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#1
第075回国会 沖縄及び北方問題に関する特別委員会 第5号
昭和五十年七月二日(水曜日)
    午後二時五十分開議
 出席委員
   委員長 松本 忠助君
   理事 熊谷 義雄君 理事 床次 徳二君
   理事 西銘 順治君 理事 美濃 政市君
   理事 安井 吉典君 理事 正森 成二君
      佐藤 孝行君    竹中 修一君
      水野  清君    山田 久就君
      上原 康助君    渡部 一郎君
      安里積千代君
 出席国務大臣
        外 務 大 臣 宮澤 喜一君
 出席政府委員
        沖繩開発庁総務
        局長      山田  滋君
        外務省アジア局
        長       高島 益郎君
        外務省アメリカ
        局長      山崎 敏夫君
        外務省欧亜局長 橘  正忠君
        外務省条約局長 松永 信雄君
 委員外の出席者
        水産庁漁政部長 兵藤 節郎君
    ―――――――――――――
六月二十三日
 沖繩の米軍並びに米民政府による損害補償に関
 する請願(楢崎弥之助君紹介)(第三九三九
 号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
六月二十八日
 沖繩県伊江島における米兵の狙撃事件に関する
 陳情書外六件(沖繩県議会議長平良幸市外六
 名)(第四六三号)
 沖繩県における米兵の女子中学生暴行傷害事件
 に関する陳情書外七件(沖繩県議会議長平良幸
 市外七名)(第四六四号)
 沖繩県のパイン産業救済に関する陳情書(石垣
 市議会議長砂川恵福)(第四六五号)
は本委員会に参考送付された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 閉会中審査に関する件
 北方問題に関する件
     ――――◇―――――
#2
○松本委員長 これより会議を開きます。
 この際、申し上げます。
 本委員会に付託になりました請願は二件であります。両請願の取り扱いにつきましては、先日の理事会において協議いたしましたが、委員会の採否の決定は保留することになりましたので、さよう御了承願います。
 なお、本委員会に参考のため送付された陳情書は、お手元に配付のとおり、沖繩県における軍用地返還方法に関する陳情書外二十九件であります。念のため御報告申し上げます。
     ――――◇―――――
#3
○松本委員長 次に、閉会中審査に関する件についてお諮りいたします。
 安井吉典君外八名提出の沖繩の住民等が受けた損害の補償に関する特別措置法案及び沖繩及び北方問題に関する件、以上の各件について、議長に対し、閉会中審査の申し出をしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○松本委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
 次に、閉会中委員派遣に関する件についてお諮りいたします。
 閉会中審査案件が付託になり、その審査のため、委員派遣の必要が生じた際には、委員長において、議長に対し、委員派遣承認申請をいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#5
○松本委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
 なお、派遣委員の員数、派遣期間、派遣地、その他所要の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#6
○松本委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
 この際、暫時休憩いたします。
    午後二時五十二分休憩
     ――――◇―――――
    午後三時三十一分開議
#7
○松本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 沖繩及び北方問題に関する件について調査を進めます。
 質疑の申し出がありますので、これを許します。安井吉典君。
#8
○安井委員 この委員会は、沖繩問題と北方問題をともに取り上げる委員会ですけれども、北方問題に対する討議がわりあい少なくて会期末を迎えている段階で、したがって、ぜひ最終段階でも外務大臣の御出席をいただいて問題点を詰めていこう、こういうことで理事会の協議で、きょうの設定、こうなったわけであります。
 私は、いわゆる北方領土問題の対象地域はどこであるかとかそういう問題の方は以前にも、ずいぶん議論をした経過もございますので、きょうは一応とどめて、今後いわゆる北方領土交渉がどう進んでいくか、その障害になるのは何なのか、さらにそれを進める道はどうなのかということを探るような意味合いで、きょうは外務大臣とお話し合いをしてみたいと思うわけであります。
 去る一月に、宮澤外務大臣は訪ソされて、モスクワでグロムイコ外相との会談を行い、日ソ平和条約についても交渉されたわけでありますが、その後交渉の発展はあるのかないのか、それからひとつ伺います。
#9
○宮澤国務大臣 御指摘のように、一月にモスクワにおきまして、この問題につきまして交渉をいたしたわけでございますが、不幸にして具体的な成果を得られないままになっておりまして、グロムイコ外務大臣が今年内に訪日をされる際に、さらに続いて戦後の未解決の諸問題を討議しようということになっておるわけでございます。したがいまして、今日まで一月の段階以上に事態は進展をいたしておらないままになっております。
#10
○安井委員 七三年秋、田中前首相の交渉の際に、七四年中に東京で継続交渉が行われる、ブレジネフ書記長やコスイギン首相やポドゴルヌイ最高幹部会議長らの三首脳来日というふうな報告が行われておりました。それはとうとう少しも実現しなかった。それだけに、ことしのグロムイコ外務大臣の来日、交渉に深い関心が寄せられているわけであります。
 いつごろグロムイコ外務大臣は日本に来られる見通しなのか、それからまた、日ソ定期協議のためだけではなしに、領土交渉が継続されると見てよろしいですね。
#11
○宮澤国務大臣 グロムイコ外務大臣の訪日の時期につきましては、いまだに決定をいたしておらないのでありますが、訪日をされた場合に、領土問題についての交渉が行われるかということにつきましては、そのように考えております。
 と申しますのは、ソ連側として、かつて領土問題というものは、もう解決済みであるというふうに聞こえるがごとき立場をとったこともあったわけでございますけれども、今年一月の会談におきましては、現実の問題として、領土問題についてかなり長いことお互いに議論をいたしておるわけでございますから、この問題が解決済みであるとソ連側が考えておりませんことは明らかでありまして、しかもその討議を継続しようということを約束いたしておりますので、この問題が、グロムイコ外相来日のときに討議をされることは間違いがないところでございます。
#12
○安井委員 討議内容には、領土問題が入るということは、いまの御答弁で明らかですが、ことし来日されるといっても、もう半年過ぎてしまったわけですね。七月を迎えました。それだけに、その段階でもまだ明確でないということは、いささか心配もあるわけでございますが、ぎりぎり年末に見えるということもないでしょうから、やはり秋ごろというふうな見通しがあってよろしいと思うのですが、どうでしょう。
#13
○宮澤国務大臣 私がソ連を訪問いたしました際に出されました発表の中でも、グロムイコ外相が一九七五年に訪問を実現することについて、両者の合意が達成されたということになっておりまして、この約束そのものははっきりいたしております。向こうにもいろいろ国際的な日程がおありのことと思いますし、当方にも幾つかあるわけでございますけれども、そういうことを踏まえました上で、具体的にいつにするかということを、ある時期には両方で打ち合わせをしなければならないと考えておりますが、まだそこまで実は参っておりません。
#14
○安井委員 やはり先方にも、それからこちらの外務大臣にも、外交上のいろいろのお仕事がたくさんあるわけですから、相当早目にお打ち合わせがなされなければ、なかなかこれからの六ヵ月の間に予定をはめ込むということは、大変だろうと思いますから、やはり取り急いで日程を詰める作業にお入りになる必要があると思いますが、どうですか。
#15
○宮澤国務大臣 これは推察でございますけれども、たとえば欧州の例の安全保障会議がいつ行われるか、あるいはSALTの交渉がどうなるか、また、それらとの関連でブレジネフ書記長の訪米がいつになるかといったような、先方としましても、かなり大きな問題の解決あるいは実現の時期が不確定であるという事情は、こちらからも察せられますので、その辺のところが少し決まってまいりますと、こちらの日程も、いつがお互いに可能であるかということがわかってくるのではないかと思っておりまして、いまのところ、そういう様子を見ておるところでございます。
#16
○安井委員 いま私、申し上げましたように、やはり急いで段取りをおつけになることを希望しておきます。
 それから、北方領土問題を日ソ両国が交渉の中でどう位置づけているかという点でありますが、戦後三十年のうち、この交渉は実に二十年に及んでいると思います。その間、ソ連側の認識もいろいろ変わってきてはいますが、田中前首相訪ソにおける共同声明の際には、領土問題は第二次大戦後の未解決の諸問題の中に含まれるということについて双方が口頭了解した、つまり、ソ連側がかつて解決済みだと言っていたものが、未解決事項の一つであるということを確認したということになったわけでありますが、先ほども、宮澤外務大臣のことしの訪ソの際にも、そういうことでお話し合いをしたというお話しがございましたが、未解決事項の一つであるということの確認そのものについては間違いないわけですね。
#17
○宮澤国務大臣 その点は、現実にことしの一月に、かなり長い時間を使いまして、お互いにこの問題を議論いたしておりまして、その間に、先方からこの問題はもう解決がついておるというような説明は一遍もなく、むしろこの問題そのものが、かなり長いことお互いに議論されておるわけでございますから、これは問題が解決されていないということを了解の上で、お互いが議論をしたものというふうにお考えくださって間違いないと思います。
#18
○安井委員 日程の問題について、いま大臣は、全欧州集団安全保障会議にグロムイコ外務大臣がぜひ必要な人物であるということでお話しがあったわけでありますが、このヨーロッパにおける会議の成功が日本の北方領土交渉にも微妙な影響があるのではないかとも思うのですが、その点はどうでしょうか。
 つまり、ソ連はドイツ、ポーランド、フィンランドその他多くの国々と国境問題を持っており、第二次大戦後のいかなる国境変更にも応じないという原則をかたく持しているわけでありますが、それが今度の新しい全欧州集団安全保障という枠組みの中で、現状が承認されるのかどうかわかりませんが、されるというふうな方向にいけば、北方領土問題の処理について、ソ連は、他国との国境問題の先例になるのではないかというおそれを持っているという情報もあるわけで、したがって、交渉がわりあいにスムーズにいくかどうか、これはそういう言葉がいいかどうかわかりませんけれども、若干ニュアンスがいままでと違ってきはしないかというふうな気がするわけですが、どういうお見通しを持っておられますか。
#19
○宮澤国務大臣 わが国のいわゆる北方領土の問題は、ヨーロッパにおける領土問題とは基本的に性格を異にしているというふうに私は考えておるわけでございますが、ただいまのお尋ねは、あるいはソ連側としては、おっしゃいますように北方領土問題について解決に達した場合に、それが、ソ連がその他の国と持っております不安定な国境問題に影響を及ぼすかもしれない、東ヨーロッパもその一つでございます。あるいは中国との間にもそういう問題があるかもしれないと存じますが、ということは、恐らくはソ連で御指摘のように考えておる一つの点であろうと存じます。
 そこで、北方領土問題というのは、なかなか楽観を許さない問題ではありますけれども、ヨーロッパにおいて、とにかくああいう形で事態が固まったということになりましたら、そこから全く別の方向が二つ考えられるわけでございます。であるから北方領土についても、ソ連は同じ態度をとるというふうな考え方と、もう事実ヨーロッパの方は固まってしまったのであるから、北方領土問題についての処理が、そちらへ新しく影響を及ぼす心配がないというふうに考える考え方もあり得ると思うのであります。私は、楽観的にそれを申し上げるわけではございませんけれども、したがって、そこは両様に考えられるのではないかと思っております。
#20
○安井委員 これは一つの見通しですから、誤りない対応をひとつお願いをしておきたいと思うのですが、いま政府は、北方領土をソ連が領有していることは、国際法上合法なのか、あるいは不法なのか、端的に言ってどういうふうなお考えですか。
#21
○宮澤国務大臣 不当であり、不法であると考えております。と申しますのは、この北方領土は徳川幕府の時代に、あの地方における当時の帝政ロシアとわが国との間の国境を平和裏に確定をいたしました際に、得撫島と択捉島の間に平和裏に境界線を引きました事実がございます。しかも、これらの北方領土は、北方四島群は、かつてわが国以外の領土であったことはないわけでございますから、そういう歴史的な事実にかんがみますと、現在ソ連が、これらの島を占拠しておるということは不法でもあり、また不当でもあるというふうに考えております。
#22
○安井委員 そうだとすれば、国際的に、たとえば国際連合とか、そういうような場でもう少し主張を明らかにするという努力があってもいいと思うのですが、その点はどうですか。
#23
○宮澤国務大臣 そういうことも私は一つの考えであろうと思いますけれども、実は、この問題自身は、関係者は多数あるわけではなく、わが国とソ連でございますので、仮に国際の場へこの問題を出しましても、両国で解決をするということが、どうしてもその中心部分になってまいると考えております。
#24
○安井委員 二国間の話ですから、さらに友好的な話し合いを続ける中で解決するというお立場はもちろん当然だと思うし、私どももそうだと思います。しかし、二十年にわたって解決しないで、これはもういつ解決するのかわからないということで、そのうち代がかわって、もう問題点がわからなくなってしまうという心配もあるわけですね。そういうふうなことがないように、対応をやはり考えておいていただく必要があるのではないか、そういう意味です。
 政府は、北方領土としていわゆる四島返還を主張しているわけで、各党で若干意見が違うわけでありますけれども、四島なら四島でいいのですが、その島の状況をどれぐらい把握をしているのかという点を、ひとつ伺っておきたいと思います。
 不当、不法という言葉をお使いになったわけですが、それは日本の固有の領土だということから出た表現だと思います。そうだとすれば、日本の国土の一部だとすれば、もう少し現在の島々がどんな状況にあるかということを把握しておく必要があるのではないか。たとえば、ソ連は軍事基地としてどの程度使っているのか、あるいは漁業基地や観光地としての役割りも果たしているように伝えられておりますけれども、これらの土地に対して、どの程度の情報を政府はお持ちなんですか。特に軍事基地等について聞きたいのですが、どうでしょう。
#25
○橘政府委員 北方の四島につきましては、私ども実は余り詳しい情報は持ち合わせておりません。国境警備隊が配備されているようでございますが、飛行場も若干施設がある、このようなことは聞いておりますが、詳細については情報を持ち合わせておりません。
#26
○安井委員 最近爺爺岳の噴火もありました。あの火山の噴火で灰が北海道にも流れてきて降ったわけです。もともと北海道の一部である鳥ですかち、当然かもしれません。そういった気象学的な立場からも、昔そこに所属をしていた北海道に影響がないとも言えないと思う。だから、そういうことからの情報交換だとか、そういうものも必要ではないかと思うわけでありますが、いままで経験があるのか、あるいは今後どうするのか。
#27
○橘政府委員 ただいまままでのところ、先生御指摘になりましたような気象あるいは火山の噴火等につきましての情報を、わが方が提供を受けた、あるいはそれに関する情報を交換したというようなことはございません実情でございます。
#28
○安井委員 それぞれの島にソ連の人も住んでいて、気象情報がやはり必要だと思うのです。漁業に従事している人が多いのでしょうからね。そうだとすれば、日本の気象観測の情報等も、とにかく目の前に見える島なんですから、だから北海道のお天気というのを向こうはすぐに知りたいということもあるのじゃないかと思うのですね。私は何かそんなような交流もあってもいいのではないかと思うのですが、いままで全然やったこともないし、これからも余りやる気はないというすげない御返事でありますけれども、もう少しこれらの点について検討をしておいていただきたいと思います。
 それから、千島引き揚げ者の切なる要望である墓参が、どうしても実現できない。かつてこの委員会で、委員長がわざわざソ連大使館まで出かけていって、委員会の代表として交渉したこともありました。しかし、そのときもだめでした。政府は、どのような努力をしているのか。たとえば、ことしならことしはだめなのか。どうですか。
#29
○橘政府委員 本年の墓参につきましては、すでに二ヵ月余り前にソ連側に、わが方の希望を提示して、極力わが方の希望に沿って許可をしてくれるように申し入れをいたしております。ただいままでのところ、まだ回答は参っておりません。
#30
○安井委員 これは渡る時期に限界があるわけですね。気象のいろいろな条件の中で、いつでも行けるというわけじゃないわけです。ですから、二ヵ月前に連絡をとったままで、まだ返事を受けていませんという涼しい顔をしての御返事じゃ私は困ると思うのです。大臣、どうです。もう少し積極的に話し合いを進めていただけませんか。
#31
○宮澤国務大臣 この点は、一月に私がグロムイコ外務大臣に申しましたところ、先方の答えは、基本的にはそれに反対する理由はない。けれども、いろいろ軍事的等々の特定の地点については、それなりの事情がソ連側にあるので、したがって日本側の希望を申し出をしてほしいということでございました。それに従いまして、二ヵ月ほど前に、こちら側の申し入れをいたしたわけでございます。仰せのように、これには時期の問題がございますから、もうかなり時期がたっておりますので、ソ連側に再度回答を催促をいたさなければならない時期になっておると存じます。
#32
○安井委員 じゃ、それをひとつぜひ急いで結論を出していただくようにお願いしておきます。
 次に、日米安保条約との絡みの問題について若干伺っておきたいと思います。
 一九六〇年、日米安保改定の際だったと思いますが、ソ連側は、グロムイコ外務大臣が、日本領土からの外国軍隊の撤退がない限り、歯舞、色丹を引き渡すわけにはいかないというふうな強い発言をし、新安保条約をソ連敵視のものだというふうな受けとめ方で、激しく抗議をした経過があります。最近は、いわゆる米ソ間の緊張緩和も反映があるのか、余り強い発言は耳にしないようでありますけれども、しかし、日米安保条約がある以上、千島列島をソ連が日本に返還をすると、もう日本の領土になるわけですから、その上に日米安保条約がかぶさって、そこへ基地を置きたいから貸してくれと言う権限を、アメリカは条約によって持っているわけです。法律的には、そういう可能性があるわけですよ。
 つまり、軍事的に言うと、ソ連の方は、先ほどの御説明で基地あるいは基地らしきものがあるということですが、それが後退をして、そのかわりにアメリカが入り込んでいく。そうなるかならないかは別として、そういう可能性だけは、日米安保体制の現在の条約がある限りあるわけです。この点について、たとえソ連が領土を返してくれても、安保条約の外に置くようアメリカと話をつけるとか、自衛隊もあそこには置かないとか、そういう平和な島にする努力をいたしますという答弁が今日まで国会でありました。外務大臣がかわられても、その辺は変わりはないと思うのですが、どうですか。
#33
○宮澤国務大臣 これらの四島は、われわれは、わが国固有の領土であると考えておりますことは、先ほど申し上げたとおりでございます。したがって、わが国が、わが国の領土をどのように利用し、使用するかということは、わが国のみが自由に決定し得るところでありまして、このことを、たとえば交渉の際の条件にするといったような考えは、私は持っておりません。
#34
○安井委員 福田外務大臣時代、交渉の条件にするという豊明はありませんけれども、しかし、そういうことでこの領土問題が片づくのならという表現でお答えがなされています。それから、防衛庁長官が自衛隊の配備をやめてもいいというふうな意味の、これは私も正確な表現は忘れましたけれども、そういう表現もあります。
 私は、こういうことで領土問題が簡単に片づくとは思いません。かつての状況と、いまとでは大分違うようですから、それで片づくとは思いませんけれども、しかし、交渉にまつわる障害は少しでも除いておいた方がいいのではないかと私は思います。また、交渉に対してこちら側の熱意を示す上からも大事だと思うのですが、どうですか。
#35
○宮澤国務大臣 この点は安井委員の御理解が正しゅうございまして、条件というようなことは、政府は過去においても申したことはございません。と同時に、わが国自身の判断として、これらの島に米軍の基地をつくる、あるいは自衛隊を配備するというようなことは、恐らく現実の問題としてそのような必要はないのではないか、こういう意味のお答えは何人かの外務大臣が過去においていたしております。そういう認識は私も違っておるわけではございません。しかし、そういうことを前提にして、この問題の交渉をする、あるいは条件にして交渉をするというような考えは持っておらないわけでございます。
#36
○安井委員 いままで二十年間もなかなか片づかなかった領土交渉が、そう簡単に解決するとは私は思いませんけれども、交渉に対してスムーズにいくために、筋道を幾らかでもきれいにしておくということは大切ではないかと私は思います。そういう意味で、大臣ははっきりそれで行きましょうとはお答えになりませんでしたけれども、私は、私のこの提案を取り下げるつもりはありません。そのこともひとつ今後の検討の中に入れておいていただきたい、こう思います。
 ソ連は、アジア集団安全保障条約を成功させるために非常に熱心にやっているようです。その成功のために日中平和友好条約を抑えようという考え方を持っているのではないか、あるいは、そのために北方領土問題を絡ませようと考えているのではないかという論評をする人がいます。それが正しいかどうかわかりませんけれども、その点については、どういうふうに政府としてお考えですか。
#37
○宮澤国務大臣 実は、ソ連のアジア集団安全保障構想でございますか、そういう話の実態が私どもに余り具体的に伝えられたことがございませんで、何か断片的にそういう話がときどき出てくるということで、どのような構想であるのか、私ども自身が、平和条約ができなければ何を言っても無意味なことであるという気持ちであるせいもございますと思いますけれども、それにすりかえた構想であってはならぬという態度で終始参っておりますので、そういうこともございますが、どうも構想そのものの内容がはっきりいたしません。したがいまして、ただいま安井委員の御質問に的確にお答えすることができない、その程度の、この問題についての私どもの理解でございます。
#38
○安井委員 いわゆるアジア集団安保なるものの中身がよくわからぬということのようでありますが、少なくともこの言葉だけは、ずいぶんしばしば出てきて、政府間の話し合いの中にも、あるいは出てきているのではないかと思うのですが、いままでの話し合いの中ではどうですか。
#39
○宮澤国務大臣 ことしの一月に、それと思われる部分はあったわけでございます。何かそういう構想らしいことをグロムイコ外務大臣が、たしかごく簡単でしたが、触れておられたと思いますけれども、私自身が、それをさらに聞いてみようという気持ちもございませんでして、したがいまして、ちょっと話題には出た程度のことでございました。
#40
○安井委員 その中身が明確でないだけに、いろいろ憶測もあるわけで、この集団安全保障条約という新しい枠組みの中に日本が入れば、領土問題を解決しようとかというのではないかという憶測が飛んだりもしています。しかし、中国がその中に入るのか入らないのかということが、この集団安全保障条約の非常に重要なポイントになるわけですし、中国なしのそういうようなものでは根底から崩れてくる可能性もあるわけです。それからまた、領土問題と絡めるという考え方にも、実はよほど慎重でなければならぬと思うわけであります。
 この問題の中身はわからないと言われるけれども、今後もしも具体的な提案があったら、どういうふうにしようとお考えですか。
#41
○宮澤国務大臣 まさしくただいま安井委員の言われましたような問題、すなわち、中国を一体どのように考えるのかということ抜きでは、この構想は恐らく説明ができないわけでございますから、具体的な提案として、果たしてそれが、いずれの日にか提案されるものであろうかどうかという点にも疑問を持ちますが、提案がありましたら、ただいままさしく安井委員が言われました中国の問題、あるいはまた同時に、その提案そのものが領土交渉と何かの形で取引になるといったような性格のものであるかどうか、その辺のことも確かめなければならないと考えます。
#42
○安井委員 もう一つ、北方領土交渉に関連する、考えられる限りの問題点を、きょうはずっと挙げてきておるわけですが、その一つに、日ソ親善友好条約の提案の問題があります。
 ソ連側は、領土問題は一応たな上げして、とりあえずこのような条約を結ぶべきではないかという提案をしばしばしているように伝えられております。しかし、領土問題をたな上げにして、こういうような条約にはまり込んでしまったら、永久にたな上げのしっ放しになるのではないかという心配は国民全体に非常に強いし、政府もそのような態度でこの問題に臨んでいるということでありますが、その点変わりありませんか。
#43
○宮澤国務大臣 その点変わりございませんで、一月にもグロムイコ外務大臣が、半ばインフォーマルな形でそういう話を私にいたしました。私は、これは領土問題をよけて通るという種類の構想のように思えるので、私としては、それを深く議論をする用意はないという意味のことを申しておりまして、その問題につきましての政府の態度は、ただいま御指摘のとおり変わっておりません。
#44
○安井委員 最近、ソ連側は、日中平和友好条約の交渉との絡みにおいて、日中条約の方は領土問題に触れないことにしている、だから日ソ交渉でも領土のたな上げでいいじゃないかという言い方をしているという報道もございますが、日本の中国に対する台湾の放棄だとか尖閣列島の問題などと、北方領土の問題とは全く次元の違う問題であることは明らかです。それを同じような位置づけのもとにソ連側が主張してくるというのは誤りだ、こう思うのですが、その点もそのとおりですね。
#45
○宮澤国務大臣 そのとおりに考えております。
#46
○安井委員 そこで、最近、条約交渉その他日中の関係が進む段階で、ソ連側がこれに対して水を差すようなさまざまな行動があるように聞いています。まさに、さまざまな行動があるのではないかというふうに思いますけれども、たとえば最近目立ったものとしては、ソ連駐日大使のトロヤノフスキーさんが、自民党の椎名副総裁を訪れて、日中平和友好条約は、ソ連に対して好ましい影響を与えるものではないから、交渉を思いとどまるようにという要請をしたとか伝えられています。
 もう一つは、六月十七日ですか、グロムイコ外務大臣が重光大使に事前通告をした後、ソ連タス通信を通して、日本政府あての声明という形で、この問題に関連してのソ連政府の公式声明を伝えたということであります。これらのことは、明らかに日本に対する内政干渉と言ってもいいように思うわけでありますが、このような一連のあり方についての政府の見解、政府はどう受けとめているか。
#47
○宮澤国務大臣 中ソの現在の関係が、残念なことでありますけれども、十分に友好的ではないということは、これはおのおのの国も認め、私どもも知っておるところでございます。そのようなことを背景に置きまして、恐らくソ連側の考えでは、あの声明に述べられておりますところは、日中間の条約交渉に関して、明らかにソ連を頭において中国の立場に日本の同調を求めるような条項がある、そのことについて云々ということでございますから、恐らくソ連としては、そういう可能性について懸念を表明するために、あのような声明をしたのであろうと考えております。
 わが国の立場は、申し上げるまでもなく、中国との友好ももとより大切でございますが、ソ連との友好も大切で、今日までまた友好的にやってまいっておりますので、わが国にはわが国の立場がございます。したがいまして、そのような懸念は御無用であるということを重光大使からグロムイコ外相に先般伝えさせたわけでございます。
 東京におけるソ連大使も、ただいま御指摘のように、いろいろに活動をしておられるようでありまして、これが内政干渉であるかないかということはともかくといたしまして、私どもとしては、この日中平和友好条約交渉で、ただいま指摘されましたような意図を全く持っておりません。これは恐らく国民のだれもが理解できるところであると考えておりますから、ソ連がそういう声明をいたしましたところで、そう一々目くじらを立てることもないというふうに私自身は思っておりますけれども、ただ、ソ連という国柄から考えまして、ああいう声明を出したものを、こちらが黙っておりますと、どういうかげんで、どういう誤解をいたすかもわからないということがございましたので、御懸念は御無用であるという答えは、一応いたしておきました。
 その点は、形をきちんと記録に残しておいた方がいいと考えていたしたのでありますけれども、ソ連そのもののああいう声明、あるいはソ連大使の行動等について、私どもは真実そういう意図は全くないわけでございますから、余り目くじらを立ててどうこうというふうには、私は、実は考えないわけでございます。
#48
○安井委員 ソ連側は、これで日中交渉にブレーキをかけようとし、あるいはかけたというふうにお考えかもしらぬが、しかし、日本国民全体の受けとめ方は、むしろ逆作用になったのではないか、ブレーキのつもりが、アクセルになる可能性も生じたのではないか、こう思うので、このことは、これからも同じようなケースが起きる可能性がありますから、私は、やはり明確にしておいた方がいいのではないかと思います。
 そこで、日中平和友好条約との関係になってくるわけでありますが、いま日本は、中国とそれからソ連と、戦後処理の二つの条約の交渉中だということになるわけです。そこで中国との交渉では、いま中国側は、七二年の日中共同声明第七項の覇権条項を織り込むことを強く主張しているのに対して、日中条約はソ連から見れば、日中の軍事同盟条約的なもので、覇権はソ連を指すものだという言い方で、政府にゆさぶりをかけてきたというようなことではないかと思うのでありますが、私、けさの朝日新聞の三宅喜二郎さん、外交研究家で元スウェーデン大使だそうですけれども、この人の投稿の記事を興味を持って読んだのですが、「「覇権」は原点に立って考えよ」つまり、国連憲章の第一条や第二条のこの精神が覇権反対ではないかという主張になっている点であります。
 つまり、国連憲章の目的や加盟国の行動について、「国際の平和及び安全を維持すること。」「人民の同権及び自決の原則の尊重に基礎をおく諸国間の友好関係を発展させること」こういうふうな表現が第一条にありますね。それから第二条にも「すべての加盟国の主権平等の原則」という表現やら、「その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない。」このような表現、つまり、このようなことが覇権に当たるのであり、このような覇権にやはり反対すべきではないか。国際的な、世界のすべての国々が遵守すべき義務事項、これが日中共同声明の中に書かれている覇権なのだという点を、もっともっと明らかにしていくということが必要なのではないか。政府もいろいろ解説をしているようでありますけれども、この論点は非常におもしろいと思うのですが、どうですか。
#49
○宮澤国務大臣 日中及び日ソ間で、二つの条約締結のための交渉がなされておるわけでございますけれども、実は二つの条約は、私は、名は似ておりますけれども、性格は異なっておるものだというふうに考えております。
 すなわち、いわゆる平和条約、日ソ間において私どもが締結したいと考えております平和条約は、これは文字どおり戦後処理のための領土問題を中心にした条約であろうと私どもは考えておるわけでございますが、日中間では平和友好条約と呼んでおりますし、また呼ぶことに少しも差しさわりはないわけでございますけれども、これは戦後処理と申しますよりは、今後日中両国の末長い友好関係を規定するルールを盛り込もう、こういう考え方でございますので、そういう意味では。ソ連との関連の条約が戦後処理であるのに対して、日中の条約は、それとは性格の異なるものである。戦後の処理というのは、日中共同声明においてなされたというふうに考えておるわけでございます。
 そこで、いま言われました覇権という問題でございますが、三木総理大臣が本院におきまして今国会中幾度か、これは平和の諸原則の一つであるということを言っておられます意味は、いま安井委員が御指摘になりましたように、国際の平和及び安全を維持すること、あるいは人民の同権、自決の原則、あるいはまた領土不可侵でありますとか内政不干渉でありますとかいう中に、自国の意思を相手に押しつけるということはしてはならない、同列のそういう一つの基本原則である、これはどこでも通じるところの基本原則である、こういうふうにわが国としては考えておると言っておられることは、ちょうどいま安井委員が御指摘になりましたことと同じ性格の観念であろうというふうに思っております。
 中国が、その点をどう考えておるかということは、それが同じような解釈であるということであるといたしますならば、これは問題が解決される一つのかぎになろうと私は思いますが、どうも最近の中国のいわゆる覇権主義に対する反対が、かなり具体性を帯びておるやに見受けられる。ソ連は、自分の国を指しておると明らかに言っておるわけでございますが、そこまででございませんでも、平和の大原則の一つであるというだけでない、やや具体性を帯びておるやに見えますところに、実は問題が、わが国としてはあるのではないか。そこらのところは、実はわが国としてはこう考えているということをやはり明確にいたしませんと、条約でございますから、意味不明なままで条約に文字を用いるということは、わが国の法体制ではいたしにくいことでございます。そこらのところが、やはりひとつ両方で話が詰まっていかなければならない問題であろうというふうに考えております。
#50
○安井委員 日中平和条約の覇権問題は、そのような普遍原則であるということとともに、特に具体的、現実的な問題ということになると、日本は戦争の中でソ連にも迷惑はかけたかもしらぬが、しかし中国にかけた迷惑というのは、これはもうとにかく想像を絶するものであった。一千万人ぐらいの人を殺したかもしれない、どれだけ多数の財産を失わせたかもしれない。だから、そういう中において、ほかの国に対する覇権の言い方よりも、中国に対する問題として、日本はずいぶん迷惑をかけたが、もう一切そんな覇権行為を――あれはまさに覇権行為になったのですが、そういうものはいたしませんという約束をするぐらいは、あたりまえではないか。領土問題も要らないし、賠償も要らないので、ただ覇権という言葉だけなんだ、こういうのですから、私は、これは物のわかった言い方ではないかと思います。
 そういう歴史的な経過も含めて、日中平和友好条約の問題への対応というものがあるべきではないか、こう私は思うわけでありますが、もう時間もなくなりましたので、この点について、本文明記で交渉を成功させるということより、いまの段階まできたら、ないのではないかとも私は思うのですけれども、最近の新聞では、政府はそのため特使を中国に派遣する、その特使というのは宮澤外務大臣だという新聞の報道もあります。その点についてどうですか。
#51
○宮澤国務大臣 わが国が、わが国の意思として、あるいは国の政策として覇権を求めることはしない、そういう意図はないということを申す限りにおいては、実は何も問題はないであろう。これは安井委員の言われるとおりであると考えます。
 それから、特使云々の問題は、実は総理大臣からそのようなことを私、承ったことがございません。そういう報道は一、二度見たことがございますけれども、事実そういうことが具体的に総理大臣におかれて考慮しておられるということでは、ただいまの段階はないように私は考えております。
#52
○安井委員 約束の時間になりましたから、これで終わりますが、私は、いま二つの平和条約、こう言ったが、名前は同じでも性格は違うと大臣は言われましたけれども、いずれにしても、二つの交渉が行われていることには間違いがありません。一方は十九年もかかっての交渉だし、一方はまだ三年目ですか、しかし、事によれば後のカラスが先になるかもしれない、こういう状況にもなっているわけです。私は、中国との関係で覇権問題がまとまれば調印ができるというのなら、やっぱり急いでもいいのではないか。そのことがまた、北方領土の交渉を陰に陽に早めることになりはしないか。これはまあ問題のとりょうはいろいろありますよ。ありますけれども、私は、そういう見方もあるのではないかと思いますが、最後にこのことについての御見解を伺います。
#53
○宮澤国務大臣 私も、いま懸案になっております問題について、はっきり筋道の立った、あいまいさを残さないような合意ができますならば、これはできるだけ早く、やはり日中平和友好条約というものは締結すべきものであるというふうに考えております。いわゆる中断というようなことを私どもは考えておりません。したがいまして、精力的に努力をするつもりでおるのでありまして、一般的に申しまして、日中の間がそのように友好裏に新しい条約で結ばれるということになりますれば、これはその他の懸案事項にも、おのずからよい影響があるであろうと考えます点においては、私もそういうふうに存じます。
#54
○安井委員 この委員会としては、北方領土の返還について非常に大きな関心を持ち、田中訪ソのあの直前に特別な、ずいぶん苦労した文書をつくって決議をして、本会議でも議決して国会の決議とした、そういう経過もございます。ぜひ、一日も早く懸案が解決できるように政府の御努力をお願いして終わります。
#55
○松本委員長 正森成二君。
#56
○正森委員 私は、時間がわずかでございますので、要点だけお伺いしたいと思います。
 私が、これから北方問題について伺いますのは、千島列島というのは、わが国の固有の領土である、当然返還さるべきであるというように私も思っております。
 ただ、外務大臣の安井議員への答弁を聞いておりますと、ソ連の占拠は不法、不当であるというように考えておりますという御答弁がございました。私も、ある意味ではポツダム宣言の第八項、それからカイロ宣言に、これは明らかに合致しないものではないかという意味では、外務大臣のそういうお言葉も納得できるわけですが、しかし政府としては、これは日本国との平和条約の第二条の(C)項で、千島列島については、これは「すべての権利、権原及び請求権を放棄する。」こういうようになっているわけです。そういう条約を結んだわが国の立場として、一刀両断的に不法、不当であるというように申されてよいものかどうか、かつ、そういう立場で先般モスクワで交渉なさったのかどうか、それを伺いたいと思います。
#57
○宮澤国務大臣 要すれば、速記録をお調べいただきたいと存じますが、私が先ほど申し上げておりましたのは、千島列島について実は申し上げたのではありませんで、いわゆる北方領土――歯舞、色丹、国後、択捉の四島群について申し上げていたわけでございます。私どもは、これらの島はサンフランシスコ平和条約第二条に言うところの千島列島に含まれていないというふうに考えておるわけでございます。
#58
○正森委員 いまのそういう御答弁でございますが、これは余り触れたくないことなんですけれども、一九五一年の十月十九日に、衆議院の平和条約及び日米安全保障条約特別委員会における西村外務省条約局長の答弁でも「条約にある千島列島の範囲については、北千島と南千島の両者を含むと考えております。」あるいは草葉外務政務次官の同趣旨の答弁もありまして、歯舞、色丹、これは北海道の付属島嶼ですから別でございますが、国後、択捉については、これは古くから千島列島ということで、わが国の国定教科書も全部そういうぐあいに書いてきた。私は念のために国立国会図書館で、過去の日本の尋常小学校の国定教科書を全部調べてきましたけれども、そうでないと書いている教科書は、ただの一つもないのですね。そういう状況で、かつ一九五一年の国会においてわが国の条約局長が明確に答弁しているものを、それから数年して、いやいや、あのクリルアイランドというのは国後、択捉は含まれていないのだ、こういうぐあいに主張したところに非常な無理があったのではないかというように私は思うのですね。
 ですからそういう議論も、外務省の君われる議論も、それは無理をすれば立てられないことはないかもしれませんけれども、宮澤外務大臣は非常に理詰めの方でございますから、わが国の本来の理詰めのソ連に対する要請としては、大西洋宣言、カイロ宣言、そしてポツダム宣言第八項から言えば、これは領土不拡張という方針でございますし、それで、わが国は一八五四年の日露通好条約で南千島と北千島の境を決め、樺太は両者が混在するというかっこうであり、一八七五年の千島樺太交換条約で、平穏裏に全千島がわが国の領有になったものである。したがって、カイロ宣言で言うような、あるいはポツダム宣言で言うような、わが国が力で奪取した、あるいは略取したというようなものではない、ですから御再考を願いたいというのが筋ではなかろうかというように思うのですが、外務大臣としてはいかがでございましょうか。
#59
○宮澤国務大臣 安政年間の日露修好条約の際、得撫島と択捉島との間に国境を設定いたしたわけでございますが、その後たまたま千島列島がわが国の領土となりましたために、一般的に千島列島というものが、どこからどこまでであるかということを余り定義をする実益が失われておったという時代がかなりございました。そういうこともございまして、一九五一年当時の政府の答弁が多少、いまから考えますと混乱をしておったのではないだろうか。私どもは千島列島につきましてはサンフランシスコ講和条約で権利、権原を放棄しておるわけでありますが日露修好条約等々の経緯からかんがみましても、この四島というのはサンフランシスコ講和条約、平和条約に言うところの千島列島には含まれない、こういうふうに考えておるわけでございます。
#60
○正森委員 それは政府が一九五一年のときには若干混乱があったと言われるその意味は理解できるのですけれども、しかし一九五一年の国会での論議というのは、まさにそのことが一番シビアに聞かれるべきそのときに何らの留保なく、千晶列島にはこれこれの島が全部含まれるのだというように答えたということは、これはやはりそのときの政府がサンフランシスコ平和条約の第二条(C)項に言う「千島列島」には国後、択捉も含まれるのだというように明白に考えていたことであって、これは外交交渉をやる場合のわが国の非常な負い目だと思うのですね。
 宮澤外務大臣、率直に伺いたいのですが、これは継続中のことですから、お答えにくい面もあると思いますが、ことしの一月、訪ソなさって十分論議なさったと思うのですが、そういう論議でわが方が議論を立てて、それで相手方から、いやいや、そうではないのでしょうかということで議論が、わが方が押されると言いますか、なかなか進まないというような状況はなかったでしょうか。これは日本民族の一人として非常に心配なものですから、あえて伺うわけでございます。
#61
○宮澤国務大臣 私は、グロムイコ外務大臣に対して、安政年間の日露修好条約等との経緯を詳しく説明をいたしたわけでございますけれども、そのことについての反論はございませんでした。他方で歯舞、色丹につきましては、一九五六年の共同声明において一つの処理がなされておるわけでございますから、もしそのこと自身を蒸し返し議論するのであったら、ソ連としては、この問題は片づいているというふうに主張せられるはずであって、しかし、そういう主張はなくて、やはり議論をしてまいったわけですから、四島全体が問題になっておったと考えなければ、議論そのものをあれだけしておったことは、お互いに説明の出来ないことではないだろうか。私が日露修好条約について述べましたことについて、グロムイコ氏からは一言も反論はなかったわけでございます。
#62
○正森委員 約束の時間でございますから質問を終わりますが、私どもとしては、外務大臣の言われる、いわゆる北方領土ということでなしに、わが国の固有の領土というたてまえから見ましても、また日露修好条約あるいは千島樺太交換条約のたてまえから言いましても、カイロ宣言、ポツダム宣言で、わが国の領土でなくなるという範囲に全千島列島も含まれないというように考えております。
 政府のお立場もあると思いますけれども、われわれの子孫の将来のために主張すべき点は十分に主張していただきたい、こういうふうに思います。
 質問を終わります。
#63
○松本委員長 本日は、これにて散会いたします。
    午後四時四十二分散会
ソース: 国立国会図書館
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