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#1
第075回国会 社会労働委員会 第3号
昭和五十年三月十一日(火曜日)
  午後一時五分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 二月二十七日
    辞任         補欠選任
     斎藤 十朗君     山東 昭子君
 三月一日
    辞任         補欠選任
     山東 昭子君     斎藤 十朗君
 三月四日
  委員須原昭二君は逝去された。
 三月十日
    補欠選任        案納  勝君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         山崎  昇君
    理 事
                玉置 和郎君
                丸茂 重貞君
                小平 芳平君
    委 員
                石本  茂君
                鹿島 俊雄君
                神田  博君
                斎藤 十朗君
                高田 浩運君
                案納  勝君
                片山 甚市君
                浜本 万三君
               目黒今朝次郎君
                柏原 ヤス君
                沓脱タケ子君
                柄谷 道一君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        中原 武夫君
   説明員
       厚生省医務局総
       務課長      幸田 正孝君
       厚生省児童家庭
       局母子衛生課長  本田  正君
   参考人
      東京大学医学部
      教授        津山 直一君
      北里大学医学部
      教授        坂上 正道君
      国立療養所西多
      賀病院長      保坂 武雄君
      川崎幸病院副院
      長         今井 重信君
      大阪市立大学医
      学部講師      宮田 雄祐君
      大腿四頭筋短縮
      症の子供を守る
      全国連絡協議会
      会長        西中山秀雄君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○社会保障制度等に関する調査
 (大腿四頭筋拘縮症に関する件)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(山崎昇君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 本委員会の委員一名を補充するため、本日案納勝君が委員に選任されました。
    ―――――――――――――
#3
○委員長(山崎昇君) すでに御承知のことと存じますが、本委員会理事須原昭二君は、去る四日名古屋第一赤十字病院において胃潰瘍、急性肺炎併発のため逝去されました。
 本委員会における同君の御活躍は目覚ましく、多大の御功績を上げられたのでありまして、同君の急逝はまことに痛恨哀惜のきわみと存じます。
 ここに委員各位とともに黙祷をささげ、心からなる哀悼の意を表するとともに、御冥福をお祈りいたしたいと存じます。
 皆さんの御起立をお願いいたします。
 それでは黙祷をさしていただきます。
 黙祷。
  〔総員起立黙祷〕
#4
○委員長(山崎昇君) 黙祷を終わります。
 ちょっと速記をとめてください。
  〔速記中止〕
#5
○委員長(山崎昇君) それでは速記を起こしてください。
    ―――――――――――――
#6
○委員長(山崎昇君) 社会保障制度等に関する調査を議題とし、大腿四頭筋拘縮症に関する件について調査を進めます。
 本件につきましては、本日はお手元に配付いたしております名簿の方々に参考人として御出席をいただいております。
 この際、参考人の方々に一言あいさつ申し上げます。
 本日は、本委員会の調査のため、御多忙のところを御出席いただきまして、まことにありがとうございます。つきましては、大腿四頭筋拘縮症に関する件について忌憚のない御所見を拝聴いたしたいと存じますので、よろしくお願いを申し上げます。
 まず、それぞれのお立場から各自十五分程度の御発言を願い、その後、委員からの質問に対しお答えをお願い申し上げたいと思います。
 本来なら、十分な時間をとって御意見をお聞かせいただきたいと存じましたけれども、日程等の都合もございまして十分な審査時間がなく、大変恐縮に思いますが、短時間の御発言をお願いをいたしたところでございます。どうぞ、これらの点御了承いただきまして、本日の委員会に対する皆さん方の御理解を心からお願い申し上げたいと思います。
 大変簡単でありますけれども、一言ごあいさつ申し上げまして、委員会を進めさしていただきたいと思います。
 それでは津山参考人にお願いいたします。
#7
○参考人(津山直一君) 津山でございます。大腿四頭筋拘縮症は最近取り上げられて非常に話題になってまいった疾患でございますが、大腿四頭筋と申しますのは、太ももの前にあるひざを伸ばす作用を持っている筋肉でありまして、この部分の筋肉であります。名前の示しますように四つの頭から成っておりまして、大腿直筋、それから三つのほかの広筋という筋肉が集まってひざを伸ばすわけでありますが、大腿四頭筋拘縮症といいますのは、この筋が瘢痕化することによって、つまり、正常な筋肉の伸び縮みする性質を失って、そのためにひざが曲がらないという現象が起こってくる疾患であります。専門的になりますけれども、大腿四頭筋の中には、大腿直筋と、先ほど申しましたような大腿広筋、三枚の広筋と一つの直筋とがありまして、そのどちらが線維化するかによってその症状は異なってまいります。
 本症は最近非常にクローズアップされてまいりましたが、必ずしもわれわれが認識したのは最近ではなくて、昭和二十一年に東京女子医大の森崎教授が発表されております。ただし、そのときにはまだ注射によるものとははっきりと断定されておりません。その後続々と発表され、昭和二十七年、昭和三十六年あたりにかなりのはっきりとした注射によって起こり得る疾患であるということを報告されております。日本においては多数の報告があり、また外国においてもぼつぼつ報告が出てまいりました。
 そういう点から顧みますと、こういう病気が注射によって起こり得るのだということを整形外科の医者だけが認識して、こういう病気に対して気をつけなければならないというような他科への呼びかけ、あるいは一般医家への啓蒙といったものに力を注がなかったことは、われわれとして非常に手落ちであったと反省しております。
 拘縮症の中には先天性のものがありますが、いま申しましたように大部分が注射によるものと思われまして、乳児期、一歳以前に大量の注射をしたような場合が多いようであります。多くの場合は乳児期の太ももに注射を頻回に行ったような場合、あるいは頻回でなくても大量の注射を小さな筋肉内に注入したような場合、そういった場合に薬物の化学的な反応あるいは薬物毒性によりまして筋肉が壊死を起こす、平たい言葉で言えば組織が腐ると申しますか、変化を起こすわけでありまして、それが筋肉でない瘢痕組織に置きかわるわけであります。あるいは、大量の注射を注入した場合に、そのために小さな筋肉の中の内圧が高まって阻血性の壊死が起こるということもあり得ると考えられます。また、頻回でない数回で起こっているというような症例もありますので、患者側の体質あるいは打った注射部位が非常に筋肉の栄養に関係するような場所に特に注射が行われたという可能性もあると考えます。もともと注射ということは非生理的なことでありまして、手術をすれば瘢痕が残る、ある程度の瘢痕は避けられないというように、注射をすれば筋肉の瘢痕化ということが起こり得るのだということは、これは当然医師として考えておかなければなりませんが、従来太ももの部分にのみ筋肉注射を盛んにやったということは、この点でその筋を非常に瘢痕化させる一因子であったと思います。そういう点、先ほど申しましたように、注射をするときには、一つの筋に頻回注射を繰り返すというようなことでなしに、あとで申しますような考慮を払わなければならないということを強調すべきであったと考えております。
 診断の問題でありますが、大体、一歳、乳児期あるいは一歳以前に注射を受けたような子供が、三歳前後になって症状を訴えてくるような場合が多いようであります。歩き始めて歩き方がおかしいとか、走ったりするとそれが目立つ、足を外から振り出すようなぶん回し歩行をするとか、お座りができない、できにくい、しゃがむことが困難である、出っちりになり、腰が非常にそっくりかえるといったような、あるいは大腿の部分に痛みを訴える、そういったものが症状であります。そうして、その診断には、こういった疾患があるということがわかっておれば診断はむずかしいものではありません。いわゆるしり上がり検査という方法、あるいはその筋肉の部分の触診所見、あるいは、大腿直筋の場合であれば、股関節を伸展してひざ関節が十分曲がるかどうか、どの程度曲がるか、大腿広筋の場合であれば、股関節の位置にかかわらずひざが曲がり得るかどうかということ、そういったことに注意して見ればこの疾患の診断は困難なものではありません。
 治療でありますが、この疾患は、程度によりまして、程度の軽いものでありますれば、これは単に筋のしこりあるいはある程度姿勢がおかしいというふうなことがありますけれども、それほど大きな機能障害を起こすものではありません。日常生活動作は十分やっておりますし、スポーツもできる子供がたくさんあります。でありますから、大腿四頭筋拘縮症即肢体不自由児というような解釈はできないと思います。その中で、大腿四頭筋の拘縮の程度がひどくて、われわれの専門領域の基準としましては、いわゆるしり上がりテストが三十度以下、つまり、ひざ関節を三十度曲げればもう股関節に異常な運動が起こってくるというふうなものは、やはり放置しないで早期に手術を行うべきだ。手術は、その短縮した縮んだ筋肉を切って伸ばすわけであります。手術をすればよくなるかと言いますと、大部分は、われわれの追跡調査では、一回の手術でかなりよくなっております。しかし、筋肉そのものの伸び方と子供の骨の成長の速度とが差があるために、再発する傾向があります。そのために、再発の傾向が強いときにはもう一度手術をしなければなりません。大体二度ぐらいの手術をして、あるいは場合によっては三度ということになるかもわかりませんが、大腿直筋の拘縮症の場合には、しゃがめない、出っちりが残るといったようなこと以外の日常生活動作は大体できる程度に治っている例が多いのであります。大腿四頭筋のうちの大腿広筋の拘縮症は、直筋の拘縮症に比べてかなり深刻な問題がありまして、ひざ関節の屈曲が制限をかなり残して治るということが深刻な問題として残り得るわけであります。
 先ほど申しましたように、注射というのは、元来非生理的な行為でありますから、何らかの瘢痕を残す可能性がありまして、そういう注射の既往のあるときには、その部分にしこりが残らないかどうか、あるいはその筋の機能障害が残っていないかどうかということは、その後もときどきは検査をすべきであり、この大腿四頭筋拘縮症のようなはっきりとした病気の起こり得る可能性のある場合には、歩き始めたときに一度、三歳ぐらいまでの間に一度は、症状のあるなしにかかわらず検査をするべきであると考えます。検査は、先ほども申しましたような簡単な検査でありますから、ことに頻回の注射の既往のあるような場合には、そういったチェックをする必要があると存じます。
 予防といたしましては、やはりなるべく必要最小限度に注射をすべきである。しかし、注射というものは、これは避けがたい場合がありますので、その場合には、筋肉注射をどうしてもしなければならない場合がありますが、筋肉注射というものには非生理的なものであって後に何か残す可能性があるということを常に考え、一つの筋肉に集中して注射を行わない。頻回注射を、注射をする回数をできるだけ必要最小限度に減らし、しかもなお頻回注射をしなければならない場合には、注射をしてよい筋肉を選んで、それを場所を変えて、注射のたびごとに場所を変えるような配慮があるべきであると存じます。大腿、臀部、肩、背中、胸部といったような、ところを変えて注射をするということも一つの方法であろうと考えます。
 とりあえず、これだけで私の発言を終わります。
#8
○委員長(山崎昇君) どうもありがとうございました。
 続きまして、坂上参考人にお願いいたします。
#9
○参考人(坂上正道君) 坂上でございます。
 私の立場は、日本医師会の中に大腿四頭筋問題検討委員会という委員会が組織されまして、その答申案がきょうの素材としてお手元に配られているのではないかと思いますが、その委員の構成について申し上げますと、赤石教授、この方は、法医のお立場で、薬剤とそれらの性質が今回の疾患と非常に関連があるというような意味でたくさんの論文をお書きになった方でございます。それから内科のお立場で加瀬教授、それから東邦大学の里吉教授は神経、筋でございます。それから島田助教授は新生児関係、それから薬学につきまして東大の高木教授、それからきょうお出ましの津山教授、それから法律のお立場で三藤教授、こういうメンバーで委員会を組織いたしまして、そうして、この委員会の性質といたしましては、厚生省の中に診断基準及び治療の方針と申しますか、治療と診断に関する委員会がつくられたということを承っておりまして、私どもとしましては、医師の立場で本症の予防についての早急な対策を立てる、それから何らかの本質的な問題に関しての問題点といたそう、こういう意味で委員会をつくったわけでございます。
 内容に入らしていただきますが、まず、筋肉注射というものにつきましては、実は従来成書あるいは教科書に余り書かれていない事柄でございます。私もここに出ます前に薬学の専門の方にお話を聞きましたのですが、筋肉に注射を打った場合に薬剤がどういうふうに吸収されていくかというようなことにつきましてはたくさんの記載があるのですが、一体、筋肉注射に入れた薬剤が人間の生体の中で筋肉に対してどういう影響を及ぼすかということにつきましてはほとんど記載がないということが言えるようでございます。ましてや、新しい薬が開発されましたときに、それが筋肉に対してどんな影響を出すかということにつきましては、ほとんど基本的な検討をしないまま実用に供されているというのが実情であったと思います。したがいまして、以上のような現状から、今後、本症に関する基本的な医学的な解明ということが必要でございまして、早急の予防対策、それから早期発見の方法ということにつきましては、医師といたしましても十分早急な方針を立てる必要があろうかと存じております。
 御承知のように、本症は全国各地に発生しておりますけれども、その発端となりました山梨県鰍沢町におきましては、山梨県大腿四頭筋拘縮症対策委員会が発足いたしまして、患者の発見、治療法の検討を行っております。その調査の結果を拝見してみますと、薬剤といたしましては、クロラムフェニコールゾル及びスルピリン剤という一つの解熱剤でございますけれども、こういうものが最も多いようでございまして、重症例におきます注射本数の下限が九本、それから中等症例で八本、軽症例で六本ということでございまして、比較的少ない注射本数でも本症が発生しておりますことは重要な点でございます。
 それから小児に対する筋肉注射につきまして、一体どういう実態にあるかということでございますか――これは途中でスライドを入れてよろしいでしょうか。明るいままならスライドを入れてよろしゅうございますか。
#10
○委員長(山崎昇君) はい、結構です。
  〔スライド写真映写〕
#11
○参考人(坂上正道君) ちょっと小さくて恐縮でございますけれども、小児科医にアンケートを出しまして調査してくだすった資料でございますが、一体どの部位に筋注をしておりますかということを問いかけてみますと、約六〇%が上腕部に打っております。それから三六%が大腿部、ただいま問題になっております場所でございますね。それから臀部に八一%、こういうふうな数でございまして、それで、ほかの場所はともかくといたしまして、大腿部についてだけの図をお目にかけますと、これはちょっとよく見にくいのですが、いま津山先生のお話で、大腿四頭筋という、二つ筋が四つあるわけですけれども、ここに大腿直筋という筋がある、それで内側広筋、外側広筋があるわけですけれども、どこに打っておりますかということを聞いてみますと、ここに数字が写っているものを読んでみますと、大腿部に打っておりますものの約六〇%がここに打っているわけです。すなわち、いまの大腿直筋の部位に打っているわけですね。これが小児科医が筋注を行っております実態でございます。
 さて、そこで、そういうことがなぜ行われるかということでございますけれども、実はここに専門の議員のお立場の方もお出ましでございますけれども、どこに注射を打つべきかということを教科書の上で調べてみますと、これは主として看護の教科書によく書かれております。それを看護の教科書に書いてありますことを図によってお示ししますと、まずここに打てという位置が示してあります。これはいまの津山教授のお話の外側広筋の位置でございまして、実は拘縮を起こしますともっとひどい変形になるというお話でございますが、これはすなわち大腿直筋の位置を避けて外側広筋に打ちなさいというふうに指示してあるわけです。しかし、この位置においてもやはり拘縮が起きることはいまの津山先生のお話のとおりでございます。それから別の教科書からとってみますと、これはやはり一番左が外側広筋の位置、それから真ん中はまさに大腿直筋の位置ですね。それから一番右が三角筋の位置です。というものに打てというふうに書いてあります。この写真はちょっとわかりにくいのですけれども、一番左をごらんになられますと、やはり外側広筋の位置です。左の三つある図の真ん中ですね。すなわち外側広筋の位置に打ちなさいと書いてございます。また、別の教科書では、これは一番右をごらんになられますと、まさに大腿直筋の位置に打てと書いてございまして、ほとんど教科書レベルの知識を見ますと、まさに本症が起きるような位置に打てというふうに教科書がずうっと書かれ続けてきた事実がございます。
 こういうふうな次第でございまして、まあ教科書に書いてあるとおりの場所に打てというふうな結果が今日に及んでいるというふうなことも言えようかと思います。
 本症発生の要因につきましては、いま注射の問題については申し上げましたけれども、先天的なものがもちろんございまして、これは先天性筋異形成症と呼ばれておりまして、文献によりますと双生児に発生したというような例がございますから、明らかに先天的なものもあろうかと思いますけれども、現在日本の文献に見られます多くの症例では注射による後天的なものというものが多いように思われます。
 この筋肉注射がではなぜ本症を起こすかということにつきましては、組織学的にも系統立てて研究した報告はないということは先ほど申し上げましたけれども、筋肉の瘢痕、線維化の原因といたしましては、化学物質による筋の炎症が考えられます。その他の原因といたしましては、注射剤の浸透圧、濃度、PH等も問題でございまして、あるいはまた添加物や安定剤などによる影響も十分考慮されます。一方、大量の液を頻回に筋の小範囲に注入するために、圧迫による阻血性壊死が起こるということも考えられます。それから赤石教授が言われますように、薬剤の溶血性は細胞毒作用の一つの指標である。すなわち、血液を溶かすぐらいでございますから、ほかの細胞も壊すであろうという意味で細胞毒作用があるということにつきまして溶血性と細胞毒作用はパラレルであるということが想像できますけれども、その溶血試験を各種の注射剤について行ってみますと、溶血性の強い薬剤、すなわち細胞毒性が強いと考えられるものに筋肉注射用の薬剤が多くございまして、この関係はハトを用いた実験でも組織変化が認められているということでございます。
 それから本症の治療法につきましては、先ほど津山教授がおっしゃいましたので、詳しく申し上げませんが、一つの診断の基準になりましたしり上がりテストについてお目にかけますと、これがしり上がりテストでございまして、患者さんのおしりを押さえて、ひざ関節からこう曲げていくわけです。曲げてまいりますと、ある角度になりましたときにおしりが上がってくるテストというのがしり上がりテストということでございまして、これが、いま津山教授のお話では、三十度まできたときにもうすでにしり上がりテストで陽性になるという場合には手術の適応になるであろうというふうにおっしゃったことでございます。もう一遍申し上げますと、上が、足のところを持ちましておしりを押さえてひざ関節でこう曲げてきているところです。普通ですと足がおしりについてしまうわけですけれども、下の写真のように、ある角度まできましたときにおしりが上がってくるという反応が見られる、このおしりが上がったときの角度をもって重症度を判定しようと、こういうことがいわゆるしり上がりテストということでございます。
 そのほかいろいろな症状がございますけれども、これはいまのお話と重複いたしますので省略さしていただきます。
 ただ、申し上げたいことは、大腿四頭筋、すなわち四つの筋肉に分かれますけれども、直筋の瘢痕化のみならず、広筋の障害というものはなお症状がひどく出るようでございますが、幸いなことにこの症例は比較的少ないというふうに言われております。
 予防法といたしましては、拘縮した筋を早期に発見いたしまして、拘縮予防のための徒手矯正延長を行うか、拘縮した筋を延長する手術を一、二行う、で、関節の可動域を増すということが早期に行うべき治療法でございます。
 それから本症の発生防止に必要な留意事項でございますけれども、本症の本体につきましては今後引き続き検討を要します。したがいまして、本委員会でもなお作業を継続いたしますけれども、当面の発生予防の方途につきまして二、三申し上げたいと思います。まず、筋注に関する事項ですが、注射回数、筋注による治療というものは筋肉注射が実施上やむを得ないと判断される場合にのみ行うことを原則といたしまして、その注射回数についても十分留意する必要がございます。もし可能ならば他の投与方法に切りかえることが望ましいと思います。それから注射部位につきましては、筋注を行う場合にはその薬剤による多少の組織障害というものは避けられないといたしましても、機能障害発生の可能性が最も少ない場所を選ぶ、かつ神経麻痺の予防にも配慮いたしまして場所を選びますと、上臀部、私どもの委員会では上臀半月部と申しまして、おしりのある骨盤の位置からこう描きますと、ちょうどおしりの後ろ側の上のところに上臀半月部という三日月型の場所ができるのですが、その場所が最もよかろうというふうに指摘をいたしました。ただ、少量の注射の場合には、大腿前面やあるいは上腕部であっても使うことができるであろう。しかし、頻回注射や大量注射は避けるべきであるというふうに考えます。それから同一部位につきましては、同一部位に対する注射回数が多ければ瘢痕化が起こりやすいことは当然でございます。したがいまして、頻回注射が必要な場合には左右の場所に交互に行う。あるいは、別の場所を利用いたしましても、あちこちの場所をローテートして使うということが必要でございます。
 それから本症の発生の一つの場になりました未熟児の医療でございますけれども、未熟児学は学問として日がなお浅く、現時点では未熟児に関する薬理学並びに注射技術は解明されていない点が多うございまして、未熟児に対する筋注につきましては注射部位の範囲も体が小さいわけで小さいことは当然でございますので、技術的にもむずかしく、また本質的にもむずかしい問題がございます。したがって、その注射に際しましては特に慎重な配慮が必要でございまして、可能ならば他の投与方法によることが望ましいと思われます。
 それから本症につきましては早期発見を行いまして、すなわち、注射を繰り返している子供におきましては、注射部位の筋の硬結の触診、あるいはいまお示ししましたしり上がりテストを行いまして、歩行開始時あるいは三歳児健診のときにそれを見つけまして、場合によっては徒手矯正、必要に応じて手術的矯正を行うということが必要です。
 ただ、申し上げたいことは、姿勢の変化あるいはその他がありましても、骨が伸びていく途中ではこういう変形の様相がはっきり出てまいりますけれども、最終的に成長が安定いたしまして、骨発育がとまりましたときには意外に代償されるのではないかということが想像されます。この実体につきましてはなお検討を要します。
 最後に申し上げたいことは、薬学と臨床医学というものの結びつきが足りのうございまして、私ども医師にとりましても薬剤の情報を得ることは大変困難でございます。しかも、その情報が変貌するということがございまして、薬学と臨床医学との間の情報交換というものが密接にされる必要がございます。具体的には、薬の能書きその他につきましても、そのときそのときあるいは検討が加わるたびに新しく変えられていくことがいいのではないかというふうに考えます。
 あとは、本症に関する知識の普及、あるいは医学教育における治療学の教育の足りなさというような面に関しまして、教育あるいは卒後教育におきましてさらに検討する必要があろうかと思います。
 研究問題につきましても、さらに、薬剤と生体側との関係、あるいは薬剤を筋注に及ぼす場合に組織的にどんな影響を持つかということにつきましては今後の研究課題でございまして、なお私どもプロジェクトチームを組みまして検討を進めたいというふうに存じております。
 以上でございます。
#12
○委員長(山崎昇君) どうもありがとうございました。
 続いて、保坂参考人にお願いいたします。
#13
○参考人(保坂武雄君) 保坂でございます。
 大腿四頭筋拘縮症の厚生省の研究班の一員でございますが、本日は個人としての意見を述べさせていただきます。
 子供の病気を治そうとして打った注射が原因でまた別の病気になってしまったということに対して、私は国民の健康の一端を担っている一員として責任を痛感しております。
 東北大の法医学教室の研究によりますと、市販されて日常使っている注射薬の中に生体の組織を障害するものが多数あり、その中でも解熱鎮痛剤、抗生物質などが特に悪かったという実験結果を出しています。
 われわれは、筋肉注射の部位として、大きな神経、血管のある場所を避けて臀部、上腕、大腿部に普通行ってきました。それでもときどき神経麻痺を起こすような事故があり、また、最近は筋肉の拘縮の問題が出てまいりました。昭和四十九年までに学会で発表されたものや文献の報告例の集計では、筋拘縮症が約五百例程度であります。しかし、その大部分が大腿四頭筋のものであります。ことしの四月の学会で日本大学の佐藤教授が全国の主な病院よりの集計を報告されることになっておりますので、いずれもっと詳しいことが判明すると思います。また、これに関する幾つかの演題もあり、治療成績などもいろいろと検討されるはずであります。
 昭和四十四年発行の看護学総編には、大腿部の注射部位として、大腿の前面、それも大腿四頭筋にするように書いてあります。日本では大腿部の前面に注射するのはいままでは常識だったわけでありますが、このために日本においては外国と異なり大腿四頭筋拘縮症は大腿前面に走っている直筋が侵されたものがほとんどです。また、患者が受けた注射の本数でも、数本で拘縮を起こした症例が報告されております。注射のすべてが大腿部に行われているのではないのに、圧倒的にこの部位のものが多く、かつ少ない注射でも起こるのは、一体何でありましょうか。
  〔スライド写真映写〕
 そこで、大腿部の筋肉の状況を解剖学的に見てみますと、これはさっきスライドですでにごらんになったように、骨盤と下腿とを結んでいる大腿四頭筋がありますが、この真ん中にあるのが肢大腿骨、この内側、外側ということになっておりますが、この大腿直筋だけを取り出して見ます。そうしますと、骨盤についております。こちらがひざの方についている。この間に筋肉があります。こちらは腱です。この裏側を見ますと、この裏側はずっと腱が上までまいっております。すなわち、横を真ん中から切ってみますと、骨盤からの腱は大腿骨の三分の一の程度から今度は筋肉の中に入ってきている。そうして膝蓋骨のじき近く、下腿の三分の一程度のところまで、ここあたりまで入ってきているわけです。それから裏側の腱は、もちろんさっきも言っているようにずっと上まできている。この間に筋肉が長目についている。そうしますと、この上からきている腱と下側にある腱との間というのは非常に接近して、子供の乳幼児の筋肉ですとこの筋肉の線維が大体二センチ程度だと思われます。それから腱と腱との直線距離が大体五ミリ以下になっているはずです。ですから、これを横断面を見ますと、この辺あたりは中に腱が入ってまいります。真ん中はもちろん筋肉はありますけれども、中側に筋肉の中に入っている。そうしますと、もしこういうところに上から注射をされますと、このすき間は非常に狭いわけですから、ここに筋肉が障害を受ける、ネクローシス――壊死を起こすような薬が注射されれば、この腱と下の腱は瘢痕で結びつけられる。すなわち、ここの腱と下からの腱はここで強引に結びついて一本のひものようになってしまう。すなわち、拘縮、ひもになってしまいますから、当然筋肉の作用はなくなって、一本のひもになってしまう。そういうふうな構造になっております。ですから、ここに注射を多くすれば、少ない注射でもそういう危険性がある、数が多ければもちろんこれは当然ながら大きくなる。特にこの大腿部の正面中心線のところが特に危険だということがこの解剖学的な所見からもはっきりわかると思います。これはももの輪切りの大腿、中は三分の一程度、これは前側で、ほとんど半分以上の筋肉の量を示しております。ちょうどその前に大腿直筋がある。その中に上から骨盤からきている腱がある。もしここに注射をするならば、すぐ下側にある腱と骨盤からきている腱と二つの、ひざの方からきている、ちょうどここで非常に瘢痕で結びつきやすいような状況になっています。そんなわけでございますから、非常に拘縮症を起こしやすいのではないかと私は思っております。治療法でございますが、治療法は保存療法と手術療法の二つに分かれます。保存療法は、ここが骨盤でここがひざ、ここでひざと骨盤を結びつけている。ここで不幸にして注射をして上から走っている腱と下からいっている腱とが結びついて一つのひもになってしまった。これが拘縮症の本体ではないか。もちろん周りに瘢痕とかそのほかの瘢痕はあると思いますが、主なるものは上からの腱、下からの腱が結びついて起こったものとすると、これを治そうとするにはこれを伸ばさなくちゃいけない。そのために少しでも伸ばそうとする保存療法が機能訓練で伸ばそうとするわけですが、この効果というのは果たして本当にあるのかどうかはまだよくわかっていないのが実情だと思います。また、何にもしないでほっておいてそれがどうなるかということもまだよくわかっていない。しかし、何もしないでほっておいても悪化しないのがある、悪くならないのがあるということはもう文献にも載っております。その上に、拘縮症になればすべてが悪くなるのだというような心配はしないで、経過観察をしてもらって、もし必要があるならば手術をすればよろしいと、私はそう思っております。
 次は手術療法ですが、手術療法はもものつけ根で切って治す方法と、ひざの上で延長術を行う。これが普通行われている方法であります。しかし、上で切り離すとか、あるいはこういうふうに伸ばすというようなのは、手術した後はいいですけれども、その後次第に悪化していくというのが現状であります。昭和三十八年に、神戸市民病院、現在海星病院におられます笠井先生は、ここでの瘢痕を切り離し、ここで腱を切り離して、そうして伸ばす手術をやって非常に成績がよろしいという報告があります。その後かなり症例を積み重ね、ことしの学会で発表されるそうであります。非常に良好な成績を上げている、十分満足できる方法だと言われております。私たちの手術方法は、主として行われている手術法は、この瘢痕部で、たくさん注射をした部位でのこの瘢痕を切除する。そして、周りに癒着しているような、皮膚と癒着する、あるいは筋膜で癒着する、そういう癒着したものをすべて切り離し、そうしてこの拘縮になって短くなっているのを十分伸ばす。少なくとも小学生でありますと五センチから七センチ程度伸ばさないと有効ではないようです。そういう方法を行っております。
 これが私たちの行った手術年度でございますが、四十二年から四十九年まで五十例、六十七肢の手術を行いましたけれども、そのうち、去年の八月に集計した患者全部の追跡調査を行ったその結果は、去年の東北整形災害外科学会で発表しました。そのときの成績でございます。こちらは年度別の症例数で、四十二年から二十例、二十八肢の手術を行いました。手術時年齢は五歳から十二歳まで、平均八歳九ヵ月でございます。これはフォローアップの期間です。一年から七年までの間でございますが、三年十ヵ月のフォローアップの期間になっております。手術しますとどこが悪くなっているかというと、二十六例の瘢痕部の手術をしてみて二十四が直筋の部位が主として侵されたものでございますが、あと外測広筋、中間広筋、内側広筋。二十六例のうち主に直筋がやられているのが、その二十四のほとんどが直筋型と言ってよろしいと思います。あと、やはり中間広筋、そういうものが関与している、癒着、瘢痕をしているという状況です。
 これは私たちの成績でございます。余りスライドはよくないですが、ここの私たちの手術も、もものつけ根とひざの上で手術したのもございます。それは五例ございますが、また、これがしり上がり角度、これは術後の年度になっております。そして、手術前と、手術後と、フォローアップのときの成績と。ですから、手術の前は悪くて、手術後退院するときはよくて、退院後は悪いというようなふうに見ていただければいいと思います。この赤になっているのが、もものつけ根とかひざの上で伸ばしたものはもとに皆返っておりました。それからその茶色の分は、ほかのところで手術をした患者で私のところで瘢痕切除したのですが、一応六十度のこのあたりで、やっぱり一度手術したのは私のところではちょっと成績は落ちておりました。
 それから私のところで初めて手術した患者の例でございます、この青が。これは、一例だけ六十度になりましたが、あと残りは百十度以上でございます。この患者の術前の平均のしり上がりは二十一度、追跡時のしり上がりは百十九度になって、非常に軽快しております。もちろん、このあたりは、しり上がりはほとんど測定するのは不能と言ってよろしいと思います。また、これでは、術後よりも退院時よりもよくなっておるのも見られるわけです。ほかの手術方法では、こういうふうな退院時よりもよくなっているというのは余り見られないはずでございます。初めて手術したのが十七例ありますが、そのうちの十六例は百度以上という成績でございます。
 これは私たちの病院で行った手術の初めて一回目の手術の成績。それからこの赤は、私たちが実際検診をしましたほかの病院で行った手術例でございます。やはり、ほかで行った手術例を見ますと、六十度以下がほとんどになっておりますが、私たちの行ったのはほとんど九十五度以上、百二十度、百三十度、百四十五度、百四十度程度もございますが、かなり成績の差が出ております。
 これは手術時年齢とその後の経過でございます。これは赤が女でございます。赤十一歳の子供、すなわち小学五、六年、それが十七歳になっておりますけれども、全く悪化しておりません。というのは、十一歳、小学五、六年生の子供がもう十七歳になってもまだ悪化していないということは、非常に期待が持てる術式ではないかと思います。五歳でしても経過がよい、これはその年齢別の経過のスライドでございます。
 以上、私がこういう成績を得た理由について考えてみました。第一として、拘縮の原因である瘢痕組織を切除したために正常な筋肉の状態に戻り、大腿骨と筋肉の成長のバランスがとれたということ。第二として、拘縮の原因になっている皮膚、筋膜、筋肉間の癒着を剥離し、あるいは緊張するものは切り離して拘縮を除いたということ。第三に、拘縮した筋の短縮の長さ以上に延長ができた。すなわち、拘縮除去のためには五センチないし七センチ程度の延長が必要であるけれども、腱切り術や延長術などの術式ではこの程度の延長はむずかしかった。
 われわれの行っているような術式は、普通、術後筋力の低下することを恐れて行われないものでありますが、いままでの手術例ではその心配は全くない。たとえ筋肉が直筋が切れてしまっても術後二カ月程度でほとんどもとに回復しております。
 私どもの追跡調査例はまだ少なく、期間も十分とは言えませんが、症例も多く期間も十分な笠井らの最近の成績は四月の学会で発表される予定であります。それによると、手術患者のかなりのパーセントが満足できる成績であるということであります。
 われわれの術式は一カ所の瘢痕切除でも良好な成績でありますけれども、手術術式をいろいろ選び、かつ術後の計画的な後療法を行えば、本症は軽快あるいは治癒させることができるものと考えております。しかし、ひざの屈曲拘縮の高度な中間広筋型の場合は、より慎重に手術を行わなければならないと思います。
 手術時年齢については、症状にもよりますけれども、私たちの行っておる術式は後療法に対する理解あるいは協調の必要があるので、五歳ないし六歳以上が望ましいのであります。したがって、養護学校併設の医療機関で治療するのが適当ではないかと思っております。
 以上でございます。
#14
○委員長(山崎昇君) どうもありがとうございました。
 続いて、今井参考人にお願いいたします。
#15
○参考人(今井重信君) 私は、昨年八月二十五日に全国的に特に整形外科医及び小児科医が中心となって結成されました大腿四頭筋短縮症児の自主検診医師団の一員として全国の自主検診ということを行ってきた立場から発言したいと思います。
 すでに三人の先生方から報告されましたように、この大腿四頭筋短縮症については、すでに昭和二十一年、いまから約三十年前に日本整形外科集談会東京地方会において第一例が報告されていると、そういう意味では非常に古くて新しい問題である。古いという意味は、すでにこの内容が医師の中ないし学会の中においてはすでに周知の事実になっていたという意味において古い。しかし、新しいという意味は、これは受ける側の患者の立場に立ってみれば、この点についではほとんど逆に言えば知らされていなかったという意味において新しい問題であるという点が非常に大きな特徴を持っているというふうに思います。第一例目は先ほども報告されましたように、注射との関連についてはまだコメントはございません、二十一年の場合には。しかし、二十二年、三年と報告が進むにつれて、特に昭和二十七年青木らによって報告された三例においては、そのディスカッションの中で注射説というものがかなり明確に出されておりまして、大腿部の注射には注意を要するというコメントが学会報告の中にすでにあります。それからそれが非常に決定的に出されたのは、先ほどから申されております笠井先生が昭和三十五年に第十七回の中部日本整形外科災害外科学会において、演題の内容においても「注射による大腿直筋短縮の七例」と、その場合はリンゲル注射及びペニシリン等々の内容が出された形で報告があります。そういう意味においては、昭和三十五年の段階においては日本整形外科学会においては注射を有力な原因として見なければならないという点についてはすでに明らかになっていたということであります。教科書的には、昭和三十七年、日本外科全書において、これは大多数は後天性であって注射及び炎症によるということが教科書においてもすでに出されております。それから全国的な意味での集団発生というか、四十八年秋の山梨県鰍沢における集団発生以前にも、昭和三十八年九月、昭和三十八年の学会報告として静岡県伊東市における集団発生の例が報告され、約三年間に伊東市において発生した大腿四頭筋短縮症の三十例ということで報告が行われています。このときには、その段階ではもちろん学会報告の中には書かれておりませんけれども、すでに特定の医師において行われたということが表明されるようなその医師の名前をつけた何々病というふうな形ですでに出されております。それから四十四年の秋には、福井県の今立町においてこれも集団発生があり、そのときの調査団として金沢大学の整形外科の教授である高瀬先生を初め参加なされて、このときには実は不思議なことに原因不明であるという形で結論がなされているという報告があります。それから昭和四十八年、今回の問題が社会問題化するきっかけをなした秋の山梨県鰍沢での集団発生、こういう一応歴史がすでにあるということであります。このように、以前からこの問題についてはすでに明らかであった。私自身が整形外科学会員でありますから、そういう意味では日本の医学界におけるこの点についてのいわゆる社会的な責任が全く果たされていなかったということについては私自身をも含めて自己批判しなければならないというふうに考えますが、その点について単に医学界のみの問題ではなく、一つは今回の大腿四頭筋問題にずっとかかわってきた立場から見ますと、実は、一つは、厚生省においてこういういわゆる薬の副作用ないし医療技術の副作用についてのいわゆる情報収集機構がほとんど欠如している。これは厚生省の医務局長との一つの面談を行った段階においてもこの点については局長みずから認めていたというふうに考えますが、その点がまず一つ大きく指摘されなければならないだろう。それからもう一つは、いわゆる製薬会社等々におけるこのような医療技術及び薬に対する副作用点検の欠如という問題は、この問題を通してやはりはっきりと存在しているということ。それからもう一つ、先ほど申しました医学会が内部においてはその点についてほとんどが常識化した形であったにもかかわらず、これを社会的な形でのアピールないしは他の学会に対する働きかけというような形ではなし得なかった。ないしは、いわば集団発生に対する調査という形でその点について整形外科におけるかなりエキスパートが参加していた今立町等々の段階においてもこれを原因不明という形でしか結論づけられなかった点がやはり一つは指摘されなければならないというふうに思います。それからもう一つは、日本医師会の問題として、この問題の根本的な原因は、私は、さまざまな注射液の問題とかそれからさまざまな監視機構の問題とか等々あるにしても、やはり乱注射――いわゆるみだりに注射するという意味での乱注射に対する規制指導の欠如というものが医師会においてもやはり指摘されなければならないのじゃないかというふうに考えております。そういう意味で、この大腿四頭筋短縮症の親の会を中心とする自主検診がこの非常に古いと言われている問題についていまの段階で結成されて全国的に行われたこと自体がやはり一つの大きな問題の内容を持っているだろうというふうに考えるわけです。
 次に、自主検診を行ってきまして、詳しいことについては一応自主検診医師団の方から三題にわたって四月の日本整形外科学会において演題発表を行いますのでそれに譲りますけれども、障害の実態として特に問題になる点というのを一応簡単に指摘しておきたいと思います。
 まず第一は、この大腿四頭筋短縮症の発生は、細かい率については別といたしまして、私たちが全国のまずほとんどの都道府県をめぐりまして発見した中においては、ほとんど全国的に発生しているという点であります。それからもう一つは、第二点として、最初の発表という形で考えられるものは昭和二十一年にしても、学会発表それから検診の段階において認められた年齢から逆算した形でも、これは昭和三十五年以降に急激にふえてきているという点であります。この原因についてはさまざまあると思いますけれども、その現象だけ一応報告しておきたいというふうに考えます。
 で、これまでの学会の発表が、文献上ですが、五百六十六例ございます。その中で注射が原因であるというふうなことがうかがわれるものが約八〇%、先天性及び外傷、手術、炎症等々と思われるのが二%、その他は記載不明です。この率から見ても、一応注射によるものが圧倒的というか、ほとんどであるということはうかがわれると思いますけれども、その大体の発表の年次もやはり昭和三十五年以降が非常にふえているし、私たちが検診してみた結果としても、やはり年齢的に見ましても十五歳以下がほとんどで、それは逆のカーブをなしている。だから、年齢が小さくなるに従ってだんだんとその人数はふえてきているという逆のカーブをなしております。要するに、三十五年以降徐々にふえてきているということであります。それからもう一つは、検診をいたしまして、いわゆる潜在患者がきわめて多数存在するということであります。私自身も東大病院等々で診療に従事していたときにも、もちろんこの疾患の手術等々に立ち会ったこともございますし、それから現在私の勤めている病院で手術をしたこともございます。しかし、いわゆる大きい医療機関ないしは医療機関そのものにかかってくる段階というのはもうすでにかなり進んだ状態であるということは、やはりはっきりと知っておかなければならないと思います。そういう意味で、自主検診の中で認められたその数というのは、実は私たちが先ほど押さえました、たとえばフォローアップという形で、患者さんに、手術した場合にしろ、前にかかっている患者さんにしろ、こちらが手紙を出して再び調べることができる数というのは非常に限られてくるわけです。そういう意味では、その点で医療機関の側から調査した場合と自主検診的な形で調査した場合とは、かなりその実態というものは異なってきているというのが実情であります。そういう意味で、角度としても九十度以上のいわゆる軽症者と言われている数もかなり多数存在している。それだけではなくて、たとえば大腿部の陥凹――へこみですね、それから硬結――かたくふくれるというようなこと、それから索状物等々が認められるケースにしても、私たちが検診で大腿四頭筋短縮症と診断した数と匹敵するぐらいの数の人がそういう患者さんがすでにいる。たとえば、大阪の自主検診でもって受診者八百九十三名中、大腿四頭筋短縮症と診断されたケースが二百八十五人ですね。ところが、陥凹とかそれから硬結とか索状物等か存在する――これは大腿部のみですけれども、ほかの部位は一応除外したとしても、その数だけでも二百九十五名存在しているわけです。この場合、かなり年長になった段階では、もちろんこの場合にはそれ以上進まないだろうという問題はあるわけですけれども、たとえばそれが二歳、三歳の段階において、こういう陥凹とか索状物がふくれる場合、しかし、しり上がり角度等々はまだ認められないという場合に、この子供さんたちがさらに二年、三年とたった場合にどのように発症してくるかというのは、いまの段階ではまだ予測できないということをまず知っておかなければならないのじゃないかというふうに思います。
 それから検診いたしまして最も問題になったこととして年長児の問題がございます。いままでに把握されている中で、十五歳以上の――まだこれは非常に中間的なまとめでございますけれども、十五歳以上の患者さんの数が検診の中で発見された人として三十三名ございます。これはまだ多分この数は中間のデータですので全体の約三分の一ぐらいというふうに考えておいてほしいのですが、その三十三名の方の症状はかなり強いもので、いわゆるひざにおける問題だけではなくて、股関節、それから腰部、骨盤、それからその他の関連したところの症状がかなり大きく出ている。それからさらに脊椎に全体に対する一つの影響等も出ている。その段階においてどういう形の治療をすればよいかというのは、いまのところかなり困難な状況があるということがございます。そういう意味において、年長児の問題というのは非常に大きな問題としなければならないのじゃないかというふうに考えています。
 それからもう一つ、非常に大きな問題としまして、大腿四頭筋の短縮症という形で大腿部における注射というものが非常に危険視されるということは、これ自体としては非常に結構なわけですけれども、実は日本医師会の調査団等々から発表されました中に、もちろんこれは部位において注射全体を減らさなければならないということの指摘の範囲の中において出されている内容だとは思いますが、いわゆる臀部における注射、臀部の上部における注射ですね、その部位での注射というものが部位的にも逆にクローズアップされてきて、現在のいわゆる注射が無批判に行われてきている状況そのものをそのままにしたままこのことが逆に定着いたしますと、いわゆる臀部における短縮症等々の発症が非常に危惧されるわけです。その点については、一つのデータといたしまして、私たちも大腿四頭筋の検診をやっていく中では、当初においては臀部における障害というのは余り重要視していなかったというよりも、逆に言えば気がつかなかったわけです。ところが、その点について私が、自分の経験なわけですが、青森における検診を行いましたときに、非常に重症の臀部短縮症がこれも一カ所のお医者さんでつくられている。それは、そのお医者さんの立場から見れば、大腿部が非常に危険であるから臀部の方がいいという、ある意味では良心的な形で問題を立てておられたと思うのですが、そういう意味では臀部の障害というものはその検診を機に私たちの自主検診医師団も非常に注目しなければならないということを認識したわけですけれども、その障害の程度というのは大腿四頭筋短縮症の重症児に劣らない、ないしはそれ以上の実はいわゆる機能障害を持つということが明らかになっております。そういう意味で、その後検診において臀部における問題をかなり注意して診るようになったわけですけれども、たとえば昨年の十月に郡山において行った検診においては、大腿四頭筋短縮症が六十九名発見されたときのデータとして八名の臀部短縮症が発見されております。そのときは一二%ぐらいだったわけです。ところが、福島県の検診が行われたときに、このときのパーセントは約一八%ですね、大腿四頭筋短縮症に対する臀筋短縮症の割合をいまパーセントであらわしておりますけれども。「いわき」においてことしの二月に行ったときには、三十六名の大腿四頭筋短縮症が発見された検診において十五名の臀部の障害ないし短縮症が発見されております。この段階で約四二%の率になっておるわけですね。この増加というのは、私たち自身が注意して診るという点もあるかもしれませんが、もう一つは、やはり大腿部から臀部へということが部位だけの問題として取り扱われているきらいがある。その点で、いわゆる注射そのものをその適応を考えないで打つということ自体に対するやはり問題点をはっきりとざせなければならないのではないか。一つのデータとして私たちが千百九名の患者さんのその原疾患を調べましたところ、四四・六%がいわゆるかぜというものによって注射を打たれているわけです。そういう意味において、かぜの場合に注射を打たなければならない場合というのはごく少ないということは一応医家の間においては常識化されているはずなんですけれども、この点についての問題がいまだにこういう形でもってデータが出てくるという問題そこら辺にやはり一つの根本的な問題があるのじゃないかというふうに考えております。
 あと、その他ありますが、時間がございませんので、一つだけ最後にしますが、この大腿四頭筋短縮症の問題について、現在、各界のいわゆる対策というものが出されているわけでありますけれども、私は、その点について自主検診をやってきた立場から見まして、それぞれやはりかなり問題点を持っておるということを一つは指摘しておきたいと思います。
 一つは、厚生省及び各地方自治体が行う形での対策の中で、やはりこの点についてはこの疾患がいわゆる長期に治療ないし予防の面を打ち立てなければならないにもかかわらず、いわば検診において患者の数が発見されるという点にどうも力点が置かれている。その後の長期的な治療及びフォローアップ、それからさらに予防という点についての対策というものがいまだ明確ではないという点であります。
 それからもう一つは、先ほど言いましたように、これは繰り返しますが、日本医師会における調査団の発表がございましたけれども、この点については、一つは注射、私たち一応乱注射というふうに呼んでおりますけれども、乱注射規制の姿勢というものが私はまだ手ぬるいというふうに考えます。その点では、どうしてもいまの場合に大腿部から臀部へという形で注射部位が移行されるだけで、問題が臀筋短縮症に移行するという形で今後逆に問題が発展する可能性があるという点ではやはりこの点について問題ではないかというふうに考えています。
 それから最後に、いわゆる日本整形医科学会、小児科学会、それからことし京都で行われる日本医学会総会等々においてこの問題についての演題発表という形での問題はもちろんございますけれども、それに対して学会として社会的な責任を果たすべき何らかの措置をとるという点についてはいまだ何らかの措置もなされていないという点がございます。その点で、私たちは、今回――私は整形外科医ですので、整形外科学会において、演題が約七題というふうに聞いておりますけれども、その演題発表においてはできればこの発表内容を逆に公開して、いわゆる親の会その他それについて関心を持たれている方が参加する形でもってこの討論というものを逆に進めていくということを要望しようというふうに考えておりますけれども、いわば医師が知っていながら医師の側から逆にこれが問題化されたのではなくて、いわゆる親の会、守る会等々を通じてこれが社会問題化されてくるという経過をとったということ自体の中にやはりこの問題の中にかなり大きい根深い今後の対策として立てなければならない問題があるのではないかというふうに考えております。
 以上です。
#16
○委員長(山崎昇君) ありがとうございました。
 続いて、宮田参考人にお願いいたします。
#17
○参考人(宮田雄祐君) きょうここで発表の機会を与えてくださいました委員長並びに諸先生方に心から感謝いたします。
 昭和四十八年以来われわれが行ってまいりました自主検診、それの内容につきましては今井参考人からもお話がありましたので省略いたしますが、その資料をもとにいたしまして若干の私見を述べさしていただきたいと思います。いろいろ短縮症の実数並びにその症度、形などにつきましては今井参考人から十分な説明がございましたので、私は、この四頭筋短縮症が起こってまいりました意義を若干述べさしていただきまして、今後この問題の解決にいろいろと具体策が講ぜられることと存じますが、それの参考にしていただきたいものと存じます。
 大腿四頭筋短縮症の文献的な報告は、先ほども説明がございましたが、諸外国におきましてはせいぜい数百名にとどまっておると専門家が申しております。わが国ではこの資料No.1をごらんいただきますとよくわかりますが、先人の集計によりますと五百四十四名の文献的な考察がありまして、はるかに外国の報告を凌駕いたしております。さらに本邦で昭和二十一年以来報告がなされてまいりまして患者数がどんどんと増加してきたということがございますが、外国に比べまして全く例を見ないのは、これらの報告の中に集団発生があるということでございます。すなわち、湯河原の某医院、大阪岸和田のM医院、福井県今立町のH医院、山梨県鰍沢のY医院等々でありまして、特定医院より数十名から場合によりますと数百名の大集団発生を見ておるということは、海外にその例を見ない重要な事実でございます。しかも、それぞれ十数年前、十年前、数年前にこういった集団発生がございまして、整形外科学会でも報告され、また文献の論文の中にも某医院で多発しておるということが明確に記載されております文献も出ております。
 注射との関連につきましては、もはや十分に論ぜられましたので、本症の大部分が筋肉注射であるということは疑う余地もございません。ただ、残念なことは、福井県の今立の場合には、医師会もその実情調査に参与いたしましてかなりのデータを持ちながら、これの公表を差し控え、国民の健康保持というそういう立場での資料に供し得なかったということは、まことに残念であると言わざるを得ない問題でございます。
 私どもが自主検診団を結成いたしまして全国的な実態調査を開始いたしましたのは、資料No.2に示しますごとく、昨年六月、大阪で検診の受診者を見ますと、近畿の地元はもとより、はるか九州、四国、関東、中部、中国、北陸といった、きわめて広範囲からの受診がございました。で、本症と診断されましてこういった広範な地域にわたる発生がよくわかりまして、特定医療機関でのミス的なものではないという結論を得まして、全国各地での実態の調査をするということにいたしました。この自主検診で二千数百名の患児が発見され、県並びに厚生省の調査で当時患児がゼロと言われておりました幾つかの県で、わずか一日の検診で十数名から数十名の患児を診断いたしました。私どもの当初の予想どおり、日本各地での検診で常に患児を診断し、やれば必ずいるという恐るべき事実を認識せざるを得なくなったのであります。さらに、こういった地方でも、どの地方でも、要観察者――先ほど今井参考人からも申されましたが、そのほかの注射による障害、たとえば皮膚のきわめて大きなくぼみ、あるいは運動時の痛みなどといった、そういった四頭筋以外の障害も、非常に大きな数に上っておるということがわかりまして、この疾患が制度のつくり出した疾患という印象を深めたのでございます。現在、要観察を加んますというと、七千名から八千名の間になるものと思われております。
 制度のつくり出しました疾患であるということでありますと、一般のポピュレーションの中にどれくらいのこういった注射による洗礼を受けているのかということを調査する目的で、私どもは、大阪で、学童並びに幼稚園、保育所の検診を初めは予備調査的に行いました。受診者は資料No.3に書いてございますが、約二千八百三十五名。当初はまだ二千名そこそこでございましたが、この調査の集計に当たりまして、私ども、当初は、一施設に一人でもおれば大変だと思っておったのでございますが、重症者を含む二千八百三十五名の一三%に本症の患児を診断するに至りまして、その事の重大さに驚きまして、急拠この事実を発表して今後の予防の資料にするという方法をとりました。これはかねがね新聞、ラジオ、テレビなどで御承知のことだろうと存じます。もちろん、これも予備調査でございますので、人数も限られております。これが全国の数字であろうとは私どもは思いません。しかしながら、重要なことは、症状が定かでなくても、日常健康であると思われておる児童あるいは幼児の中にかなりの数のこういった被害が出ておるということは、今後わが国のこういった子供たちの健康を考える上におきましてもきわめて重要な事実でございます。この中の重症の二名は、一名は親自身もこの症状のあることに気がつかないといったありさまでございました。この点につきましては、先ほど津山参考人からもございました、本症は比較的症状が軽いということでございますが、私どもは、これは症状が軽いから他の身障者とは全然別個に軽く扱うというような考えに対しては反対いたしております。私どものこの調査の後、兵庫県でも学校の調査が行われました。資料No.4になりますが、ここにおきましてもやはり一〇%から約三、四%までの数字が出ております。このように、わが国には四頭筋短縮症はきわめて広範に分布いたしておりまして、この多発しておる事実を私どもが真摯に受けとめて今後の対策を十分に考えませんと、単にいま治療を急ぐ余りとにかく切って治してしまえばそれで問題が片づくかのごとく解釈をすることは、きわめて危険を含んでおります。私どもはこの事実をきわめて重要視いたしておりまして、集団発生が持っております根本の原因を究明するということに現在まだ努力をいたしておりますが、私どもは第三、第四の四頭筋短縮症的医療被害――四頭筋短縮症的医療被害という言葉を使いますが、このようなものを未然に防ぐ必要があるのではないかと考えております。
 今回の短縮症のいろいろな注射が打たれました疾患名でございますが、それは資料No.5にいろいろな地方でのデータを並べてございます。やはり、注射が打たれましたのは、かぜ、下痢、それから発熱といったごく軽いものばかりでございます。こういう値を私ども見るときに、次の資料No.6を見ていただきますとわかりますが、これは日本できわめて一般に使われております小児科のネルソン先生の書かれた教科書でございますが、ここにコモン・コールド――かぜのことについて記載がございます。八百八十八ページをごらんいただきまして、その黒い枠の中をごらんいただきますとわかりますように、この疾患には何ら特別な治療はない。抗生物質は、効果がないどころか、急性期にこれを使うとかえって悪くなる場合があるので十分注意をするようにということがここに明記されてございます、こういうように、かぜに対する治療、あるいは、小児はかぜを引きますとすぐ下痢を起こします。こういったいわゆるかぜ症候群というものの治療には普通は抗生物質を使わないのが原則になっております。こういうような点に思いをはせますというと、単に注射どころか、不必要な投薬がやはり行われておる、そういうことが重要な原因になっておったものではないかと思います。中には注射を必要とする疾患もございます。結核におけるストレプトマイシンの注射といったものはございますが、今回の私どもの調査では、こういった筋注しかなかった薬物による四頭筋短縮症、あるいは三角筋短縮症、臀筋短縮症のケースはきわめて少なく、七千名のこういう患児のうちのわずかに十数名でございます。こういう事実は、よほどわれわれが基本的な治療ということについての考えを持ち合わしませんと大変な結果になるという一つの実例でございます。
 では、一体このような解熱剤あるいは抗生剤が最も繁用されておりますのは一体どうしてであろうかということについて若干述べてみたいと思います。
 現在の医療におきまして、先ほど私が申しましたような、あなたはかぜ引きである、お家へ帰って休みなさいというような、これが本当の診断と治療でございますが、このようにいたしますというと、それは収入にならない。やはり何らかの形で薬物を飲む、あるいは注射するといった形でないと、現在の医療にとりましてはこれは収益にならないというところに非常に大きな問題があろうかと思うのです。注射というものを日常診療に小児科医が繁用せねばならないのは、やはり人件費の削減に注射、さらには、いろいろ即効性と申しますか、来た患者がすぐに解熱効果でその先生の人気が出るといった、企業としての医療という点が重要視されてきておるからにほかならないと思います。たとえば薬物を与えるにつきまして包装あるいはびんにいろいろ盛り分けるというような労働も、薬剤師を雇ってこれをやらなければならない。しかしながら、これを注射で済ませれば看護婦さんだけで済む、あるいは散薬――粉薬、水薬でございますが、これを使用いたしましても、それの処方料はわずか四十円、抗生剤と解熱剤、同じような組み合わせで注射いたしますと、たとえばかつて繁用されましたクロマイでございますと、当時でございますと四百何がしの開きが出てまいります。さらに、いろいろと注射では、特に解熱剤では、打って帰ればすぐに熱が下がる、そういったことでの問題、あるいは短時間で注射をしてしまうことができるという、そういったたぐいの事柄などもやはり一般の医家が注射というものに主として頼ろうとする一つの傾向をつくってきたものではないかと思います。先ほど今井参考人からも出てまいりましたが、こういった医師の経営を中心にいたしました診療の形態にさらに拍車をかけてくるのがやはり製薬関係でございます。いろいろな薬物の能書きを見ましても、筋注、皮下注ということを効能書きに書いてございます。この薬は筋注、皮下注ができる。安全である静脈注射などにいたしますというと、小児にはなかなか使えない。注射をするにしましても、場合によりますと一時間ぐらいかかる、小手術ぐらいの手間がかかる。そういった手間は現在の医療の体制ではなかなか出ないというような制約もございまして、どうしてもやはり簡単に投薬を済ますことのできる筋注、皮下注というようなかっこうになってしまう。これは、製薬にとりましては大量の薬物を販売することができる一つの利点でもございまして、私ども大学あるいはそのほかの一般の医院につきましても、この新しい注射の薬、この新しい注射の薬という形で大量にそれを売るようにいままで仕向けられてきたきらいがございます。こういうことはやはり製薬業界のいろいろな販売競争、そういった形での業界の利益追求のかっこうが現在の医療の中に浸透しておる一つの形として、こういう皮下注、筋注というものを広範に普及させる結果になったものと考えます。利潤の追求しやすいこういう皮下注、筋注に対しては多大の労を使ったこういう業界が、より安全な投与方法についての研究を怠ったということは、やはりこれも利益追求の姿以外の何物でもないと私どもは思います。さらに、こういった薬物の安全の確認、さらには、長年月にわたりまして四頭筋短縮症の報告がなされておったにもかかわらず、厚生省がこういったことに対する取り組みがきわめて手ぬるかった。先日ワクチンの事故がございました。直ちに対応をされました。これは予防注射が厚生省の管轄に入っておったからであろうと思いますが、一般の医療技術はこれは医師の自由裁量に任されておる。直接その責任に関係がなければあえてそれに対する対策を積極的にやらなかったのではないだろうかというような気がいたします。先年もアメリカでスプレーの発がん効果がございました。二人の肝がんの従業員を剖検し、直ちにアメリカの政府はこれの製造を中止いたしました。このような人間を中心にした即応性というものも日本のこういった行政の基本として存在すべきものであろうと私どもは思います。
 最後に、資料のNo.7でございますが、これは坂上参考人並びに津山参考人の関係しておられます日本医師会長武見太郎殿の答申書の一部でございますが、先ほど私申しましたように、医師が治療に当たりまして本当の医療、適正な医療をしておった場合にはこのページの右半分の(3)と書いてございますが、その上二行「医療をうける側の強い希望から、止むを得ず注射が多用される傾向もあるという実地医家の声もあった。」という一行がございますが、私に言わせますと、こんなばかな話はない。正しい医療をし、そして受診する人にそれを説得するのが医師でございます。患者が注射を望んでも、また投薬を望んでも、不必要であれば持たずに帰ればそれでよろしい。その正しい医療を普及するのが医師の務めでございますが、あたかも患者に迎合し、そういう治療が横行しておるがごとく答申に書いてございますが、これは全く是正されねばならない、私が先ほどから指摘しておる一つの重要なことでございます。なるほど一般の国民も薬物に対するきわめて高い信仰のようなものがございます。こういうものをやはり一刻も早くぬぐい去って正しい医療というものを皆さんの国民の手の中に戻すためにも、一人一人の国民が健康に対する責任を持つ必要がございます。
 一番最後に、資料No.8というのがございますが、これは大阪と沖繩の短縮症患者の年齢分布を表にしたものでございます。大阪は八百九十三、沖繩が千五十八名でほぼ似たような受診者でございますが、四頭筋短縮症の数はこのように大きな差がございます。大阪では約十四、五、ちょうど国民皆保険になったころを契機にいたしまして急激な増加の立ち上がりが出てまいっております。沖繩は、本土復帰ごろから国民皆保険になりまして、その前後からやや保険が普及し、現在増加しつつあります。それが四歳ぐらいのピークになって出ておるものと私どもは解釈いたしておりますが、現在の健康保険が確かに助け合いの一つの方法として重要なものでもございますが、一方におきますと、これを持つ国民の側からは安易に医療を求め、また、物質に対する、つまり薬物あるいは注射というものを要求する一つの手だてにもなり、医師の迎合するこの姿と相まってこの多発を起こしてきたものと考えます。
 このような四点を考慮いたしますと、医師におきましても利潤追求の姿、薬剤関係におきましてもこれまた利益追求の姿、厚生省にありましても責任に直接関係なければというやはりこれも役人の利益追求の姿ではないかと私は思うのですが、その姿、あるいは一般国民におきましてもまたそういう物質に対する追求の姿、この欲のかたまりが、子供の足を、全く無欲のこの子供の足を針穴にしてしまったのではないかと私は思うのです。いまこの事実をよく反省して、そうして、打ち方を変えればいい、あるいは本数が少なかったらいい、あるいは飲む薬にすればいい、そういったものではございません。それが本当に必要な医療なのかどうかということで医療が支えられますように、今後諸先生方の御賢察をいただきまして、その具体策が出てまいることを私は心から願う次第です。
 私も幼子を持っております。そういう点では、親の立場と全く同じでございます。私が先立ちますと、後は子供が残ります。こういった子供が本当に安心をしてどこでも医療を受けられるような形にするということが私どもの務めではないかと思うのです。憲法には、われわれが健康で文化的な生活をということが書いてございます。きょう、この由緒ある委員会におきましてこの基本的な問題が討議されるということは、私にとってはきわめて重大なことであると思います。はなはだ僭越で、かつ用語の使用方法もなかなか知らない私でございますけれども、きわめて重要な今後にわたる問題がございますので、お聞き苦しい点を覚悟の上でこのようなことを申しました。
 終わりに、ぜひこういったことを考えて、医師の適正な医療の労働に対する適正な報酬、さらには国民がガラス張りで常に医師から情報が提供できるようなそういう施策、そして不必要な薬物が非常にはんらんし、国民にとってはこういう薬物を消費する対象になってしまっておる現在の医療の姿を、ぜひ是正していただきたいものと思います。
 終わります。
#18
○委員長(山崎昇君) どうもありがとうございました。
 それでは、最後になりましたが、西中山参考人にお願いいたします。
#19
○参考人(西中山秀雄君) 私は西中山でございます。私は、子供を持つ親として、一言述べさせていただきます。
  〔委員長退席、片山甚市君着席〕
 一昨年十月、山梨県の峡南地方において、注射の後遺症である大腿四頭筋短縮症についての問題が提起されてから、一年と数カ月がたちました。それ以前は、先天性であるとか、あるいはくせであるとか、風土病であるとか、いろいろと言われてきたわけでございます。ところが、調査の結果、何年も前に福井県の今立町、あるいは名古屋市、伊東市、福島県の須賀川市等の子供たちが同じような症状にかかっていたのです。そして、ここでは全国に知れ渡らないように秘密のうちに処理されてしまったのです。この段階でそれなりの対策を立てていたなら、今日このような大きな社会問題にはならなかったと思います。この間、親の会と協力してくださる医師団とによって全国各地の自主検診を行って潜在患者の実態が明らかになり、いまや七千人にも及ぼうとしています。まだまだ発見できない人はたくさんおると思います。先ほど宮田先生より発表がありましたように、ある地方では子供の一〇%ないし一三%の幼児がこの種の被害にかかっております。これらの子供たちは、乳・幼児期に、常識を逸するほどの注射を大腿部ないしは腕臀部に打たれていました。しかも、その原因は、かぜあるいは単なる下痢などがほとんどでした。外国ではかぜなどは注射の対象とはならないと聞いております。四頭筋のことに対しましては、先生方よりお話がありましたので差しおきますが、なお、最近では、腕の三角筋に注射をしたために障害を起こした三角筋短縮症と、啓部に障害を起こした臀筋短縮症と、また神経麻痺などが出てきております。
  〔委員長代理片山甚市君退席、委員長着席〕
たとえば、先日秋田のデータを見ますと、九日にこれを検診いたしました.自主検診で行った受診者総数は八十一名です。四頭筋、三角筋、臀筋短縮症になっている者が三十一名です、そのほか、ほとんどが注射による皮膚障害を持っていました。その他、座骨神経麻痺の人が何人かいました。注射をされた病院あるいは医師は、ほぼ全県的にわたっております。いまや原因は注射であることは明白であります。しかしながら、国、厚生省、医師会は、治療方法の確立を急ぐわけでもなく、原因も責任も公表しようとはしません。私たち親は、何とかもとの体にならないものかと、ありとあらゆる方法で治療しながら、その成果の実らないわが子に毎日毎日悩み抜いてきました。手術だけは避けようといろいろ治療してきた最後に、胸を裂かれるような思いで子供を手術台に送りました。にもかかわらず、その方法がまちまちで、しかもそのほとんどが再発しているというわけです。手術前より悪くなっている子供もあります。この病気といいますか、つくられた患者といいますか、原因は大腿部に行われた注射であることは、昭和二十年代にわが国の整形外科医によって確かめられていたにもかかわらず、このことが小児科医の医療の場において取り組みがなされていなかったため、子供たちの輝かしかるべき将来に重い傷を与えてしまいました、実に残念でならないと思うのです。患者の多くは、ゼロ歳から一、二歳の幼児期に太ももに注射を受けており、患者の年齢は四歳から十二歳前後に集中しています。中には二十代、三十代という方もおられます、万を超すスモン病その他の医原病の多発は、わが国の医師たちが自分たちの医療技術の妥当性を激しく点検する姿勢並びにそのための点検機構を持たないためのものと言われておりますが、本症もまたその例外ではあり得ないものと思われます。外国では一般的に注射の対象とならない軽い病気に対して常識を逸する注射が行われていることは、わが国の医療が過剰診療を促進する営利医療体制のもとに営まれていることの反映だとも考えます。正しい医療制度のあり方についても根本的な対策を講じなければならないと思います。本症が多発して十数年を経過し、すでに多くの報告例があるにもかかわらず、その経過の追跡調査が十分に行われておらず、その診療指針も確立されていないということは、きわめて遺憾なことであります。私たちは、昨年、二回にわたって厚生大臣、衆参両院議長、その他に要望書を提出したところ、善処の約束がなされたにもかかわらず、今日まで診断基準が発表されたのみにとどまっています。その診断基準も患者切り捨てに通ずるおそれさえ持っているものだと断言せざるを得ません。現に多くの自治体診療においてランク下げを行い、認定患者を少なくしようとする動きがあります。したがって、私たちは、国民の医師に対する信頼感を回復するために医療関係者の激しい自戒と早急な対策、また、国やこの方面の関係者は大腿四頭筋短縮症問題に対し今日改めて幾つかの点にわたって直ちに措置をされるよう、重ねて要望いたします。
 一、全国の自治体に呼びかけ、公費による診断を実施するとともに、幼児期、入学時等の検診を位置づけ、患者を早期に発見、これを認定すること。
 一、完全なる治療方法を近代医学のすべてと国の名誉をかけて開発すること。
 一、治療費の全額公費負担の制度を早急に確立すること。
 一、原因の究明と責任の所在を明らかにすることを強く要求する。
 一、予防対策を国の責任において直ちに講ずること。
 一、子供たちの教育の場における差別をなくし、平等の教育が受けられるよう対策を講ずること。
 一、子供たちの生涯にわたる保障制度を確立すること。
 一、スモン、サリドマイド、未熟児網膜症等を生み出してきた日本の医療制度の抜本的な改革を直ちに実行すること。
 なお、原因を究明し再び被害者をつくらないために必要であるカルテを要請があったら進んで公開するよう、国として各県の医師会に対し何らかの通達を出すようお願いいたします。
 最後に、もう一つ、この春、山梨の患者の一部が小学校に入学します。全員で五十四人です。この子たちを一般の子と区別することなく勉強できるように、国として早急に対策を立てるようお願いいたします。
 また、静岡の伊東市においては、もう高校生でございます。この高校生は学校に通学するのに坂道が多いため多くの時間を費やして通学しております。また、それができない方は、学校の近くに下宿をし、あるいはよその市へ転出して進学をしております。こういったような例もたくさんあります。このように被害児に対する教育問題、また就職、結婚など、今後の問題も山積されております。国としてもこのような事の重大性を正しくくみ取っていただきまして、真剣に取り組んでほしいと思います。
 以上でございます。
#20
○委員長(山崎昇君) どうもありがとうございました。
 ちょっと速記をとめてください。
  〔速記中止〕
#21
○委員長(山崎昇君) 速記を起こして。
 それでは、これより質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#22
○目黒今朝次郎君 一つだけ聞きたいと思うのですけれども、先ほど、今井先生が、古くて新しい問題だと、こういう言葉を使われたのですが、昭和二十一年に学会に発表されて、昭和二十七年には横浜市大の水町先生ですか、その報告書の中でこの大腿部の問題については克明にされている。こういう実態が学会でわかっていながら、これが全体のものにならなかったと、悪い言葉で言えば葬り去られた、その背景とか原因は何かという点を、考えがあったら聞かしてもらいたいというのが第一点です。
#23
○委員長(山崎昇君) 続いてそれじゃ、案納委員。
#24
○案納勝君 津山先生があと二十分ばかりしかないということですが、一つは、津山先生の見解をお聞きしたいのですが、先天性あるいは後天性、こういうことで先ほど言われました、津山先生としては、わが国の二十一年以来の四頭筋短縮症の患者をどのように両者の関係を判断をされますか。要するに、先天性という部分があるというふうに判断をされるのか。いや、そうでなくて、わが国の場合は、要するに注射による医原的な医原病だというように判断をされるのか、いままであなたの報告の中で。はっきりそこらあたりをおっしゃっていただきたい。
 それからもう一つは、先ほど津山先生が報告をされた中で、治療の方法として、起こる可能性があると判断した場合には三歳まで検査を行うべきだと、こう言われておる。チェックをする必要があると。起こる可能性があると最初に判断をする、そのことなんですが、医者が起こる可能性があると判断をした場合でもなお注射をやれということなんですか。これは、医者の良心といいますか、医者として起こる可能性があると判断をした場合は当然その注射をやらないでやるべきじゃないでしょうか。この辺について、いま津山さんが言われたようなことが現実的に予防対策としてあり得るのかと、この辺について。
#25
○参考人(津山直一君) まず第一番の御質問からお答えいたします。
 わかっていながらなぜ広がらなかったのかと、目黒さんの、啓蒙が行き届かなかったのかという点は、これは確かにわれわれの反省すべき点でありまして、新しい病気が発生――独立疾患と認められれば、一般の人にそれを啓蒙する努力を払うべきでありましょうが、昭和二十一年のあの段階では、初めて見つかって、私もあの患者は実は医者になりたてのときに外来で診察したことがある患者さんでありまして、森崎教授が後で報告されたのでありますけれども、結局はあのときは大学じゅうの医者がわからなかったのであります。大腿直筋は短縮しているけれどもなぜであろうかということはわからずじまいでああいう結論になっているのでありまして、実際には多発するような集団発生の傾向が認められてから、ああ、これは注射と関係があるのじゃないかということで、それがだんだんとそちらの方に焦点をしぼっていったのが昭和二十七年、青木君の報告あたりからであります。そうして、三十六年でございますか、根岸君の報告あたりが一番クローズアップさしていったあれだろうと思います。でありますから、実際に二十一年ぐらいでわかっていたにかかわらず三十五、六年まで啓蒙しなかったのはなぜかというのは、われわれが実態をつかんでおらなかったという無知もあります、確かに。それは、実際にデータがない以上、憶測だけで物を言うわけにはいきませんから。それと、確かに学会で認められたことはどの程度啓蒙しなきゃいかぬかということは、これはやはり学者としては慎重に、世の中にセンセーションだけを巻き起こすことがある意味ではマイナスになる場合もある。しかし、知らせるべきものは当然知らせなくてはいけない。そのときには、やはり、マスコミュニケーションというようなものを使い、あるいは講習会だとか、そういう医師に対する啓蒙の機会を使って努力しなくてはいけないわけでありますが、その短縮症につきましては、私も、昭和三十六年でありますか、「小児外科」という本に書いておきました。それが、私としては、三十三年でございますか、一番最初の執筆であると思いますが、最近は「ベビーエイジ」というふうな本を通じても多少はマスコミに呼びかけておりますけれども、その態度が非常に足りなかったということは反省しております。また、日本の学会の通弊として閉鎖的な性格を持っておりまして、自分たちだけで学問的興味のあるものだけを論じ、それを他の関連学会――当然これは小児科学会などにもつと早く啓蒙すべき問題でありますけれども、それを怠ったということは、学会の閉鎖性ということを反省する次第であります。
 第二番目の御質問に対しては、先天性か後天性かという問題でありますけれども、先天性のものも確かにあります。注射のあれがないにかかわらず同じ現象が起こっている、あるいは生まれてもう乳児期にすでにそういう筋の拘縮症があるという症例はございますので、先天性のものは確かにありますけれども、そのパーセンテージはきわめて少ない、注射に比べれば。で、大部分はこれは注射であろうと思いますが、しかし、医原性という言葉は少し使い方を明確にしなくてはいけないと思います。起こる可能性があるにかかわらずなぜやるのかというのはどういうことかと申しますと、注射をすればしこりができるということは、これはもう古くから注射というものができたころからの常識でありまして、注射をたびたび打ったような人はしこりがその後できていないかどうかときどき調べてみるというのは、それはチェックを当然すべきであって、そういう意味であります。この疾患が発生する可能性があるにかかわらずなぜ注射をするのかと言われますと、それでは今日筋肉注射というものを全面的に否定し得るのかどうか、これはまだ私はその段階ではないだろろう、必要悪と言ってはちょっと言葉のニュアンスが違うかもしれませんけれども。ですから、必要な場合にのみ注射をする、数をできるだけ減らす、必要最小限度にとどめ、そうして同一の筋に注射を反復させない、そして注射をした場合でもその予後を慎重に見届けて、できるだけ早期にこの機能障害の進行しないうちにチェックしろというのが私の申し上げた真意でございます。
#26
○案納勝君 ちょっと関連して。先天性か後天性かの問題ですが、いま説明を聞きましたが、それじゃあなたの――あなたは大腿四頭筋問題検討委員会の委員をやっておられますね。この中で検討をされた中で、今日まで直接患者を臨床されアンケートをとってこういう結論を出される過程で、何%が実際に先天性と判断をされましたか、どのくらいの臨床例を引いた上でそういう結論が出されているのか。現実に注射がないにかかわらず起こっているというのは、追跡調査が十分行われないままにその原因がわからないままにそういう判断をされたのではないか。そういう点はないのか、その点。
#27
○参考人(津山直一君) 私個人の経験では、明らかに先天性と、つまり生まれつき大腿四頭筋が突っ張っていたという患者でございますね。これは放置してもそのままになる、そういうタイプは二例ぐらいしか経験がございません。文献的には、一卵性双生児で注射の既往が全くなくて、その一卵性双生児のきょうだいにも発生したという例の報告もありますし、先天性のものも確かにあると、学問的に。しかし、私のこれはまあ推定でございますけれども、おそらく注射の対先天性の比は九九・九%よりも注射の方が多いだろうと考えております。
#28
○沓脱タケ子君 それじゃ、ちょっと関連して津山参考人と坂上参考人と両方からお伺いいたしたいのですけれども、特に整形を御専門になっておられる参考人の皆さんからは、昭和二十一年に初めて症例が報告をされたと、二十七年のあたりでは注射が原因であろうということが明らかにされており、昭和三十七年からは集団発生が起こってきているというふうな経過から見まして、整形外科学会では非常に長い間ずいぶん以前から明らかになっていたと。ところが、それがたとえば小児科学会との関係ではどうだったんだろうかという点でこれは社会的責任という点の反省も含めての御発言がうかがえるわけですけれども、いまの日本の医学界のそれぞれの専門分野でのまあ若干閉鎖的とも言えるような状況をこれは克服しなければならない一つの重大な課題ではないかと思うのですけれども、整形外科学会に所属をしておられる津山先生のお立場で今後の課題としてそういった点をどうすれば改善ができるんだろうかという点の御見解をお伺いを申し上げたい。
 それから坂上参考人にもお伺いをあわせてしたいと思っておりますのは、小児科のお立場でそういった点は小児科学会ではいつごろから問題になったんだろうか。で、そういった問題点を今後医学界として克服をしていく上では、どういうふうな点に問題があって、解決のめどはどうしたらいいだろうかと、そういった点について御両名から伺いたいと思います。
#29
○参考人(津山直一君) 確かに、整形外科の内部だけでの認識であって、外に啓蒙しなかったということは非常に悪かったということを反省しておりますし、また、私自身、これは整形外科の内部に向ってこういうことが二度と起こらないように、学会員としまして評議員にも連なっておりますから、内部に向かってそう叫びたいと考えておりますが、外部に向かっても、医学会総会のようなすべての科の先生が集まってくるようなチャンスを利用し、具体的にはまたことしの小児科学会の総会に私は参りましてこの点について整形外科的な発言をさしていただくことになっております。また、やはりこういうことはマスコミを通じて一般の国民の方々に十分知っていただかなくてはならないと考えております。
#30
○参考人(坂上正道君) 小児科の分野にいまのテーマが実際文献上入ってまいりましたのは昭和四十七年の四月、あるいはこれは時期が間違っておりましたら後で速記録を訂正するように申し込みますけれども、「小児科臨床」で特集が組まれまして、小児科以外の科からのお知恵を小児科医に教えてくれないかという特集がございました。そこにいまの慶応大整形外科の泉田教授が本症について書かれたのが最初の文献的な交流なんでございます。これでお察しいただけますように、実は学会同士のコミュニケーションというのは、何も卑下して言うわけじゃありませんけれども、非常に悪いのでございます。御想像いただけますように、学会がまあ近代化したといいますか、大学そのものが近代化したような動きになりましたのは、そもそも昭和四十三年から昭和四十四年ごろでございまして、あえて近代化という言葉を使うならばここ四、五年がそういう歴史的な流れであったということでございまして、今後はこういうことのないような動きに多分なっていくと思いますが、かつてはそういうことでございました。
 それからメディカルインフォメーションということにつきましては量と質が大変多うございまして、私どもも図書館でもしつぶさに本を全部見ろと、雑誌を見ろと言われますと、毎月千二百の雑誌が図書館に参るわけでございます。したがって、関連領域の知識をそこから引き出すということは、人間の力をもてしてはもう不可能なぐらいの情報の質と量になってまいりました。したがって、メディカルインフォメーションというものをどうやって交流させるか、あるいは実地医家の立場までフィルターをかけて有効なインフォメーションが入ってくるようにするかということにつきましては、もうメディカルインフォメーションそのもののシステムの重大な問題であろうというふうに存じております。
 それから小児科学会といたしましては、いま津山教授もおっしゃいましたように、実は私は小児科学会の会長としての責任を持っておるわけですが、学術集会につきましては会頭という立場で毎年毎年決められまして、今回は千葉大の小児科久保教授が会頭になられまして千葉で学術集会を行いますが、そこに筋注のテーマでシンポジウムが組まれまして、薬剤の面、それから注射の問題、それから小児科医としての筋注の問題というようなことをかみ合わせたシンポジウムを組むようにいたしてございます。
#31
○委員長(山崎昇君) どうも津山参考人にはありがとうございました。御苦労さまでした。
#32
○石本茂君 ただいま各参考人の専門の先生方から、今日までの経過でございますとか現実について、よくわかるようにお話をちょうだいいたしました。私は聞いておりまして、これは聞くまでもないことかもわかりませんが、いまわれわれが立ち至っておりますことは、まずどうしたら予防できるか。あわせまして、もうそういう症状になってしまった人々あるいは子供の治療をどうしていくのか。あわせまして、西中山さんが申しておられますように、この障害補償をどうしていくのだろうかというこの三本が非常に大きな柱になっていると思うのです。でございますから、余りその過去のことは私は専門でもございませんのでここでお伺いしようとは思いません。ただ、まず初めに坂上参考人にお尋ねしたいのですが、昨年の九月三日に武見医師会長あてに答申されましたこの中の五項目のところでございますが、「本症の発生防止に必要な留意事項」ということが示されております。その中で、先ほどお伺いいたしました今井参考人のおっしゃった、臀部といえどもこれを頻繁に繰り返すことによって症状が起こってくるのだという御意見がございました。そういうことになりますと、安全部位ですよとこれはお示しをいただきましても、私ども素人の立場、特に私は看護婦でございますが、大変やはり不安感といいますか、不信感といいますか、残るわけでございますが、その辺についてもう一度御見解を承っておきたいと思います。
#33
○参考人(坂上正道君) これは大変重大な問題だと思います。特に注射部位がどこがいいかということにつきましては、実は、拘縮症の問題よりも、神経麻痺ということを中心にずっと業績が積み重ねられてまいりましたし、この委員会でもそういうことに対する予防というセンスも当然働いたわけでございます。したがって、上臀部月部というのは神経麻痺の面から見ても安全だという二つの要素が加味されたというふうにお考えいただきたいと思います。
 それから筋注につきましては、いま津山教授は必要悪というふうな意味でしたでしょうか、そういうふうなお言葉がありましたように、やはり筋肉注射を打つということはもう何らかの副作用が後にはあるものだという前提に立たなければいけないわけでございまして、特に小児及び未熟児の場合にはもしも抗生物質を投与する場合と申しますのは本当に医学的に緊急の場合が多いわけでございまして、そういう場合には投与する場所も静脈から入れなければ実際上は意味がないのでございますね。したがって、小児科医の立場ではもう筋肉注射というものをされることはほとんどないというような治療体系であることが望ましいというふうに存じております。
#34
○石本茂君 続きまして、やはりこれは坂上参考人にお尋ねしたいのでございますが、この答申の七項目のところにまいりますと、「本症に関する知識の普及」という項目がございます。これは一々ごもっともだと私もうなずきながら拝見したわけでございますが、この中の2の項目に挙げてございます、先ほどまた御意見の中にもございましたように、看護婦の教育に際しまして、しかもその使われております教科書等の中に、その部位等が明示してございます。こういうことを考えましてここで取り上げられたのだと思うのですが、私は、今日、さっき宮田参考人が申されましたように、四千例か七千例か八千例かわかりませんが、この多くの症状を起こしましたものだけじゃなく、多くの注射がお医者さまの指示によって看護婦等が行っていると思うのです。これはその教育の段階で十分な生理とか解剖というものを学び得ないままにこういう部位だけが示されますと、それでよいものなんだと、まあこれはものの言い方が悪いかしれませんが、単純に解釈してしまう。そうしますと、指示されたのは医師であった、注射をした者は看護職であったというようなことで、お医者様のお立場で当然高度な教育をお受けになっていらっして、人間をしっかり人体的に理解していらっしゃるわけですから、御自分がもしなさればあるいは部位の選別等ももっと上手にこういう大きな後遺症が残ることなくできたかもしれないということを私は非常に考えるわけでございます。いまこんなことを言っても無理でございますが、一体そういう子供の筋肉内注射の何%ぐらいが医師が行っていて、どれくらいが一体診療補助者であります看護職がしているのかということをむしろいま知りたい気持ちでいっぱいでございます。しかし、これはきょうここへお出ましになりました参考人の先生方にお聞きするのじゃなくて、これは厚生行政当局がそうしたところまで立ち至っていただいてやっぱり調査をしてほしいという希望を一つ持つわけでございます。この教育の教科書の問題をここであれこれ論議しようと思いませんが、どんなに上手にそのことをお示しいただいてお導きをいただきましても、大昔の教育を受けた私は看護婦でございますが、皮下注射は私どもしてもよいということでしたこともございます。戦後ものすごく注射がふえました段階で知識のない看護婦などには静脈注射をさせることは好ましくないということを行政当局が指示したこともございます。私はこれは非常に残念なんです。静脈に薬液を入れるということは、これは非常に単純なことなんです。入れる薬液について知識がないと大変なことになりますが、御指示をいただいて静脈に注射するということの方が、技術的にも、あるいはまた後に残るいろいろな諸問題を考えましても、薬液さえ間違わなければ、そして、示されたとおりに注射をすれば、問題はないのでございます。しかし、筋肉注射ということになりますと、先刻お話の中にもありましたように、これは、私ども、私自身は長い間看護婦をいたしましたが、筋肉注射をしたことはございません。というのは、いやでございます。とっても自信はございません。これは単純なことを一つ申し上げますが、私は国立がんセンターに最後に勤務しました。そのとき、若いその年卒業した看護婦が大ぜい参りました。それで、医師グループから、ここの看護婦はくその役にも立たぬと言う。何が役に立たぬと聞きましたら、注射もできないということをさんざんちょうだいしたわけです。私は、新しい卒業生を数十名集めまして、あなた方注射できないのかと、まずこう聞きました。彼女たちは黙って聞いていました。もう一遍聞きましたら、注射と一口に言われますが、皮下注射ならできます、それから静脈注射もできるし、あるいは輸血のようなものもできると思う、しかし、筋肉注射はできません、いやでございますと、この若い卒業生が口をそろえて言ったことを私は申し上げておきたいのです。それは、後にどういう影響を残すかということは、少なくとも正規の教育を受けた看護婦は非常に心配するわけです。それからもう一つは、神経にさわりますと、ものすごい痛みを突然訴えますので、これはとてもわれわれ看護職では手がつけられないんだというようなことを実際体験者は皆持っているわけでございますが、何せ患者さんは多うございますし、お医者様の手は少のうございますので、かなりのものを補助者としてしてきたと私は思うわけです。
 そういうことで、この機会に、私は参考人にお出ましの先生方だけに申し上げるのじゃございません、厚生当局も来ていらっしゃいますので心から訴えたいのは、注射はだれでもできる、医者だけじゃなく、看護婦ならできるんだ、おまえたちはそのためにいるんだというような御見解をひとつやめていただきたいと思うのです。今日、こういう大きな社会問題が出てきて初めてこの教育の問題も出てきております。そんなことは初めからわかっていたはずだと思う。先ほど来お話を聞いておりますと、筋肉注射の可否についてはよくわからなかったという皆様のお言葉、坂上先生も、保坂先生も、いま行かれました津山先生も申されました。そういう医師の立場ですらもよく解明しにくいものを、薬液の問題もあるでしょう、注射を受ける子供の発育、いわゆる年齢等のこともあるでしょう、部位のこともあるでしょう、いろいろな条件が相重なってこういう現実が出たと信じておりますけれども、それにしても人体にこういう重要な障害を残すような医療行為だけは、ひとつ私は、よっぽどベテランの看護婦であれば別でございますが、だれにでも彼にでもその辺におります介助者に看護職だからといってさせてくださることをこの機会に厳に慎んでいただきたいということを申し上げておきたい。特に筋肉注射については私もそうでした。私の若い後輩も言いました。筋肉注射はいやでございます、自信がありません、この言葉をまじめに受けとめていただきたいということを私はまずお願いしたいわけでございます。もちろん答申の中でございますから、私はこれに絡まってとやかく申したくございませんが、この辺、坂上参考人、それから保坂参考人は病院の院長さんでもいらっしゃいますので、ひとつ私がいま言っていることについての御見解をちょうだいしたいと思います。
#35
○参考人(坂上正道君) まことに尊敬すべき御意見だと思います。と申しますのは、医療と申しますのは、医師の行います診療行為と、パラメディカルというものとの両輪のもとに成り立っていくわけでございます。そのパラメディカルの中には、いま御指摘の看護職及び検査の立場、その他もろもろですね、リハビリテーションの専門家、栄養の専門家、その他全部含めた意味でパラメディカルと申しておりますが、この両輪が成り立たなければ医療はできないと存じております。その中で、いま御指摘のように、看護婦の立場もまたまことに崇高な、また技術的にも高度なものを要する専門職でございまして、その中における御自分の専門の分野における自己陶冶をなさいまして、かつ技術を広げていかれるという立場で看護職を見詰めてくださることは、医師の側から見ましても大変ありがたいことですし、尊敬いたしております。まさに、医療というものは、おのおの専門職が自分の専門職の中での自己研さんと、そしてそのお互いの技術を尊重し合いながら両輪になっていくという形でなければ、今後の医療は成り立たないというふうに存じております。まさに看護婦の専門職である方が静脈注射ができるようになる、またできるように訓練を受けているのになぜできないのであるかということは、私は大きな矛盾であると思いまして、私も看護婦が自分の専門職の範囲内でその技術をさらに広げられましていよいよ専門職としての技術分野が広がるという方向に進んでいくことを望んでおりますし、また協力をさしていただきたいというふうに存じます。
#36
○参考人(保坂武雄君) 私、医者になりまして、現在は院長をやっておりますけれども、やはり筋肉注射というものは非常にこわいものだ思っておりました。そして院長になる前には筋肉注射というものは自分で行っておりました。静脈注射は看護婦にやってもらったことはございますが、筋肉注射は非常に危険性があるということで自分でやっておった次第です。
 現在、看護婦さんにおしりを出して、どこにあなた注射すると聞いてみますと、非常にばらばらであります。中には座骨神経のところを指示する人もありますし、非常にばらばらであります。この点はまあ筋肉注射せよと言うわけではございませんが、そのようにばらばらな状態でありますから、やはり私たちはその点を十分考えて、もししなくちゃいけない場合にはどこにするか指導をする、あるいは自分でする。このような今度の問題が今後出ないように、やっぱり筋肉にどうしてもしなくてはいけないような薬の場合は、できるだけ筋肉に障害を与えないようなそういうふうな薬を一刻も早く開発してほしいと、そう念願しております。
 以上です。
#37
○石本茂君 このことはこれでやめたいと思うのですが、もう一つ看護教育の関連事項ですが、部位等のそういう解剖学的なこともさりながら、私はむしろこの機会に医師群でいらっしゃる参考人の先生方にお願いしたいと思うのですが、もっと看護教育などの中に薬物に対する知識を非常に導入するべきじゃないか。それは、薬は、ただもう飲み薬の普通薬は何だ、劇薬は何だ、毒薬は何だ、そんなものぐらいをごく簡単にしか教えておらぬのです。ですから、薬に対する知識をもっともっと深めていってほしい、これが私の日ごろの願いでございました。本日、筋違いなところで勝手なことを申しているかと思うのでございますが、せっかくこういう答申をいただくのでございましたら、その中にもっと薬等の知識を持つ看護者をつくれというようなことも御指摘いただきたかったわけでございますので、いまからでも遅くございませんので、ぜひこのことお願いしたいと思っております。これはお願い事項です。
 続きまして、私は、いろいろお話をいただきましたが、宮田参考人に一つ二つお尋ねしたいわけです。いろいろ資料とかそれから非常に御高見を拝聴いたしまして、私も心の中で一々うなずいておったわけでございますが、私がお伺いしたいと思いますのは、今日の医療体制、あるいはまた薬物等の安全性の確認というようなこと、ひっくるめますとこれは厚生省の医療行政に関連してくるわけでございますが、この体制が好ましくないとはおっしゃいませんでしたが、私、しみじみ思いますのは、体制はたとえどう変えようとも、現に人間の疾病あるいは健康を守り育ててくださる医師の良識が麻痺してしまったのでは、どう変えたってこれは仕方がないという気がするんです。現在ただいまこの体制の悪いところをついてしまって、そしてそれをおのれの利益のまあ何といいますか追求にもし悪用したということになりますと、これはもう現体制が好ましくないのじゃなくて、医師それぞれ個々の、全部じゃございませんが、良識ある先生方がほとんどでございますけれども、一部好ましくない、おのれだけ自己だけを中心に考える医師があるとすれば、どんな体制ができてみても、診断、治療をなさる場面にはだれも介入できないのです。これは、医師という人は、人間の生命、健康管理なさるもう最高の権限者でございますから、それを、国が、この注射はしちゃいけません、これはここにせい、あそこにせいと、これはとっても行政指導等の中では言い得ないのじゃないだろうか。仮に言ってみたら、これは大変な医師の権限に対して権力をもって臨むことになります。そういうことは私はでき得ない。そういう意味で、宮田参考人自身、どのようにこの体制を変えたらよいと思っていらっしゃいますのか、これをお伺いしてみたいわけでございます。
#38
○参考人(宮田雄祐君) ただいまの御質問でございますが、私、僭越ながら二、三批判も交えながら率直に発言さしていただきたいと思います。
 確かに、医療を行っております責任を任されております医師、これの良心が常に患者に向けてそうして活動しておりますと、こういった問題は出てこないと思います。それが、いろいろ社会の仕組みのために、現在のように経済の高度成長という荒波のために、よけいにこういうあつれきが出てきたものと思いますが、先ほども申しました利潤追求の姿というものを現在の医療の中で抜きにしましてはとうていやっていけないのが大部分でございます。事実、先ほども申しましたように、この病気はもう一日二日水まくらで休んでおればいいということを説得ばかりしておりますと、これは医療としてやっていけないのでございます。事実、医療関係者の方々に私どももよく聞いてみますというと、病院を支え、診療所を支えるのは、ほとんどやはり薬物を中心にした医療の姿でございますから、その限りにおきましては、経済に余裕のある場合はよろしいのですが、次第次第にそれに押し流されてきてしまうという形になってまいります。
 先ほど一言ちょっと私に気がかりなのは、医師は医療のもうすべてを任してある、このお気持ちは私は非常にありがたいと思うのですが、医師といえどもやはり人間でございます。本当にその信にこたえてやれる心を小さい間から本当に育てて医師になるのならよろしゅうございますが、いまや医科大学に入学いたしましても入学金は数千万円ということになっております。こういうように莫大な投資を要して医師になっていく。初めからこういう成果とか利潤の追求というような姿の中に医師が置かれておりますと、次第次第にその心は患者から離れて算術になってしまうわけでございます。したがいまして、これを是正するということは、やはり医師の本当の、まあ現在の体制を変えてもというお話がございましたけれども、現在きょうあす的になさねばならない問題といたしましては、やはり医師の労働に対する正当な報酬、それを支払われるべきで、不必要な薬物を使用して初めて経営が成り立つというような医療の姿というのは、これは国民の立場、人間の立場に考えていただきましても不都合であるということを御了解いただけるものと思います。
 そういうように医師に常に適正な報酬というものを保障しつつ、それでもなおかつやはりいろいろ不都合がございますが、私、ここで一言だけ外国の例を申し上げて参考に供したいと思うのですが、私が留学いたしました大学におきましては、患者の手術を行います段階になりますと、そこのチェアマンですね、教授がたくさんおりますが、その一番偉い先生が自分の専門のところの説明に参ります。大学病院は御承知のようにチャリティーです。ほとんど生活保護でございますので、ウォードの中はほとんどが黒人ばかりです。そこに入って行きまして、この白いのを着ずに、このまんまで入って行きまして、ベッドに座って、そうして握手をして、まず一番先に聞くことは、ごきげんいかがですか、そうして、その日常の診療に不都合がないかということを聞きながら、それから手術についての危険などについての話があるわけです。その話の途中で、もし日常特定の先生にかかっておられるんだったら、つまりホームドクターです、その人をお呼びください、一緒に説明いたしますと。そのようにして、常に医師というものは、一つの疾患を診た場合に、それがこう治っていく介助者であるということに対する誇りを持っておるんです。その診断と治療についての絶対の誇りというものがあるのでありまして、がちっとしたカーテンの中で医師だけが一人勝手にやるという自由裁量、これはもうわが国特有のことでございますが、こういうものは日本の歴史に由来しているわけでございますけれども、海外に例を見ない重要な問題でございます。したがいまして、一般の方々も、医師をやっぱり育てていくという気構えで、医師にすべての医療の内容を一〇〇%任せるというのではなくて、やはり健康ということについては皆様方自身も責任を持ってある程度の知識というものを必要といたします。全然そういうことを放棄してしまって医師だけに任せるというのは、これは日本の医学教育がいままでやってきて、知らしむべからざるものとし、寄らしむべからざるものにしてきた医療といいますか、医学教育のなせるわざでございます。
 まあ、子供のことでございますので、それに話を集中いたしますと、結婚して子供を持つ、その子が何年間かの間受けるいろいろな疾患はございます。親たるべきものの責任といたしまして最低必要な疾患に対する勉強はしていただかないとこれは困るわけです。その知識の上に立ってその先生にいろいろと子供の治療を聞く。そういう姿の人間関係が成立しない場合には、いま言いましたような一方が権利を放棄して、そしてなじり合いをするという、どこまでたっても前向きの結果が出てこない医療の形態になってしまいます。医師といえどもいまここでこの重大ないままでの医療の欠陥を認知して、そうして新しい医療をここで展開していなかければならないと思うのです。医療というのは、医師のために医師によって行われるものではなくて、国民のためのものなんです。その点で、私ども医療関係者がいままで知らしむべからずで来たこの姿を大いに反省して新しい行動を開始する必要がございましょう。私も、「アサヒグラフ」でございましたか「家庭でも「診断」できる」というのを書きました。どのような疾患でも、ごく日常皆さんが遭遇する病気、家族の病気というものは、皆さんで診断ができるはずです。私どもに来られるときにも、非常に賢明な御両親のサゼスチョンがあった場合に、その医療行為がきわめて受ける利益が大きいという経験がございます。そういう点で、医師だけが心をよくしようと思ってもできるものではない。国民一人一人がすべて医療に対する正しい認識の上で、責任、つまり果たすべきものを果たすという気構えになったときに、この膨大な短縮症の患者さんも救われる道が私は開けるものと思うのです。
#39
○石本茂君 もう時間も余りありませんが、よくお説はわかりました。要するに、医師という人のただ単なる医術を施行するというだけじゃなく、持てる知識を思う存分相手方に提供していただいて、しかしそれは高く評価されるべきであるというようないまの医療費等を含めた制度というものを置きかえていけとおっしゃることだと私は承ったわけでございます。
 最後に、守る会の西中山さんに一言お伺いをし、私も考えを持つわけですが、検診から始まりまして、治療、それからこの障害児の障害補償ということを大きく打ち出していらっしゃるわけでございます。これはもちろん調査等を進めながら私も当然じゃないかと考える一人でございますが、もうおられなくなりましたが、この障害の程度というものですね、さっきの、どの辺で一体足が――ひざが曲がらないという程度もありますし、もうびっこを引かなきゃ歩けないのもあるでしょう。座ることも何もできない人ももちろんおります。この障害の程度を、いま障害者をいろいろ国が補償しておりますが、そういうものに当てはめてお考えでございますのか、それとも、もう軽度であろうが重度であろうが、この医療行為の果てに起きた障害児に対して、国は、もうとにかくその子供の障害の程度そのものよりも、心に受けた、肉体に受けたすべてのものに対しての補償というものをつくれとおっしゃっているのでしょうか、一言お伺いしたいと思います。
#40
○参考人(西中山秀雄君) ただいまの障害補償の件ですけれども、これは、われわれ、親としまして、程度の軽い重いは別といたしまして、金銭的に補償をしてくれということではありません。子供がやがて就職し、結婚して一人前に仕事ができるようにしていただきたいと、こういうことでございます。
#41
○石本茂君 よくわかりました、ありがとうございます。
 終わります。
#42
○浜本万三君 まず最初に、坂上参考人に伺いたいと思います。
 今度の大腿四頭筋拘縮症というのは、先ほどのお話によりましても、医原病ではないか、こういう疑いが非常に濃いわけでございます。加えて、先ほど参考人でお話になりました津山参考人も、九九・数%までは注射液によるものだというふうに証言をしていただきました。そうなってまいりますと、この病気は医師が注射液によって子供に注射をした結果であることはもう疑いの余地がないというふうに思うわけでございます。しかし、坂上参考人のこの報告書によりますと、その原因については非常にあいまいになっておるわけです。つまり、患者の体質の問題を含めまして、注射液の問題それから医師の治療行為の問題、そういう多岐にわたる原因が羅列されておるわけでございます。そこで、私は、二つの問題にしぼってまずお尋ねをいたしたいというふうに思います。
 まず第一は、この報告書に書かれておりますところの注射液が主要な原因であるのか、医師の治療行為そのものが主要な原因であるのか、参考人はいかように考えていらっしゃるか、まずその点をお尋ねいたしたいと思います。
#43
○参考人(坂上正道君) 私は、薬剤そのものが、筋肉注射に向く薬剤とは一体どういうものかという基準もまだはっきりしていない。それから開発されました途中でも、その効果は動物実験あるいは微生物を使った実験で確かめますけれども、人間の筋肉にやったらどうなるかというそういうデータなしに開発されて、しかも使用の段階まできてしまったわけですね。そういう薬剤そのものに大きな矛盾があると思います。したがって、その学問的な根拠が検討されない要素がございますから、能書においてもそれを全く化学的に徹底して書くことはできないわけですね。医者はその能書を見て治療をするわけです。三段論法になりますけれども、その間に果たして真っすぐ因果関係を結び得るものかどうか、疑問があろうと思います。
#44
○浜本万三君 そういたしますと、なおわからなくなるのでございますが、お医者さんが通常薬剤を購入されるときには、その薬の効果、効能ないしは副作用に至るまで十分精査されずに、とにかく薬屋さんから売り込まれた言葉を信用されまして直ちに使用されると、これが一般的になっておるのでございましょうか。
#45
○参考人(坂上正道君) いや、それほど単純ではないのでございますけれども、しかし、医者が一々やります場合に薬のことまで追及して化学的に実験してみるといういとまはございませんし、また、方法もないと思いますですね。で、かなり明確に書かれました能書というものを頼りにいたしますのと、もう一つは、製薬会社が能書及びその開発段階に出ました資料にある程度のフィルターをかけまして医者に提供してくる薬剤製造面からの日本文というものを頼りにいたします。私は、それ以上、使うなと言うことは専門職に当たる職業人として不可能だと思います。
#46
○浜本万三君 そういたしますと、仮に薬剤が悪かったとするならば、その責任は、もちろん製薬会社と、それから売り込んだその人と、それから同時にそれを許可した厚生省に責任があると、こういうことになると思うのでございますが、それはそういうことでございますか。
#47
○参考人(坂上正道君) 私はそれに対して意見を申し述べる立場にはございませんで、これはもうジャッジの立場の問題だと思います。
#48
○浜本万三君 それでは、それはその程度にしておきたいと、こういうふうに思います。
 次は、お医者さんの治療行為によってこの病気が発生したということは、おおむね疑いのないところであろうというふうに思います。坂上参考人の報告書によりましても、第一次調査だけでも、患者百四十八人のうちでその約三分の二は特定医師に集中をしておる、こういう報告書が出されておるわけなんでございますが、そのような行為のあった医師に対して、これは国民的な立場でやっぱり責任を追及しなければならぬと思うし、責任を追及するためにはその原因を明らかにしなければならないというふうに思いますが、この報告書によりますと、そういう状況が報告をされておるわけでございますが、参考人の御意見としては、この種問題、しかも特定医師に限って集団発生の条件が見られるということになりますと、お医者さんの立場として、また学会の権威者としてどのような措置が必要であるかという点についてお尋ねしたいと思います。
#49
○参考人(坂上正道君) 私は、医師という専門集団の性格はどうあるべきかということを申し述べたいと思います。
 まず、専門集団の一つの性格は、自己を常に研さんしてみがいていくという性格が一つございます。それからもう一つは、モラルの意味も含めまして自己規制をいたすという点、二つだと思います。
 その第二番目の自己規制ということにつきましては、医療そのものに関してもメディカルオージットというような形でチェックをしていくということと、医師はやはり神に近い職業であるという意味において、自分に対するモラルをさらに高めるという点があろうかと思います。その二つを自己規制の中に置きたいと思います。そして、じゃ専門集団であるならば、その規制にはずれたものを除外するのかどうかという営みは、これは私は別だと思っております。
#50
○浜本万三君 先ほど西中山参考人からも特に希望があったようでございますが、医師の治療行為に対する責任を明らかにしていくためには、どうしてもやっぱりカルテという問題を保存すると、こういうことが一番大切な条件であろうというふうに思いますが、先生のこの答申書の中にはそういう意味も含まれておるわけでございましょうか、医師会に対して。
#51
○参考人(坂上正道君) それは含まれておりません。カルテに関しましては、やはり医師の中において規制すべき書類であるというふうに存じております。
#52
○浜本万三君 ただし、この諮問をされました内容を見ますと、非常に広範多岐にわたっておるというふうに思うわけです。当然、医療集団としても、またこの道の権威者としても、おそらくこの因果関係を解明し、その結果に基づく責任を追及していくためには、どうしても必要な資料というものを保存する必要があると思うのです。そういうことがおおよそ常識的にわかり得るのになぜ答申書で言及されなかったか、そういう点についてお答え願いたいと思います。
#53
○参考人(坂上正道君) 問題がはずれるかもしれませんけれども、しかし、医師にも不法な行為ありということで裁判所そのものが証拠保全の申請を受けまして押えられたならば、これは裁判の場で使われる書類として上がってくることもあると思います。しかし、カルテそのものはやはり医師の中における患者のもろもろのことを記載しておりますから、医師が患者の秘密を守らなければならない義務と同様に守らるべき書類であるというふうに存じておるわけです。
#54
○浜本万三君 続いてお尋ねするのですが、厚生省からいただきました資料によりますと、大腿四頭筋拘縮症研究班の第二班に先生は所属されていらっしゃるのじゃないですか。第一班ですか、先生は第二班ですね。――ああ、先生じゃございませんか。それじゃこれは撤回をいたします。
 続きましてお尋ねするのですが、先ほどもちょっとお話がございましたが、治療の方法について答申書で指示をなさっていらっしゃるのですが、その内容を見ますと、先ほどから問題になっておりますところの臀部三角筋というんですか、そういうところに注射をするようにという御指導がここに書かれておるのでございますが、他の先ほどお話しいただきました先生のこの御意見によりますと、この臀筋注射も非常に問題があるというふうにお話があるわけです。しかも、それは臨床的にも相当経験を積んでいらっしゃる先生方のお話があるわけなんでございますが、先生の御意見ではこういう方法で後で問題が起きることは必配ないかという点についてお尋ねをいたしたいと思います。
#55
○参考人(坂上正道君) 非常に具体的になって恐縮なんですが、私は小児科医になりましたときに、従来からございました「小児治療学」という山本康弘さんが書かれた本がございまして、その中に、薬は効くほど使うばかはいない、子供に注射は使ってはいかぬ、こういうことがもう最初に書いてあったことを銘記しております。私は、子供に対して注射をいたすことは、予防注射以外に皮下注はございませんです。それから筋注をすべき薬剤につきましては、ほとんどこれは緊急の場合の抗生物質でございますから、ほとんど経静脈的に、しかも点滴と申しまして大量輸液を静脈から行っている中へ抗生物質を入れざるを得ない場合の方が多いわけでして、また、そのくらい使わなければ実際に意味がないのでございます。ですから、小児科医個人の立場といたしましては、筋注などというものをいたすそういう小児科医ではいたくないと思いますし、教育者の立場としてはそういう教育をいたさないつもりでございます。
#56
○浜本万三君 そういう立場の先生が委員長をされておりましてなぜこういう答申が出たかということがちょっとぼくは理解に苦しむわけなんでございますが、その間のいきさつがございましたら……。
#57
○参考人(坂上正道君) しかし、これは、医療の技術というものは、すべての医者が――決して私の技術が高度とは申しませんけれども、全部高度であるわけではないのでございますね。大学病院あるいは一般病院、それから実地医家、いろいろな立場がございますから、すべて全く高度の医療水準をもって全部の医療を割り切れということも、おっしゃることは無理じゃないかと思うのです。一般実地医家の都会の中でなすっていらっしゃる医者のレベルとか、その他もろもろですね、やはり医療水準の設定の基準があろうかと思います。そういう意味では、決して最も高度なものを答申書に書くわけにはまいりません。
#58
○浜本万三君 最後にお伺いするのですけれども、九月三日時点でこの答申書を出されたということです。その当時すでにこの問題は社会的にも大分問題になりまして、しかも、幼児に対して筋肉注射をしたのが原因だということも明らかになっておったわけなんですが、これは医師会の諮問に基づいて答申をされたわけなんでありますが、この内容は、先ほど申し上げましたように、まあ原因が非常に多岐にわたるように見受けられる。むしろ、社会的には、問題を集中いたしまして、その原因を掘り起こして、そして治療並びにこの具体的な措置を講ずるということが当時大きな社会的使命になっておったと思うのですが、そういう時期にこの種答申を出されるということは、社会的に多少こう後ろ向きの答申のきらいがないかというふうに私は思うのでございますが、そういう点、先生はいかにお考えでしょうか。
#59
○参考人(坂上正道君) その段階においてすでに本症をもうこれ以上発生さしては困るという観点から予防措置も含めて書いたつもりでございます。かつ、その当時、厚生省の中には、診断基準及び治療ということと同時に、正確な表現は存じませんが、薬に関する問題の検討も進められる委員会が置かれたと承っておりますから、そういうものを重複して私は営む必要はないというふうに判断したわけでございます。
#60
○浜本万三君 次は、保坂参考人に伺いたいと思います。
 先ほど先生のお話を承りますと、大体世間では治療をして治る、治らないと、まあそういう両説がございまして、父兄は非常に心配されておるというのが実情であろうと思いますが、先生の病院では、この治療を積み重ねられまして相当の効果が上がっておるというふうに先ほど御報告を承ったのでございますが、その治療方法として、何というんですかね、手術ですか、手術の方法について、瘢痕部分というんですか、瘢痕化したところを切除するとか、あるいはそうでなしに大腿部のつけ根とかいう遠い部分を手術をされるという二つの例が御報告をいただいたと思うのでございますが、将来のこの手術の見通しですね、つまり治療をして治るんだというような見通しがあるのかないのか、そういう点を、まあ私ども素人ですから、わかりやすく端的にひとつ、言えないかもわかりませんが、お話をいただきたいと思います。
#61
○参考人(保坂武雄君) 私は、見通しは十分あると思っております。
 私どもの手術方法は、注射をして最も筋肉が障害を受けた瘢痕部分を切って取り除く、そして拘縮の原因になっておった部分も切り離して、短縮しておった筋肉を十分伸ばしてやるということです。いままでそういうふうな治療を行っておったのは余り見当たらないのです。
 それからすでに笠井氏は、神戸市民病院にお勤めになっていましたが、現在海星病院におられる方ですが、この先生は、瘢痕部分の切り離しと、それからつけ根の切り離しを行っている。これもやはり良好な成績を得ているということですから、成績は私のところとほとんど変わりません。成績内容はほとんど変わらないと思います。ですから、瘢痕部分に手をつける方法というのは非常に有効であるということがはっきり言えると思います。これはいずれ学会に発表されることでございますから、もう間もなく発表されるわけですから、その結果を見ればよくわかるのじゃないかと思います。非常に明るいと思っております。
#62
○浜本万三君 今井参考人に伺います。
 自主検診の結果は、非常に患者の数が多いという御報告なんでございます。私も、広島の出身でございますので、三月末日までに行う広島県庁の検診状態をちょっと伺いますと、三月末までに九百九十三名の者が申し込みまして、六百十七名が検診を終わりまして、いわゆる厚生省指定のA、B、Cというランクがございますが、Aが五人、Bが十五人、他はいずれも異常なしという報告になって、非常に患者の数が少ないということになっておるわけなんです。一体なぜこういう結果が出るかということを第一にお尋ねしたい。
 時間がございませんので、私はあと一分しかございませんので、もう一つ伺うわけなんですが、つまり、学童を検診すれば非常にたくさんの潜在患者がおるということを先ほど御証言なさったわけなんですけれども、余すところなく患者を診断をして、そしてその実態を明らかにするためには、そうすると、やっぱり文部省の指導で学童の全体調査をやる必要があるのじゃないかというふうな気がするわけなんですが、その点はいかがでございましょうか。
#63
○参考人(今井重信君) この広島の結果については私は初めて伺ったわけですけれども、私たちが検診をいたしまして大体出てくる受診者と、それから大腿四頭筋短縮症として、これは先ほど申しました、潜在患者の件で申しました瘢痕のみとか、それからへこみのみというものは除外しての話ですけれども、約二〇%から三〇%の割り、これは地域によって、その検診の期によって違いますけれども、ございます。そういう意味で、六百十七名受診して結局二十名しか発見されていないという点については、私は、私のいままでの経験から言いますとこれは信じがたい。何らかの診断基準における私は相違があるのではないかというふうに考えます。
 その点についての問題といたしまして、たとえばしり上がり角度が九十度以上になってきた場合に、この点について実は厚生省の診断基準ないしそれに基づいて検診を行う検診行為の中にこの点をかなり軽く見ているきらいがあるのではないかという点が一つ上げられると思います。そういう意味で、私は、特に年少児については、実は九十度以下――悪い方ですね、の結果を持っている子供もさることながら、それ以下の方、それから瘢痕のみという方についても、実はこれは今後の問題としては非常に問題になる。そういう意味で、私は実は川崎で川崎幸病院というところにおりますが、神奈川県におけるこれまでに発見された方を一応今後定期的にフォローアップするといういわば特別外来を設けて二月からやっておりますが、その段階では一応瘢痕のみという人も特に年少児についてはフォローするということを行っております。これは絶対にその点は必要であるというふうに考えます。
 それから学童調査の件でございますけれども、この点もやはりもちろん当然私は必要だと思います。ただし、その内容が、先ほど申しましたように、診断基準という面でかなり重症ないしは中症程度しか発見できない診断基準で、ないしはそういう形で行われる限り、これは逆にかえって問題を起こすだけである。その内容を抜きにしては、その点についてはやはり推進するかしないかについては私は意見を留保したいというふうに思います。
#64
○目黒今朝次郎君 第一番に、先ほど津山先生が注射の影響が九九・九%だと、そういうふうに言われたのですが、注射というものによって発生したと、こういうことについては各参考人ともそのままお認めになるかどうか、お伺いします。
#65
○参考人(坂上正道君) 答えが重複いたしますが、注射を打ちました薬剤にも問題があるというそのつながりがございますことを指摘しておきたいと思います。
#66
○参考人(保坂武雄君) 津山参考人と同じ意見でございます。
#67
○参考人(今井重信君) 私は、注射によるものは、先ほど申しましたように、文献上も、いままでに学会に報告されている中でも、注射以外については二%しかないというデータと、検診しましたときに出ました北九州での結果ですが、注射回数によってかなり要するにはっきりと相関が見られます。ゼロから一回についてはゼロ%。これは、パーセントは、受診者のうち正常と見られた人、各年齢の受診者総数に対して大腿四頭筋短縮症と診断された人とのパーセントの比ですから、人口比ではございません。二から五回の人が四%、六回から二十回の人が一六%、それから五十一回から七十回という人が二一%、二百回以上というのは四六%、その点では、注射回数についての問題については、かなり明確に相関が出ているという点についても、やはり注射行為、それからもちろん注射液というものも全く関係ないとは申しませんが、やはりそれも注射回数の点で逆にチェックし得る問題であるというふうに考えております。
#68
○参考人(宮田雄祐君) 今井参考人と全く同意見でございます。
#69
○目黒今朝次郎君 そうしますと、若干のニュアンスの違いがあったとしても、いわゆる注射と薬ですか、こういう二つの相関関係もあるし、単独のものもあるだろうし、回数もあるだろうし、そういう点から見ると、いわゆる日本の医療公害という受けとめ方で、これの治療なりあるいは回復なりということは、加害者負担の原則に従って、医者なり、あるいは薬事会社なり、あるいは国の行政なり、そのところで責任を負うものと私は思いますが、坂上参考人、いかがでしょうか。
#70
○参考人(坂上正道君) 救済のことにつきましては、国が問題を解決するであろうというふうに期待をしております。
#71
○目黒今朝次郎君 私は、この答申書を見てみますと、その辺の責任の所在といいますか、きわめてあいまいに逃げられていると、こう見受けるのですが、あるところから入りました医師会の武見会長の発言をとらえてまことに失礼だと思うのでありますが、「日本医師会雑誌」七十三巻。第一号、五十年一月一日、第二十七回常任理事会のメモがちょっとここにあるのですが、これを見ますと、医者は教科書どおりやったのであるから全然責任がない、本件問題についてはむしろ厚生省の問題だといってわれわれ素人から見れば医師会が突っ放している、薬の責任、厚生省だと。先ほど石本先生から医者の良心という問題が言われまして、坂上先生自身も小児科を扱っておって先ほど心構えを披瀝されました。その気持ちとこの医師会における武見会長の医師会は教科書どおりやっているのだから関係ないと突っぱねているこの気持ちを私はどうしても解せないのですが、これが医師会の閉鎖性というものなんでしょうか。その点についてもう少し親の立場になって心温かい私は対応策があってもしかるべきではないかと、こう思うのですが、いかがでしょうか。
#72
○参考人(坂上正道君) どうも私は日本医師会の立場ではないわけでございまして、日本医師会の中の専門的な問題についての検討をいたせということを御指示を受けまして、専門の学者としてこの委員会に参加をしたわけでございまして、医師会そのものには全く関係しておりませんので、武見会長に対する御批判に私が答える立場ではないかと思いますが、ただ、医師そのもののあり方として、先ほど申し上げましたように、やはり専門集団でございますから、自己の技術の研さんをするという一言と、それから自分に対する学問上、モラル上のチェックをいたすという性格の専門集団であるべきであるという点は、何遍でも強調いたしたいと思います。
#73
○目黒今朝次郎君 それは後で別なところでやりますが、私たちは非常に不可解な気持ちであるということだけ表明しておきたいと思っております。
 それから保坂先生は、先ほど、この病気は治る、手術によって治ると、こういう発言をされましたが、宮田先生の、これは「アサヒグラフ」に、「家庭でも「診断」できる」というタイトルのものが出されまして、その「結論」のところに、「手術的治療そのものには根治効果がない以上、」と、こういう言葉を使っていらっしゃるのですが、これはなかなかこの病気は手術によっても治るのは困難だろうということを言いあらわしていると私は思うのですが、そういうことについてはどんな御見解か、これは具体的に教えてもらいたい、こう思うのです。
#74
○参考人(宮田雄祐君) 手術例の総計につきましては、自主検診医師団でも整形外科の先生方を中心にいたしましてかなり詳しい分析をしております。もしよろしかったら今井参考人から詳しく聞いていただきましたらよろしいかと思いますが、私が書きましたものにつきましては、病理学的に考えまして、病理と申しますが、筋肉を調べるというそういう立場から考えまして、注射を打ちます、打てばその筋肉は死滅をいたします、後、瘢痕になります。こういった状況のもとでは、もし広範に症状が出ておるぐらいの筋肉の障害があれば、この死滅したものはどのように手術をしてもその筋肉はよみがえってこない、そういうことでございますので、注射というものを安易に考える私どもの考え方をこれは日本国民全部がやっぱり考えなければならないという警告も掲げましてそういうことを書いたわけでございますが、ただ、この瘢痕がいろいろな長い時間を経過しておる間にかなり萎縮するとか、あるいは残存しておる筋肉がどのようになっていくかというようなことなどにつきましては、現在検討中でございます。
 さらに、手術についての御質問でございますが、私どもの結果からでは、世間で言われるような手術成績がいいというデータは私どもではないわけでございまして、そういう点につきましては、続いて今井先生の方から説明していただければと思います。
#75
○参考人(今井重信君) 一応現在まで私たちが検診で発見いたしました手術を受けた患者さんの数は三百六例。両足手術している方もおられますから、足の数という意味で言えば三百六十五肢です。その中で手術を受けている患者さんですけれども、その中で現在においても私たちの診断基準でもって重症は四五・五%、半数近くはやはり重症であります。これはもちろん年次経過、いわゆる経過年数、だから一年から二年まで、手術してから二年までの経過だけで見ますと、かなり成績はいい。ところが、三年以降になりますと、非常に重症がふえてまいります。
 参考までに申しますが、そのうち軽症の数は二三%、正常であるという方は二七%です。その中で、患者さんの、患者さんないし家族の人のいわば満足度ですね。私たち、一応、それを各手術を受けた方に三百六例の方に全部アンケート調査を出しまして、返事がいまのところ二百二十六名返ってきておりますが、その中で何らかの意味で現在のままでよろしいと、満足しているというのが二三%、実に七七%は現在の段階では不満足である、何らかの今後のあれを受けたいというふう・に希望しております。これはいま保坂先生が発表になりました手術方法でもってすべてがどの程度入るかという点についてはもちろんわかりません。この中には含まれていませんし、それからその点についてはあれですが、ある意味においては私は保坂先生とは若干異なった印象を持っております。その点でかなり全国的に楽観的には私はなれない。その違いといいますのは、先ほど私の発表のときにも申しましたけれども、手術をした医療機関にその患者さんが再び訪れて結果を後も診てもらうという患者さんの場合には比較的いい人が多い。これは私がいろいろな医療機関でもって予後調査というものを、他の疾患においてもそうですが、行った場合に、悪い人は来ません。はっきり言ってしまえば。ところが、自主検診という場合には、ほとんどそういう人も含まれてきます。そういう点についての、いわゆる調査方法についての問題は、やはりこれを抜きにできないし、そういう意味で、医療の中で成績を出す場合に、逆に言えば、そのすべてのそういう何というか、背景ですね、について、やはり一応は見ておかなければならないだろうというふうに考えております。それからもう一つ、病型によって手術の成績というのは圧倒的に違います。いまお話しになられたのは、多分いわゆる直筋型というタイプ、いわゆる多いタイプですけれども、全体の八〇%程度のあれを占めているもののあれですが、私たちは一応病型を検診の段階では分けております。いわゆる直筋型、広筋型、それからそれの両者の混合した型ですね。その場合に、一応広筋型、私たちがいままでつかんでいるので約二〇%ほどございます。いままでのこれは中間ですから実数ではありませんが、八百五十三例のうち約百五十五例が広筋型及び混合型に属します。その人たちの成績は、いままでの先ほど申しました成績よりももっと悪いわけです。そのいわゆる二〇%の人についての治療の問題については、はっきり申しまして、よりまあ成績としては悪いという意味で、新たなたとえば治療方法等々についてもまだこれは及んでいない。特に広筋型の、これは八百五十三名中二十二名おりますが、この人についてはまずどういう治療をしたとしても、ひざが九十度以上、いわゆる直角のところまで以上はまず曲がるのは不可能であろうというふうに、これは整形外科医としての常識であります。ですから、そういう意味で、やはりタイプ、症度等々について一つはかなり問題を分けて考えないとまずいのではないかというふうに考えております。この最終的なあれは、先ほど言いましたように、四月の学会において報告いたしますけれども、そういう一応私たちが検診上診た結果というのは、先ほど申しましたようなデータになっているということでございます。
#76
○小平芳平君 ただいまの治るかどうかという点につきまして、引き続いてお尋ねをいたしたいと思います。
 昨年の十二月一日に全国集会がございまして、その全国集会の集会の席上では自主検診班の先生からはいまちょうど今井先生からお話のあった御報告がございました。まず手術によって治るということは不可能のそういう患者がいるというような趣旨だったかと思いますが、そういう点はございませんか、ちょっと。
#77
○参考人(今井重信君) もちろん手術によってかなり軽快させることができる範囲というのはございます。これは笠井先生初め保坂先生の御努力等々も私はその意味で非常に高く評価したいと思うのです。ただ、手術そのもの、私は一応整形外科医ですけれども、手術そのものというのは、やはりたとえば二回なり三回なり行うということ自体、子供にとっては大きな負担でございます。これはほとんどの場合は全身麻酔を使わざるを得ないという場合もあります。それによる危険性等々も考慮しなければなりません。その後の訓練というのはなまやさしいものではないわけです。ですから、そういう意味で、一つは、手術によってすべてがかなり治り得るという印象を与え得る子はあの段階においては自主検診医師団としてもいなかった。
 それからもつ一つは、確度の問題としてもそれまでのデータが先ほど申しましたように悪過ぎたという問題があります。ただ、日常生活上、たとえば、正座、それから歩様――歩行の姿をかなり改善させる努力を私たち自身も自主検診医師団としても行っておりますから、そういう意味で言えば、全くそのあれがないという形ではございません。あのとき報告したのは、これまでのデータを一応まとめて報告したという段階の問題ですから、そのように一応お受け取りいただきたいと思います。
#78
○小平芳平君 中間広筋型及び混合型では手術で完全に治すということはできませんと、こういう御趣旨でよろしゅうございますか。
#79
○参考人(今井重信君) かなり私は困難であるというふうに考えております。
#80
○小平芳平君 そこで、私は、そういう学問的なことは全然わかりませんが、医学上のことはわかりませんが、手術を受けてかえって悪くなったという、なぜきわめて悪くなったかということは私たちにはわかりかねるのですけれども、非常に気の毒な例が身近に発生いたしまして、それで非常にかわいそうだと思っている一人でございます。ところが、厚生省の大腿四頭筋拘縮症研究班の報告書というのがございまして、この五には、「本症の予後」としまして「重症例を放置すれば膝変形、」これずっと書いておりまして、「幼児期から適切な治療を行えば、予後は一般に可良である。」と言ってよいというふうに言われると、何か適切な治療さえ行えば予後はよろしい。じゃ、いま悪いというのは適切な治療をやらなかったせいかというふうな疑いを持うのですが、この点につきまして今井先生もしくは宮田先生の御見解を承りたい。
#81
○参考人(今井重信君) その場合に二つ問題がございます。
 一つは、手術方法という形の中でいわゆる技術的な問題として問題になっている点ですね。たとえば、先ほど申しましたように、直筋型、広筋型、それから私たちがそういうふうに呼んでいる混合型、それぞれのタイプによってやはりいままでの段階においても一番それぞれに適した、より適した手術法というのは当然あり得るわけですね。そのまま成績がどの程度であるかということは一応先ほど申しましたように別にしたとしましても、あるタイプにある手術をしても全く治らないだろうというふうなことを逆にやってきたという結果、一つは全く同じ、ないしは前よりも進行ないしは進行をとめられなかったということはあると思います。
 それからもう一つは、やはり筋肉の一部を切るないしは切除するわけですから、これは筋力の問題が出てきます。筋肉の力の問題が出てきます。それから手術の後、必然的に何らかの形で起こる新たな侵襲、出血だとか、皮膚との癒着等々の問題、それから最終的には見かけ上の問題、女のお子さんでひざの部分にかなり大きな傷が残るというのは、これは私は機能上の問題だけじゃなくて、それも含めて予後の中に入れなければならないだろうというふうに考えております。そういう意味で、そういう点も考慮した場合に、手術後ひざは曲るようになったけれども力が弱くなって階段等々が上りにくくなったというふうな、それで、つかまらなければ上れないというふうな結果に終わっているというケースもございますし、それから一つ、ある大学病院において広範な瘢痕切除というものを行ったがために、大腿部の上からひざのところまでS字状の大きな瘢痕を残す、非常に醜い瘢痕を残すというような結果に終わっている人もあります。この場合は、その人がある程度歩様がたとえよくなったとしても、ここに残された大きい傷跡というのはかなり評価の中においてはやはりマイナス点にならざるを得ないはずだと。そういうのも含めて悪化したという点があるのではないかとというふうに思います。
#82
○小平芳平君 西中山参考人に簡単で結構でございますから伺いたいのですが、私がお目にかかった被害者の方、患者さんは、まさしくいま今井先生のおっしゃった跡がついている。何というのですか、ミミズばれといいますか、そういう手術の生々しい跡が残った、と同時に、幾らかは歩けた足が全く曲がらなくなったという、そういうお話でございます。西中山さんがいろいろな方と接触をしていらっしゃる中で、これは確かによくなった、手術なり治療の結果大変よくなったというような例を御存じかどうか、あるいは手術してかえって悪くなったというような例を御存じか、概してどちらの方が多く接しておられますか。
#83
○参考人(西中山秀雄君) 私は機会あるごとに自主検診へ出席しております。その場所で見た限りでは、よくなったという例はまだ一度も見たことはありません。悪くなった例はたくさん見ております。ましてや、足を治すために今度は三角筋をやられてしまった、こういった例もたくさんあります。よくなった例はいままで一つも見ておりません。
#84
○小平芳平君 それでは、最後に坂上先生に伺いたいのですが、先ほど日本医師会長に報告されたこの報告書の中で御指摘のありました「止むを得ず注射が多用される傾向もあるという実地医家の声もあった。」という点でございますが、この点は、報告書は、そういう話があったということを報告されたのであって、少なくとも原因については、こうした子供さんが大変な一生涯背負っていかなくてはならない被害を受けたというそういう原因については、検討委員会としましても、要するに国民の側に責任を持たせようという御趣旨じゃないと思うのですね。といいますことは、私も病気になれば病院へ行きますが、しかし、こちらからきょうは注射にしてくれとか、きょうは飲み薬にしてくれとか、あるいは飲み薬はあれにしろ、これにしろなんて、そういう余地はないのじゃないでしょうか。私の経験ではまずそういうことはない。したがいまして、国民の側にそういう希望があるという声がお医者さんの間にあったということを指摘しただけであって、実際には先ほど参考人の方が述べられました乱注射というようなことはもう一刻も早くとめなくちゃならないというところに主眼があるかと思いますが、いかがでしょう。
#85
○参考人(坂上正道君) 先生のおっしゃるとおりでございます。
 それからあえて宮田さんがこの場でおっしゃいましたので、国会の委員会であるこの場で訂正をさせていただきますが、先ほどの、やむを得ず注射が多用される傾向が医療を受ける側からの希望からされたという実地医家の声もあったというこの一項は、決して委員会の意見ではないのでございます。よくお読みいただければわかりますように、第二十九回臨床小児医学懇話会という会がございまして、これは実地医家のお立場の方が自己研修のためになさっておられる懇話会でございまして、その資料の中で御調査をなさいました注射部位の調査ともどもいま言った意見があったということをただ書いただけでございまして、委員会の意見ではございません。
#86
○沓脱タケ子君 それでは、大変短い時間でございますので簡単にお伺いをしたいのですが、最初にお伺いをしたいのは、先ほど宮田参考人のお話の中で、大阪での幼稚園や保育所の調査の結果は一三%も患児があったというふうなことで、大変大量発生をしているのではないかというふうに心配をするわけですけれども、厚生省に最初お伺いしたいのですが、全国各都道府県に対して一月末の中間報告を報告をせよということで御通知を出しておられるようでございますが、中間報告ではどの程度の数字が挙がっているか、最初にお伺いしておきたい。
#87
○説明員(本田正君) ことしの一月二十八日に、いま仰せいただきましたように、とりあえず一月末現在で報告を求めているわけでございます。本来ならば、三月になりませんと保健所等における乳幼児の健康診査あるいは三歳児健診その他が終わらないわけでございますが、重要な問題でございますので報告を求めております。ただ、現在まだ報告のない県が数県ございまして集計中ではございますけれども、ざっと、これは感じでまことに悪うございますけれども、もう数日のうちには出ると思いますが、ざっとした、もう本当の感じも若干含めまして、現在一月末ではAランクに属する者が七百名ちょっとぐらいになるのじゃなかろうかと思っております。それからBランクでは千名前後だろうと存じます。それからこれは大腿四頭筋拘縮症とは診定できないCクラスでございますが、これが約三千名あるいは三千四、五百ぐらいの見当でございます。あるいは今後報告のあるところを足しまして若干数字は変わってくると思いますが、大体そういう見当じゃなかろうかと存じております。
#88
○沓脱タケ子君 これは調査の方法等にも問題があろうということは先ほどのすでに論議で明らかになっておりますので、数値が明らかになりましたら御報告をいただきたい。
 時間がありませんので次に入りますが、実は、私も、昨年の八月にたまたま富山県で集団発生が発見をされたということで問題になっておりますときに現地へ参りまして、患者さんも拝見をしたり、家族の御両親の皆さん方の御意見も伺ったり、そして治療に当たっておられる先生方の御意見もお伺いをしてまいったわけでございます。そういう中で、特に親御さん、家族の皆さん方が主張なさっておられる御要望というのは当然だと思うのですね。何といいましても治療方法の確立が患児を抱えている親にとってはまず第一に何とかしてほしいということだと思うのです。それからもう一つは、同時に、まあ何をしていいのかわからないから、相当むだな治療費を使ってきている。いよいよ的確な治療を行うという場合の治療費についてのどうしても無料化をやってほしいという御要望、あるいは再発を、再発というか、今後の発生予防ですね、これについて当然国としても責任を持ってほしいというふうな御意見、それから子供たちの将来が大変不安だ、将来に対する保障の問題、これなどを含めまして御要望を直接伺いましたし、また、会としての請願についても拝見をいたしておりますが、私ども当然だというふうに思っておるわけでございます。
 そこで、ちょっとお伺いをしておきたいと思いますのは、西中山参考人にまずお伺いをしたいのですけれども、いまの治療法の問題は後で伺いたいと思うのですけれども、治療をする場合に、いまの体制では育成医療等が活用されるという範囲にとどまっているようなんでございますけれども、こういうふうに先ほどからのお話でも明らかなように全国的に患者さんが広がってきている。そうなりますと、育成医療を受けられる病院というのはたくさんないのですね。そういう点で、病院の医療費の問題、育成医療ですから親の所得に応じて一部負担金がつくというふうな問題、それから交通費の問題、親の滞在費の問題、そういった点についてはまあ大変な負担になってこようかと思うのですけれども、そういう点についてどういうふうにお考えになっておられるか。これはもう当然無料にすべきだというふうに思うのですけれども、最初に厚生省の見解を聞きましょうか。厚生省はこういった要望についてどういうふうに対処なさるおつもりか、先にお聞きしましょう。
#89
○説明員(本田正君) 育成医療の制度は、いま仰せいただきましたように、身体障害者に対します特に手術等を要する場合に医療費を補う制度でございます。これは児童福祉法に基づく他の制度と同様に所得制限がついているのは御指摘のとおりでございますが、特にこの疾病のためにこの所得制限を撤廃するということは、この法律のたてまえからできないのが現状でございます。
#90
○参考人(西中山秀雄君) ただいま先生の仰せられたとおりに、やはり手術費だけなんです。付き添いのお金、その他交通費一切、これは出ません。これは全部親の負担です。このようなつくられた患者でございますので、ぜひともこれは国あるいは県あるいはつくった医者なり、これは完全に無料化をさせていただきたいと思っております。
#91
○沓脱タケ子君 厚生省はよう聞いておいてくださいよ。
 それで、将来の保障の問題ですよ。これも、厚生省でいまお考えになっておられるのは、いまの患児の方が二十を過ぎたら障害福祉年金、あるいはいまの小さい間は特別児童扶養手当に該当するとおっしゃるわけですけれども、金額の多少は別といたしまして、このいわゆる四頭筋拘縮症あるいは短縮症、そういう患者さんが該当する人が一体どのくらいおるか、いまの基準でですよ。そういう点についてのお考えはどうですか。私は、いまのこのままの制度ではごく重症の方を除いてはほとんど該当しないのじゃないかというふうなことになると思うので、これでは親御さんの要求とは非常に大きく施策としては外れるのじゃないかというふうに思うのですが、この点については、厚生省、どうですか。
#92
○説明員(本田正君) ちょっと私の所管でもございませんが、知っている範囲で、特別児童扶養手当等は、別に身障者のランクづけに従いまして別の観点から適用されているわけでございます。それともう一つ、患者数の実態の把握につきましては、現在、先ほど申し上げましたように、保健所におきます乳幼児健診、三歳児健診、あるいは療育相談、そういったところで継続実施中でございまして、これはずっと将来ともやっていかなくちゃいけないと思いますが、実施中でございます。患者数さえも、一月末現在でさえも先ほど申し上げましたような状態でございまして、これから時期時期に応じてその把握ができる患者数は出てくると思います。そういうこともございます。したがいまして、児童扶養手当等は観点が別の判断に立つと思いますので、現状ここでどれくらいの患者がそれの該当を受けるかということは申し上げられませんので、お含みおきいただきたいと思います。
#93
○沓脱タケ子君 これは私いろいろ検討してみましたけれども、治療によって一定の病状が軽快をいたしますと、ほとんど該当しない。特に重病の方を除いてはほとんど該当しないという結果が起こるというふうに思いますので、これらの将来保障の問題については当然検討さるべき課題だというふうに思うわけです。
 それから時間がありませんのでもう一つお伺いをいたしたいのは、親御さんにとっていま患児を抱えておる場合に治療の問題というのは最大の関心事だと思うのです。先ほどからのお話を伺っておりますと、保坂参考人は相当な治癒例といいますか、高い効果を期待できるというふうな御報告があり、そして今井参考人のお話ではなかなか困難だというふうなことになってまいりますと、親の立場にとっては大変暗い見通ししか持てないと思うのですけれども、そういう点で、四月の学会でそういった点での御検討をいただいている先生方の業績等が集中的に報告をされて、一定の治療に対する見通しというものが確立できるかどうか、その点、これは見通しはどうなんだろうかという点、これは手術方法もいろいろな各地でやられていると思いますが、そういった点が集中的に出されてまいりますと、検討の結果が一定の成果というふうな形で治療についての見通しが持てるようになるかどうか、そういった点で保坂参考人と今井参考人から、簡単で結構ですので、時間がありませんので、ひとつよろしくお願いしたいと思います。
#94
○参考人(保坂武雄君) 現在、瘢痕の部に手をつけた手術を行っているところは、笠井先生のところとそれから私のところではないかと思います。一般に、整形外科のお医者さんは、瘢痕の部いわゆる筋肉の部に手を加えると非常に筋力が低下するということで、普通そこに手をつけないわけです。しかし、私たちは現在手術した患者についてすべて筋力の測定をしております。余り――余りと言ってはなんですが、それほど長期でない時期にすべて筋肉はもとに回復しているという結果が出ております。しかし、これらは私たちの結果が果たしてみんなに行き渡るか、あるいは十分認められるかは、これからのいろいろな検討の結果によるものと思います。
 以上です。
#95
○参考人(今井重信君) 私たちも、実は、自主検診医師団として、少なくともこういう場合にこういう時期に手術すればそれからこういう方法でやれば中でもとにかくいいというものについて、できるだけいままで検診で発見されました内容を整理しているわけですけれども、その中で、一応年齢的に大体六歳を一つの境にいたしまして、六歳以降に手術した方については、先ほど全体としては悪い中ではかなり成績としては比較すればいい成績を持っているという点。それから、確かに手術方法といたしまして、私も実は先ほどから紹介されている笠井先生にも直接会ってお話を伺っておるわけですけれども、型、いわゆるタイプを選んでそれに見合った手術をするということが一つの今後のやはり展望ではないかというふうに考えております。
 それからもう一つは、やはり手術後の一種のリハビリテーションですね。その点では、いままでかなりその医療機関医療機関に応じた形でもちろん行っていたという点がありますが、やはり、いままで私たちのデータでも、手術をした方の分布を見ますと、ほとんどがその七一%までは五歳以下の方です。これは手術後いろいろな形のリハビリテーションというのは、一種の本人のやる努力というか、それがかなり影響してくる場面ですので、そういう意味で、先ほど言ったデータ上の六歳以下の方が比較的いいということも、それと関連している可能性もあります。ですから、私は、いままでの内容について、手術について、全般的な問題としてはそう楽観できない、特にタイプによってはいまの段階でもかなりむずかしい問題があるということがありますが、その中でも一応比較しまして、時期の選び方、タイプによっての手術の選び方等々は、ある程度より改善していく方向には近づけるのではないかという点は、この場でも申し上げることができるというふうに考えております。ただ、それがこの問題を根本的に解決する一つの方法であるのかないのか、その点についてはあれですが、まあその位置づけは別といたしまして、この前に一応自主検診医師団としての治療についての適応の問題については、まあ一種の自主検診医師団内部の統一見解として発表いたしましたので、そちらに譲りたいと思います。
#96
○沓脱タケ子君 時間がありませんので済みませんけれども、坂上参考人にお伺いをしたいと思っておるのですが、先ほどからのお話を総合的に皆さんのお話を拝聴しておりますと、一つはこういった病気が発生した原因、それから今後起こさないための保障、そういった点が一番重要な点にきていると思うのですけれども、そこで一つ私はぜひお聞きをしておきたいなあと思いますのは、注射という医療行為によって起こったというふうな患者さんというのは九九・何%までだと、大部分注射という医療行為によってこういう疾患が起こってきた。しかも、その注射の回数というのが、先ほどのお話でも二回以上からもう発症が見られているのですね。医師会の答申案を見ましても、六回、七回、八回ぐらいでも重症の患者さんが起こっておるというふうな状況になってまいります。
 もう一つ心配なのは、いま四頭筋短縮症が問題になっておりますけれども、注射部位を変えたら、臀部の臀筋の短縮も起こる、あるいは三角筋も起こるということになってまいりますと、現在の医療行為の中の注射という医療行為が比較的安易に行われているという問題、こういった問題を含めて、日本の医療のあり方についてやはり根本的に考え直してみなきゃならないという段階にきているのではないかというふうに思うのですよね。
 それから先ほど冒頭に坂上参考人からも言われましたけれども、私も拝見をいたしましたが、東北大学の赤石先生の御報告によりましても、薬剤の中の溶血性の非常に高い薬が筋肉注射用の薬に非常に多いというふうな問題、そういった点の問題なども提起されているというふうなこと、そういった点を含めまして、私は薬剤の問題というのはひとつ究明をするべき課題になっておるのではないかというふうに思うのです。
 その点と、それからもう一つ、小児科医というのがいま日本では非常に少ないんですね。小児科専門医というのが、私が伺っているのでは、四、五千人しかいないんでしょう。なぜ日本で小児科専門医というのがそんなに少なくなっているのだろうかというのは、やはり日本のいまの医療行政上の一つのひずみのあらわれだというふうに思っているわけですけれども、そういう中で特に宮田参考人もお触れになりました診療行為が注射という診療行為をやらなかったら医療経営が成り立たないというふうないまの診療報酬の体系、そういった問題が非常に関連をしているというふうなことが話としてはうかがえたわけですよ。そういう中で特に私はそのお話を伺って感じましたのは、小児科分野での診療行為と大人に対する診療行為との診療報酬の比較をいたしますと、小児科分野での診療行為というのが大人の診療行為に対して三分の一か、あるいは事によると四分の一程度の診療報酬にしかならない、現行でですよ。乱注射だと言われている現行の治療の水準でそうだと。これが注射という医療行為を見直すというふうな段階になってまいりますと、いまの診療報酬体系のままでは……
#97
○委員長(山崎昇君) 簡潔にしてください。
#98
○沓脱タケ子君 基本的には解決できないという段階に来るのじゃないかという点で、そういった点の問題点について簡潔にひとつ御意見だけ伺っておきたい。
#99
○参考人(坂上正道君) どうも、問題の御指摘、ありがとうございました。まことにそのとおりでございます。
 医療のシステムにつきましては、大きい問題も含めまして、また具体的な問題に至りますまで、ひずみが多くございまして、日本の医療というものは、近代化ということのみならず、もっとシステムそのものから見直す必要がございますね。ということは、実地医家、それからセンター病院、大学病院というふうなものとの関連におきましてもそういう未熟性がございます。
 それから小児医療につきましては、もう御指摘いただきましてまことに感謝でございますが、まことに日本におきましては小児医療というものが顧みられておりませんで、諸外国に比べましても小児病院というようなものが全く少ない。普通ならばゼネラルホスピタルがあるところには必ず小児病院があるというのが本当でございますが、そういうものがされていないということで、小児医療のひずみが医療のひずみを倍加いたしましてそれにしわ寄せをしているという現状にございます。そこに大きな望みをかけて小児科医になります医者が少のうございまして、御指摘のとおり日本小児科学会は約五千の会員であるということで、欧米先進国に比べますと小児科医の数におきまして比率におきまして約四分の一ぐらいであるという実情にございます。
 それから社会保険上の処遇につきましては、小児加算というものがややされてきておりますけれども、これが処置料あるいは処方というふうな問題につきましては全く小児科の加算がされておりませんで、小児医療が社会保険の処遇上どうもぐあいが悪いという点がございます。このことにつきましては、三月十六日までに要望書をつくりましてこの委員会にも提出さしていただく予定になっておりますので、よろしく御高配をお願いしたいと思います。
#100
○案納勝君 私はいままで各参考人の意見を拝聴いたして重複しないようにお聞きをいたしますので、簡潔に御答弁いただきたいと思います。
 まず最初に、坂上参考人ですが、坂上さんが大腿四頭筋短縮症の検討委員会の答申なるものを委員長として日本医師会長に答申をされております。私は、医師会の責任がどうだ、あるいはどこの責任がどうだといま言っているときではない、それは親の会の皆さんも一緒に早急にこういうつくられていく身障者の皆さんをこれ以上拡大をしないというこれが今日の患者を一日も早く完全にできるだけ可能な限り治すということに全力をあげるときだと思います。その際に私は必要なのは、きょうは厚生省の役人に対して物を言うときじゃありません。後日改めてやりますが、その意味で少しく厳しい言い方になるかもしれません、御容赦をいただきたいのですが、私はこの答申の中に、あなたが先ほど言われたように、医者のモラルと研さんが必要だと言われる。それだけ医者の責任というのは重大なんですね。私たちが病気になりますと医者に診療を受ける、検査を受ける、必要なら投薬、手術を受ける、そして自分の病気を治す。医者にゆだねるわけですよ。ところが、実際に医者の医療で手術をされる、投薬をされる、注射をされることによって、事実上障害を生じたり、しばしば生命を奪われるというふうなこと、医者の手によって体が壊される、廃人になる、これはオーバーな言い方です、そういうことが多いわけですね。たとえば相当前になりますが、ジフテリアの予防注射で百数十人死んだとか、これはまあワクチンのミス、あるいは、先ほど問題になりました予防注射、あるいは実際にスモンやサリドマイドのように薬によって健康が害される。私はいままで質問を聞いておりましたが、その意味で医者の責任はきわめて重大だ。この答申の中にそういう医者の立場、責任というのをある意味では明確にすべきじゃないのか、いま。もちろん答申の中で書いてはないからあれですが、いま医者としてそのことを私はやっぱり自覚をすべきときじゃないのか、その上に立ってどうやっていまのこういう状態を解消するのか、政府の行政上の責任はどこにあるのかということを考えるべきである、私はこういうふうに思いますが、坂上さん、その点について。
#101
○参考人(坂上正道君) 御指摘のとおりでございます。医師といたしましては、そういう専門職ということのみならず、人の命に関係するそういう職業に携わるという意味からいきましても、単なる医者の技術ではなくて、哲学、倫理、場合によっては宗教というようなものを包含した意味での医の構造の上に立って自分の位置を決めるべきであるというふうに考えております。ですから、専門技術の上のみでなく、そういう立場においても医者というものは自己規制をより深めていくべきであるというふうに自戒をしております。ただ、そういう観念論だけではなくて、私が申し上げたいことは、この委員会が組織されましたときに率直に思いましたことは、今後こういう本症が発生しては困るという予防措置をしかもできるだけ早く可能な限り明確に出そうという点でございます。そして、治療基準及びその治療の方法につきましては、厚生省の方で別な委員会を組織するであろう、あるいは作業をするであろうという前提に立ちまして、当座具体的な医師の責任においてそういう予防の基準、今後発生しないような状況をつくろうという意味でこの委員会を運営したわけでございます。
#102
○案納勝君 これはあなたに代表して言っているような、いずれにしても、医者として、今回の問題、この種の問題については、責任はお感じになるわけですね。
#103
○参考人(坂上正道君) また繰り返しになりますけれども、私は一個人としては十分自己規制をいたすつもりでございます。しかし、本症についての発生原因については、先ほど来申しておりますように、薬の問題、医療のひずみの問題、さまざまな問題がございますから、そういう全般的な問題の解決の方がより根本的な解決であるというふうに存じております。
#104
○案納勝君 あなたのこの報告書の中に薬の問題が提起されています。ここでは簡単にお聞きしますが、その薬の成分に問題があるのか、薬の使い方あるいは注射の仕方に原因があるのか、どちらにあるのですか。
#105
○参考人(坂上正道君) 全部に問題がございます。薬の成分、それから薬の溶解剤、それから安定剤、それから部位、全部を含めて問題があろうかと思います。
#106
○案納勝君 それでは、もう一回これは宮田先生にお尋ねをしますが、いま先ほどからの質疑の段階で津山先生は九九・九%注射にある、いまもありましたように、いずれにしても注射、そして、薬によって、その使い方あるいは注射の仕方によって患者が発生している、こういうことになりますと、私は、よく言われるんですが、はっきり医原病だということが規定できる。この医原病という医学用語ですが、もう熟語になっていると思いますが、先生の立場でそのことを言い切れるかどうか、ひとつお伺いいたします。
#107
○参考人(宮田雄祐君) 確かに四頭筋短縮症の発生には薬物が持つ筋肉の細胞の障害ということはございます。ただ、一つ大事なことは、諸外国におきましても同じような薬物を使いながら治療をしておるわけでございます。わが国においても同じような薬物を使いながらの治療でございますが、きわめて多数のこういう患者が発生しておるというところが最も重要な医療行為の内容に対する問題であろうかと思うのです。先ほど私が資料といたしまして見ていただきましたのは、通常はかぜにはこういった抗生物質並びに解熱剤をそう簡単に注射するものではないというようなことが書いてございます。つまり、適正な医療というものが十分に行われなくて多発をしたきらいがある。たとえ本数が少なくてもという声もございましたけれども、その少ないものが救命し得るかどうかというものに本当に使われたのかどうか、その辺がきわめて私どもには疑問視される問題でございます。盲腸を手術する場合には、やはり障害を覚悟の上で皮膚、筋肉の切開を行います。それと同じような立場で生命というものを守るべく筋注がなされたということでありましたら、これはまだ多くの方々の理解もできると思うのです。もちろんそれによって起こった短縮症はこれは全然責任がないものであるというのではなくて、先ほど言いましたように、国民の健康をみんなで守らねばならない、個人一人では守れるものではないという立場からお互いに助け合わなければこれはできないということを考えれば、こういう方々もそれはそれなりの施策があるかと存じますが、こういう点で私はいろいろなところに問題があるということでございますけれども、やはり主たる問題は適正を欠く医療によって行った問題であろうと、そのように理解をいたしております。
#108
○案納勝君 時間も余りありませんから大事なところだけお聞きをしておきます。
 一つは、これは坂上先生にちょっとお尋ねします。いまこのように短縮症が起こってきて、学会で取り上げられ、そして医師会で報告をされる、こういう場合に、早急に再発を防ぐための指導は、今日の段階で学会がやっているのか、医師会がやっているのか、厚生省がやっているのか、この辺はどうですか。
#109
○参考人(坂上正道君) 非常にからかった意味じゃなくてその全部だと思いますが、ただ、医師会と学会との関連で申し上げますと、日本医学会というものが医師会との密着な関係にございまして、これが医師会の性格の学術的な面をリードバックしているというふうに理解しておりますので、そういう意味では日本医師会の実地医家の立場と学術とがからみ合っている、そういう場の中でこの問題に関しても討議がされ、また案が生まれたのだというふうに理解しております。
#110
○案納勝君 それじゃ、現実の問題と医者に対する指導というものは、行政機関の厚生省の場合、どの程度のことを行っているんですか。
#111
○参考人(坂上正道君) 私は厚生省の行政の立場はよく存じませんですけれども、ただ学会から出ている予防接種の問題その他要望事項を出しまして、その意見を各部門にぶつけて行政上の立案をお願いしているというような関係で、学問の世界と行政とがやはりいい方向に向かって策を生むように動いておりますし、私も動くことに役立とうとしているつもりでございます。
#112
○案納勝君 いずれにしても、これは席を改めてやることになりますが、今井先生それから西中山さんにお伺いしますが、厚生省がいま検診を全国でやっていますね、その検診基準、それから先ほど問題に出された育成医療について指導していますね、この指導、たとえば乳幼児及び三歳集団健診、これで果たして今日における身体障害、要するにこの四頭筋短縮症の検診で妥当なのか、それで十分に実態がつかめると判断をされますか。その点が第一点。
 それからさらに、それをもとにして治癒と予防というものがそれらの中から果たして完全にといいますか、十分な体制がとれると判断をされますか。
 それから最後に西中山さんにお尋ねをしますが、厚生省が今日まであなたたちの運動の中で、行政官庁として、健康を守るべき官庁として、何をしてきましたか、何を具体的に措置をしたか、これらについてお答えをいただきたい。
 以上で終わります。
#113
○参考人(今井重信君) 先ほど私は広島のデータを聞かせていただきまして実は非常に愕然としたわけでございますけれども、もちろん、対象とした患者さんが、たとえば全くの学校の児童全員を対象にしてやったとか、そういうようなものであれば話はまた少し違ってくると思います。けれども、検診に私的に集まられた人の中から二十名というのは、ちょっとこれはおかしいというふうに私は考えております。
 そういう意味でもそうですし、それから、先ほど言いましたように、診断基準の中でやはり九十度という線をあれいたしまして、その九十度以上曲がる子供については、どちらかというと、大腿四頭筋短縮症としての評価というか、診断としての評価というものを余り大きく重視してないきらいがある、その点の問題。それと、先ほど申しましたけれども、足自身は曲がるけれども、現在の段階でしこり、硬結等があるという問題について、やはり、私は、この人たちも非常に大きな問題を持っているだろう、経過を必ず追わなければならないというふうに考えております。そういう意味で、現在の厚生省の調査において現在の実態が把握できるというふうには考えておりません。
 私たちが実は自主検診という形で行っているのは、もちろん、これは厚生省よりも先に行ってきたわけですが、これは私たち自主検診医師団がやっているのじゃなくて、親の会の患者さんないし家族自体がやっているのに私たちが協力しているという関係でございます。これは、やはり、自分の子供さん、それから自分自身が一つの疾患を発見し、それを逆に治療していくというものの中でこういうものを発見していくという機構をつくらないとだめだろうというふうに私は根本的には考えております。
 それから治療体制の問題ですけれども、この問題についても、いま現在、私、実は整形外科学会の会員といたしましても、その治療体制が十分に整形外科医においてとられているというふうには思いません。そういう意味で、今回の四月八日から十日にかけて行われる学会においては、この問題について、できれば親の会の方も、それからできればこの社労委に属しておられる議員の先生方も含めて、この問題についてやはり学会の場で公開してやる必要があるだろう。これは、いままで医師がその問題を明確にしなかったものを今回の自主検診ということを通じて逆に親御さんないし患者さんの側からこの問題が明確にされてきたという歴史的経過から言っても、これは当然のことであるというふうに考えております。ですから、そういう中でやはり治療体制をつくっていく必要があるのではないか。だから、ある意味では親の会ないし患者さんの側に立った形で治療体制をつくらないと、これは絶対にいろいろな問題が出てくるであろうというふうに私は考えております。
#114
○参考人(西中山秀雄君) 私どもは、厚生省に対し、種々要求もいたし、要望もいたしてきました。ところが、できてきたものは、調査団の二案つくったこと、それから診療基準ができたことだけです、
 もう一つ、四頭筋に対しての育成医療の適用ということは、あえてこれは四頭筋だけではないと思います。ほかの病気にもこれは適用されていることだと思います。それしかいまのところ厚生省の措置はしてありません。
#115
○柏原ヤス君 いろいろ問題が検討されましたので、二つだけお聞きしてお答えをいただきたいと思います。
 一つは、簡単なことですが、治るのか治らないのかという問題なんです。宮田先生にお会いしましたときに、これは治るんですかとお聞きしたら、治らないんだというふうにおっしゃって、いろいろと御説明をお聞きして、なるほどと私も納得したわけなんです。きょう保坂先生が治るという御発言がございましたので、またこれにはその御意見もあっておっしゃっていることだと思うのです。母親の立場として見れば、一体治るのか治らないのかということがやっぱり一番心配の点だと思うのですね。そういう単純な考えでそれをはっきりしたいと思っている親に聞かれたときに、いまの段階では、宮田先生は治らないという御意見だと、保坂先生は治るという御意見だと、こういうふうに受け取ってよろしいものか、お二人の先生にもう一度簡単なお答えでお答えいただきたいと思います。
#116
○参考人(保坂武雄君) 私たちの手術の成績から見ますと、直筋型の拘縮症は治ると考えたいと思います。中間広筋型のものについても、手術を行いましたけれども、これは非常に慎重に扱いましたところ、非常に成績がよく、数日前に退院しましたが、その方の片方は昔手術をしまして、ひざを伸ばす力が非常に弱く、私たちも再度の手術を思いとどまりました。四頭筋拘縮症の中間広筋型についてはやはり非常に問題があるだろう、しかし手術実施時期について非常に慎重に行えばあるいはいい成績が得られるのではないだろうかというのが私たちの病院での実感でございます。
#117
○参考人(宮田雄祐君) 先ほども少し触れましたように、一たん障害された筋肉が全くもとに戻るということは、これはわれわれの生体の中では不可能なことでございまして、ごく簡単にということになりますというと、やはり本当の意味で治るということはございません。運動機能の障害が手術によってある程度回復すると理解すべきであろうと思うのです。
 以上です。
#118
○柏原ヤス君 もう一つ、これは大変御熱心な自主検診の先生方が中間報告をなさっているこのパンフレット、それで御説明も先生にお聞きしたのですけれども、そのときにリハビリテーションの問題が取り上げられております。これは私は今後の問題として非常に期待を持っておるわけなんです。ところが、そこに現状を維持することを目的としたリハビリテーション体操を行うと、やはりこの病気は現状を維持する程度のリハビリテーションきりできないのかということなんですね。
 それから方法は自主検診医師団でつくってそうして今後やっていくというお話ですけれども、いままでマッサージ屋さんに一生懸命もんでもらったというお話などは患者さんから聞いておりますけれども、そういう意味のマッサージじゃなくて、非常に進んだリハビリテーションの研究対象として今後大いに成果を上げていただきたいと思いますので、その点をちょっとお聞きしておきたいと思います。
#119
○参考人(今井重信君) そのリハビリテーションの効果については、手術後の効果という点はちょっと差しおきまして、一応現在のところ最終的にはまだ未定というふうに考えておいてほしいと思うのです。検診を行いまして親御さんから直接いろいろなことを聞きまして、非常に年少者、いわゆる一歳とか一歳未満、いわゆるゼロ歳児ですね、の場合に、ある程度のリハビリテーション、いわゆる先ほど申しましたマッサージによる効果というのはある程度ございます。ただし、それは、それをやめますと、大抵またもとに戻っております。そういうことが多いということです。
 それから先ほどの中間報告を出したその時点の問題があるんですが、その段階で、たとえば他動的にというか、いわゆるほかの方ですね、親御さんにしろ、それからマッサージ、特にマッサージの場合に、強制的に非常に強い力で子供が泣くほどやるということがよく行われてきたのですが、それはやはり基本的には間違いであろう。それによって子供に精神的な負担を与えるということと同時に、ひざそのものに器質的な変化をもたらしやすいということもございますし、そういう意味では、子供が体操とかスポーツとかそういうふうな中で自主的にやり得る範囲の中で、そういう意味ではいわゆる体操療法ですね、という形でその内容をできるだけ考えていきたいというふうに思っております。
#120
○柄谷道一君 先生方に対する追及という意味ではなくて、むしろ一日も早くより前向きの対策を発見したい、そういう視点から率直に御質問を申し上げたいと思います。なお、十分間に質問時間が限定されておりますので、簡潔にお答えを願いたいと思います。
 まず、今井参考人にお伺いするわけですが、ただいままで伺っておりますと、一つには同じ薬物を使いながら外国にはこの種の患者が余り多く発生をしていない、二つには国民皆保険が実現された昭和三十五年ごろから医療に対する安易さということも何かの相関関係があるのではないか、三つ目には地域によって集団発生をしている、四つ目には回数とこれまた相関的関係がある、こういう証言を聞きますと、多分にこの原因はやはり注射というか乱注射に大部分の原因がある、こういうふうに理解して差し支えございませんか。
#121
○参考人(今井重信君) そのとおりでございます。
#122
○柄谷道一君 宮田参考人も同じでございますか。
#123
○参考人(宮田雄祐君) はい、全く同じでございます。
#124
○柄谷道一君 もちろん、この問題の解決には、診療報酬体系の根本的改正とか、厚生行政の従来えてして立ちおくれておったものの姿勢を転換させるとか、医療供給体制、特にわが国の場合に小児医療と老人医療というこの二面が非常におくれをとっているということは指摘されておるところでございますが、坂上参考人にお伺いしたいと思います。
 医師会に答申されました文面を読みますと、筋肉注射に関する基礎的研究、局所反応なり薬理学的検討そのものが欠如しておったと、さらに、特に小児に対する筋肉注射に関しては、筋肉の病態生理学的、組織学的検討、解明への努力が行われていなかったということが問題点として指摘されているわけでございます。いまお二人の先生からそのような発言をいただいたわけでございますが、もちろん坂上先生のように筋肉注射というものについてきわめて慎重な配慮を加えられたお医者さんがあることは十分に評価するわけでございますが、地域的に多発しているというこの事実からいたしますと、やはり、全部の医師ではございませんけれども、一部の医師における乱注射というものがこの要因であるということと受け取めてよろしゅうございますか。
 さらに、先生は薬剤という点を指摘されたわけでございますが、これも私は素人考えでございますが、新たに開発された医薬品、言うならば薬剤というものがこの要因として考えられるということも理解できるわけでございますが、これはかぜとか下痢とか一般に昭和二十一年当初から使用されてきた薬剤でございます。したがいまして、もちろん、医師、学会、厚生省が相互に補完しつつこれらの予防措置は講ぜられなければならなかった。どこ一つに責任があるという問題ではございませんが、薬剤の性格からしてやはり私は乱注射に主たる原因があると考えますが、この点、坂上先生の御所見を伺いたいと思います。
#125
○参考人(坂上正道君) 注射の多用が原因であるということはもう否定できないと思います。
 ただ、再々申し上げますように、筋肉に対する薬剤がどんな反応をあらわすかという学問的な根拠がなかったという事実と、筋肉注射の治療基準がまあ教科書レベルでもああいうふうに書かれていたという実情からいって、医者がそういうことをやるのは自分の判断ではない、従来の習慣、しかもかなり妥当性のある習慣の上に立ってやったという面があろうという意味で弁護しているわけでございます。
 それからもう一つ、薬剤のことにつきましては、すでに薬剤学会ですかの注射の基準というものがすでに設定されておりまして、その中にPH、浸透圧がなるべくその生体のものに近いことという条件が七つのうちの二つにあるわけでございます。にもかかわらず、赤石教授御指摘のように、PH及び浸透圧が生体の幅と生理的な幅から非常に外れているものがございまして、しかもこれがかなり日常使われる薬剤、名前を申し上げますとびっくりされるような日常的な薬剤がそういう基準に外れているのでございます。そのために、能書においてもPHその他をはっきり書くようにということが言われ出しまして、最近は書かれておりますけれども、かつては全く能書にも書かれていないのでございます。ですから、新規開発ということのみならず、ふだんから使われている薬剤の能書においてもそういうふうなことを記載することがなかったために医者の方にインフォメーションが入っていなかったという実情はございます。
#126
○柄谷道一君 これは厚生省に一つだけお伺いしたいのですけれども、十月五日、ここに御参加の宮田先生も参加されまして厚生省に対し四つの申し入れをされております。
 第一は、筋肉注射の危険性を明示し、乱注射の自粛を指導すべきである。
 第二は、国は製薬会社に対する指導監督の具体策を示すべきである。
 第三は、原因究明が注射個所の再検討にすり変わっているが、太もも注射を避けろの見解によって他の部位への乱注射にならないよう指導すべきである。
 第四は、安易な手術は二重事故にもなりかねない、一日も早く最良の治療方法を確立し、親の不安を取り除くべきである。
 この四点の申し入れがされていると私は伺っております。そして、この問題につきまして早急に医道審議会を開催いたしましてこれらの問題を取り扱うようにということでございますけれども、当時たしか医道審議会は委員任期交代中で会長すら決まっていなかったというのが実態だろうと思いますが、厚生省は、この要望を受け入れ、その後具体的に医道審議会に諮問をされたのか、それとも、その後医道審議会がこの問題に対して検討されているのか、この点についてお伺いいたします。
#127
○説明員(幸田正孝君) 簡潔にお答えを申し上げますけれども、医道審議会に対しまして諮問はいたしておりません。いま御指摘にございました四項目のうちで注射の問題あるいは手術の問題ということになりますと、これは医療内容そのものの問題でございます。そういう意味で、行政庁でございます厚生省がどこまで指導しあるいは介入をいたすのが適当かどうかという問題があるわけでございまして、こういった問題につきましては、先ほど参考人の諸先生方からいろいろお話のございましたように、私ども、といいますよりも、日本医師会あるいは日本医学会といったようなそれぞれの専門団体もございますし、あるいは各学会もございますので、それらの御意見を十分に拝聴しながら対処をしていくのが適当ではないかというふうに考えているわけでございます。
#128
○柄谷道一君 これに対する私の意見は、また大臣ないし局長に改めて伺う機会をつくりたいと思いますので、これ以上の追及は避けたいと思います。
 次に、研究班が設けられているわけでありますが、特に、本日、広島の事例、そして自主検診医師団の発生のパーセント提示、これを聞いただけでも相当の開きがあるわけでございます。ということになると、現在の診断基準というものが果たして調査のための基準としても適切かどうかという問題点がいま浮かび上がってきたのではないか。さらに、医師会に対する答申なりきょうの発言を聞いておりましても、予防、治療及びフォローアップに対する基準というものについてはなおかつ検討を要する部門が多いことが指摘されたわけでございますが、保坂参考人、研究班としてそれらの問題に対する大体どのあたりにめどをつけて現在研究班の作業が進められているのか、お伺いいたします。
#129
○参考人(保坂武雄君) 私は整形外科の方でございますけれども、整形外科の医者にとってはやはり治療の問題が一番問題でございます。ことしの三月、今月の後半ごろにそれぞれの研究班員から成績、そういうものをまとめて、いずれ厚生省に報告書を提出することになるわけです。
#130
○柄谷道一君 三月いっぱいですか。
#131
○参考人(保坂武雄君) まあ、報告期間は三月いっぱいごろだろうと思っておりますが、できるだけ早くそうしたいと思っております。
#132
○柄谷道一君 時間がありませんので、あと一点だけに問題をしぼります。これに対する意見はまた改めてわれわれとしても真剣に検討し、その対策を立てるべきだと思いますが、その中で診療報酬体系の是正という問題はこの問題と切っても切り離すことのできない大きな原因であろうと、こう思うわけであります。すでに各種審議会がその抜本的改正の方向とそしてこれを審議する中医協のあり方についていろいろの答申、具申を行っているわけでございますが、坂上参考人にお伺いいたしますけれども、現行の機構で果たしていま問題視されているような診療報酬体系の根本改正が進み得る情勢にあるかどうか、この点について率直な御意見をお伺いします。
#133
○参考人(坂上正道君) 大変大きな問題でございますから、私ははっきりしたお答えができないのは当然だと思いますが、ただ、その一角にはべっております一人として申し上げますと、やはり、保険診療が、勘定項目と申しますか、点数そのものの勘定項目の設定の仕方にすでにもう医療のひずみをあらわしているというふうに思っております。と申しますのは、医師の技術料というものの評価が大変低うございまして、薬とか注射とかそういう物によって勘定項目が設定されているというひずみがございますので、ぜひ技術料の方に傾いた決め方をするような方向へ持っていっていただきたいと思います。こういう意見の反映のために、学問の分野からの意見を、学者は象牙の塔の中にこもらずに具体的な問題へも意見を出していくという、そういう自分の体質を開いた姿勢で運営していくということが必要でございまして、身近の小児科学会の中でも私はそういう立場で行動をしているつもりでございますし、今後もいたします。
#134
○委員長(山崎昇君) 他に御発言もなければ、本日の調査はこの程度にとどめます。
 参考人の皆様に一言御礼を申し上げます。
 本日は長時間にわたり貴重な御意見を聞かせていただき、まことにありがとうございました。委員会を代表してここに重ねて厚く御礼を申し上げます。
 委員会は今後皆さん方の意見を参考にいたしまして、この問題解決のために前進していきたいと思います。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後五時三十分散会
ソース: 国立国会図書館
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