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#1
第075回国会 法務委員会 第12号
昭和五十年三月十四日(金曜日)
    午前十時三分開議
 出席委員
   委員長 小宮山重四郎君
   理事 大竹 太郎君 理事 小島 徹三君
   理事 田中  覚君 理事 保岡 興治君
   理事 稲葉 誠一君 理事 横山 利秋君
   理事 青柳 盛雄君
      小澤 太郎君    小坂徳三郎君
      小平 久雄君    千葉 三郎君
      葉梨 信行君    濱野 清吾君
      福永 健司君  早稻田柳右エ門君
      綿貫 民輔君    中澤 茂一君
      山本 幸一君    諫山  博君
      沖本 泰幸君    玉置 一徳君
 出席国務大臣
        法 務 大 臣 稻葉  修君
 出席政府委員
        法務大臣官房長 香川 保一君
        法務省刑事局長 安原 美穂君
        法務省矯正局長 長島  敦君
        法務省保護局長 古川健次郎君
 委員外の出席者
        議員      横山 利秋君
        最高裁判所事務
        総局総務局長  田宮 重男君
        最高裁判所事務
        総局刑事局長  千葉 和郎君
        法務委員会調査
        室長      家弓 吉己君
    ―――――――――――――
委員の異動
三月十三日
 辞任         補欠選任
  諫山  博君     紺野与次郎君
同日
 辞任         補欠選任
  紺野与次郎君     諫山  博君
同月十四日
 辞任         補欠選任
  木村 俊夫君     綿貫 民輔君
  中垣 國男君     葉梨 信行君
  佐々木良作君     玉置 一徳君
同日
 辞任         補欠選任
  葉梨 信行君     中垣 國男君
  綿貫 民輔君     木村 俊夫君
  玉置 一徳君     佐々木良作君
    ―――――――――――――
三月十二日
 法務局、更生保護官署及び地方入国管理官署職
 員の増員等に関する請願外二件(横山利秋君紹
 介)(第一四九七号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 犯罪者予防更生法の一部を改正する法律案(内
 閣提出第一二号)
 刑事補償法及び刑事訴訟法の一部を改正する法
 律案(横山利秋君外六名提出、衆法第二号)
 刑事補償法の一部を改正する法律案(内閣提出
 第四八号)
     ――――◇―――――
#2
○小宮山委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、犯罪者予防更生法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 質疑の申し出がありますので、これを許します。稲葉誠一君。
#3
○稲葉(誠)委員 「犯罪者」という言葉は何か耳なれない言葉なんですが、これはどういう意味なんですか。
#4
○古川政府委員 御承知のように犯罪者予防更生法の冒頭に「犯罪者」というのがございますが、これは、制定当時の資料など見ますと、クリミナルズという英語なども見えております。われわれとしましては、罪を犯した者、非行を犯した者、こういうような概念でとらえております。
#5
○稲葉(誠)委員 「犯罪者」というのは、こういう名前はほかの法典なんかには具体的に出てきますか。
#6
○古川政府委員 どうも、私も全部見たわけではございませんが、余り「犯罪者」という言葉はないようでございます。これも、この法律制定の資料などを見ておりますと、どうも犯罪者予防更生法の英文にもクリミナルズとありましたので「犯罪者」というのは一番冒頭に出ている。「犯罪者」という言葉は法律の表題からはできるだけ外したい、こういうような考えも見えたようでございまして、「犯罪者」という言葉そのものは、余りまとまっては見えてないようでございます。
#7
○稲葉(誠)委員 言葉にこだわるわけではないのですが、クリミナルズというのは具体的には一体何を意味するのですか。
#8
○古川政府委員 結局、法に触れる行為を犯した者というようなことになりましょう。一応、先ほど申し上げましたように、犯罪を犯した者、それから少年等では非行を犯した者、こういう概念でわれわれはとらえております。
#9
○稲葉(誠)委員 これは犯した者ですか。犯すおそれがある、虞犯も含むのですか。
#10
○古川政府委員 狭い意味では虞犯はいかがかと思いますが、やはりわれわれは一応少年法をも含めて考えております。
#11
○稲葉(誠)委員 余り変な質問をしてあれですけれども、よくわかりませんのは、たとえば中央更生保護審査会というものがあるでしょう。それから各地の場合は、関東なら関東の地方更生保護委員会ですか、ありますね。これはみんな「更生保護」という名称でしょう。そうすると、このところに出てきて犯罪者予防更生法ということになってくるわけですね。「予防」という言葉が出てくるわけでしょう。それは本人を更生さすことは一つ予防には違いないかもわかりませんけれども、この「予防」という言葉がどうしてこういうところに出てくるのですか。いかにも防犯的というか、何というのですか、冷ややかな感じを受けるのですが、どうして犯罪者更生保護法というような法律の名称にしないのだろうか。これはどういうわけですか。
#12
○古川政府委員 これも制定当時の資料などを見ておりますと、初めはクリミナルズ・リハビリテーションという、いま稲葉先生のおっしゃったような、犯罪者の更生保護というふうになっておったようでありますが、途中でこれにプリベンションというのが入ってきたようでございます。それが入ってまいりましたので、それじゃその法律の表題をどういうふうにしたらいいかというようなことがいろいろ部内でも議論されたようでございますが、その際に、クリミナルズ・プリベンションという分野、その言葉をわが国の日本語に直した場合に、犯罪者の生成を防止する法律、要するに犯罪者が発生といいますか、出てくることを防ぐ、そんなふうにしたらどうかというような意見なんかも出ておるようであります。したがいまして、警察などでやっております防犯とか、そういうものとは幾らか違うと思うのでございますが、たとえば犯罪者が出てくることを防ぐ、生成を防ぐというふうに一応考えたようでございます。ただ、現在の犯罪者予防更生法は、御承知のように犯罪予防そのものも法律のねらいといたしております。それは、やはり最も主たるねらいである犯罪者のアフターケア、要するに、一回犯罪を犯した者が再犯することを防ぐという、これが一番大きなねらいでして、更生保護の分野における犯罪者の生成防止というのは、再犯防止が一つ、それからそういう再犯防止に努力しているということが積み重なったものでやはり最初の犯罪を防ぐという方につながっていく、そういう両面を持っているんじゃなかろうか。しかしまず主たるねらいは再犯防止という感じがいたしております。
#13
○稲葉(誠)委員 再犯防止はいいのですが、再犯を防止するためには、犯罪者というか、そういう人たちをいろいろな形で監視しなければならぬという色彩が強くなってくる。それを更生さすというふうな意義よりも、監視するような体制が何か言葉の中で強いような印象を受けるのですが、この法案の名前も余りに直訳的で、俗に言うと温かみがないような感じを受けるので――これは後でいずれにしても法案全体をほかの法律との関係で統一するわけでしょう。統一と言ったって簡単に統一はできないと私は思いますが、そういうときに十分この法案の内容についても考えてもらいたいというふうに思うわけです。
 そこで、大臣というか、事務局でいいですけれども、犯罪者予防更生法ができたときに、これは終戦後ですが、保護観察所が廃止されたのでしょう。だが結局保護観察所は復活したのでしょう。この間の経緯を、何か法務省の保護局の総務課長をやっていた人のもの、海治さんの「ジュリスト」の一九六七年一月一日号二百十八ページですが、これを見ると、いかにも急速にこれをつくったようなことが書かれておるのですが、その間のできた経緯は一体どういうことなんでしょうか。
#14
○古川政府委員 お答えいたします。
 その点に関連して、戦前の更生保護制度と申しますか、そういうものから戦後の更生保護制度への切りかえ、その間に終戦という非常に大きな断層があるわけでございますが、これを境として、戦前の更生保護制度のことをちょっと申し上げておきますと、これは先生御承知と思うのでございますが、戦前は免囚保護とか司法保護とか言われまして、任意的に、要するに民間先行型といいますか、民間の篤志家などによって任意的に行われておりまして、それに国が奨励金を出す、こういうようなことでまず始まりまして、それが制度的には、昭和十四年に施行されました司法保護事業法で制度的に行えるようになったわけでございます。
 この司法保護事業法は、起訴猶予者でありますとか、執行猶予者でありますとか、仮出獄者でありますとか、あるいは満期釈放者、あるいは少年法によって保護処分を受けた者、そういう者に対して広く保護の措置をとるということとされまして、この司法保護事業の主体は、現在の更生緊急保護法でやっておりますような、保護団体による施設への収容保護、あるいは金品の給与等の一時保護、これが中心でありまして、しかしながら一部には、現在の保護観察のような司法保護委員による保護観察も盛られていた、こういう状況でございます。
 これがまず大きなものでございますが、しかしながら、いまのような任意的といいながら、今度は一部では有権的な保護もその以前から行われたのでありまして、これは非常に特殊な者、一部の少年と、それから成人につきましては例の治安維持法関係の非常に特殊な成人、こういう者について有権的な保護が行われたわけでございまして、これは大正十一年にできました少年法と、それから昭和十一年にできました思想犯保護観察法、こういうようなもので行われておったわけでございますが、これが終戦になりまして、当然思想犯保護観察法などは廃止になりました。そういうことで、戦後になりまして、戦前に行われたような、そういうような任意的保護、さらに有権的な保護、そういうものをひっくるめて、もっとりっぱな、新しい刑事政策的な面を十分考慮した更生法があってしかるべきだということで発足いたしましたのが犯罪者予防更生法の成立でございます。
 そこで、一番最初は司法保護事業法を改正してやろうということで、任意的だった民間先行型のそれに加えて、国が責任を持って保護観察するというような制度をもっと広く取り入れよう、こういうことであったわけであります。当時の進駐軍はもちろん思想犯保護観察法は廃止、そういう方向で進んだわけでありますが、一方では、アメリカなどで行われておりました例のプロベーション、判決の宣告猶予といいますか、そういうようなことをしてプロベーションオフィサーに託するといったような、そういうプロベーション、こういうようなものをアメリカでは結構当時行われていたわけであります。日本に来ました進駐軍の軍事裁判所でも日本人に対してプロベーションの判決などをやっておりまして、そういうものをいまのわが国の司法保護事業法にも取り入れていったら、こういうようなことでわが方も始めまして、これに進駐軍の方からのサゼスチョンもありまして、先ほどちょっと申し上げましたようなクリミナルズあるいはオフェンダーズのプリベンションとリハビリテーションを行うアクト、オフェンダーズ・プリベンション・アンド・リハビリテーション・アクトというようなものが双方で検討されたようでございます。
 そこで当初、先ほど申し上げた司法保護事業法に規定されておりました起訴猶予者、満期釈放者に対する任意の保護と、それから有権的な保護観察制度、つまり国の責任によって行う保護観察制度の大幅な導入についての検討、これを行ったわけでございます。
 ところが、現実に昭和二十四年七月にできました犯罪者予防更生法は、先ほどの司法保護事業の主体であった任意保護の方は全然落としまして、保護観察を中心にしました犯罪者予防更生法になったわけでございますが、このいきさつもちょっと御説明いたしておきますと、先ほど申し上げたように全部をひっくるめた広い犯罪者予防更生法をつくろうとしているところへ、ちょうどこれと並行しまして新しい少年法が昭和二十三年七月十五日に公布されまして、これは家庭裁判所で少年の審判をやる。従来少年審判所でやっておりましたのを全然変えまして、つまり裁判所が少年に対して審判を行う、こういうことになりました。それで、新しいその少年法の二十四条には少年に対する保護観察というものがずばり規定されまして、これを実施する必要が急に起きてきたわけです。これが先ほど稲葉先生から御指摘があった、犯罪者予防更生法の急の制定を見たという一番大きな理由でございます。つまり、全面的な改正をしていく作業を進めておる間に少年法という非常に大きなものができまして、それに保護観察というのが入った。これを受けて、すぐ犯罪者予防更生法でそれを受けなければならない、その部分を中心とした犯罪者予防更生法が急遽立案されまして、昭和二十四年に国会を通りまして、同年五月三十一日公布、七月一日から施行、こういうふうになったわけでございます。これが犯罪者予防更生法の一番最初の制定経過であります。
#15
○稲葉(誠)委員 そこで、最初の段階においては、これは中央更生保護委員会という形で非常に権限が強かったわけですね。それをやってみたことはやってみたけれども、日本の実情に沿わないというので、平和条約の発効とともにすぐに廃止になってしまって、今度は法務省の直接所管という形で中央更生保護審査会という形になったわけですね。これは権限が非常に縮小してきたということになるわけですか。その間の経緯はどういうことなんですか。
#16
○古川政府委員 昭和二十四、五年といいますか、終戦後に、アメリカなどで広く行われております委員会制度、こういうものがいろいろな面で出てまいったこと、稲葉先生御承知と思うのです。そういう点とも関連して、こういうような委員会がこの保護の分野でもできてまいった、こういう大きな理由があると思うのでありますが、それが、講和発効と同時にやはり委員会制度そのものについて全面的に再検討が加えられたようでございまして、そういう面から、委員会制度が悪いとかなんとかという意味でなくて、全面的に検討が加えられた結果、ある分野については一般の行政機構と同じようにした方がいいというようなことから、委員会の機構の縮小と申しますか、あるいは権限の縮小と申しますか、そういう改革が加えられた、こういうふうに私聞いております。
#17
○稲葉(誠)委員 そこで中央更生保護審査会という形になって、これは法務省の付属機関だ、こう言うのですが、そこはどういうのですか。外局ではないのですか。外局という言葉はどういう意味に理解したらいいのか。付属機関だという言葉を使っていますね、この論文を読むと。これは独立性はないの。どういう点に独立性があるんですか。付属機関とはどういう意味なんでしょうか。
#18
○古川政府委員 性格的には付属機関だと思います。ただ、法務省設置法などをごらんいただきますと、法務大臣の所轄と申しますか、要するに法務省にあるという、普通の指揮監督というような点とは違いまして、法務省の所轄に置いておくというような形に規定されておりまして、要するに法務省の付属機関である。ただしかしながら、これは御承知のようにその性格から申しまして非常に重要な仕事であり、しかも判決を再審査するような形の、公正を保たなければならない、こういうような要請から、全く独立した権限を行使する、こういうたてまえになっておるわけであります。
#19
○稲葉(誠)委員 独立した権限を行使するたてまえはいいんですが、公取の場合はちゃんと条文にはっきりしていますね。この場合はどういうふうになっているんですか。
#20
○古川政府委員 これは恩赦の問題にいたしますならば、恩赦法等の規定によりまして審査会で恩赦の上申のあった者について検討いたしまして、恩赦相当という場合には法務大臣に申し出をするわけです。それで、恩赦は審査会が相当と考えなければ恩赦にはならないわけです。これに対してはどこからも介入はないわけでございまして、そういう意味で独立が保障されているというふうに考えております。
#21
○稲葉(誠)委員 私の聞いているのは、ぼくも勉強してないので申しわけないのだけれども、条文上はっきりしているのかどうかということが一つと、保護審査会で恩赦が相当と考えたときにはそれはそのまま通るのはわかったけれども、最終決定権は法務大臣にあるわけでしょう。逆に、恩赦が不相当だと考えたけれども、法務大臣がやることができるのかということですね。問題が出てきますね。
#22
○古川政府委員 先ほど申し上げましたように、恩赦法の十二条におきまして、「特赦、特定の者に対する減刑、刑の執行の免除及び特定の者に対する復権は、中央更生保護審査会の申出があつた者に対してこれを行うものとする。」つまり恩赦法の十二条で、中央更生保護審査会が申し出をしなければできない、こういう形になっているわけであります。
 それから、先ほど稲葉先生御質問の、法務大臣に決定権があると言われました。これはわれわれの方ではいまの十二条で、中央更生保護審査会が法務大臣に申し出をいたします。そうすると法務大臣はこれを、内閣に決定権があるものですから、内閣に出すわけでありまして、法務大臣がそれをチェックする権限はないものというふうにわれわれは理解しているわけであります。逆に今度は、法務大臣といいますか、内閣の方で恩赦にしたいと思いましても、この恩赦法十二条がいま申し上げましたように、恩赦は「中央更生保護審査会の申出があった者に対してこれを行う」この条文の解釈から、審査会が不相当と思って出さないものは内閣でもこれを取り上げて恩赦にすることはできない、こういう解釈であります。
#23
○稲葉(誠)委員 その条文からは独立性というものが、公取のような場合と比べてはっきり出てないですね。だから、法務省の付属機関なら、法務大臣から、こういうふうな恩赦を申し出ろということ、これは言えることになるのじゃないの。それでなくてはおかしいもの。おかしいというより、実際それは言えるのじゃないの。条文的には独立して行使するということはちっとも書いてないもの。
#24
○古川政府委員 一応われわれの方はいまのような解釈をとっておりまして、従来も現実に法務大臣が審査会の相当といたしたものをチェックしましたり、あるいは相当でないとして却下したものについて内閣に対して提出するというようなことはないわけです。そういう解釈はもう確立しているというふうにわれわれは解しております。
#25
○稲葉(誠)委員 解釈が確立しているのはいいのですけれども、公取の場合のような独立性というものが法律的に担保されてないじゃないか、こう言っているわけなんです。そこまで担保されるだけの必要があるかどうかということは、これは性格がちょっと違いますからね。たとえば一番強いのは会計検査院だし、それから人事院とか公取とかはまた強いでしょうけれどもね。更生保護審査会がそこまでの独立性が必要かどうかということは、これは内閣が行うことですから、そこまでの必要性があるかないか、これは問題だと思いますが、条文の上ではそこまでの担保はないじゃないか、こういうことを言っているわけです。
 それはいずれにしてもいいわけですが、そうすると、恩赦の場合は具体的にどういう手続をもって下から上がってくるのですか、そこがよくわからないのですよ。それが一つです。
 それから、恩赦の申請があって、却下される。却下されたときに、却下処分というのは一体行政処分というのか、行政行為なのか。それに対して不服の申し立て法があるの。いわゆる恩赦なんだから、慈恵的なものなんだから、それに対する不服の申し立て法は全然ないというのかな。
#26
○古川政府委員 第一番目の恩赦の手続、これは審査会でやっておりますいわゆる個別恩赦についての御質問と思いますが、この点につきましては、恩赦を受けたい者は、刑務所あるいは保護観察所の長または検察官、これらをわれわれ上申権者と呼んでいるわけでございますが、これに対して願書の提出、われわれはこれを出願と呼んでおりますが、そういう上申権者に対して恩赦を受けたい者が出願をするわけであります。この願書を受理しました刑務所長等の上申権者は、所定の事項を調査いたしまして審査会に対して進達してまいります。なお、上申権者は場合によっては職権でも上申することができることになっております。審査会におきましては、これを受理いたしますとその事件の主査委員を任命いたしまして、この主査委員がまず刑事事件記録でありますとかその他の関係記録について詳細な調査及び審理を行う。この場合、必要に応じて本人あるいは関係人等について面接をしましたり、あるいは補充調査も行うわけでございます。この間にまた主査委員は委員長初めその他の委員に関係記録を回しまして、調査方針等について適宜相互の連絡、協議を行います。これらの一連の調査及び審理が終わりますと、五人の委員で構成されております合議体において慎重に審議されて決定される。その決定は多数決ということになっているわけでございます。それで合議体の審査会で恩赦相当とされた事案につきまして、審査会は法務大臣に対して恩赦の実施についての申し出を行いまして、法務大臣は内閣総理大臣に対して閣議を求め、内閣は閣議によって右申し出にかかる恩赦を決定しまして、次いで天皇がこれを認証する、こういう過程でございます。
 それからもう一つの御質問である、恩赦不相当と審査会が決めた場合の不服申し立て、これについては不服申し立ての方法はない、こういうふえに考えております。
#27
○稲葉(誠)委員 そこで、恩赦はいわゆる慈恵的なものというか、一方的な恩恵だから、それに対する不服申し立ての方法はないということなんですが、そうすると大臣、恩赦というのは前は、旧憲法のときは大権事項だったでしょう。大権事項だったから、いまでも天皇の認証ですけれども、天皇の「恩」というのかな、「恩赦」でよかったかと思うのですが、現在は大権事項じゃないわけですから、それをまた「恩赦」というような言葉で示すこと自身が、どうも何だかはっきりしないのですがね。それが一つ。
 それから、ある一定の条件が整ったときには、それを権利として恩赦――恩赦という言葉だと権利として上申するのはおかしくなってきますけれども、何らかの形で権利としてそれを出願できるというふうな形はできないのですか。これは諸外国の制度はどういうふうになっているのですか。
#28
○古川政府委員 諸外国の制度を詳しく調べたわけではございませんが、一部にはそういう、本人に恩赦の申し立ての権限を与えているところもあるようでございます。わが国は、先ほど申し上げたように、上申権者を刑務所長でありますとかそういうものにゆだねております。またそういうことから、ひいては先ほどのように不服申し立ての方法がないというようなことにも相なってくるかと思います。この点についてはなお検討したいと思います。
#29
○稲葉(誠)委員 私もよくわからないのですが、ある一定の条件、たとえば刑期のうち何分の一かを済んだ場合には、恩赦という言葉はおかしいですから、個別恩赦でも何でもいいですが、そういうようなものの上申を権利として認めた形のものがどこかの立法例にあるとすれば、それを認めてもいいんじゃないかと考えられるのです。ただ、そうなってくると、それに対する不服の申し立てが次から次に起きてきて大変なことになっちゃうということも考えられるので、そう簡単にはできないとは思いますが、ここら辺のところ、よくわからないので十分研究してもらいたい、こういうふうに思います。
 そこで、実際問題としては中央更生保護審査会がやるんじゃなくて、これはあなた、事務局も何もないんだというじゃないですか、それをよく聞きますけれども、実際は法務省の保護局でやっているのでしょう。そうすると保護局のいろいろな意見がここへ反映するんじゃないの。それが付属機関という意味らしいんだけれども。いかにも独立性があるような形だけれども、実際は法務省の保護局の下部機関みたいな形に現在はなっているんじゃないですか。前は違いましたよね。前はむしろ逆に、中央更生保護委員会のときは、委員会があって、その下に法務省の保護局があったようなときがあったんじゃないですかね。それならば独立性があるかもわからぬけれども、いまの場合はない。実際には、中央更生保護審査会がやる前に、ブロック別の、たとえば関東の更生保護委員会とかなんとかで審議するわけでしょう。そこで決まったものが中央更生保護審査会へ上がってくるのですか。そこはどういう関係なんですか。
#30
○古川政府委員 いまの中央更生保護審査会と現在の保護局の関係でございますが、この点は犯罪者予防更生法の十一条におきまして、審査会の庶務は保護局において行う、こういうことにされているわけでありまして、実際、恩赦につきましては保護局の恩赦課、それから仮釈放関係の審査請求事件につきましては観察課というところが事実上所管しておるわけであります。言いかえれば、これは事件処理については審査会の事務局的性格を持っていると言えるかと思うのでございます。ただ、先ほど稲葉先生御指摘のように、そういう事務局が実際の権限を行使しているのじゃないかというような御趣旨のお話がございましたが、これは決してそうではございませんで、審査会の方が自主的にやっておられるわけであります。われわれ保護局におきましては、事件を受理して、書類をそろえて審査会にお出しする。審査会の方から先例はどうかとか、いろいろな調査依頼があれば、それについてわれわれの方は資料をそろえて出すというわけで、決して保護局の方でそういう実際の権限を行使しているということはございません。
 それからもう一点、各地方の各委員会がこれに関与しているか、こういう点については、これは関与しておりませんで、上申権者から真っすぐ審査会に上がってまいります。
#31
○稲葉(誠)委員 そうすると、関東更生保護委員会とかなんとかありますね、各高検単位ですか、それは具体的に何をやるのですか。そしてどの程度の陣容がおるの。そこで下調べや何かみんなやってきて上がってくるのと違うのですか。
#32
○古川政府委員 これは先ほど申し上げたように、一線といいますか、刑務所長それから保護観察所、検察庁というところが上申権者でございまして、そこでは先ほど申し上げたように、本人から恩赦にしてもらいたいという出願があった場合に調査はいたしますけれども、そこからは真っすぐ審査会ということで、全くあとの中間機関、委員会とか何かは全然関係いたしておりません。委員会の方は、先生御承知のとおり、もっぱら仮釈放を中心にやっておるわけでございます。保護観察所の方は、先ほど申し上げたように、地元の人から恩赦にしたいという場合に、保護観察所はそういう面で調査ということはいたします。上申ということはいたします。
#33
○稲葉(誠)委員 仮釈とそれから恩赦、これは減刑ですか何ですか、そういうのは実際入っている人は、両方申請――仮釈は申請はしないでしょうけれども、どちらの方が実際には多いのですか。入っている人から見ればどっちだって同じだ。ただ仮釈の場合は刑期が在宅のまま進行するだけの話で、違うと言えば法律的には違うかもわからぬが、実際には同じようなものだ。だから実際は、恩赦の手続が非常にむずかしいというか、あれするから、仮釈で補っているというか、どんどんやっているという形をとっているのじゃないかと思うのですが、仮釈の方は実際どういう条件のあったときにどういう手続で仮釈をやるわけですか。これは矯正局長の方だと思うのですが……。
#34
○長島政府委員 仮釈放の申請の手続でございますけれども、現在刑務所で分類調査というのをやっております。入所いたしましたときから分類調査をいたしまして、これは犯罪関係、家族関係、従来の経歴、社会関係、それから本人の資質と申しますか、すべて調査いたします。この分類調査をいたします分類調査会というのがございますが、これを継続的に開いておりまして、その分類調査会あるいは審査会等におきまして、本人の所内のいろいろな行状あるいは調査の結果等から見て仮釈放の申請が適当だという判断になってまいりますと、刑務官会議の議を経まして所長が申請をする、手続的にはそういうことで申請がなされてまいります。この分類調査会は毎週一回以上開いておるものでございますけれども、個々の受刑者につきましては、比較的刑期が短い者については少なくとも三月に一回開いておりますし、長い者につきましては六カ月に一回は少なくとも当該本人を審査の対象にして仮釈を申請するかどうかを検討しております。そのほかに特に刑期の短い者等につきましては、そういう事情がありますので随時この審査をするということで、仮釈放の申請に適する者は速やかに申請をするというのが一般の手続になっております。
#35
○稲葉(誠)委員 そうすると、収容者は、恩赦の申請をするのと、仮釈申請と言うと言葉はちょっとおかしいことかもわからぬけれども、それをするのと、具体的にはどっちが多いのですか、普通の場合は。
#36
○長島政府委員 御承知のように、仮釈放につきましては本人に申し立て権と申しますか申請権がございませんで、恩赦についてだけ出願権があるわけでございます。実際は恩赦と仮釈放とかなり性質が違っておりまして、仮釈放の場合は、施設内処遇から仮釈放にしまして社会内処遇へ移していくということで、処遇の一つの流れでございますから、自然に社会へ出していい者は仮釈放に持っていくという、施設側も努力をしております。したがいまして、普通のルートは仮釈放になって出ていくというのが一般のルートでございまして、恩赦の出願というのは特殊の事情がある場合に出てくるわけで、きわめて少ないわけでございます。
#37
○古川政府委員 先ほど稲葉先生の御質問の中に仮釈放と恩赦の関係について御質問ございましたので、この点についてちょっと申し上げておきたいんですが、恩赦の方は、恩赦の補充性というようなことを申しておりますが、元来刑事裁判を変更するというような非常に重要な行政作用でございますので、運用には謙虚性が要求される、そういうことを言われておりまして、原則として、ほかに刑事政策的制度があればまずこれを活用した上で恩赦を考慮すべきだということが言われているわけです。これは仮釈放もそういう一つでございます。仮釈放があればまず仮釈放について考える。それから保護観察につきましても、保護観察の仮解除というのがございますが、そういうようなことを考えて、それでなお救い得ないという場合に恩赦が考慮される。そういう意味で恩赦の補充性ということが言われているわけでございます。
#38
○稲葉(誠)委員 これは大臣、裁判で確定するでしょう。確定したものを行政権で刑を軽くしたり何かするということは、司法権の独立に対する侵犯じゃないですか。これはおかしいな。
#39
○稻葉国務大臣 非常にむずかしい問題でありますけれども、裁判の独立、司法権が正義に基づいて裁判を決定する、それを実際に執行する行政権で裁判の結果を変更するということですから、司法権の独立を侵害するのではないかという議論をときどき私どもも聞きます。ですけれども、正義と、やはり当該社会、国家――民主国家、共和国であろうと君主国であろうと、君主国の場合は君主の愛ということになっておりますね、正義と愛の接点でそこを調整するのが恩赦制度の歴史的な所産であるというふうに思いますので、しかも、司法権の独立を一方に規定してあると同時に、必ず憲法に恩赦をすることができる規定を置いておりますものですから、憲法自体にそういう制度を置いておりますものですから、憲法違反と言うわけにはまいらぬのではないか、こういうふうに存じます。
#40
○稲葉(誠)委員 そうすると、司法権の独立というのは判決が確定するまでのことかな。確定した後は司法権の独立という問題は起きないの、長島さんでいいですよ。
#41
○長島政府委員 私も憲法をよく存じませんのであれでございますけれども、恩赦制度の基本的な問題は、事後の事情の変更ということが一番大きいものだと言われております。たとえば、犯罪を犯しましたときには刑罰規定がありまして、確定をしました後にその刑罰が廃止になったというような場合、一番顕著な例は、経済統制法規が戦中戦後ございまして、それが廃止になったというような場合で現に経済統制法規でまだ刑務所へ入っておるというような場合に、いかにも事情の変更に基づきまして前の刑を執行するのがおかしいというような事態が起こります。そういう場合が実は本来のこの恩赦をやるのに適当な場合だというふうに考えられておりまして、そういう意味では、司法権の独立といいますよりも、事後の状態によって救済するというのが恩赦の本来の本旨であろうかというふうに理解しております。
#42
○稲葉(誠)委員 事後の状態の変化によらなくたってどんどん恩赦をやっているじゃないの。そういう議論はおかしいぞ。そういう議論でいいのかな。
#43
○古川政府委員 これは稲葉先生も御存じのように、恩赦にはいろんな必要性といいますか、存在意義があるわけです。長島矯正局長が御説明申し上げましたように、事情の変更、それが恩赦ができてまいりました大きな理由だと思いますが、御承知の、戦後、内閣に設置されました恩赦制度審議会では四つ存在意義を挙げておりまして、一つが先ほどの事情変更による裁判の事後変更、一つは法の画一性に基づく具体的不妥当の矯正、それから三番目には他の方法をもってしては救い得ない誤判の救済、それから最後の四番目に犯罪後の行状等に基づく裁判の変更もしくは資格の回復。この一番最後が刑事政策的な意義が非常に多いといって最近非常に指摘されまして、戦前の、天皇とかの大権によりますそういう恩恵的なものより、むしろ戦後のこういう刑事政策的な方向に基づく恩赦ということで、現在個別恩赦はこの第四番目の刑事政策的配慮による裁判の変更もしくは資格の回復、犯罪後の行状等に基づくもの、これが一番活用されている。矯正局長が説明したのが非常に大きな理由ですが、最近はだんだんそういう刑事政策的な配慮を加える方向に向かいつつある。そういうことで、先生御指摘のようにそういう面が多くなっているということかと思います。
#44
○稲葉(誠)委員 仮釈放ならこれは刑が進行しているわけですからね。ただ中へ入っているのと外へ出ているのとだけですから、これはいいと思うんですね。これを活用するということは当然だと思うんですけれども、恩赦で刑を事実上変更してしまうというのは、これが乱用されたときなんか非常に問題が起きますね。
 大臣、選挙違反はどうして恩赦の中へ入ってくるのですか。これはどういうわけだろう。
#45
○稻葉国務大臣 すべて犯罪に対して国の恩恵を与え、それ以上刑に服させる必要がない、こういうときには選挙違反犯罪だからとか殺人犯だからとか、犯罪の種類によって区別すべきものではないのではなかろうかという趣旨ではないかと思います。
#46
○稲葉(誠)委員 それはあなた、法の前に平等だからということかもわかりませんがね。しかし特別なものはみな排除しているでしょう。たとえば強殺の場合だとかは普通の場合みな排除していますよね。それは排除する場合もあるし、選挙違反でも買収のようなものは排除する場合もありますし、いろんなことがあります。政令恩赦の場合、いろいろありますから一応言いませんが……。
 一つ保護司会の問題について、これはたびたび言われているわけですがね。私も保護司をやっているわけですが、これはどういうふうに今後、たとえば予算的な措置、こういうことについてどう
 いうふうにやっていくつもりなんですか。たとえば、これはよく言われますね、調停委員が六千五百円になったと。六千五百円になったって、これは朝と午後やって、そして七段階に分けて細かいことをやって、めんどうくさいのですけれども、しかしいずれにしても前よりは倍ぐらいになったのが多いと思いますがね。保護司の人は実費弁償でさっぱり上がらないというのですけれども、これを将来どういうふうにして上げていくというつもりに考えているわけですか。大ざっぱなところでいいですよ。細かい点はいいですよ。大ざっぱなところを大臣から答えていただいて、これはうんと上げていきたいつもりだということならそれでいいじゃないですか。ここら辺は大臣から答えてもらわなければだめだよ。
#47
○稻葉国務大臣 まあ、制度の経過もございますし、歴史的な経過もあるものですから、調停委員と同じにすぐしたらいいとか、(稲葉(誠)委員「同じにしろとは言っていないけれどもね」と呼ぶ)近づけろとか、いろいろ議論があります。余りひどい、人を小ばかにしたような、ただの方がまだいいぐらいだなんて言われるようでは困るという程度の考えを持っています。
#48
○古川政府委員 確かに保護司の各位には、ごくわずかな実費弁償で非常に重要な仕事をしていただいておりますので、われわれ、どういう形でお報いするかという点については常々心を配っているつもりです。ただ、実費弁償は御指摘のように非常に低い額です。これはできるだけ上げるように努力いたしたい。
 それからもう一つは保護司会の問題がございましたが、保護司会も非常に金を使っております。実際、防犯活動などには大いに活躍したいということで、これにつきましても、保護司の研修会の旅費でありますとかを従来から要求しておりまして、ことに昭和五十年度におきましては、大臣などの御努力によりまして、今度は保護司代表者へ議、こういうような、つまり保護司の会長のような方がお集まりいただく費用も盛り込むようにいたしまして、現在その額が大体三千万ぐらいになっております。こういうふうに努力してまいりたいと思います。
 なお今後、保護司の報酬とかそういうような問題につきましては、五十年四月から発足いたします保護局内におきます更生保護の長期展望に立ったマスタープランというものの策定作業の過程におきまして、保護司の報酬制度、いろいろな問題について検討してまいりたい、かように考えております。
#49
○稻葉国務大臣 古川保護局長の言うた方が正確でございます。私のは大ざっぱでございます。
#50
○稲葉(誠)委員 それから、犯罪者予防更生法、執行猶予者保護観察法、更生緊急保護法等、更生保護関係の法律の整備統合の計画について。いろいろあるでしょう、これは。ぼくは簡単にいかないと思いますよ。おのおの立場が違うし、そんな簡単に統合はできないと思うのですけれども、これについては将来どういうふうにして整備統合していきたいかということを最後にお答え願って、終わりにします。
#51
○稻葉国務大臣 この前もこの委員会で御質問を受けてお答えしたとおりでございまして、一本にすべきものだな、そういう方向で検討を命じておりますが、その手順等につきましては事務当局をして説明させます。
#52
○古川政府委員 御指摘のように、更生保護につきましては犯罪者予防更生法を初め非常にたくさんの法律があるわけでございまして、これを統一と言いますか、できる限り一本化してわかりやすいものにしたい、それを、われわれいま仮称といたしまして更生保護法――先ほどの犯罪者というのは除きまして、更生保護法といったようなものを考えております。しかしそうした場合に、保護司法とかあるいは緊急保護法のような司法保護事業的なもの、そういうものまで全部盛り込めるかどうかという点は確かに問題がございます。十分大臣の御趣旨を受けて検討してまいりたい、かように考えております。
#53
○小宮山委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。
    ―――――――――――――
#54
○小宮山委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。
 犯罪者予防更生法の一部を改正する法律案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#55
○小宮山委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
    ―――――――――――――
#56
○小宮山委員長 この際、ただいま議決されました本案に対し、附帯決議を付したいと存じます。
 案文は、お手元に配付してありますので、朗読は省略させていただきます。
    ―――――――――――――
  犯罪者予防更生法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
一、政府は、更生保護制度を社会、経済状勢の変化に対応しうるよう次の事項について速やかに検討すべきである。
 1、関係法律の整備、統合を行うこと。
 2、更生保護施設の運営改善及び更生保護対象者の拡大などについて必要な措置を講ずること。
 3、保護司の実費弁償金並びに保護司関係経費の大幅な増額を図ること。
二、政府は、選挙違反事件に関する恩赦については、今後とも一層その適正な運用に配意すべきである。
    ―――――――――――――
#57
○小宮山委員長 お諮りいたします。
 本附帯決議を本案に付するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#58
○小宮山委員長 起立総員。よって、本案に附帯決議を付することに決しました。
 この際、ただいまの附帯決議につきまして稻葉法務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。稻葉法務大臣。
#59
○稻葉国務大臣 ただいま可決されました附帯決議に関しましては、その御趣旨に沿うよう最善の努力を払ってまいりたいと存じます。
    ―――――――――――――
#60
○小宮山委員長 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#61
○小宮山委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
     ――――◇―――――
#62
○小宮山委員長 次に、横山利秋君外六名提出、刑事補償法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案並びに内閣提出、刑事補償法の一部を改正する法律案の両案を議題とし、順次趣旨の説明を聴取いたします。横山利秋君。
    ―――――――――――――
 刑事補償法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案
 刑事補償法の一部を改正する法律案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
#63
○横山議員 刑事補償法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案の提案理由、趣旨の御説明をいたします。
 本案は、無罪の裁判を受けた者の精神的、財産的負担を償うため、現行の補償金額を引き上げ、公訴の提起後の非拘束期間についても補償を行うとともに、裁判の費用を補償しようとするものであります。
 人が刑事訴追を受けるのは、その人の人生の最大の不幸であります。罪なくして刑事訴追を受け、幸いに裁判において無罪となった場合でも、現在の法制及び日本の一般社会的取り扱いにおいては、国民は刑事訴追を受けたことによって拘束、非拘束にかかわらず、裁判期間中、刑事被告人としての汚名を着せられ、信用を失墜するほか、身分上不利益の取り扱いを受けている実情であり、無罪の裁判確定に至るまでの間の裁判に要した費用も一般国民の平均収入から見れば決して少ないものではないのであります。かかる精神的、物質的損害ははかり知れないものがあり、そのためにその人の人生の大半が失われる場合も決して少なくないのであります。
 しかるに、現在の刑事補償法によれば、無罪の裁判が確定した場合、刑事訴訟法等により拘束を受けた者に限り、国に対して抑留または拘禁及び刑の執行による補償を請求することができるとしているが、非拘束中の期間に対しては何ら補償する規定がないのであります。
 また、現在の刑事訴訟法によれば、検察官のみが上訴した場合において、上訴が棄却されまたは取り下げられたときは、当該事件の被告人であった者に対し、上訴によりその審級において生じた費用の補償をすることができるが、被告人側が上訴して無罪になった場合、被告であった人に対し上訴によりその審級において生じた費用を補償する規定もないのであります。
 さらにまた、刑事補償法による補償金額は、昭和四十八年に改正されたものでありますが、その後の急激な経済事情の変動を考慮するとき、その額は補償の目的を達するにはきわめて不十分であります。
 本案は、以上のような諸般の実情を考慮して次のように改正しようとするものであります。
 すなわち、第一に、無罪の裁判またはこれに準ずる裁判を受けた者が未決の抑留もしくは拘禁または自由刑の執行等により身体の拘束を受けた場合の補償基準額を日額千五百円以上六千円以下とし、死刑の執行を受けた場合は補償の最高額を千五百万円に財産上の損失を加えた額とする。
 第二に、無罪の判決が確定した場合には、公訴の提起があった日から、無罪の判決が確定した日までの期間及び再審または非常上告の手続により無罪の判定が確定した場合は、公訴の提起があった日から原判決が確定した日までの期間のうち未決の抑留もしくは拘禁または自由刑の執行等を受けなかった期間に係る補償の金額は六千円に当該期間の日数を乗じて得た額の二分の一以内とする。
 第三に、無罪の裁判が確定したときは、それまでに要した費用のうち被告及び弁護人であった者の公判準備及び出頭に要した旅費、日当、宿泊料、弁護士報酬を補償する。
 なお、第一の場合の金額の算定基礎につきましては、千五百円は昨年度の失業対策事業における最低賃金日額を、六千円は昨年度の労働省月別勤労統計による平均月間給与額を、千五百万円は、自動車損害賠償保障法の死亡の場合における賠償金額の改正予定金額をそれぞれ参考にいたしました。
 以上がこの法律案の趣旨であります。
 慎重御審議の上、速やかに可決されるようお願いいたします。
#64
○小宮山委員長 次に、稻葉法務大臣。
#65
○稻葉国務大臣 刑事補償法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。
 刑事補償法による補償金の算定の基準となる金額は、昭和四十八年の改正によって、無罪の裁判またはこれに準ずる裁判を受けた者が未決の抑留もしくは拘禁または自由刑の執行等による身体の拘束を受けていた場合については、拘束一日につき六百円以上二千二百円以下とされ、また、死刑の執行を受けた場合については五百万円とされているのでありますが、最近における経済事情にかんがみ、これを引き上げることが相当と認められますので、この法律案は、右の「六百円以上二千二百円以下」を「八百円以上三千二百円以下」に、「五百万円」を「千万円」に引き上げ、いわゆる冤罪者に対する補償の改善を図ろうとするものであります。
 以上が刑事補償法の一部を改正する法律案の趣旨であります。
 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願い申し上げます。
#66
○小宮山委員長 これにて両案の趣旨説明は終わりました。
     ――――◇―――――
#67
○小宮山委員長 この際、最高裁判所長官指定代理者の出席説明の承認に関する件についてお諮りいたします。
 本会期中、ただいま趣旨説明を聴取いたしました両案の審査に当たり、最高裁判所長官指定代理者から出席説明の要求がありました場合には、その承認につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#68
○小宮山委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。
     ――――◇―――――
#69
○小宮山委員長 質疑の申し出がありますので、これを許します。大竹太郎君。
#70
○大竹委員 それでは質問をいたしたいと思います。
 ただいま趣旨の説明がございました政府提案の刑事補償法の一部を改正する法律案について質疑を行いたいと思いますが、たしか刑事補償法、特に補償額の増額は、前回は四十八年に行われたと思うのであります。したがって、二年目に今度また改正されるということでございまして、この提案理由の説明にもございますように、主として経済事情の変更によって引き上げるのだという御説明でございます。したがいまして、この四十八年、四十九年に実際にどのように補償がなされているかということがやはり今度の改正には大事な資料になるのじゃないかというふうに思うのでありまして、一応この提案理由の説明以下の資料の最後の方にはついておりますけれども、これを具体的に説明をしていただきたいと思います。
#71
○千葉最高裁判所長官代理者 お手元の資料の最後のページにございますようですが、第二表で、四十八年、四十九年の「刑事補償請求事件一覧表」というものがございます。総数で、四十八年が百九十七件の請求があって、請求が認められたのが百九十五件、四十九年が六十三件の請求で、請求が認められたのが六十二件。
 それで、その内訳でございますが、第三表の下の方にその請求の認められた合計数を、旧法を適用したものと新法を適用したものと分けて書いてございます。で、四十八年の九件というのが、四十八年の六月二十二日に改正公布、即日施行になりました現行法による請求、またそれに基づく補償決定のあったものでございまして、これは平均一人当たりの日数が二百・三日、一人当たりの平均金額が三十七万三千七百七十八円、これは一日当たりにいたしますと千八百六十六円になります。四十九年も同じでございまして、五十七件が新法によるもので平均百六十三・一日、三十二万九百二十一円が一人当たりの平均金額で、一日当たりにしますと千九百六十七円、こういうことになっております。
#72
○大竹委員 そこでお聞きしたいのでありますが、いままで最高二千二百円だったものを三千二百円に引き上げたというわけでございますので、大体五〇%近く上がったということになるわけでございまして、この付表の第一表を見ますと、賃金と物価指数の平均は四十八年と比べますと一四三・三%ということでございますので、その面から言うとむしろ上がり方は多いというような面も考えられるわけでありますが、たとえば賃金の面を見ますと、昭和四十八年度は常用労働者の一日平均賃金が四千幾らだ、そして五十年度は五千九百円ぐらいで四七%上がっているというようなことを考えますと、もともと四十八年度で決まっていた二千二百円というのはどうもおかしいのじゃないかということにもなるわけでありますが、その点についてどうお考えになっておりますか。
#73
○安原政府委員 刑事補償法におきますところの補償の対象となる損害は、拘禁されたことによりますところの被告人の精神的、物質的な損害、したがって慰謝料のような精神的なものから、物質的なものとしては、働かなかったことによる得べかりし利益の喪失に対する補償、あるいは現実に出費したもろもろの物質的な損失というようなものを含めたものが損害として考えられるわけでありますが、御案内のとおり、刑事補償法の補償は、国の機関に過失がなかった場合にでも補償するいわゆる無過失責任、無過失の場合にも補償するという制度でございますので、過失があった場合には国家賠償という形で全損害が補償の対象になるはずでございますが、これはいわば無過失の場合の一種の公平の原則からする補償でございますので、必ずしもその全損害を補償しなければならないということには相ならないという意味におきまして、いま御指摘のように常用労働者の平均賃金、おそらくそれは実損害ということになるかもしれませんが、そこまでは補償する必要はないという考え方で、それよりは下回る金額が決められておるものと理解しております。
 御案内のとおり、国の制度を運用いたします場合に、この場合刑事裁判制度を運用いたします場合に、ある程度国民というものは、その運用の対象となるものにとって損害が生ずるということは避くべからざるものでございますが、その損害を過失がない場合でも個人に負担させておくのは、公平の原則上それはバランスを失するのではないか。それを個人の負担にしないで、いわば国家、さらにその奥には国民全体がそれを負担するのか、あるいは個人に負担さすのかという、公平の原則でどこまで負担さすのかという問題でございまして、国家賠償のように過失によるところの損害の補てんということではございませんで、このような額でもそれはそれなりに相当であるということでございます。
 なお、制定当時は、旧刑事補償法では大体一日の補償額が五円以内というのが昭和六年当時でございました。当時その五円というのは、それを横ににらみますと、陪審員の公判審理の出頭に要した日当と同じ額でございまして、当時の証人の日当の二円五十銭よりは高かったということでございます。
#74
○大竹委員 関連しての問題でありますが、低い方は六百円から八百円へ上げたというわけであります。これは前回には最高の方を上げて、最低の方はたしか上がらなかったと思うのでありまして、そのときもたしか問題になった記憶があるわけでございますが、いまのような御説明なら同じような説明になるのかと思いますけれども、現在において、上げたと言っても八百円でありまして、ちょっと実際問題として、そんな低額の補償ということは、そんなこと程度で済ましておけるような事件があるのかどうかというような疑問すらわくわけでありますが、適用の実際において、たとえばいままでなら六百円で済んでいたというような案件があるのでありますか。それらを説明していただきたいと思います。
#75
○千葉最高裁判所長官代理者 前回の四十八年に御説明申し上げましたときの資料でもたしか申し上げたと思いますが、当時でも六百円という例が数件ございまして、いずれも心神喪失を理由とする無罪判決で、犯罪事実そのものは行われた、しかし被告は責任がないということで無罪になった。どうも国民感情にそぐわない面からだと思いますが、六百円というような例がございました。現行法になりまして、改正されました以後でも、一件でございますが七百円というのがございます。これは取引に関しまして、暴力団の者と一緒に恐喝行為をやったという、借金の取り立ての恐喝事件でございますが、どうも事実としては若干の脅迫暴行があったというわけですが、取引関係ということもありますし、結局は恐喝とは認定されないという意味で無罪になったわけでございます。ただ、被告が取引に関して余り正確な供述をしなかったというようなことでどうしても勾留が長くなった。ほかの被告人、計四名でございますが、ほかの三人の被告人が否認したのに、この被告人は自白をして、しかし正確な取引関係を供述しないということで非常に審理が延びたというような事情があったからだと思いますが、一日当たり七百円の決定になっております。
#76
○大竹委員 それでは、時間がありませんから先に進ませていただきます。
 死刑執行の補償額を現行五百万から今度は一千万に引き上げたというわけでありますが、死刑の補償ということ、考えようによってはこれは一千万でも十分だというわけにはいかぬと思うのであります。よく例に引かれる自賠法なんか、現在、もうかなり前に一千万になっているわけでありますが、これらも千五百万くらいに近くなるのじゃないかというようなふうに言われているわけでありまして、自賠法による保険金額と同じようにしなければならぬというような理屈は私はないと思いますけれども、最近の物の考え方その他からいたしまして、国が故意、過失がないにいたしましても、過って死刑を執行してしまったというものに対しての補償額としては少ないんじゃないかというのが一般の常識――これは的確なことは申し上げられませんけれども、一般の物の考え方じゃないかというふうに思っておるわけでありますが、これらについてどうお考えになっておりますか。
#77
○安原政府委員 死刑の執行によりますところの補償は、現行法は御案内のとおり「五百万円以内で裁判所の相当と認める額の補償金」ということになっておりますが、条文にございますように、本人の死亡によりまして生じた財産上の損失額が証明されました場合には、その損失額に五百万円を加算した額の範囲内で裁判所が補償金額を定めるということにされております。このようなところから見ますと、この五百万円という現行法の規定、いまこれから改めようといたします一千万円という金額は、いわばいわゆる精神的苦痛に対する慰謝料という性格を持っているものと考えて間違いはないのではないかと思います。この金額は、現行法制定当時は五十万円でありましたところを、昭和三十九年の改正によりまして百万円、それから昭和四十三年の改正によりまして三百万円、それから昭和四十八年の改正で現在の五百万円に改められたのでありまするが、従来からの国会の審議の経過を見ましても、これがなぜ五百万円であり、かつて当初は五十万円であったかというようなことにつきましての計数的な根拠は必ずしも明確ではないのでございまして、もっぱらこの程度をもって相当とするという、俗に言えば達観、いわば常識的判断ということで額が決定されたのではないかということが考えられるのでございます。
 そこで、今度一千万円に改めましたのは、いま大竹委員御指摘のいわゆる自賠法による保険金額と必ずしも結びつかないのでございまして、自賠法の保険金額はいわば精神的、物質的両方含めた損害に対する一つの保険額でございますが、このこれから改めようといたします一千万円というのはそういう意味におきましては、精神的損害に対する一種の補償であるという意味においては、自賠法よりもその額においてはある意味では高く、一千万円になっているとも言えるわけでございます。というようなことでございますので、自賠法に比べて低いというよりはむしろ高いということに相なるのではないかと思いますが、いずれにいたしましても直接の関係はない、精神的損害に対する補償の額ということでございます。そこで、一千万円にした理由でございますけれども、これはもっぱら最近におきます交通事故による死亡を理由といたします損害賠償責任請求事件における慰謝料の額が漸次高額化の傾向にありますので、この際一千万円程度にしてはどうかという判断に達したわけでございます。
#78
○大竹委員 いま、自賠法の保険金額ではないけれども、一般に交通事件なんかの慰謝料請求の金額が逐次上がってきたというようなことで、それに近づける意味で五百万円から一千万円にされたということ、そういう考え方でおやりになることが妥当かと思えますので、また一般がだんだん上がってきたらそれに応じてまた適宜改正をしていっていただくということで了承をいたしたいと思います。
 次に、刑事補償法と関連して問題になりますのが被疑者補償規程でございます。これも、ただ検察の段階と裁判の段階までいった場合との差異にすぎないわけでありますが、やはりこの刑事補償法の改正に伴って被疑者補償規程の金額も当然改定されるというふうに思うわけでございまして、どのように改定されるのか、またそれに対しての予算措置その他がとってあるのかどうか、これらについて御説明をいただきたいと思います。
#79
○安原政府委員 このただいま御審議を願っております刑事補償法の金額の改定が成立いたしました暁には、被疑者補償規程の日額につきましてもそれと同じ金額に引き上げる予定でおります。なお、かねがね御指摘を受けておりますように、被疑者補償をした例が非常に希有でございますので、予算額としては例年二十万円ということでございますが、これはいわば補充費系統の予算でございますので、必要があれば幾らでも予算の裏づけはできるということに相なっております。
#80
○大竹委員 いままで実際に使った金が非常に少ないということでございまして、それにはそれ相当の理由があると思うのでありますけれども、これはやはり法律ではないわけでありますから、そこの運用いかんによってはもっともっと金額もふえるようになると思いますし、またできるだけそれに該当する人間にはこれをもらう機会を与えるということが民主的な物の考え方だと思うわけでありますが、それらについて何かお考えになっておりましたら、この際おっしゃっていただきたいと思います。
#81
○安原政府委員 御案内のとおり、この被疑者補償規程の補償の要件は、「被疑者として抑留又は拘禁を受けた者につき、公訴を提起しない」いわゆる不起訴処分がありました場合に、「その者が罪を犯さなかったと認めるに足りる十分な事由があるときは、抑留又は拘禁による補償をする」というたてまえになっておりまして、しかも、「本人の行為が刑法第三十九条から第四十一条までに規定」いたします責任無能力によって「罪とならない場合」あるいは「本人が、捜査又は審判を誤まらせる目的で、虚偽の自白」をしたというようなことで「抑留又は拘禁されるに至ったと認められる場合」というようなときには補償しないということになっておりますので、事例が少ないのは、私どもは基本的にはこの被疑者補償規程による補償をする要件に該当する場合が少ないということに原因があると思いますけれども、御指摘のとおり、検察官においてこの運用についてもっと熱意を持ってやれば、あるいはもう少しこの補償件数もふえるのではないかとも思われるケースがないわけでもございませんので、従来から、全国で検察官が集まる会同の機会には、特に監督者である検事正、次席検事の会同におきましては、これを活用するようにということをたびたび注意をしておるわけでございますが、大竹委員を初め先生方からの御指摘もございますので、今後さらにこれの活用を図るという意味におきまして、私どもの考えでは、私、大臣名の依命通達をもちまして、身柄を拘束した後、罪とならず、嫌疑なしという裁定をした場合においては、すべてその被疑者補償事件として検察庁内部で立件をいたしまして、補償の要否を検討して裁定するという手続をとってもらうようにいたしたい。なお、嫌疑不十分という裁定をした事件であっても、罪とならず、嫌疑なしの裁定をした場合に準じて検討することが相当だと認められる事件についても、同じように立件して検討することにする。しかも、それを主任検事に任せないで、被疑者補償裁定事件ということで立件されたものにつきましては、その裁定をした検察官を除く、その検察官が属する検察庁の次席検事または次席検事に次ぐいわゆる三席検事をしてこの検討の主任にするというようなことをこれから励行させてみたいというふうに考えておりますし、またその励行の状況につきましては、必ず四半期ごとに大臣あてに報告を求めるというようなことによりまして、いわゆる補償すべくして補償しないということのないことを期したい、かように考えます。
#82
○大竹委員 いま、これからとろうとする処置についてお話がありましたが、ぜひそういうようにしていただきたいと思いますことは、自分が担当した事件について、自分が、一口に言えば見込み違いをして、国がそれに対して補償しなければならぬということは体裁の悪いことでありますから、本人とすればなかなかこれはやりにくいことでありますので、次席検事なり検事正なりがおやりになり、そしてそれを法務大臣の方へ実績を御報告になるということが、私は非常に効果があると思いますので、ぜひそれをはっきりやっていただきたいと思います。
 最後に、社会党から御提案になっております改正案について政府にお尋ねをいたしたいのであります。
 これによりますと、無罪等の判決が確定した場合には、身柄の不拘束の者についても国が補償する。また刑事訴訟のいわゆる弁護士の日当、報酬までも、審級にかかわらず国が補償すべきであるという、社会党の方の御提案はそうなっているわけであります。これについては、いままで各大臣その他におかれても、全部はともかくも、その方向で物を考えていきたいというような御発言、御答弁等もたしかあったわけでありますが、社会党から出ておりますこの案について、政府としてはどうお考えになっておりますか。これは大臣がお答えになるか局長がお答えになるか、どちらでもよろしゅうございますが、お答えをいただきたいと思います。
#83
○稻葉国務大臣 無罪の裁判を受けた者に対する刑事補償の範囲を非拘禁者にまで拡大することの当否につきましては、かねてから検討を行ってきたところであります。その間、最高裁判所事務当局とも協議を重ねてきたのでありますが、種々の理由からその立法化は相当でないとの結論に達しております。その理由の詳細につきましては、専門的な事柄でありますので事務当局から答えさせます。
 次に、訴訟費用の補償につきましては、現行法において検察官のみが上訴してこれが入れられなかった場合、上訴費用の補償を認めておりますが、これを無罪の場合一般に広げることは理由のないことではありませんので、当省といたしましては近く法制審議会に対し費用補償制度の採否につき諮問することとしており、その答申を待って態度を決めたいと考えております。
 社会党議員から提出された法案の費用補償の点につきましては、補償を要する場合が広きに過ぎて、公平の立場から考慮を要する点があるのではないかという感じを持っております。
#84
○安原政府委員 いま大臣が仰せの、いわゆる非拘禁補償を現段階で採用することの相当でない理由ということにつきましては、この前の国会でも申し上げたと同じ理由でございますが、まず第一に、国の公権力の行使によりまして生じました損害の補償というものは、その本質が損害賠償であるという関係から言いますと、本来その損害の発生について当該公務員に故意、過失がある場合に限って行うべきものであるというふうに考えられますから、無過失による場合を含む補償は、それを必要とするだけの特別の理由がある場合でなければならないというふうに考えるのが至当と思うのであります。
 そこで、刑事事件により起訴されました場合に、身柄の拘束を受けた場合とそうでない場合とでは、無罪を言い渡された者の受ける損害の程度が著しく異なることは申すまでもないところでございまして、現行刑事補償法が拘束を受けた場合においてのみ補償することといたしておりますのは、身柄の拘束ということが国の各種の公権力の行使の中できわめて特殊のものであること、すなわち、身柄の拘束は刑事手続の性質上その必要性が肯定されるものであります反面、これを受ける側にとっては他に例を見ない高度の不利益な処分であり、損害が重大であるということに配慮したものと考えられるのであります。刑事事件により起訴された場合におきまして、被告人が物質的、精神的な損害を含め、現実に種々の不利益を受けることがあるということは否定できないのでございますけれども、しかしながら、身柄の拘束を受けた場合は別といたしまして、その他の不利益というものはおよそ公権力の行使に伴って通常生ずべき不利益の範囲に属するであると考えられるのでありまして、たとえば、国民の権利義務に重大な関係のあります海難審判とか特許審判あるいは許認可の取り消し処分等に誤りがありまして、その結果国民に損害を与えることもあり得るのでございますが、これらの場合について直ちに国がその損害を補償するという制度は設けられておらず、その公務員に故意、過失があった場合に限って国家賠償法による賠償請求が認められているのにすぎないのでございます。その意味におきまして、検察官が十分な根拠に基づいて適法に公訴を提起した場合について、裁判の結果無罪となったという理由だけで、非拘禁者に対し、当該公務員の故意、過失の有無にかかわらず損害を補償するということは、いま例を挙げましたような行政処分等との場合といわゆる均衡を失することになるのではないかと思われるのでございます。したがいまして、非拘禁者に対する補償は国家賠償法の手続により行うのが相当であり、このことは、国の補償に関する現行法制の基本的な立場といたしまして、憲法十七条及び第四十条の規定に照らしても明らかではないかと考えられるのであります。それが一つの理由であります。
 次に、実際の制度論といたしまして、ひとしく無罪の裁判を受けた場合でございましても、身柄を拘束された場合に受ける損害とそうでない場合に受ける損害とでは、質的に大きく異なっているということが言えると思います。誤って公訴を提起された者が受ける損害の程度は、身柄拘束の有無を問わず、人によって千差万別ではございますが、身柄拘束の場合はこれによって生ずる直接の損害を明確な形でとらえることができ、これをいわゆる定型化することができますが、これに反しまして非拘禁者の場合は、公訴を提起されたことによる不安、苦痛、社会的名誉の低下、失職その他得べかりし利益の喪失などが考えることができるのでございますけれども、果たしてそういう損害があったかどうか、またどの程度の損害が生じたかにつきましては、訴追された犯罪の軽重あるいは公判審理の長短等の要因も絡みまして、個々の事件ごとに具体的な判断をする以外に方法はなく、補償額の定型化ということがきわめて困難であるという、制度を立てる上においての困難さもあるということも消極となる理由でございます。
 ただ、先ほど大臣もお答えになりましたように、いわゆる被告人になって無罪になったという者の損害の中には、先ほど社会党の御提案にもありましたように、応訴するために弁護士に要した費用、あるいは本人が公判廷に義務として出頭しなければならない場合の得べかりし利益の喪失あるいは交通費、旅費、それから弁護士の報酬のほかに弁護士に払わなければならない日当、交通費、旅費というようなものは、いわば刑事事件に特有の、しかも現実の出費でもございますが、そういうものもやはり非拘禁者の場合における補償の対象となるべき損害であるということとして考えるといたしますならば、その面においては、これは刑事手続特有の出費でもございますので、そしておおむね多額になる場合が多いわけでもございますので、今後の方向といたしましては、そういうものについては法制審議会の御意見を聞いて、採用すべしということになればその方向で立法することも考えられるのではないかと思います。そういう意味においては、非拘禁者の補償のうちでいま申し上げたようないわゆる訴訟費用についてはそれを分けて、その部分については補償するといたしますならば、それは非拘禁補償の一部については非拘禁補償をするということに相なろうかと思います。
#85
○大竹委員 終わります。
#86
○小宮山委員長 次回は、来る十八日火曜日、午前十時理事会、午前十時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午前十一時三十九分散会
     ――――◇―――――
ソース: 国立国会図書館
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