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#1
第075回国会 外務委員会 第17号
昭和五十年七月一日(火曜日)
   午前十時二十九分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 六月三十日
    辞任        補欠選任
     柏原 ヤス君     黒柳  明君
     中沢伊登子君     田渕 哲也君
 七月一日
    辞任        補欠選任
     沓脱タケ子君     星野  力君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         二木 謙吾君
    理 事
                稲嶺 一郎君
                寺本 広作君
                秦野  章君
                戸叶  武君
    委 員
                伊藤 五郎君
                糸山英太郎君
                大鷹 淑子君
                中山 太郎君
                増原 恵吉君
                亘  四郎君
                田中寿美子君
                田  英夫君
                羽生 三七君
       発  議  者  田  英夫君
   国務大臣
       外 務 大 臣  宮澤 喜一君
   政府委員
       外務省欧亜局長  橘  正忠君
       外務省経済協力
       局長       鹿取 泰衛君
       外務省条約局外
       務参事官     伊達 宗起君
       外務省国際連合
       局長       鈴木 文彦君
       水産庁長官    内村 良英君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        服部比左治君
   説明員
       法務省民事局参
       事官       加藤 一昶君
       運輸省海運局総
       務課長      犬井 圭介君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○対外経済協力計画の国会承認等に関する法律案
 (田英夫君外一名発議)
○海上航行船舶の所有者の責任の制限に関する国
 際条約の締結について承認を求めるの件(内閣
 提出、衆議院送付)
○油による汚染損害についての民事責任に関する
 国際条約の締結について承認を求めるの件(内
 閣提出、衆議院送付)
○油による汚染損害の補償のための国際基金の設
 立に関する国際条約(千九百六十九年の油によ
 る汚染損害についての民事責任に関する国際条
 約の補足)の締結について承認を求めるの件
 (内閣提出、衆議院送付)
○漁業操業に関する日本国政府とソヴィエト社会
 主義共和国連邦政府との間の協定の締結につい
 て承認を求めるの件(内閣提出、衆議院送付)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(二木謙吾君) ただいまから外務委員会を開会いたします。
 まず、委員の異動について御報告いたします。
 昨三十日、柏原ヤス君及び中沢伊登子君が委員を辞任され、その補欠として黒柳明君及び田渕哲也君が選任されました。
 また、本日、沓脱タケ子君が委員を辞任され、その補欠として星野力君が選任されました。
    ―――――――――――――
#3
○委員長(二木謙吾君) 対外経済協力計画の国会承認等に関する法律案を議題といたします。
 前回に引き続き質問を行います。質疑のある方は順次御発言を願います。
#4
○亘四郎君 先般の質疑の際に、私時間が参りまして、二、三まだお尋ねをしなければならないものが残っておったわけでございまして、きょうはその残りのものに対してお考えをお伺いしたいと、かように考えております。
 まず第一の問題が、あなたの御提案になった案の第五条の関係でございますが、第五条の関係の計画の変更という問題でございます。
 私、つらつら考えてみまして、相手国のある外交問題で計画の変更のたびごとに国会の承認を事前に受けなければならないというような形のことが、果たして現実的にこれが行政ベースに沿うてうまくいくだろうか、こういうことを考えますというと、非常に疑義を多く持たされるわけでございます。そういう対外経済協力というようなものを与える相手国、いわば日本にとりましていままで友好関係のあった国である。そういう立場から言ってますます両国の信頼を深めていかなければならぬ、かように考えておる立場でございますからして、そういう形のものが仮に行わなければならないということになるというと、余りにも非現実的な現象が起きてくるのじゃないか、かように心配されるわけなんです。
 そもそもこの経済協力関係というものは、お互いに信頼し合って、さらに友好関係を深めていこうという両方の立場であることはもちろんでございます。そういたしますというと、非常にこれは外交問題として大切なことであって、できるだけ相手国に満足を与え、ある意味では感謝の念を持たれるような形にしていかなければならぬ。しかし、感謝の念を持たれるということは、決して日本の態度が感謝の念を持たせるというような気持ちがあってはもちろんならないと思います。何と申しましても、およそ洋の東西を問わず、主権独立国家である限りにおいては、その民族は他国の、何と申しますか影響、他国に世話になっているとか、コントロールされているとか、支配されているとか、そういう感情をその国の国民はだれしも持たないわけなんです。卑近な例でございますが、アメリカがあのマーシャルプラン――ヨーロッパにおいでになっても、イタリーでもドイツでも、あのマーシャルプランの結果非常に大きくりっぱに復興した。にもかかわらず、日本もある意味において同じだと思います。アメリカがあれだけ援助して、いろいろ経済協力を中心にしてやって戦後の復興ということに努力をしましたけれども、極端な言葉で言えば世界じゅうどこの国でもヤンキー帰れ、そういうことになることが、いわば好意が本当に理解されておらないという点に私はあると思うんです。
 そういう意味で日本の経済協力も、日本から助けてもらったとか援助してもらったとか、こういうような意識を強く相手国に与えてはならない。こういうことを考えますときに、やはりこういう問題はできる限り迅速に、そうしてある程度弾力性を持ってやらなければ処理のできない問題じゃないか。そういうときに、計画の変更があってそれを国会の承認を求めなければならぬという形になりますというと、それが迅速に行い得ないというおそれが私あると思う。そういたしますというと、相手国は日本に対してのいわば信頼感というものに対して大きな差を持ってくるのじゃないか。と同時に、また一方において、そうなれば協力の効果と申しますか、それが非常に減殺されてしまう等々考えますというと、この計画変更に対して国会の承認を求めるという条項は、いささか非現実的に私は考えさせられる。そういう点について提案者のお考えを私はお伺いしたい、かように考えます。
#5
○田英夫君 御心配はわかるんですけれども、実は私どももこの法案をつくりますに当たって、政府並びに輸銀、基金、こうしたところの対外経済協力の実態は調査いたしました。いま現実的でないと言われましたけれども、現実を実は調べてございます。その実態というのは、一言で言えば、政府にしろあるいは輸銀、基金にしろ、対外経済協力を進めますに当たって当該の相手国、あるいはそれがグループである場合もあり得るわけですけれども、そことの間に交渉を続けまして、そして具体的なプロジェクトについて話し合いを進めて、場合によってはあるダムをつくる、これに対して日本が協力をするというような問題について、どこにどういうダムをつくる、その国の電力事情はどうなっているというような問題まで含めて当然調査を進めて、そしてそれがかなり煮詰まった段階で今度の法案においては国会に承認を求めるということにしていただけばいいので、従来からも実際に交渉の過程というのはかなり続いております。そして、それがある程度まとまったところで予算の中に組み込まれてきているというのが実態でありますし、あるいは基金や輸銀の場合ですと、出資金の中あるいは資金運用部からの借入金というところの枠をそこに設定をするという形で運用をされてくるわけでありますから、政府の場合ですと、予算の中にそれが組み込まれてくるというのが実態だということです。初めからある程度全く一つの予算上の枠をつくっておいて、後からそれに当てはめて経済協力をやるというのではなくて、むしろ予算が編成される段階では、ある程度の計画がすでにできているというのが実態だと思います。
 もちろん、年度の途中でそうした要請が出てきて行われる場合もあることも事実でございますけれども、そういうことからすれば、かなりの部分はいままで行われていたと同じように、予算を編成する段階で、予算を国会の審議を求めて提出すると同時に、経済協力計画を国会に提出をするということが実はきわめて現実的な問題としてできる。残る部分で途中でそういう要請が急遽起きた場合ということで、むしろ私どもは非常に善意の意味で、行政府がお困りになるようなことがあってはいけないということで、この第五条を設定をしたという気持ちでございます。行政府がお困りになるということがあってはならないので、もちろんその除外例になっている項目、つまり括弧の中にあります災害援助等緊急の実施という場合、これは当然除外いたしますけれども、それ以外でも、年度の途中で、国会承認を求めた後に新たにそういう要請が起こった場合を救済といいますかね、行政府としてやりやすいようにということでこれを設けたのでございまして、実態から言いますと、その例は非常に従来の例から言って少ないと思います。同時に、しかしこれは予算でも補正予算が臨時国会に提出されると同じような形で、行政府において年度の途中でそういう緊急の場合には国会に、補正予算が提出される臨時国会ということと同じような形で御提出いただければ、十分それは可能だというふうに、現実を調べた上でこういう条項を設定してあるわけでございます。
#6
○亘四郎君 まあこれは私の一つの勘ぐりでございますけれども、相手国といろいろ下相談をする。そういたしまして、相手国は、どうせ日本の方は国会の承認を得なけりゃならぬ。その場合、修正されるか減額されるかは、普遍的に考えた場合におおよそそうなるであろうという見通しを持って交渉に当たる。そうなると、まあ悪い言葉で言えばひっかける、ブラフでもって予想外の要望を、望外の要望を盛り込んでくるんじゃないかというような危険も感じられるわけなんです。そうすると、日本の政府としては、それらに対して誠意ある交渉をしていく場合にやはり非常に困難を来す。
 こういうことを考えますというと、やはりこういうものは、行政ベースで相手国に一々個所づけした予算でなくて、いままでのようにおおむね国会の承認を得た一つの枠でございます。そうするというと、私どもは国内を考えてみましても、建設関係で道路予算、たとえば河川の予算、これはみんな大枠で取ってしまう。そしてその個所づけは後でゆっくり各地方との交渉で行っていく。そういう形を考えると、何と申しますか、事前にはっきりと決める、そうしてまた途中で修正にぶつかる、こういうことですと、相手国側の立場からいくというと、非常に事務的な処理、先ほどちょっと申しましたけれども、こういう国際情勢の今日の非常にエフィシェンシーをとうとぶ時代でございますからして、いささか私は、すべてのものがスローになって交渉がうまくいかない。そのことがひいては日本に対する信頼度を落とす、こういうことにつながるおそれがあるものですから、あえて私の気持ちをお尋ねしたわけなんです。
#7
○田英夫君 信頼度を落とすという御心配、それから能率が上がらないのではないかという御心配があるわけですけれども、これは行政府が当該相手国と交渉を進める段階で、誤った経済協力を行って、そういう交渉を進めているような場合、そしてその計画が国会に提示された場合には、国会においてこれをチェックして、そして誤りを正すということがこの法案の本来の目的でございます。このことは、実は外務大臣が横におられる前で大変失礼かもしれませんけれども、いま政府が、前回の委員会でも申し上げましたが、日韓大陸だな条約を結ばれている。それが、これは憲法の規定によって国会に承認を求める、批准を求めるという形で提出をされ、しかも二年続けて事実上審議が行われないままになっているのは、明らかにこれは韓国との関係で言えば信頼度を失ったと、こう考えざるを得ないのでありますけれども、その原因は何かと言えば、その日韓大陸だな条約が、日本の国民の皆さんの考えからして適切なものでないという気持ちが強いからじゃないかと思います。だからこそ、国会に御提出になっても、与党の一部からも反対の声が起こって、そして野党がこぞってこれに反対をするという空気の中で、率直に申し上げて、行政府はこれの国会の承認を求めることを強行できないで二年間を過ごされたんだということが、これは実態だと思います。
 これは、要はそういう条約を結ばれたことに誤りがあるんだと。同じように、国際経済協力というこれからの日本の外交にとって基本的な大切な問題について、もし誤った経済協力を行うようなことがあったならば、これはむしろ能率が落ちてもこれを正す、誤った経済協力についてはこれは承認をしないということが、真の大きな目で見た日本の外交を正しいものにするという目的に合うと、こう思うわけですね。ですから、私は能率が落ちるとも思いませんけれども、仮に能率が落ちても、正しいことをやらなければいけない。そして行政府は神様じゃありません、過ちを犯すことがあるわけでありますから、しかもその一番大切なことは、外交は国民主権であるということですね。国民の気持ちに沿わない外交をやってはならないということが基本でありますから、国民に承認されないような、つまり国会で承認されないような外交をやってはならないんだ、この気持ちから、むしろ私は従来この法律がなかったことの方が、この主権在民といういまの日本の体制の中でおかしいのではないかとさえ思っておりまして、むしろこれは行政府と立法府という立場から、私は与党の皆さんも御協力をいただいて、全会一致で、全党一致で国会で御承認をいただけるものと信じているくらいでございまして、その点はひとつぜひ御協力をいただきたいと思います。
#8
○亘四郎君 最後に、いままでこの案に対して私は私なりの立場でいろんな観点からお尋ねしてきたわけでございますが、ひとつこの段階で、いままでいろいろお尋ねした問題、特にいま最後に私が田さんにお尋ねした問題に対しまして、私は、いまのこの案に基づいて案が仮に実施に移される段階になる、そうするというと、これを行政的に扱っていかなければならない外務省、外務大臣として、私が感じたような事柄が間違っておるかどうかというような点から外務大臣のお考えを私はお聞きしたい、かように考えておるわけであります。
#9
○国務大臣(宮澤喜一君) ただいまの亘委員の田委員に対する御質問は、主としてこの法律案の第四条及び第五条に関するものであったわけでございますが、忌憚なく私の考えを申し上げさせていただきますと、この法律案を拝見した限りでは、やはり第四条、第五条あたりの構想、物の考え方という点で、経済協力というのはやはり一つの交渉であるということについての、はなはだ失礼でございますけれども、御認識において私どもと異なっておるのではないかというふうに考えるわけでございます。
 もとより経済協力というのは、こちら側の善意と好意に基づいていたすものでございますけれども、やはりわが国自身の財力、資源に限りがある。そうして協力を受けたい国が多数ある。その要求額も非常に膨大であるということでございますから、どうしても話そのものは交渉という性格を帯びることが否定ができません。そういたしますと、これは委員各位に対してまことに卑近な例を引きまして失礼かもしれませんが、やはり交渉というのは、こちらはできるだけ低くまとめたい、先方はできるだけ有利な、高いところでまとめたいというような意味におきましては、一種の賃金交渉のようなものと性格が、交渉でございますから、本質的に似ておるところがございまして、しかも、せんだってもちょっとこれは失礼な意味でなく申し上げたつもりでありますが、政府としてはこの法律の結果、一種の当事者能力を持たない形に非常になりやすいわけでございます。のみならず、実は交渉する立場というのは、こちらの最終的な腹をこちらも示さない、向こうも示さない、そうしてお互いやはり遠いところから話を始めまして、最終的にまとまったときには両方ともある程度不満であるという状態においてしかまとまらないという場合が、いわゆる交渉というものは私はそういうものだと思う。互譲というのは、裏から言えばそういうことであろうと思うのでございます。
 そこで、先ほど亘委員と田委員とのお話の中で、たとえばダムの話が出ておりました。ダムでも橋でもよろしいのでございますが、これなんかは経済協力の交渉の中で一番単純なケースでございます。恐らくこの法案の提案者がお考えになりましたことは、ここに橋をかけるというようなことは、橋のコストというのは客観的に幾らかということはわかるはずである。したがって協力が必要なことであれば、その協力に要する予算というものは客観的に算術でもってわかるはずであるから、それを出してきたらいいではないかというふうにお考えだと思いますけれども、仮にその橋をかけるコストが客観的にわかるといたしましても、私ども経済協力をいたします態様で申しますと、それならば橋について、これは資材の部分については輸出入銀行がどれだけファイナンスをするか、あるいは、橋はしかしこれは実はインフラストラクチュアに関するものであるから、むしろ協力基金においてもっと金利の安い金を出すべきではないかという先方の主張がある。そういたしますと、輸銀の条件と協力基金の条件は当然のことながら違ってまいりますから、それをどういう比率においてやるかというようなことは、これはどうしてもやはり交渉の対象にならざるを得ない。先方は安い金利、長い金というものを当然要求いたします。わが国はそうばかりはいかないという立場になります。
 それからまた、こういうのは主として発展途上国でございますから、橋をかけるためにその国の人々をやはり雇用する。これは大変大事な目的でございますから、政府としてなるべくその国の人人に仕事をさせてやりたい。またその事業に、ある意味では労働力としても参加をしてもらいたい。しかし、その国には実は自分の国の国民に支払う賃金なり、分担いたします資材費なりがないということはしばしばございます。そういたしますと、私どもはその部分について、場合によりましてはそれではその国民生活に必要な肥料を、あるいは鉄材にしても消費物資にしてもよろしゅうございますが、これを協力であげますから、あるいは長期でお貸ししますから、あなたは肥料なり消費財を売って、政府がその売り上げ代金で国民をお雇いなさいと。いわゆるローカルコストとよく私ども申します。それの部分についても経済協力が当然かかってくる。発展途上国のおくれた方の国では、やはりそうしてあげることが親切でございます。そういうローカルコスト分をどれだけこっちが見るかというようなことも、これもどうしてもネゴシエーションの対象にせざるを得ない。
 つまり、私の申し上げておりますのは、橋をかけるというような最も簡単な種類の経済協力でありましても、いま申しましたように、こっちが輸銀であるとか基金であるとか、それをどういう割合にするとか、ローカルコストをどういう条件で協力の対象にするとか、これはもうそんな簡単なケースでも、幾つか実はネゴシエートしなければならない部分がございます。これは一番簡単なケースについて申し上げました。したがって、この経済協力交渉がネゴシエーションであるということは、どうしても否定できないことであろうと思います。そういたしますと、ネゴシエーションに伴う先ほどのいろんな問題が出てまいります。
 そこで、普通ネゴシエーションの場合、両方がぎりぎり詰めまして、お互いの立場もある、ここでもう不満足だが妥結しましょうということで私どもやってまいっておりますが、この法律案によりますと、今度私どもそれを国会に持ってあがらなければならない。原計画と同じであれば問題はないわけでございますけれども、そうでない場合には持ってあがらなければならないという立場にあります。そういたしますと、交渉いたしますときにいわゆるこれは当事者能力を欠く交渉をするわけであって、これを国会に持って伺う。否決をされた場合には、相手国との間でぎりぎりまとめました最後のところの話はもう一遍やり直さなければなりません。しかし、本当にこれは両方精いっぱいやった話の結果でございますから、国会がだめでしたからやり直してくださいというようなことは、それは言えとおっしゃれば申しますけれども、向こうがどうしたって何でおまえはそんなへまな話をしたのだ、全部話は初めからもとへ戻ってやり返さなきゃならない。しかも、わが国はこういう民主的な国でございますから、それが国会で減額されたとかいうようなことは、もう相手国にはすぐわかるわけでございます。
 そうしますと、いっぱいいっぱい誠意をもって努力したのに、日本の国会でけられてしまったということになれば、向こうの交渉当事者というのは国内でこれはもう合わせる顔はないわけでございますし、また、そういうことがわかっておりますと、先ほど亘委員がいみじくもおっしゃいましたように、うんと高い値でかけておけ、国会が二割減額するのならそこへ落ちるようにというような、これは普通でしたら、やはり交渉のタクティックスとしてはそれは当然考えるわけでございます。私どもにすれば、今度はまた同じような心理が働き得るので、これは国会でもしかしたら減額をおっしゃるかもしれない、そうすればそれも考えておかなければならぬかなと、よくないことでございますかもしれませんが、やはりそうせざるを得ないということになります。
 それからまた、政府としてはこの額がもう、ぎりぎりいっぱいであると考えた。向こうも仕方がないということで政府のレベルでは話がついたが、国会がそれを減額なさるということは、恐らく相手の政府にとりましては、日本の国会が何かそこへ一つ価値判断を交えたということにやはりならざるを得ないかと思うのでございます。つまり、これは条約と違いますところは、条約でございますと、国会においてはっきり御承認を得ることができるか、あるいははっきり御承認を得られないかということでございますから、事柄はかなり明瞭になりますけれども、あの国に橋をかけてやるということは大変悪いことだと思って国会が全部否決してしまわれれば、これは一つのお立場ですけれども、悪いことじゃないが、そんなに金を出す必要はないではないかというお話になりますと、勢いこの第五条における国会の御承認というのは、まるまる承認でなければ、減額してこの程度ならいいというお話にやはりなるのであろうか。そうした場合に非常に相手国とはむずかしい問題を起こす。
 るる申し上げましたが、実務をいたします者としてはそういう感じがいたすわけでございます。
#10
○亘四郎君 もう一点だけ。
 いま外務大臣のお話をお聞きいたしまして、さもあらんというような感じを実は持ったわけであります。そういうことからいたしまして、私は何と申しますか、いまの御提案になっておるこういう形の国会の承認というようなものが、この種の予算措置を講じてゆく立場の政府として、どこか外国の例で対外協力の関係でそういう形をやっておるというような、私は不幸にして知らないのでございますけれども、例があるのでございましょうか。あるいはそういう例がないのか。もし何でしたら局長さんにひとつ。
#11
○政府委員(鹿取泰衛君) いま田先生御提案のような、こういう仕組みの経済協力をやっている例が外国にあるかというお尋ねだと思います。実は田先生の法案自体は、事前に細かい計画を国会に提出してその承認を得よ、また、その計画に変更がある場合にはその都度その承認を得よという案文でございますけれども、御答弁の間にはまた別のお考えのようなことを示されておりまして、案件を外交交渉を詰めた上で国会に提出して、その承認を得よというお考えもあるようでございます。すなわち事前の計画の承認、それから個々の案件の承認という二つのお考えを示されております。
 この二つについて外国の例を申し上げますと、まず、計画の承認のようなことをやっているのは、私は似ているのはアメリカの例、これはアメリカだけでございますけれども、アメリカの例があると思います。ただしアメリカの場合は、この前も申し上げましたとおり、軍事援助のチェックという意味が非常にございまして、軍事援助と経済援助とが一体になっている計画でございます。それからまた、アメリカは予算制度そのものが基本的に日本と違っておりまして、日本のような一般会計という各事業の予算を一括したような予算制度でございませんで、それぞれの事業別の法律を出して国会の御承認を得るということになっております。したがいまして、経済協力につきましても、ほかの事業と同じように法案を出して国会の承認を得るということは、アメリカの制度としてはこれはもうやむを得ない制度であるわけでございます。いずれにしましても、しかしアメリカの場合は、先ほど申しましたように軍事援助との結びつきがございますし、それから援助自体の金額が巨額でございますので、事前のそのラフな計画を国会が承認いたしましても、その後の政府の実行は、これをわが国に仮にそういう制度を導入した場合を想像いたします場合と全く異なっておるのではないかと思います。しかし、アメリカのその制度自体が果たしていい制度であるかどうか、これはアメリカ国内にも批判のあるところでございます。
 計画につきましてはこういうふうにアメリカに特殊な環境に基づく制度がございますが、今度は案件を一々国会に出すかどうかということになりますと、これはアメリカを含めて、世界各国どこにもそのような例はございません。これは経済協力というものは、最近では特に国際連合とかあるいはその他の機関におきまして、先進工業諸国がいわば発展途上国に対する一つの国際的な責務であるということの認識が国際的に深うございますので、なるべく国際協力を円滑に実施していく。しかもその案件は各国非常に多いわけでございますので、したがいまして、どこの国におきましても案件を国会に提出してその承認を受けるというような制度をしていないわけでございます。
 私ども行政府として考えますのに、もし日本だけが仮にそのような制度をいたしますとすると、これは非常に異常なことになるわけでございまして、日本は普通の先進国がやっていない特殊な制度をする、すなわち発展途上国に対する援助を、いわばまさにその発展途上国に対する一つの恩恵のように考えて、その手続を非常に複雑にしているというようなことを発展途上国の方からも言われるおそれもあるわけでございますし、ほかのわれわれ日本と同じ仲間の先進工業国の方からも、日本の制度は非常に時代逆行であるという批判をこうむるのは必至かと思う次第でございます。
#12
○田英夫君 私からいまの問題についてお答えをいたしますけれども、外務省の経済協力局長にしては調査が非常におかしいと思いますね。私昨年、この法案をつくりますのは実は昨年の九月から取りかかりましたけれども、つくる事前にアメリカに参りまして、歳出委員会、そして外交委員会のメンバーに個別にあるいは集団的に会いましてアメリカの実態を調べてまいりました。いまのお答えの中で欠けている点がたくさんあります。対外援助及び関連機関歳出予算法という形で出されていて、いまその点については局長の言われたとおりのやり方をとって、日本のような全体的な予算を議会に提出するというやり方はとっておりません。
 たとえば昨年、韓国に対する軍事援助の削減に関する法案を、これはアメリカの場合は御承知のとおり今回私が出しましたように議員立法がほとんど全部でございますから、そういう形で議員の名前がついて法律案が出てまいります。マスキー法とかそういう形で議員の名前が出てくるわけですけれども、韓国に対する軍事援助削減の法案という形で出てくるわけですね。それをめぐって公聴会が行われておりました。アメリカにいる韓国人の人などを公述人として、参考人として呼んで意見を聞いたりもしておりました。まさにこれは案件と言える法案を、別にそのためにわざわざ議員立法で出すのであります。
 今回私どもはそこまではこの法案の中に出しておりませんけれども、場合によってはそういうことも日本の国会であり得てちっともおかしくない。行政府が誤った対外経済協力をおやりになった場合には、立法府は議員立法でこれを中止させることを行ってもちっともおかしくない。これが民主主義というものだし、三権分立というものだと思います。
 ですから、いまのお答えを聞いておりまして、私は非常に恐ろしくなります。ひょっとするといまの行政府のお役人さんたちの頭の中には、かつての旧憲法時代の外交特権という、つまり天皇の外交権、条約大権という頭がまだ残っているんじゃないだろうか、こういう気さえするのであります。いまの民主主義の中で一番大切なことは三権分立を守り通すということであり、そしてそのためにはどうしたらいいかということを立法府も行政府も考える必要があると思います。この三権分立のやり方自体も、実は日本とアメリカとは異なっているわけでありますけれども、日本の場合はアメリカよりももっと立法府と行政府との間が関連をし合って、そして誤りをなくしていこうという考え方が憲法の中に基本的にあると思います。その考え方からすると、現在のやり方はまだ非常に危険を残している、そう思っているところにいまのような御答弁がありますと、ひょっとすると外務省は、かつての天皇に条約大権、外交大権があったと同じように、行政府が一切それを握ってしまう、条約さえも本当は憲法に規定がなければ行政府が勝手に結べるようにしたいという気持ちがにじみ出ているんじゃないだろうか。こういう気持ちがいまいたしました。だからこそ、その過ちをなくすためにこうした法律が必要だし、場合によっては誤った経済協力を個々に阻止するために、議員立法によって世論にこれを問うというようなことも必要になってくるんじゃないかという気がいたします。
 これは朴政権に対するさまざまな問題は、ここ金大中事件以来、この委員会でも予算委員会でも取り上げられてまいりました。世論は注目をしております。私の感ずる限りでは、いまそうした朴政権に対する経済協力を中止すべきであるという国民の気持ちが法案に結集すれば、そうした法案になる可能性があるとさえ私は思うわけです。ですから、この点は、先ほども申し上げたように、与党だから、つまり政府を担当している政党だからということではなくて、行政府と立法府という立場をもう一回お考えいただきたいし、われわれは考える必要があるのじゃないかということを申し上げておきたいと思います。
#13
○国務大臣(宮澤喜一君) いま外務省ということでございましたので、発言をお許しいただきたいと思います。
 ただいまの点は、実は私がこの委員会で先日も申し上げたところでございますけれども、たとえばアメリカにおいてトルコに軍事援助をしてはいけないという議会の意思が、決議案の形で、あるいは法律の形で行われるということは、これはもうございます。その理由とするところは、キプロス島における事態が悪かったとかというようなこと、これはもう国会でございますから、わが国の国会におかれても、具体的な事態に際して政府に何をすべし、あるいは何をしてはいかぬということを決議案、もっと強ければ法律の形でお示しになることは、当然わが国の国会の権能のうちでありまして、そういう形で行政はそれに拘束をされます。
 でございますから、いま田議員の言われましたように、韓国に対して経済援助をしてはいけない、当分の間とか、あるいはいつまではというようなことは、国会が特定の理由によってそれを必要だとお認めになれば、私どもは現状では反対でございますけれども、しかし国会がそういう立法をなされば行政府は当然それに拘束をされる。そのことはあたりまえのことでございまして、私ども事柄には反対でございますけれども、国会がそういう権能を持っていらっしゃることに少しも疑問を抱いたことはない。それによって政府は拘束されます。
 しかし、この法律案はそういうことではなく、一般に行政が担うべき分野について網をかけて、これはこうしろ、ああしろということでございますから、国会が特定の問題についての特定の意思を法律でおあらわしになるのではなく、行政の分野におけることを総体的に立法をされようというのであって、この法律案の趣旨といま言われたことと、私は異質なものであるというふうに考えるわけでございます。
#14
○亘四郎君 私も最初に御質問申し上げたとき、この法律案をおつくりになった精神と申しますか、そういうものに対して敬意を表するという形でスタートしたわけでございますが、もちろん立法府でございます。ですから、ロー・メーキング・ボデーであるということは間違いない。そういうロー・メーキング・ボデーだからして、私も田さんと同じように、いままで幾たびか、まるで日本の国会は政府の仕事をしやすいために駆使されておるようなものにしかないじゃないかというような不平を言うた立場でもございました。そういう意味から言って、立法府の本来の形から申しまして、私はいまの田さんのお考えには非常に敬意を表しているわけです。
 ただ問題は、このケースに限って、どう考えても私は、何と申しますか、これは混乱するなあということが非常に強く私に印象づけられてきたわけなのです。そういう意味で、先ほど来大臣のお考えも承りました。大変長い時間いろいろ愚問を発しまして、まことに失礼いたしました。ありがとうございました。私これで終わります。
#15
○中山太郎君 田先生にひとつ、御提案になった御苦労をいろいろ私どもよく勉強させていただいているわけです。私も全質問者の質問を聞いておったわけでもございませんので、あるいは少しオーバーラップするところがあるかもわかりませんが、その点ひとつあらかじめお許しをいただいておきたいと思います。
 この法律案そのものを字句を拝見しておりまして、対外経済協力というものの持つ意義、それは私なりに考えて、やはり後進国の開発を手助けしながら、グローバルな感覚で全人類の発展のために協力をしていくという気持ちが基本にあるのだろうというふうに思うのですけれども、やはり民族自決の方式と申しますか、いろいろと内政上の政治の仕組みというのは、その当該国だけの問題ではなかろうか。ここでお書きになっていただいている「民主主義の原理に反する統治を行う国」ということで、私はまずこの法案提出者の、「民主主義の原理」とは一体どういうことをお考えになっていらっしゃるのだろうか。
 私は、これからだんだん脱イデオロギーの社会に向かっていくだろう、そういう中で、実質的な物の援助あるいは金の援助、そのほかにやはりいろいろと知的ノーハウと言いますか、そういうものが東西間の異なったイデオロギーを持つ国家間でも、相当なスピードで交流が始まるであろうということの予測を持っている人間の一人であります。地球物理とか基礎学問の分野では、技術交流の協定が結ばれていない日本と相手国の間だけでもすでに学者の相当な交流が行われておる。こういう中で、こういう対外経済協力の中で、将来は人間の交流ということも、特に知的水準の高い人たちの交流、それによってその相手国の人たちの生活水準に寄与をする。その出すそういうふうな知的水準の高い人たちの生活費を政府が補助をする、あるいは援助をするという事態も将来起こってくると思うのです。
 そういう中での、「民主主義の原理に反する統治を行う国」ということで一体そういうふうに世界の国を区分けしていくことが、将来の対外協力の面でどういう意味を持つのだろうか。あるいは区分けしないことの方がいいのじゃなかろうか。その中には帝国主義もあるでしょうし、あるいはまた軍国主義もあるだろうし、人民民主主義の国もあるだろうと思うのですが、その点についてのひとつお考えをお伺いさせていただきたいと思います。
  〔委員長退席、理事秦野章君着席〕
#16
○田英夫君 これは各党の皆さんからも同じような意味の御質問をいただいた点でありますけれども、大変大切なことでありますから改めて申し上げますが、確かにおっしゃるとおり、民主主義ということの定義自体、大変私は幅の広いものだと思っていますし、世間も一般的に大変幅の広いものだというふうに理解をしておられると思います。それを法律の条文の中に書き込むことの当否という議論が一つあるかもしれませんが、基本的に民主主義というのは一体それじゃ何だろうかということで、こういう御質問を予想したからじゃありませんけれども、私もこの点については非常に大切なことだと思いましたので、この三月に予算委員会で質問をいたしましたときに、三木総理大臣初め何人かの閣僚の方々にお考えを伺ったことがあります。
 その中で、総理大臣三木さんは「国民の意思が反映される一つの政治形態」だと思いますというふうに言われました。それから永井文部大臣が大変詳しく述べられているんですが、自由そして平等ということが守られなければならないということで、さらに国によってその自由と平等のいずれに力点を置くかという違いはあると思うということも言っておられます。私もこの限りでは同感でありますけれども、さらに一般的な通念で言えば、やはり民主主義というのは、国民に主権があるということと、そして国民の基本的な人権が守られているということが一般的な通念として民主主義の基本ではないかというふうにも言えるのじゃないか。
 それでは、実態的に世界じゅうを見回したときに、どれが民主主義の国で、どれが民主主義の国でないかということになりますと、これはなかなかむずかしい問題だと思います、率直のところ。アメリカなどでは、社会主義国、共産主義国は民主主義国とは考えないというのが通念のように思いますが、私はやはりこの国々も、早い話が北朝鮮は朝鮮民主主義人民共和国と名のっているように、民主主義の国だとその人たちも考えているし、私どももそう認めていいんじゃないかというふうに思うんです。そういう広い中で、ただ、逆に民主主義ではないという国は一体どういう国かと言えば、それはやはりかつてのヒトラー、ナチのドイツのように、いわゆるファシズムが政治を支配しているという国、これは民主主義のアンチテーゼがファシズムだというふうにも言えるわけですから、これはやはり民主主義の国とは言いがたい、こういうふうに考えていいんじゃないかと思っております。
#17
○中山太郎君 いまの先生のお考え、私どもよく承ったわけですが、
  〔理事秦野章君退席、委員長着席〕
私どもとしては、やはり社会主義の国、たとえば卑近な例で言うと、やっぱり近所の中華人民共和国あるいはソビエト連邦、こういう中で片っ方は、中共の方は、社会帝国主義だと、こういうことでソ連を批判しているわけですね。しかし、自由圏から見た場合には、あれらは全体主義だというふうな意識を持っている人たちも多いと思います。しかし、その相手国の中で、同じイデオロギーの中にあって片っ方は帝国主義だと、こういう批判をしている。そういうことで、日本としては将来中共にもソ連にもやはり経済協力というか、あるいはまたいまもお話も出ておると思います、政府間ベースでなければ民間ベースの話も出ていると思うんですけれども、そういうことから考えていくと、やはりこの法律の案文の中に、いわゆる思想を、何といいますか、定義づけた条項というものを入れること自体が日本の国益に果たしてプラスになるだろうか、あるいは相手国とのいわゆる友好親善を深めていく上で、それが一つの大きなせきになるのじゃないか、私はそういうふうに考えるが、この点、先生どういうふうなお考えでしょうか。
#18
○田英夫君 この問題は、この前もお答えいたしましたけれども、いま中国、ソ連の例が出ましたけれども、さっき申し上げたように、私はこれは民主主義の国と、こう認めていいし、中国がソ連に対して、これは社会帝国主義だと、こう言っているのは中国の物差しで見ておられるわけですから、私どもはこの法律の条文を発動する場合には、基本的にやはり日本の国民の意思ということが基本でございますから、しかも、これも前回お答えいたしましたが、この判断は当然私は行政府がなさるということで、その行政府の判断が誤っている、この法律が適用されて国会に承認を求めるように提出されたときに誤っていると国会が認めたら、これはそこで正すということであって、まず第一の判断は行政府がなさるというふうになるのは当然だろうと思います。そうなりますと、これはやはり日本国民の意思をそんたくするといいますか、吸い上げて、そして行政府がなさり、その行政府がなさった判断が日本国民の意思と違っていると国会が判断した場合はそれを正す、こういうことになるのじゃないかと思うわけです。
#19
○中山太郎君 きょうは法制局長官が来られていませんので、こういうふうに法律の案文の中に一つの大きな国益に関するこういう国の選択、こういうことが規定されることが果たして正しいかどうか、法制局にそれを伺うチャンスがないのを大変残念に思っていますし、また別の機会に伺いたいと思うんです。
 政府側にお尋ねをしたいんですが、各国の対外援助の関係の法律の中でチンコムあるいは、ココム、いろんな関係もありますけれども、こういうふうな「民主主義の原理に反する統治を行う国」というふうな一つの概念でこだわるというようなことが、他のいわゆる援助国の法律にあるかどうか、御存じでしょうか。なければないで、ひとつはっきりおっしゃってください。
#20
○政府委員(鹿取泰衛君) 先ほど各国の経済協力の制度を申し上げましたときに、アメリカが独自の制度を持っているということを申し上げましたけれども、まさにいま先生のお尋ねの点につきましても、アメリカには特殊な法律がございまして、いま案文そのものを英文で持っておりますので、必ずしも的確な日本訳ができるかどうかはわかりませんけれども、その国民を、その国の市民を政治的な目的でもっていろいろ収容したり、そういう迫害を加えているその国に対しては、経済的もしくは軍事的な援助を否定するというのがコングレス、アメリカのコングレスのセンスであるというような趣旨の特殊の条文がございます。これがアメリカにおきましての唯一の、アメリカといいますか、各国におきますこの種の、先生の御指摘の問題についての唯一の例かと思います。
 それからもう一つアメリカの例でございますが、共産国に対する援助を行ってはならないということがございます。これはやはりアメリカだけでございます。
#21
○国務大臣(宮澤喜一君) アメリカの場合には確かに民主主義を広く世界に広めたいという積極的な意図、あるいは共産主義には対決しようという消極的なと申しますか、裏側の意図が従来かなり強くございました。いま申し上げましたような立法はそれを反映しているものであろう。このごろはしかし、この点について、あるいは中山委員の言われましたように、そこまでアメリカ自身がよそに立ち入るべきかどうかということについて若干の反省があるように私は見ております。
 わが国の場合、先ほど田委員が民主主義の国、そうでない国をこれは行政府が判断すべきであると、提案者の御意思でございますが、そうなりますと、私はこの外務委員会でアジアの国を一つ一つ、これは民主主義の国であると思うか、そう思わぬかということをお答えこれしなければならない立場に立つであろう。民主主義というものが世界的ににしきの御旗のように言われておる現在、あの国は民主主義ではありませんと言うことは、やはりその受け取る方にとってはおそらく侮辱であろうということを考えますと、どうも行政府としてこの判断をしろ、公にせよと言われますと、これは大変にむずかしい問題であるという感じを持っております。
#22
○中山太郎君 もう少し基本的な問題で政府側にお尋ねをいたしたいと思うんですが、対外経済協力をやるということの概念の中に、相手国の経済発展に協力するということだけか。あるいはまた、日本と相手国の友好関係がそれによって生まれるということが二次的に起こってくる。またあるいはそれを一次的に考えて、相手国との友好関係を増進させるために経済協力をやるんだという一つのテクニックとして使う場合、こういうことが考えられるのかどうか。あるいは将来いろいろと資源保有国が資源同盟をつくっていく、そういう動きがグローバルな姿で出てきているわけですけれども、そういう中での経済協力に対する政府の考え方というのはこれからどういうふうに持っていくんだろうか。この田法案に関して、政府側の従来の考え方と、将来の日本の民族のための国益というものにベースを置いた場合の対外経済協力というものの発想はどうなっているのか、そういう点についても一少し御意見を賜りたいと思います。
#23
○国務大臣(宮澤喜一君) わが国の場合、最大の国益の一つは世界が平和であるということであると存じます。その点はアメリカのような大きな軍備を持っている国とわが国の立場は違うように考えます。しかし、外交というのはおそらく、口はばったいことを申し上げるわけではありませんが、国益を伸ばすということでございますが、わが国の場合にはその国益というものが、世界の平和というものが最大の国益の一つであるという意味では、わが国はある意味ではしあわせな立場に立っておると思うのでございます。
 そういう観点から申しますと、平和というものは、やはり各国の中で国民生活が安定をし、向上をしていくということがその国自身が安定をするゆえんであると思いますし、また国と国との間で経済的な格差がないということ、それが狭まっていくということがやはり世界の平和を、非常に格差がございます場合にはそういう紛争をいわゆる大国が利用するという可能性がございますから、そういう意味で、格差が国の中でもあるいは国と国との間でもなくなって向上していくということがわが国の国益であるというふうに考えておりますので、したがいまして、私どもは相手国の国民の生活が安定をし、向上をし、そうしてできるだけ国民の間での格差がまたなくなるということが平和の基本であるし、わが国の国益にかなうというふうに存じております。そういう意味では、アメリカと異なりまして、体制の違う国ともやはり友好関係を続けていくということが平和を増進させる条件であるというふうに考えておるわけです。経済協力というのはそういう目的に奉仕すべきものと考えております。
#24
○中山太郎君 まあ共産圏を歩いてみましても、ハンガリーに行っても、アメリカ系の資本のホテルはたとえばルナン・イタルション、そういうものもある。あるいはルーマニアにもシティセンターに建っている。日本からも最近ブルガリアに進出しようと、民間ベースの話ですが。だんだん東西間の壁を越えての移動が激しくなっている。特にデタントの影響下にあると思うんです。そういう中でこういう法案が出てきて、問題は、先ほどから亘委員からも御発言ございましたが、実際昭和四十九年度あたりのこの国際協力の実態というものは一体どうなっているんですか、それをひとつ発表していただきたいと思う。
#25
○政府委員(鹿取泰衛君) 昭和四十九年におきますわが国の開発途上国に対する経済協力の実績につきまして、政府が六月二十六日に発表いたしましたその概要を、新聞などでも御承知かと思いますけれども、重要な点だけ御説明申し上げます。
 四十九年のわが国の経済協力の総額は、二十九億六千二百万ドルでございます。前年四十八年の五十八億四千四百万ドルに比較いたしますと、約半減という形になっております。いわゆるGNPの一%目標という国際的な目標がございますが、そのGNPに対する比率はどうであったかと見ますと、〇・六五%でございます。四十八年は一・四四%で、一%の目標を超えたわけでございますけれども、四十九年に至りまして再び〇・六五%ということで、一%目標をはるかに割った結果になっております。
 これが経済協力の総額でございますが、その中で最も重要な政府開発援助はどうかと申しますと、四十九年の実績は十一億二千六百万ドルでございます。前年四十八年は十億一千百万ドルでございますから、これは確実に、やや程度は小さいわけでございますが、伸びているということを申し上げられると思います。したがいまして、この政府開発援助のGNPに対する比率も〇・二五ということでございまして、四十八年の〇・二五と全く同じ比率でございます。ちなみに、このODAのGNPに対する比率の国際的な目標は〇・七%でございますので、まだ日本は〇・二五というところで足踏みしている。今後これをさらに伸ばさなければいけないというところにあるわけでございます。
 これはいろいろ石油危機以後の国際情勢の変化、わが国の経済事情その他いろいろな理由があったための結果ではございますけれども、それではそれが各国と比べてどうかということだけを簡単に申し上げます。
 援助の流れ全体すなわち経済協力全体は、わが国は二十九億六千万ドルということを申し上げましたが、これはDACの国の中では第四位でございまして、一位がアメリカの九十四億九千万ドル、二位がドイツの三十一億七千七百万ドル、三位がフランスの三十一億四千五百万ドル、四位が日本の二十九億六千二百万ドルということになるわけでございます。これを前年と比較しますと、前年のわが国の総額は五十八億四千四百万ドルということを申し上げましたが、これは実にアメリカに次いで第二位だったわけでございまして、援助の流れ全体、経済協力の総額において一昨年七三年は二位であったけれども、昨年七四年は四位に下がったということでございます。
 それから、この経済協力の中のODAの額、あるいはGNPの比率がほかの国に比べましてどうかという問題でございますけれども、七四年のわが国のODAの額、先ほど申し上げました十一億二千六百万ドルというのはやはり四位でございまして、一位がアメリカの三十五億四千五百万ドル、二位がフランスの十五億二千七百万ドル、三位がドイツの十四億三千四百万ドル、それに比べて四位でございます。ごれは前々年七三年度におきましても四位であったわけでございますので、ODAの額につきましては、昨年は一昨年同様四位という地位を維持したわけでございます。
 問題はしかし、もう一つございまして、ODAの量が少ないということ。先ほど〇・二五%という比率は〇・七という国際目標よりはるかに下であるということを申し上げましたけれども、それをほかの国はどうかということを申し上げますと、一番ODAのGNPに対する比率が多い国は、主要な援助国といたしましてはフランスでございまして〇・五六、それからドイツが〇・三七でございます。アメリカが〇・二五で日本と同じでございます。DACの比率を全部平均してみますと〇・三三ということでございますので、DACの平均よりも実は日本の〇・二五は低いということでございます。したがいまして、ODAの量がGNPに比して低いということが日本のいまの経済協力の一つの問題点になっております。
 それから第二は、細かいことは申しませんが、日本のODAの中に占める援助の贈与が少ない。ODAの中の贈与が少ないということと、それから一種の贈与でございます技術協力の額が依然として少ない。それからODAの贈与以外の形でございます借款の条件が、やはり依然としてほかの国に比べて悪いということがございます。
 以上でございます。
#26
○中山太郎君 もう一点お尋ねしたいのですが、政府のいまの国際協力の中で、政府ベースとそのほかの民間ベース、そういうふうなシェアはどうなっておるか、ひとつそれを御説明願いたい。
#27
○政府委員(鹿取泰衛君) 四十九年の実績を先ほど申し上げましたが、総額が二十九億六千二百万ドルで、その中の政府開発援助が十一億二千六百万ドルでございます。それ以外が民間もしくは民間と政府の援助の中間と申しますか、DACの統計では「その他政府資金の流れ」と呼んでおりますが、そういうカテゴリーになります。そのそれぞれのカテゴリーの額を申しますと、「その他政府資金の流れ」と申しますのが七億八千八百万ドル、それから純粋な民間の資金の流れが十億四千七百万ドルでございます。
#28
○中山太郎君 田委員にお尋ねをしたいのですが、田法案の中に盛られている「政府が外国に対して行う資金協力及び技術協力」とは、いま政府委員が答弁されました中のどの部分までをカバーするのかということをひとつ明らかにしていただきたい。
#29
○田英夫君 いまの数字で言われた部分は全部入ると思います。
#30
○中山太郎君 それでは、民間と輸銀との協力したものも国会の承認がなければできないということですか。
#31
○田英夫君 民間のものは全く入りません。ですから純粋の輸銀のもの、それから技術なら国際協力事業団のもの、それから資金だと基金ですね、そういう形の、純粋にその三つのもあと、それと政府自身のものですね。民間が入ったものはその必要はないということです。
#32
○中山太郎君 いまの政府側の答弁の中で、輸銀と民間とジョイントしたものがありますね、それはどういうことになりますか。政府委員から。
#33
○政府委員(鹿取泰衛君) 先ほど申し上げました「その他政府資金の流れ」と、それから民間の資金という二つの種類があることを申し上げまして、それぞれ四十九年の実績は七億八千八百万ドルと十億四千七百万ドルと申しましたが、これは資金ソース別の別でございますが、経済協力の形態といたしましては、それぞれにまたがりまして、輸出信用とそれから直接投資等がございます。
 そのほかもございますけれども、大きい輸出信用と直接投資だけをまとめて申し上げますと、四十九年の実績では輸出信用の計が一億五千六百万ドル、直接投資等が十六億七千三百万ドルでございます。しかし、これはこの中で、先ほど民間資金のところで申し上げました額は、輸出信用につきましては市中銀行の全くの民間の資金でございますけれども、それと一緒に一年超の輸出信用で財政資金が輸銀を通じて流れている場合には、「その他政府資金の流れ」の方に入るわけでございまして、輸出信用の例をとってみましても、一つの契約の中で、延べ払いの中で、輸銀の資金と市中の資金が一緒に流れているわけでございます。その流れているのを、これを輸銀の資金と民間の資金とを別にいたしまして、輸銀の方を政府資金の流れとしてとらえ、市中銀行等一般の資金を民間資金の流れとしてとらえているわけでございます。
 それからもう一つ申し上げますのは、以上申し上げた額は非常に少ないということでお気づきかと思いますけれども、これはいわゆるネットの流れでございまして、各国別に、日本からの資金の流れの総額から各国から返ってくる回収額を差し引きましたネットの資金の流れだけをとらえておるわけでございます。
#34
○中山太郎君 いまの田法案の趣旨から言うと、民間のものも国会の一応承認がなければならないという結果にならないですか、どうですか。いまの田先生の御答弁によれば、全部国会の審議の対象になるんだということになると、日本と海外との技術援助あるいは経済援助、もう全部国会の承認がなければできないということになると、国会がいわゆる経済活動というか、民間の一つの経済機能に大きな干渉を行うということにならないでしょうか。
#35
○田英夫君 その点は私ども大変配慮をいたしまして、そういうことがあってはならないということから、はっきりと条文の中にも括弧の中に三つのものを書き込みまして、そして実際に経済協力をやっている実態なども、いま局長から述べられましたけれども、調べてみたわけです。いま言われた中で、政府の直接の協力と、それから「その他政府資金」というそこまでに限定をしたわけで、民間資金の流れという方は除外をしてあるわけですから、そこのところにははっきり一線を引くことができると思います。引いているつもりでございます。
#36
○中山太郎君 政府側のこの点に関する御意見、どうですか。
#37
○政府委員(鹿取泰衛君) 経済協力は、私どもといたしましては、先ほど来申し上げたような理由によりまして、政府間協力と民間協力とを問わず、この法案が仮に通るといたしますと非常に実行上やりにくくなる。実際にはできなくなることすら予想されると申し上げましたのですが、特に民間の経済協力で輸銀なり基金の資金が流れる場合でも、いわゆる一般案件という案件は、民間の経済の動きが先に立ちまして、その商業活動を側面から支援するという形でコンバインして政府資金が出ていくわけでございますので、そういうものについてどこまでを政府援助であり、どこまでを民間援助であるということがなかなか、一つの案件の中に資金が二つあるわけでございますので、したがいまして、どこまでを政府援助であり、どこまでを民間資金の流れであるというふうに区別できにくい場合がありますので、仮にいろいろなチェックを政府援助だけ強めようということになりましても、民間との結びつきのある部分につきましては、少なくとも民間の経済活動なり何なりに対します制約になるのではないかというふうに考えております。
#38
○田英夫君 私の方で実態を調べた点を申し上げますと、たとえば東南アジアの国に日本の企業が進出をする。進出をするというか、合弁という形で現地に企業を設立するというような形で、当該の国と協力関係でそこに一つの新しいプロジェクトをつくろう。そうすると、そこへ工場ができる。ここまでは全く民間の経済協力という形で進められてきた中で、それではそこへ至る輸送手段、道路だとかあるいは港だとか、こういうものについてはひとつ政府の、あるいは輸銀の協力を求めたいという形になったときには、そういう実例があるわけですけれども、これは実は一つのように見えますが、その地域の開発という形で。しかし、実際にははっきりと区別ができるわけですから、私はその輸銀なり基金なり事業団、あるいは政府直接という形のものに限るということは、きわめて簡単に明快にできるというふうに判断をしております。
#39
○国務大臣(宮澤喜一君) いまのような場合がございますと思いますが、決して田委員の言われることを否定はいたしませんが、わが国の企業がある国に会社を設立いたします。その場合に、日本から機械であるとか何かを恐らくこちらが先進国であれば持ってまいるのでございましょうが、それには輸銀の融資がつくことがほとんど全部の場合であろうと思います。
#40
○中山太郎君 いま田委員がお話しになったことに関して、もう一回お尋ねを政府側にしたいのですが、田委員のお話では、工場は民間でいくのだ、これは輸銀を使いますね、民間の場合も。そこへ道路をつける、あるいは港湾設備を政府側が援助する、そういうパッケージで、結果的には一つのプロジェクトになって出ていくのじゃないか。その場合に、やはり民間もチェックするのだというふうな御意見のようにも私承ったのですが、これを切り離してやるということが、実際の経済協力を相手国と日本国の間でやる場合に、相手国がそういうやり方について、そんなにめんどうなことならもうこのプロジェクトはおれのところは要らないと言うようなことが起こる可能性があるのじゃないですか。
#41
○政府委員(鹿取泰衛君) いまの先生の御指摘のようなことがまさに考えられるし、現にあるわけでございまして、たとえばある地域にある工場をつくるという場合にも、いわゆるインフラストラクチュア、たとえば電力、道路というようなものは仮に政府借款ということで、これはある程度はっきりそれ自体政府借款ということで交換公文も結びますし、額もプロジェクトもはっきりいたします。しかし、その上に建てる工場、これが実は民間案件と申しますけれども、先生御指摘のように、それについては投資金融の形あるいは輸出信用の形で輸銀の財政資金が入っていくわけでございますから、その面でやはり政府の関与があるわけでございまして、したがいまして、仮にインフラストラクチュアだけが政府の問題で、これだけを日本政府が考えれば相手の国との経済協力が完全かというとそうでございませんで、その上に建つ工場、これも輸銀の融資なり何なりを促進しなければならないということになるわけでございますし、それから全体としてやはりインフラストラークチュアとその上に建つ工場との間の相互関係、工期を調整する、同じ時期にやはり完成するというのが望ましいわけでございますし、そういう工事をしておる場合の資材の手当てとか労働力の手当てなんかも互いに邪魔をするというようなことであってはならない。そういうことで全体としての調整も政府は必要だということでございますので、発展途上国に対します少なくとも大きなプロジェクトの協力につきましては、やはり民間と政府というものが一体となって協力しなければならないし、その中のどれを取り出して、これは民間に任せておけばいいというようなことにはなかなかならないというふうに感じております。
#42
○中山太郎君 私どもいろんな国を歩いておりますけれども、経済援助を受ける相手国というのは、日本から比べると非常に生活水準の低い国、ただしこれからの経済発展を見込まれる国ではないかと思うのです。そういう国はおしなべて、全体主義であれ、軍国主義であれ、民主主義であれ、非常に政府の力の強い国がほとんどじゃないかと私はそういうふうに判断しています。これは人民民主主義の国でも政府の権力が非常に強大だ。あるいは新しい新興国家でも、政府、民族主義の指導者が非常に強い権限を持っている。そこへ経済が伸びていくというときには、民間ベースで先に工場を持ってこいということになっても、政府との結びつきが非常に強いわけですね。そこで、民間ベースでの海外における経済発展の中で、いろんな汚職とか、あるいは腐敗問題というものが相手国の政治にある悪い影響を与えているということも、これは世界各国おしなべて言えると思うのです。むしろ政府側が港湾をつけるとか道路をつけるという問題と別に、むしろ問題があるのは、最初に出発する民間サイドにあるのじゃなかろうか。私はむしろそういうふうにも、いろんな国を実際自分も歩いてみて感じているのですが、その点どうですか、外務省の御見解は。
#43
○政府委員(鹿取泰衛君) 従来、民間の経済協力にはいろいろ先生御指摘のような問題があったということは、これは事実であろうかと思います。したがいまして、政府の方といたしましても、民間の経済協力とのいわば調整と申しますか、調和と申しますか、そういうことを考えなければいけないわけでございまして、特に先ほど来申します最近の大きい案件になりますと、仮に民間だけがいわゆる商業主義と申しますか、利潤のみを考えて先に余り走りますと、これは相手の国は、先生御指摘のように発展途上国は、相手の国にとっては常にナショナルプロジェクトというような大きな案件の場合には、民間のいろいろな企業活動そのものを先方は日本政府がすでに財政的にもあるいはその他の形でも支援しているというふうに誤解しがちでございますので、そういう点、われわれとしては今後さらに一層民間との協調は注意していくつもりでございます。
 ただ、私がここで申し上げたいのは、そういう民間の協力が、したがいまして政府のいろいろな借款なりあるいは技術協力なりの政府間の協力とも結びついているわけでございますので、政府間の協力の方がまた仮に非常に遅延する、非常に手続が煩瑣なために遅延するということになりますと、結局、それと協調しております民間の企業活動も制約を受けて、なかなか促進されないということがあるということでございます。
#44
○中山太郎君 私も、自分の体験から申し上げるのではないですが、いろいろな国へ行ってみて各国の政府の指導者と会ってみると、先ほど申し上げたように、経済援助を受ける国はレベルが低い、日本と比べて。そこで、権力者というものが絶えずいるわけです。権力者が自分の国の発展のために日本からの経済援助を受ける、あるいはまた民間の企業の進出を認めるという場合は、もう権力者の独裁的な判断に近いことで決定されると、私はいろいろ歩いてみて感じているわけですね。それから後の手続が起こってくる。
 こういう中で、相手国は、おれの国はこれだけスピードを出して決定をしてやっていくのだ、ところが日本の場合に、いまはいままでの法律の枠内で政府がそういうふうな経済協力をやる。これが全部国会の審議の対象になってくるということになってくると、せっかく日本からの進出を認めてやろう、あるいは経済援助を受けるのを認めよう、両国は友好関係を結ぼう、おれの国にある資源は日本にも出してやろうという相手国の政治権力がそういう判断をしているけれども、とにかく国会の会期末まで待たなくちゃしょうがないじゃないかということになってきたら、そこにやはり経済援助の競争というものが現実に中ソを含めいろんな国で行われている。アフガニスタンに行ってみても、あの病院はソ連だ、こっちは中共だ、こっちの鉄道の駅はアメリカだと、小さな町の中で見渡しただけでも国連ができるぐらいのいろんな国から経済援助がくる。そういう相手国の立場を考えてみると、もうあの国と話をしても、実際経済援助をするすると言っても効果が上がらない、こういう結果が生まれる危惧の念を私は持っているんですが、この点どうですか。実際の経済協力を受ける相手側の政府の立場に立って考えた場合に、相手国が選択をする場合に、それじゃソ連の方が早い、あそこはもう上でぱっと決めればすぐくるんだ、議会も関係ないんだと、こういうこともあり得ると思うんです。この点どうですか。
#45
○政府委員(鹿取泰衛君) 先生御指摘のようなケースは、最近特に中近東地域に例がございまして、まさに中近東地域におきましてはソ連及び東欧からの進出も盛んでございます。そういう国の決定は、先生御指摘のように非常に迅速でございますので、わが国の企業が政府との関係で手間取っておりますうちに競争に負けるというような例は、非常に最近見られることでございます。
#46
○田英夫君 一言ここで反論をいたしますけれども、いまのお話を伺っていると、能率こそがすべてだという感じがするんですね。私毎回申し上げているんですけれども、ぜひお考えいただきたいのは、もし政府のお役人にそういう感覚がないとしたら恐るべきことですが、その事業というのは国民の税金を使っているんだということですよ。だから、国会という国民の代表の意思を聞いた上で実行すべきだという大原則が忘れられてしまつて、能率論が先行をしていくと、いままで田中前総理大臣が東南アジアを回られると、一斉にデモが起こるという事態が起こっていたのじゃないか。
 それから率直に申し上げて、私どもがこの法案を提起いたしました発端には、やはり朴政権に対する明らかに不当な経済協力があったということの中から出てきているわけですから、いま中近東のお話なども出てまいりましたけれども、私はそれが全くマイナスがないとは言いませんけれども、しかし一番大事なことを忘れて議論をされると、私はちょっと承服いたしかねますので、一言だけ申し上げておきます。
#47
○中山太郎君 時間がないというお話でございますので、まだ突っ込んだ質問もさせていただきたいと考えておったんですが、一応調整上私の質問も大体終わらしていただきたいと思いますが、最後に一つお伺いをしておきたいことは、やはり田先生のおっしゃるように、政府資金というものは国民の血税である。それを一銭たりともむだ遣いをしてはならない。そのために国会での慎重な審議を経てそういうものは行うべきだ、この御意見は私も全く同感です。ただし、私の考えは、余りにもスクリーニングを厳しくすることによって、国全体が受けるであろう相手国からの好意、そういうものを目的にするわけじゃありませんけれども、実際は友好関係を増進させたい、そこでの悪影響がどの程度の歩どまりでとまるかということが一つのポイントじゃないか。そういうために、国会には予算の大枠と同時に、決算委員会という仕組みがあってチェックをする機能を持っているのじゃなかろうかと私は思うんですけれども、それでも政府の外交の中に大きなむだがあるというふうな御意見からこういうものが出てきた。特に、いま国名をはっきりおっしゃった朴政権に対する日本国の政府援助がけしからぬという発想からこの法案が出てきた、こういうことじゃないかと思うんです。
 そうなってくると、非常に私どもとしては、最初にお尋ねした「民主主義の原理に反する統治を行う国」ということも、これはむしろ韓国というふうに明文にしてもおかしくない、こういうことになってくると、私どもとしてはなかなか、外交上の問題も必ず発展してくる。時間がありませんので、この点、私としては経済協力というものは一国だけを指すのではなしに、もう少しグローバルの感覚でやっていかなければならない。将来必ず東西間にももっとフリーな人、物、情報の交換が行われるべきだ。そういう点で、御趣旨もよくわかっておりますし、私どもとしてはこの国会の権限、権威というものを守っていかなくちゃならぬ。こういうことでひとつ外務省も、決して国会からとやかく批判の言われないようないわゆる国際協力をやるという御意思があるかどうか、ここではっきり発言していただいて私の質問を終わらしていただきたいと思います。
#48
○国務大臣(宮澤喜一君) この点につきましては、先般も申し上げたことでございますが、経済協力というのは内容はきわめて複雑でありますし、また、わが国の協力のための機構にも改善をすべき余地が多々ございます。また国会のお立場からすれば、事柄の性質上総合的になかなかわかりにくいというような御判断もおありになりましようし、私どもとしても個々の協力について、少なくとも先ほど中山委員がお触れになりましたような、相手国の国政において世間から批判をされるような出来事も過去においてはあったやにも聞かれます。十分戒心をいたしまして、国民の税金が誤りなくわが国の平和目的のために使われるよう、戒心をいたして行政をしなければならないと思います。
#49
○秦野章君 ちょっと関連で。
 いま最後の外務大臣の、言うならば所信というんですか、政府の経済援助についての姿勢といいますかね、こういうものについてやはりしっかりしたものがなけりゃならぬという、一つのこの法案の教訓があるだろうと思うんです、これができるかできないかわかりませんけれども。私はそういう点についてはいままでもそういう気持ちを持っておりました。これはぜひひとついまの所信を貫いていただきたいと思う。そのための具体的な、やっぱりいろいろあるだろうと思うんですよ。
 それで田さんにちょっと、この法案を通したらりっぱな経済援助ができるようになりますかということです。少しいままででもいろいろデータがあれば審議できるので、まあこれは一つの花火を上げたようなものだろうと私も思っているんだけれども。少し理屈っぽくなるけれども、やっぱり立法府というのは国権の最高機関ではあるけれども、三権分立の体制をとっていくというと、立法府は行政にかわることができないというモンテスキュー以来の三権分立のたてまえになっている。これからいくと、これからもし法案が通って、たとえば政府がこれをいろいろ詰めて国会へもってきた。これは承認するしないという問題があるけれども、立法府が政府の責任を追及するという、そういう根拠が薄弱になるという心配はありませんかどうか。これが第二点なんです。
 というのは、事前にとにかく承認を得なければオシャカになるんだ、こう思って外交官はやりますわね。そのつもりでやるから、そこに一つの外交の意識というか、悪い意味の官僚外交が台頭してくる可能性もあるんですよ、萎縮した外交が。それはあると思うんだけれども、それはそれとして、仮に否決をされたときに、問題が起きた。しかし問題が起きることは、否決をされるという前提がある限りそれはまた外務省の責任だと、こう言えば言えるんだけれども、しかし、この否決をした立法府の側も責任ゼロではないという感じもするので、立法府というものは、三権分立で行政をやるべきことはやらして、そして間違ったら責任を追及するというのが三権分立の大きなたてまえだと、こう私は思うので、立法府の立法政策というものは無限定じゃない、限定があるわけですよ、おのずから三権分立には。そこが三権分立のチェック・アンド・バランスのいいところなんです。アメリカの三権分立とは違うけれども、この基本をやっぱり大切にしないというと、それぞれの三権の機能がフルに動くということにならない。
 確かに、能率本位というだけじゃないんです、私の言っている意味は。そういう意味じゃなくて、適正に、しかし能率的に公正に動くという――三権分立がいま世界的におかしくなってきているから、このデモクラシー国家も。そういう意味において、私は三権分立の基本というものをやっぱりいま一遍考えてみたいというような感じがするので、立法政策上恐らくこれは可能論もあると思うんですよね。しかし、とにかく立法府の立法政策は限定があるだろう。それはなぜかと言えば、政府の責任を追及するという、その第一義的姿勢が立法府にはなくちゃならぬから。自民党の政府でもやっぱり国会が選んだ政府であって、自民党が選んだ政府じゃなくて、政府ができればこれは自民党の政府じゃなくて国民の政府だから、国会は与野党を問わず、立法府としての大きな立場というもの、責任追及の立場、これを忘れちゃ成り立たないわけですよ。この大きな三権分立の基本的な課題にさあ果たして、これは私はちょっとこう疑問があるんですね。そういう点をひとつ……。
#50
○田英夫君 大変私どもが一番考えたところを御質問になったという気がするんですが、一番そこが大事なんですね、そういうお考えがあれば私は大変救われるんです。そこのところを考えてくださってこの法案を御審議くださるという姿勢は、非常にありがたいと思います。
 先ほどから繰り返して申し上げているように、行政府の中にその姿勢が欠けているのではないかということを非常に考えましたから、その意味で三権分立ということで言えば、これは憲法の六十六条にはっきりと「内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ。」という規定があります。つまり議院内閣制という方法をとって、アメリカのような三権分立、完全な形の三権分立ではなくて、日本の場合にはいわゆる共働性という、ともに働くという共働性という形で、行政府と立法府というものが相絡み合いながら、責任を負い合って連帯して政治を行っていく、事を処していくというところがまさに日本の憲法の精神ですから、いま言われましたように行政府の責任を追及するというようなことではなくて、本当に国民のために正しい政治を行うために共働性を発揮する、ともに働くという形をいかに有効に生かすかということで、そうかといって、非常に細かな行政事務にまで立法府が関与するようなことがあってはならないのは、これはその精神からも当然だと思います。ともに働くといいながら、実は行政府の能率をとめてしまうようなことになってはならない。
 この点を、ですからきょうも亘先生、中山先生の御質問の中に、ともにその点が出てきたのは大変私はうれしく思うんですが、行政府の能率をチェックしちやいかぬということ、私さっき能率主義になっちゃいかぬと申し上げながら、実はこの法律をつくることによって、これがもし成立をするという形の中で行政府の事務能率を落としてしまうということになってはならない。非常に小さいものについて能率を落としてしまってはならない。しかし、現在の国際情勢の中で、しかも日本が置かれている立場、そういうことから考えますと、対外経済協力というものは外交の中の非常に重要な部分である。憲法ではっきりと条約については国会の承認を求めなければならないということを規定している。これは条約というものはそういうものだ、これは外交の中で非常に重要だからだと思うんです。対外経済協力というものは憲法の規定はないけれども、やはり特別にここで法律をつくって、その意味で共働性を発揮できるようにする、機能をさらに強化するというのが私どもの考えなんで、ある意味では秦野先生のお考えと共通しているんじゃないかという気もするわけです。
#51
○秦野章君 いや、共通の面もあるんだよな、あるんだけれども、そう言われると私もいま一つ何というかな、疑問というか、立法府がちょっとタッチしてもらわなきゃいかぬということでこの領域に立法政策で法律をつくるという発想だよね、これは。だから、行政府がだらしなければだらしないように責任も追及し、何というか、立法調査権を用い、本来の三権分立のたてまえでやるというやり方もある。しかし、これは立法政策でこっちの領分にこう入れていこうということになってきたときに、さあ領分に入ったものの、外交の責任は立法府が必ずしもとれないわけです、実際は向こうがやるのだから。
 そこにちょっとひっかかるところがあるのと、それからいま一つは、これはやつ。はり外務省がいま少し研究してほしいと思うのは、予算はもうとにかく予算でもって議決してある。まだ予算の執行もしてないわけ、だから、予算をいま一遍議決するということになって、一事不再理といったようなことは心配ないのかどうか。これは少し理屈の問題だけれども、やっぱり三権分立、法律主義も大事だから、私は老婆心ながらそう思うわけでございますが。
 それからさっき田さんがおっしゃるように、協力のためだと。それは確かに協力の面もあるでしょう。しかし三権分立は協力の面もあると同時に、一種の何というか、相互に領分を守って、そうして特に立法府は行政府の責任を大きく追及していくという、そのスタンダードが私は一番大事だ、主権在民の一つのポイントが立法府にある、こう思うわけです。あとは、いろいろあるけれども、やめておきます。
#52
○戸叶武君 議事進行。
 われわれ野党はどちらかというと、野党だけが質問して発言するような国会運営のあり方は必ずしもノーマルだとは思っていなかったのですが、きょうはそういう意味において沈黙を守りまして、あとは共産党、公明党の方のパワーの発揮の方に専念しておりまして、こっちの方では対話を静かに行ったのですが、やはり今回の新しい提案として議員立法として田君が投げた一石というものは、それは法案を押し通すとか何とかというのでなく、この一石を通じて実りあるものをつくり上げたい。特にいまの場合において、日本の議会政治の危機というものは、やはり国の最高機関としての国会の権威というものが、法律上における権威じゃなくて、自主的にどこに権威があるかということを国民は見守ったり、あきれたりしている面があると思うんです。この中において、われわれが力んで国会の権威というものを主張するのじゃなくて、与野党談笑の中に私は天下の大事を決していけるような部分というものがどこからか出てこなけりゃならないと思いましたが、この問題は実際は一番むずかしい問題ですが、きょうのこの自民党の三人の方の発言を聞いておって、やはり自民党の人も平生沈黙を守っているだけに、やはり頭から、視野も広いしという感じを持ったし、それで余り無理をしないで、また国会運営という形だけにとらわれて田君の議員立法を軽視するようなことはないと思って、きょうは安心できたのです。
 国会のやはり生命というものは審議権にあるんです。国会の政治の権威というものは形式にあるのです。そういうこのリーダーシップを持つべきものが、権威を持たないで、権謀術策に陥ったり、権力と金の力でまかり通ろうという弊風を、どうやって国民の合意によってこれを崩していこうかという大きな課題が出ていると思うのです。
 一番問題になるのは経済の問題です。この問題は、やはり経済の中に哲学が含まれると思います。きょうは私は経済論争は単なる経済論争じゃなくて、やはり秦野さんの中ににじみ出ているもので、三権分立という形式じゃなくて、やはり国会はいかにあるべきか、政府はいかにあるべきか、有能なエリート集団である外務官僚のあり方はどうか。対外経済協力は世界が見ている。その中における日本の政治姿勢というものが出てくるので、それに対しては心していかないと、われわれがその行為を見つめているだけでなくて、責任をも共同に分担しなくちゃならない。行政府に任せておけばいいという形ではないのです。
 たとえば近代国家における発展の予算審議の方式を見ても、フランス革命が起きた直後においてはやはり予算編成権というものが国会にあったわけです。あったけれども、実際上行政をやるのに行政府にそれをゆだねなければならない。いまの議員立法というのがあるが、やたらに議員立法という形でもって政府を拘束したら、これは政府の機能を十分に発揮できない。しかしながら、野方図にやっておると、アメリカのニクソンさんやこちらの田中さんみたいなのが出てくる。これはやはりどうやって共同の責任をわれわれは持てるかという問題が起きてきます。それは個人でなくて、問題の発生の根源というものはやはりアメリカの政治のあり方、日本の政治のあり方に問題点があると思うのです。アメリカの三権分立だって私は理想的じゃないと思うのです。その国々が模索している。この田君の今度の議員立法は、たたき台としてはこれは最高の発想の上に立つのだから、どうぞ私はきょうあたり本当は採決して、何でも採決を急ぐのがこのごろ与党の癖なんだが、やはりこれは慎重審議をやってほしい。今後これだけ問題が提出をされては、われわれ野党でもやはりそれを支える政治勢力だから、この自民党がうんちくを傾けられている以上、われわれの方もうんちくを傾けてこの問題を慎重審議をしていきたいと思います。
 議事進行に名をかりましたが、実りある審議をするよう御要請申し上げておきます。
#53
○委員長(二木謙吾君) ほかに御発言ないですか。――本案についての質疑は本日はこの程度といたします。
 これにて暫時休憩いたします。
   午後零時二十三分休憩
     ―――――・―――――
   午後一時四十七分開会
#54
○委員長(二木謙吾君) ただいまから外務委員会を再開いたします。
 海上航行船舶の所有者の責任の制限に関する国際条約の締結について承認を求めるの件
 油による汚染損害についての民事責任に関する国際条約の締結について承認を求めるの件
 油による汚染損害の補償のための国際基金の設立に関する国際条約(千九百六十九年の油による汚染損害についての民事責任に関する国際条約の補足)の締結について承認を求めるの件
 漁業操業に関する日本国政府とソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定の締結について承認を求めるの件(いずれも衆議院送付)
 以上四件を便宜上一括して議題といたします。
 まず、政府から順次趣旨説明を聴取いたします。宮澤外務大臣。
#55
○国務大臣(宮澤喜一君) ただいま議題となりました海上航行船舶の所有者の責任の制限に関する国際条約の締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。
 船舶所有者の責任につきましては、各国とも伝統的に責任制限の制度を採用してまいりましたが、その方式は国により異っており、統一条約の必要性がつとに指摘されておりました。一九二四年の海上航行船舶の所有者の責任の制限に関するある規則の統一のための国際条約はこの統一化を促進するものでありましたが、責任制限の方式として複雑である等の欠陥が指摘されたため、船主責任制限制度の再検討の機運が生じ、より合理的な新条約の作成が望まれるに至りました。これを受けまして一九五七年ブラッセルで第十回海事法外交会議が開催され、わが国を含む三十二カ国の代表による審議の結果、同年十月十日金額責任主義による船主責任制限を定めた海上航行船舶の所有者の責任の制限に関する国際条約が作成されたわけであります。
 この条約は、海上航行船舶の所有者の責任制限制度として、事故ごとに責任を定め、トン数に応じ一定の割合で算出される金額に責任を制限することができることを定めるものであります。わが国の商法は、船舶所有者の責任制限について委付主義をとっておりますが、この委付の制度につきましては近代化された海運の現状にそぐわないとして従来から問題点が指摘されておりまして、海上航行船舶の所有者の責任の制限に関する国際条約が定めている金額主義による責任制限の制度は、責任制限の方式としてより合理的であり、かつ、船舶事故から生じた被害について妥当な救済を図るものであると考えられます。
 多くの海運国がすでにこの条約の締約国となっている事実を考慮いたします場合、主要海運国の一つであるわが国が、この条約に参加することによりまして海商法の国際的な統一を促進することが期待されます。
 よって、ここに、この条約の締結について御承認を求める次第であります。
 次に、油による汚染損害についての民事責任に関する国際条約の締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。
 一九六七年三月英仏の近海で起きた大型タンカー、トリー・キャニオン号の海難及び油による汚染事故を契機といたしまして、政府間海事協議機関においてタンカー等がもたらす油による汚染損害についての民事責任に関する法的な問題を検討し、これを国際条約化する作業を進めてきました結果、一九六九年五月その最終草案が作成され、同年十一月ブラッセルにおいて開催されました海洋汚染損害に関する国際法律会議におきまして、わが国を含む四十八カ国の代表による審議の結果、同月二十九日、油による汚染損害についての民事責任に関する国際条約が採択されました。
 この条約は、タンカーからの油の流出または排出による汚染損害の被害者に対し適正な賠償が行われることを確保するための統一的な国際的規則及び手続を定めるものであります。わが国がこの条約の締約国となりますことは、わが国の領域において汚染損害が生じた際の被害者の保護に役立つのみならず、わが国が世界有数のタンカー保有国である事実にかんがみまして国際協力増進の見地からもきわめて望ましいと考えられます。
 まって、ここに、この条約の締結について御承認を求める次第であります。
 次に、油による汚染損害の補償のための国際基金の設立に関する国際条約(千九百六十九年の油による汚染損害についての民事責任に関する国際条約の補足)の締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。
 一九六九年十一月二十九日にブラッセルにおいて油による汚染損害についての民事責任に関する国際条約が採択されましたところ、その際、同条約を補足するため、同条約に基づいて支払われる賠償が不十分である場合に汚染損害の被害者に対して補足的な補償を行うこと、及び同条約によってタンカーの所有者に課される経済的な負担を一部肩がわりすることを目的とする国際補償基金を設立すべきであることが決議されました。これに基づき、その後、政府間海事協議機関においてこれを国際条約化する作業が進められた結果、一九七一年十一月にブラッセルで開催された油による汚染損害の補償のための国際基金の設立に関する会議において、十二月十八日に本件国際条約が採択されました。
 この条約は、油による汚染損害についての民事責任に関する国際条約の補足として、タンカーからの油の流出または排出による汚染損害の被害者に十分な補償を行い、かつ、タンカーの所有者に課される経済的な負担を軽減することを確保するための国際基金を設立し、また、かかる目的の達成のため、同基金が、各締約国において海上を輸送された油を受け取る者から、拠出金を徴収することを定めるものであります。
 わが国がこの条約の締約国となりますことは、わが国の領域において汚染損害が生じた際の被害者及びタンカーの所有者の保護に役立つのみならず、わが国が世界有数のタンカー保有国であり、また、世界有数の石油輸入国である事実にかんがみまして、国際協力増進の見地からもきわめて望ましいと考えられます。
 よって、ここに、この条約の締結について御承認を求める次第であります。
 最後に、漁業操業に関する日本国政府とソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定の締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。
 政府は、近年わが国沿岸の水域におけるソ連漁船団の操業に伴い、わが国沿岸漁民との間で事故が生じている事態にかんがみ、事故の未然防止と事故発生の場合の紛争の迅速かつ円滑な処理を図ることを目的として、ソビエト社会主義共和国連邦政府との間で漁業操業に関する協定を締結するため、本年三月以来モスクワで交渉を行ってまいりました結果、去る六月七日に東京において、わが方外務大臣と先方イシコフ漁業大臣との間でこの協定の署名が行われた次第であります。
 この協定は、本文十五カ条及び四つの附属書から成っており、漁船及び漁具に関する事故の未然の防止のために、漁船の標識及び信号並びに漁具の標識等に関する規定、漁業操業の規則の設定と遵守に関する規定、情報の交換等に関する規定等を定めるとともに、漁業紛争の処理を促進するための漁業損害賠償請求処理委員会の設置による紛争処理手続等に関する事項について定めております。
 この協定の締結によりまして、特に近年わが国沿岸におけるソ連漁船団の操業の結果問題を生じていた日ソ両国の漁船の操業に一定のルールが課されることとなる結果、漁船及び漁具に関する事故の未然防止が図られることとなり、また、不幸にして事故が発生した場合には、事故から発生する損害の賠償請求の処理につき迅速かつ円滑な解決が促進されることになることが期待されます。
 よって、ここに、この協定の締結について御承認を求める次第であります。
 以上四件につき、何とぞ御審議の上、速やかに御承認あらんことを希望いたします。
#56
○委員長(二木謙吾君) 続いて順次補足説明を聴取いたします。伊達条約局参事官。
#57
○政府委員(伊達宗起君) ただいま提案理由の御説明のありました四条約について、若干補足説明をさせていただきます。
 まず、海上航行船舶の所有者の責任の制限に関する国際条約でございますが、この条約は、わが国の伝統的な委付主義を改め、金額主義を採用していますが、委付主義のもとでは船価の変動、船舶の新しさ古さ等によりまして被害者の受ける補償額が不安定になりますとともに、委付の対象となる船体が海難により滅失したような場合には、被害者の救済が事実上不可能になるという問題点もございます。
 これに対しまして金額主義のもとでは、事故を起こした船舶の大きさに比例して算出されます一定額の損害賠償を保障されることとなりますので大幅にこの点合理化されていると申せます。また、この条約に基づく責任限度額は、わが国において過去に発生した船舶事故の損害賠償額を勘案してみますと、大体合理的な額と言えるものでございます。この条約は、一九六八年五月三十一日に効力を生じておりまして、英国、フランス、西独、スウェーデン、ノルウェー、デンマーク等の主要海運国を含む二十六カ国が本条約の締約国となっております。
 わが国は、申すまでもなく世界有数の海運国でございまして、わが国がこれらの国に仲間入りいたしますことは、海商法の国際的な統一の見地からもきわめて有意義なことであると考えられます。
 次に、油による汚染損害についての民事責任に関する国際条約でございますが、この条約は、タンカーからの油の流出または排出による汚染損害の被害者に対する適正な賠償が行われることを確保するため、タンカーの所有者に対し、トン当たり二千フラン、約四万六千円、または二億一千万フラン、約四十八億三千万円の額の責任限度額を定めますとともに、無過失責任主義を採用し、さらに、タンカーの所有者に賠償責任を集中させております。また、タンカーの所有者の賠償能力を確保するために、二千トンを超えるバラ積みの油を貨物として輸送しているタンカーの所有者に対しまして、自己の責任限度額に相当する保険または保証の維持を義務づける、いわゆる強制保険制度を設けております。
 なお、この条約は、所要の発効要件を満たしまして、本年六月十九日に発効いたしましたことを申し添えます。
 三番目に、油による汚染損害の補償のための国際基金の設立に関する国際条約でございますが、この条約は、そのタイトルに示されているように、油による汚染損害についての民事責任に関する国際条約を補足するものでございます。まず、油による汚染損害の被害者に対しましては、タンカーの所有者が民事責任条約上免責される場合、タンカーの所有者が民事責任条約上責任を有するけれども賠償の資力がない場合、及び汚染損害が民事責任条約等に定める責任限度額を超えるような場合に、国際基金自身が免責されます場合を除きまして、タンカーの所有者等による賠償額を含めて合計四億五千万フラン、約百三億五千万円まで補償することを定めております。また、タンカーの所有者等に対しましては、民事責任条約上の責任の一部を補てんすることを定めております。なお、被害者への補償の最高限度額は、そのときまでの事故の経験等を考慮いたしまして、総会の決議によりまして九億フランまでの範囲で変更することができるようになっております。
 また、国際基金への拠出は、前暦年中に拠出油を総量において十五万トンを超えて受け取った者が支払うことになっています。
 このように、この条約は、油による汚染損害の被害者の保護を一層厚くいたしますとともに、それに伴う経済的負担を輸送される油により利益を受ける者にも負担せしめるものでございまして、世界有数の石油輸入国であるわが国がこの条約を締結いたしますことは、その早期発効を推進することとなりますとともに、国際協力の増進に役立つものと存ずる次第でございます。
 最後に、漁業操業に関する日本国政府とソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定でございますが、わが国の近海、特に北海道南岸の水域から千葉沖に至ります太平洋沿岸の水域におきまして、ソ連漁船団の操業によるわが国漁民との間の事故が発生しております。昭和四十六年ごろからその事故数は著しくなっておりまして、水産庁の統計によりますと、わが国漁民の漁具等の被害額は、昭和四十六年ごろより本年三月までの間に合計四億四千万円を超えるに至っておりますが、このような事故を未然に防止し、また、事故発生の場合には紛争の迅速かつ円滑な処理を図ることを目的としまして、本年三月以来、わが方重光大使とソ側イシコフ漁業大臣との間で精力的に交渉が行われました結果、去る六月七日に署名の運びになったのが、今回の協定でございます。
 協定の内容につきましては、外務大臣よりの説明のとおりでございますが、日ソ両国の漁業が協定に定めます規則のもとで行われることによりまして、事故の未然の防止が図られることとなることが期待されますとともに、漁業損害賠償請求処理委員会の設置によりまして、従来実際問題としては困難でありましたわが国漁民からのソ側に対する損害賠償請求が迅速かつ円滑に処理されることが期待される次第でございます。なお、協定におきましては、協定の発効直前の二年の間に発生した事故による損害賠償請求につきましても、委員会においての処理の対象となることとなっております。
 以上でございます。
#58
○委員長(二木謙吾君) 以上をもって四件の説明は終わりました。
 これより質疑に入ります。質疑のある方は、順次御発言を願います。
#59
○田英夫君 最初に、油濁関係の三つの条約について御質問いたしますが、この三つはもちろん関連はあるわけですけれども、海上航行船舶の所有者の責任の制限に関する国際条約と他の二つの油濁関係の条約とではやや性格を異にするといいますか、違ったものだという感じがするわけです。つまり、実際には政府が今回これを三つ合わせて批准を求められている背景には、最近のタンカーによる事故が多発をし、しかもその損害がきわめて大きいと、したがって、この船舶所有者の責任制限に関する国際条約というものに加わって、そして船舶所有者の責任制限の適用を受けるということになってこないと大変に損害が大きいという、したがって、それに関連をしてこの油濁関係の二つの条約というものにも加わっていくということになってきたんだろうと思うんですが、なぜ政府が最初の、船舶所有者の責任制限の国際条約にもっと早く入らなかったのかという気がするんですが、これは従来から、タンカー問題がこんなにクローズアップしなくてもやはり問題は小なりといえどもあったはずなんですが、この辺の背景をちょっと説明してください。
#60
○説明員(加藤一昶君) この条約は一九五七年に成立したわけでございますが、発効は一九六八年でございます。その発効の直前、昭和四十年ごろに至りまして海運界からもこの条約の批准方を願いたいというような要望がございました。それまでは、日本の海運界は、戦争の打撃によりまして、委付主義から金額責任という一層重い責任を負わせる体制をとることは困難であったわけでございますが、昭和四十年ごろに至りまして、ようやく経済的な体制もできたというような事情もございました。
 ところで、この五七年条約は商法の改正を伴いますので、法務省といたしましては法制審議会にその審議をお願いするというたてまえになっておりますけれども、当時、会社法の改正がございまして、そちらの方に精力がとられていた関係で、こちらの方の審議には入れなかったというような事情がございました。そして会社法の関係が昭和四十六年に終了いたしましたので、その直後から精力的に審議を続けまして、昭和四十八年に法制審議会から答申がなされております。ところが、国会の方でその当時、先ほど申し上げました会社制度の改正の法案が継続中でございましたので、ようやく今国会に提出ができたというような事情でございます。
#61
○田英夫君 そうすると、国内法との関係で整理がついたと、体制が整ったということだと思いますが、もう一つは、いまのこの条約三つに関連をして、国内法として現在の国会に船舶の所有者等の責任の制限に関する法律案、それから油濁損害賠償保障法案と出ているわけですが、これが整わないと完全な体制にならないわけですか。これは大変具体的のことを聞くんですがね。この会期末でこの二つの法案が実はどうなるか、ちょっと疑問の状態なようですが、その点はどうですか。
#62
○説明員(加藤一昶君) 五七年条約について申し上げますと、その実体に関する部分は条約の方で定められております。ところが手続につきましては、条約の方はすべて国内法にゆだねるということになっておりまして、ただいま先生がおっしゃいました法律案も百カ条ほどございますけれども、そのうちの九十カ条余りが手続法でございます。したがいまして、その手続法がないとこの実体法だけがあっても動かないというような関係でございます。
#63
○田英夫君 どうやらこの国会の終盤のところでこれが外務委員会で承認されても、国内法が整わないと実際の運用ができないということだと思いますが、いま言われた、大臣の御説明にもありましたけれども、従来日本が委付主義をとっていた、それを金額主義に切りかわっていくんだという、なぜ委付主義をとったのかというのは、いまの御答弁の中で、戦後の船舶所有者の状況というのがありましたけれども、それだけなんですか。これだと確かに伊達参事官の御説明にもあったように、非常に古い船で、ぼろ船処分するからあと責任免れるということじゃ、どう考えてもおかしいんですがね。にもかかわらず、それをいままで大事にしてきたみたいな気がするんですが、その背景をもう少し詳しく言っていただけませんか。
#64
○説明員(加藤一昶君) 日本商法は、明治三十二年にできましたときから、もうすでに委付主義をとっております。船舶所有者の責任の制限の仕方についてはいろいろの方法がございますけれども、この委付主義というのが一番基本的な、したがって、古くからある制度でございまして、海上企業の危険性が高いという、かつての冒険的な航海の時代からのやはり名残でそういう制度をとっていたものと思います。したがいまして、この五七年条約ができる前から、わが国においても、すでに委付主義というのは前近代的な制度である、それを改めるべきだという声が非常に強かったわけでございます。
#65
○田英夫君 それが、ようやくその段階に来たという、遅かったという気がしますけれども。
 もう一つは、やはり何と言ってもタンカーの事故というのが従来の問題に比べてはるかに損害が大きいということだと思いますが、しかし、この船舶所有者の責任制限の条約に参加をするという形になってきますと、タンカーでなくても、こういう問題が出るんじゃないかと思うんですが、数字のところを計算してちょっと教えていただきたいんですが、たとえば客船の場合、観光船というか客船の場合で、外国航路のものならこれは適用されるわけでしょう。そうなってくると、たとえば千トンの船で乗客が乗っていて事故を起こしたと。そうすると所有者の責任の制限ということになって、責任の制限がどのくらいになるのか、金額で言うと大体千トンの船で七千万円ぐらいのところでとまっちまうんじゃないかと思うんですね。そうすると、もう一つその規定によると、人身事故と言いますか、人間の乗客の事故の場合は、一人当たりという形でそれが割られてしまうでしょう。そうすると、十人乗っているのと二十人乗っているのでは、損害の補償を受ける側からすると、半分になっちゃうんじゃないですか、そういうことで理解していいんですか。
#66
○説明員(加藤一昶君) そのとおりでございます。
#67
○田英夫君 その点は実際にはどうなりますか。この条約の適用をそのままやればそういうことになってしまうので、お客さんがたくさん乗っていれば乗っているほど被害者の側の補償というのは、頭数がふえれば――一人乗っていれば七千万円、七千万円も上限が何か切られるようですけれども、仮に算術的に言えば、一人なら七千万円で二人なら三千五百万という計算でしょう。これは何か救済の方法とか何かはないんですか。
#68
○説明員(犬井圭介君) お答え申し上げます。
 確かに先生御指摘のように、旅客船について問題があるということはあるわけでございます。そこで、この条約を国内法化する場合に、国内の旅客船につきましては、旅客の死傷に基づく船舶所有者に対する債権につきましては、これは制限できないんだというふうな手当てをしたわけでございます。国内法案の三条の二項にその趣旨がうたわれております。ところが、国内船につきましては、条約との関係で言えば、これは国内の船主とその旅客との間の関係ですから、条約との関係では抵触をしないだろうということで、そういう措置がとれたわけでございますけれども、外航船になりますと、そういう処置をとれないということがございます。
 そこで、わが国関係の外国航路に就航する旅客船でございますが、これは現在関釜フェリー、下関と釜山の間に就航しております関釜フェリー一社だけでございます、船も一隻だけでございます。そこでこれに対しては、別途行政指導を行うということで、行政指導の内容としまして私たちがいま考えておりますのは、関釜フェリーの船舶所有者に対して行政指導を行って、運送約款の中に一人当たり適当な額の責任限度額を書かせるということを考えております。その責任限度額を背景にしまして、それを十分にカバーできるだけの保険を掛けさせるということを考えております。こういうことをすることによって、ただ一つの海外定期航路でございます関釜フェリーの旅客については十分な対策がとれるんじゃないかというふうに考えているわけでございます。
#69
○田英夫君 次に、油濁関係の二条約の問題に触れていきたいと思うんですが、何といってもこの条約を政府が批准を急がれると言いますか、この国会に提出された一つの直接の原因は祥和丸事件だと思います。そしてやはり、こういう条約が国際的に、さっきの船舶所有者の責任制限の問題にしても、油濁関係の問題にしても、こういう形になってきたのは、やはり例の英仏海峡のトリー・キャニオン号の事件だろうと思うのですが、祥和丸の事件は、いま現在損害補償というような問題はどういう状況になっていますか。
#70
○説明員(犬井圭介君) お答え申し上げます。
 祥和丸事故につきましては、まずシンガポールの港湾当局から祥和丸の船主、これは太平洋海運でございますが、これに対し、油濁防除費用としまして約三百六十万シンガポール・ドル、これは邦貨で四億七千万円に該当しますが、そういった金額の請求がございます。それに対して現在百万シンガポール・ドルだけ、三分の一弱でございますが、それだけ支払いまして、残額については、目下この祥和丸についての保険者でございます日本のPIでございますが、ここが先方と折衝中でございます。インドネシア、マレーシアからは、新聞紙上等においていろいろな請求額が言われておりますけれども、いまだ正式にどれだけの請求があったということは聞いておりません。
#71
○田英夫君 このような事故を今度の条約に当てはめてみると、どういうことになりますか、祥和丸の事故を、この三つの条約に当てはめてみますと、どういうふうに実際に運用されるかという、その最後の基金の問題まで含めて。
#72
○説明員(犬井圭介君) お答え申し上げます。
 祥和丸の事故は、マラッカ海峡で起こりました。マラッカ海峡の周辺の国であるシンガポールとインドネシア、マレーシア、これはまだこの条約に加入しておりません。いまのところ加入するという動きがあるということも私たちは聞いておりません。したがいまして、マラッカ海峡の三カ国がその条約に入らない限り、いままでの状態が続くということでございますが、これが仮に条約に入ると仮定しますと、その領海内で起こった事故につきましては、この二条約が適用されるわけでございます。そうしますと、まず船舶所有者は責任を集中して負うわけでございますが、その責任限度額は約五十億円、二億一千万フランということでございます。祥和丸のトン数はたしかグロストンで十一万トンぐらいでございましたから、まあ責任限度額の上限である二億一千万フラン、つまり五十億円が適用される船型にほぼ近いと思います。したがいまして、その五十億円という上限に限度額がなるのだという前提で御説明申し上げますと、祥和丸の船主はまず五十億円を支払う義務を負います。それについてはPI保険に当然加入しておりますから、それから支払われるということでございます。ただ、祥和丸の船主に仮に故意過失がある場合には、これは責任制限をできませんから、これは無限に責任を負うということになります。しかし、船舶所有者に故意過失があるということは、もともと堪航性のない船を運航の用に供するとか、あるいは資格のない船長を乗せるとかということでございますので、まあそうはないケースでございます。したがいまして、多くの場合、祥和丸の船舶所有者は五十億円の責任限度額に責任を制限できるということでございます。
 それからその五十億円より上につきましては国際基金が補償することになっております。国際基金の補償の限度額は先ほどお話がありましたが、四億五千万フラン、約百億円ちょっとでございます。したがいまして、そこまで国際基金から被害者は補償を受けられるということになるわけでございます。
#73
○田英夫君 実例で大変明快にわかってきたんですけれども、国際基金の条約に加入しているのはまだ五カ国しかないわけでしょう。そうするとこれは発効してない。日本が加わるということで六カ国になりますけれども、発効の見通しは一体どのくらいになっているのか、これ発効しなければ、いま実態的にすぐ困るわけですが。
#74
○政府委員(伊達宗起君) この条約は、御指摘のようにいまだ発効しておりません。協定の第四十条によりますと、少なくとも八つの国が批准しなければいけないということと、さらに第二番目の条件がございまして、批准した、つまり締約国となった国で拠出をしなければならないであろう者が、前暦年中に総量において少なくとも七億五千万トンの油を受け取ったというような国々が批准国にならなきゃいけないという条件がございます。今日のところ、リベリア、シリア、スウェーデン、ノルウェー、デンマークの五カ国が批准しておりますが、これではまだ第一の要件も第二の要件も満たすに至っておりません。しかし、最近の調査によりますと、油の非常に多くを輸入しておりますイギリス、西独、米国、イタリア、オランダ、ベルギー等が本年内には批准をするという情報でございまして、そのように各国とも準備をいたしているようでございます。したがいまして、わが国を含めまして、これらの諸国のうち、まあ三、四カ国が批准いたしますれば、それから九十日目に発効するということで、この条約の発効はそれほど遠いことではないと、そのように私どもは考えております。
#75
○田英夫君 これはさっきの御説明で、かなり明快にわかってきたわけですが、実際にはいままで保険に頼っていたわけですね、実際の支払い、損害の支払い側は。今後はこの基金に頼れるのは、さっきの御説明にもありましたけれども、その上の部分だけということになるわけですね。その責任の限度の上の部分だけということに理解していいんですか。
#76
○説明員(犬井圭介君) 一般的に言えばそういうことでございますけれども、六九年条約には、船舶所有者が原則として無過失責任を負うんだけれども、その責任を負わない場合もあるということで、幾つかのケースを規定しております。それは条約の第三条の二項に(a)(b)(c)というふうなことで書いてございますが、要するに、「当該汚染損害が戦争、敵対行為、内乱、暴動又は例外的、不可避かつ不可抗力的な性質を有する自然現象によって」起きた場合、それから「当該汚染損害が、専ら、損害をもたらすことを意図した第三者の作為又は不作為によって生じた」場合、それから「当該汚染損害が、専ら、灯台その他の航行援助施設の維持について」の瑕疵によって生じた場合には、船舶所有者は責任を負わないということになっております。しかし、このような場合でも国際基金は、戦争、内乱、それから暴動の場合を除いてはすべて補償するということになっております。
#77
○田英夫君 どうもありがとうございました。
 次に日ソ漁業の方に移らしていただきたいと思いますが、この日ソ漁業関係の協定、大変関係漁民の皆さんがこの発効を待ちわびておられると思います。そういう意味でこの協定が早く締結できたということは、私ども大変喜んでいるわけですけれども、この協定というものは、大体内容からいうと漁族の保護とか資源保護とか、あるいは漁業の操業そのものについての規制という形にはなっていないで、日ソ間の漁船のトラブルが起きないようにという点に主眼を置かれていると思うんですが、一番の根本的な問題は、ソ連が日本の近海で、こういういままで最近行っているような操業を自粛をするということではないかと思うんですが、イシコフ漁業相はそうした意味のことを述べたと、こう報道されているんですけれども、イシコフ漁業相なりソ連の関係者の言われている自粛というものの内容はどういうものなのか、ここで述べていただければ明らかにしていただきたいと思います。
#78
○政府委員(内村良英君) 先般ソ連のイシコフ漁業大臣が参りましたときに、安倍大臣とも数回にわたって会談したわけでございますが、その結果、次のようなことが合意されたわけでございます。ちょっと読みますと、「両大臣は、日本国沿岸の地先沖合の公海における漁業操業に関し意見を交換し、一九七五年六月七日に宮澤外務大臣とイシコフ漁業大臣により署名された漁業操業に関する日本国政府とソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定を高く評価した。上記協定の実施に関連し、双方は、同協定の規定に基づき、かつ、日本国において有効である漁業規制措置を考慮に入れ、日本国沿岸の地先沖合の公海における漁業操業に当たって紛争発生の可能性を除去するため、方策を講ずることに合意した。」ということでございます。
 そこで、この日ソ間の漁業操業協定は、公海におきます漁業につきまして、日ソ間の漁業の操業の調整に関する協定でございます。したがいまして、わが国の場合は領海三海里でございますから、日本の沿岸三海里の外におきます漁業の操業の調整に関する協定でございます。ところが、わが国の場合には国内の法規で三海里の外にわたりまして底びき漁業を禁止している海域がございます。と申しますのは、底びき漁業というのは非常に漁獲力が強くて、他の漁業に脅威を与えるものでございますから、沿岸漁業の問題として各地で底びき漁業と他の漁法との間に紛争があり、それを調停するために規則を決めているわけでございます。そこで、ソ連の漁法はまき網も若干ございますけれども、主としてトロール漁法でございますので、これがわが国の漁民感情を非常に刺激しているわけでございます。そこで、わが方から、これは公海の漁業の操業に関する協定ではあるけれども、それ以外に、わが方としてこのような措置をとっているということを、海図を示しまして向こうに話したわけでございます。そこで、できればそういうところの操業を差し控えてほしいということを申し入れたに対しまして、イシコフの方から、ここに書いてございますように、「紛争発生の可能性を除去するため」にどうやったらいいか、今後相談しようということで、自粛するとまでははっきり言わなかったわけでございますけれども、わが方のそういった漁業規則を尊重するというような意味のことを言ったということでございます。
#79
○田英夫君 大変、これは私の誤解かもしれませんけれども、一般的に、今回こういう協定が結ばれたということは、ソ連が日本沿岸の操業を自粛するんだと、こういう受け取られ方が一般にかなりあるように思いますので、しかし、この協定は、実態はどうもそういうものとは簡単に言えないんじゃないか。いまおっしゃったとおり伊豆沖とか、日本側が一本釣りに規制をしているところでトロールをやられるということは、そういう程度のことはひとつやめようということなのか、もっと広範なものなのか。たとえば近くに来ること自体を自粛しようということなのか、文字どおりの自粛なのか、これはどうやら前者のようにいまのお話でも受け取れるんですが、そう考えていいわけですか。
#80
○政府委員(内村良英君) 前者とお考えいただいていいと思います。
#81
○田英夫君 そうなりますと、この十二海里の領海の問題との関連がどうしても出てくるんじゃないだろうかと思います。つまり現在ソ連が日本近海で操業をしている北海道から本州、場合によっては四国沖ぐらいまで及ぶようですが、その範囲の中で、領海が十二海里になった場合はその領海内に入るという、つまり十二海里以内のところでの操業というのがかなりの部分を占めているんじゃないかと思いますが、水産庁なりで把握しておられる限りで、十二海里外なのか十二海里以内なのか、その比率が大まかにおわかりになれば教えていただきたいと思いますが。
#82
○政府委員(内村良英君) もちろん完全に正確なことはわからないわけでございますけれども、水産庁で推定したところによりますと、十二海里内のいろんなトラブルが大体全体のトラブルの七割というふうに見ております。したがいまして、十二海里外は三割ということになります。
#83
○田英夫君 われわれもそういうふうに聞いているわけなんで、ソ連が操業しているのはかなりの部分十二海里内だということになりますが、そうなりますと、先日の国際海洋法会議では決定を見ませんでしたけれども、いまや国際通念のようになっていると思いますが、領海は十二海里というふうに決定される日も非常に近いと思います。まあ悪くとれば、ソ連はそのことを予想して、ひとつ既得権としてこの地域であえて操業をしているんじゃないかという説もあるわけなんですが、これは外務省の条約関係になるかもしれません、あるいは水産庁の世界的な実態との関連もあるかもしれませんが、領海内で外国の漁船が操業することを例外的に認めるというような事実があり得るのかどうか。つまりその限りにおいては領土権を放棄することに広い意味でなると思うんですが、そういう前例なりそういうことがあり得るかどうか、これはいかがですか。
#84
○政府委員(伊達宗起君) お答え申し上げます。
 領海の中に他国漁船の漁業を認めるかどうかということは、私前例があるかどうか、実はここで申し上げるほど存じておりません。しかし、本来領海と申しますのは、やはり一国の、漁業に関して申しますれば漁業権がもっぱら排他的に及ぶところでございますので、他国といたしましては、その領海内での漁業を主張するということはできないものというのがたてまえになっておると思います。もちろん国際間の問題でございますから、沿岸国の同意があれば領海内で他国、第三国、相手国が漁業を行うということにつきまして合意が成立した場合には、それは必ずしも国際法違反というような問題ではないと思います。
#85
○田英夫君 そうなりますと、実際問題としては領海内に例外的に立ち入りを認めるというそのこと、つまりソ連のいまのあれで言えば既得権ということはあり得ないと見るのが常識だろうと思いますが、そうすると、もしそういう既得権をねらっているとすれば、二百海里の経済水域ということが決まった場合のことは考えられるかもしれないということも、あえて非常にこれを悪意にとれば言えるかもしれませんけれども、漁業の専門のお立場から、実際にサバなりの漁獲が得られるのは十二海里の範囲内の方がいいのか範囲外でもかなり漁獲が見込めるのか、その違いがあるのかどうか、その点はいかがですか。
#86
○政府委員(内村良英君) 私どもがソ連から聞いておりますところでは、大体日本沿岸で二十万トンぐらいの漁獲を上げております。そのほとんど大部分は十二海里の外だというふうに考えていただいていいと思います。ただ、トラブルはわが方の漁具、漁民、とのトラブルでございますから、トラブルは十二海里の中が非常に多いわけでございますけれども、ソ連の漁業自体は十二海里の外で行われておりまして、二十万トンのうちのもうほとんど大部分は外でとっておるというふうにお考えいただいていいと思います。
#87
○田英夫君 これは水産庁長官に伺いたいんですが、やはり十二海里の領海ということは漁業のお立場からすれば一日も早いことが望ましいのではないかと思いますけれども、その点はいかがですか。
#88
○政府委員(内村良英君) 漁業の立場と申しますか、沿岸漁民の立場からいけば十二海里の領海宣言が早い方がいいと思います。ただ、これにつきましては他の問題ともいろいろ関連がございますので、政府部内において検討中でございまして、水産庁といたしましては望ましいと思っております。
#89
○田英夫君 これは外務大臣に伺いますが、十二海里の問題はいまも水産庁長官言われましたように、漁業の関係からいえばもう望ましいことはだれが見ても明らかでありますけれども、まさに他の関係があると思います。特に海峡問題ということが非常に微妙に絡んでくると思いますが、十二海里領海宣言というものを政府がおやりになる意図はいまのところどうなのか、その点はいかがですか。
#90
○国務大臣(宮澤喜一君) わが国の沿岸漁民の利益を守るという立場からいえば、御指摘のように、またいま水産庁長官が言われましたように、十二海里を実施するということが望ましいと存じますが、御承知のように、海洋法会議において取り上げられましたその他の問題との関連、ことに海洋法会議がジュネーブで先般一応会期を来年ニューヨークに持ち越しましたときに、議長から各国に対して、最終的な結論はどの問題についても出ていないので、たとえある種の問題について大勢というものが見えたとしても、全体をワンパッケージでなるべく処理をしたいと、したがって、各国とも自分に有利なところだけをいわば先取りをするというようなことはできるだけ差し控えてほしいというような要請があったこともございます。それからまた、十二海里に領海がなりましたときに、恐らく国際海峡というようなものができてくると思いますが、そのような国際海峡が法的にどのような地位に立つかということは、これ全くただいまのところ明らかでございませんので、そうなりますと、それに関連してわが国の船舶の海外における航行、外国船舶のわが国周辺のそれらの海峡における航行等々、いろいろなところに関係をいたしてまいります。したがいまして、先般農林省――水産庁でございますが、運輸省あるいは海上保安庁、防衛庁、外務省等々で協議をいたしまして、先ほど水産庁長官から言われましたように、政府としてはもう少しこの問題について慎重に検討する必要があるであろうということにただいまなっております。
#91
○田英夫君 これは水産関係と同時に外交といいますか、外交、防衛関係と非常に関係の深い問題になりますけれども、いま外務大臣おっしゃったように、来年ニューヨークでということになりますと、その辺ではめどのつく可能性もあると、ということは、日本政府もそれまでに一つの結論を出さざるを得ないのではないかと思いますが、たとえばアメリカやソ連の場合には軍事的に国際海峡を航行することを認めろというようなことを主張する場合に、日本政府もこれに同調をされるのかどうか、この点はどうでしょう。
#92
○国務大臣(宮澤喜一君) この点は、十二海里というのはほぼ大勢になっておりますので、その場合に国際海峡といういま田委員のお話しの、また私が申し上げております国際海峡というようなものが当然考えられてくると存じますけれども、この国際海峡が国際的にどのような位置づけを与えられるかということがまだ十分に議論をされておりません。いわゆるそうやってでき上がりました国際海峡において、船舶の航行の自由の程度はどのようなものであるかということにつきまして合意を見ておりません。何かの合意を見るということになりますと、それが新しいいわゆる国際法上の国際海峡ということになろうと思いますので、わが国はその制度に従いたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
#93
○田英夫君 これもまあ国際的な大きな潮流として、いわゆる第三世界の発言力が非常に増してきている中で、この十二海里の領海というものは、その上に二百海里の経済水域というものまで設定をしようという方向ですから、十二海里の領海はそう決まるということは常識的に認めざるを得ない。どうしても津軽海峡なり日本の周辺の海峡で十二海里の中に入ってしまう、率直に言ってそこをアメリカなりソ連の原子力潜水艦が通ることを認めるかどうか、核の持ち込みではないか。非核三原則の一角が崩れるじゃないかという議論がすでに国会でも行われているわけですけれども、いまの御答弁で国際的な決定の方向に従うということになりますと、いまの第三世界の発言力が増しているという、そして十二海里領海説や二百海里経済水域説が出てきている背景からすれば、やはりそうした海峡は米ソが望んでいるような方向にではなくて、やはり軍事的な航行というものは認めないという方向に決まらざるを得ない。その場合に、一体この問題をどう対処するのか。アメリカの原子力潜水艦もソ連の原子力潜水艦も一切通らないんだという認識の上に立つのか。これは実はわりあい近い将来に決定を迫られている問題だと思いますが、率直のところ、この辺を政府はどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。
#94
○政府委員(伊達宗起君) お答え申し上げます。
 ただいま田先生は、まあ海洋法会議におきます第三世界の発言力というものが強大となってまいりまして、米ソの主張しております国際海峡の自由航行というものが通らないのではないかというふうにおっしゃったわけでございますが、私どもの見ておりますところでは、むしろ国際海峡の自由航行制度というのを認めるか認めないかということによりまして、この海洋法会議の成否がかかっている非常に重要な問題の一つでございます。したがいまして、仮に認められないということになりますと、恐らく海洋法会議そのものの成立がないということで、結局二百海里経済水域も、領海十二海里も、群島水域も、言わずもがな国際海峡もでございますが、そういう問題は御破算になって、現状どおりの事態が続くということになるのではないかというふうに思われます。ただし、この仮定は非常に全く仮定でございまして、むしろ可能性といたしましては国際海峡における自由航行というものが認められるという基礎に立ちまして、一つの、まあ第三世界その他各国の利害の調整がなされていくのではないかというふうに見ております。
#95
○田英夫君 率直のところ、やや希望的な観測じゃないかという気もするのですが、いずれこれは政府としても早い機会に御決断をなさらなければならない問題ですし、同時に、われわれとしても国会の立場からいろいろ意見を申し上げなくちゃならないと思いますので、これは別の機会に譲ります。
 で、この日ソ漁業協定に戻りますけれども、今回新しく協定によって設置されることになりましたこの漁業損害賠償請求処理委員会、これはまあ東京とモスクワに置くということになるわけでしょうが、四人の委員で解決できる範囲というのはかなり私は限られるのじゃないかという気がしますけれども、最近起こっている、特にこの四十八年、九年というところで非常にふえてますね、四十九年は千件を超しているわけですね。こういう状態の中で、それがこの委員会で処理できるのかどうか危ぶむのですが、いかがですか。
#96
○政府委員(伊達宗起君) 私どもといたしましては、四人の委員で処理できるのに困難はないであろうというふうに考えているわけでございます。もとよりこれは、この委員会の性格と申しますのは、御承知のように、何らこの委員会の認定が決定力を持って、裁判のように強制的な執行力を持つというものではございませんで、これは被害者と加害者との間のまあ和解といいますか、そういうものの仲介をすると、一種のあっせん案というようなものをする、そしてあっせん案を出し、かつ、あっせんをそれぞれの政府に進言するということを性格といたしておるものでございますので、その限りにおいては、確かに裁判のような強制力を持たないということはございますけれどど、しかし、もともとこのような民事関係の事件に関しましては、特にソ連との間におきましてはこのような委員会を設けましてそして和解の道を促進するということが有効だろうというふうに考えているわけでございます。
 なお、このような性格を持ちました委員会というものが、今回日ソのこの協定によって設けられたものではございませんので、各国と申しましてもそれほど多くあるわけではございませんが、ソ連とアメリカ、ソ連・ノルウェーというような同じような操業協定がございまして、同じような委員会が設けられております。
#97
○田英夫君 いまお答えありましたけれども、四十九年にいろいろトラブルが起きたというか、被害が出たといいますか、これが千四十二件ある、こう報告されております。そうすると、今度の協定によりますと、協定が発効する前二年間の事故についても損害の賠償請求をすることができるということですから、四十八年漁期と四十九年の漁期の合計になるわけで、それが大体私のところのあれだと千百六十五件について損害請求がこの協定発効と同時に一挙に出るということになると思うのですね。こういうトラブルがこれから減らなくちゃ困るし、協定ができた以上減るとは思いますけれども、まず当初千百六十五件の事件について四人のこの委員会で処理しなくちゃいかぬ。いま米ソの間の委員会のお話がありましたけれども、米ソの間では四十九年、昨年の漁期でアメリカ側に二十五件の被害が出て、申請が出たのを委員会で審査して、そのうちわずか六件が審査を終わっている。そのうち五件が審査どおり円満に解決をして、一件は当事者が拒否をしてしまった。残るところはまだ十九件あるわけですが、これは審査中という、そういう資料があるんですが、そうなると二十五件でもこんな状態なのに、千百六十五件の問題が一挙に出てくるということが処理できるのかどうかということで、実は私のところにも北海道の漁民の皆さんなんかで損害を直接受けられた方が来られますが、この協定が発効して、一日も早く発効することを望んでおられるわけですが、結局はこの委員会にかけられてしまってさっぱり進まないということになると、せっかくの期待も裏切られるんじゃないかと思いますが、この点は大丈夫ですか。
#98
○政府委員(内村良英君) 実際の審査がどう行われるかということが問題でございますけれども、被害の態様見ておりますと、同じようなケースのものが大分あるわけでございます。一つの大きなトロール船が、ずっと引きまして、わが国の沿岸の小さな船の網をずっと壊していったと。そういう同じような類型のものをまとめてやるとか――これまあつくってからの話でございますけれども、そういった工夫と申しますか、審査を早めるためのいろいろな手だては考えなきゃならぬと、こういうふうに考えます。
#99
○政府委員(伊達宗起君) なお補足的にお答え申し上げますと、委員会では委員二人だけが実際に活動することを許されているだけではございませんので、第七条の三項には、「委員を補佐する専門家及び顧問を任命することができる。」ということになっております。したがいまして、もちろんこれは件数が多いとか、事務処理の事態によりましては専門家でございますとか、特に専門家を多くつけまして事務処理の円滑化を図るということができると思います。
#100
○田英夫君 それはぜひひとつ、この協定が走り出せば、先の方では事故はそう発生しないようになるはずでありますから、だからこそ協定なんでしょうから、うまく運用できると思いますが、当初のところのこの一年間の問題といいますか、これが非常に問題だと思ったのでお聞きしたんですが、その点はそういう形で早急な処理をしていただきたいということなんです。
 それからもう一つは、この協定と並行して国内的な措置として四十九年漁期の損害について補償をするということを考えておられるということですが、これはどういう形になるんですか。
#101
○政府委員(内村良英君) 四十九年の場合には特に被害が大きくなりましたので、農林省といたしまして次のような措置を講じました。
 まず第一に、緊急融資措置といたしまして、漁具の購入資金、生活資金及び経営資金につきまして、貸付条件が金利三分五厘、経営資金は五分五厘でございますけれども、そういった安い金利の融資を行ったわけでございます。これの融資枠は九億でございまして、金利につきまして政府が利子補給の補助を行っております。
 それから、これ以外にいわゆる緊急対策事業ということで、被害を受けました道県の漁業協同組合連合会が対策基金を設けました場合に、その基金に対しまして一億五千万円の助成、これは国全体総額で一億五千万円でございますが、を補助したわけでございます。どういうことをやるかと申しますと、まず第一に、ソ連漁船の操業によりまして漁具被害を受けてかわりの漁具を買うという者に対しまして、これを漁具を貸してあげる、漁具貸与事業、まあリースと言っておりますけれども、そういった事業、それからソ連漁船の操業によりまして漁具が海の中に捨てられているというようなことで漁場がかなり荒廃したということを言っておりますので、それの清掃整備事業に対する補助、それからソ連漁船の警告用の放送施設整備事業その他ソ連漁船との関係で何らかの対策が必要であって、それについて水産庁長官が認める事業についても助成をしようというようなことで助成措置をとったわけでございます。これらの措置は一応損害賠償と関係なしに、仮に損害賠償が取れてもこれらの事業は行う、こういうことになっております。
#102
○田英夫君 いまの措置は四十九年漁期ということですが、これはまあ突然非常に多くなりましたからそういう措置をとったんだと思いますが、しかし、大体四十五年ごろから事故が発生し始めて四十八年までの間でも合わせて百八十九件という資料がありますが、これに対しては、四十九年のところはそういう形になるけれども、四十八年以前のところは何ら手が打たれないという不満が出るのではないかと恐れるんですが、その点はどういうふうになりますか。
#103
○政府委員(内村良英君) 四十九年は非常に事故がふえたわけでございまして、社会的にも放置できないというようなところから国がこういった対策をとったわけでございます。そこで、四十八年以前につきましても同様の問題があるじゃないかという御指摘はそのとおりだと思います。ただ、国のこういった対策といたしまして、災害等の場合もそうなんでございますが、ある程度の規模がないとなかなか国の対策に乗りがたいという現実的な面がございます。それから緊急性の問題なんでございますけれども、四十七年、四十八年の問題になりますと、ある程度の歳月が経過しておりまして、ソ連の被害で漁業の継続が困難となっているとか、あるいは資金が不足しているというような話も別にございませんので、私どもといたしましては国として同様な措置をとることは現状においては困難であるというふうに考えております。
#104
○田英夫君 最後に、いまのお話わかることはわかるんですが、百八十九件を救えば、四十九年の千四十二件と百八十九件という比率からすれば、もう一つ努力をしていただいて、百八十九件を救えば四十五年からの表に出ている損害はすべて処理されて不満がなくなるということからすれば、金額にしてざっと計算して四十九年で千四十二件、ほぼ三億四千万ぐらいじゃないかと。そうすると、百八十九件だと一億そこそこじゃないかという気がしますんで、それを全部処理をなさると非常にすっきりするんじゃないか。すっきりというのはおかしいですけれども、すべてのこの問題についての処理ができるんじゃないかという気がしてお聞きしましたが、ひとつこの点も御配慮いただきたいということをお願いして質問を終わります。
#105
○羽生三七君 ちょっと関連して。
 日本近海におけるソビエトの漁船の操業から起こる事故は、かなり日本とソビエトとの間の親善友好関係というものに影響を与えておると思うんです。こういうことがなければもっと親善友好は一層深まると思いますが、ソビエトから言えば、日本の漁船の方が、ソビエトの漁船が日本近海で操業する何十倍の漁船がソビエト近海で操業しておる、そういう反論をされておるようでありますが、それはとにかくとして、こういう場合に、この種の漁業問題の事故に関連をしてソビエトでは漁業関係の担当者だけが日ソ間のこの問題を考えておるのか、あるいは外務省あるいは政治担当者、そういうところで日本とソビエトとの親善友好というようなことからも、もっと高い見地からもこの漁業問題を考えておるのか、その辺は外務省としてはどういうふうに感覚的にお受け取りになっておるのか、その辺の何といいますか、気持ちといいますか、事情をお聞かせいただきたいと思います。
#106
○国務大臣(宮澤喜一君) この問題が、わが国の国民のソ連に対する国民感情に決していい影響を与えておりませんことは羽生委員の御指摘のとおりでございます。政府もそう判断をいたしておりますので、実は今年一月に私が訪ソをいたしましたときに、その旨を率直にグロムイコ外務大臣に伝えました。日ソ関係について決していいことではないことは、漁業の問題にとどまらないので、ソ連政府としてひとつこの問題はその観点からも考慮してほしいということを申しまして、それに対してグロムイコ外務大臣から、自分としてもひとつその問題は考えてみる、もちろん漁業相にも伝える、こういうことであったのでございます。
 それで、ソ連の内部がそれからどのように実はこの問題について動きましたかは事の性質上定かでないわけでございます。あるいはひょっとして、内村水産庁長官がこの間農林大臣と一緒に漁業相にしばしば会っておられますので、もし何か御存じでしたらお答えいただきたいと思いますが、今回こういう協定ができ、あるいは安倍農林大臣とイシコフ漁業相との間で先ほど水産庁長官からお話のありましたようなお話もあり、どうも私のこれは推測を出ませんけれども、ソ連としてはいろいろな工業生産のみならず、農水産生産につきましても、やはり一定の目標額といいますか、ノルマというものが当然あるのだと思います。それが国全体のノルマの場合とあるいは地方的なノルマの場合とあるのではないかと存じますが、どうもそういうこととの関連があって、それを担当しておる人々はそのノルマをやはり遂行しなきゃならぬという立場に置かれたのではないであろうか、そうだとしますと、やはり全政府的な立場でその問題について何かの再検討をしてもらうというようなことがこの問題に関連しておるのではないだろうかというふうに、これは全く推測でございますけれども、ということもございまして、外交当局にも実はそれを申したようなわけでございます。
#107
○羽生三七君 水産庁長官、何かお感じがあったら。
#108
○政府委員(内村良英君) 私三月にモスクワへ参りまして、イシコフ漁業大臣に会いました。第一回の会談のときにこの話を出したのであります、操業協定。そしたらそこで、もうすぐやろう、もうここでやろうじゃないかというようなことで非常に向こうも早く締結することを望んでおりましたから、恐らく政府の部内でも、これはもう放置できない問題だというような話があって、たまたま私が行ったものでございますから、すぐやろうというようなことになったのではないか。日本のソ連の大使館の方々も、大使以下非常に向こうが早く反応してきたので驚いておられましたので、中でかなりこれは放置できない問題だという事実認識が高まってきたのではないかというふうに思っております。
#109
○戸叶武君 いまのソ連の外交の中で、今度のこの協定文ほど日本に対して善意的な印象を与えた具体的な要旨というものはいままでソ連ではなかったのではないかと思うのですが、この問題の前後に、いわゆる覇権論争が噴き上がってまいりましたが、そのときに日本とソ連、日本と中国との関係は微妙な形においてソ連側にも動いたと思います。特にあのときにプラウダの論説を通じて、ソ連側が半公式的と思われるような論調で、日本の成田使節の共同声明なんかをめぐって厳しい批判を伺いましたが、あのときに、このプラウダ関係の論説に対する反応を知りたいのだがどういうふうな見解かという形である有力者が先方から非公式な形で打診に来ましたときに、私は、ソ連があのことを批判していることにおいては相当やはりソ連なりの一つの見解を示したものと思われるが、問題は、あれだけ日本と中国との関係に対して非常に神経質に反応する能力を持っていながら、なぜ平生もっと日本の人々の心をかち取るだけの具体的な事実をつくり上げないのか、この魚の乱獲の問題に対して、また北方領土の問題に対して、およそソ連は日本に対して悪感情を与えるために努めているような気配を感じておるが、どうしてああいうことをやるのかと言いました。
 そのことは多く言いませんが、とにかくいま羽生さんが言われたように、反応の速いのにはだれもこれはびっくりして、あれほど反応の速い敏感性を持っているのならば、今後日ソ平和条約というのも日中平和友好条約に決しておくれをとらないような速さで進む可能性もなきにしもあらずという感じを私は抱いたのですが、その辺、まあ魚心というものもありますが、(笑声)魚の方に対しての魚心の反応に対して、水産庁長官ですか、どういうふうにあなたはお感じになっていらっしゃいますか。
#110
○政府委員(内村良英君) 私といたしましては、やはり日本の沿岸漁民の感情、その他日本国民に対する感情をかなり神経質に心配しているという感じは強く感じたわけでございます。
#111
○戸叶武君 いまやはりこの戦後における外交の一番大きな質的転換というものは、アジア・太平洋地域における平和共存体制を確立することである。具体的には、たとえばこの地域に核の脅威を与えないようにするとか、いろいろな形において外交と防衛の問題が絡みついて世界の注目を浴びているのは、このアジア・太平洋地域だと思いますので、この動きというものはやはり私たちは非常に大切にしなければならない。日本と中国は非常に違っているようであるが、民族の血と文化と言葉なんかに幾つかに結びついている面があって、中国に対しては日本人は近接感を持っているが、ソ連に対しては風俗習慣も若干違うし、何かぎごちないものを感じているのですけれども、こういうふうに、今日の政治はもうイデオロギーの時代じゃなく、脱イデオロギーの時代で、具体的な事実を通じて実証的に物を示さなければ国民も納得しないという時代になったので、それをソ連も受けとめたというところは、なかなかやっぱり共産主義の国家といってもイデオロギーだけじゃ飯は食っていけない、国民を豊かにすることはできないということをやはり把握したんじゃないかと思うんで、私は、この魚の問題、海洋の問題の今後の煮詰め方、持って行き方というものは、そこから雪解けが始まった、日本と中国との加わった一つの考え方が、中ソの激突、対立深刻化と、日本と中国との結びつきの急速化、それに対して、ただ牽制するというだけじゃ、牽制球なんていうのはもう通じなくなってきた、何か具体的な一つの誠意を示さなけりゃ、日本国民というのはいままでつき合っていた範囲内の連中は観念的な連中が多いと思ったら、このごろはそればかりじゃなくてきわめて具体的な実際的なものがなけりゃ国民的合意を得られなくなった、こういうふうに変わってきたということはソ連にとっては革命的な一つの変化だと思うんで、こういうときをやはり逸しては……。さっき聞いていても、宮澤さんなんかの対話外交なんというのは三木さんやあるいは永井道雄君なんかに負けないなかなか対話の名人なんで、そこいらはやはり向こうがびっくりするほどこっちが――向こうがそうならばこっちもこうだと。やはり問題は、善意の交換がなけりゃ、これは道行きだとかいろいろな言葉がはやってますけれども、こういうすべてが何だかぎごちない形だけじゃ国民から遊離してしまう。
 特に外交においては、ソ連に行ったとき私が言ったんですが、ソ連は共産党の独裁だけれども、日本は人民主権の国なんだから、外交というものは国民的合意を得なけりゃ、共産党とどう結ぼうが、社会党とどう結ぼうが、自民党とどう結ぼうが、国民が承知しないんだから、そういうところは、民主主義国家というものはむずかしいようだけど、やはり非常に強固な一つの基盤があるんで、そういうことを無視して権謀術策で外交が可能だと思ったらばソ連としても大間違いなんだからということを、われわれは野人だから勝手な放言をしておりますが、やっぱりそういうところが幾らかわかってきたんじゃないかと思うんですけれども、そういう点で、相手がわかってきたときに、日本がいつまでもわからず屋で、韓国のことばかりなでていたんでは、やはりグローバルな時代に、近いところから行くのが非常に便宜のようだけど、遠くて近いのは男女の仲と言われるけど案外そういうところでないところ、やはりそういうものから近間に変化を起こすことも可能だと思いまして、これは外務大臣には特に心して、その方の口説きの名人というか、対話の名人ですから、私は、むずかしいところから、中国とソ連との平和条約を結ぶ能力を持った外務大臣が出てくりゃ、これはノーベル平和賞は間違いないです。そういう意味で、これは非常に私はある意味においては宮澤さん幸運な人じゃないかと思うんで、こういう機会に、たじろがずにひとつ外交をやってもらいたい。これは漁業協定、小さなようだけど、これがはしりで、きょうは前の私の方の田さんの、非常に柔軟な外交の質的転換に対する対話的論戦を聞いていても、ああ変わってきたものだ、日本は変わらないと思ったらやっぱりテンション民族だけにあって、危機に対しては順応性が非常に速いと思ったんですが、どうでしょうか。
 そういう点で、韓国のことは一番私むずかしいと思うんです。みんな韓国のことをわりあいに知らぬですから、そういう意味において韓国をイスラエルのようにしないためには、近所の方から、外野の方から、中国なりソ連なり、アメリカも遠くの方からずいぶん手を出していますけれども、こういうところをずっと根回しをやる、韓国韓国と言うとかんにさわりますけれども、そういうのじゃなく、こういくとうまくいくのじゃないかと思いますが、どうでしょうか。
#112
○国務大臣(宮澤喜一君) 確かに、このたびの操業協定に示されましたソ連の態度、あるいは先般イシコフ漁業相が見えまして、安倍農林大臣あるいは私なんかと話をいたしました感触からいたしましても、問題の重大さを認識をしておられて、日本国民の感情をこれ以上損なうということに非常に注意をして、それを避けようとしておられるようなところが見えました。これは歓迎すべきことでございますが、私どもとしては現実に今年の秋からの操業等々の実際にそれがどのようにあらわれてまいりますか。あるいはまた、グロムイコ外務大臣は今年中に日本を訪問されるという約束になっておるわけでございますが、それがどのようにして実現されるかといったような点も、私どもとしては注意深く見てまいらなければならないと思いますが、もとより一つのそういう先方が示しました問題認識の態度については、私どもも、とかく御指摘のように猜疑心が従来あったわけでございますから、そういう向こうの気持ちに対してはそのような対処をこちらもやはり態度であらわしていく、大切なことだと思います。
 それで、韓国の問題につきまして、先般いわゆる国連軍の解体について、私どもとしては朝鮮半島の平和維持のための法律的なフレームワーク及び現実に板門店等で行われております休戦監視委員会のような機能、こういうものはやはり必要と思いますが、しかし、そういう条件が満たされれば国連軍の解体というものに決して反対するものではない。そういう問題をくるめて、ひとつ国連においてコンセンサス方式に基づく話し合いができないかという、そういう決議案についてわが国も発案者の一員となったわけでございますが、こういうこともいま戸叶委員の示唆されましたような方向に事が発展していくことを実はこいねがってのことでありまして、願わくはそういうふうになってほしい、また、そのためにわが国としてはわが国独自の努力をいたしたいと考えております。
#113
○秦野章君 私、ソ連との漁業協定の問題を中心に御質問するつもりでおったんだけれども、田さんからポイントのいいところをみんな質問されてしまいましたので、多少重複するかもしれませんが、少し時間を短くして、そしていま戸叶先生のお話にあるように、関連をして、やはりこの問題にどうしても波及して触れなきゃならぬという感じのする問題を二、三手短にお尋ねをしたいと思います。
 まず、協定の問題で、第七条関係の委員会のあっせん、これは水産庁長官にちょっとお聞きしたいんだけれども、このあっせんの機能とか、それから委員会の構成みたいなものは、いままでほかの先例があるとおっしゃいましたね、米ソとか、ほかの国の。そういうものででき上がっているパターンと同一でございますか。
#114
○政府委員(伊達宗起君) お答え申し上げます。
 委員会が設けられましたのは、米ソの協定、それからソ連とノルウェーとの協定、二つがございます。前者は七三年にできた条約でございますが、ノルウェーとソ連との間のは五九年にできているかなり以前にできたものでございます。委員会の機能と申しますか、権限と申しますか、性格と申しますか、につきましては、同じように和解の仲介ということを任務といたしておりまして、その点は今回のこの協定での委員会の性格と同様でございます。
#115
○秦野章君 実際問題として、いまお答えになった先例の実績は、つまり、あっせんとか、損害賠償をあっせんでやるといった問題について、実績はうまくいっていますか。
#116
○政府委員(伊達宗起君) ソ連とノルウェーとの間の紛争処理の実態でございますが、一例でございますが、七三年に取り扱った件数が七件でございまして、そのうちの審査中が二件、それから証拠不十分で要求が認められなかったものが三件でございまして、残りの二件については賠償請求の半額が認められて補償が行われたということでございます。また、ソ連と米国との間では、七四年からこの委員会が機能を開始したわけでございますが、現在までにかけられた件数が二十五件申請がございまして、和解を勧告されたものが五件、それから証拠不十分で取り上げられなかったものが一件、残りの十九件が現在審査中である、そういう状況でございます。
#117
○秦野章君 水産庁にお尋ねしたいんだけれども、いわゆる損害賠償になるような事案で、いままで特に四十八年、四十九年に被害が多かったと。しかし、それにもかかわらず、とにかく相手がソ連だということで、言うならば未届け、潜在的な、泣き寝入りをしちゃっている、そういう被害というのはありませんか。これはないようになっているんですか。
#118
○政府委員(内村良英君) 私どもの方は、県から被害届けがありましたものは全部外務省につなぎまして、本来これは民事事件でございますからその人が要求すべきものでございますが、相手がソ連というような国柄でもございますし、私どもの方が外務省に通報いたしまして、外務省から向こうの政府に要求していると、こういうかっこうになっております。ただ問題は、今後におきましても私どもこれから運用を非常に注意してやらなければならぬわけでございますが、はっきりしないやつがあるわけです。たとえば、こういう船にやられたんだということを持ってまいりまして、私どもの方で外務省に話すと同時に、東京のソ連の大使館にもクレームを持っていきますと、これは一見ロシア語に似ているけれども、この字はロシア語の字じゃないと、こういうようなことを言われるわけです。と申しますのは、わが国の沿岸漁民は、最近では英語のアルファベットは読めますけれども、ロシア語のこんな字はちょっとわからないわけでございます。そこで、しかも、とっさのことでございますから、なかなか証拠が把握できないというような問題がございまして、今後証拠をどうやって集めるかというような問題につきましては私ども十分指導してやらなければいかぬ、こういうふうに思っております。
#119
○秦野章君 さっき十二海里の問題が出ましたけれども、伊豆七島沖のいわゆる銭州というサバの産卵場ですね。ああいうようなところでトラブルが起きているんだけれども、あれは十二海里説になればもうほとんど解決するんじゃないですか。
#120
○政府委員(内村良英君) 十二海里説になればかなり解決いたしますけれども、全部は解決できないと思います。銭州の漁場は十二海里の外もかなりございますから。
#121
○秦野章君 外務大臣に、ちょっと十二海里の問題で。先ほどいろいろやりとりを拝聴しておりましたが、衆議院の外務委員会等で前に外務大臣としては十二海里領海説を日本が採用するという方向にかなり積極的な発言があったようなふうに私らも受け取ったんですけれども、やや、その後情勢が後退をしてきたというような感じがいたしますが、その点いかがですか。
#122
○国務大臣(宮澤喜一君) この問題は、実は、私としては、水産庁のお立場はよく存じておりますので、それを考えながらやや慎重にお答えしてまいったつもりでございましたが、実は、ジュネーブの海洋法会議にわが国の代表を送りますときに基本的な訓令をつくりました。その際、閣議におきまして、このジュネーブで最終的な海洋法の結論が出れば無論それに従うと。しかし、万一出ないときは、十二海里の問題は関係省庁が多いので、その段階で改めて協議をしようと、こういうことで、農林大臣を含めまして閣僚間の閣議における了解ができました。結果といたしまして、ジュネーブの海洋法会議はこの問題について結論を得るに至りませんでした。ニューヨークへ延びたわけでございます。したがいまして、ただいま、政府としては、先ほど私も申し上げ、水産庁長官も言われましたが、水産庁の立場から言えば十二海里が直ちに実現されることが望ましいことであろうが、海洋法会議とのいろいろな関連、先ほどもちょっと申し上げたとおりでございますが、各省庁に関係する問題、それから国際海峡というものが果たしてどのような法律的な位置づけを持って生まれるかということも未知数でございますので、政府としては、本問題についてしばらくなお慎重に検討いたしたいというふうに各省庁で申し合わせをいたしておるわけでございます。
#123
○秦野章君 今度のこの協定ができたことに多少関連するんだけれども、日中漁業協定というのはどういう状況になっていますか、交渉経過は。
#124
○政府委員(内村良英君) 日中漁業協定につきましては、いわゆる日中の実務協定で最後に残った協定でございますので、昨年の五、六月北京で交渉を行いまして、ことしの三、四月東京で交渉が行われております。これにつきましては、かなりの意見の相違がございまして、まとまらなかったわけでございますが、本年五月、六月と交渉を行いまして、六月二十二日――これまでございました民間協定が切れる期限が六月二十二日だったと思うのでございますが、それを目標に両国詰めまして、いろいろな問題につきましての原則的な合意に達したわけでございます。その結果、民間協定はとりあえず半年延ばしまして、現在北京において条約文につきまして交渉中でございます。これは近くまとまる見通しでございます。
#125
○秦野章君 先ほど来、ソ連の問題――対ソ、対中ですね、そういうことを見ながらいろいろアジアの外交というものはなさっているんだろうと思うんだけれども、やっぱり日中漁業協定の目安がついたような方向があって日ソ漁業協定もでき上がったんではないかというふうに私どもは想像するんですが、つまり、その間政府はうまく善処したなあという感じもするんだけれども、そういう配慮もしながらやっているんだろうと言っても、そうだとそのまま返事をなさるかどうかは別として、いずれにしても、アジアの問題というものは中ソの対立を抜きには考えられないということは事実だと思うんですよね。
 そこで、漁業の問題の今後においても、そのことを利用すると言うんじゃないけれども、やっぱり国益という観点に立って外交と水産庁の関係を一本にして漁民のために積極的な努力をしてほしいということがつくづく感ぜられるわけでございますが、このアジアにおいて中ソ対立というものがどう考えてもいろいろ影響してくる。しかし、いまや、アジアだけじゃなくて、ヨーロッパの問題もそのような姿が投影されて動いているというような感じもするわけです。中ソ対立があってその後ろ側に米ソの大きな対立があるといったような感じがするんですけれども、関連して、最近マレーシアとかフィリピン、それからタイ国、こういういわゆるASEAN諸国が対中国交の正常化を図りつつあるわけでございますけれども、こういう動向は非常に注目されますけれども、これに対してアメリカのベトナム敗退後、日本の、わが国の外交というものがどういうふうに展開されていくのか、この点を外務大臣からちょっと伺いたい。
#126
○国務大臣(宮澤喜一君) 一般的にASEAN諸国を含めまして、インドシナ半島の国々もそうであろうと推察いたしますが、やはり国際的なデタントの中で、前にも申し上げたことがあるかもしれませんが、自分たちの民族で自分たちの将来をつくっていきたいという気分が非常に強いと存じます。そうしてその志向するところは、恐らくはやはり国内における正義と申しますか、平等と申しますか、まず生活水準を向上させ、そして所得や富の不均等についての是正というようなことを目指して進んでいくというのが一般的な私は傾向ではないかと思うんでございます。そのことをわが国は余り体制にこだわらずに、できるだけ求められれば支援をしていきたいと思っているわけでございますが、その中でASEANの国々が最近かなり急速に中国承認に向かっておりますことについて、一部にはア人リカ離れというような言葉で表現されておりますけれども、私自身は、もともとこのインドシナ半島の事態がああなります以前からもASEANの国々は幾らか中立的な志向というのは持っておったと思うんでございます。今回もしたがって、アメリカ離れということではなくて、アメリカのインドシナ撤退が契機になったことは確かでありますけれども、従来関係が空白でありましたところの大陸の中国と国交を回復しようと、あのときに始まったことではなくて、従来からありました志向が、実現が早まったということになるのではないであろうか。したがって、これらのASEANの国々は、恐らくはアメリカが完全にこのアジア地帯から手を引くことを希望しておるのではなく、やはり米中ソ、国によってはわが国をその中に考える国もありまして、これは幾らか別の意味でなければ見当違いだと思いますけれども、そういう中のバランスをとりながら、自分の民族の独立と申しますか、自主決定というものを全うしていきたいと、こう考えておるのではないだろうか。ただその中で、たとえばインドネシアのように、そういう大きな方向は恐らく注意をしていながら、過去における経験あるいは国内に相当多くの中国糸の民族、華僑等を抱えておるというようなこと等々から、テンポの速い遅いはやはりあるように存じますけれども、大きな傾向としては、私は、先ほど申し上げましたようなことを志向しているのであろうし、その点ではわが国も基本的に反対があることではございませんから、やはりそういう方向を求められれば、わが国としてもお役に立っていきたいというふうに考えております。
#127
○秦野章君 いまのお話にストレートには関連しませんけれども、ソルジェニツィンが、最近の外電の記事なんですけれども、第二次大戦が終わって冷戦構造の中で第三次大戦が始まっている、アメリカの敗退というものは、この第三次大戦の終結なんだと、ソ連の勝利に終わったんだと、アメリカの敗退に終わったんだと、こういう評価というか、見方をソルジェニツィンがしているんですよ。これについてどう思われますか。
#128
○国務大臣(宮澤喜一君) 私はソルジェニツィンをほんの少ししか読んでおりませんので、実は見当違いなことを申し上げるかもしれませんけれども、あの人は、彼の信ずる自由というものを求めてソ連を去ったのだと思いますが、どうもソルジェニツィンの考えている自由というものが、いわゆるたとえば経済政策における自由経済であるとか、あるいは政治哲学におけるわれわれの考えているデモクラシーというようなものと、どうも私は違うのではないかと、同じものと観念しては間違うんではないかというような、ごく本当にささやかな自分の乏しい――間違っているかもしれません――知識から、私は何となく感じます。と申しますのは、経済政策の面で、ソルジェニツィンはかなり経済成長であるとか、あるいはいわゆる工業化というものに懐疑的であります。むしろ否定的ではないかと思われるような、俗な言葉ですけれども農本主義的な、そういう社会の成長というものを理想にしておるのではないかと思われる節がございます。と同時に、政治形態としては、いわゆるお互いが言っておりますデモクラシーというようなものを最終的な理想とは考えずに、どうもやや哲人政治のようなものを、これは民族によって違うのかもしれませんけれども、ソ連の場合にやはり理想と考えておるのではないかというふうに私には思われるわけでございます。そういたしますと、その辺から、戦後アメリカによって代表されましたところの、いわゆる自由主義経済であるとか、あるいはデモクラシーであるとかいうものについて彼なりの懐疑を持っておったのではないか。もちろん、平和主義者でございますから、ベトナムにおけるアメリカの行動というようなものについてはことさらそうであったと思うんでございますが、そういう観点から、あるいはいま秦野委員の言われましたようなことが解釈ができるのであろうかとも思いますが、いかにも私の知識が貧弱でありますので、十分お答え申し上げることができません。
#129
○秦野章君 ぽつぽつと、実は原理的には関連しているつもりなんですけれどもね。いま一つは、例の佐藤・ニクソン沖繩返還のときの共同声明の中で、いわゆる韓国条項ですね、これは大臣も国会においてしばしば繰り返してこの韓国条項を確認しておられますけれども、これは北鮮に対決する意味合いのものなのかという点についてちょっと意見を伺っておきたい。
#130
○国務大臣(宮澤喜一君) これはもう、もとより北鮮に対決をするということは、われわれかつて考えたことはございませんし、一九七二年に南北間で一度は合意いたしました対話の路線というものが進められることを心からこいねがっておるわけでございます。現に、北鮮とは国交は開いておりませんけれども、人的、経済的あるいは文化的な、あるいはスポーツなどの交流は、これはやっておるわけでございます。で、韓国条項を私が確認いたしました意味は、これはもう韓国の平和と安全がわが国の平和と安全に緊要な関係があるという点は、朝鮮半島に紛争が起こりましたときには、わが国としては地理的にも歴史的にも非常に近い地域でございますから、ごく常識的に当然緊密な関係があるということは私は当然のことであると考えて申し上げておるわけでございます。で、北鮮とわが国が対決をする意思が全くもちろんないということは、一つは、先ほどもちょっと申し上げましたが、先般の国連軍解体の決議などにつきましても、これはもう解体ということはやはり一つのわれわれとして認めるべき方向であって、そのかわりに、平和維持のためのフレームワークなり実施機関を置いておくことは、これは必要でございますから、そこへそういうような構想で、北鮮も、あるいは北鮮に友好的であると考えられます諸国も、ひとつ一緒にそういう方式を考えてみないかという呼びかけでございまして、あそこから問題がほぐれていきましたら非常に幸せだと思って提案国の一国となったようなわけでございますので、敵視というような考えはもとより持っておりません。
#131
○秦野章君 要するに、対決が強まれば危険がもたらされるというのは、これはまあ当然なんです。やはり現状固定ということを強調すれば、またこれ、おかしくなりますけれども、しかし、いずれにしても急激な変化を現状に引き起こさないという配慮、そういう上に立って緊張緩和を図っていく、そういうふうにならぬと核軍縮も軍縮問題もできないのですから、私はそういう意味において、このアジアの周辺における、さっき戸叶先生もおっしゃっていましたけれども、やはり大国の合意といいますか、日本を含めてそういう方向にやっぱり努力をしていくしかないのだ、また、そのことは大国もだんだんわかってくるんじゃなかろうか、でないと火が噴けばその火が人類絶滅の方向にもいくのですから、そういうふうにも思うのでございますが、これはまあ先ほど来のお話、すべてそれに関連するのですけれども、日中平和友好条約が今度の国会で間に合わなかった。覇権条項でいまいろいろ難航しているというともわれわれも承知しているわけですが、これに関連して、この間ソ連の政府が、さっき戸叶先生もおっしゃっていましたが、日中平和友好条約交渉に関連しまして、わが国の政府が第三国諸国との関係を発展させるに当たって、日ソ関係を阻害するような措置をとらないように希望するということを発表したわけですね。これはまあ余り目くじらを立ててどうのこうの言うというのも問題だと思うが、いささかやはり内政干渉的なにおいがせぬでもない。これに対して外務省が一応の処置というか、態度をとられたと思うのですけれども、そこのところをちょっと……。
#132
○国務大臣(宮澤喜一君) 六月の十二日でございましたけれども、ソ連側からモスクワ駐在の重光大使に対して、先ほど秦野委員の触れられました声明を朗読をした後に、その文書を手交いたしまして、これについては発表は両国とも随意に、いいときにやろうではないかというような話がございました。私どもは事の性質上わが国から発表する必要を認めませんで、そのままにいたしておきましたところ、その後ソ連側が、一週間余りいたしまして、この声明を発表いたしたわけでございます。内容は各新聞にそのとおり伝えられましたので、ごらんになりましたとおりでございますが、要するに、中国とわが国が平和友好条約交渉をしていく過程において、中国がソ連邦に対して向けられた条項を無理に挿入しようとしておるのではないか、それに日本国を何らかの形で引き込もうとする意図があらわれているのではないかというようなことを述べておりまして、そして日本がそのようなソ連邦との善隣関係を損なうような結果にならないことを希望しておるといったような趣旨でございました。これに対してわが国は、ソ連の声明が発表されました後、直ちに重光大使がグロムイコ外務大臣に面会を申し入れまして、わが国としてはもとよりそのような意図はないことは明らかであって、わが国が日ソの友好関係を望んでいることはいろいろな事実から徴して明らかである、ことに田中首相のソ連訪問以来ことさら明らかであるし、三木総理大臣もそのことを表明をしておるのであって、したがって御懸念の向きは全く御無用のことと考えますということを返答いたしたわけでございます。御指摘のように、わが国としては余り目くじらを立てる筋のことでない。ソ連には恐らくソ連内部のいろいろ立場がございましょうしいたしますから、目くじらを立てることはないと考えたわけですが、一応ソ連のいままでの行き方から見まして、そのような声明を大使まで呼んでいたしました以上は、それに対してきちんとこちらの立場を述べておく方が将来に誤解を与えまいと思いましたので、そのような日本政府の声明をグロムイコ外務大臣に手渡したということでございます。
#133
○秦野章君 次に、台湾との関係でちょっと伺っておきたいと思うのですけれども、一九七二年九月までに、当時の日華間に存在した外交関係は、その後やむなく不幸にして途絶をしたわけでございます。しかし私は、経済交流あるいはまた人的交流を維持することは、双方ともやはり現在ひとしく必要とするところがあるというふうに考えるわけです。また、世界の多くの国々が台湾にある政府を今日なお中華民国政府として認めている。そして政治的あるいは実務的な関係を持っているのも事実でございます。今後わが方は、台湾との間の関係をどのように進めていくのか、その点をちょっと聞かしていただきたいと思います。
#134
○国務大臣(宮澤喜一君) 私も、ただいま秦野委員の言われましたと同様の認識を持っておりまして、今後の双方の関係は、いま秦野委員の言われたような現実を認識しつつ展開されるべきであると考えております。わが方といたしましては、今後交流協会が一層拡充強化されまして、これによってそれぞれの立場から、国際慣例に従い、相互に礼を失することなく、互恵ということで友好的交流が一層促進されることを希望するものでございます。
#135
○秦野章君 ついでに伺っておきますけれども、わが国は別として、国連に加盟をしている国を含めて、多数の国が台湾にある政府が中国の唯一の合法政府であると、こう、現に認めている。これらの国が青天白日旗を国旗として認識しているということに関連して、青天白日旗についてはどう考えておられるのか、この点もついでに伺っておきたいと思います。
#136
○国務大臣(宮澤喜一君) たしか、衆議院の外務委員会におきましてお答え申し上げたことがあったと記憶いたしますが、昨年の春のわが方の青天白日旗に対する言及が誤解を招いたことはまことに不幸なことであったと存じます。しかし、秦野委員が御指摘になりましたような事実、すなわち、それらの国が青天白日旗を国旗として認識しているという事実は、わが国を含めて何人も否定し得ないところでございます。
#137
○秦野章君 最後に、キッシンジャー長官が中国を去年訪問しだときに、ことしフォード大統領が、たしか秋ですね、訪中するという合意が成立したような記事が出ておりましたが、これについて何か政府は、これに関連して時期とか訪問、この問題を聞いておられますか。
#138
○国務大臣(宮澤喜一君) 五月の末にパリでキッシンジャー国務長官に会いました際にこの話が出まして、フォード大統領は今年中に中国を訪問するという方針は変えておらないと、しかし、その時期についてはまだ決定をしていないと、こういうことでございまして、それが私が一番最近の機会にキッシンジャー国務長官に聞きましたところでございます。恐らく、その後その情勢に変化はないものと存じます。
#139
○委員長(二木謙吾君) 四件についての質疑は、本日はこの程度といたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後三時五十二分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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