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#1
第075回国会 本会議 第19号
昭和五十年五月六日(火曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第十七号
  昭和五十年五月六日
    午後二時開議
 第一 原子爆弾被爆者に対する特別措置に関す
    る法律の一部を改正する法律案(内閣提
    出)
 第二 酒税法の一部を改正する法律案(内閣提
    出)
 第三 製造たばこ定価法の一部を改正する法律
    案(内閣提出)
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 原子力委員会委員任命につき同意を求めるの件
 国家公安委員会委員任命につき同意を求めるの
  件
 日程第一 原子爆弾被爆者に対する特別措置に
  関する法律の一部を改正する法律案(内閣提
  出)
 日程第二 酒税法の一部を改正する法律案(内
  閣提出)
 日程第三 製造たばこ定価法の一部を改正する
  法律案(内閣提出)
 核兵器の不拡散に関する条約の締結について承
  認を求めるの件の趣旨説明及び質疑
    午後二時五分開議
#2
○議長(前尾繁三郎君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 原子力委員会委員任命につき同意を求めるの件
 国家公安委員会委員任命につき同意を求めるの件
#3
○議長(前尾繁三郎君) お諮りいたします。
 内閣から、
 原子力委員会委員に御園生圭輔君を、
 国家公安委員会委員に橘善守君を任命したいので、それぞれ本院の同意を得たいとの申し出があります。
 まず、原子力委員会委員の任命について、申し出のとおり同意を与えるに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○議長(前尾繁三郎君) 御異議なしと認めます。よって、同意を与えるに決しました。
 次に、国家公安委員会委員の任命について、申し出のとおり同意を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#5
○議長(前尾繁三郎君) 起立多数。よって、同意を与えるに決しました。
     ――――◇―――――
 日程第一 原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)
#6
○議長(前尾繁三郎君) 日程第一、原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
 委員長の報告を求めます。社会労働委員長大野明君。
    ―――――――――――――
 原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案及び同報告書
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
    〔大野明君登壇〕
#7
○大野明君 ただいま議題となりました原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案について、社会労働委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 本案は、原子爆弾被爆者の福祉の向上を図ろうとするものでありまして、その主な内容は、
 第一に、爆心地から二キロメートルの区域内で被爆した者に対し、新たに、保健手当を支給することとし、その額を月額六千円とすること、
 第二に、認定被爆者に対する特別手当の額について、現に当該認定に係る負傷または疾病の状態にある者に支給する特別手当の額を、月額一万五千円から二万四千円に引き上げ、当該状態にない者に支給する特別手当の額を、月額七千五百円から一万二千円に引き上げること、
 第三に、健康管理手当の支給に係る年齢制限を撤廃するとともに、その額を月額七千五百円から一万二千円に引き上げること、
 第四に、介護手当の支給対象者の範囲を拡大し、重度の障害者については、介護に要する費用を支払わずに介護を受けている場合にも介護手当を支給すること等であります。
 本案は、去る四月十六日付託となり、四月二十四日には参考人より意見を聴取する等、慎重な審議を行い、同日の委員会において質疑を終了し、次いで討論を行い、採決の結果、原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。
 なお、本案に対し、附帯決議を付することに決しました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#8
○議長(前尾繁三郎君) 採決いたします。
 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#9
○議長(前尾繁三郎君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
     ――――◇―――――
 日程第二 酒税法の一部を改正する法律案
  (内閣提出)
 日程第三 製造たばこ定価法の一部を改正す
  る法律案(内閣提出)
#10
○議長(前尾繁三郎君) 日程第二、酒税法の一部を改正する法律案、日程第三、製造たばこ定価法の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。
 委員長の報告を求めます。大蔵委員長上村千一郎君。
    ―――――――――――――
 酒税法の一部を改正する法律案及び同報告書
 製造たばこ定価法の一部を改正する法律案及び
  同報告書
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
    〔上村千一郎君登壇〕
#11
○上村千一郎君 ただいま議題となりました二つの法律案につきまして、大蔵委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。現行の酒税の税率及びたばこの定価は、昭和四十三年の改正を経て今日に至っているものでありますが、両法律案は、いずれも、最近におけるこれらの税負担の推移等に顧み、この際、その見直しを行い、あわせて、財政収入の確保に資するため、税率等について所要の調整を図ろうとするものであります。
 まず、酒税法の一部を改正する法律案は、清酒特級、ビール、ウイスキー類特級及び一級、果実酒類の一部、スピリッツ類、リキュール類並びに雑酒について二二%程度、清酒一級について一五%程度、それぞれその従量税率を引き上げるとともに、酒税の諸制度につきましても、納期限の延長制度、戻し入れ控除制度等について、所要の整備を行うことといたしております。
 次に、製造たばこ定価法の一部を改正する法律案は、製造たばこの小売定価を引き上げるため、種類別、等級別に法定されている最高価格を、紙巻きたばこについては十本当たり十円ないし二十円、刻みたばこについては十グラム当たり十円、パイプたばこについては十グラム当たり二十円ないし四十円、葉巻たばこについては一本当たり三十五円ないし百二十円、それぞれ引き上げる等、所要の改正を行うことといたしております。
 両案につきましては、物価問題等に関する特別委員会と連合審査会を開くほか、参考人より意見を聴取するなど、慎重な審査を行ったのでありますが、その詳細は会議録に譲らせていただきます。
 審査の結果、去る四月二十四日質疑を終了いたしましたが、両案に対しましては、村山達雄君外四名から、自由民主党の提案により修正案が提出されました。
 その内容は、いずれも施行期日の修正に関するものでありまして、酒税法の改正案にあっては公布の日の翌日から、また、製造たばこ定価法の改正案にあっては公布の日から、それぞれ施行することに改めようとするものであります。
 次いで、各案を一括して討論を行いましたところ、自由民主党を代表して村岡兼造君は、原案並びに修正案に賛成の旨を、日本社会党を代表して佐藤観樹君、日本共産党・革新共同を代表して増本一彦君、公明党を代表して坂口力君、民社党を代表して竹本孫一君は、いずれも原案並びに修正案に反対の旨を述べられました。続いて採決いたしましたところ、修正案並びに修正部分を除く原案はいずれも多数をもって可決され、よって、両案はともに修正議決すべきものと決しました。
 なお、製造たばこ定価法の改正案につきましては、「専売納付金と地方たばこ消費税の適切な配分に配慮するとともに、日本専売公社の公共企業体としての経営の自主性と責任体制の強化を図るよう検討すること。」等、七項目にわたる附帯決議を全会一致をもって付することに決しました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#12
○議長(前尾繁三郎君) 両案につき討論の通告があります。順次これを許します。佐藤観樹君。
    〔佐藤観樹君登壇〕
#13
○佐藤観樹君 私は、日本社会党を代表して、ただいま御報告のありました酒税法及び製造たばこ定価法の一部を改正する法律案及び同修正案に対し、反対の討論を行います。
 三木内閣が、もし後世の政治に何らかの名を残すとしたら、それは社会的不公正の是正という政治目標を目指したためでありましょう。しかし、後世の歴史家は、政治スローガンゆえにその内閣を評価するのではなく、そのスローガンがどれだけ実行され、国民にいかほどの幸福をもたらしたかで評価します。三木内閣成立以来五カ月、社会的不公正の是正は単なるスローガンにすぎず、後の政治史にもただ一行、「三木内閣ありき」と、歴史の行間に消え去ってしまいましょう。(拍手)
 毎年、毎月打ち続く物価高の中で、国民の実質賃金は下がっていき、生活のレベルダウンは減税で目減りを、税金はこのインフレでもうけた人からと望むのは、国民の当然の願いであります。しかるに、百円のたばこは百五十円にと平均四八%の大幅値上げ、二百円ビールの出現など、酒類は平均二二%の値上げなどは、このような国民の切なる願いをないがしろにするばかりか、国民大衆を犠牲にして国家の財源を徴収するという、きわめて政策的にも安易な、悪逆非道な政治姿勢と断ぜざるを得ません。
 政府は、口を開けば、社会福祉も減税もやりましたと言います。しかし、本年度の所得税減税は一千九百五十億円という超ミニ減税、一方、たばこと酒の値上げによって、ざっと三千百億円の増税、何と減税額の一・五倍の増税が行われているのであります。あめにむち、泣き面にハチとは、まさにこのようなことを言うのであります。しかも、たばこや酒は所得に関係なく、いや、むしろ、低所得の人ほど税金の負担率が相対的に高くなるという逆進性を持った悪い税金です。
 私たちは、国民に必要な福祉や、生活安定や減税の財源は、高度成長政策十五年間にもうけた大企業や土地所有者、高額所得者から取り、インフレの被害者である国民に広く、あまねく潤すのが政治の任務だと考えます。
 私たちが長年主張してきたように、不公平税制の代表たる租税特別措置法を根本的に洗い直し、大企業に対する課税を強化し、土地の再評価税、高額所得者に対する富裕税の創設などによって、今回の増税額の数倍もの財源が容易に生み出せるのであります。インフレでもうけた者から税を取り、インフレの被害者にひとしく分け与える、これこそ社会的不公平の是正であるはずです。このような税の再配分機能を十分発揮させてこそ、現代最大の課題であるインフレに対し、有効に対処し得るのであります。
 このような財源問題としての誤りと同時に、たばこ、酒などの間接税が持つ逆進性について、インフレ下だけに特に触れておかなければなりません。
 つい先日、四十九年度の所得番付が発表され、一位の人は年間所得が三十五億円、そして、相変わらず土地成金が譲渡所得の分離課税という悪税制の温床の中で、億万長者として輩出しています。一方、勤労所得者の年平均所得は約二百万円前後であり、長いインフレの結果、ますます所得の格差は拡大をしています。
 このようなときに、所得番付に上がるような億万長者も、老人年金をもらっているお年寄りにも、生活保護を受けている人さえも、酒やたばこの税金はまさに均一に、平等にかかるのであります。
 これは真の平等ではなく、悪平等であります。いや、むしろ、三十五億円の億万長者の百円のたばこより、年間二百万円の、所得の少ない人の百円のたばこの方が、相対的には重い税負担となっております。
 しかも、ダイヤモンドにかかる物品税は一五%だというのに、たばこには平均五四%、清酒一級が二六・六%、ビールは四一・九%、ウイスキー一級は三二・六%と、いずれもダイヤモンドよりもはるかに高い税率がかけられています。これこそ大衆収奪の見本と言うべきであります。私たちは、これを決して認めるわけにはまいりません。
 第三に、物価問題との関連であります。
 物価抑制が三木内閣の経済政策の第一の柱であることは、前内閣同様であるはずです。政府は、たばこの値上げによって消費者物価指数への影響を〇・七と軽く言っておりますが、立て続く物価高の中で国民のインフレ心理は過敏になっており、特にたばこ喫煙者が成人の八割、三千七百万人の多きにわたっていることを考えますと、その影響ははかり知れないものがあります。
 政府は、口を開けば、本年三月の物価上昇は対前年比一三%におさまったと誇大に宣伝し、春闘抑えに巧みに利用しています。しかし、早くも四月の東京の消費者物価指数は、三月に比べて二・五%とはね上がり、季節調整をしたとしても、一昨年以来の狂乱物価に近い物価上昇率になっています。このように、物価の上昇は、先行き決して予断を許しません。しかも、十月には郵便料金の引き上げが予定され、今後、米価、国鉄、私鉄、NHK、電気、ガスなど、国民生活に切り離せない公共料金が、メジロ押しに値上げを待っています。
 このような値上げ攻勢と考え合わせますと、政府が、たばこ、酒の値上げを先頭に、公共料金主導型の物価再上昇の口火を切ろうとさえしているのであります。歴代自民党内閣の経済政策の失敗から引き起こされた物価高を、誤った財源捻出のために物価抑制を逆戻りさせるような、財政優先の政策を断じてとるべきではありません。
 しかもであります。第四に、専売公社は大赤字というなら、まだ国民も考えようがありましょう。大赤字どころか超黒字。四十九年度には一兆二千五百億円のたばこを売り上げ、六千七百八十億円の益金をかせぐ見込みとなっています。四十八年度一年間で最大の所得を上げた民間企業は、かの松下電器の一千八億円ですから、専売公社のもうけは約七倍という、その超黒字ぶりがわかります。
 このような超黒字なのに、何ゆえ値上げをするのか。これは大蔵省と専売公社の覚書によって益金率を六〇%に決め、これを割ったから値上げと言っているのであります。いまだに五四%の高率を維持しており、単に沿革から見て益金率が下がったと言われても、低過ぎるという何ら理論的根拠がないまま、国民を煙にまいて税を吸い上げていくのを、私たちは黙って見ているわけにはまいりません。収入金額から見ましても、四十三年には四千六百四十四億円、四十七年には六千六百六十二億円、四十八年には六千九百四十五億円と、着実に伸びております。
 酒類についても、四十三年には五千七十九億円、四十七年には七千百五十九億円、四十八年には何と八千二百二十六億円と、すばらしい伸び率です。
 このような実績から見ても、たばこを五割弱、酒を二割強というような大幅な値上げを国民に押しつける、何ら積極的な理由は見つからないのであります。
 しかも、税制調査会にも諮らず、専売事業審議会でも十分討議されず、国民の声も聞かず、自民党と大蔵省と専売公社が密室で話し合い、単に財源問題としてのみ考えられた押しつけ値上げを、決して認めるわけにはまいりません。
 以上、述べてきましたように、三木内閣初の公共料金値上げ法案は、全く不公平是正を掲げる政治姿勢からいっても、インフレや物価対策に対する政策論からも、国民にはとても納得のいくものではありません。三木内閣成立以来五カ月、国民のために何一つ実行された政策はなく、むしろ不公平の拡大を推し進めようとする三木内閣は、夏の朝露のごとく、ただ消え去るのが運命であります。
 両修正案につきましても、原案に反対するという基本的な立場に立って、明らかに反対の意向を表明せざるを得ません。
 むしろ、国民に一条の光は、わが社会党を中心として、野党の激しい抵抗の中で政府の五月一日実施がおくれ、国民に要らざる負担をかけなかったことであります。
 願わくば、参議院段階においても公共料金値上げ反対の集中砲火を浴び、この悪法がついえ去ることを期待して、反対討論を終わります。(拍手)
#14
○議長(前尾繁三郎君) 奥田敬和君。
    〔奥田敬和君登壇〕
#15
○奥田敬和君 ただいま議題となりました酒税法及び製造たばこ定価法の両改正案並びに両案に対する修正案について、私は、自由民主党を代表して、賛成の意見を表明いたします。(拍手)
 昭和五十年度の日本経済は、従来の高度成長下で成り立っていた一つの均衡が崩れ、その後に、次の新たな均衡へと向こうべき大きな移り変わり期にあります。つまり、安定成長のレールの上に乗せるための調整期間でもあります。したがって、政府は、五十年度における財政運営の基本方針を予算規模の圧縮と国債発行額の縮減に置き、昨年度に続いて抑制的な基調を堅持したことは、この意味で当然の措置と言えるのであります。
 しかしながら、昭和四十九年の引き締め政策の結果として生じた経済の冷え込みは著しく、不況の浸透による税収の伸びの鈍化は予想以上で、四十九年度において、すでに八千億の税収不足が見込まれるという最悪の事態に立ち至っており、さらに五十年度は、自然増収どころか、自然減収が予想されるという厳しい財政環境に当面いたしております。
 このような歳入欠陥の解決策としては、景気回復のテンポを速めて税収を確保するか、あるいは公共料金を引き上げるかであります。これらの手段がとれなければ、赤字国債の発行に逃げ込むかでありますが、安易な国債発行は財政インフレの要因となり、財政の硬直化をさらに増大する結果を招くおそれがあるのであります。この際、国民にも、ある程度の税負担を分かち合うという理解ある協力を求めざるを得ないのであります。
 今日、酒、たばこの租税負担が、所得や物価水準の変動に照らし、相当低下を来していることは事実であり、その見直しを行うことは、もはや避けることのできない財政段階に来ていると思われるのであります。
 今回の改正で、たばこ二千五百億、お酒千七十億の増収を見込んでおりますが、もちろん、先ほど佐藤議員が指摘したごとく、間接税の持つ逆進性についてはいろいろな論議のあるところであり、所得の低い人ほど税負担が重くなるという矛盾に対しても、われわれは謙虚に耳を傾けてきたわけであります。
 それだけに、専売当局に特に要望したいのは、大衆が購入しやすい百円たばこの新銘柄発売などを早急に実施するなど、きめ細かい措置を引き続き検討していただきたいと思うわけであります。
 もちろん、朝日が据え置かれ、ゴールデンバット、しんせい、エコーの大衆たばこの値上げ幅を最低に抑えた点の評価は、別途いたしたいと思います。
 また、すでに相当量の買い占めが行われており、人気銘柄は町から姿を消すといううわさもありますが、値上げと品不足のダブルパンチを消費者に与えないよう、特に当局に要望いたしておきます。
 また、清酒やウイスキー類の二級酒、しょうちゅう、合成酒など、いわゆる大衆酒を今回の増税対象から除外したことは、物価面からも、またよい品質の地酒奨励のチャンスでもあり、地方酒造業の振興といった面の配慮もあり、私は、十分な評価を惜しまないものであります。
 最後に、委員会の論議にもあったように、税負担の公正をめぐる問題であります。
 見解はいろいろ分かれるところでありますが、私は、高福祉は高負担を伴うものであり、公共部門の効率的運用を前提といたしましても、国民の租税、保険料負担の増加の必要を認めることは当然だと思います。
 公共料金抑制策が、一般財政の経費の膨張をもたらす、硬直化要因の一つであることは事実であります。これら貴重な財源を、公共料金抑制策のために使うのと、社会保障の充実のために使うのと、どちらが公正であるかという問題も発生しておるわけであります。これまでのような、ただなし崩しの公共料金抑制策は、根本的に真剣に再検討する必要があろうかと思います。
 福祉が、本来連帯の精神を基盤とするものでなければならない以上、老人や心身障害者に対する無料化の実施によって生ずる負担は、公共料金のある程度の追加によって賄われてもよいのではなかろうか。国民の間でこの種の連帯感を育てることは、これからの大切な政治課題であろうかと思います。租税負担率をほとんど引き上げることなしに、住民福祉の大幅な充実は、財政面から必ず行き詰まる。高福祉低負担の財政政策が可能だという幻想を国民に抱かすことは間違いだということを、私は、特に強く指摘いたしたいのであります。(拍手)
 以上、私は、両案並びにこれに対する修正案についてそれぞれ賛意を表明して、討論を終わります。(拍手)
#16
○議長(前尾繁三郎君) これにて討論は終局いたしました。
    ―――――――――――――
#17
○議長(前尾繁三郎君) 両案を一括して採決いたします。
 両案の委員長の報告はいずれも修正であります。両案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#18
○議長(前尾繁三郎君) 起立多数。よって、両案とも委員長報告のとおり決しました。
     ――――◇―――――
 核兵器の不拡散に関する条約の締結について
  承認を求めるの件の趣旨説明
#19
○議長(前尾繁三郎君) 核兵器の不拡散に関する条約の締結について承認を求めるの件について、趣旨の説明を求めます。外務大臣宮澤喜一君。
    〔国務大臣宮澤喜一君登壇〕
#20
○国務大臣(宮澤喜一君) 核兵器の不拡散に関する条約の締結について承認を求めるの件につきまして、趣旨の御説明をいたします。
 核戦争が人類にもたらす惨害にかんがみ、核軍縮を進めることが人類の一致した希望であることは言をまちません。他方、今日の世界にあって、直ちに全面的核軍縮を実現することが不可能であることもまた現実であります。各国は、この現実の中で、核軍縮を可能なものから段階的に実現するために、じみちな努力を重ねてまいりました。一九六三年の大気圏内、宇宙空間及び水中における核実験を禁止する条約、一九七一年の核兵器及び他の大量破壊兵器の海底における設置の禁止に関する条約等は、この努力の成果たるものであります。
 核兵器の不拡散に関する条約も、核軍縮推進の一歩として、国連及び十八カ国軍縮委員会において検討、作成されたものであり、核兵器を有する国が増加するに従い核戦争の危険が増大するとの認識に立ち、核兵器の拡散を防止することを目的とするものであります。
 すなわち、この条約は、核兵器をすでに保有している国が、核兵器その他の核爆発装置またはその管理をいかなる者にも移譲しないこと、及び核兵器を保有していない国が、核兵器その他の核爆発装置またはその管理を受領せず、また、核兵器その他の核爆発装置を製造その他の方法によって取得しないことを主たる内容としております。核兵器を保有するすべての国が核兵器の移譲を行わず、かつ、核兵器を保有していないすべての国が核兵器を受領せず、かつ、取得しないならば、核兵器を有する国の数が増加することはありません。この条約は、この段階を実現し、もって一層の核軍縮への道を開こうとするものであります。
 この趣旨から、この条約には、締約国が核軍縮及び全面的かつ完全な軍縮条約に関して誠実に交渉を行うことが規定されております。また、この条約は、非核兵器国がその義務の履行の確認のみを目的として保障措置を受諾することを定め、また、締約国は、保障措置が適用されない限り、核物質及びその利用のための設備、資材をいかなる非核兵器国にも供給しないことを定めております。
 他方、原子力は、核兵器の製造に利用されると同時に、いまや重要なエネルギーとして平和的に利用され、かつ、利用の必要が増大しているものであります。この条約の定める保障措置等が、この原子力の平和的利用を妨げるものとなってはならないことは当然のことであります。この条約は、右の点を勘案し、締約国が原子力の平和的利用の権利及びそのための設備、資材等の交換の権利を有する旨を確認するとともに、締約国が原子力の平和的利用の一層の発展のために協力することを定めております。
 政府は、核軍縮の一歩としてのこの条約の精神に賛同し、一九七〇年二月三日この条約に署名いたしました。署名に当たり、政府といたしましては、右のようなこの条約の内容にかんがみ、批准に当たっては、核軍縮の進展及び非核兵器国の安全保障の問題に注目するとともに、わが国が締結する保障措置協定の内容が、他の国に比し不利なものとなってはならないことを強調いたしました。
 軍縮の進展に関しましては、政府は、各国が二国間及び国連、軍縮委員会等の場において行ってきた努力とその成果に、それなりの評価を下すことができるものと考えております。軍縮の推進には各国の息の長い努力が必要でありますので、政府といたしましては、引き続き各国に強く呼びかけるとともに、軍縮委員会等を通じ、その実現に寄与していきたいと考えております。
 非核兵器国の安全保障の問題に関しましては、近年、核大国間の対話を中心に、国際関係安定化のための努力が行われていることを評価し得ると考えますが、政府としては、この条約にできるだけ多くの国が参加することを確保するためにも、非核兵器国の安全保障の確保が重要であり、引き続きこの問題に強い関心を払っていきたいと考えております。
 政府は、わが国の安全確保のためには、米国との安全保障体制を堅持しつつ、わが国みずからも有効な防衛力を保持していくことが最善の道であると考えております。保障措置に関しましては、政府が国際原子力機関との間で行いました予備交渉の結果、本年二月協定案文が作成されましたが、この結果、わが国が締結する保障措置協定の内容は、他の締約国が個別的に、または他の国と共同して締結する保障措置協定の内容に比し、実質的に不利な取り扱いとならないことを確保したと考えております。
 世界平和の実現、そのための軍縮の推進は、わが国が強く希求するところであります。軍縮を世界に訴えるためには、まずみずからが、その実現のために貢献し、かつ、実践をもってその姿勢を示さなければなりません。また、わが国が核兵器を受領、取得しないことを国際的に約束することは、わが国の安全保障上特に重要なわが国周辺の国際関係の安定に、一層の貢献を行うこととなりましょう。さらに、われわれの生活において、原子力の平和的利用の占める重要性がますます強くなることが予想されている現在、この分野における国際協力に参加する権利を確保しておくことはきわめて重要なことと考えられます。これらの諸点からして、わが国がこの条約を締結することは、わが国の安全と繁栄のために大きく資するものと信じる次第であります。
 以上が、核兵器の不拡散に関する条約の締結について承認を求めるの件の趣旨でございます。(拍手)
     ――――◇―――――
 核兵器の不拡散に関する条約の締結について
  承認を求めるの件の趣旨説明に対する質疑
#21
○議長(前尾繁三郎君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。小林正巳君。
    〔小林正巳君登壇〕
#22
○小林正巳君 ただいま御提案のありました核兵器の不拡散に関する条約について、私は、自由民主党を代表し、三木総理並びに宮澤外務大臣に若干の御質問をいたしたいと思うのであります。
 政府が核防条約に署名してから五年の歳月がたち、その間、この条約の批准の可否をめぐって活発な論議が行われてまいりました。この条約の持つ重要な意味合いからして、これをあらゆる角度から検討することは当然であり、その結果、政府が、わが国の国益の見地から、これらの論議を総合的に判断して、条約の批准を求められたことを多とするものの一人であります。
 この条約を批准することは、すなわち、核を保有する権利を将来にわたって放棄し、わが国が平和愛好国に徹して、世界平和の維持に貢献することであります。しかし、将来にわたって核兵器を保持しないことに関しまして、一体、わが国の安全保障をどうするかは、日本の国民にとって最も重要な問題ではないでしょうか。
 言うまでもなく、わが国はアメリカと安全保障条約を結んでおります。そして、いわゆる核のかさのもとでわが国の安全を確保しているのが現状であります。歴代米大統領は、いかなる代償を払っても同盟国を助けるという約束を繰り返してまいりました。しかし、インドシナ戦争の終結の際、アメリカ人とその家族の引き揚げに大わらわのありさまを見ておりますと、いざというとき、アメリカは本当に頼りになるのかどうか、きわめて疑問視せざるを得ません。
 アメリカは世論の国と言われております。いままでに友好国が武力侵攻を受けたとき、アメリカが守るべきかどうかとの米国内での世論調査において、日本を守るべしよりも、日本を守る必要はないとの答えの方が高い数字を示しております。南ベトナムで見られるごとく、アメリカは、世論が冷たければ、抽象的な条文や、そのときの政府の約束を果たして守るのかどうか、率直なところ、国民は頼りないという印象を受けたのではないかと思うのであります。
 このように見ると、核の攻撃に対してアメリカは日本を守ってくれるという核抑止力を信仰するのみで、果たして日本の安全保障が確保され続けるとお考えでしょうか。むしろ、期待し得ないのではないかとの意見も少なくありません。
 また、アメリカのアジア政策は、過去一世紀間における最大の失敗と評されております。その政策に関係してきた日本としても、深く反省し、新しいアジア外交への第一歩を踏み出さねばならない時期に来ていると思うのであります。
 このような激動する国際情勢のもとにおいて、アメリカの核のかさにのみ日本の安全保障を求め続けることは、わが国独自の外交政策を進める上から、障害になるのではないかという意見もあります。しかし、だからといって、反射的にわが国自身の核武装の道を残しておくとか、防衛力をむやみに増強しようというのは、平和国家の平和国家たる発想とは申せません。むしろ、戦争の要因をつくり出さないため、わが国として最大限の外交的努力を払うことこそ、わが国安全保障政策の根幹としなければなりません。
 これが歴史の教訓に学ぶ態度ではないかと思うのでありますが、三木総理の、安全保障についての三木哲学を含めて、これらの諸点に対し、御意見を伺いたいと思います。
 歴代政府は、非核三原則という基本政策を高く掲げております。一方、さきに申しましたごとく、わが国は、アメリカの核のかさのもとにおいてわが国の安全を確保しております。そこで、もしわが国が危急存亡の危機に直面した場合、わが国の安全を確保する上から、非核三原則のうち、いわゆる持ち込ませずをたな上げし、アメリカの核持ち込みを許すこともあり得ると考えてよろしいのでしょうか。それとも、国是とも言うべきこの原則を、いかなる場合も断固貫き通す決意でありましょうか。三木総理の明快なる御答弁を求めたいと思います。
 次に、この条約によって核兵器の拡散が防止し得るかということであります。
 昨年五月、インドによる地下核実験は、この条約が、第六番目の核兵器保有国の出現を防止し得なかったことを如実に示しております。現下の国際社会において核兵器を保有することは、その国にとってマイナスにこそなれ、決してプラスになるものではありません。しかし、自国の権威向上とか、他国への対抗意識によって、潜在的核保有国の間に核拡散の危険が存在することもまた事実であります。
 そこで、わが国がこの条約を批准することにより、今後核兵器の拡散を防止し得る力にどこまでなり得ると考えておられるのでしょうか。もし、不幸にして第七番目、第八番目の核保有国が出現した場合、わが国としてどのように対処されるのか、外務大臣の御所見を伺いたいと存じます。
 さて、この条約をめぐる最大の問題は、米ソ両超大国が、依然として質の改善という核兵器開発競争を続けていることであります。この核軍縮こそ、わが国のごとき非核保有国の安全と表裏一体をなすものであります。政府としては、核軍縮の進展が、この条約を批准する条件の一つであったはずではありませんか。今回、この条約の批准に踏み切られた中に、核軍縮の進展があったと政府が判断された根拠を承りたいと思います。
 米ソの戦略兵器制限交渉は、軍備を増強し、それを管理するという、いわば軍備管理ではないでしょうか。とても軍縮の名に値するとは申せず、今日まで米ソ両国の核軍縮に関する努力はなされていなかったと言わざるを得ません。今後、唯一の被爆国としてのわが国が、国連や軍縮委員会の場で長期的に主張し続ける意義はきわめて大きいのでありますが、残念ながら、核を国家の安全保障と世界戦略の根幹に据えた米ソに対し、すぐに成果を期待し得るものとは思えません。
 そこで、政府は、米ソなど核保有国に対し、核不使用宣言を出させるなどの具体的な措置について、外交努力を進めるべきであると思うのでありますが、総理の御所見を願いたいと思います。
 わが国がこの条約の批准をおくらせてきた最大の要因は、原子力の平和利用の査察の平等性が挙げられておりました。今回、国際原子力機関との間で署名された保障措置協定は、日本の希求した平等性を十分確保されたと判断されているのでしょうか。
 二十一世紀は原子力の時代と言われております。エネルギー資源の乏しいわが国にとって、原子力の平和利用に依存する度合いはますます大きくなります。その平和利用は無限の可能性があるとされております。
 しかしながら、わが国は世界唯一の被爆国であると同時に、核アレルギーのきわめて強い国でもあります。この核アレルギーが原子力の平和利用の分野にまで及び、それを阻害するものであってはならないはずであります。政府は、その安全面を中心とした責任体制の強化を図り、国民の信頼が得られるようにすることはもとよりでありますが、同時に、原子力の平和開発にとって、こうした必要以上の核アレルギーを取り除く努力こそ、政府の責任であることを指摘いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣三木武夫君登壇〕
#23
○内閣総理大臣(三木武夫君) 小林君にお答えをいたします。
 小林君の第一問は、わが国の核政策、日米安保、外交政策、非常に広範な問題を提起されましたので、総括的にお答えをいたしたいと思います。
 小林君も御承知のごとく、今日は国際的に核拡散の危険にさらされておることは事実であります。もし核の世界戦争が起これば、人類は共滅の運命にあることは明らかであります。人類の生存を維持するためには、どうしても核戦争は防がなければならぬ。そういう意味からして、人類を核戦争の危険から救うという点について、日本の発言力というものは、私は非常に重要であると考えておるわけであります。
 何となれば、日本は非核三原則によって、みずから核兵器開発の能力を持ちながら、それを放棄する決意をした国である、また、世界唯一の被爆国民として、その悲惨な状況を身をもって体験した国であるということであります。
 日本の発言が国際的な説得力を持つためには、日本の立場があいまいであってはならぬということである。日本が明確でなければならない。すなわち、一方において核軍縮、核不拡散を唱えながら、一方において核のフリーハンド論があったのでは、国際的な説得力は生まれてこない。そういうことで、日本の立場が非常に明確であり、発言に信憑性があるということが、日本の国際的発言を重からしめるゆえんだと思うのであります。
 したがって、日本は、調印の場合に日本が問題として取り上げた三点について、一応納得のいく方向が認められたこの際、この条約を批准して、そして非核三原則を堅持して、人類を共滅に陥れる危険のある核戦争防止に積極的に努力することが、平和国家としての日本の使命であると私は信ずるものでございます。
 核兵器が全廃されて、国連が全世界的な安全の保障の役割りを果たすことが理想ではありますが、現実はまだそこまでいってない。
 その現実の世界はどういうことになっておるかと言えば、集団安全保障によって、もちろんその中には、当然に核の脅威に対しての保障も含まれておりますが、一国の安全を図っておるというのが今日の現状であります。一国だけで自国を防衛できる国はありません。
 こういう見地に立って、日本は日米安保条約を結んでいるのであって、これを堅持していく方針であります。また、日米安保条約については、アメリカは、繰り返し日本に対して、安保条約における義務を誠実に履行すると約束しておりますので、この点については、われわれは信頼をおくものでございます。
 また、そのことによって日本の独自の外交政策というものの推進に障害になるのではないかという御懸念がおありのようでありますが、しかし、北大西洋条約などの例をとってみましても、その加盟国の西ヨーロッパの場合をごらんになっても、日本と同じような立場であって、私は、そういう懸念はないと考えておるのでございます。
 また、安全保障の問題については、単に軍事面だけでなくして、世界各国との友好関係の増進であるとか、平和を崩す条件を一つ一つなくしていく平和的な努力であるとか、国内においては、国内における不平不満というものをできるだけ解消して、そうして国内における国民生活の安定を図るとか、安全保障というものを非常に狭い軍事面だけに限るということは、これは私は片手落ちだと思うのでありまして、そういう外交、内政、また軍事面、これを全体として安全保障を考えるべきものだと考えております。
 また、非核三原則について、今後も貫き通すのかという御質問でございます。
 非核三原則は政府が従来堅持してきた方針であり、昭和四十六年の十一月、国会の決議もありまして、三木内閣がこれを堅持していくことは当然でございます。また、非核三原則について弾力的運用は考えておりません。
 また、最後に、米ソ等の核保有国が、核兵器を使用しないという宣言を行ってはどうかという趣旨の御質問がございましたが、無論こういう宣言が行われれば結構ではございますが、かかる宣言が実効性のあるものになるためには、関係諸国に明確な合意がなければならぬことは言うまでもございませんが、今日の国際環境は、残念ながらまだまだそこまではいっていないということでございます。
 お答えをいたします。(拍手)
   〔国務大臣宮澤喜一君登壇〕
#24
○国務大臣(宮澤喜一君) 私からお答えを申し上げるべき点は三点でございます。
 まず最初に、インドが第六番目の核保有国になったということにつきましてでございますが、このよって来るところを尋ねますと、インドが、本条約ができますかなり前の時期に、カナダから実験用の原子炉を協定によって取得をいたしまして、その後、最近になりまして、自国産の天然ウランを使いまして、平和核爆発と称するものを行った、こういうふうに考えられるおけでございます。
 本条約ができましてから後は、そのような原子炉、あるいは原子燃料等を提供いたします国は、この条約の加盟国であります限り、厳格な保障措置協定を結び、しかも平和実験と軍事目的のための実験を分けるということを認めておりませんので、この条約のもとでは、そのようなことが起こり得ないというふうに考えられます。
 もちろん、その場合にありましても、完全に自主技術によって、自国の燃料を使いまして、資源を使いまして行うということは、理論的には考え得るわけでございますけれども、この条約に加盟いたしました国、最近は西独、イタリア等のユーラトムの諸国、あるいはカナダ、スウェーデン、豪州、それにわが国が加盟いたしますと、わが国もでありますが、これらの比較的技術の高い国々がすべて加盟国となってまい0ますと、そのような自主技術による開発につきましても、ただいまのような条件がかかるわけでございますので、インドのようなケースは、恐らく今後かなり厳格にこの条約のもとで統制されると考えるわけでございます。
 ソ連、アメリカにつきましては、加盟国でございますから、技術、原料の提供者として、そういう条件のもとにあることはもちろんでありますが、フランスは、加盟国ではございませんけれども、これと同じような条件を事実上守っておるように考えておりますので、そのように理解をしてよろしいのではないかと存じます。
 第二点は、核軍縮の進展の問題でございますが、この条約ができましてから後、米ソ間に核軍縮について幾つかの大きな条約、六つほどであると思いますが、成立いたしました。また、国連の場でも海底非核化条約が七一年に成立しておりまして、このような核軍縮についての条約、協定が数多く見られるようになりましたのは、この条約ができましてから後のことでありましで、この条約が持っております効果と考えてもよろしいのではないかと存じます。
 しかし、このような軍縮というのは、もとより各国間の安全保障に非常に密接に関係いたしますから、私どもが考えておりますほど急速に、思うほど進んでいないということは認めざるを得ませんけれども、やはり息の長い努力が必要なものであるという意味では、過去に起こりましたことを、ある程度評価をしてもよろしいのではないかというふうに私どもは考えております。
 最後に、いわゆる査察の平等性の問題でございますが、これは御承知のように、今回できました保障措置協定がユーラトムと同等の待遇になっておるということ、しかし、万一その後ユーラトム等に予想しなかったいわゆる安易な、あるいは楽な査察方法が実施の段階で行われることがあるかもしれないと考えましたので、その場合に備えまして最恵国待遇の条項を入れておきました。これによりまして、わが国が不利に援われることは、万々ないであろうというふうに考えておる次第でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#25
○議長(前尾繁三郎君) 河上民雄君。
    〔河上民雄君登壇〕
#26
○河上民雄君 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となりました核兵器の不拡散に関する条約の批准に関し、その主要な問題点について、三木総理並びに関係閣僚に質問をいたしたいと存ずるものであります。
 ことしは、人類最初の原爆が広島、長崎に投下されてから三十年、核兵器の絶滅を訴えるストックホルムアピールと、それに基づく世界的な平和運動が起こってから二十五年、ビキニの核実験によって日本の漁船がその放射能に被災し、無線長久保山氏が死去せられて、わが国民に大きな衝撃を与えてから二十一年になります。
 その間、わが党は、わが国民の悲願を背景に、いかなる国の核保有、いかなる国の核実験にも反対してまいりました。しかし、現状は御承知のとおり、米ソの核軍備競争は進展し、核保有国の数は増大する傾向にあり、世界の世論にもかかわらず、核兵器の完全廃絶の道遠しの感を深くするものであります。
 本条約は、一九六八年国連総会の承認を得、一九七〇年に発効を見たものでありますが、その内容は、核兵器の不拡散ではなく、核保有国の不拡散を目指したものであり、米ソ核体制の固定化、核保有国と非核保有国との不平等性は否めないものがあります。
 しかし、それにもかかわらず、本条約が米ソ不戦と核拡散防止に若干の効果があるとするならば、また、世界で唯一の被爆国民として、核を持たず、つくらず、持ち込ませずの日本国民の決意を世界に示す機会であるとするならばと、前向きに検討してまいりました。
 しかるに、政府は、さきに宮澤外相をアメリカに派遣し、アメリカ政府との協議により、さらに、その後の自民党の党議によって、アメリカの核のかさを中心とする日米安保体制の強化と、非核三原則の弾力的運用を条件として、本条約批准に態度決定をいたしました。これは、まさに日本国民の悲願を裏切り、世界の世論を瞞着するものであると言わねばなりません。(拍手)
 日本政府は、一九七〇年二月三日に本条約に署名しながら、財界と自民党内の日本独自の核兵器開発をもくろむ反動的勢力の「将来にわたって自分の手を縛るな」といういわゆるフリーハンド論にあって、今日まで五年におたり批准の手続をとることを渋ってきました。
 日本政府は、署名に当たって、核軍縮の進展、非核保有国の安全保障、平和利用における査察の平等性の三点を挙げて批准の条件としていましたが、表面の理由はともかく、本音は、財界並びに自民党内のフリーハンド論にあったことは明らかであります。大きな核潜在力を持ち、他方、非核三原則を掲げている日本が今日まで批准を渋っている態度は、世界の人々から、いかにも底意のある危険な態度に映じ、日本の国際的信頼性を失わせてきた大きな原因であります。
 今日、一転して批准を求めてきた真意はどこにあるのか、署名のときの三条件が満たされたから批准に踏み切ったのか、日米安保体制強化と非核三原則の弾力的運用を付帯条件とするのは、形を変えたフリーハンド論ではないのか三木総理の明確なる御答弁をいただきたい。(拍手)
 政府は、この条約の批准を求めるに当たって、わが国の安全保障を何に求めているのか。もし、日米安保条約であれば、それはアメリカの核のかさを前提とし、先般のラロック証言によって、アメリカのわが国への核持ち込みが明らかになったように、政府が唱え、国会が決議した非核三原則、持たず、つくらず、持ち込まずのうちの持ち込まずと完全に矛盾するものであります。この矛盾な政府はどうするつもりか」三木総理、あなたはさきに、平時のみならず、有時においても非核三原則を堅持すると答弁したが、その決意は変わらないか。
 政府は、核軍縮の進展についてどのような評価を与えているのか。SALT交渉は、核軍縮ではなく、核管理の進展であり、いわば高値安定ではないかとの批判に、政府はどうこたえるつもりであるか。
 また、政府は、平和利用開発の査察について、ユーラトム並みの保障協定ができたから、本条約批准の条件ができたとしているが、平和利用と軍事利用の境界が明確でないことから見て、この態度はきわめて危険であります。緩い査察は、平和利用についても、野放しの平和利用という新たな危険を生むものであり、政府のように喜ぶことのできぬ問題があることを指摘せねばなりません。核拡散防止条約を盾にして、いままでの原発に関する秘密主義が一層強化される危険すらあります。平和利用に関する自主、民主、公開の三原則を損なうことは許されません。その厳守についての政府の態度を伺いたい。
 核問題については、広島、長崎、ビキニと、三たび核兵器に上る悲劇的な経験を持つ日本国民こそ、最も率直に、最も勇敢に発言する権利があり、義務があると思います。
 ところで、世界に唯一の被爆国政府として、政府はこれまで核軍縮にどれほどの努力をなしてきたのか。歴代の自民党政府は、みずからのこのとうとい権利と義務を放棄し、日米安保体制という力の政策に加担し、アメリカの核のかさに依存して、その核支配体制を積極的に支持してきました。
 いまインドシナ半島における情勢の急変は、アメリカの力によるアジア政策と、これに無批判に追随してきたわが国歴代政府の外交の破綻と、そのもろさを白日のもとにざらしております。つい先日まで日米両国政府がアジアにおいて自己の政策の正当化のために挙げてきたあらゆる前提は、いま崩れつつあります。そのときに、核拡散防止条約批准に際して、アメリカの核政策に依存する日米安保体制の強化を条件とすることは、誤りをさらに重ねるものであり、本来、核軍縮を目的とすべきとの条約の精神に反するものであります。三木総理は、この点をどうお考えになるのですか、お伺いしたいところであります。
 核時代と言われる今日とそ、日本国憲法の平和、非武装の精神を現実に生かし、世界唯一の被爆国民としての使命と責任を果たす努力を真剣に積み重ねることが必要であります。そのためには、いかなる国の核にも反対し、あらゆる機会に、核軍縮、全面核兵器の廃棄に向かって積極的な努力を展開すること、一点の疑念を残さない誠意を披瀝することが、日本のとうとい現代的使命であると信ずるものであります。(拍手)
 わが党は、以上のような見地に立ち、本条約の批准を求める件の提案に反対し、まず、それに先立ち、次のような具体的な提案をいたすものであります。
 一、持たず、つくらず、持ち込ませずの非核三原則と平和憲法の精神に基づいて、日本の非核化宣言を今国会で決議すべきであります。
 一、この非核化宣言を検証し、アジアの平和確保に貢献するために、日本政府は、核兵器の配備、保有、実験、攻撃を禁止するアジア・太平洋地域非核化地帯の設置を実現するよう関係国に働きかけるべきであります。当面、今国会においては、同地帯の設置に努力する決議を採択し、同時に、その実現のために、そのアジア・太平洋地帯非核化国際会議を開催するように呼びかけるべきであります。
 一、核保有国の核兵器全廃の第一歩として、地下核実験禁止協定と核不使用協定の締結を核保有国に働きかけるべきであります。当面、わが国花対する核保有国からの核不使用について、二国間の取り決めを結ぶべきであります。
 以上の提案に対し、三木総理の御見解をここで伺いたいと存ずるものであります。
 以上、私の意見を申し上げ、政府の見解をただして、私の質問を終おります。(拍手)
   〔内閣総理大臣三木武夫君登壇〕
#27
○内閣総理大臣(三木武夫君) 河上君にお答えをいたします。
 河上君は、五年も前に調印をしながら、批准をいまになってなぜ求めたかというお話でございます。
 言われるとおり、この条約は一九七〇年の二月、愛知外務大臣当時に結ばれたものでございますが、これが今日まで批准の手続がおくれましたのは、日本が一番重視しておった原子力の平和利用における査察の平等性というものの保障について、日本の受け入れ体制にもいろいろ整備したければならぬ点もありましたが、それの協定が今日まで結ぼれなかったわけでございます。今回、日本の平等性が確保される原子力の保障協定が結ぼれたことによって、われわれの懸念が解消されたということで、批准を今国会に求めたわけでございます。
 したがって、国会の提出がおくれたのは、河上君が御指摘のような日米の安保条約を強化する条件をつけるためだとか、あるいはまた、日米安保条約の核に対する運用に弾力性を持たす条件をつけるために、そういう話がつかなかったから、そういうことでおくれたというようなことは絶対にありません。政府の方針は変わりはありません。いままでと変わりはない。ただ、いま言ったような、この条約を批准するいろいろな日本が考えておった重要な点が、まだ整備せなかったということによって今日までおくれたので、政府の方針が変わったことによっておくれたものではないわけでございます。
 また、非核三原則を堅持するかということでございますが、これはもう四十六年の十一月に、非核三原則は存置すべしという国会の決議もございまして、政府がこれを堅持するというようなことは、もう当然のことでございます。しかし、一方、日本の安全が、今日の段階においては日米安保条約を必要としているということも事実であります。しかし、このことが、アメリカの政策に日本が盲従しておるというふうには、われわれは考えていないわけでございます。
 また河上君は、日本は平和憲法の精神からしても、あらゆる機会に、核軍縮あるいは核の兵器の廃棄ということをもっと積極的に努力することが日本の使命ではないかというお話でございます。
 われわれもさように考えておるわけでございます。しかし、積極的に日本が努力するために日本の発言というものに信頼性と有効性を持たすためには、一方において非核原則というものを堅持せよと言いながら、この核防条約の批准を引き延ばすということでは、日本の態度というものは、国際的に見ても明白を欠くのであります。だから私は、河上君の御指摘のような積極的な努力をするためにも、本条約の批准が必要である、こう言うものでございます。
 それから、非核三原則のつくらず、持たず、持ち込まず、またそれに加えて持ち込ませずというものを、これも加えたらどうかということでございましたが、まあ持ち込まずと持ち込ませずということは、本質的には何も変わらないと私は思うのでございます。要は、核兵器を使用するために日本には置かないということである。そのために、私は非核三原則を誠実に堅持するということを申し上げておるのでございます。
 また河上君は、核の非武装地帯、あるいはまた核の不使用の国際協定を結べということでございます。
 理想は、私もまさにそのとおりであると思います。しかしながら、そこまで行けば、核はもう全廃するという一歩手前まで来ておるということになるわけでございます。それは、単に言葉で終わらせないためには、この問題は、やはり実際に、現実に目的達成に近づけるようにしなければいかぬ。ただ言葉で終わらせるというよりも、もっと問題を厳重に考える必要がございます。そういうことからいくと、やはり今日の段階では、一遍に全廃の国際協定というまでは、国際環境がそこまで行ってないことは、河上君も御承知のとおりですから、段階的にその実効性の上がる方法によるべきである。それは核軍縮である。核軍縮という段階を経て、やがては核の全廃まで行くということが実際的だと思うのであります。また、その上に二国間の約束ということも、これは現実的な問題としては、大いに努力をすべきことだと私は考えております。
 また、国会でこれを決議せよということでございました。
 御承知のように、昭和四十六年の十一月でしたか、もうこの国会において厳重な決議をいたしておるわけでございますから、さらにこの決議を、もう一遍する必要はないと思うのでございます。
 また、原子力の平和利用について、政府は原子力基本法に言う自主、民主、公開という原則を、いかにも踏みにじっておるようなお話でございました。
 政府は、そうは考えておらないわけでございます。基本法の精神は尊重をいたしておるわけでございます。ただしかし、次の新しいエネルギーが開発をされるまで、原子力発電の日本のエネルギーの供給に対するウエートというものは、私は非常に大きいと思います。そのためには、やはり原子力発電に対する国民の理解と支持を得られるようにすることが、きわめて大事でございますから、今後、原子力の開発については、安全性とか、また環境に対しての配慮であるとか、こういうものに対して十分に意を用いていかなければならぬ。したがって、今回も科学技術庁の中に原子力安全局というものを新設して、この局の新設ばかりでたしに、安全対策全般について、これを拡充して考えていぎたいといたしておる次第でございます。
 お答えをいたします。(拍手)
   〔国務大臣宮澤喜一君登壇〕
#28
○国務大臣(宮澤喜一君) 御指摘のように、先月私が米国に参りまして、わが国の安全保障の問題につきまして国務長官と討議をいたしました。また、その結果につきまして、米国の大統領から確認がありましたことも、御指摘のとおりであります。
 このことによりまして、別段、日米安保条約上におきまする日本なり、アメリカなりの義務が、新しく加わったわけではございません。ただいま総理から御指摘がありましたように、従来どおりの関係をお互いに確認したということでございます。私どもが、わが国の安全のために日米安保条約がきわめて大事なものであると考えておりますことは、きょう初めて申し上げるのではございませんで、長くこの議場でも申し上げておることでございますので、もしそのことのゆえをもちまして、この条約についての考え方をお変えにならなければならないと、もしおっしゃるのでありましたら、この点につきましては、十分に政府としても御説明申し上げることができる点であるというふうに私ども考えております。
 それから、平和利用と査察の点につきましては、確かに御指摘の点は上く理解ができるのでございます。
 私どもが保障措置協定で考えましたのは、決してこの査察の内容をいたずらにルースにして、それが非平和目的に流れるのを危うくするという意味ではありませんで、各国に比べてわが国だけが過酷な査察を受ける、あるいは、それによって、わが国が開発いたしました技術がよそに流れるというようなことになれば、国益にならない、こういう趣旨でございまして、御指摘の点は、十分査察をいたします上で確保していかなければならない大切な点であろうと存じます。(拍手)
   〔国務大臣佐々木義武君登壇〕
#29
○国務大臣(佐々木義武君) 私に対する御質問は、査察の平等性が確保されると言うけれども、原子力の開発利用に関しては、軍事目的と平和目的の区別が明確でない現状から見て、緩やかな査察というのは、かえって秘密主義を助長するのじゃないか、むしろ査察を強化すべきじゃないか、したがってまた、基本法で言われています自主、民主、公開の原則をさらに厳格にしたらどうだ、こういう御質問のように承知いたしました。
 本不拡散条約のもとにおきます査察を含めた保障措置は、核物質の軍事目的への転用を防止するというのが本来の目的でございますので、その目的を達成するために必要な限度で、この査察が講ぜられるものでございますから、御指摘のように、この目的を逸脱するような査察を含む保障措置の運用は、あり得ないものだと考えております。
 なお、わが国の原子力開発利用は、総理からも御答弁がございましたように、原子力基本法による自主、民主、公開の原則に沿いまして、今後とも鋭意進めてまいりたいと考えておるところでございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#30
○議長(前尾繁三郎君) 松本善明君。
  〔松本善明君登壇〕
#31
○松本善明君 私は、日本共産党・革新共同を代表いたしまして、ただいま議題となりました核兵器の不拡散に関する条約の批准承認案件について、総理並びに外務大臣に質問をいたします。
   〔議長退席、副議長着席〕
 日本共産党は、この核防条約につきまして、当初から、そこに含まれていた問題点の重大さを一貫して指摘をし、批准反対の態度をとってまいりました。日本政府による調印、そしてこの条約の発効から、すでに満五年の歳月が経過しましたが、この間の核兵器問題をめぐる内外の諸経過は、わが党の批判の的確さを一層明らかにしていると考えるものであります。
 一体、核防条約の本質的性格はどのようなものでありましょうか。
 第一に、核防条約は、新しい核兵器保有国をつくり出さないというだけのものであって、アメリカ、ソ連、イギリス、フランス、中国の、すでに核兵器を持っている五カ国については何一つ手を触れず、むしろ、その核独占を維持し、強化しようとするものにほかなりません。このことは、本条約の第一条と第二条によって明白であります。どの条項にも、核保有国に対し、核兵器の保有をやめさせたり、あるいは、少なくともこれを弱体化させるようなことは、何らうたわれておりません。核保有国の核独占体制を強める条約を指して、核軍縮の一歩などと強弁をするのは、日本国民を欺瞞嘱するもはなはだしいと思います。明確な答弁を求めます。(拍手)
 特に、本条約の第六条にうたわれております「核軍備競争の早期の停止及び核軍備の縮小に関する効果的な措置」等についての締約国の交渉なるものが、実際上は空約束であったことは、この五年間の経緯で明白であります。
 たとえば、核防条約が発効いたしました一九七〇年当時と、それから五年たった一九七四年末、昨年末における米ソ両国の戦略核ミサイルの弾頭数を比較いたしますと、総数で実に三倍にもふえているのであります。米ソそれぞれについて見てみますと、アメリカの戦略核ミサイルの弾頭数は、千七百十個から六千九百二十二個へと四倍強の激増ぶりであります。ソ連の場合が、千五百八十個から二千三百三十七個になったと言われており、約一・五倍の増強であります。核軍拡競争の悪循環は、引き続き野放しにされているではありませんか。それにもかかわらず、政府が、あたかも核保有国は核軍縮に誠意を持って当たっているかのように言うのは、現実の事態とは全く食い違っているものであります。
 政府は、核防条約が核保有国の核独占体制を維持、強化することになっているという実際の重大な役割りを、日本国民の前に明らかにする責務があると思いますが、総理の明確な答弁を求めるものであります。(拍手)
 第二に、核防条約は、新しい核保有国をつくり出さないということを最も重大な表看板にしております。しかし、インドが六番目の核保有国になったのに続いて、エジプト、イスラエル、パキスタン等々の新たな核保有への動向も報じられており、この表看板自体が、すでにこの五年の間に完全に破綻をしております。これも、既存の核保有国の核軍拡競争が野放しにされていることと深いかかわりを持っております。
 こうした核兵器開発競争のとどまるところを知らない悪循環をきっぱりと断ち、原水爆を許すなという日本国民の念願に真にこたえるためには、核防条約の批准ではなく、核兵器完全禁止のための国際協定の成立にこそ全力を傾けるべきであります。
 第三に、核防条約のきわめて重大な問題点は、アメリカその他の核保有国が、その核兵器を外国に持ち込むことは全く何の制限もつけず、完全に、野放しになっているという点であります。
 本来、核兵器の拡散とは、核兵器保有国が外国に核兵器を配置することをも指すのであります。ところが、本条約は、核兵器の拡散防止というこの条約の核心につきましても、新核保有国の阻止だけにしぼり、アメリカなどが他国に自分の核兵器を持ち込むことは、自由だとする立場をとっているのであります。つまり、わが国で言われております非核三原則の三番目の原則であります核を持ち込まさずに相当するものは、本条約では最初から取り除かれているのであります。しかも、非核保有国の安全保障の名目で、核保有国が他国へ核兵器を持ち込んで世界的な核拡散を推進する条約を、核兵器不拡散条約と呼ぶこと自体が、世論を欺く以外の何物でもありません。(拍手)
 さらにこの場合、核保有国の核のかさ提供を、特に国際決議によって正当化をしております国連安全保障理事会の非核保有国の安全保障決議と相まって、核保有国が同盟国たどk自分の核兵器を持ち込み、相対する軍事ブロックを核軍事同盟化する体制をいよいよ固めているということは、重大なことであります。これは、核保有国が核兵器を政治的に利用Lて、同盟国、従属国等への支配を強めるととと、本条約が一体となっているということではありませんか。
 さらに重大なことは、非核保有国の安全保障を問題にしながら、核防条約が、核保有国による非核保有国への核攻撃をも禁じていないことであります。
 現に、本条約発効後、アメリカ政府がベトナムなどで核兵器使用計画をきわめて具体的に練ったことは、公然の秘密であります。一九七二年四月七日付のワシントン・ポストが暴露をいたしました、不時の際のインドシナ核戦争計画草案は、まさにその一例であります。
 三木首相は、核防条約が核保有国による核攻撃をも禁じていないことについてどう考えておられるか、御答弁をいただきたいと思います。
 ところで、核保有国による他国への核兵器持ち込みがこの条約と一体となっていることこそが、日米安保条約によってアメリカの核戦略に組み込まれているわが国に、きわめて重大な結果をもたらそうとしております。
 すでに、本条約承認案件の国会提出をめぐる自民党内の、いわゆる有事核持ち込み論議にこたえる形で、宮澤外務大臣は、国会内外で、条約解釈論からすれば、イエスもノーもあるのは当然だとか、国家が存亡の危機に立つ場合は、非核三原則以前の問題だ、たどと述べております。また、宮澤外相の訪米により、韓国の有事の際には、日本への核持ち込みも、前向き、かつ速やかに検討する旨、日米間で話がついたとの報道もなされているように、条約批准の圧力とともに、核軍事同盟化を目指す重大な策謀が、アメリカ政府と、これに追随する日本政府によって進められつつあります。
 政府は、条約論と政治論の使い分けによって、この問題での野党側の追及をかわすことはできません。
 総理は、緊急時も含めて、アメリカの核持ち込みにイエスと言うことは絶対ないのかどうか、お答えをいただきたいと思います。もし、緊急時も含めて核持ち込みはノーと言うならば、核持ち込み禁止を法制化する考えはないか、はっきりお答えいただきたいと思います。(拍手)
 さらに、政府は、四月二十五日の参議院外務委員会でのわが党の委員の追及に対しまして、沖縄県嘉手納基地駐留のアメリカ空軍輸送部隊が核空輸能力を持っていることを認めるとともに、核能力を備えた米軍部隊が日本に存在することが抑止力になっている、こう答弁をいたしました。核部隊のわが国への駐留を、抑止力の名で進んで容認するということは、非核三原則の精神を踏みにじるものではありませんか。
 総理は、このような具体的な問題に関しても非核三原則を守るのかどうか、明確にしていただきたいと思います。(拍手)
 こうして、核防条約の批准は、日米軍事同盟の公然たる核軍事同盟化に大きく道を開くものであります。このような核防条約の批准を推し進めようとしている三木内閣の真の動機が、核兵器にも依存したアメリカのアジア侵略政策への追随と加担、日米軍事同盟の侵略的強化にあることは、きわめて明らかであります。
 宮澤外相は、サイゴン陥落の日の記者会見で、アメリカのベトナム介入を、崇高な意図に基づくものだったと述べ、他民族が共産主義のもとに隷属するということは不幸だという点で、アメリカと同じ考えだと述べて、アメリカのベトナム侵略への歴代自民党内閣の加担を合理化いたしました。ここに示されているのは、アメリカや自民党政府の気に入ろうが気に入るまいが、その国の進路と運命を決めるのは、その国の人民の神聖な権利だという民族自決の権利を根本的に否認した、許すことのできない態度にほかなりません。これは、反共の名のもとに、他国への侵略と干渉をことごとく美化した、ダレス元アメリカ国務長官の冷戦の論理と全く同様のものではありませんか。独立と自由を求めるベトナム人民に公然と挑戦をした宮澤外務大臣の、国際的にもきわめて重大な暴言に、三木総理大臣はどう対処するつもりであるか。また、宮澤外相の暴言こそ、日米安保条約の根底にある考え方そのものではないか、はっきりお答えいただきたいと思います。(拍手)
 最後に、私は、今日の核兵器開発競争の悪循環を断ち、核拡散の憂慮すべき状況に根本的にメスを入れるためには、核兵器完全禁止のための国際協定の締結こそ、緊急の重要な課題だと強調したいと思います。(拍手)
 これこそ、唯一の被爆国日本の国民の全世界への訴えとして、衆参両院でも決議されているところであり、昨年、日本で開かれた第六十一回列国議会同盟総会でも、日本代表団の提案により、満場一致決議されております。核兵器完全禁止の世論は、国際的にも新たな高まりを見せつつあります。
 総理は、国会決議を尊重して、核兵器完全禁止協定の締結のため、あらゆる努力を行うべきだと思いますが、この点についての明確な答弁を要求して私の質問を終わります。(拍手)
   〔内閣総理大臣三木武夫君登壇〕
#32
○内閣総理大臣(三木武夫君) 松本君の質問にお答えをいたします。
 核防条約のいう核軍縮というものは少しも進んでないではないか、むしろ核軍拡の方向にあるという御指摘でございました。
 しかしながら、もし核防条約というものがなかったならば、私は、もっと大手を振って核軍拡が行われたのではないか、したがって、抑止的な効果というものは、私はあったと見るわけでございます。また、条約の成立後にも、幾つかの核軍縮の方向にある協定が行われたということも、評価すべきだと思うのでございます。
 また、核防条約によっても、現存の核保有国の核保有というものは野放しにしておるではないかということでございます。
 決してこの核防条約が満足なものではないけれども、だからこそ、日本が核兵器の開発の能力を持ちながらも、その核兵器を開発するという意図を捨てて、率先して核拡散を防ぎ、核強化を防ぐために、これから努力をしようというわけですから、そういう意味において、私は、この条約を批准することによって、やはり日本の発言力を重からしめるものだと考えております。
 それから、核保有国の核兵器の他国への配備を放任しておるではないかというお話でございました。
 私は、やはり日本がこの問題については大きな発言力を持つ立場にあるのですから、だから、非核三原則というものを日本はみずから守って、声を大にして、日本の持っておるような原則が世界に受け入れられるように、今後世界に訴えていくべきではないか、そういうふうに考えておるわけでございます。
 それから、非核原則に対して、いろいろ有事の場合なども挙げて、これは拘束するのかというお話でございました。
 しばしば申し上げておるように、昭和四十六年十一月のこの国会議場においての非核原則を遵守すべしという決議もあり、この決議がある限り、すべての内閣はこれに従わなければならぬことは当然であると思います。
 また、いろいろ有事の際というようなことでお話がありましたけれども、有事の際とか、一たん緩急の場合とか、余り文学的な表現で、そしてこの安保条約の運用などというきわめて厳格を要するような問題を、そういうことを仮定していろいろ考えることは、私は適当だとは思わないわけでございます。
 また、核防条約が核保有国による核攻撃を禁止していないということでございます。
 この条約は、核兵器の拡散を防止することを直接の目的とするものでありまして、したがって、今後、完全軍縮というものに対して、核の軍縮というものについて、努力を積み重ねていかなければならぬと思います。
 また、最後に、核兵器の全面禁止協定を締結せよというお話でございました。
 いま松本君の言われるように、いきなりそういう全面禁止協定が結ばれるような環境ならば、もう問題はないのであります。しかし、そこまで今日の国際環境がいかないことは事実ですから、その以前に、核軍縮によって、核兵器の全廃に通ずる入り口で今後努力をしていくということが、今日の課題であると考えておるわけでございます。
 それから、外務大臣の発言については、外務大臣自身からお答えをいたすことが適当だと思うわけでございます。
 松本君の御質問には触れたと思いますが、しかし、もし答弁の漏れたどころがあるならば、外務大臣から補足をいたすことにいたします。(拍手)
   〔国務大臣宮澤喜一君登壇〕
#33
○国務大臣(宮澤喜一君) 補足をいたします。
 第一に、韓国に有事の際に、わが国に核兵器の持ち込みを許すという密約をしたという報道はどうかということでございます。
 全くそのようなことはございません。そのような報道があったといたしますと、それは事実ではございません。
 次に、民族が共産主義のもとに隷属することは不幸云々と私が申したということでございます。
 民族がいかなる政治信条を持ちますかは、もとよりその民族が自由に選択すべきところであります。私の申しますのは、何々主義にかかわらず、力によってその主義に隷属させられるというようなことがあれば、それは不幸なことである、そう申しておるのであります。(拍手、発言する者あり)
 米軍の沖縄におります空輸中隊が、核兵器輸送の能力があるではないかという御質問は、確かに委員会においてあったわけでありますが、現実に、わが国の領域においてこのような輸送が行われていないということは、その当時もお答えをいたしたとおりであります。(拍手)
    ―――――――――――――
#34
○副議長(秋田大助君) 渡部一郎君。
   〔渡部一郎君登壇〕
#35
○渡部一郎君 私は、公明党を代表して、ただいま議題になりました核兵器の不拡散に関する条約の承認を求めるの件に対し、総理並びに関係大臣に質問いたします。
 核兵器を全廃し、軍備なき国際平和を実現することは、全世界共通の課題であり、全人類のひとしく熱望するところであります。しかし、現実は、人類大滅亡を目指して、狂乱のごとく核兵器開発競争が行われ、米、ソ、中、仏、英、五大核武装国の核保有量は増大の一途をたどり、米国だけを見ましても、広島型原爆六十一万発分を保有し、人類を十六回も滅亡せしめるに必要な量となりました。その上、核兵器保有国の拡散化の傾向も強まりつつあり、誤算と狂気と偶発によって人類は滅亡の直前に追い込まれたと言って過言ではないのであります。これを食いとめることは、まさに人類の最大にして最緊急の課題であります。
 しかし、対策は、大国のエゴと葛藤によって、はかばかしくありません。ことに、ただいま政府が国会に提出している核防条約は、成立して以来五年を経過しておりますが、当初より、この条約の実効的効果についての疑問が数多く表明されております。
 特に、この条約は、核兵器の保有の全面禁止を目途としたものではありません。核兵器保有国の現在以上の増加を禁止しながら、他方、核保有国のみには無制限な核兵器の保有と拡大を許すという、一見矛盾する両面を持つところに、その基本的な性格が存在するのであります。
 もちろん、わが党は、これ以上核保有国を増加させるべきではないという基本的な理念に関しては、何ら反対するものではありません。しかし、それだけでは十分と言えません。全世界をいま破滅させる引き金を持っているのは核大国であり、その核保有大国の横暴と無軌道を放置してよいわけはないのであります。したがって、核防条約にサインするのみでは、人類の平和と生存のために実効的効果を期し得ない。核保有大国の恣意と横暴と誤算を食いとめ、核保有国への参入を食いとめるために、条約批准とは別の措置が連動して働かなければならないのであります。政府はどのような具体的行動をとろうとするのか、その決意のほどを明らかにしていただきたいのであります。(拍手)
 また、本条約は、わが党がかねてより主張いたしますような核兵器の全面撤廃を目途としていないところから発生する、本質的な欠陥があることは否定できないのであります。だからこそ、わが国政府も、署名の際、批准のための三条件を提示したわけでありましょう。それ以来五年を経過した今日、政府は、これら三条件は満足できるまでに満たされたと確信した上で、ただいま批准承認案件として本院に提出したのかどうか、お伺いしたいのであります。
 政府みずからが批准のための条件とした核保有国の軍縮、それはこの五年間にどの程度実現したと評価しているのでありまし上うか。
 米ソ両国間では、これまでSALT交渉、戦略兵器制限交渉が行われてきており、その内容は、およそ核軍縮という実体からほど遠いものと言わねばなりません。ICEM、SLBM及び重爆撃機の上限は双方二千四百基ずつ、MIRV装備のICBM及びSL日Mの上限は双方千三百二十基ずっとするなど、むしろSALT協定は、米ソ間に核兵器の驚くべき拡大均衡を保障するためのものであります。政府は、こうした現実をどう評価しているのか、ほかに実質的な核軍縮が一歩でも前進した証拠があると評価しておられるのかどうか、ここに改めて政府の見解を求めたいのであります。
 第二に、非核保有国の安全保障の問題でありますが、果たしてどこまでこれが確保される見通しとなったのか、政府の見解を承りたいのであります。
 本来、核拡散防止条約の目的は、国際緊張の緩和をスタートに、核兵器の製造、使用、保持の権利をすべての政府から奪い去り、核戦略に全面的な制約を行い、さらにこれを前進させるものでなければならないはずであります。しかるに、わが国政府は、条約批准の条件にアメリカから安全保障の確約をとるべきであるという、与党一部勢力の誤った要求に迎合して、わざわざ外務大臣をアメリカに派遣し、日米核安保の強化を図ったのであります。
 さらに、われわれがとうてい黙視し得ないことは、宮澤・キッシンジャー了解として政府は極東条項を拡大解釈して、日本全土をアメリカのアジア核戦略のかなめ石であることを、みずから承認したばかりでなく、実質的に、核兵器の持ち込みにイエスもあればノーもあるという言い方で、核持ち込みを容認する体制を確認したことであります。このことは、抗弁の余地もなく核防条約の目的に反するばかりでなく、非核三原則に関する昭和四十六年十一月二十四日、歴史的な衆議院本会議決議に違反し、核大国の対立と緊張の激化に、わが国が加担する結果となるのであります。
 三木総理は、非核三原則決議を守る、核はつくらず、持たず、持ち込ませないと、本日も先ほどから答弁されているわけでありますが、それでは、安保事前協議の際、アメリカから核持ち込みを迫られたら、イエス、ノーでなく、ノーだけしか言わないのかどうか、それをはっきりお答えいただきたい。もしノーだけだというのであるならば、安保事前協議に対する日本政府それ自体の方針は変わったものとして、アメリカ政府に対して意思表示をされるのが当然であると私は思いますが、いかがでありますか。
 三木総理の答弁と外務大臣の答弁は、したがってこの問題では食い違ったままである。食い違ったままで、そうして実質的には日米安保体制の変質の定着を意図しているものと解釈してよいのか、私は、その点、政府のまとまった見解をお伺いしたいのであります。(拍手)
 政府は、今回の了解、確認によって、核によるわが国の安全は保障されたと広言いたしているわけでありますが、かかる認識は、そこに重大な危険性と逆行性を内蔵するものと指摘せざるを得ないのであります。世界の非核保有国をして、いやおうなく核大国の系列に組み込み、冷戦へ逆行することが平和をもたらすとは、全く驚き入った判断と言わざるを得ないのであります。一触即発の核戦略体制を一体何だと考えておられるのでありますか。
 核防条約の批准は、世界の平和と緊張緩和に役立つものでなければなりません。もし、批准とともにこれに逆行する措置をとるならば、核防条約の存在意義そのものを失うばかりか、かえって巨大なマイナスを生ずるのであります。この点に関する政府の見解を具体的に伺いたいと思うものであります。
 大体、軍事同盟体制を強化すれば、安全保障が確保されるというような勢力均衡論は、いまや古い迷信となりました。また、現にアメリカのベトナム政策が惨めに破綻したことから見ましても、これほど危険なものはないのであります。過去の歴史においても、軍事同盟体制や軍拡競争は、国際緊張を終局的に高め、戦争という悲惨な結果を招来していることは、明らかに実証されてきたところであります。
 また、最も注目すべきことは、いかなる軍事同盟を結んだとじても、自国を犠牲にしてまで相手国を助けたというためしがありたでありまし上うか。たとえば、過去の日清議定書しかり、日独伊軍事同盟しかり、さらに、昨今のカンボジア、ベトナム情勢しかりであります。しょせんは、一方の都合によって捨てられてしまうことを銘記しなければならないでありましょう。
 もし、核保有国間に戦争が発生した場合を想定するならば、アメリカの核のかさの下にある日本の運命はどうなると考えているのでありまし上うか。アメリカの戦略と連動する日本が、果たしてその圏外に置かれるとでも期待しておるのでありまし上うか。核のかさは、それ自体が爆発物であり、わが民族の頭上において誘爆するものであることを知らなければならないのであります。
 ASEAN諸国は、賢明にも、ベトナムがたどった悲惨な運命を深刻に考慮して、自国の安全保障政策を大きく再検討し、転換しようとしております。アメリカによる安全保障がいかに頼りないかを、身にしみて体験させられたからにほかならないのであります。
 日本もまた、平和保障の方途はどうあるべきかを、いま改めて真剣に考えることが焦眉の重要課題であると思うのであります。それは、日米軍事同盟体制より脱却し、自主独立の立場に立って、いかなる国とも平和友好関係を積極的に推し進め、わが党のかねての主張のごとく、平和三原則に基づいた等距離完全中立の政策をとることであります。
 すなわち、日中平和友好条約を即時締結し、朝鮮半島、インドシナ半島との間に友好的接触を緊急かつ積極的に深め、日ソ領土問題を解決し、日ソ平和条約を締結するなど、外交に対する積極的取り組みが必要でありますもこれこそが、万が一にも最悪の事態において、日本民族が最後まで生き延び得る唯一の道であると確信するのでありますが、政府のこれに対する見解を承りたいのであります。(拍手)
 第三に、原子力の平和利用についての保障措置は、ユーラトム諸国と比較して平等性は確保されたのかどうか、明らかにしていただきたい。また、技術研究の平等性は確保されたとしても、核燃料の恒常的供給確保については保障されていない。核燃料については、常に核大国の政策に従属されざるを得ないのでありますが、供給源を多角化するなど、対米依存の脱却を図るべぎではありませんか。この点、政府はどう対策を講じられるつもりか、また講じておるのか、明らかにしていただきたいのであります。
 世界の恒久平和という全人類の願望を達成し得るためには、核兵器の絶滅は絶対不可欠のものであります。すでに、核兵器の貯蔵量は全人類を全滅ざせるに余りある量であり、管理の限界を超えているのであります。いかなる国の核兵器の保有も肯定してはなりません。その核保有国との同盟関係が戦争を抑止するというような、誤った核抑止理論を断ち切らなければなりません。すべての国のすべての核兵器の全廃に対する日本政府の断固たる姿勢と取り組みがあってこそ、世界平和に貢献する日本国の存在があるのであります。
 わが国が世界の唯一の被爆国であるという単なる感傷からではなく、冷厳な体験に即して、真に全人類のため、戦争も核兵器もない世界平和の理想を実現するという、確固たる確信と使命感に燃えて立ち上がるべきでありましょう。この点の政府の決意のほどをお伺いしたい。
 わが国政府は、これまで核兵器の撤廃について、自主的な核軍縮政策を何ら持ち合わせず、国際場裏においては、核実験禁止のために援助するというだけの形式論理を数回演説しただけであります。積極的な姿勢なんか一つもない。何たる恥辱、何たる不見識でありましょうか。
 もちろん、核兵器の全廃、あるいは核軍縮という問題が、決して公式論や原則論をもって解決できるものでないことは十分了解するとしても、一貫した外交理念のもとに、核兵器の全廃を世界に向かって主張し、行動することがなぜ行われなかったのか、十分反省すべきなのではないでしょうか。この辺、政府の確固たる姿勢を示されたいのであります。(拍手)
 わが国は、非核保有国を結集して、積極的にイニシアチブをとり、この核防条約の根本的修正を行い、たとえば核保有国に対する核軍縮、核撤廃を義務づけるよう努力すべきであります。
 このための一つの方途として、わが国が、核兵器に関する国連の特別総会の開催を要求すべきでありますし、また、核保有国すべての首脳による世界核軍縮会議の開催を求めるよう、積極的な外交努力を図るべきことが必要でありますが、これらわが党の提案に対し、見解を明快に承りたいのであります。(拍手)
 政府の核政策は、今日まで余りにも不十分であったため、核防条約の批准の有無にかかわらず、日本政府が核武装する意思があるのではないかとの国際的な不信感がいつまでも、いつまでも残ることでありましょう。
 特に宮澤外務大臣は、最近の訪米において、核兵器の持ち込みを認めた態度をとったことは、唯一の核被爆国としての日本の核兵器全廃に対する説得力を、国際的に台なしにした責任は重大であります。ここで改めて、核兵器持ち込みに対する明快な態度の表明を要求するものであります。
 わが国が、独自の立場に立って非核三原則を世界に宣明し、これらは単なる政策でなく、不退転の国是であることを明確化する措置をとるとともに、この非核三原則が国際的に承認されるよう適切な措置をとるべきであると思いますが、その考えがあるかどうか。また、わが国は非核三原則の趣旨に沿い、いわゆる政府の言う自衛力としても、いかなる形の核兵器も保持しないことを明確に公約すべきでありますが、政府の見解を承りたいのであります。
 また、核防条約は、第三国、すなわち非核保有国に対する核兵器の持ち込みを禁止しておりませんが、これは核保有国の露骨な談合の結果であり、本条約の致命的欠陥と言うべきであります。政府は、一歩進んで、核保有国の、日本のような第三国に対する核兵器の持ち込みを禁止すべきことを明確に約束させるべきであります。また、核兵器保有国の核兵器不使用条約、さしあたっては、いずれの核保有国も最初に核兵器を使用しないという程度の国際取り決めは、これを早急に実現されるよう要求するものであります。
 これらのことは、少なくとも、すでに開催されている再検討会議において、総理自身、またはそれにかわる総理級の大物特使を派遣し、強く主張することを提案いたしますが、これに対する政府の所見を承りたいのであります。(拍手)
 最後に、非核三原則遵守の問題は、憲法遵守の問題と関連して重大であります。政府は、四十六年十一月国会決議を、憲法に基づいて遵守されるのかどうか。
 なぜこんなことを言わなければならないかといえば、稲葉法務大臣が、憲法遵守の義務があるにもかかわらず改憲集会に出席されたことで、私はあえてこれもまたお伺いしなければならないのでありますが、この点について、政府の御見解をあわせて伺っておきたい。
 以上をもちまして、私の質問とさせていただきます。(拍手)
   〔内閣総理大臣三木武夫君登壇〕
#36
○内閣総理大臣(三木武夫君) 渡部君の御質問は、核拡散防止条約に加入後、どういう効果のある態度を政府がとるのかということでございました。
 核防条約を批准することによって、日本の発言というものに対して信憑性があるということが明白になるわけです。いままでは、どうも日本は、結局核武装を意図しているのではないかという対日警戒心があったことは否定することはできません。いろんな世論調査を見ても、非常にこの点が強く出ておるのであります。その不信感を払拭して、日本の発言力に重みを加えることが、これから日本の政府が行動する大前提に私はなると思う。テクニカルなことを申せば、核軍縮の推進というような点では、大いに今後日本が努力をすべきであると思います。
 また、政府が署名のときにいろいろ関心を持った三点が、それが満足されているかということでございます。
 三点の一つは、核軍縮の問題でございますが、この核防条約ができて、各国とも大っぴらな核強化というものに歯どめ的な効果は、私は大いにあったと思う。また実際、軍縮の方向に関する幾つかの米ソ間の協定が成立して、これは多少進展しておるということは評価するものでございます。今後さらに努力をしなければならぬ。
 非核保有国の安全保障の問題については、英米ソ三国宣言及び安保理事会の二百五十五号の決議等も行われております。また、目下開催中の、昨日から開催されております本条約の再検討会議においても、非核保有国の実質的な安全保障の措置というものが検討をされる模様でございます。そういうことで、この点につきましては、一応これが大きく取り上げられてきておることは事実でございます。
 また、一番日本が関心を持った原子力平和利用の保障措置の協定につきましては、実質的に平等性が確保される協定になったことは御承知のとおりでございます。
 また、渡部君は、核防条約の批准に伴って、なぜ日米の安保の確認が必要なのかという御質問があったと思います。
 日本の国民の一部に、核防衛の不安感もあったことは事実でございます。この条約に批准をした後における核防衛の不安感もあったことは事実でございますから、日本防衛の責任をアメリカに対して宮澤外相が再確認することは、何らこれは、特にとりたててどうということではございません。このことによって新しく日米安保条約が、何か新しいことが追加されたというようなことは、これは全然ございません。
 また、私と宮澤外務大臣との間の食い違いはございません。安保条約の条約論としては、事前協議でありますから、両当事者が寄って、そして協議をするのだから、両当事者ともノーともイエスとも言える権利を持つことは当然でございます。しかし、政策論としては非核三原則は堅持する、これはもう国会の決議もあり、政府の方針でもございますので、この点を宮澤外相も明白に申しておるのでございまして、私との間に何ら食い違いはないということでございます。
 また、渡部君は、核防条約の体制は、大国の世界支配体制を固定化するものであるというふうに論じられました。
 私は、そういうふうに悲観的には見ていないのです。いままで日本の声が強く浸透し得なかったのは、日本の発言というものに対して、先ほどから申しておるように、一方においては非核三原則を堅持すると言いながら、いつまでも核防条約をたな上げするというそのあいまいさが、日本の国際的発言力に対する迫力を失ったわけでございますから、日本の発言を強力にして、これから日本が有効な発言を国際社会において行うことが、世界平和と緊張緩和に日本は寄与できる、こう考えておるわけでございまして、この条約の批准を、非常に悲観的な評価はしていないわけでございます。
 また、今後、安保条約を廃棄して、完全中立政策、核の全面禁止、こういうことをやるべきではないかという議論でございます。
 渡部君の頭の中には、一つの世界というものの理想を目指して追求していられるのだと思います。その理想は追求されなければなりませんが、まだ遺憾ながら、現実はそこまでいってないのでございます。現実の世界情勢に照らせば、一国だけで自国の防衛のできる国はないのであります。どうしても集団安全保障体制によらざるを得ないというのが世界の現状でございます。どこの例をとっても、皆こういうふうな例になっておることを見てもわかるのでございます。この集団的な安全保障体制というものが、現時点における理想と現実の調和点であると私は思います。日米安保条約はこの見地から成り立っているのでありますから、これを維持していくという方針でございまして、これを廃棄する考えは持っていないことを明らかにいたしておきます。
 それから、核保有国の首脳会議による世界の核軍縮会議を提唱したらどうだ、いろいろ日本がイニシアチブをとれというお話がございました。
 これは、日本はいろいろなイニシアチブをとれる立場にはあると思いますが、しかし、そのためには、日本の立場があいまいであるということでは、そういうふうなイニシアチブをとるだけの迫力になかなか乏しいと私は思います。だから、そういうふうなイニシアチブをとれるように日本が強力な立場をとる、また、一方においては、そういう開催が可能であるような国際環境をつくることにも日本は努力すべきである。そういう意味において、核防条約の批准というものは、非常に重要な意義を持っておると思うのでございます。
 また、非核三原則は不退転な国家政策であることを明確にして、国際的にもこれを宣明せよというお話でございました。
 これは、もう非核三原則は国会の決議もあり、三木内閣はこれを誠実に守るということを、何回も繰り返して申しておるのでございまして、これを不退転な日本の国家政策として国際的に明確にする道は、核防条約を批准することだと私は思います。
 それからまた、いま開かれておる核防条約に対する再検討会議にも、私自身が行くか、また大物の特使を派遣せよというお話でございました。
 いま、核防条約に批准してないために、日本は正式のメンバーでなくしてオブザーバーとして送っておるのでございます。まず、この核防条約を批准して、堂々と正式メンバーになって、そういう場において日本が強力に発言ができるような、そういう前提条件をつくることが、この際必要だと思うのでございます。
 また、最後に、稻葉法務大臣のことについて御質問がございました。
 これは皆、各人はいろいろな考えを持つことは自由でございます。いろいろな考えを持っていいわけでございますが、三木内閣は、しばしば国会においても、憲法改正の意図はないということを申しておるんですから、三木内閣の閣僚である限り、この方針に従うことは当然でございまして、稻葉法務大臣が、この私の方針と違った考え方を持っているというふうには、私は思っていないわけでございます。(拍手)
   [国務大臣宮澤喜一君登壇」
#37
○国務大臣(宮澤喜一君) 先般の日米首脳会談以来、政府が核持ち込みを許す態度をとっておる、あるいは、日本全土をアジア核戦略のかなめにしつつある云々というような御指摘がございました。
 それは、いわゆる事前協議について、イエスの場合もあり、ノーの場合もあるという条約上の解釈について、私が申し上げましたことから出ました御疑問のようでございます。これは御承知のように、安保条約も交換公文も国会の御審議を得まして、両国間の約束となっておるものでございますから、条約の解釈といたしまして、イエスもありノーもあるというのが事前協議の制度であるということは、別段異とするに当たらないところと存じます。ただ、このような協議が行われますときは、おそらくは国の最高意思の決定が必要なときでございますから、その場合に、政府がどのような意思決定をするかということにつきましては、しばしば総理大臣が述べておられます。ただいまもお述べになりました。それが政府の意思となりますことは、当然のことでございます。
 次に、先般の日米会談、安保体制に新しい権利義務を特に加えたとは存じませんが、しかし、この体制から脱却することが、わが国の安全保障の方途ではないかと渡部議員の言われますことには、必ずしも私どもそう考えません。やはり基本的な平和外交、あるいは必要な最小限度のわが国の自衛体制、そして安保体制の維持というものが、わが国の安全保障の方途であることに変わりはないと私どもは考えております。(拍手)
   〔国務大臣佐々木義武君登壇〕
#38
○国務大臣(佐々木義武君) 私に対する質問は、原子力の研究開発の平等性あるいは核燃料の安定供給は、この条約で講ぜられるかという御質問のように承知しております。
 この条約のもとにおきましては、平和的目的のための原子力の研究、生産及び利用を発展させることについて、すべての締約国の権利が保障されることになっております。また、原子力平和利用のための核燃料等について、最大限度まで交換を容易にすることが約束されておりますので、したがって、御指摘の研究開発の平等性及び核燃料の安定供給につきましては、確保し得るものと考えております。
 なお、保障措置の実質的な平等性につきましては、先ほど来、総理並びに外務大臣からしばしば御説明がございましたが、先般、国際原子力機関との間に行われました保障措置協定予備交渉におきまして、査察の態様等を含むすべての面におきまして、ユーラトム諸国との平等性を確保することができたものと考えております。(拍手)
    ―――――――――――――
#39
○副議長(秋田大助君) 永末英一君。
   〔永末英一君登壇〕
#40
○永末英一君 私は、民社党を代表し、ただいま上程されました核防条約批准案に対し、政府の所信をただしたいと存じます。
 核防条約は、今後二十年にわたって、わが国の安全保障と原子力による技術発展に重大な影響を及ぼす重要な条約であります。三木内閣がどんな考え方のもとにこの批准を求めようとしておるのか、四つの点につきまして、三木総理の見解をこの際明らかにしていただきたいと存じます。
 第一は、核防条約の性格についてであります。
 もともと核防条約は、一九六〇年二月三日、ソ連の核脅迫により、スエズでの屈辱的な屈服を強いられたフランスが、第四の核保有国としてサハラ砂漠において核爆発を成功させ、次いで一九六四年十月十六日、核によるソ連の支配から脱却しようとした中国が、第五の核保有国として核爆発装置実験を成功させたことに刺激され、一九六五年八月十七日、ジュネーブ十八カ国軍縮委員会に、アメリカ、イギリス、カナダ、イタリア、四カ国共同核拡散防止条約案が提出、さらに同年九月二十四日、第二十回国連総会に対するソ連の核兵器拡散防止条約案が提出されてから、にわかに本格化されたものであります。一九六七年八月二十四日、十八カ国軍縮委員会に、アメリカとソ連は別個に同文の核拡散防止条約草案を提出いたしましたが、これ以来アメリカ、ソ連の共同歩調は緊密となり、一九六八年七月一日、ワシントン、モスクワ、ロンドンの三首都で核防条約の署名式が行われるに至りました。
 核防条約は、このような成立過程から見ても、また、核兵器国と非核兵器国との間における核兵器保有の固定化や査察の不平等性の内容から見ても、明らかに先発核兵器国であるアメリカ、ソ連、二大核兵器国の核支配の永続化を目的としたものであります。後発核兵器国であるフランス、中国の二国が核防条約に加入せず、また、インドが未加入のまま一九七四年五月十七日に、第六の核爆発国になった事実は、このことを雄弁に物語っております。
 インドと紛争状態にあるパキスタン、さらに中東紛争の渦中にあるイスラエル、エジプト、サウジアラビア、アルジェリアなどが核防条約に未加入であることは、核防条約が、そもそも国家の安全保障には役立たぬどころか、かえって有害であると、ぎりぎりの状態にあるこれらの国々が考えている証拠ではないでありましょうか。
 また、スペイン、南アフリカ、アルゼンチン、ブラジルなどのウラン産出国の未加入は、核防条約がアメリカ、ソ連支配にのみ役立ち、ウラン産出国には何ら益することのないことの表明と言えばしないでありましょうか。
 三木総理、あなたは、このようなアメリカ、ソ連の核による支配体制を今後二十年も続かせることが、世界平和を保つ唯一の道だとお考えかどうか、御意見を承りたい。
 また、わが党は、核防条約草案が固まった昭和四十二年十月、原子力技術発展の速度を思い、条約有効期限を五年とするよう努力せよと政府に要求いたしましたが、政府は、今後期限二十年をまるまるのみ込むつもりかどうか伺いたい。
 第二は、核兵器国の核軍縮についてであります。
 条約第六条は、「核軍備競争の早期の停止及び核軍備の縮小」に関して、各締約国が「誠実に交渉を行うことを約束」いたしております。自民党政府は、この条約署名の際、一九七〇年二月三日声明を発表いたしましたが、その中で、右の点に触れて、「日本国政府は、特に核兵器国がこの約束に従い、具体的な核軍縮措置をとることが、この条約の目的実現のため必要であると考える。」と表明いたしました。
 今回、政府は、批准案の提出に当たって、アメリカ、ソ連両国の核軍縮の努力に見るべきものがあると評価しているようでありますが、一体、何をもってそう評価しているのでありましょうか。この五年間、アメリカ、ソ連両国が核軍縮に関して交渉を行ってきたことは事実でありますが、それ那、核軍備競争の早期の停止や核軍備の縮小を、誠実に交渉してきたと三木総理は考えておられるかどうか伺いたい。もっとも、アメリカ、ソ連の交渉というのは、「核兵器のすべての実験的爆発の永久的停止の達成を求め、その目的のために交渉を継続することを決意」した一九六三年八月の部分核停条約から十年以上もたっても、全面核実験禁止が実現していない程度の交渉であります。
 三木さん、あなたは誠実な政治家だと私は信じておりますが、誠実とは、一体何年ぐらいで目的を実現することか、お教えを願いたい。
 核軍縮というのは、核兵器の能力や分量を縮小することだと私は信じておりますが、アメリカは、核防条約が発効いたしました一九七〇年三月から三カ月たった同年大月、MIRV展開の決定を行いました。ソ連は、それに追いつこうと、MIRV化を急いでいるのが実情であります。またソ連は、一九七〇年、ICBMとSLBM合計千五百八十基を保有しておりましたが、七一年には千九百五十基、七二年には二千八十七基、七三年には二千百五十五基、七四年には二千二百九十五基に増強いたしました。
 三木さん、これらの経過をごらんになって、アメリカ、ソ連両国は、この五年間、誠実に核軍縮を行ってきたとあなたはお考えになりますか。先ほどの御答弁は、もし核防条約がなかったら、それと比較すればというような、仮定を立てての御答弁でございましたが、いま私が申し上げました事実に対して、率直な評価を国民に対してお示しを願いたい。
 七〇年の政府声明は、「わが国も軍縮委員会のメンバーとして、軍縮の促進に協力する考え方である。」と言っていますが、政府はこの五年間、核軍縮に対し、アメリカ、ソ連両国に対して一体何をしてきたか、この際、国民の前に報告を願いたいと存じます。
 昨年のサラジオストクのSALTIIに関する米ソ首脳会談で、戦略攻撃兵器運搬手段等の総数について、戦略ミサイル発射装置二千四百基、MIRV千三百二十発の上限の合意を見ました。
 これに対し、政府は、天井を決めたことを高く評価しているようでありますが、事の真相は、双方での継続的増強を互いに合法化しただけのことであります。早くも今日、ジュネーブにおけるSALTIIに関する技術交渉は、行き詰まりを見せているではありませんか。ソ連側が期限十年にも難色を示したことや、アメリカ・フォード大統領が帰国後の記者会見で、「ミサイルの精度向上や弾頭重量については何ら謝限はない。」と力説したことは、米ソ両国ともに、戦略兵器競争を停止したり、核軍縮を行おうなどとは、露ほども考えていないことを示すものではありませんか。三木さんの御見解を承りたい。
 第三は、インドシナからのアメリカの撤退と軌を一にして核防条約の批准を求めた三木総理が、わが国の安全保障について何を考えているかであります。
 三木総理が、国会へ核防条約の批准を求める意向を固めると、与党である自民党内では、わが国の安全保障と核防条約との関係について、てんやわんやの大騒ぎが起こりました。これは、もともと核防条約自体が、わが国の安全保障に余り役立たぬものであることを、自民党の方々自体が知悉していたからのことではありますまいか。
 署名時の政府声明は、「核兵器国が非核兵器国の安全保障のための実効ある措置につき更に検討を続けることを希望する。」と述べていますが、果たして、この五年間に、どんな実効ある措置がとられたと政府は判断しているのでありましょうか。わが国政府署名前の六八年六月十七日の米英ソの宣言や、同年六月十九日国連安保理事会決議二百五十五は別として、署名後の五年間に、核兵器国が非核兵器国の安全保障のため実効ある措置をとったとするなら、それは何であるかを、三木総理は、この際国民に明らかにせられたいのであります。
 実効ある措置なるものは、何もありません。さらに、アメリカはインドシナから撤退をするに至りました。この情勢に自民党はあわてふためき、宮澤外相を四月訪米せしめました。そして、日米安保条約がアメリカ側から廃棄されないようにこいねがったり、これと引きかえに、木村外相時代、一度は死んだ一九六九年佐藤・ニクソン共同声明でうたいました「韓国の安全は日本自身の安全にとって緊要」の文句を生き返らせ、条約論としては、有事の際の核持ち込みにイエスはあり得るなどと強調し、非核三原則の国会決議を無視し、実体的には、朝鮮半島における戦争に三木内閣は片足突っ込んだのではないかと、国民に大きな危惧をもたらしました。
 三木さん、これがあなたの平和外交なのですか。朝鮮半島に対するあなたの外交方針と、有事核持ち込みに対するあなたの意見とを明らかにしていただきたいのであります。
 アメリカの援助のみに依存しておりましたグエン・バン・チュー南ベトナム政権は、アメリカに見捨てられたときたちまち瓦解いたしました。この先例を、三木さんはどう受け取っておられるのでありましょうか。
 わが国の安全をひたすらアメリカに依存をしておる自民党政府では、防衛問題を国民的課題として国民に実感させることはできません。国民の並み並みならぬ犠牲において築き上げられているわが国の防衛について、三木さん、あなたは自分の足で立つ防衛方針を国民に示されるおつもりはないか、伺いたいのであります。
 昭和四十七年度から出発いたしました第四次防衛計画は、自民党政府のつくり出した狂乱インフレのため、すでに昭和四十八年度より遂行不可能に陥り、現在でも、計画終了時には五千億余円に上る装備の積み残しが明白に見積もられて覚ります。四次防はすでに破綻してしまっておるのであります。一体、政府はいま何を指針に防衛をやっているのでありますか。予算は、自民党の多数によって成立はいたしておりますが、三木さん、あなたはわが国防衛の最高責任者として、この際、わが国防衛の基本方針を明白に国民に示される責任があります。方針は改めねばなりません。総理のお考えを伺いたい。
 最後に、核防条約と中国との関係について伺いたい。
 核防条約批准は、米ソの二大超大国の核支配をわが国が認める結果になります。言いかえれば、これは米ソの覇権を認めることになるのでありましょうか。三木さん、あなたは、日中平和友好条約に、いわゆる覇権条項を入れると、核防条約批准に矛盾するとお考えかどうか、お伺いいたしたい。
 さらに、原子力の平和利用は、わが国産業の将来における重大問題であります。当然、日中両国間にこの点に関する協力が問題になると思いますが、核防条約に加入しない中国との間で、原子力平和利用に関する協力関係をつくり上げていく御構想を三木さんはお持ちであるかどうか、伺いた
 わが国の将来に重大な影響を持つ核防条約について、三木総理の基本的な認識と見解とを伺って、質問を終わります。(拍手)
   〔内閣総理大臣三木武夫君登壇〕
#41
○内閣総理大臣(三木武夫君) 永末君にお答えをいたします。
 核防条約の性格について、米ソの核による支配が、世界平和の維持の唯一の道かというような意味の御質問があったと思います。
 この条約は、米、英、ソ、仏、中という五核兵器保有国の存在は認めてあるわけです。しかし、この条約のねらいは、いまでさえいろいろ人類の不安の原因になっておるわけでございますから、これ以上核兵器の保有国の出現を防止しようというのが、この条約のわらいであります。したがって、米ソの核による世界支配を認めたものではないのでございます。特にまた、この核兵器に対しては、核軍縮を誠実に交渉を行うというような規定もいたしておるわけでございます。
 また、二十カ年という長期の期間をまるのみにするのかというお話でございました。
 この条約に参加すれば、二十年間の有効期限があることは御指摘のとおりでございますが、この条約には脱退の規定もございますし、条約の運用については、再検討する会議の開催も規定されておりますので、運用に対しては、いろいろ弾力的に対処できる道が開かれております。
 それから、核軍縮について、米ソ両国は核軍縮を誠実にやってきたかというお話でございます。
 この条約が成立後、米ソ間には核軍縮に関する四つ、五つの条約や協定が締結されておりまして、これは以前には見られなかったことだと私は考えております。しかし、われわれが期待するような方向には行ってないとしても、両国による交渉というものは、誠実に行われておるものと考えておるわけでございます。
 また、この条約の中に言う核軍縮に対して期限は何年を目標にしておるかというお話でございました。
 期限の規定はないわけでございますし、ことに軍縮というようなことは、永末君お考えになりましても、なかなかこれは容易なことではないことは明らかでございますので、相当時間をかけて、これは着実に実現していく努力が必要であると思います。
 また、米ソ両国はこの五年間、核軍縮を行ってきたかというお話でございました。
 核軍備の拡張に、枠をはめるという努力は続けてきておると思います。この点については、評価し得るものもございます。また、先ほども申しましたように、核軍縮に関する幾つかの条約、協定というものも行われたわけでございます。
 また、わが国は米ソ両国に対して、核軍縮にどういうことをしてきたのかということでございますが、国連とか軍縮委員会の場において、米ソを含む核の保有国に対して、絶えず核軍縮の推進を訴えてきたわけでございます。しかし、先ほど私がしばしば申しますように、どうもわが国の発言というものに、国際的な何かこう迫力が欠けるのは、それは、日本はやはり非核三原則というものを言ってはおるけれども、なかなか核防条約の批准というものもちゅうちょする、そういうところに、核兵器の開発を内心考えておるのではないかという、こういう疑惑を世界に持たしておることは事実で、それは各国における世論調査を見ても、そういうふうに日本の将来を考える世論というものが非常に高いわけでありますから、なかなか、日本がいろいろ言っても、その発言力というものは重みを欠いたことは、私は事実だと思います。
 そういう点で、この条約を批准するということは、日本の平和外交を行う上において一つの新しい出発点だと私は思うものでございます。そういう意味において、いままでの努力というものは成果を必ずしも上げていないけれども、これからは、この問題こそ、核戦争防止のために日本が働ける大きな、つの問題だと私は考えておるわけでございます。
 また、米ソ両国が核軍縮を行うものだと考えているのかということでございます。
 しかし、世界の世論というものをもっと凝結して、そうして、もうせざるを得ないように持っていくことも必要だと私は思います。それは、世界を見れば非核保有国が圧倒的に多いのですから、日本がその先頭に立って世界の世論を凝集して、そして核軍縮、やがては核兵器の国際管理あるいは廃止、こういう問題について、日本は努力する余地が非常にあるというふうに考えるものでございます。
 わが国の安全保障について、ことに、非核保有国の安全保障に対する実効ある措置とは、どんなものかという御質問でございました。
 いま永末さんの御指摘にもございましたように、安全保障に関する米英ソ三国の宣言とか、安保理事会の決議等もございましたが、しかし、まだ実効のあるということには、今後の努力が要ると私は思う。ことに、きのうからジュネーブで開かれておる本条約の再検討の会議、これは非核保有国の安全保障に対する実効的な措置というものが十分検討される場でもあると思いますから、今後この点については、さらに努力を必要といたさなければならぬと思います。
 朝鮮半島に対して、三木内閣の外交が、非常に朝鮮半島の緊張を激化するようなことを考えておるのではないかというような意味のことがございました。
 そういうことは絶対にないわけでございます。朝鮮半島の平和と安定というものは、わが国の平和と安定にとって最も重大な関係を持つのでありますから、われわれが望むものは、どうか朝鮮半島というものの緊張が緩和して、平和と安定が朝鮮半島に確立してもらいたいということが、わが外交の心からなる願いであるし、この認識の上に立って、朝鮮半島に対する外交を行っていこうと考えるものでございます。
 韓国との間には、最近種々な、いろいろな不幸な事件が起きましたけれども、今後わが国は韓国とも相互理解を増進して、日韓関係というものを一層安定さしていく所存でございます。また、北鮮との間には、人間とか経済、文化の面において交流を積み重ねていって、北鮮との間にもまた相互理解を深めていきたい。わが国は、南北が話し合うことによって相互間の緊張が緩和されるような、そういう状態が一日も早く朝鮮半島にできることを願っておるものであって、朝鮮半島の平和と安定、それによって発展をしていくということを期待いたしておるわけでございます。
 また、アメリカに依存する防衛は、アメリカから崩れるのではないかということでございました。
 アメリカは、日本に対する一つの安保条約の義務は、繰り返し繰り返し誠実に守るということを言っておるのでございまして、そう友好国というものを疑ってかかれば、なかなか外交というものはやりにくいわけでございまして、アメリカから崩れるとは私は思っていたいのでございます。したがって、わが国防衛の一つの柱である安保条約というものは、やはり維持していきたいという考えでございます。
 日本の安全保障に対して、どういう考え方を持っておるかということでございます。
 国民の安全を確保するというととは、もう政府の第一義的責任であると考えておるわけです。そのためには、いろいろな条件というものの総合化されたものの中に一国の安全はあるわけでございますから、したがって、軍事面だけというわけではない。しかし、軍事面も大事でございますから、日本は日本の国を守るという――攻撃するという必要はないわけでございますから、一国を守るための防衛力を確保するということ、また安保条約を維持していくこと、また、一方においては諸外国との友好関係というものを増進し、また世界の平和を崩すような条件、技術協力とか経済協力もそうですが、そういう条件をなくしていくための努力、こういう外交的な努力も要るし、国内においては、政治、経済、あらゆる面において国の安定を図っていくというための内政上の努力が要る。そういうものが総合化されて一国の安全というものが確保されるので、そういう点については、これは国民に対する最も第一義的な責任なりと考えて、国の安全確保に対しては、われわれとして、あらゆる場合を考えて対処いたしておる次第でございます。
 また、日中の平和友好条約に関連して御質問がございました。
 日中の平和友好条約は一日も早く締結したい、そして日中の永遠の友好関係の基礎を確立したいということを切に願っておるわけでございます。そのためにただいま外交交渉をいたしておるととは、御承知のとおりでございます。今日の核防条約と日中平和友好条約とは、何らのかかわり合いがある問題ではないわけでございます。別の問題でございます。
 また、中国との間に原子力の利用というものについて、これは将来協力関係が必要ではないかというような御質問でございました。
 将来、科学技術一般に関する中国との協力関係が進展して、原子力の平和利用の問題でも、私は協力の可能性が生まれる場合が大いにあると思います。現在はまだそこまでいっでおりませんが、そういう場合もあり得ると考えるわけでございまして、そういう場合が起これは、またそういう協力ということは必要であるわけでございます。
 お答えをいたします。(拍手)
   〔国務大臣宮澤喜一君登壇〕
#42
○国務大臣(宮澤喜一君) 総理大臣が非常に詳しくお答えになりましたので、ほとんど漏ればないと存じますが、非核保有国の安全保障につきまして、一九六八年の米英ソ三国の共同宣言、あるいは安保理事会決議二百五十五号は、今日も私どもは評価をしておるわけでございます。
 御指摘のように、いわゆるこの条約のもとにおける再検討会議がすでに開かれたところでございますので、ただいま永末議員の御質疑の中にございましたいろいろな含意をよく私ども心に置きまして、非核保有国としての安全保障につきまして、この再検討会議の場で主張をしてまいりたいと考えております。(拍手)
#43
○副議長(秋田大助君) これにて質疑は終了いたしました。
     ――――◇―――――
#44
○副議長(秋田大助君) 本日は、これにて散会いたします。
    午後四時五十九分散会
     ――――◇―――――
  出席国務大臣
       内閣総理大臣   三木 武夫君
       外 務 大 臣  宮澤 喜一君
       大 蔵 大 臣  大平 正芳君
       厚 生 大 臣  田中 正巳君
       国 務 大 臣  福田  一君
       国 務 大 臣  佐々木義武君
 出席政府委員
       内閣法制局第三
       部長       茂串  俊君
       外務省条約局長  松永 信雄君
       外務省国際連合
       局長       鈴木 文彦君
ソース: 国立国会図書館
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