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#1
第075回国会 大蔵委員会 第3号
昭和五十年二月四日(火曜日)
    午後六時三十一分開会
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         桧垣徳太郎君
    理 事
                河本嘉久蔵君
                山崎 五郎君
                野々山一三君
                鈴木 一弘君
                栗林 卓司君
    委 員
                嶋崎  均君
                土屋 義彦君
                中西 一郎君
                鳩山威一郎君
                藤田 正明君
                細川 護煕君
                吉田  実君
                大塚  喬君
                寺田 熊雄君
                藤田  進君
                矢追 秀彦君
                近藤 忠孝君
                野末 陳平君
   国務大臣
       大 蔵 大 臣  大平 正芳君
   政府委員
       大蔵政務次官   梶木 又三君
       大蔵大臣官房審
       議官       岩瀬 義郎君
       大蔵省主計局次
       長        辻  敬一君
       大蔵省主税局長  中橋敬次郎君
       大蔵省理財局長  吉瀬 維哉君
       大蔵省銀行局長  高橋 英明君
       国税庁次長    磯辺 律男君
       国税庁直税部長  横井 正美君
       国税庁調査査察
       部長       渡邊 喜一君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        杉本 金馬君
   説明員
       会計検査院事務
       総長       石川 達郎君
       会計検査院事務
       総局第一局長   高橋 保司君
       日本専売公社総
       裁        木村 秀弘君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○租税及び金融等に関する調査
 (財政及び金融等の基本施策に関する件)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(桧垣徳太郎君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。
 租税及び金融等に関する調査を議題といたします。
 前回の委員会において、大平大蔵大臣から聴取いたしました財政及び金融等の基本施策に対し、これより質疑を行います。質疑のある方は順次発言を願います。
#3
○鳩山威一郎君 大変お疲れのところ恐縮でありますが、時間も余りございませんので、特に私は、最近の経済情勢あるいは景気情勢と申しますか、そういった点につきまして、大臣のお考えをお尋ねいたしたいと思います。
 大変、景気情勢も微妙な段階に入っておりますことは、もう新聞紙上毎日載っておるわけでありますが、私は、景気の、インフレと不況の谷間をというか、両方の狭い峰をうまく歩いて行かなければいけないというような表現がよく使われております。私は、そもそもそういう考え方について大変疑問を持っておるものでございます。経済政策として臨む場合に、実際これはインフレに対して対処をするのか、不況に対して対処をするのか、これは政策手段が大変違ってくるわけであります。そういう意味で、その両方の間を縫っていくというような考え方は一体どういう発想であろうか、これはもう根本的な哲学に近い問題になるかと思います。
 私は、今日の経済情勢は、卸売物価につきましては、もう一月は御承知のように〇・三下がった、十一月以降大変鎮静をしてきている。この卸売物価の状況を見て、経済活動の上におきましてインフレーショナリィであるということはもう全くなくなった。問題は、消費者物価にあるのだ。消費者物価に対処する仕方としては、これはいろんな公共料金の問題もありましょう。いろんなコストの要因もありますが、これは経済の、金融あるいは総需要の抑制、こういったものだけで果たして効果的な消費者物価の上昇を抑えるということができるかどうかという点に、根本的に問題があるのではないか。かつてわれわれは、長い間卸売物価はきわめて安定をした経済に立っておりました。そういう時代でも消費者物価は五%あるいは六%の上昇を続けておったわけであります。何ゆえにこの卸売物価が安定し、消費者物価が上がったかというのは、いろいろ生産性の格差の議論等もございます。
 いま、昨日の総評の会議におきます、私は、新聞で拝見をいたしましたが、総評におきましてもこの不況対策というか、失業がこれ以上ふえるということはよくないという考え方をとるに至ったと思っております。今日のこの消費者物価の上昇を抑える手段というものは、これは私は、金融の引き締め、あるいは財政需要を極度に抑えると、こういったことではなかなか解決がむずかしいと思っておるものであります。そして片方で、いまの金融引き締めを続けていった場合には、社会の混乱、あるいは大変な失業問題を起こしていくというやり方では、世の中の人を不幸にするだけではないかと、こういうふうに考えるものでございます。
 で、そういう事態になって、一般にイギリス病と言われているスタグフレーションの時代を迎えるに至りまして、当然そこに所得政策という問題が出てくるわけでありますが、このところ三木新内閣も、所得政策はやりませんと、こういうふうにおっしゃっておるわけであります。で、私は、所得政策というものを、どうも歴代の総理は、賃金を抑制する手段というふうにおとひりなっておるというふうに考えております。そして法律的な規制、所得を法律的に規制するということはやらない、こういうふうに私は理解をしておるのでございます。しかし現実問題として、この所得について政策を持たないで、この今スタグフレーション下の経済問題を処理するわけにいかないんだということは、これはもう御承知のとおりだと思います。ただ、それか所得政策というと賃金の抑制になるのではないか、こういうふうに一般に受け取られますから、私は、政府は言葉を慣重にする意味で所得政策は考えておりませんと、こういうふうにおっしゃっておると思います。しかし問題は、もうすでに失業が多発する事態になった場合に、私どもはこの問題をどうしても考えざるを得ない。一説には、春闘があるから春闘までは金融引き締めは解除にならないだろうというようなことも言われております。しかし、経済は生き物でありますから、春闘がどうあろうと、私は、現状において正しい施策をとられることを切に希望する一人でございます。
 で、今日一般にはこの金融の問題よりもむしろ仕事がないのだ、何とか仕事ができないものがというような声になって、もう非痛な叫びになってきておるわけであります。で、こういうときに、金融上あるいは財政上も公共事業の、何といいますか、繰り延べ分ですか、抑えてある部分がございます。これらについてどういうふうな措置を考えておるか。
 また、これはもう大蔵省の所管ではありませんが、建築の規制等がまだ行われております。この建築の関係は、片方では大変な不況業種になっておる、その不況業種には何らかの救済措置をとらなければならないと、こういうことになっておりながら、片方で大きな建物は建てさせない、あるいは申請したならば、六カ月は待てと、こういうことがいま現に行われておる。また、銀行等の建物につきましても、まだその一般の抑制方針によって銀行が店を建てかえたいと、こういっても建てさせない、こういったことが現に行われておるわけであります。
 これらの点につきまして、いま直ちに政府が、いろいろ御相談もおありでしょうから、いまここでそういった政策の手直しをいたしますということは、私は、御答弁をちょうだいするのは無理かと思いますが、そのお気持ちなりだけでも聞かしていただければ幸いだと思います。
 それから、いま経済政策に対して微調整を加えなければいけないと、こういうことが言われておるわけでありますが、この微調整は、現に窓口指導によりますところの金融の量的な面で考えられておる、こういうふうに私どもは理解をしております。しかし私は、いまこういう経済情勢になった場合に、いまのこの金利水準をそのままにしておいて、量だけは何とか見てやるということは、果たしてそれで済むのかどうか。私は、はっきり金利水準一般、公定歩合も含めてお考えになる時期がきておるというふうに思うのでございます。これはなぜかといいますと、実際の経済情勢に反した金利の高さというものがいろんなひずみを生んでおります。簡単な例で言えば、政府の金融機関から金をぜひ借りたいんだと、いままでは市中銀行から借りていたけれども、政府から借りたほうが金利は安い。そういう意味で政府機関に何とか借りたい。で、片方、中小企業対策として政府の資金を大幅に政府関係金融機関に流します。そうしますと、一般の金融機関から借りているものを、政府の金融機関の方に振りかえて借りたい、こういった要望がうんと出てきております。また、これは国内だけではなくして、外国の資金などは、日本で、大変高利に回るというのは結構だということで、日本にどんどん外国の金を持ってくる。そういうようないろんな現象が起きておる。そういう意味で、やはり銀行がもっと貸付金利を極力下げる。預金金利は大変上がってきておりますから、なかなか下げにくいということが言われております。しかし、いまの経済情勢にマッチした金利水準というものは、私は、明らかに高過ぎるというふうに考えております。そういう意味で微調整という場合に、ただ実際に窓口指導によります資金量だけではなくして、もっと金利水準も直さなければいけない、非常に常識的に考えますと、約一年ちょっと前に公定歩合を九分にしました。これは急ブレーキを踏んだわけであります。急ブレーキを踏んだ状態のまま今日にして、しかも、その異常高の公定歩合のもとで経済がまだまだ、まあ昨年の夏ころの議論では、秋過ぎとかなれば、在庫調整が一巡して自然に景気は戻るというようなことを言っておりました。そういうことはついに実現いたしません。このような高金利のもとでは、なかなか経済が正常化するというのはむずかしい、そういう意味で私は、この総需要抑制を取り外せということを言っているのではないのです。そうではなくして、もっと急ブレーキを正常なブレーキに戻すべきだ、こういうふうに申し上げているわけであります。その正常な状態にしておいて、この総需要を適正に管理をしていくという程度に直しませんと、このブレーキはどんどん効いてしまって、ついに破壊的な現象を来すのではないか、こういった点が一番私は心配でならない。そういう意味で、金利政策という意味では、私は、正常なるブレーキの状態に戻したほうがいいんだと、これがアメリカでも行われ、西ドイツでも行われた対策であります。日本は、まだ総需要抑制の看板を外せないという意味で公定歩合水準を直しておりませんけれども、これは異常に高い水準をそのままにして置くのだ、急ブレーキを踏み続けておるのだ、こういうふうに私は考えざるを得ません。そういう意味で、適度な引き締めを長く続けたほうがいい、これは、これからの日本の経済を考える場合に、適度な引き締め状態を長く続けたほうがいいんだ、いまのような急激な引き締め状態をそのままにおいては、もしこれが解除した場合には、急なまた反動が起こるということが心配をされてならないわけであります。いままでわが国の景気対策は常におくれをとってきた。締める場合も締めおくれた。締めおくれた分を今度は緩めるときに緩めおくれますと、被害は国民全体に及んでしまいます。そういう意味で、景気の好、不況の激しさ、好況のときはものすごく上がってしまう、そのかわり今度は不況がうんと深刻になる、こういうことを繰り返すことが、私は、国民生活の上からも悪いことでありますし、また、そのあおりを食った政界に身を置くわれわれの同士も大変これは困った現象だというふうに考えるものでございます。
 以上、考えておりますことを申し述べたわけでありますが、大蔵大臣といたされまして、特に公定歩合の点につきましては、とうていお話になることはできない問題でありますから、私の希望として聞いていただければ結構でございます。御所見を承ります。
#4
○国務大臣(大平正芳君) いまの経済状況をどう診断するかということでございますが、大変むずかしい仕事でございまして、的確な診断をすることは私の力量を超えたことではないかとおそれております。ただ、鳩山さんも仰せになりましたように、よほど最近に至りまして景気が停滞の色を濃くしてまいったということは私も痛感いたしておるわけでございます。政府におきましても、こういう事態に対して何をなすべきであるかという、また、何をなしてはならないかということにつきましても、寄り寄り相談をいたしておるところでございまして、先週も関係閣僚集まりまして御相談をいたしたわけでございます。その中で、いまお尋ねの件、若干関係がございますので、簡単に答えさせていただきますならば、まず、公共事業の繰り延べ問題、繰り延べをやめて、発注を促進してまいるという問題でございますが、実は、鳩山さんも御承知のように、いままで繰り延べの前に契約の規制というのをやっておったんでございます。これは相当厳しくやっておりまして、いま一般会計、特別会計、政府機関を通じまして、一兆四千五百億余りまだ第四・四半期に残っておるわけでございますので、これをまず消化するということを考えるべきじゃないかと私ども考えておりますが、しかしこれも、消化の促進をやるにいたしましても、中央ばかりじゃなく、地方の関係もございまして、いろいろの条件を整えていかなければなりませんので、いまそういう点検討をいたしておるところでございます。
 それから、建築規制の問題でございますが、このあたりは、いま各省の間でも仰せのとおりだんだんと建築のプロジェクトが少し減ってまいりまして、特に規制を加える必要がないという議論も出てまいりましておるわけで、特にいまこれをどのように処置していくか、各省の間で御相談をして、早いところ方向を出したいと考えております。
 金利機能を活用しなければ経済政策にならぬじゃないかという御注意でございますが、これは私も仰せのとおり心得て、この間の所信表明もそういうラインで申し上げたつもりでございますが、非常にこの金利政策はむずかしい問題でございますけれども、極力この金利機能が有効に働くような政策的な配慮を考えていかなければならぬのじゃないかと考えておるわけでございます。いずれにいたしましても、非常に世界的なスケールを持ったインフレの中での問題でございまするし、またそれとの関連においての問題でございまするし、またその中で、日本がどうビヘーブするかという問題も、日本の経済政策の問題ばかりでなく、日本の外交政策の問題にもかかわってくる非常にいまの経済政策はむずかしい課題を担っておるわけでございまして、誤りないことを願いながら、また、あなたがおっしゃるように、機を逸したのではいけない、タイムリーに処置しなければならぬことも考えながら、いろいろ考慮いたしておるわけでございますが、ただただ力の足らぬことを憂えておる次第でございます。しかし、仰せのようなラインで、今後も事態の推移を十分注意深くウォッチしながら、随時適切な手を打って時機を失せず処置いたしまして、誤りないようにやらなければならぬと考えております。
 それから、インフレ政策に傾斜するのか、あるいは景気政策に傾斜するのかという問題でございますけれども、そのあたりは、いま精いっぱい物価の安定をまず図らなければならぬということで、また、物価の安定を図ることによって、国民の健全な消費がぬくもりを持ってくる状況ができてくるわけでございまして、インフレ対策と不況対策というのは、必ずしも二律背反と私考えていないので、われわれは、着実にいまやっておる政策をきめこまかく配慮しながらやってまいることによって、鳩山さんが御心配のような点のないようにひとつ気をつけていきたいと思います。
#5
○鳩山威一郎君 お考えはわかりましたが、もう時間が切れましたので一言だけ申し述べさしていただきます。
 私は、この経済政策をやる場合に、反対者が一人でもいなくなってからやったのではおそいということでございます。これは「エコノミスト」の一月四日号の「太平洋の世紀」というのにも出ておりますが、日本政府というのは、コンセンサスを見てから政治をやるので、いまだかつて経済政策というようなものはなかったんだと、ただ一つ、日本は、要するにGNPの一七%くらいしか財政に使ってないと、イギリスが三四、五%。で、それによる成長の成果は大変正しいところに使われておるということが書いてありますが、景気政策の場合は、特にだれも反対しなくなった。みんなが、当然これは緩めてどんどん景気政策をやってくれというときならもうすでにおそいのであって、そういうことをやると、今度はそれ、やれやれということになって、また大変な、逆に言えばインフレ状態をもたらす危険があると、私は、むしろその先のほうを心配しております。そういう意味で正しい施策をちゅうちょすることなく、勇気を持っておとりになることが、私は、長い目で日本の物価問題を正しい方向に導くものだと、こう思うのであります。これが時期が失しますと、おそらくもう日本国じゅう景気政策をやれという声になってしまって、そしてその結果はまた逆な方向に行くというふうに思います。
 それから、景気政策を考える場合に、私は、やはりもうスタグフレーションの先進国であるイギリスのことをよく御研究をいただきたい。特にその理論的基礎ともなったと考えられるこのロイ・ハロッドなどの言っていることは、私は、日本が一昨年来遭遇したような事態に対しては、大変傾聴に値する議論であるというふうに思うのです。それは、日本では高度成長がインフレをもたらしたということは、私は、そうではなくして、むしろ高度成長が停滞した段階、生産力がもうないという段階に大変な物不足、インフレを起こして、そこに油の問題があらわれたわけでありますから、成長の速度が早いから物価が上がるということではない、そうではなくして、むしろ逆な方向にすら行き得るのだ、いわゆるいろいろのケインジァンの言っている諸説に対して、同じ系統でありますけれども、ロイ・ハロッドはやや違った考え方をしている。私は、イギリスの置かれたそういうスタグフレーションの段階で、まさにそういうことが必要になったのだと思います。それにはどうしても所得の問題を考えていかないと解決できないのである。それは、すなわちわが国の場合には、どうしてもこの春闘の問題が目先にあるわけでありますから、この春闘の問題に正しく臨まなければならない、これは労働者の生活の確保をすること、また適正な所得をもたらすことが、日本の均衡ある発展のためにも必要だと思います。思いますが、この所得の問題につきましては、私は、政府がはっきり自信を持って考えていることを、発表なさったほうがいいように思うのであります。そうでなくして、ただもう労使の間で取り合いをしてみろということに任せておいてはいけないというふうに考えているものでありますが、そういった点につきまして、私は、大胆なやはり政府の希望でもいい、政府はこうしたいのだということを天下にお問いになったほうがいいのではないかというふうに考えているのでございます。これはただ私の考えを申し述べるだけでありまして、時間が切れましたので、御答弁は結構であります。どうもありがとうございました。
#6
○大塚喬君 私は、社会党のトップを承って、大蔵大臣に質問をいたしたいと存じます。
 先ごろ大蔵大臣が財政演説、それから、大蔵委員会での所信表明、財政金融の基本的な考え方を三つに集約をして述べられました。一つは均衡のとれた発展、一つは社会的公正の確保、一つは国際協調の推進と、おっしゃっておりますことは妥当なことで、私どもも現在の情勢の中でごもっともと、こういう考え方でございます。しかし、それが単なる方針として言葉だけで終わるのかどうか、実際にそれが実現できるものかどうか、特に私は、この社会的公正の確保という問題について、これから大臣の所見をお伺いをいたしていきたいと、このように考えておるものでございます。
 一つは租税収入、これは昭和五十年度の租税収入の問題に入ります前に、昭和四十九年度の租税収入についてお伺いをいたしたいと存じます。昭和四十九年度の予算編成の際に、多分四十九年十二月末現在の租税実績見込みをとられたと思うわけでありますが、これによりますと、自然増分が三兆六千八百五十四億、一二四・二%の伸びであると、こういうことを大蔵省の事務関係の方からお聞きをいたしたところでございます。
 そこで、お伺いをいたしたいわけでありますが、この租税の増収三兆六千八百五十四億、この自然増という中身については、大きく分けてやっぱり二つ考えられるものと思います。一つは、いわゆる経済活動の拡大によって税金がふえてきたと、こういう問題と、もう一つは、インフレーションによって税金が増収をされた分と、こういうふうに考えられるわけでございます。この三兆六千――これは昭和四十九年度の租税実績見込みでありますが、この三兆六千八百五十四億円という中身は、内容は、いま申し上げた二つの分類にして、それぞれどういう内容を持っておるものですか、ひとつ大臣からお聞かせをいただきたいと思います。
#7
○政府委員(中橋敬次郎君) ただいまお示しの四十九年度予算で、前年度すなわち四十八年度の当初予算に対しまして、一般会計で三兆六千八百五十四億円の自然増収を見込んだわけでございます。ちょうど一年前のことでございます。その中で、いまお尋ねのように、経済の実質的な拡大によって幾ら、あるいは物価の上昇によって幾らというのは、実は税の仕組みから申しまして非常にその区分がむずかしいわけでございます。と申しますのは、間接税の中に、従量税は、物の量でございまするから、これは明らかに税率が一定であります限りは、その自然増収というのは、いわば、いまおっしゃいます拡大によりますところの増収でございますけれども、それ以外の、たとえば所得税、法人税あるいは間接税につきましても、従価税はいわば名目の価格にかかるわけでございます。その中には、もちろん経済の拡大によりますものと、物価の上昇によりますものとが相乗されまして出てくるわけでございます。特に所得税でございますれば、もうわれわれの給与でよくおわかりのように、名目的な所得に対して累進税率がかかります。それから、法人税で申せば、これは見積もりのときには物価がどれくらい上がるか、あるいは生産がどれくらい伸びるかということを、そのときどきの政府の経済見通しに準拠いたしまして見込みますから、その点におきましては、生産の伸び、あるいは物価の上昇というものはどういう程度であるかということはわかりますけれども、大体総じて申せば、先ほど申しましたような間接税の従量税率によらないもの、ですから、税収の大部分のものは名目についてかかっておりまするので、お尋ねのように、その中で経済の実質的拡大によるものは幾ばく、物価の上昇によるものが幾ばくというのは区分しがたいのでございます。
#8
○大塚喬君 いま細かく分類をすることは困難であると、こういうことでありますが、税の内容を見れば、所得税、法人税、その他の税金がどの程度の額であるということは明らかであります。問題は、昭和四十九年度の国民総生産の伸びは実質前年度同月比にしてマイナス一・七であります。これは予算の編成した時期の問題でありますけれども、そういうことに、私が調査をいたしました数字はなっておるわけであります。
 ところで、こまかい間接税や何かを例に出されたわけでありますけれども、実際の税の額からいえば所得税と法人税、これが国民総生産あるいは鉱工業の生産、こういうものが前年度比マイナスということになっておって、税の自然増収が三兆六千億もある、こういう問題についてどうも釈然としないものがあるわけであります。いま局長は、間接税や何かを引き合いに出されたわけでありますが、税の大枠として、この自然増というのは、インフレーションによる、これによる税の自然増収と、おおよそこのように考えて間違いはないのではないですか。大臣いかがでしょう。
#9
○政府委員(中橋敬次郎君) 四十九年度の当初予算のお話でございますから、あの当時のGNPの伸びが一体どういうことであったか、そのときのGNPあるいは経済見通しに準拠して当時の当初予算というものは組み立てております。と申しますと、あの当時――一年前でございますけれども、GNPの実質成長は二・五%ということでございました。それから名目のGNPの伸びは一二・九%ということでございました。したがいまして、それを根拠づけておりますところの鉱工業生産は一・〇%の伸びであります。あるいは卸売物価は一四・六%であります。消費者物価は九・六%の伸びでありますということでございまするから、大体名目的な伸びが基本になっていることは、これはGNPの実質が二・五であって、名目が一二.九でありますから、全体そういうような数字になっております。また一方、所得税の中でも大宗を占めますところの給与所得は幾らであったかといいますと、あの当時の見通しでは、賃金は一八・〇伸びるということになっておりました。ですから、大体おっしゃいますように、そういう名目的な伸びが大部分は物価の伸びに対応したものではないかとおっしゃられれば、確かに四十九年度の当初予算の自然増収見込み当時三兆六千八百五十四億円と申しますのは、大部分がそういう名目所得の伸びであったということが概括的には言えると思います。
#10
○大塚喬君 いま局長から税の自然増収の大部分はインフレによる増収分だ、自然増というものの中身は経済活動の拡大によってもたらされたものではなくて、インフレによって増収があったと、こういうことでございますね。大臣、このことについては大臣も同じような見解でございますか。
#11
○国務大臣(大平正芳君) いま主税局長が言ったような認識を私も持っております。
#12
○大塚喬君 そこで、さっき私が申し上げました一・七というのは、昭和四十九年度の租税収入についてお伺いをいたしたわけで、その昭和四十九年度のいわゆる予算編成の際に、昭和四十八年度末から昭和四十九年度の間に一年間入った税金と、それから、その経済成長率、いわゆる国民生産の伸びの問題ですが、これは私が調べたところはマイナス一・七ということでございますが、その数字に間違いございませんか。
#13
○政府委員(中橋敬次郎君) 五十年度の政府の経済見通し、あるいは私どもがつくりました税収の見通しの基礎になりました四十九年度の経済が一体実績見込みでどういうふうになるのかというのは、五十年の一月二十四日に閣議決定になっております。その数字で申しますと、GNPは実質で前年度に対しまして九八・三でございますから、マイナスの一・七になっております。ただ、ちょっとつけ加えさしていただきますと、これはまた四十九年度の税収の実績になるような基礎データになると思います。いま最初にお尋ねの点は、四十九年度の当初予算における自然増収はということでございましたから、そうしますと、一年前におきますところの四十九年度の経済見通しが基礎になって四十九年度の税収、したがいまして、四十八年度の当初に対する自然増収が出てきておるわけでございます。
#14
○大塚喬君 そうすると、その閣議決定の経済の見通しでございますが、マイナス一・七と、こういうことになるわけですね。所得と税金の問題に関して私もいろいろ検討いたしたわけでございますが、一応、弾性値として所得が一、そうした場合に税金が一・五と、こういうことになった場合に、昭和四十九年度の当初予算十三兆七千億円、これがマイナス成長であったとすれば、当然インフレということがなくて同じような経済状態、こういうことの場合には、この税収というのは当然その分だけ、減収と申しますか、少なくなるわけでありますね。インフレという増収を抜きにして成長率がマイナス一・七と、こういうようになった場合に、この税収の減収というのは一体どの程度になるものでございましょう。
#15
○政府委員(中橋敬次郎君) 税は、先ほど来申しておりますように、大体は名目にかかるというふうにお考えいただければ結構でございます。それで仮に名目と実質が、おっしゃいますように、マイナス一・七とか、ともにマイナスを示せば、大体のところは――期間的にずれはございます。たとえば法人税は大体半年後にずれるということはございますけれども、そのずれも捨象し、名目も実質も同じ減少を示すということになりますれば、税収はそれだけ減ると思います。
#16
○大塚喬君 そうしますと、インフレーションということによって、政府が三兆六千八百五十四億円税の自然増収があったと、こういうことは、一つはやっぱりインフレーションによる名目的な税の増収があった。それから、いま成長率がマイナス一・七ということになれば、当然それに伴って税収というものも減収されるものである。私は、一応私なりに消費者物価指数の変動によって試算をいたしてみました。このマイナス一・七という成長率によれば、税収が当初十三兆七千億円と、これだけの上がるものが、成長率がマイナスということになれば、当初予算の額だけ出ないで、これによって弾性値、これを一対一・五ということで考えてみますというと、この分が三兆五千億円ほどともかくこの当初よりも少なくなった分として――少なくそれかならなかった分としてまあ出てくると、こういうことになりますというと、政府は、この二つの税の問題として、一兆九千六百億円程度インフレーションによって利益を受けたと、法律改正をしないでインフレーションによって政府は税収を受けたと、こういう一応の私なりの試算ができたわけでありますが、この点について、インフレーションによって大体二億前後の税の増収があったと、こういうふうに考えられるわけでございますが、大臣、いかがでございましょう。
#17
○政府委員(中橋敬次郎君) 一つは、弾性値の問題がございます。弾性値は、たとえば経済が名目的に伸びていきましたときに、特に所得税等におきまして累進構造がございますから、その経済の伸びよりは、税収の伸びが大きいというのが弾性値として表現されるわけでございますので、減少します場合には、必ずしもその弾性値というのは働かないと思います。それから、仮に大塚委員が先ほど来御主張になっておりますように、実質と名目が一致しておれば、おっしゃるように、税収はそれだけ落ちるということになりますから、その分と、それから実際に名目にかかっていった税収はこれだけ上がったから、それの差額は物価の上昇による税収ではないかというふうに言われれば確かにそういうことになると思います。
#18
○大塚喬君 率直に言って、一兆九千億かどうか、ここらのところはいろいろ試算の方法があろうと思うわけでありますが、インフレーションによって、ともかく政府は法律を改正しないで、隠れた税金としてそういう恩典と申しますか、利益を受けたと、こういうことは言えるだろうと思うわけであります。
 次に私は、いわゆる公債の問題、これは未決済債務の実質的な軽減の問題インフレーションというのは、この問題と重大なやっぱり関係があると、こういうふうに感ずるわけであります。で、政府は五十年度の予算で二兆円、一兆六百億円前年度より減額をしたと、こういうことでありますが、この三年間、政府の発行する国債というのは二兆円台が継続して続いておるわけであります。で、この国債の内容を検討いたしたわけでありますが、国債は、政府が所有しておるもの、あるいは日銀や市銀その他の金融機関が所有しておるもの、あるいは証券会社引き渡しによって個人が所有しておるもの、いろいろ所有別は分類されると思うわけでありますが、初めに大臣にお聞かせいただきたいことは、その国債というのは、これは所有者がだれであっても、債権者がだれであっても、債務者は政府でございますね、いかがでございましょう。大臣にお聞かせいただきたい。
#19
○国務大臣(大平正芳君) さようでございます。
#20
○大塚喬君 そうしますと、この国債というのは、ともかく債務者は政府だと、こういうことははっきりいたしておりますね。
 そこでお伺いしたいわけでございますが、昭和四十九年度、インフレーションによって債務者は一体どの程度私は利益を得たんだろうと、こういう計算を私なりに試算をいたしました。いわゆるインフレーションによって政府の債務というのが実質的に目減りをする、その中身はどのくらいだろうと、こういうことで試算をいたしたわけでございます。で、昭和四十九年度の予算編成される昭和四十八年十二月末現在の国債残高、これは七兆九千九百二十四億円、これは間違いございませんでしょうか。
#21
○政府委員(吉瀬維哉君) 四十八年度末の普通国債の残高、これが七兆七千三百四十億円になっております。その他出資国債等を合計いたしますと、四十八年度末には八兆二千六百七十一億円の内国債残高でございます。
#22
○大塚喬君 ちょっと失礼しました。私が申し上げるのは、外貨債ということでなしに、内国債ということで話を続けたいと思うわけですので、あらかじめひとつそういうことで御了承いただきたい。
 それで、昭和四十九年度中に、物価の上昇率、昭和四十八年十二月末から昭和四十九年十二月末までの間の消費者物価の値上がりは二一・九%、これは間違いございませんでしょうか。
#23
○政府委員(岩瀬義郎君) 暦年で申し上げますと、四十九年の一月が消費者物価指数が対前年同月で二三・一でございまして、十二月には二一・九になっております。
#24
○大塚喬君 そうしますと、政府が持っておりますその七兆、私が調べましたのは七兆九千九百二十四億と、こういうことでございますが、局長の答弁は九兆七千億と、こういうお話がございましたが、ほぼその額にはそう大きな差はないものと私は受けとめております。
 ところで、この債務者――これは消費者物価が二一・九%上がったと、そうすると債権者、これはまあいろいろ最終的には結局政府が国民からの税金を取って、その債務を払うわけですから、結局やっぱり私は債権者というのは国民だと、こう考えておるわけです。で、この国債、債務を持っておったという政府が、このインフレーションの進行によって、しかも二一・九%というアメリカの二倍、西ドイツの三倍もこういう激しいインフレーションの中で、この国債の、政府が支払うべき債務が実質的に軽減をされたと、このことについては私はそう受けとめておるわけでございますが、大臣いかがでございましょう。――大臣にひとつ、このことは大臣にお聞きしているんだから。
#25
○政府委員(吉瀬維哉君) 御質問のとおり、どういう物価指数で国債の減額をはかるべきかということにつきましては、いろいろ議論があるわけでございまして、国債の所有目的によりましては、あるいは卸売物価指数とか、あるいは建設物価指数とか、いろいろありますが、常識的に考えまして、消費者物価指数、この上昇だけ減価するということになれば、御質問の趣旨のとおりになると思います。
#26
○大塚喬君 そうしますと、四十九年度中に私がいまの数字を使用して試算いたしましたところによりますと、政府の持っておる債務、国債というのは、この物価の上昇、インフレーションによって一兆四千三百九十五億円、これが実質的な債務がインフレーションによって実質的に減額をされたと、こういう数字が出たわけであります。こういうことを考えてみますというと、いわゆる租税収入の増大、これは法律改正をしないで、隠れた税金が増収されるという問題が一点。これと、それから、いわゆる政府の債務がインフレーションによって実質的に軽減された、こういう問題をあわせますというと、昭和四十九年度のインフレーションの中で、私は、政府は少なくとも三兆三千億円から三兆五千億円の実質的な利益を受けたと、こういうふうに試算の結果出たわけであります。額の若干の幅の問題についてはともかくとして、この程度の額がインフレーションによって政府に利益をもたらした、政府の収入増があったと、こういうことについては大臣いかがでございましょう、お認めになりますか。
#27
○政府委員(岩瀬義郎君) いま先生の御議論の中で、ちょっとさかのぼらしていただきますけれども、四十八年から四十九年へのいわゆる国民総生産の実質は一・七マイナスだということでございますが、名目では一八・七という改定の見込みをつけておるわけであります。税収はあくまでもその名目でもってはじかれるものでございます。
 それから今度は、債務という関係を御指摘になりましたけれども、実質と名目とのこれだけの差ということは、ある意味においては物価がそれだけ上がっておるということでございますから、政府が歳入として入れました税金を使います場合に、その使いますもののほうも物価の騰貴がございますので、その辺では実際に当初意図したよりも実質的には、たとえば同じ工事をやるにいたしましても単価が上がっておりますので、同じ量の仕事はできないという点においては大きなマイナスがあるということでございますから、いまおっしゃったように、債務者利得というような形の計算というのは私どもとしてはあまり適当ではないんではないかと考えております。
#28
○大塚喬君 どうも役人の皆さん方の答弁というのは、私どもにはなかなか理解のしにくい、そういう感じを率直にいたします。ああでもない、こうでもない、結局、何でもないというような、そういう答弁を私は役人の答弁の中から感ずるわけでございます。実質的にこのインフレーションによって政府がその額については若干使う数字によってその推計というのは変わるだろうということは私もわかっておりますが、しかし、膨大なインフレーションによる政府の歳入増があったということだけは、これは大臣間違いございませんね。
 ところで、私が先ほど一番最初に申し上げました社会的な公正の実現。この中で大臣が率直に言わんとしておることは、これは福祉の充実ということであり、インフレを退治して社会的な公正を実現することだと、私は、率直に大臣のお話を本会議あるいは大蔵委員会のお話を聞いてそう受けとめたわけであります。ところが、実際にはインフレーションによって政府は膨大な利益を得ておる。その政府が、一体インフレーションというものを抑えるためにどうなんだと。インフレーションによって政府が痛手を受ける、インフレというものは政府自体にとっても痛いもんだと。こういうことになれば、大臣のおっしゃることは私は額面どおり、言葉どおりそれを納得するわけであります。ところが、口ではどういうことを言っても、実際インフレーションというものは政府の歳入を増大して、政府はそれによって予算を編成をし、財政運営をしているんだと。あの大臣の財政演説の中にも、まあこれは言葉のとりょうでありますが、本年度は自然増収が少なくてと、こういう意味のことが述べられておるわけでありますが、これはインフレーションを処理する、退治すると、こういう政府の考え方というのは、立場というのは、私は、率直に言ってジキルとハイドというような二律背反的な、そういう立場に立ってインフレーションの処理をしようと、こういう考え方にどうしてもならざるを得ないわけであります。で、そこで、本気になって私は、この政府がインフレーション処理のために取っ組むのかどうか、まあこういうことについてこれから先に疑問を持ち、その疑問を解明するために努力を続けていきたいと考えておるわけであります。
 ところで、時間もだいぶなくなったようでございますので、私は最後に一つ、いまそのインデクセーションエスカレーター条項の適用、こういう問題がまあ世間の中でも論議をされておるところであります。OECDの資本市場委員会でもこれが取り上げられて検討をされ討議をされておると。特に私が申し上げたいことは、債券と預金について物価指数へのリンク、この問題をやっぱり本気になって検討をし取り組まなければ、インフレーションというのは政府が口先でどんなことを言っても、やっぱりこれをおさめること、終息させることはむずかしいなあと、私個人はそういうふうな考え方を持っておるわけであります。御承知のように、わが国には、金融制度調査会というものがある。この金融制度調査会では、このインデクセーションの問題については、現在までに検討された、そういう実績はございますか。大臣にお伺いいたします。
#29
○政府委員(岩瀬義郎君) 簡単なことでございますので……。
 金融制度調査会ではまだいまだにインデクセーションのことについて論議されたことはございません。
#30
○大塚喬君 私は率直に言って、これはインフレ退治のために取り組む政府の熱意と申しますか、態度というものには、やっぱりきわめて消極的なものがある。インフレによってともかく恩典を受けて、利益を受けている、こういう感じをそういう中からもするわけであります。で、この金融制度調査会、当然私はこれだけのOECDの委員会でも取り上げられている、こういうような問題だとするならば、政府がそれに諮問をすべきであるし、それから自主的にそういう委員会でもこれらの問題については真剣に検討、討議をして、何らかの方針をやっぱり打ち出すべきこういう段階に来ておると、こう考えるわけでございますが、このエスカレーター条項の適用、インデクセーションのこの問題について、大臣として今後どのようなお考えか、大臣の所見をひとつお聞かせいただきたいと思います。
#31
○国務大臣(大平正芳君) インフレーションというものは、資産や所得の不均衡を招来するばかりでございませんで、社会経済秩序の根底をむしばむ害毒でございまして、大塚先生御指摘のように、このインフレにどう取り組むか、これが政治にとりまして最大の課題であるという認識におきまして私は、大塚先生と全く帰一する考えでございます。ただ問題は、インデクセーションというようなシステムを打ち立てることがインフレ対策になるかというと、そこからあなたと私の考えは分かれるわけでございまして、私は、そういうことをやるということはもうすでにある程度のインフレを予定しておることでございまして、したがって、インフレに対してイージーな取り組み方ではないかと思うのでございまして、何としてもこのインフレは退治いたしまして、細工をしないで、経済秩序の基本がきちんと維持できる状況をつくり出さなければいかぬわけでございますので、まず、物価を安定させるということに力点を置いて、すべての施策の根底にしなければならぬと考えるのでございまして、そういう政策的な加工を施すということは、一種の敗北主義でございまして、私どもはそれをとるべきではないのではないかと、インフレマインドが定着することになるのではないかということをおそれるわけでございますので、大蔵省としてはそういうつもりはございません。
#32
○大塚喬君 じゃ最後に、時間も来たようでございますので一言申し上げて、いまの大臣の答弁は、大臣個人のお考えでございますか。
 私が申し上げたのは、一つは、金融制度調査会、こういう機関で検討すべき段階に来ておるのではないかと、こういうことを申し上げて、そのことについて大臣の見解をお聞きしたわけでございます。
 それから、いま大臣の答弁が、インデクセーションの問題についてお答えいただいたことは、政府が、大蔵大臣がこのインフレーションの利得をともかくこれから先も引き続いてひとつ確保しょう、そのことは結局インフレーションを処理する、こういうことにはきわめて消極的なものであり、大臣が、社会的な公正を実現するためにインフレーションをなくするんだと、こう言うことは、看板に偽りありという、私は率直にそういう感じがするわけでございます。
 で、このインデクセーションの適用の問題で、政府に関するもの、これは債券の問題、あるいは所得税、法人税、こういうふうな問題、これの具体的な関連の問題、それから、それ以外の民間の経済領域におけるこれの適用の問題、これらの問題と昭和五十年度の歳入の問題等については、時間がございませんので、次回に引き続いてひとつお伺いをいたしたいと思っております。
 その金融制度調査会に対する検討の時期に来ておるではないかと、こういうことについての大臣の見解を最後にお聞かせいただいて、質問を終わるとさせていただきます。
#33
○国務大臣(大平正芳君) ただいまのところ、金融制度調査会にこれをお諮り申し上げるというようなつもりは持っておりません。
#34
○寺田熊雄君 田中前総理の金脈の問題ですが、これはいままで当委員会では、国税庁長官、いろいろな資料をそろえて見直しの最中だというふうに御答弁になっておられます。
 それから、去る一月二十三日の決算委員会では、これは大臣の御答弁でしょうが、三月いっぱいをめどに結論を出すというように報道されておりますね。しかし、目下のところ、全体として大きな誤りはないけれども、所得計算の誤り、あるいは解釈の食い違いがあるので、さらに念を入れて調べているというふうに大臣が御答弁になったことが報道せられておりますが、そのとおりでありますか。
#35
○国務大臣(大平正芳君) 仰せのとおりでございます。
#36
○寺田熊雄君 その後一昨日の毎日新聞に、この問題で徴税当局の大体の見通しなり結論が出ておるようなことを暗示する報道がせられておりますが、この記事は、もう恐らく大新聞の記事ですから、大臣も国税庁長官もお読みになったと思いますが、この報道された内容に大きな誤りはございませんでしょうか。
#37
○政府委員(磯辺律男君) 日曜日の毎日新聞の記事につきましては、私も詳細にその記事を読まさしていただきましたけれども、この記事の内容につきまして私どもか得ました印象は、当委員会のみならず、決算委員会、衆参両院を通じましての各種委員会等で、先生方の御質問、それに対する政府側の答弁、そういったことをずっとまとめて、一つの記事にしたというような印象を受けました。ただいま大臣の方から御答弁申し上げましたとおり、私どもはいま最終的にずっと各種問題点の詰めに入っておる段階でございまして、こういった数字等がまだ確定する段階ではございません。したがいまして、この記事は国税庁の方から発表した記事でもございませんので、あるいは当該新聞社のほうでいろいろと独自の取材活動であるとか、あるいは資料を総合いたしまして書かれた記事ではないかと私は思っております。
#38
○寺田熊雄君 なお、決算委員会では、田中前総理の喚問もあり得る、それから目白の田中邸への立ち入り検査もあり得るというような国税当局の御答弁のようでしたが、その時期がもうそろそろ来ているというふうに了解してよろしいでしょうか。
#39
○政府委員(磯辺律男君) 参議院の決算委員会で私御答弁申し上げましたのは、もし必要があれば田中邸の中に入って、単に図面上だけの計算ではなくて、五感をもってそれを認識するという必要があるかもしれない、そういった必要があれば、私たちは中に入りまして、いろいろと実地でそれを調査いたすことがあるかもしれないということを申し上げたわけでございます。
 それから、田中角榮氏御自身について喚問するということは御答弁申し上げておりませんで、御質問が、田中角榮氏に直接会って事情を聞いたかという御質問でございましたので、ただいまのところはまだそういったことはやっておりませんとお答えいたしました。
 それでは、重ねてそういったことをやらないのかという御質問に対しまして、もし必要があれば、あるいは現在われわれが事情を聴取している方々ではわからない問題が出て、御本人にお聞きしなければどうしてもわからないといったような問題がありましたならば、田中さんにつきまして直接お聞きするようになるかもしれないということを申し上げたわけでございます。
#40
○寺田熊雄君 おっしゃることは理解できますが、その必要がいままでにすでに生じたかどうかについてお伺いしているわけです。
#41
○政府委員(磯辺律男君) ただいまのところ、どうしても御本人にお聞きしなければならないといったような問題はまだ発見されておりません。
#42
○寺田熊雄君 この毎日新聞の記事の一番最後に、田中前総理がいろいろ不動産を取得しておる、あるいは関連企業の増資の払い込みをしておる、そういう資金がどこから出たかという点について、徴税当局が昭和三十九年に日本電建の株式を田中氏が十八億円で小佐野賢治氏に売却した、その金が手元に約八億円ほど残っておって、その運用によるんだということが書いてあるんですがね。その点は国税当局としてどういうふうに把握しておられるんですか。
#43
○政府委員(磯辺律男君) これは国会でも、四十七年の田中角榮氏の法人所得金額が大体七、八千万であるにもかかわらず、そういった前後に多額の不動産を取得しておる、一体これはどうしたことかという御質問が、当委員会のみならず各委員会で御質問を受けました。私たちの調査はもちろんそういった点は最重点の一つとして取り上げております。したがいまして、そういった資産の増加に見合う資金繰り、それがどういった資産からこの不動産の取得につながっているかということについては国税の方で解明いたしております。
 ただ、その毎日新聞の記事を拝見いたしますと、かつて日本電建の株式を田中角榮氏がお売りになって、それの利益八億円がそういうような形になっておるといったように読める記事でございますけれども、確かに田中さんの財産というものをずっとさかのぼってまいりますと、その日本電建の株式をお売りになったときの利益がかなりございますが、それがいろいろと運用され回転していっておるということは事実でございますけれども、ただ、それが現在、それだけをもって現在の資産の増加が形成されているという問題ではございません。
#44
○寺田熊雄君 いろいろ田中氏の財産取得を生み出した資金について、田中氏自身も弁明これ努めると思うんですけれども、もう一つ徴税当局の方で関心を持っていただきたいことは、まあ週刊誌などに報ぜられるところによりますと、田中氏が私邸に約十四名ほどの使用人を擁しておるというようなことがありますね。そういう日常の生活費、そのはでな政治活動の費用、そういうようなものが申告所得によって手元に残る可処分所得で賄えるかどうか、また、いまの日本電建の株式の処分によって取得した資金が長く手元に残っておったかどうかということの究明、それがないとすれば、果たしてそういうような私生活、それからはでな政治生活が可能かどうか、そういう点についても十分メスを入れていただきたいと思うんですが、その点はそういう決意がおありでしょうか、ちょっと伺いたい。
#45
○政府委員(磯辺律男君) ただいまの御質問の点につきまして、若干具体的な回答になろうかと思いますが、これは田中角榮氏のみならず、一般にそういった多くの家事使用人がおる、あるいは書生さんがおる、そういった場合に、その費用というものが関係会社等から支払われる、その月給が。そういったような場合には、当然その受けた方は、そういった会社の方からの経済的な利益を受けておるということになりますので、その受けた方の方はそれが雑所得として課税の対象になる。それから、出した方の会社なり個人というものは、当該個人から出たものでありましたら贈与でありますし、それから会社から出たものでありますと当該個人に対する寄付金ということになって、そこで、寄付金の限度計算をするというかっこうになって、当然出した方の会社にも課税問題がはね返ってくるわけでございます。ただしかし、政治家でありました場合に、それを受けた場合、そういったことが政治家として自分の政治活動のためにそういった人たちを使っておるということでありましたならば、それは政治家に対する課税の一般原則に従いまして、収入金、それが実際にそういった使用人の給与等に出ておりまして、それが政治的なことに使われておるのでありますと、雑所得は収支ゼロということになって、本人の課税にはかかってこない。ただ、それが家事に使われているということになってきますと、それは課税関係が出てくるということになるわけでございます。
#46
○寺田熊雄君 その理屈はわかりますが、政治生活のために使っている使用人か、それとも私生活のために使っている使用人かというような点にまであなた方は本当に真剣にメスを入れていらっしゃるのですか。
#47
○政府委員(磯辺律男君) こういった例は、田中さんの場合でももちろん検討いたしておりますが一般にそういった例があります場合には、一人一人につきまして、この人は会社のために働いておるのか、あるいはそういった政治家であるだれだれ個人のために働いておるのであるかということについての認定をいたしまして、それの給与のたとえば三分の一を否認するとか、あるいは半分だけ認めて半分を否認するとか、そういうふうなかっこうで具体的な処理はいたしております。田中角榮さんの場合も同様でございます。
#48
○寺田熊雄君 なお最後に、国税庁長官が、去る十一月十二日の当委員会におきまして、新星企業、室町産業、東京ニューハウス三社の過去十年間の所得と内容及び税額について報告を私が求めたんですが、そのときのお答えが「所得とか税額とかというものが、資料として提出できますかどうか十分検討してまいりたいと思います。先ほどのお話でございまして、できるだけ国政調査権を尊重いたしまして、できるだけ私ども守秘義務に抵触しないように考えてまいりたいと思っております。」、こういう御答弁がありました。まあいま長官はおられないようですが、次長もやはりいま長官を代理してお出になっておるのでしょうから、この点の検討が終わりましたか。どうでしょう。
#49
○政府委員(磯辺律男君) 各種資料の国会に対します提出の件につきましては、これは寺田先生御承知のとおりだと思いますが、去る参議院の予算委員会におきまして、政府の統一見解というのが発表されました。その結果、結論といたしましては、できるだけ国会の国政調査に協力するように努めるべきであるという結論でございます。しかしながら、やはりこれはまた寺田先生の御専門で、はなはだ恐縮でございますけれども、やはり国政調査権というものと、それから私たち国家公務員が持っております守秘義務というものの間には、そこにそれを発表しないことによって得る公益と、発表することによって得る公益との比較勘案の問題がございまして、やはりこれはケース・バイ・ケースで判断していかなければならないというふうなことになっております。したがいまして、ただいまのところ私どもといたしましては、公示額以外の取得につきまして資料をこの委員会に御提出するのはお許しいただきたいというのが、私どもの現在の考えでございます。
#50
○寺田熊雄君 あの速記録を十分読んでいただきたいのですが、あのときは国税庁長官は、それが「守秘義務に抵触しないよう考えてまいりたい」と、つまり、ニュアンスとしては提出するように努力するという趣旨の御答弁であったわけです。
 それから、あなたがいまおっしゃる、これを提出しないことによって守られる公益、まあ法益でもどちらでもよろしいが、一体何です。何が、その幽霊会社のために守らなければならない法益とは何です、具体的におっしゃってください。
#51
○政府委員(磯辺律男君) これは、いつも私、先生方にお願いしておるわけでございますが、今度の問題につきまして、私たち、田中角榮氏並びにその関連会社と言われておる会社につきましては、これは特殊な個人である、あるいは特殊な法人であるという考え方は避けまして、あくまでも一納税者、一法人であるというふうな考え方で税務の立場から処理する考えでございます。で、そういたしますと、私たち国税職員が職務を執行いたします、そのときには、やはり現在の納税制度の基本的な原則であります誠実な自主申告納税というものを納税者の方々に期待するということが一番必要なことであろうと思いますし、また納税者と税務職員の相互信頼の上に立って現在の税務行政が円滑かつ適正に執行されておるものと私どもは考えております。しからばその中の、そこで言います納税者と税務職員の信頼関係というのは何かと申しますと、やはりそれは、私たち国税職員というものに対してはすべてを、真実を話してもらいたい。それが私的な秘密であろうと、あるいは営業上の秘密であろうと、すべてそれを、真実を話していただきたい。しかし同時に、それを聞いた国税職員というものはそれを対外的には公開しません。そういったことによってお互いの秘密というものが保たれることによって現在の税務行政というものが円滑に執行されていると私たちは考えております。したがいまして、原則に戻りまして、田中角榮氏及びその関連会社というのはやはり一納税者であるということを考えますと、私たちは、やはりその職務上知り得た秘密というものは発表しない方が私たちの税務の執行に非常にプラスになり、ひいてはこれが国家財政の確保ということに役立つものではないか、かように考えておるわけでございます。
#52
○寺田熊雄君 やたらに国税当局が理由なく発表するということになりますと、確かに国民は秘密を話すということに対して危惧を感ずるでしょう。しかし、何年に一回、国会が非常に疑問を持った公の人の所得について報告を求めるということですからね。それが国民全般、国民全部の納税者に疑惑を、不安を与えるとか、危惧を覚えさせるとかいうことはないでしょう。また新星企業なり、室町産業、東京ニューハウスというものは経済人ですからね。経済人が土地の売買などの商的行為を営んだという、そのことを、一体どれだけの利益があったかというようなことを発表して、それがどうしてあなた方の公正を疑わしめるような結果を生じますか。むしろそういう、われわれから見れば怪しげな会社の秘密というものを一生懸命尊重して、国民の前に大きな疑惑を解明する努力を怠っておられる。そういうことの方がはるかにあなた方の権威なり信頼を傷つけるものですよ。国民はそう感じますよ。どうです。
#53
○政府委員(磯辺律男君) 寺田先生御指摘のその問題というのは、実は私も非常に悩んだ問題でございます。これを発表するということがほんとうに税務の信頼というものにつながってくるか、あるいはこれを秘匿しておくということが税務の信頼というものにつながってくるかという二つの問題、これは私たち事務当局の者としては非常に悩んだ問題でございますけれども、しかし、結論として、先生のいまおっしゃいました御議論というものは私は十分尊重してまいりたいと思いますし、また傾聴に値すると思いますけれども、事務当局といたしましてはこれは発表しないほうがいいのではないかという結論に達したわけでございます。
#54
○寺田熊雄君 はなはだ法的にも、また公務員としてのモラルの上でも好ましくない結論が出ましたが、いずれこれはまた論ずる機会もありましょうし、われわれとしては引き続き反省を求めていくわけですから、きょうはこれで打ち切ります、ほかにまだ御質問しなければならない人がありますから。
 会計検査院事務総長が御出席くださっておられますので、お尋ねしますが、あなたも、去る十一月十二日の大蔵委員会で、過去五年間の田中前総理の課税関係及び関連企業の課税関係の見直しを命じておるという御答弁でしたね。
 その調査の方法ですが、特別の調査班でも組織してやるかどうかということもいま検討しておるということでおっしゃったわけですが、その後そういう特別な調査班というようなものを組織せられたんでしょうか。それから本格的な調査活動をすでに開始しておられるんでしょうか。
 最後に第三点として、その成果がもうすでにあったのかどうか。その三点についてお答えを願いたいと思います。
#55
○説明員(石川達郎君) 先般の当委員会あるいは決算委員会等におきまして私から申し上げたとおり、この線に沿うてただいま調査検討を進めている次第でございます。
 特別班を設けるかどうかというようなお尋ねもございまして、その際は検討するということでお答えをいたしたわけでございますが、特にこういう法人経理等に詳しい人間数名を選びまして特別班というような名称はことさら用いてはおりませんけれども、そういう線に沿うて検査を進めておる次第でございます。
 さらにただいま検査を進めている段階でございまして、私どもの検査は、税務官署から提出されました法人の決議書あるいは財務諸表等をもとにいたしまして、要すればさらに詳細な資料を随時国税庁当局を通じまして提出を要求いたしまして検査を進めている次第でございます。何分そういうような状況でございますので、ただいま申し上げるような成果はございませんが、私どもの検査はさらにこれらの資料を検討して、国税当局が課税処理を終了した段階におきまして、さらに直接税務官署等に赴きまして、そこで検討した結果得られるものでございますので、ただいま申しましたように、いまの段階でその成果を申し上げるというまでに至っておりません。
#56
○寺田熊雄君 いまの財務諸表のことにちょっとお触れになりましたんですが、私もある権威のある興信所に依頼して調査してもらったんですが、その興信所などでは、普通の会社の場合は財務諸表がすぐ手に入るんだと。この場合はそれが一切手に入らぬということでしたが、あなたのお調べになったところでは、こういう関連企業でもきちっとそういう所定の書類というものを作成されておりましたか。
#57
○説明員(高橋保司君) 書類検査で検査院に出してこられる課税当局からの書類は、申告書とその申告書に付随いたしまする財務諸表でございますが、言うまでもなく、貸借対照表、損益計算書、それから各勘定の簡単な説明書の程度でございます。
#58
○寺田熊雄君 独立の機関でもありますし、非常に公正さという点では信頼を受けている官庁でいらっしゃるので、われわれとしては大きな期待を持っていることだけを申し上げて、質問を終わります。
 次に、大平大蔵大臣に五十年度の予算に関してお尋ねをいたしたいと思いますが、大臣は、本会議、予算委員会及び当委員会を通じまして、公共投資については引き続き抑制を図るとともに事業費の重点的な配分を図りたいと、特に、住宅、下水道、教育施設などを挙げられて重点的な配慮を示されたわけですが、また予算委員会では、特に住宅金融公庫の個人住宅貸し付け限度額の引き上げなどの改善を図ることにしたと言われ、当委員会では住宅金融の拡充を図ったと言っておられますね。印刷物にもはっきり書いてあります。ところが、予算書なり説明書を拝見しますと、大衆が最も要求する公営住宅が四十九年度九万五千戸、改良住宅が八千戸、合計十万三千戸、当初予算で予算化されておるんですが、五十年度は公営が八万五千戸、改良住宅が六千戸、計九万一千戸しか認められておらないんです。これでは一万二千戸の減少になりますね。大臣は、特に重点的な配慮をしたとおっしゃるんですが、事住宅建設に関してはこれが逆になっていますね。それから財投の関係でも、住宅公団の住宅建設戸数を六万戸として盛っておられるわけですが、四十九年度はこれは七万戸なんですよ。で、これもまた一万戸の減少なんですが、これは看板に偽りがあるように思いますが、大臣、どうでしょう、これは増額の必要があると思いますが、どうでしょうか。
#59
○国務大臣(大平正芳君) 御指摘の点は私もよく承知いたしております。住宅政策につきましては、公営住宅ばかりでなく、全体をごらんいただいて公正に評価していただきたいと思いますことが一つと、それから現実の社会の二ードと申しますか、社会的な需要の方向というものをよくわきまえて政策を考えなければならぬわけでございまして、個人の持ち家住宅に対する需要が非常に強いわけでございますので、そういう方面に特に力点を置かしていただいたわけでございます。
 第三に御理解いただきたいのは、そういう公営住宅の面におきまして、戸数は、御指摘のように若干、去年に比べまして計画戸数は落ちておりますけれども、単価の是正等を図りまして、実のある予算にすべく努力をいたした跡はそれなりに評価していただきたいと思います。
#60
○寺田熊雄君 不得要領の御答弁ですね。
 全体として見てほしいという、全体というのは、予算化されたものと、財政投融資のものと――いま私どもが論じておるのは、あなたのおつくりになった予算の内容と、それから財政投融資の問題でしょう。全体とは何をいうのです。そのほかに何があるのですか。
#61
○国務大臣(大平正芳君) いま私が申しましたのは、予算も財投も、公営も個人の持ち家も、全体として住宅政策について政府が配慮した努力の跡は寺田先生も評価していただきたい、ということを申し上げたわけです。
#62
○寺田熊雄君 それがダウンしているわけです。
 まああまり大臣を苦しめるために私は質問したのじゃないのですからね。大臣、しかし、これはあなたがどういうふうに御答弁なさろうと、なるほど一戸当たりの単価が上がっておる。これはまあ建設の単価が上がっている以上は当然のことで、しかし、それがあるからといって、やはり庶民の一番希望している公営住宅の建設戸数が減るとか、あるいは財政投融資で住金に回る原資が減るとかということは好もしいことではありません。特にあなたは経済閣僚会議で不況対策の一つとしてこの問題をとらえていらっしゃるでしょう。私どもとしては、社会福祉の面からもこの問題をゆるがせにできないわけですよ。ですから、まだ予算成立しない段階で追加予算を組むということも言えないでしょうけれども、慎重にこの点については、前向きで考慮をしてほしいと思いますが、どうですか。
#63
○国務大臣(大平正芳君) 公営住宅の場合は単価の是正もいたしましたし、規模の拡大もいたしてございますので、そのあたりつけ加えさしていただきたいと思います。
 それから、五十年度の予算は四月一日からのことでございますけれども、御案内のように、一月二十日から住宅金融公庫の融資の申し込みを再開いたしまして、年度内におきまして財政投融資の追加枠を差し上げまして、年度内にすでに一部、第二次の追加でございますけれども、やっておりますことは御案内のとおりでございまして、年度内に三万戸目標にお願いいたしておるところでございます。
#64
○寺田熊雄君 時間が参っておるということなんで、非常に閉口しておるんですが、いまの、大臣、住金の五万戸分の貸付枠の追加というのは私も知っておるんですが、あれは御承知のように、二月十九日まで申し込みを受け付ける予定だったんですが、もう二月一日か二日に締め切ってしまったぐらい非常に需要が多いわけです。それからもう一つは、大手が一万戸の枠をもう取ってしまったんですね、最初から。そして一番われわれが助けてあげなければならない中小の業者というものが、非常にそれによって打撃を受けておるのです。だから、その問題では、あなた方の御苦心になった財投が本当に中小の建築業者を潤しておるか、あるいは大手が中小の分野まで攻めて入って独占的な利益を得ているかというようなところまで十分配慮していただきたいんですね。個別審査を十分やってほしいということです。
 それからもう一つは、民間の住宅ローンの問題なんですが、民間の住宅ローンが、私ども調べてみますと、一般の都市銀行では非常にこれが冷遇されておりますね。信用金庫や相銀の場合は、パーセンテージが非常に多いんですよ。全体の貸出枠、たとえば相銀の場合は、全体の貸出枠の中で、この住宅ローンの占めるパーセンテージが七・一%あります。それから信用金庫の場合は八・五%あるんですね、これは四十九年の九月末現在だと思いますが。ところが、一般の都市銀行の場合はせいぜい四%台です。ですから、民間の、これは特別枠をつくるということはむずかしいでしょうけれども、特に民間の資金をこの方面に活用するように十分指導していただきたいと思いますが、どうでしょうか。
#65
○政府委員(吉瀬維哉君) まず最初に、財投関係の施策につきまして御説明申し上げたいと思います。
 先ほど寺田委員が御指摘になりました住宅公団が前年七万戸に対して六万戸に減っているではないかという御指摘でございますが、実はすでにこれは発表されておりますが、昭和四十九年度における住宅公団の実行戸数が約五万戸に落ちていると、これはもう寺田委員御存じのとおり、いろんな都市周辺における関連施設が進まないとか、いろんな障害要因があって、こういうぐあいに実績で落ちている。まあしかし、来年度は都市周辺のその関連施設に対して、新しい措置をつけるとかいろんなことでこれを六万戸に拡充しようということでございまして、この点は御理解をいただきたいと思います。
 それからもう一つは、今度住宅公庫の受付を五万戸の募集で、年度内に対して三万戸ということで再開したわけでございますが、一番最初の日にやや多く希望が来たわけですが、その後、まあ大体二千戸とか千戸というような推移で減ってきましまして、これは建設省とも当初からいろいろ年度内追加につきまして細密の打ち合わせを行いまして、と申しますのは、第一次、第二次の追加ですでに財投で二千六百三十六億、まあ財政投融資としては異例な住宅に対する追加を行った、これはもうすでに御承知のとおり、本年度の金融情勢にかんがみて民間住宅ローンが非常に落ちていると、これは異常の緊急避難措置であるということでやったわけでございます。ただ、まあこれも申すまでもないことでございますが、個人住宅投資といえども総需要に対する波及効果がございますし、庶民の夢でもございますので、追加はいたしますが、限度といたしましてはまあ五万戸ということで発足いたしましたので、二月に入りまして締め切らせていただいたと、こういうことになっております。
 なお、御指摘の中小と大手の関係でございますが、これは建設行政の話になると思いまして、また一つには貸し付けを受けようとする個人の選択の問題にもかかわりますので、むずかしい問題ではございますが、これは建設省当局がやはり中小土建業者が活用の機会があるようにいろいろ配慮を行っているところでございます。
 民間住宅ローンにつきましては銀行局長からお答えいたします。
#66
○政府委員(高橋英明君) 民間住宅ローンにつきまして都銀が非常に少ないではないかという御指摘でございますが、相互銀行、信用金庫といったようなものは、前から住宅とか建設、不動産といった業種に対する貸し出しが高うございました。確かに御指摘のように、都市銀行は住宅ローンというのは非常に少ないシェアでございました。四十七年ごろは総貸し出しに対しまして一・四%というシェアでございました。まあそういうことで、非常に都市銀行冷たいじゃないかという空気もございましたので、それから住宅ローンというのは、個人の住宅のために安定的に推移したほうがいいというような見地から、またこういう時代にあっても、総需要引き締めの中にあっても、できるだけ優先的に回すようにという指導をいたしまして、都市銀行のほうもかなり積極的になってまいりまして、大体増加額の中での限界シェアというものは一〇%を切ることのないようにというような指導をいたしまして、着実に上がってまいりまして、現在ではそれが四%までなったと、こういうことでございます。これはその四%というのは非常に小さいようでございますけれども、金額で申しますと、二年前、四十七年には四千億ぐらいでございました。これが現在は――これは昨年の九月末ですが、一兆六千億というようなところまでいっておりまして、私どもとしては、最近の都市銀行は住宅ローンにはかなり積極的にやっているものというふうに了解しておるわけでございます。
#67
○寺田熊雄君 まだまだこれは理財局長、銀行局長にお尋ねしたいことがあるんですが、時間がきてしまったので、また後日に譲りますが、ただ専売公社の総裁がせっかくお見えになっておられるので、ちょっと一言だけ聞かしていただきたいと思います。
 総裁、今度の値上げというのは、これは公社のイニシアチブによるものでしょうか、大蔵省のイニシアチブによるものでしょうか、それをまず伺います。
#68
○説明員(木村秀弘君) これはどちらから言い出したということじゃなく、やはり大蔵省と公社との合意の上で行ったわけでございます。
#69
○寺田熊雄君 まああまり追及しないことにしましょう。この定価を改定する理由として、益金率の低下、それからたばこ納付金が、たばこ消費税より下回るというようなことを挙げておられますかね、益金率の低下というのは基準が別段ありませんしね。それから納付金と消費税と何か比較するようなものじゃなくて、両方が国家的な見地から、片一方は国へ、片一方は自治体を潤しているわけですから、公の収入だというふうに見ていただけないものかどうか、これが第一点ですね。それからあんまりそういう点にこだわっていただきたくないということ。
 それから、財政事情から増収を図りたいということをおっしゃっておられますがね、これもインフレ対策だとか、社会政策的な見地から好ましいことではないと思うんだけれども、どうかということ、それに対する御見解を承りたい。
 それから、これはたくさんお伺いしたいんですが、もう時間がないので、ほかの方にも御迷惑かかりますからしぼってお尋ねしますが、値上げに伴って買いだめ、それから製品需要の変化が予想せられますね。そこで一時的な増産を必要とする、製造計画の変化が必要となるということが当然ありますね。そのことにつきまして、当然労働時間の延長とか、労働条件の変更が起きてきますね。で、その点では非常に私どもとしましては、あなた方と全専売労働組合との間の協議が必要だと思うのですよ。それが円滑に行われておらないということになると、このあなた方の御意図というものが貫徹しませんわね。その点はどうなっておるか。
 以上、三点についてお答えいただきたいと思います。
#70
○説明員(木村秀弘君) いわゆる専売益金を国と地方公共団体とにどういう比率で分配するのが正しいか、何か基準があるのかという御質問でございますけれども、これは沿革的に見ますというと、常に国の取り分と申しますか、国庫に納める分が、地方公共団体に納める分よりも上であったと、こういう沿革はございます。しからば、理論上から言えばどうなんだということになりますと、これは私よりもむしろ財政当局の方からお答えいただくのが正しいかと思いますけれども、これはやはり国の企業であるからには、原則としてやはり国の需要に対する比率が高いということが自然の姿であって、理論的にそうなくちゃならぬという絶対的な理論は成り立たないかと思います。
 それから、公共料金の値上げとの関係でございますが、このたばこは国の経営する公社が独占的に販売をしておるものでございますから、そういう意味におきましては確かに公共料金とも言えると思いますけれども、しかし、一方におきましては、ほかの公共料金とは多少違うんじゃないかということを私考えております。たとえば同じ専売品でございましても、たばこと塩では考え方ががらりと変わっております。塩につきましては、申し上げるまでもなく公益専売でございまして、これによって国が収益を得るということは、これは考えておりません。しかしたばこは、やはり財政専売でございまして、たばこを販売することによって得た利益というものを、国なり地方公共団体の財政に吸収をいたしまして、それをまた社会一般に還元をしていくと、いわゆる財政収入を目的としておる物資でございます。そういう意味におきましては、一般の公共料金と全く同じだということも言い切れないんではないか。むしろ税収を上げる一つの方向として、たまたま製造、販売という形をとっておる、こういうことが言えるかと思います。
 それから、第三の仮需要対策として、いろいろ公社の職員に与える労働上の条件の変更というようなことでございますけれども、ただいま寺田先生御指摘のように、確かに昭和四十三年の前回の値上げのときの例に徴しましても、値上げ前には仮需要が生じてまいります。それに対しまして、やはり公社といたしましては、消費者に対して品切れによる御不満を与えないように、できるだけの手を講じてまいる責務がございます。そのためにはやはり何としても現場で現にそのたばこを製造しておる職員、いわゆる全専売労働組合でございますが、この了解、理解を求めていく必要があると思います。ただいま公社と組合との間でこれについての協議をいたしておる最中でございます。もうしばらくお時間をかしていただきまして、できるだけ早急に理解が得られるように、協力をしてもらうようにやってまいりたいと存じております。
#71
○寺田熊雄君 終わります。
#72
○矢追秀彦君 政府は、一日の経済対策閣僚会議で、不況対策をいろいろ検討されて発表されておりますが、大蔵大臣の所信表明の中には、不況という言葉が一言もないわけでして、ただ四番目のところに「生産活動は低下し、雇用情勢にも変化が生じて」おると、「今後において、景気が過度に停滞するような事態になれば、」と、こういうふうな点で表現されているだけでありますので、大蔵大臣の御認識としては、現在の景気の動向というものは、そう深刻な不況とは受けとめていないのではないかと、こう考えるわけですが、その点まずいかがですか。
#73
○国務大臣(大平正芳君) 景気の停滞の色が濃いという感じを持っております。
#74
○矢追秀彦君 停滞の色が濃いが、不況とは言わないわけですね。
#75
○国務大臣(大平正芳君) まあ不況ということを断言し切るというところまで、まだ私どもとしてはいっていないわけです。
#76
○矢追秀彦君 そうすると、不況というのは、それではどの程度までいったときを言われるのですか。たとえば失業率はどの程度、あるいは生産性はどの程度の落ち込み、いわゆるそういう物差しといいますか、いま大蔵大臣言われた、現在の状況では不況とは断定しがたいと、景気は停滞しておると、その辺はどういうふうに判断されますか。
#77
○国務大臣(大平正芳君) 私の所信にも書いてございますように、これはまあ相当過度にこういう停滞の状態が深刻化してまいりまして、社会不安を醸成するというようなことになりかねない事態でございまして、失業率が何%になったら、それから不況と言うのだとかという決まった固定的な物差しを持っておるわけじゃございませんけれども、大体の感じといたしまして、落ち込みが過度にわたった場合というような感じ方でございます。
#78
○矢追秀彦君 いま言われたのは、恐らく全般的な状況からそう深刻ではないと言われていると思いますが、しかし物によってはかなり落ち込んでおるわけですね。たとえば十二月度をとりましても、パルプそれから紙、紙加工品になりますとマイナス九%、十二月で前月比から生産は落ちているわけですね。あるいはアルミあるいは電気銅、非鉄金属、これもマイナス六%、こういうのはやはり私はかなり冷えておると思うわけですけれども、石油、石炭はわずか〇・四%ふえておる、こういう状況ですけれども、物によっては相当深刻な事態が、特に中小零細企業には及んでおることも御承知ですし、いろんな一時帰休の問題とか、あるいはことしの大学の卒業生は相当就職が大変である、あるいは取り消しをされたところもあるということで、相当深刻になっておりますし、もう一つは、GNP自身もやはりダウンしてきているというデータが出てきておるわけですが、やはりこれは不況というふうに言ってもいいのじゃないかと私は思うのですけれども、その点重ねてお伺いしたいのですが。
#79
○政府委員(岩瀬義郎君) 不況の定義というのは、実は本当にあるわけじゃございませんで、いろいろ諸説がございますので、いま大臣がおっしゃったように、景気の停滞というか、落ち込みが過度に長く続いたような場合というようなことであろうかと思います。アメリカあたりでは、たとえば二・四半期にわたりまして、GNPが季節調整済みでマイナスになったというようなときをリセッションと言っておるようでございますが、この状況というのは日本あたりに比べますと、たとえば失業率が七%くらいというような大きな数字になっております。日本の場合はいま失業率が一・三でございますから。ただこういう状態をさらに落ち込ませていくことについては、これはやはり政策の上において、大臣がしょっちゅう言っておられましたように、きめ細かい配慮を持ってこの落ち込みを防いでいくという措置をとっていくわけでございますから、現在の時点においていろんな指標を見たところで、過度の落ち込みになっていると判断はいたしておりません。先ほどからの景気の判断の中に、在庫調整の進み方等が議論になっておりましたけれども、品目によってはすでに調整が終わったところもありますし、いまから調整に入るところもありますので、その辺は非常に跛行的な現象が現在出ているということでございます。
#80
○矢追秀彦君 この間の経済対策閣僚会議で、物価と国際収支安定のめどがつくまで総需要抑制の基調を堅持すると、こういうふうに言われておりますが、この物価安定のめどというのは、前々から政府の方針である三月末前年度比一五%、これをもって物価の安定のめどと、こういうふうな方針ですか。
#81
○国務大臣(大平正芳君) それはことしの三月の目標でございまして、三月以後明年の三月まで一けた台に持っていかなければなるまいという第二の目標をいま描いているわけでございます。で、どこらあたりで物価安定ができたと見るべきかという点につきまして、まだ政府で意思統一をはかったことはないわけでございます。
 国際収支の問題も、いま一応為替相場は三百円以内で安定をいたしておるわけでございます。一−三が比較的輸出が不振なときでございますが、予想よりはやや順調に進んでおりますことは、われわれ喜んでおりますけれども、これから先の展望で、政府の「見通し」にもございますように、まだ依然として総合収支相当の赤字を覚悟せにゃならないというときでございますので、いつの時点をもっていまとっておるような引き締め政策に終止符を打つかという転換点をつかむかということにつきましては、まだなおこれからの推移を見ながら十分政府の上で協議していかなければならぬと思っております。
#82
○矢追秀彦君 それはまあ、そう科学的にいかないと思います。経済も動いておりますし、生き物ですから。しかし、ある程度の具体的な目標といいますか、めどがなければ、やはりいまの国民、特に中小零細企業の方は非常に不安なわけでして、私たちも非常にそういったことでいろいろ質問も受けますし、陳情も受けますし、私たちが考えていた以上に実際は現場においては深刻な状況もあるわけです。だから、いま申し上げたように、たとえば三月末一五%までにおさまった、来年の三月までの一けた台への目標に向かって大体なだらかなカーブがこのまま四月、五月あたりに出たならば、この総需要抑制を徐々に解消していくとか、あるいは国際収支の赤字というものが、じゃどの辺まででおさまったならばということをある程度示さないと、やっぱりいま国民は非常にこの総需要抑制の中で始末もし、非常にいま努力をしていると思うんですね。また失業された方も非常に大変な状況にあるわけでして、やはりそういう目標がなければ――ただこの間からのいろいろな政府の方針を見ておりますと、まあ言葉としては非常にうなずける言葉があるんですが、もう一歩具体的な目標というものが掲げられていない。
 私はそういった点で聞くわけでありますけれども、やはりここまで来たらこうするのだ、そのために国民はもう少ししんぼうしてください、努力もしてください、政府もがんばりますと、こう言わなければ、ちょっと不安な状況が続く。それはわからない、見通しがきかぬというのは、それはそうでしょう。国際的な要因もあるわけですから、ある程度それはわからないでしょう。もう少し目標を――いわゆる短期目標というもの、中期目標というもの、そうして長期目標というものを設定して私はやらなければならぬと思うわけですが、その点で重ねてお伺いします。
#83
○国務大臣(大平正芳君) まあ当面の政府の見通しも、一応来年の経済の展望も出しましたし、物価の目標も一応設定をいたしましていま鋭意努力をしておる最中でございます。しかし、矢追さんおっしゃるように、もっと明確にタイミングを失せず、国民に希望を持たすような道標をタイムリーに与えていくことが政策的な配慮として大事じゃないかということ、仰せのとおりでございます。で、さればこそ、先週の経済対策会議で一応当面何をなすべきかというような問題をいま持ち寄って勉強しておるところでございますので、近くそれの答えをとりあえずのところ出さなければならぬと思っておりますが、あなたがおっしゃるように、国民にできるだけわかりやすい――展望を持っていただく場合に、できるだけわかりやすい道標を探るというような心構えで政策的な配慮を加えてまいるように努めていきたいと思います。
#84
○矢追秀彦君 そのいま勉強中のものをまとめて発表されるのはどういう形でされるわけですか。その経済対策閣僚会議の結論として何かきちんとした形での発表なんですか。
#85
○国務大臣(大平正芳君) この間は、御案内のように、通産大臣が当面の経済界の状況、御報告に相なりまして、こういう点を検討願えますまいかという問題点の提示があったわけです。それを各省がいま検討いたしておるところでございまして、そいつに対しまして、いまの時点で提示された問題についてどうこたえるかという姿で一応の答えが出るものと思います。
#86
○矢追秀彦君 大体時期はいつごろがめどですか。
#87
○国務大臣(大平正芳君) いつとまだきめておりませんで、一応の用意ができたら集まろうということになっております。
#88
○矢追秀彦君 それから、これやはり不況対策の一環として公共事業を、先ほども少しお話に出ておりましたが、繰り延べの凍結はそのままにしておいて、一月から三月の分についてはできるだけ全部やれるように促進をすると、こういうことですが、この促進が果たしてうまくいくかどうか。これがうまくいかなかった場合にはどうなるのか、これは非常にネックになっておる問題はいろいろあると思いますが、その一つに地方財政の問題があると思います。これをどうされるのか、たとえば国の補助率を上げられるのか、あるいは地方債の枠を変えていかれるのか、その点について何か具体的なあれはございますか。
#89
○政府委員(辻敬一君) 繰り延べ、公共事業等の繰り延べの問題につきましては、先ほど来御指摘いただいておるところでございますが、第四・四半期まで公共事業等の契約枠の規制というのをやってまいりました。そういう事情もございまして、第四・四半期におきます契約の枠が繰り延べ分の四千億を除きましても一兆四千五百八十億円という相当大きな額に達しておるわけでございます。過去の第四・四半期の契約額を見てまいりますと、四十八年度八千七百九十四億円、四十七年度九千八百七十二億円ということになっておりますので、それらに比べてきわめて多額でございます。そこで、現時点におきましては、先ほども大臣からお答え申し上げましたように、繰り延べの解除を行いますよりは、この契約枠をできる限り早期に確実に消化することが急務であるというふうに考えておるわけでございまして、その線に従いまして、私どもといたしまして努力をいたしたいと、かように考えておるわけでございます。
#90
○矢追秀彦君 地方財政の問題で具体的にどうするか。
#91
○政府委員(辻敬一君) 地方財政の問題につきましては、地方債その他でただいまのところでも消化できる程度の枠を組んであるというふうに承知いたしております。
#92
○矢追秀彦君 補助率はもう変えないのですか。
#93
○政府委員(辻敬一君) その補助率につきましては現在の補助率を変える考えはございません。
#94
○矢追秀彦君 いまのお話だと、地方のほうにはまだまだ、いま言われたこの一月から三月の公共事業を受けて立てるだけの財力はある、こういうふうに思うわけですが、現状はそうではないのじゃないか。もう一つの問題としては、やはり土地が、土地の手当てがなかなかできていない、こういう問題もあるわけでして、現状においては非常に厳しいのではないか。私、こまかい点までよく承知をしておりませんが、そう思うわけなんです。その点、ちょっと重ねてになりますが、地方も受けて立てるだけの体制は整っておる、こう見てよろしいわけですか。
#95
○政府委員(辻敬一君) 地方債につきましては、先ほどお答え申し上げましたように、それに見合う措置はとってあるつもりでございます。四十七年度あるいは四十八年度につきましては、先ほど申し上げましたように、契約可能額に対しまして契約額がかなり下回ったという状況があるわけでございますけれども、四十九年度におきましてはそういう特殊な事情がございませんので、第四・四半期の先ほど申し上げました契約枠の消化に全力を挙げてまいりたいと思っておるわけでございます。
#96
○矢追秀彦君 時間が来ましたので最後に、これは新聞記事ですが、大蔵省では公共事業の執行に当たって五十年ですね、来年度予算の場合、要するに上期に集中してやると、こういうようなことが出ておりますが、いまの一月から三月の分を仮に全部できた場合、かなり景気の刺激になるかならないか、これは結果を見なければわかりませんけれども、そうしてまた上期に全部集中して公共事業を持ち込んだ場合、今度は逆にまた総需要抑制という枠を超えるのではないかという感じもないではないんですが、その辺のかじ取りをどういうふうにされるのか、これをお伺いして終わりたいと思います。
#97
○国務大臣(大平正芳君) いま私どもといたしましては、予算を御提出申し上げ、御審議をいただいておりまする予算案の成立に全力を挙げる段階でございまして、これが成立後どうするかというようなところまで考えが及んでいないわけでございまして、まだとても来年の第四・四半期どうするかなんというところまでは考えておりません。
#98
○近藤忠孝君 大蔵大臣の財政演説の中で、今日の事態の混迷をもたらしたものは経済に重きを置き過ぎたこと、それから調和のとれた配慮を欠いていたことの帰結である。従来の成長の過程を通じて、生活環境施設の相対的立ちおくれ、さらに環境の汚染等のひずみがあらわれたと、こういう指摘がございます。この指摘は、今日各地で発生している公害、災害、それがいままで進めてきたこの高度経済成長の結果であるということを認めた趣旨であるかどうかということがまず第一点です。
 それから、この財政演説の中で、今後均衡がとれたものにしなければならない、こういった指摘がございますけれども、このことは税制、財政、金融の面から、この結果の是正に積極的に取り組むという趣旨である、こう理解していいかどうか、この二点についてお伺いをいたします。
#99
○国務大臣(大平正芳君) 私は、ただいままでわが国の政府が追及してまいりました経済政策が間違っておったとは考えていないわけでございます。確かにこの経済政策は、空前の速度をもって拡大が行われ、近代化が展開されたわけでございまして、そこには環境上の問題、労働力の問題、資源の問題、いろいろの問題が出てまいったわけでございまして、問題が発生したということは近藤さん御指摘のとおりこれは認めます。
 それから、私の意思表明の中で、バランスのとれたものにしなければならないということでございまして、政策を考える場合にいつもこれは考えなきゃならぬことでございますが、とりわけそういうアンバランスを生んだ過去の経緯というものも十分念頭に置きまして、これからの経済政策の推進に当たりまして、十分バランスのとれた平衡感覚は失わないように努力しなきゃならぬと考えます。
#100
○近藤忠孝君 この点は、三木総理も予算委員会における不破哲三氏の質問に対して、自民党の経済政策が高度経済成長ということにウエートを置いて、その結果、大企業に力をつけ、国際競争力を持つ企業に育つようにした、こういう指摘もございますし、実際、高度経済成長のために財政面あるいは税制面でいろいろ優遇措置をとってまいったことも事実でございます。よく指摘されている点でありますが、租税特別措置法による減免税額が、昭和四十九年一年間で七千二百七十億円、昭和三十五年から四十八年の十四年間で五兆四百八十億円、こういう数字もありますし、また五十年度を見てみましても、財政投融資九兆三千億円、その多くが大企業のための基盤整備に使われる、こういった事実がございます。そして、たとえばあの災害をもたらした石油の備蓄のためにも財政投融資の中から八百三十五億円、さらにその他も含めますと八百八十五億円という、こういう多額の金が出たわけでありますけれども、こういう点がまさに、こういう政府が援助し支援してきたことが、今日の高度経済成長をもたらし、その結果が災害であるというぐあいに考えるわけです。そこで、今度公害の問題に対する財政面あるいは税制面を見てみますと、五十年度の財政投融資で公害関係見てみますと、たとえば開発銀行で公害関係の分が一千四百十三億円、その他の国民金融公庫など全部合わせますと、合計三千百六億円に達します。また一般会計の中からの公害防止事業助成としての七十三億円とか、あるいは無公害技術や無公害エネルギーの開発のためということで、たとえば重要技術研究開発費二十四億円、大型工業技術研究開発事業費五十三億円、新エネルギー技術研究開発費三十六億円計上されておりますが、いわば公害を防止するという、あるいはその対策ということで現実に金が支出され、あるいは融資がされる、こういう事態でありますし、さらに税制面見てみますと、金額は別としましても、公害防止の機械設備等の特別償却とか、あるいは耐用年数の短縮とか、さらに公害防止準備金、こういったもので税制上も十分に対処がされている、こういうのが現実であります。しかし、公害の問題について見ますと、これは本来企業が負担すべきものを政府が負担し、あるいはまた政府関係の金融機関から融資されているという、こういった点ではむしろ元来企業の負担すべきものを負担しているという面がありはしないか。たとえば「チッソ」に対する融資の問題もそういった点で指摘されておりますけれども、こういった点についての大臣の御見解を聞きたいと思います。
#101
○国務大臣(大平正芳君) たびたび政府が申し上げておりますように、原因者負担の原則というものを損なうことのないように配慮することは当然だと思うのでございますが、いわゆる産業政策といたしましても、公害の予防とか、技術の開発というようなことは、われわれの政策的関心、努力の対象となるのは当然の道行きであろうと思うのでございまして、そういうことに対しまして、政府としてもできるだけ配慮することが政府の任務であろうと私は思います。
#102
○近藤忠孝君 私は公害対策などすべての援助等をいけないと言っているのではなくて、たとえば中小企業などに対しては十分やるべきだと思うのです。ただ、十分力のある大企業に対してこれほど至れり尽くせりの状況があるというこの事実を指摘したいと思うのです。これから申し上げたい点は、社会的不公正の是正という内閣である以上、一方でこのように大企業に対して、たとえば公害対策という、こういう面で十分な措置をとっていると、そういう内閣である以上、その結果としての公害被害者、この人々に対しても税制面、またその他の金融面等で十分な対処をとるべきじゃなかろうかということをこれから申し上げたいわけでございます。端的な例として、これほど大企業に対して優遇をしておるんですから、この公害の結果である被害補償、これに対しては課税すべきではないんじゃなかろうかと、こう思うわけです。この点についての大臣の見解を聞きたいと思います。
#103
○政府委員(中橋敬次郎君) ただいまお話しの、公害によりますところの被害者の受けますいわゆる賠償金等につきましての現在の課税はどういうふうになっておるかということをお答え申し上げますと、公害健康被害補償法等によりまして、療養の給付とか、障害の補償費を個人が受けました場合には、これはもちろん非課税になっておるわけでございます。そういう特別法によりますところの非課税はございますけれども、所得税法そのものにも、そういった場合を含めまして一般的に心身に加えられました損害につきまして支払いを受ける慰謝料、その他の損害賠償金というのは非課税になっておりますから、そういうものを受けました個人については、もちろん所得税はかからない仕組みになっております。あるいはまた心身に加えられました損害が原因で、仕事に従事することができなくなったということにつきまして、収益の補償を受けるという場合には、もちろんこれも非課税とされておるわけでございます。ただ、そういったものとはやや性質を異にいたしまして、そういう損害がありますが、それに加えまして、いわば事業をやっておれば当然収入として入ってくるようなものを補償する意味におきまして受ける損害賠償金と申しますが、そういうものについては、これはまさに事業所得と代替的なものでございまするから、これは事業所得の収入金額に入れてみまして、そしてまた他の経費が一体どういうふうになっておるのかということで総合勘案して、課税所得があれば課税になるというようなことになるわけでございます。
#104
○近藤忠孝君 要するに、身体被害に対しては非課税、そうして、いわゆる収益に対してはこれは課税するという、こういった状況のようです。しかし、実際の公害被害を見てみますと、たとえば漁業補償ですね。いま水島で漁業補償が問題になっておりますけれども、あのうちどこの部分までがいわゆる精神的な慰謝料部分であるのか、そうして、どこの部分までがいわゆる収益に対する補償であるのか、とうていわからないわけですね。そうして、現実の扱いとしてみますと、熊本のチッソの漁業被害者ですね、これに対しての補償金、四十八年度分に対する補償金に対しては、実際には課税されていないわけです。実際の扱いはそうなっておりますね。ところが一方で同じころの山口県の徳山、岩国では、水銀、PCB汚染に対して補償金が払われましたが、そのうち漁民に対しては六七%、鮮魚商については三三%非課税になっている、こういったことなんですね、実情を調べてみますと要するに補償金のうち三七%分は慰謝料分だったという計算を恐らく税務署はしたと思うんですよ。ところがそんなことが実際できるのかどうかということなんです。そこで、実際の公害の被害者、これは先ほども大臣総論的にお述べになったとおり、いままで高度経済成長で政府が十分な援助をして、その結果大きくなってきた結果としての公害なわけですね。また現実の公害対策として十分企業が公害対策をする場合には、税制上も、その他の面も、金融的にも十分な補償をしている。私たち実際公害企業を見てみますと、公害企業の設備、政府からの援助があった部分、あるいは融資のあった部分しかやっていない、その限度の公害対策であるということも現実にあるわけです。そうなりますと、そういう分については十分な援助がされているにもかかわらず、その結果の公害については、いまも言ったような収益部分については課税する、しかも、範囲がわからないのにもかかわらず課税するということですね。こういったことがなされている。こういった実例について、これは大蔵大臣として実際どうお考えなのか、この面についてこれを非課税にするという、そういう方向でこれから考えていく意思があるかないか、この点をお聞きしたいと思います。これは大臣にひとつお聞きしたい。
#105
○政府委員(横井正美君) ただいま税の執行、大変むずかしいのではないかという御指摘がございましたが、御指摘ごもっともでございますけれども、私どもといたしましては、公害の損害賠償金等が支払われました場合におきまして、個々の事実関係をよく見きわめまして、先ほど主税局長から御答弁申し上げました税の仕組みに当てはめるということをやっておるわけでございます。この損害賠償金が支払われました場合の損害が一体どういうものであったか、あるいは心身の損害に対するものであるのか、あるいはそれに起因します休業補償であるのか、あるいはまたお話が出ました収益補償に該当するのかどうかというふうなことを、実態に即しましてケース・バイ・ケースで判断いたしております。国税局署におきまして被害者の方々の気持ちもくみまして、実情に即して判断するように指導しておる、こういうことでございます。
#106
○近藤忠孝君 私が先ほどから問題にしておるのは、税務署がそういったことを判断する力があるのかどうかということなんですよ。現に、先ほど徳山などの例話しましたですけれども、実際税務署へ行って、「チッソ」の場合には非課税なのに、なぜこう課税したのかと質問しましたら答えられないと言うんですね。実際そういうものだと思うんです。そこで大臣に、これ、ちょっとごらんいただきたいのですけれども、これは香川県へ行ってもらってきた資料です。これは県からもらった資料ですけれども、実際こういう油の中でひしゃくでしゃくって、そしてその漁民の人々がその年に得られるはずの補償金があった、それをもらったからといって、それであなたは補償されたのだということを選挙区の漁民の皆さんに、大臣、そんなこと言えるのかどうかということなんです。そういうことを言ったらずいぶんしかられてしまうと思うのですけれども、まさに被害者の人は、これほど海を荒らされてしまって、そしてそのときに、ことしはたとえば百万円入るはずだったから百万円上げますぞ、それで十分に償えたと言えるのかどうかうか、補償されていると言えるのかどうかということがまさに大問題なんです。そんなところへ税務署が行って、何かそろばんをはじくかどうか知りませんけれども、どの部分だけが慰謝料部分で、どの部分だけが収益に対する補償か、そんなことが判断できるかどうか。これはあなたでなくて大臣ですね、ひとつ漁民が実際こういうことになっているわけですから、その面についてのお考えを聞きたいと思います。これは政治的判断の問題じゃないですか。
#107
○国務大臣(大平正芳君) 租税は、近藤さん御承知のように法定主義でございまして、法律によりまして所得のあるところより税金をちょうだいする、しかし、これ、免除する場合には、ちゃんと法定されるということでございまして、原則として所得がある場合におきましては、そこに発生する所得があるわけでございますから、税源があるわけでございますから、税金をちょうだいするというたてまえになっておるわけでございます。いま、しかし問題は、その判定の問題でございますし、税務官吏の能力の問題が問われておると思うのでございます。税務官吏も人間でございますから、一々神様のような判断できないかもしれませんけれども、私は、日本のただいまの五万二千の国税官吏というのは非常にすぐれた能力を持っておると思うのでございまして、あらゆるむずかしい問題によく対応力を持って対処していただけると思います。欲を言えばそれは十分でない面がないとは言えないと思いますけれども、中央の指導と協力のもとで、ともかく複雑な現実に税法の適用面の処理をよくやっていただいておるものと私は信じております。
#108
○近藤忠孝君 現場でのいろいろな扱いの問題を越えて、この問題はむしろ政府としての政治的判断の問題だと私は思うのです。そこで、比較のためにこれは通産省が出している「企業の公害防止活動と助成措置」と、その理由についてこう述べているのですが、要するに「公害防止投資等が直接生産寄与効果が少ない非収益性のものであり、政策的にそれを早急に推進して解決する必要があるところから、種々の助成措置が」必要だということで、先ほど私が言ったような金融面、税制面、それと具体的な予算の面からの助成と、そこまでされているのに――公害出すほうがですよ。出すほうがそうされているのに、受けたほうが実際には判断きわめてむずかしいし、やはり精神的な慰謝料の部分、これは大変大きな部分があるし、これはむしろ人の判断の問題ですから、どれほどかということは経験しなければわからないわけですよ。それを現場の税務署の職員にやらせることはきわめて不可能じゃなかろうか。ですから、これはむしろ公害関連企業に対してこういった助成をいま言ったような理由でやっている政府なんですから、社会的公正を言う以上、むしろ思い切ってこの関係については非課税にするという積極面を打ち出すことが必要ではなかろうか。そのことが常々三木さんが言っている社会的不公正の是正そのものじゃなかろうか。そのことを伺いたいのだし、またそのことについての決断された見解を聞きたいと思うのです。
#109
○国務大臣(大平正芳君) 産業政策として公害対策をいろいろ講じるということ、これは公害の防除をやってまいることでございますから、その会社の利益であるとか、利益でないとかいうより、社会のために公害を防除するということでございますから、そのことと税金の問題とすぐ結びつく問題ではないように私は思うわけでございまして、それは公害対策も鋭意やらなければなりませんし、課税の面におきましても課税対象をどのようにしぼっていくか、課税標準をどのようにつくり出していくか、これは非常に技術的にむずかしい問題でございますけれども、できるだけ公平に丹念にやってまいらなけりゃならぬことだと思うのでございます。問題は、立法政策の問題として、公害によって被害を受けた場合、それで賠償金をもらった場合、補償金をもらった場合は、もう非課税にすべきじゃないかという立法政策、それは近藤さんがおっしゃるように私はあり得ると思います、そういう立法政策は。税の租税政策からは直ちにそれは出てこない政策なんでございますけれども、一つの立法政策としては、私はそういう考え方はあり得ると思うのでございます。しかし、租税政策として、そういう場合は全部非課税にすべきじゃないかという立法政策上の提言は、私は、にわかに賛成できませんけれども、これはなおよく検討はしてみます。
#110
○近藤忠孝君 時間が参ったので不満ですけれども、これでやめますが、これは三木内閣の看板の問題ですから、今後引き続き追及していきたいと思います。
 以上です。
#111
○栗林卓司君 時間も経過していますし、限られておりますので、総需要の抑制に対応した政府部門のあり方という点を中心にして、一つだけお伺いしたいと思います。
 素朴な形で疑問を呈したいと思うのですけれども、いまわれわれが直面している不況というのは、従来経験した不況とは大きく違うんだということがよく言われます。この不況という言葉が景気の停滞だということで言いかえられたければどちらでも結構です、言葉の議論をしているつもりはありません。従来の不況ですと、設備投資が冷え込んでも、国民消費が景気の下支えをしてくれていたと思うんです。今回の不況あるいは景気の停滞というのは、この国民消費そのものが真っ先に冷えちゃった、そこで、設備投資も停滞するということですから、冷え込み方は一段と従来とは違って厳しいということが言われるわけです。この点、深く議論するつもりはありません。いずれにしても、そういうことで、国民消費が冷え込んできたということが今日の物価の鎮静化をもたらしてきたと考えても間違いないんじゃないか。そこで、国民消費がなぜ落ち込んできたんだろうかと考えてみますと、最初の動機というのは、原油価格の大幅な引き上げに伴う価格水準の急速な上昇でとにかくみんなびっくりして財布のひもを締めてしまった。その締め方の影響というのは所得階層によって差はあるかもしれませんけれども、とにかくだれかれなしにびっくりして財布を締める気になったことは同じことだと思うんです。その後で今度は対策として総需要の抑制策が出されてきた。結果としていま民間部門はどうかというと、残業は減ってきた、レイオフが出る、賃金カットがある、倒産が出る、実収入は減ってまいりますから、ここでも消費はさらに冷えてきたわけです。冷えてきたのが三月末消費者物価対前年度上昇率が一五%におさまるであろうという話になるんですけれども、政府部門を見た場合に、レイオフがあるわけでもなければ、残業が減るわけでもなければ、賃金カットがあるわけでもない。何もひがんで言うつもりではない。民間部門で働いている者の消費の冷え方と、政府部門で働いている者の消費の冷え方を、今日の総需要抑制の浸透というのがねを通して見ますと、不公平じゃないか。民間だけがつらい思いをすることによって、この三月末対前年度消費者物価上昇率が一五%ということになるんだろうか。政府部門はこのままでいいんだろうかという素朴な点について御所見を承りたいと思います。
#112
○国務大臣(大平正芳君) いま栗林先生がおっしゃるように、今度の景気停滞の大きな特徴の一つは、国民の消費が健全になったといえば健全、なかなか上向いてこない。で、これが本格的に暖まってこないと、景気の本当の立ち直りにつながらないと思うんでございます。それが何を契機にしてそうなるのか、それに対してどういう対策があり得るのかというようなことが、確かにあなたの御指摘のように、問題だと思うのでございまして、先ほど鳩山さんの御質問の場合に対しまして、先行き何かこう、もう物価もそろそろ安定しかけたし、世の中もやや明るい曙光も見えたんだという一つの明るい展望が、あるいはそういうきっかけになるんじゃないかとすれば、景気対策も、インフレ対策ももとは一つじゃなかろうかというような感じがしないものでもないんだというような感想を私述べたわけでございますが、実はよくわからぬのです、本当はそこは。その点、あなたが御指摘のように、確かにそれがいま最大の問題だと思うんでございます。ところが、そういう問題とあわせて、いろいろ雇用の状況が大きなさま変わりになってきておるようでございます。そこへもってきて、政府と民間の問題、それから政府といたしましても中央と地方の問題、いろいろアンバランスが問われるようになってきたと思うのでございまして、普通でございますならば、経済が相当拡大テンポで伸びておるときはそういうような問題は問題にならないで済んだわけでございますけれども、一遍こうエンジンがとまってみますと、そういうところが改めて見直される時代になってきたと思うのでございまして、いままでそういうことがなかったわけではない、程度の差こそあれ、いままではあったわけでございますが、そういうことがいま鋭敏に意識に上るような時代を迎えたと思うのでございます。そういう意味において、私は、政策的にも、また国民一人一人がいろいろ反省するそういう意味のチャンスをいまわれわれ迎えておるのではないかと思うのでございまして、このチャンスは、新しい日本の活路、進路を発見する場合におきまして、非常に徒事でない、非常に大事な時期じゃないかと、この時期を誤らぬように、これから脱出の活路をどう見出すかが非常に大事になってくるんだと、そういう意味で、われわれ非常に自重していかなければならぬのじゃないかというような感じをいまあなたの御質問から――まあお答えになりませんけれども、そんな感じをしておるということを率直にお答えいたします。
#113
○栗林卓司君 御意見を含めながら申し上げてみたいと思うんですけれども、いま確かに大臣言われたように、従来は気にならなかったことが急に気になるほど、高度成長と今日の低成長というのは前の環境がさま変わりになっている。そこで、おっしゃるように、国民として、物の使い方、生活の仕方についていい反省のきっかけが出たとおっしゃるわけですが、国民から見ると、その前に政府が反省しろという気持ちも出てくるわけですね。で、感情論でいくと、昔は減俸をしたじゃないか、民間が賃金カットならおまえたちもという気になりますが、問題は、国民消費をどうやって健全に高めていくのかということを考えると、実は減俸というのは政策にならない。では、一体どうしたらいいんだろうかということになると、問題は、大臣が所信表明の中でもおっしゃっていましたけれども、資金の重点的配分をどうするか、これまでの行財政のあり方がよかったんだんとか、そういったところに大胆に政府としてメスを入れてまいりますという姿勢がないと、やっぱりその国民が感じている何となくという気持ちが解けてこないのじゃないか。しかも、考えてみますと、私は、何も一本調子に景気刺激をしろということを主張しているつもりはありません。総需要抑制の枠はやはり、どれを枠と見るかは別にして、今後とも続けていかなければいかぬと、そこの中で民間に何を与えたらいいかと言うと、やっぱり仕事を与えなきゃいけない。それを限られた枠の中でどうしていったらいいかということになれば、当然従来でしたら財政の硬直化ということで言われていた問題点だし、しかも周りを見ると、政府部門にしても、人件費は増加してくる、社会福祉費用はふえていく、地方財政は赤字になってきたという中で、どうやって抜本的な見直しをしながら資金の本当に効果的な配分をしていくのか、その政府の迫力というのがにじんでこないと、やはり国民はわからないんではないだろうか。その意味で私が期待と意見を込めて申し上げたいのは、そういったことに政府は真剣に取り組みますと、その迫力を何らかの形でお見せになる必要はないんだろうかを申し上げて、大臣の御所見を承りたいと思います。
#114
○国務大臣(大平正芳君) 大変示唆に富む御質問ですが、私といたしましては、迫力をどういう方向にどの程度どういうタイミングにおいて出すかということでございます。いま国民の消費は健全化したというか、冷え込んだというか、そういう状況で、一向上昇の気配が見えないわけでございますが、どこかから打開していかなければいかぬという場合に、前のように民間の設備投資に狂奔するというような時代でもない。とすれば、やはりこれは経済の体質が変わって、生活重点だとか、福祉経済だとかいうことがいろいろ言われておるわけでございますので、たとえばわれわれの生活環境、生活周辺の整備、たとえば住宅政策でございますとか、下水道の整備でございますとか、あるいは公園対策でございますとか、そういったところに財政や財投といたしましては限られた公共投資の中でも力点を置いてみようと、ほかはまあ、こう前年度で天井打ちにしておいて、こちらのほうに若干活路を開いてみようという、これはあまり迫力になっていませんけれども、そういう願いを込めてそういう新しい活路をそういうところに目ざしていこうという意欲を多少出さしていただいたつもりなんでございます。それからまあ、社会保障施設でございますとか、教育施設とかいうのも若干伸ばさしていただいたわけでございまして、十分とは言えませんけれども、しかしそれは、われわれが考えているようなことでなくて、もう少し迫力のある、そしていまの経済政策としても吟味する値打ちがあるだけの、重さのあるものにしろということだろうと思うんでございまして、私どもの経済政策といたしましては、いま言われたような方向で鋭意工夫してみたいと考えております。
#115
○栗林卓司君 済みません、一つだけ。端的にお伺いします。たしか昭和四十三年だったと思いますけれども、当時大蔵省が財政の硬直化ということで警鐘を乱打されました。それと同じように大蔵大臣として警鐘を乱打される必要はないんだろうか、この点だけお伺いします。
#116
○国務大臣(大平正芳君) あのころ警鐘を乱打しまして、私も当時、政調会長として一翼かいまして、大蔵省のしり馬に乗って大いにやったものですよ。ところがその後やはりまた高度成長が続きましてね、自然増収が年々歳々何千億か入ってくるわけです。したがって、また本当は硬直化しておる、毎年毎年硬直化の度合いが激しくなっておるんだけれども、毎年毎年、先ほど大塚先生が御指摘の、その自然増収に支えられまして、毎年あまり困らずにきたもんですからね。ところが、いよいよことし来年、これから困るんです。財政硬直化が言われるようになったのはもう――これから自然増収がいよいよ出てこぬということになった場合に、こんなはずじゃなかったと、もう首が回らぬがというようなことで、これ、警鐘乱打しなくても、首が回らなくなるんだと、これはもう乱打する必要はないんです。われわれは静かに財政の体質をもう一度まじめに見直さなけりゃならぬ時期が来たと思います。
#117
○委員長(桧垣徳太郎君) 本件に対する本日の質疑はこの程度といたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後九時十九分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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