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第075回国会 予算委員会 第4号
昭和五十年二月一日(土曜日)
    午前十時開議
 出席委員
   委員長 荒舩清十郎君
   理事 小山 長規君 理事 竹下  登君
   理事 谷川 和穗君 理事 湊  徹郎君
   理事 山村新治郎君 理事 小林  進君
   理事 田中 武夫君 理事 林  百郎君
   理事 山田 太郎君
      植木庚子郎君    大野 市郎君
      北澤 直吉君    倉成  正君
      黒金 泰美君    櫻内 義雄君
      笹山茂太郎君    瀬戸山三男君
      田中 龍夫君    谷垣 專一君
      塚原 俊郎君    西村 直己君
      根本龍太郎君    野田 卯一君
      藤井 勝志君    細田 吉藏君
      前田 正男君    松浦周太郎君
      森山 欽司君    安宅 常彦君
      阿部 昭吾君    阿部 助哉君
      石野 久男君    多賀谷真稔君
      楯 兼次郎君    楢崎弥之助君
      堀  昌雄君    湯山  勇君
      荒木  宏君    中川利三郎君
      野間 友一君    有島 重武君
      岡本 富夫君    安里積千代君
      小平  忠君
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  三木 武夫君
        国 務 大 臣
        (経済企画庁長
        官)      福田 赳夫君
        法 務 大 臣 稻葉  修君
        外 務 大 臣 宮澤 喜一君
        大 蔵 大 臣 大平 正芳君
        文 部 大 臣 永井 道雄君
        厚 生 大 臣 田中 正巳君
        農 林 大 臣 安倍晋太郎君
        通商産業大臣  河本 敏夫君
        運 輸 大 臣 木村 睦男君
        労 働 大 臣 長谷川 峻君
        建 設 大 臣 仮谷 忠男君
        自 治 大 臣
        国家公安委員会
        委員長
        北海道開発庁長
        官       福田  一君
        国 務 大 臣
        (内閣官房長
        官)      井出一太郎君
        国 務 大 臣
        (総理府総務長
        官)
        (沖縄開発庁長
        官)      植木 光教君
        国 務 大 臣
        (防衛庁長官) 坂田 道太君
        国 務 大 臣
        (科学技術庁長
        官)      佐々木義武君
        国 務 大 臣
        (環境庁長官) 小沢 辰男君
        国 務 大 臣
        (国土庁長官) 金丸  信君
 出席政府委員
        内閣法制局長官 吉國 一郎君
        内閣法制局第一
        部長      角田礼次郎君
        人事院総裁   藤井 貞夫君
        人事院事務総局
        職員局長    中村  博君
        内閣総理大臣官
        房広報室長兼内
        閣官房内閣広報
        室長      関  忠雄君
        総理府統計局長 川村 皓章君
        公正取引委員会
        委員長     高橋 俊英君
        公正取引委員会
        事務局長    熊田淳一郎君
        公正取引委員会
        事務局経済部長 野上 正人君
        行政管理政務次
        官       阿部 喜元君
        防衛庁衛生局長 萩島 武夫君
        経済企画庁調整
        局長      青木 慎三君
        経済企画庁調査
        局長      宮崎  勇君
        法務省民事局長 川島 一郎君
        法務省刑事局長 安原 美穂君
        法務省人権擁護
        局長      萩原 直三君
        外務省条約局長 松永 信雄君
        外務省国際連合
        局長      鈴木 文彦君
        大蔵大臣官房審
        議官      岩瀬 義郎君
        大蔵大臣官房審
        議官      藤井 淑男君
        大蔵大臣官房審
        議官      後藤 達太君
        大蔵省主計局長 竹内 道雄君
        大蔵省主税局長 中橋敬次郎君
        大蔵省理財局長 吉瀬 維哉君
        大蔵省証券局長 田辺 博通君
        大蔵省銀行局長 高橋 英明君
        国税庁次長   磯辺 律男君
        厚生省社会局長 翁 久次郎君
        厚生省保険局長 北川 力夫君
        厚生省年金局長 曾根田郁夫君
        農林省農林経済
        局長      岡安  誠君
        農林省農蚕園芸
        局長      松元 威雄君
        通商産業審議官 天谷 直弘君
        通商産業大臣官
        房審議官    宮本 四郎君
        通商産業省貿易
        局長      岸田 文武君
        通商産業省産業
        政策局長    和田 敏信君
        通商産業省生活
        産業局長    野口 一郎君
        資源エネルギー
        庁長官     増田  実君
        資源エネルギー
        庁石炭部長   高木 俊介君
        中小企業庁長官 齋藤 太一君
        中小企業庁小規
        模企業部長   藤原 一郎君
        郵政大臣官房電
        気通信監理官  田所 文雄君
        郵政省貯金局長 舩津  茂君
        労働省労政局長 道正 邦彦君
        労働省労働基準
        局長      東村金之助君
        労働省職業安定
        局長      遠藤 政夫君
        労働省職業訓練
        局長      藤繩 正勝君
        建設省計画局長 大塩洋一郎君
        建設省住宅局長 山岡 一男君
        建設省住宅局参
        事官      救仁郷 斉君
        自治大臣官房審
        議官      山下  稔君
        自治省行政局公
        務員部長    植弘 親民君
        自治省行政局選
        挙部長     土屋 佳照君
 委員外の出席者
        厚生大臣官房国
        際課長     綱島  衞君
        参  考  人
        (日本銀行総
        裁)      森永貞一郎君
        参  考  人
        (全国銀行協会
        連合会会長)  佐々木邦彦君
        参  考  人
        (全国相互銀行
        協会会長)   尾川 武夫君
        参  考  人
        (全国信用金庫
        協会会長)   小原鐵五郎君
        参  考  人
        (全国信用組合
        中央協会会長) 雨宮 要平君
        予算委員会調査
        室長      野路 武敏君
    ―――――――――――――
委員の異動
二月一日
 辞任         補欠選任
  青柳 盛雄君     荒木  宏君
  平田 藤吉君     野間 友一君
  正木 良明君     有島 重武君
  矢野 絢也君     岡本 富夫君
同日
 辞任         補欠選任
  野間 友一君     平田 藤吉君
  有島 重武君     正木 良明君
  岡本 富夫君     矢野 絢也君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 昭和五十年度一般会計予算
 昭和五十年度特別会計予算
 昭和五十年度政府関係機関予算
     ――――◇―――――
#2
○荒舩委員長 これより会議を開きます。
 昭和五十年度一般会計予算、昭和五十年度特別会計予算及び昭和五十年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、質疑を行います。堀昌雄君。
#3
○堀委員 三木総理が一番大きく掲げられております社会における不公正の是正、この問題を中心にして、きょうは経済的な側面からお伺いをしてまいりたいと思います。
 まず最初に、私は、昭和四十七年の十月三十一日、田中総理が就任されまして最初の所信表明が行われましたときに、本会議の議場で、本日私がここで申し上げたい趣旨とほぼ同じようなことを、実は代表質問でお尋ねしておるわけであります。そのときに、こういうふうな問題提起で伺っておるわけであります。「片方にはもうけのためには手段を選ばない会社、片方には静かにしあわせを求める国民と、二つを対置しながら、これからの問題をお尋ねをしてまいりたいと思うのであります。」
 本日お尋ねいたしますのは、ただ単に企業と国民と、こういう関係ではなくて、企業の内部におきましても、実は大企業と小零細企業の関係。さらに企業と、いま申し上げた国民の関係。国民の内部においても、所得の高い人あるいは資産を持っておる人と所得の低い皆さん、この間における格差。これらの格差を中心に伺うわけでありますが、私はその中で、きょうもお伺いをするわけでありますけれども、物価問題として、貨幣価値の損失と預貯金の目減りに触れて、四十七年三月の国民貯蓄は五十八兆五千億円、昭和四十六年の消費者物価上昇が六・一%であるとするならば、その減価は三兆三千億円で、国民一人当たり三万三千円実は預貯金の目減りをするのだという問題を、私はすでに四十七年に問題提起をさしていただいておるわけであります。当時はまだ六・一%という物価上昇でありますから、この問題は余り皆さんの注意を引かなかったのかもわかりません。しかし、今日では非常に大きな問題になっておることは、御承知のとおりであります。
 で、その次に、二番目には、要するに物価問題の中で、寡占価格、管理価格というものが大変大きな問題であるということに触れて、独禁法の強化を求めておるのであります。その次に、寝たきり老人の援護の問題に触れまして、これは御記憶があるかもわかりませんけれども、要するに、六十五歳以上の寝たきり老人三十五万人の中で、介護もなく一人で寝ておられる方が大体九万人ある。ひとつこれらのお年寄りの寝たきり老人のまくら元に福祉電話というものをつけたらどうか、できれば一年一万個程度で、十年計画ぐらいでやってもらいたい、こういう問題提起をいたしました。この問題にもきょうちょっと触れさせていただきます。それから法人税の引き上げに触れました。これは四十九年に実は実施をされておるわけであります。その他、交際費課税に触れ、その次の税金では配当控除等にも触れて、さらに衆議院、参議院の定数是正、政治資金規正に触れておるわけであります。
 本日は、この四十七年十月三十一日にやりましたものを、もう一回伺うわけでありますが、特に本日は経済問題にしぼって、政治資金や管理価格の問題には触れませんけれども、同僚議員がこれらについては触れていただくことと考えております。
 そこで、三木さんにお伺いをしたいわけでありますけれども、総理は、不公正の是正という問題が、いま物価が異常に上昇をしておる中では大変大きくクローズアップされておりますけれども、一体、物価上昇がこうならなくとも、いまの世の中には不公正があると思われるのか思われないのか、その点を最初にお伺いしておきたいと思います。
#4
○三木内閣総理大臣 この不公正というものは絶えず存在をすると思います。だから、まあ世界的に見ても、国内政治の面でも、いま、やはり不公正是正ということが大きな課題になっておる。南北問題でもそうですよ。それだから、国内においても、絶えず政治は不公正是正ということに目を注がなければならぬ時代であると考えています。
#5
○堀委員 そこでお伺いをしたいのは、現在の自由主義経済の市場原理を通じて行われるところのこの経済の仕組みですね、私はこの経済の仕組みの中に、実は不公正をもたらす基本的な問題がある、こう思っております。
 実は、御承知のように、自由経済というのは競争原理でありますから、競争原理というのは、競争すれば強い者が勝つというのが、これは物事の道理であります。そこで、強い者が勝って弱い者が負ける、こういう経過が集積されてくるのが、実は資本主義という経済の仕組みだ、こう私は思っております。だからといって、私がいまここで社会主義にしろという話をするつもりは毛頭ございません。ただしかし、すでに産業構造審議会でも、競争原理市場経済だけでは問題がある、計画性を導入しなければいかぬという問題にも触れられておるように、これらの大きなひずみ、自由競争によって生ずるひずみというものは、公的な処理によってカバーするのでなければ、私は、不公正の是正ということはできない、自由競争のままではできない、その公的な介入の仕方ということが実は不公正是正の中心課題だ、こう考えるわけでありますけれども、総理はどうお考えでございましょうか。
#6
○三木内閣総理大臣 確かに不公正是正の中には、公的介入を必要とする部門も相当にございます。
#7
○堀委員 そこで私は、これからの問題について、まあ私ども政府と国会の関係でありますから、民間の中でどういうふうにしていただくかということは、これは自主的な問題として、できるだけ民間の皆さんにも、これらの不公正の是正のための協力を求めたいと思います。しかし民間における不公正の是正についてはおのずから限界がある。その限界については、国がこれを補完するということが、私は不公正是正の、この際求められておる最重要な課題だと思いますけれども、総理はいかがでございましょうか。
#8
○三木内閣総理大臣 確かにそういう面があることは、お説のとおりだと思います。
#9
○堀委員 そこで、ちょっと福田副総理にお伺いをいたしますが、この前の年末の臨時国会で、参議院で羽生三七議員の御質問に答えて、こう言っておられます。「一番大きな社会的公正確保の手段は、これは歳出だと思います。財政の配分の問題である。それから第二は私は財源の調達の問題だと、こういうふうに思います。第三には金融政策の運営、そういうものであろうと思います。」まあこうおっしゃつて、公共料金にお触れになっておるわけでありますが、私はやはりここにちょっと一つ欠けておるものがある。それは何かといいますと、これはいまお話しの国に関与する部分はもちろんこうでありますが、もう一つ国に関与する部分で、公正を守るためには、現在問題になっております独占禁止法、要するに競争に対する正しいルールを確立するということが、やはり不公正の是正のために重要だ、私はこう思うのでありますが、もう一項これを御追加になる気持ちはないかどうか、お伺いをいたします。
#10
○福田(赳)国務大臣 あのときはちょうど予算委員会でありますものですから、私は、一つは財政の中の歳出面にある、一つは財源調達の歳入面にあると申し上げたのですが、まさにあなたの御指摘のとおりです。もう一つあるのです。つまり国家権力というか法的権力、その一つが独占禁止法である、こういうふうに考えております。
#11
○堀委員 そこで、きょうは独禁法の問題については同僚議員が後でお尋ねをいたしますので、私はこれには触れませんが、前段で申し上げたいまの三つの問題、歳入、歳出、金融という問題について、これからお伺いをしたいと思います。
 そこで、まず最初にお伺いをしたいのですが、本日の午前八時四十五分から、経済閣僚懇談会でございますか、が開かれたように新聞で承知をしておるわけでありますが、ここで、いまの景気情勢その他の問題についてどういう御決定をいただいたのか、ひとつ副総理の方からお答えをいただきたいと思います。
#12
○福田(赳)国務大臣 けさの経済対策閣僚会議におきましては、まず通産大臣から、当面の企業の運営状態、これに対する説明、報告を聞いたわけです。通産大臣の報告によれば、物価、国際収支、こういう面はまあ順調に動いておるようだが、一つ一つの企業をとってみると、それは、経営面から見ましても、あるいは雇用面から見ましても一非常に深刻な状態だ、それに対して、総需要抑制政策を変えることは主張しませんけれども、しかし個別のきめ細かい対策を必要とすると言って、幾つかの具体的な御提案が示されたわけであります。それに対しまして、関係閣僚からいろいろ意見の交換が行われましたが、結論といたしまして、何といっても、当面の最大の問題は物価を鎮静させることだ、このための施策を緩めるわけにはいかぬ、総需要抑制政策はその基調を堅持するということを確認したわけであります。しかし、同時に、通産大臣のいわゆるこの物価作戦の与える摩擦、これも深刻であるということを認識いたしまして、それに留意しながら個別の対策をとるということにする、そして個別の対策につきましては、関係各省で案をまとめまして、さらに経済対策閣僚会議に付議する、かように決めたわけであります。
#13
○堀委員 ちょっと少し具体的でございませんと、論議がかみ合いませんので、いまおっしゃった個別の対策ですね、まあ通産大臣が御提案になった個別の対策でも結構ですし、要するに、決まったかどうかは別として、各省に個別の対策について詰めるようにという話ですが、どういう個別の対策を詰めるのか、ちょっとその個別対策というものの具体的な問題、それでは通産大臣からひとつ御答弁をいただきたいと思います。
#14
○河本国務大臣 現在の経済界の実情にかんがみまして、個別対策といたしまして、第一に、中小企業向けの融資を円滑にしなければならぬということ。それから第二には、滞貨、減産資金等に対する配慮が必要であるということ。それから第三には、住宅向けの融資を円滑化する必要があるということ。それから第四には、公害防止産業を中心といたしまして財政投融資を拡充していくということ。第五には、財政支出の弾力的な運用。まあその他いろいろございますが、そういう事項につきまして、関係大臣の間で検討をしていただきたい、こういうことを言ったわけでございます。
#15
○堀委員 私、新聞で承知をしておるのでありますが、通産大臣は参議院の本会議で、この不況対策として、現在たな上げになっております四十九年度分の公共事業をおろしてきたらどうかというふうに御答弁になったように、新聞で拝見しておるのでありますが、これはどういうふうなお答えかを、ちょっとそこだけをお答えいただきたい。
#16
○河本国務大臣 いま公共事業は、原則的には大体八%がたな上げになっておりますが、そのほかに契約、施行が非常におくれておりまして、その大幅におくれておる八%以外の公共事業、これをまず円滑に進めていこう、こういうことを本日議題にいたしました。
#17
○堀委員 そこで、いまの問題については、私それでこれから御検討いただければ結構だと思いますが、少し私は、国民の中でどういう形でこのいまの経済状態が受けとめられておるかという点について、まず客観的なバックグラウンドを、ちょっと御説明しておきたいと思うのです。
 そこで、実は総理府統計局の家計調査報告によりまして、収入階級別の収入と支出の対前年同月に対する伸び率というものを試算をいたしてみますと、実は御承知のように総理府では、所帯収入に伴って第一から第五までの分位に区切って統計がとられておりますが、その統計の中の一番所得の低いところが第一の分位であります。第一の分位は、四月には月の収入が九万五千四百十七円であります。第五の分位というのは、四十九年四月が二十三万三千三百六十一円、こういうふうになっておりますが、この一番下の階層と一番上の階層ではどういう変化があるかということを申し上げますと、実は四月には対前年で収入は二〇・七伸びております。しかし、消費者物価の前年同月比は二三・三でありますから、マイナスです。五月は三二・二伸びました。消費者物価は二丁三でありますから、ここでは実質プラスになりました。ところが、六月は一六・七の伸びでありまして、消費者物価が二一・七でありますから、五%くらいここでも実質減であります。七月が一七・五、消費者物価が二三でありますから、ここで実は五・五のマイナス。八月は二一・七で、これが、消費者物価は二二・八でありますから、一・一のマイナス。九月が一九・三、これが、消費者物価は二一・九でありますから、約二・六のマイナス。要するに、一番所得の低い国民は、四十九年の四月から九月の間では、五月に初めて実質的にプラスがあったが、実はずっと実質収入としては前年を下回るという状態になっておるわけですね。ところが、第五分位になりますと、一番所得の高いところは、四月が二六・六、二三・三に比べて三・三高い。五月が三二・八。これももちろん高い。六月が二八・二、消費者物価は二一・七でありますから、ずいぶん高い。七月は五三・一でありまして、二三の倍以上実は実質所得も上がっておる。さらに八月が二六・九で、消費者物価は二二・八でありますから、これも約四・一高い。九月が二五・六でありますから、二一・九に対して三・七高い。要するに、昨年の状態というのは、国民全体として見るよりも、やはり私は中身で物を見ておかなければならないと思います。そうすると、所得の低い方の実質収入は、一カ月だけで、あとは全部下がっておる、所得の高い方は、実は著しく所得はふえておるというのが実態です。
 さらに、消費支出を見ると、こういう影響を受けて、大変大きな問題が起きております。第一分位の所得の低い層は、四月が前年比で二・二、消費者物価二三・三の上昇ですから、二・二の上昇というのは大変な落ち込みです。同時に、五月が九・〇、六月が五・九、七月が五・三、八月が五・八、九月が一三・一と、いずれも消費は大幅に切り詰められておるというのが現状です。ところが、第五分位の方へいきますと、四月が四三・一、五月が三六・九、六月が五二・二、七月が五六・二、八月が五五・九、九月が三九・九と、いずれも消費者物価の上昇の倍くらいの消費支出の伸びがある。これが、現在の国民の中における所得の低い層と高い層が、どれだけこのインフレによって大きな影響を受けておるかということの実態を、私はあらわしておると思います。
 そこで、まずこういう問題を土台にしながら、私はこれからあとの問題、要するに、歳入における不公正あるいは歳出の問題等にちょっと触れていきますが、まずはこれをひとつ頭に置いておいていただきたいということが第一であります。
 第二は、企業格差の問題でありますけれども、これはデータが四十七年から四十八年一月までの民間企業の実態でありますけれども、要するに、五百万円までの資本金の会社というのが、全体の七八・九%を会社の中で占めております。そうしてその利益は全体の一三・三%です。一社当たりの利益は百四十六万円。五百万円から五千万円の間の会社は、企業数で一九・四%、利益は二二・七%、一社当たり一千十二万円。ところが、五千方円から十億までの会社というのは、構成比としては一・六%しかありません。しかし、利益は一六・七%、全体の中で持っていっています。十億円以上の会社については、千五百十八社でありますけれども、全体の中における構成比は〇・一%でありますが、利益は全体の中の四七・二%を実は持っていっておる。いかに、企業の中においても大きな企業が巨大な利益を持っていく反面、多数にある小零細企業というものはごくわずかの利益しか上げられないで苦しんでおるというのが、実は現在の客観的な情勢です。で、この問題は、昨日、矢野書記長がお触れになっておりましたけれども、金融の問題等についても、いまの一番利益の高いところの金利が一番安くて、一番利益のないところが一番高い金利を負担しておるということも、実は現在の世の中の仕組みですね。不公正の一つのあらわれだと私は思うのであります。
 まあ一応会社と個人とのバックグラウンドを申し上げましたけれども、そこで、現在、一年間に個人から会社へ移る人たちというのが実は大変たくさんにあります。昭和四十八年には約七万社くらい個人から会社に移る。なぜ個人から会社にというのがこういうふうにふえるのだろうか。これはもう申し上げるまでもなく、個人で事業をしておれば、その所得は累進税率でどんどん取られます一会社にすれば、まず会社の利益は比例税率で取られます。しかし、あとの個人の所得については給与所得で分散をされて、そして給与所得控除その他が働く。だから、いまの税法上では、個人業種というものは大変大きな税の負担をしていて、法人になれば非常に負担が軽くなる。それだけではありません。要するに、後でも触れますけれども、交際費の問題については、法人となれば、現在では一企業当たり年四百万円までは非課税というのが基本的な姿になっておりますけれども、個人業種についてはそういうものはない。言うなれば、個人と企業との関係において、そういう税制上の不公正があるために、あらゆる小さな人たちも、会社になることによって税金を少しでも安くしたい、合理的に安くしたいというのが、一年に七万件も法人成りが起こるというバックグラウンドです。
 そういうバックグラウンドばかり申しておりましたら、中身が進みませんので、そういうバックグラウンドを土台にしながら、私はこれからちょっと問題を伺うわけでありますけれども、まずいまの経済見通しの中で、まあ物価問題がいろいろ論じられておりますが、けさの新聞で見ますと、東京都の物価もやや鎮静をしてきたようであります。私がずっとこの委員会でも伺っておりますと、福田副総理は、何とか四月の消費者物価の対前年比を一五%くらいにしたいということを、まず第一点おっしゃいます。そうして、それをもとにして、実は賃上げもひとつ十分考えてほしい、こういうお考えが、総理を含めて、何回も述べられておるわけであります。そこで私は、この消費者物価というものが、果たしていまお話しのような形でいいのかどうかということをちょっと申し上げておきたいのです。
 それは、実は消費者物価の中で、食料費のウエートが約四〇八六あります。ほぼ半分が実は消費者物価の構成要素になっておるわけでありますけれども、この食料費の値上がりというのが、実は国民に一番こたえているわけです。直接にほかのものももちろんありますが、こたえておる。これを消費者物価の指数の中で、全体の指数と食料費の指数だけを取り出してみますと、大体三%内外実は現状では高いのです。たとえば二一%の消費者物価上昇のときには、食料費だけ見ると二四%ぐらいというふうに少し高い。ところが、これはただ、いまの購入品目を平均的に並べてあるわけでありますけれども、第一勧業銀行の方で、日常購入品物価指数というものを実は計算をされておる。これはその日常購入品の中の頻度を考えて、ウエートを取り直して実は計算をされておるデータがあります。これは非常に私は参考になるデータだと思う。なぜかというと、いまの消費者物価指数について国民の中にあります感覚は、物価の値上がりというのはそんなものじゃないのだ、もっと高いのだ、こう言っているのですけれども、しかし皆さんの方のデータは、いまそういうことになっているわけです。ところが、この日常購入品物価指数の最近の動きというのをいまちょっと申し上げますと、四十九年の一月からさあっと言いますと、四十九年の一月で七・一%、東京都区部の消費者物価と違います。高くなっています。二月が九・五、三月六・〇、四月が八・〇、五月三・六、六月四・四、七月六・五、八月七・四、九月五・〇、十月五・九、十一月五・三、十二月三・一と、いまのを算術計算で平均すると、六%実はいまの総理府の消費者物価指数よりも高く出ているわけです。これは第一勧業銀行がすでに長くやっておられる非常に貴重な資料だと私は思うのですが、そこで要するに、いま皆さんの方で、何か消費者物価指数だけが賃金の目安のようにおっしゃっておるのは、私ちょっと疑問があると思うのです。要するに、賃金というのは生活をするための賃金で、統計のための賃金ではございませんから、生活をするための賃金である以上、生活実態が十分組み込まれた物価指数というものが土台になるべきだ、こう考えるわけですね。そうすると、この東京都の場合でも、十二月はその差が三・一%に減っておりますから、それは四月の段階で幾らになるかを予測することはできませんが、少なくともかりに一五%になったとしても、三、四%の上乗せというものが生活実感として、実態の生活の中での物価の問題だ、こう考えるのですけれども、経済企画庁長官、それについてのお考えを承っておきたいと思います。
#18
○福田(赳)国務大臣 堀さん御指摘の点は、私はそういう問題があると思うのです。
 つまり、先ほどもお話がありましたが、第一分位、第五分位、こういうものを分けて考えますと、インフレは第一分位の人に強く響くと思うのです。第五分位の人は、それに比べるとかなり緩やかに響いてくる、こういう状態があると思うのです。一般の大衆の中には第一分位の人もかなりおるわけですから、そういう人たちの実感から見ますと、インフレというものは非常に響くわけです。
 いまの消費者物価指数のお話でございますが、これは一般的、総合的のものであります。あれを国民階層各級に区分して適用してみるということになりますと、またかなり違った感触も出てくるのじゃないか、そういうふうに思うのです。しかし、いま政府の方では、消費者物価指数をそういうふうに区分しておりませんものですから、総体としての消費者物価指数ということで、総理府においてこれを調べまして、そしてこれを施策の参考にするということでございます。しかし、同時に、お話のような各界各層に対するいろいろな段階的差別的な影響のあるインフレでございますから、インフレの及ぼす社会的不公正というような問題を考える際には、そういう問題もちゃんと頭に置いて施策しなければならぬ、こういうふうに考えております。
#19
○堀委員 ですから、いまのその賃金問題を考えていただくときには、そういう生活の中身に関係する生の物価の問題と同時に、この一年間の物価上昇の問題、この二つも含めて考えませんと、いま私が申し上げたように、要するに、未曾有のベースアップだというふうに皆さん思っていらっしゃる四十九年のあのベースアップが行われた中で、実はちっとも実質賃金にはね返らなかった人たちがかなりたくさんいるということを十分頭に置いて、これから物価と賃金の問題について臨んでいただきたいということを、私は強く要望しておきたいと思います。
 そこで、実はこれから歳入の不公正の問題について触れてまいりたいと思います。
 大平大臣は、この間、広瀬委員の本会議における質問に答えて、要するに、課税最低限を引き上げているから、これは所得の低い層には大変プラスになっているとお話しになりました。確かに、今度、課税最低限の引き上げによって税負担のなくなる層はいいと私は思うのですけれども、ところが、実はこの問題については、いま大蔵大臣がおっしゃった問題以外の問題が含まれておるということを、ちょっと申し上げておきたいと思うのです。
 この五十年度税制によりまして、給与収入を土台にしながら、今度軽減された税額は一体幾らかというのをちょっと申し上げますと、二百万円の給与収入の人は軽減額が二万三千五百円です。五百万円の人は八万九百七十五円です。一千万円の方は二十九万四百五十円です。五千万円の方は百六十万二百五十円です。仮に一億円の方があるとするならば二百八十九万七千七百五十円。今度の課税最低限の引き上げ額は、実は約三十万円ぐらいですか、百五十万円から百八十三万ですから三十万円ぐらいですが、それだけ課税最低限を引き上げると、一番得をするのは実は一番高い層の人たちです。私は、この問題をかねてから大蔵委員会で、どうもこれは問題があるんじゃないだろうか。実は、下の方の層を課税からはずそうといって努力をすると、そのあおりは、実際は上の方が財源をどんと持っていくという問題が現実に起きておる。私は、いま自民党の議員をしておられる塩崎さんが主税局長当時、特にこの問題を取り上げて、ひとつ課税の問題について消去税率というものを考えたらどうかという問題を提案したことがあるのです。ある一定のところまでは、いまの三十万円の課税最低限を引き上げたことによって、効果があっていいと思います。しかし、一定以上のところ、特に、さっき私が申し上げたように、この五分位というのは、まだそんなに高い層ではありません。年収三百万円ぐらいのところが五分位でありますが、それ以上が入っておりますが、ともかく、一千万円なり二千万円なりというようなところへいきましたら、生活費よりもたくさんの余剰があるのです。その人たちに、たくさんの財源を使って減税をするという、いまの仕組みに問題があるのじゃないかという問題提起をして、塩崎さんも全く同感だということで、少し老人の問題等に導入してもらったことがありますけれども、実は税の本体としては、この問題は今日まで置き去りにされておるわけです。財源がこれからだんだん厳しくなる中で減税をやるというときには、やはり所得の低い方に行って、所得の高い方にはできるだけそういう財源を使わないという考え方の減税を考えなければならぬ時期に来ておると思いますが、大蔵大臣、いかがですか。
#20
○大平国務大臣 二つ問題があると思います。減税をやる場合にどういうところから切り込んでまいるかという問題と、累進税率をどのように配列していくかという問題があるのではないかと、御質問から拝察するわけでございます。私は、わが国の所得税制が、国税と、それからそれに地方の税金も加えまして、ただいまの状況は、先進諸国に比べまして、不当に安くなっておるものとは決して思わない。不公平になっておるものとは思わないのでございまして、高額所得者に対しましてむしろ比較的高い状況になっているように理解をいたしておるわけでございます。所得の多寡があることは、悲しいかな現実でございますが、それに対して税が関与する場合におきまして、いまのわが国の所得税制といたしましては、そんなに高額所得者に対して甘くなっておるものとは承知いたしていないのでございます。
 しかし、なお、いま示唆されたようなことで検討すべきものありとすれば、検討することにやぶさかでございません。しかし、技術上の問題もございますので、主税局長から補足説明を……。
#21
○堀委員 いや、けっこうです。あとの問題はまた一般質問等で詰めさせていただきますが、もう一つ、そこで今度は所得税減税千九百五十億円。これは身体障害者その他の問題をはずしまして、一般は千九百五十億円です。それに対して、今度は実は三千五百七十億円増税になるのです。増税の中身は、酒で千七十億円、専売益金の増分で二千五百億円、合計三千五百七十億円。ですから国民は、実は千九百五十億円との差額、差し引き約二千億円近くの増税を負担することになるわけです。
 そこで、さっきの第一分位、第五分位という所得階層別に見て、要するに、酒やたばこがどういうかっこうではね返るのかということを、総理、ちょっとよく聞いておいていただきたいのです。四十七年の「家計調査年報」で計算をいたしますと、実は、第一分位の方は一カ月に酒を千百四十二円消費しておられます。それから第五分位の方は千七百四十四円実は消費しております。確かに所得はちょっと上がっていますので、その方が多いんですが、その所得の開きは、この年は年収が第一分位が七十六万五千円、第五分位が三百五万九千円で、その比較をすると、三・九九、一対四の比率です。ところが、これに対して酒の方はどうかといいますと、これは二・六三しか開きがない。さらに、たばこについて言いますと、第一分位の方が七百六十二円一カ月に消費します。第五分位は七百九十八円消費します。ほぼ変わりありません。これで見てもわかるように、所得の実質収入が減り、支出はめちゃくちゃに減っておる第一分位の人と、大変実収入はふえて、消費はもう倍もこれまでよりもふえておる人たちとが、実は同じ負担をする。ここに私は、こういう間接税の増税というものがいかに低所得の方に厳しく響いておるかということは明らかだと思います。総理大臣、これはどういうふうにお感じになりますか。要するに、こういう税金を納めていない人たちからも、低所得の皆さんからも、酒とたばこで税金を取り上げる、この物価上昇の中で取り上げる、これについての総理のお考えを承りたい。技術論は結構なんです。これは何でもないことです。
#22
○三木内閣総理大臣 消費税の性格は、そういう点になかなかいろいろ問題があることはやはり認めます。しかし、それを一般の所得水準に比べて、酒でもたばこでも、値段をそう違えるというわけにもいきませんで、確かに消費税は、一つのそういう面を持っておることは事実でございます。
#23
○堀委員 要するに、税金を専門にやっておる人たちには、直間比率がどうだ、直接税がこれだけのパーセントで、間接税のパーセントはこれだけ下がってきた、これはできるだけ均衡させなければならぬと、理屈の話はそんな話があるかもしれません。税金というものは、国民生活に結びついていなければ、これは不公正をもたらす原因になるのじゃないでしょうかね。そうすると、いまのようにインフレで物価が非常に上がっていて、低所得の人たちが収入支出の面で追い込められて、高額所得者はぬくぬくとやっているときに、一番弱い層に影響のある部分、ここから間接税を取り上げるという発想が、私は、三木さんの言っておられる不公正の是正ではなくて、不公正の拡大だと思うのですけれども、不公正の是正になっておるか、拡大になっておるかだけを、総理からお答えをいただきたいと思います。
#24
○三木内閣総理大臣 間接税には、どの問題も、やはり所得によってそういう格差をつけるということのむずかしさがあって、間接税を所得の区分によって差をつけるというようなことは、日本ばかりでなしに、どこの国においてもやっていないわけですから、それはそういうふうに言えば、間接税というものは不公平な面を持っておることは確かでしょうが、それだけでなしに、それを全般にいろいろな面で補っていくことが政治でしょう。どこの国だって、そういうように言えば、やはり不公正な面は確かにあることは事実です。
#25
○堀委員 私は間接税を否定するものではありません。ただ、間接税を取るのは、どういうときに取るべきか、どういうときは取るべきでないかという判断が、政治の問題じゃないでしょうか。私も財政を長くやっておりますから、間接税を否定なんてしません。当然間接税も負担をしていただかなければなりません。しかし、このように所得格差が広がり、要するに弱い国民の層が非常な圧一迫を受けておるときに、財政上の問題があるから、直間比率の問題があるから、というだけで処理をすることは適当でないということを言っているわけですよ。だから、この際こういうことをやるのはもう少し見合わせたらどうか。しかし、見合わせるだけでは、財政ですから、これは問題が残るでしょうが、これはあとでも、私は問題を提案させていただきます。
 そこで、その次の問題は、実は、今度の大蔵省から出された資料の中に、「利子配当課税の適正化」という項目があるのですが、大蔵大臣、この「適正化」という言葉はどういうことを意味しておるのでしょうか、ちょっと最初にお答えをいただきたいのです。
#26
○大平国務大臣 利子・配当所得につきましては、御案内のように、いま分離課税の道が開かれておるわけでございまして、それにつきましてとかくの批判があるわけでございます。したがって、それにつきまして、できればこれを本則に返しまして課税するのが適切な措置とは考えますけれども、それが現実にむずかしい状況でございまするので、課税の強化という姿においてこの際対応させていただこうというような措置を講ずることを、「適正化」という表現で答えたわけでございます。
#27
○堀委員 これが適正であるかどうかは、これから具体的に申し上げます。
 総理大臣、これはもう本当の専門家でない立場でお答えいただいて結構なんですけれども、いま、国民の中で、源泉徴収を一五%だけ取られたら、所得が一億円あっても確定申告をしないでもいい人があると、こう私が申し上げたら、総理はこれを、一般国民の立場から、不思議だなというふうにお考えになるかどうか。そこをちょっと伺いたいんです。
#28
○三木内閣総理大臣 税というものに対しては、いろいろ技術的な面があるが、それはあなたの言われるとおりだと思います。
#29
○堀委員 総理、私はずっとこの間の委員会から、総理の御答弁を伺っておりまして、やはり議会の子だけあって、答弁は大変お上手だと思うのですよ。私どもが聞いておることにお答えにならないで、さっとそらしてしまう。必ずそらす。なかなか大したキャリアをお持ちになっておると私は思うのですが、もうちょっとまともに答えていただかなければ、前に進みませんから、いま私が申し上げた源泉徴収を一五%取られたら――しかし、だれでも所得があれば、本来、一億円もあったら確定申告するというのが当然でしょう。それを確定申告しないでもいいという制度があるのですよ。だから、それはおかしいと思われるか、いやそれは当然だと思われるか、それだけ答えてください。
#30
○三木内閣総理大臣 あなたは専門家だから、どういう伏線があるのか知りませんが、(笑声)しかし、それはおかしいことだと思います。
#31
○堀委員 私がいまこの問題を提起することについて、恐らく、委員の皆さんの中にも、私が何を言うかと思っていらっしゃる方もあるかもしれません。皆さん、新聞記者の皆さんもおかしいと思われると思うのですね。
 それは今度の税制改正の中にあるのです。要するに、普通預金等の利子及び一銘柄年十万円以下の配当の確定申告不要制度を五カ年間延長するというのがあるのです。そこで、現在、東京証券取引所に上場しております会社は千三百九十社あります。この中で、十一月現在で一ちょっと最近のものをよく調べられませんから、これは昨年ですが、十一月現在で、配当しております会社が千二百五十社あります。そこで私が、十分金があれば、この千二百五十社の株の配当が年に十万円すれすれになるように、片っ端から買うわけです。そうすると、一五%の源泉徴収は取られますが、八万五千円私の手元に来ます。一会社当たり八万五千円。千二百五十社全部買いましたら一体幾ら買えるかというと、そのときの配当金が一億六百二十五万円までいけるのです。一億六百二十五万円の所得が私はあるわけです。しかし、確定申告は要りませんと法律で決めて、それを五年間延長する。よろしゅうございますか。いま、これを東証の利回りやその他で計算をしますと、これに必要な財源は四十三億二千九百八十一万円ありましたら、要するに、年間一億円、いまのような確定申告なしでともかくやれるわけですね。(「相続税でごっそり取られるよ、そんなものは。」と呼ぶ者あり)相続税の話じゃない。そういうことを言ったらだめですよ。いかに物がわからぬかということを証明するだけです。これは皆さん、どうでしょうかね。こういう不公平税制を五年間延長することが適正だということになっておるのですね。これは私は一つ問題があると思います。
 それから、その次に、要するに、いまの利子・配当に対する源泉徴収税率の軽減の特例というのがありますが、これは所得税法百八十二条で、本則は、二〇%の源泉税を取りますとなっているのです。それを租税特別措置で一五%にまけてやっておるわけですよ。こういう人のためにまけてやっておるわけです。そのまけてやるのも五年間延長しましょう、これも高資産所得者に対する優遇税制で、適正化だと私は思いませんね。
 その次は、少額国債の利子非課税制度を三百万円まで五年間延長する。いま銀行の貯金は、マル優で三百万円は無税ですね。その上に三百万円国債を無税にしてあげましょう、利子は無税にしてあげましょう――昨年の十一月の貯蓄中央推進会議ですかの調査によりますと、六千世帯の調査で、国民の昨年十一月現在の平均貯蓄額は二百三十五万円だと報告されておるんですね。大体二百四十何万とか、いろいろなデータがありますが、大体二百五十万円内外のところにあるわけですね。一般国民は二百五十万しか貯蓄していないときに、マル優の三百万円の上に、さらに国債三百万円持つ者に対して五年間無税を延長しましょう、これは高額所得者の優遇でしょうね。総理、いかがでしょうか。
 いま私は、ここまで触れて、最後にもう一つ肝心なところに触れたいわけですが、そのもう一つの肝心なところというのは、利子・配当所得の源泉分離選択課税の制度については、選択税率を三〇%に引き上げ、五年間延長する。ことしの十二月三十一日までは二五%ですが、五十一年から三〇%にしようというわけですね。ところが、実は、この三〇%というのは一体どこで線が区切れるかということでありますけれども、いま、課税所得で見ますと、課税所得の実効税率は千五百万円のところで三一・七%となっております。四人家族の給与所得で見ますと、この人たちは、給与所得は大分控除がいろいろありますから、給与収入で見ると二千五百四十九万円のところになっているわけです。そこから上の人は、要するに三〇%で本来総合課税しなさいとなっているのですから、それを分離課税にするために、そこから先は非常に得になるわけですね。要するに、総合課税すれば税率が高いから。
 そこで、その税率の高さについては、実はこういうことになっているわけです。課税所得金額で、どこかと申し上げますと、四千万円のところでは実は税率が六〇%です。それから八千万円のところでは七五%の総合課税を取られるわけです。そこから上積みはですね。そこで、二年定期、八%の金利で、仮にそういう人が千二百五十万円貯金を持っているとすると、一年間の利子は百万円ですね。この百万円の人が分離課税を選択すれば、三十万円税金を取られたら終わりなんです。しかし、この制度がもし仮になければ、さっき申し上げた四千万円のところが六〇%ですから、三十万円さらに払わなければいけないのですよ。六〇%の税率ですから、百万円で六十万円払わなければいけないのに、三〇%でまけてもらうから、三十万円得するわけです。八千万円以上の人は七五%ですから、四十五万円得するのですよ。本来の総合課税すべきものを、延長したために四十五万円も得をする。総理、私の申し上げておることはわかりますね。
 要するに、私がなぜ適正化を伺ったかというと、だれのための適正化かということに問題があるわけです。私がいまずっと申し上げたのは、いずれも高額所得者のための適正化であって、たとえば三〇%の税率以下の所得の人には何の恩恵もありません。要するに、国債三百万円といっても、二百五十万円しか貯金のできない者にとって、国債を買う余裕はないのです。どれ一つとっても、これらの適正化というのは、高額所得者の適正化にしかなっていないと思いますけれども、総理はどうお考えになりますか。大蔵大臣は後で結構ですから、総理にお答えをいただきたいのです。これは常識論を伺っているんですから。
#32
○三木内閣総理大臣 税制には、税制全般のいろいろなバランスを考えての措置がありますから、それは当局から、大蔵大臣からお答えさせます。
#33
○堀委員 私は、あとの問題は大平大臣に伺いますが、これは政治判断の問題なんですよ。要するに、私はここで技術論を総括質問でやろうとは思っていないのです。ただ、バックグラウンドだけははっきり申し上げておかなければ物の判断はできないと思うから、それを具体的に例示をして、総理御自身が一体しいま私が申し上げた全部ですよ。これは適正化となっておる中身全部、これを五年間延長することが、一般の所得の低い水準の多数の国民のためなのか。そうじゃなくて、大体二、三十万くらいしかいないと思いますけれども、これらの一握りの高額所得者のための適正化なのかということを伺い、これが不公正の是正と大きな関係があるということを一つ頭に置いていただきたいのです。お答えを願います。
#34
○三木内閣総理大臣 税というものは、やはり全般の税制としての体系というものを持っておるのでしょうから、それ一つをとらえたら、堀さんの御指摘のように、いかにも不公正な感じもいたしますけれども、全体の税体系として、いろいろのバランスを考えておるのでしょうから、それは当局から説明するほうが適当だと思います。
#35
○堀委員 私はさっきすり変えるという問題を提起しておるのですが、国民がこれをどう感じるかということですね。国民というのは、みな専門家じゃないのです。私がいま申し上げたことについて、この適正化というのは、いずれも高額所得に対する適正化であるということは、皆さん異論はないでしょう。そのとおりなんだ。私は何も事実を曲げて言っておるわけではないのです。現実に、具体的な科学的な分析の上で物を言っておるわけですから、御判断だけでいい。このことについてだけ伺えばいいのです。全体のことは全体で、あとからまた申し上げますから、この問題だけについては不公正な税制だと私は思いますが、いかがでしょうか。その点一点だけにお答えをいただきたいと思います。――私は総理大臣に答弁を求めておるのです。総理大臣に政治的な答弁を……。
#36
○三木内閣総理大臣 いまのお話は、いま堀さんの言われるようなことをもってすれば、確かに不公正と言われる御指摘の面はあると思いますよ。しかし、税はそれ一つでなしに、税制全体の中でいろいろなバランスを考えていくわけですから、それ一つをとらえて、いかにも税制全体が高額所得者の……(堀委員「全体じゃないですよ、ここだけですよ」と呼ぶ)高額の優遇であるというような断定は、私はできないと思う。それだけをとらえれば、確かに、御指摘のようなことは、素人から考えれば御批判はあると思いますよ。しかし、税は全体を考えなければいかぬということを申し上げておきます。
#37
○堀委員 そこで、大蔵大臣、私は、この表現が、最初から「適正化」と書いてあるのは非常にひっかかったわけですね。高額所得優遇というのが「適正化」というのはどうだろうか。確かにそれは、二五%から三〇%に引き上げたことは、私もマイナスだとは思いませんよ。しかし、三〇%にしてもどっちにしても、なおかっこれだけ大きな矛盾があるという問題は考えなければいかぬ問題でしょう。本来、所得税というのは総合課税が原則なんですからね。その点は、全体の問題というよりも、その点で申し上げておきたい。
 そこで私は、いまのいろいろな問題を背景にしながら、少し提案をさせてもらいたいわけですが、それはどういうことかと言いますと、結局、この一千万円以上の所得者というのは、給与所得者でありましても、今度、確定申告を必要とする限度は八百万円から一千万円に上げる法律を政府はお出しになっておるわけですから、一千万というのがある一つの基準として見ていいのですが、西ドイツは物価が非常に安定しておりますね。総理、御承知のように、先進国の中で、ちょっと例外的に一けたの物価で続いておるのは西ドイツだけなんです。私は西ドイツの経験にわれわれとして大いに学ぶべきものがたくさんあると思っておるのですが、きょうはその問題に幾つか触れますが、その中で、七三年の四月に、昨年やりました会社臨時特別税と同じように、企業に対して一〇%の付加税というのをやったのです。それと同時に、高額所得者に対する付加税も実は実施しておるわけです。税の公正という面から見るならば、いま私がここに申し上げたように、高額所得者には税制上の恩典がいろいろとあるわけです。さらにこういう人たちは、年収一千万円の所得のある人で、土地も家も持っていないなんという人は恐らくないと思うのですね。急に一千万円になるのじゃなくて、だんだん過去から積み上がって一千万円になっておるわけですから、土地もあり家もある方たちだということになると、この際、さっきの酒やたばこの歳入の見返りとして、この皆さんに、ひとつ一〇%の付加税を向こう二年間だけ、会社特別税と同じように、一遍御負担をいただいて、インフレの中における――さっき私の申し上げた五分位のところの、実質的にも収入がふえ消費を倍にもできるような人たち、こういう人たちには、全体の国民のために、公正な税制のために協力をいただく意味で、少し御負担をいただいたらどうか。そこで、一千万のところで実質の実効税率は二五・四%ですから、一〇%付加税をしましても、二・五四%ふやしていただくだけです。三千万円のところで四・二五%、八千万円のところで五・七二%だけ。一〇%付加税にしても、実質的な実効税率はその程度しか上がりません。これによる財源は、試算によると、大体千二、三百億から千五百億ぐらいまでの間の歳入がある、こう考えるのですね。私が申し上げておるのは、こういう際だから、ひとつそういう方たちから税金をいただいて、その分だけひとつ酒とたばこの増税を少し後ろへずらしたらどうか。そうすることが、福田副総理のおっしゃった、歳入における公正を守る一つの方法ではないか、こう私は思いますけれども、まず福田副総理から、ちょっとその歳入の公正についてお考えを聞きたい。
#38
○福田(赳)国務大臣 堀さんの御提案は、高額所得者に臨時付加税を二年間かけたらどうだろうと、こういうお話ですが、それも一つの考え方かもしれませんけれども、税は、とにかく大きな体系のもとにでき上がっておるわけでありまして、それほどの事情がなければ、それに対してかぶせて、臨時付加税というようなことはむずかしいのじゃないか。アイデアとしては、私はよくわかります。わかりますが、さあ、これをいまこの時点において実行するかどうか、かなりこれは慎重な検討を要すべき問題である、かように考えます。
#39
○堀委員 まあ私が申し上げておることは、一般に国民が見たら、私は余り無理のない話だと思います。所得の少ない人からいまこの時期に取らないで、少しでも延ばす。やめろと言っているのではないのです。しかし、その財源としては、収入もあり生活に不安もない、そして実際には、土地や何か持っていらっしゃる方、大変その土地の値上がりによって利得もふえておるであろう高額所得者にこの程度の負担をしていただくことは、私は余り問題ないと思いますが、慎重だそうですけれども、御検討をいただくそうですから、ひとつお願いをしておきたいと思います。
 その次に、もう一つ問題がありますのは、実はさっきもちょっと、四十七年の十月三十一日のときに触れました交際費課税の問題なんですね。交際費は四十八年には一兆六千四百五十九億円も実は使われておる。政府はたしかこの間、何か企業に向けて、交際費を自粛してもらいたいという提案をなさったように、私は新聞で拝見しておるのですけれども、この中で、これだけはちょっと問題がある点がございます。
 さっきと同じように、資本金別で申し上げますが、資本金別で、五百万円までの企業が四千三百六十億円使っておるんですね。それから五百万円から五千万円のところが四千百九十二億円使いまして、この方は利益とは逆立ちで、この両者を合わせまして、八千五百五十二億円の交際費が使われておるのです。そうして五千万円から十億のところは二千百十九億円、十億円以上は二千五百八十二億円で、この両者を合わせて四千七百一億円。言うなれば、これは小企業の方が大企業の倍も実は交際費を使っておるという実態が統計上明らかになっております。
 これはどこに原因があるかと言いますと、実はこれは昭和三十六年には、一社当たり三百万円と、それから資本金に対する千分の一を合計したものを免除してあげましょう、交際費から引きましょう、こういうふうになっておったわけですね。それだけはよろしいとなっておった。それが実は三十九年の税制改正で、一企業四百万円、それから資本金の千分の二・五まではよろしいと引き上げたのです。交際費課税問題というのは、これまた総理、非常に不公正な問題ですね。要するに、企業の中でいま部長とか課長とか重役は、会社の金を使って、ゴルフに行き、飲み食いをし、まあずいぶん使って、これが一兆六千億円ですからね。そうして、ともかく下積みの所得の低い人たちは、こんなものは何も恩恵に浴さないわけですから、こういう交際費、これはともかく私は、企業間における不公正の問題としても非常に大きいけれども、なぜこんなに所得の低い、資本金の小さな会社の方がよく使うかと言えば、実は一企業四百万円引いているからです。そこで、三十六年の水準に戻すために、千分の二・五は、この四十九年に三十六年ベースの千分の一に戻してもらいましたから、あとの四百万円を三百万円に戻す。これで、これはがさっと減りますね。いまこの不況の中で、これからの低成長に向かって、そういう交際費を、課税がないからといって使うことがいいとは、これは皆さんもお考えでないと思うのです。この際ひとつ交際費課税の限度を三十六年ベースに完全に戻していただいて、三百万円と、すでに行われておる千分の一に戻していただきたい、こう思うのですね。
 技術的な答弁は要りませんけれども、総理から、それは当然だというふうにお考えになるか、いや、やはり四百万でなければいかぬというふうにお考えになるか、私はひとつぜひこの際、こういう不公正是正こそ大事だと思いますので、まず総理の御答弁をいただきたいと思います。
#40
○三木内閣総理大臣 まあそういうのは、なぜ交際費を引き上げたかということは、やはりそういうときの理由があると私は思いますが、素人で言えということで、素人といいますか、一般の感じとして言えば、交際費は当然に自粛されなければならぬ、多過ぎることは事実であると思います。
#41
○堀委員 大平大蔵大臣、これは私、四十七年十月三十一日に田中総理に提案しているのですよ。ひとつ四百万円を三百万円にしましょう、こう言っているのですけれども、まあ今日までそのままになっておるのですが、これはぜひ真剣に考えていただきたいと思うのですが、大蔵大臣の御答弁をいただきたいと思います。
#42
○大平国務大臣 以前の三百万円に還元したらどうだということでございますが、その間諸物価が上がっておりますので、いまの四百万円というものが、堀さんの御指摘された、前の三百万円に比べて不当に高いものとは私は思いませんけれども、なお御指摘の点については検討してみます。
#43
○堀委員 そこで、これは税の問題の最後に、実は一つ御提案があるのですけれども、総理大臣、昨日からも一昨日からもお話が出ておりますが、いま食糧問題というのは大変重要な段階に参っておりますね。この食糧問題を、自給を進めたいというのが農林省の考えだと思うのです。ところが、今度、昨年からでもありますが、各種の農産物、たとえば、麦だとか大豆だとか、なたねだとか、てん菜糖だとか、各種のものについて奨励補助金を政府が出すことになったのですね。ところが、米は現在、議員立法で、米の転作の奨励金は、一時所得という取り扱いを受けて、三十万円特別控除してあげましょうという制度があるのです。その前に、私は長く大蔵委員会におりましたからあれですけれども、早場米の奨励金というのがありまして、これも実はそういう処置をとっておったわけですが、いまこれから食糧自給問題が大変重要な段階に来て、その重要な段階で、奨励金を出すけれども税金は取るんだというのでしたら、私はどうも、国が奨励金を出して、それからまた税金を取るという発想は、まあ非常に税の技術論にこだわるのなら別かもしれませんけれども、問題があるように思うのです。農林大臣はこれをどうお考えですか。
#44
○安倍国務大臣 確かにお話のように、米につきましては免税をいたしておるわけでございますが、これは米は、減反を農民に要請をいたしまして、その要請に基づいて、いわば補償的な意味合いをもって、免税措置をとっておるわけでございまして、麦はいわば生産を振興するというたてまえでの奨励金でございますので、麦をまたこの米と同じ措置にすれば、いまおっしゃるように、なたねとか、あるいはその他の各補助金にも、すべて影響が出てまいりますので、現在のところは、いろいろと議論があることも存じておりますが、米については、これは特別だ、こういうふうな考え方をとっております。
#45
○堀委員 私、農林大臣はもうちょっと――いまの奨励補助金を取るのに一生懸命努力したんでしょう、あなた。そうじゃないんですか。ほっておいてついたんですか。違うでしょう。一生懸命努力をしてつけてもらった。つけてもらったけれども、税金であとまた返しなさい、そういうことですね。あなた、これは全国の農民の前に答えてもらいたいんですがね。奨励金はつけたけれども、米以外は全部税金を払いなさいということだというふうに、ちょっとお答えいただきたいのです。そういうふうにお答えいただきたい。はっきり言ってください。
#46
○安倍国務大臣 米は生産調整ということで農民にお願いをして、補償的な意味があるわけですから、米については特別に税については考慮していただいておるわけですが、米以外につきましては、現在のところは、考えておらないわけであります。
#47
○荒舩委員長 ちょっとピントが狂っているな。質問と答弁の内容がちょっと食い違うようです。
#48
○安倍国務大臣 麦については……。
#49
○堀委員 農林大臣、だから、助成金をやったけれども、税金で取り上げますよということを、あなたは求めておるわけですね、あなたが農林大臣の立場で。そこを答えてほしいのです。
#50
○安倍国務大臣 これは私は、奨励金はやはり今後とも生産奨励のために出していただかなければなりませんが、税については、米について特別措置、その他については、それ以上、米と同じ措置をとっていただくという考え方は持っておらないわけであります。
#51
○堀委員 総理大臣、租税特別措置という制度がありますね。これはなぜ、一般の税制に対して不公正でも、こういう制度をやるかといいますと、国の政策目的によって、要するに、何らかの政策を推進するために、租税特別措置という制度があるのですね。いま、これからも論議がありましょうけれども、麦にしても、大豆にしても、なたねにしても、こういう各種の農産物は、自給率を高めようという国民的コンセンサスの中で、政府も踏み切って推進しようとしておる。推進しようとしておって、助成金を出しておいて、しかし税金で取り返すというなら、私はこれはやや少し問題があろうかという気がするのですが、総理は、これは一般論でどうお考えになりますか。
#52
○荒舩委員長 どうですか、堀君、これは総理大臣より大蔵大臣に……。
#53
○堀委員 私はここで大蔵大臣の専門的答弁を求めるんじゃなくて、この総括委員会では、総理の政治的判断を伺っているんですよ。だから、ここのところは政治的判断を聞かせていただきたいのです。もしあれなら、副総理でもいいですよ。
#54
○三木内閣総理大臣 政治的判断と言いますけれども、堀さんも御承知のとおり、税は税としての体系があるのですから、私の政治判断ばかりで、税の問題は解決できないわけです。だから、税制において、そういうものに対しては、一応の所得と見てかけておるんでしょう。しかし、やはりそれは税の当局から説明をされないと、政治判断、政治判断と言っても、税は全体としての体系を持ち、バランスを持っているのですから、一々私が政治判断を言うことは――ほかのことは言いますよ。堀さん、何も皆お答えいたします。しかしこの税について、全体の税体系の中で考えるのですから、一つだけを取り出して、これは不公平ではないか、おまえの政治判断を言えということは、多少やはり無理があると思います。
#55
○堀委員 それじゃ、大蔵大臣経験者である福田さんはどう感じられますか、いまの問題について。これは専門家だから。
#56
○福田(赳)国務大臣 これは補助金を出し、それを受けた農家から、その補助金も含めて総合所得があるわけです。それに対して……(堀委員「一時所得」と呼ぶ)一時所得ですか、税法の一般的な基準に従って納税していただくということは、私はこれは矛盾はない、こういうふうに考えます。
#57
○堀委員 私は非常に過大なことを要求しているんじゃないのですよ。一時所得にするというのは、特別控除が三十万円働くだけでして、あとは税金を取られるわけですね。だから三十万円までを一時所得として、控除、フェーバーを与えたらどうですか、こう言っているんでね。私はあまり無理なことを要求していると思いませんが、どうかひとつこれは自由民主党の皆さんも十分内部で御検討いただいて、国策としてひとつ農業生産を進めよう、自立を進めようというときに、助成金を出すけれども、米だけは無理にやらしたんだからやるけれども、それ以外は一切、一時所得の取り扱いもしないなどという冷たいことを言わないで、やはりその程度は考えて、農民の生産意欲を高めることが政治的な課題だと思うので、ひとつ十分政府を含め、自民党を含めて御検討いただきたいということを要望して、この問題は終わります。
 その次に、これはきょう郵政大臣がおいでになりませんから、総理大臣に伺うことにしておるのですが、さきの本会議で私が申した福祉電話の話です。
 この福祉電話は、私が問題提起をして、幸いにして昨年は二千五百台つきました。ことしは五千台つくことに予算がつきました。さらに身体障害者の皆さんに千二百の福祉電話がつくということで、徐々ではありますけれども、私が問題提起をした問題が前進しつつあることを、私は本当にうれしく思っておる一人です。
 ところが、実は今度、電電公社がこういう皆さんのために大変便利な電話機を考えたわけです。要するに、ぽっとボタンを押せば、それが病院だとか親戚だとかへつながって、一々物を言わなくても、ああ苦しいなと、ぱっと押しさえすれば、それですぐ向こうから信号が来て連絡ができるとか、各種の新しい福祉電話を開発してくれた。これも私は電電公社の皆さんの努力に敬意を表します。
 ただ一つ、この福祉電話は、シルバーホン「あんしん」、シルバーホン「めいりょう」、こういう二つがあるのですが、こういうのを取りつけますと、月額三千五百円の使用料を別に取るということですね。いまこれは、自治体と国とで実は費用を負担して、お年寄りの電話をつけてもらっているのですが、何もこれはそういうために開発をしたからといって、別の料金を取らなくても、ここらぐらいは、私は電電公社も考えたらどうかと思うのですがね。これはいまの社会福祉の中で本当に一番もうぎりぎりのところの皆さんですからね。だからこれは、郵政省として法律の処理も必要だと思いますが、せっかく福祉電話の使いやすくてお年寄りのためになるものをつけるのに、別料金を月に三千五百円も取る。おまけに電電公社では、自治体が払いやすいように、まとめて電話料をもらっても結構ですなんということを言っているのですが、自治体の負担にしたところで、これは住民の負担なんですよ。ひとつここは、何兆円という予算規模のある電電公社ですから、私は電電公社がこのぐらいのことは考えていいんじゃないかと思いますが、総理、いかがでございましょうか。これは常識論で結構です。
#58
○三木内閣総理大臣 常識論、法律論――常識論が多いようでございますが、これはどういう理由があったのか私は詳細知りませんが、どういう事情かよく調べてみることにいたします。
#59
○堀委員 総理、調べてみますだけじゃ、私、不満足なんですよ。要するに、何とかそういうものが特別の費用を取らないでやれるような方向で、検討していただきたいと思うのですが、もう一回お答えいただけませんか。
#60
○三木内閣総理大臣 郵政大臣と相談してみます。きょうは欠席ですからね。これはどういう事情でこういうようになったのか、いろいろ理由があることだと思います。私があなたに対して、いまここでどうするということを答えられるものではないわけですから、郵政大臣ともよく相談してみます。
#61
○堀委員 私は少し歳出についての不公正の問題もやりたかったのですが、大分時間がなくなりましたから、ここから、ひとつ私は、いま昨日来課題になっておりますが、目減り預金問題ですね、この問題について、少し伺っておきたいと思うのです。
 そこで、さっき申し上げましたように、いまの目減り問題というのは、私は金融機関の責任はあまりないと思うのです。あとで触れますけれども、金融機関自体の責任ではなくて、実は物価が上がることによって引き起こされておる、経済の仕組みから来ておる問題であります。しかし、いま国民の中には、何とかしてもらいたいという声は大変広く広がってきておるわけでありますね。そこで、ちょっとそのバックグラウンドをやはり申し上げておいた方がいいと思うのであります。
 これは国民生活白書でありますけれども、昭和四十八年十二月末現在の経済全体としての金融資産の債権債務関係を、日銀の金融資産負債残高表によって見ると、個人部門は、百二十兆百八十六億円の金融資産と四十九兆八千五百七十九億円の負債を持っており、差し引き七十兆一千六百七億円の債権超過となっておる。これに対して、法人部門は五十三兆五千八百九十三億円の債務超過、公社、公団及び地方公共団体は二十兆九千六百五十一億円の債務超過、政府は四兆三千八百四十三億円の債務超過となっている。いま仮に、昭和四十八年十二月から向こう一年間の物価上昇率を二〇%――これは大体二一・五くらいでありますけれども、二〇%、金融資産の平均利回りが八%であると想定すると、この一年間に、個人部門には約八兆四千億の実質価値の減少が生ずる一方、法人部門の負債は実質的に六兆四千億円減少することになる。私は本会議でも申し上げましたけれども、要するに、国民の貯蓄から、企業の借金の棒引きのために実は金が流れるということなんですね。ここに非常に問題があるのです。私が高額所得者の問題にも触れているのは、要するに、余り所得の低い人は借金できないのですよ、実は。借金ができる、借金の返済能力のある高額所得者の方、個人でもずいぶん借入金がありますけれども、そういう方向に実は流れていく、こういう問題があります。ですから、国民としては、どうしても何らかの目減り対策が欲しい、こうなっているのです。
 実は昨年の三月に、私は、当時の全国銀行協会長の第一勧銀の横田頭取、それから相互銀行協会及び全国信用金庫協会の、本日お見えになっておりますけれども、小原会長にお目にかかって、具体的な問題の提起をさしていただいたわけです。六カ月の定期預金で利率を年率で一〇%にして、一世帯一口に限る、そうして預け入れの申し込み期間は四月、五月の二カ月間に限定をする、この五十万円はマル優の特例として、その定期預金がなくなると同時に、これもその分についてのマル優はなくなる、こういう仕組みでひとつお願いできないでしょうかと御相談をしたときに、各金融機関では、そのくらいならひとつやってみましょうというお話を承ったのです。そこで私は、わが党の広瀬、武藤両議員と、当時の福田大蔵大臣にお願いをして、ぜひひとつこういうことで目減り預金の対策を立ててくださいとお願いしましたけれども、実は、信用組合や農協、その他労働金庫等に問題が起こるからだめだということに、結果的になったわけですね。そうして一年たった。最近、今度は福田副総理は大蔵大臣ではありませんけれども、何とか目減り対策をやろうという御発言があって、大蔵省もいま検討中ということです。
 そこで、実は参考人の皆さん、たいへんお待たせをいたしましたけれども、いまちょっと私が申し上げました、要するに、六カ月の定期で上限の金額が五十万円まで、そうして申し込み期間は四月から五月の二カ月間、まあこれ一回限りですね。で、これはマル優の特例として処置をする。取り扱いについてチェックの仕方は、銀行の窓口でひとつ印刷をした特別定期申込書をつくっていただいて、それを預け入れる方にお渡しをする。渡していただいたら、これを区役所なり市役所に持っていっていただいて、住民登録の上に検印をして、要するに、一世帯について一つでありますから、住民登録単位の一世帯について、自治体で、住所氏名を書いたものの上に判を押すと同時に、住民登録にちょっとひとつチェックを入れていただく。そうすれば、一世帯一口というのは確保できる。で、この制度によって、ひとつ一世帯一口ということでやってみたい。ただし、実は昨年とことしが違いますのは、これは昨年の九月に金利を上げましたから、金融機関は人件費が上がったのと金利が上がったので、昨年に比べてことしはかなり厳しい状況にあることも私は承知をしております。
 そこで、農協のようにほとんどすべてが個人預金というところでは、これはかなりの負担が出てまいりますでしょう。そういうところについては、まあ、それは農協だけではありませんけれども、要するに、その定期預金をやって、利子の高いのを払ったために、金融機関としてマイナスが立つというようなところについては、この際、私が最初に申し上げたように、民間にも協力をしていただきますけれども、その協力の上に、国もひとつ考えましょう――要するに、その六カ月間に出た赤字分だけについて、この預金で赤字分がもし出るとするならば、それはひとつ低利の財政資金をそこへ預託をしてあげて、それでカバーをしてもらう。その預託の方は、たくさんの金額が要るわけではなくて、金額は少なくても長期に預託をしてあげれば処理はできるわけで、金額と期間の問題は適当に財政的に検討できる問題だ、こういう考え方で、実はことしもう一遍この問題を私どもの党として提案をしたい、こう考えておるわけです。
 そこで、本日は、全国銀行協会、相互銀行協会、信用金庫協会、それから信用組合中央会のいずれも責任者の方がお見えになっておりますので、まず金融機関の皆さんから、私が申し上げたことについて、時間がもうございませんので、ごく簡単に、これについて金融機関はどういうふうにしていただけるかについて、お答えをいただきたいと思います。
#62
○佐々木参考人 簡単にお答えを申し上げたいと思います。
 最初に申し上げたいと思いますことは、ただいまの堀先生の御提案、非常に私どももいろいろな意味で示唆を受けます。よく検討いたしたいと思いますけれども、とりあえずそれにつきましての私の感じを申し上げたいと、こういうふうに思うわけでございます。
 その前に、この点は堀先生も十分御了承願っておると思いますけれども、このいわゆる世間での目減り問題につきましての銀行の基本的な立場と申しますか、基本的な考え方を簡単に申し上げておきたいと思うのでございます。
 私ども、日々お取引の預金者の方々と接しておりまして、預金者の苦しい立場は、はだに感じておるわけでございますが、この問題につきましての基本的な問題は、まず第一には、何と申しましてもインフレを収束するということが根本であろうと、こういうふうに思うのでございます。そこで、このインフレがまだ収束されておりません過程におきまして、何かこれに対する措置をとるということも必要だと思いますけれども、その際、私は、そういった措置をとることによって、さらにインフレへの期待感を高めるというふうなことになっては、これはかえってインフレ収束の処置をおくらせる、こういう懸念がございますと思いますので、この点は十分慎重に対処する必要があろうかと思います。
 二番目に、目減り補償の問題は、元来金融でやるべきことではないと思いますし、また、金融機関がやろうと思いましても、できる問題ではございません。したがいまして、銀行が高金利の預金を創設するというふうなことになるといたしましても、それは、目減りを補償する、そういう考え方から出るものではございませんで、預金者が苦しい立場に立っておるということを十分承知いたしておりますので、銀行の力の及ぶ範囲で何とかこの苦しみを幾分でもやわらげたい。そのために、新しい商品を開発して、そしてお取引の方々に提供する、こういった考え方に立ちますので、金融機関は目減り補償をするということは考えておりません。
 それから第三番目には、金融機関といたしましては、同じ商品に対しましては、預金者によりまして、たとえば金利を変えるということではございません。原則は、半年定期なら半年定期、一年定期なら一年定期と、商品によりまして、預金者がだれであろうと同じ金利をつける、これが原則であろうかと思います。
 第四番目には、こういった特別の商品を提供することによりまして、これが将来金利体系の硬直化というような面につながることがございますと、これもゆゆしい問題だと思いますので、この点も十分注意をする必要があろうかと思います。
 それから、ただいま私は、金融機関の力の及ぶ点を考えながらということを申し上げましたけれども、率直に申しまして、金融機関には大きな力はございません。金融機関のもうけ過ぎがいろいろ言われております。ことに、九月期は御承知のように増益になったが、これは特別な一時的な要因でございますので、今後はこの反動が出ると思いますが、そういった意味で、限度があろうかと思います。
 それから、これは非常に大事なことでございますが、いま先生もおっしゃいました、銀行で用紙をつくって、それを区役所なら区役所へ持っていって身分を確認する、こういったお話、この点あとに触れますけれども、本人確認等の技術上の問題について瑕疵がないということがまず大事であろう。
 こういった基本的な考え方につきまして、堀先生の御提案についてでございますが、いま堀先生から一世帯五十万というお話がございましたけれども、五十万につきまして、たとえば通常の金利に年二%上乗せをする。具体的に申しますと、それを半年間やりますと、五十万につきまして通常の金利に一%上乗せをするということでございますから、五十万まるまるこういった特別の預金にお預けになりましても、それによりまして特別の利息金額は半年間五千円でございます。私といたしましては、いろいろ検討いたしたいと思いますけれども、こういったときでございますので、広く浅くというよりは、もう少し範囲を限定いたしまして、できるだけ厚く考えて差し上げるということのほうがよろしいのではないか、こういう感じがいたしております。
 それから一世帯ということでございますが、この世帯の概念がどうもなかなかはっきりしない点があるように思いますので、この点が問題ではないかと思います。
 それから世帯数でございます。いろいろな見方はあろうかと思いますが、仮に三千万世帯というふうなことになりますと、これはなかなか大きな負担になりまして、金融機関にたえにくいところであろうかと思います。
 それから、あくまでも緊急避難的なものであるという点では、堀先生の、預入期間も限定する、半年だ、それが終わればもうこれでおしまいだ、この点は、私どもの考え方が取り入れられていただいておるように思います。
 それから、この点は、堀先生のただいまのお話では、必ずしもはっきりいたしておりませんように思いましたけれども、仮にこういった特別の商品を提供することによりまして、金融機関の経理が非常にむずかしくなった、そういった金融機関が出ました場合は、金融機関にも何分の負担はしてもらうけれども、それにも限度があろうから、ある限度以上のものについては財政で、こういうお話でございますが、私は、金融機関が金融機関の協力をするという点、これは私ども、金融機関でお互いに協力する点は協力する、競争する点は競争するということでまいりたいと思いますが、この点もう一つちょっとひっかかるものがございます。
 簡単でございますが、感じておりますことを申し上げました。
#63
○堀委員 次々お願いいたします。
#64
○荒舩委員長 全国相互銀行協会会長尾川武夫君。
 要点をひとつお話し願って、簡潔にお願いいたします。
#65
○尾川参考人 預金の目減りに対しては何らかの優遇策を講じなければならぬというようなことは、これは堀先生のおっしゃるとおりだと思っておりまして、私ども平素、そういうことについては十分考えておる次第でございます。
 その方法等について、あるいは原則論というようなものについては、先ほどの全銀協の協会長さんがおっしゃったとおりでございますが、ただ一言、中小企業専門金融機関である相互銀行の実態がなかなか苦しいということを、私お話し申し上げておきたいと思います。もう前期におきましても純益が減っております。現状では貸し出し金利も上がっておりますが、それ以上に、ベースアップとか、あるいは物件費、それから預金金利の引き上げ等によって、その上げ幅が大きくなっておるのでございます。しかしながら、先生の御趣旨もよくわかっておりますから、私の負担能力の範囲内において、できるだけ努力したい、こういうふうな考えを持っております。
#66
○荒舩委員長 次に、全国信用金庫協会会長小原鐵五郎君。
#67
○小原参考人 預金の目減り問題について。インフレによる目減りの問題は、単に預金ばかりでなく、生命保険にしましても、年金にしても、金融資産すべてに通ずる問題でありまして、これが対策としては、申し上げるまでもなく、物価の安定が第一であると考えます。預金の目減りを特別な利息でカバーすることが適当かどうかの問題は別といたしまして、われわれ信用金庫業界としても、国会の諸先生方の御要請があるのでありますれば、可能な範囲で御協力申し上げたいと存じます。
 特別小口預金の創設について。相次ぐ預金金利の引き上げや人件費、物件費の上昇で、信用金庫の経営も現在非常に厳しい状況にありまするが、それが短期間の預金であり、金額にも一定の制限が付され、また取り扱い期間も二カ月間程度というような短いものでありまするならば、御要望に沿って研究してみたいと存じます。しかし、この場合、同一人が何口も口座を持つことにならないよう、特別のチェックの方法が講ぜられることが必要であり、また実施の前提になろうかと存じます。
 なお、本件につきましては、私ども信用金庫と同じ協同組織であり、いわば同じ仲間でありますところの農業協同組合さんの方々から、預金構成面で個人預金が多く、経営への影響も大きいことから、検討に当たっては慎重にしてほしいとの御要望がありましたので、このことを特にお伝え申し上げておきたいと存じます。
 特別機構の設置について。高率の特別預金の実施に伴う措置としまして、預金保険機構のような特別機構を設置して、政府、日銀、民間金融機関による資金のプール化を図り、その資金預託によりまして、経営悪化の金融機関を救済してはどうかとの御提案のように伺いますが、やはり設立面、運用面にいろいろむずかしい問題があろうかと存じます。しかし、もしそういう方向に進むことになる場合には、われわれ信用金庫業界には、全国信用金庫連合会という親機関が存立しますので、その機能の活用発揮によって対処してまいりたいと考える次第でございます。
 以上、お答え申し上げました。
#68
○荒舩委員長 次に、全国信用組合中央協会会長雨宮要平君。
#69
○雨宮参考人 預金の目減りにつきましては、すでに金融機関の他の方々からお話がございますので、これは省略をさせていただきますが、信用組合について申し上げますと、昭和四十九年の期末に際しまして、統一経理基準の適用の例外的な経過期間がちょうど終了した時期に際会いたしておるのでございます。したがいまして、その実情を見ますと、その決算についてはかなり厳しいものがあるのでございます。しかし、私どもといたしましては、堀先生の御提案につきましては、ごもっともな点が多いと感じておるのでございます。しかしながら、実際の実施の段階に至りましては、諸般の情勢、また各金融機関の実情等を勘案していただきまして、そうして善処していただかなければならぬと思うのでございますが、私どもといたしましては、この預金の目減りについては、確かに何らかの対策が必要であるという点については、まことに御同感申し上げておる、その御趣旨については、私どもはやはり賛成申し上げておるのでございます。したがって、この負担増に対する何らかの措置が講じられるお話でございますので、その対象を限定して、一時的、特別なものであれば、極力そうした施策に対応いたしまして、善処いたしたい考えでございます。御趣旨にはまことにごもっともな点があると思います。
#70
○荒舩委員長 ちょっと申し上げますが、大蔵大臣に……。
#71
○堀委員 ちょっと待ってください。まだ、いまの佐々木さんの答弁だけ、ちょっとはっきりしたいものですから。
 いま伺いますと、相互銀行、信用金庫、信用組合は、まあ問題点はあるけれども、一応協力をしようという御姿勢であるようでありますが、どうも佐々木全銀協会長の御答弁だけは、そこがはっきりしませんので、私の提案について御協力がいただけるのかどうかだけ、ちょっとお答えをいただきたいのです。
#72
○佐々木参考人 お答えをいたします。
 御協力する方向で検討いたしたいと思います。ただ、繰り返し申し上げます。技術的な難点がございましたり、金融機関の負担の限度以上になりますと、その点は具体的に検討いたしたい、こういうふうに思います。
#73
○荒舩委員長 ちょっと、いまの佐々木さんの御意見、賛成ですか、反対ですか、どっちなんですか。
#74
○佐々木参考人 ですから、まだ結論は出ておりませんわけです。方向といたしましては、技術的な難点その他が解決をされますならば、十分取り上げられる。賛成かという意見、いま検討中でございます。
#75
○荒舩委員長 賛成ですか、反対ですか。
#76
○佐々木参考人 まだ賛成とも反対とも決まっておりませんわけでございます。
#77
○堀委員 実は相互銀行、信用金庫、信用組合の皆さんは、個人預金の比率も高いし、定期の比率も高い。非常に経理上困難なところの皆さんのほうが御協力をお約束いただいて、都市銀行という一番経理内容も豊かで個人預金も少ないところが、あのような態度を表明されておることは、私は重大な問題だと考えるわけであります。技術論については各行同じであります。いまおっしゃるように、信用金庫であろうと、相互銀行であろうと、信用組合であろうと、技術的な問題は同じなんですから、その技術的な問題が同じ中で、一体、都市銀行だけがそういう御答弁というのは、私はちょっと納得いたしかねるのですが、もう一回ひとつ御答弁をいただきたいと思います。
#78
○佐々木参考人 お答えいたします。
 堀先生のお考えはよくわかっております。したがって、私どもは前向きに検討いたします。
 ただ、もう一つ申し上げますと、たとえば、先ほど申し上げましたように、世帯の概念もはっきりいたしておりません。それから二カ月でございますと、一体どのくらいの世帯から申し込みがございますのか。それから世帯の確認等につきましても、技術的な点がございますように聞いておりますので、その辺をお互いに詰めまして、そういった点に問題がございませんければ、これはもちろん御協力をいたします。よろしゅうございますか。
#79
○堀委員 はい、結構です。
 大蔵大臣、この問題は確かにいま佐々木さんのおっしゃったように、世帯というものは一体何か、これはむずかしゅうございますが、私はいま、住民登録に一世帯として出ている、これを基準にする以外にないと実は思っているのですよ。そこで私は、自治体の労働者の皆さんとも御相談をして、大変お手数かけるけれども、その用紙を持っていったら、住民登録を見て、住民登録にある世帯を一単位としよう、そうしてそれにひとつ自治体の判を押してもらって、こちらはチェックして印を入れて、二度と出ないようにしよう。これは、きょう郵政大臣はいらっしゃいませんけれども、民間金融機関だけにやってもらっていいということじゃないのですよ。民間金融機関で犠牲を払ってやっていただくなら、当然郵便局にもやっていただかなければなりませんから、これは郵政大臣はいらっしゃいませんけれども、その点を含めて考えておきたいということが第一点ですね。
 それからもう一つは、まあ技術的には、世帯の確認のいかがは別としても、郵便局のほうに一枚、それから銀行に一枚というのは、住民登録台帳にちょっと印を入れるだけで、判を押して処理ができることですから、技術的に不可能ではない。自治体労働者の皆さんと御相談をして、やれますと、こう言っていただいておるわけですから、技術的に困難でない。
 それから、一体幾ら預金があるかわからないんですが、六カ月間実は期間がある。要するに、二カ月、申し込みをして締め切ったあとで、各行別に計算できるわけです。利払いはそれから六カ月先ですから。その間に十分対策も講じられるし、処理ができるので、いま三千万世帯と言われていますけれども、いまのような国民の貯蓄状態、こういう状態から見て、三千万世帯がみんな五十万円ずつの貯金ができるようななまやさしい状態ではないのですから、恐らくそれは、五十万円までだと言っても、十万円の方も二十万円の方もいろいろあるだろうと思います。ある程度試行錯誤でやってみなければわからぬことです。
 ですから問題は、金融機関に御迷惑をかけたいという気はありません。金融機関の責任でないということは最初に申し上げておりますから、ここらはひとつ財政資金の運用を適切に考えることによって処置をしたい、こういうことなんです。まあ民間金融機関は、これで御協力いただくということが明らかになりましたが、大蔵大臣の御感触だけを承って、次の問題にちょっと進めたいと思います。
#80
○大平国務大臣 かねがね堀先生の御提案につきましては、私どももよく承知いたしておりまして、すでに検討を開始いたしておるところでございます。なお、本日、本委員会を通じまして、正式の御提議をちょうだいいたしたわけでございまして、財政投融資のことも含めまして、検討さしていただきます。
#81
○堀委員 それから、ちょうどいい機会でございますので、ひとつもう一回、金融機関の皆さんにお答えをいただきたいのですけれども、実は週休二日制の問題なんです。各企業は、この不況の中で、週休二日制が大変どんどん広がっております。その中で、実は先進諸国で金融機関が土曜日もやっているというのは、いま日本だけになっているわけですね、総理。ちょっとひとつ各代表の方から、週休二日制について、賛成か反対かだけお答えをいただきたいと思います。委員長、お願いをいたします。
#82
○佐々木参考人 お答えをいたします。
 金融機関の立場上、この問題につきまして、社会的なコンセンサスを得るということがあくまでも前提でございますけれども、私どもは、早くこの社会的コンセンサスを得まして、週休二日制に踏み切りたいものと、こういうふうに考えております。
#83
○荒舩委員長 ほかの人は……。(堀委員「皆さん全部聞いてください」と呼ぶ)それでは尾川武夫君。
#84
○尾川参考人 基本的に賛成しております。
#85
○小原参考人 時代の要請であると考えまして、賛成するものでございます。
#86
○雨宮参考人 週休二日制は、できるだけ私どもその趣旨を体しまして、早く実施に踏み切りたい所存でございます。
#87
○荒舩委員長 参考人の皆さんに申し上げます。
 日銀総裁にはお残り願いまして、他の参考人の方は、お忙しいところをおいでいただきまして、ありがとうございました。まことに御苦労さまでした。お帰りを願って結構でございます。ありがとうございました。
#88
○堀委員 総理、実はこの週休二日制問題というのは、いま佐々木会長がおっしゃったんですけれども、国民のコンセンサス、確かに必要でございますが、こういう時代になりまして、もうここらでぜひ踏み切るべきときが来ているんじゃないか、一つのこれは政治判断でございます。これは、ただそれだけでなく、今後自治体なり国の関係を含めて、これからこういう新しい成長の段階に入るときには、私は、もうそろそろ週休二日制の問題を、国も地方自治体も金融機関もあわせて考えていいところにようやく来ているのじゃないだろうか、こう思いますので、ひとつ総理の御見解を最初に承っておきたいと思います。
#89
○三木内閣総理大臣 私は原則的には週休二日制賛成論者です。しかし、いま言ったように、この問題については国民的な合意が必要でしょう。そういうことは必要で、まだ実際問題として、週休二日制に難色のある人たちもおるに違いありませんから、国民的コンセンサスは必要である。原則的には、自分は賛成論者であるということです。
#90
○堀委員 総理も御賛成のようですから、これは国民のコンセンサスといっても、私は、国民のコンセンサスというのは、与野党が全部コンセンサスすれば、これは大体国民のコンセンサスと同様じゃないかという気がするのですが、与党の方も恐らく御反対ないだろうし、野党も反対ないことでしょうから、ただ、国民のコンセンサスというめどを何によって得られたかということ、これは技術的な問題としてむずかしいことですから、少なくとも私は、五十一年からはこれが行われるように、速やかに準備を進めて、これは、自治大臣もいらっしゃいますけれども、御答弁はいただきませんけれども、自治体、それから総務長官もおいでになりますから国、あらゆる問題を含めて、早急にひとつ五十一年をめどに実施ができるように努力をしてもらいたいと思うのですが、総理、いかがでございましょうか。
#91
○三木内閣総理大臣 五十一年というお約束はできませんが、しかしこれは、国民的なコンセンサスを得るために、じっとしておってはいけないですから、各方面の意見を徴することにいたします。
#92
○堀委員 時間がありませんから、最後に一つだけ。
 実は、私は、昭和四十年十二月二十三日、佐藤内閣ができましたときの予算委員会の総括質問で、こういう問題提起をしています。
  私は、この金利の問題というのは、事務当局の皆さんは非常に慎重だと思うのです。しかし、これは実はきわめて政治的な問題なんですね。勇気を持ってどこかで環を切らない限りは、この環は続いているわけです。どうしても切れないのです。私はもうほんとうに、大蔵委員会の会議録をごらんいただけば、この問題について大半を費やすくらいやってきて、なおかつ今日だめだというのはふしぎでならないのです。はたして日本は資本主義の国家なのかどうか、われわれは制度としては資本主義がいいとは思っているわけではありませんけれども、資本主義である限りは、資本主義がうまくメカニズムが相互に働いて、自律的にいってもらわなければ国民は迷惑するんですよ。私はさっきこうこうこうなったと経済成長のクオーター別の伸び率を申し上げたのは、金利が固定化しているからああいうことが起きるのです。諸外国でなぜ起きないのか。金利が自由化されているから、当然そこで歯どめがかかって、そうならない仕組みがある。日本はそうなっていない。私は佐藤さんが安定成長をおっしゃるなら、安定成長のきめ手は金利の自由化以外にないですよ。私はあなたが少なくとも在職中に金利の自由化をなされなければ、あなたのおっしゃった安定成長というのは、あれはにせものだ、こういうふうに理解せざるを得ないと思います。ひとつあなた、在職中やるということを御確認願って、私は質問を終わります。
 ○佐藤内閣総理大臣 私は、社会党の堀議員からこの話を伺うことを非常に愉快に思っております。私もそういう状態をぜひともつくりたい、かように考えておりますので、御協力を願いたいと思います。ありがとうございました。これが四十年の十二月の二十三日なんですよ。そうしてそのあとの経過は、金利の自由化をやらなければ安定成長はだめですよと私が診断したように、池田時代よりもさらに高い高度成長が起きたのは、私は歯どめがここにかかっていなかったからだ、こう考えておるわけです。今日もその所信は同じなんです。
  そこで、西ドイツの例をちょっと申し上げておきますけれども、西ドイツは、ブンデスバンクのクラーゼン総裁は、七四年二月にヘッセン・アルゲマイネ紙とのインタビューで、インフレが高進する中にあって、自分の資金をインフレ率よりも低い金利で預けようとする者はいないであろう、したがってわれわれには金利を引き下げる権利はないと発言。またフリデリクス経済相も、経済政策運営に関する国会説明の中で、実際のところ、インフレ抑制には、現行の高金利政策よりほかに有効な手はないと言っても差し支えないと思うと発言。すなわち、すでに見たように、七二年十月から七三年六月の間に計六回、通算四%に及ぶ異例な公定歩合を引き上げてまいりまして、そうしてその結果、七三年六月には戦後初めてクーポンレート一〇%の長期債、バイエルン州中央振替機関発行の五年もの長期債が発行され、翌七月には、インフレ対策の一環として発行された第二回安定国債のクーポンレートが一〇%台に引き上げられた。西ドイツは六%から七%程度の物価で一〇%の金利なんですね。七四年においても同様の状況が続き、十月中旬発行の連邦債六年ものの応募者利回りは一〇・三五%、クーポンレートは一〇%と、物価上昇率七三年六・九、七四年十月七・一%をはるかに上回る水準で処理がされておる。
 要するに、結局この問題は、私は、今後の情勢を勘案してみますと、資本主義という制度は市場経済を通じて物が決まるというのであるならば、金だって、市場経済を通じて価格が決まるのでなければおかしいではないですか。日本では、池田さんの低金利成長以来、自由経済をあなた方は標榜しながら、実際には管理金利をやって、現在でも低金利政策をやっておるわけです。そのために、いまの預金目減り問題が起きているわけですよ。西ドイツには預金目減り問題なんかないのですよ。私は、この点をもう一回三木さんに提案したいのですよ。佐藤さんに提案したけれども、これはだめだった。そして異常高度成長をやって、ごらんのような日本にしてしまったわけですよ。三木さんに、この問題についてお答えいただくと同時に、ひとつ日銀総裁にぜひお答えをいただいておきたいと思うのです。
#93
○三木内閣総理大臣 堀さんのいまの金利の自由化問題は、お説は正論だと思います、あなたの言われることが。したがって、そういう方向に向かって努力をすべきものだと思いますが、現在は現在の仕組みがあるわけですから、これは大変な問題を含んでおりますから、これはいつというようなことではございませんが、そういう方向に向かって研究し努力をするということは、確かに御指摘のとおりだと思います。
#94
○森永参考人 お答えいたします。
 過去の高度成長下におきまして、資本市場も未熟なるままに、企業は日銀から、あるいは金融機関からの借り入れに過度に依存し、その間において低金利政策がとられた、それが過去の高度成長に寄与したというようなことで、これはあるいはやむを得なかったかもしれません。しかし、お話しのように、その結果、ややもすれば過当競争を招き、景気の激変を招く、安定的な成長に支障があるというようなことから、私どもといたしましても、金利機能を市場メカニズムによって十分に活用する、そのことが安定成長の基盤であると考えまして、極力金利自由化の方向を目指して努力をしてまいりましたことは、御案内のとおりでございます。なかんずく、日本の起債市場がまだ未熟でございますが、これにはやはり金利の自由化ということが前提でございまして、今後とも金利の自由化、金利機能の拡充、活用に向かって努力をしてまいらなければならないかと存じます。ただし、急激な変化を与えましてはまた混乱を招きますので、その辺は徐々に情勢を見きわめつつということで措置してまいらなければならない問題であると存じます。
#95
○堀委員 いまの問題は、大きな金融機関と小さな金融機関、いろいろありますから、私も一遍にやれと言っているのじゃないのですけれども、その方向に計画を定めて徐々にやっていくことなくして、市場メカニズムというものは有効に働かないという基本問題に触れて、ひとつまた佐藤さんの二の舞にならぬようにだけ三木さんにお願いをして、私の質問を終わります。
#96
○荒舩委員長 これにて堀君の質疑は終了いたしました。
 午後一時より再開することとし、暫時休憩いたします。
    午後零時一分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時二分開議
#97
○荒舩委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。荒木宏君。
#98
○荒木委員 私は、まず高度成長について三木総理にお尋ねをしたいと思うのでありますが、この問題につきましては、去る本会議において、わが党の津金議員が総理に所信をただしました。続いて昨日、わが党の不破議員がこの点についてお尋ねをしたところでありますが、私はそれを受けまして、この際、従来の高度成長なるものについての三木総理のお考えを、国民の前に明らかにしていただきたい。従来の高度成長が国民に何をもたらしたか、そしてそれは果たしてだれのためのものであったか、このことを明らかにすることは、今後の施策を立てる上においてもきわめて重要なことであると思います。
 私は、質問の観点を明らかにする意味で、簡単にわが党のこの点についての見解を申し述べたいと思いますが、従来の高度成長をどう見るかという問題は、単にスピードが速かったか遅かったか、そういう問題だけではない。また、よいところもあり、また反面悪いところもある、功罪相半ばするといった、こういう性質の問題でもない。全体として、国民の利益を守り、経済を発展させていくという、そういう立場から、どのような評価がなされるべきか、そういう点から、従来とられてまいりました高度成長を見てまいりますと、すでに総理自身もお認めになりましたように、他国にも例を見ない異常な物価高、そしてまた国民の健康、身体、生命すら脅かされるという環境破壊などを初めとして、この十年、二十年の間に国民の受けた損害というものははかり知れないものがあります。
 ある人はこういった問題について、いや雇用の増大があった、所得の増大があった、いいところもあったと、こういう論をされる人があるようでありますけれども、雇用の問題一つをとってみますと、なるほど若年労働者の雇用水準、これは高水準で維持されました。しかし中年層、高年齢層の雇用問題は一体どうだったでしょうか。いまから十年前を見てみましても、求人倍率は常に一をはるかに下回り、〇・一ないしは〇・三という程度にすぎないわけです。私は、こういった切実に職を求めておる中高年層の人たちの雇用機会が確保されないような状態で、雇用増大、メリットがあったと、これはとても言えた道理ではないと思います。
 また、所得の増大があった、こういうお話もありました。しかし、昨年一年間の所得推移を見ましただけでも明らかなように、すでに一月から四月までは、実質賃金は前年対比でダウンをしておる。春闘でがんばって、労働者の団結の力でようやくその幾分かを回復したと思えば、今度は半年もたたない間に、十月から再びダウンと、こういった状態であります。したがって私は、この所得の水準を上げろ、賃金を上げろ、そして被害を回復して生活を防衛しよう、これはきわめて当然の要求であると思います。
 ところが、先日の総理の施政方針演説をお伺いいたしますと、生活の簡素化を説かれ、ぜいたくが言える時代ではなくなったということを説いておられる。
    〔委員長退席、湊委員長代理着席〕
この切実な被害回復の要求に対して、ぜいたくが言えた場合ではないというこの演説を伺って、私ははからずも、あの高度成長の時代に自民党の皆さんがおっしゃったこと、いましばらくがまんをすれば、パイが大きくなりさえすれば、そのうちに所得も向上するからがまんをしろ、この考え方と共通するものがあると思いますけれども、実質賃金がダウンというこの状態の中でも、総理はあえてぜいたくは言えた道理ではない、こういうふうにおっしゃるのかどうか、この点をまずお伺いしたいと思います。
#99
○三木内閣総理大臣 荒木さんと根本的に考えが違いますのは、高度経済成長はすべて悪だと、こういうきめつけ方をされるわけですが、しかし、高度経済成長によって、所得の水準も高まったことは事実だし、中高年令齢層に対する雇用の問題はいまも問題はございますけれども、中高年齢層ばかりか、若者の雇用の機会というものもやはりなかなかなかった日本ですから、全体として雇用は拡大される、そういう点で高度経済成長がもたらした社会に対しての貢献というものを、これをすべて悪だったという形で評価することは適当ではない。しかし、そのために起こったひずみあるいはアンバランス、こういうものに対しては、これは是正をしなければならぬわけでありますから、そういう点に目を覆うものではないわけですけれども、全体として高度経済成長がすべて悪かったというあなたの立場は、私はとらないのであります。
 また、私の施政方針演説について、いま国民に簡素な生活、こういうことを呼びかけたことが何かお気に入らぬようでありますが、しかし、考えてみると、これからは安定成長といいますか、世界的に見れば正常な成長時代に入るわけでありますから、やはりお互いに、そういう大きな変化に対応した――産業構造、国民生活、いろいろな面で対応した変化がなければならぬ。
 国民生活の面で私が言いたかったのは、いままでは使い捨てというような消費のパターンであったわけですね。これは次々に新しいものを、買う。企業もまた次々に新しいものを買いかえなければならぬような、そういう態度も企業になかったとは言えない。そういうことで、ごみの処理にも困るような状態になってきて、これからはやはり資源も節約しなければならぬし、また国民生活も、量よりも質という点で、もう少し質的な充実というほうに国民の意向も向いてきたわけでございますから、簡素な中にも豊かな生活をする工夫というものをお互いにしなければならぬ時代だということはきわめて常識的な発言で、いま御指摘のような、何か戦前を思い出すようなことを言ったわけではないわけです。だから私は、あの演説の中でも、耐乏生活をしろと言っておるのではない。簡素の中にも、何かもう少し豊かな工夫をしようではないかということを言っておるので、非常識な発言をしたとは、私は思っていないのでございます。
#100
○荒木委員 いまの答弁を伺って、私はこう思うのですね。立場が違うとおっしゃる。まさにそのとおりだと思うのですよ。雇用水準が高まった、雇用増大、いまこのことについてのお話がありました。雇用水準が高まっていいと思っているのは、金の卵である若年労働者、ここだけを何とか確保したい、そう思っている大企業、財界ではないでしょうか。切実に職を求めている中高年層の人たち、あるいは物価高の中で働きに出なければならない婦人労働者、あるいは社外工の人たち、臨時工の人たち、また出かせぎの人たちは、総理のおっしゃるように、雇用水準が拡大したとは決して考えていないでしょう。ですから、その立場に立てば、総理がおっしゃるように、その面についても高度成長がよかったとは、私は言えないと思うのです。ですから、そのことを総理御自身、いま見直しとおっしゃっておるわけですから、従来の高度成長に指摘される一番問題の根源をよく把握して、その上で見直しの政策ということにならなければ、再び条件さえ整えば、また同じ道を進むことになる。私はそのことを指摘し、総理のその点についての高度成長の認識の問題は、国の政治の将来、国民の生活にかかわる重要な問題でありますから、その点をお尋ねしておるわけであります。
 将来の問題ということがいま言われましたが、特にいま目の前に来ておる春闘の問題、労働者の賃上げ要求の問題でありますが、この点については、いま言いましたように、前年対比でダウンをしております。しかも一月−四月ダウンで、春闘でがんばってようやく取り返した。ところがそれがまたまた赤字になる。つまり、いまの労働者、国民の生活は、団結してがんばって闘わなければ維持できないようなことになっている。言うなれば、坂道を登る車のようなものでして、ほっておけばどんどん下がっていく。
 そういう状態を考えてみますときに、一方大企業のほうは、総理、どうでしょうか、前九月期決算でも、純利益と内部留保を含めまして、ある調査機関の調査では、三百八十三社で八千六百二十六億円のもうけを計上し、対前期比で一五%の増であります。片方は赤字なんです。片方は黒字でしょう。ですから、そのときに双方に節度を求めるというのはいかがなものでしょうか。むしろ、いまの物価と賃金の関係を見れば、労働者は物価高に追いつくためにがんばっている。ところが、インフレ不況と言われる中で、もうけはうんとふえている。本来、不況の場合には物価は下がるのじゃないですか。皆さん方のお考えだったら、需給の自由な関係にゆだねるというのなら、本来、不況で物価は下がるはずです。経済が発展するというのなら、実質生活はむしろ向上するはずです。ところがこれが全く逆になっている。ですから、大企業の大もうけ、これこそ物価を押し上げている大きな原因だと言えるのじゃないでしょうか。何よりの証拠に、昨年自民党の政府の皆さんの認可で公共料金の値上げがありました。電力がそうです。私鉄がそうであります。また、基幹産業の鉄鋼も値上げがありました。いずれも前九月期決算ではたいへんな利益の計上です。ですから、いま賃金と物価の問題を言うのなら、物価を押し上げている大企業の利益、もうけ、ここにこそ節度を求めるべきである、こう思いますが、総理の御意見はいかがですか。
#101
○三木内閣総理大臣 物価を押し上げている要因は、大企業が大きな利潤を得過ぎるからだというお話ですが、私は、物価を押し上げている原因の一つには、荒木さんごらんになっても、石油問題一つとらえても、これだけ輸入資源に依存しておる国が、そういう燃料、原料、食糧、皆一斉に値上がりしたわけですから、国際的な要因というものは、物価問題を考えるときに考えざるを得ない非常に大きな要因であることは明らかでございます。企業も、三月あるいは九月の決算というものはひどい決算になると私は思う。やはり相当苦しい状態にあることは事実であります。しかし、過去のインフレ期において非常な利益を上げた企業もあることは御指摘のとおりですが、これからはそうはいかない。企業もいままでのような経営の態度ではいかない。そういう点で、私どもきょう准済関係の閣僚会議を開きましたときにも、企業の自粛を求めるということについて、各関係省庁において、企業側に対しても強くそういう政府の企業に対する要望を伝えることにいたしたわけでございます。労働者だけに節度を求めるというわけではないわけで、企業に対しても同様である。労働者に対しても節度を求めると同時に、企業に対しても、経営上において、この困難な時局というものを頭に入れて、できる限りの自粛をすることは当然の責務だというので、これに対して注意を喚起するような決定を閣僚会議で行ったわけでございまして、片手落ちな、労働者だけにわれわれは節度を求めておるものではないということでございます。
#102
○荒木委員 いま海外輸入のお話がありましたけれども、これは引き続く総括質問あるいは各専門委員会で大いにやらしていただきたい。
 ただ、先日の本会議での演説を伺いますと、総理を初め各大臣とも、口をそろえて、いま賃金の問題だ、これがコストプッシュで、物価値上げの要因で、非常に重要である、労使双方に節度を求めると、口をきわめて強調されたわけであります。特に自由民主党の先日の大会の議案書を拝見しますと、この点がきわめてはっきりと指摘をされています。ですから私は、本委員会の質問では、いまその点についてお尋ねしておるのですが、賃上げについて労使双方に節度を求めるというのは、一体どういうことでしょうか。労働者は賃上げを要求する、物価高の被害を回復するために、後追いとして要求をする。節度を求めるということは、賃上げをほどほどにしなさい、常識的に言えばこういうことになる。では企業の方はどうですか。大企業の方で、労働者の言うことはよくわかった、まことに苦しいだろう、よし、それでは被害回復のために上げよう、こう言っておる財界の代表の公式発言はありますか。いまの時期に相次いで出されておる見解は、賃上げはなるべく抑えたい、コスト高にかかわる。だとすれば、それに対して節度を求めるということは、少なくとも労使交渉において双方に節度と言う限りは、使用者の方もそれに従って、大企業の方も賃上げを軽々に認めてはならぬ、常識的に考えればこういうことの道理になるわけです。
 いま所得増大というお話がありましたけれども、国際的に見たってうんと低いでしょう。この激しいインフレ、物価高の中で、一九六〇年の貨幣価値に換算をし、そして為替換算を合わせて加えるならば、日本の労働者の賃金はアメリカの労働者のまだ四分の一です。西ドイツの約二分の一ですよ。イタリアに比べてすら七割にすぎない。それほど低いところにある。名目賃金はどんどん上がってきたと、皆さんは恐らくおっしゃるでしょうけれども、実際に世帯を預かる財布の中身というものは、実質的にはからなければならぬわけです。
 ですから私は、そういった状態を総理がよくごらんになって、事実をはっきり認識されれば、いまのような労使双方に節度ということになるはずがない。もし事実認識をよそにして、そして抽象的な一般的なことになれば、これはまさに財界がいままでやってきたことを容認することになる。こういう意味で、いままで二十年間、自民党の皆さん方が政治をやってこられたその中で、決算を締めればどういう状態になっているか、このことを簡単に申し上げたいと思うのです。
 先ほどの賃金、物価について言いますと、労働生産性は他国に秀でてうんと上がりました。しかし実質賃金の上昇は先進資本主義国の中ではうんと低い。こういう状態に加えて、個人消費支出構成比率があります。GNPの中で占める個人消費の支出割合は、日本は、一九六〇年を基準にして、一九六〇年から依然として五〇%台にとどまっています。個人消費というのはちっとも伸びない。アメリカは六二%、イギリス六二%、そしてイタリア六四%、フランス五九%というように、経済の規模の大きさの違いはありますけれども、その中で、個人消費の占める割合というものはちっとも変わらず横ばいだ。そして卸売物価指数、消費者物価指数、これは数字を申し上げるまでもなく、他国に比べて異常な状態であったことは、もうひとしく認められるところであります。公害の問題、あるいは交通事故の激増、そういった環境破壊。そこへもってきて、何よりも大切な経済の基盤であるエネルギーの自給率が、一九六〇年の五五%から七二年には一三%に低下をしました。食糧の自給率も、一九六〇年の八四%から七三年には四一%、半分以下にダウンする。
 こういう状態がありますからこそ、全体として国民の受け取っている高度成長に対する感じ、総理はこれを注目してごらんになったことがありますでしょうか。経済成長をよかったと思うか、悪かったと思うか。よい面があった、これは総理の本会議でおっしゃった答弁と同じことです。この回答が一八%です。悪い面のほうが多く、全体としてよくなかった、これは二四%あります。しかも注目すべきことは、これは昨年の調査でありますが、その三年前、四十六年の調査によりますと、よいという人はまだ少し多かった。悪いという人はもう少し少なかった。ですから、事がだんだんはっきりしてくるにつれて、いままでの自民党の皆さんの政治のもとでの高度成長というのが、全体として悪いものだということが、いま国民の共通的認識になりつつある、私はこう言えると思います。これは総理府の発表した調査であります。
 こういった全体として見た場合に、総理はなおかつ、単にスピードの問題、あるいはその部分のみを取り上げて、個別にこれはよかったというふうなところを何とか探そうという、そういうふうな態度をおとりになるのか。全体として見て、本当に経済の発展と国民の生活の向上という点から見て、はかり知れない損害がある、これをはっきり見きわめて、いま真の意味での転換、見直しということを進めようとされないのか。この問題について、重ねてお伺いをしておきたいと思います。
#103
○三木内閣総理大臣 高度経済成長がもたらした、社会の発展の上に貢献したことに目をつぶるわけには私はいかぬ。それを全面的に否定するということは、それは妥当な評価ではないと思います。しかし、高度経済成長の途中において、予期せない――公害問題などもまあ最近であります、公害問題というものがやかましく世界的になったのも。そういう点で、環境との調和ということに対する配慮の足りなかったことは事実であります。その他にも、いろいろな高度経済成長がもたらしたひずみあるいは矛盾、いろいろなものがあります。そういう点は今後これを解決していかなければならぬけれども、しかし、日本があれだけの力がついてきて、そのことによって、いろいろやろうとすることもできるだけの力を持ち、国際的にも、日本の立場というものが、相当強い立場をとることが、経済面から言ってもできるわけでありますから、全面的に、荒木さんの言うように、悪いことばかりしたというふうな評価はしていないわけであります。まあ貢献をした面は貢献をしたと正当に評価をしないと、今後の政策においても非常に誤る。しかしいろいろな弊害はいま出てきておる。この弊害面というものは除去しなければならぬということで、結果的に見れば、結果としてすべてがいいことばかりではないということは、これは言われるとおりですが、全面的にこれの貢献を否定することは妥当ではないという考え方は変わらぬわけでございます。
#104
○荒木委員 予期せざるというお話ですが、このことは、高度成長の始まった当初から、わが党が指摘をしてきました。また引き続いて、新産業都市建設の関係法案あるいは工業再配置の問題が論議された折にも、繰り返しこのことを指摘したとおりであります。いまの総理の答弁の中にうかがわれますのは、やはり大企業、財界のいままで続けてきたこういうやり方を、そのまま認めようというふうな線に立っておるというふうに、私は受けとめざるを得ないと思うのです。
 そこで総理、いま首を横に振られたんですけれども、不況の中で、一時帰休、解雇、配転、出向、労働者の生活を脅かすような大企業の振る舞いが続いておりますけれども、経営者がどういうふうな態度で、一時帰休、解雇をやろうとしているか、総理はどうごらんになっていますか。
#105
○三木内閣総理大臣 やはり企業の経営が悪化しておることは事実でしょう。日本の企業は、企業自体が企業一家と言われるような面もあるわけで、そこに働いておる勤労者に対して、会社がその生活についていろいろな面で気を配らないわけはないと思います、よその国に比べたら。よその国は簡単に整理をするのですが、日本はやはり終身雇用制のような独特の形をとっておるのですから、勤労者に対する配慮は他国よりもずっと高いものがあると思いますが、それでも、会社の経営上やむを得ない場合もあるのでしょうが、私どもは、やむを得ないといっても、そういう解雇とか、あるいはまた一時帰休にしましても、いろいろな面で生活上に変化が起こるわけでありますから、できるだけそういうことをしないようにということを強く指導しておるわけでございます。これに対して、失業の場合にはむろん失業に対してのいろんな対策は準備しておりますが、そこへ行かないように、雇用を維持するようなことに対して、労働省としても全力を尽くしてやっておるわけでございます。
 もう一つ言っておきたいことは、いろいろと荒木さんは断定されて、それではいまの高度経済成長も間違っていないんだ、これをずっと続けていくんだとか、大企業中心の政策を続けていくんだというふうに断定されていろいろ議論をされますが、高度経済成長はもう少し正常な成長の路線に転換をしなければならない、それに対応して、諸制度、慣行も見直さなければならぬと言っておるのですから、高度経済成長をずっと続けていこうという考えはむろん持っていないことは、しばしば申し上げておるとおりで、自民党が大企業を中心にして政治をやっておる、そんなことではこんなに長期な政権は持てるわけありませんよ。いろんな批判はあるにしても、今日までずっと戦後の政権を持ち続けたということは、大企業中心の政治をやっておれば、まあ一年くらいでおしまいになりますよ。やはりバランスを考えてやっておるのだという国民の理解と支持があったから、選挙を通じて自民党の政権を許したのですから、大企業中心の政治ばかりやっておるのだということは、いささか独断に過ぎるということを申し上げておきます。
#106
○荒木委員 わかりました。つまり、総理がごらんになっているのと、私たちが見ているのと、事実の見方が違う。いや、もっと正確に言えば、私たちは事実をありのままに見ている。しかし総理は、事実をごらんにならないか、あるいはあえて目をそらそうとされておる。
 一つ証拠を申し上げたいと思うのです。いま、一時帰休の問題について、経営者の方もいろいろと配慮してやっている、こういう話がありました。ほんとうにそうでしょうか。昨年の秋、関東経営者協会の本部から会員全社に配られた文書があります。一時帰休の実務について、「合理化の実務」についてという文書であります。その中でどういうことを言っているか。一次帰休については特に次の点に留意をされたい。「一時帰休制度の狙い」「人員整理によらないで従業員に危機感を与え、モラールを向上させる。」つまり、会社の経営上、労働者の立場も考え、家族の立場も考えて、どうにもならないから一緒に相談しようというんじゃない。とにかく抵抗があったら困るから、この際ショック療法で危機感を与えて、そしてモラールを向上させるべしと、こういうことなんです。総理どうですか、こういうふうな事実をはっきり認識されて、そしておっしゃる大企業弁護論を展開なさっているのか。その点はいかがですか。
 ただ、私は一言申し上げておきたいのですが、そういうふうな態度をお進めになるからこそ、いま自民党長期政権論というのがありましたが、しかし得票率はどうでしょうか。ここはそういうなにじゃありませんから、私は余り触れたくないんだけれども、おっしゃるから一言申しておきますけれども、だんだん自民党の得票率は低下したじゃないですか。いまや参議院の状態をごらんなさい、世間みんな保革伯仲と言っておる。そのことだけ申し上げておいて、先ほどのことについての答弁を伺いたい。
#107
○三木内閣総理大臣 それは、一前帰休にせよ解雇にせよ、人権を踏みにじるようなことがあれば、人権擁護機関でこれはむろん処理をしますし、また、そういうふうなことが会社自身にあれば、荒木さん御指摘を願えれば、非常な、強制的に圧迫を加えて不当に労働者の権利を侵害するようなことがあったら、そういう個々のケースを御指摘になられれば、われわれとしても十分に調査をいたします。
#108
○荒木委員 どうも、全体をお尋ねすれば部分でお答えになり、そして私が、この経営者の、大企業のあり方ということについてお尋ねすれば、対応する行政機関を指摘をなさる。これはどうも、国政を論じておるわけですから、もう少し正面から、お伺いしておることについてお答えをいただきたい。自民党の支持率の消長ということもありましょうけれども、そういったことじゃなくて、私は本筋についていまお尋ねをしておるんです。繰り返し大企業弁護論を展開しておられますから、私は、その高度成長をどう見るかということと不可分なその問題について、もう一つ事実を指摘したいと思うのです。
 ここに、ある大銀行の内部文書があります。これは、いま大銀行の大もうけがいろいろ論議、取りざたをされております折から、私はかなり重要な問題を含んでおると思うのですが、事は住宅ローンに関する指示文書であります。
 そこで、内容についてお尋ねをする前に、大蔵省当局に、いま大銀行に対して住宅ローンにいかなる指導、行政方針をとっているか、簡単にそれを伺っておきたいと思います。
#109
○高橋(英)政府委員 住宅ローンにつきましては、その量を減らさないように、こういうことでございまして、大体四半期千億、都市銀行だけでございますが、四半期千億を割らないように、それから一方、貸出増加額の一割を割らないように量を確保してくれ、こういう指導をしております。
#110
○荒木委員 ここに大蔵省から出された四十九年十月一日付の局長通達があります。「かねてから各金融機関に対して要請してきたところであるが、個人住宅需要の現況にかんがみ、今後なお一層特段の配慮を」行われたし。私が所管の課長から確かめたところによれば、一〇%は維持せよと言っていると、こう言うのです。ところが総理、総理が先ほど来しばしば展開されてきた大企業弁護論、その対象である、たとえばこの都市銀行です。これがどうかということを、私は申し上げたいんです。
 これは、大銀行の一つである三和銀行の東京業務本部消費者金融部長から、昭和五十年一月四日付で二百十六店の全国の営業店に出された「住宅ローン本年一月−三月の運用について」と題する指示文書であります。若干読みますと、一月−三月の住宅ローンの運用を下記のとおりといたしますということで、裏面に具体的な措置が指示されています。住宅ローンについては原則として取り組みを停止せよ。先ほど伺いますと、大蔵省としては、特段の配慮をせよ、こういうふうにおっしゃっておるようであります。言うまでもなく、たとえば新年度予算で、公営住宅、公団住宅がそれぞれ予算上一万戸減になっている。去年に続いてまたことしも減少だ。五カ年計画達成の年になると言いながら、なかなか達成は容易ではない。そして公営住宅が減ったところを何とか持ち家で間に合わそう。これは、金を貸しさえすれば後は国民が自前でやるわけですから、インフレで物価が値上がりする被害を政府が受ける度合いが少ない。ですから、いま住宅ローンの問題というのは、大蔵省の話もあったように、たいへん引き締め下でも重視されておると言うのですが、かなり名の聞こえた大銀行が、正面からこういった無視した方針を出している。
 先ほど来、高度成長よきところあり、そして、その中で主役を演じた大企業、これまた決して悪ではない、こうおっしゃったのですが、この点について、所管の担当大臣である大蔵大臣から、一体どうなさるか。これをこのまま放置するか、それとも調査をなさるか、これを伺いたいと思います。
#111
○大平国務大臣 調査をしてみます。
#112
○荒木委員 調査をして、国民の前に明らかになったのでありますから、調査結果は本委員会に御報告をいただきたいと思います。よろしゅうございますか。
#113
○大平国務大臣 承知いたしました。
#114
○荒木委員 この点についての私の自余の質問は、調査報告の結果をまって行わしていただくことにして、この部分については保留をさしていただきたいと思いますから、理事会でお計らいをいただきたいと思います。
 日本銀行の総裁がお見えのようでありますから、直接窓口指導を担当していらっしゃる機関として、都市銀行のいまの時期でのこういうことについて、日本銀行としてはどうなさるか、お伺いしたいと思います。
#115
○森永参考人 窓口指導という名のもとに、都銀その他金融機関の貸し付けについて、指導をいたしておるわけでございますが、中小企業向けの資金の貸し付けであるとか、あるいは住宅向けの貸し付け等につきましては、特に優先的に取り扱うようにということを指導いたしておりまして、数量的な問題になりますが、先ほど銀行局長からお答えのとおり、貸出増加額の一割を目途とするようにということで指導をいたしておる次第でございます。(荒木委員「本件について伺っておるのです。いま申し上げた件について日銀はどうなさっておるか」と呼ぶ)具体的な銀行の貸し出しの内容につきましては、ただいまお答えする準備を持っておりませんですが、高度成長時代には、大企業に対する貸し出しのウエートが高かったのはやむを得ないことであったと存じます。しかし、四十年代に入りましてから、住宅であるとか、あるいは個人消費向けであるとか、あるいは公共向け等の資金のウェートが逐次増加しておるわけでございまして、特に現在の都市銀行の態度が大企業向きに偏しておるとは存じません。
 なお、実態につきましては、私ども事情の推移を注意深く見守っていくことにいたしておる次第でございます。
#116
○荒木委員 いささかお尋ねした焦点からそれた御答弁ですから、時間の関係がありますから次の御質問をするときにあわせて御留意いただきたいと思うのですが、いま大蔵大臣から、調査して国会に報告すると、こういう話がありました。私は厳重にやっていただきたいと思う。またやらねばならぬと思う。
 ただ、そのときに、特に申し上げておきたいのは、この三和銀行の頭取が本年の一月に年頭のあいさつをなさっておる。これは社内報に掲示をされておりますけれども、特に銀行として本年力を入れるのはこれだ、「「お客様を大切に」ということであります。」こうおっしゃる。表でお客様を大切にと言いながら、実は中では、住宅ローンはもうやめな、こういうふうなことは、これはいかがなものでしょうか。
 こういった大企業の、不況の時期での経営者のあり方、そしてそのことを含めて、先ほど高度成長の時期の論議がありましたけれども、見直しということは、決してスピードの問題ではない。また、これがよくてこれが悪いという部分的な問題ではない。こういうところにこそ、もし本当にそういった問題の根源に触れて見直しをなさるなら、この問題の徹底的な解明と是正が内閣として講じられなければならぬと思うのです。
 私は、そういったことについて、総理の御見解を伺いたいのですけれども、その前にもう一言申し上げておきたいのは職場の状態であります。まあ大銀行の職場と言えば、一見外から見ると美しいようにも見えますけれども、しかし、月末、期末の深夜に及ぶ連日の労働強化、そして次々とふえてくる職業病、腱鞘炎の問題です。いま預金獲得のために、もう大変なんですよ。一人当て一日ノルマを決められて、そして外交はそのノルマ達成のために、もう毎日毎日何十軒という得意先を訪問して、帰ってきては、居残りをして報告書を書かなければならぬ。
 そういう中で、職場の中では、これは例として申し上げておきたいのですけれども、いろいろな声が起こって、そして労働条件改善、生活向上の運動が起こるのですけれども、それをまた経営者が押さえつけて、大銀行の経営者が思想管理を強化しようとしている。職員の昇級試験の問題集がありますけれども、その中に、たとえば、「許可なく銀行の管理する施設内」――次は括弧になっていまして、空欄なんです。何々「に関する活動をしたとき」、これは懲戒処分を受ける。ここへ正解を入れろというのです。会社の管理する施設と言えば、これは何も職場だけではありません。社宅もそうです。いろいろなところがありますがね。この中に入れる正解というのが、同じく正解集で出ておるのですけれども、これは総理、何だと思われますか。懲戒処分を受けるような、会社の中でしてはいけない活動、社宅の中ではしてはいけない活動、この正解が、この大銀行の言うところによれば、政治に関する活動だ。これはきわめて概念のあいまいなことでありまして、自分の生活の本拠である社宅の中でまで、政治に関する活動一般を、こういう表現でもって懲戒処分だというふうな思想管理をしているようなやり方、こういったところに、先ほどの大蔵大臣の調査報告、これを総理として、厳しくその実を上げるべしということで御見解を伺いたいと思うのです。現に三和銀行は、会長が日本銀行御出身の方であります。専務取締役は大蔵省御出身の方であります。つまり、これから取り締まろうという、調査して規制しようという当のところから出向いておられる人が、要衝の役職にあるわけであります。そういうことも踏まえて、総理としてこの問題をどうごらんになるか、ひとつ伺いたいと思います。
#117
○大平国務大臣 先ほどあなたから御要請がございました、住宅ローンの取り扱いということにつきまして御指摘がありました点につきまして、私は調査をいたしまして御報告するということをお答え申し上げたわけでございます。
 後段の方は、三和銀行における労働問題、労務管理の問題でございまして、大蔵省といたしましては、それは労使間の問題であると承知いたしておるのでございまして、われわれが軽々に介入すべき性質のものではないと考えております。
#118
○荒木委員 だから総理に聞いたのですよ。大臣の所管じゃないと思いますので、総理に伺ったので、この点は三木総理いかがですか。
#119
○三木内閣総理大臣 政治活動の自由というのは憲法に保障はされておりますが、個々の会社において、社員の就業規則といいますか、そういうものを労使間で決めるということは、憲法に抵触するとは思いません。
#120
○荒木委員 どうも、もう少しよく聞いていただきたいのですが、労使間で決めた内容と言っているんじゃないのですよ。私は就業規則と言ったんですよ。就業規則をもし労使で決めると総理が思っていらっしゃるとしたら、これは何といいましょうか、大企業の使用者が一方的に、そういったことで生活の本拠まで規定できるか、事は基本的権利である政治活動である、こう言ってお尋ねをしたわけであります。全然間違っておるから、訂正してください。
#121
○三木内閣総理大臣 憲法は無論大原則でありますが、個々の商社、銀行にしても、就業規則というものをやはり決める場合があって、そういう就業規則というものを承知をして入るわけでありましょうから、一概にそれは憲法違反であるという断定は、私はいたしかねるわけでございます。
#122
○荒木委員 この問題は重要な問題でありますから、引き続き、委員会において事をはっきりさせるということを申し上げておきたいと思います。
 先ほど来のこういったことから見まして、私は、たとえば各種審議会、調査会、こういったところの意見を聞いて政策も立てられるわけですけれども、ここにこういった機関の代表が来ておるということは検討する余地がある、こう思います。そのことだけ申し上げておいて、あとの質問の関連で、答弁はお聞きしようと思います。
 大蔵大臣、いま通達に反している銀行を一つ申し上げたのですが、ほかの大銀行についてはどうごらんになっていますか。――御答弁がないから、もう一言言いますが、いま調査して報告する、こうおっしゃった。ほかの大銀行は、大臣どうごらんになっていますか。
#123
○大平国務大臣 先ほど局長からお話し申し上げましたように、わが方といたしましては、住宅ローンの消化につきまして、都市銀行の協力を要請いたしておるわけでございまして、四半期千億という水準はわれわれの期待どおり実現を見ておるわけでございまして、私は、おおむねわれわれの期待にこたえて、御協力を賜っておるものと考えております。
#124
○荒木委員 大臣そうおっしゃいますがね、まことに残念ですが、そうじゃないんです。しかも単に住宅ローンの問題だけじゃないのです。もっと広いのです。
 ここにもう一つの大銀行、三井銀行の社内文書があります。これは昭和四十九年の九月十七日付、本店審査部長並びに外国業務部長から全国の各店長あてに出された融資方針洗いがえの件に関する指示文書であります。内容はいろいろありますから、若干特徴だけ申し上げますけれども、これに「融資方針選定テーブル」というものがついております。つまり、こういうところへ融資をせよ、こういうところは少し抑えよう、こういうのです。たしかこれは四十八年十二月の二十五日、大蔵省の銀行局長から選別融資規制についての通達が出されておるはずであります。時間が余りありませんから、私が先日聞き取ったところを申し上げますけれども、制限業種は、不動産、卸、小売、風俗営業、これが全体の増加率の枠よりも超えないように、そして中小企業であるとかあるいは住宅金融であるとかは特に配慮するように、全体としてはそういう趣旨の文書であります。
 ところが、三井銀行の内部の融資に関する制限の基準というものは、全く違うんです。大蔵省の言っているようなことじゃないのです。わが方は――これは三井銀行ですよ。わが方はこの時期に及んでこの方針でいく、こう言っているんですよ。その内容は、まず出さないところ、抑えていくところ、融資を抑制するところは不動産業、卸売業、これは大蔵省の言っているのと変わりありません。ところが繊維業というものが入っている。いま繊維産業の不況というのは大臣もよく御承知のとおりです。そこで資金需要が非常に強いことも御承知のとおりです。しかしおしなべて繊維業は制限業種だ。今度は逆に、大蔵省のほうで制限していようと何していようと、抑制と言おうと何と言おうと、これはどんどんいくんだというのが、時流にマッチした成長企業、あるいは建設業での上場会社等です。これは制限業種非該当に取り扱うことができる。まあ言えばこれは逆選択でしょう。こういうふうなことが行われているんですが、大臣は、先ほどの三和銀行の件とあわせて、この件を調査して国会に報告されますか、お伺いしたいと思います。
#125
○大平国務大臣 荒木さんの御注文を聞いておると際限がないのですが、つまり、銀行の現実の仕事の手口につきまして、一々大蔵省がめんどうを見るわけにまいりませんので、われわれといたしましては、銀行局長通達という姿におきまして、そのとき、銀行行政上協力を願いたい項目につきまして、協力を要請いたしておるわけでございまして、おおむねそういうラインに沿って銀行側が協力をしていただいておるものと期待をいたしておるわけでございます。しかし、それは詳細に見てみますと、あるいは御指摘のようなことが、大蔵省の意見と銀行の現実の業務運営とに全然距離がないという保証は、私は言い切れないわけでございますが、私といたしましては、われわれの意のあるところをくみまして、関係金融機関が協力すべき方向で御努力願いたいことを期待いたしておるわけでございまして、一々の業務の手口につきまして、調べて調査しろということでございますけれども、それは、できましたら、御勘弁をちょうだいしたいと思います。
#126
○荒木委員 御勘弁という話がありましたけれども、これはなかなか勘弁できぬのです。先日来の審議で、銀行の社会的責任、公共性、営利性と並んで、その点が論議をされました。そして特に一般の企業に比べてその公共性が強いということも、広く認められておるところです。私はそういう点から申し上げておるので、いまの大臣の御答弁は、何もかも調べて報告せいということはできぬ、これはあるいはそうかもしれない。しかし、いまの時期にこういったことをしておること、これについて三木内閣がどう対処するか、本当に国民の立場に立って銀行のあり方を進めるか。あるいは大銀行のそういったことについては、いま大臣が言われたようなことで放置するか。これは一つのリトマス試験紙のようなものだと私は思うのです。
 ですから、事の本質をはっきりさせる上で申し上げておきますが、基本的な融資方針はこう言っておるのです。大臣、いいですか。いま「優良取引先の資金需要並びに新規優良先の貸し出しに対しては、金融引き締めの如何を問わず積極方針を採ることにより当行にとって優良な取引基盤拡充」を目指す。他方、「優良先に対して傾斜した資金配分のファンド捻出のため、業況不振先、取引振り改善努力に拘らず実効のない先等に対しては果断な回収措置をとる必要がある」。これは銀行の公共的責任、社会性という点から見てどうでしょうか。もうけ一本でいけというなら別ですよ。なるほど大衆預金のそのサウンドバンキングの点がありましょう。しかし、それ一本でというふうに皆さんおっしゃるなら別です。私はやはりこの場合に社会的要請というものがあると思うのです。その両方をこの時期にどういうふうにやっていくかということが、本当にいまの時期での国民的要請にこたえた指導であり、大企業としてはそれこそ保たねばならぬ節度というものじゃないでしょうか。
 この融資の基本方針を受けて、あわせて金利の方の指示をしております。四十九年九月三十日付、これは本店の審査部長から同じく各店に出された分でありますが、この機会に採算を重視したきめ細かい運営態度で臨むこととし、預金の貸し出しの利率をとにかく引き上げるということで、私が申し上げたいのは、すでに実施した分についてもさかのぼって引き上げるべし、もっとも輸銀の協調で貸し出した分については、これは適用除外とする。ですから、ここでも、こういった差別が行われる。
 これは総理、去年、石油危機のときに大企業のビヘービアが問題になりましたけれども、いいお客のところはどんどん持っていこう、新規の客はやめておけ、こういういわゆるお客選別指示文書が問題になりました。やはりそのときの社会的要請や政治的な情勢、そういったところから、この問題に対処されなければならぬと思うのですが、いま指摘しましたような問題について、総理はその政治姿勢としてどうお考えになるか、これをお伺いしたいと思います。
#127
○大平国務大臣 申すまでもなく、金融機関は免許営業でございまして、荒木先生御指摘のように、重い社会的な責任を持ち、公共的な責任を持っておると思うのでございまして、それにふさわしくビヘーブしていただかなければならぬと考えております。
 そして、いま挙げられた事例でございますが、金融引き締め下にもかかわらず、優良な部面につきましては融資をする、そして危ないところにつきましては、果断にこれは切っていくというような趣旨のことが書かれてあるようでございますが、全体として、各銀行の四半期別の融資の総枠というものは、日本銀行の方におきましてきめられた枠内におきまして、個々の銀行がその判断によって融資先を選別いたしておるわけでございまして、その場合、銀行の立場から、優良な融資先を確保したいという気持ちは、私はわからないものでもございませんし、限られた資金の中で、できるだけ資金をセーブしておきたいというような気持ちもわからないものでもございません。しかしながら、銀行の持っておる社会的な、公共的な責任にかんがみまして、できるだけそういうことのないように、責任にこたえていただくことが望ましいことでもございますし、そういうラインで、私どもといたしましても指導し、監督してまいりたいと思います。
#128
○荒木委員 どうもおっしゃることがよくわからない。総理、事ははっきりしているわけですよ。いま不況の中で、中小企業者の人たちは大変な苦労をしている。また、国民の消費面における資金需要、これも後で、関連質問で、野間議員の方から指摘がありますけれども、そういう中で、特に大企業に対する規制、高度成長の見直し、こう言う以上は、そこに違ったものがなければならぬ。いまの大蔵大臣の言い方なんかは、まるきり高度成長のときの、さあ大企業ひとつやれというのと、本質は同じじゃないですか。国民が困っている、中小企業が困っているという立場を考えようというふうな気持ちがあるのかと思われる。私はそういうふうに思うのですけれども、この点について、一言総理の政治姿勢を伺いたいと思うのです。
#129
○三木内閣総理大臣 中小企業は、インフレのもとにおいて一番しわ寄せを受けやすいわけです。われわれも細心の注意を払っているわけですが、中小企業には中小企業としての政府系の金融機関もございますが、しかし、普通の市中銀行といえども、こういう中小企業の金詰まり等も深刻な面もありますから、中小企業向けの金融というものにできるだけ積極的に取り組んでいくことが、金融機関の持っておる社会的責任であることは明らかだと思います。
#130
○荒木委員 私は、先ほど来、総理と大蔵大臣の御答弁を伺っておりまして、やっぱりこれは、大銀行と自民党の皆さんの関係、これをはっきりしなければならぬと思うのです。政治資金の関係もありましょう。それから金の貸し借りの関係もありましょう。これは否定なさらぬと思うのです。大きな都市銀行から自民党の方に金が出ている。自民党が借金をなさっている。いま、大銀行に対してどう対処するかという事実を私は申し上げた。皆さんの御答弁を伺った。若干のニュアンスの違いはありますけれども、しかし、いまの見直しということをする以上は、もっとこの問題についてはっきりした態度がとられなければならぬという点から、大銀行から自民党に対する貸し金、この問題について、私は伺っておきたいと思います。
 総理、この点はすでに御承知と思いますけれども、いま大銀行から幾ら金を借りておられるか、総裁としてお伺いしたいと思うのです。
#131
○三木内閣総理大臣 自民党は銀行に対して遠慮はいたさないわけで、昨日でしたかの答弁でも、銀行のあり方は再検討して、その再検討というものは、銀行法の改正も頭に入れながら再検討すると言ったわけで、われわれが銀行に対してどうということはございません。自民党が借金をしておることは事実ですけれども、自民党はこれらに対する返済計画を立てて、そして金を払うわけですし、金利も払うわけですから、金を借りておるから手心を加えるということはないわけです。ちゃんと利子は払うのですし、銀行の業務としてやっておるわけですから、そういうことはございません。だから、借金しておるから銀行に遠慮しておるのだということではない。しかし、やはり銀行が一番大きな公共性あるいは社会性を持っておるのですから、そのビヘービアというものがいまのままでいいとは、私は思わない。銀行もまた、こういう安定成長の時代を迎えて、銀行自身としても社会的責任を自覚し、また、いままでの金融機関のあり方というものも、相当に銀行自身としても考えなければならぬことは私も認めます。
#132
○荒木委員 額を伺ったんですよ。
#133
○三木内閣総理大臣 だから、あると言っておるじゃないですか。
#134
○荒木委員 私は、自民党の皆さんが大銀行から借金しておられる、だから悪いとは、まだ言ってないんですよ。しかし総理は、総裁として貸借関係があるということをお認めになった。問題は、その貸借関係の中に、いま私が触れました三和銀行、三井銀行が含まれているということなんです。
 自治省に一言伺っておきますが、昭和四十八年度下期並びに四十九年度上期、自由民主党の政治資金規正法による届け出添付書類の収支明細書に、相手方銀行として、この両行が含まれておるかどうか。その点を、ひとつ政府委員の方から答弁してもらいたい。
#135
○土屋政府委員 手元に官報しか持っておりませんので、明細は、台帳として手元にあるものでございますから、調べればすぐわかるわけでございますが、調べて……(荒木委員「きょう午前中に言いました。質問すると言うてある。」と呼ぶ)総額が幾らかということでございまして、入っておるかということは私……(荒木委員「あなた方にちゃんと言ってある」と呼ぶ)それじゃ、いますぐ調べて、あれします。
#136
○荒木委員 では、それは調べてもらうことにしましょう。
 私が申し上げたいのは、都市銀行の貸し出しについて――これは社会の公器ですから。現に、先ほども預金者の立場を考えるという声があった。だから、どこでも、だれでも、いつでも、どんな条件でも貸していい、こういうことはない。やはり大蔵省の指導もある。銀行内部の規定もある。それに照らして、どうかということなんです。
 そこで、もう一言伺っておきたいのですが、総理は、その都市銀行からの、いまお認めになった銀行負債について、内容を御存じか、あるいは帳簿があるか、使い道ははっきりしているか、いかがでしょうか。
#137
○三木内閣総理大臣 自民党も財政的にはなかなか火の車でありまして、お恥ずかしいことを言うわけでございますが、借金があることは事実で、その中の銀行――荒木さん御存じのように、これは私がした借金ではないわけです。前の借金でございますので、一体幾らぐらいどこから借りたということも、私、実際詳細には知らないのですけれども、私が言っておることは、政党といえども、銀行の借金は、年度計画を立てて償還計画を立てなければいかぬ、これは立てようではないか、そういう点で、自民党の議員の方々にも、やはり党費を一挙に値上げをいたしまして、この借金の返済計画は立てようとしておりますが、いま、どこの銀行から幾らということは、私自身は承知していない。まあ自治省の方ではわかっておるのかもしれません。
#138
○荒木委員 いまのお話だと、総裁である総理は、自分が個人で借りているのでないから、金額とかその他明細は存じていない、こうおっしゃった。ある新聞の報道によりますと、これは自由民主党の監査を担当していらっしゃる議員さんですが、監査なんて「名目だけのものだ。党の帳簿なんて、見たこともないし、ハンコを押したこともない」という報道があるわけですよ。
 それで、私はこう思うのです。これは自由民主党さんの党内の事情ですから、その点だけを別途に取り上げて、特別にどうこうじゃないのですけれども、問題は、金の出どころが大衆の金だということです。だからこそ、その点に公共性が求められておる。
 そこで、いま指摘をしました銀行の一つである三和銀行が、金を貸し出す場合にはどういう手順を踏まなければいかぬか決めておる点を申し上げますと、これは三和銀行の審査部発行の「貸付の基本と事例研究」と題する社内の文書でありますが、こう言っているのです。「融資対象を選別するにあたっては、次の点をよく留意し、」この次ですね。「問題対象に対しては融資をしない。」その問題対象というのはどこかといいますと、まずありますのが「経営の放任」、それから「経営者間の内紛」というのがありますがね。これは、いろいろな見方がありますから、さておくとしましても、先ほど総理がおっしゃったように、最高責任者として、あまり微細に細部にわたって承知しないというお話のようなんですけれども、この報道に見られますように、肝心な人が帳簿を見たことがない、どこへ金がいっているかわからぬというところへ、大衆の金を預かっている大銀行が巨額の金を貸し付ける、これは、そのこと自体にやはり問題がありはしないか。事実を確かめる必要があるのではないか。監督官庁として、大蔵省は、そういう貸し出しについて調査をし、是正すべきものは是正する必要があるのではないか、私はこう思うのです。
 大蔵大臣は自由民主党員で、いま私が取り上げておる政党に直接御関係の方だから、これは行政当局の銀行局長に私は伺いたいと思うのです。三和銀行が行内の基準に触れるような形で貸し出しをしておる疑いがある。しかも額は大きい。銀行局長としてはどうなさるか、答弁を伺いたいと思います。
#139
○高橋(英)政府委員 都市銀行が、自由民主党に対しまして、それぞれ貸し金があることは承知しております。ただ、いままでの取引によりますと、きちんきちんと利息なども払われておりまして、そして一応延滞にもなっていないということで、問題はない貸し金ではないかというふうに見ております。ただ私ども、大衆のお金を預かっておられるという御指摘でございますが、貸し金がきちんと返ってくることを念願しておるものでございます。
#140
○荒木委員 そういうことになりますと、これはやはり、局長の念願どおりに回収がされるかどうか、このことは関係預金者大衆の大きな利益にも関しますし、ことに大銀行の融資方針に関するわけですね、ビヘービアだとか。ことに、伝えられるところでは、担保がないということのようでありますが、その点についても、こういうふうに言っております。「下記のような取引先に対しては、フル担保体制を完備しておくこと」、これを行員に言っておるんですよ、これでなければ貸しちゃいかぬと。その先には「資金使途の不明確な貸出の起る先」、何に使うかわからぬようなところには貸すなと、こう言っているんです。これは当然でしょう。(「それは使い道はわかっているよ」と呼ぶ者あり)もし使い道がわかっていると言うのなら、そのことをやっぱりはっきりさせるべきです。させられなければ、これは借りるべきじゃない。ことに、先ほど融資方針の点で申し上げましたけれども、十分な採算のとれないところには貸し出すなと、こう言っておる。そのこと自体問題ですよ。そのこと自体問題だけれども、問題のある基準を立て、そして経営者がみずからその基準に反して、自由民主党に貸し出している疑いがある。
 ですから、私は、その点について、これは総裁である総理に、国民の間に広く知れ渡った大銀行と自由民主党の間の貸し金に関するいろんな指摘や疑惑、これを十分心して、この問題をはっきりさせる。個人資産の公開もなさった。だから、党としてはっきりさせるというような立場で政治姿勢を伺って、この問題についての質問を終わりたいと思うのです。いかがですか。
#141
○三木内閣総理大臣 常に、自民党の経理はいろんな機関があってやっておりますから、この問題について、どれだけの借金がどこから来たかということは、調べはつくことは当然だと思います。
#142
○湊委員長代理 野間友一君から関連質疑の申し出があります。荒木君の持ち時間の範囲内で、これを許します。野間友一君。
#143
○野間委員 いま荒木議員の方から、金融の問題についていろいろ御指摘がありました。大企業に太く有利に、そして中小零細企業に細く不利益に、これは、政府系の金融機関、これ一つ見ても明らかであります。と同時に、いま指摘のありました民間金融機関についても、この中小企業の細いパイプすら締めようとしておるという事実の指摘がいまなされました。
 私は、さらにここで重要なのは、この大企業は膨大な集金機構を持っているということであります。一例を、ここで三井物産について指摘したいと思います。この「有価証券報告書」によりますと、どこから金を借りたか、長借の主要なものが載っております。ところが、これには「その他」というところがありますが、細かいことは出ておりません。
 私は、物産のこの点について、一体どこからどのように金を借りておるのか、この点について調査しました。その結果を申し上げますと、都市銀行、これは十三行中十三行から借りておるわけですね。それから地銀が六十三行中三十五行から、信金は七行全部借りておる。さらに長銀とか、その他たくさんありますけれども、ここで私が指摘したいのは、政府系金融機関、この中でも、中小企業関係、それから農林系統、それから信用金庫、相互銀行、本店扱いだけでも、調べてみますと、百七十四の対象から百八十一件の貸し出しを受けておる。これは大変なことだと思うのです。
 いま申し上げたように、いまの時期に、不況の中で、中小零細企業に特に温かく厚くしなければならぬ。ところが、一応上では引き締めをしたと、こうおっしゃいますけれども、これががっと底にもぐって、中小企業分野にも、あるいは庶民の分野にも、これが被害を与えておるという実態であります。政府は従前から、中小企業やあるいは庶民の金融機関については、大企業は借りられないようにこれをしなければならぬ、見直さなければならぬ、こう言っておられましたけれども、依然としてこういう事実が残っておるわけです。
 さらに私は、ここでがまんならぬと思うのは、これは三井物産のちゃんとコンピューターの借り入れ先コードがありますから明らかでありますけれども、本来、法律的にも借りてはならない信用金庫、ここからも借りておるのです。先ほどからいろいろ話が出ておりますけれども、商工中金とか、これはなるほど大企業も借りる仕組みにはなっております。しかしこれは、やはり締めなければならぬ、と同時に、法律上違法なところから借りておる、こういう実態があります。これは物産のはっきりした文書の中にも出ておるわけですね。
 ですからこの際、このような大企業がどのような集金機構を持っておるのか、さらには、水平借り入れあるいは垂直借り入れ、一般の企業からも、だっと借り入れる。そういう膨大な機構を持っておるのですが、こういう点について、この際徹底して見直して、しかも違法な貸し出しについては、これを厳しく規制する、こういうことが非常に大事だと思うのです。この点について、この規制について、総理からまずお伺いしたいと思います。
#144
○大平国務大臣 いま提起された問題は、商社という日本のユニークな企業形態の中で、特に巨大なものの金融を受けておる状態についての御批判でございました。もともとこういう企業形態がなぜ生まれたのか、また、それがどういう経済的機能を日本経済のために果たしておるかというような問題、これはまた別にあるわけでございますが、現にあるそういう企業が金融機関から金融を受けるということは、これは十分考えられることでございまするし、もしそこに違法な面がございますれば、もとより正さなければなりませんけれども、問題は、銀行がそういうものに偏って、偏重した金融が行われておるかどうかという御指摘だろうと思うのでございますが、それは、きのうも矢野書記長の御質問にもお答え申し上げましたとおり、都市銀行におきましても、四六%が大企業と称するものでございまして、あとは中小あるいは中堅企業の融資に回されておるわけで、それ自体、私は特に問題があるとは承知いたしていないわけでございます。しかし、違法なものがもしありとするならば、それはもとより正さなければならぬことは当然と思います。
#145
○野間委員 ですから私は、本店分の借り入れの中にある信用金庫、まさに違法でしょう。借りることはできないでしょうが。東京信用金庫から借りた、こういう実績があるわけです。こういうものは大変なことだと思うのです。どういうルートで、どういう経緯で借りたのか、これは当然調査すべき、あたりまえの話じゃありませんか。
 さらに申し上げておるのは、本来、農民とか漁民の方々、あるいは中小企業の方々が借りられるこういう金融機関から、いま大蔵大臣言われたけれども、確かに一定の経緯はあるかもしれませんが、しかし、いまのこの時期においても、こういうところからさらに吸い上げておる、このことを私は問題にしておるわけです。法律的に合法か違法か、これはもちろんあります。これは政府の姿勢なんです。総理、どうですか。
#146
○三木内閣総理大臣 いま信用金庫からのことは、これは借り入れられないと思いますが、銀行局長でも答えたほうがいいと思うのです。そういうことで違法なことがあれば、正さなければならぬことは当然でございます。
#147
○野間委員 大企業は、一見非常にスマートできれいだ、しかし中では、法律に違反したこういう事実を行っておる、この実態を私は指摘しておるわけです。
 私は、時間の関係で、次に入りますけれども、特に、たとえば輸銀ですね。輸銀は借り出しの一企業に対する限度がないわけです。利息も非常に安い。六%から九%、平均しますと現在七・五%です。こういうものが無際限に借りられる仕組みになっておる、これを問題にしたいのです。
 特に、具体的に、いま重要な問題になっておるイランの問題について、少し事例を挙げたいと思いますけれども、私はここでは、中東政策とかあるいはエネルギー、あるいは海外経済協力、これについて言及するつもりはありません。ここで申し上げておるのは、輸銀の金の使い方、これであります。御承知のとおり、たしか四十七年の暮れごろだと思いますけれども、これは通産大臣もよく御存じのとおり、総理もよく御存じのとおりですけれども、イランで石油化学のプラントをつくる。これはたしか日本政府は八千万ドルの借款供与をやりました。それに相呼応して、これは三井物産を中心とする三井グループが、これについて入っていくという計画を立てました。三井が今度は出資会社、イラン化学開発会社というものをつくりまして、そしてイランの石油公団、これと折半して出資してつくるこの計画であります。
 これについて問題なのは、最初の見積もりが二千九百億であります。ところが、現在では七千九百億あるいは八千億、こう言われておるわけですね。しかもこれは、三井物産あるいは三井グループがおのれの金でやるなら、私は言及するはずがありません。しかしそれを輸銀に持ち込んで、こういう計画を立てておる、このことであります。四十七年の暮れに二千九百億の見積もりをした、いまでは七千九百億と言われておる。これは大変な問題になっております。このことであります。
 私はここには一つの大きな問題があると思うのです。というのは、貸し出し条件やあるいは金利という、特に輸銀の大企業に有利な条件と同時に、いつでも金をつかみ取りができる、こういう仕組みにあると私は思うのです。ここで言いますと、これは具体的な計画は確定していないのです。見積もりをした段階で、すでに、一緒になってつくりましたイラン・ジャパン・ペトロケミカルですね、これがすでにもう仕事をしておる。整地もして、あとは機器の搬入を待つのみである。ところが実際、全体の計画についてはまだ確定していない、こういうことですね。
 三木総理は、所信表明の中でも、この中東問題について非常に重視されておる。エネルギー問題を重視されておる。私は言及しませんけれども。このことは何を意味するかと言いますと、大企業は、ここでどんなに見積もりが狂おうとも、どんなに計画が狂おうとも、これは国際関係の信頼関係から、もうこのような借款供与を含んだ経済協力を破棄することはないだろう。私はこれをひとつうがって考えますと、最初はずさんな計画を立てる。その理由については、そこにまず入り込む、入り込んで実績さえとれば、どのようにでもなる、こういう姿勢が、この三井物産の場合にありありと出ておるのじゃないか。いま申し上げたような事態の中で、これは国際的な約束ですから、これを破棄することはできない。ところが見積もりは狂ってきた、それでもなおかつ輸銀からこれを融資しなければならぬ、こういう事態になると思うのです。これは総理は、この間の新聞でも、通産大臣と話をされて、これは補助金をつけるとかどうとか、いろいろ新聞報道で私は知っておりますけれども、こういう事態について、一体総理はどのように対処されるのか、ひとつ見解をぜひ聞かしていただきたいと思います。
#148
○三木内閣総理大臣 通産大臣からお答えいたします。
#149
○河本国務大臣 まず事実関係を申し上げますが、御案内のように、イランとわが国は経済関係が非常に密接であります。日本が輸入しております油三億トンのうち、およそ三分の一はイランから入っておるわけでございまして、しかも中近東との貿易でも、イランが最大の相手先になっております。そういうことを背景にして、イランとのいろんな経済協力というものが進んでおるわけでございますが、いまお話しの石油化学はパンダルシャプールの計画だと思いますが、大体金額等も、そのように私も承知いたしております。
 ただ、それをどういうふうに具体的に資金調達をするかということにつきましては、いま日本側とイラン側でせっかく折衝中でございまして、まだ最終の結論は出ておりません。しかし、われわれといたしましては、経済関係が非常に密接でありますしいたしますから、この計画が成功することを期待いたしております。
#150
○野間委員 ですから、いま言われたように、二千九百億が七千九百億になる。いま通産大臣も、その事実については認めました。なぜこんなに狂ってきたのか。これはたとえば、インフレの中でプラントの費用がかさんだとか、いろいろ理屈がつけられておるようでありますけれども、しかしながら、卸売物価指数の推移等を見ましても、いまの二千九百億から七千九百億と、このようなわずかの間に二・七倍にも狂ってくるということは、この同じ期間をとりましても、この卸売物価指数の推移は七四・五%のアップにしかすぎないということから、これは理由にならないということは明らかだと思うのです。
 私が指摘したいのは、三井物産は、これは商社全体そうですけれども、輸銀に依存する率が非常に高いということであります。少し数字を挙げてみますと、十大商社で、四十八年九月末で、輸銀の総貸し出しの中で二七・三%を占めておる。三井物産をちなみに見ますと、これは昨年の九月期の借り入れ残高が何と実に二千百四十二億五千八百万円、これは長借の総額の中で占める割合が二八・二%と、非常に高いわけです。いいですか、二千百四十二億、これは三月期よりも三百億ふえております。ところが、これはほとんどが輸銀に頼らなければならぬ。
 いいですか、総理、七千九百億ですよ。これがかりに折半としても、一体幾らになりますか。国際的なそういう信用の問題で、これは破棄することはできない、それじゃ結局出さなければならぬ、このことを私は問題にしておるのです。このことが、今日まで続けられた高度経済成長、輸出第一主義、この中で、いつでも、どのようにでも、いずれこれをつかみ取ることができる、この姿勢に移ってくるのです、総理。しかもこの場合、具体的な計画もまだないままに、先ほど申し上げたように、すでに着々と着工して、仕事が進んでおるのです。一体これをどうするかということです。総理、これは政治姿勢として、大変重要な問題であります。
    〔湊委員長代理退席、委員長着席〕
私は、この輸銀の金を貸すのかどうか、アラブ外交等々は別の機会に論議したいと思いますけれども、この点について、いまの三木総理の姿勢を、ひとつお聞かせ願いたいと思います。
#151
○河本国務大臣 ちょっと申し上げたいと思いますが、確かに、見積もりは相当大幅に狂っております。しかしこの理由は、一昨年の秋に、御案内のように石油が一挙に四倍に上がりまして、世界的にインフレが起こっております。それともう一つ、これだけの大事業でございますから、完成までに非常に長期間かかるわけなんです。それから、現地でもインフレが起こっておりまして、そういうことで見積もりが変わってきたわけでございますが、基本的な考え方といたしましては、私は、先ほど大蔵大臣も商社のことに言及されましたように、日本の商社というものは非常にユニークな存在でございまして、商社が日本の第一線に立って、いろいろ海外貿易を開拓しておる、それによって日本の貿易が盛んになり、日本の経済が成り立っておる。こういう意味におきまして、できるだけこういう計画は、これは輸銀のきめることでございますけれども、政府としてはバックアップをしていきたい、かように考えております。
#152
○野間委員 総理、結局こうなるわけですね。こんなに大幅に狂ってきても、破棄できない段階では、これを出さざるを得ないでしょう。いまの国際信用の問題もあるでしょう。そうでしょう、つかみ取りじゃありませんか。計画も具体的に確定していないのでしょう。これは、たとえばマレーシアとか、あちこちでいま同じような問題が起こっております。地下鉄の問題がそうです。これからどんどんこういうのが出てくると思うのです。あれこれあれこれ、民間ベースでどんどん出かけていく、政府が借款供与しておる、これは断ることができない、破棄できない、みんなつけなければならぬじゃありませんか。こういう姿勢なんです。総理、これはどうですか、輸銀の使い方、あり方、これを一遍見直さなければならぬ。当然だと思うのですけれども、いかがです。
#153
○河本国務大臣 その前に一言だけ申し上げたいと思いますが、先般の総理の演説でもこの点に言及をせられまして、海外経済協力のあり方というものは、量、質及びその方法について、ひとつこの際根本的に検討していきたい、こういうお話がございましたので、その総理の御発言の趣旨を受けまして、いま関係の官庁で意見をまとめておるところでございます。
#154
○野間委員 総理、同じことを答えてください。
#155
○三木内閣総理大臣 輸銀は、銀行ですから、ルーズな貸し出しをやるわけはないので、イランの問題ではないのですけれども、私が中東へ参ったケースで、輸銀というものはなかなか厳しい査定をするわけであります。そういうことで、そんなに何もかも無制限に、資金の限度もございますし、そんなにルーズな経営をやっておるわけではないのですけれども、この機会に、海外経済協力というものは一遍見直してみる時期に来ておる、こういうことで、先般もそういうことを私が指示したわけでございます。これは、内容とか質とか、あるいはあり方とか、こういうものに対して、この機会に一遍見直しをしてみる必要があるということですが、それは、輸銀がルーズにやっておるからということが直接の原因ではないわけでございます。
#156
○野間委員 いやいや、あり方ですよ。実際もう仕事は着々と着工しておる。進んでおるわけでしょう、計画も確定せぬままに。これは貸さざるを得ないでしょうが。こういうようなことはまさにルーズでしょうが。やればやり得じゃありませんか。ですから、これは厳しく見直して、規制する必要があるんじゃないか。当然のことでしょう。いまの答弁を聞いても、やはりそういう大企業本位の姿勢そのものには変わりはない、私はこう言わざるを得ないと思う。
 と同時に、逆に、私は中小企業関係についてお聞きしたいと思うのです。と言いますのは、小企業経営改善資金というのがあります。いま申し上げたように、一方では大企業に有利な条件で幾らでも金を貸す。ところが、小企業改善資金、これについては逆だと思うのです。なるほど無担保、無保証で、小企業者に融資の道をつけた、これは私はそれなりに評価はしております。ところが問題は、これについて商工会議所等の経営指導、それから商工会議所会頭等の推薦、これを要件として、これがなければ金を貸すことができないという仕組みになっていることであります。これは御承知のとおりであります。これについて聞きますと、経営指導と融資の連動性、これがあって初めて、小企業の経営の発展、これに資するんだということを言っております。もしそうだとすれば、すべての政策金融にこういうことをしなければならぬ。これは異例の措置なんです。私は、なぜこのような経営指導と融資と連動させてこういう推薦等を要件としたかということをいろいろ考え、あるいは調べてみました。これについては、発足前の経緯の中で、当時マスコミ等もかなり取り上げておりました。自民党が年々歳々支持を失っていく、共産党が急進出した――これはちゃんとありますよ、新聞が。この中で、どうしてもこの小規模事業者、これに対する対策、自民党側に引きつける対策を立てなければならぬ、これはマスコミにちゃんと書いてあります。しかも、このような商工会議所の推薦等、ここにも問題がある。日本商工会議所の役員の構成をずっと調べてみますと、きら星のごとく財界のお歴々が並んでおるということであります。たとえば会頭が永野重雄さん、御承知のとおりであります。副会頭が東海銀行頭取、それから横浜銀行頭取、近鉄の会長、日本新薬の社長、川崎重工の相談役、それから小規模事業対策委員会の委員長が百十四銀行の頭取、きら星のごとく並んでおります。しかも中小企業庁等から聞き取りしますと、この制度の発足については、商工会議所からこういう強い要請があって、機が熟したと思ったのでやったのだ、さらにこれは田中内閣の超重点政策だ、こういうふうに言っておりました。
 そこで、商工会議所がどのような見地からこのような制度を考えたのかということについて、私はいろいろ商工会議所の資料を調べてみました。そうすると、こういうことが目的として書かれております。「わが国の政治的、経済的、社会的安定勢力である小規模事業者に対して」これを云々するんだ、こういうととが書いてある。政治的、経済的、社会的安定勢力である小企業者、これはどういうことでしょうかね。とりもなおさず、今日まで、小企業者と財界、あるいは商工会議所をパイプとする一つの自民党とのつながりですね、図式上は、私はそこへ出てきていると思うのです。一体、小企業者が政治的に安定勢力である、経済的に安定勢力である、社会的に安定勢力である、このことは、私はいま指摘したことを抜いて考えようがないと思うのです。
 と同時に、私は、時間の関係ではしょりますけれども、一体、このような推薦やあるいは経営指導を金を借りる場合の要件とする、そういうことの法律上の根拠はあるのかないのか、これを調べてみました。これはないのです。商工会議所法を見ましても、あるいは商工会の組織等に関する法律を見ましても、こういうのはないのです。ないにもかかわらず、ここの推薦がなければ金を貸すことができない。ここからすれば、このような指導と融資のリンク、連動性、これをつくった意図が、ここに明らかに出ておると思うのです。言いたくはありませんけれども、これはまさに自民党の党利党略じゃないか、こういう疑い、こういう世論の批判、これは当然だと思うのです。総理、いかがですか。
#157
○河本国務大臣 ちょっと事実を申し上げたいと思いますが、現在、御案内のように、日本の中小企業というものはその数が五百万を超えます。そしてこの就業人口というものは約三千万でございまして、日本の生産の半分を上げておるわけでございます。特にいま御指摘の小企業というものが非常に数が多うございまして、たしか三百数十万もあったと思います。そこで、小企業というのは、生産事業では五人、それから流通関係では二人という、きわめて小規模のものでございまして、そういうものに対して、今度無担保無保証という形で出しておるわけでございますから、できるだけ、経理関係、それから今後の経営のあり方等を専門家の立場から指導いたしまして、そして金を貸していこう、こういう趣旨でございます。そして非常に数の多い小企業の経営というものが安定するということは、日本の経済が安定をする、したがって日本の社会というものが安定をする、そういう趣旨でございます。
#158
○野間委員 しかもこの要綱によりますと、地域において組織化に努めなければならぬ。これも一つの要綱の方針になっておるようです。これからも明らかですよ、意図、ねらいは。しかも、経営指導の実態について、私は調べてみました。そうすると、実際にやっておることと言えば、商工会に入れ、あるいは商工会議所に入れ、こういうことだけであります。指導は何もしてやしない。五千円の入会金を取って、入れると直ちに貸しておるのです。これなんです。これからすれば、ねらいがどこにあるかはっきりしていると思うのです。
 もう一つ、抜き差しならぬあれですけれども、経営指導員がこれについてどのような見解、態度をとっておるのか、ここに一つの文書があります。こういうことが書いてある。あれこれありますけれども、これは特定の個人には関係ありませんから、名前は言いませんけれども、ある市場ですね。ここには、「東灘民主商工会(共産系)が積極的に活動を続けておりますので、当所本来の使命、小規模企業対策推進運動を達成するには、上記融資については政治的特別の御配慮をしてくださるようお願い申上げます。」ちゃんと書いてあるのですよ。これは個別の指導員が独断でやったということだけじゃない。私は各地の事例をたくさん知っています。文書にいみじくもそれが書いてあるのです。民主商工会は積極的に活動を続けているから、政治的に配慮してこれを貸せと、こういうことが書いてある。
 このことからしても、これは商工会あるいは商工会議所の法律の中にも、特定の個人やあるいは団体に利益を与えてはならぬとか、政党の利益の活動をしてはならぬと、ちゃんと書いてある。やっていることはこれなんです。これにも「本来の使命」と、ちゃんと書いてある。いいですか、こういうところからして、ねらいは明らかであります。したがって法律上も問題がある。あるいはねらいがそうである。実際にやっていることはこうである。この推薦制度をやめて、国金本来の窓口として審査権を十分に果たさせていく、そうしなければ大変な事態になる、こう私は思うのです。ですから、これらをぜひ見直して推薦制度をやめさせるべきである、見直すべきである、こう考えますが、総理いかがですか。これは政治的な姿勢ですから、方針ですから。――総理に聞いておるのだ。委員長、総理に聞いているんだ。
#159
○河本国務大臣 ちょっとその前に、事実関係を申し上げたいと思いますが、経営指導員は現在六千人ばかりおるのです。そしてこれを五十年度にもう千名ばかりふやしまして、七千名にしたいと思っているのです。ただしかし、一挙に六千名の人間を確保したということに対しては、若干素質の問題もあったと思います。そこで、中小企業大学校をつくりまして、こういう経営指導員をさらに徹底的に指導していく、こういうふうにやっていきたい、かように考えております。
#160
○三木内閣総理大臣 私どもの今度の予算編成で、やはり無担保無保証の零細企業の資金は……(野間委員「それはわかっている」と呼ぶ)いや、それから言わないと、ちょっと話が……。これを倍にしたわけです。やはり中小企業で必要なことは、情報の提供といいますか、指導員も千名ふやしたのです。そういう場合に、私は、商工会議所というものを中小企業の場合やはり活用したらいいと思うのですね。これは非常に関連性を持っておるし、また偏った団体でもないですから、商工会とか商工会議所というものは公の団体ですから、これは余り偏見を持って見ないで、中小企業の指導というものに、私は商工会議所の役割りが非常にあると思うのです。大阪へ行ったときにも、大阪なんかの商工会議所に中小企業の指導員というものも置いて、商工会議所は中小企業の指導に当たったらどうかということを、私は前にも強調したわけですが、いまでも変わらぬ。しかし、そのことが、いま言っておられたような政治的なものであってはなりませんから、実情は調べますけれども、商工会議所がそういうものに対して推薦をしたりして、中小企業とのいろいろあっせんをしたりするということは、私は地方の実情に沿うておるのではないかという感じがするのです。しかし、行き過ぎた行為があるとするならば、やはりそういうことは是正しなければなりません。
#161
○野間委員 時間がありません。これはさらに各委員会において追及したいと思います。
 一応、私はこれで終わりたいと思います。
#162
○荒木委員 高度経済成長、これをどう見るか。私たちは、いまの極端な両極分化現象、昭和三十年から比べて大企業の利益二十四倍、労働者の実質賃金はわずか二・九倍、それに見られるような極端な開き、あるいは国内の石炭産業をつぶしてエネルギーの自給率が極端に低下をする、農地をどんどんつぶして食糧の自給率も低下をする、こういう経済基盤の問題。さらに公害を初め環境破壊、都市問題。内政については、全体として見れば高度成長が間違っていたということは、国民の多くが認めている。総理府の統計にあるとおりだということを指摘してまいりました。そして、総理が言われるこれからの見直しということについても、その点を直視して見直しをしなければならぬ。それを支えたのが税制であり、財政であり、金融の大企業を優遇する仕組みであった。その点を取り除かなければならないということを主張してきました。単にスピードの問題、功罪相半ばという問題ではありません。そのことを強く主張いたしまして、調査、回答をいただくという点がありましたから、若干の時間を残して、質問をこれで終わります。
#163
○荒舩委員長 荒木君の質問に対しまして、自治省土屋選挙部長からの御発言を願います。
 その前に、三木総理大臣。
#164
○三木内閣総理大臣 荒木さん、あなたが全体の質問を通じて、自民党が大企業中心だということを非常に断定的に言われますけれども、また、高度経済成長というものを今後も続けてやろうとしているのだということは、その二つは、私はやはり言っていないですから。それはやはり、高度経済成長はそれを支える状況がなくなったのですから、産業基盤整備といっても、今後は生活環境の整備に力を入れていかなければならぬことは事実。そういう意味において、財政などに対しても、やはりいままでの考え方と大きく違ってくることは当然でございます。そういう意味において見直しをするということは当然で、またいろいろな例をお引きになって、いかにも自民党は大企業の政党であるという、そういう断定には承服いたしかねます。これはやはり自民党は、国民全体の均衡の中にやっていこうとしておるわけでございますので、そういういろいろな御批判は承りますけれども、その断定には承服いたしかねることを申し上げます。
#165
○土屋政府委員 先ほどの御質問にお答えいたします。
 四十九年の上期は、お尋ねの三和銀行が約三千六百万、それから三井銀行が三千五百万の返済をいたしております。四十八年の下期につきましては、実は日ごとに非常にたくさん出ておるわけでございますが、何々銀行、何月何日何々銀行ほかという形で処理されておりまして、そこからは確認できませんでした。それに入っておるかどうかということは、したがって正確にはちょっと申し上げられません。
#166
○荒木委員 いまの総理の答弁は、私のほうこそ承服できないということを申し上げて、質問を終わります。
#167
○荒舩委員長 これにて荒木君の質疑は終了いたしました。
 次に、多賀谷真稔君。
#168
○多賀谷委員 今日のインフレの最大の被害者でありますお年寄りの問題を中心として、まず質問をいたしたいと思います。
 総理、総理は養護老人ホームを訪問されたことがありますか。
#169
○三木内閣総理大臣 老人ホームには行ったことがございますけれども、養護老人ホーム――老人ホームには行ったことがございます。
#170
○多賀谷委員 総理、いま老人ホームは大体四種類あるわけです。養護老人ホーム、これは御存じのように、昔、養老院といった一般的な老人ホームです。それから軽費老人ホーム、これは費用を、入っておられます人が一部負担するというホーム。それから特別養護老人ホーム、これは、言わば体が非常に不自由で寝たきりの方の多いホーム。それから有料老人ホーム、これは厚生年金等も使っておりますが、自分で金を出すというホーム。
 そこで、養護老人ホームと、同じようなホームでありますが、軽費老人ホームと、こう見てまいります。あるいは特別養護老人ホーム、有料老人ホームと訪問してみますと、非常に空気が違うわけです。ことに養護老人ホームと軽費老人ホームとを見ますと、格段の相違がある。まさに明暗異にするという感じがするわけです。
 そこで、総理が訪問されました養護老人ホームに行かれて、どういう感じを持たれましたですか。
#171
○三木内閣総理大臣 まあ養護といいますか、養護老人ホームというような形――養護老人ホームという名をとったかどうかわかりませんが、一般の老人ホーム、やはりその老人の人たちの持っておる何か一つの孤独感というようなものですね、その中に漂っておる。これはやはり老人の持っておる一つの――そういう人たちが何か仕事をしますとか、孤独感というものを持っておる者に対して、何かそういうものを持たずに余生を送るようなことはできないかという感じが非常にしたんです。
#172
○多賀谷委員 十分承知をされていないようですが、養護老人ホームに入るには次のような条件がある。要するに、生活保護の方ですね。あるいはまた、当該老人が属する世帯が、市民税の所得割りを納めていない貧しい家庭だというのが条件なんです。ですから、言ってみますと、あなたは身寄りがないからただで置いてあげますよという仕組みなんです。ですから、六畳には大体三人です。四畳半に二人。ですから、非常にさびしい。そうして、われわれが行ってみますると、この間、親転がしという話をされておりましたけれども、要するに面会者がないんです。その面会者がないというのは、全く寄りつかないんですね。そして、私が聞いたところによりますと、二、三カ所行きましたが、大体六カ月に一回来ない家庭が四割。そうして手紙が来ますと、その手紙には何々老人ホーム内と書いてないのです。しかし郵便局の人が、ああこの人は長い間老人ホームにおりますからと言って、届けてくれる。しかし発信人は老人ホーム内と書かないのです。ところが、軽費老人ホームというところへ行きますと、もう面会者が絶えない。日曜日ぐらいは殺到しているのですよ。それは自分が費用を出している。施設も違いますよ。四畳半に一人おる。そして少し経費を出しておりますから、そして毛布なんか貸してくれますから、家族が正月なんか来て泊まっておる。ですから、私は、この違いというのはどこにあるんだろうか、こういうように考えてみたわけです。
 そこで、あなたは貧しいから、身寄りがないからただで置いてあげますよという政策は、これは私は政策としては非常に非情な政策である。ですから、自分の身内が老人ホームに入っておるということを言わない。訪ねていくことが恥ずかしいのですよ。こういう現状にある。ところが、わずか二万円程度を納めますと、もう大いばりで入っておる。そうしてもちろん二万円じゃ足りませんから、後の措置費は国及び自治体が持っておるわけですよ、現実には。国が措置費を出しておる。そうして、それは家族が孫を連れてくるわけです。
 なぜこの違いが政策の中であらわれないかということですよ。私は今日ここに日本の福祉年金の問題が基本的にあると思うのです。これに対して、所管の厚生大臣はどう考えられますか。
#173
○田中国務大臣 いま多賀谷先生おっしゃったような傾向が確かにあることは、私も知っております。そこで、理想的に申しますれば、ヨーロッパの社会保障の先進国のごとく、年金で、老人ホーム等の入居費が賄えて若干のお小遣いが残るというような姿が理想的だと思いますが、しかし、今日では、わが国はまだ老人年金が未成熟でございますので、御指摘のような点が残ることについては、残念に思うわけでございます。
#174
○多賀谷委員 年金が未成熟というのが、私はどうも腑に落ちないのです。労働者年金ができたのが昭和十七年でしょう。厚生年金に変わったのが昭和十九年でしょう。十九年のときに八百二十万人加入者がいたんですよ。その後三十年たっているんですよ。三十年たって、今日まだ八十万人しか資格者がないというような制度はおかしいじゃないですか。私はそういう点が非常におかしいと思うのですよ。三十年たってまだ未成熟だというような年金がありますか。そうして基本的には、日本の場合は、年金の原則に沿わない年金をつくった。もっともあれは強制貯蓄だと言う人があるのですから。
 きょう床次さん見えておられませんが、床次竹二郎さんが鉄道院総裁のとき、これは第一次世界大戦で鉄道に人が集まらないので、年金をつくったわけです。年金をつくって、大正九年に発足した。その前に、明治四十年から国有鉄道になっておるわけです。そこで、あなたはいまからまだ二十年掛けなければ年金ありませんなんて言ったら、先輩が怒るでしょう。そんな非礼なことは先輩にできない。そこで過去十三年の勤務年限は全部見たのですよ。国有鉄道になってからの勤務年限は全部見たのです。
 ですから、年金という、しかも強制年金というものは三つの要素がある。これが欠けたら強制年金じゃないのです。公的年金じゃない。それは、第一には過去勤務を見るということです。これは御存じのように、国会でも、年金共済が始まったときに、過去の代議士の分まで見たでしょう。先輩がまだ生きておられれば、一銭の掛金もしなくても、過去の先輩のを見たのでしょう。国会議員は見たのです。それは同じ給付はもらえません。差し引くわけですけれども。ですから、過去の勤務を見ないなんという年金は、これは非常に年金ルールに合わない、原則に合わない年金なんです。それがいま福祉年金になってあらわれておるこの層なんですよ、大臣。ですから、あなたは一銭の保険金も払われないでと言うわけにはいかないのですよ、七十歳の人は当時四十歳だったんですから。ですから、そういうところを、残念ながらいまわれわれがしりぬぐいをしなければならない段階に来ておると思う。
 これについて、総理、大体趣旨がわかりましたでしょう。どういうようにお考えですか。
#175
○三木内閣総理大臣 年金制度は、多賀谷さん御指摘のように、全般的に見直しをしなければならぬし、またいろいろな欠陥がございます。そういう点で、すべての年金制度全般を、いま厚生省が、できるだけ来年度の予算に反映できるように見直しをしておる最中です。また、長期的に考えなければならぬ面もありますから、五十一年度から、社会保障制度の長期計画も立てようということで――年金は、確かにその年金自身にいろいろな欠陥があるし、またいろいろ多岐にわたっておるし、これはいま全般的な見直しをする時期だと思います。個々については、御批判のようなことが確かにいろいろあることは、われわれも認めるものでございます。
#176
○多賀谷委員 ですから、その途中で、私立共済だとか農協の方々の年金が、厚生年金から離脱したわけですね。それは自分で過去勤務債務を見ようとしたからです。そうして社会保障が前進して、年金統一の中で、逆に逆行するような現象が起きざるを得なかったわけですね。
 そこで、総理はただ、年金制度の審議会にいろいろ検討を願うと言われますが、大体、保険料を払わなかったが、払えない状態にあった。それは法律がなかったということ。こういう者に対して、それは同じように扱えとは言いませんけれども、われわれは先輩に対して非常に失礼をしているわけですから、あなたは年金の保険料を払わなかった、というだけで差別をつけるわけにはいかないのじゃないですか。その点をお聞かせ願いたい。
#177
○三木内閣総理大臣 やはり人間らしい生活、これは保障するということが一つの近代社会としての必要なことでしょうから、年金制度というものは、そういう意味において見直しをする必要があるのですが、いままでは、その制度がいろいろな沿革がありますからね。福祉年金なら福祉年金一つをとらえてみても、最初は敬老思想のような考え方で出発した制度ですから、そういういろいろないままでの経緯がございますから、一概に、それに対する給付が少ないということで、いろいろ非難もできない面もあります。しかし、一応の人間としての最低生活は保障できるような社会保障制度を持たなければならぬことは必要でございましょうが、保険のいろいろな仕組みによって、掛金のない場合はやはり給付が少ないというようなことも、いまの保険制度のもとには、あり得るわけでございます。
#178
○多賀谷委員 厚生大臣、少なくとも、とりあえず軽費老人ホームに入れるぐらいの福祉年金を出したらどうですか。どう考えられますか。
#179
○田中国務大臣 御趣旨としては、結構だというふうに思います。そういたしたいというふうに、私も思っております。しかし、今日の年金、特に国民年金の体系の中で、いまのままのような福祉年金受給者についてそのような給付をすることについては、今日のままの財政方式では、私はなかなか困難であろうというふうに、ことしの予算折衝を通じまして、しみじみと感じましたものですから、したがって、ただいま総理がおっしゃるように、年金の財政方式に手をつけて、そのような給付に近づけたいというふうに、せっかく今日腐心をいたしております。
#180
○多賀谷委員 福祉年金は、七十歳以上の方はだんだん減るんじゃありませんか。昭和五十年を限度として、ずうっと減るのでしょう。国民年金の五年年金、十年年金がどんどん出てくるわけですから、福祉年金の人数というのは、受給資格のある人は減るんじゃありませんか。
#181
○田中国務大臣 多賀谷さんおっしゃるとおりの傾向でございますが、福祉年金、たしか昭和八十五年には全部なくなってしまうということを承っておりますが、なお、急激にこれがダウンする、なくなってしまうというほどではございますまい。ですから、したがって、ここ数年の財政については、やはり慎重な配慮が必要だというふうに思っております。
#182
○多賀谷委員 専門家の田中厚生大臣としては、少し答弁がおかしいのじゃないですか。福祉年金の受給者はぐんぐん減るのですよ。ですから、国民年金その他の問題はあるでしょうけれども、福祉年金は、もう政府が見るという腹を決めて、少なくとも私は、いまの養護老人ホームなんというのは全部軽費にして、そうしていままで国が措置費で出しておったのを、今度は本人に年金を与えて、そうしてその一部、いまの少なくとも生活費程度は福祉年金をやって、それを出させたらどうですか。そうしたら全部変わりますよ。いまのお年寄りの孤独感というのはなくなる。いまの日本経済にとって、そう莫大な金が要るわけではないですよ。それはどう考えられますか。
#183
○田中国務大臣 いろいろな手法があると思いますが、いま言われている経費老人ホーム程度の給付を一切の人にいたしたいということで、いろいろと作業をいたしておりますが、その手法については、いましばらくお待ちを願いたいというふうに思います。
#184
○多賀谷委員 そうすると、まず田中厚生大臣としては、福祉年金の水準は、大体、軽費老人ホームに入れる、入居できるぐらいの水準にしたい、こういうように考えておると判断をしてもよろしいですか。
#185
○田中国務大臣 大体その程度のことを考えて、いま苦心をいたしております。
#186
○多賀谷委員 そういたしますと、少なくとも、厚生省が指導しております軽費老人ホームの費用というのは、これは生活費に管理費のほんの一部を加えた程度ということで指導されておりますが、大体、甲、乙ありますけれども、民間の施設で、甲、乙地区で大体どのぐらいの費用と見られますか。どのぐらい皆、経費老人ホームの人は出しておると思いますか。それは段階はありますけれども……。
#187
○翁政府委員 お答え申し上げます。
 おおむね二万円でございます。
#188
○多賀谷委員 大体いま二万円。これは今度の二二%、現在よりも一三%上がりますと、二万円は少し高くなる。しかし、それに本人の小遣いも要るわけですよ。それから管理費の一部が要るから、計算してみると、これはどうしても三万円と出るのですよ。われわれが三万円と言うのは、根拠がない話をしているんじゃない。少なくとも、私どもが三万円というのを入れたのは、日本全国みな老人ホームは、一部は経費を本人が負担する。それをやはり全部のお年寄りに、家庭におっても、出すということになると、小遣いも含めて大体三万円。しかし総理大臣、措置費はそれ以上にかかっておるのですよ。たとえば生活費と言っても、その二万円の中には、給食婦の人の費用は入っていないのですからね。ですから、二万円というのはほんとうに原材料なんですよ。大量に購入して大量に料理をしても、そういうふうにどうしても要るのですから。
 福祉年金は、現時点において、生活費プラス管理費、それに小遣いを入れるということになると、大体想像ができると思いますが、総理大臣、よろしいですか。
#189
○三木内閣総理大臣 おおむねよろしいと言うわけにはまいりません。それはなぜかと言えば、三万円より四万円――私は実際老人をさびしがらせない社会がいいと思うのですよ。しかし、多賀谷さんの言う三万円というのは、いまの仕組みだったならば、一兆八千億円の財政支出を伴うのですから、どうしてもこれは仕組みを変えなければ、その財政支出というものは、いまの財政事情ではとてもできませんから、田中厚生大臣のところで、田中厚生大臣はこの問題に一番熱心ですから、何とかして理想的な、しかも大蔵大臣も説得できるような案をつくって、次の予算編成には間に合わせたいとして、努力をしているわけです。したがって、いま金額について、これは一つの仕組みを変えなければならぬという問題もございますから、ここで三万円あるいは何万円ということをお約束することは、私は言ったことは必ず実行すると言っておるのですから、無理でございます。
#190
○多賀谷委員 額三万円と単純に言いましたが、物の考え方としては、軽費老人ホームの生活費プラス一部管理費、それに小遣い、こういう物の考え方を一応基準としたらどうですか、それはよろしいですかと、こう言っている。その金額三万円とか二万五千円とか、そういうことを言っているのじゃないのです。物の考え方、基準というものを聞いているわけです。
#191
○三木内閣総理大臣 そういう方が生活できるような程度までは、福祉年金をやはり持っていきたいものだと、私も願っておるものでございます。
#192
○多賀谷委員 生活できると言いますと、大臣、まだ高くなるのですよ。老人ホームに入って、いままで国や自治体が措置費として措置しておったのですから、その措置費がやはり残るのです。管理費の措置費が要るのですよ。ですから、生活できるという――全部できるなんて言うと、また大蔵大臣笑いますけれども、それでなくて、とにかく当面、福祉年金は軽費老人ホームにはいれるぐらいの程度出したらどうですかと、こう言っているのですよ。総理大臣のは非常によろしいですけれども、われわれは、それはどうも絵にかいたもちじゃないかと心配するものですから。その私が申した基準は、いま厚生大臣も、その基準で判断をしておるとおっしゃいますから、ひとつそれを推進してもらいたいと思いますが、よろしいですか。
#193
○三木内閣総理大臣 私は、やはり理想としてはそうだと思いますよ。理想としてはそうだと思いますが、これはいま言ったような財政の面から、あるいは仕組みをどうするかという点でございますから、それはやはり最低の基準にならざるを得ないと思います。一遍に生活できると言えば、多賀谷さんの言うように、やはり生活できるということの程度も非常に問題でございますし、理想としては、そこを目指さなければならぬが、いま老人ホームのお話もあって、そういうことは、やはり一応の目安になるとは思います。
#194
○多賀谷委員 ひとつ、一応でなくて、十分そういう目安で、当面やっていただきたいと思います。
 そこで、行政管理庁長官いらっしゃいますか。――いませんか。じゃ、所管大臣でいいですが、「こちらは電話局ですが、大変込み合ってかかりにくくなっております。御迷惑ですが、しばらくたってからおかけ直しください。」何回かけても、このとおりしか出ないのです。もう幾らかけたってこれしか出ない。それは電話局が言うわけです。そういうのが所管の管庁の中にありましたら、ひとつお知らせ願いたい。どこかあるはずです。私はしょっちゅうかけているから。
#195
○田中国務大臣 社会保険庁の業務課の話かと思いますが、これについては、電話がふくそうしているものと思いますが、できるだけさようなことのないように、ひとつやりたいと思いまして、電話の増設等について、今後取り計らいたいというふうに思います。
#196
○多賀谷委員 これは、大臣がおっしゃるように、社会保険庁の業務課ですよ。ところが、行ってみるとびっくりする。大臣、早々と行かれたそうですから、私は言いませんけれども、とにかく紙台帳が三千二百二十九万八千件ありました。そうして磁気テープにとったのが六千二百二十二万件ある。紙台帳の三千二百二十九万を磁気テープにしたのが大体一千万ある。そこで、いま紙台帳が二千百三十万ある。これは年金のカードなんです。そうしてこれは、戦争中に、危ないからというので、全国の社会保険事務所に疎開したわけですよ。それをまた集めたわけですよ。そして昭和三十二年ぐらいからコンピューターが入りましたから、その後はコンピューターにのせておるのです。これは大変なんですよ。とにかくいま申しましたように八千三百万件ある。これを処理すると言ったら、もう大変なんですよ。ですから、幾ら電話をかけてもかからぬはずなんです。年金なんというのは、もういまどこにも電話が通じていますから、お年寄りでもみなかけるわけですよ。それで申し込み殺到ですよ。ですから、あらかじめそういうことで、かからぬようになっておるのですよ。――それは大変失礼、悪い意味で言っているのじゃないですよ。とにかく「こちらは電話局ですが、社会保険庁の業務課はいま込んでおりますから、しばらくお待ちください。またあとでかけてください。」こう言うのです。福田副総理は行政管理庁長官だったが、これは知られませんか。
    〔委員長退席、谷川委員長代理着席〕
ぼくは、行政管理庁というのは、どうしてこういうものを調べないのだろうかと思うのですよ。ですからこれは、お年寄り、せっかちでしょう。せっかちなものですから、幾らかけてもかからぬと、われわれ代議士のところへ、今度は電話がかかってくるわけですよ。そして、私の年金が違うがどうですかとか、まだ来ないがどうですか、通知が来ないがどうですか、いろいろあるわけです。すると、私どもがかけると、また通じぬわけです。これはもう全然通じない。ですから、高井戸まで行かなければならぬ、こういう状態。これがお年寄りの行政の姿なんですよ。それは役人が悪いとか怠けておると言うのではないのです。これは私は、率直に言って、老人問題に対する政府の認識を示しておると思うのですよ。今日の時代に、電話が通じない。しかも年寄りで、もう気がせくわけですから、私のところへ手紙が来る、もう翌日は電話がかかってくるくらいですからね。総理、どういうようにお考えですか。もう少し自民党政府はお年寄りに対して丁寧に、親切にしてもらったらどうですか。
#197
○三木内閣総理大臣 その電話のことで、老人対策に対する自民党の態度をいろいろ批判されることは、いささか飛躍し過ぎておると思いますが、それは多賀谷さんの言われるように、実際御迷惑の場合があると思いますから、早速増設をいたすことにいたします。
#198
○多賀谷委員 そこで、私ども不思議に思いますのは、とにかく八千万以上のカードがあるというのが第一でしょうね。そんなに労働者はいないのですから。なぜ八千万以上のカードがあるか、それは結局、一人で何枚も登録しておる人がおるのです。そこで、その人は通算されぬわけです。そして、自分は資格があるはずだがと言っても、三カ所くらい行っておるわけですから、資格がない。こういうところにやはり問題があると言うのですね。今日の福祉年金その他の問題はここにもある。
 もう一つは、脱退手当金をみんなもらっているのですよ。みんなと言っては何ですが、かなりもらっている。それはどういうところにあるかと言いますと、労働者退職手当法というのが戦争中にできまして、これを労働者年金が吸収した。だものですから、これは退職手当のかわりだというので、みんな脱退手当金をもらったわけです。そこで皆中断されておるわけです。そういう幾多の問題が、いまのお年寄りにはあると言うのです。ですから、いままでの退職手当法が吸収されたのですから、退職金をもらいに、あの退職金はどうなりますかと言うたら、もう脱退手当金を出しておる。それで、会社によると、退職金が少ないものですから、いや、これももらえますよと言ってくっつけて、初めから計算して出した会社も相当ある。いまのように年金に対する認識が深くなってまいりますと、そういうことはありませんけれども、しかし、当時の情勢としてはやむを得なかったのではないか、こういうように考えるわけです。
 そこで私は、そういう点も勘案をして、今度の年金に対するいろいろな処置をしてもらいたい、こういうようにお願いをいたすわけであります。
 そこで、私は三つの原則があると言いましたけれども、その三つの原則のうちで、もう一つ、どの職場に移りましても通算をされるというのが原則なんですね。ところが、政府がかなり鳴り物入りで宣伝をしました適格年金、そのあとの調整年金という年金基金、これは原則として企業内だけでしょう、田中厚生大臣。
#199
○田中国務大臣 さようになっております。
#200
○曾根田政府委員 現在の適格年金、調整年金は、原則としては企業単位のものでございます。
#201
○多賀谷委員 総理、これがいけないんですよ。日本の年金制度はあらゆるものがそうですけれどもね。労働大臣もおられますけれども、労働省がやっと最近それに気がつき出した。財形貯蓄だってそうでしょう。完全な企業だけのものにしておった。それを、今度出しました改正案では、次の企業に行ってもつなぐようにした。それから中小企業退職金共済法、これもつなぐようにしたが、労働省はようやくやり出した。ところが厚生省の方は全然やっていないのです。これは、労働力の流動化なんと言ったって、そのわずかの年金のために――次の職場に行ったらもうもらえないんですからね、通算できないんですから。こういう年金をスウェーデンがやっておるとか、イギリスもあったとかなんとか言って宣伝した。スウェーデンなんか違いますよ。スウェーデンはプラスアルファの年金は、職員の年金も労働者の年金も全部企業が出しておる。しかもそれは、転々としていっても、自分が持っていくわけですね。通算される。携帯年金なんです。ですから、企業に拘束されることのないような携帯年金に早く改める必要があると思いますが、これは厚生大臣から御答弁願います。
#202
○田中国務大臣 調整年金というのは、もう先生御存じのとおり、当該企業において国が求めているだけの老齢給付をするならば、国はそれにゆだねるという精神から出たものですから、そういうかっこうに実はなっているわけですが、お説のとおりのような政策要請もあると思われますから、その方向に持っていくように努力をいたしたいというふうに思います。
#203
○多賀谷委員 日本で一つできておりますのは、海員組合の船主との調整年金。これは船主がずっとかわっても、船員である以上はそれは通算されるようになっている。あとは全部なっていないのです。これも問題点です。
 それから、もう一つの原則はスライド制であります。公務員は実質的に共済は賃金スライドになっておるわけです。なぜ厚生年金のほうはそういう処置をとらないのですか。
#204
○曾根田政府委員 四十八年の改正の際に、スライドの指標を何にするかについて、いろいろ御議論があったところでございますけれども、厚生年金の場合は、それぞれの階層別に賃金体系が異なっておるという問題、それからまた、一般的に言いますと、賃金の中には、現役労働者のいわば生活費というのが原則でございますから、老後の生活に必ずしも直接該当しないというようなものも入っておるのではないかというような問題、いろいろの問題がございまして、賃金スライド的なものは、四年ないし五年ごとの財政再計算の際に改めて見直す、いわばそれまでのつなぎの制度でございますので、物価スライドということに落ちついたわけでございます。
#205
○多賀谷委員 国家公務員共済、地方公務員共済、公企体共済、これは法律の条文は皆物価スライドになっております。ところが、実際は全部賃金スライドになっておるのです。なぜ区別をするのですか、厚生大臣。
#206
○田中国務大臣 実質的にスライドするというのは、例の標準報酬のとり方だろうと思うのでありますが、国家公務員共済は、最近、直近一年という制度をとりましたものですから、それが年金に反映するということだろうと思いますが、いずれにいたしましても、いろいろな理由がございますが、正直に申しまして、私は、スライド財源の問題について非常に踏み切れないものがある。細かく言うと、いま年金局長の申したような諸般の理由がございますが、このスライド財源をどのようにして、どういうふうに求めていくかということについても、いろいろと実際問題はあるというふうに思っております。(「正直だ」と呼ぶ者あり)
#207
○多賀谷委員 それは正直じゃないんですよ。それは基本的には、あなた方は標準報酬平均の六割の年金を出しますと約束したわけでしょう。国会でも提案理由の説明にちゃんと書いてある、厚生年金は。六割の給付をいたしますと言って、それで今度はILO条約を批准するんですよ。百二号条約を批准すれば、四〇%とある。日本の場合は期末手当が入っておりませんからね、外国は期末手当を入れておるわけですから、ちょうど日本の六割というのは四一くらいになる。すると、これはスライドを前提としなければ言えないんですよ。そうでしょう。スライドを前提としない以上は、そういう率にならないでしょう。だんだん下がるのです。ですから財源問題じゃないでしょう。やろうとしないからだ。
#208
○田中国務大臣 既裁定年金について、さような問題が如実に出てくるだろうと思いますが、これについては、今日のところ財政再計算期を、いま五年となっておりますが、今後これをできるだけ早めて整理をしていこうという手法で、いまやっているわけであります。
#209
○多賀谷委員 ですから、財政再計算期には、常に賃金にスライドをされると見ていいんでしょう。そう考えていいのでしょう。そうしなければうそになるのでしょう。
#210
○田中国務大臣 そのような方向でやるべきだと思います。
#211
○多賀谷委員 方向じゃなくて、それは原則になっているんでしょう。どうですか。方向どころじゃない、原則になっているんでしょう、公式に。
#212
○田中国務大臣 そのようにいたします。
#213
○多賀谷委員 では、国際婦人イヤーということですから、妻の年金で、ちょっとお尋ねしたいのです。
 百二号条約を批准するという話で、これは間違いないですかね。
#214
○田中国務大臣 今国会で、批准をお願いいたしたいと思っております。
#215
○多賀谷委員 いままで、なぜしなかったのですか。
#216
○田中国務大臣 今日までもいろいろと議論がありましたが、しかし、最近のこの種の社会保障立法の整備によりまして、いよいよこれが確実に批准できるというふうに思われたものでございまするから、したがって、百二号条約は今国会で批准をする、というふうに決意をしたというふうになっております。
#217
○多賀谷委員 そうではなくて、本心は、もう百二号条約のような低い基準のものは、いまさら先進国という日本が批准をするのは恥ずかしい、百二号というような、開発途上国を含めた国を主として対象としておるような条約を、いまごろ日本が批准するのは恥ずかしいという気持ちがあったのでしょう、本当の話は。しかし、ILOの理事国にもなったし、やっぱりこの基本条約を批准せぬとかっこうが悪いという両面があったから、いまごろ批准するのでしょう。あなたの言う方の条件から言うなら、とっくについているのです。率直に言って、そうでしょう。
#218
○田中国務大臣 その点もございますし、大体、日本はILO条約の批准については、諸外国よりもはるかに厳格に、ある意味では神経質にまで厳格に、これを吟味するという傾向も実はあるようでございます。
#219
○多賀谷委員 そこで総理、これは九つ項目がございまして、そのうちで四つが適合すれば批准できることになっておるのですよ。ところが今度の場合、いろいろの点があるのですけれども、いま私は妻の年金に関して言いますと、遺族給付というのは全然合わないのです。それは四〇%というのが一応適合したとしても、条約は四〇%になっておるけれども、十五年未満で権利がある場合には一〇%を引き下げてもいいということですから、三〇%に下がります。そうすると、日本のは四分の三ないわけですね、妻の年金というのは皆二分の一ですから。こういうのは、遺族は二分の一だという根拠は何もないのです。昔の恩給時代から踏襲しておるのです。そういう国もないです。国際的水準からも違反している。どうですか、ことしはやっぱりお年寄りとか、それからこの前は妻の相続税の問題が出ましたから、これもひとつ踏み切られたらどうですか。どういうふうにお考えですか。――わからぬかな、総理大臣じゃ。
#220
○田中国務大臣 この問題については、先ごろ来、国会でいろいろ議論がありまして、私も答弁をいたしておりますが、来年の再計算時には、これについて改善を加える所存でおるわけであります。
#221
○多賀谷委員 そうすると、百二号条約に大体適合した水準に直す、こういうことで理解してよろしいですか。
#222
○田中国務大臣 できるだけ、その方向に持っていくようにいたします。
#223
○多賀谷委員 御存じのように、百二号条約のほかには、百二十八号、百三十号というように、その後新しい水準の高いのが採択されておるのですよ。ですから、いまごろ古い、水準の低いのをいまさらという気持ちもあるというのは本当なんですよ。ですから私は、その後に採択された百二十八号の四五%、ですから三五%、あるいは勧告ですと、さらに五五%になり、四五%になるわけですが、そういうことよりも、まず、少なくとも四分の三というのは確保すべきじゃないかと思いますが、どうですか、その基準に合うぐらいは。
#224
○田中国務大臣 ただいま、四分の三、七五%という点については、まだ私どもとしては意向を固めておりませんが、できるだけその近辺に行きたいというふうに思っております。(「大蔵大臣」と呼ぶ者あり)
#225
○多賀谷委員 大蔵大臣よりも、総理大臣に。どうですか、総理大臣。
#226
○三木内閣総理大臣 厚生大臣がせっかく努力すると言うのですから、だから私も大いに後押しをしようと思います。
#227
○多賀谷委員 それで、ついでに、正確を期するためにお尋ねしておきますが、百二号条約の六十五条の規定の「従前の所得」とは、これは期末手当等を含むと解釈してよろしいのでしょうね。
#228
○田中国務大臣 大変細かい質問で、率直に言うて、私もよくその辺まで知りませんでしたが、いま政府委員から聞いたところによりますと、「国内法の定めにより」というふうな規定があるそうでございますから、必ずしもそれに準拠しなくてよろしいのではないかという話を聞いたわけであります。
#229
○多賀谷委員 「従前の所得」というのに、いろいろあるということは、これは私は許せないと思うのです。「受給者又はその扶養者の従前の所得と標準受給者と同一の家族的責任を有する被保護者に支払われる家族手当との合計額に前記の附表に掲げる百分率を」掛けたもの、こういうふうにあるわけですからね。これはあなた、基本がいま払われている賃金の四〇%ぐらいでいいというなら、大変なことですよ、これ。それなら、あなた方が言う、六〇%になるんじゃないかという議論だって、この肝心なところがはっきりしないで、これは困りますよ。これは基本ですから。
#230
○田中国務大臣 政府委員から答弁させます。
#231
○綱島説明員 ただいま御質疑がございましたのですが、条約の解釈といたしまして、従前の報酬という点でございますが、私ども、ILOその他に聞き合わせまして、かつほかの各国の例等も調べてみたのでございますが、国内法制で現在の厚生年金等でやっております標準報酬をとりましても、理論上差し支えない。もっとも、その従前所得でボーナス込みで計算いたしましても、百二号の条約の基準には合っておる、こういうふうに、いままでのところ解しております。
#232
○多賀谷委員 それは私らも、ボーナス込みで計算をして合っておるからよろしいと、こう言っておるのだ。それが、ボーナスをはずしてもいいのだなんという解釈があるとするなら、これは大変なことですよ。いままであなたのような解釈をした人は一人もおらぬだろう。よその国には、この期末手当というのはないのですよ、大体欧州では。ですから、期末手当というのはないのです。皆そのときの賃金に入っておる。あるいは週給だってそうでしょう。ですから日本特有のものですよ。しかも、いま国家公務員だって五・二カ月ぐらいでしょう。ですから、それをはずしてもいいという議論になれば、これは大変なことですよ。ですから、少なくとも、政府はどう考えているのだということをはっきりしてもらいたい。
#233
○綱島説明員 お答え申し上げます。
 条約の解釈といたしまして、ただいま先生御指摘になりましたような、たとえばボーナス等々を除いてもいいと、はっきりそういうふうな明示があったわけではございません。しかし、たとえば外国におきまして、最近ではそのボーナス的なものを出すところもふえております。しかし、日本の場合、おっしゃいますようにボーナスの額がふえてくる、こういうことになりますと、問題になることがございます。したがいまして、百二号条約の批准ということの条件につきましては、先生のおっしゃいましたような、いままでの解釈というものに基づいて計算いたしましても、現在のあれでは四〇%なら四〇%というラインに合格しておる、こういうふうに考えておるわけでございます。
#234
○多賀谷委員 では、いままでの解釈というのは、ボーナスを入れるということですね。
#235
○綱島説明員 そのとおりでございます。
#236
○多賀谷委員 そういう点は、ひとつはっきりしていただきたい、こういうように思います。
 先般、江田副委員長が質問をしました医療の部分について、百二号条約に日本は適合しないのですね。というのは、問題は大したことはないのですよ。要するに出産の問題なんです。妊娠、分娩の問題を病気として扱うかどうかということなんです。この一点にかかっておるのです。日本の健康保険は、それは健康保険の枠外だというのでやっておる。こんな点はどうなんですか、私は、これは当然医療という概念の中に入れてもいいのじゃないですか。それは形式論を言っているのではない。あれは健康だからお産をする、あれは健康だ、そんな話をしておったら国際条約なんかできませんよ。ですから、医療というものの中に外国では入っておるのです。せっかく批准するのですから、日本は九つのうち四つ、最低ということでなくて、九つでも六つでも七つでも、適合しておるのだ、こういうことになればいいと思うのですが、この点はどうですか。
#237
○田中国務大臣 先般、江田委員からもお話がありました出産給付は、今日、健康保険制度等では、これを現金給付でやっているわけでございまして、わが国では疾病という概念でとらえておらないわけであります。したがいまして、現金給付、本人の場合標準報酬の半分、そして最低保障を六万円、家族の場合六万円というふうにいたしておりますが、実はこれを疾病とみなすかどうかということについては非常に問題があろうと思います。もちろん日本でも、異常分娩については、これを保険の医療給付にいたしておりますが、正常分娩については、医療の給付にいたしておりません。
 なお、これを医療給付とすることにいたしますと、一体、診療報酬体系の中でどういうふうにこれを評価するか、把握するか。分娩の場合の出産費、これがわが国においてはどうもいろいろ区々であるようであります。自宅分娩の場合、あるいは病院でやる場合、母子健康センターでやる場合、非常な差があるようでございまして、これを医療費の中にどう反映させるか、相当の問題があろうと思われます。
#238
○多賀谷委員 これはやはり、国際条約を結ぶ以上、それに適合するようにしてもらいたい、こういうように考えるわけです。
 そこで、時間も余りありませんけれども、いま一番乱れている併給制ですね、それから遺族、障害の通算制の問題、これは総理、簡単でないのですよ。たとえば、厚生年金に十九年入っていまして、主人が、退職して国民年金に入った途端になくなったら、遺族年金は全然もらえない。その在職しておるときは、六カ月たったらもらえるのですよ。それが十九年も勤めておって、やめた途端になくなったらもらえないのですよ。一体こんな制度があるだろうか。こんなのは急ぎますよ。とてもあるわけですよ、こういう事件は。ですから、こういうのは簡単なんですからね、部分修正ですから。私はなぜ早く改正してやらないか、こう考えるのですが、まあ総理が無理なら、厚生大臣。
#239
○田中国務大臣 この点につきましても、私、厚生大臣就任後、しばしば各委員から御要望なり御質疑がございました。できるだけ速やかに、これは調整をいたし、通算ができるようにいたしたいと思っておりますが、いかにせん、どうもこれについては、主管省がそれぞれ違った省の間の年金制度でございまして、また条件等も、よくもこんなに区々であるというぐらい分かれておるわけでございますから、したがって、若干時間をかしていただけるならば、私はその方向に向かって実現をいたしたいというふうに思っております。
#240
○多賀谷委員 いろいろありますけれども、実は在職老齢年金について、新聞に投書が毎日のように載っておる。それで、政府に、これはひとつ返事を出してやりませんかと、私、厚生省に言うけれども、返事を出してやらないのですね。そこで私は、あんまり投書が多いものですから、自分で書いて返事を出したのです。これは問題にしたけれども、なかなか田中総理も、それから厚生大臣も認めてくれない。
 在職老齢年金というのは、こういうことなんですよ。六十から六十五までの人で、五万円まで収入があったら、年金の資格があってももらえない、こういうのです。そして、みんな六十歳になりますと、大きな企業から小さい企業へ行くのですけれども、まあ五万円というとあれですね。そこで私は、その問題について書きましたら、ものすごく手紙が来まして、そしてそれを整理しておりましたときに、こういう問題が起こった。それは三十年以上勤めて、厚生年金を掛けられるようになってきておるわけですね。もう三十年間掛けた。そうすると三十年間で定額部分がストップするわけです。そこで、それからわずかの給料で掛けておるけれども、定額部分がストップするから、だんだん、掛けるよりももらう方が少ないような状態がずっと続くわけですね。ですから、公務員共済は頭打ちを決めておるのですよ。何かこういうものもひとつ考えてもらうし、それから在職老齢年金も、今度七万四千円ですか、二千円ですか――七万二千円に上げられましたけれども、やはりこれも私は、むしろ六十五歳から八割というような制度がいいのかどうか疑問なんですけれども、これはひとつ早急に上げていただきたい。大体、いま平均賃金は幾らと思っているのですか。――まあそれはいい。後から聞きますから……。
#241
○田中国務大臣 在職老齢年金、これには私は二つの政策要請があるのじゃないかというふうに思っております。一つは、老齢になってなおかつ働いておる、この場合、まあ半分失業みたいなかっこうの給料で働かざるを得ない。これについてどこまで本人の所得を保障してやるかという要請が一つあろうと思います。いま一つは、自分はもう満期に到達しているのだから、これはもう全部もらってもいいじゃないかという要請と、二つあるのですが、これの兼ね合いが、今日、在職老齢年金というので、二割から八割という制度で、これは今度、五万円年金が七万円近くになりましたものですから、ちょっとおまけをつけまして、七万二千円というふうに改めておりますが、これについては、いろいろとその関係者の間にも諸説が分かれているようでございますので、なお検討はいたしたいと思っておりますが、逐次水準に合わせて、五万円にフィックスすることなしに、これを上げていくような方向だけは、少なくとも忘れないようにいたさなければならぬと思っております。
#242
○多賀谷委員 五万円が七万二千円になったら、多いようですけれども、ベースアップ分しか上げてないのです。これも私はひどいと思うのですが、これはひとつ、後に法案が出ると思いますから、その際さらに質問したい。
 そこで、総理、金がない金がないという話ですが、私は、この年金財源、社会保障の財源というものについて、一回検討してみる必要があると思うのですよ。私は、日本の企業家ほど社会保険料を払っていない企業家は珍しい。それはどこの国のを見ましても、フィフティー・フィフティーというところは非常に少ないのですよ。そして、フィフティー・フィフティーというのは、わりあいにドイツが多いのですけれども、ドイツは御存じのように、財形貯蓄もこれは全部雇用主が出すわけですから、こういうようにして、いろいろのなにがありまして、ドイツも率は非常に高い。そこで私は、ILOの資料をいろいろ見ましたところが、日本の労働者の賃金に対する保険料の支払いの率は、フランス、西ドイツ、イタリア、それからスウェーデン、イギリスに比べて最高ですよ。ところが、使用者のは非常に低いのですね。これは、イギリスやスウェーデンのように、国が大部分持つという方式の保険方式、国が税金で多く財源を持つという、こういう方式のところは別として、少なくとも、フランスとか西ドイツ、イタリアという、いわば欧州の保険主義をとっている国と比べて、日本の経営者の保険料が一番低い。これが私は一つの問題点だと思うのです。
 そこで、私どもは、フィフティー・フィフティーを三対七にせよということを言っておる。いま現実に、今度の雇用保険法の保険料の率の改定まで入れますと、それから健康保険は弾力条項を全部入れたといたしますと、大体労働者が納めるのが賃金の八・三%です。経営者は八・七二%です。そこでわれわれは三対七ということを要求している。経営者の負担金は、フランスやイタリアは五倍ぐらいですからね。三対七にいたしますと、労働者の方はそのまま納めるわけです。金額はいままでどおりの率は納める。経営者の分を上積みいたしますと一九・三六になる。そしていま五名以上の労働者の企業の経営者でいきますと、その差額が金額にして二兆七千億になる。すなわち、あなた方がはじいております標準報酬から逆算をしていきますと、これが大体、財源的に言いますと、五十年度にあなた方が見られておる標準報酬が二十五兆です。二十五兆で、いま差額の一〇・六四%をいたしますと二兆七千億になる。ですから私は、税金の問題はもう堀さんがおやりになったから言いませんけれども、どこの国よりもいまの日本の経営者――経営者というより企業は、一番低い保険料しか納めていないのですよ。ですから、やはりそういう点を勘案して――労働者は先進諸国の労働者並みに保険料を納めておるけれども、経営者の方は納めていないのです。しかもこれはトータル――私は比率を言ったのですけれども、先ほどありますように、日本のは期末手当なんか入れてないのですから、まだ外国はトータルとしてはよけい納めておるわけです。ですから私は、先ほど税金の問題も、なぜもうけたところから取らぬかという話があったでしょうけれども、社会保険においてもそのことが言えるんじゃないか、かように考えるのですが、総理はどういうようにお考えですか。
#243
○三木内閣総理大臣 それは、いろいろここで、予算委員会を通じても、社会福祉といいますか、社会保障に関する皆さんの御要望は大変に多いわけです。金額に対しても、給付をふやせという。こうなってくると、やはりどうしても、それらの要望にこたえるためには、掛金なども問題になってまいります。したがって、年金制度を全般的に検討する場合に、これもやはり検討の大きな題目になると思うのです。一体財源をどうするかということは大きな問題でございますから、十分な検討をいたします。諸外国の例等も、それは大いに参考になることでございます。
#244
○多賀谷委員 次に私は、日本の年金問題で、どうしても触れなければならぬ問題が、定年制の問題ですよ。これは率直に言いますと、いまの五十五歳定年制をおいて年金制度を確立しようといったって、これは大体無理ですよ。ですから、この定年制の問題にメスを入れないで、そしてこの年金制度をやろうといったって、これはなかなかむずかしいですよ。ですから私は、定年制の問題がその基本にあると思うのです。
 そこで、私は触れてみたいと思いますけれども、大体、五十五歳の定年制という国が一体ありますか。いま日本では、五十五歳という企業は五二%あるのですよ。そうして、あなた方がつくられた四十八年度雇用対策基本計画でも、経済社会基本計画でも、皆、定年制の延長を書いておるけれども、一つだって前進しないのです。これが一番計画の中でおくれておるのです。
 そこで、これは労働省ですが、一体、外国では定年制というのはどういうぐらいの数字になっていますか。
#245
○長谷川国務大臣 具体的にお答えいたします。
 わが国の定年制は、四十八年度において、規模三十人以上の企業では六七%実施しております。特に企業規模の大きいものほど定年制を施行しておりまして、大企業、五千人以上のところは一〇〇%、中小企業、三百人から九百九十人が九四%、小企業、三十人から九十九人が五五%です。最近、定年制引き上げの傾向も見られておりまして、四十五年度は、五十五歳定年の事業所が五八%の過半数でありましたけれども、四十八年度においては、六十歳定年をとる企業も増加しております。
 外国の話が出ましたから、御参考に申し上げますと、外国の場合は、先ほどからおっしゃるように、労働者が公的年金等の受給資格を得て職業生活から引退することを意味しておりますので、その公的年金の受給開始年齢は、欧米主要諸国では六十五歳程度とするところが多うございます。ちなみに、デンマーク、スウェーデンは六十七歳、カナダ、アメリカ、イギリスは六十五歳、西ドイツは六十三歳、フランスは六十歳、こういうことです。
#246
○多賀谷委員 だから、日本のように、五十五になって首を切るという、そのくせに、日本は終身雇用制と言うんですよ。生涯雇用だと言う。何が生涯雇用ですか。一番大事なときに首を切るんですから、企業からほうり出すんですから。一番活力のあるときにだけ大企業は使って、そうして一番大事な――しかも五十五の定年といいますと、この年齢層というのは、三五・七%も在学中の子供を持っているのですよ。このときに首を切られて、一体どうしますか。そうして、これが終身雇用制だとか生涯雇用だとか、私はもってのほかだと思う。そういう言葉は返上しなければならぬ。少なくとも、労働省がこんな言葉は使うべきでないですよ。
 そこで、私は聞きますけれども、あなたの方は、能力開発といって、訓練を盛んに言うけれども、お年寄りの訓練、最近中高年齢者訓練と言われる。一体、外国で中高年齢者の訓練をしているところがありますか。ないならないと言ってください。
#247
○藤繩政府委員 外国の例をお尋ねでございますから、お答えをいたしますが、外国でも、西ドイツあるいはアメリカに若干の例はございます。ただ、わが国と異なりまして、外国の場合には、徒弟訓練が中心でございますので、ごく例外的に、貧困の者あるいは再就職を特に促進する必要がある者に限って、なされているというのが実情でございます。
#248
○多賀谷委員 大体ないのですよ、総理。大体、大企業があれだけの大きな人員を抱えておって、どこかに仕事を自分のところで見つけるべきですよ。それを五十五になったら首を切って、中小企業に押しつけるなんというのは、これはもってのほかです。
 ですから、そういう点は、私は徹底的に規制をしなければならぬと思うのですよ。法律ができなければ……(小林(進)委員「役所からやるか」と呼ぶ)そうですね、役所だってそうでしょう。同じ大学を出た年次の者が次官になったら、局長は皆やめるなんて、一体そんなばかなことがあるんですか。これは新聞社もそうだし、役所も皆全部そうですよ。ところがみんな六十五までおるのです。じゃ六十五の者が次官かというと、そうじゃないのですよ。
 もう私は、時間がそれこそありませんから、あまり人事院なんかに聞きませんけれども、本当なんですよ。それはもう人の問題だと言うのですよ。おまえと同期の者が次官になって、おまえはまだ勤めているのか、それは人の問題、心の問題だ。みんな勤めておるのです。まず隗より始めよです。それで今度は天下りということになって、企業に癒着じゃないか、こういうことになる。
 ですから私は、これはやはり計画的に――定年はないと言えばないのですよ。役所は定年制をしいておらぬから、ないと言えばないけれども、現実にはある。ですから、次官や官房長になると、局長の就職先を見つけなければならぬ、それが大きな仕事だ。そういうようなばかげたことはやめたらいいですよ。国家公務員からひとつ始めたらいい。日本だって、裁判所はあるでしょう。検察庁だってあるでしょう。みんな年齢が高いですよ。
 もう時間がありませんから言いませんが、これは総理、少なくとも善政ですよ。これはそういうことがはっきりしたら、あとは給与体系を変えればいいのですから。年功序列賃金をいつまでも続けろと言っているんじゃないのですよ。そういう制度ができれば、おのずから変わっていくのですよ。家族も少なければ、また費用も要らないだろうということになる。ですから、その制度を変えないでおいて、年功序列賃金の話だけしてもだめなんです。これは労働省がそうなんです。ですから、まずそういう制度を変えるべきだ。
 役所はどういうふうにやられるか。これは、あなたは長い間議会政治に携わっておられて、現実に何回も大臣にもなられて、それを見ておる。われわれのところにも、私は退職しましたなんていう手紙が来ますよ。本当に気の毒だと思う。そういうことのないように、本当はこれを決めなければ、年金制度なんてできませんよ、財源がないのですから。五十五で首を切っていて、年金制度をやれ、幾ら賦課方式だって、それは次の若い者が泣いてしまう。これはひとつぜひ決断をもってやっていただきたい。それはいますぐやれというんじゃなくて、計画を立ててやってもらいたい。
#249
○三木内閣総理大臣 私も多賀谷さんと同意見で、どうも人間の寿命が長くなってきたときに、五十五歳という定年は低過ぎる。定年を六十歳ぐらいに上げて、しかし、日本の年功による待遇とか地位とか、これは考えなければいかぬでしょうね。六十歳ぐらいになってきたならば再雇用しまして、そして年功型で次々に地位が上がり、また給与が上がっていくという制度は、それ以後は、やはり再雇用ですから、給料は低くならざるを得ないと思います。それを年金制度につないでいって、人生の全生涯を通じて安定できるような仕組みを考えることが必要だと、私も考えておるわけでございます。これはいますぐということに実行はできないでしょうが、こういうことを目指してやらなければ、いま多賀谷さんの言われたように、年金制度といっても、これはやはり何か生涯を通じての人生設計というものが立つようにすることが、国民生活の安定だと私は思いますので、多賀谷さんの説には私賛成ですよ。そういう方に向かって、いままでのやり方を変えていくべき必要があると私は思います。
#250
○多賀谷委員 そうすると、総理、具体的には、調査会か何か設けておやりになりますか。
#251
○三木内閣総理大臣 これは、私もそういうように考えておるので、私自身が、これは政府の公の機関ではありませんけれども、私の、総理大臣の諮問機関として、そういうものですでに研究させているのですよ。そして、これをもっと具体的なものにして、何か政治の上に実現できないかと考えて、私自身も、この問題はそういうことにしないと、何か生活の設計が立たないですからね、そういうことをすでに検討を始めておる。政府の中には置きませんけれども、そういう各方面の人々に対して、すでに検討をさしているということでございます。
#252
○多賀谷委員 それは、ひとつ政府の中に置いていただきたいと思います。
 そこで、これはいま公務員の話で、次は民間です。労働大臣はアメリカにおける年齢差別禁止法というのを御存じでしょう。要するに、アメリカでは、大体失業者というのは若い青年が多い。先任権がありますから、お年寄りの方は失業者がないのです。それでもやはりありますね。
 そこで最近、あとから聞きますけれども、一時帰休とかあるいは解雇とかありますけれども、五十歳以上の者が解雇の対象になるという、ああいう基準の仕方というのは、私ははなはだけしからぬと思うのですよ。人道的にけしからぬと思うのです。もう五十になったら、希望退職の対象になるとか、解雇の対象になるとか、もう堂々と基準を示す。問題は、その感覚ですよ。
 そこで、この法律は一九六七年連邦法ですけれども、要するに、四十歳以上六十五歳以下の中高年労働者に対して、あなたは五十五になったからおやめくださいとか、もう当社は四十歳までの人しか雇いませんとか、そういうことは一切してはならぬ、本人の能力は別だというのです。しかし、年を前提に解雇するとか、年を前提に採用するとかということは許されないという趣旨なんです、法律は。ですから職業紹介も、何々自動車は四十歳までの人しか雇いませんなんということは受け付けない、こういう制度なんですが、もう日本でも、この程度は、ひとつ制定をして、指導する必要があると思いますが、どうですか。
#253
○長谷川国務大臣 多賀谷議員のおっしゃった、アメリカの年齢による雇用差別禁止法、概要は先生ただいまおっしゃったとおりでございます。日本の場合には五十五歳ということでございますから、そのあと、今度の通過しました雇用保険法等等によって、訓練などをしながら再雇用の道をよけいつくろう、そしてまた、職業紹介の場合には、年齢などによって制限しないよう、勧奨等々によって徐々に持っていこう。直ちにこういう法律のところまでまだ考えていないわけでありますが、こうした法律のあることも、ひとつ私たちは、いまから高年齢社会になるわけですから、参考にして勉強しておるところであります。
#254
○多賀谷委員 問題は大企業なんですよね、定年があるというところは。六十というのはほとんど中小企業でしょう。大企業は五十五です。ですから、大企業はそれを抱えるくらいの社会的責任があるはずですよ。そこで私は、この法律くらいは当然実施をして、あなたは五十五だからおやめくださいとか、もう安定所は、四十五以下の者しか採りませんというような募集要項には応じない、このくらいすべきじゃないですか。どうですか。あなたの方の指導なんていって、幾ら定年制に補助金を出すと言ったって、これはもう全く遅々として進みませんよ。
#255
○長谷川国務大臣 直ちに法律として実施するわけにいきませんけれども、大企業の方々にお目にかかったときに、私もそういう話をしているわけです。技術者などは、五十五過ぎたころが非常にいい技術者なんです。そういう人々をやはり残すようにするような慣習をつくってもらえば、まあそれに右へならえもさせられるというふうなことで進めておるわけでありまして、いま法律そのものとしては考えていませんが、漸次そういう方向で検討してまいりたい、こう思っております。
#256
○多賀谷委員 そうすると、法律はできなくても、行政指導で、もう年で制限をするような採用には安定所は応じない、このくらいできるでしょう。
#257
○長谷川国務大臣 そういう姿勢も、ひとつ参考にしております。
#258
○多賀谷委員 ずいぶん修飾語が多いのですよ、姿勢の方向でというような。そのくらいできるでしょう。
#259
○長谷川国務大臣 企業から求人を、職安あるいは私の方の役所が依頼された場合に、そういう姿勢で、私の方は応対しております。
#260
○多賀谷委員 身体障害者の雇用問題ですけれども、私は、形つくって魂入れずと言いますか、最近いろいろな施設を私も見て回っておるのですが、身体障害者の訓練は一年ですよ。もう一年では未熟で、それでなくても、若干本人はおくれた気持ちがありますから、私は、もう二年ぐらい延長するという制度を、これはぜひ確立してもらいたい。それは早急にやってもらいたい。あるいはやるとするならば、来年度からもうどんどん実行してもらいたい。
#261
○長谷川国務大臣 去る十二月二十五日御可決いただいた雇用保険法、あれを活用いたしまして、新年度からは、おっしゃるとおり二年に延長しております。そして訓練を二年間に延長しております。
#262
○多賀谷委員 次に、最近の雇用情勢について質問をしたいと思います。
 まず春闘ですが、今度の施政方針を見ると、総理も大蔵大臣も、それから企画庁長官まで、春闘のところに非常に力を入れてお話しになりました。ところが、いままでの政府の態度、あるいは政府が出した書物、こういうのによりますと、春闘というのは賃金相場には余り影響がないと、こう言っておるのですよ。それなのに、なぜあんなに春闘春闘と騒いで、春闘によって賃金の若干値上げをしたら日本経済がひっくり返るようなお話を、ことに副総理もそうおっしゃいましたけれども、されるのか。いままであなたの方から出された労働白書だって、それから隅谷さんの例の所得政策に関する、企画庁が依頼して出ました報告書だって、みんな春闘のパターンについて、余り春闘は賃金相場には影響なかった、こういうふうに述べておる。それに対してどういうようにお考えですか。何か、このインフレの責任を春闘に全部かぶせていくつもりですか。
#263
○福田(赳)国務大臣 まあ春闘というんでなくて、賃金と物価の関係がいままでと全く性格的に変わってきておる、こういうことを申し上げているのです。つまり、いままでは経済のパターンが、高賃金、高成長、そういう形だったわけです。高賃金、高成長でも、その間物価が上がらない、比較的安定です。卸売物価は横ばいだ。それから消費者物価は五、六%の上がりだ。これはなぜかというと、高度成長でありますから、賃金が上がっても生産性の向上はある、したがって物価には賃金の上昇が影響しない、こういう状態であったわけですが、今度は低成長になる。そうしますと、賃金の上がりが物価に大きく影響してくる、これは私は何びとも異論のないところじゃないかと思います。私もいろいろな人と話しておりますけれども、そこまではだれも異存がない、こういうふうに見ております。
 そこで、いまインフレの段階はどういう段階だ、こう言えば、需給インフレではない、コストインフレである。コストの中で非常に大きな要因になるのは何だと言いますれば、賃金です。これは申し上げるまでもありません。ですから、この賃金が今度そういう情勢の変わったもとで過高に決められるということになりますと、これは物価問題が非常にむずかしくなる。さしあたってのこの春闘の賃金交渉で非常に高く決められたということになると、それは物価にはね返る。せっかく物価も安定しかかっておる。そこへ今度は逆に物価が上がるということになれば、また賃金を上げなければならぬ。賃金が上がればまた物価が上がる。この悪循環が始まる。そういうふうに見ておるのです。そういうことになりますと、これは職場の問題にも関係しますが、同時にこれは社会秩序の問題にも関係する。これは非常にとめどもないインフレです。そこでわが国の国際経済競争力にも関係する。私は、もしことしの賃金決定が、間違って従来の惰性で決められるということになれば、これはひとり労使の関係じゃないと思うのです。日本経済全体として壁に突き当たります。壁に突き当たって鼻血を出すのじゃ済みません。これは本当に脳天打ち割りということにまで発展する可能性を持つ、こういうふうに思うのです。ですから、私はそのことを強調しているのです。
 政府として、賃金決定には介入いたしません。しかしながら、労使双方が、そういう賃金と物価の関係が変わってきた情勢を踏まえて、良識をもって、国民経済的立場に立って、ひとつ妥結してもらいたい、こういうことでございます。
#264
○多賀谷委員 いままでのように賃金が上がると、こうおっしゃっておりますが、そういう報告書は出ていないんですよ、いままでの政府の書物には。経済審議会の物価・所得・生産性委員会の四十七年の報告書はこういうふうに書いてあるのです。とにかく日本の春闘というものは「賃金交渉の中心的な存在と目される重化学工業で、賃上げによってその産業の成長性や国際競争力の低下が生じていないことからみても、わが国における団体交渉による賃上げとイギリスやアメリカにおけるような攻撃的な賃上げとの間にはなおかなりの差があるように考えられる。」大体こういう認識なんですよ。そうして争議というものが激しいのは、より賃金を上げようというときではないと書いてある。闘争が激しいのは、よそ並みの賃金をくれといったときに闘争が激しいんだ、まさに到達闘争のほうが激しいんだと、これは全部分析しているんですよ。私は戦後ずっと争議を見てみますと、本来の意味の賃金アップの闘争というものは海員組合ぐらいです、本格的なのは。あとは炭労の首切り問題とか国鉄の合理化――国鉄の場合は、一般並みに上げてもらえぬから、闘争が起こるのです。ですから、相場を上げるための闘争というものは熾烈じゃないんですよ。そういう認識をしなければならぬ。勘で言ったらだめなんです。いままでのようなとおっしゃいますが、労働省だってどう言っていますか。日銀だってどう言っていますか。
 昨年の春闘について、日銀が報告書を出しておる。それによりますと、要するに、日銀で計算をしたところによると、原油価格引き上げによるものが七三%である。原油以外の輸入原材料価格のアップが一・五%である。減産に伴うコストアップが一・〇%である。円相場の下落が一・六%。一一・四%というのが、石油並びに減産によって卸売物価が上がった。そこで、春闘のベアについては、三〇%の場合の賃金コストは六・四%である。ところがこれは、一昨年から昨年の三月下旬までに二二%上がっておる。ですから、昨年三月時点においては、予想される春闘の賃上げ分を含めても二倍上がっておる。日銀の報告書はこう書いておる。
 そうして、それをまた受けて、この労働白書ですよ。労働白書も、そういう意味のことを書いておるわけです。結論だけ言いますと、「最初に指摘したように、四十八年の大幅賃上げも労働市場における需給ひっ迫の強まりにほぼ一致するものであったし、四十九年についても労働市場要因のほか物価、企業収益などを加味して分析を行ってみると、春闘直前の経済情勢を反映したものとみることができる。」何も春闘で賃金相場を上げたんじゃないんですよ。戦後ずっとそういうパターンは変わっていないと書いてある。
 それなのに、今度三人の大臣が――まあ外交は賃金とはあまり関係ありませんけれども、一斉に所信表明で言われるというのは、これはインフレがおさまらなかったら、春闘の責任に全部かぶせてしまえるんじゃないか、政治的に見ると、春闘に焦点を合わせて、全部あらゆるPRをしているのじゃないかというように思わざるを得ない。昨年のように、いままでのようにとは何ですか。いままでのようにというのは、影響がないということですよ。しかも、物価値上げの半分の――春闘を含めても、半分しかコストは上がっていない、こう言っているのですが、一体どういうようにお考えですか。
#265
○福田(赳)国務大臣 高度成長期におきましては、先ほど申し上げたとおりです。ところが、いよいよこれから低成長期に入る、そのスタートと言ってもいいわけですね。そういう際に、いままでの賃金と物価の考え方では、これに対処できない、こういうことを申し上げているのです。ですから、あなた、いままでの賃上げの理論というか、そういうことをお読み上げになりましたが、それじゃいかぬと言うのです。つまり、これからは賃金の上昇、これが非常に大きく物価に影響してくる、コスト要因として響いてくる。昨年で言いますれば、大幅な賃上げがあった、それが物価の引き上げの要因にもなっておると思いますけれげも、しかしあの物価の引き上げの要因は、これはもう需給です。つまり、あの狂乱という、先はインフレだ、先は物価高だ、いまのうちに買っておけ、こういう要素が非常に与えているのです。いまは、もう需給という要素はほとんどない。コスト要因がほとんどを占める。コスト要因と言えば、これは海外の要因があります。しかし海外要因というのは、だんだんと薄れてきております。石油の輸入原価が四倍になった。これは非常に強く響きましたけれども、それはまあ大体吸収されて、いま一番大きく物価を押し上げておる要素は賃金である、こういうふうに見るわけです。そういう際に、この春闘で賃金が大幅に上がる、これはどうしたって物価に響かざるを得ない、こういうことを申し上げているのです。
#266
○多賀谷委員 私が言っているのは、いままでのようにというのは何ですかと、こう言っているのです。「現状でみる限り、企業ごとの経営状態をまったく無視した賃上げが通常のこととして行なわれるような状態は全然考えられない」と書いてある。日本は企業組合ですよ。なぜ春闘春闘と大騒ぎをしておるのか。そんな、あなた方が心配するようなことはないですよ。それを何か必要以上に重大視しているというところに問題がある。企業の経営を無視して賃金が上がったようなためしはないと、報告書は書いておるんですよ、戦後ずっと調査をした結果。どういう感覚で物を言っているのか、ぼくは本当に不思議です。調べていないんですよ。勘ですよ。また、労働組合の実態は、労働大臣よく知っておるとおりです。もうこれ以上言いません。そんな、経営を無視するような日本の労働組合ではないですよ。産業別労働組合が真に確立していないのです。
 そこで、私は質問しますが、全国一律最低賃金についてどう思いますか。
#267
○長谷川国務大臣 ただいま副総理からも御答弁ありましたが、これは要するに、高度経済成長からマイナス成長になった場合のお互いの姿勢というものを、ひとつよくここで考えようじゃないか、こういうことでして、労使の間に、賃金で政府が入る、こういうことじゃないことは、先生よく御理解いただくことだと思います。
 さて、最低賃金につきましては、御承知のとおり、地域別に全国四十七都道府県で地域最賃が行われ、業種別が行われて、三千二百万の労働者がカバーされているわけでありまして、物価その他の問題をいつも勘案して、昨年の十二月二十日あるいは三十日までに一斉に改定などをして、低い方々を上げる、こういう姿勢をずっととり続けているわけであります。
    〔谷川委員長代理退席、委員長着席〕
#268
○多賀谷委員 日本の最低賃金は、平均賃金に比べて何割ぐらいになっていますか。
#269
○東村政府委員 全体の平均に比べてどうかということは、ただいま手持ちございませんが、一日当たり二千百円から千七百円台、ないしは、地域別最賃になりますと、千七百九十四円から千三百四十円台が多くなっております。
#270
○多賀谷委員 それは大体平均賃金のどのくらいですか。労働大臣、大体、最低賃金というのは平均賃金のどのぐらいになるのですか。
#271
○東村政府委員 平均賃金のとり方にもよりますけれども、毎勤等におきまする平均賃金は、大体十万円前後でございます。
 いま申し上げました最低賃金は、その金額を月額に直しますと、五万五千円から三万三千円程度、こういう数字になります。
#272
○多賀谷委員 労働大臣、その国の最低賃金というものは、平均賃金のどのくらいに位をすると考えるのですか。いま私が質問したことは、役所がすぐ答弁できぬようじゃだめですよ。大体、最低賃金というものは、そのときの労働者の平均賃金の何割ぐらいということがわからぬようじゃだめです。
 厚生省、生活保護は一般世帯の何割ぐらいですか。
#273
○翁政府委員 お答え申し上げます。
 格差で申しますと、大体五七%程度です。
#274
○東村政府委員 ただいま申し上げた数字と次元が違いますので、なんでございますが、わが国の最低賃金と平均賃金との格差は、規模三十人以上、それから規模の小さいところ、両方とりますと、平均にいたしまして四五・七、五六・二、こういう数字でございます。
#275
○多賀谷委員 それはどこから調べたのですか。私はあなたの方から資料をもらった。そして十一月の毎勤統計を見た。十一月の毎勤統計は全産業賃金が出ているわけですが、それは十一月ですから、ボーナスなんか入ってませんよ。十二万六千七百九十一円。そうしてあなた方のこの地域、いろいろ差があるんですが、多いところを、上位からその次ぐらいのグループを見た。そうすると、それが千六百円から千六百九十九円、これに位しておる。そうすると、この十二万六千七百九十一円を、十一月のそのときの時間で割ってみた。そして八時間を掛けた。五千六百六十円です。そういたしますと二九・一五です。
 そこで私は、過去にさかのぼってずっと調べてみた。そういたしますと、一九六六年――古いところは別として、六七年が二四ぐらい。それから少し上がりまして二八、二七、それから二九がずっと続いている。いま二九・一です。これは社会保障の方は、生活保護を決めるときに、そのときの世帯の大体どのぐらいの水準かというのは、非常に重要な問題ですよ。ところが労働省は、最賃をきめるとき全然調査もしていない。第一そういう感覚がない。そこで私どもが、全国一律ということを言うんですよ。なるほど物価も違う。住宅費も違う。それは修正する方法があるのです。修正値を使えばいいのです。日本の最賃というのは、あなた方が幾ら言ったって、全然意味をなしていないのです。たとえば日雇い労働者の賃金をあなた方は決めるでしょう。そうすると、その賃金よりも絶対上げてくれるなと、現実にみんな頼んで歩いておる。百円でもいいからそれより下げてくださいと、全部頼んで歩いている。基準局は決めない。それが低いから、出てくる賃金がまた低いのです。二九・一%なんという最賃が世界じゅうにありますか。大体、調査をしたことがないでしょう。ここが問題なんですよ。
 そこで私は、各国の最賃を調べてみました。ところが、各国といいましても、全国一律というのはアメリカとフランスしかないのです。フランスの場合も、最初パリを中心として地域差を五つぐらいつくっております。ところがそれが今日は一本になっている。完全に一本になっておるのですが、調べてみましたら、アメリカは、これは州法ですが、アメリカの場合は州際は一種になっているわけです。六七年が四九・五、六八年が五三・二、七三年が四九・一、大体こういう数字です。
 それからフランスの最賃を調べましたら、ずっとこのところ大体平均賃金と最賃の割合が七一から七二ですね。ですから、日本のは全然ないと同じなんですよ。これで最賃と言えるかどうかです。たった三割以下で最賃と言えますか。厚生省だって、五七%だと言っているのです。そんなのが一体最賃というものに値するだろうかと言うんですよ。これは総理、どういうようにお考えですか。
#276
○東村政府委員 ただいまのお話でございますが、わが国の最低賃金は、賃金水準の低いところの労働者を何とか引き上げよう、こういう趣旨のものでございまして、最低賃金の額は、労働者の生計費、類似の労働者の賃金、それから通常の事業の賃金支払い能力、こういうものを総合勘案して決めるとなっております。そしてそれを決める際には、公、労、使三者構成による審議会によりまして、慎重審議をした結果それを決めている。ただいま御指摘ございましたが、わが国の賃金水準そのものに、現実に大企業、中小企業という格差がございますので、そういう格差を何とかして埋めていこうということで最低賃金をやっている。ほかの国と若干事情が違うことは御了解願いたいと思います。
#277
○多賀谷委員 違わないんですよ。賃金格差を是正しながら生活に見合う賃金を最低でも保障しようということですから、どこの国だって違うわけがない。ああいうように、平均賃金とどのくらいの位置をしているかがわからぬようじゃだめなんですよ。二九%でどうして生活ができますか。賃金に値しないでしょう。だから、あなたのようにばらばらでやらしておってもしようがないから、基準局が行って、委員の人に言って、とにかく日雇い労働者の賃金よりも絶対に上げちゃならぬと頼むから、こんなになっている。ですから、平均賃金の水準がどのくらいかというのは、大体国で決めなければいかぬですよ。そうしなければ、最賃に値しないのです。だからぼくらが全国一律と言うんですよ。あなた方は、全国一律、そんな画一的にはできぬだろうと言うけれども、それは修正値をやって、若干地域的な修正なんかは、前進するように考えておるけれども、とにかく全国全部に網をかぶせなければ、こういうものはできっこない。ひとつ労働大臣から……。
#278
○長谷川国務大臣 この最賃で使われている人々というのは少ないわけです。一番下をこういう人で使っちゃいけませんということで。ですから、平均が十二万にもなっているわけです。そこで、おっしゃるとおり、三者構成で、地方で組合の諸君とかそういう方々全部で、その地域最賃、業種賃金を決めてもらっているわけです。次に考えられることは、全国一律というのは、一番高いところの東京都、あるいはほかの地方の非常に安いところがありますが、こういうところを一律最賃というわけには、中央最賃の協議会の答申を見ましても、なかなかむずかしい。現状ではそれは実行しがたい、こういう答申などもいただいておりますが、いまおっしゃるような御指摘のこともあり、あるいは高度成長のこともあり、だんだんに労働省の内部において検討しよう、いまこういう姿勢であることを申し添えておきます。
#279
○多賀谷委員 だから、厚生省が全国の世帯の平均の五割とか六割ということを検討して、生活保護の基準を決めておるのに、最賃というものはそういうことが全然無関係で、大体ぼくがどのくらいの率になりましたかと言っても、勘でもわからぬです。大体どのくらいになっておるかという勘を知らないのです。そういう行政で一体できますか。ぼくはそこに姿勢があると思うんですよ。ですから、全国の賃金なら賃金が十二万なら、十二万のその半分とか、大体最賃というものは五〇%程度だとか、何かやはり基準というもの、物差しというものを考えないで、やりっ放しにやって、どうして賃金格差が是正されますか。私はそういう物の考え方を言っているんですよ。一回だって検討したデータもあったことがない。
 それで、われわれは別々にデータをとって、合わしてみたわけです。これは簡単なことなんです。あなたの方の毎勤から出した。こちらはあなたの方の最低賃金の表から出した。ですから外国は、フランスのように七割というのも、アメリカのように五割というのもある。いろいろあるでしょう。しかしこちらはその基準というものが全然ない。労使で話し合いをさしておりますなんて言うが、それはもう理屈ですよ。役所が出した原案というのは、百円だってこれは変わるわけじゃないのです。これはひとつ、総理から、最賃に対する物の考え方をお聞かせ願いたい。
#280
○三木内閣総理大臣 世界の中においても、いま多賀谷さんの御指摘のように、アメリカとフランスだけしかできていないわけです。ほかの国で最低賃金制を採用できていないのは、いわゆる地域差もあるし、企業の差もあるし、いろいろむずかしいからだと思いますが、しかし、労働行政をする上において、全国平均に対して最低賃金はどのくらいのところであらなければならぬという目安を持たなければならぬのは、御指摘のとおりだと思います。
#281
○多賀谷委員 私は、やはり労働省は、大体賃金の目安というものを考えるべきだと思うのです。ですから、そういう状態の中で、きちっとはいかぬにしても、やはり物の考え方をこの際はっきりする必要がある、こういうように考えますが、もう一回労働大臣から御答弁願いたい。
#282
○長谷川国務大臣 大事な問題でございます。そしてまた、わが労働省といたしましても、いろいろな御指摘、いろいろなまた所論なども拝見していることですから、いままで以上に真剣に省内で検討してまいりたい、こう思っております。
#283
○多賀谷委員 大事な独禁法の時間がなくなりましたけれども、まず私は、石油ショックのときの企業のあの乱脈ぶりから見て、総理はどういうようにお考えになったか、これをお聞かせ願いたい。
#284
○三木内閣総理大臣 私は、しばしば言っておるように、自由経済体制を維持したいという論者であります。そのためにも、やはりルールといいますか、そういうものがないと、ただ自由だということで、そうして弱肉強食のような経済で、自由経済体制が維持できるわけではないですから、やはり自由公正な競争というものが可能な一つの市場メカニズムというものができなければいかぬ。そういう点で厳しいルールというものを持たなければいかぬと思うわけでございますが、多賀谷さん、その内容というものに対して、一々ここで指摘をしろという御希望かもしれませんが、いま植木総務長官のもとで、これは労働組合も入り学界も入り、また経済界からも入って、この懇談会は非常に建設的な成果を上げておるわけでございまして、そこで一つの方向を出したいということで、これは二月の中旬ごろまでには方向が出るわけでございましょうから、そういうことで、せっかく検討を加えておりますから、私が、政府がいま作成しようとする法案の内容について、まだそういう方向も出てないときに申し上げることは適当でないと思いますが、これは昨日も申し上げておるように、まあ三月の上中旬までには国会に提出をしたいという予定で、政府は段取りを組んでおるわけでございます。
#285
○多賀谷委員 時間がなくなりましたが、一つだけ、これは大蔵大臣に聞きましょうか。
 日本の株式というもの、株というものは、どうも諸外国と観念が違うんじゃないか。要するに、株式というのは資金調達の手段ですね。ところが、日本の場合は、もう推移も申し上げませんけれども、法人と個人の株式所有のあり方がずっと変わってきておる。そして資金はどこから調達するかというと、株や何かで調達するのじゃなくて、借入金で調達しておる。そうして、資金の方は借入金で調達をして、株の方は、その移動の状態を見ると、どうも資金調達の方便ではなくて、要するに企業支配、商標の支配ですね。証券の支配のための道具のようになっておる、こういう感じを持つんですよ。ですから、証券の支配をする道具が株になっておるというのが日本の特徴じゃないかと思うのです。これについて、これは証券のほうは大蔵大臣ですが、大蔵大臣はどういうようにお考えですか。
#286
○大平国務大臣 株式市場、資本市場が、多賀谷さん御案内のように、まだ資本調達の場といたしまして十分発達していない、いま過程にあるわけでございます。ということをまずお断り申し上げておきます。
 それからまた、日本のいまの慣行といたしまして、株式の持ち合いでございますとか、あるいは一概にその支配を目的として株を持つということで割り切れるかというと、そう割り切るべき性質のものでもないように思うのでありまして、したがって、いまの資本調達の手段でもあり、いろいろな多元的な目的で保有が行われておるわけでございまして、確かに究明すべき問題ではあると思いますけれども、それがどのくらいの割合がこうなって、どうなっておるかというようなことにつきまして、的確にお答えできませんけれども、一概に、あなたの言われるように、支配を目的として保有しておると断案するわけには、私はいかないのではないかと思っております。
#287
○多賀谷委員 実は、そういう形になっておりますね。そして、さっきから金融の話がありましたけれども、銀行が系列化をした場合に、直系企業、これは非常に金利が安いわけです。ところが、まあ末端と言ってはなにですが、末端の株式を銀行が保有した場合に、集中度が高ければ高いほど、株の銀行の保有高が高いほど、金利が高い、こういうデータを最近、産業組織論の学者が発表しておるのです。ですからこれは、系列になったけれども、末端の系列というのは、むしろ高い金利を押しつける手段に、その会社の株を持たれておるという形になっておる。ですからこれは、いろいろな面に集中というものが、あるいは系列というものが影響を及ぼしておる。これはひとつ御調査を願いたい、こういうふうに思います。あとから本も資料も貸しますから。
 そこで、もう時間がないそうですから、私は最後に、三木総理大臣にお聞かせ願いたいのは、三木さんの人柄もあるでしょうけれども、非常な理想を掲げて総理におなりになったけれども、どうも竜頭蛇尾に終わりやしないかということを、率直に言いますと、心配するのです。
 私が石炭政策をやったときに、あなたは第三次答申をやられたときの通産大臣でした。初めかなり意気込みを持っておやりになったけれども、終わりは結局、企業の借金の肩がわりしかできなかった。そして三木さん、つくづくおっしゃっておりました。やはりこれが限界だよとおっしゃったけれども、今度は総理大臣ですからね。もうあらゆる政策について、努力したけれども、やっぱり多賀谷君、これが限界だよということのないように、今度はひとつがんばってもらいたいと私は思うのです。
 いまいろいろ質問をいたしましたけれども、残念ながらまだポイントすらわかっていないという感じもしますから、ひとつしっかり勉強して、もう総理大臣は何度もなれるわけじゃありませんから、それは田中さんの勇断じゃないですが、勇断をもって処してもらいたい、そのことを要請して、質問を終わります。(拍手)
#288
○荒舩委員長 これにて多賀谷君の質疑は終了いたしました。
 次回は、来る三日午前十時より開会いたします。
 本日は、これにて散会いたします。
    午後五時二分散会
ソース: 国立国会図書館
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