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#1
第075回国会 法務委員会 第3号
昭和五十年二月十八日(火曜日)
   午前十時二十五分開会
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         多田 省吾君
    理 事
                高橋 邦雄君
                永野 嚴雄君
                佐々木静子君
                白木義一郎君
    委 員
                片山 正英君
                柴立 芳文君
                安井  謙君
                中村 英男君
                森中 守義君
                矢田部 理君
                安永 英雄君
                橋本  敦君
                岩上 妙子君
                下村  泰君
   国務大臣
       法 務 大 臣  稻葉  修君
   政府委員
       法務政務次官   松永  光君
       法務大臣官房長  香川 保一君
       法務省民事局長  川島 一郎君
       法務省刑事局長  安原 美穂君
       外務省アジア局
       次長       中江 要介君
       国税庁調査査察
       部長       渡邊 喜一君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        二見 次夫君
   説明員
       国土庁土地局国
       土調査課長    高田 徳博君
       法務大臣官房人
       事課長      前田  宏君
       建設省計画局不
       動産業課長    川合 宏之君
       自治省行政局振
       興課長      竹村  晟君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○検察及び裁判の運営等に関する調査
 (司法試験に関する件)
 (尊属殺に関する件)
 (刑事被害者補償制度に関する件)
 (民事行政に関する件)
 (刑法改正に関する件)
 (司法書士の待遇改善に関する件)
 (宅地建物取引業法違反問題に関する件)
 (韓国において逮捕された日本人学生の釈放問
 題に関する件等)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(多田省吾君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 検察及び裁判の運営等に関する調査を議題といたします。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#3
○佐々木静子君 本日は、先日の法務大臣の御所信の表明に対する質問をさせていただいて、それから個々の問題について私は尋ねさせていただきたいというふうに考えておったわけでございますが、大臣がまだお入りになっておりませんので、御所信に対する質問という部分は順序を後に移しまして、まず、司法試験の受験の事柄について法務省の方にお尋ねいたしたいと思います。
 司法試験が非常に門戸を広く開放している国家試験であるという点に対しては、私はかねてより敬意を表しているわけでございますが、特に昭和四十八年度以降、司法試験に目の見えない方にも受験資格をお与えになったという事柄について、当然のことではございますけれども、そこまで配慮をされたということに対しましては非常にけっこうなことであるというふうに思っているわけでございます。
 ただ、この受験の方法の問題でございますが、これは目の見えない方でございますので、点字による受験をお認めになったわけでございますけれども、受験の答案を書く時間が、目の見える者が普通の文字で書く時間と同じ時間しかとっておらないために、たいへんに目の見えない方の点字による受験が事実上不利益な立場に立たされているというようなことで、これはやはり平等に、目の見えない方も同じだけの機会を与えて差し上げるべきではないかというようなことで、この問題が広く大きく世論を呼んでいるわけでございます。
 この点に関しまして、前回はどのような試験方法をおとりになったのか、担当の課長さんから簡単にお述べいただきたいと思います。四十九年度のことでございます。
#4
○説明員(前田宏君) ただいま御質問の盲人の司法試験受験者に対する試験の実施方法でございますが、この盲人の方が受けられましたのは前回だけでございませんで、もう一つ前も実は受けておるわけでございます。何分にも私ども初めてのことでございまして、ふなれの点もあったわけでございますが、最初の回と前回とは若干やり方も違っておりますので申し上げますが、第一回のときは、受験地も東京の方がいろいろな面でよかろうということで東京でやったわけでございますけれども、第二回目は御本人の希望もございまして、京都で行ったということが一つございます。
 それから先ほども御指摘のように、問題を点訳しておるわけでございますが、これは厚生省の国立東京視力障害センターの職員の方にお願いをしておるわけでございまして、この点訳につきましてもいろいろと技術的な点訳の仕方についてあるようでございまして、その点も第一回の経験にかんがみまして、第二回目は改善と申しますか、いろいろ前よりは受験者の方にわかりやすいような方法をとったというようなこともございます。
 それから一番問題は、司法試験の時間の問題であるわけございますが、この点につきましては、第一回目のときは特に本人のほうからもその問題が指摘されていなかったようでございまして、時間は一般の受験生の方と同様ということで扱った次第でございます。その後、いま御指摘のように時間をある程度延長してもらいたいというような御要望もございまして、いろいろと検討したわけでございますけれども、結論といたしまして、はたして時間を延ばすべきかどうか、また、延ばすべきだといたしました場合に、どの程度延ばすのが先ほど先生もおっしゃいましたように平等であるかどうかという問題が逆にあるわけでございまして、その点いろいろと資料を収集検討したわけでございますけれども、前回の試験実施の時点におきましては、まだその点が明確に、私どもといたしましてといいますか、管理委員会でございますけれども、いずれとも決しかねるという状態でございましたので、第二回目のときも試験時間は一般と同様ということで実施をした次第でございます。
#5
○佐々木静子君 大阪の弁護士会には、耳のこえない方で弁護士活動を全く十分にやっていらっしゃる、また聾唖者の方々から非常に頼りにされて、聾唖者の人権を守るためにもそういうことで大変に喜ばれている方も現にいらっしゃるわけでございますので、これは目の見えない方が法曹になられるということは、その方の機会均等の問題だけではなしに、社会的にもいろいろな大きな意味を持つものだというふうに思うわけでございます。だといって、十分な能力がないのに必要だからということでなっていただくわけには、むろんそういうことをお願いしているわけではございませんので、やはり少なくとも普通の目の見える者と同じだけの立場で受験ができるような態勢を整えていただかないと、これは事実上障害者差別というようなことにもなるのではないか。そういうことでは受験者御本人の人権の問題もありますし、社会的にもこれはやはり憂えるべきことであろうと思いますので、いまいろいろと御検討いただいているということでございますけれども、実質的な平等が保障されるように、ぜひ御配慮をいただきたいと思うわけです。
 この件についても、つとに法務省でもいろいろ御研究になっていらっしゃると思いますが、教員の採用試験の場合でございますと、千葉県などでは時間を一・五倍、大阪の場合で一・四倍のところと一・五倍の受験時間を与えているところがある。また大学の入試関係では、たとえば東京大学の入学試験では一・五倍の時間を盲人の場合に与えている。そのほかの大学においても丁三倍とかあるいは一・五倍というふうなのが大体多いようでございますので、それらもかなりの根拠のあることではないかというふうに思うわけでございます。
 私も目の見えない依頼者などを抱えまして、点字で手紙を出してあげられれば非常にいいと思って覚えてみたこともあるのですけれども、これは実際のところ、目で見て点字はアの字はこう、イの字はこうというふうに何しても、触覚に訴えてそれを読むというのはごく専門家の場合であっても、ベテランの点字を読むのを専門としていらっしゃる方であっても、点字用紙の八百五十字詰めの用紙である場合には、一時間の判読能力というものは六十ページが限度である。すなわち三十丁が限度であるというふうに、これは専門家の話でそうなっているわけでございますが、先日の四十九年度の試験問題でありますと、これは九十三丁百八十六ページございますので、それを三時間となりますと、点字を判読するのが、専門職の方であってもその時間中に問題を読み切ることが不可能であるということでございますので、それに対して考えて答えを書くというところまで、これは非常に時間的に不可能なわけでございます。
 私ども普通の字を読むときは、漢字などが入っていればなおのこと一々読まなくても目で見れば大体問題の意味がぱっとつかめるわけですが、これが同じ目で見ても、電文のようにかたかなで全部書かれた場合には、何回も読み返してみないと、その文章の意味を読むのは大変に骨が折れるわけでございますが、それがまた触覚に訴えての点字となれば、大変に時間がかかるということはこれは常識で考えてもわかるわけでございますので、その点について、ぜひとも次年度からは時間の延長、延長というよりも、点字によるために多く要する時間というものを受験時間の中に点字の場合は加算していただく、そういうことをぜひお願いしたい。これはこの一受験者の問題だけでなしに、これから先にやはり盲人で試験をお受けになろうという方もどんどんふえてくるのではないかと思いますので、ぜひとも平等権を確保するためにお願いしたいと思うわけです。その事柄に対しまして、御担当の人事局長、あるいはきょうは次官もお越しでございますので、法務省の御見解を述べていただきたいと思います。
#6
○説明員(前田宏君) ただいま佐々木委員からいろいろと御指摘の点は、私どももいろいろな点で承知しておるわけでございますが、何分にも、ただいま御指摘の学校の入学試験あるいは採用試験等の例も御指摘いただいたわけでございますけれども、現に御指摘のように一・三倍あるいは一・四倍、一・五倍というところもございますし、中には丁二倍というようなところもあるようでございますし、反面、いわゆる盲人の方の受験を認めながら時間の延長を認めていないところも一部あるように聞いておるわけでございます。そのようなことで、先ほども申したことと同じようなことになりますが、時間を延長することの可否、また仮りに延長するといたしました場合にどれだけ延長するのが相当であるか。反面申しまして、万一必要以上に時間を延ばしますと、一般の方よりもかえって有利になるという妙な結果になってもいけないわけでございますので、実質的な平等とうらはらの問題があるわけだと思います。
 そういうようなことで、私どもといたしましても、ほかのいろいろな大学あるいは先例等を引き続き調査検討しておる次第でございますので、その点を今後も続けて関係資料の収集、検討を管理委員会の方にもお願いいたしまして、まあ抽象的なお答えでございますけれども、合理的な結論を出したいというふうに考えております。
#7
○佐々木静子君 次官の方はいかがですか。いまのお答えではちょっと、本当にやってくださるのかどうかということですね。御検討してくださっていることは、私お尋ねする前から伺ってよく知っているわけでございますので、これはそう言っている間にまた五十年度の試験もそろそろ始まるわけでございますから、やはり検討ばかりに時間をかけていても仕方がない。時間が実際に人よりかかることだけは間違いないわけでございますから、前向きに取り組んでいただけるわけでございますね。これは大阪弁護士会からも強い要望が出ておりますし、日弁連の方からも強い要望が、全部の弁護士からも出ているわけでございます。その点いかがでございますか。
#8
○政府委員(松永光君) 先生御指摘の盲人の司法試験について、受験させる以上は身体に障害のない普通の人たちと実質上平等になるような形で受験させるのが望ましいと思います。その点についてはいま課長からお答えがありましたように、担当の司法試験管理委員会で、時間延長を認めるべきかどうか、認めるべきであるとするならばどのぐらい延長させるべきかということについて、関係資料を収集して検討を続けておるということでございますが、慎重かつ速やかに検討を終えていただいて、それを待って結論を出したいと、こう考える次第でございます。
#9
○佐々木静子君 それでは、ぜひとも速やかに御結論いただけますように(「そんな答弁あるのかはっきり言いなさいよ」と呼ぶ者あり)――いまも安永委員からも御発言ありましたように、これはもう試験が春にあるわけでございますから、大体いつごろまでに結論をお出しになるおつもりですか。
#10
○政府委員(松永光君) 先ほど課長のほうからお話がありましたように、常識的に言えば、延ばすというのが公平になるであろうということは考えられます。したがって、その方向で進めるとして、どの程度が妥当かということを速やかにいろいろな資料に基づく検討を終えていただいて、その結果を待って速やかに善処したいと、こう考えます。
#11
○佐々木静子君 それでは司法試験管理委員会を次はいつお開きになるわけですか。そして、そのときに結論が出るわけですか。また、出していただけるというお約束をしておいていただきたいと思うわけですけれども。
#12
○政府委員(松永光君) いずれにいたしましても、本年度の試験に間に合うように結論を出したいと、こう考えます。
#13
○佐々木静子君 いま今年度、五十年度の司法試験には時間延長の件について間に合うように結論を出す、そういうお約束をいただいたというふうに私承りました。この件については、試験の前までに一応また法務委員会で確認をさせていただきたいと思います。
 それでは時間の都合もございますので次の議題に移りたいと思いますが、刑事局長お入りでございますから、ちょっと刑事に関することを先にお尋ねさせていただきたいと思います。
 昭和四十八年の四月四日に最高裁で尊属殺が違憲であるという判決が出されましてから、もうすでにかれこれ二年の歳月を経ようとしているわけでございます。その後、政府のほうから違憲判決に対して、それに順応するだけの法案を御用意いただけるものかとお待ちしておったようなわけでございますが、今度の国会にもこの最高裁の判決にのっとったような法の改正案というものは、法務省のほうからは提案されておらないというようなことでございます。その点非常に遺憾に思っているわけでございますが、四十八年の四月四日この判決があって後、検察庁のほうとしますと、この尊属規定に該当する刑事事件についてはどのような取り扱いをいままでされてきたのか、簡単にお答えいただきたいと思います。
#14
○政府委員(安原美穂君) この違憲判決が出ました直後、直ちに最高検察庁から全国の検察庁に指示を発しまして、尊属殺人に関する刑法二百条の規定は違憲であるという判決を踏まえまして、自後、いわゆる尊属に対する殺人の罪につきましては普通の殺人罪の規定の適用をするようにという指示をいたしまして、それに従いまして現実に運用がなされておるというのが実情でございます。
#15
○佐々木静子君 いまの御答弁は刑法二百条に関する部分についてでございますね。ほかの尊属傷害致死とか、あるいは遺棄とか、あるいは尊属逮捕監禁ですね、ああいう別の関連する三つの条文についてはどのようなお取り扱いをしていらっしゃるのか、その点はいかがでございますか。
#16
○政府委員(安原美穂君) 御案内のとおり、最高裁の判決は尊属殺人に関する違憲の判決でございまして、その他の尊属に関する加重規定、すなわち尊属傷害致死とか、あるいは尊属遺棄とか、あるいは尊属に対する逮捕監禁の罪というものにつきましては違憲とする判決があったわけではございませんので、直接あの判決が影響するところはないということも考えられたのでありまするが、当時最高検察庁におきましては、当分の間、これら違憲と直接された犯罪でないが尊属に対する加重規定の適用されるべき罪の事件につきましては、それを処理する場合あるいは求刑を行う場合に、あらかじめ最高検に相談をして求刑等をきめなさいという指示をいたしておりますが、この通達も、その後一年を経過いたしましたころ廃止されておりますので、現在のところは尊属の致死とかあるいは逮捕監禁という罪につきましては、従来どおりの尊属加重規定を適用する運用がなされておるはずでございます。
#17
○佐々木静子君 この四十八年四月四日付の、いまおっしゃった次長検事からの通達ですけれども、それは一年後はそのようになっておらないというのは、どういうわけからでございますか。
#18
○政府委員(安原美穂君) 御指摘の一年後の廃止の通達の理由を読みますと、その後これらの関係につきましての各地の運用の実態を見ると、その処理なり求刑が適正になされつつあると認められるので、一々最高検察庁のほうでチェックしなくてもよくなったから廃止するということでございます。
#19
○佐々木静子君 いまお話のあった、ほかの三つの条項についてももちろん問題としたいわけですけれども、この刑法二百条の改正というようなことについては、法務当局とするとどのように考えておられるわけなんですか。
#20
○政府委員(安原美穂君) 率直に申しまして、この違憲判決が出ましたとき、違憲の判決が出たから直ちに当該条文は法律が無効になるという考えではございませんけれども、最高裁判所の判決を尊重するというたてまえから、当時、この二百条をどうすべきかということを法務省としては考えまして、尊属殺人の実態あるいは尊属に対する考え方の世間的な評価というようなものも考えまして、立法政策といたしましては、最高裁の判決を尊重するたてまえから尊属殺の規定を削除すべきだという考えで、そして最も重い殺人の罪について尊属加重規定を廃止するならば、それよりも軽い罪の類型である致死罪とか逮捕監禁罪についても加重規定を廃止するのが、法の体系としても、また実態から言っても不都合はないということで、全面の廃止をすべきだという考えのもとに一応の立案をいたしまして、率直に申しまして、議院内閣制のもとにおきましては政府与党の御意見を聞いて提案をするというのがたてまえでございますので、与党でございます自由民主党の方にその案を持って了解を得ようといたしましたが、党内におきましていろいろの意見がございまして、たとえば、このような尊属に関する加重規定を廃止することは、ただいさえ軽視されがちな親子間の倫理というものに対して、さらにそれを低からしめるような傾向に拍車をかけるのではないかというような御意見その他、最高裁の判決の読み方として、必ずしも削除しなくても殺人の下限をある程度、いわばはっきり言えば執行猶予可能な限度に下げる、たとえば五年に下げるというようなことだけで十分ではないかというような御意見等がございまして、十分にわれわれの考えの御了解得られない結果、政府としてはこれを提出することができないという状態に立ち至った次第でございまして、その後、法務省当局といたしましては、どういう方法、刑法全面の改正によるか、あるいは一部改正によるかは別といたしまして、尊属加重規定につきましてはこれを全面的に削除するという考え方には変わりはありませんので、そのような関係で関係方面の御理解を得るように努めたいとは思っておりますが、いまだにその御了解が得られないで提出に至らないのは、はなはだ遺憾に考えております。
#21
○佐々木静子君 経過についてのお話を伺って、法務省がいろいろと御努力なさっているというふうな事柄はわかるわけでございますが、この件については大臣がお越しになってからまた質問させていただくこととします。
 もう一つ、刑事に関する件としまして、先日来非常に話題になっております刑事被害者補償の問題で、先日も刑事被害者補償法を求める国民運動が各地で起こったニュースが報ぜられておったわけでございます。たとえば三菱の先日の爆破事故などで被害を受けた方とか、あるいはそのほか全国にいろいろと、加害者がわからない、あるいは加害者がわかっているけれども、それに対する補償を受ける方法がないというような方々の御遺族がお集まりになりまして、早く刑事被害者の補償法を実現してほしいという運動が起こっておるわけでございますが、新聞の報ずるところによりますと、法務省としても刑事局において相当立案の準備を進めていらっしゃるというふうに拝見しているわけでございますが、大体どのようなものを対象に、どういう方法でいま御検討中であるのか、刑事局長の方からお述べいただきたいと思うわけです。
#22
○政府委員(安原美穂君) いま佐々木委員御指摘のように、犯罪の被害者であって、その犯人がわからないとか、あるいは犯人に賠償能力がないというために、被害者がそのまま悲惨な状態に置かれておるという実態のあることは事実でございまして、このようなものがわが国のような福祉国家において放置されてよろしいのかということにつきましては、放置されるべきではないという考え方を法務省としてはとりまして、そして先進諸国において相当採用されておりますいわゆる被害者補償制度というものの採用という方向に向かって検討を進めるべきではないかということで、昨年来、手始めといたしまして諸外国の立法例を収集することから作業を始めまして、ただいまではその立法例の収集は終わりましたが、ただ法律の条文を見ただけではだめでございますので、実際にどのような運用がなされておるかという各国の運用状況の調査、それから三菱重工の事件とかいうことで、ある種のケースにつきまして悲惨な状態、労働災害補償も受けられないで放置されておる人がおるということは、個々のケースについてある程度そういう実情は散見いたしますけれども、およそわが国の犯罪の被害者というものがどういう状態におられるのかということを、制度を立案いたします場合にはすべてできる限りその実態を明らかにしておく必要があるということで、わが国の国内における実態調査をやるべきではないかということで、先般東北のある地方につきましての調査に着手いたしましたが、そのテストケースを経まして、これからそのテストケースの結果を参照いたしまして、全国的に被害者の実態調査をやるべきだというのが次の作業だというふうに考えておりまして、申し上げますならば、これから実態調査に着手しようとしておる段階であるということでございます。
 そして、それは別といたしまして、一応各国の制度等を考えながら、大体の方向といたしましては、あらゆる犯罪の被害者について補償するということは各国ともやっておりませんので、主として少なくとも故意の、それから人体に対する犯罪、いわゆる殺人とか傷害とかいう暴力的行為というものの被害者の補償は最小限なすべきではないかというふうなところは、大体方向として考えておりまするけれども、その他どのような要件で、どのような範囲で、そしてどのような額をというようなこと、あるいは補償する期間をどうするかというようなこともまだこれから検討を進める段階でございまして、一応の結論というものはまだ得ておらないのが実情でございます。
#23
○佐々木静子君 大体どの程度をめどとして、いまその調査をしていらっしゃるわけですか。調査の完了、大体いつごろその調査結果を集約されされるおつもりですか。
#24
○政府委員(安原美穂君) これは、いつごろということを明確に申し上げるほどにまだ作業が進んでおりませんので、たとえば実態調査というものも、やはりおそらく一年くらいはかかるのじゃないかということでございますので、少なくともまだ一年以上は――少なくとも以上というのはおかしいですが、少なくとも一年以内には案をつくるということには立ち至らないのではないかというふうに考えております。心持ちとしては迅速な検討を経べきだと思いまするが、おのずからやっぱり事柄の性質上、時間のかかることにつきましては御了承を得たいと、かように考えております。
#25
○佐々木静子君 この件に関しましてはもっと質問もあるのですが、ほかの委員からも御質問があるようでございますから、次に民事局の方にお伺いさせていただきたいと思います。
 これは実は大臣がお越しになれば、大臣の所信表明の中に民事行政の充実ということをかなり力説しておられて、特に登記に関する民事行政事務について相当な力をお注ぎになるように御所信が述べられておりますので、それに関連してお伺いしたいと思っておりましたのですが、まず局長にお尋ねさせていただきます。
 不動産登記法の第十七条によりますと「登記所ニ地図及ビ建物所在図ヲ備フ」と書いてございますし、第十八条には「地図ハ一筆又ハ数筆ノ土地毎二之ヲ作製スルモノトシ各筆ノ土地ノ区画及ビ地番ヲ明確ニスルモノナルコトヲ要ス」、また第二項では「建物所在図ハ一箇又ハ数箇ノ建物毎二之ヲ作製スルモノトシ各箇ノ建物ノ位置及ビ家屋番号ヲ明確ニスルモノナルコトヲ要ス」というふうに書いてあるわけでございますが、現実に法務局の登記所へ行きまして公図をということになると、明確な公図にお目にかかれるのがきわめてまれであって、ほとんどが不明確な公図、あるいはもう公図そのものが全くない、そういうふうな現状であることは民事局長も十分御承知のとおりだと思うわけでございます。
 そういうことで、公図が整っておらない、あるいは公図が非常に不明確であったり、あるいは実情と全くかけ離れた公図であるために、それに基づくトラブルというものがいま大変に多いように私は思うわけでございます。昨今新聞に載っておりますところを見ましても、この不動産の公図不備に基づくと思われるトラブルというものがどんどんとふえてきているというふうなことが報ぜられているようなわけでございますが、この公図を備えることについて、民事局長は、この法律の十七条、十八条のいわゆる公図に関して、これから先どのようにやっていこうとお考えになっていらっしゃるのか、まずそのことをお聞きしたいと思うわけです。
#26
○政府委員(川島一郎君) 御指摘がございましたように、現在登記所に備えつけております地図の整備状況が満足すべき状態にないということは事実でございます。これは御承知のことと存じますが、昭和二十五年に土地台帳、家屋台帳が税務署から登記所に移管になりました。そのときに税務署に備えておりました地図を登記所が引き継ぎまして、これを保管することになったのが初めでございまして、その後、昭和三十五年に台帳制度と不動産登記制度の一元化が行われまして、そのときに、先ほどお示しになりました不動産登記法の十七条、十八条という規定が設けられまして、地図が不動産登記制度の一部として認められることになったわけでございます。
 そのような経過がございますために、登記所に備えてあります地図の大部分というのは税務署から引き継ぎを受けた図面でございます。これはもとをただしますと、明治初年に全国的な地籍調査を行って作成したものでございますけれども、たいへんできが悪いという状態でございまして、その地図がそのまま引き継がれてきた。したがって日本全国の地図の状況がたいへん悪かったということに起因するものであります。
 そこで、法務省といたしましては、このような状態の地図を精度の高い正確な地図に直していく必要があるということで現在いろいろ考えておるわけでございますが、さしあたりまして、土地改良とかあるいは区画整理が行われました場合に、その換地図というものができます。これは相当最近の測量技術を使って作成いたします精度の高いものでございますので、これを登記所に送られてまいりました際に備えつけの地図として認めていく、こういうことをいたしております。
 それから法務局自身といたしましてもそういう地図を作成することをすべきではないかということで、昭和四十八年度から予算をいただきまして、若干の地域につきまして法務局が主体となって地図をつくっておる、こういう状況でございます。
 そのほか国土調査というのがございまして、これは現在は国土庁のほうで所管しておられるわけでございますが、その国土調査の結果、成果として得られました地図、地籍図と申しますが、この地籍図ができますと登記所に送付されてまいりますので、これを登記所で不動産登記法の地図として採用する、こういうこともいたしております。現在、国土調査の成果としての地籍図がかなり数量的には多くなってきております。ただ、これにつきましての問題は、実際に測量が行われましてから登記所にその成果である地図が送られてまいります間に数年間かかります。その間に土地の分合筆等が行われますと、必ずしも地籍図が現状を正確に反映していない。したがって、その国土調査の地籍図に手入れをした上で初めて登記所の地図として使えるようになる、こういう実情がございますので、そういった点の修正作業が必要でございますけれども、これを今後さらに推進することによりまして登記所の地図を整備していくということを考えております。
 大体以上のような状況でございます。
#27
○佐々木静子君 大臣途中からお越しいただきましたので、ちょっといままでのことを申し上げますと、実は先日の大臣の御所信の表明に関する質問をときょう考えておったわけでございますが、順序が逆になりましたので、いま民事行政事務の充実という大臣の御所信に関しまして質問させていただいているわけでございます。
 そして、主としていまの民事行政事務の充実の中に、登記所における公図の問題、これが不動産登記法の十七条、十八条に正確な公図を備えなければならないというふうに、備えることを要すということを明定しているわけでございますけれども、これは大臣も御承知のとおり、全国の法務局には正確な公図というものが逆にきわめてまれである。公図そのものがないところもたいへんに多い。そういうことによるトラブルがいまたいへんに起こっている。数がどんどんとふえてきているわけでございます。
 そういうことについて、私もかねてからこのことを何とか法務行政の充実の中にぜひとも組み入れていただきたいということを考えておったわけでございますけれども、先日も、これは大阪の新聞に載っているわけでございますが、公図が非常に不明確なのでトラブルが続出、そしてそのためにいま公図を、これは法務省のほうとしてもモデル地区をおつくりになって少しずつ明確な公図を作成していらっしゃるけれども、いまの速度でいくと、全国の公図ができ上がるのには二十三万年かかるというふうな、天文学的というよりも、何と申しましょうか、そういう計算になるんだそうでございまして、それではもうとても話にならないということで、一般の国民ももちろんショックを受けたし、特に不動産業務に関係のある業界では、これは何とかしていただかないと国民の重要な財産であるところの不動産の権利関係を守ることができないということで、いまいろいろと問題になっているわけなんでございます。
 そういうことで、いま法務省がどのようにこのことについてお考えいただけるのかということを局長にお尋ねして、その事柄に関しまして、いまの御答弁でもあったわけですが、法務省としても予算をとって少しずつ地図を完備するように努力はしているが、ほかの庁においてもいま地図の作成をしている庁がある。また、そのお役所の地図を法務省が備えつけることもできるんだというお話なんでございます。
 これは不動産登記準則の第三十条に地籍図等についての規定がございまして、国土調査法の第二十条に基づいてつくられた地籍図が法務省に送られて、原則として不動産登記法の十七条の地図として備えることができるという規定がございますので、それも御活用いただいているというふうなお話なんでございますが、ちょうど国土庁の土地局もお越しでございますので、国土庁のほうから、大体どういうふうな計画で、どのような手順でその地図が不動産登記法十七条の地図になるべく送付していただいているのか、また、国土庁の地図の作成というのがどのくらいのスピードで、どのくらいのめどでいま進められているのか、そういう事柄について、あまり時間もありませんが、簡潔にお答えいただきたいと思うわけです。
#28
○説明員(高田徳博君) 国土調査法に基づきまして実施しております地籍調査でございますが、これは筆ごとにつきまして、その所有者、それから地番、地目等調査いたしまして、それと境界、地積でございますが、それらを測量を行いまして簿冊と地図を作成しているわけでございます。それで、これができますと、調査が終わりますと、その成果はその調査をいたしましたところの土地を管轄するところの登記所に送付されまして、これが登記簿の地目等が修正されるわけでございます。で、送付いたします地籍図の写しにつきましては、既存の公図にかわりまして登記所備えつけの地図として利用されるということになっているわけでございます。
 それで、その事業の進度でございますが、国土調査法に基づきます地籍調査につきましては、その促進をはかるために国土調査促進特別措置法というものがございまして、それに基づきまして昭和四十五年度を初年度といたします十カ年計画を立てております。その計画の達成にいま努力しておるわけでございますが、その十カ年計画で実施いたします量でございますが、それは民有の使用地目を中心といたしまして八万五千、平方キロメートルというのを十カ年の計画量といたしております。その進度は、四十九年までにはそのうち二万二百平方キロメートルというものを終了いたしております。なお、ただいま申しましたのは十カ年計画でございまして、その以前から実施しております地籍調査がございます。その量でまいりますと、四十九年度までの実施予定面積を含めまして四万七千七百平方キロメートルということでございます。
#29
○佐々木静子君 細かい数字も何ですが、そうすると、いま全部の国土の何分の一ぐらいができておって、あとどのぐらいのめどで大体できるのか。これは大変な作業だと思いますが、法務省で地図をつくる予算と比べますと、国土庁がいま地図をつくるために取っていらっしゃる予算というものは私の調べたところでもきわめて多いわけでございますから、かなりな速度で進むのじゃないかというふうに考えておるわけですが、大体のめどが、いつごろに全国土の分が完成するのか、あるいはそのうちの半分が完成するのか、めどを簡潔におっしゃっていただきたいわけです。
#30
○説明員(高田徳博君) ただいまの十カ年計画で実施しております量は、先ほど申しましたように民有の使用面積の全部でございまして、十カ年計画の計画量でございます。その根拠といたしました全国の国土面積でございますが、三十七万平方キロメートルというのを基準にいたしましていまの面積を出しております。それで、現在までの達成しました量は先ほど申し述べました量でございますが、その十カ年計画が計画上全部終わりますれば大体の民有地については終わるという計画でございますが、何分国家予算等の関係もございますので、その予算も確保してまいりたいと、こう考えております。
#31
○佐々木静子君 十カ年計画が完了すれば大体全部の調査ができ、地籍図ができる、そういうお答えでございますね。
#32
○説明員(高田徳博君) 先ほども申し述べておりますように、ただいまの八万五千平方キロメートル、十カ年計画でございますが、それは民有の使用地の面積でございまして、このほかに国有の土地がございます。それらにつきましては、その国有の土地を所有なり管理しておりますところの国家機関の方で調査をするようになっております。
#33
○佐々木静子君 国有地がかなりの部分あるというお話、これは法務省の方で地図をおつくりになるとき、国有地はそれを管理している省から集約されるというわけにはいかないのですか。そうすれば、その部分については非常に早く進むのじゃないかというふうに常識的に考えられますが。
#34
○政府委員(川島一郎君) 国有地につきましては、従来から正確な図面というものはつくってなかったわけでございます。と申しますのは、先ほども申し上げましたように税務署で当初地図を管理しておったわけでございますが、これは税金を取ることが目的でございまして、したがって国有地については地図をつくる必要がないということで、特につくってなかったわけでございます。ただ、国有財産を管理しております昔の国有財産局ですか、現在は大蔵省の方へ行っているかと思いますが、そういうところとか、あるいは国有林野を管理しております林野庁関係にそういった資料があろうかと思いますが、ただ国有地は非常に広範な面積になっておりまして、しかも土地が分筆されていないというような事情もございまして、あまり一般の民有地におけるような正確な図面というものはつくられていない。ごく大まかな、たとえば参謀本部の地図のようなものとかそういうものはございますけれども、それ以外のものは、そういった国有地を管理するところにおいて若干のものがあろうと思いますけれども、私どもの方といたしましては、まだそこまで地図を持つに至っていない、こういう状況でございます。
#35
○佐々木静子君 国有地は登記簿の中でも表示されずに、結局、国有地の面積はどれだけなのかということがわからない。そのために、国有地と民有地との境界というものがきわめて不鮮明ではっきりしない。そのことによるトラブルというものもきわめて多いと思うわけです。特に、いまもお話しになったように税務署の地図が法務省へ移された。これは国民の知恵と申しますか、搾取されている国民の観念とすると、できるだけ少ない面積を税務署に届けたい、そういうところから、その地図は必ずしも明治の初年につくられた段階で正確な所有面積じゃなくて、もう小さい目小さい目に届けられている。そして、それから逆算すると民有地に隣接する国有地が非常に大きいことになるけれども、実際は民有地の方がかなりあって、ただ届けが少なくなっているというふうなケースも大変多いように思います。
 私も現に、特に国有林などのあるところへ開発の波が押し寄せてきて、そうして土地の値段が大変に高くなって、都市化の波も押し寄せている。ところが、国有地の地図というものが全く登記所にないために、その境界というものがわからない。そして買うときには、これは公簿上はこうだけれども、実際はこれだけあるんだということで、それだけの代金を払って買ったところが、国有地がはっきりしないために結局、逆に言えば買い取ったところの場所がはっきりしない。そのことによって思わぬトラブルに巻き込まれたり損失を受けたりしているということもあるわけでございますので、そのほかの省でどのような財産を管理しているかという、すでにその管理している財産というものが各省もう少し連絡がよければ、法務省の公図というものももっと整うのじゃないかというふうに思うわけです。
 主としていま土地家屋調査士会などで問題にしておりますのは、地方自治体にある地図を、その登記公図の不備を補うためにもつと使わせてほしいという要求が大変にいまのところ強いようでございますが、これも個々の地方自治体と折衝して個々的に解決しているというのが現状のようでございますが、これは一般的な問題として、大変に協力関係のいいところもあるのか知りませんけれども、また非常にお役所のなわ張りということになっているのか、大変に協力を得られない。結局その谷間に国民が落ち込んで困っているというのが実情だと思うのです。地方自治体のほうも三割自治というような哀れな状態で、この上まだ中央官庁にサービスを要求されるのかというようなことで、もちろんそういう考え方もわかるわけなんでございますけれども、そのしわ寄せが結局国民の上にかかってきている。国民の側から見れば、これは税金を払えばどこの役所の所管とかなんとかということは余り問題じゃないわけで、もう少しお役所でうまくやってくれればというのが当然の要求になってくるわけです。
 そのことで、たとえばこれは自治省のほうにも伺いたいのですが、これはこの公図のことと直接関係ありませんが、法務省の事務官に聞いてもそういう話が出るし、特に登記を申請に行ったりした人などからよく話が出るのですが、住居表示というものができておって、いまのところ自分の自宅の番地といえば、元は登記簿上の番地を覚えておったけれども、もう何年もたつうちに住居表示で手紙も来るし、自分もそれで手紙を出すために登記簿上の番地をもう忘れてしまって、あるいはその登記簿上の番地と住居表示の番地が違うというようなことはもう普通の国民は頭にないわけで、住居表示の番地で登記の申請をする。そうすると、調べてもらってもそれに該当するものがないということで、申請に行った者も非常に時間がかかって、結局わからない、そういうものはないということで、市役所へ行ってまた調べ直さないといけない。そしてまたいろいろ時間をかけて調べて、もう一度法務局へ行かないといけない。法務局のほうとしても、受け付けて、それがあるかないか調べるのに非常に手間取る。そして結局これは住居表示の番号だということになる。そうすると、申請に行った国民の側から見れば、同じ役所同士なんだから、住居表示の番号を言えば元の旧番地、旧番地という概念じゃないのですけれども、それがわかってしかるべきだから、そのぐらいの親切は法務局がやってくれたらいいじゃないかという不平が出てくるわけなんですね。
 そこら辺で、これは地方自治体のほうで住居表示というものをおつくりになったわけですけれども、それについてもう少し、たとえば法務局との間で連絡をよくしていただくようなわけにいかないものか。きのうも自治省のほうにお伺いしてみると、これは自治体でやっていることなので余りサービスする必要はないというようなお考えのようにも伺ったのですけれどもね。結局、不動産の表示は法務省でやるんだ、そしてそれから後に、これは主として配達の便利を考えてつくられたものだと思うのですが、住居表示というものはそれとは全然別個に地方自治体がつくった。しかし、国民のほうではもう一緒になってしまっているから、そこでお互いに役所のほうも、それから国民の側も非常に手数がかかる。そこら辺で、対照表のようなものが一つでもあれば、ああ住居表示はここのところは登記の上ではこうなるんだ、あるいは本籍地も、自分の家の住居表示が本籍地だと思い込んでいる人がたくさんいるために、これは同じく市役所へ行くものですから市役所の中で調べて、同じ役所で解決できるわけですけれども、法務局の場合はなかなかそうはいかないし、非常に手続が繁雑なために簡単なことでも何日もかからないといけない。これは法務省サイドだけでも簡略化できないのじゃないか。自治省のほうで何とかそれをもう少し国民のために、役所の管轄はともかくとして、便宜を図るようなお考えはないのか、そのあたりちょっと伺いたいと思うわけです。
#36
○説明員(竹村晟君) 登記の関係と新しい住居表示の関係でありますが、住居表示を新しく実施いたしますと、これは住居表示に関する法律の第三条の第三項にありますけれども、新しい表示につきまして、関係人でありますとか、つまり住民でございますね、あるいは関係行政機関、あるいは都道府県知事、こういうものに通知したり報告をするという制度になっております。したがいまして、この制度がどのくらい誠実に行なわれているか、それが一つの問題だろうと思うのですが、登記の問題については私初めてお伺いするわけでありますが、実は同じ法務省の関係の登記の事務につきまして同様の問題があるわけでありますが、これにつきましては市町村で同じ窓口でやることになっておりますので、先生いまおっしゃいました古い住所と新しい住所の新旧対照表、これをつくりまして窓口に備え、住民の便利に供しているというふうなことをやっておりまして、われわれとしてもそういう指導をしておるわけであります。
 いま御指摘の登記につきまして、先ほど申した三条の関係の通知、これがどんなふうに運用されているか、その辺についてはわれわれとしてもさらに実態についてよく調査して、できるだけ住民の方の便利になるような方法を法務省と一緒に相談していかなくちゃいかぬだろうというふうに考えております。
#37
○佐々木静子君 戸籍のほうで対照表というようなものがあるとすれば、そういうふうなものを登記所にも置けるようなことを考えていただくなり、役所の管轄は違っても、国民サイドで考えれば皆いわゆるお上なんですから、同じように考えているわけですから、そこら辺でもう少し国民サービスを本位に置いてぜひとも御検討いただきたいと思うわけです。
 それからいま公図が非常にそのような状態で、局長からも御答弁いただいたけれども、それじゃどうなるのだというふうな事柄が全くいまのところつかみどころがないというふうな印象を受けるのですが、大臣としてはこの公図の問題、大臣も長く法曹界でも御活躍なすっていらっしゃるわけでございまして、不動産の権利関係を確認するこの土地と建物の問題というものが、国民の財産を守る上に非常に基本になって大事なものだと思うわけですが、それが公図の不備なために、思わぬことで一生がかりの財産を失う人もあれば、大変に苦しんでいる者もある。そういうことで、これ以上不動産の無益な混乱を避けるために、どのように大臣としたら今後取り組んでいただけるのか、御所信をお述べいただきたいと思います。
#38
○国務大臣(稻葉修君) 衆議院の法務委員会のためにおくれまして、佐々木先生の御質問を当初からお聞きしませんで、大変失礼しました。
 ただ、いま伺ってわかりました。が、今後どうするかという点については、私としてはいま伺っておりまして、不動産登記法、それから住居表示に関する法律、それから国土調査促進特別措署法、これらの事務の進め方が相互に関連性を欠いているように思うのでございます。縦割り行政の弊というか、そういう点でそれぞれ相互関連する国民サービスからいえば、組になっている法律がばらばらに行われておって不便を国民に与えているという感じを先生の御質問から受けました。したがいまして、法務大臣といたしましては法務省、つまり法務局、それから自治省、地方公共団体の問題を処理する自治省、それから公図の一番作成予算も人員も持っておる国土庁、この三大臣協議をいたしまして、御指摘いただきました三つの法律の機能、有機的な運用ができますように、事務当局にそれぞれおろして、そうして国民サービスに少しでも万全を期する方向に努力して近づけていくということを早速やってみたいと、こう存じ上げる次第です。
#39
○佐々木静子君 ぜひともこれは強い国民の要望でございますので、前向きの姿勢でお取り組みいただいて、何とか解決に近づけるように御尽力いただけますようにお願いいたしたいと思います。
 それで、私の質問時間ももうございませんので、最後に一つ、これはいま申しました登記業務に携わっている、たとえば土地家屋調査士会の方方あるいは司法書士会の方々などが、公務員の方などはどんどんとベースアップもできるし、あるいはまた一般労働者の場合は春闘ということもあるけれども、非常に人件費も上がっているが報酬が上げられないということで、伺っているところでは、ちょっと法務省の御許可が公共料金ということで得られないのじゃないかなと懸念しておられるように思うのですけれども、私も司法書士会の御相談も伺っておるものですから、何もしゃにむにいま上げなくちゃどうにもならないというふうには言っておらないわけでございますけれども、またタイミングも考えて、ひとつぜひともこれはやはり生活権のかかっていることでございますし、公共料金と言いましてもガスや水道料金とちょっと意味が違って、不動産を売買する人ですから、それらの方々よりもむしろ財産を持っている方の方が比較的多いのじゃないか。そういうことから考えますと、やはりそれらの報酬もひとつ法務省のほうで御検討いただきたいということをあわせてお願いしておきたいと思います。
 それから、大臣がさっきお越しになりませんでしたので、刑事局長にいわゆる四十八年四月四日の尊属殺が違憲だという判決が出たことについて、法務省の方で今度御提案になる法案の中にも尊属殺規定の刑法改正案が入ってないけれども、どういういきさつかということを承ったわけでございますが、大臣も与党の議員のお一人として、これも国民の強い要望もあることですし、最高裁がすでにこのような判決をしていることなんでございますから、ぜひとも、われわれ野党としても議員立法を考えてないわけではございませんが、できれば政府のほうからそういうふうな違憲の法律を早く改正していただくように、ひとつ大臣としても御尽力いただきたいとお願い申し上げまして、時間がありませんので私の質問を終わらせていただきます。
#40
○国務大臣(稻葉修君) 尊属殺規定の二百条削除の法律を出す件につきましては、法務省としましては、大臣の諮問機関である法制審議会の議決もそういうことになっておりますから、法務省の案はあるわけです。これを提案する段階で、もうざっくばらんに正直に申し上げますと、与党の中で意見が分かれまして、これが法案提出に至らないネックになっておりますが、私といたしましては、よくそういう事情を説明しまして、やっぱり何といいましても民主主義の根底は裁判には従うのだということでなければいかん、これは常識ですから。そういう方向に一生懸命に誠意をもって努力しますから、いましばらくお待ちいただきたいという段階でございます。
#41
○矢田部理君 私は、昨年の九月に刑法改正問題について質疑をいたしましたが、その後内閣もかわり、大臣も新しくなりましたので、引き続きこの問題についてお尋ねをしたいと思います。特に大臣は過般の所信表明では、刑法の全面改正については目下事務当局において政府案作成作業を進めており、新しい刑法典の実現に努力する旨述べておられますので、私どももこの点について重大な関心を改めて持たざるを得ないのです。
 そこで、冒頭にお尋ねしたいのは、刑法改正案作成作業の進行状況についてであります。昨年の五月末に法制審議会から答申があった直後であります。当時の法務大臣は、これは前法務大臣でありますが、一年をめどに成案を得たいと述べられ、さらに九月の当委員会では、一年というわけにはいかないが、なるべく早く成果を得たい、こう述べてまいりました。で、法務省における刑法及び関連法規の改正作業について取り組みはどうなっているのか、その後作業はどの程度進んでおられるのかという点が一つ。それから二番目には、いつごろ成案を得て国会に提案をされる御予定なのか、その点をまずお伺いしたいと思います。
#42
○国務大臣(稻葉修君) まず、いつごろ成案を得て国会に提出するかというお尋ねですが、全然見当がつきません。全然見当がついておりません。
 それから法務省内における、主として刑事局ですが、そこの政府案作成の作業はどの程度進んでいるかというお尋ねですが、これも大臣といたしましてはどの程度進んでいるか、刑事局長に聞いてみなければ正確なところはわからないのですが、私の感じではあまり進んでいないように、ざっくばらんに申し上げると、思うのです。
 以上でございます。
#43
○政府委員(安原美穂君) いま大臣がおっしゃいましたように、いつまでに出すかというめどは正直申しましてついておりません。法制審議会の答申を得ました以上、その答申を尊重して、できるだけ早くという努力目標は持っておりますが、本来事柄の性質上、いつまでに出さなければならないというようなめどをつけるべき法案でもございませんので、急いではおりますが、いつまでにということは全然申し上げられる段階でないというのが正直なところであります。
#44
○矢田部理君 従来は一年をめどにというのが、今日では全然見当がつかないということでありますが、いまどんな取り組みをされているか、これまでどんな作業を進めてこられたのか、今後どんな作業に取り組む御予定なのか、そこら辺もうちょっと具体的にお尋ねしたいと思います。
#45
○政府委員(安原美穂君) 大臣申されましたのが、何かもうほとんど進んでいないようなお言葉でございましたが、お言葉を返すようで恐縮でございますが、ほとんど進んでないのではなくて、毎日毎日一生懸命に取り組んでおります。すでに答申がなされましたわけでございまして、それからこの答申に対しましては各界各層からいろいろな御意見が寄せられておりますので、それらの意見を見ながら、このごろのはやり言葉で言えば、答申の内容を一条一条洗い直しをしているというのが現状でございます。それから、なおそれと並行いたしまして、保安処分制度を採用するとすれば、どういう手続で保安処分の言い渡しをするかとかというような関連の関係につきましても検討を進めております。着々と検討はしておりまするが、着々と政府案が確定をしておるという段階ではまだございません。
#46
○国務大臣(稻葉修君) いま刑事局長言いましたように、私は、怠けて何にもしていないという意味の答弁はしておらぬつもりなんです。それは着着やるべき義務があるのですから。私といたしましては、御承知のように弁護士会の反対があるでしょう。ですから法務省、弁護士会、それから裁判所、この三者の協議会も、この間承れば、弁護士会の方で非常に熱心に新年度からは三者協議会を発足させたいと言っておりますから、そういうような席上で私としての最大の努力を、刑法改正問題についてそういう協議会で詰めていって、そしてこういう状態である、こういう状態であるということを刑事局におろして、その作業の進めを手伝ってやろう、そういう心組みでおるわけでございます。
#47
○矢田部理君 それから従前から問題になっておる点でありますが、答申は出ましたけれども、これは参考意見であって、今後各方面あるいは各階層の意見を十分に聞き再検討すると述べてきたわけです。また、先般の大臣の所信表明でも広く国民各階層の意見を考慮すると述べておられるわけですが、この点についてこれまでどのような具体的な努力をされてきたのか、それから今後どういう努力を具体的にされるつもりなのか、その点を次にお伺いしたいと思います。
#48
○国務大臣(稻葉修君) 法制審議会答申案は、これはやっぱり正式な公な機関が長年かかって答申した案でございますから、無視するわけにいきません。また軽視するわけにもいきませんね。尊重しなければならぬ、こう思っております。ただ、いろいろ御意見を寄せてこられる人があるものですから、きのうも第二弁護士会の会長さん以下法務大臣室においでになりまして、刑事局でつくった刑法の全面改正についてのパンフレットは余りに答申案を金科玉条として不当に宣伝に過ぎはしないかというような意見がございまして、文書を持ってこられましたから、きのう一日で読んでしまうわけにいきませんね。そういう意見が各方面から来ますから、私としてももう自分の許す限り時間を割いてそれに取り組んで、そして意見の調整をして、三者大体この程度ならばというところにこぎつけたい、こういうふうに思うているのです。それがこれからの進め方の法務大臣の段取りでございます。
#49
○矢田部理君 そこで、いま大臣からもお触れになった法務省刑事局発行の「刑法改正をどう考えるか」というPR資料といいますか、冊子についてお聞きをしたいと思います。
 この点は前回、私が幾つかの問題点を指摘をいたしまして、その配布を中止するように強く要請をしたわけでありますけれども、どうも法務省は私の要求には耳をかさないで、その後各方面に配っているようであります。で、一体この小冊子は何部ぐらい印刷されたのか、どこに何部ぐらいあて配布をしたのか、その配布は有料でやったのか無料でやったのか、さらには、発行の経費は法務省予算のどの費目から支出をしたのか、具体的な質問でありますので明確に答えていただきたいと思います。
#50
○政府委員(安原美穂君) お言葉に耳をかさなかったわけではございませんが、十分に傾聴いたしました上で決意を固めて配布をいたしたわけでございまして、配布した数は三万部でございます。印刷が三万部で、すでに配布いたしましたのが二万三千余部でございまして、すべて無償で配布いたしております。
 配布先は概略申しますと、法務省部内、官房とか民事局とかあるいは矯正局関係というふうに法務省の部内関係各機関に配りましたのが約一万四千、それから法律関係機関、国会あるいは各官庁、裁判所、司法研修所、弁護士会、警察等法律関係の学問あるいは運用に関係のある機関に配りましたものが約七千、それから新聞、通信社等のいわゆるマスコミ関係、あるいは労働組合とか消費者団体とか経営者団体等いわゆる各種団体関係と総括いたしますならば、それが約千六百部、それから欲しいとおっしゃるような方の要望に応じまして、個人的に大学教授とか評論家とかに配りましたのが約三百五十冊、以上で大体二万三千部になりまして、残が約七千部ございます。これは無償で配布いたしました。
 それからなお有償で販売されているものが、大蔵省印刷局で印刷いたしまして約一万三千部が販売されたというように聞き及んでおります。
 なお、無償で配る以上は国費を使っておるわけでありますが、これは法務省の刑事局の中にある法令立案関係の中でそういう資料費の予算がございますので、それに基づいて支出をいたしたものでございます。
#51
○矢田部理君 金額はどのぐらいですか。
#52
○政府委員(安原美穂君) 正確な金額は、すぐ本省に確かめましてお答えいたします。
#53
○矢田部理君 この冊子の発行は法務省刑事局名というふうになっておりますが、この発行については法務大臣は御存じなのでしょうか、あるいは法務大臣の指示または許可に基づいてなされたものなのでしょうか、その点いかがでしょうか。
#54
○政府委員(安原美穂君) これは発行する当時の法務大臣は御承知のことでございます。
#55
○矢田部理君 そこで次に伺いたいのは、この冊子の原稿はいつごろ、だれが書かれたものでしょうか。
#56
○政府委員(安原美穂君) 発行されました八月、それ以前の答申がありました後この八月前の夏に、具体的には法務省の立案関係を担当いたしております、また法制審議会の事務を担当いたしておりました刑事局の参事官室で、担当官が手分けをして書いたものを私が校閲したものでございます。
#57
○矢田部理君 その担当された参事官の名前と、最初の原稿はいつごろできたのか、もうちょっと明確にしていただきたい。
#58
○政府委員(安原美穂君) 担当者は全部で五名でございまして、その筆頭が鈴木義男審議官であり、あと参事官の石川、佐藤、局付検事の山本、原田、以上五名が七月ごろまでに脱稿したものと記憶しております。
#59
○矢田部理君 自由民主党が昨年の六月に「法制審議会改正刑法草案について」と題し、サブタイトルとして「いくつかの疑問に答える」というパンフレット、冊子を出しているのを御存じでしょうか。
#60
○政府委員(安原美穂君) 存じております。
#61
○矢田部理君 読んでおられますか。
#62
○政府委員(安原美穂君) 読みました。
#63
○矢田部理君 読んで何か感じられたことがございませんでしょうか。
#64
○政府委員(安原美穂君) これはざっくばらんに作成の経過を申し上げますと、自民党で、刑法改正草案の答申が出た、それの内容を党員等がよく理解する必要があるということで資料の提供を求められましたので、その資料として法制審議会の答申の主な点についての、自民党からこういう点はどう考えるのかということについてどういう法制審議会の考え方であったかという趣旨の資料の要求がありましたので、資料を書いて文書にして、そして自民党の広報担当者に渡して、広報担当者においてそれを編さんされたものと理解しておりますので、われわれの理解した資料を利用して編さんされたなという印象を受けております。
#65
○矢田部理君 私も、法務省発行の「刑法改正身どう考えるか」という冊子、これを略して法務省発行冊子と言いますが、自民党発行の冊子、これを比較して読んで見ますと内容が実に酷似しているわけですね。似ているというだけではなしに、表現も全く同一部分が随所に見受けられる驚くべき事実を実は発見をしたわけであります。そこで、この文章の内容、体裁から見ますと、表現が同じであるだけでなしに、例の引き方も同じ、文章の配列もきわめて似ている。言ってみれば自民党の小冊子を法務省自身が執筆してあげたのじゃないかという感じを非常に強くするわけでありますが、これは同一執筆者の手になったのじゃありませんか。
#66
○政府委員(安原美穂君) 自民党の広報部でどのような編さんの仕方をどのような人がしたかは知りませんけれども、先ほど申し上げましたように、こういう点が問題になっておるのでこれについて法制審議会でどういう考えであるかを教えてほしいということの資料の提供の求めがありましたので、その資料を文書にして出しましたから、法務省刑事局で理解したものをそのまま引用されたとすれば、同じような文章に結果として相なっておるのではないかというふうに推察をいたします。
#67
○矢田部理君 先ほど私が質問をしたときには、法務省の冊子の原稿は七月に脱稿したというんですね。自民党の出しているパンフは六月に発行をされているのです。自民党のほうが、印刷発行が六月なんですから、はるかに早いんですね。
 そこで内容を一、二例を引いて読んでみますと、一番冒頭の部分です、自民党のパンフレットでは「問1」として「刑法を全面改正する必要はどんなところにあるのですか」という問いになっている。法務省発行の冊子も、「1 刑法の全面改正はどうして必要なのでしょうか。」と、まずその問い自体が同じ趣旨で書かれているわけでありますが、その次の文章がほとんど同じなんです。自民党のほうから読んでみます。「答」として、「現在の刑法は、日露戦争直後の明治四〇年に制定されたもので、すでに六〇年以上も経過している古い法律です。」、こう書き出しがなっておりますが、法務省のほうはどうかといいますと、「今の刑法は、日露戦争直後の明治四〇年に制定されたもので、すでに六〇年以上もたっている古い法律です。」、ここで正確に言うと、違うのは、自民党が「現在の刑法は」と言っているのを法務省は「今の刑法は」と言っているだけの違いであります。それから自民党のほうは「六〇年以上も経過している古い法律です。」、「経過している」という言葉が法務省のほうでは「六〇年以上もたっている」という表現をしているにすぎない。
 これは読んでいけばあきれるほど似ているし、同一文章なんですね。例の引き方まで同じなんです。しかも自民党のパンフレットというのは、全部合わせてわずかに三十三ページです。十七問です。その中に、調べてみますと実に四十数カ所の同一文章、きわめて酷似した文章が出てくるという、これは単に法務省が資料を自民党に渡してやったというだけでは済まされない内容じゃありませんか。少なくとも法務省発行の原稿そのものを渡してやった、あるいは自民党のパンフレットそのものを執筆してやった、とうてい資料を渡してその資料を見て編さんをしたというようなことでは説明し切れないぐらい同じ内容の文章なんです。この点どう考えられますか。
#68
○政府委員(安原美穂君) 先ほど申し上げましたように、資料を提供いたしました結果、それをそのまま引用なさった個所があるのではないかと推測しますが、どのような編さん方法でなさったかはわかりません。ただ、自民党のために書いた、そのものを書いたということは絶対にございません。
#69
○矢田部理君 そうしますと、資料を渡したというのは、まだ脱稿もしていない法務省の原稿そのものを渡されたのですか。
#70
○政府委員(安原美穂君) 原稿そのものではなくて、これは別にこの「刑法改正をどう考えるか」を書いたのでありまして、原稿を渡した事実は絶対にございません。
#71
○矢田部理君 これは私、時間があれば全部読んで聞かせてもいいのです。単に資料を渡した程度で、たまたまある部分が一緒だったという偶然は考えられますけれども、実に四十数カ所もの文章がいま言った程度の違いで次から次と出てくる。配列や例の引き方も同じなんですよ。とすれば、いまの刑事局長の説明で納得できますか。これは資料をつくってありますから、比較対照表を一回見ていただきたい。この資料を一々説明をする時間的な余裕はありませんけれども、法務省発行の冊子と自民党発行の冊子の、何ページのどの行が同一文章になっておるのか、似ているのかということを具体的に指摘した一覧比較表であります。少なくとも書いてやった、あるいは書いてやったことがないとすれば、脱稿前の原稿を自民党に渡してやった、どちらかでしかないわけですよ。もう一回刑事局長の答弁。
#72
○政府委員(安原美穂君) 資料の提供を求められたのと、この「刑法改正をどう考えるか」を書いたのとは時期が違うわけでありますが、事柄の対象が同じでございまして、書く者が資料として出す場合とこれとして書く場合、同じ人問が書いて同じことを理解しておりますから、結果において同じようになるのはこれは至極当然の話でありまして、あくまでも原稿を渡したものではありません。
#73
○矢田部理君 資料が同じであっても、その資料をどう使うかは、書く人によっておのずからニュアンスなり表現は違ってくるわけなんです。引用部分が同じだというならまだ話はわかりますけれども。
 もう少し読んで聞かせましょうか。これは公務員の機密漏示罪の新設にかかわる部分についての両冊子の記事でありますけれども、まず自民党の方を読んでみますと、「公務員が仕事の上で知ることのできた秘密を漏らす行為は、今でも国家公務法等で処罰されますが、国の安全やその他の重要な公共の利益にかかる機密を漏らすことは、国民全体の利益を損うものですから、改正刑法草案は、とくに重要な秘密を漏らした場合の刑を重くして刑法の中に規定することにしたのです。」、ここまでの四行にわたる文章でありますが、文章の中で違っているのは、自民党のほうが「重要な秘密を漏らした場合」という表現に対して法務省のほうは「重要な秘密である機密を漏らした場合」、これだけしか違ってないのですよ。言ってみれば接続詞や修飾語を幾らか変えた、これだけの違いです。同じ資料だから同じような文章ができるのは至極当然だなどという答弁で納得できますか。
 それ以下ももう一つ読んでみましょうか。「国民の知る権利、とくに政治上の出来事について十分な情報を手に入れる権利は、民主主義政体の下で重要な意味を持つものです」というのが自民党の冊子です。これに対して法務省は「国民の知る権利、とくに政治上の出来事」というのを「政治上の事柄」と変えたにすぎません。自民党の言う「民主主義政体の下で」というのが「民主主義政治の下で」と変わったにすぎない。うり二つなんですよ。この点、偶然の一致とか資料が同じだから同じようなことになるのは至極当然だという説明では全く納得できませんので、再度刑事局長の答弁を求めます。
#74
○政府委員(安原美穂君) はなはだ同じことを申し上げて恐縮でございますが、資料の提供を求められて、そしてこういう問題点についての、どういう考えで法制審議会がそういう結論を出したかということのお尋ねに対して、資料として文書として法務省の理解を述べた。それを自民党の広報部で利用なさった結果、結果的には法務省の考えている理解と同じものが同じような文章で出たということでございまして、まあ事柄の結果として一致しておるのは、そういう意味では必然的ではなかったというふうに思いますが、あくまでも編集されたのは自民党でございますので、われわれの「刑法改正をどう考えるか」はわれわれの責任において編さんしたものであり、他方は、内容は同じようなものであっても自民党の責任において編さんされたものでございまして、われわれがどちらをも書いたということは絶対にございません。
#75
○矢田部理君 じゃ渡した資料というのは、もう一度くどいですけれどもお尋ねしたいのは、法務省で準備をしてきた原稿そのものを渡したことはあるのですか。
#76
○政府委員(安原美穂君) たびたび申し上げますように、この「刑法改正をどう考えるか」の原稿を書く前に、お尋ねに基づいて資料を提供したのでございまして、原稿は絶対に渡しておりません。
#77
○矢田部理君 刑事局長はそう強弁をされるけれども、それじゃ執筆を担当した参事官が、そのだれかが渡した形跡はありませんか。
#78
○政府委員(安原美穂君) 口幅ったいことを申すようでございますが、そのようなことを局長の了承なしにやるということは絶対にないわけでございますので、そういうことはございません。
#79
○矢田部理君 これは厳重に調べてほしいんです。いまの答弁ではとてもじゃないが説明ができないような、うり二つのパンフレットが二つ出ているわけですよ。これはあとで委員会の方にもお願いをしたいと思うのでありますけれども、この処置について、私は法制審議会等のたとえば会議録について、少なくとも法務委員会には提出をすべきだ、内外に明らかにしてその批判を問うべきだということをかねてから主張をしてきました。そういう資料などについては当委員会にすらも出さない。自民党から要請があればいろんな資料を渡してやる。しかも、その資料の中に、明らかに法務省がつくってきた原稿と思われるものまで渡している。刑事局長はそういうことはないと思うということではなしに、この事実からすれば、渡したとしか常識的にはもう考えられないような状況が事実の上であるわけです。
 公務員は全体の奉仕者であって、一党一派の利益に奉仕してはならないというのは御承知のとおりだと思う。その公務員であるべき参事官が、あるいは刑事局部内の者が自民党に原稿を渡している。これは公務員の立場や姿勢にとっても重大な問題を含んでいると私は実は思うわけです。その点でいまの刑事局長の答弁ではなしに、法務省としても大臣、厳重に内容を調べてしかるべき措置をとるべきだというふうに私は考えますので、特に強く要請をしておきたいと思います。
#80
○国務大臣(稻葉修君) 矢田部さんの御指摘の点は事実きのうもいただきましたし、それで私二弁の会長さんにも申し上げたのですが、各政党に政策審議会というものがあり、それから新聞があり、広報機関があるわけで、ずいぶん長くかかったがようやくこの改正案が審議会から答申された段階で、要点をひとつ党員にも知らせ、あるいは一般国民に知らせるために勉強しようというので資料を持ってこいと、刑事局長のところへ資料の要求に行った。法制審議会の答申がいつ出るかということはもうわかっていますから、大体出たら国民にこういう改正なんだということを、知らしむべし、よらしむべからざるものだから、やろうという準備をしておったと思いますね。その資料を、これこれの要点についてそのパンフにあるような事柄について資料を持ってこい、こちらで編さんするということだったと思うのです。それについて、文書で持ってきたその項目についての資料をはさみで切ってそのまま編さんしたということでないでしょうかね。自民党にだけ進んで与えたのじゃなく、要求があって与えたのですから、各政党とも御要望があればそれはもう喜んで資料をお渡ししたと思いますよ。そして、その資料に基づいて各政党も御編さんなされば、改正草案そのものは一つなんですから、その項目については似てくる。しかし、はさみで切っただけでそのままやるか、別に創意工夫を加えて、各政党の政策に基づいて批判を加えてお出しになるかという違いはあるでしょうけれどもね。
 そういうことで、決してこれは原稿そのものを渡したのではないという刑事局長の答弁が、もう強弁で話にならぬというふうにおとりにならぬようにしていただきたいと思うのですがね。これはしかし、おとりにならぬようにしていただきたいというふうに思っても、おれはそう思うと言われればしょうがありませんから、厳重にその点は御要望に応じてよく法務省なりに聞いてみます。
 以上でございます。
#81
○矢田部理君 大臣はまだ両方比べて読んでおられないらしいので、あるいはそういう御答弁になるのかもしれませんけれども、これは弁護士会あたりでも大変問題になっている。これはもう素人が読んでも、読んでみればなるほど資料が同じだったわいというような感じではなくて、原稿そのもの――それをどう多少はさみで切ったか、のりづけしたかは知りませんけれどもね――であるということは一目瞭然なんです。私が無理にこじつけて言っているという内容のものじゃないのです。その点でひとつ両方を見比べていただいて、この比較対照表も資料として差し上げますので、その上でひとつ改めて見解を明らかにしていただきたいと思います。
#82
○国務大臣(稻葉修君) いや、ちょっと待ってください、これは改めてでなくても、ちょっと……。
#83
○矢田部理君 それからもう一つですね、大臣は各党から資料の要求があれば出します――それはそれでけっこうなんです。ところが、私どもは、「刑法改正をどう考えるか」ということについて法務省がいろいろ原稿を作っている、調査資料を出すらしい、事前に原稿の段階でもらえないだろうかということで私自身も法務省に電話したけれども、残念ながらいただけませんでした。印刷になって早い時期にはいただきましたけれども。それと同じ内容を持つものが六月発行の自民党のパンフを書く段階で渡されているということ、これも私は非常に問題だと思うんですね。
#84
○国務大臣(稻葉修君) 原稿は、そのものはまだ脱稿していないのですから、渡せるわけはないと思うのです。ただ自由民主党としては、長年の審議を経た改正草案が出て、これは法律の専門語を書いてあったりしてわかりにくいだろうから、まあこんなこと言っていいかどうか、参議院の選挙もあることだし、早くこれは知らせて自民党の見解を明らかにしておいたほうがいいと、こういう勉強心から資料を求めた、正式に。先生もお求めになったのを渡さないのはどういうことだったか知らぬけども、一人一人に一々なかなかそれはいかぬと思いますから、社会党の政策審議会なりそういうお名前で資料を要求されれば、私は当然渡さなければならない性質のものだと思います。また、そういうことをやっていただけば非常に法務省としてはありがたいことですからね、それぞれの立場で国民に知らしていただくということは。そこの資料を批判を加えてパンフにして出すか、それから自民党はいま政府与党なものだから、政府の出している資料をのりとはさみでそのままやった、これがぴたっと一致したと、こういうことになって、これはそんなに驚くに当たらない、きわめて自然なことではないんでしょうかね、それは。どうでしょう。
#85
○矢田部理君 私は、一般的に資料を渡すということがいかぬとかいうことを言っておるつもりは全くないんですよ。法務省が予定をして書きつつある原稿をそのまま渡すようなことがなければ、こういう自民党の文章はできてこないと思う。執筆者が同一であったかどうかについては確かにおっしゃるとおりかもしれませんけれども、少なくとも原稿を渡すことによって一党の利益に手をかしたということを言われても仕方がないような状況があるから問題にしておるわけです。逆な言い方をするならば、自民党発行の冊子というのは六月に出ているわけですね。それと同じ内容、同じ文章のものを法務省が九月段階で出したわけです。その時間的経過からいえば、自民党の広報宣伝を法務省刑事局はやっておるのじゃないか、自民党が出したパンフと同じものを法務省が出して各方面に配るわけですから。こう言われても仕方がないような事実の経過なんです。私は前回の法務委員会で、いつ法務省刑事局は法制審議会の広報担当局になったのかということを厳しく追及しました。法制審議会の広報担当局だけではなしに、今度は自民党の広報担当局になってしまったというのがこの事実の経過じゃありませか。ここを実は問題にしておるわけです。その点で、よく読まれて、よく比較をされて、改めて明快な答弁をいただきたいというふうに私は思います。
 次の質問に入ります。
 法務省が、先ほどから問題にしております「刑法改正をどう考えるか」という冊子を発行し、各方面に配布をするというのは、立法権に対する侵害じゃないかというふうに私は実は思うわけなんです。御承知のように、法務省は国の行政事務を遂行する責任を負うところの一行政機関です。法務省設置法第二条によれば、法務省というのは司法制度及び法務に関する法令案の作成に関する事項について権限が認められておりますが、それは行政官庁独立の権限ではなくて、法令提案権者である国会議員あるいは内閣の法令案作成意思に基づいてこの法令案作成事務を行うことができるはずになっております。したがって、法務省やその部局が法令案あるいはそれ以前の草案について宣伝する権限は認められていない。特に本件のように政府案にすらなっていないものを、つまり諮問機関の一草案を行政官庁が宣伝できるということは、法務省の権限から見て考えられないというのが私の見解でありますけれども、この点についてどう考えられますか。
#86
○国務大臣(稻葉修君) 国費を使って法制審議会の答申案を宣伝しているつもりはないんですね。私は広く法制審議会答申案について江湖の意見を求めて、そうして国民は全般的にどういうふうにこれを評価なさるであろうかと、その素材を提供する意味で、法務省としては法務省の諮問機関でありますからね、それと違った見解を持つ人にとっては宣伝というふうにおとりになるかもしらぬけれども、宣伝するつもりでやっているのじゃないのです。広く意見を求めて、そして協調と対話をして、その中からいい成案を得たい、政府案を得たい、こういうまじめな意図なんでございます。御了解願いたいと思います。
#87
○矢田部理君 いいですか、成案ができて、その成案を国会で審議をしてもらうために、あるいは国民に知ってもらうためにいろいろ広報することはあり得ると思います。さらには、国会でできた立法について広く普及するために広報することもあり得ると思いますけれども、法務省の成案にすらなっていない諮問機関の答申程度のものを法務省の刑事局名で宣伝をする。しかもその答申案に対する世論の批判に対しては、反論を加えてまで宣伝をする。これはどう見たって法務省の権限上許されないというふうに私たちは思うし、少なくとも異例の事態だというふうに考える。これまで答申案についてわざわざ冊子をつくったり、国費を使ったりして宣伝した事例がありますか。寡聞にして私はそういうことを聞いていないわけです。
 という点で問題を考えてみますと、どうも大臣の答弁も私は理解に苦しむわけであります。このことをさらに詰めて言うならば、言ってみれば法律というのは立法事項であります。成案も得ないうちに、国会にも提案しないうちに諮問機関の草案を一行政機関が宣伝をするということは、国民に対する多数派工作じゃないか。そういう点を弁護士会などでも指摘をしている。あらかじめ国会の審議に枠はめをしようとする役割りを担わせようとしているのじゃないかという議論もあります。
 いずれにしても、提案前に、答申の段階で法務省自身が国民に直接働きかけるということは、行政機関による立法権の侵害だというふうに断ぜざるを得ませんので、前回もいろいろな角度から問題点を指摘しましたけれども、この「刑法改正をどう考えるか」という冊子は直ちに配布を中止すべきです。配布したものについては回収するように私は強く要求します。
#88
○政府委員(安原美穂君) 「刑法改正をどう考えるか」を配った動機につきまして、矢田部委員御指摘のような目的であるとすれば、けしからぬことであるという議論は成り立つと思います。しかしながら、大臣先ほど申されましたように、私どもはこれをいわゆるPR、宣伝するために配ったものではございませんで、政府が法案提出権を持っており、かつ刑事法につきましては伝統的に政府提案でやっている、その場合の主管の省として、設置法にありますように法務省がそれを担当するわけであります。その法令案を作成するに当たりまして、刑法というものが国民の日常生活を規律するルールに関する重大な法律でございますので、法制審議会の答申に対してどのような批判がなされるかという、各界各層の御意見を十分拝聴して法令案をつくるべきだ。そのつくるための作業の一プロセスとして、法制審議会はこのようなつもりでこの草案をつくったのだと法務省では理解しておるが、国民の皆さんはどう考えられるかという意見を聞くための手段として、つまりそれはPRというよりは、立法のための一つの資料収集の手段としてこの 「刑法改正をどう考えるか」を配ったというのがわれわれの考え方でございますので、決して立法権を侵害するとか、あるいは宣伝のために一審議会の答申を宣伝しておるというようなつもりは全然ございませんので、その点はひとつ御理解をいただきたい、かように思います。
 なお、そのような意見収集の手段としての冊子の配布ということになりますと、この刑法改正草案ができます前の刑法改正準備草案というものが一つの法制審議会の審議のたたき台として利用されておりますが、この準備草案というものをつくる前の段階におきまして、刑法改正準備会の考えた刑法全面改正案というものにつきまして、これを条文をつけ、そうしてその趣旨はこういうことであるということで準備会草案の解説書を配ったことがかってございます。そういう意味で前例がないわけではありません。要するに、りっぱな政府案をつくるための資料収集の手段としてこれをお配りするということが法務省当局の真意でございまして、その結果、矢田部委員の御指摘のように宣伝をしておるというようにとられるといたしますれば、それはわれわれの配慮が十分でなかった結果かもしれませんけれども、真意はそのところにあるということをぜひ御理解をいただきたい、かように思います。
#89
○矢田部理君 刑事局長の答弁でありますけれども、私は諮問委員会の答申そのものを宣伝するのもよろしくないと考えます。しかし、かりに法務省の言うとおり、それを国民に知っていただくために、批判に供するために出したのだということを一歩下がって認めるとしても、それならば、なぜそこだけにとどめなかったのか。答申案に対する在野からの非常に鋭い批判があります。その批判を一々取り上げ反論を加えておる、法務省刑事局名で。これは少なくとも行き過ぎじゃありませんか。稻葉法務大臣も言われたように、これから在野の意見等も十分に聞いて再検討し、りっぱな成案を得たいという立場からするならば、在野から意見が出ている重要なものについて、法務省の刑事局長名でほとんど全面的に反論と再批判を加えているわけです。ここまで書いた小冊子、いま刑事局長の答弁にもかかわらず、なるほどそうですがとわれわれは理解をしたり了解をするわけにはいかないということをひとつ最後に申し上げておきたいと思います。
 そこで、最後に私は次の三点について委員会にお願いをしたいのでありますが、その一つは、先ほどから質疑の中で明らかになりましたように、自民党の冊子と法務省発行の冊子は同一執筆者であるというふうに考えられます。かりに同一人が筆をとったのではないとしても、法務省の原稿段階で自民党にそれがそっくりそのまま流されている。これは公務員が一党一派の利益に奉仕する姿勢としか考えられない。その意味で、全体の奉仕者という立場からは、きちっとその責任を追求してしかるべきだというふうに思いますので、どういう資料をいつの段階で、だれが渡したのかということについて、さらに明快な答弁と責任の所在を明らかにする措置を法務省に求めていただきたいというのが一つであります。
 それから二番目には、先般の法務委員会でも法務省発行の冊子については問題にしてきたわけでありますが、この冊子の発行そのものが立法権に対する侵害の疑いがあるし、国費の乱費の疑いもある。そのほか内容的にもいろいろな問題がありますので、この際直ちに配布を中止し、増刷なとは絶対にしないようにすべきであるし、でき得ることならば、すでに配布したものをも回収すべきだというふうに考えますので、それについて適切な措置をとっていただきたい。この点が第二番目であります。
 三番目につきましては、議事録の公開問題です。法制審議会の議事録でありますけれども、この点は先般の委員会でも私の方から要求をしておきましたけれども、そのままになっております。すでに公開できない根拠はないだけではなくて、法務省発行の冊子に見られますように、国民は法制審でいかなる議論がなされたかを知りたいのに、それを秘密にして結論を中心に国民に宣伝をする。これは知らしむべからず、よらしむべしの思想のあらわれだというふうに私は考えますので、許せないわけであります。したがって、かねてから要求のあるところの法制審議会の議事録の全面的公開について、当委員会が適切な措置をとられるよう強く要望をして、私の質問を終わりたいと思います。
#90
○政府委員(安原美穂君) お尋ねではございませんが、先ほどのような趣旨で「刑法改正をどう考えるか」を配ったことを繰り返し申し上げますのともに、近く配布する予定のものがございますので、予定をしておるものをだまって配布するというのは失礼に当たりますので、前もって当委員会に申し上げておきたい配布物がございます。
 それは、このような「刑法改正をどう考えるか」ではなくて、かつて法務省刑事局が、法制審議会刑事法特別部会で決めました「改正刑法草案附同説明書」というこういうものを各界に配っておりますが、これと同じものを二月下旬に、法制審議会における審議の概要及び改正刑法草案の内容を客観的かつ詳細に説明した逐条説明書を各界に配る予定でございます。これは法制審議会における議論の大要を、だれが何と言ったということではなくて、こういう説があり、こういう説があって、こういう説になったというようなことをるる書きました客観的な叙述をした説明書を二月下旬に配布する予定でございますので、これは予定でございまして、先ほども申しましたように、立法の正しい法令案作成のための資料収集の手段として配布する予定でございますので、あらかじめ御了解を得たいと、かように思っております。
#91
○矢田部理君 いまの質問、私実はしようと思っていたわけなんですけれども、別に法務省が成案を得ないうちにすでに見解を述べたり、ある部分の意見について賛同を表したりというやり方の資料配布については、私はやはりやるべきでない。いま刑事局長が述べられた資料についてはその内容がさだかでありませんので、まだ何とも申し上げかねますけれども、基本の考え方は私たちはそう思っておりますので、その点、了解をしてほしいと当委員会に申し出されても、内容を見ないうちに了解をするわけにはいかない、委員会としてはですよ、ということをひとつまたそちらでもお含みおきをいただきたいと思います。
 以上です。
#92
○委員長(多田省吾君) 先ほどの矢田部委員の指摘された件については、理事会で十分協議したいと思います。
#93
○政府委員(安原美穂君) いまの矢田部委員の御要求に対しまして理事会で御検討なされるようでありますので、理事会の決定に従いまして忠実にそれを履行したいと、かように思います。
#94
○委員長(多田省吾君) 午前の質疑はこの程度にとどめます。
 午後一時十分再開することとし、休憩いたします。
   午後零時三十三分休憩
     ―――――・―――――
   午後一時十八分開会
#95
○委員長(多田省吾君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、検察及び裁判の運営等に関する調査を進めます。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#96
○白木義一郎君 私は、刑事犯罪被害者補償についてと、それから司法書士の件についてきょうは御質問を申し上げる予定でございますが、その前に、先ほど大臣がお出になる前に佐々木委員から司法試験の問題について質問並びに要望があったわけですが、その件についてちょっとたいへん残念な思いがしましたのでお話をしておきたいと思います。
 この司法試験に盲人の方が受験をなさる、それについて法務省は、すでに点字の六法全書を四月に発刊する、さらに従来は特別扱いとして受験地を東京で試験を受けさせる、目の見えない方をわざわざ東京まで呼んで試験を受けさせた、これはたいへん不都合であるというので、今回から現住所で試験を受けられるように配慮した、また試験中に非常に試験官が大ぜいで、そのために足音等で気が散って試験が十分受けられないというような希望に対しても十分配慮をしよう、こういう法務省の考えで、これはまあ非常に適切であるというよりは、むしろあたりまえのことであると思うわけでありますが、さらに佐々木委員から要望があったのは、健康な五体満足なわれわれと違って、全盲の方が試験を、しかも最高権威のある司法試験を受けるという、その意気込みまた努力について十分な配慮をし、時間も一般と同じようにせずに、特に配慮をしてやるべきじゃないか、こういうしごくもっともな要望があったわけです。
 それについて当面の課長は、立場上明快な結論を出せなかった。引き続いて政務次官に尋ねましたところ、政務次官もなかなか言を左右にして明快な返事をなさらない。もう政務次官というと大臣の見習いみたいなものであって、あるいは副大臣にというようなことも言われております。国民から相当権威とそれから待遇を与えられている、大臣にかわるべき立場でありながら、こういったような問題を即答できないというのが、私伺っていて非常に歯がゆかった。それも、法律を改正するとかあるいは予算が極端に要るとかいうならばまた別ですが、このわずか一人か二人の盲人の方に対する配慮について、政務次官という責任ある立場にある方が明快な意見をお述べになれないようでは、これはもう政務次官なんかない方がいいと思う。
 で、お前司法試験受けろなんて言われても、私は金を幾ら積まれても受ける気もありませんし、また受けたって受かりもしませんけれども、そういう不自由な立場で、しかもこの最高権威のある難解な司法試験にアタックするという人に対して、当然政府としては、よその大学がどうだとかこうだとか言う前に、政府はこうやってこういう方々に対しては配慮しているんだと、前もって取り組むべきじゃないか。そして、ヘレンケラー女史のような、そこまでいかなくても、そういう方方に大きな希望を与えるということが生きた政治じゃないか、こう私は思います。
 そういう点で、政務次官だったら、これは官房長でも電話をかけてあれしたら、ああそうですか、わかりましたと、早速今度の試験からそういうふうに配慮しますと、必ず官房長なら返事してくれるのですが、大臣見習いの政務次官は、もごもごもごもご言って、資料を集めてどうだとかこうだとか。三時間半を五時間にするかあるいは四時間にするかという問題なんです。こんな法務大臣、あなたの代理あるいは片腕、非常に歯がゆい思いをしたのでございますけれども、改めて最高の責任者である――ほんとはこういう問題は、こんなところで申し上げなくてもいい問題です。それぞれの担当の方が普通の人間の気持ちをお持ちになってれば、ああそうだ、最初からこういう配慮をしていくべきだった、まことに申しわけなかったと、直ちに委員会というものがあるならばそちらへ事情を話し働きかけて、早速次の試験から実施いたして、恵まれない方に大きな希望の道を開いていきますと、さっそうと答弁されると思ったのですが、それは大臣見習いとしてはまことに不適格だと思う。
 そんなことが大臣おいでになる前にありましたし、また佐々木委員も御婦人でございますから、あまり強くおっしゃらなかった点を私も配慮いたしまして、改めてこの点、政治に血が通っていなければやめた方がいいというような思いがいたしましたので、最高責任者である稻葉法務大臣にこの試験時間の特別配慮についてのはっきりした責任ある御答弁、時間の幅をどうするとかこうするとかいうことはいろいろそれぞれの立場にある方が検討されるのは当然でありますけれども、配慮するということについてはそんなにむずかしいことじゃないと思いますので、次の機会から必ず実行するという御返事をいただきたいと思うのですが。
#97
○国務大臣(稻葉修君) これは先生、試験でございますから、半ば独立した権威ある機関で決定してもらいますがね、つまり、司法試験管理委員会の専管事項でございますが、しかし参考意見として、大臣はきょう委員会へ行ったら白木委員から、佐々木委員の質問に対する政務次官の態度がもたもたしておったりしてえらいしかられたが、これは何とかならぬものでしょうかということをよく相談します。そして、これはできない相談ではないというふうに聞いておりますがね、一倍半にするか、二倍にするかというようなことについてはひとつ管理委員会の方にお任せ願いたいと思いますが。
 それから、それはそれでようございますが、いま白木委員から指摘された、松永政務次官がもたもたするような男ではないんです。これはいろいろなことを私のかわりにやってくれておって、非常にてきぱきしている人です。ただ問題が、独立機関たる管理委員会の所管事項だという点が、あの人は法律家だから頭にあって、おれがそんなことを言っては独立機関の権限を侵すようなことになりはせぬかというのが、もたつきの原因じゃないでしょうか。ですから、これは参考意見としてこういう世論がありますよと、ぜひそういう方向に大臣としては希望するがねという程度のことは、言うて差し支えないと思いますから申し上げます。
#98
○佐々木静子君 いま白木先生からお話がございました。大臣おられなかったのですが、あの次官の方の御答弁は、結局本年度の五十年度の春の試験に問に合うように前向きに改正するという結論だったわけでございます。次官ですらと言っては悪いですけれども、そういう御答弁でございましたので、ましてや大臣は、さらに前向きでお取り組みいただけると私は確信しているわけでございますが、その点いかがでございましょうか。
#99
○国務大臣(稻葉修君) よろしゅうございますよ。最終的にはしかし、司法試験管理委員会が決定してくれなければできないことでございますから、決定になりますように私どもも陳情して、皆さんの御意見を代表して強く陳情したい、そうしてそういう運びにしたい、こういうことでございます。次官と同様でございます。白木先生、ちゃんといま佐々木先生おっしゃったように、きっぱり答えているというじゃないですか。そうだろうと思うんだ、私は。
#100
○白木義一郎君 歯切れが悪いのが私は残念なんです。大臣、それにかわる政務次官、こうだったら、司法試験管理委員会があるからとか何とかと言うのなら、その人たちに大臣になってもらったらいいじゃないですか。よしわかったと、前の法務大臣田中さんなら、わかりました、私もうっかりしていました、すぐ私からあれしてそういうようにいたしますと、ぐずぐず言ったら私は土下座しても頼みます、目の見えない人に気の毒だと、そのぐらい人間性があっていいんじゃないかと思うのです。役所の機構がどうだこうだということは薄々知っていますよ。天下の法務大臣が一々管理委員会に要請したり陳情したり、そんなことを望んでいるのじゃないんです。最高責任者が、そうですか、わかりました、そんな細かいことまで皆さんから注意を受けて、よくわかりました、早速実行いたしますと、これだけ言えば、そうぐらいしないと大臣職なんか勤まらないのじゃないですか、忙しくて。やれ検討しますとか、やれ何だとか。
 それで本題に入ります。
 この刑事犯罪被害者補償についても、これはもう八年前から国民が何とかしなきゃだめだと言っているのを、まだいまここで――先ほども佐々木委員からもありましたけれども、刑法改正なんていう問題はあの調子で行かれるならば最も望ましいんです。本当のところはわかりませんけれどもね、やるんだか、やらないんだか、わからないような先ほどからの御答弁だし、ああいうのは幾らでも時間かけてやらなければなりませんけれども、こういったような問題はすでに法務大臣が衆議院の委員会で、これは新聞の報道ですが、「この制度がないのは文明国の名に恥じる」と、こういうようなお考えを示していらっしゃる。その「文明国」でない国の法務大臣ということになるんです。そうでしょう、話の運びからいうと。
 そういうことで、この問題については少なくとも私は大臣在任中に、いつまで在任されるかはあれですけれども、少なくとも大臣の席につかれている以上、国民が強く要望しているこの問題を何とか軌道に乗せていくべきだと、こう思われるような大臣だと私は思っていたのです。ところが、この間の大臣の所信表明にはそれが全然出てこないわけです。これも無理もない言いわけをなさるならば、この間私は法務大臣になったんだと。専門じゃないとは言えないんですね、大臣の経歴からいえば。だけれども、大臣就任早々だ、それでこうとおっしゃるかもしれませんけれども、すでに昨年の暮れに衆議院の法務委員会でこれは取り上げられているわけです。ですから、もう専門的にぴんときたから大臣も、これはこの制度がないのは大きなこと言っていられない、非文明国と言われてもやむを得ないと。そういう受け方をなすったならば、ここに出てこなくちゃならない。ところが出てこない。出てこないだけじゃなくて、一方は犯罪者に対していろいろ更生のために配慮されている、あるいは予算も使っていこうということで熱心にこれからやっていくと決意を示されている。それじゃ片手落ちじゃないかというのがこの問題なんです。
 唐突として大臣の前に出た問題なら、こんなことを申し上げるんじゃないのですけれども、その点ひとつよくお考え願って、何とかして在任中にレールに乗せていただきたい、こういう気持でまず最初に大臣のお考えを伺っておきたいと思います。
#101
○国務大臣(稻葉修君) 刑事犯罪被害者補償法は、私の考えとしてぜひ制度を私の在任中にめどをつけたい、こういうことで、法務省で時間がありますたびごとに係を呼んで、どの程度に進んでいる、どの程度に進んでいる、こういう点でまだ煮詰まらないとか、そういう作業をいま進めておるわけでございます。
 おしかりを受けました、所信表明の中に一言も触れていないのはけしからぬと。これはわざと落としたのじゃなくて、不熱心で落としたのじゃなくて、うっかりして言わないでしまったように思いまして、この点は深くおわびを申し上げる次第です。しかし、いずれは委員会で御質問があれば前向きな答弁をできるように作業を進めさせております。ただ、今国会にそれじゃ成案を出して提出するかということになると、まだそこまで煮詰まっておりませんので、いかんとも返答いたしかねます。
 いつまで在任するか知らぬけれども在任中にやれと、こういうことですが、これ、解散解散と言いますけれども、解散しませんわ。しませんと言っていました。けさの閣議で、そういうことは絶対ないから所管の事項について各大臣は政務に精励するようにということでしたから、これはこの被害者補償法なども、それじゃ精励して成案を得るところまでやっていけるなという自信を持っておるわけでございます。
#102
○白木義一郎君 解散しないから落ちついていいという問題じゃないと思うのです。解散しなければなおさら総力を挙げて私がやるんだと、こういうふうにすかっと責任者というのはしていただきたいのです。解散がなくても、大臣の運命は今晩もわからないのですから。私も同じですがね。
 それで、衆議院のわが党の沖本委員に対する御答弁の中で、こういうふうに答弁されているのです。「爆弾事件以来、これはこのままほうってはおかれないんだという社会的な機運もあり、各党も御熱心でありますので、総理大臣にもそういう機運が非常に醸成されておることを報告し、私も政党出身ですから、自分の出身の政党にもよく話をしまして、極力衆知をしぼってなるべく早く案をまとめたい、こういう考えでございます。」と、大変頼もしい御答弁なんですが、この御答弁から伺えば、おそらくこのとおりに自由民主党にもお諮りになって、こういう方向だということをすでにお進めになっていると信じますので、その点ひとつ御説明を願いたいと思います。
#103
○国務大臣(稻葉修君) そういう発言をいたしましたのは私、中間報告でもいいから、どの程度に作業が進んでいるか刑事局の担当者に、自民党法務部会にこの問題についての会を開いてもらいまして、この点まで行っていますと、中間報告でもいいからそういう場面をつくりたい、こういうふうに思っていま折衝中でございます。そういうことでございまして……
#104
○白木義一郎君 反応はどうですか、反応は。
#105
○国務大臣(稻葉修君) みんな私の意見には、それはそういうことがあるだろうなと。ことに爆弾事件なんかでやられた人は、本当に何の責任も罪もないのにえらいこっちゃないか、治安の担当にある者がぼさっとしていたわけではありませんけれども、そういう手抜かりもないわけではない、強いて言えばね。そういう責任はやっぱり国家が負うべきものだ、それが文明国家の任務だと、こういうふうに考えるのなら、部会長ひとつやってくれやと。開くと言っていますから。そうして皆さん方の御意見もそういう場合に積極的に言ってくだすって、われわれが法務省で法律案を作成の前でも途中でも何でもよろしゅうございますから、おっしゃっていただくと大変にありがたいと思っております。みんなで衆知を集め万機公論に決して、いい案をつくりたい、こういうことを申したわけです。
#106
○白木義一郎君 衆知を集めることは当然のことでありますけれども、もうベテラン中のベテランの大臣ですから、大臣御自身のお考えが述べられても、これは相当な衆知の意見であると伺ってもいいぐらいに尊敬申し上げております。それでなければ天下の法務大臣が勤まるはずがないと思うんです。
 そこで、この問題についていろいろ世論が高まってきておりますけれども、この問題に対して労働災害補償的な救済法を従来法務省は考えてきた、このように伺っておりますが、先日の衆議院の法務委員会で、先ほども申しましたように、新聞の報道によりますと、大臣は国家賠償的性格を持たせる、こういうお考えをお示しになっておりますが、この労災的救済あるいは国家的賠償、大きな違いがあるわけですが、法務省としての考え、あるいは大臣は別個にこういうことを考えているんだということか、あるいは大臣がその後、最初は労災的な救済方法でいいと思っていたけれども、衆知を集める前に考えてみたら、これはとんでもないと、いまおっしゃったように国家的な賠償でこういう方々を救済していくんだというふうにお変わりになったのか。もしそういう変更がおありになったとすれば、そのお考え、御意図はどこにあるか。
 というのは、しばしばこの問題について権威ある学者の先生方が議論をされておりますが、もし国家が賠償するとしたら、なぜ賠償しなければならないか、それは国民の治安を維持するだけの国家が力を注いでないから、だから賠償するんだ、だからより以上治安を維持するのに力を入れなくちゃならない、だから、さっきはああ言ったけれども、刑法改正なんかは急がなくちゃならないというような底意があってこういうふうに変わられたのか。いま政治不信の時代ですから、いろいろと考えなくてもいいことまでわれわれは心配しなくちゃならないんです、野党の立場としては。ということで、この点をただしておきたいと思います。
#107
○国務大臣(稻葉修君) 法秩序を維持し、国民の権利を保全するという本来の任務から、治安体制の確立ということは当然な法務大臣としての考えるべきことです。そのために、しかし、何といいますか警察国家みたいなことを考えているというふうに推測していただくことは、はなはだ私にとっては実は心外なんですけれども、それと別個に、いま事務当局が考えているのはまだ煮詰まっていないのです。国家賠償的なものに考えるべきものだ、憐愍よりは責任論という、そういう私の心持ちの方へ全部固まってはいないようですけれども、私としては委員会に答弁をいたしましたのは、国家の責任という立場で被害者補償制度を、そこに基本の原理を置くべきものではなかろうかとただいまのところは思っております。
 ただ、衆知を集める段階で、いやそうではないんだ、こういう学説的な理論もあるから、そんなに簡単にはいかないよということになるかもしれません。要するに、先生、あなたさっきから歯切れが悪い歯切れが悪いとおっしゃいますけれども、とにかくあれじゃないですか、外国の立法例にも型が幾つもあり、それから犯罪被害者のその犯罪の範囲をどうするか、暴力団同士のけんかでやられた者にも補償せいなんて言ったって、それは通らぬと思うのですね。それから手続、それから額、そういうようなものをすべてだんだん詰めているのですから。ただ根本原理として、国家責任論からくるやり方でこの制度を確立しようという私のいまの気持ちと、そこまで踏み切れない別な理論もある、こういった煮詰らない点もございますので、煮詰まらないことは煮詰まらないと言うのが歯切れがいいのじゃないですか。そういうふうに御理解願いたいと思います。
#108
○白木義一郎君 それじゃ、だんだんこれから歯切れが悪くなりますから。
 この一番問題は、いま大臣のお考えを伺って了とするわけですが、この補償の額はどの程度が適当か、あるいは天井を設けたほうがいいかとかいうことは、おそらくここで歯切れが悪くなっちゃうだろうと思うのですが、まあ大臣としての御意見を衆知の中に含めてという意味で、われわれもいま党としてたたき台を急いでつくって、そしてまた皆さんにお考えを伺って一日も早く実現したいと、こういう作業を進めているような立場で大臣のお考えの一端でも伺って、それをまた参考にしたり、私は、記録に残ったから大臣がこう言ったから何が何でもなんて、そういうやぼったいことを申し上げるつもりはございません。ただ、どこまでお考えになっていらっしゃるかということを伺いたいだけです。
#109
○国務大臣(稻葉修君) 補償の額等につきましては、結局金銭賠償ということになるだろうと思いますが、現在の経済情勢で貨幣の価値がどのくらいになっているのか、そういう知識が私にはないものですから、それからまた貨幣価値の変動に応じてどういうスライドするとか、そんなことがいろいろな方面で言われていますが、そういう経済学的な知識はないものですから、万事刑事局長以下に額等についての検討は任してある。したがって、私はどのくらいが適当だということを申し上げるわけにはまいらないのです、知識がないものだから。そういうことでございます。
#110
○白木義一郎君 いろいろな案がもう外国でも実施されておりますし、また古くから専門の方々によっていろんな意見が出ているわけです、あるいは生活保護的な面でいくとか。そういうふうにぽんと木で鼻くくったように正直に言われてしまうと、あと質問、何にもできなくなっちゃう。わしゃ何にも知らぬ、みんな任してあるのだ、よきに計らえということじゃ困っちまうんですよ。民主主義もけっこうですけれども、ときには正しい独裁もあっていいと思う。大臣という立場にはそれだけの権限もあってしかるべきだと思うのです。ですから、知識がないというようなことをおっしゃっちゃいけないと思うのですよ。長い間天下の自由民主党の中で日本を左右してこられた、しかも法曹界の大先輩が、ああそうだ、そのとおりだ、わしはこう思う、刑事局の方はどんな考えか、早く具体的なあれを示しなさいと、そうして事を進めでいかなければ、解散がなくたっていつのことかわからぬ。
 八年前からわあわあ言ってきた。ところが、刑事局長の先ほどの答弁もそうでしたけれども、いろいろな関係で、一年以内には何とかなるでしょうと言うかと思ったら、何とかなるということは申し上げられませんと。その立場を察すればわからないでもないですが、この問題はそういう問題じゃないわけです。きょうにもまた爆破事件が起きるかもしれませんし、ですから、すでに昨日のテレビでは、大阪の摂津市ではこういう方々に対して見舞い金を差し上げようということが決定された。地方自治体ではどんどん進んでいるわけです。あるいは地方自治体で保険に入って、そして保険によってそういう方々に対してせめてもの救済をしていこうと。
 これは法務省がやらなければならない。法務大臣がとっくにやっていなければならない。それだからこそ、こういう制度がないのはまことに恥ずかしい、文明国と言えないぐらい恥ずかしいと、大臣ははっきりと焦点をお述べになっているでしょう。それぐらい焦点をつかんでいらっしゃる大臣が、腹案とか、御自身でお考えになっている、たくさんそういう事件も扱ってこられたはずなんです、われわれ素人と違って。それでお伺いしているわけですが、わからぬと、こうぽんと突き放されちゃうと質疑応答なんていうのはむだになってしまう。
#111
○国務大臣(稻葉修君) 私は、諸外国の立法例等も参酌し、原理は先ほどのようなことでいきたいと思いますし、額を決定するのはやっぱり裁判所の判決によって決定してもらおうと思っているのです。そして幅を持たせた決め方をしておいて、その幅の中で裁判所の御決定にゆだねるという制度のやり方がいいのではないかと、個人的にはそういうふうに思っていることだけを申し上げます。
#112
○白木義一郎君 それでは、大臣がおっしゃったとおりそのまま私のみ込みまして、大臣は何も知らない、だからみんな任せてあるというそのままを伺ったことにして、幾つかの問題点を、おわかりにならないのですから、改めて考えていただきたいと思います。
 まず第一に金額の点ですね、補償額の決定。それからどういう機関からこれを支払いをするか。これもなかなか複雑な問題であることはよく承知しております。
 また、その補償の発生する時点です。たとえば、仮に四月にこの制度が立法化された。それはその時点から以降に発効するのか。とすれば、この間のあの爆破事件の人たちは適用されないわけです。こう、切りがないわけです。そういう点も急いで煮詰めていかなければならない問題だと思いますし、それからたとえば通り魔に上って殺された。その犯罪が裁判で確定したときにその補償が決定するのか、あるいはやられたときにその補償がスタートするのか。こういう問題があります。
 中には虚偽の申請をする人もあるだろうと、非常に思慮深い方も意見を述べていらっしゃいますが、仮にそういう悪いのが一人二人いても、ほかに犠牲者がいるとしたら、それは乗り越えて進めていかなければならないというような問題もあります。そういうことでお考えを願いたいと思います。
 それから心神喪失者ですね、心神喪失者の殺人。裁判では無罪になるということになりますと、犯罪者被害というこの名前にふさわしくなくなってくるわけですけれども、この点も十分間々ある問題です。非常に被害者はみじめな暮らしをされているということは、全国的なアンケート、資料を求めなくても、われわれのいままで生きてきた生活の中から考えれば十分察しのつくことだろうと思います。さらに、いま大臣は何も知らないと言いながら、やくざ同士のけんかまでは及ばないとか、夫婦げんかで家の中でどうのこうのまでいろいろ問題があると。十分わかっていらっしゃる。昔からわかっていらっしゃる。司法試験をお受けになる前からわかっていらっしゃる。
 まあ、そういう問題がありますし、これは最近の、非常に珍しいといっては大変申しわけないですが、三津五郎さんのフグ中毒の事件ですね、これは法律的にいえば業務上過失致死罪ということになりますけれども、こういう問題も含めてやはり検討しなければならないと思います。ここでひとつこの点、非常に世の中にショックを与えた事件ですので知らないと言うわけにまいりません。専門の大臣として、こういう業務上過失から起きた悪意のない犠牲者に対する補償はどういうふうにお考えになりますか。
#113
○国務大臣(稻葉修君) 大和屋さんのフグ好きの死亡は、これはいまの料飲店法か何かわかりませんが、そういう点で過失致死に該当するのじゃないかといって、料理人はたしか拘束は受けてないけれども取り調べておるのだということを、こっちのほうではなくて、三津五郎のせがれに聞いたのです。料理人はいま引っ張られていて気の毒だが、おやじも悪いんですよと、そういうことを言うておりましたが、とにかくいま取り調べ中らしいですね。それは容疑名は業務上過失致死という容疑で取り調べられておるということを伺っていますが、それは当然なことではないか。そうして、それに対してそれじゃ、この間あるところで通夜で一緒になって、せがれに、いま刑事補償という制度が問題になっているんだよ、これがほんとうに業務上過失だったら、おまえそういう制度ができたら訴えて補償要求するかいと言ったら、いや要求しませんななんて言っていましたがね。その程度の知識でございます。
#114
○白木義一郎君 大体大臣のお考えになっていることは、ほぼ推察できます。しかし、これは問題が問題でございますので、当局の方はりっぱな制度をつくりたいと非常に御苦労なさることと思いますが、事柄の性質上、これはある程度見切り発車をして、そして政治の生きていることを国民の前に一日も早く示していくべきであって、ただ、不備な点はまたその都度これをよりよい方向へ変えていく、そういう進み方でいくべきであるという意見には大臣もはっきりと御賛成のようでございますから、この問題はこれでとどめておきますけれども、願わくはひとつ在任中、法案成立とまでは仮りにいかなくとも、レールの上へ乗せたぞと、一つの大きな業績として残されることをわれわれとともに協力してやっていただきたい、こう申し上げて次の問題に入ります。
 次は、司法書士の問題ですが、第五十五国会の衆議院において、司法書士の資質の向上とその後継者の養成を図るため、現行認可、選考制度を改善した国家試験制度の確立と規範化のため司法書士法の改正を行うこと、こういう附帯決議がなされておりますが、その後この附帯決議について法務省はどのような方向で進んでおられるか、伺いたいと思います。
#115
○政府委員(川島一郎君) 昭和四十二年に、ただいま御質疑ございましたような附帯決議がなされておるということは御指摘のとおりでございます。
 ここに司法書士会に自主懲戒権が付与されるよう努力することとございますのは、弁護士会が現在、その会員に対する懲戒権を持っております。これと同じようにしてほしいということであろうと思うわけでございます。しかしながら、これは非常に大切な問題でございまして、たとえば司法書士が依頼者から預った金を使い込むとか、あるいは書類を預りっぱなしにしておいてその後の手続を進めない、こういう事例が間々あるわけでございますが、こういう場合に的確に対処して懲戒の実を上げるというためには、それだけの司法書士会の自主的な立場というものが育成されなければならないというふうに考えるわけでございまして、現在その方向でいわば基盤を醸成するという立場からの努力をいたしておるわけでございます。
 この決議がなされましてから、司法書士法の施行規則を変えまして、この種の懲戒事案が発生いたしました場合には、法務局または地方法務局の長は、自分で取り調べることもできますが、その調査を司法書士会に委嘱する。そして司法書士会がそれを調査した場合には、処分としてどういう処分が適当であるかということの意見を付して会に報告し、局の方へ報告していただく。それを参考にして法務局で処分を行う、こういうやり方をいたしておるわけでございます。
 御参考までに申し上げますと、司法書士と同種の制度につきまして、現在自主懲戒権が認められておりますのは弁護士だけでございます。そのほかの業種、たとえば行政書士の場合には懲戒権は都道府県知事が持っております。弁理士につきましては通商産業大臣が懲戒権を持っております。税理士につきましては国税庁長官が懲戒権を行使する。それから公認会計士及び会計士補につきましては大蔵大臣が懲戒権を行使する。こういう形になっておりまして、自主懲戒権を認めた例はきわめて少ないわけでございますので、それだけに私どもといたしましても慎重な態度をとっておるわけでございまして、現在の運用の実情をいましばらく見ました上で、さらにこの附帯決議の御趣旨について最終的な検討をさせていただきたい、このように考えておるところでございます。
#116
○白木義一郎君 これは大臣の所信表明の中にもございますけれども、登記所の適正配置計画が進んでいる、その作業をもっと進めたいと、こういうことですが、ただその場合に、登記所の統廃合に伴って司法書士が事務所の移転あるいは政策などを余儀なくされる場合、司法書士としては非常な経済的負担がかかるわけですが、その点政府が低利の資金を融資してもらいたい、こういう問題が出てきているわけですが、この点についてどのようにお考えになっているか。
#117
○政府委員(川島一郎君) 御指摘の問題がありますことは私も承知しておりまして、大変もっともな要望であろうと思います。そこで、司法書士の方がそういう場合を含めまして事務所を移転する、あるいは新しく設けるという場合に公庫から金を借り入れる、その場合の便宜を図ってほしいということを、これはたしか大蔵省であったと思いますが、協議いたしまして、そのようなな要望書を公庫に出したことがございます。実際に公庫が貸し出しをいたします場合には比較的低利でございますが、それと同時に、借り入れの申し込みをいたしましてから認可がおりるまで時間がかかるという問題がございます。その点につきましても極力迅速にやってもらいたいということを要望いたしまして、内部的にはその趣旨が十分わかるので、そのような扱いをしようということに話がまとまっております。
#118
○白木義一郎君 大臣にお願いしておきたいのですが、「今後とも整理統合対象庁につきましては、地元関係者等と十分折衝を重ねながら円滑な実施に努め、国民の利便にかなった登記行政のサービス向上に努力してまいりたい」と、こういう御決意ですので、あわせてこういう問題がありますので御配慮を願いたいと思います。
 それに伴いまして、現在司法書士の報酬の値上げが緊急の課題になっていると聞いておりますが、これに対する法務省のお考えをお聞かせ願いたいと思います。たとえばどのぐらい上げるのが適当か、あるいは時期は早い方がいいか、おそいか。あるいはまた現在政府としては諸般の情勢からこれは適当でない、しかし実情から言えば無理からぬ点もあるから、その面はこっちからカバーしていこうとか、何かお考えがあると思いますから。
#119
○政府委員(川島一郎君) 司法書士の報酬の改定の問題でございますが、従来の経過を見ますと、大体三年ごとに報酬の改定を行っておるというのがいままでの実績でございます。最近では昭和四十五年、その次が四十八年ということで改正を行ったわけでございますが、四十八年の暮れから例の石油問題が起こりまして経済情勢が非常に変わりましたので、これに伴いまして四十九年、これは翌年でございますが、翌年の二月一日に第二次の改定を行ったわけでございまして、このように四十八年、四十九年と次の年度に改定をさらに行ったという例は今回が初めてでございます。
 しかしながら、四十九年の二月から現在に至るまでの間にやはり相当の経済情勢の変動がございますので、司法書士会の方から、さらに報酬の改定をしてほしいという要望が出てきております。会の要望といたしましては、本年の四月一日から約四八%上げてほしいと、こういう要望でございますが、御承知のように、司法書士の手数料は一種の公共料金的な性格も持っております。その点で一般的な配慮が必要でございますが、他方におきまして、その収入によって生活をしております司法書士の実情を考えますと、これをそのままほっておいていいかどうかということにも問題がございます。そこで現在検討中でございまして、その上げ幅をどれくらいにしたらいいのか、それからいつごろから改定を行うかというような点を含めまして、目下検討中でございます。したがって、はっきりした見込みは申し上げられませんけれども、法務省といたしましては適切な対処の方法を見出したいと、このように考えております。
#120
○白木義一郎君 それでは最後に、これも司法書士会の要望ですが、公共嘱託登記手続に司法書士を参加させてもらいたい、そして適確迅速、円滑な処理を図るため不動産登記法及び司法書士法並びにそれらに関連する諸法律の改正を行ってもらいたい、要するに、司法書士の方々がその手腕をもっともっと幅広く発揮したい、公共嘱託の登記手続もわれわれがやるべきであると。この道が開かれるということは、これらの方々の大きな経済的な理由にもつながってくると思いますので、この要望に対してもどのようなお考えかを伺い、最後に大臣にもお考えを伺って、私の質問を終わりたいと思います。
#121
○政府委員(川島一郎君) 公共団体が行います公共嘱託登記の嘱託手続に司法書士が関与したいという要望が出ておりますことは仰せのとおりでございます。従来は、公共団体の場合にはあまり司法書士に依頼するということがなかったのでございますが、四十七年ごろから司法書士会がこの方面の受託体制をつくるということに力を入れまして、公共登記嘱託委員会というようなものをつくり、その下に受託団というようなものをつくって体制を整備してまいりました。そして現在では、全国五十の司法書士会のうち四十九会がこの種の委員会を設けて、現にある程度の公共登記嘱託の仕事を受託しておるわけでございます。
 そこで問題点といたしましては、この公共団体から嘱託を受けます際の受ける資格でございますが、これを個々の司法書士が受けるのでは公共団体との関係があって受けにくい場合がある、したがって受託団というものを現在設けてやっておるわけですが、この受託団に法人格を認めてほしい、こういうような要望も出ておるわけでございます。しかしながら、こういった種類の特殊法人を設けることには若干法制上の問題がございますので、私どもといたしましては、むしろ基本的な約定書というものを定めて、それにのっとってこの事業を引き受けるという形にしてはどうかということを司法書士会のほうに示唆いたしたわけでございます。その結果、司法書士会の方からは、基本約定書というようなものをつくりまして、これについて法務省としてこういうもので差し支えないかどうかという照会をしてまいりましたので、本年の一月にその契約書で差し支えないということを回答いたしたわけでございます。したがって、今後はこの基本約定書に基づいて公共嘱託登記の受託が行われるということになると思いますので、その成果をしばらく見守っていきたい、このように考えておるところでございます。
#122
○国務大臣(稻葉修君) 川島民事局長が申し上げたとおりでございまして、私からはこれにつけ加えるものがございませんが、御了承願います。
#123
○白木義一郎君 どうもありがとうございました。
#124
○橋本敦君 私は、きょうはたいへん時間が短いのですが、一つは田中金脈の問題と、二つ目は無事に釈放されて帰国しました早川、太刀川君の問題についてお伺いをしたいと思っております。
 大臣は、さきの法務委員会で御就任の所信を表明されました。当然、法をあずかる最高の責任者として、法の厳正な執行をやっていくということを表明されました。そのような大臣の所信と御意見は、田中金脈問題についても、もし違法な行為があれば厳正にこれに対処をするということであると当然私は理解をしたいのですが、そのようにお伺いしてもよろしゅうございますか。
#125
○国務大臣(稻葉修君) 橋本先生の仰せのとおりに厳正中立に行います。
#126
○橋本敦君 私は昨年の十一月十四日の当法務委員会におきまして、いわゆる田中関連会社が宅建業法違反なり、あるいは商法上の違反なり、あるいは脱税の疑いなり、いろいろな違法行為と見られる問題があることを指摘をいたしました。
 そこで、きょうはまず宅建業法の関係について建設省にお伺いをしたいと思うのですが、宅建業法の七十一条、七十二条の規定によりますと、当然建設大臣もしくは都道府県知事が業者に対する監督権を持っていると理解されますが、建設省けその点どうお考えでしょうか。
#127
○説明員(川合宏之君) 先生のおっしゃるとおりと考えております。
#128
○橋本敦君 そういたしますと、当委員会、建設委員会、決算委員会その他で、いわゆる田中金脈関連会社の宅地建物取引業法違反の問題が提起をされ、議論をされたわけですが、監督権を持つ建設省としては当然これを調査する責任があると思いますが、調査をなさっておられますか、いかがですか。
#129
○説明員(川合宏之君) 関連企業の調査につきましては、国会でお約束申し上げたことでもあり、また宅地建物取引業法を所管する建設省として当然の責務と考えております。
 調査の進捗状況ですが、たいへん遅くなりまして申しわけありませんでしたが、事務局としましておおむね調査を終わっておりますので、近く建設大臣に上げまして、早急に御報告申し上げるようにいたしたいと考えております。
#130
○橋本敦君 調査の結果は国民が注視をしておる重大な問題であるし、国会もまた重視をしておるわけですけれども、いまの御答弁ですと、事務局段階でほぼ調査を終わって、近く大臣から国会に報告をされる、機会を見て報告をされる、こういうように理解をするのですが、大体近くというのは、あとどのぐらいで報告ができるという段取りにお考えになっておれますか。
#131
○説明員(川合宏之君) 来週中に御報告申し上げるように努力いたします。
#132
○橋本敦君 いまおっしゃった来週中の調査の結果の報告を待てば、調査の結果の全貌が明らかになると思いますが、田中関連会社は幾つもあるので、どの会社とどの会社を調査をしたかというような調査対象の会社名、これはいまここで明らかにしていただけますか、いかがですか。
#133
○説明員(川合宏之君) 宅地建物取引業法の目的とします消費者の保護のために最も重要な行為は、宅地の売却行為であります。したがって、宅地の売却行為を行ったと見られます、室町産業及び新星企業を中心に調査をいたしております。
#134
○橋本敦君 室町産業については前の委員会で私も、いわゆる信濃川河川敷を買い占めました昭和四十年前後には宅建業者としての認可、免許を持っていない、持っていない業者が宅地を保有し、将来転売もしくは利益を得る目的で多数の農民その他の人々からこれを買い占めるという行為も、当然宅建業法の取り締まりの対象になるということを指摘をしたのですが、いまおっしゃった室町産業でいわゆる宅地売買とおっしゃいましたが、この河川敷問題は調査対象に入っているのですか、いないのですか。
  〔委員長退席、理事白木義一郎君着席〕
#135
○説明員(川合宏之君) 私どもが調査いたしましたのは、宅地建物取引業の免許を失効いたしました後の宅地の売買について調査いたしました。御指摘の土地の売買行為が業法違反に当たるかどうかは、いずれほかの案件と合わせまして、まとめて責任者から御報告申し上げるようにいたしたいと思っております。
#136
○橋本敦君 ところで、近く発表されることによって理解はできますが、建設省はその調査の結果に基づいて、国会に報告すると同時に、違法行為が、つまり宅建業法違反と認定される事実が調査の結果明らかになれば、そのものについてはどのような取り扱いをなされるか、その点はいかがでしょうか、違法行為があると見られればですよ。
#137
○説明員(川合宏之君) 仮定の問題になりますが、違法行為があると認められれば司法当局に通知することになろうと思います。
#138
○橋本敦君 いまこの段階で、調査の結果宅建業法違反と見られる事実があるかどうか、お答えいただけるか。それとも、大臣からの総合的報告でないと、それは課長としてはお答えになれないか。その点はいかがですか。
#139
○説明員(川合宏之君) 本件が宅地建物取引業法に違反するかどうかは実はかなり微妙な問題でありまして、御承知のとおり被害者の全然ない案件であります。したがって、私ども取り扱った前例にもさようなものがないものですから、したがって単に事務当局だけの当面の見解を申し述べることは差し控えまして、最終的に大臣の判断を得ましてから御報告いたしたいと思っております。
#140
○橋本敦君 二月十三日付の朝日新聞の夕刊には、無免許売買などで新星企業の宅建業法違反がほぼ明らかになったという建設省の結論がスクープされているわけですが、いまこの点について個個には明確にお答えいただけないということですが、これも含めて、近く一週間後には国会に明らかになるというようにお答えを理解してよろしいですか。
#141
○説明員(川合宏之君) 違法、適法の判定、それから今後の本件の取り扱いにつきましては、性質上当然まず国会に御報告すべきことでありまして、新聞の報道はもとより建設省が正式に発表したものではありません。したがいまして、先生がただいまおっしゃったように、来週中を目途に国会にまず御報告するようにいたします。
#142
○橋本敦君 安原刑事局長に伺いたいのですが、私が昨年の十一月十四日に、宅建業法違反の事実も含めて厳正に違法行為を取り締まるべきであるということを要求した際に、安原刑事局長は、警察及び検察の厳正公平な立場での処理を信頼してほしいというお答えをいただきました。いま建設省の方は、一週間後に正式に発表するけれども、違法行為があれば当然警察、検察庁の方に通知をすると、こういう意思を明確にされておられますが、これを受けて法務省あるいは警察当局、検察当局としてはどのように対処されるお考えか、伺いたいと思います。
#143
○政府委員(安原美穂君) まずもって本件は、具体的な新星企業、室町産業の宅建業法違反の処理の問題でございますので、法務当局から検察の具体的方針を申し述べるということは差し控えた方がいいと思いますけれども、一般論といたしまして、私は、検察庁はそのような事件を受理いたしました場合においては厳正な立場で処理するものと信頼しております。
#144
○橋本敦君 建設省が宅建業法違反であるという考え方の結論に達して、検察庁もしくは警察庁に通知をすると、こう言っているのですから、そういうことがあれば厳正に捜査を進める、これは当然そう伺ってよろしいわけですね。もう一遍確認をしておきます。
#145
○政府委員(安原美穂君) そういう厳正な立場で捜査、処理を行うものと期待いたしております。
#146
○橋本敦君 ところが、早くも新聞報道の一部には、いわゆる宅建業法というのは免許を持たないで売買をしたという形式犯にとどまるか、いわゆる微罪として書類送検どまりかという観測記事が出ているわけです。そこで私は、厳正な捜査を要求するわけですが、いかに宅建業法といえども、罰則の規定で言うならば三年以下の懲役、あるいは三十万円以下の罰金、場合によっては併科をされるということで、決して形式的微罪という扱いは、この罰条の関係から見ても、宅建業法が消費者の公正な利益を保護するというたてまえから見ても、軽々に微罪として扱ってはならない問題であると私は思うし、特に田中金脈については、国民注視の中で検察の信頼が問われることになると思うのです。そういうことも含めて、それを捜査をしても書類送検どまりかというような観測記事が流れているという状況の中で、その事件を受理すれば、そのように軽々しく見ないで厳正に捜査を遂げるということは当然だと思いますが、大臣の御見解はいかがでしょうか。
#147
○国務大臣(稻葉修君) わが検察庁陣営の厳正公平な事件処理の進め方に信頼を置いて見守っていきたいと思っております。
#148
○橋本敦君 次に大蔵省の方にお尋ねをしたいと思いますが、過日の決算委員会で、大蔵大臣から田中金脈の税務調査見直しについて中間報告をいただきました。その後、新聞報道その他によりますと、いわゆる過少申告という取り扱いの中で、田中総理並びに関連企業に修正申告を出させて、過少申告追徴を行うということが出ておりますが、大蔵省の処理方針が現在そういう方向で進んでいるのですか、いないのですか。その点はいかがでしょう。
#149
○政府委員(渡邊喜一君) 新聞等に二、三出ておりますのは、私どもの方から出た記事ではございませんで、私どもとは全く関係なしに新聞社等で書いた記事であろうかと思います。
 この前、参議院の決算委員会で大臣から報告を申し上げましたように、現在までの調査の段階におきましては、重大な誤りというふうなものは発見されておらない。計算の誤りでありますとか、あるいは解釈の食い違いの問題というふうなことが主でございます。
 まだ調査は完結いたしておりませんので、調査が完結した段階において国税当局がどういう措置をとるかというはっきりしたことは申し上げられないわけでございますが、一般的なやり方を申し上げますと、犯則とかそういう重大な誤りということがなくて、しかも追徴すべき税額があるというふうな場合におきましては、特に個人の場合におきましては、まず納税者に対して、税務当局としてはこれこれこういうふうに考えておる、ついては納税者側から積極的に申告の修正をする考えがあるかということ、つまり申告の修正の慫慂といいますが、そういうことを行う。これに応じない場合は当局側が一方的に更正決定をするといふうなことになろうかと思います。したがいまして、本件につきましても、一般の例にならって税務当局としては措置をするということに相なろうかと思います。
#150
○橋本敦君 いまお話の、重大な大きな違法はないから、解釈の違いその他で申告漏れが幾らかあるというお話ですが、大体現在調査をされた段階で、三月中には調査を終えるという大蔵大臣の約束がありますが、現在の段階でいま大蔵省が一般的手続で考えるとして、おおよそ田中氏及び関連企業の過少申告による追徴金がどのくらいに達するかという見込みはいかかですか。おおよそでけっこうです。
#151
○政府委員(渡邊喜一君) 調査といたしましてはかなりまとめの段階に入ってはおるわけでございますが、調査において取り上げました幾つかの項目について最終的な評価とか判断というものをまだいたしておりませんので、したがいまして、全体としてどの程度の金額になるかというふうなことは、まだ申し上げる段階に至っていないということでございます。
#152
○橋本敦君 それでも新聞では、たとえば二月九日の読売は一億円超すというように出ているわけですね。これは私は大体ほぼ調査が終結している現段階としては、正式にはきまった数字を端数まで正確に言えないということはわかりますし、それはわかるのですが、おおよそいままでの調査の結果大体これぐらいのものになるだろうという見込みは、もうつけられる段階になっていると思う。その点で聞いているのですが、いかがですか。
#153
○政府委員(渡邊喜一君) まだそういう段階に至っていないということでございまして、新聞がいろいろ書いております数字は、私どもとは全く関係なしに、記者の方でおそらくいろいろ推測をして書いた数字ではないかと思います。
#154
○橋本敦君 それでは大体調査はいつごろ完結をし、いつごろ処理の結果国会あるいはその他に報告ができるか、そのめどを明らかにしてください。
#155
○政府委員(渡邊喜一君) 調査は、大臣も申し上げましたしたように三月一ぱいをめどにやっておるということでございます。特に、個人の所得に関しましては三月十五日というのが一応確定申告の期限になっておりまして、五年以前のものは三月十五日を過ぎますと時効になるというふうな関係もございますので、そういう事態にならないように、いま懸命にまとめの段階をやっておるということでございます。
#156
○橋本敦君 そうすると、田中氏個人の問題については三月十五日までにめどをつけるという方針でやっておられる、こういうことですが、田中氏自身を呼んで調査をされたということはこれまでにありますか、ありませんか。
#157
○政府委員(渡邊喜一君) 個人、法人を問わずできるだけ早くという方針でやっておるわけでございます。時効の問題も一応のめどではございますが、必ず十五日以前に全部の処理を終わらなければならないというふうなことでもございません。しかし、それは別といたしまして、最初に申し上げましたように、法人、個人を通じてできるだけ早く完結したいということで努力をいたしておるわけでございます。
 それから田中氏個人に直接会ったかどうかという御質問でございますが、現在までのところ、まだ直接に面会をいたしたことはございません。
#158
○橋本敦君 田中邸に立ち入り調査をしたことはありますか。
#159
○政府委員(渡邊喜一君) 立ち入り調査というふうなものはまだやっておりません。
#160
○橋本敦君 最終的には田中邸、たとえば東京ニューハウスの所有地もあれば、資産評価もある、という問題で田中邸にも行って調査をする、田中氏個人とも調査の対象として話し合うという必要は当然あると思いますが、これをやる意思があるのかないのかだけお答え願いたいと思います。
#161
○政府委員(渡邊喜一君) 田中氏個人に最終的に必ず会うのかという御質問でございますが、私どもといたしましては、調査上どうしても必要だという場合には、これは会わなければならないというふうに考えております。立ち入り調査についても全く同様でございまして、立ち入り調査しなければ最終的な締めができないということでございますれば、これは立ち入り調査をやるということになろうかと思います。ただ、必ず納税者本人に会わなければ締めができないかどうか、この辺はこれから調査をまとめていく段階において判断される問題である。必要があれば必ず会うということになろうかと思います。
#162
○橋本敦君 たとえば過少申告漏れが別に悪意がなしに行われたということであれば、あなたがおっしゃるような手続で過少申告加算税を取るという手続になりますね。ところが国税通則法によれば、そのようなことではなしに、納税者がその納税のために必要な資料、課税対象等の税額の計算の基礎となる事実、これの全部もしくは一部を隠匿をしたというように見られるならば、つまり単に漏れたのじゃなくて、そう見られるならば、追徴額は過少申告の場合の五%じゃなくて、国税通則法によって三〇%取らねばならない、こうなりますね。だから、これが単に漏れたのか、それとも関連会社並びに田中氏の方で故意に申告をしなかったのかという点を見きわめなければ正しい調査にならない。それを見きわめて初めて調査の結果が終結をする。そうなれば当然会って具体的事実を調査をする、立ち入り調査も必要になるというのが一般的な常識です。現段階の調査の状況において、やはり会うか会わないか、この点の見きわめはいかがですか。必要があればじゃなくて、いまの見込みです。
#163
○政府委員(渡邊喜一君) 現在までの段階の調査におきましては、大臣も申し上げましたように、仮装隠蔽とか、偽り、不正というふうな重大なミスというものは把握されていないということでございます。
#164
○橋本敦君 それがあるかないかの調査のために会わなければならないではないかという私の指摘なんです。そうすると、いまも大蔵省は、会わないままで調査を終わってしまうかもしれない、また、調査に行くかもしれない、まだはっきり決まってないということですか。
#165
○政府委員(渡邊喜一君) 必ずしもその仮装隠蔽があるかないかというためにだけ本人に会う必要が生ずるということではございませんで、単純なミスの場合であっても、そのミスがどういうことで生じたかというふうなことについて本人に聞かなければわからないような事情がもしあれば、これは本人に会わなければなりません。
#166
○橋本敦君 そういう事情があると見るのか、見ないのか、いまの見込み……。
#167
○政府委員(渡邊喜一君) いまの段階ではまだそういう必要が生じておりませんので、本人に会っていないということでございます。
#168
○橋本敦君 その点は調査が私は手ぬる過ぎる。再検討してもらいたい。その点についてはいずれまた決算委員会、大蔵委員会で伺います、きょうは時間がありませんから。必要とあれば田中邸の調査、田中氏個人と面接調査をやると、こうおっしゃる。いまの段階でその必要は出てないという、ここに私は問題があると思いますが、重ねて厳正な調査をお願いして、大蔵省関係の調査はきょうは時間がありませんので終わります。ありがとうございました。
 次に、十カ月の長い拘禁の後に無事に帰ってこれました早川、太刀川君の問題について聞きたいと思うのです。
 この事件は、私どもは当然逮捕されるべきものでないのが逮捕され、不当な人権侵害を受けたと、こう考えている事案ですが、それはともかくとして、帰ってきたことについては、家族の皆さんの喜びも含めて、よかったというように私は考えているわけです。
  〔理事白木義一郎君退席委員長着席〕
 法務大臣は、この早川、太刀川君が帰国をしたという問題について、現在どのような御所見をお持ちでしょうか。
#169
○国務大臣(稻葉修君) 大変結構な結果になったと思って、喜んでおります。
#170
○橋本敦君 いまおっしゃった大変結構だということはそのとおりだと思いますが、どういう法的根拠と手続で二人が釈放されたのかの問題を明確にしなければならぬと思います。
 そこで、アジア局次長、外務省にお伺いするのですが、韓国政府は、二人の釈放の法的根拠を日本政府に対してどのように説明をいたしておりますか。
#171
○政府委員(中江要介君) 私どもが韓国政府から受けております説明によりますと、早川、太刀川両氏は、韓国の刑事訴訟法第百一条第一項の拘束の執行停止という措置によりまして、まず拘束が解かれて、引き続きまして、韓国の出入国管理法第四十六条の出国勧告を受けて、そして韓国から帰国したと、こういうふうに認識しております。
#172
○橋本敦君 そういたしますと、韓国の憲法上でのいわゆる赦免といいますか、そういう形で完全に釈放されたということにならない。刑事訴訟法のいまおっしゃった百一条の規定は、裁判所の判断で裁判所が相当であると認めたときは拘束の執行の停止ということにとどまりますから、また都合によっては、違法行為、再犯のおそれあるいは考え方の違いによってはこれが再拘束をされるおそれもある。これが一つ。もう一つは、進行中の裁判はどうなるのかという問題に関連をして法的には未解決の問題が残る。こう私は思うのですが、その点の御見解はいかがでしょうか。
#173
○政府委員(中江要介君) その点につきましては、今回の釈放、一般に釈放と言われておりますわけですけれども、これは早川、太刀川両氏に限らず全部で百数十名という緊急措置第一号、第四号違反者に対する、法の手続による釈放という言い方を朴大統領は特別談話の中で言っておるわけでございまして、それを敷衍いたしまして、大統領スポークスマンの補足説明によりますと、これは法定の、法に定める釈放であって、いま先生御指摘のような、憲法に基づきます大統領の特別赦免とか特別減刑とかというよなうものではないということをはっきり言っておるわけでございます。したがいまして、先ほど申し上げましたように拘束の執行停止というところにとどまっているという点は、そのとおりの認識だろうと思います。
 そういたしますと、いま係属中の大法院の上告審はどうなるのかという問題につきましては、これは大法院の上告審は法律的には係属中であるということになろうかと、こういうふうに思います。
#174
○橋本敦君 大法院の上告審が係属中であれば、当然、上告を棄却するかどうするかという判決がまた出されることが、まだ手続上残されておる。この問題が一つありますね。それが出された段階、あるいは太刀川、早川両君が日本国内においてどのような行動をするとかしないかいう問題も含めて、いまなされたこの拘束の執行停止が取り消されるおそれ、危険性というものがあるのかないのかという点について、外務省はどのようなお考えを持っておられますか。もうないというように信じてよいのかどうなのかという問題ですね。
#175
○政府委員(中江要介君) この早川、太刀川両氏は、特に今回の釈放された大ぜいの中の数少ない外国人ということでございまして、この外国人たる二人に対する措置の理由として、先ほども申し上げました大統領のスポークスマンの補足説明では、二人の日本人に対しては当該国家との友好関係を考慮して釈放の対象に含めると、こういう言い方をしておるわけでございます。したがいまして、今度の釈放の措置の背後には、日韓両国の友好関係というものが考慮されている。したがって、日韓双方で両国間の友好関係が大事だと思っている限りは、今回の釈放に至った措置の取り消しなり変更なりというものはないというふうに確信していいのではないかと、こういうふうに私どもは考えております。
#176
○橋本敦君 そういう政治的、抽象的な議論だと不安が残るわけですね。日本の大使館は韓国政府に対して、いま二人が拘留の執行停止、刑の執行停止によって帰国したということは韓国側が日韓友好のためと言うのはよろしいですが、要するに、この二人はもはや再び執行停止を取り消して拘留することはないというはっきり言明をとっていますか、とっていませんか。いま向こう側のスポークスマンだけの説明でしたね。大使館として韓国政府にそこまではっきりした詰めをしているか、していないか、これを聞かしてほしいのです。
#177
○政府委員(中江要介君) この二人の日本人に対する裁判事件につきましては、政府もたびたび申しておりますように、政府の考え方は、これは第一義的には韓国の主権下における司法手続が進行中の事件である。したがって、それについては上告審の結審があった上で何らかの措置なり申し出なりということは、これは理論的にはあり得るといたしましても、裁判進行中は、それはまず韓国の主権行使の妨げになるようなことはしないという方針で臨んでおるわけでございまして、この基本的な考え方は、上告審が係属中である現段階でも同じでございます。したがって、そういう意味で、先生がおっしゃいますように、法律的にあるいは法律手続的に最終的に決着を見てないじゃないかと言われますと、その点は理論的にはそのとおりだと、こういうふうに申さざるを得ない、こう思います。
#178
○橋本敦君 そこで法務大臣に伺いたいのですが、この早川、太刀川君が帰国をいたしまして、自分の信条、信念に基づいて日本国内で自由に自分に課せられたいろいろな事件についてものを書く、あるいは話す、いわゆる日本の国内では当然言論表現の自由によって保障されているような諸活動あるいは行動、これをとるということは当然日本の憲法から許されているというのはあたりまえだと思いますが、まずこの点は疑いございませんね。
#179
○国務大臣(稻葉修君) そのとおりでございます。
#180
○橋本敦君 そこで法務大臣に伺いたいのですが、韓国とわが国の間に犯罪人引き渡しに関する条約は締結されておりますか、おりませんですか。
#181
○国務大臣(稻葉修君) まだ締結されておらないように思われます。
#182
○橋本敦君 そういたしますと、将来、法的にはいま外務省がお答えになったようなペンディングな問題が残るという不安がまるで解消されていないわけだから、再びそのようなことがないことを期待しますけれども、仮りに韓国政府が早川、太刀川君の刑の執行の停止を取り消して、身柄を引き渡せというような問題が将来理論的にはあり得るわけです。その場合、私は日本政府は二人の身柄を引き渡すべきでないということは、これは日本の法律に照らして当然だと思いますが、大臣の御所見はいかがでしょう。
#183
○政府委員(安原美穂君) いまの問題は、逃亡犯罪人引渡法の適用の問題と思いまするが、御指摘のとおり、逃亡犯罪人引渡法には、条約があって、その条約に別段の定めがない限りは、逃亡犯罪人とされる者が日本国民であるときは引き渡してはならないという規定がございますので、当然引き渡すということはできないということに相なろうかと思います。
#184
○橋本敦君 その点をはっきり法務省の見解を伺いたかったわけです。
 ところで、この事件の真相は、いろいろだださなければならない日本の二人の学生に対する基本的人権の侵害の問題があると私は考えているのですが、きょうは時間がありませんから、ごくかいつまんで二、三外務省に伺いたいのですけれども、外務省は、これまで私が二学生の救出を早くしてほしい、早くやれと、こう要求をいたしましたが、いまお答えのように、裁判進行中の事件であって、とやかく介入することは主権の侵害になるというたてまえから、裁判の結果を待ってと、こういう態度を続けてこられました。ところが、きのう太刀川君が記者会見で言っているところによりますと、日本大使館から弁護士を通じて、けんかをしないでおけというように言われて、それが日本政府の方針かと思ったという記事を読んで、私はこれが事実であれば大変なことであるということを思ったのですね。つまり、言いかえてみるならば、おとなしく向こうの官憲の言うことを認めなさいと日本大使館が弁護士を通じて言ったというようにとられる、そういう記事ですね、そういう趣旨です。こういうことをもし日本大使館が弁護士を通じて言ったとすれば、これは大変な問題です。
 そこで、このようなことを太刀川君が言っているのですが、私は、長い間苦労し、拘禁されて苦しい思いをした本人が弁護士から言われた言葉をよもや間違って伝える、忘れるとは思いませんが、外務省としてはこのような事実、いかがでしょう、実際あったのですか、いかがですか。
#185
○政府委員(中江要介君) 政府といたしまして、弁護士を通じて太刀川氏にそういうことを言うように依頼したとか、あるいは言わせたとか、言ってほしいとお願いしたとか、そういったことは一切ございません。
#186
○橋本敦君 今回の二人の釈放について、韓国政府の金総理から日本の外務省、あるいは手島書記官か大使かわかりません、二人が帰国してからの言動を注意してほしい、慎んでほしい、こういつたような要望がなされたというようなことが報道されています。外務省は正式に二人の釈放について何らかの条件なり要望なりを韓国政府から聞いていますか、いませんか。
#187
○政府委員(中江要介君) ソウルにあります日本の大使館が、本件を正式に韓国政府当局から通報を受けましたのは十五日、土曜日の朝でございますが、そのときには、いま先生がおっしゃったようなことは一切ございませんで、釈放されることになったという正式の通報と、その釈放に朴大統領が決定されたゆえんのものは、先ほど申し上げましたような両国の友好関係というものを配慮してなされたものであるということを伝えられた、こういうことでございます。
#188
○橋本敦君 したがって私が心配するような、日本の大使館に対して、あるいは外務省に対して、帰国後二人の言動や行動を慎み、遠慮してもらいたいというような意向はなかった、何らの条件もつけられていない釈放である、こう理解してよろしゅうございますね。
#189
○政府委員(中江要介君) そのように御理解いただいてけっこうでございます。
#190
○橋本敦君 そういたしますと、その言葉を信用して、二人の自由な活動を保障してやってほしいと思うのですが、この釈放が、いまあなたがおっしゃった日韓関係の友好のためにと韓国側が言っておるということの中身、真意、具体的にどういうことを言っているのか、外務省筋は聞いていますか。
#191
○政府委員(中江要介君) 具体的な内容については何ら聞いておりません。こういうことを韓国側から言われたのはもっぱら韓国政府の判断だ、こういうふうに認識しております。
#192
○橋本敦君 そういたしますと、新聞は早くも、この二人の釈放によって五月にも日韓閣僚会議を開催することを外務省、政府は準備するかという報道記事がなされています。そのような対応を外務省は準備をしているのですか、していないのですか。
#193
○政府委員(中江要介君) 外務省といたしましては、日韓定期閣僚会議を今回の早川、太刀川両氏の釈放とは何ら関係のないものという認識のもとに対処しております。
#194
○橋本敦君 だから、したがっていわゆる経済援助その他の取引に二人が使われたというようなことが、この二人の学生の生涯の負担にならないということは、はっきりそういうことはないということはお約束いただけますね。
#195
○政府委員(中江要介君) 絶対にそういうことはないということは、はっきり申し上げることができます。
#196
○橋本敦君 日韓関係については、まだいわゆる朴大統領狙撃事件のなぞに包まれた多くの問題、この二人の学生の大統領緊急措置による逮捕の人権侵害その他の理論的問題が残っています。さらに大きな金大中氏事件、主権侵害と見られるわが警察当局の捜査、韓国政府の金東雲一等書記官に対する捜査打ち切りを含む問題、この問題がまだ残されているということは、事実間違いありませんね。
#197
○政府委員(中江要介君) 間違いございません。
#198
○橋本敦君 それでは、金大中事件について私もしばしば質問をしているのですが、今後どのような方向でどういうような手続で解決をする御方針なのか、外務省の見解をお聞かせください、金大中事件について。
#199
○政府委員(中江要介君) いわゆる金大中事件につきましては、外交的には決着を見たという立場をとっていることは何度も申し上げておりますが、その外交的決着をつけるに当たって、いま先生がおっしゃいました金大中事件に絡まる金東雲当時在日韓国大使館一等書記官の犯行容疑というもの、それの有力な証拠としてわが方から韓国に提出いたしました指紋という証拠、こういうものについての韓国側の取り扱い、さらにはそれについての説明というものは不十分である、日本政府としては満足していないという点も何度か申し上げたと思うのですが、その点はいまも変わらないわけでございますので、政府としてはその後も折に触れて韓国側に、金東雲一等書記官の犯行容疑について、日本政府が韓国側に提出した指紋という有力な証拠について韓国側はどういうふうに取り扱い、どういうことであるのかということについて、わが方が満足し得る説明を提供していただかないことには納得ができないという申し入れは引き続き行っておるし、これについて満足な説明が得られるまで、日本政府としては韓国側に要求し続けていくという方針には変わりはございません。
#200
○橋本敦君 時間が参りましたが、それでは金大中事件の問題について、まだ外務省としては金東雲一等書記官の指紋の検出を中心に韓国政府の納得のいく説明を要求中である。それが明らかにされない以上は金大中氏事件が、その問題と金大中氏自身の原状回復を含めて未解決であるということは御確認いただけますね。
#201
○政府委員(中江要介君) 金東雲一等書記官の部分につきましてはいま先生のおっしゃるとおりでございますが、他方、金大中氏の原状回復というとらえ方は、これは政府としてはまだそういうとらえ方ができるだけの十分な主権侵害の証拠がないということでございまして、いまの段階の政府の考え方は、外交的決着の際に金大中氏の身柄の自由、出国をもし希望するなら出国が認められるべきではないかという金大中氏の自由の問題として見守っていく、こういうことが残っていくという、こういうことでございます。
#202
○橋本敦君 では最後に。その点の答弁は私は納得ができません。つまり、金東雲書記官が犯行に加わっていたとするなら、それ自体明白な主権侵害を具体的にあらわす事実です。これが明白になれば当然、主権侵害に伴う国際法上の処置として原状回復という問題が出てこなければならない、私はこう考える。その点について今の御意見との食い違いがあります。したがって、この点について私は納得しませんので、また機会を見て成り行きを報告を受け、質問をすることにして、きょうは時間がきましたので、これで終わります。ありがとうございました。
#203
○委員長(多田省吾君) 本日の調査はこの程度にとどめます。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後三時六分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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