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#1
第075回国会 大蔵委員会 第16号
昭和五十年三月十三日(木曜日)
    午前十時三十二分開議
 出席委員
   委員長 上村千一郎君
   理事 伊藤宗一郎君 理事 山下 元利君
   理事 山本 幸雄君 理事 佐藤 観樹君
   理事 増本 一彦君
      大石 千八君    金子 一平君
      鴨田 宗一君    瓦   力君
      小泉純一郎君    齊藤 邦吉君
      塩谷 一夫君    原田  憲君
      宮崎 茂一君    村岡 兼造君
      山中 貞則君    武藤 山治君
      村山 喜一君    山中 吾郎君
      横路 孝弘君    小林 政子君
      坂口  力君
 出席政府委員
        大蔵政務次官  森  美秀君
        大蔵大臣官房審
        議官      旦  弘昌君
 委員外の出席者
        参  考  人
        (税制調査会会
        長代理)    友末 洋治君
        参  考  人
        (日本労働組合
        総評議会生活局
        減税闘争連絡会
        議事務局次長) 高橋  進君
        参  考  人
        (専修大学経済
        学部助教授)  青木 信治君
        参  考  人
        (税経新人会
        全国協議会理事
        長)      吉田 敏幸君
        大蔵委員会調査
        室長      末松 経正君
    ―――――――――――――
三月十二日
 企業組合に対する課税の適正化に関する請願
 (住栄作君紹介)(第一三五〇号)
 同外二件(田中昭二君紹介)(第一三五一号)
 同(萩原幸雄君紹介)(第一四一二号)
 音楽・舞踊・演劇・演芸等の入場税撤廃に関す
 る請願(大野潔君紹介)(第一三五二号)
 同(田中美智子君紹介)(第一三五三号)
 同(田中昭二君紹介)(第一三五四号)
 同(田代文久君紹介)(第一三五五号)
 同(伏木和雄君紹介)(第一三五六号)
 同(石田幸四郎君紹介)(第一四一三号)
 同(赤松勇君紹介)(第一四四一号)
 同(池田禎治君紹介)(第一四四二号)
 同外一件(小沢貞孝君紹介)(第一四四三号)
 同(塚本三郎君紹介)(第一四四四号)
 同(長谷川正三君紹介)(第一四四五号)
 同(増本一彦君紹介)(第一四四六号)
 同(宮田早苗君紹介)(第一四四七号)
 同(八木昇君紹介)(第一四四八号)
 同(山田耻目君紹介)(第一四四九号)
 同(横山利秋君紹介)(第一四五〇号)
 同(渡辺武三君紹介)(第一四五一号)
 同(枝村要作君紹介)(第一四九八号)
 同(加藤清二君紹介)(第一四九九号)
 同(佐藤観樹君紹介)(第一五〇〇号)
 同(佐野進君紹介)(第一五〇一号)
 同(高沢寅男君紹介)(第一五〇二号)
 同(中村重光君紹介)(第一五〇三号)
 同(楢崎弥之助君紹介)(第一五〇四号)
 相続税の軽減に関する請願(小沢貞孝君紹介)
 (第一四四〇号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 所得税法の一部を改正する法律案(内閣提出第
 七号)
 法人税法の一部を改正する法律案(内閣提出第
 八号)
 租税特別措置法の一部を改正する法律案(内閣
 提出第二二号)
     ――――◇―――――
#2
○上村委員長 これより会議を開きます。
 所得税法の一部を改正する法律案、法人税法の一部を改正する法律案及び租税特別措置法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。
 本日は、各案について参考人から意見を聴取することにしております。
 本日御出席いただきました参考人は、税制調査会会長代理友末洋治君、日本労働組合総評議会生活局減税闘争連絡会議事務局次長高橋進君、専修大学経済学部助教授青木信治君、税経新人会全国協議会理事長吉田敏幸君の各位であります。
 参考人各位には、御多用中のところ御出席をいただき、まことにありがとうございます。本日は、税制改正各案について忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願い申し上げます。
 なお、御意見は十分程度にお取りまとめいただき、その後、委員からの質疑にお答え願うことといたしたいと存じます。何とぞよろしくお願い申し上げます。
 それでは、まず最初に友末参考人よりお願い申し上げます。
#3
○友末参考人 ただいま御紹介をちょうだいいたしました友末でございます。
 実は、小倉税調会長があいにく外国に出張されておりまして出席できませんので、私がお呼び出しを受けたと思います。私は、年かさの関係から会長代理として、委員各位の種々の意見の最大公約数を取りまとめするという役目を仰せつかっておるわけでございます。別に税制全般につきまして特別な研究をし、特別な意見を持っておるということではございませんので、あらかじめこの点ひとつ御了承を賜っておきたいと存じます。
 税制調査会は、昨年の十二月二十七日に、昭和五十年度税制改正に関しまする答申を総理大臣に提出をいたしました。政府はこの答申を尊重されまして、ほとんどこれを取り入れ、ただいま国会におきまして皆さんの御審議されているところでございます。
 ただ一点、税調の答申と異なるところは、社会保険診療報酬課税の特例措置の是正について、答申におきましては具体案を示しておるのでございまするが、政府案にはこれが除かれておりまして、次回診療報酬改定と同時に実施することとして、ひとまず見送られた形になっておることでございます。
 次に、この答申の内容につきまして主な点を一応申し上げることといたします。
 第一は、所得税の減税でございまするが、これにつきましては、昭和四十九年度税制改正におきまして、初年度一兆四千五百億円の規模の画期的な減税が実施されたことは御承知のとおりでございます。
 昭和五十年度におきましては、昭和四十九年度の所得税減税の平年度化が相当の規模に達しまする上、当面は、需要面から物価刺激要因が生ずることのないよう、抑制的に経済を運営することが要請されているところから、税制調査会におきましても、この際所得税減税を行う理由に乏しいとする意見が相当見られたのでございます。しかしながら、最終的には、最近におきまする中小所得者の負担の状況にかんがみ、当面の物価上昇に即応いたしまする程度の所得税減税を行うべきであるとの結論に到達をいたしたのでございます。
 今回の所得税減税の概要は、まず基礎控除、配偶者控除及び扶養控除をそれぞれ二万円引き上げることとし、その結果、課税最低限は夫婦、子二人の給与所得者の場合、昭和四十九年分の百五十万七千円から昭和五十年分の百八十三万円へと、二一・四%引き上げられることになっているのでございます。
 また、社会福祉に関連するものといたしまして、障害者控除、老年者控除等をそれぞれ基礎控除等の引き上げの幅の倍の四万円引き上げるほか、退職所得の特別控除の引き上げ、医療費控除の拡充等を行うことといたしたのであります。
 第二は、租税特別措置の整理合理化についてでございます。租税特別措置につきましては、既得権化や慢性化の排除に努めますとともに、社会、経済情勢の推移に応じまして随時見直しを行っていく必要があることは申し上げるまでもないところでございます。
 税制調査会は、昭和五十年度の税制改正に当たり、特に社会保険診療報酬課税の特例、土地譲渡所得に対しまする課税の特例及び利子配当所得に対しまする課税の特例につきまして具体的な改善案を答申いたしておるのでございます。
 このうち社会保険診療報酬課税の特例につきましては、税制調査会としてもその是正について結論を得ることが長年の懸案となっていたものであり、特に昭和四十七年六月以降は特別部会まで設け、その具体的な改善措置につきまして鋭意検討を続けてまいったのでございます。その結果、昨年十月にこの特例の改善に関しまする基本的な考えについての答申を取りまとめ、さらに昨年十二月の昭和五十年度の税制改正に関する答申におきましては、具体的な改善案を答申したものでございます。ただ、この程度の改正では社会的不公正の是正がやかましい今日、不満を感ずるとの強い意見が主張されたのでございまするが、長年にわたりまする懸案を解決する第一歩をまず踏み出すことを最優先に考えるべきであるとされたのでございます。
 政府は、次回診療報酬改定と同時に改善合理化を実施するとのことでございまするが、答申の趣旨を十分尊重し、できるだけ早い機会にぜひともこれを実施するよう特に希望申し上げたいのでございます。もしこれが万一また見送られるようなことになりますれば、一般納税者の納税に対しまする信頼感は非常に恐ろしいものがあるように感ぜられてならないのでございます。医師が優遇されておりますところのお金は、強いて申し上げますると、一般納税者がかわって負担をしている、その犠牲において医師が優遇されておる、かように申しても決して過言ではない。医師の社会的使命ということから考えまして、これは非常に大きな社会的不公正の是正の問題である。もしこれがうまくまいりませんと、政府としては、社会的不公正の是正の看板をおろしてもらわなければならないんじゃなかろうかという意見が税調の内部でもかなり強いのでございます。
 次は、土地譲渡所得課税の強化についてでございまするが、個人の譲渡所得に対する課税の特例は、昭和四十四年度の税制改正におきまして、仮需要の抑制、土地供給の促進等の見地から導入されたものであり、短期譲渡所得の分離重課制度と長期譲渡所得の分離比例課税制度から相なっておるのは御承知のところでございます。
 このうち、長期譲渡所得につきまして、分離比例課税により税制上優遇措置が講ぜられていることにつきましては、いかに地価対策とはいえ、所得税負担の公平を余りに阻害するものであり、政策目的に比べて犠牲が大き過ぎるのではないかという強い批判が従来寄せられていたところでございます。
 そこで、今回の改正におきましては、土地譲渡所得につきましてもそれ相応の負担を求めるという見地から、その強化を図ることとしているのでございます。
 すなわち、個人の長期譲渡所得の分離比例課税制度は適用期限の到来とともに廃止し、新たに五年間の時限措置として、譲渡益二千万円以下の部分につきましては二〇%の税率により課税し、譲渡益二千万円超の部分につきましては本則の二分の一総合課税にかえて四分の三総合課税とすることとし、全体として本則より重い負担を求めることとしておるのでございます。
 次に、利子配当に対する課税の強化についてでございまするが、これにつきましても総合課税を行うことが望ましいものであることは申し上げるまでもないのでありまするが、利子配当を完全に把握する体制の整備をされていないまま一挙に総合課税に移行いたしますると、新しい不公平を招く恐れがあるのでございます。
 そこで、昭和五十年度の税制改正におきましては、利子配当所得の源泉分離選択課税制度につきまして選択税率を二五%から三〇%に引き上げ、適用期限を五年延長することとしております。
 なお、今後利子配当を完全に把握するための措置につきまして検討を行い、そうした措置が整った場合には五年の期間内におきましても総合課税に移行するものとしておるのでございます。
 第三は、相続税、贈与税についてでございますが、これにつきましては、昭和四十一年以来基本的な見直しが、怠けたわけでもございませんでしょうが行われていないため、その後におきます地価及び一般的な物価水準の著しい上昇を反映いたしまして、相続税の負担は急激に増加しておるのであります。そこで、課税最低限の引き上げ及び税率の緩和によりまして、一般的な負担の後追い的な調整を図ることとしておるのでございます。
 また、かねてよりの懸案でございました配偶者の負担の軽減問題及び農地に対する相続税の負担の問題を解決するため、配偶者の相続税負担の軽減措置を拡充するとともに、農地に対しまする相続税の納税猶予制度を創設することとしておるのでございます。
 贈与税につきましても、相続税の改正とあわせて基礎控除の引き上げ及び税率の緩和を行うこととしておるのでございます。
 第四は、間接税についてでございます。
 これにつきましては、経済社会の推移、消費の態様に適しました課税の実現を図り、税体系におきまして適切な地位を維持するよう配意していくことがぜひ必要でございます。
 昭和四十九年度の税制改正におきましては、印紙税、自動車関係諸税の負担の見直しが行われたのでございますが、昭和五十年度におきましては、昭和四十三年以来据え置かれておりまするため、その後における物価上昇等により負担が低下しておりまする酒及びたばこに関する間接税について負担の調整を行うこととしておるのでございます。
 すなわち酒税のうち従量税率によっておりまする酒類につきまして、大衆酒を除き一五%ないし二二%程度の税率を引き上げるとともに、たばこの小売定価につきまして十本当たり一級品につきましては二十五円程度、二級品につきましては二十円程度引き上げることとしておるのでございます。
 以上が今回の答申の主な内容でございます。
#4
○上村委員長 次に、高橋参考人にお願いいたします。
#5
○高橋参考人 総評の高橋でございます。ただいま御紹介いただきましたように、減税闘争連絡会議の事務局次長も兼務しております。
 私は、税制の専門家でも研究者でもありません。いままで一銭の滞納も許されなかったまじめな一納税者にすぎません。しかし、今日の税の仕組みの不公平さ、過酷さについては非常な憤りすら感じておるものであります。
 私どもの運動の目的は、第一に不公平な税制を改めていくこと、第二に大衆に重い税負担をもたらしていることをやめさせることのために、院内外で活動しております。主だったものとしては、毎年税制改正の要求をまとめ、請願、要請行動を税制調査会や国会に対して行ってまいりました。
 また一方では、四十四年の十月、北海道、栃木、東京、長野、大阪、福岡の六地裁に十五人の原告を立て、源泉所得税制度違憲訴訟を提起し、今日に至っております。同じく四十五年三月に、宮城の仲間二十七人が直接税務署に所得税の還付請求という形で行った、源泉徴収されている者にも必要経費の実額控除を認めよという要求行動がことしで六年目を迎え、全国的に広がっております。この申告行動をめぐって種々の論議があることを聞き及んでおります。だが現に、昨年の場合、岐阜県のみで約二千人の仲間が確定申告をして約一千五百万円の還付がありました。一昨年まではこのような手続すら知らず、税金を取り戻す権利を行使せずじまいだったのが労働者です。税務署は税の取り立てを仮借なく行いますが、取り過ぎた税金を返すような仕組みにはなっておりません。これが民主国家の税務署なのかと疑いたくなることが再三ございます。
 私たち給与所得者は、源泉徴収という名のもとに、いやおうなしに、自分のふところに給料袋が納まる前に強制的な手段で税金を取り立てられております。所得税法は、源泉徴収をするよりどころは明らかにしておりますが、源泉徴収される義務を明文化しておりません。したがって、源泉徴収されている者でも税額を確定するには申告しなければならないと思います。現実に、年末調整における税の確定が正確かどうかは、確定申告をして初めて税務署がその適否をチェックし、本人に還付または追加納付の手続をしております。これは、明らかに、年末調整は税の予納制度であって、確定申告することによって初めて税が確定することを物語っております。それならば、なぜ給与所得者だけが確定申告のときに必要経費を書き出し得ないのかということで、この運動が広がっているわけでございます。
 現在は、私たちが計算した経費は、給与所得控除が働いておるからといって、その中身を審理しないでおりますので、一銭も戻らない方が大半です。それでもこの運動に参加する人々が年々ふえ、本年は三万人を超えようとしております。このことは銭金の問題ではなく、われわれだけがなぜ他の所得者と同じような納税方法を認められないのか、その不公平な扱い、差別に対する憤りが、このように運動の輪を広げている要因だと思います。
 一体、源泉徴収制度は、私たちにどんな不利益をもたらしているでしょうか。第一に、税金が毎月毎月天引きされ、前払いとなっております。
 第二に、給与所得者以外の者に認められている延納の権利の恩恵にもあずかれず、その上、延滞金を納めても、滞納する権利すらありません。
 第三に、火災、水害などの場合を除き、どんな重病人が出ようと徴収を猶予されることはありません。
 第四に、事業所が間違った計算をして多く納め過ぎていても、それを直接税務署から返してもらうことができません。
 第五に、源泉徴収されている人以外は、税額決定に不服ある場合、各種の不服申し立て制度によって救済の道が開かれていますが、給与所得者にはそれがございません。これは納税者としての人格が認められていないことではないかと思います。
 第六に、申告制度にならされていないために、確定申告すれば控除される医療費、雑損、住宅取得控除など、ほとんどの人が利用しておりません。冒頭に述べた岐阜の例などはその典型的なものでございます。
 第七に、天引き制度で税金に対する感覚が麻痺させられ、タックスペイヤーとして意識が弱く、政治的関心が希薄になっています。
 このように、税務行政執行の上からも不合理な源泉徴収制度を一日も早く改められることを切望するものであります。
 第二点は、給与所得者にも必要経費を認めるべきだと思います。給与所得者のみ、収入が幾らあるかで税金は自動的に決まってしまいます。共かせぎのため幼児を保育所に預けている人も、時間外割り増し金が収入の三割を占めている人も、毎日、日勤しかしていない人も、その経費は給与所得控除で一律に計算されております。これに対し、事業所得などの場合においては、実際に要した必要経費のすべてが控除されるたてまえになっております。給与所得控除額の中に給与所得者の勤務に必要な経費の金額を概算的に控除する部分が含まれていると言われますが、仮にある給与所得者の実際に要した経費の金額が給与所得控除額に含まれている概算経費控除分を著しく超える場合においても、現行制度のもとにおいてはその超過分を控除してもらえません。
 このような予盾を解消するためにも、税法上の実額控除と法定の概算経費控除とのいずれかの選択制を保障するのが当然であると思います。
 第三点は、給与所得者の課税最低限の決め方ですが、大蔵省は、生計費非課税の原則ということは考えておらないそうでありますが、私どもは、労働者の必要経費は労働力の再生産費、すなわち生活費それ自体だと思っております。
 政府は、日本の課税最低限は世界の水準を抜いていると盛んに宣伝しておりますが、しかし、税調の長期税制答申の中にも明らかになっていますように、給与所得の必要経費に関する各国の制度はまちまちであります。アメリカ、西ドイツ、フランスなどは、交際費、研修費、職業上の団体会費まで必要経費に組み入れ、実額控除や選択制を認めております。物価水準も異なり、社会保障の給付も違う環境で、ただ単に金額だけを比較し、その高低を論ずることは的外れな論議であると思います。
 第四点は、ことしの所得税減税でありますが、昨年の二兆円減税で課税最低限は大幅に引き上げられたから、ことしは減税の幅を物価調整だけにとどめたと言われております。昨年は、あの異常な物価値上がりで、春闘の平均賃上げ率が三〇%を上回っても、実質所得がふえなかったにもかかわらず、政府は、予算編成時に賃上げの見通しを一八%と試算しておいたために、源泉所得の自然増収が一兆五千億にも上り、勤労者は、減税どころか、実質増税に泣かされております。
 ことしの改正内容を勤労者家庭に当てはめてみますと、税額が減るのは二百万円世帯で年収のアップ率が一二%以下の場合だけであります。三百万円以上の世帯は、ベースアップと名のつくものがありさえすれば、どんな場合でもことしの税額を上回っております。その上、物価が一%上がると二百五十億円の増税効果になるといわれておりますので、政府の見通しの一一・八%でも二千九百五十億、酒、たばこによる増税分三千六百億、計六千五百億円が庶民のふところから吸い上げられ、重税感はますます深まるばかりでございます。せめて五百万円ぐらいまでは実質減税効果が適確に及ぶようにすべきだと考えます。一方、高額所得の人々には、逆に負担をふやすことを考えるべきだと思います。
 以上の点から見ても、減税のやり方は戻し税方式によるべきが一番適切だと思います。不公平税制の三本柱であった医師、土地、利子配当に対する措置が一向に改められず、ますます国民に税に対する不公平感が広まっております。
 第五に、税務行政についてでございますが、納税人口の八〇%以上を占める源泉徴収者に対し、税務職員が一税務署当たり三・五人ということでは、いかに納税者扱いをしていないかは明々白々であります。国税不服審判所に至っては、審査請求をした者を審判所に呼びつけ、事情聴取のような形で陳述をさせるだけで裁決を出しております。こんな審査の仕方では真に納税者の権利救済機関として機能しているとはお世辞にも申し上げられません。速やかに準司法機関としてその役割りを果たされるよう改組されることをお願いするものでございます。
 以上で私の意見陳述を終わります。
#6
○上村委員長 次に、青木参考人にお願いいたします。
#7
○青木参考人 ただいま御紹介にあずかりました青木でございます。日ごろ、もっぱら財政学の講義を担当しておる者でございます。至って世事に疎うございますので、一般原則論の域にとどまることになるかと存じますが、あらかじめ御了承を賜りたい、かように存じ上げます。
 本日は、昭和五十年度の税制改正につきまして、はばかりながら若干意見を申し述べさせていただきたいと存じます。
 顧みますと、今日まで社会資本の整備や社会福祉の拡充ということさえ十分であれば問題はないという、いわば財政主導型経済論なる見解が支配的ではなかったかと思われます。そこには国民全体の生活安定が要請されておりますとともに、その無限の向上が意図されてきたとみなすことができると存じます。ではございますが、そうした見解は引き続き高度経済成長を肯定するものであり、また見逃すべからざるは、あながち国民生活の平等化に真剣に取り組むものではないという点でございます。
 社会資本の整備も社会福祉の拡充も、国民全体の安定向上に寄与はいたしまするが、たとえば社会福祉のうちの社会保障ということにいたしましても、貧困の救済と貧困への転落防止という、いわば対症療法的施策にすぎないとさえ言えるわけでございます。仮に最低生活水準がどんなに高く引き上げられましょうとも、他面、最高生活水準もまた無限に高く引き上げられるならば、貧困感は永遠になくならないであろうか、かように思われるのでございます。
 しかも、すでに今日、御案内のとおり、自然資源の枯渇化、自然環境の荒廃化、人口の絶対的過剰化及び人間疎外の激化が顕著になりまして、古来からの地球無限観に基づく人工的富のおびただしくはんらんすることを前提とした理想社会像というものが、音を立てで崩壊しつつあるやに感じられます。そこにおきまして、もはや高度経済成長はもとより、これまでの国民全体の生活の無限の向上をもって善とする考えにも終止符が打たれなければならないかと存じます。そして、これよりは、ひたすら国民生活のいわばしょうしゃな安定と国民の生活水準の平等化に努める時期に逢着していると思われるわけでございます。
 私の見ますところによりますと、税制の改正はこうした新時代の要請のもとに行われてしかるべきかと存じます。言いかえますと、税制の改正は、国民生活の安定と平等という目標のもとにのみ講じられなければならないということでございます。
 ところで、日本経済の現局面は、すでに触れましたとおり、物価高騰下の不況でございます。物価高騰がいかに国民大多数の生活の安定を脅かし、貧富の差を拡大しているかはいまさら申し述べるまでもございません。かてて加えて、不況の打撃を受け、生活苦を味わっている人々も少なくない、こういうありさまでございます。そこにおきまして、国民大多数の生活苦を可能な限り除去し、また国民の生活水準の平等化を図る上で税制の改正が一段と重責を帯びると存じます。言いかえると、新時代の要請にこたえるべく、税制の使命は重かつ大であるという次第でございみす。
 確かに、今次改正案には改善の面があることを認めるのに私は決してやぶさかではございません。しかしながら、さりとて今次改正案が、ただいま述べさせていただきました新時代の要請に必ずしも忠実であるとは遺憾ながら認めがたいのでございます。現下のような生活必需品の価格高騰下におきまして、国民生活の安定と平等ということを目指すならば、所得税の減税ということは、当然生活苦にあえぎ、生活水準の格差拡大を見せつけられている中小所得者にだけ限られなければならないはずでございます。ところが、改正案に盛られております基礎控除、配遇者控除及び扶養控除から成る人的控除の引き上げという減税措置は、決してそうした線に忠実に沿うものとは申せない、かように存じ上げる次第でございます。
 この改正が行われるならば、第一に、今回の減税は四十九年度の税制改正の際のそれと比べましてここ二減税であるということが言えるでありましょう。このこと自体、中小所得者の税負担軽減に資するところはさほど大きくはないと存じます。ではございますが、それにも増しましてこの人的控除引き上げという方式による減税効果は、所得が大きいほど租税の割合も大となる累進税率をとっているがために、中小所得者よりもむしろ高所得者の上に及ぶという結果が招かれはしないかと存じます。
 御案内のとおり、四十九年度税制改正におきまして七十六万円という給与所得控除の最高限度額、いわば頭打ち制度が廃止されていることによりまして、これより高所得者は果てしない所得控除の恩恵を受けられるということになりはしないか、こういう指摘でございます。その給果、五十年度も同様に人的控除が引き上げられるならば、国民生活の平等化の一環としての税制改正はおろか、格差拡大及び物価高騰下において、めぐりめぐって国民大多数の生活苦は一層強いられることにならないとは断言できないと存じます。
 こうした国民生活の平等化のための所得課税を補完するものとし、かつ、わが国の国税における唯一の資産課税である相続税、贈与税につきましてどのような改正が考えられているかということも、国民の大きな関心事であろうかと存じます。すなわち、相続税では、その課税最低限は定額控除が六百万円から二千万円へ、法定相続人比例控除が一人百二十万円から四百万円へ引き上げられます。この結果、配偶者と子供四人の五人家族の場合で見ますと、現行の千八百万円の控除から四千万円の控除となります。ではございますが、この種の課税最低限を受け得る人々は国民のうちのごくわずかな教にすぎない。相続税を納めるほどの財産を残す死亡者は、全国で毎年約七十万人のうち一万人程度だけと目されております。
 さらに相続税の改正において問題でございますのは、配遇者の負担軽減措置でございます。現行法では、配遇者の遺産相続は三千万円まで課税されませんけれども、改正案によりますれば、相続額の三分の一もしくは四千万円のいずれか大きい方まで非課税とされるわけでございます。これは死亡した者の財産の維持ないし形成にはその配遇者の力もあずかって大であったという見解に基づくものと推量いたします。しかし、国民生活の平等化という目標を貫こうとする場合、配遇者といえども資産状況に恵まれている限り、これに沿い、相当の負担をしてしかるべきかと存じます。
 以上から、今回の相続税等の軽減案は、あるいはいたずらに有産者を優遇する結果を招くおそれがありはしないかと存じます。
 なお、これとは別に、国民生活平等化の税制への熱意を疑わせる社会保障診療報酬課税の特別措置廃止の見送りは、先ほど税調の代表の方の御意見もございましたけれども、これはきわめて注目に値する問題だろう、かように思われます。
 すでに財政は、これまでの資本蓄積促進型から福祉促進型へ転換しつつあるとの政府筋の御説明がございます。福祉促進型への転換ということは、恐らく新時代の要請に従うならば、国民生活の安定、平等化の第一歩ということになります。
 ところが、利子所得及び配当所得に対します分離課税の廃止は、税制調査会の御説明によりますれば、利子配当を完全に把握する体制の整備されないままで一挙に総合課税に移行すると、新しい不公平を招くおそれがある、かような理由のもとで選択税率を二五%から三〇%に引き上げた上で、その適用期限を五年延長することが提案されております。周知のとおり、利子配当の分離課税は、資本蓄積のための貯蓄増強促進政策の主要な一環としてとられました租税特別措置でございます。しかも、それは貯蓄促進効果の点を初めといたしまして、成立当時から問題視されてきたものであることは御存じのとおりでございます。言うところの利子配当を完全に把握する体制整備の努力が顕示されないままに、その整備を前提として廃止に踏み切られないのはきわめて納得のいかない点でございます。
 このこととあわせまして、有価証券譲渡益の非課税措置という、担税力の強い不労所得に対してほぼ完全な形での免税が講じられていることもまた見逃すことはできないと存じます。
 以上のように、利子配当分離課税の修正、延期は、なお資本蓄積促進型が税制の上で維持されようとしていることの代表的な実例になりはしないか、かように存じます。
 このように見てまいりますと、今回の税制改正案は、新時代の要請に応じた国民生活の安定、平等化という線に沿うものでないばかりか、旧態依然たる資本蓄積型と無縁なものでないようにさえ思われます。しかも、実はその上に、すでに酒税引き上げとたばこ大幅値上げが断行されようとしておるわけでございます。酒税やたばこの値上げは、即大衆課税の強化であるばかりでなく、物価高騰促進の新たな引き金となって、国民生活の安定、平等化を妨害することは覆うべくもございません。
 それに加えまして、昨今、付加価値税の導入がまたもやその筋からほのめかされているように伝えられております。それは、あるいは国民大多数に対し負担感を与えずに講じられる国民生活の安定、平等化に背く施策になりはしないかと懸念される次第でございます。
 最近、文明研究会などの開催のごとき、新時代の要請にこたえるもののような姿勢が表示されながら、税制改正という具体的な施策面で基本的に新しいところが認められないようでは、あるいは羊頭狗肉のそしりも受けはしないかと存じます。
 以上をもちまして、五十年度制改正をめぐる私の意見陳述を、簡単ながら終わらせていただきたいと存じます。
#8
○上村委員長 次に、吉田参考人にお願いいたします。
#9
○吉田参考人 ただいま御紹介いただきました税経新人会の吉田でございます。私は税理士、公認会計士でございまして、中小企業の相談相手として日常実務に従事いたしておりますので、現場実務の面から今回の改正三法について意見を述べ、皆様の御参考に供したいと存じます。
 まず、所得税法の改正について意見を述べさしていただきますと、第一点は、昭和五十年分の今回の改正で際立つことは、改正附則二条が全面的に適用になったという点であります。これは納税者の長年の要求が本年度改正で実現したわけで、税金計算の簡素化の面では画期的なものだというふうに評価できると思います。
 ところが、せっかくこの改正法の適用が一月一日にさかのぼるということになっても、この改正法によって利益を受けるのは、申告しております予定納税者と退職所得者であって、納税者の絶対多数を占める給与所得者についてはこの恩恵がないということなんでございます。
 すなわち、給与所得者は本年の一月、二月、三月分については旧法で高い源泉税を取られ、その分の払い戻しは十二月の年末調整までお預けということになっております。退職所得者については、附則七条で利息をつけて返すということになっているんですから、給与所得者については年末までお預けということを言わずに、せめて四月以降の給料から徴収する税額に充当するようにしてもらいたい。百歩譲って、遅くとも夏のボーナスの徴収税額に充当するくらいのことをやっていただきたいというふうに思っているわけでございます。
 この計算は簡単でございますし、昭和五十年度の予算年度内のことでございますから、予算の税収額には全く響かないわけでございます。計算実務はすべて給与支払い側、すなわち源泉徴収義務者が行うのですから、これはすぐ実施できることです。条文についても、附則第何条、括弧開く、施行日前に支払われた給与所得に係る源泉徴収税額の充当、括弧閉ずとして条文を一つ入れていただくだけでよいわけです。
 本日御列席の委員の皆さんは、お顔を拝見しても私どもが日常新聞紙上でちょいちょいお目にかかるお偉い先生が非常に多いようなんで、ぜひ皆様の御努力によって、先ほども高橋さんが言われましたけれども、非常に痛めつけられている給与所得者に、ひとつ皆さんのお力でこの措置によってボーナスを与えていただきたいというふうに思っているわけで、こういう措置が講ぜられれば、国会の権威というのは一段と高まることは間違いないというふうに私は思っております。
 それから第二点でございますが、福祉政策から来る障害者控除等の特別な人的控除のことでありますが、これは御承知のとおり、昭和四十二年分の所得税法改正で、計算簡易化の見地から税額控除を所得控除に切りかえたわけでございます。これは所得控除よりも税額控除の方が実際に効果があるということは、私ちょっと読ましていただきましたけれども、前年、前々年の参考人の意見陳述の中にもしばしば出ておることでございまして、今回の改正で申し上げれば、老年者控除の適用要件としての所得限度額が現行五百万円から一千万円にアップいたしましたけれども、こういうようなアップよりも、税額控除に切りかえていただいた方がはるかに福祉政策に合致するということでございます。
 仮に本年度を税額控除としますと、所得五百万円ぐらいのところは税率が二〇%ですから、本年度の障害者等の所得控除額の二割を税額控除にしていただければ、低所得の障害者等の皆さんに大変喜ばれる。これは予算措置を伴うことですから、来年ということになるかもしれませんが、この点、税額控除の点をお考え願いたいと思います。
 それから第三点でございますが、白色申告者の事業専従者控除の件でございます。この専従者控除の基準としては、私は給与所得の最低控除額五十万円に合致させるのが妥当じゃないかというように思います。また、青色申告者に事業主報酬制度が実施されておりますので、これに関連して、白色申告の事業主にも少なくとも事業専従者控除と同額の控除を認めていただきたいと思っております。
 ついでに申し上げますと、青色事業主報酬制度というものは非常に制限がきつい。毎年十二月末までに翌年の事業主報酬を決めて届け出せよ、一たん決めたものは変更まかりならぬということになっているわけで、これは青色申告の専従者給与に対する届け出より格段に厳しくなっております。収益見込みというのは、前年度の決算を検討してある程度見込みが立つわけですから、青色専従者の給与の届け出と同様に、事業主報酬の届け出も三月十五日までにしていただくと、大分事業主報酬というものが生きてくると思います。
 それから第四点として、医療費控除でございますが、足切り限度というものを撤廃していただきたいということでございます。体のぐあいが悪くても、家族の生活のために、健康保険には入っているにかかわらず医者にも行かないで、くしゃみ三回ルル三錠というのですか、薬を買って済ましているという例は非常に多いわけでございます。低所得の勤労者にはこういう例は非常に多いことで、社会保険料というのは御承知のとおり全額所得控除になっておりますし、売薬で済ませることはその分だけ、それ以上に社会保険診療支出を少なくするという意味にもつながっておりますので、医療費支出については足切り限度を撤廃して、全額控除をするというようにお願いしたいと思っております。
 医療費が全額控除となると、医療費支出についてお医者さんなり薬局から領収書を受け取るという慣習が国民に定着するようになります。税務行政上手間がかかるということについては、医療費控除を年末調整で行えるようにすれば、大部分は片づけられることになって、大変喜ばれて、福祉ということに非常に大きくつながるのじゃないかと思います。
 それから第五点でございますが、今回、給与所得者が確定申告を要しない限度額として、給与以外のその他の所得が引き上げられました。ところが、同族会社の役員及び特別関係者がその同族会社から受けるその他の所得については、たとえ一円あっても全額合算申告しなければいけないことになっているわけです。どうしてこう同族会社ばかりをいじめるのか。要するに、中小企業の法人のほそんど全部は同族会社ですから、私は、同族会社をいじめる制限規定をついでに撤廃していただきたいと、これもお願いしたいことでございます。
 最後に、これに関連して申し上げたいのは、給与所得に関する現物給与の課税規定でございますけれども、これは御承知のとおり、現物給与については月々の免税点は七百円、これは基本通達に入っております。この免税点は、昭和二十五年までは百円で、二十六年から二百円、二十七年から五百円、二十九年から七百円、そのまま今日まで変更がないわけです。二十年変更がないのですが、現在昼飯を食べても五百円という時代で、現物給与の七百円免税点は余りにも低過ぎる。通勤費については、御承知のとおり、四十一年改正で非課税所得に組み入れられて、毎年のように政令でアップして、今日九千円になっているわけです。昭和二十九年当時の通勤定期の控除額は五百円でしたから、今日の現物給与の免税点の七百円は余りにも低いということが言えると思います。ぜひこの際に現物給与の免税点は通勤費の控除並みにアップをいたしていただきたい、こういうふうに思います。
 次は、法人税の改正についで申し上げますと、まず第一に、同族会社の留保金課税、これはもうそろそろ撤廃の時期が来ているのじゃないかというふうにはっきり申し上げられると思います。留保金課税については所得課税に吸収して撤廃すすべきだ。
 第二点は、法人税の累進税率の導入でございますが、大企業の超過所得について担税力相当分の累進制をとる。私は所得十億円以上の部分について五〇%の課税をやってもいいのじゃないかというふうに考えております。ただ、ここで大事なのは、大企業のそういう法人税が転嫁されないように別途法的な措置をとりませんと、力が強いですから、法人税も転嫁する可能性があるという点はは申し上げたいと思います。
 第三点は、大会社に対する受取配当の益金不算入、配当軽課というものは、これは現在の時点ではもう廃止する時期が来ている。いわゆる法人擬制説というような実態は、中小企業の同族法人にその実態があるわけでございまして、これは税制調査会にお願いしたいのですが、ひとつとことん審議していただきたいというふうに思っております。
 第三番目に、租税特別措置法について、時間がございませんので簡単に申し上げます。
 土地譲渡所得課税の適正化でございますが、今度の改正は土地成金を目のかたきにし過ぎたという感じがございます。説明で見ますと、単純に総合課税にすると、低額の譲渡益四千三百万円以下については現行の分離課税よりも課税額が低くなるので、従来の施策を継続するということで二〇%の税率を据え置いておりますが、これはちょっと私はいただけない。ということは、低額の譲渡ということは非常に土地の供給の促進にも役立つことでございますから、当然低額の譲渡益については軽減措置を講ずべきだというふうに考えます。
 第二点は、譲渡所得の特別控除、収用の例だとか土地区画とかいろいろな控除の恩典がございますが、地方自治体の課税担当者の方がこういうような控除条件についてもっとわかるようなPR、これは国税庁ということになるのかもしれませんけれども、実際にそういう施行している自治体の課説課に聞いてみると、適用になるかどうか、チンプンカンプンで全くわからないわけです。こういうようなものは日常の実務では非常に大きな困難を来たしておるわけでございます。実際に収用でも本当に控除になるということがはっきりしているのだったら、また収用とか土地区画の事業がスムーズにいくということにもつながるので、ぜひ地方自治体の職員がこういう特別措置の内容について具体的に知るような措置を講じていただきたい。
 それから第三点、農地に対する相続税の納税猶予制度の創設でございますが、今回の農業投資価格にとどめるという課税措置、これは大変結構なことでございます。ただ、これについては、農地の固定資産税についても、農業投資価格というものを固定資産税の課税標準とする。実際に農業をやっている者、これについてはそういうような配慮をしていただきたい。農地が地価を高めたわけではございませんので、実際に農業をやっている者については、固定資産税についてもそういう都市並みの追い出しの高額の課税をするのではなくて、先ほど青木先生も言われましたけれども、今日は高度成長政策ではなくて食糧自給時代になっているわけなので、これは発想の転換を行っていただいて、固定資産税の軽減を図っていただきたい。
 中小企業の事業引き継ぎの贈与税についても、お医者さんも同じことですけれども、この事業引き継ぎについて農地の贈与税並みの配慮を願いたい。
 時間があと一分でございますので、その他さっと申し上げますと、直間比率の問題については、どれが直接税でどれが間接税だという公的な解釈がはっきりしておりません。これをはっきりしていただいて、その上で転嫁の問題を考えて直間比率を考えていただきたい。
 それから医者の問題ですけれども、大分医者がやられておりますが、これは憲法二十五条の、健康にして文化的なのこの原則からもう一回洗い直してみたらどうかと私は考えております。医者が医療施設を改善するということについては国民の願いなんですから、医者が収益を医療施設の改善に投じる限り税金はかけない、これは憲法二十五条と合っているので、そういう面でひとつお考え願いたい。
 それから、税金が特別、政策的に高い安いということになった場合に、もっと積極的にPRをしていただきたい。こういうことをすると高くなりますよ、こういうことをすると安くなりますよということで、こういうPRを政府の方で積極的にやっていただきたいというふうに思います。
 以上、簡単でございますが、意見を終わります。
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#10
○上村委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。佐藤観樹君。
#11
○佐藤(観)委員 参考人の皆さん方には大変お忙しいところを、いろいろな角度からお話をいただきまして、ありがとうございました。
 私は全般的には青木先生がお話しになったことに、今度の税制改正あるいは現状についての考え方がきわめて近いわけでありますが、そこで友末参考人にお伺いをしたいのでありますが、今度の税制改正、相続税法、贈与税法、これは本委員会を通過していったわけでありますけれども、先ほど青木先生も言われましたように、この特に激しい三年間のインフレというものをどういうふうに認識されて税制改正というものができたんだろうか。
 それは、一つには勤労者、給与所得者の減税規模の問題、あるいは土地、利子配当所得、医者の問題、これは医者の問題を除いては若干の前進はあるわけでありますが、基本的な問題には触れられていないと私は思うのであります。
 それから、片や相続税は、いわゆる資産家についてはきわめて有利になっている。特にインフレで強かった資産家、いま相続税を納めているのは大体三万人程度、こういう人についてはむしろ優遇がなされ、そして勤労者には減税は非常に少なく、しかも酒とたばこの値上げがかぶってくる。こういうことになりますと、この三年間のインフレでインフレ弱者と言われる、単に社会保障を受けている人々、母子家庭あるいは老人の方々、こういった狭い意味でのインフレ弱者ではなくて、全く抵抗力の弱い勤労者の方々、中小企業の方々について、果たしてどういう配慮が今度の税制改正で全般にされたんだろうかということについて、私はきわめて疑問を持つわけであります。その点について、税調の中でどれだけこの三年間の激しかったインフレというものを頭に置いて税制改正が出されたのか、お伺いをしたいと思うのであります。
#12
○友末参考人 ただいま佐藤先生から、インフレについてどういう考えのもとに税調は税制改正を検討したかという基本的な御質問でございます。
    〔委員長退席、山下(元)委員長代理着席〕
 例年の税制改正をいたす場合におきましての案を練るときに、税調としていつも考えますことは、いわゆる土台をどこに置いて考えていくかということが、しょっぱなに議論に相なるのでございます。本年の改正につきましてもやはり同様に、どこに家を建てる土台を置くのか、これが問題になりました。いままででございまするというと、社会経済発展計画というものがございます。これをまあ土台にして考えてきたのでございまするが、これがいまは役に立たなくなっております。これから改定をされなければならない。日本の経済社会問題が今後どうなるかということについての政府全体としての見解がまだ確定をいたしておりません。さらにまた、今後の福祉計画、これがどうなっていくのか、これもはっきりいたしておりません。また、今後のインフレがどの程度におさまるか。われわれの審議いたします場合におきましても、消費者物価の上昇がどの程度かということを経済企画庁その他からいろいろ聞いたのでございまするが、はっきり実は出てこないのでございます。
 そこで、これでいつまでも議論いたしておりますると時間を食ってしようがございませんので、要するに、現在最も大事なのは、総需要を抑制いたしまして、そうして物価を安定せしめるということが国民的、国家的要望ではなかろうか、かような考えが委員の皆さんの頭の中にございまして、これを土台にそれとなくいたしまして、そうして現在最も緊急を要する各論、これから取り上げて、一つ一つ審議をしていった、これが実態でございます。したがいまして、インフレがこうなるから中小企業対策はこうしなければならぬというふうなはっきりした答えが出ておるわけではございませんけれども、なるべく社会的な公正を図っていくためには、やはり中小企業にはできるだけ手厚くしていくという考えは皆さんの頭の中にあったようでございます。ただ、総論ははっきりしないで各論からこう積み上げていった、これが今回の税調の答申の特徴である、かように一応お考えを願っておきたいと思います。
 そこで、相続税の問題について特にお触れになりましたけれども、実はこれについてもいろいろ議論が出たのでございます。余りこれは妻を優遇し過ぎるんじゃなかろうか、金持を優遇するんじゃないかという意見も、確かに佐藤さんのおっしゃるように出ました。しかしながら、ずっと詰めてまいっておりまするというと、この相続税を納めまする対象人員というものが一年一年非常にふえてまいっております。四・三%になっておったかと思いまするが、五%近い。だんだんこの納税者がふえまして、これは結局自分の資産を売買しなければ相続税が納められないというのも出てまいってきたわけでございます。
 それは当然でございまして、四十一年以来見直しを行っていない。大蔵省に文句を言ったのでありまするが、少し怠けておるんじゃないか、もう少し経済社会情勢の変転に応じて打つべき手はどんどん打つべきじゃないか、かようなことまで言いまして、結局先ほど申し上げました、相当、物価の値上がりした、土地の値上がりした後追い的な調整である、優遇でも何でもないというふうな、皆さんの意見がさような方向に傾きまして、いま申し上げましたような結論に達したわけでございます。
#13
○佐藤(観)委員 忌憚のないお話をありがとうございました。大体雰囲気はわかってきたわけでありますが、そこで、確かに今度の税調の答申が各論から入っていった。どうも総論については余り見通しははっきりしないけれども、とにかく各論から入っていったのだ。その中で、特に今大蔵委員会で一番問題になるのはたばこの値上げ、酒の値上げにつながる税制の改正になってくる。それに触れますと、どうしても、では果たして直接税というものがいまの各論の中で限界なんだろうかということになりますと、私はきわめて疑問に思うわけであります。
 たとえば、退職給与引当金にしてもあるいは価格変動準備金にしましても、まあ細部にわたってはいいのですが、膨大な額が積み立てられているわけでありますから、こういったインフレ下において大衆課税になるたばことか酒とかの値上げによらずして、やはり企業に対する課税にもう少しメスを入れる必要があるのじゃないだろうか。しかも今後やはり高福祉が国民的な課題になり、高度成長ができなくなっている今後の日本経済を考えますと、おのずと財源というものは限られてくる。その中で考えてみたときに、各論として、企業に対する課税のあり方はやはりもっとメスを入れる必要があったのじゃないだろうか。そのあたりは今度の税調の答申の中にはほとんど足跡が見られないという結果になっていると思うのですが、これはどういう事情からだったのでしょうか。
#14
○友末参考人 税調にとりましては痛いところを御質問いただいたのでありまするが、実は法人税の問題、これは従来の関係から申しますると、資本の蓄積あるいは海外競争力の強化という高度経済成長の観点から相当程度特別措置等におきまして優遇されてまいったことは、これはもう否定できないのであります。しかし、時代は変わってまいりまして、もっと福祉重点の方向に大転換をしなければならない、従来の惰性でかようなものをほうっておくわけにはいかないということが相当税調では議論になりました。
 それにつきましては、いま仰せのように特別措置の整理の問題、その他法人課税の仕組みの問題等につきましていろいろと意見がたくさん出てまいりました。あるいは富裕税的なものを設けてもっと法人から税金を取れとか、あるいは特別措置というものをもっと徹底的に整理して、そうして法人から金を出させれば、たばこ、酒なんというものを上げる必要はないじゃないかという御意見も出たことは間違いがございません。ただ、これを詰めていっておりますると、法人税の今後の問題につきましては非常に問題が多いのでございます。先ほど仰せになりました特別措置の整理の問題ばかりでなく、法人間の益金の不算入の問題、配当軽課の問題その他いろいろございまして、これはもう一遍ひとつ根本的に見直して検討しようじゃないかという意味におきまして、特別部会までつくってやりかけたのであります。やりかけましたところが、時間の関係もございまして、十分審議をいたす暇はございません。
 実はそれ以上に火急の眼前に出てきた問題は、事務所事業所税の問題でございます。各地方団体は火の車でございます。これはもうほうっておくわけにいかないというふうなことで、法人関係につきましてはついに突っ込んだ検討をするいとまもなく、事務所事業所税の方向に実は移ってまいったのでございます。これは新税でございまして、新税には反対だという意見も一部にはございました。しかし、これは何とかしなければいかぬというので、地方税だけにつきましての事務所事業所税の創設というものがようやくにしてまとまった。後の法人関係の各種の問題はこれから残された懸案の問題でございまして、本年から税調としては本格的にこれと取り組んで、全面的に法人の仕組みあるいは法人のすべての負担等につきましての検討をやっていくということになるかと思うのであります。
 ただ、酒、たばこの問題でございまするが、実は原案はもっと高いものであったのでありまするが、まあ上げることはやむを得ぬけれども、大衆の必要とするものにつきましては、これはなるべく据え置く、あるいは上げるとしても小幅にとどめる。これは御承知のように間接税でございまするが、間接税の比重というものはだんだん減ってきておる。直接税のウエートが非常に高くなって間接税はだんだん細っており、間接税の中の物品税につきましては、御承知のように相互に非常な不公平が現実に出ております。いずれ間接税につきましては適当な地位を持たせるように根本的に検討する必要があると思います。
 いずれにいたしましても、酒、たばこは、生活必需品になっているという人もあるかもしれませんが、まあ詰めて考えれば、生活必需品じゃない、たばこをのまないで死ぬ人はないじゃないか、酒を飲まないで死んだ人はないじゃないかという議論まで実は出まして、それで、歳入も非常に窮屈な時期でございまするから、まずどこに財源を求めるかとすれば、嗜好品である、あるいはまた、非常に細っておりまするところの間接税の一部である酒、たばこの消費税の引き上げは、これはやむを得ないだろうというのが最終的な結論になったということを御了承いただきたいと思います。
    〔山下(元)委員長代理退席、委員長着席〕
#15
○佐藤(観)委員 もう一点だけお伺いしておきたいのですが、法人税についてはもう少し大企業と中小企業というものをはっきり分ける必要があるのじゃないか、あるいは累進税率を法人税にも適用する必要があるのじゃないか、こういうことは当委員会でもずいぶん論議をしているのですが、なかなか結論が出ないところなわけでありますけれども、税調においても法人税の本格的な論議というのは、少し先というか、まあ来年になるのだと思いますが、そういうふうに理解をさしていただきたいと思うのです。
 それから、医師の社会保険診療報酬の問題については、先ほど友末さんの方から、実行できなかったことについて、少なくも税調案で実行ができなかったことについてきわめて残念だというお話があって、これは先ほど吉田参考人もお話しになりましたように、背景があって非常にむずかしい問題ですので、ここではちょっと本格的には触れられません。
 それで、一つだけお伺いしておきたいのは、例の土地の譲渡所得に対する課税の問題なんですが、これは明らかに税制としては失敗であったという結論が――私は大蔵省の方も認めていると思うのです。要するに、売りは売ったけれども、買うのは大法人が買っただけの話で、庶民が土地を安く手に入れるための税制が、もちろん税制というのは主体ではなくして補完的な役目でありますが、その補完的な役目も悪いように使われたというのが一つ結論になっていると私は思うのです。
 そこで、国民の緊急の課題になっている住宅問題を解決する、それにはどうしても土地が高くて手に入らぬという地価対策というのが隘路になっているわけでありますが、今度の改正というのは、国民が安く土地を手に入れて家を建てるというのに果たしてどれだけの役割りができるだろうか、どのくらいそういった観点が審議をされて今度の改正が出てきたのだろうか。私に言わせれば、改正が出るにしてもちょっと時期を失してしまっているのじゃないかとすら思うわけでありますが、その辺についてはどういう御議論があったのか、お話をお聞かせいただきたいと思います。
#16
○友末参考人 土地税制につきましての御質問でございますが、いま仰せになったのは長期保有の土地税制だろうと思います。御承知のように、この比例分離軽課税というものを、四十四年だったかと思いますが始めたのであります。始めのねらいは、住宅政策の一環として、土地がなるべく手に入りやすいようにというところがねらいであったと思うのでありますが、これはどうもねらいと結果が結びついていないのであります。住宅のために譲渡した場合あるいは公共用地として譲渡した場合とか、はっきりした目的のために譲渡した場合に軽課するということになっていませんで、野放しで軽課税をつくった、ここに大きな一つの問題点がある。また、しかもこれを全国的に適用した、住宅の最も必要とする大都市周辺に地域を限定するのならばまた一つの理屈があるのでありますが、全国的に野放しで土地を手放すというと安い税金、一〇%の税金で済むというので、大地主がどんどん手放したというのが実情でございます。
 一度大蔵省にやかましく言ったのでありますが、なかなか大蔵省というところは頭を下げないのであります。私、非常に憤慨したことがあるのでありますが、目的と合致しない税制は、ちょっと先走ったのじゃないか。土地政策というものがはっきりできて、その上に税制というものがプラスされる、二人三脚であればこんな間違いは起こらなかった。なるべく早く住宅を建てたい、早く土地を得たいというところにどうも大蔵省は引っ張られて、税調が引っ張られた気味もないことはないのでありましょうが、ついにうっかりして制度ができまして、そうして結果は土地成金をふやしたにすぎない。全然効果がなかったとは申しません。大蔵省によれば、相当の効果があったと言うのでありますが、どうも信用できないところが、まだ私の胸の中にもあるのでございます。
 そこで、これは何としてもほうっておくわけにいかないというので、原案のような改正案ができたのでございますが、これはかなりきつい税制でございます。四分の三の上積み税率ですから、前と比べればかなりきつい課税になる。そういたしますと、土地を手放すことはなかなか困難になるということのおそれがあるわけであります。そこで、公有地の取得につきましては、特に軽課措置をとりまして手に入りやすいような方策も講じております。また今度、国土利用計画法ができまして、地方団体でかなり土地問題につきましては介入して措置ができることになりますので、若干の心配はございますけれども、土地は現在だんだんと安くなりつつあるというのが実情のようであります。この機会をとらえて、地方公共団体がうんとがんばってくれるように、中央政府としても手を打たれる必要があるんじゃなかろうか、かように考えておる次第でございます。
#17
○佐藤(観)委員 最後に、青木参考人にお伺いをしたいのでありますが、これからの成長というのは、低成長と申しますか安定成長と申しますか、資源問題から言ってもそういうところにいかなければいけないし、また、それが公害の問題なりそのほかの高度成長下に見られた数々の問題を出さない安定的な成長になっていくと私は思うのです。その中で、福祉を充実するとういことは大きな国民的課題であるわけでありますが、問題は、その財源の問題ということになってくると思うのです。高福祉高負担という言葉自体について私たちはあえて反対するものではありませんが、その負担が国民的に公平でなければいけないと私は思うのです。
 その観点から考えてみますと、長期的な税制のあり方として、今後の安定成長、低成長の中で果たして税制というのはどうあらねばならないのか、一つは、私は具体的に先ほどまだ企業の課税に対してメスは入れられるんではないかと申し上げたわけでありますが、さらに今後税目を考えるとしたら一体どういうことが考えられるのか、あるいはそれに関連をしてやはり関係深いのが、直間比率というものはいかにあるべきか、私は間接税というのは逆進性がございますから、間接税三分の一、直接税三分の二というのはまあまあいい比率ではないかなと個人的には思っているわけでありますが、今後のそういった意味での高福祉を実現するための長期税制のあり方というものについてはどういうふうに考えていらっしゃるか、御意見をお伺いしたいと思うのです。
#18
○青木参考人 ただいま佐藤委員から御質問をいただいたわけでございますが、先ほどの御質問の中に、税調の代表の参考人に対しまして、現状で申しますと恐らくインフレ下の不況ということだろうと思うのですけれども、そういった事態のもとでどのような見地から税制改正を行われたのかという御質問があったやに存じております。
 そういう御質問に対しまして、ただいま総論はないが各論というお話なんでございますが、非常にお考えなされた上総論が考えつかなかったというお答えのように承ったわけでございますが、私は総論はそれほどむずかしいものではないというふうに考えております。と申しますのは、こういったいわゆるスタグフレーションというような現経済局面において税制改正を試みる上においての視点というものは、当然不要な有効需要の喚起を抑制するということ、それからインフレによりまして、また不況によりまして生活苦をなめている人々、こういう人々に対してその有効需要を高めてやるということ、言いかえますと、生活の安定ということ、国民大多数、中小所得者に対する生活の安定を図るという見地がまず確認されてよろしいかと存じます。
 もう一つは、こういったスタグフレーションのもとにおきましては、先ほども触れましたとおり、貧富の差が一層拡大の傾向にある。したがって、こういった場合を考えまして、高所得者に対しましては、その所得を減殺していく、強度に減殺していく。そういうことは、同時に不要な有効需要を抑制することにつながるわけでございますので、そういったこと。
 これを要約いたしますれば、高所得者に対して課税を強化する、低所得者、中所得者に対しては税負担を極力軽減してやる、こういうことが十分総論として確立され得るように私は存じ上げるものでございます。
 そういうところを総論といたしまして、ただいま御質問にあずかりましたところに触れてまいりますれば、まず第一に長期的な税制改正のプログラムということになりますが、これは先ほども若干触れましたわけでございますが、ごく代表的な例を取り上げまして御説明さしていただくならば、人的控除による所得税減税方式というもの、こういうもの一つをとりましても、先ほど吉田参考人も十分お述べになったわけでございますが、これは税額控除方式にするというような形で累進課税制度を強度にするということ、これが一番の方向ではなかろうか、かように思われるわけでございます。そういったことをまずシンボルとしまして、以下御質問にお答えしてまいりたいと思います。
 それは当然行われるべきものとして、まず所得税に関しましては分離課税の廃止、こういうことが第一だろうと思われます。これはこの委員会におかれましても再三発言がなされてきたケースのように漏れ承っておりますけれども、これはぜひ優先的に行っていただきたい。
 それから特別免税措置の廃止、それから給与所得源泉徴収制によるところの不公平の是正、これは後ほど恐らく高橋参考人より詳しく御説明がなされることと思いますけれども、こういうことが一番緊急の課題ではなかろうかと存じます。
 たとえば分離課税の廃止で申しますれば、利子配当所得源泉分離選択制を同所得の確定申告不要制度とともに廃止する、こういうことが考えられるかと思います。また、配当控除制も、法人実在説のもとに同時に廃止してしかるべきではなかろうか、かように存じます。さらに土地の譲渡所得分離課税、先ほど詳しく御説明がございましたけれども、これは確かに時期は失しましたが評価するに足るものだろうと思われますけれども、こういったことに対する、特に徴税面での姿勢を正すというようなことが望まれると存じます。
 特別免税措置の廃止につきましては、有価証券譲渡所得益の非課税の廃止及び社会保険診療報酬の特例の廃止がございます。これにつきましては、先ほど吉田参考人から特に社会保険診療報酬の特例の問題に触れまして、きわめてユニークな御発言がございましたわけですが、私は一応原則的にはこれらは廃止へ移行されなければならないのではないか、このように考えております。
 前者の有価証券譲渡所得益の非課税の方でございますが、これは今回税制調査会答申のうちに全く織り込まれていないものでございますが、こうした極端な資本蓄積助成の税制がこのままであってよろしいか、このように疑われるわけでございます。
 給与所得源泉徴収につきましては、ただいまも触れましたとおり、俗に申しますクロヨンとか、トーゴーサンとか言われておりますところの給与課税所得と申告課税所得との捕捉率の格差是正、こういうことでございますが、これは恐らく後ほど高橋参考人から十分な御見解が示されると思いますけれども、こういったことをまず解消していく必要がありはしないかと思われるわけでございます。
 そこで、この給与所得控除制に、必要経費を実態に即して一定額を法定化する現行の法定控除制に、さらに実際に必要としたところの必要経費を申告させますところの実額控除制というものを創設しまして、そしてそのいずれかを選択させるという方法、こういうものがまた考えられてしかるべきかと存じます。この方法はすでに御存じのとおりアメリカ、フランス及び西ドイツにおきまして、税務行政にさしたる混乱も招くことなく実施されているものでございます。
 さらに、富裕税のことが考えられてよろしいのではないかと思われます。これは御案内のとおり、かつてシャウプ勧告に従いまして昭和二十五年度から創設されたものでございますが、所有財産の明示をきらう納税者が多かったこと、各種財産の評価が困難なこと、わけても無記名預金があるため預金元本の把握が困難なこと、こういった制約条件がございまして、二十七年度限りで廃止されました。しかし、そうした反対や困難を招く要因を除去することによりまして、この富裕税の復活ということは可能ではなかろうか、このように存ずる次第であります。
 簡単にという御指摘がございましたので、以下ほんの要約にとどめたいと思いますけれども、こういった所得税の不公平の是正の余地はまだ多々あると思うわけでございますが、次にほんの一言法人課税の不公平の是正に関して触れたいと思います。
 それは当面の措置といたしましては、費用収益概念の適正化が図られなければならない、こういうことだろうと思われます。具体的にはこれらの措置を認めている法人税法及び租税特別措置法の該当規定を改廃するということになると存じます。それ以外に多々ございますけれども、一番忘れてはならないと思われますのは、法人税というもの、法人課税というものを、先ほどもほかの参考人がお触れになられておりますけれども、現在の比例税率から累進税率へ構造転換をする、こういうことによって抜本的な改善ということが行われ得るやに感じられます。
 まことに意を尽くしておりませんで、お答えになったかどうか不安でございますけれども、以上をもちまして答弁といたしたいと思います。
#19
○上村委員長 横路孝弘君。
#20
○横路委員 初めに友末参考人にお尋ねしたいと思います。
 いまのお話を聞いておって、私たちも外から見ておって、税調のあり方というものは、いつも予算編成の大詰めのときに、いわば歳出と歳入を合わせるために、どさくさに紛れて何か自民党なんかの方針が決まってから出されてくるような感じがあるわけですね。今度も何か時間がなくて、総論について議論しないで各論でやった。
 つまりそれは、いままでの税体系の中では、若干の経済的な状況の考慮をして改善措置をとったということだろうと思うのでありますけれども、したがって、基本的な、たとえば租税特別措置法なり、いまいろいろ御指摘のありました不公平な税制を改めるというような点については、これはそういう時期じゃなくて、きちんと議論して方向を位置づけるということが必要じゃないかと思うのです。いつも予算編成の直前になって、経済の見通しや何かの問題もあるでしょうから、そう早くというわけにはいかないだろうと思うのですけれども、ただ、基本的な税のそういう問題点については、これはいつでもこの議論をして、方向というのは出せると思います。
 それが、先ほど来あった、大蔵省に振り回されたり、あるいはさまざまな圧力がかかるということになるんじゃないかと思うので、税調の自主性というものを確保するためにも、どうですか、いまの税調のあり方なり議論なりというのは、どのようにお考えになっていますか。
#21
○友末参考人 今後の税調のあり方いかんという御質問でございます。税調といたしまして、ことし、別に総論的なものを議論しなかったわけではございません。やりましたが、御承知のように、内外にわたりまする経済社会の厳しい情勢がございます。今後日本全体がどういうふうに経済を持っていくのか、これすらはっきりした線を出し得る者はだれ一人もいなかったように私は税調で考えておりました。他の省からもお願いして意見を聞いたのでありまするが、長期的展望に立つ日本の経済、財政、外交はこうあるんだ、かように述べられた人は一人もいなかった。
 税制はもちろん財政政策の一環でございます。そこで、相互に関連を持っておりまするので、全体の方向が国家的にはっきりしない以上、土台がないと言えばない、そういう時代になっておるんじゃなかろうか。すなわち、大きな転換期になっておりまするがために、これはやむを得ない。一カ月や二カ月税調で審議したって、そんな大きな問題が税調で出るものではない。また、税調はそういう問題を取り組んで出す性格のものでもない、よそで出たものを土台にして、そうしてそこにねらいを合わせるようにして税制改正をやってまいったのが今日までの状況でございます。
 そこで、今後税調は自主的にどうするのかというお話でございます。もちろん税調には各方面から権威者がたくさん出ておられまして、自主性を守りつつ検討をいたしております。そこで、何も大蔵省の言うままにあるいは自民党の言うままになっておる税調ではございません。御意見はいろいろと聞きまするけれども、最終的に自主的な結論は税調の皆さんがお出しになる、その取りまとめを私がやっておるというわけでございます。
 それで、やってみておりますると、どうも新しい税の創設あるいはすでにつくられておる税制の改正という問題になりますると、非常にむずかしい。特に今日のような厳しい社会経済の時代的な背景がありまする事態におきましては、特に実はむずかしいのでございます。よく言われるのでありまするが、「旧税は良税なり、新税は悪税なり」余りこの言葉は好きじゃないのでありまするが、ずっと税調をやっておりますると、そういう感じを実は持たざるを得ない。
 そこで、いろいろ欠陥はございまするけれども、長期的展望をながめながら、基本のいまの税体系、これを余りいじくり回すことは不可能じゃなかろうか、国民としても困るんじゃなかろうか。本当に手をつけざるを得ないところに手をつけて、漸進的に国民の納得するような税を組み立てていく。
 その前提といたしましては、今日一番大きな問題は、財政あるいは行政の硬直化の打開でございます。いつも私はやかましく言うのでありまするが、税のむだ遣いが中央、地方を通じて非常に多過ぎる。納税者の立場に立って考えますると、税金を出すたびに、これがむだ遣いをされるのかという気持ちがするんじゃないか。そこで、中央、地方を通じての行財政の大改革を納税者の立場からぜひひとつお考えをいただく。その前提がありませんと、高福祉高負担と申しましても、夢のようなことになる。これから先、国民から税金をたくさんちょうだいいたすというようなことにでもなれば、まして安上がりの行財政でありませんと、合意は得られないのではなかろうか、こういうことが税調の皆さんの頭の中にはあるようでございますので、一応御紹介を申し上げておきます。
#22
○上村委員長 この際、参考人各位に申し上げます。
 重要な問題点についての質疑でございますので、なかなかむずかしい点はございまするが、時間の関係もあり、答弁は簡潔によろしくお願い申し上げます。
#23
○横路委員 高橋さんにお尋ねしますけれども、政府の方は四十九年度の税制改正が大幅であったということで、ことしはいろいろな情勢を考えて減税幅を縮めたというように言っておるわけですけれども、生活の実感として去年の減税というのはどうであったのか、働く人を代表している立場から、サラリーマンの生活実感はどうかという点をひとつお答えいただきたいと思うのですが。
#24
○高橋参考人 いま御質問があった点につきまして的確な御答弁になるかどうかわかりませんけれども、私たち去年の十月の時点で、労働者の家計調査をいたしました。この範囲は大体首都圏の三百五十世帯の勤労者を対象にして行った調査でございますが、その中でいまのお話の中にございました四人家族を一つ例にとってみますと、大体消費関係の実支出が十五万三千五百三十三円、それからその他の非消費支出が一万七千百三十七円、その内訳は食料費が四万九千九百九十四円、それから住居費が一万四千五百六十六円、光熱費が六千三百五十一円、被服費が一万五千四百八十二円、その他保健衛生、交通、教育、それから教養、娯楽、小遣いなどが六万七千百四十一円ということで、それからその他のいわゆる税金、租税公課関係が一万七千百三十七円ということになっておるわけでございます。
 この食料費の四万九千九百九十四円の内訳をひとつ御承知いただくと私たちの生活がどんなものであるかということが御理解いただけるんじゃないか。大蔵省は生活費非課税の原則に立っていないと言われますが、給与所得、所得税と言われているわけでございますので、収入に税金がかかるとは私たちは思っていないので、所得にかかるというように考えておりますし、これは本当に、私たちの生活の実態と申しますと、食費が一日当たり千六百十三円でございます。一日のおかず代の平均は九百四十八円、一日一人当たりでは肉類が五十円、牛乳、卵が三十九円、ということは一人で一本の牛乳も飲めない。果物に至っては三十円ということになるわけでございます。
 このような食費の実態の中でも、租税公課負担は二・五%あるということから見ましても、いかに庶民の重税感は――またその中には間接税は別でございます。いま税調会長代理は、酒、たばこについてはこれは生活必需品でないと言われましたが、私たち何の娯楽もない者としては、うちで一ぱい晩酌することでその日の勤労をいやすというのは、本当のささやかな慰みでございます。そういうものの税負担を本年度また大幅にふやすということは、私たちとしてはとうていその負担に耐えられないという気持ちでございます。
#25
○横路委員 いまいろいろ教育費とか食費等の御発言がありましたが、それは合計すると幾らになって、年額幾らになるんですか。
#26
○高橋参考人 十七万六百七十円でございますから、簡単に十二カ月で掛けますと二百四万でございます。これにはいわゆる貯蓄関係、家屋月賦の払いなどは別になっておりますので、それが四万六千六百五十八円ありますから、それを入れますと一カ月二十一万七千三百二十八円ということになっておりまして、今年度の物価上昇率は政府見通しで一一・八%と見込まれておりますから、この比率を私たちの実支出の方に掛けますと二百四十万七百二十円、貯蓄関係についての分は今年度そのまま据え置いても二百九十四万七千二十円になるということでございます。
#27
○横路委員 お話を聞いていますと、昨年の調査で生活の実態というのは、生活の部分に税がかかっているということだろうと思うのですけれども、先ほど高橋さんの方からいろいろサラリーマンの人たちの税金感、所得税制についても御意見がございましたが、一体、どんなことをお考えになってどういう御意見をお持ちになっているのか、その辺のところを最後にお聞かせ願いたいと思います。
#28
○高橋参考人 率直に申し上げまして、私たちは先ほどの陳述に申し述べましたように、自分の給料袋がふところに入る前に公租公課を取られておりますので、その点では感覚が非常に麻痺しておりまして、年末調整のときに初めてこんなに税金を負担しているのかというような気持ちがございます。いまの重税感ということは、電気、ガス税から、私たちが本当にしがないパチンコをやってもこれは誤楽施設利用税がかかるわけでございまして、ちょっと子供たちと飲食をすれば、千五百円ぐらいになればまたそれにも税金がかかるという形で、本当にどういうものが税金項目としてあるのかすらも一般勤労者は知り得ない、知っていないというのが実感じゃないか。
 ですから、私たちのこの運動の中で感じましたことは、雑損控除、医療費控除、それから住宅取得控除というものがいまの現行法の中でとれるのだということでございましても、実際問題としてなかなかそのことが個々人ではそこをむしろ煩わしさのために権利放棄しているというような形になっておりますし、こういうことが本当に権利放棄にならないようにということならば、やはり先ほど青木先生から申していただいておりますように、源泉と申告の選択制をたてまえとして、それがヨーロッパ諸国ではやられておって何ら税務行政に混乱がないというならば、ぜひそういうふうな形に改めていただきたいということです。
 それから、不公平感についてでございますが、これは先ほど友末税調会長代理から、政府の税制調査会の会長代理でありながら非常に憤りを感じるという御発言があったことから見ても、三木内閣が社会的不公正の是正を政治スローガンに掲げているにもかかわらず、この税制の不公平というのは余りにも根強いんじゃないか。率直に申し上げまして、利子配当の方々が四人家族では三百八十四万円までは税金がかからないわけですが、私たちはこのぐらいの収入があれば、所得税だけでも十六万三千五百円もかかるということでございますし、それからお医者さんのことでございますが、お医者さんと私たちで、一千万の収入があるというのは、給与所得者の中では重役さんでございましょうけれども、それにしてもお医者さんの方は自動的に七百二十万の経費控除がある。そのほかにも実額でこれを上回ればそれも認められるという立場になっておるのに、私たちの場合、給与所得者の場合は二百五万しかそれが働かない、認められないということについては、何としても――私たちは決して税金を納めないというような考えを持っていませんし、納得して税金を納めたいというのが私たちの念願でございますので、その点ひとつ十分にごしんしゃくいただきたいと思います。
#29
○横路委員 ちょっと一言、先ほどの発言で、還付申告をして相当戻ってきたというお話がございましたね。その戻ってきた内容はどういうことで戻ってきたのか、それを最後にお答えいただきたい。
#30
○高橋参考人 主なものは住宅取得控除、それから雑損控除、医療控除等々でございます。これは岐阜で千五百万、東海四県で二千万、全国で三千万以上になっておりますが、その中で、先ほどもちょっと申し上げましたように、源泉徴収義務者の計算間違いで、申告したがゆえにそれがわかって返ってきている方も百人のうちに平均して三、四人ございます。これは全く私たちが申告しなかったらそのままになっているわけですね。申告して初めてそれが税務署でチェックされるというこのたてまえから言っても、私は、年末調整というのは税の予納制度じゃないか、確定じゃないのじゃないかという考えを持っております。これは、大きい人ですと二万幾らも出ているというのも現状でございます。
#31
○上村委員長 増本一彦君。
#32
○増本委員 今回の税制調査会の答申に法人税法の改正についての答申がない。その理由は、先ほどのお話で経過だけはわかりましたのですが、そこで、現在、法人税法の基本的な仕組みを含めての再検討が、特別部会を中心にしてどこまで進んでいて、どういう問題を持っておられるのか、それから、今後はそれをさらに続けておやりになっていくのかどうか、その点はいかがなんでしょう。
#33
○友末参考人 法人税に関する特別部会、これは昨年そういう方向でつくろうということでつくったばかりでございます。これから検討に入ろうとする際に、実は事務所事業所税というものが、火急の解決すべき事項として出てきた。そこで、そっちの方に手をとられまして、本格的な仕組みの問題にはまだ何ら入っておりません。これからの問題でございます。それを御了承いただきたいと思います。
#34
○増本委員 先ほど友末参考人御自身も配当軽課の問題、受取配当益金不算入をどうするとかいう問題を指摘されました。それと同時に、法人税率を累進制にすべきかどうかということも含めて、法人そのものの本質の問題にわたる十分な議論をすべきだと私は思いますし、現在のような擬制説はもう特に大企業を中心にして実態に合わないという、そういう認識で御理解を統一されてアプローチしていくべきではないかというように考えるわけですね。
 その問題とあわせて、この法人の課税所得を拡大していく問題で、先ほどもお話がありましたけれども、準備金の問題や引当金の引き当て限度をどうするかという問題もあるわけですね。現在、本法の各種引当金については政令でその引き当ての限度を決めている。この引き当て限度を決める際の政令で決めるその問題について、これが適正かどうかということ、ここまでもむしろ税制調査会で十分に審議をしてしかるべきだというように私は思うのですが、そういう点の問題意識というのはお持ちなんでしょうか。
#35
○友末参考人 特別部会でただいま仰せになったような事項についての検討は全然行っておりませんし、また、政令でどういうものを定めるかということの突っ込んだ検討もいたしておりません。すべてこれからの問題でございます。
 ただ、私個人といたしましては、かなり法人税につきましてはいろいろな問題が出ております。これらをすべて取り上げて、そして総合的な検討をして結論を出したい、なるべ早くやりたいと思いまするが、余りにも問題が大きい関係から、本年度にそう簡単に結論が出るかどうか、私はまとめ役でございますから、そこの見当までつきませんが、なかなか問題が多く、また問題の困難性が非常に強いという点から考えますると、そう簡単に結論は出そうにないということを、私自身といたしましては心配をいたしておる、かような状況であります。
#36
○増本委員 まとめ役であるからこそ、実はまとめ役の友末さん自身が、法人の課税所得を拡大していく、そのためにどうするか、政令委任事項になっていて、そうして大蔵省が、もういわば勝手に線を引く各種引当金の引き当て限度額なんかについては、こういうのはもういまのあれでも甘いじゃないかとか、もっとそれの実態について資料を出させてそれを十分に検討するというような問題意識でリードをされていかないと、その困難性はいつまでも困難なままで終わるのではないか。だから、そういう問題意識を持って取り組まれる御意思がおありなのかどうかというその点を実はお伺いしているのです。いかがですか。
#37
○友末参考人 税調でいろいろ議論してみないとはっきりしたお答えはできにくいのでありまするが、私自身の考えといたしましては、税制調査会が役人のやるような小さいことをあれこれやることは余り好ましくない、また、それに適したような方も少ないのじゃなかろうか。税調としては、長期的展望に立って大きな問題を総合的に取り上げて結論づけて、あとのことは事務当局に任せるというような方向がいままでとられてまいりました方向でございます。恐らく今後におきましてもこれに大きな変更を加えるようなことにはならないのじゃないか。特に、これから福祉財源の充実等の点から考えますれば、間接税の強化といったような問題、あるいは国と地方の税財源配分の問題、これなどが最重点的な項目にもなろうかと思いまするので、ただ法人税の根本的な基本的な仕組みのみに税調が取り組むというわけにもまいらないので、それらの点を比較考量して、非常にむずかしい問題になるだろう、かように想像をいたしております。
#38
○増本委員 現実を見てみますと、御承知かと思いますけれども、たとえば昨年の三月の大企業五十社の各種引当金、準備金等を見てみましても、すでに七兆五千五百億円にも準備金、引当金が上っているという実態があるし、あの不況だと言われている昨年の九月の決算を見ましても、東京証券取引所の一部上場の三百十数社をとっただけでも、前期と比べて五八%も積み増し、増大がある。いまここのところで課税をどうするかということが問題になるし、こういう制度そのものが、先ほど参考人自身おっしゃったように、いわば資本蓄積と国際競争力の強化というところに法人税法や租税特別措置法のそういう仕組みの重点が置かれていたということが問題になり、そういう御発言もあったわけですね。だから、そういうものが実は政令によって引き当て限度額というもので決められている。これは事務当局のやることで細かいことだというのじゃなくて、そこのところの縛りだけはやはり基本的な問題としてにらんでおく必要があるのではないかということで申し上げているわけです。そういうことはひとつ十分に御配慮いただきたい。ただ、ほかの問題も山積するから法人税の問題だけになかなかいかない、だから大変むずかしいんじゃないかというのは、私自身大変寒心にたえないところであります。
 そこで一つは、法人税についての問題を、特別部会はつくったけれども、手もつけないうちにいろいろな問題が出て、それの緊急の問題を取り上げた。そのために、いわばほかの税の引き上げということを考えて、どうも先ほどのお話ですと、たばこの値上げとか酒税の引き上げというところにいったように私は考えたわけですね。これは私は逆さまな議論だと思うのですよ。
 先ほどの友末さんのお話ですと、資本蓄積、国際競争力強化に重点を置き過ぎてきたということは否めないということをおっしゃったわけですね。だからこそ法人に対する課税の強化をしなくちゃならない。むしろ、この問題を解決した上で、改めてたばこや酒の値上げを考えればいいのに、税調の方でそっちができないからより簡単な方のたばこや酒の方の値上げで財源の確保を図ろうというような安直なやり方に行き過ぎているという気が私はするのですね、いままでのお話を聞きますと。だから、法人税の課税の強化、ここのところを解決するまで、それまではこういうたばこや酒の値上げというものは待ってもよかったんじゃないかというふうに思うのですが、いかがですか。
#39
○友末参考人 どうも私は正直な方で、ちょっと増本さんの気に触れたかと思いまするが、事実は法人税についてやりたかったのです。やりかけてみると非常に問題が多い。特にお話しになりました準備金、引当金、これなどが果たして資本蓄積、国際競争力強化のための租税特別措置なりや否やという問題についても議論が相当出てくると思うのです。それをまだやっておりません。租税特別措置、これはできるだけ整理、廃止しなきゃなりませんけれども、そうでない法人の会計上の処理の問題、よそに許されたものも法人に限ってこれを許さぬということは適正ではない。根本に租税特別措置なりや否やという問題と取り組んでも、これは相当時間がかかるなという気持ちがいたしておったのでありまするが、その前に、実は先ほど申し上げました事務所事業所税、これは足に火がついているのです。地方団体もやかましいし、多年の問題でもありまするので、何とか解決してあげなくちゃならぬというので、そっちの万へ移って、本格的な審議ができなかったというのが実情でございますから、あしからず、ひとつこの点だけは御了承をいただきたい、かようにこちらから実はお願いを申し上げるのであります。
 なお、これから本年度は法人税の本格的な問題と、それから先ほど申し上げました間接税の問題等につきましての福祉財源充実のことも大きな問題でございまするから、あわせてひとつ総合的に均衡のとれた、長期的展望に立った税制の確立というものに向かって努力してみたいと思いまするが、果たしてどのくらいの程度のことができまするか、はっきり申し上げかねます。
#40
○増本委員 次に、所得税減税の問題でお伺いいたしますけれども、今度の税調の答申を読ませていただきますと、結局経済成長のマイナスのもとで、しかし物価の動向をやはり重視しなくちゃいかぬ、そのために需要に刺激を与えないようにするため減税は小幅にすべきだと、こういう意見ですね。しかし、いろいろ高橋参考人初めほかの参考人の皆さんからのお話を聞いてみますと、それから国民生活の実態を見てみると、私はやはりミニ減税だ、こういう減税は納得できないという批判は非常に正しいというように考えるのです。
 そこで、課税最低限のあり方についてなんですが、これは友末参考人、高橋参考人、それから実務を実際に担当していらっしゃる吉田参考人にそれぞれ簡単にお伺いします。
 各二十四万円の人的控除が二十六万円に、たった二万円しか上がっていない。私はむしろ人的控除中心の引き上げをいまの税制のもとではもっとやらなければいかぬというように考えるのです。今度標準世帯で百八十三万円と言いますけれども、結局人的控除は百四万円で、後は給与所得控除や社会保険料なんかのいわば経費ですね。これが実際には四三%ちょっとで、人的控除分というのは非常に少ない。これでようやく辛うじて百八十三万円というこの実態ですね。課税最低限というものは標準的な生計費に着目すると政府も言っておるわけです。その辺を一つ目安にしたって、これだけで百八十万円ぐらいのところへ、あるいはもっと上へ引き上げていくということがむしろ私は当然だというように思うのです。そういう人的控除中心の課税最低限の引き上げにもっと努力すべきだと考えるのですが、いま三参考人にまず御意見を伺いたい。高橋さんにもぜひひとつお願いします。それぞれ簡単にお願いします。
#41
○友末参考人 所得税の減税についての税調の審議でございまするが、これはもう一歩で没になるところだったのです。こういう財政状況、総需要を抑制し、物価を安定せしめるためには減税すべきでない、去年の二兆円減税でもう十分じゃないか、よけいなことをするなという意見もかなり実は強くあって、あるいはこれはそっちへ向くんじゃないかという気持ちも一時したことがあるのであります。それをさらにオーバーして、こういうときにおいてこそ増税すべきじゃないか、交際費なども少なくすべきだという増税論すら出たぐらいでございまして、ミニ減税にいたしましても、苦心惨たんをしてまとめ役が最敬礼をして、そうは申されながら物価調整減税はやらなきゃいかぬのじゃないでしょうか、独身者あるいは子供一人の方について見ますと、消費者物価の一一八%、これをきれいにまかなったとは言えないのじゃないですかというふうな数字まで大蔵省に出してもらって、ようやくミニ減税に追い込んだというのが実情でございます。
#42
○高橋参考人 私は諸控除の性格がわからないわけです。率直に言いまして、配偶者控除は二十四万円となっていますが、では月二万円で奥さん一人がどうして食っていけるのか。先ほどから言っているように、大蔵省は生活費課税の原則はとっていないのだと言うけれども、しあし実質その生命が絶たれるような形のところまで税金はかけるのかどうかということになりますと、その点が非常に明快さを欠いている。一時、三十八年ぐらいに大蔵省メニューというのが発表されたことがありましたけれども、いろいろ論議があってその後全然あれされておりませんが、どういう形でこういうふうな金額がはじき出されるのか、その点について私は非常に疑問を持っております。
 率直に申し上げまして、人的控除の一万円や二万円の引き上げについても、先ほどからお話があるように、低所得者の私たちには一〇%くらいにしか働かないけれども、上に行けばそれが五〇%、六〇%に働くということもございますし、こういうようなインフレ状況下ではその被害を一番多くこうむっている者に対して税額控除方式をぜひとっていただきたい、こういうふうに考えます。
#43
○青木参考人 ただいまの御質問につきましては先ほど少しく触れましたが、考え方といたしましてはただいまの増本委員のお考えに同感でございますが、要するに低所得者、中所得者はインフレの打撃を非常に大きく受けている、購買力を失っているということで、生活必需物資を十分獲得できない、こういった理由によりましてこの減税を行うということだろうと思います。したがって、これはミニ減税の域にとどめておくべきではない。同時に、高所得者に対しては課税を強化するということが忘れられてはならない、かように思います。
 方法といたしましては、ただいま高橋参考人が提案されました税額控除方式、これは私も先ほど触れたところでございますが、同時に応急措置というような形で、伝えられておりますような戻し税、税額還付方式というようなものも考えられてしかるべきか、かように存じます。
#44
○吉田参考人 増本委員のお説のとおりでございます。
#45
○増本委員 そこで、時間がありませんので次に移りますが、いま友末参考人も、これからは間接税の強化だということを言われた。いま政府の方も直間比率の是正だとか福祉財源を確保するということを理由に一般消費税の導入ということを現実の問題として動き始めている。そこで、ここから問題に出てくるのは付加価値税の創設いかんという問題です。この付加価値税についてそれぞれの参考人の皆さんが具体的にどう考えておるのか。
 特に、いまのようにインフレと不況、しかも大企業と中小零細企業との間に格差があり、こういう事態のもとで付加価値税を採用するというようなことになったら、これはいろいろな面で大変大きな問題になる。一般勤労市民や中小零細企業は転嫁ができませんし、最後のツケは消費者に回ってくるということですから、逆に物価をつり上げることになるし、一層の大衆課税、重税になってくるということは目に見えている。これは私の見解です。そういうものまで含めてお考えになっているのかどうか、これは友末参考人ですね。それぞれの皆さんは、いまの政府のこういう動きに対してどういうようにお考えになっているのか、この点をまず簡潔にお答えいただきたい。
#46
○友末参考人 付加価値税につきましては、かって四十二、三年だったかと思いまするが、検討すべきだという税調の答申が出ております。実施までには踏み切っておるわけではございません。福祉財源をどこに求めるかということになりますると、なかなかむずかしいのでございます。
 一方、間接税というものは現在おそらく二五、六%じゃないかと思うのですが、戦前におきましてはこれが三分の二ぐらい占めておったという時代もあるのであります。直間比率の問題もありまするが、どこを強化しなければならないか、全般を通じて見た場合におきましては、やはり間接税のようであります。所得税についてもいろいろ問題がございます。法人税についてもございまするが、強化ということになりまするとやはり間接税。そうなりますと、全般から逆進性はございまするが、納めていただく。軽い売上税といいますか、販売税といいますか、一般消費税といいますか、付加価値税といいますか、とにかく物の取引から付加されるものから税金を少しずついただく。ただ、その場合に前提がございます。生活必需品、これはちょっとおそらく税調でも賛成する者は少ないのじゃないか。かけるとしてもほんのわずか、おしるしといいますかな、賛成者は少ないだろうと思います。
 それから前提といたしましてはやはり行財政の大改革、そっちの方から福祉財源を三分の二出すから三分の一は付加価値税で持ってくれという場合でないとむずかしいのじゃなかろうか。歳出の方をそのままにしておいて付加価値税を出せ、そんなことに賛成する税調委員は一人もいないだろうと私は想像いたします。
 もう一つは国と地方の行財政の大改革、これをやはり前提としてやって、その上にプラス売上税はこういう税ですよ、手数はめんどうになりますが、しかし歳出の方をこんなにしぼったのですよ、福祉は充実しなければならない、お金はございません、足りない、どうぞというので、そういう一般的な国民の合意ができたときに初めてこういうものは実現可能性があるというふうな方向にいくのじゃないかというのが私個人の想像でございます。
#47
○増本委員 残り時間が少ないですから、簡潔にひとつお願いします。
#48
○高橋参考人 一種の売上税だと思いますし、間接税の増強には反対でございます。率直に申し上げまして、たとえばたばこの例をとりますと、松下幸之助さんのお吸いになっておるたばこも私たちの吸っているたばこも同じでございます。それが所得の比例で見ますと、たとえば私たちが年収三百万として、その収入との割合を見ますと〇七%のたばこ税を払っていますが、松下さんの場合、このような比率、形でいけば七十七万七千箱も一年間に吸わなくてはならぬことになりますし、そんなことはできるわけではございません。結局私たちの関係との間に三百六十分の一の負担で済んでいるというようなことでございますので、このような一般大衆に逆累進の増徴になる付加価値税には反対でございます。
#49
○青木参考人 私はただいま取りざたされておりますところの付加価値税というものにつきましては、税負担が売り上げ金額に含まれまして、結局のところ最終消費者に転嫁されることを制度上前提とする租税、このように考えております。先ほど増本委員のお言葉にもございましたとおり、法人税あるいは所得税の累進化というものをたな上げする、そういう意図が込められたところの間接税の強化というように感じられてならないわけでございます。
#50
○吉田参考人 生活必需物品には非常に低率だというお話ですけれども、現在、酒、たばこが生活必需物品というように見ておられない状況においてとても当てにならないということで、そういう面では私ども中小企業の人たちと接触している者にとっては、付加価値税が実施されますと中小業者が皆税務署の徴収係になる。しかも、税務署の場合には滞納があっても給料がもらえますけれども、全部自己負担の徴収係で、取らないようになれば自己負担になりますし、まともに取ればお客さんがなくなってしまう。どっちに転んでもつぶれるという方向になりますので、これは反対ということになります。
#51
○増本委員 あと最後に吉田参考人に一つだけ伺いますが、現在でも相当な間接税の負担があると思うのです。税負担の軽減という以上、直接税のみならず間接税の負担まで考える必要がある。そこで、こういう直接税、間接税まで含めて一つのシビルミニマム的な課税の最低限みたいなものを考える必要があるんじゃないか。それ以上に負担している場合には税金を返してもらうというような仕組みまで考えていいんじゃないだろうかというようなことも考えるわけです。いま吉田参考人が零細業者の皆さんあるいは国民と実務的に接触している中で、こういうような問題について具体的にどうお考えになっておられるのか。その点だけお伺いして終わりたいと思います。
#52
○吉田参考人 総合的に考えての戻し税のことですが、前々回ですか、この委員会での参考人の意見で戻し税のことが出ましたけれども、何か社会福祉的な恩恵的なものでなくて、一体どのくらい負担しているかということを見てみると、税に対する認識が給与所得者でも増すんじゃないかというように思うわけです。これはたしか三十六年の税制調査会の答申の説明資料で間接税の負担割合が発表されましたけれども、私の記憶によりますと、当時間接税と直接税は約半々でございまして、たばこに対する税金負担は、所得税が全然かかっていない非課税世帯が五四五%負担しているという資料が記憶に残っております。
 そういう面で、実際にいまの間接税の中で物品にはっきり表示できる、そういうようなものについてレシートを発行するようにして、給与所得者の皆さんが全部集めて、年間実際にどれだけ負担しているか、資料が集まったら何%か所得税から引いて、差し引き分については戻すというようなことで一回やってごらんになると、これは本当に税負担が大変だということが全国民的にわかるようになると思うのです。そういうのも一回試しにやってごらんになったらいいんじゃないか。単に低い者の恩恵的な戻し税というのでなくて、実際に自分が負担しているのだという権利主張としての戻し税というものをひとつ考えてもおもしろいんじゃないかと私は思っています。
#53
○増本委員 時間が来ましたので終わります。
#54
○上村委員長 坂口力君。
#55
○坂口委員 参考人の皆さんには大変お忙しい中をありがとうございます。
 先ほど皆さん方のお話をお伺いいたしました中で、各参考人とも医師に対する優遇措置の問題が出まして、友末参考人もかなり厳しくこの問題について触れられたわけでございます。なかなかむずかしい面がございまして、何かタブー視されている面もございますが、重要な問題でございますので、一応もう少し深くお伺いをしておきたいと思うわけでございます。
 御承知のように、むずかしいのは医療制度そのものが完全になっていないという一面がございますし、吉田参考人でございましたかちょっと申されましたとおり、患者さん負担の医療費で建設費から設備費まで全部賄わなければならない、こういう制度の中での話なものですから、いろいろむずかしい問題がからんでくるわけでございますが、そういう中でしかしなおかつ租税というのは公平でなければならないということで、いろいろ御検討をいただいたものであろうと思うわけです。
 一つお聞きしたいと思いますのは、青色申告をしておみえになります病院、あるいはまた診療所にもございますが、それらの皆さん方の結果を見せていただきました。私の場合には完全なサンプリングをしたわけでは決してございませんで、手当たり次第いただくところからいただいて見せてもらったわけでございます。しかし四、五十例私は見せてもらいましたが、非常にばらつきが多うございまして、なかなか平均値を出しにくいわけなんです。特に外科系、内科系、あるいは精神科、産婦人科というふうに、科によりましてずいぶん違いがございますし、また、人数の多い少ないによってもずいぶん差があるわけでございますけれども、平均すると青色申告の方の必要経費というのが大体七五から八〇ぐらいなところに来ておるように思うわけなんです。そのことについて、皆さん方が集めておみえになりますサンプリングの結果と合わせてどうかということを、これは友末参考人にお聞きをしたいわけでございます。
 それからもう一つは、総収入の多いところが必ずしも必要経費が低いということではなしに、比較的大きいとところがかえって必要経費の率が高くなってきておるというような感じが、私の手元にありますものだけから見ますとするわけなんです。その辺につきまして、いまの実態、それから、どいうふうにお考えになっているのかということをひとつお聞きをしたいと思います。
#56
○友末参考人 御承知のように社会保険診療報酬制度の特例は、恐らく昭和二十六年ごろじゃなかったかと思います、政治的な妥協で生まれた変な子供ですな、あれは。税調は通っておりません。社会保険診療報酬が適正化されるまでの暫定というふうなお気持ちのようだったように思います。
 それから毎年診療報酬の問題がほかの方で論議されて、この租税特別措置七二%は税調の方では毎年毎年これを改めるべきだという答申ばかりしておるのですね。答申ばかりしておるけれども中身のない答申で、検討して直せというだけじゃ、これは迫力がないじゃないか。持に前の会長は執念を持っておりました。これはぜひ片づけなければ、租税特別措置の不公平の最たるものだ、これをほうっておいてほかの特別措置を整理合理化をすることはとんでもないことだ、人に笑われるるというようなことまで言われた人もあるのでありますが、今度こそひとつ特別部会をつくって具体案を出そうというのが、税調の一致した意見でございました。
 医師会の方にもいろいろ連絡をとりまして、御意見をお伺いしたかったのでありますが、なかなか出ておいでにならないので、仕方がないわれわれとして正しいと思う線を出そう。どこに基礎を置くかということになると、いまおっしゃったように青色申告その他、お医者にはピンからキリまでいろいろございますので、ばらつきが非常に多い。大蔵省の方にもしっかりした調査がないことはないのでありますが、一応調査いたしましたサンプル調査がございます。平均して必要経費が五二%です。八〇のものもございます。九〇のものもあるようでございます。非常にばらつきが多いのでありますが平均して五二%、これを基礎にいたしまして、五千万円超の部分は五二というのを一応出したわけでございます。ところが千五百万円以下の部分につきましては相変わらず七二%、この七二%の適用が非常に多いのじゃないかと私は思います。
 そうすると、改正したのか改正しないのか、実質はどうもわからぬじゃないかという意見も実は出たのであります。どうもこの七二%はのどにひっかかって困る、七二を取れ、これを八〇とかなんとか、従来の七二%は困るという意見まで出たのでありますが、そうは言ってもそう一ぺんにこういうむずかしい問題が、もう既得権化しておりますから、そう簡単に解決できそうにない。のめそうなところで線を出してひとつのんでもらおうじゃないかというふうなことで、第一歩を踏み出すという意味でこの案が出ておる。非常に最良な安であるとは申しかねる、こういうわけでございます。
#57
○坂口委員 先ほど吉田参考人もこの問題について少しお触れになりました。特に建設費その他の問題に回すようにはっきりとしたらどうかというような御意見であったかと思いますが、もう少し突っ込んだ御意見を承れれば幸いだと思います。
#58
○吉田参考人 私がそういう発想のヒントを得ましたのは、実は自分自身のことで、私の下の娘がある日突然左肩が痛くなった。ちょうど家内が家庭医学宝典ですかを見たら、がんの場合があるのだそうですね。子供に聞いてみたら、鉄棒でぶつかったとか転んだとかいう記憶がない。この場合に、何かそのときにはおそいので腕を切っても間に合わないのだということを聞きました。これはどなた様の親も同じだと思いますが、そのときに自分の腕と子供の腕と交換できるのだったら交換したいという気持ちに私はなりました。行きつけの医者に行ったら、わからないということですね。それで、医者の関係で大学病院に行きまして精密検査を受けて、結果として異常なかったわけですが、そのときに私はこのヒントを得たわけなんです。
 そういう医療施設をすばらしくするということ、これは国民の願いじゃないかというように感じたのです。一々遠い大学病院まで行かなければわからないということでなくて、町医者でもりっぱな医療施設を持っていただくということについては、私は全国民だれ一人として反対する人はいないと思うのです。しかも憲法二十五条には、健康にして文化的な生活を営む権利を有する、これは時の政府の役目だということが書いてあるわけなんで、この憲法の大原則から社会診療報酬というものをもう一回洗い直す必要があるのじゃないかというふうに考えついたわけでございます。
 そういう点で、武見会長のはったりですか、非常に力強い圧力がかかっておるようでございますけれども、七二%が実際の経費かどうかという論議で進むよりも、そういう憲法二十五条の健康な生活というものの担い手としては医者は大きな役割りを果たしているわけでございますから、そういう面でもしお医者さんがその収益を診療施設の向上に向けている限りこれについては税金をかけない、こういうことについては憲法の原則からもマッチすることで、ほかの遊びに使うとか土地の投機に使うとかいうようなことで使われる場合には当然課税してしかるべきだと思いますけれども、そういうような形でひとつ新しい控除方式を考えていく、これは国民の願いと一致するのだというようなところで考えていったらどうかという考え方でございます。
#59
○坂口委員 せっかくの機会でございますので、青木参考人からも一言、簡単で結構でございますのでお聞きしたいと思います。
#60
○青木参考人 ただいま吉田参考人から、先ほども触れましたとおりユニークな御説明がございまして、まことに抜本的なテーマだろうと存じます。しかし、あえて申しますれば、そういった医師の姿勢が正されるということが前提にされない以上、なかなか実現はむずかしいのではないかという感じがいたします。そこで、私は当面、基本的には医師の七二%という控除に対しましても、これはやはり実際に必要としたものを下回ってはならないという考えからこの必要経費の費用概念を明確にするという立場を貫いて、その上でただいまの吉田参考人の御説が生かし得るのではないか、かように存じております。
#61
○坂口委員 次に、高橋参考人が先ほど医療控除の問題に少し触れられまして、そういうふうな習慣というものがついていないのでなかなか十分に行われていないということを申されたと思います。いままでにもこの委員会でその問題が話題になったことがございまして、今度ははりだとかきゅうだとかいうような種類のものについても全部含まれていくということでありますので、今後これをきちっと整理するかしないかによって大分違ってくるというふうに思うわけです。いままで医療費控除について何かをおまとめになったデータでもあればお聞かせをいただきたいと思うわけでございますが、たとえばどのくらいはまとめられているとか、あるいは全然まとめられていないとか、何かその辺のところの数字あるいは概略のお話でも結構ですが、ありましたらお聞かせをいただきたいと思います。
#62
○高橋参考人 せっかくの御質問でございますが、いま私の方でそれぞれが請求した申告者のデータを集計しておりませんので、大変申しわけなく思っております。
#63
○坂口委員 別の問題でもう一つ友末参考人にお聞きをしたいと思いますが、これも先ほど吉田参考人がお触れになりました所得控除の問題で、所得控除よりも税額控除の方にすべきじゃないかという御意見を出されたと思うのです。この意見につきましては私も同感なんでございますが、ひとつこの辺についての御意見、あるいはまた友末参考人御自身でなくても結構でございます。税制調査会全体の雰囲気でも結構でございますが、お聞かせいただきたいと思います。
#64
○友末参考人 所得控除か税額控除か、ものにもよると思いますけれども、いままでの税調の筋から言いますと、基礎控除を引き上げていく、課税最低限度を引き上げていくという方向でまいっております。これが今後どうなりまするか、ものによっていろいろ税額控除あるいは基礎控除というふうなことになってくる場合も出てくるんじゃないか、かように思います。
#65
○坂口委員 青木参考人からも一言この問題についてお聞きをしたいと思うのですが……。
#66
○青木参考人 私は先ほど再三にわたりまして触れたわけでございますけれども、税額の控除ということが最も望ましいということ、これは現在のような累進課税制度が一応とられているところでは、先ほども申しましたのですけれども、やはりこれまでとられてきたような所得控除方式をもってしますと高所得者を優遇してしまう。ましてやこういった物価の高騰そして不況も併存しているというときにおきましては、一層この種の課税方式が適切かと思われます。
#67
○坂口委員 もう一点だけ吉田参考人にお聞きをしておきたいと思いますが、先ほど医療控除のところで足切りの問題に触れられたと思います。私も参考人の御意見に同感なんでございますが、これは実は今度上限も百万から二百万になりましたが、これもあるわけです。私も細かなデータがあっての話では決してないわけでございますけれども、中には最近のように医療費で賄えない部分がかなりあるということになりますと、年間二百万を超えるような場合もやはりあるのではないかというふうに思うわけでございます。この上限につきましても、もうすっかりとってしまったらということをこの前もここで議論したわけでございますが、この辺について、何か御意見がございましたらお聞かせいただきたい。
#68
○吉田参考人 上限の問題については、がんなんかになりますと、ちょっと三十万、四十万じゃ済みませんので、そういう点で上限を撤廃するということは、これは人の命の問題ですから、私も御意見に賛成でございます。
 足切り撤廃の問題について、ただ税務行政上非常に複雑になるという点が問題になると思いますけれども、そういう面での福祉というものが勤労者自体の問題になるという点では、これは足切りが撤廃になったら恐らく、高橋さんの方の総評は、全力を挙げて領収証をちゃんととって確定申告をやるようになると思います。そうなると、健康保険証があるにもかかわらずどれだけの自己負担があるかということもまた、労働者の皆さん自体がびっくりするほど、ちょこちょこルル三錠をやっておりますけれども、これがはっきり数字で出てくると思うのですね。そういう面で一回やっていただきたいというふうに私は思うわけでございます。
#69
○坂口委員 ありがとうございました。終わります。
#70
○上村委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。
 参考人各位には、御多用中のところ御出席の上貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。
 次回は、明十四日金曜日、午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後一時二十六分散会
ソース: 国立国会図書館
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