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#1
第075回国会 公害対策及び環境保全特別委員会 第9号
昭和五十年六月十八日(水曜日)
   午後零時二十二分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 六月九日
    辞任         補欠選任
     鶴園 哲夫君     羽生 三七君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         藤田  進君
    理 事
                森下  泰君
                山内 一郎君
                内田 善利君
    委 員
                井上 吉夫君
                上原 正吉君
                金井 元彦君
                菅野 儀作君
                原 文兵衛君
                藤井 丙午君
                宮田  輝君
                神沢  浄君
                浜本 万三君
                小平 芳平君
                沓脱タケ子君
                近藤 忠孝君
                三治 重信君
   国務大臣
       国 務 大 臣
       (環境庁長官)  小沢 辰男君
   政府委員
       環境庁長官官房
       長        信澤  清君
       環境庁企画調整
       局長       城戸 謙次君
       環境庁企画調整
       局環境保健部長  橋本 道夫君
       環境庁自然保護
       局長       柳瀬 孝吉君
       環境庁大気保全
       局長       春日  斉君
       環境庁水質保全
       局長       大場 敏彦君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        中原 武夫君
   説明員
       大蔵省理財局特
       別財産課長    森  卓也君
       文化庁文化財保
       護部記念物課長  澤田 道也君
       厚生省環境衛生
       局水道環境部環
       境整備課長    吉崎 正義君
       通商産業省立地
       公害局公害防止
       企画課長     山田 勝久君
       通商産業省立地
       公害局公害防止
       指導課長     弓削田英一君
       通商産業省生活
       産業局紙業課長  沢田  仁君
       建設省道路局有
       料道路課長    下川 浩資君
   参考人
       日本道路公団理
       事        伊藤 直行君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○参考人の出席要求に関する件
○公害及び環境保全対策樹立に関する調査
 (自動車排出ガス規制に関する件)
 (富士地域の自然保護に関する件)
 (製紙スラッジの処理に関する件)
 (光化学スモッグ対策に関する件)
 (公害健康被害補償法の運用に関する件)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(藤田進君) ただいまから公害対策及び環境保全特別委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 去る九日、鶴園哲夫君が委員を辞任され、その補欠として羽生三七君が選任されました。
    ―――――――――――――
#3
○委員長(藤田進君) 参考人の出席要求に関する件につきお諮りいたします。
 公害及び環境保全対策樹立に関する調査のため、本日の委員会に道路公団理事伊藤直行君の出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○委員長(藤田進君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ―――――――――――――
#5
○委員長(藤田進君) 公害及び環境保全対策樹立に関する調査を議題といたします。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#6
○藤井丙午君 私はいま申しましたように、座って質問することをお許しいただきたいと思います。
 私は質問に入る前に、本委員会で各委員の皆様方が強調されておりますとおり、国民の生命の尊重と健康を守ることが何より大切であるということにつきましては全く同感であるということをまずもって申し上げておきます。しかしながら、私がここで申し上げたいことは、わが国の環境行政が理想を追うに急で、公害防除技術の開発状況や日本経済にかかわる経済的側面を無視していささか独走しているのではないかという懸念を持っておる次第でございます。
 そこで、まず第一に小沢環境庁長官にお尋ね申し上げたいことは、環境基準とは何ぞや、すなわちそれは公害汚染防止のための努力目標であるか、それともそれは規制値として確定して動かすことのできないものであるかという環境基準の性格についてはまずお尋ねいたしたいと存じます。
#7
○国務大臣(小沢辰男君) 私ども環境庁に対しまして、経済の発展なりあるいは経済の現状なりというものについてのどうも考慮が足らぬという御批判があることはたびたび私どもも聞きます。また一方、それとは逆に、どうも環境庁の姿勢が経済なりあるいは産業界の現状というものと妥協し過ぎるじゃないかと、環境庁は、そういうことは、公害基本法に経済との調和条項がなくなって以来、経済の問題は全く度外視をして人の健康と環境保全の鬼となってやるべきであるという御批判もまた受けているわけでございまして、どうも両面からいろいろと御批判をいただいておることはおっしゃるように事実でございます。
 さて、環境基準の性格でございますが、公害対策基本法の第九条にありますように、まさに「人の健康を保護し」「生活環境を保全するうえで維持されることが望ましい基準」ということになっております。まあいわば「望ましい基準」でございますから、しかも、その判断の基礎は「人の健康を保護し」「生活環境を保全するうえで維持されることが望ましい基準」でございますので、これがお尋ねのように確定した規制値として全く動かすことができないのかどうかというお尋ねにつきましては、やはり同じ条文の第三項に「第一項の基準については、常に適切な科学的判断が加えられ、必要な改定がなされなければならない。」という規定がございますから、科学技術の進歩によりまして、第九条の一項の規定によってつくりました環境基準でも科学技術の進歩等によっていろいろ適切な、科学技術の進歩というものに合わせて改定をしなければならないというふうに書いてございますので、全く動かすことのできない規制値であるというふうには法律上考えられないわけでございます。
#8
○藤井丙午君 いま長官のお話で、まあ技術の進歩その他等考量して環境基準も改定することあるべしというお話を伺いまして大体の御意向は了解しましたが、実はこの中公審の答申の中で、「環境基準による地域大気汚染の評価について」、「本環境基準は、二酸化いおうによる大気汚染の人の健康への影響を防止するうえで、十分に安全性を見込んだ極めてきびしい濃度条件に設定されるため、本環境基準を若干こえる測定値が得られた場合においても、直ちにそれが人の健康被害をもたらすものでないことに留意すべきである。」と、かように述べております。しかるに現実では、各地方自治体等においては環境基準をあたかも確定した法的規制値というように解釈して、これを根拠にきわめて厳しい公害防止協定を各企業に強制しておるというのが実情でございます。
 最近新聞紙上で問題になりました千葉市の川崎製鉄所と県、市との公害防止協定におきましても、製鉄所から出る公害物資、硫黄酸化物は環境基準一日平均〇・〇四ppm以下、また窒素酸化物は一日平均〇・〇二ppm以下等環境基準の厳守を要求しております。川崎製鉄は、後に述べるようなNO2〇・〇二ppmというような、いまだ防除対策技術の開発していないような基準をやむを得ず受け入れて、国の許可と千葉市並びに千葉県の同意を得て、本年四月、従来の古い溶鉱炉と代替するために、日産一万トンの第六溶鉱炉を設備費約五千億を投じて昭和五十二年春の操業を目指して建設に着手しておるにかかわらず、一部地域住民の方々は、この大気汚染を防除しようとする計画についてさえ建設差しとめの補償請求の訴訟を提起しておることは御承知のとおりでございます。もし万一、仮りに、かつての神通川流域のイタイイタイ病裁判のように、裁判所がカドミウムとイタイイタイ病との因果関係について、当時の厚生省の見解、すなわちこれは現在ではむしろ少数学説とさえ論議されておる萩野学説に基づいて決められた厚生省見解を根拠として判決が下され、三井金属鉱業株式会社に巨額の補償金の支払いを命じたと同様に、現在の防除技術の開発状況ではとうてい不可能とさえ言われている厳しい環境基準を根拠に裁判所がもし判決を下すというような事態が起こるとしますと――これは全く想定の問題でございますが、これは単に川崎製鉄ばかりではなくて、日本のあらゆる製鉄所の溶鉱炉の火を消さなきゃならぬという重大問題にも発展しかねないようなことになるのでございます。これは単に製鉄業界のみならず、日本経済全体にかかわる重大な問題と考えまするが、この千葉の川崎製鉄所の問題について小沢長官はどのように受けとめておられるか、ちょっと御所信を伺いたいと存じます。
#9
○国務大臣(小沢辰男君) 私から千葉県の問題につきまして、具体的な問題についてどうこうということをこの場で申し上げるのは、どうも、直接的に回答を申し上げるのは、やはり環境行政というのは、国会の御意思等もありまして、その実施の諸問題あるいは権限というものを知事にほとんど委任をしておりますので、したがって、そういう面から見ますと、いまのお尋ねの個々の地方の問題等について私がここで所見を述べることはいかがかと思いますので、実は総括的な私どもの考え方、地方とのどういう連絡になっておるかということを申し上げて御参考にしていただきたいわけでございます。
 いまおっしゃいますように、環境基準というのは、先ほどお答え申し上げましたように望ましい基準で、いわば私どもの目標値でございます。その目標を達成するために、国の方では汚染物質ごとに全国的な規制基準というものを決めているわけでございます。ただ、法律にありますように、それぞれの地方におきましては、地方がその地域の実情に応じまして効果的に環境基準を達成するための条例によってある程度規制基準というものに若干上乗せをいたしまして、その地域に応じて上乗せ基準――これは環境基準ではありませんが、規制基準、そういうものができるようになっているわけでございます。これは法律上そういうふうに決められてございます。このような法律上の制度を補完する意味で、都道府県知事、市町村と事業者がそれぞれ協議をしまして公害防止計画というものをいろいろ協定をして決めておられるわけでございますので、これはまさに――もちろん、私法上の契約じゃありませんが、公法上の目的を達成するための公共団体と事業者との協定でございますから、そういう趣旨のものでございますが、そうした公害防止協定によりまして事業者も大気汚染防止に協力し、地方公共団体も住民の健康の保護のためにいろいろ施策をやっていると、こういうことでございます。したがって、これは、本来、千葉県なら千葉県という公共団体と、そこに立地をする事業者との間の取り決めでございますから、その当事者間の問題というふうになるわけでございます。ただ、NOxにつきましては、焼結炉とかあるいはコークス炉というような非常にNOxが出やすい、また多量に他の施設よりも出るものにつきまして、先生がちょっとお触れになった技術開発の現状等から見て、NOxの排出基準というものがまだつくられていないわけでございます。また、その意味において、このNOxそのものは総体的に総量規制というものにまだ踏み切ってないのでございます、制度として。そこで、結局、それぞれ技術開発を、国も急いでおりますが、また民間でもそれを努力していただいておる。そこで、地方公共団体と事業者がそれぞれの地域においてお互いに公害防止計画全体を基礎にしながら協定を結んでいるというようなやり方になっているわけでございますので、本来、千葉の問題についても、それぞれ当事者間の協定、両者間の問題であると、かように御理解をいただければいいんじゃないかと思っております。
#10
○藤井丙午君 長官のいまの御答弁はよく理解できますが、現実は、さっき申しましたように、環境基準を、地方の各自治体はむしろこれに上乗せをして厳しい公害協定を、強制というか要請しておるというのが実情でございます。企業は、むろん、地域住民の健康を守るために公害防止に全力を挙げていることは当然でございますけれども、いまお話しのように、根本のNOxの環境基準それ自体について、長官先ほどのお話しのように、まだ大いに改定、検討の余地があるというのにもかかわらず、それを根拠に、しかも、それにさらに上乗せしたような強い厳しい公害協定を実は企業に要請しておるというのが実情でございますから、その辺のところを政府としてはどういうふうに行政指導されるか、ちょっとお伺いしたいと思います。
#11
○国務大臣(小沢辰男君) おっしゃるように、日本のNOxの環境基準でございますが、これはアメリカの五倍というような、しかも、安全度を相当大幅に見た厳しい基準でございます。これは、先ほど言いましたように、九条の第一項で、人の健康を維持する上において全く望ましい基準としてつくり上げた。したがって、地方では――誤解をしていただきたくないんですが、この環境基準をさらに上回る規制値というものは出していません。また、その必要はないわけでございます。ただ、規制基準についての環境基準が目標としてありまして、そこへ到達するために規制基準というものを決めているわけでありますが、その規制基準に地域の実情に応じて上乗せができると、法律上あるものですから、それでやっておるわけでございまして、環境基準そのものを、さらにそれを上回るような、地方が独自に上乗せができるという法律上の規定にはなっておりませんので、もしそういうことがあるとすれば、それは法律上は規制基準についての上乗せ、その地方の実情に応じてということになっておりますものですから、誤りがあれば指導しなければいけないと思っておりますけれども、私どもの聞き及んでおる範囲では、環境基準にさらに上乗せをするようなそういう具体例というものは、どうもまだつかんでおらないわけでございます。
#12
○藤井丙午君 いま長官から日本のNO2の環境基準はアメリカの五倍というお話がございましたが、まさにアメリカの五倍、西ドイツの七倍というような世界に比類のない厳しい環境基準に設定されて、これを五年を超えない期間内でできるだけ早期に達成するようにということになっておりまするが、現実には、いま申しましたような地方自治体と各企業との間の公害防止協定というのは非常にむずかしい問題に当面しておるということは、これは事実でございます。事実上NO2の総量規制さえ迫っておる自治体もございます。ところで、わが国のNO2の環境基準は幾多の科学的誤謬を犯して設定されているということが米国の議会における政府証言によって指摘されております。これは議会の議事録にも収載されております。すなわち米国環境保護庁、環境研究センター人体影響部長のC・M・シャイ博士――この方は世界的な権威と言われておる方でございまするが、同博士は、日本のNO2環境基準の医学的検討報告書において、日本のNO2基準の根拠となった疫学調査は、第一に、本来慢性器管支炎の有症率増加は年単位の長期累積的な汚染曝路に起因するにもかかわらず三カ月という短期間の、しかも月間わずか数十時間の測定値を用いておる。第二に、また有症率の調査も短期間であるばかりでなく、大気汚染以外の母集団決定因子に関する情報も欠如しておる。第三に、浮遊粒子状物質の環境基準を超える高濃度汚染と有症率との関係を全く無視してNO2汚染濃度だけを取り上げておる。第四に、さらに飛躍してNO2汚染と有症率増加に関係ありと誤って結論しておると、かように指摘して、誤謬だらけで医学的見地からとうてい容認できない基準であると決めつけております。わが国のNO2環境基準は、御承知のように、平均値一日〇・〇二ppm以下と告示され、環境庁は四十八年全国調査で基準合格はわずか二%と発表しておりまするが、これを米国基準で判定すれば九八%以上が合格するから、日本のNO2汚染はほとんど問題でないという見方をする学者もあります。加えて、NO2〇・〇二ppmというような超希薄濃度は連続測定機器の誤差範囲に入ってしまい、一時間値の連続測定は困難であります。環境庁の測定はザルツマン自動測定器あるいはこれに準ずる方法によって行われておりまするが、その目盛り表示範囲は大部分のものがゼロかまたは〇・五ppmであり、最近は〇・一ppmのものも開発中とのことでございますが、各測定器、機器メーカーに当たって私が調査しましたところによりましても、いまのところNO2〇・〇二ppmというような超希薄濃度の測定できる機器の開発はほとんど不可能であると申しております。このように数々の誤謬と欠陥の多いNO2基準の設定について、電力、鉄鋼、自動車などの主要メーカーについて調査したところでも、短期間に数兆円にも上る巨額な対策費を強制し、しかも、それが国民の健康を守るためにさほどの役に立たないというようなことになりますと、後に詳しく述べますように、国民経済すなわち国民生活にも重大な経済的負担を強いることになりかねない大問題と考えられまするが、これに対する小沢長官の御見解を伺いたいと存じます。
#13
○国務大臣(小沢辰男君) 私ちょっとアメリカの環境基準設定の、何といいますか、制度上の考え方、態度と、日本の環境基準を決める場合のやり方と、基本的に違う点がございますことをまず御理解をいただきたいのであります。それは、アメリカでは先生がいまおっしゃったような考え方で環境基準というものを決めます場合に、当時のもろもろの科学的な、技術的な条件、それとこの経済に与えるいろいろなプラス・マイナスというものをこの両面から検討をしまして、そして環境基準というものを決めているわけでございます。ところが、日本の考え方あるいは法律上の制度、たてまえというものは、環境基準はそういう脱硝技術がまだそこまでいっていないとか、あるいはまた音源対策として技術がまだそこまでいっていないとかということでなくて、そういうものは考えに入れないで、人体に対する健康に与える被害、影響というものについてのもちろん医学的な検討をしなければいけませんけれども、そういうことを人の健康を維持するに望ましい基準として、目標値として環境基準を決めまして、一方規制基準につきましては、あるいはまたものによっての達成期間につきましては、今度はその当時知見される科学的な技術というものを基礎にしてその達成期間なり、あるいは規制基準というものを決めていくと、そうしてこの目標に到達するように向上していくという考え方とやり方になっておる。アメリカの方は、まあいわば規制基準と日本の環境基準というものを一本にしたような考え方が基礎に立ち、特に経済に対するいろいろなメリット、デメリットというものをすべての環境問題については配慮しなきゃいけないというような、この基本のそうした法律上あるいは制度上のたてまえで来ているものですから、先生のおっしゃるような御意見から見ますと、日本の環境基準の立て方とアメリカの立て方が全く違ってくるわけでございます。そういう意味で、アメリカの方より私どもの方が非常に厳しくなっている理由もそこにあるんじゃないかと思われるわけでございますし、また、まあこれはいろいろ御批判あろうかと思いますが、医学的な安全度というものを、人の健康の場合に考慮しますときに、アメリカのNOxの環境基準の安全度をどの程度見ているかというと約十倍に見ている、日本は五十倍に見ているという点の違いがここに出ているわけでございますが、食品衛生法上のいろいろな添加物や、その他食品衛生の安全度を考慮するときに、厚生省の方では大体安全率は百倍に見ておる。そのほかの面でも大体五十倍以下という安全率をとっているところはなかったわけでございまして、動物実験から人体に対する換算の仕方をいろいろ考えてみまして、そうしてそこで安全率を、出てきたものにどの程度やるかということが、いろいろ医学的な専門家が集まって決定をされたのが、このいまの四十八年でございますか、環境基準〇・〇二、一日平均ということが出てきているわけで、どうしても日本の環境基準の公害対策基本法の考え方、九条の一項の考え方というものと、アメリカの環境基準を設定する場合の考え方、あるいは制度のやり方というものが全くそういう意味においては違うものでございますから、そこでアメリカと比較してこうだ、あるいはアメリカから見ていろんな批判が出るということも当然のことではないかと私は思っておるわけです。ただ、いまおっしゃるアメリカの医学的な見地から見た日本の環境基準に対する細かい批判、あるいは測定の問題等については、専門家の局長からなお補足説明をさしていただきたいと思います。
#14
○政府委員(春日斉君) 前半は長官がお答え申し上げましたので、具体的な問題につきましてお答え申し上げます。
 確かに、一九七三年の十一月のアメリカの上院公共事業委員会に提出されましたシャイさん、まあ当時先生の御指摘のように環境研究センター人体影響部長でございましたが、日本のNO2の環境基準に対するコメントをもとに、わが国の環境基準が決定的に誤謬だらけであるかのような指摘をする方々がいらっしゃいます。しかし、シャイ氏の意見書を上院に提出したという背景はひとつお考えいただきたいのでございますが、それは、当時米国におきます自動車の排ガス規制基準を緩和する必要があるかどうか、こういった問題の検討の際に出されたものでございまして、その趣旨は、アメリカの環境基準の変更を日本の環境基準によって行う必要のないということを申しておるわけでございます。さらにシャイ氏自身がその意見の中で認めておりますように、シャイ氏が言っている言葉でございますが、日本のNO2の環境基準の設定の経緯はシャイ氏は十分に理解しておりません。また十分な資料をもとに批判したわけではないのでございます。要するに、日本の全報告書を入手しないうちにシャイ氏は批判を加えたために、幾つかのシャイ氏の意見の中には誤解が生まれております。したがいまして、シャイ氏の批判というものが即わが国の環境基準を改定する理由にはならないわけでございます……
#15
○藤井丙午君 私はちょっと時間がきょう限定がありますので、じゃその点はそれでもう結構でございます。
 ちょっと続いて長官にお伺いしたいんですが、いまのお話によりますと、アメリカと日本との環境基準の決定の方法が根本的に違うと。しかし、私どもに言わせますれば、さっき前提に申しましたように、人命を尊重することは、これはもう一番大切であることは申し上げるまでもございませんが、人間は空気だけで生きているんじゃないんですよ。衣食住とも全部これ経済活動、生産活動を通じて生きているわけでございますから、そういうただ単に医学的な問題だけでこの厳しい基準を決めて、それで事足れりとするようなことでは、これは大変なことになるんで、これは後から詳しくまた御質問します。
 そこで、いまお話の中にも、この規制基準なり、あるいは達成の期間等を、その防除技術の研究開発の状況その他の諸条件を踏まえて、これを緩和したり延長する意思があるということをお話しになりましたが、それはさように受け取ってよろしゅうございますか、いまそういうことを長官おっしゃいましたけれども。
#16
○国務大臣(小沢辰男君) ちょっともう一遍……。
#17
○藤井丙午君 規制基準を緩和したりあるいは達成期間を延長することあるべしという御答弁ございましたが、それはそう承知してよろしゅうございましょうか。
#18
○国務大臣(小沢辰男君) 先ほど私が申し上げましたのは、環境基準を常に適切な科学的な、技術的な検討を加えて改定することが法律上の規定になっておるということを申し上げまして、したがって全く不動のものではないと、こういうことを申し上げたわけでございますので……。
 それからもう一つ、おっしゃるようにこの望ましい環境基準を決定いたしまして、そこへ至る達成期間なりあるいはまたそのための規制値を当面こういうふうにするぞということをいろいろ決めてあります、いろいろな公害対策について。それが、この達成期間なり、あるいは自動車のときも御批判が実は国会でもございましたように、自動車の一番私どもが理想とするのは、四十七年十月に告示をしまして行政方針を示したわけでございます。窒素酸化物については〇・二五を理想値だと、こう出しました。しかし、やはり自動車のいまの技術から見て、とてもそれは無理だということで、暫定値をこの五十年規制なり五十一年規制を〇・六グラムなり〇・八五グラムということに決めたように、そういう考え方で、この理想的な環境基準というものは変えないけれども、それに至る段階においては、当時知見されるやっぱり科学的な技術を尊重していかなければいかぬということからああいうような結果にもなったということをお考えくだされば、この環境基準と規制基準というもの、あるいはまた環境基準を達成するための期間というものについては、これは当時技術的には全くできないと。しかし、いまはこういう現状で無理かもしらぬけれども、いろいろデータを研究してみると、学者間では、あるいは五年後あるいは八年後にはこれができるであろうと予見されるような問題も加味して達成期間というものを決めていっているわけでございますから、そういう御趣旨で御理解をいただきたいと思うわけでございます。
#19
○藤井丙午君 はい、わかりました。
 次に、窒素酸化物は、高温燃焼等によって必然的に発生することはもうこれは当然でございまするが、NO2は自然界にも大量に発生して、土壌中の嫌気性バクテリア及び海洋から大気中に放出されてNO2やNO3となって再び土壌に戻ると聞いておりまするが、NO2のほとんどは自然発生分で、人工分は全体の十五分の一と推定されていると言う学者もおられます。したがって、自然発生分によって生ずるNO2のバックグラウンド濃度は、地域あるいは機関、その時によって異なりまするが、およそ〇・〇〇三ppmから〇・〇三ppmと見られておりまして、正常と思われる農村におけるNO2濃度でも平均〇・〇二二ppmを示しております。そこで、いま環境基準となっておりますNO2〇・〇二ppmとの差は〇・〇〇七ppmというほんのわずかのものでございます。そういたしますと、この自然に発生する分と工業生産等から出るものとを合わせて考えまする場合に、この〇・〇二ppmというNO2の環境基準を達成するためには、これは工業生産あるいは交通機関あるいは暖房等の人為的な発生源の大半をとめなければならぬといったようなきわめて厳しい、これは大変なことになるわけでございます。
 そこで、申し上げるまでもなく工業原材料のほとんどない、また食糧等についても大部分を海外に依存しなければならぬというきわめて小資源国の日本としては、国民経済を維持し、国民生活を向上するために海外から膨大な原材料を輸入して、これの加工貿易によって経済を運営していくほかないということはもう御承知のとおりでございまするが、しかし、輸出の六〇%以上が重化学工業によって占められている現状でございまして、きれいな空気さえ吸っておれば生きておれるというような簡単なことであれば結構でございますけれども、先ほど申しましたように衣食住ことごとくこれ生産活動を通じて、ことに加工貿易によって国の経済を、あるいは国民生活を支えておる日本の現状におきまして、このような世界に比類のないNO2の環境基準を強行しようということについて、小沢長官は、この国民経済なり、国民生活との関連において、一体こういうことがはたしていいのか悪いのかというこの経済的側面の関連においてどうお考えになるか、私はお伺いしたいと思います。
#20
○国務大臣(小沢辰男君) 私も、先生のような非常に広い視野と高度の経済的な知識、経験を持つ男ではありませんが、しかし相当私自身としても育環境あるいは私の育った環境からして経済人の小規模な一人ではあろうかと考えておりますから、先生のおっしゃることを私はわからぬわけじゃないのです。しかし私は、環境庁長官というのは政治家ではありますが、同時に法律のもとで法律を忠実に執行する行政官庁の長であることは、これはまた間違いないわけでございまして、もし先生のような考えに立つとすれば、立法府において公害基本法の中から経済との調和条項というものをお取りにならぬかったでありましょうし、もしそういう考え方を、本当に日本全体の将来のために先生のような考え方で進めていかなければならぬと、国民も、国民の代表たる国会もお考えになるならば、立法論としては私はよく理解できますけれども、何分現実の法律を施行する責任を持っている私として、法律のたてまえを度外視――先ほど言いましたように、アメリカの諸制度の立て方なり、考え方なり、こういう考え方がいいのか、日本の考え方、あるいは立法の制度というものがいいのかということについては、これはまさに立法論になると思いますから、そういう意味では先生方のお考え、国会というものの意思がどこにあるかによって、私どもはやっぱり行政官庁の責任者としてはこの法律の忠実なる施行というものをやっていかなければいけない。しかしおそらく、私はこの制度の立て方をいろいろ、六カ月でございますが、勉強してみ、現実の問題にぶつかってみますと、やはりこれがいま全く先生のような考え方をわが国の制度においても無視していない、足りないかもしれませんが、無視していない。そのために環境基準は特に九条では理想的な旗を掲げなさい、しかしそれに至る今度は達成期間なり、あるいは規制基準というものは、その目標を達成するための手段として考えるときには、そういういろいろな当時の技術的な客観情勢というものを踏まえてやると。
 私、衆議院の委員会で、共産党の代表の先生方の御質問の中にも、いま私が申し上げたと同じような考え方で言われまして、環境基準はあくまでも人の健康を中心にして考える、しかし達成期間あるいはそれに至る規制の基準というものについては、そのときに考えられる技術的な、あるいはその他のいろいろな要素を考えてやるべきであるという御質問があって、そのとおりだろうと言われますから、そのとおりだと申し上げたわけでございますが、そういう点もいろいろ制度の中にございますので、そういう点は、私どものこの行政庁としてのいまの法律上のたてまえ、現行法のたてまえ、制度というものと立法論とどうも一緒にして議論をされると、私は政治家としてでなくて、行政官庁の長としての責任者としては、どうしても立法論にまで踏み入って先生のお考えについて賛否をここで申し上げるわけにいかぬわけでございますので、この点は御了解いただきたいと思います。
#21
○藤井丙午君 まあ、まさにいま環境庁長官として法律にきめられたその線の上で行政を運営していかなければならぬという長官の立場は、私はよく理解します。実は、この問題は、立法の問題であると同時に、三木総理大臣もここへ来ていただいて所信を伺わなければならぬような大きな問題でございますけれども、遺憾ながら三木総理は大学を出てからすぐに政治家になられた方でありまして、この間も一時間ほどいろいろ話をしましたけれども、経済のことはあまりわからぬから、少なくとも小沢長官の方が経済のことは詳しいと思って御質問を申し上げておりますが、これは率直に申しまして、なぜこういう小資源国の日本が生きていく上に必要な経済的な問題を踏まえておるにもかかわらず、西ドイツの七倍、アメリカの五倍、いわんやヨーロッパ諸国では全然問題にしてないような厳しいものを設定しなければならぬかということについて、これは立法の問題であり、大きな政治的な判断の問題であるということであれば、もうそれ以上いま長官を追及してもこれは答えは得られませんから、また別の機会にお話をしなければならぬと思っております。
 次に技術的問題についてお尋ねいたしまするが、中央公害審議会の答申におきまして、NO2の「発生や排出を抑制する防止技術は現在のところ開発に着手した段階であるため、その実用化には相当の時日を要すると予想され、窒素酸化物による汚染を改善することには極めて大きな困難が伴うものと考える。
 したがって、本環境基準を維持達成するためには窒素酸化物に関する脱硝技術等の防止技術の開発が不可欠の課題である。このため政府は従来に例を見ない大規模な国家的プロジェクトとして五年以内の実用化を目途に技術開発を強力に推進する必要がある。」と、こう強調しております。
 しからば、政府としては、このような従来に例を見ないような大規模な国家的プロジェクトを推進して防除技術の開発に取り組んでおられますかどうか、おられるとすれば、その予算、規模、研究開発の進展状況、あるいは五カ年以内に実用化のめどが立っているかどうか関係当局の明確な御答弁を願いたい。
#22
○政府委員(春日斉君) 脱硝技術の開発につきましては、通産省の工業技術院におきまして各種の研究が行われ、また技術開発のため補助金の交付等が行われております。その成果及び評価の問題につきましては、通産省の当局から御答弁いただきたいと思いますが、環境庁におきまして、今後の窒素酸化物の排出規制の強化の参考資料といたしますために、脱硝技術の開発状況につきまして昨年の六月、さらに現在も国内のメーカーから実情を聴取しているところでございます。その結論はまだ出ていないわけでございますが、大体次のとおりだと私ども考えております。
 まず第一に、脱硝技術は大別して乾式と湿式の二つがございます。このうち乾式法が比較的進んでおりまして、特にダストや硫黄酸化物を含まないクリーン排ガス用の脱硝装置というものは正常に現在運転されております。実用化の域に達しておると考えております。
 次に重油燃焼排ガスのようなダーティな排ガスに対する乾式法についても、ダストによる目詰まりとか、あるいは硝黄酸化物、ダストによる触媒活性の低下というようなものが問題でございますが、試験装置ではほぼ満足できる結果が得られている段階でございます。ただ、熱交換器の腐食とか、目詰まり、装置の安定性、こういったエンジニアリング面及び触媒ライフの問題がまだ残っておるわけでございますが、これらの問題は早急に解決されていくものと、そういう段階にあると考えております。で、湿式法でございますが、これは一般に同時に脱硫、脱硝ができるわけでございまして、非常に期待される方法でございますが、二次公害を発生させないような廃液処理のシステムを確立するということが技術的に一番大きな課題だと存じております。現在試験研究が続けられておりまして、パイロットプラントによる成果が出るのは本年の夏以降だろうと予想され、実用化の見通しについては必ずしもはっきりしていないところがあるわけでございます。ただ焼結炉の排ガス、これはもうダーティ度の高い排ガスであることは御承知のとおりでございまして、脱硝技術としては最もむずかしい部類に入ると思います。現在パイロットプラントによる試験が行われておるわけでございますが、環境庁といたしまして十分なデータが得られた段階で技術的な判断をいたしたいと考えております。
#23
○説明員(弓削田英一君) 脱硝技術の開発に関しましてまさに先生御指摘のように、非常に環境基準の達成のために重要であるわけでございますが、このため通産省におきましては、工業技術院の傘下の試験所、特に公害資源研究所が中心でございますが、これを中心といたしまして、昨年度三億三千百万円、それから本年度三億五千三百万円の予算で燃焼の改善の研究――これはもっぱら燃焼の過程に生じます窒素酸化物を抑制するための研究でございますが、こういう研究であるとか、あるいは脱硝技術の開発研究、さらに先ほど環境庁からも答弁のございました、非常に脱硝技術で問題になりますのは触媒の問題でございますが、そういう高性能の触媒の開発研究ということを主体に現在研究を進めている段階でございます。さらに民間におきましては、御承知かと思いますが、重要技術研究開発費補助金制度というのがございまして、通産省といたしましては四十九年度から新たに窒素酸化物対策技術枠というものを設けまして、四十九年度の予算は六億円でございますが、本年度はこれを七億円にふやしまして、民間におきます技術開発研究の促進を図っているところでございます。
 そこで、主要業種におきましてどういう技術研究が行われているか、あるいはその進捗状況について概括的にお話し申し上げますが、まず鉄鋼業でございますが、御承知のとおり、鉄鋼業におきましては鉄鋼連盟の中に鉄鋼業窒素酸化物除去開発本部というのが設置されておりまして、ここで窒素酸化物の除去の技術の基本的な戦略と申しますか、基本的方針といいますか、こういうものを検討いたしますと同時に、その下に鉄鋼設備窒素酸化物除去開発基金及び鉄鋼業窒素酸化物除去研究組合という二つの組織が、それぞれ四十八年の九月と四十九年の三月に設定されておりまして、開発基金におきましては、これを通じまして大学であるとか、あるいは民間の研究所、あるいは関連業界に窒素酸化物の除去開発のための助成金を交付して開発を進めているということでございます。さらに、研究組合の方では実際のテストプラントを動かすということが中心でございまして、現在、川崎製鉄千葉製鉄所、それから新日本製鐵の八幡製鉄所、それから住友金属工業の鹿島製鉄所にそれぞれテストプラントを設置いたしまして研究を進めているわけでございます。研究テーマは三つございまして、一つは焼結工場から出ます排煙の窒素酸化物をアンモニアによって還元するというプロセスでございまして、もう一つは電子線を照射いたしまして固型化し除去するというプロセスでございます。それからもう一つは、焼結用の粉コークスを高温で処理いたしまして、コークス中に含まれる窒素の含有量を低下させるという研究でございまして、これらの研究は、それぞれ開始時期が違いますが、四十九年の四月から始まりまして、一応五十一年三月なり、あるいは五十二年の三月には終わるということになっておりまして、現在研究を進めているという段階でございます。このために鉄鋼業におきましては四十九年から三年ないしは四年間の間に七十億円という多額の開発費を投ずる計画になっているわけでございます。
 それから電気事業でございますが、電気事業におきましては現在、現段階で技術的に実施可能なものにつきましては逐次実施するということでございまして、一つには排ガスの混合燃焼あるいは二段燃焼等によりまして窒素酸化物の発生を除去する、抑制をする、こういうためのボイラー改造等を進める一方、LNG等の低窒素燃料を使うということで当面対策を進めているわけでございますが、そういう低窒素の含有の燃料というのは必ずしも潤沢ではございませんので、どうしても根本的な開発というのは脱硝技術の開発ということになるわけでございますので、これらにつきましては各電力会社は関係業界と協力いたしまして、ただいま七つのテストプラントが動いているということでございます。
 それからさらに自動車関係でございますが、これにつきましても各社総力を挙げて規制基準の達成のための努力をしておりまして、私ども聞きましたところによりますと、四十九年度までに各社合計で千七百億円という多額の投資をしている、さらに本年度は七百億円という開発研究費を投ずるような計画になっておりまして、自動車産業におきましても規制基準の達成のための研究開発に十分の努力をしているということでございます。
 それでは、現在までの技術の評価ということになるわけでございますが、まだ研究が途上でございまして、これを評価するという段階では必ずしもございませんけれども、一応問題は脱硝技術全般にとりまして触媒の問題が、一番大きな問題じゃなかろうか、特にその強度なり寿命ということが問題になりますんで、今後とも有効な触媒の開発ということが重要な研究テーマになりますし、特に先ほど環境庁からも御答弁ございましたように、クリーンガスについては一応の成果を見つつあるわけでございますが、いわゆる焼結工場等から出ますSO2あるいはばいじん等を含みます窒素酸化物の除去につきましてはかなり問題があるということで、この面の研究を今後とも続けていく必要があろうかと思います。それからさらに実際の運転になりますとロードの変化、負荷の変化というものがございますんで、こういう負荷の変化にどう対応していくか、この辺の技術的な問題も残された課題だろうかというふうに思っております。
 通産省といたしましては、御承知のように、五十三年度、一部地域につきましては五十六年度が環境基準の達成目標年次になっておるわけでございますが、この目標達成のために今後とも格段の努力をしていきたい、かように考えている次第でございます。
#24
○藤井丙午君 いま御努力のほどは伺いましたが、大部分は民間の負担で、民間の研究開発に依存しておって、大規模な国家的なプロジェクトを推進しておるということはまことにほど遠いことでございまして、これが果たしてこの中公審の答申にもうたわれておるような方向で政府として問題を取り上げておられるかどうかについては、私はきわめて不満の意を表するものでございます。ただいま、自動車産業界、鉄鋼業界、電力業界についてるる御説明がございましたので、私から申し上げようといった点は概略済みましたので詳しくは申しませんけれども、自動車業界におきましても、すでに千七百億、五十年度には七百億を投入して研究人員は約七千人ということで懸命に努力しておりますけれども、自動車の必要条件である耐久性の確保、性能に対する信頼性の確保、安全性の確保、経済性すなわち生産コスト、燃料費などの問題の多いことを満足するための総合的な開発についてはいまのところ達成のめどがついていないというのが正直な自動車業界の話でございます。
 鉄鋼についても、いまお話しのように、非常に高熱作業の工程が多いために、特に焼結炉、コークス炉等、完全密閉化の困難なものでありますために、鉄鋼連盟等におきましても、いまお話しのようないろいろな方法でもってこれの解決に努力していることはもう繰り返し申しませんが、電力業界におきましても、可能な限り窒素酸化物を低減するための排ガス混合燃焼技術の改善とか、低窒素燃料の使用、さらには排煙脱硝技術の開発等に積極的に努力しておるということはいまもお話しのとおりでございますが、問題の低窒素燃料につきまして、たとえばLNG等の液化ガスの供給量は世界的にもう限られておりまして、とうてい大量の確保は困難であるばかりでなく、仮にこれの供給が可能になりましたとしましても、その輸送なり、港湾の設備等々の条件整備のために巨額の、おそらく兆円単位の設備投資を必要とするということでございまして、排煙脱硝装置等につきましていまるるお話がございましたが、これにつきましても、第二次公害のおそれもありますし、たとえば重油、ナフサを対象とした高温乾式アンモニア還元法を採用する場合にしましても、果たして大量のアンモニアが確保できるかどうか。確保するためにはまた大量の電力を必要とするといったような悪循環も起こるのでございますし、触媒については、きっきもお話がございましたように、まだ未解決の問題が多いばかりでなく、廃棄触媒による第二次公害のおそれもありますし、また湿式方式をとった場合でも、排水処理等に第二次公害のおそれがある等々、数え上げれば幾多のまだ困難な解決を要する問題がございまして、これらを総合しますと、とうてい五十二年のこの達成目標の期限内にはこれらの主要産業はいずれも達成は困難だというのがわれわれの調査した結果でございます。
 また、機械メーカー等について調査しましても、これらの防除技術の開発は緒についたばかりで完成のめどがまだ立っていない。こういうことで、かれこれ総合いたしますと膨大な技術開発費用のみならず、これに伴う施設費を要するわけでございまして、そのことは、たとえば電力にとりましても非常な電力料金の引き上げを余儀なくするのみならず、これがあらゆる産業の動力源という意味で、その経済的な波及効果から申しますと、物価の高騰に当然はね返ってくることが予想される次第でございます。
 鉄鋼業界のことを私が申し上げるのもいかがかと存じますけれども、公害防止関係の投資は昭和四十八年度は一千三十億、四十九年度は一千六百八十八億、五十年度は二千五百十億と、三年間で約五千三百億の巨額の投資を必要としておりまして、新日本製鐵だけでも二千二百四十億という投資で、これが鉄鋼一トン当たりのコストが四千百円となっておりまして、目下の計画ではさらに二千七百億程度の投資を必要とするために、トン当たり九千円からないし一万円の公害対策関係からの原価の上昇となり、これまた電力と同様わが国の経済のみならず国際競争力の低下に非常に重大な影響を招来するということはこれは申し上げるまでもございません。かようにNO2の環境基準に関する技術開発の困難性に加えて、国民経済、国民生活に重大な影響を及ぼすという経済的な問題について、小沢環境庁長官は、先ほども十分考慮するというように御答弁をいただきましたが、もう一度繰り返してひとつこの点を再確認させていただきたいと思います。
#25
○国務大臣(小沢辰男君) おっしゃるとおり、環境基準の達成のためには膨大な投資が必要でございまして、私ども環境白書で、今年度の報告の中にも挙げましたように、昭和六十年ないし六十一年までのことを今年から考えてみますと、大体二十六兆円投資が必要だという試算をいたしてみたことから見ましても、膨大な経済的な投資が必要であることはおっしゃるとおりでございます。また先ほど来私どもの大気保全局長並びに通産当局からお話がありましたように、脱硝技術等をめぐる技術開発についてもまだ自信を持った確定的なところまでいっておらないことも事実でございます。しかし環境行政というのは、やはり九条の一項にありますような、望ましい環境基準というものを一応理想的な旗として掲げまして、そこに皆が努力をするというのがやっぱりこれは基本でなければいかぬわけでございますから、またその場合OECDのPPPの原則というものもございますので、これらはやっぱり国民の当該公害防止費用を負担する企業のコストであるという考え方からあのPPPの原則というものが出ているわけでございまして、結局それらが企業の努力によって吸収できるかどうか、できない場合にはやはり価格に転嫁をされてくる問題でございます。当然だろうと思うのでございますが、したがって相当の負担をしても、自分たちの健康を守るために、環境基準達成のための負担をそれぞれやっぱり国民が選択をしていくかどうかにかかっていると思うのでございますので、私どもは、問題は、費用の点でたとえどういうような犠牲がありましても、これはやはり環境基準達成のためには忍んでいただかなければならない。ただそこに至る、あらゆる科学技術の総力を挙げて取り組んでみてもどうしても達成できない、技術的な何といいますか隘路があった場合に、これはたとえば窒素と燐について排出基準ができないように、まだ排出をとめるだけの技術の確立がされていないから排出基準ができないわけでございまして、どうしても技術的に不可能だという場合にはこれはやはり考えを、この達成期間というものについて、もちろん検討していかなけりゃいかぬと思いますけれども、費用の面では、遺憾ながら私も経済人である先生の意見がわからぬことはありませんけれども、やはり人の健康を守るためには、それぞれ必要な投資をやらなきゃいかぬ、これはもうまた立法論になれば別ですけれども、現行法のもとにおいては、これはもうやむを得ざる投資として忍んでいただいて、国が公害防止事業団なり、あるいは開発銀行なりの公害防止投資計画についての融資というのをもっと積極的に拡大をしてやりやすいような基盤をつくっていかなきゃいかぬと思いますが、やはりこの環境白書にもありますように、公害防止投資計画につきましては、これはひとつできるだけの協力をしていただかなきゃいかぬだろう、しかし、技術問題についてどうしても隘路が打開できないというようなことの場合には、これは現実問題としてできないわけでございますので、国としては通産省を中心に、私どもも協力しまして、先ほど先生から御指摘のありましたような、とてもこういう技術開発の国家的プロジェクトなんということを言っておるけれども、一つもやってないじゃないかという御批判には、これはもう当然努力でこたえていかなきゃいかぬと思うわけでございます。そういう意味で、何としても私どもはこの日本のある地区に非常に集中した経済活動あるいは人口構造というものを、これが極端に外国と比較して進んでいる私どものような国においては、どうしてもやっぱり人の健康を守る観点を中心にしまして、生活環境の保全のために、厳しい目標ではありましょうけれども、そこに至る努力だけはどうしてもみんなで進んでいただかなければならない、かように考えているわけでございます。まあどうもぴったり先生に対する回答にはなりませんで大変恐縮なんでございますが、お許しをいただきたいと思います。
#26
○藤井丙午君 いや、わかりました。いま長官のお話は私も十分わかります。同時にまた企業もただ企業本位に考えておるのではなくて、現在の企業はその企業の社会的責任というものを非常に深刻に考えておりますから、先ほど申しましたとおりに、各業界とも膨大な公害対策費を投入しておる事実をごらんになりましてもこれは御理解いただけると思いますが、ただ問題は、そういった場合に全部を企業の努力に吸収しろというようなことで、物価や電力料金上がったらけしからぬ、鉄鋼価格が上がったらけしからぬと、全部企業が、大企業が悪なりというようなことを政府が言わぬばかりのことを言われておるところに問題があるんですよ。問題の真実はこうだ、日本経済はどうして成り立っておるのか、この公害問題を解決するにはかくかくの巨額な投資が必要だから国民もそれ相応の分担を物価等を通じてしなけりゃならぬという、事の真実を政府が明らかにしないと、いたずらに大企業だけがけしからぬ、けしからぬというようなことで、そういうことで日本の国民経済が成り立ちますか。国民生活が成り立ちますか。そういう点を私は申し上げたい。何も私は企業擁護論を言ってるわけじゃない。企業こそは本当に国民のためにこの社会的責任を十分に考えて、いま申しますように真剣に努力して、むしろ公害防除対策に対する取り組み方は政府よりはるかに真剣でございます、金額をごらんになってもおわかりのとおりに。そういう意味で、私はむしろ政府の政治姿勢に対して一言申し上げたかったということでございます。
 それから、先ほど環境庁長官は、アメリカと日本とは環境行政のやり方に根本的な考え方の相違があると、こうおっしゃいました。まさにそれはそのとおりでございましょうが、しかし、ここはひとつアメリカの環境基準の設定についても日本として参考にすべき問題があるかと思います。
 それは、たとえばアメリカでは環境基準を設定する際に実施可能な対策技術の便覧というものを政府が作成刊行しなければならないということになっております。日本のように、できるはずだというような単なる推測的な、希望的な、ときには高圧的な態度で臨むというような態度ではございません。きわめて民主的でございます。そのために環境行政当局は、アメリカでは産業界と緊密な協力のもとに実用技術を検討し、技術便覧を刊行しておりますのみならず、政府は環境技術については技術便覧の刊行を義務づけておるということによって産業界との協調を図るのが法の目的ということになっておるのでございまするが、また環境基準の設定や規制の実施に関する聴聞会や意見処理においても、産業界のものであれ、科学者からのものであれ、あるいは一般市民のものであれ、民主的に丁重に取り扱われて、意見書は一定の一般の閲覧期間の後に採否とその理由を付して、本人はもとより議会にも報告され、官報にも公示されておるというような状況でございます。日本のように一方的に握りつぶすというようなこともなければ、産業関係の委員を審議会からシャットアウトしたり、あるいは企業姿勢がどうのこうのと、あたかもさっき申しましたようにすべての責任が大企業にありというような、こういう印象を国民に与えるような、こういう威圧感を与えるような態度はとっておりません。まあ時間ございませんので詳しくは申しませんけれども、排ガス規制をとりましても、御承知のように本年三月に一年延長が決定され、さらに一九七九年まで凍結といった思い切った勧告がされております。この決定は本年一月に米国の大手自動車三社から提出された延期申請に対して、三月五日付で環境保護庁長官の決定として告示されたのでありまするが、その決定書を見ますと、申請に関する過去の経緯、公聴会の概要、決定とその根拠など明らかにし、六十二ページにもわたる懇切な記述で、特に公共への利益の項では、規制のエネルギー消費への影響、経済への影響、大気質への影響について慎重に考慮した結果、国民と産業界にじゅんじゅんとその理由を説明しておりまして、そこに産業界軽視といったような片りんも見られないのでございまして、いままでの日本の環境行政のあり方について、この点について小沢長官に、私は率直にもう少し反省をしていただきたいということを申し上げたいと思いますが、いかがでございましょうか。
#27
○国務大臣(小沢辰男君) まず第一に、先ほどお話がありました政府の姿勢について、企業の負担は十分やると、やるが、それは結局帰するところ国民の負担になるんだということについて、政府は考え方が足らぬじゃないかという物価問題に関連して、あるいは公害防止費用の負担の問題について御意見ございました。私が先ほど申し上げましたように、OECDにおけるPPPの原則も、結局これは公害防止のための費用というものは事業者の負担である、同時にそれはコストであるということを強調されたあの国際的な取り決めでございます。私はすべてこれコストだろうと思います。しかし、できるだけそのコストを国民の負担にならないようにする努力はしつつも、してもできない面については、これは国民は当然環境を守るために負担をしていただかなきゃいかぬ、そういうことを申し上げたわけでございまして、決してすべてが企業の努力でできるんだからそれはおまえの方でかってにやれなんというような考え方を持っているんではありませんということでございます。要は結局国民の選択の問題になってくると思います。その点は基本的にやはり公害防止投資費用というものは結局企業のコストであるという考え方は、これはもう私どもは決して否定はいたしてないわけでございます。
 それからアメリカのやり方等について、確かに技術面を当時知見される技術というものを非常に詳しく、またそれをもとにしてやっておる。先ほど申し上げましたように、アメリカの環境基準を決定するに当たりましては、経済的ないろいろな問題、諸条件というものと、それから当時知見される技術的な、科学的な判断という、可能性というものを両方やっぱりあわせて決定をしているたてまえでございますので、当然先生のような御意見が出てくるわけでございまして、われわれはそれを規制基準なり、あるいは達成期間というものを決定する場合に、当然当時知見される科学技術の現状というものを踏まえながら決めていかなきゃいけない。こういうことで、環境基準は一応アメリカのやり方と違う人命尊重ということをもっぱら中心にしまして決定をしていって、そして規制基準、達成期間というものは、その技術的な問題を頭に置いて進んでまいると、こういうのがいまの日本のたてまえであることを申し上げたわけで、また環境行政をやる場合の行政手続、民間に対する十分なる説明、理解あるいはいわば一般国民の意思というもの、住民――日本で言われております住民の意向を尊重するという、こういう手続については、確かに日本の方はおくれているんじゃないかと私は思っております。アメリカは御承知のように行政手続法というのが決まっておりますので、この面についてはまさに、たとえば原子力問題なり環境問題にティピカルに日本の場合には一般の国民の参加といいますか、あるいは意思の反映という手続が行政上、どうも余りはっきりとらえてないという欠点があろうかと私は考えております。そういう意味で、これは内閣全体の問題として、日本でも行政手続法といいますか、アメリカのような考え方の制度というものをいかに取り入れていくかということは、今後の大きな私は問題点ではなかろうかと思います。しかし、環境庁としては、今年いっぱいかかって準備をいたしまして、でき得るならば来年の国会に御審議をいただきたいと考えておりますいわゆるアセスメントの立法化につきまして、この行政手続の上でいかに住民の意思を反映していくか、関係者の意見をいかに反映をしていくかということを十分ひとつ取り上げて実行していきたいということで、いま鋭意検討をいたしておるわけでございます。大変お答えにどうもなっておるかどうかわかりませんが……。
 それから私ども環境行政をやる場合に、当然国民の協力を得なければできません。目的達成はできません。その国民というのは、もちろん私は関連の企業も含めた意味で、広い意味で私は国民の協力を得なければできないと申し上げているわけでございまして、決して企業その他、一切のものを度外視して、それと無関係に行政を進めていくというような考え方で国民という言葉を使っているわけではありませんので、この点は、もしまだいろいろ直接対策をとっていただかなきゃいけない、企業に対するわれわれの取り扱いといいますか、応待の仕方が不十分な点がありましたら、御批判としていただきまして、十分全般的に国民全体の協力を得るために、消費者も生産者も含めまして、私どもの態度をひとつ改善する努力はやぶさかではございません。
#28
○藤井丙午君 長官の御意見は私としては了解しましたけれども、政府の政治姿勢として、そういう点について十分民主的にこの問題を取り扱っていただくように希望しておきます。
 それから、ただいま長官のお話の中にもありましたように、PPP、すなわち汚染者負担の原則のお話が出ましたが、これは一九七二年に決められたOECDの環境政策の国際経済面に関するガイディングプリンシプルの中にあることでございます。その中で特に次のような条項がございます。すなわち多くの場合、受容可能な状態に環境を保つ上で、ある水準を超えてまで汚染を除去することは、それに要する費用を考慮すれば実際的ではなかろうし、また必要でさえもない云々とあります。また、有限な環境資源を有効に使うために、各国の環境政策の違いが国際貿易にゆがみを与えてはいけないともうたってあります。
 以上のごとく、わが国の非常に厳しい、あるいは行き過ぎたと申しましても過言でないようなNO2の環境基準が各国の、先ほど申しましたようにアメリカの五倍、西ドイツの七倍、欧米その他の諸国では全然問題にしていないといったような、こういった非常な厳しい基準を設ける環境政策と、国際的な各国とのバランスの問題、ひいては日本の国際競争に関する関係と、そういったガイディングプリンシプルにうたっておる条項は、ずばりわが国そのものを指しておるとしか思えないような条項でございますが、この点について長官はいかがお考えでございますか。
#29
○国務大臣(小沢辰男君) おっしゃるように、ガイディングプリンシプルの中で、Aの指針というのがございまして、その指針の第三項に、多くの場合、受容可能な状態に環境を保つ上で、ある水準を超えてまで汚染を除去することは、それに要する費用を考慮すれば実際的ではなかろうし、また必要でさえもないだろうと、確かに御指摘のようなガイディングプリンシプルの中の一項はございます。どうも私、OECDのこれを見ましても、あるいはまた各国の環境行政の取り組み方等を見ましても、やはり何といいますか、非常にその政策というものの、いわばバランスシートというものを非常に経済的によく考えているような考え方が基本にあったり、また制度を立てる場合でもそういうことを常に考慮しているようでございます。日本の場合は、むしろ国会の意思として経済との調和条項を特に削除するというようなことが行われました。そういう点から考えますと、国際的なこの環境問題に取り組む基本的な考え方が確かに違うのじゃないかというふうに――これがいいか悪いかにつきましては、これは先生方のいろいろな御意見があろうかと思いますけれども、私どもは最初から申し上げておりますように、先生の御趣旨は十分理解しながらも、行政官庁としては現在の公害対策基本法というものの精神というものを踏まえて、その法律の具体化を図る行政を進めていかなければならぬ立場にありますので、この点の現在の制度の立て方なり、法律のたてまえというものは御了解を願って、さらに先生のOECDの勧告の中にもありますような点も十分われわれとしても検討に値する問題として、今後ひとつ頭に置かしていただきたい。それ以上私はここで、どうも立法論に及ぶようないろいろ意見を申し上げたり、あるいは御回答申し上げたりする現在立場でないものでございますから、御了解をいただきたいと思うわけでございます。
#30
○藤井丙午君 もう時間がまいりましたようで、せっかくきょうは農林省等からお越しいただきましたけれども、カドミウムの問題は別の機会にさしていただきたいと思います。
 では、これで質問を終わります。
#31
○神沢浄君 質問に入ります前に、自動車騒音の規制の担当は環境庁では企業調整局ですか。自動車騒音の規制の担当の部局はどこですか。
#32
○政府委員(春日斉君) 大気保全局です。
#33
○神沢浄君 それじゃちょっと先に資料を渡しておきますから、後からそれに関連する質問をいたしたいと思いますので。(資料を手渡す)環境庁て自然環境保全審議会に富士箱根伊豆国立公園の公園区域及び公園計画の変更案というのを提出をされておりますね。その内容をひとつまず御説明をいただきたい。
#34
○政府委員(柳瀬孝吉君) 富士地域の公園計画の見直しということが前々から問題になっておりまして、もっときちんと保全すべきではないかという御意見が非常に強いわけでございまして、それに伴いまして富士五湖の周辺とか、あるいは青木ヶ原とか、あるいは富士山の五合目以上とか、その他非常にもっと保全を強化すべき地域というようなところについてまあ再検討をしたいということで、まあ県の方といろいろと打ち合わせをしておるわけでございます。
#35
○神沢浄君 私の質問がどうもずばり受け取られていないようですが、ただいまのお話はちょっと富士の自然環境を守る全体計画の検討に触れてのことだろうと思いますけれども、私が入手しておるこの富士箱根伊豆国立公園の公園区域及び公園計画の変更案というのが自然環境保全審議会というんですか、そこへ環境庁が提出をしておりますね。その内容をお聞きをいたしたいと、こういうことなんです。
#36
○政府委員(柳瀬孝吉君) 富士箱根伊豆国立公園公園区域及び公園計画の変更案の北富士の地域でございますね。――これは北富士の返還地につきましての地域につきまして、これを国立公園の地域に編入をいたしまして、第一種、二種、三種というような地域区分、それから普通地域というような区分をしたいということで計画案をつくったわけでございまして、これは内容は特別地域と普通地域にまあ分かれておりますが、特別地域につきましては、国有地の返還部分は地種区分としては三種、それから松林のあります特別天然記念物の地域に指定しておりますところを第一種の地域、その中間のところを第二種の地域にしたいという案であったわけでございます。
#37
○神沢浄君 そこで、その審議会の方の審議の経過、それから現段階におけるところの状況をひとつお聞きいたしたいと思います。
#38
○政府委員(柳瀬孝吉君) 昨年の十二月に自然環境保全審議会にこの案につきましてお諮りをいたしまして、たしか十二日でしたか、にお諮りをいたしまして、その際に委員の方々が現地視察をしたいという御意見が多数でありましたので、その後現地視察をしていただきまして、さらに十二月の二十三日に御審議をいただきまして、その結果特別地域、普通地域の区分によって国立公園地域に編入するということは結構である、しかし地種区分についてはいろいろと賛否両論が非常にありますので、その地種区分については結論が出せないという御答申をいただいたわけでございます。それに基づきまして本年の二月に特別地域及び普通地域の区分によりまして国立公園の地域に編入することを決めまして告示をいたしたわけでございます。
#39
○神沢浄君 その地種区分について賛否両論があってまだまとまらないと、こういう御説明ですが、その賛否両論の代表的な意見というようなものをちょっとお聞かせをいただけませんか。
#40
○政府委員(柳瀬孝吉君) 厳しい意見の方では二種、三種というような地種区分は少しあの地域では緩過ぎると、したがいまして、もう全部一種という区分をすべきであるという御意見も相当ございました。それから逆にいろいろその地域の振興というようなことも考えて、一種、二種は厳しいじゃないか、全部三種扱いにすべきじゃないかとか、あるいは一種のところを二種にすべきじゃないかとか、そういうような御意見がいろいろと賛否こもごも出ておったわけでございます。
#41
○神沢浄君 いまの御説明では漠然として――私にはわかるのですけれども、私は現地をよく知っておる立場ですから。恐らくはかの委員の方たちがお聞きになっておってもちょっとわかりかねるんじゃないかと、こう思いますんですね。そこで、いま御答弁の中でも触れられておりますように、賛否両論それぞれの見解というものが立てられておる。ほとんどあの地域とすれば、この地種区分については最も規制の厳重であるところの、これはもうすべて一種にすべきだと、こういう御意見もあるというようにいま言われておったのですが、私など現地の状況を知る者の立場からすると大変私はその意見は正しいというふうに考える一人であります。というのは、御承知のとおり国道百三十八号線は、これは静岡から山梨へ入ってきておるところのあの道路でありますが、この部分はちょうど富士五湖の一つである山中湖から富士吉田市との間がおおむね該当する、いわば富士箱根伊豆国立公園のど真ん中でありまして、日本一の富士山を擁しての、言うなれば日本全国的に見ましても代表的な景勝地、こういう地域であるわけです。そこで、この百三十八号線のいま申し上げました山中湖から富士吉田に入ってまいりますこの地点については、国道の左右百メートルの地域については、これはアカマツやカラマツなどの非常に美林の地帯でもありますけれども、この地点から富士の眺望も非常に絶佳のところでございまして、ですから、もうすでに文化財保護法ですか、この法律によっていわゆる特別名勝地に指定を受けておる地域だと私は承知をしております。文部省の方、いらっしゃっていただいておりますか――この文化財保護法に基づく特別名勝地の指定の経過、事由、指定された時期、こういうようなものを内容としてのちょっと御説明を受けたいと思います。
#42
○説明員(澤田道也君) 富士山の名勝に指定しましたのは、昭和二十七年の秋でございます。昭和二十七年の秋に、十月に富士山の五合目以上を基本とし、さらに各登山道の両側百メートルというものを指定したわけでございます。この、いまお話のございました梨が原県道、現在の国道百三十八号線はこれは登山道と申しますよりは、先ほどお話がありましたように、山中湖と富士吉田をつなぐルートでございますが、非常に当時は車も少のうございますし、そこをたどる間において富士山の眺望が非常に絶佳であるという眺望地点ということで、そこも含めましてわが国のすぐれた国土美――指定基準でございますが、わが国のすぐれた国土美で、自然的な風致景観が優秀で、名所としても、学術的な価値としても、また人文的なわれわれの心の中においてもすぐれたものとして指定したものでございます。
#43
○神沢浄君 お聞きのとおりでありますが、そこで今回環境庁が保全審議会に提出をいたしておりますところの公園計画変更案に基づきますと、先ほど御説明もありましたように、この文化財保護法によって特別名勝地に指定をされておるところは、これはその法律との関係でもって一種はもうかるということでありますから、この内容を見ますと、一種ということになっておるわけなんです。ところで、あの地域を御存じの方はおられるかどうか存じませんが、今回地種区分をなさろうというこの地帯はこれと地続きで、ほとんどもう条件的にも同一の、大差はないような地帯なんですね。その変更案の中を見ますと、今回北富士の演習場が米軍使用の演習場から自衛隊使用への転換がなされた、その際に演習場の一部、地続きの分に当たる一部が除外をされているわけですね。これが二百十ヘクタール、こうなるんです。この変更案の内容を見ると、この二百十ヘクタールを第三種にしているわけなんです。ところが、一種から一遍に三種に続いてしまうということもこれは変則ですから、これを見ますとまことに不自然きわまる感じを受けざるを得ないんです。したがって、二百十ヘクタール分を三種として、特別名勝地域として文化財保護法でもって指定を受けておるところの地域を一種として、その間まことにわずかな帯状のところを二種に指定をしているわけです。これはだれが見たって、もう不自然千万ですね。私はそういう不自然の変更案というものがなぜ出されてきたかというところにこの問題を置いてこれから論議をいたしたいと、こう思うわけであります。
 私も私の見解等述べながら質問を進めたいと思うんですが、まず最初に、これは長官にお聞きをしてもちょっとわかりかねると思いますから、なぜこのような不自然な変更案が出されてきたかという点をまず一つ、これは局長で結構ですから、お尋ねをいたしたいと思います。
#44
○政府委員(柳瀬孝吉君) 一種の予定をされておりますところは先生いまお話のあったとおりでございまして、アカマツのすぐれた道の両側の街道沿いと言いますか、そういうところの非常に、特別名勝にも指定されておるところでございますから、これはそういうことでございますが、三種のつまり国有地二百十ヘクタールの部分でございますが、これは自然の保全を厳しく図りながら地元の民生の安定にも寄与をするような使い方はないものかということで、昭和四十八年の三月の閣議了解でも、その地域はひとつ地元の市町村の連合体である恩賜林組合に払い下げをしまして林業整備事業を実施するという目的のために払い下げをするというようなことの了解もございまして、で、私どもはそれに基づきますと、いわゆる林業整備事業と言いますのは、やはり木を植栽し、育て、伐採し、また保護し、またという、この繰り返しをやるわけでございますが、その際、第一種、第二種でありますと伐採に厳しい制限がついておりましてなかなかできない、そこでそういう林業整備事業ができるという意味で第三種の地域にしたいという意味でございまして、第三種の地域だから規制が緩くてルーズにやろうという意思は毛頭ないわけでございます。
#45
○神沢浄君 局長の御答弁は大変正直でよろしいですよ。私はそんなに正直な御答弁が一遍にいただけるとは実は期待をしていなかったわけです。
 いまおっしゃられるとおり、なぜ三種に指定をしたかということは、一方において林業整備事業を目途としたあの地域を払い下げをしなければならないから、払い下げをするにはやっぱり三種にしておかなければならないから、そこで三種に指定をしたというのが私は経過だろうと思うわけです。(図を示す)これが現地の地図ですね。私が何も環境庁の皆さん方にお示しするほどのことはないわけですけれども、よく御存じのところですが、これは一種に指定をされております特別名勝地域と三種地帯の間にこれどのくらいの距離がありますか。せいぜい五百メートル範囲くらいのものじゃないですか。その間を三種にしたり、それから一種から一遍に三種へ飛んだんじゃこれは理屈が合わないから、したがってそっちを三種にどうしてもしなければならないために――これは特別名勝地が一種でないというわけにはいきませんわね。ですからその間へ二種をわざわざ帯状にこのわずかなものをつくった。これはもう現地の人たちはもうまるきり理解がいかないですよ。
 そこで、私は今度は長官にお聞きをしなきゃなりませんが、環境行政という立場からされますと、私は特別地域の指定については地種区分を当然環境行政の立場からこれはなさる。その際に、払い下げをしなければならない他の事情があるから――この事情は私が後から御説明をいたしますが、だからそれを三種にしなければならないというような指定をなさるのは、これは私は環境行政のやっぱり筋を外れちゃっているんじゃないか、こう考えざるを得ないんです。これはやはり一種に指定をすべきような環境行政上の条件を持っておるとするならば、これはやはりそちらの方に環境庁としての立場からすれば、主体が置かれなければこれは間違いである。これは演習場の関係で、後からいずれ御説明をしてまいりたいと思うんですけれども、実はこの自衛隊の使用転換を政府側がなさりたいために、その地元の一部要望に屈して、そして払い下げの約定をされているわけなんです。いわば、軍事優先的な事情というものがあるわけなんです。その事情に屈して環境行政が振り回されてしまうなどという、私はこれでは国民は日本の環境行政というふうなものに信頼は置けないことになってしまうんじゃないか。そうあってはならないと私は考えますけれども、そういう基本の問題については、まず長官から御意見を伺っておきたいと思うのです。
#46
○国務大臣(小沢辰男君) 御指摘の、第三種に予定をしまして諮問した案に、第三種というものはどうもおかしいじゃないかと、しかも、それが払い下げを前提にして、そのために第三種にしておかないといかぬから第三種にしたというような考え方は、基本的に大体環境庁の姿勢、自然保護の姿勢がおかしいじゃないかというお尋ねでございます。
 実は、先生も御承知のように、私はまだそこだけということで見に行ったことはないんですが、全般は、あそこの辺よく前にもちょいちょい行っておりますので知っておりますが、先生よく御承知のように、いま払い下げをしようという、森林組合にやろうというところは、全く木がないところでございます。ほとんどもう木がないところでございます。むしろ木を植えまして、そしてそれを一部間伐しながらまた植林をしていくというような、こういう地帯にした方が自然環境保全の上からも、また同時に民生安定のためにも役立つという、そういうような考え方が基本にあって、それで閣議了解のときに、これは私は当時は知りませんけれども、四十八年に、そういうような対象としては、ただ民生安定といっても、自然保護の観点から見ると植林をする、そういう林業施業というものの団体でなければならぬということで、それで両面を考えて決定をされたんじゃないかと思いますので、したがって、国立公園内でも木がだんだん少なくなっていくような傾向でございますから、普通の野っ原で、なるほど景観は、全般的な眺望はよろしゅうございますけれども、やっぱりかつて先輩がああいうようないろいろのところに植林をしましたようなことも自然保護上非常に必要なことだということと、かてて加えて、民生安定に資するということが一つの今後のいろいろあの地区の自然保護、保全の見地からも役立つんじゃないか、こういうことで決められたと思うのでございまして、必ずしも、払い下げのために第三種にしたんだから、自然環境保全の見地からどうも環境庁の姿勢がまるで主客転倒じゃないかという、そこまでの御批判はちょっと私はひとつ御容赦を願いたいと思うわけでございます。
#47
○神沢浄君 長官、私も御容赦申し上げたいと思いたいんですけれども、恐らく長官は、まあ以前の問題ですから、いまの三木総理が長官当時のこれは経過があります。それと同時に、長官も現状を、現地の状況を、そうよくきっと御存じではないだろうと思うんです。なるほど草の生えておるところもありますけれども、美林になっておるところもあります。全体的には、草原もあり、それから美林地帯もあり、そして一つの景勝をなしておる、こういう地帯なんです。大体、何かくどく繰り返すようですけれども、特別名勝地域に指定をされておる地帯と地続きでもって、大体五百メートル範囲内くらいの、全く同一の状況を持ったような地域なんですからね。(図を示す)わずかこれだけのところですからね。これだけのところで――この青いのが特別名勝地域で、赤いのがその第三種に指定をしようとされるところでもって、恐らく、見えぬでしょうけれども、一種から三種へは飛べぬから真ん中へわずかな白い二種という地帯をつくっているわけなんです。
 私は、いろんな点からこれを考察してみまして、大体行政の秩序というものがちっと狂っちゃっているというように思えてなりません。環境行政上からいたしましても、先ほど来申し上げておるように大変不自然、変則の計画をなさっておる。それから、もう一面、私もかつて内閣の委員会でもって防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律――まあそれ以前は何か基地周辺整備法とこう言った法律が、今度は防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律というふうに変わりましたね。で、変わった際に、あの内容のかなり特徴的な部分として、騒音の激しい飛行場だとか、あるいは実弾射撃などをいたします、いまの北富士演習場はそれに該当いたしますけれども、こういう防衛施設の周辺は、これは観光行政の方では厳重な規制をする方から一種、二種、三種とこうなるけれども、防衛施設の周辺の生活環境の整備の方は今度は逆に防衛施設に近い方から一種、二種、三種とこう決めまして、
  〔委員長退席、理事山内一郎君着席〕
そうして、一種や二種の地域に当たるところは、これはもし住民の要望があれば、もしそこに住家があれば政府は金を出して移転をさしてやる、あるいはその他の施設についても、他へできるだけその防衛施設から遠ざけるように政府が金を出してもそれはやってあげましょうと、そうしてこの一番近い一種地帯から二種地帯等に及んでは、ひとつこれはもう政府の責任でもって緑地地帯をつくっていこう、そのためには政府がそういう地域はできるだけ買い上げていこう、こういう法律ができたはずです、できております。私もその審議に参加をした一人であります。そうなりますと、いま私が取り上げておりますこの地帯は、これは北富士演習場に全く隣接をしているわけなんです。ことに、第三種に指定をされようというところは、北富士演習場にこれはぴったりくっついておるところですね。そうなりますと、この防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律のたてまえからいけば、むしろ国有のものでない場合にも、できるならばこれは国が買い上げてそうして緑地地帯につくっていこうというようなこれは地帯に当たるわけなんですよ。それをわざわざ払い下げをしていこうという、これをもう全く行政の秩序に逆行をするわけですね。極端に言ったら、防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律をせっかくつくったけれども、その法律をまず政府がみずからの手でもって破ろうというようなおかしなことにもなりかねないことになります。
 私は、いずれの点から取り上げてみましても、そもそももうこのこと自体に、環境庁が出しております公園区域及び公園計画変更案というものは大変矛盾に満ちたものであるというようにもう指摘せざるを得ないわけであります。いまのこの防衛施設の周辺の生活環境の整備等に関する法律に基づいての私の見解はそうでありますが、どうでしょうか、ちょっと長官の見解などをお聞きしてみたいと、こう思うんです。
#48
○国務大臣(小沢辰男君) 先生の防衛施設周辺の生活環境の整備に関する法律の考え方と私どもの考え方は、やっぱり基本が少し違うと思います。あれはやっぱり演習場に近いところがか、国がいろいろ防衛施設の影響を非常に直接的に受けやすいものからだんだんこう遠ざかっていくに従って、いろいろな国の保護といいますか、そういう考え方を厚く程度を違えていこうと、こういう考えで、一番近いところを一種からこうやっていくんじゃないかと思うんでございまして、生活環境の整備でございますから、そういう面では、今度の第三種にしようとしたところは、一番近いところで景観を阻害するような利用方法ではいけませんけれども、むしろ植林もしようということでございますので、私どもはやっぱり自然保護の観点から、なるべく一番特別保護地域になって百メーター幅でアカマツのずっと美林が並んでおりますような、それに続く地帯でございますので、やっぱり森林計画というものがより適当なのではないかという考えと、それから北富士演習場が返還になりますいろいろな地元との関連の経過から見まして、それを国が直接森林施業をやるよりは、そうした組合の努力に待って、それがまた民生安定に資するといういろいろな見地からそういうことをやりましたわけでございますので、先生のお考えは間違っていると私申し上げているわけじゃありませんが、私どもの方の考え方も御了解願いたいと、こう申し上げておるわけでございます。
#49
○神沢浄君 まあ長官も苦しいと思うんです、私は。ただ、私は、なぜこんなような変則な事態を招いているか。環境庁も環境行政の基本からはずれて、そして本来ならば名勝地に続いて一種に指定をすることの方がむしろより妥当性を持っておるようなところに三種指定などを行わなければならないか、これは理由ははっきりしているわけですよ。これは要するに、この自衛隊へのあの演習場使用転換の約定の際に、まあきょうお見受けすれば、この団体、恩賜県有財産の保護組合の方たちもおいでになっているようであります。この団体に国は払い下げを実は約定されているんですね。なぜそういう約定をされておるかというと、もっとさかのぼりますけれども、この団体は、かつて北富士演習場がアメリカの使用する演習場でありましたときに自衛隊の演習を行いました、その自衛隊の演習に対して自衛隊の使用排除の訴えをしたわけなんです。これはまあ厄介でもって、その裁判の見通しというのは、どうも法理論上からまいりましても国が敗訴するという、こういう見通しが濃厚になってまいりました。そこで、国としましては、この団体に執拗に接触をいたしまして、そうして自衛隊へのもうその当面する問題としては、その裁判の取り下げ、それからさらには自衛隊の演習場としての使用転換への賛成、こういうものを取りつけるために、もしそのことが実現がされる場合においては一部地域を払い下げをいたしましょうという覚書の取り交わしをしているわけであります。覚書のここに控えがありますが、まあいろいろありますけれども、特に関連のあるところだけを読み上げてみますと――甲というのはその団体の方ですね。「甲が上記一の林業経営の再建整備事業を実施するための用地として払下げを希望している国有地」、これは括弧して(「字梨ヶ原――檜丸尾――土丸尾等運用道路北側)」と、こうなっておりまして、「については、乙は、本演習場の使用転換の際に約百五十ヘクタール以上の区域の返還の実現に努めるとともに、甲が関係機関に払下げを申請した場合は、乙はこれに協力する。」ですね。それと同時に「甲は、東京地方裁判所に提訴中の自衛隊違法使用排除の訴訟の進行を停止するよう努めるものとする。また、甲は、上記二の国有地の甲に対する払下げの方針が決定した場合には、本訴訟を取下げ、自衛隊への使用転換賛成の意思表示を行なうものとする。」、昭和四十五年に取り交わされておりますこれは覚書でございます。これがずうっと尾を引いてくるわけですね。尾を引いておるわけです。これが尾を引きまして、いよいよ自衛隊への使用転換というのが、昨年でございますか、これがもう決まります際にこの覚書が物を言いまして、そして閣議了解をもって払い下げを当時の政府、時の政府ですね、これは田中首相時代、閣議了解の中でもってこのことを認めているわけであります。
 さあ、こうなってしまいましたから、これは私は、環境庁の長官の立場も確かにお苦しいと、こう言うのであります。環境行政のたてまえからこれはもう三種などにするところではないと、こう考えられましても、まあ少なくとも閣議でもって了解を与えてしまっておるというようなことですから、これはどうにもならないということがこの行政の秩序の混乱をいま招いておるという、これが私は真相だと、こう思うわけであります。先ほども申し上げたように、関係の団体の代表の方もお見えになっております。私も山梨の出身でございますから、これはもうその地域の関係の方たちのまあたとえ局部的利益でありましょうとも、そういう方たちから反感を持たれようなどということは、私は望むところじゃありません。望むところではありませんけれども、あえて私がこの問題をこうして国会の中でもって取り上げておりますのは、もっと大切なやっぱり国政の秩序が紊乱をするなどということは、私は国会議員の一人として、そんなものはとてもそれは認められるものではないと、こういう立場が一つございます。と同時に、軍事優先が支配をいたしまして、国民のために大切な環境行政がじゅうりんをされてしまうなどということは、これはわが国の民主政治の大義にもとることになるわけでありまして、そういう観点から私はこれは大変重大な問題だとして取り上げておるわけであります。まあついでですから申し上げたいと思うのですが、さっき私の触れました防衛施設周辺の環境整備に関する法律を取り上げましたのは、あの地域について環境行政の側から言っても三種指定というものは、これは大体もう筋違いである。それから、それを離れて防衛にかかるところのその法律のたてまえから言っても、むしろ国が、もし国有でない場合には買い上げて国有にしてこの緑地地帯等をつくっていかなければならないというのがその法律の精神であるにもかかわらず、現在国有であるものをなぜわざわざ払い下げをしなければならないかという、これはやっぱり私は行政の秩序というか、民主政治のたてまえというか、そういう点から言って実に不自然といいますか、変則といいますか、まあもっと極端な言い方をすれば、政府が自分の出して決めた法律自体に政府みずからが違背をしていくような、これは重大な内容というものを持っておると、こう考えざるを得ないからであります。私は、あの地域などは、これは大体演習場自体が富士のふもとにあるなどということがもう大間違いだと、こう思っておりますが、しかし演習場の問題はまあ一応置いておきましても、少なくともあの地帯などは、私は、いま国民のこの生活環境というものを環境庁の責任において考えていくという、これが環境行政の基本であるといたしますれば、あの地帯こそ、とにかくもう日本の景勝地を代表するような日本一の富士山を擁してのそれこそ他を探したって絶対にあり得ないような場所でありますから、これは国民のために、私どもずっとそういう主張をしてまいっておるわけなんですが、国の責任でもって休養センターくらいはこれは私はやってみるべきだと、こう考えているところであります。これはひとつ長官、ここでもって思い切って、なるほど閣議了解もあるかどうか、そういう事情もあるかもしれませんけれども、この際こそ、やっぱり本当に国の責任でもって国民のための保護、休養のセンターを、せっかくあそこに土地があるんだから、これをつくるぐらいのことをやってこそ、私は国民が信頼する環境行政になっていくんじゃないか、こういうふうに思います。いま大体東京都では一千万の人たちが、とにかくもう汚れた空気あるいは騒音、交通難にあえいでいるのですよ。現在だって、あの演習場が演習をしないときには、中へ入れば不発弾などの危険がある中をあえて――大体休みの日などには数千人の人たちが入ってきているのです。まあ大体演習場に限らない、富士の五湖を初め、あの地帯へ年間入ってこられるところの人たちは、これは私が照会をしてそうして調べたところによりますと、何と一年間を通じては一千万に近いですね。国民の一割くらいの人たちがあの景勝を求めて、きれいな空気を求めて、そして本当に人間としての潤いを求めて一千万もの人たちがあそこに集まってくる。演習場に対してさえも休みの日などには三千から五千くらいの人たちが来ている、こういう場所なんですよ。そのど真ん中の目抜きの場所なんですよ。私はやっぱりこの環境行政というたてまえから、これは本当にここで慎重に取り組んでいただきたいというか、むしろひとつ長官に勇気を出してもらって、そしてあの地域を本当に日本の国民のための環境行政として生かすというような、私はこういう一つの決断を求めてやまないわけなんです。内容的にこんな不自然な変則なことを私はしておくべきじゃないと、こう考えておるからこそ問題提起をいたしておるわけなんですから、長官どうでしょうか。
  〔理事山内一郎君退席、委員長着席〕
#50
○国務大臣(小沢辰男君) 先生のいまのお話は、国有地二百十ヘクタール、アカマツの美林に隣接した地域、これをせっかく国有地なんだから払い下げというようなことをしないで、そこに富士山を心の糧として求めに来る国民全体のために何か大きな休養施設等りっぱなものをつくったらどうだ、こういう御意見でございますが、私は遺憾ながら賛成できないのでありまして、なるべくあのアカマツの美林のすぐわきにそういうような国民の休養施設といいますと相当規模のものをつくっていかなければならない、そこへ生活排水等も処理をしなければいけないようなそういう施設をつくるということは、自然保護の見地からむしろいかがであろうかと。この点は先生の全体的なお考えはよくわかりますけれども、この点は環境庁としてはむしろ、せっかくの御意見でございますけれども、どうも賛成できないのでございまして、私どもが森林組合に払い下げをやろうというのは、それが民生安定にも資することではありますが、同時にやはりこの北富士の自然を守るためにむしろアカマツのりっぱな森林地帯に続いて木を植えていただいて、そしてそれが自然環境の保全にも役立つような面に有効に利用をしていただこう、こういう趣旨でございますから、払い下げをしてほかの施設をつくらすとか、あるいは他の目的にいろいろ利用さすとかということでありませんので、この点はひとつぜひ、あの百メーターに及ぶ幅のアカマツの美林地帯に続いたところはむしろできるだけ木が植わっていくような保護のやり方をしていきたいということなものですから、ぜひ御理解をいただきたいと思うわけでございます。国民休養施設の必要性があれば、国立公園の、しかもそういうところでない別の、富士を利用できる人たちの便宜も考えつつ、国立公園のそうした特別地域外のところで私は考えさしていただきたいというふうに思いますので、ぜひ御理解をいただきたい。
#51
○神沢浄君 長官は私が申し上げたことを非常に狭義に受け取っておられるようですけれども、私はそういう国で施設つくれなんて言っているわけじゃないんです。せっかくの国有地をわざわざ人手に渡すなんて――できることなら、やがていま演習場に使っているところまで含めて、大体富士山というのは国民渇仰の的なんですから、外国人だってやっぱり日本の象徴としてながめておる富士山ですから、その富士を中心に据えたところのあの地帯、演習場はいま目の前でもって返らぬということであれば、少なくともいま国が使える国有地であるいまの土地ぐらいは国民のために――さっき申し上げたように演習場に使っておるところだっても演習をしない休みのときには数千人の人が入り込むというような状況ですから、富士一帯には年間には一千万人もの人たちが皆そこへ集まってくるというような、こういう状況ですから――それはそうですよ、いまそれはもう東京都から、神奈川から、千葉から、埼玉から、この近くだけでもって、もうそれこそ日本の人口の二割にも近いような人たちかここに集まっているわけなんですね。こういう人たちのためにあすこを私が休養センターなどという言い方をしたから、何か長官は、いわばあずまやでもおっ建てるような、そういう狭義な解釈をされたのかもしれませんけれども、そうでなくて、国の所有のままであそこを本当に国民の休養のために開放して、使わしていけるようなものを環境行政として考えていただきたいということをぼくは言っておるわけです。私はそれは正しい筋だと、こう信念を持っているわけなんです。それが演習場のとばっちりを受けて、いわば軍事優先のために、国民のために貴重な環境行政がじゅうりんをされていくというようないまの姿というものは、これはいわゆるわが国の民主政治の大義に反する。これは私は地元の人たちなどの目の前の利益のためにこんなことを言えばあるいは反感を持たれるかもしれない。しかし、たとえば反感を持たれようとも、私がいま取り上げておる問題はもっとずっと大きな意義を持つから国会議員の一人として、これはどうもこのまま見捨てていくわけにまいらぬと思うからこそ申し上げているのでありまして、その辺をひとつこれは理解をしていただかなければならぬと思いますし、それから木を植えた方がいいと思えばそれは植えていいですよ。何も払い下げの方法をとらなくたって、国が植えたっていいじゃないですか。草原でおくところはそのままおく。ここはやっぱり木を植えた方がいいと思いましたらば、これはそういう計画に基づいて国が植えて一向差し支えないわけでございますから、そういう点を私は申し上げているわけなんです。
 いずれにしましても、私は非常にこれはもう地種区分の内容というのはまことに不自然で変則きわまる問題である。時間の関係がありますから、これにばかりかかっておれませんので、私はまたいずれ他の場所、機会を求めましてこの問題はさらに取り組んでいくつもりでおります。
 そこで、大蔵省の方来ていただいておりますね。――一方においては払い下げの事務というようなものがきちっと進行されているわけなんでしょうけれども、いまどんな状況になっておるか、ちょっと伺っておきたいと思います。
#52
○説明員(森卓也君) ただいま御指摘の土地につきましては、大蔵省は昨年防衛施設庁の方から引き継ぎを受けたわけでございまして、払い下げ契約を締結する必要があるわけでございますけれども、それに先立ちましては、いろいろとまだ事務的に詰めなければならない問題がございますものですから、ただいま関係省庁の間でいろいろと調整を行っているという段階でございます。
#53
○神沢浄君 それからこの問題に関連をしまして、長官、さらにおかしな問題が、これは絡んでおるわけなんです。というのは、建設省では東名とそれから中央道の間に東富士有料道路というものをつくろう、こういうことでもって計画をされておるわけなんですね。ちょっと論議の関係上、建設省の方、公団の方もおいでになっていただいておりますね。――この東富士有料道路の計画の概要と予算の関係など、それからいまのこの進行の状況など先に御説明をいただきたいと思います。
#54
○説明員(下川浩資君) 東富士有料道路の計画につきましては、山梨県南都留郡河口湖町から静岡県の御殿場市水土野に至る区間二十三・七キロメートルにつきまして四車線の車道幅員が二十二メーター、道路幅員が二十二メーター、道路の構造規格といたしましては、第一種の三級自動車専用道路ということで目下計画を進めておるわけでございます。
 この道路の調査の経緯について申し上げますと、昭和四十四年、当時この静岡県の御殿場市、山梨県の富士吉田市を含みます六市町村から、この間におきます国道百三十八号線の道路整備を早急に進めるようにという非常に強い陳情が建設省の中部地建並びに道路公団あてに行われまして、こういう地元の要望に基づいて道路公団が調査路線として調査を進めてまいったわけでございますが、その間、昭和四十七年当時からこの計画路線が富士箱根伊豆国立公園の区域を通過するという状況を踏まえまして環境庁と担当者同士逐一下打ち合わせを行いながら計画を進めてまいってきたわけでございますが、昭和四十八年の三月三十日閣議了解に基づきまして北富士演習場のうち二百十ヘクタールが払い下げられるということになりまして、それに伴って払い下げ予定地を国立公園区域へ編入するということで、公園区域並びに公園計画の変更が行われることになりました。これに基づきまして環境庁から建設大臣あてに協議が行われまして、その段階で建設省と環境庁の間では、この地域が国立公園地域として、先ほど来御議論がございますように、景観的にも、自然保護的にも大変重要な地域であるということを私どもも十分認識をするし、環境庁の方も、道路計画というものがこういう地元の要望あるいは国道百三十八号線の現況等を踏まえて必要であるということを了解した上で、今後環境保全あるいは自然保護という観点から十分調査研究を行って、遺憾のないような計画をつくりたい、こういうことで現在調査を継続しておるという状況でございます。
#55
○神沢浄君 いま御説明の調査研究に関してですが、私が耳にしておるところでは、この自然環境の調査のために国立公園協会に委託をされてやられておる。――これは公団の側ですかね。そのいま状況なんか、どんなになっているか、ちょっと御説明ください。
#56
○参考人(伊藤直行君) 財団法人国立公園協会から調査報告が五十年、本年の四月の初旬に道路公団あてに提出されてまいりました。
 内容は「地形及び地質、植生、動物及び景観」の四部門にわたって委託して、これらに対する環境保全の観点からの影響を調査していただいたわけでございます。
#57
○神沢浄君 調査をしてもらった、その調査の中身ですよ。
#58
○参考人(伊藤直行君) 簡単に述べますと、内容はまず地形、地質の点につきましては、鷹丸尾、雁穴丸尾、剣丸尾等の地質的に非常に興味のある溶岩流が存在すると、これらのものに対する保護及び工事をする際のやり方については慎重を期すべきであるというふうなものがございます。
 それから植物関係につきましては、当地域には自然の植生、つまり全然人の手を触れない植生の状況は全くないのでございますが、富士山全体を考えれば、富士山の東面――現在問題になっている地区でございますが、できるだけ現状を保存すべきであるというような意見が述べられてございます。
 次に、動物関係につきまして調べていただいたものにつきましては、特に保存を必要とする動物の種類は生息していないが、鳥獣保護地区も含まれ、現状維持に努めるべきであろうということでございます。
 それから景観につきましては、当地域からの富士山の景観は雄大であって、日本のほかの地域の景観というのが箱庭的な景観でございますが、それに比べると、雄大であって希少価値を持っておるというようなそういう報告がございました。
 公団としては以上のような調査結果に基づきまして、道路構造面からの対策、また植生等についての慎重な検討を現在行っておる次第でございます。
#59
○神沢浄君 長官、大体まあ国立公園協会の調査の結果もいま御説明がありましたような地域なんですね。それで、東富士有料道路というのを通す場合には、いわゆる今回の環境庁が出されました公園区域の変更計画案の中でもって第三種に指定をされようとなさっておる、いわゆる払い下げをしようとするところのその地域が該当するわけなんですね。これは演習場の中を道路を通すならばきっと関係なく済むでしょうけれども、おそらくそのことは不可能でありましょうから、そうなりますと、いまの地域を通すよりほかにはないわけなんですね、この道路をつくるとすれば。
 そこで、いまのお話では、いわゆる環境庁との間の何か協議というものが行われているようでありますが、環境庁の見解というのはどうなんでしょうか。
#60
○政府委員(柳瀬孝吉君) 私どもは、まあ道路の建設につきましては、国立公園地域につきまして、特に特別保護地区につきましては、これは道路はつくることを認めていないわけでございますが、それ以外の特別地域でも非常に貴重な自然景観を有しているところ、あるいは貴重な動植物が生息しているところ、あるいは地形が特に特異な地形、地質を持っているところ、その他、特に自然の保全を強力に図らなければならぬような地域につきましては道路をつくることは好ましくないというふうに考えておるわけでございまして、まあ富士山地域一帯につきましても、そういう観点から、自然保護という観点から言いますと、なるべく道路は国立公園の特別地域内にはつくってもらいたくないというふうに思っておるわけでございます。ただ、現在のこの道路計画につきましては、私どもまだ正式に協議を受けておりませんし、そういう自然環境保全という面から申請が出てきますれば、そういう点からどういうふうな影響があるのかというようなことを十分検討した上で、自然環境保全審議会にもお諮りした上でその適否というものについて決めていきたいと、こういうふうに考えておるわけでございます。
#61
○神沢浄君 そうすると、まだ環境庁に向けての正面からの協議というふうなものはなされていないわけですか。
#62
○参考人(伊藤直行君) 現在環境庁に対して正式の協議はまだいたしておりません。現在、先ほど申し上げましたように、いろいろまだ検討すべき点がありますので、その検討すべき点を詰めてからお伺いしようと思っております。
#63
○神沢浄君 そうしますと、これは予算の関係などはどうなっているのですか、さっきちょっとその辺を詳しくお聞きができなかったのですけれども。
#64
○説明員(下川浩資君) 予算につきましては、先ほども御説明申し上げましたように、まだ調査の段階でございまして、事業許可をしておらないわけでございます。環境庁との協議が正式に整いました上で公団から事業許可の申請が大臣になされまして、その段階で建設省で判断をして許可をするということになっておるわけでございます。したがいまして、事業費はまだつけておらないわけでございますが、調査費につきましては、先ほど来申し上げましたように、昭和四十四年から調査を開始しておりますので、四十九年まで総計九千二百万円程度の調査費でもって調査を進めておるわけでございます。
#65
○神沢浄君 先ほどの局長の御答弁で、国立公園の特別地域内にはなるべく道路はつくりたくないと、これは衆議院でもそういうふうにお答えになっておるようでありまして、私どもは会議録などを拝見もいたしているわけでありますので、そこで、私はこれは長官にお尋ねをしておきたいと思うのですけれども、たしか、かつて大石長官のときにあの尾瀬の道路をとめて、これはかなり国民から評価をされました。それから例の北海道の大雪山の縦貫道路などにつきましてもこれは白紙に返されているわけなんですが、あの際に、自然環境保全審議会の自然公園部会長の、これは林修三先生ですか、の談話に、国立公園内の場合極力抑制をしなければならないと、特別地域の場合については、どうしても必要だという場合にもやっぱり代替手段がないときだけであると、こういうようなことが述べられているわけなんですね。この東富士有料道路というのは、これはもう全く百三十八号線と、もしいま考えられておるような路線が設定をされるとすれば、これは全く並行道路でございまして、もう代替手段云々などという以前にこれは並行道路なんですね。こういうような状況でありますだけに、私は環境庁としての基本的な姿勢というものは、まだ協議が正式にされていないという段階なんだそうですから、あるいはここでもってお答えをいただけるのはむずかしいかもしれぬとも思いますけれども、こういう際には、私はいままでの、以前の長官の際におかれましてもとってこられましたようなそういう基本姿勢というものが当然踏襲されていかなければならぬものじゃないか、こういうふうに判断をいたしているところでありますが、長官の御所信などひとつ承っておきたいと思います。
#66
○国務大臣(小沢辰男君) 私ども実はきょういまの先生との質疑応答で四十四年から調査に入っておることを私自身初めてきょう聞きまして、相当進んでいることがきょう初めてわかったわけでございまして、私自身いままで自然保護地域における道路問題はきょうが初めてで、私にとっては着任以来東富士有料道路の計画にぶつかったようなことでございます。私着任しまして、先生御承知のように私の郷里は新潟県で、新潟県の妙高有料道路は、私はやめたわけです。これが私の姿勢であったわけです。大石さんのような喝采はいただきませんでしたが、やめたことは事実であります。いまいろいろな点で問題になっておる林道なり道路がございます。私は富士山とか日光とか、特に富士山を中心にした自然景観というものは日本の宝じゃないかと思っております。国際的にもこれはむしろ人類の宝かもしらぬと思うぐらいでございますので、軽々には認めたくないと思っております、基本的な態度を申し上げれば。ただ、私きょう初めてそういうような計画なり、調査なり、国立公園協会でもいろいろ検討をしてその結論が出たということを承ったわけでございますから、内容をよく協議をやりましたときは検討してみなければならぬと思います。建設省の方は、これは国民の生活の必要から道路をつくるという任務がございますので、これはもう建設省の方で前から調査をし、それからいろいろな閣議決定に基づくそれぞれ公共事業の実施体が環境影響事前評価というものをやらなきゃいかぬことになっておりますから、そうしたことを数年間続けてやっておられることは当然のことだと思うのであります。私が知らなかったのは私自身のこれは落ち度だと思いますが、よく計画等をこれから承りまして――ただ私が想像でございますけれども、御承知の御殿場から行きます百三十八号線、非常な混乱でございます。混乱ということは停滞がはなはだしい、停滞が数多ければ多いほど排気ガスがよけい出る、これはもう自動車の性能からそうなるわけでございます。したがって、都内でも四十メーターでずうっと信号が連続して走っていれば少ないで済むからというので、電動式やいろいろスピードというのを考えて規制をやっていただいておるわけでございますので、そういう面から、きっと道路の必要性あるいはいまの山梨県自体の、先生が先ほどおっしゃいましたような富士山を国民の憩いの場として、また自然の心の糧として来る人が年々殺到するという状況等から見て、やむを得ざるバイパス道路として恐らく計画をされたのじゃないかと想像するわけでございます。全体的に自然環境保全の見地から、果たしてこの計画がいかにマイナスになるか、またプラスの面があるのかという点をよく検討いたしましてお答えをさしていただきたいと考えております。現在のところは私初めて詳細に聞いたばかりでございますので、それから基本的な態度は、林さんの言を引用されましたが、そういう態度でいままでは少なくとも具体的な例を申し上げましたように、私ども基本的な態度はそういう態度と同じでございます。
#67
○神沢浄君 それ以上のことをお聞きしようとしても無理でございましょうから置きますけれども、私はそれこそ日本を代表するような景勝の地域であり、あの富士を全体的にどう守っていくかという問題は、これは環境庁としては本当に真剣に取り組んでいただきたいとこう思うわけなんですよ。いま排気ガスのお話などにも触れられたけれども、確かに限度を越せばこれはもう思い切って規制をしていただくということが必要だと思います。
 そこで、ちょうど話がついでになりましたからお尋ねしておきたいと思うのですが、かつてスバルラインというやつをつくりまして、富士の五合目まで自動車が登れるようにしてあるわけなんです。このスバルラインはそのために自然植生が相当に影響を受けまして問題にもなってまいっているわけなんですけれども、この規制の問題というのはかなり重大に取り上げられてきているはずですが、環境庁の方ではその後どんなようになさっておられるか、ちょっとつぶさにお尋ねをしておきたいと思います。
#68
○政府委員(柳瀬孝吉君) 御指摘のスバルラインの自然景観の破壊問題とかオーバーユースの問題でございます。オーバーユースの問題につきましては、あそこにああいう道路ができまして、特にシーズンには非常に車が混雑をするということからいろいろな問題が起こっておるわけでございますが、これにつきましては、相当のこれはやはり規制をしなければいけないじゃないかということで、現在、全国でいろいろと尾瀬とか、あるいは上高地とか奥入瀬とか六地域ほどで車両の規制を行っておりますが、スバルラインにつきましても、たとえば五合目のところにいま以上に駐車場をつくらせないとか、それから駐車場が一ぱいになった場合には入口の方で規制をするとか、あるいは路上にずっと駐車をするようなことはさせないようにするとか、そういうようなことをやらなければいかぬというふうに思っておりまして、これは山梨県とも御相談をいたしまして、そういう方向でやっていきたいというふうに考えておるわけでございます。
 それから、あの道路をつくったために木が大分枯れたり倒れたりしておることにつきましては、それのいわゆる修景緑化的なことはやっていっていただいておるわけでございますが、三合目以下のところはある程度その効果が出てきておるわけでございますが、四合目、五合目はやはり地形、地質の関係等もありまして、なかなかそれが進んでいないというのが現状でございます。
#69
○神沢浄君 時間の関係でもって終わらなければならぬわけなんですが、いろいろ論議をしてまいりましたように、とにかくこの地域は問題のところでありまして、払い下げ問題が絡み、いまの東富士有料道路の計画が絡み、きょう時間がありませんが、その他土地に関係あるところのいわゆる地元の利害関係というようなものも相当複雑なものがある場所でございます。したがいまして、これは自然環境保全審議会というこの機関の運営規則に基づけば、地元関係者の意見を聴取をすることの規定もあるそうでありますが、まだそういうことが行われていないというように聞いております。これは地元関係者からそういう要望が出ているはずなんですがね。いろいろとさっきから申し上げておりますように環境庁案の地種区分の内容というようなものは非常に不自然で、変則なものだというような点から、地元の関係のそれぞれの立場の人たちが、たとえば隣接するところの民有地の所有者だとか、あるいはあの地域の中でもって、すでに許可に基づいて植林などをしてある関係の人たちだとか、いろいろあるんです、こういうような人たちから意見の聴取を求めているそうでありますが、まだそれらの手続がなされていないと聞いておるんですけれども、これはどうなされますか。当然これは運営規則にもあることであれば、意見聴取というような手続をおとりになるでしょうね。
#70
○政府委員(柳瀬孝吉君) 先生もおっしゃいましたように、あの地域につきましてはいろいろの御意見がございまして、地元の関係の方々にも、土地の所有者もおられますし、それから地元の一市二村の御意見もございますし、あるいはあの地域のいろいろな富士急というような会社なんかの御意見もございますし、いろいろ利害が錯綜いたしておりまして、そういういろいろな方々の御意見も、私どももお会いしましてずいぶん伺っておるわけでございますが、そういうことが反映して、審議会の中でもいろいろな御意見が出まして、とてもこれはいまの現状で一つの意見としてまとめることは、少なくとも地種区分については現状では無理だということで、特別地域の指定だけをしたわけでございます。審議会の委員の方々も、先ほど申し上げましたように、現地にも行きましていろいろ話も伺ったりしておるわけでございますが、当然地元あるいは現地のいろいろな方の御意見は伺わなければならぬというふうに思っておるわけでございます。
#71
○神沢浄君 そうすると、要求に基づいては地元関係者の意見も聴取をすると、こういうように受け取っておいてよろしゅうございますね。
#72
○政府委員(柳瀬孝吉君) はい。
#73
○神沢浄君 そこで、私は委員長にお願いをいたしたいと思うんですが、お聞き及びのように、とにかくいろんな問題が絡みまして問題の地域でありますし、きょうの論議を通じましても、私は、長官などもあの現地へやっぱり一度おいでになって、そして直接現地の状況というものを御自身でもって把握をされるということが私は大変に必要なことじゃないかというようなことを実は感じてもいるわけなんでございますが、できましたら当委員会といたしましても、ひとつ現地の調査などをなさっていただくような御協議をお願いをしておきたいと、こう思うわけであります。
 それから、もう時間がありませんから、以上の問題は終わりますが、先ほど質問に入る際に資料を差し上げておきましたが、したがってきわめて簡単に申し上げますけれども、中央高速道の大月駅近傍の葛野川橋とこう称しておる架橋の付近の問題ですけれども、そこの住民が家鳴り振動、とにかく日常の生活が非常に神経などを刺激されまして大変苦しめられておるわけなんで、苦情が出てまいりまして、これは県が中心になって調査を行いまして、その調査資料を先に見ていただいたわけでありますが、結論的に言いますと、いわゆる何ホンとかいう基準を決めてあるようないわゆる騒音については、これは道路交通法から、あるいはそれにかかわる命令からして、その規制の基準というものがあるようでありますけれども、この調査の結果というのは、何か私どもこれ門外漢でわかりませんが、低周波騒音というんですか、いわゆる肉耳、耳には聞こえないけれども家鳴り振動といいますか、ここに調査の結果として出ておりますのは低周波騒音、人間の耳には聞こえないが、特別に低い周波数の音で、いわゆる低周波騒音による家鳴り振動、窓ガラスががたがたしたりするようなものの発生が予想されたから、その調査を依頼したところが、これはもう被害苦情の予想をされる限界値を大幅に超えていた、こういうような調査の結果が明らかにされているようでありますが、これはいわゆる耳に聞こえるような騒音というようなものについては、規制の基準なども決まっておりますし、一応措置もできることになっているだろうと思うんですけど、この種のものにつきましては、これはどういうようなことになっておるのか。また、こうしたことについてはどんなふうにお考えなさるか、その点ちょっとお尋ねをいたしたいと思うんです。
#74
○政府委員(春日斉君) 先ほど山梨県の公害課の調査報告を先生からいただきまして見たわけでございますが、確かに葛野川の付近で、小形山部落付近で、主として建具、家具ががたがた鳴って非常にうるさい、大変だという苦情が約二十五戸から出ておるようでございます。私どもいろいろ検討し、あるいは県ともこの問題につきましては連紹いたしておるわけでございますが、確かに低周波騒音、いわば特殊振動の問題なんでございますが、その発生原因はどうもはっきりしないと、これは学問的にはまだあるようでございます。一応県は橋げたからこれは出るんであろうと推定いたしておりますが、まだ発生メカニズムの解析というものは県にとりましても明確化されておりません。私どもといたしましては、県及び日本道路公団において調査中でございますので、その結果を待って早急に問題の解決を図るように関係機関に働きかけてまいりたいと思っておりますが、いずれにいたしましても、今後はこういう耳には聞こえないけれども、低周波の騒音がある、それによっていわゆる振動現象が起こると、こういう問題は橋げたの設計をいたすときとか、その他いろいろ考えていかなければならないと思っております。私どもは四十八年度中の低周波振動による全国的な苦情の件数というものを調べてみますると、工場、事務所あるいは飛行機等うを含めまして、約九十五件ばかりに、この低周波振動と申しますか、騒音と申しますか、それではなかろうかといわれるものが出ております。それぞれ原因なり、あるいはメカニズムが違うようでございます。これは十分私どもも検討いたしまして、適切な手を今後打っていかなければならないと考えております。
#75
○神沢浄君 まあ二十五、六戸の民家といたしましては、日常の生活も相当にこれは不愉快に送っているわけでありますから、いま御答弁がありましたように、それぞれその関係を督励をしていただいて、適切な措置が急がれるように要望をいたしておきたいと思います。
#76
○委員長(藤田進君) 神沢委員の御要望についてでありますが、理事会で協議いたします。
#77
○神沢浄君 はい。
#78
○小平芳平君 最初に、静岡県の富士市周辺の製紙工場のスラッジの処理につきまして、これは猶予期間も設けられたり、いろんないきさつがあったように伺っておりますが、現在の段階でどう処理されているか、お答えをいただきたいと思います。
#79
○政府委員(大場敏彦君) 御承知のとおり、富士市は製紙工場の集中的に立地している場所でございまして、いろいろ排水の問題が問題になっているわけでありますが、排水規制をいろいろ地元におきましても強化しているわけであります。その過程で当然のこと問題になりますのがスラッジの処理ということでございまして、また、この処分が大きな問題となっているということでございます。富士市は、昨年の九月に、このスラッジの処分につきまして、指導といいますか、方針を固めまして、従来認めておりました生の処理というものは非常にまずい、つまり、埋立地の効率的使用という点から見ても、すぐ埋立地が埋まってしまうということもあるでしょうし、あるいは運搬経路、それから埋立地の周辺における悪臭問題だとか、あるいは滲出液ということで環境が汚染される、こういった被害ということを防止する観点から、生スラッジの処分というものはやめて、今後は、つまり昨年の九月以降はすべてこれを焼却してから埋め立てしろと、こういうぐあいに決めたわけであります。その方針はその方針として評価できるわけでございますが、問題は、大手工場は非常に自分のところで設備も設置しやすいし、また、施設も敷地もあると、こういったことでございますが、御承知のとおり中小の工場がかなりこの地方は多うございますから、そういった中小の工場では、なかなか単独ではできない、また、敷地の発見も非常にむずかしい。こういうことでございまして、勢い、中にはもちろんできるのもあるわけでございますが、かなりの部分は、やはり共同でそういったスラッジの焼却の施設をつくらざるを得ない、こういうことになっておるわけでありますが、その敷地をどうやって確保するか、こういったことが問題になる。一方、それを各工場からその敷地まで、その焼却場まで持っていくわけでありますが、その過程で、やはりいろいろ地域住民とのトラブルが起きて、なかなかコンセンサスが得られていない、こういったことで、かなりの部分はそういった市の方針に対応しつつあるというのが実態でございますが、しかし中小企業を中心として、残念ながら現在までのところはそういった問題は完全には解決していない、こういった問題があるというふうに私どもは聞いております。
#80
○小平芳平君 大変抽象的で、それでは問題がどこにあるかということがつかみがたいのですが、四十七年九月一日から四十九年八月三十一日の間、この二年間は暫定指導要領ですね、暫定指導要領によって山へ捨てに行っていたんですね、ですから、田子ノ浦で問題になったヘドロが富士へ登るという現象が起きていたわけです、この二年間は。ところが、この暫定期間の二年間が過ぎましたので、いま、お答えにもありましたように、四十九年九月からは生処理は一切許さない、許可しないということになったわけです。そこで大手企業では、私も実際見せてもらいましたが、たとえば大昭和製紙とか、大手企業では相当な焼却施設をつくって焼却をしているわけです。あるいは中小企業でも、協同組合で焼却場をつくって焼却している、その焼却場もあるわけです。ただ、ある数の企業――中小企業が主体ですが、ある分量というものは全くこのスラッジの処理ができない、焼却場が話し合いがつかなくて、敷地が決定できない、敷地が決定できないために、どこへも持って行く先がない。それで、自分の社内へ仮置き場をつくって滞積して置いたり、あるいは中継基地をつくってそこへ滞積をしてあるわけですが、なおかつ毎日毎日出るスラッジですので、それはトラックへ積んで持って行くわけです、どっか投棄に行くわけです。だから、そういう点はこれは厚生省で把握しておられますか。
#81
○説明員(吉崎正義君) 御指摘がございましたように、富士市の製紙工場の製紙工程の中で、現在困難を来しておるものの主なものは中小企業のものであろうかと存じます。静岡県の調査いたしております数字をちょっと申し上げたいと思うわけでございますが、二月一日現在でございますけれども、富士市に百三十一、二の製紙工場がございまして、その中で自家焼却をやっておりますものが十六工場、お話にもございました共同焼却をやっておりますものが十三工場でございます。この合計二十九工場でもって千七百二十四トン・日のものを焼いておるわけでございますが、これは排出汚泥ベース含水率七五%としての計算でございますけれども、富士市全体では二千二百六十四トン・日の排出汚泥ベースの製紙汚泥が出ますので、七六・一%のものが焼却場で処理されておる、こういうことであります。ですから、工場数にいたしますと、比較的、四分の一ぐらいのもので、七六・一%が焼却場へ、それから四十六工場は再利用をやっております。これは先ほど申し上げました二千二百六十四トンの中には含まれておりません。廃棄物として出ないで、再利用をやっておる、こういうことでございます。そういたしますと、その他というものが残るわけでございまして、これが五十六工場ございまして、五百四十トン・日の製紙汚泥を排出いたしております。これの内訳は、県外で処分いたしておりますものが二百九十七トン・日、でございます。あとは県内で処分いたしておるものが二十一トン、再利用一トン、それから二百二十一トンはこれも御指摘にもございましたが保管中でございます。
 そこで、県外でございますけれども、許可業者によりまして、東京、千葉等でもって処分をしておるわけでございます。
 なお、この保管中のものでございますけれども、現在のところ、県の調査では、特段の問題を起こしておらない、こういうことでございますが、念のために現在県で調査中でございまして、秋口にはその結果がまとまるというふうに承知をいたしております。
#82
○小平芳平君 県の調査をそのまま聞かれて答えておられますからそういうことになるでしょうけれども、実際は保管中といいましても、周辺の住民等苦情が起きるのは、これは当然なことであります。あるいは県外へ持ち出すための中継基地は大きなプール状のものがコンクリートでできておりまして、そこへ山とスラッジがほうり込まれて積み重ねられてあるのですが、すぐ隣にもう民家があるわけですから、そういうところがら果たして浸透水の影響がありはしないか、あるいはいろいろ苦情が出てくるのは当然のことでありまして、そういう苦情が大変起きてきているのです。そして東京、神奈川等へ持って行っているのですか、許可業者がいて。その辺もう少し詳しくわかりませんか。
#83
○説明員(吉崎正義君) 県の対処の仕方でございますけれども、御案内のように、産業廃棄物の処理業者はそれぞれその業を行う地域を管轄する都道府県知事の許可の対象になっております。そこで静岡県では、たとえば収集運搬業の申請がございますと、これをどこへ持って行って、どういうふうに処理をするのであるか、そこまで確認をいたしまして、そうしてそれがはっきりいたしません場合には指導をして、その処分の方法を確認して許可をしておるところでございます。今日私どもの把握しておりますところでは、静岡県から外へ持って行って処分をしておりますのが七社ございますけれども、お話にもございましたように東京都でありますとか、千葉県でありますとか、神奈川県でありますとか、そういうところへ持って行っておるわけです。それぞれ持ち込み先の県の指導でございますけれども、これは県によって必ずしも一致いたしておりませんが、それぞれの県で許可をいたしておりますので、法令によってその処分を行っておるわけでございますけれども、たとえば東京都の場合を申し上げますと、お話にもございましたトラブルがございまして、今日では東京都では製紙汚泥にはPCBが含まれておるおそれがありますので、その基準を現在作成中であるので、それが決まるまでひとつ処分を控えるようにというふうに業者を指導しておるところでございます。また、千葉県におきましては一部再利用をやっておりまして、一部は今日の法令の定めるところによって処分を行っているというところが実情でございます。
#84
○小平芳平君 これは環境庁、通産省もお聞きいただきたいのですが、こうした家庭用紙のメーカーは毎日出てくるスラッジの処理が全く処理のしようがない。いよいよせっぱ詰まったら、もう操業中止せざるを得ないようなところへ追い込まれかねないわけです。ですから、これは通産省はどう対処されていますか。
#85
○説明員(沢田仁君) 先ほど御答弁ございました富士市の例でございますけれども、私どもの考え方としましては一刻も早く焼却場が共同で建設されることを期待しておるところでございます。現状は、残念ながら先生御案内のように、土地問題に絡みまして、その焼却場の建設がおくれております。私どもは絶えず県、市当局にもあるいは業界の方々にも要請をいたしまして、やはりきちんと焼却をするような方法を打ち立てるように絶えず注意を喚起しておるところでございます。焼却場の建設が始まります段階に至りました場合には、所定の政府金融機関からの融資といった方途を講じまして、極力中小企業の負担を軽減して焼却場の建設が早くできるような金融上の措置を講じてまいりたいと思っております。
#86
○小平芳平君 すでに焼却場のできているところはそれで焼却をいたしておりますが、まだ焼却場を持たない企業は焼却はできない。したがって、積んでおくか、あるいは業者に請け負わせてどこかへ持っていって処分するか、それも厚生省からのお答えのように東京都でも、あるいはほかの県でも対応の仕方は若干の相違はあるが、PCB等のおそれがあるということでそうした生投棄は許可しない。そうすると操業ができなくなるじゃないですか。通産省としては、かつてトイレットペーパーの品不足を――つくられた品不足か、あのパニック状態のときにはどういう指導をしましたか。その当時から、すでに今日こうして行き詰まることもわかっていたはずですが、何をやってこられたですか。
#87
○説明員(沢田仁君) 一年半くらい前から昨年の初めにかけてのいわゆる紙のパニックの時代に、通産省としましては供給の安定を図るために、生産力の増強あるいは所要の在庫水準の維持、この二点につきまして業界を指導してまいりました。いわば増産を奨励する形でパニックの状態に対処してきたつもりでございます。その後、御案内のように経済情勢が一転して、現在不況局面に至っております。通産省といたしましては中小企業信用保険法に基づく不況業種の指定を、本年の三月にちり紙業界、トイレットペーパー業界についていたしました。現在金融的にも非常に困難な状況になろうと思われますので、目下事務当局におきまして手続を進行中でございますけれども、業界が目下要望しておりますのが約二十三億円の融資の希望を出しておられます。中小企業向けの特別の金融を全銀協傘下の銀行から融資をする措置を大体貸し付けのめどといたしまして、七月ごろには業界に対して資金の貸し出しができるめどで目下検討しております。
#88
○小平芳平君 環境庁長官、お聞きのようにこれは環境上の問題としても、環境庁はそうしたスラッジの問題ですから、直接の関係は薄い面があろうかと思いますが、どうも通産省あるいは厚生省、保健所を通じまして対応しているのですが、現実に昨年の九月からというものは、そのスラッジの生投棄は一切許可しないということを地元は決めたわけです。やむを得ず、先ほどお聞きのように県外へも持ち出してみたのですが、県外でもそれは喜んでそういうことをいつまでも続けていかれる状態にはありません。そうなると、いよいよもってこの中小企業が操業継続がきわめて困難ということになるのですが、どう考えられますか。
#89
○国務大臣(小沢辰男君) 環境庁長官としては、産業廃棄物につきましては、処分の基準を定める権限しかない。また、それ以上の責任もないというようないま法制上のたてまえになっております。しかし、これは本当に中小の製紙関係の工場が困ってまいりますと、日常国民が使う物が極端に今度はなくなり、それが非常なパニック状態を来すということになりますので、一方、スラッジの処置をしませんと、二次公害のおそれも相当ございますから、私、環境庁長官の立場としても、国務大臣としても、非常に頭を痛めておるわけでございます。何とかスラッジの生産量を根本的には減少させるような製造工程の研究をもっと進めるなり、あるいはまた発生したスラッジの有効利用をもう少し、いろんな有効利用の方途があるようでございますけれども、それを考えると。ただPCBなんかが混っているおそれがあるという場合もございますので、簡単に肥料に回すこともできませんし、何とか土地の確保に協力を、公共団体と国がもっと積極的に乗り出していかなきゃいかぬのじゃないだろうかと考えますので、厚生当局と十分相談をいたしまして、一層ひとつ努力をしてまいりたい。いまのところ、それ以上具体的な方策について、私は率直に言ってどうもいい考えが浮かびませんので、中小企業の救済面は、いま通産省が言われましたような、いろいろな対策をとっていただきますが、やっぱり、何とかこの処分に必要な土地の確保ですね、これがどうしても、汚染者負担の原則といいますけれども、それができるだけの環境の整備といいますか、条件の整備だけは、国と公共団体で力をいたしてやらなきゃいけないのじゃないかと思いますので、当面それに全力を挙げて協力をしていきたいと考えております。
#90
○小平芳平君 ひとつ、私もお断りしておりますように、小沢長官が直接スラッジの処理に乗り出してほしいと言っているわけではありませんが、いまのような国と地方公共団体が協力しまして、それで何とか立ち行くような方途を講ずるように努力していただきたい、これは環境庁自体が動かないまでもですね。かと言って、じゃどこが本気になってやってくれるかというと、これまた不況対策とか、そういうことだったら通産省が全面的に推進なさるでしょうが、どうもスラッジの処理となると、厚生省も関係があるしというようなことで、実際、現在非常に困っている方は、家庭用紙メーカーは中小企業が大部分ですので、困ってらっしゃるのですが、それがこれ以上にせっぱ詰まると、いま長官も述べられましたような家庭用紙のまたパニックが起きるというようなことが、非常にこれ重大な社会問題となりますので、解決の方法に努力をいただきたいと思います。
 それから、いま長官もちょっと述べられましたが、通産省の方では、スラッジとして現状ではどこで投棄するか、あるいは焼却するかということが議論の焦点になりがちですけれども、再利用についてはどう考えておられますか、あるいはどういう方法が立っておりますか。
#91
○説明員(沢田仁君) 若干統計が古うございますけれども、日本全国で年間に発生しますスラッジが大体六十万トン前後だと考えられております。そのうち三割ぐらいが焼却に向かっておりますが、いま御指摘の再利用に向けられている分は、非常にまだシェアが少のうございまして、五%ばかり、こういう低水準でございます。これがいま日本全国の数字でございますが、富士宮市を含みますところの富士地区でその再利用のパーセンテージを若干申し上げますと、先ほどの厚生省の御答弁と地区が違いますので、数字が少し違いますけれども、御了承いただきたいと思いますけれども、富士地区の場合は七百九十トン、これは一日当たりでございますが、私どもが把握している統計ではスラッジが出ております。そのうち再利用に向けられておりますトン数が一日当たり百八十五トン、二割強のものが全国のベースよりも非常に高い率で再利用に向けられております。で、富士地区の場合には、主として紙の産地でございますので、板紙の、私どもの言葉であんこと言っておりますけれども、紙の中に詰める材料としましてスラッジを使っておるということで、厚紙の厚みをつける役割を果たしております。しかし、全国ベースで見ますと、先ほど申し上げましたように、まだわずか五%でございます。私どもとしましては、この割合を、将来にわたって技術の開発を含めて、できるだけ早く高めていきたいと思っております。
 御参考までに再利用を現在やっておりますのにどんな用途があるかちょっと申し上げますと、土地改良剤、肥料の関係でございますとか、あるいはブロックとか、ボードとか、建築用材にこのスラッジを使っております。さらにミミズを使いまして、ミミズがスラッジを食べるというこの機能を利用して、スラッジを処理していく。これにつきましては、私ども中小企業庁の方から技術改善費補助金を昨年度投入いたしまして、この研究の助成に努めておるところでございます。そのほか乳牛の粗飼料に若干配合して、飼料の給与状態のバランスをとる、こういうものにも使っております。それから、活性炭化する方途も考えられております。さらに、鋳物をつくる場合の鋳物のわきにこのスラッジをつけまして、これによって鋳物が急激に冷却するのを防ぐ役割をスラッジに期待する。いろいろ盛りだくさんのようでございますけれども、これといったまだ再利用の量的にさばいていく決め手は現在のところ残念ながら開発されていないというのが実情でございます。通産省としましては、こういった再利用の方途につきまして、いろいろ業界、あるいは関係の研究機関とも協力いたしまして、必要な場合には政府の研究助成の面で、前向きに研究費を助成してまいりたい、こういうふうに思っております。
#92
○小平芳平君 大変盛りだくさんでしたけれども、量的には少ないということですが、つい最近の新聞報道で製鉄用保温材に使うということが出ておりましたが、これはいかがですか。新聞の報道によりますと、スラッジで月間三千トン、それを月間六万トンを目標に再利用の計画を立てているということですが、この点はどうですか。
#93
○説明員(弓削田英一君) 私ども新聞を見ておりますが、具体的にこの会社の開発しました技術内容について、まだ十分説明を聴取していない段階でございますけれども、スラッジの処理の方法としまして、確かに有効な方法じゃないかというふうに考えておりまして、すでに御案内のように二、三百トンを試験的に使われているようでございますので、私どもとしては十分技術内容等も検討した上で、必要ならばこれの有効利用等については、政府関係機関の技術制度もございますので、こういうことを活用いたしまして、その普及を図っていきたいと、かように考えておる次第でございます。
#94
○小平芳平君 どうもそういう対応の仕方が遅いじゃないですか。その技術は、アイコー株式会社というんですね。で、ここに「公開特許公報」というのに出ておりますが、この商品名はEPOCAといってこういうふうに出ておりますから。これはすでに新日鉄名古屋工場、広畑工場、室蘭工場あるいは神戸製鋼、大同製鋼、トピー工業、こういうようなところで、すでにもう何年来使用しているというんですよ、実験的にも。実験的にもというか、実用的にも。それで特許が公開になったから今回新聞発表しましたと、こうおっしゃっているわけです。そういうことが、ただ手がない、方法がない、焼く場所を一生懸命探しなさいということのほかに、技術援助しているとか技術援助するとかおっしゃったですが、こういうふうにもうどんどん企業としては進められているということに対してはどう思いますか。
#95
○説明員(弓削田英一君) 非常に先生からおしかりを受けたわけでございますが、われわれ非常に不勉強でして大変申しわけなく思っている次第でございますが、早速業者等からこの技術の成果等を十分聞きまして、いま紙業界ではスラッジの処理に困っているようでございますから、この面でどれぐらい利用できるかという問題もいろいろあろうかと思いますが、その辺も十分検討した上で善処していきたいと、かように考えている次第でございます。
#96
○小平芳平君 大体この製紙に関するスラッジ処理の技術開発に対してどういう援助をしてきたんですか、いままで。あるいは今後やっていきますか。
#97
○説明員(沢田仁君) 通産省関係で研究補助を出しましたのは、先ほど発言いたしましたミミズの飼育によるヘドロ処理、これ一件だけでございます。
#98
○小平芳平君 どうもミミズだけじゃちょっと頼りない。製紙工場ごらんになると、どうもミミズだけじゃ頼りない。もう少し資源として再利用というなら、それに対応するような研究開発が必要でしょうと思いますが、いかがですか。
#99
○説明員(沢田仁君) 全く御指摘のとおりだと思います。もっと本格的なたとえばいま御指摘のアイコー株式会社のケースにつきましても詳しく事情を勉強いたしまして、抜本的な処理の方策があるかどうか、そのような効用がありました場合には、極力金融面なり、あるいは研究補助の面で前向きに努力していきたいと思っております。
#100
○説明員(山田勝久君) 先生御指摘のように、廃棄物の再資源化に関する情報でございますが、なかなか不足しております。そこで、私ども近く財団法人クリーン・ジャパン・センターというものを設立いたしまして、一般会計補助もいただいております。そこで、資源リサイクル・データ・バンクというような一種の情報の収集と提供の事業も行っていきたいと思いますので、先生御指摘の面を十分配慮して実効を上げていきたいと、こう思っております。
#101
○小平芳平君 そういうふうに実効を上げていただければ結構なんですが、とにかく、もう先ほど来繰り返し申し述べますように、せっぱ詰まっているといいますか、もうこれ以上いまの状態が続けば、果たして操業が継続できるかどうかという、そういう状態にあるということをよく考えていただきたい。
 もう一つ、これは通産省に対する業界の方々の御意見としまして、通産省は先ほども答弁なさいましたように、パニックのときには増産の要請をし、それから現在不況になった、不況になった現在は対応しているという御答弁ですけれども、増産のときはもう期待を込めて増産の要請をされましたが、どうも深刻な不況に陥った現在は、まだまだお荷物扱いにされているようにしか受けとめておられないわけです。
 そのことと、それから今度は故紙ですね。関係する故紙を扱っている方々も、昔は故紙が資源だと、重要な資源として回収すると言われながら、いまはくず紙ですか、紙くずですか、昔は資源、今は紙くずというんですが、そんなに昔といま離れていない。ほんの半年か一年の間に、一時は資源再利用と言われ、いまは紙くずというふうに扱われるというのは、余りにも行政のあり方というものが、その場その場のその場逃れでしかないんじゃないかということに対してはどう考えますか。
#102
○説明員(沢田仁君) まずトイレットペーパー、ちり紙業者に対する私どもの扱いでございますけれども、決してまま子扱いにしておるつもりはございません。しかし、製紙業界、とりわけ故紙を使う板紙、それからいまのちり紙、トイレットペーパーの業界、これが非常に経済情勢の一般的な沈下の中でもとりわけひどい景気の影響を受けており、これをどのようにして何らかの意味での御援助の手を差し伸べるかということで苦慮しておるところでございます。さしずめ、現在私どもが動かし得る道具立てとしまして、先ほど発言いたしました金融措置がまず先決ということで、従来から、また先ほど発言いたしましたように、七月からも融資の道を極力講じていきたい、まずこれが一つの道でございます。
 それから、業界の方からいろいろお伺いをするわけでございますけれども、いわゆる調整行為あるいはカルテル、これがまだ業界の方でも機が熟しておると申しますか、実際にやはり団体法に基づく調整行為をいたします場合にも、業界の実質的な合意といいますか、そういったものが出てきました場合には、私どもいろいろお話を伺いまして慎重に検討をしていきたいと思いますが、現在までのところまだそれが業界のまとまりがついていないというのが偽りない実情でございます。
 第二に、故紙の点でございます。
 故紙は、私どもはこれは現在の不況にもかかわらず非常に重要な資源だと思っております。しかしながら現実には、御指摘のとおり、現在の故紙回収業者の経営は非常に苦しくなっております。故紙は主として板紙に使われます。板紙がこれが好況、不況によりまして生産量に非常に消長がございます。その影響を受けまして故紙の消費量というものが好況のときと不況のときで非常に乱高下いたしまして、相場も非常な波を打つものでございます。で、昨年、通産省といたしまして、故紙を極力くずにもつていかない、ごみにもつていかないで、資源として保存をしておきたいと、こういう精神から故紙再生促進センターを財団法人として設立いたしました。で、そのときのもくろみ、あるいは九月ごろに至りまして、業界の相互扶助としまして、その当時から下がりつつありました故紙の値段に対抗して、極力これを適正な、買い出し人が、あるいは回収人が生活をしていけるような値段に何とか食いとめたいという意図から、金額にいたしまして三十億円、数量にいたしまして十五万トンの故紙を備蓄し、現在故紙センターに保有中でございます。しかし、何分経済の落ち込み、板紙の不況の落ち込みが非常に激しゅうございまして、きわめて遺憾でございましたけれども、大勢に抗すべくもなく、御案内のように故紙の値段が非常に下がっております。で、こういう状態を今後続けていきます場合、製紙原料の中で故紙は何と申しましても四割方の原料の割合を占めております。日本の紙産業における非常に重要な原料だと思います。そして今後、いわゆる原木からつくられますパルプ、これは外国から調達してこなくてはいけません。その量の問題、値段の問題、いろいろ困難な問題が長期的に予想されます。そのようなことを考えますと、故紙の長期的に見た将来像は、非常にますます重要なものになっていくと思います。同時にもう一つ、この故紙の問題は、大都市におきますところの清掃事業とも関連しております。この清掃は清掃、再生は再生と分かれてきたのが現在までの実情でございますけれども、やはりこれは清掃とそれから再生というものを、いわば統一した形で、何か新しい故紙の再生をコンスタントにリサイクルさしていくやり方を考えたい、このように考えております。で、考えるだけでなく、何らかの意味での実験と申しますか、地方公共団体を取り込んで、そういった清掃と再生を一丸としたような故紙の回収の仕方、それの延長線上の備蓄の仕方、このようなものを真剣に考えていきたいと思います。繰り返しますが、現在の故紙再生促進センターは必ずしも十分にその現在の姿では機能が発揮し得ると思っておりません。さらにこれを改良する方向で本当に故紙を資源として活用する方途を考えていきたいと思っております。
#103
○小平芳平君 まあ小沢長官、先ほどのスラッジの処理といい、あるいは資源としての回収再利用といい、これは環境庁の直接の分担ではありませんけれども、どちらかと言えば環境問題としまして大所高所からのスラッジの処理、スラッジの処理も企業内で、工場の敷地内でやっている段階じゃないわけです。外部へぼんぼん放り出しているわけです。それを、先ほど申しますように、中継基地、滞積場をつくっておいて、そこからダプンカーに乗せてまたどんどん県内、県外へ運搬しているわけですから、これは環境問題としてもきわめて重大な問題となってきているということも頭に置かれ、また、いま申しますような資源再利用、それは故紙の再利用ももちろんそうですが、スラッジそのものを何万トンという計画で再利用するという計画をすでに立てて、特許も取り、動き出しているところもある、こういう点に大きな関心を持っていただきたい、環境庁長官として関心を持っていただきたい、何か御感想を承りたい。
#104
○国務大臣(小沢辰男君) もうおっしゃるとおりだと思います。私ども関係各省と連絡を密にしまして、こういう面でも最大の努力をして協力していかなきゃいかぬと思いますので、心構えだけで大変恐縮なんでございますが、おっしゃるとおりの考え方で進みたいと、かように考えます。
#105
○小平芳平君 じゃあその問題は終わります。
 それで次に、今度は光化学スモッグのことしの被害状況はどうなっておりますか。それから、光化学スモッグの被害者に対する公害健康被害として救済するかどうかという点についてはどうなっておりますか。以上二点についてお答えいただきたい。
#106
○政府委員(春日斉君) 本年の光化学スモッグの発生状況でございますが、五月末日現在で集計いたしてみますと、全国の注意報発令回数は二十一回でございます。いわゆる被害届けに上がってまいります人数は八百九十五名でございます。これをまあ一昨年の同期に比べますると、一昨年の同期は四十三回、五千九百五十五人でございましたし、昨年の同期は六十三回、一万百七十九名でございましたから、その限りにおきましては大幅に減っているように見えるわけでございます。また、県別に見ましても、注意報発令回数が昨年同期より増加した県は岡山県だけでございます。被害届け出人数が昨年同期より増加した県はないわけでございます。しかし、これは五月末日だけの話でございまして、実は六月六日になりますると、川崎の幸区でオキシダントがかなり上がってまいりました。そうして被害者数の合計が二千十五名に上ったという届け出も出ています。ただ、このときは、医院とか、あるいは病院で受診した者はなかったようでございまするし、被害の内容も、目のちかちか、のどの痛みというものが大半で、学童三名が嘔吐したということぐらいで、これはもうすぐに回復したわけでございます。したがいまして、昨年、一昨年に比べて大幅に今後も減少するだろうとまでは申しませんけれども、届け出られた五月末日で集計すると、そうだということでございます。
 なお、まあ問題としては、昨年、一昨年きわめて幸運だと思うわけでございますが、いわゆる重症被害者というものが、少なくとも届け出されなかった。ところが、ことしの五月三十日でございますが、オキシダント濃度は余り高くないんでございますが、東京で四十九名、千葉で三十九名の被害の訴えがあったうち、町田市では四名が受診をして、そのうち、まあほかの病気の既応症があったんでしょうが、一名が入院した。あるいは佐原市では一名が入院して、翌日退院したというふうに、まあ数はそんなに多くございませんが、いわゆる重症被害に属するもの、これが果たして光化学スモッグそのものによるかどうかということはともかくといたしまして、そういったことが報告されておる。これは数の問題だけでなくて、私どもは重要視しなきゃいかぬと、かように考えております。
#107
○政府委員(橋本道夫君) 公害健康被害補償法の方で、光化学スモッグに関連した健康被害がどうなっておるかという御質問でございますが、この点につきまして、昨年の五月の末の本委員全で、先生の御質問に対しまして私もお答えいたしましたが、私どもは重症例につきましては非常な関心を持っておりまして、もしこれが、補償法としてのカテゴリーの中に入るということならば、これは取り上げるべきだろうという考え方はいまも持っております。で、その後、四十九年の八月の末に、中央公害対策審議会の専門委員会からの報告がございました。その報告の中で、光化学スモッグによる健康障害を対象疾病として取り上げるかどうかということにつきましてのその時点での御意見は、そのとおり申し上げますと、「現時点では、光化学スモッグに関連した健康被害は疾病というよりも症状であると考えられており、かつ、症状の大部分は軽症で一過性であり、医療を要する程度の健康被害はきわめて」少なく、実際には、「被害者のうち約〇・三パーセントが医療機関で受診しているという実情にある。」ということでございまして、光化学スモッグによる疾病ということ、像がはっきりして評価ができれば、これはその中に入れるということで、私どもは現在もいろいろな情報について注意を払っているところでございます。なお、大気局がこの光化学スモッグの健康被害につきましての調査をしておりますので、四十九年度の調査結果が全部出れば、またそれを参考とさせていただいて検討したいというふうに考えます。
#108
○小平芳平君 春日局長の先ほどの御発言は、昨年、一昨年に比べて、本年は被害者発生数が少ないということと、重症例があるということ。それで、春日局長は、六月十六日の朝日新聞が、全国の通信網を使って調べた十五日現在の被害発生状況という記事がありますが、これはごらんになったですか。また、どう考えますか。
#109
○政府委員(春日斉君) 見たと思いますが、ちょっと記憶いたしておりません。
#110
○小平芳平君 それではやむを得ませんが、その重症例は、これは先ほどの橋本部長の読み上げられた――答申ですか、それは。
#111
○政府委員(春日斉君) はい。
#112
○小平芳平君 答申によれば、症状であって疾病ではないということだと、それは重症でもそういうことですか。
#113
○政府委員(春日斉君) 私は、いわゆる重症被害と、いわゆるをくっつけておりますが、それはお断わりいたしましたように、これは光化学スモッグによる被害であろうということで届け出られたものがこうだということでございまして、それは現実に私どももいわゆる重症被害例というものについて調査いたしておりますが、どういうふうに光化学スモッグで外国には例を見ないようなああいう重症被害と称する症状が出るのかどうか、これにつきましては、必ずしもまだ明らかにされていない。したがいまして、私どもは正直に、そういう光化学スモッグによるであろうといういわゆる重症被害、こういったものを御披露申し上げたわけでございます。単なる症状と申しますか、症状を呈すれば患者であるということも言えると思います。
#114
○小平芳平君 これは私は、国会からそう遠くないところで見たのですが、芝生で遊んでいた子供たちが目が痛いと言って、それで急いでもう家の中へ駆け込む以外に対策はないわけですから、現状としまして、子供にとってみては。それで、頭が痛いと言ってそのまま一時間、二時間寝てしまうということを再三見ております。ですから、この大気汚染そのものが深刻化してきている。それはちょっと、まだ科学的に解明し切れない何らかのそういう作用もあるんじゃないか、複合的な作用もあるのではないか。したがって、それを解明することがきわめて大事な、しかも急を要することであるということと、それから、これは先ほどの藤井委員の質問に対する長官、いろいろ上げられたり下げられたりしておられましたが、光化学による被害、それ以外の被害とは考えられないような被害が現に発生しているというこの事実ですね。そういう点からして伺いたいことは、先ほどおっしゃっておられた環境基準、四十八年五月八日告示の環境基準が達成されるならば、そうした光化学スモッグによる被害というものはなくなるだろうか、その辺はどういう見通しを持たれますか。
#115
○政府委員(春日斉君) 御承知のとおり、光化学スモッグの発生メカニズムは、常識的にと申しますか、通説と申しますか、要するにNO2とHCに紫外線が当たっていわゆるオキシダントが出て、そのオキシダントによる一過性の症状である、こう言われておるわけでございます。したがいまして、炭化水素と窒素酸化物のどちらかがゼロになるぐらい下がれば、それはよろしいわけでございます。しかし、最近の実験――室内の実験でございますけれども、実は光化学オキシダントができる際の条件として、炭化水素と窒素酸化物の比率というものが、これが問題です。単に窒素酸化物と炭化水素だけぐっと減らしても、それだけではなかなか光化学スモッグは落ちぬというデータもございます。私どもはそういったいろいろなデータも考えながら、きわめて異常に高いところの窒素酸化物というものはわれわれは減らしてまいります。あるいはまた、炭化水素もまだ高いわけでございます。これはともかく減らしてまいる。炭化水素の場合は自動車は十分の一にするわけでございます。これは五十年度規制というのは全部そうなっておるわけです。それと窒素酸化物は、先ほど申しましたように、環境基準を目指してやるわけでございます。炭化水素の環境基準はいろいろ検討はいたしております。まだ所定の目的に達しておりませんが、そういう意味で、私は単に窒素酸化物の環境基準さえ満たせば光化学スモッグが全然なくなるかと言われますと、炭化水素との比率の問題がございます。ですから、学問的に言うならば、必ずしもそうではないこともあり得べしと、しかしいまの段階ではともかく下げることは大切、こういうことでございます。
#116
○小平芳平君 小沢長官、これで私のもう質問時間が終わりますが、先ほどの長官の御答弁は、経済との調和条項をはずしたとか、私も長官の答弁に賛成するところが多かったわけですが、ただ環境基準がアメリカの五倍、西独の七倍ですか、あるいはあの環境基準そのものが行き過ぎだとか、厳し過ぎるとかというような質問もあったようでしたが、それに対して長官は、いやそうじゃない、これはあくまで達成の努力をするんだというふうな発言も余りはっきりなさらなかったかとも思いますが、私が指摘したいことは、先ほど来述べますように、現にそういう健康被害が発生しているという事実ですね、それは自動車の排気ガスの多いところに住んでいらっしゃる方は、かぜを引いたら最後二、三カ月治らないとか、あるいは都心の小学校へ通っている子供はこんこんせきをする子供が多いとか、目が赤いですね。これは大気汚染と目とどういうふうに関係づけるか、橋本部長なんかうんと意見を聞けば言うでしょうけれども、とにかくそういう被害者、子供さんが、あるいは孫が、あるいはお父さんなりお母さんなりが、そういうどうも大気汚染、空気が悪い、空気が悪いと言って健康の被害を訴えているという、そういう立場からひとつ長官、環境庁は行政を進めていただきたいと思うんですね。長官のお考えを伺いたい。
#117
○国務大臣(小沢辰男君) それは小平先生おっしゃるとおりの姿勢で私どもは臨まなければいかぬということを先ほど来私、藤井先生にも申し上げておるつもりなんでございます。答弁聞いていただくとわかりますが、私は環境基準というものはやはりそういうような健康障害が起こっている以上は、起こらない状態を想定をして環境基準というものは決め、そこへみんなで努力をしていかなきゃいかぬのだと思います。そのために、ただそこに至る過程においてはいろいろな対策を講じていかなきゃいかぬけれども、そのときの予見された科学技術の進歩の状況というものに制約される、これはまあ仕方がないだろうと。しかし、それだけではなくて、やっぱり現在の科学技術が、将来何年か先にはおそらく改善され進歩するであろうという予見まで含めて私どもは考えていかなければいけないということを申し上げたわけでございます。ただ、費用の点については、これはやっぱり帰するところ国民全体がそのつもりになって協力をしていただかなきゃいかぬわけでございますので、企業だけが悪いとかいいとかということを私は申し上げたわけではありませんので、この点は……。
 それから、環境基準の九条の第三項に、やはり法律上は適切な科学的な、科学技術の進歩なりいろいろな変革によって見直していかなきゃいかぬという法律の規定がございますから、その意味においては、私どもは、環境基準を一たん決めたらもう全くおろさないんだというようなかたくなな考えは持つべきじゃないんじゃないか。そういう考えだけを申し上げておきます。
 ただ、アメリカの五倍と私先ほど申し上げたんですが、アメリカと日本では測定方法が違いまして、大体そういう点で言いますと、アメリカの測定方法と日本の測定方法が日本の測定方法の方が約倍ぐらい、ちょうど二倍ぐらい違ったデータが出てまいりますので、したがって、五倍にはなっておりますが、事実上は測定方法の関係から言いますと二・五倍ぐらいじゃないかと思いますが、さっき藤井先生の答弁についてその点を言わないで五倍と申し上げまして、常識的にそう言われていることを申し上げたことは私の足らないところでございましたので、ここでつけ加えさしていただきます。
#118
○沓脱タケ子君 それでは本題に入る前に、いま小平委員からも言われましたけれども、先ほどの藤井委員の質疑の中で、公害発生源に対する規制が厳し過ぎるじゃないかという趣旨の御質疑があったわけですよ。その中で長官は、その趣旨はよく理解できるけれども、立法府ではなくていまは行政府の長としておるんで法律を守らにゃならぬので御了解をいただきたいということを繰り返し言っておられたんですが、私大変丁寧に聞いておったわけですけれども、聞けば聞くほど、いまは行政府の長としておるから法律を守らにゃならぬということだけれども、立法府の立場なら御意見には賛成なんだというふうに受け取れるような感じまでしたんですよ。そこで、これはそういう点きわめて大切な基本問題だと思いますので、長官の率直な御意見お聞きをしておきたいと思うんです。だって、あんなに繰り返し言われたら、立法府におったらあなたの御意見には賛成ですがと言わぬばかりに聞こえてしようがなかった。
#119
○国務大臣(小沢辰男君) 藤井先生は、今日の技術開発の現状と、それから国民経済の観点から環境基準というものをある程度やはり考慮をしていかなきゃいかぬじゃないかという御主張なんですね。それはお聞き及びのとおりだと思うんです。私はそれについて賛否何も申し上げていないんです。そういう藤井委員が立法府の委員としておっしゃることはこれは理解できますけれども、日本の現実の法律なり制度の立て方というものはそうなってないということを申し上げているんで、私の意見を一つも申し上げていないわけでございます。そうじゃないでしょうか。私はたとえば先生と意見が違っても、先生のお考え、あるいは先生の立論というものは理解できることは事実だと思うんです。先生が私と意見が違ってもそうだろうと思うんです。理解ができるということ、それに賛成いたしますということとは相当大きな違いがございます。したがって、私は、藤井先生がやはり経済人として見られて、日本の経済の実態あるいは日本の今後の問題をいろいろ経済人としてお考えになるときに、そういう立論をされ、あるいは意見を出されるということには私は理解できるわけでございます。しかし賛否は別でございます。私は、いま環境庁長官として行政をあずかる者としては、法律というものがあるんですから、その法律のもとにやっていかなければならないわけでございます。そういう意味で申し上げておりますので、いま小平先生にお答えしたのが環境庁長官としての私の態度でございますので、御理解をいただきたいと思います。
#120
○沓脱タケ子君 これはきわめて大事な問題なんですが、そこで時間を費やすと困りますので、発生源対策の規制が厳し過ぎるという御意見が出て、全く対照的に私は公害の被害者救済の問題に関連してお伺いをしたいと思っているわけです。
 これは前回五月二十三日にもお伺いをいたしましたことに続きましてお尋ねをしていきたいと思うわけですが、あのときにもお伺いをいたしましたが、公害健康被害補償法の東京都における実施状況ですね。あのときにも御指摘を申し上げたように、三千八百人余りの認定申請患者が出ておるのに認定患者ゼロだというふうな実情では法の趣旨からいっても困るではないかということで御指摘を申し上げましたんですが、その後進捗状況はどうなっているか。新聞では品川で五十七人申請をされたとか、あるいは文京で六十人とかいうふうなことで散見をいたしますけれども、どういうふうにめどがついたのか。特に、あのときにお話があったのでは、医療機関との話し合い、これがうまく話がついていないのでというふうなことであったように思いますが、そういった点はどういうふうに解決をされたのか、ひとつお答えをいただきたい。
#121
○政府委員(橋本道夫君) 東京都の八区の進捗状況でございますが、第一回の認定審査会は現在すべての区においてもうすでに実施されております。一部の区におきましては、もう第二回というところに入っているところもございます。そういうことで認定審査会は五月の末以降動き出したという状態でございます。また、現在私どもはっきりつかまえております認定患者数は六月十三日現在で五十七人でございますが、このほかの方の数字はまだいまのところつかまえるというところまでにはいっておりません。そういうことで、東京都の方の認定審査会としてはすでに動き出したということを申し上げられると思います。
 それから医師会との話し合いがどうなっているかということでございますが、私どもは、一つずつの区あるいは東京都と医師会という問題の直接の介入はいたしません。これはやはり東京都知事が基本的に地方の問題をやり、また特別区の区長が最も法律的に規定されておる責任があるということでございまして、側面的に日本医師会を通じ、あるいは東京都医師会と日本医師会とその三つの間で話をし合ったりするということで話をし合ったり、また、認定審査会の全国会議を開いてそこに東京都の審査会が全部出席しておられましたので、そういうところがやるということでございますので、詳細にどこまで詰まったかということは存じませんが、少なくとも認定審査会は始まったというところだけは申し上げられると思います。
#122
○沓脱タケ子君 これは詳細に存じませんというふうにおっしゃるんならしようがないんで、新聞の報道を引用したいと思いますけれども、これは五月の三十日の日経にも、また六月十七日の読売にも報道されているんですけれども、東京都では、公害健康被害補償法に関する指定医療機関の指定医を返上するというのが起こっていますよね。その指定医返上を認めると、それからもう一つは、公害患者には無料診料を認める、三つ目には、診療報酬は健保方式で支払いをする、こういうふうに報道されているんですが、これは事実ですか。
#123
○政府委員(橋本道夫君) 東京都医師会の辞退状況でございますが、これは五月二十二日の状態でございますけれども、八区関係で大体八五・五%の方が辞退をしておられるということでございます。これは公害医療機関といいますものは指定ではございません。その点はお間違いのないようにしていただきたいんですが、健康保険や国保、政保の医療機関はすべて公害医療機関としてまずございまして、私はやるのがいやだという方が届け出られるということで、その断りを届け出られるということでございますので、指定医ということではございません。そういうことでございまして、一四・五%の医療機関、まあ公的医療機関等が大体これになっておりますが、そういうところは公害医療機関としてやっていただけるということだというぐあいに存じております。ただ、私まだ正確に存じませんのは、果たしてその辞表が区長や都知事に正式に受理された形になったという処分をされているのか否かというところにつきましては、まだ明らかな事実というものは存じません。医師会としてつかまえている人数はそういうところであるということでございます。
 それから、公害患者からは費用を取らないということでございますが、これは医療費を請求されるということでカバーをするということでございましょうが、公害患者の方の側から見ますと、公害健康被害補償法によるこの医療という形のものを公害医療機関で受けがたいという事態があることは事実でございますが、そのほかのところに行っても医療を拒否されるというわけではなしに、その医療を受けられる形にするという話を医師会と東京都と区が話をしておるという事態でございまして、私どもは何とかこれはもう少し円満にいかないものであるかという気持ちをいまも強く持っております。
 それから、健康保険でよいということでございますが、これは東京都の医師会の方が七二%の特例ということをきわめて重く見ておられまして、あの特例を払われるのは絶対いやだという気持ちをお持ちのようでございます。しかし、日本医師会の方はもう当然この新しい公害健康被害補償法の診療報酬ということでこれは進めていただいているわけでございます。また、東京都以外の指定地域の医師会の方は、そんな健康保険でやるなんということは全く考えてないということでございまして、そういう点では東京都医師会の態度は日本医師会の会合の中におきましては批判をされておるという事態でございます。
#124
○沓脱タケ子君 いや、その診療報酬の批判されるとかされないとか、そんなこと私聞いてないんですよ。それぞれ御意見があってやっておられることなんで、ただしその合意をしたという中で健康保険法と同じく診療報酬の明細の書式、点数計算の方法など、これまでの健康保険法と全く同じにするというふうに合意をしたというふうに報道されておるんです。で、そういうことについては私どもちょっと理解しにくいんですけれども、そういうやり方について環境庁は御承認になっておられるんですか。
#125
○政府委員(橋本道夫君) 環境庁としては、これは何とか公害健康被害補償法の診療報酬の方によっていただけないものかという気持を私どももいまだ持っております。
#126
○沓脱タケ子君 いや、現実に認定患者が認定をされて、まあ五十七人かプラス六十人かは知りませんけれども、認定患者ができて――もうですから連日診療が開始されるという状況になっていて、その診療報酬の支払いが健康保険方式で点数計算もやるというふうなことで合意をされたということなんですけれども、環境庁はそのことをお認めになるんですかということですよ。毎日動いているんですから。
#127
○政府委員(橋本道夫君) 認めるか認めないかという形での私ども正式の照会も受けておりませんが、私どもとしていま認めるという気持ちはなかなか言いにくうございまして、何とかその点はもう少し円満にできないものかということでございます。ただし、患者の医療については、現実的には支障は来たしておらないということは事実でございます。
#128
○沓脱タケ子君 この問題ちょっと細かくてめんどうなんですけれども、なぜ申し上げるかと言いますと、これは健康保険における点数計算方式と、また公害医療における診療報酬の体系とは違うということで、それが大変複雑でかなわぬというのが東京都の医師会の御意見でもあるわけです。すでに実施されておられる十二地域の医師会の皆さん方もそのことを何とか早く改善をしてくれという御意見になって要望が出ているわけですね。そういう問題点が隘路になって環境庁がお示しになっておられる公害医療の点数計算あるいは診療報酬の体系というものが東京都ではやられないということになったらこれは大変だなと思うんですよ。
 それからもう一つは、健康保険と同じ点数計算で報酬明細書を請求すると、そうしたらどうしてこれ支払いをするのかなあというのがわからぬわけですよ。理解できないですよ、大体において。金額とか、あるいは内容が違うんですからね、これどうするんですか。いや、お認めになりますかと言うたら認めるとは言いにくいと。それは確かにそうだと思う。現実に請求書出てくるんですよ。どうするんですか。
#129
○政府委員(橋本道夫君) これは私どもまだ正式には最終的にどうなるかということは取り決めておりませんが、この事態といいますのは二十四条の「(療養費の支給)」ということで患者さんの側に原因があるのではなく、医療機関の側に原因があって、いま言った公害健康被害補償法の診療報酬での医療ができないという事態は患者さんの方の側にあるわけです。ただし、しかし医療は受けられるということでございます。それから健康保険の診療報酬請求で要求されますから、公害健康被害補償法の医療よりもある意味で安い医療費の問題があるわけでありまして、東京都医師会としてはその安い方の健保の医療ということでこの形としては請求の形になってくる。そこのところは、これは別の例を言えば、健保の総辞退に遭ったときの条件とまず同じなのではなかろうかというような理解を私どもはいたしておりまして、何とかそこのところがもう少し円満に解決できないものかという希望をいまだに捨てておりません。
#130
○沓脱タケ子君 安いとか高いとか言ってないんですよ。金額とか内容が違うんだから、で、東京都は健康保険の診療報酬の点数体系で請求をするわけです。環境庁は、それは指定する、おたくの方が認める診療報酬の内容明細とは違うけれども請求をしてきたらそのとおりに渡すということなのか、あるいは換算をしてちゃんと環境庁が示しておられる診療報酬で支払うのか、その辺はどうなんですか。
#131
○政府委員(橋本道夫君) 二十四条では現にかかった限度ということでございまして、健保の水準でやると要求されるわけですから、健保の水準の費用がかかったということでその限度の費用が払われると、こういう形になります。
 それから先ほどお答えするのを私、落としましたが、確かに先生の御指摘のように診療報酬の請求方式は非常に複雑である、三本立てというのは、これは何とか簡素化しようという御意見、私どもも何とか簡素化しようというこれは決意を持っております。で、診療報酬が決まると同時にその方式をもう少し簡素化するということを私どもは考えておりますので、その前段階でございますので、まだ非常に複雑ではないかという御批判があるというぐあいに考えております。
#132
○沓脱タケ子君 前回も私、申し上げましたように東京都でもスムーズにいかないというのはそういう診療報酬の中身が特掲点数という金額明示、あるいは技術料については一点十五円、材料費については一点十円というふうな三本立てのしちめんどうくさい業務量のたくさんある複雑なやり方になっておるという点が、それでなくても医療や診療と無関係な事務屋がふえて保険医としては大変困るという状況の中に、さらに複雑さをプラスするということで改善をしてほしいという要望が、すでに昨年来やられておる十二地域の全国の医療機関から出されているわけです。そういう問題が一つの大きな隘路になって、東京都では医療機関とうまくいかなくて患者さんには迷惑がかかってきているわけですよ。そういう絡み合いのある問題なので、東京都を早く解決をし患者に迷惑をかけないというためには、そこのところを解決していくということが一番近道じゃないかということなんですよ、長官どうですか。これね、こんなことをやっていますと、私この前にも患者に迷惑をかけるということを言いましたけれども、現に迷惑がかかっているんです。この間も、つい数日前ですか、肺気腫という病気の患者さんでね、入院をして、呼吸困難でのどへ穴をあけて呼吸管理をしなければならない患者さんが、これはたまたま働けないから生活が大変困難で、せめて国民年金の障害年金の受給者になれないだろうかという相談に見えたんですよ。で、よく調べてみたら東京都の公害指定地域の方です。当然公害認定患者に該当するべき――恐らく特級ぐらいですね、これだったら。そういう病状の方が公害病で苦しんでおられる。ところが、東京都ではそれがやられていないというふうなことで現に患者には迷惑がかかっているという事例もたまたま見受けましたけれども、そういう事態になっておるわけですから、これは医療機関との関係がスムーズにいかないということになりますと、区民の中にも正しく伝達をされないし、宣伝もされないわけですから、医療機関としても、積極的にそれは認定用務についても協力をしようという立場も取りにくいということは当然でございましょう。だから、そういった点では、診療には迷惑をかけませんと部長おっしゃるけれど、現実には大変な迷惑が患者さんにはかかっているという事態、これは軽視できないです。これの、解決をどういうふうにするかと。もう問題点ははっきりしているんですから、その辺をひとつ……。長官ね、公害に苦しめられて、しかもその間に死んでいますよね。品川の五十七人の中で二人はもう死んでいるんでしょう。そういう状態も起こっている中で何ということですか。どうですか、長官。
#133
○国務大臣(小沢辰男君) 私どもの公害関係の健康被害の患者さんたちを扱っていただいている医療機関の御苦労というものは大変なものでございまして、普通の健保なりあるいは国保なり、その他の患者さんとは違ったいろいろやはりメンタルの面も重要視していかなければいけないものですから、その上に手続が先生いまおっしゃるような状況である。それからもう一つ大事なことは、これは実は私直接医療機関の先生方とはお会いしたこともないし、大変国会その他で忙しいものですから、まだ医師会の方々とも懇談したこともないんですけれども、私の想像でございますが、例の税金の費用認定の問題、これは健保では、御承知のいまいろいろ問題になっておりますけれども、経費率の法定の問題があるわけて、私の方の診療報酬にはそれがないわけでございます。そういたしますと、医療機関側としては、まさに、税務当局から見ますと、自由診療の調査と同じ対象になるというようなことになっておるわけでございまして、非常に忙しい、また苦労して患者さんを診ている最中に税務当局の調査を受けなきゃいかぬというふうなこと等がございまして、それも東京都の方の一つの大きな理由になっておるんじゃないかなあと想像を私はいたしております。したがって、診療報酬の改定を近くやらなければなりませんので、その際にこの手続面の極力合理化をやりたいと、かように考えております。
 税の方につきましては、こういう特殊な診療であり、診療報酬体系になっていることを税務当局にも十分理解をしてもらって、現実の問題として、できるだけトラブルを起こさないようにお願いをいたしたいと考えておるわけでございますが、いま東京都の現実の解決策になりますと、やはり都や区の方でこれはもっと努力をしていただかぬと――そういう御不満があって、辞退をしたい、ああそうですか、それじゃ別のことでやりましょうと、すぐそういうような態度でなくて、もっと努力をしていただいて、私どもは医師会ともいろいろ何回か会合に出て、橋本部長お話し合いをしたり、それから私どもの方の診療を取り扱っておる全国の方々の会合でいろいろお願いをしたり、協力を願って努力をしているわけでありますが、現実の一番大事な権限といいますか、そういう委任を受けている東京都の方と、特別区の場合は区の方がもっと努力をしていただかなきゃいかぬので、この点もあわせまして、もちろん、われわれ指導いたしますけれども、両面相まってこの問題の早期解決を図っていきたい、かように考えます。
#134
○沓脱タケ子君 それじゃもう一遍確めておきたいと思うんですがね……
#135
○国務大臣(小沢辰男君) ちょっと私、いまの税の取り扱い問題は、少し違っているようでございますので、私が申し上げた自由診療並みではもちろんありません、その診療報酬の算定は。そういうことを申し上げたのじゃなくて、経費率が決まっていないために全体として医療機関の収入の面から見るといいますか、その税務の煩瑣面から見ていろいろ問題があるというふうに御理解いただきたい。自由診療という言葉を使ったためにちょっと誤解があるかもしれませんから。それはまあ専門家の先生ですから、おわかりと思いますけれども……。
#136
○沓脱タケ子君 それじゃ一つはっきりさしておきたいと思いますのは、いま長官言われたように、診療報酬の改定と、それから事務面の改定ですね、簡素化ですね、これについてはいつおやりになりますか。
#137
○国務大臣(小沢辰男君) 私の方はできるだけ早くやりたいと思って、いろいろと折衝をいたしておるわけでございます。
#138
○沓脱タケ子君 これは前回やったらそれでもよかったですよ。二十三日に実際そのこと聞いているんですな。できるだけ早くじゃだめなんで、四月一日からやりますというお約束になっているわけです。それが今日、六月のきょう十八日まで延びているわけですから、これはできるだけ早くということでは済まないわけですよ。
 それで長官ね、ちょっと聞いてほしいのは、これはすでに御苦労願っている十二地域の医療機関の先生方にはそのしちめんどくさいことをお願いしているわけでしょう。そうしていろいろと御要望が出てきて、せめて診療報酬の若干の改定と、それからその事務面の複雑さ、これを何とか簡素化してくれという御要望が出て、四月一日からやりましょうという話になったわけでしょう、実際にはね。そういう約束になっているわけです。いつまでもできるだけ早くやります言うてやらぬでおったら、東京都はいやや言うてやめておったら、そのままでもいけるんなら、もう皆ここまで努力してきたけれども、環境庁それ以上誠意を示して努力をしてくれないのならもうやめますわと、同じことになりますよ。そうなったら、せっかくの被害者のための補償法なんですからね、有名無実になりかねないというおそれだって出てくるわけですよ。その点ではなまやさしい問題ではないと思うんです。御決意のほどを再度伺いたい。
#139
○国務大臣(小沢辰男君) 私はできるだけ早くと、私の方は、
  〔委員長退席、理事山内一郎君着席〕
それはもう五月にやりたかったし、六月にやりたかったしという状況だったんです。ただ、やはりそれには、なぜおくれたかというと、やっぱり健康被害補償法の患者さんを扱っていただく先生方のできるだけ御希望を通したいために時間をいただいているわけでございまして、そういう意味では、私は医療機関の側に立った折衝をいたしておりまして、そのためにおくれているわけです。だからむしろ私、大変おくれたことは事実でございますから、その点は申しわけないのですけれども、そのために医療機関の御希望をほとんど満たすようなところまでようやくたどりつきつつあるのが現状でございますから、できるだけ早くと申し上げたのもそういう趣旨で申し上げましたので、またおくれたのも医療機関の考え方、先生方の考え方をできるだけ完全に通したいと思って努力をしていたために時間がかかった、こう御理解願って御了承いただきたいのです。
#140
○沓脱タケ子君 誠意を傾けてやっているのだという御発言なんですが、六月分の請求は六月の末から七月の初めにかけて請求事務というのをやるのが通常の作業なんです。ですから六月一日にさかのぼって改定をすることは可能なんですよ、今日の事態では。六月中にそのことができるめどがあるかどうか、その点を重ねてお伺いしたい。
#141
○国務大臣(小沢辰男君) 決まりまして、それを六月一日にさかのぼるかどうかという点については、これは私どもの方は、実は基本的な姿勢を申し上げておきますが、何も少しでも倹約しようとかなんかそういう考えでやる意思は毛頭ありません。ただ、いろいろ従来の行き方等もございますし、それから他の制度に対するやっぱりいろいろ影響等もございますから、そう私だけいい子になってほかの者が変なかっこうになっては、これは行政の中全体としてはよくないものですから、その辺も考えます。ただ、いまやらぬとは言ってないし、やるとも言ってないのですけれども、そういう点も含んでいかなければいかぬというようにちょっと私いま考えるものですから、そのまま先生に真っすぐさかのぼってやりますよというお答えはできないことだけは――あるいはやるかもしれませんよ、やるかもしらぬけれども、やるといま申し上げることはできないことは御了承願いたい。
#142
○沓脱タケ子君 やるかもしれぬしやらぬかもしれんと言ったら返事が一つもないということになりますね。それで、他の制度との関係とおっしゃるけれども、他の制度との関係とは何ですか。健康保険法は昨年の秋にすでに診療報酬の改定をやられているのですよ。そのときには本法はさわられていないのです。それは四月一日からということのお約束でさわらなかった、だから他法との影響はないんです。独自にお考えになっていただいてよいわけなんですよ。
#143
○政府委員(橋本道夫君) 私どもは全く独自の制度であるという考えでこれはいろいろ主張をいたしますけれども、国全体として考えると、やはり健保と労災とこれの問題はいま非常に議論のやかましい時期でございますから関連があるととる側もある、これはまた事実でございます。そういうことでいま大臣のおっしゃっている何とか希望を通したいということでいまのところなっているというところをお含みおき願いたいと思います。
#144
○沓脱タケ子君 それじゃ、やるかもしれぬしやらぬかもしれぬという話、あのままではちょっとしんどいので、その辺ちょっともう少し理解のできる御回答をいただいてこの問題はやめますよ。はっきりしてください。
#145
○国務大臣(小沢辰男君) 先生も専門家ですからおわかりだと思うのですけれども、
  〔理事山内一郎君退席、委員長着席〕
あまり期間をさかのぼるということは、いままでは例はそうないのです。たとえば話し合いが六月十日に決まったと、それを一日からということはあったと思いますけれども、六月の三十日に決まったものを六月一日からさかのぼってやりますよということは、なかなかいままでの例から見ますと、私は前そういう問題に関与したこともございますけれども、どうも記憶がない、そういう意味で自信を持ってお答えできない。しかしまあ、できるだけそういう御希望があれば御希望に沿うように努力をしたいという意味で申し上げているわけでございますが、なかなか一カ月もさかのぼって前から適用するということをいま思い切って言うだけの自信はございませんですね。
#146
○沓脱タケ子君 いや、そうすると、六月一日にさかのぼるということは自信がないと、しかしそれじゃ七月の一日ということなら可能なんだという意味ですか。ちょっと返事として、私頭が悪いのかなあ、わからないんだ。その辺きちんとしてもらったら結構なんですがね。
#147
○国務大臣(小沢辰男君) 私は、私だけで医療機関側と相談なくこれが最善だろうと思ってやることができるんなら、もうここではっきり私はいつからやりますと言えるのでございますけれども、やはり医療機関の受け入れ側ともよく納得づくでやらなければいかぬ問題でございますから、それを私がここでいつからやりますというようなことを申し上げることはなかなか困難でございますから、ここではできるだけ早くと申し上げる以外にはないので、できるだけ早くでございますから、もう本当に可能な限り早くやりたい、そういう気持ちでもう前からいろいろお願いをいたしておりますので、御理解をいただければ七月からはもう十分実施できるわけでございます。あるいは、これ小刻みに実施ができるのかどうか、制度のたてまえ――私は事務的なことはよく知らぬものですから、六月二十日からできるのか、あるいは話し合いがつけば二十五日からできるのかという、そういう点よくわからぬものですから、やはり月別の御請求になっておるようですからできないのではないかと思いますが、とにかく御理解をいただければ、もう一日からでも私は実施をいたします。
#148
○沓脱タケ子君 じゃ、その辺はいいとしまして、さっき橋本部長おっしゃった点でちょっと確認をしておきたいんですが、健康保険方式での請求を東京都がやると言っているんですね。そのことを当然お認めになっておるわけですが、そうしたらその健康保険の点数の範囲内で診療報酬はお払いをする、こういうことになるのですか。
#149
○政府委員(橋本道夫君) 東京都の医師会の御主張は健保のとおりの請求をやるとおっしゃいますから、そういうことになると思います。それから二十四条のところもその医療の限度においてとなっておりますから、健保でいえば限度はそこになっているということで、この制度から結果としては要った金が出るということになる、こういうことでございます。
#150
○沓脱タケ子君 換算をして支払うということはないんですね。
#151
○政府委員(橋本道夫君) ございません。
#152
○沓脱タケ子君 大分これ長官との話で長引きまして予定が、時間をとりましたから、あとちょっと……。
 そうしますと補償関係の問題と保健福祉事業、その関係の問題をきょうはお伺いをしておきたいと思います。
 この公害患者の実態というのは、やはりきわめて悲惨だと思うんです。端的に言いまして、これは前回も申し上げましたけれども、たまたま私のおります大阪の西淀川というところでは、隣の行政区の病院で苦しさの余り自殺したという問題、前言いましたね、その後二十歳になる、これは公害病二級の患者さんですが、勤務帰りに尼崎の駅で窒息死をしたというふうな事件が起こっております。それからやはりこれも五十五歳の二級の患者さんですが、北海道の方が郷里でその方へ転地療養に行っていて、行き先でやはりぜんそくで入院をしたりなんかしておって窒息死をした。それから、その患者さんのお父さんというのは、昨年ぜんそくでやはりなくなっている。それから以後にも二人やはりぜんそくの患者さんがなくなっているというふうなことで、公害の被害者の実態というのはきわめて悲惨です。この一カ月ほどの間に六人なくなっているんですね。そういう中で、なくなられた患者さんの御家族というのは、せめてきれいな空気のところで入院なり、療養なり、あるいは保養なりができたらということがなくなった後での一番悲痛な叫びになっているんです。首をつってなくなった方でも、もっときれいな空気のところで、苦しくないところへ行きたいとしょっちゅう言うてたというんですからね。そういう状況なので、やはり原状回復という点で考えていきますならば、保養所というのですか、転地療養所というのですか、そういう施設というものを持たなければならないのではないか。これは指定地域をそれぞれに持つというのは大変でしょうけれども、全国で患者の集中している地域に幾つかせめてつくっていくというふうなことを原状回復の、健康回復の仕事としてやるべきではないかというふうに思いますが、その点についてはどうですか。
#153
○政府委員(橋本道夫君) いまの公害保健福祉事業という点での御意見でございましたが、公害保健福祉事業はわりあい期間の限られた非常に短い転地療養という形になっておりまして、むしろ、いま先生のおっしゃったような重症の方はこういう短い転地療養はとうていできない。むしろ長くどちらかへ行くということでございまして、それは公害健康被害補償法で移送費もちゃんと出ますし、あるいは看護につきましても、新しく通知しますところによれば実費が出るという形になっておりますから、これは健保と非常に違った形になっております。ですから、むしろ重い方の分はそのような公害健康被害補償法の医療の中で当然これは処理ができるという問題として制度的には私どもはそう考えております。
 それからもう一つは施設の問題でございまして、現在の公害健康被害補償法では施設的なものに対しては事業を組んでおりません。これは施設になりますと、土地が要る、建物が要る、非常に大きなものになりますし、医療制度との関連もございますし、やはりなるべく実際の患者さんに直接還元できる形に原状回復を使いたいという趣旨のもとに、そういう形になったのですが、非常に患者さんや、あるいは一部の地方自治体からは、そういう施設という御希望があることも事実でございます。私どもは当初はそれは考えておりませんでしたが、いろいろ御希望があるということで、一体これは検討できるものかどうかということをちょっと考えますが、やはり施設をやる段になると、土地やいろんなものがすべてついてきて、とうていわれわれのようなところではなかなかできないのではないか。ただ御要望が強いということだけはよく頭に置いておきたいと思います。
#154
○沓脱タケ子君 いま検討なさるとおっしゃっておられるんですが、たとえば、私どもも伺っております自治体では、大阪市ですね、大阪市のように集中的に公害被害者のおるところ、これは大阪市だけでといっても大変だからお隣の尼崎も、堺もというふうな周りの大阪湾沿岸の公害被害地域をひとつ束ねて、せめて一つつくれないものだろうかというふうなことで、十万坪ぐらいの土地もあることだし、そういうものを使って環境庁が本当にその気になってくれるならつくれるんだというふうな積極的な意見もあるやに聞いております。ぜひ前向きに検討してもらいたいと思います。
 それから保健福祉事業の五泊六日の件ですね。これは四十九年度予算が五分の一ぐらいしか消化できなかったというふうに伺っておりますが、この問題については、私は、これ本当に患者さんの健康回復、原状回復に役立たせていくためには積極的に患者の意見を取り入れてやっていく必要があろうと思うのです。五泊六日でないとその事業として認めないとかというふうなことではなくて、いま公害の被害者の中では、たとえば日帰りでワラビ取りに行って来たというだけでも、二級、三級の人たちで子供たちも含めて一日郊外へ行ってきれいな空気を吸うて来たというだけでもずいぶん気分も違うし、健康も回復しているわけですよ。ですから、五泊六日と必ずしも限らなくても、一泊二日でもあるいは二泊三日でも患者の要望にこたえた形での事業がやれないものだろうかという点が一つ。
 それからもう一つは、四十九年度に大阪市でやられた実情を見ますと、こういう仕事の中でも自治体に超過負担が出ております。大阪市でやりました五十人の患者について五泊六日の保健福祉事業の総計が二百九十一万円要ったそうですが、法の基準額というのは百四十九万円で、超過負担が百四十二万円、約半分しか環境庁からはいただけておらないというふうに言われておるわけでございますので、そういった点も含めて予算が五分の一ぐらいしか消化できなかったという四十九年度の実績にかんがみて本当に被害者に役立つように、いま申し上げた点などを前向きに解決をするという御意見をお持ちかどうか、その辺をお伺いしたい。
#155
○政府委員(橋本道夫君) 御指摘のように、被害者の意見を聞くということ、これは非常に大事なことであり、私ども努力をいたしております。被害者の意見と同時に、財政当局に説明がつくことも、これまた必要でございまして、そんなことを言ってちゃんと聞くのか、こう言われると、私どもはこちら医者だもんですから、非常にむずかしい場合があるわけです。素人としては幾らでも言えます。けれども、それを聞くのか、こう言われると、非常に実は説明のときにつらい場合がある。これは御理解願えると思うのです。ですから患者さんの意見を聞くのにこれは努力をいたしますが、しかし、患者さんの意見だけでできるわけじゃなしに、やはり、公費は強制的に取ってきた金を使うわけですから、やはりそこは説明のつくような何かできないかということで私どもは最大の努力をいたすつもりでございます。
 それからもう一つは、超過負担の件なんですが、そんなに超過負担があるというのは、ちょっといま私不審に思っておりまして、一度よく事情を調べてみたいと思います。なるべく実情に合うように運用するということは当然のことでございますが、私どもも財政当局ともよくこの点は努力をして折衝してみたいと、そういうぐあいに思っております。
 ただ、私申しました五泊六日を割ってはどうかという点は、そういう気持ちも持っておりますが、先ほど聞くか、聞かないかという議論をされたときに、どういうぐあいに言えるのかという問題、それからもう一つは、行かれたときに、われわれのプログラムでは、お医者さんがついている、学校の先生がついている、そうなっているわけです。で、もしも行って気持ちがよかっただけならいいですけれども、お金もらってどこそこへ行ったらそこでばったり倒れたなんて言われますと、またこれは世話が悪い。またそうなるわけです。ですから、患者さんがどっかに行くときには、やはり先生やあるいは付き添いのお医者さんが要る。それが全部伴わなければなかなか事業はできないというところに非常に私どももむずかしい難点があるという点はひとつ御理解をお願いして、われわれも最善の努力をしたいと思います。
#156
○沓脱タケ子君 私はその点よく理解をしておるから特に申し上げておりますので、たとえば、公害患者一人にあなたの予算これですから、五泊六日で行ってきなさいと言って渡すべき性格の事業ではなかろうと思うんですよ。ですから、たとえば間もなく夏休みになりますよね。学童たちの公害患者は当然保健福祉事業に該当して行かなければならない。一番いいチャンスです、夏休みというのは。
 それで、大阪市というのは実情はどうかということです。ぜひやってほしいという患者の方々の御要望があって、どういうふうな計画をしているのだということで相談をしたそうですけれども、大阪市ではことしの夏お連れできるというのは五十人の範囲ぐらいしか行政能力はない。健康の状況から言いまして、連れていける状況の該当者というのは何人あるかと言ったら、ざっと二千人余りある。で、なぜ五十人しか連れて行けないのかといいますと、実情は、これはもう人手の点でどうにもならないと、こういうふうに言っているわけです。ですから、たてまえ論も、これは部長おっしゃるたてまえ論もありますよ。で、たてまえ論で幾ら筋をお立てになっても、地方自治体へ行ったら人手もなくて、そりゃお金はくれるかしらぬけれども、どないにもなりませんと、こういうことにもなっているわけです。その辺のあたりに本当に、だからこそ、患者さんの御要望を聞いてということを私、申し上げているのは、できるだけそういう人手の少ないところで人手を補充していくということが大事です。しかし、そう一遍にふえないでしょう。そういう中で、人手もふやし、しかも効率的に保健福祉事業が進められるという実態というのは、これは確保しなきゃならない。そのためには、どうしたって患者さんの要求、要望、これに基づいて事業を進めていくということが何よりも大事ではないかというふうに思いますので、事情を知った上で申し上げておるんですが、そういう点、どういうふうに解決されます。
#157
○政府委員(橋本道夫君) 昨年度の不利な点は、九月から始めましたものですから、夏休みが使えなかったという非常なハンディキャップがあると思います。人手の点は、確かにいま御指摘のとおり、非常にこれはむずかしい問題で、どれだけの能力があるかという点とそれからもう一つは、先ほど先生のおっしゃった施設の問題の方が、そこで集中できるかと、そういった問題とあわせながら、ちょっと検討しませんと、そりゃ人手はふやせますとは、私はちょっと簡単にはお答えできないということでございます。
#158
○沓脱タケ子君 いや、入手をふやしますという簡単なお答えはできないと。私、人手は一遍にはふやせないだろうし、そうかといって、事業は進めなければならないのだから、そういう中で、事業を進めていくためには、被害者の、患者の皆さん方の要望に基づいて事業を実施していくということが一番要望にこたえ、しかも目的を達成していく上で大事だということで申し上げているんですよ。だって、現に大阪市みたいな大きな自治体で、行政的には五十人ぐらいの能力しかないと、これは率直に言っておられるわけですよ。そういう点、それじゃどうして解決するかということを、めどをお立てになっていただかないと、こりゃ人手はそう簡単にふやせませんというお返事だけでは、そうですかというわけにもいかぬのですよ。現に、夏休みが近づいてまいりますし、当然、そういう御計画というものは、前に進めていきたいという希望もあるでしょうし、自治体としても熱意は持っているようですよ。ですから、そういう点では、どういうふうになさるかということを、方向だけでもお示しをいただいたら結構だと思うんです。
#159
○政府委員(橋本道夫君) 私、いま、こういうことはどうかという考え方がちょっとなかなか具体的に浮かびませんので、この点は患者さんの要望もありますし、自治体の考え方もございますし、そういうものをよくあわせて見て検討していきたいと思います。
#160
○沓脱タケ子君 ぜひ、自治体も苦労しておるようですし、患者さんたちの方もそういう事業を知っておりますから、希望もあるわけですから、本当に実現できるようによく相談をして進めていただきたいというふうに思うんです。
 それから、もう余り時間がありませんので、最後に、健康被害補償法の中で障害等級の問題というのは非常にやはり実施の段階で問題になってきているわけです。これ、ずいぶんいろいろな問題が出てきているわけですよ。たとえば尼崎では、五十人の人たちは異議を申し立てるというふうなことが起こっている。あるいは公害医療を担当しておられる医療機関の先生方が主治医の意見が通らないということで不満も起こっているという問題が出てきております。時間があれば、具体例を出して御批判の対象にしたいと思ったんですけれども、私の持ち時間、余りありませんから、まあ部長はよく御承知のとおりだと思いますので、そういう点で非常に特徴的な問題が出ているようなところですね。たとえば尼崎の五十数人が異議の申請をしたというふうなこと、そういう点などは調査をなさって点検をなさる必要はないかと思うんですけれども、どうでしょう。
#161
○政府委員(橋本道夫君) いまおっしゃったような尼崎の問題、私自身も尼崎に行きまして、いろいろ具体的に審査会の先生方ともお話もいたしております。これは行政不服審査の問題は、また、別の系統になりますので、個別のケースについて、私どもはまだ調査をすることはいたしておりません。しかし、非常に先生方が御努力をしておられることも事実でございます。ただ、尼崎の場合ですと、その横の西尾と落差が非常につくということでございまして、その場合には尼崎の問題と西尾の問題、両方眺めながら、どのようなぐあいにやはり運営するのが一番いいのかということをよく考えてみたいと思います。
#162
○沓脱タケ子君 一般論でおっしゃったんですが、私は、一人一人の障害等級に大変な違いが出てきておるというふうに思うんですよ。たとえば、これはこんなことを言ったら、また、具体的に言わんならぬですが、尼崎の五十四歳の労働者の方ですが、慢性気管支炎で二級なんですね。この人は二級だけれども、どの程度の疾病かというと、四十九年の十一月二十日に認定を受けた。症状はどういう状況かと言いますと、自分で息をするのが困難で、奥さんがもうほとんど始終背中をさすって呼吸を助けている。朝晩、酸素吸入を使用し、せき、たんが出ると、洋服やカッターシャツのとめはずしを自分ができないという、夜も何回かたんが詰まった状態で飛び起きなければならないというふうなかこうで、四十九年十二月二十日に今井病院というところに入院中だということです。で、入院中、空気清浄器の部屋におるそうですが、そういう中で幾分気持ちがよくなってきたと――これは患者さんの主張ですよ。安定剤や眠り薬を飲んでしか寝られなかったのが、最近は少し寝られるようになってきたと、まあ障害等級の二級といいますと、大体いわゆる全国平均賃金の八〇%の二分の一ですから、四割程度ですね。で、五十四歳の方ですから、家族関係は子供さんは高校生と、一人は森永の砒素ミルク中毒患者、これは認定を受けていない子供、それから奥さんというふうな中ではとても生活ができないというわけですね。それで、生活保護をそれじゃ申請しようかということになったら、申請もこれはできないわけですね、併給では。これは金額ではやはり生活保護の基準ちょぼちょぼか、ちょっと上回る程度ですから、生活保護の請求もできない。一家心中をしようかということで頭を抱えておったけれども、やむなく異議申請に踏み切ったと、しかし異議申請は通らなかったというふうな事例なども出ているんですね。そういうことですから、ひとつこれは実態的な調査というふうなものを、特に異議申請の出ているというふうな人たちの問題、これをやる必要があるんではないかということ。
 それからもう一つ一緒に、これはぜひ調査をしてもらわなければならないと思いましたのは、障害等級をきめる、いわゆる政令を制定する段階では、問題になっておらなかった等級外という、公害の認定患者で等級外という人たちが、これは昨今の調査によりますと、尼崎、川崎、東海地方では二〇%ぐらい公害患者の中で等級外という人たちが出てきていると。これも私どもの立場で見ておりますと、ちょっと不思議な気がするんですね。保留というふうな形になるというなら話はわかるんですが、認定患者があって特級、一級、二級、三級までしかランクがないのに等級外というのが二割も出ているというのもこれも大変理解に苦しむわけです。等級外の方の中にも、一年に一、二カ月は入院をしなければならないようなぜんそくのお子さんも等級外だというふうなこともありますしね。その点については患者さんの傷害補償の問題で非常に大事な点だと思いますので、せっかくの法の趣旨を生かすためにもぜひ調査をする必要があろうと思うんですが、これはどうでしょう。
#163
○政府委員(橋本道夫君) 最初のケースでございますが、この個人のケースという問題とは別に七月二十日の認定を受けられた当時の状態といまの状態が違っているのかどうかという問題が一つあるかと思います。で、ごく短い間かぜを引いて熱が出たということだけでは変わりませんが、二、三カ月様子を見て非常に重くなっているというときには等級変更ということがございますから、新たな申請の問題になるということでございまして、不服審査で争うのか。それとも新たな状態が非常に二、三カ月継続して悪くなっていると、これでは重い方にしなければいけないという問題になるかという問題として見ることが一つあるわけです。
 それから、もう一つは指定疾病あるいはそれに起因する疾病として重いのか。別の重い疾患があってそして重くなっているのかという問題がありまして、ほかの合併症の方が中心になって、ほかの病気が主になってこちらが全体の症状が出ているという場合には、やはり等級の問題についてもそういう問題が入ってくるわけでございますから、その問題がどうなっているかという問題がありますので、確かに指定疾病で全くそのままの状態であるという場合には非常に問題になろうかというように私ども一応は考えます。
 それからもう一つは等級外の問題ですが、去る六月十四日に全国の認定審査会の先生方の全国会議をいたしまして、これは非常に大事な問題ですので、この問題について国としてもぜひこれから慎重にいろいろ調べて適正に運営できるにはどうしたらいいかということをやりたいということで、まだ制度が生まれてから非常に間がないことですし、主治医の先生から出される主治医診断報告につきましても、私どもの努力もいたしておりますが、まだまだ努力が末端のお医者さんに十分理解ということが及んでいないところがあるかと思います。そういうことで、患者さんの問題と主治医の問題と認定審査会、この三者の方の御意見をよく伺って、その問題、今年度の非常に大事な問題として検討するということで、患者さんにも申請、認定審査会の先生方にもお話をいたしておりますので、ひとつ時間をかしていただきたい、こういうように思います。
#164
○沓脱タケ子君 今年度の大切な問題、課題として取り組むということでございますので、そういうことで進めていただきたいと思うのですが、私はこの大気系の公害患者というのはこういう障害等級を決めていくというのはきわめてむずかしいと思うのです。なぜむずかしいかと言いますと、いまの日本の医療というのは、外来では患者さんのほんの診たときのその局面しかつかめないような医療のシステムになっているわけです。ところが、公害患者というのは大体ぜんそく発作なんて起こるのは夜中だとか夜明けに起こるわけですね。で、診療を受けるときというのは大分回復したときに受けるというふうな場合もあるわけです。ですから、その患者さんの二十四時間、一年じゅうにわたる障害度がどうなのかというふうな点をつかんでもらうということ。これは主治医の先生だってずいぶん骨が折れるだろうと思うのです。そういう点で患者の障害度というものをつかまえてやってもらえるような指導というのは主治医の先生にも、あるいは審査会にも、患者さんにもそういうふうにお願いをするものだというふうな指導、こういったことをあわせて、せっかくつくられた公害健康被害補償法の実が少しでも上がるようにぜひ前向きに進めてもらいたい。そのことをお願いいたしまして、きょうは予定をしておりました点は時間がありませんので、大変春日局長に申しわけありませんが、これで終わりたいと思います。
#165
○国務大臣(小沢辰男君) 一言、先ほど、お許しを得まして、藤井先生のときに窒素酸化物の環境基準値が米国に比べて五倍という話が出まして、それから小平先生に大体二・五倍だろうと、測定方法の違いがあるからと申し上げたのですが、どうも測定方法並びに測定する地域とのいろいろ関連があって、最近はなかなか下の方と上の方のいろいろな学問的な問題があるようでございますので、私が五倍とか二・五倍とか明確に申し上げたことは誤りでございますので、五倍とも言われたり、二.五倍とも言われたりいたしますが、必ずしも数字的に明確にはその点はお答えできないことが正確のようでございますので、大変恐縮でございますが、その点は速記録を訂正させておいていただきたいと思います。
#166
○委員長(藤田進君) それは発言の方を今後間違いのないように……。(笑声)
 本日の調査はこの程度といたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後五時二十四分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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