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1947/09/25 第1回国会 参議院 参議院会議録情報 第001回国会 農林委員会 第18号
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1947/09/25 第1回国会 参議院

参議院会議録情報 第001回国会 農林委員会 第18号

#1
第001回国会 農林委員会 第18号
  付託事件
○農地調整法の改正に關する陳情(第
 一號)
○物價是正及び肥料、作業衣、ゴム底
 足袋配給に關する陳情(第十號)
○農業保險法の改正に關する陳情(第
 十三號)
○農業復興運動に關する陳情(第十四
 號)
○水利組合費賦課に關する陳情(第二
 十二號)
○食料品配給公團法案(内閣送付)
○油糧配給公團法案(内閣送付)
○農業會の農業技術者給與國庫補助に
 關する陳情(第四十六號)
○農業會の農業技術者給與國庫補助に
 關する陳情(第五十一號)
○農業會の農業技術者給與國庫補助に
 關する陳情(第五十九號)
○農業會の農業技術者給與國庫補助に
 關する陳情(第六十一號)
○薪炭生産のあい路打開に關する陳情
 (第六十二號)
○茶業振興に關する陳情(第六十三
 號)
○農業用電力料金の引下げ及び換地處
 分經費の全額國庫助成等に關する陳
 情(第六十七號)
○東北及び新潟地方の特殊事情に立脚
 せる食糧供出對策改善に關する陳情
 (第六十八號)
○農林省所管の治山治水事業に一部移
 管反對に關する陳情(第七十號)
○農地委員會の經費を全額國庫負擔と
 することに關する陳情(第七十三
 號)
○林道飯田、赤石線開設に關する請願
 (第十七號)
○主食需給計畫の根本的改革に關する
 陳情(第七十四號)
○養蠶協同組合法の制定に關する陳情
 (第七十六號)
○農業會の農業技術者給與國庫補助に
 關する陳情(第七十七號)
○農業會の農業技術者給與を國庫負擔
 とすることに關する陳情(第八十
 號)
○農業會の農業技術者給與國庫補助に
 關する陳情(第八十四號)
○愛知縣豐川沿岸農業水利事業經費を
 國庫負擔とすることに關する陳情
 (第八十九號)
○農業會の農業技術者給與國庫補助に
 關する陳情(第九十一號)
○農業會の農業技術者給與國庫補助に
 關する陳情(第九十七號)
○農作物の「榮養週期栽培法」の普及
 實施に關する陳情(第百二號)
○農業會の農業技術者給與國庫補助に
 關する陳情(第百五號)
○農業會の農業技術者給與國庫補助に
 關する陳情(第百九號)
○蠶繭の増産に關する陳情(第百十
 五號)
○養蠶協同組合法の制定に關する陳情
 (第百十六號)
○農業會の農業技術者給與國庫補助に
 關する陳情(第百十九號)
○飼料配給公團法案(内閣送付)
○農業協同組合法案(内閣送付)
○農業協同組合法の制定に伴う農業團
 體の整備等に關する法律案(内閣送
 付)
○函館營林局の管轄區域變更に關する
 請願(第五十四號)
○藥用人參試驗場設置に關する請願
 (第六十六號)
○米價改訂に關する陳情(第百二十八
 號)
○民有林野制度の確立に關する陳情
 (第百三十號)
○養蠶協同組合法の制定に關する陳情
 (第百三十一號)
○農作物の「榮養週期栽培法」の普及
 實施に關する陳情(第百三十三號)
○開拓者資金融通に關する陳情(第百
 三十八號)
○米穀供出に對する報奬制度の廢止竝
 びに肥料の配給に關する陳情(第百
 四十九號)
○農業會の農業技術者給與國庫補助に
 關する陳情(第百五十號)
○遲配主食の價格に關する陳情(第百
 五十二號)
○岩手縣下の三農業用水改良事業を國
 營とすることに關する請願(第八十
 八號)
○福島縣安達郡大山村内の開墾事業を
 中止することに關する請願(第九十
 五號)
○北海道てん菜糖業の保護政策確立に
 關する請願(第百二號)
○薪炭の價格に關する陳情(第百六十
 二號)
○農業會の農業技術者給與國庫補助に
 關する陳情(第百六十三號)
○食料品配給公團法に關する陳情(第
 百七十六號)
○農業會の農業技術者給與國庫補助に
 關する陳情(第百八十七號)
○農作物の「榮養週期栽培法」の普及
 實施に關する陳情(第百八十八號)
○農作物の「榮養週期栽培法」の普及
 實施に關する陳情(第百九十二號)
○市營競馬の施行に關する陳情(第二
 百二號)
○北海道開拓事業に關する陳情(第二
 百七號)
○岩手山ろく國營開發事業に關する陳
 情(第二百九號)
○農作物の「榮養週期栽培法」の普及
 實施に關する陳情(第二百十三號)
○農業會の農業技術者給與國庫補助に
 關する陳情(第二百二十二號)
○未墾地の開拓事業に關する陳情(第
 二百二十二號)
○群馬縣古馬牧村外ヶ村のかん漑用水
 路に關する請願(第百二十一號)
○蒜山演習地の返還竝びに開拓計畫變
 更に關する請願(第百三十五號)
○食糧配給確保に關する陳情(第二百
 三十六號)
○林業振興對策に關する陳情(第二百
 二十七號)
○農業會の農業技術者給與國庫補助に
 關する陳情(第二百二十八號)
○農業會の農業技術者給與國庫補助に
 關する陳情(第二百三十一號)
○水利組合法の改正及び水利事業費國
 庫補助に關する陳情(第二百三十二
 號)
○農作物の「榮養週期栽培法」の普及
 實施に關する陳情(第二百三十五
 號)
○米麥需給計畫の根本方針に關する陳
 情(第二百三十六號)
○農業保險法制定に關する陳情(第二
 百四十四號)
○農業會の農業技術者給與國庫補助に
 關する陳情(第二百四十五號)
○岩手山ろく國營開發事業に關する陳
 情(第二百四十八號)
○薪炭需給調節特別會計法を改正する
 法律案(内閣送付)
○未利用地耕作利用臨時措置法案(内
 閣送付)
○青果物の統制撤廢に關する請願(第
 百七十六號)
○開拓對策に關する請願(第百七十七
 號)
○不軍馬補充部十勝支部用地内山林拂
 下げに關する請願(第百八十三號)
○十勝種馬育成所用地開放に關する請
 願(第百八十五號)
○昭和二十二年度産米價格竝びに供出
 に關する陳情(第二百六十二號)
○農作物の(榮養週期栽培法)の普及
 實施に關する請願(第二百六十七
 號)
○農業會の農業技術者給與國庫補助に
 關する陳情(第二百六十八號)
○農作物の「榮養週期栽培法」の普及
 實施に關する陳情(第二百七十一
 號)
○自作農創設特別措置法及び同法附属
 法規の一部を改正することに關する
 陳情(第二百八十號)
○勤勞大衆の食糧危機突破對策に關す
 る陳情(第二百八十二號)
○日本競馬會に關する陳情(第二百八
 十三號)
○農村指導農場開設に關する陳情(第
 二百九十四號)
○昭和二十二年度産米價格竝びに供出
 に關する陳情(第二百九十五號)
○農作物の「榮養週期栽培法」の普及
 實施に關する陳情(第二百九十九
 號)
○農業會の農業技術者給與國庫補助に
 關する陳情(第三百號)
○農地開發營團の行う農地開發事業を
 政府において引き繼いだ場合の措置
 に關する法律案(内閣提出)
○臨時農業生産調整法案(内閣送付)
○重要肥料統制法等を廢止する法律案
 (内閣送付)
○小阪部川貯水池改良事業を國營とす
 ることに關する請願(第二百七號)
○旭川合同用水工事促進等に關する請
 願(第二百九號)
○農地改革促進等に關する請願(第二
 百十三號)
○東京都内の食糧配給に關する陳情
 (第三百七號)
○農業會の農業技術者給與國庫補助に
 關する陳情(第三百十三號)
○種卵及びひなの價格撤廢竝びに養鶏
 用飼料増配に關する陳情(第三百十
 八號)
○農業會の農業技術者給與國庫補助に
 關する陳情(第三百十九號)
  ―――――――――――――
昭和二十二年九月二十五日(木曜日)
   午後一時三十三分開會
  ―――――――――――――
  本日の會議に付した事件
○臨時農業生産調整法案
  ―――――――――――――
#2
○委員長(楠見義男君) それでは只今から開會いたします。本日は臨時農業生産調整法案を議題に供します。先ず農林大臣から提案理由の説明を承ることにいたします。
#3
○國務大臣(平野力三君) 只今議題となりました臨時農業生産調整法の提案の理由を御説明申上げたいと存じます。
 本案は危機突破經濟緊急對策の第一に揚げておりますところの、農業生産と供出とを計畫的に連繋させまして、主要食糧の供出制度を根本的に改善する方策に基いて立案したものでございます。
 今日食糧事情が深刻になつて參りました原因は、朝鮮、滿洲等からの輸入がなくなりましたことの外、我が國内部における農業事情においても、戰爭による主要食糧の不足を契機といたしまして、主要農産物の重點的生産の強行、主要食糧供出の強化に伴つて、却つて行詰りに逢著いたしまして、一方一般經濟の衰退による資材及び畜力の不足によつて、農業生産は脆弱化の一途を辿つて參つたのであります。その上敗戰による經濟及び民心の變化によつて、戰時中の矛盾が表面化し、今や何らかの根本的轉換を企圓しなければ、このまま推移することを許さない重大なる危機に當面しておることは御承知の通りであります。
 狭小なる國土に多數の人口を養い、而も日本經濟を再建するためには、何よりも先ず主要食糧の確保が絶對に必要なことは申すまでもないのでありまして、これがためには先ず以て供出制度を根本的に改善しなければならないと思うのであります。供出制度の根本的改善は、一方では農家に納得の行く合理的なることを必要とすると共に、他方面においては農業の再生産を確保し、更に農業經營の健全な發達を阻害しないようにすることが必要なのであります。即ち農産物の價格、農家の生産資材その他必需物資の供給等につき、格別の努力を拂わなければならないことは勿論でありまするが、同時に公正且つ合理的な方法によつて、計畫的に農業生産を行うこととし、主要食糧の供出は、その基礎の上に合理化することが必要なのでございます。
 さて、この本案に關する重要な點について先ず申上げますならば、第一、農業生産の割當制を實施して、同時に事前に供出の割當をも行いまして、農家の生産と供出の責任制を確立することにあるのであります。即ち米、麥、芋類について豫め農業計畫というものを定めるのでありますが、これはこれらの生産數量、作付面積、供出數量を割當てて、農家の生産及び供出の責任を明らかにすると共に、これに對して肥料等の資材の配給の裏打を計畫的に行うのであります。そうして同時に、農家の責任の限界を明らかにする意味において、強制的な意味における追加割當は行わないのであります。
 第二に、この割當の方法について申上げますると、先ず農林大臣が經濟安定本部總裁の定める方策に基き、中央農業調整委員會と知事の意見を聽き、都道府縣別に農業計畫を定めて、これを知事に指示するのであります。知事はその指示に從いまして、市町村別に農業計畫を定めこれを市町村長に指示し、市町村長はその指示に從つて農家別に農業計畫を定めて指示するのであります。而して知事か指示する場合には、都道府縣農業調整委員會の議決を得ることを必要とし、市町村長が農家に指示するには豫め市町村農業調整委員會の議決を得ることを必要とするのであります。農家別の農業計畫はこれを公表し、農家に異議の申立を認めて、割當の公正を期し、農家の納得の行く生産と供出を行つて參るのであります。
 第三に、以上のようにして豫め生産と供出の責任數量を明確にするのでありまするから、肥料はその生産の計畫と結び附けて割當を行い、肥料以外の農業用資材についても可及的に生産計畫を參酌して配給することになつておるのであります。又指示通りに作付を行なつても、災害その他止むを得ない事由によつて計畫通りに生産ができないときには、農家は供出數量の變更を市町村長に對して請求することができることになつております。
 第四に、以上のようにして民主的且つ合理的なる方法と手續によつて割當を行い、重要なる農業生産物の生産と供出を確保するのでありますが、特に必要がありますならば、知事は或る種の不急作物の作付を制限するために、その作付について市町村農業調整委員會の承認を受けさせるとか、又農業生産上の障害を除去し、又増産推進上の必要がありまするならば、市町村農業調整委員會に、病蟲害の驅除、豫防、水利の調整、農業用施設の共同利用等について、農家に對し必要なる指示をする權限を與えておるのであります。
 第五に、以上のような處置は、その實施機構が民主化されなければ從來と何ら變るところがないのでありますからして、市町村及び都道府縣農業調整委員會を設置いたしまして、その委員は農民の間から公選をすることにし、他に學職經驗者若干名を加えることにいたしておるのであります。先にも申上げましたように、生産及び供出の割當は委員會の議決を要するのであります。末端においてその計畫の樹立と、實施の後に必要なる專任職員を設置することができるのであります。又農林省には中央農業調整委員會を置いて、農業の計畫の樹立と食糧の管理の實施に關するところの重要事項を審議することにいたしておるのであります。
 尚、本法案は当面の食糧危機を突破するための對策でありまして、主要食糧の生産と供出とを確保するためのものでありますから、その有効期限を一應昭和二十四年三月といたしておる次第であります。
 以上が臨時農業生産調整法の骨子となるところでありますが、要約いたしますると、農家の生産意欲を昂揚し、増産への努力を勵まし、食糧問題の根本を解決するために考えた案でありますので、何卒愼重御審議の上速かに御協贊あらんことをお願いする次第であります。
#4
○委員長(楠見義男君) それではこれから質疑に入ります。
#5
○羽生三七君 只今の法案で、詳細については後に讓りまして、概要について少しお尋ねしたいと思います。
 只今御説明にありましたように、この法案は期限が定められておるところでも明らかでありますが、大體臨時的な處置のようであります。それで私のお尋ねしたいのはそれが飽くまで臨時的な處置であるのが、或いは日本の農業生産の上に多少とも計畫性を持たせようという考えが含まれておるのかどうか、それをまずお尋ねしたいと思います。
 次には、先般來豫備審査を行つておりまする農業協同組合法は、この設立の原則からいいまして自由の意思に基くことになつております。ところが、この農業協同組合法を我々が効果的に運營して行く場合におきましては、特に作付等を考慮いたしまして、生産の面でその協同化が達成されなければならないと思うのでありますが、この農業協同組合法とこの農業生産調整法と睨み合して見ますというと、農業協同組合法は自由の原則がとられ、この生産調整法においては驚くべき國家的統制意思が反映しておるのでありまするが、この間において政府は矛盾をお考えにならないかどうか。これが第二點であります。
 それかに第三番目には、これで食糧の不足を補うための供出の面の問題は解決されると思いますけれども、こういう著しく各農民個人の自由意思を拘束する場合におきまして、食糧の増産自體を確保できる確信がおありになるかどうか。これが第三であります。
 それから次には、大體これは先般來の各委員會で論議せられたことでありますが、日本の耕地面積が驚くべき莫大なる變化が行われております。例えて申しますならば、先日頂いた資料を拜見しても分りますように、昭和九年と二十年におきましては二十數萬町歩の作付面積の減少を來しております。これは恐らくは米にいたしまして數百萬石に當る多量の面積であります。なぜこういうことになつておるかということにつきましては、すでに數次論議が繰返されたことでありますからこれ以上申上げませんが、一言にして申せば、從來の供出制度或いは農産物価格等が著しく不合理であつたために、勢い統計画において正直なる報告が行われなかつたということが一つでありますけれども、いま一つはこれは直接この法案と關係ないところでありますが、第一番に米作と他の果樹や蔬菜等の現金收入の非常に多い作物との差が非常に甚だしいということであります。このことが結局耕地面積の減少を招來しておるのでありますが、もしこの農業生産調整法が施行せられました場合において、段當收量でなしに、段當收入であります。つまり今申上げました果樹や蔬菜或いはその他有利なる農業作物と米作等の比較的不利なる農業生産物とのこの段當現金收入の差をいかにして調節するか。これが調節できなかつた場合におきましては、農業生産上私は極めて重大なる結果を招來すると思うのであります。これについてどういうお考えを持つておるか、承りたいと思います。
 尚これは希望でありますが、農民にかくのごとき法律的處置を講じて生産竝に供出の面で嚴重なる處置を講ずる以上、當然先程提案の説明の中にありましたように、この裏付けとなるべき必要なる再生産資材については十分なる確保が行われねばならないと思います。他の農業生産に必要なる資材等につきましては、從來極めて自由放任の處置に委されておつて、ひとり農業生産者のみが最も強力なる國家統制を受けるというこの現状を見ましたときに、當然私は先程大臣の提案説明にありましたように、必ず強力なる裏付けが行われるものと固く信じておりますけれども、これについて十分なる對策を期待するわけであります。
 尚その次にいま一つお尋ねしたいことは、大體これは架空な問題になるかも知れませんが、政府がお考えになりまして、この法案は一應和昭二十四年度と規定されておりますけれども、大體今日のこの國内の食糧事情或いは世界の食糧事情とを睨み合して、このような法案が大凡撤囘されてもいい自由な生産に復歸できる時期をいつ頃と想定されますか。これも合せて承つて置きたいと思います。
 大體以上を承りまして、あと詳細につきましては後刻又お尋ねしたいと思います。
#6
○國務大臣(平野力三君) この法律は飽くまで暫定的なる法律でありまして、こういう強制的なる制度を永久に農業制度において行う意思を持つておらんのであります。從いまして昭和二十四年三月を一應の期限としておるのであります。固よりこの期限に關しましてはこの年に參りまして、尚この法律を繼續するの必要なる状況にあります場合におきましては當然延長をすることは固よりでございます。面してかようなる暫定的ではあるが、なぜこういうような供出及び供出に關するところの強制的な處理を取るところの法律が必要であるかという點は、現在行なつておりますところの供出制度というものが、すでに相當に農家に對して政府が無理を言うておるところの内容であるのでありまして、單にかような制度を法制化されないで便宜的にやつておるということは段々に情勢が許さないと考えましたので、今囘新らたに法律を制定いたしまして、その法律の範圍においてお互いに政府の行うべき限界と、農民の責任を負うべきところの内容を明らかにいたして置きますというのが、これが妥當であるという見解において、今囘供出制度を法律の形においてここに提案するに至つたのでございます。
 次に、協同組合は自由の原則に立つており、農業生産調整法は非常に自由を束縛する、こういう矛盾したる法律を同時に出しておるのはどういうわけかというお問いのようでありますが、誠に御尤もなるお問いであります。これにつきましては、農業協同組合は飽くまでも日本の農村の民主化という意味においての立案せられた基本的農業政策の方向であつて、これはその方向に關する限り永久的な考え方であります。併しこの農業生産調整法は、法案の上に臨時という字を加えておりまするように、現在當面せる食糧危機を突破するにはこういう處置よりいたし方がないのである。本意ではないが、こういう一つの農村に對して責任供出制というものを設けて、その責任額は果して貰わなければならない、こういう規定を設ける以外に現在の食糧問題を打開する方法がない。殊に輸入食糧等を懇請しておる限においては、日本政府又日本農民に對してかような強制力を持たなければなりません。こういう臨時的なる趣意の下に出ておるのでありまして、同時にイデオロギーの違つた法案を二つ出しておるということについては、矛盾するようでありますが、一方は臨時的、一方は恒久的なる思想を持つておるのでありまして、この意味においては、兩案とも何卒御了承を願いたい、かように思うのであります。
 第三は、この農業生産調整法は、供出の面においては尤もであるが、これによつては増産にはならんのではないか、こういう御指摘でありますが、これは私といたしましては、そう考えておらんのであります。これによつて相当に増産になる、かように考えておるのであります。その理由を申上げますると、從來の供出制度は、農家が澤山生産をすればする程供出の割當が多くなつて來る、こういうのが最近におきまする供出制度の一大弊害であり、又そういう制度を採つて參つたのであります。現在農村において生産量を隱す主なる理由も、生産量が多くなれは供出割當が多くなつて來るという點において、とにかく生産數量の正當なる報告を受けておらん、こういうことになるのであります。今囘からは責任供出制というものを定めて、その責任供出量というものを供出すれば、あとの部分については、固より賣るのは政府でありますけれども、いわゆる自由販賣を自由に認めるのではありませんが、責任供出制を果した農家は、その餘の分については、賣るのは政府でありますけれども、自己の保有という點については或る程度の自由を認めております。この部分において、私は農民の増産意欲を刺戟する點においてはこの法案は非常に重要なる法案である、かようなる判断をいたしておるのであります。いま一つは、この法律によりますると、豫め麥、米を値付ける以前において割當をいたしまして、その作付面積を基準として肥料を割當てる、從いましてその作付面積を基調として肥料を貰うのでありますから、そこにおのずから明確に増産の線を辿つて行くことができる。その點におきまして、この法律は、或る程度まで農家に自由を拘束しておる點においては相當缺點がありまするけれども、生産というものを明確にして行くという點においては、現段階においては非常に必要なる法律である、かように考えておるのであります。
 次にございました御質問は、米よりもつと儲かる果樹であるとか、或いは蔬菜、こういうようなものを農家がどんどん作るようになつて行くのではないか、現金收入が多いという方面に農家が走るということになれば、勢い政府が米によつて強制しようと思つても、他の物を作るじやないか、これをどうするかというような趣意の御質問であると解釋したのでありますが、今申上げましたように、この生産調整法におきましては、豫め米を作る、豫め麥を作る、その部分についてこれだけの肥料を渡し、これだけの農業用の必要な資材を渡す、こういう計畫的なものを豫め立てるのでありますから、米を作るからといつて、野菜を作る農家が現われた場合においては、これに對しては必要なる農業用資材を裏付けしないというような、別の意味においてこれらを制約して行くつもりであります。尚その他必要なるところの農業上における統制上の處置を、地方長官が相當裁量できるような規定を設けておるのでありまして、極端に米作を止めて果樹園を作るというようなことについては、明らかにそれを阻止するだけの行政上の處置を取り得る、かように考えておるのであります。
 最後に、この法律を必要とするところの期限は、一應現段階においては二ヶ年としておるが、果していつになつたらこれを撤廢するかという御質問は、要約いたしますると、日本の食糧事情というものがかような法律を必要としないときはいつかと、こういう問題になるのでありまして、これを今から明確に何年という年限を切つて測定いたしますることは困難でありまするけれども、併しこれはそんなに長い間、五年十年と非常に長い間、こういうような世界的なる食糧不足が續くのではなくして、大體ここ數年間のうちには一應世界的食糧問題も解決をし、場合によりますると、或いは世界農業恐慌が襲うのではないかというような意味の見解さえあるのでありますので、まずこの法律の廢止の時期というものは、年限を切るわけには參りませんけれども、今申上げましたような意味において、そんなに長い間この法律を存置さす必要はない、と申しまして、まあここに掲げてある二年間くらいは絶對に必要である、かように考えておる次第であります。
#7
○羽生三七君 只今のお答えで大體了承したわけでありますが、その中米作と果樹、蔬菜等の現金收入の多いものとの比率の問題でありますけれども、これは私が先程お尋ねしたことは、必ずしも現金收入の多いものをどんどん農家が作つてしまうということではないのでありまして、そういうわけではないのでありまして、現在作つておる面積は現在程度と假定いたしましても、この米作と他の作物との著しい收入上の不均衡というものが相當供出を阻害しておる原因に從來なつておりますが、こういう場合をどうお考えになるかということと、それからもう一つは、この法律を施行する場合におきまして、全く新らしい見地で作付面積を考えておるのか、或いは過去の實績というようなものを相當考慮されて行かれるか、その邊をちよつとお伺いしたいと思います。
#8
○國務大臣(平野力三君) 現在米及び果樹等の段當の金錢收入に非常な差がある、これをどう見るかというお問いでありまするが、これは農産物の價格の是正という面から考えなければなりませんので、私は常に申上げておりまするように、大體米を基準として農産物價を整頓するというような趣意を持つておりますので、今後は極端なる農産物の間における價格の大きな差はないようにいたしたい、かように考えております。併し物によりましては、例えば果樹の統制を撤廢する、米は依然として統制するというような場合におきまして、依然として或る程度の過去の不均衡が存續いたします場合もあるのでありますが、この點についてはなかなか實際には困難なる點もあろう、併しさようなことのないようにいろいろ方法を考えることも亦可能であると思つております。
 次にお尋ねになりましたのは、作付の面積を從來の基準によつて、實績によつてやるかどうか、こういうお問いでありますが、大體は農業というものは、一遍に新らしい試みをするというわけには參りませんので、原則といたしましては、從來の作付面積を基調として行くのは當然であると思います。併し單に從來の作付面積のみに拘泥することなく、やはり米麥、甘藷、馬鈴薯等の國の必要量に順應いたしまして相當の農業生産を調整する、こういうことを亦やつて行きたい、かように思つております。
#9
○北村一男君 この法案を見ますると、或る意味におきましては、農業の國家管理というような面がないではないと考えまする。併し大臣の御説明によりますれば、臨時的のものである、併し又御説明の中には、そのとき必要とあれは繼續しないではない、かように仰せられておりまするが、勿論政府はそういうお考えはないこととは私存じますが、國家管理というような理念をお持ちになつておるかどうか、これを先ず承りたいと存じます。
 それから羽生委員からも御指摘になつたように、これは非常に農民に對する統制強化でございまして、私は生産數量、供出數量さえお掴みになればいいのではないか、作付面積、それから第九條の知事が必要と認めた場合の作物の種類というようなものまで、計畫化するということは差控えられてもいいのではないか、そうして農民にできるだけ自由の意思によつて増産に努力させる、こういうようなことであつてもいいのではないかと考えまするが、この點について大臣の御所見を承りたいと存じます。
 それからこの條文の中に、中央の委員會は農林大臣にただ意見を申出る、意見を聽くという程度のものでございまするが、都道府縣竝びに市町村の段階に行きますると、これが議決ということに相成つておりますが、中央の委員會というものは、こういうように、ただ意見を申上げるというような程度の輕いもので十分であるかどうか。
 それからこの調整法の精神を完遂いたしますには、私はどうしても農産物の價格が他の産業の商品の價格と同様に、或る程度釣合を保つて行かなければ甚だ農村に對して不公平だと考えております。結局この供出というものは、價格操作に出發して、歸するところは價格操作でやる、かように考えるのでありますが、この調整法によつて、供出計畫が進められる場合において、價格に對してどういうようなお考えをお持ちになつておるか、でき得れば本年度の供米について大臣のお考えが片鱗でもお伺いできればこの際承りたいと思います。
 それからこれは委員長に一つ申上げて置きたいのでありまするが、この法案については、農村において相當の議論がありまするから、公聽會を開いて農村の輿論をお聽きになつたらどうか、こういうことをお尋ね申したいと思います。
#10
○國務大臣(平野力三君) 本法案は農業の國家管理というような思想から出發しておるのではないかという御問でありますが、私はこの法案の個々の具體的な事實については、統制管理というような思想が見られないわけはないと思いまするが、これを提案いたしておりましたるところの根本的な思想としては、特に國家管理、農業を國家管理にすべきだというような根柢から出發をしておるのではない、飽くまで現實においてかような制度が必要であるという必要性に重點がある、かように御了承願いたい。私は農民の本然の姿は、土地と自由を愛する農民は、本然に自己の土地の上に自由なる生活を營みたい、これが農民本然の姿でありまするので、將來農業を國家管理するというような指導に持つて行く方針はとつておらんのであります。
 次にお問いになりました作付統制の問題もさようでありまして、農民はあれを作れ、これを作れ、あれを作つてはならない、これを作るべからずというような面倒臭いことを農民に向つて行政官廳が言うことには固より私は反對であります。農民が眞に自由の天地において最も適當なるものを適切に作る自然の姿において農業は發展するということを念願いたしておるのでありますので、作付の統制というようなことについては私は餘り欲しないのであります。併しながら、これ又現段階において、それでは儲かるものならば、何をお作りになつても自由であるというような制度は許されないのでありまして、現に農業の必要といたしますところの資材、肥料、農機具、地下足袋その他の面において國が統制配給をいたして行かなければならない現状において農家亦或る程度の作付の統制に順應して行くということも當然であると考えますので、これ又現段階において必要なる作付統制であるとお考えを願いたい、別にイデオロギーから出發した統制管理というのではないのであります。
 第三に御指摘になりました中央食糧調整委員會は意見を聽くのみであり、縣及び町村の調整委員會は議決となつておるが、これでよいか、こういう御質問でありますが、割當を民主化するという趣意の下において、町村及び縣においては選擧によつて選ばれた調整委員會の議決、こういうことを決めておりますことが、民主的なる割當ということについて當然必要である、かように考えるのであります。中央におきましては、これは農林大臣がいろいろな報告に基いて一定の案を作つて、その案を知事に示す、知事が町村に示し、町村が農民に示す、この段階を經て行く一番最初の原案でありますので、この原案を作るに當りましては、農林大臣といたしましては大體中央の食糧調整委員會の意見を求める、こういう程度においてよろしいのではないか。而も中央食糧調整委員會は、これは町村の食糧調整委員會の構成のごとく末端から選擧したという機關ではないのでありまして、やはり農林大臣の諮問の機關、かようにいたすことがよかろうと考えたのであります。
 最後にお尋ねの農産物價格の問題でありまするが、私は理想の形態といたしましては、價格操作の面において供出が順當に進展する、例えばこの價格において供出をするということは望ましい、この價格ならば自分は滿足である、こういう價格を農家に與えるということを私といたしましても考えておるのであります。併しながらこれ又現實の問題といたしまして、農産物價というもの、殊に現在の農民の生産價格というものを十分に滿足するところの米價を決定するということは、やはり現實困難である。從つてここにどういたしましても單に價格操作の面のみにおいて供出を滿足するというわけには參りませんので、一定の割當制というものを設けて、割當の上においては、與えられた價格の上において、租税を納める意味において、國家奉仕の考えを農民に持つて貰うことは現段階において止むを得ない、こういう思想に出ておるのであります。そうは申しましても、現在當面いたしておりますところの供出に當つて、米價を相當程度に農民の滿足の行くように決めることは、これ又當然の問題でありますので、現在米價の決定に當りましては、農林省は安定本部と物價廳との間に、それぞれの方法によつて、案を持ち寄つて協議をいたしておるのでありまして、現在その協議の經過の途中において私が米價の見通しを言うことは、むしろ穩當でないのでありますから、値段については本日依然として差控えることをお許しを願いたいと思うのでありますが、私といたしましては抽象的に飽くまで農民の生産供出意欲を冷却するような米價を決定してはならない。勿論生活の基本は飽くまで主食の配給を完全にするという點であるのでありまして、主食の配給を完全にするには、どうしても供出の完全を期する、この供出の完全を期するには、米價は農民の生産意欲を冷却する米價ではいけない、こういう考えの下に農林大臣といたしましては、その趣意から米價の交渉に當つておるということがはつきり申上げて置きたいと思います。併しインフレの問題、或いは諸般の現在の賃金等の關係から、私の思うような米價には參らん傾向もあるのでありまして、これらの點につきましては現在最も私共苦心をいたしておる點であります。以上御了承を願いたいのであります。
#11
○委員長(楠見義男君) 委員長に對する御意見もございましたが、この問題については、尚別によく御相談をいたします。
#12
○森田豊壽君 只今各委員の御質問に對して、農林大臣から大分詳細に亙りましてお考について縷々お話がありましたが、本案に對しましては第三條に「農林大臣は、經濟安定本部總裁の定める方策に基き、命令で定める」云々とあり、その後の方の條項から行きますというと、農業生産の調整及び主要食糧の供出制度要綱の(二)に「農林大臣は、經濟安定本部總裁の定めるところに從い、中央農業調整委員會の審議を經て知事と協議の上都道府縣別に生産計畫を定め、これを知事に指示する。」ということが書いてありまして、農林大臣が大體において生産計畫に對します案を出すべきでなくてはならん。この農業生産調整法に對しましてすべて經濟安定本部の指圖を受けなければこれができないというような調整法であることにつきましては、私は多大の疑問を持つ者でありますが、この邊につきましては本案は一體農林大臣或いは農林省におきまして、みずからこういう案をお作りになつたのであるか、或いは安定本部等の幾多の指示等を受けましてここにこういう案をお作りになつたのか、この法案を眺めた場合におきましては、これは生産調整法にあらずして、先程北村君からお話のあつた通り國家管理ということはどうでありますか、農業生産統制法であるといつても差支えないのではなかろうかと私は思うのであります。この點につてましては、どこまでも農民の意思によりまして、ここに生産計畫を立てるという、いわゆる市町村におきます農業會の議決を經る、又都道府縣の議決を經て、それを以ちまして中央におきましての或いは審議と申しましようか、協議と申しましようか、ここにいろいろ定めるということであるならば、これは誠は結構のように考えますけれども、そこはとにかく都道府縣知事に對しましても命令を下してこれだけの一つの計畫をしろということを指示するのであります從いまして、この點につきまして農林大臣のはつきりした實情を赤裸々にここに御説明を願いたい。然る後におきまして後段の質問をいたしたいと思います。それだけを一つお願いいたします。
#13
○國務大臣(平野力三君) 經濟安定本部は各省の上にすべての資材物資等を綜合的に計畫をする、こういう機構の下にできておるものであります。從つてすべての物資が綜合的には經濟安定本部の一應の指示を受けるという原則に從つて本案もその趣旨から出ておるのであります。ただ從來公團法におきましは經濟安定本部長官という字を用いておりましたものを、この臨時農業生産調整法からは經濟安定本部總裁、こういう字句に改めました。これは安定本部總裁は總理大臣でありますので、憲法上總理大臣が各省大臣のやや上にあるということは妨げないということで、この法案からは長官という字を總裁という字に改めるということを了承を得まして、かようにいたして來ておるのであります。安定本部と農林省との大體の權能の問題につきましては、農林省は實施官廳でありますので、飽くまで割當、供出、生産等を實地に行うのは農林省でありまして、安定本部では絶對ないのであります。ただ形式的にすべての物資が綜合的に經濟安定本部において計畫が立てられるという趣意の下から、この目的であるところの主要食糧についても、經濟安定本部總裁の指示に基くという字句が使つてある點は御了承を願いたい、かように思うのであります。
#14
○森田豊壽君 大體分りましたが、これが安定本部長官であろうと、總裁であろうと、總濟安定本部なることには間違いないのでありまして、從いまして經濟安定本部の指示と申しましようか、經濟安定本部の總裁の定めるところに從つてやるということになりまするというと、農林大臣は相當これは抑えらるる場合があると見なければならんと私は考えるのであります。荀くもこの法律が出た以上は、法律の定めるところに從いまして、その權限も持つておると私は考えておるのであります。こういう問題につきましてはいずれ徹底的に審議しなければならん問題だと思いまするが、とかくこういう問題が調整法に非ずして統制法であると言われる點で、私自身もそう感じておるのであります。そういう點について生産者の誤解を招くことによりまして、この調整法の運營がうまく行かんということになるわけであります。この點に對しましても、農林大臣は、尚これは先程も質問がありましたが、これ對しては大分詳しくお話はありましたけれども、生産を阻害するような統制を加えるのではないということにつきましての御意見をもう少しお聞かせを願いたいと思います。
#15
○國務大臣(平野力三君) 經濟安定本部そのものも御承知の通り年限を切つてあるのでありますが、これ亦必要があるのでまた當分存續する、併し經濟安定本部は飽くまで臨時的なものであると解釋をいたしておるのであります。又今囘の農業主産調整法も臨時のものでありまして、現在の日本の經濟、現在の諸般の國の事情というものが、かようなる制度を必要とする、これは現在において必要であるという點がら生れているのであつて、決して統制とか、國家管理とか、強制とか、そういうような意味からこの法律が思想的に出ておるのではないということを御了承願いたいと思います。
#16
○岡村文四郎君 大臣の提案理由の御説明を承りますと、農家が自主的に生産計畫を立てて、實にうまく行くようになつておるので、餘りきついもののように感じないという御趣旨のようでありますが、私共百姓がこれを見ますると、實にきびしいものなんです。そこで昨年の春強權發動の案を議會が決めた時分に、これは止むを得ず決めたにしても、強權發動をしないようにすることが政府の責任であり、議會に參與しておる者の責任であつたと思うのでありまするが、決め放しで置きますから、ああいう殘酷なことを全國的に見たようなわけであります。この法律をやらなければならない理由は承りましたが、こうまで百姓を虐げるような法律をやらないで、その他の方法があるのじやないか。百姓にもいろいろ生産をする者もありますが、第七條に從わない者は三年以下の懲役又は一萬圓以下の罰金、又第九條に從わない者は一年以下の懲役又は一萬圓以下の罰金、そういうものを拵えなくても、殊に農林大臣は農業者の意思は十分に承知いたしておる方と信じておりますが、どうしてこういうものを百姓のみに課するようなことをやられるのか、何らか他の方法があるのではないかということを、私この法律を見てからもう寸分の暇なく考えておるのであります。若しこれを出して決めましても、これはなかなか困つた問題で、これを徹底するのはなかなかむずかしい仕事であつて、必ず誤りができると思います。これはどう考えるか分りませんが、食糧に限つてかどうか分りませんが、若し食糧に限つての法律なら考えようがありますが、農産物と書いてありますから、この農産物と書いてあることを眞直ぐに當嵌めて行きますと、殊に國の奬勵をする欲しいものがありますが、それによつてやられますと、當然その犯罪者を出すことがはつきりしておるものがあります。そこで例えば北海道で作つております亞麻のごときどうお決めになりますか、それらはどう見ても作られない價格をお決めになつておる、作られない計畫を立つても駄目なんです。農家が自主的に決めて來るものならいいが。……從つて本當に作り得るように、供出のできるように末端から決めて順次上に持つて行くというなら話は分りますが、そうおつしやられてもそうでないことがはつきりいたしております。そこで作物には裏付がなくてはならんのでありますが、一方的に解釋をして、それに對して資材の裏付も書いてありますけれども、その資材の裏付が作付に間に合わなかつたときの責任は書いてありません。安定本部の總裁が同じような三年以下の懲役だとか或いは一萬圓以下の罰金だとか、こういうことがあれば納得ができます。そうでなく一方的に百姓のみ虐げられるような法律は、根本的に承服できないのであります。どうかそのおつもりでもう一度御説明をお聞かせ願いたい。
#17
○國務大臣(平野力三君) ずつと前の議會におきまして、食糧緊急措置令が議會に出ましたときも、非常に強權發動として議會の問題になつたことでありまして、農民に對してのみかようなる強制力を持たするということは隠當でないという思想は私も同感であります。從つてこの法律の運用に當つては、現實問題として、法律は違つておりまするが、食糧緊急措置令における強權發動というような面においても、私自身としては全くこれを用いない、別の言葉でいうならば、これは傳家の寶刀であつて、なかなか抜けない、強權發動というようなことを以て農村に臨まない、こういう方針で行きたい。併しものには例外があり、又最後的には、甚だ不屆きな立場において供出を阻害する者についても、何らかの措置がなくては食糧管理はできないという趣意の下に、食糧緊急措置令にも賛成をいたしたのであります。今囘のこの法律に關しましても、固より農民から罰金を取る、農民を刑罰するというようなことは私の最も欲せざるところであります。今囘我々がこの法律を作つて、極めて臨時的であるけれども運用しなければならないというのは、一に日本の国内における食糧が、日本國内だけの需給で間に合わない、どうしても輸入食糧を墾請して、輸入食糧をプラスした食糧と配給制度によつて食糧計畫を立てる、この段階の食糧行政の任に當る者としては、只今ここに提案をいたしておりまする農業生産調整が必要である、從つてこれには或る程度の罰則も加味せざるを得ない、こういう意味でありますので、罰則があるからといつて、直ぐこれによつて農民を罰するというような趣意から作つておるのではない、止を得ずかような處置をとらなければならんという點については一つ御了承願いたい、かように思つております。
#18
○太田敏兄君 一つの農業計畫をお立てになりまして、これが完全に行われますためには、米價と最も大きな關係があるということは、先程農林大臣もおつしやつた通りであります。ところで問題はその米價はいかなる方法で決定させるかということが最も重要な問題であると思うのであります。平野大臣は豫ねてから農民の納得の行く價格でということをよくおつしやつておりますので、その點は大いに我々も敬意を表しておる點でありまするが、併しその價格の決定の方法というのは、飽くまで科學的でなければならんと思うのでありますが、その方法につきまして、或いは生産費の計算を基礎とするものもあり、或はパリテイー計算というようなものもあるのであるが、その米價の決定につきましては、豫めその米價を決定する方法を明示して欲しいと思うのであります。生産費なら生産費、或いはパリテイー計算ならパリテイーの計算の基礎を承りたいと存じます。それから又その決め方につきましても或いは政府が一方的に決められるのであるか、或いはこうした農林委員會に御諮問になるのであるか、その點も伺いたい。ともかく私は大臣が常に言はれる納得の行くという方法を具體的にお示しを願いたいと思うのであります。
#19
○國務大臣(平野力三君) この前の麥の價格を千五十二圓と決定いたしまする場合には、いわゆる農業パリテイー計算という方式を採つたのであります。このパリテイー計算というものは、もうすでに御承知でありましようが、昭和九年、十年、十一年の三ケ年間、この三ケ年間における平均米價というものを出しまして、それから今日に至るまでの間農業に必要といたしまするところの物品六十四品目、肥料、農器具その他一般の農業用の藥品、その他すべてのものを綜合いたしまして、その中から六十四品目を取りまして、その六十四品目の値上りの率というものを米價に掛けて出ましたもの、これをいわゆるパリテイー計算による米價ということに決定したのであります。
 九年、十年、十一年をなぜ見たかと申しますると、支那事變のちようど以前でありまして、比較的日本の經濟が安定しておるときであり、又同時にこの時代におきましては、米穀統制法というものが大體施行せられまして、米價が極端に下がる場合においては、政府が無制限買上げを行うことによつて米の値段を維持し得る、こういう趣意の、いわゆる米に關するところの或る程度の基準米價というものが、經濟上安定しておるというような理論の下に、九年、十年、十一年という年を取つて、この三年間の米價の平均から今度は農業用の必要なものの値上りを掛けて今年の米價としたのであります。このことは大體において農村の買うものと農民が賣るものとの値段というものをいわゆる理論的に採算が取れるように、こういう趣意から理論的に考えて參りました計算方法であつて、私は理窟といたしましては、一應これは尤もな計算方法である、かように考えるのであります。
 併し、然らばここにこういう一つの理論的パリテイー計算というような方法から取つて參りましたものが、現實今農民が生産しておる米なり麥というものを、農民が使つた肥料、農機具、農民の勞働賃金、こういうものから計算を逆にいたして參りまして、この値段で引合うかどうかというような點になりますると、必らずしも一致しないのであります、理論的に鋏状價格というものをなくするということについては、パリテイー計算というものは筋が通つた計算方法として、私は大いに尊重すべき計算方法と思います。併し個々のものから見て、この米をパリテイー計算によるところの方式で賣つた場合、自分の使つた必要なる農民の勞力或いは肥料、農機具等が、これで採算が取れるかどうかというと、個々には必ずしも一致しない、こういうことになります。
 そこで農林省といたしましては、この米價決定に當りまして、非常に苦心をいたしておるのであります。從つて米價を理論的にただ一つの統計的に計算をして、これで米價がよいということをいたしまするには、なかなか實際には困難な面がある。そこで私共はパリテイー計算にいたす場合も、農民の生産方法から割出したところの米價というものを、いろいろな角度から種類を作りまして、その種類を作つたものを、經濟安定本部の物價廳に交渉をいたしまして、物價廳又いろいろな角度から、物價廳の見るところのいわゆる計算をいたしまして、物價廳方面におきましては現在千八百圓ベースを維持するために米價はこうなつてはいかん、こういう議論もあります。又物價廳の計算はパリテイー計算もありまして、いろいろこれらの問題を持寄つた結果、そこに最後に多少政府的と申しまするか、常識的にいろいろな方面も考慮いたしまして、最後的に米價というものもここに成り立つ、ここで成り立ちました米價について我々司令部の了解を得まして、そうしてこの米價を國民に發表する、こういう段階であるのであります。従つて依然としてこの經過の途上において、私が米價は幾らであるかという金額をここに指示するということは、誤解も起り、却つて混亂を生ずるのであります。今やつております方式そのものについては一應簡單に申上げたいと思うのでありますが、これを以て御了承願いたいと思うのであります。
#20
○太田敏兄君 そういたしますと、パリテイー計算の輪廓は了承いたしましたが、例えば六十四品目の要素を組合せる場合に、各品目のウエートをどういうふうに見るか、或いは個々の價格をどう決めるか、具體的に例えばマル公で行くのか、實際價格を當嵌めるのかによつて非常に結果が變つて來ると思うるです。これも供出と一番大きな關係がありますが、これを事前に大臣から委員會に具體的に、こういう計算の内容でこうするのだとか、その場合に農相も言われましたが、實際はこうだか、決定に考慮を加えるというような、具體的の内容を委員會に御報告する御意思はあるかどうか伺いたい。
#21
○國務大臣(平野力三君) 固より米價が決定いたしました曉においては、その經過なり方法なりを申上げることは當然であり、發表いたしたいと私は考えております。ただ誠にどう申していいのでありますか、決定前にかような委員會或いはもつと正式な國會なら國會に諮つて、米價を決めるというような措置をとりました場合、事實上それが非常に混亂に陥つて、どうもさようなふうでは見通しはつかんというようなことでありますと、却つてここに米價を一つの政治上の問題に扱うというような形と相成りまするので、私個人といたしましては、甚だ不本意であります。一應物價廳の立場において米價を決めるという現在の立場を了承するより他にいたし方ないと思います。
#22
○松村眞一郎君 大臣の御説明を承つておりますと、主要食糧の確保ということが要點であるということを申されました。ところが、本法案を見ますと、そういうことがちつとも書いてない。第一條には「重要な農産物」とありますが、これは主要食糧に限らず、更に第三條におきましては「命令で定める農産物」とあります。今度は第四條を見ますと、第四條の一項によつて、「前條第一項の命令で定める農産物以外の農産物」ということになつて農産物は無限であります。こういうような非常に廣範圍な農産物について統制ができると書いて置きながら、これは別に國家統制でも何でもないからという御答辯である。これは法案自身が許しません。この法案は非常に廣汎な計畫を示しておる。大臣の御説明にありましたけれども、この理由書にはちつとも主要食糧の増産ということは書いてない。何といいましてもこれはいかに説明されても、法案そのものは全部の農産物に對して國家統制を加えるということを示しておるのであります。それでないならば第一條から米麥、甘藷、馬鈴薯とお書きになつてよかろうと思う。食糧管理法に書いてある食糧管理局というのは永續の機關であります。それもはつきりと米麥と甘藷、馬鈴薯というような工合に例示がしてあります。これは何ら例示がない。期限の方は一應はこういうような工合に、二十四年の四月三十一日と書いてありますけれども、いつでも延ばせるわけであります。たまたま期限だけを附けておいて、臨時という名前は附いておるけれども、法律に期間があるから、臨時であつて、農業生産の調整ということは全農業の生産調整になる、法律はそう書いてある。若し大臣の仰せられる通りであるならば、第一條は明確に改正されてよかろうと思う米麥、甘藷、馬鈴薯と……。ところが、これでもいかんのは米麥、甘藷、馬鈴薯の生産及び供出を確保するためには、これの邪魔になる生産物を作つてはいかんということが第四條に書いてある。「農産物以外の農産物」とは、主要食糧の邪魔になる農産物の生産をしてはいかんということになる。そうなると、この法律自身は、何と大臣が辯解されても、農産物全部に亙る統制法であるということは明瞭であると思う。そうでなければ第一條から政府が改正されなければならん。米麥、甘藷、馬鈴薯と入れたらよろしい。このイデオロギーはどうあろうと、全部の農産物に對して統制をすることになつておることは、法律自身が語つておる、大臣のお考えはどうでありますか。
 第二に生産を頻りにやかましくいつておりますけれども、第二條の配給數量について、行政廳のされた計畫だけははつきりしております。ただ配給を怠つた場合、官廳が怠る場合もありましよう。或いは肥料、資材ならば政府の命令した業者が怠ることもありましようが、そういうものについて何らの制裁規定がない。結局生産を頻りに統制することばかり考えておる。而も全農産物についての國家統制をやるということを考えて置いて、自分の職責の方の配給について、何ら責任の規定は書いてないということは不備と思いますが、配給數量に關する計畫齟齬とか、或いはそれに對して不行届であるとかいうことについては、どういう制裁をするつもりでありますか。
#23
○國務大臣(平野力三君) 第一條の重要農産物、これは御指摘のように米麥、甘藷、馬鈴薯等の主要食糧を指す意味であります。四條に至つてそれ以外のものも農業計畫の中に入れるということをいたしておりますのは、御指摘のようにこれ以外の農産物も、現在政府が食糧行政を行う上において必要な場合においては、當然計畫的農業生産の調整の範圍に入る、こういう御解釋についてはお説の通りであります。併しこれが私が先刻來申上げておる通りに、かようなことをいたしますること自體は、現段階において必要であるから行つておるのである、必要だからやつておるのであつて、これをいわゆる農村に向つて物を強制するとか、統制をするとかいうような思想から生れて、この法律を作つておるものではないのであるということについては、依然として私はその趣意を申上げたいと思います。併し御指摘のように、計畫的重要な生産の調整ということを、この法律の目的としておること自體がすでに統制經濟になるか、統制でないかと仰しやれば、固よりの統制をしておりますので、その區分においては統制をいたしておるということに申上げる以外にないのでありまするが、その統制をする根柢というものが、單なる統制のための統制ではなくして、必要であるからかような制度を設けておるという點において、飽くまで御了承を願つて置きたいと思います。
 それから農民が生産上において、間違いを起した場合においては、相當なる處罰規定があるが、政府みずからが配給等の面において、間違いがあつても處罰規定がない、これは誠に考え方として御尤もでありまして、我々としては今後配給その他の面において間違いのある場合におきましては、もとより相當責任を負わなければならん、かように考えておりますが、この法律自體の狙うところが農業生産物について重點を置いておるのでありまして、配給面における失態等について罰則規定を設けないところの趣意は、この法律の性質上それまでの必要はなかろう、かように考えたのでありますが、法律の明文には書いてありませんが、將來政府みずからの責任において配給等が甚だ失態を演じた場合等においては、何らかの處置を我々は講ずるということも考えて行きたい、かように思つております。
#24
○石川準吉君 大分時間も經つておりますが、簡單にお伺いいたします。第一點は、農林當局におきましては、曾て生産統制令を布きまして、ほぼ本法案と同じような統制をやつたのでありますが、その結果は當局が豫期するような成績でなかつたと思います。我々はこれにつきましては政府の政治力、それから農家經濟この二つの點から好ましからざる成績に終つたのじやないか、こう思つておりますが、今囘これをいたすにつきまして、前にやりました生産統制令の施行のよくなかつた原因に對する大臣の御見解、竝びに本法案の施行に對しまして、今後それらの缺陷をどういうふうに補つて行かれる方針であるか、これを第一點として伺つて置きたいと思います。
 第二點は、生産調整をやりますと、好むと好まざるとに拘りませず、農家といたしましては、自分の農家經濟上からこうしたいのだという生産計畫というものは、或る程度是正せざるを得ないと思います。從いまして地方的に考えますと、その結果としまして非常に價格經濟からいいまして有利になる地方もあれば、又非常に不利な地方も出て來ると思います。又同一町村にいたしましても、或る農家の經濟というものは非常に不利になり、或る農家の經濟は非常によくなるというふうに、農家が自分の農家經濟、いわゆる言換えますと、作物の價格經濟というものを基底として農家經濟ができないようなふうになることがあると思います。これらに對しまして、この法案を實施する上におきまして、何かそれに對する國家の救濟の方法をお考えになつておられるかどうか、先ず差當りこの二點についてお伺いいたします。
#25
○國務大臣(平野力三君) 私は、元來法律というものはその運用如何にあるということを考えておるのであります。從いまして、この農業生産調整法の條文の解繹のみから行けば、随分窮屈であり、無理であり、殊に法律的には相當例外的なものも條文に盛るのでありまして、そういう部面からこの法律を攻め立てれば、確かに農家の反感を買い、農民の氣分に副わないものが澤山あると私みずから了承しておるのであります。併し現段階において農家と雖もこの食糧危機に當面して、或る程度の責任の義務を果すべきである。又責任の義務を潔く果して、自己の職責はこれを全うしたいという氣分も農民には横溢いたして最近おると考えますので、私はかような農村における非常なよい面を、よくこれを農民に理解をして貰うと共に、又政府におきましても段々御指摘になりましたように、今後は政府みずからの失態、間違い等を飽くまで十分これを起さないように自省をいたしまして、この法律の文面は文面とし、又運用の面においては相當に彈力性を持つことによつて、供出増産の面を調整をして行きたい、かように私は考えておるのでありまして、現に割當制の問題及びその割當の基準をどこに置くかというような問題は、この法律以外の他の行政上の處置に關する問題でありますので、これらの點については私は農村の實状と農民心理というものをよく捉えましえ、この法律の運用については萬遺憾なきを期して行きたい、かように考えておるのであります。
 ちよつと第二點はよく分らなかつたのですが……。
#26
○石川準吉君 申上げます。第二點の方は、こういうような調整法が施行されますと、例えば農家の自主的な一つの計畫を基礎にいたしましても、やはり市町村調整委員會で農家の割當をするのでありますから、農家としましては自己の農家經濟、例えばこういうものを作つて自分の家計經濟をやつて行きたいという一つの、農家としましては価格經濟を基礎としたところの農家經濟を持つておるのであります。それらを是正して、そして割當てられましたところの作物を作らなければならん。その場合においては地方的に非常ないわゆる得する者と損する者ができて來る。同一地方についても、各農家についていえばそういう部面が出て來るだろうと思います。併しながらこの調整の問題というものは、先程大臣の御説明にありましたように、現下の食糧事情からどうしてもやらなければならんということであれば、それに對しましてそういうような不当に損失を被るような、いわゆる農家の經濟の上において不當な損失を被る者については、何らか國家としては救濟の方法を考える必要があるのでないか。これに對してはどういうお考えでありますか、こういうことであります。
#27
○國務大臣(平野力三君) 誠に御尤もでありますが、大體の計畫として農家にさような損害、迷惑を及ぼさないような形を採つて行きたい、こう思うのであります。固より農家の方において儲かれば勝手なものを作るというようなことについてやられる場合においては、これは相當農家の收入を減殺するということになりましようが、そういう農業をこの際やろうという農家自體は、これはいわゆる農民としては今日において幾らか脱線をしておるということになりますので、大體從來の慣例によつて適地適作主義によつてやつております農家の實情については、それほど損害を被らせないようにこの法律を運用し得ると私は見込んでおります。
#28
○石川準吉君 先程申上げた第一點で、曾つて行なつた生産統制の失敗というものは、我々の見るところによりますと、やはり農家經濟の維持ということが非常に困難なことになした、その結果失敗を來したのでないかと思うのであります。若し大臣のおつしやるような意味で行くならば、農産物の價格と先程言われましたが、これが他の諸物價との均衡が十分取れなければ、その議論は成り立たんと思います。
#29
○國務大臣(平野力三君) 從いまして、農産物價というものについても、この生産調整法を行う上においては、米價を基準として、その基準にならうというように整頓して行きたい、かように思つております。
#30
○岡村文四郎君 先程お尋ねしましたが、大臣の御答辯がなかつたのですが、松村さんの御質問でそうかなあとも感じておりますが、食糧作物以外に適用いたしませんかどうか。食糧作物以外にはこの調整法を適用しないか。
 それからちよつと分らんのですが、この「農産物以外の農産物」というのは何か。それを一つ。
 それから一體段別をはつきり握ればそれで十分に事が分るのであつて、臨時農業生産調整法というものを何ぼ出しても、これが増産するわけでない。段別というものが分れば、專門ですから何ぼ出るか分る、というのでこういうものを出したように思うのですが、それで適地適作主義で行くわけでありますが、水田では米を作ることが本商賣であつて、畑作物のみが適地適作で行かないのか。米、麥、甘藷、馬鈴薯、これを割當てて行くということでありますが、段別としてしつかり握ることができなくて、こういう面倒なことをやつて、百姓から反感を持たれるようなことは、何とか一つ考えて農林大臣にやつて貰うことを我々は非常に希望するのですが、これは大變下手なやり方で、これでは非常に困ると思いますから、一つお考えを願いたい。
#31
○國務大臣(平野力三君) この「農産物以外の農産物」というのは、前條の第一項の「命令で定める農産物」以外の農産物であります。從つて重要な農産物以外の農産物、こういうことになります。從つて米、麥、甘藷以外の農産物、具體的には雜穀、豆、こういうものがこれに含まれるのでないか。從つてここに規定いたしますものを廣義に解釋すれば、食物以外の作物をも含むということにも解釋はできます。大體において主要食物に附随する作物以外にはこの法律を適用する必要は當分なからう、かように考えております。
 それから段別を握ればすべてよいのではないかという御議論でありますが、實際はそう参りませんので、現にやつて見ますると、この前の麥の場合におきましても、報告を受けておりまするところの段別と實際の段別では、二十萬町歩くらいの差異を生じております。又政府が配給をいたしまする肥料の面からの段別と、今度は收穫を得た場合における收穫段別というものには相當の喰違いがありまして、これ亦一割五分くらいの程度は明らかに段別に差異を生じて來るのであります。從いまして、この際の食糧行政といたしましては、單に段別さえ握ればよいということでは満足できません。現に麥におきましても、だんだん麥を止めてそら豆を作るということになれば、そのそら豆の段別というものがどういうふうになるかというところまでやはり調査をしなければ、食糧行政はうまくいかんということになりますので、ここでやはりかような農業生産調整法によつて、生産と供出、こういう面における全般的なる或る程度の差配をしなければならん、かように考えておりますので、御了承願いたいと思います。
#32
○島村軍次君 大分重要な御質疑があつたようでありますが、根本的の問題といたしまして、尚疑問が取り去らない點が相當あると思うのであります。それは重要なる農産物の生産というのは、米麥、馬鈴薯のごとき主要食糧であるということは分りますが、その考え方であるならば、むしろそういうことをはつきり謳われた方が適當じやないかと思う。
 それから第二條におきまして「農業計畫とは」という言葉の中には、勿論作付面積、生産數量、供出數量がありますが、裏付けすべき「肥料その他の資材で命令で定めるものの配給數量について」、こうあります。そうして「行政廳の定める計畫をいう。」とあります。だから農業計畫というものの中には、生産及び配給についてのものを全部含んでおる意味と解釋していいと思います。その點はどうですか。果してそういうことになりますれば、先程松村委員及び岡村委員からもお話になりましたように、一方的に生産計畫についてだけ、この業者の定める生産計畫についてだけの罰則でありますか。第七條の三項の規定に違反云々のことは、これは農業者に對する罰則のようでありますが、この點についても、罰則の點が片手落のような感じがいたしますので、一應その点の御見解を承つて置きたいと思います。
 それから大臣は、堂々と納得の行くということを數囘お話になつておりますが、勿論國家の或る程度の計畫に國民が協力することは當然でありまするが、この生産調整法というものを逆に下から持つて行つて、そうして市町村で農業者から出させる、そうしてそれを市町村で決めて行く、市町村で決めたものを府縣で決めて行く、府縣で決めたものを農林大臣がそれを全國的に睨んで決めると、下からの段階で行けるという法律で、そうして国家の考えとそれを調整する法律の形に取るべきが、私はこの納得の行くという大臣の考え方から行けば當然じやないかと思うのでありまするが、農家に對しては、頭から民主的な決議機關を作り、そこで調整をして行くんだと言つておるが、併し事實はこれは役人の割當なんであります。押付けであります。而して價格の面においても、これは物價廳が決める。物價廳の役人も、これは私は萬能ではないと思う。勿論政治的にいえば、米の價格の問題でも、これは本會議において確か和田安本長官か、或いは西尾官房長官だつたと思いますが、東浦議員の質問に對しては、將來物價の決定に當つても國會を中心とするという考えを持つておるという御答辯があつたというのです。それに對して只今の農林大臣の御答辯は、これはいろいろ政治的な情勢があつて、どうも不安のような、政治に利用されるというような弊害があるのじやないか、そのために物價廳の役人に任すのだというような御答辯のように拜聽できるのでありますが、これは誠に私怪しからんことだと思うのでありまして、物價廳の役人のやられたことを一應國會へ、或いは秘密會でもよろしい、價格の決定においても、一応は決定前においてお諮りになるということが當然じやないかと思う。殊に農産物及び米價の問題は、すべての基本になることはよく分つておりますが、先程の委員會において、このパリテイー計算の方式について、實際の原案をお立てになつた方の意見を聞きますというと、パリテイーのいわゆるウエイトの問題は勿論のこと、それに加うるべき六十數品目以外に、例えば牛の勞力費、この頃段當牛耕をやるには五百圓掛かります。それはよく大臣も御存じであると思います。人を頼めば百五十円くらい掛かる。かような勞力費というものの全くこのパリテイー計算というものに加味せられないということは、百姓はよく知つておる。そうして一面生産調整法というもので、調整法が出ますと同時一番我々の耳に悲難囂囂たるものがあつたのは、やはり昔の藩政時代と同じように、言ふことを聞かねば直ぐ罰則だというようなことが、非常に農家の強い意見になつております。それに對して行政の妙味を發揮すればこの生産調整はうまく行くと言われますけれあも、戰時中あの統制を強化した場合においても、石川委員の言われたように、生産調整令というものは殆ど失敗に歸した事實があるわけであります。そこで末端機構において、この法律が先程の疑問が解決するにいたしましても、調整法を本當によく徹底させ、而してこの作付なり、或いはここに上つておる各般の事項を、第五條の第二項の各號の關係をうまく調整するということは、農家自身の勞力の按配その他の點からいつても、非常に重要な影響を受けることになるのでありまして、これらに對して、この調整法實施に當つて、どれだけの豫算を以て、どういう機構の下に實施をされんとしておりますか、一應その點も承つて見たいと思います。
#33
○國務大臣(平野力三君) 物の値段を勝手に決める。又勝手な數量を寄こせ、こういう面から見ますならば、誠に殘酷なる一つのやり方であるということになろうと思います。又このことについては私自身よくその適當ならざることを知つておるのであります。併しながら現在日本の食糧問題を當面打開する上において、値段も御自由、お出しになるのも御自由、こういうことをいうたら元も子もなく、食糧問題は實際運用できない、こういうことになりますので、勢いここに政府が値段を決め又必要といたしまするところの數量というものを農家にお願いをする、こういうことになつて參りますることは、これは當然のことでありまして、殊に輸入食糧を懇請いたしまする立場においては、日本政府みづからこれだけの強制を農家に向つて要求いたしますることは、これは當然のこととなつて參るのであります。從つて私は農民心理をよく知らないわけではありませんが、食糧管理の任にあたる者といたしますしては、誰もこれは一定の値段において一定の數量を農家に要求する、而してそれを基準として輸入食糧を又懇請する、かくして綜合されたものを國民に配給することによつてこの危機を突破する、これは絶對必要なることでありますので、この意味において、この法案に盛つておりますところの考え方は御了承願いたいと思うのであります。
 次に米價の決定を國會においてこれを諮り、又米價のみならずすべての物價をすべて國會に設けられておるところの委員會の了承を得て行く、私はこれは少くとも國會の自由討議等においてかような問題を相當やつて頂いて、それが物價廳にも反映し、又それが政府においても参考にして行くというようなことは、私個人といたしましては全く望ましいことである、そうして頂きたいと自分は思うておるのであります。併し政府といたしましては、これ又現實の問題として米價は國會に相談しなければならない、國會の議決を經なければ米價は決められないということであつては、恐らく現在のこの食糧事情を切抜けるということについては、現實問題として容易ならざる問題が起つて來るであろう、かように考えざるを得ないのであります。理論として、民主主義であるから飽くまで國會にすべての問題を相談申上げて行くということは當然のことであつて、これに反對すべき論據はないけれども、さて今の米價を實際國會に相談して、國會の議決を經てその米價が決まるかといえば、時にはさよう參らんというような事情のある内容についても、御了承願いたいと思うのであります。島村委員のおつしやることは、すべてよく了承するのでありますが、要は、私はこの農業生産調整法は、假に戰時中生産統制令が失敗しておつたから、これも失敗するのではないかというような、單なる經過的なことによつて規定されるのでなくして、私自身として飽くまでこの臨時農業生産調整法を巧みに農村の實情に即するように運用することによつて、現在の食糧危機を突破しない、かように存じておりますので、この點又御了承願いたいと思います。
#34
○委員長(楠見義男君) ちよつとまだ島村さんの御質問に對する答辯にも漏れておるところがありますが、農林大臣は水害關係でGHQの方に行かれる豫定になつておりまして、三時からということでございましたが、時間一杯經つたようなふうでありますので、本日はこの程度で散會いたします。
   午後三時四分散會
 出席者は左の通り。
   委員長     楠見 義男君
   理事
           木下 源吾君
           森田 豊壽君
           高橋  啓君
   委員
           太田 敏兄君
           羽生 三七君
           北村 一男君
           柴田 政次君
           岩木 哲夫君
           木檜三四郎君
           小杉 繁安君
           竹中 七郎君
           石川 準吉君
           宇都宮 登君
           岡村文四郎君
           島村 軍次君
           徳川 宗敬君
           藤野 繁雄君
           松村眞一郎君
           山崎  恒君
           廣瀬與兵衞君
  國務大臣
   農 林 大 臣 平野 力三君
ソース: 国立国会図書館
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