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#1
第075回国会 本会議 第6号
昭和五十年二月十四日(金曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第六号
  昭和五十年二月十四日
   午後一時開議
 第一 裁判官弾劾裁判所裁判員辞職の件
 第二 裁判官弾劾裁判所裁判員の選挙
 第三 検察官適格審査会委員及び同予備委員の
    選挙
 第四 四国地方開発審議会委員の選挙
 第五 北陸地方開発審議会委員の選挙
 第六 豪雪地帯対策審議会委員の選挙
 第七 北海道開発審議会委員の選挙
 第八 鉄道建設審議会委員の選挙
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 永年在職の議員大石武一君に対し、院議をも
  つて功労を表彰することとし、表彰文は議長
  に一任するの件(議長発議)
 日程第一 裁判官弾劾裁判所裁判員辞職の件
 日程第二 裁判官弾劾裁判所裁判員の選挙
 日程第三 検察官適格審査会委員及び同予備委
  員の選挙
 日程第四 四国地方開発審議会委員の選挙
 日程第五 北陸地方開発審議会委員の選挙
 日程第六 豪雪地帯対策審議会委員の選挙
 日程第七 北海道開発審議会委員の選挙
 日程第八 鉄道建設審議会委員の選挙
 所得税法の一部を改正する法律案(内閣提出)、
  法人税法の一部を改正する法律案(内閣提出)
  及び租税特別措置法の一部を改正する法律案
  (内閣提出)の趣旨説明及び質疑
    午後一時四分開議
#2
○議長(前尾繁三郎君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 永年在職議員の表彰の件
#3
○議長(前尾繁三郎君) お諮りいたします。
 本院議員として在職二十五年に達せられました大石武一君に対し、先例により、院議をもってその功労を表彰いたしたいと存じます。表彰文は議長に一任せられたいと存じます。これに御異議ありませんか。
#4
○議長(前尾繁三郎君) 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。
 表彰文を朗読いたします。
 議員大石武一君は衆議院議員に当選すること十回在職二十五年に及び常に憲政のために尽くし民意の伸張に努められた
 よつて衆議院は君が永年の功労を多とし特に院議をもつてこれを表彰する
 この贈呈方は議長において取り計らいます。
    ―――――――――――――
#5
○議長(前尾繁三郎君) この際、大石武一君から発言を求められております。これを許します。大石武一君。
#6
○大石武一君 ただいま、私が本院在職二十五年に及びましたととに対し、院議をもって御丁重な御決議を賜りました。まことに身に余る光栄でございまして、感激にたえません。(拍手)
 私は、昭和二十三年五月の補欠選挙において初めて本院において議席を得ました。当時、わが国はまだ占領行政下にございまして、国民は困難と窮乏にあえぎつつも、祖国再建の意気に燃えておりました。私は、このときより国民の代弁者の一員として、ひたすら建国の努力を重ねることになったのでございますが、いつの間にか二十七年の歳月をけみすることになってしまいました。
 その間に、国家に対してどれほどの貢献をなし得たか、はなはだ心もとない次第でございますが、近年に至りまして、ようやく一つの心境にたどりつくことができたのでございます。「政治の目的は、人の生命を何よりも大切にすることにある」という信念でございます。私は、これからもこの政治信条のもとに、すべての人々の幸せを願って、政治活動に生命をささげてまいる所存でございます。
 不徳非才をもちまして今日の栄誉に浴し得ましたことは、ひとえに先輩、同僚諸賢の温かい御厚情、御指導のたまものであり、郷里の皆様方の長い間の御理解と御支援によるものでございまして、心から感謝を申し上げる次第でございます。(拍手)
 今後は、この感激を深く肝に銘じ、初心に返って国民各位の信頼にこたえるよう、最善の努力を尽くす決意でございます。
 まことにありがとうございました。(拍手)
     ――――◇―――――
 日程第一 裁判官弾劾裁判所裁判員辞職の件
#7
○議長(前尾繁三郎君) 日程第一につきお諮りいたします。
 裁判官弾劾裁判所裁判員大西正男君から、裁判員を辞職いたしたいとの申し出があります。右申し出を許可するに御異議ありませんか。
#8
○議長(前尾繁三郎君) 御異議なしと認めます。よって、許可するに決しました。
     ――――◇―――――
 日程第二 裁判官弾劾裁判所裁判員の選挙
 日程第三 検察官適格審査会委員及び同予備委員の選挙
 日程第四 四国地方開発審議会委員の選挙
 日程第五 北陸地方開発審議会委員の選挙
 日程第六 豪雪地帯対策審議会委員の選挙
 日程第七 北海道開発審議会委員の選挙
 日程第八 鉄道建設審議会委員の選挙
#9
○議長(前尾繁三郎君) 日程第二ないし第八に掲げました各種委員等の選挙を行います。
#10
○羽田孜君 各種委員等の選挙は、いずれもその手続を省略して、議長において指名されんことを望みます。
#11
○議長(前尾繁三郎君) 羽田孜君の動議に御異議ありませんか。
#12
○議長(前尾繁三郎君) 御異議なしと認めます。よって、動議のごとく決しました。
 議長は、裁判官弾劾裁判所裁判員に濱野清吾君を指名いたします。
 次に検察官適格審査会委員に
      小平 久雄君    大竹 太郎君
      加藤 清二君 及び 諫山  博君を指名いたします。
 また、
 唐沢俊二郎君を大竹太郎君の予備委員に、
 広瀬秀吉君を加藤清二君の予備委員に、
 荒木宏君を諫山博君の予備委員に指名いたします。
 なお、現に予備委員である保岡興治君は、小平久雄君の予備委員といたします。
 次に、四国地方開発審議会委員に田村良平君を指名いたします。
 次に、北陸地方開発審議会委員に古川喜一君を指名いたします。
 次に、豪雪地帯対策審議会委員に箕輪登君を指名いたします。
 次に、北海道開発審議会委員に
      本名  武君    中川 一郎君
      三枝 三郎君    芳賀  貢君
   及び 多田 光雄君を指名いたします。
 次に、鉄道建設審議会委員に
      堂森 芳夫君 及び 紺野与次郎君を指名いたします。
     ――――◇―――――
 所得税法の一部を改正する法律案(内閣提出)、法人税法の一部を改正する法律案(内閣提出)及び租税特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明
#13
○議長(前尾繁三郎君) 内閣提出、所得税法の一部を改正する法律案、法人税法の一部を改正する法律案及び租税特別措置法の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。大蔵大臣大平正芳君。
#14
○国務大臣(大平正芳君) 所得税法の一部を改正する法律案、法人税法の一部を改正する法律案及び租税特別措置法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
 初めに、所得税法の一部を改正する法律案につきまして申し上げます。
 所得税につきましては、昭和四十九年度に画期的な減税を行ったところでありますが、昭和五十年度におきましてはその平年度化が相当の規模に達する上、経済を抑制的に運営する必要がありますので、減税の規模は、最近における物価情勢に即応する程度にとどめることといたしております。
 すなわち、基礎控除、配偶者控除及び扶養控除は、それぞれ二十四万円から二十六万円に引き上げることといたしております。この結果、昭和五十年分の課税最低限は、昭和四十九年度の所得税減税の平年度化が大きいことをも反映して、夫婦と子供二人の給与所得者の場合で、昭和四十九年分の百五十万円から百八十三万円へと三十三万円程度引き上げられることになります。
 次に、障害者控除、老年者控除、寡婦控除等につきましては、福祉政策等の見地から、その控除額を基礎控除等の引き上げ幅の倍額、すなわち四万円引き上げますとともに、退職所得につきましても、三十年勤続した場合の非課税限度を、現行の八百万円から一千万円に引き上げることを目途に、特別控除の額を引き上げることといたしております。
 以上のほか、白色申告者の専従者控除を現行の三十万円から四十万円に引き上げ、また、医療費控除の拡充を図る等、所要の改正を行うことといたしております。
 次に、法人税法の一部を改正する法律案につきまして申し上げます。
 法人税につきましては、昭和四十九年度に税率の引き上げを含む大きな改正を行ったばかりであり、昭和五十年度においては最小限の手直しを行うにとどめております。
 すなわち、中小企業の内部留保の充実に資するため、同族会社の留保所得課税について、その定額控除を一千万円から一千五百万円に引き上げますほか、改正商法の施行に伴い、会計監査人の監査を要する等の理由により決算の確定がおくれることとなる法人について、一定の条件のもとに、申告期限を一月延長することができる等の制度を設けることといたしております。
 最後に、租税特別措置法の一部を改正する法律案について申し上げます。
 租税特別措置につきましては、利子、配当課税の特例及び土地譲渡所得課税の特例の見直しを初めとして、引き続きその整理合理化を推進するとともに、福祉対策、公害対策その他に資するため、所要の措置を講ずることといたしております。
 すなわち、まず第一に、利子、配当課税の改善合理化を図る見地から、源泉分離選択課税制度の選択税率を二五%から三〇%に引き上げるとともに、その適用期限を五年延長することといたしております。
 第二に、土地譲渡所得課税の適正化を図るため、個人の長期譲渡所得の分離比例課税制度は適用期限の到来とともに廃止し、新たに五年間の時限措置として、譲渡益二千万円以下の部分については、二〇%の税率により課税し、譲渡益二千万円超の部分については、本則の二分の一総合課税にかえて四分の三総合課税とすることとし、また、短期譲渡所得の分離重課制度の適用期限を五年延長することといたしております。
 第三に、海外投資等損失準備金について、先進地域に対する投融資で、資源開発以外のものに係る制度を廃止いたす等、既存の特別措置の整理合理化を行うことといたしております。
 第四に、農地に対する相続税について、その一部の納税を猶予して、次の相続まで、または二十年間農業を継続した場合には、納付を免除する制度を創設することといたしております。
 第五に、福祉対策に資するため、老年者年金特別控除額の引き上げを行い、また、公害対策の観点から、昭和五十一年度の自動車排出ガス規制に適合する乗用自動車の開発普及に資するため、物品税の暫定軽減措置を講ずる等、所要の措置を講ずることといたしております。
 以上、所得税法の一部を改正する法律案、法人税法の一部を改正する法律案及び租税特別措置法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げた次第でございます。(拍手)
     ――――◇―――――
 所得税法の一部を改正する法律案(内閣提出)、法人税法の一部を改正する法律案(内閣提出)及び租税特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
#15
○議長(前尾繁三郎君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。野田毅君。
#16
○野田毅君 私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となりました所得税法、法人税法及び祖税特別措置法の一部を改正する法律案につきまして、質問をいたします。
 今回の改正案によりますと、所得税の減税規模は、初年度二千四百八十億円となっておりますが、これに昨年度改正の平年度化分を含めますと、実質約七千億円の減税となっております。片や、財政が硬直化し、各種の財政需要が急増する中で、また、国債発行額が昨年度より千六百億円も減額するという環境を考えますと、これだけの所得税減税が行われることは、高く評価すべきであります。
 また、改正の内容は広範多岐にわたっておりますが、しさいに検討いたしますと、障害者控除、老齢者控除など、特別な人的控除の大幅引き上げを初め、各種の福祉関係措置の拡充、同族会社の留保所得課税の大幅軽減、白色専従者控除の大幅引き上げなど、中小零細企業のための改善、勤労者財産形成、住宅対策のための措置の拡充、公害防止、環境保全あるいは資源対策の視点からの措置の新設、拡充など、改正の内容においても、私は率直にこれを評価するものであります。
 特に、多年の懸案でありました農業後継者に対する農地の相続税の実質的な非課税措置の実施は、農業後継者問題に一条の光を与えるものとして、また、土地の譲渡所得課税について、高額の長期譲渡所得を本則よりも重課することは、いわゆる土地成金の出現を未然に防止するものとして、注目すべきでありましょう。
 しかしながら、今回の改正によっても、残された問題が多々あることは言うまでもありません。
 以下、数点について、総理並びに関係大臣にお伺いをいたします。
 私が伺いたい第一の問題は、今後における国民の総合的な税負担の問題であります。
 国民所得に対する租税負担の割合二〇・三%という数字は、確かに欧米諸国に比べれば、はるかに低いと言えましょう。その点だけからするならば、高福祉を進めるための高負担の余力はまだまだあるようでもあります。しかし、中身を見ますと、特に直接税の負担割合がここ数年の間に飛躍的に増大しており、十年前に五九%程度であったものが、来年度は七三%を超える見込みとなっております。
 過去においては、経済の高度成長や物価上昇などのため、いわば無理をしなくとも、直接税を中心に毎年大幅な税の自然増収が発生してきたのでありますが、今後予想される資源やエネルギーなどの制約条件を考えますと、負担の面、税源の面、この両面から、直接税に対する過度の依存には限界が出てくることになります。
 こうした状況の中で、今後さらに高福祉のための高負担を求めるとなれば、欧州と同様に、間接税のウエートを相当程度高めていくことが必要となるのではないか、そのためには、単なる物品税の手直しにとどまらず、何らかの方策もまた必要となるのではないかと考えられるのでありますが、総理の御所見をお伺いいたします。
 他方、国民が高福祉を要求する以上、何らかの意味で負担の増加に耐えねばならぬことは当然であります。しかし、逆に、負担が増加する以上は、高福祉と言われる中身について、いろいろと要求を抱くこともまた当然でありましょう。
 最近、福祉というにしきの御旗のもとに、本来的に自己の責任において処理すべきことであっても、安易に国や自治体あるいは第三者に責任を転嫁し、またこれを許そうとする風潮が生まれつつあるように思われます。
 たとえば、昨年の暮れ、ある老人が亡くなってから一週間もたった後に発見されたという痛ましい記事が出ていましたが、そのときの論調を見ると、異口同音、政府や自治体の責任を追及していたようであります。しかし、私は、ただそれだけにとどまっていいものかどうか、まず問われるべきは、その息子や娘たちであり、隣近所の人たちではないのか、もっと人間としての原点から問われるべきではないのかと考えざるを得ないのであります。親のめんどうを見るのは第一義的には子供の責任ではないか、子供を幼いころしつけるのは親の責任ではないのか、このような基本的な事柄を素通りして、ただ一方的に、国や自治体が迎合的に福祉という名のつく予算を数字的にふやしていくことが、本当に高福祉と言われるゆえんのものであろうか。私は疑問なしとしないのであります。(拍手)
 総理は、文芸春秋二月号の「日本の自殺」という論文をお読みになったでしょうか。それによりますと、古代ギリシャやローマの没落は、単に外敵から物理的に滅ぼされたというよりも、むしろ社会の構成員の精神的な内部崩壊に真因があったと言います。民主政治のもとでは、政治家が票を欲しがり、政府は厚い信任を得ようとして当時の世論に迎合し、パンとサーカスを与える競争に陥る危険を絶えずはらんでおります。
 しかし、その結果は、単に財政的破綻を来すだけでなく、国民に責任転嫁や他人への依存心の増大や怠惰をもたらし、ひいては、社会全体の活力を奪い、国家民族の内部崩壊へとつながるという警告を発しているのであります。
 私は、今日のわが国の状況を見ておりますと、単に杞憂とは言い切れない一面を、この論文はついておると思うのであります。
 私は、全く身寄りのない老人や障害者など、本当に気の毒な人たちについてとやかく言うのではありません。このような人たちには、もっと手厚い思いやりが必要でありましょう。しかし、福祉というものは、世話をする人の思いやりと、世話をされる人の感謝の気持ちが裏づけとならなければなりますまい。権利や義務という単純な関係ではないはずであります。いわんや、金をつければ、それで福祉が増進するというものではないはずであります。
 福祉優先、弱者対策を強調される総理の頭には、福祉とは金のみにてあがなえるものではないという確固とした哲学的信念がおありのことと思います。総理は、かつて翼賛選挙に敢然として立ち向かった毅然たる人物であり、決して世相だからといって迎合する人物ではないはずであります。今日のこうした風潮をどのように受けとめておられるのか、そして、今後の福祉政策のあり方について、特にその進め方と、その裏づけとなる負担の関係について、総理の忌憚のないお考えを伺いたいのであります。
 次に、利子所得課税の問題についてお伺いします。
 今回、利子、配当所得の源泉分離選択税率を、その限度と言われる三〇%に引き上げたことは、大いに評価しなければなりません。しかし、所得税の本則である総合課税のたてまえからするならば、とかく批判があることも事実であります。他方、今日の社会実態として、架名預金や預金先の分散が行われていることも事実であります。このような状態の中で、直ちに総合課税に持っていくと、いわば正直者がばかを見るという結果になることは、目に見えております。
 そこで、アメリカでは、いわゆる国民総背番号制を取り入れているようでありますが、わが国においても、行政の円滑化という面からも、これを取り入れる考えはございませんか。また、全面的にこの制度を取り入れることが、いま直ちには困難であるとするならば、少なくとも税務及び金融取引の面において、納税者番号制度をすべての個人についても拡充するお考えはないか、大蔵大臣の御所見を承りたいと思うのであります。
 第三にお伺いしたいのは、社会保険診療報酬課税の特例の問題についてであります。
 今回の税制改正要綱において、「社会保険診療報酬課税の特例措置の改善合理化は、次回診療報酬改訂と同時に実施する。」とあります。私は、この特例措置が、世上報道されているように、単なる医師の優遇措置であるとは考えておりません。この特例措置が超党派の議員立法により、昭和二十九年、「本法律案は、社会保険診療報酬の適正化の実現までの暫定措置であるから、政府は速やかにこれが実現をはかるよう善処せられたい。」との附帯決議を付して設けられた経緯からも明らかなように、社会保険診療報酬体系の抜本的改正と表裏一体の関係にあり、いわば車の両輪関係にあります。しかし、残念ながらこの特例措置が、世上不必要な税の不公平感をもたらしていることも事実であります。
 問題は、政府がこの特例の存在に甘えて、本来の診療報酬の抜本的改正を避けて通ってきているのではないかということであります。
 田中厚生大臣は、歴代大臣の中でも特に誠実なお人柄であり、私の最も尊敬するお一人でもあります。すでに、この問題について十分御検討を重ねておられることと思います。現在検討しておられる方向と内容、さらに、抜本的改正の目標とされる時期について、率直な御見解をお伺いします。
 あわせて、医師会の言ういわゆる医療の公共性について、大臣の御所見を御披露いただきたいのであります。
 最後に、税務調査の問題についてお伺いをいたします。
 税務署の調査官は、一億国民の公僕として適正な税務の執行のために調査を行っているのであります。ところが、この調査官に対して、納税者でもない者が多人数でこれを取り囲み、テープレコーダーを持ち込んだり、悪口雑言はおろか、時には物を投げつけるなどの調査妨害が行われているのであります。しかも、これがある団体の指導のもとに、きわめて組織的に行われているのであります。このような団体の存在は、正しい税務の執行を阻害するものであり、善良なる納税者にとってはまことに憂慮すべき、ゆゆしき問題であります。(拍手)
 法治国家において、このような集団的威嚇が白昼堂々と行われておること自体遺憾でありますが、こういうことによって、万が一にも法のもとの平等がゆがめられ、税務行政が適正を欠くことがあってはならないのであります。大蔵大臣は、このような事態に対して、厳正に措置を講ずべきであり、勇断をもって臨むべきであると思うが、御所見を伺います。
 以上、各点について、総理並びに関係大臣の率直な御答弁を期待して、私の質問を終わります。どうもありがとうございました。(拍手)
#17
○内閣総理大臣(三木武夫君) 野田君の御質問にお答えをいたします。
 私に対しての第一の御質問は、間接税の比率をもう少しふやすべきではないかという御質問であったわけです。
 野田議員も御指摘のように、ヨーロッパの主要国は半々の国が多いわけでありますが、日本は七三・五%程度所得税に比重をかけておるわけであります。近時、やはりもう少し間接税に比重をかけるべきだという声が高くなっておることも事実でございます。しかし、間接税は一律の課税でございますから、税は取りやすい一面があると同時に、また一方においては、非常に負担の不公平という問題も起こってまいりますから、この点は、税制調査会で十分に検討をいたしてまいりたいと思うわけでございます。
 また、第二の御質問は、福祉という問題について私の所信を求められましたが、これは、私は広い意味で福祉というものを考えておるものでございます。
 お互いに、人生にはたくさんな共通の不安を持っておる、生まれてから死ぬまでの間。あるいは生活の不安、失業の不安、病気の不安、子供の教育の不安、老後の不安、こういう不安というものに対して、これをできるだけ解消していくということが福祉政策だと考えておるわけでございます。
 しかし、いま言ったような広範な人間の不安にこたえるためには、全部政府や公共団体というわけにもいかない。どうしても、これからは低成長時代に入ってきて、国の歳入面についても限界がございましょうし、その中で福祉政策を進めていくためには、国民の皆さんからも相当な負担を覚悟してもらわなければならぬ。そういうことになってくると、福祉政策の背景をなすものは、社会連帯の精神、相互扶助の精神、これがなければ福祉を推進していくわけにはいかない。それを、いま御指摘のように、福祉ということは全部他人に対して依存する、みずからというものよりも、全部他人に依存するというような風潮を助長することは、とてもそれを賄い切れるものではないわけであります。
 文芸春秋は私も読んだ一人でございますが、ああいう点で、全部他人の責任に福祉という問題を転嫁する風潮は、これは常に社会的な不満というものを助長することになりますから、やはりみずからも責任を果たす、そういう意味において、社会連帯の精神というものが非常に強く社会の中になければ、高度福祉の社会というものは建設できるものではない。野田さんのお話の点、非常に私も同感をいたしますとともに、福祉政策はどうしても今後政府は進めてまいって、日本の安定した福祉的な社会建設のために、今後とも努力をいたしたい考えでございます。(拍手)
#18
○国務大臣(大平正芳君) 御質問の第一は、直接税の比重が大変高くなってまいりまして、今後の財政を考える場合に、間接税に対して、もっと期待が持てるようなことを考えるべきでないかという御趣旨の御質問でございました。
 仰せのように、わが国の直接税収入は、欧米各国に比べまして著しく高い状況でございまして、すでに限界を超えたのではないかという見方が一般でございまして、間接税に税源を求めるという方向で、今後の税制改正は考えるべきが一つの道標であろうと考えております。税制調査会等と相諮りまして、御指摘のような方向で考えてみたいと思います。
 第二の御質問は、総合課税の徹底を図る上からいって、国民総背番号制の導入についてどう考えるかという御質問でございました。利子、配当所得ばかりでなく、総合課税でいくのが本則であることは申すまでもないことでございますが、いまそういう税源の捕捉が十分でないために、総合課税に移行できない状態にありますことは、御指摘のとおりでございます。そのためには、国民総背番号制が確立しておれば、難なくそういうことに移行できるではないかという御指摘は、ごもっともでございます。
 しかしながら、この問題は、広く各層の人々の意見も十分聴取しなければなりませんし、いろいろな角度からこれは検討しておかなければならぬ大きな政治の課題であろうと思いますので、今後あらゆる角度から十分検討してみたいということで、この段階におきましては御答弁にさせていただきたいと思います。
 第三の御質問は、納税非協力団体に対する措置でございます。
 税務行政の目的は、御指摘のように、税法を適正に執行して、課税の公平を期することでございます。集団的、意図的な低額申告、あるいは調査の妨害というようなことが許されていいはずはないわけでございます。国税当局といたしましても、これまで調査の充実、課税の公平のために鋭意努力してまいりましたけれども、今後一層厳しくこの種の行動に対しましては対処して、御期待にこたえるつもりでございます。(拍手)
#19
○国務大臣(田中正巳君) お答えいたします。
 診療報酬の今後のあり方については、基本的には技術の尊重を中心課題として、あるべき姿に改善を進めてまいりたいと思います。
 なお、診療報酬の改定は、一般的に国民負担と密接に関連する問題であることは申すまでもないことでございますので、わが国の社会保険診療がかなりの水準になっていることを踏まえ、国民の理解と納得を進めつつ、このことについて急いでまいりたいというふうに思います。
 さらに、医療の公共性についてのお尋ねでございますが、国民の健康と生命を支える医療は、文字どおり国民の生命線と申すべきものだろうと思います。
 さらに、単なる臨床的な面だけではなく、地域保健、その他公衆衛生面に果たされておる役割りをも考えるとき、医療の公共性は高く評価しなければならないと思います。
 また、国民経済一般が自由主義を基調としているのに対して、医療の世界が、社会保障の目的から、大部分が国の制度と枠の中で行われておるということについても、医療の特殊性として深い認識と配慮が必要であると思います。(拍手)
    ―――――――――――――
#20
○議長(前尾繁三郎君) 高沢寅男君。
#21
○高沢寅男君 私は、日本社会党を代表して、ただいま提案説明のありました所得税法の一部を改正する法律案、法人税法の一部を改正する法律案、租税特別措置法の一部を改正する法律案につき、三木総理及び大平大蔵大臣に対して質問を申し上げます。
 三木総理、いま行われている第七十五国会に対して国民が寄せている期待の最大のものは、いわゆる社会的不公正の是正が力強く推進されることではないでしょうか。あなたもまた、社会的不公正の是正を最大の課題として強調されております。
 ところで、三木総理、あなたは社会的不公正をつくり出し、拡大させているものは一体何だとお考えでしょうか。それはインフレではないでしょうか。振り返ってみれば、高度経済成長政策とともに進行してきた忍び足のインフレを、恐るべき駆け足のインフレに転化さしたのは、田中前内閣であります。そして、田中内閣の二年四カ月の間に、社会的不公正は物すごい勢いで拡大してきたのであります。
 三木総理も御存じのように、インフレは決して自然に起きたものではありません。それは政府の財政金融政策によって引き起こされたものであります。インフレによって社会的不公正がどんなに拡大されたか、一つ二つの例を見れば明らかであります。
 昭和四十八年の所得税の全国長者番付を見れば、上位百人のうちの九十七人は土地成金で占められているのであります。同じく、昭和四十八年度の東京証券取引所の全上場会社の資産の総計を見ると、土地だけで、何と六十八兆円の含み資産となっているのであります。償却資産及び所有株式も合わせると、約八十八兆円という恐るべき含み資産となっております。言うまでもなく、インフレによって、大会社のふところには刻一刻と含み資産が蓄積をされている反面、一般の庶民の預貯金は刻一刻と目減りをさせられているのであります。
 三木総理に私はお尋ねをいたします。社会的不公正を是正するには、まず何よりもインフレを収束させなければならず、そのために財政金融政策の総力を集中しなければなりません。この点について、まず冒頭に総理の率直なる所信をお尋ねいたしたいと思います。
 租税の機能については、いろいろの学説がありますが、第一義的に要求されるのは、所得の再分配の機能であります。しかも、いまのようなインフレによって社会的不公正が恐ろしく拡大されている時代には、なおさら租税による所得の再分配が絶対に必要であります。インフレによって不当に利益を得た者からは重い税を取り、インフレによって被害を受けた人たちに対しては福祉政策を拡充する、こうした政策を筋道を立てて実行することによって、初めて不公正の是正は進むのであります。この単純明快な政策の原理について、三木総理はどのような信念と使命感をもって取り組むお考えか、総理の所信をお尋ねいたします。
 さて、以上のような政策の原理に立って、ただいま提案説明のありました租税三法の改正法案を見るとき、私は全くの驚きと怒りを禁じ得ないのであります。
 まず、昭和五十年度の租税の自然増収と減税の関係を見れば、三兆七千八百三十億円という莫大な自然増収に対し、減税はわずかに二千五十億にしかすぎません。所得税の減税はどうかと見れば、基礎控除、配偶者控除、扶養控除の人的控除の引き上げによる一般減税は千九百五十億にしかすぎません。五十年度の政府の見通しによる消費者物価の上昇率は一一・八%であり、このパーセントに見合う物価調整減税は二千九百五十億でなければならないのに、所得税の一般減税は、これより一千億円も少ないのであります。政府は、昨年度に二兆円の大減税を行い、所得税の課税最低限を標準世帯で年収百五十万円に引き上げ、それが本年は平年度化して百七十万円まで上がるのであるから、本年の新たなる減税はミニ減税で十分だと説明しております。だが、昨年の二兆円減税は、あの二〇%を超す大幅な物価上昇で、とうの昔に帳消しにされてしまったのであります。それは給与所得者が、ひとしく昨年末の年末調整でごっそりと天引きされた、あの苦しい体験の中にもはっきりと証明されております。実際のところ、昨年の九月には、すでに勤労者世帯の税引き後の実質可処分所得は、対前年比でマイナスに転じているのであります。したがって、政府が昨年の減税を理由にしてことしの減税を圧縮していることは、国民に対する二重の欺瞞であります。
 三木総理、あなたは、このような国民を欺く政治が許されてよいと思っておられるのかどうか。それは田中前内閣のやったことだという逃げ口上でなく、あなたの責任ある所信を表明していただきたいのであります。(拍手)
 三木総理、私はむしろ結論から先に申し上げて、あなたのお答えをお願いしたいと思います。
 租税の第一の機能は、所得の再分配によって、不公平の是正を進めることであると申し上げましたが、今回提案の租税三法の改正案は、百八十度これに逆行するものであり、所得分配の不公平を一層拡大させる結果をもたらすものであります。このような逆行の改正案を内閣の名において提案されていることは、社会的公正の確保を口癖のように唱える三木総理、あなたがもしこの改正案の内容を承知して提案されているとするならば、それは国民に対する恐るべき背信行為であります。この点についていかがお考えか、私はあなたの責任あるお答えを求めるものであります。(拍手)
 以下、私は具体的な内容に触れつつ、この改正案の欠陥を指摘したいと思います。これらの具体的な問題では、大平大蔵大臣の御答弁をお願いいたします。
 夫婦子供二人の標準世帯の所得税課税最低限は、今度の改正で百八十三万円になることになっていますが、物価上昇と名目所得の上昇により、一般勤労者にとっては実質増税となることは、すでに指摘した所得税一般減税が、物価調整減税の所要額よりもはるかに下回っていることからも明らかであります。一般の勤労者には、そのほかに酒、たばこの増税も降りかかってくるのでありすす。それに対し、高額所得者に対しては、あの重役減税と批判を受けた給与所得控除の青天井が、ことしもまたそのまま適用されております。
 また、国民の批判が最も厳しく向けられている利子、配当所得、土地譲渡所得の特別措置が、若干の選択税率の手直しにより、またもや五年間も期間延長されようとしております。政府は、利子、配当所得を完全に把握する体制の整備されないうちに、一挙に総合課税に移行することはできないと説明しておりますが、政府は、利子、配当所得を把握する体制の整備のために、いままでに一体どんな努力をされたのでしょうか。また、今後いつまでにその体制を整備するつもりでしょうか。このめどを示すことなしに、いつまでもずるずると特別措置を延長していくことは、もはや許されないのであります。この問題は、大平大蔵大臣からはっきりとお答えをいただきたいと思います。
 もう一つ、不公平の代表として世論の批判を浴びている社会保険診療報酬の特別措置も、とうとうことしもまた延長になりましたが、これこそ不公平の最たるものではないでしょうか。その他、租税特別措置法及び法人税法による各種の引当金、準備金、特別控除、特別償却が大企業の実効税率を不当に引き下げ、大企業と中小企業の税負担を逆累進の状態にさせていることは、今回の改正でも何らの是正の措置はとられておりません。むしろ、資源対策の名のもとに、これらの特別措置が拡大さえされているのであります。
 以上、総合すれば、社会的不公平は拡大されることはあっても、縮小是正されることは全く期待できません。このことに、私は国民の名において強く抗議するものであります。(拍手)
 私は、この機会に、真の不公平是正のために、次のような税制改正を行うことを提案し、これを政府の責任において実行されることを要求して、大平大蔵大臣の所信をお尋ねしたいと思います。
 第一に、勤労所得税は、現行税法による税負担額を計算し、そこから独身者は三万円、夫婦者は四万五千円、夫婦子供一人は六万円、夫婦子供二人は七万五千円の税額控除を行い、また、給与所得控除の改正を行うことによって、標準世帯年収二百八十万円までは無税とすべきであります。二
 第二に、老人への年金給付金は、全額を無税にすべきであります。
 第三に、退職金は、二十年勤続で一千万円まで非課税にすべきであります。
 第四に、利子、配当所得、土地譲渡所得は特別措置を廃して、総合課税にすべきであります。また、社会保険診療報酬の特別措置の改正については、さしあたり、昨年末の政府税制調査会の答申案を直ちに実施すべきであります。
 第五に、キャピタルゲイン課税として、株式譲渡所得への課税は復活すべきであります。
 第六には、一億円以上の資産の保有者に対して、富裕税を新設すべきであります。
 第七には、法人税率に累進制を導入して、資本金一億円以下、所得七百万円未満の中小法人は二八%、所得七百万円以上一億円未満の法人は三七%、所得一億円以上十億円未満は四二%、そして、所得十億円以上は四七%の税率とすべきであります。第八には、大法人所有の土地の含み資産に対しては、再評価益の課税を行うべきであります。
 以上の八項目に対して、大平大蔵大臣の所信をお尋ねするものであります。
 最後に、私は、もう一度三木総理にお尋ねをいたしたいと思います。
 昭和三十年代以降のわが国の経済の異常な高度成長の時代は終わりました。インフレ政策と手を切り、安定した物価で安定した成長を実現していくことが、今後のわが国経済のあるべき目標でありますが、それには高額所得者、大資産所有者には税負担を重くし、その財源によって庶民のための福祉政策を拡充し、もって所得の再分配と福祉の向上によって、安定した経済成長の原動力をつくり出していかなければなりません。これこそ、福祉型の経済成長でありますが、そのために福祉型税制が、いまほど必要なときはないのであります。
 三木総理、あなたは、今後の日本経済の成長路線をどのように展望し、また、どのように構想されているか、あなたの経済政策の基本的な経綸をお尋ねして、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)
#22
○内閣総理大臣(三木武夫君) 高沢議員の御質問にお答えをいたします。
 第一問は、インフレの問題であります。
 私も、高沢議員の言われるように、インフレは所得の不公正を助長、拡大するものであって、インフレを抑制するということに政策の重点を置かなければならぬということは、全く同感でございます。したがって、政府がいまとっております政策も、当面の三木内閣の一番重要な施策は、インフレを抑制する、物価を安定さすということで、相当な不況の中にあって、個々には相当苦しい企業も出ておりますが、なおかつ、総需要抑制の施策、これを推し進めていっておるのも、まずインフレを抑制しなければ、ますます社会的不公正は拡大するばかりであるという政府の考え方に基づくものでございます。
 最近、物価も鎮静の傾向にありますが、まだまだやはり物価を押し上げる要因がなくなったわけではございませんので、今後、なおかつ、この総需要抑制の枠組みは外さないで、その枠組みは外さない中で個別的な対策を進めて、不況によるいろいろな被害をできるだけ少なくしようとしておるわけでございます。
 インフレに対する責任、政府の責任ではないかというお話でございましたが、やはり政府自身の政策にも反省をすべき点は多々あると思いますが、今日のインフレは、そういう政府の責任ばかりだとは申せないわけであります。たとえば、石油の値上がりを一つとらえてみましても、非常に急激に資源の輸入価格が上がったということも、世界的なインフレを呼んだ大きな原因でありますから、今日のインフレを単に、全部政府の責任だという断定には、これは実情に沿わない点がございます。しかし、今後、政府の施策については、いろいろと政府としても誤りなきを期さなければならぬということは当然のことでございます。
 また、租税負担というものが、一つの資源再分配の機能を持つということは、これは、もう所得税などにおいては累進課税でもございますし、そういう点で当然のことでございます。
 政府は、当面は、御承知のように、インフレを抑制する、これが社会的不公正の根源であるということで、インフレ抑制に重点を置きつつ、一方においては、今回の租税の改正についても、できるだけ中小所得者の負担の軽減を図るための改正を行いまして、昨年度の二兆円減税に引き続いて相当の減税を行って、できるだけ負担の公正を期しながら、社会的に弱い立場にある人たちに対して、この限られた予算の中で、政府としては精いっぱいの、社会的な福祉の増進ということに頭を置いた予算を編成したわけでございます。大抵の予算を抑えた中で、社会保障関係は一兆円増額をしたということも、政府が、弱い立場にある人たちのインフレによる犠牲を、できるだけ少なくしようという意図によるものであるわけでございます。
 また、これからの経済政策というものは、もう一遍高度経済成長の時代が来ると考えることは誤りである。その条件は失われたわけでありますから、今後は緩やかな成長、まあ世界的に見れば正常な成長であって、日本のは異常な成長であったわけですから、これからは資源とか環境とか、承るいはまた、労働条件など考えてみましても、もう一遍高度経済成長の時代に返ることはない。低成長と申しますか、世界的に言えば普通の成長ですが、そういう状態が今後続くのである。
 そうなってくると、そういう今後続いていくであろう正常な成長の中における日本の財政経済、あるいはまた税制、あるいはまたいろいろな国民生活の面でも、産業構造の面でも、これはよほど新しい出発点に立つという決心でなければ、一時的なこういう調整期であって、再びまた昔の時代が返るという考えではやっていけないので、私は、いまあらゆる問題について、新しい出発点に日本は立っておるという考え方のもとに、ただその場その場でなくして、もっと基本の問題にメスを入れようとしておることは、それは高沢さん御承知のとおりでございます。これはこれからの新しい転換期の日本のかじ取りを、誤らしめないかじ取りをいたす所存でございます。(拍手)
#23
○国務大臣(大平正芳君) 社会的不公正を是正するという立場から、大変ラジカルな御提案を含めての御質疑でございました。
 まず第一は、勤労所得税につきまして二百八十万円まで無税にすべきでないかという御提案でございます。
 たびたび本院でも御説明申し上げておりますとおり、ことし百八十三万円まで課税最低限を引き上げさせていただいたわけでございまして、これは先進国中第一位であるわけでございます。精いっぱいの努力をいたしておることについて御理解を賜りたいと思うのでありまして、一挙に二百八十万円という考えは持っておりません。
 それから、利子、配当所得、土地譲渡所得の総合課税について、いつまでにどういう可能な条件をつくりながらやるかということでございます。
 これは先ほど野田さんの御質問にもお答え申し上げたとおり、税源を正確にまだ捕捉するだけの能力を政府が持っていないわけでございますので、とりあえず源泉選択分離課税率を五%上げさしていただくことによって、五年間延長さしていただこうといたしておるわけでございます。しかし、私ども、これは決して総合課税を断念したわけではないのでございまして、鋭意そういう方向で努力をしてまいることは、あらゆる機会に申し上げておるところでございまして、今後一層御鞭撻を願いたいと思うのでございます。
 それから、老齢給付金につきまして、全額無税にすべきでないかという御提案でございます。
 ことしの改正におきまして、物価スライド方式による年金の給付水準の改定等を考慮いたしまして、老齢者年金特別控除額を六十万円から七十八万円に大幅に引き上げてございます。この結果、年金だけしかない老人夫婦の課税最低限は二百二万円まで引き上げられることになるわけでございまして、大多数の年金受給者は、非課税になるものと私は期待いたしておるわけでございます。
 退職金、二十年勤続で一千万円まで非課税という御主張でございます。
 五十年度改正におきまして、三十年勤続した場合の非課税限度を八百万円から一千万円に引き上げることを目途に特別控除額を引き上げることといたしております。したがって、退職者の大部分が、そういう御指摘のようなラインで救われることになるものと期待いたしております。
 それから、キャピタルゲイン課税として株式譲渡所得課税を復活せよという御意見でございます。
 これはいろいろないきさつがありました税制でございまして、昭和二十年代から問題になっておった税目でございますが、本来、これは譲渡益の把握はもちろん大事でございますけれども、譲渡損をどう取り扱うかという技術的なむずかしい問題もございますので、昭和二十八年に、継続的な取引から生ずる所得を除いて一般的に非課税とするという取り扱いになって今日に至ったと承っております。しかし、御指摘の問題については、なお譲渡益ばかりではなく譲渡損の取り扱い等、技術的な問題も含めて検討を要することがございますので、いま直ちに課税を復活するという考えを持っておりません。
 それから、社会保険診療報酬の特別措置の取り扱いでございますが、これはたびたび申し上げますとおり、次の診療報酬改定と同時に行うということにいたしておるわけでございます。
 その他、法人税率の累進制の御主張でございますが、これにつきましては、本院におきましてもたびたび申し上げておりますとおり、累進税制そのものは法人税にはなじまない制度である、これは所得が個人に最終的に帰属するというたてまえで考えられる税制であって、法人には本来なじまない制度であるということをたびたびお答え申し上げておるとおりでございます。
 それから、高額所得者に対する課税が甘いじゃないかという御指摘でございますが、これは、これまでの減税の過程が基礎控除、各種控除の引き上げという姿において行われてまいりましたので、下に厚く行われてまいりましたので、高額所得者は先進諸国に比べまして、わが国はむしろ高目になっておりますので、この際、特に高額所得者に対する重課を考えていないことを御理解いただきたいと思うのでございます。
 漏れたところがあるかもしれませんけれども、もし漏れたところがございますならば、大蔵委員会等で補足をさせていただくことをお許しいただきたいと思います。(拍手)
#24
○議長(前尾繁三郎君) これにて質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
#25
○議長(前尾繁三郎君) 本日は、これにて散会いたします。
    午後二時十一分散会
     ――――◇―――――
ソース: 国立国会図書館
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