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#1
第075回国会 外務委員会 第9号
昭和五十年四月十五日(火曜日)
   午後一時二十八分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 四月十五日
    辞任         補欠選任
     野坂 参三君      星野  力君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         二木 謙吾君
    理 事
                稲嶺 一郎君
                秦野  章君
                戸叶  武君
    委 員
                糸山英太郎君
                大鷹 淑子君
                中山 太郎君
                亘  四郎君
                田中寿美子君
                田  英夫君
                羽生 三七君
                松永 忠二君
                塩出 啓典君
                立木  洋君
   国務大臣
       外 務 大 臣  宮澤 喜一君
   政府委員
       外務省アジア局
       次長       中江 要介君
       外務省アメリカ
       局長       山崎 敏夫君
       外務省経済局次
       長        野村  豊君
       外務省条約局長  松永 信雄君
       外務省条約局外
       務参事官     伊達 宗起君
       外務省国際連合
       局長       鈴木 文彦君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        服部比左治君
   説明員
       外務省経済協力
       局外務参事官   菊地 清明君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○千九百七十一年の国際小麦協定を構成する小麦
 貿易規約及び食糧援助規約の有効期間の延長に
 関する議定書の締結について承認を求めるの件
 (内閣提出、衆議院送付)
○関税及び貿易に関する一般協定の譲許表の変更
 に関する第二確認書の締結について承認を求め
 るの件(内閣提出、衆議院送付)
○国際情勢等に関する調査
 (最近の国際情勢と外相訪米に関する件)
 (日韓経済協力に関する件)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(二木謙吾君) ただいまから外務委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 本日野坂参三君が委員を辞任され、その補欠として星野力君が選任されました。
    ―――――――――――――
#3
○委員長(二木謙吾君) 千九百七十一年の国際小麦協定を構成する小麦貿易規約及び食糧援助規約の有効期間の延長に関する議定着の締結について承認を求めるの件
 関税及び貿易に関する一般協定の譲許表の変更に関する第二確認書の締結について承認を求めるの件(いずれも衆議院送付)
 両件を一括して議題といたします。
 政府から順次趣旨説明を聴取いたします。宮澤外務大臣。
#4
○国務大臣(宮澤喜一君) ただいま議題となりました千九百七十一年の国際小麦協定を構成する小麦貿易規約及び食糧援助規約の有効期間の延長に関する議定書の締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。
 この議定書は、一九七一年の国際小麦協定の有効期間を一年間延長するもので、一九七四年二月ロンドンで開催された関係国政府間会議において採択されたものであります。
 一九七一年の国際小麦協定は、小麦貿易規約と食糧援助規約との二部から成っており、小麦貿易規約は、小麦の市況の安定化等を規定し、食糧援助規約は、開発途上にある国に対する食糧援助について規定しておりますが、この議定書は、この両規約の内容に変更を加えることなく、その有効期間を一年間延長することを定めており、小麦貿易規約の有効期間の延長に関する議定書と食糧援助規約の有効期間の延長に関する議定書との二部から成っております。
 この議定書を締結することは、小麦貿易に関する国際協力の促進が期待されること、開発途上にある国の食糧問題の解決に貢献することとなること等の見地から、わが国にとり有益であると考えられます。なおわが国としては、食糧援助規約の有効期間の延長に関する議定書に基づく食糧援助を米または農業物資で行う方針であるので同議定書にその旨の留保を付しました。
 よって、ここに、この議定書の締結について御承認を求める次第であります。
 次に、関税及び貿易に関する一般協定の譲許表の変更に関する第二確認書の締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。
 わが国の関税定率法の制度は、昭和四十七年四月一日ブラッセル関税品目分類表に合致するよう改正されましたが、右改正前に締結されたガットの諸文書に含まれているわが国のガット上の譲許は旧品目分類方式に基づいておりますので、同日以降、わが国の税関において関税を課する際に、品目及び相手国により、新旧の異なった品目分類表を用いることとなっており、かかる状態は税関事務の上で支障がありますので、ガット上のわが国の現行の譲許表をすべて新たな品目分類表に基づくものに切りかえることとし、昨年一月九日、そのためのガット上の手続を了しました。
 本件確認書は、わが国の譲許表の訂正、他の締約国の譲許表の訂正及び修正並びに南アフリカ等の総合譲許表を収録するものでありまして、わが国の譲許表の訂正については、政府が国会の承認を得た後、ガットの事務局長に対して行う通告によって効力を生ずることとなっております。
 よって、ここに、この確認書の締結について御承認を求める次第であります。
 以上、二件につきまして、何とぞ御審議の上、速やかに御承認あらんことを希望いたします。
#5
○委員長(二木謙吾君) 続いて、両件の補足説明を聴取いたします。伊達条約局参事官。
#6
○政府委員(伊達宗起君) 最初に、千九百七十一年の国際小麦協定を構成する小麦貿易規約及び食糧援助規約の有効期間の延長に関する議定書につきまして補足説明を申し上げます。
 小麦につきましては、一九四九年以来継続して国際協定が作成されて、一九七一年の国際小麦協定に至っておりましたが、同協定が昨年六月三十日に効力を失うため、この議定書によりまして同協定の有効期間を一年間延長することとされたものでございます。
 一九七一年の国際小麦協定の小麦貿易規約におきましては、小麦の価格や一定価格による供給保証などの価格に関連する加盟国の権利義務につきましての規定、つまり、実質的には経済条項が削除されておりまして、経済条項に関する問題の検討は国際小麦理事会の任務となっておりましたところ、七四年になりましても、この経済条項を含む協定の採択には至りませんでした。しかし、七一年の協定でも、小麦に関します情報だとか、資料の交換、検討、さらには、小麦市況に不安定が生じた場合の協議、新協定につきましての準備作業などが規定されておりまして、小麦貿易に関する国際協力の継続、促進に有意義であることから、そのまま有効期間を一年間延長することとなった次第でございます。
 食糧援助規約は、一九六七年に国際穀物協定によりまして協定の一部として取り入れられ、一九七一年の国際小麦協定にそれが引き継がれたものでございます。この議定書におきましては、一九七一年の規約と異なりまして、各締約国の援助量の最小拠出量を定めている規定がございますが、その中で欧州経済共同体の最小拠出量が掲げられてございません。これは、この議定書の採択の時点で、欧州経済共同体の食糧援助規約の有効期間の延長に対する参加の態度が未決定であったことによるものでございますが、欧州経済共同体は、その後、従来と同量の最小拠出量をもってこの議定書に加入することを決定いたしております。
 次に、関税及び貿易に関する一般協定の譲許表の変更に関する第二確認書につきまして補足説明を申し上げます。
 わが国の関税定率法別表は、わが国の基本税率を定めた税表でございますが、これとは別に、わが国がガットの関税交渉で関税率の引き下げなどを約束した品目とその税率を掲げた表がわが国のガット譲許表でございます。ガット加盟国及びわが国が二国間条約で関税上の最恵国待遇を約束している国々からの輸入品に対しましては、この譲許表の税率を適用することになっております。政府といたしましては、税関事務の円滑化の見地から、従来より、わが国のガット譲許表の品目分類をできるだけ最新の関税定率法別表の品目分類に合致させるように努力してまいりました。
 今回の確認書は、提案理由にもございましたとおり、昭和四十七年四月に関税定率法別表の品目分類がかなり大幅に改正されましたので、これを機会に、わが国のガット譲許表を新しい関税定率法別表に合わせて組みかえをするという結果生まれました文書でございます。この組みかえによりまして、現行のわが国のガット譲許表の中で、品目がある税番から他の税番に移りますとか、あるいは細目分類の番号が変わりますとか、あるいは品名の表現が改められるというような技術的な訂正がかなり多数必要になってまいりましたので、ガットの手続に従いまして関係締約国と協議を行いまして、その承認を得て、これらの訂正が今回の第二確認書に収録された次第でございます。
 以上でございます。
#7
○委員長(二木謙吾君) 以上をもって両件の説明は終わりました。
 質疑は後刻行うことにいたします。
 暫時休憩いたします。
   午後一時三十八分休憩
     ―――――・―――――
   午後三時五十四分開会
#8
○委員長(二木謙吾君) ただいまから外務委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、協定二件を議題といたします。
 これより質疑に入ります。質疑のある方は御発言願います。
#9
○秦野章君 提案になったこの議案の、議定書の延長の問題に関連して、小麦協定というのを読んでみると、この中に一体日本としてのメリットは何があるのか、たとえば小麦協定を延長して、そしてその中で供給の確保ができるとか、あるいは価格の問題等について、そういった経済条項なんというものは全然ないんだけれども、その辺はどういうふうになっていますか。
#10
○政府委員(野村豊君) ただいま先生の御指摘のございましたとおり、現在の七一年の小麦協定におきましては、いわゆる経済条項というものを欠いておりますわけでございます。したがいまして、通常小麦協定におきましては価格帯を決めまして、その範囲内に小麦の価格を安定し、かつまた、輸入国の立場から見れば供給保証を受けるというふうな規定があったわけでございます。しかるところ、残念ながら現在そういった条項は七一年の交渉の際におきまして、主として輸出国の利害の対立から、そういった経済条項を欠いておるというのが現状であるわけでございます。しかしながら、その時点におきまして、従来から国際小麦理事会というものは小麦の市況の問題とか需給に関しますところの有益な情報交換というものを行っておりますし、かつまた、加盟国の協議ということも行っておったわけでございます。かつまた、現在は経済条項を欠いておりますけれども、将来はそういった経済条項を含むところの国際小麦協定をつくろうというふうな準備作業も行っておるわけでございます。したがいまして、わが国といたしましては、この協定には参加しているということによりまして直接の供給保証というふうなことは受けられないわけではございますけれども、いま申し上げましたとおり、いろんな小麦に関しますところの市況の変動の点でございますとか、情報の交換に参画しておるのみならず、今後、将来におきますところの小麦協定というものにつきましても、日本がこれに参加するということよりまして日本の立場をも十分反映していくということが必要かというふうに考えておるわけでございます。そういった国際協力の立場からも、わが国といたしましてはこういった協定に参加しておるというふうなメリットがあるわけでございます。
#11
○秦野章君 この協定に入らなかったら、情報交換とかそういうことができないということなんですか。
#12
○政府委員(野村豊君) もとよりいろいろな小麦その他の農産物に関しまするところの情報交換等につきましては、たとえば日本とアメリカとか、そういった二国間でもできるわけでございます。しかしながら、現在この国際小麦協定に参加しております国は、大体輸出国、輸入国のほとんどの相当部分を占めておるわけでございます。したがいまして、そういった国際的な多角的な場におきましていろいろな情報の交換を受けるということも非常に有利かというふうにわれわれ考えておるわけでございますし、かつまた、先ほど申し上げましたとおり、新しい今後の国際協定というものをつくる準備作業が行われるわけでございまして、そういった中に日本としても参加しておるということは非常に大事なことかと考えております。
#13
○秦野章君 これはいつごろそういった本格的な小麦協定はできるのですか。
#14
○政府委員(野村豊君) すでに先ほど来申し上げましたとおり、この規約の二十一条によりまして新しい経済条項の新たな協定の準備を行うということになっておるわけでございまして、すでに昨年来基礎的な研究というようなものをやっておるわけでございます。かつまた、本年の三月におきましては、小麦理事会の中におきまして新しい小麦協定の準備を進めようということを、会議をしておるわけでございます。この会議はきわめてまだノンコミッタルなベースで、将来あり得べき小麦協定の価格の問題とかいうふうな問題、あるいはまた、対象穀物をどうするかというふうな問題についてもまだ意見交換に終わっておるわけでございます。かつまた、この問題は御承知のとおりいまジュネーブで行われておりますところの新しい国際ラウンドという問題ございまして、新しい貿易交渉が行われるわけでございます。そういった中におきましての農業問題の多角的な解決といいますか、ことを図る作業が進んでおりますので、そういった作業ともにらみ合わせてやっておるということでございますので、いますぐこの新しい協定ができるということは、いまのところ非常に予断がしにくいという状況でございます。
#15
○秦野章君 いま一つ、食糧援助規約の延長の案件の問題で、これを読むと、食糧の援助といっても日本の場合は農業物資だということになっていますが、そういう権利を留保しているわけですけれども、援助を実施する場合に、相手の国とか援助の内容とかいうものはどうして決めるのですか。また、決めるに当たって日本もそれに参画してもちろん決めるのだろうと思うのだけれども、どこでやるのですか。
#16
○説明委員(菊地清明君) わが国の場合には、米または農業物資で援助を行うことが認められております。御質問の、どういうふうにしてこれが決まるかということでございますけれども、原則として相手国の事情を調べまして、相手国政府の要請に基づいて日本政府において援助の形態を決めるということでございます。
 米の場合でございますけれども、御承知のとおり、わが国の過剰米の処理が大体終了いたしましたので、最近は外米、特にタイ米、ビルマ米をこれに使っております。この間、援助を受ける相手国それから米の供給国、そういった国々と協議しながら決定している次第でございます。
#17
○委員長(二木謙吾君) 両件につきましての質疑は、本日はこの程度といたします。
    ―――――――――――――
#18
○委員長(二木謙吾君) 次に、国際情勢に関する調査を議題といたします。
 これより質疑を行います。質疑のある方は順次御発言を願います。
#19
○秦野章君 外務大臣、今度訪米されて、いろいろ新聞では見ているのですけれども、十日にフォード大統領が演説をして、非常に日本を何といいますか、重視する演説といいますか、そういうものを、太平洋地域の中における日本が大変かなめの地位にあるという趣旨の演説がございました。外務大臣が今度訪米された趣旨というものはわれわれも理解をしているわけですけれども、あのフォード大統領の演説といったようなものは、安保条約を締結している日本にとって、フォード大統領があれまでの演説をしたことはこれまでなかったと思うのですけれども、たまたまベトナム情勢の問題もあり、何かフォード大統領の演説というものが格別の意味があったのかどうか。私どもは理解としては、安保条約というものはいままでもこれからも変わることなきものだとは思うのですけれども、実質的な意味等について、大臣のひとついろいろ交渉なさった経過から見て何か格別の意味があるのかどうか、ちょっとお伺いしたい。
#20
○国務大臣(宮澤喜一君) フォード大統領の御指摘の演説は、ただいまインドシナ半島の情勢が非常に微妙でございますせいもありまして、各方面にかなり細かい配慮をしながらなされた演説のように思われます。すなわち、インドシナ半島の情勢、あるいはサイゴン政府の立場を考えつつ、あるいはまたアメリカの国会の立場、さらに米国以外の各国の立場、もとより米国民の考え方等々、かなり各方面に配慮をしつつ述べられた演説のように考えられます。したがいまして、この解釈も、おのおの見る立場によってやや異なるというような複雑な内容を持っておるように存ぜられますが、その中で、わが国に対して何度か言及がございましたことは、秦野委員の御指摘のとおりでございます。
 一つには、今回のインドシナ半島の情勢にかんがみて、米国のいろいろ条約関係を持っております国に対する約束の有効性というものが疑われることがあってはならないというような配慮に出た点もあるように思いますし、他方では、それらの国に対して現在米国が直面しております立場についての理解を求めるというような趣旨もあったように思われます。またもう一つは、インドシナ半島に起こっている情勢はきわめて深刻なものでありますけれども、米国としては同時に世界各国に広くいろいろな意味での関係を持っておる、インドシナ半島における情勢はその一つであるというような気持ちもあったのではないかと思われます。そういういろいろな要素を含んでおると存じますけれども、わが国との安全保障関係、安保条約を中心とする関係につきましては、キッシンジャー国務長官と私との間にかなり明確なやりとりがあり、またフォード大統領自身もそれを確認いたしまして、両国ともこの条約における義務を誠実に履行するというような点について確認があったわけでございます。
#21
○秦野章君 キッシンジャーといろいろお話しになったという中で、ベトナム情勢というものをどういう判断をアメリカがしているのかという問題、日本の安全とどういうふうに関係があるのか。宮澤さんはアメリカに、ベトナム情勢にはもう見切りをつけたらどうかと言ったというふうに新聞に出ておるのですが、パリ協定、ジュネーブ協定というようなものの侵犯かどうかというような問題について、なかなか立場はデリケートだと思うのだけれども、まあ南側もああいう状態になれば侵犯もしただろうし、北も侵犯をしたのが本当だと思うのですよ。特に十数個師団もベトナム周辺に来ておるという事実から見て、まあ一般的な事実と言わざるを得ないと思うのだけれども、しかし、そういう事実認識というものを考え、どう認識をするかという問題は、いろいろ言いにくい立場とは思うのだけれども、私はやっぱりパリ協定がどうやら空文に帰したように思うのですが、そういうふうに考えると、国際条約とかいろいろな取り決めとかというようなものが、意外と力のないものだというふうにも考えざるを得ないし、そういう意味ではいろいろ突っこんだお話をなさったということでございますけれども、大体ベトナム情勢の判断というものをアメリカがどういうふうに受け取っているのか。意見を伺いたい。
#22
○国務大臣(宮澤喜一君) ベトナム共和国の問題について、私が身切りをつけたらどうだというようなことを申したというふうに報道されておりましたら、それは正確ではございませんで、私はそういうことを申したことはございません。情勢をアメリカはどういうふうに判断しておるかということでございますけれども、少なくとも私の話しました時点におきまして、チュー政権、サイゴン政権は、アメリカが相当な援助をするならば、現在の地域、サイゴン周辺及びメコンデルタ、従来のコーチンチャイナでございますけれども、この地域をなお守っていけるであろう、そうしてそれだけのまだ士気もあると、モラルもあると、もちろん失いました地域を全部奪回すると、そういうような意味合いではありませんけれども、コーチンチャイナ地域はアメリカが援助を続けていけば保持し得るという判断に立っておるように私は観察をいたしました。
 次に、侵犯云々のことでございますが、これは私の申しましたのは、わが国は、国会でも申し上げておりますとおり、パリ協定の当事者でもございませず、もちろん軍事的な情勢にも詳しいわけではございません。本来、侵犯云々については国際監視委員会が判断すべきであるということは、パリ協定に定められているわけでございますけれども、これは機能をしていない。そのような諸種の条件から見まして、わが国としては有権的に事態を判断し得る状態にはないと国会でも申し上げておることでございますが、それをそのまま申しましたわけでありまして、アメリカ側の判断が誤りであるというふうに私は申したわけではございません。日本としては有権的には判断ができないということを実は申したようなわけでございます。
#23
○秦野章君 あと一つだけ。
 まあカンボジアのプノンペンから最後にアメリカの飛行機が一機飛び立ったのがまず終末みたいな感じがするし、ベトナムも何かこう運命がおのずから決まったような感じがするんだけれども、日本として何かこれからの外交努力というものは一体どういうものがあるのか。
 それからもう一つは難民の問題ですね、どういう形の難民か、これはむずかしい面もあるかもしれませんが、やっぱりこれからの情勢の中では、難民救済といった人道主義に基づくアジアのきょうだい国としての何か問題があるような気もするんですけれども、こういう点について何か具体的なお考えがございますか。
#24
○国務大臣(宮澤喜一君) わが国としてなし得る外交努力でございますが、カンボジア情勢につきまして、ロン・ノル大統領が国を離れます前の数週問、わが国の大使がASEAN諸国の大使とともにしばしば意見を求められまして、それに応じまして所見を申し述べたことは事実でございます。その中心となりましたのは、やはりクメール人の問題はクメール人で片づける、そしてできるだけやはり無用の殺傷は避けるべきである、そういう観点から所見を何度か求められて申しました。このことは、ロン・ノル政権が政策決定をいたします上にかなりな影響力を持ったものではないかというふうに考えております。
 サイゴン政権についてわれわれがどのような外交努力をすべきかということにつきましては、事態が流動的でございますので、抽象的にしか申し上げることができませんが、やはり同じような立場、すなわち、無用の殺戮というものはできるだけ双方とも努力をして避けるべきものであるというような考え方、それから民族がお互いに自分たちで国をつくっていくという考え方、これは基本的には私は同じ考え方が適用されるべきではないかと考えております。したがって、そういう意味では先ほどパリ協定というものは死滅してしまったというふうに仰せられました。確かにあそこで書き上げられました構図そのものは適用がなかなかむつかしくなりましたけれども、しかし、戦いによらず、民族の間の話し合いによって事を処理していくべきだという精神そのものは死滅したわけではなく、いずれはそういう方向で問題が処理されなければならないのではないかと私どもやはり考えております。
 難民救済の問題でございますけれども、確かにわが国として現在貢献し得ることはこの一点と申しても過言ではないと思います。すでに国際赤十字等を通じまして求められた負担には直ちに応じておるわけでございますが、今後さらにそのような要請が強くなるであろうと存じます。せんだっても、実は閣議の席上におきまして、ある程度既定予算の中でやりくりをいたしましても相当の支出を準備をしておくべきであるということを、私閣議で報告をいたしたわけでございますけれども、ただいま外務、大蔵両省の間で既定予算の範囲内でどのぐらいなやりくりができるであろうかということを検討をいたしておりまして、わが国としては財政、ことに五十年度の財政はなかなかむつかしい年であろうと思いますけれども、既定予算をやりくりいたしましてでも相当なものはやはり準備をしておく必要があるというふうに考えております。
#25
○秦野章君 その場合、援助の対象といいますか、内容とか、そういうものはどういうことなんですか。
#26
○国務大臣(宮澤喜一君) これはその難民の状態、段階によって異なると思いますけれども、おそらくさしずめ一番最初に必要とされますものは、やはりテントであるとか食糧であるとか薬品、なべかまのたぐいに至るまで、とにかく雨露をしのいで、飢えをしのいでいくという、そういうところから始まるのではなかろうかと考えられます。将来もう少し事態が安定いたしまして、ある程度その地域に定住するということになりますと、またそれなりの違った種類の援助が必要かと存じますけれども、ただいまの段階は、先ほど申し上げたような種類のものがさしずめ必要なのではなかろうかと考えます。
#27
○羽生三七君 時間のないのが大変残念でありますが、外相の訪米問題に関連して若干お尋ねをいたします。
 中東地域その他に地域的に問題があるにいたしましても、国際的には緊張緩和の方向にあるし、また日本を取り巻く国際情勢に差し迫った危険な要素もないこの時期に、核防条約の批准に関連する与党対策上の問題ということから、日米安保体制の再確認というようなこの重要な問題を絡ませて日米会談で推進されたことは、はなはだ失礼な言いぐさですが、必ずしも外交政策の選択としては適切ではなかったんではないかと思いますが、この機会に外相の所見を伺います。
#28
○国務大臣(宮澤喜一君) それはそのような御批判があろうかと存じます。この点につきましては羽生委員もすでに御存じのとおり、核拡散防止条約が今後二十年間、少なくともわが国のこの問題につきましての立場を国際的に拘束をするものであるということとの関連で、わが国の安全をいかにして確保するかという、そういう問題に与党の内部の議論が進んでまいりまして、これはわが国が米国との間で安全保障条約を結んでおるということと切り離してわが国の安全を論ずることはできないではないかということから、さらに進みまして、日米安保条約下において、米国がわが国に加えられることあるべきいかなる種類の攻撃に対しても防衛義務を果たすものであるかどうかというような議論に展開をしていったわけでございます。このような展開が、必ずしも羽生委員の御納得のいく展開であったかどうかについては、これは御批判があろうと思いますけれども、とにかくそのように議論が展開をいたしてまいりまして、この際、わが国が核防条約を批准を目的に国会の御審議を願うということにするとすれば、ただいまの点の確認は不可欠ではないかというような議論が与党の内部に強うございまして、私としてはその論理は一応論理としてうなずけることでございますので、この点についての確認を求めたという次第でございました。
#29
○羽生三七君 その点については前の委員会で、核防条約の問題点は、日本が従来取り上げてきた問題点は、核保有国の非核保有国に対する安全保障をどうするかという問題であったのですから、今回の問題は私は問題のすりかえであると思いますが、それとともに、今回の会談では、アメリカに対日防衛の再確認を求めただけではなく、日本も安保条約の義務の履行を約束しておるわけです。したがって、今回の会談でこのアメリカの対日防衛力の強化を求めたということは、同時に日本のアメリカに対する協力義務の強化を確認したことにもなると思います。日米安保体制の強化というような重要問題は国民の合意を待って行うべき性質のものではないかと思うんですが、核防条約に絡ませるような国会対策上の問題でこの種の重要問題を取り扱うということは、私どうしてもこれは過ちではないか、国民の合意を待って行うべき性質のものではないかと思うが、いかがでしょうか。
#30
○国務大臣(宮澤喜一君) 第一の御指摘の点でございますが、わが国の安全を考えます場合に安保条約の問題がございますことは、これは事実でございます。しかし他方で、それに限らず、いわゆる核保有国の脅威から非核保有国をどのようにして守るかという問題が一般的に存在するわけでございまして、この点につきましては、このたびの安保条約の問題と別に、来たるべき核防条約の再検討会議におきまして、非核保有国の一国であるわが国として、再検討会議で何をどのように主張すべきかということは、これは別途実はただいま私ども考究をいたしております。あの場において求めなければならないことがさらにあるわけでございまして、この点の努力をないがしろにしておるわけではございません。
 それから次に、このたびわが国として安保条約を誠実に遵守するということを私が約束をいたしましたことは、ことさら何か新しい義務をそれによって背負ったという、具体的に何か新しいものが追加されたという意味合いではなく、先方に安保条約上の義務の履行を確認するということになれば、わが国としても当然双務的にこちらの負っておる義務を誠実に果たすということを確認をしたということでございまして、新しい何らかの具体的な義務を背負ったという意味ではございません。
#31
○羽生三七君 そこで、いまも外相の御答弁の中にありましたが、乙の日米安保体制の再確認ということは、具体的にそれでは一体どういうことなのか。たとえば、アメリカ側から安保条約を廃棄しないというようなことを求めたのか、あるいは防衛力をもっと強化してもらいたいということを言われたのか、一体具体的にはどういうことなのか。精神問題なんですか、これ。どういうことなんでしょう。
#32
○国務大臣(宮澤喜一君) 再確認という言葉が示しますように、特に新しいものがつけ加わったというわけではございませんけれども、先刻申し上げました核防条約の与党内における議論の過程で、安保条約上の一般的な米国の義務というものはこれはよく理解をしておるところであるけれども、米国の持ってるいわゆる核の抑止力といったようなものが、果たして与党のそれらの方々が理解をしておられるように米国も理解をしておるのであろうか、あるいはさらに、わが国に攻撃が加えられた場合米国が防衛義務を負うということの、その攻撃ということの意味の中に、万一それが核兵器による攻撃であってもなお米国がそのような義務を負うのであろうか、こういう二種類の疑問が提出されておりました。政府としてはその点について疑念を持ったわけでは実はございませんでしたが、従来その点について特に問題を指摘して日米間で具体的に議論をしたことはございませんでしたので、そのような一部の問題提起にかんがみましてその問題を提起をいたしましたという点が、せめて申しますと今回の議論の新しい点であったというふうに存じます。しかしこれは、政府の立場から申しますと従来から別段の疑念を抱いていなかった点であったことは事実でございます。
#33
○羽生三七君 いま外相の御答弁にもありましたように、いままで安保条約に関連をして核兵器の問題に触れて日米間で対応があったことはない、今回初めてだと思います。そこで、今回のこの会談で米国の核能力はわが国への攻撃に対し重要な抑止力となると、こういう見解を表明されたわけでありますが、このことは、今後アメリカの日本に対する核持ち込みを拒否し得ないような事態に発展する要素を内在しておると思うんです。いかがでありましょうか。
#34
○国務大臣(宮澤喜一君) 先ほど私の申し上げましたことの中で、従来そのような対話がなかったと私が申し上げました、これはあるいは不正確であったかと存じます。そのようなことが表面に出たということはなかった、というふうに訂正さしていただきます。あるいは対話はあったかもしれません。
 で、お尋ねの本体でございますけれども、私はそうは考えておりませんで、核が抑止力であるということと、必ず核が持ち込まれなければしたがって抑止力たり得ないということとは同じことではない。すなわち、一般に核兵器を米国が持っておるということそのものが米国のわが国の防衛義務と関連をいたしまして抑止力として存在し得るというふうに考えておりまして、端的に申しますと、このたびのそのような日米間の対話、会談の結果、わが国がいわゆる核に関する三原則、総理大臣がしばしば申し上げております原則を変更するというような意図を持っておるものではございません。
#35
○羽生三七君 そこで、この米国の核抑止力を評価しながら、かつは安保の義務の履行を再確認しながら、米国の核積載艦艇の日本への寄港等の問題を今後とも拒否し続け得る確信がおありでございますか。
#36
○国務大臣(宮澤喜一君) その点は、いわゆる非核三原則に申しますところの持ち込ませずということにつきましては、総理大臣がしばしば言明されておりますとおり、政府としてはその方針を変更する意図はございません。
#37
○羽生三七君 さきのこの委員会で私、二回にわたって、核問題についての日本の特殊な立場を十分アメリカと話し合うべきだという問題提起をして、外相は二回にわたってそれを確認されて、アメリカの首脳部と話し合うと、こういうことになっておったのですが、今回の会談で、核抑止力の評価はされましたが、核に対する日本の特殊的な立場なり主張というものについて話し合いをされた結果が、いま外相がお話しになったように、核について日本への持ち込みは拒否する、あるいは核積載艦艇の日本への寄港も拒否するという、この態度は一貫して変わりがないということを取りつけられたんでありますか。
#38
○国務大臣(宮澤喜一君) この点は私どもの基本的な立場として、このたびの会談の当然の前提となっておりましたことは間違いのないところでございます。すなわち、逆に申しますと、わが国がこのたびのような安全保障を求めるということに関連して、それならば核の導入についてもわが国がもう少し積極的であるべきではないかといったような、そういう議論というものは一切起こっておりませんで、われわれが非核三原則を持っておりますということは先方も当然のことながら理解し、前提としてこのたびの会談が行われたわけでございます。
#39
○羽生三七君 そうすると、今度の日米会談での安保体制の再確認ということは、核防条約批准に関連する自民党の与党対策上以上の何物でもない、こういう理解でよろしいんでございますか。
#40
○国務大臣(宮澤喜一君) そう申しますよりは、与党の中にそのような有力な意見がありますということは、国民のかなりの人が同様な疑問を持ち、心配を持つということにほかならないと存じますので、そういう意味では核拡散防止条約を国会に御提出をしたいと考えております政府の立場から、そのような国民の少なくとも一部にございます疑問あるいは憂慮に対してこたえる当然の努力であったというふうに考えております。
#41
○羽生三七君 新聞報道によると、さきの佐藤総理とニクソン大統領との共同声明の中で、韓国条項に触れた部分について、韓国の記者であったにしても記者会見でこれを改めて再確認されたように報道されておりますが、しかし、さきの木村外相の言われた、朝鮮半島全体の問題が日本の安危に重要なかかわり合いを持っているという発言の方が、私は客観的に見て正当だと思うんです。だからその韓国の記者に答えられたことを、ここで改めてもう一度、いま私の御質問したような趣旨であることを確認していただけませんか。
#42
○国務大臣(宮澤喜一君) いわゆる佐藤・ニクソン会談におけるところの韓国条項をどのように考えるかということでございますけれども、これは韓国というのはわが国に申すまでもなく非常に地理的に近い地域でございます。したがって、その韓国における安全がわが国の安全と密接な関係があるという考え方そのものは、私はむしろ当然の認識ではないかと考えております。もちろん韓国の内部における、あるいは朝鮮半島全体における緊張緩和の状態というのは時とともに変化をいたしておりますので、私どもはその緊張がより緩和することを期待しておりますことにはもとより違いはございませんが、最近において全く緊張は緩和して安全な状態、平和な状態であるかと言えば、必ずしもそうは思われないような、小規模ではありますけれども、事件が幾つか起こっておるわけでございます。そのような意味から、やはり韓国において全く、もう安心しても全く大丈夫だというような安定状態が生まれたとは考えにくい、朝鮮半島におきましてそういう状態が生まれたとは考えにくい、そういう意味では、やはり韓国における安定というもの、安全というものがわが国の安全に関係がございますし、また同時に、仰せられますように、そのことは朝鮮半島全体が平和であるということ、朝鮮半島があるいは不安定であるということは当然にわが国に同じように影響を及ぼすというふうに申し上げてもよろしいと思うんでございます。
#43
○羽生三七君 アメリカの――アメリカというより、インドシナ問題について日米間に認識や見通しの相違があったと思いますけれども、日本としては民族自決を尊重するという立場をとられたと思いますが、そう理解してよろしゅうございますか。
#44
○国務大臣(宮澤喜一君) そのように御理解願って結構でございます。
#45
○羽生三七君 そうだとすれば、アメリカが今後ベトナムへの軍事介入を再開したような場合――そういう事態が起こる可能性は少ないとかどうとかいう問題じゃないんです。基本的な問題として、そういう事態が仮に起こった場合に、日本としてはどういう方針をとるのか。この場合、いま民族の自決を尊重されるという立場をここで確認された以上、アメリカの要請があっても、純粋人道的な問題は別ですが、いかなる軍事的な問題にも日本が介入し、協力すべきではないと思いますが、ここで改めて確認をしていただきたい。
#46
○国務大臣(宮澤喜一君) 民族自決を中心に問題の解決が図られるべきだと考えておりますことはそのとおりであります。その場合、米国が何らかのそれについての支援をする、サイゴン政府に対して支援をすることがその目的を妨げる結果になるかどうかということは、相手側に対して同様な支援が他の国から行われることがあるかないかということと、やはり相対的に判断をしなければならないということが現実の事態ではないかと私は思います。しかし、それは基本的な物の考え方の問題でありまして、現状からして米国がこの事態に大規模な介入をするということは恐らく考えにくいことであろう、また、その目的のためにわが国にございます施設・区域が直接に用いられるということも恐らくはありそうもない事態でございまして、私としては、仮にそのような関連でわが国の施設・区域が間接的にでも使用されるということであれば、それは人道的な目的において使用されるのであれば差し支えがないことであろうというふうに考えておるわけでございます。
#47
○羽生三七君 だから、軍事的介入に協力する意思は日本としてはないと理解してよろしゅうございますか。
#48
○国務大臣(宮澤喜一君) 非常に厳密な意味での当委員会におけるお尋ねということになりますと、それは介入そのものが持っておりますところの性格、態様をその時点で判断をするというふうにお答えをするしかないことになるわけでございますが、私としてはただいま仰せのようなことが今後起こるというようなことは、恐らくその可能性はきわめて少ないというふうに判断をいたします。
#49
○羽生三七君 私は介入の可能性の問題でなしに、日本の基本的な姿勢についてお尋ねしておるんですが、特にアメリカのインドシナにおける失敗という問題ですが、解放勢力を共産主義勢力とみなしての反共封じ込めのアメリカの政策が現に崩壊しまたは崩壊しつつある、こういう場合に、その情勢の分析はとにかく、どういうふうに理解するかという分析はとにかくとして、他国の内政に外部から武力介入をしてはならぬということをこのインドシナ問題は実によく証明したと思うんです。日本のアメリカに対する協力も、ベトナム問題から見た場合に、そういう介入に協力すべきではないということをこの歴史はよく証明しておると思うんです。したがって、単にベトナム、インドシナだけでなしに、つまり外国の紛争に日本が、アメリカの軍事的介入に日本が絶対に協力すべきではないということ、私は今度のベトナム問題、インドシナ問題のアメリカの失敗はよくそれへの教訓になると思う。日本もまたその教訓をくみ取るべきであると思いますが、いかがでありますか。
#50
○国務大臣(宮澤喜一君) その点につきましては、私が米国の当局者に対しまして、過去何年かのインドシナ半島における紛争に際して日本がとってきた態度が必ずしも米国側にとって十分協力的であると考えられなかった事例が幾つかあったのではないかと思う、しかしそれは、一つにはわが国の憲法の規定のゆえであり、もう一つには、わが国として米国のいわゆる戦争目的、それが善意であることは疑わないけれども、その戦争目的の具体的な達成の可能性、それについて十分にわが国としては理解をし得なかった、そういうためでもあるということを申し述べたわけでございますが、そのことから推察を願いたいと存じます。
#51
○羽生三七君 次に、日本が北ベトナム、ハノイに大使館を開設するという問題はその後どうなっているのか。アメリカの意図にかかわりなく速やかに既定方針どおり進めるべきであると思いますが、いかがでありますか。
#52
○国務大臣(宮澤喜一君) この問題につきましては、一昨年の九月以来長いこと両国間で協議をしてまいりまして、ビエンチャンにおきまして基本的な了解がほぼできたわけでございますので、わが国としてはその了解を誠実に履行をしなければならないという立場にございますことは変わりがございません。
 ただ、現実に起こりました事態は、このような非常に微妙なインドシナ半島の情勢でございますので、わが国がいたしますところの経済協力、この経済協力と大使館の開設というものは一応別のことでございますけれども、一緒にビエンチャンで議論をされてまいりましたので、全く別個のこととも申しにくい性格を持っております。経済協力の内容につきましては、いかなる意味でもこれが軍事力の増強になるようなことは避けなければならない、人道的な立場から避けなければならないと思いますので、その点につきまして十分慎重な態度でなければならないと存じます。したがいまして、その内容、時期につきましては、これは慎重に検討をいたさなければならないと思っておりますものの、基本的にビエンチャンでいたしました両国間の約束というものはほごにしてはならないものである、適当な方法と時期を選んでやはり履行されなければならないというふうに私は考えております。
#53
○羽生三七君 これは、速やかに既定方針どおり進められることを要望いたします。
 それに関連して、いまお話があった経済協力についてですが、これは先方から来た使節、代表団ですか、これが帰国後、日本の誠意のなさを云々されておるようですが、この取り扱いは今後どうなさるつもりですか。やはり速やかに、約束といいますか、計画を達成すべきではないかと思いますが、いかがですか。
#54
○国務大臣(宮澤喜一君) 先方の使節団三名が帰国の前に私を訪ねてこられまして、じかに会談をいたしたわけでございますが、そのとき私としましては、事態のこのような急転によって日本政府としては経済援助の内容をかなり気を使って選ばなければならなくなったことは事実である、それについて最終的な合意に達しなかったことは残念なことであるけれども、日本政府としては今後外交ルートを通じて交渉を妥結させたいと考えておりますと、そういうことを伝えてございまして、それが私どもの立場でございます。その後、先方から非難の発言があったということを報道によって知ったわけでございますが、私がそのように申しました真意は恐らく誤りなく先方に伝わっておるというふうに考えております。
#55
○羽生三七君 最後に。
 安保の本質論はこの際やめておきますが、このインドシナ政策の転換を契機に、安保の極東条項を再検討してはどうかと思うのです。
 アメリカへ行って安保体制を再確認されてこられた外相にこういう質問をするのはいささかいかがかと思いますが、しかしベトナム問題、インドシナ問題を見ておると、やはり外国、アメリカの軍事的介入に協力した歴史が実はインドシナ問題だと。ですから、安保条約の極東条項はこの際再検討すべきだ。われわれから言えば安保の本質論に触れなければなりませんが、そういう問題はきょうは別として、これはやはり一つのベトナム問題の教訓からくみ取るべきわれわれの選択すべき課題ではないかと思いますが、いかがでしょうか。
#56
○国務大臣(宮澤喜一君) 極東条項の問題でございますけれども、現実にわが国の平和あるいは安全というものを私どもとしては確保したい、全うしたい。自衛の立場からこの条約を持っておるわけでございますが、事の当然として、その目的を達しますためにある程度わが国の周辺の安全、平和というものがわが国に直接に関係があるということは、これは否定ができないことであろうと思います。したがいまして、極東条項の思想というのはそういう思想であろうと存じますので、これをやめてしまって、全くわが国だけの問題として考えました場合、わが国の平和と安全が全うできるかどうかということは、これはやはり私は問題があるであろうと存じます。したがいまして、この条項をやめるという考えは私はございません。ございませんが、あくまでそれはわが国の自衛ということとの関連において考えられるべきである。従来政府はそういう立場をとってまいったことはそのとおりでございますけれども、しかし、やはり世界的な緊張緩和というような事態もございますので、具体的にどの程度を持ってわが国の平和と安全に影響ありと考えるかの判断につきましては、慎重でなければならないというふうに存じます。
#57
○塩出啓典君 今回外相が訪米をされまして、先ほど羽生議員の方から質問がありましたが、いわゆる核防条約を批准をすることについての与党あるいは国民の不安を解消するために安保条約堅持の了解をとってきたと、このように判断をしておるわけでありますが、まず第一番に、外務大臣として、こういう口頭了解を取りつけてきたことによって、その核防条約批准に対するいろいろな不安というものはもう解消されたと判断をしているのかどうか。そして今後、与党内においても、いろいろ今回の訪米での口頭了解等の問題について了解を求めて、そして今国会に提案をすると、このような方向に進んでいると思うんでありますが、大体スケジュールとして、批准を提案する前のスケジュールはどういうスケジュールでやるのか、まずその点お聞きしたいと思います。
#58
○国務大臣(宮澤喜一君) 与党の一部、したがいまして国民の一部にございましたそのような不安、心配というものを、私自身は必ずしも同じようには実は考えなかったわけでございますけれども、そのような心配があるということは事実でございましたので、今回このような再確認をいたしました。私としては、このたびの再確認によりましてそのような不安、あるいは疑問にはこたえ得たものというふうに考えておりますので、その問題に関する疑念であればこれでこたえることができた、したがって、その問題についての与党の中の核防条約についての議論はまずこれで解決をし得るのではないかというふうに、私としては、多少の希望を交えてでございますが、考えております。したがいまして、当初の予定どおり、できるだけ早い機会に与党との了解をつけまして、御審議のために国会に提出をいたしたいと考えております。
#59
○塩出啓典君 私は、やはり核防条約の問題というのはかなり何十年という将来に及ぶ問題でありますし、この安保条約堅持を再確認をしたと言っても、これは単なる口頭でございますし、現在の安保条約によれば、日米いずれかの国がやはりこれを一年前に通告をすればこれは破棄できるようになっているわけですね。だから、安保条約の堅持を再確認をしたことが核防条約の批准に対する不安を解消したというのはそもそもおかしいわけでありまして、これはわれわれはそういう立場はとりませんけれども、まああえて論ずれば、いわゆる安保条約というものをたとえば二十年、三十年堅持すると、そういうことでもするんならばまだ話はわかるわけですが、そういう点で何か口頭で安保条約の堅持をしたということが核防条約批准の不安を解消するというのは、非常にまやかしのような感じがするわけですけれども、そういう点は外務大臣はどう考えておりますか。
#60
○国務大臣(宮澤喜一君) 私自身は、安保条約というものを、いわゆる廃棄条項がございますゆえに常に一年の命しか持っていないというふうには考えておりませんで、むしろ半恒久的に存在するものであるというふうに考えております。恐らくその点の認識は、アメリカにおきましても異ならないというふうに存じます。もし、しかしその点の認識が変わりまして、現実に安保条約が破棄をされるようになると、いずれかの側から――ということになりますと、日米の信頼関係、現在の関係というものは全く異なったものになると考えざるを得ない。そういう事態を私どもは現在予測をしておりませんし、米国側も恐らく予測をしていないところでございます。したがいまして、その点についての疑問を含めて今回何かの再確誌をしたということであれば、そのことは大して意味がないではないかとおっしゃいますことは、私にはわからぬではございませんけれども、現実にはそのような心配を持つ向きが国民の中に相当ある。しかも、それがそういう形で与党の中に反映されたということでございますので、それはそれなりに私どもとしてはやはりそのような不安にはこたえなければならない、こう思いまして、このたびの再確認をいたしました。
#61
○塩出啓典君 まあ私は、被爆国日本として、やはり核兵器というものを絶滅させるというか、結局核保有国のいわゆる核軍縮というものをどのように今後進めていくのか、やはりこういう一つの約束がなされなければ、結局核を持たない国に対する核の拡散はストップされても、核を持っている国についてのそういう核兵器絶滅への約束がなされなければ、やはりこの条約を批准するということにはいろいろ問題があろうかと思いますが、もちろん、まあ批准をした後でそういう努力をしていくというあり方もあると思うんですけれどもね。しかし、いずれにいたしましても、核保有国の核軍縮の問題については、アメリカが当然リーダーシップをとるべきじゃないかと思うわけでありますが、今回の訪米においては、キッシンジャーあるいはフォード大統領との会談においては、このような点については触れなかったのかどうかですね。
#62
○国務大臣(宮澤喜一君) その点につきましては、来たるべきこの条約の定めます再検討会議において、わが国としては当然に核軍縮の必要、それから非核保有国の安全という問題は提起をすると、そういう方針でありますことは、先ほど羽生委員に申し上げたとおりでございます。この方針は変わりません。そのためにも、やはりわが国自身は核防条約に加盟をいたしまして、その一員として発言をすることがわが国の発言力を高からしめるゆえんであろう、そのように考えております。わが国が来たるべき再検討会議でそのような方針を持っておること、この点は今回の会談でも幾たびか実は取り上げられまして、私どもとしては私どもの立場を米国側に伝えておるわけでございます。
#63
○塩出啓典君 そうしますと、外務大臣の考えとしては、いわゆるそういう条件を取りつけてから条約を批准するというのではなしに、一応まあ日本もその条約を批准してから、しかる後に核保有国の核軍縮には努力をしていくと、こういう姿勢であると判断していいわけございますか。
#64
○国務大臣(宮澤喜一君) その点につきましては、軍縮の会議で従来からわが国はいわゆる核実験の全面禁止、そして軍拡への歯どめをかけること、さらには最終的には核兵器を廃棄するというような目標を掲げつつ、活発に国際的に活動をいたしておるわけでございます、従来とも。それに加えまして、わが国がこの条約の加盟国となるならば、さらにわが国の発言力を高めることができるであろう、こういうふうに考えておるわけでございます。
#65
○塩出啓典君 それでは次に、フォード大統領が上下両院の合同特別会議で、いわゆるベトナムへの軍事援助の要請をされておるわけでありますが、これはやはりわが国の立場としても、いわゆる人道的な経済援助ということはいいにしても、アメリカがベトナムに軍事援助をさらに進めていくと、こういう姿勢は非常に力と力で対決をしていくという姿勢であって、非常にパリ協定にも違反をする問題であると思うわけでありますが、こういう問題について訪米のときに宮澤外務大臣は、かなりアメリカに対してもそのような姿勢を非常に日本の立場と違うということを申し入れたように新聞では拝見をしたわけでありますが、こういう軍事援助については外務大臣としてはどう考えているのか、また、この会談において日本としてはどういうことを主張したのか、その点をお聞きしたいと思います。
#66
○国務大臣(宮澤喜一君) フォード大統領が改めてアメリカ議会にいわゆる軍事援助に当たる部分の金額を要請いたしましたのは、恐らくは先ほど秦野委員に申し上げましたように、援助をすることによってサイゴン政権がコーチンチャイナの部分を防衛し得るのではないか、そうあるべきであるという判断に基づくものというふうに考えられます。これを一概に批判をする、非難をするということになりますと、相手側の状況が果たしてどうであるのかということについても考察を加えた上でありませんと公平な批判、非難はいたしにくいというのが、私はこれは公平なところであろうというふうに存じます。もとより両方がエスカレートするということは、これは避けなければならないことでございますけれども、やはり片側だけの議論をしてはならない性格のものではないだろうかというふうに考えるわけであります。しかしながら、このインドシナ半島における紛争、戦乱というものが、両側が軍備をエスカレートするこによって解決される性格のものでないということ、それはすなわちパリ協定の精神に戻るわけでございますけれども、そういうことはまた事実でございますから、そういう意味での発言は私も米国の当局者に対していたしております。その詳細について、これはいわゆる友人、友好国の立場から申しておることでございますので、全部を公の席で御報告をいたしますことは差し控えさしていただくべきではないかというふうに存じます。
#67
○塩出啓典君 最後に、先ほど羽生委員へのの答弁の中で、いわゆる佐藤・ニクソン会談の共同声明における韓国条項の問題についていろいろ御答弁があったわけでありますが、これは木村前外務大臣が、いわゆる韓国の安全というよりもむしろ朝鮮半島全体の安全と置きかえるべきである、こういう答弁を覆すものではない、あくまでもやはり木村前外相が発言をしたことは宮澤外務大臣になって変わったわけではないわけで、そうとるのか、あるいはもとに逆戻りしたのか、その点はどうですか。
#68
○国務大臣(宮澤喜一君) 実はこの点につきまして、今度私帰国しましてから、一部の報道を見ておりますと、何かこの点が非常に一つの問題として一部に取り上げられ、報道されたということを、多少私としては、どういう見方からであろうかという疑問を持ったわけでございます。つまり、韓国に非常な不安定が起こるということはわが国の安定にきわめて密接な影響があることはこれはもう明らかでございます。そのことは、恐らく客観的な事実として否定をされる方は少ないのであろうと思いますので、そういう事実の認識というものを私が確認をしたとて一向にこれ新しい事実、新しい行為ではない、政策決定ではないというふうに私は思っておるわけで、どうしてこの問題が今回どういう連関から取り上げられたのか、一部でございましたけれども、多少不思議に思っておりました。木村前外務大臣の言われましたことも、私のいま申し上げておりますことと別段違うわけではなく、ただ昭和二十五年当時、いわゆる朝鮮戦乱のような事態から考えれば確かに危険の度合いは小さくなっておる、ことに一九七二年に対話が開けましたあたりでは、かなり事態は好転するのではないかと思われた時代もあったわけで、そういう意味ではこのいわゆる佐藤・ニクソン会談が行われましたのはたしかプエブロ事件というような出来事の直後、これを反映しておりますから、事態は幾らかずつでも好転をしておるということは言えるであろう、またしかし、最近は少しずつ小さな出来事が起こっておる、一進一退とでも申しましょうか、でございますが、いずれにしても韓国が不安定になると、それは朝鮮半島そのものが不安定になることでございますから、いずれの場合でもわが国にこれは密接な関連があるという事実認識は、私は代々の外務大臣が一貫して変わらずに持っておるところではなかろうかと存じます。
#69
○立木洋君 いまの問題に引き続いてなんですけれども、大臣はそのようにおっしゃいますけれども、ワシントンで聞かれたときにはそのとおりだというお答えがあって、帰国後になって細かい国会答弁的な答え方をするのはあまり意味がないと思ったのでそのとおりと答えたと、私はこれはあまり外務大臣としては見識のある記者会見での発言ではなかったように思うんですが、失礼かもしれませんけれども。ただ、韓国の安全が日本の安全にとって緊要であるという問題は、朝鮮が御承知のように二つに分断されておるこういう状態で、一方の側とだけいわゆる運命共同体的なそういう発想に基づく考え方での韓国条項というのと、それから朝鮮半島全体の安全の問題が日本とのかかわりがあるという観点とは、やはり質的に異なると思うんです。ですから、この点でやはり外務大臣が木村前外相のいわゆる考え方を全面的に否定されるのか、つまり韓国条項はいまでも生きているというふうに明確に国会で答弁されるのか、それともそうではなくて木村前外相の言われた発言をいまでもそのとおりだと考えられるのか、どちらか明確にしていただきたいと思います。
#70
○国務大臣(宮澤喜一君) 二つの記者会見のことをお挙げになりましたが、二つとも事実でございまして、私の申しましたことは誤りなく報道されております。ワシントンにおきまして、大筋だけを述べて細かい修飾を省いたということも事実でございます。が、二つの記者会見で言っていることは私は別段矛盾したことを言っておるつもりではございません。で、韓国の情勢が不安定になるということは、これはとりもなおさず朝鮮半島の情勢が不安定になるということ、両方のことを私は矛盾することだとは考えておりませんので、いずれの場合でもそれはわが国の安全、安定というものにきわめて密接な関係があるというふうに考えておりまして、ただいま申しましたとおり、この点の認識は別に前外務大臣と私とで変わるところはないというふうに思っております。
#71
○立木洋君 じゃ韓国と日本との関係、つまり運命共同体と言われるような考え方を肯定されるわけですか。
#72
○国務大臣(宮澤喜一君) 運命共同体というようなことは政府は申したことはないと存じます。
#73
○立木洋君 ええ、私たちの考え方ですが……。
#74
○国務大臣(宮澤喜一君) この点につきましては、いわゆる一九六九年の日米共同声明に述べられておりますとおりのことを、つまり韓国の安全がわが国の安全と密接に関連があるというふうに、客観的なこれは私は事実であると思いますので、それを運命共同体というような表現にすることは私どもはかつてしたことはございません。
#75
○立木洋君 じゃもう少し説明させていただきますけれども、今度のフォード大統領の演説の中でも、明確に日米安保条約がアジア・太平洋のいわゆるキーストーンであるという趣旨の話もありましたし、米韓相互防衛条約も基本的に重要なものだというふうな趣旨の説明があったわけですね。アメリカの国防白書の中でも、沖繩について述べた部分でも、西太平洋の防衛の拠点であるという考え方が明確にされておる。御承知のように、東南アジアの状況を見ればベトナムがああいう状態になってきた。さらには台湾は、御承知のように日中国交回復しましたし、それでタイからの米軍の撤退の要求等もタイの中では生まれてきておるし、フィリピンでも米軍基地の存続に難色を示すというふうな状況も生まれてきておる。そうすると、アメリカのアジアのいろいろな支配の体制を維持していく上では、日本の持つ役割りというのが一層重要になる。ここで結局アメリカが日本と韓国との関係を一層密接にして、いわゆるアジアにおける体制を維持していく、そういう考え方が示されておるというふうに考えるわけですが、その点では私は外相が韓国条項がいまでもそのとおりだと言われたのは決して偶然ではないように思うのですけれども、こういうアメリカでの一連の発言、あるいはいまの東南アジアでの変化と関連して見た場合に、日本と韓国との、韓国の安全がきわめて日本の安全にとって緊要だと再確認されたという意味は、私はきわめて重要だと思うのですけれども、この点についての外相の御認識はいかがでしょうか。
#76
○国務大臣(宮澤喜一君) このように申し上げればよろしいのかもしれません。特定の国の政治のあり方について私どもは積極的にそれを肯定する、支持するというふうなことをいたすべきではありませんし、また積極的に否定する、否認するということもいたすべきではない。それは主権国としてのやはりあり方というものは主権国に任せるよりほかはないわけでありますが、しかし、朝鮮半島の地域で戦乱が起こるというふうなことになれば、これはもうわが国の安全と平和に密接に影響があるということは私は事実認識として間違いはないというふうに考えておるわけでございます。
#77
○立木洋君 じゃこの問題は次の機会にお尋ねすることにします。
 次に、七日と八日にソウルで開かれました日韓実務者会談で二百三十四億円という借款の供与が決められたということが報道されておりますけれども、これは金大中事件、言葉をかえて言いますと金東雲事件、これが事実上まだ解決されていないという状態の中で、いままでの借款供与の継続ではなくて、新たに取り決められたという問題はきわめて重要に考えるわけですけれども、金大中事件とのかかわり合いでどういうふうにこの問題について考えておられるのか。また、金東雲事件なんかの問題をこのまま放置されるのかどうか、その点について、いかがでしょうか。
#78
○国務大臣(宮澤喜一君) 御承知のように、韓国との経済協力関係は在来と違いまして、閣僚会議というような高度に政治的な場で行うのではなく、事務的に考えましてメリットがあり、しかも、韓国の民生の向上に資するものであればわが国の経済力の許す範囲でこれを行おうというのは在来から一貫した方針でございます。しがって、そのような方針に基づいて先般の経済協力についての協議をまとめたわけでございます。かと申しまして、このことによって金大中氏あるいは金東雲事件というものが水に流され、あるいは解決を見たがゆえにこのような経済協力が行われたというふうには私ども考えておりません。
#79
○立木洋君 それからもう一つ、これはインドシナの問題に関連してですけれども、外相がインドシナの情勢に触れまして、民族自決の流れであるというふうな趣旨のお話もあったわけですけれども、アメリカを訪問されて、アメリカの首脳といろいろと会談された結果、現在においていわゆるインドシナ問題に関してどういうふうな御認識をお持ちなのか、お答えいただきたいと思います。
#80
○国務大臣(宮澤喜一君) 従来から、訪米前から考えておりましたことと現在の認識と別段異なっておる点はございませんで、やはり、アメリカの介入は非常に善意ではあったであろうけれども、なかなかその目的を達するに至らない。そういう大きな流れの中で冷戦構造の変化、いわゆるデタントの中で比較的自由である西側陣営の中で民族自決の運動が盛んになってきておる。ほぼそういう認識でございますが、そういう認識そのものには変わりはございません。ただ、直接当局者の一人としてのアメリカのこの段階における立場というものは、きわめて微妙かつむずかしいものである。ことに、多数のアメリカ人が現地におるというようなことも考え合わせますと、きわめて微妙なむずかしいものであるという点についての認識は、私は新たにつけ加えてまいったことは確かでございます。しかし、基本的に大きな流れとして見てあの事態をどう考えるかということについての私のそういう基本的な考え方は、別段訪米前後で変わったところはございません。
#81
○立木洋君 民族自決の流れという点でそういう考え方がなされたし、また国会でも、三木首相の答弁でも、民族自決に関しては尊重するという趣旨のことが繰り返し述べられてきたわけですが、アメリカのベトナムに対する介入が始まってからここ二十年近く、私はいまこの民族自決の動きが表面化したということではなくて、ぼくは根本からそういう流れであった。これはアメリカの介入であって、いわゆる外部からの干渉、介入であって、根底にあったベトナム問題というのは、本来はやはり民族自決の流れである。そういう認識が最近の情勢で外相自身が変わったというふうな趣旨のお話でしたけれども、私たちはそうではない。そうすると、いまベトナム問題に対して介入がやられてきた、それに対して日本が当初南ベトナムの当時のサイゴン政権に賠償を行ったし、さらにはその後もダナンの上陸が四十年に行われ、あるいは北爆が再開され、これも防衛的な措置だと、正当防衛であるという主張で、事実上民族主権の流れということに反する態度を日本の政府がとってきた。その後も安保条約を拡大解釈して、事実上アメリカのベトナムに対する介入に協力するという立場を日本の政府がとってきたというふうに私たちは考えておるわけですが、いまのそういう民族自決の流れということを考えるに至った今日の時点で、いままでのインドシナに対する日本政府の態度、あり方、これを振り返ってみてどういうふうにお考えなのか。そのことを反省する余地があるのかないのか、それとも全く正しかったというふうにいまでも主張されるのかどうか。
#82
○国務大臣(宮澤喜一君) 十分な評価をいたしますことはもっと歴史の経過をみなければあるいは無理ではないかと思いますが、この民族自決ということと、自由とか民主主義とかいうものの実現というものは決して矛盾することはないはずのものであります。ただ、そういうようなものを打ち立てようとしたアメリカの努力、自由あるいは民主主義、そのことにわが国が確かに共感を持ちました。それが実現するならばこれは恐らくベトナム民族の幸福につながるものであるというふうに考えてまいりましたから、そういう意味でわが国は協力をしてまいったと思います。しかし、残念ながらそのような目的が果たされずにしまったということについては、これは残念なことであるというふうに考えていますが、そういう目的の実現を助けようとした行為そのものは、民族自決の精神にもとるという筋のものではなかった、現地の人たちがそのような目的の達成を十分に理解をしなかったか、あるいは現地にもともとそのようなものを受け入れる風土がなかったか、理由は現在十分に分析ができませんけれども、このような目的がいわゆる価値のある試みであったと、そのゆえにわが国もできる限りの協力はしたと、これはいま振り返りまして、別に民族自決の精神にわれわれが立ち向かって、それに反するような試みに支援をしたというふうには私は考えていないわけでございます。
#83
○立木洋君 外務大臣の立場とされてはそういうふうに述べる以外にないだろうと思いますけれども、まあ大臣がパリ協定実現については努力をするというふうなことが衆議院の三日の内閣委員会でお話しされているわけですが、パリ協定の実現に努力をするという趣旨の発言が、日本政府としては具体的にどういう努力をされるお考えなのか、お尋ねしたいと思います。
#84
○国務大臣(宮澤喜一君) 私、今回もアメリカに参りましたときには、結局この問題は最後には民族間で話し合いをするということしか恒久的な解決はないというふうに思う。当面アメリカがいろいろ考えておられることは私も理解はいたしますけれども、最終的にはそれは武力で解決されるべき問題ではないというふうに考えるということを申しておりますのですが、われわれはパリ協定の当事者ではございませんから、具体的にパリ協定をわれわれ自身がこのように実現する、運用するということはできるわけではございませんけれども、しかし、同じ東洋の国として、ああいう話し合いの精神、民族間の和解という精神でなければインドシナ半島の最終的な安定はないであろうというふうに私どもの所信を述べることによって、何がしかのやはりわれわれとしての協力をなしつつあるのではないか、できるのではないかというふうに思っております。
#85
○立木洋君 最後に。
 この問題とも関連するわけですが、南ベトナム共和臨時革命政府が解放地域における住民の救済のために協力してほしいという趣旨のことを国際的に呼びかけましたし、ベトナム民主共和国もその趣旨の呼びかけに協力してほしいというふうな問題が提起されているわけですが、この南ベトナム共和臨時革命政府の解放区の住民に対するいわゆる救済援助ですか、これを政府としても、何もサイゴン政権の支配下だけではなくて、解放区全体の住民にも及ぶようないわゆる救済の問題ということを考えておられるようですけれども、南ベトナム共和臨時革命政府と接触をしてこの問題について協力をしていくというようなお考えはございませんか。
#86
○国務大臣(宮澤喜一君) いわゆる難民救済の援助をいたしますときに、できますれば国際赤十字等を通じまして、その援助が文字どおり人道的に、政治的な意図、あるいはだれが支配をしている地域の住民であるというような分け隔てなく行いたい。それが人道的という意味であろうというふうに考えておりますので、そういう意味ではこの地域の住民あるいはこの地域の住民であっては困るといったようなことを私ども考えるべきではない。人道的な援助とはそういうものではないと思っております。しかし、いま言われましたのはいわゆるPRGでございますか、この政府、このPRGというものを私ども政府として承認をするというようなつもりは現在ございません。
#87
○立木洋君 いや、接触です。いわゆる緊急の問題が発生した場合には接触することもあり得ると高島局長が前に答えておられるわけですが、いわゆる人道的な問題としてPRGと接触する考えがないかどうかということを聞いたのです。
#88
○国務大臣(宮澤喜一君) 私どもがいま考えておりますのは、難民救済でございますから、それは国際赤十字を通じてやってもらうことが最も効果的であろうというふうに考えております。
#89
○委員長(二木謙吾君) 本件の質疑は本日はこの程度といたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後五時二十五分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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