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#1
第075回国会 本会議 第3号
昭和五十年一月二十八日(火曜日)
   午前十時三分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
#2
○議事日程 第三号
  昭和五十年一月二十八日
   午前十時開議
 第一 国務大臣の演説に関する件(第二日)
    ━━━━━━━━━━━━━
○本日の会議に付した案件
 議事日程のとおり
     ―――――・―――――
#3
○議長(河野謙三君) これより会議を開きます。
 日程第一 国務大臣の演説に関する件去る二十四日の国務大臣の演説に対し、これより順次質疑を許します。阿具根登君。
   〔阿具根登君登壇、拍手〕
#4
○阿具根登君 私は、長い自民党政権の中で、幾たびか三木内閣を期待したことがございました。いま私はこの壇上で三木総理と対話する機会を与えられましたが、質問に入る前に、歴代自民党内閣が発足に当たって国民に与えたイメージを振り返ってみたいと思います。岸内閣では汚職・貧乏・暴力の三悪追放を叫びました。池田内閣では所得倍増、寛容と忍耐であり、佐藤内閣では国民調和、田中内閣は決断と実行で国民に期待を与えて発足いたしましたが、いずれも国民から惜しまれて退陣した人は一人もありません。それはなぜなのか。大企業と密着し、国民不在の自民党の体質によるものと思います。
 その中にあって、三木さんは党内野党的立場にあり、岸内閣では警職法のごり押し、佐藤内閣では総裁の多選、特に田中内閣では金権政治を批判して大臣の職を去られました。いつの場合でも前向きの発言のようであり、一部期待した一面もありました。しかしながら、あなたの発言はいつも事後であり、後の祭りであります。特に田中内閣では副総理として最高の責任の地位にあり、参議院選挙に当たり惨敗して閣外に去られました。その進退はりっぱなものですが、いずれも結果論であり、みずからは責任を避けて通った感じがしてなりません。田中内閣の金権政治に反対される三木総理もまたその責任を問われるべき地位にあった人です。私は、このあなたの政治姿勢に大きな危惧を感じるものであります。
 さて、私は、日本社会党を代表いたしまして、三木総理並びに関係閣僚に対して若干の質問をいたします。
 まず第一に、私は、三木総理に基本的な政治姿勢の問題をただしたいのであります。
 三木総理は、話し合いの政治、社会的不公正の是正を唱え、また、十字架を背負った気持ちであると述べながら、今日まで幾つかの公約をしていますが、具体的に列挙いたしますと、選挙制度と政治資金の改革、社会的不公正の是正、独禁法の改正など、当然なことですが、公約をされてきたわけです。第七十五回通常国会において以上の重要課題を公約どおり実現することを明言し、あなたの変わらぬ政治姿勢を国民の前に明らかにできるならしていただきたいと思うんです。
 まず、政治資金規正についてであります。政治資金規正強化の必要性についてはいまさら多くを語る必要はありません。要は、総理が万難を排してやれるかどうかであります。三木総理は、さきの国会で、わが党の松永議員の質問に答えて、政治資金の規正に対する改正を次の国会で行う、と言明しております。そして、国民の要望に従って改正を加える、と答えております。私は総理のこの決意を信頼したいのですが、その後の推移は、総理が言明された方向に少しも進んでいないと思われるのであります。よもや党内の現実論だとして、国民があなたに寄せた期待を裏切ることはないと思いますが、いかがですか。
 さらに、三木総理は、去る一月六日の財界六団体の懇談会の席上で、企業の政治献金は悪ではない、と発言されております。私にはクリーン政治を売り物にしておられる三木総理の発言とは思えないのでありますが、政治献金は本来個人に限るべきだとする総理のたびたびの発言と一体どう両立するのでしょうか、その真意をお伺いいたしたいのであります。また、中曽根幹事長は、労働組合の選挙資金に関連して発言をしておりますが、労働組合の選挙資金は、それぞれ組合員個々の生活費の中からなされるものであり、大企業の利潤による献金とは本質的に異なるものであります。この中曽根発言について総理はどのようにお考えですか、あわせてお尋ねいたします。
 次に、選挙制度の改革について、総理は、選挙運動粛正のための選挙腐敗防止法案なる三木試案を発表しておられました。金のかからない、かけられない選挙を主張してこられましたが、総理が真に金権選挙、企業ぐるみ選挙を憎むのでしたら、選挙制度についても速やかに改革の手が加えられなければなりません。自民党の中に巣くった金権的体質や金権選挙を打破するのでなければ意味がないのでありますが、総理の決意をお伺いいたします。
 次に、社会的不公正の是正についてであります。総理は、インフレ克服とともに社会的不公正の是正を当面の最大課題に掲げております。しかし、本来、社会的に弱い立場にある労働者や農民を救済し、社会的公正を確保することは政治の使命であり、根源の一つであります。いまさら声を大にして叫ばねばならぬこと自体、自民党がいかに長きにわたって国民不在の政治を推し進めてきたかを物語るものではないでしょうか。
 五十年度予算案を見ますと、二十一兆二千八百八十八億となっており、前年度に比べ二四.五%の増になっておりますが、その中で当然増が二〇%以上の多くを占め、これが漫然と認められており、総理が主張しておるようには予算が組まれておらず、不況のしわ寄せは労働者や中小企業にいっておる。労働者や中小企業が今日のわが国の発展に大きく寄与してきたことを考えれば、総需要抑制策が続けられる中であっても、これらの人々を救う道を真剣に考えなければなりません。政府関係の機構を改善することもなく、特に百十二にも上る公団、事業団等をそのままに残し、その中の一部は政府の隠れみのにして、税金のむだ遣いをしておると言われております。他方、民間では不況による合理化、大量の首切りが行われております。不況という名のもとにいつも職場を追われ、生存権すら奪われる労働者、農民、中小企業、これらの人々に社会的不公正の是正の目を向け、抜本的な問題の解決に当たるべきだと思いますが、総理の所見を承ります。
 次に、独占禁止法改正に対する真意についてお伺いいたします。
 最近における経済構造の寡占化、それに基づく消費者利益収奪の体制化は、現行独占禁止法の機能をはなはだしく減殺しており、これを抜本的に改正強化して、失われた消費者擁護力のバランス回復を図らなければならないのは、いまや世界の趨勢であります。西ドイツでは、ビール会社の価格協定に対して八億円の罰金を科し、それに対してビール会社は不動産を売却してもそれを支払ったと言われております。イギリスでも昨年、独占企業の認定範囲のシェアを引き下げるなどの独禁法改正を行い、またフランスでも、カルテル行為の罰金の引き上げ、支配的地位の乱用の定義の明確化の要求が盛り上がっております。さらに、アメリカにおいては、昨年十二月、フォード大統領は、罰金の最高額を五万ドルから百万ドルヘの引き上げ等の改正案に署名し、その際、もっと早く改正すべきであったとさえ漏らしておると新聞では報じられております。きのうの衆議院の答弁で、総理は、骨抜き改正はしないと言明されておりますが、それは、今国会において、公正取引委員会が昨年九月に発表した改正試案より後退することのない改正を実行するということでありますか、明確にお答え願います。もしも新聞等で言われでおるように、一部分の改正であるならば、それこそ羊頭を掲げて狗肉を売るものと言わねばなりません。総理の明確な答弁をいただきます。(拍手)
 次に、外交問題についてお伺いいたします。
 三木内閣発足早々、宮澤外相をソ連に、保利氏を中国に派遣するなど、積極的な外交姿勢を示しておることは評価しますが、この点については後に譲ります。ただ、総理の施政方針演説では朝鮮問題について触れられておらないのはいかなる意味でしょうか。
 朝鮮問題の基本は、朝鮮の将来は朝鮮民族自身が決定するという民族自決の原則であるはずであります。その意味から、朝鮮問題の原点は、一九七二年七月四日の南北朝鮮の自主的平和統一についての共同声明であると言えます。この共同声明は、自主、平和、団結の三原則を基本としており、朝鮮民族の意思は、共同声明で明らかなように、明快に統一を求めておることを忘れてはなりません。したがって、「二つの朝鮮」の考え方は明らかにこの朝鮮民族の意思に逆らうものであり、最も近い隣国であり、長い友好の歴史を持つ日本がいやしくもこのような方向に加担してはならないと思いますが、政府の考え方をお聞きいたします。また、この「二つの朝鮮」の考えに立って、いわゆるクロス承認論が最近アメリカなどで主張されておるようであります。それは日米が北を承認し、中ソが南を承認し、「二つの朝鮮」を固定化しようとするものであります。これについての政府の考え方をお伺いいたします。
 一方、朝鮮民主主義人民共和国は、自主的平和統一の基礎に立って、その発展のために具体的提案を行っております。すなわち、一九七三年六月二十三日、金日成主席は、南北朝鮮は相互に政治社会体制の違いを認め合った上で、連邦制で一つの国家として国連に加盟しようではないか、と言っております。このことからも明らかなように、いわゆる北からの脅威はあり得ないと思いますが、現に木村前外務大臣は、昨年の参議院外務委員会で社会党委員の質問に対し、北からの脅威はない、と明確に答弁いたしております。三木総理の御見解をお聞きいたします。
 以上申し上げましたことから見ましても、日本政府は、朝鮮の自主的平和統一が一日も早く実現するようあらゆる点から協力を進めるべきであるにもかかわらず、昨年秋の国連総会でも、国連軍の名のもとに韓国に駐留する米軍の撤退を求める提案を先頭に立って阻止したのはなぜでしょうか。この行為は明らかに「二つの朝鮮」を目指すアメリカの方針に加担するものであり、朝鮮民族の自主的平和統一の悲願を踏みにじるものであります。政府の考え方をお聞きいたします。
 次に、いわゆる石油外交についてであります。
 三木総理は、一昨年の石油危機に際して、特使としてアラブ諸国を訪問し、石油外交に重大な役目を果たされました。その当時は、いかに産油国側と消費国側が協調していくべきかということであったと思います。しかし、現在では世界の情勢が相当に変化してまいりました。去る一月二日、キッシンジャー米国務長官は、石油の高価格によって先進工業国の経済が破滅に直面するような場合は、米軍が中東地区に武力介入することもあり得ると述べ、大きな波紋を投げかけました。また、フォード大統領もそれを再三追認するような発言がなされておりますが、日本の基本的態度としては、消費国と産油国との協力の上に石油危機を解決していこうという従来の主張を堅持していくべきであり、産油諸国に圧力をかけて問題を解決するという行き方はとるべきではないと思いますが、政府の基本方針についてお考えをお聞きいたします。
 次に、日中、日ソ問題についてお伺いいたします。
 政府は、日中両国の将来にわたる平和友好関係の基礎となる諸原則、すなわち、国交正常化の際の共同声明に盛られた平和五原則等を再確認するにとどめ、台湾問題等領土問題には触れない方針をとっておるようでありますが、果たして中国側がそれで納得するかどうか危惧なしとしないのであります。台湾問題に関しましては、政府は、「台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部である」との共同声明と条約締結の際の政府の考え方をお尋ねいたします。中華人民共和国政府の立場を「十分理解し、尊重する」との態度を共同声明で表明しておきながら、日中航空協定の交渉に際しては、日台路線の取り扱いに関して煮え切らない態度をとったため交渉が難航したことをこの際想起すべきであります。
 次に、日ソ問題につきましては、政府は、第二次大戦のときからの未解決の諸問題には領土問題が含まれることをソ連側も確認しておると説明し、領土問題は解決済みとの従来のソ連側の主張にかんがみれば、領土問題解決への端緒が開かれたものであると述べてまいりました。昨年中に開かれる約束であった平和条約交渉はついに行われず、ようやく今般宮澤外相が訪ソして討議が行われたものの、結局は、政府の誇示にもかかわらず、ソ連側の壁の厚さには何らの変化も見られませんでした。この問題の解決のためには、今後ともねばり強い交渉が必要であることは言うまで本ありませんが、友好関係の促進を図る中で領土問題の解決を推進すべきだと思いますが、政府の見解をお尋ねいたします。
 次に、政府の経済政策並びに経済の基本認識についてお伺いいたします。
 三木内閣の性格と特徴は、何よりも物価問題への取り組み方いかんに見られます。現在最大の政策課題が物価の安定に置かれなければならないととは言うまでもありません。問題は、物価対策の名のもとでどのような政策が実行されようとしておるのか、その諸政策が真に国民のために行われようとしておるのか、それこそが問われなければなりません。その前提として、現在のインフレをかどのように認識するかが問題であります。
 政府の基本的な考え方は、施政方針演説からもわかるように、現在のインフレはコストインフレの状態であり、コストプッシュ要因の最大のものは賃金である、高賃金は賃金と物価の悪循環を招くと、あたかも賃金がインフレの真犯人であるかのように宣伝しておる。果たしてそうでありましょうか。一昨年秋以降の原油価格の大幅引き上げが物価上昇に拍車をかけたことは事実でしょう。わが国の高物価の原因が諸政策の失敗の結果であることは明らかであります。その結果初めて三〇%を超える賃上げで勤労者がようやく生活を防衛できつつあったのでありますが、それが物価上昇の原因であると言うのは、結果を原因にすりかえようとするものであります。インフレ高進と時間外労働の切り捨てなどによって、勤労世帯の実質賃金が前年をはるかに下回りつつあることも御存じでしょうか。三木総理、福田副総理、大平蔵相、それぞれ演説の中で、労使の交渉には干渉しないと言いながら、一五%以下にすべきだと口を合わせて叫んでおられますことは、まだ労使が交渉すらもしておらないのに、政府みずからが卒先して企業の代弁者となり、勤労者の犠牲で物価抑制を図ろうとすることになると思われますが、総理の明確な答弁をお願いいたします。(拍手)
 さらにまた、この際、全国働く者の念願である全国全産業一律の最低賃金制を法制化すべきだと思いますが、あわせて御答弁をいただきます。
 次に、物価の見通しについてお伺いいたします。来年度の物価見通しについて、政府は、一〇%以下を目標とし、年度平均比較では一一・八%としておりますが、本年度から来年度への持ち越されるげた部分及び公共料金引き上げ分を加えると、その見通しを信頼するわけにはいかないのであります。春闘までは何とか小康状態を保ったが、その後は急騰するというのでは、国民を欺瞞したことになろうと思います。新しい内閣は物価の安定についてどのような覚悟と不退転の決意をお持ちであるのか、この際、国民の前に明らかにしていただきたいと思います。また、実現できなかった場合の責任を明らかにしていただきます。
 次は、インフレ下における税制の役割りであります。三木内閣の目指す社会的不公正の是正は、五十年度税制改正においてこそその真価が発揮されるものと国民は期待したのであります。わが国の現行税制は、所得税における税法本来のたてまえである累進構造に大きな穴をあけてしまっておるのであります。利子・配当に対する特別措置、株式譲渡所得の非課税、医師課税の特例、土地譲渡所得に関する分離軽減課税など、個人段階に帰着する資産所得が本来の累進化のシステムを崩しておることは明らかなのであります。極言すれば、累進所得税は給与所得についてのみ成立しておるとさえ言えるのであります。このような現状に対して、三木内閣は給与所得者に対し大幅な減税を行い、租税特別措置に対しては大なたをふるわれると思っておりましたが、所得税については超ミニ減税、一方、医師課税の特例の存続等租税特別措置に対しては小手先の手直しに終わりました。総理は、五十年度税制改正において完全に社会的公正は貫けたとお考えになっておるのでしょうか、明確な御答弁をいただきます。
 次は、大衆の零細預貯金の目減り対策であります。この問題については一昨年来各方面から種々の提案がなされ、指摘されてきたところであります。しかるに、政府は前向きに取り組む姿勢が見られませんでした。それは現在、副総理、大蔵大臣の意見の相違にも見られるところです。福田副総理は、零細預貯金者に対し特別に高い利息をつけるということを大蔵省に申し入れたと言われ、これに対して大蔵大臣は、実施がきわめて困難であると、こう反論されております。これに対して、技術的にむずかしいと言っては何もできないのではないかと、それを突破することが実行されなければならない、こういうことを言われており、国民は期待しておりましたが、大蔵省が出したと報道されておるのは、老齢福祉年金についてのみ一%ないし二%の積み上げをやるということであります。老齢福祉年金をもらう人たちに、大蔵大臣は、画期的な一万二千円だと言っておられたけれども、衆議院でわが党の委員長から指摘のあったとおり、これは前総理のもとで一万円は決定されたものであったのであります。それをそのまま貯金できるような状態にある人が何人おられるか、何%あるか。大部分の人はこの一万二千円の手当が生活の糧の一部になってしまうことは当然です。預金どころではない。そうすると、これは老齢福祉年金受給者に特別の優遇をいたしますよということは、何にもしないでよいということに通ずるのではないでしょうか。福田さんが言った零細預貯金者対策は一体どこにいったのか、これでは二階から目薬よりももっと悪いことであると思います。こういう問題を掲げながら不公正の是正と言うことは、国民をごまかす何物でもないと思いますが、三木総理は愛知県知事選挙応援のために、名古屋において、預貯金の目減りを直すとはっきり公約をしてこられたようです。もしもできなかった場合は、これまたあなたの責任をはっきりここで示していただきたい、かように思います。これは福田副総理、大平蔵相にも御答弁を願います。
 次に、資源・エネルギー政策並びに食糧政策についてお尋ねいたします。
 従来、政府の資源・エネルギー政策には、これといって確たる基本方針もなく、中東に安い大量の石油が噴出したからといって、それを大量に取得して、いたずらに工業化に走り、その結果公害等の問題を引き起こし、また一昨年暮れの石油危機を招いたのは御承知のとおりであります。三木総理も施政方針演説の中で、石油の価格が一挙に四倍になり、石油に対する依存度の高いわが国は、コストインフレと国際収支に悩まされていると述べております。わが党は、石油の九七%を外国に依存している状況では、必ずこのような事態が起こるであろうということを早くから指摘し続けてきたのであります。政府の資源・エネルギー政策は一向に確立されず現在に至ったのではありませんか。たとえば、わが国の貴重な国内エネルギーである石炭でさえも、エネルギー流体革命という美名のもとに、かつては六百を数えていた石炭山をわずか三十七鉱にまでなだれ閉山させ、二十四万人を超えた労働者も七分の一の三万六千人と激減させ、二十万にも上る多くの石炭労働者を路頭に迷わしたのであります。
 食糧についても、また同じであろうかと思います。大豆の九〇%、小麦の六〇%をアメリカに依存し、小麦一つとってみても、その価格は一昨年に比べて現在では三倍にもなっておるではありませんか。しかも、かつて百八十七万ヘクタールもあった麦の作付面積を現在はわずか八・二%に激減せしめ、生産量もわずか一一%の四十二万トンと、麦作は政府の手により完全に安楽死させられてしまいました。そして、この麦畑にかわって大企業が経営するゴルフ場が各地につくられ、現に開設中のものだけ取り上げてみても八百に上り、その面積は七万ヘクタールに及んでおる。その結果、最近における世界的な食糧危機に際しても、わが国は何のなすすべもなく手をこまねくだけであります。狭い国土に一部の人のゴルフ場をつくるより食糧増産を優先させるべきであると思いますが、総理のお答えを願います。
 政府の資源・エネルギー政策の無策は、国内資源の見直しと称して石炭や米作の奨励をしようとしておりますが、一たん閉山した石炭山を開発することはなかなか容易なことでなく、また、アシが生えてしまった田をもとに戻すこともなかなか簡単なことでないことは御承知のとおりであります。政府において、今後いかなる資金・エネルギー政策を展開しようとしているのか、その基本的な考えをお伺いいたします。
 また、政府は、石油危機のとうとい経験を生かしたと称し、昨年七月に総合エネルギー調査会の報告を出し、原子力の安全性が立証されないままに、単に原子力発電が重油火力より相対的に安くなったというだけで一方的に強力に原子力発電を推進しようとしており、その結果、国内至るところにおいて原子力発電所の立地反対に遭い、昭和六十年度に六千万キロワットを開発しようという政府の目標はとうてい及びがたいものとなっているのが現状であり、また、安全性が立証されないままに建設された発電所は連日のように事故を発生し、周辺住民は原子力の恐怖にさらされておる。このような実情に対して今後どのような対策を考えておられるのか、総理の見解をお伺いします。
 次に、石油備蓄の問題についてお伺いいたします。
 第一に、資金の問題であります。石油の九十日備蓄に要する資金は、五十年度予算案では財投や石油・石炭特別会計から出しておりますが、石特会計は御承知のように石炭政策の根本財源であり、今後も石油備蓄の資金がここから出されるならば、石炭の見直しどころではなくなってしまいます。政府は石油備蓄の財源を今後どうされようとしておるのか。
 第二に、石油の安全管理の問題であります。三菱石油の重油流出事故にしましても、太平洋海運の祥和丸の座礁にいたしましても、経済性のみを追求するわが国の大企業のエコノミックアニマルによって引き起こされたものであり、政府の石油に対する安全管理体制の欠陥と無策ぶりを暴露したものであります。しかも、その石油貯蔵タンクのほとんどが河口近くの砂地を埋め立てた造成地に建設されており、最近の調査でも、名古屋港を初め鹿児島、横浜、仙台等の石油タンクのごとく、きわめて危険な状態にあることが明らかにされております。これも企業の安全に対する責任の欠如を示すもので、国の機関の調査によらなければ何もしないということ自体きわめておかしく、国民にツケを回す結果となり、政府が企業べったりの姿勢と言われるのであります。また、コンビナートの防災対策は、立地条件、監督行政などが一元化され、それが法律で強力に行われなければならないことは、昨年の石油化学コンビナートの連続爆発事故の教訓であったはずであります。本来、石油の備蓄と安全対策とは一体として考えるべきものであると思われます。なお、地震のおそれが今日言われておるとき、もしも大きな地震があれば、これら石油タンクやコンビナートを考えるときに慄然たるものがありますが、政府の対策をお伺いいたします。
 第三に、石油の輸送政策のあり方の問題であります。さきにも指摘いたしましたように、祥和丸の事故は、年間三億キロリットルもの大量の石油を海外市場からの輸入に依存しながら、その輸入対策については何ら抜本的対策を講ぜず、マラッカ海峡ルート偏重の安易な輸送政策をとってきた政府の責任でもあります。石油の輸送ルートを安全に確保するためには、根本的には石油の海上輸送ルートの多様化を図るなり、中東地域偏在の輸入体制を改めるなど、近距離からの石油輸入を拡大する必要があると思われますが、以上について総理並びに関係大臣にお伺いいたします。
 次に、社会保障について若干の質問をいたします。
 国民の生活は、インフレの激しい波をまともに受け著しく不安定さを増すと同時に、富と所得の格差を増大し、いわゆる社会的不公正は一段と大きくなっており、特に生活保護世帯、老人、心身障害者、母子世帯等社会的援護を受けるべき人の生活は極度に圧迫されている現状にあります。これは、国民の生活上の切実な要求を無視し、国が当然果たすべき義務を放置して、一部の階級の利益擁護に偏したことのあらわれであると考えます。このようなこれまでの考え方は、現在の厳しい環境下においては一刻も早く大きく転換され、真に国民の生活の安定を図り、富と所得の公正な分配を実現させるという観点から政策がとられなければなりません。その意味で、社会保障制度の充実は、当面する課題のうち最優先させるべきものであります。
 五十年度予算案においても、確かに社会保障予算の一般会計に占める割合は一八・四%になっておりますが、北欧諸国の三〇%以上というところは別といたしましても、西ドイツの二九・五%、イギリスの二四・七%に比べて、福祉重点予算などとは言えるものではありません。さらに、四十九年度末には十一兆四千五百八十二億円に達する厚生年金と国民年金の積立金の大部分が財政投融資を通じて大企業や産業基盤整備に回されていることも大きな問題であります。
 しかも、社会保障関係費は、年金給付、医療費措置等当然増が大半を占めており、その上、これまでの水準の立ちおくれとインフレによる国民生活の圧迫とを考えるとき、社会的不公正の是正を旗印の一つとした三木内閣の編成した予算は、弱者救済の期待を大きく裏切った継ぎはぎだらけの福祉政策と言わざるを得ないのであります。(拍手) そこで、まず政府は予算案決定に当たって社会保障制度をどのように位置づけたのか、また、今後どのような方向で社会保障の推進を図っていくつもりか、基本姿勢をお伺いしたいのであります。
 まず、公的年金制度についてでありますが、周知のとおり、わが国の公的年金制度は、各種共済組合、厚生年金、国民年金等八つの年金制度に分かれており、各制度において支給開始年齢、年金額算定の基礎となる報酬のとり方などに差異があり、給付水準及び負担面に著しい格差が生じております。社会保障制度の機能の重要な要素は、国民の最低生活の保障と所得再配分による公平の実現にあるわけでありますが、同一の給付事故に対してすら格差が生じていることは大きな問題であります。この際、年金制度全体について見直しを行い、その総合調整を図るべきであると思いますが、御所見を承ります。
 次に、各種公的年金制度の給付水準は総じて低水準にあります。国民年金は六万円年金と政府はPRしておりますが、仮に夫婦で加入して昭和六十六年まで保険料を完納し支給されても六万円にはならないので、幻の年金と言われ、国民年金は標準的な年金額を受ける者は一人もおらず、国民を欺瞞したものであったことはすでに御承知のとおりであります。そこで、年金制度の成熟を促進し、国民が安心して老後を送ることができるようにするため、現行の財政方式を積立方式から賦課方式へ移行する問題も含めて給付水準の見直しを早急に行い、その大幅な引き上げを図るべきだと思います。
 また、現行の老齢福祉年金についても、当初の目標どおり実質価値を維持するためには、一万二千円のアップにとどまらず、せめて三万円程度に引き上げるべきだと考えますが、あわせてお伺いいたします。
 最後に、先般モロタイ島で救出されました中村輝夫さんに対し日本政府のとった措置は、関係各国から非常に冷たいと非難されました。本人の切なる要望であったのか、台湾の強い要請であったのかわかりませんけれども、なぜ温かく日本に迎えて、小野田さんや横井さんのように、国立病院で静養した上で台湾に送らなかったのかお伺いいたします。
 総理の施政方針と決意は、簡素、つつましさの押しつけとなっておりましたが、一部ではございますけれども、三木内閣のことをヤマブキ内閣と言われておりますが、それが現実とならぬよう強く要望いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣三木武夫君登壇、拍手〕
#5
○国務大臣(三木武夫君) 阿具根さんの御質問にお答えをいたします。
 阿具根さんも御承知のごとく、今日の時代は大きな転換期である、ちょっと経験をしないぐらいの大きな転換期であります。したがって、いろいろな諸制度に対しても全部再検討いたして、新規まき直しと私は言っておるんですが、それくらいのことをやる覚悟でなければこの変化に適応ができないわけであります。したがって、いろいろ改革をしなければならぬものはたくさんにある。それを全部一遍にできるものではない。だから、私の言っておることは、やはり発言は、お約束したことは必ず実行する。実行できないことは約束をしない。したがって、私の約束はつつましい面があるわけであります。それはなぜかといったら、実行の責任を負うておるわけでありますから、そう何もかも大ぶろしきを広げるわけにはいかない。しかし、言ったことは必ず実行すると御承知を願いたいのであります。(拍手)
 また、政治資金の規正については、これはこの国会に提出をいたしますと言っておりますから提出をいたしますが、その場合に、労働組合の献金というものも、企業の献金に対して節度を求めると同時に、これも検討いたしたいと考えておる次第でございます。そして、企業の献金というものを私が悪ではないんだと言うことが、非常に阿具根さん、私の主張と矛盾すると、こういうことですが、私は矛盾しない。いつもそういうふうに申しておるので、政党の経費は党費と個人献金が私は理想的だと思っておるのです。しかし、一遍にそこへ持ってまいりますためには、日本の社会的慣習が、個々が、政党の資金を皆が寄付するという慣習になれておるとは私は言えないと思います。だから、いますぐにそういうふうな制度に変えることはきわめて困難がありますので、やはり経過規定が要る。経過の時期が要って、そして将来はそういう理想的な方向に向けるべきだ、この主張は一遍も私は変えてないんですよ。いつもこう言っておるわけです。しかも、企業献金ということを私は悪だと思わないのは、企業という大きな社会的な役割りを果たしておる団体が、政党  その政党は自由社会を守り、民主政治の健全な発展を願うために企業が応分の政治に対して応援をすることが悪だと断定することは私はできないと思う、これは。企業はいろんな面において、政党ばかりでなしに、寄付もしておるんですから、政党だけに寄付するのが悪だとは私は思わないのですけれども、自民党に言っておることは、企業の献金に甘えてはいけないんだと。甘えてはいけないんだと。だから、自民党自身がやはりそういうことに対して節度を持った、幾らでも企業の献金は多々ますます弁ずるということではいけない、節度を持たなければならぬと申しておるのであって、企業の献金が悪だという感じで私はこの政治資金規正法の改革を考えておるのではないので、これは終始私の言っておることに変わりはないのであります。
 また、選挙制度につきましては、これは阿具根さんがお考えになっても、今日の選挙のあり方が、これが正常な姿とお考えになるでしょうか。こんなに選挙に金がかかっているような状態がそのまま野放しにされて日本の民主政治が健全に発達するとは私は思わないんです。この点から、日本の民主政治は崩壊の危険を持っておる。だから、選挙法を改正して、全般的な改正でなくても、もう少し選挙が、いわゆる金がかからないで、しかも、いろんな悪質な選挙違反というものが起こされることのないように選挙が行なわれるような、いわゆるまあ選挙の粛正に関する選挙法の改正を私はぜひともこの国会において達成をしたい、そういう法案の通過を図りたいと考えておる次第でございまして、これは私の強い決意であるということを申し上げておきたいのでございます。
 また、社会的な公正についていろいろお話がございました。これはいろんな原因があると思いますが、とにかくこのインフレというものによって、いろんな財産とか所得とかいうものに不公正が生じておることは事実でありますから、したがって、その社会的不公正というものを、あるいは税制の面から、あるいはまた、いま言ったような社会保障の面から、できるだけその不公正を是正していきたいと考えておる次第でございまして、昭和五十年度の予算に対してもいろいろと御批判がありましたけれども、ああいう条件の中で精いっぱい社会的不公正を是正しようという私の意図は予算案の中に盛り込んだつもりでございます。社会保障についても前年度に比べて一兆円の増額をしたわけですから、そういう点から考えてみましても、今度の予算編成が、ああいう条件の中で社会的不公正の是正ということに対して非常に配慮を加えた予算であると御承知を願いたいのでございます。
 また、倒産の問題など総需要抑制によって労働者や中小企業だけにしわ寄せがいくというお話でありましたが、やはり私は総需要抑制の政策は当分これを継続していかなければいかぬ。それは何かと言えば、何としても物価を安定させなければ、こういう状態でおってはお互いの生活の設計も立ちませんし、また、まじめに働くという健全な国民の精神というものに対しても、これはむしばむことは明らかでございますから、インフレを抑制して物価を安定さすということをこの内閣の一番の大きな政治目標に、当面のことでございますが、しておるのでございます。幸いにも、物価は鎮静の傾向にございますから、もう一息というところまで私は来ておると思う。したがって、政府の目標を掲げております三月末には前年同月比一五%程度に抑える。来年の三月が来れば一けた台にするというこの約束は達成できるというような見通しも生まれてきておりますから、やはりここで政府の経済政策というものを転換するということは、せっかく物価の鎮静の方向に向かっておることに対して、それが物価鎮静の目的に沿うゆえんだとは思わないのでございます。しかし、その間にいろんな中小企業などに対して不当なしわ寄せがいかないように、きめ細かい中小企業対策を講じていく所存でございます。また、労働者に対しても、できるだけ労働者の解雇などを、解雇されれば労働者ばかりでなしに家族の生活にも非常な破綻が来るわけでありますから、したがって、簡単に安易に解雇をするようなことのないように、もしそういうことがあった場合においてもそれに対する救済の対策ということも考えて、そうして労働者にしわ寄せが参らないように今後とも十分気をつけてまいりたいと考えておる次第でございます。また、物価鎮静ということが、春闘を意識してやっておるのではないかというお話でしたが、われわれは何もこう春闘のために物価の安定ということを考えておるのではなくして、国民生活の安定のためにやっておるのであって、春闘のために物価の安定をやるなどという、そんな考えはないのであります。けれども、やはり労働賃金というものが大きな物価を押し上げていく要因であることは否定できませんから、労使とも、この春闘の賃上げ交渉というものに、物価鎮静の動向にあることも労使ともに考えられて、節度のある賃金の決定がなされることを強く要望をいたしておる次第でございます。それ以上政府が賃金の決定に介入する考えは持っておりません。
 また、独禁法の改正については、これはいま内閣において懇談会、各方面の有識者による懇談会というものが設けられて、非常に建設的な論議が行われておるわけでございまして、そういう懇談会の意見等も徴して、これは三月にはこの国会に法案として提出をする考えでございます。内容については、いま検討を加えておるときでありますからこの席上で一々申し上げられませんが、衆議院の本会議でも述べましたごとく、ただお茶を濁すようなそういう独禁法の改正にはいたさないと、骨抜きにはしないということを申しておるわけでございます。ただ、いま阿具根さんは、公取の案をそのまま採用するかというお話でございましたが、公取の案が最善絶対のものだとは思ってないので、そのとおりしなければ独禁法の改正が後退したんだというような、そういう御批評は当たらないと思うのでございます。日本の実情に適したように、いろいろ諸外国の例をお引きになりましたけれども、独禁法はその国の経済事情に即した一番いい案にいたすべきであって、日本は日本の事情に即した、できるだけ国民の納得のいくような独禁法の改正にいたしたいと、鋭意検討々加えておる最中でございます。
 次に、外交問題について、朝鮮問題にお触れになりましたけれども、われわれは、朝鮮半島が統一したいということがこれはもう民族の悲願であるということはよくわかる。これは阿具根さんと私も同じであります。したがって、よそから干渉されるのでなしに、自主的に、平和的に目的が達成されるということを全面的に支持いたします。そういう立場です、政府は。しかし、一足飛びにそこまでいかないとするならば、そのいくまでの過程に、どうか南北が平和的に共存をしてもらいたいと、これがわれわれの心からの願いであるということでございます。
 また、木村前外務大臣の発言にお触れになりまして、脅威があるかないかというお話でありましたが、恐らく木村前外務大臣としても、国連軍は駐留しておるし、再び朝鮮戦争のような大規模な軍事行動が朝鮮半島に起こる可能性は乏しいというふうに観察をされることは、これは常識的だと思います。いますぐ朝鮮戦争が再発するということ、危険を考えないだろうということが、これは皆の常識に合致すると思います。しかし、脅威ということになりますと、「脅威」という日本語の持っておるいろんな意味、これは脅威ということになってきたら、その脅威というものを判断するものは一体だれかと、その当事者が、やっぱり判断する主体が――脅威というものを判断するのは当事者でありますから、脅威があるかないかというようなことを第三者がいろいろ申し上げることは私は適当ではないのではないかと、こういうふうに思うのでございます。(拍手)
 それから、国連総会において、国連軍というものが撤退をするようにという北朝鮮の提案でありますが、これに対して日本がなぜ反対したかというのでありますが、国連軍の撤退というものはいつかやらなければならぬですけれども、しかし、国連軍が撤退した後に朝鮮半島の平和維持というものは一体どうなるのか、何の保障もないわけですから。何の保障もなしに国連軍が撤退するということは、まだ朝鮮半島の状態からして平和と安全が絶対に回復されたとは言えないんですからね、朝鮮半島は。絶対に回復されたと言えないところに、いままでおった国連軍が一遍に撤退してしまって、後の保障というものは何にもないということでは、朝鮮半島の平和と安全のために不安が残ると、そういうことで、やはり国連軍がいま駐留しておるという役割りを私どもは評価するものとして、後の保障も何もなしにすぐに撤退をするということは、時期的にはやはり適当ではないと、そうすることが、南北の朝鮮の統一にもかえってそういうことは好ましいことではないのではないかと、こういう判断から国連軍の撤退に反対をいたしたわけでございます。何らかの保障の措置があれば、それは何にも反対しないんですけれども、その保障のないところに不安があったということでございます。(拍手)
 また、石油についていろいろお話がございました。ただ、私は、いろいろキッシンジャー国務長官も言われておりますが、それは新聞記者などに対しての談話の中に、首を絞めつけられるようになってきたら、やはりそれに対しては黙っておれぬというような発言が、軍事介入という強い印象を与えておるようでありますが、しかし、アメリカの現実の政策というものは、御承知のように、十二月の十六日でしたか、フランスのジスカールデスタンとアメリカのフォード大統領とが会って、そして、この三月に予備会談が始まるわけで、それは産油国と消費国とが一緒に話し合って、そしてお互いによく話し合って協力していこうということの合意が成立したわけですから、このアメリカの現実のとろうとする政策はわれわれがとろうとする政策とは反しないのでありまして、われわれの方向と同じである。いろいろな発言はありますけれども、現実にとろうとするアメリカのこの産油国に対する政策がわれわれの考え方と大きな距離があるとは私は思ってない。私どもはあくまでも力ずくではいかぬと思っているのですよ。力ずくで石油問題は解決するわけにはいかぬ。どうしても産油国と消費油とがお互いに共通の利害があるのですから、したがって、お互いによく話し合って協力できれば、協力の道を探求すれば必ず話し合いはつくだろうし、つかさなければならぬというのがわれわれの強い信念でございますから、力で石油問題を解決しようというのはわれわれの考え方ではないということを明らかに申し上げておく次第でございます。
 それから日中、日ソの関係について言及をなさいましたが、日中の問題については、しばしば申し上げましたるごとく、平和友好条約がいま話し合いを順調に進めておりますから、妥結次第、これは国会の批准もできるだけ早い機会に得たいと思っておる次第でございます。
 また、日ソの関係については、宮澤外務大臣が先般御承知のようにソ連に参りまして、そうして、田中・ブレジネフ会談の結果、平和条約締結の交渉をするということになっておりますから、まあ、それをやはり引き続いてやることがこの問題を解決するために必要であるということで参ったわけでございまして、阿具根さん御承知のように、領土問題は簡単に片づく問題ではないわけでございますが、この問題はしんぼう強く領土問題を解決して、日ソ間においても平和条約を締結いたしたいと願っておる次第でございます。
 次に、春闘のことは、先ほど申し上げたごとく、やはり物価の抑制ということは春闘のためでないのだと、国民生活の安定のためだと。
 それから次には、物価の見通しについてでありますが、これはもう私どもが申し上げたとおり、三月末に一五%程度に推移、来年の三月には一けた台にするということは、これはもう強い政府の目標でございますから、したがって、この目標に対しては政府も責任を持つことは当然でございます。どうか阿具根さんにおかれましてもいろんなお立場がおありでしょうけれども、この政府の施策にできるだけの御協力を願いたいと思うのでございます。
 また、税制の問題については、大蔵大臣からすべてお答えをいたすことにいたします。
 しかし、農林大臣の要求がないようでございますから、食糧問題だけには私からお答えをいたしておきたいと思うのでございます。
 やはり日本は、こういう世界的な食糧不足でありますから、できるだけ食糧の自給率を高めたほうがいい。そのためにたとえば裏作などに対してはこれをできるだけ奨励をしようということで政府も努力をしておるわけでございますが、しかし、自給率を高めても日本が食糧を自給自足するようなことはとても不可能でございまして、できるだけ高めはするけれども、その不足する食糧はこれはやっぱり海外に仰がなければならぬ。そういう点で、食糧の面からも国際協力というものは非常に大切である。全部食糧を自国で賄うということは、これはどこの国でもできるわけではないわけでありますから、やはりできるだけ自給率を高めて、どうしても自給することが合理的でないという面については海外から輸入を仰がなければならぬ。それが安定的に供給を受けられるような国際的な関係を維持していくことが大事であって、しかし、いろんな場合がありましょうから、どうしてもやはりそういう場合に潜在的な生産力というものを培養しておく必要がある。そういう点で土地整備事業というものはきわめて重要であって、農地あるいはまた水資源とか土地の利用というものに対して、高度に利用できるような基盤を整備するということが大事である、こういうふうに基本的に考えておる次第でございます。
 また、エネルギーの問題については通産大臣からいろいろ個々の問題についてはお答えをいたしますが、エネルギーに対する政府の基本的な考え方は、これだけ外国からの輸入の石油に依存しておるんですから、これを節約をしていこうということは当然であります。できるだけその石油の輸入を減らすために節約をすると同時に、一方においては、やはり石油にかかわるいろんなエネルギー、まあ、原子力などは、やはり今後急速に原子力発電などは開発をしていかなければならぬ。安全問題というものが非常に問題になっておりますから、科学技術庁に安全局というものを新しく設置いたしまして、国民の原子力発電に対する不安の解消に全力を挙げたいと考えておる次第でございます。また石炭などに対しても、どうこれを利用していくかということの検討もいたすことにいたしております。
 また、これにかわる新しいエネルギーの開発ということに対しても、サンシャイン計画などによって太陽熱であるとか、核融合とか、こういう研究も、予算も増額をいたしましたし、今後力を入れてまいる次第でございます。個々の問題については通産大臣からお答えをいたすことにいたします。また、社会保障の関係については、これはやはり社会保障というものは今後政府が特に力を入れておる面でありまして、お互いに人生には共通の不安があるわけで、いろんな境遇の変化によって生活というものの不安がある、失業の不安がある、病気の不安がある、老後の不安がある。こういう人間共通の不安というものは少なくとも解消して、まず人間としての生活というものはこれはまあ安心だというような社会をつくることがわれわれのまず当面の大きな目標でありますから、社会保障には力を入れてまいります。それもそのときそのときでなくして、これは長期計画を立てる必要があると考えますので、経済社会発展計画と一緒に社会保障の長期計画をつくりたい。五十一年度からそういう計画がスタートできるような長期計画をいま策定中でございます。そして年度的に見て日本の社会保障の充実していく方向を明らかにしたいと考えておる次第でございます。
 その他の社会保障関係には厚生大臣からお答えをいたしますが、モロタイ島の中村輝夫さんの問題について日本政府のやり方が不満であるというお話がございましたが、われわれとしても、中村さんが日本に帰ってくれたら、国立病院などに入っていただいて、できるだけいたわりたいという気持ちはいっぱいでした。しかし、御希望で台湾へ帰られたわけですが、その帰るに際して、よほど中村さんのお立場等もいろいろと考えまして、政府は従来の例よりもずっと中村さんに対しては手厚くいたしたということはひとつ御理解を願いたいんであります。何も中村さんに特に薄情にしたというようなことは絶対にないということを申し上げておきたいのでございます。
 最後に、私の内閣をヤマブキ内閣であるという御批判がございましたが、どうか、この内閣は、非常に花はつつましいけれども実は大きい内閣である。御承知おきを願いたいんでございます。(拍手)
   〔国務大臣大平正芳君登壇、拍手〕
#6
○国務大臣(大平正芳君) 私に対する御質疑の第一は税制改正の問題でございます。阿具根さんは、所得税は微調整にとどめたではないか、物価高の今日、そういう御指摘でございますが、これは事実でございまして、ことし、御案内のように大幅な所得税の減税がございまして、来年度にわたりましてこれが平年度化されるわけでございます。したがって、所得税課税の最低限を見ていただきましても、この二年間で約六割の引き上げになるばかりでなく、所得税を納める最低限が百八十三万円という、たびたび申し上げますように世界で一番高い水準に達しておるわけでございます。したがって、ことし、私といたしましては所得税をこのまま据え置いておきたかったわけでございますが、与党、野党を通じて切なる希望もございましたので、物価調整減税程度、今度の改正に組み入れさしていただくことになりましたことを御了承いただきたいと思います。ただ、その中におきましても、相続税、入場税等につきましては相当思い切った改正をいたしてございますことは御案内のとおりでございます。ただ、酒とたばこにつきまして、税額の増徴をお願いいたしておりますゆえんのものは、ここ数年にわたりまして、こういう従量税につきましては、価格が上がったにかかわりませず税額が上がらないということで、他の税目との間に著しい実質的な不均衡を生じておりますので、これを是正させていただく意味と、歳入充足の意味をもちまして若干の値上げを提案せざるを得なかったことを御了承いただきたいと思います。
 第二は、租税特別措置の是正が十分でないという御指摘でございます。今度の租税各法の改正におきましては、まず利子・配当所得の特例につきまして、その源泉分離選択税率を従来の二五%から三〇%に引き上げますと同時に、この特例を五年間延長することをお願いいたしてあります。これはなぜかと申しますと、利子所得の源泉を十分掌握するまでに至っていないわけでございますので、この把握が行き届きますならば、この特例を撤廃いたしまして本則に返すことに政府としてはやぶさかでございません。
 それから第二に、土地の長期譲渡所得でございますが、これは申すまでもなく一時所得でございまして、半分は当然総合されるべきことが本則でございますが、今度この中で一番御批判の多い長期譲渡所得につきましては、特別控除後の譲渡益のうち、二千万円以下の分について二〇%、二千万円を超える部分につきましては四分の三、総合課税した場合の上積み課税をいたすことにいたしております。言いかえれば、これは本則に返したよりもむしろ重い税金になっておりますことを御了承いただきたいと思います。
 それから、第二の御質問は目減り対策でございます。目減り対策につきましては、従来からたびたび御議論があるところでございまするし、各党からもいろいろの御提案がございますことはよく承知いたしておるわけでございます。政府といたしましては、この問題につきましては、目減りの原因となっておりまする物価の上昇を抑制することがまず第一の基本的な政策でなけりゃならぬと考えております。そういう見地から、いま手がたく総需要抑制策を金融、財政、産業全体を通じましてお願いをいたしておりますことは御案内のとおりでございます。しかしながら、こういうインフレ下の預金者の立場にも十分配慮しなければならないと存じまして、四十八年以後五回にわたりまして預金金利の引き上げを行いましたことも阿具根さん御承知のとおりでございます。しかし、いまあなたの御意見は、目減り対策を、個人預金の金利を全般的に引き上げること、もう少し、狭い範囲でなくて、もっと広くめんどう見なければならないではないかという御意見のように承りますけれども、そういたしますと、中小企業向けの貸出金利の上昇、郵貯金利の引き上げ、政府関係機関の貸出金利の上昇等、非常に多くの方面に影響が起こるのでございまして、私は、なかなかこれは困難な問題であるということをたびたび繰り返して訴えてまいったわけでございます。しかしながら、困難であるからといって、いまのままで果たして放置しておいていいかということになりますと、そうもいけないんではないかということでございまして、目下政府部内におきまして鋭意検討いたしておりますので、しばらく時間をかしていただきたいと存じております。(拍手)
   〔国務大臣河本敏夫君登壇、拍手〕
#7
○国務大臣(河本敏夫君) お答えをいたします。
 まず第一番に石炭の問題でございますが、一昨年の秋に石油問題が起こりましてから、 エネルギー全体の中におきまして占める石炭の役割りというものは非常に大きくなったと思います。そこで、通産省といたしましては、石炭鉱業審議会に、今後の石炭はどうあるべきかということについて答申を求めておりますが、近くその答申が出る予定になっております。それに沿って恒久的な対策をとっていきたい、かように考えております。
 次に、原子力発電の問題でございますが、これも御案内のように、総合エネルギー調査会、それから電気事業審議会から、昭和六十年を目標として大体六千万キロの原子力発電をつくるべきである、こういう答申が出ておりますが、お説のように、この問題におきまして一番大きな問題は安全の確保ということでございます。先ほど総理からも御答弁がございましたように、今度安全確保のための行政の強化ということも実現されましたが、通産省といたしましては、この電気事業法に基づきまして検査、こういう面からひとつ安全性を強化していきたい、こういうふうに考えております。あわせて、やはり地元の住民の皆さんの御了解を得るということが大事でございますので、この周辺の公共用施設の整備、こういうことについて新しい法律等もできておりますので全力を挙げていきたい、こういうふうに考えております。そして地元の皆さんの御了解を得たい、かように考えます。
 それから石油備蓄の問題についてのお話がございましたが、その御趣旨は、これを石炭・石油特別会計から出すのはいかがか、こういう御趣旨であったと思いますが、今回はいろいろ検討いたしました結果、あらゆる角度から考えましてこれがよかろうということで石特会計から出すことにいたしましたが、将来はこの財源等も含めまして総合的に再検討していきたい、こういうふうに考えております。ただ、石炭を軽視するのではないかと、こういう若干の御心配のお話もあったようでございますけれども、備蓄関係にこの石特から若干の金は出しておりますけれども、石炭関係の予算というものは実質上相当大幅にふえておるということを申し上げておきたいと思います。
 それから石油の安全管理の問題でございますが、水島の事故であるとか、あるいは最近の各地における不等沈下、こういう問題からたいへん心痛をしておるわけでございますが、これにはもちろん企業自身が責任を持ってもらう、十分気をつけてもらうということが第一でありますが、さらに消防庁などにおきましていろいろその原因等を調査していただいております。それに基づきまして各社に注意を喚起いたしますと同時に、この指導監督に協力していきたい、かように考えておる次第でございます。
 それから最後に石油の輸入ソース、これを多角化すべきである、特に近距離から輸入するように努力をすべきである、こういうお話がございました。全く私も同意見でございますので、それが実現するようにただいま努力をしておるところでございます。(拍手)
   〔国務大臣田中正巳君登壇、拍手〕
#8
○国務大臣(田中正巳君) お答えいたします。
 第一に、予算編成上、社会保障制度の充実は最優先さるべきではないかという御質問でございますが、本来、社会保障の実施は近代国家の特色の一つでもありますし、また、特に最近のように物価が高騰いたすというような状態になりますれば、社会的不公正を拡大し再生産するということになりまするので、特に社会保障の充実はこれをやらなければならないということだろうと思います。
 そこで、五十年度予算におきましては、こうした命題を踏まえまして、種々な御批判があることは存じておりますが、私としては懸命な態度で編成をいたしたつもりであります。財政規模を一般的に抑制をいたす予算編成下におきましても、厚生省予算は昨年度比で大体三六・二%伸びましたし、また一般会計におけるシェアも昨年の一六・八%から一八・四%と、それぞれ伸びを示したわけであります。今後ともなお努力をしていきたいというふうに思います。
 次に、厚生、国年の積立金の使途の問題でございますが、これにつきましては、被保険者の拠出された保険料の集積であるということにかんがみまして、慎重に従来から運用をいたしております。すなわち、財政投融資使途別分類表をごらんになっていただくとよくわかるのでありますが、昭和四十八年からこれの(1)−(3)分類、つまり住宅、生活環境、つまり上下水道、厚生福祉などというものに三分の二を充足をすることになっておりますし、またいわゆる(1)−(6)分類、国民生活向上に直接関係あるものについては八五%、また道路、電気、通信等の国民生活基盤になるものについて、いわゆる(7)−(10)分類でございますが、これに一五%充当をいたしておりまして、いわゆる産業分野、基幹産業、貿易等に対しては全くこれを充当をいたしておらないわけであります。
 次に、社会保障費の増加のうち当然増が多いというお話でございますが、三六・二%増加をいたしましたと最前申し上げましたが、これを分類してみますると、自然増が三六・二のうちの八・二、従来の政策の平年度化増が九・七、診療報酬等の改定増が八・五、政策増が九・八というふうになっておるわけであります。静的に観察をいたしまするとかような数字になりまするが、どうも厚生省関係の施策は、法律の実施の時期あるいは諸準備の都合上、年度途中から開始されるものが多いものでございまするから、したがって、今年度の政策増が平年度化するならば、相当のものに相なるものであろうというふうに思っている次第であります。
 次に、年金の総合調整についてお話がありました。それぞれの年金がそれぞれの沿革や目的で発展をしてきましたものですから、したがいまして、いろいろな点についていろいろな違いが出ているわけでございますが、本来的にはこうした違いが余りあることは望ましいものではございません。そこで目下、公的年金制度全般にわたる基本的なあり方について各省庁と十分連絡をとって調整をやっておりまするが、なかなかこれは既得権の激しい主張の間にあって容易なことではないというのが実態だろうと思います。とりあえず、私どもとしては、通則法によるところの通算年金制度について、従来は老齢通算年金だけ実施をしておりましたが、障害と遺族の両年金につきましても、通算年金制度を近く実施いたすべく鋭意検討中であります。
 次に、国民年金の実態についてのお尋ねがございました。おっしゃるように、国民年金は発足をいたしましてからまだ十四年しかたっておりませんから、したがいまして、まだ未成熟でございます。そこで、これがいろいろに言われているように、満度な給付にまだ到達をしておらないということもありまして、種々御批判がありまするが、順次これが成熟化していく場合においては、世間で言われているような給付額に上ることができると思っております。
 そこで、この財政方式についてでありますが、賦課方式をとることをいろいろと各方面で御主張になっております。私も、将来の制度としては、財政方式としては、賦課方式というものは、十分検討に値するものであると考えておりまして、五十一年度に実施をする財政再計算時にはこの考え方を取り入れたいと思っていろいろいま検討をしておりますが、いかなる時期に、どういう範囲で、どういう方法で、どんなプロセスをとって賦課方式を導入するかということについては、口で言うほどそう簡単なものではないのでございまして、せっかく腐心をいたしているわけであります。また、これにつきましては、どうしてもやはり相互扶助の精神がなければ賦課方式というものはやっていけないものであるということを最近しみじみと私は感じているわけであります。
 福祉年金の金額についていろいろ御批判がございましたが、やはりこれについては、最前来申しているように相当の実は財政負担を必要とするわけでありまして、ただいま御主張のように、三万円支給せよということになりますると、一兆八千億年間かかるわけでありまして、一省庁の予算令をオーバーするだけの予算が福祉年金だけで支出をされるということに相なりますので、これは年金の財政方式の抜本的改定と絡み合わせまして検討をして、何とか生活を支えるに足るような福祉年金というものに近づけていくようにいたしたいというふうに思っております。
 最後の中村輝夫さんについての御質問については、総理がお答えになりましたから省略をさせていただきます。
 以上でございます。(拍手)
#9
○議長(河野謙三君) 答弁の補足があります。三木内閣総理大臣。
   〔国務大臣三木武夫君登壇、拍手〕
#10
○国務大臣(三木武夫君) 阿具根さんの御質問の中で、公団の問題と台湾の問題を落としたようでございますから、補足をさせていただきます。
 公団、事業団というものは、これは政府がもう目的を達成したものとか、あるいはまた業務量が減少したものは極力整理統合さすという方針であります。また、新しく新設したいという場合には、スクラップ・アンド・ビルドの原則で、何か一つそれを壊して、一つなくして、廃止をして、そして新しいものを新設するというふうに極力指導しておるわけでございます。今後も、阿具根さんの御指摘のように多過ぎることは事実でありますから、できるだけこれを整理をしてまいるような方向で努力をしてまいることにいたしたいと思っております。
 また、日中平和友好条約に関連して台湾の問題をお尋ねになりましたが、日中平和友好条約は、日中間に永遠の友好の基礎をこの機会に固めたいと思って鋭意いま下交渉を進めておるわけで、いまこの段階で内容はどうだこうだということを申し上げることは適当でないと思いますが、台湾につきましては、これはもう日中共同声明の諸原則を厳格に守って、その中で処理さるべきことという方針には毫も変更はございません。(拍手)
    ―――――――――――――
#11
○議長(河野謙三君) 温水三郎君。
   〔温水三郎君登壇、拍手〕
#12
○温水三郎君 自由民主党を代表し、五十年度予算案等を通じて、内政の一部だけに若干の質問を行うものであります。
   〔議長退席、副議長着席〕
 三木総理は、総裁に指名されたとき、青天のへきれきという表現をされたことは有名であります。すなわち、就任の時期においてすでに五十年度予算はほとんどでき上がっていて、修正の余地も余裕もなかったと思うのであります。しかるに、予算はかなり三木色が盛り込まれたことは総理の豊かなる学識と強靱なる信念によるものと存じ、改めて敬意をささげ、かつ、十字架を背負う今日の指導者として最高の信頼を寄せるものであります。(拍手)しかしながら、なお施政について国民の前に明白にしなければならない諸問題があると思うのであります。
 質問の第一点は、徹底的話し合いの政治姿勢であります。国内において今日のイデオロギーの対立、世代間の断絶、モラルの喪失等、国内の不安と動揺の時代において肝要なことは、全国民が相互に理解し、相協力する時代思潮を樹立することであります。総理は、与野党間における国家の重要問題に対する共通の広場のないことが与野党間の政権交代を阻んでいるという趣旨の発言をされたと仄聞するのであります。私ども自民党員は自民党の永久政権が望ましいのでありますが、しかし、議会制民主主義の政治理念からすれば、総理のこの発言は重大であると言わなければなりません。このことは、しかし容易なことではありません。総理がこれに身をもって当たり、内閣が一致して推進し、党が理解と協力を与えるならば、野党もまたイデオロギーを振りかざしていたずらに対立することなく、与野党間に共通の広場をつくり、わが国政治のがんを切除することが三木総理ならば不可能にあらずと信ずるものであります。総理の所信を伺います。
 質問の第二点は、物価の問題であります。
 福田副総理のいわゆる短期決戦によって物価抑制は成功しつつあります。物価を安定し、数%の経済成長を定着せしめ、社会的不公正を是正し、国民の不安、動揺を取り除き、美しい国土のもと人情豊かなる国民生活を築くことが今日施政の根本方針であると思うのであります。物価は予定どおり年度内一五%、次年度一〇%以内の上昇に落ちつく公算が大になってきたことは喜ばしいことであります。
 しかしながら、世界先進諸国のインフレ、また輸入物資の影響を考え、さらに、国民の、なお物価は上昇するであろうという考えを考慮に入れるとき、一歩を緩めればインフレ再現の危険が十分にあるのであります。
 このときに当たり、政府は、物資需給の均衡確保、生産の向上、流通の改善、公正自由な競争条件の整備等強力に推進することが肝要であります。
 また、政府は、低成長時代にふさわしい経済社会基本計画を組み直さんとしているのであるが、国民は、今日、わらをもつかむ気持ちで政府の経済政策の動向を一日も早く知ることによって生きる道を探さんとする切迫した事態に追い込まれているのでありまするから、安定経済成長を骨子とした中期計画とでも言うがごときものを一日も早く策定し、動かざる指針として、国民にお示し願いたいのであります。
 一方において、物価抑制短期決戦の副作用として、成長はマイナスに転じ、中小企業等の倒産いまなお相次ぎ、失業の多発、経済活動の萎縮、生産の減退等、世情不安の様相を呈していることは御承知のとおりであります。いまや、何らかの手直し的施策の展開が望まれるのであります。今年度予算において、政府は、中小企業対策に対して、その振興のための若干の手段を用意いたしました。しかし、これは短期決戦の副作用に対する手直しではありません。物価抑制は至上命題でありますが、これを達成しながら、この副作用を緩和する手段としていかなる秘策をお持ちであるか、政府の考えを承るものでございます。
 問題の第三点は、社会福祉政策についてであります。
 三木総理は、物価の安定と社会的不公正の是正を当面の政策の主な柱として、五十年度予算案の編成に際しまして、その主導によって、老齢年金を当初の計画より月二千円上積みしたほか、各種福祉年金、児童扶養手当等もこれに準じて上積みし、また、在宅重度障害者の福祉手当制度を創設するなど、福祉の画期的とも言うべき前進を実現したのであります。ために、五十年度において、社会保障関係費の伸びは三五・八%と大きな飛躍を示し、構成比は防衛費の約三倍に相当し、また欧米先進国の水準にも迫るものであり、三木内閣の福祉国家建設の性格を如実に証明するものとして私はこれを高く評価するものであります。(拍手)
 しかしながら、低成長時代に入り、さらに福祉の増大を図るためには、財政の長期的見通しに即応して、最も合理的に効率的に再編整理する必要を痛感するものであります。すなわち、低成長時代が定着すれば、福祉優先といえども、これ以上巨額の新規財源をこれに割くことは困難となります。
 一例を挙げれば、現に老齢年金の二千円引き上げでさえも連鎖的措置を伴い、五十年度は三百億円程度としても、平年度二千八百億円以上の負担となり、財政硬直化の原因ともなりかねないのであります。もし、また一部の論客の説くがごとく、年金の積立方式を単純なる賦課方式に改めるとすれば、後年度においてはその負担は飛躍的に増大し、現に福祉先進国のスウェーデンやイギリスが陥ったような財政上の行き詰まりや負担の過重にあえぐ結果となり、国政全般の均衡ある発展が阻害されるに至るでありましょう。
 総理の施政方針でも述べておられますが、私は、低成長時代における福祉は、高福祉・高負担の原則を確立することが肝要だと存じます。国民全体が、高福祉を求むれば、その経費を負担すべきことをはっきりと理解すべきであります。その負担はもちろん大企業や富裕階級が多くを負担すべきでありまするけれども、社会保障を初めとする福祉政策は、国民全体が連帯してお互いに助け合うための政策でありますから、中小所得階級といえども応分の負担をなすべきであると私は考えるのであります。弱者救済という言葉がありますが、これについて抵抗を感ずる旨の意見が国民の一部から届けられました。日本民族は誇り高き民族であります。負担すべきは負担し、恩恵は胸を張って受け取ることこそ、国民の感情に沿うものと思うのであります。(拍手)今後の福祉政策をいかように再編整理するか、どのような方針をもって進められるのか、総理及び厚生大臣のお答えが願いたいのであります。
 この際、提言があります。社会保障の主柱とも言うべき医療保障は、政府管掌健康保険から国民健康保険に至るまで九種類もあるのであります。これらの各種制度はそれぞれ制定の沿革があって、内容も不統一、不均衡のまま今日に至っておりますが、これが改善合理化は低成長時代の真の福祉国家建設の前提と信ずるのであります。
 特に、医療保険制度は、財政的にも幾たびか危機に直面し、中でも一般国民四千五百万人を対象とする国民健康保険財政の悪化は著しく、これが国の財政硬直化の大きな要因の一つになっているのであります。
 五十年度予算案におきましても、国民健康保険助成費は一兆六百二十億円の巨額に達しているのであります。これをこのまま放置することは、とうていできないと思うのであります。
 国民健康保険財政がなぜこのように悪化したか。その原因は、最も病気にかかる率の高い老人や体質の弱い階層がこれに集中する仕組みになっていること、具体的に言えば、定年退職で職域健康保険から追い出された老人、幼児あるいは身体検査で採用を断られた不健康な青年がすべて国民健康保険に組み入れられたことが第一であります。
 かくして、一方において、赤字に悩み十分な診療の期待できない国民健康保険があり、他方、潤沢な財政と施設に恵まれ、家族にも実質的十割給付のできるような大企業の組合健保が存在することは、公正であるべき社会保障とはいかにしても承知できないのであります。
 田中厚生大臣は厚生行政については専門家であると思うが、私の質問が余りにも幼稚であり、かつ、野党の諸君及び財界まで反対であるからこれが一本化は困難だ、と言われるかもしれませんが、しかし、健康保険の一本化こそは国民大多数の切実な要望であり、国保の財政改善にもつながる問題であると考えるし、勇気を持ってこれに当たれば不可能ではないと思うのであります。総理及び厚生大臣の答弁を求めるものであります。
 質問の第四点は、文教政策であります。
 徳性・知性・情操・健康のバランスのとれた人間性豊かなたくましい国民を育成することが国家民族永遠の発展を保障する基本であることは言うまでもありません。戦後のわが国教育の歩みを反省いたしますと、多くの弊害や欠陥の存在する事実は何人といえども否定できないと思うのであります。私は、特に重要と思われる二、三の点について政府の見解をただすものであります。
 その第一は、日教組のあり方についてであります。日教組指導部は、教師は労働者なりと主張し、崇高なる人間育成の使命を自覚せず、違法にも教壇放棄の争議行為を指導し、中立性が要求されるにかかわらず、どう見ても偏向的な教育態度を持ち、子女を人質に取られるがごとき恐怖の思いを父兄に味わしめ、破壊的闘争本位の態度を今日まで持ち続けることは、私の最も遺憾に思うものであります。しかしながら、日教組にはそれなりの理由と主張があるのでありましょう。このたび学界から選ばれた永井文部大臣は、その経歴、識見からして、日教組との対話による教育正常化には最適任者であり、期待も大きいのであります。そこで、私が特に要望したいことは、日教組の主張でとるべきものは最大限にこれを受け入れることにやぶさかであってはならない。と同時に、改めさせるべき点はいささかも妥協することなく、明らかな偏向教育と違法のストライキは厳にこれを慎むよう求むべきであると思うのであります。日教組もまた、国民総耐乏のとき、教師の待遇を特別に改善したことでもあり、原始的賃上げ闘争は自発的にやめるべきだと存じます。わが自由民主党は、教養高き教育者に対して、日教組であっても、いたずらに対立し、教育を党略の具に供し、その中立性を侵さんとするものでは決してありません。この機会に日教組との徹底的話し合いを行うべきであると考えるものであります。
 第二点は、私学の振興についてでありますが、わが国の教育、特に高等教育と幼稚園教育においては、私立学校が圧倒的な比重と役割りを占めているのであります。すなわち、大学は短大を含めて学生総数が百九十万人のうち、私立大学は百五十万人と約八割の学生を教育しているのであります。しかるにかかわらず、国のこれに対する助成は、五十年度予算案においてようやく千億円を超えた程度にすぎません。国立学校会計への繰り入れが五千六百十二億円であるのに比ぶれば、私立大学に対する国の補助が、いかに均衡を失した少額のものであるかがはっきりとわかるのであります。五十年度は、高等学校以下に対しても、私立学校に対して国が地方の助成をかさ上げする予算が八十億円計上されましたことは画期的とも言うべきことで高く評価いたしますが、なお不十分であり、私学振興になお格段の配意をなすべきではないかと思うのであります。所見を文部大臣から承ります。
 今日の教育は、幼稚園から大学に至るまで試験地獄につきまとわれ、そのため、自然に伸びるべき少年が心身ともにさいなまれ、人間として国民としての素直さやたくましさを失ってしまうのであります。その根本の禍根は学歴偏重の社会にあります。試験地獄の解消と学歴偏重の是正についての文相の具体的施策についてお伺いいたしたいと存じます。
 質問の第五点は、食糧問題についてであります。
 食糧は、その供給が不足し、あるいは不安定になりますと、たちまち民生の混乱を来たし、その国の存立が動揺することは歴史と現実が示すとおりであります。われわれが戦中、戦後において経験したところであります。
 現下、内外の食糧事情は、昨年十一月のローマでの世界食糧会議が象徴するように、いまや世界的不足が大きな関心を集めるに至り、現に飢餓線上をさまよう多数の人類があるのであります。
 わが国は現在食糧に不安はないように見えるのでありますが、外国の食糧に依存し、自給率四〇%程度であるので、国際食糧事情の変化によっていつ食糧難に見舞われるかわからないというきわめて不安定な環境にあると思うのであります。
 現に、一九七二年のソ連の大凶作によるアメリカ、カナダからの二千七百万トンと推定される難物の買い付けが行われるや、たちまちそれらの国際価格は数倍に急騰し、アメリカはついに輸出割り当ての挙に出たのであります。かくて、穀物全体の自給率わずかに四一%というわが国は、大百八〇%、小麦九三%をアメリカに依存していたがために、不安のどん底に陥ったことは記憶に新たなところであります。
 アメリカといかに友好関係があるといっても、自国民を犠牲にして他国に食糧を供給する国はないのであります。また、もし買い付けたとしても、船舶がなければ運搬が不可能なのであります。このように天候に支配される農産物を外国に依存することは、わが国食糧の恒久的保障とはならないと思うのであります。
 今日、第五次中東戦争は、発生するか否かが問題ではなく、いつ発生するかが問題であるという説もあります。あれとれ思いをめぐらすとき、わが国はいまや飢餓の断崖の上に安眠をむさぼっていると言っても過言ではありません。
 わが国の食糧自給率は、一九六五年総合食糧で八一%であったのでありますが、その後大幅に低下し、穀類全体実に四〇%を割る状態であると推定されます。もはや瑞穂の国の影すらないのであります。わずかに米が余るといっても、それは大量の麦を輸入している結果であることは言うまでもありません。
 何がここに至らしめたのでありましょうか。その原因は、重化学工業を中心とした高度経済成長政策が成長速度の遅い農業の衰退を必然としたこと、また、国際分業主義、国際自由競争主義がわが国の農業政策の展開を拒んだことにあると思うのであります。
 土に基盤を置き、自然を相手とする農業は、工業とは本質的に異なり、設備を増せば直ちに増産できるものではありません。農業者は今日では熟練工であり、しかも、少年期から土にまみれなければこれに向く体力はできないのであります。耕地も、宅地のように一朝一夕にできるものではありません。熟成した耕地は十年の歳月を要するのであります。
 国際分業主義は言うに及ばず、アジア地域などに農業の開発を行っても、最も飢えているのはこれらの地域であり、開発農産物を食うものは爆発的人口増加を伴う現地人であります。農業政策は、確固たる目標を立て、じみちな政策をたゆまずうまず、着実に積み上げていくことによって初めて効果を発揮するものであります。歴代の政府は、農業を十分に理解することなく、腰の弱い政策をとってきたと言ったら言い過ぎになるでありましようか。
 最近の例を挙げれば、政府は昭和四十八年五月、土地改良長期計画を閣議決定し、十カ年間に総事業量十三兆円の基盤整備事業を計画、実施し、前期五カ年の事業量を五兆二千億円と予定したのであります。さらに自由民主党は、昨年の参議院選挙に際し、物価上昇等の事情を考慮して、十五兆円の計画に改めることを公約したのであります。五十年度はこの長期計画の第三年度に当たり、閣議決定の計画の事業量を実行するならば、約六千億円を必要とするのであります。ところが、五十年度予算案に計上された農業生産基盤整備の予算額は、四十九年度予算のほぼ横ばい程度の約三千六百億円にすぎず、物価、賃金の上昇を考慮すると、事業量では二十数%の縮小となるのであります。
 農業基盤整備は、生産性向上の基礎条件であります。昔、大化の改新においては、くわという新農機具を発明しこれに適合する耕地の整備をした、と言われております。今日、大多数の農地は、いまだ大化の改新より一歩も改良されていないのであります。農道・環境を含む広義の基盤整備が農業の死命を制することが理解されなければなりません。これなくして農民に生産性の向上を押しつけても豊富、低廉なる農産物を得ることは夢のまた夢と言わざるを得ません。歴代の政府首脳は農業に対する理解が十分でなく、このことがわが国農業の衰退の原因であると思うのであります。
 農民は国民の苗代なりと池田元首相は言われました。また、だれよりも農民を愛する福田副総理がおられます。しかし私は、農業政策は農民を対象として考えることも大事でありますが、それよりも農業そのものに焦点を合わせなければならないと思うのであります。本年度予算編成の末期、三木総理の意向ということで三十億円の構造改善への追加があったことは、いささかなりとも心の支えになったと思うのであります。三木総理の農業問題に対する御精進を心からお願い申し上げます。
 農業には、なお一日もゆるがせにできない問題がたくさんあるのであります。このたびの予算においても、農道及び環境の整備、緊急粗飼料増産対策、牛肉等農産物価格支持、裏作奨励、えさの対策、果樹対策、近代化資金等、金融対策等に適切な予算計上を見たことは、従来の政策の補強をなすものとして評価するのでありますが、しかし、わが国政治の中に農業の地位を最重点に置き、勇敢なる施策を実行し、豊富、低廉なる農産物の造成と、一部の品目でも海外への輸出を可能ならしむる程度の振興こそ私は現内閣の使命と存ずるのであります。総理及び農林大臣の答弁を求むるものであります。
 なお、農業に関し、二つの問題につき所信を伺うものであります。
 その第一は農業基本法であります。昭和三十六年制定された基本法は、当時としては重大な意義を有し、その効果はよく目的を達成したと思うが、今日においては、農民の所得を目標とし、選択的拡大を柱とした基本法は、今日ミカン生産の伸び過ぎ、畜産の経営不安、国民食生活洋風化のための食糧輸入の増大等の副作用を発生せしめているのであります。今日は食糧自給、進んでは一部の輸出さえ目標とし、農業の発展と合理性の追求を理念とすべき時代であります。すなわち、新農業基本法を制定すべきであると思うのであります。
 その第二は食管制度についてであります。すなわち、食糧管理制度の赤字であります。八千四百億円を超す赤字は、大約四千億余が米、二千億余が麦の逆ざやであり、事務経費が約二千億余であります。世界の穀物相場は数倍に上昇し、わが国の生産費も、物価上昇とともに上がらざるを得ません。漫然とこのまま続けることは許されないと思うのであります。そもそもこの赤字は、本質的には消費者救済の赤字と思うのでありますが、その影響は、長谷川万治氏、藤井堯四郎氏等富裕階級にも恩恵を与えますが、一方、飯米農家という貧乏人には与えられないのであります。現状は物価対策としてやむを得ないことはわかりますが、このような消費者対策は社会保障として考慮するのでなければ社会的公正は期せられないと思うのであります。
 今日、消費者米価十キロ約二千二百五十円は、物価総合指数、食料総合指数から見ても高くはなく、エンゲル係数から見ても警戒する数字ではないと存じます。私は物最優先の現今、いますぐ是正できるとは思いませんが、適当な時期において事務経費を除く逆ざやの赤字だけはこれを漸次縮小し、その余裕を社会福祉による消費者の救済と、豊富、低廉なる農産物の生産を目ざす政策に振り向けるべきであると思うのであります。大臣の御見解を承りたいと存じます。
 質問の第六点は、漁業と林業の振興であります。
 日本は海洋国であり、食糧たん白資源の三二%は魚介類より摂取している世界唯一の国であります。しかるに、近時国際環境の悪化、沿岸及び内水面の汚染等によって、わが国の漁業はきわめて悲観すべき環境に置かれているのであります。関係国に対し強力なる漁業保護の外交を展開すべきはもちろんでありますが、わが国でできることは一日も早くこれを行うべきであります。
 すなわち、漁港の整備は最も緊要であります。窮屈なる本年度の予算につき若干の配慮を見たことはこれを認めますが、なお満足する状態にはほど遠いのであります。政府は、重要なる食糧生産が漁業にもかかっていることに思いをいたし、その基盤たる漁港に対し整備を促進することは一日もゆるがせにすべきではないと存ずるのであります。
 次に、国際環境の悪化に対抗し、養殖漁業の育成に果敢なる投資を行い、また、公害対策のほかに、漁業の振興の立場からも、海洋及び内水面の汚染に対し十分なる対策を講ずべきであると思うのであります。農漁業によって食糧の需給を達成するために十分なる国費の投入を惜しむならば、後年の国民に対し、亡国の嘆きを見せしむるものと断ぜざるを得ないのであります。(拍手)
 林業もまた百年の大計を要する国民生活関連産業であります。今日需給安定の様相を示しておりますが、林業こそ、百年たゆまざる振興によってのみ発展する産業でありまして、我が国の経済にとってもきわめて重要なるものであることは何人も異論なきところでありましょう。したがって、林業構造改善事業、林道の整備拡充等の林業基本政策は、時代の影響を受けることなく、静々として進めなければならない施策であると思うのであります。今次予算において、公共事業抑制の若干の犠牲となったことはやむを得ないと存じすすが、しかし、遺憾の意を表せざるを得ないのであります。農林大臣の御答弁をお願いいたします。
 質問の第七は、産業構造とエネルギー問題についてであります。
 一昨年秋の石油危機以来、わが国の経済の様相は一変し、安価な原油の自由な輸入に依存した重化学工業中心の経済高度成長時代は終わり、一転してマイナス成長の時代へ突入したのであります。もはや省資源産業の開発なくしては経済の成長は望めないのであります。政府も、しばしば省資源、知識集約型産業重視の産業構造再編成を強調しておるのであります。しかし、一般国民は、具体的にはどのような目標のもとに、どのような段取りで、どのような産業を育成しようというのか。また、そのような産業構造の根本的転換が実現できるものかどうかなどについて疑問と不安を抱いていると思われるのであります。
 私がここで承りたいのは、知識集約型産業とは、具体的にどのような産業を、どのように位置づけて考えておられるのか。具体的青写真はいつごろまでに策定され国民に公表できるのかということであります。
 次に伺いたいことはエネルギー対策であります。
 当面、石油に代替する最も実際的な新エネルギーは、言うまでもなく、現に建設が進みつつある原子力発電であります。今後、原子力発電の飛躍的促進を図るためには、この安全性確保につき国民の完全な信頼を得るととが前提条件であります。
 政府は五十年度予算において、原子力安全局の設置を初め、原子力安全関係予算の飛躍的な拡充を行いましたが、この機会にその具体的な施策の内容を明らかにされたいのであります。
 エネルギーの恒久的安定供給確保のためには、核融合とともに、太陽エネルギーその他の無公害、無限の新エネルギー開発技術の研究開発の必要なことは言うまでもなく、私は、五十年度予算に大幅の増額を見たサンシャイン計画についても多大の期待を寄せるものでありますが、計画の具体的内容を承りたいのであります。
 以上、国政の一部につき質問いたしましたが、知識集約型産業と食料産業が国家発展のため最重要二大産業であることは、アメリカ、フランスの例に見るがごとく、古今東西の歴史が示すとおりであります。内閣は決意を新たにしてこの二大産業の世界最強を目指し、最大の努力をなすべきであります。総理の御決意を伺うものであります。
 以上をもって私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣三木武夫君登壇、拍手〕
#13
○国務大臣(三木武夫君) 温水さんの御質問にお答えをいたします。
 第一問は、対話と協調の政治をあくまでも徹底していくべきだというお話でございます。私も、力による政治というものが成功した歴史は知らぬ。一時は成功したように見えても、結局挫折をするわけでありますから、やはりお互いに話し合って理解を求めて、そして納得ずくで政治は進めていくべきものである。ことに今日の時代においては、一層その必要というものは強くなっている。野党の諸君とも、これはいろいろ方法論は違っても、国のことを考えておられることに間違いはないのですから、今後とも対話と協調の態度をもって野党にも臨みたいと思うのでございます。
 また、物価の上昇率を三月末までに一五%程度に、また来年の三月末には一けた台の目標は達成できるかというお話でございます。これは、たとえば三月末の一五%程度というのは、端境期などもございまして、野菜、生鮮食料というものに対しては、なかなか心配な点もございますけれども、あらゆるこれに対する対策を講じて、政府が国民に目標として申し述べたこの目標は、万難を排して達成をしたいという覚悟であることを申し上げておきます。
 第三点は、第二問の二番目になっておりますが、
   〔副議長退席、議長着席〕
安定経済成長というものは、長期計画をこの際策定したらどうかというお話でございます。きのうも経済審議会を開かれまして、従来あったのでございますが、新しく発足するという意味で、委員なども多少変更がありまして、私も出席をしたわけであります。そして新しい安定、いま安定成長期における日本の社会経済計画というものを五十一年度から計画を策定することになりまして、そうして、これはその作業というものにわれわれは期待を寄せておるものでございます。
 さらにまた物価抑制政策のもとで打撃を受ける中小企業、失業などに対していろいろ御心配の点を披瀝されましたが、われわれとしても、どうしてもいまここで政策転換をして、景気政策を、景気を刺激するような政策をとることは適当でないと考えますので当分この抑制政策は続けますが、その間に不当な打撃を受けるような人のないように、これは非常に機動的に、弾力的に細かい手を打ってまいって、その間の犠牲をできるだけ少なくしたいと考えておる次第でございます。
 また、社会保障についても長期的にこれは検討する必要があるというお話でございましたが、われわれもさように考えておるので、そのときそのときに社会福祉政策というものをやるということは、全体としての日本の社会保障制度の骨組みというものが、非常に一つの骨組みとしてまとまったものにはなりませんから、やはり、経済の長期計画と同時に、社会保障に対しても長期計画を一緒につくろうということで、来年度からスタートする目標のもとに、社会保障についても長期計画を策定することにいたしております。
 医療保障その他いろいろそういう点には厚生大臣に対して出席の要求がございますし、厚生大臣からお答えをし、日教組の問題については文部大臣からお答えをいたすことにいたします。
 食糧の問題については、温水さん、わが党、自民党における農業関係の第一人者でありますから、大変にいろいろの見識に富んだ御質問がございました。私もやはり、この詳細な点は農林大臣に譲りますけれども、農業というものは大事にせなければ、食糧というものがこういう状態になってきて農業というものの地位が見直されてきましたけれども、しかし、農業というものは、やはりこれを粗末にしてはその国は私は成り立っていかないわけでありますから、今後自民党は農業政策に相当力を入れてまいりたいと。農村は食糧の供給地域ばかりでなしに、一つの健全な精神を持っておるわけでありますから、日本の安定勢力であります。日本の安定勢力は農村である。(拍手)農村を粗末にして健全な国家の形成はできない。こういうことで、農業というものには力を入れてまいります。また同時に、水産業、食糧の面からいっても水産業の果たす役割りは多いわけでありますから、農業とか水産、これには一段と力を入れてまいりたいと思っておりますが、この具体的なことについては農林大臣からお答えをいたします。
 通産大臣の御要求がございませんから、これにお答えを私からいたしておきますが、知識集約型の産業とは一体どういうことだと。これは大変にこれから時間をかけて、一遍にこれは転換はで勇ませんが、計画的に、日本の産業ができるだけエネルギーを消費しないような産業に転換をする必要があることは申すまでもないことであります。それは結局は、この頭脳や技術を使って付加価値の高いものをつくる、機械にしても高級なやっぱり機械工業になっていくし、そういうことで、これは産業構造審議会、いろいろ意見を聞いて、できるだけ計画的に、日本の産業構造の転換というものを検討を加えて、それがまた民間に対しても一つの大きな参考になるようなものにいたしたいと考えておるわけでございます。
 原子力については、温水さんの御指摘のように、もうどうしたって日本は油、また、新しい新規のエネルギーの開発といっても時間がかかるわけでありますから、原子力発電というものに相当依存していかなければならぬ。ところが、原子力の安全性というものに国民が疑いを持ってくるんでは開発はできないわけですから、私は、まあ新しい部局――局は新設をしないということになっておるんですが、その原則を破って、科学技術庁に安全局だけは置いたんです。それで、原子力の安全、国民に安心感を持ってもらうためには、安全の研究というものに対してももっと強化せなけりゃいかぬ。そういうことで、安全局を中心にして――国民の不安、そのことが原子力発電の事業を停滞を来しておる。事業の推進を停滞を来しておる問題について、これは徹底的に安全局というものが中心になって、国民の不安にこたえてもらうようにしてもらいたいと思っておるわけでございます。
 サンシャイン計画についていろいろ申し述べよということでございますが、これは予算の点においても四十七億円、七五%増したわけで、まだこれは金額としては多くはないんですけれども、まあいろいろな、地熱であるとか、太陽熱、水素、核融合の研究であるとか、その中で太陽熱とか核融合という問題については、日本も相当いままで研究をしておるわけでありますから、もしそういうものが開発できれば人類に対して大きな貢献をするわけでございますので、今後一つのきれいなエネルギーと申しますか、そういうふうな核融合、太陽熱、こういうふうな一つの新しいエネルギーの開発には今後思い切って力を入れてまいりたいと考えております。(拍手)
   〔国務大臣田中正巳君登壇、拍手〕
#14
○国務大臣(田中正巳君) お答えいたします。
 低成長時代における社会保障のあり方についての御質問がありましたが、低成長時代には一面には社会保障のニードが増大することが考えられますが、反面、その財源に不足をするといういわば二律背反的な傾向が出てくるものと思われるわけであります。しかしながら、経済の動向には関係なくわが国においては国民の老齢化が進みますので、年金制度等の充実が要請されてくるわけであります。こうした状態を踏まえまして、政府といたしましては負担の公平の趣旨を十分に取り入れながら、社会保障の長期計画の策定等を含めて、長期的な視野に立って制度の基本的なあり方を再検討してまいらなければならないと思います。特にまた、不公正な既得権の主張についてはこれをお互いに慎むようにしなければやっていけないことだろうというふうに思います。なお、一般的に社会保障の充実のためにはヨーロッパ等の先進社会保障国と比較をしてみますると、わが国においては租税負担率においても、社会保険料においても、なお相当これらの国から見ると低いということを考えて、国民の間から社会保障の要請に対し何分のやはり財源拠出をしていただかなければならないときが来るというふうに考えられるわけであります。
 次に、医療保険の一本化の問題でございますが、国民が同じ負担をして同じような給付を受けるというのは理想的に望ましいことであることは申すまでもございません。しかし、従来の経緯を振り返ってみますると、なかなかこのことは容易ではございません。厚生省において過去に医療の抜本策の一環として財政再調整策というものを立てたことがございました。すなわち、比較的財源に余裕のあるところから不足する方面に対して若干の、いわゆる応分の喜捨をしていただきたい、助力をしていただきたいというのがその制度の骨子でございましたが、これはついに実現をすることができなかったという経緯を踏まえてみるときに、理想は理想でございますが、そう簡単なものではないと思います。しかし、今後とも関係者の御理解と御協力を執拗に要請をいたして、何とかその方向に進んでいきたいということを強く考えております。とりあえず、国保におきましては老人の占める比率が多いのでございまするから、この老人に対する社会保険医療の給付のあり方について相当根本的な再検討をしなければならないと思って、これについては今日、制度の改正について急遽急いでおる次第でございます。
 以上でございます。(拍手)
   〔国務大臣永井道雄君登壇、拍手〕
#15
○国務大臣(永井道雄君) 温水議員の御指摘になりました御質問の点は三点にわたっておりますので、それについて御答弁申し上げます。
 まず第一に、わが国において学歴偏重というものがあり、そうして受験態勢というものが激化しているが、これについてどのように考えているかということでございます。これは人々がひとしく認める重要な問題でございまして、しかも、長い年月にでき上がった問題でございますから、きわめて総合的に全体を考えなければならないと思っております。目下、この問題の解決に当たりまして考慮しておりますことは、一つは、教育課程というものを小・中・高を通して一貫して精選する、さらに国・公・私学というものの格差是正に努める、それから大学の入学試験制度というものの改善に努めるということでございますが、このほかに、社会各界におきまして学歴偏重というものをなくしていくように御協力を願わなければならないと考えております。
 次に、日教組と徹底的に話し合いをすべきではないか。しかしながら、そこに偏向教育あるいはストライキなどの問題があるから、それについては十分に意見を述べるべきではないかという御質問にお答え申し上げます。
 私は、就任いたしまして以来、特に教育におきましては、本内閣が掲げておりますところの対話と協調というものが重要であるということを繰り返し申し述べてきております。そこで、日教組と話し合っていくことはきわめて重要でありますが、話し合うということは、日教組の方々が考えられておられる意見も十分に聞く、他方において、私どもが考えておることも十分に申し上げるということであるかと考えます。
 それではどういうことを申し上げるのかというと、まず教育というものを政争の外に置きましょうということが第一でございましょう。あるいは、教育の中立性を重んじましょう。さらにまた、先生方がストライキをなさるのは望ましくございません、あるいは違法ですということを申し上げたいのでございます。
 しかしながら、それでは共通の話し合いというものがないのかというと、そうではございません。共通に話す問題ということは、国民のすべての子供たち、そういう人たちを尊重して、ともに考えなければならない重要な問題がありますときには、共通に考え、共通に理解し、共通に努力するということがきわめて必要であるかと考えますが、しからば、どのようなことがあるか。それは、温水議員も御指摘になりましたように、この受験態勢の激化をいかにするか、あるいはまた学歴偏重をいかにするかというようなことにつきましては、ともに努力するということが必要でございましょう。
 さらにまた、私学の振興というものをどうするかということが御質問の第三点であったように理解いたしております。私学の振興というものはきわめて重要でございます。なぜかなれば、幼稚園から大学に至るまで、わが国の教育が私学に依存するところきわめて大であるからであります。しからば、それについてどうするか。これもまた、長く私学の振興というものを重要視しなければならなかったにもかかわらず、十分にこれについての努力というものが必ずしも国民が望む方向には進んでこなかったために、全力を挙げて総合的に考えなければならないと考えております。
 そこで、まず一つは、私立大学に対する助成しいうものの拡大でございまして、本年度は五七%強増でございます一千七億円を五十年度予算案に計上することにいたしました。しかしながら、高校以下幼稚園に及びます問題がございますから、これにつきましても八十億円の予算を計上したわけでございます。
 さらに、多角的に考えるという意味合いにおきましては育英資金というものの増額を図りましたし、特に、この場合、私学というものを重要視いたしました。
 しかしながら、私学の振興というものは、単に財政的な裏づけを考えればよろしいというものではないと思います。もちろん、政府が行いますことは、公共的な資金が私学において行われる場合、これが正しく使われる使い方について監督するということでございますが、しかし、教育、研究につきましては、サポート・バット・ノー・コントロール――支持はいたしますが支配はいたしません。私学は大いに元気を持って、自主的に教育並びに研究の精神を持って学校の発展を図っていただくように、したがって、財政の裏づけをいたしますのも、究極的な目的は私学の精神が起こることを願っているということを申し上げて、私の答弁を終わりたいと思います。(拍手)
   〔国務大臣安倍晋太郎君登壇、拍手〕
#16
○国務大臣(安倍晋太郎君) 温水さんからきわめて示唆に富んだ農林水産業全般に対する御質問がございましたのでお答えを申し上げますが、第一問は、世界的な食糧不足の中で国民食糧を確保するための農業政策は国政の最大の政策でなければならぬという御指摘でございますが、まさにそのとおりであろうと思うわけでございます。将来にわたって国民食糧の確保を図っていくためには、やはり第一には生産体制を整備をして、そして農業の自給力を高めていくということが第一の課題であろうと思うわけでございます。
 第二は、やはり国土資源の制約等からどうしても国内で自給が非常にむずかしい農産物については、外国から安定的な輸入を図っていくということが、これまたやはり農政の課題であろうと思うわけでございますが、そうした観点に立ちまして、昭和五十年度の予算を編成をいたし、自給力を高めるための幾多の施策を盛り込んだことは御案内のとおりでございます。
 さらに、今春をめどに、昭和六十年度を目標年次とする農産物の需要と生産の長期見通しの策定をいま進めておる段階でございまして、今後は長期的な視点に立って農政の転回を図っていきたいと思っているわけであります。
 第二の御質問は、農政の現状から、農業基本法の改めて新農業基本法を制定すべきであるというきわめて見識のある御発言でございます。確かに農業をめぐる内外の情勢は、基本法制定当時と比べますとずいぶん変わっておることは事実であるわけでございます。しかし、私は、農業基本法の基本的な理念あるいは根幹については、今日といえども間違ってはいないと考えておるわけでありまして、新農業基本法をつくれ、あるいは食糧基本法をつくれというふうな議論があることも承知いたしておるわけでございますが、現在の段階におきましては、新しい基本法等をつくる考えは持っていないわけでございます。
 第三は、食管の赤字の問題でございますが、現在の食管赤字は、御承知のとおり、米麦価の大幅な逆ざやがそのすべての原因、ほとんどすべてと言ってもいいほどの原因でございますので、この逆ざやをやはり早期に解消していくということに対して今後とも努力を続けていきたいと思っております。
 次は、漁業でございますが、水産業につきましては、海洋法の問題もありまして国際漁業も非常に厳しくなってまいりましたし、また、沿岸の海洋汚染といった問題等もありまして、沿岸漁業もまたさらに厳しい環境下にあるわけでございますが、そういう中にあって国民の求める動物性たん白資源を確保していくためには、温水さんも御指摘のように、漁場の環境の保全、あるいは漁港の整備、さらに関係国との協力のもとでのわが国の遠洋漁場の確保、新漁場の確保といったこともこれから大いに進めていかなければならないと思っております。
 最後に、林業対策でございますが、温水さんがおっしゃいましたような立場で、林業生産基盤、治山事業、あるいは構造改善対策、あるいは労働力対策等につきまして懸命な努力をいたしてまいりたいと思っております。(拍手)
#17
○議長(河野謙三君) 質疑はなおございますが、これを次会に譲りたいと存じます。御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#18
○議長(河野謙三君) 御異議ないと認めます。本日はこれにて散会いたします。
  午後零時四十一分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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