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#1
第075回国会 法務委員会 第15号
昭和五十年六月二十六日(木曜日)
   午前十時三十六分開会
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         多田 省吾君
    理 事
                大島 友治君
                高橋 邦雄君
                白木義一郎君
    委 員
                岩上 妙子君
                福井  勇君
                町村 金五君
                中村 英男君
                矢田部 理君
                安永 英雄君
                橋本  敦君
                下村  泰君
   国務大臣
       法 務 大 臣  稻葉  修君
   政府委員
       法務大臣官房長  香川 保一君
       法務省民事局長  川島 一郎君
       法務省刑事局長  安原 美穂君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        二見 次夫君
   説明員
       法務省刑事局参
       事官       根來 泰周君
    ―――――――――――――
 本日の会議に付した案件
○船舶の所有者等の責任の制限に関する法律案
 (内閣提出、衆議院送付)
○刑事補償法の一部を改正する法律案(内閣提
 出、衆議院送付)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(多田省吾君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 船舶の所有者等の責任の制限に関する法律案を議題といたします。
 まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。稻葉法務大臣。
#3
○国務大臣(稻葉修君) 船舶の所有者等の責任の制限に関する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。
 現行商法は、船舶所有者が船舶による事故によって損害賠償の責任を負う場合等には、船舶及び運送賃等を債権者に委付して損害賠償の責任を免れることができる、いわゆる委付主義を採用しております。
 このように船舶所有者の責任を一定の限度に制限する制度は、その方法にそれぞれ異なるところがあるとはいえ、世界各国に共通する制度でありますが、わが国の委付主義の制度は、委付の対象となる船舶の破損の程度等偶然の事情によって、損害の填補される程度が著しく異なり、被害者保護の見地から合理的でないものとされ、現在わが国以外には、この委付主義をとる主要海運国はありません。
 ところで、昭和三十二年に、船舶所有者の責任制限制度を国際的な金額主義に統一するための海上航行船舶の所有者の責任の制限に関する国際条約が成立し、昭和四十三年に発効しましたが、現在までに英、独、仏等二十六カ国がこの条約を批准しております。
 そこで、この法律案は、この条約を批准することに伴い、船舶の所有者等の責任制限制度を金額主義に改め、これを実施するため、所要の立法措置を講じようとするものであります。
 この法律案の要点を申し上げますと、第一に、船舶所有者、船舶賃借人及び傭船者は、故意または過失がないときに限り、事故について負うべき損害賠償の責任を、一事故ごとに、その船舶のトン数に応じた一定の金額に制限することができることといたしております。また、船長、海員その他船舶所有者等が使用する者も、故意がないときに限り、船舶所有者等と同様に、責任を制限することができることといたしております。
 なお、船舶所有者等の使用する者の債権等、特に債権者を保護する必要のあるものについては、例外として、責任制限の効力が及ばないことといたしております。
 第二に、責任の限度額は、責任を制限する債権が物の損害に関する債権のみである場合には、一金フランの千倍にその船舶のトン数を乗じた金額といたしておりますが、その他の場合には、一金フランの三千百倍にその船舶のトン数を乗じた金額とし、そのうち一金フランの二千百倍に船舶のトン数を乗じた金額は、人の損害に関する債権の弁済のみに充てられるものといたしております。
 第三に、責任を制限される債権の弁済を確保するため、船舶所有者等が責任を制限するには、裁判所にその旨の申立てをし、かつ、供託等によりその責任限度額に相当する基金を形成しなければならないこととし、また、責任制限手続が開始したときは、裁判上の手続によりその基金を各債権者に公平に分配することとし、これらの手続について詳細な規定を設けることにいたしております。
 なお、最後に、タンカーによる油濁事故から発生した損害の賠償請求権については、別途今国会に提出しております油濁損害賠償保障法案によることとなりますので、本法案の規定は適用されないこととなります。
 以上が船舶の所有者等の責任の制限に関する法律案の趣旨であります。
 何とぞ「慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いを申し上げます。
#4
○委員長(多田省吾君) 以上で趣旨説明聴取は終わりました。
 本案に対する質疑は後日に譲ることといたします。
    ―――――――――――――
#5
○委員長(多田省吾君) 刑事補償法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#6
○矢田部理君 起訴された場合につきましては、先般から議論をしております刑事補償法の適用があるわけですが、それ以前の被疑者段階で不起訴という処分になった場合に、しかもその被疑者が勾留等をされておった場合に、どういう補償なり金額の支給がなされておるかということを中心にきょうはお尋ねをしていきたいと思うわけでありますが、その根拠規程として、被疑者補償規程というものが大臣訓令であるようであります。この訓令の運用の実態について、まず概括的にお尋ねをしたいと思います。
#7
○政府委員(安原美穂君) 矢田部委員御案内のとおり、被疑者補償規程という大臣訓令がございまして、その対象となるものは、被疑者として抑留または拘禁を受けた者でありまして、公訴を提起しない処分、いわゆる不起訴処分があった場合におきまして、その抑留または拘禁を受けた者が「罪を犯さなかったと認めるに足りる十分な事由があるとき」に、抑留または拘禁による補償をすることができるということで、拘禁の日数に応じまして、常にこの刑事補償法の最高金額、一日の日額の最高金額以下で日数に応じて補償するというたてまえになっておるわけでございますが、結論から申しまして、その規程の適用を受けて補償を受けた者はそう多くはないのでございまして、昭和四十三年におきましては二人、四十四年二人、四十五年一人、四十六年はなし、四十七年は四十二名、四十八年は二名、昨年はなし、こういう運用の状況になっております。
#8
○矢田部理君 そこでお尋ねをしたいと思うのですが、不起訴処分にするに当たって、いろいろな内容があろうかと思います。たとえば嫌疑なしとか、嫌疑不十分とか、さらには罪とならずというようなものもそれに入ろうかと思うのでありますが、そういう通常の不起訴処分の処理との関係で、いま説明をされた「罪を犯さなかったと認めるに足りる十分な事由がある」場合というのは、どういう関連を持つのか。その点を第一点としてお尋ねをしたいと思います。
 それから第二点は、いま昭和四十三年以降の、補償規程によって補償を受けた件数が報告をされたわけでありますが、これは本人の請求によって補償をするのか、いわば刑事補償と同じたてまえになっているのか、あるいは職権で補償をするのか。本人の請求によってやるとすれば、請求がなかったために少ないのか。それとも、全体として先ほどの「罪を犯さなかったと認めるに足りる十分な事由」という規定に該当するものが少ないために、この程度の件数なのか。そこら辺のところを御説明をいただきたいと思います。
#9
○政府委員(安原美穂君) まず前段のお尋ねでございますが、これまた専門家でいらっしゃる矢田部委員は御案内と思いまするけれども、検察官の不起訴処分の主文となりますものは、これは別に法律の規定ではございませんが、内部の事務規程によりまして、不起訴裁定の主文は全部で十八あるわけです。代表的なものは、起訴猶予というようなもの、あるいは罪とならず、嫌疑なし、嫌疑不十分というものが多いと思いますけれども、したがって、いま御指摘の被疑者補償規定の「罪を犯さなかったと認めるに足りる十分な事由があるとき」というのに該当する不起訴処分の裁定の主文といたしましては、やはり嫌疑なし、あるいは罪とならずというのがほとんどであろうと思いますが、これはあくまでも不起訴処分の裁定主文にこだわらずに――結果的にはそういうものが多いと思いますが、あくまでも実態に即して、「認めるに足りる十分な事由があるとき」には補償すべきものでございます。
 それからこの被疑者補償規程は、刑事補償法による無罪の場合の補償と違いまして、不起訴処分の裁定を受けた者の請求を待って論ずるいわゆる請求権ではなくて、いわば検察官が自発的にそういう判断をして支給をするという意味におきまして、請求権の対象になるものではなくて、自発的に検察官が支給をするというたてまえになっておるものでございます。
 もう一つ、客観的に見て非常に少ないのではないかということでございますが、実は、現行法が成立しますこの前の昭和四十八年の国会におきましても、また衆議院の審議過程におきましても、その点の御指摘を受けておるわけでございますが、私どもとしてもそれの活用を図ることはしばしば現地の検察庁に要請をしておるところですが、それにいたしましても客観的にそう多くはないことは事実でございますので、実はどういう状況にあるかを積極的に調べたのでございます。その結果によりますと、全国の検察庁から、昨年中に検察庁で身柄を拘束した者で、昨年中に嫌疑なし、また罪とならずとの裁定主文により不起訴処分に付した事件につきまして、不起訴裁定書の写しの提出を求めまして、被疑者補償をなすべき事案がないかどうかを実は当刑事局で調査をいたしたのでありまするが、そういう補償をしていないもので明白に補償すべきであるというふうに考える案件というものは、発見されなかったのでございます。
 しかし、先ほどの御指摘もございますので、今後とも活用を図るということについては万全を期したいということでございますが、補償件数の少ない理由として、検察庁からの報告によりますと、被疑者補償事件として立件する前に、この補償規程にもありますが、本人の補償に関する意向を尋ねることになっておりますが、そういう補償を受ける意思があるかどうかを打診することがあるのでございますが、この場合、本人からそういうものは要りませんという意味においての辞退の意思が明らかにされることもあって、結果的には少ないということの大きな理由になっておるというようなことが報告になっておるわけでございます。
#10
○矢田部理君 不起訴裁定の理由として少なくとも嫌疑なし、罪とならずということになった場合には、まずこの補償をする。それ以外でも、先ほど述べた罪を犯さなかったと認めるに足る十分な事由がある場合にはもちろん補償をする、こういうたてまえになっておるわけですね。
 そこで、最近の事例で結構ですが、年間、嫌疑なしとか罪とならずとかという不起訴の理由となる件数というのは、どのぐらいあるのでしょうか。
#11
○政府委員(安原美穂君) 告訴事件じゃなくて、身柄を拘束した上で不起訴になったもので、罪とならず、嫌疑なしという裁定をしたものは、大体年間百件ぐらいはあるということでございます。
#12
○矢田部理君 そうしますと、それ以外にも補償の対象になる場合はあり得ると思いますが、少なくともこの百件ぐらいの人あるいは件数については、訓令のたてまえから言えば補償するということになるわけですね。
#13
○政府委員(安原美穂君) たてまえはまさにそのとおりでございますが、先ほどの辞退をする者があるということのほかに、当該人間のその当該事件については罪とならず、嫌疑なしでも、そのほかに罪を犯しておるというような案件があるわけでございまして、だから、拘束をしたが不起訴というのは当該人間全体について不起訴じゃなくて、当該事件で罪とならず、不起訴としたもので、抑留、拘禁を受けた者であるが、そのほかにいわゆる公判あるいは起訴すべき事案としての罪を犯していた者というのもこの中には含まれておりますので、その関係で百件全部が補償を考慮すべき対象になるということにはならないということも一つの原因であるというふうに、報告で観察をしておるわけでございます。
#14
○矢田部理君 もう少し正確にお話しをいただければと思うのですが、年間嫌疑なし、罪とならずが百件程度ある。そのうち、他の被疑事実で起訴をされたりして補償の対象にならないものもあるし、それから本人が辞退をして補償しないものもあるということなんですが、その内訳をもう少し明確にしていただけませんでしょうか。
#15
○政府委員(安原美穂君) たてまえとして罪とならず、嫌疑なしということのゆえに一応補償規程の対象になるやに見える事案のうちで、補償をしていないものの理由の大半は、実は数字的に把握をしていないのでございますが、巨視的な観察で恐縮でございますが、大半は、数個の窃盗事件などがあって、そのうちの一件について嫌疑なしというような案件が非常に多くございまして、補償を辞退するというのはそう多くはないということでございます。遺憾ながらその内訳を明確に統計的に把握していないので、数字を申し上げることのできないのは申しわけないと思いまするけれども、概観いたしますとそういうことだということでございます。
#16
○矢田部理君 実はその数字、内訳を聞きたかったわけでありますけれども、被疑者として取り調べられた、しかし結果として不起訴になった、不起訴になったので一応被疑者としては大変よかったということにはなるわけですが、どういう理由で不起訴になったのかというのは、率直に言うと非常に外部からはわかりにくいわけですね。しかも、その被疑者の側から見ると、その辺の法律的な知識もなくて、嫌疑なしだったのか、いわゆる起訴猶予だったのかというようなこともはっきりしないまま、とにかく起訴されなかったらよかったということで終わってしまうのが実態だと思うわけなんですが、そういう中で、やはり嫌疑なしとか罪とならずということで不起訴になれば、本人の名誉にとっても非常に――名誉回復措置がとられるわけですね。あるいはいろんな精神的な悩みや肉体的な苦痛も含めて、少なくとも相当の期間苦しんできたわけでありますから、それについてはやはり実態把握をして、検察官が自発的にやるということではなしに、これはもう義務的に補償をしていくというたてまえをとるのが、少なくとも人間を一人拘禁をしたりなんかしているわけですから、国家としての基本姿勢でなければならぬというふうに私自身は考えるのですが、それにしても、まだ数字の把握がちょっと不十分過ぎるのじゃないかという感じが一つはいたします。
 それからもう一つは、どうも自分で調べた検察官としては、結論的には不起訴であるけれども、なかなか嫌疑なしとか罪とならずというのは裁定理由の中には書かずに、あるいは厳密な検討をしないで起訴猶予ということで終わらせているような実態も相当数あるように実は思われるわけですね、私たちの経験からいたしますと。そういうことで考えてみますと、この補償規程の適用が非常に件数が少ないというのは、単に本人が辞退したというだけの説明では少し不十分なんじゃなかろうか。もう少しその実態を詰めて考えてみる必要があるだろうし、それから現に調べた検察官としては、不起訴裁定の理由がこれに該当するような理由に必ずしも厳密に検討して書くというのは、われわれの経験からすると少ないのじゃなかろうかという感じもありますので、その辺について、今後の取り扱いなり進め方について見解を承れればと思っております。
#17
○政府委員(安原美穂君) 確かに御指摘のところは問題でございまして、といって、いろいろ議論はございますが、これを請求権の対象にするということには刑訴の基本構造に触れる重大な問題がありますので、要はやはり検察官が訓令である規程の趣旨に従ってこれを活用を図っていくということが、最も現段階における訴訟法の構造等からいって望ましいわけであると私ども思いますので、御指摘のように何とかこれの活用を図るという方策を考えるべきだということで、実は常に活用を図ることを現場に指示いたしますとともに、幸いこの改正法案が成立を見た暁におきましては、これと歩調を合わせまして、被疑者補償規程の一部を改正する訓令を大臣から出していただくつもりで目下準備中でございます。
 その内容といたしましては、まず、いま御指摘の罪とならず、嫌疑なしという不起訴裁定主文によって不起訴処分をしたというときには、必ず補償に関する事件として立件をする。立件手続を行う。しかも、いま御指摘のように罪とならず、嫌疑なしというだけではなくて、抑留、拘禁を受けた者で、いま申したような不起訴裁定主文以外の裁定主文により公訴を提起しない場合であっても、その実質にかんがみてその者が罪を犯さなかったことを認めるに足る十分な事由があるとき、これは上から下で、当該主任検察官の判断ではなくて上司が判断をするということに結果にはなると思いますが、そういうことがわかる場合におきましても、以外の裁定主文の場合でも、先ほど申しましたように、罪を犯さなかったことを認めるに足る十分な事由があると認められるものについては立件をする。それからその理由が立つ立たぬにかかわらず、いわゆる不起訴処分を受けた被疑者から補償の申し出があったというときにも立件をするということにして、立件という内部的な手続ではございますが、結果を明確にするという意味において立件手続をする。
 そして、いま御指摘のように、当該主任検察官が補償すべきかどうかを判断するということではやや公正を欠くおそれがあるというので、その上司に当たる、次席検事その他の上司に当たる者が、その立件された事件について補償すべきかどうかを決めるというようなことに、骨格をいまよりも変えて、活用の図れるように、そして公正な運用が図れるようにということを訓令の改正によって図りたいというふうに現在では考えておる次第でございます。
#18
○矢田部理君 そこで、運用の問題としてもう一、二点だけお尋ねをしたいのですが、嫌疑なしとか罪とならずということで不起訴になった場合に、被疑者には現在は告知はしていないのでしょう。
#19
○説明員(根來泰周君) 御指摘のように、被疑者から請求がある場合はともかくといたしまして、進んで検察官がその結果を通知するということはいたしておりません。
#20
○矢田部理君 そこに一つ問題があると思うんですね。不起訴になったということはわかるわけですけれども、どういう理由で不起訴になったのかというのが本人にはわからない。したがって、請求があれば出しますということを説明されても、本人としては少なくとも請求しようがないわけですね。だから訓令としては、先ほどお話があったように検察官が自発的にやるんだというふうになっている。この自発性に期待をするということでも、なかなかやっぱり運用は十分に行われないのじゃないかという疑いが出てくるわけなんですね。
 その点で、少なくとも不起訴になった場合で嫌疑なしとか罪とならず、あるいは訓令に出ておりますように「罪を犯さなかつたと認めるに足りる十分な事由がある」と考えた場合には、やっぱり本人の名誉回復のために、補償だけの問題じゃありません。こういう理由であなたは不起訴になりました、疑いは晴れましたということを少なくとも被疑者に伝えてやる、告知をするということをひとつお考えになる余地がないのかどうか。あわせて、その際に、いろいろ国家としてはそういう事案であるにもかかわらず勾留などをして申しわけなかった、それについてはかくかくの補償をいたしますということで、補償することと、その内容の告知などを積極的に行っていくべきではないかというふうに考えるのですが、大臣、いかがなものでしょうか。
#21
○国務大臣(稻葉修君) 事務当局と矢田部さんの質疑応答をよく拝聴しておりまして、被疑者補償規程の運用が十分でないように私感ずるわけです。したがいまして、近くこの規程を改正したいと思っています。改正し、あわせてその運用につきまして、矢田部委員御指摘のような方向に運用されるよう、そのものずばりで規定すればなおさらいいし、規定は無理でも運用で改めるという点もあるでしょうし、いずれにしても、御指摘のような方向に進んでまいりたい、こういう御答弁を申し上げる次第です。
#22
○矢田部理君 これはお金の問題補償の問題としてだけではなしに、先ほども申しましたように、不起訴だということで本人は全体的には安心をするわけですが、それが全く疑いがなくて、疑惑が解消されて不起訴になった気分と、事件としては被疑事実はそのとおりなんだけれども、情状の面から不起訴にされたというのとでは、おのずから質が違うわけですね。したがって、少なくとも嫌疑なしとか罪とならずということで不起訴になった場合については、その旨をやっぱり本人に知らせてやる。それだけで名誉が回復するとは必ずしも思いませんけれども、実は私はこういう理由で不起訴になったんだ、疑いが晴れたんだということを本人が胸を張って言えるような知らせ方ぐらいは工夫してあげてもいいのではないか。あわせて、補償の問題はやっぱりそういう立場で考えるべきではないかというのが私の問題提起の趣旨なんでございますが、いかがなものでしょう。
#23
○説明員(根來泰周君) 実は、先ほど刑事局長が答弁いたしましたように、嫌疑なしとか罪とならずの事件を取り寄せまして調査いたしましたわけですが、ただいまおっしゃったように、確かにシロである、間違って逮捕したという案件もないというわけではございません。しかし、その大部分は、先ほど申しましたように、併合罪の一部が嫌疑なしあるいは罪とならずであるというふうな事件になっているわけです。たとえば具体的に申しますと、窃盗罪であるということで逮捕されまして調べた結果、どうも友達から頼まれて臓物を持っていたんだというような事件があるわけです。そういう場合、検察官としましては、窃盗罪としては嫌疑なしである……。
#24
○矢田部理君 いや、そういうことを言っているんじゃないのだよ。
#25
○説明員(根來泰周君) しかし、臓物としては事件が認められるという場合もあるわけでございます。ですから嫌疑なし、罪とならずと言いましても、一律にその結果を本人に知らせてやるということはいろいろ問題があろうかと思うのでございますけれども、ただいまおっしゃった先生の御趣旨もよく体しまして、いろいろこれからそういう点も検討いたしたい、こういうふうに思うわけでございます。
#26
○矢田部理君 ちょっともう少し正確にしておきたいのですがね。いまの社会では、裁判で有罪になったとか起訴されたということよりも、何か犯罪で逮捕された、つかまった、あるいは勾留されているということが非常に重みを持つわけですね。つまり、もうそのこと自体で大変社会的に見ると悪いことをしてしまったというふうに見られがちなんですよ。そういう人たちが捜査段階で罪とならずとか嫌疑なしとかということでシロになったという場合に、名誉回復措置がきわめて弱いのじゃないか。これは無罪の場合も同じでありますけれどもね。特に、捜査段階で決着がついてしまったような場合については、大臣訓令などもあるようですけれども、どうも十分な措置が制度的にも保障されていない。そこで、いま私が言ったのは一つの方法でありますけれども、もちろんそれでも十分だとは思いませんけれども、名誉回復措置について、いま私が提起したような問題も含めて、もう少し本格的に、国家権力の行使を完全に誤ったわけでありますから、補償だけの問題ではなしに、検討していく必要があるのじゃなかろうか。このことを申し上げたので、それに関する姿勢、今後の取り組みを最後に大臣にお伺いして、一応私の質問を終わりたいと思います。
#27
○国務大臣(稻葉修君) いま参事官が申しましたような特殊な場合だけでなくて、先生のは全く嫌疑なし、罪とならずという場合のことでございますからね。大抵は弁護士さんが本人に説明するのじゃないでしょうかと思いますが、弁護士がいない場合はわかりませんからね。ですから、そういうこともございますので、参事官が言ったような場合は別として、全く罪とならず、嫌疑なしというときはやっぱり知らせた方がいいように私は思うので、そういうことを運用でやっていくか、被疑者補償規程を改定して明確にするかはしばらく検討させていただきたいと存じますが、先生のおっしゃることは私はもっともだというふうにお答えしておきます。
#28
○矢田部理君 全くシロだという場合にも、一部はシロで他の別件でクロという場合も、内容ぐらいは知らせてやるべきだ。不起訴になったときに、どういう理由で不起訴になったのかというのはなかなか知らせてもらえないんですよ、不起訴だという結論しか。その程度の配慮は、全くシロの場合以外でもしてもいいのじゃないかというふうに思うわけです。
 最後にもう一点だけ確認的にお伺いしておきたいのは、今度刑事補償法で金額の引き上げが行われるわけですが、この訓令の方も、同時にやっぱり金額の引き上げが同じような金額で行われるのでしょうか。この金額の補償の関係はどういうふうになるのか、その点最後に質問して終わります。
#29
○説明員(根來泰周君) 御指摘のように、この法律案が成立した場合には、これに合わせまして被疑者補償規程の金額の引き上げも行う予定をいたしております。
 なお、事務的に検討しておる点でございますけれども、現在、被疑者補償規程の補償金額というのは、最高限が刑事補償金額と並行になっておるわけでございます。最低限が定められていないわけでございます。それで、これも最低限を定めて、刑事補償法とパラレルに金額をいたしたい、こういうふうに事務的には考えておるわけでございます。
#30
○矢田部理君 終わります。
#31
○白木義一郎君 先般の当委員会で、この刑事補償法に対しての私どもの考え方、とらえ方につきまして、前法務大臣の田中氏の発言を御紹介して大臣にお聞き願ったわけですが、そこで最初に、この刑事補償という言葉の解釈を基本的な立場から考えますと、一応の定義として、刑事責任なき者に対し、国家が犯罪者または犯罪被疑者として扱ったことにより与えた損害を補てんする制度というように考えられるわけですが、これはいわゆる専門家の解釈でありまして、大臣初め皆さん方は私から言いますとプロであります。
 私はアマチュアであります。なかなかむずかしい言い回しなので、アマチュアの立場でこの刑事補償法という法律の原点といいますか、基本精神というのは平たく言うと、だれかが国民に迷惑をかけた。そこで、その国民にかわって国家が、あいつだ、あいつがあなたのほっぺたをぶん殴って逃げたんだというわけで、特定の人間を国がひっぱたこう、横っ面を仕返しにぶん殴る。ところが、後でいろいろ調べてみたところが、これは人違いだった。そのときに、知らずに殴られた人に対して、国という人は、大変申しわけなかった、そういう気はなかったのですけれども、関係のないあなたの横っ面をぶん殴って大変申しわけなかったと。ただ言葉の上で申しわけなかっただけではなくて、それでは気持ちもお済みにならないでしょうから、申しわけない気持ちのあらわれとして、おわびをこういうことで願えないだろうかというのが一般社会の常識であり、通念だと思うのです。そういう考え方からこの補償制度ができ上がったのじゃないか。単純にとらえますと、いわゆるおわび料なんだ。私は前の四十八年の改正案のときと引き続いて取り組んでまいりましたけれども、どうしてもそういう考え方から抜け切れない。
 それで、先日大臣は、十七条で国民に権利が与えられているんだ、したがって、国はこれを賠償する義務があるんだと、権利義務の立場からお考えを述べられておりましたけれども、しかし、際に人間の社会において、権利だ義務だということだけでこれを推し進めていくと大変味気ない、索漠とした世の中になってしまうのは、これは当然だろうと思います。そういうことで、どう考えてもこの法律はおわび料なんだ、この考えを私は取り去るわけにいかないので、くどいようですが、大臣のお考えをお聞かせ願いたい。
#32
○国務大臣(稻葉修君) 人違いの場合も大分例があるようですね。こんなのは本当に国家権力の誤れる行使でありますから、非常に申しわけないわけですね。したがって、そういう道徳的に申しわけない、おわびをするという意味ももちろん含めて義務にしてある、こういうことになるのじゃないでしょうか。そして相手は権利がある、こういう制度にしてあるのが憲法四十条の規定ではあるまいかと私は思います。先生のおっしゃるおわびのしるしにという意味も含めて、おわびのしるしといってただ道徳的な義務にしておかぬで、法律上の義務にする、法律上の権利にする、こういう制度が刑事補償制度であると私は理解するわけでございます。
#33
○白木義一郎君 どうもプロとアマの違いがそこに、釈然としないんですね。間違ってぶん殴った、そこでこちらから行って、すみませんでした、御勘弁くださいというのが人間社会のあたりまえの姿勢なんですね。ところが、法律を持ち出すと、間違ってぶん殴った、あなたには補償を請求する資格があるんだ、だから請求をしてくれ、うちが間違ってぶん殴ったのだから補償に応ずる義務があるんだなんていうことになると、こんな法律つくって、われわれ大臣も忙しいのに、こういうところに座ってごちゃごちゃやるなんていうのはナンセンスな気がするわけです。実際の社会では、もうそれこそ平身低頭して、手みやげを持っておわびに行かなくちゃならない。
 こういうふうに申し上げますと、法律家のさがとしてなんていうことをよくプロはおっしゃるわけです。実際人間の社会の中の問題ですからね。ですから、そういう専門的な考えでいきますと、だんだんだんだん立法の精神から外れてしまう。理屈を言えば、無罪の中にもいろいろ色分けがあるんだ、疑わしきは罰せずという考え方からこれは無罪にしたんだなんていうことも出てきます。そうじゃなくて、これらの純粋に無罪であった人に補償していく。それをこっちの方から、こういうのもいるんだからがまんせいということになると、まじめな人が色づきの人のために犠牲にならなくちゃならない。まずこっちを生かして、しかる後こっちは手当てしていくというのが、これはあたりまえだろうと思うんです。そこで大臣から、そういうおわびの意味も含めてと。含めるんじゃないのです。これはもう制度、法律自体がそうだろうと、私はどうしてもこれは思わざるを得ないのですがね、もう一回ひとつ。
#34
○国務大臣(稻葉修君) 一般社会通念として、間違ったんだから相済まぬ、こういうわび料というふうに御理解になることは、それはそれで正しいと思いますよ。ただ、それを道徳的な義務に放任しておいていいかというと、そういうわけにはまいりませんから、ですから権利義務、全く間違ってやったような場合は検察官の誤りなんですから、ただ単に道徳的な義務として幾らかこの辺で御勘弁願いますというような雑駁なものにしておかないで、法律上きちんと義務にして額も決める、こういうことになっているのじゃなかろうかと思うのでございます。
#35
○白木義一郎君 どうも就任当初の稻葉法務大臣の御答弁とかお考え、御意見の披瀝の仕方と比べますと、最近は非常にぎこちないところがある、申しわけないけれども。まあこれは私の主観ですから……。
 そこで、大臣も気持ちの中では私の考えに賛成し、当然同調、言わずもがなのことだろうと思います。であるならば、この補償の請求というのが、先ほど申し上げたとおりちょっとひっかかるわけです。そこで、現在の補償の請求の具体的な方法をお聞きしたいわけです。プロの方は、もう弁護士さんなんかは直接手がけておわかりでしょうけれども、無罪の判決が出た、それからどうすればこの制度が、何というんですか、ぶん殴られた方ですね、被害者の方からどうしたらこの制度を生かすことができるか、現実の面からひとつお教え願いたいと思います。
#36
○説明員(根來泰周君) この請求の手続につきましては、あるいは最高裁からお答えいただくのが筋かもわかりませんけれども、私どもが承知しておる点で御説明申し上げますと、これは無罪の判決があったからすぐ刑事補償請求権というものが発生するわけではなくて、その無罪の判決が確定した暁におきまして、初めて刑事補償請求権が発生するというふうに法律的になっておるわけでございますので、無罪の判決が確定したときに、その無罪の判決を言い渡した裁判所、これは国法上の裁判所でございますけれども、その裁判所に刑事補償の請求をするという、これは別に様式というのは決まっておりませんので、あるいは口頭でもよいかと思いますけれども、普通はちょっとした書面に書いていただいて裁判所に出していただく。それで請求があったというふうな取り扱いになっているというふうに聞いているわけでございます。
#37
○白木義一郎君 そうしますと、無罪の判決があった。それから十四日間ですか、十四日間の期限を置いて確定をする。その段階で請求をする。その請求の具体的な方法としては、口頭でもいいし、書面でもいいし、ということは何でもいいということになる。そこで私は、裁判所が何でもいいというような、それこそプロが、そうそうたるプロの世界に対して口頭でも書面でも何でもいいんだと。われわれは鼻紙でもいいのかと、そういうひねくれた考え方をするわけですが、何かこの制度を生かすためにきっちりとした、あるいは法律あるいは規則というものにのっとって事を運んでいるのじゃないかと、こう思うのですが、規則とか、あるいは何かございますか。
#38
○説明員(根來泰周君) 確かに御指摘のように、様式というものを定めまして、それで請求をさせるということは、請求を発揮させるという意味では非常にいいわけでございますけれども、請求権を手軽に行使させるという意味におきましては、やはり様式というものをはっきり決めるよりも、裁判所に出頭しまして、そうしてそこで書記官なりに趣旨を告げまして、こういうことで請求したいと。そうすると書記官は、こういう書面を書いたらどうでしょうかというようなことで書面を出すとか、あるいは口頭で聞いた書記官がそれをいろいろ書類につくるとかいうふうにする方が、請求権の行使のやり方としては簡単で手軽であろうじゃないか、こういうふうに思うわけでございます。
#39
○白木義一郎君 言葉じりをつかまえて失礼なようですが、請求をさせると言うと、そういうあれがどうしても出てくるわけです、プロは。大臣はおわびを含めてということですが、あくまでもこれはおわび以外ないと思うわけです。ですから、われわれから言えばかた苦しい、それこそ六法全書のかたまりみたいな世界の裁判所に対して、何でもいいんだ、請求せいと、こういうふうな現実になっている、こういうふうに伺うわけですが、今度は一般国民の立場から考えますと、非常に役所とか特に裁判所なんというと、なかなか恐ろしくて足が向かないわけです。というようなことで、仮にこの法律があるということを知り、教えられた人であっても、金額が低いから請求する人が少ないんだとかというようなことをおっしゃる方もいますけれども、そうじゃなくて、非常にめんどうくさいわけですね。ぶん殴った上で、めんどうくさいなんていうことになると、せっかく人権をあくまでも尊重していくのだという十七条の精神から出てきたこの法律が、全く生かされないということになるわけです。いま参事官のお話では、適当にやってください、そうすれば国は、政府は義務を果たします、これじゃならないのじゃないかと思うのです。
 そこで、いまこの補償の金額の上限、下限の値上げについていろいろな意見が論議されているわけです。これは絶対的な額はないと思うんです。幾ら奮発しても、金だけでは解決のできない問題がどうしても残るわけです。そこで、もし規則とかあるいはそういう決められたものがなければ、私は無罪の判決を下した裁判長から、こういう補償制度があるんだけれども、ぜひひとつあなたの場合はこれを活用してもらいたいと、本当を言えば法務大臣が直接あいさつをすべき、あるいは総理大臣がこれはもうとんでもないことしましたと言うべき立場ですが、そこを同じ公務員である裁判官、しかも無罪を宣告してくれた裁判官から、こういうわけで、金額的には話にならぬのだけれども法律上というようなことで済ましていくというようなことであれば、この制度は、いま大臣が言われたようにおわびも含めて、立派に生きてくるのじゃないか。
 そういうことで私は考えて、どうでもいいならば、そしていまの参事官のようなお話で、請求をする、今度は別の裁判官がその請求を受けて全部一応調べて、どういう事件で何日拘禁された、あるいはまた検察官と相談する、そして上限と下限の中で、このわび料はこのぐらいが適当であろうというところで決定する。そんなことをしていると、たださえだらだら裁判という国民の批判がある忙しい立場にある裁判官の方々が、そういうことで手を取られるということも、そしてしかも生きない。だったら、無罪の判決を下して、今度はこっちから言えば、あの裁判官が公平に裁判をして、そして無罪の宣告をくれたという裁判官から、大変ご苦労さまでした、まあ法務大臣がじきじきおわびするわけですが、これでどうでしょうかと、一定の書式でも用意して、十四日たって確定したらひとつこれを届けてください、郵送でも結構です、そうすれば法務大臣が法律に基づいて補償をさせていただくことになっておりますと、こういう方法がとれるのじゃないか。こう思うのですが、なかなかわれわれのうかがい知れない世界でもあるわけですから、その点参事官いかがですか、まことに具体的なあれなんですが。
#40
○説明員(根來泰周君) 御指摘の点については、お気持ちとしてはよくわかるわけでございますので、そういう制度的な、あるいは運用的なことができるかどうか、最高裁判所の方と検討協議いたしまして、前向きに検討いたしたいと、こういうふうに思います。
#41
○白木義一郎君 いま伺ったように、これの運用については規則も何もないということであれば、まあ一般的な言い方をすると適当にということになるわけです、請求の方法については。となると、これはいま前向きに検討ということでございますが、大臣のひとつ決裁と言いますか、お声がかりで、こういうふうにすべきだというようなことが言えるのじゃないかと思うんです。それでなければ、また規則第何項であれしてということになってしまうわけですが、大臣、ひとつ最高責任者としてお考えを伺いたい。
#42
○国務大臣(稻葉修君) 白木さんのおっしゃることは私、理由が十分ある、非常に正しい御意見だというふうに拝聴しました。ただ、裁判所が無罪の判決を言い渡すと同時に、その同じ裁判官が補償の額も決めてやるとか、そういうような点につきましては裁判所側の意見も聞く必要があるというふうに思いますので、最高裁判所と事務局同士よく相談するように私から指示いたしまして、そうして私自身もよく最高裁判所の意見も聞いたりして協議して、前向きに、先生のごもっともな御意見でございますから、検討したいというふうに思います。
#43
○白木義一郎君 われわれがそういう答弁をするならば当然だと思うのですが、何しろ大臣もプロですからね、弁護士の立場で裁判官のあり方というのはよく御承知のことですから、まあ素人は困ると思っていらっしゃると思うんですよね。くどいようですが、私はこの法律の趣旨を生かすためにはどうしてもそうすべきだ、その考え、精神、思想に立った上で高いとか安いとか論じないと話にならぬと思うんです。無罪にするには相当裁判長も真剣に研究し、審査し、それで無罪にするのですから、全部わかっているわけです。それを別な裁判官にまたやらせるというような繁雑なことはしないで、そこで大体結論を出して、それで法務大臣にかわって裁判長がこうしてくださいと言えば、少々安くても、全部と言わなくても、納得をしてもらえるのじゃないか。まあそういうことなんですがね。
 これは全体的な立場から見ればごくわずかなことですが、これを大臣の立場でおやりになるということは、国民がこれを知った場合には、本当に庶民の、国民の立場に立った法務大臣であるという評価はこれは間違いない。私はいろんな人にこの制度の問題について伺っているわけです。ところが、いろいろと伺うと、最終的にはそうだ、おわび料なんだ、こういうことに皆さんなっちゃうわけです。そこまで来た以上は、気持ちよくひとつ新しい出発をしてもらわなきゃならぬという立場で考えていかなきゃならない。ですから、これは一定の書式をつくって、無罪の判決と同時に、あるいは書記官に託したり、あるいは弁護士に裁判官からやってやってくれというようなことで済ましていくことが可能だろうと思います。
 そこで、私は国会の答弁で検討検討というのは、これはもう頭にきているのです。検討されて結論が出たためしがないのです。そこで大変勝手なような要望ですが、次の委員会に、できたらひとつ粗々の方向だけでも大臣から検討していただいた御返事を来週にお聞かせ願いたい。これは私が申し上げて、大臣が率直にこれを実行に移してくだすって、あと弁護士会にでも、あるいは裁判所にも大臣の何というのですか、訓令ですか、通達ですか、というようなことになれば、非常にいい例を法務大臣としてお残しになるのじゃないか、こう思うわけです。
#44
○国務大臣(稻葉修君) 御指摘の点につきましては、橋本委員からも先般御質疑、御意見の御開陳があって、私ざっくばらんに、あなた私の性格が変わったようにおっしゃいますけれども、そんなに変わっちゃおりませんと。そうして、何かあの事件以来ざっくばらんさがなくなって、ずるくなったようにお考えですけれども、私はそういうことを言われたのです、あなた余り正直過ぎてばか見るぞ、もう少しずるく立ち回らなければ政治家にはなれないぞと言うから、そんなばかなことはあるか、こんなことでずるくなんか断じてなるべきものじゃないと、こう言っておるのでありまして、もうざっくばらんに、ただ、軽率なことはできませんからな、軽率ではなく、慎重にはやらなくちゃいかぬ、こう思っているのです。
 そこで、御指摘の点につきましてはごもっともな点があります。ただ、どうするかという具体的なことは、この次の委員会に全部が全部できるかどうかわからないです。少なくともまじめにやったのだ、ここのところまでは来ましたというものは、この次の委員会までに出します。そうします。
#45
○白木義一郎君 どうもありがとうございました。
#46
○委員長(多田省吾君) 本案に対する本日の審査はこの程度といたします。
 暫時休憩いたします。
   午前十一時四十三分休憩
  〔休憩後開会に至らなかった〕
ソース: 国立国会図書館
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