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1974/10/23 第73回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第073回国会 文教委員会文化財保護に関する小委員会 第1号
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1974/10/23 第73回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第073回国会 文教委員会文化財保護に関する小委員会 第1号

#1
第073回国会 文教委員会文化財保護に関する小委員会 第1号
本小委員会は昭和四十九年七月三十一日(水曜
日)委員会において、設置することに決した。
八月一日
 本小委員は委員長の指名で、次の通り選任され
 た。
      上田 茂行君    塩崎  潤君
      楢橋  進君    西岡 武夫君
      羽生田 進君    深谷 隆司君
      山崎  拓君    木島喜兵衞君
      小林 信一君    嶋崎  譲君
      栗田  翠君    高橋  繁君
      安里積千代君
八月一日
 塩崎潤君が委員長の指名で、小委員長に選任さ
 れた。
―――――――――――――――――――――
昭和四十九年十月二十三日(水曜日)
    午後四時七分開議
 出席小委員
   小委員長 塩崎  潤君
      西岡 武夫君    羽生田 進君
      木島喜兵衞君    小林 信一君
      嶋崎  譲君    栗田  翠君
      高橋  繁君
 小委員外の出席者
        文化庁長官   安達 健二君
        文教委員会調査
        室長      石田 幸男君
    ―――――――――――――
十月二十三日
 小委員安里積千代君八月二十六日委員辞任につ
 き、その補欠として安里積千代君が委員長の指
 名で小委員に選任された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 文化財保護に関する件(文化財保護制度の現状
 と問題点)
     ――――◇―――――
#2
○塩崎小委員長 これより文化財保護に関する小委員会を開会いたします。
 文化財保護に関する件について調査を進めます。
 この際、文化財保護制度の現状と問題点について政府より説明を聴取いたします。文化庁長官安達健二君。
#3
○安達説明員 文化財保護行政の現状と問題点につきまして申し上げさしていただきます。
 お手元に資料といたしまして「文化財保護法の主たる問題点について」という資料と「文化財保護行政関係資料」並びに現行法を用意いたしておりますが、この「文化財保護法の主たる問題点について」に沿いまして御説明申し上げたいと存じます。
 現行の文化財保護法は、昭和二十四年、世界に誇るべき法隆寺金堂壁画の焼損というまことに不幸な事件を契機といたしまして、文化財保護に対する国民的な世論を背景といたしまして、昭和二十五年参議院議員提案により、従来の国宝保存法、史跡名勝天然記念物保存法等を一体化して、有形文化財及び記念物、さらに無形文化財を加えた文化財の各般にわたり保護の体制を整備した画期的立法でございました。
 その後、昭和二十九年に政府提案により一部改正が行なわれ、無形文化財や民俗資料について指定制度を確立するなど、無形文化財や民俗資料の保護の改善充実をはかりますとともに、文化財保護法全体にわたりますところの法制的整備が行なわれたのでございます。しかるに、その後今日に至る二十年間、文化財にかかわる開発事業の異常な拡大や広般で急激な経済的、社会的変動にもかかわらず、大きな改正も行なわれず今日に至っております。
 近来、文化財保護法の改正の必要が各方面から叫ばれておりますが、全国都道府県教育委員長協議会、都道府県教育長協議会及び日本考古学協会等からの要望や日本学術会議の勧告等各方面から具体的な提案も行なわれるに至りました。
 この内容等につきましては、この「文化財保護行政関係資料」の中に掲げてございます。
 文化庁としましては、従来から現行法のもとにおきまして、国民一般の協力を得ながら、都道府県、市町村との連携を密にし、関係予算の拡充をはかるなど、文化財保護の推進に極力努力してまいったところでございますが、新しい時代の要請に応じた文化財保護の万全を期するためには、現行法の必要な改善をはかることが急務であると考え、文化財保護法改正の問題点等を検討してまいっているところでございます。
 まず、現行の文化財保護の制度の大要をごくかいつまんで御説明申し上げたいと存じます。
 保護の対象といたしましては、美術工芸品、建造物などの有形文化財、伝統芸能や伝統工芸技術などの無形文化財、国民生活の推移の理解のため欠くことのできない民俗資料及び史跡名勝天然記念物がございます。有形文化財のうち国宝、重要文化財に指定しておりますのは約一万件、重要無形文化財の指定件数は芸能関係二十八件、工芸関係三十六件となっております。重要民俗資料の指定は有形のものに限られておりまして、約百件、史跡名勝天然記念物に指定されておりますのは約二千件になっております。
 詳細につきましてはこの資料にございます。
 これらの指定文化財につきましては、その保存修理、防災、土地の買い上げ、環境整備、公開の措置などを推進いたしておるのでございます。文化庁の昭和四十九年度予算は百七十三億円でありますが、うち文化財保護に関するものは百三十二億円となっておるのでございます。
 この予算等の詳細は同じくこの資料に掲記してございます。
 次に私どもが従来検討してまいりました文化財保護法の重要な問題点を申し上げ、御審議の御参考にしていただければ幸いに存じます。
 まず、第一は、開発事業の異常な拡大の文化財行政に及ぼす問題でございます。開発事業が、すでに指定された史跡名勝天然記念物にかかわります場合には、文化庁長官の許可を必要とするものとされているのでありますが、許可をしがたい場合などにおきまして、当該土地が私有地であるときは、公有化することが不可欠となってまいります。文化庁といたしましては、地方公共団体による土地の公有化を促進するため、昭和三十三年度より国庫補助を行ない、その拡充につとめているところでございますが、文化財保護法にはそれらについての根拠規定が欠けているのであります。また、現状変更の許可を受けるべき行為の範囲を法的に明確にする必要や、他の省庁等の規制にかかわるものについて円滑な実施を期するための事前協議の制度化を検討する必要があるものと思われます。なお、史跡名勝天然記念物につきましては、その管理体制を整備し、環境整備をはかるなど積極的な保存対策を講ずる必要があり、そのための法的な改善整備も必要になるかと存じます。
 次に、わが国には埋蔵文化財包蔵地がきわめて多いのであります。その所在につきましては、昭和三十五年度から昭和三十七年度までの間の調査によりますれば、全国約十四万カ所でございましたが、さらに最近の調査によれば、その数は三十万カ所にも及ぶものと考えられるのでございます。開発事業が埋蔵文化財包蔵地にかかわる場合は、事前に、文化庁長官に届け出ることになっているのでありますが、その件数はこの十年間六・八倍にも増加しているのでございます。
 ところで、現行法におきましてはその事前届け出期間が三十日にすぎないこと、文化庁長官はその届け出があった際必要な指示をなし得るという法的規制にとどまっていることなどから、開発事業に対して埋蔵文化財を保護する対策について適正を期することが困難となっているのであります。当該埋蔵文化財の価値の判断や保存対策の決定には発掘調査が不可欠でございますが、その発掘調査に関する法的規定が不備でございまして、また発掘調査費用の負担についても明確にする必要があると考えられます。
 さらに、これらの事前発掘調査が時日を要する場合も多く、また、埋蔵文化財の性格上、工事に着手して初めて発見される場合も少なからずあるのであります。このような場合におきましては、埋蔵文化財の調査と保護の万全を期するため、土木工事の延期や停止を行ない得るようにすることについても検討する必要があると存じます。
 なお、開発事業を国及び地方公共団体、公社、公団等が行なう場合も多いのでありますが、従来、日本国有鉄道、日本鉄道建設公団、日本道路公団、日本住宅公団と文化庁との間におきましては行政上の措置として事前協議の覚え書きを交換し、その円滑な運営をはかっているのでありますが、これらの事実上の事前協議制度を、広く国、地方公共団体、公社、公団等にも拡大して、制度化することについても検討を要するものと思われます。
 第二は、社会、経済の急激な変動に伴い、失われようとしている文化財の問題であります。
 その一つといたしましては、建造物にかかわるものがございます。歴史上、芸術上価値の高い建造物は重要文化財に指定して保存に当たっておわ、その対象としても従来の社寺のみならず、民家や明治以降の洋風建築等にまで拡大しているところであります。ところで、現行法は個々の建造物の指定をたてまえとしておりますが、当該建造物のみならず敷地その他の関連物件をもあわせ保護することとしないと、当該建造物自体の保護にも影響があるばかりでなく、周辺との一体性を失うおそれもあるかと存じます。
 さらにその二といたしまして、集落町並みといわれるものの保護の問題がございます。集落町並みと申しますのは、それを構成する個々の建造物そのものの価値よりも、建造物群の全体がその外観の美的価値や歴史的価値から広域的に保存すべきことが要請されているものでございます。今日、関係市町村におきまして独自の措置として条例等により保護の措置が講ぜられている現状を勘案いたしまして、さらに国家的にも積極的な保存体制を整備する必要があると思われるのでございます。
 その三として、民俗芸能や民俗的行事など、無形文化財や民俗資料の保存の問題がございます。これらは最近保存の動きも出てまいっているのでありますが、衰亡のおそれのあるものも多く、その保護のための法的措置の強化を検討する必要があると思われます。
 その四として、文化財保存技術の問題でございます。文化財の保存の万全を期するためには、指定文化財である書画や仏像の修理を行なう技術者、文化財建造物修理の現場監督や大工、――宮大工でございます。楽器師、面打師、装束師等、伝統工芸の用具の修理技能者等の確保が必要とされるのでありますが、最近における社会情勢の変化に伴い、これらの後継者が得られないなど各種の問題が生じてきているのであります。しかるに、現行法におきましては、これについて何らの規定が設けられていないので、すみやかにその保護の措置の制度化について検討する必要があるやに思われるのでございます。
 第三は、文化財保護に関する国及び地方公共団体の行政体制と国民、事業者等の協力体制を整備することの問題でございます。
 文化財保護行政の充実を期するためには、国や地方公共団体の任務を明確にするとともに、国、都道府県、市町村等の行政体制を整備し、相互間の協力体制を確立する必要がございます。従来は、国や地方公共団体の任務といたしまして趣旨徹底につとめるべき旨が定められているにすぎないのでありますが、さらに積極的、具体的に任務を明確化する必要があるかと思われます。地方の行政体制の整備のためには、文化庁といたしましては従来から都道府県等における組織の整備充実につとめてきたところであり、現状では、都道府県における文化行政専管課は、一県を除き、全都道府県に設置されるに至ったのでございます。しかしながら、それらの部課の専門職員の充実あるいは文化財専門委員の強化に資するための法的措置について検討する必要が認められるのでございます。さらに、文化財保護の万全を期するためには、文化財保護思想の普及向上につとめ、一般国民の文化財保護に対して誠実に協力すべき心がまえが要請されるのでありますが、これをさらに推し進めまして、事業者がその事業活動を実施するにあたっては、文化財保護に対して適切な措置を講ずるよう事業者の責務を明記することが望ましいと考えられるのでございます。また、文化財の保護に関する国民の協力態勢を確保するため、私有財産権尊重の見地から、損失補償の規定を整備し、その遺憾なきを期する必要かあるやに考えられるのでございます。以上が、文化財保護行政の現状と文化財保護法の主たる問題点でございます。よろしくお願いいたします。
#4
○塩崎小委員長 これにて説明は終わりました。本日は、これにて散会いたします。
   午後四時二十一分散会
ソース: 国立国会図書館
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