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#1
第075回国会 運輸委員会 第16号
昭和五十年五月二十七日(火曜日)
   午前十時三十一分開議
 出席委員
   委員長 木部 佳昭君
   理事 加藤 六月君 理事 佐藤 守良君
   理事 増岡 博之君 理事 太田 一夫君
   理事 金瀬 俊雄君 理事 三浦  久君
      佐藤 孝行君    徳安 實藏君
      三原 朝雄君    宮崎 茂一君
      綿貫 民輔君    久保 三郎君
      兒玉 末男君    梅田  勝君
      紺野与次郎君    松本 忠助君
      河村  勝君
 出席国務大臣
        運 輸 大 臣 木村 睦男君
 出席政府委員
        運輸省海運局長 薗村 泰彦君
        運輸省船舶局長 内田  守君
        運輸省港湾局長 竹内 良夫君
        海上保安庁長官 寺井 久美君
 委員外の出席者
        水産庁研究開発
        部漁場保全課長 山内 静夫君
        通商産業省立地
        公害局工業再配
        置課長     箕輪  哲君
        運輸大臣官房参
        事官      横田不二夫君
        運輸委員会調査
        室長      鎌瀬 正己君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 油濁損害賠償保障法案(内閣提出第六四号)
     ――――◇―――――
#2
○木部委員長 これより会議を開きます。
 油濁損害賠償保障法案を議題とし、質疑を行います。
 質疑の通告がありますので、順次これを許します。金瀬俊雄君。
#3
○金瀬委員 今回提案された油濁損害賠償保障法案について重点的に御質問をいたします。
 わが国は、提案説明にもあるように、世界最大の石油輸入国であり、それだけに多数のタンカーが東京湾、伊勢湾、瀬戸内海の重工業地帯に出入しています。それだけにタンカーによる事故、臨海工業地帯のタンクの事故、たとえば水島の三菱石油等の事故発生が年々増加してきて、海を生活の場としている漁民を初め港湾関係者、水産関係者等に大きな被害や不安を与えています。このたび提案されたこの法案は、長い間泣き寝入りされていた多くの漁民を中心に関係者にとって不十分であるが、一歩前進したものと評価したいと思います。
 そこで、この法律に基づいて今後いろいろ行われるわけでございますが、その際にいろいろ課題として残ることを確認をしておきたいと思いますので、数点について御質問申し上げます。
 第一点は事故の未然防止についてであります。一たん油の流出事故が起こると、現在の体制では相当の被害が出るという現状であります。漁業者にとっても海で生活する者にとっても絶対に事故を起こしては困るということがいま言われております。この法律ができたからといって事故が起こらないという保証はございません。しかも、この法律の運用いかんによっては事故の発生を相当減らすことができるかどうかということは疑問でございます。そのためにはどうしても自然を破壊したことに対する償い、漁業補償あるいは重い罰金を課する等、あくまでも船主あるいは船舶運航者に事故を起こしては大変なことになるという責任感を強く植えつけることが必要であると思います。その点について、以下順次質問いたします。
 この法律の説明は船主あるいは船舶運航者あるいは関係者に前もってしてあるかどうか。また、これから先説明会を開くつもりがあるかどうか。
#4
○薗村政府委員 この法案の内容につきましては、関係業界、船主協会、内航タンカー協会、それから石油業界に説明はしてございます。
#5
○金瀬委員 この法案について、被害を受ける側の漁業組合等のいろいろな関係者については説明会を開いていますか。
#6
○薗村政府委員 直接私どもから説明する機会は持っておりませんけれども、農林省の水産庁の方によく内容を御説明してございます。
#7
○金瀬委員 それでは、水産庁の方では関係漁業組合にこの法案の内容を説明しておりますか。
#8
○山内説明員 来る六月四、五の両日にわたりましてこの法案の概略につきまして全漁連と共同して御説明いたしたい、こう考えております。
#9
○金瀬委員 この法案を千葉県の漁連それから水産部に届けて説明を聞いたことがあるかということを聞きました。ところが、この法案は初めて見るのだ、全然説明を聞いていないのでこの法案についての参考意見を述べることができないと言われたわけです。だからどうしても、業界サイドだけ先に説明するということでなくて、被害を受ける方の漁民にも前もって説明して、意見を聞かずにこういう法律をつくったということが私は相当疑問がありますが、その点についてはどう考えますか。
#10
○薗村政府委員 法律案をつくる過程で水産庁とよくお打ち合わせをして御意見を承ってまいりました。いまお話しのように水産庁の方でも六月早々やっていただけるようでありますが、必要でございましたら私どもも十分この法案についての説明の機会を持たせていただきたいと思います。
#11
○金瀬委員 海上交通安全法のときは、海上保安庁の方から漁民の方に前もって、賛成、不賛成は別にしてよく説明してあったのですよ。だから漁民がすぐに賛成とか反対とか言える立場にあったわけです。ところが、今度の場合はこれを説明を一つもしておらないということは片手落ちではないか。業界とかあるいは船舶関係者とか荷主とか、そういう人たちに説明しただけでは不十分である、さように考えますので、いまからでもひとつ漁民に対して、水産庁だけに責任を負わせるということでなくて、答弁もございましたようにこの法案を作成した方からも説明していただきたい、さように考えております。
 それから、事故を起こした場合の責任の所在の判断について厳正に敏速に処理するように配慮されたいということが漁民の側からいろいろ出されておりますが、海難審判のために延び延びとなっていることが多いのですね。第十雄洋丸のことにつきましては二、三日前の公判で判定が下されましたね。だからあれでも大体積み荷の補償の方は早いのですよ。積み荷の補償とかそういうことばかり暇取っていて、漁民に対する被害補償というのがいつも後回しになるのです。保険会社というのは積み荷の補償だけ一生懸命にやって、漁民の被害ということは後回しにして余り急がないのですね。だから、漁民の方が生活に苦しんでいる人が多いんだから、それを早くやれるような措置をしていただきたい。そういうことについてどう考えていますか。
#12
○薗村政府委員 しゃくし定規なことを申しますと、この損害賠償の請求というのは民事上の不法行為に基づく請求の一種でございまして、その解決は第一次的には当事者の間の合意による示談で解決を図る。それが成立しない場合には最終的な手段として裁判手続によるということになるわけですが、先生お話しのように少なくとも示談などの手続は早くして、被害者救済の見地からおくれることのないようにということで、私どもも今後PI保険組合にも十分その趣旨を伝えたいと思っております。
#13
○金瀬委員 明原丸の事件がまだ解決されてないですね。明原丸の事件のようなものは、今度のこの法律が通過した後にああいう事件が起きたとすれば、どういうふうに有利にというか、漁民側が要望しているように解決されますか。
#14
○薗村政府委員 もちろんいままでの事故は関係ないわけですが、この法律案が成立して、国際条約にも入ったということになりますと、この法律の手続によって示談の手続がとられたり裁判の手続がとられたりするわけでございます。
 一般に、いままで、たとえば明原丸の場合にそういう賠償関係がおくれておるというようなことについても、私どもも、それを例として引いてPI組合にその後の賠償の迅速な処理ということに一層努力してもらうように私どもから指導しだいと思っております。
#15
○金瀬委員 明原丸事件はまだ御存じのような状態でございますので、これは一日も早くこの法律が通過しますと同時に、この法の趣旨にのっとって解決できますように、当局でもひとつ御努力願いたい、さように考えております。
 それから、この法が通過しますと、航行する船舶はいわゆる自動車の自賠法の法律を適用されたと同じような状況になりますので、船舶運航の従事者かかえって、保険に入っているからもう事故を起こしても大丈夫だということになって、気の緩みから運用の管理というのは無責任になりやしないか、要するに、事故を起こせば保険会社に頼めばもうそれでやれるのだという気持ちになって、事故を起こしやすくなりやしないかということを漁民が心配していますが、そういう点についてはどういう対策を立てていますか。
#16
○薗村政府委員 事故を未然に防止するというのが、こういった損害賠償制度を確立するそれ以前の問題として基本的に大事であるということは申すまでもないことでございます。特にこの法律案の中には、いままで過失がなければ責任を負わないというような考え方でありました船主側の責任を、無過失でも責任を負うということに厳格にいたしますので、その意味においても、事故を起こさないようにという態度に船主側は当然なると思います。そういった方向で事故の未然防止それからあわせて、この法律案に盛られているところの賠償責任制度の確立ということを行っていきたいと思っております。
#17
○金瀬委員 この運用の仕方によると、船舶運航者が無責任になるということが心配されるわけですね。保険へ入っているから保険会社で後を処理してくれるということになると、外へ流れ出した油の処理とかそういうことについても、もう事故を起こしたのだから仕方がない、被害が拡大されてもあと保険会社でやってくれるという気持ちになるということが心配だというふうに漁民側が言っていますが、その点については十分配慮していただきたい、さように要望いたしておきます。
 その次に、補償の実務はすべて公営ではないですね。公営ではなくて保険機構、民間の会社に任せられることになるけれども、民間の会社でどういう会社が保険業務に当たって、それは絶対心配ないものなのかどうか。あるいは国際的に信用を置ける、そういう機構があるのかどうなのか、その点について説明を願いたいと思います。
#18
○薗村政府委員 この法案ができまして賠償制度が国際的に確立するということになるわけですけれども、それ以前に保険には当然いまの状態でもかかっているわけです。それで、ただ二千重量トン以上のタンカーは国際的に全部強制保険に入るということが非常な前進でございまして、現状で申しますと、日本のタンカーは二千トン以上のものは全部一〇〇%すでにPI保険と申します保険に加入をしてございます。したがって、保険に入っているかどうかという点では、いまの状態と今後の状態とは変わらない。ただ、強制保険ということでそういう保険に入っているという証明書がなければ、タンカーとしての機能を果たすことができないということで前進になるということが本法案の趣旨でございます。
 なお、PI保険と申しますのは、日本では船主相互保険組合というものを、日本の船会社が相互に保険制度をつくって日本の保険を一手に引き受けて、そういう第三者に対する損害賠償の保険については一手に引き受けてやっておりますので、これは機構とか内容とかは全く間違いのないものでございます。
 なお、国際的に申しますと、一番発達しているのはイギリスの保険制度でございますが、たとえばUKPIとかブリタニアPIとかいうようなもので、それぞれ世界の国々がそういう国際的な保険に入っておるということでございますし、さらにまた日本のPI保険組合はイギリスの保険組合に再保険に出すということで、国際的に保険機構を確立するために世界的な網が張られているということが実情でございます。
#19
○金瀬委員 けさのテレビで、事故を起こす油船、タンカーの八割ぐらいは外国船だ、二割ぐらいが日本の船だということを発表されましたね。けさのテレビで言っていましたよ。そうなってくると、保険会社そのものが査定する場合に、保険会社というのは日本のノリ漁場とかそういうことはわからないわけですよ。だから漁業者側の立証が、漁業組合の人たちがこのくらい損したという立証をするのに、外国の人がノリの養殖とかいうことを知らない、理解できないということのために、不本意だけれども、いままでの補償というのは減額を非常にされている。そういうことは今後何か対策ございますか。保険機構の調査員が日本の漁業というもの、そういうものに対して理解してもらうということですね。
#20
○薗村政府委員 そういった国際的な保険機構に入っております外国船が参りましたときに、事故を起こしたら、当然その示談ということについてはその入っておるところの保険組合の方が、事故を起こした船主はもちろんでございますけれども、保険者がそういった賠償責任の責めを負うて直接被害者からも被害の賠償請求を受けられるということになっておりますので、当面そういった交渉の相手方になると思います。それで日本に参りましたときには、当然漁業被害は適正にそれを見積もらなければならないということは、いままでの例でもだんだんその周知方が図られておると思いますけれども、なお外国の船といえども日本の代理店がございますから、代理店を通じてその趣旨がわかるように十分その相手方の船主ないしは保険者に連絡もできると思います。そういった点で落ち度がないようにしていきたいと思います。
 それからさらに示談で成立しない場合には、これは日本の裁判所の手にかかって公正な裁判が行われるということで当然日本の実情に合った裁判が行われるということは期待できると思っております。
#21
○金瀬委員 水産庁で、その被害の金額の査定というのが中正妥当なものであるというようなことを審判するような、査定するというのですかな、そういうような機関をつくる気はございますか。またそういうことをいままで水産研究所とか何かでやったことはございますか。
#22
○山内説明員 現在損害額の認定等につきましては漁業者団体は専門の海事検定関係の機関に依頼している現状でございます。私一存でこの問題答えかねますが、いろいろ民事関係の問題でございまして、利害関係に絡む問題でございますから、水産庁が損害の査定を行う、こういうことにつきまして現在まで庁内で話し合いが持たれた、こういうことはございません。
#23
○金瀬委員 それでは、賠償の支払いの促進というのはいままでの例でございますと当事者間の交渉によって解決するということが主であったわけですが、この法律が施行されますと、事故の因果関係が明確になったときは被害者は裁判に移行しなくても補償を得られるというふうに漁業組合は考えておるようですが、それはそう解釈してよろしゅうございますか。
#24
○薗村政府委員 当然関係者間の示談によって話し合いを始めていただく。それで済めばもちろん早い時期に片づく。それが不成立の場合にやむを得ず最終的な手段として裁判に訴えるということでございますので、先生おっしゃるとおりに御理解願って結構であります。
#25
○金瀬委員 当事者間の話し合いがつかなくて、つかないけれども相当の被害が出たということを両方が認めた場合、たとえば二十億ぐらいの被害だけれども、それが十五億ぐらいだろうとか、あるいは五億ぐらいの差で話し合いがつかずにもめておるという場合に、漁業組合というのはしょっちゅう漁業をやっておるわけですから、苦しいわけですから、内渡し金ということができるかどうか。たとえば五割ぐらいは先に払っておいてあとの話のつかない面は話し合いがついてから払うということが制度としてできるかどうか。その点はどうですか。
#26
○薗村政府委員 このPI保険の組み立て方というのは、実は日本船は先ほどもちょっと申し上げましたが日本のPIに入る、イギリスならば恐らく大部分イギリスのPIに入るということで保険の制度としては国際的に統一されたものになっております。いまのところ残念ながら仮払いをするという制度はPIの中には国際的に取り入れられておりません。この問題はPIの保険の制度の問題として国際的に今後研究していかなければならない問題であろうと思っております。
#27
○金瀬委員 原因者不明の場合にその救済のために漁場油濁被害救済基金というのがございますね。水産庁でこれは管理しておるわけですが、この基金というのが相当豊富にあれば、そういう場合に漁民を救済するために貸すことができるわけですよね、基金の方から。そういう貸すことができるほど余裕のあるものなんですか。それともこれは非常に少なくて、原因者不明の事故が起きた場合の救済をするのにやっとぐらいしか基金がないものなんですか。
#28
○山内説明員 漁場油濁被害救済基金につきましては、原因者不明のものについてのみ救済事業を行うことでございまして、原因者がわかっている問題につきましては、その基金としては仮払いする機能は持っておりません。原因者不明のものに限りまして救済事業を行う、こういうことでございます。
#29
○金瀬委員 そうなってくると、たとえば水産関係の金融機関か何かを活用するということ以外はないわけですね。そういう被害、後で当然補償金が取れるという場合に、内渡し金のようなものを融資するということはできますか。
#30
○山内説明員 現在、補償の方法といたしましては、先生御説のとおり系統金融機関等が融資いたしまして、県あるいは市、国等が利子補給を行う、こういう方法と、それから比較的被害が多発する県におきまして、この基金と同じような漁業救済基金のようなものがございまして、これが作動いたしまして、これがいろいろの金融措置を講ずる方法、あるいは水島の事故とかあるいはこの前の福島の事故等におきまして見られましたように、補償額が妥結する前に企業側が一応仮払い金という形で妥結する以前に何割かの補償額を払う、こういうケースがございます。
 以上が大体の補償関係につきましての現在までのルールだろうと思っております。
#31
○金瀬委員 次に油濁防止の常時監視体制についてお伺いします。
 沿岸の立地企業それから船舶の所有者、いわゆる運航をしておる人たち、海上保安庁、水産庁、港湾局、そうした人たちが事故が起きた場合に横の連絡はどうとるようになっていますか。それを、横の連絡方法はどういうことになっていますか。
#32
○寺井政府委員 大量の流出油がありました場合には、各地区特に東京湾は一体になっておりますが、油の災害防止に関するそういう協議会がございまして、この協議会を通じまして関係者に直ちに連絡が参ります。そうして防除活動に直ちに入るわけでございます。このメンバーの中には海上保安庁はもちろんでございますが消防庁あるいは船舶の運航者それから陸上の精製業者それから地方公共団体等も入っております。したがいまして、そういうふうな横の連絡というのが迅速に行われる体制になっております。
#33
○金瀬委員 飛行機で、県によるとノリをつくっておる間は常時飛行機を飛ばしておるのですね。飛行機の上から見ておって、油が流れていると下の方に監視船がおって、飛行機の上から電話をしてすぐに知らせてやると、中和剤をまくとかあるいはいろいろ手を打てるのですがね。そういう体制は国の方ではとっておらないのですか、飛行機で見るとか。
#34
○寺井政府委員 海域によって差がございますけれども、たとえば東京湾のようなあるいは瀬戸内海のような地点につきましては航行が可能な日は毎日二度当庁の航空機が汚染の監視をやっております。したがいまして、油が流れておりますと、これは直接漁民の方には参りませんが、航空機から当庁の船舶に連絡が入りまして、船舶が防除活動に入ります。その段階で地元には連絡がいく体制になっております。
#35
○金瀬委員 油を防除する資材についてお伺いします。
 それで、この中で水島ではむしろとひしゃくが防除したように書いてありますね。テレビでよく出ていた。昔の方法と同じですよ。昔と同じでむしろとひしゃくが活用された。あれを見てみるとそれがすべてである。漁民の人が大量動員されて、ひしゃくとむしろを持っていって片づけた。そういうことしかできないんですか。いまこういう科学が進歩してきても、むしろとひしゃく作戦――昔焼夷弾が落ちたときに砂とバケツで消したと同じような方法だけれども、これしか方法がないのですか。
#36
○寺井政府委員 防除活動の基本的な考え方といたしまして、まず流出油がありました場合に、これをオイルフェンスで囲みまして、その囲んだ中の油を油回収船で回収をする、それからこれが囲み切れなくて流れるものがございます。これについては吸着マットあるいは油処理剤等を使用して中和していくという考え方で防除体制の整備をやっております。
 ただ先生ただいま御指摘のように、水島のような場合、油は時々刻々変化いたしてまいります。かなり粘度が高くなって固まってまいりますと、やはりひしゃく等で回収をするより手がないという状態になっております。そういうことで、油回収船そのものにつきましてもいろいろ性能上の差がありますし、自然条件あるいは油の状態によって違っておりますので、こうした回収用の器材の研究開発が今後とも要望されておるわけであります。当庁といたしましては、やはりそうした考え方で一応防除体制を組んでおります。資器材の開発が進みますればそれによってまた新しいものを整備していく、こういう考え方でおります。
#37
○金瀬委員 水島の油はひしゃくとむしろで処理された方が多いでしょう、それが多いですね。そうなってくると、ひしゃくとむしろとが油を防除する最大の武器だということになりますね。そうすると、千葉県の漁業組合だけでも一万一千四百十枚常時むしろを準備してあるのですよ。それからひしゃくが幾らとか、これに全部書いてありますが、全く原始的な方法で油処理に当たっているのですよ。もう少し処理船というのをつくっていただければ何かできるんじゃないかということをみんなが言っているのですが、この処理船が大型の場合は底がつかえちゃうからノリ漁場へ入っていかれない、小型だと役に立たない、えらい悩みが多いようですが、大型船が母船のような役を足すようなものをつくって、小型船をそれにつけて、いわゆる捕鯨船団のようにそういうものを組織しておけば相当防げると言う漁民もいるわけですし、中和剤というのは霧状にして吹かさなければ、まくだけではもう全然役に立たないと言う人がいますがね、それはどういうことなんですか。中和剤というのは霧状にして吹かさなければ役に立ちませんか。
#38
○寺井政府委員 霧状にして吹かすということかどうかわかりませんけれども、要するに中和剤というのは油とまぜなければならないわけです。ですから中和剤をぽんとほうり込んだだけではだめでございまして、やはり放水のようなかっこうで中和剤と油とをできるだけ攪拌する、攪拌すればするほど中和剤の効率が高いということでございます。
#39
○金瀬委員 四月二十七日の朝、二十キロくらいの油が流出した、油処理船がそこへ来たけれども、二十七、二十八日と両日かかってやっと食いとめたということが言われていますね。これは事実ですか。
#40
○寺井政府委員 ただいま先生御指摘のことは東京湾のケースだと思いますけれども、あれは確かにおっしゃるとおり二日かかりました。
#41
○金瀬委員 相当油を処理するというのには時間がかかるようですが、油の回収とかそれから油を中和させるとかいう技術の開発ということについてはどこが責任持ってやっているんですか。そういう油を中和させたり、油被害が出たときにむしろやひしゃくだけしか使えないというような原始的な方法というか昔ながらの方法で処理する以外に最大の効果を発揮することができないということでなくて、もっと科学的な技術開発が欲しいと思うけれども、そういうことについてはどこでやってますか。
#42
○寺井政府委員 この油回収船あるいは処理剤等につきましては、世界の主要国でも検討が進められておるわけでございますが、わが国におきましては日本海難防止協会というところに委嘱いたしまして、こうした技術の開発、研究をしていただいております。
#43
○金瀬委員 海上保安庁長官、こういうのができておりますね、海上防災センターというのが。これ、ありますね。
#44
○寺井政府委員 いま私手元にございませんが、それは承知しております。
#45
○金瀬委員 できておりますね。この海上防災センターというのは非常によくできておって、これを活用すれば油被害が出た場合、非常に処理できるようになっていますね。このできたことはいいことだと思いますが、これが完全に活用できるように今後このセンターというのを大いに活用できるように各方面に漁業組合その他よく連絡していただいて活用していただきたい、そういうふうに考えております。これはいい制度じゃないか、さように考えております。
 それから次に、いま東京湾の海底にはオイルボールが積もっておると言われておりますが、どの程度汚染されておるか調べたことございますか。
#46
○寺井政府委員 東京湾の海底の状態につきましては、実は余り私つまびらかでございません。基本的な調査を環境庁と都道府県がやっておるはずでございます。
#47
○金瀬委員 東京湾の海底にはオイルボール、これはほとんど中和剤で処理されたものが沈下しているそうです。そのために異臭魚というのが大変とれるようになった、変なにおいのする魚。たとえばコノシロ、コハダ、セイゴ、イシモチ、ボラというのは、においがして、揚げても食べられない、あるいは非常に安い値段で取引されてしまう。非常に被害が出ておるということですが、これがまた赤潮発生の最大の原因になるそうです。だから漁民のために一回、汚した人たちは大体工場側ですよね、そういう人たちから負担金出させて、東京湾の大掃除をやらせる気はありませんか。東京湾でも、瀬戸内海でも、伊勢湾でも同じですが、そういうことは考えたことございますか。これは水産庁でもいいし、港湾局でも海上保安庁でも結構です。
#48
○寺井政府委員 ただいま御指摘の点でございますが、私どもの方といたしましては汚染の防止ということに重点を置いておりまして、まだ海底の掃除というところまでは検討をいたしたことはございません。
#49
○金瀬委員 このままでいきますと、そういう中和剤で沈んでいるものが上へ浮かび上がってきて東京湾が非常に死の海になってしまう、死滅しちゃうと言われているんですよ。だから、たとえば海の記念日とか何かポスター張るのもいいけれども、一回大掃除をやる計画を水産庁あるいは海上保安庁、港湾局でひとつ考えてみてください。
 それから水先案内人は、日本、外国ともこれは同じ資格だそうですか、甲種船長の資格がある人が老後の生活のために従事しているという、そういう人たちの数がほとんどであって、きわめて限定された人たちである。そのために、水先案内人の案内料が非常に高いということで、依頼せずに東京湾へ入るとか瀬戸内海へ入るということが多くて、そのために事故が起きるのだと言われておりますが、そういうことはございませんか、水先案内人の数……。
#50
○寺井政府委員 東京湾とか瀬戸内海、こうした狭水道のございますところについては、不慣れな船長には水先をとっていただく方がよろしいわけです。特にタンカーなどの大型船につきましては、海上保安庁といたしまして、水先案内人をとるように勧奨、行政指導等をいたしております。去年の第十雄洋丸の事故以来、さらにこうした指導強化をいたしまして、現在ではかなりの船がパイロットをとって、その安全上の効果を上げておるわけでございます。
 ただ、先生御指摘の、いまの数が少ないとか、パイロット料が高いとかいう点につきましては、私どもちょっと所管が違いますので、つまびらかにいたしません。
#51
○金瀬委員 次に、沖繩の海洋博で、通産省が外に出したパンフレットにこう書いてある。それを見ると、「海」と書いて、「その望ましい未来」ということを書いてある。これはどういうことなのか、通産省の人来ていたら説明してくれませんか。海の望ましい未来ということを書いて出している。その海の望ましい未来ということはどういうことなのか、通産省の人。
#52
○箕輪説明員 私、実は急遽こちらに参ったものですから、御質問の内容を確めないで伺ったわけでありますが、海洋博は私の所管ではございませんので、必要があれば担当の者を先生のところに御説明に差し向けたいと存じておりますが、この場ではちょっと私としてはお答えいたしかねると思います。
#53
○金瀬委員 ちょっと待ってください。
 これを見ると、通産省の人ならだれでもこれを読んでいるわけだ。通産省でたくさん出している海洋博のパンフレット、あなたこれは読んだことないか。
#54
○箕輪説明員 見たことはございますが……。
#55
○金瀬委員 「その望ましい未来」というところに「自然と海と人類の調和を求めて」と書いてある。これは、通産省が海をきれいにしなさいということをはっきり言っているわけだ。それで海洋博覧会をやっているわけだ。あなた立地何課長……。
#56
○箕輪説明員 工業再配置課長でございます。
#57
○金瀬委員 工業再配置課で工業の立地をやるわけでしょう。工業の立地というのはあなたのところでやるわけでしょう。そうでしょう。そうすればあなたの方は海を汚す元凶だよ。その元凶が通産省。同じ通産省で海洋博で海の未来と、こういうことを書いてある。このことについてどう思うか。
#58
○箕輪説明員 ただいま、工場が海を汚す元凶であるという御指摘がございましたが、確かに従来いろいろな事故が起きておりまして、元凶と言われる要素も確かにあることは、私も承知いたしております。ただ、私どもが工業再配置政策、工場立地政策として進めております考え方は、環境をより悪化させるということを考えておるわけではございませんので、基本的に環境をよくしていこうということを前提にして考えております。それからさらに、これは先生御存じのとおりだと思いますが、日本の過密状態を解消していく行政的な一つの対応であるというふうに考えております。
#59
○金瀬委員 東京湾の中にこれ以上石油関係の工場を設置することは絶対反対だ、住民も漁民もみんな言っているけれども、これ以上石油関係の工場を東京湾の中へつくるという気持ちはございますか。もうこれ以上はつくらないと約束できますか。
#60
○箕輪説明員 実はもう昨年の秋に、産業構造審議会の答申を得ましたその報告書がございますが、そこにはっきり書いてあるわけでございますけれども、特に資源を多量に消費する工場につきましては、東京湾、伊勢湾、大阪湾あるいは瀬戸内海というようなところにつきましては、すでに計画が具体化しているものを除きましては、原則として企業の新規立地ということは考えないという基本方針を打ち出してございます。私どもはこの方針にのっとりまして、今後は企業の立地というものを指導してまいりたい、このように考えております。
#61
○金瀬委員 たとえば、千葉に第二シーバース、京葉シーバースというものをつくりたいということで、工場側が県に申請し、国の方にいま書類が出されている。ところが漁業組合の方々とかあるいは住民とかは、これ以上千葉県側に工場をつくらない、少なくとも石油精製の工場は建てないということを約束するならば、第二シーバースに協力いたしましょうということをはっきり言っているけれども、そのくらい石油精製工場というのはきらわれているわけです。あなたの方では、まだ石油精製工場を建てるだけの、増設することができるだけの土地を石油精製工場に持たせている。そういうのを今後ほかの方に使うことによってやめさせることができるわけだけれども、そういう気持ちがありますか。
#62
○箕輪説明員 御指摘の石油精製工場につきましては、現在東京湾内において計画がはっきりしたものがあるかどうか私は存じませんけれども、ただ考え方といたしまして、私どもは地元住民がそれをよしとする、地方公共団体がそれをよしとする条件がいろいろあると思いますけれども、そういうような基盤というものをベースに考えてまいりたい、そのように考えております。
#63
○金瀬委員 この法案の提案説明の中に、「交通ルールの確立、航行環境の整備」ということがありますが、東京湾の入り口の第三海堡を取り去るということもその一つですが、この状況についてはいまどうなっていますか。
#64
○竹内(良)政府委員 東京湾の入り口に海堡が三つございまして、そのうちの第三海堡は現在の航路を非常にSカーブにするような形で存在しておりまして、事故が非常に多かった、こういう経緯がございます。そこで運輸省といたしましては、第三海堡を撤去いたしまして航路を整正するという方針のもとで、昭和四十六年ごろからこの撤去についていろいろ苦心をしているわけでございますけれども、現在までのところ、いろいろ関係者、特に漁業関係者の方々との話し合いと申しますか、お話がつきませんで、大分いいところまでは進んでいるのでございますけれども、いまひとつ話し合いがつきませんので、現在のところまだ着工に至っていないというのが現況でございます。私どもといたしましては、極力この関係の漁業者の御理解をいただきまして、できるだけ早い機会にこの工事に着手したいというのが現状でございます。
#65
○金瀬委員 東京湾内の、東京都とそれから千葉県と神奈川県と三組合の漁連の幹部が集まって東京で話し合ったそうです。そのときに開発保全航路ということについては、神奈川県側は指定することを了承したようです。ところが、三海堡を取り去るということについてはまだ同意を与えていないということです。同意を与えない最大の原因はどんなことかということで漁連の幹部に会って確かめたところが、あの三海堡を取り去ると東京湾の中の温度が変化すると言うのですよ。暖流が中へ入ってくると言うのですよ。暖流が中へ入ってくるので温度が変化する、まだ東京湾の水産物にどういう影響を与えるか検査が十分にされていないということ、それから、あの海堡が一つの魚礁になっておって、魚がたくさん集まる場所になっておる、それに対するどういうかわりのものをつくってくれるかということが明らかでないということですが、それはどうなっていますか。
#66
○竹内(良)政府委員 第三海堡撤去に対します漁民の方々の反対の理由の中に、魚礁になっているからそれを取ってもらっては困るというようなお話は確かにあるようでございます。運輸省の方といたしましては、たとえば魚礁にかわるべき何かをつくるというようなことも考えなくてはいけないというふうに考えております。またそのほか、たとえば避難の場所になるとかいろいろ漁民の方のおっしゃる点がございますので、それに対応するような措置はできるだけとっていきたいというように考えておりますが、いまおっしゃいました温度の変化、東京湾の全体の温度が変わってくるということにつきましては初耳でございますので、本当にそういうものかどうかは少し勉強させていただきたいと思います。
#67
○金瀬委員 これは三海堡を取ると流れが非常に速くなるそうですよ。それで暖流が東京湾に流れ込む量がふえると言っているのですよ。だから変化が来る。だからノリとか魚類に非常な影響があるということを言っていますから、ひとつ水産試験場等で研究してみてください。そうすれば漁民の方もあるいは納得いくかもわかりませんが、まだその結果が出ていないということを言っています。
 それから海上交通安全法が通過した際に附帯条件が幾つかついたわけですが、その附帯条件が一つでも実施されておるかどうか、そのことについて御質問いたします。
#68
○竹内(良)政府委員 その附帯条件の中に、湾口の外側にシーバースをつくりまして、そこから油のパイプラインを設置いたしまして、各製油所等に配油する、そういたしますと、大型タンカーが狭隘部等を通らないで済むというような附帯条件がございます。その線に沿いまして、私ども港湾の方の担当も鋭意努力している最中でございますが、現在は技術的な調査を実施している段階でございまして、実はこの問題の設置点につきまして関係者の同意が得られないという状況でございます。一応技術的な調査としては相当詰まってきておりますので、鋭意関係の漁民の方あるいは地方公共団体と話を進めていきたいというのが現状でございます。
#69
○金瀬委員 いま漁民が、法律が出るたびに自分たちだけ犠牲になる、そして法律が出るたびに漁民と国なりあるいは県といろいろ約束したことが一つも実行されていない。だから一つでも海上交通安全法が通過する際に約束したことを守ってほしい。
    〔委員長退席、佐藤(守)委員長代理着席〕
ただ、法律によって自分たちの漁場がだんだんだんだん狭められていく。そして収入が少なくなっていく。最後はだんだん漁民の数が少なくなってきてしまうということをよく言っておりますので、その点については十分――一つでも実行していただきたい、さように考えます。
 それから最後に、大臣に御質問をいたしますが、油が船の中あるいはタンクの中に入っている場合には被害が全くございません。これは私どもの生活にきわめて有用なものです。しかし外に流れ出した場合には被害が出る。特に海に出た場合には生物に非常に毒作用がある。特にノリ、アサリ、魚類だけでなくて、海水にも大きな化学変化を起こすといわれております。そして海の汚染が進むと、とにかく死の海になる。それから海からつくり出す酸素というのは、陸の緑からつくり出す酸素とは比較にならないほど酸素が多いようです。それから油が薄く海面を覆っておる、そうなってくると、海水の蒸発作用が抑えられる。ですから、日光が海水に浸透する力が弱くなる。生物の成長に大きな影響がある。だから、そういう意味では海を汚濁させるということは非常に大きな犯罪である。
 それから、今回は海上を航行する船舶についてこういう保障制度ができて、保険もできたわけですが、陸上のタンクにもこうした保険制度をつくることが望ましいと思うのです、三菱のようなことがございますので。で、タンクについて、これは運輸省の所管ではございませんが、これと同じような保険制度を将来つくるように、ひとつ閣議の中でも発言して実現してほしい、さように考えております。
 それから、いつも産業の方が急激な変化をして進歩している。法律というのは後を追っかけてつくられている。だから、後を追っかけてつくられているので、この法律もいまは理想的であり、あるいは現状においては最高かもわかりませんが、やがてこの法律も直さなければならない時期に来ると思うのですよ。その際には思い切った改正ができるように処理していただきますようひとつ御要望申し上げたいと思っております。
#70
○木村国務大臣 海上における油の汚染につきましては、大型化しておりますタンカーからの原因が常に多いわけでございますが、いまお話しのように、陸上の特にコンビナートのタンクからの汚染も十分――すでに水島のごとき事故もあるわけであります。そこで、コンビナートの災害防止の法律を、先般消防庁を中心にいたしまして関係各省でまとめまして、今国会に提案をいたして御審議をしていただいておることになっておるわけでございますが、いまお話しのようにこのいま御審議をいただいております油濁損害賠償保障法に似たようなものをコンビナート地域のタンク企業にもつくるべきではないかという御意見でございますが、私は非常に傾聴に値する御意見だと思っております。どういうふうになっておりますか、私も実は詳しいことを知りませんので、御意見十分に参考にいたしまして、関係方面とも相談をいたしてみたいと思っております。
#71
○金瀬委員 終わります。
#72
○佐藤(守)委員長代理 紺野与次郎君。
#73
○紺野委員 最初に今度の油濁損害賠償保障法と、それからその基礎になっている国際条約があるわけですが、この法案の背景をつくっているとこるの現実の油濁損害事故の実態がどういうものであるか。果たしてこういう実態をこの損害賠償法がカバーできるようになっているのかどうかという点について聞きたいと思います。そういう点で、まず日本でいままでに起きた一番大きな油濁事故の実態というものがどういうものであるか、これについてお聞きしたいと思います。
#74
○薗村政府委員 日本で起きました油濁事故で一番大きいのは四十六年の新潟沖で発生しましたジュリアナ号の事件でございますが、これは総トン数一万一千六百八十四トンの船が事故で油を流したということでございまして、そのときの賠償額は二億七千三百四十七万円でございます。
#75
○紺野委員 これは最終決定としてそうなったんだと思いますが、実際に漁民その他はどれくらい要求したんですか。
#76
○薗村政府委員 油濁防除費用それから離岸堤の復旧費用それから清掃費用、漁業被害、鮮魚商の被害というようなもので、請求額は五億六千万円程度あったということでございます。
#77
○紺野委員 これ以外の油濁事故はどんなものですか。
#78
○薗村政府委員 いまジュリアナの例は外航船で申しましたが、内航船舶で大きいのが二件ばかりございますが、これは四十八年にたまたま生じた事故でございますが、四十八年の五月に日聖丸というのが伊良湖岬沖で油を流しまして、そのときの賠償額が四億六千万円、それから同じ四十八年十月に日興丸というのが備讃瀬戸で油を流しました。そのときの賠償額が三億六千八百万円、いずれも内航タンカーの事故で油が流れたということでございます。
#79
○紺野委員 では外国の、これは国際条約を背景にもしておりますので、外国では最近の最大の事故はどの規模のものですか。
#80
○薗村政府委員 一番世間で取り上げられておりまして、実は今回お願いをしております法案がこういうかっこうで国際的な基本的には条約としてでき上がった一九六九年条約の発端となりました事故は、御承知のとおりトリー・キャニオン号事件でございまして、これは一九六七年英仏海峡で六万トン級のタンカーが起こした事故でございまして、このときの賠償額は約二十一億円ということになっております。
#81
○紺野委員 そのときにも実際の被害者たちが要求した額は、どれぐらい要求したのですか。
#82
○薗村政府委員 防除費用それからその他の一般被害を合わせまして、約七十四億円の損害が生じたということがその当時言われたわけでございます。
#83
○紺野委員 そうするといままでの外国の例で六万トンのタンカー、これははるか一九六七年ですね。今日一九七五年。そうするとタンカーも大きくなっているし、現在のタンカーは十万トン、二十万トシ、重量トン数でいえば四十万トンクラスの大きなタンカーが建造されているわけですが、これから起こり得る石油油濁の事故ということは、このトリー・キャニオンその他の過去の例から見て、はるかに大きなものが起こり得る可能性ですね、これはタンカーも大きくなっておりますから。そういうことで、その大きさが相当大きなものが起こり得る可能性があると思うんですが、その大型タンカーの一体どれぐらいの大きなタンカーがいま日本で、そしてまた外国で動いているようになっているのか、ちょっと実態を知らせていただきたい。
#84
○薗村政府委員 最初にトリー・キャニオン号事件のことでございますが、私先ほど六万トンと申し上げましたが、総トンでございますので、重量トンで申しますと十二万八百九十デッドウエートでございます。いわゆる十二万トンタンカーといわれているもので、そのときに流れ出た油の量は約九万三千キロリットルということであったと思います。それから現在デッドウエートで申しまして、大体二十万トンから二十五万デッドウエートのタンカーが一番多うございますが、一番大きいと申しますと日本でも四十万トンを超えたタンカーがございます。
#85
○紺野委員 どういう船ですか。
#86
○薗村政府委員 日本のダンカーで一番大きいのが三十七万二千トンでございます。
#87
○紺野委員 それはデッドウェートですか総トンですか。
#88
○薗村政府委員 デッドウェートでございます。
#89
○紺野委員 そうするとこれらの大型タンカーが、大体二十万トンから二十五万トンというのが最多でしょう。一番多いですね。大きいのは三十七万トンくらいのものが動いている。私もきのう、おとといですか、東京湾をちょっと見たんですけれども、実に大きな船が入ってきておりますね。そういうタンカーがトリー・キャニオンの場合には十二万トンのあれで九万トンぐらいの油を流したんですね。そして損害が七十四億。この法案は、五十億で一応船主の責任ということが制限されているわけですが、そのことと関係して、いまの大型のタンカーによれば、恐らく十万トン以上の油が流れるようなことも決して考えられないことではない、二十万トンクラスの船が横行しているわけですから。そういう点でいまの大型タンカー自身の持っているタンクの構造ですね。これは衝突した場合どの程度の事故が起こることが予想されるのか。この点についてちょっとお聞きしたいと思います。
#90
○内田政府委員 大型タンカーが事故を起こした場合に油がどのぐらい出るかという問題につきましては、その船の個々のタンクの大きさとか、あるいは船内の配置とか、あるいは損傷の位置、大きさというようなことで非常に複雑な組み合わせになりますので、一概にどのくらいの数字ですということは言い切れないと思います。ただ一つの規制といたしまして、一九七一年の油による海洋汚染防止条約。その内容は一九七三年の条約にも取り入れられておるわけでございますが、タンクサイズに関する規定が設けられておるわけでございます。この規定の中身は一定の損傷範囲を想定いたしまして、さらに幾つかの仮定を入れた計算によりまして、出てきた計算の流出量というものをある限度以下にするということで、結果的にタンクの容量とか配置を規制している内容でございます。その仮定の計算で出てきます計算の結果の限度と申しますのは、船がどんなに大きくても限度としては四万立方メートルということになります。小さい方で三万立方メートルでございます。つまり三万立方メートルから四万立方メートルの間で、ある計算式で船のデッドウェートに応じて決めているという規制内容がございます。
#91
○紺野委員 それはもうちょっと詳しく言ってください。タンクの構造ですね。何か外側タンク等いろいろ詳しいあれがあるそうですか……。
#92
○内田政府委員 この規制の中身は、いま申しましたタンクの大きさ、配置を総合的にその船でいろいろな計算をして、全体としてのある仮定の流出値をいま申しました三万トンから四万トンの間で抑えるという規定が一つと、それからもう一つは個々のタンクの最大の大きさを抑える規定が別にございます。これは船の側面に向かうサイドの両側のタンクが三万立方メートル、それから真ん中のタンクが五万立方メートルということになっております。
#93
○紺野委員 それは一個一個の大きさがですか。――そうですね。そうするとよく二つのところに、境界線にぽかんといって三万と三万、プラスして六万というふうなことにはどうなんですか。
#94
○内田政府委員 それがいま申し上げましたように三万、三万を直接隣接させないとかいうような船の中の配置を考えまして、そしてある仮定計算に基づいた流出油の計算結果が、先ほど申しましたように船全体として三万から四万の間に計算値を抑えるという規定が別にあるということでございます。
#95
○紺野委員 それは法律は条約ですね。団内的には実行していますか。
#96
○内田政府委員 おっしゃるとおりでございまして、この二つの内容の条約は御承知のようにいま発効しておらないわけでございますが、日本といたしましてはこの条約の基準の中身をすでにそのまま国内的には実施しておる状況でございます。
#97
○紺野委員 何で実行しているのですか。
#98
○内田政府委員 この条約の中身は船の基本設計にかかわる問題でございますので、おのずから新造船に適用せざるを得ないわけでございますが、昭和四十七年一月以降契約の船から実施しておるわけでございます。
#99
○紺野委員 それは運輸省の省令か何かですね。
#100
○内田政府委員 通達でございます。
#101
○紺野委員 そうすると、七二年一月から、そういう新造船は何隻ぐらいあって、それ以前につくられた、その意味からいけば旧式タンカーというか、その規格に当てはまらないタンカーは十万トンまたは二十万トン以上の船でどれぐらいの割合になっているのですか。
#102
○内田政府委員 これ一隻一隻非常にむずかしい計算でございまして、当たってみないとわからないわけでございますけれども、ただ機械的に二十万トン以上で申しますと、二十万デッドウエート以上のタンカーといいますと現在約八十隻ぐらい日本にあると思いますけれども、いま申しました四十七年一月一日後契約で現在動いておる船というのは恐らくその約一割だと思います。
 なお、それ以前の船につきましては、先ほど御指摘がありました個々のタンク、つまり五万トン、三万トンという個々のタンクの問題は、これは見ればすぐわかるわけでございますけれども、大部分の船がそれ以下になっておるというふうに記憶しております。
#103
○紺野委員 一割だけがそういう新しい規定に基づいているものと見られる、九〇%は以前からのはっきりしないものでつくられているというふうに言えるわけですね。
#104
○内田政府委員 残りの船につきますと、先ほど申しましたように検討してみなければわからないわけでございますけれども、五万トン、三万トンという個々のタンクの大きさはほとんど大部分がそれ以下になっているというふうに承知しております。
#105
○紺野委員 ところが日石丸は四万トン台のあれだというのじゃないですか、一個のタンクは。
#106
○内田政府委員 これは先ほどお話のありましたように、三十七万トンの船でございますので、たしかセンタータンクが四万五千トン、ウイングタンクが四万トンということでございます。
#107
○紺野委員 それで結局そういう実態から見て、要するに三万トンは出るというような構造が全部に共通していると見ていいですね。
 それで、もう一つ聞きたいことは、シンガポール海峡のところで土佐丸が真っ二つに割れて沈んだわけですが、この土佐丸のトン数とそのタンクの構造はどうですか。
#108
○内田政府委員 土佐丸のデッドウエートは七万三千百五十トンでございます。それから個々のタンクの最大のタンクは一万三千六百立方メートルでございます。
#109
○紺野委員 それで、私はこういうことが成り立つのじゃないかと思うのです。一つは水島の汚染、これは一つの実例です。これは船ではありませんでしたが、陸上タンクからの流出が海上に行ったものは九千キロリットルと言われているのですね。九千ないし一万と言われているのです。そうすると、一万ないし九千キロリットルの油が瀬戸内海でああいうふうに流れた場合に、補償額は現在まですでに二百五十億ぐらい、実際に要求とそれから妥結したものだけでも大体その線のあたりにいっているわけです。そうすると、こういう大型タンカーが実際に衝突をして、七一年の条約等々で言っているだけではなくて、四万トンでとめよう、仮に四万トンでとめた場合でも、これが所によっては全く二百五十億以上の損害を引き起こすということで、ある意味では水島がそれを証明していると考えられるのですね。
 それから、ぶつかってただ外側のタンクが二つほど壊れたということだけじゃなくて、土佐丸式にぐあい悪く二つに割れてしまうということになれば真ん中の五万トンも切れるということもあり得るわけで、現在の巨大なタンカーの横行がはらんでいる危険というものは、この条約と法案によって五十億一さらに国際基金で百八億、総会の決議によって二百十六億というふうに上限が、責任制限がされているわけですけれども、実際の損害がそれよりはみ出す可能性があるんじゃないかということなんです。
    〔佐藤(守)委員長代理退席、委員長着席〕
それについてどうですか。そういう点から言ってこの条約そのものの上限がやはり低目に――もちろんトリー・キャニオン時代とは違って、いまの条件と今後の展望から見ての話でありますけれども、これは限度が低く押さえられていると思いますが、どうですか。
#110
○薗村政府委員 いま先生御指摘のように万が一大変な事故ということを考えたらいろいろな場合が想定されると思うのでございますけれども、日本のPIの支払い関係の実績を見てみますと、最近、昭和四十九年の例でとりますと、支払い件数百二十三件ございますが、その油濁賠償の平均額が二百十九万六千円でございます。それから一番大きい賠償額で七千九百万円でございます。本法で制限限度を設けておりますトン当たり四万八千円を超すと見られるのは一件だけでございます。これが四十九年の例でございます。
 それから、この法律案によりまして責任を過失責任から無過失責任にして、船舶所有者に、事故を起こさないということを、その責任を事前に十分痛感きせるということもこの法律案のねらいの一つでございますし、当然強制保険の制度ということで、二千デッドウエート以上の船は強制保険を掛けなければ国際航海に従事できないことにいたしますし、先ほど先生からもお話ございましたけれども、船主の負担限度は五十億円でございますが、万一それを上回った場合には国際基金という国際条約に基づく国際機関を用意をして百八億円まで被害者の損害を補償しよう、さらに総会の決議によってそれを二百十六億円まで上げることも用意しておこうということでございますので、もちろんジュリアナ号からかなりの時期はたっておりますけれども、六九年にできた当時の事情と現在とはそんなに違っておりませんので、もちろん防除に対する技術も向上しなければなりませんし、また先ほどから申し上げましたようなタンカーの一つ一つの容量を規制するということによって被害を最小限度にとどめるということも必要でございますが、現在、一まず二百十六億円まで用意しておくことで対処できるのではないかということが国際的に考えられている見方でございます。
#111
○紺野委員 それで、百八億から二百十六億までやる場合には特に総会の決議を必要とするとなっていますね。これは手続その他から見てなかなかめんどうくさくて、日本の表決票は一票ですか、こういうところで、水島規模の災害一つを考えてもこれが非常に実勢に合わないと私思うのですけれども、果たしてスムーズにそういうものが出せるものかどうか、どうですか。
#112
○薗村政府委員 先生御指摘のように、総会では四分の三の多数決で基金としての補償額を上げることを議決するという条約の内容になっております。もちろんこれは国際的に見ていまのところ通常は百八億円まで、また必要があったら二百十六億円までということを用意するということが国際的に合意されているわけですけれども、もちろんその手続が煩瑣だということはありますけれども、もし国際的にそういう事故が本当に出現をして、国際基金がこれから働き出すわけですけれども、実際そういった高額の補償を被害者に向かって国際基金として負担しなければならないというような事例が出てくるということが通例の事情として国際的に出てきたら、それは国際的な基金の総会で議決を得るということを国際的に認められるような事態だと思いますが、いまのところは百八億円までの通常の補償規定を用意しておくということ、そのために必要な基金の拠出を求めておくということ、それから総会の決議によってそれを倍額まで広げられるようにしておくことということで十分であるという国際的な合意がなされておる現状でございます。
#113
○紺野委員 それで、結局百八億以上、非常にむずかしいだろうという印象を受けますね。そういう点でこの法案自身が、事実日本の水島事故その他から見れば日本としていろいろ考えなければいけない点が多々あるというふうに感じます。
 これは今後の大きな問題ですが、もう一つこういう点から見ても、つまり大きな事故が起こる可能性のある大型タンカーの航行規制ということが、瀬戸内のように一発起これば、今度の赤潮にも影響が云々されておりますけれども、はかり知れないような汚染になるわけですね。そういう点で大型タンカーの航行規制についてこれとの関連で何か政府は考えているかどうか、これを大臣からお話を聞きたいと思うのです。
#114
○寺井政府委員 先生御指摘の大型タンカーの航行規制ということをこれとの関係で直接考えておるかという点でございますが、この問題とは関係なく瀬戸内海とか東京湾とか船が非常に混雑いたしますようなところでは海上交通安全法を適用いたしまして、航法を遵守させるということは当然でございますが、そのほか特に大型タンカー等につきましては、入港予定時刻を事前に通知させまして、船舶の通航状態等を勘案して、場合によっては時刻の調整を行う、あるいは航路内を航行する場合の速力の制限を行うあるいは視界の悪いときには航行を停止せしめる、また、夜間航行も制限をいたす、こうしたことをやりますほか進路警戒船をつけまして運航の安全に万全な手配を考えておりますし、先ほども出ましたが、ふなれな船長にはパイロットをとるようにという指導などいたしまして、こういう湾内の航行の安全について指導をやっておる次第でございます。
#115
○紺野委員 では、そういう第一問関係のことを終わりまして、とにかくこの法案については、大型タンカーの事故が起きないような安全規制、これを充実するということがどうしても必要だと思います。
 それから保険料のことですけれども、たとえば一万トンクラス、十万トンクラス、二十万トンクラスの保険料はそれぞれどういう方式で大体どれくらいのものが必要なのか、ちょっとお聞かせいただきたいと思います。
#116
○薗村政府委員 現在PI保険に掛けております実例で申しますと、先に総トン数で申し上げさせていただきたいと思いますが、十三万三千総トンの船が保険金額として無制限の、アンリミテッドというのですが、無制限の保険金額をもらえるような保険を掛けたときに、年間のPI保険料は九百四十四万三千円、船費に占める割合が〇・四二%、それから七万一千三百トン、これもグロストンでございますが、これが無制限の保険金額の保険契約を結んだときに、年間の保険料が五百二十万四千円、船費に占める比率が〇・三二%、それから小型になりまして九百九十九トン、これが三十五億の保険金額を掛けますと八十七万八千円、船費に占める比率が〇・五八%でございます。
#117
○紺野委員 そうすると、この制度が導入された場合、それより上がるのですか下がるのですか。
#118
○薗村政府委員 実は、一九六九年条約が本年の六月十九日に世界的に発効するということでございます。日本もそれにおくれないで入りたいということで、条約ないし法律案の御審議をお願いしているわけですが、世界じゅうで一九六九年条約が稼働しましたときに保険がどうなるだろうかというのは、いまのところ新制度でございますので完全にはっきりはしておりません。しかし、現在それぞれ日本のPI保険なりイギリスのPI保険なりで掛けておる保険と大差ないものになるという見通しを持っております。したがって、先ほど申し上げた金額で御判断願って大体いいのではないかと思います。
#119
○紺野委員 一点。五十億で責任が制限されておりますね。そうすると、無制限ということでいまPIで計算されているものよりもずっと下がるということはないですか、大きいところは。
#120
○薗村政府委員 現在のPI保険でも無制限と申しますが、そのうちの油濁の賠償部分だけをとりますと一この四月からの制度ですが、二千五百万ドル、したがって、日本円で七十五億円で頭打ち、たしかこの三月までは二千万ドルで六十億円ということでありましたが、これは油濁部分については頭打ちという制度はございます。それから今度は油濁については、船主の責任は一応五十億円ということで頭打ちになりますけれども、この法案にも盛られておりますように、五十億円を超えて被害者の救済に不十分な場合には、被害者の方から国際基金にその補償を求めることができるという制度になっておりますので、心配はないということでございます。
#121
○紺野委員 特に五十億で切っているということから、要するに大型の二十万トンクラスとかいうところで起こり得るいろいろの事故と関連すると、相対的には保険料がずっと安くなるということはありませんか。
#122
○薗村政府委員 保険料は、油濁事故だけじゃなくてPIは第三者に与える損害補償の面でその賠償責任を全うするための保険ということになっておりますので、油濁とそれ以外の保険関係を含めて保険料が決められておるということでございまして、特にそういった相違はないと思います。(紺野委員「油濁については」と呼ぶ)油濁については大型船は七十五億で頭打ち、小型船の場合ももちろん七十五億で頭打ちということですが、大型の場合だけが制限にひっかかるというような点ではございますけれども、またほかの事故の面でいろいろな事故率、危険負担率というものを総合勘案しなければ、それだけの面で保険料の多寡というのはちょっと論議しにくいと思います。
#123
○紺野委員 ちょっとはっきりしないですね。要するに、油濁については五十億で切っているわけだから、したがって、油濁関係の保険料についてはやはりいままでよりも大きな船の方は安くなる関係になるだろうということなんです。
#124
○薗村政府委員 実はこの五十億円に限定されるという責任の制限の問題というのは、まずは船舶所有者に故意、過失があったらこの責任制限の制度は利用できないというような限定がございます。それから、PI保険というのは世界じゅうをカバーするような保険になっておりますので、今後非締約国に行きまして非締約国の領域内で事故を起こしました場合には、やはりその五十億に制限されるという問題が起こってきません。したがって、現在のところ六九年条約が働いてきましても、油濁の面で特に保険料負担が変わるということはない。要するに、責任制限が働くことはその場合の限定もございますし、その土地の限定もございますので、一概にはその面だけで保険料の多寡を言うことはできないということです。
#125
○紺野委員 不明確だと思います。大きな何十万トンのタンカーを持つようなところでの、保険料その他はまだ決まっていないようですけれども、それは五十億の賠償限度という点から見ていまよでより切り下げられているか低くなるのじゃないかと思います。
 それから、こっちの方は賠償責任を船舶所有者に制限しておりますね。ところが、船舶の所有者等の責任の制限に関する法律というもう一つの国際条約に基づく法務委員会にかかる方には、船主だけじゃなくて賃借人、傭船者並びに法人のこれらの無限責任社員、これらは賠償責任を持っているというふうになっているわけですけれども、油濁に関してだけは船舶所有者だけに制限しているのですね。そうでしょう。それはどういうわけでしょうか、違いは。
#126
○薗村政府委員 先生いまお話ございましたように、一九五七年条約では所有者等ということで所有者以外の人もその責任を負うようなかっこうになっておるわけでございます。ただ、この所有者等の範囲がどの程度損害賠償の責任者として責任を持つかということについてはいろいろ学説もございますし、裁判の結果もございまして、国際的にも国内的にも不分明な点がございます。そこで、一九六九年条約の油濁損害の条約ができ上がりますときに、これはもう船舶所有者に一元的に責任を負わせた方がその責任の帰属がはっきりするということで、船舶所有者に集中をしたという経緯でございます。
#127
○紺野委員 問題なのは、日本の場合、この前にもあなたに匿いたけれども、便宜置籍船の場合ですね。これを用船している多くの会社――三光汽船はその最たるものと言われておりますが、こういう便宜置籍船は多くの場合ペーパー会社だと言われているのですね。そうすると、この船舶所有者にだけ制限していろいろ交渉しなければいけないというときに、このペーパー会社の便宜置籍船を相手にやるということは、実際上幽霊と相談するようなことにならないかということなんです。いままでの場合、ジュリアナ号はリベリア船ですね。これは用船者のシェルが実際の交渉に当たった。それから第十雄洋丸がパシフィックアリス号と衝突をした。あのときアリス号は綱材を持っていたわけですが、三光汽船がたしかこれの用船者で、いろいろ折衝に当たったのですね。ですから、今後こういう事故が起こった場合に、船主だけに限定した場合に、そういう用船者は関係ないということになると、これは引っ込む。そうすると、ペーパー会社のような船主とどうしてうまく交渉できるか、この点どうですか。
#128
○薗村政府委員 まず最初に、便宜置籍船と申しましても、一般船舶と同じように必ず損害賠償責任保険、PI保険に加入することが世界の海事関係者の常識となっておりまして、未加入のままでは用船市場での引き合いの対象にならないということでございますから、この保険が十分賠償能力に役立ち得るという前提が一つございます。
 それから、便宜置籍船の船主の実態が不明確ではないかという御指摘については、いわゆるペーパーカンパニーと一口に言われますけれども、ペーパーカンパニーであっても必ず当該船主の代理人としてその用船契約だとかマンニングの業務とか、いわゆる船主業務をかわって行う者がおりますので、事故が起きた場合の示談交渉においてもその者が船主の代理人として、交渉の相手方として役に立つということで、支障がないのが実情でございます。したがって、便宜置籍船であるからということで特に被害者保護の観点から問題はないということは一般的に私は申し上げられると思います。
 さらに、今度の法案では、便宜置籍国船を含めまして二千重量トンを超えるタンカーについては、責任限度額以上の責任保険を保持することが義務として強制されております。しかも、仮にその船主、また先ほど申し上げました代理人が示談に当たって交渉に誠意を示さないという場合には、被害者が直接その保険者に請求することが認められておるということは本法の進歩だと思います。
 それからさらに加えて、万一その船主に賠償の資力がない場合、あるいはまた賠償額が責任限度額を先ほどのように超えるという場合が生じたち、これは国際基金が被害者に補償をしようということになっておるので、便宜置籍船一般論としてではなくて、本法の特別な国際的な合意に基づく進歩としても問題は起こらないというふうに私どもは考えております。
#129
○紺野委員 そうすると、いままで運輸省は、便宜置籍船はよその国のものだから監督権がないということで、これについては一切ノータッチみたいなことを答弁されておったわけですが、今度はこの法案が出てくると、ペーパー会社が実体をあらわすように、交渉無能力者ではなしに、能力者として立ちあらわれるようにというふうな点の積極的な行政的な配慮ですね、そういう面の強化をやりますか。
#130
○薗村政府委員 私申し上げておりますのは、やはりこの損害賠償というような不法行為の責任関係に基づいて、民事関係でございますので、被害者がまずは所有者に向かってその責任を追及していくということでありまして、実情としてペーパーカンパニーということで一言にして言われて、どこにも実体がないというようなことが言われておるのに対しまして、それは船主の代理人として別にそういった事故関係を処理するというような代理人がちゃんとおるということを申し上げておるので、さらにまた本法の特別な関係としても心配がないということを御説明したつもりでございます。
#131
○紺野委員 そうすると、本法が施行された場合、当然そういう実際的な関係が起こるわけで、その場合にこういう便宜置籍船と言われるジュリアナ号のようなものですね、これはシェルがいままでやっておったけれども、今度シェルにかわってそういった話し合いができるように行政的なやはり責任と保障がなければいけないと思うのですね。これがわれわれがここで審議をし、もし実行するということになった場合、そういういままで用船者がしていたようなことを今度は実際に政府の方でもあっせんするとかそういうことができるように保障というものを考えなければ、法はできたけれども、責任はございませんというようなことにならないという点で、もっと積極的にこれらのいわゆる外国船と言われあるいは用船とされているような船の問題についての行政のあり方というものを改善する必要があると私は思うのですが、それに対してはどうですか。
#132
○薗村政府委員 先般マラッカ、シンガポールで事故を起こしました土佐丸の相手方であったカクタスクイーンなどの例は、日本の便宜置籍船でありまして、日正汽船の社長とその便宜置籍の会社の社長が同一であるというような場合でありまして、こういった例については、事故の補償関係についても当然その船主のそういった代理の業務をやっているであろう日正汽船に向かって、事故賠償について十分な配慮をするようにというようなことをわれわれは指導はしたいと思います。ただ全くリベリアの国の用船を日本の船主なり日本の荷主がしているときに、それに向かって日本の政府がどうこうするということはできないということでございます。
#133
○紺野委員 それはやはり責任があると思います。日本の法律でこういうふうに関連が出てきたとすれば、いままでのようにリベリアだからわれわれは何もございませんというふうな態度は無責任と言わなければならないと思いますね。
 それから私は、時間がありませんから、わが梅田委員もここで聞いたわけですが、要するに公海におけるいろいろの事故あるいは公海における油濁の事故というものが、五十マイル以上はこれに適用されないというか、海洋汚染防止法の方では五十マイル以上離れたところでやれば一万五千分の一ならよろしいということになっておりますね。そういう点がありますために、実際上公海における海洋の汚染が非常にひどくなっている。まずさしあたって日本にとって重要なのは廃油ボールの汚染ですけれども、この廃油ボールの日本全体の海域についての汚染はどういうふうになっているのか、簡単に知らしていただきたいと思います。
#134
○寺井政府委員 廃油ボールにつきましては、四十六年と四十八年の二回にわたりましてわが国の沿岸の漂着、漂流状態を調査いたしました。この調査によりますと、最近やや減少の傾向にありますけれども、南西諸島のほぼ全島に漂着をしております。またそのほか南九州から伊豆諸島、鹿島灘にかけての太平洋沿岸にも漂着が見られます。あるいは三陸沿岸、日本海沿岸にもところどころ漂着しておる状態がございます。それで、沖合いでネットを引いて調査をいたしましても、黒潮や対馬海流に乗ってかなり微細な油塊が漂着していることが確認されております。
#135
○紺野委員 問題は、この法律はそういうところまでは手が届かないようになっているようですが、要するに、原因者不明を含めた被害、廃油ボールやその他等々、現実には西南の方面からずっと多発しているわけですけれども、赤潮が出たり何かしているのもいろいろいま騒がれているわけで、現実にはやはり沿岸漁民やその他に実害が与えられていると思います。そういうことで、これに対する救済措置は必要だと思うのですが、何か政府の方で考えているようですが、何か対策がありますか。
#136
○薗村政府委員 原因者不明の漁場の油濁の損害につきましては、水産庁が中心となっていろいろ関係者の間で協議を進めました結果、当面暫定的な救済措置として本年の三月三日に財団法人漁場油濁損害救済基金というものが発足をいたしまして、国、都道府県、水産団体、関連業界が応分の負担をして、救済金、防除費、漁場清掃費等に充てることとなりました。五十年度において、国の負担分は一億九千四百万円、都道府県、水産団体、関係業界の負担部分が二億七千七百万円、合計四億七千百万円、うち一億円は基金でございますが、その予算で事業を行うことにしております。
#137
○紺野委員 もう一つ今度お聞きしたいのは、たしか最近の新聞に、世界を回った人の印象記で、インド洋の状態をこういうふうに書いているのですね。インド洋はまさに油の汚染の果てしない海のようになっておったということを、最近新聞で出していた人があったと思います。これは日本が中近東から油を毎年二億七千万キロリットルぐらい持ってくるわけです。そういう、日本にとってはいわばシルクロードみたいな、油のロードになっているわけですが、そのインド洋がこのように汚染されているということで、大きな意味でわれわれが人類の海を、共通の財産である海をこのように汚しているということですね、これは何とかしなければならないんじゃないか。特に日本の場合は二億七千万キロリットル、大体二億七千万トン、世界の大体二割ぐらいの油を日本だけでやっていると言われておりますけれども、日本にとっても大きな責任があると思うのですね。
 こういうふうな汚染の関係として、いわゆるクリーニング、タンカーが運んで、帰りにクリーニングをやって、それを五十海里、外で捨ててもいいというふうなことがだんだん重なっていくということになると、こういったことが起きてくると思うのですけれども、このような汚染について何かわれわれとしても責任があるんじゃないかと思うのですけれども、その他の世界の海についても、いろいろ油全体、世界で運搬される油の総量なんかを聞かしてもらって、どういう状態なのか、どういうふうなことがなされなければならないか、こういうような点についてひとつお聞きしたいと思います。
#138
○横田説明員 お答えいたします。
 世界の海、特にインド洋を中心にいたしましてどの程度に汚れているかということにつきましては、私どもも確かな数字を持ちませんし、いまここで申し上げることはできないのでございますけれども、世界の主要国が全部協力いたしまして、これは、政府間海事協議機関でございますIMCOに、海洋汚染小委員会、海上安全委員会の中の小委員会を設けて従来から努力しているわけでございます。また、最近ではこれを海洋環境小委員会というふうに改組いたしまして、日本もこれに加わって、同じように努力を続けているわけでございます。
 こういうことで、世界の主要国、そういう各国が相協力して、それぞれの国の船舶をみずから取り締ぼっていこう、こういう努力を重ねているところでございまして、最初に申し上げましたように、細かい数字についてはちょっと承知しておりませんので、申し上げられません。
#139
○紺野委員 これについて、国連の方で、ことしからこれに対する実際的な調査をやる必要があるということで、世界の海洋汚染の実態の調査を始めるということも聞いておりますけれども、これについて、どうですか。
#140
○寺井政府委員 ユネスコの一機関でございます政府間海洋学委員会というのがありまして、ここで全世界の海洋観測システムの一環といたしまして、五十年から二カ年間、油による海洋汚染調査を行うことになっております。わが国もこれに参加することになっておりまして、このために日本沿岸で十八定線、それから廃油ボールの調査点として五十一定点を決めまして、世界共通のレベルでこの廃油ボールの状態を調査するということになっております。
#141
○紺野委員 それは海上保安庁も参加するのですね、日本から。
#142
○寺井政府委員 さようでございます。
#143
○紺野委員 どれくらいの陣容で参加するのですか。
#144
○寺井政府委員 これは当庁の警備艇、船舶を利用いたしますが、予算といたしましては六百三十万円ほどでございます。
#145
○紺野委員 ずいぶん少ない金のようですけれども、このことについては日本は大きな責任がありますからね、十六億キロリットル世界でやっているそうですか、その二割近くわれわれがやっている、関連があるわけですから、これについては、しかるべき充実した体制でもってインド洋その他の汚染の実態を明らかにして、そして共通の、われわれ人間の海に対する責任が果たせるように、もっと真剣にひとつ取り組んでもらいたいということで私の質問を終わりますけれども、そういう、少し大きな政治水準のところで、木村大臣にひとつ御答弁を願いたいと思います。
#146
○木村国務大臣 公海の汚染防止という問題、私は地球上の人類共通の問題であろうと思います。ことに、公海における汚染について、わが国の海運事業もかなりこの原因をつくっておるということも事実であろうと思います。しかも、その比率から申しますと、わが国の油の輸送量その他から考えましても、そういう意味の役割りは確かに大きいわけでございます。
 したがって、御指摘のように、公海の汚染防止についてのそういった国際機関での会議、またはそれへの参加の仕方等につきましては、当初はいま海上保安庁が申しましたような程度の予算でもって参加をいたしておりますけれども、今後この国際機関でどういうふうに問題が処理できるか、わが国も参加するわけでございますから、その推移を見ながら、わが国のこれに対するそれ相当の参加の対応は強めていく必要があるのではないか、かように思っております。
#147
○紺野委員 では、これで終わります。
#148
○木部委員長 次回は、来る六月三日午前十時理事会、十時三十分委員会を開くこととし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時三十一分散会
ソース: 国立国会図書館
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