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#1
第075回国会 本会議 第3号
昭和五十年一月二十七日(月曜日)
    ―――――――――――――
議事日程 第三号
 昭和五十年一月二十七日
   午後一時開議
 一 国務大臣の演説に対する質疑
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 永年在職の議員保利茂君に対し、院議をもつて
  功労を表彰することとし、表彰文は議長に一
  任するの件(議長発議)
 議員請暇の件
 国土総合開発審議会委員の選挙
 国務大臣の演説に対する質疑
    午後一時四分開議
#2
○議長(前尾繁三郎君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 永年在職議員の表彰の件
#3
○議長(前尾繁三郎君) お諮りいたします。
 本院議員として在職二十五年に達せられました保利茂君に対し、先例により、院議をもってその功労を表彰いたしたいと存じます。表彰文は議長に一任せられたいと存じます。これに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○議長(前尾繁三郎君) 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。
 表彰文を朗読いたします。
 議員保利茂君は衆議院議員に当選すること十一回在職二十五年に及び常に憲政のために尽くし民意の伸張に努められたよって衆議院は君が永年の功労を多とし特に院議をもつてこれを表彰する
    〔拍手〕
 この贈呈方は議長において取り計らいます。
    ―――――――――――――
#5
○議長(前尾繁三郎君) この際、保利茂君から発言を求められております。これを許します。保利茂君。
    〔保利茂君登壇〕
#6
○保利茂君 ただいま、私が本院議員として二十五年間在職したるのゆえをもちまして、院議をもって御丁重なる表彰の御決議を賜りましたことは、身に余る光栄でございまして、感激にたえません。
 顧みますれば、過ぐる大戦の戦局が次第に苛烈の様相を呈しておりました昭和十九年十二月、初めて本院の議席を得ましてから三十年が過ぎ去りました。この歳月の流れを振り返り、国政の推移、進展に思いをいたしますと、まことに感慨無量なものがあります。
 不徳非才をもちまして、よく風雪をしのぎ、今日の栄誉に浴し得ましたことは、ひとえに先輩、同僚諸賢の温かい御厚情と御鞭撻のたまものであります。ここに先輩、同僚諸賢に対し心から御礼申し上げます。(拍手)
 あわせて、郷土佐賀県の皆様の長きにわたる御理解と御支援に対し深く感謝申し上げ、この光栄と喜びを分かちたいと存じます。
 いまや内外きわめて複雑、重大のとき、私は、同僚各位の驥尾に付し、微力ながら国民各位の信頼と期待にこたえるため、さらに最善を尽くしたい所存であります。
 何とぞ今後ともよろしく御指導くださいまするようお願い申し上げまして、御礼の言葉といたします。
 まことにありがとうございました。(拍手)
     ――――◇―――――
 議員請暇の件
#7
○議長(前尾繁三郎君) 議員請暇の件につきお諮りいたします。
 勝間田清一君から、海外旅行のため、一月三十一日から二月八日まで九日間、請暇の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#8
○議長(前尾繁三郎君) 御異議なしと認めます。よって、許可するに決しました。
     ――――◇―――――
 国土総合開発審議会委員の選挙
#9
○議長(前尾繁三郎君) 国土総合開発審議会委員の選挙を行います。
#10
○羽田孜君 国土総合開発審議会委員の選挙は、その手続を省略して、議長において指名されんことを望みます。
#11
○議長(前尾繁三郎君) 羽田孜君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#12
○議長(前尾繁三郎君) 御異議なしと認めます。よって、動議のごとく決しました。
 議長は、国土総合開発審議会委員に井上普方君を指名いたします。
     ――――◇―――――
 国務大臣の演説に対する質疑
#13
○議長(前尾繁三郎君) これより国務大臣の演説に対する質疑に入ります。成田知巳君。
    〔成田知巳君登壇〕
#14
○成田知巳君 私は、日本社会党を代表し、三木内閣の外交、内政の基本についてお尋ねいたしたいと存じます。
 総理の率直な答弁をお願いしたいと存じます。
 日本の最近の政治経済の激動は、六〇年代後半を境として、一つの時代が終わりを告げ新しい時代の幕あけが始まりつつあることを示していると思います。
 戦後の長い間の保守支配を支えてきたものの一つは、日米安保体制であり、他の一つは、いわゆる高度経済成長路線でありまして、自由民主党の諸君の好んで言う安保繁栄論でありました。
 しかし、アジアにおける冷戦構造が、日中国交の回復、ベトナムにおけるアメリカ軍の敗退により、次第に崩壊していくにつれて、日本の安全のために安保条約を堅持し、アメリカの核のかさのもとにいなければならないといういままでの冷戦意識に支えられた宣伝は、全くの虚構であることが国民の前に明らかになりつつあるのであります。(拍手)
 また、高度経済成長路線が完全に破綻を来したことは、物価高と不況、公害と自然環境の破壊、都市問題など、新しい現代的貧困が続出していることを見れば明らかだと言わなければなりません。
 三木総理の施政方針演説の基調は、大別して、基本的経済政策の転換、社会的公正の実現、そして内政、外交にわたり、いわゆる対話と協調の姿勢をとるということにあると思います。その限りではまことにりっぱなことであり、私も賛成でございます。しかし、この基本方針をどのようにして実現していくのか、その方法論を施政方針演説で聞くことができなかったことを残念に思ったのは、私一人ではないと思います。(拍手)
 言うまでもなく、基本的経済政策の転換を図るためには、今日までの大企業中心の財政、金融、税制のあり方を根本的に改めなければなりません。
 たとえば、税制一つ例にとってみましても、今日まで大法人には特別な優遇措置がとられております。東京都の昭和四十八年度法人事業税を見ても、資本金十億円以上の大会社千三百九十六社のうち、欠損法人は二百一社、約一五%に上り、これらの大会社は国税を一銭も納めておりません。わずかに住民税五千円を納めているにすぎません。
 このような不公正を是正するために、大企業に対する租税特別措置の全面廃止、法人税の累進課税の採用、交際費課税の強化、土地の再評価課税を断行し、これを財源として国民生活の充実向上を図ることこそ、経済政策の根本的転換への第一歩でなければなりません。(拍手)三木総理にその決意ありや否や、まず国民の前に明らかにしていただきたいと存じます。(拍手)
 総理も御承知のように、現在、不況下の物価高で、中小企業の倒産が続出しております。三木総理は、先日、不況のときこそ中小企業の体質改善のときだと言われましたが、この言葉は、経済政策の根本的転換どころか、今日までの大企業中心の政策をさらに推し進め、中小企業切り捨ての冷酷な政策をみずから表明したものだと思います。
 中小企業への大幅減税、無担保無保証融資の制度を三百万円まで引き上げるなど、金融上の特別措置を講ずるとともに、大企業が弱い中小企業の分野に力に任せて進出することを防ぐ、産業分野確保の法制化という思い切った措置が必要だと思いますが、総理の見解を明らかにしていただきたいと存じます。(拍手)
 今日、世界的に食糧危機が叫ばれておりますが、政府も世論に押され、食糧自給度の向上を口にするようになりました。それならば、田中前首相の打ち出した三十万ヘクタールの耕地取りつぶし計画は直ちに中止すべきだと思います。農業衰退をもたらした元凶であるいままでの自民党農政を根本的に転換し、農業基盤整備に思い切って資金を投入して、十年内にせめて穀物自給率で、EC並みの九〇%にまで近づけるべきだと思います。
 総理は、施政方針演説で防衛問題に触れられ、真空地帯論を展開されましたが、これはまさにダレスの亡霊の再現であり、時代逆行もはなはだしいものだと言わなければなりません。(拍手)
 総理、幾ら国民の血税で自衛隊を増強しても、食糧の自給と必要最小限度のエネルギー源の確保なくして、国の安全保障があり得ぬことは常識であります。真空地帯論を取り上げる前に、荒廃した農村を、農民が希望をもって働ける青い空と豊かな土壌の農村にすることが、政府の大切な任務であります。総理の見解はいかがですか、明らかにしていただきたいと存じます。(拍手)
 総理自身、今回の予算案の不十分さを認められ、大平大蔵大臣も、予算編成を終わって、「自分の気持ちは鉛のようだ」と言われたと伝えられております。政府みずから不備、不満だと考える予算案に、どうして国民が満足できるでしょうか。国会の審議を通し、国民皆さん方の声に耳を傾け、修正すべきは修正し、一歩でも二歩でも国民の要求に近づける予算にすることが、われわれの国民に対する任務であり、責任だと考えるものであります。(拍手)
 三木総理、あなたに「対話と協調」の姿勢を貫き、民主的国会運営を行う決意があるならば、われわれもまた、国会を国民のものにするため、共同の努力と責任を担う用意があることを明らかにし、総理の予算案修正に対する考え方を国民の前に明らかにしていただきたいと存じます。(拍手)
 時の政府の性格を数字で示したものが国の予算であります。一般会計は二十一兆二千八百八十八億円、二四・五%の伸び率であり、まさにインフレ追認の膨大予算案であります。
 春闘が終わるまでは総需要抑制論をとり、インフレの後追いにしかすぎない労働者の生活防衛のための賃上げ要求はこれを抑え、国民には耐乏、節約をお説教し、春闘が終わればインフレにつながる景気浮揚策をとり、財界の要求にこたえようとしているこの政府の意図を、国民はすでに敏感に察知しておるのであります。(拍手)
 消費者物価を九・九%に抑えると言っていますが、経済がマイナス成長となっているにもかかわらず、今日、物価は依然上昇を続けておるではありませんか。それなのに景気刺激政策をとって、どうして消費者物価を現在の半分以下の一けた台に抑えることができるでしょうか。すでに河本通産大臣は、景気刺激政策への転換を公然と口にしております。政府の今後の経済運営の統一見解を、国民の前に明らかにしていただきたいと存じます。(拍手)
 総理も御承知のように、現在、中国、ソ連などの社会主義国を除きまして、世界の資本主義諸国は例外なく激しいインフレと深刻な不況に巻き込まれ、その解決に苦悩いたしております。
 日本銀行調査で明らかなように、わが国の実質個人消費支出は、四十八年下期に比して四十九年上期は八・五%の減少を示しておるのであります。これは激しいインフレによって消費支出が大きく削減され、その結果、国内購買力が低下し、不況を深刻化させていることを示しているものであります。したがって、現在の不況はインフレの引き起こしたものであり、インフレそのものに内在するものであります。にもかかわらず、インフレに対しては総需要抑制策、不況に対しては景気刺激政策といういままでのやり方でこの危機を打開できると考えるならば、これほど陳腐な経験主義はないと考えるものであります。(拍手)
 総理は、今日の経済危機をもたらした真の要因は一体何なのか、これを打開する根本的方策は何であるとお考えか、国民の前に明らかにしていただきたいと存じます。(拍手)
 われわれ日本社会党は、GNP中心、金と物中心の経済成長でなく、国民福祉の成長率を増大させること、すなわち、福祉の充実により成長の中身を高めていく政策こそ、今日の危機を打開し、将来の安定した豊かな日本経済をもたらす道だと確信するものであります。(拍手)
 そのために、インフレを抑えることを当面の最重点政策として、第一に、日本銀行法を改正し、日銀の中立性を保証し、通貨膨張に歯どめをかけるとともに、公共料金を少なくとも物価の鎮静するまで据え置くことを強く主張いたします。(拍手)
 第二に、独禁法の改正を、最低限公取委員会試案のとおり実施することを政府に要求いたします。
 原状回復命令と原価の公表、持ち株制限、巨大企業の分割につき、政府・自民党、財界筋に強い抵抗があるようですが、やみカルテルや便乗値上げで不当な利益を得、国民生活を破壊と混乱に陥れてきた大企業のやり方を思うとき、原価の公表、原状回復命令は、社会的不公平是正のためにも当然過ぎるほど当然の措置だと言わなければなりません。(拍手)
 また、持ち株制限の必要性は、今回の公取委員会の調査報告書を見れば明らかであります。総合商社十社で一兆円を超える株式を持ち、これを武器として中小企業に不公正な取引を強要している実体が浮き彫りにされたではありませんか。公正な取引を保証し、価格操作を抑えて消費者の利益を守るために、不公正な取引を防止するための認定基準を設け、総合商社の株式保有を制限すること、これまた当然だと思います。
 また、大企業の分割は、いわゆる規模の利益を害するとの反対意見があるようですが、総理に思い出していただきたいことは、日本版マスキー法による自動車排ガス規制問題の経過であります。この規制の実現に最も熱心で、技術開発に力を入れたのは、大メーカーではなくして、むしろ中堅メーカーであったことを忘れてはなりません。(拍手)
 このように、むしろ巨大化し、市場を独占している企業を適正規模に分割することが、真の能率の向上と公正な取引、消費者保護のために必要なのであります。
 かつて環境庁長官もおやりになった三木総理の、独禁法改正と自動車排ガス規制に対する見解を明らかにしていただきたいと存じます。(拍手)
 環境対策と言えば、三菱石油重油流出問題に触れざるを得ません。
 公害は、その発生源において防止することが、コストも安く有効であり、社会的影響も少なくて済むことは明らかな事実であります。ところが、資本の側は、そのわずかの費用を出し惜しんで、社会的にはかり知れない損害を与えてきたのであります。
 今回の三菱石油の事故もその例外ではなく、まさに人災、企業責任であり、このような状況を放置してきた政府の責任はまことに重大だと言わなければなりません。(拍手)
 漁民は生活を奪われ、瀬戸内海は完全に死の海となりつつあります。漁民は一隻のフリゲート艦よりも、一隻の油回収船が欲しいと訴えております。この言葉こそ、本当に国土と国民の生活を守るものが何であるかを、事実をもって示したものだと思います。(拍手)
 今回の事故、そして各地に相次いで起こっている不等沈下を見ましても、埋立地にコンビナートを建設することは、環境保全、公害防止上これ以上絶対認めるべきでないと考えるが、総理の御見解を明らかにしていただきたいと存じます。(拍手)
 なお、公害補償に関連して、経営不振の大企業に、政府の救済融資の動きがあるようでございますが、この政府資金の導入は、汚染者負担の原則と相入れないことだと思いますが、政府はどのように処理されようとしているのか。その影響するところまことに甚大であります。政府はその見解を明らかにする責任があると思います。
 三木内閣は、弱者救済を看板に登場してまいりましたが、今回の予算案を見る限り、残念ながらリップサービスに終わったとしか考えられません。
 一例を申し上げましょう。老人福祉手当月額一万二千円、これは、三年前にすでに計画されていた一万円に二千円上積みしただけで、その間の物価上昇を考えると、実質一万円以下の計算にしかなりません。老人福祉手当は、少なくとも月三万円にし、各種年金制度は賦課方式に思い切って切りかえるべきであります。
 物価上昇のもとで積立方式を続けることは、積立金、すなわち国民のお金を大幅に目減り、減価させて、二十年、三十年後に年金として国民に返すということであり、これほど社会的不公正はありません。一世帯百万円まで最低一〇%の金利とする特別預貯金制をつくるとともに、年金の賦課方式への切りかえを即刻行うべきでありますが、関係当局の見解はまだまとまらず、区々に分かれているようですが、この機会に、総理としての権威ある見解を明らかにしていただきたいと存じます。(拍手)
 社会的不公正の例として、さきに法人税の不合理性を指摘しましたが、五十年度、所得税の自然増収は二兆九百億円と見られているにもかかわらず、所得税減税は二千四百八十億円にしかすぎません。これでは超ミニ減税どころか、実質的な大増税であります。
 さらに、たばこ、郵便料金などの値上げで国民を二重に苦しめようとしております。法人税法の改正、土地再評価税、富裕税の創設など、インフレにより労せずしてもうけた者の負担において、インフレと不況に苦しむ勤労者、中小企業者、農民の負担を軽減し、四人家族二百八十万円まで無税とするととともに、全国一律最低賃金制の実施、主食、住宅、教育、医療などについてナショナルミニマムを確立することこそ、社会的公正にかなった政治であり、これこそ総理の言う真の意味の高福祉、高負担の政治だと思います。
 大会社、大資産家に利益する経済の仕組みに手をつけないで、いたずらに高福祉、高負担を言うことは、高福祉の名のもとに国民大衆に大きな負担を強いることになると思うが、総理の見解はいかがでしょうか、明らかにしていただきたいと存じます。(拍手)
 社会的公正と福祉経済の実現のために特に指摘しておきたいことは、自治体財政の確立の問題であります。
 言うまでもなく、福祉行政の主体は自治体であります。その自治体の財政は、インフレと不況のために、福祉行政の推進どころか、義務的支出も困難になっております。
 この危機を打開するためにも、行政事務の再配分と、現在、国七、地方三となっている不公正な税源配分を、少なくとも五分五分の割合に変えることが必要であり、当面、超過負担の解消と地方債起債の制約を廃止すべきであります。自治体行財政を全面的に見直すと言われた総理の見解はいかがですか、具体的に御答弁を願いたいと存じます。(拍手)
 政府は、本年度予算案が目玉なしとなった理由として、財政硬直化を挙げ、特に国鉄、健保、食管の赤字をその三大要因と考え、これにメスを入れると言っています。私も赤字をよしと言うのではありません。しかし、たとえ食管、国鉄、健保会計に赤字が生じても、これによって国民の食生活と足と健康が確保されるならば、それは営利会社で言う赤字ではなく、国民福祉の黒字として喜ぶべきだと思います。火事、災害に備える消防費を、赤字だとして非難する人が一体あるでしょうか。
 しかも、財政硬直化の真の犯人は、産業基盤整備のための公共事業費、建設国債という名の赤字国債や、再生産に何ら役立たぬ防衛費等の激増であって、この犯人を捕らえないで財政硬直化打開は不可能だと考えるが、総理の見解はいかがか、お伺いしたいと存じます。(拍手)
 次に、質問を外交問題に移したいと存じます。
 御承知のように、ラロック証言により、日米安保条約は核安保であることが全国民の前に明らかにされました。これほど核持ち込みを裏づける具体的事実が次々と出ても、三木総理は、良心に恥じることなく、日本への核持ち込みは絶対にないといまなお国民に断言することができるのでしょうか。
 核持ち込みが国民的規模で疑われている今日、疑いのある米軍基地、艦船、航空機につき、米国に調査を要求し、事実関係を確認し、これを国民の前に明らかにするのが独立国政府の責任ではないでしょうか。総理の決意のほどを承りたいと存じます。
 今日、アジアを中心とする国際情勢は、緊張緩和と平和共存の動きが主流となりつつあります。各種世論調査の示すように、日本国民の過半数が中立政策を支持しておるのであります。このアジアの情勢変化に即応し、この国民の期待にこたえて、日米安保条約をやめて、日米友好条約を締結し、両国国民の真の友好と、アジアの恒久の平和と繁栄を図るべきときが到来したと思うが、総理の見解はいかがでしょうか。(拍手)
 国際協調を唱える三木内閣のもとで、残念ながら、田中内閣時代よりも著しく後退しているのが対朝鮮政策であります。施政方針演説で、朝鮮民主主義人民共和国には一言も触れられておりません。
 日韓関係の真の正常化は、政治的、経済的援助で朴ファッショ政権とのゆがんだ関係をさらに強めることでは絶対ありません。金大中氏事件などの公正な解決と、朝鮮民主主義人民共和国との国交正常化への努力によって初めて切り開かれることは、最近における韓国内における民主化運動の高まりと、朴政権の危機的状況を見ても明らかではないでしょうか。(拍手)
 いま国民は、日中、日ソの平和条約の締結に大きな関心を払っていますが、先般の日ソ交渉で、北方領土問題を共同発表に盛り込むことができなかったことは、まことに遺憾だと考えます。
 かつて三木総理は、ソ連首脳との会談で、北方領土問題解決のための中間的措置があることを確認したと言われましたが、その中間的措置とは一体何でしようか。
 全千島がわが国固有の領土であるという一貫した方針のもとに、日ソ共同宣言に基づいて平和条約を締結して、歯舞、色丹両島の返還と北洋における安全操業を実現し、さらに、継続交渉によって、日本の中立化と見合いつつ、全千島の返還を図るというわが社会党の政策こそ、真に現実的な政策だと考えるが、総理の見解を承りたいと思います。(拍手)
 言うまでもありませんが、日中平和友好条約の一日も早い締結は、日本と中国の永遠の友好と繁栄を願うすべての人々の心からの願いであります。政府はこれにこたえ、一部の台湾ロビイストの動きを排し、日中共同声明の精神を具化体して、速やかに日中平和友好条約を締結し、今国会で批准すべきだと思うが、交渉の経過と今後の見通しを、可能な限り国民の前に明らかにしていただきたいと存じます。(拍手)
 三木総理は、かつてアラブ諸国を訪問され、友好関係の確立が急務であると表明され、わが党もこれを積極的に支持してまいりました。しかるにその後、政府の態度は後退を続け、食糧と石油を戦略武器とし、アメリカの世界支配を強め、第三世界を抑え込もうとする危険なキッシンジャー構想への加担を強めようとしております。
 キッシンジャー国務長官は、中東産油国への軍事介入の可能性を公然と述べておりますが、これは、中東諸国の主権と独立を踏みにじるものであり、米軍に軍事基地を提供しているわが国にとって、見過ごすことのできない重大な問題だと思います。
 施政方針演説で、中東政策の重要性を説いた三木総理が、アメリカのこの危険な動きに対し、なぜ今日まで黙して語らず、何の行動にも出ようとされなかったのでしょうか、国民は疑問を抱いております。
 また、昨年末、国連総会で日本は、パレスチナ解放機構のオブザーバー資格を求める決議に棄権さえしているではありませんか。パレスチナの正当な権利を認めるべきだと強調された総理は、これらの一連の事実を一体どのようにお考えなのか、言葉だけでなく、今後の現実的、具体的な行動についての総理の見解を明らかにしていただきたいと存じます。(拍手)
 結論に入る前に、私は二つのことをただしておきたいと存じます。
 総理は、教育の中立性を強調されました。言うまでもなく、教育の目的は、憲法及び教育基本法に基づいて、平和を求め真理と正義を愛する自主的、民主的人間をつくり上げることにあります。そして、このような人間像をつくり上げる教育の権利は、言うまでもなく国民の手にあるのであります。教育の内容を政府が権力で決定することは、この国民の教育権と教育の自由を侵すものであります。
 政府の仕事は、教育環境をりっぱに整備していくことであります。政府・自民党はこの本来の任務には目を向けず、平和と民主主義の教育を偏向教育ときめつけ、自民党の方針を教育内容に押しつけ、権力で教育を左右せんとしてまいりました。これこそまさに偏向教育そのものだと言わなければなりません。(拍手)総理の主張とは反対に、教育を政争の圏内に持ち込んできたのが自民党ではないでしょうか。総理の見解はいかがですか、明確にお答え願いたいと存じます。
 田中内閣が、金権政治のどろ沼の中で崩壊した後登場した三木内閣は、金権政治の打破を国民に強調されてきました。言うまでもありませんが、政治の腐敗の原因は、選挙に不当に金がかかるということ、いや、自民党がかけてきたということにあるのであります。(拍手)したがって、政治を金で動かすという、この自民党の体質そのものを変えることが、金権政治打破のかぎであります。うそのない政治を行うという総理の言葉を事実で示すため、営利会社からの一切の政治献金を禁止する政治資金規正法の改正を早急に行って、金権政治の根源を断固断つべきだと思います。
 労働者一人一人が賃金の一部を積み重ねた労働組合の政治献金と、営利会社のそれを同一視することは、政治献金規制の本来の意味をねじ曲げたものであることを、ここに指摘しておきたいと存じます。(拍手)
 自民党内に、小選挙区制と比例代表制、定数是正と参議院全国区制改正、この問題を何らの合理的な根拠もなく結びつけて、保守政治に有利な選挙制度をつくり出そうとする動きがありますが、もちろん、今日の自民党の低落傾向は、選挙制度によるものではなく、自民党の体質そのものに根差していることを、心ある自民党議員は御承知のはずだと思います。(拍手)
 総理は、さきの党首会談におきまして、選挙法の改正は野党第一党の賛成なくしてやるべきではないと言われましたが、社会党はもちろん、すべての野党が反対している小選挙区制は、絶対取り上げるべきではないと思うが、総理の見解はいかがでしょうか。
 反対に、国民の常識となっている定数アンバランスの是正と選挙の公営強化は、与野党話し合いの上、今国会でぜひ実現すべきであり、総理の明快な答弁を要請するものであります。(拍手)
 最後に、総理の解散、総選挙に対する見解を承り、質問を終わります。
 申すまでもなく、三木内閣誕生の経緯からしても、総選挙により国民の信を問うことは当然であります。五十年度予算を国民の予算にするための努力を重ね、物価抑制と社会的弱者救済の当面の対策を樹立し、政治資金規正法と選挙法の改正を行った後解散を断行することが、議会制民主主義のルールにかなうものと考えるが、本議場を通して、総理の見解を率直に国民の前に明らかにしていただくことを強く要求して、私の質問を終わる次第でございます。(拍手)
    〔内閣総理大臣三木武夫君登壇〕
#15
○内閣総理大臣(三木武夫君) 成田さんの御質問、十分に拝聴いたしました。詳細にお答えをいたしたいと思うのでございます。
 まず最初に、全体の演説を通じての成田さんのお考えでありますが、成田さんは、安保条約と高度経済成長とを一本に抱き合わせて、これを否定する立場に立つことが新しい政治の始まりであるということが、全体の御質問を貫かれておる考えでございます。
 私は、長く議席を本院に持つ者として、議会政治に対して愛着と責任を持っておる人間であります。だから、日本の議会政治の健全な発展を願う者として、日本の政党政治は混乱なしに政権の交代が行われる基盤が、政党政治の中に確立されなければならぬと考えておるのであります。(拍手)これは成田さん、リップサービスではないんですよ。私は心からそう考えておるのであります。
 しかし、その前提条件というものは、与野党間の中に、防衛問題であるとか外交問題であるとか、国の基本的政策について共通の基盤があるということが、私は大切であると思っておるのであります。(拍手)もしそういう共通の基盤がなしに、百八十度違っておる政党間に政権の交代が行われるということは、国際的不信を招き、国民に対して混乱をもたらすことは明らかであります。(拍手)
 ところが、野党第一党の党首である成田さんと私との間に、日米安保条約、日本の自衛力の問題について、百八十度考え方が違って共通の基盤のないことは、日本の政党政治のために、まことに残念なことであると考えておるのであります。(拍手)私は、今日の議会政治においてはこれはきわめて重要な問題である、与野党間で真剣に話し合っていかなければならぬ課題であると考えておるのであります。(拍手)
 私は、安保条約と高度経済成長とを一緒に抱き合わせて論ずるという論はとらないのであります。安保条約は安保条約、高度経済成長は高度経済成長、こうして私はそれを評価するものであります。
 第一番に、安保条約にいたしましても、成田さんごらんのように、世界の主要国の国際的な常識は、集団安全保障ということであります。いわゆる国際連帯の意識の上に立った集団安全保障体制というのが、今日の国際的常識であります。しかし、その集団安全保障の体制は、それによって軍備を拡張するというのではなく、だんだん軍縮に向かわなければならぬことは言うまでもありません。しかし、私は、政治は理想を目指すことはよいけれども、現実を踏まえてやらなければならぬのが政治だと考えておるのであります。(拍手)
 そういう点から、私は、成田さん、無防備論はとらないのですよ。無防備論はとらない。日本の場合はむやみに防衛力を増強しようという意見ではないのです。最小限度の防衛力は日本が持って、そして日米安保条約は、それを補強するものとしたいというのが私の考え方でございます。したがって、こういう自民党が従来とってきた政策は、国際常識としても、各国から妥当な政策として承認を受けておる政策であると信ずるものでございます。(拍手)
 また、今日において高度経済成長のひずみ、たくさん出ております。第一、資源の問題にしても、どこからでも日本が資源を買いあさるようなことは許されません。環境問題からしても、次々に新しくコンビナートをつくって、そして設備投資をふやしていくようなことは、立地条件からして許されることでもない。また、労働力の点からもできない。だから、今日は量的な拡大から質的な拡大に方向転換しようと私は言っておるのですよ、この国会においても。だから、その高度経済成長のいろいろなひずみ、これは私は認めます。全部高度経済成長がよかったと言っておるのではないのですよ。反省をいたしますけれども、成田さんのように、高度経済成長がすべて悪かった――こういう高度経済成長の功績面に対しては、適当な評価をしなければならぬと考えておるのであります。(拍手)それは、国民の所得も上がり、一方においては雇用の機会も増大し、高度経済成長としての、それだけのメリットは評価することが、公正な高度経済成長論に対する批判だと考えておる次第でございます。これが、第一問の御質問に対する私の考え方を率直に述べたわけでございます。
 第二は、やはり今日の税制、財政あるいはまた金融、そういうすべての問題は、一遍根本的に洗い直して考えてみるべき時代が来ておるということには、私も賛成です。これはやはり高度経済成長から安定成長に大きな方向転換をするのですから、従来の制度や慣行というものは、ここで洗い直してみることが必要であります。
 ただ、私は、これは皆さんにも御理解を願いたいのは、こういういままでなれてきた制度や慣行を洗い直すということが、すぐに結論が出る問題ではないということでございます。これはなかなか容易な問題ではない。少なくとも最低二、三年はかかりましょう。けれども、今年度においては方向は出さなければいかぬ。そして、その方向に従って、できるだけ来年度の予算に反映をできるようにせなければならぬというのが、私の心づもりであることは申し上げておくのでございます。(拍手)
 したがって、すべてのいま言ったような制度が、大企業中心であったということには私は賛成できません。産業基盤の整備にしても、それは大企業のためであったというその一方的なきめつけ方には、賛成できないと申し上げておきたいのでございます。
 次に、中小企業、この問題をお取り上げになって、いかにも自民党という政党が、中小企業に対して薄情な政党のようにおっしゃいますが、そんなことはありません。
 今日、中小企業は、事業数にしたって五百万、また就業総人口でも三千万ですから、この中小企業の安定なくして日本の安定はありません。われわれは、中小企業に対してはできるだけの配慮をいたしまして、しかもこのインフレの進行下に、健全な経営をしておる中小企業にしわ寄せがいかないように、昨年の末においても七千億の融資の枠を拡大したり、ことしの予算でも、中小企業に対する対策の費用は千二百八十八億円、これは抑えぎみな予算の中で相当な増額であります。また、成田さんの御指摘になりましたような無担保無保証の資金枠にしましても、一挙に、去年は千二百億円でしたが、それを倍にしたのですから、二千四百億円にした。(拍手)そしてまた、やはり中小企業には情報の提供が必要でありますから、全国で指導員を千人ふやしました。また、中小企業大学などもつくって、将来のために指導者を養成していこうという政策もとりました。また、中小企業の分野の確定、中小企業が大企業にその分野を蚕食されることのないようにしろということでございますが、われわれもそう考えております。これについては、中小企業団体法などを適用して、これで成田さんの言うような目的を達成して、中小企業が安定して経営をやっていけるようにしたいと考えておる次第でございます。(拍手)
 第三には、農業の問題にお触れになりました。
 田中前総理が三千万ヘクタールの農地をつぶすと言った、これは政府の政策ではありません。したがって、私はそういう政策は踏襲をする意思はないということを明らかに申しておきます。これは政府の政策でないのですから。われわれは、やはり食糧生産というものが重要であるこの現在において、農地というものは確保していかなければならぬ、世界的に食糧の危機の状態の中にあって、農地を次々につぶしていくという考え方には私どもは反対であります。やはり農地は確保していかなければならぬ。そして、できるだけ食糧の自給率を高める。食糧の自給率を高めると言っても限度がありますよ。どうしてもやはり国際協調、国際協力というものが必要ですよ。日本は、外国から食糧の輸入、それを全然予定しないで、国内だけで食糧を自給しようとすれば、新たに千万ヘクタールぐらいの農地が必要でしょう。できることじゃない。どうしてもやはり必要なことは、国際協力のもとに必要な食糧が安定して輸入のできるような、安定した国際関係を築くということが大事であると私は思うのであります。(拍手)
 それと同時に、日本の農業生産の持っておる潜在能力を培養しなければなりませんから、土地基盤の整備ということが、これは今後特に力を入れていきたいと思うのでございます。
 次に、今度の予算の編成は、私も大蔵大臣も非常に不満な予算であるということを言っておるということでありますが、理想的に言えば、予算というものはなかなか、社会福祉にしても、あれもしたいこれもしたいということはたくさんある。だから、理想的に言えばしたいことはいっぱいあるけれども、現在の条件のもとにおいては、最善の予算であるとしてこれを提出したものであることは、御了承を願いたいのであります。(拍手)したがって、この予算は、与党内においても意見の統一を見た予算であるし、予算編成前にも、党首会談あるいは大蔵大臣と政調会長のお話を通じて、できるだけ野党諸君のいろいろな御希望というものも、取り入れられるものは取り入れようと努力をした予算でございます。もちろん、成田さんから言えば、非常にまだ程度が低い、程度が足りないと言われましょうけれども、われわれとしては、できるだけ野党の御希望も取り入れられるものは取り入れたわけでございますので、この予算を修正する考えはないということを申し上げておきたいのでございます。(拍手)
 また次には、春闘というものに対して、春闘を意識して総需要抑制政策をとって、春闘が終われば景気政策をとるのであろうというような、そういう意味の御質問がございましたが、何も、この総需要を抑制してインフレを抑えようとするのは、春闘のためではないのです。春闘のためにそういうことをやっているのではなくして、国民生活を安定させたいということでございますから、したがって、春闘が終われば、すぐに景気政策をとるというようなことはいたしません。(拍手)われわれは、国民の御協力を得て、物価もだんだん鎮静に向かっておることを喜んでおります。
 したがって、政府が皆さんに申し上げておるように、今年の三月には前年同月比一五%程度、来年の三月には一けた台にしたいというこの政府の目標は、これは国民に対してもぜひとも守らなければならぬ政府の約束であると考えておりますから、全力を傾けて、まずインフレを抑制する、物価を鎮静する、こういうことに全力を向けようと思っておりますから、いま政策転換をする考え方は持っておりません。物価政策の動向をながめながら、景気の動向にも無論政府は注意いたさなければなりませんが、いま政策転換をやって景気政策をとるという考えはございません。
 その間、インフレの影響によって弱い人たちが非常な打撃を受けないように、中小企業対策とか、あるいは弱い立場に置かれておる人たちの社会保障的な政策は、推進してまいる考えでございます。
 次に、独禁法の問題にお触れになりました。
 私は、やはり日本は自由経済の体制というものが日本の国情に一番合うと思っております。ただ、しかし、その自由経済というものが、何でも勝手に自由にできるというようなことが今日認められるわけがない。どうしても自由経済は、非常な厳しい社会的制約のもとに一定のルールを設けなければ、国民の支持を受けられる体制ではありません。そういう意味において、私は、現在の独禁法は改正しなければならない、こういうことで、政府部内においても懇談会を設けまして、そして、いま各方面の意見も聴取し、できるだけ理想的な独禁法の改正をいたしたいということで研究をいたしておるわけでございまして、いまここでその内容について申し上げることは差し控えますが、やはり独禁法の改正は、骨抜きな改正はいたさないつもりでございます。
 また、自動車の排気ガスという問題についてもお触れになりました。
 これは私は、御承知のように環境庁の長官として、何とかしてマスキー法と言われるこの規制を日本に実行したいということを熱心に推進してきたことは、成田さんもお認めになると思います。五十年の窒素、五十年の硫黄酸化物の規制についても、アメリカは延ばしたわけですが、アメリカとは事情が違うと言って、私はこれをやはり予定どおり実施したのです。
 ただ困ったのは、五十一年度の窒素酸化物の規制であります。これも私は、〇・二五という目標を達成するために、環境庁長官をやめる最後まで努力をしたのですが、どうしても、まだ世界的に、そういう基準を実行できるような技術開発というものが世界のどこにもできていないのです。だから、促進は私はやったんですよ。したがって、残念ながら五十一年度から暫定値を設けて、一トン以下の車は〇・六、一トン以上の車は〇・八五という規制にいたしたわけでございます。しかし、それまでに、ただ単に大気部会でそれを決めたからといって、すぐに告示を私は許さなかった。中公審にかけて、全体の大きな国民的立場から再検討してもらいたい、このことを申し出て、中公審で慎重審議の結果、そういう結論が出ましたから、それを尊重をいたすというのが私の立場でございます。しかし、二年間の延長ではありますが、自動車のメーカーの人たちはその規制をできるだけ早く促進してもらいたい、今後ともそういう立場をとることに変わりはありません。
 次に、インフレ下における目減りの対策についてはいろいろお話がございましたが、これはいま、政府のもとにおいて鋭意検討いたしておりますから、いましばらく時間をおかし願いたいのでございます。
 次に、主食と住宅、医療、これについてナショナルミニマムをつくれというお話でございました。
 このお挙げになりました問題は、いずれも国民の生命あるいは生活に非常に重大な関係を持つ主食、住宅、医療でありますから、この問題については、われわれもできる限り、そういう問題に対して国民が安心して、主食の問題も住宅の問題も医療も、安心して生活のできるような状態を早くつくり出したいと願っておるものでございます。だから、一定の水準というもので持っていきたいという考えを持っておるわけでございますが、ナショナルミニマムというようなものをいまつくるという考え方は持っておりません。
 また、次には、地方の財政にお触れになりました。
 国と地方とを通ずる行財政の問題というのは大問題でありますから、地方制度調査会などにおいても、これを私は先日諮問することにしたわけですが、自治体のあり方というものについては、根本的に検討の時期に来ておる。自治体の自主性、自治の自主性を認めながらも、なるべく自治の財政が放漫にならないように、これはやはりこの際、地方の行財政に対してメスを入れる時期だと考えておる次第でございます。
 次に、ラロック証言について御発言がございました。
 現在の米軍が核兵器をわが国に持ち込む場合は、すべて事前協議の対象になるということになっております。また、アメリカの政府も、事前協議にかかるようなことを、日本政府の意思に反して行動をとるようなことはしないという保証をしておるわけでございます。これは先般のフォード大統領が参ったときも、こういうことをフォード大統領自身の口からも保証をされたわけでございまして、日米安保条約というものは、相互の信頼関係の上に成り立っておるわけでございますから、大統領が約束したものを信用できぬ、もう基地も軍艦も皆日本が行ってこれを調査せなければ、これは日本は安心しない、アメリカ政府の言うことは信用できぬということでは、日米間の友好関係の基礎はこれは確立をせないわけでありますから、いま私どもは、アメリカ政府のその保証を信頼し、基地の点検であるとか、あるいはまた艦船の点検とか、そういうことをいたす考えは持っていないわけでございます。
 それから、次に日ソ平和条約、これはもう日本としては一番の隣国でありますから、早く日ソ平和条約を締結いたしたいのでありますが、その締結の前提には、いわゆる択捉、国後、歯舞色丹というこの北方領土の問題を解決することが前提でございます。宮澤外務大臣も、先般モスクワに派遣をいたしたわけでございますが、この問題に対しての壁は厚いということである。グロムイコ外相も本年来ることになっておりますから、なおしんぼう強くこの問題は日ソ間で交渉を続けて、何とか解決を図って、日ソ平和条約の締結にこぎつけたいと願っておるものでございます。
 中間的処置は、私とコスイギン首相との会見の中に出たのでありますが、その当時もコスイギン首相も、自分にも何か案があって言うのでないのだけれども、この問題、何かそういう処置はないだろうかという提案でありまして、その後の外交交渉も続けましたけれども、格別目新しい成果は残念ながら生まれませんでした。
 日中平和条約は、これはもう外交のルートで数次にわたって接触を続けておりますが、中国も日本も、一日も早く平和条約を締結して日中間の永遠の平和の基礎を固めたいと考えておりますから、この日中間の外交交渉が妥結し次第、一日も早い国会の批准を受けたいと考えておるわけでございます。
 また、アラブ外交につきましては、キッシンジャー国務長官の考え方に加担しておるというようなお話でございましたが、加担も何もないので、日本は、キッシンジャー構想に出発する産油国と消費国とが話し合って、そうしてこの石油問題を解決しようという、この三月に開催される予備交渉には賛成をして出席をいたす所存でございます。
 われわれは、石油問題といっても、それは中東の紛争解決とは切り離しては考えられない。したがって、中東の紛争解決に日本のできることは必ずしも多いとは言われませんけれども、しかし、その中にあっても、一九六七年第二四二国連の決議を可決したときは、日本は安保理事会における非常任理事国であって、その決議を推進する役目を日本はとったのですから、決議だけをしておいて、その実行に対して、できるだけこれを推進しようという誠意を持たぬことはよくない。私は機会あるごとに、この二四二というものが実行されて、中東の紛争が解決することを常に関係諸国に対しても申しておるのでありまして、そういう点で早く中東の紛争が解決されて、石油の問題も安定した基礎の上に供給が受けられるような状態を確立いたしますように、日本も努力をしなければならぬと考えておる次第でございます。
 最後に、教育の問題にお触れになりまして、自民党が教育に対して、自民党の考え方を押しつけようというようなことを御非難になりましたが、自民党は、日本の教育に自民党の考えを押しつけようなどという考え方は、毛頭ないということを申し上げるのであります。(拍手)自民党は、日本の教育の場が非常な政治の争いの場から、政争の圏外に立って、もっと静かな場で、次の時代を背負う健全な国民が育ってもらいたいと願っておる以外にないのです。(拍手)したがって、平和と民主主義、これを否定するようなことはあり得ないじゃありませんか。平和と民主主義を否定して、自民党という政党も成り立ちませんよ。そんな考え方はわれわれはする考えはないのでございます。(拍手)
 ただ、成田さんにも申し上げたいのは、私は、教育を改革するにしても、日本の教育の零囲気を一新せなければ真の解決はできぬと思うのです。その零囲気を改革することは、教育の場を政治の争いの場からはずすということです。それがなければ、こういう零囲気の中で教育の改革をやろうといったってなかなかできませんよ。だから、社会党も教育に政党が関与するおつもりがないという御意見のようでありましょうから、みんなで日本の教育を政争の圏外に置くために協力しようじゃありませんか。(拍手)
 もし、私の答弁で足りないところがございましたら、各省大臣でこれを補うことにいたします。
 私は、何もきょうは上がっておるわけでないんですけれども、ちょっと言い間違いがありまして、成田さん、相済みません。
 耕地については三十万ヘクタールで、これは三千万ヘクタールというふうに言ったとしたら大変な誤りで、そういうことは訂正をいたします。
 また、最後に解散の問題あるいは政治資金の問題この問題について、なるほどたくさんの御質問を受けたので、これは落としまして失礼をいたしました。
 政治資金あるいは選挙のあり方等、政治の信頼を取り戻すというのは、単に自民党ばかりでなしに、議会政治を守っていくのには、皆さんも私も運命共有者ですからね。この問題は、自民党も案をつくりつつありますが、各党間でも御協議を願って、定数の是正の問題などは、これは各党間で話し合いがつけられる能力を持たなければならぬと考えておる次第でございます。
 また小選挙区制度は、私は成田さんにも申したのですが、少なくとも野党の第一党が絶対に反対というような、そういう選挙法の改正、社会党ばかりでなしに、野党の諸君がみんなそろって絶対に反対というような選挙法の改正をやる考えはございません。したがって、小選挙区制に選挙区制を改正しようという考えは持っていないことを明らかに申しておきます。また、現在の段階では持っていないことを明らかにいたしておきます。
 また、解散の問題については、解散問題というのは頭の中で考えていないのです。何とかしてこのインフレ、物価問題を解決したいということで、総理大臣の頭はいっぱいである。しかし、いつかは国民の審判を受けなければならぬとは考えておる次第でございます。(拍手)
 私も一生懸命にメモをとったのですけれども、成田さんの御質問は非常に多岐にわたって、質問にお答え漏れがあってまことに申しわけないのですが、三菱石油の重油の流出問題については、私は頭を痛めておる。これは何とかしてああいうふうな不幸な事件が起こらないように、やはりその企業の方々にも十分に注意をしてもらいたいということを厳重に申しておるのですが、しかし、とにかくこういう事件が起こったのでありますから、この事件の全責任は、やはりそういう被害を出した三菱石油が負わなければならぬわけでございまして、この三菱石油が、いわゆる原因者負担の原則を曲げるようなことは絶対にいたしません。全責任を負わなければならぬ。
 また、ほかの公害企業についても、公害被害に対する患者の救済であるとか、公害被害について当然に責任を持たなければならぬような問題を、政府が肩がわりするような考え方は全然持っていない。ただ、いろいろなプラント類などに対して、政府の金融機関がこれに協力するようなことがあっても、それは公害企業が、いわゆる加害者負担の原則に反するようなことは絶対にいたさせないということを申し添えておく次第でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#16
○議長(前尾繁三郎君) 松野頼三君。
    〔松野頼三君登壇〕
#17
○松野頼三君 私は、ここに自由民主党を代表して、わが国が直面する重要事項について、いささかの意見を交えつつ、三木総理大臣に対して若干の質問を行おうとするものであります。(拍手)
 第一にお伺いいたしますのは、三木内閣の誕生の意義であります。第二は政治姿勢であります。第三は外交であります。第四は財政であります。第五は発想の転換、以上、五つにしぼりまして、順次お尋ねをいたします。
 三木総理はみずから議会の子、民主政治の鬼と称し、これを生活の誇りとされています。学窓から直ちに政界入りして三十八年間、議員として終始一貫歩まれました道は、まさしく議会の申し子とも言えましょう。三木総理の歩みはわが議会制度の歩みであり、三木総理の苦悩は議会制度の苦しみでもありました。特に、この歩みは、与野党議員を通じての輝かしい最長不倒記録でもあります。
 三木首相が議会の子と言われれば、英国の名首相チャーチルを思い出します。自分は下院の子であると語っていたことを思い出します。議会制民主主義を守ったチャーチル首相の功績を、ここで改めて言う必要はありません。しかしながら、くしくも同じく誇りを掲げた二人のすぐれた政治家に多くの符合するところを見出すことは、大変興味深いものでございます。チャーチルは必ずしも優等生的な議員ではありませんでした。しかし、その行動は自信と信念に忠実だったのであります。
 第二次大戦の半ば、ドイツ軍の猛攻でスエズは陥落寸前となり、責任を問われたチャーチル卿は、不信任案をたたきつけられ、その政治生命も終わりかと思われました。この危機を救ったのは、「われわれはチャーチルを選ぶ」という院外の国民の声だったのであります。国民は忘れなかったのであります。チャーチルがその政治生活において、労働党よりもっと進歩的であったことを。最初に失業保険法を提案した人物、養老年金の創設、土地の不労所得に対する課税を断行した人物であることを。国民が選んだほんとうの首相と言われるゆえんであります。
 翻って、三木首相も波乱に満ちた人生を歩かれました。
 戦雲立ち込める昭和十二年、政治を志した第一の理由が、軍閥の圧力に押された政党政治の危機を救おうとすることにあったと聞きます。日米開戦前は、身の危険も顧みず、軍部の独走を非難、全国に日米開戦を憂えると遊説して回りました。ために、戦時中は非推薦議員として徹底的に弾圧を受けるなど、辛酸をなめられましたが、決して反軍国主義の信念は変えませんでした。戦後は、社会保障、社会福祉を政治の第一目標にしました。きわめて適切な、先見性に満ちた考え方だと言えましょう。
 三木氏をして首相にならしめた最大の原因は、さわやかな出処進退、清潔な政治姿勢、信念に忠実である点であります。もとより、従来の政治力学ではありません。権力闘争の所産でもありません。ましてや、富が徳を制したわけでもありません。国民に根強い政党政治の危機意識が、そして時代が、三木氏を首相の適格者として選んだのであります。三木氏こそ、国民が、時代が生んだ首相と言えましょう。
 こうした観点に立ったとき、三木総理を生み出した国民の前に、いまこそはっきりと今後の政局に臨む決意と約束を明示すべきであります。もし公約が実現できなければ、地位に恋々とすることなく、いつでも責任をとる覚悟率あることを披瀝すべきであると考えます。(拍手)
 そこで、第一にお伺いいたしたいのは、総理の政治姿勢についてであります。
 田中前内閣が、決断と実行をモットーとした力と行動力の内閣でした。たとえてみれば、かたいカシの木のような政治姿勢を堅持いたしました。これに対して三木内閣は、対話と協調を基調とした、いわば柳の木のような柔軟さを示したことに大きな特徴があります。この柔軟さに対し、野党もこれに応じて、予算編成前に野党の要望書を提出するなど、従来の国会には見られなかった話し合いの芽が生まれたことは、貴重な収穫だと信じます。
 もともと、議会、パーラメントとは、語源的には話し合うサロンという意味であります。議会は話し合いの場であり、徹底して話し合うということなしに、議会制民主主義は守れません。一方的に意見を規制することは避けなければなりませんが、話し合い、審議を尽くした後は、多数の道理に少数意見が従うというルールは守らなければなりません。対話の政治が究極的に要求するところは、この点であります。
 次に、三木首相に期待するものは清潔な政治の確立であります。
 さきに、総理はみずから私有財産の公開をされました。日本の政界に画期的な先例を開きました。言うはやすく行うはかたい行為と言うべきでありましょう。問題は、財産の大小を言うのではなく、恐らく総理在任中は、いやしくもその地位を利用して、たとえ一銭の金も一坪の土地もみだりにふやすことはないと、国民の前に誓ったことでありましょう。その勇気と清潔な行為は称賛に値するものであります。
 次に、政治不信の最大の原因となっておる政党の政治資金及び選挙制度の問題についてお尋ねいたします。
 第一は、政治資金の収入及び支出はなお不透明であるという非難があることは、率直に認めなければならないと思いますが、企業献金即悪と断定するのは早急に過ぎます。選挙制度審議会においてもこれを認めております。あくまで常識と節度を守り、ことに支出に関しては、公開の原則を貫けば、従来の悪弊は除去されることは間違いありません。もとより、これは労働組合の政治献金についても同様、厳しい条件を課するということは言うまでもありません。
 さらに、いまや政治資金と表裏一体をなす選挙制度改正の時期が到来したと思います。これまでしばしば横行した行き過ぎた宣伝、不必要な売名行為、そして、余りにもはでな選挙運動こそは、政治不信をより一層高め、ついには政治自身を滅亡に追いやる行為と言えましょう。いまこそ、こうした政治の自殺行為を戒め、選挙法の改正を重点的に行うべきときであると思います。
 他方、選挙公営制度をますます拡充し、金がなければ立候補できないという悪弊を打破すべきであります。
 さしあたって、衆参両院の定数是正と参議院の全国区制度改正は早急に実施する必要があります。特に全国区制については、七千五百万人に及ぶ膨大な有権者に一人の候補者が立ち向かうというようなこの制度は、制度そのものに無理があることは明らかであります。(拍手)このような制度は、世界に類例を見ないものであります。これらの問題を改善するため、関係法案を一括この国会に提出されることを望みます。
 次に、外交問題について二、三お尋ねいたします。
 日本外交の元老吉田元首相の言葉に、「外交の基本は、主権尊重、内政不干渉、互恵平等の原則に立った相互信頼、相互依存、相互理解にあり」という言葉があります。外交といえば、久しく、自主外交路線が日本では金科玉条とされたときもありました。しかし、自主には、自己中心でごり押しを続けるならば、やがては孤立してしまうという危険性があると、外交の独断専行を戒めた言葉だと受け取るべきでありましょう。
 この立場から、日米外交は、いたずらに自主的という言葉にとらわれることなく、より一層の相互信頼、相互依存のもとに緊密度を加えるべきだと思います。
 日米の友好関係の堅持は、日本外交の基礎であります。すでに沖繩は復帰を実現し、本年は海洋博の年にもなりました。昨年は、日米修好百年余にして初めて現職大統領を迎えるなど、日米の友好関係が増進を続けている現状は、まことに好ましいことだと言わざるを得ません。
 他方、日ソ両国関係は、鳩山内閣当時平和宣言を採択して以来十八年、相互の信頼関係は大きな前進を見ましたが、しかし、いまだに平和条約の締結を見ていないことは、はなはだ遺憾であります。その最大の障害は、歯舞、色丹、国後、択捉などの四つの固有の領土の返還問題が最終決定を見ていない点にあります。この固有の領土は、わが国の歴史的観点から見ても、早期返還を希望します。さきの宮澤外務大臣訪ソでの交渉不成功にめげることなく、今後も粘り強くその正当性を、ソ連はもとより国際世論に訴えていくべきであると思います。
 かつて佐藤首相は、沖繩が本土に返らないうちは戦後は終わらないと言われました。四つの島が返ってこないうちは、日本に真の独立はありません。いまこそ国民の一人一人がとの事実に目覚め、引き揚げ者二万数千人の人々の悲しみをわが悲しみとして、早期返還の実現に努力しようではありませんか。(拍手)
 日中間の相互理解が一段と進展を見せていることは、アジアの平和に、ひいては世界秩序維持に喜ばしいことであります。
 つい先ごろ、第四回全国人民代表者会議で、文革後の毛体制の安定化が証明されました。ほぼ同時に行われた保利議員団の訪中で、四十七年九月に締結された日中共同声明の諸原則に、いささかの変更もないことが確認されました。人事、文化、経済の交流は活発化を続けており、機は明らかに熟しております。この機会を逸せず、なるべく速やかに日中平和友好条約締結を促進し、日中永遠の平和の基礎固めをされるよう、切に希望するものであります。
 他方、これに関連して、日台の不幸な現状も、このまま放置することは、両者にとって大きな禍根を残すことになりましょう。たてまえはともかく、日台間の国民同士の心のきずなは安易に断ち切れるものではなく、特に日台間の航空路の途絶は、両者間の利益を損なうことは明らかであります。政経分離の原則に立ち、民間協定で路線を再開する機運も熟しつつあるとも聞きますが、政府も可能な限りこうした方向で進まれるよう、要望する次第であります。(拍手)
 なお、中近東外交については、一昨年来のアラブ石油戦略によって、多大な影響をこうむったのはわが国自身である、という教訓をもう一度かみしめたいと存じます。幸い、今回外務省の当該地域に対する出先機関の拡充もあり、今後はそれぞれの相手国の国情、政治情勢に沿った柔軟な姿勢をとりながら、その場限りでなく、恒久的な友好親善関係の保持に努められるよう、格段の努力を要請いたします。
 さらに、資源小国であるわが国は、石油以外にも多くの鉱産物資源を海外諸国に頼らざるを得ません。したがって、多くの地下資源供給国に対しても、アラブ諸国と同様、外交機構を拡充し、積極的に経済協力外交を展開することが必要であります。
 次に、五十年度予算についてお尋ねいたします。
 一言にして言えば、雨降って地固まる、物価とインフレのあらしの後の地固め予算と見受けます。その特徴の第一は、健全財政を基調としたインフレと物価の克服であります。第二は、経済的弱者に対しての社会福祉であります。第三は、文教の充実と教育の改善、普及であります。
 戦後、長い間高度成長に安住してきたわが国が、一挙にマイナス成長に急転落しなければならない厳しい条件のもとにこの予算は編成されました。規模も前年度比二四・五%に抑え、その中身はほとんどが自然増の当然経費で、その中で公共事業は極力抑制して、四十六年度ベースにまで圧縮してあります。特に物価抑制のため、公共料金をストップしたことは大英断であります。卵か鶏かの循環論を断ち切って、物価安定の卵をまず育てようと、物価、インフレ克服から着手したことであります。三月末一五%、五十年度中九・九%に安定させるとの施策は高く評価いたします。公債依存度も九・四%となっております。すなわち、健全財政を堅持したと言えます。
 元来、公債はややもすれば、安易な予算の膨張に陥り、財政からインフレの助長を促すものであります。公債発行については、節度と基準を示す必要があると思います。四十一年度当時の不況対策の一環として、戦後、公債が初めて発行されました。金額七千三百億、公債依存度一七%という大胆な政策に転換したとき、政府は、公債発行の限度を決める次の三つの基準を示しました。
 一、財政規模との見合い、二、市中消化能力、三、社会資本整備のための建設公債であること。今日までは幸い、財政インフレの要因とはなっていませんが、しかし、今後、低成長の経済のもとで予算編成を行うに至れば、公債論は一つの中心問題になると予想されます。この際、公債政策につき、考えを表明されるべきだと思います。
 二番目は社会福祉であります。老齢福祉年金の上積み及び在宅重症障害者福祉手当の大政策のほか、恵まれない待遇と過重労働に悩む福祉施設職員の給与の特別引き上げ等々で三六%の増額を見ました。これに福祉減税を加うれば、名実ともに福祉予算であります。
 三は、教員の人材確保法に基づく第二次及び第三次の一部を計上し、好待遇、良教育の努力が見られます。特に私学には前例のないほどの配慮が払われており、私立の高校まで国の助成を拡大したことは、教育改善に必ずや実りあるものと思います。
 五十年度予算に関して、この際特に申し述べたいことは、中央、地方を通ずる財政硬直化問題であります。
 これはいまにして打破しなければ、今後の国政の発展も困難になるであろうということであります。しかも膨大な数に上る官僚は、複雑巨大な組織の中にあって、セクショナリズムにこり固まり、変化の多い内外情勢に対応する力を失っている事実は、多くの識者が指摘するところであります。さらに、年々の大幅のベースアップに伴う人件費が毎年増大し、他の政策の先取りになり、政策実行の公約を空文化するおそれがあります。ことに、地方公共団体における人件費は年々高騰を続け、東京、横浜、川崎、大阪等のごときは、国家公務員より高きこと二〇%に及ぶ実情であります。驚くなかれ、実は革新という政策を掲げた革新首長の自治体ばかりであります。(拍手)このような状態を放置すれば、悪化した行財政の病状は回復不可能に陥ると思います。したがって、摩擦や抵抗は多いと思いますが、この際、三木総理の英断を特にお願いする次第でございます。
 次に、一言税制に触れたいと思います。
 五十年度は厳しい財政のうち、国、地方、合計八千三百億の中型減税を行い、負担の軽減と公正確保に尽くしたと思います。妻の座を高くするため、夫の遺産のうち、法定相続分である三分の一または四千万円までの相続税の非課税、農地の細分化防止のため、農業経営を継続する限り納税猶予すること、また福祉減税、文化振興のための入場税の大幅軽減とを行う一面、不公正の強い土地譲渡課税、利子、配当分離課税を改める等、税の公正確保に配慮したことは、大きな特色と認めます。
 次は、独禁法改正についてであります。
 その精神は、ダンプカーが往来する道に歩行者優先の青信号と赤信号を掲げるものだと思います。現行の独禁制度が、現下の内外の情勢から見て相当改正を要することは、世論の一致するところであります。政府がこの国会に自由経済体制の正常、健全な発展と国民生活の安定、向上を保障する適切な改正を実施することを切に望みます。
 独禁法は、長期的視野に立った自由主義経済のモラルを確立するものでなければなりません。その第一は、企業のやみカルテルや不公正取引等の問題であり、第二は、公正取引委員会の権限と機構の問題であります。公正取引委員会に現状のまま多くの権限を集中することばかりでは、その公正な運営はできません。ある意味では消費者行政庁の新構想も必要かと思います。
 次に、発想の転換についてであります。これは、いままで善であっても、時がたてば色があせる場合があります。悪であるものも、善用できるものも生まれてまいります。惰性の政治を一変して、新しい考えから、平面より立体に、ただ行列に従って歩くより、みずから新しい道を歩く道はなきかということであります。
 その第一は、予算編成の方法です。何割増しの概算要求を毎年繰り返すより、政策中心に概算要求を切りかえることです。毎年前例にのみ従う予算編成を根本的に切りかえることです。同時に、行政機構のなわ張りも権限も再検討することです。
 第二番目には、国鉄や公務員の定期的ストです。それに対抗する処分、ストと処分の悪循環、国民はたまりません。労使は両足のごときもので、争うものではないと思います。両足そろって初めて役に立つものです。くつの痛みは、はいた者同士でなければわからないというのが労使の関係です。両者の理解への新しい道、方法が求められないものでしょうか。
 三は、今後ますます充実すべき福祉年金制度や各種公的年金制度との仕組みを、根本的に再検討するべき時期ではないでしょうか。
 最後に、政治は過去にとらわれ、現状に固執したときは進歩をとめます。未来へいどみ、あらゆる可能性を追求する姿勢こそ、政治に新しいエネルギーを注ぐ最良の道であります。フレッシュな政治に敗北はありません。国民一人一人が、みずからのことはみずからの努力で処理する決意を持ったとき、直面する危機と困難に立ち向かう勇気がわき上がるものと確信いたします。
 以上、国民の声を代表しながら、幾多の問題点を指摘いたしました。三木内閣が、渾身の勇をふるって諸懸案解決に当たらんことを切望しつつ、私の代表質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣三木武夫君登壇〕
#18
○内閣総理大臣(三木武夫君) 松野さんの御質問にお答えをいたします。
 非常に温情のある激励の言葉をいただきまして、大変に感銘をいたした次第でございます。私も、至らぬ者でございますが、全力を傾けてこの難局に当たる覚悟でございます。皆さんの御協力を切にお願いいたします。(拍手)
 最初に、政治に対する基本姿勢というお話でありましたが、私は、やはり政治というものは、今日、国民の信頼に連なっていないと政治にはならない。国民の信頼を得るためには、いろいろ国民が顔をしかめて、こういうことはいけないぞと言っておることは、これは勇気を持って改革をする必要もありますが、やはり根本は、政治家が国家、国民のために汗みどろになって一生懸命にやってくれている、こういう姿というものが、政治の信頼というものが生まれてくる根本じゃないでしょうか。皆国民は政治家というものを冷厳に見ておりますから、その国民が見て、本当に国のために一生懸命にやっておる、献身しておるという姿が国民の目に映るような政治、そうでなければ、いろいろ口で言ってもだめだ、そういうことで私は考えておるわけでございます。(拍手)
 それから、政治資金の問題に対する考え方ですが、これはやはり、金にまつわる不信というものは政治不信の中の大きな問題ですから、この問題については、ぜひともこの国会において政治資金の改正案を提出したい。自民党の方においても、これは十分にいま検討を加えておるわけでございます。
 いま、理想的には、政党の政治資金というものは、党費あるいは個人献金という方が理想的だと私は思いますが、すぐそこへ行くことは、まだ日本の実情というものには沿わない。企業献金というものはすぐ悪だとは私は思わない。これはやはり節度を失ったり、明朗を欠いたりすることがいけないのであって、企業が民主政治の健全な発達のために応分の政治に対する応援をするということが、悪いと私は思わない。ただしかし、それが度が過ぎてくると、政治に対する不信というものが生まれますね。そういう点で、節度が要るし、またそれが明朗なものでなければならぬ。そういうことで、政治資金規正法も改正の必要がある。すぐに、理想的に一足飛びにいかないでも、そういう理想に向かって一歩ずつ近づけていくという政治資金規正法の改正が必要であると思うのでございます。
 次に、参議院の全国区と定数是正の問題がございました。
 この問題は、各党間で検討が進められておると聞いておりますが、こういう問題は、これは各党がお考えになっても、定数の問題にしても、参議院の全国区の問題にしても、いろんな弊害というか、不公正が生まれておることは事実ですから、この問題は党利党略を離れて、各党間で話し合いがまとまって、今国会に改正案として法案が提出されることを、私は願っておるものでございます。
 また、外交問題について、日米外交というものについて第一番にお触れになりました。
 日本は、経済の面からいっても、あるいは思想、信念の上からいっても、あるいはまた、防衛、日本の安全保障の問題からいっても、これはもう日米外交というものは日本外交の基本であることは間違いないので、日米間の友好関係というものを犠牲にして得るものは何もありません。これにかわるものはない。日米の外交、友好関係というものは、これを維持していくことが、日本の国益に合致するゆえんである。日米外交というものはしっかりしていなければいかぬ。
 また、日ソ、日中の問題にお触れになりましたが、日ソ関係には領土問題がありますから、平和条約の締結というものは、これは忍耐強くやらなければいかぬ。これはやはり相手のあることでもあるし、したがって、忍耐強く日本は領土問題を解決する、こういう前提の上に立って、平和条約締結というものに対して、やはりその一番阻害されておる前提条件をなくすることに努力をすることが必要でございます。
 日中の平和友好条約、成田さんに平和条約と申しましたが、平和友好条約、これは外務当局から聞きますと、やはり順調な話し合いが進められておるようでございますから、外交の話し合いが妥結すれば、これは何も間を置く必要はないのでありますから、一番早い国会に批准を求める考えでございます。そして、日中間永遠の和平の基礎を築きたい。アジアにおいても日中間の仲が悪かったことが、アジアというものの平和を乱した一番大きな原因ですから、日中が永遠の友好関係を築くということは、アジア、太平洋の安定の基礎である。日中関係は、これは非常にわれわれとして重視せなければならぬと思うのでございます。
 日台の航空路線の問題にもお触れになりましたが、日台間の航空路線は、いわゆる一昨々年の共同声明の諸原則のもとで、実務協定としてこの問題が解決をされることを希望いたす次第でございます。
 それから、中近東の外交にお触れになりましたが、これは中近東の外交に限らず、発展途上国の外交というものは、日本の外交の中においても、もう少し、先進国ばかりでなしに、そういう発展途上国の外交というものは強化せなければいかぬ。これは国連などの姿を見ておりましても、海洋会議、食糧会議、人口会議、石油会議、みんなやはり根底にあるものは南北問題である。国連は、東西問題から南北問題に問題の焦点が移りつつある。このときに、発展途上国の外交というものは軽視してはいけない、こういうことで、今後中近東の外交に限らず、発展途上国との外交関係は強化をしてまいる所存でございます。
 また、行財政の硬直化打開に非常に勇気を持てと言ったのですが、それはいままでも問題にならぬわけではないのですけれども、問題になりながら、なかなか手をつけられなかった問題ですね。これは大変に困難な問題であって、成田さんにお答えすると、野党の諸君から大きい反発の声が出ましたが、これはすぐに結論を出せるような問題でありません。そんなにこれを、きょうすぐ結論を出すように簡単に取り扱うことは、かえって危険である。この問題は、皆がじっくり腰を落ちつけて取り組まなければならぬ問題であって、まず今年は方向を出して、その出た方向というものが、五十一年度の予算編成に反映されるというところまで持っていくことが必要である、私はこう考えておるわけでございます。
 独禁法の改正については、これは私が約束をしておることでもあるし、自由経済の体制を守ろうとするならば、現状のままで守ろうというようなことは無理です。やはり世間の人が見ても、これで公正な競争が行われるというような、それだけのルールを持たないで、自由経済がいいんだというような論が、今日通用するわけではない。やはり厳しいルールのもとに耐え抜いていく自由経済でなくてはいけぬ、こう考えるわけでございますから、これはいろいろ御意見もありましょうけれども、自由経済の体制が、将来にわたって健全に発展していくために、この際、相当厳しいルールをつくりたいと思いますから、国会においても御協力を願いたいのでございます。
 それから、これに関連して、地方行政の問題を取り上げられましたが、この問題は、松野さんと同様に、私も心配をするわけでございます。
 どうも地方行政というものが、だんだんと、福祉の政策とか環境政策というものが、地方自治体の責任が大きくなってまいりましたから、仕事もふえたことは事実ですけれども、それでも、そのために地方自治体の機構が余りにも膨大になって、そうして膨張し過ぎるということは、これはもう地方財政の硬直化ということは、ある意味において中央よりも大きいかもしれません。こういうことで、この際に、中央と地方との関係も含めて、地方自治体の行財政というのは見直す必要がある。これには、あくまでも地方自治の精神を踏みにじってはいけない。地方自治という、地方の自主性を尊重しながらも、しかも責任を持ってもらえるような地方自治体というものに対して、これは今後お互いに、そのあり方を検討しなければならぬと考えておるわけでございます。
 それから、国鉄や公務員のストというものに対して、私も心配をいたしております。
 国鉄その他三公社五現業は、地位の特殊性と職務の公共性からして、争議行為は禁止されておるわけである。しかし、現に、やはり現実に行われておる。だから、これに対しては、法律の手続に従って手続をとらなければならぬことは、法治国として申すまでもないが、ここまで至らないで、平和的にこれを解決できるような方法を、お互いに考えることが必要であると考えておるものでございます。
 それから、福祉年金のことにもお触れになったと思いますが、これはもういろいろ野党の諸君から、福祉年金を二万円にせよ、三万円にせよというお話がございますが、二万円にしても一兆二千億円、三万円にすれば一兆八千億円という、これはみんなやはり財政資金によるほかないのですから、これは一万円より二万円がいい、二万円より三万円がいいということはわれわれとしても同じ考えですが、それには、一体その財源をどこから持ってくるかという問題がございますので、これは年金制度全般について見直しをして、いわゆる賦課方式というようなことも頭に入れながら、年金制度というものを厚生大臣のもとで見直しをいたすことにして、できる限り老人の人たちが、老後の生活が余り不安のないような年金制度にしたいものだと考えておる次第でございます。
 お答えをいたします。(拍手)
    〔国務大臣大平正芳君登壇〕
#19
○国務大臣(大平正芳君) 公債政策についてのお尋ねでございました。
 松野さんが御指摘のように、公債政策につきましては、いずれの場合も節度ある運営が大事であること、私も御同感でございます。もともと財政政策といたしまして、公債を出すのがよいのか悪いのかということが問題ではなくて、経済の情勢ないし動向に応じまして、財政が十分対応できる状況にある力を持っていなければならないわけでございます。したがって、公債はいつでも出せるだけの弾力性をわれわれがいつも手にしておる必要があると思うわけでございます。いま、わが国は十兆億ばかりの公債残高を持っておりますが、その利払いだけで約七千億円あるわけでございまして、これは諸外国に比べまして必ずしも多い方ではございません。しかし、これをむやみに多くしておきますと、いざという段階におきまして、十分財政の弾力性が発揮できないうらみがあるわけでございますので、私どもといたしましては、常に公債の発行については、お説のように節度を持って当たりたいと考えております。
 それから、公債を戦後発行される際に、市中消化の原則をうたわれたことはごもっともであったと思いますし、いま現に市中消化の原則を貫いておるわけでございます。しかしながら、しばらく市中で消化していただいたと思っておりますと、一年もたちますと、その公債はやがて日銀に大部分が還流してくるというような状態でございますので、いまわが国におきましては、公債を出すことについては、十分注意しておかないといけないと考えておるわけでございます。
 いずれにいたしましても、仰せのような趣旨に従いまして、節度のある運営をやってまいりたいと考えます。
 第二は、財政硬直化の問題でございました。
 総理からお答えがあったと思いますが、私どもといたしましても、財政ができるだけ少ない国民の負担で、十分な弾力性を持ちまして資源の配分をいたして、国民の期待にこたえる力をいつも持っていなければならない。しかるに、今日、日本の財政が年々歳々弾力性を損ないつつあることは憂慮にたえないわけでございます。これは、人がふえ、人件費がふえ、あるいは制度、慣行が定着してまいりまして、なかなかこの切りかえがむずかしい状況になっておるわけでございます。
 これは、総理が仰せられましたように容易ならぬ決心が要るわけでございまして、私ども鋭意この問題と取り組みまして、御期待に沿うように、次の予算編成までには方向を出さなければならないものと、いま心組んでおるところでございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#20
○議長(前尾繁三郎君) 広瀬秀吉君。
    〔議長退席、副議長着席〕
    〔広瀬秀吉君登壇〕
#21
○広瀬秀吉君 私は、日本社会党を代表して、三木総理の施政方針演説を中心にして、総理並びに関係閣僚に対し、質問いたします。
 ことしは、第二次大戦が終わってから三十年目に当たる年ております。まさに一つの時代の終わり、新しい時代の幕明けの節目に当たる年てあります。
 今日まで、わが国経済は、高度経済成長政策のもとで、生産第一主義、大企業優先の利潤と資本蓄積を目指して、なりふり構わぬ財政、税制、通貨金融政策を総動員して推し進められてまいりました。その中で追求されたものは、大企業生産の量的拡大と利潤蓄積、そして国際競争力の強化でありました。まさに、生産あって生活、福祉なく、利潤と資本の蓄積あって公正な分配なしという状況でありました。その結果、消費者物価は世界先進国中最高の狂乱的二十数%の上昇となり、全国土はいまや公害列島と化し、環境破壊は美しい国土を無残に荒廃させ、交通地獄、住宅難は一層進み、社会保障と福祉の貧困を浮き彫りにいたしております。
 そして、経済大国日本のゆがみ、ひずみは、資産と所得の格差、富の配分の不平等、不公正を極限まで広げ、国民にとって耐えがたい状況、人の心のすみずみまでむしばむに至ったのであります。しかも、一方において、インフレ抑圧の名のもとに、かつて見ない長期にわたる総需要抑制策が続けられ、戦後初めてのマイナス一−二%成長という深刻な不況をもたらし、失業の増大、中小企業の倒産、一時帰休、操業短縮がはびこり、勤労者大衆に大きな犠牲を押しつけるに至ったのであります。
 このような異常経済の状況はどうして起こったのか、その根源を正しく認識することなしに、的確な処方せんは書けないはずであります。
 われわれ国民が、総理の施政方針演説並びに大蔵大臣、経済企画庁長官の財政、経済演説に期待したのは、このような異常な経済危機ともいうべきスタグフレーションを引き起こした根源を率直に分析し、反省し、その上で思い切ったニューディールへの転換対策を具体的に出してもらいたかったのであります。
 しかるに、総理、副総理、大蔵三大臣の演説の中では、異口同音に繰り返し述べられたのは、一つには、外的要因としての石油危機、国内的には賃金上昇にインフレの原因を転嫁するというすりかえを行いました。賃金値上げを抑えさえすればインフレは収束し、物価は安定するかのごとき錯覚を国民に向かって振りまいただけに終わってしまったことは、まことに残念です。
 私がここで総理にはっきり聞きたいのは、戦後一貫して政治を担ってきた自民党の財政、経済政策の失敗を認むるべきだということであります。もちろん、アメリカのドルたれ流しによる過剰流動性のはんらん、あるいは石油危機とその値上がりなども一要因ではありましょう。しかし、それだけを強調する三大臣は、日本と同じような立場にある西ドイツがいまだに年率七%程度の物価上昇にとどまっているのに、日本が年率二二%という状態にあることを説明できないではありませんか。物価は、石油危機以前にもすでに一七・二%も上昇に転じていたのであります。その根は深く、日本の資本主義経済の構造と高度成長経済の仕組みそのものにあったと見なければなりません。
 日本の経済が先進資本主義国の二倍以上のスピードで成長した秘密は、技術革新の大胆な採用、海外資源・エネルギーの順調、安価な確保、勤勉、良質の労働力、不足労働力は農基法農政を通じて絶えず農村から吐き出させることができた、その上にあぐらをかいて、成長と完全雇用の代価として物価の上昇はやむを得ないことだ、こういうインフレ政策を基調にした借入金による民間設備投資主導型の経済成長政策を進め、毎年GNPを上回る金融機関貸し出しが行われてまいりました。それを支えてきたのは、管理通貨制度の乱用であります。日銀券の増発、民間金融機関を含めた信用創造の仕組みでした。財政面からは赤字公債を定着させて、公共投資、特に道路投資などで産業基盤を応援をし、大企業のため有効需要をつくり出すという大企業優先の財政政策の後押しがあったのであります。
 その上、税制までが、公平の原則を踏みにじってまで、資本蓄積、産業助長と大企業の成長に手をかし、昭和三十一年から四十九年度までに、国税だけで隠れたる補助金に等しい五兆二千億もの大減税を行ってきたことが、高成長とインフレ促進、社会的不公正の累積に果たした役割りは、はかり知れないものがあります。
 特に昭和四十四年に制定された土地譲渡の優遇税制は、土地成金を生み出し、法人の投機的土地買い占めを促進する起爆剤となり、物価値上がりの元凶とも言うべき地価上昇に決定的役割りを果たしました。昭和四十六、四十七年のいわゆる過剰流動性時代の大商社、大企業の土地買い占めに発展をし、地価暴騰は年率三〇%を超え、和光証券調査によれば、東証一部上場会社だけでも、いまやその含み資産は六十八兆と言われております。これこそ、まさに物価値上げの元凶ではありませんか。
 この税制をつくったのは、当時の福田大蔵大臣でありました。今日、危機的経済情勢の中で発足した三木内閣の副総理として、経済閣僚会議の座長として、みずからまいた種を刈る立場に立ったことも、まさに因縁とも申すべきか。福田経企庁長官のこの点の所見を承りたいのであります。
 以上のごとく、今日の狂乱物価、悪性インフレの中で容赦なく進行する社会的不公正の是正を図り、インフレを克服し、同時に、深刻な不況を打開する道は、自民党の失政を率直に認め、反省して、そこから新規まき直し的政策転換、二十世紀最後の四半世紀の出発的における正しい選択をする以外にないと思いますが、総理以下各大臣の演説には、その点の認識と深い反省がなかったことはまことに残念であります。(拍手)
 以下、その観点から、三木総理及び関係大臣に対して、わが党の建設的提言を行いながら、社会的不公正是正を中心にお尋ねしてまいりたいと存じます。これを実行するかどうかが、インフレと不況の同時解決につながるからであります。
 三木総理、いま国民は、政治に対して不信と不満と不安の渦の中にあります。未来への希望や夢を失いつつあります。しかるに、あなたの施政方針演説は、高邁な政治哲学と精神訓話はあったけれども、具体的に国民を納得させる政策の提示が見られませんでした。三木総理も、やっぱり独占資本との癒着を断ち切れない自民党の政治家でしかなかったことを、残念ながら証明された結果になったのではないでしょうか。(拍手)
 私が総理に問わんとする問題は、国民の期待と要求についてであります。自他ともに許す議会主義政治家たる総理の、誠意ある、かつ率直な答弁を求めます。
 まず最初に伺いたいのは、総理の言う社会的不公正とは、具体的に何を指しておられるのか。少なくとも、国民の求めている不公正是正への回答が、五十年度予算を見る限り、そして施政方針演説を聞く限りにおいてはとらえがたいのであります。特に、総理の言う不公平是正の内容が、インフレ弱者に対するわずかばかりの上積みによる救済策だけであって、インフレによる利得をたんまり享受したインフレ強者に、適切、公平な負担と犠牲を求める姿勢に全く欠けた片手落ちのものである、このことを強く指摘しなければなりません。(拍手)
 そこで、第一に伺いたいのは、不公平税制に対する総理の対応についてであります。
 狂乱インフレが資産と所得の格差不公平を拡大しているとき、土地譲渡による高額所得者優遇をなぜ廃止しなかったのでありますか。この税制の結果、昭和四十三年度において六十一名にすぎなかった億万長者が、四十八年度には六千三百八十八名と、百四倍にふえました。高額所得者上位百名のうち、九十七名は土地成金で占められるという不公正を生み出した悪税制を、どうして五十一年度以降も、一部の手直しで五年間も温存をさしたのでしょうか。不公正の拡大そのものではありませんか。(拍手)昨年の最高所得者は五十一億円でありました。勤労者の平均賃金の四千倍に当たります。この者に対して、なぜ二十五億円余の減税をする必要があるのでしょう。その理由を明らかにしていただきます。
 配当所得者は、利子、配当優遇税制によって、昭和五十年度で標準世帯で四百四万九千円まで無税になります。勤労所得者の課税最低限は、五十年度百八十三万円です。これが公平税制でしょうか。私は、少額貯蓄非課税制度だけ残して、利子、配当優遇はすべて廃止すべきことを提案をいたします。
 社会保険診療報酬制度も、不公平税制の象徴的な存在として、すでにその改善を求める政府税調答申が十回も行われております。五十年度に向けては、その答申で具体的改善案まで示されたのであります。今回、これが実現を見送ったことは、三木総理の社会的公正を実現するという基本姿勢が本物でなかったのではないかと、今日、国民は疑っております。(拍手)総理、大蔵大臣のこれが解決の具体策をお示しいただきたいのです。
 不公平な富と所得の分配は、税制の基本理念である所得再配分機能によって是正することが、最も有効であります。
 その第一着手として、四十九年度の所得減税の中で、給与所得の定率控除一〇%を、六百万円を超える高額所得者に青天井に広げたいわゆる社長、重役減税を改めて、百九十万程度の頭打ち限度額を設けて、インフレ利得者、インフレ強者である高額所得者に当然の負担を求むべきではないでしょうか。給与所得者の非課税限度額は、思い切ってこの際、二百八十万円程度に引き上げることこそが、社会的弱者対策の公平税制であろうと思うが、いかがですか。
 さらに、大法人保有の土地の再評価益に対する課税、一億円以上の資産保有者に対する富裕税の新設を提案いたします。
 法人の受取配当を益金に算入しないという今日の制度は廃止すべきであります。この制度あるがゆえに、法人が株の持ち合い比率をどんどん高めて、いまや法人持ち株比率は七割を超えるような状況になっておりまして、法人は不当利益をたっぷり享受していると言わなければなりません。接待や飲み食いに費やされ、そして道義的腐敗や浪費の根源となる一兆六千億に及ぶ交際費支出に対して課税を強化すべきであります。
 政治献金に利用され、金権政治の根源をなす寄付金の損金算人限度額も大幅に圧縮し、社会福祉施設、教育文教施設などへの寄付だけを損金扱いとすることとし、国民の政治不信を解消する意味を含めて税制改革を行うこと、大法人の内部留保を優遇する準備金、引当金、特別償却制度などは、すでにもう政策目標を達成してしまっております。やめるべきです。
 これらの措置を行うことによって、弱者救済、福祉政策実現の財源が十分得られるだけではありません。(拍手)インフレの根を断ち、国民消費の充実による消費需要を喚起し、不況を克服することにもなります。生活、福祉優先の政治が、これによって実現するものと確信をいたします。
 第二にお尋ねしたいことは、少額預貯金保有者に対するいわゆる目減り対策についてであります。
 総理並びに大蔵大臣は、激しいインフレの中で、今日の政治に信頼ができないで、病気や不時の災害、子供の教育、結婚、老後の生活などに備えるため、土地や住宅を求めたいという切なる願いを持って、物価高騰の中でみすみす目減りすることを知りつつも、他に有利な資産運用の方法、いわゆるインフレヘッジの手段を持たないで、生活を切り詰めてまで、せっせと預金をしている少額貯蓄者の泣くに泣けない深刻な立場をどう思いますか。この人たちに四十九年だけで八兆四千億円の損害を与えて、なおほおかぶりするつもりでありますか。一方において、その預貯金の借り手である大企業、大会社は、物価騰貴分だけ借金が減るという形で、国民生活白書によれば、四十九年だけで六兆四千億円もインフレ利得が転がり込んでくるという、笑いがとまらないこの不公正をいつまで放置するつもりでありますか。(拍手)
 もちろんインフレ克服が第一義ですけれども、これが救済対策として、一口百万円程度までの小口預金に対して、乱用を厳しく抑えるという条件をつけながら、少なくとも一〇%以上の特別金利を付するというこの措置を早期に断行すべきことを要求いたします。(拍手)わが国の銀行は、好不況にかかわらず、すでに十九期連続増益決算を示しているのです。この程度の金利負担に耐えられないはずはないのです。要は、やる気があるかないかなのです。総理、大蔵大臣の誠意ある答弁を求めます。
 次に、社会保障、福祉問題について伺いたいと思います。重点的に伺います。
 第一は、わが国の社会保障は、高度成長型経済財政政策のしわ寄せを受けて、まことに貧困であります。
 そこで、総理に伺いたいことは、人間生活、福祉優先への財政経済政策転換のあかしとして、日本の社会保障費の国民所得に対する比率六%を、西欧先進国に近い一五%に引き上げること、これを五年目途の中期計画を策定して実現を期すべきであると思いますが、その決意と用意がありますか。
 第二に、公的年金についてでありますが、年金、特に老齢年金は、福祉年金を含めて、老後の生活を営むに足る所得保障である、年金のこの理念を確立すべきときであると思うが、いかがですか。今日までこの点がわが国ではまことにあいまいにされてきたのであります。このことによって、初めて年金スライド制の完全実施も根拠を得るのです。老後の生活に深刻な不安を感じている圧倒的多数の国民に向かって、この際明確にしてください。
 この観点に立てば、持続的インフレのもと、年々価値の下落することを避け得ない現行積み立て方式は、賦課方式に転換せざるを得ないのであります。その決意と勇断を求めます。
 第三に、まとめて老人福祉対策について伺います。
 その一つは、老人福祉年金を年度当初から二万円に引き上げ、年度内には三万円年金が実現する、こういう措置をとることこそ、老人福祉の出発点だと思います。
 総理、福祉年金の対象者は、明治、大正、昭和の三代にわたる苦難な時代を生き抜いてきた人たちです。この人たちに安らぎとゆとりのある余生を保障できないで、どうして社会的に不公平な立場にある気の毒な人たちに特に配慮したなどと言えるでしょう。
 老人問題の第二は、健康の問題でありますが、特に寝たきり老人は三十二万人と言われておりますが、政府にとって大事なことは、寝たきり老人にならないための予防とリハビリテーションの施設の増強です。そのため、先進国の例にならって、老人専門病院、病棟の強化に重点を置くべきだと考えますが、いかがですか。
 第三の老人問題は、老人に生きがいを与えるという、今日まで余り着目されなかった点であります。老人に対し、ノルマから解放され、所得を目的にしない、人間としての生きがいを保障する福祉型労働の実現を可能にする施設と場を提供することを、ここに新しい提案として強く求めたいと思います。(拍手)
 戦後三十年の今日、戦争犠牲者救済の分野において取り残されている原爆被爆者援護法をぜひとも本国会で成立させ、戦争の後始末をきれいに終わるよう強く要求いたします。
 次に、労働問題についてお尋ねいたします。
 総理以下、福田さんも大平さんも、まさに符節を合するように、物価抑制に成功するかどうかは、春闘の賃金が話し合いの中で抑制的、控え目に、節度ある決定が行われることにかかっている、こう演説しました。これは不当な見解です。この発想は、土地あるいは有価証券など、不労所得者と賃金労働者の間にある不平等と格差に目をつむっております。日本の労働分配率の低さ、売上高に対する労賃、人件費の比率が、全法人で九・二%、これは大蔵省の資料です。十億以上の企業では七%程度にしかならないことをひた隠しに隠しております。賃金上昇が物価の後追いであることをも認めておりません。あたかも、賃金引き上げを物価の元凶のごとく印象づけようとする、カラスをサギと言いくるめるたぐいの詭弁にすぎないのであります。(拍手)
 それだけでなく、労使の話し合いと団体交渉で決定される賃金に対して、不当干渉、権力の巧妙な介入ではありませんか。物価問題の所在をあいまいにごまかす結果にもなります。
 政府がいまやるべきことは、独禁法改正の中身をはっきりさせて、寡占価格の規制、公共料金の全面ストップ、インフレ犠牲者、弱者の救済対策を強力に実行すること、インフレ利得者に対する負担の正しい強制などであることを特に指摘しておきます。
 総理、この狂乱物価の中で賃金月額五万円以下の労働者が四百万人もいることを御存じでしょうか。現行にせ最賃制のもとで、地域別、業種別に協定される最低賃金のうち、全国最高は東京都の日額千七百九十四円、二十五日稼働で月額四万四千八百五十円、青森、秋田のそれは日額わずかに千三百六十円、月額三万四千円でしかないのであります。
 いまこそ、全国全産業一律最賃制を制度化し、五十年から、月額六万円以下の賃金労働者を日本全土からなくするという、こういう政治をあなたの言うニューディールの柱として断行すべきではないでしょうか。(拍手)強くその実行を要求いたします。
 次に、農業政策について、総理及び農林大臣の所信をお伺いいたします。
 いま、世界的に食糧需給が逼迫しています。子の中で、日本の食糧自給率は急速に低下し、国民に大きな不安を与えています。わが国農業は、二十年代後半から、高度成長への移行とともに大企業優先政策の犠牲となり、農地と水と労働力を奪われながら、急速に衰退の一途をたどってまいったのであります。なかんずく、場当たり農政による米の減反政策は、田園を荒廃さしただけではありません。農民の心の中にペンペングサを生やしてしまったのであります。(拍手)その結果が、国内食糧自給率五三%、穀物自給率に至っては四三ないし四一%と、先進諸国の中で最低の自給率でございます。
 総理は、安保条約について、経済協力条項、いわゆる第二条を強調されました。これは食糧の総輸入の中で、アメリカからの輸入が八〇%も占めている今日の日本の農業の事情というものを、経済協力条項、これこそが安保条約の主流なんだという見方をしよう、こういうことでこの問題を考えておられるということをあの演説で表明したのでありますか、この辺ははっきり聞いておかなければならぬと思います。
 国民はいま、石油パニックの際の苦い思いをかみしめながら、次は食糧パニックが来るのではないか、石油は節約もできようが、小麦や大豆や砂糖、肉など、食糧の供給がとまったら一体どうなるかと、不安でならないのであります。総理は、農産物の増産対策を強化するというその一言でこの重要問題を片づけておられます。これでは、言葉あって、農産物増産に真剣に取り組む姿勢をくみ取ることはできません。総理は、ほんとうに日本の農業振興と生産の拡大、国内食糧自給率向上を達成して、長期的展望を持った食糧の安定供給を図ることを本当に考えているかどうか、先ほどの答弁からも非常に不安が残ります。重大な疑問を抱かざるを得ないのであります。
 私はここに、具体的に要求します。八〇%以上の自給度確保をまず中心目標に据えることです。日本経済の中で占める農業の位置づけ、農基法にはそれがなかったのです。今度は、この農業の位置づけをしっかり、はっきりさしてください。混迷と失意の中にある農民にやる気を起こさせるため、主要農畜産物価格について、生産費及び所得補償方式を採用して、価格支持制度を確立することです。土地基盤整備事業の全額国庫負担、各市町村に農業機械化センターを設けて、安い賃貸料で農民に大型農機具を貸与して、機械化貧乏をなくすることです。定温、冷温貯蔵施設を増設し、豊作貧乏をなくすことです。もみによる半年分の食糧備蓄を行うこと、農地の相続税、固定資産税の評価は、収益還元方式によって算定すべきこと、畜産、養鶏農家などに、牧草の確保とともに、濃厚飼料の国家管理を行って、安定的、低廉な飼料を供給すること、このような思い切った施策を断行し、農業後継者が本当に農業生産に夢と希望を持って打ち込めるようにすべきであろうと思うが、決意のほどを伺います。(拍手)
 次に、中小企業の緊急対策と抜本的振興策についてお伺いいたします。
 今日、不況は一層深刻になりました。四十九年の倒産件数は一万一千六百八十一件に達し、戦後最高の記録を打ち立てようとしております。そのうち中小企業の倒産は実に九九・二%です。しかるに、政府演説の中では、大蔵大臣が小企業経営改善資金融資と三公庫の枠拡大に触れただけであります。政府が大企業には甘く、温かく、中小企業には冷たいことを物語っております。不況に最も抵抗力の弱い中小企業に対して、当面政府は、いかなる倒産防止の具体策を緊急に実行されるか、はっきりさせていただきます。
 この際、私は一つ具体的に提案します。
 不況の深刻化とともに、下請企業の受取手形サイトの長期化は、親企業たる大企業の一方的措置により、百八十日だとか二百十日手形、こういうものを生み出すのです。これが小さな下請業者の死命を制することにもなります。下請代金支払遅延等防止法の厳正な適用を監視すること、これは当然であります。そして、その中で言われている検収納品後六十日を超える手形期間については、親企業が必ずその分の金利負担を行う、このことを何らかの法的措置として確立をしていただきたいのです。
 さらに、いますぐにでもできることとして、官公需、官公庁の需要の中小企業向け発注分を、この際国、地方を通じて思い切ってふやして、仕事を中小企業に与えてください。
 中小企業問題は、結局するところ、中小企業に働く労働者の低賃金、低生活水準に帰着するのであります。ちなみに、従業員五人ないし二十九人の中小企業労働者の賃金は、五百人規模以上の大企業労働者の六二・八%にしか達していません。昭和四十年当時で六三・二%だったのですから、格差は逆に広がってしまったということなんです。このような取り残された中小企業労働者、とりわけ未組織労働者の生活、住宅資金などを労働金庫から融資できるようにすること、そしてその労働金庫に対しては財政資金を投入するという、この制度をどうしても開いていただきたいと思います。
 政府は、いまこそ中小企業振興予算の拡大、金融、税制による優遇、中小企業の適正事業分野を大企業が食い荒らすことのないように、中小企業分野を法的に確保するなど、抜本的振興発展施策を進めるべきであると思いますが、いかがでありますか。(拍手)
 最後に、教育問題について一つだけ伺います。
 総理は、施政方針演説の中で、教育を最も重要視する、このことを明らかにされました。そして、最も適任者として永井文相を起用したと述べました。総理の最も信頼の厚い永井文相が、私立大学の今日の経営悪化に対して、経常費の半分を国が三年計画で補助する方針をもって予算要求に臨まれたと聞きますが、私大経常費は今日約五千億、これに対して、今年度認められたものは一千七億円であります。五十二年度までに、総理は本当に経常費の半分の補助を実現する決意をはっきりお持ちですかどうか、この点の所信を伺います。
 事はまことに重要です。今日、国公立大学は学生数三十四万、私立大学は百五十六万です。私立大学が八二%余のシェアで人材養成の重大な責任を果たしておるのです。それに引きかえ、国立大学の予算が約五千億、これに対して私立大学への予算措置は一千億、これでは、総理の言う社会的不公正を改めるという基本方針にも反するではありませんか。教育重視の総理みずから教育の機会均等すら、ほごにしたと酷評されてもしかたがないのであります。いまこそ国立と私立大学の差別は、高等学校を含めて解消さるべきだと思います。そういう新しい理念に立つことを強く要求をいたし、総理の所見を伺いたいと思うのであります。(拍手)
 以上、私は、総理が述べた高度成長時代の制度、慣行の見直しが必要である、すでに資源・エネルギーの有限性、公害問題などの制約、こういうものから、低成長時代にどうしても移行しなければならないとの認識に焦点を合わせながら、そのような条件のもとで、総理が新規巻き直し、ニューディール的政策転換、生産の量的拡大よりは質的充実だ、こう言うならば、当然国民のナショナルミニマムとして確保されなければならないはずの政策課題を具体的に提示して、この実行を迫ってまいりました。
 私が提起し、要求した課題は、個別問題の羅列ではありません。これこそが新しい二十一世紀を展望する二十世紀の最後の四半世紀における国民大衆の選択であり、切望であります。(拍手)これらを実現させることを政治の中心に据えて、これに合わせて、経済の構造も、産業の構造も、富と所得の分配方式も、抜本的に転換すべきことを求めているのであります。
 ことしは階段の踊り場に相当する予算だと言われておりますが、三木総理、三木内閣も踊り場内閣に終わることなく――あるいはそれで終わるのか、それとも、真に新しい、正しい、将来の理想の社会を目指して、選択の階段を上がるのかどうか、これがいま問われております。
 総理の誠意ある答弁を期待いたしまして、私の質問を終わる次第でございます。(拍手)
    〔内閣総理大臣三木武夫君登壇〕
#22
○内閣総理大臣(三木武夫君) 広瀬さんの御質問にお答えをいたします。
 インフレの原因等についてどう考えておるかというお話でございます。
 今日までの高度経済成長が、全部誤りであったという御主張に対しては、成田さんのときにも申し上げたごとく、われわれは賛成をいたさない。けれども、余りにも高度経済成長というこの速度が速過ぎた、そのことが、まあ今日では資源とか環境とか労働力とか、いろいろアンバランスを来したことは事実であります。これに対する反省も当然あってしかるべきだと思います。
 しかし、一方において、石油を初め、資源保有国の資源に対する考え方にも変化があった。それは、資源というものは有限なものであるから、これを、ただもう需要国の必要に応じて安く提供するというのでなくして、細く長く、しかも、これを相当高い水準、高い価格で売ろうということに変わってきたために、石油のごときは一挙に四倍になるというような――石油に限らず、ほかの資源にしても、農作物にいたしましても、世界的な急激な物価騰貴があったということも、これは日本の場合に海外依存度の高い国ですから、非常に大きな影響を受けたものと考えます。
 しかし、ここらで、私どもが申しておるように、高度経済成長を支えた条件はすべて終わったんだ、これを続けていくことはできないんだ、ここでいわゆる正常な成長、まあ安定成長と申しますか、これに切りかえていかなければならぬ。そうなってくると、いままでのように、設備投資を重点に置いた日本の経済拡大政策というものはとれないわけでありますから、いま広瀬さんの御指摘にもなっておるように、国民の生活、国民の福祉、こういうものを重点にしたこれからの運営をいたしていかなければならぬことについては、その行き方についての方法論についてはいろいろ意見の違いもあると思いますが、そういう方向を目指さなければならぬということに対して、われわれも異存はないわけでございます。
 第二の、不公正是正の問題については、税の問題を中心にいろいろお話しになりましたので、これは大蔵大臣から詳しく御答弁をいたす次第でございます。
 また、福祉年金については、先ほど申し上げましたごとく、われわれもやはり老後の生活が不安がない、こういうことは福祉国家の大きな前提であります。若いときに働いて老後の生活が不安だというぐらい悲惨なことはないわけであります。福祉年金も、私が政調会長のときに、いまから十四、五年前にこれは設置したわけですから、老人の老後の生活というものは、私は非常に重視しておる一人でございます。しかし、これもやはり全部財政的資金によるわけでありますから、多いにこしたことはないけれども、現在のような仕組みでは、一万二千円にした、七千五百円からしたのですからね。この努力は評価あってしかるべきと思うのでございます。しかし、これをさらに広瀬さんの言われるように三万円とか、こういうことになってまいりますと、いまの仕組みを変えなければならぬわけで、二万円とか三万円とかいうことになれば、そういうことになりますので、これは年金制度全般をひとつ見直してみる作業を厚生省でいたしておる次第でございます。
 それから、社会保障に年次計画を立てる、ごもっともなことであります。これは、やはり年次計画を立てて、その中で計画的に社会保障政策を推進していくことが必要であると思います。
 また、いま老人の問題に、福祉年金ばかりでなしに、寝たきり老人などのリハビリテーションの施設の充実とか、あるいはまた、老人の生きがいを与える施策というようなものをこれから強化すべきだという考え、私たちもそう考えておるわけでございますから、これは努力をいたします。また、予防的な措置もとれということは、至極ごもっともな話であって、こういうことに対していろいろ今後努力をいたす所存でございます。
 また、原爆の被爆者に対する援護法の制定ということでございます。
 私も、総理大臣就任前からこの問題に心を痛めておる一人でございます。しかし特別手当、今年度予算で月一万五千円から二万四千円に増額をし、健康管理手当というものを七千五百円から一万二千円にいたして、それから今度また六千円の保健手当という制度も新しく設けたのであります。そういう点で、この非常にお気の毒な原爆の被爆者に対して、できるだけ生活の不安なからしめたいと努力はいたしておるわけでございまして、いま援護法をこの機会に制定するという考え方は持っていないわけでございます。
 次に、全国一律の最低賃金制ということは、これは野党各派共通の熱心な提案でございますが、これは全国一律といっても、地域的に、企業別的に考えても賃金の格差があるわけですから、全国これを一律にするということに無理があるわけですが、この問題は、全国一律な最低賃金制を設けるということは、各党非常に熱心な御提案でもあるし、労働組合としても強い一つの提案として掲げておるわけでございますから、この問題は、もう少し真剣に検討をさしていただきたいと思います。
 それから、不払い賃金の代位弁済を政府が行うべきじゃないかということでございますが、この問題は、賃金の債権の保護と、公租公課や私法上の債権との関係等も、法律的にもいろいろ問題がございますので、これは実際に不払いの場合は、労働者ばかりでなしに御家族の方にお気の毒でありますから、この問題については、これは十分検討をしなければならぬ問題であると思いますので、そういうお気の毒な人々の生活を何とかして不安のないようにできないかという点から検討をさしていただきたいと思います。
 また次に、失業防止の雇用安定対策でありますが、これについていろいろ御提案があったわけでありまして、たとえば労働金庫などの金が、未組織労働者の資金の借り入れの場合、こういうことができるように労働金庫法を改正せよという御意見もありましたが、こういう問題については、雇用問題や失業問題については、労働大臣からこれは詳しく御答弁をいたした方がいいと思います。
 次に、食糧の問題についていろいろお話がございましたが、この食糧という問題は、いま石油ということが大問題になっておりますが、しかし、これは最も基本的な問題であって、食糧問題というものは、国民が不安を持つようなことになれば、国の安定の基礎は崩れるわけであります。そういう点で、私が農業問題に触れることが少なかったので、農業というものを重視していないのではないかということでございましたが、そんなことではないわけで、もう食糧の確保ということは、その国の基礎であるし、また、農村というものがよい環境を保全しておる役割りもありますし、日本の国全体から考えても、私は農村こそ安定勢力の中心であると考えておるわけでございます。そういう意味で、私自身も農村の出身である。私も出身は農村であって、農業というものを日本は大事にしなければ、この国はもうやがて立ち行かなくなる。農業というものは大事にしていきたい。
 ただしかし、いま広瀬さんの言われたように、八〇%の自給率を設けてやれというのですが、私はこの自給率を、いまのままではこれはいけませんから、水田の裏作奨励なども今度の予算に計上してありますし、自給率を高めるために努力はしなければならぬけれども、八〇%ということには相当の無理がある。やはり食糧というものは国際的な協力というものがなければ、全部自給自足というのは、成田さんのお答えにも申したように、日本の農地を三倍ぐらいにせなければできないわけですから、これは不可能でありますが、できるだけ自給率を高めよということには賛成でございます。
 そういうことで努力をいたしますが、一方において、やはり国際協力ということも、食糧問題の確保には、これは無視することのできない現実的な条件であるということも申し上げておかなければならぬのでございます。ことに、こういう食糧問題というものは、日米間の協力の大きな問題点の一つであることは、先ほど申したとおりでございます。
 また、中小企業については、国等の契約についてはできるだけ中小企業に、いわゆる官需と申しますか、こういうものに対しては中小企業に回すようにという行政指導は、非常に強く行っておるわけです。私自身も通産大臣のときに、中小企業の官需をできるだけ確保しようという法律案を提出したことがあるぐらいでございます。この点は、非常な関心を持っておるものでございます。
 また、下請代金の支払い遅延については、支払遅延防止法の適用を、これは厳重にしたいと思っております。
 また、私立大学の問題についてお話しになりましたが、私立大学はいまお話しのように、八二%の学生は私立大学が占めておるのであるし、それがやはり人材養成に果たしておる役割りは、割合からいっても私立大学の方が重いわけでありますし、どうしてもやはり私立大学の経費というものは、今後やはり国の方で相当めんどうを見ていく必要があると思いますが、二分の一までという広瀬さんのお話というものは、これはいろいろ財政当局でも検討を加えなければ、ここでお答えはできません。しかし、私立大学に政府がいろいろな助成をするからといって、教育内容に干渉する考えはございません。指導監督はしなければならぬが、しかし、私立大学にいろいろな助成を政府がしたからといって、教育内容に国が干渉する考え方は、全然ないということを申し上げておく次第でございます。
 また、国鉄の経営などに対していろいろお話があったようでございますが、ナショナルミニマムということでいろいろお話がありましたが、われわれもナショナルミニマムというものを、いますぐに作成するという考えはないのですが、われわれが目指しておる社会は、やはり生活が確保されて、そして安定して生活が充実できる、こういう社会でなければ、ただ生活できるということだけでは意味はないので、そういう新しい社会の建設に向かって全力を傾けようとしておるのであって、ただ、いま広瀬さんの御指摘になったような、一時の何か調整期を乗り切っていこうという考えではないわけで、新しい日本を目指して全力を尽くそうとしておるのが、三木内閣の使命であると御承知を願いたいのでございます。
 お答えをいたします。(拍手)
    〔国務大臣大平正芳君登壇〕
#23
○国務大臣(大平正芳君) 税制改正につきまして、御意見を交えながら、社会的公正を確保する見地から御質問がございましたので、順次お答えいたしたいと思います。
 第一は、土地譲渡所得課税の特例に関してでございます。
 御指摘のように、この特例は五十年の十二月末に適用期限が到来することになっております。来年度の税制改正におきましては、この特例のうち、特に批判の多い長期譲渡所得の分離比例課税制度につきまして、税制面における社会的不公正を是正する立場から、二千万円までの譲渡所得につきましては、最低二〇%の税率により課税いたしますが、これを超える高額な譲渡所得につきましては、四分の三総合課税を行うことといたしております。これによりまして、土地の長期譲渡所得につきましては、単に優遇措置を廃止して所得課税本則の二分の一総合課税に戻った場合よりも、全体として高い負担が求められることになります。
 第二は、お医者さんに対する社会保険診療報酬課税の特例についてでございます。
 これは御指摘のように、たびたび調査会の御検討が行われ、昭和四十七年から二年間にわたりまして税制調査会の特別部会におきまして具体的検討が続けられまして、昨年十月にその結論が取りまとめられまして、その改正の方向について答申が提出されましたことは、御案内のとおりでございます。政府といたしましては、しかしながら、この問題が診療報酬と関連するところがあるという見解を持っておるものでございまして、具体的な制度の改正は、次回の診療報酬改定と同時に実施することにいたしております。
 第三は、利子、配当所得についての特例についてでございます。
 利子、配当を完全に把握するという体制が、残念ながらただいままだ整備されておりませんので、とりあえずの措置といたしまして、源泉分離選択税率を現行より五%引き上げることによりまして、この特例の適用期限を五カ年間延長させてもらうことにいたしたいと考えております。しかしながら、政府といたしましても、利子、配当を完全に把握することができるようになりました場合には、総合課税に移行することは賛成でございます。
 それから、法人保有の土地の再評価益に課税する制度を創設することはどうかという御提言でございます。
 この問題は、法人の所有であろうとなかろうと、再評価税であることに間違いはないわけでございまして、これは私は軽々に賛成できないわけでございます。何とならば、再評価税というのは、まだ実現していない利益に課税することでございますので、税率というものはそもそも低くならざるを得ないわけでございまして、法人税率より低いような再評価税をかけましても、全く意味がないと私は考えるわけでございまして、遺憾ながらこれは賛成できません。
 それから、富裕税でございます。富裕税創設の意思があるかどうかということでございます。
 一般的に、富裕税のような財産税の創設、これは所得税の補完税としての役割りを持つものでございまして、所得税の税率をどのように調整するか、財産の把握が果たして十分行われるかどうか、そういったことを十分確かめないと踏み切れない問題でございまして、今後慎重に検討をさせていただきたいと思います。
 法人の受取配当金の益金不算入制度、配当軽課制度というものを改めてはどうかということでございます。
 これにつきましては、現在税制調査会におきまして専門的な御検討をいただいておるわけでございまして、全体としては、その検討結果を待って考えたいと思います。
 ただ、法人税の累進課税の議論が常に持ち上がるわけでございますけれども、たびたび申し上げておりますように、累進課税というのは、個人に最終的に所得が帰属するということを前提に考えられる制度でございまして、本来、法人にはなじまない制度であると私は考えております。
 それから、高所得者に対する課税をもっと強化すべきではないかという御指摘でございます。
 これにつきましては、わが国はたびたび所得税の減税を鋭意やってまいったわけでございますが、課税最低限、各種控除の引き上げというような形において減税が行われてまいったわけでございまして、いま公平に比較いたしてみまして、他の先進諸国に比べまして、高額所得者に対する課税は決して低くはございません。むしろ高目になっておるわけでございまして、ただいまのところ、私は軽々に賛成いたしかねます。
 預金の目減り対策につきましての御提言と御質問があったわけでございます。
 この問題につきましては、目減りの原因となっておる物価上昇を抑制することが、まず何をおいても必要であると考えます。そうした見地から、政府は、一昨年以来、大変御不自由をお願いして、総需要抑制策を堅持さしていただいておりますことも御理解いただきたいと思うのであります。
 しかしながら、同時に、預金者の立場も考えなければならぬことは、政府としても重々心得ておるわけでございまして、昭和四十八年以降、預金金利を五回にわたりまして引き上げてまいりましたことも御案内のとおりでございます。これは広瀬さんも御案内のように、金融機関の負担において行うものでございまして、金融機関にそれだけの力がなければならぬわけでございまして、中小金融機関の負担力というものも十分念頭に置いて考えなければならぬ制度でございます。
 しかし、そうかと言って、大幅な物価の高騰下にありまする預金金利のあり方につきましては、このままでいいとも言い切れないものがございますので、先ほど成田さんの御質疑に総理がお答えいたしましたように、政府部内におきまして、いろいろな角度からいませっかく検討中でございますので、しばらく時間をおかしいただきたいと思います。(拍手)
    〔国務大臣安倍晋太郎君登壇〕
#24
○国務大臣(安倍晋太郎君) 広瀬議員の私に対する御質問、御提案は、大体七項目にわたっておると思いますので、順次お答え申し上げたいと思います。
 第一の御質問は、穀物自給率を八〇%以上に確保する施策を講ずべきであるとの御質問でございますが、これは総理もお答えをいたしておるわけでございますが、わが国における穀物自給率の低下は、畜産物等の生産が非常に高いテンポで増加した一方、わが国の土地資源等の制約もありまして、濃厚飼料の輸入が著増しておるということが主たる原因でございます。
 最近の国際的な食糧事情の変化から見まして、わが国の穀物生産力を高めていく努力はいたさなければならないことは当然でありますが、わが国の生産条件に合わない穀物については、外国からの安定輸入に依存するほかはなく、畜産物消費の増大と相まって、広瀬さんの御指摘がありましたように、昭和三十五年ごろの八〇%以上の自給率を再現するということは、きわめて困難であり、不可能であると思うわけであります。
 なお、今後の食糧の自給率につきましては、ただいま長期見通しを立案中でございまして、いずれ御批判を仰ぎたいと思います。
 第二の御質問は、農業基本法が、いわゆる今日の農政をもたらしたという意味の御質問がございました。
 農業基本法においては、御存じのように、農業が、国民食糧その他の農産物の供給、資源の有効利用、国土の保全、国内市場の拡大等、国民経済の発展と国民生活の安定に寄与しているという認識の上に立って、農政の基本目標及び根幹的施策について規定をしておるわけであります。このような基本法の基本となる考え方は、現在においても妥当なものと考えておりまして、今後もこの基本的方向に沿って、施策の総合的な展開を図ってまいりたいと思います。
 第三は、主要農産物の価格政策に生産費所得補償方式を導入すべきであるがどうだとの御質問でございます。
 価格政策が、わが国農政におきまして果たす役割りはますます重要となってきております。このため、五十年度におきましては、新たに牛肉を畜安法に基づく指定食肉に指定し、その価格の安定を図ることとしておるほか、鶏卵、ミカン、野菜等の価格対策につきましても、その拡充に努めております。
 農産物価格政策につきましては、農産物ごとにその生産、流通事情を異にしておりますので、実情に即して、価格支持の仕組みと算定方式を考えていくことが適当であると考えております。
 第四は、土地基盤整備について全額国庫負担とすべきであるかどうかという御質問でございます。
 土地基盤整備は、受益農家の利益にもつながるものでございますので、全額国庫負担とすることは適当でないと考えております。
 現在、土地基盤整備については、その重要性にかんがみまして、事業に要する経費については、国の助成措置に加え、地元負担については地方公共団体の負担も行われており、補助残等については融資措置等も行われておるわけでございます。今後とも、受益者負担が過重にならないように、助成措置の内容の充実を図っていきたいと思います。
 第五は、国の援助によって農村に農業機械化センターを設置し、低料金で農家に利用させるべきではないかという御質問であります。
 農業機械の利用につきましては、経営主体である農家、あるいはその組織する営農集団、農協等が所有して、効率的に利用することが適当であるとの考え方に立って、従来からその導入について指導、助成措置等を講じてきたところでございます。
 次に、生鮮食料品の対策として、定温及び冷温施設の設置を図るべきであるとの御質問であります。
 御指摘のように、生鮮食料品、特に野菜について、計画的、安定的供給及び品質保持のため、産地及び消費地の各段階における貯蔵施設の整備等重要であります。このため、産地段階におきましては、野菜指定産地関連事業等において冷蔵庫等の貯蔵施設の整備を進めてきております。また、消費地におきましても、消費地大規模低温貯蔵庫の整備を進めておるところでありまして、昭和五十年度予算におきましても、これら事業の拡充を図っておりますことは御案内のとおりでございます。
 最後に、農家に課する農地相続税は収益還元方式をとるべきではないかとの御質問でございます。
 近年における著しい地価の上昇に伴って、農地に係る相続税の負担が増加し、相続に際して農地の売却も余儀なくされておることは事実でございます。このような事態に対処して、相続人が農業を継続する限り、農地相続税の納税猶予制度を設けることといたしまして、相続税の軽減を図ろうといたしておるわけでございます。したがって、いわゆる収益還元方式は採用をいたさないのでありますが、この制度によりまして、農地の確保及び農業経営の維持発展に支障を来すことがないようにいたしたいと思うわけであります。
 なお、濃厚飼料を国家管理にせよという御質問でございますが、そういうことは全然考えておりません。(拍手)
#25
○副議長(秋田大助君) 福田国務大臣の答弁は、適当な機会に願うことといたします。
     ――――◇―――――
#26
○羽田孜君 国務大臣の演説に対する残余の質疑は延期し、明二十八日午後二時より本会議を開きこれを継続することとし、本日はこれにて散会されんことを望みます。
#27
○副議長(秋田大助君) 羽田孜君の動議に御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#28
○副議長(秋田大助君) 御異議なしと認めます。よって、動議のごとく決しました。
 本日は、これにて散会いたします。
    午後四時三十分散会
     ――――◇―――――
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  三木 武夫君
        法 務 大 臣 稻葉  修君
        外 務 大 臣 宮澤 喜一君
        大 蔵 大 臣 大平 正芳君
        文 部 大 臣 永井 道雄君
        厚 生 大 臣 田中 正巳君
        農 林 大 臣 安倍晋太郎君
        通商産業大臣  河本 敏夫君
        運 輸 大 臣 木村 睦男君
        郵 政 大 臣 村上  勇君
        労 働 大 臣 長谷川 峻君
        建 設 大 臣 仮谷 忠男君
        自 治 大 臣 福田  一君
        国 務 大 臣 井出一太郎君
        国 務 大 臣 植木 光教君
        国 務 大 臣 小沢 辰男君
        国 務 大 臣 金丸  信君
        国 務 大 臣 佐々木義武君
        国 務 大 臣 坂田 道太君
        国 務 大 臣 松澤 雄藏君
 出席政府委員
        内閣法制局長官 吉國 一郎君
        外務省条約局長 松永 信雄君
     ――――◇―――――
ソース: 国立国会図書館
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