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#1
第075回国会 社会労働委員会 第22号
昭和五十年六月十七日(火曜日)
    午前十時二分開議
 出席委員
   委員長 大野  明君
   理事 菅波  茂君 理事 住  栄作君
   理事 竹内 黎一君 理事 戸井田三郎君
   理事 葉梨 信行君 理事 枝村 要作君
   理事 村山 富市君 理事 石母田 達君
      伊東 正義君    加藤 紘一君
      瓦   力君    小坂善太郎君
      田川 誠一君    高橋 千寿君
      羽生田 進君    橋本龍太郎君
      山口 敏夫君    稲葉 誠一君
      島本 虎三君    田口 一男君
      田邊  誠君    多賀谷真稔君
      寺前  巖君    大橋 敏雄君
      岡本 富夫君    小宮 武喜君
 出席国務大臣
        労 働 大 臣 長谷川 峻君
 出席政府委員
        中小企業庁計画
        部長      吉川 佐吉君
        労働大臣官房審
        議官      細野  正君
        労働省労働基準
        局長      東村金之助君
        労働省労働基準
        局賃金福祉部長 水谷 剛蔵君
 委員外の出席者
        厚生省社会局保
        護課長     山本 純男君
        参  考  人
        (日本経営者団
        体連盟常任幹
        事)      山王丸 茂君
        参  考  人
        (全国中小企業
        団体中央会労働
        専門委員)   下村 和之君
        参  考  人
        (日本労働組合
        総評議会組織部
        長)      岡村 省三君
        参  考  人
        (中立労働組合
        連絡会議常任幹
        事)      丹下 洋一君
        参  考  人
        (慶應義塾大学
        教授)     黒川 俊雄君
        社会労働委員会
        調査室長    濱中雄太郎君
    ―――――――――――――
委員の異動
六月十七日
 辞任         補欠選任
  金子 みつ君     多賀谷真稔君
同日
 辞任         補欠選任
  多賀谷真稔君     金子 みつ君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 最低賃金制をめぐる諸問題に関する件
     ――――◇―――――
#2
○大野委員長 これより会議を開きます。
 労働関係の基本施策に関する件について調査を進めます。
 本日は、特に全国一律最低賃金制を含め、最低賃金制をめぐる諸問題について調査を進めます。
 本問題について、参考人として日本経営者団体連盟常任幹事山王丸茂君、全国中小企業団体中央会労働専門委員下村和之君、日本労働組合総評議会組織部長岡村省三君、中立労働組合連絡会議常任幹事丹下洋一君及び慶應義塾大学教授黒川俊雄君、以上五名の方々に御出席をいただいております。
 この際、一言ごあいさつ申し上げます。
 参考人には御多用のところ御出席をいただき、まことにありがとうございます。本問題について、おのおののお立場から何とぞ忌憚のない御意見をお述べくださるようお願いいたします。
 なお、議事の都合上、最初に御意見を十五分程度に要約してお述べいただき、その後、各委員からの質疑にもお答え願いたいと存じます。また、念のために申し上げますが、参考人から委員への質疑はできないことになっておりますので、御了承願います。
 まず、山王丸参考人にお願いいたします。
#3
○山王丸参考人 私、山王丸でございます。
 御高承のとおり、昭和四十五年の九月八日に中賃から、それまでの最賃行政に関連してみると相当前向きな姿勢の答申が打ち出されたわけでございます。この答申の内容はもうすでによく御承知かと思われますけれども、ちょっと関連するところを申し上げてみますと、この時点では、中小企業労働者を中心として、七百万人を超える労働者が適用労働者としてあったわけでございます。基本的な考え方として、最低賃金制度は、「労働経済の変ぼうのなかでこれに即応し、なんらかの原因で、なんらかの形で存在する不公正な低賃金に対処し、有効に作用するものでなければならない。このためには、労働市場の相場賃金と密接に関連した実効性ある最低賃金でなければならない。従って最低賃金は、労働市場の実態に即しかつ類似労働者の賃金が主たる基準となって決定されるようなあり方が望ましく、それは低賃金労働者の保護を実効的に確保する面でも現実に適応するものであると考える。」というふうに触れておるわけでございます。現在、労働四団体の最賃法に関する賃金決定の基準の考え方と全く同じ考え方が、四十五年のこの答申の中でも触れておるわけでございます。また「最低賃金はすべての労働者が何らかの形でその適用をうけることが望ましい。従って、まだ適用をうけていない労働者についても適切な最低賃金が設定され、全国全産業の労働者があまねくその適用をうける状態が実現されるよう配慮されるべきである。」この推進に当たっては「労働市場に応じ、産業別、職業別又は地域別に最低賃金を設定することを基本とするべきである。」そして「この場合、低賃金労働者が多数存在する産業、職業又は地域から逐次最低賃金を適用し、すべての労働者に包括的に適用を及ぼす」という答申が出まして、全国の都道府県では労働省の指導と相まって、この方針にのっとって今日まで非常な努力をしてまいったわけでございます。その結果、現在、すなわち本年の三月三十一日現在では、産業別に三百七十二件、地域別には四十六件、適用労働者の数は三千二百六十一万四千人と、ほとんどわが国の民間労働者の数を占めるように相なったわけでございます。
 これは、最低賃金が、賃金、物価等経済情勢変化の中で実効性を確保するための改定が行われてきたものでございまして、特に昨年度、昭和四十九年度におきましては、全国の都道府県でそれまでに決まっていたもの、あるいは改定されていたもの全部について改定を行いまして、労使、公益三者構成の最低賃金審議会、いわゆる地方最低賃金審議会の非常な努力によりまして、四十九年度中にほとんど前向きに改定されたという実績も出ております。私も地方最低賃金審議会の委員をやっておりますけれども、四十九年度中に従来のものをそっくり改定するということのためには、労働側も使用者側もあるいは公益の先生方も大変な努力をしたわけでございます。
 なお、現在、御高承のとおり非常な景気の冷え込みでございまして、また低成長経済に突入しておるわけでございますが、しかも雇用情勢は悪化して、なかなか緩和されておりません。今年度に入りましてから今月までにさらに最低賃金額の改定に前向きに取り組みまして、業種、地域合わせて、今年度に入ってから現在までに二十件の諮問がすでに出されております。
 私のおります福島県では、昨年の八月七日発効の地域最賃はまだ一年たっておりませんけれども、今月の十三日の審議会の席上、基準局長から地域最賃の改定の諮問が出されまして、早急にこれと取り組むということを決定しておりますし、また七つの業種別の最低賃金につきましても、小委員会を設けて改定の方法その他を検討するということが決定いたしております。恐らくこの傾向は、先ほど二十件と申し上げましたけれども、今後全国の都道府県で相当出てまいるのではないかというふうに思われます。従来から特に労働側では、賃金相場あるいは生計費というものを基準としてこの最低賃金制度の改定等に関しましては非常に強く主張してまいりましたし、私ども使用者側は、何と申しましても企業の支払い能力を無視するわけにはいかないという観点から臨んでいる場面が非常に多くあったわけでございます。申し上げるまでもなく、一たび最低賃金制度が、いわゆる法制化されたものが決定いたしますと、この支払いの責任は企業のみの責任でやらなければなりません。何らの保障も援助もないわけでございます。しかも、守られなければ罰金刑といういわゆる罰則も伴っておるわけでございます。したがって、最低賃金制度設定の趣旨は十分理解しておりますものの、やはり企業の支払い能力、そういうものを無視するわけにはまいりません。元来、最低賃金制度とは、これ以上安く人を使ってはならないというぎりぎりの線のいわゆる最低賃金を決められるわけでございまして、実態はいわば社会保障的な賃金というふうに私ども理解しております。したがって、労働市場の実態に応じまして、最低賃金の額が決まってもそれぞれ実態に応じた上積みをすることはもちろん一向差し支えないわけでございまして、とかく最低賃金制度というものが何か雇用賃金の相場、いわゆる賃金相場的なものに誤解されやすい面もあるように存じております。
 最近、労働側から出されております一日二千八百円、七万円という全国一律最低賃金制度の額について考えてみましても、何かわが国全体の雇用賃金相場のレベルアップをするというような感じを私どもは受けておるわけでございまして、私どもが理解している、先ほど申し上げました社会保障的な賃金で、全くこれ以下で人を使ってはならぬという最低賃金制度の本旨からはちょっとかけ離れたような額という感じがするわけでございます。まして現在の中小企業の置かれております労働市場の中におけるいろいろの実態あるいはまた支払い能力、そういう面からも、いま触れました金額ではとても実現不可能ではないかというふうに感じております。
 また、賃金というものは労働の対価として支払われるものであるという原則、これは何人も認めざるを得ないのではないかと思いますが、そこで、労働の対価として支払われる賃金に関連しまして労働の質というものが問題になってまいります。申し上げるまでもなく、コンベヤーに乗っかって、いやおうなく働かされる労働の質もございましょうし、軽労働、重労働あるいは頭脳労働、肉体労働、あるいはまた、地方によく見受けられる実態でございますけれども、農山村に多いわけですが、そこの付近の家庭のいわゆるおばちゃん方あるいは相当な年配の人たち、おじいさん、おばあさん、そういう人たちが、小遣いでもかせいで孫に何か買ってやる、全くその程度の現金収入があればいいんだというようなことで、きわめて軽い、しかも非常に気ままな勤務状態、好きなときに出てきて好きなときに帰る、用事があったらいつでも帰ってしまう、そういうような実態の労働の質も現実には相当あるわけでございます。これは私どものおります福島県内にも――必要とあらばもっと具体的に申し上げますけれども、そういう事例が、最低賃金の決定に当たって実態調査の結果明らかになったということもございます。
 また、物価の問題であるとか生計費の問題というものも、よく賃金に関連して当然決定基準として論議されますけれども、この物価そのものにもいろいろ問題がございますし、また、生計費等につきましても、物価が上がったから即生計費がそれだけかかるというわけでもなく、これはその環境によってかなり生計費も違ってまいります。
 そういうこともございますし、いろいろな実態、特にわが国の中小零細企業の労働市場の中における実態の地方と中央との格差、あるいは業種別の賃金だけでも相当な格差が現状ではございます。自由主義経済体制のもとにおける現在の日本の中小企業の宿命的ないろいろな実態一つを考えてみましても、いまの段階で全国一律最低賃金制度を設定するということは、私はまことに時期尚早ではないかというふうに存じます。もしあえて、この全国一律最低賃金制度を設定するとすれば、そう無理な形でなく、先ほど来申し上げましたような労働市場の実態の中で、支払い能力その他も十分勘案して、守られる線ということになると、きわめて低い金額にならざるを得ないんではないかと私は思う。そういうことでは、いまこの制度の改定を要請している方々は恐らく納得しないと存じます。そうかといって、相当のレベルアップした額ということになりますと、支払い能力のない企業に対する保障の問題をどうするかということが出てまいります。現行の最低賃金制度がかつて設定された当時から、中小企業関係から、これらに対する保障とか援助の問題が出ておったわけでございますけれども、今日まで、直接最低賃金制度の実施に関連して予算措置を伴った保障、保護助長策というものはなかったわけでございます。相当の高額の全国一律最賃制がもし出たとなりますと、支払い能力のない、たとえば先ほど申し上げましたような、ほんの片手間にお小遣いをかせげばいいんだというような労働力を使って、その補いを家族労働でしながら、労使とも全くこれでいいんだという状態で細々と経営をしている業界も現にあるわけでございますが、それは極端な例と申されるかもしれませんけれども、こういう零細中小企業に対する保障という問題が私は無視できないと存じます。もしこれをやるとなると、全国的に相当の金額も必要と思われますし、またこれらの実態を調査するための人員の配置、整備というものだけでも大変なものになるのじゃないかと思われますし、まず理想で、現実には実現困難ではないかというふうに存じます。
 現在、冒頭に申し上げましたように、全国の地賃、いわゆる地方最低賃金審議会の三者構成の各側委員の非常に前向きな努力の結果、業種別、地域別の賃金の格差も縮まりつつありますし、相当の実績を伴う向上を遂げておるわけでございまして、私は、いまの段階であえて全国全産業一律最低賃金制度をやる必要はないのではないかというふうに存じます。
 以上、簡単でございますが、私の意見を申し上げました。(拍手)
#4
○大野委員長 次に、下村参考人にお願いいたします。
#5
○下村参考人 下村でございます。
 最初に御紹介いただきましたように、私は全国中小企業団体中央会の労働専門委員でございます。同時に岐阜県の中小企業団体中央会の会長をいたしております。また、私自身小さな鉄工所を経営しております。また、岐阜にございます工場団地の理事長として七十数社の組合員を抱えて、その指導をしながら企業を営んでおる者でございます。
 ことしの春闘におきまして、労働四団体の統一要求として全国一律最低賃金制の確立ということが取り上げられておることはよく承知をいたしております。また、このことは全国中小企業団体中央会に対しまして、労働四団体からこれが実現に協力するよう要請を受けておるということも承知をいたしておるわけでございます。
 現在、最低賃金は、先ほどの参考人も申し上げましたように、地域別、業種別に全国の労働者に対してほとんど適用がなされておる状態でございます。しかし、これらの金額は調査の時点、地域、業種等によってかなりの開きがございます。調査の時点の問題はともかくといたしまして、地域別、業種別に開きがあるということは、それぞれ各県の地賃の中で審議をされておる場合に、それぞれの実情に応じてきめ細かく勘案をされて決まった金額でございまして、いわゆる地域の実情とか業種の実情を反映しておるわけでございます。これをいま全国一律でならそうといたしますと、それらの実情を無視をすることになりまして、大きな混乱を起こすおそれがあります。特に低賃金層を抱えております中小企業にとりましては、より大きな混乱を引き起こすのではないかということを憂慮いたしておる次第でございます。したがいまして、私たち中小企業者の立場としては、これには絶対に反対でございます。
 最低賃金は、最低賃金法の目的の中にありますように、賃金の低廉な労働者の賃金の最低額を保障することにより云々ということになっておりますが、低賃金というのは一体どれだけが低賃金なのか、これはもういろいろ議論の分かれることであろうかと思うわけでございます。この低賃金は一体どういうものかということでございますけれども、これも四十五年の中賃の答申にありましたように、いわゆる労働市場の相場賃金に密接に関連して、不公正な賃金に対処するということになっておるわけですから、いわゆる低賃金といいましても、単純にどこが限界かわからない額ではなくして、不公正なものを排除するというのが目的ではないか。そういうことになりますと、いわゆる労働市場をどうとらえるか、あるいは賃金の相場をどう見るかということになってくるかと思います。
 賃金の相場というのは、普通に平均賃金だとか、あるいは学卒初任給だとか、あるいは賃金の中位数だとか、あるいは何分位数だとかいうことをよく言われますけれども、ここで言う賃金の相場というのは、そういった特定のポイントをとらえて考えるものではない、こういうふうに思うわけでございます。賃金をある階層に分けましてその分布をつくってみますと一定のパターンがございまして、いわゆる労働市場の相場というものは、そういった一つの形をなして分布しておる諸状態そのものが一つの相場ではなかろうかと私は思うわけです。そういうパターンをはずれて存在しておるような賃金が不公正あるいは不当な賃金であろうかと思うわけでございます。高いところへ飛び抜けて存在しておるようなものは、全体の公正という立場からいけば多少抑えなければいけない問題が起こるんじゃないか。それから低い方の立場にあるものがいわゆる不公正な低賃金であって、この最低賃金法というのは、こういった不公正な賃金を救済する、あるいは排除する、取り除く、そういった効果をねらうべきものではないか、こういうふうに思うわけでございます。
 それから、労働市場をどうとらえるかということでございますけれども、労働を物にたとえるということは私は必ずしも賛成はできませんが、あえて物にたとえるとすれば、いわゆる労働者の生活の基盤、居住、これを中心にいたしまして、移動、流通の可能な範囲内に限るべきだろうと思うわけであります。北海道から沖繩まで同じ労働市場だというふうな考え方をとるべきではない、こういうふうに考えるわけでございます。現在、最低賃金の設定は、大体地賃の範囲内で決めておるわけでございます。
 私のところは岐阜でございまして、いわゆる太平洋側の部分と日本海側に近い部分、いわゆる山岳農村地帯があるわけでございますが、一つの最低賃金を決めようという場合においても、いわゆる岐阜等を中心にした市部と、それから山村部ではかなりの開きがある調査が出ておるわけでございます。かつて最低賃金を決定するある業種につきまして調査をしまして、一つの企業の中でこれにひっかかるのが七割も八割も出てきておるような企業も、中小企業でありますけれども、存在しておるわけでございます。すでに一県の中においてすらこういった差が出てくるわけでございます。いわんや全国を一つの、一本の市場と考えて一つの不公正な賃金を決めるための労働市場を設定するといったようなことは、これは不可能ではないか。額が低ければいいんだという先ほど御意見もありましたようでありますけれども、私は観念的に、全国一律最低賃金制というものは制度としては反対でございます。
 また、こういうふうに考えますと、不公正な低賃金を排除するということですから、これはいまや雇用との条件の中で決めるものではなくして、いわゆる社会保障的なものでありますから、社会的性格を帯びた賃金でございます。
 したがって、これを決めるにつきましては、現行ではいわゆる最低賃金審議会の答申を得て決めることになっておるわけでございますが、審議会の構成は御承知のように公労使三者構成でございます。しかし私は、労働側は労働者の直接の交渉の代表ではないと思うのです。使用者は使用者としての交渉の代表ではないと思うのです。いまや最低賃金というのは社会的な賃金でございますから、労働側は労働者の内部の事情によく精通しておる経験者であり、使用者側は事業の経営の実態を詳しく知っておる経験者である、そういう立場で、社会的な最低賃金を決めるための意見を述べるということであります。これではどちらかへ偏るおそれがあり、また話し合いが、意見の食い違いが大きく出てくる場合もありますから、これに公益側の社会的な公正な立場で、学識経験豊かな委員が加わって、その三者でこれを審議決定をするという形ではないかと思います。いわゆる審議会において公労使の多数決で決められるというところに意味があるのでございます。同等の立場でございまして、ですから、これはいわゆる通常の賃金の労使の交渉、労使の話し合い、こういったことで決めるべき性質のものではないのではないかと思うわけでございます。
 話が戻るかもわかりませんが、最低賃金は労働市場の相場の実態に対応して、不公正な低賃金を排除するというのが目的でありまして、相場を押し上げる働きを期待するものであってはならないと思うわけでございます。労働団体の方の要求は最低賃金の額が月額七万円とか六万円とかいうことに聞いておりますが、現在の最低賃金、かなり幅広く広がっておりますが、平均ぐらいのところをとって、仮に日額千八百円くらいと考えましょうか、もし七万円とか六万円とかいう月額にするということは、六割または九割くらいのアップをしなければならない。ところが賃金というのは一つの配列の中にあるわけでございますから、最低賃金だけが別のものではないわけです。最低賃金がもし大幅に上がれば、いわゆる一人前の、あるいは正常な相場の中における賃金も押し上げざるを得ない。その上げ幅は小さいにしても、こんな六割も九割もアップをさせようと思えば、少なくとも平均のところでも四割とか五割ということをアップしないと、労働者のいわゆる能力を正しく評価して、それにふさわしい格づけをしていくということにならない。そうすれば、一般の労働者の勤労意欲をそぐ、いわゆる努力をスポイルするといったようなことになりかねないのでございます。ですから、最低賃金というのはそういった全体の賃金を押し上げる性格を持たせるべき性質のものではないのではないかというふうに考えるわけでございます。あくまでいわゆる一つの賃金の配列という相場の中から取り残された不公正な取り扱いを受けておる賃金を取り除くためのいわゆる歯どめとなるべき賃金であると考えるのが私は至当ではないか、こういうふうに思うわけでございます。
 さらに、一般に賃金を決める場合に、通常はいわゆる労働者に働いていただきまして、あるいは資本とか技術とかいろいろなものとの完全な協調の中で価値を生産するわけでございますから、いわゆる価値の生産の寄与の割合に応じてやっぱり賃金というものは格づけされていかなければならないと思うわけでございます。
 現在中小企業は非常に労働力の確保がむずかしいのでございます。やむを得ず比較的質の低位の労働でもうまく適材適所に配分いたしまして、そうしてこれを活用いたしておるのでございます。いわゆる中高年齢層を多く使っているのも中小企業でございます。また婦人だとかあるいはお年寄り、多少質的に弱い労働も使わざるを得ないし、これも適材適所にうまく使っておるのが中小企業ではないかと私は思うわけでございます。もし最低賃金が高くなり過ぎますと、企業としてはその賃金に見合う労働をしていただかなければなりませんし、そうなりますと、中小企業としては労働の選択の範囲を狭められるおそれがありますし、また労働者の方から言えば雇用の機会を失う、こういうことになりかねないのでございまして、最低賃金の額の決定というものは、あくまでいわゆる不公正なもの、不公正なところへ置かれるものを排除するという立場で考えなければならない。相場があって最低賃金があるのでありまして、最低賃金があって相場ができていくというものではないのであります。
 そういう私の考え方から考えますと、いわゆる全国一律最低賃金制というものは、もちろん現在の企業、特に中小企業の健全な事業の経営を阻害するおそれがむしろ出てくるのではないか、かように考えるわけでございまして、全国一律最低賃金制はまず反対でございますし、また、最低賃金というものは社会的な性格の賃金でございますから、労使の交渉によって決めるべきものではございます。また、相場があって最低賃金があるのであって、最低賃金があって相場をつくっていく性格のものでないということを申し上げまして、私の意見を一応締めくくらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
#6
○大野委員長 次に、岡村参考人にお願いいたします。
#7
○岡村参考人 紹介を受けました総評の岡村であります。私が参考人として意見を述べる立場を最初に申し上げてみたいと思います。
 御存じのように、ことしの春闘におきまして総評、中立労連、同盟、新産別の労働四団体が、最低賃金制度についての統一要求を提出をしています。これを基礎にしまして社会、共産、公明、民社の四党が共同法案を作成をいたしまして本委員会に提出していることはすでに御存じのことだと思います。私の立場は、このわれわれの要求及び四党案が一日も早く成立することを願う立場から意見を申し上げてみたいと思います。
 最初に私たちの要求であります。要求は、一つは最低賃金の決定方式についてであります。最低賃金の決定方式は、全国一律の最低賃金を法制化すること、この一律の制定に関連しまして、実効性の上がらない産業、業種、地域についてはその一律の上に上積みをするということであります。二番目の決定方式は、労働協約の拡張適用を制度化する、こういうことであります。
 それから二番目は、最低賃金の決定基準であります。最低賃金の決定に当たっては、生計費賃金事情を基礎にして決める。しかも、御存じのように日本の賃金なり生活条件というのは毎年一回春闘を中心にして改定をされているわけでありますから、最低賃金についても毎年改定をする、これが決定基準であります。
 三番目が決定機構であります。決定機構については、現状の最低賃金審議会ではなくて、最低賃金を決定する権限を持つ最低賃金委員会を設置をするという考え方であります。しかもこの委員会は、第一に中央及び地方に設置をするということ、それからその構成については労使同数の委員と少数の中立委員で構成をしたいということであります。第三は、委員の推薦については労使はそれぞれの関係団体が推薦をし、中立委員の選出については労使の同意を必要とする、こういう考え方に立っているわけであります。
 私たちがこういう要求を出した背景には、大別しますと二つの理由、それから一つの考え方があります。
 その大別して二つの理由という一つは、日本の低賃金、低福祉水準の存在ということであります。時間の関係もありますから簡単に申し上げますと、戦後の自民党を中心とする保守党の政策の基本構造というのは、私なりに理解すれば、対外的には安保体制に依拠しながら国内的には高成長、高蓄積、これを全面的に支援をする、こういう立場に立って進められてきたと思うのです。そういう中で、成長の余禄を、部分的に低賃金とか低福祉水準など社会的な矛盾にばんそうこうを張るといいますか手当てをする、こういうものだったと思うわけであります。
 御存じのように日本は、特に昭和三十年代以降世界に類例のないような高成長を遂げたわけであります。今日資本主義社会においては世界で第二位の工業水準に達しているわけであります。この工業水準に達するまでの過程でどういうことがとられたかといえば、国なり地方自治体が、挙げて産業基盤の整備、たとえば道路だとか港湾だとか土地だとかというような整備に狂奔するし、金融とか税制の面で優遇策をとるし、当然、国民生活の維持という立場から言えばやるべき課題である交通だとか、住宅だとか、教育だとか、社会保障の充実だとか、こういうことをネグレクトして政策が遂行された。しかも、今日社会的にも問題になっている公害その他企業が当然負担すべき社会的な負担についても、これを放置するという政策がとられたわけであります。しかも御存じのように、日本は明治以来、戦争中の一時期を除きますと、労働力の余っていた国であります。優秀な労働力が低賃金で存在をする、これを最大限活用して今日の成長を遂げたというのが私は実態だろうと思います。したがいまして、時間の関係もありますから細かいことは別にして、日本の今日の低賃金水準というのは、工業生産水準が世界第二位という実態にもかかわらず、アメリカはむろんのこと、ヨーロッパの先進諸国に比べても賃金は低い、しかも物価が異常に高いという中で、生活水準全体から見れば世界で十数番目という状態に置かれていることは皆さん御存じのとおりであります。
 この低賃金という問題と同時に日本で特に私たちが注目しなければいかぬのは、この低賃金水準の中で格差問題が存在するということであります。これも御存じのように、三十年代前半では、特に内外から指摘された問題として二重構造の存在ということがあったわけであります。大企業と中小企業、本工と臨時工ないしは男女における格差、こういうものが非常に大きく存在したわけであります。三十年代後半、春闘が定着をしまして、われわれとしては春闘相場というものを形成してこの格差の縮小、賃金水準の引き上げに努力をした結果、統計的に言いますと、昭和三十四年の一番格差の開いた段階から、四十年代に入ると、ある程度格差の縮小ということに成功してきたわけであります。
 ところが、政府を中心としてとられた政策を見てみますと、三十年代後半から四十年代にかけて、たとえば農業基本法なり中小企業基本法なり、積極的な労働力流動化政策という名のもとに新しい日本の低賃金層が創出されたということが指摘できると思うわけであります。
 御存じのように、今日の産業構造というのはきわめて重層的な下請構造であります。しかも新しい低賃金層として臨時工なり社外工なり季節工なり出かせぎないしはパートという、こういう差別雇用と低賃金が多数存在しているわけであります。こういうことは、今日の日本の状況で考えた場合に、果たして社会的に許されていいのかどうか、これが私は一番大きな問題点だろうと思うのです。われわれ労働組合としても、みずからの力の弱さがこういうものの存在を許したということについては率直に反省をしたいと思いますけれども、私は、社会的に許されていいというようには考えないわけであります。
 しかも四十年代後半からインフレが非常に高進をする、狂乱物価という中で労働者なり国民の生活が非常に不安に陥れられる。そういう中で、労働者なり国民が立ち上がるとどういう政策がとられたのかと言えば、御存じのように、総需要抑制という中から大量の失業者がつくり出されるというのが一つの方向であります。同時に、もう一つの方向は何かと言えば、インフレの犯人を賃金ということに仕立て上げて、したがって、そういう中で賃金か福祉かということで労働者と国民の分断を図る、ないしは賃金か雇用かということで労働者内部の矛盾を突いてくる、こういうやり方をいまとられているわけであります。要するに、このインフレの被害を労働者なり国民なり中小企業なり農業の犠牲によってくぐり抜けようというのが今日とられている政策だろうと思います。
 そういう歴史的な経過を踏まえて、果たして一体全体最賃行政というものがどういうものであり、その実態はどの辺に問題があるかということを次に指摘をしてみたいと思うのです。
 御存じのように、昭和二十二年に最賃法が制定されました。その中には、二十八条から三十一条にわたって最低賃金制についての規定があったわけであります。ところが、これが具体化されるまでには十年以上もたなざらしになっていたという経過があります。三十四年にいわゆる業者間協定による最賃法というのがつくられたわけであります。この中心は九条及び十条であります。この九条及び十条というのはどういう決定方式であるかと言えば、業者団体が勝手に一方的に労働者の初任給を決定をする、これを最低賃金審議会にかける、ここで多数決で押し切る、これが当時の最低賃金の主要な決定方式であります。私たちは、これが次のような問題点を実は含んでいるというように考えます。
 一つは何かと言うと、労働者の労働条件決定に当たって一方的に決定するということは、労働者の団結権、団交権の否認であるというように考えます。第二番目は何かと言うと、業者が初めから一方的に決めるわけですから、初めから賃金水準に比較して低い。加えて、これは実績によっても明らかなように数年たって一回しか改定をしない、こういうことでありますから、初めから有効性がないものは数年たてばますます実効性がないし、それが果たしている社会的役割りというのは低賃金固定化策以外の何物でもないのではないか、こういう立場をとっているわけであります。
 少なくとも最低賃金というものを考える場合には、国内的には憲法二十五条なり労働基準法一条、二条、国際的に言えばILO条約の二十六号、三十号その他の条約なり勧告があります。この精神が生かされないものは国際的には通用しないわけであります。私たちのそういう追及の中で、実は政府は四十年代に入ってこの法律を改正をしました。それが改正されたものが今日の現行法であります。
 現行法は御存じのように十六条を中心で決定をされています。いわゆる審議会方式であります。しかし、先ほど私たちの要求の際に申し上げましたけれども、審議会というのは、諮問を受けて審議をするというものでありまして、みずから調査し決定するという権限を持っていないという問題点が一つあります。それからもう一つの問題点は何かと言うと、三者構成に表面的にはなっている、ところが、この実態は三者構成ではなくて、二対一の構成だと言って私は間違いないと思います。
 それを具体的な例で申し上げますと、昨年の秋に全国的に地方最低賃金の改定が行われたわけであります。東京の場合には、御存じのように千七百九十四円で決まっております。これは失対賃金の最低下限の金額であります。労使でこの改定のときに詰められた金額は千八百円台の話が具体的に出ていたわけであります。ところが、この金額で最終的に押し切られた背景には、この委員会だったと記憶をいたしますけれども、議論をされたように、労働省の当局が各県の労働基準局を指導して、最低賃金の金額を失対賃金以上には絶対するなという行政指導が行われて、その意向を受けた公益委員がこういう金額を決める、これが全国的な状況であります。だから、地域包括最賃の金額を見ていただけばわかりますように、全国的に失対賃金の金額ないしはそれと幾らも違わない、一けたの円しか違わない金額で決まっている、こういう実態になっています。したがって、名目的には三者構成ということになっておりますけれども、明らかにこれは二対一の行政指導型の最低賃金決定機構だ、こういうことが言えると思います。
 そこで、私たちが要求した最低賃金の要求の理念ないしは発想について一言申し上げてみたいと思います。
 私たちがよく労働省といろいろ交渉する中で言われる言葉について、ここで指摘をしなければいけないと思うのです。それは、最低賃金というのは落ち穂拾いという考え方であります。私たちはこういう考え方には立ちません。非常に低い低賃金労働者の救済という視点といいますか、労働省はこれであると思います。私たちの考え方というのは、次のような考え方であります。それは、憲法で規定をしている健康にして文化的な生活を営む権利、基準法で指摘をしている人たるに値する生活を確保する必要がある、こういう考え方、ないしはILO条約で指摘をされているような考え方を基礎にして今日の日本の状況を考えれば、国民生活重視の政治経済体制をつくっていく、その場合のナショナルミニマム形成の基軸として最低賃金をやはり考えなければいけないのじゃないか、こういうように実は考えるわけであります。したがいまして、労働者には最低賃金、農民の場合には、そういう労働者の生活、賃金を基礎にした生活保障、中小企業の場合で言えば課税最低限の引き上げを通じて最低の生活を確保する、むろん、社会保障の関係で言えば、失対賃金とか生活保護とか各種の年金とかいうのが、そういう関連で内容が当然改善をされる、こういう必要があると思うのであります。
 先ほど経営者側の方から一律について反対という話が出ましたけれども、今日の日本においても、たとえば就労する労働者の最低年齢が規制をされておる、時間が決まっておる。なぜ賃金ができないかということについて、私たちは納得をするわけにはいきません。こういう立場に立っています。
 時間の関係もありますから最後に一言申し上げたいのは、こういう私たちの要求に対して、いつも言われる問題点として企業の支払い能力、ないしはその延長線上から言うと中小企業の限界といいますか倒産というような問題が提起をされます。内容を細かく申し上げませんで、二、三の点についてだけ申し上げておきたいと思うのです。
 私は、総評で二十年にわたって中小企業労働運動をやってきました。中小企業安定審議会の委員もやらしていただいております。政府が出した経済白書なり労働白書その他を読んでみましても、高賃金で企業が倒産した例というのを残念ながら余り知りません。たとえば、ここ二十年にわたる日本経済の成長の中で、景気循環過程で何回か不況がありました。今日はまた低成長への切りかえという中で雇用不安がいっぱい出ております。しかし、中小企業が困難になっておる理由というのは、いろいろ見聞きし読んだりしておる中で明らかになっておることは、たとえば景気循環過程における金融政策から金融的に行き詰まるとか、親企業が下請工賃をたたくとか支払いを延ばすとか、それから大企業が中小企業分野に進出をしてくるとか、ないしは今日の国際経済情勢の中で、発展途上国の追い上げというような中で企業が転業していくとかいう理由が多くあります。特に四十年代に入ってからの問題点は、先ほども指摘がありましたように、低賃金、低福祉では労働者が集まらないというところから転廃業が進んでいるというのが客観的な事実であります。そうだとすると、最低賃金を、われわれが要求しておるようなものをつくることが中小企業の倒産につながるというように考えるのは事実と違っておる、こういうことを私は強調しておきたいわけであります。
 むしろ、いま申し上げたような中小企業の抱えておる諸問題を政策的に解決するとするならば、賃金については最低賃金だとか、世間並みの時間短縮をやるとか、そういうような労働者の労働条件の改善とか福祉という最低の歯どめがあって、初めて有効な政策ができるというように私たちは考えています。今日の状況から考えると、むしろ困難な企業状態を克服するといいますか、低賃金によってこれを乗り切ろうというような考え方は果たして社会的に認められる考え方なのかどうか、しかも今日のような日本を取り巻く経済情勢から言えば、低賃金に依存して企業の存立を考えるというようなことは客観的にできるのかどうか、この辺についても改めて考え直していただきたいというように考えます。
 しかし、とはいえ、私たちは中小企業が困難な事情に置かれておるということはよく知っております。私たちともある面では共通点があります。私たちがこの中小企業問題を問題にするのは、直接的には労働者の労働条件の改善とか、雇用の確保とか、権利の拡大という視点からそういう問題意識を持っております。経営者側の方からすれば、当然企業の存続発展、利益の確保という立場から問題にされるだろうと思うのです。ただ私は、共通点があるというのはこういう面で共通点があると思います。それは、大企業から圧迫をされている中小企業の方々をどうやって守っていくのか、たとえば政策的に言えば、中小企業分野の確保だとか、独禁法の強化だとか、ないしは官公需の確保だとか、下請企業の地位の改善だとかいうふうなことについては私は一致点があると思います。また、金融、税制その他の抜本的な改善の必要性も認めます。
 そういう立場から言いますと、御存じのように私たちは国民春闘を展開をしております。私たちは、中小企業の皆さん方がみずからこういう困難な課題に向かって立ち上がること、したがってそういう面で共通の点があるならば一緒に闘いたいという考え方を持っております。そういう立場から、最低賃金の実施と中小企業の困難な問題というものを変に結びつけることなく、今日の日本の置かれている状況、将来の日本のあり方という問題から大局的に考えて、われわれの要求についてぜひ理解をしていただき、実現に当たっていただきたいことを申し上げまして、私の意見にかえさせていただきたいと思います。(拍手)
#8
○竹内(黎)委員長代理 次に、丹下参考人にお願いいたします。
#9
○丹下参考人 中立労連の丹下でございます。
 私もただいまの岡村参考人と同様に、労働四団体の最賃制についての共同の要求あるいは野党四党の最賃制の根本的な改正についての共同の法案を成立をさせる、こういう観点で意見を述べさせていただきたいというふうに思います。
 私どもが最賃制について考えている基盤というのは、ただいまの岡村参考人の考え方と同様でございますので、重複する部分もあるというふうに思いますけれども、幾つかの点で意見を申し上げます。
 まず第一に、いままでとられてまいりました賃金政策の問題であります。また経済政策の問題でありますけれども、いまの日本の経済をつくり上げていく上には並み並みならぬ労働者、国民の犠牲があった、その上に初めて日本の経済が高度成長をしてきた、そして、その結果が労働者、国民の生活をあるいは生活の基盤を本当の意味で確立をするという状況ではなしに、むしろ新しい困難を背負わせてしまった、こういうことが大変大きな問題として指摘をされなければいけないのではないかというふうに考えるわけです。
 過去にとられてまいりました最賃制の運営等にいたしましても、私どもの立場からすれば、労働省等々が言うように仮に労働者の最低を拾っていく、こういう落ち穂拾いの立場ですらなくて、むしろ高度成長を支えるための労働力の誘導化政策あるいは低賃金政策の固定化、こういう意味で少なくとも客観的には作用をしてきたというふうに言わざるを得ないのじゃないかというふうに思うわけであります。なぜならば、高度成長の結果の中で、わが国は資本主義世界でも第二の工業力を持つような国になったわけでありますけれども、その中で非常に多くの低賃金労働者が存在をする。労働する以上、その労働力を売った金で生活ができなければいけないということになるわけでありますけれども、そういうことすら満足にできないという非常に多くの階層がいるということは統計上も明らかであるというふうに思います。
 多少古い統計でありますけれども、四十八年の時点で、雇用労働者の賃金の中位数が八万五千三百円というふうに出ておりますけれども、それ以下の労働者は女子においては九五%、男子においても三八%いる。五万四千円以下の労働者というのは五百六十三万人いる。これは十人以上の規模で、パートを除いておりますから、実質的にはもっとこの層というのが拡大をするという状況になっていると思います。この賃金が、労働者が労働をして、そして生活をするということに本当に足る賃金であるというふうにはだれしも考えないのじゃないかというふうに思うわけであります。
 さて、こういう中で行われております現行最賃法の問題点でありますけれども、私どもは二つの点で大きな問題があるのじゃないかというふうに考えております。
 その一つは賃金決定の基準であります。現在の賃金決定の基準というのは、労働市場の相場賃金を基準にするということ、あるいは企業の支払い能力を優先させるということ、それらを含めて、結局は一定の額を定めることによってどのくらいの影響率が出るのか、こういうことを基礎にして賃金決定がされているわけであります。しかし、労働力の相場賃金というのは、結局は自然にできてきたものであるし、そのときの労働力の事情あるいは経営の側の労働力に対する要請、こういうふうなものを前提にして、そうした自然発生的なものを前提にして、その最下限をちょっとばかり切って上げていく、こういうかっこうになっているのじゃないかというふうに思うわけであります。
 企業の支払い能力がある、そしてそれ以上のものを出すということになれば、その企業はつぶれてしまうか、あるいは労働者の質というものを選定をし、労働者の雇用機会が失われるではないか、こういう意見も大変に強くあるというふうに思いますけれども、これらについても、実はそういう観点に立ってこれらの基準が決定をされているのじゃないということは、いまの時期になれば明らかな問題なのじゃないかと思います。私は食品の労働組合の出身でありますけれども、食品の労働組合の中を見てみましても、大変に低賃金の労働者がいる。そして、低賃金であるから雇用できるのだ、こう言っている経営者もいたわけでありますけれども、この現在の不況の中で、そうした企業から労働者が一時帰休の形あるいは解雇の形でどんどんと締め出されるということになれば、経営者が雇用機会を確保するために一定の賃金水準でやむを得ないというふうに考えたのでないことは明らかであって、むしろ低賃金において企業利潤を確保をする、こういう観点に立って、その主張が賃金決定の基準に大きく作用していたのだということが明らかなのじゃないかというふうに思うわけであります。
 二番目の問題点といたしましては、決定方式の問題があります。これについても行政主導型の決定方式でありまして、審議会方式という枠内であっても、労働者の生活の状態あるいは労働者の要求、賃金実態というものが的確に反映をするという形にはなっていなかった。一定の政策目的を持って、そしてそれに基づいて賃金決定の基準がつくられるようにする、こういう機能を果たしていたのではないかというふうに思うわけであります。
 こうした問題点に対して私たちの主張をしておりますところは、労働者が企業に雇用される、そして働く、賃金を得る。その賃金というのは、労働者が人間として生活するに足るような賃金、すなわち憲法や労働基準法あるいはILO条約の中に含まれているような、そうした人たるに値する生活を営める賃金、こういうものを基準にして考えるべきであって、自然発生的に企業経営の都合によって生まれてきた賃金相場の下限を切る、こういうものではないのじゃないかというふうに考えているわけであります。賃金というのは元来そういうものではないのじゃないか、こういうふうに考えているわけであります。
 しかし、労働力市場の中における労働組合の力がまだまだ非常に弱いということもあって、それを規制する力というのが薄く、したがって非常に極端な低賃金労働者が生まれているということについては、私ども労働組合の立場からもそれなりに考えなければならないところがあるわけでありますけれども、これらの最低基準、労働者が労働者として生活するに値するような賃金を決定をするということは、今日国の責任でもあるのじゃないかというふうに考えるわけであります。
 労働基準法の中には労働時間の最低というふうな問題も決められている。賃金というのは、労働時間と並んで労働者が労働契約をする上での最大の要素であるわけでありますけれども、その賃金についてはただいま申し上げましたような形での決定しかされないということでは、今日の社会状況を考えてみると、そういう点での社会の公正あるいは社会正義ということを考えてみると、とうてい許されるところではないのじゃないかというふうに思うわけであります。労働者の一番基本的な労働条件であります賃金がナショナルミニマムとして形成をされていく、そしてそれに基づいて国民諸階層の生活が確保されていく、こういうことが今日の社会的なあるいは政治的な使命だということを特に強調をしておきたいというふうに考えるわけであります。
 次にいわゆる支払い能力論の問題であります。これについては、私どもの周りを見てみても、非常に困難な状況に立っている中小企業というのがたくさんあるわけであります。そして、計数的に言えば、賃上げをするというふうなことがその企業に非常に大きな影響をもたらすことがあるということも存じているわけであります。しかし、翻って考えてみますと、この中小企業の困難な状況というのは、単に賃金が問題であるのかというと、決してそんなことはないのじゃないかというふうに実態からしても考えざるを得ないわけであります。非常な低賃金で労働者を働かさせて、そして企業がもっていく、それしか仕方がないのだ、こういうふうに考えるのは政治の立場でないというふうに思いますし、それ以上の現実の問題としては、仮に私ども非常に低い賃金である、しかしそれにもかかわらず倒産をする、こういう企業をたくさん見ているとしますと、あるいは一定の社会状況の中で賃金が上がっていく、その中でも企業が中小企業といえども発展をしていく、こういう現実を反面見ていると、その中小企業の困難というのは、むしろ中小企業を取り巻いている現在の経済的なあるいは政治的なさまざまな形での政策の弱さ、不足、過ちというのが一番根本にあるのじゃないだろうかというふうに考えているわけであります。
 そうした問題を除いて、中小企業の問題というのを賃金とストレートに結びつけ、全国一律最賃の流行ということが即中小企業を破壊に導くというふうな議論があるとすれば、これは事実にも反しているわけだし、そういう方向では中小企業の真の意味での発展、基盤をつくるということにはなり得ないのじゃないか。労働者を安く使うことによって、そのことによって中小企業の存立があるのだ、こういうふうに考えていれば、事実とも違うし、社会的な政治的な観点からしても著しく公正に反するのじゃないだろうかというふうに思うわけであります。そこで、私どもはまず全国一律最賃を志向し、その中ですべての労働者が、憲法あるいは労働基準法にうたわれているような意味での賃金を受けることによって労働者としての生活を安定をさせていく、それを前提にして、それでもなお中小企業がりっぱに存続をしていくような政策をさまざまな形で打ち出していく、それが政治の役割りだと思いますし、そういう点から独禁法の問題あるいは金融の問題、財政の問題、税制の問題等々にも同時にメスを入れていくことが必要なのではないかというふうに考えるわけであります。
 私どもの要求は、一つは、全国全産業一律最賃制を基本として、その上に産業別最低賃金の一般的拘束力を積み重ねていく、こういうかっこうでまず全国的な底支えをし、その上にさらにそれだけでは問題が解決をしないところにはその上積みをしていく、こういう考え方。それから二番目としては、最低額を決定する権限を有する労使対等の立場での賃金委員会を設置する。三番目といたしましては、最低賃金額は、賃金委員会の算出する労働者の生計費を基礎として、生計費の上昇に応じてスライドする。こういう要求を持っているわけでありますけれども、それらの要求というのは四野党の共同法案の中に盛られているわけでありますから、こうした労働者の、あるいは広く全国民的な要求、要望でもあるというふうに思いますが、これを国会において十分審議をされ、われわれの要求を実現されるようにお願いをして意見を終わらせていただきたいと思います。(拍手)
#10
○竹内(黎)委員長代理 次に、黒川参考人にお願いいたします。
#11
○黒川参考人 慶應義塾大学の黒川です。
 私は、一研究者の立場でこの最低賃金制の問題について私なりの意見を申し上げたいと思います。
 いま問題になっております全国一律最低賃金制については、政府やあるいは経営者団体の中で、わが国においては賃金格差が余りにも大きいから実効性がないというふうなことがしばしば言われますけれども、正確に言うと、恐らくそういう立場からは、むしろ無理だ、実効性ではなくて無理だということが率直な考え方ではないかと思います。私は逆に、わが国のように賃金格差が大きく、そしてまた賃金分布を見ましたときに平均賃金あるいは中位の賃金水準を下回る低賃金層が非常に多いというふうな状況、これは皆さんのところにあるいは資料をお渡ししたと思いますが、西ドイツ、イギリス、アメリカなどもそうですが、それらの賃金分布と比較してみましたときに非常にはっきりいたします。欧米諸国の場合には、平均あるいは中位の賃金水準に近い賃金を受け取っている層が多い。ところがわが国の場合はそれを下回った賃金を受け取っている層が多い、格差も大きい、こういう特徴を示しております。このようなことは、ある意味では現在の開発途上国と似通った面があり、ただ違う点は、平均を上回る賃金層がわが国の場合にはかなり高いところの水準まであるということでありますが、こういう状況の中で、やはり現行の最低賃金法、先ほどから話が出ておりましたように、低い水準で、しかも幅のある、格差のある最低賃金が、地域別、業種別に決定されるというような現行最低賃金法の方が私は実効性がないのではないかというふうに考えます。
 というのは、ある意味では、戦前からも比較してみますと、先ほど言ったような賃金分布状況というのはほとんど変わっていない。現行の最低賃金法が成立して、当初はもっぱら業者間協定方式がとられましたが、六八年以降十六条方式がもっぱらとられるようになっても依然として賃金分布はほとんど変わりがないというふうな状況にある。このことを考えてみますと、やはり実効性がないというふうに判断せざるを得ないのではないか。そういう意味で、やはりわが国においては全国一律の最定賃金制というものが必要であるというふうに考えるわけであります。
 そういう点で、確かに世界各国を見渡してみますと、完全な意味の全国全産業一律の最低賃金制がとられているのはフランスだけであるというこどが言えますけれども、これもやはり成立の状況の中で、労使のいろいろな対抗関係で妥協の産物として各国の最低賃金制が成立しておりますので、現実においては全国全産業一律制が成立しにくいという状況があります。その中で特に先ほど申しました開発途上国、そういう意味では底辺の層がきわめて多い開発途上国であっても、たとえばメキシコなどにおいては戦前早くから最低賃金制が成立いたしましたけれども、その中でやはり全国一律制というものが必要であるという意見が出されてきている。
 具体的に申しますと、一九三三年に最低賃金制がメキシコにおいてできておりますが、四一年には労働厚生省自身が、地域別あるいは業種別の格差のついた最低賃金制というのは効果がない、単一の最低賃金率というものを決定する必要があるというふうなことを申しておりますが、それとあわせて、ラテンアメリカの労働法の権威者でありますマリオ・デ・ラ・クェヴァ教授なども大体そのような意見、いわば全国一律の最低賃金制がなければメキシコの低賃金というのは克服できないということをはっきり申しております。
 また、戦後いち早く最低賃金制を実施しましたインドにおきましても、第一次経済計画から第二次経済計画へ移る段階において、やはり第一次計画の中で基礎になっていた業種別、地域別の低い最低賃金というものがほとんど効果がなかったという反省の上に立って、ここに挙げましたインドのピライ教授は、生計費を基準にした全国一律的な最低賃金を基準にして産業構造を再編成していかなければならない、こういうような意見を吐くようになってきております。言うまでもなく、その場合に産業構造をそのままにしているというふうな前提ではなしに、やはり生計費を基準にした全国一律に基づいて構造を変えていく政策をとる必要があるというふうに主張しているわけで、あえてそのようなことを主張するのは、インドにおける低賃金労働というのは国家の名誉にしるされた汚点である、これは早急になくす必要がある、そういうような観点からこのような主張をするようになってきていたわけであります。しかし現実の政治は、インドにおいてもなかなか思うようにはいっていないようでありますが、そのような見解が出されてきているということはやはり注目しなければならないと思います。
 しかし、こういったラテンアメリカ諸国あるいはインドのような国々でなくても、先進諸国においても言うまでもなく全国一律制というものが要求されていることは事実でありまして、先ほどのフランスのみならず、各国においてすでに業種別、地域別の最低賃金制が実施されているところにおいても、絶えず全国一律制というものが主張されてきておる。御存じのようにイギリスの場合には地域別、特に産業別の最低賃金になっておりますが、しかしイギリスにおいても、現在、産業別の審議会を廃止して全国的な最低賃金を設定していく必要があるんではないか、そうしなければ効果が上がらないというふうな意見が出ております。しかしながら、先ほど申しましたように、イギリスはわが国と比べたならばまだ中位水準の賃金を受け取っている層が最も多い。わが国のように中位以下あるいは平均以下の賃金を受け取っている層が多いわけではないのでありますけれども、しかしこのイギリスにおいても、全国一律制というものが要求されるようになってきている。こういう点で、やはりわが国においても全国全産業一律の最賃制というものが必要ではないかというふうに私は考える次第であります。
 次に最低賃金額の決定の基準の問題であります。これについては、いままでの参考人の方々がそれぞれ述べられましたが、ここで特に私が指摘しておきたいと思いますのは、一九二八年でありますが、ILOの総会において最低賃金決定制度の実施に関する勧告案が上程されました。その席上、使用者側から、支払い能力を考慮するという修正案が提出されました。これについていろいろ議論の結果、支払い能力原則というものを打ち出すことは最低賃金制の実施そのものを妨げる結果になるということでこの修正案は否決されて、現実においてこの勧告案の中には支払い能力という言葉はありません。
 そういうようなことを考えてみますと、その基礎にあるのは何かというと、しばしば常識的には支払い能力がないから低賃金である、こういう因果関係が主張されますが、実はそうではないのであって、低賃金で労働者が雇えるので、そのような低賃金労働者を雇っている中小零細企業を大企業が犠牲にしあるいは利用する結果、中小零細企業の支払い能力が少なくなっている、こういうふうな状況があるのではないか。この点特にわが国の場合には、ここであえて細かい数字は省略いたしますけれども、一人当たりの付加価値額の規模別格差というものをとってみますと、中小零細企業の付加価値額の格差は大企業に対してきわめて大きい。そして、そういう意味では賃金格差よりさらに大きいというふうな状況を示しております。これはしばしば生産性の違いがこの一人当たり付加価値額の格差にあらわれているのだと主張されておりますが、これはそうではないので、わが国の規模別の格差が欧米諸国よりも大きい、さらに一人当たり付加価値額の格差がさらに大きいというのは、やはり格差のある低賃金で働かされている労働者がいるというふうなことから、先ほど申しましたようにその中小零細企業がいろいろな形で利用されあるいは犠牲にされて、その結果付加価値額がきわめて少なく抑えられている、いわゆる支払い能力がないと言われるような状況を呈しておるのがこのような統計数字に反映されているのだ、この点がやはり重要ではないか、そういうふうに思われるわけであります。
 そういう意味でわが国において全国一律の最低賃金を決定していった場合に、中小企業に対するいままでの下請単価の決定であるとか原材料の仕入れであるとか、あるいは金融、税制、そういうふうな面が社会的に規制されていくということが当然そこに出てくるわけで、先ほどの産業構造の再編成と言われたその問題、インドのピライ教授が言われているような点がここに問題になってくるというふうに考えられるわけであります。
 次に最低賃金額の決定の方法の問題であります。時間の関係で簡単に申し上げますが、決定方法に関して政府が決定をしていく、あるいは法律に規定していくという方法が余り各国の最低賃金制においてとられていないのは、最低賃金制成立当初において、これはD・セルズという人が書いた「ブリティッシュ・ウエイジズ・ボード」という本の中に書いてありますが、所得の民主化という趣旨と、もう一つは賃金決定方法の民主化という意味で、政府、国家が決定をするのではなくて労使の代表が出た機関において労使が対等な条件で決めていく、これを尊重するということが賃金決定方法の民主化である、こういうことを主張しておりますし、さらにイギリスにおいて早くから最低賃金法案を作成するために努力をしたチャールズ・ディルク夫妻、これは未組織労働者の組織化に努めたヒューマニストでありますけれども、この人なんかも実際において賃金委員会制度というものをようやく工夫し探り当てて、そのような法案をつくることになった。なかなかこれは成立しませんでしたけれども……。そういうことを考えてみますと、決定方法についてもやはり民主的な方式という意味が非常に重要な点になってくるのではないか。
 以上のようなことを勘案してまいりますと、私が野党四党法案について見ましたところ、いろいろその問題点は私なりに持っておりますけれども、しかし少なくとも現行法に比べたならば、わが国の低賃金を克服していく上ではるかに実効性のあるものであると私は評価せざるを得ないというふうに申し上げたいと思います。
 以上であります。(拍手)
#12
○竹内(黎)委員長代理 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。
    ―――――――――――――
#13
○竹内(黎)委員長代理 これより質疑を行います。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。住栄作君。
#14
○住委員 いま問題になっております最賃の問題について、各参考人から大変貴重な意見を伺いました。今後の私どもの審議に大変参考になると思うのでございますが、私は少しさらに掘り下げて御質問を申し上げてみたいと思いますが、時間も限られておりますので、できるだけ要点について簡略にお答えいただけたらありがたいのでございます。
 第一の問題は、いま全国一律について労働側の方並びに黒川先生の方から、結局全国一律でないとだめなんだ、と同時に山王丸さんあるいは下村さんの方から、なかなかそれは大変な問題だと、こういうことで明瞭に対立したと私は思うのでございますが、一体最低賃金の額を全国一律の場合どのようにして決めるか、こういうことによってずいぶん考え方が違ってくるんだろうと思うのです。
 そこで決定基準の問題ですけれども、岡村参考人は生計費及び賃金事情、こういうことをおっしゃいました。それから黒川参考人の方は恐らく生計費だと思うのでございますが、そこでお伺いしたいのは、岡村さんは生計費と賃金事情をおとりになっておられるが、この点について生計費と賃金事情を同じようにお考えになるのかどうか、こういうようなことについて御意見を承りたい。
 それから黒川参考人に対して、生計費とおっしゃる場合、一体理論生計費なのか実態生計費なのか、あるいはその場合に標準世帯、あるいは世帯でもいいのですが、あるいは労働者一人の生計費なのか、そういう点について御見解を伺いたいと思うのです。
#15
○岡村参考人 お答えします。
 第一義に考えるのは生計費であります。
#16
○黒川参考人 生計費については、これはマーケットバスケットという方式がありますが、これは使用者側代表それぞれの間で具体的な中身を基準にして生計費を提出してきて、そこで交渉していくという形になると思うのです。
 それから内容については、わが国の場合は当面一人の生計費というところから出発せざるを得ないだろう。ただそれではきわめて不十分でありますけれども、そういうふうなところから出発せざるを得ないだろうというふうに考えています。
#17
○住委員 岡村参考人にお願いしたいのでございますが、当然生計費、こういうことでございますが、やはり同じように生計費であればいま申し上げましたいろんなとり方がある。一人の生計費とかいろんな問題があると思うのですが、黒川参考人から、さしあたって一人の生計費、こういうような御意見でございますが、その点どういうようにお考えになっておられるか。
#18
○岡村参考人 できればそれはヨーロッパ等で考えられているように世帯の方がいいことは間違いありません。ただ、日本の現状を考えれば、いま黒川先生が言われたようにスタートは単身者でということでいいんではないか。将来的には世帯を考えたい、こういうように思います。
#19
○住委員 そこで一人当たりの生計費ということになりますと、大体額というものが想定されるわけでございますけれども、現実の問題として、労働四団体の掲げておられる七万円というもの、これは大体一人当たりというようなことでお考えになっておられるのでしょうか。岡村さんにお願いしたいと思うのです。
#20
○岡村参考人 そういうように理解していただいて結構であります。
#21
○住委員 一人当たり七万円。これは議論は避けておきますけれども、成年男子で一人当たりの生計費として、実際の生計費としても理論生計費としても七万円というのはちょっと理解できないのでございます。ちょっと高いような気もいたしますが、どんなものでございましょうか。と申しますのは、私は、先ほど下村さんあるいは山王丸さんがおっしゃったように、七万円、一日二千八百円というもの、これは大変大きな影響を中小企業に与えるのだ、現実の賃金から見れば中小企業にとって最低賃金として大変な金額である、こういうような感覚であろうと思うのです。そこらあたり、議論は必要はないのでございますけれども、最低賃金というもの、たとえば東京で千七百九十四円ですか、地域最賃として決まっておりますけれども、最低賃金額の決まり方ですね。たとえば低い県では千三百四十円くらいのところもあるわけですから、その最低賃金額の決まり方が賃金額の決定基準との関係で非常に問題があるわけでございますけれども、決まり方いかんによっては全国一律の最低賃金という考え方があり得るのじゃないか。下村さんは、そもそもそういうことはいかぬのだ、労働市場における賃金分布から極端に外れている不公正な賃金を救うのだ、だから全国一律はあり得ないのだ、こういうようにおっしゃったわけでございます。しかし、いずれの労働市場――これは全国横断的な労働市場はないと思うのですけれども、いずれの労働市場においても、そういうはみ出たもの、これをどういう基準で救うか、こういうことになりますと、やはりその地方の生計費なりあるいは相場賃金というものがそこに基準として出てくるんじゃないか。その場合に、労働市場を通ずる、まあ高い低いはあるだろうと思いますが、一律最賃制というものを否定する議論には必ずしもならないのじゃないかと思うのでございます。要するに、Aの労働市場、Bの労働市場、Cの労働市場というものがありますね。そういう労働市場を横断する最低賃金制、これは一律と考えてもらって結構なんでございますが、そういう考え方というものはとり得ないものかどうか、これをひとつ下村さんにお願いしたいと思うのです。
#22
○下村参考人 そういういままでの最低賃金を決める過程の中で、私も前、地賃をやっておったのですけれども、いわゆる業者間協定をやるころは盛んに労働側の方は生計費重点でおっしゃった。それからだんだん実際に賃金のベースが上がってまいりまして、そして比較的生活に余裕のあるような状態になってきたときは、いや生計費は二の次なんだ、相場なんだ、こういうおっしゃり方をしておる。ですから、いわゆる理論に一貫性がないので、これはどういうふうに変わってくるのかわからない。私はやはり最低賃金が相場に対して不公正なものであるという、賃金を救済するのだという面から考えて、相場がやはり重点だと思っています。
#23
○住委員 大変恐縮なんですが、もう一回お願いしたいと思うのです。
 基準として相場が大事だという、それはよくわかるのです。ですから、相場賃金をとるか生計費基準をとるか、これは最低賃金決定基準の問題としてあると私は思うのです。仮に相場というものだけをとってみても、そのことから直ちに全国一律最賃制というものの否定になるのかならぬのか、この点についての御意見を聞きたかったわけです。
#24
○下村参考人 これは意見の中で申し上げましたように、いわゆる労働の移動、流通が可能な範囲内の市場の相場ということでありますが、全国共通に移動が活発にできるという市場ではないと思いますので、狭義の市場になると思います。
#25
○住委員 岡村参考人にお伺いしたいのです。
 この最賃決定機構の問題ですが、四団体の考え方あるいは四党の法案の考え方も、労使同数で、そしてそれより少ない人数、これを公益委員にしよう、こういう考え方なんです。これは、たとえばフランスの例を見ましても、委員会の中で意見がまとまればいいのですけれども、どうもまとまらない、そういう場合は、フランスの場合なんか結局政府が決めておる、こういうようなのが実情であるわけなんです。先ほど来いろいろ御意見にもありますように、労使の意見というのはかなり鋭く対立しておる。そこで委員会なら委員会で意見がまとまらない場合がむしろ多いのじゃないだろうか、こういう感じがするわけなんですけれども、まとまらない場合、これは最低賃金がいつまでたっても決まらないということになると思うのでございますが、この点についてどのようにお考えでしょうか。
#26
○岡村参考人 いまの御質問に対して最初にお答えしますが、したがって私たちの方は、いままでやられていた十数年にわたる最賃行政の反省から、労使同数、それに比較して少数の中立をと、こういう委員会制度を提案しているわけであります。
 それから先ほど答弁したのはちょっと舌足らずですけれども、七万円というのは生計費を考え、日本の賃金事情を考えて、とりあえずわれわれの要求でありますから、それが直ちに生計費だというようにとられると誤解になるかと思います。
 それから先ほどちょっと質問にありました、高いのじゃないかという意見があったと思うのですけれども、率直に言って、何を基準に高いかというのをむしろ私の方から伺いたいほどなんです。たとえば、その前提として、人事院勧告の生計費等が想定されるとすれば、これは御存じと思いますけれども、全国的に見ると、一人の場合で言うと三万九千二百円とか、東京の場合で言うと四万四千二百円とかいう数字に昨年の場合にはなっています。しかしこれは、たとえば食料費を一つとってみると、全国的な場合で言えば一万五千五百七十円、東京の場合で言うと一万八千六十円くらいの金額になります。そうなりますと、これを三十日で割りますと、一日当たり五百円とか六百円という数字になりますから、三食ラーメンも食べられないということになりますから、幾ら何でも生計費で、これを基準にしてと考えられることはないのじゃないか。私たちが言っている七万円もごく控え目の要求であるというように御理解いただきたいと思います。
#27
○住委員 生計費のことよりも、決まらない場合どういうことになるのだろうか。いつまでたっても決まらない場合があるのじゃないか。そういう場合、お考えになっておられるような賃金決定機構ではどうなるのだ、こういうことをお伺いしておったのです。
#28
○岡村参考人 十分に議論をしていただいて、その中から合意を得る。合意を得る場合にどういう決め方をするかというのは、最終的には多数決で決める、こういうことになるのだろうと思います。
#29
○住委員 最終的には多数決で決めるということになるのだろうということでございますけれども、その多数決が、一方では労使同数で、それに公益側が加わるわけですから、簡単に多数決で決めるのだと言っても、どのようにうまく決まるのかということを大変心配するものですから、お伺い申し上げたわけでございます。
 それから、七万円が高いとか安いとかの御意見ございましたが、一人の生計費としては、いまもちょっと御説明がございましたけれども、政府関係の統計では、生計費をもととしておるならば高いのじゃなかろうか。
 それはどうでもいいのですけれども、私は山王丸さんなり下村さんに、最低賃金も決まり方によっては全国一律があってもいいのじゃないか、七万円だからびっくりされるのであって、そうでないのであれば全国一律だって考えられるのじゃないだろうかということで、こういう趣旨を含めて、むしろそのためにお伺いしたわけでございます。
 いずれにしましても、最低賃金、現在地域別あるいは産業別に決まっておりますけれども、これは現実問題として低賃金労働者、たとえば一〇%とか一五%というものを、それは落ち穂拾いか何かは別問題として、救っておることは事実だと思うのです。
 そこで問題は、全国一律制をやったとしても、金額の問題はありますけれども、いままで高い賃金を払ったから企業がつぶれたという話を余り聞かないのだ、こういうような御意見を岡村さんがちょっと漏らされましたけれども、やはり最低賃金の決まり方によっては非常に大きな影響を中小企業に与える、特に地場産業、先ほど下村さんがおっしゃいましたように、よそへ移動できないような労働者を雇っているそういう地場産業もあるわけですから、影響を受けることは確かであろうと思うのです。しかし一方で、高い賃金を払ったからといって企業が倒産したという例は余り聞いたことがない。企業努力によってそれはやれるのじゃないか、こういうような御意見もございましたので、これは大変大事なポイントであると思います。そういう点について山王丸さんの御意見をお伺いしたいと思うのです。
#30
○山王丸参考人 お答えいたします。
 いま御質問がありました件で先ほどの参考人の意見、すなわち高い賃金を払っている中小企業のつぶれたのを聞いたことがないとおっしゃったわけですが、私はその途端に、高い賃金を払っている中小企業というのはかなり専門化され、大企業でもまねのできないようなものをおつくりになっているとか、かなり特殊な中小企業でもともと高賃金を払い得る体制の企業のことをおっしゃっているんじゃないかというふうに存じました。日本の中小企業の実態の中にはむしろ低賃金のところが圧倒的多数ございますので、さきに申し上げたように、そういう能力のある中小企業だからこそ高賃金を払ってもつぶれたところがないのであって、それをごらんになったことがないのではないかというふうに存じました。
 それから、低賃金の中小企業に与える全産業全国一律の場合の問題でございますけれども、こういうところで賃金を高くしたらどうか。これはちょっとこの最賃制に直接関連したことではございませんが、今度の春の賃上げ、いわゆる春闘に関連しまして、関西方面の全国金属に所属する組合が企業に非常な圧力を加えて高賃金をかち取ったその直後、途端に会社がつぶれかけて会社更生法適用の申請を出したということを聞いております。したがって、中小企業が無理に高賃金を出すということがもしあったとすれば、これは最賃制の全国一律の場合も同じように非常にゆゆしい問題になります。したがって、私が冒頭に参考人の意見として申し上げましたように、中小企業の支払い能力に対する保障措置が完全になされない限りは、現段階で全国全産業一律最賃方式というのはわが国の労働市場の実態から言って無理だということを意見として申し上げたわけでございます。
#31
○住委員 黒川参考人にお伺いしたいのですけれども、全国一律最賃の上に産業別の最低賃金を考えるべきだ、こういうことでございますが、その場合に、全国一律よりも高い産業別賃金を決める場合、その場合の基準というもの、これについてどういうようなお考えか、お伺いしたいのです。
#32
○黒川参考人 産業別の場合には、これはもう野党共同提案の法案もそうなっておると思いますが、産業別の協約の拡張適用という形をとっておると思うので、国際的に言っても、全国一律の上に積み上げられるものは、ある一般的な基準というよりも、そこでは労使の交渉の結果決まっていくという性格が強いと思うのです。ただその場合に、産業別がなぜ積み上げられる必要があるかというと、やはり熟練、資格の点で全国一律とは違う部分がかなり出てくる、そういう意味がある、こういうことが言えると思いますが、その全国一律と同じような意味で基準があるというふうには考えられないというふうに思っています。
#33
○住委員 私、ちょっとこういうように考えておるわけでございます。一つは全国一律最賃制がある、そのほかに産業別の最賃がある、もう一つは協約方式がある、こういうように考えて、協約方式の場合はいまの御説明でわかるのでございますが、そうでない賃金委員会が産業別最低賃金をつくる場合の基準というものをどう考えるべきなのだろうか、こういうつもりでお伺いしたわけでございます。いずれにしましても、産業別最賃を決める場合に、上のものは認めるけれども、場合によっては下の産業別だって決めていいんじゃないだろうか、上があれば下の方もあると考えていいんじゃないか、こういうように基準との関連で考えたわけでございますが、その点についての御意見をひとつお述べいただければと思います。
#34
○黒川参考人 全国一律の場合には、これは不熟練労働者の最低ということですから、産業別の場合に、それ以上というのは考えられますけれどもそれ以下というのは考えられない。そういう形で全国一律を決めるということは、先ほどちょっと出ましたけれども、あるところが賃上げを獲得して企業が倒産に追い込まれるという条件とは違って、全般的に一定のレベル以上の賃金が支払われなければならないという基準を決めるわけですから、そのときには個別的に賃上げが行われた場合とは条件が違う。そういう意味の最低をどこの水準に決定するかということが全国一律の問題であろうというふうに考えております。
#35
○住委員 終わります。
#36
○竹内(黎)委員長代理 この際、零時三十分まで休憩いたします。
    午前十一時五十八分休憩
     ――――◇―――――
    午後零時三十四分開議
#37
○竹内(黎)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。
 休憩前の質疑を続行いたします。多賀谷真稔君。
#38
○多賀谷委員 最低賃金法に入る前に、同じ低賃金層の問題について、春闘との関連でちょっとお聞かせ願いたいと思うのです。
 総理府統計局から四十九年度の家計調査報告というのが出ました。それを見ますると、第一・五分位、すなわち百四十万円から百五十万円ぐらいの層ですね、これの収入を見ますると、名目で一七・八%、実質はマイナスの三・三%になっておるわけです。そうして消費支出は名目で六・七%、それから実質はマイナスの一二・四%になっている。ところが四百万円以上の第五・五分位、これを見ますと、収入が名目で二九・三%、実質で六・二%、消費支出は名目で三九%、そして実質で一四・一%ということになっている。そういたしますと、四十九年度のこの収入を見ますと、大臣、実質収入がマイナスになっているのですよ。そうして、消費支出はさらに一二・四%という非常な落ち込みなんですね。逆に、わりあいに収入の多い階層はその実質収入もプラスになっておる。それから消費支出も一四・一%ということになっている。低階層の方はマイナスの一二・四、それから高所得の方はプラスの一四・一、これは非常な差があるわけですよ。それで、一体これで景気の回復ができるかどうか。今度の春闘は、大臣なかなかお手柄のような話をされておるけれども、一体これはお手柄になるのかならないのか、私はこれは非常に大きな問題だと思う。
 この前の予算委員会では、副総理は四つの条件を挙げられました。それは民間設備を拡大するという問題がある。しかし、いま操業率が七六%程度であるのに、民間設備をさらに増強をするということはこれは不可能である。それから消費支出を増大するという問題もあるけれども、これはインフレをやっと抑えて、ここで春闘をいわば政府としては乗り切ったところで、労働者に協力を願ったところで、これはこれなりに消費支出をいま上げるというわけにはいかない。それから輸出という問題があるけれども、輸出も海外の情勢を見ると輸出の伸びる要因がない。そこで最後の点としては財政だ。財政も予算の硬直化という問題があって、税収入が四十九年度はもうすでに減収になって、五十年度も減収の見込みだと言われておる。でありますから、いわゆる一般会計としての財政は期待できないけれども、ただ貯金もふえておるから財政投融資に待つのだという話なんですよ。そうすると、昨日も新聞では不況対策を発表されたようですが、一兆八千億。しかし供給量と需要のギャップが十八兆あるというのですよ。十八兆にたった一割ぐらいの振興政策をやって一体乗り切れるかどうかですね。
 そこで、私は、きょうはそういう大きな問題は別にしまして、最賃に関係がありますからちょっと言ったのですが、日本では余りにも賃金の分布の状態が不公正になっているのじゃないか、こういうことを感ずるわけです。四十九年度は三二・何%という賃金アップだったというのですけれども、現実は四十九年度の家計はマイナスの家計になっておる。ですから消費支出がぐっと落ちておる。こういうことが社会的に一体許されるかどうか。一体、大臣はこの統計を見られて、これは総理府の統計ですから、どういうようにお感じであるか、これをまずお聞かせ願いたい。
#39
○長谷川国務大臣 私もいろいろなものを心配の余り見ておりますが、こういうインフレの場合に一番影響を受けるのは、御承知のとおり非常に弱い階層と言われる方々であります。そうした問題については、政府もあるいはまた国会の議論も社会的公正を堅持するということで出ておるわけでありまして、それにいたしましても、いろいろな問題が出ましたけれども、やはりここはどうしても物価を安定させることが一番大事なことじゃなかろうか。その間にも、おっしゃるように世界全体が大変なときでございますから、そういう中においての調和のとれたいろんな施策をするというところにお互いの苦心がある、こう思っております。
#40
○多賀谷委員 しかし、一番低階層の犠牲においてこのインフレをおさめるわけですか。問題は、私は労働者全体が平均して負担を負うというのなら文句を言わないのですよ。しかしこの統計から見ると、一番低所得の方が犠牲を負うておる、こういう形になるでしょう。しかもそういう中で、第一・五分位の人の方が可処分所得の中の貯金の割合を見ると去年よりも多いのですよ。もっともこれはずっと貯金をしておるかどうかわからぬのですよ。とにかく給料をもらったら一応貯金をするというのかもしれない。しかし、貯蓄率を見てもこの第一・五分位の人が一番協力しておるんですよ。ところが、この層が一番打撃を受けるわけでしょう。こういうことに対してどういうようなお考えですか。
#41
○長谷川国務大臣 そういう意味からしますと、それぞれの民族の特性というのがあるだろう、こう私は思っておるわけです。こうしたときに、一方は目減り訴訟とか補償とかという話があるときに、政府が号令をかけるわけでも何でもないけれども、こうして自分を守るということで貯金をしていく、こういう姿の中に労働省とすればいかにしてお互いの中から失業者を出さないでいくか、それと同時に、いまのような弱者と言われる方々に対する施策を、ときにはほかの省も引っ張りながらでも推進していくという姿勢をとっていく、こういうふうな感じです。
#42
○多賀谷委員 ですから、社会的不公正の中で一番泣く、弱い方々について施策をとるということです。
 そこで、昭和二十九年に、私ども社会党は当時左右両派ありましたけれども、おのおの最低賃金法を出しました。以来すでに二十一年経過しているわけです。ですけれども、残念ながらこの最賃については前進していないという感じですよ。それはどこが前進していないかといいますと、なるほど規模別格差あるいは男女別格差も若干縮小の傾向はたどっておるんです。たどってはおりますけれども、この賃金分布偏在状態を先ほど先生方からお話がありましたから見ると、外国と非常に違うんですね。要するにいま集中をしている、いわば山になっている頂点は、一体中位数についてどのくらいになっておるのか、これは労働省でおわかりになったらお知らせ願いたい。
#43
○東村政府委員 いまのお話は最低賃金の中位数だと思いますけれども……(多賀谷委員「最低賃金じゃない、賃金」と呼ぶ)賃金ですか。――現金給与総額で規模三十人以上の数字で申し上げますと、調査産業計で、四十七年が十万五百八十六円、四十八年が十二万二千五百四十五円、四十九年が十五万四千六百六十八円、これは中位数といいますよりは平均でございます。
#44
○多賀谷委員 そういうようにはとらないですね。ですから分布集中点というのはちょっとわからぬでしょう。
#45
○東村政府委員 先生のおっしゃる中位数というのは、上から数えても下から数えてもまん中という統計用語の中位数だと思いますが、それよりは分布がどういうふうに集中しているかというモードのお話だと思うのですが、それはちょっと手元にございません。むしろ、そういうふうなことを見るのならば平均の方がよろしいのではないかというふうに考えて、いま申し上げた次第でございます。
#46
○多賀谷委員 私がちょっと調べたのでは、三十六年が大体中位数の五〇%ぐらいが分布の集中点、四十二年が七〇%ぐらいですね。それが、先ほどちょっとお話がありました四十八年の中位数が八万五千三百円として分布集中点が五万四千円、これは六四%、こういうようになっておって、あなた方の例の賃金の基本構造の調査によると、五万円以下が四百四十八万で一六・七%、六万円未満が八百四十五万で三一・六%、こういうようになっている。ところがあなたのところの藤繩さんという当時課長ですか、なかなかいい本を書いておりまして、役人の書いた本としてはりっぱだと私は評価しているのですが、ここに日本のいまの賃金分布と西ドイツの賃金分布とを書いておるのですね。そして要するに、西ドイツの場合は大体賃金のまん中ぐらいへ分布の集中点が来ておるわけですね。日本の場合はずっとグラフの左端、すなわち低賃金の層に来ておるわけです。こういうところに賃金の分布が前進をしていないということが統計的に言えるのではないか。ですからこういう賃金全体が前進していない。しかも日本のは、分布の広がりは各国に見られないほど広いのですよ。ですから大臣、要するに高い給与者は日本はいるのです。ところが低い方にかなり集中しているのですよ。ですから極端に言うと、下と上をとると、日本のは非常に幅が広いのですよ。ですから不公正という問題が当然起こってくる。ですから、そういうものをどうして是正するかというところに一つ問題点があるんじゃないか、こういうように私は思うのです。
 そこで、それにはやはり最低賃金というものの全国一律が非常に役立つのではないか、こういうように私は考えざるを得ないのです。それから地域差の問題は、これはフランスのようにパリを中心として最初は非常に差がありましたけれども、だんだん差がなくなりまして、一九六八年には御存じのように差がなくなって一本になったわけですけれども、やがてこういうようになっていくんだろうと思うのです。いくんだろうと思いますけれども、現状においては地域差のあるのは現実にはやむを得ない。しかしこの計算は何もむずかしくないと私は思うのです。日本には幾らも地域差を出したデータがあるのです。ここに全国の人事委員会がおのおの全部理論生計費を出しておるのです。人事院も出しておるけれども、何々市も全部出しているわけです。ですから、これが内容が低いとか高いとかいうことは一応別にして、やる方法は全国みな心得ておるということが一つ言えるわけです。それから公務員は、御存じのように人事院の調整手当として各地域のランクを設けておる。それから失対賃金は、御存じのように一番上は東京、大阪の千七百九十四円から、下の方は、これは失対の最低額ですが、これは名前を言いませんけれども東北のかなりの県と九州、四国の県と沖繩ということになっている。これも大体賃金の格差というものを一応全体的にとらえておる。それから、これは最低賃金の場合はちょっと時期がいろいろ違いますから、地域別最低賃金は必ずしも正確に地域差の実態をあらわしているかどうかちょっと疑問に思います。しかし何にしてもこれも出ておるということになりますと、おのずから全国一律の最低賃金というものが決められる可能性があるのじゃないか、私はこういうように考えるわけです。ですから、その点についてマーケットが、いまのたとえば県でやれば県内とかいう――同種の職業ということは次の段階で話すとして、地域的に見ると全国一律の上に地域最賃というものがあるのですから、そのことを加味すれば一応、どの線に置くかということは別にして、全国一律というものが可能ではないか、こういうようにも思うのですけれども、これはひとつ使用者の両氏にお伺いをしたいと思います。
#47
○山王丸参考人 お答えいたします。
 全国全産業一律最賃制について、地域格差を設ければ実現は比較的できるのではないかという御説に対する意見を聞かれたものと存じますけれども、それはおっしゃるとおり地域差というものを実態に応じて、あるいは労働市場の実態に応じてつければよろしいかと思われますけれども、いまお話の中にございましたいろいろのチータにあらわれております地域差と、それから現実の労働市場の中における地域差とは、私どもが実際に体でぶつかって見ているものと比べますと、やはりかなりの差があるという現実の姿を否定はできないのではないかと思います。
 たとえば福島県に、これは業種別には窯業セメントという最低賃金の産業分類による業種に入りますけれども、陶磁器関係の会津本郷焼という陶磁器をつくっているところがございます。午前中にもちょっと触れさせていただいたと思いますけれども、この地域では卸仲買人というのが、最近は非常に色の真っ白な焼き物に使う土がとれなくなったものですから、よそから白焼の茶わんを持ってくるわけです。これを四人とか五人とか、多いところで三、四十人使っている業者に卸して、そこで絵つけをさせるわけです。その絵つけに出てくる労働者の諸君というのは、全く定年退職後のお年寄りであるとかあるいは近所のおばちゃん連中であるとか、そういう労働力を使っているわけです。そして家族ぐるみ、おやじさんがみずからライトバンを運転しながら物を運ぶ。また労働の質の問題にちょっと触れますけれども、好きな時間に出てきて好きな時間に帰る。途中で、孫や子供の何かあると言えば、学校へ用があるからと言ってすっと消えてしまうとか、全く働く人たちの自分の気ままな状態で働く。労働の生産性を上げるということなどは毛頭考えていない。
 実は、先般の最賃の改定に当たってこの地域の賃金というものがかなり問題になりまして、労働側も一緒に実態調査に行ったわけです。そして全くそういう労働の質が違うということと、働いている方々自身が、自分たちは現在の仕事のやり方でそのままに働かしてもらって何がしかの現金収入を得て、その金で孫に何か買ってやったり自分の小遣いにしたり、それで十分なんだ。もしこの最賃を改定して賃金を上げるとすれば、そういう卸仲買人からの全く限られたマージンでやっているわけですから、その関係から、もう少しよく働いてもらって生産性をある程度上げるしか方法がないわけです。ところが自分たちは、生産性なんか上げたくもないし、全くいまのままで働いて、いまのままの賃金をもらっていれば満足なんだということでございます。使用者側の方も、そういうことで途中で抜けられたり、おくれて来たり、早く帰ったりされる補いは家族労働でつけている。こういう実態の中で労使とも別に不満がなく、しかも現状でいいのだという形の中で成り立っている企業があるわけです。こういうところの賃金なんというものは、先ほどおっしゃったようないろんなデータによる地域間格差とは全く比較にならないほど低い賃金であります。
 会津本郷という例を一つ申し上げましたけれども、そういう実態のところが全国的にはかなりあるように聞いております。ですからおっしゃったように、いろいろなそういうデータに基づいて地域差をつけて全国一律最賃制をやることでよろしいかというと、私は現実の労働市場の中ではいろいろ問題があるというふうに存じておりますし、なかなかその辺がむずかしいのではないか。先ほども申し上げましたように、やはり構造的に日本の中小企業の一つの宿命的なそういう実態がまだまだたくさん残っていると言えばそれまでですけれども、やはり自由主義経済体制の中におけるそういう零細中小企業に対する保障のような措置がなされない限りは、一律最低賃金制というものは無理ではないかというふうに存じます。
#48
○下村参考人 賃金分布がすその方に集中しておるというようなことをおっしゃいましたが、それは単に不公平な取り扱いを受けておる低賃金層ということだけではなくして、日本の年功序列による形が出ているのではないか。高い人が高くおりまして、いわゆる低年齢層の若年の人が年功序列という姿の中における、最初はしんぼうして、年をとればだんだん賃金が自動的に上がっていって、家族もふえる、教育もしなければいけない、生活の中身も向上してくる、そういうものに対応できるような形になっておるのではないか、そういうように理解しております。
 それから、最低賃金は不公正な賃金を救済するということであります。ですから、同じ土俵で公正か不公正かということを見なければいけないので、違った土俵の場で公正か不公正かということは判定ができない、こういうふうに理解しております。
#49
○多賀谷委員 私は、年功序列賃金というのは逆に日本の低賃金の遺物だと思っているのですよ。あなたは若くて費用が要らぬからそれでがまんせい、あなたは年寄りで子供も抱えているからよけいやらなければならぬ、こういう最低の生活水準だけしか賃金を払わなかったところに、日本の年功序列賃金というものが形成されてきたのですよ。何か年功序列賃金というのは、日本の場合は特殊な恩恵のように考えておるけれども、そもそもの発生の過程は、その年齢に応じて最低生活を営むだけしか賃金をくれなかったところに、日本の年功序列賃金というものが形成されてきたんですよ。最近の議論を聞いていますと、そうでなくて、何か日本の年功序列賃金はいかにも労働者に特別の恩恵を与えたような印象の賃金形態であるという考えを持っておるところにそもそも間違いがある、私はかように思います。しかし、これは議論をしているわけではありませんから申し上げませんが……。
 そこで、来たり来なかったり、自由な時間に働いたりというのは、これは最低賃金から別個に扱えばいいのですよ、そういう人は。私は適用除外というのはできると思うのですよ。あるいは陶磁器なら陶磁器一個につける請負賃金というようにすればいいのですよ。それは賃金形態で幾らもできて、そのことによって日本の一律の最低賃金ができないという理由にはならない。そういう方はそういう方のような賃金体系を組めばいいわけでしょう。ですから私は、日本では出来高払い制度というのがあるのですから、そういうことをやられたらいいと思うのです。私はそういう意味においては、それが例になって日本の最低賃金制度をつくるのにはどうもそぐわないということではいかない、こういうように考えるわけです。
 そこで、時間もありませんので、若干日本の現在の最低賃金がどのくらいの地位にあるのかということについて、諸外国との比較においてこれは基準局長から答弁を願いたいと思うのです。私はこの前の予算委員会で、いまつくられております日本の最低賃金は諸外国に比べて非常に低いではないか、全国一律の最低賃金の場合を考えますとアメリカは大体五〇%弱だ、それからフランスの場合は七〇%ぐらいだ、しかし日本の場合は二九・一%じゃないか、これは十一月の毎勤統計から見て現金収入で言った場合にそういうようになるじゃないか、こういうように質問をしたわけであります。それに対して局長から若干違う数字を出されましたが、ひとつその後調査されたと思いますので、アメリカ、フランス、そして日本の場合の比較をしていただきたいと思います。
#50
○東村政府委員 平均賃金と最低賃金との関係といいますか、比較について申し上げますと、日本の最低賃金の平均賃金に対する割合は、規模三十人以上を一〇〇といたしまして平均賃金に対し地域別最賃は三九・〇でございます。
    〔竹内(黎)委員長代理退席、葉梨委員長代
    理着席〕それから産業別最賃は四六・九でございます。また、試みに規模五人以上をとってみますと、五人以上の平均賃金に対して地域別最賃は四一・一、産業別最賃は四九・四となっております。これに対しまして、いまお話しございましたアメリカ、フランス、イギリス等の数字でございますが、なかなかわが国とぴたりの数字がございませんが、一応手元にあります数字を見ますと、アメリカはいまお話しございましたように四七・七ないしは四〇・九、フランスは五九・一ないし四七・三、イギリスは五三・八ないし二六・九となっております。
 なお、先般私が申し上げました数字は産業別の最賃でございまして、当時まだ地域別の最賃は全国的に行き渡っておりませんのでその数字だけを申し上げたわけですが、いま地域別と産業別を改めて申し上げる次第でございます。
#51
○多賀谷委員 このフランスの一九七一年のいまの最低賃金制度、SMIGができたときにちょうど七一%ぐらいであった。あるいは藤繩さんの著書では七二%と書いてありますね。でありますから、その程度であったわけです。それがだんだん下がってきたのがよくわからないのですが、あなたの方は五九・一%とおっしゃる。五九・一%でもかなり高いわけですけれども、これだけ差がある。
 それから、地域別最低賃金の平均をとっておられるのですね、千七百七。私はちょうど一番集中しておるところの千六百円から千七百円をとって、その真ん中の千六百五十円をとったのですよ。しかしこれで比べると、むしろ福島県の千五百三十七円という数字も出るのですけれども、これと比べたらどうか。そうすると三〇・六という数字が出る。これはあなたの方のを言いませんけれども、要するにかなり低いということですよ。
 それから産業別のを比べてもこれは全く意味がないのでありまして、平均賃金と産業別、しかも産業別の中には石炭だとか鉱山だとかわりあいに坑内の高い賃金水準もありますから、余りこれは意味がないのですが、何にいたしましても、こういう日本の最低賃金はまだ非常に低いということです。でありますから、どうしても最低賃金を上げていかなければならないのじゃないか、全国的な一律の最低賃金を形成をし、確立する基盤がある、私はこういうふうに思うのです。
 ただ、先ほどから参考人がおっしゃいますように、中小零細企業に対する影響をどう考えるか、これが一番大きい問題だと思います。そこで私どもいろいろ各党、野党間で協議をいたしまして、この法律をつくる際にそれが一番問題になったわけであります。そこで提案理由の説明の中にも、中小企業に対する政策をぜひ確立しなければならぬというようなことが入れてあるわけです。ただ、一つ考えられなければならぬことは、いまの現状で自分の企業だけが高い最賃を行うとつぶれる、こういう心配があると思うのです。私はそれはそうだろうと思うのですよ。自分のところだけ最賃やればそれはつぶれますよ、ほかの方は安い賃金ですから。ですから私は、日本全国どこへ行ってもそれ以下の労働者はいないのだということになったら一体どうなるか。ですから、いまの現状で自分の企業だけが最賃を行うというならばそれはつぶれるかもしれないけれども、日本にはそれ以下の労働者がいなかったという場合には一体どういうようになるのかということをまず考えてみなければならぬ。そこで、たとえば散髪屋さんだとかそういうものはこれは必ず料金にはね返ってくるということは当然である。でありますけれども、私はそれは全国民が犠牲を負うべきだと思うのですよ。その程度の消費者物価が上がってもそれはがまんをしなければならぬ。それはそうでしょう。自分たちがもらっている賃金以下で人を使って、そしてその料金が高くなったから困るということは、やはり連帯責任から国民としては言えないんじゃないか。ですから、ことに労働集約型の企業で賃金を上げることが即料金にはね上がってくるというものについては私はやむを得ない、これは割り切って消費者物価が上がることをがまんしなければならぬ、この点はこういうように思うのです。
 そこで、次に考えられるのは、大企業と競合する分野、これが非常に困るわけです。大企業と競合する分野については、いままではどちらかと言いますと、率直に言いますと、低賃金で成り立っておった、競争ができた。その賃金が高くなったらできないという産業が私はないことはないと思います。あります。
 そこで私どもがまず第一に考えなければならぬのは、やはり産業分野の調整、中小企業における産業分野の確保というものがやはり最低賃金を行うときに大きな前提条件になると思うのです。製糸会社から糸を買って――製糸会社もこれは布にしておる、それを自分も布にしてワイシャツをつくっておったのでは、それは絶対に負けますよ。ですからその点は、私はやはり産業分野の確保というものがどうしても中小企業をいまから生かす意味においては必要ではないか、こういうのが第一の問題であります。
 それから第二は、いままでスケールメリット、やはり規模の拡大ということを、これは日本経済全体ですけれども、中小企業においてもそれを強いてきたわけですね。それを中小企業庁は盛んに奨励してきたことは事実です。それは近代化ということで、金を貸しましょうということと同時に協業化をやったらどうですかということをやりましたけれども、これにはやはり限度があるだろう。それは近代化とか協業化も必要でありますが、それをすると同時に、現在の社会というのは需要の多様化といいますか、価値の変化といいますか、そういう画一的な製品ではなくて手づくり製品といいますか、そういう手づくりの味の製品というものが消費者から喜ばれるような時期が来ておる。でありますから、それはやはり専門化であり特化であるという方向に物を持っていかなければいかないのじゃないだろうか。大企業と同じような競争場裏に立つということはなかなか困難である。
 しかももう一つ大きい問題は、金利は高いでしょう、原材料も高いわけですから、原材料が高くて金利が高くてどうしてやれますか。何とか低賃金だけでやろうといったってそれは無理がいく。そうすればもう労働者は集まらないということになりますから、そういう点については中小企業に対する特段の政策というのがやはり必要である、こういうふうに考える。ことに大臣にも聞いていただきたいのは、日本の重層的な下請制度ですよ。たとえば大手の何々建設が建設をする、そして何十という孫請がくっついてくる、こんなことは一体許されるだろうか。それはいつか予算委員会で質問したように世界にないのです。日本だけですよ、下請制度がある、社外工があるという制度は。ですから団地整地でも、大成建設なら大成建設に建物まで全部請け負わせるのではなくて、敷地なら敷地は、この部分については中小企業でできる分はできるように初めから仕事の振り当てをやるべきじゃないか、ことに公共事業としてはやるべきじゃないか。大成建設に請け負わせて用地の整地まで全部やらすから、結局下請、そこには率直に言いますと中間の搾取という形が出てくる。ですから下請は一向らちがあかないという形です。そういう点はまず隗より始めよで、中小企業のそのおのおのの規模に応じたような発注を公共事業でもやるべきではないか、そして下請についても、ただ単なる規制だけではなくて、どういうようにすれば中小が成り立っていくかということを十分考えてやる必要があるのではないか、私はこういうように考えるわけであります。それから融資とか原材料の問題も同じです。
 それから第四番目の問題は、何といっても国際競争力の問題だと思うのです。低賃金で立っておった日本の産業が、もうすでに朝鮮とか台湾、香港というようなところから低賃金の労働集約型の製品が日本にどんどん出回っておる、あるいは輸出の市場を喪失しておる。これはやはり早晩あらわれてくる問題でして、この大きな波は簡単に防ぎ得ないのじゃないか。でありますから、国際競争力との関係でいく問題は、いろいろ方法はあるでしょう、関税の方法もあるし、国内市場だけ何とかするという方法もあるでしょうけれども、これはやはり国際経済の上に立っての国際分業的な調整というものを考えざるを得ないのじゃないか、こういうように思うのです。この分野がかなり最賃を引き上げることに対する抵抗をされる分野であろう、こういうように考えるわけです。
 以上、私が述べましたけれども、わが社会党も昭和二十九年に最低賃金法を出しましたときには、最低賃金保障金融公庫法というのを出したのです。そして最低賃金の金融を特に困る企業には出そうということを当時考えついて出したわけですけれども、いまの時期にこれができるかどうか、それが賃金ですから簡単ではないと思います。そこで私はいろいろ調べてみましたところが、ドルショックのときに、御存じのように日本は国際経済上の調整措置の実施に伴う中小企業に対する臨時措置に関する法律という法律があります。でありますから、日本で本格的な最賃を実施しようとする場合には、それが産業としてはとても成り立たぬというようなもの、それほどドラスチックに大きく上げてはいただけぬでしょうけれども、そういう面が出てくるとするならば、何か転換資金を出すとかそういう方法を講ずるべきである。また中小企業もいつまでも低賃金で競争しようたって、社長さんなら社長さんの生涯を通じてみると、一番大事なときにやめざるを得なくなるかもしれぬ。労働力が来なくなるかもしれぬ。そういう点を見ると、長期的にどう見てもこの産業は国際競争力の面から成り立っていかぬというものについては早く転換をする、こういう処置もやはり必要ではないか。そうでなければ労働力の面から逆に確保ができないのではないか、こういうように考えるわけです。
 そこで、そういう全国一律ということを実施することをひとつ賛同願って、それからそれを実施するにはどういう隘路が出てくるのだということをむしろ検討をして、そして最後の結論はどうなるかわかりませんが、最後の結論にわれわれの法案に賛成していただけば結構なんですが、そういう考え方はできないものだろうか、こう思うのです。これは黒川先生とそれから、はなはだ恐縮ですけれども使用者を代表される参考人からお聞かせ願いたい。
#52
○下村参考人 私は最初に申し上げたように一つ団地を抱えておるのです。こういうふうに非常に経済が変動してまいりまして、従来のような高成長の時代は再び来ないかもわからない。私のところの団地は金属関係の業者が七十数社入っておるのです。ですから、いままでは高度成長に支えられましてかなり急速に伸びてきたのでありますけれども、いまや特に鋳物関係等は操短に入って、雇用調整金等の受給を受けておるのであります。そういう中で、もうこれからいままでのような考え方では企業の経営はできませんよ、恐らく日本の産業構造も変わってくるかもわからない、やはりそれに対応できるような経営を考えていかなければいけない、金属関連であるけれども金属にこだわる必要はないのだ、もっと知識集約的な高い価値の何らかに転換脱皮をしていかなければいけないということを口を酸っぱくして申しておるのですけれども、これは一朝一夕に成り立つものではないのです。やはり経営というのは人の問題でありますから、金があるから仕事があるからでできていくものではないと思うのです。
 一つ、直接関係はないかもわかりませんが例を申し上げますと、実は二年ばかり前に、これは板金関係の仕事をしておった工場でございますが、社長が亡くなったのです。後、奥さんとそれに従業員もおりますし、息子がまだ大学へ入ったくらい。その時点で、とてもあなた、その経営をこれから続けていくことはできぬのじゃないか、だからこの機会に事業をやめるか何か抜本的に考え直してみたらどうか、いまなら残っておる資産等を処分すればある程度の金が残るし、それから従業員に対してもそれ相応の手当てもできるということを申し上げたのですが、やはり急には廃業できない。それで組合でございますから、われわれは必要なときは資金を転貸して出したり、いろいろ仕事に対しては他の組合の企業から供給させるようなそういう手当てをしたりしてやってまいりましたのですけれども、三年たって、やはりできないということなんですね。それで最後には資産の処分を組合の手で手助けしてあげて、そしてそれらで負債を円満に片づけて、そしてやめる、若干の金が、当面生活できていくくらいの程度のものが残ったと思いますし、それからまた従業員にもある程度の退職金も払ったのですけれども、こういうようなことをしたのでありますけれども、考えてみれば私はそういう方法で――まあ安楽死ですね、安楽死させたことがよかったのかどうか反省しておるのです。恐らく、将来息子さんが大きくなった、娘さんが大きくなった時点では、あのときになぜ続けていけなかったのかなという後悔が出てくるかもわからない。非常にうまく処理してあげたけれども、何か心残りの気持ちをいま抱いておるのでありますけれども、やはり企業は人の問題でございまして、ただ政策でこういう手当てをしたから、こういうごちそうをつくってやったからといっても、そのごちそうをうまく食べて栄養を吸収してもらえるような力がなければ、これは存続していけない。それがいろんな問題で、たとえば最賃によって賃金が大幅に、全部ずっとベースが上がっていくような体制になると、企業の方は、それぞれ受け入れられる企業の受け取り方というのがばらばらではないか、そうなりますと、非常に大きな混乱を生ずる。私はいま、後悔はしておりませんけれども、後悔しなければいかぬかもわからないというような気持ちを抱かざるを得ない場合もあり得るんではないかというふうに思われますので、議論ではありませんけれども、なかなかむずかしい問題だろう、そういうふうに思います。
#53
○山王丸参考人 一言だけ申し上げます。
 いま先生のおっしゃった、全国一斉に改定するのだから、一企業だけが大幅に上がるということだったらこれはつぶれるかもしらぬが、一斉だから、全く同じ条件なんだから心配ないじゃないかというのは、ちょっとお伺いすると、理論的にはまさにそのような気がする錯覚を起こしやすいのですけれども、現実の問題はなかなかそうはいきませんで、その辺なかなかわれわれとしても納得できません。
 中小零細企業は大手とのつながりなしにいろいろやっているものもございますし、先ほどの本郷のような実態もあるし、また会津本郷の焼き物の実態というのは、そういうものは除外すればいいじゃないかとおっしゃいましたけれども、現在の法律では、除外したものは地域最賃が適用になることになっているのです。ですから、全く最賃法から除外することはできない仕組みになっております。
 したがって、その辺がどうなるかという問題もございますし、またもう一つは、自由主義経済の体制の中で全く企業というものは自由競争のもとに現在存立しているわけですが、そういう面と、全国全産業一律最賃制によって相当の制約を受けるという、あるいはまた保障措置がとられたとしても、その辺との体制上の問題を一体どう考えたらいいかとか、いろいろ問題点があるような気がいたします。
 一言だけ感じたことを申し上げます。
#54
○黒川参考人 私は全国一律に賛成の意見を午前中述べましたので、特に賛成をした後でどうこうということはございませんが、特に午前中お話ししましたように、先ほど多賀谷さんが言われたとおりで、賃金の分布を見ますと、確かに日本は一言で言えば下ぶくれで、欧米諸国は中ぶくれというかっこうになっておりますが、こういういわゆる特徴的な点がはっきりしている以上、これはますますこう薬張りのような形での地域別、業種別の最賃ではなくて、やはり全国一律の最賃というものを通じて、産業構造といいますか賃金構造を変革していかなければならない、こういうふうなことがあります。ただその場合に、先ほど多賀谷さんが言われたようないろいろな施策というものが当然必要になってくるわけで、これはきめ細かくしなければならないと思います。
 それから先ほどの会津の例のような場合、これはやはり家内労働あるいはさらに内職などについても適用しなければいけませんから、特別きめ細かく、それをどういう形で規定していくかということが当然出てくるわけで、それは単価計算等を通じて標準を決めてやっていくという形が当然とられるわけで、これなんかはフランスの例で言いますと、これはフランスの全国最賃は家内労働についても適用されておりますので大変むずかしくて、それでも完全ではないようですけれども、そういう措置が具体的にとられるということを通じて、全国最賃が実質的に施行されていくようなことが十分に可能であるというふうに考えられますし、それをまた保障する中小企業対策あるいは零細企業対策ということについてもこれは考えられるわけで、ここでは細かく申し上げませんけれども、そういう点を十分に煮詰めてやっていけば、一定期間の間に実現できるというふうな方向が出されてくるのではないかというふうに考えております。
#55
○葉梨委員長代理 枝村君。
#56
○枝村委員 私は関連質問をいたしたいと思います。
 その前に一言申し上げておきたいのですが、本委員会は御案内のように全国一律最賃制を含めた最賃制をめぐる諸問題を審査しておるところでありますが、全国一律最賃制については、先ほどからお話がありましたように、四野党の共同提案が三月二十五日に出されて、提案理由の説明がありました。ですから当然のように、きょうの委員会では四野党の提案が議題として取り上げられて審査するのが理にかなったやり方なんですけれども、残念ながら与野党の間で一致しません。ですから、本来ならば多賀谷委員は提案者ですから答弁席に座って、そして私の質問に答えるべきであったと思うのですが、いま言いましたように与野党が一致しませんから、それが実現できないわけであります。
 そこで、私は実は提案者の多賀谷委員にたくさん質問したいことがあるのですけれども、ここに二人並んで質疑応答はできないというルールになっておる、しかしそれはまあ規則で別にきちっと文書で定められておるものではないようでありますけれども、そういう慣行のルールがありますから、私はそれは避けたいと思います。しかし先ほど言いましたように、多賀谷さんがその立場でうんちくある意見を述べられまして、私も二、三の点について質問したいこともありますが、いま言ったようなことですからできませんから、形を変えまして、形式上答弁席におられる皆さんに質問するようなかっこうをしますけれども、実質的には多賀谷さんが機会があるときにひとつ私のそういう質問に答えていただくという、こういうふうな取り扱いをしていただく、というより私はしたいと思うのです。そういうことでひとつ御協力を得たいと思います。
 まず第一に質問したいのは、現行の最賃法の第八条では、四つの項に該当する労働者は適用除外を規定しているのでありますが、四野党提案の法案は、その中のいわゆる所定労働時間の特に短い者以外は適用されるというようになっております。私は、身体障害者など、また試の使用期間中の者、養成訓練を受ける者が、このことによって一人前の労働者として最賃の適用を受けることは、大変いいことだと思っておるのであります。ところが、そうは言うけれども、いろいろ心配される方があるわけなのです。その第一は「精神又は身体の障害により著しく労働能力の低い者」が適用除外されると、企業がこれらの方々を雇用しなくなるのではないかという心配の意見が出されておる。私はこういう意見があることは知っておりますが、しかしこのようなことは絶対に許されてはならぬ問題でありますし、そういう問題については、雇用政策の面で十分対策を立てるべき問題であると思っております。ですから、全国一律最賃制とはこれはまた関係のないものである、こういうふうに考えております。これについてどのような基本的な立場に立ってこれがそういうふうに立案されたかということをお伺いしたいのでありますが、岡村参考人にこのことについて何か所見があれば、一言言っていただきたい。
#57
○岡村参考人 労働四団体が要求している内容というのは非常に簡略なものですから、それを法体系として四野党でつくられる細部の問題については、むしろ党の方からお答え願った方がいいのですけれども、私たちの考え方は先ほど黒川先生も申されていましたけれども、全国一律最賃制というのは、当然のこととして不熟練労働者すべての最低を規制するという考え方ですから、できる限り例外を少なくする、やはりこれが基本的な立場だろう、実はこういうふうに考えています。したがって、適用除外はできる限り少なくする、こういうことになるのだろうと思います。あとは、先ほど枝村先生が言われたようなあれに従いまして、党の方でお答えをお願いいたします。
#58
○多賀谷委員 福島の陶磁器のお年寄りの就労の問題で、私の方がそういう場合には最低賃金から適用除外ということもあるのじゃないかということを言いましたのは、所定の労働時間が非常に短いという場合があるじゃないか、あるいはまた、時間給に直せば、それは当然一日でされるからですが、時間給に直しておやりになれば適用を受けるわけですから、そういう心配がないじゃないか、こういう意味で私は申し上げたわけであります。
 それで、いま、身体障害者の方々の雇用機会を逆に失わすじゃないかという、これは議論のあるところであります。そこで、私どもは、この適用除外から一応外しましたけれども、附則の二十で「政府は、精神又は身体の障害により著しく労働能力の低い者に対するこの法律の規定の適用に伴い、その者を雇用する使用者に対する援助その他その者の雇用機会の確保を図るため必要な措置を講じなければならない。」これはひとつ、例の雇用保険基金あたりから身障者の方に賃金補給をする、こういうことをやってもらいたい。要するに、労働者の方は、最低賃金の適用を受けます。ところが、経営者の方に対しては、雇用基金の方から政府の方が援助をしてやる。こういうことが幾らでもあるのですからね。例の定年延長の問題だってあるわけですから、こういう制度をお願いをしたい、こういう意味で、私どもはこの条項を外したわけであります。
 それから、その次の試の使用期間というのは、雇用関係があるわけですから、当然適用除外をすべきでないということと、それから職業訓練の場合は事業主訓練ですから、当然雇用関係もありますから、最低賃金はぜひやってもらいたい、こういうことで外したわけでございます。
#59
○葉梨委員長代理 ちょっと速記をとめて。
#60
○葉梨委員長代理 速記を起こして
#61
○多賀谷委員 答弁は結構です。
#62
○枝村委員 なかなかややこしいようですが、二番目の質問は、現行法の十一条は、労働協約の拡張適用について、労働者及び使用者の大部分が適用を受ける労働協約を前提としているのでありますが、四野党の法案は「労働者の過半数が」ということになって使用者を外しておるのでございますが、これは一体どういう理由かということをお伺いいたしたいのであります。
 岡村参考人に簡単にその所見をお願いしたい。
#63
○岡村参考人 御存じのように、大部分問題については前の最賃法、それから今日の現行法の過程でも大部分の解釈をめぐって非常にきつい規定になっておるわけです。当初は大体四分の三くらい、だんだん弱めて三分の二、それから企業条件についてはそれに弾力性を持たせるというような運用にはだんだんなってきていますけれども、御存じのように日本の産業構造というのは中小企業が圧倒的に多い。加えて、日本の労働組合は企業別ですから、この大部分を労使にとった場合には、一部の産業以外は実際問題はこの条件を満たす場合というのはほとんど少ない、こういうことになるわけであります。
 したがって、私たちの年来の要求もそうでありますし、四野党の方の案もそうですけれども、これは実効性をそういう制度として求めようとすれば、当然私は労働側の大部分、しかもこれは大部分という場合でも四分の三とか何とかじゃなくて、これはできる限りやはり緩い条件で考えていくことが実効性を上げる基本的な条件になるのじゃないか、こういうように考えています。
#64
○多賀谷委員 いまのに関連して労働省にお尋ねしますが、四十五年の中央最低賃金審議会の答申ですね。この答申の中に、「法十一条の労働協約の地域的拡張方式については、使用者要件を緩和するものとする。」こういうようにありますが、どうですか、あなた方の考え方は。
#65
○東村政府委員 最低賃金法で、法十一条の労働協約の地域的拡張方式がございましたわけですが、ただいま参考人からお話しございましたように、使用者側の要件ということをきつく考えますと、この適用ができてこないという問題がございまして、その関係でこれが出てきたと思うのです。その結果、従来四分の三というしぼりがあったわけですが、それを三分の二とした。しかし、いずれにいたしましても、やはり使用者側の要件は外さないという形でその緩和を図った、こういうことでございます。
#66
○多賀谷委員 これは例の公益委員の方は「使用者の要件を除くものとす」という公益側の方の公益試案が出ておるのです。それから労働側の方も「使用者要件を除くものとす」という要件が出ておる。そこでいまのお話は、「大部分」というのを四分の三を三分の二にしたのだ、こういう話ですが、問題は二つあるわけですよ。一つは適用を現実に受けておる者、すなわちその最初の方の条件ですね。「労働者及びこれを使用する使用者の大部分」この分については私どもは使用者の要件を全部外したわけです。それから後段の方、後段といいますか、今度は申請の方の場合には、これは「全部の合意」というのを「大部分の合意による申請」こういうように改めたわけでありまして、お話しのように使用者の大部分ということになりますと、労働者から見ると過半数になっておるけれども、使用者は数が多いのでどうにも動かないという面がございますので、最初の適用の方の条件からは私どもは外した、こういうようにいたしたいと思いますが、これはいままで賃金審議会に出ておられました経営者の参考人の方どういうようにお考えですか。
#67
○山王丸参考人 そういうふうに改正されるとすると、一つ問題がございます。それは、労働者だけの大部分ということになりますと、比較的中堅以上のいわゆる労働者を多数抱えている企業で働く労働者の数が非常に多いわけですから、しかもこういう事業体の人々は比較的賃金は高いわけです。そういう方々の労使協定が、いわゆる労働側だけで大部分になってしまったものが、事業所の数というものが採用されなくなりますと、比較的少数働いてどちらかというと賃金も低いところの労働者に及ぼすという点では、労働組合側の目的達成には大変便利かもしれませんけれども、企業の側の立場から見るとやはり事業場も大部分ということにしていただきませんと、大きい組合の多数の労働者を抱えているところの意見で左右されてしまう、そういう心配がございます。
#68
○多賀谷委員 御存じのようにこれには異議申請の制度がありまして、それから猶予とかあるいはその期間には別段の定めもすることができる、こういういわば猶予期間というあるいは異議申請というような制度もあるわけですが、それでもどうですか、いけませんか。
#69
○山王丸参考人 おっしゃるとおりのそういう異議申し立ての方法とかいろいろございますけれども、そういう方法をとることと、そうでなく大前提が改められてしまうこととはかなりの違いがございますので、使用者側としてはやはり問題でございます。
#70
○枝村委員 多賀谷さんにお伺いするのもありますけれども、もう時間がありませんので省きます。
 そこで山王丸参考人にお伺いします。全国一律最賃制をあえて実施するとすればという前置きであなたはこれは低い賃金になるであろう、こういう意見を述べられました。それからまた支払い能力のない企業に対する保障をすることが必要だと言われたのです。結論的には、あなたは時期尚早とか無理という言葉の表現でこの全国一律最賃制の問題について締めくくられておるのですけれども、しかしいま言われたようなことが表明されますと、あなたの考え方は下村参考人とは大分大きな相違があるような気がしてならぬ。
 先ほど住委員からその点についてしつこく質問されたのですけれども、下村さんはお答えがなかったし、あなたもちょっと繰り返しのような御答弁をされておるのですが、ここで一つ聞いてみたいのは、全国一律最賃の制度をつくることそれ自体については、先ほどあなたが言われたのが条件が何か知りませんけれども、そういうことになればこれを頭から否認しない、認めてもよいというふうに受け取られるのですが、そういうことなのですか。どうでしょうか、その点お伺いします。
#71
○山王丸参考人 お答えいたします。
 同じ使用者側の下村参考人といささか意見が違うように受けとられたかもしれませんけれども、私は、極端な表現かもしれませんけれども、未来永劫絶対反対だというのではございません。はっきり申し上げます。やはり何回もいままで申し上げているように、日本の中小企業、特に零細企業の労働市場における非常ないろいろな格差のある実態、こういうものがやはり逐次解消されている面と相まって、そして先ほど申し上げましたように、賃金の額の設定の仕方あるいはまたその時点によっては完全な保障措置がとれるならば時間をかけて漸次そういう方向にいくのもやむを得ないんじゃないか。いささか下村参考人に比較すれば前向きの姿勢の理解はしておるつもりでございます。
#72
○枝村委員 いまの山王丸参考人の意見は他の参考人の方もよくお聞きになったと思いますので、岡村参考人と黒川参考人にこの問題についてひとつ所見をお伺いしたいと思うのです。
 先ほど言いましたように、下村参考人の意見は全国一律最賃制なんてこれは頭からいけないという否定、反対の態度であります。いまの山王丸参考人の意見はそれと明らかに違っておることがはっきりしております。平たく言えば、そのような条件をつけたならば時間をかけてでも全国一律最賃制をあえて否定しない、こういう考え方なんですが、保障の内容とかその他いろいろあるでしょうけれども、そういう山王丸参考人の意見に対して、お二方からどういう考え方をそれに対してお持ちになっておるか、述べていただきたいと思うのです。
#73
○岡村参考人 個々のいま言われた条件については、きわめて一般的なことですから、さらに詰めなければいけないと思うのです。
 それから時間についても未来永劫に、こういうことは非常に時間的に長いことですから、まだその時間、われわれとすればできる限り一日も早くという立場ですから、距離のあることは事実であります。しかし、じゃ共通面がないかと言えば、私はないとは思いません。
 先ほど私の意見も申し上げましたように、賃金――言葉か足らなかったから誤解されて受け取られたようでありますけれども、賃金だけが理由で企業が倒産をしたり転廃業したりというようなことはないんじゃないかという意味で申し上げたのですけれども、そういう面で言えば、時間の問題とかそれから実施に当たっての諸政策の実施だとか、そういう面はさらに詰めればよいわけで、前提条件が一律を肯定されるということであれば、共通の土俵でさらに詰めれば、われわれの要求が一歩でも二歩でも前進するのではないか、こういう感じを実はいまの答弁を通じて感じた、こういうことを申し上げておきます。
#74
○黒川参考人 私は、先ほど山王丸参考人が言われた条件が整えばということなんですが、問題は、果たして条件を最低賃金制のような法的規制なしで整えられるだろうか。もともと最低賃金制という法的規制が出てきた原因というのは、先ほどから自由主義経済という問題が出ていますが、自由主義経済で現実において低賃金に依存して企業競争をやっていくと、いつまでたっても、それこそ未来永劫にかもしれませんが、低賃金を克服する条件が企業の側からつくられない、したがってやむを得ず自由主義に対する修正として法的規制としての最低賃金制が登場せざるを得なかったのだ、こういうことがあると思うのです。
 そして特に、これは午前中の話をもう一回繰り返しませんけれども、わが国のような賃金構造の場合には、これはやはり個別的な格差のある最低賃金でなくて、一定の全国一律の規制をして、そしてもちろん一定猶予期間を必要とすると思いますが、その方向で企業の側が、これは日本の場合には企業別格差があり、先ほどから問題になっている下請その他中小企業対策のいろいろな措置が問題になりますけれども、そういうものを全国的に賃金水準を上げていく、全国最賃以上に上げていくために条件を整えていく。そうせざるを得ないというふうな事態をつくらなければならないので最低賃金制が必要なのだ。したがって、法的規制なしに条件をつくってからやってもと言っても、いつまでたっても企業の側からはそういう条件がつくられないのではないか、そういう意味の法的な規制ということが最低賃金制なので、そういう意味で私は全国最賃をやるということを前提にして考えていかなければならないというふうに思っているわけです。
#75
○枝村委員 いま予鈴が鳴りましたが、十四時ぎりぎりまでやります。
 多賀谷さんが後を質問しますが、その前に私は労働大臣に聞きたいことが一つあります。
 中央最賃審議会に諮問された内容を見ますと、全国一律最賃制については四野党提案などを重要参考資料として提出されておりますが、この重要参考資料は審議会で審議を進める中で一体どのような意味を持っておるのであろうか。いままでこのような重要資料が出されたことがあるかないかということも含めて、そしてもう二度と立ちませんから、最後に、大臣は中賃審が速やかに結論を出し、答申されるよう審議促進についてひとつ全力を挙げてもらいたいと思います。大体世間巷間には二年をめどという話がある、ないと言っておりますけれども、少なくともそのくらいのところをめどにしてやるように大臣の一層の力を尽くしていただきたい、こういうことを申し上げますので、ひとつ決意のはどをお伺いいたしたいと思います。
#76
○長谷川国務大臣 先日私が中央最賃審議会に諮問するに当たりまして、重要参考資料と申し上げたことは、それは先日の国会で労働四団体から全国一律最低賃金制の統一要求が出された、同時に野党四党からも同趣旨の法案が国会に提出されたことを留意してやったことでありまして、こういう要求書を重要参考資料として提出したということでして、いままでこういうことは余りなかった。しかしながら、こういうものも資料としてありまして、ほかの問題もありますけれども、最賃の問題もありますが、こういう問題についてもお考えいただきますということでございまして、そういうことからしますと、その審議会において慎重にひとつ御審議が行われることを期待しているものであります。
#77
○多賀谷委員 先ほど中小企業の対策が全国一律の最賃を実施するには前提になるというお話をしたわけですが、そこで労働省は日本、ドイツ、フランスその他、主要国で結構ですけれども、規模別賃金格差をどういうように把握されておるか、これをお聞かせ願いたい。
#78
○東村政府委員 諸外国の問題とあわせて申し上げてみたいと思うのですが、私どもの方で規模別格差をとるとり方と諸外国の方のとり方となかなかどうもうまく合いませんので、ちょっと数字がぴたりいたしませんが、製造業の規模別賃金格差について見ますると、全規模平均を一〇〇といたしまして、フランスは最高で一一九、最低で九一、西ドイツでは最高が一一五、最低が九三、イタリアでは最高が一二八、最低が八一、わが国の場合におきましては最高が一二六・三、最低が七八・四、かように相なっております。
#79
○多賀谷委員 大臣、いまお話がありましたように、ドイツやフランスでも十人から十九人が平均の九四%くらいですよ。ドイツが九四、フランスが九六、こういう場合、日本は三十人から九十九人までの分が七八・四、こういうことですから、中小企業と言われても規模別格差がほとんどないのです。ですから、あなたの方がILOなんかへ出される統計は皆三十人以上の統計を出すわけです。外国も小さいのは出さないかもしれないけれども、余り変化がないわけです。でありますから、いかに日本の中小企業が賃金が安いというよりも付加価値が低いかということをやはり物語るだろう。要するに中小企業というものが政策がないというのか、大企業がやたらに中小企業の分野に進出してくるというのか、何にしても中小企業政策というものが十分でないということが言えるわけです。
 そこで最賃を実施する場合にいろいろ転換をしなければならぬような業種がもしあるとするならば、私はやはり雇用保険基金というものをひとつ活用してみたらどうか。あるいはそういう別の基金をつくってみたらどうか。最近フランスで失業保険のほかに付加的求職手当というものを出している。これは雇用主が五分の四出している。労働者は五分の一です。一年間九〇%払っているのです。九〇%といいますが、社会保険料を除かれますから、一〇〇%と同じなんです。賃金の九〇%というものは結局社会保険料がないですから一〇〇%と同じである。これを一年間失業保険のほかに出しているわけです。それからドイツで破産賃金不払い保険法という法律を出しておるのです。要するに破産をして賃金が不払いになった場合に不払い賃金を払ってやるという、これは業者団体が掛金をあらかじめ積み立てておいて、そういう倒産の企業が出たら経営者の連帯責任で支払ってやる、こういう制度があるわけです。ですから最近各国ともそういう制度が前進をしてきた。あなたの方は、だから雇用保険法をつくったじゃないかとおっしゃるだろうけれども、そういうものをひとつ活用するなり、今後そういうものをどういうようにしていくかという問題を、やはり最賃の一律賃金を審議する場においてかなり摩擦が出たらどうするか。全然摩擦のないようなものは産業構造の変革もないし、意味がないのです。ですから、そこの調整をどうするかという問題が一番むずかしいですから、ひとつ十分大臣におかれてもこの問題については積極的に取り組んでいただきたい。このことをお願いいたしまして、質問を終わりたいと思います。
#80
○葉梨委員長代理 この際、休憩いたします。
 本会議散会後、直ちに再開することといたします。
    午後一時五十八分休憩
     ――――◇―――――
    午後二時三十分開議
#81
○竹内(黎)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。
 休憩前の質疑を続行いたします。石母田達君。
#82
○石母田委員 私はきょう全国一律最低賃金制を中心といたしまして質問したいと思います。
 初めに、先ほども話がありましたように、この問題につきましては、野党四党が共同で法案を作成いたしまして、三月二十五日社会労働委員会で趣旨説明が行われました。会期が大幅に延長になり、その会期もあとわずかとなった現状におきましても、いまだにこの法案が議題となって審議されていないことはきわめて遺憾であります。したがいまして、私はこの四党案の内容を中心といたしまして質問したいと思うのであります。
 初めに若干の数字を政府の方にお尋ねしたいというふうに思います。その一つは、現行の最低賃金の最高額と最低額の県名をまずお伺いしたいと思います。
#83
○東村政府委員 最低賃金には二つございまして、地域別最賃と産業別最賃がございますが、地域別の方で申し上げますと、一番高いのは東京都でございまして、千七百九十四円、一番低いのは千三百四十円、これは福島でございます。これが地域別でございます。
#84
○石母田委員 もう一つ賃金の、特に現行の最低賃金法で決められている最低賃金の種類を、地域は大体わかります、地域、業種別、数を教えていただきたいと思います。
#85
○東村政府委員 現在最低賃金審議会の調査審議に基づく最低賃金、これは法第十六条と申しておりますが、それが四百十八件、その内訳がただいま申し上げました産業別と地域別になりますが、産業別の方が三百七十二件、地域別の方が四十六件。それからもう一つ、この十六条に対します十一条、これは労働協約に基づく地域的最低賃金が七件、したがいまして、合計いたしますと、四百十八件と七件で四百二十五件でございます。
#86
○石母田委員 もう一つは、低賃金労働者が非常に多いと先ほどから言われておりますけれども、五万円以下の賃金は、この間私の質問に対する答えでは四十八年度しかなくて五百二万人、一七・七%、こうなっておりますけれども、その後の数字はわかりませんか、これでよろしいですか。
#87
○東村政府委員 先般お答えした以降の新しい数字はございません。ただいまも御指摘ございましたように、四十八年で五万円未満が五百二万人、こういうことでございます。
#88
○石母田委員 黒川参考人にお尋ねしたいのですが、先ほど「賃金の分散度の比較」という第六十一表という資料をいただきました。先ほどの先生のお話で、日本の賃金の構造が下ぶくれである、そしてヨーロッパ各国の中ぶくれというんですかの賃金に対してそうした特徴を持っているということを言われましたけれども、この資料か何かで具体的に説明できますれば、御説明願いたいというふうに思います。これとはちょっと違うわけですか、これは分散度……。
#89
○黒川参考人 それで見ると大体わかると思いますが、あるいはこれだけではちょっと余り正確には出ないかもしれませんけれども、大体、その真ん中の度数のところを見てみますと、それから下の中位数というところを見ますが、これは本当は平均の方がよろしいのですが、大体六万ぐらいから下の方がパーセンテージがずっと多くなっているということが日本の場合にはわかります。西ドイツ、イギリスの場合には、下の中位の数、これは西ドイツの場合はマルク、それからイギリスの場合はポンドが出ておりますが、それに匹敵するレベルのところが一番パーセンテージが多くなっているというふうなことが大体推定できる。そういう意味で真ん中がふくれているということなんです。これは国際的な比較というのは大変むずかしいので、正確に出ませんけれども、そのほかの国々についてなかなか出しにくいということもありますが、大体真ん中あたりが一番ふくれ上がって、日本の場合には低い方がずっとパーセンテージがふくれ上がっているということがおおよそこれで推定できる。これは分散度の統計でありますけれども、大体そういうことがつかめるんじゃないかということなんです。
#90
○石母田委員 政府にお尋ねしますが、日本の傾向として低賃金層が賃金の中では非常に多い、下ぶくれ的な傾向だということについては政府はどういう認識を持っておられますか。
#91
○東村政府委員 ただいま参考人の先生からお話がありましたが、私どもの方でも分散係数というのをとってみました。その分散係数といいますのは、中位数、つまり上から数えても下から数えてもちょうど真ん中にある賃金の水準を分母にいたしまして、それから第三・四分位数、第一・四分位数というものを出しまして、その差額を割るわけですが、これを分散係数と申します。それは昭和三十九年あたりからの数字を見てみると、逐次減ってはおります。しかしこれは外国と比較できませんので何とも言えませんが、全体的に分散係数は少なくなっております。この分散係数といいますか、ただいまの御指摘の問題につきましてはやはり大企業と中小企業の問題、さらには雇用の形態の問題、先ほどございました年功序列賃金等々の問題が構成されてこういう形になっているのではないだろうか、かように考えます。
#92
○石母田委員 大臣にお尋ねします。
 これも再三お尋ねしていることですけれども、現行法が制定されてから十数年たつわけですけれども、それにもかかわらずこうした膨大な低賃金労働者、特に先ほど五万円以下の労働者が五百万人以上いるというこうした事実の中で、この現行法によってはこうした低賃金層を解決するということについては、この十数年間の長きにわたってもこうしたものが解決されないということは、現行法自体にやはり大きな問題点があるのではないかというふうに考えますけれども、この点について大臣はどう考えますか。
#93
○長谷川国務大臣 わが国の特殊性からいろんな問題があることは御承知おきのとおりでございます。そういうことからして最賃制度において地域別あるいは業種別、そういうことで毎年事情に合わせて改定して、そういうことのないように前進していこう、こういう姿勢であります。
#94
○石母田委員 姿勢を聞いているんじゃない。これもこの間の答えと同じなんです。前向きの姿勢で当たります。そこで、ここで私、前向きとか下向きでないんだというふうに言うと、またこの前の答弁の繰り返しになりますから、単力率直に、解決されていないということは事実じゃないのか。だからこそあなたは全国一律最低賃金制を含む最低賃金制の問題について諮問しているということは、こうした問題を何とかしなければならぬということについて問題意識を持っておられるからだと思うのですけれども、その点についての大臣の見解をお伺いしたいのです。
#95
○長谷川国務大臣 全国一律最賃の問題につきましては何遍か御答弁いたしましたように、中央審議会の方で昭和四十五年の答申などもあり、そこのところに先日、四野党あるいは労働四団体等から全国一律最低賃金の問題についての申し入れ、あるいは法案などが提出されましたので、これらも含めて、いまから先御研究願いたいということで、審議会の方に私の方から諮問したわけであります。
#96
○石母田委員 依然として、現在のそういう低賃金労働者がたくさん長期にわたっているということ、現行法がそれが解決になっていないという事実がその存在を示しておると思います。
 さて、私は、そうした問題で先ほど使用者側の山王丸参考人のお話でしたと思うのですけれども、福島の例で、私どもとしてはきわめて異例な事例を聞いたわけです。労働者がいつ出勤してもいいというか、いつ働きに行ってもいい、そして出来高についても責任を負わないで、生産性にも余り関心を持たない労働者で、いまの賃金で満足している、十分だ、こういう人たちがいまどき日本にいるのかどうか。そういう雇用形態があるということは、私はきわめて異例だと思うのですけれども、こういう問題について、政府としてはあの話を聞いて――そうしたところが、この方は全国最低の賃金を決めている地方審議会の委員でもあるということですから、そうした私どもから見れば非常に異例中の異例の問題を見ながら最低賃金などを決めているというふうに聞きましたけれども、この点について政府としてはどういうふうに見ているか、見解を聞きたいと思います。
#97
○東村政府委員 ただいま参考人から前にお話があった点について触れられましたが、実は私どももそういう参考人のお話のようなことをずいぶん聞いております。それはどのくらいの量になっているかということはこれは問題でございまして、具体的な統計は手元にございませんが、そういうのが地方の、東京でも別の形であるのかもしれませんが、審議会で最低賃金を決める際に問題になるということをしばしば聞いております。
 そこで、先ほどもちょっとお話が出たわけですが、そういう方はひとつ最低賃金という形の中で別に例外に扱ったらどうかというお話がございますが、それはやはり例外に別建てにするのか、あるいは除外をするのか、いろいろ問題がありますが、その問題をめぐってまた地域ごとの最低賃金審議会で問題になっている、つまりそれは別建てにすべきではない、一本の最低賃金の中に入れるべきであるというようなことを議論されているということは聞いております。
#98
○石母田委員 そうすると、政府は、私どもがよくパートや家内労働、いろいろな問題で雇用関係が非常に――ほかの問題ですよ。たとえばいろいろ適用の問題なんかで雇用関係が明確じゃないということをしばしば理由にされて拒否される例が多いのですけれども、先ほどのような形態というのも、これは例外というのじゃなくて、今後はそうしたことは雇用関係という形で認められる方向ですね。
#99
○東村政府委員 雇用関係で認めるという、そういうところまでまだ私申し上げるつもりはございませんが、最低賃金といういわば限界的な労働者の問題を議論するときに、そういう方々がいろいろ問題になってくるということを聞いているということを申し上げたわけでございます。
#100
○石母田委員 そういうきわめて例外的な例を取り上げての議論でありまして、それを聞いておりまして私は、それならば、じゃ、一般的な労働者については全国一律最低賃金制の問題というのはかえって適用しやすいんじゃないかという論理もあの話から伺ったわけであります。
 そこで、私は黒川参考人に再度お尋ねしたいのですけれども、先ほどからお聞きのように、政府並びに使用者の方々は、全国一律的に最低賃金制を決めるのは、地域差、業種別の格差がある現状においてはこれは現実的ではない、こういう見解を述べているわけです。いま、先ほど答弁がありましたように、業種別、地域別など入れまして四百二十五種類という大変な数の最低賃金というものが現実にわが国に存在しておるわけです。私どもの四党案の作成の根本的な態度というのは、何といっても最低賃金というものは最低生活を保障する、こういう働く人たちが最低の、つまり憲法二十五条で規定されたような健康で文化的な水準に少しでも接近していくという点での最低の生活保障をするのが最低賃金である。したがって、この賃金が、どこの業種にいたからとか、あるいはどこどこの地域にいたからとか、あるいはまた雇用形態がどうであるからとかいうことでなくて、働く人ならばいわゆる最低の生活を保障する、そうした賃金でなければならないということで全国一律を基礎とする。もちろん、これは上積みの地域別のもありますし、また産業別のもあることは皆さんも御承知のとおりだと思いますけれども、そうした点で政府側や使用者側の見解について、全国一律に決めるのは地域差、業種別の格差を否定するものではないか、非現実的ではないかという意見についてどういう見解であるか。また、このよう数百種類の最低賃金があるということは一体どういうことなのか。そういうことについて簡単に御見解を聞かしていただきたいと思います。
#101
○黒川参考人 先ほども申しましたけれども、もともと最低賃金制というものが法的な規制として出てきたというのは、やはりそれなしにはそれぞれの企業がいろいろな雇用形態のもとに低賃金で労働者を雇う、そういうことが避けられない。これは欧米諸国の場合ですと、スエッティングシステムというふうなことが特に十九世紀の終わりから二十世紀の初めになって問題になってきました。これに対する法的規制なしには防げないということから出てきた。そこには当然一定の強制があるわけですから、何らかの摩擦が起こらざるを得ないということになります。したがって、その法的な規制なしに企業の側が自発的に、全国的にあるレベル以下の賃金で人を雇わないような条件をつくっていくかというと、つくっていかない。いままでもつくっていかなかった。したがって、一定の線を引いて、法的規制に基づいて、一定のレベル以上の賃金でなければならないという形で、それに合わせていろいろな施策を講じていかざるを得ないというふうな条件がここで出てくるんだ、そういう意味を持っているんだと思うのです。
 ただ、先ほど来出ているいろいろな例外的な問題については、これはどこの国においてもその具体的なケース・バイ・ケースで処理されていくということは当然あると思うのです。特に家内労働その他については、あるいは下請なんかについても、言葉は同じでも国によって大変違いがあります。したがって、これに対してどういう措置をとっていくかということは、大変細かい技術的な問題になりますけれども、しかしいずれにしても、一定の線を引いて、極端なレベルの低賃金をまずなくしていくということが当面の重要な課題であって、全国一律最賃が特に重要であるというのは、わが国の場合には先ほども申しましたように、賃金格差が非常に大きいことと、それから底辺層が非常に多いというふうな現状をここで変えていかなければならないということにあるわけで、当然法的規制のもとにそれに対する施策が必要になってくるということになると思います。
#102
○石母田委員 今度の四党案の作成の過程で非常に論議をし、私どもが一致させた点というのは、決定基準の問題であります。これは第三条の問題ですが、ここの中では生計費を基本としているということを明確に規定しているわけであります。私どもが最低賃金という場合は、先ほどから再三申し上げているような、最低生活を保障するということを基準にしておりまして、先ほど使用者側の方々が言われているような、いわゆる例外的な、社会保障的な賃金ということで言われているのとは、最低賃金というものに対する基本的な考え方が非常に違うような気もするのですけれども、そういうことから生計費を基本としておる。ところが、現行法では御承知のように類似の労働者の賃金水準であるとかあるいは支払い能力を考慮するとあります。実際にはそういう中で、この支払い能力ということでこれまで非常に低額に決められてきた。先ほど発表されましたように、福島県では千三百四十円、東京でも千七百九十四円という、現在の生活水準、賃金水準からいいますれば、きわめて低い額になっているという実態のもとで、このような生計費を基本とするということに決めたわれわれの四党案の見解について、丹下洋一参考人から御見解をお願いしたいと思います。
#103
○丹下参考人 午前中にも申し上げましたように、私どもは、賃金というのは労働力市場の需給関係の中で決まってくるという側面もあるわけでありますが、そういう状況だけに放置しておくと大変に低賃金でも働かざるを得ない、こういう労働者が出てきて、それを雇用することによって利益を上げる、こういう経営側の動きも出てくる。そういう中で非常な低賃金層が形成をされる、こういう状態があるわけですけれども、賃金というのは、本来憲法あるいは労働基準法に規定をされているような、少なくとも働いている以上、それによって最低の健康にして文化的な水準が営める、それが賃金の規制でなければならない、そういうふうなものを制度的につくり上げていくということがなければ、低賃金層というのはいつまでたってもなくならないし、賃金の名前にも値しないのじゃないだろうか、こういうふうに考えておりまして、その基準として生計費の内容が何なのかということについては、大変むずかしい問題があるということは承知しておりますけれども、それを基盤にしながら賃金の最低を決めていく必要があるというふうに考えておるわけであります。
#104
○石母田委員 下村参考人にお尋ねしたいのですけれども、中小企業の立場から申しますと、なかなか全国一律最低賃金制が受け入れにくいということは、その一つの理由の中に、全国一律最低賃金制にすると、大幅に金額が上がって支払い能力からいってきわめて大変な事態になるということが一つの大きな理由だったと思いますけれども、私どもは七万とかというような問題についてはまだ意見を持っておりますし、まだ法的にこれに金額を入れるということについては――入ってないわけですけれども、全国一律最低賃金にするとかえって低くなるという片一方の使用者側の御意見で、これはたしか山王丸さんの意見じゃなかったかと思うのですけれども、下村さんの意見かどうかは知りませんけれども、全国一律最低賃金制になった場合には、ずっと賃金が上がるというふうに考えておられるのかどうか、お尋ねしたいと思います。
#105
○下村参考人 最初の出だしは低いところで決められるかもわかりませんけれども、そういうものを基盤にして急速に上がってくるというおそれがいままでの経験からあるわけであります。
#106
○石母田委員 もう一つ、下村参考人にお尋ねしたいのですけれども、私どもが中小企業の方々からいろいろ御相談を受ける問題の中には、特に下請単価が非常にたたかれて割りに合わぬという苦情とか、あるいはまた最近の不況の中で仕事がどんどんなくなっていく中で、大企業の系列のある一部分のところにはいくけれども、それから外れたようなところには非常に発注がなくなって仕事が一方的に打ち切られていく、こういったことが最近非常に多いのです。あなたのところはそうした問題というのは余り問題にならないところでしょうか。
#107
○下村参考人 そういう影響は非常に強く出ております。
#108
○石母田委員 この、最低賃金制の問題で、私どもが全国一律最低賃金制を要求し、あるいはまた労働者の方々、労働組合の方々が要求しておるのは、決して労働者の低賃金を克服する、直していくというだけでなくて、それだけを考えておるのじゃない。つまり中小企業の方々が安い賃金を利用されて大企業なりそうした元請あたりから一層苦しい状況に置かれておるという状況のもとで、下請単価を決める場合に、そこの人件費なり労務費を決める場合に、それが非常に低く決められているからこそ下請単価もどんどんたたかれておる。それでももう下請労働者はやるのだ。下請企業はそれで押しつければやらざるを得ないのだ、こういう一つの力といいますか、支配的な力を利用して押しつける。それを中小企業がやっていくにはどうしてもやらざるを得ない、こういう立場に追い込まれているからだと思うのです。ところが、もし法的に、いわゆるそういう中小企業に働く人たちも含めて、労働者の賃金がこれ以下では使ってはならないということであれば、もちろんこれと並行して、下請単価を決める場合にもこの最低賃金に準じてその労務費なりを決めて、下請単価を上げていかなければならぬ。こういうことは当然、他の法的な処置も行われなければ、これは一方的に中小企業に負担がいきますから、そういうこともわれわれは考えて、この法律の中に入っていませんけれども、一方に出されておる。こういう処置も考えておるということについてあなたは御承知でしょうか。またそのことについて御見解をお願いしたいと思います。
#109
○下村参考人 経営というものは、いろいろな要素が絡んで含まれてきておると思うのです。そういう条件がすべて満たされるような土壤ができるということは、恐らく期待ができないと思うのです。最低賃金の問題だけを切り捨て御免の形で押しつけられるようなことについては、非常に抵抗を感ずる。
#110
○石母田委員 そのとおりだと思うのです。最低賃金全部一方的に押しつけられたらそういうことになる。だからこそわれわれは、この下請単価、大企業の横暴、大企業のもうけを抑えるということが前提になければこういう全国一律の最低賃金制なんて実施できるものじゃない。現在の中小企業経営の深刻な原因がどこにあるかということが一つの認識の違いにもなると思いますけれども、先ほど私どもが申し上げました原因は、あなたのやっている団地あるいは周りでもそうした状況が非常に影響しておるということであれば、私はその原因がやはり大資本といいますか、大企業といいますか、そうしたものの利益が非常に膨大であり、またその利益が中小企業やあるいは中小企業に働く人たちの犠牲において成り立っておる。そういう中で、この最低賃金制というのは、そうした中小企業がまともな賃金を払い、そしてそれを前提にした下請単価ということによって、大資本、大企業にそれを規制していくということからいっても、この法的な規制はきわめて大事だというふうに私どもは考えているわけであります。
 さて、この四党案の作成の問題で、もう一つの特徴は、最低賃金額の決定方式の問題であります。
 この問題については、これでは三者構成になっております。現在の審議会と違うのは、現在の審議会はいわゆる労働大臣あるいはまた基準局長が決定する、決定権はそこにあるわけです。この四党法案については行政委員会方式をとっておりまして、そこで決定されたものは法的な拘束力を持つというふうになっているわけであります。しかもその中で、労使の協議をやはり中心といたしまして、公益委員の役割りというのは、第十八条の九項目において、協議促進の役割りだけになっておるわけです。この中では書いてありませんけれども、なお一層、この労使の協議ということを中心とすることをたてまえとすることから、この賃金の改定なんかについての発議権というものも労働者委員が持つというふうに私どもは大体意見を一致しているわけであります。こうした中で、もちろんこの最低賃金は、先ほどの論議にもありましたように、国民生活上あるいは経済上においても大きな影響を持つものでありますから、公益委員がその促進的な役割りを果たすと同時に十分に審議をする。
 先ほど自民党の方から、そういう決定機構について、決まらない場合はどうするのだ、労使なんというのはなかなか決まらないじゃないかというような疑問が出ました。これは今度の四党案に出ておりませんけれども、わが党の案では、そういう立場から自動的なスライド制をやって、他の国なんかで採用している、たとえば決まらない場合でも物価の上昇などに応じた自動的な改正という点も導入しているわけです。そうした点で、先ほどどなたかに質問ありましたけれども、黒川参考人から、先ほどの同じような質問に対する御見解、つまりなかなか決まらない場合について諸外国はどうしているのかというようなことも参考的に述べていただきたいというふうに思います。
#111
○黒川参考人 言うまでもなく、最低賃金の実質――生計費の中身を問題にするときにはなかなか意見の食い違いがあろうと思いますが、現在非常に物価の上昇率が大きくなっているときにはやはり物価スライド制、物価が何%上昇した場合には自動的に最低賃金額を改定していくというふうな制度と併用していくという形をとっておりますが、しかしそれだけではなお問題があるので、生計費の中身が問題になってくる段階ではこれでは解決いたしませんが、そういう併用の方法がとられつつあるということが言えると思います。
#112
○石母田委員 最後に、これまた黒川参考人にお尋ねしたいと思います。
 それは、先ほどからの論議の中で、特に中小企業に対する、これが実施された場合の影響ということが問題になっているわけです。この点については、実施に当たっていろいろ配慮しなければならない点がたくさんあると思います。この四党案には法律事項に加えることについてはいろいろの事情で入っておりませんけれども、共産党の最低賃金法案の内容を見ますと、中小企業の代表を一定数必ず使用者側に含むとかという形で、中小企業の方々の意見が十分取り入れられるような仕組みにしておかなければならぬということで提案しております。もちろん、このことについては、今後の構成の問題で、四党案が実施される段階についていろいろまた協議される内容でありますけれども、そうした点で、特に中小企業などの全国一律の最低賃金制の実施について配慮すべき点があるとすれば、その点について黒川参考人から述べていただきたいというふうに思います。
#113
○黒川参考人 使用者側委員の中に中小企業経営の代表者が出ていくということは、これはフランスの全国最賃の場合にもそうなっております。ただ、フランスのように、企業別格差が日本のようにないというときにはそれほど大きな問題はありませんが、わが国の場合には、中小企業の代表者が出ている場合には、先ほどかち出ているように、全国最賃を保障する意味では中小企業に対するどういうふうな施策を講ずる必要があるかということが当然付随的に問題になってくる、そういう場がそこでつくられるということが言えると思います。
 なお、中小零細企業に対して国家保障という意見がありますが、これはやはり問題があって、かつてイギリスの救貧法の中でそういうことがとられましたけれども、廃止されました。それは使用者が払う賃金レベルを引き上げるというところに重点があるわけですから、やはり企業経営が賃金を支払えるような状況をつくっていくというところに基本を置かなければならないので、国家がこれを保障するということは、かえってその低賃金を残存させるという形になるので、あくまで最低賃金制というのは単なる社会保障とは区別して考えなければならないというふうに考えます。
#114
○石母田委員 以上、非常に短時間の質問でありましたけれども、全体としてやはり現行法が依然として低賃金を解決してない。日本の中で、大正九年の第一回メーデー以来、最低賃金制のスローガンが掲げられてすでに半世紀を超えておるわけです。こうした問題の中で、現在の業種別、地域別というような賃金、あるいはまたいわゆる職権方式と言われるような、事実上職権で決めるようなこうしたやり方、あるいは支払い能力がどうしても決めるときの基準になるというようないまの基準、こうした問題について、この四党法案の出している決定方式あるいは決定機構、決定基準、特に今回の中で、公務員を含めましていままでの現行法では対象外となっていたパートの大部分とかあるいはまた臨時工あるいは訓練工などを含めまして、すべての労働者にこの適用を拡大するという点で、きわめて画期的な内容を持っていると私は思います。このような全国一律最低賃金制を基礎とする四党法案について、ぜひその実現を心から要望いたしまして、私の質問を終わります。
#115
○竹内(黎)委員長代理 次に、寺前巖君。
#116
○寺前委員 参考人の皆さんには、朝から長時間にわたって委員の審議のために御協力をいただいて、ありがとうございます。約三十分ほどの間に幾つかのことを聞きたいと思うわけですが、私は朝から聞いておって、どうしてもはっきり国民が知りたいということを端的に二、三の問題について聞いてみたいと思うのです。
 第一は、まず政府の方にお聞きしたいと思います。大臣に申し上げるのは失礼だと思いますので、事務当局の方にお聞きします。この最賃法が制定されてから、ことしで現行法何年になるのか、この間にこの法律によって何が労働者にとって役に立ったのか、事実をもってどういうふうに労働者に役に立ったかということを示していただきたい。
#117
○東村政府委員 最低賃金法が施行されて、紆余曲折ございましたが、現在十六年という歴史を持っております。その間、最低賃金についてのいろいろの御議論、いろいろの実績ございますが、ただいま先生御指摘のように、どういう点で役に立ったかというお話でございます。
 これは見方はいろいろございますが、一つには、やはり審議会方式で、各地域の審議会において労使の皆さん方が、公益を入れて賃金についての御議論をされた。これは計数ではなかなか把握できないが、こういう実績がございます。その上に立ちまして、そのときそのときの最低賃金について、低賃金層の賃金について、全体の一割前後の引き上げをすることになる、つまり全体の中で特に低賃金層、中小企業層ではございますが、そこの賃金を引き上げていったということが言えると思います。
    〔竹内(黎)委員長代理退席、住委員長代理
    着席〕
#118
○寺前委員 十六年の歴史の間に二つの役に立った、一つは、地域で賃金に対する議論が行われるようになった、これは非常に大きな役割りだ、第二番目には、一〇%前後の人々の低賃金層が救われた、これは年々救われていくのですから、五年たったらどれだけになっていくのか、三年たったらどれだけになっていくのか知りませんが、非常に大きな役割りを果たした、こういう二つの点が法律が施行されてからの役立った顕著な点だ、こうおっしゃるのですが、それじゃ直接この影響を受けられる労働団体のお二人の方と、それから大学の先生、御三人さんにこの政府の評価に対しての御意見を聞きたいと思います。
#119
○岡村参考人 午前中の私の意見の際にも申し上げましたけれども、十六年の最賃行政の中でも、御存じのように、業者間協定時代とそれから現行法の時代では法律の内容も違います。しかしその間通じて、先ほど私が申し上げましたように、業者間協定時代には特にその色彩が非常に強いわけでありますけれども、当初から業者団体だけが集まって一方的に賃金を決めて、それを審議会という場でいわゆる公認をする、それを押しつける、こういうことですから、労働者の基本的な団結権なり団交権を否認をしているということが一つと、いま事務当局の方から言われた一〇%前後にというのは改定時の話なんでしょうけれども、御存じのように、日本の賃金というのは毎年毎年春闘を中心にして変わっていく、こういう中で、そもそも低い金額で決めたやつを数年間にわたって固定をしておいて、したがって、当初から有効性が余りないものが時間とともにむしろ低賃金固定化の役割りしか果たしていなかったのじゃないか、現行法になっても私は基本的には同じだと思うのであります。
 最低賃金というのは別に断続的につくられたわけじゃなくて、歴史的にずっと積み重ねられてきているわけでありますから、そういう面でいうと、私は午前中東京の事例を具体的に挙げて説明を申し上げましたけれども、今日の場合は、現行法で、われわれとしてはむろん反対でありますけれども、最低賃金を決める場合の三原則、三つあります。生計費なり類似労働者の賃金水準なり企業の支払い能力というものがありますけれども、それとは全く無関係に、たとえば地域包括最賃の場合で言えば、失対賃金を上限にして決められている。こういうことは私がいま申し上げたことを端的に示しているのではないか、こういうように私は感じております。
#120
○丹下参考人 業者間協定の問題については、いま岡村参考人がおっしゃったとおりだというふうに思います。
 それから、その後の問題ですけれども、この高度成長で、しかも完全雇用という時代に、もし仮に現行最賃法がなければ賃金水準が下の方でも上がらなかったかというと、そんなことはないわけで、この物価上昇の中で年々一〇%しか救われない、しかもその限度というのが失対賃金の最高を限度にするということでは、最賃法が機能するという目的からは全く外れているのではないだろうかというふうに考えます。
#121
○黒川参考人 現行の最低賃金法のもとで最低賃金が各業種別あるいは地域別に改定されたときには、一割足らずだと思いますが、確かにその層に一定の影響があります。しかし、午前中も申しましたように、賃金分布が基本的には変わっていないということを見てもわかりますように、絶えずその後その賃金分布の形を温存していくような、そういう役割りを果たしている、最低賃金というのは、やはりレベルによっては逆に賃金統制の機能を果たすこともあり得る、こういうことが言えるわけで、現実において戦時中の賃金統制令の中にも低い最低賃金というのが規定されておりました。それほどにはなっておりませんけれども、しかし、少なくとも現行の最低賃金法が、一定のごく少数の極端な低賃金層に一定の影響を与えながら、全体として日本の低賃金構造を温存していく、そういった役割りを果たしておるということは否定できないのではないかというふうに思っております。
#122
○寺前委員 政府の人と直接の影響を受ける人との間に見解のきわめて大きな違いが生まれました。あなたたちは一〇%前後影響を与えるであろうとおっしゃった。いま黒川先生は、改定時には若干の影響はあるだろう、さらにまた労働代表の方々も、数年間固定しておく以上は、それの影響というのはもう変わってしまう、共通して大学の先生もおっしゃったのは、むしろ低賃金という貨金統制の役割りを果たしておるじゃないかというのが、現行法の実施された十六年間の経過の結果であったということを言っておるわけです。絶対にそういうことではなかったということを具体的に証明できる何か数値がありますか、示していただきたいと思います。
#123
○東村政府委員 ただいま参考人の方からお話がございまして、私も改定の際にそういう影響があるということがまず出発点に言えると思うわけでございます。しかし、賃金水準でございますから、全体の賃金水準が動く際にはそういう低賃金層の賃金も動くでしょうから、その影響率はおのずから減少してくることは事実でございます。しかし、最近のようにいろいろ物価の問題、賃金水準の激しい動きの中で考えますと、何年間も賃金を据え置くということはそれ自身問題でございますので、私どもといたしましては、実効性を確保できるように賃金の改定については鋭意努力する、そのことによって、ただいまお話がございましたようなデメリットを何とか是正していきたいというふうに考えておるところでございます。
#124
○寺前委員 私の聞きたいのは、十六年間に低賃金層を構造として改革するのに役立ったかどうか、労働代表の方も大学の先生方も、低賃金層を統制する、固定化させるという役割りを果たした、こうおっしゃった。政府はそうではなかったのだというふうにおっしゃるのだったら、その統計をここに示しなさい、私の質問はそういうことなんです。もう一度やってください。
#125
○東村政府委員 最低賃金が賃金構造をどういうふうに変えていったかということは、確かにいろいろの見方がございます。
 本来、最低賃金によって賃金構造をどこまで変えていく機能を持たせるか、あるいは持ったかという問題がございますが、私どもが従来各賃金審議会を通じて最低賃金を決定していただいておるのを考えますと、その地方、その産業についての低賃金層の是正ということでございまして、その結果、賃金構造が従来と違って大いに変わっていったというところまではいかないと思いますが、先ほど申し上げましたように、最低賃金を改定した段階においてはそういう影響があった。そもそも賃金構造全体を問題にするのでございましたら、午前中から皆さん方御審議していただいたように、ただ単に最低賃金だけの問題ではなくして、もっと広い分野からのいろいろ施策が必要になるのではないだろうか、かように考えております。
#126
○寺前委員 時間がなくなるので余りやりませんが、私は予算委員会のときにも具体的な数字を示してお話をしたと思うんですよ。要するに、国民は、こういう法律によって低賃金の労働者層が救われていくという実態が現実のものにならなかったならば、どんなきれいなことを言ってもだめだということになりますよ。
 たとえば、一九六五年の高額所得者は、上位十人の平均所得額をとってみると二億九千三百七十二万円という数字が出ておる。これに対して、労働者の平均給与は四十五万円で、倍率にして六百五十二・七倍であった。それが一九七三年になると、上位十人の平均所得額が二十三億六千六百八十二万円である。時の労働者の平均給与は百三十二万二千円である。倍率にすると千七百九十・三倍というふうに、一九六五年から七三年の間にかけて、時の所得の格差というのは増大する方向か縮小する方向かというと、だれの目にも明らかなように二倍、三倍と格差が広がってきているというのが、勤労者全体の中におけるところの数字となっている。これは国税庁の資料あるいは国民生活白書を引っ張り出したら出てくる資料なんです。決して勤労者全体の賃金水準はよくなっていない。特別の上の方の人だけがよくなっていっているというのが結果として出てきている。あるいは、民間の給与の所得格差という問題を調べてみたってやはり同じことが言えます。上位十人の平均給与というのがどうであって、最下位のランクの者がどうなんだという数字を調べてみると、一九六五年には上位の人は九十二万四千円、最下位のランクの人は四十万円、その倍率は二・三一倍であったものが、一九七三年になると上位の人は二百六十七万九千円、最下位の人は五十三万一千円、倍率は五・〇五倍とますます開いていってるというのが、国税庁の一九七三年の「民間給与の実態」という資料の中から出た数字なんです。
 いずれの資料を見ても、明らかに低い賃金層が層として少しも改善されていないどころか、ますます激しくなっているとするならば、この法律が悪いのか、政府の政治姿勢が悪いのか、どっちかをはっきりさせなかったならば私はだめだと思うのです。どっちも悪いのかもしれない。これははっきりここにしか原因を求めることができないじゃありませんか。
 そこで、現行法のもとにおいても政府の姿勢を変えるならば明らかにもっと改善することがあるという問題点と、現行法ではもうとうていだめなんだという問題点と、二つの問題点についてお感じになっている点があるならば、労働代表の方と学者代表の方からお聞かせをいただきたいと思います。
#127
○岡村参考人 私の感じで申し上げますと、現行法では、中心になる決定方式なり決定基準なり決定機構について、午前中も私の意見を申し上げたのですけれども、これを部分的に運用改善をしたからといって日本の低賃金構造を直すことはできない、こういうように私は実は考えておるわけであります。
#128
○丹下参考人 私も同じようにできないというふうに考えております。
#129
○黒川参考人 私も、現行法の手直しということではできないので、特に現在現行法のもとでの中賃において調査審議が行われておりますけれども、やはりこうなってくると中央最低賃金審議会の自己否定ということにならざるを得ないのではないか。政治姿勢で現行法のもとでいま言われたような問題が解決するというふうには考えておりません。
#130
○寺前委員 さて、労働代表や学者代表はみんな現行法ではだめだと言うのですが、現行法のもとにおいて政府当局は改善点はあるというふうに見ているのだったら、どこをどう直す、どういうふうにしてやっていったら役に立ってきますというふうな問題点を指摘していただきたいと思います。
#131
○東村政府委員 先ほども申し上げましたように、現行法のたてまえからいきますと、やはり現在の最低賃金を実効性あるように運営しなければいかぬ。それは賃金の水準の動きであるとか、あるいは物価の動きであるとか、そういうものにつれて改定を実効性あるようにやっていくということに相なるわけでございます。
    〔住委員長代理退席、委員長着席〕
しかし、いずれにいたしましても、先般来大臣からもお答えがございましたように、こういう一律性の問題が出ている時代でございますし、最低賃金制についても、先ほど申し上げましたように十六年という歳月を経ておりますので、これからどういうふうに最低賃金制を進めていったらよろしいかということを中央の最低賃金審議会に諮問をしているという段階でございます。
#132
○寺前委員 現行法の中でも姿勢が悪いというのは幾つかあると、さきも指摘がありました。一つは、上限を失対賃金に置いているという御指摘が労働団体お二人からありました。これはすでに私が予算委員会のときに説明しましたよ。あなたたちはこういうような指導をしておっていいのか。大臣は事実を調べるとおっしゃった。石母田議員にその後、当委員会においてお話しのようないろいろなニュアンスがありまして、多少行き過ぎがあった結果として指示を受け取られ、実際の審議との関連で問題が生じたとすれば、まことに遺憾なことで、今後はそのようなことがないように留意していきたい。ここに上限を求めるという指導はそれではしないというふうなことで、はっきりと指導の改善をされたのかどうか。
 わざわざ私がこの問題を指摘したのは、昨年の九月段階に全国各地において、あなたたちが基準局の賃金課長をブロック別にお集めになった席上で御指導なさった内容について、これが各地の審議会でも労働代表やその他の諸君たちから流れてきた情報として私は知っているのです。わざわざ集めて指導した結果なんだから、それじゃ、わざわざ集めてこれに対する改善の指摘をするなり、あるいはまた通達でもってそのことのないようにということを改めて御指導になったのかどうか。現行法においても明らかに、労働代表からもこういう上限を設けるやり方ではよくなるはずはないという具体的な指摘がありながら、これがいまの答弁を聞いていたら、賃金や物価の動向、その動きを早くキャッチして云々というところに改善を求めるということだけでは、出された問題すら改善する気がなければいまの法律でもよくなるはずはない。私はそう言わなければならぬ。果たして御指摘なさって指導されたのかどうか、これが一点。
 それからついでに私は、現在の法律においても本当に真剣に考えているかどうかということで幾つか聞いてみたいと思う。
 群馬県で問題になったのは何ですか。審議会の委員ですらも、どのような結果が、審議の結果としてその賃金が出てくるのかわからぬ。まして住民は、労働者はわからぬというんでしょう。何でか。私も幾つかのところの審議会へ行ってみました。聞いてみたら、基準局の賃金課長と公益委員が入って、そこに労働代表ちょっと来てくれ、使用者代表ちょっと来てくれ、こそこそこそこそ裏で話しているだけでいつの間にやら決まるので、そこの担当の職員はいろいろな資料を出すけれども、それがどういう経過を経てどういうことになったのか、資料とちょっとも関係ないと言っておるのです。そこで群馬県では、この審議会を公開せいと言っておる。どういう論議の末にその結論が出てくるのか、国民はわからない。あなたのさっきの答弁を聞いておったら、賃金をその地域で問題にするとそれが役に立ったのだという指摘があった。賃金が問題になったということが役に立ったと言うのだけれども、実際には審議会のメンバーすらが、公開をしなかったら役に立たぬじゃないかということを言っている。これはそもそもここにまた問題がある。これは第二番目の問題。あなたは依然としてこのままやるのですか。公開をしなさいという要求に対してはどうです。
 さらにまた私は聞いてみたいと思う。この審議会の構成メンバー、果たして信用できるメンバーなのかどうか、労働者自身に。労働代表の皆さん方に、この人を審議会のメンバーとして選んで皆さんの地域の賃金を決めていくのですけれどもよろしいかと言って承諾を得るというやり方でもやっているのですか。信用できないと言って罷免要求が出ているんじゃないですか、群馬県で。現実の法律のもとにおいても改善点があるのと違いますか。これが第三点。
 第四点。一たん決めたところのこの決定、一〇%前後の人に影響がある、こうおっしゃる。改定時期にすぐにその影響があると言うので、それでは賃金改定を、最賃を決めた瞬間に直ちにそれぞれの地方で調査をやるのかどうか。まず労働省は周知義務の責務があるでしょう。周知徹底をどういうやり方でやっているのですか。やった結果に対してどのように点検をやっているのですか。全国的に履行状況の点検を何年の何月何日付でもって一斉にやらせたということがこの十六年間にあるならば、その日時をここで明らかにしてもらいたい。
 以上の点について答弁願いたいと思います。
#133
○東村政府委員 まず第一点の失対賃金との関係でございますが、ただいまのお話ございましたように、大臣からも一応お話し申し上げてございますが、私どもは四月二十四日、全国の賃金課長会議というのを持ちましたが、その際にそのことは明僚に指示しております。それから五月三十日にこの一律最賃制を含めて最賃制のあり方を中央最低賃金審議会に諮問した際にその問題が出てまいりましたので、私の方から、失対問題と最賃の問題というのは別個の問題であって、最賃は最賃の原則で決めるものであるということを御答弁申し上げております。
 それから、具体的なケースになりますとなかなか私ども実態を承知しておりませんが、公開の問題一つお話が出ましたが、これは行政委員会的の話でございまするので、公開といいましても、やはり公労使三者構成で皆さんに御審議を願っているわけでございます。したがいまして、その審議会の会長さんの御判断によると思いますが、通常は公開という原則をとっておらない。
 それから承諾という問題でございますが、これは法のたてまえ上、公益の先生方を選定する場合に労使の承諾を要するというたてまえにはなっておりませんが、実際問題といたしまして、審議会が開かれた際にお互いに信頼関係にない審議会では円滑にいきませんので、できるだけ事前に、承諾というところまできちっとしたものではない場合もありますが、お話をつけておるということでございます。
 それから改定時期の問題でございますが、おっしゃるように、昔に比較いたしまして最近におきましては改定の問題というのは前よりもスピーディーにやらなければいかぬということがありまして、この問題についても、一般的な指示で恐縮でございますが、一般的に各地賃に実効性のあるような改定ができるようにということを事あるごとに指示はしております。ただこれは地方の最低賃金審議会の御判断、運営の問題でございまするので、そう一律にはいきませんが、そういうことをやっております。
 それから周知義務の問題でございますが、確かにおっしゃるように私どももそれは反省しておりますが、周知義務というものはもっとやらなければいけない。監督機関としては関係の業者団体であるとかあるいは監督に行った際にそれを周知させるとかいろいろやっておりますが、改定のスピードが速いという問題もございまして、確かに周知はもう少し徹底しなければいかぬ。
 それから点検というお言葉ございました。これは監督指導ということでよろしいと思うのですが、これも率直に申し上げまして、従来監督指導ということが周知徹底ないしは最賃制の定着ということを主として念頭に置きましたので、一軒一軒回ってどうだどうだという監督指導はややウエートが少なかったと思うのですが、実はことし五十年度におきましては、というよりは五十年以降におきましては、実際につくられておる最低賃金がどのように守られておるか、あるいは守られておらないのかということを十分見ていこう、履行の確保に十分努めていこうということを決めて全国に指示したところでございます。
#134
○寺前委員 もうお約束の時間が来たようなので残念なんですが、私は現行法のもとにおいての政府の責任問題というのはやはりあると思うのです。いま明らかになったように、失対賃金を上限にするという問題の指摘があったということは事実で、したがって労働団体からああいう批判が出ておった。これは絶対に高めるという姿勢でなかったことはこれで明確になったわけです。そういう重大問題がある。しかも自主的に決めたとこう言って、行っている内容について、せめて一〇%前後改定時には役立つと言ったこの話すら、全国一斉に、十六年間点検というのですか、いまの言葉で言えば監督ですか、それがなかったのだ。いよいよ今度やろうというのでしょう、全国一斉に。そうでしょう。部分的にはいろいろあるよ。一斉に監督をやる、重要な事項としてやるという姿勢がなかったということは事実なんです。
 私この間京都の舞鶴へ行ったんですよ。そしておまえたちどうするのだと言ってこう聞いてみたら、向こうは監督官が二人だが、そうしたら、いやいま指示が来ておりますと言うわけ。京都で百カ所、この舞鶴で五カ所ですと言うわけ。びっくりしましたね。五カ所で一体点検するといってどうなるのだ。業種別が京都の場合には三つかな。地域包括最賃と合わせて五カ所だ。食品関係いうたら食品関係は一カ所だということだ。どこか適当なところを取ってきて、それでぱっとやるというだけのことや。そんなことでこれは調査になるのだろうか。本当にやる気だったら全面的に機構問題についても考えなかったらできる話と違いますよ。監督官はこれだけやるのじゃないのだから、ほんまのところ。
 だから現行の体制の中においても本当に一時期の改定、値打ちがあるというその改定すら真剣にやる体制でなかったということです。そこへもってきて結果として低賃金層というのが改革される姿だったかといえば、十六年間たった今日、何も低賃金構造の改革にはならなかった。いよいよもって抜本的に改革ということを考えなければならなくなったという到達点に来たんだ。だからそういう意味で労働大臣、野党四党が出している法案についてはこの十六年の歴史の経過にかんがみて、政府の責任を明らかにするということとあわせて、この問題について真剣に検討するということをやらなければいけない問題だと思うのです。最後に大臣の意見を聞いて私は終わりたいと思うのです。
#135
○長谷川国務大臣 参考人のお忙しい方々もこうして国会に御協力をいただいて朝から質疑応答をされているわけです。それに対してまた皆さん方が前々から御研究された問題、いまから先の問題等々についてこうしてフリーにお話しされる、それを私も拝聴しながら、また皆さん方から御提案された全国一律最賃の問題あるいは労働団体からされたそういう問題を、先日お話し申し上げたような形において中央審議会の方に諮問いたしまして重要なる案件として御審議をお願いしたいという誠意のあるところを御理解いただきたいと思います。
#136
○大野委員長 次に、大橋敏雄君。
#137
○大橋(敏)委員 私も同じ問題についてお尋ねするわけでございますので、午前中の質問者と極力重複を避けたいとは思っておりますが、多少重複するかもしれませんがお許しを願いたいと思います。
 参考人の皆さんには、朝早くから本当に御苦労さまでございました。参考人の公述の中にもありましたように、労働者の最低賃金を設定して額に汗して働く人々の最低生活を保障することが最低賃金制の目的なんだ、このような御意見でございましたが、私も同感であります。
 ところが、四野党が提出いたしております全国一律最低賃金制については、意見が二つに分かれているようでございます。一方の方は、好ましい内容であり一日も早く促進すべきである。一方の方は、これは実際には無理な内容だ、中小企業あるいは零細企業等では支払い能力がなくて大変な問題になるだろう、無理だ、このように意見が分かれたわけであります。また学者の先生の意見によりますと、全国一律最低賃金はいろいろ問題はあるけれども好ましい内容でありやはり賛成の方向だ、高く評価をするというお話のようでございました。
 そこで私は、皆様の御意見をお伺いしながら考えましたことは、要するに全国一律の最低賃金がどの水準、幾らの金額に決められるか、これによって功罪が明らかになってくる。したがいまして、この基準をどこにとっていくのかというのが最終的には大きな問題点であろうと考えたわけでございますので、そういう立場から各参考人に一人ずつまたお尋ねしてみたいと思っております。
 まず最初に山王丸参考人にお尋ねをいたします。
 現行最低賃金制度は、四十五年から開始された年次推進計画というのがあって、四十九年度末でほとんどの労働者に最賃が適用される情勢になったと聞いております。また地域最賃も宮城県を残すだけということを聞いておりますけれども、そういう立場から考えてまいりますと、いわゆる現行の最賃法というのは一応の目標を達成しつつある。つまり現行の最低賃金制度というのはいわゆる曲がり角にきているんだと判断していいのではないかと思うのでございますが、その点についてはどういうお考えであるか。またその一つの裏づけとしまして、労働大臣は中央最賃審議会に改めて全国一律最賃制を含めて今後の最賃制のあり方を審議するようにと諮問をいたしております。そういう立場から考えてまいりますと、現行法ではもうだめだ、そういう方向にきていることは事実だと思うのでございますが、その点についてまず御意見を伺いたいと思います。
#138
○山王丸参考人 お答え申し上げます。
 私どもは、本日の午前中の冒頭にも申し上げましたように、昭和四十五年の中審の答申による指針あるいは労働省の指導等によりまして今日まで、単に使用者側だけでなくて労使、公益各側委員が各地方の最低賃金審議会の中で非常な努力を払って、私は相当の成果を上げつつあるというふうに評価しております。この審議会の中身の問題でよく労働側とも笑い話が出るくらいでございまして、最近の最低賃金審議会の中では労使が全く真剣に話し合い、主張し合い、その審議の回数も、何回もきわめて精力的にやっております。こういう行政委員会の中でよく対照的に話が出ますのは地方労働委員会、私も地労委の委員をやっておりますけれども、また労働関係の行政委員会の中では地労委の委員になることが一番だというふうな話も出ているくらいで、地方労働委員会の委員とよく比較されるわけですけれども、その地労委の委員よりも最低賃金審議会の委員が全く大変だなという話がよく出るくらいに忙しい思いをし、努力をしてきております。これは私どもの全国会議の皆さんの話を聞いてみても、単に福島県だけではなくて全国どこの都道府県の最低賃金審議会でもきわめて精力的に努力をして、この現行法による最低賃金の改定その他に取り組んでまいったことがはっきり申し上げられると存じます。
 お話がございました四十五年の推進計画、昭和五十年度は二千九百五十万人というふうになってございますけれども、これも五月三十一日現在で三千二百六十一万人という、はるかに推進計画を上回った適用労働者の数を現在見ておるわけでございます。
 先ほど先生から宮城県の話がちょっと出ましたけれども、東北ブロックの中で宮城県の実態をよく知っておりますが、宮城県が最低賃金の審議が非常におくれております原因は労働側にございます。より審議に非協力ということで進まない。これは特殊な例でございますけれども……。
 それからもう一つ中賃の諮問に対して御質問がございましたけれども、私どもの聞いている範囲では、最近労働四団体あるいは野党四党から全国一律最賃制の問題が出ましたけれども、それ以前から最賃制度の広域化の問題を取り上げて中賃の中に小委員会ができております。その小委員会の中でこの最賃制度の広域化の問題を各側の信任されて出ておられます小委員の方がいろいろ検討中でございました。こういう中身の中で、今回労働大臣から全国一律最賃制の問題について諮問がされたわけでございまして、中賃は中賃なりに前向きの姿勢で取り組んでいると思いますので、私は、現行制度の中で中賃の諮問を待って、全国の都道府県の最低賃金委員会がさらに努力することによって、先ほども申し上げましたように、逐次時間をかけて理想に近づけることは可能かと存じます。
#139
○大橋(敏)委員 いまの参考人のお話によれば、まあ現行法でもそれなりには大変な成果を上げてきたというような答弁のようであったのですけれども、私らはそう思いません。というのは、現行最賃制の致命的欠陥、それは賃金格差が生じやすいということなんですね。まあ十六条方式あるいは十一条方式、現実にこれまで労働省としてはその最低賃金の決定状況というのはつかんでいると思いますけれども、私も労働省の資料をここに持っております。これを見ていきますと、数の上ではかなり成果が出てきておりますが、実際問題として最低賃金の額は大きな開きがあると思うけれども、いかがですか。まあ政府にお尋ねします。
#140
○東村政府委員 おっしゃるとおり最低賃金は各地賃を中心にして決められておりますので、その地方の賃金水準というものを一つの要素としておる関係もございまして、地域別に格差のある賃金を反映して、最低賃金についても地域的な格差があることは否めないところでございます。
#141
○大橋(敏)委員 額にしてどのくらいの差がついておりますか。
#142
○水谷政府委員 金額で申し上げますと、地域最賃では東京都が千七百九十四円、それから福島県は、これは決まった時期が半年ほどずれがありますので、直ちに比較するのには問題がございますが、現在地域最賃では、群馬県で決まってないのを外しますと、一応昨年決まった最低千三百四十円でございますので、東京を一〇〇としますと七四・七ということになります。
 それから産業別最賃につきましては、全国の石炭鉱業の三千二百五十円というのが最高でございまして、最低が宮崎県の繊維産業の千五百七十五円でございますので、全国の石炭鉱業を一〇〇といたしますと、宮崎県の最賃は決まった時期が古いということもございますが、四八・五ということになります。
#143
○大橋(敏)委員 大臣、いまお聞きになったとおりに、現行最賃法の欠陥はいま述べられたとおりです。ですから、全国一律の最賃をという要求が出てくるわけです。また組織労働者と未組織労働者との間にも大きな開きが出てきますし、同じ能力を持つ労働者が同じ時間働いても、あるいはまた勤務先が大企業であってみたり中小企業であってみたり、あるいは大都市、地方によって大きな格差が出てくるわけですね。ですから、いまわれわれが強く要求している全国一律の最低賃金を、そしてすべての労働者が健康で生活できる最低保障の最低賃金額をやはり要求するわけです。
 そこで大臣にお尋ねしますが、前回の中央最賃審議会で四十五年に出た答申のときは、その審議に五年も歳月がかかったわけでございますが、その結果が、現状では実行できないという結論だったわけですね。今回、労働大臣が全国一律最賃のあり方に対する諮問をしたわけでございますが、大変に困難な問題ではありますけれども、大臣としての考え、決意といいますか、いつごろまでにこの問題を含めた答申が出ればという考えがあるのかどうか、そういうのを含めてお答え願いたいと思います。
#144
○長谷川国務大臣 国会の御審議というものを私も尊重いたすことは当然でありますから、先日四野党の全国一律最賃――しかしながら、先生おっしゃるように、四十五年には、全国一律最賃というのは実行性が伴わない、まだ早いという審議会の御答申などもありました。しかし四野党のそういう御提案などもありましたから、これらを含めてひとつ問題をぜひ御研究願いたいということで諮問したわけであります。その際に、かつてないと人に言われますけれども、皆さん方が提案された法案なども重要参考資料としてつけ加えて御審議に入っていただいておりますので、そういうことでお願いしておりますので、私は誠意をもってそういうところで御研究をお願いして、御答申をいただくだろうということをお願いしているわけであります。
#145
○大橋(敏)委員 大臣として大体いつごろまでにという期待をお持ちになっているか、希望をお持ちになっているか、それをお尋ねしたいと思います。
#146
○長谷川国務大臣 私からお答えできないのは残念ですが、審議会が独自の権限をもって御審議願っておりますので、私がここでいついつまでにということを言えば、これは権限を侵すことになりますので、その辺の気持ちは御理解いただきたいと思います。
#147
○大橋(敏)委員 新聞等では大臣のその気持ちまでが出ているのですが、この席では言えないということらしいですがね。まあ少なくとも二年程度で結論が出てほしいという気持ちを漏らされたということが新聞等では出ておりました。私は、前回の審議が五年かかった結果、現状ではだめだというような簡単な結論が出ているのに比べまして、今度の全国一律の野党案というものは非常に実行性のある具体案でありまして、審議会も真剣にこれと取り組んで、恐らく大臣のその気持ちに沿った内容で出てくることを実は期待をするわけでありますが、確かにこの場では言えないでしょうけれども、われわれが期待しているのは二年先というのではなくて、もっと早い機会にこれが実現するようにということをここで強く要望をいたしておきます。
 時間に限りがありますので次に進みますが、下村参考人に、これは確認の意味でお尋ねいたします。
 二十二日の日でしたか、全国中小企業団体中央会の総会があったわけですね。その席上で、全国一律最賃制は中小企業にとって実施不可能であるので反対するという意味の決議を採択なさったとやら、新聞報道で見ました。同時に、その席で三木総理が、政府は不可能なことはしないので安心してほしいという、何かごあいさつをなさったという報道を見たのですけれども、これを確認したいと思うのですが、いかがでしょうか。
#148
○下村参考人 残念ながら私はその総会に出ておりませんので、現場で確認をいたしておりませんので、よろしく御推察を……。
#149
○大橋(敏)委員 きょう代表で出ていらっしゃったけれども、その会合には出ていらっしゃらなかったのですか。――そうですが。これは後日で結構ですので、確認した上で私に御連絡を願いたいと思います。
 では大臣に一言言っておきますが、もしいまのが事実であれば大変な食い違いだと思うのです。というのは、労働大臣は全国一律最低賃金の実施の方向で努力していくと、こういうふうにいろいろなところで発言もなさり、努力もなさっているわけです。大体その方向でですよ。ですけれども、三木総理はそうじゃないのですよ。不可能なことはしないので安心しなさいと。ましてや中小企業は無理だと言っているその決議を採択したものに対してのそういう発言があっていることは、ずれだと思うのですね。大きなずれだと思う。これは問題だと思うのですがいかがですか。
#150
○長谷川国務大臣 その場に私はいたわけじゃありませんけれども、私が総理からお伺いしたことは、四党提案の全国一律最賃というものをストライキをやめるために妥協して総理はのんだ、こういうことはいけないんじゃないかというふうに言われた。そこで総理は、そういうことはありません、できないことは約束しません、そういうストライキと交換したんじゃありませんと、こういうふうに私は答弁されたと聞いております。私も当時のいきさつからしますと、四党御提案のものをここで御審議いただいたときにはそのとおりだったろうと思うのです。
 それからもう一つは、水ぶっかけるわけじゃありませんが、私が二年とか三年とか時間を、期限を切ったということはないということを御理解いただきたい。なぜかなれば、この席上で皆さん方に四党提案あるいは組合提案のものを、一律最賃というものを田邊君の質問に答えて、そしてこれを中央審議会の方にこれも含めて最賃の問題を検討してもらいますということを御答弁申し上げた後で、実は社会党の石橋さんと私の会見がありました。その席上で石橋さんから私に、二年間以内にやらぬかというお話がありました。私はそのときに国会の委員会で期限を切らないでいま御審議をお願いしますということを申し上げておいて、十分も五分もたたないうちに、一党の一番えらい方に、期限を私はここでお約束ということはできません、国会優先というたてまえで、これだけは御勘弁願います、こう申し上げた。これは何人か立会人がいるわけです。その間に、いろいろの党の間に話しがあって、そういうことも一つの希望である、二年間とかということも一つの希望であるという話の出ているということは私は後で聞きました。
 こういう自分に関係したことだけ申し上げまして、先生の御質問にお答えとしておきます。
#151
○大橋(敏)委員 じゃ、推進している側の気持ちとしていまのようなことがあることは確認なさったわけですね。
 それでは次に移りましょう。いずれにしましても、時間に限りがありますので、いずれはまたこの問題をゆっくり審議する段階ありましょうから、三木総理の問題も確認しながらやってまいりましょう。
 丹下さんにお尋ねしますが、労働協約の拡張適用の問題について、現行最賃制度では、労使協約で最賃協定している場合に、同一業種内の労使双方の大部分に適用されるような労使協約があれば、残りのアウトサイダーにも拡張適用される。これは理由としてはわかるのですけれども、しかし現実問題として労働協約を持っているのは大企業が多いため、いわゆる従業員が多い数社の大企業が協約を結んでいただけで、周辺の中小企業には大企業が決めた、いわゆる高い賃金を押しつけることになるので、こういうことでは中小企業者は困るというようなことで、われわれの全国一律最賃の考え方についての反対を述べる政府側、あるいは経営者側があるわけでございますが、これに対して丹下さんはどうお考えになっておりますか。お伺いします。
#152
○丹下参考人 最賃制として決める場合の額とか限度とかいうのはおのずと限度があるというふうに考えておりまして、大企業の中の労使の間で決められた協約がそのまますべて拡張適用されるというふうには現実的にもなり得ないんじゃないかというふうに思います。
 しかし、その場合でも当然全国最賃の上に重ねられるべきものとして熟練の問題、技能の問題というのがございますから、それらを加味して考えてみるという必要があるという場合に、一部分だけが非常に落ち込んでいる賃金が払われるということはぐあいが悪いわけでありまして、そのときには大企業の労使の中でも当然そのようなことが前提になって交渉が行われ、協定が結ばれることになるわけでありますから、そういう観点に立ってその産業の中で適切な賃金がそれなりに全体的な立場で決められ、それが拡張適用される、こういう運用がなされるのじゃないかというふうに考えています。
#153
○大橋(敏)委員 時間の関係で黒川先生にお尋ねしたいと思います。
 先ほど私申し上げましたように、決定基準の問題でありますが、先ほどから各委員もお尋ねしていたわけでございますけれども、われわれは生計費を基準にすべきであるということで要求を掲げているわけでございますけれども、生計費といいましても生活様式が異なり、あるいは大都市と田舎では生計費にかなりの差がある、あるいは独身者と妻帯者と比べても違ってまいります。どこに生計費の線を引くのかというのが私は大きな問題であろうと考えているわけでございますが、この点についての御見解をお願いしたいと思います。
#154
○黒川参考人 先ほども出ましたけれども、生計費といっても人事院が出しているようなものありますが、これはやはり生計費といっても実態でありまして、先ほどどなたか参考人も言われましたけれども、中身を見てみますと、食費その他に関して実際上これでは生活できないというふうな内容のものであります。したがって、生計費の中身としてはやはり私も先ほどちょっと申しましたが、いわゆるマーケットバスケット、かつて個別の賃上げの基準になりましたけれども、実際の生活用物質を含めてどれだけの生計費を必要とするかということを基準にしなければならない。
 もう一つ、にもかかわらず具体的に考えますと、一人かあるいは家族も含めてかという議論がありますが、現在の賃金の実態というものを考えてみますと、むしろ中高年層といっても、これは企業の中にずっと雇用されている人々は、これは先ほども出ましたが、いわゆる年功的な賃金なので、一定の家族も含めて生活できるよう、本当はできないのですが、できるように幾らか高まっていますが、むしろ逆に一人の生活もできないような賃金で中高年層が不安定な雇用形態でどんどん雇われてきているというふうな現状の中では、当面一人の生活を保障する生計費、その中身は先ほど言ったことですが、これを基準にして全国一律最賃というものを決めていくべきではないかというふうに考えているわけです。
#155
○大橋(敏)委員 実は私たちはこの基準生計費を十八歳の労働者が健康で文化的な生活を営むために必要な最小限の生計費として中央最低賃金審議会が算定した経費を言うと、このように十八歳のというところで物を考えてきたわけでございますが、これも私は一つの大きな基準の要素であろうと思うのですけれども、それに対する御意見を伺いたいと思います。
#156
○黒川参考人 いま年齢のことは申しませんでしたけれども、その辺のところはやはりわが国の場合にはいわゆる年功賃金というのが支配的なので、やはり生計費を考える場合に一応年齢を出さないと現実的でないというふうな側面があります、しかし、現実においてマーケットバスケットを考えていく場合に、やはり単身、独身ではなくて単身者生活というふうなものを基準にして考えていくということは可能なのではないか。ただし、条件が違いますのは、わが国の場合には社会保障制度としての家族手当、児童手当制度というふうなものがほかの国と違って確立されていなかったりいろいろな条件がありますので、いろいろなこういう諸条件を考えてくるとむずかしい問題があるというふうに考えられますが、その十八歳というふうな年齢を基準にして考えることが私は必ずしも不適当だというふうには考えておりませんが、しかし将来を展望して考えてみた場合に、特に十八歳というふうに年齢を固定してしまうことにはまた問題があるというふうに考えているわけです。
#157
○大橋(敏)委員 もう一度黒川先生にお尋ねしたいと思いますが、最低賃金の機能といたしまして初任給をどう改善するか、また未熟練労働者の最賃をどれだけの水準に決めていくかということの御意見をお聞きしたいと思います。
#158
○黒川参考人 どれだけの水準というと、具体的な金額で申し上げるということなんでしょうか。
#159
○大橋(敏)委員 まず初任給に対するものの考え方について。
#160
○黒川参考人 これはやはり基本的に言いますと、わが国の場合には初任給を基礎にした昇給制度という賃金体系をとっておりますが、これは資本主義国としては非常に独特な賃金形態であるというふうに考えられます。そういう意味では、この初任給形態を将来はこれを廃止していけるような、そういった方向で最低賃金制も考えていかなければならない。そうなってきますと、家族手当だけではなくてやはり欧米諸国にも見られますような総合的な職業訓練制度というふうなものの確立との関連ということがあります。ですから当面はむずかしいですけれども、やはり初任給という水準だけではなくて、形態そのものを克服していく、そういった方向で水準を考えていかなければならないというふうに考えているわけです。
#161
○大橋(敏)委員 じゃ政府の方にお尋ねをいたします。
 現行の最賃法の十一条の労働協約方式及び十六条の審議会方式によっても最終的には各地域の基準局の判断によるわけですね。というのは、全国的な視野での判断ができないという問題がひそんでいるわけでございますが、そういうことからそれぞれの地域間の賃金格差が是正されないという問題が見えるわけでございますが、これに対してどのような考えを持っているか。
#162
○東村政府委員 先ほど来いろいろ最低賃金の決定基準のお話ございますが、現行最低賃金法では御承知のとおり労働者の生計費、類似の労働者の賃金、通常の企業の賃金支払い能力、こういうかっこうになっております。ところで、生計費なり支払い能力なり賃金水準なりをどうやってつかまえるかということが一つの問題でございますが、たとえば現在行われている賃金水準というのを見ますと、それは実は生計費の問題もそこにすでに入っている、賃金支払い能力の問題もそこに入って形成された現実の賃金水準というのがあるわけでございます。
 そこで、どういうふうに問題をつかまえるかというときに、そこの労働市場における賃金水準というものをまず見て、そこで分散係数などを勘案しながら、一方生計費の問題も加味しながら一つの賃金を決める、こういう形になります。
 したがいまして、どうしても市場の賃金相場というものが一つのよりどころになってまいりますので、ある意味では、賃金の格差というものがそこで、コントロールという言葉は悪いですが、調整されないんじゃないかということが考えられます。その結果、地域別の格差というのが是正されないんじゃないかというお話だと思うのですが、私どもはその問題に対しては、全国の各地方で行われている最低賃金の金額をもうできますと直ちに各県に流しまして、特に隣接県は相互に連絡をとりまして、それを参考にいたしましてその当該の最低賃金審議会では最低賃金を御決定になる、こういうかっこうでやっている次第でございます。
#163
○大橋(敏)委員 大臣、先ほど失対賃金と最低賃金の関係性がかなり厳しく論じられていたわけでございますが、私たちも最低賃金が失対賃金とリンクされているみたいに考えてきました。この問題は、先ほどの答弁で多少は気持ちも晴れたわけでございますが、たとえば失対賃金の最低の鹿児島県の場合は千七百六十一円であるわけでございます。失対賃金と最低賃金を全然別個に考えるとは言っていますけれども、どうもそれに近いところで落ちついていますからね。そういうことを考えてまいりますと、月間フル稼働をいたしましても四万ないしは五万円程度にしかならぬわけですね。これじゃとても憲法に言う最低生活保障にはならないのではないか。失対ベースでは最賃を引き下げる結果になるぞと私も指摘したかったわけですよ。
 この点について、先ほども答弁があっておりましたけれども、もう一度明確にお答え願いたいと思います。
#164
○東村政府委員 失対賃金と最低賃金の関係でございますが、実は従来は、最低賃金を決める際に、失対賃金との間にある程度の差があったわけでございます。それが最近になりますと、失対賃金と最低賃金の差がぐっと縮まってきた、そこで先ほど来の問題が起こるわけでございまして、現在六県ばかりがそういう問題に逢着しております。
 しかし問題は、失対賃金は失対賃金の決定原則がございますし、最低賃金は最低賃金の法にうたわれた決定原則がございますので、やはり最低賃金については最低賃金審議会で御決定願った線を尊重してまいりたいというのが基本線でございますし、先ほどもお答えしたとおりでございます。
#165
○大橋(敏)委員 最後に、大臣に御意見を聞いて終わりたいと思うのですけれども、インフレ、不況下において労働者の生活防衛というものはむしろ国民的課題であろうと私は思うのであります。しかし、先ほども申し上げましたように、階層によって大きな異なりがあるわけですね。組織労働者と未組織労働者の例でも明らかになりましたように、たとえば未組織労働者というのはこのインフレから生活を防衛する手段さえ持っていない、こういうことから、全国一律の最低賃金の制定をと強い要求になってきていることも事実であります。また、この最低賃金が本当の意味で確立されますならば、これは単に労働者の最低賃金を決めるというだけではなくて、これが失業保険あるいは生活保護の基準あるいは厚生年金等にリンクされ、こういうのもともに充実されていくというわが国の社会保障の向上に大きな役割りを果たす内容であろうと考えるわけであります。したがいまして、この労働者の最低賃金、ましてや本当の意味での全国一律最低賃金、労働者の健康で文化的な生活を守るだけのものが決まりますように私は強く要望するわけでございますが、いま申し上げましたいろいろな問題を含めて、最後に大臣の御意見を聞いて終わりたいと思います。
#166
○長谷川国務大臣 全国最賃制度というのは、私も、ILOの百三十一号条約の第三条を見ますと、まさに一般の賃金の水準あるいは生計費、社会保障給付その他経済的要素等々がございます。日本では未組織労働者の諸君は、大企業の組織労働者より非常に苦しいことは御案内のとおり。そういう中において、一般論といたしますと、参考人のお話の中には、現制度ではどうしてもだめだという御意見などもありますが、やはり地域最賃、業務最賃というふうなことで積み上げてまいっております。そうした意味から、またこのたびの皆さん方の御提案によって、全国一律最賃というものもあらためて中央最賃の方にお願いしておることでありまして、そういう意味合いにおいて、その経過というものを慎重に見守って、労働者を守る方向に向いてまいりたい、こう思っております。
#167
○大橋(敏)委員 終わります。
#168
○大野委員長 次に、小宮武喜君。
#169
○小宮委員 最初に山王丸参考人にお尋ねします。
 先ほどの意見公述の中で、参考人は、最低賃金制度はこれ以上安く人を使ってはならないという社会保障的な賃金である、こういうような表現を使われました。また、下村参考人も、大体社会保障的な賃金だという表現を使われたわけですが、まず社会保障的な賃金というものの定義について、山王丸参考人からひとつお聞きしたいと思います。
#170
○山王丸参考人 定義という御質問でございますけれども、別に法律的な用語でも何でもないと思います。私の考え方が、そういう一種の社会保障的な賃金ではないかという考え方を従来から持っておりますので、そういう表現をいたしたわけでございますが、いわゆる最低賃金でございまして、これ以下で人を使ってはならないという最低賃金制度でございますので、先ほど申し上げましたように、労働市場の実態によってそれに上積みすることは一向自由でございまして、全く下限を決定するいわゆる最低賃金、したがって、この最賃法が制定されて以来、われわれ経営者側では一種の社会保障賃金制度というような見方をしておるわけでございます。――それでよろしゅうございますか。
#171
○小宮委員 その社会保障的な賃金というものがぼくにはどうもよう理解できないのですよ。だから、その社会保障的な賃金とは何ぞやということで、その定義をお聞かせ願いたい。そうしなければ、この問題は、いままでの参考人の方々の意見を聞きましても、やはり根本的には、労働側の方は最低生活を保障するための賃金だと言われるし、また、下村参考人と山王丸参考人の方は、そうじゃないのだというようなことを言いますし、たまたま山王丸参考人の方からは社会保障的な賃金だという表現がございましたので、さてさて、私も、社会保障的な賃金とは何ぞやということにちょっと疑問を持ちましたし、また、この問題は根本的にやはり双方の参考人の中でも意見が分かれておるように、根本的なものに非常に根があるものですから、ひとつその点をはっきりお聞きしたいということでお尋ねしたわけですから……。
#172
○山王丸参考人 いわゆる一たび決定すれば法律によって保障された賃金ですね、これ以下で人を使ってはならぬというわけですから。そういう意味で一種の社会保障賃金という考え方でございます。
#173
○小宮委員 いいでしょう。しかし、下村参考人も発言を求めておるようですから、下村参考人からもひとつ定義をお聞きしたいと思います。
#174
○下村参考人 賃金というものは、使う者と使われる者との話し合いによって決めるべきもの、私の労働を幾らで提供しよう、あなたの労働をどれだけで使おうと労使で決めるべきもの。ところが、最低賃金が決まりますと、これは法律で決められる。そういう性格が違うということであります。
#175
○小宮委員 それはもう労働賃金は双方の話し合いで決まるわけですから、それはそれでいいわけですが、ただ、その中の社会保障的な賃金ということについて、どうも私、十分理解できないのですが、局長からひとつ、局長はこの社会保障的な賃金というものをどういうように理解しておるのか、局長ならベテランだからわかっておるでしょうから、ひとつどうですか。
#176
○東村政府委員 お二人の先生方からお話がございましたので、それ以上、私お答えするのはどうかと思いますが、いまお話ございましたように、賃金というのは労使が一つの対等と言いますか、お話し合いで決めるものである。ところが、最低賃金というのは、そのお話し合いがあってもそれ以下ではだめだという意味で、単なる賃金を話し合いで決めるそういう賃金とは性格が違うのだ、それ以下ではならないというのだから社会保障的と言うのでしょうか、性格の違うものだ、こういうふうにお話が出ているのじゃないでしょうか。
#177
○小宮委員 非常に都合のいいように解釈しておるわけですね。それ以下で話し合いをやって賃金を決めようとする場合は、いや、それではだめですよ、こういうような最低賃金というのが決まっておるから、そこでその線までは話し合いをしなさいよというようないまの局長の答弁なのですね。ところが、むしろ、それより高いところで賃金を話し合いで決めようとしても、逆に今度は、最低賃金がいま現在ありますけれども、非常に低いということで、むしろそれが足を引っ張っておるというのが今日の実情ではないか、こういうように私は見ておるわけです。だから、私は、いまの最低賃金制度については、この最低賃金というのが、むしろその地域の労働者の賃金を抑制しておるというような形になっておるのじゃないかというふうに見ておるわけです。この問答はもういいです。
 そこで、先ほどから参考人の方のいろいろ御意見の中に、高賃金あるいは低賃金という言葉がしばしば出ておるわけですが、その概念としては、高賃金、低賃金と言われて、私らも案外使うのですけれども、何を基準にして高賃金と言うのか、低賃金と言うのか、ひとつその点を、これは山王丸参考人と岡村参考人に、これは労働界と経営界のベテランにひとつお聞きしたいと思います。
#178
○山王丸参考人 お答えいたします。
 私の立場から申し上げますと、一つは、企業の支払い能力をはるかに超えた賃金も高賃金じゃないかと思いますし、それから、先ほど来標準労働者の賃金であるとかあるいは生計費であるとか、いろいろ出ておりますけれども、元来、たとえば生計費一つとってみても、いわゆる健康にして文化的な生活を営むに足る賃金とは、具体的にどの辺が限界なのか。ぜいたくをすれば切りがないのでございまして、この生計費一つとっても、この線の引き方が具体的には非常にむずかしいと私は思うのです。
 また、地方で生活して、たとえば家へ帰れば小さいながら畑があって食う米をつくっている。そういうところから勤めて生活している人と、同じ地方でも、たとえば県庁所在地のような都会で、消費の場もかなり数多くある場所で働いておる方の生計費、これも違うと思います。東京とももちろん違うでしょうし、生計費の水準のとり方一つ考えてもなかなか大変だ、非常にむずかしい問題と思いますけれども、まあ一般的にそのときの賃金相場、特に私どもの立場から申し上げますと、中小企業の賃金相場に比べて非常に高い賃金、これもやはり高い賃金ではないかというふうに思われます。また、標準労働者の同じ業種の賃金水準に比較して、ある企業では非常に給与をよけい払っている、あそこは給与が高い、これも高賃金の部類に属すと思いますし、いろいろこれは見解があると思うのです。こんな程度の答弁でよろしゅうございましょうか。
#179
○岡村参考人 質問の意味が余り正確にとれないのですけれども、われわれが高いとか低いとか言う場合には、それぞれの問題との兼ね合いで言うわけですから、常に相対的な関係になるわけですね。だから、たとえば日本の工業生産水準がもう世界第二位だ、それに比べて賃金が安いという場合もありますし、きょうの主題から言えば、最低賃金制というのは生計費を中心に考えるという場合に、現行の最賃法で決められておる最低賃金が、そういう基準に照らして低いだとか、一般的な賃金問題との兼ね合いで低い、高いを言う場合は、いまもちょっと話が出ましたけれども、たとえば同一産業だとか業種だとか、地域における水準との比較だとか、資本の方のもうけに比べて労働者側の方の取り分が少ないとか、そういう関係で高いとか低いとか、こういう話をするわけであります。きょうの主題から言えば、先ほど申し上げたように、最低賃金というのは本来最低生活費の確保という視点に立って、現行の決まっておる最低賃金が低い、こういう話をした、こういうことだろうと思います。
#180
○小宮委員 大臣、この最低賃金法というのはいろいろ意見が分かれるところですが、私もやはり労働者の最低の生活を保障すべき賃金だというふうに考えるのですが、労働大臣は大体どのように考えておられますか。この三条を見ても、いろいろくっつけてつくっているからいろんな矛盾があり、条文がすっきりしてないのですね。
#181
○長谷川国務大臣 高いほどこしたことはありませんけれども、やはり支払い能力とか一般市場の問題とか、そういうほかとの比較、こういうものがあろうと思います。
 いずれにいたしましても、私、労働省の立場からいたしますと、従来はソシアルダンピングの国だと言われた日本が、少なくとも統計の上ではイギリスまで抜いてきておる最近のこと、しかしながら、お互いが心配します大企業と未組織労働者、そういう方々の差が大分ある。いわんやこういう低成長になりますと、そういう方々にしわ寄せがある、この格差が開くだろう。従来は中小企業の方々の方が、労働力の需給の関係から、春闘の場合の伸び率からしますと、パーセンテージが多かった。しかしながら、今度はなかなかそうはいかないじゃないかということを見ますと、本当によく注目してやっていく必要がある、こう思っております。
#182
○小宮委員 この問題は今度は抜きにしまして、この最低賃金法の第一条それから第三条を見ても、一方では「労働者の生計費」と入れてみたり、目的の中にも「労働者の生活の安定」と言ってみたりということになれば、それぞれの立場において見方、考え方は自分の都合のいいように考えたとしても、しかし、法律の精神というのは、労働者の最低の生活の保障をするというふうに私は理解すべきだと思うんですよ。
 そこで、後でまたやりますけれども、それでは下村参考人に質問しますが、四十五年の中央最賃審議会答申があってから、地域別の最賃がどれくらい上がっておりますか。
#183
○下村参考人 全国のことは基準局にお聞きいただけばわかると思うのですけれども、私は岐阜県なんですが、岐阜県ではかなり積極的に最賃の決定を現行法の中で進めておりますし、特に答申がありましたころはいわゆる地域最賃の出だしのころだった。岐阜県はトップを切って決定をいたしております。先ほど局長さんが影響率が大体一〇%前後だとおっしゃったのですけれども、私はそのころ実は地賃の委員をやっておりまして、最低賃金目安額の決定の試案というのを出しておるのですけれども、それの中では……
#184
○小宮委員 地域最賃が幾ら上がったかということで、具体的に金額を言ってください。
#185
○下村参考人 最初に決めたときは九百六十円に決めました。それから二回目は緊急措置で物価スライドで決めましたときが千二百六十円で決めました。それから三回目に改定いたしましたときが千七百円であります。それが岐阜県の地域最賃でございます。
#186
○東村政府委員 地域最賃が一般に行き渡りましたのは四十八年度でございますので、四十八年、四十九年、こういうことになるわけです。そこで四十八年と四十九年の上昇率は二九・八%でございます。
#187
○小宮委員 いまの数字を見ても九百六十円が千二百六十円、上昇率は三百円ですね。そうすると、二十五日働いて七千五百円ですね。それから千二百六十円から千七百円に上がったとしても四百四十円の上がりで、二十五日働いたとしても一万円の上がりですね。
 皆さんが支払い能力の問題をすぐ強調されますけれども、いまのような物価上昇の中で、こういった最賃制度をむしろてこにして、皆さん方経営者の方々は低賃金に抑えようじゃないか、どうもそういう感じがしてなりません。支払い能力の問題を言われると、実際支払い能力の問題どうだということになれば、皆さん方はいろいろ言い分があるにしても、われわれも支払い能力はどうなんだと言うても、具体的に経営の内容まで突っ込んだわけではありませんからわかりませんけれども、いずれにしても非常に安い。
 たとえば、いま東京都の地域別最賃にしましても、結局千七百九十四円でしょう。残業賃金は除くべきですから、二十五日働いて四万四千七百五十円ですね。それから福島の場合、いま千三百四十円という話が出ましたけれども、二十五日働いて三万三千五百円ですよ。これで最賃法ができた趣旨に沿っておるかどうかということになれば、これはお話になりません。
 特に私が言いたいのは、たとえば生活保護法の中で、はっきり最低生活の保障となっておるわけです。第一条に「最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする。」これこそ結局国が認めた最低生活を保障するということで生活保護基準が決まっておるわけです。これは大臣、あなたに前にも質問したことがありますけれども……。
 それでは、厚生省来ておりますか。――厚生省を呼んで調べたときも、御主人が三十五歳、奥さんが三十歳、子供さんが九歳、小学校三年生、それに四歳の女の子、これは中学、小学校で就学補助が違いますからわざと挙げたわけですが、二級地で生活扶助だけで手取り六万八千二百六円ですよ。それに教育扶助が中学校の場合千九百四十円です。小学校の場合でも千四十円になる。それから勤労控除が一万二千二十円、最高が一万五千三十円ですが、住宅補助が自宅以外の場合は五千五百円あるのですね。そうすると、いわゆる年齢的な問題はありますけれども、標準四人世帯で手取り八万六千七百六十六円になるのです。これを国は、国民が最低生活を営むに必要な金額だとして生活保護基準を決めてあるわけですよ。これから見ますと、たとえば母子三人世帯で御主人がいなくても、三十歳の奥さんで九歳と四歳になる子供さんがおれば手取り六万七千七百五十六円になるのです。老人二人でも五万八千八百二十円になる。これは二級地でですよ。それで最低賃金が高いとかへったくれとか言うこと自身がおかしいのです。これは、国が制度として生活保護基準は決めてあるわけですから、それに基づいていまこういうような制度になっていっておるわけですから、これから比べて東京都でも千七百九十円、二十五日働いて四万四千七百五十円、福島では三万三千五百円、こういうようなことで最低賃金制と、これでは法律が泣きはせぬでしょうか。私はこういうことを言いたいのです。
 そこで、われわれはやはりいまの全国一律最低賃金制というものを何とか考えなければ、むしろこういった足を引っ張っておるような作用をしておるいまの最賃法については非常に疑問があるわけです。たからこういうような現状について――これは私の資料に間違いないと思います。厚生省からたとえば東京都を例にとって説明してもらってもいいし、大臣このような現実をどう考えますか。
 先に厚生省、東京都で四人世帯で生活保護を幾らもらうかちょっと説明してください。
#188
○山本説明員 ただいま御指摘になりましたような三十五歳の夫と三十歳の妻がいまして、九歳の男の子に四歳の女の子がいるというのを標準四人世帯といっておるわけでありますが、その場合の生活保護の基準額を、東京都は一級地でございますから一級地で申し上げますと、生活扶助基準額が七万四千九百五十二円でございます。これに教育扶助、この九歳の小学校三年になる男の子について教育扶助を計算いたしますと千四十円になります。住宅扶助は五千五百円が通常の基準でございまして、家賃が高い場合にはこれを増額することがございます。そのほか、標準四人世帯と申しますと三十五歳の夫が日雇い労働に従事しているという想定で考えておりますので、そういう場合の賃金、いろいろあるかもしれませんけれども、大体一万二千円程度の勤労控除が加算されます。以上合計いたしますと、九万三千五百十二円になるわけでございます。
#189
○東村政府委員 いまのお話は世帯の数が多いわけでございますが、最低賃金は先ほどからお話がございますように十八歳程度の労働者、つまり年功序列の初任給程度の人たちとも関係しますので、私どもの方で十八歳男子、独身でその生活保護の内容を生活扶助、住宅扶助、基礎控除、社会保険料の合計額、これを月額に直しますと一級地で、つまりいまお話がございました東京を含みますが四万二千六十二円、これを日額に直しますと二十五で割りましたが千六百八十三円、これは五十年一月以降の数字でございますが、さらに五十年四月以降に改定されておりますのでその数字を挙げますと、一級地で月額四万七千六百三十円、一日当たり千九百五円。なお参考までに、人事院の東京都のこれも十八歳の男子についての生計費が出ておりますので申し上げますと、これは四十九年五月の数字でございますが千七百六十八円と相なっております。
#190
○小宮委員 これでは労働省が幾ら雇用促進だとか雇用対策だとかいろいろ奨励して法律つくってみても、働いて生活扶助基準より安いということになった場合、それなら働かぬで生活扶助をもらった方が得じゃないかということになりますよ。
 これは私ちょっと問題にしたいのですが、厚生省に聞きますけれども、たとえばいま東京都で九万三千五百十二円になる。そしてどこか事業所で働いてもらう金の手取りがたとえば六万円なら六万円しかもらえないという場合に、国が保障した最低生活より三万二千円ぐらい低いわけですから、そうした場合その三万二千円の差額について、国民として国に生活扶助の申請をしてその差額をもらう権利が当然あると私は思うのですが、その場合に厚生省はどうしますか。
#191
○山本説明員 生活保護法の生活扶助を含めた生活保護と申しますのは、国民が自分の持っております資産、能力、収入その他でもって最低生活が維持できません場合に、そのできない限度で差額を給付するものでございます。したがって、ただ月給が幾らであるということだけで判断するわけではございません。持っております資産でございますとか、そのほか他からの援助でございますとか、あるいはさらに年に不定期に入ります収入でございますとか、いろいろなものを総合的に調査いたしまして、総合的な判断の上で御申請があれば判断をするということになるわけでございます。
#192
○小宮委員 私が言っておるのは同一条件の人で、働いていまの最賃制を適用されて千七百九十四円かもらって四万何がしにしかならぬ。それで片一方の生活保護では九万三千円もらっておる。同一条件の場合に、みずから働いて得る収入が生活保護基準より少なかった場合は、これは当然生活扶助の申請をやってその差額をもらえる権利があると私は思うのですが、同一条件の場合どうですか。
#193
○山本説明員 条件といいますのは、いま申し上げましたように収入、資産その他を考えまして、その結果最低生活としまして私どもが標準四人世帯でしたら一級地で先ほど申しました九万何千円という数字と比べるわけでございます。その結果、そこに三万でも四万でも足りない金額が出てまいりますと、これは申請に基づいてその差額を支給いたします。
#194
○小宮委員 わかりました。そういうことははっきりしておるわけです。皆さん方の方はこれでほっとする人が出てきたら困るわけですけれども、私が言いたいのは、いまの最賃制度がいかに低過ぎるかということを言っておるわけですよ。だから、やはり最賃は少なくともわれわれ野党四党が要求しておるところぐらいまで引き上げて、みずからの労働の対価として得る賃金が余りにも低過ぎるということからこの問題をわれわれは考えたわけですから、そういうような意味では、これは今後審議会でどのように審議されるか知りませんけれども、これは従来のようなただ単に一時的に引き上げていくというようなことでなくて、抜本的に、先ほど出ました――私は、失対賃金の問題も言いたいのですよ。失対賃金にしたって、その地域の賃金の実情を考えて決めると言いながら、むしろ失対賃金の方は失対賃金審議会にかけて、その場合は労働大臣、政府がある程度干渉するわけですから、いまの最賃より高いのですよね。東京都の場合も、千七百九十円というのは一番最低のランクにようやく追いついたわけだから。そういうように同じ審議会があって、しかもそういういろんな制度がありながら、最賃制度というのはいかに低過ぎるかということを皆さん方に知っていただくために私は言っておるわけです。
 そこで、支払い能力の問題が先ほどからいろいろ言われておるわけですけれども、この支払い能力の問題について丹下参考人はどのように考えておられるか、ひとつお聞きをします。
#195
○丹下参考人 現状を固定して考えますと、確かに支払い能力の問題が出てくるという危惧はあると思うのです。しかし問題にすべきことはそういうことではなくて、労働者が憲法や労働基準法に定められておりますようなそうした生活を営める賃金を確保していく、こういうことを基準にして、それで企業運営が成り立つような政策的な諸施策を講ずる、こういうのが政治のあり方ではないか。そのためには、野党四党の中でもそれに関連するさまざまな政策を国会の場で御審議なさるというふうに伺っておりますから、その面からカバーしていくべきじゃないか。当然、産業構造の問題等々についてもいまのままでよしとはしないわけでありまして、そういう立場が貫かれるような他の諸施策を講ずべきだというのが私たちの考え方であります。
#196
○小宮委員 従来は、最低賃金の問題は労働大臣が中央最低賃金審議会に諮問をする。そこからまた今度は地方へといき、長いときは一年ぐらいかかるのですね。それでは物価がどんどん上がっていくときに実際後追いもいいところで、少し上げてみたって、そのときはもう次がまた上がっておる。後追いどころか、もう実態に即したやり方にならぬのですよ。
 だから、こういうようなことを考えた場合に、今後どういうような運用をされるか知りませんけれども、たとえば、中央最低賃金審議会を開くとかなんとかいうことも必要ではありますけれども、賃金なら賃金スライドするというような応急な措置をとるような運用を考えぬと、いまのままでは、これはおそらく一年ぐらいかかるわけですから、それではどうにもなりません。そういう賃金スライドをわれわれは要求したいんだけれども、一応物価スライドの問題とかいろいろございますが、そういったスライド制についてどういうふうに考えておるかということを労働省にお聞きします。
#197
○東村政府委員 ただいま先生のお言葉にございましたように、おくれるんではないかというお話でございます。御参考までに申し上げますと、昭和四十九年の地域別最賃は、先ほど申し上げましたように二九・八%上がりました。これに対して毎月勤労統計の水準は二四・七%でございます。消費者物価も二四・五%程度でございますので、その実質的な賃金の上昇というのは少ないかもしれませんが、一応こういうふうなかっこうでやっております。
 ただ先生いま御指摘のような、これからも賃金とか物価がスピーディーに上がる情勢だから物価スライドをというお話でございますが、これは各地方最低賃金審議会においてやるたてまえに現在なっておりますので、その地方最低賃金審議会ごとでいろいろ御相談をされて、しかし全体としては御指摘のように実効性の上がるような形で改定をすることが望ましいということになっているわけでございまして、直ちに物価スライドではございませんが、そういう賃金とか消費者物価におくれないようにという一般的な考え方でやっておることは事実でございます。
#198
○小宮委員 そこで一つだけ黒川参考人にちょっとお聞きします。
 ぼくらもいろいろ話を聞くのですが、大企業の場合は労使で話し合って賃金決定がなされるわけですけれども、それが結局、特にこういうような不況の場合はたとえば下請企業労働者の方にしわ寄せされる。賃金のベアにしましても、たとえば一万五千円であったとしても、今度は関連下請企業の場合は、実際はそれの三分の一ぐらいの賃上げしかできない。あるいは一時金にしても、おそらく三分の一ぐらいしかその一時金を出すことができないということは、大企業が労使で賃金決定がなされたそのしわ寄せが、下請企業の、たとえば発注単価の問題とかあるいは見積もり工数を非常に削減されるとかいうことにかかってくるわけです。ですからそういったことで大企業と中小企業、特に最賃の該当者等については非常にそういうような問題が起こるわけです。だから本質的な問題があるのですけれども、そういう場合にそういうような人たちに対して制度的な、政策的な問題もありますが、たとえば労働組合側としてもそういうような人たちにしわ寄せが行かないように何とか配慮するとかそういったごとも、ただ自分の賃上げが終わったら、もうそれでそういうような人たちにどういうようなしわ寄せが行こうとわれわれは関知しないのだという態度では、弱者救済の立場からもそれでは済まされぬ問題ではないかというように私は考えますので、その点についての労働組合側としての立場も聞きたいし、ひとつそういう立場で岡村参考人でも結構ですが、また黒川参考人からも、そういうような問題についてどう対処していくかということをお聞きして、私の質問を終わりたいと思います。
#199
○黒川参考人 現在特に不況という情勢の中で、たとえば大企業が下請企業との関係を切って、下請企業が倒産して失業者が出る、その失業者を実際的には今度は内職者として利用するというふうな情勢も具体的には知っておりますけれども、こういう形で大企業が、常用労働者は別として、そういった下請企業の賃金よりもさらに低い内職工賃で失業者を利用していくというふうな情勢があります。こういうことに対してチェックをするためにも、現在のような不況の情勢では、ますますもって底を設けて、下請工賃までも含めて最低賃金が適用されるという形をとってそういうことを防ぐ別の措置をとらざるを得ないような状況を今度つくっておかなければならない。そういう意味で私としては、労働組合、組織労働者が、現在でも真剣にやっておられると思いますが、もっともっと真剣に労働組合の賃上げのみならず、全国全産業一律の最賃制のために努力をするという必要があるんではないかというふうに考えております。
#200
○岡村参考人 一般的なことは黒川先生が言われましたけれども、組合側の方でいままでやってきたこと、ないしはこれから目指していることを含めて、若干申し上げておいた方がいいだろうと思います。
 御存じのように、別に今日の時点だけじゃなくて、いままでの景気循環の過程でもそういうことはあったわけであります。私たちがやってきたのは、これは総評だろうが中連だろうが同盟だろうが、程度の差はありますけれども、一般的にやってきたのは、賃金の場合で言えば、春闘相場を中心にして大企業、中小企業の格差をなくしていくという努力をしてきたわけであります。ところが、特に不況期ということになりますと、そういう中で具体的に親企業の方が下請単価を下げるとかそれから代金の支払いを延ばすとか、極端な場合には仕事をなくす。特に、一次下請ぐらいのところはいいのですけれども、二次、三次、四次というふうに下へいけばいくほどそういうかっこうになってくる。それからこの問題で言えば、本工労働者は直接に首を切らないで臨時なりパートなりをまず切っていく、こういうようなことが行われてきているわけであります。
 午前中の際にも私申し上げましたけれども、日本の組合は企業別組合で非常に企業意識が強くて、なかなかこういう問題について全面的に対応できなかったという歴史を持っているわけであります。しかし、そうは言ったってこの問題を放棄するわけにはいかぬし、今日の状況で言えばこういう問題を放置することは、午前中も申し上げましたけれども私は社会的にも罪悪だという考え方にわれわれとしては立っているわけであります。したがいまして、従来やってきたのはこういう人たちを組織をして自分たちの組合に入れる。組合に入れなくても、別個の場合でも、賃金、労働条件についてはできる限り本工並みの水準を取っていくというような仕事をやってきたわけでありますけれども、最賃法との関係で言えば全国的に最低の歯どめをかけると同時に、先ほどから議論になった、産業別の労働組合が同一産業の大企業のみならず中小企業なり下請企業なり臨時、パートを含めて最低賃金を取っていく、そういう場合に拡張適用というものが有効な方法にもなるわけであります。そういう努力もしていきたいし、それから部分的にではありますけれども、先進的な組合の場合でいえば、下請工賃をめちゃくちゃに切り下げることについて親企業の組合が団体交渉でそういうものを引き上げるというような努力も幾つかやられているわけであります。そういう多面的な努力を今後もやっていって社会的にそういう差別をなくしていく。そういう中で最低の生活水準を維持し、雇用を守っていくという運動についてこれからやっていきたいという考え方を持っているということを申し上げておきたいと思います。
#201
○小宮委員 質問を終わります。
#202
○大野委員長 以上で質疑は終了いたしました。
 参考人の方々には長時間にわたり御出席をいただき、また貴重な御意見をお述べくださいまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。
 次回は明後十九日木曜日午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後五時三分散会
ソース: 国立国会図書館
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