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#1
第075回国会 決算委員会 第9号
昭和五十年五月二十一日(水曜日)
   午後三時十九分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 五月七日
    辞任         補欠選任
     野末 陳平君     喜屋武眞榮君
 五月九日
    辞任         補欠選任
     近藤 忠孝君     加藤  進君
 五月二十一日
    辞任         補欠選任
     寺下 岩蔵君     林  ゆう君
     木内 四郎君     中村 太郎君
    茜ケ久保重光君     工藤 良平君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         前川  旦君
    理 事
                今泉 正二君
                遠藤  要君
                園田 清充君
                小谷  守君
                峯山 昭範君
                橋本  敦君
    委 員
                石本  茂君
                岩男 頴一君
                河本嘉久蔵君
                鈴木 省吾君
                世耕 政隆君
                中村 太郎君
                永野 嚴雄君
                温水 三郎君
                林  ゆう君
                松岡 克由君
                望月 邦夫君
                案納  勝君
                久保  亘君
                工藤 良平君
                小山 一平君
                佐々木静子君
                矢田部 理君
                田代富士男君
                二宮 文造君
                加藤  進君
                田渕 哲也君
                喜屋武眞榮君
   国務大臣
       法 務 大 臣  稻葉  修君
       国 務 大 臣
      (内閣官房長官)  井出一太郎君
   政府委員
       内閣法制局長官  吉國 一郎君
       内閣法制局第一
       部長       角田礼次郎君
       法務大臣官房長  香川 保一君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        佐藤 忠雄君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○昭和四十七年度一般会計歳入歳出決算、昭和四
 十七年度特別会計歳入歳出決算、昭和四十七年
 度国税収納金整理資金受払計算書、昭和四十七
 年度政府関係機関決算書(第七十二回国会内閣
 提出)
○昭和四十七年度国有財産増減及び現在額総計算
 書(第七十二回国会内閣提出)
○昭和四十七年度国有財産無償貸付状況総計算書
 (第七十二回国会内閣提出)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(前川旦君) ただいまから決算委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 去る五月七日、野末陳平君が委員を辞任され、その補欠として喜屋武眞榮君が、五月九日、近藤忠孝君が委員を辞任され、その補欠として加藤進君が、また本日、茜ケ久保重光君、木内四郎君及び寺下岩蔵君が委員を辞任され、その補欠として工藤良平君、中村太郎君及び林ゆう君がそれぞれ選任されました。
    ―――――――――――――
#3
○委員長(前川旦君) 次に、昭和四十七年度決算外二件を議題といたします。
 去る五月七日、法務省所管の審査に入りましたところ、法務大臣の自主憲法制定国民会議出席問題及び憲法に関する発言問題で本来の所管審査に入ることができず、前述の発言問題を含めて質疑保留となり、その取り扱いにつきましては、理事会協議となっておりましたが、その後数回にわたり理事会及び理事懇談会を開会し、その取り扱いにつきまして協議いたしましたが、先ほど行いました理事会で最終的に次のとおり行うことで各党の意見が一致いたしました。すなわち、稻葉法務大臣から私あてに、去る五月七日の発言について、本委員会でいま一度発言の機会を与えられたい旨の申し出に対し、この発言の機会を与えること及び内閣官房長官から内閣を代表してその意見を聴取し、この発言聴取終了後質疑を行うわけでございますが、本件の質疑につきましては、委員長が委員会を代表して、法務大臣に対して質疑を行い、その後各党が必要に応じて補足質疑することで意見が一致いたしました。
 以上簡単に御報告申し上げましたが、これより直ちに議事に入ります。
 それでは、まず法務大臣の発言を許します。稻葉法務大臣。
#4
○国務大臣(稻葉修君) 私は去る五月七日、本委員会において、欠陥の多い憲法という発言をしましたことは、憲法を軽視したかのごとき印象を与えるおそれのある不適当な発言であり、ひいては憲法を改正せずという方針を持つ三木内閣の閣僚としては、はなはだ慎重を欠いたものであり、まことに遺憾であります。
 このことを深く反省し、右の発言を取り消しますとともに、今後十分に言動を注意いたします。
#5
○委員長(前川旦君) 次に内閣官房長官から内閣を代表してその意見を聴取いたします。井出内閣官房長官。
#6
○国務大臣(井出一太郎君) 昨日、内閣から野党各派へ御回答を申し上げましたその内容を、この際、私から申し上げます。
 稻葉法務大臣が、五月三日、自主憲法制定国民会議に出席しましたことは、たとえそれが個人の資格にしても、閣僚の地位の重みからして、その使い分けは、そもそも困難であり、閣僚の行動としては慎重を欠いたと言わざるを得ません。
 また、五月七日参議院決算委員会における同相の発言は、国の最高法規である憲法の持つ重大性から言っても不適切なものがあり、はなはだ遺憾でございます。
 政府としても厳重に注意をいたしましたが、稻葉法務大臣はこれらの点を深く反省し、今後は十分その言動を慎むと誓約をいたしております。
 三木内閣の閣僚が憲法改正を推進する会合に出席することは、憲法改正をしないという内閣の方針について誤解を生ずるおそれがありますので、三木内閣の閣僚である限りは、今後は出席いたさせません。
 自民党は、結党時の政綱において、憲法の自主的改正を図ることにしておりますが、三木内閣は国会でもしばしば言明しておりますとおり、憲法改正を行わない方針であります。したがって、改憲運動のリーダーシップをとるということもございません。
 現行憲法は、高い理想を掲げて現実政治の向かうべき目標を設定していることは、すぐれたものであると考えます。
 三木内閣としては、現行憲法の理想を政治の上に一層具現してゆくよう、最大の努力をいたす所存であります。
 なお、憲法記念日については、憲法の施行を記念し、国の成長を期すという記念日の趣旨に沿って、内閣の責任において、意義ある記念行事を行う考えでございます。
#7
○委員長(前川旦君) 以上で発言聴取は終わりました。
 ただいまの法務大臣の発言中、欠陥の多い憲法の部分について取り消す旨の発言がありましたが、その他の発言問題を含めて、この取り扱いにつきましては理事会で協議いたしたいと思います。
 引き続き、質疑に入るわけでございますが、先ほど申し上げましたように、まことに僭越でございますが、私が委員会を代表して質疑を行います。
 質疑に入ります前に、委員長といたしまして一言遺憾の旨を表したいと思います。決算委員会理事会の一致した意見として、三木総理大臣の出席を求めておりました。しかし、三木総理大臣の出席が得られなかったということに対しまして、委員会といたしまして大変残念であり、遺憾の旨を申し述べておきます。
 それでは、まず最初に、ただいま井出内閣官房長官から、内閣の見解について責任のある御発言をいただきましたので、それについて法務大臣にお伺いをいたします。
 法務大臣は個人の資格であの集会に出席をしたとのことでございましたが、ただいまの井出官房長官の御発言によりますと、閣僚と個人との使い分けはそもそも困難であると、こう申されております。その点について、法務大臣は現在どのようにお考えになっていらっしゃいますか。
#8
○国務大臣(稻葉修君) 法務大臣も同様に考えております。
#9
○委員長(前川旦君) それでは、あの自主憲法制定国民会議に出席されましたことを現在はどのようにお考えですか。
#10
○国務大臣(稻葉修君) 慎重を欠いた行動であって、深く反省をいたしております。
#11
○委員長(前川旦君) 法務大臣にお尋ねしますが、五月七日の当決算委員会における発言のどの部分が不適切であるとあなたは考えていられますか。
#12
○国務大臣(稻葉修君) この憲法には欠陥が多いと申した部分について不適切であると考えております。
#13
○委員長(前川旦君) そうしますと、あなたが取り消されるというのも、その部分だけですか。そうではないと思いますが。ただいまの政府の統一見解と大分感じが違いますね。その点について明確にお答えください。
#14
○国務大臣(稻葉修君) その他の部分につきましては、議事録をよく検討した上お答えしたいのでありますけれども、この際、お取り扱いを委員長及び委員会に御一任したいと思っております。
#15
○委員長(前川旦君) ただいまの井出官房長官の御発言の中に、稻葉法務大臣はこれらの点を深く反省し、今後は十分その言動を慎むと誓約しているという言葉がございました。「今後は十分その言動を慎む」ということは具体的にはどのようなことを慎むおつもりですか。
#16
○国務大臣(稻葉修君) あらゆる私の発言につきましては、憲法を軽視しているのではないかという誤解を生ずるような発言を慎み、また、三木内閣は憲法を改正しないと言っているんですから、改正の推進集会のようなところへ出席はしないと、具体的にはそういうことであります。
#17
○委員長(前川旦君) それでは稻葉法務大臣は、憲法第九十九条には「憲法を尊重し擁護する義務」というはっきりした明文がございますが、この憲法第九十九条を忠実にお果たしになりますか。
#18
○国務大臣(稻葉修君) それは申すまでもないことでございまして、忠実にその義務を果たすつもりでございます。
#19
○委員長(前川旦君) 先ほどの政府の御見解の中で、現行憲法は、高い理想を掲げて現実政治の向かうべき目標を設定していることは、すぐれたものと思う。三木内閣としては、現行憲法の理想を政治の上に一層具現していくよう、最大の努力を致す所存であると、はっきりおっしゃいましたけれども、稻葉法務大臣も同じ御意見で、同じように連帯して行動なさいますか。
#20
○国務大臣(稻葉修君) 委員長のおっしゃるとおりでございます。
#21
○委員長(前川旦君) それでは、官房長官にお伺いいたします。
 先ほどの御発言の中に、自民党は、結党時の政綱において、憲法の自主的改正を図ることにしているがと述べられております。総理は、総理大臣であると同時に一つの政党の総裁という二つの性格を現実にいまお持ちです。この二つを使い分けるということは非常にむずかしいと私は思います。したがって、先ほどの御発言では、三木内閣は国会でもしばしば言明しておるとおり、憲法改正を行わない方針である。したがって、改憲運動のリーダーシップをとることもないと述べられましたが、三木総理は改憲を党の政綱にしている政党の責任者である総裁ですね、この二つをどうやって使い分けるか、大変困難だと思いますが、その点について官房長官はどのようにお考えになっていますか。
#22
○国務大臣(井出一太郎君) 党の一般的方針といたしまして、自主憲法というものに関する御指摘のような方針を持っておることは事実でございますが、まあこれには歴史と沿革があるわけであります。そこで、現段階といたしまして、改正というような世論のコンセンサスも得られない段階でもありまするし、三木内閣に関する限りは改憲という方針をとっておらない、こういうことに御理解を願いたいと思います。
#23
○委員長(前川旦君) 私がお尋ねいたしました趣旨は、自分が総裁として所属する政党は一つの方向を出している、しかし、総理大臣としては、また内閣としては違う考え方である、その二つを同じ人物が使い分けするのはむずかしいでしょうと、ですからこの点はどのように整理して考えたらよろしいんでしょうかということをお尋ねいたしたのです。
#24
○国務大臣(井出一太郎君) その御質問にお答えをしたつもりでございますが、党の一般的方針として長い間そういう政綱を持ち続けておることは事実でございます。しかしそれをどういうふうに判断をするかという段になりますと、時の内閣の衝に当たる者が判断をする、三木内閣に関する限りはいま改憲というような時期ではないと、こういうふうに申しておるわけであります。
#25
○委員長(前川旦君) そういたしますと、三木総理は、総理大臣としても、あるいはその他の資格としても、改憲運動のリーダーシップをとることはないと、こう考えてもよろしゅうございますか。
#26
○国務大臣(井出一太郎君) さように御了承いただいて結構であります。
#27
○委員長(前川旦君) 次に、先ほどの御発言の最後に「内閣の責任において、意義ある記念行事を行う」という言葉がございました。「意義ある記念行事」とは具体的に何を考えていらっしゃるのか。もしいま具体的に考えていらっしゃることがおありでしたらこの際お答えいただきたいと思います。
#28
○国務大臣(井出一太郎君) 憲法記念行事につきましてこれをどのような形に行うかという点につきましては、なおしばらく検討を要するものと考えておるのでございます。まあ過去において記念行事を行った前例もございます。あるいはまた、立法府ないしは司法府、そういう方面のお考え方をもやっぱり聴取してみる必要があろうかと、こう考えておりますので、きょうはまだ具体的にどうというお答えは申し上げがたい段階でございますが、いずれにもせよ、これを有意義に施行をいたしたいという考え方は、先ほど来申し上げておるとおりでございます。
#29
○委員長(前川旦君) それでは私の質問はこれで終わります。
#30
○峯山昭範君 それでは委員長の質問に関連をいたしまして若干質問したいと思います。
 まず初めに、官房長官にお伺いしたいんですが、先ほどの憲法記念日の行事の問題でございます。これは三木内閣として記念行事をやるのであって、自民党内閣ではない、こういうような国対委員長からの談話がございましたが、これは一体どういうことでございますか。
#31
○国務大臣(井出一太郎君) 私はいま御指摘になりました談話の趣は承知をいたしておりませんが、いずれにもせよ、その記念行事を内閣の責任において取り上げると、こういうことでございますから、これは今回のいきさつにかんがみまして有意義なものを行うと、こういうことに御理解をいただきたいと思います。
#32
○峯山昭範君 そうしますと、ただいまの問題は、これは三木内閣であろうと何内閣になろうと、自民党内閣である限りただいまこの委員会はお約束されたことは実施すると、こういうことでよろしゅうございますか。
#33
○国務大臣(井出一太郎君) さようにお考えいただいてよろしいと思います。
#34
○峯山昭範君 もう一点確認をいたしますが、その当時の自民党の国対委員長の談話の中に、この行事には総理並びに全閣僚が出席するとは言えない、全員出席するとは言えないと、こういうような談話があるわけですが、これは一体どういうことでございますか。
#35
○国務大臣(井出一太郎君) いま御指摘の談話も私承知をしておらない点でありますが、内閣の責任において有意義な行事をやると言いまする以上は、これは特別の差し支えない限りにおいては閣僚等が出席することは当然だと、こう考えております。
#36
○峯山昭範君 そうしますと、この談話はちょっと趣旨が違うということでございますね。要するに、各閣僚は都合が許す限り出席をすると、こういうぐあいにとってよろしゅうございますか。
#37
○国務大臣(井出一太郎君) さようにお考えをいただきたいと思います。
#38
○峯山昭範君 それでは、稻葉大臣にお伺いいたしますが、大臣は先ほど、「欠陥の多い憲法」というところはまことに遺憾であると、取り消すという話がございました。また、その内容については委員長に一任をされました。しかし、ここで再度一点だけ確認をしておきたいのでございますが、大臣は、今回の問題が起きましてから大臣の発言がたびたび変わりました。実は一番初めに、当決算委員会では、大臣に私は、「諸悪の根源」ときめつけたメッセージがあの席上で読み上げられた段階で大臣は席をたって帰るべきじゃないのでしょうかと、こういう具合に質問をしたつもりであります。そうしましたら、大臣はそれに対しまして、私は諸悪の根源というほどではないけれども欠陥の多い憲法だという点はいまでもそう思っているんですと、だから、要するに、直そうという点で欠陥がなけりゃ改憲論になりませんと、しかも、そういう点で同感の点もあるわけですと、こうおっしゃっているわけです。そういう点で同感の点もあるわけです、というのは、いわゆる諸悪の根源であるということに同感の点もあるとあなたはおっしゃっているわけです。これらの点については大臣は現在どうお考えでございますか。
#39
○国務大臣(稻葉修君) 私は、諸悪の根源という――諸悪の根源が現憲法にあると思っていないんです。したがって、そういうことに同調しているわけではございませんです。内閣憲法調査会に長くおりました際に、改正論者も改正不要論の人も不備欠陥があるという言葉を使っている。不備欠陥があるけれどもいまは改正する必要はないではないかという改正不要論と、不備欠陥があるから改正すべきだという意見と、そういう言葉がずっと使われてきたものですからそういう発言をしたわけですけれども、あの当時といまの時勢とでは、欠陥と言いますと欠陥車みたいな、そういう言葉の意味の変遷がありますから、これはいかにも現憲法を軽視し、べっ視し、侮辱をしているという誤解を生ずる言葉だなあと、そうすると、九十九条の尊重ということとべっ視、軽視は両立しないからこれは取り消さなきゃいかんと、こういうことなんでございます。
#40
○峯山昭範君 大臣の話を聞いておりますと、大臣はいまそのようにおっしゃっておりますけれども、あなた自身が当委員会において、いまあなたがおっしゃったように、憲法をべっ視する言葉を吐いているんです。過去にどういういきさつがあろうとも、あなたはいまおっしゃったそういうふうないろんな問題があったという過去のいきさつは別にいたしまして、当委員会でこの問題が問題になりましたときに私たちは丁寧に大臣にお尋ねしたわけです。にもかかわらず、現実に、諸悪の根源とは思わないまでも、私は欠陥が多いということで話を結んでいるわけです。しかも、その後には、そういう点で同感の点もある、というのは、欠陥が多いという、諸悪の根源という点に同感の点もあるとおっしゃっているわけですよ、あなたは。ですから、過去のいろいろないきさつは別にして、このこと自体がべっ視に当たるといまあなたはおっしゃっているわけです。したがって、私たちは本日までこの問題を重大視して取り上げてきたわけです。その点を考えて再度御答弁願いたいんです。
 さらにあなたは、この問題を追求されて、法務委員会において、むしろ改正すべき点があると言った方がよかったのではないかと、こう変わりました。そして、この点を追求されてあなたは取り消しました。そしてさらに、しかし、この言葉も誤解を生むので、理論的に検討すべき点があると、こうおっしゃった。現在、あなたはいまでも理論的に検討すべき点があるとお考えなのか、この点どうです。
#41
○国務大臣(稻葉修君) 学問的、理論的には検討を要する点があると考えております。
#42
○峯山昭範君 学問的には理論的に検討すべき点もある、こういまでもお考えなんですね。ということは、理論的に検討すべき中身をやっぱり教えてもらわないといけないということになりますが、これはどうです。
#43
○国務大臣(稻葉修君) その中身の具体的な問題に入りまして御質問に応じてお答えをしていきますと、三木内閣は憲法を改正しないんだと言うている閣僚の一人として――三木内閣が憲法を改正しないというのは政治姿勢なんです。その政治姿勢に疑いを持たれるおそれがあるから、そういう御質疑に対する具体的な私の閣僚としての答弁は差し控えさしていただきたいと存ずる次第でございます。
#44
○峯山昭範君 いや、実は、大臣、私たちは決して私たちから議論をいどんでいるわけじゃございませんでしてね、あなたが初めおっしゃったことからずうっと詰めていきますと、そこら辺のところもはっきりしていただかないとこの問題の解決にならない。この点は再度御答弁をいただきたい。
 さらに、官房長官にあわせて質問をいたしますが、先ほど大臣は、まことに遺憾でありましたという答弁がございました。この遺憾の意の表明と陳謝という問題はどう違うのか。あなた方の国対委員長は、自民党の皆さんには陳謝じゃ全然ないんだという説明をされているようであります。ところが、私たちのところでは陳謝と受け取っているわけであります。また陳謝すべきであるということを要求してきたわけであります。陳謝と遺憾の意とどう違うのか、これはどうです。
#45
○国務大臣(井出一太郎君) 表現というものはなかなかむずかしいものでございますが、稻葉法務大臣が、先ほど来当委員会を通じて、その考え方といいますか、それをるる申し上げておるわけでございまして、法務大臣のきょうのこの態度といいますか、あるいは表現といいますか、これは十分に反省をいたし、軽率であったということをおわびをしておると、このように御理解を願いたいと思います。
#46
○峯山昭範君 ということは、陳謝ではないということですか、どういういうことです。
#47
○国務大臣(稻葉修君) 先ほど私が申し上げましたとおりでございまして、「はなはだ慎重を欠いたものであり、まことに遺憾であります。」と。それに続きまして、「このことを深く反省し、右の発言を取り消しますとともに、今後十分に言動を注意いたします。」というところで私の気持ちを御賢察いただきたいと存じます。
#48
○峯山昭範君 官房長官にお伺いしますが、政府は、この発言は不適切であり、はなはだ遺憾である、こうおっしゃっているわけです。ということは、はなはだ不適切であり、はなはだ遺憾なんだから法務大臣はこれは陳謝した、こういうぐあいに私たちは受け取っていいのですか、どうです。
#49
○国務大臣(井出一太郎君) 私が昨日申し上げました回答は、先ほど申し述べたとおりでございまして、皆様方のお受け取りをいただく立場におかれましては、そのようにおとりをいただいてよろしいと思っています。
#50
○峯山昭範君 それでは、最後にもう一点お伺いしますが、官房長官、簡単でけっこうですが、私たちは参議院のこの審議を非常に慎重にやってまいりました。議会制民主主義に基づいて私たちはこの決算委員会を開き、そして慎重にこの問題を取り扱ってまいりました。官房長官はどうお考えですか。
#51
○国務大臣(井出一太郎君) 今回大変長い時日がこの問題でかかった次第でございますが、当決算委員会におかれましては、いまおっしゃいますように慎重なお取り扱いをちょうだいした、かように理解をいたしております。
#52
○峯山昭範君 あなたの方の幹事長さんが、おたくの方の会合の中ででございますが、これはマスコミの皆さん方からも報道されておりますように、参議院は無政府状態だと、こういうふうな発言をしていらっしゃいますが、御存じですか。
#53
○国務大臣(井出一太郎君) それは承知をしておりません。
#54
○峯山昭範君 それでは、あなた承知してなかったら、していないで結構でございますが、少なくともこういうことを、あなたの党の幹事長が発言をしておる。私たちは、参議院はルールに従ってきちっといままで審議をしてきたつもりであります。にもかかわらず、こういうことをもし党の、あなたは関係ないかもしれませんが、内閣でございますから関係はございませんけれども、こういうふうなことを発言するというのは、もし発言しているとすれば私は非常に不謹慎だと思うのですが、あなたはどうお考えです。
#55
○国務大臣(井出一太郎君) ただいまお示しの点は、私存知しないところでございますが、事政府に関する限りは、さきには参議院の法務委員会において総理以下長時間にわたってお答えをする、こういう態度でずっとまいっておりますので、政府側はそういう意味で慎重を期し、十分御審議に対してお答えをする、こういう態度でまいりましたことを御了承をいただきたいと思います。
#56
○橋本敦君 法務大臣に伺いますが、あなたは先ほど、自分が釈明した言葉を再度読み上げて、陳謝かどうか御賢察願いたいと述べられた。あなた自身の口から、まさにあなたの言動が問題になったあなた自身の口から陳謝をするということがなぜそれほどに言えないのか。官房長官は、陳謝と解していただいてけっこうですと、こうおっしゃっています。御本人のあなたがなぜ陳謝をするとはっきり言えないのか、お答えを願いたいと思います。
#57
○国務大臣(稻葉修君) 「はなはだ慎重を欠いたものであり、まことに遺憾であります。このことを深く反省し、右の発言を取り消しますとともに、今後十分に言動を注意いたします。」、こう言っているのですから、これは謝っているんですよ。(笑声)
#58
○橋本敦君 開き直った謝り方というのは私聞いたことありませんよ。そういう態度では、あなたが反省していると言っても、本当に反省しているのか、これが閣僚として本当に真摯に発言する態度であるか、疑問なしとしませんよ。いま官房長官は五月三日のあなたの集会参加、あるいは当委員会での「欠陥の多い憲法」であるという言動について、これは遺憾であったということを正式に政府として表明された上で、現在の憲法は高い理想を掲げたすぐれたものであり、三木内閣は全力を挙げてこれの実現のために努力する、こうはっきりおっしゃった。この政府の声明、見解からすれば、あなたの五月三日の集会参加も、当委員会での「欠陥の多い憲法」であるという発言についても、政府として正式にこれを是認しない、このことははっきりしております。
 そうだとすれば、あなたは深く反省すると言いますけれども、政府によって是認されないみずからの言動について、あなた自身反省しているのであれば、その責任を明確にすべきではないか、こう思いますが、いかがですか。
#59
○国務大臣(稻葉修君) 責任ということでございますが、責任とは自己の言動につき他の批判を受け、みずからその結果を負担するということでございますから、私の慎重を欠いた言動につきましては、その結果を負担し、政府回答にもありますような、三木内閣の閣僚である限り今後改憲を推進する集会等に出席しないとか、そういうことを約束しているわけですから、結果をその程度に負担をしておると私は思っております。
#60
○橋本敦君 それは将来自分の行動を慎むという意味であって、過去に自分が軽率であり、誤った行動を犯したことに対する責任をとるという意味での責任をとったことにならぬと私は思いますよ。いまあなたは、この内閣の方針どおり、将来このような改憲集会には参加しないということを言明されましたが、しかしあなたは、五月三日のあの集会に参加をしたその場での記者会見では、あなたははっきりと、何度も指摘されるように、憲法改正論者である私がそのための一番大きな会議に出るのはあたりまえだ、稻葉が法相であろうと仮に首相になろうと私は出席すると言明された事実がある。この考え方を変えられたわけですか。
#61
○国務大臣(稻葉修君) 三木内閣の閣僚である限りにおいては考えを変えたわけでございます。
#62
○橋本敦君 変えた……。考えを変えたのは、やはり前の自分の行動が軽率であり、あの当時新聞記者の皆さんに話した考え方が間違いであったということを率直に認めてお変えになったのか、三木内閣の方針が出たのでやむを得ず従うという趣旨で変えるという意味なのか、どうなんですか。
#63
○国務大臣(稻葉修君) 橋本さん、あなた、あの場においでになりませんでしたからね、その語句だけとりますと非常に誤解されますが、いきなり新聞記者諸君が会見を求めてこられて、私に最初に聞かれたのは、憲法九十九条の、閣僚その他公務員の憲法尊重擁護義務を犯しているようなことを言われるものですから、いや、それはそうじゃないですよと。憲法改正の国民の声もあり、改正しちゃならぬという国民の声もあり、そういう国民の声を代表するのが国会なんだから、私は国会議員として自主憲法期成議員連盟の一会員としてここへ来ておるということは、それはすなわち直ちに憲法九十九条の違反なのではないでしょうから、仮に法務大臣ということでも、その辺のところは私はそう思わぬ、こういうことを強調するの余りに非常に刺激的な言葉を使いましたことにつきましては、反省をいたしておる次第です。
#64
○橋本敦君 あなたははっきりと考えを変えたとおっしゃったから、変えた趣旨を聞いておるんです。答弁に私はなっていないと思うんですよ。あなたは今後、そのような考え方を変えたと、閣僚として今後改憲集会に出席させないという政府の方針に従うと、このことが本当に間違いないのであれば私は、あなたが三木内閣の閣僚である間は、せめて自主憲法期成議員同盟を退会をすると――閣僚を去ればまた御入会になるのはあなたの自由です、それぐらいのことは、あなた自身の決意としてはっきり示す必要があるのではないかと思いますが、いかがお考えでしょうか。
#65
○国務大臣(稻葉修君) 考えを変えたというのは、あの当時は、閣僚であろうが総理大臣であろうが差し支えないじゃないかと、こうおとりになっておられますが、もしそうおとりになっておられると、それは多少私の気持ちとは違うんですがね。しかし、そういう考えは変えて、三木内閣の閣僚である限りにおいてはこれはいかぬなと、あのときは差し支えないと思っていた、今度は差し支えあると、こういうふうに考えを変えました次第でございます。
#66
○橋本敦君 質問に答えてください。時間がありません、質問に答えてください。議員同盟を退会なさる決意があるかどうかということです。
#67
○国務大臣(稻葉修君) それから、自主憲法議員同盟というのは、ずっと会員でございまして……
#68
○橋本敦君 結論だけで結構です。閣僚である間は……
#69
○国務大臣(稻葉修君) 私は、三木内閣は――三木さんも退会など、脱退などということを言われておりませんし――何かどっかにあったんじゃないでしょうかな、ですから、端的に答えれば、退会の意思はございませんのです。
#70
○橋本敦君 三木総理から言われたとか政府から言われたということで退会をするしないを聞いているんじゃなくて、本当に反省をし、三木内閣の憲法を改正しないという方針に誤解を生じさせないと、本当に深く反省し、決意しているなら、三木総理に言われなくても、みずから進んで退会をすると、それぐらいの決意があっていかがですかと聞いたんですよ。どうなんですか、もう一遍答えてください。人ごとのように答えられては困ります。
#71
○国務大臣(稻葉修君) 私はやはり憲法に非常な関心を持ち、興味を持っておるものですから、これらの人がどういう意見を吐いているとか、そういうことを聞きたいんですね、学問研究上。だから、ここで退会するというようなことを明言するわけにはまいりませんで、(「三木内閣の閣僚である間」と呼ぶ者あり)ですから、閣僚である間、実際上出ないとかいうことは別でございますけれども、退会してしまうという点につきましては、退会する意思を持っておりませんと、こうお答えせざるを得ないのです。
#72
○橋本敦君 同じ質問を繰り返しても仕方がありませんが、あなたがそういう意思であると、そしていまおっしゃったように、いろんな人の意見を聞きたい――いろんな人とは、憲法改正を論ずる人たちのことであることは、いままでの実情からわかりますよ。
 そこで、官房長官に伺いたいのですが、政府は稻葉法務大臣が深く反省をし、今後改憲集会に一切出席させないと、こう言っていますが、いろんな意見を聞きたい、自分は閣僚である間も退会しない、こう言っているのですよ。官房長官、責任を持って答えてください。三木内閣の方針に誤解を生じないという、そのようなことを、確約、本当にできますか、いまのような答弁で。
#73
○国務大臣(井出一太郎君) 一つは思想信条の自由というような問題があろうかと思うのであります。この改憲の実践的な行動団体というふうなものは、これは誤解を生ずるおそれがございますし、いやしくも閣僚である方に、そういう席へ出られるということは、これは厳に慎んでいただく、こういう考え方でございまして、まあ研究活動と申しましょうか、それまで拘束するわけにはまいらない、こう考えております。
#74
○橋本敦君 官房長官、私は改憲的な行動であるという性格を持っているからこそ聞いておるんです。たとえば、官房長官に一つの事実をはっきり御指摘しましょう。
 五月三日の稻葉法務大臣が参加をされた集会で、総会ですから、配付をされた資料がありますよ。その資料の中で、自主憲法制定国民会議、これの決算書、四十九年四月以降一年間の決算書を見てみますと、この自主憲法制定国民会議の経費を支えている総額七百四十八万、これが収入の部ですが、このうち二百七十六万が議員同盟からの借入金です。そうしてもう一つ大部分を占める収入、「漫画の憲法」の売上代金ですが、これは「稻葉修先生」「他団体より」と、こうして稻葉先生の名が、たくさんお買いになったからでしょう、公然と書かれている。そうしてまた、自主憲法期成議員同盟の収支決算書がありますが、この中の支出の部を見てみますと、この中では、昨年五月三日に開かれた自主憲法制定国民会議の大会、この大会費をこの議員同盟が、この決算書で明らかなように、五百万円以上の金を負担してやっておるわけです。こうして議員同盟と自主憲法制定国民会議は、公然と公にされた収支決算書から見ても、密接なつながりがあるどころか、バックボーンになっている、こういう事実があるから、私はあなたの誓約が本当なら、閣僚である間は、学問研究の機関ではなくて、自主憲法制定国民会議を財政的にも基本的に支えているこの同盟から、閣僚である限りは退会をなさる、これがまさにあなたの反省を示す証左ではないかと、こうして伺っているのです。官房長官は、学問研究の団体というようにすりかえて答弁されたが、このような事実から、そのような答弁はこれは許されないと思います。
 法務大臣、いかがですか、退会の意思があるかどうか、あなたの決意と反省のあかしとしてもう一遍聞いて、この質問終わります。いま私が指摘した事実を踏まえて答えてもらいたい。
#75
○国務大臣(稻葉修君) 深く反省し、十分に言動を注意すると、こう申しているんですから、考えさしていただきましょう。
#76
○橋本敦君 深く考えてください。考えた結果をまた伺う機会があると思います。また、あなたの行動によってわかると思います。
 ところで、あなたは当委員会で言った、「欠陥の多い憲法」という発言を取り消すという意思を表明されたんですが、取り消すというのは具体的にどういうことなのであろうか、私は重大な疑問を持っております。法務委員会では、あなたは、この「欠陥の多い憲法」であるという表現を訂正をして、理論的には検討をすべき点もあるというように言いかえる、訂正をすると、こうおっしゃった。きょうは取り消してしまうと、そうしてどのように直すか、直さないか、それは問題でないような発言である。あなたがおっしゃる取り消すというのは、どういうことを要求されておるんですか、当委員会において……。
#77
○国務大臣(稻葉修君) 取り消すというのは、それを削除するという、それからあるいはそれは取り消して書きかえてもらうとか、こういう処置は一切委員長に御一任申し上げます、こういうことを申しておるわけです。
#78
○橋本敦君 議事録からの削除というようなことは、当然あなたの御一存でできることではありませんね。さらにまた、書きかえると言うならば、どのように書きかえる、どのように訂正するのか、これを意思表示なさらなければ、委員長一任されても、勝手に書きかえる、こんなことはとうていできる問題ではありません。どのように書きかえてほしいのか、はっきりおっしゃってください。
#79
○国務大臣(稻葉修君) 委員長にお任せしてあるわけですから、ここで御返答を差し控えまして、最初に前提としてざっくばらんに私申し上げますれば、できればひとつ私の希望としては書きかえさしていただきたいと、こう思っているのですけれども、御一任しているんですから、委員長からおまえはああ言うたが、どうするということがあればまた別ですけれども、一切もう御一任しているんですから、その辺のところも含めまして御了察を願いたいと、こう思っております。
#80
○橋本敦君 あなたが「欠陥の多い憲法」であると当委員会で発言した事実は消しようもありませんよ。また、いかに委員長が任されようとも、あなたの意思に反して訂正することもできません。無責任な取り消しの申し出ではありませんか。私は全くそういう申し出はおかしいと思いますよ。さらに「欠陥の多い憲法」というのは、あなたの発言の趣旨前後、全体を通じて考えますと、これはあねたの憲法観そのものですよ。岸議長は憲法について「諸悪の根源」だと、こういう表現をされた。岸議長の憲法観を端的にあらわしておられる。「欠陥の多い憲法だ」というのは、これはあなたの憲法観であり、価値観そのものである。だから、したがって取り消すというのは、私はあなたに聞きたいのですが、あなたの憲法観、憲法に対する価値観が変わったから取り消すと、こういうことなのかどうか、はっきり伺わしていただきたいと思います。
#81
○国務大臣(稻葉修君) 私は諸悪の根源とは思ってないと、ということははっきりしましたね、申し上げましたね。場合によっては諸善の根源的なところもあるわけです。そのことは「現行憲法は、高い理想を掲げて現実政治の向うべき目標を設定していることは、すぐれたものと思う。」という政府回答と同感なんです。ただ、理論的には検討すべき点が学問的にはあると、こういうことを申し上げているわけでありますから、私の真意が正しく伝わるような表現に直していただければまことにありがたいがなと。しかし、その点はいずれ委員長に及び委員会にお任せいたしますと、私が申し上げたのは、そういう趣旨をも含めておることを御了察願いたいと思うんでございます。
#82
○橋本敦君 委員長に任せる、他人任せの取り消しや訂正なんて聞いたことがないですよ。私の質問に答えてください。あなたの憲法観が変わったのですか、変わってないのですか。これを答えてください。私の質問ですよ。いたずらに時間が過ぎます。
#83
○国務大臣(稻葉修君) 私の憲法観は変わっておりませんのですね。
#84
○橋本敦君 わかりました。あなたの憲法観が変わっていなければ、あなたの憲法感覚なり、憲法観をあらわしたと見られる「欠陥の多い憲法」というこの表現は、本質的には取り消しようもないと私は思うのですよ。そしていまあなたは、理論的には検討すべき点があるというようにも言いかえられたんですが、理論的に検討すべき点があるその検討の内容の中に、国家緊急非常事態の際における非常大権ないし、治安立法、これを内閣が持つというように改正するという点も含まれますか、含まれませんか。この点はいかがですか。
#85
○国務大臣(稻葉修君) 私はかつて内閣憲法調査会に所属しておった委員の当時も、それから自民党の憲法調査会長として会員の意見をまとめた憲法改正大綱草案にもそのことは含んでおります。
#86
○橋本敦君 あなたの当決算委員会における答弁は重大な食い違いがありますよ。七日の決算委員会で私は稻葉私案をもとにして自民党憲法調査会の改正案大綱がつくられた、この中には緊急事態立法の制定という問題が入っておる、この大綱草案、あなたは賛成ですかと私は聞いたら、あなたは賛成ですと明確に答弁されてるんですよ。きょうの答弁と明らかに食い違います。このような食い違いがある答弁をあちこちで繰り返し、どのように取り消すかを明確にしないで本当に反省していると言えますか。
 さらにもう一つ私はあなたに伺いますが、いま峯山委員から質問があって、あなたは三木内閣の憲法を改正しないという方針に誤解を生ずるおそれがあるので、この内容については答えないと、こうおっしゃった。そうすると、この理論的に検討すべき点があるというあなたのその具体的内容は、三木内閣の方針と違っている部分を内容として持っていることが前提になっているように聞こえます。あなたが理論的に検討すべき点があると、こう考えている内容は、三木内閣の政府声明に見られるこの憲法方針、憲法理解、これと食い違っていることを認めますか。
#87
○国務大臣(稻葉修君) 私は「現行憲法は、高い理想を掲げて現実政治の向うべき目標を設定していることは、すぐれたものと思う。」という点につきましては、そのとおりで、憲法観を一にしておる、こういうつもりでありますが、そうして、そのことはたびたび衆参両院の委員会等においても申し上げておるつもりでございます。
#88
○橋本敦君 もう時間がありませんから……
#89
○委員長(前川旦君) 時間がありませんので……
#90
○橋本敦君 これで最後にしますけれども、いまあなたは、高い理想を掲げたという政府のこの憲法観に賛成だとおっしゃった。「欠陥の多い憲法だ」とわずか十日ほど前におっしゃったあなたが、いまさらそうおっしゃってもだれが信用しますか。国民が、だれが信用できますか。そのようにくるくるとあなたは答弁を変えられる。これでは本当にですよ、本当にあなたが反省しているように私たちは受け取らない。むしろ今度の政府声明が出て、あなたの言動について遺憾であったと述べ、そうして憲法の理想を実現すると、こう言っている政府声明が本当ならば、あなたが五月三日のあのファッショ的な改憲集会に出席したり、「欠陥が多い」とこう言って、公式の場で発言をしたことに対しては、重大な責任をあなたはとるべきである。私たちが要求しているように、あなたが辞任するなり、総理は罷免すべきである、この考え方を私ども変えることができません。今後も引き続きこの問題を究明していくことをここに明言をして、時間が参りましたので私の質問を終わります。
#91
○田渕哲也君 時間が非常に限られておりますので、一問だけという御要請でありますので、官房長官に対する質問と法務大臣に対する質問と、一つずつ一緒にまとめてお伺いをしますので御答弁をいただきたいと思います。
 私は、法務委員会並びに決算委員会において、この問題でかなり長時間論議された問題でありますけれども、どこかすっきりしない感じがするわけです。そのすっきりしない根源はどっから来ておるかというと、結局この自民党の方針と内閣の方針の食い違いである。この食い違いを何とか糊塗しようとしておるから、どうしてもこれはすっきりしないのであります。
 ひとつ官房長官にお伺いしますけれども、閣僚はいわゆる改憲を目的とする集会には出席させないということを言われましたけれども、現在御承知のように閣僚の中で十三名の方が自主憲法期成議員同盟に入っておられます。この自主憲法期成議員同盟は、すでに御説明するまでもないと思いますけれども、憲法の改正ですね、「自主憲法の実現に挺身しなければならぬ。」「自主憲法実現の必要を国民にうったえ、一大国民運動に盛り上げよう。」、こういう趣旨に賛同して入られておるわけであります。したがって、単なる改憲集会に出席させないというだけでいいものだろうか、やはり憲法改正を目的とした同盟でありますから、同僚委員の質問にもありましたように、私はやはり閣僚としてこれは退会すべきではないか、このように思うわけであります。しかし、これは退会させないというような方針を承っておりますけれども、それなら単なる改憲集会に出席させないという歯どめだけではいけないのではないか。自主憲法実現の必要を国民に訴えるという行動もやはり規制しなければならない、あるいはこの同盟の規約にある「自主憲法草案の研究」ということについても、その行動は規制すべきではないか、このように思うわけですけれども、こういう点について官房長官の御答弁をお願いしたいと思います。
 それから法務大臣は、「欠陥の多い憲法」ということを修正されたわけでありますけれども、自分が改憲論者であるということは訂正されておりません。これは五月七日の決算委員会においても言われておりますし、その後もこれは取り消されていないわけであります。ところが、欠陥がなけりゃ改憲論になりませんということも御自身で言われておりますけども、私もそのとおりだと思うんです。その後法務委員会でこの言葉を訂正されて、改正した方がよいと思われる点があると、こう言えばよかったと言われておりますけれども、これもまた取り消されました。そして現在は学問的に、理論的に検討すべき点があると、私はこの表現と改憲論者というのとどうしてもつながらないと思うんですね。学問的、理論的に検討すべき点があるなら、これは研究学徒ならいいと思うんです。改憲論者だとはっきり言われる上はやはり悪い点があるから改憲するわけでしょう。まあ御自身の判断では改正される、もっとよくしようとしておられるわけです、これは悪い点があるから。だから、御自身としてはやっぱり欠陥があるからだと思っておられると思うんです。だから、改憲論者につながるわけですね。学問的、理論的に検討すべき点があるというだけでは改憲論に直ちにつながらないと、こういう矛盾がやはり残っておるわけです。こういう点についてやはり解明をしていただきたい。
 それと、法務大臣にもう一つ、今度は政府で憲法記念日の行事を、憲法擁護のための行事をやるということを言われたわけでありますけれども、これには法務大臣は出席されるのかどうか、御答弁をお願いしたいと思います。
#92
○国務大臣(井出一太郎君) それでは、前段の点を私から申し上げますが、自主憲法の会員になっておるという点でございますが、これも私どもは実践団体というふうに考えておりませんので、あえてこれを規制するという立場には立っておりませんけれども、しかし、まあ閣僚の諸君おのずから考えるところはあるのではないかと、こう思っております。
 さらに、自民党が党是として政綱の中にうたっておる、まあ改憲を意図した方向というものと現内閣の考え方とに矛盾があるという御指摘でございますが、これは、一つは長期展望と申しますか、この国民世論というようなものがほうはいとして盛り上がると、いまはそういうふうにわれわれは理解しておりません。したがいまして、その改憲のリーダーシップをとらないというのが三木内閣の方針であると、こういうふうにそこは割り切って解釈をいたしておるような次第でございます。
#93
○国務大臣(稻葉修君) 改正論者か改正不要論ないし改正反対論者かと、こういう分け方をした場合に、おまえはどっちなんだと言われれば、私は前者に属しますと、こういうことは、そうなんですからうそを言うわけにはまいりませんのですね。
 第二の憲法、政府の記念行事に閣僚が差し支えない限り出席することは私は当然だと思っております。
#94
○田渕哲也君 ちょっと答弁漏れがありますので……。
 法務大臣にお伺いしたのは、改憲論者かどうかということをお伺いしたのではありません。学問的、理論的に検討すべき点があるというふうに訂正した場合に、それと改憲論者であるということはつながらないということです。
 それと、官房長官に重ねてお伺いしますけれども、自主憲法期成議員同盟の規約には、はっきり「自主憲法を推進することを目的とする。」と書いてあります。これは実践団体なんです。研究団体じゃないわけです。だから、官房長官の答弁はぼくは事実を間違っておられると思います。
#95
○国務大臣(井出一太郎君) いまの自主憲法の会合というものは、私はまあいまのように理解をしておりましたが、さらに規約その他もよく私として検討をいたすつもりでございます。
#96
○国務大臣(稻葉修君) 「現行憲法は、高い理想を掲げて現実政治の向うべき目標を設定していることは、すぐれたもの」であると。ただ、理論的には検討すべき問題を含んでおるがと、これでやっぱり私のその発言の中に、おまえは国民のうちに改正した方がいいという部類と、いや、このままの方がいいという部類とあるがどっちに属するかと、それは改正論者に属するんでしょうということにつながるように私は思いますんですが、その辺のところを御賢察願います。
#97
○田渕哲也君 納得できませんが、これで終わります。
#98
○喜屋武眞榮君 私で最後でございますのでよろしくお願いします。
 いままで官房長官あるいは稻葉法務大臣のまあ御反省やら御答弁を聞いておりますと、聞けば聞くほど非常に疑惑が起こってまいります。
 多くをもう申し上げられませんが、まず第一点は、法務大臣にお聞きしたいことは、三木内閣の閣僚として憲法改正はしない、こういうお答えがありました。ところで三木内閣は、まあいつまで続くかは知れませんが、その続く限りにおいては改正はしないが、三木内閣が他に変わった場合にはどうなるかわからぬというお気持ちであるのか、そのときこそまたばく進すると、こうおっしゃるお気持ちであるのか、そのことが気になります。
 第二点は、まあ私たちはあれだけの戦争の犠牲を払ってできた平和、人権、民主憲法、いわゆる世界にも類例のないすばらしい憲法だと信じております。ところが、まああるまた一方的な見方では、押しつけの憲法であるから改めないといかぬという考え方もありますが、もう三十年も国民生活に密着、定着いたしております。こう私は判断いたします。そこで、そういうりっぱなすばらしい、世界的にもいい意味における類例のない平和憲法を欠陥だらけと言うその内容は一体何であるのか。もしその全部をお答えできなければ、その一、二の例でも結構ですからぜひひとつお聞かせ願いたい。
 次に、官房長官にお聞きしたいことは、まあ五月三日の憲法記念日、このことを中心に問題にもなっておるわけなんですが、憲法改正をしないどころか、これから非常に意義のある行事を国としても持ちたいと、こうおっしゃっておられる。それはまあ記念日の五月三日は過ぎてしまったわけですが、次の憲法記念日であるという意味であるのか、それとも今後直ちに適当な機会にその憲法を推進していく、こういう意義ある行事を持っていきたいと、こういうお考えであるのか、そのことをお尋ねいたしまして、限られた時間でありますので質問を終わります。
#99
○国務大臣(稻葉修君) お答えいたしますが、三木内閣は憲法改正せずと、これには私はもう賛成なんです。一方、自由民主党の政策綱領には、民主主義、平和主義、人権尊重等の原則を踏まえて、自主的に憲法を改めていく、こういうことになっておりまして、そのためにまあ党に憲法調査会が置かれてずっと検討してまいりました。私も調査会長をやったりして検討してまいりました。私の会長時代に、党議にはなっておりませんけれども、自由民主党の憲法改正大綱草案というものがございますけれども、これはまあもっとうんと研究に研究を重ねて、われわれのはそんな世間に誤解されているような反動的なものを、右寄りなものではありませんよというものをきちんとつくって、討議を経た上で、そして国民にもまた直してもらったりいろいろして、そうしていくべきものであるから、まだ時間の先の話であって、現在の政治日程ではないのだから、三木内閣は憲法改正をすべきでない、そういう作業を開始すべきじゃないという点で、私は三木内閣が憲法を改正しないという方針に渋々従っているのじゃないのです。私は心からそれはそうあるべきものだということでございまして、この点は三木内閣がいつまで続くかわからぬが、それが終わればくるっとひっくり返って進軍ラッパかというような御質問でございますが、そうではございません。いま申し上げたとおりでございます。
 さらに、この内容について一点だけでも言うたらどうかということでございますが、それがこの間、まずたとえばと言って一点入ったところが、この大問題に発展したわけでございますので、こういう際にそれに入りますことはひとつ、私も政治家として、どうもそういうことではできないなという判断でございまして、お許しを願いたいと思うのでございます。と同時に、三木内閣の改正せずという政治姿勢をまた疑われるので、私は三木内閣の政治姿勢に賛成なのですから、先ほど申し上げましたように。そういうことで、誤解を生ずることはこの際避けたいと思いますので、どうか答弁を差し控えさしていただきます。
#100
○国務大臣(井出一太郎君) 記念行事についてのお尋ねでありますが、これは現在祝日法におきまして「憲法の施行を記念し、国の成長を期する。」と、こういうすでに文言が厳としてあるわけであります。そこで、具体的にこれを有意義な行事として取り扱うということをお約束しておるのでございますが、これには若干の準備も必要でございましょうし、いますぐにというわけにもまいりかねる、こういうことで、まあ常識的に申しますと、明年の憲法施行日を期しての記念行事というふうに考えざるを得ないのではないか、こう思っております。
#101
○委員長(前川旦君) 以上をもって発言問題に対する質疑を終わりますが、昭和四十七年度決算外二件中の法務省所管につきましては、審査を保留とし、質疑は後日行うことといたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後四時三十四分散会
ソース: 国立国会図書館
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