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#1
第075回国会 商工委員会 第18号
昭和五十年五月二十八日(水曜日)
   午前十時三十三分開議
 出席委員
   委員長 山村新治郎君
   理事 塩川正十郎君 理事 田中 六助君
   理事 萩原 幸雄君 理事 前田治一郎君
   理事 武藤 嘉文君 理事 佐野  進君
   理事 中村 重光君 理事 神崎 敏雄君
      天野 公義君   稻村左近四郎君
      内田 常雄君    浦野 幸男君
      小川 平二君    近藤 鉄雄君
      塩崎  潤君    菅波  茂君
      谷川 和穗君    橋口  隆君
      八田 貞義君    林  義郎君
      深谷 隆司君    藤井 勝志君
      森下 元晴君    山崎  拓君
      石野 久男君    板川 正吾君
      加藤 清政君    加藤 清二君
      勝澤 芳雄君    上坂  昇君
      竹村 幸雄君    渡辺 三郎君
      野間 友一君    米原  昶君
      近江巳記夫君    松尾 信人君
      玉置 一徳君    宮田 早苗君
 出席国務大臣
        通商産業大臣  河本 敏夫君
 出席政府委員
        外務省条約局外
        務参事官    伊達 宗起君
        特許庁長官   齋藤 英雄君
        特許庁特許技監 大谷幸太郎君
        特許庁総務部長 三枝 英夫君
        特許庁審査第一
        部長      土谷 直敏君
        中小企業庁指導
        部長      河村 捷郎君
 委員外の出席者
        参議院議員   中尾 辰義君
        外務省国際連合
        局専門機関課長 市岡 克博君
        通商産業省機械
        情報産業局電子
        機器電機課長  鈴木  健君
        商工委員会調査
        室長      藤沼 六郎君
    ―――――――――――――
委員の異動
五月二十八日
 辞任         補欠選任
  越智 通雄君     菅波  茂君
  粕谷  茂君     林  義郎君
  小山 省二君     谷川 和穗君
  竹村 幸雄君     石野 久男君
同日
 辞任         補欠選任
  菅波  茂君     越智 通雄君
  谷川 和穗君     小山 省二君
  林  義郎君     粕谷  茂君
  石野 久男君     竹村 幸雄君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法
 律の一部を改正する法律案(桑名義治君外一名
 提出、参法第二〇号)(予)
 特許法等の一部を改正する法律案(内閣提出第
 三三号)(参議院送付)
     ――――◇―――――
#2
○山村委員長 これより会議を開きます。
 去る二十六日、予備審査のため本委員会に付託されました参議院議員桑名義治君外一名提出の私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案を議題とし、提案理由の説明を聴取いたします。発議者参議院議員中尾辰義君。
    ―――――――――――――
私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
#3
○中尾参議院議員 ただいま議題となりました私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案について、その提案理由及びその概要を御説明申し上げます。
 現行独占禁止法の究極的目的は、国民経済の民主化と一般消費者の利益を確保することであります。しかし、この目的を貫徹するためには、現行独占禁止法の規定する政策手段は余りにも無力であるという経験的事実を示している現状にあります。巨大企業の管理価格、カルテル等による物価の高騰、買い占め、売り惜しみ、商社の投機行為等の現実は、今日の経済体制そのものの矛盾を端的に示しているものと言わざるを得ません。
 今日の経済体制の基本的特色は巨大企業支配体制であります。この経済体制は人間軽視の成長第一主義により形成されたものであります。高度経済成長こそが国民の福祉を約束すると言われながら、現実は巨大企業支配体制を形成し、福祉を妨げる結果を招くに至りました。現行独占禁止法は、直接的には市場機構の機能を最大限に発揮し、経済的効率を達成しようとするものでありますが、寡占体制下において競争秩序が崩れつつある状況下では、失われた市場機能の回復に努めるとともに、市場機能の回復が困難な領域に新しい経済の公正さを求め、消費者主権の確立を図らなければなりません。巨大企業体制のもとでは、市場機構は、十分な機能を発揮するものではなく、経済的効率を達成することもなく、国民の福祉を実現するものでもありません。競争秩序の崩れ去った巨大企業体制下では、独占禁止政策は、競争秩序の回復によって経済的効率と経済的公正を実現すると同時に、市場欠落の状況下での経済的公正を実現するための新しい政策手段を持たなければなりません。
 公明党は、責任ある自由な経済活動と、その成果の公正な分配を保障する経済体制を確立するために、現行独占禁止法の目的が経済的効率と同時に経済的公正を実現し、福祉経済体制の確立に向けられなければならないと確信するものであります。市場機構が機能しなくなった巨大企業体制下では、管理価格に挑戦するため、価格構成、経理内容の公表の実現を図る必要があります。
 この改正法案は、このような観点から独占禁止政策を経済的効率と経済的公正を実現し、巨大企業体制の矛盾を克服して、真の経済民主主義を確立しようとするために提案されたものであります。
 次に、この法律案の主な内容について、その概要を御説明申し上げます。
 第一に、カルテル規制の実質的効果を確保するために、公正取引委員会にカルテル規制措置として価格引き下げ命令をする権限を与えることとしています。
 現行独占禁止法によってカルテルを破棄させても、価格引き下げ効果を伴わず、カルテル等の規制効果に国民の強い不満が示されている現状にあります。そこで、カルテル等の違法行為に基づいて形成された価格引き上げの状態を排除するために、必要に応じ六カ月の範囲内で違法行為のなされる直前の価格を超えて販売してはならない旨を命ずることができることとしています。また、経済事情の著しい変動によって違法行為のなされる直前の価格に引き下げさせることが実情に適さなくなった場合には、修正することもできることとしています。
 他方、カルテルを行った取引段階において、価格引き下げ効果が生じているにもかかわらず、なお他の取引段階において価格引き下げ効果が生じていない場合には、それら取引段階の者に対しても公正取引委員会が価格引き下げを命ずることができるようにし、さらに都道府県知事もその価格引き下げの指示をすることができるようにすることによって、価格引き下げ効果を各取引段階ごとに浸透させるよう万全の体制を整備することといたしました。この都道府県知事への権限の付与は、不当景品類及び不当表示防止法の例にならって策定されたものであります。
 第二に、現行独占禁止法の最大の欠陥とされてきた管理価格問題に対し、有効適切な規制措置をとることとしています。現行独占禁止法はいわゆる管理価格に対して、有効な規制手段を持っていません。国民が長期にわたってその有効な規制措置を求めてきたものであります。そこで、価格支配力を持ち、不当な高価格が長期にわたり維持され、一般消費者の利益を不当に害すると認める場合には、公正取引委員会がまず当該事業者に対し原価構成、経理内容の公表等の措置を命ずることとし、それでもなお価格、利益率が不当に高い場合には、当該商品の販売価格を公正取引委員会の認可とすることとし、価格の直接規制を実施する可能性を開いたものであります。
 しかし、カルテルと管理価格とを区別することは決して容易ではなく、また安易に管理価格であるとして価格の直接規制をすることは決して望ましいものではありません。最近の物価高騰の一要因がカルテルにあることは明白であり、積極的にカルテル規制を行う必要のあることは言うまでもないところであります。そのためには、巧妙に証拠を隠滅する事業者に挑戦するために経済的証拠等の情況証拠の活用をすべきことが、本法運用の重要な核心といわなければなりません。
 第三に、管理価格を形成する市場構造を変革するため、市場支配力そのものを排除するいわゆる企業分割等の措置をとることといたしました。
 具体的には、事業者が市場支配力を持っていると認められる場合には、公正取引委員会の定める排除基準に従って、企業分割等の事業再編成計画を定めさせ、その実施を命ずることができるようにすることによって、市場支配力そのものを分割して、競争的市場構造に変える措置を講ずることといたしました。
 企業分割は慎重を要することは言うまでなく、そのため市場支配力の存否の認定は、審判手続によることといたしたのであります。
 第四に、株式保有制限の規制を強化することとしました。
 現行法では、会社間の株式保有は競争制限の蓋然性がある場合に禁止されているのですが、コングロマリット的巨大企業が多数存在し、かつ株式所有による流通支配、系列支配体制の確立しつつある現状にかんがみ、新たに、競争関係の有無を問わず会社間の株式取得保有によって競争制限の可能性のある場合は、すべてこれを禁止することとし、株式取得による企業集中規制政策を一層強化することといたしました。
 他方、財閥解体後、わが国経済は巨大な金融機関を中心に企業集団化が進展し、金融支配体制が確立した現状にかんがみ、金融機関の株式保有制限の枠を現行の発行済み株式総数の一〇%から五%に変更し、これを厳しく規制することといたしました。
 第五に、合併規制の強化を図ることといたしました。合併による新日鉄の出現によって国民は経験的事実として合併規制の強化が必要であることを痛感しています。合併規制基準についても、株式保有制限の基準と同様に、競争制限の可能性のある場合には、これをすべて禁止することといたしたのであります。
 第六に、総合商社の持ち株制限をすることといたしました。
 総合商社が巨大な資金力を持ち、株式所有による企業集団の威力をほしいままに駆使し、投機行為、買い占め、系列企業への圧迫など数多くの許しがたい行為を繰り返しています。かかる実情を是正するためには、金融機関と同様に株式保有の制限の枠を五%とし、これを厳しく規制することにより、総合商社の株式保有による支配体制を打破することといたします。
 第七に、再販売価格維持行為はいわば縦のカルテルであり、流通段階の競争を失わせ、物価上昇の一因といえるため、著作物を除きこれをすべて禁止することとし、さらにカルテルと同様の制裁を課すことによって、その制限を強化することといたしました。
 第八に、価格協定に対しても、緊急停止命令を出せるよう明文化し、価格協定によって一般消費者が回復しがたい不利益をこうむらないよう法改正を行うことといたしました。今日まで一価格協定に対しては、緊急停止命令を申し立てることができないとされてきましたが、価格協定によって受ける需要者、一般消費者の不利益は償うことができません。そのため一般消費者等に対する著しい損失を避けるためにも、緊急停止命令を出させるようにいたしたのであります。
 第九に、不況カルテルに関する適用除外要件を厳格にし、認可に当たって国民の監視体制を強化することといたしました。
 景気循環的不況カルテルを認めているのは、先進工業国の中ではわが国だけであるといわれ、これが物価上昇の一因となってきたことは鉄鋼の不況カルテルにより証明されているところであります。現行法の不況カルテルの認可要件を「長期にわたりその平均生産費を下回り、かつ、当該事業者の事業の継続が著しく困難となる」場合にだけ認めるよう改正し、かつ、その商品の価格構成とその経理内容を公表することといたしました。
 第十に、独占禁止法違反者に対する制裁措置を厳格化し、これを強化することといたしました。
 現代の経済社会における最も巧妙にして悪質な犯罪は、独占禁止法違反行為であると言っても過言ではありません。数多くの違反行為を繰り返す企業の少なくない実情にかんがみ、その制裁措置を厳しくする必要のあることは国民の声というべきものであります。
 そのため、行政措置として、公正取引委員会が課徴金の納付の命令を出せるようにし、かつ刑罰規定も私的独占、カルテルを行った者に対しては、十年以下の懲役または五百万円以下の罰金とし、再販売価格維持行為を行った者に対しては、三年以下の懲役または二百万円以下の罰金に処することといたしました。また、監督者をも処罰することといたしたのであります。
 他方、刑事告発を容易ならしめるため、一般消費者にもその道を開くことといたしました。
 第十一に、独占禁止法の運用に民意を反映させるため、学識経験者、一般消費者により構成される公正取引調査会を設置し、独占禁止法の運用等について意見を述べる制度を確立することといたしました。
 以上が本改正法案の主な内容であります。
 この改正法案を運用するためには、公正取引委員会及びその事務局が抜本的に強化されなければなりません。また、独占禁止法違反行為による民事損害賠償制度についても、集団訴訟制度の確立が急務でありますが、消費者訴訟制度は公害訴訟等をも含め、新しい民事訴訟制度の確立を志向しなければならないと考えますので、本改正法案には含めなかったものであります。
 独占禁止法制定以来、今日まで、独占禁止政策弱体化の改正だけが行われてきました。物価問題の緊急な解決だけではなく、巨大企業体制下における経済民主主義のあり方そのものが問われている今日、独占禁止政策強化の本改正法案につき、何とぞ慎重に御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。
#4
○山村委員長 以上で提案理由の説明は終わりました。
     ――――◇―――――
#5
○山村委員長 次に、参議院から送付されました内閣提出、特許法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。勝澤芳雄君。
#6
○勝澤委員 工業所有権制度の国際化の進展についてお伺いいたしますが、工業所有権制度は、工業所有権の保護に関するパリ条約に基礎を置いていることからもわかるように、従来からきわめて国際的性格の強い制度であることは周知のとおりでありますが、最近の工業所有権制度をめぐる国際協調の動きは非常に活発化しているようであり、世界知的所有権機関の設立、特許協力条約、商標登録条約等の成立等もまことに目覚ましいものがあります。今回の法律の改正の主要な目的の中にも、このような工業所有権制度の国際化の進展に対処することが含まれているようでありますが、まず工業所有権制度をめぐる最近の国際的な動向についてお伺いをいたします。
#7
○齋藤(英)政府委員 お答えいたします。
 いま先生からお話がございましたように、工業所有権の国際関係につきましては、日本は一八九九年パリ条約に加盟をいたしまして、以後それに沿って国際化、技術交流に対処いたしてまいったわけでございます。最近、特に経済の国際化、技術交流が非常に進んでまいりまして、かつ技術情報の量あるいはその密度というものも非常に濃くなってまいりました。貿易の量が非常に多くなったことも言うまでもございません。そういう情勢に対処いたしまして、工業所有権関係におきましても、昨年の十二月にございました臨時国会では、パリ条約のストックホルム改正につきまして、あるいはWIPO、世界知的所有権機関の設立の条約に関しましても国会の御承認をいただいた次第でございます。したがいまして、現在の工業所有権の国際問題につきましての中心は、WIPOと申しますか、世界知的所有権機関を中心にして展開いたしておるわけでございます。
 それから、そのWIPOはジュネーブにございますが、そこで各種の会議が絶えず開かれて、いろいろ世界共通の問題につきまして議論しておるわけでございますが、その中で特に顕著に見られますのは、まず特許協力条約でございます。これは先ほどお話もございましたように、一九七〇年、昭和四十五年の六月に締結をされまして、わが国も署名を行っております。したがいまして、これは将来、一九七八年ごろと一応予想されておりますが、そのころに条約が発効するのではあるまいかというふうに考えておりまして、私どももこれに即応するようにいろいろ努力をいたしておるわけでございます。
 第二番目は、商標登録条約でございます。いわゆるTRTと言われておるものでございます。これは一九七三年、すなわち昭和四十八年にウイーンで締結をされたものでございまして、国際登録を行いまして、これを一定の条件のもとに各国の国内登録と同一の効果を持たせるような、そういう内容を持った条約でございますが、わが国は各種の問題等を控えておりますので、現在まだ署名いたしておりませんが、いずれ商標登録条約が発効の暁に、それに間に合うように国内体制も整備いたしてまいりたいと考えておる次第でございます。
 第三番目には、国際特許分類協定というのがございます。いわゆるIPCと略称いたしておりますが、特許分類を国際的に統一して、世界各国の特許関係の文献を統一的に分類し、整理するというふうなことでございまして、一九七一年、すなわち昭和四十六年にこれは締結をされまして、わが国も署名を行っております。これは本年の秋十月ごろ効力を発生するということが一応予定をされておるわけでございます。
 なおこれ以外に、昨日も御質問がございましたが、開発途上国をめぐる一連の動きがございます。UNCTADを中心といたします、あるいはWIPOを中心といたしますいろいろな動きがございまして、パリ条約につきましても開発途上国等の意見も考慮に入れた上の改正の会議が開かれつつございます。本年の二月に実はパリ条約改正の第一回の会議が開かれたというふうなことでございまして、将来こういう問題はますます国際的な関係の密接さを加えてくるというふうに思われますので、私どもそれに対処するように努力をするつもりでございます。
#8
○勝澤委員 わが国の国際化への対応の仕方でありますけれども、いつもおくれぎみで、昨年の臨時国会のストックホルムの改正パリ条約にしても、すでに一九六七年に成立しておったものでありまして、こういうように国際交流が盛んになっている時代に、わが国の国際化への対応がおくれているということは国際的にも大変問題があると思うのですが、一体なぜおくれているのでしょうか。その理由あるいは今後はそれについてどう対処していくのか、そういう点についてお伺いいたします。
#9
○齋藤(英)政府委員 一九六七年にパリ条約のストックホルム改正が署名をされましたこと、お話しのとおりでございまして、わが国はこれに対応する各種の施策、内容をいろいろ検討してまいりましたが、たまたまその当時特許関係におきましては、今回御審議をいただいております物質特許あるいは多項制の問題につきまして小委員会が進行しておる最中でございまして、そういう関係と、それから商標関係につきましても審議が進められておる状況でございましたので、これをあわせまして国内法の整備が行われなければやはり条約について国会の御承認をいただくというわけにもなかなかまいりません。したがいまして、それらをあわせまして今改正案の中に実は盛りまして、法律の御承認をお願いしておるわけでございます。したがいまして、国内法の整備ということもございまして、その辺の問題で国会の御承認ということを提案する時期が多少おくれたというのが実情でございます。
 それから、今後の問題でございますが、私ども先ほど申し上げましたように、PCTにつきましては一九七八年ごろ大体発効条件を満たすのではあるまいかと考えられます。したがいまして、それに間に合うように国内の審査体制あるいは書類の整備体制というものを、年次計画をつくりまして現在進めておる次第でございます。
 それから、国際特許分類、いわゆるIPC協定につきましては、すでに私どもの方の公開公報、公告公報には国際特許分類が付与されておりまして、国内的にはほぼその体制が整っております。したがいまして、これはできるだけ早い機会に国会の御承認をいただくように私どもは関係各省と協議をしているところでございます。
 それから、TRT、商標登録条約につきましては、いわゆるPCTの発効よりもさらにおくれるであろうというのが一般的な国際的な観測でございます。したがいまして、これは一、二年でございますか、あるいはもう少しおくれますか、各国の動向を見ないとわかりませんが、そういうこともございますので、やはりそれに間に合うように国内の体制を整えたい。その国内の体制を整えます一環といたしまして、今回の法律改正の御審議もお願いしておる次第でございます。
#10
○勝澤委員 次に、特許行政の現状についてお伺いいたしますが、わが国の工業所有権制度も発足以来九十年を迎えると言われておりますが、近年出願件数が非常に増加したためにその処理が一般に長期間を要していることから、迅速な処理をしてもらいたいという要望が強いわけでございます。
 そこで、特許、実用新案、意匠及び商標の出願とその処理の状況はどういうふうになっているのかという点、そしてなお、出願してから権利がもらえるまでに何年もかかるというのでは、こういう技術革新が激しく商品のライフサイクルが短くなっている時代の国民の要望にこたえられないと考えられるので、特許庁はこれまでこれらの出願の処理の迅速化のためにどのような措置を講じてきたのか、こういう二つの点についてお伺いいたします。
#11
○齋藤(英)政府委員 最初に御質問ございましたのは、現在の出願状況及びそれの処理状況あるいは処理期間の問題、これはどうであろうか、こういう御質問でございます。
 特許、実用新案につきましては、四十五年度から四十九年度まででございますが、出願の伸びを平均いたしますと、おおむね六・三%でございます。昭和四十九年度におきましては、出願の総数は三十一万六千余でございました。そのうち、四十六年一月一日から新審査請求制度になりましたが、審査請求がありましたものは、四十九年度中では約十四万件でございます。
 それで、未処理案というのは、四十九年度末で五十三万件余でございます。これは四十五年当時は八十三万二千件程度ございました。それが四十九年度末では五十三万というふうに約三十万程度減少しておるというのが現状でございます。
 これに要します要処理期間でございますが、どのくらいかかるかということでございますが、これは昨日もお話し申し上げたのでございますが、私ども一つの目安といたしまして、未処理案件を分母といたしまして当該年度の処理件数を分子にいたしまして、それで割ったものを一応要処理期間と俗称しております。そういうことでお答えをいたしますと、四十九年度は二年十カ月ということに相なるわけでございます。これは必ずしも実際の平均の処理期間をあらわしたものではございませんけれども、一応のメルクマールとしてはそういうことでございます。
 それから二番目に、意匠でございますが、意匠は、四十五年度から四十九年度までの過去五年間の平均の伸びは二・五%でございます。四十九年度について申し上げますと、出願が約四万七千五百件余、処理が五万二千八百件余でございまして、未処理案件が十一万六千件余でございました。
 それで、先ほど申し上げました要処理期間、そういう意味の要処理期間でございますが、それで申し上げますと、二年二カ月ということになっております。これは四十七年度におきましては二年十カ月程度でございまして、未処理案件がおおむね十二万三千件余でございましたが、四十九年度はそれが先ほど申し上げましたように十一万六千であり、要処理期間が二年二カ月である、こういう現状でございます。
 三番目に商標でございますが、商標につきましては、過去五年間、先ほどと同じ年度でございますが、過去五カ年間に六・六%の伸び率でございます。それで、これを四十九年度について申し上げますと、出願の総数は十六万一千七百件でございまして、当該年度で処理をいたしました件数が十四万件余でございました。未処理案件は五十万二千件余でございます。これに要します先ほどの要処理期間と俗称しておりますものは、三年七カ月ということでございます。
 以上が出願なり処理の現状でございます。
 それに対して、それでは特許庁がどういうことをやったか、こういうことでございますが、私どもの方で第一に考えまして処理をいたしましたのは、何といいましても審査の処理は審査官の数によりまして左右されるものでございます。たとえば特許、実用新案について申し上げますと、昭和四十七年度におきまして審査官の数は八百十二人でございましたが、昭和四十九年度は八百七十人、五十年度に至りまして八百八十人程度に相なるかと思いますが、人員の増加に努めているわけでございます。以下意匠、商標ともございますが、審査官の増員ということでございます。
 それから二番目に、私どもが考えておりますのは、これは出願から審査あるいは公報に出る、公告して最後に登録するという一連のものがございますので、当然これは事務系職員の増員ということも私どもは力を入れて考えざるを得ない、こういうことでございまして、昭和五十年度におきましては、おおむね三十名程度の事務系職員の増員を図っておるということでございます。
 以上が人員の点でございますが、予算関係につきましては、私どもは出願から最後の登録に至りますまでの間につきまして、単純労務につきましてはコンピューターを入れて機械化をするということを考えておりまして、出願段階なりあるいは商標の審査段階ではある程度の段階まで進んできております。
 そういうふうなことをいろいろ努力をいたしまして審査期間を短縮いたそうと考えておりますが、何分それだけではいまだ十分でないということがございますし、特に商標の出願が非常に多いということも考えまして今回の法律の改正もお願いをいたしておる、こういう次第でございます。
#12
○勝澤委員 事務の能率化なり機械化なりについてもいろいろ努力をされておるようでありますけれども、法案審議のたびに言われておる問題で、特許庁の庁舎が二つに分かれておる、早く一つにして能率を向上させるべきだという話がありますけれども、これは大体いつ一緒になって能率あるいは環境の整備がされるのですか。
 それから、もう一つの問題は、これも法案審議のたびに言われ、このたび参議院の附帯決議にも出されておりますけれども、審査官あるいは審判官等の待遇の改善あるいは研修の強化、こういうような問題でありますけれども、この二つの問題についての取り組みはどうなっておるかという点についてお伺いいたします。
#13
○齋藤(英)政府委員 庁舎の問題につきましては、まことに遺憾ながら現在特許庁の本庁舎と通産省の本館というふうに二分されていることはお話しのとおりでございまして、これがためにいろいろ非常に不便な点がございます。したがいまして、私どもは、これは建設省の予算に計上されますが、四十八年以降毎年いろいろ予算要求をいたしたいのでございますけれども、当時の経済環境等によりましていまだ実現するに至っておりません。これは現在通産省の本館につきまして第三期工事が行われる、こういう予算要求をしておるわけでございますけれども、私どもは現在の環境状況は決してよくないと考えますので、これをできるだけ早く統合するように予算関係につきまして努力をいたしたいと思います。今後、私どもこの統合は非常に熱望しておりますので、できるだけ早く実現するように関係方面に強力に働きかけたい、こういうふうに思っております。
 それから、審査官、審判官の待遇の問題でございますが、これは一つは職員の環境の整備の問題でございまして、環境整備は過去三年、四年ぐらいに比べまして予算にして三倍ぐらいの予算を私どもの方は獲得をいたして整備に努めております。それからなお、その上に、審査官、審判官、これは一般職員もそうでございますけれども、いわゆる定数問題というのがございますが、これにつきましても格段の努力をいたしておるつもりでございます。
#14
○勝澤委員 次に、四十五年の改正法についての評価でありますけれども、この四十五年の改正法律は、特許、実用新案の出願の急増と処理期間の著しい長期化に対応するため出願の早期公開制、審査請求制度等を導入することとしたわけでありますが、十分な効果を上げていると言えるのかどうなのかという点が第一。
    〔委員長退席、萩原委員長代理着席〕
 第二に、出願の早期公開制の採用によって膨大な量の特許情報が公開されることになった反面、これを効果的に利用するためには分類、整理がきっちり行われ、かつ検索が容易にできるような条件が整備されなければならないわけでありますが、情報の洪水に押し流されることにもなりかねないような状態ですけれども、これについてどういう対策が講ぜられておるのか。
 第三に、日本特許情報センターは、新規性調査機関として膨大な特許情報の有効利用を促進するという機能を持っているはずですが、その活動はいまだ不十分だと言わざるを得ないわけでありまして、その点につきましては参議院のこのたびの附帯決議にもその強化拡充が言われておるようでありますけれども、これらについて特許庁としては今後どのようにしていくのか、この三つの点についてお伺いいたします。
#15
○齋藤(英)政府委員 第一点の、四十六年一月一日から発効しましたいわゆる私どもが新法と呼んでおりますものの効果でございますが、先ほど出願件数あるいは未処理件数のところで申し上げましたように、四十五年度当時は未処理案件が八十三万二千件余ございまして、先ほど申しましたような計算で言います要処理期間で五年三カ月ということになっておりましたものが、四十九年度では未処理案件が五十三万件余で二年十カ月というふうに申し上げましたが、そういうふうに短縮をいたしております。これは人員の増加その他各種の改善もございますが、いわゆる審査請求制度をとったということの一つの効果ではあるまいかと私どもは考えている次第でございます。
 それから二番目に、しからばその公報につきまして非常に情報量が多くなってくるにつれて分類をどういうふうにしているかというお尋ねだと思いますが、分類につきましては日本特許分類と国際特許分類と両方ございますが、日本特許分類は前からもちろん付与しておりますが、国際特許分類、いわゆるIPCというものにつきましては、公告公報につきましては四十八年十月から、公開公報につきましては五十年の三月半ばから、最終けたまで、分類、再分類で五万数千の分類になりますが、それまで付与をいたしております。なお、最後の御質問と関係いたしますけれども、いわゆる日本特許情報センター、ジャパティックにおきましては、この公開公報、公開されたものにつきまして抄録、アブストラクトを出しておりまして、そのアブストラクトを見ますと、一応公開された発明の内容がわかるというふうなことも実は行っておるわけでございますが、この点につきましてはなお十分とは言いがたい点もあると私どもは考えております。
 それから三番目の、ジャパティックの現在の活動いかんというお話でございます。これは現在、発明者の出願の年月日であるとか出願人の氏名であるとか発明の名称であるとかというふうないわゆる書誌的事項と呼んでおりますものにつきましては、これは全部マイクロフィルムに入れましてコンピューターで処理いたしまして、第一検索と言っておりますが、民間の需要に応じていろいろな資料が供給できるようになっております。それから、第二分類という検索分類がありまして、これにつきましては、やや狭い分野ではございますけれども、技術の内容にわたった検索ができるようなシステムになっております。それから三番目に、先ほど申し上げました公開公報についての抄録を発行いたしております。
 そういうふうに、次第にその効果を発揮しつつありますが、しかしながら昭和四十六年にこれはできたものでございまして、年限が少ない関係で、そういう情報サービスをいたしますにつきましてはやはり相当の期間をかけて膨大な量の情報を収集いたしませんと所期の効果が上がらない、こういううらみがございます。したがいまして、私どもは一般会計の予算なりあるいは競輪関係の資金なりを投入いたしまして、この情報の蓄積というものに関しまして補助をいたしております。今後この日本特許情報センターをどういうふうにするかということは、私どもは新規性調査機関としての効果をさらに有効に発揮できるように推し進めてまいりたいというふうに考えております。
#16
○勝澤委員 今回の改正の物質特許制度でございますが、この物質特許の制度は昭和三十四年ごろからすでに問題にされておったと聞いておりますけれども、いままで物質特許を認めなかったのは一体いかなる理由なのか、今回認めるようになったのは一体どういうわけなのか、この点についてお伺いいたします。
#17
○齋藤(英)政府委員 物質特許につきましては、いまお話がございましたとおり、たとえば化学物質について大正十年以来不特許事由になっておりました。これの一番大きな理由は、近年に至るまでわが国のこの分野での技術水準というものが国際水準に比べてかなり低かったということでございます。そのために外国からの特許による支配を受けるおそれがあったということでございます。それ以外にも各種多少の理由がございますが、そういうことで従来は認めていなかったわけでございますが、その後昭和四十六年八月に工業所有権審議会に本件の問題について付議をいたしまして、以来昭和四十九年十二月に至るまで、この点につきまして学識経験者、需要者、あるいは生産者等、各種の人が集まりました小委員会でいろいろ議論をいたしました末、現在に至りましてはほとんど技術水準としましては国際的な水準に達しておるというふうな結論に達しました。したがいまして、すでに物質特許を認めないというふうな理由は消滅しておるということでございまして、その結果私どもとしましては、国際的な観点等も考えまして、物質特許制度を採用するのに踏み切った次第でございます。
#18
○勝澤委員 次に、この物質特許の効力は、その物質のすべての製法、用途に及ぶため、よりよい製造方法あるいは用途の研究開発というものを阻害するのではないだろうかという考え方が出てまいりますし、それからもう一つは、この物質特許制度を採用する上においては、特に新規物質の研究開発活動を促進するという立場から、これについての特に国なり地方公共団体の金融、税制上の優遇措置といいますか、こういうものを特に考える必要があるのではないだろうか。民間の中小企業の研究開発については特別の方法というものが必要ではないだろうか、こういう点についてどういうふうにお考えになっておりますか。
#19
○齋藤(英)政府委員 物質特許制度の採用によりまして、製法特許の研究開発が阻害されるのではないか、こういうふうな御質問でございますが、新規物質につきましてこれから特許を与えた場合におきまして、その新しい物質ができますと、それについてのいわゆる改良発明と申します製法特許あるいは用途発明、こういうものにつきましては当然それより非常に容易になるわけでございますので、当然それにつきましての意欲が阻害をされるということはないと私どもは考えております。現にすでに物質特許を与えておりますアメリカなどにおきましては、その製法特許というものにつきまして、物質特許を与えられたものについての製法特許というものが相当多数出願をされて特許になっている例を私どもは聞いております。
 それからなお、この点につきましては、さらに製法特許と物質特許との関係というのは特許法七十二条でいわゆる利用関係ということになっておりまして、製法特許権者は物質特許権者に対しまして実施許諾を得なければこれが実施できないということになっております。そういう関係がございますので、そういう製法特許権者が物質特許権者の権利につきまして実施権をもらいたいという場合、そういう場合がふえてくると思います。そうなりますと当然裁定の問題というのが起こってきます。特許法の九十二条、あるいは公益の場合には九十三条という規定がございますが、裁定という問題が起こってまいりまして、その問題につきましては私どもは格段の努力をいたしたいというふうに考えている次第でございます。
 それから、物質特許制度の採用によりましていわゆる中小企業関係についてはいかがであろうかというふうな御質問であろうかと思いますが、中小企業に関しましては意見が二つ実はあるわけでございます。と申しますのは、通常考えますと、いわゆる物質特許というものは大企業あるいは大規模な研究施設を持っている者が主として発明をして、中小企業なりあるいは個人というものはそういう発明が非常にむずかしいのではないか、こういうふうな意見が一つございます。それから二番目に、それと全く反対の意見が実はあるわけでございます。これは国際的に、たとえばOECDで昨年出しましたような資料あるいは外国の資料等を見ますと、発明家というものはむしろ小単位あるいは個人で自由に研究をするということの方が、本当に革新的な発明ができるんだというような説が実はございます。両方ございますので、これはどちらかということは一概には言い切れない段階でございます。
 それから、中小企業につきましては、従来物質特許がございませんために、ある物質を発明いたしましても、それを一つの製法だけで出願をしますと、すぐほかのものから別の製法で同じ物質をつくるような、そういう出願をされるというおそれがありましたものですから、三つか四つぐらい同じ物質をつくるにつきましての製造方法を発明いたしまして、それで出願をするということになります。そういたしますと、当然出願するまでに時間と金がかかります。そういうことは、今回物質特許を採用することによりまして、一つの製造方法である物質ができるということになりますれば、すぐそれが出願できるということで、資金の面と時間の面が節約できるということがありますので、一概に中小企業に不利であるということには必らずしもならないのではあるまいか、このようにも考えております。
 なお、これにつきましての情報関係につきましては、私どもも中小企業庁と連絡をとりまして、いろいろ情報が行き渡るようなことを始終考えております。
#20
○勝澤委員 特許権の使用料の国際収支の状態はどういうふうになっておりますか、おわかりになりましたら御説明願いたいと思うのです。――それでは、後で資料を出していただくことにいたしまして、時間がありませんので、もう一問だけお尋ねいたしますが、多項制の問題についてであります。
 長年わが国は単項制を行ってきて、今回多項制を採用するに至ったわけでありますけれども、その多項制を採用するに至った経過と、諸外国で採用されている多項制と今日わが国で採用しようとしている多項制は同じであるのか違いがあるのか、どのように違うのか、この点について、多項制についてちょっとお伺いいたします。
#21
○齋藤(英)政府委員 多項制の問題につきましては、昭和四十三年の十一月に工業所有権審議会で出されました答申によりまして、今後検討すべきことであるというふうに指摘をされております。その後、四十五年法の改正のときにおきましても、参議院の商工委員会において、多項制について速やかに検討するようにというふうな附帯決議をいただいております。これらを受けまして、昭和四十六年の八月に工業所有権審議会を開きまして、実際には十二月から制度改正部会の多項制小委員会というものを開きまして、そこで鋭意検討いたしました結果、一昨年の十二月に至りまして一応の結論を得まして、それを四十九年の一月の工業所有権審議会にかけまして中間答申をいただきまして、以後各方面の御意見を聞いた末、四十九年の九月十七日に最終答申をいただきまして、それに基づきまして多項制を採用するように条文化の作業を始めた、こういうふうなことが非常にあらましの経緯でございます。
 内容でございますが、わが国が今回採用することに予定をいたしております多項制と諸外国の多項制との差異ということでございますが、多項制というものの考え方につきましては、まず基本的な問題といたしまして、わが国が現在とっております特許制度では、発明の単位というものあるいは発明の大きさというもの、これが特許法の二条以下の条文で一応明瞭になっております。これは国際的にはいわゆるカテゴリーと一つ言われておりますが、カテゴリー別の発明になっております。そのカテゴリー別の発明につきまして、特許法の三十八条によりまして、一定の関係のあるものにつきましてはこれを併合して出願ができるというかっこうになっております。
 したがいまして、諸外国と現行制度とを比較しますと、どこのところが足りないかということでございますが、それは、そういうふうなカテゴリー別の一発明について発明の構成に欠くことのできない事項のみしか特許請求範囲に書けなかった。ところが、諸外国はそれ以外に、いわゆる実施態様と言われておりますもの、英語ではエンボディーメントとかあるいはスペシフィックフォームとかいろいろ言われておりますが、そういうものを書けた。わが国ではそういうものを区分して別項で書けなかった点が違っております。したがいまして、今回その点を改正いたしまして、それも書けるようなふうに改めたということでございます。
 しからば、結果的に見ますとどういうことかと申しますと、アメリカ、イギリス、西独を初めとします先進諸国におきましては、日本ほどカテゴリー別の発明、一カテゴリーが一発明であるというふうなことが明瞭ではございません。発明の単位が数カテゴリーにわたっておる場合がございます。一つの一般的な発明思想で統合できるようなものは一発明と概念できて、それが一出願ができるというふうになっている国が多うございます。したがいまして、一発明一出願ではございますけれども、その一発明というものの内容が諸外国と日本とは違っておる、ただしスイスなどは日本とほとんど同じような発明の単位でございますけれども、そういうところが違っておるという点でございまして、その点が非常に大きな点でございます。
 ただ、でき上がった結果を見ますと、いまの基礎的な考え方のいろいろな相違はございますけれども、一出願でどの程度の範囲の発明が出願できるかということになりますと、結論的に言いますとほとんど諸外国と変わらない、こういう結果になろうかと思います。
#22
○勝澤委員 私の申し合わせの時間が終わりましたので、まだ不十分な点は同僚議員に譲りまして、質問を終わります。
#23
○萩原委員長代理 松尾委員。
#24
○松尾委員 特許法の改正に関しまして若干質疑を重ねていくわけでありますけれども、まず初めに、今回物質特許を導入するという点でございます。いままでこれは製法の発明に特許を与えてまいったわけでありますけれども、技術開発面で国際競争力がなおわが国は非常に弱い、そういう立場から外国企業による特許の支配に対して保護を加えていかなければいけない、このような点が製法発明特許だけを与えておったという理由に掲げられておるわけでありますけれども、こういう外国企業との関連、そしていままで要するに外国企業による特許の支配から保護してきた、それを今回は外す、こういうふうになるわけでありますから、これは外国企業に対しましてわが国の企業というものがもう国際競争力としては負けない、遜色はないんだ、このようなお考えであろうかと思うのであります。
 それに関連いたしまして、現在外国企業の特許出願の実態、そして外国企業に負けないような国際競争力を日本が持ったんだという点の御説明をあわせてまず最初にやっていただきたいと思います。
#25
○齋藤(英)政府委員 物質特許の採用になりますまでの経緯につきましては御説明を申し上げたとおりでございますが、昭和四十六年の実際は十二月からでございますが、工業所有権審議会の制度改正部会物質特許小委員会を設けまして、そこで学識経験者あるいは生産者あるいは需要者、そういう各種の方が集まりまして、以来大体二年半この問題について議論をいたしました。わが国の技術水準はどの程度であるのであろうかということ、ことに関係の学識経験者等を別に呼びましてそのヒヤリングもいたしました。そういうことで、現在に至りましては欧米先進諸国に比較いたしましてほとんど国際的な水準に達しているというふうな結論に小委員会で達したわけでございます。
 それで、なおこれにつきまして、たとえばでございますが、アメリカにおきます化学分野につきまして各国の著名な企業がどのくらい特許を取っておるかというふうなことを一応調べてみたわけでございますが、日本は、欧米諸国全部で七カ国ぐらいありますが、七カ国ぐらいのうちで一九五七年では七番目でございます。しかしながら、一九七三年に至りますと、日本はアメリカ、西独に次ぎまして三番目でございます。そういうふうなぐあいに一九五七年では七番目であったのが、一九七三年になりましては三番目になった、こういうふうなこと、これは単に一例でございますけれども、そういうようなこと等から見まして、日本はここ数年間のその方面の技術水準の向上というのはかなり著しいものがある。現在ではおおむね国際水準に達しているのではないかというふうに私どもも判断をいたした次第でございます。
#26
○松尾委員 わが国における外国企業の特許出願の実態はどうですか。
#27
○齋藤(英)政府委員 現在におきまして化学分野だけに限って見ますと、内外国の出願をされます比率は、おおむね内外国半分ずつぐらいというふうに承知をいたしております。
#28
○松尾委員 そうすると、内外おのおの五〇%の比率である、このようなお答えであり、またわが国のこのような物質特許関係のものが非常にふえてきておる。過去は七番目だったけれども、三番目になって、最近はそのような実態である。このような御説明であります。何としましても過去の実績、現状も五対五というような力でありますれば、この物質特許につきましてはまず外国企業がいち早く進出してくるのじゃないかというふうな懸念も、素人考えかもしれませんけれども持つわけです。ですから、これは早い者がやはり勝ちでありましょうから、やはり過去にいろいろの経験を持ち、特許を持っておる、そのような実績から、わが国がこの物質特許をやると一そこに出てくるものはどういうふうにあなたの方は内外のことを考えていらっしゃいますか。その外国の方がさっと、いろいろなものをやはり勉強しておるでしょうから、わが国におけるそのような独占的な特許、そのマーケットというものを占めるというような心配は全然ありませんか。
#29
○齋藤(英)政府委員 お答えいたします。
 先ほど申し上げましたアメリカの化学分野におきます出願が一例と申し上げたのでございますが、それ以外に医薬につきましても同じような出願、日本人が外国に出願をしたというそういう実績がございます。
 それで、私ども物質特許を考えました場合に、現在のところ化学分野でおおむね半分ずつぐらいというふうに申し上げましたが、今後そういう日本人が海外に出願をいたしております。そういうふうな状況等もあわせ考えますと、私ども物質特許が施行されましたときに、外国の出願が圧倒的に多くなって、比率が圧倒的に高くなるというふうなことは、実はそういう状況からは想定をしていないわけでございます。この点につきましては、過去二年半にわたります小委員会の議論、御審議の結果でも一応そういう想定をいたしておる次第でございます。
#30
○松尾委員 いまのお答えのとおりに事態が推移すれば私は非常に安心だ。何でも特許というものは大きな利権、独占的な権利というものが必ずそこには発生しておるのが当然でありますから、やはりそのようなあなたたちの自信のある判定からこの物質特許に踏み切った、このように理解しておきますから、今後の動きにつきましてもやはりよく心をとめて、そしていまお答えになりましたようなことではなくて、政府の期待する方向でないような方向が生まれた場合には、やはりいろいろ対策を考えていかなくちゃいかぬのじゃないか。やはりおくれというものが現実にあるかどうかという問題でありますから、二年半の研究も結構でありますけれども、これはよく推移をながめるということをここで私は注意を喚起しておくにとどめたいと思います。
 外国関係はそうでございますけれども、今度は国内の企業の関係に移ります。
 日本国内で物質特許の開発に取り組み得る、また国際化にたえ得るような企業が果たしてどのくらいあるかという問題であります。これは一説によりますと、巨大な独占企業の数社しかそれに対応する力はないのじゃないか、このように言われておる点もあるわけでありますけれども、この点の政府の見方はいかがでありますか。
#31
○齋藤(英)政府委員 お答え申し上げます。
 先ほどの御質問にもございましたが、いわゆる物質特許というものにつきまして、ことに化学物質、医薬につきまして大企業中心に発明がされ、出願がされるのではあるまいか、こういう懸念があるのではないかという御質問であろうかと思います。この点につきましては、実は先ほども申し上げましたように、見方が二つございます。
 一般的に言われておりますように、確かに大企業は多くの研究施設を持ち、膨大な人員と資金を抱えておるということからして、化学物質等の発明については非常に有利ではないか、こういうふうな意見もございます。
 ところが、それに対しまして、そうでないという意見も実はあるわけでございます。先ほどはOECDのリポートの例を申し上げましたけれども、それ以外にもほかの外国の文献などにも散見されますが、実は大企業というものは自分の経済的な地位及び自分の目先の利害ということがかなり強く表に出まして、技術を開発いたしますのにつきましても、そういう観点からの開発努力というものが非常に大きい。それで、個人あるいは小企業というものはむしろ逆にそういうものを離れて、革新的と申しますか、そういうものと非常に飛び離れたような新しい開発力を逆に持っているのだという非常に強い説が反面ございます。
 これはいずれが正しいかということにつきましては非常に問題があるところでございますが、真に創造力を持っているのは実は個人でありあるいは小企業である、こういう説もございます。かつて本で読みましたけれども、ランド・コーポレーションというのがアメリカにございますけれども、それの中で実は九七%ないし九八%はいわゆる製法と申しますか、改良と申しますか、そういうものの開発に使われているというようなこともリポートされておりまして、その辺から見ますと、いずれが開発力が強いかという点につきましてはいろいろ議論がある点でございます。
    〔萩原委員長代理退席、委員長着席〕
それに加えまして、実は先ほども申し上げましたように、小企業につきましてはやはり資金面等について問題がございます。それから、情報面についても問題がございます。これは中小企業庁の方でその方面については施策をいろいろしておられます。今後もそれを中小企業庁にお願いをいたしまして、われわれと一緒になりまして、それを強化することによりましてこれを解決いたしたいというふうに考えております。
#32
○松尾委員 いまのお答えでは両方の説を並べて、そして大企業の方が有利であるという説と、そうでもないのだという説をあなたは述べておられるわけでありますけれども、何といっても物質特許の研究開発には膨大なる特許情報が要るわけです。そして、そのような管理をしなくちゃできません。多大な資金と人材というものが確保されなければ、常識的にはなかなか太刀打ちできないのじゃないか。でありますから、国際化にたえてそのような技術開発のできるのは限られたる大きな企業になっていくのじゃなかろうか、このようなことを私は非常に心配しておるわけです。いまもあなたがおっしゃったとおりに、そのような中小企業等につきましてはいろいろ問題点もあるというお言葉でありますけれども、そういう中小企業関係の方を伸ばしていくのだ、限られたるものに独占的に物質特許を与えてはいけない、そうしますと、むしろ私が心配している方に、世間の常識的な判断に私はなるのだろうと思いまするので、何としても中小企業の物質特許の開発に関する助成があわせてなされなければ――まず第一番目に外国企業関係はどうか、こう聞いたわけです。第二番目には、では日本の企業ではどういう企業が出てくるか聞いているわけです、そこは限られた大企業になるのじゃなかろうかと。そうではないとおっしゃればいいけれども、それも推移を見なければわからぬことであります。そして、現実には民間中小企業では非常に弱体ではないかということが言われているわけでありますから、この助成は、やはり研究投資の拡大それから国だとか地方公共団体がそのような姿勢を堅持していく、研究推進のための情報サービスだとか指導の改善、拡大、こういうことをあわせてやりませんと、長官のお答えに反した現実が私は出てくるのじゃないかと思いますけれども、そういう面の助成等についてはいかがに考えておりますか。
#33
○河村政府委員 先生御指摘のように中小企業の技術水準の向上を図るということは非常に必要でございますし、われわれといたしましては、特にこれからの新しい時代に即応するような技術開発あるいは情報の提供というようなことに全力を注いでおるわけでございます。
 われわれの考えている二、三の主な施策を申し上げますと、一つは、中小企業の技術情報が比較的少ないものですから、そういう技術情報をできるだけ中小企業に流す体制をつくるということで、中小企業振興事業団の中に情報センターというのを設けまして、ここから大きなパイプでそれぞれ地方に流す、あるいは各都道府県にも地域センターを設けまして、その中に情報収集の技術情報室を設けるというようなことで情報の提供をやっておるわけでございます。
 また、御指摘のようないろいろな技術、せっかくのいい技術につきましては、それの研究開発を助成していくとか、あるいはそれのための資金の助成を図るというようなことで、まず一つは、中小企業のそういうふうな技術開発のためには補助金を交付してそれを育成していくとか、あるいはそういうふうな新しい研究開発の結果を企業化するという場合には、中小企業金融公庫の中に特別の資金貸し付けの制度を設けてそれを助成するというような技術開発もわれわれとしては推進をしているわけでございます。
 また、さらにそういうふうないろいろな中小企業者の技術の指導をやっていくということで、都道府県あるいは市に公設の試験場がございますけれども、その指導に当たる公設試験場の設備の増強を図ったり、あるいは巡回指導、あるいはそれぞれが個別にいろいろな試験分析設備を持つことが資金面等で大変な場合に、開放試験室を設けまして、だれでも自由にこれが利用できる、あるいはさらにそれに立ち会って優秀な技術者が指導するというふうな各般の指導あるいは提供業務を行いまして、中小企業の技術水準のレベルアップを図っておるわけでございます。
#34
○松尾委員 その点はしっかり今後ともにがんばってもらいたいと思いますね。
 特許庁としましては、発明ですから、ほかのことは何も考える必要はないんですね。ほかのことと申しますると、人体に悪影響があるとか、または遺伝物質がどうだこうだとか、また果たしてそれが薬として人体に役に立つのかどうかというような問題は考えないで、そしてそのような物質の発明、そういうものに対して製法なりまたは物質特許に入っていくと思うのでありますけれども、これは間違いないですか。よそのことを一切考慮しないで、国民に対するいろいろな影響は考慮しないで、物の発明だけを中心にして特許庁はやっていくんだ、これは間違いないですか。
#35
○齋藤(英)政府委員 特許法、特許制度のたてまえは、先生おっしゃいましたように、新しい発明を大いに刺激するということでございますが、なおこれにつきまして、私どもの方の特許法の三十二条の改正後の第二号のところに「公の秩序、善良の風俗又は公衆の衛生を害するおそれがある発明」につきましては特許しない。こういうふうな条項がございまして、これによりまして、たとえば医薬につきましては、薬効につきましてこれを明細書あるいは請求範囲について判断することは当然でございますけれども、もしその明細書どおりの方法を使うことによりまして、それが毒性があるということがすでにわかっておるというふうな場合におきましては、いまの条項によりまして特許できないということになろうかと思います。
#36
○松尾委員 それは特許出願に関する範囲、内容を点検していけば当然そのように毒性があるとかなんとかということはわかるわけですね。そうしますと、石油たん白の例になりますけれども、これは現在は製法特許があるわけですね。特許庁においては製法特許を与えておる。これをいよいよ、これは食品衛生法の関係になると思うのでありますけれども、食品衛生法で果たしてこれが大衆のためにいいかどうか、毒性はどうか、いろいろのことを審査しまして許可していくと思うのであります。医薬品につきましては、特許法に基づいて特許になった、その品物を今度は医薬品として製造する、使うという段階につきましては薬事法で見る、このような法体系になっていると思うのでありますけれども、これがやはり今度は物質特許になりまするといろいろな新しいものが出てくる。それで、薬事法だとか食品衛生法だけですべての新しい化学物質というものがチェックできて、その製造、販売というものが国民のために本当に役に立っていくような方向になればいいのでありますけれども、どういう物質が出てくるかわからない。特に、この前も化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律、これは四十九年四月十六日から施行した新しい法律でありますけれども、これはPCBの問題がやかましくなりまして、あわててつくった政府の法律であります。こうしまして、いろいろな物質が特許になる。それが今度社会的に製造される、使用されるという段階で、あなたの方はそういう一つの歯どめがあるけれども、それは微々たる歯どめである。現実にそれを製造していく場合には、これを薬事法なり食品衛生法で見ていく、こういうものがやはり整備されていかなくちゃ、私は特許は特許でどんどん進む、製造は製造で進む、それが思わない悪い影響を及ぼすということがないようにしたい、このような考え方から言っているわけでありますが、そのような関連において大臣はどのように考えますか。通産大臣、これは事務当局がお答えになっていいですけれども、基本的には特許法と国内法との関連で、やはり国民の利益または生命、そういうものを守るという立場から、これは法というものをきちっと整備していく必要があるというたてまえで言っているわけでありますが、いかがですか。
#37
○河本国務大臣 先に政府委員から……。
#38
○大谷政府委員 技術的な問題に関連いたしますので、私から答弁申し上げます。
 石油たん白につきましては、酵母菌等の微生物菌体がたん白質を多量に含有するということに着目いたしまして、菌体を石油のうちのノルマルパラフィンを原料として培養し、この菌体を精製して得られるものと解釈いたしております。石油たん白はいま申し上げたようなものでございますので、いろいろのものがございます。各種のたん白質物質等の混合物でございまして、単一物質としての単離あるいは特定された場合に限って化学物質の対象となるわけでございます。ただいま化学物質のことを申し上げているわけでございますけれども、しかしながらこのようなものが非常に複雑な構造を持つものでございまして、これを原則として構造式等によりまして特定するということは困難でございますので、化学物質としての特許となる可能性はきわめて困難と考えております。
 次に、飲食品としてでございますけれども、飲食品の場合は、構造式で特定するということにかえまして製造限定組成物というような形で表現することが可能でございますので、出願する可能性はあると思いますし、また特許の対象となり得るものと考えます。しかしながら、先ほど申し上げましたように、石油たん白にはいろいろのものがございます。微生物と石油との組み合わせ、いろいろございますが、それぞれによってその効果が違ってまいると思います。
 私どもといたしましては、ただいま長官からも答弁がありましたように、こういったものにつきまして公衆の衛生を害するかどうかということを厳重に審査をいたしまして、公衆の衛生を害すると認めたものについては特許しないということになりますけれども、そうでないというものについては特許される可能性があろうと思います。
#39
○河本国務大臣 先ほど長官と技監から申し述べたとおりだと思います。
#40
○松尾委員 物質特許の導入によりまして、通常実施権の設定を求めるケースが増大するであろう、これは当然増大させなくちゃできないであろう、こう思うのであります。裁定はいろいろありますけれども、特に九十三条の裁定ですね。なぜかと申しますると、製造から販売、使用、流通段階まで強力な独占権がある。それを自分の会社でやろう、または系列会社でやろうという、そのような傾向に多分なっていくであろうと予測されます。それを、そのような物質を原材料として正当に購入し使用するという一般の方々に対して、この裁定制度の運用というものを活発にしなくちゃいかぬ。明確にしなくちゃいけない。また、迅速にそれを決めておる必要がある。このような考え方から申しておるわけでございますけれども、特に九十三条の裁定につきまして、特許法でこれを明らかにするか、またどのようにその点を考えておるか、そういう点をあわせてはっきりとお答え願いたいと思います。
    〔委員長退席、塩川委員長代理着席〕
#41
○齋藤(英)政府委員 物質特許の採用になりました暁には、その裁定制度、ことに特許法九十三条の裁定制度が非常に重要な意味を持ってくるのじゃないかというふうな御質問でございます。私どももその点は全く同様に考えております。したがいまして、工業所有権審議会で物質特許につきます答申をいただきましたが、その答申の中でもその点については特に注意をするようにということが強調してあります。
 なお、その答申の中、答申の一部ではございませんけれども、参考資料として「裁定制度の運用要領試案」というものをわざわざつけてあります。これは、裁定というものが物質特許採用に当たりましていかに重要であるかということの一つの証左であろうかと思いますが、その試案の中にはそれぞれ基準的な期間が書いてありまして、たとえば裁定の請求書の提出があった後には速やかに期間を指定して答弁書の提出を求めろ、その答弁書は内国の場合は四十日、外国の場合は三カ月であるとかいうふうに、具体的な運用の要領を実は示しておるわけでございまして、工業所有権審議会の発明実施部会というところでこれを審議することになろうと思いますけれども、私どもはすでに先日懇談会を開きましてこの点につきましていろいろ意見を交換しておる次第でございまして、裁定の有効なる運用につきましては今後とも努力をいたしたいと考えております。
#42
○松尾委員 その点は法なりまたはいろいろ運用上で明確にしてもらいたいと思うのであります。
 多項制の問題等につきましてもいろいろ質問したいと思ったのでありますけれども、非常にきょうは時間を制約されましたので飛んでまいりますけれども、結局は四十五年の衆議院における附帯決議、また参議院の附帯決議等がございまして、やはりいろいろ事務を迅速化する、滞貨を早く一掃する、そのような体制を整備強化するというようなことがもう昔から言われておるわけであります。あなたの方もそれに対処していろいろ努力をしてきたと思うのでありますけれども、四十五年以降、衆議院で附帯決議をつけられた以降にあなたの方の審判官、審査官、事務員のそれぞれの増加状況、それによって、事務員等の方の職務の負担が社会的に比べても非常に過重になっていた、それが現在はどのように緩和されたかという説明をあわせてしてもらいたいと思います。
#43
○齋藤(英)政府委員 先ほど最近の特許、意匠、商標につきましての出願状況と、それから未処理案件がどのくらい残っているかということの御説明を申し上げた次第でございますが、特許の例をとりますと、繰り返しになりますが、四十五年当時八十三万二千件程度の未処理案件がございましたのが、現在では五十三万件余になっているということをお話し申し上げました。未処理案件がまだ多いことは多いのでございますけれども、その当時に比べればかなり減っておるということを御説明申し上げた次第でございます。したがいまして、その点についてはある程度進歩しておるのじゃなかろうかと私どもは考えております。
 それで、しからば増員がどうであったか、こういうお話でございますが、全体といたしまして昭和四十六年、たとえば増員だけで申し上げますとネットで六十四名ふえております。それから、四十七年は八十一名、以下ずっとございますが、昭和五十年度の予算では六十二名のネットの増員が認められております。そのうちの事務系の職員はネットで三十名でございます。その前の四十九年にはネットで事務系の増員は二十六名でございます。そういうふうに増員にかなり努めておる次第でございまして、いま数字を申し上げましたように、その結果かなりいろいろ事務処理が進んでおるとは思いますが、しかしながら先ほど申し上げましたように出願も年々ふえておりますので、審査官並びに事務系職員の今後の増員関係につきましては私どもも格段の努力をいたしたいと考えております。
#44
○松尾委員 次に、特許料の値上げの問題であります。これはそれぞれ、前回の料金の決定、その後における物価上昇、そういうものとちゃんとスライドしておるかどうかという問題であります。いろいろ特許料、手数料を引き上げた、はなはだしきは五倍。簡単でいいですから、引き上げたのはいつの物価であり、最近の物価についてこうだから必ずスライドしております。またはいませんということ。
 それからもう一つは、物質特許に関する問題でありますけれども、これは私は、同じ特許だといいましても、この物質特許は、これは私の前提としての解釈から出るかもしれませんけれども、巨大企業にそのような特許がまた独占されていくのじゃないか、そうしますと物質特許によって巨大な利益を上げていくのはそのような一握りの集団ではないか、こういうことを私は心配して聞くわけであります。とするならば、あなたのおっしゃるとおり中小企業がどんどん出てくればいい、もしもそうでないと、当分の間これは特別な料金でも私はいいのじゃないかというような感じがするわけです。特許の内容が違うのじゃないか、これは非常に強大な力をある独占的な企業に与えて、そうして非常に国民というものが大きな影響を受けていくというような観点から、そのような考え方を私は持つわけでありますけれども、それが誤っておるかどうか、以上二点お答え願いたい。
#45
○齋藤(英)政府委員 昭和四十五年のときに特許法の改正の御審議を願いまして、そのときに意匠と商標の出願の手数料を除きましては料金の改定を行ったわけでございます。当時の物価水準、大体昭和四十三年ごろの水準を基礎にして計算をしたと思いますが、それで比較をいたしますと大体二倍弱ぐらいになっております。したがいまして、いまの意匠と商標の出願手数料はそのとき動かしませんでしたので、それを除きましてはほぼ二倍、これは細いことを申し上げますと印紙の関係がございまして一応切り上げ、切り捨てがちょっとございますが、おおむね二倍の値上げをしておる、こういうことでございまして、意匠と商標の出願手数料につきましてはそのときにはいじりません、修正をいたしませんでした。したがいまして、これは昭和三十五年法とわれわれ呼んでおります。その当時から据え置きになっておりまして、その当時の物価水準は多分昭和三十三年ごろの物価水準を基礎にして計算をしたものだと思いますが、それと現在を比較いたしますとおおむね二・八倍程度であったと思います。約三倍弱でございます。したがいまして、私どもの方は原則的には三倍ということを実は考えておったわけでございます。したがいまして、意匠の出願手数料はおおむね三倍になっております。それから、商標につきましては――実は四十五年法の改正のときに審査請求制度が導入されました結果、審査請求手数料として八千円をプラスいたしまして、出願手数料は二千円でございますから、合わして一万円ということになりまして、四十五年以降は審査をするものにつきましては一万円の手数料になっているわけでございます。商標は言うまでもなく審査請求制度がございませんで、全部審査をするわけでございますから、それとの比較で考えますと、四十五年以前につきましては、すなわち正確に言いますと四十六年一月一日以前におきましては、特許も商標もいずれも出願手数料は審査をするものについて二千円であった、ところが四十六年一月一日以降は、特許については実質的には一万円になり、商標については二千円のままであったということでございます。したがいまして、今回特許につきましても、先ほど申し上げましたように物価水準にスライドするという関係で、ほぼ二倍、合わせまして二万円ということを御提案を申し上げておるわけでございますが、商標ももしそのでんでいきますと二万円ということに相なるわけでございますけれども、これは非常に倍率が高いし、現在の経済状態等から考えまして必ずしも適当ではないのではあるまいかという観点から、現在の特許が実質的に出願をしますときに負担をいたします一万円の限度にとどめたということでございます。
 なお、手数料関係は言うまでもなく最高限が法律で決まっておりまして、その範囲内において政令で定めることになっております。法律の改正は、言うまでもなく十年に一遍あるいは五年に一遍慎重な手続を踏んで出すものでございますから、そういうことも私どもは考えた上で法律の最高限度を一応考えたわけでございますが、実際の政令段階におきまして、現下の経済情勢等を考えまして、急激に負担がふえないようなことも考慮しつつ、適当な額に政令の額を決めたいというふうに考えております。
#46
○松尾委員 時間が参りましたので終わりますけれども、やはり何といってもこの事務処理をしっかりやるということは、職場における士気の高揚ですね。でありますから、人員が足らなければふやさなければなりませんし、それからやはり給与体系も普通の官庁とは違った非常に特殊の技能等を要するものでありますから、その給与体系も変わらなくちゃできませんし、また指摘されておりますとおりに、一番大事なことは庁舎でございます。これは大臣からも鋭意その実現に努力するという答えが前にありましたので、あえて私はここでどうかどうかということは言いませんけれども、今後ともに人員を確保する、それから給与体系はやはり特許庁に合った給与体系でがんばる、予算をとる、それから環境をよくしていく、特に庁舎の問題は速やかにこれを建設するということを要望いたしまして、時間が参りましたので、私の質問を終わります。
#47
○塩川委員長代理 宮田早苗君。
#48
○宮田委員 特許請求の多項制への移行問題について、まずお伺いいたします。
 多項制への移行を法文化した改正案三十六条と併合出願を認める三十八条の関係、さらに「実施態様」という表現の定義が、これまで衆参両委員会で議論されてまいりましたが、参議院での参考人の方々の意見を見てまいりますと、この実施態様の概念がどうもすっきりしない。私ども改正案を検討しました際、多項制に移行してなおかつ実施態様を書けるようにしておけば、三十八条のような規定は不要であるように直感をするわけであります。また、われわれよりはるかに詳しい専門家の意見もあるようですが、法の運用をどうするのかも含めて特許庁のお考えをまずお聞かせ願いたいと思います。
#49
○齋藤(英)政府委員 現行の特許法三十八条と申しますのは、言うまでもなく一定の関係にあります二つ以上の発明につきましてこれを一つの願書で出願できるという規定でございます。それで、今回の三十六条の五項の改正でございますが、これは一発明につきまして、発明の構成に欠くべからざる事項を一項に書きまして、それにプラスしまして、あわせてその実施態様を記載する。たとえば実施態様が二つでございますれば、第二項目と第三項目に実施態様を書く。合わして項の数が三つになるというかっこうになるわけでございまして、それが全部合わして一発明でございます。その一発明が、いま三十六条五項の規定をそういうふうに改正をしたいということで提案をしておるわけでございますが、ワングループと申しますそのワングループが、今度一定の関係にあるほかの発明がありました場合には、それにつきましてもやはり同様に数項、三項なり四項なり書けるわけでございまして、それが一定の関係にありますA発明とB発明でありますれば、三十八条の要件を満たしておりますれば、それはAグループ・プラス・Bグループであわせて一つの願書で出願できるということでございます。したがいまして、三十八条は多発明が一出願でできるということでございますし、三十六条は一発明の中でそれを多項に記載ができるということでございます。したがいまして、その内容の性格が違うように存じております。
 それから、実施態様の問題について御質問がございました。実施態様と申しますのは、第一項に書きます発明の構成に欠くべからざる事項の技術的特徴を全部含んで、しかもその一部を条件をつけたりあるいは限定をしたりということで、それを具体的に表現する発明の態様でございます。これを実施態様と呼んでおりますが、これは昨日もお話し申し上げましたように、大正十年法に一応「実施ノ態様」という言葉がございまして、それを実施態様という言葉でつかまえて今回表現をいたしたという次第でございます。
#50
○宮田委員 おっしゃる改正案三十六条第五項にあります「ただし、その発明の実施態様を併せて記載することを妨げない。」これについてでございますが、出願人及び第三者の便宜に資するという新しい時代の要請にこたえるという今回の法改正の趣旨に照らしまして、実施態様の記載を義務づけないということになっておりますが、この意義についてもう一度お伺いします。
#51
○齋藤(英)政府委員 三十六条の五項、現行法によりますと「発明の構成に欠くことができない事項のみを記載しなければならない。」「のみ」という言葉がございまして、それだけしか書けないということになっております。したがいまして、現在のように非常に技術水準が高度になりかつ複雑になりました場合には、出願人がそれを字句で表現するわけでございますから、発明の構成に欠くことができない事項だけを書くということだけで十分にその内容が表現できるかどうかというふうな問題もございます。非常に広い範囲のものについて特許請求の範囲を書くことが当然ございますために、その内容をより明確に、この点について主張したい、あるいは範囲が広いその境界の点についてはここまでが私の権利だということをぜひこの際はっきり言っておきたい、したがいましてそれが特許になりました後では、それが特許権の範囲になりますから、第三者が見ました場合にもこれが非常に明瞭になるというふうなことがございますために、実施態様というものをあわせて記載するということにいたしたわけでございます。仮に今度、逆に申し上げますと、もし発明の構成に欠くことができない事項だけでそれが明瞭になっておるというふうに出願人が考えました場合には、二項、三項というのは書く必要はございませんので、したがって第一項だけでよろしい、発明の構成に欠くことができない事項だけでよろしいということになるわけでございまして、その辺は出願人の判断によりまして実施態様を書く場合もあるし、あるいは書かない場合もあるというふうな実態でございますし、これは各国ともそうでございますとともに、いわゆるPCTと言われております特許協力条約におきましても一または二以上の請求項ということで一項でもよろしいということになっております。そういうふうな諸外国の制度等も考えまして現在提案しておりますような案にしたわけでございます。
#52
○宮田委員 今度の改正の骨子の一つになっております物質特許制度について質問いたしますが、まず特許制度は発明活動の領域で研究の競争を促すのが本来の目的ですから、現行法にない化学物質や医薬品等にもこの制度を導入することには異論はないわけであります。しかし、法の運用を誤りますと大変な事態を招くことになりますので、二、三質問をいたしたいと思います。
 まず一つとして、化学物質や医薬品が特許の対象になりますと、各種の省庁管轄になります各種事業法一たとえば薬事法等も一つの例ですが、これとの関連がどうなるのかということと、大きく言いますと、産業政策との兼ね合いについて国民は疑問を抱くんじゃないか、こう思うわけであります。これまでの質疑でもいろいろ指摘されたようでございますが、薬品に限定して伺いますと、国民の生命を守るという人道上の観点から請求に対する拒絶の歯どめがないように思うわけでございます。さっきも答弁で、三十二条五号、改正では二号ですか、「公衆の衛生を害する発明」で拒絶できるというふうにはおっしゃっておりましたが、これだけでは歯どめにならぬじゃないかというふうに思いますが、その点について質問いたします。
#53
○大谷政府委員 ただいま先生の御質問の公衆衛生を害する問題についての歯どめの問題でございますけれども、その発明の実施が必然的に公衆衛生を害することになるような場合でございます。その発明の実施の方法によっては公衆の衛生を害する可能性があるにすぎないというような場合、それから技術的条件の変化、たとえば毒性を消す方法が発明されたというようなことによりまして、これに該当しなくなるというような場合、これは公衆の衛生を害しないというような解釈になろうかと思います。
#54
○宮田委員 もう一つこれに関連してお聞きいたしますが、これまでに各化学物質あるいはまた医薬品の製法等で、いまの法律三十二条第五号ですか、これを適用したケースがあるかどうか、あればひとつ説明していただきます。
#55
○大谷政府委員 ただいまの三十二条五号の適用ケースでございますけれども、これは従来は、現在もそうでございますけれども、医薬自体あるいは化学物質自体は許してお。ませんので、適用したケースはそう多くはございません。ただし、一般的に申しますと、三十二条五号で言っておりますのはいわゆる公序良俗違反それから公衆の衛生を害するということでございます。たとえば公序良俗を害する発明といたしましては、正義観念に反するもの、たとえて言えば窃盗用の器具であるとかあるいは紙幣の偽造機械であるとかあるいは金塊の密輸用のチョッキであるとか、そういう正義観念に反するもの、さらには人倫に反するもの、すなわち人体の尊厳性を害するというふうなものでございます。具体的に申しますと、人の臓器、臓物、それから骨とか眼球とか皮膚など、こういったものを原料とする医薬の製造方法であるとか、こういったものは公序良俗違反となるわけでございます。それから、さらにはいわゆるわいせつなもの、これは公序良俗違反になるわけでございます。それから、公衆の衛生を害するおそれがある発明の例といたしまして、従来はたとえば補助成分、安定剤とか着色剤とか、そういった医薬関係の補助成分として有害物を使用する医薬の製造方法であるとか、あるいは許容量を超えて用いないと効果が生じないというような有害物をその許容量を超えて含んでいる化粧料であるとか、こういった発明が挙げられると思います。
 例と申しますと、大体以上のようなことでございます。
#56
○宮田委員 もう一つ、これの関連についてですが、特許出願の際の記載事項に関してでございますが、特に医薬品の場合、発明の目的、構成及び効果をどの程度記載しなければならないのかということであります。つまり人体にどのような効果があるという臨床データまで記載しなければならぬのか、諸外国の例もあると思いますので、その点についてお答え願いたいと思います。
#57
○大谷政府委員 お答え申し上げます。
 これは一般的に申しまして、先生御承知と思いますけれども、明細書には、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者、専門用語で私ども当業者と言っておりますけれども、通常の知識を有する者がその発明の内容を正確に理解し、かつその発明を容易に実施できる程度にその目的、構成、効果を書かなければいけないということになっております。
 医薬につきましては、その成分、それから製造方法のほかに、特に薬理効果の問題がございます。薬理効果、有効量、それから投与方法が重要でございまして、医薬は人体に用いられるものでございますから、これらは原則といたしまして人体臨床知見の結果をつけるということで考えております。しかしながら、これは昨日も質問があったのでございますけれども、発明の内容によりましては、この人体臨床知見の結果にかえまして動物実験の結果であるとかあるいは試験管内実験の結果、そういったものをつけて、それによって裏づけてもよろしいということになっております。
 諸外国の例でございますけれども、諸外国でも大体同様だと思います。たとえば西ドイツにおきましては、医薬発明における薬理効果につきましては、ほとんどの場合動物実験の結果、または人体臨床知見の結果が要求されるということになっているようでございます。また、アメリカにおきましても、薬理効果等につきましては、原則として人体臨床知見の結果によって裏づけられなければならないけれども、場合によっては動物実験等の結果によって裏づけられてもよいというようなことで運用しているようでございます。イギリスにおきましても、一般的には臨床データを要求しているようでございますけれども、非常に精密なデータまでは要求してない、そういうふうな実情でございます。
#58
○宮田委員 次に、物質特許制度についてお伺いいたしますが、まず化学物質に特許制を認めた場合の弊害というものも当然考えられるわけであります。一つの例を挙げますと、特許庁のお考え方、さらに通産省はこれまでどう対処してきたかもお尋ねをするわけですが、ここに車のバッテリーに補充したらバッテリーの極板の腐蝕防止をしてスタミナを強化するという効能を記した化学物質製品があるわけでございます。アメリカのパテントのナンバーも入っておりますし、特許庁の方には事前に調査を依頼しておいたのですが、ちょっと製品を持ってきておりますので……。こういう製品でございまして、これをバッテリーの補充液に使うということでございます。
 このことについてもう少し申し上げますと、この製品は日本の販売会社が輸入をいたしまして、石油スタンドなどで販売しておるわけでございます。名前はバイタライトというのでございますが、これは日本でのブランドかどうかということをひとつお聞きしたい。それと、先ほど申しましたパテントナンバーがアメリカということで打ってございますので、そのものかどうかということ。
 説明書をよく見ますと、米国の特許ということになっておりまして、これを使用すれば最高の補充液という宣伝もされておるわけでございまして、よく考えてみますと非常にあいまいな商品だという風評、また使った人もそういう意向でございますので、この点通産省にも質問いたしますが、この種のバッテリーの補充液というものが、それだけでなしにここにも国内の製品を持ってきておりますが、相当に出てきておるというふうに思うわけです。そこで、どの程度外国製品が出ておるのか、また日本の製品がどの程度出ておるか、お調べになっておいでならまず御報告を願いたいと思います。
#59
○鈴木説明員 お答え申し上げます。
 いま先生が御指摘になりましたような製品につきましては、公的な統計がございませんので正確には把握できないわけでございますが、業界から事情を聴取いたしたところによりますと、この種のものにはバッテリーの強化剤とそれからバッテリーの補充液のかわりをするというものがございます。補充液は御承知のように通常は純粋の水、蒸留水等を使うわけでございますが、このかわりをするという名目で売られておるわけでございます。現在、バッテリーの強化剤として売られておるものはきわめて限られておるわけでございまして、西ドイツからの輸入品のようなものが一部あるだけでございます。それから、補充液のかわりに売られているものといたしましては、任意団体で日本バッテリー補充液工業会というのがございまして、その会員が売っておりますだけでも三十五種類程度ございます。アウトサイダーもあると思われますので、その辺も含めますと全国で六十以上の銘柄があるのではないかというふうに推測されるわけでございます。
 四十九年の販売額は全体で十億円ぐらい、販売数量にしまして千七百万本程度というふうに推測されます。
 なお、輸入でございますが、補充液につきましてはほとんどが国内の中小メーカーによって製造されておりまして、輸入品はほとんどないのではないかと推測されますが、強化剤につきましては、先ほど申し上げましたものが一部輸入して売られているようでございます。
#60
○宮田委員 この種の製品が本当に効果があるかどうかということについてでございます。自動車業界ではそれぞれが調査をしておるようでございます。この種の製品は大別して三種類あるということを自動車業界では言っておるわけです。まず、蒸留水に着色染剤を入れた製品と、二番目が希硫酸主体のもの、三番目が非金属を溶かし込んだもの、この三つだそうでございますが、いまお見せしましたアメリカの製品のバイタライトの成分と申しますか、どのようなものか調べていただきたいということでございます。特にいまたくさん市販されております補充液の効能は、使っておる人の御意見を聞いてみますと、ほとんど効果がないということがもはや通説になっておるようでございまして、むしろそれがトラブルを生じるというような実態にもあるようです。たとえば新車のバッテリーが一年でだめになったり、そのことによってバッテリーメーカーが品質を問われたり、その液を注入したスタンドが責任を追及されたり、このようなケースが大分あるようでございます。また、希硫酸主体の液を使ったために内部の濃度が大変高くなってまいりまして、寿命を逆に縮めたようなケースもあるということを聞いております。
 自動車メーカーは、企業防衛上自分のところでこの種の製品検査を自主的にやっているということでございますが、通産省はこういう余り役にも立たない製品を野放しにしているという声をどのように判断をされるか。国産のものもあるわけでありますが、少なくとも特許製品たる輸入品についてのチェックの方法、この点について何かお考えがございますならばお聞きをしたいと思います。
#61
○鈴木説明員 いま申し上げましたバッテリー特殊補充液の主成分でございますが、国といたしまして、たとえばバイタライトというような商品について分析したことはございませんので正確なことはわからないわけでございますが、製造元に問い合わせたところでは、一リットル中の主成分としましては、たとえば硫酸マグネシウム七百五十ミリグラム、硫酸コばルト三十七・五ミリグラム、硫酸アルミニウム十二・五ミリグラム、その他塩基性青色染料を十五ミリグラム、あとは精製水であるということでございます。
 このようなものが本当に効果があるかどうかということでございますが、特殊補充液について通産省といたしましてはこれまで分析したことがございませんので何とも言えないわけでございますが、バッテリー製造メーカー等が過去にその効果について試験を行ったり、あるいは補充液メーカーが各種の試験機関に分析を依頼したということがございますが、決定的に効果があるとかないとかということが断定できるような結論は出ていないようでございます。
 いずれにしましても、バッテリー補充液としましては純水で十分であるというのが通説でございまして、通産省といたしましてはバッテリーメーカーを通じてこの趣旨をユーザーに浸透させるということが必要だと考えますが、それとともに補充液メーカーに対しまして行き過ぎた宣伝や販売方法をとらないように指導してまいりたい、かように考えております。
#62
○宮田委員 若干要望めいた質問になると思いますが、営業の自由侵害ということにもなるかもしれません、あるいはまた事故やトラブルの実態をつかんでいない等の理由もございましょうが、自動車メーカーやスタンドで調査をしてみたらどうか、あるいはまた試験研究機関があるわけでございますから、こういうところで調査をしてみられたらどうかと思います。さらに、さっきも答弁の中でお聞きいたしました日本バッテリー補充液工業会という任意の団体があるわけでございますので、ここを十分に活用をする方法等もあるのじゃないかというふうに思いますので、こういう点について積極的に取り組まれる用意があるかどうか、それを聞きます。
    〔塩川委員長代理退席、萩原委員長代理着席〕
#63
○鈴木説明員 バッテリー補充液工業会につきましては、先生の御指摘もございましたので、早速呼びまして注意いたしましたところ、もし行き過ぎの点があれば指導に従って改めていくようにしたい、かように申しております。
 それから、本当に効果があるかどうかということにつきましては、業界等の通説もあるわけでございますが、今後ともできるだけ、もし可能であればその調査をするというようなことで取り組んでまいりたいと思いますが、何分にも本当に効果があるかどうかというのは、補充液だけの影響ではなくて、ほかの要素もたくさんあり、非常に検討がむずかしいというようなことでございまして、その辺は関係の研究機関とも十分相談して善処するように検討してみたい、かように考えております。
#64
○宮田委員 品質表示が国民に誤解を与えてはならないと思いますので、この面の行政指導を特に考えていただきたいということでございます。
 そこで、この硫酸コバルトや硫酸マグネシウムを主成分といたします添加剤の効果、この実用性が非常に薄いとか、全くないということになりますと問題だと思うわけであります。たとえばいま申し上げましたアメリカの製品、こういう問題についても当然であります。石油スタンドあたりのサービス品としていまなお使用されている。また、この点について利用者は、何と申しますか、高く評価ということでなしに、特許の番号が打ってある、しかもアメリカの製品であるということでございますので、信用度も非常に高いようでございまして、使ってみていま申し上げましたようなことがわかってくるということでございますので、特に特許庁の方に申し上げておきたいのは、特許を取った製品が一般に与える信用の度合い、特に外国製品に対してはそれが非常に高いというふうに思いますので、その点の行政指導を、特許庁の範疇ではないと思いますけれども、通産省なら通産省の行政指導ということに特にひとつ配慮をしていただきたいということを要望しておきます。
 時間の関係がございますので次に参りますが、特許の公開について申し上げます。
 昨年来の狂乱物価の最中に、企業の社会的責任追及の一環として、特許の公開ということが話題になったわけでありますが、その後の企業の実態を通産省にお伺いをいたします。さきに本委員会で中小企業近代化促進法案か審議され、決まったわけでありますが、この法律におきましても、低成長下の中小企業の施策として新しい技術の開発ということがうたわれておるわけであります。技術開発力に乏しい中小企業には、国が利用されていない特許の利用を促すような施策が必要だと思います。この法改正に当たって特許庁はここらの点をどうお考えになっておりますか、その点をお尋ね申し上げるわけであります。
 もう一つは、中小企業庁にもお願いを申し上げたいのは、特許法の運用に関しましても、ひとつ御意見がございましたらお伺いをしたいということであります。
#65
○齋藤(英)政府委員 ただいま先生からお話がございましたように、中小企業にとりましても、技術開発ということあるいは技術水準の向上ということが非常に重要なことであることは申すまでもございません。したがいまして、いわゆる自分で開発をする、あるいは技術提携をする、クロスライセンスで技術の交換をするというふうなこと、これにつきましてはわれわれとしても非常に力を入れなければいけない問題だというふうに考えております。したがいまして、特許庁といたしましても、これは主管庁はもちろん中小企業庁でございますが、中小企業庁と密接に連絡をいたしまして、中小企業者が本当に適合する技術を選択いたしまして、これが取り入れやすいようなかっこうで取り入れられるようにあっせんしたり、あるいはその指導を行うというふうなことを考えまして、中小企業に有効な技術の評価選定あるいは特許情報の提供ということにつきまして、本年度からではございますけれども、中小企業振興事業団あるいは日本特許情報センター、これが共同してそういう仕事をするような運びになっておる次第でございまして、それ以外のことにつきましては中小企業庁の所管でございますので、中小企業庁からお願い申し上げたいと思います。
#66
○河村政府委員 中小企業の方でやはりいろいろな工業所有権等の利用希望が多いわけでございますが、国が持っております工業所有権につきましても、そういう希望者につきましては適正な対価でいまいろいろとこれを利用し、実施して、非常に中小企業の近代化にも役立っておるわけでございますが、同時に、大企業が持っておりますいろんな工業所有権につきましても、先ほど長官が申されましたように、国の試験場あるいは都道府県の公設試験場あるいは大企業、中小企業者、これらが総合的なチームをつくりまして、そういう大企業の持っておりますような特許を中小企業がうまく消化をして、情報のトランスファーと申しますか、流動的なそういうふうな利用ができるということで、今年度から振興事業団あるいは中小企業が中心になりましていろいろ特許庁の協力を得て行っておるわけでございまして、今後ともそういうふうな国、大企業の持つ特許あるいはノーハウ等についても中小企業に十分使わしていただき、中小企業のレベルアップを図りたいと思っております。
#67
○宮田委員 最後に、要望を含めて質問をいたしますが、バッテリー補充液として市販されております製品の化学的効果というものが大変疑問だということでございます。ただ蒸留水だけでは高く売れませんので、着色したりあるいはまた化学物質を添加しているんじゃないかという声も聞くわけでございます。一〇〇%害がないものとしても、今後製造販売されるものであれば、品質表示の改善によって消費者に過大な期待を抱かせないよう行政指導が特に必要じゃないか、たとえばJISのような規格化、あるいは先ほど申し上げました工業会が任意団体であれ、この団体による認証制度化等も考えられるわけでございます。私は国の研究機関によるちゃんとした品質検査を公表することが一番よろしいんじゃないかというふうに思っておるわけでございますので、いま申し上げましたのは多分に要望めいたことでございますけれども、この点についてどうお考えかも聞かしていただきまして、私の質問を終わらしていただきます。
#68
○鈴木説明員 お答え申し上げます。
 ただいま御質問のございました日本バッテリー補充液工業会につきましては、中小メーカー十七社程度の非常に小さな集まりの任意法人でございまして、ここが権威ある認定を行うというようなことができるかどうかはちょっと自信がございませんが、いずれにいたしましても、消費者が誤った理解をいたしましてバッテリー補充液を購入するということがないように、関係方面とも十分意見の交換を行いまして、改善に努めるように努力いたしたい、かように考えております。
#69
○萩原委員長代理 これにて宮田委員の質疑は終了いたしました。
 午後二時から委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。
    午後零時五十三分休憩
     ――――◇―――――
    午後二時六分開議
#70
○田中(六)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。石野久男君。
#71
○石野委員 特許法の一部を改正する法律案の提案理由が、「わが国産業の技術水準の向上一商標登録出願の増加等工業所有権制度をめぐる最近の情勢の変化に対処するため、」ということで、工業所有権制度の国際化の進展ということに伴う改正でございますが、私は、工業所有権パリ条約に関連して、昨年WIPOの問題で外務委員会で質疑をしたことがございます。
    〔田中(六)委員長代理退席、委員長着席〕
そのときの私の質問は、WIPOが一日も早く国連の専門機関として所要の目的達成のために活動する必要があるのではないかという質問をいたしました。その質問に対して、当時外務省の御答弁は、WIPOについては私どもとしてはまだその見通しを立てておりませんということ、並びに将来国連の専門機関になる方向に動き出したというふうには申し上げられない状況にあるというふうに考えます、こういうふうな御答弁がございました。ところが、私もちょっと調査が不十分でございましたが、そうなると、もう率直に申しまして、WIPO自身が九月の段階で国連の専門機関に入ることに対する意思決定をされておりましたし、また国連の方でもすでにもうそのことについて一定の方針を出しておりました。なぜこういうことについて外務省が情報を得ていないんだろうか。やはり外務省自身、日本政府自身、WIPOにもあるいはまた国連にもそれぞれ責任のある方が出ておるのに、なぜこんな国会答弁が出ておるのかと実に不思議に思ったわけなんです。その後外務省の方から一定の弁解のようなものがございましたが、当時の事情について一応やはり政府の方から事情説明をしてもらいたいし、なぜそういうことになったのかということについては問題があると思いますので、本件について、一応政府の方から、これは外務省かあるいは国連かどっちになるか知りませんけれども、とにかく最初にその事情を説明してもらいたい。
#72
○伊達政府委員 お答え申し上げます。
 ただいま先生が御指摘になりました昨年の末の臨時国会におきます御質問に対しまして御答弁申し上げたのは私でございますが、私は、若干古い資料と情報に基づいて御答弁を申し上げたのでございまして、その後直ちに、ただいま先生御指摘がございましたように、誤った情報での御答弁であったということに気づきまして、まことに申しわけなく存じております。
 実は十二月二十四日でございますか、WIPOの事務局長からも、十二月十七日をもちまして、WIPOは国連の専門機関となったという通知も参っておるわけでございます。それから、九月の、ただいま先生御指摘になりました国連の専門機関となるということについてのWIPO側の決議というものも私が存じなかったわけでございまして、外務省は、国連局はちゃんと情報は把握していたわけでございます。
 その当時、私がまことに不勉強のために事実関係を正確に把握しておらず、正確なお返事を差し上げることができなかったことをおわび申し上げますとともに、ここで訂正させていただきたいと思います。
#73
○石野委員 当時の答弁が情報不足だったために間違っておったんだということですが、その後、WIPOについては、政府はどういうふうに対処しておりますか。
#74
○市岡説明員 御説明申し上げます。
 WIPOにつきましては、先般、先生先ほど御指摘のとおり、臨時国会におきまして、わが国もこの条約を締結することを得まして、いまやわが国は加盟国としての本来の地位を取得したわけでございます。
 この機関は、このようにいたしまして国連の専門機関ともなり、国連ファミリーとして正当な地位を得たということもございまして、われわれといたしましては、今後このWIPOに対して、他の専門機関と同様、できるだけの注意を払い、その動きについて心してまいりたい、また所要の措置につきましては、必要に応じ関係各省庁と協議をいたし、その措置に誤りなきを期したい、かように考えておるわけでございます。
#75
○石野委員 WIPOについて、特にこれは国連の専門機関という形になりましたが、外務省はそれに対して予算的あるいは人的な対処の仕方については、特にどのような対処の仕方をしておるか、その点をこの際明らかにしてください。
#76
○市岡説明員 WIPOがこのような機関になりましたにつきましては、私どもといたしましては、まずこのWIPOを担当するところといたしまして国際連合局、具体的には専門機関課がその第一次的対処の部局であるということをはっきりさしておりまして、私どものところでは他の機関もございますが、この機関のために特に担当官を配置いたしまして、東京の方の対処に備えているわけでございます。
 在外といたしましては、WIPOの本来の本部は、ジュネーブにあります国際連合に対する日本政府代表部をもって対処せしめるということにいたしておりまして、代表部におきましては、特命全権大使以下館員は三十四名でございますが、必要に応じ総力を挙げてこの機関の会議関係の問題に当たるということにいたしている次第でございます。
#77
○石野委員 政府がWIPOについて力を入れなければならぬということは、かねがね私たちも要請しておったところですが、昨年のような情報不足から国会に対して政府の答弁が、もうすでに事実が具体的にはっきりしている問題について古い資料で答弁をするというような対処の仕方というものは、やはりこのWIPOの問題だけじゃないと思うのです。この十月にはストラスブールの協定が効力を発生する段階に入っていると思いますが、政府はこのストラスブールの協定に対していまどのように対処しておりますか。
#78
○市岡説明員 御説明申し上げます。
 先生御指摘のとおり、この特許分類に関するストラスブール協定は、今年十月七日をもって発効することに確定いたしております。わが国は、この協定には一九七一年九月七日の閣議をもって署名いたしておりまして、したがって私どもといたしましても、この協定につき今後手続を進めまして、できるだけ早い機会に正式の当事国となるということを希望いたしております。もちろんこの協定の内容及び趣旨においては異存ございませんで、先ほども申しましたように、速やかに批准するという考えをもちまして、目下関係省庁と協議する等諸般の準備を進めている次第でございます。この準備が整い次第国会に対しましてこの協定締結について御承認を求めたい、かように考えております。
 私どもといたしましては、目下のところ次期通常国会をめどとして作業を進める、このように取り計らいたい、かように考えておる次第でございます。
#79
○石野委員 署名したのはもういまから四年前ですね。そして、昨年の十月にヨーロッパ理事国の、あるいはまた非同盟国のそれぞれの所定の手続が終わって、そして一年たったこの十月に協定が成立する、そういう段階になっている。この一年間政府は署名をしたものの、批准手続についての準備をやってきたのですか、それともそのまま忘れてしまって何も準備をしなかったのですか、どっちなんですか。
#80
○市岡説明員 この件につきましては、昨年確かに十月当時、今後一カ年をもって現実に発効するという見込みを得たわけでございますが、その当時から関係省庁、特に特許庁とも協議をいたして事の準備を図ろうとしてきたわけでございます。今次通常国会につきましては、その準備が十分整うことを得ず、批准についての御承認を求めることを得なかったわけでございますが、今後できる限り作業を促進いたしまして、次期国会をめどとして批准の御承認をいただけるよう取り進めたい、かように希望する次第でございます。
#81
○石野委員 特許庁長官にお尋ねしますが、ストラスブールの協定の意味するものは非常に重要だと思うのです。特に今日のような国際情勢の中で、日本経済がだんだんと追い詰められてきている段階では、やはり輸出増進とかあるいは国際的な貿易関係を通じて、ここで決められる工業所有権に関する特許の問題等の国際的協定へ日本が入り込んでいくことが非常に大事だということは言わぬでもわかっていることなんですよ。昨年の十月に、ストラスブールの協定が今年十月には成立することがすでにわかっていたのに、特許庁はこの段階でもなお日本が正式の加盟国になることに対する熱意を燃やしていなかったのだろうか、あるいはまた一生懸命やったのだけれども準備が整わないほど、それほど繁雑な事務内容があったのだろうか、そういう点について私は不審に思うのです。私の調べたところでは、もう事務手続や何かではそんなに問題がなさそうなんですよね。
    〔委員長退席、田中(六)委員長代理着席〕
各国がみんな同時発足をしていく。それを、四年も前に署名をしているのに批准をする手続を怠っているということは、外務省の方だけの責任なのか、それとも特許庁はそのことを外務省に対して要請しなかったのかどうなのか、その辺のところをまず最初にお聞きしたいのです。
#82
○齋藤(英)政府委員 いわゆるストラスブールのIPCの問題でございますが、IPCの内容は、申すまでもなく特許を国際的な分類にする、こういうことでございます。IPC分類を日本の特許分類にどういうふうに付与するかということがその内容でございます。
 私どもの方といたしましては、IPCの分類につきまして、昭和四十五年から日本特許分類と併記するかっこうで公告公報にサブクラスレベルのIPC付与を開始いたしまして、さらにそれを推し進めまして、昭和四十八年の十月からは全技術分野にわたりましてサブグループレベルで完全に記号を付しております。それからなお、公開公報につきましても、これは本年の三月からでございますが、サブグループレベルで完全に符号をつけております。したがいまして、現在、公告公報、公開公報ともサブグループレベルで完全にIPCの符号を付与しておる、こういうのが実態でございます。
 したがいまして、特許庁といたしましては、すでにそのIPCの意図しております国際的な特許分類というものを、現在はJPCと申します日本特許分類と併記ではございますけれども、サブグループレベルでもって完全につけておるというのが現状でございます。
 それで、IPC協定は、これは申すまでもなく非常に重要な問題でございます。私どもの方といたしましても、一日も早くこの協定の正式メンバーになることを熱望いたしております。
#83
○石野委員 IPC条約の問題については、すでに公告公報はもとよりのこと、公開公報も十分やっております。あるいはサブクラスレベルでのいろいろななにも全部やっておるんだということですが、そういうふうに準備は十分整っており、正式の加盟国になることを期待しているというのに、この十月からストラスブールの協定が発効する段階でなぜ加盟国になる努力をなさらないのですか。特許庁はそのつもりでおったのだけれども外務省の手落ちだったのか、それともあなたの方でそれだけの意欲を燃やしていなかったのだろうか。そこのところをちょっと聞きたいのですから、その点について長官の御意見を聞かしていただきたい。
#84
○齋藤(英)政府委員 IPCの協定に参加をいたしますことを私ども非常に熱望していることは、いま御答弁申し上げたとおりでございます。したがいまして、私どもが関係各方面に対しましてこれを絶えず熱心に希望いたしておりましたことは事実でございます。その具体的な詳細にわたりましては、これは各方面いろいろ御都合もあったことだと思います。したがいまして、私どもの方の希望がかなえられなかったことは、私どもとしてより努力が足りなかったんじゃないかというふうな気がいたしております。
#85
○石野委員 国連局に聞きますが、特許庁としては一日も早く加盟したいという熱望を持っておる。だのに、十月発効がもうちゃんとわかっている時点でなぜ今国会にその批准の手続をしなかったのですか。今国会で批准の手続をすれば、政府がその要望をもってすれば、各党の意見はわかりませんけれども、本件について国会が拒否をするということは恐らくないだろうと思うのですよ。条件がそれだけ整っているのになぜこの国会に批准の手続をしなかったか、その間の事情を聞かしてもらいたい。
#86
○市岡説明員 御説明申し上げます。
 先ほど長官から御説明がございましたとおり、先年秋から暮れにかけまして種々御要望があり、私どもといたしましても、この件につきましては十分慎重に検討いたした次第でございます。それが今次通常国会に批准の御承認を求めるに至らなかった理由につきましては、諸般の事情がございますが、まず、批准を必要とする多々の条約関係もあり、もちろんその間に優劣があろうとは決して思わないわけでございますが、諸般の準備が整い得るという見込みがついたものから手続を進めるということにせざるを得ないという事務的な事情もございまして、今次国会につきましてはこれを御承認いただく手続はとれないというように考えたわけでございます。しかしながら、この条約の必要性につきましては十分認識している次第でございますので、今後できるだけ作業を促進したい、かように考える次第でございます。
#87
○石野委員 特許庁長官にお聞きしますが、いま日本の特許申請件数というのはどのような事情なのだろうか、そしてまた世界の各国と日本と比較してどんなぐあいになっているんだろうか、そういう点をひとつお聞かせいただきたい。時間がありませんから簡単にしてください。
#88
○齋藤(英)政府委員 お答えいたします。
 現在、日本の特許関係は、特許、実用新案を合計いたしまして、昭和四十九年度の出願件数は三十一万六千六百六十五件でございます。それから、ちなみに四十八年度は二十八万八千九百六十一件でございます。これに対しまして諸外国でございますが――いま私、年度で申し上げましたが、諸外国は暦年でございますが、特許、実用新案を合わせまして、西独では一九七三暦年で十一万二千百四件、一九七二年では十一万五千百六件でございます。そのほかアメリカを一例だけ申し上げますと、一九七三年では十万四千七十九件、一九七二年は九万九千二百九十八件でございます。それ以外の国もございますが、省略させていただきます。
#89
○石野委員 日本の場合は暦年ではありませんから、若干の違いがあったとしても西独、アメリカと比べてはるかに多いわけです。これだけ多い特許申請があるという段階でストラスブール協定の持つ意味合いというものは、私は非常に重要になってくると思います。そういうようなきわめて重要な問題について、今国会で批准の手続をしないということは、事務上のミスであったのか、あるいは政府の考え方がどういうものであったかわかりませんけれども、とにかく十月のストラスブール協定の発効の段階では、日本は具体的には加盟国になり得ないという事情にございます。
 私はいま一つお聞きしたいのですが、このWIPOの関係あるいはIPCの関係で国際的な会議というのは数多く持たれておると思いますが、特許庁なりあるいは外務省なりで、ことし一年間のIPC関係の国際会議の回数がどれだけあって、どれだけわが国がそれに出席するのかということについての計画がございましたら、それを先にちょっと聞かせてもらいたい。
#90
○齋藤(英)政府委員 IPCは、これは五年ごとに改正をすることになっております。その改正会議は、私どもが予定をしておりますのは、ジュネーブにおきまして昭和五十年度において約二回予定をいたしております。その関係の予算の手当てをいたしておりますが、それ以外に国際特許分類協定の分担金というものがございます。この分担金につきましても予算上の手当てをいたしております。
#91
○石野委員 IPCがいま作業部会として持っておる会議というのは非常に多いわけですね。これは第一から第五部会までの間の部会の会議があるけれども、それには日本は一遍も出ないわけです。それで、いまのお話のように、二回出る予定だというのは、ビューローとそれから合同暫定委員会における出席、おそらくその二回だろうと私は思うのです。そうだとしますと、日本の場合は、先ほど言っておるように、特許件数は圧倒的に多いのに、それぞれの部会における作業部会には一遍も出席しないんですよ。しかも、IPCとJPCとの間にはいろいろな錯綜する問題がたくさんあるはずです。それを調整しなければならない作業部会には一遍も出ないで、そしてビューローだとかあるいは合同暫定委員会等に出ておるだけでは、実際には仕事としてはならないのではないか、こう思います。
 大臣にちょっとお尋ねしますが、私は、この特許の問題についてのストラスブール協定というのは、日本の産業の国際的関係における意味合いでは大変に重要なものだと思うのです。特に輸出増進とかあるいは輸出入の関係における特許の持つ意味合いが非常に重要だということを考えますと、この種の会議に全然出ないでいて、特許問題に対して全然ノータッチと言っちゃいけないかもしれませんけれども、作業部会に全然出ないということは もうノータッチと同じなんですよ。ビューローだとかあるいは合同暫定委員会等に出てみたところで、もう話は皆決まっちゃっておって、あとはみんなでやりましょう、やりましょうというだけになっちゃうんだろう、恐らく私はそうだと思うのですが、こういうようなことでは、ストラスブール協定とかあるいはWIPOに対して関心を持っているというふうには考えられないのですよね。昨年私がそのWIPOの国連専門機関についての質問をしたときに、政府の側の答弁は的外れだった。そうしてまた、今日、この十月からストラスブール協定が発効するとわかっていて、なおかつ国会に対する批准手続さえも行わないということになると、この問題について形は追っているけれども魂は全然入っていない。政府の考え方が那辺にあるのかわからないんだが、通産大臣は、この問題についてこれでいいのかどうだろうか、外務省と通産省との間の関係もやはり一つあると思いますし、それからなお作業部会等に出席できないのは、予算がないから出ないんだろうと思いますが、その予算等についても対処する方法を考えないのかどうか、あるいはそれに対する要員の設定というものは要らないのだろうかどうだろうか、あるいはWIPOについてあるいはIPCについて所要の人員手当てというようなものを考えないでもいいのだろうかというふうなことを私はここで懸念するのです。大臣のその点についてのお考えがありましたら、ひとつ聞かしてもらいたい。
    〔田中(六)委員長代理退席、萩原委員長代理着席〕
#92
○齋藤(英)政府委員 多少事実問題がございますので、私から答弁さしていただきます。
 先ほど申し上げました二回予定をされております予算上の手当ては、先生のおっしゃるとおりでございます。ただ、私どもの方が持っております外国旅費は、もちろんそれだけではございません。したがいまして、非常に必要な場合にはこのワーキンググループにも出席した事例もございます。それからまた、出席をいたしません場合には書面で一応いろいろ意見を申し述べて、ディスカッションの結果を実は送ってきていただいております。そういうふうにいたしまして、日本の国の特殊な分野と申しますか、いわゆるジャパンアイテムと称するような部門、あるいはわりあい進んでおります電子関係の部門につきましての分類等につきましては、われわれが一応提案をいたしまして、この次の改正におきましてはその提案がほぼ入れられるような情勢にも相なっておりまして、私ども日本側の意見というものもそのIPCの分類の改正作業の中に相当程度取り入れられて改正作業が進められておるというふうに私どもは認識をいたしております。
#93
○石野委員 日本がこのIPCの中で自分たちの利益を得るために努力するということは当然やらなければいけません。また、そのために私は、この作業部会等に積極的に出るような体制づくりをしてもらわなければいかぬというふうに言っているのですが、これは日本だけの利益じゃなくて、国際的な諸関係においてお互いに助け合わなければいかぬわけですから、自分の必要なときだけ出て、あとはほうりっ放しだということは許されまいと思うのですよ。そういう意味から言いますと、私は、こういう特許関係の問題で国際機関の中に入っていく日本の政府の態度というものが、他面においてエコノミックアニマルだと言われるような非難を受けないように、自分の必要なときだけは出るけれどもほかは出ないんだ、そういうようなやり方をしてはいけないだろう、こう思います。そういうふうに考えてまいりますと、予算は確かに旅費としては取っているかもしれませんが、しかし私の見た限りにおいても、各グループの作業というものはずいぶん、やはり一年間に十以上あると思うのですよ。その十以上もあるような作業部会の会議に対しては一度も出ないで、ただもう最後の締めだと言われるようなビューロー会議あるいは合同暫定委員会ですか、そういうようなところにだけ出ればよろしいんだというこの考え方を直さなければいけないんじゃなかろうか。私はそういう意味で、通産大臣に、やはり外務省と通産省との連携も不十分なところがあるんじゃないかと思うのですよ。特に昨年の私に対する答弁や、それからことし十月にすでに条約が発効しようとするのに、もう準備は十分できておるはずなんですよ、準備が不足しておるものはないはずなんです。ただ、手続の問題、対国会関係での手続にロスがあるんじゃないだろうかと私は思いますが、きわめて重要な会議に出ることもできないようにしてしまうような政府の態度というものは、これは考えなければならぬと思うのです。大臣からそういう点について是正するための、閣議の中でか、あるいはまたあなたの指示かでの対処の仕方をはっきりしておいていただく必要があるんじゃないかと思いますので、大臣の所見をこの際ひとつ聞かしていただきたいと思います。
#94
○河本国務大臣 先ほど来、わが国の工業所有権制度の問題についての国際会議における出席、活躍、発言等についてのいろいろなお話がございました。よく整理をいたしまして、政府部内でも手落ちのないように今後十分気をつけていきたいと思います。
#95
○石野委員 もう一遍お尋ねしておきますが、IPCのこの協定に加盟するための批准は、この次の国会には必ずやるのですか。もうこの国会にはいまからとてもだめなのかどうか、その点もう一度はっきり聞かしていただきたい。私は、この問題は準備が整っておれば条約の批准をできる限り急ぐということの意味は、この加盟国としての発言権を早く持っておることがわが国のために有利だと思うから、オブザーバーということよりも正式加盟国であることの方が有利だと思う。だから、批准がおくれれば、その間わが国の発言権というものがIPCの中へ入り込むことが非常に不利になるだろうというように思うのでこのことを言うのですから、政府の考え方をちょっと聞かしてもらいたい。
#96
○市岡説明員 御説明申し上げます。
 先ほど申し述べましたとおり、この協定につきましては、その内容及び趣旨につきまして異存ございませんところでありますので、できるだけ速やかに批准するという方向で作業を取り進め、私どもといたしましては、次期通常国会に提出さしていただきたい、かように希望する次第でございます。
#97
○萩原委員長代理 石野委員の質疑は終了いたしました。
 野間友一君。
#98
○野間委員 特許法の一部改正法案について質問したいと思うのですが、この特許の関係については国際的な問題あるいは専門的、技術的な側面が非常に多うございまして「非常にむずかしい、このように私は考えるわけですけれども、本日は多項制の問題とそれから料金制度、この問題を中心にして政府の見解をただしたいと思うのです。
 工業所有権審議会の答申の中で、多項制を採用する理由として三つばかり挙げておりますが、国際的な協調、それから発明の適切な保護、三つ目は第三者の便宜に資する、こういうのが挙げてありますとともに、諸外国における特許権の取得と維持の経験から、わが国でも多項制を採用するべきだ、こういうのが意見として述べてありますね。この「取得と維持の経験から」というのは、諸外国とわが国との法制の相違が特許権を取得しあるいは維持する上で何らかの支障を来している、このようにこの答申から私は理解するわけです。
 そこで、まずお聞きしたいのは、その諸外国と日本との法律上の相違、特に多項制に関連して問題となっておりますところのクレーム、この性格に関する規定についてお伺いをしたいと思うのです。西ドイツとかあるいはオランダ、アメリカあるいはイギリス、こういう諸国あるいはPCT、ここでは法律あるいは運用として、クレームとは出願人が保護を求める対象、こういうふうに規定しております。ところが、日本では、クレームについては発明の構成に欠くことができない事項、このように規定されておるのは御承知のとおりであります。このクレームの規定の違い、これは明細書を作成する際に、考え方として基本的な相違があるように思うわけですが、これは特許権の取得と維持に支障を与えた原因にならなかったのかどうか、その点からまずお伺いを申し上げたいと思います。
#99
○齋藤(英)政府委員 ただいまの御質問のうちの、特許法の三十六条の五項の現行法にございます請求範囲、俗にクレームと言っておりますものにつきまして「発明の詳細な説明に記載した発明の構成に欠くことができない事項のみを記載しなければならない。」こういう規定がございます。したがいまして、この請求の範囲の内容として書くべきことは、発明の構成に欠くことができない事項を記載するということになっておるということはお話しのとおりでございます。したがいまして、これは発明自身といいますか発明の構成を書く、こういうことになっておりますが、ただ書かれました事項につきましての法律的効果につきましては、特許法七十条に同じように規定がございまして、「特許発明の技術的範囲は、願書に添附した明細書の特許請求の範囲の記載に基いて定めなければならない。」こういう規定がございます。これは平たく申しますと、特許請求の範囲に書いたこと、その内容、その範囲が特許発明の技術的範囲である。したがって、もう少し突き進んで申し上げますれば、これがすなわち特許権、特許として保護が求められるその範囲内であるというふうに考えるわけでございます。したがいまして、日本のクレームと申しますか、特許請求の範囲を記載する内容は、発明の構成を書くということではございますけれども、法律的な性格といたしましては、これは特許発明の技術的範囲を決めるものである。平たく言いますれば、これは保護の対象になるべきそのものをここに書く、こういうふうにも理解ができるのではなかろうかというふうに考えております。
#100
○野間委員 私、そういうことを前提にしてお聞きしておるのは、答申の中で多項制を採用すべきだという理由の一つとして、「諸外国における特許権の取得と維持の経験から」という表現があるわけですね。クレームについての理解と申しますか規定の仕方も違う。多項制を採用する理由の中に国際化を図るということがある以上、こういうクレームの違い、これらが今日の日本の法制の中で国際化の観点からとらえた場合には支障を与えた原因として理解していいのかどうか、こういうことを結論としてお聞きしておるわけですが、いかがですか。
#101
○齋藤(英)政府委員 いまお話がございましたクレームといいますか、特許請求の範囲の法律的な性格と申しますか、それが国際的に見まして非常に支障があるから、これについて再検討を要するということよりは、むしろ請求の範囲の中に、クレームの中にどういうことが書けるのか、どういうことが書けないのかということ、それによりましてその特許発明の技術的範囲の記載の範囲というのが広がったり縮まったりすることは当然でございます。したがいまして、むしろ日本の三十六条の五項、現行法にございますように「発明の構成に欠くことができない事項のみを記載しなければならない。」という、そこのところが諸外国の法制とは、あるいは慣行とはかなり異なっておるのではあるまいか、そこが問題の出発点ではなかろうかと存じております。
#102
○野間委員 今回の改正による多項制、これは一発明についてクレームを複数で書けるという趣旨への改正、こう言われておりますが、クレームが一つかあるいは二つか三つか、こういうような単なるクレームの項数の問題だけでなくて、各クレームに何を書くか、それからクレームの内容あるいは性格、これなどに対する考え方を明確にすることが非常に大切ではなかろうか、こう思うわけです。「クレーム多項制の採用について」という、これは特許庁の総務課が四十八年七月につくられた文書があります。この資料によりますとA案、B案と二つがございます。そうして、A案では「クレームは保護の対象」と考えておる。B案では「クレームは保護の対象であると同時に発明を特定する機能を有する」、こういうことがこの文書には書かれておりますね。このことは、そのA案を別の面から考えますと、発明を特定するということと保護対象を特定するということが必ずしも両立することが前提でない、こういうふうに私は受け取ったわけですけれども、その点についてはいかがでしょう。
#103
○齋藤(英)政府委員 いまお話がございましたのは四十八年七月、特許庁内におきまして検討いたしました途中の案であろうかと思います。
 それで、その中にA案、B案ということで、一発明の考え方あるいはクレームの考え方についていろいろ書いてあります。私どもの方は、結論的に申し上げますと、現在の日本の法制において、国際的に見て、あるいは出願人、第三者の保護の点等から見て、どういうところを直したらいいかということを考えたわけでございます。といいますのは、要するに現行法があるわけでございますからして、現行法をもとにしてこれをどういうふうに手直しをしたらばそういう要請に合致をするかというふうに考えるのが自然ではなかろうかと思います。したがいまして、結論は、なるべく現行法の趣旨に沿って、しかもそれで最小限必要なところの手直しを行う、こういうふうな考え方になったわけでございます。したがいまして、現行法は、いま申し上げましたように、あるいはお話がございましたように、発明の構成を書く、発明を特定すると同時に、七十条でその技術範囲を、あるいは平たく言いますれば保護の範囲を定めておるということでございますので、そういう案をとった、こういうことでございます。
#104
○野間委員 いや、私がお伺いしておるのは、いまの文書の中でA案、B案、これはとにかくクレームが保護の対象と考える、あるいはそれと同時に発明を特定する機能を有すると考える、これがA案、B案の違いであるわけですね。B案をとったということでしょうけれども。この特許庁の中での論議の中で、二つの案があるということで、私お聞きしておるのは、その保護の対象と発明を特定する機能、これが同一であればA案、B案の違いというものは出てこないと思うのですね。ですから、A案を別の面から考えれば、発明を特定するというのと保護の対象というのと、これは必ずしも両立しないということがあるから、このようなA案、B案というものが出てきた、こう理解するわけですけれども、この点についての私の理解が間違っておるのかどうか、その点についてひとつ……。
#105
○齋藤(英)政府委員 いまお話がございましたA案、B案、A案につきましては、クレームを保護の対象と考えるということでございますが、そのクレームの内容として一発明の考え方をどういうふうにつかまえるか、そのつかまえ方いかんによってそのクレームに書く内容というのは当然変わってくるわけでございます。それで、これは申すまでもなく諸外国におきましてはそれぞれ歴史的な経緯等もありまして、一発明の範囲というものは必ずしも一定ではないし、場合によっては相当弾力的に取り扱っておるところもございます。したがいまして、クレームを保護の範囲と考えるという考え方でありますと、非常に広く見たその発明というものあるいは場合によっては非常に狭い範囲の発明というものを自由にそのクレームの中に書くということになりまして、クレームは保護の対象ということで統一せざるを得ないということになるかと思います。日本の法制は、これも申し上げるまでもございませんけれども、二条の実施の定義等から推しまして一応、俗称カテゴリーと申しますが、カテゴリーの単位に発明の単位が成立をして、それによって特許法全体が構成されている、こういうことでございます。したがいまして、その一発明の範囲内で書くという、そう発明を特定するということは当然現行特許法の、一番大きいと言えるかどうかわかりませんけれども、一つの前提でございますので、したがいまして発明を特定する機能もクレームでは特許請求の範囲の中にはっきり位置づけるということが必要ではなかろうか、こういうふうに考える次第でございます。
#106
○野間委員 そこで、この文書の中で続けてあるのは、いまも長官答弁にもありましたけれども、庁内の多項制委員会の大勢はA案の方向と記載があります。B案を支持する法曹界の代表を除けば、産業界あるいは弁理士会の代表など全体としてはA案支持が圧倒的であった、こういうふうに受け取るわけですが、しかしB案がこの改正案の中身として提案された。この理由として、先ほども若干答弁の中にあったと思いますが、参議院の審議の中での答弁でも、そのA案のような外国並み多項制にすると、改正の規模が大き過ぎるへ改正作業としての労力やあるいは改正後の運用等にもたらされる変更が大き過ぎる。そこで、わずかな改正で済むB案を選んだ、そういう趣旨の説明をされております。これは藤井議員の質問に対する答弁の中にあります。
 そこで、お伺いしたいのは、このような改正で、改正の目的である国際化に対応するという改正になるのかどうか、あるいはこの改正でいって、PCT正式加盟の際に再度抜本的にさらに検討し直すというようなことになるのか、そのあたりの考え方をひとつ聞かしてください。
#107
○齋藤(英)政府委員 いまお話がございましたA案、B案で、私の方はB案をとったということは、私、参議院の藤井先生に答弁いたしましたとおりでございます。と同時に、先ほど申し上げましたように現行法というものは、昭和三十五年以来でございますけれども、こういう構成できっちりしてあるわけでございます。したがいまして、その諸種の事情の変化あるいは要請にこたえるにつきましては、現行法を基礎にして、現行法の最小限の手直しによって、国際的な要請に合い、かつ第三者並びに出願人の利益に合うような改正ができるならば、それが一番いい改正ではなかろうかと私の方は思うわけでございます。それの逆な裏返しの表現を、私は藤井先生の御質問のときにいたしたわけでございます。
 といいますのは、要するに、そういたしますと、現行法の基本的な考え方でございますいわゆる発明の単位と申しますか、カテゴリー別になっております発明の概念と申しますか、そういうものをやはり基本的に直さなければ、これは改正ができないということになります。これは単に、手数の問題でももちろんございますけれども、それ以上に、既存の特許法の概念、考え方を基本的に変えざるを得ないということになろうかと思います。
 なお、蛇足かもしれませんが、各国によりまして、少しずつ、あるいは相当部分、発明あるいは発明の単位に対する考え方は違っております。たとえば、最近スイスの改正法等が話題に上がっておりますが、これは日本のカテゴリー別の発明の単位とほとんど等しい制度をとっております。ほかの国は必ずしもそうではございませんで、たとえば、PCTルールにもございますように、一つの一般的な発明概念といいますか、シングルゼネラルインベンティブ コンセプトというものでリンクされているものについては一出願ができる、そういうふうな考え方のところもございます。
 したがいまして、われわれは、そういう趣旨の要請にこたえるために、現行法を基礎にして、これをそういう要請に合うようにするにはどういうふうにしたらいいかということで考えた結果が現在の案になった、こういうことでございます。
#108
○野間委員 そこで、お伺いしているのは、本改正案で国際化に対応できる、こういうふうに考えておられるのか、あるいはいまのお話の趣旨から、当面今度の改正でいく、そしてこの推移を見て、PCTとの関係が出てくるまでにさらに抜本的に一遍検討し直すということも踏まえて改正案を出されたのか、そのところを聞いておるわけです。
#109
○齋藤(英)政府委員 現在の多項制に関する御質問でございますので、多項制の部分に限って申し上げますと、私どもは、PCT加入に際しまして、その部分について改正をしなくてもPCTに加入できるというふうに考えております。
#110
○野間委員 そこで、少し質問を進めてみます。
 本改正の目的が、先ほどから申し上げているように、国際化に対応するということが一つの柱であることは事実でありますし、参議院の論議でもかなりその点がされておるわけですが、PCT条約の二十七条、これを見てみますと、この条約及び規則と異なった、または追加的な形式または態様を国内法で要求してはならない、こういう規定がありますね。したがって、この改正法はそのPCT条約及び規則と矛盾しないものでなければならない、これは当然だと思うのです。そのとおりに理解をしてよろしいかどうか。
#111
○齋藤(英)政府委員 そのとおりに考えております。
#112
○野間委員 さらに、今回改正は、一発明多項、それから多発明多項、これを併用したところに特徴がある、このように言われておりますが、まずそのクレームの表現形式、これについて少しお尋ねをしたいと思うのです。
 一発明多項、このためには実施態様というものが新しく提案されております。そして、この実施態様は、参議院の審議の過程で特許庁が明らかにした省令案、私もここに持っておりますけれども、この省令案によりますと、引用形式で書くことになっておりますね。その改正案の六項の省令案要綱の五号で、引用形式で書くことになっております。発明の構成に欠くことができない事項は、引用しない形式で書く、これは六号にございますね。
 このようにクレームを実施態様かそうでないものか、これを区別して、引用形式かあるいは非引用形式で書かせるのは、本改正案による日本だけの特徴なのか、あるいはPCTもそうなっておるのか、その点についてひとつ見解を伺っておきたいと思います。
#113
○齋藤(英)政府委員 現在の日本の法制におきまして、いまお話しがございましたように、多発明多項、一発明多項というふうにこれから直そうということで御提案を申し上げておるわけでございますが、その場合の従属項については引用形式にしなければいけない、引用形式にするということにつきましては、私どもはPCTの条約あるいはルールにつきまして、それに規定しておるところ、PCTは主として形式面を規定いたしておる点が多いわけでございますけれども、それに私どもの方は違反をいたしていないというふうに考えております。
#114
○野間委員 違反をしていない、こういうことですね。
 もう少し入りますけれども、ちょっとややこしい条約の問題が出てきますが、PCT規則の六の四(a)というのがありますね。この六の四(a)によりますと、「一つまたは二以上の他の請求の範囲のすべての技術的特徴事項を含む請求範囲」、「従属請求の範囲」でありますけれども、これは「他の請求の範囲を引用し、」こういう規定がありますね。これは特許法の三十八条第一号に「特定発明の構成に欠くことができない事項の全部又は主要部をその構成に欠くことができない事項の主要部としている発明」、こういう表現がありますが、この六の四(a)、この中には、当然三十八条第一号のいま申し上げたこれが入っておる、こういうふうに理解されるわけです。ところが、省令案の第六号によりますと、発明の構成に欠くことができない事項の記載には、他の発明の構成に欠くことができない事項を引用してはならず、こうなっておりますね。
 つまり三十八条一号の関係にある二発明の請求範囲について考えてみますと、PCTでは引用せよ、こういうことになるわけですね。ところが、日本の規則では、この省令案によりますと「引用してはならず、」そうなるわけで、どう見てもこれは反対のことを言っておるのじゃないか、こう言わざるを得ないと思うのです。先ほど長官の答弁には、違反しないというような言葉がありましたけれども……。
 そこで、それを前提にしてお伺いしたいのは、PCTの六の四(a)、これと省令案の第六号、これとは互いに矛盾しないのかどうか、この点について、結論だけまずお伺いしておきたいと思います。
#115
○齋藤(英)政府委員 PCTのルール全体の構成を考えまして、私どもの方は矛盾をしていないと考えております。
#116
○野間委員 全体の構成という話がありましたけれども、少し詳細にその矛盾しないという理由をひとつ述べていただきたいと思います。
#117
○齋藤(英)政府委員 現行と申しますか、まだ発効はいたしておりませんが、PCTのルールの六の四では、ディペンデントクレームにつきましていまお話がございましたように、一つ以上のほかのクレームのあらゆる特徴を含むクレームはリファレンスによってそうしなさいというふうに書いてあります。それはお話のとおりでございます。
 それで、しからばこのディペンデントクレームの性格というものが出願の際にどういうふうに記載ができるのかできないのかということにつきましては、この六の四には記載がございません。したがいまして、私どもの方は、これは、ルール十三というところにユニティー オブ インベンションというのがあります。ここで考えますと、この国際出願というものは一つの発明であるかあるいはシングル ゼネラル インベンティブ コンセプトでリンクされたような複数の発明のグループであるか……(野間委員「日本語で言ってください」と呼ぶ)失礼いたしました。国際出願は、一つの発明に関するものであるかあるいは一つの一般的な発明思想でリンクされた複数の発明のグループであるか、そういうものについて国際出願をしなければいかぬというのが十三の一にございます。それで、以下十三の二以下の規定がございますが、十三の四のところにディペンデントクレーム、従属項という規定がございまして、その従属項の規定のところに、この同じ国際出願で含まれるような従属項というのはどういうものかという記載がございます。その従属項の記載は、一の独立項で請求しておる発明の特別の形をクレームする従属項の適当な数ならば、それは同じ同一の願書の中に記載ができるんだ、含むことができるんだ、含まれるべきなんだ、こういう記載がございます。したがいまして、私どもの方はその両方の規定をあわせ考えますれば、同じ一つの国際出願の中で記載することができるクレームといいますか、日本語で言えば請求の範囲ですが、請求の範囲というものはどういうものであるかということでございますが、それはこれ以外にもちろんいわゆるインディペンデントクレームと申しまして独立項の規定は別にございますが、それは別にいたしまして、従属項の規定といたしましては、この独立項で請求された発明の特別な、特定な形とでも言いましょうか、特定な形を請求するものであるという規定がございます。したがいまして、形といたしましては独立項は独立項で、これはほかの項は引用しないかっこうで記載すべきであり、従属項は実施態様というものが従属項に書ける。その従属項は六の四によって、これはリファー、引用しなければいけない、こういうふうになっているというふうに考えます。
 したがいまして、その全体の構成と言いましたのはそういうことでございますけれども、そういうことから考えまして私どもの方はそれをもう少し簡単、直明に申し上げますと、独立項というのは形から言いますと他の請求項を引用するということはしない、あるいは他の従属項を引用することはしない、それから従属項に書きますものは、これは日本語で言いますれば発明の実施態様でございますけれども、実施態様という具体的な内容でなければならず、かつそれは独立項を引用しなければいけない、かつ独立項に書いてある技術的特徴というものはすべて包含しなければいけない、こういうふうな解釈をいたしております。
 したがいまして、いま御質問がございました六の規定は、そういう趣旨でもって私の方は規定をいたしたわけでございます。
#118
○野間委員 えらい実務的な問題で理解が非常にしにくいわけですけれども、お聞きしておって、要するに言わんとするところは、矛盾しないということだと思うのですね。そうでしょう。それは十三の四ですね。これは六の四をさらに限定的に定義する規定だ、こういう解釈のように承っていいわけですね。
#119
○齋藤(英)政府委員 従属項に関しまして、私どもはそういうふうに理解をいたしております。
#120
○野間委員 しかし、そうなりますと、ちょっと私も納得しにくいのですけれどもね。六の四の(a)、いま長官も英語文で読まれましたけれども、一または二以上の他の云々を含むいかなるクレーム、こうありますね。「エニークレーム」こういう書き出しで始まっておりますね。この書き方からしますと、十三の四がどうであろうと、とにかく六の四(a)のかぎで考えてよいはずではなかろうか、独立してですね。また、前段に規定された条文の内容、ルールの内容を変更するような規定があるんだという考え方も、これは私はおかしいと思うのですね。
 ざらに、十三の四の規定についてですけれども、この規定は従属クレームがそれ自体で一発明を構成する、こうありますね。これはわが国の三十八条の一号に言う別発明と同じものであると私は思うのです。また、ここで言う特定の形態、これが本改正案で言うところの実施態様と同じ意味であるとは私は理解できないと思う。
 そこで、もしPCTの十三の四が六の四の(a)とともに省令案の第六号、これと同じ意味だと仮に仮定しますと、PCTルールのこの規則のもとにあっても一発明かあるいは同一カテゴリーの別発明か、これを峻別しなければならぬということになると思うのです。これは形式論はともかくとしても、この峻別の点については参議院の商工委員会で松本参考人その他からも指摘をされたように、実際には非常に厄介な問題だ、こう思うのですね。ですから、PCTでは、それを承知の上で十三の一で、一発明または発明群、こういう規定をしておりますが、これに見られますように、一貫して一発明かあるいは別発明か、この峻別の論議を避けておると思うのですね。これは各国で発明の体制に対する考え方、これが違うということが考慮されておるというふうに私は理解しておるわけです。したがって、私、素人ですけれども、多少専門的な論議かもわかりませんが、十三の四の規定は独立クレームと従属クレームがある場合に、それらが一発明か別発明なのか判断しなければならぬという問題が起こるから、一発明なら従属クレームとして書いてもよろしい。仮にそれ自体で一つの発明となるもの、すなわちわが国の法三十八条の一号に言うような別発明であったとしても、それを従属クレームとしてよろしい、こう読むべきだと私は思うわけです。そうしないと、実務上大変な問題を抱え込む、私はそう思うのですけれども、その点についていかがでしょうか。
#121
○齋藤(英)政府委員 いまお話がありました一番最後の点で「イーブンウエア」、英語で恐縮でございますけれどもそう書いてありますが、その規定であると思いますが、それは要するにそれ自体一つの独立の発明を構成するものである場合であってもこうであるというふうに私どもは考えております。
 たとえば特許法の訂正審判の規定、これは御案内だと思いますが、百二十六条の規定ございますが、その三項に「第一項第一号の場合は、訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により構成される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならない。」こういう規定があります。と申しますのは、訂正後におきましてもそれは要するに一つの発明の構成、発明を構成して独立して特許を受けることができるものでなければならぬという、こういう規定でございますが、私どもはこの「イーブンウエア」のそこのところは、たとえば最初の主クレームと申しますか、主請求項が仮に何かの瑕疵がありまして、それが仮に抹消しなければいかぬというのを仮定いたしました場合に、第二項目の、私どもが言う実施態様項がその上に出でくるということになりますが、その場合において、それ自身百二十六条の三項に書いてありますように一つの発明を構成するようなものでなければならないんだというふうなことではあるまいかというふうに私どもは考えている次第でございます。
#122
○野間委員 どうも妙な答えで、私は理解できないのですけれども、真っ当に考えますと、いま私が申し上げたようなふうに解釈する以外にないと思うのですね。しかし、そういう答弁があるなら、押し問答しておってもあれですから次に進みます。
 すでに実施態様の中身について質問に入っておるわけですが、先ほどから申し上げておるように、一発明かあるいは多発明か、この峻別は非常にむずかしいと思うのです。ことに三十八条一号の関係が非常にむずかしくなると思うのですが、これまた参議院での審議の中で松本参考人、これは弁護士さんですね、この方のこの問題に関しての指摘について、一体特許庁はどういうふうに受けとめておるのか。これは特許庁の中の職員の方からもいろんな訴えを私も聞いておるのですけれども、公式論はともかくとして、いまいろいろ言われましたけれども、実際にどう運用するのか、これが非常に問題だろうと思うのです。この点をあいまいにしておきますと、出願人が明細書を書くときにどうすればよいか迷うことにもなりますし、特許庁の内部での取り扱い、これもそれぞれ違うと思うのです。混乱すると思うのです。どう理解するか、どう認識するかで違いが出てくると思うのです。また、出願人にとっては、明細書の書き直し、これが求められる場合もあるだろうと思うし、場合によっては拒絶の問題も出てくると思うのです。さらに、料金の問題、払わなくてもよい審査請求料を払わされたり、あるいは払うべきものを払わないままになったりの不公正が出てくるということも、十分私予測できるのです。これに対して一体どう対処されるのか、先ほどの論議を踏まえ、また参考人の参議院での意見を踏まえて、特許庁は一体どのように対処されるのか、ひとつ明確に答弁願いたいと思います。
#123
○齋藤(英)政府委員 今回の改正は、一番最初に申し上げましたように、現行法を基礎にいたしましてその改正を最小限にとどめるということを意図しておるということは、申し上げましたとおりでございます。したがいまして、たとえば一発明の概念というものにつきましては、これは変更いたしておりません。そういうふうな次第でございますからして、一発明というものの考え方、内容、範囲というものにつきましては従来と変更していないわけでございます。したがいまして、出願人あるいは審査官の間において、従来と違った考え方になっておるのではあるまいかともしお考えの方がございましたならば、私はそういうお考えの方はないと思いますけれども、それはそうではないわけでございます。しかしながら、これは多項になります。当然一発明につきましても複数のクレームになりますからして、新しい制度でございますから、当然その間におきまして私どもの施策がよろしきを得ない場合には混乱が起きるということは、これは抽象的に申しましてあらゆる新しい制度をとる場合に生ずることでございます。したがいまして、私どもはこの点、現在はまだ法律御審議の最中でございますから、まだ省令の案でございますけれども、この省令につきましても広く現在でも内外にいろいろ御説明申し上げ、あるいは御意見をお聞きして、足らざるところあるいはこれについていろいろ問題があるところにつきましては、議論の末それをいろいろ省令の段階において考えたいと思っております。それと同時に、実施の運用要領を実は部内でつくりつつありますが、これにつきましても同様に、やはり衆知を集めまして完全なものをつくりたいと思っております。
 それからなお、それが一応完成いたしました暁には、これは特許庁の中はもちろんのこと、各地に参りましていろいろ説明をし、御意見をお聞きして、その周知徹底を図るようなことにいたしたいというふうに考えております。
#124
○野間委員 新しい制度をつくったときには混乱がつきものだ、私はそういう答弁のように聞きまして、もうけしからぬ。しかも、いまの答弁の中で、基本的には変わっていないと言いながら、多項制を採用したこの理由については国際化だ、こういうことも事実なんですね。しかも、多項制の問題が、実際PCTに即したものであるから、これがまさに論議の対象になっているわけでしょう。庁内で論議されたA案、B案、まさにそうなんですね。非常にあいまいな形で進みながら、しかも新しい制度をつくったら多少の混乱はやむを得ないというような抽象的な一般論で逃げるというのは、私は避けていただきたいと思うのです。少なくとも私は、いま出ました条約との関係で生じておるいろいろな問題、これに対してどう対処するのかということを聞いておるわけです。単に抽象的なそういう論議で、出てきた場合にはそれは新しい制度でやむを得ない、しかし適切に対処するというような抽象的な論議では、私はこれは救えないと思うのです。その点について私は、対処の仕方をもっと厳しく、いま省令の問題とかあるいは内部の運用の問題についてありましたけれども、これをぜひひとつ混乱のないようにつくって、ひとつまた説明をいただきたい、こう思います。
 そこで、続けますけれども、改正案の第三十六条第五項ただし書き、いわゆる実施態様の問題ですが、その発明の実施態様に何が書けるかという、この問題についてお伺いしたいと思います。
 特許法の二条では、その発明の実施について定義があります。この定義によりますと、物の発明の実施とは、その物の生産、それから使用等も入る、こういう規定がありますね。物の発明の実施態様にそれでは生産や使用に関する事項を書いてもよい、このように理解していいのかどうか。いかがです。
#125
○齋藤(英)政府委員 第二条において実施の定義があることはお話のとおりでございます。今回の実施態様と申しますのは、大正十年法の「実施ノ態様」という、従来使いなれております言葉、その表現をとったわけでございますけれども、これは実施の態様というふうに当初私どもの方も表現をいたしておりました。しかしながら、実施の態様ということになりますと、二条の実施ということとの関係が非常に生じてくるということが、これは法制部門を担当しておるところでもいろいろ議論がございまして、その末、実施の態様を実施態様というふうに一つの熟語にこれを変えまして、実施態様という一つの言葉で全体の意味を表現するということにいたしたわけでございます。したがいまして、二条の実施ということとこの実施態様という言葉につきましては、関連と申しますか、二条の実施というものとこの実施態様の内容というものは違ったものであるというふうに私どもの方は考えております。
#126
○野間委員 それで結局どうなるのですか、いまの質問。
#127
○齋藤(英)政府委員 生産とか販売とか、そういうものが二条の実施にございますけれども、それは私どもの方は実施態様の内容になるとは考えておりません。
#128
○野間委員 そうしますと、特許法の中では実施という概念が二通りに使われる、こういうことになりますね。二条でいう実施とそれから三十六条五項の実施態様、同じ実施という言葉を使いながら、片方は実施である、片方は実施態様という新たな概念の規定だ、設定だ、こういうふうに理解されておるわけですか。新たにつくったものであって、その中には、二条の実施の概念規定ですね、定義とは異なったものであって、当然生産や使用は入らないのだ、こういうことですか。
#129
○齋藤(英)政府委員 三十六条五項ただし書きで御審議をお願いしております実施態様というものは、実施態様という一つの熟語で私の方は考えておりますので、二条の実施というものの定義とは違ったものであるというふうに考えております。
#130
○野間委員 そういう前提に立って生産やあるいは使用に関する事項を書くことはできない、結論はそうなるわけですね。
 そこで、二条とかあるいは三十六条の五項等々いろいろ検討しましたけれども、一体使用やあるいは生産が書けない、書いてはならぬという答弁がいまありましたけれども、これは二条の概念とは違うのだ、こういうことですね。それじゃ、書いてはならぬという法律の根拠は一体あるのかどうか、これが問題になると思うのです。禁止、これはいけないとおっしゃるなら、私が見るところ特許法の中ではこれを禁止する規定はないと思うのです。もし、それを書いてはならぬというような取り扱いをするとすれば、それはやはり省令等で書かれるとしか考えようがないと思うのですけれども、こうなりますと、出願人の権利そのものが省令等で規制されるということになりますと、これを単なる運用上の問題、運用事項として考えることは大変なことになると思うのです。そういう点を踏まえてこの現行法の中で使用、生産が書けないということの法律上の根拠は一体どこに求めておられるのか、ひとつお聞かせ願いたいと思います。
#131
○齋藤(英)政府委員 先ほども申し上げましたように、その実施態様というものは二条にいう実施とは違うという私どもの考え方でございます。これは大正十年法以来、実施の態様あるいは実施態様という言葉は学術論文その他でいろいろ使われておりますが、諸外国におきましてもほぼ同じような形態のものがクレームの中に書かれておる。そういうふうな諸般の情勢をつかまえまして、私どもの方は実施態様という――これはもちろん言葉の約束でございますからして、すべて言葉というものは約束ごとでございますから、共通の認識に立たなければその約束は守られないわけでございますけれども、私どもの方は、そういう特許業界あるいは外国も含めまして、そういう関係各方面の認識の上に立ちまして、実施態様というものにつきましては、生産なりあるいは販売とか、そういうものの態様を書くものではないというふうに理解されると思っております。
#132
○野間委員 いえ、一つの法律の中に二つの同じ実施という概念が出てきますから、そうであれば、混乱を避けるために、これは国際間の問題もありますから、やはりそれなりの規定を置かなければならぬ、こういう点から私は質問したわけです。
 そこで、料金問題について少し伺いたいと思いますけれども、審査請求料というのは審査負担に対する手数料、こういうふうに私は理解しておりますけれども、それはよろしいわけですね。
#133
○齋藤(英)政府委員 おっしゃるとおりでございます。
#134
○野間委員 多項制を採用することによってクレームの数が多くなる、審査負担がふえる、これは当然のことであります。そうすると、その審査請求料もふえる、増加するということも当然だと思いますけれども、この点についてはいかがですか。
#135
○齋藤(英)政府委員 いまお話かございましたように、多項制になりまして実施態様が合わせて記載されるという事態、そういうふうなことになりました場合には、それは審査官としましては当然それが実施態様であるかどうか等、あるいは省令案にいま私どもが考えております先ほど出ました番号を付すとかいろいろな問題がありますが、そういう形式の問題あるいは実態の問題でチェックするポイントが非常にふえてまいりますから、したがいましてこれにつきましての審査負担がふえるということは、お話しのとおりであろうと私は思います。しかしながら、要するに出願につきまして、かりに一発明といたします。併合の場合をちょっと別にいたしまして一発明といたしました場合に、その発明を把握いたしますのにつきましては、発明の技術的特徴というのは第一項である主クレームと申しますか、発明の構成に欠くことができない事項に技術的特徴というものがすべて書かれていなければ、発明というものは特定いたしません。それから、それの構成の具体化した事項が実施態様に書いてあるわけでございます。それで、発明を把握する場合には、当然最も厳密に見なければならないのは主として第一項で、発明全体を把握しなければいけないわけでございます。第二項、第三項の実施態様、それから発明の詳細な説明が書かれておるわけでございますから、それも当然読んでその内容を理解しなければならないことは当然でございますけれども、実施態様に、クレームに、要するに特許請求の範囲に書かれるということは、詳細な説明に書かれるよりもより重要なことであります。これは特許権の範囲によることでございますから、したがいまして審査官の負担がふえることは当然でございますけれども、その第一項、要するに一発明でありますれば主請求項によって主として発明の技術的特徴をすべて把握するということでございますから、項がふえるにつれましてそれだけ発明の数がふえるわけではもちろんございません。したがいまして、その項ごとに手数料を取るかどうかという問題は、それほどそこまで考える必要はないのではあるまいかというふうな考え方に私どもは立ったわけでございます。
 なお、私どもがほかの国の例等も多少調べましたところが、一出願につきましての手数料を決めておるところもございますし、あるいはクレームごとのところもございます。種々種類がございまして、いずれの方策も国際的にはあるのではあるまいかと考えております。
#136
○野間委員 参議院の中でもそういう趣旨の答弁もあるようですけれども、しかし四十九条から見ますと、審査項目が列挙され、おっしゃるように新規性とか進歩性、これは発明を単位とし審査するということになっております。しかし、三十六条あるいは三十八条はそうなっていませんね。
 それらの条文に関して省令案を参考にして見てみますと、実施態様であるのかないのか、それから明確かつ簡潔に記載されているかどうか、それから発明ごとに区分されているかどうか、つまり二つ以上の発明が含まれていないかどうか、それから各実施態様と構成に欠くことができない事項とが区分されているかどうか、さらに各実施態様は引用形式で記載されているかどうか、それから発明の構成に欠くことができない事項は非引用形式になっておるかどうか、各実施態様は技術的に限定して具体化しているかどうか、各実施態様は他の発明の構成に不可欠な事項や他の発明の実施態様を引用していないか、さらに各実施態様は詳細な説明によって支持されているかどうか、こういうこと等々が純粋にクレームの数に応じてふえる審査項目ではなかろうかと思うのです。これらは拒絶の理由を出すか出さないかに関係なく、必ず審査しなければならぬ。また、進歩性やあるいは新規性と同様に大切なものであります。したがって、審査のウエートとしても無視はできない。これは当然な話だと思うのです。それでもやはりいまの答弁を維持されるかどうか。
#137
○齋藤(英)政府委員 ただいまお話がございました省令案についてのいわばチェックポイントとも称すべきものでございますけれども、それはおっしゃるとおりチェックポイントは多数あります。したがいまして、私も審査官の負担は多項制になった場合はふえるのは当然ではないかということを申し上げた次第でございますが、しかしながらこれを一発明として考えました場合には、やはり一発明の新規性、進歩性その他を判断する技術的特徴は、第一項の主クレームによって主として判断される、主としてでございますが、判断されることは間違いない事実であると思います。したがいまして、その点を考えますれば、諸外国にもいろいろ制度がございまして、これについていろいろ議論はもちろんありますが、私どもといたしましては、現在、物価水準にスライドしてではありますけれども、やはり出願料その他についての改正もお願いを申し上げておる次第もございます。そういうこと等も考えまして、私どもの方といたしましてはクレームごとの料金を取るということにはいたさなかった次第でございます。
 なお、そのクレームと申しますと、これは先ほど英語を使ってはいけないというお話がございましたが、実は各項と申しますか、複数項、多数項という形式的な項というものの特許法における地位というものは必ずしも法律の条文上はっきりしておりません。改正法もまたそうでございます。したがいまして、項ごとに料金を取るということにつきましては、その項というものにつきましての法律的な位置づけというものをやはり相当明確にすべきではなかろうかと私は思います。現在省令段階においてそれは一応区分して記載する、こういうことになっております。記載方法ということで一応私どもは考えておりますが、もし項ごとに料金ということになりました場合には、その辺のところももう一遍私ども再検討せざるを得ないことになろうかと存じております。
#138
○野間委員 時間がありませんので、あと大事な点を二、三、実務の問題について少しお聞きしたいと思いますけれども、訂正審判で一つの独立クレームが削除され、二以上の実施態様が独立クレームに昇格するようなケースがあり得るわけですね。この際、登録料は加算しなければならないと思いますけれども、いつの時点で払えばいいのか、つまり公告のときまでさかのぼるのか、あるいは訂正審判成立のとき払えばいいのか、そのときからか、あるいはそれ以外の時点なのか、そうであればいつの時点か、これは実務の問題ですけれども聞いておきます。
#139
○齋藤(英)政府委員 審決の手数料の御質問であろうかと存じますが、審決の手数料につきましては審決確定時に払えばいいというふうに考えております。
#140
○野間委員 登録料です。一つの独立クレームが削除され、二つ以上の実施態様が独立クレームに昇格するというケースがありますね。この場合、私聞いておるのは登録料です。これを加算しなければならぬと思うのです、二つの独立したクレームになりましたから。その場合にいつの時点で払うかということ、つまり公告のときまでさかのぼって払わなければならぬのか、あるいは訂正審判が成立した、そのときに払えばいいのか、この問題なんです。
#141
○齋藤(英)政府委員 いまのお話は特許料あるいは実用新案による登録料の問題だと思います。それは審決が確定をいたしましたときに払うわけでございますけれども、その払う分につきましては、それは当初にさかのぼった分について追加して支払う、こういうことでございます。
#142
○野間委員 もう一つ、実務の問題ですけれども、百二十六条の関係について少し聞きます。
 時間がありませんので個条書きに四点ばかり挙げてみたいと思いますが、一発明の範囲内で特定の実施態様を抹消することができるかどうか。次に、一発明の範囲内で特定の実施態様を新たに追加することができるかどうか。三つ目は、一発明の範囲内で特定の実施態様を拡張変更することができるか。四つ目は、同じ一発明の範囲内で特定の実施態様を減縮することができるか。この四つの場合に一体どうなるのか、この百二十六条の関係で少しお伺いしたいと思います。
#143
○齋藤(英)政府委員 いまお話がございました一発明の範囲内においてある特定の実施態様を抹消できるかどうかということでございますが、これは私どもはできると考えております。
 それから二番目に、一発明の範囲内において特定の実施態様を追加することができるかどうかということでございますが、訂正審判は特許請求の範囲の減縮ということでございますので、追加はできないというふうに判断をいたしております。
 三番目の拡張する変更でございますけれども、これはやはり減縮ではございませんので、これはできないと考えております。
 四番目の減縮でございますが、これは百二十六条の特許請求の範囲の減縮であればできるというふうに考えております。
#144
○野間委員 そうしますと、抹消そのものもこれは減縮として考えるということですね。百二十六条の一項一号でできるということになるわけですか。これは正式に答弁としてひとつ確認しておきたいと思います。
#145
○齋藤(英)政府委員 百二十六条の特許請求の範囲の減縮の極限の形として抹消ということがあるというふうに考えております。
#146
○野間委員 まだたくさん聞きたいことがありますけれども、ちょっと後がつかえておるようですから、この程度で私は当面終わりまして、あとまた機会があれば保留した分について質問したいと思います。
#147
○萩原委員長代理 野間委員の質疑は終了いたしました。
 近江巳記夫君。
#148
○近江委員 きょうは非常に時間も制約されておるわけでありますが、何項目かにつきまして質問したいと思います。
 今回の改正案は、化学物質、医薬、飲食物等の発明に対して特許を与える、いわゆる物質特許制度の採用を第一の柱としておるわけですが、この制度のメリット及びデメリットにつきまして、特にメリットがデメリットを上回る根拠につきまして詳細に説明をしてもらいたいと思うのです。
 あわせまして、この制度につきまして関係業界、なかんずく中小企業の側から反対意見というものは出なかったかどうか、その点についてお伺いしたいと思います。
#149
○齋藤(英)政府委員 物質特許を採用いたしました基本的な考え方につきましては、これは先般の経緯でも申し上げたとおりでございまして、物質自身に関して特許を与えるということでございます。これにつきまして、たとえば物質特許がない場合を考えてみました場合には、ある技術、製造手段、A製造手段によりましてXの物質を仮に発明をしたといたしました場合には、そのXの物質特許を守りますためには、単にAという製造方法だけではそれが公開され、あるいは公告されました場合には、すぐそれに類似ないしは相当容易に思いつくようなBあるいはC、Dという製法特許が出願をされて出てまいります。したがいまして、当然発明者は、これは自分でB、C、場合によってはDまでの製法を考えました上でそれぞれ四つなら四つの出願として出願が出てくる、こういうことでございますが、物質特許が与えられました場合には、一つの製造方法を考えました場合にはすぐそれで出願をいたしまして、そのXという物質特許をとることができるわけでございます。したがいまして、その辺につきまして資金面あるいはこれが世の中に出るその期間の面につきましては相当大きな差異が出てくるのではあるまいかというふうに私どもの方は考えております。したがいまして、本制度を採用することによりまして――従来そういうふうな事態であるために、とかくわが国の技術研究というものが新しい基本的な物質を発明する、こういうふうなことよりも、むしろAという製造方法が出ますと、それのB、C、Dという別の製造方法を発明した方が安上がりですし、場合によってはその方がプロフィタブルでございますからして、そういうふうにとかく走りがちになる、こういう傾向がございました。これは技術水準の格差が非常にありました場合にはあるいはやむを得なかったかと思いますけれども、その辺につきましては、私どもはいまの技術水準になりました暁にはそういうことはむしろ避けるべきで、新しい物質創造のような基本的な研究あるいは発明がされるべきであるというふうに考えます。
 したがいまして、デメリットとなりますと、皆その裏返しでございます。
 主な点は以上のように考えております。
#150
○近江委員 この物質特許の制度をとるためには、根本的にわが国の産業技術というものが相当高い水準にあることが条件でなければならないと思うのです。しかるに、わが国のこの技術貿易の実態というものを見てまいりますと、昭和四十九年の国際収支のデータを見てまいりますと、特許権使用料の支払いが約七億四千万ドルに及んでおるわけです。それに対しまして、受け取りは一億一千万ドルにすぎないわけであります。このように技術面で外国に比べまして非常に立ちおくれしている状態の中で、この物質特許制度を設けた場合、その特許権を武器とする外国企業によってわが国産業が支配されるようなおそれがないかどうか、この点が非常に心配であるわけです。この点についてはどうですか。
#151
○齋藤(英)政府委員 昭和四十六年の八月からでございますが、工業所有権審議会を開きまして、そこで物質特許制度を採用すべきかどうかということの諮問をいただきまして、それから物質特許小委員会を開きまして、二年半にわたりましてこの問題につきまして議論を重ねたわけでございます。その参加されました方々は、学識経験の方あるいは生産者の方あるいはそれを消費される方等、各種にわたっておりますと同時に、委員以外の方のそれぞれのヒヤリング、学識経験者の方に来ていただきましてヒヤリングをいたしまして、その結果、総合して、日本で現在不特許事由になっております化学物質、医薬、飲食物、嗜好物につきましては、すでにほとんど国際的な水準に達しておるという一応の結論に達したわけでございます。したがいまして、その結論に従いまして、私どももそれにつきまして条文を改正いたしまして御審議をいただいておるわけでございます。なお、これ以外に、本日午前中に申し上げましたように、化学関係につきます主要企業のアメリカにおきます特許の取得数等を考えてみますと、十年前といまとでは全く違った様相になっております。一九五七年ごろは世界の先進七大国のうちで日本は七番目ぐらいでございました。しかしながら、一九七三年になりますと、日本は、アメリカ――アメリカへの特許でございますから、アメリカが一番であることは当然ですが、アメリカが一番で、二番目が西独で三番目が日本ということになっております。したがいまして、その間に、この十年間におきまして日本の技術水準というものが相当飛躍的に向上したというふうなことの一つの証左ではなかろうかと考えます。
 なお、それ以外に、科学技術庁で世界経済白書というものを出されましたけれども、そこで各種いろいろな要素を比較して技術水準を算定いたしておられますが、一九六〇年代の技術水準というのは、わが国は、米、英、西独、仏、伊、日の六カ国の中で五番目である、イタリアの前であるということのようでございますが、六〇年代の末にはほとんど西独と同じような水準に達しておるというのがこの白書の中に出ております。これは一九七〇年度版でございますけれども、そういうふうな点からも考えまして、私どもは現在その方面の技術水準は世界的水準とほぼ等しいところまで来ておるというふうに考えております。
#152
○近江委員 世界の水準に来ているということをおっしゃっているのですが、いわゆる国際収支で見ますとこれだけの差があるわけですから、その点はよく認識をされてしてもらわないと、ずれが非常に大きいと私は思います。
 それから、新しい化学物質や医薬などを発明することについては、どうしてもやはり大きな研究組織を持っております大企業が有利であることは、これは当然であります。大企業が基本的な特許権を獲得することによりまして、独占、寡占状態が形式または強化される。ひいては国民生活に密接な関係のある化学物質や医薬の供給数量あるいは供給価格に悪影響を及ぼすおそれがないか、こういう点が非常に心配であるわけです。また、大企業が特許権を所有した結果、同業種の中小企業との経営格差というものがさらに拡大をする、二重構造が固定化することにならないかどうか、こういう心配が非常にあるわけですが、この二点についてお伺いしたいと思います。
#153
○齋藤(英)政府委員 物質特許を採用いたしますことによりまして、化学物質あるいは医薬品――飲食物は少し企業形態なり業界内容も違うと思いますが、そういうものの新しい発明なり発見なりというものが大企業が中心に行われるおそれがあるのじゃないかというお話でございますが、これは私どもその心配が全くないということは申し上げられないと思います。大きな研究所を持ち、豊富な資金を持って有為な人材を持っておりますところが仮に大企業だといたしますれば、それはそういうことがあり得る可能性も当然あるというふうに考えます。しかしながら、一方、この基本的なあるいは革新的な発明、場合によっては発見も入ると思いますが、発明というものは必ずしも大企業だけが有利ではないという説もございます。これは一つの説でございますけれども、大企業は自分自身の利益というものが当然中心になります。そして、膨大な機構がございます。悪い大企業でありますれば、やや硬直化した機構にもなるわけでございますが、そういう機構と、それからそういうふうに目前と申しますか、企業の利益を追求する、そういう方面からの研究志向ということになりますと、これは必ずしも革新的なそういう発明、発見というふうな方向に向かうかどうかという点については非常に疑問である、こういう説も、実はこれは外国の文献等にも散見されるわけでございます。先般出ましたOECDのイノベーションに関する報告書にもそのことが散見されておりますが、そういうこともございまして、これは両説ございます。多分OECDの方の医薬についてだったと思いますが、医薬が大企業から出てくるのがむしろ少ないということを見て驚くには当たらない、そういう表現で書いてあったと思いますけれども、したがいましてその辺は私どもも憂慮いたしておりますが、実質的には必ずしもそうでない部分もあるんではなかろうかというふうに考えております。
 しかしながら、その心配が全くないわけではもちろんございませんので、もしそういうふうな事態が非常に大きく起こりました場合には、これは当然ある範囲を出ました場合には権利の乱用ということに相なります。したがいまして、独禁法二十三条であったと思いますが、これでもって正当なる権利の行使は除外されておりますが、それ以外の権利の乱用になりました場合には、当然それは独禁法によって規制をされなければいけない事態になろうかと思います。
 それから、特許法自体といたしましては、公共の利益が著しくあるような場合につきましては、当然九十三条の裁定制度というものがございますので、それを活用いたしましてそういうことを防ぎたいというふうに考えております。
#154
○近江委員 本改正案が参議院で審議されました際に、こうしたケースにつきましては九十三条の裁定によって解決を図る、先ほども同じ趣旨の答弁があったように聞いておるわけですが、この際にも、公共の福祉の定義がはっきりしておらない。あるいは過去の裁定の件数を見ましても、昭和三十五年法の施行以来、八十三条関係は九件、九十二条関係は三件、九十三条に至ってはゼロ件になっておるわけです。その内訳は、八十三条の九件のうち七件が取り下げ、一件が和解、一件が却下、九十二条は三件のうち二件が取り下げ、一件が和解、こういう結果が出ておるわけです。そういうことで、今後裁定に持ち込まれるケースが非常に多くなってまいりますし、こうした充実ということが特に今後は大事な問題になるんじゃないか、このように私は思うわけであります。
 独禁法の適用等の話もあったわけですが、この点は公取委員長ともよくお詰めになっておられるのかどうか、この辺もひとつあわせてお伺いしたいと思いますし、さらに工業所有権審議会の答申におきましても、裁定制度の充実を指摘するとともに、裁定手続及び裁定要件についての運用要領を定め、公表する必要がある、このように言っているわけですが、この運用要領はいつごろまとまる見通しであるか、また現段階での考え方につきましてできるだけ具体的に説明をしていただきたい、このように思うわけです。
 以上申し上げた点について御答弁いただきます。
#155
○齋藤(英)政府委員 第一点は独禁法との関係の御質問であったかと思いますが、これは私ども公正取引委員会と密接な連絡をとりまして、もし権利乱用がありました場合に、二十三条を逸脱いたしましたような場合には厳重に公正取引委員会で取り締まるということにつきまして、双方相談はいたしてございます。
 それから、第二番目の九十三条の裁定の問題でございますが、これは工業所有権審議会の最終答申の中に参考資料といたしまして裁定制度の運用要領試案がございます。したがいまして、この試案の中に非常に具体的なことが書いてあります。
 たとえば裁定請求書の提出がありまして後、速やかに裁定請求書の副本を被請求人に送付いたしまして、期間を指定し、たとえば国内でありましたら四十日以内、外国でありましたら三ヵ月以内に答弁書の提出を求める等、以下いろいろございますが、そういうふうにいたしまして、おおむね六ヵ月ないし七ヵ月以内にこの裁定の手続が終わるようにという運用要領試案がございます。
 私どもの方は、この運用要領試案をもとにいたしまして、さらにこれにつけ加えるべきところ、あるいはその後、これは工業所有権審議会の発明実施部会に実は御相談を申し上げなければいけないことでございますので、それを開きまして早急にこの点について成案を得たいと思っております。
 現在、参考資料といたしましては要領ということで一応まとまったものができております。すでに先日私どもは発明実施部会――まだこれは法律の御審議の最中でございますから、正式の部会でこれを諮るというわけにはまいりませんので、懇談会というかっこうにはいたしましたけれども、懇談会をすでに開きまして、そこでこの要領試案につきましては御相談を申し上げておる次第でございます。
#156
○近江委員 この裁定の審理期間は六ヵ月あるいは七ヵ月というようなことがあるわけですが、これはやはりずるずると延ばそうという長官の気持ちのあらわれでそういうことが出ていると思うのです。六ヵ月以上延ばすというようなことは、これはどうしようもない問題だと思いますし、この点、この場において、少なくとも長官は六ヵ月以内におさめるということをおっしゃる必要があるのじゃないか、私こう思うのです。
 それから、公共の利益の解釈の問題ですが、これについてあなたはいまどのようにお考えか、考え及ぶ範囲で明確に御答弁いただきたい、このように思います。
#157
○齋藤(英)政府委員 裁定の申請がありましてから最終の通知を出しますまでの間、六ヵ月の範囲内にするように、私は極力努めるようにいたします。
 それから、第二番目の点でございますが、公共の利益の解釈につきましては、実は運用要領試案にも記載がされておりますが、「法第九三条第一項における「公共の利益のため特に必要であるとき」の主要なものとしては、次に掲げる場合が考えられる。」ということで、「国民の生命、財産の保全や公共施設の建設等国民生活に直接関係する分野で特に必要である場合」と、それから二番目に「特許権の独占により当該産業全般の健全な発展を阻害し、その結果国民生活に実質的弊害が認められる場合」というのか例示として挙がっております。私どもは、これは審議会の運用要領試案でもございますので、この内容につきましてさらにブレークダウンをして個々のケースについて適用するように考えたいと思っております。
#158
○近江委員 この裁定制度に関しまして、今回の改正案で第九十二条にいわゆるクロスライセンスの規定が加えられておるわけですが、物質特許制度の採用に当たってこの規定を必要とする理由、いかなる場合にクロスライセンスが認められるのか、あるいは認められないのかなどにつきまして、こういう問題についても実例を想定してお答えいただきたい、このように思うわけです。
#159
○齋藤(英)政府委員 従来裁定を実施いたします場合には、先願者が、たとえば今度新しく物質特許が認められますので物質特許権者でございまして、それでかりに後願の特許権者が製造方法の特許権者であったと仮定をいたしますと、後願の方が先願の物質特許権者に対して自分の製造方法を実施させてくれ、こういうふうな請求をいたしまして、それが裁定になるというのが九十二条の従来の規定でございます。今回の規定はそれを、もし後願者に対してそういう強制的に実施権が与えられました場合には、先願者たる物質特許権者から後願者たる製法特許権者に対しましても実施権を与えるよう請求するという、そういう裁定も下せる、そういうことがクロスライセンスの内容でございます。と申しますのは、通常の場合でございますけれども、後願者が考えますのは、たとえば新しいXという物質が考えられまして、それに伴いましてAという製造方法がありました場合には、何もない場合と比較いたしますと、それ以外のBという製造方法でXという物質をつくるというということがわりあい容易に考えられます。と同時に、それが通常の場合は、たとえば単価が非常に安いとか、あるいは性能その他につきまして、性質その他につきましてやや違うとか、いろいろそういうものが考えられる例が多いわけでございます。そうしますと、かりに非常にコストの安い製造方法が考えられました場合に、その人がその製造方法をXというその物質特許権者から実施権をもらいまして実施しました場合には、Xというその物質特許権者の権利というものは、せっかく特許権を取りながら、これは空権と言うとちょっと言い過ぎでございますけれども、権利としての価値が非常に薄れてくるということがございます。したがいまして、そういう場合には、当然裁定をする者は双方均衡をとって考えるわけでございますけれども、均衡がとれるようにするために、先願者から後願者に対しましても実施権の請求ができて実施権を与えることができるということでございます。
 それから二番目に、従来はその場合の対価といたしましては、当然後願者は先願者の、いまの例でいいますと物質特許権者にその対価を払うわけでございますけれども、その対価の額というものも裁定の内容に入っております。その対価の額、したがって対価だけで解決をしなければいけないということになりますと、実際に裁定を下す場合になかなかその辺についての問題解決をする困難さがございます。しかしながら、今回の改正によりまして、先願者から後願者に対しても強制実施権の請求ができる、先願者に対して与えられるということになりました場合には、双方でライセンスを得ることになります。したがいまして、当然その辺の解決は、裁定を下すことは容易になるという点もございます。
 それから三番目に、クロスライセンスということは、結局私どもとしましては貴重な発明、製造方法であれ物質特許であれ、これが早く広く世の中に実施をされるということを非常に強く念願をいたしておるわけでございます。したがいまして、いま申し上げましたクロスライセンスの場合は、そうでない場合に比べて双方とも実施しやすいような条件になるということは容易に考えられることでございまして、したがいましてそういう種々の点を考えましてクロスライセンスという制度を今回採用いたしたいと考えた次第でございます。
#160
○近江委員 次は、多項制の問題について聞きたいと思いますが、いわゆるこの改正案におきまして、この多項制というのは三十六条の第五項に実施態様の併記を防げないという条文を加えたことであるわけですが、いかにも非常にわかりがたい表現である上に、実施態様の記載方法は省令にゆだねられておる、こういうようなことでわれわれとしても非常に理解しがたいものになっておるわけです。
 そこで、この実施態様の意味ですね、またその書き方、すなわちこの省令の中身等につきまして、できるだけ具体的に説明をいただきたいと思うわけです。また、これを中小企業や個人発明家などがよく理解できるようにするためには、どういうような措置をとられるか、この点につきましてお答えいただきたいと思うのです。きょうは時間も限られておりますから明確に、ひとつ簡潔にお願いしたいと思うのです。
#161
○齋藤(英)政府委員 「その発明の実施態様を併せて記載することを防げない。」こういう規定で三十六条の五項ただし書きに入っております発明の実施態様でございますが、私どもが考えております実施態様と申しますのは、その第一項に書かれるべき発明の構成に欠くことができない事項に記載をされております発明の技術的特徴をすべて含みまして、かつその発明の構成の要素になっておりますものの全部あるいは一部をその場合について限定をしたり、あるいはそれに条件を付したりしてそれを具体的に表現をする、そういうふうな発明の態様の一つの種類であるというふうに考えております。
 したがいまして、そういうものの記載をいたします場合には、第一項の発明の構成に欠くことができない事項をかりに主請求項といたしますと、主請求項を一番先に書きまして、簡単に言いますとそれに番号を一とつけまして、二番目にその主請求項を引用した実施態様項を書きまして、それに二という番号を振りまして、三番目に、主請求項に対してさらに実施態様がありますればそれに三という番号を付しまして、第一項、場合によりましては第二項を選択的に引用する場合もあると思いますが、引用いたしまして第三番目の実施態様項を記載するというふうに、記載の方法といいますか、形式としてはそういう形式になろうかと思うのでございます。
 それで、こういうふうな新しい制度でございますために、当然私どもの方といたしましてもこの省令あるいはそれに対する実施運営要領というものを明確につくりまして、省の内外の御意見も聞いた上で確定しましたならば、これは各地におきます説明会その他も開催をいたしまして、広くこの内容を周知徹底せしめまして皆様の御理解に努めるとともに、特許庁に協力をしていただくようにお願いを申し上げたいというふうに考えている次第でございます。
    〔萩原委員長代理退席、塩川委員長代理着席〕
#162
○近江委員 後のそうした研究にまつという点については、非常にわれわれとしては不満があるわけですよ。しかし、きょうは時間もありませんから先に進みたいと思いますが、この実施態様を何項目まで書いてよいかは法文上にないのはむろん、省令でも項目数を制限するのは非常に無理があるのじゃないかと思うわけですが、数十項目もの記載がある出願がされた場合、この審査が著しく停滞する恐れがないかどうかということが一つです。
 それから、この多項制の採用によりまして発明の保護はより適切に行われ、また第三者の便宜も図られる、このように審議会も政府も言っておるわけですが、実際にそうなるのかどうか、もう一度確かめたいということが一つです。
 それからまた、今回の改正はPCTが発効した際にそのまま間に合うのかどうか、PCTによる国際出願、国際審査に当たって、多項制の規定については改正の必要がないのかどうか。
 以上三点について、簡潔にお答えいただきたいと思います。
#163
○齋藤(英)政府委員 第一点の審査について停滞がないかどうかという点でございますが、これは私ども、先ほどもほかの委員の方の御質問に答えましたように、これはチェックポイントがふえますから、したがって審査官の業務というのは当然ふえるというふうに考えております。したがいまして、どういうふうな体制でこれに対処するかということにつきましては、目下部内で検討いたしております。しかしながら、これは施行が五十一年の一月一日となっておりますので、それまでの間私どもの方としては鋭意努力をいたしまして、審査が延滞しないような体制に持っていきたいというふうに考えております。
 なお、これにつきましては蛇足ではございますが、資料の整備という点も、あるいは分類という点も重要な点であろうかと思います。
 それから二番目に、多項制につきまして、この保護が十分であるというふうな話であるけれどもどうか、あるいは第三者はどうかというふうな点がございましたけれども、これは第一項、要するに発明の構成に欠くことができない事項だけしか書けないということになりますと、当然権利者は非常に複雑な発明の内容、発明の構成について、字句であらわす表現に限度があるために非常に苦慮するという場合もございます。したがいまして、実際自分が発明の構成に欠くべからざる事項を記載いたしまして、第二項に自分がそれを具体化したことを書けるということは、その内容をより理解させ、場合によりましてはその権利の範囲というものをより明確に主張ができるということでございます。したがいまして、出願者あるいは権利者にとりましての保護は厚いということになるわけでございます。それから、それを逆に第三者が見ました場合には、第三者は当然その特許権の権利の内容がより明確になるわけでございますからして、無用な紛争が起こらないというふうな点につきましては、第三者にとりましても有利になるのではあるまいかというふうに考えております。
 それから、PCTとの関係につきましては、結論だけを申し上げますが、多項制に限って申し上げますと、PCTに加入する際にわれわれは多項制の点につきまして改正をする必要はないというふうに考えております。
#164
○近江委員 それから、商標法の改正の問題ですが、商標法の改正部分は、更新登録出願時における使用事実のチェック及び不使用商標の取り消し審判における挙証責任の転換ということになっておるわけですが、この法改正によりまして出願件数の減少、審査の促進、審査期間の短縮等の効果が本当にどの程度あると考えておられるのか、また法改正以外の運用改善による効果についてはどうか、こうした点につきまして、具体的な数字をもって長期計画として明らかにできるものであるかどうか、この点が一点です。
 第二点として、更新登録出願時における使用事実のチェックはどういうような基準で行われるのか。すなわち、これを使用しているかいないかはどのような基準で判断されるのか。商標や指定商品の種類などによって不公平が生ずることのないようにするためにどのような方法をとるのか等につきましてお答えいただきたい。
 第三点として、不使用取り消し審判における挙証責任は従来審判請求側にあったのが、この改正によりまして被請求側、すなわち商標権者に転換されることになるわけですが、これによって審判請求がやたらにふえて審判処理が停滞するようなおそれがないのかどうか、また審判件数が多くなれば被請求人の方でにせの証拠を示してもそれを調査するのが困難なために間違った判決がなされるなどの事態を招くおそれはないのかどうか、以上申し上げたのが第三点であります。
 第四点として、商標登録出願の書類に出願人の業務の事項を記載させること及び商標や商品の類似範囲等に関する判断基準の見直しを行うことについての措置はいつから講じるのか、これらの処置をあらかじめ一般に周知徹底させるためにどのような対策を講ずるのか、またこれらの措置は登録済みの商標とまだ出願していない商標との間に権利の強弱に関するアンバランスを生じないかどうか、以上が第四点であります。
 以上申し上げました四点につきまして、簡潔にお答えいただきたいと思います。
#165
○土谷政府委員 お答え申し上げます。
 まず第一にお尋ねのございましたのは、今回の法改正によります効果という点についてであったと存じます。この効果の点につきましては、業界に対しましてアンケート調査あるいはヒヤリング等を行った結果、私どもの方ではこれから先毎年一年間の出願抑制効果と申しますか、出願減につながる方の効果としては、およそ二〇%から二五%あるのではないかと考えております。
 これを細かく申し上げますと、出願時の業務チェックを行いますことによっておよそ五%、それから更新時に使用のチェックをいたすことになっておりますが、これによりまして八%程度、それから不使用取り消し審判における挙証責任の転換を行いますことによって約六%、それから料金引き上げの方でございますが、これは引き上げたとき以降毎年その効果は減少してまいるというふうに考えておりますので、当初は十数%の効果があると見ておりますが、四、五年先にはこれはほとんど効果がなくなろうかと思います。そのほかさらに、私どもの方の運用の改善によりまして、当初はさほど効果が上がらないまでも、数年先には少なくとも四、五%の出願減少効果があろうかというふうに考えている次第でございます。
 こういうことにあわせまして、現在処理の促進を図っております。審査官の増員はもちろんでございますが、特にコンピューターを利用して商標の検索を行うということを数年前から検討しておりますし、これが近く実施の運びになりますれば相当の効果が上がるものと期待しております。
 これらをすべてあわせますと、四、五年先には審査に要する期間が一年程度に短縮されるのではないかというふうに効果を期待しているわけでございます。
 それから二番目の御質問でございますが、更新出願の際のチェックをどのように行うかという御質問であったかと存じます。これにつきましては、私どもといたしましてはその更新を出願してまいります出願人に自分の登録商標を使用していることを証明する書類を出していただく。その書類を出していただきます際に、その自分の商標を商品に使用しているという状態を示す写真を添付していただく、あるいはそういった商品が掲載されているカタログ等を添付していただくというふうに考えております。ただ、更新時の使用のチェックに当たりまして、もし正当な理由で使っていないというふうな場合には、これは正当な理由を明らかにする書類を出していただく。また、その事由が生じていなかった場合には、その登録商標を使用できたはずであるということを明らかにする書類を出していただくことになっております。
 それから三番目に、不使用取り消し審判の挙証責任の転換によりまして審判請求がふえてくるのではなかろうかという御質問でございます。この点につきましては、私どもとしまして当初はある程度ふえるのではなかろうか、つまりこれまで不使用取り消し審判が十分活用されていなかった、また実際に相手の不使用を立証することがかなり困難でありましたためにこれが利用されてまいりませんでしたが、こういった方々がこの制度が発足したときにはお出しになるように考えられます。ただ、その一時期を過ぎれば、現在も行われていることでございますが、恐らく商標を持っている相手方に対して譲渡の交渉をする。そして、そのために審査の場合に、当方で譲渡交渉中であるから待ってもらいたいというふうなことが従来も行われているわけでございますが、こういうものの件数が、これまででは大体三百件程度でございますので、私どもとしましては、通常はその程度の審判請求があろうかと思っております。もちろん、この不使用取り消し審判の請求がふえました場合には、審判の処理を促進するためにこれの手当てをしなければならないことは当然と存じます。
 それから四つ目の問題といたしまして、業務チェックのことについてであったと存じます。これにつきましては、今回の法律改正の中身にはなっておらないわけでございますが、あわせて、この法律が成立し、そして施行ざれる五十一年の一月からというふうに予定いたしている次第でございます。
 それから、類似範囲を拡大することによって新旧の登録の権利の強弱についてアンバランスが生ずるのではないかというふうな御質問であったかと存じますが、これは制度上は変わらないわけでございます。類似の判断の運用は社会通念によってこれまでも行われており、またこれからも行われることになると存じます。
#166
○近江委員 この登録商標が指定商品について使用されている状態を写真に基づいて審査をするということでありますが、この更新登録出願人が虚偽の証明を提出してきた場合にはどういうようにチェックをするかという問題なんです。処理の促進のために、画一的な方法によるチェックで、第一義的には書かれたものをそのまま信用して審査せざるを得ないとするならば、チェックすることにならないのではないか、このように思うわけです。
 それから、改正案の第二十条の二の柱書きには、使用証明等をその出願と同時に提出しなければならないとされておるわけですが、拒絶理由通知に対する意見書の提出時にその証明書を補正し得るようなことはできないかどうか。
 以上の点について、もう余り時間がありませんから、簡潔にひとつお願いしたいと思います。
#167
○土谷政府委員 お答え申し上げます。
 御質問の更新時の使用チェックの際に写真で十分かどうかということでございますが、この更新時の使用チェックは、相当数多く出されるわけでございますし、またこれを迅速に処理しなければならないわけでございます。本来でございますと、商標のついた商品そのものを出してくればよろしいかと存じますが、これでは保管も非常に大変でございますし、また画一的な処理というのはかなり困難かと存じます。したがいまして、チェックの目的を最も達成しやすい、そういう証拠書類として写真を添付していただくことになるわけでございます。その意味では、本人の申し出るところを尊重するという形になると思います。
 団体等第三者の証明を付する方法ということも当然検討の対象にはなったわけでございますが、その場合には、その団体の証拠力が必ずしも一定でないということも十分考えられます。また、出願人の手数もかなり大きいというふうにも考えられますので、この辺は現在運用要綱試案を作成いたしまして、業界並びに庁内部の意見を聞いて固めつつあるところでございます。
 それから、この記載内容につきまして、後に補正をすることはどうかという御質問であったかと存じますが、この点につきましては、私どもの方ではきわめて軽微な補正以外はすべて認めないということを当初からたてまえといたしております。これは先ほども申し上げましたように、大量の更新出願を迅速に処理するということが理由でございます。
#168
○近江委員 あと、まとめてお聞きしますから、ちょっとメモして答えてください。
 一つは、料金の値上げ問題ですが、今回の改正で各種料金が非常に値上げをされておるわけですが、二、三倍、さらに例外として商標登録出願手数料は五倍という大幅値上げがされることになっておる上に、料金値上げだけは公布の日、即日から実施されるというのはひどいという意見が非常に強いわけでありますが、これに対して配慮する用意があるかどうか、これが一点であります。
 第二点として、値上げによる増収分は国庫収入として大蔵省に入ることになるわけですが、それ以上の金額を特許行政の強化のために今後支出していくことは、わが国の科学技術の振興及び産業の発展を図る見地から当然であると思うわけですが、改めて政府の決意をお伺いしたいと思います。
 第三番目は、国会における決議に対する措置の問題でありますが、いままで衆参両院の商工委員会におきまして、工業所有権に関して数々の決議がなされておるわけですが、その各決議事項のうち、次の点について政府はどういうような措置を講じ、または講じようとなさっておるかという問題であります。第一点は、この審査官、審判官及び事務職員の有能な人材の多数確保、そのための待遇改善、庁舎、施設等執務環境の整備、研修制度の充実等についてどういうようにやっておるか。その次は、国際動向に即応するための必要な機構の整備拡充、特に新規性調査機関の設立についてはどうか。実用新案制度に関する基本的事項の検討についてはどのようにやっておるか。
 以上の点につきまして簡潔にお答えいただきたいと思います。
#169
○齋藤(英)政府委員 料金の点につきましては先ほど申し上げましたとおりでございまして、特に商標の点につきましては五倍ということになっております点も、その理由は、特許の出願手数料との関係でそういうふうに考えておると同時に、この工業所有権法自身の改正が十年に一遍、場合によりましては五年に一遍行われるということ等も考えて、一応法律の最高限としては五倍というふうに考えたということを申し上げた次第でございますが、法律の最高限どおり政令で一応規定するかどうかという点につきましては、私どもも現下の経済情勢等を考慮いたしまして実際の額を決めたいというふうに考えております。
 それから、即時という点でございますが、これは国会法によりまして、法律が成立をいたしまして、奏上になりましてから一ヵ月以内にこれを公布しなければならないという規定がございまして、猶予期間がございます。したがいまして、私どもとしましてはその猶予期間をなるべくいっぱいとりまして、前広に皆様方にPRをして混乱を防ごうというふうに考えております。なお、なぜそれでは施行の日にしなかったかという点はございますが、これは現在でもすでにその傾向が見えておりますように、悪い言葉ではございますけれども、やや駆け込みというふうな状態も現在すでにあらわれつつあるようなこともございますので、その点につきましては、私どもはやはり配慮せざるを得ないというふうに考えたわけでございます。
 それから、二番目の料金の値上げによります収入は挙げて特許庁の支出に充てるべきではなかろうかという御意見でございますが、私ども特許庁当局といたしましてはぜひそういうふうにしていただきたいというふうに実は考えております。しかしながら、これは一般会計に入るものでございまして、当然一般会計を所掌しております関係省の御意見等を参酌いたしませんと、特許庁だけで答弁できる問題ではなかろうと思いますが、私どもはその方針に沿いましてなるべく努力をいたしたいと考えております。
 それから、附帯決議の点につきまして三点ばかり御質問がございました。審査官、審判官等につきましての待遇改善あるいは研修強化の点につきましては、基本的には審査官、審判官の定数の問題になります。したがいまして、定数の切り上げあるいは役付の増加等につきましては私どもは私どもなりに毎年予算期に努力をしておるつもりでございます。それから、研修所の強化につきましても同様、私どもは有能な研修所長を配置いたしまして新しい研修もどしどし行っております。ことに国際関係の研修も増加をして行っておりまして、国際化に備えるように私どもは努力をいたしている次第でございます。
 それから二番目に、国際化に伴う新規性調査機関の問題でございますが、これはすでに御案内のように昭和四十六年にJAPATICができまして、これは現在必ずしも十分な活躍をしていないことは皆様御指摘のとおりでございますが、このデータの蓄積に量、質ともにさらに努めまして、名実ともに新規性調査機関になるようなかっこうに私どもは指導いたしていきたいと考えております。
 それから最後に、実用新案につきまして抜本的な検討をすべきであるということでございますが、これはいままでいま申し上げましたような各種の改正点につきましていろいろ議論をしておりまして、その中に実は当然実用新案の問題も含まれております。そういうことでいろいろ議論をして実用新案法につきましても実は改正をお願い申し上げている次第でございますが、実用新案自体の問題としましては今後さらに私どもは検討を重ねたい、こういうふうに考えております。
#170
○近江委員 もう時間も来ておりますので、委員長に御協力申し上げて一応終わりますが、後、他の委員もやりますから、問題が出てきた場合におきましては質問をいたします。一応留保しておきます。
#171
○塩川委員長代理 引き続いて中村重光君の質疑に入ります。
#172
○中村(重)委員 わが党の同僚諸君から相当長時間にわたって質疑をいたしておりますから、私は二、三点についてお尋ねをしたいのです。
 同僚諸君からも触れられたことですが、分類について伺うのですけれども、御承知のとおり現在公開並びに公告の分類表示をしているわけですが、これがどうも不正確だという批判が非常に強いわけですね。あるものは非常に詳しく表示している、あるものは非常に不十分だということなんですが、それらの点に対して長官としての見解はいかがですか。
#173
○大谷政府委員 技術的な問題を含みますので私から答弁させていただきたいと思うのですが、ただいま先生御指摘ありました分類でございますが、公開分類のことと解釈いたしております。
 御承知のように膨大な特許、実用新案の出願に対処いたしまして、一年六ヵ月経過直後できるだけ早く公報を発行するように分類をつけているわけでございますけれども、何分にもこの分類付与というものは人間がやっていることでございまして、若干の精度の悪い点もあろうかと思います。精度の悪い、あるいはミスという面を分析いたしますと、大きくは三つに分かれると思います。一つは、特許分類の付与時におけるミスがあろうかと思います。二番目には、特許文献のサーチの際に、特許分類の付与をした者とサーチをした者の分類体系の認識上の相違の問題があろうかと思います。三番目には、分類付与から公開公報発行までの行程における転記ミス、写しかえのミス、事務的なミスでございますけれども、そういった事務上のミスというように分かれると思います。これらに対処いたしまして、私どもといたしましてはいろいろと対策を検討し、また実行できるものはしつつあるわけでございますけれども、以上のような精度の問題につきましては大きくは三つに分かれる、そういったミスがあろうかと思います。
#174
○中村(重)委員 齋藤さん、私の耳にいろいろな批判が入ってくるんだから、いま技術的な問題だからと言ってそれは担当者の答弁があったんだけれども、長官だからあなたの耳には私の耳に入っている以上にそのような批判が入っているはずだ。それに対してあなたは、長官という立場からこれはどうあるべきか、どこに問題点があるのかということを十分わきまえていなければならないわけだ。だから、あなたの見解はどうかということを聞いたんだから、あなたとしては、その批判は間違いなんだという確信を持っているのか、そうでないとしたならば、どうしたらよろしいのかということをもっと責任を持ってお答えにならなければいけないと私は思う。どうです。
#175
○齋藤(英)政府委員 特許分類の付与につきましていろいろミスがあるということにつきましては、いま大谷技監がお話しいたしましたとおりでございますが、この特許分類といいますものは、いま申し上げましたように一年六ヵ月の公開前におきましてこれを付与しなければいけない時間的な制限もございます。したがいまして、時としていま申し上げましたようなミスが出るということも私どもは聞いております。したがいまして、これはやはり分類関係を担当する人の問題にも帰すると思います、あるいはその量の問題にも帰すると思います。したがいまして、分類を担当します、具体的には分類審査官でございますが、分類審査官の数をふやし、かつ分類審査官につきまして専門的な訓練と申しますか研修と申しますか、それを行いましてそのミスを非常に少なくするようにいたしたいと考えております。
#176
○中村(重)委員 おっしゃるとおり分類審査官の数が少ない、非常に事務が過重だと私は思う。また、待遇上の問題もあるだろう。それから、余り予算をけちるから研修といったようなものも行われていないといったような点もあるんじゃないか。同時に、分類は正確を期さなければいけないのだから、これは法律に明示する必要があると私は考える。その点に対してあなたはどうお考えになるのか。それから、国際的な分類方法に対してわが国としてはどう対応するのかといった問題も、考え方を明らかにしておいていただきたいと思うのです。
#177
○齋藤(英)政府委員 分類の問題につきまして、実際には現在公開公報あるいは公告公報につきまして、すでに、JPCとIPCの併記ではございますけれども、分類を付与しております。これはサブグループレベルまでの相当精度の高い分類を付与いたしておる次第でございます。
 それで、法律上で申し上げますと、これは公告をいたします場合でも公開をいたします場合でも、それぞれいろいろ事項が並んでおりまして、その最後のところに「その他必要な事項」という事項がございます。その事項によりまして私どもは分類を公開公報なり公告公報に付与しておるわけでございます。したがいまして、現行法を基礎にして考えました場合には、現行法の範囲内で一応これはカバーができると考えております。
#178
○中村(重)委員 私どもはこれは法律に明示する必要がある、そういうことで修正をやるべきであるという考え方の上に立ったのですが、なかなか抵抗もあるということで今回修正をすることができなかったわけなんだ。だがしかし、速やかにこれは法律に明示する、そういうことでもってできるだけ早い機会に国会に提案をしなさいという附帯決議をつけることに実はなっている。これはすでに与野党合意をしているのだから、後で提案者が提案をして、通産大臣はこれに対して意見を問われると、附帯事項を十分体してやっていこうというお答えになるだろうと私は思う。だから、長官としては、法律に明示するということについて反対なのか、そのことを十分考えなければならないということなのか、その点どうです。
#179
○齋藤(英)政府委員 いま御答弁申し上げましたように、現行法の範囲内で一応これはできることでございます。しかしながら、その重要性をどういうふうに認識するかという問題いかんにかかわっておると思います。したがいまして、私どもの方としては、その問題につきましては至急に検討させていただきたいと存じております。
#180
○中村(重)委員 次に、多項制の導入についてお尋ねをするのですが、法律案を見ましても、それから特許法等新旧条文対照表を見ても、私はどうも多項制の導入ということになっていないような感じがする。新しく加わったのは、「ただし、その発明の実施態様を併せて記載することを妨げない。」これでは多項制ではなくて原則単項制だということを私は申し上げたい。多項制に移行しなければならない、こういうことで改正案をお出しになったのだったら、なるほどこれは単項制から多項制に変わったんだなということを法律の上ではっきり読み取れるような改正案をお出しになる必要がある。なぜにそうされなかったのか。「実施態様を併せて記載することを妨げない。」こういうことで多項制を導入したんだということには、どこから考えてみたって私どもはそう理解できない。いかがですか。
#181
○齋藤(英)政府委員 現在私どもが考えております多項制と申しますのは、三十六条の五項に書いてございますように、「発明の構成に欠くことができない事項」これはぜひとも記載しなければいけない。これは記載をいたしませんと発明の内容、範囲というものが特定いたしませんので書かなければいけない。それが前提でございまして、それに加えて出願人がもし発明の構成に欠くことのできない事項のそれをより具体化したことにつきまして、それを記載する方がその権利の範囲が明確になり、あるいは内容がより明瞭に表現できる、こういうことであります場合には、それは実施態様をあわせて記載する、こういうことでございます。
    〔塩川委員長代理退席、委員長着席〕
したがいまして、実施態様というものは、出願人の要するに意思によりまして書く場合もあるし書かない場合もある、こういうのが多項制でございまして、これは世界各国あるいはPCTにおきましても、PCTには一または二以上の請求項について云々ということが随所に見受けられます。したがって、一項だけでもよろしい、PCTのルールにおきましてもそういうふうな規定に相なっておるわけでございます。
 それから、それにつきましての表現でございますが、私どもはその表現につきまして各種の案を出しましていろいろ検討いたしました。しかしながら、これは法制的ないろいろな制限もございまして、現在のただし書きの規定に落ちついたわけでございます。日本語の表現といたしまして、ただし書きにいたしました場合には、ただし、これこれの場合にはこれこれに限らないというふうな表現になりますし、あるいはそういう場合がない場合には、ただし、妨げない、こういう表現に法制上はなるわけでございます。私どもの方も法制関係の方々と相談をいたしました末、そういう表現に一応なっておる、こういうことでございます。
#182
○中村(重)委員 だから、あなたが答弁の中にお答えになったように、それを書くか書かないかということは選択の問題なんだからね。書くことを妨げないよというようなことでは、これは多項制ではなくて原則単項制だと私は言うわけなんだ。単項制から多項制に移行するわけだから、だからして書くということが原則であるけれども、書く、書かないということは、それは出願人の選択に任せるのだ、そういうように理解されるようなわかりやすい表現を用いた改正案をお出しになる必要がある、私はそのように考えるのです。しかし、あなたの方では強引に、これでなければならないのだ、こう言っているのですが、私どもはそうではないということを申し上げておきます。
 次に、物質特許についてお尋ねをするのですが、物質特許に踏み切った理由は何なのか。先ほど同僚委員からメリットであるとかデメリットといったようなことについてのお話もあったわけですが、時間の関係がありますから私から申し上げると、いままで物質特許に踏み切らなかったということについては、その及ぼす影響ということをおもんぱかっておられたのだと私は思う。ところが、今度はそれを踏み切った。それじゃ、従来踏み切ることができなかった問題は解消したのかどうかということが実は問題である。物質特許ということになってまいりますと、ほとんど化学物質になるだろう。そうすると、製薬なんかの場合においては、これは独占権というものを実質的に持つようになってくるのじゃないか。しかし、それは特許を与えないことによる開発競争といったようなむだな投資がないということは言える。そういったような点は物質特許のメリットと言えばメリットであるということは言えるのだけれども、化学物質の特許ということになってくると、この特許申請をし得るものはその規模においてあるいはスタッフにおいてあるいはいわゆる投資額においてほとんど巨大企業になるのじゃないか。そうなってくると、寡占体制というものが強化されてくる、中小企業の圧迫、国民生活に不利益をもたらすというような大きなデメリットがあるような気がしてならない。それらの点をどのようにお考えになっていらっしゃるのかということです。
#183
○齋藤(英)政府委員 物質特許の採用に当たりましての大きな踏み切り方は、日本の技術水準というものはすでにほとんど国際レベルに達しておるという認識のもとに、それを採用しないことによるいろいろなデメリットを解消する、それはいま先生お話しのとおりのデメリットがありますから、そういうものを解消する、そういうこと等をいろいろ考え合わせまして採用することにいたしたわけでございます。
 化学物質なり医薬なりというものに対する発明につきましては、これは確かに資金力が豊富であり、大きい研究所を持っていて、というふうな巨大企業が非常に有利であるということはもちろん否めない事実でございます。しかしながら、これに関しましてそうではないというかなり有力な説もございます。これは先般来繰り返して申し上げておりますので実は省略をさせていただきたいと思いますが、そういう説もございます。しかしながら、私どもは、その心配は心配として確かにあるわけでございます。それで、先般中小企業庁の方もお見えいただいて、中小企業関係からもいろいろこういう手当てをしたいというお話もございました。また、私どもは今後、たとえば裁定制度の活用につきましても格段の配意をいたしたいというふうにも考えて、そういういろいろな施策によりまして私どもが考えておりますような心配を解消いたしたいと考えている次第でございます。
#184
○中村(重)委員 私は、非常にデメリットが大きい、そういう点からして対抗策というものがなければいけない。対抗策として九十三条の公共の利益ということがあるのだけれども、これを広く解釈をしていく必要があるであろうと考えるわけですが、この点についてはどのような見解ですか。
#185
○齋藤(英)政府委員 公共の利益というものに関しましての一応の考え方が答申の参考資料の中に出ております。これは憲法上の問題もあろうかと思いますが、そういうことを考慮しつつ、公共の利益というのはおおむねこの範囲ではあるまいかという、これは例示的ではありますけれども、そういうふうな考え方が示されております。
 しかしながら、この考え方は時代の流れとともにやはり当然変わってくる考え方でございます。したがいまして、私どもは公共の利益を解釈いたします場合には、そのときの要請なり、その時代の流れなり、そういうものをよく考えまして、総合的に判断をいたしたいというふうに考えております。
#186
○中村(重)委員 九十三条の公共の利益ということを広く解釈をしていくということは、私は対抗策として当然なことであるというふうに考える。この公共の利益について通常実施権の裁定申請というものが行われるわけですが、これに対してはどう対応していこうとお考えになっていらっしゃいますか。
#187
○齋藤(英)政府委員 九十三条の裁定問題につきましては、答申の参考資料にもやや詳細に書いてございます。しかも、これは試案ではございますけれども、相当議論をされた末、一応できたものでございます。私どもがやる、たとえば被請求人に答弁書を送付する期間は国内では四十日以内でなければいかぬとか、そういうことまで実は書いてあります。したがいまして、それを総体として見ますと、その裁定申請がありましてから裁定の決定に至るまで六ヵ月ということを一応目途にしてその案ができているということは、ほぼ疑いがないところでございます。私どもの方はさらにその参考資料に書いてあります試案というものを基礎にいたしまして、これは工業所有権審議会の発明実施部会にかけなければ実は決まらない事項なのでございますが、それと裁定につきましては、一件一件これは工業所有権審議会の発明実施部会にかけなければいけない事項に法定されております。したがいまして、そういう審議会の議を経まして、この要領をできるだけ早く確定をいたしまして、実施に移したいというふうに考えております。
#188
○中村(重)委員 裁定申請があってから、私が調査したところによると、もう六ヵ月といったようなことではなくて、一年も二年もなかなか裁定がされない。これでは公共の利益ということで対抗策を講ずるということには私はなってこないんじゃないか、少なくとも六ヵ月以内には裁定をするということでなければ、私はいけないんだろうと思うのです。
 ところが、これは一つの判決なんだから、六ヵ月ということをきちっと日を切るということはできないにしても、これはやはり法律事項にして、六ヵ月なら六ヵ月以内に裁定を下すように努めなければならないといったような、不十分ではあってもそうした努力目標というものを法律の中に明示していく、そうしてこの弊害というものをできるだけ除去していくということでなければならないと考えますが、この点は大臣としての見解を伺っておきたいと思う。
#189
○河本国務大臣 実際上の運営といたしまして、そのように努力してまいりたいと思います。
#190
○中村(重)委員 実際上の運営でそのように努力をするということでは話にならないのです。いつもそういう答弁が返ってきておったわけだけれども、なかなか運営がうまくいかない。だから、私は法律に明示する必要があるということを申し上げておりますから、この点については附帯決議もつけるわけでございますから、十分ひとつ検討されて、そうしてできるだけ速やかに、努力目標でも結構でありますから、法律事項にするようにやっていってもらいたいということを強く望んでおきます。
 それから、この特許法の改正案を審議いたします際に、私どもはいつも附帯決議をつけるのですが、その際、審査、審判及び事務処理に従事するところの職員の増員あるいは待遇改善を言うのですが、どうも不十分だ。これは特許庁の職員の職務内容からいたしまして、一般の職員と違った待遇、そういったようなことが当然私は要求されていると思う。また、仕事の精密さからいたしまして、これはもっと増員をしていくということでなければいけないのではないか、そのように考えるわけですが、その点についての考え方はいかがですか。
#191
○齋藤(英)政府委員 審査、審判官の待遇問題につきましては、私ども日ごろから努力をいたしておるつもりでございます。しかしながら、これで十分であるかどうかという点につきましては、いろいろまた御批判があろうかと思います。
 ただ、審査、審判官には特別に調整額というのがついております。特別に待遇上は優遇されていることは、これは事実でございます。今後ともその点につきましては私どもは努力をいたしたいと思います。
 それから、増員の問題につきましては、これは私ども非常に努力をいたしますが、したがいまして増員につきまして私どもは今後とも一生懸命にやりますけれども、ただ特許庁全体の仕事を見ます場合に、増員だけに頼るわけにはいかない点も、これはまた事実でございます。したがいまして、そういう各般の施策と相まちまして、増員ももちろん含みます、努力をいたしたいと考えております。
#192
○中村(重)委員 御提案になりました法律改正案は、多項制の導入ということが大きな柱である。しかし、これは多項制になっていない、きわめて不十分な法律案であると私どもは受けとめます。また、同僚諸君の質問に対してもただいまの私の質問に対しても、答弁がきわめて不十分である、そうしたことから私どもはこれに賛成できないという意思を表明をいたしまして、私の質問は終わります。
#193
○山村委員長 以上で本案に対する質疑は終了いたしました。
    ―――――――――――――
#194
○山村委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。
 特許法等の一部を改正する法律案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#195
○山村委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
    ―――――――――――――
#196
○山村委員長 本法案に対し、武藤嘉文君外四名より自由民主党、日本社会党、日本共産党・革新共同、公明党及び民社党五党共同提案にかかる附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
 まず、提出者より趣旨の説明を求めます。佐野進君。
#197
○佐野(進)委員 ただいま提案いたしました附帯決議案につきまして、提案者を代表し、その趣旨を御説明申し上げます。
 まず、案文を朗読いたします。
  特許法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
  政府は、本法施行に当たり、内外における諸情勢の進展に即応して工業所有権制度を円滑に運用するため、特に次の諸点について適切な措置を講ずべきである。
 一 特許情報の激増に対処し、その効率的利用を図るため、特許庁における分類審査機能の強化及び審査資料の収集整理についての改善を含め、情報処理業務と機構の拡充を図り、特に公開公報の内容及び発行の態様につき早急に再検討を加え、必要な法的措置を速やかに国会に提案すること。
   なお、(財)日本特許情報センターは、新規性調査機関として、必ずしも所期の目的に合致していない実情にかんがみ、そのあり方を再検討し、必要な強化拡充措置を講ずること。
 二 審査・審判及び事務処理に従事する職員の増員、その待遇改善、庁舎設備等執務環境の整備並びに職員研修制度の強化等を早急に行い、有能な人材の育成と確保に努めること。
  また、工業所有権制度の国際化に対応し得るよう、専門の職員を確保すること。
 三 物質特許制度のもとで、特許権を利用した市場支配力の拡大、技術の独占による国民生活及び中小企業に対する不利益等の弊害が生ずることのないよう、速やかに具体的措置を検討し、必要な措置を講ずること。
   特に、通常実施権の設定の裁定は、請求から裁定まで六カ月以内において行うよう万全の措置を講ずること。
 四 多項制の採用に当たつては、特許請求の記載方法と解釈の明確化、運用基準の確立及びこれらの内容の周知徹底を図ることにより、その円滑な運用に努めること。
 五 特許料等の値上げに当たつては、その納付が困難なために権利の取得ができない事態を招かないよう減免・猶予について配慮し、各手数料特に商標登録出願手数料の金額を定める政令の制定に当たつては、出願人に急激な負担増をもたらすことのないように配慮するとともに、値上げに伴う増収分は、あげて特許情報管理の充実等特許行政を強化するための経費に充当するよう努めること。
 六 多項制に関する規定並びに学校法人、宗教法人の標章、サービスマーク及びソフトウエアの法的保護のほか、工業所有権制度の基本問題に対する検討を速やかに行うこと。
以上でございます。
 決議の内容につきましては、委員会における質疑応答を通じましてよく御理解いただけると存じますので、事項別の説明は省略させていただきます。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
 以上であります。
#198
○山村委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。
 採決いたします。
 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#199
○山村委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。
 この際、附帯決議について政府から発言を求められておりますので、これを許します。河本通商産業大臣。
#200
○河本国務大臣 ただいま御決定になりました御決議につきましては、その御趣旨を尊重いたしまして、今後行政を進めてまいりたいと思います。
    ―――――――――――――
#201
○山村委員長 お諮りいたします。
 本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#202
○山村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
    ―――――――――――――
#203
○山村委員長 次回は、来る三十日金曜日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後五時十四分散会
     ――――◇―――――
ソース: 国立国会図書館
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