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#1
第074回国会 社会労働委員会 第3号
昭和四十九年十二月二十四日(火曜日)
   午前十時三十七分開会
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         山崎  昇君
    理 事
                玉置 和郎君
                丸茂 重貞君
                須原 昭二君
                小平 芳平君
    委 員
                石本  茂君
                上原 正吉君
                小川 半次君
                神田  博君
                斎藤 十朗君
                高田 浩運君
                徳永 正利君
                森下  泰君
                山崎 五郎君
                粕谷 照美君
                片山 甚市君
                浜本 万三君
                柏原 ヤス君
                沓脱タケ子君
                星野  力君
                柄谷 道一君
   国務大臣
       労 働 大 臣  長谷川 峻君
   政府委員
       労働省労働基準
       局長       東村金之助君
       労働省婦人少年
       局長       森山 真弓君
       労働省職業安定
       局長       遠藤 政夫君
       労働省職業訓練
       局長       藤繩 正勝君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        中原 武夫君
   説明員
       労働省職業安定
       局失業保険課長  関  英夫君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○雇用保険法案(内閣提出、衆議院送付)
○雇用保険法の施行に伴う関係法律の整備等に関
 する法律案(内閣提出、衆議院送付)
○労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律
 案(内閣提出、衆議院送付)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(山崎昇君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。
 雇用保険法案、雇用保険法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案、労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律案、以上三案を一括議題とし、質疑を行ないます。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#3
○柏原ヤス君 雇用保険法案につきましてお聞きしたいと思います。
 まず、基本的なことですが、今回失業保険法が新たに雇用保険法に変わるわけですが、名前が変わると同時に失業保険法の精神まで変わってしまうのではないかということを心配しております。なぜ法律の名称を変えたのか、その点をお尋ねしたいと思います。
#4
○政府委員(遠藤政夫君) 今回御審議いただいております雇用保険法案によりまして、現行の失業保険法が廃止され、新しく雇用保険法による制度が発足することになるわけでございます。これは、ただいま御指摘のように、なぜ失業保険法という名前を雇用保険法に変えたのか。したがって、そういうことによって失業保険法に盛られた趣旨が没却されることになるのではないか、こういう御趣旨かと思います。で、最近のわが国の雇用・失業の情勢は、もう先生御承知のとおりでございまして、この数年来基本的な変化を遂げてまいっておりまして、量的な意味では一応完全雇用、こういう形になっております。しかしながら、まあ昨年の秋以来のいわゆる石油危機に伴います経済不況によりまして失業情勢はかなり深刻ではございます。これは量的な意味での完全雇用状態におきましても、そういった経済的な摩擦、国際経済の変動等によりまして、当然そういった失業ということは私どもは予測をしなければならない。これは昨年の八月、この新しい法案の制定を準備いたします際に再三議論が重ねられまして、今後量的な意味での完全雇用の状態の中でも、こういった国際経済情勢の変化あるいは国内経済的な摩擦要因、こういうことによりまして当然失業というものが予測される、そういう失業状態に対して的確に対応できるような体制をとる必要がある。その点につきまして、昭和二十二年にできました、制定されまして、今日まで及んでおります現行の失業保険法はいろいろの面で必ずしも十分でないし、現在の、今後の雇用情勢に適確に対応できるだけのものを備えていないのじゃないか、こういうことで現在の失業保険法の持っております失業補償機能を十分この実態に即応した形で強化いたしますと同時に、先般来大臣がしばしばお述べいただいておりますように、できるだけ失業をなくする、失業を予防する、どうしても必要なものは失業を少なくする、こういう意味で、この保険事故でございます失業をなくするという意味で、それとうらはらの関係のこの予防措置といいますか、それに必要な積極的な雇用面の措置、これをいわゆる保険事業の付帯的な仕事といたしまして、新しく加えることにいたしたわけでございます。そういう意味におきまして、単なる失業に対する給付をやるというだけの一つの柱でなくて、それに加えて新しい失業を予防するための雇用改善事業あるいは能力開発のための事業あるいは働く人たちの福祉対策を行なうための事業、こういった三つの事業をもう一つの柱として新しく加える、こういうことによりまして、現行の失業保険法によって果たし得なかった失業に対する補償あるいは積極的な失業の予防措置、さらに進んで、働く人たちが生涯安定した職場を確保できるための措置、こういうものを、全体を総合的な制度といたしますことによりまして、新しい法案の体系をつくっていきたい。そこで名称も単なる失業だけでなくて、働く人たちの雇用を確保し保障する、という趣旨から雇用保険法という名称に改めたわけでございます。
#5
○柏原ヤス君 名称は変わっても、性格的に失業保険法と変わるものではないと私は思っております。
 そこで、失業給付との関係で、これが就職を強制することになるのではないかということを心配しますので、お尋ねしているわけでございます。就職を強制するようなことになるのではないかと思われる点がこの法案の中に見えるわけです。目的の第一条を見ましても、「求職活動を容易にする等その就職を促進し、」とうたつておりますし、この「失業給付」のところを見ましても、「求職者給付」というふうにいままで「失業保険金」となっていたところが改まっております。そこで、失業保険法の制定の当時に、労働省は労働の意思とは安定所に出てきて、求職票を書けば労働の意思があるものとするというふうにはっきりおっしゃっておりますが、この点は雇用保険法についても変更することはない、こうお約束していただけるか、また雇用保険法においても失業給付は性格的にこれまでの失業保険と変わるものではないとはっきり言っていただけるものかこの点をお伺いいたします。
#6
○政府委員(遠藤政夫君) ただいま申し上げましたように、今回の雇用保険法案の中のいわゆる失業給付に属する事業、この事業に関する限りは現行の失業保険法に盛っております、いわゆる失業補償の機能を強化するということで私どもは考えております。
 ただいま先生御指摘のように求職活動を容易にする等就職を促進するという条項はございますけれども、これは現行の失業保険法の考え方と何ら異なるものではございません。求職者が、失業した人が求職をされる場合に、あくまでも憲法に保障された職業選択の自由が保障されております。したがいまして、現行の失業保険法におきましても、失業した人が安定所に出頭して求職の申し込みをする。再就職をできるだけ本人の御希望に応じて希望される職場にあっせんするというのが、これは目的でございます。したがいまして、今回の雇用保険法案におきましてもその考え方は全く変わっておりません。「求職者給付」あるいは「就職促進給付」と名前はついておりますけれども、これも現行の失業保険法のいわゆる失業保険金日額と、そのほかに移転費用でございますとか、就職促進のための諸手当がございます。それを体系的に分類いたしただけでございまして、考え方は全く変わっていないことを明らかにさせていただきたいと思います。
#7
○柏原ヤス君 雇用保険法案は失業した場合の労働者の生活の安定、それが一つ、雇用の促進、これが一つ、及び三事業の、この三つを目的として取り上げておりますが、失業給付による生活の安定と雇用の促進と、いずれに重きを置くものか。先ほど申し上げましたように第一条第十条、こういうところに従前の労働条件より悪いところへ雇用促進するのではないかということが心配されます。といいますのは、社会情勢も、解雇されて失業する者が非常に多くなってくるということが現実であり、また予想されているわけです。そういうところに雇用を促進するということになってはたいへんだと思いますので、その点をお聞きしておきたいと思います。
#8
○政府委員(遠藤政夫君) この雇用保険法の中の二つの大きな柱、一つは失業給付の事業であり、もう一つの柱がいわゆる三事業でございます。失業された方にはもちろん職業選択の自由が保障されております。そのワクの中で本人の御希望によって一日も早く就職をしていただくことが、これは私は最大の私どもの仕事であろう、こういうふうに考えております。それまでの間、失業されている期間中生活の保障として失業給付をするというのが、この雇用保険の最大の目的でございます。したがいまして三事業はそれに付帯的に行ないますいわゆる失業をさせないための、あるいは職場を安定させるためのそういった事業でございまして、この新しい雇用保険法になったからということで、現行の失業保険法と違う、何が何でも就職させることだということでないことは先ほど申し上げたとおりでございます。
#9
○柏原ヤス君 次にお尋ねしたいのは、不況の際の失業を防止するための一時帰休に対する事業主への援助、これが第六十二条一項四号に定められておりますが、ここはたいへん簡単なことばて、――簡単なことはというのはたった二、三行で書かれてあり、何ら具体的な措置について明示されておりませんが、私は、この法律に明記されていないというところから、労働省の一存で容易に変更されてしまうのではないかと心配しております。一時休業の際の事業主に対する援助措置は、具体的にどうやっていくのか、これを明確に示していただきたいと思います。
#10
○説明員(関英夫君) 御質問の、雇用調整交付金というような名前で私ども予算化したいと思っておりますが、一時休業の場合の補償のための制度、こういったものにつきましてはその点に限らず、ほかの三事業の場合も同様でございますが、そういうようなものの基準は中央職業安定審議会という労働省に設けられました三者構成の審議会にはかりました上、諮問してその御答申をいただきました上、基準を省令できめていく、こういうようなことになるわけでございます。これは法律上そういうことが明記されております。したがいまして、そういう議を経て、初めてきまるものでございますので、私ども法案成立の上はできるだけすみやかに、いままでここでいろいろ御質問に応じまして御答弁申し上げたそういった点を踏まえ、かつ各方面の御要望も承りつつ審議会に成案を得て諮問する。その上で審議会の答申を得て省令を定めて明確に基準を設定したい、こういうふうに考えております。
#11
○柏原ヤス君 この点、明確に示していただきたい。内容はきまっておりますでしょう。どうなんですか。
#12
○説明員(関英夫君) すでにいままでのこの審議経過から、たとえば補助率といいますか、支給の率につきましては、大企業と中小企業につきまして差を設けるといいますか、中小企業に手厚くするという意味におきまして、事業主が労働者に支払った休業手当の、大企業については二分の一、中小企業については三分の二という支給率とするとか、あるいは休業の規模、支給の対象となる休業の規模につきましても、大企業と中小企業では差をつけまして、より中小企業が利用しやすいようにするといったような点はすでに明らかになっておりますけれども、なお細部につきましては、これから三者構成の審議会の御審議を経て、省令上明確に規定する、こういうことに相なります。
#13
○柏原ヤス君 この雇用調整交付金の援助を受けている会社が、もし労働者を従前の雇用に復帰させないでこれを解雇したというような場合、労働省としてはどう対処していくのか。このようなケースは今後考えられると思います。この際、雇用調整交付金というのは失業予防のためにということがうたわれておりますので、この交付金の対象とした会社の労働者のその後の雇用というものは保障されなければならないと思います。この点、保障していくのか、どういうふうにするのかお聞きしておきたいと思います。
#14
○説明員(関英夫君) 雇用調整交付金の支給の要件の一つといたしまして、その休業につきまして労使間の協定、労働組合がある場合には労働協約、労働組合がない場合には従業員の過半数を代表するものとの労使協定というものを前提として、それがなければ支給対象としない、こういうことにいたしたいと思ってます。その労使協定の中には、休業の規模が、つまり休業の開始と休業が終わって、もちろん身分は続いているわけですが、休業が終わってまた就業が始まる時期、そういったものも当然明示されなければならない、これは労使間の協定で明示してもらおう、そういうことによって休業がなしくずしに解雇につながるという事態がないように、あらかじめ就労に復帰する時点が明確に協定されているものに限り支給対象とするというようなことを考えていきたいと思っております。
#15
○柏原ヤス君 大蔵省の方にお聞きしたいんですが、お見えになってますか。――それでは、労働省にお聞きいたしますが、中小企業などは従業員に支払う最低六割の賃金さえもきびしいというところが多いと思います。私は、そういう中小企業に対して国が従業員への六割の貸金を会社が払えるように金を融資するとか、また金融上何らかの措置を講じて中小企業とその労働者を助けるべきではないかと思いますが、この点いかがでしょうか。
#16
○政府委員(遠藤政夫君) この春以来、たとえば今回の不況で一番被害を受けております繊維産業等におきましては、中小企業におきましても操業短縮でかなり休業状態が続発いたしております。その際、労働者に支払われる休業時の賃金はおおむね一〇〇%あるいは九〇%、こういった状態が続いておりましたが、しかしながら、こういった不況が長期化するにつれまして繊維業界等におきましては、特に中小企業等は金繰りが苦しくなるというようなことで、私ども通産省、大蔵省とも十分連絡をとりながら、緊急融資の手配をしてもらうといったような措置をとって、できるだけこの危機を切り抜けるように努力をしてまいったわけでございます。そこで、いま先生御指摘のございましたように、休業期間中の賃金をできるだけ確保するということが必要なわけで、そのささえといたしましてこの雇用調整交付金という制度をつくったわけでございます。先ほど課長からお答えいたしましたように、中小企業の場合三分の二を交付するということになりますと、かりに九〇%の支給をいたしておりました中小企業の場合は、その三分の二、六〇%がこの交付金制度によってささえられることになります。したがいまして、中小企業の場合は、企業主は支払った貸金の三分の一だけを、三〇%を負担すれば九〇%が労働者の手に渡る、こういうことに結果的になるわけでございます。最近の一時休業からさらに進んで人員整理、解雇という事態になっておりますのは、いままでこういう制度がございませんために、何とかささえてきたものがもうどうにもならなくなって、結局工場を閉鎖しあるいは人員整理をする、企業を縮小する、こういう事態になってきているわけでございまして、この雇用調整交付金制度を早急に、一月にも繰り上げて実施していくということで衆議院で御修正になりましたのもそういう趣旨から、そういう御要請から出たものでございます。私どもはこの制度が発足すれば、中小企業等におきまして休業中の賞金をできるだけ、一〇〇%に近く補償できるように行政指導をしてまいりますと同時に、そういった金融面の措置につきましてもできるだけの努力をいたしてまいりたい、かように考えております。
#17
○柏原ヤス君 この点、きょう大蔵省が見えておりませんので聞かれませんけれども、労働省としても大蔵省のほうに積極的な話をつけていただけるのかどうか、その点いかがでしょう。
#18
○国務大臣(長谷川峻君) こういう失業・雇用の関係がむずかしいときでございますから、従来ですと労働政策は労働省だけでもよかった時代がありますが、国全体として勤労者対策を考えていかなきゃならぬ、こういう姿勢のもとに内閣全体がこの法案を支持し、そして私たちが皆さんにお答えする、あるいは皆さんからお話の出たものを、そしゃくしたものを大蔵省のほうも大体理解し、そして積極的に応援をしてもらっていると、こういう姿勢でございます。
#19
○柏原ヤス君 次に、季節出かせぎなどの短期雇用の労働者についての特例についてお聞きしておきたいと思います。
 季節労働者についてはILOの四十四号条約、ここで特例を認めているのは六カ月未満のものに限るというふうになっております。その他に政府の出している雇用保険法案を見ますと、短期特例は六カ月以上ということになっています。なぜ特例を設けたのか、その理由がわからないわけです。条約では特例として別扱いにしてはならないということになっているわけですが、この点いかがでしょうか。
#20
○説明員(関英夫君) 季節的な労働者あるいは季節というふうには特定しておりませんでも、短期の循環雇用を繰り返す労働者につきましては一般の日本の雇用慣行のもとにおきます常用労働者と異なりまして、毎年毎年ある一定期間働き、そして、その働いた期間のほかは仕事をしないという形態を繰り返しております。そのために、他の一般の継続的な雇用関係にあります労働者から見ますと、納付した保険料と受ける給付との間に非常なアンバランスがございます。六カ月ないし十カ月働いたといたしまして、納める保険料は給付の二日分から三日分でございます。その二日分か三日分の保険料で毎年給付を受けるということがあるわけでございます。それは他の非常に継続的な雇用関係を持っておる労使から見ますとアンバランスだと、こういうことにもなりますか、ただ、私どもの今度の雇用保険法案におきます考え方は、それがアンバランスだから悪いんだからこれを切り捨てるということでなく、やはりそれだけの不安定な雇用を繰り返さざるを得ない現状というものが今後とも早急には解消されないで続くであろう、そして、その人々の生活の設計の中に一定期間の出かせぎと、それから失業給付を受けることとがすでに長年の間組み込まれている、こういう実態を考慮いたしまして、そういう現実をむしろ法律の上ではっきりと制度化しよう、一般の中に埋没させて扱うのではなく、むしろはっきりとした制度として確立して、そして、その給付のしかたもそれらの人々の生活の実態に合わせて一時金としたほうがよりその人々にとってよい制度になるんではなかろうか、こういうことで今回の制度を特例として考えたものでございます。
#21
○柏原ヤス君 いまお聞きしたのは、ILO四十四号条約では六カ月未満のものに限ると、そういうふうにいわれているのに、日本ではこの短期特例は六カ月以上というふうにしている。六カ月以上は短期特例にするべきではないんじゃないか、こういうふうに思いますので、お聞きしたんですが、その点はいかがですか。
#22
○説明員(関英夫君) ILOの条約関係につきましては、非常に昔に採択されました四十四号条約では確かにそういうことになっておりますが、その後、社会保障関係についてILOで基本的な見直しをいたしまして、社会保障に関する最低基準の条約として百二号条約というものが採択されました。非常に有名な条約でございまして、現在その批准が非常に国会でも要請されているというようなことになっておりますが、その中では特に六カ月というような限定なしに季節労働者について特例を設けることができることとなっているというふうに私は承知いたしております。そういうような関係もございまして、かつまた先ほど私が申しました日本の現状から見て、そのほうがより出かせぎ労働者にとってよりよい形態として考えられるので、今度の法案の中で、そういうよりよい形態をはっきりと制度的に確立したい、こういうふうに考えたものでございます。
#23
○柏原ヤス君 それから季節出かせぎ等の短期雇用の労働者の給付日数のところですが、この制限に関してもILOの失業給付条約では少なくとも七十八日を下回ってはならないと、こういうふうになっておりますが、それから見ると、この法案は五十日という日にちで切っております。これは延長するべきじゃないかと、こういうふうに考えますが、その点いかがでしょうか。
#24
○説明員(関英夫君) 先ほど申し上げましたように、失業保険に関しましては、他の社会保険と同じようにILOは最近見直しを行ないまして、百二号という社会保障の最低基準に関する条約を採択しておるわけでございます。そこでは季節労働者については、その給付期間等についても特例を設けることができるということで、先ほどの六カ月のほうも四十四号とは変えまして、季節労働者全体について特例を設けることができるというふうに変わってきております。そこで、私どもはこの百二号条約という最新の社会保障に関する条約、こういったものをいつも念頭に置いて国内法制を考えてきているわけでございます。
#25
○柏原ヤス君 次に、保険料の流用についてお聞きしますが、労働保険特別会計法第十八条二項に、三事業費というものが不足した場合には千分の十の剰余金をもって補足するということを当然に予定していると思うんです。労使折半の千分の十の保険料を三事業に流用しないという保証があるかどうか、三事業を充実すれば千分の三では不足するようになると思いますので、不足してきたらどうするのか、この点をお聞きしておきたいと思います。
#26
○説明員(関英夫君) 雇用保険法案の六十八条の第二項に、三事業には千分の十三のうちの三の費用をもって三事業に充てるということを明記してございます。したがいまして、私ども毎年度の予算をこれから考えます場合には、その千分の三の範囲内の予算を国会にお願いし、その範囲内でしかいわば支出権が認められないわけでございます。ただ、先生の御質問が、そうやって組んだ予算をオーバーするような事態になったらどうするかということでございますが、三事業の中身をずっと精査してみますと、経済的な要因によりまして非常に変動的要素のありますものは、一番問題になっております雇用調整交付金のところだろうと思います。それ以外につきましてはあまり景気の情勢、動向によって変動要素はございません。したがいまして、通常の場合は、私は組んだ予算の支出権の範囲内で十分まかなえると思いますが、景気の動向によりましては、雇用調整交付金のようないわば義務的支出を優先いたしまして、他のそれほど義務的でない、たとえば施設の建設のようなものを節約するような形で必ず千分の三の範囲内で給付をまかなう、三事業をまかなう、こういうことでやっていきたいと考えております。
#27
○柏原ヤス君 五人未満事業所への適用についてですが、これは実は六年前から適用することになっていたと思うんです。これは失業保険法の改正のときに原則として適用するようにというふうに示されております。ところが現実は適用されておりません。それを今回強制適用するということになるわけですが、具体的にどのようにやっていくつもりなのでしょうか。
#28
○政府委員(遠藤政夫君) ただいま先生御指摘のように、昭和四十四年の失業保険法の改正によりまして、原則として商業、サービス業等の五人未満も含めて全面適用ということに相なっております。ただ、現実の問題といたしましては、こういう五人未満のいわゆる小零細企業の実態を把握いたしますことはきわめて困難でございます。したがいまして、政令によりまして当分の間政令に指定する業種については任意適用事業とする、こういうたてまえになっております。これを今回改めまして、こういった暫定的な任意適用という制度を全面的に廃止いたしまして、こういった五人未満の商業、サービス業等の零細企業等につきましても五十年の四月一日から全面強制適用にいたしますと、こういうことにいたしたわけでございますが、それじゃ、いままでのそういう考え方が解決できたのかということになるかと思います。確かに五年前といまの時点とを比べましてもコンピューター化等によりまして事務が簡素化され、あるいは事務組合の促進によりまして、こういった小零細企業の適用がかなり当時よりは把握しやすくなっていることは事実でございます。と申しましても、こういった小零細企業、数十万の事業所を的確に把握いたしますことは現時点におきましても、この法律施行時におきましてもきわめて困難でございます。それをあえてこういうふうに全面適用にいたしました理由は、先般来申し上げておりますように、必ずしも適用という形で実態を把握し、この法律によります適用の手続あるいは保険料の納付といったことが行なわれなくても、法律上当然適用になっております場合には、その事業から解雇され離職をされた方々に対しては、この雇用保険法によります失業給付は当然に行なわれる、こういうたてまえを貫くことにいたしたわけでございます。したがいまして、私どもはこの法律によって当然適用となった事業については当然事務的には最大限の努力をいたしまして、その実態の把握、適用につとめることはもちろんでございますけれども、現実に適用の手続が行なわれなくても、そこから離職をされた方に対するいわゆる失業の補償給付としては万抜かりはないことになる、こういうことになりました。こういうたてまえをとることによりまして全面適用を実施することにいたしたわけでございます。
#29
○柏原ヤス君 なかなか強制適用するといってもこれはたいへんなことだと思います。そこで、この五人未満事業所への適用拡大を円滑に行なうために、衆議院で、附帯決議で、労働保険事務組合をつくって助成などをしていくようにということが示されておりますが、具体的にこれをどのように育成強化していくのか、この点お聞きしておきたいと思います。
#30
○説明員(関英夫君) 労働保険事務組合につきましては、零細規模の事業主にかわりまして保険料の納入をやるのを主たる事業とし、あわせていろいろ届け出事務、そういったものも代行しているわけでございますが、私どもといたしましては労働保険事務組合に対します報奨金の制度等の充実をはかりまして事務組合の育成強化をはかると、こういうことで、来年度の予算の際には大いにその点について努力いたしたい、こういうふうに考えております。
#31
○柏原ヤス君 最後に、この法案によりますと、出かせぎ労働者に対しては一般被保険者の場合と違って一時金を支給するということになっておりますが、これはどういう趣旨なのか、もう一度お聞きしておきたいと思います。
#32
○政府委員(遠藤政夫君) この出かせぎ労働者、いわゆる毎年夏場あるいは冬場、二通りの型がございますけれども、主として農閑期あるいは漁閑期に出かせぎに出る、こういう人たちが現行の失業保険法の制度の中におきましても相当数を占めております。こういう方たちのいわゆる保険給付のあり方につきましていろいろと各方面から御意見がございました。本来、こういう人たちは農業に従事しながらその合い間に出かせぎに出る。出かせぎから帰ってくると本来的な農業なり漁業に従事される。そういう農業なり漁業に従事しておられる期間中について保険給付が行なわれる、こういうものが本来の保険制度になじまないんじゃないか、こういう御批判もありました。また、通常の、常用的に働いておられる方々が長期間にわたってこの保険の対象になる、そういう人たちに比べると、同じようなレベルでこの保険の対象者として考えるにはいろいろ問題があるんじゃないか、少なくともこういうものを制度の中に組み入れる以上は別な形をとるべきじゃないかと、そのほうがむしろ現実的であり妥当ではなかろうか、こういう御意見もございました。私どもは、この点ではいろいろ問題がございますが、この現行法の中で十数年こういう形で、失業に対する給付という形で行なわれておりましたものが、実態はどうあれ、その実情を踏まえた上で制度化するということがまず前提として考えなきゃならないことじゃないか。そういたしますと、これをより合理的な制度に改めるにいたしましても、実態を踏まえた上で、現実にいままで給付を受けていたものを、相当程度のものを確保するという前提に立って、これをより合理的にするには、やはり一時金にしたほうがより妥当であろう。そうすることがこの出かせぎに出る人たちにとっても非常に好都合であるし、制度をいままでいろいろと、とかく御意見のありました点につきましても基本的な解決策として最もいい方法であろう。こういうことで一時金制度に改めたわけでございます。
 そこで、一時金は、政府原案は当初三十日分ということでございましたけれども、まあ従来の実績から見ますると、大体全国平均で四十七、八日から多い地区で五十二、三日というような実態でございます。今回の雇用保険法案におきまして、一日当たりの日額の単価が引き上げられたこと等もございまして、過去の実績の五十日程度を一時金とすることが妥当であろう、かつ、いままでの実績を十分踏まえた上での制度として適当であろう、こういう御意見でございまして、一時金五十日分ということにいたしたわけでございます。
#33
○柏原ヤス君 最後に、大臣にお聞きしておきたいと思いますが、いわゆる出かせぎ労働者、これは決して好んで出かせぎしているのではない、収入を得るためにやむなく家族と離れて遠方で就職をしているわけでございますけれども、この出かせぎ労働者の問題については、国の産業政策、地域政策、こうした面からも対処していかなければ解決できないと私は思います。そこで、この出かせぎ労働者に対して、大臣として基本方針、また具体的対策、こういうものがおありでしたらお聞かせいただきたいと思います。
#34
○国務大臣(長谷川峻君) 実は、私の出身地は出かせぎ地帯でしてね。東北が出かせぎ者が一番多いわけでございます。ですから、私は自分の地方で、出かせぎに行って、東京なり、そういうところで働いている諸君とこういう場所でまたお目にかかり、また激励することもあるわけです。おっしゃるとおり、子供と妻と離れてなれない出かせぎ、しかも額に汗をして働く諸君、こういう仕事というものはなかなかたいへんでございます。収入はかなりにあるにしても、毎年毎年繰り返していくことは、非常に私は気の毒だと思うわけでありまして、やっぱり基本的には地方地方でりっぱな雇用の口があるということ、あるいは出かせぎに来ておっても、それが出かせぎじゃなくて、通年、ずっとつとめられるようになること、そういうことが一番大事じゃなかろうかと思っているわけでありまして、いずれにしましても、出かせぎ者がまた今度東京へ来まして、よく私など、個人的にたずねて来て、黄金の不払いがあるがこれは何とかならないかと言われると、孫の孫の孫ぐらいのところで働いているものですから、その不払いの金を一体どこから引っぱり出してあげたらいいかというような苦労などをしますというと、やはり職業安定所のような正常な就労の経過をたどってくると話がしやすい、役所のほうはそれがお手伝いしやすいというふうな問題もございます。あるいはまた健康保険あるいは健康診断などをしてちゃんとくるというと病気しないで済むとか、いろんなことを考えますというと、どういたしましても、私は、地元において就労するような機会を長い目においてつくることが一番大事じゃなかろうか。そして、この際は、ただいま局長からも御説明申し上げましたように、毎年毎年繰り返して、帰ったとたんに職安に一ヵ月二回も三回も行って、働く意思があるんだ、ないんだというふうな、ときにはもんちゃくなども起こるようなことが全部解決をして、東京から帰ったとたんに、次の日、一時金として五十日分ぴしゃっともらって、そして、だれもそれを当然の権利としてもらえるという姿にしたほうが、その近くで自分の仕事をされようと、ある場合にはその近所に何か手のないときに助けに行こうとも、保険金を返せとか返さぬとかというごたごたがなくて済むのじゃなかろうかと、こういう考えでいまから先やってまいりたい。
 それから、先ほどから先生から三事業の予算等々の問題がございますが、これは千分の三でやることですし、国会においてずうっと御審議いただくことでございますから、労働省には何ら皆さんの前に秘密も何もございません。まさにこれは労働省は働く諸君の役所でございますから、そういうことで万全を期しながら皆さんの、労働者諸君の信頼と国会の私は信頼を得たいと、こういう形でやっていきたいということを御理解いただきたいと思う次第であります。
#35
○柏原ヤス君 この出かせぎ労働者に対する基本方針、具体的対策、こういうものをもう少しお聞きしておきたいと思いますが、その程度なんでしょうか。
#36
○政府委員(遠藤政夫君) 具体的な出かせぎ労働に対する私どもの対策といたしましては、従来いろいろ各方面からの御意見あるいは各審議会、――雇用審議会あるいは私ともの中央職業安定審議会等におきまして御議論いただいておるわけでございます。現在もこの出かせぎにつきましての根本的な、抜本的な対策を何とかやりたいということで、雇用審議会の専門部会と中央職業安定審議会の建設部会におきまして、具体的な検討が進められておるわけでございます。私どもは、この両審議会の御答申をいただきまして、出かせぎ労働者に対するもろもろの問題、数多くのいろいろむずかしい問題ございますが、こういった問題を基本的に解決できるような方向で対策を立ててまいりたい、かように考えておる次第でございます。まあ、その中で、ひとつ前提になります問題は、いわゆる私ども出かせぎ手帳という制度をとりまして、出かせぎに出られる方々が正規の公共的なルートを通って、機関を通して就労していただく、こういうことをまず第一に考えているわけでございます。ややもすればこういった公共職業安定所とかあるいは市町村とか農協とかこういつた公共的な機関、団体の手を経ないで縁故で就労される方がまだ相当数多うございますけれども、そういったことによっていわゆる蒸発とか出かせぎの先でいろいろと事故が起こったり、問題が起こりました場合に、その処理に非常に難渋しなきゃならないというふうな問題がございます。したがいまして、この就労経路を正常化するということにまず第一に私どもは行政の目標を掲げているわけでございます。同時にまた、その就労されたあとのいろいろな問題がございますが、そのために事前の健康診断でございますとかあるいは就労前の一応の訓練、教育、こういったことにつきましてもそれぞれ送り出し地域の都道府県の協力を得まして逐次実施をいたしてまいっております。また、就労後の安全対策でございますとか、間々起こりやすい賃金不払いの問題でございますとか、こういった問題を引っくるめて総合的な対策を制度的に確立するような方向で私どもは目下鋭意検討し努力をしてまいりたいと、かように考えておるわけでございます。
#37
○柏原ヤス君 もう少し具体的なことをおっしゃっていただきたいわけですが、何となくことばはりっぱでもはたしてそれが実現されるかどうかということについて労働省はもっと力を入れてやっていただかなきゃならないんだということを私は感じとして申し上げるわけです。そのことをもうちょっと具体的に申し上げますと、先ほど手帳のことが出ましたですね。この手帳一つ見てもほんとうに出かせぎの方たちに労働省が本気になって取り組んでいるのかどうかと疑われるような手帳なんですね。その手帳にはりっぱなことが労働省として書かれてございます。ところが実際その手帳を、内容を見せてもらいました。これは何人もの方のを見せていただいたんですけれども、大体ちゃんと書かれてないわけですね。ひどいのになると、安定所の、どこの安定所かという名前も書いてないようなのが出ております。それから身分証明をする役場の村長さんとか町長さんの判こなんというものも押してないものがある。これは出かせぎの方たちにとってみれば、ちょうど外国へ行った場合のパスポートのようなものでなければならないと思うのですね。ところが発行するその安定所もまたそれに協力する役場も、もうめんどうくさそうにいいかげんに扱っているような感じがするわけです。今度それを持って出かせぎに行った事業所のほうはそれを受け取ってきちんとした約束の条件を書き込んでいるかどうかというと、ほとんど書かないところが多いらしいんですね。書いてくださいと言うと、いや、言うとおりやってんだからいいじゃないか。もう人をばかにしたような言い方で鼻であしらっている。そういうところが多いんですね。これは具体的な例ですけれども条件が違うのでやめると言ったら、その手帳を取り上げて持っているんですね、事業所が。返してくれないわけですね。それで、もうそんなら訴えるぞというふうにけんかふっかけたら出してくれた。じゃ、まるで手帳というものは出かせぎの人を守る手帳じゃなくて、適当に利用される手帳になってないとも言えない事実を見たわけです。まあ、そういう点、この手帳が出かせぎ労働者のために活用され、また確かに労働省が考えていられるような出かせぎ者のためになる手帳になるようにするのには、やはり適当な予算も出してそれをきちっとつくらせるということも必要だと思います。しかし、こんな手帳一つですら、まるで出しておけばいいと、あとは適当にやれ、そしてかえって出かせぎ労働者の方たちにとっては何の役にも立たないというようなことになっている現状でございます、これは。まあ、このこと一つでもいいからぴしっとできないものか。そうすれば、出かせぎ労働者の方たちに対して労働省はこれだけ力を入れているんだということが具体的にわかると思うんですね。一人一人がその手帳を持つわけですから。その点、もう少し私もいろんな実例を調べて大臣のお耳にも入れたいと思っておりますんですが、まあ一端を申し上げて、基本方針、そして具体的対策というものをやっぱりきめてかからなければ、こうした不況の中で、そして弱い立場にいる出かせぎの方たちというものはますます追い詰められていくんじゃないか、まあ、こう思いますので申し上げたわけです。その点、大臣にもう一言おっしゃっていただきたいと思います。
#38
○国務大臣(長谷川峻君) まあ、その現物がこの場にはないものですから、私、すぐお答えにならないかもしれませんが、そういうものがありましたらどしどし私のほうへ直接ひとつお申し越しいただきたいと思います。やっぱりそれは手帳というものは、先生おっしゃるように、外国のパスポートと同じように、それによって自分の権利が生まれることですから、そういう意味で、私たちが一人の人に不便をおかけするようなことがありましたら、かりに役所の手落ちとするならこれは私の手落ちということになりまして、やはり私は先日も、十月の初めに全国の職安の課長さんと異例な会議を開きまして、こういう苦しい時代であるから、役所の諸君は親切な行政をやる、相手が困っているときに親切をされればこれは一生忘れないし、また親切をすることによって相手が喜ぶということであるとやるほうも喜びを感ずるんじゃなかろうか、こういうつもりでやらしておりますので、具体的な御不便なことがありましたら、どうぞひとつお申し越しを願いたいと思っております。
 なお、私は役所のほうにもわざわざ直通電話で「一三一三」と、こういう直通の何でも相談を受ける電話を一本引いておきまして、そこにはいつでも常時二人職員を置いて、何でもすぐでも御返事申し上げ、そしてまた役所の中をかけずり回って得た結論を御返事すると、こういうふうな行政の心の通うようなところを実は心がけてやらしておりますので、いまのような具体的な事例がありました場合には、遠慮なくひとつお申し越しのほどをお願いしたいと思います。
#39
○柄谷道一君 私は、去る十一月十四日の社労委員会で、雇用情勢の現状と展望について質問しまして、現行失業保険制度を抜本的に改正し、失業給付のほか、これと三事業の経理上の区分を明確にするということを前提として、西ドイツの雇用促進法などの例を引きながら、雇用改善能力開発、雇用福祉等を含めた積極的、総合的雇用政策を推進する必要があることを指摘いたしました。そして、多くの民間産業労働組合や中小企業団体の切実な要望にこたえて、第七十四回臨時国会に雇用保険法案を提出すべきである、提案内容はさきの七十二臨時国会の衆議院段階における修正案を織り込むべきであるということを強く求めました。労働大臣がこの意見を尊重し、その措置をとられましたことにつきましてまず心から敬意を表するものであります。
 私は、この法案の細目につきましてはなお検討すべき余地があると思いますけれども、現下の事態にあたりましては、再検討で遅延するよりも即時完全実施こそ肝要である、こういう前提に立ち、今後質量両面にわたる完全雇用を実現させたいという視点に立ちまして以下質問を申し上げたいと存じます。
 現在の繊維、弱電、非鉄金属、木工、合板等をはじめとする深刻な雇用情勢につきましてはあらためて指摘するまでもありません。雇用不安が増大し、これらの地場産業を多くかかえる産地では社会問題にすら発展するおそれがあると思うのであります。雇用保険法案が本国会で成立しましても、明年四月一日からの施行ではこの深刻な情勢に対応できないと思います。衆議院で可決された修正案によれば、付則第二十一条で「福祉施設として、」「景気の変動、国際経済事情の急激な変化その他の経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた場合における失業を予防するために必要な助成及び援助を」一月一日から行なうことができる、こうされておりますけれども、この内容は実質上四月一日施行の雇用調整対策としての雇用調整交付金をそのまま一月一日より交付する、こう解してよろしゅうございますか。
#40
○国務大臣(長谷川峻君) 先生からこの雇用保険法案についての評価をいただきましたことは役所としてはありがたいと思っております。前国会に御審議をいただきながら今日に至り、その間にもだいぶ雇用・失業情勢がきびしくなって、皆さんが御心配くだされているところであり、また、私などもその責任を感じて奔走につとめているところであります。そういう雰囲気の中におきまして衆議院あるいは参議院においても実施をする場合には早く繰り上げるべきじゃなかろうか、雇用調整交付金の問題。そういう御議論がございました。原案においては来年の四月一日から実施するというところでございますけれども、やはり非常の場合には非常なことをやってお手伝いすることが一番大事じゃなかろうかということは私は政治の要諦じゃなかろうかと思いまして、何さま今日のことでございます、年の暮れももう二十四日でございますが、これを一月一日からおっしゃるとおり、この雇用改善事業に関する規定のうち、雇用調整に関する規定は実質的、実際に一月一日から施行する、こういう覚悟をきめているわけでありまして、やはり一ページを開かなきゃ二ページ目は出てまいりませんので、これをおやりいただきながらまたひとつ新しい知恵を出して、不完全なところがある場合にはそれを是正していくという形をとるべきじゃなかろうかと考えているわけであります。
#41
○柄谷道一君 一月一日施行ということになりますと、その施行部分に対しては細部の政令、通達等を出さなければならないと思うのであります。一月一日施行に間に合わせるために、今後どのような日程で政令または通達内容を制定されようとしておるのかお伺いいたします。
#42
○説明員(関英夫君) 御指摘のとおり一月一日までには非常にもう日数が少ないわけでございますので、この法案が成立しましたならば、二十六日に中央職業安定審議会を開催する予定にいたしております。そこの御意見に基づきまして実施基準等を定めて通達をし、できるだけすみやかに実施体制を整えて、一月一日からの適用が必ずできるようにいたしたいと、こういうふうに考えております。
#43
○柄谷道一君 細部は中央職業安定審議会の審議にゆだねられると思うのでありますが、雇用調整交付金の支給につきましては一定規模以上の休業に対し、こうなっております。今日までの質問の過程では必ずしもその内容が明らかにされていないわけであります。中小企業に対しては特別の配慮を行ないたいという答弁にとどまっております。これは審議会で審議されるべき項目であろうと思いますが、現段階で、もし明らかにしていただくとするならば、その一定規模とはどの程度の規模をお考えになっているのかお伺いします。
#44
○説明員(関英夫君) 現在、その規模等につきまして鋭意検討中でございまして、きょうここで具体的に申し上げるわけにいきませんが、できるだけすみやかにそれは確定したいということで、現在検討しているわけでございますが、ただ、申し上げられますことは、中小企業につきましては、大企業よりも休業のやり方等について余地が少ないといいますか、自由な計画を立てられない状態にあるかと思いますので、中小企業の場合には、大企業よりも休業規模につきましても特に手厚い措置をとらなければならないだろうと、こういうふうに一つ考えております。
 それからもう一つ申し上げられますことは、たとえば労働省といたしましては、週休二日制といったようなものの普及に努力しているわけでございますので、まだ週休二日制をとってないところで週休二日程度の休業をいたした場合にも助成するかというようなことになりますと、それは問題でございますので、やはりある程度以上の規模の休業でなきゃならぬだろうと、しかし、それは中小企業と大企業とでは相当の差をつけて考えるべきだというようなことを鋭意検討しているところでございます。
#45
○柄谷道一君 具体的にその規模の内容か明らかにされないのはまことに残念でございますけれども、要望として、この雇用調整交付金が現下の深刻な雇用情勢に対応して失業を予防するために行なわれるものであるという趣旨を十分御理解の上、それがその失業予防に有効に作動するようにきめのこまかな、しかも現実を配慮した基準が設定されることを強く求めたいと思います。
 なお、あわせまして、一昨日からの質問を聞いておりますと、どうも中小企業、大企業ということが極端から極端の議論としてかわされているような感じを受けるのであります。中小企業は現在資本金一億円以下、そして従業員五百人以下、そのいずれかに該当するものをもって中小企業とするという定義でございます。しかし、大企業といいますと五千人、一万人と従業員をかかえるところをもって大企業という通念が一般に行なわれているわけでございますが、その政策の谷間に中堅企業があるという事実をこれは無視することはできないと思うのであります。産業構造が今後改善されてまいりますと、五百人をこえるいわゆる中堅企業が中小企業としての政策的な手厚い援助も受けられない、さりとて大企業のような企業力もない、こういう中堅企業が存在するわけでございまして、本法制定には間に合いませんけれども、通産省とも労働大臣十分この点について御検討願いまして、日本の産業構造の今後の展望とにらみ合わして、これら中堅企業に対する雇用対策についてどのような配慮が必要かという問題について真剣な御討議を願いたいと思います。時間の関係でこれに対する私の考え方はあらためての機会にまた申し述べたいと思うのであります。
 次の質問は、失業給付の所定給付日数につきましては、原則として就職の難易度に応じて定めることになっております。そして、これだけで十分に対処できない場合に各種の給付延長制度を活用することがそのたてまえであります。しかし、最近のような深刻な雇用・失業情勢のもとではまさにこの延長制度が生かされなければならないときではないかと思います。若年労働者の再就職につきまして遠藤局長は比較的容易である、こういう答弁をされているわけでございますけれども、現在のような不況の際には、事業や職種の転換を余儀なくされまして、その結果、従来の経験や知識や技能を十分生かせなくなる。このために九十日の給付日数では十分な就職活動ができない人が多く出てくることが予想されるのであります。個別延長の基準でこのような事態に対処して若年者も安心して求職活動が行なわれるように措置していく必要があると思います。そこで労働省としては、この九十日をもって十分な就職活動ができない場合、さらにこれを百五十日まで延長して完全雇用がはかられるよう努力する、こういう御趣旨であると理解してよろしゅうございますか。
#46
○政府委員(遠藤政夫君) ただいま御指摘のように、私どもは一般的にはこういう不況下におきましても、若年労働者の就職は比較的容易である、過去の実績におきましてもその実例がございますし、最近の事態におきましても、まだまだそういう状態は続いておるんじゃないかと、かように考えております。しかしながら、こういう不況によります雇用・失業情勢が深刻になってまいりますと、一般的にはそういうことを言えても部分的にはいろいろ大きな問題が出てまいります。そこで、ただいま御指摘の雇用保険法案によります個別延長の制度がございますが、この個別延長の制度につきましては、従来は中高年齢者でございますとか、身体障害者とか、そういった客観的に就職が困難と認められる方々についてこの個別延長という制度を発動してまいりたいと、こういうふうなつもりでこの法案の作成に当たっておったわけでございます。しかしながら、御指摘のございましたように、こういう深刻な不況が長期的に継続するということになりますと、従来の離職をされた方々で過去に蓄積された技能や経験やそういったものを十分に生かし切れないために、短期間に所定給付日数内で就職できないというような事例もかなり多く出ることも十分予想されるわけでございます。したがいまして、そういった関係の方々につきまして、この所定給付日数の個別延長といった制度を合理的な範囲内で基準を定めてそれに十分対応できるような体制をとってまいりたい、具体的には審議会の御答申に基づいてその発動を考えてまいりたい、かように考えております。
#47
○柄谷道一君 まあ、その点に対する十分な配慮を求めますとともに、たとえば繊維産業等の場合におきましては、地場産業という特色を持つ地域が多うございまして、有効求人倍率が福井県、石川県の場合は、すでに十月度において〇・八台に低下しておる、そういう実態でございます。就職活動の難易につきましては、さらに地域的な問題もこれから出てこようと思います。これらに対する有効な対策というものについても強く要望し、次の質問に移りたいと思います。
 雇用改善事業等の三事業を円滑に推進させるためには、参加の体制、事業内容について労使の意見が十分に反映される体制を確立することが必要であろうと思うのであります。三木総理大臣も対決より対話へとその所信表明の中で明らかにされました。現在の世間のやはり大勢は抵抗から参加へという大きな胎動が見られるわけであります。この点に対しまして第七十二臨時国会の附帯決議の中に、この参加と意見反映の問題が決定されたわけでございますが、衆議院段階ではこの問題に対して触れられておりません。当然労働大臣は、この参加とそして労使の意見反映につき格段の配慮をされるものと理解いたしますが、いかがでございますか。
#48
○国務大臣(長谷川峻君) 私は三木さんが対話と協調をやる前に自分でやってきたつもりなんです。それはもう労働問題は対話と協調がなくちゃだめなんだ、ことに加工国日本は勤労者の汗の上につくられているという私は信念を持っております。ですから、ことしの春なども三十数回も組合の諸君にお会いするという形でございますので、先生がおっしゃった御意見のとおりと私は思っています。
#49
○柄谷道一君 それでは、その意見反映ということについて、具体的にはどの審議会で意見を徴し、その反映につとめられようとしているのか、お伺いします。
#50
○説明員(関英夫君) この法律に基づきまして雇用改善事業等の三事業の実施にあたっては中央職業安定審議会の意見を聞くと、こういうことになっておりますし、また失業給付の関係の重要事項についても中央職業安定審議会の意見を聞かなければならないことに法律上なっております。そういう意味で成立後できるだけ早い機会に三者構成の中央職業安定審議会の意見を聞いて、その答申をいただきまして、具体的な基準を設定してまいりたい、こういうふうに考えております。
#51
○柄谷道一君 同様第七十二臨時国会の衆議院可決時における附帯決議の中には、公共職業訓練の強化と、その制度全体の体系化及び資格の社会化、行政体制の充実強化と窓口におけるサービスの向上という問題が触れられております。この点に対しましても、その趣旨を十分尊重しつつ今後の運用が行なわれるもの、それが行政に実施されるものと理解してよろしゅうございますか。
#52
○政府委員(遠藤政夫君) 御指摘のとおりでございまして、こういった先般の七十二国会におきまして附帯決議が付されております。この内容で今回衆議院の附帯決議から落ちておるものもございますけれども、こういった点につきましては、衆議院の社会労働委員会におきまして、大臣から先般の通常国会で答弁いたしましたとおり、責任をもって対処してまいりますと、こういうお答えがございました。私どもは前回流れたからといって、その答弁されました趣旨に反することを運用上実施いたすつもりは毛頭ございません。全般を通じて御指摘のございました点、お答え申し上げました点を誠意をもって対処してまいりたい、善処してまいりたい、かように考えております。
#53
○柄谷道一君 雇用保険法案が本国会で成立いたしますと、失業の予防には相当の効果を期待することができると思います。しかし、企業倒産、特に中小企業の倒産時における労務債権の確保に対する救済措置はきわめて不十分であると言わなければならないと思います。
 実体法上民法三百六条の第二号、商法二百九十五条等では共益の費用に次ぐ一般の先取り特権として労務債権を認めておりますけれども、しかし、それは追及力に欠け、特別担保権者に対抗できません。いわゆるしり抜けであります。企業倒産時の訴訟法による賃金債権の保護につきましても、破産法では別除権、財団債権に次ぐ第三番目の優先的破産債権としての順位を与えられているにすぎません。また、会社更生法の中でかろうじて更生手続前六カ月間の給料、預かり金等が共益債権として認められておりますけれども、しかし、この更生手続には期間を要しまして、その間労働者としてはこの労務債権の確保にきわめて不安定な状況のまま推移せざるを得ないという欠陥を持っております。さらに使用者の夜逃げなどによりまして、破産法に基づく破産手続が破産財団を欠くために行なわれないという場合には何ら労務債権確保の道がないわけであります。また、社内預金の保全につきましても、現在の労働省の方針からいたしますと、労使の自主管理制というものが含まれておりまして、これは債権確保に対して必ずしも実効力を持つものとは言えないと思うのであります。十二月の十三日でございましたか、労働省労働基準局が賃金不払いの概況を発表されております。それによりますと、四十八年十月から四十九年三月までの前期繰り越しと本年九月末までの新規分を含めますと、六千七百九十七件、対象労働者四万四千九百三十三人、金額にして六十六億七千七百六万円の労務債権がいま問題として残っていることが発表されております。で、昨日基準局長はこれらに対する労働省の対策について説明をされたわけでございますけれども、それはあくまでも現象的な事象を追う対策でございまして、真に労働者の債権確保の万全の措置とは言い得ないと思うのであります。民法や商法や会社更生法、破産法が制定された当時と現在とは社会通念の上で大きな変化がいまあると思うのであります。そうして考えますと、現在、いま申し上げましたような実体法上の弱さをカバーする法の改正または新しい法の制定ないしは社内預金の保全方法に対するしり抜けの排除、さらに国、地方公共団体の立てかえ払い、または共同保証機関の設置というような抜本的な労務債権確保のための制度確立がいま強く求められていると思うのであります。この点を補強いたしませんと、労働大臣の言われました精神は画竜点睛を欠くということになると私は指摘をいたします。これはきわめて大きな法の改正につながる問題でございますが、これらに対する労働大臣としての明確な答弁を求めたいと思います。
#54
○政府委員(東村金之助君) ただいま御指摘ございました労務債権の確保の問題でございますが、実定体上の問題、御指摘ございましたとおりでございます。つまり、通常の場合ないしは破産法適用の場合、会社更生法の適用の場合、あるいは使用者が行くえ不明になってしまった場合、いろいろ実体法上問題はありますが、おっしゃるとおり、労働債権がどれだけ保護されているかという点については問題をなしといたしません。それから、社内預金保全の問題でございますが、これはいろいろ保全の方法を考えておりまして、金融機関による保全の方法、あるいは質権設定の問題、信託の問題等々やっておりまして、これについては現在までのところ返還不能の金額はそう目立ったものではございませんが、もちろん問題は残ると思います。いずれにいたしましても、そういう点を何とかしなければいけないということは考えております。そこで、最後に御指摘のあったように、これらの法律の問題を踏まえながら、抜本的な救済策はというお話でございます。確かに私どもそういう方向で考えておりますが、何せ法律上いろいろ問題がございますので、そういうものを研究した上で、救済制度が新しく発足できるような、そういう方向で検討してまいりたい。なお、その間につきましては、現在労働基準法で賃金不払いがございますと、罰則づきで強制しておりますので、早期把握、早期解決という方向でやっていきたいと思います。ただいま数字について御指摘ございましたが、ことしの三月から九月の間、発生いたしました約四十億の債権につきましても、現在申し上げましたように早期把握、早期解決ということで三十八億程度は解決をしているということでございます。なお、抜本的な救済制度についての今後の具体的な対策等は、現在これから十分検討してまいりたいというふうに考えております。
#55
○国務大臣(長谷川峻君) 私は、いままでの高度経済成長でなれておりまして、そして、こういうショックを受けて、――国際的なショックやいろんなものがございます。私はやっぱりことしの暮れから来年というのは、ほんとうに敗戦以来の国難だと思っております。まさに異常事態である、異常事態には異常な事態に応ずるだけの私は対策を講ずべきだと、こういう感じを持っておりますから、いろいろ法律上の制約がおっしゃるとおりありますけれども、この国、地方公共団体の立てかえ払い、あるいはまた共同保証機関の設置、これはことしじゅうに研究させまして、一部はことしじゅうに発足をさせ、明年から何とかこれを法律の事項としてでも実施できるように熱心に研究さしてこの非常事態、国難というものを打開して働く諸君に安心をひとつ求めていく、こういう決意でありますことをこの際申し上げておきます。
#56
○柄谷道一君 次に、雇用保険法の制定に伴いまして三事業について短期雇用特例被保険者を多くかかえる産業にこれを十分活用できる配慮を行なうことが当然でありますけれども、婦人労働者の雇用安定と福祉の増進をはかることもまたきわめて重視されるべきであろうと思います。このため育児休職制度をはじめとする援護措置をこの事業の中に私は含めるべきであると思います。去る十一月十四日の私の質問に対しまして森山婦人少年局長は、雇用保険法の事業の中の一環として育児休業を実施する事業主に対し援助措置を講じたい、こう答弁されております。また、衆議院附帯決議の中でも新たに「育児をはじめとする」具体的な一項が付加されております。こうした経緯から見まして、当然今後育児休業の援護措置が三事業の中でとられるものと理解をいたしますけれども、本件に対する大臣の明確な答弁を求めたいと思います。
#57
○国務大臣(長谷川峻君) おっしゃるとおり、附帯決議にそういうことがありますが、かねてから勤労婦人福祉法の規定に基づいて育児休業の普及、促進につとめてきたところでありますけれども、先日の衆議院で採択された附帯決議も十分尊重しながら雇用保険事業の一環として育児をはじめとする婦人労働者の援護措置を講じてまいりたい、研究してまいりたい、こう思っております。
#58
○柄谷道一君 婦人の就業問題の中でまた配慮しなければならない問題は、交通遺児をかかえた寡婦やその他の事情によって生じた母子家庭の母の就業問題であります。特に本年十月交通遺児育英会が調査したところによりますと、全国の小・中・高校生の交通遺児家庭三万六百五十五世帯のうち九割が低所得層、うち五割が生活保護層、そして母親の三人に一人は病気または病気がちで定職につけない、このために高校進学を断念したり学校の退学、休学、さらには母子離別の悲劇すらやむなくされていると発表されております。まさにこれは人間以前の貧困状態にあると言わなければならないと思うのであります。これらに対しましては、もちろんその交通事故補償、医療問題、住宅問題、教育問題、生活保護等の総合的な施策が必要であることは当然でございますけれども、やはり何と言ってもその抜本策は寡婦の雇用を促進することではないかと思うのであります。資格も技能も持たない寡婦に適切な職業訓練を施しまして安定した職場を供給することが重要であると考えます。婦人と年少者の行政をあずかる労働省として、これら寡婦の雇用促進について今後どのような対策を講じていかれようとしているのか、お伺いをしたいと思います。
#59
○政府委員(遠藤政夫君) ただいま先生御指摘の交通遺児をかかえた寡婦、こういった方々の就業問題は、これは中高年とか身体障害者と同じように並んでなかなかむずかしい問題でございます。社会福祉の充実とか職業能力の開発あるいはこういった人たちのための雇用関係の整備、こういったいろいろむずかしい問題がございますが、こういったもろもろの問題を総合的な見地に立って一つ一つ解決をすることが前提として必要になってまいります。私どもといたしましても、こういった交通遺児をかかえた寡婦の方々の雇用についての実態をまだ十分見きわめておりません。こういった調査も必要でございますし、そういった実態の把握を進めると同時に、こういった人たちの雇用の場の確保ということにつきまして、積極的に検討をし、努力をしてまいりたいと、かように考えております。
#60
○柄谷道一君 今日までの労働省の雇用政策として中高年、身障者、これらに対する雇用促進の道は十分とは言えないにしてとられてきておるところでございますけれども、こうした母子家庭の母の就業、その就業促進のための助成措置、援助措置というものはほとんど見るべきものがなかったと言っても過言ではないと思うのであります。ただいま局長から前向きの御回答をいただいたわけでございますけれども、早急にこれらの問題について実態を把握し、そして適切な雇用に対する援護措置がとられるように強くこれは労働大臣に要望をいたしておきたいと存じます。
 次に、去る十二月九日に私が紹介議員になったわけでございますが、千百名以上の方々から「家内労働者の生活の向上安定のため休業保障制度の制定に関する請願」というのが提出されております。で、現在の家内労働者の封建的な従属関係に縛りつけられ、そして低い賃金で長時間労働を余儀なくされている現状につきましては、多くを語る必要はないと思います。そして、家内労働法が制定されたとは言いながら、その安全対策につきましてもきわめて不備であります。また、このような経済情勢の大きな変動が襲ってまいりますと、まず第一にその不況のしわ寄せを受けるのは、これらの家内労働者であります。しかし、この家内労働者に対しましては、今回制定されます雇用保険法をもってしてはその救済の道がないわけであります。こうして考えてみますと、現行の家内労働法というものをもう一度洗い直して、失業保険法を雇用保険法と抜本的に改正したごとく、この家内労働法についても現下の深刻な雇用労働情勢と、そして高度経済成長時代から低経済成長時代へと移行していくにあたって、現行家内労働法がはたして万全の機能を発揮するものかどうかということについてこれは再検討を行ない、その補強をすべき時期ではないかと私は思います。この家内労働法に対する今後の労働省としての所見を伺いたい。
#61
○政府委員(東村金之助君) 家内労働法につきましては、制定されて日まだそうだっておりません。したがいまして、現段階におきましては、家内労働法の施行のPRといいますか、あるいは徹底といいますか、そういうことをやっておる段階でございますが、かたがたただいま御指摘のような問題も出てまいりましたし、その他最初予想しなかったような問題も出るおることは事実でございます。そこで、そういう問題を含めてこれからどうするかということが、現在家内労働法の審議会等で問題になっておりますので、ただいまお話があった問題についても、その中で御検討されるのじゃないかと、このように考えております。
#62
○柄谷道一君 御検討されるんではないかという受け身的な姿勢ではなくて、ほんとうに労働大臣、いまこれはたいへんなんです、家族労働者の現状は。これはゆっくりと検討しておっていいという種類の問題ではないと思います。ひとつ大臣、この問題については熱意をもって、むしろ労働省が積極的にこの問題解決のために動くという気魄をもってひとつこれは臨んでいただきたいと思います。
 次は、私は、雇用保険法案の成立、施行という問題は、新しい日本の雇用政策を展開するいわばこれは幕あけであろうと思うのであります。確かに高度経済成長にささえられた旧来のパターンによる雇用政策では、今後の雇用・失業情勢に対応できないと私は思います。私はそういう意味において本法の成立は意義のあることと思うのでありますけれども、むしろその成果はポスト雇用保険法、すなわち、今後、いかに具体的に本法案に制定された内容に肉づけをし、新しい政策を展開していくかということにその焦点が向けられなければならないと思います。
 中山伊知郎教授が議長をしておられるます社会経済国民会議は去る十二月十三日に、「インフレ下における政・労・使の協力に関する緊急提言」というものを行なっておりましたが、私は、引き続いてこの会議が、現下の雇用保障に関する緊急提言として、第一に、雇用保険法の即時完全実施と三事業に対する政府の積極的国費の支出、第二に、福祉的雇用機会の創設とその拡大、第三に、雇用審議会の機能の強化と雇用対策法及び職業訓練法の充実、第四に、全業種の完全週休二日制の完全実施の四項目を緊急提言を行なう予定であると伺っております。私はその内容をあらかじめ見せてもらったわけでございますが、この内容を評価し、これに対して非常な共鳴を覚えるものであります。
 そこで、今後こうした総合対策を進めていこうとする場合に重要な機能を発揮するのは雇用審議会であろうと思うのであります。現在、また今後の雇用問題はひとり労働省だけの力をもってして完全な雇用政策が推進されるはずはありません。農業政策、産業政策、地域政策の拡充と、これに関連する総合的雇用政策の確立ということがきわめて重要になると私は思うのであります。で、これらの各省のワクを越えた総合的な雇用政策を樹立するために設けられたのが雇用審議会であると思います。ところが、この審議会の運営実態を眺めておりますと、どうも開店休業、といっては失礼でございますけれども、十分その機能を発揮し、わが国の雇用政策に対する有効な基本政策を策定しているとは受け取れがたい面が多いのであります。私はこのような視点から、これらの雇用審議会の機能の充実強化について特段の配慮がなければ、たとえば出かせぎ労働者、さらに中小企業の産業政策と関連する雇用政策のあり方というものについて一手一手おくれていくのではないかと思います。そういう観点から、私は、特にポスト雇用保険法という視点に立ちまして、それらの問題点を雇用審議会を中心として全国政が総合された雇用政策が今後展開されていく必要がある、こう感ずるものであります。その点に対する労働大臣としての今後の総合雇用政策の策定について、これら審議会の活用等を含めてどのような考え方を持って対処されていこうとしているのか、この点についてお伺いいたします。
#63
○国務大臣(長谷川峻君) 雇用保険法案について評価していただいたことに敬意を払います。今度の雇用保険法案が何といたしましても新しい労働政策である、すなわち従来のように高度経済成長の時代、完全雇用の形はとりましたものの、しかし、日本は老齢、高年齢者の諸君が多くなりまして、地域的な問題あるいはこういう方々の問題、なかなかばらつきがございます。さらにまた農林水産にまで適用するという新しい制度、こういう問題によって私はまさに幕あけだという評価はそのとおりだろう、またその誇りを持っているものであります。そして一方、あなたがおっしゃった中山さんの国民会議の私は先日その書類を拝見しまして、さっそく福田副総理その他関係閣僚に全部私のほうでお配りしました。すなわち国政の中、心、いろいろあるでしょうけれども、やっぱり汗を流す諸君、こういう問題に注目していく姿というものが一番大事なんじゃなかろうか、こういうことを感じております。でありますから、いまから先提案されるいろんな問題もあるでしょうけれども、私はやはり学識経験者の方々が長い目から問題を見たものを、お互い行政をやる者がときに現実の情勢を踏まえながらこれを率直に推進していく、そして社会全体が勤労の問題について常に対立なし、協調とそれこそ対話の中からいろんなものを一つずつ生み出していく、こういう姿勢であるべきだと、こう思っておりますので皆さん方の御支持あるいは御支援というものを、激励をいただきながらそういう方向に持っていくことが近代国家として日本がどういう時代にも生きていく最後の生きる道だろう、こう思っておりますことを御理解いただきたいと思います。
#64
○柄谷道一君 いま、非常に大臣の答弁としてはけっこうな御答弁をいただいたわけでございますけれども、私が以上幾つかの質問を申し上げました中で明らかなごとく、この雇用保険法が制定される、それはそれとして、むしろ問題は今後にある、こう思うのであります。衆参両院における附帯決議について尊重していきたい、また私の、たとえば交通遺児をかかえる寡婦の問題、婦人労働者に対する雇用促進の問題、さらにそれぞれの委員が指摘されました問題につきまして大臣の答弁をいただいたわけでございますけれども、私はただその大臣のおことばがことばとして終わらないように、誠実にそれが具体的労働政策として実現されますことを強くあらためて求めたいと思います。
 なお、労災保険法の一部改正につきましては、その細目について言うならば、全面適用の問題、給付水準の問題、スライド制の問題、背損患者に対する取り扱いの問題、四十日分の減価調整の廃止等の問題、内在する問題は多くあろうと思います。しかし、これに対して今日までの質問で労働省のお考えが発表されましたし、また現在労災審議会でこれらの問題について洗い直しの検討が行なわれ、昭和五十一年度通常国会提出を目途として、鋭意検討が行なわれていると聞いております。したがいまして、時間の関係から、これらに対する質問は省略し、特に四十日分の減価調整と付添介護料の是正について、今日までの質問の大臣答弁にありましたように、早急に善処されんことを求めまして私の質問を終わります。
#65
○国務大臣(長谷川峻君) ちょっと柄谷先生のさっきの労働債権の確保についての御質疑中、私が答弁した中に、「今年中に」検討し、「明年中に」発足させる旨の答弁がありましたが、「今年中に」を「来年度中に」、「明年中に」を「昭和五十一年度一部、五十二年度に全面的に」と訂正をいたしたい、こう思います。
#66
○柄谷道一君 答弁であるので、そういうことが労働省の所見であるということはわかりますけれども、しかし、私繰り返して申し上げますと、現在の当面している状況がきわめて深刻であることは御理解のとおりでございまして、基準局長御指摘のように、その間の応急措置は講ずるということは当然でございますけれども、いまの大臣答弁も、一日でも早くその具体的成案が樹立されますことを重ねて求めたいと思います。
#67
○委員長(山崎昇君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時二十分から再開することとし、休憩いたします。
   午後雰時十六分休憩
     ―――――・―――――
   午後一時三十分開会
#68
○委員長(山崎昇君) ただいまから社会労働委員会を再開いたします。
 午前に引き続き、雇用保険法案、雇用保険法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案、労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律案、以上三案を一括議題とし、質疑を行ないます。
 質疑のある方は御発言を願います。
#69
○須原昭二君 私が当法案に対する審議の最終の質問者でありますが、いろいろと総括的にお尋ねをいたしたいと思います。
 まず、その前に一般的な問題点として基本的な問題に触れておきたいと思います。
 失業保険の主たる目的というものは、もう言うまでもありません。失業者の生活保障であります。就職の促進だとか失業の予防だとかその他の福祉向上のための事業というものは現行法の福祉施設というところに規定をされておるのでありますが、それはあくまでも主たる事業に付属する付随的な事業であります。ところが、この本法案のねらいは、提案説明の中でも明らかにされておりますように、失業保険制度を改善、発展をさせ雇用に関する総合的機能を持つ制度の創設、−創設というふうに表現をされておるわけでありますが、失業保険制度を変質、私たちからのことばで言うならば、改悪をして、雇用対策あるいは労働力対策に重きを置いておる制度として考えられておることが非常に私は明瞭になってきておると思うのです。そもそも、その雇用改善事業だとかあるいは能力開発事業というものは、政策の体系として別立てのものであると私は思います。たとえば、雇用対策法あるいは中高年雇用促進法、雇用事業団法あるいは駐留軍関係、炭鉱離職者臨時措置法、港湾労働法、こうしたものはすべて雇用関係法であります。能力開発事業では、いわゆる職業訓練法というものがあるわけでありますが、この法案の三事業とこうした政策体系はいかなる関係にあるかということが私たちは疑問になってくるわけであります。この点をひとつ明瞭にしておいていただきたいと思います。いかがですか。
#70
○政府委員(遠藤政夫君) ただいま先生から御指摘のありました点でございますが、わが国の雇用法制はいわゆる雇用対策法を中心といたしまして、雇用対策法の中に盛られております各般の雇用面の施策を、職業安定法、職業訓練法あるいは身体障害者雇用促進法、中高年齢者等の雇用促進に関する特別措置法、あるいは駐留軍、炭鉱離職者の臨時措置法、こういった法律によってその基準を定め手続を施行いたしておるわけでございまして、今回のこの雇用保険法案におきますいわゆる三事業につきましても、この雇用対策法の中に定められております雇用に関する国の施策の一還をその実現の手段として規定をいたしておるわけでございます。言ってみますと、雇用対策法の中に示された各種の雇用政策、雇用の施策の中で、使用者の社会的責任に属するものとして使用者が全額負担する保険料をもって支弁するものが適当と認められるものについて、この雇用保険法の三事業のワクの中で行なう、こういう関係にございます。したがいまして、雇用対策法の一環としてのこの三事業につきましては、雇用保険法による使用者負担の保険料でこれを実施いたします。その他の面につきましては、国の一般的施策として実施される、こういう関係にあるわけでございます。
#71
○須原昭二君 こうした三事業というのは副次的な事業であって、本来被保険者だとか被保険者であった者に私は限定されるべきものである、一般労働者までこれを包含をするところにいろいろと疑問点が出てくるわけです。時間の関係がございますから、意見だけまず申し上げておきたいと思います。
 次は、労働大臣は提案の趣旨説明の中で、雇用・失業情勢の基本的な変化をとらえて、質的な意味での完全雇用の実現が課題となっていると、こう述べておるわけです。質的な意味での完全雇用とは、はたしてどういうことなのか、明確にひとつお尋ねしておきたいと思います。いかがですか。
#72
○国務大臣(長谷川峻君) これまでの経済成長の過程で雇用の機会は非常に増大しておりまして、最近のような一時的な景気停滞期を別としますというと、基調はむしろ量的にはほぼ完全雇用に近い状態となっておると思われます。これは外国もときにはうらやむところであります。しかしながら、年齢あるいは職業、地域によっては労働力の需給の不均衡が見られますので、質的な面ではなお解決すべき問題が残されていると私は思います。さらにその上に今後高齢者の社会にどんどん日本は移行してまいりますし、産業構造の変化なども新しい事態を迎えていると思うのです。それに対処していく必要がどうしてもある、こういう問題にこたえるためには、すべての労働者にゆとりのある充実した職業生活を実現することが今後の私は雇用政策の重要課題だと、こう思っているのでありまして、そういう意味で、質的な意味で完全雇用を実現したい、そういうふうに解釈しているところであります。
#73
○須原昭二君 質的な意味での完全雇用、こういう面から見て、いまの日本の労働市場を考えてみますと、多くの問題があるわけです。特に雇用対策上いま最も重要なことは、雇用の二重構造、いわゆる不安定な就業状態が拡大されてきている事実、こういう現況をはたして労働省は完全に掌把をしているのかどうか、この点が私は疑問でありますから、その点は特にお尋ねをいたしておきたいと思うわけです。不安定雇用あるいは不安定就職の状態は、製造業においては、特に新設の工場ほど本工は少数精鋭にしてしまって、要員を切り詰めて、その他はすべて下請の社外工に依存をしている、そういう傾向が非常に強くなってきておるわけです。たとえば四十八年の鉄鋼連盟の調査によりますと、大企業であります新日鉄なんか、旧の八幡製鉄、これは本工が二万三千六百八十人、しかし社外作業の工事の下請関係に渡しておる従業員が一万九千三百十三人、八一%を占めておる。新しい工場の君津なんかを調べますと、本工が七千二十二名、下請のほうは一万二千百六十九、新のほうは、一七〇%を占めているわけです。あるいは日本鋼管を見ますると、旧の京浜、――川崎の京浜ですか、本工が一万四千百五十三名、下請社外工が六千六百二十五、四六%でありますが、新しい福山の工場を見ますると、本工が一万七百四十五名、工事下請関係が一万九千二百四十七、一七〇%とふくれ上がっておるわけです。川崎製鉄を見ますると、旧の千葉工場、これは本工が一万二千三百四十七名、下請関係を見ますると八千八百四十六名と実は少数でありますが、新工場の水島ですか、これを見ますると、本工は一万一千六百七名、それが下請関係を見ますると一万一千三百十三と、このように旧工場から新工場へこの内容がずっと変わってきておるわけです。こういう状態、特に生産工程の省力化、代表的にはコンピューターの導入などが考えられますが、本工要員を最小限度に食いとめて関連企業だとか関連社外工を活用して経営上の経済効力を高めていこうとする、いまではこうした下請社外工は本工と同一同質の労働条件をしいられているわけです、一面。景気変動の際にはこれらの人たちは雇用の調整の安全弁として実は容赦なく首を切られていく。そういう現実がいま明らかになってきているわけです。こうした情勢の中で問題となるのはまず第一に、雇用の責任が不明確にされる情勢が多いことです。二番目には、労働条件の決定機能を持っていないということです。三番目には、労働能力だとか職業能力の維持向上の保障措置がなされていない。四番目に、しかも労働災害、それも重度の公害の被害を集中的に浴びておる。こういう諸点があげられますが、こうした事実と状況を政府はどう考え、とらえておるのか。これは明確にひとつお答えをいただきたい。
#74
○政府委員(遠藤政夫君) 臨時工とか社外工とか一般的にいわゆる不完全就業あるいは不安定雇用といったような総称で呼ばれております、こういった形の労働者、こういう人たちにつきましては、昨年までのいわゆる高度経済成長に伴いまして雇用機会が著しく増大し、雇用量が増大したことによりまして一般的に申しますと、こういういわゆる不完全就業といった部類に属する人たちは減少していると考えられております。ただ、しかしながら、不完全就業あるいは不安定雇用といったものをどういうふうに定義づけすればいいのか、どういう形でその実態が把握できるのかということになりますと、いろいろ就業時間とか賃金収入、そういった面の基準をどこで求めたらいいのか。あるいは労働者の意識の問題等々といったような関連ございまして、統計的に実態を把握することはきわめてむずかしい状態にございます。しかしながら、だからといって問題がないんではなくて、いわゆる季節出かせぎでございますとか、臨時工あるいは社外工、こういった範疇に属する人たちはいま御指摘のようにいろいろと存在いたしております。その雇用状態の改善をしなきゃならぬという面はこれは私ども強く認識をしておるわけでございます。特に建設業等の下請関係におきましては雇用関係が不明確である。あるいは賃金支払いの条件が明らかにされていない。いろいろ労働関係におきまして問題がたくさんございます。こういった面につきまして、私どもは雇い入れの関係あるいは賃金支払い等といったような基本的な問題を十分明確にするような措置をとるように雇い入れの段階から指導いたします。同時に就業時の安全問題でございますとか、いろいろ労働条件の面で多くの問題をかかえております。こういった点について極力それぞれの法規、それぞれの制度のもとにこの改善を指導してまいっておるわけでございます。
#75
○須原昭二君 いま指導というおことばを使われておりますが、つまり労働大臣が提案説明の中で申されました質的な意味での完全雇用の実現、この課題の中には当然これらの問題が入っておらなければ私はならぬと思うわけです。そういう点で、指導していくというような一片の御答弁では私たちは了承できないわけです。こういうものについていかなる措置を完全にとっていくか、ここに私は完全雇用への道の大きな問題点がひそんでおるのではないかと思います。したがって、きょうはこれら論議をしておりますとあれですから、問題を提起をして、ひとつぜひとも善処していただきたいと、かように思っております。
 続いて、婦人労働者の職業能力と職業生活の安定の向上です。婦人労働者の活用、とりわけ主婦の労働力化、つまり過剰人口化した婦人労働者をかり立てて、そして低賃金あるいは不安定就業を拡大させている面が非常に強い。若年労働者の不足基調に対応しようとしておるわけです。すなわち、まあ臨時日雇いだとかパートタイマーの増大がそれであると私は指摘をせざるを得ないんですが、今日のこの婦人労働者の職業能力の向上、職業生活の維持向上をはかることが、きわめて重要な今日的な政策課題だと私は思います。こういう問題について具体的に制度上いかなる方策がとられておるのか、きわめて私は疑問視をいたしておるわけです。不安定雇用状態を改善して制度上の保障措置として雇用改善をはかっていくこと、婦人労働者あるいは中高年齢者の雇用を改善して継続的な職業生活を保障していくという制度上の措置はきわめて重要な課題であって、この点の対応が私は労働省は欠けておると言っても、指摘をしてもいたしかたがないと思うんです。したがって、当然独立した私は政策体系のもとで制度化すべきものとして雇用保障政策体系がつくられなければならないと思うんですが、その点はどうお感じになっておるのか、これはひとつ明確にしておいていただきたい。いかがですか。
#76
○政府委員(森山真弓君) 御指摘のとおり、婦人労働問題は非常に重要な問題でございまして、これにつきましては昭和四十七年に御承知のように勤労婦人福祉法が制定されております。この法律の趣旨に基づきまして、昨年の七月勤労婦人福祉対策基本方針というのが策定されまして、この方針に基づきましていろいろな施策が総合的に行なわれているところでございます。たとえば婦人の適性、能力等に見合った職業が選択できますように、職業指導の強化ということが行なわれておりますし、また職業訓練施設におきます職業訓練の充実ということも、特に婦人労働者につきましても強化されているところでございます。
 さらに、婦人の職業に関する調査、研究の成果というものを広く関係者の方々に提供いたしまして、この問題を認識していただくということにもつとめているわけでございます。さらに、勤労婦人の労働条件の向上という面でございますが、この婦人の能力の有効な発揮をはかるためにもまた必要なことでございまして、雇用の機会を拡大いたしまして職業分野の拡大をはかるということに努力しているところでございまして、たとえば不合理な雇用慣行の是正等につきましては、指導を実施しているわけでございます。
 そのほか、家庭生活との調和という面につきましては、たびたびこの場でもお話が出ました育児休業制度の普及につとめておりますし、また、企業内の育児施設も整備に努力しているところでございます。それから、妊娠及び出産中の勤労婦人の健康管理の充実のためには、事業主に対する指導基準を作成いたしまして、行政指導を行なっております。そのほか、同じくこの法律の中に書いてございますが、勤労婦人のための総合福祉施設、働く婦人の家とか勤労婦人福祉センター等の設置にもつとめているところでございます。さらに、社会一般の御理解をいただきますために、婦人労働の問題につきまして啓発活動を積極的に行なっているところでございます。
#77
○須原昭二君 まあ、この勤労婦人福祉法というのは、私たちがかねがね言っておりましたように、精神的なそういう支柱のような感じがして、あとは行政機関の指導に重きが置かれておるわけです。私たちが言っているのは、制度化をきちんとせよということです。たとえば西ドイツのような雇用促進法だとか、解雇制限法だとか、あるいはフランスの全国雇用保障協定だとか、アメリカの雇用における年齢差別禁止法だとか、イタリアの短期労働契約規制法だとか、作業請負規制法だとか、そういうきちんとした抜かりのない制度化をすべしということが、われわれの主張なんです。そのためには、少なくとも同一事業所に働く労働者については、雇用形態あるいは雇用関係のいかんにかかわらず、同一労働同一賃金、同一労働条件の確立をはかるために、短期労働契約だとかあるいは作業下請による労働者の使用の規制、その賃金、労働条件を本工並みにするための具体的なやはり施策を講ずる必要が今日時点では非常に重要な問題点だと思います。その点についてこれは検討する、これから検討していただかなきやならないと思いますが、その点はどうでしょう。
#78
○政府委員(東村金之助君) ただいまお話ございましたような社外工等の問題で親企業といいますか、そこと同一労働にある場合に、同一賃金、同一労働条件というお話がございましたが、まあ私どもといたしましては、この社外工等が多く使われております、たとえば造船であるとか鉄鋼であるとか、そういうところにつきましては、いまお話ございましたが、災害の問題が非常に多く出ております。この災害の問題につきましては、やはりそういう雇用形態の中にあるということも一つ原因でございますが、同一の場所において入り組んだいろいろの作業が行なわれているということから出てくる問題が非常に多いというふうに考えまして、この親企業のほうに一定の規制をいたしまして作業が全体的に整斉と行なわれるようにということを考えてこれはもう法律で現在行なっているところであります。それから、いまのお話の同一賃金、同一労働条件の確立というお話でございますが、これはやはり企業がそれぞれ異なりますので、やはり労使間で貸金なり労働条件を決定するのが現在のたてまえ上当然であるということでやっておりますが、ただいま申し上げましたように、安全衛生等の面におきましては、やはり労働条件全般にかかわる問題にもなってまいりますので、そういう労働条件についてよく親企業、中小企業一括含みまして労使で自主的に決定するとは言いながらや、やはり安全の面等からそれを引き上げるようなそういう指導もしてまいりたい、現にやっていると、こういうところでございます。
#79
○須原昭二君 これはひとつ制度化を踏み切っていただきたいと思うわけです。
 次へまいりましょう。職業訓練のあり方でありますが、今回の能力開発事業にしても訓練をやろうという事業主に実は金を出そうという程度のものにすぎないと私は思うわけです。一体職業訓練というのはどう考えているのか、基本的な姿勢を疑わざるを得ないわけです。特に職業訓練を企業でなく政府でやることです。訓練を終わったものについてはきちんと資格を与えて資格に応じた賃金で雇われるように、またそうした制度を運用上に労働団体の代表を参加させると、こういう制度というのが特にいまヨーロッパでは常識になっているわけです。どうも今度の政策を見ますると、今度の労働省のものの考え方を見ると、企業内での訓練をむしろ重視しておるような感じがしてならない、これは制度上私はむしろ後退だと指摘をせざるを得ないわけです。この企業内訓練を重視するのか、公共的な訓練を重視していくのか、いずれなのか明確に答弁を願いたい。
#80
○政府委員(藤繩正勝君) 昭和四十四年に現行の職業訓練法ができまして生涯訓練体制というものが体系的に一応打ち出されたわけでございますが、現在、現実の職業訓練は……。
#81
○須原昭二君 いずれかだ、どちらを重視するかということです。
#82
○政府委員(藤繩正勝君) はい。ただいま公共と事業内をいずれを重視するかというお尋ねでございますが、従来事業内訓練は実は非常に貧弱でございまして、職業訓練の予算の中でも四、五%しか占めていないわけでございます。ところが従来公共訓練といいましても、いま言いかけたんでございますが、中学を卒業したいわゆるグリーンボーイというものを対象に多くの訓練をやってきたというのが実情でございます。ところが最近の高校進学率の上昇というようなことからそれが非常に問題になってまいりました。したがって、これからは高校卒の訓練に重点を切りかえていかなければならない、訓練短期大学校というようなものも今回お願いをしておりますが、そういう発想が一つございます。しかし、さらにそれよりも重要なことは、ただいま御指摘になりましたように、ヨーロッパ等でも労働者の訓練、在職の労働者かしかも平均余命が長くなりまして、非常に長い労働生涯の中で早い技術革新に対応してそれぞれの職業訓練を受ける、また、それを施すという体制が必要でありまして、その場合に、事業内あるいは公共と言わず、むしろヨーロッパでは、徒弟訓練あるいはそういう成人訓練でもデイ・リリースとかブロック・リリースとかいいまして、在職中一日とか二日とか、あるいは一定期間まとめて公共訓練で訓練を受けるという体制がとられているわけでございます。そこで、今度の法律でも技能開発センターというものをお願いをしておりますが、それからまた、そういう訓練をするにはその間の事業主が有給で公共訓練に労働者を派遣できるような、その裏づけも必要でございます。そういう技能開発センターに要する経費とか、そういう裏づけのない経費というものをこれに盛ってあるわけでございまして、どちらというよりも、公共と事業内の密接な連携ということが一番眼目ではなかろうかというふうに思っているわけでございます。
#83
○須原昭二君 じゃあ、私はお尋ねしますが、この訓練の問題は、今度の法案の三事業の財政面から私は取り上げてみたい。そういたしますと、この能力開発事業に充てられる予算というのは千分の三のうちの千分の一ですね。どれだけですか。それと、現在、日本の企業の教育訓練投資は年間幾らですか。それを対比すれば、明らかにこれは二階の窓から目薬ということばがありますが、まさにそんなもんじゃないですか。そういうものを少しぐらい出して重点なのか、われわれ財政面から指摘をしたいと思うのですが、いかがですか。
#84
○政府委員(藤繩正勝君) わが国の企業でどのくらいの教育訓練の経費を使っているかというのはなかなか算定しがたいのでございますが、労働省でやっております労働者福祉施設制度調査で三十人以上の企業につきまして、一人一ヵ月二百九十九円という教育訓練投資が行なわれているという数字がございます。それを基礎に推計をいたしますと、大体せいぜい一千億程度の年間の投資ではないかというふうに思われます。
 今度のこの能力開発事業にどれだけの財源が充当されるかということは、今後の予算折衝の問題でございますけれども、たびたび安定局長からも説明をいたしておりますように、全体としてこの三事業に千五、六百億というものを予想するということでございますので、その中でどの程度充当するかということに相なろうかと思います。
#85
○須原昭二君 非常に明確にならないんですがね。政府としては公共職業訓練を重視するのか、企業内の職業訓練を重視するのか、私は関連を持っていかなきゃならないと思っているけれども、政府としてはどちらに重点を置くかということを聞いているわけです。私は当然そうした企業の中に企業の雇い主の意向だけでやっておっては、自分たちの企業には即応するけれども、一般的な労働者の職業訓練にはならない。だから、政府としては公共的な訓練を重視しなきゃならない立場があると思うんです。もし、そういう公共訓練を重視するというならば、私は三事業というものを独立した体系に持っていくのが正しいのではないか、こういうことを主張しているわけですが、その点の考え方についてどうですか。
#86
○政府委員(藤繩正勝君) 公共訓練を重視するか、事業内を重視するかというお尋ねでございますが、ヨーロッパの例を見ましても、事業内というか公共というか、必ずしも私は割り切れないと思うのでございます。事業内にいる在職者が一定期間公共の施設に行って訓練を受けるという体制でございます。わが国の場合に、公共を当然重視していきたいと思いますが、ただ従来問題になりますのは、公共の訓練施設では一般の労働者はあまり訓練を受ける機会に恵まれない、いわゆるグリーンボーイの訓練に重点を置かれてきたというところがむしろ問題でありまして、これからは大いに技能開発センターというようなものを中心にいたしまして、これを開かれた訓練校にしていきたい、そういう意味では公共の訓練も大いに重視するわけでございます。と同時に、公共と事業内の連携を密にしながら両々相まって訓練の成果を高めていきたいと、こういうわけでございます。したがいまして、そういった方向にだんだん向かっていきます場合に、将来どういう形になるかということでございますが、ヨーロッパにはいまおあげになりましたようないろんな制度がございます。私どもも十分研究をしていきたいと思いますけれども、今度のこの制度も事業主の負担においてそういった訓練の一部を行なおうというわけでございますから、私は現行制度ではずっと前進したものであるというふうに考えておるわけでございます。
#87
○須原昭二君 えらい胸を張っておっしゃいますけどね。労働省は三事業については企業から金を出させることにしたと、まあ胸を張っておられますけれども、この取った金をもう一ぺん政府を通じてまた企業に返すという仕組みですね。やはり企業の企業主が考える職業能力の開発というものは、企業の利益につながらなければやらないわけですよ。訓練というのは民主的に社会的にやるところに重要な視点があるわけであって、そういう点については労働省は気がないと言わざるを得ない。そういう点から言うならば、私は時代逆行だと言わなければならない。この点は時間がこれで議論をやってますとまた延びてしまいますから、意見だけ申し上げておきますが、そのものの考え方は変えていただかなきゃいけないと思います。
 それから、今日的な課題として私はさらに加えておきたいと思いますが、これは不況に関連をしてであります。いま見のがし得ない重大な問題点というのは、特に中小企業に働く労働者の賃金の不払いの問題点であります。たとえば自動車、電機、繊維あるいは建設、窯業等々の各産業は非常に深刻な不況産業となっているわけであります。しかし、より大きな影響があるのはこれら産業の下請、先ほども二重雇用構造と申し上げましたが、この下請だとか孫請だとかいわれておるこの下請企業の倒産賃金不払いの問題、この実態についても政府はあまり現実を掌握しておらない。政府の統計の取り方自体に問題があると私は思いますが、労働省が十二月十三日発表いたしました、ことし九月現在までの賃金不払い概要を見ますると未解決件数が千五百四十件、対象労働者が一万四千十七人、金額として二十八億九千何がしと、こういうことの数字が出ておりますが、きわめて私はこれは数字が非常に小さいのではないかと思うんですが、この点は時間の関係がございますから論点を論じませんけれども、私たち社会党は、中小企業の倒産等による未払い賃金あるいは債権の救済制度の確立を早急に実現をするようわれわれは強く要求をいたしてまいったわけであります。すなわち、企業が倒産した場合、労働者の未払い賃金、あるいは退職金、あるいは委託をしたというよりは半ば強制的に社内預金をされておる、そういう問題点、その他の債権もございますけれども、これは雇用されたら直ちにやはり支払わなければならないと思います。そういう支払わない企業が非常に多いわけです。こういう立場に立って、やはり国は労働者の請求によって未払い債権を代位弁済するというような措置を早急に私は考えるべきことがほんとうに労働者の生活を守る労働省の立場ではないかと思うんですが、そういう点を検討されておるのかどうか。この点はひとつ大臣から御答弁をいただきたいと思います。いかがですか。
#88
○政府委員(東村金之助君) ただいま御指摘ございましたように、賃金不払いの件数は最近増加しております。本年四月から九月までの間に五千六百件、四十億の不払いが生じております。これに対しまして、私どもは賃金不払いの問題は非常に重要であって、しかもその不払いの被害を受けている労働者が、ただいま御指摘のように、私どもの統計では明確ではございませんが、やはり下請であるとか中小企業の労働者の方がかなりそれに含まれているという観点も含めまして、これは一刻も早く解決しなきゃいかぬという立場でいつもやっておりまして、九月までにただいま申し上げた金額のうち、五千三百件、二十八億円の不払いを解消したわけでございます。しかし、これだけではもちろん十分でございません。先ほどもお話しございましたように、私法上のいろいろ優先弁済権等の関係、その他ございますので、なかなかこれだけでは問題は解決しないということで、貸金不払いに対する救済制度ということを考えておりまして、賃金不払いの実態の分析であるとか公租公課、他の法令上の債権との関係等について十分研究を行ないまして、五十一年度から一部この制度を発足させ、五十二年度から全面的に発足させるというような形で現在研究、検討を進めているところでございます。
#89
○須原昭二君 以上、基本的な今日的な問題点を指摘をいたしたわけですが、時間の関係があって非常に残念ですが、詰めてまいりたいと思うのです。時間が許しません。したがって、私は一応一般的な基本的な問題点だけを指摘しておいて、きょうは最終でありますから、特に非常に大きな世論が巻き起こっておりますこの雇用保険法案の問題について、とりわけ総括的にお尋ねをいたしておきたいと思うのです。これはこの当委員会で同僚議員から多くの問題点が指摘をされておりますが、私も若干申し上げまして、重複する点があるかと思いますけれども、これからあげる私は十二の項目について、ひとつこの点は労働大臣から一つ一つ的確に御答弁をいただきたい、確認をしておきたい事項がございます。よろしくお願いします。
 まず一つは、農林水産業への完全適用の問題。
 雇用保険は全産業に適用するたてまえになっているのでありますが、農林水産業のうち雇用労働者数が五人未満の個人事業主の事業については、準備の事務や掌握が困難であることなどの事情から当面は暫定的に任意適用とする内容となっています。しかし、これらの企業に雇用される労働者の福祉を増進するために早急に強制適用とすべきであると私は考えますが、その強制適用とする時期はどの程度と考えられているのか、この点について伺っておきたい。
#90
○国務大臣(長谷川峻君) お答えいたします。
 当面は暫定的に任意適用とされる一部の事業についても五年程度を一応の目途としつつ、できろ限り早期に当然適用とすることとしたいと考えております。
#91
○須原昭二君 二つ目の問題点は、適用拡大に伴う新規被保険者が離職した場合の措置の件であります。
 雇用保険法は五人未満の事業所に全面的に適用されることになっているのでありますが、法の施行日は五十年四月からであります。したがって、これらの事業所に雇用される労働者に失業給付の受給資格がつくのは五十年十月以降であります。しかし、これらの事業所の被保険者の中には、最近の雇用・失業状況から見て、受給資格を得る前に解雇される者が多いと思われるのでありますが、これについてはどのように対処していく考えなのか伺っておきたいと思います。いかがですか。
#92
○国務大臣(長谷川峻君) 従来も御答弁を事務当局から申し上げましたが、私の責任においてお答えします。
 新たに当然適用とされる零細事業所に雇用される被保険者は、法の施行後六カ月を経なければ受給資格を得ることができません。そのため最近の雇用・失業情勢から見て御指摘のようなケースも起こると考えられますので、これに対しましては職業転換給付金制度を充実して、その活用により対処してまいるつもりであります。
#93
○須原昭二君 わかりました。
 三つ目の問題点は、出かせぎ建設労働問題の抜本的な対策の件であります。
 雇用保険法の短期雇用特例被保険者の特例制度を実施するのにあわせて出かせぎ労働者、建設労働者等に見られるいわゆる不安定雇用問題について抜本的な改善をはかることが急務であることを申し上げました。この基本問題についての検討をすみやかに行なって、抜本的対策の具体化をはかる必要があると私は思うのでありますが、労働大臣の見解を伺っておきたいと思います。
#94
○国務大臣(長谷川峻君) 建設出かせぎ労働等の不安定雇用の問題につきましては、すみやかな検討を進めまして抜本的対策の具体化をはかってまいりたいと思います。
 なお、建設労働対策については、現在雇用審議会及び中央職業安定審議会において検討が行なわれておりますので、その結論に基づいて早期に対策の具体化をはかってまいりたいと考えております。
#95
○須原昭二君 ぜひこれはひとつお願いいたしておきたいと思います。
 四つ目は、短期雇用特例被保険者の一次金制度の初年度における運用の問題点であります。
 短期雇用特例被保険者に関する特例制度の実施に際しましては、初年度においては被保険者の実態も不明であり、短期雇用特例被保険者としての確認が必ずしも容易ではないと私は思います。したがって、一時金の給付を希望する人たちは別として、被保険者の確認を行なうにあたっては、初年度に限り、被保険者の就労に関する意思やあるいは就労の実態を十分考慮して行なうべきであると私は考えるのでありますが、政府はどのようにお考えになりますか。
#96
○国務大臣(長谷川峻君) 御指摘のような問題もあると思われますので、初年度については御指摘のとおり配慮してまいりたい、こう思っております。
#97
○須原昭二君 私が申し上げたとおりにひとつお願いをしておきたいと思います。
 五番目は、個別延長給付の基準の問題であります。
 給付日数の個別延長制度については、最近の雇用・失業情勢に対応して実効ある運用が行なわれるように十分配慮する必要があると私は思います。このため、政令で定める基準の中に景気の変動などの不況に伴って離職し、就職が困難な人たちも対象に加え得るようにして、省令において対象業種を指定する場合には、全産業について指定が可能になるようにして、経済事情に即した運用を行なうことができるようにすべきだと私は考えます。その点はいかかですか。
#98
○国務大臣(長谷川峻君) 御提示の方向に沿うて検討して、経済事情に即した運用ができるようにしてまいりたい、こう思っております。
#99
○須原昭二君 ぜひこれもひとつお願いをいたしておきたいと思います。
 第六番目は、婦人労働者に対する給付と紹介窓口における取り扱いであります。これは長年言ってきたことであります。
 婦人労働者は、わが国の雇用慣行や託児施設の整備状況が不十分な現況からいって、就職に関してきわめて弱い立場にあります。しかし、職安の窓口においては、このような状況を全く理解せず、不当に給付の締めつけを行なっていると、この点は当委員会でも多く指摘をされてきた問題であります。このような不当な締めつけをやめ、窓口におけるサービスの向上をはかるとともに、昭和三十九年八月二十八日の給付適正化通達はこのような観点から、この際これを廃止すべきではないか、私は特に要求をいたしたいのですが、この点はいかがですか。
#100
○国務大臣(長谷川峻君) 雇用保険法の施行にあたりましては、受給資格者に制度の趣旨を十分に理解していただくようつとめますとともに、職業紹介や失業の認定のあり方につきましても再検討を行ない、労働市場の状況や個々の労働者の実情を十分配慮して、御指摘のような批判を受けることのないように措置してまいるつもりであります。また、御指摘の通達につきましては、雇用保険法の施行を機会に廃止することといたしたいと思っております。
#101
○須原昭二君 明確に通達は廃止するということですね。確認をしておきたいと思います。
 七番目でありますが、日雇い労働被保険者の求職者の給付金の問題点であります。
 日雇い労働被保険者の求職者給付金の日額については、基本手当の基礎となる最低賃金額の引き上げを行なっていることとの関連も考慮して配慮を行なうべきだと思うのでありますが、どうか。また、受給資格要件の緩和や三段階以上の給付区分とすることなどについても今後は検討すべきだと思いますが、その点はいかがですか、御意見を承っておきたいと思います。
#102
○国務大臣(長谷川峻君) 日雇い労働求職者給付金の日額につきましては、雇用保険法案におきまして自動スライド制を適切に運用することによりまして賃金水準の変動に即した改善が行なわれるように配慮してまいるつもりであります。また、受給資格要件の緩和、三段階以上の給付区分の設定につきましては、日雇い労働者の就労状況や給付事務の円滑な処理という観点から、なお検討すべき問題もあるので、御指摘の趣旨を十分に踏まえつつ、今後検討してまいる所存であります。
#103
○須原昭二君 八番目は、先ほども私も質疑の中でお話しをいたしました三事業の運営の問題点。
 雇用改善事業等の三事業の実施にあたっては、失業給付との経理上の区分を明確にして、また、その運営にあたっては、労働者の利益がそこなわれることのないように、労使の意見を十二分に反映させるための措置を講ずべきであると私は思うのです。その点について労働大臣はいかがお考えですか。
#104
○国務大臣(長谷川峻君) 三事業の実施及び運営にあたりましては、御指摘の趣旨を体して適切に対処してまいる所存であります。
#105
○須原昭二君 九番目の問題は、先ほども指摘をいたしました公共職業訓練の拡充強化の問題です。
 この職業技術の変化や産業構造の変革等に対応して、労働者の知識やあるいは技術の向上をはかることが労働者の雇用の安定をはかる上に不可分の関係にあると私は思います。しかし、公共職業訓練の現況は、まことに不十分であるばかりでなく、わが国の職業訓練政策や、並びに職業訓練の体系の上で公共訓練の位置づけがきわめて不明確であると言わざるを得ないのであります。したがって、職業訓練の社会化、公共化を推進する立場から、公共職業訓練の拡充強化をどうしてもはかるべきであると私は思うのですが、その点についてのお考え方を明確にしておいていただきたいと思います。
#106
○国務大臣(長谷川峻君) わが国の職業訓練につきましては、最近の技術革新の伸展に対して高度の技能を付与できるよう、その一そうの充実をはかる必要があると考えております。このため能力開発事業において、公共職業訓練の拡充をはかるとともに、事業内訓練に対して、その公共化、社会化の推進を基本とした指導援助を強化するなどにより、生涯教育訓練体制の確立に資することとしておりますけれども、今後とも職業訓練の体系化、振興のため、公共職業訓練の拡充強化につとめてまいる所存であります。
#107
○須原昭二君 時間の関係かございますから、続いて十番目でありますが、いま非常に年の瀬を迎えて話題になっております交通遺児をかかえた寡婦の就業対策の問題点であります。最近交通遺児をかかえた寡婦の就業問題が非常に社会的に大きくクローズアップされてきております。この問題の解決には多面的に検討を行なっていくことが必要でありますが、その一つの対策として、これらの寡婦の雇用促進に関する援助措置を至急検討してこれを実施していく考えがあるかどうか、いかがですか。
#108
○国務大臣(長谷川峻君) その御提示の方向に沿うて対処してまいりたいと思います。
#109
○須原昭二君 寡婦と申し上げましたけれども、寡婦などというふうに、いろんな階層がございますから、それも含めてひとつ御検討願いたいと思います。
 十一番目は、中小企業の貸金不払いに対する救済制度の確立の問題であります。この点は先ほども私も申し上げましたが、あらためて労働大臣にひとつ所見を承っておきたいと思います。
 中小企業の倒産が増加しておる現況にかんがみて、中小企業の倒産等による貸金不払いに対する救済制度の確立については、急に私は検討して順次その実現につとめるべきであると思います。あらためてひとつ労働大臣みずからの御所見を承っておきたいと思います。いかがですか。
#110
○国務大臣(長谷川峻君) 賞金不払いに対する救済制度につきましては、賃金不払いの実態の分析、公租公課やその他の私法上の債権との関係などについて研究を行ない、五十一年度から一部発足させ、五十二年度からは全面的に発足させるようにつとめてまいる所存であります。
#111
○須原昭二君 その他多くの問題点がまだたくさんございますが、きょうは十二項目だけ私から確認をさしていただくわけです。
 最後の十二項目は、今後の雇用政策のあり方の検討の問題点です。
 不安定雇用の解消等真の雇用安定の実現をはかるためには雇用保険制度のみでは十分ではありません。したがって、労働者の職能開発、雇用状況の改善をはかることはもとより、雇用政策全般について雇用保険制度の具体化の検討に並行して、その実施に当たる行政体制のあり方を含めて急かつ基本的な検討を加えるべきであると私は思うのですが、その点、労働大臣の御所見を承っておきたいと思います。
#112
○国務大臣(長谷川峻君) 雇用保険制度の一環として新設する雇用改善事業等の三事業が、質量両面にわたる完全雇用の実現に資するところ大であると期待されておりますけれども、これら三事業以外の雇用対策ともどもに有機的、総合的に雇用政策が展開されるべきであることはもちろんでございます。したがって、雇用保険法案が成立の暁には早急にその具体化をはかるとともに、雇用の改善、能力の開発等、御指摘のあった雇用政策全般についてこれを実施する行政体制の問題をも含め、そのあり方に検討を加え、雇用政策の前進に一段と努力を重ねてまいるつもりであります。
#113
○須原昭二君 以上、十二項目について、まだ私としてはたくさんの問題点を指摘をいたしたいんですが、特に本委員会の質疑を通じて問題となった点、重要な点をまとめて十二項目にわたって労働大臣の所見を承りました。その内容については、まだまだいろいろ私たちも疑念を持ちますが、ぜひともこの十二項目については早急に実現の方途を見出していただくように特に要望して、私の質問を終わりたいと思います。
#114
○委員長(山崎昇君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#115
○委員長(山崎昇君) 御異議ないと認めます。
 それでは、これより雇用保険法案、雇用保険法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案、両案の討論に入ります。御意見のある方は、賛否を明らかにしてお述べ願います。沓脱君。
#116
○沓脱タケ子君 私は、日本共産党を代表して、雇用保険法案外一件に反対する討論を行ない、あわせてわが党の提出した修正案の趣旨を説明いたします。
 現在の雇用状態の悪化はきわめて深刻な社会問題となっています。とりわけ、インフレ、不況のもとで本年一月から八月までで事業主の都合による解雇は五十六万一千人に及んでおり、労働省の見通しでも来年一月から三月期には完全失業者が百万にのぼるとされております。しかも、十月の求人倍率は〇・九六と求人数が求職者数を下回るに至っております。職を追われた労働者は、再就職も困難で、先行きの生活のめども立たない状態に置かれています。こうした状態の中で、失業者の生活の保障、失業中の就労の保障、失業の防止などは解決すべき緊急の課題となっています。あれこれの粉飾をこらしてはいるものの、政府提出の雇用保険法案ではこれらの課題を決して解決し得ないことは明確であります。それどころか、若年、女子及び季節労働者への保険金給付を大幅に切り下げ、失業者の生活を脅かし、また、一方では、本来資本家と国の負担で行なうべき雇用対策事業に保険財政を投入するなど、失業保険制度の根本的改悪をねらうものであり、わが党は反対をいたします。
 したがって、わか党は、かかる雇用保険法案を全面的に修正し、いますぐにでも失業者の生活保障に役立つように、次のような趣旨の修正案を提案するものであります。
 一、失業保険法の適用範囲を拡大します。そのために失業保険の全面適用の実施を繰り上げ、パートタイマーにも適用することにいたします。
 二、失業保険金の給付を改善します。給付日額を賃金日額の八〇%とし、給付日数を現行より一律に百八十日分延長することといたします。
 三、日雇い失業保険を改善します。受給資格要件の保険料納付を前二カ月通算して二十二日分に短縮をし、賃金実勢に見合った給付を行なうため五段階の給付日額を設定することといたします。
 以上が修正案の趣旨であります。
 さらに、わが党は、同時に今日の深刻な事態を生んでいる経済変動に伴う企業経営の困難を理由とした解雇、一時帰休などの一方的強行と拡大を押えることが必要と考えています。また、失業中の労働者の生活保障と就労の条件を拡大するために、解雇制限、休業補償の完全な実施、労務債権の完全な保障などを内容とした雇用不安の緩和等に関する緊急措置が必要であると考えております。したがって、わが党は、経済変動に伴う雇用不安の緩和等に関する緊急措置法案を提出いたしております。――――――――――
#117
○委員長(山崎昇君) ちょっと待ってください。発言者、それは議題になっていません。発言者、それは議題になっておりません。
#118
○沓脱タケ子君 ―――――――――――
#119
○委員長(山崎昇君) 発言者、それは議題になっておりません。
#120
○沓脱タケ子君 反対討論の内容でございますから。
#121
○委員長(山崎昇君) いやいや、それは議題になっておりませんから。
 ちょっと速記をとめてください。
  〔速記中止〕
#122
○委員長(山崎昇君) 速記を起こしてください。
 注意しておきます。
#123
○沓脱タケ子君 ―――――――――――
#124
○委員長(山崎昇君) ちょっと速記をとめてください。
  〔速記中止〕
#125
○委員長(山崎昇君) 速記を起こして。
#126
○沓脱タケ子君 それでは、最後の結論に入ります。
 現在の深刻な不況の情勢のもとで生ずる緊急な課題にきわめて具体的に解決策をわが党は提起したものであります。
 以上、雇用保険法案外一件に反対をし、わが党の修正案――――――――――の成立を願って討論を終わりたいと思います。
#127
○玉置和郎君 議事進行。
 いまの沓脱君の発言は、非常にぼくらにとっては遺憾です。何のための理事会かわからぬ。理事会というのはやっぱり委員会運営にとって非常に大事な場所なんだ。そこでやっぱりお互いがルールをきめるのです。そのルール違反をやって、それで委員長の制止も聞かずにまだ読み続けるというようなことは、これは全く委員会を冒涜するものだ。だから、これからはこういうことがあったら退場を命じてもらいたい。
#128
○委員長(山崎昇君) それでは、ちょっと皆さんにおはかりいたします。
 いまの発言は、私から整理して申し上げますが、共産党から修正意見が出ておりますから、それは討論の中で提案をしてくださいということでさっき確認をしまして、したがって、共産党が修正案を出しますので、討論が一番先になりますと。これも国会のルールでありますから、いま反対討論を一番先にやりました。しかし、いま述べられております緊急措置法案については議題でありませんから、その内容に入ることはこれは委員会として認めることはできませんので、私は委員長としてそれはやることができませんので、後ほどその部分に関するものは理事会で御相談申し上げまして議事録から削除いたしたいと思いますが、御異議ありませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#129
○委員長(山崎昇君) それでは、そのとおり進めます。(発言する者多し)
 相原君。
#130
○柏原ヤス君 ただいま議題となっております雇用保険法案並びに雇用保険法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案につきまして、私は公明党を代表して原案に賛成し、日本共産党提出の修正案に反対の討論を行ないます。
 雇用保険法案は、現行の失業保険法を中高年対策を主眼に再編成し、雇用の安定、労働者の能力開発、福祉の増進などの施策を講ずることとなっていますが、約三十年の歴史を持つ失業保険制度を根本的に改革する重大な問題であります。制度の根幹にかかわる改正問題を審議日数の短い臨時国会に、しかも短時間の検討で審議を終えることに不安が残ります。一方、過般来顕著となってまいりました相次ぐ企業倒産賃金未払い問題希望退職の募集あるいは一時帰休など深刻な不況下で雇用情勢が逼迫していることも事実であります。これが対策として問題を将来に残すこととなっても現行法よりは前進した点も認められ、かつ不況に対し一応対処し得るものと考え賛成し、その成立を期するものであります。
 しかしながら、本法案には、被保険者期間がいかに長くても若年層の給付を一律に切り下げるなど明らかに既得権を侵すものであります。また、六十歳以上の高年労働者については、失業保険料が免除されることとなっておりながら、出かせぎなど短期雇用者からは保険料を徴収するという不公平を残しているなど問題があります。
 さらに、雇用改善、能力開発及び雇用福祉などいわゆる三事業についても、失業保険会計の運用とともにこれまで各方面から指摘されてきた問題点、意見を十分に尊重して適正な運用をはかることが政府行政機関に課せられた責任であります。
 より一そう労働者の保護と生活水準の発展向上を目ざし改善強化されることを要望して私の討論を終わります。
#131
○委員長(山崎昇君) 須原君。
#132
○須原昭二君 私は、日本社会党を代表いたしまして、本法案に反対する立場から討論をいたしたいと思います。
 まず第一に、失業保険給付の要件に就職の難易度なるものを基準にして年齢区分を導入したことは失業者の生活保障を原則とする本制度のたてまえに照らしてその妥当性がきわめて疑わしいものであります。しかも、そのために少なからぬ人々、とりわけ三十歳未満の被保険者に対する失業保険給付の条件低下が避けられず、理由のいかんを向わず、被保険者の権益が侵されることは重大な問題であると言わざるを得ません。
 そもそも、この法案は、いわゆる完全雇用を条件として作成されたものであります。ところが、最近の情勢はどうかというと、完全雇用の状態が実現されているどころか、労働省の統計によっても失業者が急増し、いわゆる完全失業者だけでも間もなく百万人を数えると予想されているのであります。これは日本のみの趨勢ではなく、アメリカもイギリスもフランスもイタリアも、先進資本主義国のいずれもがインフレーションの高進と不況の深化のジレンマの中で共通している事態なのであります。
 わが国では最近すでに求職に対する求人倍率が一倍を割るに至っております。失業者が急増し求人が減少している中で、一たび解雇されるや、たとえ若年労働者といえども、新たな職につくことはきわめて困難になりつつあります。しかも、この情勢はすぐに好転するどころか、いずれの資本主義国においてもインフレーションと不況と失業とが慢性化し、失業者はふえる一方であります。
 若くとも、すぐに再就職することのできない失業者や、地方にはますます職がなく、農業も破壊されて出かせぎと失業保険給付とによって一家の露命をつないでいる農民がかくも増加しているとき、このような人々の中に失業保険給付の縮減される場合が生まれることは重大な問題であります。
 次に、雇用安定政策に関する基本的な問題点についてであります。
 労働者の雇用安定政策は、本来、国と資本家の責任と負担において措置されるべきものであるにもかかわらず、失業保険制度を活用して、保険財政を雇用政策に活用することは基本的な制度上の問題として断じて容認しがたきところであります。現行雇用対策法との関連においても疑問があるだけでなく、このような情勢のもとで雇用保障制度の抜本的改善こそが望まれているにもかかわらず、本法案のような形で三事業への交付などというように失業保険法をなしくずしに変形させて糊塗するのでは大きな問題をもたらすに違いありません。
 以上のような理由により、日本社会党は本法案に強く反対せざるを得ないのであります。
 なお、修正案については、わが党が作成しつつある雇用保障法案や、進めてきた失業保険法の抜本的改正案に比べて不十分でありますので、これにも反対するほかありません。
 これをもって日本社会党の反対討論を終わります。
#133
○委員長(山崎昇君) 柄谷君。
#134
○柄谷道一君 私は、民社党を代表して、雇用保険法案、雇用保険法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案及び労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律案に対し賛成し、共産党の修正案に対し反対の討論を行なうものであります。
 質問の中で述べましたように、依然として労常インフレが収束されていない現在、他方インフレ抑制策としての総需要抑制策の結果、実質需要の停滞、製品在庫の増大、企業倒産、工場閉鎖、操業短縮、求人率の激減等の不況事態を現出し、産業構造の矛盾や無秩序な輸入増大とも相まって、雇用の不安、労働関係の緊張、社会不安等を生み出しています。こうした現況に対応するためには、もちろん財政金融政策、産業政策等の総合施策を充実させることが必要でありますが、雇用保障策の実施もまた緊急を要します。
 私は、雇用保険法案の細目についてはなお検討すべき余地もあり、今後改善を要する点を指摘するものでありますが、現下の深刻な事態にあっては、その再検討に時間をかけるよりも、この法案を成立させ、すみやかに実施することこそ肝要であり、それこそ多くの民間産業労働者や中小企業経営者の切望にこたえるゆえんであると考えます。しかし問題は、質問の中で指摘したように、本法案の成立は日本の雇用政策の転換期であり、ポスト雇用保険法、すなわち今後の具体策の設定とその実践にかかると思います。
 私は、附帯決議案の十二項目を政府が誠実かつすみやかに実行に移すことを強く求めるとともに、特に中高年齢者の雇用促進、心身障害者、交通事故等による寡婦等に対する特別の措置、全面適用と出かせぎ労働、建設労働等の不安定雇用に対する通年雇用の促進、婦人労働者に対する個別延長措置の有効な運用と、育児休業に対する援助措置、福祉的な雇用機会の積極的創設、雇用審議会の機能強化と、それを通じ、農業政策、産業政策、地域政策と関連づけた総合的雇用政策の確立、労務債確保の方途の確立について善処されるよう強く求めて賛成の討論を終わります。
#135
○委員長(山崎昇君) 沓脱君提出の修正案は、予算を伴うものでありますので、国会法第五十七条の三の規定により、内閣から本修正案に対する意見を聴取いたします。労働大臣。
#136
○国務大臣(長谷川峻君) ただいま御提案のありました共産党提出の修正案につきましては、政府としては反対であります。
#137
○委員長(山崎昇君) 他に御意見もなければ、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#138
○委員長(山崎昇君) 御異議ないと認めます。
 それでは、これより雇用保険法案について採決に入ります。
 まず、沓脱君提出の修正案を問題に供します。沓脱君提出の修正案に賛成の方の挙手を願います。
  〔賛成者挙手〕
#139
○委員長(山崎昇君) 少数と認めます。よって、沓脱君提出の修正案は否決されました。
 それでは、次に、原案全部を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。
  〔賛成者挙手〕
#140
○委員長(山崎昇君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 次に、雇用保険法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。
  〔賛成者挙手〕
#141
○委員長(山崎昇君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
#142
○須原昭二君 私は、ただいま可決されました雇用保険法案に対し、自由民主党、日本社会党、公明党及び民社党共同提案の附帯決議案を提出いたします。
 案文を朗読をいたします。
   雇用保険法案に対する附帯決議(案)
  政府は、雇用保険制度の適切な運用を図るた
 め、左記事項を実現するよう、なお一層努力す
 べきである。
 一 雇用保険の完全全面適用を可及的速やかに
  実現するよう努めるとともに、労働保険事務
  組合の育成強化を図る等、零細企業への円滑
  な適用拡大のための実施体制を整備するとと
  もに行政体制の充実強化に努めること。
 二、出稼労働、建設労働等の不安定雇用の問題
  について通年雇用の促進、産業政策及び地域
  政策を総合的かつ強力にすすめること。また、
  労働者の雇用条件及び生活の安定、福祉の向
  上を図るための制度並びに施策の確立につい
  て専門の検討機関において速やかにその具体
  化を図るための検討を行うこと。
 三、雇用保険の暫定任意適用とされる事業につ
  いては、可及的速やかにその適用を図るとと
  もに、新たに適用拡大される部門における新
  規被保険者が受給資格を得ずに不況により解
  雇された場合には、職業転換給付金制度の充
  実、活用により対処すること。
 四、短期雇用特例被保険者の特例制度の実施初
  年度においては、短期雇用特例被保険者の確
  認が容易でないことにかんがみ、被保険者の
  就労に関する意思や就労の実態を十分考慮し
  て運用するよう配慮すること。
 五、給付日数の個別延長制度については、最近
  の雇用・失業情勢に対処して実効ある運営が
  行われるよう配慮すること。
 六、婦人労働者に対する失業給付及び職業紹介
  にあたっては、個々の労働者の実情に十分配
  慮し、その働く意思と能力を尊重した運営を
  行い、窓口におけるサービスの向上に努める
  とともに、昭和三十九年八月二十八日付の給
  付適正化通達は廃止すること。また、出産、
  育児等の理由による受給期間の延長措置につ
  いては、真に婦人労働者の福祉の向上に資す
  るよう適正な運営を行うこと。
 七、雇用改善事業等の三事業の実施にあたって
  は、失業給付との経理上の区分を明確にし、
  その運営にあたっては、労働者の利益がそこ
  なわれることのないよう、労使の意見を十分
  に反映させるための措置を講ずること。
 八、将来、三事業の事業内容の強化、特に職業
  訓練の振興のため、労使の参加する管理運営、
  企業賦課金等の諸外国の制度も参考とし、制
  度のあり方についても速やかに検討を行い、
  具体化を図ること。
 九、公共職業訓練を強化するとともに、職業訓
  練制度全体の体系化及び資格の社会化を図る
  こと。
 十、交通遺児を抱えた寡婦等の就業問題の解決
  に資するため、雇用促進に関する援助措置を
  講ずるよう検討すること。
 十一、中小企業の倒産等による不払貸金の救済
  制度の確立について早急に検討すること。
 十二、国有林労働者に対する退職手当について、
  従前に比し不利とならないよう措置するこ
  と。また、雇用の通年化を一層促進するとと
  もに、通年雇用に必要な新たな措置について
  も積極的に検討すること。
  右決議する。
#143
○委員長(山崎昇君) ただいま須原君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行ないます。
 本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
  〔賛成者挙手〕
#144
○委員長(山崎昇君) 全会一致と認めます。よって、須原君提出の附帯決議案は、全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
 ただいまの決議に対し、長谷川労働大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。長谷川労働大臣。
#145
○国務大臣(長谷川峻君) ただいま御決議をいただきました附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重し、関係各省とも協議の上、善処してまいる所存であります。
#146
○委員長(山崎昇君) 次に、労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律案を議題とし、これより討論に入ります。御意見のある方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。――別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
 労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。
  〔賛成者挙手〕
#147
○委員長(山崎昇君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
#148
○小平芳平君 私は、ただいま可決されました労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、日本社会党、公明党、日本共産党及び民社党共同提案の附帯決議案を提出いたします。
 案文を朗読いたします。
   労働者災害補償保険法等の一部を改正する
   法律案に対する附帯決議(案)
  政府は、左記事項に関し速やかに所要の措置
 を講ずべきである。
 一、労災保険の給付水準、給付基礎日額の算定
  方法、スライド制等については、今後ともそ
  の改善を図るよう努力すること。
 二、労災保険の全面適用を早急に実現するこ
  と。
 三、労災保険給付と他の社会保険給付との関係
  については、災害補償の趣旨からみて適切な
  調整のあり方を検討すること。
 四、被災労働者の社会復帰のためのリハビリ
  テーションに関する措置を一層充実するこ
  と。
 五、特別支給金の額は、社会経済の動向に即応
  し、今後ともその引上げに努力すること。
 六、旧法以来の長期療養者の年金についての四
  〇日分の減額調整の廃止について検討する
  こと。
 七、業務災害の発生防止を図る等のため、関係
  職員を大幅に増員すること。
  右決議する。
 以上でございます。
#149
○委員長(山崎昇君) ただいま小平君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行ないます。
 本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
  〔賛成者挙手〕
#150
○委員長(山崎昇君) 全会一致と認めます。よって、小平君提出の附帯決議案は、全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
 ただいまの決議に対し、長谷川労働大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。長谷川労働大臣。
#151
○国務大臣(長谷川峻君) ただいまの附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重し、善処してまいる所存であります。
#152
○委員長(山崎昇君) 雇用保険法案、雇用保険法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案、労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律案、以上三案の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#153
○委員長(山崎昇君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後二時五十三分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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