くにさくロゴ
1947/10/02 第1回国会 参議院 参議院会議録情報 第001回国会 農林委員会 第20号
姉妹サイト
 
1947/10/02 第1回国会 参議院

参議院会議録情報 第001回国会 農林委員会 第20号

#1
第001回国会 農林委員会 第20号
  付託事件
○農地調整法の改正に関する陳情(第
 一号)
○物價是正及び肥料、作業衣、ゴム底
 足袋配給に関する陳情(第十号)
○農業保險法の改正に関する陳情(第
 十三号)
○農業復興運動に関する陳情(第十四
 号)
○水利組合費賦課に関する陳情(第二
 十二号)
○食料品配給公團法案(内閣送付)
○油糧配給公團法案(内閣送付)
○農業会の農業技術者給與國庫補助に
 関する陳情(第四十六号)
○農業会の農業技術者給與國庫補助に
 関する陳情(第五十一号)
○農業会の農業技術者給與國庫補助に
 関する陳情(第五十九号)
○農業会の農業技術者給與國庫補助に
 関する陳情(第六十一号)
○薪炭生産のあい路打開に関する陳情
 (第六十二号)
○茶業振興に関する陳情(第六十三
 号)
○農業用電力料金の引下げ及び換地処
 分経費の全額國庫助成等に関する陳
 情(第六十七号)
○東北及び新潟地方の特殊事情に立脚
 せる食糧供出対策改善に関する陳情
 (第六十八号)
○農林省所管の治山治水事業の一部移
 管反対に関する陳情(第七十号)
○農地委員会の経費を全額國庫負担と
 することに関する陳情(第七十三
 号)
○林道飯田、赤石線開設に関する請願
 (第十七号)
○主食需給計画の根本的改革に関する
 陳情(第七十四号)
○養蚕協同組合法の制定に関する陳情
 (第七十六号)
○農業会の農業技術者給與國庫補助に
 関する陳情(第七十七号)
○農業会の農業技術者給與を國庫負担
 とすることに関する陳情(第八十
 号)
○農業会の農業技術者給與國庫補助に
 関する陳情(第八十四号)
○愛知縣豊川沿岸農業水利事業経費を
 國庫負担とすることに関する陳情
 (第八十九号)
○農業会の農業技術者給與國庫補助に
 関する陳情(第九十一号)
○農業会の農業技術者給與國庫補助に
 関する陳情(第九十七号)
○農作物の「栄養週期栽培法」の普及
 実施に関する陳情(第百二号)
○農業会の農業技術者給與國庫補助に
 関する陳情(第百五号)
○農業会の農業技術者給與國庫補助に
 関する陳情(第百九号)
○蚕繭の増産に関する陳情(第百十五
 号)
○養蚕協同組合法の制定に関する陳情
 (第百十六号)
○農業会の農業技術者給與國庫補助に
 関する陳情(第百十九号)
○飼料配給公團法案(内閣送付)
○農業協同組合法案(内閣送付)
○農業協同組合法の制定に伴う農業團
 体の整理に関する法律案(内閣送
 付)
○函館営林局の管轄区域変更に関する
 請願(第五十四号)
○藥用人参試驗場設置に関する請願
 (第六十六号)
○米價改訂に関する陳情(第百二十八
 号)
○民有林野制度の確立に関する陳情
 (第百三十号)
○養蚕協同組合法の制定に関する陳情
 (第百三十一号)
○農作物の「栄養週期栽培法」の普及
 実施に関する陳情(第百三十三号)
○開拓者資金融通に関する陳情(第百
 三十八号)
○米穀供出に対する報奬制度の廃止並
 びに肥料の配給に関する陳情(第百
 四十九号)
○農業会の農業技術者給與國庫補助に
 関する陳情(第百五十号)
○遅配主食の價格に関する陳情(第百
 五十二号)
○岩手縣下の三農業用水改良事業を國
 営とすることに関する請願(第八十
 八号)
○福島縣安達郡大山村内の開墾事業を
 中止することに関する請願(第九十
 五号)
○北海道てん菜糖業の保護政策確立に
 関する請願(第百二号)
○薪炭の價格に関する陳情(第百六十
 二号)
○農業会の農業技術者給與國庫補助に
 関する陳情(第百六十三号)
○食料品配給公團法に関する陳情(第
 百七十六号)
○農業会の農業技術者給與國庫補助に
 関する陳情(第百八十七号)
○農作物の「栄養週期栽培法」の普及
 実施に関する陳情(第百八十八号)
○農作物の「栄養週期栽培法」の普及
 実施に関する陳情(第百九十二号)
○市営競馬の施行に関する陳情(第二
 百二号)
○北海道開拓事業に関する陳情(第二
 百七号)
○岩手山ろく國営開発事業に関する陳
 情(第二百九号)
○農作物の「栄養週期栽培法」の普及
 実施に関する陳情(第二百十三号)
○農業会の農業技術者給與國庫補助に
 関する陳情(第二百二十号)
○未墾地の開拓事業に関する陳情(第
 百二十二号)
○群馬縣古馬牧村外三ケ村のかん漑用
 水路に関する請願(第百二十一号)
○蒜山演習地の返還並びに開拓計画変
 更に関する請願(第百三十五号)
○食糧配給確保に関する陳情(第二百
 二十六号)
○林業振興対策に関する陳情(第二百
 二十七号)
○農業会の農業技術者給與國庫補助に
 関する陳情(第二百二十八号)
○農業会の農業技術者給與國庫補助に
 関する陳情(第二百三十一号)
○水利組合法の改正及び水利事業費國
 庫補助に関する陳情(第二百三十二
 号)
○農作物の「栄養週期栽培法」の普及
 実施に関する陳情(第二百三十五
 号)
○米麦需給計画の根本方針に関する陳
 情(第二百三十六号)
○農業保險法制定に関する陳情(第二
 百四十四号)
○農業会の農業技術者給與國庫補助に
 関する陳情(第二百四十五号)
○岩手山ろく國営開発事業に関する陳
 情(第二百四十八号)
○薪炭需給調節特別会計法を改正する
 法律案(内閣送付)
○未利用地耕作利用臨時措置法案(内
 閣送付)
○青果物の統制撤廃に関する請願(第
 百七十六号)
○開拓対策に関する請願(第百七十七
 号)
○旧軍馬補充部十勝支部用地山林拂下
 げに関する請願(第百八十三号)
○十勝種馬育成所用地開放に関する請
 願(第百八十五号)
○昭和二十二年度産米價格並びに供出
 関する陳情(第二百六十二号)
○農作物の「栄養週期栽培法」の普及
 の実施に関する陳情(第二百六十七
 号)
○農業会の農業技術者給與國庫補助に
 関する陳情(第二百六十八号)
○農作物の「栄養週期栽培法」の普及
 実施に関する陳情(第二百七十一
 号)
○自作農創設特別措置法及び同法附属
 法規の一部を改正することに関する
 陳情(第二百八十号)
○勤労大衆の食糧危機突破対策に関す
 る陳情(第二百八十二号)
○日本競馬会に関する陳情(第二百八
 十三号)
○農村指導農場開設に関する陳情(第
 二百九十四号)
○昭和二十二年度産米價格並びに供出
 に関する陳情(第二百九十五号)
○農作物の「栄養週期栽培法」の普及
 実施に関する陳情(第二百九十九
 号)
○農業会の農業技術者給與國庫補助に
 関する陳情(第三百号)
○農地開発営團の行う農地開発事業を
 政府において引継いだ場合の措置に
 関する法律案(内閣提出)
○臨時農業調整法案(内閣送付)
○重要肥料統制法等を廃止する法律案
 (内閣提出、衆議院送付)
○小阪部川貯水池改良事業を國営とす
 ることに関する請願(第二百七号)
○旭川合同用水工事促進等に関する請
 願(第二百九号)
○農地改革促進に関する請願(第二百
 十三号)
○東京都内の食糧配給に関する陳情
 (第三百七号)
○農業会の農業技術者給與國庫補助に
 関する陳情(第三百十三号)
○種卵及びひなの價格撤廃並びに養鶏
 用飼料増配に関する陳情(第三百十
 八号)
○農業会の農業技術者給與國庫補助に
 関する陳情(第三百十九号)
○農業会の農業技術者給與國庫補加に
 関する陳情(第三百二十五号)
○開拓融資金増額に関する陳情(第三
 百三十号)
○農地法による山林開墾行過是正に関
 する陳情(第三百三十二号)
○農作物の「栄養週期栽培法」の普及
 実施に関する陳情(第三百三十五
 号)
○千葉縣長生郡茂原乾繭所の設備を縣
 蚕糸業会に還元することに関する陳
 情(第三百三十七号)
○農業協同組合法案に関する陳情(第
 三百四十二号)
○三方原揚水事業に関する陳情(第三
 百四十五号)
○富士山ろく開発農業用水事業促進に
 関する陳情(第三百四十九号)
○こうじ類の一般製造に関する請願
 (第三百四十六号)
○茨城縣下北浦干拓事業促進に関する
 請願(第二百四十八号)
○公團法案の取扱いに関する小委員設
 置に関する件
  ―――――――――――――
昭和二十二年十月二日(木曜日)
   午前十時二十五分開会
  本日の会議に付した事件
○重要肥料業統制法を廃止する法律案
○知事会議における米の供出割当会議
 の経過報告に関する件
○水害地方における食糧対策に関する
 件
○公團法案の取扱いに関する小委員設
 置に関する件
  ―――――――――――――
#2
○委員長(楠見義男君) これより委員会を開催いたします。本日は重要肥料業統制法等を廃止する法律案について審議をいたしたいと思います。
 尚最初に申上げておきますが、この法案は極めて簡單な法案でありまするので、できるだけ早く質疑を終了いたしたいと思つておりますが、時間が余りましたら、前会に引続いて臨時農業生産調整法の質疑を続行いたしたいと思います。それから提案理由の御説明が済みましたら、後で農林大臣が、実は新聞その他で御承知のように、最近の供出の問題、その後の状況等について当参議院の本会議で御説明せられるように発言を要求せられておつたのでありますが、参議院の方では本会議がございませんので、当農林委員会でその事情を御説明いたしたいというお申出でございますので、お伺いいたすことにいたします。
 それから大臣の出席要求で、北村さんから総理大臣の御出席の要求がございましたが、総理大臣は本日どうしても他の用事があつて出席できないそうでありますから、農林大臣でよければ農林大臣にお願いいたしたいと思います。それから板野さんから農林大臣と厚生大臣に対する緊急の御質問があるということでございました。農林大臣はお見えになつておりますが、厚生大臣は今衆議院の方の委員会に出ておられまして、少しでもいいから、こちらへ來るように連絡を取つております。大臣どうしても來られなければ政務次官が來るそうでありますが、厚生大臣或いは厚生政務次官がお見えになつた時に一つ御質疑を願います。
 それではこれから重要肥料業統制法等を廃止する法律案について提案理由を伺います。
#3
○國務大臣(平野力三君) 重要肥料業統制法及び輸出農産物株式会社法を廃止する法律案につきまして、その提案の理由を申上げたいと思います。重要肥料業統制法は、肥料の需給の円滑及び價格の公正を図り、肥料製造業及び農業経営の改善発達を期することを目的として昭和十一年に制定いたしまして、硫酸アンモニア、石炭窒素、過燐酸石灰の製造業者に対しまして、各製造業組合を設立せしめ、これらの組合に肥料の製造総数量及び各組合員に対するその割当の決定、肥料の販賣價格の決定等の事業をさせておりましたが、後に情勢の変化と共に、これが決定は政府が行うことになりましたので、組合は政府の決定に参画するのみで、次第に本來の諸機能を喪失するに至りました。而して終戰後に至りまして、産業における独占禁止の方針が漸次明確になつて來ましたので、本年三月三十一日を以て各組合は解散いたしまして、本法はその存在理由を失いますと共に、私的独占禁止及び公正取引の確保に関する法律の趣旨に反しますので、ここに廃止する次第であります。
 日本輸出農産物株式会社法は昭和十五年に制定いたしまして、半額政府出資の日本輸出農産物株式会社を設立し、除虫菊、薄荷について一元的な集荷及び配給を行なつて参りましたが、同じく私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の趣旨に反しますから、本法を廃止する次第であります。
 以上が本法案の主要な内容でありますが、何卒愼重御審議の上速かに御協賛あらんことを切望する次第であります。
#4
○委員長(楠見義男君) それではこれから供出問題について御説明をお伺いすることにいたします。
#5
○國務大臣(平野力三君) 只今委員長からお話を願いましたように、実は本日参議院の本会議におきまして、現在の供出問題に関する最近の経過の模様を御報告申上げまして御協力を得たいと、かように思つておつたのでありますが、本日の参議院の本会議が開会されませんので、特に関係深き本日のこの農林委員会の席上を拜借いたしまして、最近の状況を報告申上げて御協力を得たい、かように思うのであります。新聞紙によつて大体御了解を願つておると思つておるのでありますが、割当会議は九月の十九日及び二十七日の両日、全國の府縣知事を二つに分けまして、割当会議を開催いたしまして尚個別的には二十日以來最近に至るまで連日個別折衝を開始いたしておつたのであります。ところが御覧の通り今年の諸般の水害、旱害或いは農業生産の統計等の問題を中心といたしまして、この割当会議の模樣が予定通り進行いたさない状況にあつたのであります。固よりこの割当が長引いておりますのは、各府縣の事情を極めて詳細に我々が檢討をいたしておりましたこと、及び各府縣から上京されておりますところの知事以外の食糧調整委員の諸君が地方事情に対して非常に長時間に亘る発言がありまするために、つい一日に予定いたしておりまするところの数府縣の協議が、一縣或いは二縣の程度に止まるようなことになりまして、新聞報道のように割当会議が非常に、遅々として進まないというような状況に報道をされておつたのであります。然るところ、二十九日に至りまして、マッカーサー司令部の天然資源部長シェンク氏より農林大臣に呼出しがありまして、私は同日午後三時シェンク氏に会見をいたしたのであります。この時シェンク氏より私に申し渡されました覚書があるのであります。この覚書は極めて日本の食糧問題に対して重大なる問題でありますので、私は直ちにこれを閣議に報告をいたしまして、これに対する相当なる方法を講じ、且つ昨日は在京の知事会議を招集をいたしまして、この覚書を傳達し、尚來る五日には全國の府縣知事を招集をいたしまして、この内容を傳えまして、日本の供出問題に関する新らしいところの出発をしなければならないということになりましたので、この際この委員会にこの内容を報告いたしまして、皆さんの御了解と理解を得たい。かように思つておるのであります。
 シェンク氏から農林大臣に渡されました覚書は大体五つの項目から成つておるのでありまして、その第一点は、現在農林省が知事との間に行なつておるところの割当会議に、政府提案の割当量というものを單に削減するところの会議である。而してかような会議が遅々として進んでおらないという状況は、司令部においては非常にこれを重大視しておる、不満足である、こういう意思表示であります。
 第二点は、すでに政府が割当を決定して了解済みになつておる福井縣、石川縣、富山縣、青森縣、山形縣、群馬縣、岐阜縣、京都府、この八府縣の模樣を見るのに、農林省が割当てた石数は六百十三万八千三百石である、ところが割当会議において決定した数字は五百四十八万四千二百石である、この六十五万四千百石の削減ということは原案の一〇%の削減である、かような比率を以て割当会議が終ると仮定するならば、二千八百四十四万石の割当量となるのであつて、かような下廻りの割当というものについては了承できない、これが第二点であります。
 第三点といたしましては、新潟、長野、滋賀、愛知等の数縣について、すでにこれらの縣は協議調わずという理由の下に東京を離れて國へ帰つておる。こういうような状況は誠に遺憾である。これが第三。
 第四点といたしまして、かようなる食糧割当会議というものは、日本國が食糧不足國であつて、國際緊急食糧委員会に対して輸入を墾請しておるところの國としては、この態度は容認できない。日本は食糧不足国として自國民に食糧を與うるために眞に最善の努力を日本の國内において盡しつつあるということが証明されなければならない。若し供出知事会議がかように遅々として進まないような状況であつては、日本は世界に対して非常なる不利益なる輿論の上に立つて、今後日本が世界から割当てられるところの輸入食糧というものに対して甚だしく不利益を招くことは極めて明らかである。こういう結論を判定されたのであります。
 從いまして、最後の第五の結論として、農林大臣は十月七日までに米、雜穀の共出割当三千五十五万石を下らざる割当量というものを確立するに必要なる措置を講ずベし、こういう覚書を貰つたのであります。從いまして、私といたしましては昨日これを知事会議に報告し、尚五日には全國の知事会議を招集をいたしまして、これに対する対策を立てつつある状況でありますが、当委員会に御協力願いたいと思いますることは、かようなる状況になりましたので、日本政府としては所定の三千五十五万石というものをこの十月の七日までにはどうしても府縣に下ろさなければならん。從つて今日各府縣の水害の状況、或いは旱魃の状況等に関しましては、これを逐一我々は縣からの報告を受けまして、來る五日までにこの三千五十五万石という数字は如何ともいたし方がないのでありますが、府縣々々の割当というものは公平に割当て、或る縣が損をするということがないように割当を行いまして、五日の全國の知事会議においてはこれを決定し、これを司令部に報告をいたしまして、日本は食糧問題について自國内においてかようなる努力を拂つておるということを示さなければならないと思つておるのであります。この事たるや見ようによりますると、いわゆる天降り供出である。天降り割当であるという農村においては批評も起り得るわけでありまして、仮にこれを割当てましても、今後百パーセント供出を得るには相当に盡力をしなければなりません。この盡力をいたしますには、政府たる我々が固より全力を挙げてこの趣旨を徹底することは言うまでもないことでありまするが、参議院及び衆議院の、特に農林関係の皆さんには我々の立場をよく御理解を願いまして、これに対するところの御協力を願いたい、かように考えまして今日今までの経過を簡單に申上げまして、あなた方の御参考に供し、且つは今後の御協力を墾請する次第であります。以上であります。
#6
○委員長(楠見義男君) ちよつとお諮りいたしますが、只今の御報告を得ましたことに付ての御質疑、或いは本日の議題になつておりまする法案の御質疑もあると思いますが、その前に、最初に申上げましたように、板野さんから両大臣に対する緊急質問がざごいまして、厚生大臣は非常に急いでおられますので、便宜その方を先にいたします。それから質疑に移りたい。かように思つておりますから何卒御了承願います。
#7
○板野勝次君 先般厚生大臣と農林大臣に出席して頂いてお尋ねしようと思つておりましたところが、両政務次官がおいでになつて今度の罹災者に対する食糧の無償配給について質疑いたしましたところ、厚生政務次官は七日乃至九日間は無償であるが、その他については無償配給はできない。生活救護法による外ないということであり、尚市川市方面では食糧の無償配給は二十二日を以て打切られて、すでにパン一ケに対して二円ずつ取つております。これは不都合だから返還する意思があるかないかという意味のことを尋ねたのでありますが、厚生政務次官は一たん若し有償配給をしておつても返還の方法はしないつもりだ。こういうことであつたと思うのでありますが、これに対して農林政務次官は、現在のような混乱した際であるから、相当期間は食糧の無償配給をやるべきである。若しも有償で取つておるなら拂戻す。こういう二つの違つた答弁を得たのですが、これでは罹災者は、本当に今度の水害が天災のみではなくして、政府の責任の所在が明らかにされなければならない点等よりいたしましても、或る一定期間は直ちに生活救護法によるというよりも、混乱した地域に対しては無償の配給をすることが当然だろうと思うのです。昨日も現地に参つて見たのでございますが、松戸方面の小学校に避難しておりまする多数の罹災者は、毎日出掛けて行つて自分の家を洗い、又幾分侵水しておる家を乾燥させておる、衣料等も黴が生えかかつておるのを洗濯し、干しておるという場合、長い間働きにも出ていないから、今直ちに有償にされたら困るという現状でありましたし、金町附近の小学校に参りましても同樣な罹災者の意見であつたのであります。ところが昨日の新聞によりまするというと、東京都はすでに本日を以て学校全部の明け渡しを要求して、罹災者の立退きは今日を以て、明日から全部立退いてしまえということであり、明日から又食糧もすべて有償になる。これでは現在まだ浸水しておる地域の罹災者は、その日の生活にも窮すると思う。東京都が発表しておりまする本日を限つて明日から罹災者を学校から全部立退かせるということと、明日から全部食糧は有償にするとこういう考えは厚生大臣から出た指示であるかどうかという点をお伺いしたいのと、同時に農林政務次官の相当期間無償にするという農林当局の見解と厚生省の七日乃至九日は無償で出すけれども、それ以後は生活救護法による外ないという、この喰い違いに対する農林大臣の御見解と、厚生大臣の御見解とを承わりたいと存ずるのであります。これが第二点でございます。
 第三に、これも併せて厚生大臣にこの機会においてお尋ねして置きたいのですが、現地におきまする医療施設等につきましても、相当罹災者の方において不安を持つておりまするので、相当期間無料診療所のようなものを開設して、罹災者に対する便に供するという御意思があるかどうか、この点を承わりたいと存ずるのであります。
#8
○國務大臣(平野力三君) 水害地に対する食糧の無償特配、こういう問題は農林省の所管に関する限りは、食糧管理特別会計に制約されておりますので無償ということはできません。從いまして農林省としては、無償ということで扱うわけには参らんのでありますが、問題は農林省が水害地に放出いたしまする食糧を、厚生省なり或いは地方長官が水害に関する救助に、金に換えましてそれを無償で配給するということは当然あり得るのであります。このことが混同いたしまして、只今仰せになつたのでなかろうかと思います。從つたその場合は無償で水害地の人は貰うことができる。農林省所管といたしましては、食糧特別会計の範囲内において、農林省が無償でやるということはないとこういうように思います。
#9
○國務大臣(一松定吉君) 只今の農林大臣の御答弁によりまして、どの程度が有償であり、どの程度が無償であるということの限界はすでに御了解のことであろうと思いますが、ただ東京都の取りましたいわゆる明日からもう食糧は有償にするのだ、こういう態度は、厚生大臣の指示に基ずくものなりや否や、こういうお尋ねであつたようでありまするが、厚生大臣の一般的指示といたしましては、地方々々の現状に即しまして、もうこの程度であるならば、非常災害救助という矩を越えなくてもよろしい。これならば通常に復してもよろしいということの見境いがついたならば、その時からはいわゆる有償に復するがよろしい。併しそれまでは勿論非常災害時における救助の目的を達成するためには、やはりこれを無償で配給してやることが正しいのである。こういうような指示をしておりまして、そのいわゆる判断は地方長官に任しておるのであります。でございますから東京都長官が今日までは無料で配るけれども、明日から有料にするという見解を発表したといたしましたならば、それは今申上げたような見解に基ずいた決定であろうと思うのであります。御承知の通りこの災害救助というようなことは、これは非常特別措置でありまするから、そういう際には貧富を問いませず、資産の有る無いに拘わらず、すべての者に無料でこれを配給して、救助の目的を達成するというのが建前であります。でございますからもう今日の程度に行けば、非常特別措置の方法を取らなくてもいわゆる資産のある者に対しては有料、資産のない者に対しては無料というような区別を付けて、そうして救助の目的を達成するというのが正しいやり方でありますから、おそらく東京都廳もそういうような意味においてやつたのでありまして、明日から、いわゆる生活保護法の規定によつて救助しなければならない者にまで有料でなければ食糧を配給しないという趣旨ではないのでありまして、非常措置の取扱いを今日までして明日からは止めると、それは具体的に言えばどうであるかというと、資産のある者に対して、即ち生活保護法の規定によつて救助せんでよろしい者に対しては有償で上げる。そうじやない者は生活保護法の規定によつて保護して行く、こういう趣旨であると私は考えておりますから、さよう御了承賜わりたいのであります。それから七日乃至九日は無償である云々、その後は有償だと厚生政務次官が答えたという趣旨は、どういう意味でそういう七日とか九日とかという、日限を切つたのか分りませんが、恐らくそれは水も引いて非常特別措置を取らなくてもいい状態になるのが、今後七日若しくは九日経てば、そういうことになるのだからという趣旨であつたかと思いますが、今私が申上げましたように、非常措置を取る必要がなくなつたということを以て期間を区画しなければならない。そのことは各地方廳で具体的に決まるのでありますから、この土地では七日、この土地では九日と決めましても、それがやはり非常措置の救済をしなければならない状態が続いておれば、その期間を切ることはないということによつて、御了承を賜われたいと思うのであります。
 それから学校の立退きでありますが、これもやはり同じで、つまり浸水しておるがために、その地方に住んでおる住民が避難しなければならない。幸いにこの学校は土地が高く水も入つていないからというような趣旨の下に学校に避難しておつたところが、段々水が引いた、そこで自分の宅に帰つたという者で、その学校をどしどし引揚げて参る者がある。そうしますと学校は段々空いて参ります。又引揚げることのできない者がある。そういうように引揚げることのできない者に対して。もう学校は明日限りお前方は全部引揚げて学校を空けなければならん、そういうようなことはいわゆる非常措置の應急対策としての趣旨に適わないものであります。自分から自分の家屋はもす水浸りが済んだこれから家に帰えろうといつて帰える。そこで学校が空いたということになれば、今まで水害に罹かつていなかつた学校で、而ももう今日では、授業の始まつておる学校、そういうところに水害地の人々が避難しておる時に、自分の地域に近い所に引揚げて、段々引揚げたがために、学校が空いたという所に段々ここに集結して貰う、そうして浸水地でないところの学校は一つ授業を開始したい。こういう意味においてこの学校を明けてくれということに立退きを要求したものであると私は考える。從つて、私は引揚げるにしても家がありませんから、引揚げることができませんというような人までも、お前は引揚げて帰えらなければならん、ここにおることはできない。さような処置はこれは非常識でありますから、それは取らないと思います。さよう御了承を願いたいと思います。
#10
○板野勝次君 大体了承したのですが、どうも学校の立退きの問題については、只今厚生大臣の答弁にも拘わらず、相当嚴格にやつて行くという考えが罹災者全体に傳わつておるようです。固より東京都がそういう非常識なことをやつておるとは考えられないのですけれども、学校の授業等のことがあるがために、至急に明けさせるという強硬の態度に出るような状態にあるのではないかと思うのであります。罹災者の方も自分の家がすぐ住める状態でないので、消毒、掃除、その他のことが行われないと、極めて不衞生で又そこに、帰つて行つて傳染病にでも罹つたらいけないという不安等もあるので、これらの処置については、厚生大臣の方から單に東京都においてだけでなくして、全体にもこういう問題があると思うので、適切な処置が取られるように、更に浸水地域に対して、勿論今まで十分なる手当等はいたされておると思うのですけれど、行つて見た状態では、まだ消毒その他のことが全く等閑に付せられておる状態だということを聞きましたので、そういう点について各方面で手落のないような指示を発するようにして頂いて、不安の氣持を起させないようにして頂きたいと思うことが一点と、その次に第二番目は、食糧の無償配給の問題も明日で打切るというような杓子定規のようなことではなくして、まだ浸水地帶若しくは消毒その他のことが十分に行われていないために、まだ混乱しておるという地帶には、当分食糧を無償配給にするのが、これは当然だと思いまするし、又そのような処置をとつて貰いたいと思うのですが、その点に対するお考えをも、この機会に承わつて置きたいと存じます。
#11
○國務大臣(一松定吉君) 学校立退きの問題に関しましては、勿論御意見の通りであります。自分は引揚げようと思うけれども、まあ自分の宅は消毒はできていない、まだ住むにはこのままでは住めないから、住めるようになるまでこのまま置いてくれというような希望があれば、そういうような境遇におりまする人に対しては勿論そうでなければならない。それがいわゆる常識なのであります。それにも拘わらずお前達は、学校では授業しなければならんから立退けというようなことは非常識だと思います。そういう処置を取るべきものでない。又取りもしますまいと考えますが、併しそういう御懸念もありますれば、それは厚生大臣としてそういうことのないようにすることは十分の指示もいたしますし、勿論当然のことである。
 食糧の打切りでありますが、これを混乱時であるということだけでは困る。もう今日ではすでに非常災害に措置を取る必要がないという見通しがその長官について、そうして財産のある者には有償、財産のないような、いわゆる生活保護法の規定によつて保護しなければならんような者については、無償若しくは生活保護法の範囲内における活用とかいうようなことは、地方長官にそれぞれ任してあるのでありますから、ただ混乱時であるからということよりも、むしろ非常災害に対する救助の必要がなくなつたならば、ということの方が正しいように思うのでありますが、そういう点につきましても、地方長官もその他の出先の地方官憲が誤つた考を以て、まだ非常災害救助の無債配給をしなければならん状態にあるのは、もう長官がそういつたから直ぐにその通りにしなければならんというような法の運用を誤るように者があれば大変であります。そういうことのないようにも直ちに指示いたすことにいたします。
#12
○委員長(楠見義男君) 北村さん、農林大臣が非常に急いでおられるようなんで、あなたの御質問は生産調整法関係の御質問だと思つておりますが……
#13
○北村一男君 いや、今の供出の問題に関聯いたします。
#14
○委員長(楠見義男君) どはどうぞお話し願います。
#15
○北村一男君 只今農林大臣から段々この供出に対する御苦心を承わりまして、その御心労に対しては感謝に堪えないところであります。私は前回にも質問いたしましたが、この供出の問題と供出代金の問題が非常に関係が深いという点からして、重ねて供出代金の問題に関して御所見を承わりたいと存じます。前回の御答弁では、農林大臣としてはでき得る限り生産費による支拂いをして、供出代金を生産費によつて決めたいというお考えであるけれども、只今の情勢では必ずしもそういうふうに参らんかも知れん、パリティー計算に重きを附けて決定しなければならんというような意味合の御答弁に接したのでございますが、パリティー計算につきましては、可かり前でございますが、本委員会において物價廳当局からの御説明を承わりました際に、同僚委員から交々パリティー計算の不完全であるという点を指摘されたのでございます。特にその基準年度の置き方につきましては、いろいろの意味合において不完全である、不適当である、こういう点を指摘されまして、この点に対しましては物價廳当局も、自分らはこれが適当と思つて採用したのであるが、併しながら適当ならざるという意見もないではない、それであるから只今研究会を拵えて、そこで折角資料を集めて実態に即するように、今少しく堀下げて研究して見たい、こういうような意味合の答弁がございました。そこで物價当局の適当でないという点を御考慮になつて、その後どのような研究をして、どのようなふうに御決定になつたか、農林省としてはこれに向つてどのような目標に持つて行かれようとして御努力になつておるか、私は今日の常識におきましては、生産費が一石当り二千円である、まあ二千円見当である。これは各府縣によつて違うかも知れませんが、新潟縣におきまして一應計算しましたのが二千五十五円、その後公課公租が増せば、まだ若干増すと思いますが、そういうような数字が出ておるかに聞いております。大体各府縣とも二千円見当でないかと存じまするが、当局としては米の一石当りの生産費をどのように御覧になつておるか、他にもう二点お伺いしたいと思いますが、先ずこの点をお飼いしたい。
#16
○國務大臣(平野力三君) 米價問題は農林省でいろいろな角度から檢討を加えました米價を物價廳の方へ持込みまして、物價廳のその係官との間に連日いろいろ檢討を加えつつある状況でございます。そこでそれではどういうふうな内容のものを基本としてやつておるかという御質問でありますが、パリティー計算にいたしましても、例えば品目を六十四品目に取つて參つたのが從來のパリティー計算でありますが、農業用必需物資の六十四品目でありますが、その六十四品目にも相当、例えば牛とか馬とかいうものを持つておるじやないかというような意味から、品目について相当の疑義があり、且つ又その倍率についても、相当にこれを四十倍くらいに見ら來る見方や、七十倍くらいに見て行く見方がありまして、パリティー計算から來る米價についても、いろいろな数字が出る。それから農林省といたしましては、先般も申上げたように、食糧管理法の規定によつて農民の生産費を基調とし、その他物價の状況を斟酌して決める、こういう規定があるのでありますから、その点からあらゆる農民團体の方から生産費を基調とした米價というものを取つております。これは固より相当上廻つておるものでありまして、固より二千円を突破し、ときには三千円を突破するような計算も出ておるというようなことは言うまでもない。併しここにお断りをいたしたいと思いますことは、このこと自体の決め方については、私は個人としては相当不満なんでありますが、米價問題が公の席上において、例えば物價廳の意見はこうである、農林省の意見はこうであるというようなことが、新聞紙によつて報道せられるというそのこと自体が、後に決定せざるを得なかつた数字と大いなる隔たりがある場合においては、むしろ非常に困るという御意見がありますので、その経過の内容というものは発表しないようにしてある、このこと自体は例えば米價を國会において決定しろ、或いはもつと明るみでやれという議論もあるので、もつと明るみでやるのが当然であると私は思つている。併し結局米價が最後的に止むを得ず決められた米價とその論爭途中において言うた米價との間に、非常に隔たりがあつた場合の影響を考えると、いろいろな計算方法を余り明るみに出すということはよくないのだという意見が、やはり強いのでありして、今ここで私が農林省からは幾らの案を持ち、物價廳はいくらであるという数字を発表することは、実は差控えたいと思うのでありますが、甚だ不得要領でありまするが、今申上げたように、米價問題は現在内部的には非常に議論をしている、こういう状態であります。ただ私から申しまするならば、或いは國会なりその他の農業團体なり、或いはその他の機関から米價はかくあるべしというような御議論は、これは御自由でありまして、これは大いに活發にむしろ展開をして頂くのはいいのであります。当局はどうであるか、物價廳の意見はこうであり、農林省の意見はこうであるというように、而も数字を挙げて論爭の途中で発表するということは差控えたい、このことについては御了解を願いたいと思うのであります。
#17
○北村一男君 そこで私は大体農林大臣のお考えは生産費一杯というわけには行かんというような意味合があるのじやないか、こういうことを懸念しまして、殊にもう決定しましては後手でありまして、何ともいたし方ありませんので、私は私の見解を申述べまして、農林大臣の御所見を承わりたいと思うのであります。
 私はこの米價が長年不当に生産費以下に決定されることは憲法の精神に違反するのではないか、こういうことを憂えるものでございます。そのわけは、これは或いは一見奇異の感がございましようが、新らしい憲法と古い憲法の下における供出制度、或いは供米の代價というものは、少しく変つた見解を持たなければならんと思うのであります。申すまでもなく國家は國民の統合されました團体でございまして、この意味から申しますると、國民は國家に対して國家構成員であり、社会構成員であるという面もございまするが、又独自の生存目的を持つた個体であるという面もありまして、この面におきましては、國民は自由とか生命とか財産の安全を求める権利がある。又人のかような権利を侵害しないという規則もあるわけであります。このことは新旧憲法を通じて変らないのでございまするが、旧憲法の下におきましては法律万能主義に根さす法治國家の思想を以て臨んでおりましたために、法律を以てすれば、どんなに國民の生命とか、自由とか或いは財産とかに制限を加えても差支えないというような精神でありましたが、この新らしい憲法におきましては、いわゆる基本的人権というものを尊重いたしまして、場合によつては法律以上の効力を與えておるのでございます。法律を以ても侵すことばできないという、かような精神で國民に保障いたしておるのでございます。これを供出の問題に結び付けますると、農民は自分の作つた物を公共の福祉のために提供する義務がある、こういうことから供出の義務を負担するのでございまするが供出に対して拂われる代價の問題はおのずから別個の問題である。つまり基本的人権に基ずく幸福追求とか、或いは財産の安全を求めることによつて保障されなければならんと思うのであります。殊にこの供出代金の問題に対しましては、過般農林省関係における本年度産米、甘藷の供出に関する協議会におきましても、消費者代表又は中立的立場を取つておられる方々が、相当大巾に引上げて農民の満足するような、生産費を償うような、適正價格を支拂うことが、消費者のためにも却つて利益である、こういうような意見が開陳されましたことは、農林大臣も御記憶に新たなるところと存じます。私はこの基本的人権というものが、これを行使するに濫用されてはいかん、又公共の福祉に反してはいかんという制限がございまするが、かような点から考えまして、この正当なる生産費を保障する供出價格を農民が要望することは、果して権利の濫用であるとか、或いはひどく公共の福祉を害するものであるとかいう意見に対しては、否定的意見を持つておるわけでございます。そういたしますると、当局が本年も亦國家の必要というようなことから、供出代價が生産費を償うことができんというような点で決められたといたしましたならば、これは只今申上げました基本的人権に対する侵害であるばかりでなく、國家の必要というようなことから、憲法において國民の立場を、國民の國家に対する立場について個人主義を採用しまして、全体主義を否定しました精神に悖るのではないか、合せて基本的人権の侵害に相成るのではないか、かように考える者でございまするが、この点について大臣の御所見を承わりたいと存じます。但しどうぞ御答弁に当りましては主観的意見ばかりでなく、私が只今申上げた、指摘しました具体的の條項に対しまして、どういうお考えを持つておられるか、若し私の言うところが大臣の御所見と合致しないならば、どういうわけで合致しないかを明確に、懇切に御指摘願いたいと思うのであります。
#18
○國務大臣(平野力三君) 生産費を割る米價を決定して、農民に押しつける態度は、基本的人権を蹂躪する、憲法違反じやないかという御趣意については、非常に御尤もな御議論であると考えます。私は飽くまで生産費を割らない米價を決定することについて、農林大臣といたしまして繰返し申しまするように十分盡力をいたしておる、又そのつもりでやつておるのであります。ただ御指摘のようにこういう経済上の問題が、いわゆる今の憲法そのものに直ぐ背反するや否やという法制上の問題は、憲法について私自分の研究が不十分でありますので、結論を申上げることはできませんが、氣分としてはあなたの御意見については私もよく分ります。尚私はかような氣分を持つております。從來非常に高い小作料で農民は食えなくても我慢せよという思想を以て支配したということは、明らかに農民を封建的の奴隷という観念で、社会的なる人権から蹂躪されておつた、このことに奮起して農民開放の旗を揚げた。從つて農民はいつでも社会の下積みになつて、社会の困難なることはいつも農民が背負うのであるという思想には、私は猛然として反対するのである。從つて今回の價格の問題でも、若し思想的根拠が、農民は生産費を割つても農民なるが故に我慢しろという思想から出る價格論に対しては、徹底的に反対する。これが私の考え方であります。
 ただあなたの仰しやるように、憲法的の違反になるかどうかということは、今のところ何とも申上げられませんが、要するに農民なるが故に、生産費を割つても我慢して行けという思想から來る米價論ならば、飽くまで間違つておると思う。お互が祖國再建の途上において、お互の立場のみ主張するわけに行かんから、お互が我慢するという思想から米價が或る所で落着くならば、お互が我慢するという精神において、祖國再建の思想に合致するので、協調を保たなければならんと思います。然るに農民なるが故に、いつでも下積みであるという思想から來る米價を押しつけるというのであるならば私は承服しない、かように考えております。
#19
○西山龜七君 大臣にお伺いいたしますが、現在の割当の状況は新聞紙上その他で、大臣の御苦心の程は十分に分りましたが、この現在の割当から見ましても、食糧問題のいかにむずかしいかが分るのであります。その上に今度の農業生産調整法にこれを強制いたしましたならば、現在以上に混乱に陷いる懸念が私は多分にあるかのように考えるのであります。故に私はこの農業生産調整法で、政府が府縣に割当て、府縣が市町村に割当て、市町村が農家に割当てる場合に、この生産の量を確保したならば、あとの耕地の増減変更、そういう點に農民の意思を自由に、裕りを持たすようにする。殊に本案を修正するか、又は供出量を確保した以上は自由に処分させるか、こういうような農民に余裕を與えないで現在のような供出の割当にいたしましても、臨時農業生産調整法にいたしましても、これを強制いたしましたならば、ますます食糧問題は混乱いたしまして、政府の所期の目的を達することができない。かように私は固く信ずる者であります。農林大臣はその点におきましては、十二分に御承知にはなつておると思いますけれども、社会情勢がそういうことにできないために、こういうようなことになつておるかのようにも思いますけれども、どうしても現在の割当、それから又農業生産調整法を実施いたしましたならば、これは農村の破綻を來すものではないかと、かように思いますので、何とか割当以上のものを自由に処分をさすか、又その割当の生産を完遂すれば、耕地の増減を自由にさすか、何とかそこに裕りを持たす御意思があるかないか、それを承わりたいと思います。
#20
○國務大臣(平野力三君) 一定の割当を上の方から決めて、飽くまでこれを推進をして行くという行き方が望ましい供出制度とは思つておりません。從つて供出に関しては、成るべく裕りのある立場を取つて参りたいということが基本的な考え方であります。現段階における今年の食糧問題、今当面しておる供出問題については、先刻御報告申上げましたように、三千五十五万石というものを、日本の各府縣がこれを呑む、これを了承してくれるということが、世界の食糧事情から考えて、日本の輸入食糧等の問題から当然やらなければならんという意味においては、私は相当地方農民諸君に対しては無理を言わなければならん。ただこの無理の言い方が、そこに理解をして貰つて無理を言うのと理解をさせないで無理を言うのとは、そこはおのずから違うのでありますから、私共といたしましては、この世界食糧事情の止むを得ざる理由に基ずくところを、懇切丁寧に農村に対してよく徹底することによつて、私共はこの供出を完遂したいと、現段階においてかように考えております。從つて農業生産調整法についても、提案の理由で申上げたように、かような形の供出をするということは、これは臨時立法である、あくまでも臨時である、將來永久に農業生産調整法というような形を取るものでないということを申上げたように、この点も極めて臨時である。併し問題はやはり食糧問題が、相当困難な状況が尚ここ何年か続くということを仮定いたしますならば、そこには一定の責任供出量というものについては、これを農家に相当義務を感じて貰つて、その責任供出量以後のものについては、或る程度の自由性を與えて行くということは、これはあなたの御意見と同じように、私もさようにいたしたい。又農業生産調整法の部分においても、その裕りというものは、或る程度まで採用できるようになつておりますので、この法律そのものについては、相当欠点があると思いまするが、これは法の運用によつて、その欠点を補つて行きたい。これが大体今日の私の考え方であります。
#21
○西山龜七君 大臣の氣持はよくわかりますが、併し大臣が新聞なんかで発表しておられまする、或いは供出量以外のものを、特別に報奬物資その他によつて特別に優遇する、こういうような制度では、到底農村が増産にも励むことはできまい。主食の耕作を轉じまして、その他の経済的の方へ走る虞れは多分にあると思います。それから今大臣の氣持は、農村の生産に合うような價格にしたい、かように申されておりますけれども、これは國の財政上可能でない。そのお氣持は十分にあつても、それが実現しない。そうするならばどうしても先程申しましたように、もう少し農村に余裕を與える食糧政策をお立て願いたい。そうしなければ食糧問題は解決しない。その意味におきまして、この農業生産調整法の内容の修正をしても、大臣はそれの修正に應ずるだけの御決意があるや否や、それを伺いたい。
#22
○国務大臣(平野力三君) 現在法律を修正する意思は持つておりません。併しこれはいつも申上げるのでありますが、國会においての審議は、國会における皆さんの御発議によつて、こういう点は修正すべきものであるという御意見があつて、それが極めて御尤もであるという場合においては、固より政府はこれの相談に應ずべきものである。かように考えるのでありまして、いかなる法律も出したら修正に應じないというのでは決してありません。併しこの農業生産調整法自体については、現段階においてはこの原案で行きたい。かように考えます。
#23
○山崎恒君 供出問題について二、三お伺いいたしたいと思うのでありまするが、今回発表されましたところの三千五十五万石の驚異的な数字は、從來から考えておりましたところの本年度の天候から考えますれば、我々に何ら苦痛はないのでありまするが、本年度のこの最近におけるところの災害等を考えますると、並み大抵の数字じやないということは、これはもう政府も我我も等しく憂うるところでありまするが、この三千五十五万石は何としてもこれを成し逐げなければならない。敗戰國民としてどうしてもこれを出さなければならんということは、これは十分承知でありまするが、先ずそれだけ出したならば、輸入食糧がどれだけ來年度は入るかという見通しについて、結論的にお伺いいたしたいと、こう思うのであります。
 次に、本年度のこの数字の供出につきましては、私も昨夜零時半まで大臣官邸で供出割当の数字の点について伺つておつたのでありまするが、全くこの予想もしない、殊に私共天災を受けた縣といたしましては、非常に思わざるところの数字を昨晩出されたのでございまするが、それにつきましては、いろいろ條件を縷々申上げてお諮りして來たのでありますが、とにかく今回の数字そのものは殆んど天降り的な数字であるというようなことを、私共は痛切に感じておるのでございまするが、ただ戰爭に負けたというような関係からいたしまして、日本の食糧事情は全く本年度が底であるというようなことを考えますれば、惡條件をできるだけ拂拭して私共は供出せなければならんと、かように思うのでありますが、ただ單に我々が政府から貰つた数字を縣の委員会にかけ、縣の委員会が町村の委員会にかけても、無いものはなかなか出し得ないのでありますが、これは隣保共助の精神で、まあ都会地に対しては多少でもとれた所から互助の精神を以て出して貰うというような方法を採るのでありますが、これはひとり農民のみの供出責任でなくして、一方におきまして、國民的の消費者殊に大きく國全体の國民が一つの供出運動を何らかの方法で展開するような方法を政府はお持合せがあるかどうか、そうした問題を一つお伺いいたしたいと思うのであります。
 次に、農産物の價格の問題が各委員から出ておりますが、農産物の價格につきましては、われわれ労働者に取りましては、いずれも今回制定された労働基準法によりまして、時間的にも又労銀につきましても、一定の枠、ペースが付けられてあるのでありますが、農民に関しましてはいずれも労働時間は制約されておりません。朝から晩まで、殊に農繁期に際しましては殆んど十四時間乃至十五時間も、田植の時期は暗い中から暗くなるまで働かなければならんというような労働をせんければならんのでありますが、この價格の建て方につきまして、いずれも労働時間の問題について、労銀がそれに盛込まれてあるかどうかというような点も私は特にこの際お聽きいたして置きたいと思います。
 又中間マージンの問題でありますが、木炭にいたしましても、甘藷にいたしましても、いずれも中間マージンが生産者のそれに比しまして非常に幅がある。これは農産物いずれもさような結果になつておる現状であります。これに対しましては何らか再檢討を加える御意思がないかどうか、殊に甘藷馬鈴薯会社のごときは、前議会におきましてこれは廃止することになつておるように聞いておりますが、未だに存続しておるのはどういう点であるか、又今年度の差当りの供出に掛かけます藷の取扱いは依然として甘藷、馬鈴薯会社がこれを取扱うのかどうか、かような点につきましてお伺いいたしたいと思います。
#24
○國務大臣(平野力三君) 今回司令部から発せられました覚書には、三千五十五万石日本政府が農村に供出させまして、その交換條件として輸入食糧を幾らやる、こういう意味ではないのであります。今のような遅々として進まざる供出割当、而もその割当が單に値切る、こういうような輿論が世界的に放送せられるような割当会議をやつておつたのでは、日本の輸入食糧に対して恐らく不利益になるということを考えよ、こういう意味であります。その意味において重大であつて、これを出せば向うで幾ら輸入食糧をやるというわけでありません。併し問題はこの前の六十万トン輸入食糧放出の場合、麦、馬鈴薯の供出成績がすでに八月十日頃において九十%以上凌駕して非常に成績が良好である、というこのことは輸入食糧を放出する上においては非常に良いことである、こういう一つの既成の事実があるのでありますから、交換條件ではありませんが、日本の供出が良くなるということは輸入食糧を懇請する上において、これは有力な基礎材料である、こういう意味から今回の三千五十五万石は無理でも地方において呑んで貰いたいというのがわれわれの立場である、かように御了承願いたいと思います。
 第二の御質問は、昨日も知事会議において非常に問題になりましたので、我々はかような割当を農村に行う限りは、これは單に農民に犠牲を負わすというようなそういう運動であつてはいけない、飽くまで國民運動を展開してつまり政府は單に農林大臣がやるというようなことではなく、政府自体の名において飽くまで供出運動をやる、同時にこれは國民全体がこのことについて十分理解を得るために特別なる運動を展開しよう。固より方法としては或いは映画を作るとか、或いは全國の町村長に対して、特別なる運動を展開して貰うとか、いろいろのことが考案されておりますが、とにかく國民運動の形態において供出運動をやるということに大体肚を決めております。
 それから同時に、かような供出を農村に要求する限り、農民の要求たる他の農業生産、例えば地方に起つておりますところの水害、干害等に対する政府の施設は固より急速且つ徹底する必要がある。尚地方問題として知事から、或いは地方の人達から單に農林省と言わず各省に宛てて陳情しておることは、諸般の案件は書類を温めて置くということをしないで、速かにてきぱき片付けて、政府はこれだけの義務を負うことは、今回の供出に対する割当を敢行した上においては当然の義務であるというような諸点に対しても、私はこれを覚悟いたしております。從つて農林大臣としては特に閣議にこの供出問題を持出しまして、各大臣にかような供出を割当てて農民に敢行する限りは、農民から要求されておる諸般の案件については、速かに各閣僚ともこれを処理して行くというようなことは、当面においては最も必要であるというような提議も閣議においていたさんとしておる状況でありまして、この点一つ御了承願いたいと思います。
 第三の農産物價を決定するに当つて、労賃をどう見ておるかというお話でありますが、固より労賃を見ない價格の計算というものはありません。ただその労賃を幾らに見るかということが爭いの種になりますので、そこで例えば米一反歩を作る間において二十人手間、三十人手間掛かる、その手間代を都会の労働賃金と同じに見るか、或いは内輪に見るならばどういう方面において農村労働賃金を内輪に見るかという論爭が一つの米價問題決定の論爭になつております。労賃を見ないというような極端な米價決定でないことは固より当然であります。労賃の中味において議論が非常に行われておることを御了承願いたい。中間マージンの問題、これは木炭に関する中間マージンについては、今後これを改める方針であります。つまり中間マージンが多過ぎるという木炭に関する非難は、これは今後考えまして、中間マージンを相当に軽減するという方針を取つております。
 甘藷、馬鈴薯に関する問題として、甘藷、馬鈴薯会社に対する御議論がありましたが、食糧営團及び甘藷、馬鈴薯会社等がしばしば問題になりながら今日まで存続いたしております理由は、とにかく主食の配給という任務を持つておる二つの團体でありますので、廃止をする場合においては直ぐその瞬間に次の機構をどうするという問題と睨み合せないと、單に甘藷、馬鈴薯会社のやつておる内容がこういう点について欠点があるという点を以て直ぐ廃止する、こういう処置取れないので今日まで存続しておるのであります。食糧営團についても同様であると思います。今政府は食糧営團及び甘藷、馬鈴薯会社について一つの機構改革の大きな立場に立つておるのでありますが、これを公團とすべきか、或いは他の機構になすべきやという点は現在の課題でありますので、われわれはこれを愼重に考慮いたしておるのであります。
#25
○委員長(楠見義男君) 農林大臣は他に非常に急な用があるので十一時というのを、今まで引張つておるのでありますから、午前はこれで休憩いたしまして、午後は一時から再開いたしたいと思います。
   午前十一時三十九分休憩
  ―――――――――――――
   午後一時四十一分開会
#26
○委員長(楠見義男君) それでは休憩前に引続き再開いたします。重要肥料業統制法等を廃止する法律案を議題に供します、どうぞ質疑を……。
#27
○藤野繁雄君 只今簡單な肥料の状況の印刷物を頂いたのでありますが、私などは農業の生産には肥料が最も必要であると考えるのでありますから、重要な肥料の需給状況の現在の状況はどうであるかということを、今少しく数字を以て説明して頂くと同時に、將來に対する政府の方針はどういうふうであるかということを詳細な御説明をお願いしたいと思うのであります。
 第二の点といたしましては、今申上げましたように、肥料というものは農業生産上非常に必要であるのでありますから、この法律が廃止された後と雖も、この法律の趣旨に基ずいて肥料の需給の圓滑及び價格の公正を図つて、肥料製造業及び農業経営の改善発達を期さなければならないのでありますが、この法律廃止後における政府の重要肥料に対する具体的の方針のお示しをお願いしたいと思うのであります。次に聞くところによりますと、燐鉱石はあるところに数十万トンが滞荷しておるという話であるのであります。過燐酸石灰が農業経営上に必要であるということは、今更申上げるまでもないのでありますが、かくのごとく沢山な燐鉱石を果して持つておられるのであるか、ないのであるか。若しありといたしましたならば、どこにあるか、その数量はどのくらいであるか、又何故に燐鉱石があるのにも拘らず、過燐酸石灰を作らないのであるか、又聞くところによれば、燐鉱石は今後と雖も引続き輸入されるという話であるのでありますが、その輸入されるところの燐鉱石でできるだけ早く過燐酸石灰を作つて農業の需要に應じて、食糧の増産に寄與したらいいではないか、私の縣の一例を取つて見ましても、佐世保港には相当の過燐酸石灰があるという話であります。それでこの燐鉱石を原料として肥料会社を作つたらどうかというような話もあるのであります。それで若しそういうふうなことがあるといたしましたならば、この農家の必要なところの肥料を製造するのに政府はいかなる助成方法を講ぜられるのであるか、又燐鉱石からは過燐酸石灰を作るのみならず、その他の燐酸肥料も造られるという話であるのでありますが、その他の肥料を造られる具体的の計画があるかどうか、これらの点について御説明をお願いしたいと思うのであります。
#28
○政府委員(山添利作君) 重要肥料統制法の廃止につきましては、これはもう現在働いておりません法律でありますので、この法律を廃止するということは、肥料の政策に現在何らの影響はないのであります。肥料の恒久的な考え方としてどういう事情になつておるか、又現在の生産状況はどうであるかということについて申上げます。
 第一の恒久的な点につきましては、これは今後日本の耕地も開墾計画等によつて増加をする、而して從前使つておりましたところの製品、基準数量は、これは現在配給しております数量の概ね倍でございますが、それくらいのものを供給するという、長期と申しまするか、計画をいたしております。これは硫安から二百万トン、窒素系の肥料といたしまして二百万トン、こういう数字であります。又過燐酸におきましては確か約六十万トンであつたかと思います。そこで戰が終りましてから、これらの工場につきましては固より連合軍の許可を受けなければならないのでありまするので、かような計画を以ちまして、一昨年來連合当局の方といろいろ折衝をいたしておつたのであります。硫安における二百万トンの需要ということは承認を得ております。この計画によりまして着々工場の復旧という点に力を注いで参りました。硫安に例を取つて見ますれば、終戰当時月一万トンが、一万五千トンというような極端な状況にありましたのが、現在は御承知のように最近は七万五千トンというくらいまで出し得るということに回復をして参つたのであります。併しながらまだ工場の復旧乃至補修の中途にございます。これは今まで許可を得ました工場によりましては、硫安並びに石灰窒素におきまして二百万トンを造りますためには、まだ二十五、六万トン足りない。從つてこの足りない部分についての工場の新設乃至拡張の許可ということを、昨年中随分問題にいたしたのであります。具体的に申しますれば、四日市の工場でありますとか、或いは徳山の硫安工場でありますとか、或いは和歌山における工場でありますとか、数個のものについていろいろ折衝をいたしたのでありまするが、これはまだ承認を得るに至つておりません。と申しますのは、一方の肥料を作りますための石炭並びに電力の状況が、施設が復旧して行きますのに伴つて、所要なる分を十分に供給することが伴わない、こういう事情もありまして、日本側が主張するところの現在の能力ではできないのだということが確実に立証させれない、又一方原材料の状況ではその方面を急ぐ必要はないじやないか、こういうようなことからその点におきましてはまあ未解決のままになつております。そこで許されたる工場につきまして、これは石灰窒素と硫安とで確か三十四工場であつたと思いまするが、補修をしつつ同時に又生産に力を入れておるわけであります。この補修計画と言いましても、まだ完全にでき上つたのではございません。更に今後一年以上の日子を要しまして、現在動いておる工場が完全にそのキヤパシテイを発揮するというところまでは参りませんのであります。これの補修につきましては鉄鋼並にセメント等の供給にかかつておる。併しながらともかく着実に復旧並びに補修が進められておる、こういうわけでございます。それでこの各肥料につきましての……尚過燐酸の方につきましては、これは御承知のように工場数は沢山ございます。又補修に努めつつありますのであります。これ亦十分にその能力を発揮するということは制約をされておるという状況にございます。そこで石灰窒素のこの秋肥についての需給状況につきましては、お手許に差上げて置きました表にございます通りに、麦につきまして基準教量四貫、それから供出を完遂いたしますれば四貫九百匁、約反当五貫になるのでありますが、それを配りまして、相当数量の繰越しが出る、こういうことになつております。これは当り前のことでありまして、肥料と申しましても、多くのものは水稻に使うのでありまして、どつち道八月から十二月までの間は、肥料に関する限り不要期でありまして、相当数量を來期に持越して使うということが当然のことであります。そういう計画を以てやつておるのであります。ただ差上げました麦の中で、非常に繰越数量が多くなつておりますことにつきましては、計画数量通りに生産は必ずしもできていないということが今までの実績でありまして、私共の配給計画を立てますにつきましては、生産数量の計画に対してはまあ二割近くも内輪に見積るということを常といたしております。そういう関係、並びに需給計画におきまして、輸入の方は未定といいますか、エックスでありますから、この秋の配給計画を立てます時に考えていないというようなことからいたしまして、相当の繰越しを生ずる、それだけ秋肥の配給につきましては、適期に配給できるというように相成るわけであります。來年の水稻についての考え方は、反当り五貫目は下らないという考え方をいたしております、基準といたしましては反当り五貫目を配給する、而して超過供出等に対しては、一俵に対して二貫目の肥料をこの秋の供出に対しては適用する、そういう考えでございます。かように肥料につきましては成る程復旧事業につきましては、相当程度に復旧も見ておりまして、長い計画としては問題を残しつつも、当面の問題といたしましては、ともかく概ね順調であるということが言えると思うのであります。ただこれに要するところのもの、生産を制約するところのものは硫酸でありまして、只今仰せになりました過燐酸石灰は石が五、六十万トンも積んであるのに拘わらず、予期のごとくできないということは、このハイライトの生産並びに運送量にかかつておるのであります。この硫化鉱は御承知のように東北の岩手、でありまするか、棚原、中國の松尾の両工場を中心といたしまして、その外十幾つの小鉱山がございますが、その生産が百万トンということでありまして、山元にございまする十万トンを合せて、本年の供給百十万トンということを目標にいたしまして、食糧の加配、或いは労務者に対する住宅建設というような特別施設をこの春以來やつております。又最近におきましても、この増産対策について、特別の施設をいたすということについて、閣議の決定を経て努力をいたしておるのでありまするが、この硫化鉱が必ずしも計画のごとく参らない、又需要は多いのでありまするが、これを急に殖やすということに非常に困難性がある。從つてこの硫酸は御承知のように、今人造絹糸その他の化学工業に使いまするけれども、肥料で使つておりますのが大部分であります。この硫化鉱から作りますところの硫酸を過燐酸石灰とそれから硫安とにいかに按配して分けるかどうか、これはリミツティクグ・フアクターになつておるわけであります。その硫化鉱の配分によつて、この肥料についての生産計画もできておるわけであります。この硫安につきまして、四十三万五千トン、或いは過燐酸につきまして三十八万三千トン、これは計画でございますけれども、これはそれぞれ両方の肥料の重要度割合というものを見まして、このハイライトを配分いたす。これが目途になつておるというのであります。同時に今後の問題といたしまして、何と言つても輸出産業を急に振興しなければならん。そのために要するところの石炭電力、こういう問題がございます。特に冬等になりますれば、渇水期になりますると、電力の問題等が起つて來るわけであります。從つてそういう面からも肥料殊に硫安等についての生産は必ずしも樂観はいたしておらないのでありまして、これを計画通りに生産を上げて行くということにつきましては、絶えざる努力を必要とするものと考えております。併しながら反当來年の稻作について五貫が欠けるということはございません。それは多分確保いたすつもりであります。尚燐鉱石の問題でありますが、今どこにあるかというのは、後に調べて申上げたいと思いますが、各工場における倉庫も一杯であるし、場所によつては野積みとしてあるという状況であります。それではなぜそういうふうに消化ができないかと申しますと、先程申しますような、これは硫化鉱の不足ということが主たる原因である。そこに制約を受けておる。そこで新らしい肥料といいましても、これは急にそういうものができるわけでもない。或いは液体の形にしたものであるとかいうようなものも、少しは研究もし、やつておりますけれども、これはまあ論ずるに足りないのであります。それでは石を粉末にして、ともかく燐鉱石のままを非常に微粉にいたしまして配給したらどうかということも研究されておるわけであります。併し今までの考え方といたしましては、氣候の点からいたしまして程度が非常に低いわけでありまして、まあ三割以下であろうということになつておりますので、これも考えなければならないものだというようなふうに考えておるわけであります。さようなわけでありまして、これは石炭、電力というようなことにつきまして、從來とも非常に重点的に肥料が取扱われておりますし、今後とも優先的に取扱われるのでございますが、これが一般の輸出産業その他に対する関係上制約を受けるということの外に、最も大きな問題として、この硫化鉱の増産並びに増送ということに努めなければならない。そこを打開いたさなければなりません。これが硫安並びに加燐酸石灰両方合せたものについての一つの枠になつておる。こういう事情になつておるわけであります。
#29
○北村一男君 只今御説明の中の、來年度の稻には反当五貫目、それから一俵二貫目というような、この五貫目、二貫目というのは、これは硫安に換算してのお話でございました。ところが本年度の肥料の配給されます状態を見ますると、これは前にも私ちよつとお尋ねいたしたのでございますが、出穂の時期になりまして、石灰窒素が配給せられまして、どうも農家としては使つて見ようがないので、來年度に持ち込む外しようがないというような事態が起きたわけでありますが、勿論石灰窒素をも配給なさるものと考えまするが、そういう場合は時期を誤まらぬように、適期に適当な肥料を配給して頂くように御注意頂きたいということを、希望として申上げて置きます。
#30
○羽生三七君 ちよつとお尋ねいたしますが、只今の点で大体分つたのでありますが、現在の肥料の生産能力で日本のすべての農産物、例えば水稻とか麦というものに限らず、蔬菜から果樹等、即ち日本の全耕地面積に作付けられてる全部に農作物に、大体この程度で肥料が行き渡るという時期は、今の肥料の生産能力でどのくらいですか。
#31
○政府委員(山添利作君) 今までやつておりました計画によりますと、この肥料年度の終り、即ち來年の七月末を以て一應完成するという計画を立つておりましたけれども、併し実際問題として、鉄並びにセメントの遅れます関係、又最近は特に多少そんな事情で少くなつております関係上それは遅れます。併し設備の方としては、そう長くだらだら掛かるというわけではない。やはり硫化鉱の増産、それからそういう時期に石炭がどれだけ供給ができるか電力がどれだけ供給できるかという、こういう國力全体のバランスの問題になつておるわけであります。從つて全体計画がございませんと、何時ということは肥料だけの関係からは申上げられないわけであります。
#32
○羽生三七君 現在の能力ではどうです。肥料が電力、石炭等現在の能力程度で、大体自給自足という……。
#33
○政府委員(山添利作君) 現在の程度でありますと、硫安にいたしましても今月産七万トン乃至……最近ちよつと落ちますが、八万トンはできる。キヤバシティから言えばもつとできるわけです。從つて年間にいたしまして石灰窒素を合せますれば、硫安にしまして百二十万トンは優にできるものと思います。そうしますと二百万トンというのは百五十万町歩の開墾を頭に入れてでありますが、今まで使つておりました窒素肥料につきましては、大体百六十万トンが程度です。そうしますと、それに対しては相当な割合にはなるというわけであります。私共の考として今狙つている状況は、普通に要する所要量の半ばを超える。こういう考であります。
#34
○羽生三七君 大体常識的に見て、現在の能力、電力、石炭等現在の能力で行けば、二、三年中には大体一應肥料問題というものは打開できるものと見て差支ないわけですね。
#35
○政府委員(山添利作君) そういうふうに思つております。
#36
○寺尾博君 今の化学肥料の御話は承わつたのですけれども、從來肥料として相当重要の位置におりました魚肥、油粕です。こういうようなものが一部は食料方面に用途があり、又飼料方面の関係があるので、肥料の方に振り向けられるに困難な事情も今日は非常にあると思うのでありますが、この方面のいわゆる有機質肥料について、政府として今日はどういう取扱いの方針になつておりますか、この際御説明を願いたいと思います。
#37
○政府委員(山添利作君) これは正直に申しますが、魚肥の方でありますが、これは現在の統制の枠からは、即ち肥料配給公團の取扱い品目からは除外いたしております。その除外いたしました理由は、固よりこれは非常に重要なものではございますけれども、食い物と餌と、それから肥料との区別が付かないがために、元の日本肥料会社の形において、統制しておりました時分にも、價格は統制でありましたけれども、実情はその内容については全然把握はできておりませんでした。そこでこの新らしくできました公團の方式による統制から除外しております。そこで北海道等で生産されますもの等につきましては、食料品として政府の斡旋によるバーターによるというような形で、秋田とか或いは山形に若干魚肥を持つて來、内地から食糧を持つて行く、こういうことが実際の実情になつております。
#38
○寺尾博君 そういたしますと、今のその方面の、從來肥料に使つておつた有機質肥料、魚肥、油粕等は現在の肥料需給面からは殆んどこれを計算に入れることができないというような事情である。こういうふうに考えてよろしいわけですか。
#39
○政府委員(山添利作君) 魚肥そのものの生産も可なり減つておると思いまするが、これはああいう種類で、到る処且つ零細に作られるのでありますから、何ら私共といたしまして統計的にこれを推測する余地がございません。これは餌に廻りますか、或いは肥料になつておるのでありますか、恐らく果樹等にはそれぞれ廻つておるわけであります。果樹に対しては統制肥料は配給はいたしておりますけれども、使用量は非常に少い、そういうところに補われておるというようなことを推測いたしております。
#40
○委員長(楠見義男君) 御諮りいたしますが、大体御質疑も盡きたようでありますが、質疑はこの程度で打切つてよろしうございますか。
#41
○委員長(楠見義男君) それではさようにいたします。尚採決の問題でありますが、これは先般御審議を頂きました農地開発営團の廃止に関する法律案について多少まだ残つたところがありまして、そのまま留保さけておるのでありますが、その問題と併せて、あの方も御承知のように極めて簡單な法案でありますので、あれと二つ合せて、別の日に討論採決するという取り運びにいたしたいと思います。
#42
○委員長(楠見義男君) それではさよう御了承を願います。それでは重要肥料業統制法等を廃止する法律案に関する質疑はこれで終了いたしました。
 引續いて臨時農業生産調整法の質疑をいたしたいと思います。
 速記を止めて……。
#43
○委員長(楠見義男君) 速記を始めて下さい。
 それではいろいろ御都合もあるようでありますから、臨時農業生産調整法に対する質疑は明日いたすことにいたします。
 尚この機会にちよつと皆様にお諮りいたしたいのでありますが、それは先般の農林委員打合会で公團についての小委員会を設けることに大体意見が一致を見たのであります。そこで小委員の選定でありますが、これはこの前の農業資産相続特例に関する法律案の例に倣つて、大体五名程度にして委員長からその小委員の方々を指名を申上げるというような運びにいたしたいと思うのでありますが、或いは別の御案等もあれば御披露願いたいと思いますがいかがいたしましようか。
#44
○委員長(楠見義男君) それでは委員長指名ということで、その数も委員長において定めることにしてという大体の御意向でありますから、そういうふうに取計らいます。先例にならつて小委員は数を五名にいたしたいと思います。その委員は、本日御欠席の方もございますが、宇都宮さん、山崎さん、それから北村さん、木下さん、岩木さん、この五名のお方にお願いいたしたいと思いまするので、さように御了承願いたいと思います。
#45
○田中利勝君 委員長ちよつと希望があります。農林委員会の速記録は大体六号ですか、八月十五日以後出ていないのですが、もつと速記録を早く出すようなことに事務局の方に一つ申入れをして頂きたいと思います。衆議院の方は本委員会の速記録というものは非常に早く……私のように病氣で欠席しておる場合に実際不便を感ずることが多いのです。
#46
○委員長(楠見義男君) その点は私も全く同感でして、事務当局の方にも随分再々お願いはしておるのでありますが、ただ速記者の方々は連日非常に重なつて、実はこれは間接ですけれども、女の速記者の方なんかは半分近くはもう倒れられたようというようなことで、随分お困りになつておるようなわけで、從つてそう無理も言えませんけれども、でき得る限り早く作つて頂くようにお願いをしておりますが、重ねて又お願いいたします。
#47
○羽生三七君 ここの速記者の諸君は責任を盡していますよ。それは速記者の諸君でなしに、印刷能力らしいです。
#48
○委員長(楠見義男君) それでは本日はこれで散会いたします。
   午後二時十九分散会
 出席者は左の通り。
   委員長     楠見 義男君
   理事
           木下 源吾君
           高橋  啓君
   委員
           門田 定藏君
           田中 利勝君
           羽生 三七君
           北村 一男君
           西山 龜七君
           平沼彌太郎君
           岩木 啓夫君
           本檜三四郎君
           小杉 繁安君
           佐々木鹿藏君
           竹中 七郎君
           石川 準吉君
           宇都宮 登君
           岡村文四郎君
           島村 軍次君
           寺尾  博君
           徳川 宗敬君
           藤野 繁雄君
           松村眞一郎君
           山崎  恒君
           板野 勝次君
           廣瀬與兵衞君
  國務大臣
   厚 生 大 臣 一松 定吉君
   農 林 大 臣 平野 力三君
  政府委員
   農林事務官
   (農政局長)  山添 利作君
ソース: 国立国会図書館
姉妹サイト