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#1
第075回国会 本会議 第20号
昭和五十年五月八日(木曜日)
    ―――――――――――――
 議事日程 第十八号
  昭和五十年五月八日
    午後二時開議
 第一 鉄道敷設法の一部を改正する法律案(内
    閣提出)
 第二 中小企業近代化促進法の一部を改正する
    法律案(内閣提出)
 第三 恩給法等の一部を改正する法律案(内閣
    提出)
 第四 郵便法の一部を改正する法律案(内閣提
    出)
 第五 地方交付税法の一部を改正する法律案
    (内閣提出)
    ―――――――――――――
○本日の会議に付した案件
 永年在職の議員八百板正君に対し、院議をもつ
  て功労を表彰することとし、表彰文は議長に
  一任するの件(議長発議)
 日程第一 鉄道敷設法の一部を改正する法律案
  (内閣提出)
 日程第二 中小企業近代化促進法の一部を改正
  する法律案(内閣提出)
 日程第三 恩給法等の一部を改正する法律案
  (内閣提出)
 日程第四 郵便法の一部を改正する法律案(内
  閣提出)
 日程第五 地方交付税法の一部を改正する法律
  案(内閣提出)
 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法
  律の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣
  旨説明及び質疑
    午後二時二十四分開議
#2
○議長(前尾繁三郎君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
 永年在職議員の表彰の件
#3
○議長(前尾繁三郎君) お諮りいたします。
 本院議員として在職二十五年に達せられました八百板正君に対し、先例により、院議をもってその功労を表彰いたしたいと存じます。表彰文は議長に一任せられたいと存じます。これに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○議長(前尾繁三郎君) 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。
 表彰文を朗読いたします。
 議員八百板正君は衆議院議員に当選すること十
 回在職二十五年に及び常に憲政のために尽くし
 民意の伸張に努められた
 よって衆議院は君が永年の功労を多とし特に院
 議をもつてこれを表彰する
    〔拍手〕
 この贈呈方は議長において取り計らいます。
    ―――――――――――――
#5
○議長(前尾繁三郎君) この際、八百板正君から発言を求められております。これを許します。八百板正君。
    〔八百板正君登壇〕
#6
○八百板正君 私は、昭和二十二年四月、第二十三回衆議院議員総選挙に立候補して当選、このとき初めて議席を得まして、新憲法による第一回国会に臨んだのであります。社会党片山内閣成立というときでありました。
 それからいろいろの変化がありましたが、いまここに、二十五年永年在職ということで表彰をいただくわけであります。
 長いだけが能ではありませんので、一体、何をしてきたかと考え、何もしなかった、何もしないと同じようなものではなかったかと反省いたしております。
 しかし、私でなければできない何かをしてきたはずだと思い直し、自問自答いたしております。やはり精いっぱいのことをしてきたのだと、一つ一つを振り返って、みずからを慰めるものであります。
 型のごとく表彰をいただく年月になったわけでありますが、思えば、この長い内外の変化と厳しさに耐えて、これを切り抜けて今日に至ったのは、この健康で強靱な体と心ではなかったか、産んだ両親のたまものではなかったか、いまは亡き父母に思い及ぶものがあります。(拍手)
 国会に出た初めのころは、委員会の部屋から出ても、西と東を間違えて廊下を歩くありさまで、また、人から先生などと呼びとめられては、おれが先生ではあるまいと、後にだれかいるのだろうと振り向いた私でありましたが、この西も東もわきまえぬ若輩でありましたのに、多くの先輩、同僚各位の御指導をいただき、とにかく今日に至ったのであります。これ、ひとえに皆様のおかげでありまして、ここに思いを新たに、深く感謝申し上げるものであります。(拍手)
 また、選挙区の皆様には、長年にわたり、変わりなく温い御支援をいただき、ありがとうございます。おかげさまで本日を迎えました。深く感謝いたします。
 国会職員の皆様、議員会館と議員宿舎の皆様、国会図書館の皆様、ずいぶんお世話になり、今日に至りました。あわせて、ここに深く感謝申し上げます。(拍手)
 国の内外を見ても、国会の内外を見ても、余りよくなったとも思えない面もあり、意に満たないたくさんのことがあります。皆様方の御指導と御協力で、もっとよくするよう、さらに精魂を傾けて取り組みたい所存であります。何とぞ、今後とも変わりなく御指導くださいますようお願いを申し上げます。
 私は、二十五年の区画をしかと心に刻み、意を新たにして、わが国政治の発展のために、さらに精進、努力いたすつもりであります。
 ここに御礼を申し述べ、尊敬する議長初め、議員各位の御健康をお祈りいたし、謝辞といたします。
 ありがとうございました。(拍手)
     ――――◇―――――
 日程第一 鉄道敷設法の一部を改正する法律案(内閣提出)
#7
○議長(前尾繁三郎君) 日程第一、鉄道敷設法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 委員長の報告を求めます。運輸委員長木部佳昭君。
    ―――――――――――――
 鉄道敷設法の一部を改正する法律案及び同報告書
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
    〔木部佳昭君登壇〕
#8
○木部佳昭君 ただいま議題となりました鉄道敷設法の一部を改正する法律案につきまして、運輸委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
 本案は、昭和四十八年十月の鉄道建設審議会の建議に基づき、京都府北部に必要な鉄道を整備いたしますため、本法別表に掲げられております予定鉄道線路のうち、京都府宮澤から河守に至る、いわゆる宮守線の終点を福知山まで延長しようとするものであります。
 本案は、三月十七日本委員会に付託され、同月二十五日政府から提案理由の説明を聴取し、二十八日質疑に入り、五月六日質疑を終了し、採決いたしました結果、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#9
○議長(前尾繁三郎君) 採決いたします。
 本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#10
○議長(前尾繁三郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
     ――――◇―――――
 日程第二 中小企業近代化促進法の一部を改正する法律案(内閣提出)
#11
○議長(前尾繁三郎君) 日程第二、中小企業近代化促進法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 委員長の報告を求めます。商工委員長山村新治郎君。
    ―――――――――――――
 中小企業近代化促進法の一部を改正する法律案及び同報告書
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
    〔山村新治郎君登壇〕
#12
○山村新治郎君 ただいま議題となりました中小企業近代化促進法の一部を改正する法律案につきまして、商工委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 最近における中小企業をめぐる経済情勢は、高度成長から安定成長への転換、国際分業化の進展、国民生活の多様化等、現行法制定時に比べ大きく変化しております。
 本案は、このような経済事情の著しい変化に対処して、中小企業の成長発展を図るため、中小企業近代化施策の一層の充実を図ることを目的として提案されたものでありまして、その改正点の
 第一は、国民生活との関連性が高い物品または役務を供給する、いわゆる国民生活関連業種を近代化施策の対象業種に加えること、
 第二は、主務大臣が定める中小企業近代化計画の事項として、新たに「従業員の福祉の向上、消費者の利益の増進、環境の保全等」を加えること、
 第三は、従来の業種別構造改善事業に加え、新たに関連事業者との協調による構造改善事業についても金融、税制上の助成措置を講ずること、
 第四は、経済事情の変化に対処するため、新商品の開発等により、中小企業者が新たな事業分野へ進出しようとする新分野進出計画承認制度を設け、これに対し、金融、税制上の助成措置を講ずることであります。
 本案は、去る二月二十八日当委員会に付託され、三月十八日、河本通商産業大臣から提案理由の説明を聴取し、四月十五日より質疑に入り、以来、慎重に審査を重ねました。
 かくて、昨七日質疑を終了し、採決の結果、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決した次第であります。
 なお、本案に対し、中小企業近代化を効果的に推進する趣旨の附帯決議が付されましたことを申し添え、以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#13
○議長(前尾繁三郎君) 採決いたします。
 本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#14
○議長(前尾繁三郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
     ――――◇―――――
 日程第三 恩給法等の一部を改正する法律案
 (内閣提出)
#15
○議長(前尾繁三郎君) 日程第三、恩給法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 委員長の報告を求めます。内閣委員長藤尾正行君。
    ―――――――――――――
 恩給法等の一部を改正する法律案及び同報告書
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
    〔藤尾正行君登壇〕
#16
○藤尾正行君 ただいま議題となりました恩給法等の一部を改正する法律案につきまして、内閣委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
 本案は、昭和四十九年度における国家公務員給与の改善率及び公務員給与と恩給との水準差の補てん分により、恩給年額を三八・一%増額する等、十一項目の改善措置を行おうとするもので、公務員給与と恩給との水準差の補てん分は昭和五十一年一月一日から、その他の措置は五十年八月一日から、それぞれ実施しようとするものであります。
 本案は、二月十五日本委員会に付託、二月十八日政府より提案理由の説明を聴取し、慎重審議を行い、五月七日質疑を終了、討論の後、採決の結果、全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。
 なお、本案に対し、自由民主党、日本社会党、日本共産党・革新共同、公明党及び民社党の各派共同提案に係る附帯決議が全会一致をもって付されました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#17
○議長(前尾繁三郎君) 採決いたします。
 本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#18
○議長(前尾繁三郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
     ――――◇―――――
 日程第四 郵便法の一部を改正する法律案(内閣提出)
#19
○議長(前尾繁三郎君) 日程第四、郵便法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 委員長の報告を求めます。逓信委員長地崎宇三郎君。
    ―――――――――――――
 郵便法の一部を改正する法律案及び同報告書
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
    〔地崎宇三郎君登壇〕
#20
○地崎宇三郎君 ただいま議題となりました郵便法の一部を改正する法律案に関し、逓信委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
 まず、法律案の内容を御説明いたしますと、郵便事業の運営に要する財源を確保するため、郵便料金の改定を行おうとするものでありまして、その主なものは、第一種郵便物のうち、定形郵便物については二十五グラムまで二十円を五十円に、定形外郵便物については五十グラムまで四十円を百円に改め、また、第二種郵便物の通常はがきについては十円を二十円に改定することといたしております。
 その他、取り扱いについて若干の改善を図ることとし、料金不足の郵便物の納付額の算定方法を改めること並びに引き受け及び配達について記録を行ういわゆる簡易書留の損害賠償の最高限度額を引き上げることといたしております。
 なお、この法律案の施行期日は、本年十月一日となっております。
 本案は、去る一月三十一日内閣から提出され、二月二十五日、本会議において提案趣旨説明及び質疑が行われた後、逓信委員会に付託されたのであります。
 自来、委員会においては、政府に対し詳細な質疑を重ねたほか、物価問題等に関する特別委員会との連合審査会を開き、また、委員を大阪に派遣して、同地方在住の有識者等の意見を聴取するなどの審査を行った後、五月七日質疑を終了し、直ちに討論に入りましたところ、日本社会党を代表して古川喜一君、日本共産党・革新共同を代表して土橋一吉君及び公明党を代表して田中昭二君が、それぞれ反対の意見を述べられ、引き続き採決を行いました結果、賛成多数をもって原案のとおり可決いたしました。
 なお、本案に対して附帯決議を付したことを申し添えます。
 以上をもって御報告を終わります。(拍手)
    ―――――――――――――
#21
○議長(前尾繁三郎君) 討論の通告があります。順次これを許します。古川喜一君。
    〔古川喜一君登壇〕
#22
○古川喜一君 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となりました郵便法の一部を改正する法律案に対し、反対の意を表明するものであります。
 この法律案は、現下の厳しい経済情勢の中にあって、公共料金たる郵便料金を大幅に引き上げ、物価の上昇に拍車をかけ、狂乱物価再来の呼び水ともなりかねないものであり、国民生活に与える影響はきわめて重大であると言わねばなりません。
 三木内閣は、当面の急務は物価の鎮静であり、公共料金を極力抑制すると公約したにもかかわらず、酒、たばこを初め、政府みずからこの郵便料金の大幅引き上げをあえて提案してまいったのであります。これは政府の物価に取り組む政治姿勢の欺瞞であり、政策の貧困以外の何ものでもありません。
 政府は、この三月の消費者物価上昇率を目標の一五%以下に抑えることに成功したと胸を張っているが、もう物価は再上昇への胎動をし始めているのであります。さらにここに来て、土地上昇の兆しが見え、また、大企業製品、基礎的物資の値上げの動きが見られているのであります。企業は、値上げの時期を、いまや遅しと手ぐすねを引いて待ち構えているのであります。
 政府は、物価上昇率を一年後には一けたにすると言うが、地価、物価の動向を考えただけでも、全く空中の楼閣に終わることは明らかであります。これはひとえに、政府の公共料金抑制策の貧困さに起因するものであり、物価対策の無策であり、国民に対する公約違反を犯し、また一つ悪事を重ねたのがこの法律案であります。わが党は、まずこの点において断固反対するものであります。(拍手)
 次に、政府は、郵便料金が家計に占める割合はわずか〇・一二%にしかすぎないから、さして国民生活に影響はないと答弁しておりますが、第一種郵便で二・五倍、第二種で二倍、第三種に至っては五倍という、史上に例のない大幅値上げによる物価へのはね返りは、企業通信は当然に原価に算入され、諸物価、新聞、雑誌の購読料に波及することは明白であり、数値以上の影響を来すことを見逃すわけにはまいりません。
 さらに、この法律案は、郵便料金値上げのみをもくろみ、最も具体的課題である郵便事業改善策を何ら考えていないということであります。
 郵便事業の財源を確保するため、単に郵便料金値上げのみを安易に考え、政府は、事業財政の根本的改善策を確立しようという努力もなく、その点についての何らの措置もとられていないのであります。
 たとえば、郵便局舎建設費の問題があります。現在、郵便局は約二万二千局あり、この建設及び維持のための費用が、独立採算制のたてまえから、すべて郵政事業特別会計から支出していることが、赤字の大きな要因になっているのであります。もし企業採算を強調するならば、当然山間僻地などの郵便局はすべて採算のとれないものであり、即刻閉局しなければならないことになり、国営事業としての郵便事業は、その責任を遂行することができないことになります。郵便がナショナルミニマムとして国の行う事業となっていることから考えても、このような局舎建設の費用は、利用者に負担させるものでなく、一般会計において負担するのが当然であります。
 また、郵便職員の退職年金制度があります。これは国家公務員の共済組合によって、年金に必要とされる財源は、組合員四二・五%、国庫負担五七・五%とされておりますが、この国庫負担分は一般会計からの繰り入れでなくて、郵政事業特別会計から全額支出されております。他方、厚生年金制度においては、必要財源の二〇%相当を一般会計から支出していることを考えれば、この郵便職員退職年金の必要財源についても、一般会計から支出すべきが当然であります。
 このように、事業財政の根本的改善策を放置して、安易に郵便料金の値上げにのみ頼ろうとする態度は、許すわけにはまいりません。
 私は、以上の数点について強調するとともに、最後に、郵便事業の今日の事態を招いた大きな責任として、郵政当局の労使間に関する頑迷、無理解な態度を挙げねばなりません。
 郵便の遅配は依然として慢性化しており、このことは、過去のわが党の主張と提案を抑えて、政府・与党が、料金値上げをすれば郵便物がスムーズに家庭に届くと、国民にうそをついてきた結果でありまして、労使正常化こそ、一切の前提であるとするわれわれの主張の正しさを、何よりも雄弁に物語っていると思うのであります。
 事業を運営するのは人であり、なかんずく労働者であります。労働者の権利、労働運動の基本的権利を率直に認める当局の厳しい自己反省なしには、郵便事業の正常化は期しがたいのであります。
 以上申し述べたとおり、政府提案に係るこの郵便法の一部を改正する法律案は、物価対策上からもきわめて不当であるばかりでなく、大幅な料金の値上げは、かえって郵便事業の収入を減少させる結果にもなりかねないのであります。わが党は、かかる無定見な料金引き上げには絶対反対であります。
 政府は、潔く本案を撤回して、国家財政による大幅な助成策を図るとともに、郵便事業に日夜を問わず働いている労働者の諸権利を尊重して、もって、国民の負託にこたえ得る郵便にすべきであることを強く主張いたしまして、私の反対討論を終わりたいと思います。(拍手)
#23
○議長(前尾繁三郎君) 高橋千寿君。
    〔高橋千寿君登壇〕
#24
○高橋千寿君 私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となりました郵便法の一部を改正する法律案に対し、賛成の意を表するものであります。
 郵便事業は、創業以来百有余年を経過しておりますが、全国津々浦々の郵便局を通じて提供されてまいりました郵便サービスは、わが国の社会経済の発展並びに国民生活の向上に大きく寄与してきたのであります。
 現在では、情報化時代と呼ばれるほどに郵便物の数も飛躍的に増加し、四十八年度には百三十億通を超える状況となりましたが、一方、郵便事業はきわめて人の力に頼る面が大きいという特質もあって、経営合理化の努力にもかかわらず、諸経費の上昇、とりわけ運営経費の約九割を占める人件費の著しい高騰のため、郵便事業の財政は年々悪化してきたのであります。
 このような状況を踏まえて、四十八年十月、郵政大臣から郵政審議会に対し、「郵便事業の健全な経営を維持する方策について」諮問が行われ、同年十二月に答申がなされたわけであります。
 その答申によりますと、当面、郵便事業の収支を改善するためには、四十九年度において郵便料金の改正をすることが適当であるとして、具体的な料金改正案を示されたわけでありますが、折からの異常な経済情勢の中において、政府は、物価安定を最優先の課題として、小包郵便物の料金を除き、郵便料金の改定につきましては、四十九年度中これを見送ることとされたのであります。これに加えて、その後の給与の改定が約三〇%にも及ぶ、かつてない大幅なものとなったため、郵便事業収支の不足額は巨大なものとなったのであります。
 このため、郵政大臣は、昨年十一月、再度、郵政審議会に対し、財源を確保するための郵便料金改正案を諮問し、同年十二月には、第一種五十円、第二種三十円を骨子とした、五十年四月からの料金改正もやむを得ない旨の答申がなされたのであります。
 四十八年に行われました総理府の家計調査によりますと、一世帯当たり一年間の家計消費支出額は平均約百三十五万円となっておりますが、このうち郵便料は千六百二十八円であり、一世帯当たり一カ月平均百三十六円程度となっており、家計支出全体に占める郵便料の割合は〇・一二%になります。
 しかし、今日の経済事情のもとにおいては、公共料金の値上げが国民生活に及ぼす心理的な影響を考えますと、極力値上げを抑制すべきことは当然のことであり、その点、本法律案で、物価政策上の配慮から、はがきの値上げ幅を小さく抑え、実施時期についても本年十月に延期するなどの配慮が加えられたのであります。
 このように特に配慮された本法律案は、事業財政の一段の悪化を避けるため、やむを得ないものと考えるものであります。
 郵便事業の機械化、合理化などにつきましては、かねてより種々努力がなされており、たとえば、通常郵便物の種類、体系の整備、郵便番号制の実施、自動読み取り区分機による区分など、各般にわたる合理化、機械化策が逐次実施され、作業能率の向上を図ることによって人員の増加を吸収し、経費を抑制し、さらに、配達度数や窓口取り扱い時間などの合理化についても検討が加えられているとのことでありますが、郵便事業は一軒一軒配達をしなくてはならないなど、人手に頼る度合いが非常に大きく、機械化にもおのずから限度があるものと考えられます。
 したがいまして、今後とも、あらゆる施策を講じ、事業の効率的運営を図るよう要望したいと思いますが、当面、料金改定によって収支の改善を図ることは、やむを得ないものと考えるものであります。(拍手)
 収支の不足を一般会計から補てんするという議論もありますが、受益者負担の原則を離れ、仮に、郵便の赤字を一般会計からの繰り入れにより補てんすることとしますと、これは、とりもなおさず国民の税金で負担することとなるわけであり、郵便の約八割が企業などの差し出す業務用通信であるという実態から見まして、負担の公平を失することとなると考えます。また、安易に一般会計に依存すれば、事業の自主性も喪失するなどの弊害が生ずることも懸念されるところであり、郵便事業の将来のためにも、また、国民全体の利益の上からもとるべき手段ではなく、したがいまして、独立採算のたてまえにより、受益者負担の原則に立ちまして、郵便料金で賄うことが社会的公平にもかない、妥当なことであると考えております。
 料金改定のほか、この法律案におきましては、料金未納などの場合に差出人または受取人が納付する金額の算定方法を改めること、並びに引き受け及び配達についての記録を行う、いわゆる簡易書留の損害賠償の最高限度額を五千円に引き上げることとしておりますが、いずれも妥当と存じ、賛成するものであります。(拍手)
 簡単に賛成の理由を申し上げましたが、この際、政府当局に特に希望を申し上げておきたいと存じます。
 今日の郵便事業に対して、国民の間に強い不満があります。特に、郵便配達の安定は、国民のひとしく切望するところとなっております。政府は、この機に臨んで、郵便事業に課せられた社会的責務を自覚され、事業の健全なる経営と業務の正常化について、全職員が真に一体となって努力し、国民の期待にこたえていただきたいのであります。
 以上をもって、私の賛成討論を終わります。(拍手)
#25
○議長(前尾繁三郎君) 土橋一吉君。
    〔土橋一吉君登壇〕
#26
○土橋一吉君 私は、日本共産党・革新共同を代表し、郵便法の一部を改正する法律案に反対の討論を行うものであります。
 反対の第一の理由は、今回の郵便料金値上げが、物価の安定を求める国民の切実な要求を踏みにじり、政府みずから物価値上げの拍車をかけようとするものであります。
 今日、物価鎮静という政府の口先の宣伝とはうらはらに、四月の東京都区部の消費者物価指数が、三月に比べ二・五%と大幅に上昇し、また、経済企画庁の調査でも、大企業の七割もが、景気回復とともに製品価格引き上げの意向を持っていることにも明らかなように、物価高騰の危険はきわめて大きいものがあります。
 しかるに、政府が、さきの酒、たばこ値上げ法案に加えて、今回の郵便料金法案をしゃにむに成立させようとしていることは、政府が、物価急騰の火に油を注ぐ結果を生み出すものであることは、議論の余地がないのであります。
 それだけでなく、政府は、本年度の歳入欠陥を口実として、さらに、塩、小麦、各種社会保険料から消費者米価、国鉄運賃、電信電話料金などの公共料金の引き上げを意図しているではありませんか。
 政府が、郵便料金値上げの理由としている今日の郵便財政の赤字の最大の原因は、営業用通信物の急増、過密過疎問題の激化、都市での局舎増設の必要、資材の高騰、配達の困難など、歴代の自民党政府による大企業本位の高度経済成長政策、インフレ・高物価政策にあることは、わが党が審議の中で明らかにしたとおりであります。
 政府は、人件費の高騰を赤字の最大の原因であるかのように宣伝しておりますが、これが根拠のないものであることは、郵政事業の業務費に占める人件費の比率が、昭和四十年以来一貫して低下していることを見れば、きわめて明らかな事実であります。
 反対の第二の理由は、今回の措置が、郵便法第一条にうたわれた郵便事業の公共的性格を真っ向から踏みにじる、きわめて不当なものだからであります。
 郵便法第一条は、「郵便の役務をなるべく安い料金で、あまねく、公平に提供することによって、公共の福祉を増進することを目的とする。」と定めているのであります。これは、郵便事業の根本的性格が公共的なものであり、国民の社会生活に必要不可欠の通信を、安い料金で公平に提供するところにあることを、明確に定めたものであることは言うまでもありません。
 しかるに政府は、わが党が審議の中で厳しく追及をしたように、事業の採算を第一として、もっぱら料金の引き上げによって財政の赤字を解決しようとしております。これは、郵便事業の根本的性格である公共的性格を踏みにじるものと言わなければなりません。
 わが党は、政府がこのような不当な方針を直ちに改め、郵便事業の本来の任務に立ち返るべきことを、重ねて強く要求するものであります。(拍手)
 反対理由の第三は、政府が以上の誤った立場に立って、郵便事業の公共的性格を保障するに必要な財政的支出を行っていないところにあります。
 本来、局舎、ポストなどの基礎施設にかかわる費用及び郵便事業を管理監督している本省、地方郵政局、監察局、郵便局長等の人件費を中心とする経費、さらには、医療機関、訓練機関の経費などは、当然に国が負担すること、このことが、国民に安い料金で、あまねく、公平に郵便の役務を提供するための不可欠の条件であることは、わが党がしばしば明らかにしてきたとおりであります。これらに要する経費一千億円を国が負担しさえすれば、現行の料金で郵便事業に直接かかわる経費を償えることは、郵政省の資料によっても明らかな事実であります。
 政府が、当然負担すべき国の支出を出さないために、今回の料金値上げを行っても、郵便事業の累積赤字は、五十一年度末には三千億円に上り、国民は絶え間ない料金引き上げの被害にさらされることは、政府自身の資料によっても明らかであります。このことは、郵便事業の根本的な公共的性格を破壊するものと言わなければなりません。政府が、わが党の道理ある主張に耳をかさずに、もっぱら料金引き上げを押し通そうとすることは、言語道断と言わなければなりません。(拍手)
 反対の第四の理由は、政府が、本法案の改正とともに、第三種郵便料金を実に五倍も引き上げる計画を進めているところにあります。
 このような大幅な値上げはかつてないものであり、不当きわまりないものと言わなければなりません。本来、第三種郵便物とは、政府みずからも認めているように、国民の言論、表現、文化、科学の重要な手段である新聞、雑誌、学会報などを特別な低料金で郵送して、文化の啓発、向上に貢献しようとするところにあります。この制度は、郵便事業の根本的な公共性から当然のことであり、したがってまた、この制度による料金割引分は国が負担をしなければならないことも、また当然のことであります。今回の大幅値上げは、この制度の趣旨を根本から破壊をする暴挙と言わなければなりません。
 政府は、第三種郵便物の割引分を負担しようとせず、逆に、逓信委員会審議においても明らかになったように、国民が負担をする封書やはがきの料金で賄っているというありさまであります。政府がこのような不当な仕組みを改めようとしないばかりか、さらに第三種郵便料金の値上げを行うことは、断じて認めるわけにはいきません。
 最後に、私は、わが党が審議の中で明らかにした政策以外には、郵便事業の公共的性格を発揮しながら、同時に、郵便事業の財政問題を正しく解決する道のないことを、重ねて強調するとともに、政府の今回の不当な措置を厳しく糾弾をして、私の反対討論を終わります。(拍手)
#27
○議長(前尾繁三郎君) 田中昭二君。
    〔田中昭二君登壇〕
#28
○田中昭二君 私は、公明党を代表いたしまして、ただいま議題となりました郵便法の一部を改正する法律案に対して、反対の討論を行うものであります。
 本法案に反対する第一の理由は、物価対策上、今回の改正を絶対に認めるわけにはいかないからであります。
 いまさら申すまでもなく、物価対策は昨今における最も重要な中心的課題の一つであり、物価抑制は国民の切実な願いであります。したがって、今国会冒頭において行われた三木総理の施政方針演説の中にある「当面の急務は物価の鎮静にある」との言葉を、国民は期待と願望をもって見守ってきたのであります。しかし、さきに行われた酒、たばこの値上げに次いで、今回の郵便料金の大幅値上げを断行しようとする政府・自民党の暴挙により、国民は、政府の物価抑制政策は単なる絵にかいたもちにすぎず、三木内閣ではとうてい物価鎮静が不可能であることを、身をもって知らされたのであります。
 本改正案は、史上その例を見ない大幅なものであり、第一種郵便で二・五倍、第二種郵便は二倍、第三種郵便に至っては何と五倍という、戦後の混乱期以来の大幅値上げとなっています。
 これまで逓信委員会の審議を通じ、本法案が実施されれば、これがてことなって、国民生活はなお一層物価高騰の重圧に脅かされ、とりわけ、母子家庭、身障者、低所得者などの社会的に弱い立場にある人々の経済的負担を大きくするばかりでなく、中でも、身体障害者のように、郵便により社会的交流を保っている人々の通信手段さえも奪い取り、ますます社会的不公平を拡大さしてしまうことが明らかとなるのであります。
 したがって、政府は、今回の郵便料金値上げが国民生活に及ぼす影響を正しく認識し、物価抑制を最優先させると言われた総理の公約どおり、物価抑制を真に実行しようとする意思と姿勢があるならば、本改正案を即座に撤回すべきであります。
 反対する第二の理由は、今回の値上げが、郵便法第一条の目的と異なり、郵便の持つ公共性を軽視し、企業性、採算性を重視したものであり、このままでは、郵便事業の公共的性格が失われることであります。
 すでに郵便事業の公共的性格は、昭和四十六年の郵便法の改正に当たり、野党各党の反対を押し切り、郵便法第三条を改悪挿入したときに失われたと言っても過言でありません。郵政省の試算でも、五十一年度において、郵政事業特別会計は二千八百八十六億円の赤字が見込まれております。もし仮に、このまま郵便法第三条の企業性の優先を貫き、一般会計からの補てんも行わず、独立採算制に固執すれば、赤字はますます拡大し、数年を経ずして、再び大幅な料金値上げを行わざるを得なくなることは明らかであります。
 したがって、政府は、郵便法第一条の「郵便の役務をなるべく安い料金で、あまねく、公平に提供することによって、公共の福祉を増進する」という法の精神にのっとり、公共料金と郵政事業の独立採算制との関係に抜本的なメスを入れ、郵便の公共性を確保するため、一般会計からの補てんを行い、郵便事業における国の負担すべき範囲を明確にすべきであります。
 すなわち、国が国民に対して保障する通信手段の基礎的施設である郵便局舎などの公共的施設の整備、配置は、国が責任をもって行うべきものであり、これらの経費までも国民の負担で賄おうとするならば、事業の赤字はさらに増大し、再び料金値上げを繰り返し、第一条の法の目的は永遠に保障されないのであります。同時に、第三条の企業性を優先する条文を早急に削除すべきであります。
 第三の理由は、郵政事業の赤字解消に対し、政府及び郵政当局は、何ら手段を講じようとしていないというべきであります。
 現在、郵便局で取り扱う業務に、郵政事業、郵便貯金事業、簡易生命保険、郵便年金事業があり、これら三つの事業は、特別会計法に基づいてそれぞれ独立採算制で運用されております。しかし、その業務は同一の郵便局で行われているのが現状であります。人件費や局舎維持費など、事業運営は三事業が分担しているとはいえ、その分担割合については、確固たる根拠は不明確であり、早急に三事業間で明確にする必要がありながら、今日まで何ら改善されないでいるのが現状であります。
 これらは一部の例であり、郵政事業の財政悪化を改善するため、政府並びに郵政当局が行うべき対策を放置したまま、いたずらに国民負担を増大させる料金値上げを唯一の対策とする政府、郵政当局の姿勢は、絶対に容認できないのであります。
 第四の理由は、郵政業務のサービス改善は、値上げが実施されても、何一つ行われないという点であります。
 郵便送達速度のおくれの慢性化は、速達郵便物の増加となってあらわれており、国民は高い速達料を支払って郵便を利用せねばならぬ現実に追い込まれており、現在すでに大幅な負担を強いられている現状であります。その上さらに今回の大幅値上げを行えば、国民に二重の値上げを押しつけることになるのであります。
 また、一般化された遅配、誤配、滞留のために、国民が郵便事業への不信を招いていることは周知のとおりであります。特に遅配、欠配はひどく、さきの四十六年の値上げの際決められた送達日数の確保率は、かえって悪化しているのであります。
 このような現状にかんがみて、国民へのサービス改善を図ることが絶対に必要であるにもかかわらず、今回の法改正に際して、郵政当局にはサービス向上を図るための施策は皆無であります。
 郵政事業は人力に依存せざるを得ないのが現状であり、したがって、人間関係こそ郵便事業を円滑に運用するかぎとなっているのであります。
 しかるに、今日の郵便事業に携わる職場において、管理職にある者と職員との間の相互不信は深刻なものがあります。このような事態が、郵便事業の健全なる運用と国民へのサービスの欠如となってあらわれているのであります。このような状況のもとでは、仮に郵便料金の大幅値上げを行って収支のつじつまを合わせたとしても、国民へのサービスの改善はとうてい望めません。
 この際、深刻化している労使関係の改善のために、政府並びに関係者は真剣に取り組み、その円満な解決を図り、正常な業務と国民へのサービス向上を、国民にまず確約することが先決であると思うのであります。
 第五の理由は、郵政事業改善のための長期計画及び将来の展望について、政府、郵政当局に確固たるものがないという点であります。
 国民生活に不可欠な郵政事業に対して、政府並びに郵政当局が、その再建のための長期計画を持たないということは、どういうことでありましょうか。郵便料金の改正に関する郵政審議会の答申においても、「社会経済の変動に即応するよう料金体系その他全般的な問題について長期的な視野に立って調査検討すべき重要な時期に来ていると考えられる」と述べているように、当面の赤字対策のみに終始することなく、まず、事業改善のための長期計画を確立することが、料金値上げ以前の問題として、きわめて重要であります。
 したがって、一般会計の補てん等を含めた独立採算制の再検討、郵政当局の企業努力のあり方、経営近代化、サービス向上の方途など、これら諸問題を含めた郵政事業の改善のための長期計画と抜本的な施策を、まず国民の前に明示すべきであります。
 以上、本法案に対する主な反対理由を述べましたが、この際、政府に対し、本法案を撤回することを再度要求しまして、私の討論を終わります。(拍手)
#29
○議長(前尾繁三郎君) 宮田早苗君。
    〔宮田早苗君登壇〕
#30
○宮田早苗君 私は、民社党を代表し、ただいま提案されております郵便法の一部を改正する法律案に対し、反対の討論を行うものであります。
 申し上げるまでもなく、今回の改正案の内容は、封書を二十円から五十円に、通常はがきを十円から二十円に、第三種を六円から三十円に、それぞれ引き上げる、無謀とも言える大幅値上げ案であります。国民生活に密着した公共料金のこのような大幅値上げを現時点で行うことについて、われわれは断固反対するものであります。
 政府がいつも主張しているように、すべての公共料金を一律に、しかも、長期にわたって凍結することは不可能に近いということは、われわれも理解はしておるわけであります。しかし、私は、公共料金の値上げについては、三つの原則を踏まえねばならないと思うのであります。
 すなわち、第一は、妥当な必要最小限度の値上げ率であること、第二には、一般消費者物価上昇率などとの関連で、値上げのタイミング、時期を十分に配慮することであり、第三には、値上げに伴う明確なサービス向上を国民に示すこと、以上の三点であります。
 ところが、今回の値上げ案は、これら原則をことごとく無視した、全く不当なものであると断言せざるを得ないのであります。(拍手)
 わが国のインフレ、物価高は、依然深刻な事態にあります。四月の消費者物価上昇率は一三・四%と、若干鎮静化しつつあるとはいえ、対前月比では二・五%も上昇しているのであります。ところが、政府は、公定歩合の引き下げを図り、景気回復策に転じましたが、現状のまま景気刺激政策を続けるならば、消費者物価が今後とも大幅に上昇することは必至であります。景気を回復させながら物価を安定させるためには、政府の不退転の決意と、これを実現する政策が必要なことは申すまでもありません。
 すなわち、政府みずからが公共料金の値上げを抑制し、再び台頭しつつある産業界の製品値上げムードを一掃すべきであります。
 民社党は、この観点から、消費者物価上昇率が一〇%以下に定着するまで、すべての公共料金の値上げを凍結すべきであると主張してきたのでありますが、政府は、われわれの主張に耳をかそうともせず、さきの酒、たばこに続いて、今回また郵便料金の大幅値上げを強行しようとすることは、国民生活をますます苦境に陥れるものであり、断じて認めるわけにはまいらないのであります。
 第二に、私が反対する理由は、政府は依然として独立採算制中心の考え方で、公共料金の値上げを図ろうとする政治姿勢であります。
 郵便法第一条にあるように、「なるべく安い料金で、あまねく、公平に提供し、公共の福祉の増進をする」ことと独立採算制の論理は、本来矛盾しているのであります。
 諸外国の政策を取り上げてみましても、アメリカでは、採算がとれない地域へのサービス提供や政策料金による収入不足などは、国庫から財政援助を行い、七三年度の支出は約十四億ドルに上っております。イギリスにおきましても、イギリス政府のインフレ対策として、公共料金を抑制するため、インフレ収束までの臨時特例措置として、一般会計から一億三千万ポンドの財政援助を行っているのであります。
 ところが、わが国の場合は、郵政事業に対しては一般会計から全く支出を行わず、すべて一般国民の負担によって問題の解決を図ろうとしているのであります。これこそ、政府・自民党の国民生活軽視の態度を端的に示したものと言わざるを得ません。
 第三の反対理由は、今回の値上げに際し、国民に何らの約束もしていないということであります。サービス向上をどうするのか、長期的展望に立った郵政事業のあり方等、何も示されていないのであります。
 合理化に対する理事者側の熱意のなさ、組合側の年中行事化したスト、それに伴う郵便物の遅配等から、国民の間には郵政事業に対する不信感がますます増大しているのであります。本日もまた全国で違法ストライキが行われております。このような、常識ではとうてい考えられない行為が続けられている現状において、郵便料金の大幅値上げを決定することを、多くの国民が納得するわけはないのであります。
 いまこそ、労使はえりを正し、真に国民の福祉向上を願い、郵政事業のあるべき姿を真剣に探し求めるための努力をすべきであります。
 そのような努力の跡が見られない現状においては、郵便料金の値上げに断じて反対であることを明らかにして、私の反対討論を終わります。(拍手)
#31
○議長(前尾繁三郎君) これにて討論は終局いた
 しました。
    ―――――――――――――
#32
○議長(前尾繁三郎君) 採決いたします。
 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#33
○議長(前尾繁三郎君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。(拍手)
     ――――◇―――――
 日程第五 地方交付税法の一部を改正する法律案(内閣提出)
#34
○議長(前尾繁三郎君) 日程第五、地方交付税法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 委員長の報告を求めます。地方行政委員長大西正男君。
    ―――――――――――――
 地方交付税法の一部を改正する法律案及び同報告書
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
    〔大西正男君登壇〕
#35
○大西正男君 ただいま議題となりました地方交付税法の一部を改正する法律案につきまして、地方行政委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
 本案は、地方財政の現状にかんがみ、児童福祉、老人福祉対策等社会福祉水準の向上、教職員定数の増加、教員給与の改善等教育水準の向上、市町村道、清掃施設等公共施設の計画的な整備並びに過密過疎対策、交通安全対策、消防救急対策等に要する財源の充実を図るため、昭和五十年度の普通交付税の額の算定に用いる単位費用の改定を行おうとするものであります。
 また、公共用地の円滑な取得を図るため、臨時土地対策費を基準財政需要額に算入することとしております。
 本案は、二月二十七日本委員会に付託され、翌二十八日福田自治大臣から提案理由の説明を聴取し、四月二十三日には参考人から意見を聴取するなど、本案はもとより、地方財政全般にわたって熱心に審査を行いました。
 五月七日、本案に対する質疑を終了いたしましたところ、日本社会党及び公明党から、人口急増市町村及び人口急減市町村の財源の強化、都の特例の廃止並びに特別交付税の割合の変更を内容とする修正案が、また、日本共産党・革新共同から、地方交付税の率の引き上げを内容とする修正案がそれぞれ提出され、佐藤委員及び三谷委員から、その趣旨説明を聴取いたしました。
 次いで、討論を行いましたところ、自由民主党を代表して愛野委員は、本案に賛成、両修正案に反対、日本社会党を代表して山田委員は、日本社会党及び公明党提出の修正案に賛成、本案及び日本共産党・革新共同提出の修正案に反対、日本共産党・革新共同を代表して林委員は、日本共産党・革新共同提出の修正案に賛成、本案に反対、公明党を代表して小濱委員は、日本社会党及び公明党提出の修正案に賛成、本案及び日本共産党・革新共同提出の修正案に反対、民社党を代表して折小野委員は、本案及び両修正案に反対の意見を述べられました。
 採決の結果、両修正案は賛成少数をもって否決され、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。
 なお、本案に対し、自由民主党、日本社会党、公明党及び民社党の四党共同提案により、地方財政の充実強化について附帯決議を付することに決しました。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
    ―――――――――――――
#36
○議長(前尾繁三郎君) 採決いたします。
 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#37
○議長(前尾繁三郎君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
     ――――◇―――――
 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明
#38
○議長(前尾繁三郎君) 内閣提出、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。国務大臣植木光教君。
    〔国務大臣植木光教君登壇〕
#39
○国務大臣(植木光教君) 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。
 独占禁止法につきましては、昭和二十八年以来、実質的な改正は行われておりません。この間のわが国経済は、競争の中に生かされた民間経済の活力に支えられ、目覚ましい発展を遂げてまいりましたが、最近における経済を取り巻く環境は、著しい変貌を遂げるに至りました。
 したがって、今後のわが国経済の一層の発展を図るためには、情勢の変化に適応し、国民の理解の得られるルールを確立して、公正かつ自由な競争を促進し、自由経済に新しい活力を与えることが必要となったのであります。このような背景のもとに、今回、政府は独占禁止法を改正しようとするものであります。
 この法律案は、以上の観点から、不当な取引制限等について課徴金の納付を命ずる制度及び独占的状態が生じた場合における競争回復のための措置に関する制度を新設するほか、会社の株式の保有の制限、違反行為に対する排除措置等を強化する等により、公正かつ自由な競争を促進しようとするものであります。
 次に、この法律案の概要を御説明いたします。
 第一に、不当な取引制限等について課徴金を国庫に納付することを命ずる制度を新設することとしております。
 これは、いわゆる違法カルテルの発生の状況等にかんがみ、禁止規定の実効性を確保するための行政上の措置として、違法カルテルにより得られた経済上の利得について、その納付を命じようとするものであります。課徴金の額は、違反行為の実行期間における売上額に、業種等に応じ、一定の率を乗じて得た額の二分の一に相当する金額とし、十万円未満の場合は、その納付を命じないこととしております。
 第二に、独占的状態が生じた場合における競争回復のための措置に関する制度を新設することとしております。
 すなわち、一定の規模以上の事業分野において、一定の市場構造があり、価格、利益等の面での弊害があらわれているという独占的状態があるときは、競争を回復させるための最後の手段として、営業の一部の譲渡その他必要な措置を命ずることができることといたしております。これは、競争を経済運営の基本に置こうとするものであります。なお、この措置の重要性等にかんがみ、その要件、手続等につき配慮を加えております。
 第三に、大規模な会社及び金融会社の株式の保有の制限を強化することとしております。
 すなわち、大規模な会社に対しては、その資本の額または純資産の額を超えて他の会社の株式を保有してはならないようにするとともに、金融会社に対しては、他の会社の株式を保有することができる限度を現行よりも厳しくすることといたしております。なお、規制を強化するに当たっては、株式保有制限に国策的見地等からの例外を設けることとするほか、証券市場や中小企業への影響等を考慮して、所要の経過措置を置くこととしております。
 第四に、高度に寡占的な業種におけるいわゆる同調的な価格引き上げについて、その理由の報告を求めるとともに、その概要を国会に報告する制度を新設することといたしております。
 第五に、違反行為に対する排除措置の内容を強化することとしております。
 事業者や事業者団体の行う不当な取引制限に対して、単にその排除を求めるだけでなく、違反行為の影響を排除するためにとることとなる具体的措置の内容の届け出等に関する措置を命ずることができるものとするほか、既往の違反行為に対する措置、不公正な取引方法に対する排除措置についても、その強化を図っております。
 第六に、違反行為に対する罰則を強化することとしております。
 すなわち、他の経済関係法律との均衡をも考慮し、たとえば、違法カルテルに対する罰金の最高額を引き上げる等の所要の措置を講ずることとするほか、違反行為者が法人である場合は、その最高責任者である代表者に対しても罰金を科すことができるようにすることにより、責任の所在を明確にすることといたしております。
 このほか、違反事実についての報告者に対する通知に関する規定を設けることとするとともに、所要の整備を図ることといたしております。
 以上が、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案の趣旨でございます。(拍手)
     ――――◇―――――
 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
#40
○議長(前尾繁三郎君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。萩原幸雄君。
    〔萩原幸雄君登壇〕
#41
○萩原幸雄君 私は、自由民主党を代表して、ただいま趣旨説明のありました私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案、すなわち、いわゆる独占禁止法の一部改正案について、若干の質問をいたしたいと存じます。
 まず第一に、改正案の基本的な考え方についてであります。
 わが国の経済は、戦後、政治的には民主主義、経済的には自由主義体制を基盤として、世界に例を見ない成長と繁栄を続けてまいりました。
    〔議長退席、副議長着席〕
一昨年秋の石油危機を転機として、これまでの高度成長路線から減速成長路線へと、大きく方向を転換しつつあります。そして、この過程において、企業と消費者である国民との利益が一致しない幾つかの不幸な事態が指摘されるようになりました。また、国民の意識も、物質的繁栄の追求から、精神的なものを含めた真に豊かな生活を追求することに変わり始め、さらには、強く社会的公正を要求する動きとしてあらわれてまいりました。
 私は、社会経済を律する法律制度は、このように変動する経済社会の実態に即応した最適なものでなければならないと信じておりますが、独占禁止法の改正に当たっては、それが自由経済のルールをつくる経済運営の基本法であるだけに、わが国経済の現状の単に一時的な現象にとらわれることなく、将来の展望をも明確にした上で、慎重かつ果敢に行うべきであると考えます。
 今回、政府の提出された改正案は、このような考え方のもとに作成されたものとは考えますが、その立案過程では、先ごろ公表された公正取引委員会の改正試案にこだわりがちで、わが国産業経済の現状及び将来を展望した大局的、基本的見地からする論議が、果たして十分に尽くされたのかどうか、いささか疑念を持つものであります。
 この点、三木総理は、わが国の産業経済の現状及び減速成長路線のもとにおける産業の構造のあり方等、将来の展望をどのようにとらえられ、その中で独占禁止政策をいかに位置づけておられるか、この際、明確にしていただきたいのであります。
 第二に、独占禁止法の改正については、これまで、学界、政界産業界、一般消費者、さらには政府部内においてさえ、それぞれの立場から見解が示され、国民の各階層が論争に参加した事実は、まことに評価すべきものがありましたが、このことは、かえって国民的コンセンサスを得ることをはなはだ困難にする実情になりました。にもかかわらず、政府は、昨年の暮れの独占禁止法改正問題懇談会設置以来、鋭意検討を続けられ、四カ月というきわめて短時日の間にこれだけの大きな問題に一つの結論を与え、今日、国会審議の運びに至っておるわけでございます。私は、率直にその労を多とするものであります。
 しかしながら、今回の改正案の課徴金制度の新設、独占的状態を排除するための構造規制の導入などを初め、株式保有の制限の強化、違法カルテルの排除措置の徹底などは、どれ一つをとりましても、まことに重要な問題であります。そうして、いずれもまだ各方面に論議を残しているのが実情であります。
 この点、立案作業の過程で、各方面のさまざまな問題点の指摘にどのようにこたえられ、その理解を得るためにどのように努力をされたか、総務長官に見解を伺いたいのでございます。そうして、この国会審議の場において、いまなお論議されている問題点について、明確に解明されることを希望するものであります。
 第三に、わが国の現行独占禁止法は、世界の他の独占禁止法制に比較して決して遜色のあるものではないと思うのでありまして、公正取引委員会の法運用並びにその姿勢いかんによって、十分な成果を上げることができたのではないかと思うのであります。現に、有識者の中にも同様な有力な意見があります。
 振り返って考えますと、さきにも申し上げましたとおり、独占禁止法の改正論議は、一昨年の石油危機を契機とする狂乱物価、物不足、企業不信という一連の事態を背景として提起された面が強く、こうした短期的な現象のみをとらえて経済を律する基本法の大改正を行うことは、必ずしも適当ではないのではないかと考えます。しかも、独占禁止法にいたずらに即効的物価対策等、過大な期待をかけることは、問題の本質を誤るものでありまして、むしろ、このような国民的期待は、産業政策によって物資の需給関係を調整し、供給者と需要者に社会的責任を自覚せしめ、さらには、国際的秩序を確保し続ける外交的努力を尽くすことこそ、重要なことではないでしょうか。この点について、総務長官及び通産大臣の見解を伺いたいのでございます。
 第四に、今回の改正案においては、高度寡占対策としての営業の一部譲渡などの措置や株式の保有制限の強化など、従来の行為規制を一歩踏み出し、独占禁止政策としては、世界的にも例を見ない構造規制に入り込んでおり、新独占禁止法とも言うべききわめて大きな改革になっております。
 しかし、本来、独占禁止法は、自由主義経済体制にとって、基本ルールとしてその発展と強化につながるものでありますが、規制の内容、運用のあり方によれば、きわめて強力な劇薬に似た性格を持っているのであります。そして、劇薬は、量を間違えると毒薬に、すなわち、自由経済の活力を弱める結果にもなりかねないのであります。
 この意味で、今回の改正案が、わが国経済にとって真に適量なものと思われるのかどうか、総務長官の見解を伺いたいのであります。
 第五に、独占的状態に対する構造規制措置である営業の一部譲渡については、主務大臣と再度にわたり協議することになっておりますが、基本的には、公正取引委員会の判断にゆだねられております。
 この措置は、私は、本来、産業経済政策の全般を考慮して行われるべき行政措置であると思うのであり、このような権限を、内閣から独立した公正取引委員会にゆだねることは、内閣の行政責任を不明確にするおそれがあるという意味において、重大な問題を含んでいると思います。しかも、その結果はきわめて大きな影響を及ぼすものであり、理論的、実際的両面にわたって、各方面に根強い不安感を残していることは否定できません。
 この点について、内閣の行政責任の明確化についてどう考えているか、また、公正取引委員会が一面的な視野からこの権限を行使することがないよう、十分に客観的な基準と運用面における配慮が必要であろうと思いますが、総務長官の見解をお伺いいたします。
 このような問題が出てくるのも、公正取引委員会が、内閣総理大臣の所轄に属する行政官庁でありながら、準立法的権限及び準司法的権限を有し、しかも、職権行使に当たっては、内閣総理大臣の指揮監督を受けない独立性を有しているからであります。現行の公正取引委員会のこのきわめて異例な性格は、純法律的にはいかに観念されるべきであるのか。将来、他の機関に権限を分配すべきではないか等の問題が出てくるのではないか。総務長官にお伺いいたします。
 次に、この際、公正取引委員会の業務のあり方について意見を申し上げます。
 それは、従来、公正取引委員会の独立性を尊重する余りと思うのでありますが、独占禁止法の運用に当たって、公正取引委員会と産業政策担当省庁との間の連絡調整が不十分であったのではないかという点であります。
 すなわち、独占禁止法の運用に当たっては、実態の的確な把握とスピーディーな対応が不可欠なのでありますが、公正取引委員会は、違法カルテルの防止については積極的、意欲的であるように見受けますが、他面、不況カルテルの認可などの際はその対応が遅きに失し、そのため、基礎的、構造的に体力の弱い中小企業中心の業種におきまして、やむを得ずやみカルテルに追い込まれているケースがあるやに思うのであります。このようなケースは、公正取引委員会が日常業務として産業担当省庁と十分連絡を密にしていれば防止できるはずであり、現状は、独占禁止法の運用上の欠陥と言わざるを得ないと思います。
 私は、公正取引委員会が独占禁止法の本来の機能を十分発揮するよう、あえて苦言を呈したのでありますが、このため、公正取引委員会の機構の拡充及び定員の増加等については、画期的な改善を図るべきであると考えます。
 最後に、独占禁止政策は、その目的に示してあるように、自由主義経済の活力ある維持発展が直接の目的であり、その結果が、消費者である国民の利益に合致することを目標としております。しかしながら、法律を強化することのみが独占禁止政策を実効あらしめるものでもありません。すなわち、自由にして公正な競争の促進と他の産業諸政策の発展とが整合しつつ、表裏の関係にあって初めて所期の目的を達成し、自由主義経済を国民の利益と合致させることが可能になると信じます。
 総理を初め関係大臣各位におかれましては、独占禁止法の改正のみで事足れりとせず、改正によって生ずる波紋を吸収し、また、技術開発や企業の活力保持のための諸政策を絶え間なく整備され、厳しい国際社会に対応して、わが国の末永き繁栄を確保されんことを希望いたしまして、質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣三木武夫君登壇〕
#42
○内閣総理大臣(三木武夫君) 萩原君にお答えをいたします。
 萩原君の質問は、私が、わが国産業の展望の中で、独禁法改正をどう位置づけて改正案を国会に提出したかということでございます。
 三木内閣が誕生した当時の政治的、社会的背景は、政治に対する国民の不信、一部企業に対する国民の疑惑ということであります。それに対して誠実に取り組むことが、私に課された大きな責任だと考えて三木内閣は出発をいたしました。
 日本経済のあり方、企業のあり方について、私は、大原則として、自由経済、自由企業の精神と体制を守り抜く決意であります。
 しかし、同時に、自由経済体制は、時代の要請に応じていかなければ、守ろうとしても守り抜いていけるものではありません。弱肉強食は、社会的公正の観念に反することは明らかであります。しかし、同時に、企業みずからの力、企業みずからの創意、企業みずからの責任を、官僚統計によって萎縮させるようなことがあってはいけないことは言うまでもありません。この両者を踏まえて、公正な自由競争の仕組みが健全に働くような自由経済の基本的ルールの確立が、この際必要であると痛感して、独禁法の改正案を本国会に提出したものであります。
 さらに、この改正案は、石油危機の時期に見られた数々の現象と、また、従来からうっせきしていた国民の強い不満にこたえんとするものであります。
 したがって、萩原君が御心配になるような対症療法的なものではなく、自由経済を守ろうとする者が、自由経済の将来を展望して、これからの自由経済の基本ルールを確立して、国民の信頼と期待にこたえ得る改正を早く確立をしなければならぬと考えておるからであります。そうすることが、自由経済を守り抜いていくゆえんである、こういう決意のもとに独禁法の改正を今国会に提出したものでございます。
 お答えといたします。(拍手)
    〔国務大臣植木光教君登壇〕
#43
○国務大臣(植木光教君) お答えをいたします。
 独占禁止法の改正案は、昨年十二月十日の第一回の定例閣議におきまして、三木総理から、私の手元において取りまとめるよう指示をせられました。このため、総理府に独占禁止法改正問題懇談会を設置いたしまして、六回にわたり開催し、広く各界の意見を聴取いたしました上、関係各省庁、自由民主党との調整を経て、最終的に、四月二十五日、改正法案が閣議決定されたものでございます。このように、改正法案作成の過程におきましては、多方面にわたっての意見の調整を行い、改正法案を作成したものでございまして、国民各層の理解の得られるものであると確信をいたしております。
 次に、独占禁止政策以外の各般の施策についてでございますが、御指摘のように重要なことでございます。
 しかし、独占禁止法は自由経済の公正なルールをつくるものでございまして、各般の施策は、このルールを尊重しながら実施せられるべきものであると考えております。
 政府といたしましては、現在の段階において、独占禁止法の改正によって即効的な期待をかけているものではございませんが、公正な競争を促進し、自由経済のよい点を助長し、国民経済の発展に役立てるために重要なものであると考えているのでございます。
 次に、独占禁止法の今回の改正は、適度であるかどうかという御質問でございます。
 昭和二十八年以来、実質的な改正は加えられないで今日に至っております。この間のわが国経済は、競争の中に生かされた民間経済の活力に支えられ、目覚ましい発展を遂げてまいってきましたことは、先ほど趣旨説明において申し上げたとおりでございます。
 高度成長は、それ自体が競争の成果であると同時に、競争を促進するものであります。しかし、最近における経済を取り巻く環境の変化は著しく、わが国経済の一層の発展を図ってまいりますためには、情勢の変化に適応し、国民の理解の得られるルールを確立いたしまして、公正かつ自由な競争を促進し、自由経済に新しい活力を与えることが必要となってきたのであります。
 政府が今回、独占禁止法を改正しようとする基本的考え方は、このようなものであり、適切なものであると考えております。
 次に、公正取引委員会につきまして、独占禁止法第二十八条は、「公正取引委員会の委員長及び委員は、独立してその職権を行う。」と規定をいたしておりますが、これは、公正取引委員会の職務の性質上、政治的影響を排除して、公正、中立に行われることが要請されるものでありますところから、内閣総理大臣が一般の行政機関に対して有するような指揮監督権に対する例外を定めたものでございます。
 しかしながら、公正取引委員会は内閣総理大臣の所轄に属する行政機関とされておりまして、内閣は、委員長及び委員の任命行為等を通じて、国会に対して責任を負っているわけでございます。このような仕組みは、委員会制度をとる行政機関につきましては一般に認められているところでありまして、法律論から言って、問題を生ずるようなものではないと考えております。
 さらに、独占的状態に対する措置でございますが、これは、弊害を生じました場合、競争を回復するための最終的手段として新設するものでありまして、独占禁止政策の一環をなすものであり、独占禁止政策について職責を負う公正取引委員会に、この権限を行使させることは当然でございます。客観的な基準と運用面における配慮が必要であるという点は、御指摘のとおりでございまして、改正法案作成に当たり、十分配慮を加えているところでございます。
 以上でございます。(拍手)
    〔国務大臣河本敏夫君登壇〕
#44
○国務大臣(河本敏夫君) 私に対する御質問は、独禁法に過大の期待をかけないで、産業政策や経済外交を優先すべきではないか、こういう御質問でございます。
 これは、いずれの政策を優先する、こういうことではなく、総合的かつ機動的に運用をいたしまして、初めてわが国経済の健全な発展が期せられるものと、かように信じております。(拍手)
    ―――――――――――――
#45
○副議長(秋田大助君) 板川正吾君。
    〔板川正吾君登壇〕
#46
○板川正吾君 私は、日本社会党を代表して、ただいま提案されました私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案に対し、三木総理大臣並びに高橋公正取引委員会委員長及び関係大臣に対し、質疑をいたします。
 三木総理、あなたは昨年十二月、はからずも総理の指名を受けるや、田中内閣ではとうてい日の目を見まいと予想されていた独禁法の改正を取り上げ、公約第一号とされました。恐らくそれは、昨年の参議院選挙の結果、田中内閣の金権万能主義に対する深い反省から、決然と副総理と環境庁長官のいすを投げ捨て、三十六年にわたる議会の子としての政治生命をかけて、金権万能政治の是正、大企業癒着の自民党体質を根本的に改革し、政治に対する国民の信頼を取り戻したいという決意から発想されたものであると存じます。
 三木内閣のもとで独禁法改正が政治日程に上るや、財界、大企業はこぞって反対を表明し、もし政府・自民党が本気で独禁法の改正を図るならば、今後一切の政治献金はしないと恫喝し、改正案阻止に血道を上げてきましたことは、周知の事実であります。したがって、内閣提出の独禁法の改正案の内容いかんは、三木内閣の政治姿勢とクリーン度を示すものとして、注目されていたのであります。
 政府案を見て率直に感じましたことは、項目こそ、基本となった公取試案に沿ってはいますが、その内容には、独占企業の分割規定、寡占企業の同調的値上げに対する原価公表、違法な値上げカルテルの原状回復命令等、公取試案の重要な部分がほとんど姿を消している点であります。しかも、改正と目される部分には、いかにして実効性をなくするか、二重三重の歯どめをかけており、逆に、それが現行法の解釈を狭め、改悪となっているのであります。
 政府案は、自民党との調整過程で、財界の意見は申し分なく取り入れながら、一般消費者の要望はほとんど無視しており、これでは、改正どころか、改悪ではないかと、独禁法専門の学者をして言わしめているのであります。
 御承知のように、わが国経済は、いまや高度成長時代が終わり、低成長時代を迎え、経済秩序も大きく転換を迫られています。独禁法を改正し、大企業の横暴を抑え、消費者国民の利益を守り、経済民主化を促進することは、わが国経済の当面する重要な課題であります。しかるに、政府案は、こうした課題にこたえないばかりか、逆に現行法を改悪する点が加えられており、三木内閣は、まさに羊頭を掲げて狗肉を売るのたぐいと評されてもいたし方がありません。(拍手)
 そこで、私は、三木総理に質問いたします。
 第一は、三木内閣は、対話と協調を政治方針とされておりますが、社会党はすでに独禁法改正案を提出し、その中で、公取試案にも政府素案にもなく、しかも、消費者にとって重要な改正点を数多く提起しております。
 すなわち、カルテルの原則禁止規定の復活、合併や企業結合の予防規定の強化、企業集団の相互持ち株制限の新設、消費者の無過失損害賠償の訴えを地裁に提起できる道を開いていること、公取に他の官庁に対し必要な勧告ができるようにしていること、公取の機構整備、人員の拡充を図っていること、以上のように、社会党案は政府案の欠陥を補う内容を持っていますが、対話と協調を旨とする三木内閣は、国会審議の過程で法案修正に応ずる用意があるかどうか、総理の見解をお伺いいたします。
 第二の質問は、本法案が成立しなかったときの政治責任についてであります。
 伝えられるところによりますと、本改正案に対し、椎名副総裁を初め自民党内には、なお根強い反対意見があり、国会審議の過程で、改めて政府は党三役と協議し、成立させるか否かを決定することになっていると言われております。もしこれが事実ならば、内閣として、法案提出上、無責任きわまる態度と申さねばなりません。
 三木総理、もし本改正案が党内の反対派によって不成立となった場合は、あなたはいかなる責任をとられるのか、あらかじめ、その決意のほどを明らかにしていただきたいと存じます。
 次は、高橋公正取引委員長に質問いたします。
 第一は、政府案では、カルテルを摘発した場合、すべての者に課徴金の納付を命じなければならないものとして、公取に裁量の余地を与えておりません。
 全国的組織の事業者団体の中には、何千というメンバーを擁するものがあり、これが違反した場合、すべての者に、過去三年間の売上高利益率を調査し、業績の悪い企業には減額査定し、違反行為の事実を記載した納付命令書を送達する、もし内容に不服ある者は、公取に審判手続を請求できることになっています。これでは、カルテル違反者を摘発すれば、膨大な事務量となり、公取の審査、審判の機能は麻痺するため、事実上、公取は摘発を断念するほかはなく、結果的に改悪になると思うが、どうか。率直なる答弁をいただきたい。
 第二は、独占的状態の排除措置として、営業の一部譲渡を命じようとするとき、審判手続の前後二回にわたって主務大臣と協議することを定めていますが、大臣協議の目的、その範囲、協議調わざるときの扱い方について、念のために伺っておきます。
 現行法にも、不況カルテルを認可する場合等、主務大臣と協議することはありますが、それは公取が行政機関として機能する場合であって、裁判上第一審の機能を持つ公取が、準司法的手続に基づいて判断する場合に、協議する例はありません。しかし、主務官庁としての必要な意見は、現行法で、関係官庁は審判中いつでも出席して、公開の席上で意見を述べる機会が確保されてありますから、あえて主務大臣の協議は必要ないと思うが、どうか。
 また、法的に大臣協議を設けることは、主務大臣の政治判断を公取は尊重しなければならなくなり、公取の職権行使の独立性が損なわれるおそれがあると思うが、見解はどうか。
 第三は、政府案の中には数多くの政令委任事項があります。
 御承知のように、独禁法は、実体規定や手続規定についてはすべて法律で定め、その他は公取規則で定めることになっています。これは行政委員会として独立性を保つために、必要不可欠な要件であります。政府案のように、政令委任事項の乱設は、閣議に出席しない公取が、閣議で決定される政令に拘束されることになり、公取の権限を弱め、その独立性保持の点から問題が生ずると思うが、見解はどうか、答弁を求めます。
 なお、高橋公取委員長は、本日、事故欠席をされたので、後日、適当な機会に答弁されるように要求いたしておきます。
 次は、植木総理府総務長官に質問をいたします。
 第一は、政府案には、独占状態の排除措置として、会社分割の規定が欠落しています。
 会社分割の規定は、二十八年の改正で削除された旧八条にも同趣旨のものがあり、独禁法上、公取権限の上限を示すものとして重要な規定であります。政府は、いかなる論拠をもって会社分割の規定を改正案から落としたのか、伺っておきます。
 また、営業の一部譲渡命令が出された場合、政府案には、株主総会の特別決議を不要とする商法の適用除外規定がありません。これは現行法第七条の場合も同様であって、現行法の不備を示すものであります。独禁法は、社会法的理念を基本とする法体系に属し、市民法を基本とする商法に優先することは、近代法理論の認めるところでありますから、社会党案のように、念のため商法の適用除外規定を設けるべきではなかったのか、その点、いかなる見解を持つか、お伺いをいたします。
 第二は、政府案には、寡占企業に対する唯一の規制というべき同調的値上げの場合の原価公表制が姿を消しておりますが、これは、独占企業に次いで市場支配力の強い寡占企業の管理価格を野放しにするということであって、現行法の重要な欠陥を放置することになるのであります。そればかりでなく、政府案が、寡占より市場支配力の弱い企業者のカルテル値上げには課徴金の強制徴収という厳罰主義で臨むのに比較すると、弱い者には厳しく、強い者には甘いという矛盾を持ち、明らかに不平等であります。なぜ寡占企業に原価公表制度を取り入れないのか、お伺いをいたします。
 また、政府案は、原価公表の代案として、寡占企業が三カ月以内に同調的値上げを行った場合、企業に対し値上げ理由の報告を求め得るとし、報告の理由が妥当か否か、公取の意見も加えず、年次報告をもって示すことといたしております。これは、現行法で一般的な強制調査権に基づく調査や、調査の結果を随時公表できるものが、逆に制限されるおそれがあり、改正どころか、改悪になると思うが、どうか。
 第三は、政府案や公取試案には、カルテルは悪なりという思想がありません。その点、社会党案のように、二十八年改正で削除された旧四条を復活し、カルテルの原則禁止主義をとるべきではないかと思うが、どうか。
 また、政府案には、違法なカルテル値上げの原状回復命令が落ちているのも問題であります。これでは、従来どおり、カルテルはやめました、しかし価格は下げませんということで、結局、やり得を防止できません。政府案が原状回復命令を落とした理由は何か、伺っておきます。
 政府は、原価公表や原状回復命令が改正案に盛り込めない理由として、公取には、本来価格に介入する権限はないという学説によるものと思われますが、しからば、最近問題となっておる中部読売新聞のごとく、安売りするときは、不当廉売だとして、公取は差しとめ命令をもって高値価格を決定し、それを強制しているのに、より悪質な違法カルテル値上げに対し、値下げ措置がとれないという論拠はどこにあるのか、明快に答弁を願いたいと存じます。(拍手)
 第四は、政府案は、課徴金の取り方で、値上げカルテルと生産数量等のカルテルを同一の徴収基準で律しようとしているため、ことさら算定方式をむずかしくしております。そして、売上高利益率のとり方やカルテルの不当性に関係のない原理を導入して、整合性を欠き、筋の通らない軽減措置をとっているのも問題であります。政府は、なぜ値上げカルテルと生産数量等のカルテルを区別して課徴金の算定をしないのか。たとえば、値上げカルテルにはそのものずばりの差額を取り、生産数量等のカルテルには便法として売上高利益率方式を採用するという考えはないのか、伺います。
 また、政府案の課徴金規定は、一見、法の運用を強化するように見せかけながら、実は公取に法外な事務量を押しつけ、カルテルの摘発を不可能とする、底意地の悪い意図を持った改正ではないかと思うが、どうか。
 第五は、政府案は、公取の機構整備や人員充実について一言も触れていません。現在でも、独禁法の適正な運用を図るためには、現在の三倍程度の要員が必要だと言われています。一体、政府は、本法成立後、公取の陣容をどのように強化しようと考えているのか、具体的な構想があれば、それを示していただきたい。
 最後に、河本通産大臣に質問いたします。
 あなたは、かつて政府素案が発表されたとき、これは公取が産業政策に介入するもので、通産大臣として絶対に承服できないと主張されましたが、一体、通産省の産業政策とは何か、法的根拠とその限界、及び産業政策と独禁法との関係について、明快な答弁を求めて、私の質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣三木武夫君登壇〕
#47
○内閣総理大臣(三木武夫君) 板川君にお答えをいたします。
 自由経済は、国民の理解と支持を得なければ守り抜けるものではないと私は思っております。自由経済を守り抜こうとしておる私としては、この際、自由経済に公正な基本的ルールを整備することが、自由経済の基盤を強化することである、こう考えて、三木内閣成立以来、直ちに改正案の作成に着手した次第であります。
 また、この政府の案がまとまりますまでには、各方面の意見も徴しまして、これならば、国民の理解を得られるであろうという今回の改正案を提出した次第でありまして、それは、独禁法を強化していこうというものであって、板川君の言われる改悪ということには、私は当たらないと思うのであります。
 また、社会党がいろいろな案を持っておるので、修正をする用意があるかという御意見でございました。
 これは、現在の時点において妥当な案であると考えますので、修正は考えておりませんが、十分国会の御審議を尽くしていただきたいと思うのでございます。
 また、この独禁法が不成立の場合の政治責任という問題にお触れになりました。
 きょう初めて独禁法というものが審議が始まるわけでありまして、人間にたとえれば、赤ん坊が生まれたばかりである。私としては、この赤ん坊が健全に育ってくれること、すなわち、独禁法が成立するということを、ひたすら願っておるものでございます。それ以外のことは、いまは考えてはおりません。(拍手)
    〔国務大臣河本敏夫君登壇〕
#48
○国務大臣(河本敏夫君) 産業政策は、各行政機関がそれぞれの任務と権限に基づきまして、国民の要望に応じて、産業や事業者を望ましい方向に規制をしたり誘導したりするのが産業政策である、こういうふうに理解をいたしております。
 それから、その法的根拠はどうかということでございますが、これは通商産業省設置法に基づいて行っておるものでございます。
 なお、産業政策を行う場合に、独禁法と矛盾が生ずることのないように、十分配慮をいたしておるところでございます。(拍手)
    〔国務大臣植木光教君登壇〕
#49
○国務大臣(植木光教君) お答えをいたします。
 まず、会社分割についてでございます。
 現行商法に規定がございませんので、会社分割の措置を講じますためには、商法に規定を設けますか、または、独占禁止法において特例を設けることが必要でございますが、このためには、会社法の専門的見地から、十分な検討が必要でございます。
 また、独占的状態の競争回復措置といたしましては、厳密な意味での会社分割の手続によらなくとも、現行商法に基づく既存会社または新設会社への営業の一部譲渡などの措置により、必要な企業の分割は達成できるのでありますから、現行法で可能な手続によることとしたものでございます。
 営業の一部の譲渡は、現行第七条によっても命ずることができることは、御承知のとおりでございます。営業の一部の譲渡を命ぜられました会社が、これを実行いたしますためには、たとえば、譲渡先の選定、折衝、譲渡契約の締結、債権債務関係の整理、従業員の雇用関係の調整、さらに、重要な一部の譲渡の際には、株主総会の手続をとるなど、所要の措置は多いのでございます。株主総会の決議も、これらの必要な手続の一つでありまして、すべてではございません。現行第七条は、このような事情から、所要の民事法上の手続の特例に立ち入ることを避けたものと考えるのでありますが、独占的状態に対する措置の場合も、現行第七条の規定にならいまして、株主総会の決議を不要とする特例を設けないこととしたのでございます。
 次に、原価公表でございます。
 独占禁止法改正問題懇談会におきましても、原価は競争の最大の要素であり、この秘密を公開させることは、かえって競争を阻害する、同調的引き上げの場合に、原価を公表さしても抑止力にはならない、国際的にもわが国のみが原価公表するのは問題が多い等、多くの問題が指摘をせられました。また、場合によりましては、コスト、プラス利潤という形の値上げを正当化させることになり、かえって競争政策を損なうことにもなりかねないのでございます。したがって、改正法案では取り上げていないのでございます。
 現行法第四十条の「調査のための強制権限」でございますが、これは公正取引委員会の「職務を行うために必要があるとき」に行使されるものでありまして、「職務を行うため」とは、独占禁止法の規定の具体的運用に関する職務をいうと解されるのであります。しかし、現行法のもとでは、単に同調的値上げの形をとっているという事実のみをもって、直ちに独占禁止法上問題とすることは困難でありまして、通常、第四十条によって値上げ理由の報告を求めることはできないと解しております。改正法案第四十条の二の報告徴収権の規定は、現行法第四十条の規定を縮小せしめるものではなく、むしろ、かかる規定の新設によりまして、同調的値上げの要件を満たしている場合、直ちに値上げ理由の報告を徴し、かつ、国会への年次報告を通じてそれを公表することができることとなるものでございますので、現行法を強化するものと考えております。
 政府は、違法カルテルは悪であるという考え方でその対策を強化いたしております。しかし、独占禁止法の中心的な考え方は、「競争を実質的に制限する」ものを規制するということでございます。したがって、競争を制限しないような共同行為までを、形式上違法としなければならないとは考えておりません。
 次に、価格の原状回復命令でございます。
 これも改正問題懇談会におきまして、カルテル破棄後の価格には、需給関係、コスト関係等の変化が織り込まれているので、時日が経過した以前に単純に戻せるものではない。据え置き期間中の弊害、たとえば売り惜しみ、買い占め、下請等へのしわ寄せ等が大きい。生産者に価格の原状回復命令が出されましても、その効果は流通段階には及ばないので、価格介入を広げざるを得なくなるということ等が指摘せられました。これらを勘案しました結果、価格の原状回復命令は採用しないことにいたしたのでございます。
 次に、独占禁止法が、不当廉売の場合のように、価格に関する規定を設けている場合があることは、御指摘のとおりでございます。しかし、これは自由競争の結果定まるであろう価格を尊重するという考え方に立ったものと理解しているのでございます。これに対しまして、価格の原状回復命令になると、カルテルを破棄した後に、自由に市場で決定されるべき価格を公権力によって決定しようとするもので、いわゆる価格統制の場合と同様の弊害がいろいろ出てくるという考えが多いということを、御理解をいただきたいのでございます。
 したがいまして、政府といたしましては、今回の改正案で、カルテル排除措置の徹底という見地から、事業者にカルテル排除後にとることとなる具体的措置の内容の届け出と、その実施状況の報告をさせることができるようにしておるのでございます。
 次に、課徴金でございます。
 課徴金は、違法カルテル行為のうち、「商品若しくは役務の対価に係るもの又は実質的に商品若しくは役務の供給量を制限することによりその対価に影響があるもの」を対象としております。「数量等のカルテル」でございましても、その対価に影響があるものにつきましては、経済上の利得が発生している点では、値上げカルテルと区別することは適当でないと考えているのでございます。
 課徴金は行政上の措置でございまして、行政機関の自由裁量を認めることは、刑事罰との関係からいっても適当ではございません。また、実務上実行可能な方式で、しかも、値上げカルテルのみならず、生産制限カルテルをも対象とするためには、政府案のように、売上額に一定の率を乗ずることが適切と考えられるのでございます。
 今回の政府案について、公正取引委員会のカルテル摘発を、事実上不可能とする意図があるのではないかとの御指摘は、非常な誤解でございまして、政府としては、その摘発を容易にしようとするものでございます。
 最後に、公正取引委員会の機構及び定員についてでございます。
 従来、逐次整備されつつあります。特に、昭和五十年度予算におきましては、審査部を中心とする機能拡充が図られることとなっておりまして、今後とも、機構の整備及び増員について努力を払ってまいる所存でございます。
 以上でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#50
○副議長(秋田大助君) 野間友一君。
    〔野間友一君登壇〕
#51
○野間友一君 私は、日本共産党・革新共同を代表して、ただいま趣旨説明のありました私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案に関し、総理並びに関係閣僚に質問いたします。
 第二次大戦直後の財閥解体、経済力集中排除が実施されて以来三十年近くに及んでおりますが、この間の高度成長を通じて、わが国では、世界的な巨大企業、世界に類例を見ない総合商社、巨大な資本力を持った三菱、三井、住友など、旧財閥系を初めとする独占企業集団、メジャーなど、幾つかの重要産業を掌握している多国籍企業などが出現し、独占資本は急速に復活、強化して、重要産業はもとより、経済のすみずみまで支配するようになっています。
 これらの独占資本は、巨大な資本の支配力に物を言わせて、利潤追求に明け暮れ、カルテルや投機による価格のつり上げ、利益隠しなど、横暴な反社会的経済撹乱行為を繰り返し、国民をこの上なく苦しめ、また、国民経済に大きなゆがみをつくり出しております。そのような大企業、独占企業集団の横暴な反社会的行為は、経済危機が深まるにつれて、いよいよつのる状態にあります。
 こういう中で、国民は、大企業の横暴を規制するため、独禁法の抜本的な改正を強く要求しておるのであります。この改正要求は、狂乱物価、物隠しなどで苦しめられた国民が、苦々しい体験を通じて発展させてきたものであり、当然の要求であります。(拍手)
 わが党は、こういう状況の中で、いま必要なことは、現実の経済構造に対応した法改正、国民の要求にこたえる法改正を実現することであると一貫して主張し、すでに、この趣旨に即した改正案を提出しておりますが、ここに改めてこのことを強調するものであります。
 以上の立場に立って政府に質問いたします。
 まず、指摘しなければならないのは、本改正案にあらわれた政府の姿勢であり、それは一口に言って、必要最低限の改正点をすべて骨抜きにしただけでなく、各所に改悪のとげを植えつけるという反国民的なものだということであります。
 そのことは、第一に、物価問題で苦しむ国民が最大の関心を寄せているカルテル規制に端的にあらわれています。
 大企業のやみカルテルは近年急増し、日本カルテル列島とさえ呼ばれる現状であります。重要なことは、このようにやみカルテルが横行しているにもかかわらず、それが摘発され、破棄勧告を受けても、大企業は価格を下げずに済んだということであります。このことは、やみカルテルによって大もうけをした大企業にとっては、何の痛痒も感じない、やり得を許す結果となっております。
 本来、独禁法は反カルテル法であり、その点から言えば、本改正案には、最低限の措置として、価格を原状に戻し、原価を公開させるとともに、不当な超過利益を吸い上げる課徴金制度を盛り込むべきであります。
 ところが、二月十二日に経団連は、独禁法改正問題で見解を発表し、その中で、「原価公開及び価格引下げ命令はそもそも物価対策的な要望を背景として登場したものであり、独禁法の目的と機能から言って異質のものである」として、これを改正案に持ち込んではならないと強調したのであります。
 そして先日、自民党の松野政調会長らは、わが党代表との会談の席上、価格引き下げ命令や原価公開を除外する理由について、物価対策のために独禁法を改正するという立場はとらないと言明しましたが、これこそ、経団連見解を基調とした改正案を作成することに努めたことを、みずから告白したものと言わざるを得ません。
 この点について、政府もまた、経団連や自民党政調会長らと同じ考えなのかどうか、総理並びに関係閣僚にお尋ねいたします。
 もし政府も、独禁法改正が物価対策ではないとするなら、それは、カルテル価格や不当な対価を取り締まることをも重要な目的とする独禁法本来の性格を、大きく後退させるものではありませんか。
 しかも、総理自身、昨年末臨時国会における所信表明演説の中では、独禁法改正を物価大作戦の一つに位置づけておられましたが、その公約にも矛盾するではありませんか。総理の明確な答弁を求めます。
 あわせて、私は、大企業の反社会的行為を規制するため、国民が強く求めているカルテル価格の引き下げ命令、大企業の原価公開並びに不当な超過利益を吸収する課徴金などを、最低限の措置として必ず本改正案に盛り込むことを要求し、この点についても、総理並びに関係閣僚の見解を求める次第であります。
 第二に、巨大企業、独占企業集団、多国籍企業の横暴を規制せよという国民的要求にこたえることも、独禁法改正の重要な課題であります。
 公正取引委員会の調査によっても、三菱、三井、住友などの六大独占企業集団は、わが国の全法人企業に対して、資本金で四一%、総資産で三一%にも及び、これら一握りの独占企業集団が、きわめて強大な支配力を持つに至ったことを示しております。
 わが党改正案は、巨大企業や独占企業集団の系列支配を規制するのに最も効果のある企業分割、株式保有制限や役員兼任の禁止はもとより、中小企業分野への不当な進出の規制、系統的な経理の公開による反社会的行為の民主的規制等を盛り込み、国民の要求に全面的にこたえたものであります。
 ところが、政府提出の本改正案では、わずかに取り上げられた営業の一部譲渡命令及び株式保有制限さえ、いずれも実効性のないものとなっております。
 すなわち、営業の一部譲渡命令については、多段式の歯どめを設けて完全に骨抜きにし、株式保有制限については、株式保有の基準を緩め、十項目にも及ぶ例外措置を設けた結果、規制対象企業は十指にも満たないと見込まれるありさまではありませんか。その上、十年もの経過措置を設けたことは、今後の企業規模拡大をあわせ考えれば、政府には規制する意思の全くないことを示すものと言わざるを得ません。
 総理は、三月一日の予算委員会において、株式保有による集団形成の弊害を除去する方向で独禁法を改正すると答弁されながら、本改正案の内容は、この答弁と正反対のものであり、これは重大な背信行為であります。このような骨抜きの態度を改め、さきに述べたわが党改正案を実現することこそ、国民の要求にこたえる道であります。政府にその意思があるかどうか、総理並びに関係閣僚の明確な答弁を求めるものであります。(拍手)
 第三に、本改正案が、最低限の改正点を骨抜きにして、切実な国民の願いを踏みにじったばかりでなく、幾つかの改悪点を盛り込んでいることは、さらに重大であります。
 その一は、やみカルテル規制を弱め、公取委の権限を制限する意図を盛り込んでいることであります。すなわち、価格の同調的引き上げに関して、現行法でも十分行える報告の徴収をわざわざ明記することによって、逆に、現在公取委が持っている原価調査を含む調査のための強制権限並びに必要な事項の公表権限を封じ込めようとしております。
 また、やみカルテル規制について、違反行為の影響を排除するための具体的措置の届け出や実施状況の報告によって、現行法で定められたカルテル排除措置を制限するおそれのある条項を盛り込んでいることも重大であります。
 その二は、課徴金徴収についてであります。
 やみカルテルのやり得をなくすためには、違法な価格つり上げによって不当にもうけた超過利益を吐き出させなければならないにもかかわらず、カルテルによる超過利益と関係のない過去三年間の経常利益率を基準に取り入れることによって課徴金の額を極端に軽減するとともに、実行不可能な膨大な計算業務をふやし、公取委の機能を麻痺させようとすらしております。これは、独占規制どころか、公正取引委員会規制と言っても過言ではありません。
 その三は、営業の一部譲渡に関して、公取委の独立性を侵害する問題であります。
 本改正案は、その多段式の歯どめなどによって独占的状態の是正はほとんど期待できないばかりか、重大なことは、審判手続開始前と審決前の二度にわたって、多くの項目について公取委員に主務大臣との協議を義務づけ、事実上、主務大臣の同意を必要とするようにしていることであります。
 これは裁判にたとえれば、裁判官に、判決前に他人と相談することを義務づけることに等しく、明らかに公取委の職権行使の独立性を侵害するものであり、独禁政策遂行上の、いわば生命線に攻撃をかける全く不当なものであります。過去二回の骨抜き改正のときにさえ手を触れ得なかった公取委の独立性を侵す条項等の改悪を持ち込んだことは、三木内閣の反国民的、反動的な性格を浮き彫りにするものであります。
 これらの諸点については、経済法、独禁法を専攻する二十一氏の学者グループの意見書でも、強く後退として指摘しているところでもあります。しかも、これらの改悪諸点については、公取委が訴追機能と審判機能をあわせ持つことに疑問を呈するなど、一貫して公取委の職権行使の独立性を侵そうとしてきた経団連見解の本旨を、政府・自民党がそっくり具体化したものと言うべく、国民を愚弄するものと断ぜざるを得ません。(拍手)
 以上、改悪の諸点については、削除を強く要求し、総理並びに関係閣僚の明確な答弁を求めるものであります。
 最後に、公正取引委員会の民主的強化について質問します。
 大企業による不当なカルテルや反社会的行為の横行によって、国民生活が重大な脅威を受け、国民経済への支配力がますます重大となっている中で、国民生活を守り、経済の健全な発展を図る立場から、独禁政策遂行上重要な位置にある公取委を民主的に強化し、国民に開かれた独禁法と公取委にすることは不可欠なことであり、当然、今回の独禁法改正で実現されるべきものであります。
 すでに、わが党は、公取委を民主的に強化するために、日本学術会議、消費者、労働者、農民の諸団体が推薦する者を委員に加え、また、国民の根拠のある訴えが不問に付されないよう特別審査制度を創設するなど、国民に開かれた公取委に改めることを提案しています。
 政府は、公取委の権限縮小や独立性侵害条項を削除して、わが党が提唱しているような公取委の民主的強化を実行すべきであり、これこそ、国民の要求にこたえるただ一つの道であります。
 政府にその決意があるかどうか、総理並びに関係閣僚の答弁を求めて、質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣三木武夫君登壇〕
#52
○内閣総理大臣(三木武夫君) 野間君にお答えをいたします。
 野間君は、私が昨年の所信表明演説で、物価政策を展開する、独禁法もその一環として考えているということを申したことをとらえて、矛盾するではないかという御質問でございます。
 この独禁法は、直接に物価対策であるとは言えないと思います。しかし、公正な自由競争が促進されることによって物価の安定に資することは明らかであり、そのことが、究極において消費者、すなわち国民大衆の利益を物価面から守ることになる、こう私は考えます。したがって、そういう趣旨のことを申したわけでございます。
 また、この独禁法の改正に、価格引き下げ命令、原価公開の条項がないのは、非常に間違っているという御質問でございました。
 独禁法は、自由競争の原理を追求しよう、こういうものであって、そのために自由経済の基本的ルールを確立しようということでありますから、したがって、独禁法というものが、自由経済の価格の形成に深く公権力が介入するということは、統制経済的な色彩を深めて、自由経済の根幹に触れる問題もあるので、その措置は避けたわけでございます。
 また、課徴金は行政措置でありますから、簡明な基準で算定をすることにいたしたわけでございます。
 また、共産党の改正案に対して、これを取り入れる考えはないかというお話でございました。
 この独禁法の改正は、総理府の中に懇談会を設けて、各方面の意見を徴して、現在の時点では妥当な案であると考えて、政府案を提出いたしたわけでございますから、共産党の修正案に同調する考えは持っておりません。
 また、独禁法の改正が、原価の調査権、あるいはまた必要事項の公表権限の排除、課徴金徴収に伴う公取委員会の機能の麻痺、営業の一部譲渡を主務大臣と協議することはよくないというお話でございました。
 営業の一部を譲渡するということは、大変に重大な措置であります。したがって、それは簡単に公取の自由裁量によってこういうような重大なことがなされることは、企業に対しても非常な不安を与えるわけでありますから、慎重を期さなければならぬことは言うまでもない。また、この措置が産業構造にも深いかかわり合いを持つものでありますから、主務大臣と協議をするということは当然のことであります。
 しかし、これからの産業というものは、やはり基本的なルールというものを守っていくということがなければ成り立っていかないと私は思うわけでございますから、産業政策と独禁政策というものは、ともに、対立矛盾するものでなくして、両立して、共存していくことが、これからの産業のあり方である、こう考えておる次第でございます。
 また、公取委員会を民主的に強化せよということでございました。
 公取委員会は中立的立場から判断する必要がありますので、現行の制度というものを変える必要があるとは思っておりません。また、国民からいろいろな申し出があれば、そういう違反事項については、どういう措置をしたかということを報告することになっております。そういう配慮も加える規定を設けた次第でございます。
 お答えをいたします。(拍手)
    〔国務大臣福田赳夫君登壇〕
#53
○国務大臣(福田赳夫君) 独禁政策と物価との関係についてのお尋ねでございます。
 申すまでもありませんが、独禁政策の本旨は、企業の公正かつ自由な競争を促進し、ひいて一般消費者の利益を確保する、こういうことであります。
 したがって、今回の独禁法の改正は、直接の物価対策と言うことはできませんが、しかし、長期的には物価の安定に資するところが大なるものがある、かように考えております。三木総理が所信表明において申し上げたのは、さような趣旨でございます。(拍手)
    〔国務大臣河本敏夫君登壇〕
#54
○国務大臣(河本敏夫君) 私に対して一連の御質問がございましたが、まず、この独禁法改正に当たっての基本的な考え方でございます。
 これは先ほど総理も御答弁になりましたように、自由主義経済の新しいルールをつくる、ただし、その場合に、産業界の活力を阻害してはいけない、こういう考え方のもとに今回の改正案がつくられておるわけでございます。
 そこで、いまお述べになりました御意見に対して申し上げますが、一つは、独占、寡占の弊害を未然に防止し、自由主義経済の健全な発展を図るためには、現段階におきましては、今回の政府案で十分対処できる、こういうふうに考えております。
 それから次に、買い占め、売り惜しみ、便乗値上げ等の反社会的な経済撹乱行為につきましては、買占め売惜しみ防止法、それから国民生活安定緊急措置法等の運用によりまして、これまでも対処してまいりましたが、今後とも、異常事態が生じましたときには、これらの法律を適正に運用いたしまして対処していく所存でございます。(拍手)
    〔国務大臣植木光教君登壇〕
#55
○国務大臣(植木光教君) お答えをいたします。
 総理がほとんどみんなお答えになりましたが、価格引き下げ命令につきまして、あるいは原価公表につきましては、先ほど来申し上げておりますように、それぞれ採用することができない種々の問題があるわけでございまして、代案を考えたわけでございます。
 課徴金制度につきましては、今回の改正案で採用、強化いたしておりますことは、御承知のとおりでございます。
 さらに、共産党の改正案でございますが、政府案の中にも企業分割、会社の株式保有制限等を採用いたしているところでございまして、御指摘のような修正をする考え方はございません。
 それから次に、原価調査権等について御質問がございましたが、これも、御指摘のような修正をする必要はないと考えております。
 現行法第四十条につきましては、先ほどもお答えをいたしましたが、これは公正取引委員会の職務を行うために必要があるときに行使されるものでございます。現行法を強化するものとして、私どもは、同調的値上げをいたしましたときには、その理由の報告を求めるということにいたしたのでございます。
 さらに、公正取引委員会の機能が麻痺するではないかというお話でございますけれども、これはそのような考え方は全くございませんで、御批判は妥当ではございません。
 次に、大臣との協議につきましては、先ほど総理からお答えがあったとおりでございまして、これは二回行うということにいたしましたのは、審判手続の開始前と審決前とでは、その協議すべき事項も異にすること、また、審判に要する時間の経過もございまして、要件についての判断も変化してくるという考え方をとったものでございます。
 それから、公正取引委員会の問題でございますが、御指摘のように、公正取引委員会に特別審査制度を新設するとか、公正取引委員会の専属告発権を修正するという考え方は、政府は持っておりません。
 以上でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#56
○副議長(秋田大助君) 近江巳記夫君。
    〔近江巳記夫君登壇〕
#57
○近江巳記夫君 私は、公明党を代表して、ただいま議題となりました独占禁止法改正案について、総理並びに関係大臣に質問いたします。
 わが党は、かねてより、独占禁止法改正問題を民主的経済体制の基本問題と認識し、重視してまいりました。そして本問題を、三木内閣の姿勢が、国民の側にあるか大企業の側にあるかの踏み絵であるとして、国民の要望に即した同法の改正を速やかに実現することを強く求めてきたのであります。
 しかしながら、今回提案された政府改正案は、遺憾ながら、国民の声に背を向け、財界の力に屈した傷だらけの独占禁止法改正案と断ぜざるを得ないのであります。
 昨年九月、公正取引委員会が同法改正試案骨子を発表、ことし三月、政府素案を公表、四月、政府要綱を決定、そして、今回ようやく法案として国民の前に姿を明らかにするに至ったのでありますが、この数カ月間の推移は後退に後退を重ね、財界と癒着した自民党政府の体質を、国民の前に明らかにする以外の何物でもなかったと言わざるを得ないのであります。(拍手)
 国民は長きにわたり、独占禁止法強化のための改正を求めてまいりました。しかし、今回の政府案は、公正取引委員会の職権行使の独立性を侵し、むしろ現行法上確立した諸原則を後退させる一側面を持つものであるところに、基本的問題があると言わねばならないのであります。
 独占禁止法は、政治的中立性を保障された公正取引委員会の職権行使の独立性によって初めて公正に運用されるものであることは、何びとも否定できないところであります。しかるに、政府改正案は、独占的状態に対する措置について、実体的でも手続面でも、公正取引委員会の職権行使に数多くの歯どめをかけ、特に、審判手続の前後二回にわたる主務大臣との協議を義務づけているのであります。これは、準司法的機関である公正取引委員会の判断に主務大臣が介入する道を切り開いたもので、公正取引委員会の職権行使の独立性を侵害するものと言わねばなりません。
 そればかりでなく、本政府案の随所に、公正取引委員会の法律に基づく裁量権を縮小せしめるための改悪が認められるのであります。独占的状態の内容、課徴金の額の算出方法、数多くの政令制定事項などは、その端的な一例にすぎません。
 独占禁止法強化のための改正と称しながら、課徴金制度によって、公正取引委員会が事実上機能を停止せざるを得ない局面に追いやられるおそれのあること、カルテル排除に対する徹底措置、同調的価格引き上げの値上げ理由の公表などは、あたかも強化したかのごとく装いながら、事実上は、現行法の後退を企図するものと言わざるを得ません。
 そこで、総理に質問いたします。
 総理は、社会的公正の実現を政治理念として登場され、独占禁止法の強化のための改正を国民に公約されたのでありますが、改悪と言われる側面のある事実をいかに受けとめておられるか、また、公正取引委員会の職権行使の独立性を守る決意があるや否や、この点についての基本的態度を、まず明らかにされることを求めるものであります。
 以下、具体的にお伺いいたしますが、第一は、独占、寡占対策についてであります。
 現行独占禁止法は、独占、寡占から生み落とされる管理価格に対して、全く無力であります。社会的公正の実現の観点からも、独占、寡占に対する有効な措置を講じなければならないことは、総理自身も認められるところであると思います。
 しかし、独占状態に対する措置は、抜かずの宝刀といわれた政府素案段階から、抜かずの竹光と言わざるを得ないほど骨抜きにされた法案に成り下がったと言わざるを得ません。元来、独占的状態に対する措置は、公共の福祉に反するがゆえに命じられるものであるにもかかわらず、営業の重要部分の譲渡命令につき、株主総会の特別決議なしには実行できないこととしているため、その命令の効力はきわめて実効性に乏しいものとなってしまいました。また、独占的状態があっても、規模の経済性、経理の健全性、国際競争力の維持を損なうと認められる場合には措置を命じないこととしていますが、かかる不明確な概念を導入し、その上、前述のごとく、主務大臣との協議事項としてしまったのであります。政府案は、なぜにかかる歯どめをかけなければならなかったのか、これらの理由を明確にされたいのであります。
 他方、独占、寡占体制下においては、市場機構が機能せず、巨大企業が現行独占禁止法に違反することなく、恣意に価格を決定し、超過利潤を取得することは、国民の広く認識するところであります。国民は、かかる管理価格に対し、原価の公表を強く求めてきました。
 しかるに、原価の公表制度はついにその姿をとどめることなく、単に同調的価格引き上げの場合の値上げ理由につき、国会への年次報告を義務づけているだけであります。しかも、三月に公表された政府素案では、公正取引委員会が意見を付し得ることとなっていたのに、自民党との調整の中で削除され、公正取引委員会はその意見すらも付し得ないこととなってしまったのであります。
 結局、現行法ですらなし得る管理価格等の調査権限に決定的な枠をはめ、独占的価格の原価を神聖不可侵のものとして、秘密のベールに包むこととしているのであります。原価公表を削除した理由、及び同調的値上げに公正取引委員会の意見を付し得なくしてしまった理由を明らかにされたいのであります。
 株式保有による企業集団の形成が、わが国経済の支配構造に大きな変化をもたらしている事実は、商社、銀行の株式保有を通ずる事例によっても明らかにされたところであります。しかも、巨大企業は、株式の相互持ち合いを通じ、その結束力を強化しているのであります。しかるに、政府案は、現行独占禁止法が株式の相互持ち合いを規制しにくい事実を認識しながら、その規制の強化をしていないのであります。
 他方、株式の総量規制も、経過措置の期間十年であり、企業の成長、規模の拡大を考慮すると、事実上、この規制の有効性について強い疑問を持たざるを得ません。株式保有の制限の有効性につき、総理の所信を伺いたいのであります。
 第二に、カルテル規制についてお伺いいたします。
 カルテルは、現代経済社会の市場機構を破壊し、力弱き一般消費者の犠牲において超過利潤をむさぼるという、社会的に最も悪質な犯罪であると言うべきであります。したがって、カルテルに対する規制の強化は、国民の怒りの中で求められ、具体的に不当な利得の徴収ないし制裁としての課徴金制度と、原状回復命令の制度の確立が求められてきたのであります。
 しかるに、原状回復命令の制度はその痕跡すら残さず、カルテルに対する排除措置の徹底としてその名をとどめているものの、その実体は、現行独占禁止法によるカルテルに対する排除措置に厳しい枠をはめ、むしろ改悪するに至ったのであります。この点については、今日まで独占禁止法の改正を主張してきた法律学者の多数が、一致して、四月二十五日に政府案を激しく批判しているところであります。
 原状回復命令の制度が消え去るに至った理由及び現行法を後退させるような改正に至った理由について、明らかにされたいのであります。
 また、課徴金制度は、一応実現されたというものの、政府案の算出基準は、悪質なカルテルに対しては甘いみつを吸わしめる効果しか果たし得ない結果を招くものと言わざるを得ません。しかも、巨大な超過利益をむさぼるカルテルも、わずかの超過利益しか得られないカルテルも同列の利益率で扱い、不公正を助長することとなっていることは、許しがたいものと言わねばなりません。
 かかる不公正な算出基準を定め、社会的公正を旨とする課徴金制度を不公正ならしめた根拠を明らかにすることを求めるものであります。
 第三に、独占禁止法改正と一般消費者の利益確保の問題について、政府の見解をただしたいのであります。
 独占禁止法を支えるものは、政府でもなく、まして公正取引委員会だけでもありません。一般消費者こそが、独占禁止法を支える柱であります。したがって、一般消費者が独占禁止法を支える具体的制度を確立しなければならないにもかかわらず、今回の政府案がこの点の認識を欠き、消費者の強い要求に耳を傾けなかった理由は、全く不可解であります。
 わが党は、集団訴訟制度、すなわちクラスアクション制度の確立、消費者代表を含む公正取引調査会の設置等を求めてまいりました。カルテルに対する価格引き下げ命令の要求をしたのも、かかる観点からでありました。私は、独占禁止法第一条の目的に照らし、一般消費者をして、独占禁止法を支える制度を確立することなしに、独占禁止法は国民に根をおろすものとはなり得ないと思うのであります。
 以上、三項目に分けて、特に重要と思われる点について質問いたしましたが、わが党は、かかる見地から、国会において政府案の大幅修正を求めるものであります。
 最後に、総理がかねて主張する野党との話し合いによる議会運営の約束どおり、本改正案の修正について、野党と話し合いの用意はあるか否かをお伺いし、質問を終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣三木武夫君登壇〕
#58
○内閣総理大臣(三木武夫君) 近江君にお答えをいたします。
 今回の政府案が独禁法改悪の側面がある、そういう御意見でございます。また、公取委員会の職権の行使の独立性を、将来にわたって守るかという点が第一点でございます。
 政府は、独禁法の強化を図る目的で、広く各方面の意見を徴して改正案をまとめたものでありまして、現状では妥当な案であると考えておるのでありまして、これを改悪と言う批判は当たらないと信じております。
 また、公取委員会の職権行使の独立性は非常に重要であり、尊重すべきものと考えており、侵す考えは持っておりません。
 また、独占状態の認定、排除に当たって、二重三重の歯どめをかけているのは何か、原価公表の削除をした理由は何かという御質問でございました。
 独禁法の改正は、公正な自由競争のルールをつくるという考えのもとに行っているのでありまして、ルールでありますから、基準が明確であることが必要であります。そうでなければなかなかルールにならない。要件を厳密に定めたものであって、それを歯どめと言うのは、私は当たらないと考えるものでございます。特に、独占的状態に対する措置は、競争を回復するための最後の手段であって、十分な慎重な手続をとることが必要であることは、言うまでもないと考えております。
 また、原価の公開については、独禁法改正問題の懇談会でも、多くの人々からこの問題に対する難点を指摘されて、そういう非常な疑問のある問題点がありますので採用しなかったのでございます。しかし、競争政策の立場から、同調的値上げがあった場合には、公取が価格引き上げの理由について報告を求めることになっております。
 それから、課徴金の算定に当たっては、不当利益をすべて剥奪するようにすべきではないかというお話でございます。
 課徴金は、違法なカルテルによって得られた経済上の利得を納付させるための行政上の処置であります。違法カルテルによって得られた経済上の利得は、本来まちまちでございますが、この措置が行政上の措置であるという点から、簡明な方法で算定をするものとしたのでございます。なお、経営状態が事業によっていろいろ異なっておりますから、異なる事業者に一律に課徴金の納付を命ずるということは、実情に沿わない点がありますので、経営状態によって率に差をつけることをいたしたわけでございます。
 それから、カルテルの原状回復命令を見送ったのはなぜかということでございます。
 原状回復命令については、やはりこれもまた独禁の改正問題懇談会において、需給関係というものはときどき変わってくる、また、コストなどもときどき変わってくるのでありますから、時日が、日がたった後に簡単にもとに戻せるものではないなどという問題が指摘されまして、今回は採用しなかったものでございます。しかし、違法行為の影響を排除するための具体的措置の届け出や、その実施状態を報告させることができることにいたしました。
 また、株式保有制限にに対して経過措置を十年間にしたのは、どういう理由かというお話でございました。
 株式の保有制限を急激にいたしますことは、証券市場や中小企業に非常な悪影響を与えることが懸念されますので、やはり経過措置を設けることは当然のことと思っております。しかし、この間は保有はふやさないし、次第に通常の基準額に近づくことにもなると思われますので、本条項は有効に機能するものと考えております。
 また、独占禁止法の改正が、一般消費者の利益確保についてどういうふうに考えておるかということでございます。
 独禁法というものは、その一条の中にも書いてありますとおり、競争政策を推進することを、これはやはり目標とするものでありまして、直接に消費者の利益ということではありませんが、先ほどもお答えいたしましたごとく、やはり公正な競争を行うことによって価格の安定に資して、究極においては、一般消費者の利益を確保することができると考えておりますので、そういう意味において、消費者の利益の確保にもつながると思っておるわけでございます。
 また、独禁法の大幅修正について、野党と話し合う用意があるかというお話でございました。
 これは、いままでも各方面の意見を聞いて取りまとめたものでございまして、私どもとしては、これは現在の時点においては妥当なものと考えておりますので、どうか、国会において十分な御審議を願いたいと思うわけでございます。
 以上、お答えをいたします。(拍手)
    〔国務大臣植木光教君登壇〕
#59
○国務大臣(植木光教君) お答えを申し上げます。
 これも総理がほとんどお答えになりましたが、今回の改正法案は、独占禁止法の強化を図ったものでございまして、改悪と言われる御批判は当たりません。ただ、今後、国会における審議を通じまして、十分御理解をいただくよう努めてまいりたいと思うのでございます。
 それから、独占的状態に対する措置でございますが、これは、国民経済に悪影響のない限りで、競争回復のために最後にとられる措置でございまして、十分慎重な手続をとることとしているものでございます。歯どめと呼ぶべき性格のものではございません。
 原価公表につきましては、原価は競争の最大の要素であり、この秘密を公開させることは、かえって競争を阻害する、同調的引き上げの場合に原価を公表させても抑止力にならない、わが国のみで原価公表を行うことは国際的に不利になる等、種々の問題を指摘されましたので、取り上げないことといたしたのでございます。
 なお、公取が見解を示すという問題でございますが、この場合は、独禁法の見地から法的な判断を示すことになりますが、同調的価格引き上げは、御承知のとおり違反行為ではございませんので、公取がこれについて見解を示すことは、適当でないと考えたものでございます。
 株式保有制限につきましては、総理がお答えになりましたとおりでございます。
 価格の原状回復命令につきましても、総理からお答えになりました。私どもは、かわりに考えました案が改悪であるとは考えておりません。
 課徴金につきましても、総理がお答えになりましたとおりでございます。
 また、一般消費者の利益の問題でございますが、この消費者の立場につきましては、改正法案では、違反事実報告者に対する処理結果の通知義務を盛り込むことを考えているのでございまして、これは、一般国民の利益に資するものであると信じているものでございます。
 以上でございます。(拍手)
    ―――――――――――――
#60
○副議長(秋田大助君) 竹本孫一君。
    〔竹本孫一君登壇〕
#61
○竹本孫一君 私は、民社党を代表して、ただいま提案されております私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案に対し、若干の基本的質問を行い、三木総理並びに関係大臣の所見を伺いたいと思います。
 第一点は、独占禁止法改正の前提である現在の資本主義経済体制を、政府はいかに認識しておるかという問題であります。
 かつて、偉大な経済学者のシュンペーターは、資本主義を論じまして、「静態的な封建経済はなお封建経済であり、静態的な社会主義もまた社会主義経済であり得るだろう。けれども、静態的な資本主義経済は形容矛盾にほかならない」と言いまして、資本主義のダイナミズムを強調して、活力を失った資本主義はもはや資本主義ではない、かように喝破しておるのであります。
 しかるに、わが国の経済の最近の実情を見ておりますと、高度成長の中で、強き者はいよいよ強くなってまいりまして、いまでは三井、三菱などの六つの企業集団は、その傘下に百六十六社を結集して、このわずか百六十六社が日本経済全体に占める地位は、総資産で二四・二%、資本金で二五%、売上高で二三・六%を占めて、一握りの者が日本経済を左右しているのであります。
 同時に大事なことは、最近の顕著な傾向でありますが、これらの企業集団間の激しい競争というものがだんだんになくなりまして、いまや、お互いの癒着と巧みな協調に変わりつつあることであります。
 日本経済は、百三十万の法人、四百万の中小企業の活気に満ちた自由な競争というものは姿を消しまして、政府の昨年の経済白書も指摘しておりますように、第一は集中度の高まり、第二は業界内の秩序の形成、第三は新規参入の困難性の増大、第四は流通販売における優劣の強まり、これらが日本の経済の特色であります。
 したがいまして、いまや、自由主義経済の特色であり、また独禁法の目的でもあります公正かつ自由なる競争は死滅をして、価格の引き上げ、生産の縮小、技術革新の停滞、消費者に対する勝手な支配など、自由なるべき資本主義は、独占と硬直化の中で、国民経済にとって前向きのプラス要因ではなくて、いまや後ろ向きの阻害要因に転化しておるということであります。(拍手)
 そこで、私は、三木総理にお伺いいたしたいのでありますけれども、今回のいわゆる骨抜き政府改正案で、わが国産業社会の硬直化をもたらした私的独占を打ち破り、公正で自由な競争を中心に、活力のある、創意に満ちた産業社会を再建して、国民の理解と協力を得ることができるとお考えになりますか。また、大企業や独占だけの活力ではなく、われわれに必要なものは、日本経済全体としての活力の回復が重要な課題であると思いますが、政府のお考えを伺いたいのであります。
 第二に、これからの経済体制取り組みの問題でありますが、日本は、これから、アメリカ型で自由競争中心、またはプライスメカニズム万能、こういった考え方を貫いていき、その立場から独禁法の厳しい運用に最大の力点を置いていく、こういう方向をとるのか、あるいは、共産主義的な全面的な国営論は一応別といたしまして、ドイツやイギリスなど欧州型で、一方では、独禁法を強化しながら自由競争の長所を生かしていく、同時に、他方では、独占、寡占の弊害に対しては、それに対抗する公企業を育成する、あるいは一部産業の国有化をやる、あるいは価格の値下げ命令を発動する、あるいは労働者の経営参加を法制化する、かような多様な社会化の方策を講じて、一方で資本主義の持病を治しながら、その活力を保持していくという方向に向かおうとしておるのか、いずれの路線を進むつもりであるか、政府の基本的な考えをお示し願いたいのであります。
 われわれ国民は、三木さんの進歩的なポーズに多くのものを期待して、そのお手並みを拝見したいと待望しておりましたけれども、独禁法の経過を見ておりますと、お手並み拝見をする前に、足並みの乱れの方を拝見したということは、まことに残念であります。
 もちろん、構造規制には慎重でなければなりませんし、また、国際競争力の確保ということは、重要なる政治課題であります。しかしながら、今回の改正の経過を見ておると、公取試案をことごとくと言ってよいほど骨抜きにしまして、営業譲渡命令に至りましては、その発動までに各種の制約あるいは適用除外の条件を設けまして、十一の関門を設けておるのであります。まさに、がんじがらめの制約で、実際には命令の発動はできないようにしてしまったのであります。
 また、経済力の過度の集中排除、株式保有の制限対策につきましても、十年間の経過期間を設けるなど、現状を追認するだけではなくて、将来にわたりまして、有効な対策を講ずる道をも封じてしまっているのであります。一体、これで福祉日本の経済憲法と言えるであろうかということを疑うのであります。
 そこには、アメリカ型の自由主義経済を維持発展させようという考え方も見ることができませんし、いわんや、ドイツ、イギリス、スウェーデンのように、大企業の社会化を積極的に推進するという意欲も、全く見ることができません。ただ、あるのは、現在の官僚と財界が癒着した大企業の利益擁護を図る、消費者不在の姿勢だけであると言っても過言ではないと思うのであります。
 一体、独禁法は公法であるのか、私法であるのか、あるいは、特別法として他の法律に優先するものであるのか、優先しないものであるのか、政府の法的見解も伺っておきたいと思います。(拍手)
 特に通産大臣、あなたは、公取の独禁法改正試案は産業政策への介入であると言って反対をしておられますが、それでは、あなた自身は、現在の大企業中心の硬直化、独占体制に対して、いかなる改革案をお持ちであり、いかなるビジョンを持っておるか、伺いたいのであります。
 大企業中心の産業第一主義が批判されたからこそ、経済民主化の有力なる手段として公正取引委員会ができた、この歴史的経緯をお忘れになりましたか。通産行政の財界寄りの矛盾を批判する、より高い国民的立場に立って、公取の司法的機能が行われるのだということもお忘れになりましたか。それを一々、協議協議と言って、実質的には通産大臣の同意がなければ何もできないことにしてしまった。あなた方の御議論は、要するに、独占または独占の弊害を禁止するために独占禁止法の改正を論ずるのではなく、財界の邪魔者である公取をなくするために、いわば公取禁止法をつくろうとしておられるような感じを持つのであります。
 通産大臣は、公取の機能は、一般の産業行政よりもより高い立場に立つものと考えられるか、平等の立場に立つものと考えられるか、あるいは、より低い立場に立つものと考えておられるか、そのお考えを明確にお伺いいたしたいと思うのであります。
 第三に、私は、大企業体制下における価格問題について質問したいと思います。
 自由競争の長所は、生産性の向上の成果を製品価格の値下げによって消費者に還元するという、いわゆる価格競争が自由に行われるという点にあります。ところが、いまやわが国の実態は、価格値上げカルテルが横行して、毎年七十件前後のカルテルが摘発せられておるし、地方ではやみカルテルが相次いで行われておる。カルテル列島の名をほしいままにしておるのであります。また、大企業間の同調的な値上げが頻繁に行われまして、ビールについても、化粧品、フィルムにつきましても、価格競争は行われてはいない。行われているのは、製品差別化競争だけであります。
 これに対して、今回の独禁法改正案は、課徴金を新設する、あるいは、社長や専務などの法人の代表者に責任罰を導入するといったような刑事罰の強化を図るなど、若干の前進は認められますけれども、しかし、先ほど来御議論になっておりますように、カルテルは悪であり、違法にカルテルを行っても、企業のやり得には絶対にならないという当初の厳しい制裁規定は大幅に緩和をされて、価格の原状回復命令も消されてしまったのであります。ましてや、寡占企業の同調的値上げ対策に至りましては、単なる報告義務だけが課せられておるだけでありまして、何の歯どめもありません。これこそ、政府・自民党の消費者無視の姿勢を端的に示したものであります。
 特に問題は、今後低成長下になってまいります。資源の需給も厳しくなってまいります。したがって、ますます寡占価格がふえてまいるだろうと思いますが、この寡占価格をいかに国民の立場からコントロールするかということが、一番重大な問題であります。
 すでに、この観点から、ドイツにおきましては、一九七三年に競争制限禁止法の改正強化を行い、特に市場支配的企業の地位乱用の規制を強化いたしまして、昨年においては、ブラウン社の電気かみそりの八%の値上げとか、あるいはガソリン価格の一リットル当たり一ペニッヒの値上げ、これらは全部勧告によって撤回をさせた。さらに、メルク社のビタミンB12の価格のごときは、六〇%から七〇%の思い切った引き下げ命令を出しておるのであります。イギリスにおいても、同様な措置がすでに講じられております。
 われわれ民社党は、寡占価格規制法を制定して、値下げ勧告、命令も最終的には出せるようにすべきことを主張しておるのであります。したがいまして、政府・自民党が公取委員会の価格介入は越権行為であるという主張は、世界の大勢に反し、国民大衆の生活要求を圧殺するものであると言わなければならないと思うのであります。
 三木総理のこの価格問題に関する御見解と御決意をお伺いしたいのであります。
 また、政府は、世界先進国のこの独禁法を強化するという歴史の流れというものを、一体、どれだけ調査されておるか、その点も伺いたいのであります。
 さらに、福田副総理に伺いますが、独禁法の改正は、物価が落ちつき始めたからもう要らないというような議論もあるようでございますけれども、独禁法の改正は、公正なる競争秩序をつくることが第一義的目的でありますから、物価が若干落ちついたとしましても、経済の公正なる秩序をつくるための改正そのものは依然として必要であると思いますが、大臣のお考えはいかがでありますか。
 さらに、ついででございますが、相次ぐ公共料金の引き上げにもかかわらず、来年三月には消費者物価は上昇を一けたに抑えるという自信は、依然として副総理はお持ちであるかどうかも伺っておきたいと思います。
 最後に、政府に要望を兼ねてお伺いをしたいのでありますが、高橋公取委員長がいみじくも述べておりますが、独禁法の歴史は骨抜きの歴史であります。今回の改正の経過もこのことを実証しているように思います。かくて、国民の三木さんに対する期待と信頼は、政府みずからがこれを踏みにじり、三木内閣の政治的威信は、大きく地に落ちるのではないかと思います。
 三木総理、あなたは、真に国民の利益と経済の民主化を進める立場から、あるべき独禁法の姿に近づけるために、この国会では十分この法案の審議を尽くしまして、よりよき修正はこれを受け入れるべきであろうと思いますが、その用意がおありになりますか。
 また、これから国会の審議の過程におきましては、独禁法だけではなくて、六つの内外重大な案件を持っておるわけでございますけれども、独禁法こそは、その六大案件の中では最優先すべきものであると考えますが、いかなるお考えでございますか、政策の優先順位についてお伺いいたしたいと思います。
 いずれにいたしましても、こうした国民の期待をつなぎ、三木内閣の一番大きな大切な公約であります独禁法の改正の国民の期待に沿うような努力というもの、また、その方向における政府の決断を強く要求いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)
    〔内閣総理大臣三木武夫君登壇〕
#62
○内閣総理大臣(三木武夫君) 竹本君にお答えいたします。
 公正かつ自由な競争がいま行われているかどうか、また、政府の改正案程度で公正な自由競争というものが確立できるかというような御質問であったと思います。
 私は、先ほども申したように、自由経済体制を守っていきたい立場のものでございます。非能率な官僚統制はとらない。わが国が現在まで目覚ましい経済発展を遂げたのは、民間の活力によって競争が活発に行われた結果であると考えております。しかし、一部に自由経済の機能を妨げるような硬直化の傾向が見られることは、竹本君御指摘のとおりでございます。また、今日は安定成長を旨とした経済運営を必要とされておるのでありますから、公正かつ自由な競争を促進することが、自由経済の活力を発揮するためには必要である。独禁法の改正は、現在の時点に照らしても重要であると考えておる次第でございます。
 また、日本の独禁政策は、アメリカ型か西欧型かという御質問でございました。
 独禁政策は、それぞれの国の実情が違うので、一概に、アメリカ方式、あるいはまた西独等西欧方式というわけにはまいりません。国情に沿うた政策をとるべきだと考えております。また、産業を国有化するというような方向ではなく、自由経済を原則として、その弊害面を社会的なルールを確立して規制をしていきたいというのが、三木内閣の考え方でございます。
 また、同調的な値上げに対して、報告義務だけでは何の歯どめにもならぬ、公取の値下げの勧告ができるようにすべきであると思うがどうかという御質問でありました。
 報告を求めるという措置を通じて、国民に理解される公正な価格形成に資することができると考えておるわけでございます。
 また、価格の問題については、先ほどもお答えいたしましたように、公権力によって価格形成に深く介入をすることは、これは自由経済の根幹に触れる問題でありますので、私は、公取が価格形成に深く介入することは適当でないと考えるわけでございます。
 また、政府の改正案を野党の修正案を取り入れて修正する用意があるかということでございました。
 この案は、各方面の意見を聞いて、現在妥当なものであると考えて提出をしたので、修正の考えはございませんが、これは重要な問題でありますので、国会において十分御審議を願いたいと思うのでございます。
 また、政府の提出法案について優先順位をつけろというお話でございました。
 政府が国会に提出したということは、全部その法案に対して成立を期したいというために国会に提出をいたしたのでございますから、今日の段階で、優先順位をつけるということは、適当でないと考えておるわけでございます。全部、どうか御審議の上、成立を図れるように御協力を願いたいと思うわけでございます。(拍手)
 また、独禁法の改正というものに対して、いろいろの問題についてお述べになった個所がございましたが、とにかく、この法案は、日本の自由経済を維持していくためのルール確立という見地から必要でございますので、審議日数も少ないわけではございますが、できるだけ能率を上げて御審議の上、成立できますように、皆さんの御協力を願っておる次第でございます。
 お答えをいたします。(拍手)
    〔国務大臣河本敏夫君登壇〕
#63
○国務大臣(河本敏夫君) わが国は自由経済をたてまえとしておるわけでありますから、経済に公権力が介入するということは、できるだけ避けなければならぬと思うわけであります。そういうことになりますと、産業界の活力を失う、経済の発展を阻害する、そういう危険もありますので、避けなければならぬわけでありますが、そういう観点から、今回の独占禁止法の改正に当たりまして、私は、いろいろな必要な意見を申し述べたわけであります。
 ただし、今回の政府提出の改正案は、経済界の実情を十分考慮し、かつ掌握いたしまして、現段階としては、きわめて妥当な案になっておると思います。私といたしましては、今回の改正が自由経済に新しい活力を与え、国民経済の一層の発展に寄与することを期待しておるものであります。
 なお、今後の産業政策をどうすべきかということであります。
 これは、実情を十分正確に掌握いたしますと同時に、産業政策と経済外交、さらに今回の独禁政策を総合的に進める、こういう方一向でやっていきたい、かように考えておる次第であります。(拍手)
    〔国務大臣福田赳夫君登壇〕
#64
○国務大臣(福田赳夫君) 物価が安定したら、独禁法の改正は必要ないのではないか、そういう意見があるが、竹本さんは、私は反対だ、こういうお話であります。
 私といたしましても、全く御所見と一緒でございます。独禁法は、公正かつ自由な競争の促進を通じ、一般消費者の利益を確保する、これを旨としておりますので、仮に当面の物価が安定いたしましても、この改正は必要である、かように考えております。
 なお、五十年度の消費者物価見通し一けた台は達成可能か、自信はあるかというお話です。
 確かに、これだけ混乱いたしました後の収拾でございますので、これから先もそう楽観を許せませんし、難問山積をいたしておると思います。しかし、その困難を乗り越え、万難を排して、この一けた台の消費者物価、五十年度中に実現、これは自信をもってひとつ実現したい、かように考えております。(拍手)
#65
○副議長(秋田大助君) これにて質疑は終了いたしました。
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#66
○副議長(秋田大助君) 本日は、これにて散会いたします。
    午後五時四十一分散会
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ソース: 国立国会図書館
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