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#1
第075回国会 交通安全対策特別委員会 第9号
昭和五十年六月二十五日(水曜日)
   午後零時四十一分開会
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         吉田忠三郎君
    理 事
                黒住 忠行君
                中村 太郎君
               目黒今朝次郎君
                阿部 憲一君
                栗林 卓司君
    委 員
                小川 半次君
                岡本  悟君
                加藤 武徳君
                土屋 義彦君
                望月 邦夫君
                山崎 竜男君
                加瀬  完君
                小柳  勇君
                前川  旦君
                太田 淳夫君
                河田 賢治君
                安武 洋子君
   国務大臣
       国 務 大 臣
       (国家公安委員
       会委員長)    福田  一君
   政府委員
       内閣総理大臣官
       房交通安全対策
       室長       竹岡 勝美君
       警察庁長官    浅辺清太郎君
       警察庁交通局長  勝田 俊男君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        池部 幸雄君
   説明員
       法務大臣官房司
       法法制調査部参
       事官       青山 正明君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○自動車安全運転センター法案(内閣提出、衆議
 院送付)
○交通安全対策樹立に関する調査
 (交通事故の相談業務に関する件)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(吉田忠三郎君) ただいまから交通安全対策特別委員会を開会いたします。
 自動車安全運転センター法案を議題とし、前回に引き続いて質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#3
○目黒今朝次郎君 時間もありませんから、一つだけ大臣並びに関係者に要請したいのですが、この前中村先生から交通事故の話がありましたが、私は、交通事故の中で、植物人間という俗称を使われているわけですが、正式の名前は遷延性意識障害者、この問題であります。実は私も実態についてはこの国会に出て初めてわかったのですが、時間がありませんから結論だけ申し上げますと、大体この方は全国で二千名程度いらっしゃると。そうして、その二千名のうちで、交通事故で直接発生した方が約七割から八割、ですから千六百前後、交通事故が大部分だと、こういう実態であります。この方は意識はありますけれども人間としての機能は一切ない。それで、長い方はもう六年から七年寝たきりと、こういうことであります。それで、私は、社会労働委員会でこの問題を取り上げてやっておるわけですが、社会労働委員会の方では、いわゆる加害者の方が責めを負うべきだと、こういう議論が出ておってなかなか進まないわけであります。で、加害者の方に聞きますと、自賠責で一千万もらっても二年か三年でこの金がなくなってしまうと、そういうことでありますから、こういう植物人間というものについて、交通政策上、関係当局が検討したことがあるかどうかですね、検討したとすればどういう対策をお持ちか、まず大臣なりあるいは関係者の方からお聞きしたいと、こう思っておるわけです。
#4
○政府委員(竹岡勝美君) 先生の御指摘のございました植物人間というのは、まことに悲惨な状況でございます。御指摘のとおり、厚生省の調べによりますと、大体二千名ぐらいおられる。そのうち、まあ詳細には交通事故で何名かということははっきりしていないようでございますが、大体七割という先生の御指摘ももっともだろうと思います。現在、資料といたしましては、運輸省が単年度ごとに自賠責で後遺災害にかかった方に金を出しておりますが、その中の最もひどいいわゆる一級、一級のうちでも「精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの」というのがあるいはこれに当たるのじゃないかと思いますが、その数字が、たとえば四十八年に四百一名という数字が出ております。この自賠責の方の数字が出ておりますが、詳細な調査をした交通事故による植物人間になられた方の数字はまだ手元に持っておりません。今後十分そういう面の調査をしたいと思いますが、そして、御承知のとおり、交通事故の被害者として植物人間になられた方、こういう方に対します補償というものは、当然に原因者負担で補償されるのが原則だろうと思います。また、それの担保といたしまして自賠責保険なりあるいは任意の交通災害保険などもあるわけでございますけれども、植物人間になられた方には、これの治療費並びに介護費が非常に高額なものになりますので、当然加害者本人だけでは十分に補償し切れない大きな問題がございます。現在、運輸省でも、この七月一日から自賠責の最高額――植物人間になられましたら最高額が出ると思いますが、これを従来の一千万円から千五百万円に上げるということも、あるいはこれに若干でも役立つのではなかろうかと思います。また、一方、交通事故で脳をやられまして植物人間になられるわけでございますから、こういう悲惨な脳損傷の交通事故を少しでも減らすために、現在、警察庁でもあるいは二輪車のヘルメットをかぶる運動、あるいは総理府でもこの八月一日からシートベルトをつける運動を展開したいということで、この悲惨な事故を防止するための一助といたしたいと考えております。そして、この植物人間になられた方々の一般の医療体制は、単に交通事故だけではなく、あるいは災害によりまして病気になられた方々、こういう方々に対します一般的な医療対策の一環として政府もさらに厚く講ずるよう考えていかなければならないと思います。また、医療的には高額家族の療養費等の制度もとられておるようでございますが、今後交通事故に起こりました植物人間になられた方々の実態等につきましては、関係省庁と十分さらに詰めまして、もう少し手厚くできる問題があるのかどうか、この点につきましては勉強していきたいと思います。
#5
○目黒今朝次郎君 自治大臣、まあ国家公安委員長と自治大臣両方兼務ですから、これはいま厚生省の方でももうどうにもならないと。それから自賠責の期限の切れた方もどうにもならないと。しかし、病人は生きておるし、家族はそれで生活すると。そういう関係で、全国で宮城県の場合には一人に対して県が六十五万、それから市が七十五万、合計百五十万のお金を出して特別の補助をしているわけなんです。それからお隣の山形県がそのことをいま始めていると。それから四国の高知もそういうことをやっておる。いわゆる俗に言う宮城方式というものを自治体がやっておるわけなんです。これは皮肉なことに国立病院はほとんどこの病人は受けない、全部地方自治体の市立病院と、そういうような実態なので、問題が地方自治体の関係もあって非常に混乱している。でありますから、私は、社会労働委員会で提案をして、ぜひ田中厚生大臣が現地を見て来年の予算では抜本策を立てると、そういうことを一応われわれに公約していますから、交通安全の面からも、いま対策室長の答弁に従って、大臣の最大の努力をお願いしたいと、こう思っておるわけですが、大臣の決意のほどを聞かせてもらって、質問を終わります。
#6
○国務大臣(福田一君) ただいま御指摘がございました後遺症障害による方は、本当にお気の毒なお方であると思います。したがいまして、今後、田中厚生大臣以下に対して、本委員会において先生から非常な決意をもって御指摘があったこの後遺障害者に対する救済問題というものをひとつしっかり努力してもらいたいということを申し入れることにいたしたいと存じます。
#7
○委員長(吉田忠三郎君) 他に御発言もなければ、質疑は終局いたしたものと認めて御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#8
○委員長(吉田忠三郎君) 御異議ないものと認めます。
 これより討論に入ります。御意見がある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。別に御意見もなければ、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#9
○委員長(吉田忠三郎君) 御異議ないものと認めます。
 これより採決に入ります。
 自動車安全運転センター法案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。
  〔賛成者挙手〕
#10
○委員長(吉田忠三郎君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#11
○委員長(吉田忠三郎君) 御異議ないものと認め、さよう決定いたします。
 福田国家公安委員長から発言を求められておりますので、これを許します。
#12
○国務大臣(福田一君) ただいまは自動車安全運転センター法案について慎重御審議の結果、御採決をいただきまして、まことにありがとうございました。御審議の際の御趣旨を十分尊重いたしまして法律の運用に当たる所存でございます。
    ―――――――――――――
#13
○委員長(吉田忠三郎君) 次に、交通安全対策樹立に関する調査を議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#14
○加瀬完君 私は、交通事故裁定センターの件でお伺いをいたします。
 この設立許可申請が総理府に提出されていると伺っておりますが、そのとおりですか。
#15
○政府委員(竹岡勝美君) 任意団体の交通事故裁定委員会というものから本年の五月七日付で内閣総理大臣三木武夫にあてまして、設立代表者は加藤一郎元東大総長でございますが、その名前で財団法人交通事故裁定センターの設立許可申請書が総理府へ参っております。
#16
○加瀬完君 その目的、事業、資産等について御説明いただきます。
  〔委員長退席、理事目黒今朝次郎君着席〕
#17
○政府委員(竹岡勝美君) その設立趣意書等から見まして、これの目的といたしましては、交通事故被害者の利益の公正な保護を図るため、交通事故に関する紛争の適正かつ迅速な処理を行うことを目的としておるということが言えます。
 それから、資産につきましては、五十年度は、基本財産として三千万円、運営経費として一億六千九百八十三万円を計上して申請書を出してきております。
#18
○加瀬完君 結局いま御説明がございましたように、交通事故の被害者の利益の公正な保護を図るため、交通事故に関する紛争の適正な処理を行うということを目的にして、事業内容は、交通事故の損害賠償に関する紛争の適正な和解の斡旋をその内容とし、そして、その資金については、損保協会と農業共済連との出費によって形成されておると、こう了解してよろしゅうございますね。
#19
○政府委員(竹岡勝美君) たとえば、基本財産三千万円につきましても、そのうち二千八百万円は損害補償協会、二百万円が全国共済農業協同組合連合会、あるいは運営経費につきましても、損害補償協会から一億五千七百四十万、全国共済農業協同組合連合会から千百万というようになっておりますので、先生の御趣旨のとおりでございます。
#20
○加瀬完君 所管官庁を総理府としたのはどういうわけですか。
#21
○政府委員(竹岡勝美君) これは交通事故の被害者の救済という問題でたとえば運輸省所管に交通事故相談センターというものがありますが、一般的に交通事故被害者は各省庁にわたりますので、交通事故被害者の問題は総合的には総理府交通安全対策室が所管することということになっておりますので総理府の方に持ってきたわけでございます。
#22
○加瀬完君 関係省庁としては、法務、大蔵、運輸、農林、警察などだと伝えられておりますが、そのとおりですか。そして、どのような手続をこの間その関係官庁にはいたしておりますか。
#23
○政府委員(竹岡勝美君) これは交通事故相談等に関係しますから、法務省もかみましょうし、あるいは農業共済から金が出ておりますというような関係で農林省もありましょうし、警察もありましょうし、いまおっしゃりになりました各関係官庁が私の方もこの問題に関します関係官庁だと思っております。そのために、この申請書が来たことにつきまして、あるいはこの設立趣意書等につきましては、一応各関係官庁に連絡はしております。
#24
○加瀬完君 法務省へはどういう連絡をし、どういう答申を得ておりますか。
#25
○政府委員(竹岡勝美君) 法務省につきましては、私の方も実は問題にしておるのですが、この設立趣意書の寄付行為の内容を見ますと、交通事故裁定センターなる法人が和解の斡旋をするような文言になっておりますので、これはどうも妥当でないのじゃないだろうかというような点も私の方も持っておりますし、そういった点で法的に問題があるのじゃなかろうか、特に弁護士法との関連がどうなるであろうかというようなことを照会しておりますが、まだ法務省から正式な回答は得ておりません。
#26
○加瀬完君 許可申請に対する現在の審査状況はどうなっておりますか。
#27
○政府委員(竹岡勝美君) それにお答えいたします前に、この交通事故裁定センターを設立したいということで、これには発起人といたしまして、その代表に加藤一郎さん、それから日本でも全国的に有名な弁護士五名がこれに入っておるわけでございます。そして、私の方に相談に来られましたのは、いわゆる交通事故相談、そしてさらには嘱託の弁護士を厚く置きましてそしてその弁護士を通じまして示談の斡旋等まで進んでやりたいというような申し入れがあったわけでございます。
 私のほうには、すでに総理府所管で各都道府県、市町村、地方自治体に交通事故相談所というものをすでに九十六カ所置きまして、年間約二十万件の交通事故の相談を受けております。あるいは運輸省所管で、日弁連――日本弁護士会の交通事故相談センターというものも各府県の裁判所に置かれております。これも年間約三万件の交通事故相談を受けております。ただ、いわゆる弁護士法の……
#28
○加瀬完君 質問に答えてください。
#29
○政府委員(竹岡勝美君) はい。その壁がありますので、いわゆる従来の相談所だけではその示談の斡旋まではいかないということで、それに対するいろいろな注文も出ております。今回この提案されております交通事故裁定センターというものは、嘱託の弁護士をして示談の斡旋までいきたいというように、従来の交通事故相談より少し層の厚いものにしようというような意味の趣旨の話がございました。しかし、それには常に弁護士の協力を得なければなりませんので、この問題を私の方で認可します場合には、少なくとも弁護士会――日本弁護士連合会の一応の了解を得ることが前提であろうというように申し上げ、その間の日本弁護士会との調整等をわれわれは待っておるという状況でございます。
#30
○加瀬完君 そうすると、審査状況は、それらの関係者に対する話し合いがつかない限りは、許可の段階にはまだ至っておらないと了解してよろしゅうございますね。
  〔理事目黒今朝次郎君退席、委員長着席〕
#31
○政府委員(竹岡勝美君) いわゆる日弁連の方から、あるいは日本弁護士会の大阪とかあるいは名古屋とかいうやはり日弁連の方から、これに対しましての一部の批判が出ております。その批判の内容には若干誤解のある分もありますし、また、あるいはこの事故裁定センターの方からの寄付行為等を見ましても、若干問題のある個所もございます。そういう点も十分詰めてみまして、そうして特に日弁連のそういう批判等につきまして十分話し合ってもらう必要がある。ある程度両者の了解というものがなければこれは許可することがむずかしいのではなかろうかということで、その調停に乗り出してみたいと思っております。
#32
○加瀬完君 本センターを法人化する必要性は何ですか。
#33
○政府委員(竹岡勝美君) 先ほどもお答えいたしましたとおり、これが交通事故の被害者の交通事故の相談なりあるいは示談の斡旋等につきまして無償でこれの相談に乗るということで社会的に意義があるとするならば、公益法人としてこれを認可してもいいのではないだろうか、このように考えておるわけであります。
#34
○加瀬完君 裁判所の解決が鈍いので交通事故紛争を適正妥当に解決するために設立すると、こういうように伺っております。そして、それはそれで理由がありましょうけれども、次のような指摘も行われておりますね。紛争の解決は、単に迅速簡易であるだけで十分ということにならないではないか。解決する機関が組織上も運営上も十分にその公正さを担保されていなければならない。これは担保がないじゃないか。そして、さらに、裁判所が当然なすべきことを、裁判所の機能を高めることをせずに、裁判所の代用機関みたいな形でつくるということは裁判制度というものに対する矛盾ではないかと、こういう指摘がございますが、これについてはどうお考えですか。
#35
○政府委員(竹岡勝美君) 設立趣意書の中にまさに先生の言われたような文言がございます。しかし、現在の民事裁判に対します批判をしておることはまことに私は不適当だと思います。
 それから公正の担保というものは、むしろ私が聞いておりましたのは裁判の公正の担保という意味じゃなくて、往々にして私的な示談屋等が介入してきてこれを妨害しておるというような意味で聞いておったのですが、この文言から見ますと、裁判に対する批判的な文言があることは私は不適当だと思います。
#36
○加瀬完君 何が不適当か、もう一度そこを。――もう一回聞きます。私が申し上げましたのは、紛争の解決は、単に迅速簡易であるだけで十分ということにならないではないか。解決する機関が組織上も運営上も十分にその公正さが担保されていなければならないと、こういう意見がありますが、それに対してどう御判断をなさっていらっしゃいますかと、こう伺ったのです。
#37
○政府委員(竹岡勝美君) 交通事故の紛争につきまして裁判にかけた場合に、往々にして長くかかるということはよく言われております。
 それから公正の担保というものは、これは当然弁護士法によりましての弁護士の入ります場合あるいは裁判等では公正が担保されておると、このように思っております。
#38
○加瀬完君 これは裁判所の代用機関なり別の機関としてつくられるわけではないわけですね。ですから、法人でしょう。法人が斡旋なり裁定権というものを持つわけですね。弁護士以外にこういう裁定権というものを持たせる根拠というものが一体どこにあるのか、こういう問題が出てくるわけです。ですから、弁護士に依頼をして訴訟をするということならば担保がはっきりしておりますけれども、このセンターでの弁護士がやっておったようなことと同じような裁定までするということになりますと、これはどこにも担保がないじゃないか、こういう点を問題にしている向きがありますが、これに対して総理府としてはこの問題をどう御解釈なさっていらっしゃるか。
#39
○政府委員(竹岡勝美君) 少なくとも示談の斡旋等、いわゆる和解の斡旋のような法律事務行為を行いますのには、これは弁護士でなければできません。だから、法人がこれをなすということの点はいろいろ議論がございます。そのために、少なくともこの裁定センターという法人が和解の斡旋の主体者であってはならないと思います。あくまでも嘱託弁護士が弁護士の名でやらなければならないのじゃないだろうか。嘱託弁護士が弁護士法に基づいて示談の斡旋をしなければならない、法人がしてはならないのではないかと、このように私は考えるわけでございます。
#40
○加瀬完君 そうすると、こう解釈していいですね。交通事故裁定センターという法人は斡旋裁定ということはできないし、しないと。その法人が依頼をする弁護士の活動として初めていま言ったようなことが行われると。そうなりますと、この設立趣旨というのは、このとおりの設立趣旨であれば、これは許可をすることには総理府としては少しちゅうちょをせざるを得ないと、こう解釈してよろしゅうございますね。
#41
○政府委員(竹岡勝美君) まさにそのとおりでございます。そして、現在、財団法人の日弁連交通事故相談センターと、法人としてはこれと同じような趣旨のものでなければならないのじゃないだろうかという感じをもって、これの設立趣意書等につきましては十分検討しなければならぬと思います。
#42
○加瀬完君 そこまでわかりました。それで、先ほども御説明がございましたように、日弁連を初め、東京、大阪、名古屋、福岡各弁護士会から反対意見がいろいろ出ております。その反対意見の第一に、裁判所外に準司法機関をつくるということは憲法七十六条の一項、同三十二条、同十七条違反の疑いがきわめて強い、こう指摘をされておりますが、この点はこれは法務省関係にお答えをいただきたいと思いますが、いかがですか。若干説明を加えますと、裁定センターは、当事者である保険会社の紛争を処理する業務の進行に関し、損保協会すなわち保険会社から寄付を受け、実質的な報酬を得、不特定多数を対象として法律事務を取り扱うことができるというふうに構想されておるわけです。いま室長の御説明では、それは政府としては認めないということでありますから別でありますが、こういう構想は、法律事務を弁護士でないのに扱うということになりますと、これは認めるわけにいかないと考えてよろしいですね、法務省も。
#43
○説明員(青山正明君) 御承知のように、弁護士法第七十二条におきまして、弁護士でない者は、報酬を得る目的で法律事務を取り扱ってはならないと、取り扱うことを業とすることができないという規定がございますので、弁護士でない者が法律相談あるいは和解の斡旋等を行うということになりますと、この七十二条違反の問題が出てくると思います。
#44
○加瀬完君 弁護士会が指摘をしております七十六条の一項というのは「すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。」とありますので、このほかに斡旋、裁定、裁判所と同様な行為をする機関というものは認められないと、こう解してよろしいということですね。
#45
○説明員(青山正明君) 裁判所以外の機関でそういう紛争の処理が行われるということによって、国民の裁判を受ける権利であるとかあるいは司法権を侵害するということに直ちになるとは言えないと思います。ただ、裁判所に出訴して事件の解決を図ることができないために、やむを得ずそういう機関に行って解決するほかなくなるというような状態ができるとすれば、そのことは司法の運営のあり方を改善工夫するというような観点から検討しなければいけない問題だと思いますけれども、裁判所以外の機関でそういう紛争が解決されるということ自体で司法権を侵害するということにはならないのではないかと考えます。
#46
○加瀬完君 そこはもう一度お答えをいただきます。この裁定センターというのは、当事者である保険会社の紛争を処理する業務の遂行に関し、損保協会から寄付を受け、実質的な報酬を得て不特定多数を対象として法律事務を取り扱うと、こういう構想を持っているわけです、出願者の構想は。こういうことは、私が最初に指摘をした憲法の七十六条の一項、三十二条、十七条というものに当然問題を生じてくると、こう解していいでしょう。これをこのまま認めないという政府の見解は明らかになったわけですけれども、法的に念のために伺うわけですけれども、これがこのまま弁護士でない者が弁護士の行為と同じことをやるとすれば、それは現在の法律としては認めてはおられない、認めるわけにいかない、こう解釈してよろしいでしょう。
#47
○説明員(青山正明君) 弁護士でない者が報酬を得る目的で法律事務を業とすることを行うということになりますと、これは、先ほども申し上げましたとおり、弁護士法第七十二条違反の問題になりますので、これは許されないということになろうかと思いますが、御指摘の憲法の七十六条等の問題はまた別の問題ではないかというふうに考えます。
#48
○加瀬完君 いや、ここで議論しようとは思いませんがね、裁判所法を。しかし、「すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。」とあるわけでしょう。これは法律で決めたものでもないんです、この裁定センターというのは。任意の設立申請をしただけですよ。それが司法権に関する行為をするということは、これは認められないことでしょう。
#49
○説明員(青山正明君) お言葉を返すようでございますが、仮にそのような裁判所以外の機関で紛争を解決するということが行われることになりましても、国民はその機関に行かなければ紛争の解決が得られないというわけではございませんで、いつでも裁判所に出訴する道は保障されているのでございますので、憲法七十六条の問題には直接はならないのではないかという趣旨でございます。
#50
○加瀬完君 最後に弁護士に頼めば、その前には弁護士的な行為をだれがやっても弁護士法違反にはならないということにならないでしょう。最後弁護士に頼もうが、裁判所に訴えようが、そういうことには関係なく、現実に弁護士でない者が弁護士的行為をすれば、これは違反だということでしょう。この裁定センターは、裁定センターの設立者の構想だけから見れば、弁護士でない者でも裁定行為を、斡旋行為を弁護士と同じような行為をするというたてまえをとっているわけです。これは政府はそれを認めないとおっしゃっているんですからその実際の被害は出てこないけれども、そういう内容の機関というものが法律で決まるものでなく任意団体でたくさんできるということは、これは許されないことと解していいでしょう。
#51
○説明員(青山正明君) 弁護士でない者がそういう行為をすることを認めるということになれば弁護士法違反になるということは、そのとおりだと思います。
#52
○加瀬完君 次に、国家が公認の示談屋をつくるということにならないかという心配があるわけです。非弁性の疑いという点が指摘をされておりますが、この点はいかがでしょうか、いまとちょっと関連をする問題ですが。
#53
○説明員(青山正明君) 私ども、この交通事故裁定センターがどのような実体になるかということを詳細は承知しておりませんけれども、もし仮に弁護士でない者が相談の担当をするというような構想であるとすれば、先ほど来問題になっておりますように、非弁活動、弁護士法第七十二条違反行為をすることを認めるということになりますので、それはいわゆる示談屋を認めたというような表現になろうかと思います。
#54
○加瀬完君 総理府に伺いますが、こういう非弁行為性の疑惑というのが残っている限りはこの裁定センターはそのまま認めるわけにはいかないと、先ほどの御説明でそう了解してよろしゅうございますね。
#55
○政府委員(竹岡勝美君) 交通事故裁定委員会は、すでに昨年の二月から任意団体として発足しております。それで現在まで交通事故相談を約九百九十件受けておりますが、これには常に九名の弁護士を嘱託いたしまして、事示談の斡旋という法律行為に至ります場合にはこの弁護士に任してやっておるという意味からいいますと、この裁定センターは、この名前もまあ若干考えなきゃならぬかもしれませんけれども、一応交通事故相談所的な窓口を開いて、そして常に弁護士を数多く置きまして、事示談の斡旋まで乗り出していこうとする法律行為をやろうという場合にはこの弁護士をしてやらせるということで現在までやってきておると解しております。
#56
○加瀬完君 それならば、いまある団体を交通事故裁定センターという新しい法人格をつくって出発をさせ、目的も先ほど私が申し述べたような内容に変える必要はないわけですよね。変えたということには新しい性格が入っているわけですよね、設立者の趣旨説明からすれば。その趣旨説明をそのまま受けて認可をするとすれば、弁護士法の七十二条あるいは弁護士法の二十七条、こういうものに当然違反をしてくるということに私はなると思います。それはそういうことにならないということでありますから、あるいは、申し落としましたが、弁護士法の七十四条の二項、「弁護士でない者は、利益を得る目的で、法律相談その他法律事務を取り扱う旨の標示又は記載をしてはならない。」ということもあるわけですから、弁護士業務と同じようなことをいたしますという裁定センターというものはこれは認められない。御説明のように、あくまでも弁護士的業務というのは弁護士を通してのみ行うので、そこの職員、新しい法人格であろうとも、それが弁護士行為をする団体という認定は絶対にさせないと、こう解していいですね。
#57
○政府委員(竹岡勝美君) 先生の御趣旨のとおりでございます。だから、現在設立趣意書に盛られておりますような寄付行為等につきましても、その文言等につきましては、私が申し上げましたように、弁護士法に触れないような文言に改めるべきところは私は改めさせるべきだと、このように思っております。
#58
○加瀬完君 それから問題点の第三は、裁定センターと損保協会が余りに一体的ではないか、損保協会の代理をこの裁定センターがするということであっては被害者の実質的な補償にはならないと、こういう点が指摘をされておりますが、この点は総理府はどうお考えですか。
#59
○政府委員(竹岡勝美君) 私は、現在の交通事故の被害者等について一番大きな問題は、やはり相互の補償の問題で一番頭を悩めておりますので、こういう被害者等、あるいはこれは加害者も頭を痛めている問題はありますが、こういう当事者は交通事故の相談の窓口は多ければ多いほど私はいいのではないか。しかもそれはできる限り無償でそれをやっていただけるというような相談所のあることが非常にいいのではないかと思います。これをたまたまそれの基金といたしまして損保協会等がその基金を出しまして、交通事故相談、さらには嘱託弁護士を通じて示談の斡旋まで等乗り出すような交通事故相談的なセンターというものは、その公正さを担保するために、もし認可いたします場合には、われわれ十分それを監督しなければならぬと思いますが、直ちにその基金が損保協会から出ておるからこれが公正さを欠くとはまだ私も直ちに断言はできないのではないか。と同時に、従来の実績を見てみましても、強制保険だけ加入しておる、いわゆる任意保険に加入していない者も、この裁定委員会委任団体には相当相談に来ておるようでございますので、もし認可いたします場合にはその公正さにつきましての配慮は十分しなきゃならぬと、このように考えます。
#60
○加瀬完君 二点私はまだ疑点がある。裁定センターと損保協会等の組織上運営上の一体性というのは、役員の構成から見ても、資金の構成から見ても、これが中立公正な第三者機関という見方は遺憾ながらできないと思うのです。これに法人格を与える意味が一体どこにあるんだ、本当の意味の第三者機関になっておらないじゃないか、こういう点が私には疑問でございます。
 それから交通事故裁定委員会は、社団法人日本損害保険協会が昭和四十九年三月、交通事故紛争処理の一環として開設したわけでありますけれども、その業務はもっぱら各保険会社の行う相談業務の延長として和解の斡旋が主であって、いわゆる裁定の業務はほとんどないのが現状ではございませんか。実績として、裁定をするといったって、いままで裁定は一つもやらないで、保険会社との間の斡旋だけをやっておったというこういうものをそのまま延長して法人格を与えたって効果が上がるか、こういう疑問を感じますが、この点はいかがでしょう。
#61
○政府委員(竹岡勝美君) もしこれを認可いたしますとするならば、組織上少なくとも損保協会等、そういう民間利害者は断ち切らなければならない、公正な第三者が組織上の役員等にならなければならない、損保協会等からそういう役員を派遣するようなことがあってはならない、もし認可します場合にはそういう組織でなければならないと私は思っております。
 それから先ほど先生裁定ということを言われましたけれども、実は、この裁定というのが、裁定センターという名前をつけておりますけれども、裁定とは一体何か。要は、私が申し上げましたとおり、この法人格がいまの現在の法律でできますことは、いわゆる交通事故相談の窓口を開いておきますと、だれでも交通事故相談に来なさいと、ただし、嘱託弁護士をたくさん置いておりますから、場合によりますならばその場合示談の斡旋までその弁護士を通じてやってあげましょうと、弁護士をしてやらせてあげましょうといういわゆる和解の斡旋的な業務にとどまるべきだと思うのです。これがさらに法的な調停とかになりましたら、当然これは裁判所への訴訟を申し立てたりしなければなりませんので、業務的にも示談の斡旋程度にとどまるべきであろうと思います。その和解の斡旋資格が保険会社の単なる契約との延長だけだということは直ちに言えないのじゃないか。というのは、従来の実績を見てみましても、そういう窓口を開いておりますので、たとえば家族保険とかあるいは示談つき保険とか最近できておりますが、そういう加入者だけが来ておるのじゃないのでございます。強制保険だけしか入っていない、任意保険に入っていない者も若干これに来て相談に乗っておりますから、単に保険会社の代行的なことしかやっていないのじゃないかということは、過去の実績から見て直ちに言えない。と同時に、またそうあってはならないと思います。
#62
○加瀬完君 そうあってはならないのは同感ですよ。だから質問しているわけです。裁定センターという言葉は適当でないと認めてよろしゅうございますね。
#63
○政府委員(竹岡勝美君) 実は、私もこの裁定という言葉についてきのう発起人の方々に、一応来ていただき話を聞いておりますけれども、裁定という言葉には若干疑義があるのじゃないか、もう少し検討し直す必要があるのではないかということを申し入れております。
#64
○加瀬完君 これはこう確認してよろしゅうございますね。斡旋はするけれども、裁定の部面というものはこれは弁護士に任せるのだと。よろしゅうございますね。
#65
○政府委員(竹岡勝美君) その裁定という言葉が実は私もはっきりしないのです。少なくとも示談の斡旋、これですら弁護士でなければならないように弁護士法七十二条に出ておりますから、いわゆる示談の斡旋程度のところまでいくべきである。あとの裁定というのがたとえば調停とか何かさらに高度の法律行為であるということになりますならば、少なくとも法人としてはすべきではない。
#66
○加瀬完君 いずれにしても、弁護士行為に類するものはできないのだと、こう解していいですね。
#67
○政府委員(竹岡勝美君) 法人が弁護士活動ができるかどうかという問題については、いろいろ議論があるようでございます。しかし、そういう議論がある中で、法人として弁護士法に言う弁護士的な行為をすべきではない、あくまでも嘱託弁護士をしてさすべきではないだろうかと、このように私は考えております。
#68
○加瀬完君 そこで、そうすると、弁護士会または弁護士が協力しない限り、このセンターの運営というものはうまくいかないと解してよろしいですね。
#69
○政府委員(竹岡勝美君) 冒頭に申し上げましたとおり、この問題を持って来られましたときに、私も発起人の方々にこれは少なくとも弁護士会とよく話し合って来てくださいということを申し入れたのもその趣旨でございます。
#70
○加瀬完君 そうすると、総理府は、この認可あるいは許可に当たりまして、司法制度の根幹にも非常に関係のある大きな問題でもございますから、法律的な矛盾あるいはいま私が幾つか指摘しましたような未解決の問題点、こういうものが残されておりますが、これらは十分関係者の了解を得て、その上でなければ許可ですか認可ですかはしないと、認可する前には十分関係者と話し合いをして同意を得るように努力をするのだと、こう解してよろしいですか。
#71
○政府委員(竹岡勝美君) いま発起人代表である加藤一郎さんが洋行しておられますので、帰って来られましたら加藤一郎さんと発起人と日弁連の幹部の方とも会っていただいて話し合ってもらうような段取りも進めておりますし、私も間に入りましてどのようにしていったならば私の考えております本当の被害者保護のためになるようなものになるかどうか十分詰め合ってみたい、お互い両方での話し合いをしていただきたいと考えております。
#72
○加瀬完君 さっきからたびたび加藤一郎さんという名前が出ますが、加藤一郎さんは出願者ですよね。加藤一郎さんの意向というのは、出願の内容は、私が問題点を指摘したような内容を含んだものが出願されている。加藤さんの問題ではなくて、政府としてこの出願に対してどういう態度をとるかということが問題だと思う。加藤さんに当然政府の見解は話し合わなければならないでしょうけれども、その前に、弁護士会なりそれからそれぞれの関係者なりに、法的な矛盾の点、それから未解決の諸問題の点、これらを十分話し合いをして、その上に許可か否かを決めると、こう了解してよろしいですね。
#73
○政府委員(竹岡勝美君) そのとおりでございます。
#74
○加瀬完君 結構です。ありがとうございました。
#75
○委員長(吉田忠三郎君) 本件に対する本日の質疑はこの程度にとどめ、本日はこれにて散会いたします。
   午後一時二十九分散会
ソース: 国立国会図書館
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