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#1
第075回国会 外務委員会 第4号
昭和五十年二月二十日(木曜日)
   午前十時二十七分開会
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         二木 謙吾君
    理 事
                秦野  章君
                戸叶  武君
    委 員
                糸山英太郎君
                大鷹 淑子君
                増原 恵吉君
                亘  四郎君
                田  英夫君
                羽生 三七君
                黒柳  明君
                立木  洋君
       発  議  者  田  英夫君
   国務大臣
       外 務 大 臣  宮澤 喜一君
   政府委員
       外務省アジア局
       長        高島 益郎君
       外務省アメリカ
       局長       山崎 敏夫君
       外務省欧亜局長  橘  正忠君
       外務省経済協力
       局長       鹿取 泰衛君
       外務省条約局長  松永 信雄君
       外務省条約局外
       務参事官     伊達 宗起君
       外務省国際連合
       局長       鈴木 文彦君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        服部比左治君
   説明員
       外務省情報文化
       局文化事業部長  堀  新助君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○対外経済協力計画の国会承認等に関する法律案
 (田英夫君外一名発議)
○日本国政府とオーストラリア政府との間の文化
 協定の締結について承認を求めるの件(内閣提
 出)
○国際情勢等に関する調査
 (核兵器不拡散条約批准問題に関する件)
 (核兵器の持込み問題に関する件)
 (韓国における日本人学生の釈放と日韓定期閣
 僚会議開催問題に関する件)
 (ベトナム問題に関する件)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(二木謙吾君) ただいまから外務委員会を開会いたします。
 対外経済協力計画の国会承認等に関する法律案を議題とし、発議者から趣旨説明を聴取いたします。田英夫君。
#3
○田英夫君 ただいま議題となりました対外経済協力計画の国会承認等に関する法律案につきまして、その提案理由及び主要な内容を御説明申し上げます。
 世界はいまやかけがえのない地球に生をうけた人類が世界共同体という連体意識の上に立った国際協力の時代になっています。
 この国際協力の時代において対外経済協力の目的とは、いわゆる南北問題、すなわち富める先進諸国と貧しい発展途上諸国との間に存在する大きな貧富の差から生ずる諸問題、また、先進諸国の高度経済成長から生ずるひずみの是正の問題等にこたえるものであり、世界各国が相互に資金や技術を供与し合い、かつ貿易面での協力を強化しつつ、限られた地球上の資源を有効に活用し、分かち合い、人類が全体として恒久の平和と繁栄を享受し得ることを目指すものであります。
 このように、対外経済協力が世界各国の平和と繁栄を究極の目的とするものである以上、対外経済協力が特定の国家における軍事目的や非民主的政権の強化に奉仕するがごとき結果を招来する事態は厳に戒むべきことであります。
 以上の観点から、わが国の対外経済協力もその根本原理においては、国際社会の一員としてその能力に応じて要求されている責任を全うすることであり、この責任を公正に遂行することに伴って、対外経済協力はわが国の平和的存立と繁栄を達成するために必要な国際環境をつくり出す役割りを果たすことになるわけであります。
 このことは、わが国憲法前文が「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであって、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」、また、「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。」と規定していること、さらには、「われらは、いづれの国家も、自己のことのみに専念して他国を無視してはならない」と規定していること、この日本国憲法前文の精神にかなうものであります。
 このように、対外経済協力の果たす役割りの重大さにもかかわらず、従来、政府の行う対外経済協力の内容及びその適格性について国会は必ずしも事前に全般にわたって明確に関知することが困難な状況にあったと思われます。
 たとえば、昭和四十九年度におきましては一般会計予算から約千六百十億円が支出され、財政投融資からは対外経済協力の実施機関である日本輸出入銀行及び海外経済協力基金へ九千八百八十億円の繰り入れがなされているわけであり、これらの巨額な費用が対外経済協力のためにいかなる国のいかなる部門についてどのくらいの規模において支出されるのかが、従来、国会における予算の承認の段階においては必ずしも十分に把握し得ない状況にあったわけであります。この点に対する反省から、政府が対外経済協力を行おうとする場合におきましては、その具体的内容を定めた対外経済協力計画を作成して国会の承認を経ることとし、適正かつ効果的な対外経済協力の実施に資することとしたわけであります。
 以上がこの法律案を提出する理由であります。以下その主な内容につきまして御説明申し上げます。
 第一は、対外経済協力の目的といたしましては、前述のように、対外経済協力がわが国の外交の中で果たす役割りの重要性にかんがみ、対外経済協力計画についての国会の承認を受ける等の手続を経ることによって適正かつ効果的な対外経済協力の実施を図ろうとするものであります。
 第二は、この法律案におきましては、政府みずから行うもののほか、日本輸出入銀行、海外経済協力基金及び国際協力事業団に実施させる対外経済協力も対象といたしております。
 第三は、対外経済協力の指針といたしましては、民主主義の原理に反する統治を行う国に対しては、対外経済協力を行わないこと及び軍事目的に充てられるような対外経済協力は行わないこととしたわけであります。これらはいずれも、日本国憲法が民主主義及び永久平和主義をその理念として掲げており、わが国の対外経済協力がこの憲法の理念にかなうものでなければならないと考えたからであります。第四は、対外経済協力計画は、政府が毎年四月一日から翌年三月三十一日までの間に係る対外経済協力計画を作成し、国会に提出してその承認を受けることとしたわけでありますが、その計画は、対外経済協力の相手国別に区別するものとし、対外経済協力として実施しようとする事業ごとに、当該事業の実施機関、実施規模その他当該事業を実施するために必要な事項について定めるものとし、できるだけ対外経済協力計画の明確化を図ろうとするものであります。
 また、年度当初に予定していなかった対外経済協力の必要が新たに生じた場合においては、その都度、当初の対外経済協力計画を変更することができるものとし、国会の承認を経る道を開いております。
 なお、災害援助等の緊急に実施する必要があり、かつ人道上の目的に充てられるものにつきましては、その計画の作成及び国会の承認手続は必要としないこととしております。
 第五は、対外経済協力計画の実施状況の報告でありますが、これは、おおむね六月に一回国会に報告することを義務づけることにしております。
 右のほか、施行関係について所要の規定を設けております。
 以上がこの法律案の提案理由及び主な内容でありますが、これにやや補足をして委員各位にお願いをしておきたいと思いますが、ただいま申し上げたとおり、従来対外経済協力はその重要性にもかかわらず、年度予算を承認することによって実質的にこれを認めていたわけでありますけれども、国民の支出した貴重な税金を日本国民に還元をする形ではなくて、他国民の繁栄、平和といった目的のために使用するわけでありますから、その使途、内容については、国民の代表である立法府、つまり国会の承認を求めるのが私は民主主義の筋である、このことを特に強調しておきたいと思います。したがって、私は与野党という区別、あるいは党派という区別を越えて、立法府という立場からこの問題をぜひお考えいただきたい。これは日本の憲法のことも申し上げましたけれども、きわめて重要なことであると信じています。したがって、私が提案者になりまして御提出いたしましたけれども、まだまだその意味では内容等不十分な点もあるかと思います。そうした点につきましては、当委員会における審議の経過の中で、各党各委員の御意見を十分伺って、直すべきところは直すという余地もあり得ると思います。要は、先ほど申し上げた立法府という立場を十二分にお考えいただきたい。その上でどうか速やかに御同意くださるように改めてお願いをしておきたいと思います。
#4
○委員長(二木謙吾君) 次に、日本国政府とオーストラリア政府との間の文化協定の締結について承認を求めるの件を議題とし、これより質疑に入ります。
 質疑のある方は御発言願います。
#5
○戸叶武君 日本国政府とオーストラリア政府との間の文化協定、これは三木内閣、宮澤外務大臣の外交理念というものがこの中に私はにじみ出ているものと推定しますが、そこで宮澤外務大臣に私はこの問題をめぐって具体的に二、三の点を質問いたします。
 三木首相は、かつて外務大臣のときから、太平洋時代が来たという観点に立って、アジア・太平洋時代における、特に太平洋地域における平和共存体制の樹立を目指して豪州やニュージーランドにも呼びかけたことがあります。やはり三木さんの、いろいろな点で批判はありまするけれども、理想主義的な理念というものは、どちらかといえば三木さんの外交的な方面に多くのものが力点が置かれておったと思うのです。その中で最も刮目すべき問題が私はこの豪州やニュージーランドに対する呼びかけだと思いますが、三木さんと田中前総理とは、考え方の具体的な表現は異なりますけれども、この豪州やニュージーランドに対しての意欲というものには、やはり相当共通なものが流れておったと思うのであります。
 しかしながら、田中内閣と三木内閣の違いは、それを具体的にどう実践するかの問題だと思います。田中前首相は、昨年ニュージーランド、豪州を公式に訪問しましたが、その際、文化交流のため、豪州とは百万オーストラリアドルをそれぞれ出し合うことを、またニュージーランドとは、金額は明示しなかったと思いますが、やはり相当の資金を出し合うことを合意しているのであります。その田中さんの打ち出した、具体的な金額までも出しての呼びかけ、それが今度の予算措置にはどうなっているか、五十年度の予算にはまだ出てないようでありますが、その方向に向かってどういうような模索が行われているか、また具体的対策は講ぜられているか、そういうことについてまず第一に承りたいと思います。
#6
○国務大臣(宮澤喜一君) 詳しくは後ほど政府委員より申し上げますが、御指摘のように、豪州との間に百万豪州ドルを相互に支出をいたしまして文化交流に資しようということを、田中前総理大臣が豪州訪問の際に約束をされたわけでございます。これは、具体的には私ども主として国際交流基金の事業において行おうと考えておりまして、したがいまして、百万豪州ドルを一時に支出するという意味合いではなく、国際交流基金の運用において、豪州とのこのような文化交流の約束を一つの重点としていこう、こういうことでございますので、昭和五十年度におきましても、国際交流基金においてそのような計画を中に盛っております。予算措置といたしまして特段にこの百万ドルの一部が別に掲げられておるわけではございませんで、交流基金の中において処理をしている。並びに、もちろん基金によりませんで、それ以外に日本側の諸機関からこの交流に資する計画が出てまいることもあろうと思いますが、それもこの交流の計画の実績として勘定していく、このような了解に両国の間がなっておるわけでございます。
#7
○戸叶武君 これに関連しての質問ですが、田中前総理は、一昨年の訪米の際に、日本研究資金として一千万ドル贈与することをアメリカで表明しております。また同年の仏、英、西独各国訪問の際にも、各国へそれぞれ百万ドルの贈与を表明しておりますが、この履行状況はどうなっておるでしょうか。
#8
○説明員(堀新助君) 田中前総理がアメリカを訪問されましたときに約束をいたしました合計一千万ドルの寄贈は、一昨年の十二月に実施いたしました。また、イギリス、ドイツ、フランス三国に対しまするそれぞれ三億円は、昨年の三月に寄贈を実施いたしました。
 そこで、この寄贈金額は、これを基金といたしまして、年々の利子だけを日本研究の促進のために使うということになっておりますので、寄贈実現後、まだ日も浅いことでございますので、活発な利用はいまのところされておりません。しかし、例を挙げますならば、たとえばアメリカのエール大学におきましては日本語教授を一人新たに雇ったことと、それからその他小さなこともございますが、実施を始めておりますし、スタンフォード大学におきましては、大学院及び学部の学生で日本研究を専門にしておりますものに対します奨学金、それから日本関係の教材の購入などに使っております。ヨーロッパにおきましては、詳しくは申し上げるのを遠慮いたしますが、フランスの例をとりますと、パリ第三大学の東洋言語文明研究所、リヨン第三大学、パリ第七大学その他の日本研究の高等研究機関に対しまして運用益約一千万円をまず配分したという報告を受けております。イギリス、ドイツについても、目下運用益の配分について委員会で検討中であると聞いておけます。
#9
○戸叶武君 いまアメリカ及びヨーロッパにおける一つの具体的な施策が説明されましたが、オーストラリアにおける行き方もこれと大体同じような方向をたどっていくのでしょうか。
#10
○説明員(堀新助君) オーストラリアとの計画は非常に違っております。アメリカに対する寄贈は、十の大学に対しまして寄贈いたしまして、ヨーロッパ関係はそれぞれの国の大学及び高等教育機関における日本研究全部の大学に及ぼしてくださいという意味の約束をしてございます。ところが豪州の場合は、これはお金を寄贈するのではございませんで、先ほど外務大臣から説明がございましたように、百万豪州ドルという目標を持ちまして、広くいろいろな文化交流事業を拡大していこうという約束でございますので、アメリカ、ヨーロッパに対します場合と豪州の場合は非常に違っております。
#11
○戸叶武君 そのアメリカ、ヨーロッパに対するのと豪州のやり方は違うというのは、やはり現地の実情に適応すべくそういう細かい配慮がなされたんだと思いますが、いま、イギリスから離れて、経済的にも文化的にも特に日本に接近しなければならない太平洋時代における豪州というものは、明らかに日本研究も大学だけの研究でなく、国民全体が研究しようという取り組み方にきているのでそういう施策もなされているのだと思いますが、アメリカにおけるエール大学の工科なんかは、すでに日本人の優秀な研究者をあそこへ集めてサンシャイン計画の研究なんかにも入っているぐらいで、日本で明日の学問に対して先取りの意欲のないこの停滞を、逆に日本のアメリカに行っている優秀な留学生、研究者というものを大学で吸収して、そこで日米共同でそういう方向づけをやろうというような点があるので、おそらくはそういう点も十分配慮しているのだと思いますが、いま第三の私は質問として、日豪間の文化交流はかなりの実績が上がっているのが事実であります。また留学生の交流も盛んなようですが、この実態はどうなっておりますか。日本から豪州への留学生、また豪州から日本へ来ている留学生及び研究者、そういうものの文化交流の実態はどうなっていますか、その御説明を願いたいと思います。
#12
○説明員(堀新助君) オーストラリアとの留学生の交流につきましては、まずオーストラリアから日本へ留学生を受け入れる面におきましては、文部省の予算で実施されております国費留学生の制度がございます。これによりまして、豪州から十三名の人が昨年度だけでやってまいりました。一九七一年以来の合計を申しますと、来年度の予定も加えますと、累計五十三人に上る予定でございます。それで実際十三名と申しましたのは、昨年一年で入ってきた国費留学生でございますので、前からおります人と加えますと、昨年の五月一日現在ではオーストラリアからの国費留学生が二十四人、私費留学生が十八人、合計四十二人が日本に参っております。それから、日本人のオーストラリア留学でございますが、これも文部省の予算によります留学生が昨年度は合計十三人向こうへ参りました。これは一年間の留学でございます。そのほかに、これは留学生とはちょっと趣が違うのでございますが、豪州政府が日本人の研究者に対して奨学金を出しておるという制度もございます。簡単でございますが、お答え申し上げます。
#13
○戸叶武君 そのように、日本と豪州との文化交流は、短期間においてもそれだけの実績を示しているということは、いま急速に日本と豪州とが文化的にも経済的にも非常に接近の速度が早まっていることを意味するのだと思うのであります。
 そこで、日豪文化協定とは別に、日豪友好協力基本条約交渉について触れていきたいと思いますが、このNARA条約は、経済条項をめぐって、資源の開発及び投資等について及び輸出に際して、労働党政府である豪州の政府と日本の政府との間に考え方に非常にギャップがあるように新聞等でも伝えておりますが、社会主義的なコントロールを目指していくところの豪州政府と、自由貿易のたてまえを崩していくまいという日本との間に考え方の差異があることは当然でありますけれども、政治はイデオロギーや国家性格を乗り越えて、当面の具体的な調整というものが最終的には決定的なやはり私は要素になると思うのですが、いま日本と豪州との考え方の距離の問題点及びそれを具体的にどう調整していけるかという見通しについて、ひとつこれは大臣から承りたいと思います。
#14
○国務大臣(宮澤喜一君) いわゆるNARA条約の締結につきましては、両国ともできるだけ早く締結をしようという熱意がございまして、今月の初めまでキャンベラで正式交渉、第二回目の交渉をいたしたわけでございます。相当進展がございまして、場合によっては調印が可能かというふうにいっとき聞いた段階もあったわけでございますけれども、完全な合意に至りませんで、なお交渉を継続する必要があるという現状でございます。そこでやはり一つ問題になっておりますのは、ただいま戸叶委員が御指摘になりましたような、資源に関する考え方、現在の豪州政府が、過去における豪州資源の開発、ことに外国との関連における豪州資源のあり方につきまして、現政府としての考えがある。まあ御承知のように、豪州は非常な資源国でございますし、従来国内的には資金が不足であるということもありまして、外国からの資本を導入して資源開発をやるということを相当やってまいりましたが、その結果、現政権から見ますと、豪州の資源が外国資本によって持っていかれると申しますか、そういう物の見方、反省と申しますか、考え方がございまして、何かそこへ一定の歯どめを置くべきだということをウイットラム首相以下考えておられるようでございます。そういうことが、非常に具体的な形ではございませんけれども、このたびの条約交渉にも幾らか反映をしてまいっておるようでございまして、ほかにも一、二問題点があるようでございますけれども、ここらあたりのところで今回の交渉が最終的にはまとまらずに継続をすることになったというふうに了解をいたしております。なお、もし何でございましたら、政府委員から補足説明をいたすようにいたします。
#15
○戸叶武君 宮澤さんが言われた点が一つの問題点になっておるのです。やはり去る四日にオーストラリア労働党大会が行われた席上における資源政策に関するエネルギー資源の問題で、一〇〇%オーストラリア支配及び所有などの新しい綱領が採択されておるのであります。これは宮澤さんが言われたように、昨年秋のウイットラム・田中両首相会談で打ち出された資源開発に関する外資導入のガイドラインを修正したものと見られております。こういうふうなはっきりとした線がここに出ているのに対して、いま現実に政権を握っているところの労働党政府におきましては、こういう意見が労働党大会では出されているが、それを現実的にどう調整していくか、ウイットラム首相の柔軟路線、それから党内のナショナリズムの台頭、こういうものとの政治的な調整というものが確かに問題になっていると思いますが、そういう日本の考え方と相手側の立場というものを十分配慮した上でないと、今後におけるこのNARA条約の成果も上げられないと思うのでありますが、そういう点はきょうは時間の制約もありますから、またあとでお聞きすることにいたしますが、この経済条項をめぐっての日本と豪州とのこの見解の相違、これを現実的にどう調整可能か、うまくまとまるところまで行ったが、いかなかったというところに非常にむずかしい面があると思うのですが、その見通しを外務大臣はどういうふうに受けとめていますか。
#16
○国務大臣(宮澤喜一君) 現在の豪州政府の基本的な理念といたしまして、ただいま戸叶委員の御指摘なされましたようなことがあるように考えております。具体的には、資源を輸出いたしますときの価格の問題でありますとか、あるいは資源開発に当たりまして、一定率の豪州資本の参加を確保しなければならない。まあ資源のいかんによりましては、豪州の公社というようなもので開発することが望ましいといったような点が具体的には考えられておるようでございますけれども、同時にまた、しかし、豪州自身のために資源を開発しなければならない。概して資本不足であるということも事実でございますから、基本的な理念はそれといたしまして、非常に硬直化した政策をとろうとしているというふうにも考えておりませんで、まあ言ってみますと、従来、生の資源のままで外国に出すというようなことから、いわゆるローカルプロセシングと申しますか、現地において付加価値をつけた形で出すというようなことも一つの私は行き方になってこようと思います。で、そのような理念というものをある程度御指摘の条約に盛りたいということは理解ができないわけではございませんけれども、また、余りそれを厳格に条約に述べてもらいますと、わが国の考え方とも違った点が出てまいりますので、そのあたりをどのように条約の文言に表現をすべきかというあたりが交渉の煮詰まってくるところになるのではないか。前回も――前回と申しますのは今月の初め終わりました交渉でございますけれども、かなり文言のところで歩み寄ろうと両側でいたしたように聞いておりますが、適当な表現に合意することができなかった、そんな経緯であったようでございます。しかし、これについては双方とも熱意を持っておりますので、また両方考え直しまして、何かお互いに譲り合えるような表現に到達をしたいというふうに考えております。
#17
○戸叶武君 いま外務大臣が非常なデリカシーな触覚で今後の外交をやはり進めなければならない、日本の受けとめ方と、また資源ナショナリズムの台頭している国々、その背後にある第三世界に対しての配慮も考慮して問題を進めなきゃならないと言われておりますが、やはり社会主義国家における理想と現実的な実績を上げていかなきゃならない経綸との間における調整にこれは苦悩していくことは、相当先進国と言われた西ドイツにおけるいままでのリーダーでも、あるいはイギリスにおける労働党のリーダーでも、そういうところで非常に苦悩の限りを尽くしていると思うんであります。私は、いまから二十二年前に、第一回アジア社会党大会で、ラングーンにおける会議で一番問題点になったのも経済委員会における考え方で、いわゆる日本の右派と左派の分かれもそこにあり、またアジアにおけるプリミティブなマルキシズムの影響を受けていた国々における考え方もそこで非常に私はこの幼稚さを暴露した点があったと思うんです。それは、帝国主義的な支配を受けたくないというのは当然であるが、資本の蓄積がない国において、外国からのやはり援助なり協力というものをどう受け入れるかという問題に対して、細かいやはり経験というものが得てなかった。そういう点において、帝国主義的な支配は受くべきではないが、外国からのやはり援助は、そういう支配を受けないという十分の配慮なりに立ってやはり受け入れなければ前進しないんじゃないかという議論をわれわれが提示し、インドのプラジャ・ソーシャリスト・パーティのゼネラルセクレタリーのアショカ・メタもその意見でしたが、なかなかやはり困難でした。二十二年を経ていろいろな実験を通じて、これはソ連でも東欧でも、あるいはヨーロッパ諸国でも、世界じゅうが理想と現実とのギャップをどう埋めるかというところへきたと思うんですが、日本は、外務大臣が言われたように、南北問題の、あるいは東西両方の問題の十字路に立っておるのであって、その調整を具体的にどう可能ならしめるかという実験が、これは資本主義とか社会主義とかとを乗り越えて、大衆の要求しているのはやはり平和と繁栄ですから、そういう現実政治における前進というものの実験をやるためには、余り原則論にこだわらないで、実際的に大衆にどういうふうにして受け入れられるか、それから明日の長期的展望において、今日においては完全なものではないが、それが正しい方向に方向づけられたかという、そういう方向づけを十分やってもらいたいということをここでお願いします。それで次に、昨年田中首相が同じく資源保有国であるカナダを訪問したとき、日本・カナダ間の通商協定はすでに二十年経過しているので、その可能性を検討することになったが、この資源ナショナリズムに対してどう対処するかの問題で、カナダとの通商協定の見通しはどうなっておりますか。――それはあとでもいいです。
 わが国と牛肉の輸入規制の問題、ガットの中に食肉グループをつくり相談することになっているという一つの問題点と、もう一つは、豪州の自動車輸入規制をめぐる、ガットに提言する前に、ガットの場で相談することになっているというこの二つの問題をめぐって、具体的にいまどういう調整がなされておりますか。
#18
○政府委員(橘正忠君) 豪州からの牛肉の輸入の問題につきましては、先般、当時の田中総理大臣が豪州へおいでになりました際にも、わが国の事情をよく説明されまして、他方、同時にガットの場の協議の機構がございますが、その場におきましてもわが国の事情をよく説明して、豪州側の了解を求めるように努力いたしております。ただ現在、御存じのとおり、まだ牛肉の市況が不安定なので、先行き輸入の再開の見通しはつかないんでございますが、こうした豪州側の了解を求める努力は二国間において、ガットの場において、双方において努力を重ねております。
 他方、豪州側のとりました自動車輸入の制限措置につきましては、直接わが方から豪州側の政府に対しまして、これをなるべく早く撤廃してほしいという要望を申し入れましたとともに、ガットの場におきましても、先方がガットの十九条によるこの措置をとりました関係上、ガットでの協議を求めております。
#19
○戸叶武君 それではこれをもって最後にしたいと思いますが、不況によって原材料の輸入が著しく伸び悩んでいる反面、やはり不況打開のために自動車等の輸出に積極的な努力をしていると思いますが、最大の貿易国が、牛肉等においても豪州は日本が相手になっておりますが、それと同時に、やっぱり日本と豪州との両方の要望にこたえるような友好協力関係の条約が結ばれなけりゃならないと思うのですが、先ほど田さんが一つの法案を提示したように、現実がこうだという形だけで、その理想を忘れて何か相手国の要求だけを満たすようなゆがんだ形における経済協力関係なんかというものは、決して先行きにおいていい効果をもたらさないと思いますので、経済と文化交流というものはきわめて車の両輪のように密接な関係がありますので、そういうところを十分配慮してこれから進めていってもらいたいと思うんですが、宮澤外務大臣に、きょうも非公式な形において衆議院側の外務委員会の理事と話し合ったんですが、宮澤さんは頭がいいしよく勉強してそつがないが、何かおもしろくないなあという話で、これは失礼な話ですが、やっぱり一つの、まあ外務大臣として間違いを起こすまいという用意周到な配慮がそうさしているんでしょうが、宮澤さんはなかなかの理想家なんだから、理想を現実の上に根づけていくんだという情熱をもって、やはり何か理想を忘れて、八方美人と言うとはなはだ失礼だが、どっちも当たりさわりのないような一つの発言でなく、これはなかなか困難だけど、こういうふうにして一歩一歩われわれは一つの日本の考え方というものを近隣諸国に理解してもらうために努力するんだという政治姿勢をもっとはつらつと出していただきたいと思うことをお願いするんですが、宮澤さん、苦言ですが、いかがでしょうか。
#20
○国務大臣(宮澤喜一君) まことにありがとうございました。まだ不なれでございますので、どうもなかなか仰せられるようなところに行けないでおりますが、せっかくそのように努力をいたしたいと思います。
#21
○政府委員(伊達宗起君) 先ほど戸叶先生から日加通商協定の改定について御質問がございまし^が、まだお答えしておりませんので補足さしていただきます。
 現在、日加通商協定の改定交渉につきましては、どのような方向で両国間の通商協定を現状にふさわしいものにするかにつきまして、外務省において検討中でございます。
#22
○委員長(二木謙吾君) 本件についての質疑は本日はこの程度にいたします。
#23
○委員長(二木謙吾君) 次に、国際情勢等に関する調査を議題とし、これより質疑を行います。質疑のある方は順次御発言を願います。
#24
○羽生三七君 問題になっておるいわゆる核防条約について、最近この数日間の動きを見ておりますと、政府・与党はきわめて慎重というか、非常に消極的なように見受けられますが、それに対して、外務省というか、政府側では、この批准の論拠づくりを急いでおるというようにも報道されておりますので、そういうことに関連をして幾つか問題点をただしたいと思います。
 その第一は、外相自身も、あるいは自民党の外交担当者も、核防条約の批准は今後二十年間わが国を縛る重大な問題だと言われております。それはそうでしょうが、二十年間日本のどういう点を縛ることになるのか。これは外相自身も発言されておることですから、この席でもこの前も御発言になりましたから、二十年間日本のどういう点を縛るのか、まずこの点をお伺いをいたします。
#25
○国務大臣(宮澤喜一君) 基本的に申し上げますれば、わが国が核保有国にならないということにつきまして、この条約に加盟をすることによってそういう国際的な約束をする、こういうことが一番基本的な点であろうかと思います。
#26
○羽生三七君 縛られる、つまり非核――核を持たないという立場で長く日本が拘束されるというようにいまのお答えは受け取れるんですが、どうも私の受け取るところでは、核軍縮や、核保有国の非保有国に対する安全保障の問題や、平和利用の場合の保障措置の問題等々を政府はいままで問題点として挙げてきたわけですが、しかし、実際にはどうも核武装――核保有の権利を、フリーハンドを留保しておこうというようなにおいが非常に強いんですが、そういうことを考えてのことでしょうか。
#27
○国務大臣(宮澤喜一君) 政府といたしましては、この条約を国会の御承認を得て批准をいたしたいと考えておるわけでございますので、政府の立場はそのようなものでございますが、これにつきましての、この条約批准につきましての各方面の批判の中には、今後二十年間という長い年月にわたってわが国がいわゆる核保有国にならないということ、そこから先が実は二つに議論が分かれておるように思いますが、核保有国になることがあるかもしれないという立場からこの条約に批准をすることは適当でないと言われる方と、核保有国になることはないであろうけれども、さりとて、それを国の政策としてならともかく、条約という形で国際的に誓約をする必要はないではないかという意見と、そういうふうに二つに分かれておるようでございます。で、政府といたしましては、わが国が今後二十年間、核保有国になるということはわが国の国益に沿わないものであると考えておりますので、それがわが国の政策であるのみならず、国際的に誓約をすることは何ら差し支えないばかりでなく、むしろ国際的な軍縮を推し進める有力な力になるであろう、政府としてはそのような立場でございます。
#28
○羽生三七君 核問題自身については、私この核防条約の問題についてお尋ねした後、またお尋ねしたいと思いますが、これからお尋ねする問題を宮澤外相にお尋ねするのはいかがかと思いますけれども、たとえば自民党の椎名副総裁は、この核防条約についてこう言っておりますね。「この問題は査察の条件がどうこうというのではなく国際情勢を冷静に分析して判断すべきで、デタントという国際的な潮流を過大評価してはいけない」と、云々と言っております。また、けさの新聞を見ると、中曽根幹事長は、日本と米中ソなどの関係を踏まえた、いわば国の世界戦略の中での同条約の位置づけが必要との見解を述べているようです。だから、自民党の首脳が慎重に考えるのはよいが、言うところの国際情勢の認識あるいは世界戦略とこの核防条約との関連ですね、それをどうとらえるのか。つまり自民党副総裁がデタントを過大評価してはいかぬと言い、あるいは中曽根幹事長が日米中ソ等の世界戦略の中で同条約を位置づけるべきだ、こういうふうに言っておられますが、それとこの条約との関連をどうとらえるのか、またそれによって、つまり慎重に対処することはよいが、何を得ようとするんでしょうか。これは外相に伺うのは実は無理な話で、副総裁や幹事長の言っていることですから。しかし、それは自民党の中の首脳部の非常な有力な意見であるので、それがそういう慎重な態度をとって、国際情勢と関連づけることによっていかなるメリットを得ようとするのか、これをひとつお聞かせいただきたい。
#29
○国務大臣(宮澤喜一君) 私の聞いておりますそれらの議論の中で、わが国が核保有国になるべきだという論拠に立っておられる議論はまだ聞いておりません。むしろそこから先がニュアンスがございますけれども、そうではあるが、しかし、条約という形でそのことをコミットする必要はなく、ある意味で、その方々の表現によれば、フリーハンドというような表現をされるわけでございますが、フリーハンドを持っておっても別段差し支えないではないかと、いわゆるフリーハンドがいろんな意味で世界の政治の中でわが国が国益を追求する際に何か有利に使えるのではないかというような御意見、それからさらにまた、これは少しそれとニュアンスが違いますが、今後二十年というものは、来し方二十年を考えますと、まことにいまから想像しにくい二十年であろうから、そういう長い期間にわたって何事にもあれ、事をコミットするということは果たして適当であろうかというような物の見方、それがまた一つあるように存じます。私といたしましては、どちらかといいますと、過去の二十年がわれわれの想像しがたいような変化を国内でも国際的にも出現いたしましただけに、今後の二十年はなおさらそうであろう、そうだとすればここでそういう長い約束をすることは賢明なのかという、そういうまあ言ってみますと漠然としたと申しますか、そのような心の迷いとでも申すんでございましょうか、未来に対する不可知的な一種の迷い、そういったようなものが比較的しばしば私が観察をするところにございます。
#30
○羽生三七君 平和利用の場合の保障措置はほぼ目的を達成したと、こう言われておるようでありますが、ほかに問題としては、先ほど申し上げた核軍縮の推進、非核保有国の安全保障の問題等があるわけであります。これ批准の場合のメリットも必ずしも私明確ではないと思いますが、私がお聞きしたいことは、条約を批准しなければ核軍縮が推進され、非保有国の安全保障が強化されるのかどうかということです。つまり、慎重に対処しておれば、そうすれば核軍縮が推進されて、非核保有国の安全保障が強化されるのかどうかと、そういうことが明確にならないと、残るものは核のフリーハンド、核保有のフリーハンドを持つことだけにならざるを得ぬと思うんですね、理論的に。ですから、この点はどういうようにお考えになっておるのか。これは外相自身にお尋ねするというよりも、いま自民党はそういう意味でどういう動き方をしているのか、また外務省としてはそういう動きに対してどういうメリット、デメリットを感じておるのか、その辺を承りたいと思います。
#31
○国務大臣(宮澤喜一君) 実は、ちょっとただいまの全体の状況を申し上げさしていただきたいと思いますが、先ごろいわゆる保障措置協定の実体がほぼ固まりまして、これはわが国にとりましてほぼ満足できるものというふうに判断をいたしておるわけでございます。そこで私どもとしては、その面の条件は整ったと考えておりまして、政府といたしましては核防条約の御審議を国会にお願いしたいと考えておるわけでございますが、それにつきましては、保障措置協定が大体こんなものでございますと申し上げたのでは国会の御審議にたえないと思いますので、かなり明確に、かつ正確にこれを参考資料として国会に御提出をして、それをごらんの上で条約の御審議を願わなければならないであろうと、こう考えておりますが、その保障措置協定が本文だけでも百条に近いもでございまして、これを国会の御審議の御参考としてたえる状態にきちんといたしますのに一カ月以上実はただいまから時間がかかるのが実情でございます。その準備は鋭意進めておりますけれども、他方でその間、いよいよこの保障措置協定も満足な形でできる見通しがつきましたので、条約そのもののメリット、デメリットを各方面に議論をしていただきたい。これは先ほど申しましたような準備の都合上決して時間のウエーストにはなりませんので、その間にそういう議論を十分詰めていただきたいと考えておりまして、それで、先ほど仰せになりましたようないわば世界政治あるいは世界戦略というのでございましょうか、そういう観点からわが国がこれを批准することによって今後二十年間わが国の立場はどうなるかというような議論、それについての外務省の考え方なども準備をいたしまして、そういう御議論に資したいと考えておるわけでございます。私がただいま考えておりますのは、それらについてはいろんな御議論があるであろうと思いますけれども、しかし、他方でわが国がこの際批准をしないということになった場合のデメリット、これは非常に大きなものではないだろうか。ただいま羽生委員のおっしゃいましたように、日本が批准をしないから世界的に核軍縮が進むというような論理はむしろ非常に考えにくうございまして、日本がしなかったということによって非核保有国がそれでは核を保有しようかというような動きをむしろ助ける結果になる公算の方がはるかに大きいのでございますから、わが国が批准をした場合の仮にデメリットが何がしかあると仮定いたしましても、批准をしなかった場合のデメリットが非常に大きいというふうに政府としては考えておるわけでございます。が、その辺のところを十分いろいろな場合を想定して各方面の御議論に資したいと考えまして、ただいまそういうような観点からの検討も準備をいたしておるわけでございます。
#32
○羽生三七君 よくわかりました。
 そこで、いまのような観点から言った場合に、今後二十年間日本が縛られたくないと、フリーハンドを持ちたいということが核保有を意味する場合、これが非核三原則を持った、しかもそれを国是とした日本の国の政府・与党の首脳部の中にまだそんなことを考えておる人がおるということはこれは驚くべきことで、そういうようなことで条約の審議がおくれるといいますか、批准が問題にされるなら、私は条約批准の問題ではなしに、日本の最高政策そのものに関するこれは非常に重要な問題だと思うんです。したがって、これは外相自身としても確固たる姿勢を持って貫いていただかぬと、そんなことに余地を残してもたもたしておるような、そんなことでは日本の最高政策とするこの日本の非核三原則が全く意味のないものになる。だからこの点は十分お考えをいただきたいと思いますが、よろしゅうございますか。
#33
○国務大臣(宮澤喜一君) 先ほど正確に申し上げたつもりでございますので、誤解をしていただいておらないと思いますけれども、私どもが自分の党内でいろいろな議論を伺います中で、日本が核保有国になるべきだという議論は、一遍も実はそういう議論にはぶつかっておりません。そうではなくて、国際的にそういうことにはならないということをこの際約束をする必要はないではないか、両方のことの間には、ややニュアンスがございまして、そういうっもりはないけれども、しかし、ないということを天下に公約をする必要もないではないか、こういうような議論がかなりあるように思うんでございます。しかし、政府の立場といたしましては、実はそのようなフリーハンドというものは、現実には存在する可能性のないもので、フリーハンドというのは、観念だけであって実存しないんではないかと、何となれば、わが国が核を保有するということは国益にならないし、現実の問題としてそういう政策をとるということがあり得るのかというのが政府の実は立場であるわけでございますが、その辺私ども党内にも若干の議論があるわけでございます。
#34
○羽生三七君 まあ外相の説明はわかりますが、しかし必ずしも政府・与党の中でお考えになっている核問題についてのお考え方は、そういう説明だけではカバーできないものがあると思いますが、これはよろしゅうございます。
 次に、今日までのところ日本は平和利用の査察の条件に主力を置いてきたであろうことは、先ほど申し上げたとおりであります。この場合、平和利用でウランの核分裂エネルギーを原子力発電が利用する場合に、それに伴ってこのプルトニウムが生成、蓄積されて、核兵器を持たない国でも、原子力発電を進めれば、同時に核爆弾の原料を蓄積することになるわけであります。これはもう申し上げるまでもございません。この危険なプルトニウムが蓄積されるということになると、平和利用の場合の査察も不平等是正は当然であるけれども、すべての条件緩和ばかりを主張するのは、私は問題ではないかと思う。核兵器の危険は、これは言うまでもありませんが、この平和利用の場合でもプルトニウムの危険をチェックするための処置は、私は厳しくやっても厳し過ぎることはないと思う。特にこの廃棄物処理の場合、軍のような厳重な警戒体制もできない施設、その種の関係施設において、もしこれを奪取するような危険なことでも起こった場合には一体どうするのか。だから査察の条件を緩和することばかりが問題ではなしに、そういう危険をチェックすることもまた重要な要素ではないかと、そういう点がもう全然日本の考慮の中では欠けておるんではないかという、ただ条件がユーラトム並みとか、不平等是正とかいうだけで、危険のチェックについての配慮が足りないように思いますが、この点はどうお考えになっておるか、お伺いします。
#35
○政府委員(鈴木文彦君) ただいま羽生委員の御質問は、核物質が軍事転用に至ることを防止する、つまり通常の査察の観点よりは、盗難防止の点からどういうような措置をとっておるであろうか、特に今度のウィーンにおける交渉においてどういう配慮がなされているであろうかという御質問かと思いますが……。
#36
○羽生三七君 途中ですが、ちょっと待ってください。いわゆる核ジャックといいますか、盗難、奪取するということだけを言っているんではないです。それでプルトニウムをつくって核爆弾をつくれるような、そういう条件がこの廃棄物から生まれてくるのに、査察を緩和してくれだけで済むのかということを言っておるわけです、両方です。
#37
○政府委員(鈴木文彦君) その点につきましては、現在は御承知のように国際原子力機関からの査察員が参りまして、特にプルトニウムを使う施設あるいはその廃棄に至る過程については厳重な査察をいたしております。目的は主として軍事転用防止でございますけれども、同時に、盗難による安全に対する被害を生ずることを防止するという二重の目的でやっていることは御承知のとおりでございます。今度の査察の取り決めをつくります場合に、日本の査察が自主的に行われ、原子力機関の査察がいわば従というかっこうで査察の条件が緩和される、あるいは簡素化されるということが主目的であることはもちろんでございますが、特にプルトニウム施設のような軍事転用につながる度合いのわりに濃厚な施設につきましての査察につきましては、従来とそれほど変わらない、わりに厳重な査察が行われるわけでございます。ただ査察の仕方が、日本の査察に国際原子力機関の査察員が立ち会うというかっこうで日本の自主性が確保される点が違いますけれども、査察を厳重にやるという点についてはそれほど変わりはございません。したがいまして、この査察取り決めの結果だけから申しましても、従来よりこの点についての手抜かりが起こるということはございませんが、さらに加えまして、最近盗難防止による安全に対する被害といいますか、これを防止する見地から、特に国際原子力機関を中心にいたしまして、新しい安全基準をつくる必要があるのではなかろうか、特にプルトニウムその他の核物質の取り扱い量が急速にふえるし、また、それを移動する機会がふえるということから、一層この点についての配慮をする必要があるということで、各国ともこの点についての関心が深うございまして、現在国際原子力機関を中心にいたしまして、新しい安全基準の設定を含めまして鋭意検討しているわけでございます。わが国も関係省庁におきまして、この協力の措置に参加いたしまして、現在日本の国情に合った安全基準をどうすべきかということを検討中というふうに聞いております。
#38
○羽生三七君 いまの点は御説明でよくわかりましたが、特に軍事転用のような場合の査察の条件は徹底的に厳しくやることのほうが望ましいので、この点は十分な配慮を、今後ともその種の努力を続けられることを希望いたしておきます。
 次に、この核防条約批准の場合に、査察を受ける場合の条件というような、いわば受け身の立場での論議がほとんどで、日本が条約を批准した場合にどういう役割りを果たすかという積極的な面の考慮が非常に欠けているように思うんです。いわば受け身の議論が中心のようです。先ほども述べましたように、先ほどは触れなかったかもしれませんが、世界唯一の被爆国、かつまた、非核三原則を持つ国として、核軍縮を推進してこの国際平和の増進に寄与するような積極的な姿勢の確立が私は必要ではないかと思う、受け身のことばかりでなしに。日本がこの条約を批准することによってどういう役割りを果たしていくかという、たとえば再検討会議を欲するような場合は、これは五年ごとでありますが、この条約を改正した場合には、これは締約国の三分の一以上の要請があれば会議を開くことが可能なわけですから、もっとそういう積極的な努力を持つ工夫を私は考えるべきだと思う。こういう自主的な努力のほかに、たとえば日本が非核武装地帯をみずから設定を推進するというようなこともありますけれども、これは他日の論議にしまして、そういう積極性がやはりこの条約批准の場合には考えられていいんではないか。たとえば核軍縮が推進できない場合には、締約国の仲間入りをしておらなければ発言の機会がないんですから、相手国に対し、いわゆる核保有国に対して軍縮を迫るとか、あるいは非保有国の安全保障に対してもっと具体的な、確実な条件を獲得するとか、そういうことは中へ入っておらなければ言えないことなので、そういう積極面、つまり中へ入ってやる、その積極面という面からも問題を考えないと、ただ、受け身の場合のことだけを考えておっても意味ないんではないかという気がしますが、外相はその辺をどうお考えでしょうか。
#39
○国務大臣(宮澤喜一君) わが国といたしましては、従来から、さしずめすべての核爆発実験の禁止、さらに進んで新規開発をしないこと、最終的には既存の核兵器を廃棄することというふうに進むべきであると考えておりまして、ことに、現在問題になっております地下実験につきましては、その検証方法について、わが国はたまたま地震国であるせいもありまして相当進んだ技術、ノーハウを提供して検証方法をつくり上げることができる立場にございますので、そういうことから貢献をしていきたいと考えておるわけでございますが、しかし、そのような場合、わが国がこの条約に加盟をしない、ついに批准をしないという状態でそれを申しますのと、自分の姿勢をしっかりとりました後でそれを申しますのとでは、おのずから非常に説得力が違ってまいるわけでございます。で、批准をいたしましたら、わが国が、ただいま申しましたような呼びかけを続けていたしたいと思いますが、その場合、説得力がそれだけ大きくなる、そのような積極的な努力をいたしていかなければならないと思います。
#40
○羽生三七君 この問題はもう一問で終わりますが、最後に、核防条約の批准問題で党首脳が消極的になって、必ずしも今国会の批准にこだわらないという立場に立って、実際に成立がむずかしいというようなことが起こった場合に、私は三木首相の指導力の問題も問われると思うけれども、それはとにかく、外相自身としてはやはりどんなに困難があってもこれは今国会に批准をしたいというそういう考えで臨まれるのか、あるいは党側の考えが優先するのか、その辺のお考えを承っておきたいと思います。
#41
○国務大臣(宮澤喜一君) 私といたしましては、保障措置協定がほぼ先ほど申しましたような形で固まってまいりましたので、他の二点、すなわち世界的な核軍縮の動向及び非核保有国の安全の保障につきまして、私どもは条件は少なくとも徐々にではあるが改善しつつあると考えておりますから、このような点の説得並びに今後二十年間にわたりわが国がこの条約を批准した場合の国際政治における立場についての見通し、これも私は積極的に判断をしておるのでございますけれども、そのようなことをこれからほぼ一カ月十分関係方面に説得もし、また議論にも加わりまして、結局批准をしなかった場合のデメリットがいかに大きいか、やはり批准をすべきであるという私どもの方の党内の態勢をつくり上げていきたい。ただそのためには、問題が問題でございますので、一方的に引きずるというような性格のものでありません。政府が批准すべきであるという立場に自信を持っておりますだけに、十分そういう説得ができる、可能である、そのために最善を尽くす決心をいたしております。
#42
○羽生三七君 批准が可能という方に重点を置いておるお答えですか、いまのは。主観的な希望でなしに、客観的に可能かどうかという、どちらにおかけになりますか。
#43
○国務大臣(宮澤喜一君) これはいろいろな意味ですべての人々が深く考え、そして結論に達すべきものであると思っておりますので、議論を封殺するというようなことがコンセンサスを得るゆえんではなくて、むしろとことんまで議論を尽くすということが大事だと私は考えておりますが、その結果は、必ずや政府の立場について党内の理解が得られる、それだけの自信を持ってコンセンサスづくりをいたしたいと考えております。
#44
○羽生三七君 それではこの問題はこの程度にして、次にやはり核に関する問題ですが、核兵器が日本に持ち込まれているかどうか、あるいは核兵器を積載した艦船が日本に寄港しているのかどうかというさまざまな疑問が存在しておることは、これは言うまでもないと思います。これに関連して、アメリカの国防省が、先日、横須賀基地に存在すると言われる核一時貯蔵庫について、これを否定も肯定もしないという正式回答を日本政府に伝えたという報道があるわけですが、アメリカからそういう回答があったわけでしょうか。
#45
○政府委員(松永信雄君) 前々から申し上げておりますように、アメリカ政府は核の存在、所在について否定も肯定もしないという立場を公式的にとっているわけでございます。ただいま御指摘がございました点についての事実関係につきましては、いますぐ調べて御返事申し上げたいと思います。
#46
○羽生三七君 実は、これは私これからお尋ねしてくることに関連もして、これはアメリカがどういう態度をとっておるかということは非常に重要な問題になるわけですが、そういうことを政府当局が、アメリカ局長がおられないにしても御存じないとは、これは意外なわけでしたが、この核問題を明確にすることは、私は政府の国民に対する重要な責任であると思います。しかし、実際にはこの問題について政府が突っ込んだ調査をされたこともないし、また明確な回答をアメリカに求められたこともあまりないと思います。ただ、今日までは事前協議をアメリカが求めないから核の持ち込みはあり得ないという、こういう立場をずっと一貫してとっておられるわけです。しかし、私はこの前にも、木村外相のときにも申し上げたことがありますが、そういう虚構に満ちた言葉のやりとりは国民に対して何らの説得力がないだけではなしに、そういう形はもう限界に来たんではないかと思う。いつまでも真実を包み隠すことは、日米間の真の友好にも私は役立たないと思う。むしろそれを阻害する要因にもなりかねないと思うんです。
 そこでお尋ねしたいことは、三木総理は、先日衆議院の予算委員会で、日本の非核三原則は緊急時も日本は貫くと述べておりますが、この核を持ち込ませないということは日本の主観的な意図なのか、それに対してアメリカも合意をしておるのかどうか、この点をお伺いいたします。
#47
○国務大臣(宮澤喜一君) 三木総理大臣の御発言はそのとおりでございましたし、したがいまして、それは政府の方針でございます。
 その場合、それはわが国の方針であるわけでございますけれども、事前協議事項そのものは、安保条約、交換公文の規定上残っておるわけでございますから、もしアメリカ側が事前協議の必要がある事態に立ち至れば、事前協議をしてくれなければならない条約上の義務であります。それに対して、われわれが、先ほどの三木総理の方針に基づきまして、協議は受けるけれども、イエスというわけにはまいらないという、そういうことを総理大臣が言われたものというふうに考えております。
#48
○羽生三七君 事前協議の場合に日本が拒否することはアメリカも了解しておると思うし、それから先ほど条約局長からもお話がありましたように、日本の――まあ条約局長というよりも、むしろ日米間の今日までのやりとりから見ると、日本の立場は了解しておると、こうアメリカは言っておるわけですね。もしそういう意味の合意があるとすれば、日本に核を持ち込まないということがアメリカ自身の意思であるならば、これは国際的にも周知さるべき問題だと思う。そうだとすれば、日本に核は持ち込んでいないと、そういう事実はないとアメリカが日本に回答したところで、それは核の抑止力に何の影響もないんではないか。つまり、核の存否についてあいまいにしておくことが効果的であるという理論は成り立たないんではないか。実際に存在することがあるかもしれないということで抑止理論は成り立つと思うんですね。私は、抑止理論の立場をとるものではありませんが、抑止理論という立場に立って言えば、それは持ち込むことがあるかもしれないからこそ抑止理論たり得るのです。したがって、アメリカが持ち込まないと、日本の立場を了解しておるというようなことであるなら、これは核の不存在を明らかにした、アメリカが日本には核を持ち込まないということを明らかにしても何ら差し支えない問題だと。これは余りにも理論的に明瞭なことだと思うがいかがでしょうか。
#49
○国務大臣(宮澤喜一君) よその国の立場をそんたくをすることになるわけでございますけれども、しかし、アメリカとしては事前協議という制度は持っておるわけでございますから、必要があれば事前協議をしてくる、そういう立場は留保していると、そういうふうに解すべきかと考えます。
#50
○羽生三七君 私は、これはこの前も申し上げたことですが、事前協議はいまや核に関する日米間のやりとりの中ではむしろ隠れみのの役割りを果たしておる、そう思っております。だから非核三原則を、これは国是であるし、それから核拒否については国民的なコンセンサスができ上がっておると言ってもこれは差し支えないと思います。したがって、核の問題をいつまでも私はあいまいにしておいてはいけないと思う。アメリカが事前協議の対象にするであろうというようなことで片づけておくべき性質のものではないと思うんです。私は、この問題については、こんな形でしょっちゅう、おそらくこの委員会でも何回も横須賀にはどうと、あるいは沖繩にはどうという問題が持ち出されておるし、それ以外にもいっぱいある、問題が。それはいつもあいまいである。ですから、この際こういう問題を明確にするために総理なり外務大臣がアメリカのトップレベルと根本的に一度話し合いをしてはどうかと思う。そういう機会を持つべきだと思うんです。外相は日米の信頼関係を問題にされるかもしれませんが、一体真の信頼関係とは何か。真の信頼関係とは、核心に触れる問題を避けて通ることではなしに、相互に真実を語って、真実の基礎に基づいて理性的な判断を行って問題に対処していく、これが私は真の信頼関係だと思うんです。だから、核心に触れるような重要問題は避けられねばならぬというような信頼関係というものは、真の信頼関係ではないと思います。したがって、核問題について言葉の上だけでつじつまを合わせるような関係はもう限界に来ておる。事務当局が事務レベルでの問い合わせをするようなそんななまやさしい問題ではこの核問題はないと思います。したがって、いま申し上げましたように、トップレベル同士で本格的な話し合いをされる機会を一度おつくりになってはどうでしょう。そうしなければ、新聞には大きく出ておりますよ。その核の問題について、横須賀の問題ですね。明確に言うことはできないと、アメリカが日本政府に正式に回答したと、大きく出ております。そうでありますから、そうであるならば、政府がもっとトップレベルで根本的にこの問題について話し合う機会を一度おつくりになってはどうか。これは私、特に外相に要請をいたします。
#51
○国務大臣(宮澤喜一君) 従来も、この問題は日米間の首脳の会談の際には必ず出てきておる問題でございまして、私どもとしては米国側から十分わが国の政策を理解し条約上の義務を誠実に履行するという確約をもらっておる、そういうふうに考えておりますけれども、羽生委員の言われますこともごもっともなことでございますから、今後そのような機会には、やはりそういうことをさらに明確にする努力をいたしてまいりたいと思います。
 なお、先ほどのお尋ねにつきまして、政府委員からお答えを申し上げます。
#52
○政府委員(山崎敏夫君) 一九七〇年のサイミントン委員会の議事録にございます横須賀にあります米軍のNOFに関する記述中に削除した部分がございまして、これが核兵器に当たるのではないかというお話でございますと思います。
#53
○羽生三七君 ちょっと待ってください。新聞報道によると、このいまの核貯蔵庫が存在するかどうかということについてアメリカは否定も肯定もしないという、そういう回答を国務省が外務省によこしたと、こうこれに出ておるわけです、大きく。それが事実かどうかと言うんです。
#54
○政府委員(山崎敏夫君) 私の方で問い合わせましたのは、これは四十九年、昨年の十二月六日の衆議院の内閣委員会におきます大出議員からの質問に対しまして、質問中におきましてその一九七〇年のサイミントン委員会の議事録にある横須賀にあります米軍の貯蔵庫の中に、米軍の施設に関する記述の中に削除部分がある、そこは核兵器を指すのではないかという御質問がございました。それに対しまして、われわれはこの削除部分は何であるかということを問い合わせるということを当時の木村外務大臣が約束されたわけでございます。そこで私たちといたしましては、それに対しましてアメリカ側に問い合わせをいたしました。それに対しましてアメリカ側から、その点につきましては、その削除した部分は核兵器に言及したものではない、また核兵器とは関係のないものであるという旨の回答があった次第でございます。さらに、それじゃ削除した部分は何であるかということを聞きましたところ、その削除した部分が具体的に何が書いてあったかということについては公表いたしかねるということを言ってきたわけでございます。
 したがいまして、私たちが問い合わせましたのは、その具体的なサイミントン委員会の議事録についております資料の削除した部分に関してでございます。一般的な形での問題について問い合わせたものではございません。で、その問い合わせました限りにおいては、アメリカはその部分は核兵器に関するものではないということを回答してきたわけでございます。
#55
○羽生三七君 一般的な問題でなしに、削除された部分についての回答を留保しておるわけですが、それにも見られるように、核問題に関する限りは否定も肯定もしないという立場を明確にいままでアメリカが態度をとっていたことがあるかと言えば、ほとんどそれは日本政府の考えに背馳しないとか、あるいは否定も肯定もしないとか、あるいは日本側で言えば事前協議があるからとか、みなそういうことです。ですから、そういうことがあるので、私はまた機会があったらということでなしに、適当な機会を早くとらえてトップレベルで、こういう表現ははなはだ失礼でありますが、国会向けの答弁を引き出すために当たりさわりなく聞くのでなしに、本格的にやはり非核三原則を持つ日本国の政府首脳の立場として、本格的にアメリカの首脳にこの問題を突き詰めてはどうかと、そのことによって先ほど日米間、アメリカも日本に核を持ち込まないというその立場を損なうことがないと言って了解しておるならば、持ち込まないと言ったところで、核抑止力に何の関係も私はないと思うんです。少なくとも核戦略に関する限りは、日本は世界の中で特殊な国だと思うんです。世界もそれを認める、アメリカもそれを認める。それならそれを公表したところで、この日本の核戦略、アメリカの日本に対する核戦略に何ら影響するものではない。そういう意味で、私はそういう機会を速やかに持ってもらいたいと思う。もう一度これをお尋ねいたします。
#56
○国務大臣(宮澤喜一君) 先ほども申し上げましたが、政府としては、過去においてそのような会談の機会を通じまして、わが国の立場を十分に述べ、了解をされておると考えておりますけれども、御指摘の点ごもっともでございますので、そのような努力をいたしたいと思います。
#57
○羽生三七君 よくわかりました。これに関連して、アメリカの上院のバレオ事務総長が、さきにマンスフィールド民主党院内総務あて情勢報告の中で、核兵器を積んだ軍艦の日本寄港の問題が解決されなければ、在日米軍の基地の将来、ひいては日米安保条約自体に暗影を生ずるという見解を明らかにして、またその報告の中で、日米いずれの国も核問題についての衝突を長引かせることはできないとして、この問題が日米関係に及ぼす影響について警告を発しておるわけです。いずれにしても、先ほど来申し上げるように、こういう問題でつじつまを合わせるだけのやり方も限界にきたと思うわけでありますが、こういう質問は非常に酷かもしれませんけれども、たとえば日本がこの問題をはっきりさせようとした場合に、アメリカが日本に対して、核のかさのもとにとどまるのかどうか、日本は核のかさのもとにとどまるのかどうか。もしそれを欲するならば、核積載艦艇の寄港は認めるべきではないかと、二者択一を求められてきたような場合に、一体日本としてはどうされますか。
#58
○国務大臣(宮澤喜一君) それは仮定のお尋ねでありますし、あるいは非常に専門的な知識を必要とするお尋ねであるかもしれませんけれども、私といたしましては、いわゆる核抑止力のもとにある、核のかさということは、そのこと自身が核の持ち込みを必要とするということには必ずしもならない。戦術核、戦略核というような分け方を言われる方もございますけれども、それも相対的な話であって、わが国が攻撃を受ける場合には、攻撃を加えるものはアメリカの核攻撃を受ける覚悟でなければならないぞという意味で核が抑止力になるということが成り立つわけでございますから、そのことが即わが国に核を持ち込まなければならないということにはならないというふうに私は考えておるわけでございます。
#59
○羽生三七君 時間がないので、私、またこの問題の詳しくは他日の機会に譲りたいと思いますが、そういう議論でいきますと、日本には核を持ち込まないと、しかし日本は核抑止力に頼ると、それから核積載艦艇が寄港してくれても困ると、そういうような場合に、アメリカは日本をどういう態様で防衛するのかそれはどこの基地、核基地、それは海軍を考えておるのか、そういう問題にまでこれ発展するわけですね。アメリカが日本を防衛しようというのに、核で防衛しようという場合に、日本では持ち込ませぬし艦船の寄港も認めないと言えば、その態様はどういうものかと、そういうことまで考えねばならぬ問題ですが、これは時間がありませんから他日の機会に譲ります。
 そこで、もう時間ありませんから簡単にいたしますが、これも木村外相に申し上げたことがあるんですが、七〇年代の初めごろから、これはアメリカは全世界に広がり過ぎたこの核兵器に対する反省期に入っているように思われます。ラロック証言の舞台となったアメリカの上下両院原子力合同委員会や下院の歳出委員会の動きも私はこれに関連していると思うんです。それからアメリカの政府の核についての秘密主義にもかかわらず、原子力合同委員会のサイミントン軍事利用小委員長は、この核の秘密解除の推進で政府に圧力をかけておるようにも見受けられます。そういう議会の動向や背景の中で実はラロック証言が生まれたんではないかと思います。今後核の存在について、逆にアメリカ側からこれを公表するということが絶無とは言えないし、あるいは日本の政党、あるいは市民団体等が事実を持ってこれを証明するようなことが絶無とも言えない。もしそういうようなことが起こった場合、これ日本政府の責任というものは一体どういうことになるんでしょうか。私は、将来これはあり得ることだと思うんですね。アメリカ側の最近の余りにも世界に広がり過ぎた核兵器の処理についていろいろなことを考えているいまの動きを見ますと、いま申し上げたようなことが絶無とは言えない。そういう場合に、アメリカ側なりあるいは日本の政党なり市民団体の側から核の存在が立証されたような場合に、日本の政府としてはどういう立場に立たされるのか、お伺いします。
#60
○国務大臣(宮澤喜一君) 仮定としてそのようなことが明らかになりました場合には、日本政府としては過去において事前協議を受けたことがなく、また事前協議に対していわんやイエスという返事をしたことも無論ないわけでございますから、もし仮定としてそのような事実が明らかにされましたときには、日米安保条約及び付属取り決めに伴うアメリカ側の条約上の義務が履行されていないという状況にならざるを得ないかと思います。
#61
○羽生三七君 それ以上は言わなくてもわかりますから理解しておきますが、そこで時間の関係で最後にしますが、いま申し上げましたように、アメリカは日本が一方で核抑止力に依存しながら他方では核の持ち込みを拒否しておる、こういう立場は非常に私はアメリカは日本に対して苦々しく思っていると思うんです。しかし、それにもかかわらず日本の立場を考慮して、あるいは安保条約のたてまえから、まあそのときどき適当に対処しておる、こういうことだと思います。しかし、そういうことは先ほど申し上げたようにもう限界に来ているのではないか、もっと問題をはっきりさせる必要があるんではないかと思いますが、ラロック証言は単に核兵器の危険だけではなしに、事故による危険、あるいは核ジャックの危険等についても警告を発しているわけであります。だから、私はそういう点からも考えて、日本が非核三原則を持つ国でありますから、アメリカの核抑止力から離脱するということをもうはっきりさせたらどうかと思う。これはいま日本政府としてそうしますなんていうことを言える立場には私はあるとは思いません。思いませんが、しかし、核抑止力に依存しながら核を拒否していくというやり方ですね。これは実に非常にむずかしいやり方でありますから、いずれこれは矛盾にぶつかる。それよりも私は日本が核を持たない、本当なら核非武装宣言をやるとか、あるいは周辺に核非武装地帯をつくるとか、あるいはいまの核防条約の場合ですね、そういうような場合も利用して、あらゆる場合にいわゆる核を持たない国、世界で被爆したただ一つの国として、核廃絶、核軍縮推進のために世界の諸国の先頭に立つという、そういう役割りを果たすことこそ私はむしろ日本の将来の進むべき道であるし、むしろ場合によったらそれが日本の安全に通ずる道であるかもしれない、長い将来展望すれば。そういう意味で、私はやはり核問題についてもっとアメリカとはっきり話し合いをすべきである、そういうことをもう一度申し上げて、最後の御感想をお伺いして質問を終わりたいと思います。
#62
○国務大臣(宮澤喜一君) ただいまのお尋ねは、わが国が米国の核抑止力から離脱をすることについてどう考えるか、そういう考えはないかというお尋ねでございます。ただいまのわが国のとっております国の安全についての基本方針が、御承知のように最小限度の自衛力を持っておりますものの、この自衛力自身では核攻撃に耐え得ないことはまことに明らかでございます。したがって、核攻撃の危険がなお存在している今日の世の中において、日米安保条約に随伴いたします核抑止力プラスわが国の持っております自衛力、こういう基本的な考えのもとにわが国の安全保障の構想が成り立っておると思うんでございます。したがいまして、そういう考えから申しますと、核抑止力から離脱をするということになりました場合、核攻撃の危険がなお皆無でないという今日、私どもの考えでは、それにかわるものを何に求めるかというような発想にやはりならざるを得ないのではないか。これは羽生委員に決して私は反論を申し上げる意味で申しておるのではございませんのですが、先ほど御議論になりました核拡散防止条約といったようなものの考え方も、現状におきましては少なくともわが国が米国の核抑止力のもとにあるという、そういうこととの関連でしばしば論ぜられ考えられておるのは事実でございますので、核抑止力を離脱し得るような世界の情勢というものが確認できない限りなかなかそのような決心ができない。それはわが国の安全をやはり危うくするものであるか、あるいはわが国自身がそのかわりのものを何かの方法で得なければならないというようなことに理論としては非常になりやすい、そのことはわが国の国益に沿うものではないであろうというふうに私どもは考えておるものでございます。
#63
○羽生三七君 最後に、核抑止理論というものは私は神話にいまになるだろうと思うんです。私はそういう意味で根本的に外相と最後の結論は違うんですが、時間がないのでまた他日に譲りまして、私は今日の質問はこれで終わっておきます。
#64
○田英夫君 一言だけそれじゃ……。
 一つだけ伺っておきたいんですが、日韓問題ですが、早川、太刀川両君が釈放されて帰国いたしましたが、これでいわゆる日韓閣僚会議を開く条件が整ったというふうにお考えになりますかどうか。
#65
○国務大臣(宮澤喜一君) 両君が今般釈放されましたことによりまして、しかも、韓国側がこれは両国の友好関係を配慮してのことであるという補足の説明を加えておられることもあって、両国間にございました一つのわだかまりが取れたということは政府としても多といたしております。しかしながら、私は日韓閣僚会議というのを再開するといたしますと、これはここ一、二年ございましたお互いに不幸な関係というのをひとつ終止符を打ちまして、将来に向かって本当の友好関係を再び確立したいという、そういうモメントとして日韓閣僚会議の再開は考えたいと思っておりますものでございますから、今回のことは多といたしますけれども、そこに至りますのにはもう少し私は事態の進展を見る必要があるのではないかと、こう考えております。
#66
○田英夫君 次回にまた詳しく伺いますが、早川、太刀川両君は帰ってきてからの談話の中で、事件は全くでっち上げであったと、こう述べているわけでありますが、そうなりますと、日本国民がある外国を旅行していて――彼ら二人ともそうでありますが、やや滞在的な旅行ではありますけれども、いずれにしても旅行中、外国で全くでっち上げという事件で逮捕されて、一年近くも投獄され裁判にかけられて有罪になると、こういうことがそのまま放置されていいかどうか。これは国民の側からすると重大な問題だと思います。したがって、日本政府としてこれに対してどういう対処をなさるのか。両君を政府として呼ばれてお調べになるとか、事情を聴取されて、本当にでっち上げであるということなら、これは韓国政府に対して抗議をしなければおかしな筋だと思いますが、この辺のところはどういうふうにお考えですか。
#67
○国務大臣(宮澤喜一君) 二人の学生は、両君はかなり長いこと自由を拘束された状態にありまして、そうして自由を得てあのような発言、ただいま御指摘のような発言をされたというふうに伝え聞いておりますが、そのような非常に平静でない環境のもと、正常でない環境のもとにあり、それが解けたという瞬間の発言でございますから、平静になったときに両君がどう考えておられるかということは、あるいは同じことを繰り返されるのであるか、そうでないかということは、必ずしもはっきりいたさないように思うんでございます。それよりも、しかし、私思いますのは、両君はいわば被告という立場で従来法廷において自己の主張をしてこられたわけでございます。で、両君が真実と考えておりますものと、しかし、おそらく韓国の検察側はまた別のことを真実と考えておったに違いない、そのゆえに裁判が行われたのであろうと思いますから。言ってみますと、私は、両君がうそをついておるというふうに申し上げるわけではございませんで、真実というものが、両方の側でこれが真実だと信じられておるような状況、その場合に、片側だけのことを真実だとすぐに考えるわけにはいかないのではないであろうか。さりとて、わが国が韓国の裁判の内容について公にするということは、これはそのような立場にわが国はございませんので、したがって私としては、おのおのが真実と信ずることの中から裁判が行われて、裁判が適正に行われておる限りは、必ずしも両君の言うことをそのまま信ずるわけにはいかないというふうに考えておるわけでございます。
#68
○田英夫君 時間がありませんから、次回に伺いますが、場合によっては両君に国会に出席してもらって、国会の場で事情を聞くということもわれわれは考えなければならない。つまり、国民の安全ということを政府が守り抜いてくださるかどうかという問題にかかわることですから、そういうことも含めて次回に伺うことにして、きょうは質問やめます。
#69
○立木洋君 きょう、ベトナムのことについて少しお聞きしたいと思いますが、御承知のように、ベトナム民主共和国と国交を樹立してすでに一年半近くになるわけです。当時の交換公文でもはっきりされているわけですが、いまだに相互に大使館が設置されていない。また、経済協力その他必要な実務問題についてもまだ実現を見ていないという状態にあるわけですが、どうしてそういうふうになっているのか、この辺の事情ですね、それから今後の見通し、その点についてまずお伺いしたいと思います。
#70
○国務大臣(宮澤喜一君) まさに御指摘のような現状でございまして、このことは私は残念なことだと思っております。わが国としては、いわゆる北越がわが国に、東京に大使館を設置されることを歓迎すると、それを受け入れる用意があるということは申しておりますし、したがって、わが国自身も北越に大使館を、実館を開設したいということを申しております。また、経済協力問題についてもいままで話し合いもしてきておりまして、その間非友好的な要素は現実にないようでございます。
 で、わが国としては、ただいまハノイにそういうわけで大使館を置くことがまだできない状態でございますために、ラオスの大使館の者が北越関係の仕事をしておりますし、また、ハノイに大使館をつくってもよろしいということになりますと、すぐにその準備をいたしますように、要員を二人ほどラオスで待機をさせておるのでございます。でございますから、わが国としては、十分先方の大使館も東京へ開いてくれることを歓迎しますし、こちらもハノイに開きたい、経済協力についても話もしておるということで、その間友好を欠くような雰囲気にございませんので、どのような事情に基づくのであろうか、先方がわが国のそのような用意のありますことを十分了解をしてくれて、話し合いが円満に妥結しますことを希望しておるわけでございます。
#71
○立木洋君 日本側としては別に問題がないと――ベトナム民主共和国側に問題があるかのようにもうかがうことができるのですが、そういうことなんですか。
#72
○国務大臣(宮澤喜一君) 政府委員から申し上げます。
#73
○政府委員(高島益郎君) そういうことではございませんで、いま大臣からお話がありましたとおり、特に経済協力の問題を中心に話をしておりまして、わが方はビエンチャンにおる菅沼大使、先方は同じくビエンチャンにおります先方の大使、この両者の間でかなり頻繁な会合を重ねておりまして、見通しにつきましても、最近やや近い将来に妥結に至る可能性はあるというふうに確信を持てるような状況になってまいっております。
#74
○立木洋君 近い将来というのは、いつごろという、そういう見通しまでは……。
#75
○政府委員(高島益郎君) まだ何月というところまではまいりませんけれども、いずれにしても今年中の近い機会にということでございます。
#76
○立木洋君 今日こういうふうにして話し合いが、十分結論がまだ出るに至っていないという点について、われわれは賠償の問題ということを言いますけれども、政府の側としては賠償問題はもう終わったということが繰り返し言われておるわけですが、この問題は、問題はあるとしても、経済援助の問題、それから南ベトナム共和臨時革命政府に対する日本政府の対応の問題、そこらあたりに問題があったのではないかということがしばしば言われておるわけですが、このあたりの問題はどういうふうになっておりますか。
#77
○政府委員(高島益郎君) 経済協力の問題につきましては、具体的な協力の案件の内容についての話はまだいたしておりません。しかし、従来やってきました話の内容は、賠償ということではなくて、無償の経済協力ということにつきまして、おおよその金額というものを中心に話を進めてまいっております。
 それから、いま先生御指摘の南越の臨時革命政府の問題でございますけれども、この問題は、本来は北越の交渉の対象となるべき筋合いのものとは私たちは思っておりませんけれども、先方が非常に関心がございますので、この点につきましても話を確かにいたしております。これも含めまして、先ほど申しましたとおり、大体妥結に近づいてきつつあるということを申し上げたいと思います。
#78
○立木洋君 去年の十二月でしたか、キッシンジャー国務長官が、アメリカの上院の財政委員会の公聴会で、ベトナム民主共和国復興援助については現在も検討していないし、今後も進めようと思っていないと、事実上援助を放棄するという態度を表明しているわけですが、日本の政府としては、今後とも引き続いてやはり復興援助を進めるという態度には変わりがないわけですね。
#79
○政府委員(高島益郎君) このベトナム民主共和国との間の経済協力を中心とする話し合いは、もともと先方の賠償に関する要求ということが出発点でございまして、そういった賠償という言葉は私たちもちろん使っておりませんし、賠償としての話し合いではございませんけれども、きわめて政治的な要素がございますので、日本といたしましては、いま先生の御指摘のとおり、この経済協力ということでもって話を今後も進めていく。金額の問題につきまして話が詰まれば、さらに案件の内容についても詰めていきたい、こう思っております。
#80
○立木洋君 もしお答えいただけるならば、その無償援助の額、あるいはある程度話が煮詰まってきて大体どの程度に考えられておるのか、その点はいかがでしょうか。
#81
○政府委員(高島益郎君) 大変申しわけありませんが、これは現に交渉中でございますし、先方の立場もございますので、この席でお話するのは差し控えさしていただきたいと思います。
#82
○立木洋君 もう一つの点では、ずっと国会でもいろいろ論議されてきたわけですが、南ベトナム共和臨時革命政府――日本政府もベトナムに関するパリ協定の立場は尊重するという趣旨を繰り返し述べられておるわけですが、共和臨時革命政府に対する今後の対応というのはどのようにお考えになっておられるのか、外務大臣いかがでしょうか。
#83
○国務大臣(宮澤喜一君) 先ほど政府委員から申し上げましたように、この問題はいわば北越との関連の問題ではない、南側の問題であるというふうに基本的には考えておりまして、いわゆるPRGがパリ協定の一つのパーティーであったということは、ハリ協定を読みますとそのようになっておるようでございます。しかし、わが国としてはサイゴン政府を南越における正統政府としてただいままでのところ承認をいたしてまいっておるわけでございますから、そのままの状態でPRGを政府であるといって承認をするわけにはまいらない。いずれにしても、これは南の問題でございますから、パリ協定の趣旨に従いまして、戦闘行為がやみ、そうして建設的な話し合いが実を結ぶということをわが国としては見守る、基本的にはそういう立場でございます。
#84
○立木洋君 事務当局の方で結構なんですが、世界で南ベトナム共和臨時革命政府をいま承認している国、それから外交関係を持っている国、あるいは何らかの意味で接触のある国はどれくらいになっておりますか。
#85
○政府委員(高島益郎君) 現在で申しますと、ことしの一月の初めの時点でございますけれども、いわゆるPRGを承認している国は四十三カ国でございます。
#86
○立木洋君 最近の国連の欧州本部の発表によりましても、ジュネーブに連絡事務所ですか、これを設置するというふうなことも述べられておるわけですし、オーストラリアも情報代表部を開設して結構だというふうな結論も出ておるようでありますけれども、日本の政府としてはこの連絡事務所、何らかの意味で連絡事務所を置きたいという相手側の要望があった場合、それを置くような意向があるのかどうか、その点についてはいかがでしょうか。
#87
○政府委員(高島益郎君) いま立木先生御指摘のとおり、現在までそういう意味での代表部といいますか、政府の大使館とか公使館とかいう性質のものではございませんが、代表部としてございますのはパリに常駐代表部、それからスウェーデンにいわゆるPRGの総代表部という名前のものがございます。三番目に、いま御指摘のジュネーブの連絡事務所、この三カ所でございます。日本に対しましてそういうものを置きたいという希望はなされたことはもちろんございませんし、私ども日本にいかなる意味であれ、PRGの機関を置くということは、現在のところは全然考えておりません。
#88
○立木洋君 この間の衆議院の予算委員会で、中東の問題がいろいろ論議されました。あの中でPLO、相手側から代表部、あるいは連絡事務所等を置きたいという要望があった場合には、外交特権を持たないというふうなことも何かつけ加えられておるようですが、それは別としても、そういうことが前向きに検討する可能性があるということを政府としては出されておるわけですが、そうなれば南ベトナム共和臨時革命政府の場合にも、向こうから要望があれば検討するということはできるのではないでしょうか。
#89
○国務大臣(宮澤喜一君) PLOにつきましては、総理大臣が所信表明で述べられましたように、これはただの難民の問題ではないと、安保理事会決議二四二号でいわゆる難民問題としてのみ認識をしておったことは十分でないという趣旨のことを総理大臣が述べられまして、そうしてそのPLOの固有の権利が国連憲章の規定に従って実現をすることが大切なことであるとの趣旨のことを、その後総理大臣が委員会等で述べておられます。したがいまして、そこにございます私どもの基本的な認識は、やがて中東和平が終局的にもたらされる場合には、PLOをそのようなものとして認識をするということが一つの不可欠な条件である。現に、国連において自己に関係のある問題について発言をし、討議に加わることの決議案にわれわれも賛成をいたしたわけでございますから、衆議院でいろいろ御議論になりましたPLOの事務所というものは、外交特権を伴うものではございませんけれども、もしお申し出でもあれば考えると申しました意味は、将来のそのような展望を私ども頭の中に置いてああいうお答えをいたしておるわけでございます。しかるところ、PRGにつきましては、先ほど申しましたように、現在のサイゴン政府との関連では、パリ協定に定めるような状況がまだつくり出せませんで、ただいま私どもがPLOにつきまして持っておりますような展望をPRGについては持ち得ない状況である、そういうところが基本的に異なっている点であろうかと思います。
#90
○立木洋君 この問題で論議をしますと、だいぶ時間がかかると思うのですが、PLOの場合にしましても、やっぱり民族自決の問題を掲げて、非常に複雑な事態があるということは、再々国会の中でも論議されてきているわけですね、イスラエルとの関係その他においても。しかし、そういう事態があれば前向きに検討できるというとらえ方を政府としてはされた。南ベトナム共和臨時革命政府の場合も、これは民族の自決の立場をとって、外務大臣も外交演説の中でインドシナ半島の問題については双方当事者が外部からの干渉なしにやることが不可欠だという趣旨のことを述べられておりますが、結局アメリカが事実上干渉して重大な事態になっている。そういうことを考えた場合に、当然ベトナム人民が民族の自決権を行使して、やはり平和、本当の安定した平和がベトナムで樹立されるという問題を考えてみても、南ベトナム共和臨時革命政府について今後何らかのやっぱり接触していく、そういうことがあってもいいんではないか。全然接触する余地はいまのところないというふうに言われるのか。そういう必要がある場合にはそういうことを考えていいという、将来の展望としては考えておられるのか、どうなのか。そういう点ではいかがでしょう。
#91
○政府委員(高島益郎君) いま立木先生から御指摘のあったとおり、南越あるいは北越を含めての全ベトナムの平和につきましては、パリ協定が構想を描いておりまして、私どもこのパリ協定の規定に従って、各当事者による平和的な話し合いを通じて最終的な統一ということを達成されることを希望しております。そういう意味におきまして、南越につきましては、サイゴン政府と並んで臨時革命政府が一つの当事者となっていることは私どももよく承知しておりまして、そういう事実を認識いたしております。しかし、そのことと各国がいずれの政府と代表関係を持つかということは、おのずから別個の問題でございまして、日本につきましては、サイゴン政府と外交関係を維持しておる、こういう立場でございますので、PRGと政府間の関係は持ち得ない、承認するということもあり得ないということでございます。このことはちょうどPRGを承認し、サイゴン政府を承認していない国が、サイゴン政府をさらに追加して承認するということはあり得ないというのと同じ理屈であろうと思います。ただ、私どもいままでこの臨時革命政府の人々の日本への渡航という問題については、先方の方に関心がございまして、そういう問題につきましては、そのケース・バイ・ケースに私どもこれを検討して対処するということはしばしば申しております。現在のところ政府が考えておりますのは、そういう意味での接触といえば接触があるというのが現状でございます。
#92
○立木洋君 いま外交関係としては持てないと言われる意味、これはわれわれ了解できないけれども、しかしまあそれは問題別として、何らかの接触ですね、今後そういうことを考える余地が全然ないと言われるのかどうかという意味なんです。
#93
○政府委員(高島益郎君) 政府としての公的な関係における接触ということは考えられないと思います。ただたとえば、たとえばのことでございますけれども、邦人が南越におきまして戦闘に巻き込まれて、逮捕される、拉致されるというふうな事態になった場合に、PRGの管轄区域内にいる日本人を助けなければならないというようなことが起きるといたしますと、そういう場合においては、何らかの方法でこのPRGとの接触ということは考えられるというふうに思います。
#94
○立木洋君 この間二人の人が逮捕されたことがありまして、いわゆる現地ですか、外交官が、いわゆる解放戦線という言葉を使って、それに対して批判的な指摘が相手側からあったということを聞いているわけですが、これについてはいま政府はどのようにお考えになっていますか、その問題は。
#95
○政府委員(高島益郎君) あの文書は現地の大使からICCSという機関に、国際機関に――監視機構ですか、監視機構あてに出した手紙の一部であったように思います。この手紙につきましては、私ども特に特別な訓令を出してこう書けといって指導をしたものではなくて、現地の大使館限りの判断でああいう表現になったということでございます。私ども日本政府といたしましては、パリ平和協定の中に一つの当事者としてあるということでございますし、しかもその名前は臨時革命政府ということで呼称されておりますし、こういう名前で呼ぶのが適当であるというふうに考えております。
#96
○立木洋君 そういう呼称の仕方は現地がやったとしても、それはやはりよくなかったというふうに感じておられるわけですね。
#97
○政府委員(高島益郎君) 適当であるとは思っておりません。
#98
○立木洋君 三木総理が国会で答弁されたときに、南ベトナム共和臨時革命政府の統治下にある人々との人事交流の問題に関して、ケース・バイ・ケースで認め得るというふうな答弁があったと思うのですが、どういう場合に認められるのか、認められない方はけっこうですから、認められる方をひとつお答えしていただきたいんです。
#99
○政府委員(高島益郎君) これは実は法務大臣の権限の問題でございまして、外務省として公式な見解を述べるというのはちょっと権限上ぐあいが悪い問題かと思いますが、一般的に申しまして、政治的な目的を持った入国ということは別としまして、それ以外のものであれば、その目的をよく検討した上で大体前向きに処理されるんだろうと私は思っております。しかしこれ、いずれにいたしましても、外務省の権限の問題ではございませんので、外務省としてはそういうふうに考えております。
#100
○立木洋君 人事交流については前向きで検討するということ、外務省の見解としてはそうであるというふうに承っておきたいと思うんです。
 これは時間がないので一つですが、この間の私が質問しましたSR71の問題で、ベトナム民主共和国の上空で偵察飛行を行っておるという事実に関して、可能な限り調べてみましょうというお話だったんですが、その後何かお調べになって明らかになった事態があったら述べていただきたいと思うんですが。
#101
○政府委員(山崎敏夫君) SR71の活動の事実関係につきましては、アメリカ側に照会いたしました。アメリカ側としましては、米軍の個々の活動の詳細については明らかにすることはできないということを回答してきた次第でございます。
#102
○立木洋君 十四日の新聞でこれはより明確に報道されているわけですが、サイゴンの米軍がはっきりとこのことを事実として認めておる。で、この米軍筋によるという報道によりますと、「北ベトナム偵察に使われるSR71機は沖繩の喜手納米空軍基地所属で、同基地を飛び立ち、南ベトナム――カンボジア――ラオスというルートから北ベトナム上空に入り、ハノイ、ハイフォン地区などを偵察して南シナ海を抜け沖繩に戻るのが普通のコース」である。これは、偵察機の発進地が沖繩に間違いないことを明らかにし、「東および東南アジア地区でSR71が現在おかれているのは沖繩の喜手納基地だけのはず」である、と、いうことをはっきり述べてあるわけですが、この点についてはどうお考えでしょうか。
#103
○政府委員(山崎敏夫君) われわれといたしましては、そういう報道も踏まえて先方に問い合わせたわけでございますけれども、先方としては、先ほど申し上げましたように、米軍のそういう個々の活動の詳細については明らかにできないということを言っておるわけでございます。
#104
○立木洋君 時間がないので、この問題に関しましては、また次回に私はいろいろとお聞きしたいということで、きょうは終わります。
#105
○委員長(二木謙吾君) 本調査についての質疑は本日はこの程度とし、これにて散会いたします。
   午後零時四十四分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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