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#1
第075回国会 大蔵委員会 第7号
昭和五十年二月十八日(火曜日)
    午前十時三十三分開議
 出席委員
   委員長 上村千一郎君
   理事 伊藤宗一郎君 理事 浜田 幸一君
   理事 村山 達雄君 理事 山下 元利君
   理事 山本 幸雄君 理事 佐藤 観樹君
   理事 山田 耻目君 理事 増本 一彦君
      越智 伊平君    大石 千八君
      金子 一平君    鴨田 宗一君
      小泉純一郎君    齋藤 邦吉君
      塩谷 一夫君    野田  毅君
      原田  憲君    坊  秀男君
      宮崎 茂一君    村岡 兼造君
      毛利 松平君    山中 貞則君
      高沢 寅男君    広瀬 秀吉君
      藤田 高敏君    武藤 山治君
      村山 喜一君    横路 孝弘君
      荒木  宏君    小林 政子君
      広沢 直樹君
 出席政府委員
        大蔵政務次官  森  美秀君
        大蔵大臣官房審
        議官      旦  弘昌君
        大蔵省主税局長 中橋敬次郎君
        国税庁直税部長 横井 正美君
 委員外の出席者
        経済企画庁国民
        生活政策課長  降矢 憲一君
        自治省税務局固
        定資産税課長  川俣 芳郎君
        大蔵委員会調査
        室長      末松 経正君
    ―――――――――――――
委員の異動
二月十五日
 辞任         補欠選任
  坂口  力君     正木 良明君
同日
 辞任         補欠選任
  正木 良明君     坂口  力君
同月十七日
 辞任         補欠選任
  松浦 利尚君     楯 兼次郎君
  村山 喜一君     多賀谷直稔君
  広沢 直樹君     矢野 絢也君
同日
 辞任         補欠選任
  多賀谷直稔君     村山 喜一君
  楯 兼次郎君     松浦 利尚君
  矢野 絢也君     広沢 直樹君
    ―――――――――――――
二月十四日
 所得税法の一部を改正する法律案(内閣提出第
 七号)
 法人税法の一部を改正する法律案(内閣提出第
 八号)
 租税特別措置法の一部を改正する法律案(内閣
 提出第二二号)
同月十五日
 付加価値税の新設反対等に関する請願(井上泉
 君紹介)(第四九八号)同(芳賀貢君紹介)(
 第五五八号)
 企業組合に対する課税の適正化に関する請願
 (熊谷義雄君紹介)(第四九九号)
 同(浦野幸男君紹介)(第五五六号)
 桐たんすに対する物品税に関する請願(伊東正
 義君紹介)(第五〇〇号)
 同(橋口隆君紹介)(第五八四号)
 共済保険の育成に関する請願(唐沢俊二郎君紹
 介)(第五〇一号)
 同(倉石忠雄君紹介)(第五〇二君)
 同(小坂善太郎君紹介)(第五〇三号)
 同(小川平二君紹介)(第五八五号)
 同(小沢貞孝君紹介)(第五八六号)
 同(吉川久衛君紹介)(第五八七号)
 同(羽田孜君紹介)(第五八八号)
 大和基地跡地の公共的利用に関する請願(大野
 潔君紹介)(第五五七号)
 葉たばこ収納価格の引上げ等に関する請願(小
 林政子君紹介)(第五五九号)
 同(小林政子君紹介)(第五八九号)
 新座、朝霞、和光市内の米軍基地跡地の無償払
 上げに関する請願(小川新一郎君紹介)(第五
 七七号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 入場税法の一部を改正する法律案(内閣提出第
 三号)
 相続税法の一部を改正する法律案(内閣提出第
 二号)
     ――――◇―――――
#2
○上村委員長 これより会議を開きます。
 入場税法の一部を改正する法律案及び相続税法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。
 これより両案について、政府より提案理由の説明を求めます。森大蔵政務次官。
    ―――――――――――――
 入場税法の一部を改正する法律案
 相続税法の一部を改正する法律案
    ―――――――――――――
#3
○森(美)政府委員 ただいま議題となりました入場税法の一部を改正する法律案及び相続税法の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由及びその内容を御説明申し上げます。
 まず、入場税法の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。
 政府は、今次の税制改正の一環として、最近における入場税負担の現状に顧み、その負担の軽減を図るため、映画、演劇等の免税点を引き上げるとともに、税率の一本化を行うほか、所要の規定の整備を行うこととし、ここにこの法律案を提出した次第であります。
 以下、この法律案につきまして、その大要を申し上げます。
 まず、映画、演劇等の免税点を大幅に引き上げることといたしております。
 すなわち、現行の映画、演劇等に適用される免税点は、百円でありますが、これを、映画については千五百円に、演劇、演芸、音楽、スポーツ及び見せ物については三千円に、それぞれ引き上げることといたしております。
 次に、入場税の税率を一本化することといたしております。
 すなわち、現行の入場税の税率は、映画については、一人一回の入場料金が千円以下の場合は五%、千円を超える場合は一〇%、演劇、音楽等については、一人一回の入場料金が二千円以下の場合は五%、二千円を超える場合は一〇%、競馬、競輪等については、一律一〇%となっておりますが、映画、演劇等の免税点の大幅引き上げにより五%税率を解消し、催し物の種類等にかかわらず、一律一〇%にすることといたしております。
 以上のほか、興行場経営者等の事務負担を軽減するため、興行場の開廃申告の制度を簡素合理化する等所要の規定の整備を行うことといたしております。
 次に、相続税法の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。
 政府は、今次の税制改正の一環として、最近における相続税及び贈与税の負担の状況に顧み、配偶者を中心として負担の軽減を図るとともに、制度の整備合理化を図るため、ここにこの法律案を提出した次第であります。
 以下、この法律案につきまして、その大要を申し上げます。
 第一は、相続税負担の一般的な軽減であります。
 まず、相続税を課税するに当たって遺産から控除する額を、定額控除にあっては現行の六百万円から二千万円に、法定相続人比例控除にあっては現行の百二十万円から四百万円に、それぞれ引き上げることといたしております。なお、その際、従来の配偶者控除は、次に申し述べます配偶者の負担軽減措置に吸収することといたしております。この結果、相続税の課税最低限は、配偶者を含む法定相続人五人の場合、現行の千八百万円から四千万円に引き上げられることとなります。
 また、相続税の税率につきましても、その適用区分を拡大することにより、負担の軽減を図るとともに、最高税率を現行の七〇%から七五%に引き上げることにより、相続財産が高額な場合における課税を強化することといたしております。
 第二は、配偶者に対する相続税負担の軽減であります。
 すなわち、配偶者の相続財産については最高三千万円を非課税とする現行制度を抜本的に拡充し、配偶者が取得した財産のうち、遺産額の三分の一相当額か四千万円のいずれか高い金額まで相続税を非課税とすることといたしております。
 第三は、贈与税負担の軽減であります。
 すなわち、贈与税の基礎控除を現行の四十万円から六十万円に、居住用財産についての配偶者控除を現行の五百六十万円から一千万円に、それぞれ引き上げますほか、贈与税の税率につきましても、相続税の税率に合わせて所要の調整を図ることといたしております。
 以上のほか、相続税の障害者控除及び未成年者控除の引き上げを行い、また、死亡退職金及び死亡保険金の非課税限度の引き上げを行うとともに、重度の心身障害者に対する贈与税の非課税制度を創設する等の措置を講ずることといたしております。
 以上、入場税法の一部を改正する法律案及び相続税法の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由とその内容の大要を申し上げました。
 何とぞ御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
#4
○上村委員長 これにて両案の提案理由の説明は終わりました。
    ―――――――――――――
#5
○上村委員長 これより質疑に入ります。
 質疑の通告がありますので、順次これを許します。高沢寅男君。
#6
○高沢委員 ただいま提案説明のありました両案のうち、入場税法の改正について御質問申し上げたいと思います。
 今回の改正がいわば非常に大幅な免税点の引き上げであるということ、そのことによって入場税の負担が軽減をされる、このことについては私たちも大変評価をしているものであります。従来の国会で入場税の論議のときに、私たちもいつもこういうふうな立場で大幅な税の軽減のための措置を要求してまいりましたが、今回の改正ではかなりにその措置がなされたということは、まず評価をいたしたいと思うわけであります。しかし、なお、その上に立って問題点があります。こういうことでもってひとつ御質問をいたしたいと思います。
 まず、今度の改正によってどういうふうな変化が生ずるかというその前提として、いまの映画なり演劇なりあるいは音楽会なり、そういうふうな催し物の関係の入場料金が現状においては大体どういうふうな水準になっているか、まずその実態の面で現状を御説明願いたいと思います。これは局長からお願いをいたします。
#7
○中橋政府委員 私どもの資料としましてございますのは古うございまして、四十八年度の数字でございますが、そこにおきますところの催し物別の入場料金の平均を申し上げさせていただきます。
 まず、映画でございますけれども、平均は五百二十五円となっております。それから、いわゆるなまものの中で演劇でございますが、一千七十三円。演劇のほかの演芸等でございますが、七百四十七円でございます。音楽は九百四十円。スポーツは八百五十五円で、先ほど申しましたいわゆるなまもの、演劇からスポーツまでのものの平均が八百七十三円でございます。
 それから、競馬、競輪等いわゆるギャンブルに対する入場料金は百円が平均額になっております。
 全部の、ただいま申しました映画から競馬などまでのすべての催し物の平均額を申しますと、五百三十一円ということになっております。いずれも税抜きの価格でございます。
#8
○高沢委員 いま局長から、平均で入場料金の四十八年度の状態の説明があったわけですが、この平均の中には今度は料金の安い部分と高い部分、Aクラス、Bクラスというような中身があるわけですが、そういうふうな現状の中で、今度の改正で入場者の数の中のどのくらいの比率が免税点以下になって税を免れるということになるのか、その辺の比率はどうでしょうか。
#9
○中橋政府委員 ただいま申しましたいろいろな催し物につきましての入場料金を階層別にとってございまして、それの入場料金を払いながら入場しておる人がいまの御質問のお答えになるかと思いますので、入場人員で申し上げますと、やや推計を交えまして五十年におきますところの新しい免税点におきます課税人員というものを考えてみます。
 まず、映画でございますけれども、映画への入場人員は一億八千九百万人と推定いたしております。その中で新しい免税点千五百円というものを境にいたしまして、いわゆる課税の入場料金を払うであろうと見込まれます者ば約百万人ございます。したがいまして、総入場人員の一億八千九百万人に対しまして一%弱ぐらいが入場税を課税されまして入場する人員であろうというふうに見込んでおります。
 それから、いわゆる演劇等のなまものでございますけれども、これに対する入場人員は九千八百万人あるだろうというふうに見込んでおりますが、新しい案によりますところの入場税の免税点が三千円ということになりますれば、そのもとにおきまして入場税が課税されて入場する人は二百万人と見込んでおります。したがいまして、総入場人員推定の数に対しまして約二%ということになります。
 競馬、競輪等につきましては、免税点を改正いたしておりませんから、総数は一億三千三百万人ぐらい入場する中で、現行のままの免税点三十円を境にいたしまして課税を受けて入る人は六千四百万人、総入場人員の推定に対しまして約四八%程度になると思います。
#10
○高沢委員 いまの御説明で、今回の免税点の引き上げによって映画、演劇というふうな関係においては、ほとんど大部分が免税点以下になるということが説明をされたわけです。このことは大変結構なことだと私は思うわけですが……(「そんなことは五年前から言っておる」と呼ぶ者あり)いま五年前から言っておるという声も出たわけですが、問題は、今後の問題だと思うのです。
 いまの時点では、いま局長の説明されたようなことに五十年度の見込みではなるということだと思うわけですが、現実には、御承知のとおり物価の上昇というふうなものが非常に早い、こういう実態にあるわけです。そうすると今度は映画なり演劇をやる側の人から見ても、当然劇場費であるとか仕込み費であるとか、いろいろな経費も上がる。そうすると、入場料金というものも上げていかなくてはならぬ、こういう一つの客観的な事情があるわけであります。
 そうしますと、私の調べた入場料金の現状、これはなまものでありますが、たとえば音楽の関係であれば、NHK交響楽団の入場料は千円ないし二千円、そういう料金になっております。新日本フィルハーモニーの入場料金は千五百円から二千五百円、宝塚歌劇の場合には四百円から二千八百円、それからいま帝劇でやっておる「勝海舟」が七百円から三千円、こんなような実態になっております。外国から招聘した演奏で見ても、バルトーク四重奏団千五百円から三千円、こういうふうな姿になっております。
 そうすると、こういうふうなところは、今回なまもの三千円に上げられたその免税点に大体上の方はすれすれというところまで現に来ておる、そういう入場料金の実態があるわけです。これが来年、再来年、これから物価が上がるという状況が進む。したがって料金の引き上げもせざるを得ないということが進む。そうなると、今回せっかく免税点の引き上げによって入場税を課税されなくなったそこのところが、また免税点の上へ頭が出てくる、それで課税されるというふうになってくる、こういうふうな過程にこれから進むというふうに見なければいけないと思うわけです。
 そうすると、こういう事態を防ぐためには、当然、物価の動向、経済情勢の動向に応じて、今回の千五百円と三千円というこの免税点は弾力的に見直しをしていくということが必要になるのじゃないか、こう思うわけです。そういう点からいって、しかし見直しをしていくという場合、どういうふうな原則で見直しをするかという問題が今度出てくると思うのです。たとえば年金なんかの場合には物価に対するスライド制、あるいは賃金に対するスライド制というふうな議論があるわけですが、この免税点の場合にはどんな原理といいますか原則でそういう見直しをやっていくのが適当かという原理上の問題が一つあります。
 それからもう一つは、今度は実際の行政上の措置として、こういう今後の物価の推移に対して、たとえば来年あるいは再来年というふうな比較的に時間的に短い期間のうちに弾力的に見直しをしていくということが必要になるのじゃないかと思いますが、こういう免税点の見直しということの原理上の問題、これはどう考えるべきか、これはひとつ政務次官から考えをお聞きしたいと思います。
 それからまた、いつごろどういうふうなタイミングで見直しをしていくか、そういう行政上の実態の面では局長からひとつ考えをお聞かせをいただきたいこう思います。
#11
○森(美)政府委員 これは長い問いろいろ課題になって、ことしようやく実現したわけでございますが、やはり物価の趨勢その他を見まして、また来年、再来年、いろいろな事態に即応して考えていこう、こう考えております。
 もう一つはどういう……。
#12
○高沢委員 見直しをする場合の原理上の問題をどこに据えるかということです。
#13
○森(美)政府委員 これはやはりサービス課税、ほかのものもございますので、そういうものとバランスをとりまして、誤りないようにやっていきたいと考えております。
#14
○中橋政府委員 ただいまお示しのように、確かに過去におきます映画あるいはなまものの催し物の入場料金というのは、逐次上がってまいっております。ここ四、五年考えてみましても、大体一割とか二割の率でもって上昇いたしておりますから、今回の改正で大幅に免税点の引き上げをやっていただきました後におきましても、ただいま政務次官からお話がございましたように、ある程度の上等なものについての課税というのは、今後も入場税として期待をしなければなりませんと思いますけれども、現在考えております程度の、大方の人たちのそういうものへの入場についての非課税ということを考えます場合には、やはりときどきの見直しが必要であろうと思っております。
 それで、一体どういう原理原則でそういうものを見直したらいいかということでございますけれども、一つには、先ほど政務次官からお話がございましたように、国税、地方税で入場税以外につきましてもサービス課税が行われております。たとえば国税で申し上げますと、通行税というのがございます。これにつきましては、いわゆる寝台料金等について、多くの人たちが利用できるような寝台料金は非課税というのが大体原則として出ておりまして、その値段の引き上げに伴いまして、免税点の引き上げを随時やっていただいております。
 それから地方税でございますけれども、料理飲食税とかいうものにつきましてはそれぞれの免税点がございますが、それも随時引き上げが行われております。
 それから、入場税の分身でございますけれども娯楽施設利用税というのがございます。そういうものにつきましてもサービス課税が行われておりますから、そういったいま申しましたような税目についての一連のサービス課税との権衡をとりながら、しかも入場税といいますものがいろいろな文化的、芸術的な催し物への入場ということもかなり絡んでおりますから、現在の免税点で課税しない部分というようなものを頭に置きながら、今後の入場料金の上昇を考えつつ引き上げを図ってまいらなければならないと思っております。
 今回、映画につきまして千五百円、なまものにつきまして三千円という免税点を設定しましたときの考え方は、まず基本的には、四十八年に入場税の税率が二本立てにされました。そのときにいわゆる映画について一〇%、高い方の税率がかかる、あるいはなまものにつきまして一〇%、高い方の税率がかかるという区分がそれぞれ千円、二千円という考えでございました。それからの入場料金の上昇を勘案いたしまして、今回はむしろそれよりもはるかに大幅に五割アップという線で考えさしていただきたいと思っておるわけでございます。こういう五割アップの線で、いままでの五%課税というものをさらに上回ったところで免税点を設ければ、いままでの低率課税を受けた人よりもさらに多くの人が非課税になるであろうということを一応推定いたしておるわけでございます。
 今後、そういった今回の改正の考え方と、それからその後におきますところの入場料金の上昇、それから他のサービス課税の事情というものを勘案しながら、見直しを行わなければならないと考えております。
#15
○高沢委員 いま局長の説明されましたように、従来は百円という免税点であったわけですから、そうすると、入場料金の実態から見て、ほとんどの料金にはたとえ五%という低率であっても、それから上の方は一〇%、とにかく入場税がかかる、こういう状態で従来来たわけですね。
 それが今度の改正で、先ほどの説明では映画の場合には九九%まで税を納めなくてよろしい、それから演劇、なまものの場合でも九八%まで納めなくてよろしいというふうな状態になったと言う。私はこの状態というのは、入場税という関係で言えば一つの画期的な状態だ、こう見ていいと思うのです。
 そうすると、この画期的ないまの状態というものが今度、今後にわたって入場税を考えていく場合の、あるいは免税点を考えていく場合の当然一つの基準、出発点というふうに見るべきではないか。そうすると、先ほど局長の言われたこれからの物価の動向、それから入場料金の動きに応じて弾力的に見直しをするという場合に、その見直しをする一つのめどは映画なら九九%、演劇なら九八%、そこまでも入場者の数の中で課税から免除されるというその状態を将来にわたってとにかく持続していく。そういうことを一つのめどにして、そういう見地から、たとえば来年、再来年、また入場料金を物価の動向で引き上げるという変動が来たときに、やはり九九%あるいは九八%が税の対象から落ちるというところまで免税点を上げるというような考え方でいくべきじゃないか。
 だからその点では、今回の改正が遅かったとは言っても非常に画期的な改正であるということを一つの前提にして、この状態が今後にわたって持続されるということを一つのめどにして、免税点の見直し、引き上げを今後もやっていくのだという原理原則をここでひとつ確認をしておきたいと思うのですが、これは局長からでも次官からでもひとつお考えを聞きたいと思います。
#16
○中橋政府委員 結論としますれば、いま高沢委員がおっしゃったとおりでございます。ただ、恐らくそういうことはないと思いますけれども、私どもは入場料金の高さというものは、ほかのサービス課税をいたします場合に比較検討しなければならないという点だけは忘れてはならないと思っております。と申しますのは、そういうことはあまり想像できませんけれども、入場料金自体が非常に高くなってくる、映画というものがたとえば非常に環境のいいカムフォタブルな施設で見ることが多くなってまいりますということで料金体系が非常に高くなってまいりまして、そこへの入場者がウエートとしまして、いま考えておりますたとえば一%よりも三%、五%とふえてきたときに、はたしていま九九%まで免税をいたしておりますから、その九九%を今後も絶対的な水準として考えていいかというと、そういう場合には、やはりそういう上等な映画を見に行く人には一割程度の国庫への貢献というのをあわせてやってもらっていいのではないかというのが、今回若干の部分につきましてでも入場税の課税というのは残る、あるいは残さざるを得ないという理由であると思いますから、入場料金の高さというものを考える必要があると思います。
 しかし、おっしゃるように、そういうことは一%がそんなに高くなるという予測もそうできませんから、恐らく結論としますれば、映画で申せば大部分の九九%ぐらい、演劇その他で申せば九八%くらいの人たちというのが、入場税がこのままの状態であれば恐らく課税されないような事態というのが今後も続くであろうと思っております。
#17
○高沢委員 この点に私がこだわるのは、入場料金を払って入る、そういう側の問題をいま言ったわけですが、もう一つは、今度は特になまものの関係では、そういう演劇や音楽会というようなものを主催する側の立場というものがやはりあると思うのです。この入場税というものは入場料金を払う人が当然負担をしておる税であるわけですが、しかし、その主催者側にしてみれば、結局料金として入ったその収入の総額、その中からいろいろな経費も払い、あるいはまた入場税部分も税務署に納めるというふうな形になるわけで、入場税部分も実態としては一種の経費のような姿になっておる、こういう面があると思うのです。
 そういうことからすれば、演劇の主催者側、音楽会の主催者側がそういう面においていい音楽もやりたい、そして大ぜいの人に音楽を聞いてもらいたい、演劇を見てもらいたいというふうな立場でやっておる文化的な活動、芸術的な活動、これがなるべくやりやすい条件というものを保障していくという面からこの免税点の問題を考えた場合、これは免税点というものが高く画期的になされた現在の改正の線が将来にわたって持続されるということがやはり必要じゃないかというふうに私は考えるわけです。
 そういう点で、この入場税を払って入る側の国民の立場と、それからそういう催し物をやる側の主催者側の両面の立場から見ても、いま局長の答弁にありましたけれども、今回の画期的な改正という線が将来にわたって持続されるということを主体に将来の免税点の見直しという問題はひとつ処理をしていってもらいたい、こう思うわけです。
 次の方へ移りますけれども、こども劇場の問題であります。
 こども劇場の問題については、こども劇場には入場税がかからぬようにしてもらいたいという陳情や請願というものがこども劇場の関係者からずっと長いことあったわけです。これも今回のこの改正によって、実際上こども劇場はほとんど入場税の対象ではなくなった、こういうふうな実態になったということは、私はこれは非常によかったと思うわけです。
 その上に立ってもう一つ申し上げたいことは、これもやはり文化政策あるいは教育政策ということに関係をしてくるわけですが、このこども劇場というものの性格が非常に社会教育的な性格を持っておる。これはこの前にも、実は当時の高木主税局長にもそういうことで御質問をしたわけですが、子供たちがどういうふうな芝居を見るかということから、今度はさらには自分たちでどういうふうな芝居をやるかというようなこと、それに親たちも一緒に参加する、あるいは学生のそういう演劇関係のサークルの人たちも子供たちと一緒に協力してそういうふうな催しをやるという、こういうこども劇場というもののあり方というものは、実は私は非常に貴重な社会教育的な行事じゃないか、やり方じゃないか、こう思うわけです。
 そうすると、そういうものに対しては原理上入場税はかけない、こういうふうな扱い方が、これは文化政策、教育政策という観点から当然あっていいんじゃないか。今回は免税点が非常に上がったということから、このこども劇場の関係のものはかからぬということになったわけですが、そういう実態の面はそれでかからぬことになったんだから同じことだということにあるいはなるかもしれませんが、私はそれと別に、原理上、社会教育的なそういう性格のものは入場税の対象から外す、いわば免税というよりは非課税にする、こういうふうな扱いをされる方が政策的により正しいんじゃないかというような感じがするわけです。
 そういう意味で、今回の改正ではそういうふうなことにはなっていない。免税点ということで救われてはいるわけですけれども、私はむしろ入場税の税法の扱いとしては、こども劇場というふうな対象は非課税の扱いをするようなやり方がむしろ政策原理の上から正しいんじゃないかというふうに考えるわけですが、これは次官どうでしょうか。
#18
○森(美)政府委員 高沢先生のおっしゃること非常によくわかりますが、在来こども劇場は五百円か六百円ぐらいの入場料でございましたので、そういうことは別にいたしまして、ともかく免税点の引き上げということで一括ものを考えておるわけでございます。おっしゃることはよくわかりますが、ひとつこれで今回は満足していただきたい、こう考えております。
#19
○高沢委員 今回のこの免税点の引き上げで勘弁してくれ、こういうことなんですが、政策上のそういう扱いの一つの例としては、たとえば古典歌舞伎の場合は非課税という扱いがなされている。この場合には、文化財の保存というような、一つの国の政策的な目的といったものがあってそういう扱いがなされている、こういうことじゃないかと思うわけですが、そうすると、文化財の保存というそういうふうな目的と、それから社会教育というそういう対象、それは直接には一緒のものじゃないけれども、そういう国としての政策目的の見地から入場税の中に非課税を設ける、こういうことが古典歌舞伎の場合と同じようにこども劇場の場合もあってもいいのじゃないかと考えるわけですが、重ねてその点、古典歌舞伎の関係等にも関連をつけながらお答えをいただきたいと思います。
#20
○中橋政府委員 ギャンブルへの入場を別にいたしますと、入場税をかけております催し物というものは、実は私はいまおっしゃいますようなこども劇場を含めまして、社会教育的にはみんな重要な価値高いものだと思っております。
 それで、その中で特に社会教育上あるいは次の国民のために特にそういう教育が必要であるということから、こども劇場への入場を非課税にすることは入場税法上より適当かどうかというお尋ねだと思いますけれども、それに対しまして私は、実は入場税というのは、冒頭申しましたように、本来は非常に社会教育上、文化の向上の上から言いましても望ましい催し物でございますから、一つ一つの催し物の価値判断をいたしまして、そこへの入場について入場税をかける、かけないということを諭じてまいりますれば、おそらく入場税というのはほとんど非課税にしなければならないのではないかと思っております。やはり私は、先ほどの御質問にもお答えしましたように、それぞれの催し物としては文化的にも社会教育的にも非常に価値の高い催し物ではございますけれども、それに対してかなりの金額を投じ得るという入場者の担税力にも着目をしなければならないと思っております。
 そういう意味で、従来の入場税におきましては、従前からの免税点の考え方からむしろ少額非課税というふうな観点で、非常に低い免税点でもって考えてまいりましたけれども、今回の免税点の改正が行われますれば、これはやはり先ほど一番初めに御質問になりましたように、かなり催し物の重要性も考えながら、しかもそれにある程度の入場料金を投じまして入場する人の担税力ということも加味して大幅な免税点の設定ということがなされたものと思いますから、やはりこども劇場その他の催し物の性格ということを判断いたしますよりは、むしろそこへの入場料金の高さ、それをまたある程度の水準までは非課税にしまして、その当時のいろいろな消費支出の中で、この程度の入場料金を払い得る人にはこの程度の国庫への寄与をやってもらってもいいのではないかということを見出した方がよろしいのじゃないかという考えを持っております。
 そこでまた、歌舞伎につきまして、あるいはその他、特別に入場税の非課税を設けております。これも本来は、私が先ほど申しましたような原則で律するのが一番いいと思いますけれども、やはりたとえば歌舞伎のように伝統芸能という意味で、非常にその演目なり演出なりにつきまして限定せられた厳しい条件のもとにおける催し物、それに対する入場料金が割高になり得るということ、あるいはまた国立劇場に対しまして国が助成をしておるというようなこと、そういうことを勘案いたしますれば、やはり特別の非課税という規定もやむを得ない措置である。同じく国が援助をいたしております。芸術祭等につきましても、私が第一に申しました原則をややはずれますけれども、そういった催し物の中身というものを判断いたして非課税ということも加味することはやむを得ないと思います。
 しかし、できますれば、なるべくはやはり入場料金というものの高さ、しかも今回のように非常に高い免税点を設定していただいた暁におきましては、入場料金というものに一番大きなウエートをかけて入場税を課すべきか課すべきでないかという判断をするのがより適当ではないかというふうに考えております。
#21
○高沢委員 いま局長から、文化的なあるいは教育的なという見地になれば、極端に言えば、そういうものは全部課税の対象にしないということにもなり得るという話がありましたが、私は確かに、たとえば新派と新劇のどっちが文化的価値が高いとか低いとかいうふうなことを税の観点から判定していくというような大変なことはできない、こういうふうに思うわけですが、しかし、これらの映画、演劇というふうな催し物というものが、総体として国民の生活の中で文化的なあるいは教育的な役割りを果たしている、こういうふうな大前提に立てば、今回の改正で今度は税率は一〇%一本ということになったわけですが、従来五%、一〇%という二本立てできたのが、今度は相当免税点を上げたからその上はもう一〇%一本でいい、こういうお考えだと思うのですが、やはりこういうものの税負担はなるべく軽い方がいい。文化的なものというふうな見地からすれば、むしろ一本の税率を設定するなら五%、これでいく方が、入場する側にも、それから今度はさっきも言いましたそういう催し物を主催する側にも、いずれの立場にもその方がいい、こう思うわけですが、ここら辺はひとつ五%一本という方へ直すお考えはありませんか。
#22
○中橋政府委員 入場税というものの性格から言いますれば、一〇%よりは五%の方が望ましいことは確かでございますけれども、その場合に、やはり今回免税点を大幅に引き上げまして、むしろ五%の税率の部分は免税点に吸収をしまして、一〇%の税率一本を残すことを改正でやらせていただきたいと思っておりますのは、先ほども申しましたように、現在ございますサービス課税の他の税率との権衡も考えたわけでございます。通行税、料理飲食税、娯楽施設利用税というふうなサービス課税は、やはり一〇%というものを取っております。
 したがいまして、またそれとの税目の差というものを考えれば、必ずしも私は何も一〇%でなければならぬという絶対的な命題はないと思いますけれども、やはりそういう他のサービス課税の税目におきましても、免税点と一〇%の税率というもののかみ合わせを行っておりますから、今回の改正におきましても、それに入場税を合わせたということで御了解をいただきたいのでございます。
#23
○高沢委員 この点はぜひひとつ将来の見直しの際の検討事項にしていただきたいと思います。
 それで、最後の御質問ですが、結局こういうふうな大幅な免税点の引き上げがあって、その後の実際の入場税の総体としての税収は、これは国の全体の租税財源の中で占める比率としては非常にわずかなものになっているわけですね。国の財源として入場税というものを考える位置づけはほとんど無視していい程度のものになっておるとすれば、結局、先ほど来の議論にまた戻るわけですが、この催し物というふうなものの文化的、教育的性格から言って、この際入場税というものそのものをやめていいのじゃないか。これはもともと私たちはそういう立場も持ってきたわけですが、そういう議論は当然出てくると思うわけです。そういう入場税という税そのものをなくてもいいではないか、こういうようなわれわれの主張、議論というものに対して、見解はいかがですか。ひとつこれは将来にわたっての根本的な検討事項にぜひしてもらいたい、こう思うわけです。
#24
○中橋政府委員 入場税は、税収といたしますれば、恐らく五十年度は三十億円という数字になると思います。もっともこの三十億円でございますけれども、これよりも少ない税収で一つの税目を掲げておるものがもちろんございます。ですから、金額が少ないからなくてもいいではないかということにはならぬと思いますが、先ほど来の御主張のように、その催し物の性格から言いまして、入場税をかけなくてもいいではないかという御主張は、私もよくわかります。
 ただ、また税制全体から申せば、先ほど来私がお願いをしておりますように、サービスに対する課税というのを一体どういうふうに考えたらいいか。その中で、催し物への入場というものをどういう位置を持ったものとして考えたらいいのかということとあわせて考えなければなりませんので、私どもといたしますれば、やはりその税収の金高の大小にかかわりませず、税目とすればサービス課税の中の一つの柱としまして、今後とも残していくべきものではないかというふうに思っております。
#25
○高沢委員 以上で質問を終わります。
#26
○上村委員長 広瀬秀吉君。
#27
○広瀬(秀)委員 大分大蔵委員会にごぶさたをいたしておりますが、きょうは入場税の問題について若干お伺いしたいわけです。
 この入場税は当初地方税でできたんですが、これは何年ですか。
#28
○中橋政府委員 入場税は実は日支事変と申しますか、あのときの財源調達ということをまず第一の目的にいたしまして、昭和十三年に国税として創設をせられました。それから戦争の財政を賄う必要から逐次税率が高くなってまいりまして、戦後、昭和二十二年まで国税として残ったわけでございます。
 そこで、二十三年から地方税に移管せられまして、二十八年まで存続せられております。その間におきまして逐次税率は下がってまいりましたが、その当時は五〇%という税率が基本でございました。
 昭和二十九年に地方税の大幅な改正がございまして、そこで国税に移されたわけでございます。
#29
○広瀬(秀)委員 この入場税の歴史をたどってみますと、昭和十三年に日支事変という言うならば戦時課税として出発をして、国税から地方税に移管される、そしてまた国税に戻ってくる、こういう経過をたどっているわけですけれども、戦時財源を確保するというような見地からこの問題に着目をして、入場行為というものを戦時というようなときにある程度抑える、そしてそれをなおやる者からは支出余力というか負担余力というか担税力というか、そういうものに着目してそこから税金を取ろう、こういう思想があったと思うのですね。
 そういうことを考えてみますと、やはり入場行為というものの中に、今日、税法の第一条によりますと、「映画、演劇、演芸、音楽、スポーツ又は見せ物を多数人に見せ、又は聞かせる場所 競馬場及び競輪場 前号に掲げる場所に類する場所で、政令で定めるもの」、こういうところへの入場には法律により入場税を課するんだということになっております。もちろんこれは時代の背景というようなものが、戦時中と平和憲法を持つ今日の平和的、民主的な状況、そして当時の非常に窮迫した生活の状況というような中で戦時財源を支えなければならぬというようなものとはもう全然違うんだ、こういうことになっていると思うのですね。そこで、やはり基本的には、こういう戦時課税として出発したというようなものについては、その原点に返った見直しというのがやはり必要だろうと思うのです。
 そういう意味で、まあ今度の改正も幾らかそういう意思というものがそのバックグラウンドに、主税当局にも働いたというように私は考えるのですが、その辺のところについて、入場税というのは本質は一体何なんだ、そういうものについての基本的な主税当局の見解を聞いておきたいと思います。
#30
○中橋政府委員 入場税は、お示しのように確かに戦争中に発生したものでございます。今回の改正で大幅に入場税の減税をお願いいたしておりますのは、むしろその発生の原点がそこにあるから、今日において入場税の課税が妥当でないから大幅な減税をするという考えに発しましたよりは、むしろかねてのいろいろな文化的な御議論もございましたし、幸いそういう財源的な事情も許される今日におきまして、大幅に免税点を上げていただきたいというのが私どもの考えでございます。
 と申しますのは、わが国の今日の税制が、戦後いろいろ体系づけられましたけれども、終戦に至りますまでにかなり整備をせられたというのは、あの昭和十三年から昭和十五年にかけましての戦争を契機としまして、財源調達という観点から税制を総合的に判断しなければならないというむしろ外的な要請から今日の税制の基本ができ上がっていたのではないかと思います。そういう点から言いますと、いわゆる消費課税につきましてかなり大幅に取り入れたのは、実はこの昭和十三年のころでございます。もう一つ、やはり戦時税であるからということでいろいろ批判を今日も受けておりますのは物品税でございます。
 そういうふうに生まれはその時期でございますけれども、そういう外的な要因のもとに消費課税というのを非常に広範な税制という観点から見直しをされた。そういう結果、一つはサービス課税についての課税も行われましたし、あるいは物品というものの消費についての担税力に着目しました課税というのも始まったというふうに思っております。もちろんその当初は、おっしゃいますように、消費抑制という観点もあったと思いますけれども、今日振り返ってみますれば、やはりその時代におきます消費課税の採用というものは、今日の、戦後におきますいろいろな税制の整備と相まちまして、やはりわが国の税制の中では一つの大きな基本となっておるというふうに私は思うわけでございます。
 もっとも、それだからと申しましても、許されれば今回のような入場税の大幅な減税もやっていただくということでございまするから、必ずしもその考え方を固執はいたしませんけれども、戦時税でありますから今回減税をお願いするという気持ちは実は持っていなかったのでございます。
#31
○広瀬(秀)委員 いまはしなくも主税局長から物品税の議論とちょっと似たところがあると言われたが、私もそういう立場でちょっと質問したいのだけれども、戦時財源を確保するというようなことで消費を抑制して、その消費抑制というようなことでやり玉に上がったのがこういうものであり、奢侈的物品の消費であったと思うのですね。いまや状況はまさに一変して、人間そのものを大切にしていくのだ、生活優先、福祉優先というような段階を迎えている。
 福祉国家、文化国家、こういうようなことになってまいりますと、かつて戦時中に、これは抑えるべきものである、抑制すべきものである、言うならば奢侈的行為である、奢侈的消費である、ぜいたくであるというような観念がやはりその当時の為政者には当然強く働いたと思うのですが、そういうものが、今日の段階を迎えれば、もうそれは当然のことになってくるわけですね、人間が人間として人間らしく生きるという原点に立てば。
 ところが、そういう演劇を見ることも映画を見ることもスポーツを楽しむことも――みずからやるということでは入場税はかからぬけれども、それをながめて楽しむというようなことも、あるいはギャンブルまでもが取り入れられてきておるわけだけれども、そういう人間の、何といいますか、これはいささか劣性の部分かもしれないけれども、やはりそういうものも含んだ人間であるというようなとらえ方でそういうことまで来ているのだろうと思うのですけれども、とにかくこういう入場という行為を奢侈的行為であるとか、一般のレベルより突き出た、言うならばぜいたくな消費行為、そういうものであるという認識がやはりどうしても基本にあるだろうと思うのです。そういう点はこの入場税の中にいまでもやはり残っている、こう見るわけですが、当局としてはいかがですか。
#32
○中橋政府委員 確かに当時のいわゆる国民の消費生活と、今日の国民の消費生活というのは非常に変わっておると思います。そのときのたとえば催し物への参加あるいは消費物品の消費というものがぜいたく視されておったのは、今日においてはかなり違った見方であると思いますし、むしろもっと一般の国民の生活に溶け込んでおるということはおっしゃるとおりだろうと思います。
 それで、それに対する税金でございますけれども、むしろ発足の当初はそういう消費を抑制する観点があったと思いますが、そういうものを漸次、戦争が終わりますまではむしろ高めてまいりましたのを、だんだんとまた払拭をしてまいったのが今日までの経過ではないかと思います。そういう点で言えば、私は、入場税の歴史を振り返ってみまして、その当初あるいは戦争中に経過いたしましたものの払拭が他の消費税に比べまして非常に遅かったのではないかという観点はやはりぬぐえない、そういう観点をとらざるを得ないと思います。
 先ほど申されました物品税でございますけれども、あの戦争中に至ります多数の課税物品は、今日非常に整理をせられておりまして六十八品目になっておるということでございますし、他の消費課税におきましても、サービス課税におきましても、免税点というのが逐次上げられてきておるのが大方の趨勢でございます。そういう観点から申せば、確かに入場税の免税点というものの考え方は、従来どおり、長い間いわゆる小額不追求という思想で推移してきたのではないかと思います。そういう点の反省というのは今日こういう大幅な免税点の改正ということで行われておりますから、そういう点では確かに従来の入場税についての私どもの物の考え方というのを今回大幅に変えたということになるのかもしれません。
#33
○広瀬(秀)委員 そこで、さっき高沢委員も質問をしておったわけですけれども、今回の改正で、いままで長いこと議論をしてきた問題が――先ほど主税局長が数字を言いましたけれども、たとえば映画のごときは延べ一億八千万というような人数が見ている。こういうようにかつてある程度奢侈的行為だと見られたものが、いまや国民がすべて年に二回ぐらいは映画も見る。まあこれは平均的ですから、大人の世界では五回も十回もあるいはそれ以上も見る人もあるし、それ以下の人もあるかもしれないけれども、とにかくもう映画とか演劇とかスポーツとかという場に入場するということを通じて教養を豊かにしたり、あるいは社会人としての社会教育的なものを自然に身につけるというようなことになってきているわけですから、そういうものが税の対象になるということはおかしいわけですから、そういうところで今回かなりの部分を、一億八千万人の中で、さきの数字では百万でしたか、そのくらいしか課税対象人員にはならぬだろうというような話になってきた。これは大変結構だと思うのです。
 それじゃそういうものをどういうところで線を引いてという問題が、入場税の問題ではこれからも残ると思うのです。全部これを廃止してしまえば問題はないと思うのですけれども、今日の段階では私はまだ全面的に廃止してしまえという議論も、これは別な角度で、たとえば十万円の入場料金を払ってフランク・シナトラをインペリアルホテルで豪勢に聞いたというような人からまだ負担を求めるということは、私どももやっぱり考えていいことだ、こういうように考えるわけですね。ですから、そういう意味から言えば、この課税最低限をどういうところに設けるか、非課税限度というようなものをどの点に設けるかということは、やはりそのときそのときの状況において国民の合意というものが得られる程度のものということが一番適正の基準であろうと思うのですね。
 そういう立場で、文化政策とか何とかということを言い出せば、またこれはこれなりのむずかしい問題がありますけれども、そういう見地から判断をする場合に、非常に広範な国民の、言うならば大衆、特に勤労大衆のほとんど大部分が現にその入場行為に参加をして入場しておるというようなものにはかからぬ、しかし現段階においてもなおかつ非常に奢侈的と思われる特別な行為であると見られるようなものに対しては、やっぱり税を課してもいいであろう、こういうように考えるわけです。
 そういうところに基準を置いて、かなり広範な大衆、勤労大衆が参加をして、映画を見る、演劇を見る、これはだんだん時代が変わるに従ってそういう人数はふえてくるだろうと思いますが、そういうものを一つの目安にして課税最低限というようなものは決めていくべきだ。そしてそれを越えて、かなり飛び抜けた奢侈的な行為、かなりぜいたくな、金があるに任せて特定の者だけが享受できるといったものに対しては一定の負担を求めるということはよろしいと、いまの段階では私は言うわけです。私は入場税というものを全部取っ払った場合にはどこかでまたそれに見合うような負担を求めることを提案しながらやらないといかぬという立場で、現在そういう意味で入場税があってもよろしいと思うのですけれども、やはり皆さんの考え方というものの基点として、課税最低限を決める場合には、これは時代がかなり流動的に進展するわけですから、今度映画で千五百円、なまものの演劇で三千円というようなことを決めたけれども、それはこれから将来にわたって、そういうところに基準を置いた形で、絶えず見直しをしていくことが必要だと思うのですね。
 そういう問題について、私がいま言った大部分の勤労大衆というものがそれに参加して見られる程度のものというようなところまではかけないのだ、そういう基準というものは当然あってしかるべきだと思うのですが、その点は大分うなずいているから賛成だと思うのですけれども、そういう角度で見直しをするのだ、その基準はそうだというようなお考えですか、どうですか。
#34
○中橋政府委員 免税点をどこに設定するかという問題でございますが、これはおっしゃるように、大部分の人が入場行為を行いますについては課税にならない、やはりそういう人たちから見ても、あの程度の金額を払っておる人が税金を払わないのはおかしいではないかというような線を見出したいのでございます。一つ参酌いたしましたのは、通行税におきましていわゆるB級の寝台料金というものが、経過的にはそれを頭に置きながら免税点というのをこれまで設定をせられておりました。
 それよりもはるかに今回の免税点というのは、私はむしろ入場税の性格そのものから言いまして、もっと大幅に課税されない人の部分というものを考えたのではないかというふうに思っております。いわば一等、二等というものがあれば、二等は非課税にするという思想でございますけれども、先ほどお答えもしましたように、一%なり二%の人たちが課税になるということでございまするから、ごく一握りの、しかもかなり高い料金を負担し得る人が課税を受けるということになると思います。
 それよりももっと高い、たとえばいまお話しのように、非常に希有な何万円というような入場行為だけについて課税をしてもいいのではないかというお考えもあるかと思いますけれども、それではまた余りにも極端なことになりますので、やはり先ほど御説明しましたような五%、一〇%を接点といたしました千円、二千円の五割増ということで、今日の段階では相当程度の非課税の人が出てくるという見通しでございますし、今後ともどもそういった観点で免税点の見直しをやっていけば、おそらく大部分の人はかからないという事態は将来でき得るのだろうと思います。
#35
○広瀬(秀)委員 次官に、その点、将来の見直しの基準というのをどこに置くかということについてのあなたの政治家としての、副大臣としての所見を――私が提案をしたことに主税局長もほぼそういうつもりでこれから見直していくと言うのだけれども、その点についてのあなたのお考えをここではっきりさせておいていただきたい。
#36
○森(美)政府委員 先ほど広瀬委員から戦時課税だからというお話もございましたが、私はこの入場税というものを今後どうしていくかという問題につきましては、やはり非常に高い奢侈にわたるもの、こういったものについては当然入場税をつけていかなければならない、こういう考えでございます。
 しからば基準はどうかという問題は、やはり私はほかのサービス課税を横に見ながら考えていくのであって、これは当然入場税そのものは見直しの時期を常に持っているという立場で考えたらいいのじゃないかと考えております。
#37
○広瀬(秀)委員 その問題はそのくらいにしますが、入場税法第一条の第二号、「競馬場及び競輪場」、これは二十九年のときから入っていたものでしたかね。そのずっと前から、ずっと一番最初からこういうものが入っていましたか。これは当時は多分なかったはずですから、何年から入りましたかね。
#38
○中橋政府委員 たしか昭和十三年のときから競馬、競輪等への――競輪はなかったかもしれませんけれども、そういったギャンブル場への入場というものが課税対象になっておりました。
#39
○広瀬(秀)委員 大体戦時中ですから、非常に無理をして何もかも抑制する、歌舞音曲皆禁止だなんという時代にやがて進んでいくわけですからね、十三年から十四年、十五年、十六年と、こうなるに従って。われわれちょうど学生時代だったけれども、ダンスホールは全部禁止だとか、銀座、新宿から歌舞音曲追放だなんという時代をわれわれ青春時代に経験しているわけだけれども、しかし、歌舞音曲、映画、演劇とか、スポーツとかというようなものなどは、これはやはり人類の生み出した文化財としてそういうものを人間として享受する、その文化財を楽しむということがあったと思うのです。
 けれども、本来この賭博という行為は、刑法百八十五条ですかで処罰に値する行為として取り上げられているものなんですね。「偶然ノ輸贏ニ関シ財物ヲ以テ博戯又ハ賭事ヲ為シタル者八千円以下ノ罰金又ハ科料ニ処ス但一時ノ娯楽ニ供スル物ヲ賭シタル者ハ此限ニ在ラス」。第百八十六条はそれについて「常習賭博、賭博場開張」ということに対してさらに罪を加重するという、そういう規定もあるわけですね。まあ公営の競輪とか競馬とかというようなもの、これは本来的にはやはりかけごと、刑法では罪である、刑罰に値する行為であるという本質を持つものなんですね。それを公営にすることによって、そういうものから免れるということなんですね。
 しかも、そういうものへの入場料というものは非常に安く据え置かれている。しかし、その人間が人間らしく生きるという立場から、文化的な生活という面あるいは社会教育という面で当然必要なスポーツであるとか映画であるとか演劇であるとかというようなものの入場料は、どんどん高くなっていく。それで一定の税率がそれに掛けられるわけですから、税はどんどん高くなるというような経過をたどってきたわけだけれども、これはもう戦後、競輪、競馬あるいはモーターボートとかオートレースとか、こういうようなものがどんどん出てきて、それに対する入場者はきわめて急速に増大をしている。しかも、これが本来の人間の本性に根差したものとしては罪に当たるものだという規定が刑法にはある。そういうものを公営としてやって、しかも、それは入場することが本来目的ではない。これは入場してながめるという人は非常に数は少ないだろうと思うのです。すべてこれはやはりギャンブルをやる、かけごとをやるんだ。公営のかけごとで、百八十五条からは解放された形ではあるけれども、大っぴらにやれるんだということでそこで、車券を買い馬券を買って、偶然の輸贏というものの楽しみを最大限に味わおうということなんですね。こういうものが同じ入場税という範疇の中でやられている。
 一方においては、人間の本来的な立場で生きるとということのとうとさ、単に食うだけではないんだ、それは文化というものをつくり、また先人がつくった文化を楽しみ、そういうものを楽しみながら次の文化を築いていくというようなことで必要なものだというものと、そういう刑法で本来禁止さるべきようなものを公営にしたという形のものを同じこの法律の中に組み込んで、しかも入場そのものに対する行為に対して課するという入場税のたてまえで、したがって、入場料というものが一つの課税標準になっている。そして一方はもうきわめて低位に据え置かれて、二十円だとか三十円だとか、一番高いところでも百円だ、こういうようなことになっている。そうすれば、そういうところからは入場税というのはほとんどごくわずかしか取れない。
 こういうことであっては、私はどうも、入場税全体というものの中で整合性というか、入場税における理念的混乱というか、そういうものがどうしてもあるだろうということを考えざるを得ないわけです。そういう点についてどういうようにお考えになりますか。
#40
○中橋政府委員 確かにおっしゃいますように、競馬、競輪場への入場料金といいますのと、映画場その他の催し物を行っておるところへの入場料金とは、かなり性質的に違っておると思います。
 競馬場、競輪場などへの入場料金といいますのは、私もいわば整理料金みたいなものと思っておりまして、それですからこそ、まさに非常に低い料金で終っております。むしろおっしゃいますように、そこに入る人たちの競馬、競輪へのいわば催し物への参加ということは、入ることだけではなしに、やはり馬券なり車券を買うということで達せられるということからも、そういうふうに思われるわけでございます。
 また実際、入場税におきましても、入場料金に対して同じく課税はいたしておりますけれども、たとえば最近におきましては、映画、演劇、音楽等への催し物について五%という税率を設定いたしました四十八年におきましても、違っておるという物の考え方から、競馬場等への入場につきましては、一〇%一律の税率をそのまま据え置いたわけでございますし、免税点につきましても、映画、演劇等につきまして百円に上げました際にも、従来どおり三十円に据え置いてまいりました。そういうことから言いましても、おっしゃいますように、競馬場、競輪場への入場料に対する入場税の考え方というのは違っておると思います。
 今回も、この改正案におきましても同じような考え方から、競馬場、競輪場への入場料金につきましての入場税というのも、やはり若干異質のところがあるというところから、免税点はそのまま据え置きをお願いしておるわけでございます。
#41
○広瀬(秀)委員 競輪場なんかでは、大体、三十円というところが非常に多いのですね。そうすると、入場税は一人に対して幾らかかるのですか。
#42
○中橋政府委員 三十円でございますと、免税点ですから、税金はかかりませんけれども、たとえば百円でございますと、そのうちの十一分の一が税金でございますので、約九円が税金でございます。
 それで、全体の競馬、場競輪場への入場に対する入場税は、五十年度の見込みで約六億円でございます。
#43
○広瀬(秀)委員 オートレースあるいはモーターボート、こういうようなものを含めていわゆるギャンブル、第一条第二号、第三号の競馬場、競輪場等々の入場税の合計は幾らでございますか。
#44
○中橋政府委員 それを全部合計いたしまして、五十年度におきまして六億円見込んでおります。
#45
○広瀬(秀)委員 そうしますと、五十年度では、一挙に百十億近くも減税をして三十億にしましたということなんですが、あと二十四億は、やはり映画、演劇、スポーツという第一号の方に掲げているところから取る、こういうことなんですね。
 まあこれも、千五百円、三千円がいいかどうかという問題にも発展するわけですけれども、私どもから言えば、指定席というような特別なカムフォタブルなところ、一般と飛び離れたシートに座って、ゆっくりそういうカムフォタブルな雰囲気の中で見れるということに対しては、まだある程度取ってもやむを得ないだろうという見解を先ほども言ったのですけれども、こういうことで、三十億の中でも競輪、競馬、オートレース、モーターボートというようなところからわずかに六億しか入場税を徴収しないということを考えると、たとえばどのくらいそういうところに入場しているかということを、あなた方の資料で見ましても、四十八年度で六千四百十四万一千人、大体人口の六割は少なくとも入っておるわけですね。これだけの人が入ってこれは平均して六億ということですから、まあ一人十円ということですね。一人十円当たりの入場税しか取らぬ。
 しかも、入場することが目的ではなくて、そのレースを見ることが目的ではなくて、どれくらい車券を買い、馬券を買いというようなことで金を支出しているかということを見ますと、これは大変な金額なんですね。合計で三兆。これは昭和四十八年度の数字でありますが、中央競馬、地方競馬、競輪、競艇、オートレース、これだけで三兆一千九百六十九億、これだけのギャンブルが行われておるのですね。
 それで、たとえば金持ちは一レースについて十万とか五十万とか、あるいはそれ以上やる者は百万とかというような単位で出しておる。庶民大衆はおそらくやっとこ千円ぐらいの特券とかなんとかいうのを買うという程度でございましょう。そういうものにこそ担税力を当然求めるという思想に発想の転換をやるのが私は当然だと思うのですよ。
 ところが、ならば、ほかの文化的なあるいは体育振興の見地から、あるいは社会教育の見地から、少なくともそういう人間が正しく生きていくためにプラスになる面を持っておるものから、三十億の六億ですからまあ二〇%ですね、あとの八
〇%をそういうところから取りながら、片方でこれだけの消費行為が行われておる中で、わずかに六億の税収であるというようなことは、入場税全体の趣旨からいってこれはおかしい、異質なものをむしろ取り込んでおるのではないか、こう思うのです。
 私どもは前から、この入場税法からむしろ抜き出した形で別な法律をつくってギャンブル課税というものに当然もう踏み切っていいところへ来ておるのじゃないかということを提案しているわけなんですけれども、こういう六千四百万からの人が参加し、しかも三兆一千九百六十九億の支出をしておる。しかも、それがギャンブルである。これはなるほど七五%を支出した者に還元するということですが、これがやはりまさに偶然の輸贏にかけておるという、これにそういう支出をやるのですから、買った人全体に七割五分が平均に戻るわけじゃなくて、ある人は百倍にも、あるいは何十倍にもというような形で戻ってくる、ある人は全部出したままだ、こういうことになっているわけですね。
 そういうことですから、やはりギャンブル課税というものをやって、その車券なり馬券なりを買った段階で、それを課税標準にしてその何%かの拠出を求める。たとえば十万円買う人だったら、あるいはその五%ぐらい、あるいは三%でもいいから、その辺のところの拠出ぐらいは当然求めていいのじゃないか。それがいやならばやめればいいのであって、やめたって別にこれは――今日地方財政にかなり組み込まれてしまっておりますから、若干、減ったら大変だということもあろうかと思うけれども、これがどんどん伸びていくというような社会情勢というものは、必ずしも健全ではないと思うのですね。だから、ある程度そういうものに対して適正な負担を求めていくという新たな観点というようなものを、あなた方は持つ意思はございませんか。
#46
○中橋政府委員 競馬、競輪場への入場料金に対します課税は先ほどお答えしたような考えでございますが、むしろ、それよりも、そこで消費をせられておりますいわゆるギャンブルへの投資と申しますか、そういうものに対して担税力を求めて課税をしてしかるべきではないかということは、かねて御議論を承っておりますし、私どももいろいろ検討はいたしております。
 ただ、その場合に、いつも逢着をいたしまするのは、いまお話しのように、ギャンブルに投じました金のうち七五%が今度は勝ち馬なりへ投票した人への払戻金になるわけでございますけれども、いまおっしゃいますように、ギャンブルに対する新しい課税を行いますというときには、どうしましてもそういう七五%の払戻金率というものに変更を加えなければならないわけでございます。かつては七五%よりももっと低い時代がございましたけれども、今日ギャンブルが非常に盛んになっておるということの一つには、七五%という水準の払戻金率があずかって力があるというふうに考えられるわけでございます。
 その残りの二五%のうちで、経費に使います部分がもちろんございますけれども、国なり、あるいは主催者たる地方公共団体がいわば公の財源として使いますものは約一〇%から一三%程度になると思いますが、大体そういったものはすでにいわば公の財政に繰り入れまして使っておるわけでございます。それ以上にさらに税金を負担するということになりますれば、先ほど申しましたように七五%に食い込みまして、払戻金率というのを低下するということが必要なわけでございます。
 そうしました場合に、一番私どもの難点といたしておりまするのは、今日もやはり後を絶たないと言われておりますのみ行為でございます。今日でも、この二五%の経費あるいは公経済への投入部分というものを種にいたしまして、かなりのみ行為が行われておるということが言われておりますし、ときどきそれの犯則事犯も検挙せられておることを耳にいたしますが、これをさらに引き下げるということになりますれば、相当のそれに対する施設を講じなければ、やはり相当のみ行為というものがまたふえてまいるというおそれがあるわけでございます。どうも、そこに参りますと、私どももいつもこの問題についての障壁にぶつかるわけでございまして、今日までもいろいろ検討してまいりましたけれども、先ほど申しましたように、かなりの金額がすでに公の経済に組み込まれておるということと、それからのみ行為の推移ということから、今日までいわゆるギャンブル課税についての構想はできないわけでございます。
#47
○広瀬(秀)委員 局長の答弁はピントはずれなので、一つの問題として七五%を還元する、それからあとの二五%は市町村の経費とかあるいは収益部分として還元される、こういう話で、そっちを減らさなければならぬと言うのですが、私が言っているのは、十万円買ったら、五%ならば五千円を同時に、十万円と五千円を出させる。それでなければ車券を売らないということにしたら、そんなことはないはずでしょう。税金をその場で取るのですよ。十万円買いたかったら五千円税金を持っていかなければ買えないのだというシステムにしたらいいじゃないですか。そうすれば、何もいままでのシステムを変える必要がないわけですよ。
 自治省から調べてみましたら、都道府県で、これは四十八年度の決算で五百五十二億収益として入っている。それから市町村の決算額が二千三百億になっている。大体都道府県にはその売り上げの一一・九%、それから市町村には一〇・九%という率で入った金がこれだけだということになっているわけですね。まあ二千八百億ぐらいの地方財政に対する寄与があるという数字が盛ってあるのですよ。
 仮にいま私が言ったような形をとれば、ギャンブルをやった、車券なり馬券なりというようなものを買った人たちに払い戻す七五%ということにも手をつけずにやれるはずなんですね。そういうことになるわけですから、やはり約三兆二千億に及ぶこれだけのものに対してギャンブル課税というようなことに踏み切って一向差し支えない。
 これはひとつ次官に聞きますけれども、こういう行為、ギャンブルというものを、これだけ財源として寄与しているからということで大いにこれから奨励して伸ばしていこうという考えなんですか、それともこの程度のところで目下のところはというような、そういう考えですか、どっちなんです。これは大いに奨励し、多々ますます弁ずでやっていくべき性質のものですか。そうでない、むしろ抑制ぎみにしながら、廃止できる条件が整えば廃止していくというような方向にいくべきなんですか。これは基本問題ですから、副大臣、答えてください。
#48
○森(美)政府委員 ギャンブルを伸ばすべきかどうかという問題だと思いますが、これは私どもの立場ではちょっと御返事しかねる問題でございます。
#49
○広瀬(秀)委員 政務次官はお答えにならない。わからぬと言う。こんなことでは、この質問は留保せざるを得ません。大蔵大臣が来てから大蔵大臣に聞きます、そうでなければ決着がつきませんから。もうあなたはいい。それ以上の答えを求めてもしようがないと思う。
 それからもう一つ、のみ行為の横行というようなことが起こるだろうと言われた。これは二課長も私のところへ来て、前に査察部長時代の経験も十分お聞きしました。そういうこともあるでしょう。あるけれども、一つの秩序のある国家として、そういうものを取り締まれないはずはないのですね、本当にやろうと思えば。かなりむずかしいということはいろいろお聞きしておりますし、これは隠れて裏でいろいろそういう脱税行為、脱法行為というようなものが行われることは、ある程度あるかもしれない。しかし、これは工夫の仕方によってかなりそれを押えていくこともできるというような、大衆を信頼する気持ちで、しかもそれを犯してなおやる者に対しては、日本の警察だって取り締まりができないというはずはない。たとえば、一つつかまってもこれは一罰百戒になるのだということでやる。警察の整備された今日の段階で、そのくらいのことが取り締まれないからのみ行為がふえるからというのでは、これは理屈にはならない話なんですよね。
 のみ行為がふえる、それもある程度私どもわかります、そういう実情が恐らく出てくるだろうということは。しかし、だから当然やるべきことがやれないのだという政治姿勢であっては、正しい政治に向かっての前進というものはあり得ないと思うのですよ。そういう反作用、リアクションがあっても、それは別途克服する知恵を出し、方策を考えよう、こういうような立場でやらなければ、当然のことが当然として行われない、いつでもおかしな不公正を抱いたままでいかざるを得ないということになるわけですから、その辺のところはやりようだと思うのですよ。だからこそ、やれませんということは私は筋が通らぬと思うのです。
 こういうギャンブルにかけるような人たちは、よく世に言うあぶく銭というようなものを抱えている人たちだと思うのです。その他の税法なんかをもぐって、そしてしこたま金を抱えているというような人たちなんかがそういう大口にやるのですから、そういうような人たちから取る。あるいはまた、もちろん善良なる市民もこれに参加しているわけですけれども、すべてこれに参加している人たちが悪人だというようなことを私は言う気はありませんけれども、しかし、庶民大衆が許された中で一瞬のかけごとに勝負を張って千円を拠出するという場合に、たとえば五十円出す、このことぐらいは、当然そういう制度をつくりさえすれば喜んで出すだろうと思うのです。
 そういう、おれはこれをやるかわりにこれだけは国の財政に寄与するんだという風潮がむしろ出た方がいいだろうと思うのです。大体、一般の大衆はおそらく千円ぐらいか、せいぜい踏ん張っても二千円ぐらいか三千円ぐらいのところで買うのですから、それについての三%か五%ぐらい同時に出します、税金を納めます、こういう程度なら幾らでもやれる。
 特に私がこの点を問題にするのは、一レースについて十万ずつ買っていくというような、あるいはそれ以上の金額で買っていくというような人たちからは、その程度の税負担を求めていくことは、社会的公正の立場において当然のことになっているんじゃないか、こういうように思うのですがね。そういうことについて、さっき七五%が減ってしまいますということと、それからのみ行為の横行ということを恐れてとてもいまのところ踏み切れませんと言うのだけれども、私が申し上げたような立場でいけば主税局長の論拠も崩れると思うんだけれども、いかがですか。そういう方向に向かって検討してみる気があるかどうか、この点はっきりさしてください。
#50
○中橋政府委員 ギャンブル税につきましては実は数年来御議論がございましたし、私どもも相当詳細に検討した時期がございます。
 そこで、いまおっしゃいますように、たとえば千円を勝ち馬投票券に投じまして、そのほかに五十円を別に取ればいいではないかとおっしゃいますけれども、勝ち馬投票券にかけた人にしてみますれば、そこではやはり千五十円をかけたという気持ちになるわけでございます。そのときに、千五十円について総体で一体幾らが払い戻し財源になるのかということになりますれば、どうしても七五%が七十何%に下がるということになりますので、そこで、のみ行為をする人たちは、現在の二五%の中でも、たとえば当たらなくてもそのうちの一〇%は返しますよということで多くの人を集めておるわけでございます。
 そうしましたときに、私どもが仮にギャンブル税をやり得るという決心をいたしますためには、どうしてもそういったのみ行為というものに対して、かなりの程度取り締まりもできますが、また人が参加しないような施設というものを十分講じなければ踏み切れないわけでございます。従来からいろいろ真剣に私どもも検討いたしましたけれども、まだまだそういった打開しなければならない問題点が多々ありましたので今日に至っておりますが、それが今日それでは直ちに解消し得るかということになりますれば、長年とってまいりました七五%の水準というものがかりに減るということになりますと、これまでの勝馬投票券に対する投票者の心理というものへの影響も相当大きいということもやはり十分考えなければならないということで今日に至っております。
#51
○広瀬(秀)委員 この収益の関係は、税込みで考えるということじゃなくて、一万円買ったらその五%ならば五百円出しましょう、こういうことですよね。千円で五十円ですか、一万円で五百円になるわけですけれども、そういうことぐらいは当然これは別扱いにして、車券の分は一万円なら一万円、五万円なら五万円、十万円なら十万円、それに対する五%の税率、これは五%に必ずしもこだわりませんが、三%でも、大体三兆二千億ならば一千億の税収を上げられるはずですよ。
 そういうような形でその負担を求めていくということは、いままでの七五%と二五%、市町村の経費やそれから収益として入るものが二五%、それからその買った者に対する還元、参加してギャンブルをやった者に対して七五%の還元、そういうものを崩さなくたって、税金を全然別扱いにするんだというシステムをつくれば、そういう税法をつくれば、これはそれでそのままいくのであって、その点の議論は納得のできる、説得力のある意見ではない、われわれとしてはこう見ざるを得ないわけです。それは別扱いにならないのですか。それは最初から税金分を分けてかかればいいでしょう。
#52
○中橋政府委員 勝馬投票券に投票しましたときに、ギャンブラーの心理といたしますれば、千円投じますればそのうちの七百五十円というのは勝馬を当てた人への払い戻し財源になるということで感じておるわけでございます。千円投じましたほかに五十円取ると幾ら言いましても、ギャンブラーの心理といたしますれば、千五十円出したのに七百五十円しか勝馬に当たった人に返ってこないということになりますから、どうしてもやはり七五%の率というのは、投票者の心理に照らしますれば、七三%になるとか七〇%になるとかいうことになりますので、そこにのみ行為者のつけ入るすきが生ずるわけであります。
#53
○広瀬(秀)委員 仮に私は五%と言ったが、三%でもそれはいいということで、とにかくそういうような形で、たとえばギャンブラーに返る分が若干減ったって、その程度のものはいいのじゃないですか。七五%が七〇%になったって、やりたい者はやはりやるのですよ。それで、それだけの力を持っている人から、そういう者から適正な負担を求めるということは、これは今日当然考えられていいことだと思うのですよ、仮にそうだとしても。
 私はそうではない、もうこれは税金なんだということで、納めさせるということが定着すれば、それはそれなりに割り切って、ギャンブラーの頭だって変わってくるのですから、それはやはり法律をどうつくるかだけのことだと思うのですよ。
#54
○中橋政府委員 現在の七五%の水準でのみ行為が行われておりますのも、二五%の中で、たとえば胴元は一五%手に入れますが、あとの一〇%は当たらなくても返しますということで、のみ行為者はのみ行為をする人を勧誘するわけであります。したがいまして、仮に払戻金率が七〇%になるということになりますと、三〇%というものが実は胴元の自由になる金になるわけでございます。そうしましたら、当たらなくても一五%返しますよということも成り立ち得るわけでございます。そうすると、現在よりもさらにのみ行為というのが広がるということは想像できるわけでございますので、それに対する措置なり施設というものを十分考えないと、やはりのみ行為というものを前提としたギャンブル課税ということはなかなか踏み切れないのでございます。
#55
○広瀬(秀)委員 主税局長も次官もどうも歯切れが悪くて、私のは実にいい発言だと思うのだけれども、それに対して明確な答えがないので、きょうはこのくらいでやめまして、大蔵大臣が出た段階でこの問題についてもうちょっと詰めた議論をしてみたいと思いますので、きょうはこれで終わりにしたいと思います。
#56
○上村委員長 午後一時三十分より再開することとし、この際、暫時休憩いたします。
    午後零時十五分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時三十八分開議
#57
○上村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。荒木宏君。
#58
○荒木委員 相続税法の改正案についてお尋ねいたしますが、今度の政府案でいろいろ減税の措置を講じた、こういう趣旨説明を伺ったのでありますが、相続財産を相続する額によって階級区分がいろいろありますが、そのうちのどの階層が恩典を受けるか、どの階層まではその恩典を受けないか、今度の改正案の結果による階層の受益の線引きをひとつお伺いをしたいと思います。これは政府委員から。
#59
○中橋政府委員 それぞれの遺産額を設定いたしまして、それにつきましての相続人が配偶者及び子供四人の場合ということで負担割合を比較したものがございますが、それによりますと、たとえば遺産額四千万円までは、今回の改正案によりますれば子供の税額はゼロになりますので、軽減割合としては一〇〇%ということになりますから、遺産額四千万円までは今回の改正ではいわば皆減と申しますか、そういうことになるわけでございます。
#60
○荒木委員 軽減割合を伺ったのではなくて、まず今度の政府案によって恩恵を受けない階層はどこまでであるか。もちろんいろいろ特別の障害者の配慮だとかいろいろありますけれども、いわゆる課税最低限の引き上げによって全く影響を受けないのはどの層か、程度ではなくて、どの層までがいままでと同じ額か、それをひとつはっきりしていただきたい。
#61
○中橋政府委員 配偶者と子供四人が相続人であります場合に、現在の課税最低限は千八百万円でありますから、それ以下の人たちというのは今回の改正では何ら恩恵を受けない。それを超えます遺産額であれば、何らかの意味において軽減を受けるわけであります。
#62
○荒木委員 わかりました。
 千八百万円以下の人というのは相続税を納める人の中で何%ぐらいになりますか。
#63
○中橋政府委員 死亡しました人の中で、相続税の課税を受けるというのは、五十年度にはまだはっきりと推計はできませんが、四十八年度におきましては、百人死亡した人の中で課税される遺産額を持った被相続人は四・二人でございますから、逆に申せば、それ以外の人たちというのは課税を受けていないということになりますので、今回の改正では全然改正の影響がないということになります。
 それからなお、ちょっと申し忘れましたが、税率の改正を今回行っておりまして、最高税率を七〇%から七五%に引き上げておりまするので、それによってまた影響を受けるという部分が別途ございます。
#64
○荒木委員 国民全体の中で、今度の相続税の改正によって課税最低限の引き上げのメリットを受けないのがどのぐらいの比率か、これはこの後で伺おうと思ったんです。
 私がいまお尋ねしたのは、相続が開始された、何といいますか、相続税の一応対象予定者といいますか、相続が開始された相続関係者の中で、今回のメリットを受けない人数の比率は大体どのぐらいか。つまり千八百万円以下の相続財産の階層区分に属する人たちの構成区分はどのくらいか、こう聞いたわけであります。
#65
○中橋政府委員 大体毎年死亡する人が七十万人ぐらいございまして、たとえば四十八年で、先ほど申しました百人のうちの四・二人は課税を受けるというのは約三万人でございますから、約六十七万人というのは課税最低限以下になるということでございますので、今回の影響を全然こうむらないということでございます。
#66
○荒木委員 それでは、債務控除後の遺産総額の階級区分にしまして、被相続人の数の中で影響を受けないのはどのぐらいの比率ですか。
#67
○中橋政府委員 債務控除をいたしまして、それからいわゆるネット財産価額に相続税の課税最低限を適用しまして課税を受けないという人が、先ほど申しましたように毎年七十万人死ぬ中で六十七万人ぐらいでございまするので、債務控除とおっしゃる意味はちょっとよくわかりませんけれども、相続税はすべてネットの財産をまず土台といたしますから、債務控除しましたもの、それからさらに相続税のいろんな控除をしまして、課税をされない人間というのはやっぱり九六%ぐらいであります。
#68
○荒木委員 わかりました。
 それではとにかくいまおっしゃるように、九割以上が今度の改正では直接メリットを受けない、課税最低限の引き上げについては影響を受けない、こういうことですね。
#69
○中橋政府委員 メリットの影響を受けないとおっしゃいますのとちょっと違いますので、大部分の方々というのは相続税に縁のない人たちであったわけでございますから、その人たちは当然今回の課税最低限の引き上げ等について影響を受けないという意味においてはおっしゃるとおりでございますけれども、そもそも相続税と縁のない人が大部分になってきておるということでございます。
#70
○荒木委員 相続税に縁のない人とこういう話だったのですが、この相続税に縁のある人というふうな言い方が正確かどうかわかりませんけれども、四十七年の債務控除後の遺産総額階級区分、これで見ますと、千五百万円以下が被相続人の数の中で約四二%ある。つまり四割以上の人たちは、このときの実績によれば、今度の改正があっても関係がない、相続税に縁がない人たちが大部分だろう。しかし縁のある人の中で、四割以上は今度は関係がないんじゃないか、メリットを受けないのじゃないか、こういう趣旨で聞いておるのですが。
#71
○中橋政府委員 今回の改正で予定いたしておりますいわゆる配偶者と相続人四人の課税最低限四千万円という中には、相続人の数のいかんにかかわらず定額で控除をいたしますものが二千万円ということでございまするので、いまお示しの課税財産価額の階級区分で申しまして、二千万円以下の人たちは相続人数いかんにかかわらず、今回課税から落ちるわけでございますから、四十八年でその数字を申しますと二三・二%、四十七年では四二・五%ということになります。
#72
○荒木委員 つまりいまおっしゃった数字の範囲で、今度の改正では一応まず影響のない人たちが二割、四割、年度の数字がありましたけれども、それだけある、低い遺産額を受ける相続人ですね。相続に縁のあるという人がこのときの統計では三万人あって、そのうちの、いま指摘の割合については改正は関係がない。
 そこで、いま勤労者の一世帯当たり平均の資産の保有額は大体どのぐらいでありましょうか。
#73
○降矢説明員 では説明させていただきます。
 国民生活白書の四十九年度版におきまして、四十七年末現在におきます勤労者世帯の資産保有の状況を推定しておるわけでございますが、これは金融資産と土地住宅等の実物資産のトータルでございます。これによりますと、平均では金融資産が百七十三万円、実物資産が千四十七万円ということで、合計は千二百二十二万円ということになっております。
#74
○荒木委員 局長、そうしますと、勤労者の平均が千二百万円といま企画庁の話があったのですけれども、その勤労者の人たちは平均的に見ると今回の改正には特別の恩恵はない、課税最低限の引き上げによって別に恩典は受けていないというふうに思いますが、どうですか。
#75
○中橋政府委員 それはそういうことになると思いますけれども、いまお話のありましたのは勤労者平均でございますから、非常に若々しい勤労者まで入っておるわけでございまして、そもそも相続税という問題とは非常に遠い時点にある人も入っておりますから、それが恩典を受けないとおっしゃるのが、相続税の恩典を受けるか受けないかという範疇としますと、どうも非常に遠い人たちが入っておるということをお含み置き願いたいのでございます。
#76
○荒木委員 平均ということですから、確かにそういうことが言えるかと思うのですが、勤労者の階層の中で若々しいまだ所得の低い人もあれば、あるいは所得の高い人もある。もちろん年齢であるとかいろいろな経歴であるとか、要素はありましょうけれども、階層がある。
 それでは、勤労者の階層の中でどういう階層の人がこの恩典を受けるかということをお尋ねしたいのですが、その前に企画庁に、勤労者の統計の五分位で二千万円を超えておる層というのはどの階層になりますか。
#77
○降矢説明員 それでは御説明申しますが、二千万円ということでございますと、第五分位、つまり上位二割の階層がここに該当いたします。
#78
○荒木委員 わかりました。
 そうすると、この一番上位の二割の人は確かに二千六百万円ですから、これは恩恵を受ける。
 では、その次の第四分位はどうですか。
#79
○降矢説明員 第四分位は千三百七十万円でございます。
#80
○荒木委員 そうしますと、先ほどの主税局長のお話ですと、これは二千万円以下でありますからメリットは受けない。
 重ねて企画庁に聞いておきますが、では残りの第一分位から第三分位まではいかがですか。
#81
○降矢説明員 第一分位は三百六十七万円、それから第二分位が六百四万円、第三分位が千百三十八万円ということになっております。
#82
○荒木委員 そうしますと、主税局長、いまお聞きのように、圧倒的多数の、勤労者の世帯で見ますと第一分位から第四分位まで、つまり所得の低い部分に属する八割の人たちは今度の課税最低限の引き上げでメリットは受けない、ただ一番高い層だけが改正案のメリットを受ける、こういうことが一般的に言えると思いますが、どうですか。
#83
○中橋政府委員 先ほど申しましたように、相続税に関係のありますのは毎年亡くなる七十万人の方の遺産額であります。それで、いまお話のありました第一分位から第五分位というのは、現に生きておる若々しい人から年寄りの人たちまでの所有資産でございますが、その人が死んだときには今回の相続税の改正がどういうインパクトを持つかという点を考えれば、いまの平均保有資産額で考えていっていいのだろうと思います。したがいまして、それは先ほど申しましたように、毎年七十万人ぐらい死ぬ中で三万人ぐらいが相続税の課税対象になるということでございますから、大体上の方の資産を持っておる人たちが相続税に縁があるということになると思います。
 ただ、観点を変えまして、相続人という立場から申せば、いまお話のございましたように、所得の低い人、資産額がまだそんなに高くない人も、相続人という地位に立てば相続税にまた関係が出てまいるわけでございます。それは被相続人の持っておる財産価額のいかんによるわけでございますから、そういうときには、先ほど申しましたような六十七万人の人に当たる被相続人、それはあるいは非常に若い人があるかもしれません、また所得階層で言えば低い階級にある人かもしれませんけれども、そういう人たちが影響を受けることは確かでございます。
 ただ、私が先ほど申しましたのは被相続人に着目し、あるいはその遺産額に着目して申せば、七十万人のうちの三万人でございますから、四十八年の率で申せば約四%の人が相続税に関係がある、したがって今回の改正でも影響を受けるということになるわけであります。
#84
○荒木委員 お聞きしておることをなるべくそのままおとりいただいてお答え願いたいのですが、いままでの論議で、九十何%の人は今度の改正案を出しても直接課税最低限の引き上げで、ああ、ありがたいとは思わぬ、このことが一つはっきりしたわけですね。
 それから、今度は勤労者という階層別に見てみると、なるほど資産の保有額の高低は年齢にも無関係とは言えぬでしょう。また、年齢の高低は相続の発生率にこれまた関係がないとは言えないかと思いますけれども、しかし、結果として一番資産保有額の高い階層が今度の皆さんの改正案でメリットを受ける、この事実はそうではありませんか、こう聞いているのです。結果として一番高いところだけが皆さんの改正案で恩恵を受けて、あとの第一分位から第四分位までは、改正案が出ようが出まいが関係はないということが言えるのではないでしょうか、こう伺っているのです。
#85
○中橋政府委員 その点に関しましては、まず被相続人という立場で考えていただかなければならないということであります。被相続人という立場で考えていただければ、大部分の方には相続税がなかったわけであります。相続税の性格から言いまして、またその人たちに課税をしないということが従来からいろいろ積み重ねられてきた経緯でございますから、おっしゃるとおりでございます。
#86
○荒木委員 ですから、いままでのことを全部論ずるのではなくて、今度の改正案によって、このことによって生ずる影響、効果を受けるのはいま私が言った階層だ、これはイエスですか、ノーですか。
#87
○中橋政府委員 これまでの相続税の納税者とい
 いますか、その相続税がかかる遺産を持っておった人が非常に限られておりますから、今回の改正の恩恵を受ける人も限られております。
#88
○荒木委員 その限られ方が、従来に比べて勤労者の中の第五分位の人に限られておる。一般的に限られておると言っているのではないのです。今回の改正によれば第五分位に限られておる、こう
 いうことを言っておるのです。どうですか。
#89
○中橋政府委員 相続税というのは大体高い財産家に対する課税でございますから、今回の改正もどちらかといえばそういう高い財産家についての影響ということに限られます。
#90
○荒木委員 局長は今回の改正も高い階層に恩恵を受ける層が限られておるということをお認めになったわけですけれども、私は今度は、高い階層に限られておるその恩恵の度合い、これがどの程度のものであるかということを少しお尋ねをしたいのですけれども、たとえば、特に今度は配偶者の控除について制度改正があって、三分の一、頭打ちなし、こういうことになっておるようですが、そういたしますと、たとえて計算をいたしますと、資産一億円、相続財産一億円の場合には、遺産の三分の一を配偶者が取るとして、この配偶者の相続税額はどのぐらいになりましょうか。
#91
○中橋政府委員 資産一億円の人について、配偶者が三分の一相続をいたすということで計算をいたしまして、現行法ではその配偶者の相続税額は八十五万八千円でございます。それが改正案によればゼロになります。
#92
○荒木委員 そうすると、先ほどの勤労者の平均資産であります千二百万円の場合は、改正案でも現行法でも同じことになりますね。それとも違いがありますか、課税最低限の引き上げによって。
#93
○中橋政府委員 相続税の失格者でございますから、納税額がゼロの方はゼロでございます。
#94
○荒木委員 そうしますと、平均的な勤労者にとっては前もいまも全然変わりはない。資産一億円の高額資産家の配偶者は今度は相続税がゼロになる、こういうことですね、いまおっしゃったのは。
 こういった高額資産家が減税の恩典を受けるような税制度について、政府の関係機関ではいろいろな意見があろうかと思うのでありますけれども、たとえば、このインフレ、物価高の時期に、国民生活万般についていろいろ審議がありました。国民生活審議会でもこの旨の審議があったようですけれども、企画庁に伺いますが、こういった高額資産所有者に対する税負担を軽減していくというようなやり方について、生活審議会では報告なり意見表明なり何かありましたでしょうか。
#95
○降矢説明員 国民生活審議会におきまして、「物価上昇下の分配等の歪み是正策」についての中間報告という形での御意見をちょうだいいたしたのでありますが、その中には、物価上昇下における社会保障の機動的対応、それから物価調整減税、それから資産の目減りというような問題について、当面必要性を認めていただいたわけでございます。
 その第二番にございます税制に関しましては、主として控除の引き上げ等に伴う課税最低限の引き上げというのを、所得税について御意見をちょうだいいたしました。
 資産保有の関係につきましては、当面の問題としてまだ十分の詰めがございませんので、特段の御意見はちょうだいしておりません。
#96
○荒木委員 昨年の十一月二十七日に出されました、いま企画庁の課長が言われた生活審議会の総合部会の報告がありますが、これによりますと、「物価上昇の中では、高所得層における税負担は当面むしろ高められることが必要である。」これは所得という面でとらえておりますけれども、同時に、資産所得優遇措置については逆進的効果をもたらしていると思われ、抜本的に改正、是正の必要がある、また富裕税の創設を検討する必要も生じてくると思われると、こういうことを言っているわけですけれども、そういった点から見ますと、企画庁に重ねて伺いたいのですが、高額所得者、高額資産家にこそ税負担を高めるような措置をとるべしということが、生活審議会総合部会での考え方の大筋ではないのでしょうか。
 つまり、多いところ、高いところ、それから低いところ、小さいところ、これを分けて、どっちに重点をかけていくかという点から言えば、国民生活審議会総合部会の意見の大筋としては、高いところ、大きいところを把握すべしというのが報告の大筋ではないかと思いますが、いかがですか。
#97
○降矢説明員 御説明にとどまる以上、ちょっと申し上げにくいと思いますが、審議会におきまして意見が交わされました段階では、不公正是正という趣旨から取り上げる、こういうことでございましたので、インフレに伴う負担を受けておる者の改善と、一方で条件のいいところの負担を増大するということを全体の中で見直す必要があるということは、大まかな考え方として前提にあったかと思います。
 しかし、問題の緊急性というところにしぼって、とりあえず今回中間的に御審議いただく、こういうことになりましたものですから、いまのような点が余り具体的に詰められないということにとどまったわけでございます。
#98
○荒木委員 わかりました。
 それでは、企画庁としての、いまの到達点での考えをひとつ伺いたいのですが、国民生活を守る、物価に対する所管庁として、私がいま言いました大きいところや高いところ、ここのところはひとつぎゅっと抑えていこう、小さいところ、弱いところ、ここはひとつ税負担を軽減していこう、こういったような考え方は企画庁としては支持されるかどうか、この点はいかがです。
#99
○降矢説明員 私は本日説明員として参りましたので、意見にかかわる点は多少差し控えさしていただきますが、今回も審議会で、分配のひずみの方の是正を図ることの緊急性という御意見をちょうだいできるというような機会があったわけでございますので、そういう趣旨については、まさにその趣旨を受けてやるという姿勢のためにその御審議を願った、こういうことかと思います。
#100
○荒木委員 そこで、その審議の趣旨を説明していただきたいのです。審議の趣旨というのは、そういう異常なインフレ下にあって、ひずみ是正のためには、こういった高額のふくれ上がったところ、ここを抑えよう、そうして不公正是正のために、落ち込んでおる弱いところ、低いところ、これを高めよう、これが審議の趣旨ではなかったのですか。これからの政策とか展望じゃなくて、いままで行われた、企画庁が関与したその生活審議会の審議の趣旨はそのようなものであったかどうか、これを説明していただきたい。大筋だけでいいです。
#101
○降矢説明員 どこまで具体的に結論を出すかということを別にいたしますと、趣旨はそういうことでございます。
#102
○荒木委員 説明員としてお見えいただきましたので、それ以上の判断は無理かと思うのですが、そういたしますと、大蔵省当局にもこれは実務的な説明を伺ったのでは政策論議としては進まない。事は皆さんがいまお出しになっておりますこの改正案が、いろいろ御説明はありましたけれども、結果として、課税最低限で言えば勤労者の中の最高のところにのみメリットが及ぶ、あとは変わらない。大体相続税なんというものはそういうものだ、局長はそう言われた、そうですね。
 とりわけ今回の分では、配偶者の三分の一控除については頭打ちがはずされているから、たとえば皆さんの方で計算をしていただいた、仮に相続の遺産額が十億円の場合、これは現行によりますと、配偶者の場合は一億七千四百十五万円税金を払わなければならぬ。ところが、今度の改正案ではこれがゼロになっている。先ほどのように八十万円がゼロになるということなら、これは比率から言えば、ゼロだから非常に大きい進歩かと思いますけれども、十億の場合に、配偶者の場合一億七千万払うのがゼロになるというのは非常に大きな減税ではないでしょうか。
 そうだとしますと、企画庁の方の説明によれば、詳しい論議は別ですが、大筋としては、大きく持てるところ、そこはそういう方向で税負担を高めていく、そして小さく十分でないところはこれを向上させていこう、それこそ不公正是正なんだということから見れば、今度の改正案は、企画庁で説明を受けた方向に沿っておるものなのか、あるいは方向として反しておるものなのか、それともどっちでもない中立的なものなのか。やはり政策論議としてはそういった問題が起こってこようかと思うのです。
 これはちょっと局長に伺ってもあるいは無理かもしれませんので、政務次官にお伺いをいたしますが、いま企画庁の方で言われた、政府がその答申報告を尊重してやろうとおっしゃる大筋は、いま説明を受けたとおり。そしてまた不公正是正を大きな眼目としていまやろうとおっしゃっておることも間々言われておるとおり。だとしますと、政策選択として、技術的な細かい点は別にして、この法案がいまの政策課題なり、あるいは国民生活を守る上からの審議会の報告なりに、いままで伺った説明では、沿わない面があるのではないか。方向としては反しているとさえ言える向きもあるのではないかという問題が起こってまいりますけれども、その点について、この問題を大蔵省内部で政治的に論議をされた経過があるかないか、これは結論じゃなくて、まず過去の事実として、法案提出前にこの論議がなされたかどうか、これをひとつ伺いたい。
#103
○森(美)政府委員 妻の座優遇ということにつきまして、十分に検討いたしました。
#104
○荒木委員 私が伺ったのは、大金持ちの妻の座も、それから額に汗して働いている勤労者の妻の座も同じように見ることができるかどうか。先ほどの企画庁の説明では、むしろそういった、いま国民生活を守る上において、階層区分を抜きにした妻の座こそ守るべしという論議の大筋ではなくて、むしろ持てる者、大きい者、強い者、そこのところに税負担をと、こういう大筋だと伺いました。
 いませっかくの御答弁をいただいたのですが、身分関係に着目しての答弁ではなくて、階層に着目しての答弁、企画庁から伺っておる説明の趣旨に沿った答弁を重ねていただきたい、過去にその論議をされたかどうか。
#105
○森(美)政府委員 過去において、これについて十分に討議をいたしたつもりでございます。
#106
○荒木委員 それでは伺いますが、まず強い者といいますか、高額資産家の配偶者について実質的に税負担率が高くなっておるとおっしゃるのでしょうか。それともそれは低くなっておりますか。
#107
○中橋政府委員 今回の改正によりまして、配偶者の負担は軽くなっております。
#108
○荒木委員 局長、何べんも言っているのですから、少しは質問の進んでいった到達点で答えてください。配偶者一般について聞いておるのじゃないのです。高額資産家の配偶者の負担率はどうかと、こう聞いたんですよ、たとえば十億円とさっき言ったでしょう。
#109
○中橋政府委員 高額資産につきましての配偶者の相続税負担額は、階層が上になるほど大きくなりましたのが、今回の改正で、三分の一の相続をいたしました場合にはゼロになりますから、その軽減額は大きいです。
#110
○荒木委員 そうしますと、軽減額の度合いは、たとえば五千万円の場合と一億円の場合とそれから十億円の場合と、もちろんこれはいまの構造が前提ですから、資産総額がふえていくに従って軽減額はうんと逆放物線状にふえますね、ゼロになるのだから。そのとおりでしょう。
#111
○中橋政府委員 配偶者が三分の一を相続いたします限りにおいてはゼロになりますから、現行法において負担すべき相続税額がゼロになるわけでございます。
#112
○荒木委員 そうしますと、この配偶者の中で一〇〇%といいましょうか、まるまる軽減を受けておる、これ以上はないという軽減を受ける配偶者の属する課税価格階級区分がどの層であるか。
 つまり一例を申しますと、さっき一億円と十億円と言いましたけれども、たとえば五億円以上の課税価格階級区分で配偶者が含まれておる、そういう相続人の人数構成比は、相続人の中で配偶者が財産を取得している者の総数の何%ぐらいになりますか。
#113
○中橋政府委員 現在の相続税の制度の中におきましても、配偶者が相続いたしました場合の特典というのがございます。それによりますと、配偶者の特典を受けました者は、法定相続人のうちで、被相続人ごとに考えてみまして、平均しまして六五%は有配偶でございます。
#114
○荒木委員 どうもあっちの返事をしてもらったら困るんですよ。私が聞きましたのは五億円と、こう言ったでしょう。聞いておることをよく伺ってほしいんですよ。五億円以上は、皆さんのお出しになった、昨年の十一月にいただいた資料によれば、配偶者で財産を取得している者の数は十七人であります。そのときの総数は三千四百七人ですから〇・五%です。
 政務次官、つまり〇・五%、これは五億円以上ということで仮に限ったのですけれども、軽減率もうんと大きい。もちろん軽減額総額もうんと高い。しかも、人数の構成比は相続に縁のあるうちで一握りだ。そこのところが今度の恩恵を十分受ける結果になる。これは先ほどの生活審議会の報告の大筋あるいは不公正の是正を図ると言っていらっしゃる皆さん方のたてまえ、この点に照らして検討したと、こうおっしゃるのですが、私は、考えますと、どうもいままでの結果は趣旨に沿っていないように思います。だってそうなんですから。言っている意味はおわかりでしょう。ですから、その点について、いま私が申し上げておる点を検討されておるなら、ひとつ御答弁をいただきたい。
#115
○森(美)政府委員 先ほど申し上げましたように、妻の座から見て検討しましたので、いま荒木委員のおっしゃっておることとちょっと私の答弁と違うかもわかりませんが、そういう意味です。
#116
○荒木委員 いま政務次官から伺いますと、つまり妻の座あるいは直系卑属の座、身分関係の点から検討された、私が申し上げておるような生活審議会なりあるいはいまの内閣の課題という点からの検討は、その中には含まれていないように伺いました。そうだとしますと、こういう私が申し上げておるような趣旨の検討は必要ないとお考えでしょうか。それともそういう点の検討も必要だというふうにお思いになりますか。これは政務次官に伺いたいのです。
#117
○森(美)政府委員 いまの御質問は、所得税についての御見解と思いますが……
#118
○荒木委員 いや、相続税ですよ。ずっと伺ってきたのは相続税ですから。
#119
○森(美)政府委員 いろいろとその点につきましては検討しておるつもりでございます。
#120
○荒木委員 しかし、先ほど次官は妻の座という観点から検討した、こう御答弁になりましたでしょう。しかも妻の座から検討されて、特にメリットがあるのは今回は相続税の問題ですよ。しかもいまは相続税を論議しているのですから。
 だとしますと、企画庁の方の言われた趣旨が、所得であるか資産重点であるか、これは細かい点は伺っていないのです。ところが、大筋として、持てる者、強い者、大きい者、こういうことで伺っておるわけです。そしてまた、生活審議会の論は一応おくとしても、不公正是正というのは皆さんおっしゃっているわけでしょう。だとすれば、この相続税の改正に当たって単に妻の座という身分関係からだけ検討するのではなくて、やはり社会的な不公正、公正ということにかかわる階級区分、こういう点の検討が当然要るのではないか、私はこう申し上げているわけです。
 次官はその点については、妻の座という点から検討してきた、こうお答えになりましたので、そこで、それがいいとか悪いとかは言っていないのです。そうだとすれば、なおこの階級的な区分の上から、不公正の是正あるいはより公正を図っていくという点からの検討が必要だということはお認めになると思うのです。そこで、そういうふうな検討を今後なさるおつもりがあるかどうか、これは政治的な御答弁として伺っておきたいのです。
#121
○森(美)政府委員 今回のこの改正は、あくまで妻の座について考えたものでございますので、そういう意味でひとつ御了解いただきたいと思います。
#122
○荒木委員 それは了解しているのですよ。私はそれは了解していないとは言っていない。それは了解しているのです。ただ一口に妻の座と言っても、いまのように階層区分があって、結果が違うと言うのです。これはお認めになっているのですよ。先ほど来の質問で伺ったとおり。だとすれば、その階層間の受益の程度がより開くような結果になる、これは不公正の是正という点からみれば、むしろ沿わないというふうに常識的に考えられる向きがある。だから、この点の検討が、いままで妻の座という点からの検討だとおっしゃるから、これも必要じゃないか、こう言っているわけです。そんなものは要らぬ、こう言われますか。
 (中橋政府委員「委員長」と呼ぶ)これは政策判断だからひとつ政務次官から伺いたい。局長じゃないです。いままでの実務的なことを伺っているわけではない。政治判断として、この点の検討が要るか要らぬかということを伺っている。
#123
○森(美)政府委員 今回のこの改正につきましては、同世帯の妻あるいは妻の座、こういうような問題で改正いたしましたので、その点御了承いただきたいと思います。
#124
○荒木委員 ですから、それは了承しておるのです。もう十分了承しておるのですよ。ただそれと、この階級区分による結果がむしろ高額所得者に有利になっているということとは、観点が違うではありませんか。そこで、その点の検討が三木内閣として要らぬとおっしゃるのか、それともそれは要る。これから場合によってはそれもする。要るとお考えか。要らぬとお考えか。この政治判断を伺っておるのです。
#125
○森(美)政府委員 今回のこの改正につきましては、あくまで妻の座を優遇する、こういう見地から改正案を出したのでございますので、ひとつ御了承をいただきたいと思います。
#126
○荒木委員 去年でしたか、所得税法の改正のときに、給与所得控除の頭打ちの取っ払いがありましたね、青天井。あれで外に出て働いている高額給与所得者が頭打ちがなくなったわけですから、ずっと減税効果を受ける。今度は高額資産家の配偶者の方が、これでもってぐっと受ける。去年もことしも、どうも高額所得者、高額資産家の方に減税効果が多いような法案を出してみえておる。
 私は言葉の常識的な意味としまして、不公正の是正を図るということは、むしろアンバランスのギャップが開いていくのを是正する、狭めていくことだろうと思うのですよ、細かい論議は別にして。だから、今回妻の座という点から出したとおっしゃる、それはそれでいいのです。しかし、いままさに政治課題としてこういうことを皆さんは言っているのだから、だとしたら、この法案についてもそういう観点からの検討が、いまか、過去にしたか、先か、それは別です、そういう観点の検討が要るのではありませんか、こう言っているんです。
 ですから、妻の座という考慮から出したということは了解しましたから、その点の答弁は要りません。いま言っておる観点からの検討を必要と考えられておるかどうか、返事してください。裏側の返事じゃなく、聞いている表の答弁をお願いしたいのです。
#127
○森(美)政府委員 おっしゃること、よくわかりますが、今回の妻の座を優遇することにつきましては、いま荒木委員のおっしゃったようなこと、これを乗り越えましてより優遇した、こう考えておるわけでございます。
#128
○荒木委員 いま答弁で二つのことをおっしゃっていただいたんですが、一つは、よくわかりますが、こうおっしゃっていただいた。つまり私の申し上げておる、不公正の是正という観点からすれば検討が必要だということは、それなりに次官もお認めになると思うんですよ。
 問題は、しかし今回は妻の座という点から検討しておるので、それを乗り越えたとおっしゃる。乗り越えたといま次官が言われた意味は、不公正是正をこれで解決をしつつある、つまり、このことも含んでギャップが開いていくのを縮めている点があるということをおっしゃっている意味なのか、それともまさに文字どおり、その検討はひとまずおいて、その上を飛び越して今回妻の座ということで出したんだというふうにおっしゃる意味なのか、乗り越えてと言われる意味はそのどちらであるか、お答え願いたい。
#129
○森(美)政府委員 妻の座を優遇することについてでございます。
#130
○荒木委員 不公正の是正を図るという点は、これはこの中に含まれたんですか。それは飛び越したんですか。(中橋政府委員「委員長」と呼ぶ)
 これは政治判断で、しかも次官自身がおっしゃった言葉で伺っているんですよ。あなたの答弁について伺っているんじゃないのです。局長の答弁は遠慮してください。あなたのおっしゃったことについてなら幾らでも答弁を伺いますよ。しかし、これは次官が乗り越えたと言われているんだから。
#131
○森(美)政府委員 今回のこの改正につきましては、先ほどから言っておりますように、妻の座を優遇するという立場をとってやったものでございますから、その点であるいは妻に税金がかからなくなるというような現象も生じたんだと思いますが、なおこの問題について、ひとつ局長から詳しく答弁させていただきたいと思います。
#132
○中橋政府委員 いま荒木委員が言っておられますのは、むしろ階層といいますか、資産の大小について非常に着目されて言っておられますが、今回の妻の相続につきましての改正は、先ほど来政務次官からお話がございますように、妻の座に対する、あるいは妻の相続についてどういう評価を加えるかということで、従来のいろいろな批判にもまたこたえたものでございます。
 従来は、妻の相続につきまして相当の相続税がかかるということはおかしいではないか、妻は相当の寄与をしたではないか、あるいは妻は被相続人と同じ世帯ではないかというようなことから、従来のような課税が起こるということについてむしろ批判があったわけでございます。それについて荒木委員の、それは当然のことではないか、高額の資産家については妻の相続といえども課税すべきであるというお立場は、それはあり得ると思います。しかしまた一方において、それはおかしいではないかという意見もあったわけでございます。
 私どもはむしろ今回の改正は、妻の座というものについてより重点を置きまして、妻の相続といいますのは、一つには妻が夫の財産稼得についても相当の寄与をしたではないかということ、あるいは妻への相続ということは同世帯内における財産の移転ではないか、妻、未亡人からその次の相続人への相続においてはまた課税が行われるではないかというようなことをより重く考えまして、妻の相続というものについて今回のような改正に踏み切ったわけでございます。
 したがいまして、おっしゃいますように、相続財産の大小という観点に非常に重点を置かれれば、これは不公正を助長するものというふうに言われますし、また従来のように、妻の座を優遇していないではないか、その点がむしろ公正を欠くではないかというような観点から批判をせられた向きにとっては、今回の改正というのはよりそちらの方向へ進んだ、公正を強めたというふうになるわけでございまして、私どもはこれが非常に不公正を助長するものであるとは考えないわけであります。
#133
○荒木委員 局長の説明でかなり皆さんのお考えがわかってきました。つまり皆さんのお考えでは、同じ世帯の中で相続人の位置、直系卑属相続である、あるいは直系尊属の相続である、兄弟姉妹相続である、配偶者相続である、つまり世帯内の相続の公正問題を非常に重視していらっしゃる。私は社会全体を見まして、なるほど一家の中で配偶者の貢献度を評価すべし、この論があることは十分承知しておりますし、それなりの意味があると思います。
 しかし、いま社会全体を見ますときに、両極の分化現象というものが論議をされ、インフレのメリットを受ける層とインフレの被害を受ける層と、社会的には階層間の公正問題ということがこれまたそれに劣らず重要な問題だというふうに論議されておりますときに、いま出そうとする相続税の改正案について、私は妻の座の確保を図ることがいかぬとかどうとかいうことは一言も言っていない。皆さんがしきりに強調して、これこそ第一にうんと強調していらっしゃる点を否定する趣旨の発言は一言もしていないのです。しかし、それと同時にといいますか、それとあわせてと申しましょうか、あるいはそれと並んで、この問題もきわめて重要なことではありませんかと、階層間の不公正是正の問題を出しているわけです。
 そして、その問題について次官は、乗り越えてとおっしゃったから、乗り越えたというのが検討しなかったという意味なのか、あるいはあわせて解決したという意味なのか、答弁の意味を伺ったのです。いまの局長の答弁では、私のお尋ねしておることの答弁には一つもなっていないし、また次官のお考えになっている趣旨を局長が御説明なさるというのも、これはいかに能力のすぐれた局長であられても無理な面もありますから、次官に重ねてお尋ねしたいのですが、私はこういう点の検討も必要だと思うのですよ。
 それは、いろんな予算委員会の論議、本会議での御答弁を伺っておりまして、内閣の基本的な方針として、階層間の不公正是正を全く捨象するというような趣旨ではなかろうと思っておったのですが、しかし、いまのように繰り返してその答弁を避けて、妻の座妻の座、家庭内のこと、ここへだけというふうに余り答弁を繰り返されますと、おっしゃっておるところの社会的不公正是正というものは、実はちょっと聞けば社会的な階層の不公正是正につながるようでありながら、実際になさることの重点は、しかも家庭内のことに限るんではないか、こういうふうに思わざるを得ぬのです。
 それともう一つは、一口に配偶者の立場、妻の座と言いましても、妻の中にもまた階層間の区別があるわけです。大資産家の配偶者と勤労者の配偶者、これを同列視して同じく三分の一というふうな、減税効果がうんと違うような扱いが果たして配偶者の立場を考えた場合に真の不公正の是正になり得るかどうか、この論議もあると思います。しかし、これは妻の座ということの中に入っていきますから、それは一応おきましょう。
 ですから、皆さんがお触れにならなかった点の検討が私は必要だと思います。そして、皆さんにもそれはしていただきたいと思いますから、答弁が余り同じことの繰り返しになってもあれですから、次官にはっきりおっしゃっていただきたいのですが、そういう私が言っておる方向でやはりこの改正問題も考えるということをひとつ言っていただけば、この論議はおいて次に移りたいと思います。しかし、もしそれはもう触れぬとおっしゃるんなら、これは内閣が言っておられる基本的な課題にかかわることですから、これは何時間でもやらせてもらいます。
#134
○森(美)政府委員 おっしゃることについても検討しまして、繰り返ししつこく申しますが、今回この妻の座について改正をしたわけでございますので、その点もひとつおくみ取りいただきたい、こう考えております。
#135
○荒木委員 そうすると、これは検討したとおっしゃるのですね。ちょっと先ほどの御答弁とニュアンスが違うのですが、先ほどはまず最初全然お触れにならなかった、次は乗り越えてとおっしゃった、今度ははっきり検討したとおっしゃった。検討済みでありますか。
#136
○森(美)政府委員 十分に検討しております。
#137
○荒木委員 今度は十分にということになりましたが、言葉の端々にこだわるわけではないのですが、しかし、そうしますと、階層間の格差が縮まっておるという点は改正案の中のどの点でしょうか。いま次官が十分検討したとおっしゃった。それでは、私が申し上げておるのは階層間の問題として申し上げておるのですよ。それを検討したとおっしゃったんだから、その縮まった点は結果としてどの点でございますか。
#138
○森(美)政府委員 そういう問題を検討いたしまして、今回は妻の座についての改正をしたわけでございます。
#139
○荒木委員 不公正という問題については、世帯内の不公正もあれば社会的な階層間の不公正もあるということは、さっき繰り返し申し上げたとおりです。私が言っておるのは世帯内の問題ではなくて階層間、この点を問題にしているわけです。
 いま妻の座の世帯内のことについては、それ自身もいろいろありますけれども、これは一応おきましょうと言ってのけたわけです。質問は範囲を限ったわけです。この範囲について検討したとおっしゃるから、それではどこですかと聞けば、お聞きしていない妻の座と、こういうふうにお答えになった。これでは質問についてはっきりお答えいただいているというふうには私には考えられないのです。
 それとも、次官の方で御答弁がいまのようなことで繰り返されるなら、委員長、これは御相談でありますけれども、この点は大臣においでいただいて、基本的な内閣の課題にかかわる改正案の問題点でありますから、この点の質問は留保させていただいて、大臣御出席のときにこの質疑を進めたいと思います。
#140
○上村委員長 留保していただいてよろしゅうございます。
#141
○荒木委員 それでは委員長から質問の留保ということでお許しをいただきましたから、この点は一応ここでおかしていただきます。
 第二の点でございますけれども、いま、相続税を課税するに当たって、課税財産の評価ということが世間では大変問題になっております。特にインフレ、物価高による値上がりのひどい土地の評価について問題になっておるわけですが、いま、法律をずっと見渡してみますと、こういった土地の評価については、さまざまな法律にさまざまな規定があります。
 そこで、大蔵省の御意見を伺う前に、自治省がお見えと思いますから、地方税法における固定資産の評価、なかんずく土地の評価ですね、これがどういう基準によってやられておるかということを、大筋だけで結構ですから、ひとつ簡単に御答弁願いたいと思います。
#142
○川俣説明員 固定資産税につきましての評価方法、特に土地についてというお尋ねでございますが、地方税法の三百八十八条におきまして、自治大臣は、固定資産の評価の基準、評価の実施の方法及びその手続を定めることとされておりまして、いわゆる固定資産評価基準を自治大臣が定めております。それで、市町村長が具体の市町村内の固定資産につきまして評価をするに当たりましては、地方税法四百三条の規定によりまして、市町村長が、自治大臣が示した評価基準によって固定資産の価格を決定しなければならないということに相なっております。このように、評価基準に従いまして市町村長が評価を行うということによりまして市町村間の評価の均衡を図るということに相なっております。
 具体の土地の評価につきましては、地目別の評価方法を固定資産評価基準において示しておるところでございますけれども、そのうち宅地について例として申し上げてみますと、宅地につきましては、市街地宅地評価法それからその他の宅地評価法がございます。市街地宅地評価法は、主として市街地的形態を形成している地域の宅地を評価する方法でございまして、その他の宅地評価方法は、市街地的形態を形成するに至らない地域の宅地についての評価法でございます。
 市街地宅地評価法につきましては、まずその市街地内を用途地区に区分をいたしまして、たとえば商業地区でございますとか住宅地区、あるいは工業地区等に分類をいたします。それで、その用途地区内におきまして、主要な街路に沿っておるところの標準的な宅地を選定をいたします。その標準宅地につきまして付近の土地の売買実例価額から適正な評価額を求めまして、そしてその主要な路線について路線価を付設いたします。市街地の宅地内のすべての土地について、路線について路線価を付設をして、その路線価を基礎として、それぞれの各筆の宅地を評価するという方法でございます。
 その他の宅地評価法を適用すべき地域につきましては、状況類似地区というものを設定いたしまして、その他の宅地を区分いたします。それで、状況類似地区ごとに標準宅地を選定し、以下は先ほど申し上げましたと同様の方法で、その標準宅地についての適正な時価を付近の売買実例価額から算定をする。そうやって求めました標準宅地についての評価額に比準をいたしまして、状況類似地区内の各筆の宅地の評価をいたすということでございます。
 その他、農地あるいは山林等々、それぞれ売買実例価額を基礎といたす評価方法を固定資産評価基準において定めておるところでございます。
#143
○荒木委員 評価の大筋を伺いましたが、法律的に言えば、要するに適正な時価、こういう法律的な規定があり、それを受けて先ほどお話しの大臣の基準が設定され、それに基づいて評点一点当たりの価額の指定があり、さらに指示平均価額が大臣から指示をされて、それに基づいて評価が各市町村の審議会の議を経て決められている、こういう大筋だと思うのです。
 自治省の方では、現在の全国市町村の決めておるこの評価額が法律の言う適正な評価の要件を全体として満たしているかどうか、大臣の基準に適合しているかどうか。個々はいろいろありましょうけれども、全体として、その点についてはどういうふうに見ておられますか。
#144
○川俣説明員 各市町村ごとの評価の均衡がとれておるかどうかという点が問題であろうかと思いますが、その点につきましては、先ほど御指摘のありましたように、指定市町村の宅地でございますと、指定市町村の基準値につきまして評価替えの際に価額を指示いたす、さらにはその指定市町村の土地の評価全体につきまして総評価見込み額を出しまして、それについて平均価額を指示するという仕組みで、評価の均衡をとるということに相なっております。
 それで、固定資産税の課税標準は価格でございまして、価格につきましては、適正な時価ということに法律上なっておることは御案内のとおりでございますけれども、いわゆるその適正な時価、仮にこれを売買実例価額というふうに考えますならば、それに比較いたしまして現在の固定資産税における土地の評価の水準がどの程度になっておるかということになりますと、それはやはり、ここ十数年来非常に地価が高騰してまいっておるというような状況もございまして、税負担を伴うところの固定資産税の評価といたしましては、その時価に追っつかないという事情があるわけでございます。
 四十八年度の場合で申し上げますと、地価公示価格のある地点について比較をいたしますと、大体平均して四割レベルでございます。これが市町村それぞれのところにおいておおよそ四割程度になっておるということであれば、これは評価の均衡がとれておるわけで、そういう意味で固定資産税としては均衡のとれた評価になっておるのではなかろうかというふうに考えております。
#145
○荒木委員 自治省からお見えいただいておるのは固定資産税課長さんでしょう。政治判断を伺っているのじゃなくて、いまの行政執行が法律に適合しているかどうか、これを聞いているんですよ。
 そうすると、地方税法のたてまえでは適正時価でしょう。適正時価とは何か、それは大臣が決めているのでしょう。あなたがお決めになっているのですか。大臣が決めておられるのは基準告示でしょう。それに従って市町村がやっているんでしょう。もし大臣の基準に反しておれば、皆さんはそのまま放置しますか。是正をするんじゃないですか、監督権があるから。
 私が聞いているのは、法律で適正時価と決まっている、それに従って大臣が基準を決めている、その決めた基準に従って市町村が執行しているかどうかということを聞いているのです。あなたが考えておられる法律の解釈が、適正時価とは売買実例である、大臣にかわってあなたがそういうことをお決めになって、それに照らしてどうかということを聞いているんじゃないんです。いまの法律と、それに従った大臣の告示と、そしてそれに伴う市町村の執行が全体として違法、不当な状態なのか、全体として法律と大臣の決めた基準の趣旨に沿っているのか、それを伺っているのです。
#146
○川俣説明員 市町村の評価の実態は、自治大臣が定めました固定資産評価基準に従いまして適正に行われているというふうに思っております。
#147
○荒木委員 いま説明員の課長さんから伺いますと、現在の執行状態が法律に従った適正な手続でやられており、法律の言うところの適正な時価という状態に適合している、こう伺ったわけでありますが、そこで、大蔵省に伺いますが、相続税の場合の土地の評価、いま適正時価について、自治省が考えておるやり方によって現に固定資産評価が行われている、これは法律にいう適正評価である、こういう説明を伺ったわけです。皆さんはそれと同じ評価のやり方をしていらっしゃるか。宅地といわず農地といわず、いろいろあります。それともそれと違ったやり方をしていらっしゃるのか、この点をまずお伺いしたいと思います。(横井政府委員「委員長」と呼ぶ)
 いま大蔵省に伺ったのですけど、執行段階よりもまず法制上の問題として伺いたいと思いますので、法制上、評価についてはそれと同じやり方の法制度をとっていらっしゃるか、それとも違ったやり方なのか、この点をまず言ってください。執行の問題は後で伺います。
#148
○中橋政府委員 相続税法によりますと、評価の原則は相続財産の取得のときにおける時価でございますから、その時価ということになります。
#149
○荒木委員 局長の答弁がありましたから重ねて伺っておきますが、いま局長のおっしゃったのは時価ということですが、これは適正な時価、こういう意味でしょうね。
#150
○中橋政府委員 そのとおりでございます。
#151
○荒木委員 それでは、執行段階の方で国税庁に伺いますが、いま局長が答弁されたところで、実際にやっていらっしゃる方式と結果が固定資産税評価額と同じであるか違うか、その点をまず言ってください。
#152
○横井政府委員 結果からいたしますと、固定資産税、評価額に比べまして相続税評価額が高いというのが現状でございます。
#153
○荒木委員 結果として高くなっておるプロセスはいろいろあろうかと思いますけれども、大別してどういうやり方で結果として高くなるようになっておるのか、大筋のところだけ言ってください。
#154
○横井政府委員 ただいま自治省の御説明を伺っておりますと、売買実例、精通者意見価格等を参考にしておやりになっておるということでございます。私どもの方も同様に、売買実例価額それから精通者意見価格に基づきまして検討して決めておるわけでございますが、その精通者意見価格あるいは売買実例価額のとり方によりまして変わってきておるのじゃなかろうか、かように考えます。
#155
○荒木委員 皆さんの方では相続税財産評価に関する基本通達というのを出していらっしゃるのでしょう。これによれば、土地を幾つかに分類していますけれども、固定資産税評価に対する倍率方式、それから別途路線化方式、こういう大筋の評価方式をとっていらっしゃるようですが、そうじゃないですか。
#156
○横井政府委員 御指摘のように、市街地につきましては原則として路線化方式、その他の土地につきましては固定資産税評価に対する倍率方式をとっておるわけでございます。いずれの場合におきましても、売買実例価額、精通者意見価格、これに基づきまして算定をいたしておりまして、法律にございますように時価ということでございます。
 通達には、御承知のように、いわゆる不特定多数の間で成立する自由な価格という表現をいたしてございます。私どもはそのような過程で成立する価格を実例としてとってまいるわけでございますが、御承知のように、土地の売買価格の形成につきましては、上場株式のようないわゆる自由な取引市場がない、こういう実情でございます。そういうことから、土地の売買価格についてはある程度幅があるということが実情でございます。それからまた、相続税納付のために相続財産を売却しなければいけないという場合も例外的にあるわけでございます。そういうことからいたしまして、私どもはいわゆる売買実例等から出てまいります仲値の七〇%をかた目の時価であるというふうなことにいたしまして運用いたしておる、こういう実情でございます。
#157
○荒木委員 時間が余りありませんので、お尋ねしたことをまずおっしゃっていただきたいのです。聞いたのは、路線化方式と倍率方式というのをとっていらっしゃるのではないですか、こう聞いたのですからね。さっきの御説明だとそれは間違いないですね。
 そういたしますと、結果として法律で適正時価ということを決め、それから大臣がその基準を示し、自治省の担当官がそのとおりやられておりまして固定資産評価は適正であります、こう言っているわけですね。皆さんの方では、同じ適正な時価というが、主税局長の答弁にあります目的で、結果として高くなっている。一体だれが認定して高くしているのです。それを決めているのはだれですか。倍率を決定する権限はどこにありますか。
#158
○横井政府委員 評価のやり方につきましては国税庁長官が定めておりますが、実際の決定は国税局長がいたしておるわけでございます。
#159
○荒木委員 そういたしますと、法律で決めておって、大臣が基準を決め、そのとおりやられておりますと言っておるものを、一介の国税局長が勝手に変えるということができる根拠はどこにあるのでしょうか。法律ではどちらも同じ適正な時価という目的でありながら、しかも片や、いま自治省の答弁によれば、大臣基準でそのとおりやられており、結果は適正だ、こう言っておる。皆さんの方で出先の国税局長が勝手に倍率を決めることができる法律上の根拠はどこですか。
#160
○横井政府委員 国税庁長官は大蔵大臣から委任を受けて通達等を定め、国税局長は国税庁長官から委任を受けておるわけでございまして、法律形式的には何ら問題はない、かように考えます。
#161
○荒木委員 いま部長のおっしゃったのは、一般権限の根拠でしょう。一般的にはその旨の委任を受けて出すことができる。内容はどうですか、具体的権限――それじゃ、一たん委任を受けさえすればどんなことでも国税庁長官は決められるわけですか。これじゃ法律は要らないんじゃないですか、税法は。一たび委任を受けるや否や、あなたの説明によれば、委任を受けておるんだからそれで決められるとなれば、内容について一々法律で事細かく国会で論議をして決めても決めなくても同じことになりはしませんか。一般権限の上に、長官が通達を出すに当たって具体的な権限が要ることは、これは法理論の常識でしょう。
 私が伺ったのは、法律で適正時価と決まり、大臣が基準を決め、そしてその結果適正にやられていると自治省が言っている、それを国税局長が変更できるという、国税局長のさじかげん次第――さじかげんは語弊があるが、国税局長の扱い一つでそいつを上げることができるという具体的な権限の文明上の根拠はどこか、こう聞いておる。
#162
○横井政府委員 先ほど自治省から御説明がございましたのは、地方税法に基づきます取り扱いの御説明かと思います。
 私どもは、相続税法にございます時価というものを適正に執行するということで、大臣から長官、局長ということで適正な時価を判定して執行しておるということでございます。
#163
○荒木委員 そうすると、同じ内閣のもとで適正な時価ということについて違った見解をとっている。あなたがおっしゃるその中身の論議はこの後へひとつおきましょう。
 手続上の問題についてもう一つ聞きますが、そうすると、あなたがおっしゃる、長官が自治大臣の基準と違った、あるいは地方税法の法文と違った結果をもたらす通達が出せる明文上の根拠は何という法律の何条かということをひとつはっきり言ってください。(中橋政府委員「委員長」と呼ぶ)
 これは執行段階で伺っているのです。法制上はまた後で伺いますから、そのときに答弁してください。
#164
○横井政府委員 相続税法の二十二条に御承知の評価の原則がございます。これの執行につきましては税務署長が当たるわけでございますけれども、それの上司といたしましても国税局長、長官、大臣と監督をいたしておるということでございます。
#165
○荒木委員 そうしますと、地方税法に言う適正、相続税法に言う適正、これは違うというのが国税庁の見解ですな。
#166
○横井政府委員 これは大変むずかしい問題でございまして、記憶に基づく発言で申しわけないのでありますが、前の相続税法の改正の際に当たりましても、当委員会におきまして、この時価あるいは適正時価というものの解釈なり運用につきましてずいぶん御議論がございました。当時のことでございますが、国税当局の方からは、相続税というのは一世代に一回の課税である、固定資産税の方は年税であるということから、これが統一を図るということは、もっともなことなんでございますけれども、非常にむずかしいので、双方が食い違ったままで今日に至っておるということを御説明申し上げたような記憶がございます。
#167
○荒木委員 どうも時間がないから、聞いていることをはっきり言ってください。そうすると、皆さんは、自治大臣が決めてやっているあれは不適正だ、こう言うのですか。不適正だと言うのか言わないのか、これをひとつ答弁してください。
#168
○横井政府委員 適正か不適正かという判断を私どもができるわけのものではございませんが、それぞれ法の目的あるいは評価の目的、課税の目的が違っておるということからそのようなことになっておるんじゃなかろうか、かように考えております。
#169
○荒木委員 もう少しはっきり答弁していただきたいのですよ、国税庁として来ていただいているのですから。
 なるほど課税目的は違うでしょう。しかし、課税目的が違えば、だから税率が違うし、それから控除方式が違うし、課税の手続だって違っているのですよ。問題は評価ですよ。適正に評価するという目的は一つでしょう。それとも適正の度合いにニュアンスがいろいろあって、完全適正、不完全適正、そういうふうなことを考えていらっしゃるのかどうかということを聞いているのです。だから、自治省のやっているのを不適正だと言うのかどうかです。
#170
○横井政府委員 他省のことは批判いたせませんわけでございますが、私どもは私どもの評価が適正である、かように考えております。
#171
○荒木委員 ここで主税局長にひとつ伺っておきますが、適正な評価ということをとれば――あとの課税手続だとか課税効果だとか、これはいろいろありますよ。だって法律が違えばみんな違うのだから。しかし、同じ対象の物件について適正に評価をしようということについて、自治省と見解が違うと考えておられますか、適正を追求するという点では同じだと思われますか、どっちですか。
#172
○中橋政府委員 ともに適正な時価を追求いたしておりますのですが、自治省の評価基準によります各市町村の段階における評価について、私どもはそれがいかなる水準にあるか承知いたしておりません。ただし、国税庁がやっております個々の税務署におきますところの評価は、適正であると思っております。
#173
○荒木委員 それは少しおかしいじゃないですか。倍率方式をとっていると執行当局は言ったのでしょう。倍率方式をとっているということは、もとに固定資産税の評価があるのですよ、土台が。土台の上に何倍かの倍率を掛けるのでしょう。土台がどういうことをやっているか、適正であるかどうか知らずして、倍率だけ掛けてどうして結果が適正と言えるのですか。だって、被乗数が適正でなくして、結果出てきた答えがどうして適正になるのですか。いまの答弁は少し不見識じゃないですか。
 被乗数、つまり固定資産評価が適正であるかどうかわからぬ、こうおっしゃる。もとがわからなくて、その結果出てきた答えだけが適正だという結論は、私は論理的にはうなずけないのです。
#174
○中橋政府委員 固定資産税の評価は、御承知のように、三年ごとでございます。あるいは農地の評価は昭和三十九年から据え置きでございます。したがって、最近時点におきます実際の時価を反映していない場合もあるかと思います。そういうものを私どもの方は毎年毎年売買実例によりましてポイント、ポイントの評価をいたしまして、それを今度はその当該地点の固定資産税の評価額で割るわけでございますから、倍率として出てくるわけでございます。したがって、私どもの評価はむしろ各固定資産税の評価額をもとにしましてやっているのではありませんで、毎年毎年における評価をやってみまして、それをその地点におきますところの固定資産税の評価額で割って倍率をきめているわけでございますので、私どもの評価としましては、それぞれの時点時点における評価、地点地点における評価というものは適正だというふうに判断いたしております。
#175
○荒木委員 そうしますと、皆さんがおっしゃっている倍率というのは実は計算の一つの手順であって、結局は自治省が基準を決めてやっておる、そしていま適正だと、こう言っておる固定資産の評価と別建て方式でやって、結果として高くなっておる、これは適正だ、こういうことですね、いままでの答弁を一応到達点で総括すれば。
 いま局長は三年ごとだと言いましたけれども、三年間据え置きの評価替えになっているということはこれは別個の事由でして、同じ評価替えをした時点で統一をしてみたって違うのですから、三年間据え置きになっているという、そのいわば据え置きに伴う時価上昇の遅れの問題は一応おきましょう。評価が同じ時期になされた場合に結果が違う。相続税評価の方が高い。それでともに適正だと言っている。
 これは政務次官、大蔵省の政務次官としてお出になっておりますけれども、この各省各省で目的は同じ適正でしょう。これに異議はないのですよ。さっき局長も認められた。同じ目的を追求して、そしてやる作業は適正な評価という同じ作業です。同一目的で同一作業をやって結果が違う。このことについて検討をなさる必要があると思うのですが、政務次官、いかがですか。
#176
○森(美)政府委員 この問題につきましては、過去においてもいろいろ食い違い、誤差がございまして、苦労してやっておるわけでございますが、今後もなるべく違いのないように努力をしていきたいと思います。
#177
○荒木委員 地方税法の方では固定資産の評価の審議会というのがありますね。相続税の方では現行法ではそういうのがあるのですか。改正案は別ですよ、現行法ではあるのですか。
#178
○中橋政府委員 そういうものはありません。
#179
○荒木委員 私ども普通に考えますと、やはり関係者が審議会に寄られていろいろ審議をして、ある意味ではこれはオープンになる。手続上公正、適正ということがやはり近代法的に言えば担保されている一つのプロセスではないかと思うのです、相続税でそういうことをやらないでやっているよりも。だから手続面から言えば、どちらがより適正に近いかということを判断すれば、制度的にはやっている方が適正に近いというふうに普通は考えるでしょう。しかし、皆さんは、それにもかかわらず、われこそ適正なりとおっしゃる、片やこれが適正だとおっしゃる。いま統一のために努力すると次官おっしゃったのですが、この問題は四十六年の税制調査会の答申のときにも触れております。
 これは政府委員の方に伺いたいのですが、四十六年答申でこの点についてはどういうふうな指摘をしておりますか。
#180
○中橋政府委員 手元に四十六年の税制調査会の答申がございませんのではっきりしたことを申せませんが、過去におきましては、実は昭和三十七年くらいに一度そういう議論がございまして、評価統一のための審議会を設けた経緯がございます。それでかなり努力をいたしました。その後もそういう観点から統一をしようじゃないか――実はもう一つ評価の問題がございまして、登記所におきますところの登録税の評価というものがございます。
 この三つは一体違っておっていいのかどうか。いま荒木委員は同一目的でとおっしゃいましたが、そこのところが非常に問題でございまして、必ずしも固定資産税の目的と相続税の目的とが、私は実は同一ではないと思います。これまた個人的な意見にわたりますから……。そういう意見もございます。評価というものが常に一致するのかという点、それから同じ税目につきましても、たとえば相続税の評価について、あるいは固定資産税の評価について本当に適正な評価を求めながら、またそれの権威者がやりながら、いろいろな価格が出てまいるわけでございます。いま御指摘の固定資産税につきましてそういう審議会があるのも、実はそういうところから、ほぼ中庸な価格を出そうというための手続でございます。
 したがいまして、適正な価格と言えば一つであるかということになりますと、非常にむずかしい面をはらんでおるのでございます。実は昭和三十七年なり御指摘の四十六年も、恐らくそういう観点から評価の問題についてなおよく検討しようじゃないかという指摘があったと思います。
#181
○荒木委員 四十六年の答申では、いま局長の言われたこと以上に、納税者に不信感を与える、そういうことを指摘していますね。そして統一のために一層の検討をすべし、こう言っているわけです。
 四十六年から今日まで四年たっていますが、その間に統一のために努力されて、これだけ統一に近づきましたという、具体的に伺う結果がありますか。
#182
○中橋政府委員 実は四十六年は、現在大分ポイントの数が多くなりました土地の地価の公示制度というものが発足をしました機会に、先ほど言いました三つの税目につきましての評価と、それから地価の公示制度の公示価格というものとをできるだけ一本にしようではないかという議が起こったことは確かでございます。
 しかし、その後の実情を見てみますと、現実に発足をしました地価の公示制度におきます公示価格と固定資産税の長年据え置きになっております価格、特に農地におきましては十数年来据え置きになっております価格、それから三年据え置きになっております価格、それから相続税の価格というのは、なかなか統一をするにつきましても、一体どっちがどれに寄っていったらいいのかということで非常に議論があるところでございます。したがいまして、御質問のように、実績としては出ておりません。
#183
○荒木委員 いや、議論があるからこそ不信感が起こり、統一の必要を答申で指摘しているわけでしょう。成果がないということだったら、あなた、四年間見るべきことをしてなかったということになるじゃありませんか。結局、結果としては税調の答申で指摘をし、国民の間で不信感がある、こう言っているにかかわらず、是正の措置が四年間とられていない、こういうことでしょう。一昨年の相続税改正の機会もありました。それでも是正措置がとられていない。これは政務次官、先ほど努力するという御答弁がありましたけれども、結果として成果が出るような形で検討するということを、はっきりお約束いただけますか。
#184
○森(美)政府委員 検討いたします。
#185
○荒木委員 それでは、いま言われたその答弁がどういうふうに実を結ぶかということを十分私たちも注視をしていきたいと思うのでありますが、問題は、これはどっちかへ近寄るというわけですから、どっちの方向へ統一をしていくかということです。
 そこでお伺いをしますが、地方税法に定めておる固定資産の評価の方では、いま世上非常に問題になっておるインフレ効果に対する配慮、評価の点もあれば課税の点もあります。そういうふうな点で、評価上あるいは課税標準策定上、固定資産の評価、課税について配慮をしておるかどうか、インフレ効果をできるだけ少なくするという方向へしているかどうかという点、大筋だけ自治省の方から伺いたいと思います。
#186
○川俣説明員 固定資産税の特に土地について申し上げますと、四十八年度が評価替えの年に当たっておりまして、その際、制度改正といたしまして住宅用地の負担を軽減する必要があるということで、住宅用地につきましては、評価額の二分の一の額を課税標準とするという措置をとっております。
 さらに四十九年度におきましては、住民の日常生活に最小限必要であると考えられます二百平米の小規模住宅用地につきましてはさらに二分の一、つまり価格の四分の一の額を課税標準にするという措置をとっておるところでございます。
 また、家屋につきましては、新築住宅につきまして一定期間、課税標準を価格の二分の一にするという軽減措置も講じておるところでございます。
#187
○荒木委員 そういったインフレによる地価の上昇が急激である、そこで課税の安定ということもあって、いま自治省の指摘のような配慮が地方税の固定資産評価、課税についてはなされておるわけですが、国税である相続税の評価、課税についてもそういう配慮の検討をされるかどうか。
 これは先ほど政務次官が総括的に検討するとおっしゃったのですから、その中にそういうことを含めて検討されるかどうか、ひとつ御答弁を伺いたい。
#188
○森(美)政府委員 自治省の評価に合わせることが必ずしも適正なものと私ども考えておりません。
#189
○荒木委員 それはそうでしょう。だから、いま不統一が出ているのですよ。だからこそ、いま国民に不信感が出ているのじゃないですか。税調の答申はそういうことをはっきり指摘している。もし皆さんが国民の意向を大事だとお思いなら、この不信感解消のために努力することが政策上必要だとお考えなら、そのことはなおざりにはできぬことでしょう。
 現に次官、先ほど検討するとおっしゃったのだから、その検討の中に当然この評価上、課税上の地方税法の配慮を統一するための検討も含められてしかるべしでしょう。ですから、検討された結果についてはまた伺います。しかし、そのことの検討の必要性ということを、検討もしない前から否定をするということになれば、先ほどの御答弁の本旨ももう一度お聞きしなければならぬことになります。重ねて伺いましょう。
#190
○森(美)政府委員 私が先ほど検討と言いましたのは、私どもの方に寄せてくることを考えておるわけでございます。現状のままで、自治省の側ではなくて、私どもの側に一割でも二割でも寄せてこよう、こういう検討をしよう、こういうことでございます。
#191
○荒木委員 そうすると、皆さんは一歩も譲らぬ、向こうのほうだけ寄ってこい、こういう検討ですか。その検討の中身をひとつはっきりしてください。あなた方の方は寄るというつもりは全くないのか。
 不統一を統一するために検討せよと税調が言っておるのは、常識的に考えれば、両方がいろいろ相談をして歩み寄りをする、こういうことでしょう、普通に言えば。それを受けて検討するとおっしゃるのに、自分の方は変えぬ、おまえの方が来るなら来いというのは、一体、統一のための正しい国民の立場に立った検討でしょうか。国民の不信感を解消する、そして、その国民の要望にこたえてインフレ効果を除去するためにいろいろ配慮しておる――そうすると、皆さんはインフレ効果の除去なんということは念頭にないのですか。そういうことはないでしょう、大臣の所信表明でもおっしゃっておるのですから。
 そうだとすれば、一般的に言っても、統一のための検討といえば両方の歩み寄りだし、ましてや事の中身はインフレ効果による不公正という状態、これは階層間もありましょう、あるいは時差的な問題もありましょう。それを統一するための問題ですから、まあ腹の中ではこっちへというお気持ちが双方にあるかもしれません。しかし、やはり政策態度としておっしゃるなら、これはやはり両方の歩み寄りの検討ということになるのが当然だと思いますが、その点ひとつ明らかにしてください。
#192
○森(美)政府委員 それは、相なるべくは私どもの方に寄ってきてもらいたい、こう考えておるわけでございます。
#193
○荒木委員 それは皆さんの願望でしょう。私が言っておるのは、国民に向けての答弁を伺っておるのです。皆さんの省内でのお気持ちはそうかもしれぬ。しかし、国民の立場を考え、自治省がそういう配慮をしておるということを、いまのインフレ被害を是正するという政策課題と照らし合わせて考えれば、やはり政策態度としては、その方向も含めて――願望は願望でありましょう。しかし、政策表明としては、両方の歩み寄りを図るように統一のために努力するというのが筋じゃないでしょうか。
#194
○森(美)政府委員 荒木委員のおっしゃるとおり、願望でございます。
#195
○荒木委員 私は、先ほど来時間をかけて政務次官の願望を伺ったのじゃないのです。大臣がお見えにならないから、大蔵省としての政策態度を伺っておるのですよ。だとしたら――個人の願望はいろいろありますよ、それは省内の意見だっていろいろあるのですから。そうではなくて、政策としておっしゃるならば、個人の願望はもう伺いました。もうそれはいいのです。はっきり政治的な態度としておっしゃっていただきたい。もし、そのことについて同じことをおっしゃるのなら、さっきと同じように、これはやはり大臣に伺わざるを得ない、私はこう思うのですけれども、その点、ひとつ立場を明確にして、個人的願望はのけて、個人的願望は委員会終了後伺います。それをはっきり、政策の方針として聞かせてください。
#196
○森(美)政府委員 適正な時価という立場で私どもは努力をしたいと考えております。
#197
○荒木委員 ですから、その立場の努力は自治省のやっておる具体的な措置を採用するかしないかを十分協議するという意味の検討でしょう。どうですか。
#198
○森(美)政府委員 もちろんその検討はさせていただきます。
#199
○荒木委員 それを伺いましたので、重ねてもう一言伺いたいのですが、自治省の方では一般的にインフレ除去というだけでなくて、小規模の宅地所有者に特別な配慮をしておりませんか。簡単に答えてください。二百平米以下……。
#200
○川俣説明員 先ほどお答えいたしましたとおり、小規模住宅用地二百平米以下につきまして課税標準の特例がございまして、価格の四分の一にいたしております。
#201
○荒木委員 そうすると政務次官、この点も小規模宅地の評価、課税について自治省がやっておる、この小規模向けの特別の措置ももちろん検討の対象にされますね。――次官に政治的な態度として伺っているのです。実務当局はちょっとおいてください、時間がないのだから。後でまた伺いますから……。
#202
○森(美)政府委員 そういう配慮をしていきますと、ますます時価と離れていくような結果になるのじゃないかということを私ども憂えているわけでございます。
#203
○荒木委員 それではしかし、問題は振り出しにまた戻りますよ。四十六年の税調の答申がさっきありました。インフレによる名目的価値の上昇について税負担が増加する、この現象に対して税調の答申はどう言っていますか。次官、御存じでしょう。このときは、そういうことのないように十分配慮検討すべし、こう言っているのですよ。
 そうすると、その被害を受けるのはやはり小規模の資産所有者、小規模の事業者。低所得者はそういう被害を受けやすいということを言っているわけですからね。だから、一般的に税額調整だとか、あるいは課税上配慮しているということを検討するとおっしゃったのだから、そうだとしたら、そのうちの小規模の宅地分についてもあわせて検討するというのがこれは事の道理じゃないですか。いかがですか。
#204
○中橋政府委員 ただいま言われましたように、インフレで仮に一般的に時価が上がっておるということになりますれば、それはまさに適正な時価と言えばそれをとらざるを得ないのであります。それを何らかの意味で配慮するという方法に、時価を下げる、評価を下げるということはもちろんありましょうけれども、それは適正な時価から離れていくということであります。言っておりますのは、そこで累進の効果をできるだけ排除するということであれば、また別のいろいろな政策配慮が別途措置としては可能なものでありまして、評価ということ、あるいは適正な時価を求めるということにつきましては、おっしゃいますようないろいろな配慮を入れれば入れるほど、一般的な適正な時価から遠ざかるわけでございます。それを私どもは憂えるわけであります。
#205
○荒木委員 局長が答弁されますと、次元がまた違ってくるのですよ。だから、また論議が別のところで今度は振り出しに戻る。
 先ほど次官に伺ってきましたのは、適正な時価ということから、自治省のやっておることとの対比でいろいろ課税上、評価上の措置について検討すべしということで、それは検討なさるとおっしゃった。そこで、私は、その中に小規模についての扱いも、自治省のあれで入っているのだから、それも含めて検討されるというのが当然だろうということで伺ったわけです。皆さんの願望と反する結果になっていくかもしれぬというのは、これは想像できますよ、だって、向こうに寄ってこいというふうな気持ちを持っていらっしゃるということを公然と言われたのだから。しかし、公式な政策意見としては、見解としては、両方歩み寄って話を決めよう、こうおっしゃったのだから、その中に小規模の問題も当然含まれるというのが論じゃないですか。次官、その点だけひとつはっきりしてください。
#206
○森(美)政府委員 政策的な評価をしていくということになりますと、先ほどから私どもが何遍も言っておりますようにだんだん時価と遠くなっていくということはございます。その点も御了承いただきたいと思います。
#207
○荒木委員 事の結果と願望とを伺っているのじゃないのです。政策を聞いているのです。次官、これはくどいですけれども、皆さんは時価だ時価だとおっしゃるが、同じ適正な時価ということで、自治省の方ではいまこうやっていて、いろいろな配慮をしていると言うのでしょう。そして皆さんの方では、そうではなくて、それはやっていない。で、それを統一せい、こう言っている。
 それに対して、両方合わせる意味で統一しましょうとさっき答弁されたでしょう。ですから、そのことの中に自治省で一環としてやっている小規模の問題も当然含まれるのじゃないか、こう言っているわけですから、この問題だけ別個だということになると、これは質的に違うことになる。いままでの答弁を全部否定されるというのでない限りは、これはもう当然、全体の大概念の中に含まれる一つの部分概念ですから、その点で次官に、先ほど政治答弁としておっしゃったことの意味合いを確認しているわけです。
#208
○森(美)政府委員 その点に関しましては適正な時価、これを目標にやっておるわけでございます。
#209
○荒木委員 それは一番最初に局長から伺ったのです。私は、その適正な時価ということを目標にやってきた結果がいまこうなっている、これをどう打開するかという、先に向けての、しかも抽象的な適正時価ではなくて、具体的に自治省のやっているこの事態との統一をどうするかという政策目標を聞いているのです。ですから、答弁を一般化したりあるいはほかへそらしたりしないで、その問題について答えてください。
#210
○森(美)政府委員 検討いたします。
#211
○荒木委員 それも含めて検討ということを伺いましたから、あと時間の関係がありますので、若干の事例についてまとめて申し上げて、できれば一括答弁でも結構ですし、時間の進行の点を配慮したいと思います。
 そういたしますと、大体いままでは宅地について伺ってきたわけでありますが、農地については市街化農地のうちA、Bは自治省の方ではたとえば二分の一、それからC農地については凍結、こういう措置をとっておるように聞いておりますが、その点イエスかノーかだけ自治省の方からちょっと一言言ってください。
#212
○川俣説明員 そのとおりでございます。
#213
○荒木委員 そういたしますと、事の筋道として、評価の問題についてこのたび特別措置でいろいろ出るということは聞いておりますから、それの論議はそのときに譲りましょう。
 いまずっと論議をしてきました評価問題としてこの農地の地方税法でやられておるいろいろな措置がありますが、その点も含めて検討されますね。――いや、政務次官に伺ったのです。さっきからの答弁の続きですから。
#214
○上村委員長 一括すると言ったから、まとめて言ってください。
#215
○荒木委員 わかりました。
 では、それから生産緑地の法案が昨年の八月成立をいたしました。その生産緑地の指定を受けた農地にその法案の趣旨に沿う評価の措置がなされておるかどうか。あるいは御案内のように、そこで何年か物をつくってはいかぬとか、勝手に売ってはいかぬとか、あの法律によってくくられてしまうわけですね。そういうことによって新しく権利制限を受ける。そういったものについての国税の立場からの評価が、その制度が変わったことによって評価の扱いを変えているかどうか。そしてもし変えていないとすれば、先ほど言ったように、ほかの制度と統一を図る意味で検討されるかどうか。
 それからもう一点ですが、純農地については、自治省の方では限界収益補正率を採用して評価をきめています。そのことも含めて、先ほど次官答弁の中で検討するとおっしゃった内容をひとつ確認したい。
 つまり、市街地農地のA、B、Cの措置、そのこと自体の当否はまたありますけれども、これはおきます。それから生産緑地の指定があった農地についての国税の対応、それから純農地に限界収益補正率を採用しておるかどうか、この点をこのたびの租特法と離れて、評価の問題としてひとつ次官から、先ほどの検討という中に含まれるかどうかという点を明らかにしておいていただきたい。
#216
○中橋政府委員 先に事務的に申しますと、生産緑地につきまして権利制限があれば、当然これは相続税の評価につきましてもおのずとそういうものが評価に反映をするわけでございます。
 それから、純農地につきまして、限界収益補正率というものはすでに相続税についても採用いたしております。その率について幾らがいいかということは、これは相続税が常に見直しておるわけでございます。
 A、B、C農地につきましての固定資産税の評価につきましては、これはかなり固定資産税の方で政策的な配慮を、評価額よりはむしろ固定資産税の額としてやっておられるようでございます。先ほどの御指摘の中には、評価額としてではなしに固定資産税額として政策的な配慮をしておられるものもいろいろございます。しかしながら、いずれにしましても、そういう政策的な配慮というものがはたして適正な評価というときに入り得るかどうかということも含めて、政務次官から先ほどおっしゃったはずでございます。
#217
○荒木委員 生産緑地の方はそれと対応しているはずだ、こう言われましたが、あれを受けて国税庁の方は、長官通達か何か出していますか。
#218
○横井政府委員 土地の評価について先ほど申し上げました途中で、いわゆる仲値の七〇%で土地の課税をしておると申し上げましたが、純農地につきましては限界補正率五五%を現在適用しております。したがいまして七〇%掛ける五五%、三八・五%の課税でございます。それ以外の農地、いま主税局長が申しました制約を受けるこういうところにつきましては、最高の場合でも八〇%の課税をしております。したがいまして七〇%掛ける八〇%、五六%課税でございます。生産緑地につきましてはまだ最終の詰めはいたしておりませんが、五六%以下というふうなことで今後検討いたしたい、かように考えております。
#219
○荒木委員 そうすると、主税局長はそれに対する対応はしているはずだ、こう言いましたけれども、国税庁では長官通達としてはまだやっていないのですね。
#220
○横井政府委員 まだ最終的にやっておりませんけれども、いま申し上げましたようなことで、制約を受けます農地については既往の通達で、ある程度の手当てをしておる。それに対しまして、生産緑地についてさらに上乗せをするかどうか、こういう点を検討しておるわけであります。
#221
○荒木委員 そうすると、ある程度の対応というのは、現にいまやっておる対応と、それから緑地法の成立に伴って長官通達は出すわけですね。その出す内容の方向を、もう一度簡潔にちょっと言ってください。
#222
○横井政府委員 長官通達はまだ出しておりません。しかしながらいま申しましたように、仲値の七〇%に加えまして、さらにその八割にするというのが農地の扱いでございます。それに加えまして、いまのところまだ売買実例等もございませんけれども、実例の受ける制約状況等を勘案いたしまして、最終的に決定の上、長官から指示いたしたい、かように考えております。
#223
○荒木委員 しかし、もう法案が成立して半年余りになるでしょう、八月にできた。いつごろ出すのですか。その時期だけひとつ最後にはっきりしておいてください。
#224
○横井政府委員 お話しのとおりでございますけれども、まだ指定がなく動いておらない、こういう状況のようでございますので、今後検討いたしたい、かように考えております。
#225
○荒木委員 いろいろお尋ねしてきたのですけれども、第一点のところは、委員長のお許しがありましたから保留をさしていただいて、第二点は、政務次官からいろいろ検討するという答弁がありました。内容の確認もさしていただきましたから、この点はひとつ今後十分検討内容を私たちも拝見して、国民の不信を解消する方向で御努力をいただきたい、こう思います。
 時間が大変長くなりましたが、これで質問を終わります。
#226
○上村委員長 次回は、明十九日水曜日、午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後三時四十一分散会
     ――――◇―――――
ソース: 国立国会図書館
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