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#1
第075回国会 法務委員会 第24号
昭和五十年六月六日(金曜日)
    午前十時十九分開議
 出席委員
   委員長 小宮山重四郎君
   理事 大竹 太郎君 理事 小島 徹三君
   理事 田中伊三次君 理事 田中  覚君
   理事 保岡 興治君 理事 横山 利秋君
   理事 青柳 盛雄君
      今井  進君    小澤 太郎君
      片岡 清一君    小平 久雄君
      羽生田 進君  早稻田柳右エ門君
      綿貫 民輔君    沖本 泰幸君
 出席政府委員
        法務政務次官  松永  光君
        法務大臣官房長 香川 保一君
        法務省民事局長 川島 一郎君
 委員外の出席者
        運輸省海運局総
        務課長     犬井 圭介君
        運輸省海運局外
        航課長     富田 長治君
        法務委員会調査
        室長      家弓 吉己君
    ―――――――――――――
委員の異動
六月五日
 辞任         補欠選任
  諫山  博君     田代 文久君
同日
 辞任         補欠選任
  田代 文久君     諫山  博君
同月六日
 辞任         補欠選任
  木村 武雄君     綿貫 民輔君
  木村 俊夫君     片岡 清一君
  千葉 三郎君     今井  進君
  中垣 國男君     羽生田 進君
同日
 辞任         補欠選任
  今井  進君     千葉 三郎君
  片岡 清一君     木村 俊夫君
  羽生田 進君     中垣 國男君
  綿貫 民輔君     木村 武雄君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 参考人出頭要求に関する件
 船舶の所有者等の責任の制限に関する法律案
 (内閣提出第六三号)
     ――――◇―――――
#2
○小宮山委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、船舶の所有者等の責任の制限に関する法律案を議題といたします。
 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。
 ただいま議題となっております本案を審査するため、来る六月十日午前十時から、参考人の出頭を求め、意見を聴取することとし、その人選につきましては、委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
#3
○小宮山委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
    ―――――――――――――
#4
○小宮山委員長 質疑の申し出がありますので、これを許します。沖本泰幸君。
#5
○沖本委員 御質問が飛び飛びになるかわかりませんが、お許しいただきたいと思います。
 船舶の所有者等の責任の制限に関する法律案の理由説明の中で、一番最初の、
 「現行商法は、船舶所有者が船舶による事故によって損害賠償の責任を負う場合等には、船舶及び運送賃等を債権者に委付して損害賠償の責任を免れることができる、いわゆる委付主義を採用しております。
 このように船舶所有者の責任を一定の限度に制限する制度は、その方法にそれぞれ異なるところがあるとはいえ、世界各国に共通する制度でありますが、わが国の委付主義の制度は、委付の対象となる船舶の破損の程度等偶然の事情によって、損害のてん補される程度が著しく異なり、被害者保護の見地から合理的でないものとされ、現在わが国以外には、この委付主義をとる主要海運国はありません。
 ところで、昭和三十二年に、船舶所有者の責任制限制度を国際的な金額主義に統一するための海上航行船舶の所有者の責任の制限に関する国際条約が成立し、昭和四十三年に発効しましたが、現在までに、英、独、仏等二十六カ国がこの条約を批准しております。」ということで、この法律案の要点として、
 「第一に、船舶所有者、船舶賃借人及び傭船者は、故意または過失がないときに限り、事故について負うべき損害賠償の責任を、一事故ごとに、その船舶のトン数に応じた一定の金額に制限することができることといたしております。また、船長、海員その他船舶所有者等が使用する者も、故意がないときに限り、船舶所有者等と同様に、責任を制限することができることといたしております。
 なお、船舶所有者等の使用する者の債権等、特に債権者を保護する必要のあるものについては、例外として、責任制限の効力が及ばないことといたしております。」
 この第一について、具体的にわかりやすい御説明がいただけたらと思うのです。
#6
○川島(一)政府委員 この第一は、この法律によって責任の制限ができる者及び責任の制限ができる要件、それから責任を制限することができる債権の範囲、こういった事柄について規定をいたしておるわけでございます。
 まず、責任制限をできる者、責任制限の主体といたしましては、船舶所有者、船舶賃借人、傭船者、それから船長、海員その他船舶所有者の使用人というものを挙げておるわけでございますが、これはこの法律案のもととなっております一九五七年の国際条約におきまして、大体このようなものが責任制限をできることとする内容の条約の規定を設けておりますので、それに合わせたものでございます。条約と若干表現が違っている点がございます。たとえば、「船舶所有者」という点は同じでございますが、条約には「船舶賃借人」という言葉は挙がっておりません。それから条約の方には、ここに書いてありますほかに「船舶の管理人」というのが挙げられております。これにつきましては、日本の法律とそれから国際的な世界の各国における法律用語との若干の食い違いというものがあろうかと思うわけでございますが、その実質を押さえまして条約に相当するものをここに掲げたということでございます。
 具体的に申し上げますと、条約の方では第一条において船舶所有者が責任制限ができるというふうに言っておりまして、さらに第六条の二項に、傭船者、船舶管理人、運航者、船長その他の被用者、こういう者を責任制限ができるものとして追加している形をとっております。これに対しましてこの法案の方は、第二条の第二号の定義におきまして、船舶所有者、船舶賃借人及び傭船者並びに法人であるこれらの者の無限責任社員というものをまず挙げておりまして、これが三条の規定によって責任制限ができるということにいたしておるわけでございます。それから船長等につきましては二条の三号に定義がございまして、これも三条の規定によって責任制限ができるということにいたしております。そのほかこの法案の九十八条におきまして、船舶の管理人及び船舶の運航者並びに法人であるこれらの者の無限責任社員につきまして、船舶所有者と同様に責任制限ができるという趣旨を規定しておるわけでございます。
 これらの規定によりまして、内容的には大体国際条約とこの法律案とが責任制限の主体においては同一のことを規定しているということになろうかと思いますが、用語の上で、たとえば船舶賃借人というものは条約に挙がっておりませんが、これは、条約は、賃借人のようなものは当然船舶所有者に準ずる者あるいは傭船者の特に船舶所有者に近い立場にある者というような趣旨から含むものと思われるわけでございます。したがって、これは日本の商法で船舶賃借人という特殊な概念を認めておりますので、これも船舶の主体としてはっきりと規定の上に加えたということでございます。
 それから、若干条約と違うのではないかと思われますのは、法人である船舶所有者、傭船者等が無限責任社員を擁している場合に、その無限責任社員も責任制限ができるというふうにこの法律案では規定しているわけでございます。この点につきましては条約には特に規定はございません。しかしこれは、その法人が責任制限ができます以上、法人の無限責任社員につきましても責任制限を認めませんと明らかに均衡を失することになりますので、立案に当たって特にこれも加えたということでございまして、これを加えても国際条約の違反にはならないというふうに考えております。現にドイツあたりでは、この国際条約に基づく国内法におきまして、わが国と同様に法人の無限責任社員というものを加えております。そういう先例があるわけでございますので、特に問題はないというふうに考えております。
 それから次に、責任制限の要件でございますが、これは一事故ごとに責任制限というものを考えるという点、それから、その事故について故意、過失の関係が問題になりますが、船舶所有者、船舶賃借人、傭船者等につきましては、その者自体に故意、過失がない場合に限って責任制限ができる。また、船長、海員その他の者については、その者自体に故意がない場合に限って責任制限ができるということにいたしておりますが、これは国際条約、この法案、いずれも完全に表現も合致しておるわけでございます。
 それから三番目の、責任制限をすることができる債権の範囲でございますが、これにつきましては、国際条約の方は第一条にまとめていろいろ規定があるわけでございます。特に第一条の一項に包括的な規定がございまして、二項、三項でそれを補足した規定があり、そして四項で責任制限をすることができない債権というものを抜き出して規定しております。これに対しましてこの法律案の方では、第三条の一項に責任制限をすることができる債権の範囲を規定いたしまして、その中から特に責任制限をすることができない、つまり除外すべき債権というものを第四条に規定をしておる、こういう構成をとっております。その内容は、若干表現は違う点があろうかと思いますが、条約と異なるものではございません。つまり、条約に合わせてこういう債権を規定したということになるわけでございます。
 この債権の範囲につきましてもいろいろ問題がございますが、特に御質問がございますればそれに応じてお答えをさしていただきたいというふうに存じます。
#7
○沖本委員 法律の条文に従って、批准するために検討するわけで、いわば条文に掲げられておる文章についていろいろと検討を加えていくという形のものになるのですが、お答えになっている民事局長も船の方の御事情は余り御堪能ではないということになってくると、活字になっておるものが具体的に一体どういうかっこうで実際に運航されたり、それがどんな形で法律の定めるところとの関連が出ておるかという点を考えてみますと、何か活字だけが、取り残されるということはないのでしょうが、浮き上がって、何か証書が置かれておって、証書だけ見ておって船とのつながりというのが全然感じられないというような感じを私は受けるわけなんです。大体、法律で定められたものは、われわれの日常生活なりあるいは社会の機構の中でいろんな形で関連していきますからわかるわけですけれども、ちょっと聞いている方も十分わかりませんし、御説明になっている方も十分わかりにくい点もあるのじゃないか、そういうふうに考えるわけなんです。
 そこで、単純な議論をやっていきたいと思うのですが、たとえば賃借人という、賃貸によって船を持っている者も所有者として今度扱うという御説明もあったわけなんですが、そういたしますと、最近新聞紙上に出てくる便宜置籍船というのはどういう形で賃貸のような形になっておるのか、あるいはこういう現在の船舶の取り扱いについて、どんな形でわれわれはこれをとらえたらいいのか。これはむしろ運輸省の方からの御説明の方がわかりやすいと思いますが、後でやってみますけれども、こういうふうな便宜置籍船というものが、われわれ素人にわかりやすい形で、いわゆる世界をどういう形で運航されておるか。あるいは念書船というものがどういうかっこうで扱われておるのか。それと、いわゆる賃貸による傭船――傭う船とか用いる船、傭船という形のつながり、こういうものが具体的にどういう形でいま国際社会の中で運航されておるか。それと、いまわれわれが検討しておる法律のどの辺にそれが当たるのかという点を、これは海運局の方から御説明していただきたいのです。
#8
○富田説明員 お答え申し上げます。
 先生最後の御質問の法律との絡みについて、私ちょっと十分知識を持っておりませんので、また後ほど総務課長なり法務省の方から申し上げます。
 まず、便宜置籍船でございますが、主としてリベリア、パナマその他幾つかございます。これは単純に申しますと、たとえば日本のようにあるいはイギリスのように歴史的な理由があって海運を振興させてきたという国でないような国が、ある日突然といいますか、船を自分のところに登録させて、それによって登録料あるいは一定の租税収入を得るというような目的で、そういう海運の誘致政策をとる、そういうところに登録している船を便宜置籍船と称しているわけでございます。厳格な定義はございませんが、一応OECDなんかでも大体そういう観念だということで、むしろ国で、リベリア、パナマあるいは最近ではシンガポールというようなことで、そういう国へ登録された船が便宜置籍船であるというふうに把握しているわけでございます。それら便宜置籍船は、私の記憶で、世界の船腹量のざっと二五%ぐらいございます。わが国の物資も約二五%くらいがこのような便宜置籍船によって運ばれてきておるという現状でございます。
 それで、普通の航路、大ざっぱに分けまして大体二つございます。一つは定期航路でございます。もう一つは不定期航路。不定期航路の中にさらに一定の分野がタンカーということになっておるわけでございます。定期航路は大体において、例外もございますが、たとえば日本郵船の船であるとか商船三井の船であるとかいうふうな、自分のところの船で運営しておるのが一番通常の形でございます。したがって、定期航路の分野では余り便宜置籍船はございません。したがいまして、便宜置籍船が主として働いておるのは不定期航路の分野でございます。不定期航路につきましても、たとえば日本のタンカーのように長期契約の傭船がありましたり、いろいろな、荷主との結びつきあるいは船会社と結びついておるというような形で張りついておるものがございます。したがいまして、非常にフリーに、ある日突然荷物を運びたいというときに、何か荷物を運んでくれる船はないかと捜したときに出てくる船が大体便宜置籍船であるというふうに大ざっぱにお考えいただいていいと思います。要するに、傭船市場で手当てし得るのは便宜置籍船が非常に多いということでございます。
 先生御質問の、便宜置籍船をどのようにして使っているかということでございますが、船を傭船するには大体三つの形態がございます。これは普通の常識的な分類でございますが、一つは、いわゆる裸傭船と申しまして、船だけを特定の会社に貸しまして、その借りた会社が自分のところで船員の手当てをし、オペレートする。これは裸傭船と称しております。それから第二に、定期傭船と申しまして、これはたとえば二年とか三年とか、一定の期間、貸す方が自分のところの船員を皆乗せて貸してやるというのが定期傭船でございます。それから三番目に、これは実は傭船であるか賃貸であるかということについては若干法律上の問題があるようでございますが、トリップチャーターあるいは航海傭船と申しております。あるいは委託というような俗語もございますが、これは要するに一つの航海ごとに、どこからどこまでこの荷物を運んでくれというのも一つの傭船であるというような形でとっておるわけでございます。そういう三つの形態があるわけです。
 その傭船というものの法律的性格については、ちょっと私も専門家でございませんので、また後ほど総務課長からお答えいたしたいと思います。
 それから、先生おっしゃいました念書船でございますが、これはちょっとまた形式が違いますので、いまお答え申し上げますか。――質問に応じてお答えいたします。
#9
○犬井説明員 お答え申し上げます。
 ただいま外航課長からお話し申し上げましたように、傭船の種類としては裸傭船、定期傭船、それから航海傭船がございます。
    〔委員長退席、保岡委員長代理着席〕
こういうものが船舶賃貸借に当たるのか、それとも傭船かということについては、学説、判例等でも必ずしも明確な分類というのはできてないようでございますけれども、ごく一般的に言えば、裸傭船は船舶賃貸借に該当する。それから航海傭船、一航海ごとの傭船、これは傭船契約に該当する。真ん中にあるのが定期傭船でございますが、これは船舶賃貸借としての性格を持つのかあるいは傭船契約としての性格を持つのか、この点についてはいろいろ考え方がございまして、必ずしも明確な結論が出ていないというのが現状でございます。
#10
○沖本委員 要綱の中に、「船舶の所有者等の責任の制限」という中で、「船舶所有者、船舶賃借人及び傭船者(以下「船舶所有者等」という。)又は船長、海員その他の船舶所有者等が使用する者(以下「船長等」という。)は、航海に関して生じた次に掲げる損害に基づく債権について、この法律で定めるところにより、その責任を制限することができるものとすること。ただし、損害の発生が、船舶所有者等にあっては自己の故意又は過失によるものであるとき、船長等にあっては自己の故意によるものであるときは、責任を制限することができないものとすること。」こういうふうなのがあるのですね。
 これはむしろ運輸省の方に伺った方がいいと思うのですが、そうなってくると、この便宜置籍船の場合、裸傭船という形になったときに、これはまるまるこちらが、借りた方が乗組員を乗せるわけですね。そうするとそこで、たとえて言えば、第十雄洋丸といわゆるリベリアの便宜置籍船が中ノ瀬の水道で衝突事故を起こして、いわゆる裸傭船の方は全員死んでしまったという事故が発生しておるわけですね。これは損害の責任なりあるいは損害の補償なりというものをどういう形で決めるかということであって、その中身の点については海事審判で決められるはずなんですけれども、つまり審判によって、いわゆる判決があったので事故の原因者というものがそこらでわかってくるということになるわけですけれども、第十雄洋丸の場合は相手方が全部死んでしまったから、恐らく状況判断によって審判がされるということになるわけです。
 そこで今度はこの便宜置籍船で非常に問題になっておるのは、乗組員の質の低下ということが問題になってきておるわけですね。結局、裸傭船した側が韓国の労働賃金の非常に低い人たちを乗り組ます、あるいはインドネシアであるとか香港であるとかあるいは台湾であるとか、こういうところの十分技術を習得していないような乗組員、まして航海に関するいろいろな技術、そういうものが未熟な人が乗せられた場合には、これは故意になるのか、過失になるのか。事故そのものの内容については検討はされるでしょうけれども、あえて事故率の高いと思われるような人たちを乗せておって、それが世界じゅうでいわゆる海運の中の二五%のシェアを占めておるということになるわけですね。ただいままでの議論の中では、外国もやっておるから日本もやるのだ。日本だけどうこう言ったってこれはしようがないのだ。アメリカもやっておれば、ヨーロッパのそれぞれの海運国はほとんどこういう方法をとってきておるということになるわけで、この辺まで話が横に走りますといま検討しているこの法律とは全然ずれてしまうことになるわけですけれども、ここに述べられておることは、船舶所有者等の故意になるのか過失になるのかということによって責任を制限することができたりできなかったり、こういうことがあるわけなんです。ですから、いま批准をするために法務委員会で議論をやっているわけですけれども、具体的にこの問題がおりていくときには運輸省の方の関係になっていくわけですね。そうすると、やはり日本政府のいろいろなこういう海運政策というものが原因していくということになってくるのじゃないか。根本の原因がずれてきておるので、最終的にこの辺まで詰めていかなければならない。もっとも、ここで批准されることによって、賠償の限度というものが上げられていったということで、いままでの法律を全部変えていく、そして新しい国際的な法律をつくっていくという形になっておるけれども、具体的なものは、この法律なんかによらないでほとんど保険会社によっていろいろなものが決済されていっておるというのが実情ですね。そういうような点を考えていくと、これは犬井さんだけのお話で決まることではないのですけれども、その辺は運輸省としてはどういうとらえ方をしていらっしゃるのですか。
#11
○犬井説明員 お答え申し上げます。
 昨年の雄洋丸とパシフィック・アリス号の衝突事故の件でございますが、ただいま先生、裸傭船というふうに申されましたけれども、パシフィック・アリス号、というのは相手方の船でございますが、これは三光汽船が定期傭船していた船でございます。したがいまして、船主が船員手当てをしたものを三光汽船が借りているというかっこうでございます。
 一体、そういう事故についてはだれが責任を負うかということについては、先ほど申し上げましたように、定期傭船者が負うのかあるいは船主が負うのか、そういう点については必ずしも明確な定説がございません。その点は世界的に解決されていない問題でございます。この問題についてはこの条約では解決されていない。それは別の条約なり――まだございませんが、別の条約なりあるいは各国の国内法に責任関係についての規定をゆだねているということでございます。ただ、いま別途運輸委員会で審議をいただいております一九六九年条約、それから七一年条約、それを受けての油濁損害賠償保障法案におきましては、タンカーの油濁事故については船舶所有者に責任を集中するということがはっきり規定されているわけでございます。ですからタンカーについては今後責任関係が非常にはっきりするけれども、ほかの船については世界的にまだ責任関係がはっきりしていないということでございます。
 それから第二に、もしパシフィック・アリス号が裸傭船だった場合にどうなるかということだと思いますが、この場合には三光汽船が船舶の賃借人ということになりますから、船舶所有者と同様な責任を負うということになるかと思います。その場合に、日本の船主は実際にそんなことはできないのですが、発展途上国の船員を乗せていた、その技術が悪かったので事故が起きたという場合に故意、過失があったかどうかという点でございますが、これはかなりむずかしい問題だと思います。しかし一般的に言えば、要するに、船主に過失があるというような場合は、たとえば船長としての資格を持っていないものを船長に任命したというような、明らかに法令上注意すべきことについて十分な注意義務を払わなかったという場合でありまして、単に技術が若干低い船員を乗せたということは、決して好ましいことではありませんが、それをもって法律上過失があったと言うことは非常にむずかしいのではないかというふうに考えます。
 それから便宜置籍船一般につきましては、外航課長の方から答えさせていただきたいと思います。
#12
○富田説明員 先生御質問のうち、便宜置籍船に乗っている船員が劣悪ではないかということでございますが、これはやはり国際的なものでございますので、非常にデリケートな面がございます。われわれ胸を張って言えるのは、日本の船員は非常に優秀であるということであります。しかし、といって韓国の船員が優秀でない、台湾の船員が優秀でないということについては、それ自体として取り上げるのはちょっと妥当でないと思います。われわれ承知しておる限りにおきましては、やはりそれぞれの国内法で一定の資格要件を持った人を乗せている。これらの発展途上国でもそうでございますし、便宜置籍国でも、たとえばリベリア、パナマでも国内法で一定資格要件を要求いたしております。それが具体的にインチキであったとかなんとかという議論は別にいたしまして、基本的な方向としては、そういう船員を乗せたのが悪かったと断定するのはちょっとむずかしいのではないかと思います。
#13
○沖本委員 犬井さんも、裸傭船あるいは航海傭船、定期傭船の定義づけにはいろいろ議論があるのだということをおっしゃっておられたわけで、それで裸傭船という一番問題になるところを引き出してお話ししたわけですけれども、結局定期傭船の場合は船主側の方ですべてを準備して、手当てをして傭船するという形になるわけです。この前から国会で議論された便宜置籍船は、三光汽船であったではないか。三光汽船がつくった船を一たん外へ出して、そしてそういう形にしてまた使っている。そして日本の船員は乗り組んでいない。船籍は全部外国へ移ってしまっているということで、全然別会社の扱いになっているわけですね。外航課長がおっしゃったとおり、日本の船員は優秀だ、こういうふうにちゃんと政府でも認めていらっしゃるわけです。そういうところの労働の範囲なり、あるいは船舶の安全性あるいは航海の安全性、そういうものがだんだん追い詰められていっている。そしてどうしても文句も言えないようないろいろな形のものが全船腹量の二五%を占めてき出している。これは増加の傾向にあるわけですね。
 そういうことをいろいろ考えていきますと、ここで船舶の所有者等の責任の制限に関する法律案というものを一生懸命やっていたって、それはまるで、さっきから言っているとおり活字だけを検討している、具体的な中身は全然形の変わったものになっていって、そこで事が終わるということになると、こういうことを議論していること自体がばかばかしい内容なんですね。現実に即した国際法ではなくなってくるのじゃないですか。これは答えられない問題かもわかりませんけれども、これは考えなければならない問題ではあるわけです。もう時期が来たから国会で審議して国際法として批准しなければならないということだけれども、その国際的な水準のこういう批准法案が空文化してしまっている。これは現実なんですね。そういう点を考えていくと、やっていること自体がまるでナンセンスみたいな事態、これは運輸省の方でも認めざるを得ない内容ではないかというふうに考えられるわけですね。ですから、こっちの内容を議論することよりも、よって来るところの根本原因的なものをもっと突き詰めていって、そして航海の安全なり積み荷の安全なり、あるいは船舶の安全なりあるいは乗組員の安全なりというようなものを十分検討することの方がより重要になってくる、私はそういうふうに考えるわけです。
 そういうことでちょっと横ずりした質問を始めているわけなんですけれども、今度は同じようなことで、日本の船主協会で調べると、現在の日本近海に就航している不定期船ほとんどが南洋材を積んだラワン船であったということで、これががたがたいま不況の波を食らって、ほとんどの船が余ってきておる。全体で約五百十万重量トンある、こう言われているわけで、結局適正な船腹量は三百万トン前後、こういうふうになっていき、いわゆる現在は近海海運が船舶過剰傾向をとってきておる。こういうことで、NHKも取り上げておりましたけれども、インドネシアなりあるいはマレーシアの方の木材関係が、フィリピンも同じことが言えるわけですけれども、非常に事情が悪化していって、そしてそこらで非常な失業者の増加を見てきて、活況を呈した港なり町なりが灯の消えたような状態になっていき、そのこと自体がやはり、日本の進出した企業が手を引いてしまうので日本に対する非常な悪感情が生まれてきておるということも事実なんです。
 船に関して言えば、不定期船五百十万トンの内訳は日本船が二百三十万トン、外国籍の船が二百八十万トンで、外国籍の中には念書船がかなり就航しておるということになって、その念書船は、船舶建造に当たって船舶をわが国の近海の海運の用に供さないという念書が交わされた船舶であるけれども、その交わされた念書というものはどういう内容で念書が交わされていっておるのかということなんですね。これは先ほど外航課長がおっしゃったとおり、優秀な日本船員がこの辺でだんだんだんだん失業していっているという事態が起きてきておるわけです。そういうものも含めて、いわゆる海国日本であるとか、あるいは四方を海に囲まれて、日本の船に関する力というものはこれから世界に肩を並べていくんだ、こう言われながら、今度は日本の船がだんだん少なくなっていっておるわけですから、これは鉄鋼なり造船なりあらゆるところに影響していくような形をとってきているわけですね。日本の籍で持たれておる船が、同じ船というものでありながら、その船自体がだんだん日本籍から皆離れていっているというかっこうになっていっているわけですね。そういうものについて、念書船の仕組みというものをもう一度御説明願いたいと思います。
#14
○富田説明員 お答え申し上げます。
 先生御指摘のとおり、近海海運として、ざっと不定期船として五百万トンくらいの船腹があるということでございます。これは実は船でございますので、あっちへ行ったりこっちへ行ったりしましてなかなか正確には把握できませんが、大体五百万トンだと思います。
 それで、これも先生御指摘のとおり、木材の需要が非常に悪化したということが今日の問題の基本的な問題でございます。御承知のとおり、南洋材といいますのは、入ってきたうちの六割ぐらいがベニヤ板になります。四割くらいが建材になります。したがいまして、両方とも合わせて大体住宅の資材になるということでございます。住宅が、たとえば新築で申しますと昭和四十八年には百九十万戸できた。したがってそのときにそれに応じて年間で二千七百万立米の南洋材が運ばれてきたという実態がございます。それがことしの一月、二月、三月をとりますと、三カ月合わせて二十五万戸、したがってこれを単純に四倍しますと年間百万戸でございます。先ほど申し上げました百九十万戸の約半分ぐらいになってきておるわけでございます。そのように非常に住宅の需要自体が減ってまいりました。これは景気全体の問題でもございますが、減ってまいりましたところから過乗船腹が起こり、過乗船腹の中から、非常に船が余っておるところでございますので当然経済の原則に従いまして傭船料が安くなる。そうした場合には、日本の船員の方がちょっとコストが高いので使えなくなるのではないかという話が、いま御指摘の近海船問題でございます。
 そのうち、御質問の念書船でございますが、これはたしか四十七年の六月から四十九年の四月まで、日本船の近海船建造を一切ストップいたしました。そのときに輸出船をどうするかという問題になったわけであります。実はその輸出船も単純にストップできれば問題ないのでございますけれども、近海に来ないというものであればこれを建造許可をしないこと自体が違法になりますので、われわれとしてはできないわけです。それじゃどういうものが近海に来ないかということでございますけれども、船でございますので、いつどこへ動くかわからないということで、遺憾ながらわれわれとしてはこれを確定する手段がないので、念書を徴しまして、日本の近海航路に配船しないという約束を取って許可したということでございます。そういうのが念書の実態でございます。
 問題は、そういう約束をした船が、輸出された船が日本に来ているではないかということで先生の御指摘の問題が起こっているわけでございますが、これがまず違法であるかどうかということにつきましては、非常に残念ながら、念書船として輸出したということはあくまでも輸出許可、建造許可をするときの判断基準でございますので、そうしたものがその後日本に来たから違法であるというふうにはとらえられないわけでございます。ただ、もちろんのことながら、これは日本の商社が絡んだりいろいろなものが絡んでおりますから、道義的責任は当然追及されてしかるべきかと思われます。それで、そういう船が日本に参っているということを聞きましたので、私ども昨年の十二月中ごろに各商社あるいは船の運航事業者等に通達を発しまして、そういう船を使わないでくださいという厳重な警告を発しました。その後まだ来ているという話がありましたので、では実態調査をしてみようということで、日本の主な木材港十四港について一船ごとに全部チェックして、念書に違反しているのはどれくらいあるかというのをチェックしてみましたら、一月から四月までの間に念書に違反している船が七隻で、もちろんそれ自体は悪いのですけれども、騒がれているほどは多くないという実態が判明したわけでございます。それが念書船の実態でございます。
#15
○沖本委員 どういう形でチェックされたのかはわかりませんけれども、その程度のことで騒ぐはずないのですね。まあ、日本に入ってきた、入るだけの条件を備えている船がたくさんあるということであって、先ほどあなたがおっしゃっているとおりに、船はじっとしていないのだという形になるわけですけれども、念書船がたくさん出ているということなんですね。ですから、海運関係全体に影響をだんだん及ぼしている。こういうことが常時行われる。しかし違法ではない。ただ道義的な面で責任をやかましく言っているのだということなんですけれども、臨時船舶建造調整法によると、「船舶の建造についての調整を行い、もつてわが国の国際海運の健全な発展に資することを目的とする。」という法律ができているわけですね。これが第一条の目的で、そしてその許可の基準は、「運輸大臣は、前条の許可の申請が、左の各号に掲げる基準に適合すると認めるときは、同条の許可をしなければならない。」「当該船舶の建造によってわが国の国際海運の健全な発展に支障を及ぼすおそれのないこと。」こういうことをきちっと定めて、船をつくることに対しての許可を出しておるという点を考えていきますと、日本の海運に関して大きな影響を及ぼしているということを言わざるを得ないということになるわけです。これはやはり違法であるということで処置を講ずべきじゃないですか。
#16
○富田説明員 先生おっしゃいましたとおり、臨時船舶建造調整法というのがありまして、いま先生お読みいただきましたとおり、第三条で、この書き方自体をごらんいただきますと、「同条の許可をしなければならない。」というふうに許可を義務づけておるわけで、例外的な場合にだけ許可しなくてもいいということでございます。その中で確かに、「当該船舶の建造によってわが国の国際海運の健全な発展に支障を及ぼすおそれのないこと。」おそれがあった場合には許可しなくてもいいということになっております。たまたまある一つの申請が参りまして、それを許可をしないことはわれわれにとってそれ自体が違法行為になるわけです。許可せざるを得ないわけです。したがって、そういう意味でそのときに調査が十分でなかったとおしかりを受ければまことにそのとおりで申しわけございませんのですが、数も非常にたくさんございますので、そういうふうにわれわれとしては一応念書をもって約束させただけだということで、そのときに一応法律上は建造の許可を受けて外国へ輸出されたという船でございますので、それが違法であるというふうにとらえるのは、われわれとしてはやはりちょっと法制上できかねるのではないかと思っております。
 したがいまして、むしろ道義的責任の方を追及いたしまして、これは御案内のとおり、商社がかんで輸出をしたりしておりますから、そういうものを輸出するような商社については、今後建造申請が出たときに非常に厳密に調査をするとかいうような形で、いろいろな形を講じていかざるを得ない。また船が現実に日本に入ってくる、これはわれわれ各港で全部チェックしたわけでございますけれども、それを今後とも続けていくつもりでございますが、そういうものが入ったときに、そのたびに、われわれは知っておるよ、こういうものを使ってけしからぬじゃないかということを申し続けてまいりますれば、これはかなり責任のある企業がやっていることでございますので、われわれの行政指導にもある程度従ってくれるというふうな期待をしておるわけでございます。
#17
○沖本委員 海上運送法は傭船関係の規定として、日本籍船を外国に傭船に出す場合二年以上は許可、二年未満は届けのみとなっている。また、外国船を傭船する場合は届け出のみとなっている。これは改正する必要があるのじゃないですか。
#18
○富田説明員 船舶の活動を余り縛り過ぎるのは問題でございますので、基本的な改正まで至っていないと思いますが、いま先生お読みいただきました法律の中で、一定の期間以上の傭船については許可を受けろと書いてございます。たまたま先ほど先生おっしゃっておりますように、裸傭船についていろいろ議論がございます。いまその一定の期間を二年にしております。二年以上の傭船に、なる場合には許可を受けろということでございますので、その辺について、これは省令改正でありますが、われわれもある程度改正する必要があるとは思っております。
#19
○沖本委員 この中にも出ておるわけですけれども、責任制限手続として、「責任制限事件は、原則として、船籍の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に専属するものとすること。」こういうことになるわけですから、これはさっき言ったとおり、便宜置籍船みたいになって船籍が全部変わっていくわけですね。そこでこちらの手が及ばぬというようなことの事態がたくさん生じるのじゃありませんか。その辺はどうなんですか。
#20
○川島(一)政府委員 この責任制限手続の管轄の規定でございますが、これは、わが国の裁判所がこの責任制限の事件を担当する場合に、その事件をどの裁判所が取り扱うかということを定めたものでございます。したがいまして、日本の船舶でございますと船籍が日本の国内にあるわけでございますから、その船籍港の所在地を管轄する地の地方裁判所というのが管轄裁判所になるわけでございますが、外国の場合には、船籍の所在地を管轄する地方裁判所というものはわが国から見た場合には存在しない。したがって、この法案の九条の規定によりまして、「船籍を有しない船舶に係る場合」として、「申立人の普通裁判籍の所在地」そのほかいろいろございますが、こういった基準によって管轄の裁判所を決めていくということになるわけでございます。外国の船が日本の領海で事故を起こしたというような場合に、日本の裁判所にその責任制限事件が申し立てられるということは当然考えられるところでございまして、その場合には、ただいまの規定によって、「申立人の普通裁判籍の所在地」とか、「事故発生地」とか、あるいは「船舶が最初に到達した地」とか、そういった土地を基準にして裁判所の管轄が決められる、こういうことになるわけでございます。したがって、外国船については日本の裁判所が責任制限事件を扱わないというわけではございません。
#21
○沖本委員 ですが、抜け穴が非常に多い。便宜置籍船という形がとられておるわけですから。汚濁の問題と関連しますが、日本の国に入ってくるときはほとんど狭水道から入ってくるわけですね。だから事故率が高いということは事実なんです。ですから、そういう場合に責任を追及して、はっきりした答えが得られるような形に持っていくべきではないか。それはこれからのいろいろな国際的な話し合いの中でそういうものが詰められていくことになるとは思いますけれども、それなりに運輸省としても政府としてもそういう問題をすっきり筋を正していくということでなければ、一方では法律があるわけなんですけれども、それ以外のことが関連し合いながらずっと問題を多く残してしまう。これは皆さんの方としても否めないことじゃないかと思うのです。ですから、ただ政治的に世間の注目を引くということで便宜置籍船を国会でいろいろ議論した、あるいは通産大臣が三光汽船の当事者であったという事柄から予算委員会等でいろいろと議論した、むしろそのことによってクローズアップされたとも言えるわけですけれども、別に三光汽船だけが便宜置籍船を持っておるということではなくて、大手の船会社はほとんど便宜置籍船の方に力をかえていっておるということにもなりますし、また日本としても海運国でありながら船を持たない海運国にだんだんなっていきつつあるということもいまの傾向として考えられるわけですね。そういう点を考えていきますと、やはりこれを契機に相当、国際海洋法会議なり何なり、あるいは国際の海運の議論の場所で日本としての考えをどんどん出していって、その国際的な内容のものが正されていく。ただ利益を追求するだけで後はほったらかしということであってはならないわけですね。いわゆる油を捨てる船とかそういう船もほとんどこういうかっこうの船なんですね。そういうところにやはり問題が後々残っていくということになりますから、その辺は十分考えて運輸省としても対策を立てていただかなければならないと私は考えるわけです。その点、運輸省としてどうなんですか。
#22
○富田説明員 国際的な場とおっしゃいましたとおり、実はこれはOECD、IMCO――IMCOというのは政府間海事協議機関と申しましてロンドンにございます。そういういろいろな場で便宜置籍船の議論が行われております。そこでいろいろな観点から検討されておりまして、それの結果徐々に便宜置籍船がよくなってきているということもまた事実でございます。と申しますのは、たとえばSOLAS条約と申しておりますが、千九百六十年の海上における人命の安全のための条約で、いろいろな船舶の設備その他について義務が課せられております。そういうものについて、リベリア、パナマも皆条約に加盟いたしました。したがってそういう一定の保障ができてきているわけです。今度は乗り組み員につきましても、いまIMCOでそういう一定の資格を、どういう者に限らなければいかぬというようなことを国際的に統一しようという動きがございます。そういう中で、われわれも先進海運国等と協調しながらそういうものを正していくということについてやはり努力していかなければならないと思っております。
#23
○沖本委員 終わります。
#24
○保岡委員長代理 次回は、来る十日火曜日、午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午前十一時二十三分散会
ソース: 国立国会図書館
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