家七という負担割合の変更を要求しています。中小企業家の負担を増大させることなく、この方向を追求すべきであると思いますが、以上の三点について、厚生大臣の率直なお考えを示していただきたい。
 最後に、国民健康保険についてお尋ねします。
 この保険には、商工業者や農民など、多くの勤労市民が入っていますが、給付は本人、家族ともに七割、その上、傷病手当金制度がなく、助産費も低く抑えられています。せめて政府管掌健康保険並みに給付を改善すべきだと思うが、どうですか。
 もともとこの保険は、老人などが多いために財政力が弱いものであります。それにもかかわらず、自治体が住民の切実な要求にこたえて、老人医療の年齢引き下げ、休日、夜間、救急医療を国の援助もない中で行ってきています。ところが、これに対し政府が、あたかも不当なことを地方自治体が行っているがごとき批判をすることは、本末を転倒するものであります。速やかに、法律に決められているとおり、事務費の全額国庫負担を行い、地方自治体の超過負担を解消するとともに、大幅な国庫補助の引き上げで住民の要求にこたえる財政援助を行うべきであると思いますが、お尋ねしたいと思うのであります。
 以上、私は、保険あって医療なしという実態に何らの抜本策のないまま、分娩費や葬祭料の引き上げなどの若干の改善はあるものの、相変わらず一方的に国民に負担増を押しつけ、保険財政対策のみをその主要な内容とする健康保険法の一部改正案に怒りを持つとともに、速やかに本法案を撤回され、被保険者に負担増を強いることなく、国民の期待にこたえる医療政策に抜本的に転換されることを要望し、政府の責任ある答弁を求めて、質問を終わるものであります。(拍手)
    〔内閣総理大臣三木武夫君登壇〕
#21
○内閣総理大臣(三木武夫君) 寺前君にお答えをいたします。
 第一の御質問は、医療体制の整備等、医療の供給体制をどのように整備していくかという問題でございますが、御承知のごとく、政府は医療体制の整備については二つの柱を考えている。一つは医療に従事する人間の確保、一つには医療の機関の整備、充実ということでございます。
 この点については、たくさん問題を抱えておることは、寺前君御指摘のとおりでございます。いま御指摘のあった救急医療の問題、これも問題を抱えておるわけです。僻地医療であるとか、休日、夜間の診療の確保であるとか、看護婦等の不足の解消など、問題があることは事実でございます。こういう問題について政府は、いろんな指摘されておるような問題を解消していくために、今後積極的に取り組んでまいりたいというのがこの救急体制の整備について考えておる点でございます。
 第二には、老人医療の問題についていろいろ御質問がございました。老人医療の問題については、寺前君も御承知のように、単に財政上の問題ばかりではないのですね。医療の供給面についても、いろんな議論があることは御承知のとおりでございます。今後においては、こういう実態を調査してみたい。そして、どうすれば老人のために本当に老人の幸せを図れるかということを主眼といたしまして、老人福祉の対策の一環として基本的に検討をしてまいりたいという考えでございます。
 また、差額徴収の問題についていろいろ御質問がございました。国公立病院の差額徴収の場合でございます。この問題については、政府としても、やむを得ない場合にとどめる。あるいは患者の希望によって特別室というものに入ることを要求される場合がある、こういうふうな場合。あるいはまた、家族にかわっての付き添いの看護人による付き添い、今後とも、それは本当にやむを得ない場合を除いて、そういうふうな差額の負担というものはないように指導を徹底してまいりたいと考えております。
 以上、お答えいたしまして、あとは厚生大臣からお答えをいたします。(拍手)
    〔国務大臣田中正巳君登壇〕
#22
○国務大臣(田中正巳君) 救急医療の問題について御質問がございましたが、先ほど村山委員にお答えしたとおり、五十二年度予算の最大の課題としてこれに積極的に取り組む所存でございますが、なお五十二年度以前においても、いろいろと行政を確実にやるようにさらに努力をいたしたいと思います。
 国公立病院の協力を進めることも必要でございますが、この問題については、民間医療機関の協力もぜひやらなければならないという幅の広い視野でもって、対策を拡充いたさなければならないと思っております。
 次に、休日夜間診療体制を確立するために、十万人に一カ所の補助対象をふやしたらどうか、こういうことでございますが、いろいろ考えてみますと、機械的に十万人に一カ所というと、四十万都市だと四カ所ということに相なるのだろうかと思いますが、現在は、百四十三カ所、十万都市以上のところに一カ所ということで設置をいたしておりまして、これを急いでいるわけであります。十万以上の全都市すべてに行き渡るようになったならば、こうしたことを踏まえていろいろ努力をいたしたいと思っておりますが、機械的に十万に一カ所、五十万に五カ所というような考え方では、この問題がうまくいくかどうか、さらに検討してみなければならぬと思っております。
 リハビリテーションについては、大変必要なことでございますので、四十九年の二月に、診療報酬改定に当たって、身体障害者作業療法、身体障害者運動療法を診療報酬の面において新設をいたしたわけでありますが、これは四月の改正においても約四〇%という引き上げをいたしたわけでございまして、今後ともリハビリテーションが全面的に保険の対象としてやられていくように努力をいたします。
 付添看護、差額ベッドについてのいろいろなお話がございました。先ほど御答弁を申し上げましたが、従来の方針を強力に進め、いやしくもこうしたもののために必要な医療の機会が妨げられることのないようにいたす所存でございます。
 歯科差額問題については、いろいろなお話がございました。この問題については、従来の長い経緯もあり、また過去におけるいろいろないきさつについていろいろ問題が実はあるようでございまして、私どもも掘り下げれば掘り下げるほど問題の根深いところがよくわかるわけでございますので、寺前議員の所説をも参考にいたしながら、適切、合理的な解決を図るような方途を具体的に講じたい。そのために日本歯科医師会とも相談をいたしたいと思っております。
 医療費に占める薬剤費の問題でございますが、薬剤費を原価計算の主義によれということでございますが、これは実際問題としてなかなか大変だろうと思います。試験研究費、人件費等の問題をどう振り込むか、いろいろな問題がございまして、かねがねこの問題は中医協においていろいろ長い間やってきたことでございますが、例の九〇%バルクライン方式をもってこれをやるということが中医協の過去における経緯でございますので、これをにわかに改めることについては、検討はいたしますが、そう簡単なものではなさそうでございます。
 保険料の労使負担をこの際五〇、五〇を変えたらどうかということでございますが、これについては、被用者保険制度全体の問題でございますので、今後慎重に検討いたしたいと思いますが、ヨーロッパにおいてもいろいろな例がございまして、決して三割、七割とかいうものばかりではございません。五〇、五〇というのもございまして、わが国の実情に一体どれがよろしいのか、そしてそういうことをやった場合に一体賃金形成にどのように影響するか、そうしたことをしさいに検討いたさなければ、簡単な結論は、私は、むずかしく、かつ危険であるとさえ思っております。
 次に、国保につきましては、いろいろと給付水準を改善せよということでございますが、国保につきましては、何分にも使用主のない、しかも一般の自営業者あるいは農漁民等を対象とする保険でございますので、国においては相当の実は助成をいたしているわけであります。既存の国庫補助、臨時財政調整交付金、特別療養給付費補助金等、実に一兆二千八百七十五億円がことしの国保に対する補助金、助成金でございまして、厚生省予算の多くはこれに占められているわけですが、なお国保の財政は各保険者とも楽ではございません。しかも保険料はなかなか上げることができないということでございますので、したがって、給付を普通の政管健保並みに上げるということは、実際問題として簡単なものではございますまい。国保のいろいろと抜本改正、老人をどのように扱うか、こうしたことを、老人の医療をどのグループで扱うか等々の根本的な問題との関連において解決すべきものというふうに考えております。
    〔国務大臣永井道雄君登壇〕
#23
○国務大臣(永井道雄君) 大学病院におきます救急の重要性について、村山議員が先ほどお尋ねになりましたことと重なります点が、寺前議員の御質問に対する答弁の中にありますといけませんので、なるべく重ならないように申し上げたいと思います。
 まず、実情の方は先ほどすでに申し上げましたので、これは大要だけ申しますと、四十九年度が延べ三万八千人が国立大学病院において救急患者として取り扱われた人でございます。先ほどの御質疑の中に、そういうことを言うが、具体的に対策をどういうふうに持っているのか、その点を述べよというお言葉でございましたので、そこに力点を置いてお答えしたいと思います。
 それにつきましては、これも先ほど申したことでございますが、大学病院だけでなく、他の地元の医師会等と十分なネットワークをつくっていって、そして大学病院として特に果たし得る役割りというものを重視して救急医療に役立てていくべきだと申し上げましたが、これは先ほど、対策であって、これからのことを考えているというふうな御印象を与えたとすると、そうではございませんので、すでに対策として、こういう角度から国公立の大学に、文部省として、大学の自治を重んじながら他方において指導をいたしている現状でございます。こういう方向を一層、いまもやっておりますが、強めてまいりたいということでございます。
 なお、救急部につきまして、やはり緊急医療の場合に救急部が必要であると先ほど申しましたが、これにつきましては、これも今後のことでなく、昭和四十年代に入りましてから、仮に告示を受けていない大学病院の場合にも、早く救急部をつくっていくようにということで整備をいたしてまいりましたので、告示は一カ所でございますが、救急部ができましたところは、現段階では七カ所になりました。そういう方向で、七カ所では足りませんから、今後これをふやしていきたいということでございます。
 さらに、救急部ができますと、その中の看護要員というものをどうするかという問題がございますから、これは、救急部の増設と並行して看護要員の増員を図るように、今後計画を進めていきたいと考えております。
 第二点のリハビリテーションに関するわが国の大学における講座、あるいはリハビリテーション関係の専門家の養成が弱体ではないかという御質問でございます。これは、弱体であるというか、おくれているというのが実情でありますから、御指摘のとおりであると申し上げるほかはないのでありますが、さような状況におきまして、今後リハビリテーション関係の研究を強化することはきわめて重要でございます。
 そこで、まず研究講座の方から申しますと、講座は現在国公私六十大学に設けられているところがないのでございますが、しかしながら、教育課程の中に授業科目を設けるという形でこの問題に取り組んでいる大学が、すでに二十一生まれました。また、授業科目を設けておりません場合には、整形外科学、内科学などの授業内容にリハビリテーションを含めて実施しているところがございます。しかし、それだけでは不十分でございますので、現在筑波大学におきましては、五十二年四月開設予定でリハビリテーション医学の教育研究体制を強化する構想を持っております。そのほか、国立大学の研究所あるいは研究施設でリハビリテーション関係の研究部門を設置する、あるいは附属病院におきまして、理学療法部、いわゆるフィジカルセラピーの部の設置も逐年進めてきております。
 しかし、これだけでは不十分でございまして、やはり医学部の設置基準というものをもっと弾力的にいたしますと、現在の講座の中でもリハビリテーションを強化していくことができますので、本年の四月一日に医学部設置基準を改正いたしました。そこで、まだそれからそれほど日数を経ておりませんが、この新しい改正によりまして授業時間数の配分割合の弾力化が図れますから、こうした角度でリハビリテーションについてのいわば教育というものを強化していけるのではないかと考えております。
 しかし、先ほど御質疑の中で、そういうことと関連して、理学療法士あるいは作業療法士、フィジカルセラピスト、オキュペーショナルセラピスト、こういうものの養成をどうするかというお言葉がございましたが、これにつきましては、現在各種学校で行われていることは御承知のとおりでございますが、しかし強化しなければいけませんので、これも先ほどの日付と同じになりますが、去る四月一日に、各種学校の中で整備されましたものを専修学校といたすことに相なりましたので、この種リハビリテーション関係の学校が基準に合っております場合には、そうしたものとして、専修学校の一部として今後強化される方向が開かれたのは、いまだ一カ月強前であるということでございます。
 しかしながら、それだけでは不十分であると思いますから、さらに、リハビリテーション関係指導者をどういうふうにして確保し養成していくかという問題につきまして、専修学校の方法だけに限らず、どう考えるべきかということは、文部省として今後も検討を続けていかなければならないことと考えております。
 以上、私のお答えとする次第でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#24
○副議長(秋田大助君) 小濱新次君。
    〔小濱新次君登壇〕
#25
○小濱新次君 私は、公明党を代表して、ただいま趣旨説明のありました健康保険法等の一部を改正する法律案について、三木総理並びに厚生大臣に質問をいたします。
 このたびの改正案は、わが国の健康保険制度史上通算して五十一回目の改正であり、その間、わが国の医療行政が保険あって医療なしの言葉に象徴されるように、無医地区、救急、夜間休日診療、差額徴収、付添看護料の患者負担の増大など、医療保険を取り巻く医療の荒廃は著しく、今日では一段と患者の保険外負担がふえていることは、すでに周知のとおりでございます。
 かかる現状下において、医療保険の抜本改正が関係団体の意見、社会保険審議会等の答申及び国会審議を通して何回となく要望されてきたのであります。加えて戦後最大の不況下における改正であることからも、本法の改正案に対する国民の期待はきわめて高いものがあり、政府はこの際、国民が納得のいく誠意ある答弁をすべきであり、このことを強く要望して具体的な質問に入ります。
 初めに、今回提案された法案は、さきに述べたように、国民が等しく期待する健康保険制度の抜本改正ではなく、四十八年改正後の経済情勢の激変や医療費の急増などからくる保険財政の赤字に対処し、制度の維持を図るため、被保険者に負担増を要求した改悪であることを厳しく指摘するものであります。
 さらに、社会保障制度審議会の答申も、政管健保の財政対策中心であり、本改正に対し関係審議会等から強い批判のあるのは、政府が各方面からつとに指摘されてきた医療制度の抜本対策を怠ってきたことに起因していると述べており、抜本改正を公約してきた政府の責任は重大であります。この点について、総理並びに厚生大臣の責任ある答弁をお伺いするものでございます。(拍手)
 次に、本改正案の中で最も改悪と言われている一部負担の問題についてお尋ねをいたします。
 健康保険が社会保険である以上、強制加入であり、日ごろから健康のときに保険料をかけて、疾病のときに安心して保険給付により医療を受けられる制度であることは納得できるのでありますが、健康保険の被保険者が給付を受ける場合に、国鉄や郵便料金のように、受益者負担という名のもとに一部負担を行うのは当然であるかのような考え方は大きな誤りであります。さらに、保険財政に赤字が増大したからという理由で一部負担をふやすことは、国家保障制度である社会保険の本質にもとるものであり、何のための、だれのための健康保険であるのか、全く理解に苦しむものでございます。(拍手)むしろ、疾病の早期発見、早期治療の見地からすれば、初診料の一部負担は廃止するのが当然であるとの意見もあるのであります。
 改正案では、初診時の一部負担は現行二百円を六百円に引き上げるのでありますが、昭和四十二年以来二百円のまま据え置かれてきた経緯を考えますと、初診時の一部負担の引き上げは、受診抑制につながるために据え置かれてきたのであり、入院時の一部負担は、現行一日六十円一カ月間を、一日二百円六カ月と一挙に三倍以上と、特に期間を六倍にしたことは、差額ベッド、付添看護の問題が解決していない現在、国民生活の経済状態に対応してスライドに改定したとはいえず、被保険者の負担増であり、改悪であります。
 この点について、社会保険審議会の答申も、被保険者の負担能力がきわめて脆弱であること、差額ベッド、付添看護料等の保険外負担が重いなどと反対しており、ちなみに、諸外国においては、入院時の一部負担は行われていないのであります。厚生大臣の見解を承りたいのであります。
 次に、給付の改善についてお尋ねいたします。
 政府は、現金給付である分娩費及び埋葬料の最低保障額の引き上げをもって給付を改善したと宣伝し、強調していますが、これは本来の給付部門ではなく、健康保険の給付のうちでは特異なもので、普遍的な給付ではないのであり、むしろ健康保険給付部門としてはその件数も少なく、給付改善による財政支出もわずかの金額であります。また、この分娩費などの改善は、保険料率の改定等による保険財政の収入増に対し、給付改善を最小限にとどめて支出減を図ったものと言われても仕方のないことであります。
 現在、被保険者が保険給付の改善を早急に実施してほしい給付に、本人と家族の給付率の格差の是正があります。この点について厚生大臣の英断を期待するものでありますが、率直な見解を承りたいと思います。
 次に、標準報酬の改定についてお尋ねをいたします。
 標準報酬の上限の頭打ちがその全体の五%以上に達したところから、上限の引き上げは当然の措置でありますが、下限を二万円から三万円に引き上げたことは、低所得者の保険料負担が増大することになり、上限と同様に簡単に引き上げるべきではなく、配慮が不十分であると思うのでありますが、厚生大臣の責任ある答弁をお願いするものであります。
 次に、改正案にあらわれてこない保険料率の引き上げについてお伺いします。
 政管健保の料率の改定は、弾力条項によって政令改定にゆだねられていることは周知のとおりであり、今回の改定では千分の二を引き上げ千分の七十八にするのであります。
 この弾力条項の発動については、伝家の宝刀であり、四十八年の健保改正の際に、やたらに行使はしないことを政府は国会答弁で約束しておりながら、それを数年にしてほごにしたことは、まさに馬脚をあらわしたとしか言いようがないのであります。
 また、政管健保の保険料率の引き上げは、当然国民健保などすべての保険制度に波及していくことは火を見るより明らかであり、一般の公共料金の引き上げと同様な役割りを持っていることから、弾力条項の発動はより慎重でなければならないと思うのでありますが、厚生大臣の見解を承りたいものであります。
 さらに、同じ政令事項の高額療養費の自己負担限度額が、現行三万円を三万九千円と大幅に引き上げることは、四十八年の改定における政府のわずかな改善と言える目玉商品に、政府みずからどろを塗らんとするものであります。もとより現行制度の問題点として、四十八年の附帯決議でも、「家族高額療養費制度の運用にあっては、極力患者負担の軽減を図るよう努めること」と決議したにもかかわらず、長期療養患者や複数の重症患者を抱える家族に対して厳しい給付制限があり、必ずしも被保険者及びその家族にとって実情に合っているとは言い得ないというのが制度の実態なのであります。したがいまして、改正という以上、これらの問題を解決せずして自己負担の限度額のみを引き上げることは、まさに片手落ちという以外の何物でもないと思うのでありますが、厚生大臣の責任ある答弁を期待するものであります。
 次に、任意継続被保険者制度についてお伺いいたします。
 本法案では、現行の加入期間一年を二年に延長し、保険料も被保険者の平均保険料を軽減するというものでありますが、定年退職後の被保険者にとって、疾病率の上昇、収入減などきわめて生活力が低下するとともに、やがて労働能力が失われたとき、国民健康保険に移行し七割給付となることは不合理であり、従前どおりの保険給付を行うべきであるということから、本格的な退職者医療制度の確立が望まれていたのであります。
 こうした経緯については、すでに政府も御承知のことと思いますが、小手先の改善でお茶を濁すのではなく、この際、退職者医療制度を創設される意思はないか、創設されるとすれば、いつごろ実現されるのか、厚生大臣の御所見をお尋ねするものでございます。
 次に、国庫負担については、現行法では医療給付費の一〇%としているが、社会保険審議会での論議として、二〇%に引き上げるべきであるとの意見が強く出ていたのでありますが、今回の改正案では改正されていないのであります。仮に弾力条項により最大限千分の八十まで保険料が引き上げられたとしても、国庫負担率は一六・四%にすぎず、三・六%が不足することになるのであります。国庫負担率の改定をする意思があるか否か、厚生大臣の見解をお尋ねいたします。
 最後に、医療制度の今後のあり方について総理にお伺いいたします。
 今回の改正案が国民の期待を裏切る内容であることは、これまで指摘してきたとおりであります。したがって、そこからは、わが国の経済が直面している低成長時代の厳しい環境の中で、将来の給付、負担はどうあるべきか、そのためには、どのような重点策、選択的改革が必要であるかという行政の責任は皆無であります。
 社会保障制度審議会の答申も、医療供給体制の整備や医療資源の効率的配分がどのように行われるのか、診療報酬体系をどうするか、薬剤に関する問題をどう解決するのかなどが明確にならないまま放置されていると指摘しており、政府の態度を明らかにすべきであると述べているのであります。また、差額ベッド、付添看護料等の問題の早期解決を要望しております。
 この際、総理は、医療制度の将来の方針について明確なる答弁を国民の前に明らかにすべきであります。
 以上、申し上げましたとおり、この法案は、抜本改正を怠った改正案であること、さらに法案の内容からも余りにも問題点が多くあり、この際、廃案として、国民の期待にこたえ得る法案に再考すべきことを強く主張して、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣三木武夫君登壇〕
#26
○内閣総理大臣(三木武夫君) 小濱君にお答えをいたします。
 二問ございましたが、いずれも関連をする問題なので、かためてお答えをいたします。
 今回の健康保険の改正は、最近の経済の変動に対応するべく、いわばスライド的な処置を講じたものでありまして、制度の健全な運営を図ってまいるという目的のものでございます。小濱君の御指摘のように、これは抜本的な改正というものではございません。
 今後、医療制度というものは、結局、人間の生命の維持、発展ということが政治が追求する最も基本的な課題でありまして、そのためには、医療制度のあり方というものはきわめて重要な政治の課題であるという考えでございます。そのためには結局は、医学というものが日に進歩していきますし、また、社会情勢もいまは非常に変化の時期でありますから、医療の水準、あるいはまた社会情勢の変化を踏まえて、そのときの医療、あるいはまたいろいろな予防的な処置も入るでしょうし、リハビリテーションもその中に入りますが、そういうものをすべての国民が等しく受けられるような医療体制をつくるということでございます。そのためには、医療従事者の人間の確保ということもきわめてこれは重要な課題であるし、医療機関の整備拡充ということも必要でございまして、この問題は、私も、小濱君の言われるとおり、ただそのときそのときの手直しでなしに、根本的に考えてみなければならぬ問題を抱えておるということには同意見でございます。
 ただ、いろいろな立場によって非常にこの問題については意見が分かれるところで、国民の理解を得なければなりません。そういう国民の理解を得ながら、この社会の変化に対応できるような制度の改善ということに真剣に取り組んでまいりたい所存でございます。
 お答えいたします。(拍手)
    〔国務大臣田中正巳君登壇〕
#27
○国務大臣(田中正巳君) 一部負担金の増額についてのお尋ねでございますが、これにつきましては、いま総理から御答弁がありましたとおり、従来の経済的な諸情勢に対応したスライド的な改定でございまして、これによって受診を抑制するということは考えておりません。
 なお、小濱さんは外国について一部負担制度がないというお話でございますが、入院と外来のシステムの違いはございますが、外国についてもかなりの実は一部負担の制度をしいていることは、大方の御存じのところだろうと思います。
 標準報酬の改定につきまして、上限の方も問題があるが、下限を二万円から三万円に上げたことについてのいろいろな御意見がございました。私は、むしろ、この二万円から三万円などという極端に低い標準報酬というものは、問題であるというふうに思っているわけであります。二万円や三万円で生活ができるはずもございませんし、こうした被保険者には間々逆選択の被保険者が見受けられるわけでございまして、したがいまして、標準報酬の下限については、もう少し慎重な態度で私は臨むべきであろうというふうに思っております。いずれにしても、二万円を三万円に下限を上げたことについては、私はあれこれおしかりを受けるようなものではないというふうに思っております。
 弾力条項の発動と高額療養費の問題についてお話がございました。綿密に計算をいたしますると、今回弾力条項を千分の二上げただけでは不十分ではなかろうかという議論も実はあったわけでございますが、むやみにこの種のものを発動すべきではないということから、私どもは、千分の二を、しかも時期を今年後半に予定をしているわけでありまして、時期といい、あるいは料率のアップといい、かなり実は自粛をし必要最小限度にとどめたというのが、われわれのこれに対処した態度でございます。
 なお、高額療養費については、これ以上上げるなということでございますが、三万円を三万九千円に上げたというのは、もう少し実は上げるような経済指標があったわけでございますが、一遍に上げるのはどうか、要するに、これは患者の可処分所得によってどの辺が妥当であるかということを決めるのが正しいと思いますので、そうしたことを踏まえて慎重に対処いたしますが、三万円を三万九千円にとどめたというのは、われわれとしては大いに配慮した所存でございます。
 任意継続被保険者制度についていろいろお話がございました。退職者医療制度を行ったらどうかという御意見でございますが、現在の各管掌の保険のうちで、実態を見ますると、不用意に退職者医療制度を導入いたしますると、勤労者が退職後まで医療保険について不均衡を生ずるというおそれがあるわけであります。ある種の人は財政力の弱い保険グループに入っておったものですから退職者医療が受けられない、ある人は富裕な保険グループに入っておったものだから受けられるという、退職後まで社会的不公正を持ち込むことはいかがかということで、いろいろ議論があるわけでございまして、社会保険審議会におきましてもいろいろ議論がありましたが、とにかくこれについてはさらに検討をしてみようということになっております。
 また、国庫負担の制度を改正する所存がないかということでございますが、弾力条項を用いますと連動式に補助金がふえるわけでありまして、この連動式の補助金の額がかなりに実は相上っておるわけでございまして、したがいまして、従来なかったような相当の財政負担をこの政府管掌健康保険に入れ込んでおるわけでございますので、ただいま直ちに国庫負担制度を改定する考え方はございません。(拍手)
    ―――――――――――――
#28
○副議長(秋田大助君) 小宮武喜君。
    〔小宮武喜君登壇〕
#29
○小宮武喜君 私は、民社党を代表して、ただいま趣旨説明が行われました健康保険法等の一部を改正する法律案に関し、総理並びに関係諸大臣に質問を行うものであります。
 近年における社会経済の激しい変動に伴い、一方においては公害や交通事故が激化し、他方においては有害物質のはんらん、あるいは原因、治療方法不明の疾病が増大するなど、新たな健康阻害要因が発生し、国民の生命と健康が脅かされております。しかるに、国民の生命と健康を守るべき医療保障制度は荒廃の一途をたどり、医療本来の任務を果たしているとは言いがたいのであります。
 都市においては三時間待って三分診療という現状にある反面、三千地区にも及ぶ無医地区が存在するなど、医療供給のアンバランスは目に余るものがあります。また、看護婦や医療担当者の慢性的な人材難も著しく、患者は不安な入院生活を余儀なくされておるのであります。さらに医薬分業も進展せず、薬依存の医療保障になっており、かつ予防からリハビリテーションに至る一貫した医療保障の確立も放置されているのが現状であります。まさに保険あって医療なしという憂うべき状態に置かれています。したがって、わが国の政治に課せられた緊急課題は、医療制度の抜本的な改革を強力に推進し、すべての国民がいつでもどこにあっても常に最良の医療を受けられる医療制度を確立することにあります。
 すでにわが党は、医療保障基本法を国会に提出した経緯があり、また、関係諸団体等からも抜本改革案が提言されており、医療制度のあるべき姿は明確になっていると思います。要は政府の決断いかんにかかっているのであります。総理、あなたが本当に国民のための政治を行う決意があるならば、次期国会に医療制度の抜本的改革案を提出することを確約すべきであると思いますが、総理の明快なる御答弁をお願いしたい。
 わが国では、昭和三十六年に国民皆保険体制が確立し、だれでも保険による救済が受けられるようになりました。しかし、多くの患者が医療費の支払いに苦しんでいます。その原因は、差額ベッド料や付添看護料などの保険外負担の差額料金を徴収されているからであります。健康保険組合連合会が最近まとめた調査によりましても、入院患者の半数以上が差額料金を取られており、差額料金は二千円未満が最も多く、三人部屋以上でも五割が差額徴収されています。しかも、基準看護と付添婦が重複しているものが全体の三六・九%を占め、付添看護料は三千円から八千円未満が八割を占めているなどの実態が明るみに出されております。したがって、一カ月間入院すると、付添看護料だけでも最低九万円に達することになります。こうした差額料金の横行を放置することは医療保険を空洞化するに等しく、早急に改善して患者負担の解消を図るべきであります。
 そこで私は、公的医療機関の差額ベッドを一掃するために財政援助を強化し、さらに、私的医療機関の差額ベッドについても規制を強化すべきであると考えますが、厚生大臣の決意をお聞かせ願いたい。また、付添看護料についても、保険給付の対象とすべきだと思いますが、政府の見解を明らかにしていただきたい。
 次に、私がお尋ねしたいことは、高額療養費支給制度の改善についてであります。
 医療保険は、本人、家族を問わず、高額医療の場合は十割給付することは本来のあり方であると思うのであります。この趣旨にのっとって昭和四十八年に高額療養費支給制度が確立されました。この制度は高く評価するものでありますけれども、さらに今後は、医療保険の本来のあり方に近づけるよう、改善、改革すべきであります。
 しかるに、今回の改正案では、改善されるどころか、逆に高額療養費支給の自己負担限度額の引き上げを図っています。わが党は断じて容認できないのであります。私は、むしろ三万円を限度とする自己負担期間を三カ月とし、四カ月以降は全額保険給付とするよう改善すべきだと考えますが、厚生大臣の所見をお聞きしたいと思います。
 次に、退職者医療制度の創設についての政府の見解をお聞きしたいと思います。
 被用者保険の被保険者は、定年退職後は、新たに被用者保険の被保険者になる場合を除き、国保の被保険者となるか、被用者保険の家族にならざるを得ません。いずれの場合も、給付率は従前の十割から七割に低下することになります。多年にわたり健保財政に貢献してきた者が、有病率の高くなる年齢に達するや、低給付しか受けられないということはまことに不合理であります。同時に、財政基盤の弱い国保にさらにしわ寄せすることも不合理だと思います。
 こうした不合理を解消し、定年退職しても、公費負担医療が受けられるようになるまでの間、従前の健保を適用するよう退職者医療制度の創設を図るべきだと思います。この制度の創設に対する国民のニーズも高まっています。国民のニーズを政治に正しく反映するためにも、退職者医療制度を確立すべきだと考えますが、厚生大臣の誠意ある答弁をお願いします。
 次に、保険料の労使折半負担の改善についてお尋ねします。
 わが国の社会保険の保険料負担は、労災、雇用保険を除き、労使折半が法的に定められています。もちろん、健保においても、政管健保は労使折半方式がとられています。このため、わが国の事業主負担はわずか五二・九%にすぎず、アメリカの五九・二%、西ドイツの六〇・五%、フランスの七八・四%、イタリアの八〇・四%、ベルギーの七八・二%に比べ著しく低負担となっております。こうした現状を改め、適正負担を確立するため、政管健保においても、組合健保と同様に事業主の保険料負担割合をふやす道を開くべきであると考えます。将来は、法的に労働者負担三、事業主負担七という負担割合に改めるべきだと思いますが、厚生大臣の見解をお聞きしたいと思います。
 次に、老人医療についてお尋ねします。
 老人医療の無料化制度は、老人福祉の目玉として昭和四十八年一月から実施されたのでありますが、実施後いまだ日も浅いにもかかわらず、五十一年度予算編成に際しては、再び有料化に逆戻りするという事態が起きたのであります。しかし、三木総理の強い要請によって五十一年度の有料化だけは見送られたものの、五十二年度以降はどうするかについては改めて検討されることになっております。わが党は、この時代に逆行する老人医療の有料化には、断固反対するものであります。三木総理の明確な御所見を承りたいと思います。
 次に、救急医療体制についてお尋ねします。
 近年、全国各地で救急患者のたらい回し事故が続発し、大きな社会問題となっております。ついに救急医療訴訟にまで発展しております。しかるに、国の対策はまことにお粗末であり、その熱意を疑わざるを得ないのであります。速やかに国は救急医療体制整備に積極的に取り組むべきであると考えますが、厚生大臣の決意をお聞かせ願いたい。
 最後に私が政府に要求することは、一部負担金の引き上げの撤廃についてであります。
 私が一部負担の引き上げに反対する理由は、今回の改正案によれば、引き上げ幅が三倍というきわめて大幅であり、低所得者にとって相当の負担増であります。また、現在でさえ差額ベッドや付添看護料が徴収されている上にさらに一部負担を重くすることは、医療保険の趣旨に反し、さらに、今回の引き上げは単に財政の帳じりを合わせるためのものであり、かつ、一部負担金の性格をあいまいにしたまま大幅に引き上げようとする政府の姿勢は、国民生活無視の姿勢であると言わざるを得ません。われわれは断じて容認できないのであります。一部負担金の引き上げの撤廃を強く政府に要求して、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣三木武夫君登壇〕
#30
○内閣総理大臣(三木武夫君) 小宮君にお答えをいたします。
 しばしばお答えをしておりますように、医療制度については、これは根本的にいろいろ検討すべき問題を含んでおることは事実でございます。しかし、この問題は、いろいろの立場によって非常に意見が分かれ、国民的な合意を得るためには相当な時間をかけなければなりませんので、全般的に検討いたしたい所存でございますが、小宮君の御指摘のように、次の通常国会に医療保険制度の抜本的改正案を提出せよというお約束には、残念ながら応じかねるわけでございます。十分に検討をいたします。
 老人医療の問題については、これは財政的見地から一部負担というようなものが出ておるのではなくして、いろんな問題点があるわけでございます。したがって、この問題は実態調査をしてみたい、実態調査をしてみて、われわれも、老人のために何が一番幸せになるのかという見地からこの問題を、単に財政的見地から、金がかかるからという見地でなしに、老人福祉のあり方の一環として検討をいたす所存でございます。
 第三点は、今回の一部負担の増加の案を撤廃せよということでございますが、今回の案は、経済情勢のいろいろな急激な変化に応ずるためのスライド的な役割りで、こうすることによって医療保険制度の健全な運用を図ろうということでございますので、これを政府は撤廃する意思を持ってない、せっかくの御提案でございますが、これはそういう意見を持ってないということをお答えして、御答弁といたします。(拍手)
    〔国務大臣田中正巳君登壇〕
#31
○国務大臣(田中正巳君) 小宮さんにお答えいたします。
 差額ベッド、付添料についてのお話がございました。いろいろいままでに御答弁を申し上げました。要するに、この問題によって必要な医療の機会が妨げられることのないようにいたさなければならないということであります。差額ベッドというものは、本来絶対になければならないといったようなものではございませんが、人によってはどうしても必要だということもございます。したがって、これを置くことについては、置かなければなるまいと思いますが、これによって病院が収入を上げるようなことがあってはいけないということで、これについては、かねがね厚生省は規制措置を通達しているわけですが、その実行についてさらに強力に指導をいたしたいと思います。
 付添料については、御承知のとおり基準看護体制のない保険医療機関において、患者の病状が一定の要件に該当した場合には費用償還払いをしているわけでございます。しかし、これについても、できるだけ実勢に近づけるように引き上げをいたしてまいりました。また、基準看護体制にあるところで付添婦を置くようなことについては、厚生省としては適切な措置を講じていく所存でございます。
 高額医療については、三万円から三万九千円に引き上げたことについていろいろな御批判とおしかりがございました。しかし、今日これは国民の可処分所得によって考えることが必要でありますが、同時に、この間医療費も実は相当に上がっているわけでございまして、三万円に引き上げたままですと、かなりの者が実は高額医療になってしまうという実態がございまして、そうすれば、これについて国やあるいは保険者が払っていかなければならぬということで、これについては、国保の保険者である市町村長からも、いろいろとある程度引き上げていただきたいという御意見もございました。そのままに据え置いておきますと、かなりの多くの者が高額療養者というふうになってまいりましたときの財政的な負担、そして本人の負担能力等々を考えて、まあまあ三万九千円程度はやむを得ないものというふうにして引き上げたわけであります。
 退職者医療については、さっき申し上げたとおり、被保険者の過去に所属しておった各管掌の保険のグループによって、老後にまで不公平が持ち越されることを私は恐れているわけでございますので、したがって、任意継続制度、任継制度を活用し、この任継についても、保険料ができるだけ安くなるような措置を今回考えて、これを御提案申し上げているわけでありまして、任意継続制度を活用することによって、この問題に一応対処していきたいと思います。
 退職者医療制度をどうするかについては、今後関係審議会等の御意見も踏まえて慎重に対処していきたいと思います。
 労使負担の五割、五割というのをこの際変えたらどうかということでございますが、さっき御答弁申し上げましたとおり、被用者保険制度全般に係る問題でありまして、慎重に対処していきたいというふうに思っております。
 救急医療についてのいろいろな御質問がございましたが、これは先ごろ申し上げましたとおり、今後のわれわれの重大な課題として、決してほめられた姿じゃございませんので、これは真剣に強力に取り組む所存でございます。(拍手)
#32
○副議長(秋田大助君) これにて質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
#33
○副議長(秋田大助君) 本日は、これにて散会いたします。
    午後三時十八分散会
     ――――◇―――――
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  三木 武夫君
        大 蔵 大 臣 大平 正芳君
        文 部 大 臣 永井 道雄君
        厚 生 大 臣 田中 正巳君
        通商産業大臣  河本 敏夫君
        運 輸 大 臣 木村 睦男君
 出席政府委員
        内閣法制局第四
        部長      別府 正夫君
     ――――◇―――――
ソース: 国立国会図書館
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