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#1
第075回国会 物価問題等に関する特別委員会 第18号
昭和五十年六月十七日(火曜日)
    午前十一時二十二分開議
 出席委員
   委員長 横山 利秋君
   理事 越智 通雄君 理事 橋口  隆君
   理事 山下 元利君 理事 松浦 利尚君
   理事 山中 吾郎君 理事 小林 政子君
      片岡 清一君    三塚  博君
      山崎  拓君    山本 幸雄君
      加藤 清政君    中村  茂君
      有島 重武君    石田幸四郎君
      和田 耕作君
 出席国務大臣
        国 務 大 臣
        (経済企画庁長
        官)      福田 赳夫君
 出席政府委員
        経済企画政務次
        官       安田 貴六君
        経済企画庁長官
        官房長     長岡  實君
 委員外の出席者
        参  考  人
        (日本銀行総
        裁)      森永貞一郎君
        参  考  人
        (経済団体連合
        会会長)    土光 敏夫君
        物価問題等に関
        する特別委員会
        調査室長    芦田 茂男君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 物価問題等に関する件(当面の景気対策が物価
 に及ぼす諸問題等)
     ――――◇―――――
#2
○横山委員長 これより会議を開きます。
 物価問題等に関する件について調査を進めます。
 本日は、物価安定対策と、昨日政府が発表いたしました当面講ずべき景気対策について政府から説明を聴取した後、同一問題について、参考人経済団体連合会会長土光敏夫君及び日本銀行総裁森永貞一郎君から、それぞれのお立場を代表して御意見を拝聴いたしたいと存じます。
 それでは、まず政府から説明を聴取いたします。福田経済企画庁長官。
#3
○福田(赳)国務大臣 いま、日本の経済としますと、当面のスタグフレーションからいかに脱出するかという問題と、また、それから先の経済安定の路線をどういうふうに引くか、この二つの問題に当面しておるわけであります。
 そこで、第一のあの混乱からの脱出、これは私は大局的には順調に推移しておる、こういうふうに見ております。
 一昨年は、御承知のように国際収支では一年度で百三十億ドルの赤字を出す。それから物価は、卸売物価で言いますればピーク時には三七%の上昇、消費者物価は二七%の上昇、こういうような情勢だったわけですが、私はあの事態を見て、これは短期には解決ができない問題だ、大体三ヵ年計画で安定させるということを考える必要があるような深刻な事態である、こういう見解をとったのですが、第一年度、つまり四十九年度、これは国際収支の方は非常な改善を見まして、基礎収支で四十三億ドルの赤字というところまでなってきたのです。それから物価の方は、卸売物価が四・九%の上昇、それから消費者物価が一四・二%の上昇、こういうことにとどまる、かような状態になってきておるわけであります。
 しかし、今後のことを展望しますと、いろいろ問題はあるわけであります。国際収支もこれは手ぶらの楽観を許さないし、また、改善はされたと言いますものの、その改善の内容というものが、産油国に対しましては百三十億ドルを超える赤字である、逆に非産油国については百四、五十億ドルの黒字である、そういうような奇形的な状態である。これをどういうふうにこれから調整していくか。
 それから物価につきましては、とにかく五十年度中の物価上昇、特に消費者物価上昇、これを何とかして一けたにしたい、万難を排してこれを実現したいという気持ちを持っておるわけでありますが、それとてもそう簡単な問題ではありません。しかし、この目標が達成不可能なものであるかというと、そうは考えない。
 物価をめぐる環境から言いますと、海外からの輸入物資の価格、これが昨年の状態に比べますと頭打ちの状態になってきておるわけです。それから第二のコスト要因の賃金、これはなだらかな上昇、そういうような形をとりつつある。恐らく一三・四%台で決着がつくのじゃないか。これも非常な変化になってきておるわけであります。それから公共料金につきましても、昨年は大変な上昇でありましたが、ことしは抑制方針をとりまして、そして例外的なもの以外につきましてはこの引き上げを抑止するということを実行しようとしておるわけです。それから金利コストにつきましても、昨年は上昇という時期でありましたが、ことしは下降というような背景を持っておる時期である。そういうことを考えますと、物価問題をめぐる環境というものは昨年に比べて必ずしも悪くない、こういうふうに私は見ておるわけです。
 ただ、一つ問題がありますのは、景気停滞が長きにわたった。そして、一つ一つの企業をとってみますと、その内容が非常に弱化しておる。そういうことで、これから長きにわたってそういう状態が続くということになりますると、企業の存立にかかわる問題が出てくるのであります。そういう事態を企業においては改善したいと考えるのは当然だ。そういう考え方から、製品の値上げを考えることになる物が多いわけであります。しかし、それが一斉に吹き出してくるというようなことになれば、物価政策も何もあったものじゃない。
 私は、ことしの賃金交渉がなだらかにいった、これは大変なことだと思うのです。もしあれが昨年、一昨年のような惰性で決められていくということになったら、これはもう本当に手のつけどころのないような状態の日本経済だっただろうと思う。それがともかくなだらかな解決になろうとしておる。その背景を考えますと、これは何と言っても物価が一四・二%という水準で済んだという実績がある。政府においては、五十年度は一けた台にしよう、さらにその先、五十一年度におきましては、なるべく早く定期預金の金利水準以下に持っていきたいと言っておる。そういうことへの期待、これがまたこのなだらかな春闘解決の背景に大きく存在しておる、こういうふうに私は思うのです。
 そういうことを考えますと、物価を安定させる、これは大変な課題である。私は、その辺は企業の方も同じような認識を持っておる、こういうふうに思うわけでありまして、企業側におきましてもそういう物価問題の重要性を認識されまして、自由価格体制下の今日におきましても、値上げにつきましては、特別な事情のあるものはあります、そこまでは言いませんけれども、これはもう極力自粛してもらいたいということをお願いいたしておる次第でございます。
 しかし、同時に、値上げをした、値上げをしてもどんどん売れるのだという状況だと、やはり値上げという現象は起こってくる。そこで、総需要管理体制というものは堅持していかなければならない、こういうふうに考えておるわけでございます。同時に、個別の物資、その需給につきましては格段の配慮をしなければならぬ。また、個別の物資の価格につきましても注目をしていかなければならぬ。各所管官庁におきまして、その辺のことにつきましては最善の努力をいまいたしておるという最中でございます。
 私は、そういう産業界の協力を得ますことができますれば、五十年度中の一けた台の目標というものは必ず実現できるし、これは実現をしなければならぬ問題である、そういうふうな考え方のもとに、物価問題を、また経済問題を処理していきたい、かように考えております。
 ただ、一面、さて景気の状態はどうだ、こういう側面を見ますると、これは昨年の下半期以来非常な落ち込みを続け、またそれが今年度の初頭まで尾を引いておる、こういう状態です。そういう中におきまして、企業の体質は脆弱、悪化をしておる。この事態を放置することはできない、こういうふうに考えるわけであります。
 そういうような考え方から、第一次の不況対策、第二次の不況対策ととってまいりましたが、昨日、経済対策閣僚会議を開きまして、第三次の不況対策をとることにいたしたわけでございます。
 第一次は、主として中小企業対策が中心であります。それから第二次は、公共事業の繰り上げ執行、これが中心であります。
 第三次の、昨日決めましたものは、一つは、住宅建設を促進しよう、こういうことから、住宅金融公庫で予定しております融資戸数、その下半期分五万戸を上半期に繰り上げ実行する、これが一つ。
 それからもう一つは、公共事業。第二次の対策におきましては、公共事業の上半期における契約率を六五%程度というふうに考えておりましたが、これを今回さらに繰り上げを強化いたしまして、七〇%程度のものにいたす。
 その他、公害投資というような問題がありますが、それに応ずるための資金枠の拡大でありますとか、あるいは中小企業対策等々にわたって施策を進める。
 つまり、私どもの日本経済全体の見方につきましては、物価は鎮静の方向にある。それから景気の方はいま底に来た。しかし、底に来た経済が回復過程に向かうか、つまり浮揚というような状態になるかどうかということを考えますと、その浮揚への推進力というものが非常に微弱である、そういうふうに見ておるわけであります。国民の消費、こういう面におきましても、そうこれが盛り上がりを期待することは困難な情勢であります。
 それから設備投資はどうか、こう言いますと、公害投資でありますとか、安全投資でありますとか、あるいはボトルネック産業における投資でありますとか、例外はありまするけれども、大局的にはおしなべて企業の稼働率が非常に少ない。遊休施設をたくさん抱えておる。そういう中において、仮りに金融が緩和されたというような状態がありましても、設備投資がわき起こってくるというような状態とは見られない。
 そうしますと、あとに残る最終需要要因というものは、政府が引き起こすか、あるいは輸出にこれを求めるか、こういうことでありますが、いま世界環境が非常に悪い、そういう中で、輸出に特に景気振興の推進的役割りを求めるということは非常に困難な状態である。輸出努力ももちろんしなければなりませんけれども、これに景気浮揚の推進的役割りを担っていただく、そういうことも非常に困難である。そうすると残されたものは、政府がみずから需要を造成するほかないじゃないか、そういう見解に立ちまして、第三次の不況対策というものを決定したわけでございます。
 これによりまする需要造出能力を大体一兆八千億程度と見ておるのですが、国民総生産に対する割合が大体一%を超える、そういうような額に相当するものでありますが、この施策を速やかに実行いたしまして、景気をなるべく早く上昇過程に転じせしむるということを期待しておるわけであります。
 しかし、同時に、物価問題、これも非常に重要であります。でありますので、財界に対しましては、ごく特別な事情のあるものはやむを得ませんけれども、一般的値上げムードというものが醸成されないように、また一つ一つの企業におきましては、その引き上げにつきまして厳粛にこれを自粛していただけるように協力をお願いすると同時に、先ほど申し上げましたような総需要政策等々を堅持してまいりたい、こういうふうに考えておるわけでありまして、ことしの見通しといたしますと、経済見通しにおきましては、四・三%実質成長、一五・九%名目成長ということを言っておるわけであります。
 私は多少景気回復についての時期的なずれがある、こういうふうに見ておるわけであります。したがって、四・三というコンマまでつけたそういう数字までなるかどうか、これはまだ判断できませんけれども、景気は着実に回復過程に転ずる、しかしそれはなだらかな上昇である、こういうことを展望し、また同時に、物価一けた台の目標というものはぜひ達成しなければならぬし、達成可能である、かように考えておる次第でございます。
 そういう基本的な考え方でありますが、さらに大事な問題は、これからのわが国の経済をどういう形に持っていくか一先々の展望を国民に理解してもらう必要があるだろう、そういう考え方から、ことしじゅうぐらいに大体の見当をつけたい。そういう意味から、いわゆる中期社会経済計画、これの作成にただいま取りかかっておるわけでありますが、その概略案とも申すべきものは、五十一年度の予算編成に間に合うように、年末までにはこれが策定を了したい、かように考えておるわけでありますが、何とぞ御協力、御指導のほどをお願い申し上げます。
#4
○横山委員長 以上で説明の聴取は終わりました。
 この際、一言参考人にごあいさつを申し上げます。
 参考人各位には、御多用のところ御出席をいただき、まことにありがとうございました。
 この際、委員長として、おいでくださいました趣旨を若干申し上げたいと思います。
 最近の経済情勢は、消費者物価の四十九年度中上昇率は政府の公約どおり一五%以内におさまり、卸売物価も今年に入り下落傾向を示し、政府の見通しを大きく下回り、また、本年の春闘は、物価上昇率を下回るベースアップで妥結することがやや確実になりました。
 現在、政府は、御承知のとおり、物価対策の第二段階として五十年度中の消費者物価上昇率一けた台、第三段階として五十一年度中の早い時期に定期預金金利並みを目標に、鋭意努力いたしておるところであります。
 しかし、今年度に入り、四月、五月の物価動向、今後予定される公共料金の改定、企業の製品価格の値上げ機運等を考え合わせるとき、政府の目標達成は楽観を許さないものがあります。
 一方、長期にわたる総需要抑制政策の浸透により、経済活動の水準は低下し、景気刺激策を望む声は日増しに強くなっており、公定歩合は四月十六日に続いて今月七日に、それぞれ〇・五%引き下げられました。
 また、経済企画庁の発表によれば、実質GNPの基調は、四十九年十月から十二月、五十年一月から三月、連続して前期を下回り、四十九年の実質GNPは、戦後初めてマイナス成長になったことが明らかになりました。
 こうした実態に即し、政府は第一次、第二次不況対策に引き続き、昨十六日、住宅建設の促進、公共事業の円滑な執行などを内容とする第三次不況対策を発表いたしました。
 申すまでもなく、今後わが国経済は、資源、公害、環境破壊等に制約されて、従来のような高度成長は望み得べくもなく、日本経済の仕組み全体を変え、必然的に新しい福祉経済への移行を迫られております。
 政府は、発想の転換だけにとどまらず、安定成長の軌道に乗せるため、速やかに将来にわたる長期的構図を明確にして、国民に希望を、企業に努力目標を持たせ、国民経済の健全な機能を早急に回復する必要があります。
 果たして、今回の第三次不況対策は、物価の安定と景気の着実な回復を達成し、国民の期待にこたえ得るものかどうか。
 すでに、土光会長は、第四次不況対策と第三次公定歩合の引き下げを力説されております。政府部内でも、通産大臣が金利引き下げの必要性を唱え、労働大臣が強く消費者物価を本年一けた台にとどめることは困難と指摘したと伝えられています。有力な民間経済機関もまた同様な意見であります。また、別な問題では、一部の人から、不況対策と物価対策とは両立するとの意見が出始めています。これらを含めて、今回の第三次不況対策はどんな効果があると考えるか、それぞれの立場から御意見を伺いたい。
 また、住宅融資や公共事業の繰り上げ等は、当然補正予算編成の不可避なことを意味すると考えるがどうか。
 また、貸出金利の引き下げを金融機関に要請するというが、預金金利についてはどう考えられるか。
 また、今後の物価対策はどうあるべきか。総じて、いまや本年一けた台という政府の物価政策は、重大な、国民、特に春闘における労働者への約束でもありますがゆえに、この達成ができない場合の政治責任、また明年の春闘に及ぼす影響は重大であります。
 第三次施策に当たって、物価対策を中心とする経済のあり方について、それぞれ腹蔵のない所信を承りたいと存ずる次第でございます。
 次に、御意見をお述べいただく順序は、土光参考人が時間の都合で途中退席いたしたいとの申し出がありますので、まず土光参考人、次に森永参考人の順序でお述べ願いたいと存じます。
 なお、委員各位に申し上げます。
 本日は、時間の都合から、参考人各位からの御意見の御開陳のみにとどめますので、あらかじめ御了承ください。
 それでは、まず土光参考人にお願いをいたします。
#5
○土光参考人 現在の物価問題といたしましては、先ほど福田副総理から申されましたように、政府の施策よろしきを得まして、四十九年度の物価上昇は先ほどお話しのとおりであります。この点はわれわれとしても非常に喜びにたえないわけでありますが、今後、ことしの物価上昇につきましても、われわれとしてはできる限り政府の方針に協力を惜しまないという決心でおります。
 いまお話がありましたように、物価も一応の安定を見、かつまた春闘もおおむね終了したということによりまして、昭和五十年度の経済計画をいかに持っていくか、これは政府におかれても非常に御苦心のあることと思うのであります。しかしながら、これからいよいよ景気を順次上昇に持っていくということは、なかなか言うべくして困難な問題であろうかと思うのであります。その間については、政府で主張される点と、われわれの現在実際の問題として考えております点には相当の径庭があるのであります。
 現在の物価問題でありますが、われわれは昨年、政府の方針に全的に協力いたしまして、厳しい総需要抑制政策についても、あるいはまた金利政策についても、一言もわれわれとしてはこの点は緩めていただきたいということは申した覚えはありません。しかし、その反面におきまして、企業が受けましたいろいろなマイナスの影響というものは相当のものがあるのであります。
 御承知のように、昨年は石油その他輸入物資が相当値段が上がったのでありますが、これが現在、われわれの企業努力もまだこれを十分吸収しておるという状態ではないのであります。したがって、現在は、卸売物価等におきましてもコスト割れの製品が相当たくさんある。先般調べましたところによりましても、六四%は現在のままのコストでは採算に合わないという調査が出ておるのであります。もちろん、企業としても、社会的あるいは国家的見地から、十分協力すべき点は協力しなければなりませんけれども、企業の実態といたしまして、赤字経営を続けていって企業を破滅に導くということは、国家経済からも許しがたいことであろうかと存じますし、また企業者としてもそれは重大な責任であろうと思うのであります。
 実際といたしまして、三月期の四十九年度の下期の決算等をごらんいただきましても、企業体は非常なダメージを受けまして、経常利益では実際において五〇%以上の利益減少をしたものが相当多いのであります。これをいろいろ、固定資産その他もろもろの蓄積をつぶしまして、そして一応表面利益はある程度これを修正したものが出ておるわけであります。
 ことに昨年の下期、十月以降は、いろいろな生産等におきましても非常に落ち込みがひどいのでありますが、ことにことし一−三においては相当の落ち込みがあったわけでありまして、これは最近調べてみましても、実際の現状において、企業の調査としましては相当の利益がマイナスになっておる。したがって、今後、九月期においては三月期に比べましてさらに二〇%以上の利益減少が見込まれるのじゃないか、いろいろと多数の企業を調査いたしました結果の数字はさらに詳しいものを持っておりますが、時間の制限で申しませんけれども、今期の先行きも非常にむずかしいものがあるというふうに思うのであります。
 しかしながら、われわれとしては前向きに、政府の物価政策には全面的に協力しようというわけで、したがって、われわれが金利を下げていただきたいと言うことは、ただ単に消極的な意味で申し上げておるのじゃないのであります。それからなお、いろいろと財政投融資等をふやし、仕事をふやしてもらいたいということをお願いするのも、ただ利益を増すのじゃない。いま申しますように、経営の実態はマイナスの赤字経営であるということでありまして、この赤字をいかにして消していくか。赤字なしに経営を持っていくということは、物価を上げれば一番楽でありますが、われわれとしては、政府の方針どおり物価は上げないという前提に立って考えるならば、その他の問題を探さなければならぬ。
 われわれが研究しました結果は、まず現在の企業は総体的に七〇%の操業度であります。中にはひどい、五〇%以下の操業度のものもあるのであります。ところが、御承知のようにすでに設備があり、あるいは借入金があり、あるいは従業員を抱え、その他もろもろの企業体制を持っておりながら生産することができないといえば、これはコストにかかってくることは当然であります。固定費がコストに入ってくることは当然であります。損益分岐点もそのために非常に高くなっている。普通の努力では決して損益分岐点を越すことはできないというのが現状であります。
 そこで、われわれとしては、企業に仕事をもう少し増していただきたい。操業度を上げていただきたい。操業度を上げることによって、相当の赤字になるべきものが消えていく。これはわれわれも詳しく計算しておりますが、これは企業によってまちまちであります。平均しますと、相当高いものになります。
 それからもう一つ、金利の問題でありますが、現在、日本の企業においては非常に金利負担が高いのであります。われわれの調査しましたところ、これまた企業によって違いますけれども、平均として大体コストの一九%程度はかかってくるというふうな状況もあるのであります。したがって、金利を下げていただくことは、これはすなわちコスト割れになっている損失を減らしたい、金利負担を減らしたいということであります。
 なお、われわれとしても昨年来ずいぶん努力してまいりましたけれども、今後においてもさらに企業努力は続ける。全力を挙げて合理化もいたします。そして、そういうことのコンビネーションによって、いま赤字になっておるものを、赤字を幾らかでも減らしたい、そして政府の方針に沿いたいというのがわれわれの希望であります。
 しかしながら、御承知のように、中には輸入物資の非常にまだ吸収し得ないものもあるかと思うのであります。こういうものは、われわれどういうふうにするか、第二次的に十分考えなければならない問題であろうと思うのであります。
 次に不況対策でありますが、一応賃上げが一三%程度でおさまった、あるいはまた物価が一応政府の御方針どおりおさまったということになれば、これは五十年度の、われわれとして政府の御方針に協力していく準備条件は整ったのではないかと思うのであります。しかし、政府は非常に物価に重点を置かれまして、企業側が自粛によって物価を上げない――まあわれわれひがみかもわかりませんが、どうもそういうふうに聞こえる節もあるのであります。まだまだ企業は耐久力があるから、もっとしんぼうすべきときであるというような説も行われるのであります。われわれとしては、もちろんそういう点は十分考慮いたしますけれども、企業体質が現在非常に弱っている、この上弱らすならば、たとえば重病人に対して、非常に手おくれのために栄養分を与えても受け付けないというような状況も起きかねないのであります。
 いま副総理の言われたように、海外から輸入すべき資源その他についても一応の物価の安定はありますけれども、現在まで昨年度の上昇をまだ企業が十分コストに吸収し切っていないというものがあることを、ひとつ御認識いただきたいというのであります。
 しからば不況打開の線をどこへ求めるかということに対して、われわれはぜひお願いすることがあるのであります。それは、インフレの後遺症でコストが上昇するという傾向がいまなおあることは、御承知のとおりであります。これがまた政府の御心配のもとであろうかと思うのであります。しかし、いま申しますように、不況のために需要が減退しておるということであれば、価格を上げないということは原価割れになるのであります。われわれとしては、需要が減退するという点は絶対に、いま副総理の言われたように十分対策を打っていただきたいと思うのであります。
 しからば、現在、需要を喚起される第三次の対策でこれが十分であるかという点が問題になるのであります。われわれとしては、とにかく現在仕事は七〇%以下であるけれども、これはことしの一月から、決して総需要抑制、金利を緩めることなく、静かにひとつ仕事を流していただきたいということをお願いしたのであります。一−三におきましても、操業度の落ち込みは非常にひどいのであります。われわれとしては、その間、一−三に十分落ち込みも少なくしておいて、そして今度新しい予算のできる四月以降にうまくつないでいきたいという希望であったのであります。ところが、一−三はそういうふうにはなっていないということが、われわれとしては非常に遺憾な点であるのであります。
 そこで、現在においては、政府におかれてはおよそ底を入れたということを言われておるのでありますが、われわれから見ますと、確かに底を入れた感じは十分うかがえることは事実であります。しかしながら、実際を見ますと、たとえば三月においては生産動向は一・四%上がりました。四月においても一%上がりました。これは二カ月上昇したのであります。しかしながら、問題は水準でありまして、現在の生産の実態は二年以前の水準にとどまっておるのであります。
 一方、生産能力は、この二カ年、最近においては決して拡充はしておりませんけれども、かなりな伸びがその間あるわけであります。それで稼働率はさっき申しましたように七〇%というわけで、先般発表されました政府の一−三月の国民所得の統計を見ましても、実質GNPは四十八年の一−三月期の水準にとどまっておるのであります。極端な冷え込みであることは、もう皆さん方十分御認識いただけると思うのであります。
 現在の生産水準が一年間もしも続いたとするならば、先ほど副総理は、今年度の経済成長はまあ四%がらみになるという御発言がありましたのですが、われわれは、とうてい四%どころの話ではない、前年度に比較しまして相当のマイナスになるという傾向であろうかと思うのであります。
 実際、副総理は、三年とかあるいは四年、十分時間をかけなければならぬ、ひとつ健全な安定成長の路線に復帰していくように努力しようじゃないか、われわれもこの説には共鳴するわけであります。これについてはわれわれも協力を惜しまないわけでありますが、われわれのいろいろ調査をいたしておりますものから申しますと、現在の落ち込みが二〇%以上水準から落ちておるわけであります。これをどういうふうな程度に持っていくならば、大体日本経済が副総理の言われる安定した経済水準、生産水準に復帰できるか、これはなかなかむずかしい。現在のポイントから、たとえば三年間にこれを復帰するとしても、相当の手を打たなければなかなかこれが上がってこない。もしも大変なことをすればインフレがまた再燃をするというふうにわれわれは感ずるのであります。いろいろ試算しておりますが、たとえば一年間に五%程度の成長ラインに回復されるとしても、年率では非常に、われわれが想像つかない数字でなければこれは復帰できないというふうに考えるのであります。
 なおまた、現在は底をついておるということでありますが、われわれが非常に遺憾に思いますのは、政府あるいは日銀等におかれてはどうもマクロ的にものをごらんになって、ミクロ的に――企業おのおの別でありまして、全体的でははかれない問題がたくさんあるのであります。われわれは、昨年来全国を回って、各部の細かい調査をいたしておるのでありますが、三、四、五月の生産はどうかと申しますと、五月の電力需要は二%以上マイナスに移っております。三、四月は先ほど申しましたように上昇したにしても、その次はやはり不安定に電力は下がっておる。とにかく三月以降底入れの徴候はあったものの、現在はまだ確実な上昇過程には乗っていないというふうにわれわれは思うのであります。
 ことに、四月の機械受注等は大幅な減少をいたしまして、前月に比べまして二八・三%マイナスになっております。五月の百貨店の売り上げを見ましても伸び悩みの情勢でありまして、個人消費は決して順調に上昇気流には乗っておらない、前年同月比の一・九%増にとどまっておるのであります。設備投資あるいは個人消費、これが伸び悩みであることはもうごらんのとおりでありますが、そういう点から考えまして、現在すでに上りカーブであって、今後順調に上りカーブが継続するというふうには、われわれ細かく見るとどうも期待できないのであります。
 のみならず、われわれが最も遺憾といたしますのは、政府はいろいろ施策よろしきを得られるのでありますが、その間、手を打たれるのが非常におくれるのであります。現在の第三次の景気対策も、これが二カ月とかなんとか前であったならば、われわれとしてもっと効果があったのじゃないか。われわれが、一体底はいつだということを調べますと、大多数の企業は、やはり七−九月であるという回答が出てくるのであります。
 時間の制限がありますからはしょりますが、経済界も、ともかく安定成長ということには異論はないのであります。しかしながら、現状をもって、安定成長をさっき申しますようにいかにして実現するかという点には、これは妥当な、しかも強力な政府の御施策を得なければ、企業自体の自律回復は決して望めないのであります。
 われわれとしましては、第一に、経営の落ち込みが従来になく非常に急激であり、また非常に落ち込みの度がひどい、回復には、いま申しますように相当政府としては思い切った施策をタイムリーにひとつ打っていただきたい、こういうのがわれわれの希望であります。だから、第三次の景気対策はわれわれとして非常に尊敬いたしますけれども、これでは十分でないというふうに感じる次第であります。
 さらに、輸出あるいは設備投資、個人消費、これもいろいろと今度は御心配いただいておりますが、自律回復力がないのであります。特に輸出の伸び悩み、設備投資意欲の減退、これは最もひどいのでありますが、これに対して政府はどういうふうな施策をしていただけますか。
 ことに輸出等におきまして、われわれも競争力を出していこうということで非常に努力しておりますが、現在の輸出のプラントの規模は非常に大きくなっておるのであります。中近東に大いに協力しよう、あるいはいろいろの方面に協力をしたいと思うのでありますが、現在は個人企業の範囲では、民間関係では決してこれには手が出ない。たとえば調査をするだけに二十億、その他の準備費が要るのであります。こういう点に対しては、政府はあらかじめそういう点を予見されて、こういうことに対する施策をしておいていただきたかった。いまお願いしておりますが、政府がこれを実現していただくのはやはり二カ月、あるいは三カ月、あるいはもっと先であるかというふうに心配するわけであります。
 輸出入についてすでに非常に落ち込んでおることは御承知のとおりであります。この点については申し上げませんが、しかしながら、これは国内の景気問題だけでなく、近隣諸国はもちろん、国際的に――きょうもインドネシアの代表が来ましたが、近隣諸国に対しても、やはり彼らも不況なのでありまして、買うべきものはやはり輸入してやらなければならぬのではないかというふうに思うのであります。
 そういう次第でありまして、現在のいろいろの設備投資が萎縮しておるとかなんとかいうのも、申しますと、需要と供給の面に、われわれの調査では十五兆円のデフレギャップがあるのであります。そういう意味から、政府が緩めたらすぐ価格が上がるぞというようなことは、御心配ないのであります、これは物にもよりましょうけれども。とにかくデフレギャップが相当大きいのでありますから、思い切って需要を喚起されましても、われわれとしては決して値段を上げるというようなことは起き得ないし、また、そういう点はわれわれとしては努力したいというふうに思うのであります。
 このような情勢でありますので、政府の施策に対する発動がおくれるというか、あるいはまた不十分であるために、われわれとしては、非常に不況の期間が長引く、あるいは取り返しのつかないような状態が起きるのじゃないかということを、非常な焦燥感をもって心配しておるわけであります。
 とにかく政府とされては、いま副総理の言われたように、これから安定成長にどう乗せられるのか。私といたしましては、政府に対しまして、この一年、物価を上げないで景気も順次回復させていくのには、どういうプランによってどういう方法によっておやりになりますか、この計画をお示しいただきたいということをお願いしておるのであります。これはもう空論で、われわれはこれではむずかしい、政府はこれでいくのだということでなしに、こういうふうな計画で、こういうふうに持っていこうじゃないかという短期の一年間の計画をお立ていただくならば、われわれとしては安心してついていく。国民も信頼するだろうと思う。
 たとえば、昨年度において、政府が消費者物価は一五%以下にするということを実現された。これで、現在、国民の政府に対する信頼が非常にふえておると私は思うのであります。この一年間においてこういうふうにして今度は一けたにするのだ、こういうふうにするから、君らもこれにこういう方法によって協力しろということであれば、われわれも非常に安心して、全力を尽くしてこれに協力することができると思うのであります。私がさっき申しましたように、さらにこれから一体いかようにして安定成長の路線に乗せるかということが、非常にむずかしい段階に来ておると思うのであります。
 もちろん、われわれはただ企業の利益のみを申し上げるのじゃありません。われわれの利益が減ると、政府の税収も減ります。現にそういう問題が起きておると思うのであります。もしもことし一年が、さらにこの不況で沈滞しておるならば、さっき申しましたように、来年の税収は大変なことになるのじゃないかというふうに私は心配するのであります。
 その他もろもろの点がありますが、非常に賢明な委員の皆さんでありますから、どうか――われわれ決して企業のエゴで景気回復をお願いしておるのじゃないのであります。われわれも、われわれがやるべきことは十分やります。しかし、いかようにして政府の施策にわれわれは協力し、結果を上げるかということについて、済んだ後で苦情を申し上げても仕方がないので、いまの段階で私はわれわれの意見を申し述べておきます。
 はなはだ口幅ったい意見でありますが、昨年来の見通しは、経済研究所その他いろいろの見込みがありましたが、経団連の意見が一番当っております。今年度の成長も三・四%――、当時八%、五%、政府も初め五%と言われておったのに、福田副総理がこれを四・三に変えられて、ちょうどわれわれの逆になった。けれども、今度どうなるか。私は、このままでいくならば、さっきの副総理の四%もなかなかむずかしいのじゃないかということを心配しますけれども、やはり副総理の計画にできるだけわれわれも協力して、実現したいと思っております。
#6
○横山委員長 土光参考人におかれては、お忙しいところ貴重な御意見をお述べくださいまして、ありがとうございました。
 次に、森永参考人にお願いをいたします。
#7
○森永参考人 当面の景気情勢並びに物価動向をどう考えるか、また、それに処して政策運営上いかなる態度をとるべきだと日本銀行は考えておるかということにつきまして、簡単に申し上げたいと思います。
 まず、景気の動向でございますが、日本銀行は一昨年の初めから二年余にわたりまして金融引き締めを実施してまいったのでございまして、その間、石油問題が発生したりなどいたしまして、一昨年の暮れには公定歩合を九%という高い基準にまで引き上げたのでございますが、こういう引き締めの浸透に伴いまして、設備投資を中心とする最終需要の伸び悩み、また在庫調整の進捗などもありまして、昨年の半ば以後、景気は停滞を示してまいりまして、特に昨年末から年初にかけましては、生産、出荷ともかなり落ち込むというようなことで、不況感が大変深刻になってきたわけでございます。
 しかし、私どもの見るところでは、その後景気は二、三月ごろを境といたしましてほぼ底入れの状態になっておる。生産、出荷ともわずかながら上向きの傾向をとってきておりまして、回復の動きも見られ始めてきておるというふうに考えるのであります。
 もう皆さん御承知のことでございますが、鉱工業出荷指数は二月以降増勢に転じております。五月がどうなりますか、ただいま土光さんからのお話にもございましたが、これはふたをあけてみなければわからないのでございますが、二月以後は増勢に転じておる。また生産も同じような傾向でございまして、生産が三月以後、出荷は二月以後増勢に転じておるわけでございまして、その辺にマクロ的には底を打ったという感じが出ておるわけでございます。
 こういった出荷の上昇の傾向は、財政面での公共事業支出が促進されてきておるということ、住宅の建設が回復し始めてきておるということ、また個人消費の方も、長く不振の状態でございましたが、年初来、たとえば、自動車とかテレビなどの売れ行きがよくなっておるというようなことにも見られますように、部分的ながら若干持ち直しぎみとなっておるといったようなことが、出荷の上向きになったことの背景にあると思われるのであります。
 この間、在庫調整の方も、昨年半ば以後、各業界が大幅な減産によってこれに対処してきたわけでありますが、二月ごろからはこの減産の効果も出てまいりましたし、また出荷が先ほど申し上げましたように持ち直してきたというようなことがございまして、かなり在庫調整が進捗を見るに至っておる。鉱工業製品在庫も、一月以来ずっと減少を続けておるのでございます。それより先、流通段階の在庫調整はほぼ済んでいた状態でございまして、それに比べるに、いま申し上げましたようなメーカー段階の在庫につきましても、ほぼ調整のめどがつきつつあるというのが現状ではないかと思うのでございます。
 こうした状況から、最近になりまして一部の業界では減産の緩和の動きも見られ始めておりまして、これを反映しまして、雇用情勢も、たとえば有効求人倍率が四月には久しぶりに上昇するなど、一ころに比べますと景気にはやや回復の兆しもあらわれ始めておると言えると思うのでございます。
 私ども、毎年年四回、主要企業にアンケートを求めまして、短期的な経済観測の調査をいたしておるのでございますが、この五月に行いましたその調査の結果から見ましても、生産、売り上げは一月−三月は減少いたしたのでございますが、四月−六月あるいは七月−九月にはそれぞれ若干の増加を予測しておるという結果が出ておるのでございます。もちろん、これはアンケート調査でございますので、多分に先行きの期待感も入っておるとは思いますが、それを割り引きましても、業界の実感としては、少なくとも生産、売り上げに関してはわずかながら上向き状態になってきておるということがうかがわれるように思います。
 私ども、このように景気の現状は底入れの状態から、かすかではございますが、徐々に回復に動き出してきつつあるところだと判断しておるわけでございますが、ただ、それはきわめて緩やかな、かすかな回復の兆しであるようでございます。当面の需要動向を見ますと、財政支出あるいは住宅建設等は増加の傾向にございますが、設備投資の方は依然としてかなりの停滞が続いておるわけでございまして、それに加うるに、先ほど土光さんのお話もございましたが、輸出もことしになりましてから若干伸び悩みの状態を呈しておる。個人の消費はやや立ち直る傾向が見られ始めたとは申し上げましたが、その腰はまだきわめて弱いようでございまして、非常に根強い回復の姿勢は示しておりません。
 このような状況から考えますと、景気の現状は、一部にはかすかな回復の動きが出てきてはおりますものの、そのテンポはきわめて緩慢なものにとどまっておると言うべきであるというふうに考えるわけでございます。
 その間、企業収益の方は依然として悪化の傾向をたどっておるわけでございまして、このため、産業界としては、先ほど土光さんのお話にもございましたように、景気の先行きに明るさが見出せない状態にある、これは私どももさように見ておるのでございます。この点は、緩慢ながらもともかく底入れから回復への方向にあると認められるマクロ的な景気の動きと、産業界の実感、ミクロ的な景況感との間に若干のずれがあるということだと思うのでございます。しかし、この点は過去の経験でもいつもそうであったわけでございまして、マクロ的な景気の回復と企業収益の回復との間には、当然のことながら若干のタイムラグがあるわけでございまして、今後需要が、なだらかではございますが徐々に回復をしていくことになりますれば、企業収益の方ももうこれ以上大きく落ち込むという心配はなく、いつの日か少しずつ回復に向かっていくことが期待されておるわけでございまして、企業収益の面でも、私どもはこの辺が底になるのではないかというふうに考えておるわけでございます。
 景気の動向についてはそのくらいにいたしまして、物価の動向でございますが、御案内のごとく、卸売物価は昨年秋以降鎮静に向かいまして、特にことしになりましてからは一−三月と微落を続けました後、四月、五月はほぼ横ばいの基調で推移しておるわけでございまして、落ちついた動きが続いておると言えるかと思うのであります。卸売物価に関連の深い商品市況を見ましても、流通段階の在庫調整の進捗に伴いまして、三−四月にかけて一時強含みのときもございましたが、五月以降は再び落ちつきを取り戻したように見受けられるのであります。
 一方、消費者物価の方も昨年の末ごろから上昇率が鈍化してまいったのでありますが、ただ、この四月、五月におきましては、東京都の指数で申しますと、四月が二・五%、五月が一%と、かなりの上昇になりまして注目をされたわけでございます。ただ、この四、五月の上昇の内容をしさいに検討してみますと、たとえば授業料の改定であるとか、あるいは宿泊料金の改定であるとか、あるいは一部の野菜、果物等についての季節的な要因であるとか、あるいはレモンなどに見られるような特殊な要因がかなり響いておるようでございまして、こういう要因を割り引いて考えますと、ここへ来て従来の騰勢鈍化の傾向に激しい変化が起こったとは見られないようでございます。
 概して申しますと、現在のところ、物価は卸売、消費ともに落ちつき傾向をたどっておると言えると思うのでございますが、しかし、私どもといたしましては、こうした物価鎮静の動きが現段階において完全に定着したとは考えていないのでございます。石油の価格が四倍に上がったということを中心にして起こりましたコストの増加傾向は、なお依然として根強く残っておるのでございまして、また、企業家も、一般国民におきましても、インフレ心理が一ころに比べてかなりおさまったとは言えると思いますが、まだ完全に払拭されたとは言いがたい状況にあると思うのでございまして、物価の上昇の圧力はなおかなり根強いものがあるように思われるのでございます。
 現に、主要な商品、鉄鋼以下いろいろな商品がございますが、主要商品につきまして建て値の引き上げの動きも多く見られておることは、皆様御承知のとおりでございます。もちろん、私どもも、やむを得ないコストの増大はいずれは価格に転嫁せざるを得ないものもあると思いますが、しかし、それがもし一斉に表面化するというようなことになりますと、再び物価の騰勢、インフレ心理の再燃を招くおそれがあるわけでございまして、価格への転嫁がやむを得ないものにつきましても、それを最小限度にとどめ、かつできるだけ時間をかけて徐々に行われるようにすることが必要であると考えるのでございます。
 主要商品の建て値の問題のほかに、いろいろな公共料金等につきまして値上げの問題もございます次第でございまして、彼此勘案いたしますと、物価の先行きにはなお楽観を許さないものがありまして、物価の安定を確保していくためには、今後とも引き続いて相当の努力を払っていかなければならないと考えておるのでございます。
 政府におきましては、本年度末の消費者物価の前年比上昇率を一けたにとどめるということを目標にしておられるのでございますが、私どももぜひこれを達成する必要があると思います。しかし、それを達成するためには、本当に官民そろって一段と真剣に問題に取り組む気構えが必要であるというのが現状ではないかと思うのでございます。
 次に、当面の政策運営の態度につきまして、私どもの考えておるところを申し上げたいと存じます。
 御承知のように、私どもは昨年の年末ごろからの景気情勢や物価の動向にかんがみまして、石油問題発生後における異常事態に対処した金融引き締め体制をこれ以上続ける必要はないという判断のもとに、去る四月十六日から公定歩合の〇・五%引き下げを行ったのでございます。その後、引き続き経済の推移を見守ってまいったのでございますが、前に申し上げましたとおり、最近の経済情勢は、景気にかすかながら回復の動きが見られてはいるものの、その動きはごく緩慢なものにとどまっており、一方、物価は、前途安易な楽観は決して許さないのではございますが、目下のところ引き続き落ちつき傾向を続けておるというようなことから、今月の七日にさらに〇・五%の公定歩合の引き下げを実施いたしたのでございます。私どもといたしましては、この措置が物価の鎮静化傾向を損なわないで、今後における景気の緩やかな回復に寄与することを期待いたしておる次第でございます。
 このようにして、四月以来二回にわたって公定歩合を引き下げたわけでございますが、基本的には、先ほど申し上げましたごとく、物価の先行きにはなお楽観を許さないものがございますので、私どもの政策運営の基調としては、今後とも引き締めを維持していく方針をとっております。
 具体的に申し上げますと、金利につきましては従来に比べ比較的高目の水準を保っていきますとともに、金融機関に対する窓口指導を通ずる量的な調整も従来同様これを続けていく方針であります。これまで二回の公定歩合の引き下げ幅をそれぞれ〇・五%という小幅にとどめましたのも、あるいはそのときに預金準備率につきましてはこれを据え置くことにいたしましたのも、引き続き金融の量的調整を続けていくという政策運営の姿勢に基づいたものであることは申し上げるまでもございません。
 先ほど土光さんもおっしゃったのでございますが、また世間でも各方面にいろいろな声が聞かれるのでございますが、景気回復の動きがきわめて緩慢なものであることからして、もっと大幅な公定歩合の引き下げを行って、もっと積極的に景気の刺激を図り、企業の金利負担の軽減を図れといったような御意見があることは、私どもよく承っておるのでございます。私どもといたしましても、物価の安定を損なわない範囲で、景気が緩やかではあるが着実に回復に向かうよう、今後の政策運営上配慮していくことは当然でございますが、先ほど申し上げましたとおり、物価の先行きになお問題が残っておる現状におきましては、従来の景気回復期に見られましたようなV字型の景気回復をねらった積極的な景気刺激策はとるべきではないと信じております。私どもといたしましては、物価の安定を確保していくためには、今後の景気回復のテンポを従来の場合よりもずっと緩やかなものにとどめて、需給環境の変化、需給バランスの急激な変化によって、せっかくいままで落ちついてまいっておりまする物価の鎮静化傾向が崩れてしまうようなことが絶対にないようにということが、私どもの金融政策運営の基本的な態度でなければならないと思っておるのでございます。
 企業の金利負担につきましていろいろな要請もあるわけでございますが、もちろん、金利が下がりますと企業コストがそれだけ減るということは当然でございまして、いままで〇・五%ずつ二回引き下げ、一%公定歩合を引き下げましたが、それに追随して市中貸出金利ができるだけ早く下がっていき、結果的にはコストが減少するという効果を持つことは、私どもといたしましても期待をいたしておるのでございますが、金利政策は金利のコスト面の効果だけから運営をしていくべきものではなく、やはり金利が持っておる総需要ないしは資金需給の調整の重要な機能の一つであるという面を重視していかなければならないわけでございまして、金利負担を軽減するというだけの見地からさらに公定歩合を引き下げるというような考え方は、私どもはとっていないのでございます。
 なお、公定歩合に関連いたしまして、預金金利についてどう考えておるかというようなお尋ねがございましたのですが、私どもは、まだ消費者物価の騰貴率が二けたを続けており、年度内にそれをぜひ一けたにしたいということでございますが、二けたの続いているいまの状態のもとにおきましては、預金金利には軽々に手をつけるべきではないというふうに考えておるのであります。
 その場合に、いまの預金金利のもとにおいて、公定歩合ないしは貸出金利の引き下げの余地が絶対にないかと申しますと、それは必ずしもそうではないというふうに考えておるのでございまして、金融機関としても相応の努力をしなければならない局面でございますので、預金利子を据え置くことが現在において金利引き下げのブレーキになっておるというふうにも考えません。もちろん、金利引き下げの程度いかんにもよることでございますが、現状では、もうこれ以上貸出金利が引き下げられないという事態でもないかと思います。
 しかし、先ほども申し上げましたように、私どもといたしましては、当面公定歩合をさらに引き下げるということは考えておりません。もっぱら今後の経済情勢の推移、景気の動向、物価の情勢等の推移を冷静に見守っておるところでございまして、現在のところはさような配慮をいたしていないことを申し上げておきたいと思うのであります。
 なお、ここで、当面の私どもの政策運営に関連いたしまして、海外の情勢との関連について一言申し上げますと、御承知のとおり、昨年秋以降、米国、西独を中心として、海外主要国はそれまでの引き締めを漸次緩和してきておるのでございまして、それに伴いまして海外金利も昨年末来低下の傾向にございますことは御承知のとおりでございます。私ども四月以来二回にわたって公定歩合を引き下げましたのは、主として国内の景気、物価の動向に着目して実施したのでございますが、こういう海外における最近の動向をも考慮に入れましたことはもちろんでございます。
 しかし、内外の金利差ということがよく言われるのでありますが、なるほど公定歩合に関する限りは、わが国はアメリカ、西独よりかなり割り高なのでございますが、その他の諸国とはそんなに差があるわけではございません。のみならず、金利体系の中に占める公定歩合の地位は、各国の慣行、制度によりまして一様ではございません。日本の場合は、市中の短期のプライムレートはそのまま公定歩合に連動して動くのでございますが、各国におきましては必ずしもそういうことにはなっていないのでございまして、内外の金利差を公定歩合だけで論ずるのは必ずしも適当ではないと考えるのでございます。たとえば市中貸出金利をとりましても、わが国の金利は諸外国に比べて決してそんなに高いということではございません。
 また、短期の外資の流入という観点から内外金利差をよく問題にされる方もあるのでございますが、実際に外資が流入してくるルートについて考えてみますると、その金利差が現在そんなに大きくなっておるわけではございません。内外金利差という点だけから、わが国に対し大量の外資が流入し、日本の経済運営に対し撹乱的な影響を与えておるという状況ではないのでございます。
 私ども今後の金融政策の運営に当たりましては、海外情勢や海外金利の動向に十分注意を払っていく必要がありますことはもちろんでございます。この前、前週でございますか、欧州における一連の物価関係の国際会議に出席いたしたのでございますが、もう海外でも大体いまの金利が大底ではないかというような議論が多かったようでございます。特にアメリカ、西独では、金利政策の面からこれ以上景気を刺激するのはインフレをもたらす危険があるという意見でございまして、景気刺激が行き過ぎないように、その点にはやはり十分気をつけていかなければならないというのが、大方の一致した意見でございましたことを申し上げておきたいのでございます。
 西ドイツは、物価騰貴も大変小幅でございまして、引き締め政策から不況対策への転換も素早かった、また、その対策も大変積極的な思い切ったものであったのでございます。そのことから、私どもは、やはり物価の安定、インフレの克服ということがあらゆる経済政策の基本であり、そのことなくしては勇敢な不況対策もとり得ないという教訓を学んだような気がするのでございますが、わが国の場合におきましても、やはり物価の安定こそがあらゆる経済政策の前提であるということを改めて痛感させられたような次第でございます。
 いろいろと申し上げたのでございますが、私どもの当面の政策運営の姿勢は、景気を緩やかに回復させながら、その過程においていかにして物価の安定を定着させていくかということであると考えるのでございます。政府において三次にわたってとられております景気対策のねらいもそこにあろうかと思うのでございまして、人為的な、余りにも積極的に過ぎるいわゆる景気振興策によってV字型の景気回復を図ることは、この際とるべきではないと考えるのでございます。第三次不況対策に盛られておりまする線もおおむねそのような配慮に基づくものと考える次第でございまして、適正なものであるというふうに考えるのでございます。
 本当の意味の物価安定はなかなかむずかしいことでございまして、それには経済界全体が、いままでのような高度成長をもう望み得なくなっておるという日本経済の現状を十分認識し、そういう新しい環境に即応し得る体制を整えていくことによって初めて可能になると思われるのでございます。産業界におかれましても、そのことはよくわかっておられるのでございますが、やはり観念の上でわかっておりましても、昔の景気回復において見られましたようなV字型の景気回復が忘れられない感じの方もおられるのも無理からぬことでございまして、そのようなことがいろいろな大幅な景気振興策への要請につながってきておるわけでございます。
 私どもといたしましては、物価問題一つとりましても、いまやそういう急激なV字型の景気回復は望まれないのみならず、日本がいま置かれておりまする資源の制約、あるいは環境問題、その他いろいろなことを考えましても、昔のような高度成長を再び夢見ることは許されないのでございまして、いかにして節度ある安定成長のレールに日本経済を乗せていくか、いまはその過渡期にあるわけでございまして、それだけにきわめて慎重な政策運営を必要とする、そういう段階であるというふうに考えるのでございまして、その意味で、経済界その他各方面に対しましても、もうしばらくのごしんぼうをお願いしなければならないというのが私どもの考え方でございます。
#8
○横山委員長 ありがとうございました。
 これにて参考人各位の御意見の御開陳は終わりました。
 森永参考人には、お忙しいところ長時間にわたり御出席をいただき、貴重な御意見をお述べくださいまして、まことにありがとうございました。ここに、委員会を代表して、厚くお礼を申し上げます。
 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時四十二分散会
ソース: 国立国会図書館
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