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1974/05/23 第75回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第075回国会 運輸委員会 第15号
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1974/05/23 第75回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第075回国会 運輸委員会 第15号

#1
第075回国会 運輸委員会 第15号
昭和五十年五月二十三日(金曜日)
    午前十時三十五分開議
 出席委員
   委員長 木部 佳昭君
   理事 加藤 六月君 理事 佐藤 文生君
   理事 佐藤 守良君 理事 西銘 順治君
   理事 太田 一夫君 理事 金瀬 俊雄君
   理事 三浦  久君
      佐藤 孝行君    關谷 勝利君
      徳安 實藏君    丹羽喬四郎君
      宮崎 茂一君    綿貫 民輔君
      久保 三郎君    兒玉 末男君
      坂本 恭一君    梅田  勝君
      紺野与次郎君    松本 忠助君
      河村  勝君
 出席国務大臣
        運 輸 大 臣 木村 睦男君
 出席政府委員
        運輸大臣官房審
        議官      中村 四郎君
        運輸省海運局長 薗村 泰彦君
        運輸省船舶局長 内田  守君
        運輸省船員局長 山上 孝史君
        運輸省航空局長 中村 大造君
        海上保安庁長官 寺井 久美君
 委員外の出席者
        外務省国際連合
        局専門機関課長 市岡 克博君
        水産庁研究開発
        部漁場保全課長 山内 静夫君
        運輸省海運局総
        務課長     犬井 圭介君
        運輸委員会調査
        室長      鎌瀬 正己君
    ―――――――――――――
五月十六日
 タクシーの安全輸送確立に関する請願(稲葉誠
 一君紹介)(第二九二八号)
 同外一件(枝村要作君紹介)(第二九二九号)
 同(太田一夫君紹介)(第二九三〇号)
 同(金瀬俊雄君紹介)(第二九三一号)
 同(金子みつ君紹介)(第二九三二号)
 同(川俣健二郎君紹介)(第二九三三号)
 同外一件(久保三郎君紹介)(第二九三四号)
 同(兒玉末男君紹介)(第二九三五号)
 同(斉藤正男君紹介)(第二九三六号)
 同(坂本恭一君紹介)(第二九三七号)
 同(島本虎三君紹介)(第二九三八号)
 同(田口一男君紹介)(第二九三九号)
 同(田邊誠君紹介)(第二九四〇号)
 同外一件(広瀬秀吉君紹介)(第二九四一号)
 同(森井忠良君紹介)(第二九四二号)
 同(村山富市君紹介)(第二九四三号)
 同(吉田法晴君紹介)(第二九四四号)
 新幹線被害対策確立に関する請願(小濱新次君
 紹介)(第二九五七号)
同月十九日
 新幹線被害対策確立に関する請願(山本幸一君
 紹介)(第三〇二四号)
 国民本位の公共交通確保等に関する請願(板川
 正吾君紹介)(第三〇六二号)
 同(太田一夫君紹介)(第三〇六三号)
 同(金瀬俊雄君紹介)(第三〇六四号)
 同(金子みつ君紹介)(第三〇六五号)
 同(川崎寛治君紹介)(第三〇六六号)
同月二十日
 新幹線被害対策確立に関する請願(平田藤吉君
 紹介)(第三三五一号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 油濁損害賠償保障法案(内閣提出第六四号)
     ――――◇―――――
#2
○木部委員長 これより会議を開きます。
 油濁損害賠償保障法案を議題とし、質疑を行います。
 質疑の通告がありますので、順次これを許します。兒玉末男君。
#3
○兒玉委員 提案をされております今回の油濁損害についての保障関係のことで第一点にお伺いしたいのは、この提案の説明にも書いてございますけれども、現行の法制度では民法及び商法の不法行為に関する規定が適用されるとともに、わが国の場合においてはいわゆる免責委付制度というものがいままでとられてきたのでございますが、今回これがいわゆる金額責任主義、こういうふうに内容が変わったわけでございますけれども、これはどういうふうな沿革と理由でこういうふうに変わったのか、その経過について簡潔にひとつお聞かせを願いたい。
#4
○薗村政府委員 先生ただいまお話ございましたように、現行の商法は六百九十条の規定によりまして、船舶所有者等が船舶による事故によって損害賠償の責任を負う場合には、船舶及び運送賃等を債権者に委付して賠償責任を免れることができるという、いわゆる委付主義を採用しております。
 このように船舶所有者の責任を一定の限度に制限しようとする制度には方法にいろいろございますけれども、世界各国に共通する制度でございまして、わが国の委付主義の制度は、昔からこの制度を実はとってきたのでございますけれども、委付の対象となる船舶の破損の程度いかんでというような偶然の事情によって損害のてん補される程度が著しく異なるという点で、被害者保護の見地から合理的でないということがはっきりしております。
 そこで、現在英、仏、独等主な海運国はすでに一九五七年条約を批准いたしまして、より合理的な制度である金額責任主義を採用しておりますので、実質的に世界第一と言われておりますわが国として、これらの先進海運国と歩調をそろえて金額責任主義へ移行して被害者の保護を図るということが必要であると思われます。さらに、今回お願いしております油濁関係の二条約を批准をして国内法化する、そしてタンカー事故に備えるという必要からも、この二条約が金額責任主義をとっているために責任制限に関する基本的な制度を確立するという面からも、一九五七年条約を批准して国内法化するということが基本的に必要となっているのでございます。
#5
○兒玉委員 それで、この一項のいわゆる六八年の条約と、それから六九年条約、いわゆる油濁関係ですが、六八年の方はこれは一九五七年条約ですか、これで金額責任主義をとっていることについて、たとえば海上航行船舶の所有者の責任の制限に関するいわゆる五七年条約では責任の範囲というものが「船舶所有者等」ということで非常に拡大された表現をとっているわけでございます。ところが、油濁関係については明確に「船舶所有者」というふうに限定をされているわけでございますが、同じ責任関係ということについてはそんなに変わりないと思うのですけれども、このような責任の範囲というものが違っているのはどういうふうな考えなのか、お伺いしたいと思います。
#6
○薗村政府委員 先生がいまお述べになりましたように、一九五七年条約では責任を負う者の範囲が所有者ということに限定されないで、もうちょっと広くなっております。ただ、タンカーの油濁事故について、特にその賠償責任を負う者を船舶所有者に集中しているのは、大体その理由としては、こんなことが考えられるのじゃないかと思います。
 まず第一に、現実に運航されておるタンカーに関します契約関係はかなり複雑な場合が多い。その場合に一たん油濁責任が生じると、被害者としてはだれに損害賠償請求を行うことがいいのかということで判断に苦しむ場合も多いと考えられますので、油濁事故の重大性にかんがみて、その責任を負うべき者をはっきり法定しておいた方がいいのじゃないかということが一つの理由でございます。
 それから、二番目には船舶所有者、賃借人、用船者、船長などのうち、いずれに責任を集中したら一番はっきりするかという点につきましては、船舶所有者について世界的に登録制度というものが行われている現状にかんがみまして、所有者をはっきり責任の主体とすることが最も明確であると考えられるという点がございます。また、海運界の慣行としては、船舶所有者が責任保険に加入しているということで、船舶航行に対して第三者に与えた損害について責任を持つということが最も適当と考えられているという海運界の実情がございます。また、今度の法律では特に、万一その船舶所有者に責任限度額についてその損害賠償を十分に行う資力がない場合、あるいはその損害額が責任限度額を超える場合には、国際基金が不足分について被害者にてん補することになっているので、船舶所有者だけに責任を限定しておきましても、被害救済上何ら問題がないというような理由から、特に油濁の場合は船舶所有者にその損害賠償の責任を集中するということを世界的に決めたということでございます。
#7
○兒玉委員 次に、この調査室の資料によりますと、今回の油濁関係の国際条約が締結される中におきまして、「一九六七年に英仏海峡で発生したトリー・キャニオン号事件を契機として、油濁損害の賠償責任について行為者の故意又は過失の存在を前提とする不法行為責任の一般原則によることは適切でないとの反省のもとに」この条約が締結された、こういうように書いてございますが、この「適切でない」ということは、具体的にどういうことを意味しているのか、お伺いしたいと思います。
#8
○薗村政府委員 従来船舶の事故については一般に故意、過失というものが前提となってその損害賠償責任が生ずるということになっておりましたが、近年タンカーの事故ではその油濁損害がトリー・キャニオン事件を見てもわかるように、非常に巨大な損害額を生ずるようになってきた。そこで、タンカー側の無過失ということを理由にタンカー所有者の免責を認めるようなことでは被害者の保護に欠けるということが全面的に世界的に取り上げられることになってきたことによるものでございます。
#9
○兒玉委員 それからこの五七年条約の場合は責任制限額というのが油濁の場合と比較しますと大体半分になっておりますね。これはどういうことでこんな金額の相違があるのか。
 それからもう一点は、この条約が決定された時期というのはすでにいまから七年前ですね。発効が一九六八年でございますから、かなりの年月が経過をしておるわけでございますが、この金額というもののドル等相場というのはかなり変動しておるわけでございますが、この金額というものは、現時点において、今度国会で批准するわけでございますけれども、貨幣価値というものが妥当であるかどうか。
 この二点について御説明いただきます。
#10
○薗村政府委員 まず初めの御質問に答えさせていただきたいのですが、一般の船舶事故と違いまして、タンカーの事故に伴って生ずる油濁の損害ということにつきましては、その損害を防止する措置のための費用一つを取り上げてみましても、また、その油濁関係から生ずる漁業の損害などを取り上げてみましても、どうしてもその損害額が多額になるということで、一般船の損害に対してはすべてほとんどの場合にその額が大きくなるという懸念があるために、一般船の場合の倍額ということでこの責任額を決めたものでございます。
 それから、この損害賠償関係の条約において、その基準として金価値を採用しているというのは、通貨価値はいろいろ変動いたしますので、金価値をとった方が安定するだろうということで金価値をとっているわけですが、現に金一オンスに対するドルの価が、この条約がいままで来た経過を見ましても、三十五ドルから三十八ドルに、また現在では四十二・二二ドルにと、ドルで表示した金の公定価格も順次上がってきたということでございます。現在の通貨価値を前提としてこれを日本円に換算いたしますと、一金フランが約二十四円前後になるということでございまして、この法案で決められました責任限度額を超えるような油濁事故というのは過去の実例からするときわめてまれであろうということが考えられますし、もし仮にその額を超えることがあっても、国際基金が四億五千万金フランまで、日本円に直して約百八億円まで補償することになっておりますし、また特に大きな事故の場合には国際基金の総会の決定でさらにその倍額、九億金フラン、日本円に直して約二百十六億円という程度にまでその金額を上げることができることになっておりますので、補償の点では十分であろうと考えております。
#11
○兒玉委員 多少内容についてお伺いしたいと思うのですが、特に今回の油濁に関する条約の場合は、船舶所有者ということが明確に義務づけられておるわけでございますが、一般的に言われる便宜置籍船といいますか、対象船舶は二千トン以上でございますが、この便宜置籍船というものについて、その所有者の責任というものは非常に重大でございますが、現在日本に関連する便宜置籍船というのはどの程度海運局では確認されているのか。また、これによる事故発生の場合、これは国際的な問題としてもその責任の所在をめぐってかなり混乱というものが生じ、あるいはそれが国際的な不信にもつながる。マラッカ海峡におけるあの祥和丸等の衝突事故でも、相手の船も便宜置籍船であった、船籍は日本にあったというようなことが大々的に報道されまして問題を起こしておるわけでございますが、もちろん賠償等の場合は保険制度というものがありまして、直接的な被害者への問題はないかもしれませんけれども、この便宜置籍船について海運局ではどういうような把握をされておるのか。また、問題発生の場合の処理については国際間にトラブルが起きる問題はないのかどうか、この点についてひとつ明らかにしていただきたい。
#12
○薗村政府委員 まず、日本の便宜置籍船、日本の安定輸送のために便宜置籍船がどの程度来ているかということについては、大体日本の貿易物資を運ぶための必要船舶量のうちの二五%がリベリア、パナマの便宜置籍国船の船舶に負っているという実情でございます。
 それで便宜置籍船の場合に、その船舶所有者に責任を集中しておいても、その便宜置籍国船の所有者が多くの場合一船一社主義をとっておって、その船舶以外に一般財産を持たないから賠償能力に欠けるんではないかという御批判でありますとか、また船舶所有者の会社が多くの場合ペーパーカンパニーと称せられておって実体を持たないのではないかというような御批判があるのは私どもも承知をしております。しかし、便宜置籍船といいましても、一般の船舶と同じように損害賠償責任保険、いわゆるPI保険と言っておるものを付保しておるのは実態でございまして、そういった保険を付保しておらないような船では用船市場で引き合いの対象にならないということでございますので、仮にその船主の資力が十分でないという点がありましても、付保されている保険によって賠償能力は十分であるということでございます。いままでいろいろ便宜置籍船をめぐっての事故がございましたけれども、そういったPI関係の保険を付保していないということはございませんでした。
 それからまたペーパーカンパニーであってどうも相手の所在がわからぬのではないか、信用ができないのではないかという点がございますけれども、必ず船主事務を代行しているという者がおりまして、それを賠償の相手方とするということは支障がないということをわれわれとしては考えております。また仮にそういった懸念がございますにしても、この法律が実施されますと便宜置籍船を含めまして二千重量トンを超えるタンカーについては責任保険を維持するということを今度は世界的に強制するということになりますので、その所有者である便宜置籍の船主だけではなくて、その保険者にも直接被害者がその賠償請求をするということができるようになりますので、その点では被害者保護の点で非常に進歩するということになると考えられます。しかも万一船舶所有者に賠償能力がないとかあるいはその損害額が責任限度額を超えているという場合には、先ほどもちょっと触れさせていただきましたように国際基金が補償するということになりますので、被害者保護という点からはこういった法律の制度を進めていただくことによって非常に世界的に進歩すると思います。
#13
○兒玉委員 確かに被害者保護という点は、私もこの法案を読ましていただきまして、いま、局長が言われるとおりですが、われわれとしては被害者救済ということも必要ですが、特に便宜置籍船が各種の海難事故、航行中のそういういろんな衝突事故なりあるいは座礁なりそういうふうな事故を防ぐ責任体制ということも、被害者救済ということはもちろん大事でありますが、航行上の安全、こういう点の指導なり責任なり、そういうものがやはり私は国際的にもこれから必ず問われてくるということが問題の焦点でなくてはいけない。この点については特に大臣に対してお伺いしたいわけですが、こういう置籍船の問題については今後の海運行政についても相当厳重な指導とチェックをやはり私はしていく必要がある、こういうように感ずるわけでございますが、この際ひとつ、特に国際的な問題でもございますので、大臣の御所見を承りたい。
#14
○木村国務大臣 便宜置籍船の問題についてはいろいろいままでも議論あるところでございます。しかし、世界の海運の現状から言いますと、こういう制度というものも現実に行われておるわけでございますので、その前提の上に立って便宜置籍船が起こすところのいろいろな問題について、たとえば航行の安全あるいは損害の防止等の措置を講じなければならないわけでございます。いまも海運局長が申し上げましたように、油濁の損害等につきます損害責任の所在等につきましては先ほど申し上げたとおりでございますが、その他航行の安全等につきまして、ペーパーカンパニーが船舶の所有者である、したがって、その運航に当たる乗組員等についてもいろいろ航行安全の点で懸念される点もないとは保証できません。これらの問題につきましては、したがって、一国のみでどうすることもできない問題でございます。これはOECD等で取り上げまして、現在これらの問題をどういうふうにしたらよろしいかという国際間の一つの取り決めをしようということで検討をいたしておりますが、わが国といたしましても二五%ぐらいは便宜置籍船を用船しておる現状でございますので、わが国としてできる限りのことはこれらの船舶に対してもいろいろと措置を講じていきたい。そして便宜置籍船なるがゆえに海難その他の事故が起こらないようにこれもでもいろいろ指導をいたしておりますが、これは用船者等を通じてもやっておりますけれども、今後ともその方向で努力をしていきたい、かように考えております。
#15
○兒玉委員 海上保安庁来ておられますか。――いまの便宜置籍船のことといろいろな事故なり責任対策ということを大臣にお伺いしたわけですが、この置籍船等のいわゆる航海上におけるいろんな事故の発生なり防止対策あるいはまた今回のこの油濁関係の条約で二千トン以下の船はその対象になっていない、こういうことでございますが、これは一体海上保安庁としてこのような関係の条約との関連について、特に航行の安全の確保という点あるいは発生した場合に、これは海運局長にもお聞きするわけですが、二千トン未満の油濁損害の発生、こういう場合についてはどういうような被害者の保護対策、それから保安庁の場合は先般のマラッカ海峡における衝突事故でも相手側の船も実は船籍は日本にあったということが報道されておるわけでございますが、こういうような場合のいわゆる航行安全等の指導といいますか指揮といいますか、そういうことは一体どういうふうになっているのか、この点について、ひとつ保安庁並びに海運局の見解を承りたい。
#16
○薗村政府委員 二千トンを超えるタンカーには付保を強制することになっている、二千トン以下の船についてはどうであろうかということでございますが、日本のタンカーの実例を申しますと、二千デッドウエート以上のタンカーは全部PIの保険にすでに入っております。それからなお二千デッドウェート以下の船についても、私ども調査をいたしましたら、五百グロトン以上、したがって、デッドウエートでまず千トン以上二千トン未満でございますが、の船が三百三十七隻、それから、グロトンで申しますが、デッドウェートの大体半分になるわけですが、三百グロトン以上の船四百六十隻、二百グロトン以上の船百四十二隻、百グロトン以上の船六百七隻、実は全部日本のPIに付保されているという実情でございますので、この二千トン以上の付保の強制というのは、国際条約に基づいて、それぞれ国際問題としてここで線を切ってお互いにこうさせようじゃないかという強制の問題が出てまいりましたが、二千トン以下の問題は、国際水準に合わせるということからは全部を網羅するというわけにはいきませんけれども、付保の実情として一〇〇%付保しているという実情にございますので、今後とも私どもは行政的な指導を行いまして、こういった実績を十分守っていくというふうに指導していきたいと思っておるわけでございます。また、被害者保護の制度から言いますと、もし万一付保されていないために事故を起こして小型のタンカー会社で破産するというようなケースがございましても、今度は国際基金が被害者を救済するということを引き受けてくれるということになりますので、その制度自体は前進することになると思います。
 それから、便宜置籍船につきましても、日本の船社が用船をしてその支配力を持っております船につきましては、たとえばマラッカ、シンガポールを通るときに事故は起こさないように、日本の船会社が日本の船に航行上の注意を与えていると同様な注意を外国用船にも押し及ぼすことができるように、船主協会を通じて日本の船会社に私どもは指導をすることを進めているという実情にございます。それから、マラッカ、シンガポールの事故の例で、「土佐丸」が「カクタス・クイーン号」というものと衝突をいたしまして先般事故を起こしました。その「カクタス・クイーン号」というのは日本の日正汽船が便宜リベリアに籍を置いた船であるということが事件の当時判明いたしましたので、そういった被害補償の関係については、日正汽船を通じて十分行うように私どもから監督をしておる次第でございます。
#17
○寺井政府委員 マラッカ、シンガポールの関係の事故につきましては、私どもは直接関係ございませんと申しますか、直接権限がございませんわけで、主として海運局を通じまして、船主あるいはその他に対して指導をしておるという状態でございます。それから、二千トン以下の船が除外になっておる、この点海洋汚染の防止の見地からどうかという御質問でございますが、一般的に私どもは、二千トン上下にかかわらず、汚染防止の対策を講じておりまして、これは常時監視をいたしますとともに、随時講習会あるいは臨検等によりまして指導をいたしております。ちなみに、外国船の汚染件数は四十九年度で三百六十六件ございまして、このうちリベリア、パナマ等の船籍の船が約半分を占めておるという実情でございます。ただ、タンカーについて申しますと、二千トン以下の船がこうした汚染をしたという実例が四十九年度ではございません。それから、四十八年度で一隻ございます。比較的船型が大型化しておりますので、二千トン以下の小型船につきましては一般的な汚染防止対策という枠の中で処理していけるものというふうに考えております。
#18
○兒玉委員 それから、局長にお伺いしますけれども、こういうふうなタンカー船の事故が発生した場合、これを被害者対加害者という関係における審判をする機関ですね、金額にしても、あるいは被害状況なり因果関係、これは第三条に免責条項も明記してありますけれども、その他の、こういうふうな事故発生の場合に、いうところの裁判をする機関ですね、これは、審判する機関はどういうふうになっているのかお伺いしたいと思います。
#19
○薗村政府委員 一般に船舶の事故につきまして、特にまた本法案で問題となっております油濁損害の賠償請求の事件につきまして、やはり一般の不法行為に基づく損害賠償事件として、当事者と、すなわちこの場合には船舶の所有者、保険者と被害者との間で、まずはその話し合いによって、責任の有無、損害の程度というようなものについて話し合いが行われて、合意が得られれば示談ということで整理するということになりますが、もしその争いがその両者の間で解決しないという場合には、訴訟事件によって管轄権のある裁判所の判断にゆだねられるということになるわけでございます。
#20
○兒玉委員 それから、この規定の中で、いわゆる荷物というのはばら積みに限定をされているわけでございますが、これはどういう意味なのかお伺いしたいと思います。
#21
○薗村政府委員 本法の適用の対象をばら積みの油ということに限っておりますが、一般にばら積みでない場合と申しますと、ドラムかんあるいはコンテナ等の容器に収容した状態の油ということでございますが、こういった形で輸送するという輸送量は小規模であって、したがって、たとえ油濁損害が生じても損害額もそう多くならないということから、責任条約の適用対象としては省いてあるということでございます。
#22
○兒玉委員 それから、第三条に規定している、一項一号から四号まで、いわゆる免責ということが書いてございますが、こういうふうな免責されるような事項によって被害が発生した場合、この被害者の救済というものはどういうふうな保護規定があるのか、あるいはそれはどういうような方法で――免責される場合の事故発生ですね、これはどういうふうな救済対策を考えられるのか、お聞きしたいと思います。
#23
○薗村政府委員 油濁事故がこの法律の第三条の免責事項に該当する場合、四つほど挙げてございますが、こういう場合にはこの法案の第二十二条の規定、それから基金条約第四条の規定によって、国際基金に対して四億五千万フラン、日本円に直して約百八億円を限度として損害賠償を請求し得るということになっております。ただし、その免責事項のうちで第三条の第一項の一号にございます「戦争、内乱又は暴動により生じた」ときという場合には、これは国際基金がこういう証明をいたしましたら、国際基金もその場合だけは免責されることになるわけでございます。
#24
○兒玉委員 それからこの法律の何項でございますか、「貨物として」と、こういうような表現がなされているわけでございますが、貨物というふうな表現をとったのはその範囲なり内容というものがどういうことを意味しているのか、お伺いしたいと思います。
    〔委員長退席、佐藤(守)委員長代理着席〕
#25
○薗村政府委員 荷物としてその油を運ぶ場合に限るということは、タンカーとしてその荷物を運ぶ場合だということが書いてありますので、自分の燃料などは別だということでございます。
#26
○兒玉委員 そういたしますと、やはりこの用語の中で流出もしくは排出というようになっておりますが、この観念はどういうふうに解釈をされるのか。
#27
○薗村政府委員 排出というのは人為的に排出をしたということでございまして、衝突の危険を防止するために油を捨てたというようなことを人為的にやった場合が排出でございまして、したがって流出というのは自然に流れ出た場合、したがって衝突の結果やむを得ず油が流れたというようなときは流出ということになるのでございます。
#28
○兒玉委員 この荷物の規定の中で特に限定の理由として「蒸発しにくい油」、だからガソリンとかそういうような油類はこの対象外である、こういうように限定をしたのはどういうような根拠があるのかお伺いしたいと思います。
#29
○薗村政府委員 実はこれ本法で「蒸発しにくい油」という表現をとりましたのですが、もとの責任条約第一条第五項というところでは「持続性油」という表現を使ってございます。特に油濁の責任関係をはっきりする油を持続性の油、あるいは国内的に表現をいたしました蒸発しにくい油ということに限定をしたのは、やはりこういった油が流れ出た場合に、蒸発しやすい油に比較すると長期間海面に残留して粘着性を有して海洋汚染の可能性が大きい。したがって、油濁の損害が大規模になるだろうということから、「持続性油」あるいは「蒸発しにくい油」ということに限ったものと考えております。
#30
○兒玉委員 それからいわゆる第十三条で「(保障契約の締結強制)」という項があるわけでございますが、この場合「二千トンを超えるばら積みの油を積載して」おるとあるわけでございますけれども、この中身の確認というのは具体的になかなか困難じゃないかと思うのですが、これはどういうような方法で中身の確認はされるようになっておるのか、お伺いしたいと思います。
#31
○薗村政府委員 これは先生お話しのようにちょっと視認でむずかしいという場合もあるいはあるかもしれませんが、外形あるいは喫水の状況から判断して一応の判断が可能ではないかと考えておるわけですが、もし明確に判断できないときには当該の船について積み荷に関する書類を調査することによって、二千トン以上の油を積んでいるかどうかということをはっきりする必要があろうと思います。先ほどちょっと触れさせていただいたように、小型船にも保障契約を締結しているということが日本では大体一〇〇%行き届いておるという実情でございますので、特にこの船についてどうかなということを問題にしなければならぬ場合は少ないのじゃないかということを考えておるわけです。
#32
○兒玉委員 それから国際基金のことが先ほど局長から再三言われているわけですが、この国際基金の納付金の基準があるわけでございますが、これが十五万トン以上というふうになっております。この基礎というのは大体どういう形でこのような基準が設けられているのか。
 それから時間があまりありませんので、十五万トン以上のいわゆる荷物の出し入れあるいは関係の企業というのが大体五十七社ぐらいあるそうですか、この受け入れなり払い出しの確認というのはなかなか困難じゃないかと思うのですが、基準を決めたのとこの確認はどういうような方法で行われるのかお伺いしたいと思います。
#33
○薗村政府委員 やはり国際基金を集めるのに、あまり拠出の範囲が広がって小口の業者になってはかえって事務が煩瑣であって、拠出義務を課してもなかなか守っていただけないということがあるので、国際的にいろいろ検討した結果、自分の受け取り量が十五万トン以上の場合に拠出をしていただくということにしたものでございます。ただ、単独で十五万トンでございませんでも、自分の所属するところの企業集団が全体として受け取った油量が十五万トンを超える場合には、拠出義務を負うことになりますので、それらは合算をして運輸省に受け取り量の報告をしていただく、それによって国際基金に対する拠出の義務を果たしていただくということにしたいと思っております。
#34
○兒玉委員 それからこの国際基金のいわゆる対象の荷物というのが、当初のタンカーによるいわゆる原油、重油あるいは潤滑油、鯨油というものが規定されておるわけでございますが、国際基金の場合は特にこの特定油として原油と重油に限定されておるわけでございますが、これはどういうような根拠によるものか、お伺いしたい。
    〔佐藤(守)委員長代理退席、委員長着席〕
#35
○薗村政府委員 いまお話ございましたように、拠出油の範囲については鯨油が実は抜けておりますが、これは国際基金の範囲で取り上げることが国際的に論議されましたときに、その鯨油についてはこれは国際基金として取り上げないということになりましたので、その受け取り量を拠出金の当然算出基礎としない。魚油関係の受け取り業者からは国際基金を扱うことはできないのだから、国際基金の拠出は求めないということになったわけでございます。
 それから潤滑油については、そういった理由はございませんけれども、海上輸送量は原油、重油に比べると潤滑油というのははるかに小さい。原油、重油だけを拠出金の算定基礎とすれば、基金の財源としては十分拠出が仰げるということから潤滑油を外したということで、やはり潤滑油まで広げますと各国について受け取り量の報告聴取なり内容のチェックなりという事務が非常に煩瑣になるということから、大口の原油、重油に限ったものでございます。
#36
○兒玉委員 それからこの附則の第二条の経過措置というところの二項で、国際基金に対するところの訴えは基金条約発効日から起算して二百四十日を経過する日までは締結することができない、こういうような経過措置があるわけですが、二百四十日というのは非常に期間が長いように考えられるわけでございますが、この二百四十日と限定した理由はどういうところにあるのか。
#37
○薗村政府委員 これは基金条約の三十五条第二項という規定に実はこの規定が置かれておりまして、国際基金という初めての仕事が国際的に活躍を始めるために、補償あるいは補てんのための支払いを初めての仕事として行うというためには、原資となる拠出金の徴収というようなことをそれに先立って行っておらなければなりませんので、やはりそういった仕事のいわば店開きをするための準備ということがどの程度必要かということが国際的にいろいろ論議をされた結果、二百四十日という猶予期間を置こうということになってこの規定が入れられたものでございます。
#38
○兒玉委員 それから、この油濁に関する賠償の条約が今国会で批准されてから発効するまではどのようになっているのか。それから発効されて、もちろん今度の会期延長がなければむずかしいと思うのですけれども、そういうことにした場合に実際に適用が行われるまでにかなりの期間があるのではないか、こういうふうに考えるわけでございますが、その間の経過の過程における被害者の救済対策、こういうものはどういうふうな法的な根拠によってされるのか、あるいは野放しなのか、この辺の関係についてお伺いしたいと思う。
#39
○犬井説明員 お答えいたします。
 今度の国会で三条約がもし承認されますと、まず五七年条約を批准することになります。五七年条約は批准書の寄託が行われましてから百八十日たってから日本について効力を生ずるということになりますので、仮に七月一日に批准書の寄託をするということになりますと、それから百八十日でございますから、ちょうど一月一日ということになるわけでございます。一方、六九年条約及び七一年条約の日本について効力を発生する日は批准書を寄託してから九十日後の日というふうに規定されております。
 わが国としましては、五七年条約がわが国について効力を生ずる日と、それから六九年、七一年条約がわが国について効力を生ずる日とを合わせる必要がございます。そうしないと国内法との関係で問題を生じますので、その日を合わせることになるかと思います。そうしますと、五七年条約を七月一日に批准した後、九十日たって六九年条約と七一年条約を批准して、それで仮に一月一日に日本について発効する日を三条約について一定するということになります。したがいまして、仮に今国会でこの条約が批准の承認が行われる、国内法が制定されるということになりました場合には、来年の初めに条約及び国内法が日本について施行されることになるというふうになるわけでございます。
#40
○兒玉委員 ちょっといま最後の方、聞きにくかったのですが、この条約の発効、来年の一月一日ですか、この間における被害が発生した場合の救済の措置はどうなるのか。
#41
○犬井説明員 それは、まだ条約もわが国について効力を生じておりませんし、それから法律も施行されていないわけでございますから、現在のとおりの状態が続くということでございます。
#42
○兒玉委員 油濁に関する質問は一応まだ後でやりますけれども、ここでちょっと時間をおかりしまして、私の持ち時間の中でございますが、地元の航空関係についてお伺いしたいと思います。
 先般局長並びに大臣にもお伺いしたわけでございますが、実は三月二十六日に県議会が、ちょうど知事選挙の最中に空港拡張の採択を行い、しかも機動隊まで動員してやった。加えまして、先般市議会においてもそういうふうな非常に無理な方法をもってやったということが言われておるわけでございますが、特にこの際、航空局長はどのような報告を受けておるのか、その点まず第一にお伺いしたいと思います。
#43
○中村(大)政府委員 三月に宮崎県議会におきまして宮崎空港拡張請願が採択されたということは、宮崎県当局から報告を受けておるわけでございます。その際に機動隊を導入するような事態が起こったということにつきましては、地元の新聞等によりましてその概略を承知いたしておるということでございます。
#44
○兒玉委員 特に今回の延長が海岸に七百メートル出すわけでしょう。いまでもこの沿岸は、例のシラスとかいう小さな魚がございますが、沿岸を相当大型のタンカーが通ると、そういうことで油による被害でかなり漁民は苦しんでいるわけですよ。これに加えまして空港の延長が海岸に出ることはさらにまた沿岸の漁業にとっては二重の被害をこうむるということで猛反対をしておるわけでございますが、並びに騒音関係も私が昭和四十八年にも、漁業関係を含めて住民の意思を十分尊重せよ、決して強行すべきでない、こういうことを強く要望しておるわけでございます。これについては当時の内村局長ですか、そういうような答弁をされておるわけですが、この際航空局長並びに大臣の御所見もひとつお伺いしまして、私の質問を終わりたいと思います。局長並びに大臣ひとつ。
#45
○中村(大)政府委員 宮崎空港の滑走路の延長につきましては、第二次五カ年計画におきましてそのような方針を決定いたしておるわけでございます。したがいまして、その線に沿って現在基礎的な自然条件調査をやっておる段階でございます。将来、環境対策あるいは漁業補償その他は今後実施段階を控えまして万全の措置を講じて行うわけでございまして、これを無理押しをするというふうなことは毛頭考えておりません。
#46
○木村国務大臣 もとよりこういう問題は地元の了解と協力がなければできないことでございます。そこで、地元のいわゆる民意を代表する機関として県、市の当局、市議会、県議会、そういうところに相談をいたしておるわけでございまして、一応そういう地元の代表の機関のところで了承を得ますれば形の上では地元の十分な了解を得たということになりますけれども、しかし個々の地元の人についてもいろいろ反対とかあるいは御不満の点もあろうかと思いますので、そういう点はさらに県、市当局とも十分連絡をとりながら了解を得てやるように努力をいたしたいと思っております。
#47
○兒玉委員 終わります。
#48
○木部委員長 梅田勝君。
#49
○梅田委員 油濁損害賠償保障法案につきまして質問いたします。
 御承知のように本法案は油による汚染に関する二つの国際条約の実施に伴う国内法の整備という形で提案されたのでありますが、近年海洋汚染の重大性が叫ばれているだけに重要なものと考えております。
 ところで、この経過を見てみますと、国際条約ができましてもこれがなかなか批准され発効しない、あるいは発効しましても批准の方は進んでいない、こういうことがございます。一九六九年の油の汚染損害についての民事責任に関する国際条約、いわゆる責任条約と言われるものは十四カ国が批准し、すでに一九七〇年六月十九日発効しております。わが国はこれからでございます。一九七一年の油による汚染損害の補償のための国際基金の設立に関する国際条約の方は、批准したのはまだ五カ国で発効しておりません。わが国はこの条約に賛成し、七二年に署名もしている条約でありますが、批准の方がおくれております。これは、御承知のとおりだと思いますが、この責任はわが国もあるのではないか、かように思います。
 それから、一九五七年の海上航行船舶の所有者の責任の制限に関する国際条約は、二十六カ国の批准で一九六八年五月三十一日に発効いたしております。わが国は、この条約には賛成していない、今日までほってきたわけであります。今度の国会にようやく承認の提案が出てきたわけでありますが、こういうことにつきまして、次の諸点を御質問申し上げます。
 こういうことは、船主や海運業者に対する特別の保護が必要だ、こういう考えが根底にあるのではないか。被害者の救済よりもそちらの方が優先する、こういう考え方が一貫してあったのではなかろうかというように思うのでありますが、批准や承認がおくれるという理由についてお伺いしたいわけであります。
 それから、二つ目の問題は海洋汚染防止法の関係国際条約でありますが、たとえば一九五四年の油による海水の汚濁の防止に関する国際条約、これの一九七一年改正条約は、まだ批准国が少なく、発効しておりません。これらは六九年改正条約が未発効だから急ぐ必要はないのだ、こういう考え方が根底にあるのではないかと思いますが、日本がまだ批准していないというのは、私は遺憾に思います。もっと積極的に推進してはどうか。
 それから、三つ目は一九七三年の船舶による汚染の防止のための国際条約、これが政府間海事協議機関、IMCOによって採択されておりますが、これはいつごろ批准するつもりなのか。外務省の方も来ておられますので、運輸省の方と両方あわせて御答弁願いたいと思います。
#50
○薗村政府委員 先生いまお話ございました一番初めのいわゆる一九五七年条約、海上航行船舶の所有者の責任の制限に関する国際条約、いわゆる船主責任制限条約につきましては、すでに世界各国が金額制限主義に移行するという立場から批准を終えて、この条約自身が発効しているというのはお話のとおりでございます。
 わが国も、一九五七年当時いろいろこの条約に対する態度を考えたわけでありますけれども、一番この問題の大きいところは、今回別途法務委員会で御審議を仰いでいるように、商法を改正して委付主義を金額主義に改めるということの準備をする必要がありました。もちろんその責任金額が船主の経済とどういうふうに関係があるだろうということも、それは問題点の一つであることは私も否定はいたしませんけれども、決して船主を擁護するためにそういった条約案に対する態度であるとか、その後の批准状況をいたずらに延引するということではありませんで、やはり一番大きな問題は委付主義を金額主義に改める商法の改正の手続を日本の法体系の中で準備をしていくということに年月の経過がかなり要ったということでございます。
 すでに運輸省としても四十二年の十月には法務省にこの条約を批准して国内法化するために手続をとっていただきたいというお願いをしているところでございます。わが方としては、やはり主要海運国の動きにおくれないように、国内法化をして金額責任主義に移行していくという時期を考えておったということでございます。
 法務省の方でもそれを受けて、法制審議会等の手続を鋭意急いでいただいて、商法の改正という手続がかなり法制的に困難ないろいろな問題点があったにもかかわらず間に合わしていただいたというのが現在の進行状況でございます。
 特に、その後先生御指摘のような第二番目の条約、油による汚染損害についての民事責任に関する国際条約、いわゆる民事責任条約というものが四十四年にできましたし、さらに四十六年には三つ目の条約である油による汚染損害の補償のための国際基金の設立に関する国際条約、いわゆる国際基金条約というものが採択されて、これについては、先ほどお話がございましたように、わが国も最初から積極的に参加しようという立場でございましたので、そういう二条約を取り急いで批准する、そして国内法化するという上からも、一番根っこに日にちがかかっておった一九五七年条約の国内法化という問題を商法の改正というかっこうで取り上げなければいかぬということで、いろいろな年月の経過を追うて今国会でお願いするということになったわけです。
 特に第二番目の条約については、先ほどお話がございましたが、まだ実は発効していないのですが、来る六月十九日になると世界的に発効するということになるので、これはわが方も一日もおくれることはできないということで、今国会にこの法案をお願いをして、一日も早く通過をさせていただきたいということなんでございます。特に二番目の条約が六月十九日に発効するようになりました世界的な動きというのは、イギリスとフランスが日本と同じようにやはり主要な海運国として批准の手続を進めておったのですが、ちょっとイギリスとフランスに先を越されたかっこうになって、日本もぜひひとつ今国会でこの法案を通していただきたいということでございます。
#51
○内田政府委員 海洋汚染防止条約の一九七一年条約でございますけれども、その改正の中身は、先生御承知のように、一番大きい点は、衝突、座礁等によるタンカーの流出油を制限するという目的から、タンカーの構造の改善事項でございます。この七一年改正条約というのはまだ発効しておりませんけれども、その後、この七一年条約の改正の中身を含めまして、七三年条約に引き続きすべて包含されておるわけでございまして、私どもの方といたしましてはこの七三年の条約の批准とあわせて検討中という状況でございます。
 なお、七一年条約の内容に盛られておりますタンクの構造改善については、私どもは国内的にはすでに七一年からその中身は実施しておるわけでございます。
#52
○中村(四)政府委員 お尋ねの一九七三年の海洋汚染防止条約についてでございますが、この七三年条約におきましては、一つは油による汚染の防止につきまして排出基準につきましては現行六九年条約と比較しまして大きな違いはございませんが、排出基準を担保するための設備、構造の規制というものの整備を図っておるわけであります。そのほか有害液体物質につきましてこれの汚染防止、それからバラ積みの、包装積みの有害物質による汚染の防止、そのほか廃棄物、汚水につきましても汚染防止の規定を設けておるわけでございます。これらの規制につきまして排出基準を担保するための備えつけるべき装置、設備、こういったもの、それから排出方法に関する基準につきましてその細目が政府間海事協議機関、IMCOでございますが、IMCOでこれを決める、こういう形に相なっております。
 そこでIMCOにおきましては昨年海洋環境保護委員会というものを設置いたしまして、わが国もこれに積極的に参加して検討を行っているところでございます。したがいまして、こういった七三年条約を実行に移す場合にこの実効性を担保できる装置なり基準の細目の詰めということをこういう国際的な場において急ぎまして、そして私どもとしましても国内法の整備を図るとともにこの条約の批准ということに向かって進みたい、かように考えておる次第でございます。
#53
○梅田委員 外務省。
#54
○市岡説明員 御説明申し上げます。
 海の汚染、特に油濁等に関しましてはこれを国際的な基準に合わせてできるだけ海の汚れ、汚染を防止するという趣旨においては私どもといたしましても全く同感するところでございまして、こういうような国際協力にはできる限り早急に参加してまいりたいというのが基本的な考え方でございます。もっともこれらの条約をわが国が当事国になり締結するというにつきましては、条約の当事国になった以上、その条約を誠実に履行するというだけの国内的な体制をきちっと固めることも必要であろうかと考えまして、そのあたりのことにつきまして関係省庁にもお願いをし、また御協力も申し上げまして、その詰めを行った上で、でき次第条約の批准について国会の承認を求めるということにいたしたい、かように考えておるわけであります。
#55
○梅田委員 運輸省がこの条約の批准を手がけるために国内法の整備をやるという作業が、いま聞いておりましてもやはり遅いと思うのですね。それから技術的な対応をしなければならぬということでいろいろの研究をなさるという点におきましても国際的な動向に順応してない、非常に立ちおくれがあるんじゃないか、私はそのように思います。
 たとえば技術開発の現状と予算についてそれでは伺っていきたいのでありますが、いま言われました海洋環境保護委員会、IMCOの機関でございますが、年二回技術情報の交換が行われておる。そこでいろいろ技術開発を推進していると言われておりますが、日本がそこへ参加をして実際にどういう具体的な仕事をしているのか。たとえば聞きますと大型タンカーのバラスト水の処理、大量のそういったものを油水分離装置によってきれいにしていくという研究が進められておるというように聞くのでありますが、この方の予算や体制というのは一体どうなっているのか。五十年度完成を目標にして昭和四十七年ごろより基礎研究を始めて順次実験も重ねておるというように聞いておるのですが、一体これにどれぐらいの予算とどのぐらいの体制でやっているのかちょっとお伺いしたいと思います。
#56
○内田政府委員 具体的な御指摘がございましたのですが、油水分離装置の開発につきましては四十七年度から開発を進めておりますが、それは主として取りまとめの仕事でございまして、予算的には四十八年から五十年までで約百五十万円でございます。
 それから一方民間のこれらの開発の具体的なハードの研究といたしまして科学技術試験研究補助金を、研究総額は一千八百万円に対しまして四百十八万円交付しております。
 それから日本舶用機器開発協会で大容量の油水分離装置の開発を進めておりますが、これは日本船舶振興会による補助金を交付しておるわけでございますが、それが研究総額が二億六千六百万、それに対します補助金が二億八百九十五万円でございます。
#57
○梅田委員 国が直接やっているのは非常に少ないと思うのですね。だからなかなかそういう研究開発が進まないという現状だと思うのですね。大体環境保全関係の予算につきまして運輸省の関係の状況を見ましても非常に予算が少ないというように思います。
 大体環境庁の方の総合的な国立機関公害防止等試験研究費というのをこの間拝見をいたしますと二十八億四千六百万円、その中で瀬戸内海の沿岸海域の汚染防止に関する総合研究というのをやっておられますが、この中に船舶からの軽質油等排出処理対策の研究というのが運輸省の船舶技術研究所において行われておる。これは昭和四十九年度は八百十万円しかないのですね。これは五十年度幾らになっていますか。
#58
○内田政府委員 四十九年、五十年度合わせまして二千四百万円であります。
#59
○梅田委員 それはいま私が申し上げました研究だけについてですか。
#60
○内田政府委員 船舶からの軽質油等の排水で、その分だけでございます。四十九年度が八百十万円、五十年度が千五百九十万円でございます。
#61
○梅田委員 去年よりもことしは少しふやしたようでありますが、非常に少ないと思うのですね。ですから、せっかく国際的な条約ができて、その技術もそれに対応していこうということになりましても、なかなかついていけない。だから批准もおくれてくるというように思うのでありますが、大臣いかがですか、そういう点で海運国として日本は非常に大きな位置を持っているわけでありますけれども、国としての対応が少し弱いように思うのでありますが、この点を強化していくという点についての御所見を承りたいと思います。
#62
○木村国務大臣 問題の非常に重要であることは私も十分認識をしておりますけれども、国の全体の予算の中で金額的な裏づけを考えていかなければならないわけでございますので、まあしかし、四十九年度に比べまして大体倍額、全体の予算が二、三割しかふえない中で倍額ふやしたということは、この問題の重要性を運輸省としては相当認識しておると、こういうふうにひとつ受け取ってもらいたいと思うわけでございますが、今後とも努力をするつもりでございます。
#63
○梅田委員 海上保安庁の調査によりますと、昭和四十九年海洋汚染件数は二千三百六十六件、そのうち船舶からの油による汚染件数は千百七十一件、比率にいたしますと四九・五%、約半分に達しております。また海上での廃油や廃棄物の不法投棄、排出事件もふえております。昭和四十四年が百三十一件、昭和四十五年には二百十六件、四十六年には五百八十八件、四十七年には八百三件、四十八年には千六十四件に激増いたしております。この不法投棄、排出事件ですね、このうち油によるものは、昭和四十四年からできれば昨年まで、どういうように歴年変化したかお聞かせ願いたいと思います。
#64
○寺井政府委員 油によります海洋汚染件数は、四十四年二百七十三件でございました。四十四年、四十五年、四十六年、四十七年、四十八年、四十九年まで順を追って申し上げますと、四十五年三百四十九件、四十六年千三百件、四十七年千九百八十三件、四十八年二千六十件、四十九年千九百八十五件というふうに推移いたしております。
#65
○梅田委員 このように、油による汚染というものが非常に激増しておるということは、数字によりましても非常に明白でございます。そこで、外国から入ってくる船舶による汚染件数、これも同じように発生がふえておるのじゃないかと思いますが、先日、五月十四日付の海上保安庁の「海洋汚染の現状」という資料によりますと、日本船舶に対して外国船舶の汚染発生率が非常に高いというのが一目でわかります。入港数が、日本船舶は百三万八百二十七隻、汚染発生数が八百七十七件、比率が〇・〇八五%、外国船舶は、四万六千三十八隻入港に対して汚染発生数が三百三十四件、比率が〇・七二五%、外国船による汚染発生率は日本船舶の約八・五倍である、こういうように出ておりますが、外国船が入港の数としては日本船と比べて圧倒的に少ないわけでありますけれども、発生率が非常に高い。どこの船がこういうことをやっておるのか、ちょっと船籍別におっしゃっていただけませんか。
#66
○寺井政府委員 ただいま御指摘のように、外国船の汚染発生件数の率が高いということは事実でありまして、四十九年の実績によりまして主な国籍別の船を申し上げますと、パナマ、リベリア、ギリシャ、イギリス、韓国といった順序になっておりまして、パナマとリベリアで大体五〇%弱の比率になっております。
#67
○梅田委員 これは恐らく便宜置籍船ですね。この便宜置籍船が、本国会におきましてもいろいろ議論になってきたわけでありますけれども、とにかく外国からやってきて日本の海を汚していくという点については厳重な取り締まりをやらなければならぬと思いますが、こういう事犯に対してどのような処置を保安庁はとっておられますか。
#68
○寺井政府委員 外国船がこうした油を流す場合に二つのケースがございますが、領海内で発生いたしましたものにつきましては、これは海洋汚染防止法あるいは港則法等によりまして所定の手続をとりまして起訴をするもの、あるいは注意をするもの等の処置を講じております。また、領海外で発生いたしましたものにつきましては、旗国主義の原則が国際的にございますので、まず写真を撮り、船名を確認し、証拠が明白であるというものにつきましてはこれをその旗国に通知をいたしまして、船籍国の処分にゆだねておるという状態でございます。
#69
○梅田委員 それで、実際にわが国の領域に関するもので事件にしたものはどのぐらいありますか。
#70
○寺井政府委員 四十七年、四十八年、四十九年とございますけれども、四十九年の例で申しますと、三百六十六汚染が発生したわけでございますが、そのうち二百四十五件検挙いたしております。三百六十六と二百四十五、差がございますが、この中で、さらに旗国に通報いたしましたのが十八件、それから海難、不可抗力、原因不明、軽微、こうしたものがございますので、三百六十六との間に多少差がございますが、二百四十五件検挙しておると、こういうことです。
#71
○梅田委員 これは今後も厳重に取り締まりをやっていただきたいと思います。
 海上保安庁が発表いたしました「海上保安の現況」というのがございます。その中で廃油ボールの問題が書かれております。これは非常に海洋を汚染する重大な一つの問題になってきておりますが、四十六年六月から一年間、これら廃油ボールによる汚染の実態を把握するために全国的に第一回廃油ボール調査を実施されております。それから四十八年の六月から十一月までにも第二回目の廃油ボール調査を行っておられます。それによりますと、「沖繩、奄美大島等の南西諸島では、ほぼ全島しょにわたり漂着しているほか、南九州から伊豆諸島、三陸沿岸に至る太平洋岸への漂着は相変らず多く、また九州西岸、日本海沿岸、北海道南岸にも漂着していることが確認された。」このようにございます。こうなりますと、これはもう日本の国土の沿岸の至るところがそういう問題で汚染されておるということを意味すると思いますが、これは非常に重大な問題だと思います。そして、「依然として外航タンカー等がタンククリーニング水、スラッジ等の油性混合物を海洋に投棄していることが考えられるので、海上保安庁は、南西諸島海域への航空機による監視を強化するとともに、廃油類が多量に発生する入渠直前のタンカーを対象としたタンククリーニング水、スラッジ等の処理状況、全国の廃油処理施設の利用状況のは握に努め、廃油類が適正に処理されているかどうかを追跡調査している。」このように述べております。非常に重大なことだと思うのでありますが、その追跡調査をして実際にどのような実効が上がっているのか、そこのところをお聞かせ願いたいと思うのです。
#72
○寺井政府委員 ただいま先生御指摘のように、廃油ボールの主たる発生源と申しますか、これは大体東シナ海の辺で外航タンカーがタンククリーニングを行ったその油とまじった水を出すことによって、これが黒潮に乗って本邦沿岸に漂着をしているというのが一つの大きな原因であります。また船舶が修理のためにドックに入る前にタンクを掃除いたしますが、この関係の洗浄をした水が流される、この二つが原因と考えられております。現在の国際条約では五十海里以遠で油を出すことについて特段の制限がございませんので、出すこと自体が違反であるとしてすぐ私の方で措置はできないわけでございますが、常時こうした監視を続けております。
 それから入渠前のタンククリーニングにつきましては、その処理をした処理業者あるいは入渠しました際の状態等を検査いたしまして、どこで水を捨ててきたか、あるいは持ってきたかといったようなことをいろいろ追跡調査をしておるわけでございますが、なかなか現実の問題といたしましてどれだけの油が海洋投棄されたかというようなことを証明するのが非常に困難でございます。しかしながら、そうした行為を通じまして船舶の乗組員あるいは運航者に対して海洋汚染をしないようにという指導を図っておりますので、ただいま先生が御質問になりましたように、どの程度の効果が上がっているかという点につきましては、明確に数字をもってお答えはできないわけでございますが、先ほども申し述べましたように、この近年海洋汚染の発生件数と申しますか、こうしたものが大体頭打ちになっております。入港船舶その他が増加いたしておりますのにこうした頭打ちの状態になっておるということは、その間にやはり効果が上がっておるというふうに考えております。
#73
○梅田委員 この廃油ボールの調査に対して、予算は何ぼついておるのですか。五十年度、聞くところによると六百二十三万七千円というように聞いておるのですが、そんなものですか。
#74
○寺井政府委員 六百五十万ほどついております。これは実は海洋汚染ということが世界的に問題になっておりまして、世界の海洋の汚染状態を調べようということで、政府間の海洋汚濁委員会というものがございますが、これが全世界的に五十年から二カ年間汚染状態を調査するという計画を持っておりまして、わが国もこれに参加をいたしまして、この国際的に統一されました規格で、決められた海域でこの状態を調査するということになっております。ただいま申し上げました金額は、この調査のために使用する金額でございます。
#75
○梅田委員 この運輸省の予算で、海上公害監視取り締まり体制の整備というのがありますね。これは昨年は三億三千二百万円、ことしは三億四百万円、減っておるんですがね。いまの予算も六百五十万弱ですね、少ないと思うんですがね。それで実際に海上保安庁としては十分に機能できるのかどうか、問題点がないのかどうか、その点ちょっと……。
#76
○寺井政府委員 予算の総額、海洋汚染防止関係ではいろいろなものが入っておるわけでございまして、減りました原因と申しますか、先生御指摘の数字がちょっとあれでございますが、昨年度に比べまして八十六万五千円ほど実は増加しております。まあ横ばいという状態でございますが、この中で私どもが本年度予算で最も力を入れましたのは公害監視と申しますか、監視取り締まりのための小さな船、あるいは検査のための機械でございますが、機器類の整備に力を入れまして、本年度の予算で大体わが方の出先の管区にしかるべき検査室あるいは検査用の機器が整備されるという状態になっておりますので、一応汚染防止の関係の体制というものがとられておるというふうに考えております。
#77
○梅田委員 まあ私が聞いておっても非常に不十分だと思いますけれども、これは今後も改善のために力を入れていただきたいと思います。社会主義国なんかいろいろ情報を見てみますと、そういう大量に出しておるクリーニング水なんか相当厳重にやっておる。やはり廃油処理施設というものを十分に整備をして、それを守らぬのは厳重に処罰をするということにいかないと、実際これはなくなってこないんじゃないかと思いますが、改善に努めていただきたいと思います。
 次に本法案の救済範囲の問題についてちょっとお伺いいたします。先ほど来議論されておりますが、要するにこれはタンカーによる油の流出ないしは排出事件ですね、これしか対象にしてない。しかしながら海が汚染されるのはタンカーからの油だけじゃない、非常に多方面から海が汚されております。陸上からの油による汚染件数は、昭和四十八年は九十七件、四十九年は百六件とふえております。この中には先般の水島の大量重油流出事件も含まれておると思うのでありますが、とにかく最近は陸上からの油の汚染被害というものが大きな問題になってきております。ところがこの法律案は、国際条約との関係で救済の対象にしていない。それから原因者不明の場合も損害補償がございません。原因者不明の被害も保安庁の調査によりますと、四十九年度は七百八件、全体の汚染の千九百八十五件中の三五・七%に達しておる。ところが、これも相手がはっきりしている話の民事責任法だということで対象になっていない。名称を見ますと、油濁損害賠償保障法、こうなっているわけですね。素人が見ますと、油濁に関するものは全部やってくれるんかいなという印象を受けるわけですね。だから国内法の整備に当たっては、国際条約よりも上回ってやろうと思えばやれると思うのでありますが、その点、二つの問題についてどのような検討をされたのかお伺いしたいと思います。
#78
○薗村政府委員 先ほど先生からもお話しいただいたように、一九五七年の国際条約から始まりまして、一連の海事条約の流れ、最初の一般船の被害者救済から始まって、六九年の油濁の被害者救済、それから七一年のそれを補足するための国際基金の設立のための条約という一般的な海事条約の流れをくんでわれわれ一日も早く被害者救済に万全を期したいということでやってきたわけでございます。したがって、私ども考えられるのはあくまでも船の損害ということであって、一連の国際条約の動きを見ていただいても、私どもも陸上の被害者救済までちょっと取り入れるというようなことはできませんし、それから原因者不明については、これは先ほどからも出てきています過失責任主義を無過失責任主義に改めていくというような一連の不法行為の考え方も、あくまでも原因がはっきりしている不法行為の責任をだれがどういうような方法でとるかということでありまして、原因がはっきりしていないものについて救済制度を全部取り入れるということは、これを見ていただいてもわかるように、三条約と二つの法律案だけでもかなり大変な作業でありますので、とても法制的にそこまで取り入れることができなかったということであります。
 ただ、原因者不明の油濁損害については、これは水産庁の方で漁業の油濁被害に対して非常に御心配になって、ここ数年間の被害額を補償できるように、特に関係者と申しまして、国と都道府県、水産団体それから海運界などの入った関連業界が応分の負担をして、救済金、防除費、漁場清掃費等に充てるためにみんなで金を出し合おうということで、すでに本年の三月三日に財団法人漁場油濁被害救済基金というものを設立して、別途に、暫定的ではありますけれども、水産庁の手でそういう機構をお考えになっているという動きがございます。これは法律ではないわけですけれども。したがって、私どもはあくまでも一連の国際条約の動きを追うて伝統的な海事条約の範囲で考えるということであるし、それから過失責任にかわって無過失の責任をとっていくという不法行為の範囲内で考えていくということで、今度の三条約の批准と二法案の御審議をお願いしているということでございます。
 それで、名前がどうも悪いというおしかりなんでございますけれども、どうも国際条約自体も先ほど先生も読み上げられましたように、油による汚染損害についての民事責任に関する国際条約というのが六九年条約の名前であるし、七一年の条約の方も油による汚染損害の補償のための国際基金の設立に関する国際条約ということになっていまして、それを国内法化するとどうしても油による汚染損害というのを油濁損害という国内法の表現に直さなければならなかったということであります。したがって、本法の第二条の第六号において、油濁損害とはタンカーによる油の損害をいうということを定義させてもらって国内法の名前に取り入れている、しかし内容は先生おっしゃるとおりタンカーから出た油濁損害だ、こういうことであります。
#79
○梅田委員 三菱石油の大量重油流出事件のときに海洋汚染防止法の問題が議論になって、あれは船舶と海上施設しか処罰の対象になってない、陸上からのやつは予想しなかったということで悔いを後に残したわけですね。そういう点を考えると国内法の整備に当たっては、やはりああいう事件もあったことですから、陸上からの問題についても何らかの保障対策というものを法制的に考える必要があるのじゃないか、かように思うわけですよ。何しろ航空騒音の問題については乗客から迷惑料まで取るというような時代ですからね。これのよい悪いは議論がありますがね。そこまでやろうと思えばやっている運輸省ですから、やはり被害者をいかに救済するかという立場から連帯責任を負わせるとか、いろいろなことを考えるべきではなかろうかと思うのです。
 そこで、ちょっと時間がありませんので先に進みますが、被害者の対象をどう考えているか。新潟におけるジュリアナ号の事故の場合、この参考資料によりますと鮮魚商被害まで補償していますね。百万円。ここでちょっとお伺いしたいのでありますが、この事件の際にどれだけの要求が出て、そしてここに書いてある金額で妥結したわけでありますが、その差はどんなものであったのか、それからここに書いてある以外に要求は出ていなかったのかどうか、お伺いしたいと思います。
#80
○薗村政府委員 ジュリアナ号の事故の例で申しますと、油濁防除費用については海上保安庁と新潟県、離岸堤の復旧費用について同じく新潟県、海岸清掃費用については同じく新潟県、新潟市からも油濁防除費用、それから漁業組合から漁業被害、それから鮮魚商、魚屋さんの方から関連の被害というようなことで請求金額としては五億六千三百万円請求されたようでありますが、それに対して支払い金額は二億七千三百万円ということで、それぞれ合意ができて示談が成立したというふうに承知しております。
#81
○梅田委員 とにかく、こういう補償をどのようにするかというときには、必ず被害者は、いま言いましたように、たとえ合意に達して協定いたしましても、金額面では泣かされているというのが実情だと思うのですね。
 そこで、三菱石油の問題につきまして、現在どうなっているか。これは漁連側は約二百億円要求した。そして去る五月七日には香川、徳島、兵庫の三県漁連と児島漁連を除く岡山県漁連は、総額百三十四億七千五百万円で一応流出重油による漁業被害等の補償協定に調印をいたしました。しかし、水島に最も近い、被害を受けたと言われている児島漁連の方は未解決でございます。漁連側の要求は三十五億三千万円、これに対して三石の回答は五月の十五日にやっておりますが、八億円の越年資金に対してプラスアルファが一億四千六百万円ということで、解決を見ておりません。具体的にどこに問題があるのか、ちょっとお伺いしたいと思います。
#82
○山内説明員 水島関係の児島湾漁連の補償の問題につきましては、ただいま先生の御指摘のとおりでございます。問題の最大の点は、後遺症の問題が非常に両方で食い違っておる、こういうことでございます。
 ちなみに申し上げますと、総額三十五億円強を児島湾漁連が要求しておりますが、その内訳といたしましては、十八億円が漁業被害関係である、残りの十六億円が第二次被害、こういう問題の要求を出しておるわけでございます。主としてこの問題が補償交渉における難点ではないか、こういうふうに考えておるわけでございます。四県漁連等につきましては、後遺症の問題につきましては今後国の調査等を待ちまして、後遺症が出た場合においては協議する、こういう話になっておりますが、児島湾漁連と三菱との交渉過程におきましては、恐らくこの問題がネックになっているのではないか、こう思うわけでございます。
 水産庁といたしましては、当事者間で鋭意補償交渉を行って、早期に解決されることを望んでいるわけでございます。特に要請があればあっせんの労をとっていきたい、こう考えておるわけでございます。
#83
○梅田委員 大臣が参議院の方に行かれますので質問いたしますが、このように、あれだけ重大な事故が起こって、そして大社会問題になりましたにもかかわらず、三石はいまだに児島漁連に対しては誠意ある解決を示していない、こういう点で国としてもああいう問題については厳重な監督をする責任があるわけでありますから、どういう方向で解決させようとしているのか、御決意のほどをお伺いしたいと思います。
#84
○木村国務大臣 水島の事故につきましては、逐次解決はしておりますけれども、いまだに児島漁連の関係が解決していないということは、非常に残念に思うわけでございますが、いま水産庁から説明をいたしましたような現段階に至っておるわけでございます。
 こういう事故に対する補償関係でございますから、それぞれ言い分もございましょうし、また、客観的に見て公正な解決ということも必要であろうと思います。そのためには、それぞれの言い分にもいろいろ理由もございましょうし、相互がそれを理解して合意点に達するのには時間のかかる問題もあろうかと思うわけでございますが、政府といたしましても、こういう事故が事故だけに、残りました未解決の問題の決着が少しでも早くつくように促進方につきましては政府側としてできる限りのことはしたい、かように思っております。きょうの段階ではまだ解決しておりませんが、大分何回かもういろいろ交渉しておるようでございますので、いつまでも延び延びになるということはないと思いますが、その辺はよく見てまいりたいと考えます。
#85
○梅田委員 きのうも漁連の会長さんに実情を聞いたのですけれども、非常に怒っておられたですよ。だから、この問題につきまして誠意ある解決を示すように、国としても努力をしていただきたいと思います。
 そこでさらに、あの大量の油の流出によって最近瀬戸内海の赤潮問題がクローズアップされてきております。中国、四国地区国立九大学共同研究グループによる瀬戸内海環境改善の基礎的研究、これの公開議演会が最近行われておりますが、瀬戸内での赤潮大発生の警告が出ておる。そうしたら、けさの新聞によりますと「赤潮やはり大発生警告ズバリ」というのが出ているわけですね。これに対して水産庁はどのような対策を講じておられるのか、最後にお伺いしたいと思います。
#86
○山内説明員 先生御指摘のように、五月二十一日から二十二日の間に行われました高松市における中国、四国地区国立九大学の共同研究グループの会議におきまして、瀬戸内海においては肉眼で見えない重油の油膜が広がっており、これによってことしの夏赤潮の大発生が見込まれるおそれがある、こういう発表がなされたとおりでございます。
 三菱石油関係の大量流出油による水産生物への影響につきましては、現在調査中でございます。水島流出油事故が原因となって赤潮が大発生するのか、あるいはしたのか、こういう問題につきましては、現在のところ定説がございませんで、いまのところ何とも即断しがたい状況ではないか、こう判断しておるわけでございます。水産庁といたしましても、政府といたしましても、水島流出油につきましては、保安庁等の御協力を得まして、海岸の標着油の除去その他油除去等につきましては万全の措置を講じてきたところでございます。
 これ以外に、赤潮対策といたしましては、水産庁としては従来から赤潮被害を最大限に防止するためにさまざまの予算を組んでいるわけでございます。一例を申し上げますと、赤潮情報交換事業とか、あるいは赤潮の被害防止施設設置事業、こういう補助を実施するとともに、もし事故が起きた場合には養殖共済におきましてその損害をてん補する、こういう方法をとっているところでございます。
#87
○梅田委員 水産庁の南西海区水産研究所というのがございますね。そこがことしの一月二十五日から二月の四日までの十一日間、瀬戸内の五十八地点で海水やどろやプランクトンの精密な調査をやられた、これが新聞に出ておりましたけれども、これによりましても非常に小さなオイルボールが非常にたくさん海水の中にある。これらによって赤潮の原因が突きとめられていっているわけでありますけれども、この大量の重油流出事件との因果関係というのはきわめてはっきりしていると思うのですね。だから私は、本法案はあくまでも船舶からの流出あるいは排出だけの対象になっておりますけれども、国としてはああいう陸上の施設からの大量の油流出事件に対して抜本的な対策を講ずる必要がある、かように思います。そういう点で時間もございませんので、きょうはこれで質問を終わりますけれども、国としてさらに対策を練り直して、被害住民が困惑をすることのないように、至急に被害があれば救済できるような体制、制度というものをつくっていただくように要望いたしまして私の質問を終わります。
#88
○木部委員長 午後一時二十分から再開することとし、この際、暫時休憩いたします。
    午後零時三十二分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時二十八分開議
#89
○佐藤(守)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。松本忠助君。
#90
○松本(忠)委員 大臣に伺いたいわけでありますが、議題になっております油濁損害賠償保障法、これが、御提案の理由の説明でもわかるわけでございますが、一日も早く成立を期すべきであるというふうな大臣の御意見ですし、また運輸省当局としても当然そうであろうと思うわけでありますが、もうすでに会期末ぎりぎりという段階でありまして、この法案が果たして日の目を見るか見ないかもわからぬわけであります。衆議院が終わり、参議院の方に回るという、そしてまたさらに条約の批准というような問題、また外務委員会におきましても本法のもとになります条約についての討議もまだ進められていないという、こういう段階であります。この法案が大臣の意図されるように今国会で成立を見るということはもう不可能ではないかと私は思うわけでありますが、この点について大臣はどのように対処されるおつもりなのか。
#91
○木村国務大臣 二十五日までが通常国会の会期になっておるわけでございます。私たちの関係法案はもちろんですが、いろいろ法案が残されておることも事実でございます。どういうふうに国会においてそれを御処理いただきますか、会期の問題等、国会でお決めになることでございますので、それに従うわけでございますが、われわれ当局といたしましては、とにかく与えられた国会の会期中にできる限りの御審議をいただきまして、そして成立の運びに参りますようにわれわれとしては最後まで努力をいたしたい、かように思っておりますので、どうぞひとつよろしくお願い申し上げます。
#92
○松本(忠)委員 大臣の熱意はわかるわけですけれども、物理的にもう不可能だと思うのでありますけれども、全くこの法案が日の目を見るのはことしのうちにはちょっと不可能ではないかと私は思いますが、どうですか、この法案をどうしても必要とされるそのお気持ちはわかりますけれども、われわれとしても決してこの法案を温めておこうとかそういう気持ちは万々ないわけでありますけれども、御熱意のほどはよくわかりますけれども、とうてい私どもは不可能と思うわけでありますが、この条約が批准になるまでもかなりの期間を要するわけでございますし、御熱意のほどはよくわかりますが、その御熱意に十分その目的が達成できるかということになると、私どもは非常に不安に思うわけでありますが、この点重ねて、大臣はどう思われるのか。
#93
○木村国務大臣 何とかこの国会中に成立させていただきたいというひたすらの熱意を持ってやりますので、よろしくどうぞ。
#94
○松本(忠)委員 わかりました。とにかく今国会はもうあした、あさってと二日間しかございません。物理的に不可能であるところを熱意を持ってやろうというお気持ちだけはよくわかっております。
 海運局長に伺うわけでありますが、第六条の責任限度額のことについて伺いたいわけであります。船舶のトン数の大小によって船舶所有者の責任限度額が違うわけでございます。流出した油の量によらない、こういう点についても私どももちょっと疑問に思うわけでございます。大型タンカーが必ず大量の油を流出するとは限らないと思いますし、造船技術も向上いたしましたし、また隔壁等も非常に細かくなって大事に至らないような機構が完備されているように思います。
 たとえば過去の事例につきましても、昭和四十八年五月三日の伊良湖水道における日聖丸の事故でございますが、これは総トン数が七百九十一トン、流出した重油がC重油で九百キロリットル、このときの漁業被害が一億六千万円、防除の費用は三億円、合計四億六千万円。一方四十六年の十一月三十日の新潟のジュリアナ号事件、これは一万一千六百八十四トンの船舶で、原油が七千二百キロリットル流出しました。漁業の被害が二億五百万円、それから防除の費用が六千八百五十万円ということでございます。こちらの方はそういうことになりますと二億七千三百五十万円、こういうふうなことになるわけでございます。こうなりますと、そのジュリアナ号の方はトン数は確かに多いが、そしてまた流出した油の量も多いが、被害の金額というか補償の金額は少ない。一方日聖丸の方はわずかに七百九十一トンで九百キロリットルしか流出していないにもかかわらず四億六千万円、こういうふうになっているわけでございます。
 こうした点を考えましたときに、流出した油の量によらないで総トン数によるという点、非常に私も疑問に思うわけでございます。また船の大きさ、それとまた積める量というもの、これはまあ相関の関係があるわけでございますけれども、船舶のトン数によって責任を制限する、こういうことでございます。そうなりますと、この損害は私どもは、船でなくて船に積んでいる積み荷によって油濁の損害は生じるわけでありますから、被害額に関係のないところの積み荷によって油濁事故が生ずるわけでございますし、被害額に関係の深い、実際に運ばれた積み荷のトン数を基準にすべきではないか、こう思うわけであります。総括して言うならば、いわゆる責任限度額というものは積める量によって決められたものであって、運んだ量、積んだ量、そういうものによらない、また流出した油の量にもよらないという、この点についてお答えをいただきたいと思う。
#95
○薗村政府委員 先生御指摘のような点、確かにございます。ただ今度のこの油濁の六九年条約というのは実は御承知のとおり五七年の一般船の損害賠償責任をどう制限するかという国際的な合意から始まっておるのでございます。御承知のとおり一九五七年条約では船のトン数をベースにした金額責任主義を世界じゅうの合意事項にして国際条約をつくりまして、その船舶のトン当たりの責任制限金額を二倍にしたものが一九六九年条約のいわゆる油濁関係の民事責任条約の基礎になっているということでございます。
 国際的にやはり損害が出たときに、特に油につきましては一番確実な把握しやすい数量でその責任額を決めていくべきではないかということで、やはり船のトン数を基礎にするのが最も確実な把握しやすい数量であるということで賠償のベースにトン数がなったということでございます。
 それから一般に油濁の事故が起こりましたときに何キロリットル流れたということがよく言われるのでございますけれども、実は事故の最中にあるいは事故後に確実にその流出の油の量を把握するということは困難であるという事情が過去の事故の例でもございます。また船がそのときに満杯状況であったかどうかというような偶然の事由によって賠償額が左右されるということのないように、いわゆる一番はっきりしているトン数で損害額を決めるのが国際的に合意された事項であるということでございます。
#96
○松本(忠)委員 国際的にこの条約の基礎がそうなっているから日本もそれに従うのだということになればそれまでの話なんでありますけれども、やはりそういうところに対する詰めはなされたものですか。
#97
○薗村政府委員 恐らく、私五七年の条約にさかのぼって議事録などをよく勉強しておりませんのでその当時どこまで行われたかということを明確にお答えできませんけれども、当然その問題もあったと思います。また、あるいは先生御指摘のような観点から、今後油濁の条約についてそういう論議が行われるかもしれないということも考えております。
#98
○松本(忠)委員 要するに、私はその辺が国際条約でこう決められているのだからそれでそいつをうのみにするということであってはならないと思いますので、その辺の条約をつくるときに、どの程度までの詰めができたかということをやはり聞いておきたいわけでありますが、まあ海運局長が会議録を見た範囲においてはまだ明確でないというようなお話でありますので、この問題についてはさらに国際条約で決められているのだからそれをうのみにするのだということでなくて、やはり私が申し上げたような点についての意見もあるということは、ひとつ記憶にとどめておいていただきたいと思うわけでございます。
 それから次の問題でありますが、十五条の船舶の所有者の悪意によって損害が生じたとき、ただし書きにございますように「船舶所有者の悪意によってその損害が生じたときは、この限りでない。」ということは、要するに損害請求をしても払わない、こういうことと理解していいですか。
#99
○薗村政府委員 船舶所有者の悪意によって事故が起こされたときに、保険者に対して被害者は直接請求することはできないということに御理解をいただいて結構であります。
#100
○松本(忠)委員 悪意でやりましたという人はないだろうと私は思うのでありますけれども、その辺で船舶の所有者が、いろいろの紛争が起こるのじゃないかというような気がするのです。要するに、被害を受けるのは第三者でありますね。その第三者に、そっちの方が悪意によって損害が生じたときには、要するに船舶所有者の悪意によって損害が生じたときには払わないのだ。しかし、いわゆる被害を受けた第三者の方は、やはりその損害を何とか補償してもらわなければならない、こういうふうに思いますが、その点はどうですか。
#101
○薗村政府委員 その事件が船舶所有者の悪意で起こされたものであるかどうかということは、恐らく悪意の立証の責任は保険会社側にあって、保険会社と船舶所有者の間で裁判の争いになって残ると思います。ただ、一般にこの損害賠償の裏づけは、御承知のとおり保険契約というものがなされておりますけれども、一般に保険契約について、その保険料を払っている人が悪意でそういった保険事故を起こしたときに保険会社は支払わないということになっているのは、火災保険その他の例でも見られるように、そのとおりでございますので、保険会社と船舶所有者の間にそういう裁判の問題が残ると思います。その場合に、この被害者は、当然保険会社には請求できませんけれども、その悪意をもって起こした船舶の所有者には請求できる。その場合に、船舶の所有者がもし資力その他の点で支払いができないというときには、今度できる国際基金によって被害者が補償を受けられるということになるのでございます。
#102
○松本(忠)委員 悪意であるかどうかというような問題について、いわゆる裁判にでも持ち込まれた場合、それが相当の長期間にわたる、こういった場合に、その長期間第三者が、被害を受けた者が待っているわけにもいかないわけでありますし、当然それは船舶の所有者の方に請求できるというわけでありますけれども、えてしてそういう紛争などが起こった場合には、どうしてもその処理が行われる、悪意であるかどうかということの認定がされるまで、裁判で決定がされるまでそういうものが払われないというのが通常でございますので、そうなりますと、被害者、いわゆる善意の第三者の被害者というものが非常に気の毒な状態になると思いますが、この点についての保障はありませんか。
#103
○薗村政府委員 裁判が長くかかってそういった面で被害者に賠償がおそくなるというような点があるのは、私どもも存じておりますが、やはりそういった裁判関係をできるだけ早くしていただくというよりちょっと解決の、制度上の解決の方法はないと思います。
#104
○松本(忠)委員 大臣、こういう場合にえてして日本の、日本の船とは限らぬわけでありますけれども、なかなかこれは自分の方で悪意でございますと素直に認める人はないと思うわけであります。そうした場合に、いわゆる被害を受けた第三者が非常に困っている、であるにもかかわらずなかなかそれが決定しないというと払われないのは、いままでも通例でございます。最終的には国際基金の方で払うのだというけれども、相当の長い期間そういうものが払われないときに、もし日本の船がそういうことであったときには、大臣としてそれに対する救済の処置をお考えになりますか。
#105
○木村国務大臣 最終的には国際基金の方で担保をするわけでございますが、それまでに非常な期間がかかりまして被害者の救済に実際上非常な支障を来すというふうな場合に、さらば政府がどういうふうにそれに入って救済をするかということは、いろいろ法律問題もあると思います。一遍ひとつ研究をさしていただきたいと思います。
#106
○松本(忠)委員 私は不満足に思います。善意の漁民あるいは小さな漁業をやって生活をしている人たちに大きな被害を及ぼしたというような場合もそれが決まるまでは払わないということであっては、まことにそれは残念だと思いますので、そういう面についてひとつ何か考える必要があるのではないかと思うわけです。
 それから、次の問題でございますが、海運局長に伺いますが、三国間貿易のために就航しているわが国の船舶に対しても本法が適用されるかどうかという問題が一つ。もう一つは、第三国間に運航している船舶が事故を起こして油濁損害賠償の対象となった場合に、どのような形で損害が補てんされるのか。特に、条約を締結していない第三国間において問題が生じると思うわけでございます。この点についてお答えをいただきたい。
#107
○薗村政府委員 日本のタンカーが外国で油濁損害を引き起こしたときの法律関係はどうなるのかということを三つばかりの場合に分けて考えなければいかぬと思うのです。
 一番初めに、損害が生じた相手国が責任条約の六九年条約と、それから七一年の基金条約の両方の締約国の領域でそういう損害が生じた場合には、被害国の被害者が船舶の所有者に対して賠償請求の訴えをいたします。それから、同じように今度は被害者が国際基金に対して、一定の場合に、補償をしてくださいということの請求をいたします。それからもう一つは、今度は船舶所有者が国際基金に対して、自分が被害者に払った金額のうちの一部の金額について補てんをしてくれと言って請求をいたします。こういう三つの場合に、いずれも日本の船が日本で被害を起こした場合と同様に、賠償の請求なり補償の請求なり補てんの請求なりが、全部やれるということになります。ただ、そのときの根拠法規は、その外国の法律によります。おそらく、御審議を願っているこれと同じような法律が条約によってその締約国にできておりますから、その根拠法規はその外国の法律でございます。これが一番目の例です。
 その次に、今度は被害国が責任条約、六九年条約だけの締約国であって七一年の基金条約の締約国ではない場合というのが出てきます。この場合には、被害者が船舶所有者に対する賠償の請求と、それから、船舶所有者が国際基金に対する補てんの請求とはできますけれども、被害者の国は基金条約に入っておりませんから、被害者が船舶所有者から十分な賠償を受けられないという場合であって国際基金から補償を受けるということはできないことになります。
 それから第三番目には、損害を起こした外国が責任条約の締約国でもなく基金条約の締約国でもないという場合がございますが、この場合の法律関係は現行制度と全く同じでありまして、相手国が基金条約にも責任条約にも入っておりませんから、ここでわれわれがこれから決めていただくような責任制限というような問題だとかそれから無過失の責任というような問題は起こりませんし、それから国際基金にその国から補償を求めるというような請求も行われませんので、現在の法律関係とは全く同じですということでございます。
#108
○松本(忠)委員 この点私、局長の言われたのをもう一遍聞きたいですね。ちょっとどうも理解に苦しむところがありますよ。
#109
○薗村政府委員 実は、私どももその間の状況が非常にややこしいものですから、日本船が日本の国で事故を起こした場合、それから外国へ行って事故を起こしたときに、先ほど申しました三つのケースがあります。それに分けてどういう関係になるか。それから外国船が日本に来たときにどうなるかという場合もありますので、これ表にして実は研究しましたので、これを一遍差し上げます。御質問が終わりましたらすぐ差し上げます。
#110
○松本(忠)委員 その資料は、私ひとついただいて十分検討してみますよ。どうも局長の説明非常にわかりにくいというふうに私は思うのです。それは私の質問が終わって後、石田君がやる場合にも、あるいはその面についてもう一遍問いただしてみたいと思います。
 それからその問題に関連するわけですけれども、本法が施行までの期間、これは大臣がさっき非常に熱意を示されましたけれども、物理的に不可能だと私は思うわけですが、仮にこれが来国会なり何なりで完全に施行されるような、衆参両院を通って条約の批准が終わったというようなことになる。そこまでには相当の期間があるわけであります。そこで、この保障契約の証明書の発行が本法施行までの期間におくれる、こういうことができるのではないかと思うのです。仮にこれが決まったとしても、この保障契約の証明書というものの発行がスムーズにいけばいいのです。ですけれども、その間にもう条約の締約国に船が入っていくというような場合も起こるのじゃないかと思うのです。この場合に支障が起きないか、こういうことを考えるわけですが、それはどうでしょうか。仮にスムーズにこれが成立をし、そしてまた国際条約の方にも加盟した。しかし加盟したけれども、保障契約の証明書というものの発行がスムーズにいかない場合、こういったことが起きないとは言えないと思いますので、その点についての疑問がありますので……。
#111
○薗村政府委員 御指摘のような問題が確かにございます。一九六九年条約は六月十九日に世界的に発効するということに最近世界の情勢が固まりました。そこで、今国会にこの法律案を通していただいて準備にかかりましても、批准の手続を終えましてからその六カ月後でなければ発効しないということになりますので、今国会で通していただいても半年間くらいブランクができるということがございます。その間は、日本政府として責任のある保険に掛けた証明書を発行することができないという事態になります。そこで日本のタンカーの大部分は実はペルシャ湾と日本の間を運航しておりますので、ペルシャ湾の方はいきなりこの条約との関係、締約国という関係は出てこない現在の情勢でございますけれども、仮に締約国である国に入港する場合に、責任のある証明書を持ってこなければ入港に支障を来すという事態が考えられます。その場合には入港先のそれぞれの締約国の証明書を持っておれば、これは基本的には問題ないことでございます。ただ、その入港先の締約国の証明書でなくて、ほかの締約国の証明書で共通的に二国ないし三国にまたがってそういう証明書を利用していけないかということを、現在われわれ研究しております。各国の国内法がまだ未整備でございますので、そういったよその締約国の証明書をその入港先の締約国の政府がどういうふうに取り扱うかということをもうちょっと私どもいま現に調査しているところですが、また現在民間ベースでもそういった便法がとれないかどうかということを各国に働きかけておりますので、われわれとしてはそれをできるだけバックアップするような方向で、なるべく便宜な方法によれるように協力をしていきたいと考えておるところでございます。
#112
○松本(忠)委員 証明書を前もってとっておくというような方向は考えられないものでしょう、これは。要するに、どこで積み荷しようかということがわからない船は、いわゆるヨーロッパの方に向かっていた、電報が入った、どこどこへ向かえということになってイギリスへ向かう、こういった場合、イギリスの方では加盟していれば、その国の発行の証明書でもいいわけでありますか、その点は。
#113
○薗村政府委員 イギリスへ入港するときにそのイギリスの証明書を持っておれば、これはもう問題ないわけです。先生おっしゃるように、船が行き先を勝手に決めるわけではありませんから、やはりイギリスに行くということが事前に予期されているような船は、イギリスの入港先の証明をとっておればいいということになるわけです。ただイギリスの証明書によって、あるいはよその国もイギリスが締約国であるということで、その証明書をノルウェーへ来てもいいということでノルウェー政府が認めてくれるだろうかどうか。もし認めてくれないとすれば、イギリスへ行くときにはイギリスの証明書をとらなければいかぬ、ノルウェーは別途にまたノルウェー行きのために、ノルウェーの証明書をとっておかなければいかぬ。こういうことになりますので、その辺をどう調整していくかということをいま民間で調べているし、われわれもできるだけ簡便な方法はないかということをバックアップしていきたいということでございます。
#114
○松本(忠)委員 要するに船が日本を出発するときには、そういうものは全く持たずに出ていくというようなことになるんじゃないか。最初からそういったものを何通も何通も保有していて出ていくなら問題ないわけでありますけれども、果たしてそれだけのものが証明書を持たないで出ていったというような場合に、さまざまなそういった行き先によって問題が起きるんじゃなかろうか。こういう点を心配するものでありますから、その点伺ったわけでありますが、この点についてはよりいい方法を考えていただきたい、こう思うわけでございます。
 それから保障契約の証明書の有効期間といいますか、こういったものは条約では決まってないと思うわけでありますけれども、この期間というものはどれくらい見ておられるのか、この点はどうでしょう。
#115
○薗村政府委員 裏づけになっておりますPI保険というのは、大体保険契約は一年で更新していくということになっておりますので、証明書の有効期間も一年ということにいたしたいと思っております。したがって、やはり先生先ほどもお話しございましたように、事前にどこの国へ行くぞということを予定されている国に、一年間有効のものを事前に用意していくということであります。
#116
○松本(忠)委員 ですから、その有効期間がじゃ一年だと仮にしますね。もう十一カ月も経過してしまっている、あと一カ月しか残ってない、こういった場合に日本を出ていくときに、果たしてその一カ月以内に向こうに行って積んで、そうして帰ってこられる状態ならばいいんですよ。問題は、そうでないときにはどうなるのですか。
#117
○薗村政府委員 これはやはり切れ目がないように、たとえば日本で発行いたしますとすると、十一カ月目に出て十三カ月日に帰ってくるというときには、有効期間が切れる前に更新して有効な証明書を発行してやる、そういう証明書を持って航海をするということに考えていきたいと思います。
    〔佐藤(守)委員長代理退席、委員長着席〕
#118
○松本(忠)委員 十七条五項によって手数料の納付というものが義務づけられておりますが、この徴収の基準というものはどれぐらいに考えているものでしょうか、一枚幾らとかそういった点について。
#119
○薗村政府委員 実は何千円ということをいまのところまだはっきり考えておりません。何かイギリスの方では三十ポンド、二万円ということも聞いておりますけれども、わが国内としてはほかの証明書類の発行手数料の基準なんかございますでしょうから、その点も見てコストに見合ったもので決めていきたい。ただいまのところ明確な金額は決めておりません。
#120
○松本(忠)委員 いずれそういったものは省令で決められると思いますけれども、やはり日本の実情に合わせて決めていただきたい、こう思います。
 それから、保障契約が締結されていないタンカーについて本邦内の港への入港はできないわけですね。これは十三条二項にも、外国船が入れないことになっていますね。そこで、実際問題として、それを持っているか持っていないかということをチェックする方法は具体的にできるのかというふうに私は思うわけです。本当に持っていますか、持っていますよと言って入ってきてしまった、係留してしまった、ところが持ってなかった、こういう場合ができたのでは困りますので、その点について、海上保安庁がそういったタンカーに停船を命じて書類を持っているか持ってないか港外でそれをチェックできるかと言うと、実際問題として保安庁としてもできないだろうと思うのですね。そうすると入ってきてしまうことの方の可能性が多いと思うのです。入ってきてしまった、係留してしまった。これには係留の施設を使わせない、こうなっておりますけれども、実際問題として、入ってきてしまってそれから後に持つていないことがわかる、こうなったときどうなんですか。
#121
○薗村政府委員 この条約関係については世界じゅうの関心を集めておりますので、日本がこの条約に加盟をした、必要な国内法下の手続を終わったというようなことは、外国のタンカーの場合、代理店、荷主等を通じて当然わかると思いますし、したがいまして、日本へ無保険のままで来るということはほとんどないと思います。しかし、先生おっしゃるとおり、万一そうした船があったらどうするかということについては、いまお話ございました条文に、入港をさせてはならぬし、出港を認めてはならぬし、係留施設を使用させてはならない、こういうことになっているわけでございます。しかし現実にはおっしゃるとおりで、港外で大きなタンカーをとめてというようなことは安全上もまた問題があろうと思われます。具体的にどういう方法でやるかということについては私ども、海上保安庁とよく御相談をしていきたいと思っております。ただ、この法律の仕組みとしては、船舶所有者と運航者を体刑及び罰金で処分をするということになっておりますので、もし仮に入ってきてそういう罰則を受けたというようなことがありましたら二度と日本へ来るというようなことはないと思いますし、そういう面の罰則の規定でも無保険のタンカーが入ってくることを取り締まりできると思っております。
#122
○松本(忠)委員 罰則の規定をつけるのは結構なんですけれども、法を破ってのこのこ入ってきてしまった。入ってくる前にチェックするのならわかるわけですけれども、チェックの方法が具体的にあるかと私が聞くと、これは恐らく海上保安庁だってそんなことはできませんと言うだろうと思うのですよ。そうなってくると、のこのこ入ってきてしまった。要するに港に入港しそしてまた出港もさせ――本邦内の港を出港し、または係留施設を使用してはならないと言うが、使用させてからは一体どうなんですか。それは罰則を規定すればそれでいいのか、保険がかかっていなくてもそれでいいのか、こういうことになるのですがね。その辺を私はもう少し詰めておかないと、そういう無法な者が出たときにそれに対抗する方法を考えておかなければいけないので、やはりそれは事前のチェックでなければならない、これが一番理想だと思うのですけれども、実際問題としてできない。できないことをこうやって書いておいてもしようがないんじゃないかという気がしますが、どうですか。
#123
○薗村政府委員 実は国際的にこういうことで取り締まろうという合意ができておりますので、やはりこういう表現を使わせていただいたわけですが、実際としては、船が入ってきたときにその証明書の提示を求めて海上保安庁に取り締まっていただくという方法しかないと私は思います。
#124
○松本(忠)委員 保安庁長官、できますか。
#125
○寺井政府委員 この取り締まり方法につきましては私ども、海運局ともさらにいろいろ御相談をして決めたいと思っておりますが、一つの例といたしまして、こういう油のタンカーが入ってきます外国船の場合、代理店その他がございます。入港予定というのがわかりますので、代理店を通じましてこうした保険に入って証明書を持っているかどうかということをまず確認する必要があろうかと考えております。できましたらそういう写しが送られてきて、それを見た上で入港許可をするということが一番間違いない方法だ。もしそれがない船が入ってくる場合これをどうするかというのが実は技術的になかなかむずかしいところがございまして、停船を命じて入港を拒否することができるかできないかいろいろ問題がございます。しかし、そうすることによって違反船といいますか持たないで入ってくる船はなくなるであろう。先生御指摘のように入って着いてしまった、見つけたというケースは当初はございましても、実施を始めていくうちにそういう船はなくなっていくだろうと考えております。
#126
○松本(忠)委員 長官、代理店を通じて確認するというのは私もいい方法だと思うのです。代理店も確かに持っております。こういうことになりました、それでオーケーだ。しかし現物は見ていないわけでしょう。代理店を通じて確認できるだけでしょう。しかし実際には持っていなかったというようなことになったら、それはどうなんですか。一杯食わされたということで済みますか。
#127
○寺井政府委員 確かに代理店を通じまして確認をする、持っていますというのが一番簡単な方法です。私どもはその写しを取りつけたいというふうにいま内々考えております。仮にそうでありましても、現実に入ってきたら持っていなかったというケースはあり得ることでもあります。一杯食わされたでは済まないのでございまして、もし着いた場合には法律に基づいて厳重に処分をしていくということになろうかと思います。
#128
○松本(忠)委員 私はそういう無法者があることを歓迎するわけじゃございませんけれども、そうした事態のときにただいわゆる罰則を適用すればそれでいいのだということになった。しかし、その前に、そういう無法者によって事故が起きてくるということになるとこれまた大問題だと思いますので申し上げたわけなんです。
 次の問題は、マラッカ、シンガポール海峡等における海難事故が非常に多いということは御承知のとおりです。全日本海員組合の調査資料によりましても特にここ数年は多いわけでございまして、七二年には七件、七三年に八件、七四年には三件、ことしに入って四月までにすでに三件、こうなっております。特に七二年のごときは七件中日本国籍のものが五隻も占めている。七三年も八件中に三隻、七四年の三件中には二件、これは日本船籍のものでございます。日本の船がマラッカ、シンガポール海峡を非常に通る。しかもここにおける事故は日本の船籍のものが非常に多いということは明白な事実でございます。ことしに入ってからも祥和丸、土佐丸とまことに多く起こっておるわけでございますが、こうした海難、特に油の流出事故、御承知のような祥和丸の場合を例にとりましても、あの海域、条約締約国でない国の領域、いま申し上げたようなマラッカ海峡に接するところのシンガポール、マレーシア、インドネシア、こういった三国においてわが国のタンカーが原油を流出した場合、この法は適用されない、こうなると私は思います。こんな場内に船舶所有者が補償する、当然のことだと思うわけでありますけれども、どういうふうな方法でこれをやるのか、それから、特にマラッカ海峡における事故が多く発生しておりますので、賠償保障法の効力が生じないところの事故について補償方法を明確にしておくべきではないか。要するに、そういうところについては船舶所有者が別の保険をつけるということになればそれで解決するといえばそれまでの話なのでありますけれども、その辺のところ明確にすべきではないかと思いますが、どうでしょうか。
#129
○薗村政府委員 さしあたってマラッカ海峡に面しておりますような三国がこの条約の締約国にならないのではないかということは予想される事態でございます。したがって、あの海域に起こりますところの日本船の油濁損害の賠償責任というものは、いままでと同じように、この法律で定めておるような無過失の責任が生ずることでもなくて、また国際基金に対して補償、補てんを求めるという制度も働かないままで、現在の法律制度がそのままで行われるということになります。その基礎はやはりPI保険の保険制度が裏づけになっておるわけですが、PI保険は、この法律が動き出しまして、締約国と非締約国の区別ができても世界じゆうに通用し得るようになっておりますので、保険的な裏づけは現在のPI保険のそのままでいいということでございます。しかし、率直に申しまして、やはりこういう制度が国際的に打ち立てられまして、だんだんその加盟国も多くなるわけですから、関係のところもそういう方向でお考えになるのではないかということでございますが、他国のことでございますので、そういう関係のことを私どもの方から簡単に申し上げるわけにはいきませんということでございます。
#130
○松本(忠)委員 いまPI保険の話が出てまいりましたけれども、現行のPI保険あるいはTOVALOPあるいはCRISTAL、こういったものの関係がどのようになるのかを改めてここで伺っておきたいと思うわけです。
 御承知のように、TOVALOPにつきましては一九六九年の十月六日から事業が始められまして、協定の有効期間が五年、これが二年延びて一九七六年の十月六日までになっているわけですね。それ以前に本法が施行されればいいわけですけれども、これもまだ未確定のものです。さらに一九六九年の油濁責任条約の国内批准が完了して、さらにまたこの七一年の国際基金条約についても加盟し、批准された暁には、このTOVALOP及びCRISTAL、こういったものが補完的な役割りを果たすことがなくなると私は思います。こうなった場合に、現行のPI保険、これはどういうふうになるかということを改めてお聞きしておきたいわけであります。
#131
○薗村政府委員 おっしゃるとおり、現在はPI保険と称する船主の自主的な相互保険制度と、それからタンカーの船主が自主的な協定を結んでおるTOVALOPと、それから油会社が自主的な協定を結んでおるところのCRISTALという三本立てになっておって、PIの機能をTOVALOPが補完をする、さらにCRISTALが補完をするという状態になっておるのは、いまお話をいただいたとおりでございます。おそらくこういう条約が、六九年条約あわせて七一年条約が世界的に動いてまいりますと、TOVALOPはPIと一本になってしまうだろうと思われます。それからCRISTALはおそらく国際基金の中に包含されてしまうと思います。ただ、過渡的には、国際基金条約が、先ほどもお話ございましたように、世界各国全部一遍に締約国になるというような状態にはすぐには進めませんので、あるいは基金の国際的な条約によるところの補償制度と、それから民間の自主的な協定であるCRISTALとが、ある時期経過的に二本立てに残るかもしれないということは予想されます。それはCRISTALの中でのいろいろな論議で今後決まっていくことだと思っております。
#132
○松本(忠)委員 CRISTALが全くその役目を終わって解散するというような時期が来たときには、どんな形でそれをやられることになるのですか。
#133
○薗村政府委員 いまお話がございました、具体的に解散がどういうかっこうで行われるかというのは、私どももちょっといまよく承知しておりませんけれども、民間の協定でございますので、それから具体的にはファンドができたらもうCRISTALはやめだということが一応合意されておりますけれども、おそらくはいまのように非締約国と締約国という領域が分かれてくる、ある程度存続していかなければいかぬということだろうと思うので、私いま明確に解散手続がどうであるかということはお答えできない、おそらくその中で相談をして決めていくことだと思いますけれども、当初の拠出金などは、そのとき解散によってもう一遍分けて持って帰ろうということになりますでしょうし、それから年々の拠出金というのは、おそらく被害の額に応じてそのつど集めておるという現状でありましょうから、それは分割してもとの人に返納するというようなことは行われないのではないかという感じでおります。
#134
○松本(忠)委員 それから保険料率ですね、これがどの程度になるかということ、それからまた原油の輸送コストにこれが若干は響くのではなかろうかと思います。大した響きはないとしましても、若干響く、そういったものが日本円に換算してどれくらいになるかということですね。
 それから、輸送のコストに関連があれば、当然のこと製品の価格にも影響を生ずるというふうに思うわけでございますけれども、これの影響はごく小さいものだと思いますけれども、どれくらいを予想されておりますか。
#135
○薗村政府委員 強制保険の保険料は、やはり現在のPI保険の保険料とほとんど違わないものになるだろうと思っております。現在の保険料が総コストに占める割合は一%程度でございます。大して高いものではございません。
 それから拠出金の方でございますが、基金に対する拠出金は、これは年々集めますのは、事故の発生の事情に応じて集めますので、いまわれわれが試算できますのは、当初の拠出金ということで、一番初めの元金みたいなものを集めるということで、それの試算をしてみますと一トン当たり一円程度でございますので、これもまた非常に少ない金額、原油の価格に比べると〇・〇一%程度にしかならない、大してコストに響いたり価格に影響を及ぼしたりするということではないと思っております。
#136
○松本(忠)委員 料率には大きな影響はないということは結構でございました。
 それから保安庁長官に伺いたいわけでありますけれども、海洋汚染の現状については、先ほど梅田委員からもいろいろとお話がございました。年々汚染が全般的に及んでいるということもわかるわけでございますが、その最大の原因は何だと言えば、当然船舶からタンカーから排出されるところのバラストとかビルジ、廃油、こういうものが原因であろうと思うわけでございます。そこで、海上保安庁の予算の問題なども出たようでございますけれども、とにかく海上保安庁としましても全力を挙げてあの広い海に活動しているわけで、その監視にも限界点があると私は思います。そうなってくれば、要は船舶業者あるいはまた船の側、こういったモラルの問題ではないか。要するに、だれも見ていないから適当に流してしまえ、こういったことでやられたのでは、全く世界の海が油だらけになってしまうわけでございます。こういったような点を考えましたときに、これから海上保安庁としてこの現在の現況から将来を予測して、どうやったらよろしいか、この点をひとつ保安庁としてのお考えを聞かせていただきたいと思います。
#137
○寺井政府委員 ただいま先生御指摘のように、この汚染防止につきましては二つの面があろうかと存じます。
 まず第一には、厳重に取り締まり、監視を実施するという面でございまして、これにつきましては、当庁といたしましては、巡視船艇、航空機あるいはこれに要する要員、汚染度をはかる分析測定器といったものを整備いたしまして、この体制をますます強化していかなければならないというふうに思う次第でございますが、御指摘のように取り締まるだけでは効果が上がりません。やはり運航者が十分汚染を防止するという認識に立って行動していただくということが先決というふうに考えますので、第二の面といたしましては、やはり海洋汚染防止の意識の高揚といいますか、こうした気持ちの徹底ということが必要となるわけでございまして、現在まで海上保安庁といたしましては年に十カ所程度、十回前後の海洋汚染防止講習会といったものを毎年開催いたしまして、海洋汚染防止思想の普及に努めております。また、業界を通じまして、こうした防止に関する具体的な注意あるいは対策等につきまして指導をいたしております。また、個々の船に臨検をいたしますが、この機会にもこうした汚染防止、特に不注意によりますバルブの操作の誤り等が油を流す原因になっておるケースがかなり多うございますので、そういった面で現場で具体的な指導を行っております。また、一般的に海洋汚染防止のモニターと言いますか、これは漁業関係者、海事関係者にお願いをいたしまして、全国で約六百五十名ほどお願いいたしておりますが、こうしたモニターを委嘱いたしまして海洋汚染の発見あるいは通報をしていただくというようなことを依頼いたしております。また、たとえば海の旬間あるいは環境週間といったような機会をもとらえまして、全国的な海洋汚染防止のPRを行っております。
 要しまするに、海をきれいにするという意識が国民の一人一人に徹底することがやはり基本的な問題であろうと考えておりますので、そういった面での努力も今後ともさらに続けていく必要があろうかと考えております。
#138
○松本(忠)委員 では大臣、いま保安庁長官からお話がありましたが、確かに長官が言われるように、いろいろな面で一生懸命きれいな海をつくろうといって努力していることはわかるわけですけれども、取り締まりの現場にいる人たちの話を聞いてみると、要するに、こういう違法に対し業界の感覚が麻痺している、こういう意見が多いのですね。それはもっといわゆる海洋汚染防止法の罰則、これを強化すべきではないか、故意でも六カ月の懲役または二十万円以下の罰金、こういう点を考えますと、アメリカあたりから比べると非常に安いといいますか、軽いといいますか、そういう点が考えられるので、もっとびしっとした取り締まりをすべきではないか、こういう意見を取り締まりの現場の、海上保安庁の現場の人たちの意見として言われているわけです。まあ刑罰がすべてではないと思いますけれども、もう少し船舶の運航停止というようないわゆる行政処分を含めた罰則の強化をする必要があるのじゃないかというふうに私は思うのです。この問題はもちろん法務省の管轄でございますので、運輸大臣に御答弁を要求する方が無理かもしれませんけれども、国務大臣としての考えから、ひとつこの面についてどのようにお考えになるか、お答えをいただきたい。
#139
○木村国務大臣 海洋汚染防止につきましては、何といいましても船舶運航の責任者が最大の注意力をもって航行をすることが最終的な、そして最大の担保になると私は思うわけでございます。そういう意味では、その方面に対する徹底した指導なり教育なりあるいは国際的な視野においての取り決めなり、いろいろなことをやることが必要でございますし、現在もやっておるわけでございますが、一たびこういった海洋汚染を来したときに、これを予防する意味も含めまして、制裁というものがあるわけでございますが、現在はわが国では、いまお話しのように、懲役で六カ月、罰金で二十万円ということになっております。これが軽いか重いか、その判断はそのときどきの海洋汚染の実態に即して判断すべき問題であろうと思います。
 最近タンカー事故が相次いで起こりまして、汚染の事故も多いというふうな背景を考えますときに、あるいはこの六カ月なり二十万円というものが、水質汚濁あるいは大気汚染と、公害に対する制裁としては大体同じになっておりますが、それが同じであるということが、海洋汚染の場合には軽過ぎやせぬかという判断もあろうかと思います。したがって、これらの点につきましては、実態を見ながら、いやしくもこういう刑事罰の改正でございますので、慎重にやらなければいけないと思うわけでございますが、まあまあいまの状況で六ヵ月という懲役でかなり、懲役ですから、予防的効果はあるのではないかと私は考えておるわけでございます。
 それから、行政罰の点でございますが、行政罰は行政秩序の違反に対して科するということが根本であろうかと思いますので、刑事罰が非常に軽いからそれにあわせて行政罰を加えたらということも、これは法務当局等の見解も聞いてみなければならないと思っておるわけでございますが、要は現行の六カ月の懲役という刑事罰が軽いために海洋汚染がやまぬのかどうかという問題に帰結するだろうと思います。いまのところは私たちは、現在海洋汚染を来して実際六カ月の懲役を本当に科せられておるかどうかという実態もよく見きわめてみなければいけないと思っております。御意見は貴重な御意見として十分拝聴させていただきます。
#140
○松本(忠)委員 私はいまの大臣のお話はわかるのでありますけれども、そういうものを現場で保安庁が発見したとき、やはり船舶の運航停止というようなことをぎちっとやった方がみせしめにいいのじゃないか、こういうふうに思うのです。そういうところから私は申し上げたわけでありますけれども、この点についてはひとつ十分検討してもらいたいと思います。
 それから、全然別な問題でございますが、船舶局長に伺います。
 四十八年の十一月に政府間海事協議機関で開きました海洋汚染防止会議におきまして、石油類の排出規制のために船体構造を変えるというような厳しい条約に仮調印していると思います。この条約につきまして、わが国の海運界、造船界に与える影響は少なくないと思うわけでございますが、海洋汚染防止の上から、これはやはり進めていって、条約を批准するというようなことまで持っていく考えがあるのかないのか、この点を伺いたい。
#141
○内田政府委員 御指摘の条約は一九七三年の海洋汚染防止条約のことだと思いますけれども、いま御質問にございました構造の改善というのは、分離バラスト方式のことでございましょうか。
#142
○松本(忠)委員 これは四十八年の十一月に海洋汚染防止会議においてそのようなことをやっておりませんか。
#143
○内田政府委員 この四十八年の会議で採択されましたいわゆる七三年の海洋汚染防止条約の中身で構造に大きく改善事項として取り入れられた問題は、一つは七万トン以上のタンカーに分離バラスト、つまり油タンクとは別に専用のバラストタンクを持つということになった条項が一つあるわけでございます。そのことだと思いますけれども、これはこの専用バラストタンク方式というのはこの条約の会議の数年前からすでにIMCO等で検討がされておられまして、わが国の国内でも業界を含めてそれ以前、数年前から検討しておりまして、そういう方向についてはすでに定着しておるわけでございます。
 それから第二点は、この会議にもわが方の関係業界がやはり参加しておるわけでございます。確かにこの専用バラストタンクを特別に持つということは船の基本設計に関係あることではございますが、いま申しましたような事情であることと、かつこの適用は新造のタンカーからでございます。したがいまして、実行も十分可能な事柄でありまして、七三年条約の批准の障害となるようなものではございません。
#144
○松本(忠)委員 それから船員局長に伺いたいことが一つございます。日本沿岸で起きたところの外国船の海難事故のうち、パナマ、リベリア、こういうところの便宜置籍船の起こした事故というものが全体の三九・一というふうな数字に上っております。この原因につきまして船員の質が低いというふうに言われておるわけで、そこから起きるんだ、そういったところからこれらの便宜置籍船、仕組み船の起こす海難事故の実態、こういうものから考えましたときに何らか措置を講ずべきではないかと思いますが、船員局長としてはどのようにお考えでございましょうか。
#145
○山上政府委員 先生御指摘のように便宜置籍船を含みました外国船による事故率というのは日本船に比べまして大きく出ております。このようないわゆる状況証拠はありましても、実はその船に対する船員の乗り組み資格等につきましては現在国際的な取り決めはございません。各国の主権に任されておりますので、したがいまして、正確に政府としてその資格につきまして劣るものであるかどうかを把握することはできないのは残念でございます。
 そこでこの対策といたしましては二つあると思います。一つはIMCOにおける国際討議によって国際協力の場でもって対処をするということでございます。もう一つは、もとよりこれはわが国の領海内だけでございますが、強制水先の適用でございます。
 まず第一のIMCOにおける検討は、これは先生も御承知かと思いますが、一九六七年の三月にあのトリー・キャニオン号の座礁事故というのがございました。この船はリベリアの籍でございます。この事故を契機といたしまして、当直士官の資格要件等につきまして統一的な国際基準を制定すべきであるという機運が高まったわけでございます。それで一九七二年になりましてこのIMCOにこれを検討するための訓練当直基準小委員会を設置をいたしました。これにはわが国はもとより便宜置籍国でありますリベリアも代表を毎回送っております。そこでこれに積極的に参加をいたしまして、前向きに国際協力の場で統一的な基準つくりをしたいということでございます。現にこの六月の九日から十三日までにかけまして第六回のこの小委員会がございます。これには担当の船舶職員課長を出席させます。
 それから第二の対策は強制水先の適用でございます。これにつきましては海上保安庁を通じて現在浦賀水道につきましては行政指導で水先人を極力外国船には乗らせるという措置を講じております。特に昨年の十一月六日の第十雄洋丸の事故以来海上保安庁の行政指導も強化をしていただきまして、その結果、外国船につきましては全体として三分の一程度、それから巨大船、危険物積載船につきましては外国船でも八〇%程度まで水先人を乗せるようになっております。しかし、その数字で見ましてもまだ全体の船、全体の外国船に水先人を乗せるという状態にはなっておりません。そこで、去る四月の三十日に運輸大臣の諮問機関であります海上安全船員教育審議会からこの強制水先の改善につきまして中間答申がありました。これの内容は特に東京湾につきましては一たんこのような事故が起こりますと第二次災害が非常に大きいということでありますので、とりあえず東京湾、浦賀水道や中ノ瀬航路を含みました東京湾の全域につきまして強制水先の適用をすべきであるということでございます。したがって、私どもといたしましては、必要な水先法の改正措置等をできるだけ早く講じていただきましてこの実現を図りたいと存じております。
 以上でございます。
#146
○松本(忠)委員 最後に、大臣に一つ伺いたい。それで終わりになります。
 近海海運の現状の抱える諸問題についてはけさも海運局長から中間報告を聞いたわけでございますが、特にその念書船と言われる船舶の実態について、これはいろいろ問題があろうと思うのでありますが、要するに、船腹の過剰を理由にして日本船主の建造を中止しながら念書のみで近海海運の秩序維持に支障を及ぼさない、そういった判断から商社に大量の輸出船の建造を許可した、この行政姿勢に私は問題があるのではないかと思いますけれども、この点について、大臣どのようにお考えであるかを最後に伺って質問を終わりたいと思います。
#147
○薗村政府委員 私どもも実は当初から十分最善の方法だと思ってやったことではございません。これは率直に申し上げさせていただきたいと思いますが、それでやはり間接的な効果をねらってやったのですが、だからいま念書船がどういうかっこうで入ってきておるか、違反の事実をまず突きとめることが大事であろうと思いますので、けさも御報告をさせていただいたように、十数港の港について過去数カ月にさかのぼって実態を把握させていただいておるので、その結果を待ちまして荷主に対してどういう協力要請ができるかということを考えさせていただきたい、そういうことで大臣にも御報告を私からさせていただきたいと思っておりますのでお願いいたしたいと思います。
#148
○木村国務大臣 いま海運局長が申し上げましたようなことで、現在近海海運の対策を中心にこの問題も調査をいたしております。この実態をよく把握いたしまして、そしてそれに対して有効な手を打っていきたい、かように考えております。
#149
○松本(忠)委員 終わります。先ほどの海運局長の第三国間の資料についてひとついただいて、十分検討してみたいと思います。
 以上で終わります。
#150
○木部委員長 河村勝君。
#151
○河村委員 初めに二、三条約とそれから法律との関連で疑問のあるところを伺います。初めに第二条の三、「油」ということについて、「原油、重油、潤滑油その他の蒸発しにくい油」と書いてあります。これは「政令で定める」というから、それで具体化されるのでありましょうが、その中で条約の方にも「重油」という言葉が使ってあるが、「重油」の定義については統一的な解釈が国際的にありますか。
#152
○薗村政府委員 これは責任条約の第一条の5によりますと、「「油」とは、原油、重油、重ディーゼル油、潤滑油、鯨油等の持続性油をいい、」ということになっております。それを国内法の表現に変えたのがこの表現なんでございます。それで重油のうち、どの程度のものを取り入れるかということについては政令で決めたいと思っておりますが、千九百五十四年の油による海水の汚濁の防止のための国際条約第一条の、重ディーゼル油とは、ディーゼル油のうちで米国の材料検査協会の標準方式によって試験したときのある程度の蒸発度のものを除いた重いものということになっておるので、それがわが方の政令で取り入れて決めていきたいと思っております。結論的に言うと、A重油の一部とB重油とC重油ということになりますが、A重油の一部は日本では生産されていないということですから、B重油とC重油ということに結果としてはなると思っております。
#153
○河村委員 そうするとA重油はこの重油の中には入らないということですか。
#154
○犬井説明員 ちょっと補足させていただきますと、条約では重油というのはフュエルオイルということでございますが、これに相当する日本の名称としてはB重油とC重油とA重油の一部重いものが入るということでございます。しかし、実際にはA重油の重いものは日本ではほとんど生産されてないというのが実情でございますので、いま局長が申し上げましたように、結果としては日本におけるB重油及びC重油が条約に言う重油に該当することになるということでございます。
#155
○河村委員 そこで、それが国際的に統一をされているかという点はどうなんですか。
#156
○犬井説明員 お答えいたします。
 いま申し上げましたようなことで、フュエルオイルというのは日本で言うA重油の重いものよりもさらに重い油に限るんだということが国際的には了解されておりますが、条約会議の席上それをどういうふうに表現するかということが問題になったときに、最終的には結局条約の上で明瞭には書かないということが結論になったというふうに聞いております。
#157
○河村委員 それから、同じくこの二条の八「一単位 純分千分の九百の金六十五・五ミリグラムの価値に相当する」これは一金フランですね。この一金フラン、これを円に換算するわけですね。その場合、同じ二千金フランとかあるいは二億一千万フランとかいいましても相場があるわけですね。この法律の方には書いてなくて、それで条約の方には、条約の五条の9、これは基金の項に書いてあるのですけれども、「基金の形成の日にその通貨がこの9に定義する単位に対して有する公定の価値」というふうに書いてあって、基金の場合には基金の形成される日の価値にしてある。現実には一体これは政令でどういうふうに定めるつもりですか。
#158
○薗村政府委員 金の価値にリンクして書いてあることは、これは表現のとおりなんです。それで、金の公定価格を使うのか、金の実勢価格を使うのか、それからIMFのSDRを使うのかということをわれわれ検討しておるところでございます。まあ簡単に実勢の市場価格ということは、もういろいろ金の相場が変わりますので、これは使えない。いまのところ私どもは、金のIMFで決まっておるところの公定価格を使ってやりたい。それがいまのところ一オンス四十二・二二ドルということになっておりますので、それによって換算してわれわれは二十四円程度の計算をして政令で決めようかと思っております。
#159
○河村委員 それで、国際的にそれぞれの国が違ったのでは、これはおかしいわけですね。昔ならばドルが金と直接リンクされて動かなかったから、だからこれはドルにしておけば問題ないけれども、いまはドル自身がフロートしているわけですから、これをどうするかという問題。だから、やはりSDRで決めるということがいまの場合は一番正しいのではないかということ。
 それからもう一つ、これはそのときどきの価値なんでしょうね、その賠償時の。その点はどうなんですか。
#160
○薗村政府委員 やはり政令で決めて、一定の期間はその価格によってやりたい、事故が発生したときそれぞれで変わるということではないようにしていきたい。したがって、いままあ大体金、ドルのフラクチュエーションをしておりますけれども、レートが過去にさかのぼって三百円であれば三百円ということで政令で決めていきたいと思いますが、これがまた非常に事情が変わって、また二百六十円でフィックスするとか三百二十円でフィックスするというような事態が来たら、そのときはまた政令で考え直さなければいかぬのじゃないかということを考えております。
#161
○河村委員 国際的に通貨が安定しているときならばそれでいいわけだ。しかしいまのように非常に世界的なインフレ状態が続いておるとき、これからどういうふうに動いていくかというのが非常にわからないときですね。そうなると同じ責任制限額といっても、被害者の方はもらい分がえらく違うわけだ。だから、いまは一ドル大体三百円、ドルを相手にすること自身がおかしいのだけれども、とにかくそのときの損害発生時あるいは賠償時、それに相当する価格でフロートさせる、フロートの原則をつくっておくということの方が正しいやり方ではないかと思うのですが、どうなんですか。
#162
○薗村政府委員 ただそのときどきと申しましても、また事故発生のときなのか賠償を実際実行するときなのか、いろんな基準のとり方がございますので、私どもはやはり円とドルとのレートがある程度フラクチュエーションするということはやむを得ない事情として、ある程度レートが変わったら政令で改正していく、改正したら当分の間はその価値で、一々の事故で変わるということではなくてやはり安定したその円の値段で賠償額を決めていきたいということに考えております。
#163
○河村委員 まあ長年月固定するのではなしに、変えるなら一応それでもいいとして、しかし少なくともドルにリンクされるのはおかしいでしょう。ドル自身がフロートしているものにリンクさせるというのは理屈に合わないので、リンクをさせるならSDRと円とをリンクさせるということでなければ非常におかしいと思うが、どうです。
#164
○犬井説明員 お答え申し上げます。
 確かに先生のおっしゃいますようにドルがフロートしている現状では、金からドルを経て円に換算するという方法が妥当ではないのではないかという御指摘はごもっともだと思います。ただSDRは国際通貨としてまだ十分に熟してないということもあって、現在までこの条約を批准している国では大部分の国がIMF協定による金とドルとの交換レートに従って、それを経て自国の通貨に換算しているというのが実情でございます。したがいまして、政令をどう決めるかということは今後の問題でございますが、現在のところ、他の大部分の諸国と同じようにIMF協定に基づくドルと金との換算レートを基礎にして、さらにそれから円へ換算していくという方法をとらざるを得ないのではないかというふうに考えております。
#165
○河村委員 どうも昔ながらのドルを偉いものと考えておるけれども、実際はもうドルはそんな値打ちはなくて、特にドルは、リラほどではないがドル自身が非常に不安定なものですよ、いま。それよりは日本の円の方がよっぽど偉いんで、むしろフランと円を直接リンクさせた方がいいくらいだ。だからこの点は、SDRはまだ正規に金に代用されるものではないけれども、しかしより正しい価値をあらわすことだけは間違いがないんで、これはいまここで返事しろと言っても無理でしょうから、ひとつ検討してみてください。
 それから三条の「異常な天災地変」これは条約の方では「イクセプ ショナル イネビタブル アンド イリジスタブル」「例外的、不可避的かつ不可抗力的」、これと「異常」というのじゃずいぶん、少なくとも翻訳としては違いますね。異常というのは通常に対する異常だ。片っ方は不可避であり抵抗しがたい例外的なもの、これほど違う国内法であれば事と次第によっては相当問題の起きる余地があると思うが、なぜこういう、単に異常と、アブノーマルという程度のことにしたのか、そのわけを聞きたい。
#166
○犬井説明員 お答え申し上げます。
 条約には先生がいまおっしゃいましたように「例外的、不可避的かつ不可抗力的な性質を有する自然現象によって生じたこと。」というふうに書いてございます。これを日本の法令に組み入れます場合に、どういうふうに書くかということでかなりむずかしい問題だったわけですが、最終的にはこの表現にあるような「異常な天災地変」ということで落ちついたわけです。「異常な」ということではちょっと足りないんじゃないかということでございますが「天災地変」という言葉の中にもすでに例外的、不可避的、不可抗力的だという意味が含まれていると思いますので、最終的にこういう表現で条約の趣旨が表現できるのではないか、今後この異常な天災地変により生じたということを条約のように例外的、不可避的、不可抗力的な性質を有する自然現象なんだというふうに解釈できるのではないかということで、こういうふうな表現に落ちついたわけでございます。
#167
○河村委員 常識的に言うとどういうことですか。大体どういう場合がこれに該当するのか。
#168
○犬井説明員 お答え申し上げます。
 一番典型的な例は直下地震とか、そういう場合があると思います。たとえば台風などはあらかじめ予知できるわけですから、これはここにいう「異常な天災地変」には該当しないというふうに考えられます。
#169
○河村委員 そうすると、直下地震となると、津波でも来ない限りは、海に浮かんでる間は関係がないですね。そうすると停泊中の船以外にはこの例外規定が適用になるものはない、そう考えてもよろしいのか。
#170
○犬井説明員 たとえばこんなことはそんなに考えられないわけですが、たとえば明神礁のようなことが起きるというようなことがあれば、ここに言う「異常な天災地変」に該当するということだと思います。
#171
○河村委員 じゃ、きわめて例外もまた例外中のものであるというふうに理解してよろしいわけですね。
 それから第五条ですね、この責任制限が適用にならない場合について、これはどうもよくわからないんですが、法律の場合には「自己の故意又は過失により生じたものであるとき」、条約では過失のときしか書いてないのだけれども、これは故意は余りあたりまえだから条約には書かなかったのですか、それともほかに何かわけがあるのか。
#172
○犬井説明員 英語では、先生がおっしゃるように、所有者自身の過失ということで、「アリザルト オブ ジ アクチュアル フォルト オア プリビティ オブ ジ オーナー」という表現になっております。これを日本の法令の言葉として直しますと、通常「自己の故意又は過失」というふうになっておりますので、それを踏襲したわけであります。
#173
○河村委員 故意の場合には保険掛けておっても保険会社は保険約款上払わなくていいのが通例だと思いますが、その場合当然これは責任制限にも該当しない。それでいて、さっき局長の話を聞いていると、国際基金は適用になるというように聞きましたが、それは確かであるか。それからその場合、これは被害者救済だから、そうであるならそれで結構であるけれども、同時に、賠償額の四分の一ないし五分の二を補てんをしてもらえる、これは一体適用があるのかないのか、どうなんですか。
#174
○犬井説明員 お答え申し上げます。
 船舶所有者自身の故意または過失によって事故が起きた場合でも基金は補償の責めに任じます。ただし、その場合は、船舶所有者は条約では悪意がある場合というふうに書いてありますが、船舶所有者に悪意がある場合には船舶所有者は国際基金から補てんは受けられないということになるわけでございます。
#175
○河村委員 それじゃ条文の話はそれで終わりまして、海上保安庁長官に少し伺いますが、先ほど話が出ましたが、外国船による汚染が割合から言うと大変多い。なぜ外国船が多いんですか、率から言って。
#176
○寺井政府委員 なぜ邦船より多いかという点につきましては、ちょっと明確にお答えできないのではないかと思いますが、邦船につきましては、先ほどもお答え申し上げたと思いますけれども、非常にこうした汚染防止の意識の高揚というのをやっておりますし、常時指導も行き届いておるわけでございます。したがいまして、邦船のこうした汚染事例というものがだんだん減ってまいっておりますし、また取り締まりも相当厳重にやっておりますので、原因不明なものの件数というものがこの数年多少減っております。そうしたことで、かなり徹底をいたしておりますけれども、外国船の場合は常時日本に来ておるという船もございますけれども、たまに参ります船もあるというような状態で、こうした指導が必ずしも十分徹底しかねるという面もあろうかと存じます。そうしたことで、外船の方がその入港隻数に比べますと起こす率が多いという状態になっておりますが、もちろんトータルの絶対数ははるかに少ないわけでございます。
#177
○河村委員 先ほどの説明であると、パナマとリベリア船籍のものがこの事故を起こした中の五〇%を占める、こういうことでしたね。そうすると、いわゆる便宜置籍船全部の、外国船で起こした事故件数の中で便宜置籍船が起こした事故の割合というのは何%になるのですか。
#178
○寺井政府委員 実は、まことに申しわけないのでございますが、便宜置籍船というとらえ方をいたしておりませんで、国籍別で統計が整理されております。したがいまして、便宜置籍船の数字をそのままストレートにお答えいたしかねるわけでございますが、国籍別に申し上げますと、四十九年ではパナマが八十七件、それからリベリアが五十八件、ギリシャが三十件、イギリスが二十六件、韓国が二十四件というような順序になっております。その他合わせまして、全部で三百六十六件でございますから、その他が百四十一件ございます。
#179
○河村委員 便宜置籍船別に分けるとどうせろくな質問されないからそういう分類をしなかったのであろうと邪推をするけれども、しかしどう見ても、パナマ、リベリア、ギリシャ、韓国も最近は多い、イギリスを除くと大口の犯人はまあ大体あらかた便宜置籍船だと推定してもそう間違いはない。そうですね。やはり便宜置籍船というものの船員の素質その他、そうしたものに欠陥があるというふうに見ざるを得ない、そう思いますが、いかがです。
#180
○寺井政府委員 便宜置籍船と申しますか、便宜置籍国の船舶によります汚染件数が非常に多いのは事実でございまして、これの原因を見てまいりますと、やはり器具の取り扱い上の不注意というものが圧倒的に多うございます。したがいまして、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、バルブ類の操作のふぐあいによるもの等が多うございまして、三百六十六件のうちの二百五十五件というものがそういった原因になっております。また、その次に多いのが、故意に排出したか、あるいはその容疑がある、これが六十一件程度、それから海難が十三件、それからパイプの破損といったような器具の破損によるものが二十一件というような状態でございまして、やはり取り扱いの不注意によるものが非常に多いということでございます。これはパナマ、リベリア、ギリシャといった国のみの傾向ではございませんで、全体としてやはりそういう傾向がございます。
#181
○河村委員 便宜置籍船の議論はいままでも再三されておって、これが一つのやはり問題点であることだけは間違いがありません。これは問題点だけ指摘しておきます。
 ところで、これの取り扱いですが、先ほども、便宜置籍船の場合でもPI等の保険はちゃんとかけてあるから大丈夫だというお話がありましたが、保険会社が代位できるからあるいはいいのかもしれないが、実際保険はかけてあっても、国が遠くて、それでちょっと頼りないオーナーも多いというようなことで、訴訟その他の手続上非常に不便だということはないのですか、オーナーにしてあることによって。
#182
○薗村政府委員 繰り返しになりますけれども、便宜置籍船も含めて二千トン以上のタンカーには強制保険が課せられる、それで、まずは便宜置籍船の所有者に損害賠償ということでかかっていきますけれども、また、それも会社とは別に船主事務を代行しておるところもおるだろうから、基本的に用船契約を結ぶときに保険がかかっているなということさえチェックできれば大丈夫というのがまず第一番目ですが、その次に、先生おっしゃるように保険会社の関係が出てくる。保険会社は、大体日本の場合だったらもうPI保険一本ですけれども、諸外国で言っても、ほとんどUKPIというようなところで、非常に国際的に信用のあるところ、恐らくそんなに数たくさんないと思うのです。そういうところですから、変な話ですけれども、便宜置籍船の船主がちりぢりばらばらにまかれているということではなくて、保険会社がもっとまとまってりっぱな店を張っているということは事実だろうと思います。なお、その上に、被害者が保険会社にも直接かかっていくことができますけれども、もし万一船主に賠償の資力がないというようなとき、あるいは賠償の損害額が大きくなったときには国際基金が被害者に補償することになるということで、制度としては十分今度の油濁責任の賠償制度は、便宜置籍船も含めて、よくなっているということだと思います。
#183
○河村委員 制度として穴がないことはわかるのですけれども、実際の取り扱い上不便になりはしないかということを聞きたかったわけです。
 そこで、便宜置籍船というものは悪いものだということは別にして、確かにこれはなくすわけにもいかないものですね、かなり一般的になっているならば、むしろ日本のように対象としてこのくらい便宜置籍船が多くなっておれば、むしろオペレーターをその責任の対象にしてしまった方がより合理的である。実際、船を持っているというだけで、動かしているわけではないから、責任ということになれば実際オペレーターの責任に帰属するものが、少なくとも内部関係においては結局はそうなっていくはずだ。それならば、オペレーターそのものを対象とするように日本の法律ではやることはできるのだと思うが、それは条約違反になるのかならないのか、ならないのならばそうやるべきではないのかという点についてはどう考えますか。
#184
○薗村政府委員 オペレーターが責任を持つべきかオーナーが責任を持つべきかというのは、用船形態の違いによっていろいろ出てくると思いますが、一般に海運界の常識としてオーナーが持つべきだと言われているのは、船員をオーナーが乗せているという例が多くて、それで船長以下の船員に対する指揮監督権というものは、オペレーターの場合は、この船は何の荷物を載せてどこへ行けというような営業上の指示は与えるけれども、航海上の船員、船長に対する指揮監督権というものは、やはりその配乗を実際したところのオーナーの方が影響度が多いということから、船舶所有者の責任に集中した方がいいというのが国際的な常識になっておる。その面で条約もつくられておる。したがって、この条約を国内法化するのには、やはり現状としては船舶所有者に責任を集中することがいいことだという国際的な合意の線を踏襲していきたいということでございます。
#185
○河村委員 それはそれでいいでしょう。
 海上公害事犯の取り締まりについて、もう一遍海上保安庁に戻りますが、公海上の事故件数、これはこうした汚染事件についてパーセンテージとしてどのくらいあるのですか。
#186
○寺井政府委員 四十九年に三百六十六件ございましたが、そのうち三海里以遠で起こりましたのが四十一件、三海里以内で起こりましたのが三百二十五件ということになっております。大体一割強が三海里以遠の地点で起こっております。こういう状態でございます。
#187
○河村委員 公海上で発見をした場合には、これは旗国主義で裁判管轄権はないから、当該の国、相手国に通報して処理してもらうということでありますが、一体、それは通報して処理をされてこちらに通報されたという件数というのは、実際起こった件数の何割くらいになって、実際どのような処理をされていますか。
#188
○寺井政府委員 四十九年について申し上げますと、十八件につきまして旗国に通知をいたしております。四十九年につきましてはまだやや明確ではございませんが、四十七年から四十九年までの三カ年間に三十三件の通知を行っておりまして、そのうち旗国から回答がありました件数が五件ということになっております。
#189
○河村委員 その内容はどういう処理をしたということになっているのですか。
#190
○寺井政府委員 まず例を申し上げますと、アメリカに通知いたしましたのは、回答といたしましては、油を排出したのではなくて、油膜がある海域を航行中にさび色の水を排出したものであって、一九五四年の国際条約の規定に違反していないという回答がございます。それから、ソ連の例を申し上げますと、一例では、船舶間でのディーゼル油の移送中に船員の不注意によって起こしたものである。また他の例では、荒天のため船体に損傷が生じて、積み荷のディーゼル油が漏れたものであるということで、これは条約の適用除外の規定に合致するものであるというような回答が来ております。また、ノルウェーの例を申し上げますと、バルブが完全に閉鎖されていなかったために、油が漏れたものであるが、そのバルブのロッドが損壊していたためにバルブの完全閉鎖が確認できなかったものであるから、国内法の適用除外の規定に該当しているというような回答が参っております。また、イタリアの例では、荒天のためにデッキ積みのドラムかんが破損して内部の油が漏れたものであるといったような回答が参っております。
#191
○河村委員 回答そのものは少ないけれども、回答が来たものはいずれも先進国ですね。だからこれまた便宜置籍船の場合がやはり多いはずであるけれども、一件も回答がない、そういうことですね。
#192
○寺井政府委員 リベリア等からは、まだ回答が参っておりません。
#193
○河村委員 一体日本の受ける被害、まあ潮流その他の関係でいろいろでありましょうけれども、領海は三海里、三海里外で実際影響のあるのはどのくらいの範囲までですか、日本の沿岸に影響のあるものは。
#194
○寺井政府委員 場所によって非常に違うと思われますが、まあ廃油ボールなどの調査をいたしておりますと、遠く東シナ海あたりで出しても廃油ボールになって日本沿岸に流れつくというのがほぼ確実でございます。本州の近くでありましても、黒潮の外側になりますと、本邦沿岸にはほとんど影響があらわれておりません。距離がどのぐらいだということは一概にお答えできませんけれども、大体潮流、その季節の風向によって非常に影響が違うというふうに御了解いただきたいと思います。
#195
○河村委員 こういう捜査活動をやるにしても、三海里じゃいかにも狭いですね。まあすでに十二海里がいま世界的な通説というか常識になっておるわけですね。国際海峡における軍艦の扱いとかタンカーの扱いとかいうものがあるから、ちょっとすぐには決めかねるようであるが、本法あるいは本条約の適用については、大体十二海里が締約国のほとんどであるならば、本法、本条約の適用上十二海里を領海とする、みなすというような合意はできませんか。
#196
○薗村政府委員 海洋法会議で論議されている事態が現にああいう関係でありまして、本条約のときにそれぞれ各国で締約国の領域内に起こった油濁損害ということを相談し合うときに、恐らく三海里の国もあったし十二海里の国もあったと思うのですが、その間の合意をこの条約に基づいて条約会議で論議するというような経緯ではなかったと思います。片や海洋法の進行状況もああいうことですから、ちょっとこの条約でどれかの線に統一するというのはむずかしいと思います。
#197
○河村委員 これは大臣に伺いますけれども、日本の場合、これからだんだん遠洋漁業がいろいろな経済水域その他の制約でますます苦しくなる。昔の沿岸漁業を復活していかなければならぬ時期になっておるわけですね。これはもちろん陸上からの汚い水の排出というものがより大きい問題であるけれども、同時に外側から入ってくる汚染も防止をしなければならない。だから、いま汚染防止ゾーンという観念があるわけですね。現にそういうものを宣言している国もあるのではないかと思う。ある意味じゃ領海も実力行使なんですから、自分の方で宣言すれば領海になるのだ。十二海里にいま本当はしてしまえばよろしいのでね。何も津軽海峡や何かに潜水艦を浮かび上がらせて通したって、本当は日本の国益にはむしろ合致するぐらいなものなんだけれども、きょうはちょっと場所が違うからその議論はいたしませんが、汚染防止ゾーンというものを海洋法会議なりに主張して、それで自分の方で宣言をしてしまうということを考えたことがあるか、あるいはやったことがあるか、それともこれからどうするのか、大臣、その点はいかがですか。
#198
○木村国務大臣 いま、まあわが国は三海里をとっておりますので、いろいろな問題についてすべて三海里ということになっておるわけであります。こういう海洋汚染等の問題の処理につきましては、やはり三海里というのはいろいろプラスよりもむしろマイナスの点が多いような気がいたします。そこで、いずれはこういう問題について領海の範囲というものを検討すべきでございますが、まあ幸いといいますか、いま海洋法会議で御承知のようなことで、大体まあ十二海里に大勢が傾きつつあるというときでございますので、お説を含めまして日本も早晩十二海里をとらざるを得ないし、またとることが国策に合うのではないかと思います。いま三海里ということで、外の九海里の辺でいろいろ問題がたくさんあるようでございます。これが十二海里をとるようになりますと大半は解決するんではないかというふうに思うわけでございます。特に、お話しのようにこういう海水汚濁等の関係でのみの領海的な特別の範囲を決めるということも一つの考え方であることは私もよくわかりますが、幸い、全体をすべて十二海里ということがいま問題になりつつありますし、おおむねそれにいくであろうと思っておりますので、いまはその成り行きを見まして、これができましたときに改めて特別に考えるかどうかということを検討をしてみるのも一つの方法ではないかと思っております。
#199
○河村委員 汚染防止ゾーンということになると十二海里よりもっと広くなるのです。これを日本としては海洋法会議で提唱したことはないのですか。また全体の議論の過程はどういうふうになっていますか。
#200
○寺井政府委員 私、汚染防止ゾーンに限って了解しているところでお答えいたしますけれども、日本といたしましては、五十海里の汚染防止ゾーンというのを、海洋法会議で正式に主張いたしましたかどうかわかりませんけれども、少なくともそういう五十海里が適当であるという意思表示をいたしております。
#201
○河村委員 大臣、そういうことなんです。日本が一番こういうものの影響を受けやすい国なんですね。だから領海問題は領海問題、これは別の意味があるわけです。だから汚染防止ゾーンというものをもっと――いま全く海洋法会議でも防衛に回ってばかりいるんだね。経済水域大変だ、大陸だな大変だ、もっぱら受け身ばかり。一つぐらい、汚染防止ゾーンぐらいは日本が、一番被害を受ける国なんだから、積極的に提唱して主張するのが私は至当だと思う。大臣余り御存じじゃなかったようだが、少し勉強してください。
 ところで、油による汚染でやはり大きいのは海難であって、海難の防止というのは一番大事で、それがたびたび問題になっているわけですが、これはなかなか計算しにくいと思うが、日本の沿岸が汚染をされた中で、海難によるものの汚染という、件数ではなくて、汚染の総量の中で占める海難による被害の割合というのは、大ざっぱに言ってどんな見当になるのですか。
#202
○寺井政府委員 非常に正確に申し上げにくいわけでございますが、海難によるものが全体の船舶による汚染の中で百二十六件程度でございますのであれでございますが、汚染全体の量の中のパーセンテージといたしますと、大体二〇%ぐらいというふうに了解いたしております。
#203
○河村委員 大臣、この前も東京湾あるいは承勢湾その他非常にふくそうする海域の海難防止について、これは自民党の佐藤さんの質問であったか何かに対して、こうするんですということを幾つも並べましたが、実際、現実には昨年十一月の東京湾におけるパシフィックアリスと第十雄洋丸の事故についても、中ノ瀬航路の北口のところに調整区域を事故が起こった後につくりました。だけれども、浦賀航路と中ノ瀬航路の接点になるところというのは常識的に考えても一番危ないところなんですよね。それが、事故が起こって初めて調整海域をつくるとかあるいは水先を乗せるとかいうようなことをやる、後からですよね。だから、いろんな政策を並べられても、本当にやっているのかどうか非常に疑わしいのですね。特にその中でも危険な海域について本当に――起こったすぐ後からやったってしょうがないんで、総点検みたいなことを本当にやったことがあるのかどうか、その点はいかがなんです。
#204
○寺井政府委員 先生御指摘の昨年の第十雄洋丸とパシフィックアリスの衝突事故が一つの契機になりまして――従来からあの中ノ瀬の出口に緩衝地帯が必要であるという主張があったわけです。それがなかなか実現しないでおりましたが、あの事故を契機にいたしまして、さっそく浮標を入れまして、ことしの三月でしたか完成をいたして、現在そのように運航いたしております。また、あの事故の一つの教訓と申しますか、私ども危険物積載船あるいは大型タンカーにつきましては進路警戒船をつけて走らせております。しかし、この進路警戒船の職務内容と申しますか、あるいは本船との通信方法その他につきまして改善すべき点が多々ございました。これらも逐次改善をさしております。また、浦賀航路と中ノ瀬の接点、これも御指摘のように非常に問題のある海域でございまして、この地域につきましては当庁の巡視艇を重点的に配備いたしまして、常時警戒に当たらせておる。それからまた外国船、ふなれな外国船についてはパイロットをできるだけ乗せるようにということを指導いたしております。まだ一〇〇%パイロットをとっておるという状態ではございませんけれども、昨年の事故の以前に比べますと、かなりパイロットをとる率がふえておるというような状態でございます。
 総点検につきましては、これは何も東京湾のみでございませんので、瀬戸内海あるいは伊勢湾等につきましても問題点がないかということを検討いたしました。たとえば非常に似たようなケースで明石航路のところでやはりこうした緩衝地帯が要るということで、いま、浮標はまだ完成いたしておりませんが、そうしたことを実行していこうという段階になっております。
#205
○木村国務大臣 事故対策というものが事故が起きた後、どうしてもその後追い、後追いになるということは、これは海上ばかりではございません。陸上でもそういう傾向があることは非常に遺憾に思います。ただ、いままである時期には事故防止対策としていろんな施策を講じて、その積み重ねできておるわけであります。したがって、当該事故が起きたときには、その事故の原因の対策はできていなかったということはあるのでございますが、先手を打って対策を講じたために、ひょっとしたら起こったかもしれない事故が未然に防止されたということもあることはあるわけでございますが、総じて後追いということは、私も非常に遺憾なことだと思いますので、今後そういうことは極力先手先手でいくように努力いたしたいと思います。
#206
○河村委員 最後に、大臣に伺いますが、この前も過密な港域に対して、特に大型タンカー等がこれ以上入ってこないように港湾の外に受け入れ施設をつくる。それから新しくバースをつくることは制限するというような答弁をされておられた。それはそういう考えがあると思うけれども、具体的に私はまだ何にも、実現するとか、すでにプランが具体化しつつあるという話を聞いたことがない。一体、言うだけでは何にもならないので、港湾外に受け入れ施設をつくるといって具体的にどういうプランがあるのですか。それから東京湾とかその他の過密な港湾に対しては新しく大型の船のバースをつくらぬというような方針が確立されているのか、その点は一体どういうことに相なっておるか、それを伺いたい。
#207
○木村国務大臣 遺憾ながらまだ具体的にどこをどうやるというところまではいっていないようでございます。ただ、たとえば東京湾におきましても、シーバースは御承知かと思いますが、すでに東京湾の中等にも三カ所ぐらい設けております。そういうことでその港湾外にタンカーをとめて、そしてパイプで取るというふうなことをさらに一層進めてまいりたいと思いますが、現在のところはまだきわめて初歩的なところでございますので、今後さらに一層やりたいと思っております。
#208
○河村委員 この委員会で堂々と海難防止のために港外に受け入れ施設をつくる、新しいバースは制限するというからには、ただやりますと言うだけで東京湾に一つありましたという程度では、これは行政としては実に怠慢であります。だから金がないからここまでしかできないとかなんとか言うならそれも一つの計画です。だからもうちょっと具体的な計画をしっかりつくっていくのでなければ、私は、運輸省としてはきわめて怠慢だと思います。その点もうちょっと、ただ口先の答弁だけではなしに、本当に計画を持ってやっていってほしいと最後に要望して、私の質問を終わります。
#209
○木部委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後三時三十一分散会
ソース: 国立国会図書館
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