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#1
第074回国会 法務委員会 第1号
昭和四十九年十二月二十三日(月曜日)
   午前十時二十四分開会
    ―――――――――――――
  委員氏名
    委員長         多田 省吾君
    理 事         岡本  悟君
    理 事         永野 嚴雄君
    理 事         佐々木静子君
    理 事         白木義一郎君
                岩本 政一君
                塩見 俊二君
                棚辺 四郎君
                中村 禎二君
                安井  謙君
                町村 金五君
                山本茂一郎君
                中村 英男君
                藤田  進君
                松永 忠二君
                矢田部 理君
                橋本  敦君
                岩上 妙子君
                河野 謙三君
                下村  泰君
    ―――――――――――――
   委員の異動
 十二月九日
    辞任         補欠選任
     岡本  悟君     鹿島 俊雄君
 十二月十八日
    辞任         補欠選任
     棚辺 四郎君     高橋 邦雄君
     中村 禎二君     柴立 芳文君
     山本茂一郎君     片山 正英君
 十二月二十三日
    辞任         補欠選任
     柴立 芳文君     棚辺 四郎君
     片山 正英君     望月 邦夫君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         多田 省吾君
    理 事
                高橋 邦雄君
                永野 嚴雄君
                佐々木静子君
                白木義一郎君
    委 員
                鹿島 俊雄君
                塩見 俊二君
                柴立 芳文君
                棚辺 四郎君
                町村 金五君
                望月 邦夫君
                安井  謙君
                中村 英男君
                藤田  進君
                矢田部 理君
                橋本  敦君
                岩上 妙子君
                下村  泰君
   国務大臣
       法 務 大 臣  稻葉  修君
   政府委員
       法務政務次官   松永  光君
       法務大臣官房長  香川 保一君
       法務大臣官房司
       法法制調査部長  勝見 嘉美君
       法務省民事局長  川島 一郎君
       法務省矯正局長  長島  敦君
   最高裁判所長官代理者
       最高裁判所事務
       総長       寺田 治郎君
       最高裁判所事務
       総局人事局長   矢口 洪一君
       最高裁判所事務
       総局刑事局長   千葉 和郎君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        二見 次夫君
   説明員
       警察庁警備局外
       事課長      金沢 昭雄君
       法務省刑事局総
       務課長      筧  榮一君
       外務省アジア局
       次長       中江 要介君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○理事補欠選任の件
○調査承認要求に関する件
○検察及び裁判の運営等に関する調査
 (検察行政に関する件)
 (法務局職員の増員に関する件)
 (金大中事件に関する件)
 (朴大統領そ撃事件に関する件等)
○裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する
 法律案(内閣提出、衆議院送付)
○検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する
 法律案(内閣提出、衆議院送付)
○熊本地方法務局免田出張所存置に関する請願
 (第五九四号)(第一三六八号)(第二〇五四
 号)(第二〇八三号)
○拘置所等における土曜日の面会廃止措置の取止
 めに関する請願(第二〇二六号)(第二〇八〇
 号)(第二〇八一号)(第二〇八二号)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(多田省吾君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 まず、委員の異動について御報告いたします。
 岡本悟君、棚辺四郎君、中村禎二君及び山本茂一郎君が委員を辞任され、その補欠として鹿島俊雄君、高橋邦雄君、柴立芳文君及び片山正英君が選任されました。
    ―――――――――――――
#3
○委員長(多田省吾君) 次に、理事の補欠選任についておはかりいたします。
 委員の異動に伴い、現在理事が一名欠員となっておりますので、この際、理事の補欠選任を行ないたいと存じます。
 理事の選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○委員長(多田省吾君) 御異議ないと認めます。
 それでは、理事に高橋邦雄君を指名いたします。
    ―――――――――――――
#5
○委員長(多田省吾君) 調査承認要求に関する件についておはかりいたします。
 本委員会は、今期国会におきましても検察及び裁判の運営等に関する調査を行なうこととし、この旨の調査承認要求書を議長に提出いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#6
○委員長(多田省吾君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 なお、要求書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#7
○委員長(多田省吾君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ―――――――――――――
#8
○委員長(多田省吾君) この際、松永法務政務次官から発言を求められておりますので、これを許します。松永法務政務次官。
#9
○政府委員(松永光君) 一言ごあいさつを申し上げます。
 先般法務政務次官を拝命いたしました松永光でございます。法務行政につきましては経験に乏しい身でございますが、稻葉法務大臣のもと、全力をもって国民に期待される法務行政の推進に努力してまいりたいと存じます。どうかよろしく御指導、御鞭撻のほどお願い申し上げます。
    ―――――――――――――
#10
○委員長(多田省吾君) 検察及び裁判の運営等に関する調査を議題といたします。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#11
○矢田部理君 きょうは私のほうから、拘置所等の面会制限問題について主としてお尋ねしたいと思います。
 これは従来から弁護人の接見その他でいろいろ問題にされてきたところもあるわけでありますし、私どもとしても関心を持っておったわけでありますけれども、とりわけ最近、ことしの六月でありますが、東京拘置所で「土曜日の面会、差入れについてお願い」と題する文書が掲示になりました。その内容を読み上げてみます。
  面会においでの皆さんには、当所の方針をよくご理解いただき、何かとご不自由をおかけしているにもかかわらず絶大なご協力をいただき深く感謝いたしております。
  さて、ご存知のとおり隔週二日制の波はついに当所にも及び来年度本実施をめざして、裁判所・検察庁などと共に今年六月よりテストとして実施することになりました。これは人事院の承認による法務省の方針によるものですが、このテストのために、毎週土曜日は人手が半分に減り、面会・差入れの業務を行なうことは、事実上非常に困難となりました。
  つきましては何かとご不自由をおかけすることは十分に承知しておりますが、右当所の事情をご賢察のうえ面会差入れは、つとめて月曜日から金曜日までにお願いしたく皆さんのご協力をお願いします。
               東京拘置所
  面会差入者各位
 こういう文書の掲示が二カ所にわたって六月になされたわけですけれども、法務省としてそういう掲示をするように指示ないしは指導をされておるのかどうか、まずこの点お伺いいたします。
#12
○政府委員(長島敦君) 指導とか指示をいたしてはおりません。
#13
○矢田部理君 にもかかわらずこういう文書が掲示されたのは、法務省の意向なのか、それとも拘置所独自でやられたのか、その辺はいかがでしょうか。
#14
○政府委員(長島敦君) その「お願い」と申します文書にございますように、隔週の週休二日制というようなことが問題になってきておりまして、ことに、御承知のように拘置所等は二十四時間勤務でございますので、これをやりますのはたいへんむずかしい問題でございます。そういう意味で試行する、ためしにやってみるということで、その試行に入るように、全国で十六庁ほど指定いたしまして試行させたわけでございます。その試行に伴いまして東京拘置所で、申し上げておりますようにやはり人手が一部不足するという事態が当然に起こりますので、そのために東京拘置所としてはお願いをするということで、独自の判断と申しますか、事務上非常に支障が出てくるだろうということで、そういうお願をしたというふうに思います。
#15
○矢田部理君 経過は一応わかりましたけれども、法務省として隔週二日制ということは考えておられるわけですか。その前提で問題を進めていった場合に、土曜日は面会、差し入れをこれからは行なわないというような基本的な方針、考え方を持っておられるわけですか。
#16
○政府委員(長島敦君) この週休二日制の問題は、職員の勤務条件の改善ということが中心でございます。特に拘置所等は非常に困難な勤務状態と申しますか、非常にきびしい勤務状態にございますので、ほかの一般官庁が週休二日制になります場合には、それに準じたような制度をやはり導入いたしませんと、職員の採用とかあるいは勤務の継続、やめていく人が出るとかいろんな問題が出てまいります。ただし、この性質上、拘置所のようなところにおきましては、収容者ももちろんでありますけれども、面会に来られる弁護士の方とか家族の方とか、そういう方の便宜も当然に考えなければならぬということで、サービスは低下しない、従来どおりのサービスを続けるということを一方で持ちながら週休二日制をやろうという、非常にむずかしい実は場面に直面しております。ただ、基本の考えといたしましては、そういう面で従来のサービスは低下しないというのが基本の考え方でございます。
#17
○矢田部理君 私どもも拘置所等で働く職員の週休二日制とか時間短縮ということは基本的に賛成だし、むしろ要求すらしているわけでありますけれども、問題は、そういうことを口実にして、すでにこの掲示にありますように事実上土曜日に面会をする機会を奪ってしまう。これは被告人、被疑者はもちろんでありますが、家族や関係者にとっても人権にかかわる問題だというふうに私たちは考えているわけです。
 いま局長のお話ですと、週休二日制あるいは隔週二日制を実施するにあたって、いろいろむずかしい問題はあるけれども、サービスは低下させないというお話があったのですが、そうすると、サービスは低下させないという考え方と、土曜日は面会、差し入れについては遠慮を願う、事実上非常に困難だ、したがって協力をしてほしいということとは矛盾することになりませんでしょうか。
#18
○政府委員(長島敦君) さような事態が起こるかもしれないということで実は試行に入ったわけでございまして、そういう事態を避けながら、どういうかっこうで週休二日制の実施ができるかということをいま実は検討しておる段階でございます。その検討の段階の初歩と申しますか、試行に入ります当初におきまして、いわば単純な計算と申しますか、というようなことでやってまいりますと、どうしても土曜日に半分職員が休む。そういうことになりますと事務が渋滞するというようなことから、そういうお願いを申し上げたということだと思います。
 しかし、これは週休二日制を実施いたします場合には、そういうような問題を解決しながら実施しなければならぬということで、ですから、たとえば面会につきまして人手が要るということになりますと、その配置をしなければなりません。それを配置いたしますためには、ほかの部面から人員を捻出するということが必要になる。あるいは場合によりますと、土曜日は面会を続ける。そのかわりに、たとえば週の日のうちの一日を振りかえいたしまして、ある日の午後なら午後は面会は遠慮してもらいたいというようなことで振りかえる方法とか、具体的にはいろいろな方法が考え得ると思います。
 そういう点をいま検討しておるわけでございまして、東京拘置所も現在はさような「お願い」というのももう撤去しておるようでございますし、実際に、お願いいたしましたけれども、結果から見ますとやはり少しも面会は減っておりませんし、実際の職員配置もしたがって従来どおりの配置をしてやっておるわけでございまして、別の何か解決方法を考えざるを得ないというふうに思っております。
#19
○矢田部理君 こういう掲示が張り出されて、その後いろいろ苦情が出たり抗議が出たりして、最近は撤回はされておるようでありますけれども、問題はこの内容なんですね。
 一つ一つ確かめていきたいと思うのですが、隔週二日制というのは来年度実施がきまったのでしょうか。この点はどうなっておりますか。
#20
○政府委員(長島敦君) これは御承知のように、きまっておりません。当初さような動きもございまして、先ほど申し上げましたように、非常に普通と異なった勤務形態でございますので、急に実施になりますと混乱が起こりますし、また急に実施ができない職場でございますので、そういうこともあろうかということで事前にいろいろな問題点を探るために試行を始めたということでございます。
#21
○矢田部理君 関連して、この文書では「来年度本実施をめざして」と書いてあるのですが、きまってはいないけれども、目ざしてはいるのでしょうか。
#22
○政府委員(長島敦君) この問題はまだ人事院からも勧告が出ていないと私承知しておりますが、人事院の御趣旨は、将来実施する。それについて必要があれば、ためしに行なうといいますか、試行というようなことで順次問題点を詰めるということについてはお許しが出ているというふうに聞いておりますけれども、それ以上、いつ実施をしろという勧告もございませんし、これは政府全体の問題でございまして、私どものほうで独走できる問題ではございません。
#23
○矢田部理君 いま先にお答えいただいたのですが、その次の文章に「人事院の承認による法務省の方針による」と、こういうふうな文章になっておるのですが、これは、いつどういう人事院の承認があり、法務省としてどういう方針を立てられたのか。
#24
○政府委員(長島敦君) これは週休二日制を実施することの承認ではございませんで、将来週休二日制になる場合に、たいへんそれの実施がむずかしい職場でございますので、どんな問題が起こるか、問題点を探るために試行するということについて非公式の了解を得たということでございます。そういう意味で試行をしなさいということは、法務省の方針として特定の指定した庁について試行させたということでございます。
#25
○矢田部理君 どうも文章としては、何かそういう非公式のものではなくて、むしろ人事院の承認によるんだというようなことで明確に書いてあるわけですが、さらに、このテストを行なうにあたって土曜日は人手を半分に減らした、その上でしばらくの間テストを行なってきたというようなことはあるのでしょうか。
#26
○政府委員(長島敦君) この隔週週休二日制というやり方にいろいろなやり方がございますけれども、拘置所等の性質から申しまして、一般の官庁のように、たとえば隔週に土曜日はお休みというわけにはまいりませんので、土曜日も開くということでございます。そうなりますと、実際の試行の形態といたしましては半舷上陸方式と申しますか、職員を半数ずつ土曜日には出勤させるという形が考えられるわけでございます。その半舷上陸方式で一応東京拘置所の場合は試行に入りました。その関係で、土曜日は職員が原則として半数になるというかっこうになるわけでございます。そのことがそこに書かれておることかと存じます。
#27
○矢田部理君 いずれにしても、最近は掲示を取り除いて、こういう方針はテストとしてはやったけれども、いまだ確定をしていないというのが法務省の考え方ではないでしょうか。
#28
○政府委員(長島敦君) ただいま試行中でございまして、いろいろなテストをいまやっておるわけでございます。そういうことで、非常にまずいという分については直していって、いつのことかわかりませんが、正規の実施の際にはもっといいかっこうと申しますか、サービスも低下させず、職員の勤務条件もよくするというたいへんむずかしいことでございますけれども、それをやるためにいま努力をして、プロジェクトチームというものをつくって検討をずっと続けておる段階でございます。
#29
○矢田部理君 こまかい質問になってきましたけれども、土曜日の面会というのは、一般の特につとめを持っているような人たちにとっては非常に重要なんですね。ウイークデーにはなかなか休めないけれども、土曜日の日は休んだりあるいは午後を利用したりして面会とか差し入れに出かけていく。これが事実上あるいは制度上できなくなってしまうということになりますとすれば、被告人、被疑人の人権にとって、あるいは関係者のそういう面会、差し入れ等の権利という立場から見ても、非常に重大な人権侵害の疑いが出てくると思うのです。その点で、サービスは低下させないということと、事実上土曜日の面会、差し入れ等を制限していく、これはやっぱりどうしても私たちは黙っているわけにはいかないというふうに思うわけなんです。
 というわけで、東京拘置所では、関係者がだれか面会をしたあと、その日のうちに家族が行くと、もうすでに一人面会をしているからきょうはだめですというようなことで断わられている事例もあるわけです。一人一日一回面会制というようなことがいわれているのですが、そういう原則なり基準というのはあるのでしょうか。
#30
○政府委員(長島敦君) これはそれぞれの拘置所の実情に応じましてきめておるようでございます。きめます基本は、そこに収容されております人たちの数、職員の数、全体として面会に来る人たちの数、そういうものから全部算出してまいりますと、おのずから許し得る大体基準になるものが出てくるようでございます。
 東京拘置所について申しますと、ただいま御指摘のように、収容者が一日に接見できる回数は原則として一回という原則がとられておるようでございまして、ただこれは原則でございまして、もちろんいろいろな、特に緊急に必要があるというような場合は例外を許しておるようでございますけれども、ここら辺は結局、現在の拘置所の持っております職員の数と収容者の数と面会にこられる方々の総数というものから割り出した、一つの現状としてはやむを得ない基準であろうかというふうに思っております。御指摘のように、現在東京拘置所ではそういう基準をとっております。
#31
○矢田部理君 これは土曜日の問題とも関連するわけでありますけれども、だれか関係者が朝のうちに面会してしまう。家族の人たちがどうしても面会をしたいということで、遠くから出かけてきて面会を申し入れたところ、もう一人朝のうちに面会しているからだめですといって断わられるというようなことが、しばしばあると聞いております。家族にとってはなかなか、土曜日などわざわざ遠くから出かけてきて、実際上面会も何もできないで帰る、あるいは差し入れ等も受け付けられないで帰るということになりますればたいへんなことなんですね。そういう点で、一人一日一回面会制という基準も私は非常に問題だと思うわけであります。
 とりわけ家族などについては、かりに他の人たちがすでに面会をしておっても、それはやっぱり認めてしかるべきだということが一つ。加えて、勤労者などにとっては普通なかなか休めないわけですから、せめて土曜日ぐらいは面会に行こう、差し入れをしようということで出かけて行ったのに、こういう事実上の制限でそれができなくなるということになりますと、いわば面会とか差し入れについての権利を奪うことにもなりかねませんので、その点はサービスを低下させないという精神で、ぜひこういうものは撤回してほしい。
 私たちは週休二日制とか時間短縮というのは、そういう刑務所の職員の、拘置所の職員の犠牲や、あるいは被疑者、被告人、さらには面会者等の犠牲の上につくるべきではない。むしろやっぱり要員等を確保して、サービスをまさに低下させないという中で実施をすべきだというふうに考えておるわけでありますけれども、事実上こういう問題が出てきておりますので、この点については掲示は撤回したようですけれども、テストとしても行なうべきでないし、今後これをさらに実施をするということになりますと重大な問題を含んでまいりますので、ぜひ取りやめるように強く要請をしておきたいというふうに思います。
 最後に、そういう立場から、掲示は撤回をしたのですけれども、テストそのものもすでに取りやめたということになりますか。その点だけもう一つ。
#32
○政府委員(長島敦君) 土曜日の面会の問題につきましては、従来どおりと同じ定員をずっと配置しておりまして、したがいましてテスト期間中も、実際の問題としましては従来の面会の数と比べまして、一日平均に施行前には百六十七件の面会がございまして、お願いしました後も一日平均百六十一件という面会がございまして、一日に六件ほど減ったわけでございますけれども、そういうことで、職員の配置その他につきましては従来どおりの数は配置しております。そういうことで今後も実質的に制限をするというようなつもりはございません。自発的にほかの日でも間に合うということで御協力いただく分には、これはまたありがたいことだと思いますけれども、そういうふうに押しつけるとかいうようなことはいたさないようにいたします。
#33
○矢田部理君 テストにせよ、あるいはそうでないにせよ、そういう協力申し入れみたいなものを法務省の方針として、あるいは拘置所の方針として出しておられますと、現場の運用面で非常に事実上の障害が起こってくるわけです、任意の協力という以上に。係官が土曜日ばむしろ来てもらいたくないというような応待をする実例も幾つかあるわけですけれども、サービスを低下させないということだから、私はその点は詳しく追及はしませんけれども、したがって、これはテストとしてももちろん実施をやめるべきだ。そういうニュアンスを出すことは現場段階で非常な摩擦、問題を起こすということを私は心配をするわけですので、任意の協力要請だということも含めてそれはやっぱりやめてもらいたいということを強く要請して、私の質問を終わります。
#34
○佐々木静子君 私は、きょうは法務局の特に登記関係の登記所の問題について民事局長にお伺いしたいと思います。
 この十年間に、登記のいわゆる甲号事件が数の上で二倍、乙号事件が約四倍と大幅に事務量が増加して、登記所は非常に忙しくて繁雑な状態であるということは私から申し上げるまでもないことでございますけれども、その間の人員が、昭和三十九年に七千七百三十八名であったのが、本年昭和四十九年においてわずか八千八百八十一名と、一五%しか増加しておらない。事件数が非常に多くなっている、大体十年間に五倍ぐらいになっているにもかかわらず、人員がわずか一五%足らずの増加しかないというようなことで、いま法務局のほうがたいへんな状態である。これはそのとおりでございますか。
#35
○政府委員(川島一郎君) 登記所の職場が非常に繁忙度の高いということでただいま数字を示してお話がございましたが、仰せのとおりでございます。ただ、登記従事人員の現在の数字でございますが、三十九年は仰せのとおりで七千七百三十八名、それから四十九年、本年度におきましては、これは私のほうの調査では八千九百六十九名、一六%の増加ということになっております。
#36
○佐々木静子君 いまのお答えの中から、定員法で八百三十八名が減らされ、さらに今度三・一四%というものがまた減らされるというふうなうわさが出ているわけでございますが、そのあたりの、こうした状態からまだ職員が減らされるのではないかということで、法務職員あるいはまたこれに関係する司法書士の方々、その他関係する業界の方々もたいへんに心配をしているわけでございますが、大体、人員の増減の見通しというようなものを民事局ではどのようにごらんになっていらっしゃるわけでございますか。
#37
○政府委員(川島一郎君) 先ほどの御質問に、事件数が非常に増加しておるのに人員の増加率が少ないという御指摘があったわけでございますが、これは私ども事件の増加に対しまして相当数の増員が必要であるということで、毎年予算の作成の段階におきまして増員に努力してまいってきたわけでございますが、いろいろ定員事情というものがございまして、なかなか必要な職員数を確保することが困難な実情にあるということでございます。今後の見通しといたしましても、そういった事情に大きな変化はないというふうに思われますので、私ども一段と努力をいたす覚悟でございますけれども、急激に大幅な増員を獲得することはむずかしいのではなかろうかと、このように考えております。
#38
○佐々木静子君 このように登記数が激増したということは、何といいましても、ことしあたりは多少頭打ちかも知らないですけれども、例の悪名高い日本列島改造論の影響度、土地ブームによるもの、不動産ブームによるものだと思うわけでございますけれども、そういうようなブームを巻き起こしておきながら、最も不動産についての権利関係を扱わなければならないところの肝心の登記職員の増員が思うようにできておらない。そういうことから、そのしわ寄せというものがすべて一般の国民のところにかかってきている。たとえば東京の新宿の登記所では、謄本の交付を受けるについて申請から大体十日ぐらいかかる。そういうふうな状態でございまして、また中には、あとから申請したものが先に着いたり、早くから申請しているものがなかなかうまくいかなかったりというようなことで、相当混乱を生じておる。
 これはもう言うまでもなく、国民の一番大事な財産の権利関係に非常に多くの利害を与えるわけでございますけれども、いま早急な増員というものはむずかしいというふうな御答弁でございましたが、来年度は何人増員を要求しておられて、見通しとしてどういうふうになるのかということをもう少し具体的におっしゃっていただきたいわけです。
#39
○政府委員(川島一郎君) 来年の増員要求数は、登記関係で約千七百七十名を要求いたしております。その見通しでございますが、実は毎年大体千数百名の増員の要求をいたしておりまして、これに対しまして最終的に認められますのが、その年度によって違いはございますが、二百ないし三百程度でございます。そうして御承知のように、最近は毎年定員削減というのがございまして、それを差し引きますと、純増、純粋に増加する分というのは百数十名、本年度で申し上げますと登記関係では百六十八名、それから四十八年度で申しますと百二十四名、こういう数字が出ておりまして、今後の見通しといたしましても、こういった数字から見ましてどういうことになりますか、私どもとしてはできるだけ多くいただきたいというふうに考えております。
#40
○佐々木静子君 事件の激増するかたわら、職員が非常な手不足である。そういうところから、それをさばくために部外者の応援に頼っていらっしゃるのが現在の実情だと思うわけなんです。そういうことで、この間から各紙に、各紙というほどでもないか知れませんが、相当各地の地方版にも載っておるようでございますけれども、登記を業者にまかせることは違法である、そういうことは困るということで、順法闘争ということで全法務が全国的にこの年末にかけて闘争を開始しておるわけでございまして、そういうことでいま非常に国民の方々も困っていらっしゃる。しかし、全法務が戦っている闘争というものはこれは当然の要求であるので、やはり当局において何とか法律にのっとった登記業務というものができるように対策を講じていただきたいということなんでございます。
 そういうことで、この部外応援の実態というものを私ども司法書士会の方からもいろいろ伺い、また土地家屋調査士関係の方からもいろいろ伺っているわけでございまして、いわゆる司法書士会とか土地家屋調査士などでも、大ぜいの人を使って大々的にやっている方は職員の何人かを法務局に派遣して、自分のところさえ能率がよければそれでいいというふうな気持ちを持っておられる方も中にはないでもありませんけれども、一般的に現在非常に人手不足である、そして人件費も高い、そういう状態の中で、本来法務局がやらなければならない仕事を自分の職員を派遣してやらすということについては、こうした業者の方も非常に困っておられるわけで、何とかこれは解決できないものだろうか、むしろそういう意味においては、これはひとつ全法務とアベック闘争をやってもいいんじゃないかというふうな考え方も出ておるようでございまして、ともかく法務局に働いていらっしゃる職員の方にしてみると、これはもう数の上から見てもたいへんなことでございますので、何とかこの問題を早く解決していただかないといけないわけです。
 法務局のほうとすると、司法書士会あるいは土地家屋調査士、あるいはそのほか地方公共団体とか公団とか公社などの方がずいぶん部外応援として入っていらっしゃるようでございますが、どのぐらいの人が一日延べ全国の法務局へ入ってきているのか、どのように把握しておられますか。
#41
○政府委員(川島一郎君) お話しのように、登記所に部外応援というものが行なわれておるということは事実でございます。はなはだ芳しくない制度でございまして――制度といってはあれですが、慣行として行なわれておる。私どもも何とかこれを排除したいとかねてから考えておるわけでございますが、登記所が忙しいためにそれをまだ完全に排除しきれずにおるというのが現状でございます。
 この部外応援の実態でございますが、これは私どもがかねてから排除するようにということを申しております関係上、あまり正確な数字は把握できない現状でございます。ただ、実態といたしましては二種類ございまして、仰せのように司法書士あるいは土地家屋調査士など登記所関係の業務を行なっております業者が、その補助者を登記所に派遣して、そうして自分たちの申請した謄本などを早く出してもらうために手伝いをする、つまり謄本を焼いたりする手伝いをするというのが第一の形態、それからもう一つは、大量に登記を申請いたします地方公共団体あるいは公団などのいわば公共的な団体が、その自分たちの申請する大量の登記事件に関連して登記所の手伝いをするために人数を派遣する、こういう形のものと二つあるわけでございます。私どもの大体の観測によりますと、大体部外応援の三分の二程度のものは業者の手によるものであろう。残りの三分の一が市町村その他の公共的な団体によるものであろう。
 それから一日延べ何人くらいかということは、はなはだ正確にはつかみにくいわけでございまして、こういうところで数字を申し上げるのはどうかと思いますけれども、相当多数にのぼる。延べ人員にいたしますとこれは千人以上、あるいはもう少し多いかもしれませんが、になるのではなかろうかというふうに想像いたしております。もちろん、これは同一人が登記所に入りっきりでやるというのではございませんで、いろいろな補助者がやってきては自分の申請の事件について手伝うとか、そうい形態が多いわけでございます。
#42
○佐々木静子君 いま、なかなか一日何人というのはつかみにくいとおっしゃった。それはそのとおりだと思います、年末になると事件は殺到しますし、また幾分ひまなときもあると思いますので。全法務の資料によると、部外応援の数は年間延べ人数七十万以上というふうに皆さんおっしゃっているわけで、これもむろん根拠のない話じゃなくて、いろいろな各法務局の資料を合わせたところが年間七十万人以上になる。これはやはりたいへんな問題じゃないかと思うわけです。
 そして、この間からやはり登記がたいへんおくれる。特に、不動産を手に入れて、それを担保に入れるというふうなことでやっと金策がついたところが、登記の申請を出しても十日たっても謄本が返ってこないということで、結局せっかく取りつけた担保の話が流れるというようなことで、零細企業の人たちをはじめいろいろな方々がたいへんに困っているわけでございますので、この部外応援は一刻も早くやめてもらわなければならないけれども、さりとて登記がこれ以上おくれるということは困るわけでございますので、やはり根本的にこの対策を立てていただかないとたいへんな問題になってきていると思うわけなんです。
 この部外応援の話ですけれども、今月の四日のサンケイ新聞にも、浦和の法務局で、これは部外応援に来ていられた方か、また自分で申請人として来られたのか、そこのところはつまびらかにいたしませんが、抵当権を抹消した。公印をすきを見て不正使用して抵当権を抹消して、これも一人で何回もやっておるというふうな記事も載っておりますし、またあるいは判こなどもかってに部外応援者が使用して、ミス登記がたいへんに増加している。抵当権を設定するのに債権額一千万円と書くところを千円となっておったりして、あとで大騒ぎをしているというようなケースが、これは数が多いから常時あることだとは思いますが、特にこういうふうな問題がいま取り上げられているということから考えますと、この部外応援というようなことを早く何とかしないといけないのじゃないか。
 法務局とすると、この乙号の謄本の申請というようなことを、いま交付のことを言われましたけれども、この部外応援の内容というようなことについて、どこまでいまのところ黙認しておられるのか。また、こういうことは絶対に部外応援者にはさせておらないということがあると思いますので、どういうふうなところで基準を置いておられるのか、そこのところをまずおっしゃっていただきたい。
#43
○政府委員(川島一郎君) 部外応援の内容でございますが、これは主として業者の補助者が行なう場合におきましては、登記簿の謄本を機械にかけてコピーをつくるという作業でございます。登記簿の謄本をつくります場合には、そのコピーをつくりまして、そこにさらに証明文を付しまして登記官が捺印をするということになっております。場合によりましては、その証明文の判こまでは押してもらう。しかし、登記官の判を押すというのは、これは役所の者でなければなすべきことでございませんので、そこまではさせていないというふうに理解いたしております。この点は厳重に私どもとしても申し渡しておりますし、守られているというふうに承知しております。ただ、それに関連いたしまして、登記簿のあとの整理であるとか、それから登記事件について市町村に通知を出したりいたしますが、その通知書の作成を手伝ってもらうとか、そういった形式的な仕事につきましては若干お願いしておるという実情があるように聞いております。
 それから、最初にちょっと浦和の事件のお話がございましたが、これはまことに遺憾な事件でございまして、司法書士の補助者が登記所に入り込んで、そして登記簿に記入をして、そうして登記所の判まで隠れたところで押してしまった、それを数回繰り返したという事件でございまして、これは登記所のほうの管理体制に非常に欠陥があったように思われます。こういうことが起こらないように厳重注意いたしますとともに、やはり部外応援の場合にはそうした危険が全くないとは申せませんので、こういうことは今後絶対に起こらぬように十分注意してまいりたいと考えております。
#44
○佐々木静子君 こういう事件が起こると、たいへんにこの登記というものに対する信頼というものもそこなわれるわけでございますけれども、私ども登記所にはいままでも出入りする機会があったわけですが、私も特に注意をいたしまして、ひまがあれば各地の登記所をのぞく。むろん法務省のほうへお話しして行くこともありますが、かってにのぞいてくることもよくあるわけですが、これはもう非常にどこへ行っても繁雑で殺到しておって、見ていても登記所の職員は私気の毒だと思うわけです。これくらい忙しい職場はあまりないのじゃないか。しかも、原簿を出してきたりまた入れてくるという仕事もたいへんですし、たいへんに働く環境としてよくない場合が多うございますし、またほかの一般の官庁のように、仕事が切りがついたからちょっとたばこでものんで一服しようかというようなことは、これは登記役場を見ている限りにおいては全然そういう余裕がない。皆さんがきりきり舞いをしておられるということで、非常な過酷な労働条件じゃないかと思うわけなんです。
 さりとて、いまの部外者の応援ですけれども、登記官の判を押さすようなことはしてないとおっしゃるけれども、そのもう一つの証明の判にしたところで、これは部外者が法務局の判を押すということ自身非常におかしいのじゃないか。たいへんに変則的なことじゃないか。それから、見ておりまして、ここまでの判はかってに使ってもいいが――それも非常におかしいんですが――ここから先はいかぬといって、あの狭い職場で管理体制がよくないといっても、忙しいからこそ部外者が入ってきて働いているわけで、それを一人がついて管理する余裕があるならば何も部外者に来てもらわないでもいいというのが実情で、とてもこれは現実の問題として管理体制のよしあしなど言っておれないのじゃないか。
 現実の問題とすると、あそこで見ておる限りにおいては、部外応援者の中に何かたくらむ者があれば、これは幾らでも何でもできる。また一般の申請人にしても、あるいは特に閲覧者にしてみれば、あれだけ忙しい職場で目が届くはずがないのですから、書き入れようが多少抹消しようが、特に籍図なんかは幾らでも書き入れられる。私なんかは常時閲覧のところを見ていて、一年に何件そういうふうな事件があるか知らないけれども、そういう事件がどんなにたくさん起こってもあたりまえじゃないかと思うような状態なんです。そこら辺でもっと何とか根本的に体制を整備していただかないと、持っているつもりの財産がとんでもないことになっているというようなことも多くなってくるのではないか。
 これはやはり、何とかいまのこういう激増している登記事務に対して根本的な対策を立てていただかなくちゃ困ると思うわけですが、この未済事件数というものは、いま全国的にどのぐらいになっているわけでございますか。甲号、乙号、別々に。
#45
○政府委員(川島一郎君) 未済事件数がどれくらいになっているかという、その数はちょっと把握いたしにくいのでございますが、私のほうでこの十二月の十六日現在で全国の登記所の事務の遅延状況を調査いたしたわけでございます。
 その結果によりますと、甲号事件につきまして申し上げますと、申請をしてからでき上がるまでに七日以上かかるという登記所が、全国に十三庁ございます。登記所は全部で千五百八十七あるわけでございますが、このうち東京、大阪、札幌などの登記所の十三庁が七日以上かかる。それから申請してからでき上がるまでに五日以上かかるという登記所が、四十七庁ございます。これは相当な遅延状態であるというふうに考えます。毎年、年末になりますと事件が急増いたしますので、その関係で三、四日程度のおくれというものは生ずるわけでございますが、本年は、いろいろ御質問にありましたような事情もございまして、例年に比べて事件の遅延が少しはなはだしくなっておるようでございまして、甲号事件について申し上げますとそういう状況でございます。
 それから乙号事件につきましては、七日以上遅延しているところが全国で二庁、それから五日以上のところが三庁、四日以上のところが六庁、こういう数字になっております。乙号事件は甲号事件に比較して簡単な事件でございますから、これはもう少し早くできないと申請者に御迷惑がかかるのではないかと心配しておるわけでございまして、こういった状況にかんがみまして、目下法務局ともいろいろ相談をしながら、この遅延の解消につとめておるところでございます。
#46
○佐々木静子君 大きな法務局へ行きますと全自動謄本作製機が動いているわけでございまして、あれは見ているとおもしろいように次々にできてくるわけでございますけれども、いま全国的に全自動謄本作製機というのは何台ぐらいあるわけでございますか。
#47
○政府委員(川島一郎君) この全自動謄本作製機というのは、普通の機械でありますと単に登記簿の写しをつくるというだけでございますが、この機械では一挙に登記簿の謄本をつくってしまう。つまりコピーをして、そうしてそれを編綴して、それから検印をして、証明文まで印刷して出てくるようにする、こういう形のものでございまして、全国に現在約七十台配置してございます。何ぶんにも値段が高い機械でございますので、もう少し配置したいと考えておりますけれども、現在のところ約七十台配置してございます。
#48
○佐々木静子君 これは合理化の問題にもつながりますし、また現実にたまたま行って見ていると、これは便利な機械だなというふうに思いますが、現実に使っていらっしゃる職員の方々の立場に立つとそれなりにまたいろいろな問題があるようではございますけれども、いまたいへん高価というお話しでしたが、一台幾らぐらいのものなのか。そうして、これから先もっともっと購入なさる御予定なのか、どういうふうな計画なのか、教えていただきたいと思います。
#49
○政府委員(川島一郎君) 一台の値段は、本年度の予算執行では三百六十万円でございます。
 それから五十年度におきましてはさらに二十二台を要求いたしております。
 なお、この機械は非常に便利でございますが、まだ多少手直しする必要がありまして、使ってみますと非常に故障が多いわけでございます。しょっちゅう故障が起こっては専門家に直してもらうという必要がございますので、その機械の内容につきましてもさらに検討を進めて改善を加えてい、きたいと、このように考えております。
#50
○佐々木静子君 それからいまの人員不足の問題と勢い関連してくる問題として、以前にも一度お尋ねしたことのある問題ですが、登記協会というのがございますね。登記協会についてまた来年度の予算に一億六千万を計上していられるということでございますが、そのとおりですか。
#51
○政府委員(川島一郎君) 来年度も要求いたしております。金額は正確にいま記憶しておりませんが、二億を若干こえる程度の金額でございます。
#52
○佐々木静子君 この登記協会につきましては、これは以前より全法務が強く反対をしてきている。それから司法書士会などでもかなり反対の声が多い。前に伺いましたときにも、主として司法書士会の一番の反対の根拠は司法書士業務を圧迫しないかということでございまして、それについては民事局長が何度も、司法書士業務を圧迫するようなことは一切しないというお約束でございます。そして、主として関東一円にいま二十二庁でございますか二十一庁でございますか、登記協会は入っているようでございますが、関西方面は、これは大体まとまった意見として司法書士会強く反対しておりまして、なかなか登記協会の介入を許しておらないというような状態だと思うのでございますけれども、この登記協会に来年度二億の予算というようなことになってくると、これは法務当局は登記協会をどういうようにするおつもりでこれだけのたくさんの予算を組んでおられるのか、そこら辺の計画を聞かせていただきたい。
#53
○政府委員(川島一郎君) 予算の要求といたしましては、つまり乙号事務の業務の一部委託ということでございまして、登記協会に委託するという、その委託先をどこにするかということまでは予算の上では明示されていないわけでございます。したがいまして、執行の際にどこに委託するかということは、これは予算が入りました場合に考えてきめていくという問題でございます。
 それから、現在登記協会が実施しておりますのは、お話にございましたように、東京、横浜、浦和、千葉、それから名古屋の各局内の登記所二十一庁でございます。これについて司法書士会が以前反対しておったことは御指摘のとおりで、先生よく御承知のとおりでありますが、司法書士会のほうでも最近はかなり理解を示してきておるというふうに思います。司法書士業務を侵すような心配はこれは全くないものでございますので、当初の反対というのは私誤解であったといまでも確信いたしております。
 それからこの委託というのは、先ほどお話に出ました部外応援に比べますと、はっきりした契約に基づき、そしてはっきりした相手方とのこまかい事務のやり方などについても打ち合わせをした上で行なっておりますので、部外応援に比べますと問題は非常に少ないし、現在非常に繁忙をきわめております登記所の職場で、何とか事務の遅滞を起こさないように処理していくというためには必要な制度ではなかろうかと、このように考えております。
 組合のほうでこれに対して反対の意見を持っておることは御指摘のとおりでございますが、私ども組合のほうとも話し合いをいたしまして、そしてお互いの理解を深めながら、なるべく問題を起こさないような形でこの制度を続けていきたいと、このように考えております。
#54
○佐々木静子君 この登記協会、いまいろいろ御説明がございまして、決して悪い制度ではないという御趣旨のお話だったようでございますけれども、この登記協会のまず役員を拝見させていただいても、理事の方は全部元どこそこの法務局長と、全員そうでございますね。お一人だけ本省の元民事局におられた方で、ほかは全部私の拝見しているところでは元法務局長。そういうところがら見ても、これは法務当局のほうで幾らいい制度だとおっしゃっても、国民の側はすんなりと受け取れないので、やはりこれは天下りの典型じゃないか。
 私が前に伺ったときに、これは全くの名誉的な職であって、むろん役員の方も報酬などももらっておらないし、全く国民に対するサービスとして元法務省幹部のOBがやっておられるんだという御説明だったのですけれども、私の聞いているところ現実に、これは確かな証拠があるわけではありませんが、決して名誉職というのじゃなくて、役員としての報酬もちゃんと取っていらっしゃるし、しかもこれは非常な法務省の天下り先になっているんだというふうに言われる方も一方には多いわけです。形の上から見ると、そのように言われてもやむを得ないのじゃないかと思うわけなんです。そこら辺についてもどうもすっきりしないですね。
 この登記協会に二億円の予算をおとりになるとするならば、さっきの機械をもっとふやすとか、あるいは職員も、臨時職員をもっと一時的にも採用するとか、本来的な姿で法務行政を進められたほうが本来あるべき姿になっていいのじゃないかというふうに思うのですが、なぜこの登記協会にそれだけの予算を計上しなければならないのか。また、どうしてそれだけの予算を、いま申し上げた本来あるべき姿のほうにお使いになるわけにいかないのか。そこら辺ちょっと私ども納得できないので、納得できる説明をしていただきたいのですが、いかがなものですか。
#55
○政府委員(川島一郎君) 現在の登記所のたくさんの事務量を処理するためには、いろいろな方法を考えていかなければならないと思います。私どもが非常に重点を置いておりますのは、増員と、それから機械化、事務の合理化でございます。そういった面についていろいろ努力をし、ある程度の実績をあげておるわけでございますけれども、事件の増加というものが非常に急激でございまして、それに追いつかない。そのために、どうしてもそれ以外の方法も考えていかなくちゃならないという現状にあります。
 そこで、いまお話に出ました賃金職員でございますが、これは現在の総定員法のもとにおきまして、恒常的業務に賃金職員を雇い入れて使うということはできないというのがわれわれの考え方でございますし、これは政府の方針にもなっていると思います。恒常的業務を雇い入れた定員外の賃金職員で処理するということはできないんだと、こういう認識と運用に立っておるわけでございまして、したがって、臨時的に事務が増加したとか、一時的に何とかしなくちゃならぬというような場合には、これは賃金職員を雇い入れて処理することもございますけれども、恒常的に増加している事務を処理するためには賃金職員ではまかなえない。
 そこで、やむを得ず別の方法を考えることになるわけでありますが、この登記協会だけではございません。ほかの団体に対しても委託を行なっておりますけれども、この事務の一部委託というものは、これは正規の契約に基づいて行なうものでございまして、官庁などでは、いろいろ特殊技術を要するとかあるいは非常に大量の事務を機械的に処理しなくちゃならないというような場合には、外部に委託してやってもらうということがございます。それと同じ発想に基づいているわけでございまして、こういう方法も現在の法務局の事務処理にとってはきわめて有効であるし、また必要であるというふうに考えておる次第であります。
 そして、その登記協会が天下りの団体ではないかと言われるわけでございますが、形の上から申しますと、確かに前法務局長といったような方々が役員になっておられます。しかしながら、これは登記協会設立の際に、財団法人として設立されたわけでありますが、その基金をこういう方々が出し合ってそして少しでも法務局のためになることならばみんなで協力してやろうということでその基金を出していただいた、そういう関係がありまして理事になっておられるのでありまして、理事の多くの方々は名目的なものでございます。もちろん報酬は一銭も差し上げておりません。それから現実に登記協会の仕事をやっております理事の、これは二名ばかりの方がおられますが、この方々もほんとうに手弁当でやっておられまして、登記協会の実際の会計の内容をごらんに入れても差しつかえないのでありますけれども、これはほんとうに犠牲的な奉仕でやっていただいておるわけでございます。
 したがいまして、この点の誤解を受けるということは私ども非常に心外でございまして、その点は、もし組合のほうでそういう誤解があるといたしますならば、さらにそういった点につきましても十分説明もし、またその現在の理事の姿がよくないというのであれば、そういった点についても十分今後の方針として考えていきたいという気持ちは持っておるわけでございます。そういう意味で、先ほど申し上げましたようになるべく組合のほうの理解も深めながら今後運営していきたいと、こういうことを申し上げておるわけでございます。
#56
○佐々木静子君 いま局長のお話しのとおりだといたしますと、相当いろいろ誤解があるということになると思いますので、もしそういうことでございますならば、その登記協会の財政を資料として出していただいたら、また誤解の部分はそれで氷解するのじゃないかというふうに思いますが、資料としてお出しいただけますでしょうか。
#57
○政府委員(川島一郎君) まあ一度、先生にお目にかけることは差しつかえございません。
#58
○佐々木静子君 もう時間がありませんので、登記協会のことをもう少し伺いたいのですが、このあたりにいたしまして、これは特に地方へ参りますと登記所の出張所の方々がこぼしていらっしゃる話、特に出張所の所長といえば聞こえがいいけれども、全く所長兼何々というくらいのところの小さい庁ですね、そういうところ辺で渡しきり費が、もう初めにいただいておくと、このごろの物価高で立ちどころになくなってしまう。特に、燃料代が高くて相当自腹を切っておる。自腹を切るにも、収入も収入だからたいへんに苦しいんだとこぼしておられる方がたいへんに各地で多いのですけれども、この物価の高騰について、この渡しきり費を何とか補てんするというようなことはいま考えていらっしゃいますか、どうでしょうか。特に寒くなってくると皆さんたいへんに現実に困っていらっしゃるようですが、いかがなものでしょうか。
#59
○政府委員(川島一郎君) 燃料費等の値上がりで渡しきり費が不足の状態にあるということは事実でございます。しかしながら、渡しきり費というのは予算できまっておるわけでございまして、ほかの金額を流用するわけにはいかないわけでございます。ただ私ども、現実に不足しているという実情にかんがみまして、実質的にそういった不足をカバーできるような方法を何とかできないものかと検討いたしておりまして、できる限りそういった措置を講じたいというふうに思っております。
#60
○佐々木静子君 ぜひこの渡しきり費の不足の、各所長さんが立てかえられた分を何とか補てんできるように措置をとっていただきたいと思いますことと、それからいま全法務が八千人の増員を要求しておりますが、まあ八千人全員というようなことはなかなかむずかしいにしても、何とかこの増員を取りつけることができますように、ひとつ御尽力いただきたい。そして国民の登記というものに対して、登記制度が実際にうまく運用されて国民の最も切実な権利義務関係がきちっと処理できるように、ひとつ民事局のほうとしてもぜひとも御努力いただきたいと思います。
 政務次官お越しいただいておりますので、最後にそのことについてどういうお考えでございますか。
#61
○政府委員(松永光君) 登記事務の渋滞については、国民に及ぼす影響も大きいものですから、渋滞をすみやかに解消するように鋭意努力していきたいと、こう考えております。
    ―――――――――――――
#62
○委員長(多田省吾君) 質疑の途中でございますが、委員の異動について御報告申し上げます。
 柴立芳文君が委員を辞任され、その補欠として棚辺四郎君が選任されました。
    ―――――――――――――
#63
○橋本敦君 私は、この法務委員会でもかねてから、対韓外交について筋を通してこれを行なうこと、とりわけ、いま韓国の事態が重大な人権侵害というそういう政治状況にあることについて、この問題を正しく踏まえて処理をしなければならない、こういった問題を追及をしてきたわけですが、ことしももう終わるという状況の中で、依然として金大中事件の主権侵害の真相解明、あるいは文世光にかかわる狙撃事件の真相の解明、さらには太刀川、早川君にかかわる二学生の早期釈放と人権を守るという問題、いずれも未解決のまま年を越そうとしている状況にあります。そういう問題について、きょうは法案審議がある関係で詳しくお伺いできないのが残念ですが、どうしてもきょうお伺いしておきたい幾つかの点について、限られた時間の中で質問をしたいと思います。
 まず第一に、わが国の主権侵害の重大な疑惑の持たれた金大中事件について、韓国からは捜査を打ち切るという通告がなされた。それに対して木村外相も日本の警察当局も、金東雲氏の指紋まで検出をしながら、きわめて不満であるという意向を表明されて今日に至っているのですが、去る十月二十五日には木村外相は、当時の衆議院外務委員会における答弁によりますと、日本の警察当局がつかんだ証拠について詳細説明するように韓国政府に申し入れたと、こういう答弁が出ています。その結果、韓国政府から何らかの回答ないしは説明があったのかどうか、まずこの点を外務省もしくは警察庁いずれからでもけっこうですが、御答弁をいただきたいと思います。
#64
○説明員(中江要介君) ただいま御質問の、十月二十五日に文書をもって申し入れました金東雲元一等書記官の捜査結果についての追加資料の請求については、現在までのところ韓国政府からは何らの回答も得ておりません。
#65
○橋本敦君 十月二十五日からもう二カ月たつわけです。これについて韓国政府がわが国の申し入れに対して誠意ある態度をとっているならば、何らかの回答がもうすでに来ていなければならないと思うのです。それがいまだ来ていない。そうすれば、いつごろ、どのような回答があると予想していいのかどうか。この辺についてさらに韓国政府に事情をただしていますか、いませんか。いかがですか。
#66
○説明員(中江要介君) 本件は、先ほどおっしゃいましたように先方では、一応韓国側の捜査としては打ち切るということを八月十四日に通告してまいっておったわけでございますが、その後例の狙撃事件があって延び延びになって、十月の下旬に先方に再照会したということで、日本側から提供しました資料に基づいて韓国の当局は考え直していると私どもは期待しておるわけですが、いつごろまでにどういうことになるかという点については、残念ながらいまのところは見通しが立たないということでございます。
#67
○橋本敦君 その点については、わが国の外務大臣からの公式の説明要求でありますから、韓国政府が誠意を持って早期に回答するようにさらに強く求めていただきたい。このことを強く希望しておきます。
 さらに警察庁にお伺いしたいのですが、金大中事件の真相解明の捜査はいまも続けられていますか。
#68
○説明員(金沢昭雄君) 現在も続けております。
#69
○橋本敦君 ところで、いまそのように捜査が続けられている中で、十二月六日付のワシントン・ポスト紙並びに同じく十二月六日付のワシントン・メリーゴーランドという新聞によりますと、有名なジャーナリスト、コラームニストであるジャック・アンダーソン氏が朴大統領と単独会見をした結果、この金大中事件については、朴大統領はたぶん中央情報部、KCIAの犯行であろうということを認めたという非常に重大なニュースが流されています。これについてその詳しい報道内容、これを外務省はその新聞を直接手に入れてすでに御存じでしょうか、いかがですか。
#70
○説明員(中江要介君) 報道の内容については承知しております。
#71
○橋本敦君 その報道の内容に、いま私が言ったように、朴大統領がKCIAの犯行であろうと認めたという、そういう記事が記事として掲載されている事実は間違いありませんね。
#72
○説明員(中江要介君) 正確な記事の表現そのものは、私ちょっとこちらに持ち合わせておりませんが、朴大統領がKCIAがやったのではないかというような推測を漏らされたというふうに、記者の記事の中では書かれておったというふうに記憶しております。
#73
○橋本敦君 ともかく、わが国政府の正式の申し入れに対しては何ら回答がない、そういう中でこういう記事が出てきている。これは捜査当局としても重大な関心を払うに値する報道だと考えますが、いま捜査中だというお話の中で、この報道についてはどのような関心を払われているか、またこれについて事実の解明をどのようになさろうというお考えがあるのか、この点はいかがでしょうか。
#74
○説明員(金沢昭雄君) ジャック・アンダーソン氏の書きましたものにつきましては、まだ残念ながら承知しておりませんので、今後その内容を見ましていろいろと考えていきたいというふうに考えております。
#75
○橋本敦君 まだごらんになっていないというのは、私は捜査中であるという警察庁の立場としては、この重大な記事についていささか対処がおそきに失すると思いますよ。外務省はもう御存じだということですから、さっそく資料をごらんいただきたい。ほんとうに捜査を真剣にやるならば見のがせない報道だと私は思います。したがって、もし重大な関心を払うという必要があるということをお認めになるならば、何らかのこれに対する真実の解明のために努力をされるおつもりがありますか。たとえば、係員をアメリカに派遣をして、直接アンダーソン氏から事情を聞くというような思い切った処置も私はとるべきだと思いますが、警察庁としていまどう考えていらっしゃいますか。
#76
○説明員(金沢昭雄君) ただいま申し上げましたように、まだ内容を十分に承知しておりませんので、今後いろいろと考えてまいりたいと思います。
#77
○橋本敦君 それでは、いずれその処置について次回に伺うことにいたします。
 ところで、問題の金東雲一等書記官が解任をされたという事実は明らかです。金東雲書記官が解任をされればもはや外交特権を主張する身分にはないし、地位にはない。これは捜査の関係において外交特権を主張し得ないということは明らかだと思いますが、いかがですか。
#78
○説明員(金沢昭雄君) 金東雲元書記官につきましては、日本警察といたしましては一応被疑者ということで断定をして、外務省を通しての向こうでの捜査結果の送付等につきまして依頼をしておるわけでございますが、まだ正式に回答はございません。
#79
○橋本敦君 正式にもうシロだという回答があったでしょう。
#80
○説明員(金沢昭雄君) 今後この点につきまして、こちらのいままで調べました捜査結果を再度通告をして、その回答についてこれからも要求をしてまいりたいというふうに考えております。
#81
○橋本敦君 私は、金東雲書記官が解任をされて外交特権を主張する地位と立場を失った以上、日本の警察当局は、正式に金東雲氏を捜査のためにわが国に召喚をするという手続を求める、それぐらい強い態度を外務省当局と協議をして進めることが国民の疑惑をとく当面の道であると考えますが、その点についてのお考えはいかがですか。
#82
○説明員(金沢昭雄君) 金東雲元書記官につきまして、いま申し上げたようなことで今後やってまいりたいというように考えておりますが、まず何はともあれ、向こうでの結果とこちらでのその疑問の点、これの突き合わせが大切であろうと思いますので、これについて繰り返し外務省を通しICPOを通して向こうに申し入れをしたい、こういうふうに考えております。
#83
○橋本敦君 端的に言って、金東雲書記官に対し被疑者と断定した日本の警察当局が、もはや外交官でない彼を何らかの方法で直接に事情を聞き、調べるという手続を具体的にどうすればとれるか。それは検討されますか、されませんか。それだけ一点お答えいただきたいと思います。
#84
○説明員(金沢昭雄君) 現在、いま申し上げましたようなことについて考えておりますので、その進展を待って、いま直ちにどういう方法とるかということについてはお答え申し上げにくいわけでございますが、いままでと同じような方針で繰り返しやっていきたいというふうに考えております。
#85
○橋本敦君 この問題だけで時間をとれませんから……。
 わが国の外務大臣が正式に申し入れたことに対しても誠意ある回答がない現在、事態の推移を見てということでは、これは問題の解決はおくらされるばかりですよ。だから、そういう誠意のない回答、誠意のない態度であるというこの推移の上に立って、断固として捜査を進展させるという処置、これをとるのが警察の本来の使命であるという観点で今後検討を深めてもらうことを期待をします。その結果はまた伺うことにします。
 そこで、時間がないので次の問題ですが、文世光は死刑が確定して、たちまち三日後に処刑をされて刑場の露と消えた。これはかなりのショックを各界に与えました。依然として重大な疑惑が解明されないまま処刑をされたということについて、私は彼のためにもかわいそうに思うし、ほんとうに心の痛む思いがするのですが、大逆事件を思い出さざるを得ないということさえ言われている。
 ところで、この事件に関連をして、なぞの解明について聞きたいことは山ほどあるのですが、これはまた次回の法務委員会に回すとして、赤不動病院の捜索について端的にお伺いしておきたいと思うのです。それは、赤不動病院に対して警察当局はカルテあるいは入院患者名簿あるいは文世光の入院状況、これを調べるために十月二十五日に捜査に行かれ、カルテ等を押収されている。この事実は間違いありませんか。
#86
○説明員(金沢昭雄君) 赤不動病院につきまして十月二十五日、資料の提出を要求し、任意提出を得たという事実、間違いございません。
#87
○橋本敦君 その場合に、被疑者は文世光、罪名は殺人の予備と出入国管理令違反、こういうことで行かれたことも間違いありませんか。
#88
○説明員(金沢昭雄君) 正確に申し上げますと、窃盗、殺人予備、旅券法の違反、それから出入国管理令違反という罪名であります。
#89
○橋本敦君 ついで十二月に入って、五日には裁判所の令状による強制捜索、押収をなされたということですが、このときの罪名が同じく殺人予備、窃盗であったということは間違いありませんか。
#90
○説明員(金沢昭雄君) 間違いございません。
#91
○橋本敦君 そこで、私がこの件に対してお伺いをしたい問題の中心は何かと言いますと、この十月二十五日及び十二月のついこの間の令状による捜索についてですが、これは文世光を殺人予備あるいは窃盗、窃盗というのはピストルの窃盗ですが、これについてわが国の警察がわが国の司法権の発動として起訴し得るという見通しが持てる状況が、この時期にありましたか、ありませんか。どうですか。
#92
○説明員(金沢昭雄君) 起訴し得るか、し得ないかというのはちょっと問題かと思いますが、国内法違反の、国内法を犯したという事実があり、警察としてはそれを明らかにして検察庁のほうに事件として送致をする、こういう観点から捜索を行なったものであります。
#93
○橋本敦君 文世光事件が起こったのはまぎれもない八月の十五日。それから多くの報道が相次いでなされました。吉井さんは旅券法違反幇助で起訴さえされている。ところで、文世光自身の初公判が十月七日、たちまちにして判決が十月十九日に死刑判決として出ている。そのあとで十月二十五日に赤不動病院へ行かれておるのですが、第二審はどうかといえば、十一月十三日に開始されて、十一月二十日に同じく死刑判決を維持している。そのあとの十二月五日に令状で捜索をやられている。死刑の一審判決が出され、二審でも同じ判決が維持されている。上告審でも見込みがないということが、あの韓国のいまの政治情勢と軍事裁判の関係がはっきりしている中で、文世光自身を起訴する見込みはこれはないということはだれにもわかる中で、この時期に、八月十五日からはるかにたった十月二十五日以降の時期に、あえてこのような捜査をやられた真意はどこにあるのだろうか、私は疑いの目をもって見ざるを得ないのですが、もう一ぺん、この捜査の目的、そして捜査の結果をどう処理するつもりであったか、お答えをください。
#94
○説明員(金沢昭雄君) 先ほどもお答えしましたように、あくまでも国内法の違反事件につきまして資料を集め、事件を検察庁に送致をする、こういった目的で行なわれたものであります。
#95
○橋本敦君 きわめて形式的な答弁であって、私は納得できないのです。検察庁に送致をするというのは手続上そうでしょう。だけど、捜査の真の目的が一体那辺にあったかを私は疑う。
 なぜかと言いますと、その前の九月十九日に有名な椎名訪韓がなされている。ここで外交上異例な親書についての事前協議といわれるようなことまでやって、謝罪特使とまでいわれた椎名氏の訪韓があって、いわゆるその椎名メモによって、日本国内における文世光事件について朝鮮総連を含む捜査、活動の抑圧について協力という問題が出たのではないかという疑惑があった。この椎名訪韓が九月十九日。それからあと赤不動病院に対する捜査が始まっているのですよね。だから私が質問をしたい核心は、まさに椎名訪韓によって約束したことに基づいてこの捜査を、起訴する見込みはないけれどもやったのではないか、まさに椎名メモがここに現実になって出てきているのではないか、こういう疑惑をこの事実関係、日時の経過から持つのは私は当然だと思うのです。警察としてはそのような指示あるいは方針を、外務省当局との打ち合わせで椎名訪韓との関係で出したと私は思うのですが、そういうことはありますか、ありませんか、はっきりしてください。
#96
○説明員(金沢昭雄君) 椎名メモによりまして国内捜査が行なわれたというような事実は全くございません。あくまでも真相の解明ということを目的として警察当局は捜査を行なったものであります。
#97
○橋本敦君 それならばもっと早くやり得たし、やっておかなければならないですよ。それが常識だと私は思う。私はいまの答弁で納得できません。椎名訪韓問題に対する対韓姿勢については、きょうは時間がありませんから、いずれまた伺うことにいたしまして、外務省当局にこの問題で一言。あの椎名氏の補足メモなるものは外交文書と考えていますか、全く外交文書的意味のない、法的には、条約的には意味のない文書と考えていますか、その点を明らかにしておいてください。
#98
○説明員(中江要介君) もし、その文書が日本政府と韓国政府との合意であるとかあるいは了解であるとか、何らかの意味で拘束する力を持つものであるかどうかということでの御質問ですと、私どもの了解は、あの紙は何ら拘束力のないものだと、こういうふうに了解しております。
#99
○橋本敦君 有力な国際法学者の中に、合意事項に達したものをあのような形でイニシアルまで付してメモとして渡すということは、準条約的な法律的効力があると解すべきだという説があるのは御存じですか。
#100
○説明員(中江要介君) 考え方といたしまして、その内容が両当事者の合意を記録としてとどめ、その両当事者がそれにイニシアルをしたものであれば、これは国際法上も拘束力のある合意文書だという考え方があることは私どもも承知しておりますし、もしあの紙がそういうものであれば拘束力のあるものだというふうに認識いたしますが、椎名特使が向こうに置いてこられた紙は、まず、日本と韓国の間で合意なり了解したものを記録にとどめたものでない、これは日本側の説明を書いたものだという点が一つ、それからもう一つは、イニシアルというふうに報道されておりますのですけれども、実際にあの紙にイニシアルといいますか、しるしをとどめたのは後宮大使だけでありまして、別に先方の当事者がそれにイニシアルを付しているわけでもございませんので、一般にいわれておりますような外交文書にイニシアルをするという意味での、拘束力を与えるためのイニシアルではなかったというようなことで、この二点から見ましても、私どもはあの紙が両国政府を拘束するいわゆる拘束力のある外交合意文書であるというふうには認識しておらない、こういうことでございます。
#101
○橋本敦君 それでは、その問題で最後に一点だけもう一度お伺いします。
 これについて金鍾泌首相は、韓国内の放送並びに報道で、あの特使訪問と補足メモによって日本政府が日本国内における反韓国団体である朝鮮総連、これに対する活動抑圧、これに協力をした、今後日本政府がこれをほんとうに誠実に守るかどうかが日韓関係の前進かどうかにかかっているという演説、報道をしているということに接するわけです。いまのあなたの答弁ならば、全く日本政府はあのメモに拘束されないという立場である。したがって、朝鮮総連に対する国内法を越えた捜査、弾圧ということは毛頭考えていないし、考えるべきでない、こういう従前の立場は変わりないと、こう伺ってよろしいですか。
#102
○説明員(中江要介君) 私先ほど御説明しました拘束力がないと言いましたのは、日韓間の合意文書あるいは合意事項として日本国をあるいは日本国政府を拘束するという力はないということを申し上げたわけですが、他方、これは当時の田中総理の親書をふえん説明された椎名特使の口頭説明の概要をしるしたメモということでございますので、それはそれなりの日本の立場を明らかにしておるわけでございますから、全くこれは何の意味もないものというわけにはまいらないことは当然でございます。
 で、その紙の中に書かれておりますいわゆる破壊活動なりテロなり、そういったものに対する日本政府の取り締まりの部分に関しましては、これはあくまでも日本の法律に違反した行為というものがあれば、それが在日朝鮮総連によってあるいは個人によって行なわれたものであろうといなとを問わず、これを取り締まるというのはこれは日本国の従来の方針であり、これに変更があるわけのものではないということでございまして、そういう意味において、先生の御質問の末段の、本件に対処する日本の捜査当局なり治安当局の態度というものは従来と変わりがない、こういうふうに認識しておるわけでございます。
#103
○橋本敦君 いろいろ問題が残りますが、きょうは時間がありませんので今後またお尋ねすることにします。
 そこで、いまの問題について警察庁に最後に伺います。
 文世光はすでに処刑をされて、いない。こういう状態の中で十二月五日に捜索をされた赤不動病院の捜索、今後どうされますか。今後も窃盗もしくは殺人容疑、こういった問題について、被疑者がもういないのですが、捜索をされるということなのか、もうこれで打ち切るということなのか、はっきりしてください。
#104
○説明員(金沢昭雄君) 文世光自身の国内法違反の捜査につきましては、一部を除きまして大部分が現在ほぼ目鼻がついておる、こういう状況でございますので、近日中に一応の捜査の節をつけるということで検察庁に送致をしていきたいというふうに考えております。その段階で、大阪府警にあります特別捜査本部で一応の発表をする、こういう予定にしております。
 以上であります。
#105
○橋本敦君 近く結果を発表されるということはいいですが、被疑者がもう死んで、いないという状況の中で捜査を続けるということは、法律的にもおかしいじゃないか、そういう意味でも早期に終結をするのはあたりまえではないか、こういう私の質問なんですが、それはそれでよろしいわけですか。
#106
○説明員(金沢昭雄君) 重ねてお答えいたしますが、全面的に真相が解明されるという段階にはなっておりません。大部分が解明をされるという段階でございますのでいま申し上げたようなことを考えておるわけでございますが、若干解明されない事実が残りますので、その点につきましては今後も引き続き事実の解明をはかっていきたいというふうに考えております。
#107
○橋本敦君 おかしいじゃないですか。被疑者が死んでいないのに、解明するというのはどういうことですか、はっきりしてください。
#108
○説明員(金沢昭雄君) 被疑者は確かに死亡してございますが、これは形式上と先生おっしゃるかもしれませんですが、一応事件の解明としましては、事件の国内法の関連についてはこうこうこういうことであったということの解明をし、これを検察庁に送致をするというのが警察のたてまえになっておりますので、そういうふうに申し上げたわけでございます。
#109
○橋本敦君 捜査を継続するという意味ではないという意味ですか、真相解明とあなたがおっしゃったのは。被疑者が死んでいないのに捜査を続けるという、そのこと自体法律的にどういうことなんですか。真相解明ということは法律上の手続に基づいてしかやれないでしょう、警察は。おわかりでしょう、一般的真相解明といったって、警察権発動できませんよ。被疑者に対する具体的被疑事実の解明ですよ。被疑者が死んでいないのに、なおかつ真相解明、これはどういう意味ですか。法をおかしてはならない。
#110
○説明員(金沢昭雄君) 被疑事実につきまして、その犯行の動機、それからいわゆる共犯の関係といいますか背後関係、そういったことにつきましてはまだ十分に解明がされていないわけでございます。そういった点について、被疑者は、文世光は死亡しておりますが、そういう本人の動機なり、いろいろと背後関係なりについて解明されていない点を解明していきたい、こういうことで申し上げたわけでございます。
#111
○橋本敦君 納得できませんね。何のためにそれをやるんですか。これは時間がありませんから、引き続いて質問を留保します。今後不当な捜査と見られるような、法を逸脱した捜査があれば、これは許されないことですから、その点は私の質問の趣旨をよく踏んまえてください。
 もう十分ほどで終わりますが、続けてよろしゅうございますか。
#112
○委員長(多田省吾君) どうぞ。
#113
○橋本敦君 それでは最後に、二学生の問題についてお伺いをいたします。
 この早川、太刀川君については、酷寒の韓国の地で二十年という重刑を受けて、非常に私ども心配をしております。早川君のお父さんはもう七十歳、お母さんも六十歳、太刀川君の両親、家族も非常に心配をしている。一部の報道によれば、来年早々にも釈放されるのではないかという希望的観測が流れているのですが、外務省でつかんでおられる情報はどのようなものでしょうか。
#114
○説明員(中江要介君) 先生のおっしゃいますようにいろいろの情報が流れてきておることは、私どももそれなりに承知しておりますけれども、政府の基本的な考え方としては、韓国政府が自国の司法手続に従って最終審まで結審して、そして司法上の手続が終わってから何らかの配慮がなされるのではないかという期待のもとに、この結審をまつまでは裁判について静観していくというのがいままでの立場であったわけでございまして、今回いろいろ情報は、いよいよ結審に近づいておるもので推測は流れておりますけれども、そういう基本的な立場から、韓国側からも何ら正式なといいますか、公式な推測はございませんし、日本側からもそういうものを照会しているということはございません。基本的に従来と同様に、本件の特殊な事情にかんがみて、その取り扱いに日韓友好の見地から特別の配慮がなされることを期待するという希望を表明していくにとどまっている、こういうのが現状でございます。
#115
○橋本敦君 第一審で予想をこえた二十年という重刑を受けました。それ自体が刑として重過ぎるという意味でも人権侵害、そしてこの早川、太刀川君の事件について、まさに近代刑法に違反する、刑罰不遡及の原則に違反する非常立法例である。しかも、この二人の事件については、むしろ無実であるという疑いが濃いという意味でも人権問題を提起しているわけです。この第二審でも、日本弁護士連合会長は、第二審の開始で基本的人権を守るために正当な権利が侵害されることのないよう重大な関心を払われたく要望しますという電報を大韓弁護士協会会長に打った。ところが第二審は、御存じのように被告の最終陳述さえ認めないで、たちまち結審をして判決をした。こういう状況で、ほんとうに人権を守る裁判がこの二人について行なわれているかどうか、私は重大な関心と疑問を持っている。何とかしなきゃならぬと思うのです。
 いま上告審に行っていますが、この上告審を十分に被告人とされた二人の主張なり家族の意見が通るように、向こうとの弁護士の折衝、あるいは日本弁護士連合会の人権擁護委員会に関係者が申し立てているその申し立ての趣旨にのっとって、最大の便宜を外務省ははかることを通して日本国民の人権を守る責務があると思います。このような努力をなさる御意思がありますか、ありませんか。
#116
○説明員(中江要介君) その点に関しましてはいろいろの御議論のあることは承知しておりますが、政府のいままでとっております態度は、先ほども申し上げましたように、韓国における司法手続が進行中は、その中間における、量刑に対する考え方とかあるいは裁判の行ない方に直接介入することはできないということで静観しておるわけですが、他方、人権を尊重するというたてまえから、当初から本人の弁護士選定の段階、あるいは家族との面会、差し入れ、そういった問題について在ソウルの大使館はできる限りの努力をして、不当な裁判が行なわれるようなことのないように、これは注意深く見守っているということでございます。
#117
○橋本敦君 上告審が最後ですよ。これは近々出されるだろうと、こういっているのです。この上告審において韓国の担当弁護士は、非常大統領緊急措置が違憲であるという主張まで加えてやろうとしているということが伝わっている。こういう上告審の最後の段階で、面会、差し入れだけじゃなくて、日本から日本弁護士連合会において関心を持つ人権を守ろうとしている人たちの韓国に対する渡航、向こうの弁護士会との折衝、被告人との面会、こういった問題について、裁判の内容に干渉せよとは言いません、積極的に便宜をいますぐとるという、このおつもりがありますか、どうですか。差し入れ、面会だけじゃありません。
#118
○説明員(中江要介君) 日本の弁護士会からソウルに行って云々というお話は、私ちょっと正式には聞いておらないものですから、あるいはそういう御要望がありましたときに、それをどう扱うかということはその段階で考えなければならぬと思いますが、政府としては、いかなるチャネルであっても外国で裁判に服している日本人のためにできるだけのことはしなきゃならぬという認識は、従来持っておるわけでございます。
#119
○橋本敦君 それでは最後にいたしますが、その認識に基づく積極的支援と援助が、私は日本の外務省としてはあまりにもなさすぎるということで問題にしている。これはいずれまた次のときに問題にします。たとえば、日本弁護士連合会の人権擁護委員会に関係者が人権侵害として申し立てている事実とその資料を御存じですか。御存じないでしょう。そういったことを含めて、もっと積極的な人権を守る立場での外交姿勢に立ってほしい。
 先ごろ国外追放されたオーグル牧師がアメリカの下院の小委員会の公聴会で証言をしています。その報道によれば、朴政権の人権弾圧に対して、日本の政府がこれに対して積極的批判の態度をとらない、むしろ助長する傾向にあるということを批判したと伝えられています。まさにこのような批判は、私は日本の外交信用にかかわるし、人権保障の観点からして検討すべきである。アメリカの国務省でさえ十月一日には、朴政権の人権弾圧に対して正式の警告声命を発している。裁判の内容に干渉せよと私は言いませんが、ほんとうに人権を守る立場に立った外交姿勢に徹するという方向で、この二学生の早期釈放について、一段と真剣な努力を外務省当局が関係者と協議の上積極的にとるということを約束していただいて、私の質問を終わりたいと思いますが、いかがですか。
#120
○説明員(中江要介君) 外務省といたしましても、いま先生のおっしゃいました線に沿ってできる限りの努力をしていきたいと、こう思います。
#121
○橋本敦君 終わります。
#122
○委員長(多田省吾君) 本日の調査はこの程度にとどめます。
    ―――――――――――――
#123
○委員長(多田省吾君) この際、稻葉法務大臣及び寺田最高裁判所事務総長から発言を求められておりますので、順次これを許します。稻葉法務大臣。
#124
○国務大臣(稻葉修君) 一言ごあいさつを申し上げます。
 このたび、はからずも法務大臣に就任し、法務行政を担当いたすことになりました。
 委員長はじめ委員各位におかれましては、平素、法務行政の推進のため多大の御尽力をくだされ、感謝にたえないところであります。ここにあらためて深甚の敬意と謝意を表するものであります。
 私は、法務行政の使命とするところは、法秩序の維持と国民の権利保全にあると考えております。ことに、内外諸情勢が激動し、困難な問題が山積しているこの時期に際し、国民生活の安定を確保し、国家社会の平和と繁栄をはかるためには、その基盤ともいうべき法秩序が厳然と維持され、国民の権利がよく保全されていることが最も肝要と存ずるのであります。したがいまして、私は、より適正な検察権の運用について努力を尽くし、いやしくも法秩序を破壊し、国民の権利を不法に侵害する行為に対しましては、厳正な態度で臨み、この使命達成に邁進する所存であります。また、法務行政のサービス部門である登記、出入国管理事務等の行政事務につきましても、これが一そう適正かつ能率的に行われるよう事務処理態勢の充実を期し、この種行政の向上につとめてまいりたいと考えております。
 さらに、その他所管する行政の各分野にわたり、適時適切な施策を講じ、真に国民の期待する法務行政を推進してまいりたいと存じております。
 以上はなはだ簡単でありますが、就任に際しまして私の考えの一端を申し述べた次第であります。もとより、これらのことは委員各位の御支援、御協力なくしてはとうてい果たし得ないところでございますので、どうか旧に倍する御援助、御鞭撻をくださるよう心からお願いを申し上げまして、ごあいさつといたします。
#125
○委員長(多田省吾君) 次に、寺田事務総長。
#126
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 東京高等裁判所長官に転出いたしました安村前総長のあとを受けまして、去る十九日、最高裁判所事務総長を命ぜられました寺田でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 いまさららしく申し上げるようで恐縮ではございますが、裁判所は基本的人権を擁護し、法秩序の維持に当たるという重い責務を負託されているのでございまして、この使命を達成することができますよう司法行政の面において微力を尽くしてまいりたいと存じます。幸い、今日まで当委員会の皆さま方の深い御理解と強い御支援によりまして、裁判所は人的、物的の両面にわたり逐次充実してまいっておりますが、今後ともなお一そうの御支援を賜りますよう切にお願い申し上げまして、簡単ではございますが、私のごあいさつとさせていただきます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
    ―――――――――――――
#127
○委員長(多田省吾君) 裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
 まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。稻葉法務大臣。
#128
○国務大臣(稻葉修君) 裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案について、その趣旨を便宜一括して説明いたします。
 政府は、人事院勧告の趣旨にかんがみ、一般の政府職員の給与を改善する必要を認め、今国会に一般職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律案及び特別職の職員の給与に関する法律及び沖繩国際海洋博覧会政府代表の設置に関する臨時措置法の一部を改正する法律案を提出いたしました。そこで、裁判官及び検察官につきましても、一般の政府職員の例に準じてその給与を改善する措置を講ずるため、この両法律案を提出した次第でありまして、改正の内容は次のとおりであります。
 第一に、最高裁判所長官、最高裁判所判事及び高等裁判所長官の報酬並びに検事総長、次長検事及び検事長の俸給は、従来、特別職の職員の給与に関する法律の適用を受ける内閣総理大臣その他の特別職の職員の俸給に準じて定められておりますところ、今回、内閣総理大臣その他の特別職の職員について、その俸給を増額することといたしておりますので、おおむねこれに準じて、最高裁判所長官、最高裁判所判事及び高等裁判所長官の報酬並びに検事総長、次長検事及び検事長の俸給を増額することといたしております。
 第二に、判事、判事補及び簡易裁判所判事の報酬並びに検事及び副検事の俸給につきましては、おおむねその額においてこれに対応する一般職の職員の給与に関する法律の適用を受ける職員の俸給の増額に準じて、いずれもこれを増額することといたしております。
 第三に、裁判官が死亡した場合における報酬については、現在、裁判官がその地位を失った場合と同様、その死亡の日までの日割り計算によって支給するものとされておりますが、今回、一般の政府職員について、その死亡の日の属する月の報酬の全額を支給することができるように改めることとされておりますので、裁判官についても同様の改正をすることといたしております。検察官については、検察官の俸給等に関する法律第一条において、一般の政府職員の例によることとされておりますので、この点に関する特段の措置の必要はありません。
 これらの改正は、一般の政府職員の場合と同様、昭和四十九年四月一日にさかのぼって適用することといたしております。
 なお、今回の改正により、昭和四十九年度限り、暫定的に、特別の措置として裁判官及び検察官の報酬月額及び俸給月額の一〇%を増額する旨の規定がその必要性を失うこととなりますので、同規定を削ることといたしております。
 以上が裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案の趣旨であります。
 何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決くださいますようお願い申し上げます。
#129
○委員長(多田省吾君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。
 午前の審査はこの程度にとどめます。
 暫時休憩いたします。
   午後零時二十三分休憩
     ―――――・―――――
   午後四時四十分開会
#130
○委員長(多田省吾君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
 まず、委員の異動について御報告いたします。
 片山正英君が委員を辞任され、その補欠として望月邦夫君が選任されました。
    ―――――――――――――
#131
○委員長(多田省吾君) 休憩前に引き続き、裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
 質疑のある方は順次御発言願います。
#132
○佐々木静子君 それでは私から質問をさせていただきます。
 まず、法務省にお伺いしたいと思いますが、私この裁判官の報酬等に関する法律の改正あるいは検察官の俸給等に関する法律の改正について質問させていただくのは、これで四回続けて四年目なんですけれども、最初から申し上げておるのですが、これはいつでもこういうふうに一緒にひっつけてアベックで出てくるわけなんです。これは何かそういうふうにしなければならない法律上の根拠でもあるのですか。いかがなものなんですか。
#133
○政府委員(勝見嘉美君) 裁判官報酬法と検察官俸給法につきましては、ただいま佐々木委員御指摘のとおり、従前におきまして常に一緒に御審議いただいているようでございます。もちろん御説明申し上げるまでもございませんが、裁判官報酬法と検察官俸給法はそれぞれ独立の法律になっております。ただ、裁判官報酬法と検察官の俸給法は、その中身におきましてほとんどリンクしております。その理由につきましてもほとんど同一でございますので、国会の御審議の便宜のためにそうなったものと私どもは理解している次第でございます。
#134
○佐々木静子君 私、四回目と申し上げましたが、一番最初にこの法案を見たとき非常にびっくりしたわけでございまして、これは形の上では、裁判官の報酬というのは私が申し上げるまでもなく憲法上の規定に基づく根拠があるわけでございますし、検察官のそれは、むろん独立性を尊重しなければならないわけでございますけれども、これは行政官としての俸給でございますので、これがこういうかっこうで二つ一緒になって出てくる。しかも、一つは当然裁判所予算でまかなわれる問題ですし、一方は行政官庁の予算の問題であるのに、なぜこういうふうにして一体で提案され、また、こういうふうに一つにして、アベックどころか一卵性双生児のようなかっこうで審議をするということ、私は理論的にはたいへんに納得のいかないものを感じておるわけなんです。
 そのあたり、法務省でやはりこのよって出てくるところの根拠、いま若干給与体制が似ているとかなんとかというような御説明もあったですけれども、根本的にその発生しているところが違うのじゃないかと、そういうふうに考えますと、どうも、これで違法ということはないと思うのですけれども、何もこのようにして毎度毎度お出しになる必要はないのじゃないかというふうに思うのです。そのあたりは法務省はどう考えられますか。
#135
○政府委員(勝見嘉美君) 裁判官の報酬につきましては、ただいま佐々木委員御指摘のとおり憲法上の保障を受けております。検察官は、これも申し上げるまでもございませんが、国家公務員法上は一般職とされております。その意味におきまして、裁判官と検察官の地位は質的にいって違う面がもちろんおっしゃるとおりあると存じます。ただ検察官の場合は、司法権の発動を促す、司法の運営につきまして非常に重要な職責を有しておりまして、いわば準司法的機能を営むものであると考えます。しかも現実に試験、それから任用の実際を見ますと、裁判官と同一であるという実情でございます。また検察庁法におきまして、その身分保障につきまして裁判所と異なる面がございますけれども、やはり一般の公務員と違った身分保障が規定されております。検察官の受けます俸給につきましても、特に検察庁法で「別に法律でこれを定める」ということを明記しております。
 ただいま申し上げましたように、検察官の職務と責任につきましては一般の公務員とは著しく違う面があろうかと思います。反面、当初に申し上げましたように裁判官と検察官の地位の違いもございますけれども、これも先ほど申し上げましたような検察官と裁判官のいわば似ている面と申しますか、そういうことで常に同時に御審議いただいているというようなことであろうかと思います。資料としてお手元に差し上げてございます各表などを見ていただきますと、まさに御指摘の一卵性双生児といいますか、全く同一の法律の中身のような表をつくっておりまして、その意味でかえって誤解を招いているような面があるかもしれませんけれども、私ども一緒に御審議いただいている理由は以上のような点にあろうかというふうに考えております。
#136
○佐々木静子君 裁判官の報酬と検察官の俸給との中身が大体同一だという御説明、逆に言えば、検察官の俸給と裁判官の報酬が中身が同一である、私これはどうも最初からおかしい感じがしてしかたがないわけなんです。なぜ同一にしなければならないのか。同一だから一緒に審議するんだというふうに言われているけれども、提案者は法務省なんですね。同一にしているのは法務省のほうで同一にしてお出しになっているわけで、勢い国会審議も同じように何か同時にスタートして一緒に審議するわけですけれども、これは根本的に非常にその性質が違うものじゃないか、また、違っていいのじゃないか。そこら辺で、これから後もやはりこういうふうな、悪く言えば司法の裁判官の報酬というものが行政庁の俸給に追随しているようなかっこうで法案を、形の上でそういうかっこうになっておるのですけれども、これから先もそういうかっこうでしかお出しになれないのか、あるいは別のかっこうで出すことも今後考えておられるのか、一度そのあたりをお聞きしたいと思います。
 私から申し上げるまでもなく、報酬について憲法上で規定されておるのは、国会議員と裁判官はこれははっきりと憲法上で明記されている。したがって、国会議員の報酬と裁判官の報酬というものは、これはそれぞれ三権分立の関係で立法権あるいは司法権を独立して考える考え方から、その独立を尊重する意味で憲法にも明記してあると思うのですけれども、これは逆に、私はこういう出し方をされると裁判官の報酬というもの、ひいては司法権の独立というようなものが何か非常に行政権に追随しているようなかっこうが見えて、形の上からもまたこの審議の実態から見ても、あまり司法権というものが尊重されておらないという感じを受けるのです。そこらあたり、提案者である法務省はどのようにお考えですか。
#137
○政府委員(勝見嘉美君) 確かに御指摘の面があろうかと存じますけれども、あえて弁解させていただきますと、裁判官の報酬法と検察官の俸給法の改正法案は別々にして御提案申し上げている次第でございます。ただ、お昼に大臣から提案理由説明を申し上げました際に、冒頭に、その改正の趣旨を「便宜一括して説明いたします」というふうに申し上げているところでございますが、先ほどから申し上げておりますように、御審議の便宜という点もあろうかということでこのようなことを申し上げている次第でございます。
 司法の独立の問題でございますけれども、むしろ私どもといたしましては、検察官の俸給が裁判官の給与に準じているというふうに考えております。決して、司法の独立云々というようなことを毛頭考えているわけじゃございません。むしろ、検察官は一般の政府職員とは違うけれども、裁判官の給与のほうに準じているというふうに理解している次第でございます。
#138
○佐々木静子君 これは私、別に何か意図するところがあって申し上げるわけじゃ決してございませんけれども、そういうことだとすると、たとえば立法権のほうの報酬の増額というようなこともまだ国会の審議も始まってもおらぬわけでございます。きょうは実は一般公務員の俸給の増額の法案がいま内閣委員会で審議されて、本日の本会議でたぶん可決されるであろうという予定になっておるわけですけれども、別に立法権はそれと一緒に審議してほしいというようなことは何も起こってはおらぬわけでございますが、この裁判官と検察官のそれぞれの報酬の問題について、かりに別別に採決しても、あるいは別の日に審議を行なってまたそれぞれ別個の日に採決しても、これはちっとも違法じゃない。私はむしろ本来から言うと、そのほうが筋の通った議論ではないかというふうに思うのですが、調査部長はどのようにお考えですか。
#139
○政府委員(勝見嘉美君) 理論的にまさに佐々木委員御指摘のとおりだと思います。私どもといたしましては、先ほどから繰り返して申し上げておりますように、検察官の俸給は私どもの考えでは裁判官の報酬に準じて定められてしかるべきだというふうに考えておるわけでございまして、そのような言い方から言いますれば、裁判官の報酬法をきめていただきまして、それで検察官がこれに準ずるという形に相なろうかと存じますけれども、理論的に必ずこれがまさに改正法案を一本にして御提案申し上げているわけでもございませんので、その辺のお考えは国会でおきめいただくところであろうかと存じますけれども、従来からいま御指摘のような形で御審議をいただいているというのが実情でございます。
#140
○佐々木静子君 これは私不勉強でよくわからないのですが、外国などではどういうふうになっておりますか。裁判官と検察官と、こういうふうなかっこうで一緒に出てきて、一緒といっても別の法律ですけれども、同時に提案して、一緒に審議して同時に可決するというようなことは、少なくとも英米では全く考えられないと思うのですけれども、そのあたりはいかがですか。
#141
○政府委員(勝見嘉美君) 御承知のとおり、その任用につきまして全く異なっております英米の裁判官につきましては、必ずしも正確な資料を持ち合わせておりませんけれども、実態的に比較的似ておりますドイツの法制を見ますと、現在はドイツの裁判官の報酬は全く一般の公務員法の報酬法の中に含められているようでございます。ただ、これも正確なことではございませんけれども、裁判官の報酬については独立の法律を持つべきではないかというような考え方があるやに聞いております。
#142
○佐々木静子君 わが国の裁判官の給与体制というものは、必ずしもドイツ法によらなければならないという根拠はどこにもないと思うわけでございますし、いまの御答弁によってもドイツでもそのような動きがあるということであれば、これはいま裁判官のキャリアシステムをとっているということからどうしてもこういう給与体制になるのだとは思いますけれども、裁判の独立ということから考えていくならば、決して必ずしも好ましいかっこうじゃないのじゃないか。
 むしろ裁判官の責任の重大さなどというようなことから考えると、これは初任であっても裁判官は裁判官なのですから、もう少し額を増額していいのじゃないか。そして必ずしもこう小刻みに上がっていく必要がないのじゃないか。また、一方が上がり一方が上がらないという人も出てくる。そういうことになると、これは外部から、はたして司法権というものが完全に独立しているのかどうかということについて疑義を持たざるを得ないというような問題も起こらざるを得ない。そういうことから考えると、何もこういうこまかい給与体制にしないでもいいのじゃないかというふうなことが、これは何回も出てきている議論ですけれども、感ぜられるわけですが、そのあたり、最高裁の事務総長はどのようにお考えでございますか。
#143
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 先ほど来佐々木委員からお話のありました点は、基本的な考え方といたしましては私ども共鳴するところが非常に多いわけでございます。ただ、法案の出し方であるとか資料のつくり方であるとか、あるいは御決議のおやりになり方というような問題は、これは内閣と国会との関係でいろいろおきめになることでございましょうから、私どもの口を差しはさむべき限りのことではないと存じます。
 佐々木委員の一番問題にされます点は、おそらく法案の形式的な提出のしかたとかいう問題よりも、むしろ実質的な内容において裁判官と検察官との比較がどうであるかという点ではなかろうかというふうに、私先ほど来伺っておったわけでございますが、その点につきまして、こまかい点はさらに御指摘がござりますれば、人事局長も参っておりますから詳しく説明させたいと存じますが、私どもとしては、裁判官の報酬というものは憲法上に規定があることはもとよりのこととして、さらにその職務の性質から言っても、検察官をはじめ他の行政官とは根本的に質的に違うものである、かように考えているわけでございます。したがって、その額等においても、どういう格差をつけるかということは別問題といたしまして、何らかの独自なものがあってしかるべきもの、かように考えておりますし、したがいまして、現在におきましてもこういう独立の特別立法をもって一般職の職員の給与とは違う制度になっている、かように理解しているわけでございます。
 問題は、あるいは私の口を差しはさむべき事項ではないかもしれませんけれども、先ほど来比較で出ておりますので、検察官の俸給に触れざるを得ないわけでございますが、検察官の俸給がどうあるべきかということは、日本では非常にむずかしいデリケートな問題であるというふうに、かねがね伺っているわけでございます。これはもうこの新しい憲法下で裁判官、検察官の給与制度ができまして以来の問題で、これは佐々木委員つとに御承知のことでございますが、両者の関係についてはかねがね幾多の問題があったわけでございます。
 最近と申しますか、それでももう十年近くになりますが、臨時司法制度調査会等におきましても相当な検討がされまして、裁判官の報酬については、具体的な内容は別として、一応の結論的なものが得られたと言ってもいいのかと存じますけれども、これに対して検察官は、これは明らかに一般の行政官とは違うものである。しかし裁判官とはまた違うものである。ただ、日本の現実においては非常に似た経路をとってきておるものである。その間の関係をどうすればいいのかということについては非常にむずかしいデリケートな問題があるように伺っているのでありまして、私どもとしては先ほど勝見部長からお話がありましたように、裁判官は完全に独自なものでやっていただいている。検察官がそれについてきておられる。
 先ほど佐々木委員は、裁判官が検察官に追随するのはおかしいじゃないかというお話でございましたが、私ども追随しているような気持ちは全然ございませんで、検察官が追随してきておられる。ついてくるなということを私どもの立場として言うべき筋合いのことではございませんので、これは内閣がどういうお考えになるか、あるいは国会でどういうふうにおきめになるか。私どもはあくまで、検察官がどうあろうとも、裁判官は独立して走っている、こういう考えで基本的にはいるわけでございます。
 なお、個々の点についてお話でございますれば、人事局長に答弁させることといたします。
#144
○佐々木静子君 事務総長から詳しい御説明がございましたが、いまの検察官が裁判官のあとをついてきているというお話なんですが、これは内容はよくわかりませんけれども、形の上で見るとあまりぴったり一つになっているものですから、これを民間の人間が見ると、何だかこれは不可分一体の、検察官一体の原則というのはかねがね刑事訴訟法で出てまいりますが、何か裁判官検察官一体の原則でもどこかにあるのじゃないかというような印象を受けるわけなんです。
 私は、裁判所が独立していられるならしていられるで、提案は法務省になるでしょうけれども、もっと独自に増額の提案をされ、また何も一般公務員あるいは検察官の報酬と一緒に、まあ同時着陸はこれは国会のほうでやるわけですけれども、何も全然関係のないときに値上げになったりあるいはどっちが先にどうなろうと私は一向に――司法権の独立ということから考えると、一方が値上げしたからこちらも値上げするというふうなことは全く私はナンセンスなんじゃないかというふうに思うのですが、そのあたりの、これからも毎年こういう問題が起こるのじゃないかと思いますけれども、やはりこういう方法でいかれる御予定なのかどうか。これは検察官のほうがまねをしていられるということですので、最高裁の人事局のほうではどのように、やはりこういうふうにこれから先もやっていらっしゃる御予定なんですか。
#145
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 報酬法の改正案を法務省から提出、御審議をいただいておるわけでございますが、改正案にもいろいろの理由があるわけでございまして、現在キャリアシステムの実態を考慮に入れまして、このようなかなり号俸の数の多い体系をとっております。私どもこれが必ずしも完全なものであるとも考えていないわけです。しかし、あるべき裁判官の報酬ということになりますと、あるべき裁判官の姿と、それから現にある実態というところの調和を求めていかなければいけない非常にむずかしい問題でございます。その点につきましては、しょっちゅう検討いたしておるわけでございます。そういった根本的な問題につきまして成案が得られ、御検討いただくというようなことになりますと、これはまた別問題であろうかと思います。
 ただ、今回はあくまで生計費、それから一般の賃金事情といったようなものが非常に変わってまいりまして、一般の政府職員につきましては人事院の勧告がなされたということで、それに準じまして、準ずると申しますのは何でもまねをするという意味ではございませんで、一般の政府職員について賃金事情あるいは生計費の変動があるということは裁判官についても同じでございます。そういう意味でいわゆるベースアップをお願いしておるものでございまして、この点に関しまして、今回のこのような改正の中身ということでございますと、これはしいて別々でなくてもいいのではなかろうかというふうに考えております。
#146
○佐々木静子君 それで、裁判官の昇給ですね、いまここで一覧表では拝見させていただいているのですけれども、これは現実にだれがどうなってだれがどうなるというようなことは、どこでだれがおきめになるわけなんですか。
#147
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 具体的な個々の裁判官の報酬をどうするかということは、裁判官会議の御決定によって行なっております。
#148
○佐々木静子君 裁判官にも勤務評定があるということがよく言われておりますけれども、そういうふうなものも裁判官会議の決定については参考にされるわけですか。
#149
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) これはいろいろの何がございますが、たとえば判事につきまして特号というような制度がございますが、ごく少数の方がおなりになるというようなことでございます。そういうところへまいりますと、勢い非常に限られてまいります。ある程度の年限に達した方が全員がおなりになるというものではございません。しかし、判事補の間でございますとか、判事になりまして第一ラウンドを終わりますまでの間、大学の卒業年次で申しますと二十二年ということになりますが、それぐらいの間は特段の事情なき限り、どなたも大体同一に昇給されるということでございます。これは結果的に見ました実情と申しますか、そういうことになっております。
#150
○佐々木静子君 いま第一ラウンドのことについては大体基準があるということを伺ったわけですが、何か裁判所の中で、裁判官会議できまるとはいえ、内規のようなものでもあるわけですか。全くそういう内規はないのですか。
#151
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) そのときの状況によりまして自由に御判断をいただくわけでございますが、これは大量でございますので、大体慣例といったようなものがあるわけでございます。判事補の間はこの十二号を十で割るわけでございますので、大体御了解をいただけるかと思います。それから判事の第一ラウンドでございますが、まあ二年半から三年ぐらいというものをお考えいただいて、その間に大体五号から四号、大体判事の第一ラウンドを過ぎるごろには四号くらいのところにおいでになる。それから先になりますとかなり個人差が事実上ついてまいりますので、一概にどういうふうにいかれるということはないようでございます。
#152
○佐々木静子君 これは裁判官会議できめるといっても、一つ一つ裁判官会議で議論を尽くしてきめるわけですか。なかなか、いま各地方裁判所なんかでも、裁判官会議というものはもうすでに形骸化していて、うっかりものを言うとたいへんなことになるというようなうわさも方々で耳にするわけですけれども、これは大体もう管理者のほうできめてあるのじゃないですか。そこら辺の標準がどうなっているのか。内規も何にもないとなれば、上がる人はどんどん上がるけれども、据え置きの人はそのままになる。そこら辺のところは非常に微妙な問題があると思うのですけれども、実際はどのようにして裁判官会議に提案されるわけですか。
#153
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 各地の所属の裁判所の所長、それからさらにその上の高等裁判所長官等が常に管内の裁判官を見ておられるわけでございます。中には病気で休んでおられる方もある、いろいろな事情で勤務を事実上遠ざかるというような方もないわけではございません。そういうのをごらんになっておりまして適当に御上申をいただく。その御上申いただいたところをとりまとめまして裁判官会議に御報告し、御判断をいただく。もう裁判所、発足いたしまして二十数年たっております。大体慣例的なものもございます。その慣例的なものと非常に違うような御上申があったりするような場合には、これは個々に慎重に御審議をいただいておきめ願う。一般的なものは一般的なものとして大体御処理をいただくということで、理論的に申し上げますれば、個々の御上申につきまして個別に御審議をいただくというふうに申し上げるよりほかしょうがないのじゃないかと思っております。
#154
○佐々木静子君 いま判事特号の話がありましたけれども、これは現実には全国で何人ぐらいあるわけですか。
#155
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) この特号の数についてはちょっとお許しをいただきたいわけでございますが、決してそう多いわけではございません。ごく少数でございます。
#156
○佐々木静子君 それはどういうわけでなんですか。それほど秘密を要することのようには私どもは全く思わないですけれども。
#157
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 特号と申しますのは、大体、検察官と比較するとあるいはおしかりを受けるかもしれませんが、現実の問題といたしまして裁判官のほうが定年が二年長うございます。仕事の性質から申しまして、比較的定年まで現実の裁判官として勤務をいただく。その中でも代表的な方が、高等裁判所の裁判長あるいはこれに準ずる二次陪席クラスの方ということでございます。そういう方はおおむねその前に所長等も十分御経験になり、司法行政等にもある程度の御経験をお持ちになり、また戻って一線の裁判を御担当になる、そういうような方を処遇いたします問題として特号の問題があるわけでございます。大体その辺のところで御了解をいただけるのじゃないかと思います。
#158
○佐々木静子君 これは別に秘密になさらねばならぬことでも何でもないと思います。定年が判事のほうが二年長いということはだれでもわかっていることですし、それから私、前のときにも質問したことがあるのですが、法務省からいただいている資料の五十二ページ、五十三ページを見ましても、一般政府職員の俸給との対比を見ても、これは判事の一号が、行政職であるとこれが一番上になるわけですね。事務次官などはこの判事一号と同じになるのじゃないですか。私は前にも申し上げておるとおり、行政官庁の事務次官というと、大学を出てから大体二十五年ぐらいの人が普通なっている。ところが、裁判所で大学を出てから二十五年というと、まだまだ上が一ぱいあるというような状態だから、非常に年齢的に見てむしろこれではアンバランスじゃないかということも言っているくらいで、これは特号がたくさんあっても何もふしぎじゃなくて、ちっとも国会でお隠しになることは要らない、あたりまえのことだから。これはやっぱり教えていただけないわけですか。
#159
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 各号の数につきましては、恐縮でございますが、お許しをいただけるならばこの場ではごかんべんをいただきたいと思います。
#160
○佐々木静子君 どうも裁判所は秘密がお好きなようで、何もそんなにお隠しになることはないのじゃないかというふうに思うわけですけれども。
 それから、裁判官の報酬のことが出てまいりましたのですが、これに関連して、むろん判事特号もけっこうですが、初任の裁判官の報酬が、やはり裁判官という責任の重さから比べると、初任給手当というものもだいぶ出ているようですけれども、まだまだ軽いのじゃないか。そして、それの差があまり大きいのじゃないか。裁判官としてそれぞれ独立しているという点においてはそれぞれ同じだけの責任を負っているのに、報酬の格差が大きいのじゃないかということが私どももう少し何とかならないかと思うわけでございますけれども、また一般の事務職員、これはこの法案とは直接関係ありませんが、それとの格差がまたたいへんに大き過ぎるのではないかというふうに思うわけです。
 報酬の問題と関連してちょっと申し上げますと、裁判官の中で、転勤するけれども家がないという人はいまほとんどなくなっている、大体裁判官の宿舎については一〇〇%完備しているというふうに考えていいわけでございますか。
#161
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) たとえば乙号支部等に御赴任になるような場合でございますと、その地に家などをお持ちになっております方が長年御勤務になっている。そういたしますと、ちょっと官舎を建てる理由がないわけでございます。ところが、定年でおやめになる、そのあとに、これは独身の人でも行けば問題がないわけでございますが、家族を持った人が行くということになりますと、一時期宿舎の手当てにちょっと困ることがございます。そういった例外を除いてお考えいただきますれば、裁判官につきましては宿舎は完備しておる、こういうふうにお考えいただいてしかるべきと思います。
#162
○佐々木静子君 これは裁判所職員との対比ですけれども、この間も私は全司法の大会に参りましたら、非常に裁判所職員の方々が転勤に際して宿舎がない。同じ地裁管内においての転勤であっても、大都会などの場合は大体通勤できるけれども、いなかの大きな県に行けば、とうてい宿舎設備がなければ転勤してもたいへんなことになる。ところが、それだけの宿舎設備がないために実質的に非常な支出を余儀なくされている。また二重生活を余儀なくされている。そういうことに対する苦情がたいへんに多かったわけでございますが、裁判官の報酬に関連して、その点についていま人事局はどのようにお考えになりますか。
#163
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 裁判官についても宿舎がより完備していかなければいけないというのは当然のことでございますが、一般の職員につきましても事情は全く同様でございまして、裁判官は宿舎が要る、一般の職員は宿舎がなくてもいいなどとは決して考えていないわけであります。ことに上のほうの職員につきましては、場合によってはどうしても異動をしていただかなければいけないということもございますので、そういった職員については一〇〇%宿舎を完備するということを最大の目標にいたしまして、この点では努力をいたしておるわけでございます。ただ、何ぶんにも数が多うございますので、場合によりましてはまだ一部手当てのできていないところもあろうかと思います。今後とも努力をいたしていきたいと思います。
#164
○佐々木静子君 それから調整手当の問題ですけれども、これは一般公務員法に基づいて、甲地、乙地に分けて調整手当があるようでございますが、たとえばこの間、徳島の地方裁判所で岩村所長が非常にお気の毒な最期をお遂げになったというような問題が起こっておるわけでございまして、いろいろ御家庭の御事情などで単身赴任を余儀なくされていらっしゃるというふうな方が、これは裁判所に限りませんけれども、検察庁でも同じことだと思いますが、起こっている。これは二重生活をしなければならない場合に、何かそういうふうなことについての配慮があるのかどうか。甲地は大都市でございますけれども、たとえば離島などの場合、子供さんが元の勤務地の学校に行っていらっしゃる場合に、離島まで連れていけないという場合が多いのじゃないかと思いますが、そういうふうなときに裁判所はどのような措置を講じておられるのか、具体的に説明していただきたい。
#165
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 実は、その問題が一番私どもの現在の運用の問題として大きな問題であるわけでございます。
 裁判所は実はいままではできるだけ離島等に、一般の職員の方をむしろ中心にして申し上げますが、異動されることのないように、できればその土地の方あるいはその近くの方にずっといていただくというような方向で任用政策をいたしてまいったわけです。しかし、いろいろの関係上どうしてもやはり異動していただかなければいけない、あるいは現地で適当な方を得にくいというような状況が徐々に出てまいったわけです。現在のところ非常に一般の職員にはお気の毒であろうかと思いますが、一般の事務職員の方は別としましても、書記官の方とか調査官の方、一定の資格要件の要る方は、どうしても別のところに移っていただかなければいけない状況が出てまいります。一人行っていただきますと、その方を帰さなければいけませんので、また別の人に行ってもらうという、どちらが鶏でどちらがたまごか、ちょっと申し上げがたい面もございますが、いずれにいたしましてもかなりの異動をせざるを得ないという状況でございます。
 現在、その異動をいたしますときに、旧任地に自宅等をお持ちの方に新任地の宿舎を用意するということは可能でございますが、旧任地も宿舎におられるような場合、両方の宿舎を用意するということは宿舎法上もできがたいことでございまして、非常に頭を悩ましておるわけでございます。私、いろいろな困難はございますけれども、今後のやり方としては、とにもかくにもそういった比較的若い職員と申しますか、下のほうの部類に属する職員方につきましてはできるだけ転勤を差し控える、むしろそちらのほうを中心に考えていく。役所のいろいろな不都合というものはできるだけがまんをして、あまり若い方とかあるいは収入のそう多くない方に迷惑をかけないようにしていきたい。しかも、そうすることによってなお転勤をしなかったというようなことで不利益な扱い等を受けてもいけませんので、そういうこともないようにしていきたいということで、相当の決意をいたしておるわけでございます。
 ただ先ほども申しましたように、すでに行っておられる方があります。どうしても戻さなければいけない。そのためにはあとを送らなければいかぬというのがございまして、どこで切るかということが非常にむずかしいことでございます。もうしばらく、そういった方向で検討しておるということで見守っていただきたいと思います。
#166
○佐々木静子君 それから、これは一般公務員についても同じことだと思いますし、裁判官に限らず検察官についても同じことだと思いますが、先日も白木先生と一緒に北海道へ参りまして地方の実情を調べさせていただいたのですが、やはり燃料費が非常に高い。灯油などもたいへんに値段が張るので、少々の寒冷地手当をいただいておってもたいへんに足が出るという御苦情が、どこへ行っても深刻な問題として起こっておったわけですが、そのあたりは裁判所なり法務省はどのようにお考えでございますか。
#167
○政府委員(勝見嘉美君) 寒冷地手当につきましては、ただいま佐々木委員御指摘のとおり裁判官、検察官にも支給されます。その実情、内容につきましては法律によって定まっているところでございますが、現行の寒冷地手当ではたして十分かどうかという問題も確かに御指摘のとおりあろうかと存じます。裁判官の報酬法、検察官の俸給法の体系につきましては先ほどから御議論がありましたように、俸給ないし報酬すなわち給与の本体につきましては、裁判官につきましても検察官につきましても法律上いわば独立に定められることになっておりますけれども、寒冷地手当を含む手当につきましては、一般の行政職の政府職員の例に準ずることとなっておりますので、確かに御指摘のとおり一般の公務員もそうであるがというふうにおっしゃいましたけれども、一般の公務員につきまして改善があれば、当然裁判官、検察官についても改善がなされるという形になっておりますので、公務員全体の問題として私ども担当者において十分努力しているところでございます。
#168
○佐々木静子君 それから法務省にお伺いしますが、今度の検察官の俸給の問題で副検事の十五、十六号のあたりですね、これは改正になったところで額が非常に少な過ぎるのじゃないか、これではとても生計を維持するのにむずかしい額ではないかというふうに私ども思わざるを得ないわけなんです。やはり検察官として責任の重い仕事に携わっておられる方が、下の額があまりにも少な過ぎる。そういうことで、できれば社会党としてもこの下限については修正案を出したいぐらいに思っておるわけなんでございますけれども、そのあたりについて法務省は、まあ今度はともかくとして、これから先どのように考えておられますか。
#169
○政府委員(勝見嘉美君) 裁判官につきましても同様でございますが、検事につきましてはいわゆる有資格者、司法試験を通りまして二年間の修習を受けて検事になると、検事二十号のランクで採用されるわけでございます。副検事につきましては、すでに御承知のとおり別個の採用方法がございます。中には年齢の比較的若い方もあり得ることでございまして、一応、検察官の給与体系といたしましては、いわゆるキャリアの検事二十号よりも下のランクを設けること自体につきましては、一応の合理性はあろうかというふうに考えております。ただ、ただいま御指摘のとおり、はたしてこの程度の俸給で十分なのかということになりますと確かに問題があろうかと存じますので、担当者において十分この下限、いわば初任給の増額について努力するようにいたしておるところでございます。
 なお、ちなみに一般の行政職について申し上げますと、いわゆる普通の上級職甲の試験で、大学を出まして国家公務員上級職の甲の試験を通りますと、七等級二号という形で採用されるのが原則となっているようでございます。これらの方々は原則として一年後に六等級になりまして、二年後に六等級の二号というような待遇を受けているようでございますので、現行の検察官の給与体系を見ましても、副検事十六号は六等級の三と四の間にランクされておりますので、一般の行政職、しかも国家公務員の一番むずかしい上級甲の試験を通った一般の行政職の職員よりもまだ上にランクされているというのが、現在の検察官の俸給体系でございます。
#170
○佐々木静子君 この一番下のランクの方がもう少し大幅に俸給が上がるように、これはやっぱり法務省としても当然努力なさるべきじゃないかというふうに思います。
 それから、これは先日来金脈追及などで週刊誌などにかなり書き立てられたことなんですが、どうもいまの自民党政府は経済検事というものをあまりつくらないようにしている。大がかりな会社犯罪などを検察庁が十分に追及できないように、ちゃんとそこら辺はワクぎめができておるのだというふうなことが、まことらしく書かれておりますね。しかも、そういうことでいわゆる金脈にからんだ会社の経理に関連するような犯罪などというものがなかなか追及しにくくなっているというふうにいっておりますが、経済問題担当の検事というものは全国でどのぐらいあるのか。小さい検察庁ではそれ専門というわけにはいかないでしょうけれども。
 また、その捜査に要する費用などというようなものも、これは俸給の問題とはだいぶ離れますが、額が押えられておって、とても大企業犯罪を追及していくには機械力その他で太刀打ちできないような機構になっているんだというふうにマスコミの報ずるところでございますが、そのあたりの実情はどうなのか、お答えいただきたい。
#171
○説明員(筧榮一君) 御説明申し上げます。
 まず組織の面から簡単に御説明いたしたいと思いますが、御承知のように、検察庁におきましては係検事制度がございまして、係検事につきまして一名以上を、地方検察庁の例で申し上げますが、検事正が指名するということになっております。経済財政事犯につきましては財政経済係検事及び補助金を扱います特別刑事係検事、この両者になろうかと思いますが、地方検察庁におきましては、各地検一名以上の係検事がそれぞれ指命されております。
 そのうち、東京地検におきましては財政経済係検事として九名、特別刑事係として二名、それから大阪地検におきましては財政経済係検事二名、それから奈良地検におきまして財政経済係検事二名が指名されております。そのほかはそれぞれ一名ずつが指名されておるわけでございます。ただ小規模の地検におきましては、財政経済係検事と特別刑事係検事をそれぞれ別個に指名するというほど検事の数が多くないといいますか、一名で両方が処理できるという体制の場合にはそれを兼ねておる場合もございますし、財政係検事がほかの係検事を兼ねておる場合もございますが、ただいま申し上げましたように、大地検におきましては複数、その他については一名の係検事が指名されておるわけでございます。
 それではトータル何名かと申しますと、現在のところトータルはいま手持ちがございませんが、少なくとも一名ずつ、ダブっておりますのが二、三十庁あるかと思います。それでおおよその数がおわかりいただけるかと思います。
 それと、ただいまのは係検事の組織的な面でございますが、現実にその財政事犯について捜査に従事している人員の関係でございます。検事については、いま申し上げましたが、たとえば係検事として指名を受けておりますのが一名ないし大阪で二名と申しましても、現実にはそれ以上に、係検事でない検事が財政事犯を常時担当している事例もございます。たとえば、先生御案内のとおりかと思いますが、大阪地検では捜査については二名がやっておりますけれども、税法違反事件等の公判につきましては二名が専従いたしております。これもいわば経済事犯の公判面を担当しておるわけでございます。それからほかの地検におきましても、財政経済係の補助といたしまして検事を部内的に指名して、その補助に当たらしめているという事例もございます。それからこれを補助いたします検察事務官につきましても、原則として検事一名に補助の立ち会い事務官一名がついておりますが、そのほかに大きい地検におきましては、財政経済に関する資料の収集あるいは情報の収集ということで、それに当たっておる事務官も数名ございますし、副検事も置いておるところもございます。その常時といいますか、事情によって変動がございますので、その数については正確には把握いたしかねますが、人員としてはそのようになっておるわけでございます。
 ただ、さらに現実に事件が起こった場合にどうかと申しますと、たとえば一つの地検で財政経済係一名のところで大きい税法違反が発覚いたしました場合には、他の検事もこれを応援いたしまして、その係検事が主任検事となり、検事五人あるいは十人でチームを組織して解明に当たるわけでございます。さらに当該地検の中でまかなえない場合には高検管内、あるいは全国に及ぶ経済事犯の場合には全国から応援をとりまして、数十名に及ぶ捜査体制をとってこの捜査に当たるということは、常にと申しますか、しばしば行なわれておるところでございます。したがいまして、その人員を財政経済事犯にあまり充てないというような実情はないかと思います。
 それから次に予算面でございますが、御承知のように検察活動に直接必要な経費は検察費ということで、これは中身は別に幾らが財政経済に使うべきであり幾らが公安であるという色はついておりませんで、毎年の事件数の推移に応じまして若干の増減はございますが、旅費幾ら、庁費幾らということで、現状で約十一億数千万円、旅費、庁費、謝金その他もろもろの経費合わせてございますが、十一億円余が検察費として本年度で認められておるわけでございます。これを各地におきまして起こりました事件の必要性に応じて支出するわけでございまして、たまたま経済財政事犯の端緒が発覚し、捜査に着手するという場合に、予算面で着手に制約が及ぶという事情は全くございません。当然やるべき事案であれば、当該庁に持っております検察費をつぎ込んで捜査をいたしますし、それでなお不足する場合には、中央において留保しております費用をそれにつぎ込みまして、経費が足りないから捜査を控えるというようなことは絶対にないようにいたしておるつもりでございますし、現にそのように運用されておると考えております。
#172
○佐々木静子君 これから大がかりな経済事犯というようなものもどんどん出てくると思いますし、また、先日来大きく世論が起こっておりましたこの権力と大企業が結びついての犯罪というようなものに対する摘発が、どうも国民の目から見ていると、どうしてここら辺にメスが入らないのであろうかと思われるような歯がゆい思いがするようなことが多いわけですが、そういう意味におきましても、この検察官の俸給の改正に関連もいたしまして、これは検察権の独立を害するという意味じゃなくて、ひとつ厳正な検察権の行使というものを国民が期待しているということも申し添えておきたいと思います。
 それからこれは裁判所へお伺いいたしたいのですけれども、私のほうへ、ここへ持ってきただけでもこれだけですが、毎日のようにたくさん裁判所の廷吏の方から陳情が来ているわけでございます。と申しますのは、これは廷吏が五等級に昇格するのが非常に頭打ちの状態でむずかしい。そういうことで廷吏の方が、かなり年齢に達してきて勤務年限も長くなっているけれども、裁判所の職場の中において差別をされている。そういうことで法廷立ち会いの危険性などから考えても、八%の調整手当の支給を実施してほしい、また廷吏という名称ももう少し変えていただきたいというふうな陳情がそのおもな趣旨のようでございますので、そのあたり、人事局長はどういうふうにお考えでございますか。
#173
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 名称の点でございますが、御承知のように前は廷丁と申しておりましたのを廷吏というふうに戦後改めたわけでございます。御指摘のように相当年輩の方もあるわけでございます。廷吏の仕事の格付けとしましてはそう高くはないということでございますが、その仕事の困難さということもございまして、年来調整手当の要求ということを続けてまいっておりますが、いまだ成果を得ていない状況でございます。この問題につきましては今後も十分努力いたしまして、その職務の特殊性というものを待遇の上に反映させていきたいというふうに考えております。
 なお、調整手当ということとも関連いたしまして、より根本的な重要な問題でございます格付けの問題で、級別定数の上位等級の数の獲得ということ、これはなお今後はひとつ重点事項としてやっていきたいと考えております。
#174
○佐々木静子君 ぜひこの廷吏さんの問題も解決していただきたい一つでございますが、裁判官の報酬の値上げに便乗するわけではありませんけれども、これは弁護士会でかねて問題にしている国選弁護人の報酬の問題でございます。
 裁判所の刑事局長にお伺いしたいのですが、この国選弁護制度が発足いたしました昭和二十三年においては、地裁で開廷が三回と見て、当時の判事三号俸の報酬が月額一万二千円であった。そしてそれの十分の一がいま申し上げた国選弁護人に対する報酬千二百円、大体地裁で開廷三回として判事三号俸の十分の一というのが基準であって、これは統計で見ますと、その翌年の二十四年にはさらに八分の一に比率において上がっているわけですね。ところが、ちょうど十年後の三十三年にはそれが十二分の一に比率が落ちて、そしてそれからあと、さらに十年後の四十三年には二十分の一に落ちている。そして昨年四十八年度は二十五分の一になっているというふうなことで、裁判官の報酬も必ずしも私はこれで多いとは思いませんけれども、この上昇カーブと比べると国選弁護料のカーブが非常に横ばいで、どんどんと格差が大きくなっているわけでございますね。
 この事柄について、判事三号俸というのが判事としても最もトップクラスの方だ、弁護士の平均年齢、平均のキャリアから考えるともっともっと下だというお話もあるとは思いますけれども、そもそもの出発点がこれは比率の問題ですので、判事三号俸の月額の十分の一が大体国選弁護料の基本額というふうなところから出発している事柄から見ますと、いま非常にそれが低くなってしまっている。今度またさらにこの報酬が、きょうこれが可決されますと上がるわけでございます。ますますその開きが大きくなるわけでございますが、そのあたり最高裁とすると、国選弁護料を何とか大幅にこれは値段が上がるように努力していただきたい。判事三号俸を基準にして何分の一ぐらいまでに来年度は縮めていただけるか、ちょっと刑事局長のお考えを述べていただきたいと思います。
#175
○最高裁判所長官代理者(千葉和郎君) 佐々木委員御指摘のように、国選弁護が始まりましたその当初の報酬金額と、もちろん基準でございますが、それと判事三号というのを比較しまして、その後の経過をお示しいただいたわけでございますが、そういたしますと、御指摘のとおり非常に差が出てきております。ただ、国選弁護人の報酬の定め方というのは、実は日弁連のほうの報酬基準のほうになるべく報酬基準をそろえたいというような考え方で来ておりまして、日弁連のほうの報酬基準は昭和二十四年、先ほどお話ございました地方裁判所でいいますと二千五百円の報酬基準のときに五千円であったわけでございますが、それが昭和三十年に一万円にふえまして、それから三十八年に二万円にふえまして、それでずっと来ておりましたので、私どもとしましても、昭和四十年くらいのこるからは大体それに近づけるということで、それで国家公務員のベースアップの率に下がらないようにというような目標でやってきたわけでございますが、昭和四十八年に突然報酬基準が三倍になりまして、いまや非常な差が出てきてしまった、こういう実情でございます。
 昨年は、いままで大体九%ないし一〇%のアップ率でありましたのを一八%にふやしまして、大いに努力したつもりでございますが、そういうふうな日弁連の基準が急に上がりましたので、その格差がまた大きくなってしまった。もちろん、私ども何とか報酬基準をよくしたいと考えまして毎年鋭意努力しておりましたが、今回もそういう状況もありますので、裁判官の報酬のどれとランクするというようなのはいままでやっておりませんでしたので、いま急にどうと申し上げかねますが、とにかく日弁連の報酬基準になるべく近づけるということで大いに努力したいと、かように考えております。
#176
○佐々木静子君 不十分ながら裁判官の報酬というものも、このようにだんだんと今度は大きくアップするわけですから、これは裁判官だけアップしてそれでいいというものじゃない。最高裁のほうで、ぜひともこの訴訟関係人としての弁護人の国選弁護料の大幅アップということについて、ひとつ鋭意御努力いただきたい。事務総長、いかがでございますか。
#177
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 佐々木委員の御意見まことにごもっともでございます。先ほど刑事局長からお答え申し上げましたように、私どもとしてもできる限りの努力をしてまいりたいと考えております。
#178
○佐々木静子君 それではもう時間がきましたので、私質問を終わりたいと思いますが、最高裁が百八十億という大きな予算で最高裁の庁舎、あのすばらしいのをお建てになったのも、これは私も必ずしも悪いというわけではございませんけれども、結局、建物をりっぱにしたから裁判がよくなるわけじゃなくて、問題はそこの裁判所で仕事をする人が問題なわけでございます。その人を大事にする意味において、裁判官とか検察官が安んじて本来の趣旨に沿っての裁判なり検察が行なえるようにという意味で、私どもこの報酬の値上げというものにつきましても御協力させていただいているわけなんでございますけれども、私ども非常に遺憾に思いますことは、たとえばいまの最高裁一つを取り上げても、これは大きな予算をさいてあの裁判所をつくった。まあ司法権というものから見ると悪いことではないでしょうけれども、これはもう弁護人までも含めて国民自身は近寄ることもできないような実情なわけです。事務総長は三日ほど前に御赴任になったばかりで、その実情もどの程度お聞きになっていらっしゃるか知りませんけれども、一般国民は入ることすらできないという状態になっているわけでございます。
 私は、あそこの中で仕事をなさる、ここにいらっしゃっている方々は、それはりっぱなところでお仕事なされるのだから非常にいいとは思いますけれども、一般の国民にやはりその利益が還元されるようなかっこうで裁判所予算というものは当然使われるべきじゃないか。一例をあげると、それこそ国民と密接に結びついている簡裁では、くつをぬがなければ廊下も歩けないようなひどい音が、大きな音がきしんで、中で審理をしているのに忍び足で行かなければじゃまになるというような悪い建物がまだたくさんあるわけです。雨漏りのするところもある。国民はやはりそういうところへ出入りしているわけです。ですから、そういう点もお考えいただいて、ほんとうに国民の利益になるように、国民のための裁判所予算というものをぜひこれからおとりいただきたい、そういうことを特にお願い申し上げたいわけでございます。
 これで私の質問を終わりたいと思いますが、最後にその点について事務総長からの御所見を述べていただきたいと思います。
#179
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 佐々木委員からいろいろお話がございまして、申すまでもなく、いまお話のとおり裁判所は国民のためにあるものでございます。上は最高裁判所から下は簡易裁判所に至るまで、国民の皆さま方が裁判所を十分に御利用いただくという方向で従来も指導してまいっておるわけでございますが、今後ともさような方向でやってまいりたいと、かように考えるわけでございます。
#180
○白木義一郎君 一点だけお伺いしたいと思います。
 先ほど寒冷地手当について御答弁がありましたけれども、反対に非常に暑さのきびしい、また湿気の多い沖繩県という特殊な気象条件のもとにおける裁判官あるいは検察官に対するいわゆる酷暑手当といいますか、亜熱帯手当といいますか、この新設についてお伺いしたいと思いますが、昭和四十七年の十一月の九日に当委員会において、法務省側の答弁として、この問題は一般公務員とのかかわり合いにおいて十分慎重に検討しなければならない問題であると、このような答弁をされておりますので、その後、この手当についてどのような経過あるいはお考えをお持ちになっているか、その一点だけお尋ねしておきたいと思います。
#181
○政府委員(勝見嘉美君) 裁判官及び検察官に限局して申し上げますと、先ほど手当について御説明申し上げましたように、また、ただいま白木委員御指摘のように、一般の公務員につきまして手当の改善がなされますと、裁判官と検察官についても当然それに準じまして改善がなされるべきことになっております。ただいま御指摘の、いわば暑い地域の手当につきましては、私ども実はたいへん恐縮でございますが、担当者でございませんので、人事院ではたしてどの程度の資料を集められて御検討なすっているか、よく存じませんけれども、私どもといたしましては、一般の政府職員につきまして一日も早くその手当が実現されるよう、担当者において関係省庁に働きかけまして、実現をはかりたいというふうに考えている次第でございます。
#182
○橋本敦君 法案の審議に関連してお伺いしたいと思うのですが、現在第一線の裁判官はたいへんな激務に耐えていらっしゃるように私は見ています。これを弁護士並びに国民の側から見ますと、裁判官の数が足らなくて事件の審理がおくれるということにもなって、弁護士会からは裁判官の増員に対してかねてから強い要請を提出をしている状況になっています。そういうことで現在第一線の裁判官が、一体民事事件でいえばどのくらいの事件をお持ちになっているという平均的な数字なのか、裁判官の不足は現在の人事局長がごらんになるところでどの程度のものと理解していらっしゃるか、そのあたりお答え願いたいと思います。
#183
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 大都会の裁判官と小規模の裁判所の裁判官とでは非常に事情が異なっておりますので、橋本委員御指摘の全国平均で何件ぐらいを妥当であると考えておるかという観点からは、なかなかお答えが出しにくいわけでございます。しかし、東京とか大阪というような比較的専門化された大きい裁判所で考えてまいりますと、一人二百件から二百五十件ぐらいが大体御担当である。また私の経験等から申しましても、そのぐらいの数字を下がりますと、かえって期日があき過ぎる、あるいは当事者の準備が間に合わないというような状況も出てまいります。民事といたしますと、二百五十件前後といったようなものが一応の基準になるのではないか。そして小規模の裁判所あるいは地方の裁判所になりますと、その他のいろんな仕事が加わってまいりますので、その仕事を事件件数に割り直した場合に何件ぐらいつくのが妥当であるかというようなことできめていかなければいけない、こういうふうに考えております。
 そこで、現実の現在の状況といたしましては、そういったような形で裁判官が執務をいたしておりますが、なおやはり特定のところあるいは全国、またそれはそれで理由があるわけでございますが、事件がたまって当事者の方にも非常に御迷惑をかけるというようなこともございます。現在そういうところには、ある程度事件が停滞しておると思われるところには人員について特別な手当てをいたしまして、そういった事件滞留状況の解消というようなことも心がけるというふうにいたしております。その程度の人員のやりくりというものは現在でもできておるわけでございます。
 しかし、裁判官の適正裁判官数と申しますか、あるべき裁判官数ということになりますと、いろんな要素がございますが、別のことばで申し上げますれば、今日私ども、裁判官はやはりできるだけ数多くの方が十分適正かつ迅速に事件が処理いただけるように任官していただく、裁判官になっていただくということが好ましいと考えております。問題はその質ということでございます。あまり質を下げて人数だけそろえるということも、これは国民の権利義務に重要な関係のあるところでございますので、いかがであろうかと思います。質を下げることなく、できるだけ好ましいりっぱな裁判官をできるだけ数多く獲得したいというのが現在の私どもの希望でございます。
#184
○橋本敦君 私ども第一線の裁判官を見ていたり弁護士の立場で言いますと、裁判官を増員してほしいという要求は、大阪にしろ岡山にしろ伊丹にしろあるいは神戸にしろ、私の知っている大阪近辺でもかなり根強い強い要求なんですね。いまおっしゃった裁判官の増員問題は、国民から信頼を受ける裁判官という意味においても、また裁判という特別の法の世界のむずかしさから言っても、質を下げるわけにいかないというお話もそれなりに理解できますけれども、それは裁判官としての研修なりあるいは研さんなり、あるいは経験をお積みになるという中で解決をしていかれる問題も多いわけです。現状の裁判官不足を解決するために弁護士会からも強い要求もあり、裁判官の判事補初任給についても調整手当をつけるなど一定の努力が払われてきたわけですね。しかし、依然として裁判官の増員ということはなかなか実現できないという事情にある。
 そういう中で、裁判官の給与体系がどうあるべきかという根本問題を、単に初任給の給与を引き上げるというだけでなくて、さらに検討を深めるという時期にきているのではないかという感じもいたしておりますが、そこらあたりのお考えはいかがでしょうか。
#185
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 御指摘のとおりの問題を持っておりまして、これをどのように考えていけばいいか、あるべき裁判官、ことに判事補の初任給というものをどういうふうに設定すべきかということで、私どもも事あるごとにその点の検討はいたしておるつもりでございます。初任給調整手当と申しますのも、結局は、同じに修習を修了いたしまして各地の弁護士会、事務所等にお入りになるような方の収入との格差をなくしていくという方向で行なわれた、いわば次善の策のことであるわけでございます。これをどのように扱っていくかということは非常に問題でございます。ただ、先ほどもちょっと申し上げましたが、やはり給与というのは非常に理論的な面を持っておりますと同時に、きわめて現実的な面を持っておるものでございまして、大部分の方が大学を出て二年の修習で任官され、いわゆるキャリア的にずっとおつとめになるといたしますと、そういった同じように大学を出ました国家公務員とあまり違った金額にもできない。そこに悩みがあるわけでございます。弁護士の先生方でございますと、事務所からおもらいになる報酬は別として、仕事をなさって、その仕事によるまた別途の収入ということもあり得るわけでございまして、裁判官にはそういう出来高というわけにももちろんまいりません。その辺のところ、なかなか最終的にこれがいいのだという結論は出しかねておるというのが現状でございます。
#186
○橋本敦君 そういうむずかしさはあるにしても、裁判官の増員ということに関連をして、若い法曹を志す人たちが裁判官になろうという、そういう期待と意欲がわくような方向でひとつ検討を深めてもらいたいということをお願いしておきたいのです。
 それから一つ具体的に伺いたいのですが、今度の給与法の改正によって、判事補に任官をして五年たったぐらいで、大体この表でいきますとどのランクに通常格付けされますか、何号俸ぐらいに。
#187
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 判事補の間は、先ほども佐々木委員の御質問にお答えしましたように、ある意味で非常に機械的にやっております。また私は、判事補というのはみんな成長していく過程の仕事でございますので、仕事の中身にも差はございませんし、この段階において差がつくということはむしろないと考えることのほうが正しいというふうに考えております。といたしますと、十年間でこの一号から十二号を消化するわけでございますから、大体そのまん中のところになるというふうにお考えいただければしかるべきかと考えます。
#188
○橋本敦君 そういたしますと、判事補の七号ないし八号ぐらい、こういうことでございますね、五年たちますと。
#189
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 十二号から出発いたしまして、一号というのが判事補の最終号俸で、十年目に一号になるわけではございませんので、もう少し上のほうになるのじゃないかと思います。
#190
○橋本敦君 そういたしますと、たとえば五号あるいは四号をとってみますと、今度の改正案で判事補四号で十七万四千円になる、こういうわけですね。いろいろ手当等つきまして、概算でけっこうですが、判事補になって五、六年たった方が手取りどのぐらいになりますか。約幾らでけっこうです、手取り額。
#191
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) これは一般的なことで考えておりまして、そのころでございますと独身ということもない、しかし子供がそう何人もおるということはないということでございますから、大体判事補の六号で手取りが大体十五万円余りになるというふうに考えております。
#192
○橋本敦君 私は裁判官におなりになる地方の若い人が、判事補に任官されてから一番やっぱり勉強なさり、また多くの図書その他をどんどん買って勉強していただくということは、これは図書館を利用する以外に非常に大事なことであると、こう思います。現在の物価高の中で、私ども法律家の専門書は大体最低五千円、大体記念論文集になりますと一万円をこえるということになります。そうすると、一カ月の図書費は裁判官がほんとうに勉強なさるには私は三万、四万というぐらいが最低要るのではなかろうか。そういたしますと、判事補に任官をして五、六年たって手取りが十四、五万ということです。図書費にそれだけ使いますと、家族の生活費を含めてこれは決して楽な状況でないということを痛切に感ずるのですね。生活するだけならいいですけれども、裁判官としての研修のための研究資料、そしてまたよい裁判官になるためには専門書の勉強だけでなくて、よい小説を読むなり社会勉強なさるなり旅行なさるなり、社会常識と見聞を広めていただく必要がある。そういう点を考えますと、今度の給与法の改正では、一番よく勉強していただきたい若い裁判官の皆さん、第一線の皆さんに見合うだけの給与の改正がこれで十分と言えないきらいがあるという心配をいたします。人事局長として、いま私が指摘したようなほんとうに研修し、社会常識をつけるという意味での立場から見て、どのようなお考えでしょうか。
#193
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 私どももそういった経験を持っておりまして、一番知識を吸収するのに意欲も持っており、また吸収も可能な年齢であるわけでございます。書籍費が非常に高騰いたしております。そう簡単に十分書籍を購入し、なおかつ余裕のある生活ができるということまではまいらないかと思います。
 ただ、役所といたしましても、そういう点非常に配慮いたしまして、これも当委員会等非常に長く御援助をいただいた結果でございますが、裁判所の資料整備、環境整備、ことに判事室の環境整備というようなことに力を尽くしており、毎年数億の費用を投じて、読みたいけれども何も手元に常に置かなくてもいいというような書籍は役所でそろえるというふうな方針をとっております。恒常的なすぐ手元に常に置いておかなければいけない書籍等は、これは別でございますが、できるだけ役所で論文等見てもらうというような方法でいたしております。そういった点についての資料の整備等も、今後も十分力を入れてやっていきたいと思います。宿舎等につきましても、できるだけ御承知のような低廉な宿舎を提供いたしまして、その報酬の大部分を、そういった勉学のために使うということも必要でございますが、そちらに全部注ぎ込まなければどうにもならないというようなことのないように、環境の整備ということを努力してやっていきたい。今後もそのつもりでございます。
#194
○橋本敦君 先ほども話に出ましたが、徳島に単身御赴任になった裁判官が、家族にみとられることもなく、なくなってしまうというような悲しい悲劇が起こっているし、実際裁判官の激務というのはよくわかるわけですね。また、検察官の立場をとってみても、第一線の検察官、特に捜査を担当する検察官の激務、これはたいへんなものだと思います。
 そこで私はこういう観点から、今度の給与の改正案については、下のほうはアップ率はなるほど高くなっている。たとえば判事の場合、八号俸で二九・五%というアップ率になっている。上のほうでは、たとえば最高裁長官の場合は増率は一九%にとどまっている。努力は下に厚くということでされていることは理解をいたしますが、それでも上のほうは基礎ベースが高いですから、増額を見ますと、最高裁長官の場合は二十万円増額ですが、判事補八号の場合は二九・五%にかかわらず、わずか六万五千円だという状態にとどまっている。これはもっと抜本的に改正をしていただきたい、そういうように私は努力をお願いしたいと思います。
 特に最高裁長官あるいは最高裁判事、いわゆる内閣総理大臣その他特別職に見合う関係でまいりますと、絶対額において私はこれはたいへんな金額であるというふうに理解をするのです。たとえば十年たってようやく判事におなりになって、今度の改正案で二十八万五千円、判事補の場合でいえば、判事補十二号で十万三千二百円という改正になります。これはもうまさに最高裁長官、最高裁判事の百万円前後と比べてみますと、格差が大き過ぎるという感じも私はする。なぜこうなるかというと、いわゆる最高裁長官と総理大臣とをそろえる、特別職がまず上がる、それに右へならえをしていくという現在の体系自体にも問題がある。
 私はそういう観点から言いまして、特別職が据え置かれた年度も過去には幾度もあったですね。だから、これだけ総理大臣あるいは最高裁長官クラスが給与が高いときには、これを据え置いてでも下に厚くという処置をとるべきではないか。まさに、いまの国民生活のたいへんなしわ寄せが低所得者の皆さんはじめ下の方に及んでいるという実情です。そういう意味で私は今度のこの法案については、最高裁長官が総理大臣と三権分立、同じ地位に立つという立場で常にこうされるのですけれども、最高裁長官の給与が高過ぎるという意味じゃなくて、特別職を据え置いてでもやるべきであったという意見を持っているわけです。
 それにしても、私は若い法曹志望家がほんとうに裁判官になろうという期待を強めるためには、裁判所内部の官僚体制化ということは極力防がねばならぬという考えを持っています。その意味では日常の司法行政、裁判官会議の重視、これはもちろん事務総長にお願いするところですが、給与の体系自体も、まさに一般職公務員の体系にひとしいような年功序列型あるいは職務職階型ということだけでは、上と下との開きが大きくなるのに加えて、いわゆる官僚型賃金体系を裁判官も押しつけられているという実態にならざるを得ないのではないか。こういう意味ではもう一度もとに戻って、あるべき裁判官の給与体系はいかなるものであるべきか、官僚型裁判所にならないために御検討を願いたいということを強くこの点では要望しておきたいと思います。そういう点についてさらに御検討を深めるという御意見をいただけるかどうか、事務総長のほうに一言お願いしたいと思います。
#195
○最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 裁判官の給与の問題は、先ほど来佐々木委員あるいはいま橋本委員からお話のございましたとおり、きわめて重要な問題であると私どもかねがね考えておりますし、またそういう心組みで取り組んでまいった次第でございます。ただ、いまお話のございました当面具体的にどういう方向で給与の改善に向かって進んでいくかという点につきましては、先ほど御理解のあるお話をいただきましたとおり、何ぶん私着任いたしましてまだ五日目ぐらいでございますので、根本的な趣旨におきましては先生方の御意見のとおり考えておりますけれども、現実的に具体的に当面どういう方向でその問題を処理していくかということにつきましては、いろいろ従来からの経緯もあると思います。その点まだ十分に所管局長なり関係方面との話し合いもいたしておりませんので、今日のところはさような抽象的なことでひとつ御了解いただきたいと存じます。
#196
○橋本敦君 最後にもう一点、別の観点からお尋ねをしておきたいのですが、裁判所の独立なり国民からの信頼という問題は裁判官の地位の独立というだけにとどまらないで、裁判所全体が国民の信頼と独立を確保するためには、書記官の皆さん、廷吏の皆さん、速記官の皆さんも含めた裁判所全体の、それなりの地位の保障ということが私は必要だろうと思うのです。ところで、裁判所書記官の皆さんや廷吏の皆さん等の給与の改定の問題は、この裁判官の報酬法では定められていませんから、一緒に議論されるということは、具体的数字や定数は法案の上では一緒にならない。これは私はやっぱり一つの問題ではなかろうか。そういう意味で法律の改正が必要ですから、すぐにはまいりませんけれども、来年以降、裁判官の給与の変更という問題が毎年起こってくるということになると思いますが、せめて裁判所書記官、速記官、あるいは廷吏さんたち、その方たちの給与の改正方針あるいはその実態を、付属資料として当委員会に裁判官給与改正に関連をして提出をしていただくという処置をとっていただけるかどうか。それとあわせて、検察官の場合も、検察官以外の検察事務官あるいは検察庁に働く皆さんの場合も同じですが、そういうような提案方式を御検討願えるかどうか。法務省並びに矢口人事局長のほうからそれぞれのお考えを伺わせていただきたいと思います。
#197
○政府委員(勝見嘉美君) 十分検討させていただきたいと存じます。ただ、一般の法務省職員及び検察庁職員につきましては、一般職の給与等に関する法律そのものが適用になるわけでございまして、御承知のとおり、検察庁職員につきましては公安職(二)という表の適用がございます。それぞれの表にどのようにいわば適用されていくかという問題につきましては相当検討を要する問題であろうかと存じますけれども、私どもといたしましては、次回の裁判官及び検察官の報酬及び俸給の改正につきまして、一般のそれ以外の職員についてどうなっておるかということを御理解いただけるような表を作成することについて、十分検討させていただきたいと思います。
#198
○最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 裁判官の場合と同様に裁判所としても重要な関心を持っており、努力をいたしておる問題でございます。御理解をいただけるような御説明をできるようにいたしたいと考えております。
#199
○橋本敦君 それでは最後に。いまのような努力をしていただくことと、実際に上下の格差があまりにも開かないということ、特に第一線で御奮闘願っている裁判官、検察官、関係職員の給与が、まさに司法としての信頼を得られるような方向で具体的内容でも努力をしていただくということを強く期待をして質問を終わるわけですが、今度のこの改正案自体については、いま私が指摘した幾つかの問題が全面的に解決をされてはいないというように見ておりますので、この法案について私は、もちろんあえて反対はいたしませんが、全面的賛成もしかねるという立場でございますので、来年度以降の努力を切にお願いをして、質問を終わります。
#200
○委員長(多田省吾君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#201
○委員長(多田省吾君) 御異議ないと認めます。
 それでは、これより討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べを願います。
 別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
 まず裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。
  〔賛成者挙手〕
#202
○委員長(多田省吾君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 次に、検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。
  〔賛成者挙手〕
#203
○委員長(多田省吾君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、両案についての審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#204
○委員長(多田省吾君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ―――――――――――――
#205
○委員長(多田省吾君) これより請願の審査を行ないます。
 第五九四号熊本地方法務局免田出張所存置に関する請願外七件を議題といたします。
 まず専門委員から説明を聴取いたします。
 速記をとめてください。
  〔速記中止〕
#206
○委員長(多田省吾君) 速記を起こしてください。
 第五九四号熊本地方法務局免田出張所存置に関する請願外七件は保留と決定することに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#207
○委員長(多田省吾君) 御異議ないと認めます。よって、さよう決定いたしました。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後六時十八分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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