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1949/01/25 第7回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第007回国会 本会議 第12号
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1949/01/25 第7回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第007回国会 本会議 第12号

#1
第007回国会 本会議 第12号
昭和二十五年一月二十五日(水曜日)
 議事日程 第十号
    午後三時開議
 一 国務大臣の演説に対する質疑
    ―――――――――――――
●本日の会議に付した事件
 仮議長の選任
 国務大臣の演説に対する質疑
    午後三時三十二分開議
#2
○議長(幣原喜重郎君) これより会議を開きます。
     ―――――◇―――――
 仮議長の選任
#3
○議長(幣原喜重郎君) 諸君、御承知の通り岩本副議長が不在であり、議長のみでは何時議事に支障を来すやもはかられませんから、あらかじめ仮議長を選任して、副議長の不在中を通じ、議長に事故がある場合に処したいと考えます。よつてこの際仮議長の選任を行います。
    ―――――――――――――
#4
○倉石忠雄君 仮議長の選任は、選挙の手続を省略して、議長において指名せられんことを望みます。
#5
○議長(幣原喜重郎君) 倉石君の動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#6
○議長(幣原喜重郎君) 起立多数。よつて議長は庄司一郎君を仮議長に指名いたします。(拍手)
     ―――――◇―――――
#7
○議長(幣原喜重郎君) これより国務大臣の演説に対する質疑に入ります。三宅正一君。
    〔三宅正一君登壇〕
#8
○三宅正一君 私は、日本社会党を代表いたしまして、……
    〔「右か左か、どつちだ」と呼び、その他発言する者多し〕
#9
○議長(幣原喜重郎君) 静粛に願います。
#10
○三宅正一君(続) 一昨日の吉田総理、池田大蔵、青木安本各相の施政方計並びに財政方針等の演説に対しまして質疑を試みたいと存ずるのであります。
 私は、一昨日吉田首相の演説を拝聽いたしまし、あまりに手放しの楽観に終始していることに対して、むしろぼう然といたしたのであります。首相の楽観論は、單にしろうとだましの当面の現象を指摘いたしまして、これを国民に誇示するものであつて、その基底にひそむ、おそるべき矛盾を見ようとしないのであります。また池田大蔵大臣は、政府の施策の基調はあくまでディスインフレであつて、デフレではない、いたずらに経済不安を説くのは、ためにする議論であつて、今後は一段と明るい希望に面すると言われておるのであります。しかしながら、賃金の不拂いは増加し、倒産はふえ、失業者は増大し、滯貨は激増し、不渡り手形は横行し、株式の暴落している現状は、これら一連の現象の底にひそむ深刻なるデフレ恐慌の現われでなくて何であろうかと考えなければならないのであります。(拍手)
 去る一月五日よりコロンボにおいて開催されましたイギリス連邦会議において、日本に関する二つの不信と危惧とが論ぜられたと外電が報じていることは、きわめて注目すべき問題であると考えるのであります。その一は日本の軍事的復活に対する危惧であり、その二は、日本が再びソーシャル・ダンピングによる経済進出をやるのではないかという危惧なのであります。いかに口に民主主義、平和主義を唱えても、実際の政治的、経済的政策が具体的にこれを証明するのでなかつたならば、全世界の輿論はとうてい納得するものではないと存ずるのであります。私は、この見地に立ちまして、まず講和問題から質問に入りたいと存ずるのであります。
 講和に対してわが国の堅持しなければならぬ立場は、第一に、一切の戰争と武力行使と戰力保持と交戰権の放棄を明記した日本憲法が世界に宣言いたしました絶対平和国家の態度を死守することであります。これは、ひとりわが国民の信念でなければならぬとともに、ポツダム宣言でこれを支持した連合国もまたこれをみだりに侵すことはできないはずであると信ずるのであります。(拍手)またマツカーサー元帥が、かつて日本が太平洋のスイスたることを希望すると言われたことも、日本が永久に国際紛争に中立を保つ平和国家たることを要求されたものと理解されるのであります。この点に関して、講和を前にしてこの国民の信念を強化すべく、さらに一段の努力を拂いますとともに、対外的にも世界の輿論、ことにアメリカ国民の良識に訴えて、日本国は日本憲法の精神を堅持しなけれぱならぬと考えるのであります。(拍手)
 第二に、講和が今日まで延びました理由は、不幸にして世界が二つの陣営にわかれておる結果であることは申すまでもありません。そのゆえにこそ、わが国は強く全面講和を要望しなければならないと存ずるのであります。(拍手)この際日本が、一方の陣営との間に、いわゆる單独講和を結びますることは、他方の陣営とわが国との関係を機微ならしめ、日本の中立的立場に疑惑を抱かしめるおそれがあるからでありまして、わが国としては、あくまで全面講和を要望し、これを国民的要望として世界の輿論に訴え、全面講和が可能となるまでは、むしろ戰争状態終結宣言等による実際上の講和を進めながら、あくまで全面講和を待つべきものであると考えるのでありますが、この点に関しまして、首相の見解は単独講和やむなしとの印象を受けるのでありますけれども、あらためてこの点に関する首相の見解を問いたいのであります。
 第三には、平和と中立とを堅持する立場は当然に特定国または特定国家群との間に、たとえば基地の提供等の消極的にもせよ、軍事的負担を含む軍事的ないし政治的協定を締結することに反対する立場でなければなりません。万一かかる協定に応ずることがありまするならば、ポツダム宣言の精神も、日本憲法の理想も、マ元帥の永世中立の要望も、一片のほごと化すのであります。この一点を死守することは、世界の正義の要望するところであつて、日本国民の不動の信念として堅持されればならぬところと信ずるのでありますが、首相の所見はいかがでありますか。
 第四には、われわれは講和ととともに、関係各国から中立と領土保全に関する保障を與えられることを期待するものであります。(拍手)また国際連合に加盟を認められ、その集団保障が認められることは、もとより待望するところであるのでありますが、いずれの場合におきましても、わが憲法の中立性、平和性にかんがみ、みずから兵力によつて中立を守る義務を免除され、侵略国に対する共同制裁へ参加等につきましても特殊の考慮が拂わるべきであると信ずるのでありますが、首相の見解はいかがでありまするか。
 最後に自衛権の問題についてでありますが、一たび首相の口から自衛権ありとの言明がなされました以上、内外に疑惑を與えざるため、武装なき日本の持つ自衛権の意義について、さらに明確なる意思表示の必要ありと考えるものであります。端的に申しますならば、わが国に自衛権ありということが、いかなる意味おいても、わが国自身の再軍備、その他いかなる形式の武力保持をも理由づけるものでないことを明確にされたいのであります。
 この際特に明白にいたしておきたいことは、わが党の態度は、国内体制におきましては、極左極右の全体主義を排撃して、言論報道の自由や、自由なる選挙による議会主義のごとき民主主義体制を堅持しつつ、国際的にはあくまで中立的立場を守り抜かんとするものであるということであります。原子爆弾の発明せられました今日、世界一本の、平和にして各民族おのおのその所を得た、国際民主主義の上に立つ世界連邦の大理想の実現に寄與すべき国民的矜持を持つことが、すなわちわれわれの立場であることを宣明するものであります。以上につき首相の所見を問いたいと存ずるものであります。
 次に経済財政に関して質問をいたします。経済財政の問題及び労働の問題につきましては、あとから同志勝間田君、前田君から質問をいたしまするので、きわめて簡單に申し上げたいのであります。
 民主自由党は、昨年春の総選挙におきまして、生産増強によるインフレ收束を唱えられたのであります。これは、生産増強に役立つならば、通過の増発も赤字公債も避くべきでないとの持論の継続であつたのであります。この経済九原則にまつたく背反した無責任な主張は、ドツジ・ラインの実施に伴つて放擲せしめられ、まつたく自主性を失つた超均衡予算の強行となり、その内容は、中小企業を含む全勤労者の犠牲の上に、独占資本の利潤は保証し、金融資本を強化する、いわゆる集中生産方式のもとにインフレ収束をはかつたのであつて、かかる根本的な公約と相違する政策を実施して、てんとして恥じず、得々として一応のインフレ收束を誇り、今日の深刻なデフレ恐慌の危機に目をおおわんとするに至つては、池田君その他の良心の存在を疑わざるを得ないのであります。(拍手)
 まず第一点として、政府の財政経済政策が、低賃金を基調とするかつての侵略主義時代の政策とその軌を一にする点を指摘して、政府の反省を促したいのであります。国土狭小にして資源乏しく、人口過剰なわが国において、荒廃せる経済を復興して国民生活を安定せしむる最大の課題は、労働生産性の引上げと完全雇用の問題をいかに調和するかであると存ずるのであります。
 たとえば、アメリカの五分の一の程度にまで農業の生産性を高めるとするならば、わが国六百万農家はおそらく百万戸をもつて足り、三千万人に近い完全失業者を生ずることになります。さればといつて、これを永久に低い生産性に甘んぜしむるならば、わが国は国際経済の落伍者たらざるを得ないのであります。すなわち、完全雇用の理想と産業の近代化、高度化とを及ぶ限り同時に並行実施して、国民生活の安定と国内市場の培養をはかるとともに、低賃金と苦汗労働制度によるソーシヤル・タンビングの危険を防止し、公正なる競争による貿易の振興をはかるべきであり、その間転換期に伴う矛盾を防止するためには、十分なる失業対策の確立と、社会保障制度による生活不安の解消に努力し、一方国家の直接投資と強力なる金融統制による資金計画の実施によつて、電力開発、土地改良、重化学工業等、産業基盤の拡大とその設備の改良、技術の向上による真の産業合理化を実現すべきであります。
 しかるに、政府のなすところを見まするに、失業対策も中小企業対策も十分な用意もなく、一挙に集中生産方式を強行した結果は、顕在並びに潜在失業者を氾濫せしめ、中小企業の破綻を招いており、一方定賃金、低米価、重税の、いわゆる世間のいう池田三原則によつて、都市及び農村の勤労大衆は購買力を失い、国内市場は極端に狭隘化したのであります。
 かくて、勢いのおもむくところ、貿易関係においては低賃金に基く粗製濫造とダンピングを生ずるのであつて、多くのキャンセルと滯貨と海外市場の締め出しを招来いたしまする一つの原因がここにあろとは、私は見やすき道理であると考えるのであります。(拍手)これは、かつての侵略主義日本の歩んだと同じコースであつて、断じて平和主義国家の基調をなす経済政策ではないのであります。政府は、かかる危險なる政策をこの際転換して、真に安定と復興と並行するデイスインフレ政策に切りかえる意思ありやいなや、蔵相の所見を伺いたいのであります。
 第二に、かくのごとく買いたいけれども買えず、つくつても売れないという資本主義体制下におけを最惡のデフレ恐慌の危機が迫つておる状況、これを来らしました根本原因の一つは、われわれがつとに指摘いたしましたように、十四年度の予算においても、二十五年度の予算においても、国民の税金と見返り資金によりますところの千数百億に及ぶ、いまだ償還期限の来ない、いわゆるこの公債、復金債等を繰上げ償還いたしまして、産業基礎の拡大のために、これを公共事業、土地改良、基礎産業に投資しなかつたその大きなやり方が、いわゆるデフレ恐慌を来した大きな責任であると、私どもは、指摘せざるを得ないのであります。(拍手)
 さらにこの際つけ加えてお伺いしたいことは、わが国産業の高度化と国民生活の安定化が必要であるが、国の施策として、失業、疾病、養老、育英、社会扶助等万般にわたる社会保障制度の確立を急がねばならぬと思うのであります。それは單に国家に不当な財政的負担をもたらす防貧制度と見るべきではなく、実に平和的にしてかつ国際競争に十分耐え得るところの新しき日本経済再建の支柱となるものであつてかかる意味をもつ社会保障制度の確立に対して、政府は認識と熱意を欠くのみならず、池田大蔵大臣のごときは、英国の社会保障制度を冷笑するがごとき態度をおとりになつておることは、いやしくも近代的政治家としての感覚を欠如せるものであると、われわれはいわざるを得ないのであります。厚生大臣の所見かん。
 さらに人口問題について、海外に対する平和的移民の道がにわかに開かれない現在におきまして、人口調節の問題に対し真剣に取り組まざるを得ないのであるが、いたずらに政府は掛け声だけで、適切なる指導と施設を欠き、ただ避妊薬を横行せしめて、製薬会社をもうけさせているだけの現状であるのであります。(拍手)統計によりますれば、年子の死亡率は五%高く、五人以上の多子仮定の母の死亡率も二〇%高いことが報告されております。政府は、母性保護、婦人解放の見地に立つて、真に適切にして有効なる産児制限の指導推進につき、いかなる方策をお持ちになるか、お伺いいたしたいのであります。
 次に賃金問題でありますが、政府の低賃金政策が最も露骨にその意図をむき出しにしておるのは公務員の給與問題であります。さきに国鉄仲裁を拒否した政府は、今また人事院給與ベースの勧告を拒否し、專売公社の仲裁もまた拒否せんとしておる。專売公社の裁定については、公社経理のわく内において拠出可能であることを認めながら、これを不承認せんとするがごときは、明白に公労法第十六條第一項の違反を政府みずからいたしておるものであるといわざるを得ないのであります。(拍手)労働者の基本的権利である罷業権、団体交渉権を奪いながら、勤労者にかわつて、公正にその利益を擁護する権威ある機関たる人事院や仲裁委員会の裁定を拒否するがごときは、民主主義の原則を破るフアツシヨ專制の政治と、いわざるを得ないのでありまして、首相のいわゆる物価との関係において惡循環に陥るというがごときは、現下の経済情勢において、国民を納得せしむるに足る科学的説明を欠くものであるといわざるを得ない。かかる政府の措置が労働運動を非合法に追い込む責任は、政府みずからこれを負うべきであつて、これらの点について、法務総裁、労働大臣、人事院総裁等の所見を伺いたいのである。
 さらに最近、民間企業における賃金環欠配は深刻をきわめておるが、金融的措置を講ずることによつて、国家がこれを保障する方法をもつて、これが解消をはかるために、特別の立法を考慮する意思ありやいなやを伺いたい。株価の値下がりにあたり、大衆投資家が損失をこうむつたあとにおいて、百億円のてこ入れを行つたのはよいといたしまして、それによつて主として金融業者をもうけさせた政府が、中小企業労働者の賃金遅欠配に対し何らの同情を示すことなく、ほうかむりで済まそうとすることは、私の理解に苦しむところであり、その点政府に対策があればお伺いをいたしたいのであります。
 次に農村問題についてお伺いをする。現在日本の農村は、インフレの收束、食糧生産の回復、海外輸入食糧の増加等によつて一大転換期にあることは、何人もひとしくこれを認めるところであります。これに対する吉田内閣の農村行政は、ことごとくその施策を誤り、その行政は支離滅烈であつて、ひとり吉田内閣にとつて最大の弱点であるのみなならず、農民を絶望と不安のどん底に陥れつつあると言うも過言ではないのであります。(拍手)過般の第六回国会における野党各派の森農林大臣に対する不信任案は、かかる吉田内閣の農林政策に対する全国民の憤激の集中的爆発ともいうべきものであつたとわれわれは考えるのであります。(拍手)
 まず、政府が時局に対する適切なる政策を行う能力を欠く例といたしまして、次の事例をあげることができるのであります。
 第一に、吉田内閣は米券制度の実現に狂奔して、遂に総司令部の拒否にあつたが、これは自由経済の美名に隠れて主食を投機の対象とする、戰前の米穀取引所制度の復活の前提となるものでありまして、農民を再び商業資本の搾取の対象とするものであります。第二に、吉田内閣は農地改革を打切らんとしたが、かえつてマ晝間によつて農地改革完遂を指令され、その面目を失墜したのである。そのため全国的に農村の反動的傾向を著しく強められたことは否定すべからざる事実である。第三に、小作料、地価の大幅の引上げを策して、これまた総司令部の拒否するところとなつたが、かかる行為が地主制度復活への道を開くものであつて、農地改革の精神に逆行する反動的政策であることは明らかであります。森農政は、少くとも以上の三つの施策において総司令部の拒否にあつておるが、民自党内閣の農政の反動性と貧困性を遺憾なく暴露したものと考えられるのであります。かかる一連の動きの底を流れる森農政の反農民性は、すでに明らかであります。
 次に、政府の農政行政が首尾一貫せざる好個の事例はさきの食確法改正案のポ政令による実施に現われておる。昨年の総選挙に、供米後の自由販売を公約した民自党は、その正反対である追加供出を強制する食確法改正案を提出し、第五、第六国会に握りつぶしにあうや、第七国会開会中にもかかわらず、あえてポ政令によつてこれを強行するという憲法違反をなし、さらに本年度においてはこれを実施する意思なしということを声明するなど、農民を愚弄するの態度をとるに至つたのでありますが、要するにこれは、一貫せる画業政策なく、その場その場の当り政策を、しかも資本家的、地主的立場において行わんとするものの当面せる悲喜劇的現象といわなければならぬのであります。(拍手)
 農地改革を契機として、高率小作料より解放されて自作農となつた農家も、一時的な農村インフレの夢は消え、今や引揚げ、復員、帰農地主の自作化等によりまして、その耕地は零細化し、あり余る扶養人口をかかえて、さらにデフレ政策の犠牲となり、二百五十万の失業人口を農村に背負い込み、戰時中の收奪農業によつて地方は衰え、かてて加えて、供出と軍税と、低米価と一般物価との間のシェーレは拡大するばかりであつて、わが国農業は深刻な危機に当面しているのであります。かかる脆弱なる基盤の上に、三百七千万トンという戰前戰後を通じて最大の食糧輸入を見んとし、わが国農業は卒然として国際農業との競争に追い込まれるに至つたのであります。もし人口の半分を占める農村がこの状態のままに放置せられますならば、第一に厖大なる産業予備軍となつて労働市場を脅威し、第二に、農家経済の窮乏によつて国内市場はいよいよ狭隘化し、さきにも申した通り、軍国主義的侵略と、フアシズム抬頭の経済的原因となるものであると考えざるを得ないのであります。
 この際転換期の農政をいかに確立すべきか、当面する二、三の問題について森農相の見解を承りたいのであります。
 第一に、政府は農業調整委員会と農地委員会とを合併して農業委員会とし、予算、人員ともにこれを減少して、おるが、本来性格を異にする事務を兼務させ、山積せる農地登記等を遅延せしめるのみならず、耕地の交換分合、集団化等、農地改革をして有終の美をなさしむべき施策を不可能ならしめたることは、農民解放の大精神に逆行する行為であると存ずるのであります。農村はこれによつて、再びボスの支配下に置かれる端緒を開くことになるのであつて、われらは、かくのごとき措置をとるのではなしに、進んで第三次農地改革を断行し、一切の地主所有地を解放し、可耕未墾地を解放し、薪炭採草地、牧野の解放等を推進すべきであると思うが、大臣の所信はいかがであるか。
 第二に、農業恐慌に備えて、産業経営の合理化をはかるため、その協同化、機械化を促進し、農民経済を防衛するために、農業協同組合の民主化を徹底するとともに、その確立をはかるべきであります。たとえば、販売、購買、指導、厚生等の連合組織の分立によつて農協が弱体化し、かつ、いたずらに多数の役職員を擁して農民負担を過重ならしめる各種農協を、少くとも県段階において統合すべきではないか。
 第三に、零細過小なるわが国農家が、自己資本をもつて経営を合理化し、その生産性を高めることはまつたく不可能であつて、このわが国農家の特殊性のために、国家は十分なる援助を與える必要があるのである。すなわち、土地改良、開墾、干拓等の全面的施行、機械化、有畜化、協同化等による近代化の促進、農村工業の振興等に対し、長期または短期の国家資本を投入すべきであります。特に、首相初め蔵相、安本長官が、その演説において農地改良に努力することを言明されながら、土地改良に関する予算は年々縮減を余議なくされているのである。政府は、これを單なる空手形に終らしめないために、予算面においていかなる措置を考えられているかを承りたいのである。
 さらに、農業に対する金融面において、あるいは最近の農業用の電力料金の値上げにおいても、農業の特殊性をまつたく顧みられてないことは、はなはだ以下であつて、所管大臣としての農林大臣のほか、大蔵大臣、安本長官等の、農村の特殊性及び重要性に対する所信を承りたいと考えるのであります。特に土地改良に関しては、見返り資金の無償融資等を考慮して大規模にこれを行う計画なきやいなやを伺いたいのであります。その他米麦中心の食糧政策を転換して、油脂、蛋白質の食糧の増産をはかり、山村の收益化を推し進め、将来海外食糧の圧迫より内地農業を守るため、農産物価格のの維持制度を考慮する等転換期農政に処する新しき具体的対策の持ち合せありやいなやを伺いたいのであります。
 最後に、吉田内閣の国会無視傾向に対しまして、主として総理大臣に二、三の質問をいたしたいと思います。吉田首相は、外国の新聞が、しばしば民主自由党を目してウルトラ・コンサーヴアティブと批評することに対し、大きな不満を持たれているようであるが、わが国の勤労大衆もまた、吉田内閣を目して保守反動と称しているのであります。
 まずその現われとしては、第一、吉田内閣の議会無視の態度であります。食確法改正のポ政令公布については、さきに申し述べた通りでありまして、民主主義の原則を蹂躪する重大なる違憲行為と言わねばなりません。第二、しかも第六国会最終日には、食確法の審議に関し、国会を侮辱するがごとき声明を発して、みずからは大磯に逃避された吉田首相は、衆議院議員として当然に国会に出席するの義務があり、国会終了後は朝野各党の控室にあいさつまわりをするのが儀礼的慣例でもあります。(笑声)首相の、われひとり高しとするがごとき態度は、民衆とともにある民主主義政治家の態度としては断じて許さるべきでないと思われるのであります。第三に、吉田内閣は官吏の政治的活動の自由を一片の政令をもつて剥奪しております。第四に、国鉄仲裁委員会の裁定、人事院の給與改訂の勧告を無視して、罷業権を奪われた政府職員及び国鉄従業員の生存権すら蹂躪する態度をとり、第五に、米価審議会の答申を無視する等、国会の権威を蹂躪し、法規を軽視し、反労働者的態度は枚挙にいとまないのであります。
 さらに保守合同問題につきましては、民主党内にも有力な反対があり、現に連立、野党二派にわかれて対立し、民自党内にもごうごうたる反対あるものを、個人の密約によつて、むりに合同せんとするごとき首相の態度も、およそ理解に苦しむのであります。
    〔発言する者多し〕
#11
○議長(幣原喜重郎君) 静粛に願います。
#12
○三宅正一君(続) かくのごとき政府並びに首相の態度は、およそ民主主義とは対蹠的なものであつて、ポツダム宣言にいうところの、平和を愛する民主主義的な政府と目するに困難であり、またかくのごとき政府によつて民主主義、平和主義の徹底を期することは、水によつて魚を求むるものと考えられるのであります。政治的民主主義のルールの上に立つて、経済政策において資本主義の立場をとられる保守党は、当然その存在を主張し得るものでありますが、それには、あくまで民主主義の原則を守つて行動さるべきであります。口に民主主義を唱えても、その行うところ独裁專制の影を宿し、国民に與えられた基本的人権を十分尊雄し得ないものは、まさに反動であり、ウルトラ・コンサーヴアテイヴであると存ずるが、この点に関し総理の答弁を求めたいのであります。(拍手)
 総理は、昨年一月の総選挙において、講和問題は織り込み済みであると言われているが、当時選挙民は、講和の内容につき希望を表明すべき状態になかつたことに申すまでもありません。政府は、この際国会を解散して講和会議をもつて国民の意向を問い、平和と中立と独立と自由を要求する国民の総意を集中して世界の世論に訴うべきだと存じます。さらに経済政策につき、デフレ段階の今日、急変せる経済情勢の中に、あらためて国論を問うはきわめて時宜に適しており、かつ政界全般にわたる再編成を国民総意反映のうちに行うために、あえて衆議院を解散し、来る参議院議員選挙と同時にこれを行う意思ありやいなやを伺いたいと存ずるのであります。
 以上をもつて私の質問を終ります。(拍手)
    〔国務大臣吉田茂君登壇〕
#13
○国務大臣(吉田茂君) 三宅君にお答えをいたします。
 私が国際関係、講和に対して楽観論に過ぐるという御批評でありますが、私としては、この議会において楽観論をとなえ得るということは、国家のためにまことに慶事であり、賀すべきことであると私は考えるのであります。(拍手)ただいま三宅君は、社会党を代表して平和国家論を強調せられたのでありますが、私はこれを聞くことを最も欣快に考えるのであります。どうか社会党におかれては平和国家の主義において終始せられんことを切望してやまないのであります。
 またダンピングに関しての議論でありますが、私は、十二月中にフロア・プライスを撤廃するときにあたつて、特にダイビングをいたさないということを声明いたしております。また顧みて、日本がダンピングをしやしないかというその危惧の念を外国が持つておるということは、既往において日本の産業、日本の経済力がいかに強力であつたかということを証明するものであつて、これまた国家の慶事と申すべきものであると考えるのであります。(拍手)
 全面講和がいいか惡いかということは、私の施政り方針において申し述べた通り、全面講和は最も希望するところであり、願わくはそうありたいと思うが、これは刻下の現状において、客観情勢をいかんともできないことを御了承を願いたいと思います。
 また軍事基地、領土保全、中立問題ということについてお話がありましたが、これは現在仮定の問題でありますから、お答えはいたしません。
 また自衛権についてのお話でありますが、これまた、私が施政の演説において、武力を除く自衛権は国家がもとより持つておるところであることを言明いたしております。
 また保守反動云々の御批評でありますが、保守反動であるかどうかは保守反動と言わるることは、社会党の諸君はそう言われるかもしれませんが、少くとも民自党はそう信じておりません。(拍手)予算における施策について御検討になれば、わが党の政策が決して保守反動にあらざることを証明して余りあると思うのであります。(拍手)
 議会解散については、しばしば申しまするが、政府においては議会を解散する意思はないのであります。また議会を無視した云々私一個人の弁明についてはいたしません。(「できないのだろう」と呼ぶ者あり、拍手)
    〔国務大臣池田勇人君登壇〕
#14
○国務大臣(池田勇人君) 社会党を代表するとおつしやる三宅さんに御答弁申し上げます。
 吉田内閣は生産増強をあえて言つて、そうしてとる政策はデフレ政策であるではないか、こういう御質問でありますが、われわれは、あくまで生産増強を主義政策の第一といたしておるのであります。生産増強を主義政策の第一としておりますからこそ、わが吉田内閣が成立以来、生産はふえて来ておるではございませんか。これは指数が明らかに示しております。しかもまた、御質問の中に、安定と復興のデイスインフレをやるべきじやないかというお話でありますが、安定と復興のデイスインフレをやつておるのであります。これは先般の財政演説で申し上げた通りであるのであります。しかして物価は安定し、賃金も安定し、生産も上昇し、通過は安定しておる。これがいわゆろディスインフレである。しかし、今までにやつた放漫財政政策を急激にディスインフレの線に向けますためには、ある程度の摩擦が起ることは、これはやむを得ないのであります。この摩擦をできるだけ少くしようとするのがわれわれの仕事であるのであります。従つて、経済全体といたしましては、非常な順調な復興の歩みをしておるということは、私がここで言うまでもなく、世界経済学者のひとしく認めておるということをここに断言してはばかりません。
 次に第二の債務償還の問題でありますが、最近債務償還の問題が新聞紙上その他にやかましくなつて来ました。昨年のインヴエントリー・フアイナンスの問題と同様に、今債務償還の問題がやかましくなつて参りましたから、私は、ここでしばらく時間をかりまして、詳しくお答え申し上げたいと思いす。
 債務償還の問題は、私は二通りにわけ得られると思います。しいて言えば三通りにもわけられましよう。お配りいたしました予算参考書には、債務償還として、主として国債の償還を充てております。国債の償還という意味において債務償還を論ずるならば、昨二十四年度の予算におきましては千五百七十億、この数字には少しは訂正しなければならぬ点がありますが、一応千五百億の債務償還をいたしておるにかかわらず、今年度は千二百億円であります。ここでまた、債務償還の見方といたしまして、一般会計から他会計の赤字あるいは運転資金に繰入れます金額を計算いたしますと、この意味での債務償還は、前年度においては千二百八十億円に対しまして、今年度は二百二十億円に減つておるのであります。
 そうしてまた、一般では債務を償遺せずに、減税に充てたらいいじやないか、あるいは直接政府が事業に参加したらいいじやないか、こう申します。この議論に対して私はここでお答え申し上げますが、この債務償還の大部分は、二十四年度におきましても、二十五年度におきましても、見返り資金であります。アメリカの納税者の金であるのであります。これをもつてわれわれの減税に充てるということは、絶対まかりなりません。(「イギリスはどうだ」と呼ぶ者あり)イギリスのことを申し上げますが、イギリスは、アメリカの援助は全部国債償還に充てて、減税に充てておりません。
 しかして次に問題になるのは、減税に充てたらどうかという問題でありますが、私は減税には、今年度七百億円、実質的には九百億円の減税をしております。アメリカからいろいろな援助を受けておる場合におきまして全部を減税に充てるよりも、将来の財政を考え、将来の国民負担を考えて、五百億円の一般会計の債務償還をしたのであります。しかもこの五百億円には、よくお調べくださいますとわかりますが、アメリカの援助をもつて繰入れたものが百億円以上加わつておることを御承知願いたい。私は、この減税にどれだけ充て、債務償還をどれだけするかということが財政の最も重大な問題であると思う。この九百億円の減税、五百億円の債務償還をしておる。実質的には、ほんとうの債務償還は三百億余りであります。しかして、地方税は増税しておるじやないか、地方税は増税しております。増税して、しかもなお足らぬから、三百億円の地方債を募つておるではありませんか。中央地方を通じて全体的にバランスド・バジエツトをつくれば、地方が借金を玉膚億円しますから、国が借金を三百億円拂う。これが今度の政府の一般会計、あらゆる会計を通じてのみならず、全般的に見て地方と中央を通じてのバランスドパジエツトができたと言い得るのであります。五百億円の一般債務の償還は最小限度のものであるということを御承知願いたいのであります。
 次に社会保障制度について申し上げまするが、先般の国会におきまして、先輩水谷議員の質問にお答えした点が足りないところがあるので申し上げます。この社会保障制度は、われわれとしても、量も重要なる問題として、ただいま社会保障制度審議会にかけて鋭意検討を続けておるのであります。ただ私が心配することは、経済の基礎が安定していないし、財政が不安定なときに、いたずらに社会保障制度に莫大な金を投ずることは、国民の生活をかえつて不安定に導くものでありますから、社会保障制度審議会の答申を待ちまして、徐々にこの方に財政資金を向けて行きたいと思つておるのであります。今年度におきましても、相当社会保障制度に金を向けましたことは、財政演説で申し上げた通りであります。
 次に賃金問題について申し上げますが、公務員の給與ベースにつきましては、先ほども申し上げた通りで、私は上げないと思います。財政演説で申し上げなかつた、足りないところを申し上げますが、今問題は、公務員の給與と一般給與とが非常に差があるというお考えでありまするが、それなら、一般給與の基準ほどこにあるか、こう聞きますと、おおむね大産業をもつて組織せられました工業賃金ベースによつております八千四百数十円の工業平均賃金であります。しかし、昭和二十三年に調べた中小商工業関係の労務者、これは一般の計数にのつとります工業賃金よりも三割低いということは、万人が認めておる。しかも、これを平均したならば八千四百円にはなりません。しかしまた、一方官吏の六千三百円べースにつきましては、実際の給與は六千三百円を超えております。国鉄は六千八、九百円になつておりましよう。低いところもありますが、全体として、私の計算では六千四百円前後になつております。しかもまた、来年度におきましては、公務員には、時間外勤務、超過勤務手当を出します。しかしてまた、税引計算をしたならば、私は、ほんとうの労務者の平均賃金と、公務員の賃金は、そう差はないと思います。八千四百円の大工業の従業員に比べたら少しは遜色があるかもしれませんが、全産業の職員に比べて大して遜色はないと思うのであります。しかし、われわれとしては、できるだけ公務員の賃金を上げるべく考慮いたしております。実質賃金を上げると同時に財政の許す限り今後検討して行きたいという考えでおるのであります。
 しかしてまた、裁定に対して政府は独断的にやつたと言われますが、しかし、みなあなた方の承認を得てやつておるのであります。この点は御了承を願います。(拍手)ことに三宅先生の言われる通り、今賃金の不拂いの問題等がありまして、非常にやつかいな問題でございますので、一にも二にも、賃金の不拂いのないように早く経済を安定して行くためには、公務員も、一般労務者も、中小商工業者も、農民の方も、とにかく力を合せてやつていただきたいというのが、私の念願であるのであります。(拍手)
 次に土地改良の問題につきまして、これは昭和二十五年度の予算につきましては昨年以上に認めておりますし、また先般も申し上げました通り、農林中央金庫を通じて、できるだけ農林産業資金の充足をはかりたいと考えております。お話の電気の点につきましても、農村の小さい電気に対しての融資を、すでにもう農林中央金庫に申し出ておるのであります。そのうち、そうい金がどんどん出て行くと思います。見返り資金につきましても、できるだけ農地改良の方に使うべく努力を続けておる次第であります。(拍手)
    〔国務大臣林讓治君登壇〕
#15
○国務大臣(林讓治君) 社会保障制度の樹立に関しましては、三宅議員と私どもも同感でありまして、かねて連合軍総司令部の勧告もありますので、政府といたしましては鋭意これの調査研究を進めておることは、すでに御承知であるばかりでなく、先ほど大蔵大臣からもお答えがありました通りに、社会保障制度審議会がありまして、さだめしその審議会からも、本年の六月ろには、最も緊要を要する問題だけでも具体的な答申があることと考えまして、その結果を勘案いたしまして、早急に善処いたしたいと考えておるわけであります。
 次に人口調節の問題でありますが、この人口の問題が非常に重要なことは、かねて議会におきましても人口問題に関する御決議もありましたので、その趣旨によりまして、内閣にも人口問題審議会を設けましで検討いたしておりますが、政府といたしましては、受胎調節は、私どもが考えましても、根本的にはこれは国民各自の常識にまつべきところの問題であると存ずるわけであります。しかしながら、最近、遺憾ながら人工妊娠中絶の数がはなはだ増しておりますので、これらの現象にかんがみまして子供を持つことを望まない国民に対しましては安全確実なる方法を普及せしめるようにいたしたいと考えまして、この点につきましては、優生結婚相談所というようなものを設置いたしまして、これらの問題の解決に努めたいと考えておるわけであります。さよう御了承をお願いいたします。(拍手)
    〔国務大臣鈴木正文君登壇〕
#16
○国務大臣(鈴木正文君) 第一の賃金還欠配の問題に対する対策についてお答え申し上げます。この問題につきましては、先ほど三宅議員御自身おつしやいましたように、根本的の対策といたしましては、一般の中小商工業者、また全産業に対する金融その他経済政策の問題でございまして、この点につきましては、大藏大臣の演説にもありましたように、見返り資金を中小商工業の方面に持込む方式、あるいは商工中金等の拡充といつたような、法制化をも伴うところの一連の政策が、準備されておるわけでありまして、私どもといたししては、なお強力にこれを実行して参りたいと思つております。しかしながら、一方におきまして、還欠配の現象として現実に現われて来たものに対して、労働行政の面からこれを当面どうするか、この問題につきましては、労働者自体の立場があるのでございまして、この点につきましては、昨年検事総長名をもちまして、こういう種類の問題は、労働基準法第二十四條の精神にのつとつて、賃金は税金を除き、あらゆる債務に優先するところの債務であるという建前を堅持いたしまして、惡質なるものに対しましては、法の命ずる方式によつてこれを摘発して行くという方法を断行して来ておるのであります。現に昨年の三月から十一月までの間に、こういう意味におきまして労働省が手をつけたところの問題は、全額において七十二億円であります。このうち五十六億円は、明確に措置をつけて支拂われているという成績をも一方ではあげておるのであります。賃金の問題につきましては、今後も基本的な金融問題について政府全般の努力を拂う一方、今申しましたような労働基準法の精神を援用いたしまして、この精神によつてこの方向を堅持して参りたいと考えております。
 それから第二の、專売公社を中心とするところの裁定の問題でありますけれども、政府の見解は、これは資金上、予算上不可能なる内容であるという見解のもとに、先日国会に付議して、その審議を仰いでおるのでありますが、これは公労法に命ぜられたところの所定の手続をふんでおるのであります。この見解につきましては、国会自体の審議によつて結論をつけらるべきものであり、政府において何がゆえにそれが不可能であるかというところの十分な説明の御聽取を待つて、国会の意思によつて決定していただきたいと存じます。
    〔国務大臣森幸太郎君登壇〕
#17
○国務大臣(森幸太郎君) 三宅議員にお答えいたします。
 当初御意見としてお述べになりました米券制度の問題でありますが、これは政府の立案いたしたものではないのであります。これはさきの議会におきまして、当議場において申し上げたのでありますが、今日の供出制度は理想的とは申し上げられないのでありまして、この供出制度の改善、いわゆるこれを合理的に直して行くということは、一日もこれを考えていないことはないのであります。従つて、この米券制度についても、その一環としての考え方であるのでありまして、これが必ずしも不適当であるという断案は下されないのでありますが、政府としてこれを取上げて考えたという問題でないことは、たびたび申し上げた通りであります。
 農地改革につきまして、これを打切つたというお話でありますが、決して打切つてはおりません。当初の予定通りに、これを着々進行いたしております。ただ、今三宅議員のお話のように、第三次とお話になりました農地改革に対しましては、政府としては、これを施行する考えは持つておりません。
 小作料の改正等について、そういう必要がないのではないかというようなお話でありまするが、御承知の通り地租が改正せられまして、すでに五百倍の地租を負担いたしておるのであります。現在認めておりまするところの一反七十五円の小作料におきましては、公租を支拂うことができ得ないのでありまして、これは適当に改正する必要がある、かように考えております。
 食確法をポツダム政令によつてやりましたことは、すでにたびたび政府の所信を申し上げたのでありますから、ここに繰返す必要はないと存じております。
 農地調整委員会と農地委員会とを合併して農業委員会に改めるという方針は持つておるのであります。今日、農地改革がすでに最終の段階に入りておりますので、この農地調整委員会と農地委員会とのその仕事の分量から申しまして、また国費の節約という面からいたしましても、これを統一することは、何らその目的達成に相反するものでない、かように考えておるわけであります。
 なお協同組合の問題でありまするが、これは三宅議員の言われました通り、今日の協同組合のの組織の上においては相当遺憾な点があります。これは御説の通り、適当な時期に連合会の組織を改組いたしまして、本議場に御相談を願う案を出したい、かように考えております。
 土地改良の推進につきましては、今大藏大臣が申し述べました通り、二十五年度の予算におきましては、二十四年度以上にこの土地改良の必要を感じまして、相当の予算措置をとつておることを、御承知を願いたいと存じます。
 金融措置につきましても、大藏大臣の今御答弁いたしました通り、中央農林金庫を通じ、あるいは造林、営農等につきましても適当な金融策を考えておることを御承知願いたいと存じます。
 しかして、日本の農業政策の第一の主義といたしましては、自給度を高めることであります。食糧の自給度を高めることについて、あらゆる面から総合的な施設を行わんとしておるのでありまして、この招来につきましては、なお予算委員会等において詳細にわたつてお答をいたしたい、かように考えております。
#18
○議長(幣原喜重郎君) 三宅君、再質問はありませんか。
#19
○三宅正一君 ありません。
#20
○議長(幣原喜重郎君) この際仮議長に席を譲ります。庄司一郎君。(拍手)
    〔議長退席、仮議長着席〕
#21
○仮議長(庄司一郎君) 先刻の議長の御指名によりまして、私がこの席につくことと相なりました。万事ふなれのことでございますから、諸君の一層の御支援をお願い申し上げます(拍手)
 北村徳太郎君。
    〔北村徳太郎君登壇〕
#22
○北村徳太郎君 吉田首相の施政方針演説に対しましては、世間にすでに相当の反響があつたのでございますが、これを要約いたしますと、あまりにも手放しの楽観論にのけぞつている、足元の現実を知らな過ぎるという一言に盡きるのであります。しかし、私がこの吉田首相の施政方針演説及びこれまでの首相の政治活動によつて知り得ましたことは、吉田首相に世界的な歴史感覚、現実感覚の欠如しているということ、(拍手)そうしてまた、一貫した自主的な政治的信念と、高邁な理想の片鱗さえもうかがい得ないということであります。これは国民にとつてまことに不幸なる事実と申さなければなりません。私は、以下基本的な二、三の点に関しまして、きわめて簡單に首相に質疑をいたしたい。従つて、他の大臣諸君の御答弁には及ばないのであります。(「なまいきなことを言うな」と呼び、その他発言する者あり)
 第一は、日本経済自立のための諸施策についてでございます。吉田氏の率いる民自党の絶対多数をバツクとする現内閣は、すでに昨年十一月、本議場において、日本経済は安定したと放言されておる。しかし、今池田大蔵大臣は、社会保障の問題となると、経済が安定したらば考えてみよう、こう言うのでありまして、早くもここに矛盾を見るのであります。(拍手)しかるにまた、一昨日のこの議場において、吉田首相は、やはりこのことを繰返して放言されているのであります。
 昭和十四年度のドツジ予算の強行によりまして、日本経済はデフレ化への衝撃の第一の波に襲われている。今日また、さらに新たなるデフレの第二の波が襲い来らんとしているのであります。この現実を前にして、今の日本経済は安定したと、手放しに楽観するに至つては、これこそまさに、民自党及び政府は、絶対多数という安易な座ぶとんの上にあぐらをかいて、足元の国民経済の実相を直視する勇気と良心を欠いたものと断ぜざるを得ないのであります。(拍手、発言する者あり)しかも、そもそも政府の財政政策の基調をなすドツジ・ラインなるものは、その文事通り、吉田内閣自らの手によつてできたものではございません。ドツジさんがわざわざやつて来て、ドツジ氏自身でつくつたものである。われわれは、もとより、このドツジさんのおかげでインフレに終止符が打たれたこの事実は認め、その功績を謝するにやぶさかではないが、吉田首相がみずから自主的にこの道を切り開いたものでないことは、きわめて明白であります。(「それならなぜ反対するか」と呼び、その他発言する者あり、拍手)
 しかも、今日国民経済が、かつてない萎縮と破壊に直面し、税金の滞納、不渡手形の増加、滯貨の激増、元値を割る投売りダンピング、失業者の激増、深刻なる金詰まり、破産等々デフレの深化と不景気の大波は、企業も家計も破滅に追い落さんとしているのであります。しかも、すでに、さらに新たなる税金攻勢は今から始められようとしておる。これがデイスインフレであるとかないとかいう言葉のせんさくではありません。まさにデフレ強化の不景気であるというこの事実は、何人も否定することができないのであります。私は、これらの不幸にしてしかも深刻な国民経済の上に現われているところのもろもろの現象の責任は、一切当然吉田内閣が負うべきものであると信ずるのであります。また、それは当然のことである。
 今日、この国内の政治責任の所在が、現政府の自主性のない施策によつて、まつたく不明確であることは、国民にとつて迷惑千万であるというよりも、むしろ痛恨事といわなければなりません。減税はシヤウプさんに、金詰まりはドツジさんにと、重要問題はすべてその責任を転嫁し、さしもの絶対多数も今や何らの力も持たないことを、みずから裏書きするような印象を国民に與えておるのである。講和間近しというこの際、国民の自主独立の気魂を失わしめ、目標のないその日暮しを余儀なくせしめる、まことに不幸な事実といわなければならないのであります。
 われわれは、もとより敗戰国民として、また占領下に置かれている者として制約の多いことは十分承知しておる。しかしながら、それでもなお、そのわく内において、われわれが日本人として、その自覚と感覚と良識とに基いて自主的に処理すべき道は開かれていると信じるのでおります。一も二もなく関係方面の意見をうのみにして、むしろこれに便乗し、責任を他に転嫁せんとするがごとき、卑屈な、自主性のない政治方式は、国民の名誉のために一刻もすやかに拂拭せられ、自主的に占領政策に協力する誇りを回復することが、日本独立のために何よりも緊要なる根本要件であるのであります。(拍手)占領下にあるとはいえ、政党政治が現に行われている今日、政治的責任の所在を明確にすることは、民主政治を確立するための根本要件であります。そこで、占領政策と国内政治自主性の世界を国民の前にこの際明確にすることが必要であると信ずるのであります。この点に関し、まず吉田首相の所信を承りたいのであります。
 民自党の一枚看板が自由経済主義であることは世間周知の通りであります。また青木安本長官が、本議場で、繰返し、自由経済の原則に従つて自由競争の範囲を拡大するということを力説せられたのでありますが、吉田首相は、現政府に自主性がないと私が申したことに対して、現政府の自主性はこの自由経済を実行しておるところにあると、おそらくはおうむ返しに答弁せられるでありましよう。事実、今日統制は次々撤廃され、自由競争は次第に激化の度を加えつつある。はたして、一昨年の選挙で、自由経済の公約につられて民自党に投票した全國多数の選挙民が、この自由経済の実現によつて満足し、幸福になつたであろうかどうか。その結果はまつたく逆であることは、諸君の御承知の通りである。(拍手)
 そもそも現内閣の財政政策なるものは貨幣的安定政策、すなわちモネタリ・スタビリゼーシヨンの原則を單純に強行したにすぎない。それでありますから、ローガン構想による自由貿易体制への復帰、あるいは超均衡予算による国家債務償還金をもってする金融機関のペーイング・ベーシスの上に立つた投資を主軸とする資本蓄積、投資の機構、さらに所得税の累進率を三十万円超五五%に打切ることによる高額所得層の租税負担の緩和、かくして解放せられた購買力が、少額所得者層に比べて消費性向が小さいと考えられる高額所得者層において自然的節約、蓄積が行われる、かようなシャウブ的蓄積方法等の展開によつて、今日自由経済的傾向に拍車をかけつつあるのであります。この事実は、貨幣的安定さえ実現すれば、その後は価格機構の自動的な調節によつて自然的成行きにまかせるという、一世紀前の教科書に書いてある古典的資本主義の方法であります。池田蔵相がいうところの、経済の安定と復興とのたの施策は、結局この貨幣的安定方策こそ唯一無二のものであり、あとは経済自然の成行きにまかせる、いなむしろまかせた方がよいと極論しておると見ても、あえてさしつかえないのであります
 もとより私どもは、戰争中における官僚統制が国民経済に惡影響を及ぼした事実を認めます。これを排除することに努力するものであります。また正常な経済循環を確立するためには、競争の原理によつて経済的合理性を貫徹せしめることの必要であることを認める。しかしながら、今日政府がとつておるような手放しの自由放任によつて経済的合理性を貫徹せんといたしますならば、それは当然社会的合理性を犠牲にせざるを得ない。この事実を忘れてはならないと思う。このことは理論問題ではなく、すでに資本主義の最も惡い面として第一次世界対戰を起した主要原因であることは、何人も承知しておるところであります。それは遠い昔のことではない。今日この二十世紀の日本において、光栄ある絶対多数をバツクに持つ吉田内閣において、一世紀も前の方式がこのままとられておることは、いかに大保守党とは言え、まことに世界の現状を無視した、その時代遅れのはなはだしさに驚かざるを得ないのであります。(拍手)
 今日、この時代遅れの自由経済方式によつて日本に何がもたらされておるか。イギリスには、ゆたかさの中の貧困という言葉がありますが、今日日本は、むしろ貧困の中のゆたかさという逆の現象を持つておることを指摘しなければなりません。先ほど池田君は、生産第一主義、それを盛んに強調せられたけれども、その生産がいかなる方式によつて行われるかというところに問題があるのである。基礎産業偏重と、集中生産方式と、並びに金融偏傾等、その経済的自由をして、その経済的自由が万人のための自由でなくして、万人の自由たらしむべき努力も計画もなくて、特定少数者の自由たらしめる結果を招いておる。大企業を擁護する、資本家だけをゆたかにしようとする、そういう本性を次第に暴露しつつある。一方においては、中小企業、農漁民、勤労者等、弱い者、乏しい者へしわを押しつけている。貧困なる者、弱い者の犠牲において、ゆたかなる者を一層ゆたかならしめんとする、貧困の中のゆたかさという現象に直面しているのであります。すなわち、資本家階級の階級的性格を露呈しているものと申さねばならないのであります。
 私どもは、かくのごとき特定階級のみに片寄る自由経済主義が、結局資本の支配性、生産の無政府性等より、周期的に恐慌循環の過程を繰返す今日までの経験に徴し、資本主義計画経済の確立こそ目下の最大の必要條件であると主張するものであります。
 今日、産業政策と金融政策とは、まつたくちぐはぐになつている。それから起つているところのいろいろな矛盾も、要するに一貫した総合計画を欠いておることに原因するのであります。弱い者いじめも、ここから発しておるのである。今日、古典的な自由経済を金科玉條と信奉しておる無知を反省して、競争の原理偏重を修正して保障の原理を導入する、このことによつて財政政策を包む総合的な日本経済自立計画を確立することが焦眉の急務と言わなければなりません。
 貧困の中のゆたかさという矛盾を克服するためには、総合計画を確立せねばならない。統制のあつものに懲りて計画のなますを吹くの愚を繰返してはならない。この際政府は、一貫した総合計画を立てることと、今後の経済自立計画の用意があるかどうか、この点を明らかにせられたいのであります。もしその用意がないならば、その理由を明らかにせられたいと思うのであります。
 民自党が、その財政及び経済政策において、資本家擁護的な、資本家階級的な性格をいよいよ露骨に現わし、国民経済の自主性を喪失しているとき、われわれは見のがすことのできない重大な問題を持つておる。それは、去る一月八日、コミンフオルムが日本共産党を米帝国主義の召使だと批判したことによつて、わが国極左陣営の化けの皮がはぎとられ、その実相が、白日のもと、国民の前に暴露されるに至つたものであります。(拍手)かくて、遂に機会主義、無原則主義の上に立つ日本共産党は、今やこのコミンフオルム批判の前に意気地なくも屈服して、スターリン首相への奴隷の言葉をもつて、ソ連に隷属することを明らかにしたのであります。この事実は、西欧においては二つの世界が一応のバランスを保つに至つた今日、冷たい戰争が次第にアジアの岸に押し寄せて来たことを物語るものであります。東亜における二大勢力のバランス維持のために、コミンフオルムが、中共の進出と相まつて、アジアに対する積極的な関心を示すとともに、その進出をはからんとする意図を明確にしたものとして、世界注視の重大事件であります。一方、このことによつて、日本共産党は、日本人に愛せられる共産党から、急転直下スターリンに愛せられる共産党に変貌し、(笑声)国際共産党の一環として、完全にクレムリンの召使となつたことは、今やおおうべからざる事実と言わなければなりません。かくて、今日まで人民大衆の名によつて人民大衆を欺瞞して来たところの一切の仮面を脱ぎ捨てて、その本来の非合法性、その非合法的、暴力的性格を暴露して来たのであります。
 しかし、私の言いたいのは、民自党並びに現内閣が、先に申した通り、自由放任主義を金科玉條と心得、その資本家的階級性を露骨にし、弱い者いじめをすればするほど、それは結局極左階級政党跳梁の思うつぼであるのであります。ここに、はしなくも、左右の二つの世界の冷たい戰争をこの日本にも持ち来す結果を招来する危険が多分にあることを警告したいのであります。(拍手)
 しかも、かかる政治的危機にはほおかむりをして、識者をして翼賛政治復活を夢みるのではないかと疑わしめるような保守合同を呼号し、しかもワン・マン吉田翁の独裁力をもつてしても遂に一人の犬養氏さえも救い得ないという絶対多数党内の醜状を天下に暴露しながら、気ままな首相の、保守合同はもういやになつたという鶴の一声で一時を糊塗して、表面の平和を保つているのが、民自党の現状である。
 かくのごとき状態をもつてして、なおあえて吉田首相は、国内の政情は安定したと言われるのであるか。ことに日本共産党の戰術転換に対して、吉田首相はいかなる用意と対策があるのであるか。また、日本共産党の向ソ一辺倒、すなわちソ連依存に対抗して、吉田首相の民事党は、向米一辺倒、すなわちアメリカ一国依存をもつて進まんとするのであるか。もし、かくのごとくなるならば、日本民族は、互いに、血で血を洗う、最も恐るべき事態に立ち至らないと、一体だれが保証するでありましようか。われわれは、あくまで日本民族の独自の主体性を堅持し、いかなる他国にも隷属することなく、わが民族の誇りを高く持して、苦難に満ちた道を切開いて行くことを念願しておりますが、吉田首相の以上の諸点に関する所見を私は伺いたいのであります。
 最後に、講和開議の問題についてであります。これについては三宅君もお尋ねになつたのでありますが、簡單に二、三の点を申し上げたい。コロンボ会議、あるいは近く開かれると聞くバンコツク会議において対日講和條約の草案が議せられるということを聞きまして、これは私ども日本国民の喜びにたえないところであります。しかも一方、世界の政局の舞台の焦点は、今やアジアに向けられている。アメリカのマーシヤル・プランによる西欧諸国の復興の達成により、欧州市場は一応片がついた。アジア未開発地が今後マーケツトとして残され、今後アジア未開発地開発計画がアジア・マーシヤル・プランとして展開されようとしておるのでありますが、特に東南アジアの政情の緊迫化に伴いまして、米ソ勢力の均衡点が次第にわが国の周辺に接近しつつおる、きわめて複雑微妙な段階に立ち至つておるのであります。また英国の中共承認、いわゆる北京事件等によりまして、われわれの待望してやまない講和会議が、予期に反して遅れるのではないかとされるに至つておるのでございます。
 かくのごとき複雑な国際情勢に基いて、吉田首相は、全面講和は一に国際の客観情勢によることで、この客観情勢は、わが国の現状においては、いかんともできがたいことである、と述べられたのでありますが、この一見きわめて慎重に見える言葉の背後に、われわれの見のがすことのできない事実が二点ここに明らかになつたのであります。それは、客観情勢に藉口して、單独講和もまたやむなしとの底意をその裏に隠しておるのではないかという点、また講和に関しては、しろうとは黙つておれ、外交のくろうとに任しておけといつた、いわゆる問答無用流の、秘密外交的な外務官僚の独善がひそんでいるという点であります。
 講和の形式が、勢い講和の内容に、ひいては講和後の日本の国際体制、さらには将来の日本の基本的性格に、生か死かの重大影響を及ぼすことを、われわれは十分に自覚しなければなりません。日本国民の立場から、いわゆる單独講和を主張するような筋合いは寸毫もないはずであります。もとより、敗戰国民であるわれわれが勝手な主張をすることは慎まねばなりません。しかし、ポツダム宣言によつてしかれた基本的軌道を踏みはずすことなく、良識と節度とをもつて、極東委員会の承認した憲法に掲げる理想に基いて日本人としての希望を表明することは、決して無條件降伏という嚴粛な事実と抵触するものではありません。敗戰国民としての節度を踏みはずすものでも断じてないのでございます。もちろん、領土の問題、賠償問題、講和後に認められるべき産業水準の問題等も、日本にとつてきわめて重要な問題であるには違いございませんが、われわれが最後の一線として主張しなければならないのは、日本の基本的性格の保持という一点であります。これこそ何をおいてもかけがえのない、重要な、本質的な問題であります。日本の基本的性格は、わが憲法において明らかにせられている、平和主義の根本理念に徹することである。わが国が今日当面する国際情勢の晴雨計は、世界政治の気圧の配置に応じて、どのように変化しようとも、この平和主義に一貫するわが国の基本的性格こそは、最後まで守り貫かねばならぬ不動の理想でなければならないのであります。(拍手)この理想は、決して單独講和によつて達成されるものではないのであります。首相は、これらの点について、どうお考えになつているか。
 平和主義に一貫するわが国の基本的性格は、憲法に明らかであるごとく、無武装、戰争放棄ということである。欧州もアジアも、冷たい戰争の余波を食つて分裂していることは事実でありますが、これが第三次世界大戦をもたらすとは思わないし、また起さしめてはならないが、しかし、万一最悪の事態が起つた場合、日本は一体いかなる立場をとらんとするのであるか。この場合も、吉田首相は、あえて客観情勢のおもむくままにと考えておられるのであるかどうか。最悪の事態が起つた場合、日本のとるべき行動は、ただ一つしかないと信ずる。それは、いかなる戰争であつても、日本はその局外に立ち、嚴正中立を守つて、参戰すべきではないということであります。
 このことは、ひとり日本の基本的性格を守るというだけにとどまらず、この日本の中立態勢を守ることが、米ソ両国にとつて何らの支障もないはずである。米ソ両国間にいかなる他の問題がかかつているにせよ、われわれのこの主張は、両国の利害の問題には何ら関係がないと信ずるのであります。のみならず、極東における両国の関係は、日本が中立態勢に入ることによつてのみ、初めて一つの安定をもたらし得ると信ずるのであります。
 ヒユーマニズムに立脚した人間尊嚴の立場から、双方に原子兵器を保持するに至つた二大国家に対して、一切敵を持たざることを決意した日本民族の真意と願望とを、吉田首相は、国民を代表して、世界の良心と良識に向つて訴える勇気と用意があるかどうか。(拍手)しかも、このことは、日本国民の世界人としての義務でもあると確信するのであるが、二つの世界の対立が、原子破壊力によつて、生か死かの脅威を人類に投げかけている今日、いずれの陣営にも隷属・依存せず、むしろ二つの世界の協調と提携を求め訴え、一つの世界の平和を打ち立てるために、日本国民の総意を、この際吉田首相は世界に向つて衷心から訴えていただきたいのであります。かくの如き国民の総意が世界人の良識と良心を動かすならば、必ずや協調と信義と愛とに基く国際的保障が日本に與えられると確信するのであります。(拍手)
 吉田首相は、戰争放棄の趣旨に徹することは自衛権の放棄を意味するものではないと言われたのでありますが、その内容と方法については一言も触れておられないのであります。われわれは、以上の観点から、自己を防衛するための最後の武器は、人間の自由と尊嚴に対する信頼以外にはないと確信する。しかも、これこそ世界の全異民族を有効に結びつける帶であると思うのであります。吉田首相の言われる自衛権の内容、またその方法、この際明らかにせられたいと思います。
 さきにアチソン長官が、米国の安全保障上の利益、全太平洋地域の安全保障上の利益のためばかりでなく、日本の安全保障上の利益のためにも、アメリカは日本の防衛を引受ける、と述べられたのであるが、この声明に関し、日本本土に軍事基地を提供することの臆説が伝わつたのであります。かくのごときことは、日本人の気持として、またわれわれが守らんとする日本の基本的性格からいたしましても受取りがたいものでありまするが、これらの点について、自衛権の関係について所信を伺いたいと思うのであります。(拍手)
 最後に一言したいことは、不可能であるということと困難であるということは同一ではないということである。今日講和に関し、この困難を不可能と混同し、利害打算の上から安易な現実論が横行しておるのでありますが、政府に一貫した信念と理想のないことは、一に国民をして帰一するところを知らしめないいろいろな論議が横行する原因となつておると思うのであります。不可能を可能にすることはできないにしても、困難を克服することはできるはずである。この苦難の道こそ、あえてわれわれが選びとらんとする日本民族独立の道である。吉田首相は、どうか日本国民のために、この観点から、情念と勇気とをもつて、以上の私の質疑に答えられんことを望みます。
 以上をもつて私の質疑を終りたいと思います。(拍手)
    〔国務大臣吉田茂君登壇〕
#23
○国務大臣(吉田茂君) 北村君にお答えいたします。
 今日、日本の国内政治の責任、自主性について、まずお話がありましたが、今日日本政府は、対連合国條約の範囲内において、内政においてはむろん自主性を持つておるのであります。また連合国司令部においても、日本の自主性を尊重して、なるべく内政については日本の自主的政策を援助しようとしておることは、明瞭なる事実であります。しからば、ドツジ氏の意見を採用したのはどうかというお話であるように思いますが、ドツジ氏の財政意見は、結局日本において均衡財政を打立てよということであります。これは日本政府においてもむろん同意見であるのみならず、ことにその線に沿つて行きたいということで、日本政府は自主的にドツジ氏の意見を採用いたしたのであります。(拍手)
 また資本主義等についてお話がありましたが、これは北村君の資本主義に対する御講釈をつつしんで伺いますが、これに対しての批評は差控えたいと思います。
 また共産党の政策が戰術変換したから、これに対する対策いかんというようなお話のように聞えますが、これは共産党の諸君に答弁は御委任いたしたいと思います。(拍手)
 また講和会議について、全面講和かいなかという問題については、すでに私は一応お答えいたしましたが、私はかつて單独講和がいいということを申したこともなければ、また秘密外交がいいと申したこともないのであります。むろん全面講和はけつこうなことであるが、しかしながら、全面講和といなとは客観情勢によるものであつて、今日日本の地位として、降服條約のもとにおいて、いかんともでき得ないということは、しばしば強調いたしておるのであります。
 また平和国家に対して、また日本の民主的国家の性格及び国際活動について、民主野党を代表せられての北村君のお話は、私はまことに欣快に拜聽いたしたのであります。どうぞ、あくまでもこの平和主義、平和国家、国際主義に立つて、日本が将来においても誠意をもつて国際義務を守り、また世界平和、繁栄を指導するという立場に置きたいものだと思います。
 軍事基地その他の問題については、これは仮定の問題でありまするから、しばしば申す通り、お答えはいたしません。(拍手)
#24
○仮議長(庄司一郎君) 北村君に申し上げますが、これでよろしゆうございますか。
 野坂參三君。
    〔野坂參三君登壇〕
#25
○野坂參三君 私は、日本共産党を代表して総理大臣並びに他の大臣諸君に質問を試みたいと思うものであります。
 思うに、一九五〇年は日本の運命を決する年であると見てさしつかえないと思います。今、わが国は連合国の管理下にあります。しかしながら、講和後には、講和が済んだあとには、いずれの外国からも支配されない、完全な独立を回復することを期待して、われわれ国民は今日まで艱難辛苦に耐えて来たのであります。しかし、もし今日の日本の状態がこのまま続けば、私は、講和後においても、はたして自主権を回復し得るかどうか、大きな疑いを持たざるを得ないのであります。この疑いは、特に総理大臣の施政演説――あの、のんききわまる施政演説を聞いて、私は、その疑いをますます深めざるを得なくなつたのであります。この問題は、決して共産党一党の問題ではありません。いやしくも日本の現状、日本の将来を憂える者は、深刻に考えなければならない。(拍手)この意味において、私は、総理大臣は十分お考えをしたあとで、冷静にお答え願いたい。私が質問すると、よく総理大臣は異常に興奮されますけれど、この問題だけは冷静に聞いて、冷静にお答え願いたい。それから、私の質問は決して仮定に基いたものではなくて、具体的事実に基いておりますから、これについても、やはり総理大臣は、仮定という名目のもとで回答を拒否しないでお答え願いたい。
    〔「日本の兵隊はだれが殺した」と呼び、その他発言する者多し〕
#26
○仮議長(庄司一郎君) 静粛に願います。
#27
○野坂參三君(続) まず第一の問題は、吉田内閣のもとでは、国民の知らない間に、わが国が急速に軍事基地化される危險があります。(「それが仮定だ」と呼ぶ者あり)これは仮定ではありません。具体的事実を申しましよう。たとえば、十二月二十一日付INS電報によりますと、アメリカ陸軍次官ヴオルヒース氏はこう言つておる。沖縄のアメリカ陸軍の建設工事の七四%までを沖縄と日本の負担に切りかえるとりきめによつて三千万ドル節約することができる。(「どこから聞いて来た」と呼ぶ者あり)これは電報にあります。三千万ドルと言えば、現在の邦貨に換算しますと百八億円になります。このとりきめは、わが国の財政にとつても大きな負担であります。沖縄の軍事基地設定のために、なぜ日本がその経費を負担しなければならないのか、(拍手)われわれは理解に苦しむ。はたして、このようなとりきめが実際に行われているかどうか、もしそうならば、この内容について、総理大臣と大蔵大臣から明快なお答えを願いたい。
 次に、本多国務相が、最近壱岐、対馬、あの島を特別開発地域として視察したと、新聞に伝えられておりますが、一部では、この島に海軍基地設置の下準備に本多国務相が行かれたと新聞に報道しておりますが、これはゆゆしき問題であります。この真相について、本多国務相からお伺いしたい。もし、このような事実があるとすれば、これは明らかにポツダム宣言に違反する疑いがあります。(拍手)また、わが国の国家財政にも大きな影響を與えます。従つて国民の代表たる国会議員が、これらの島々を視察する必要がありはしないかと思う。これについて総理大臣のお答えをお願いしたい。
 さらに、来月来朝されると予定されているアメリカ統合参謀本部の一行が日本に来られたあかつきには、新聞によりますと、横須賀に海軍基地を提供する計画があると伝えている。ポツダム宣言に基いて、われわれは、これに絶対反対しなければならない。(拍手)このような、ポツダム宣言に違反するような計画が現在あるかどうか。私が総理大臣にお聞きしたいのは、このような軍事基地化の計画というようなことは、将来も絶対に日本政府としてはやらないということを、ここで確言できるのかどうか。(拍手)
 さらに自衛権の問題について、憲法が制定されるとき、当時の総理大臣であつた吉田氏は、自衛権の問題で、きわめてあいまいな言葉を用いられておる。ところが、突然、昨年の秋ごろから、この自衛権が日本にあるということを言い始められた。しかも、今度の施政方針演説では、これを非常に強調されております。一体、なぜこういうことを今突然やられるのであるか。これをこういうふうに強調される限りは、一体武力を放棄した日本が自衛権を行使するには、どういうふうにして行使するのか、これをお聞きしたい。(拍手)総理が急に自衛権を云々し始められた裏には、自衛権の承認に基いて、将来軍事協定ないしは防衛同盟を締結する意図がありはしないか、われわれは疑わざるを得ない。(拍手)また昨年、阿波丸事件に関連して、政府は、国会、国民が知らない間に協定を結ばれた。このように、国民も知らない間に他国と協定を結ぶ、こういう形において、将来軍事基地、あるいは防衛同盟を結ぶような可能性がありはしないかと、われわれは疑わざるを得ない。この問題について、総理は絶対に将来こういうことがないということを、ここで誓い得るかどうか、これをお聞きしたい。(拍手)
 次にお聞きしたいのは、軍事協定または軍事基地提供と、わが憲法との関係であります。すなわち、憲法第九條には、日本は一切の武力を放棄しております。特に同條第二項に「その他の戰力は、これを保持しない。」と明記してあります。この「その他の戰力」、この中には、單に日本の武力のみでなく、外国の陸軍、海軍、空軍の基地を日本に設定することも放棄したことを意味するとわれわれは考える。従つて、一切の軍事基地協定は、ポツダム宣言違反であるのみならず、憲法違反でもあります。(拍手)また、憲法を一貫する平和の精神から見ても、ちろん軍事協定は明らかに憲法違反である。これについて総理大臣の明確な御回答をお願いしたい。(「仮定の問題じやないか」と呼ぶ者あり)これは決して仮定の問題ではなくて、憲法の解釈の問題であります。
 以上のような諸事実から明瞭でありますように、吉田総理とその側近のやり方では、講和の後においても、自衛権のかつてな解釈に基いて、永久にわが国を軍事基地化するおそれが明らかにあります。彼らの今日とりつつある全政策は、好むと好まないにかかわらず、この方向に行かざるを得ないのであります。(「それが仮定だよ」と呼ぶ者あり)もしそうであるならば、将来万が一戰争が勃発するような場合には、日本は必ず戰争に巻き込まれて、完全に破滅せられる運命を持つのであります。(拍手)そうして、あの広島、長崎の惨禍を再びわれわれが繰返すことになるのであります。それだけではありません。現在急速に進行している警察の武装強化とともに、これら一切の武力は、一体どこに向けられるのであるか、決して国外にだけ向けられるのではありません。日本国内にも向けられて、民族解放の運動や勤労大衆の運動を弾圧するために必ず使われるのであります。(拍手)これは過去の歴史が明らかに証明している。
 この問題について、最後に吉田総理に、もう一度はつきりと質問しますが、それは、現在並びに将来、日本はいかなる国とも軍事協定や防衛同盟のごときものを結ばないという確言を、この壇上から與え得るかどうか。もし総理があいまいな答弁をなされるならば、このような計画があるとわれわれは解釈せざるを得ないのである。(拍手)
 次にお聞きしたいのは、日本の全経済が、吉田内閣のもとで、急速に外国の大資本の完全な隷属のもとに置かれつつある事実であります。(拍手、発言する者あり)事実を申します。たとえば貿易産業で、今クレームが非常な大きな問題になつております。これがために、倒産する会社がたくさん出て来ている。日本の裁判で、不当なクレーム申立てに対して、対抗理由があると認めて損害賠償を判決したにもかかわらず、実際には賠償取立ての不可能なものが、驚くなかれ八十億に及んでいると言つている。このような不当なことが、公然と今行われておるのであります。これでは、貿易の発展を望むことはとうていできない。(拍手)このようなことは、ただ植民地においてだけ起り得る現象であります。(拍手)これに対して、吉田総理並びに関係大臣は、どういう対策をお持ちになるか、お答え願いたい。
 さら重要産業の実情を見ますと、たとえば石油業を見ます。原油が今莫大に輸入されています。そして、古い陸軍、海軍の燃料廠の設備をフルに利用して精油しながら、しかも国内の石油消費は、きゆうくつになつて来ている。今、機帆船がそのために動かない。このように、最も重要な日本の石油産業が、今や外国の石油独占資本の支配のもとに置かれております。たとえば、日石や興亜燃料とカルテツクスとの関係、東亜燃料とスタンダード・ヴアキウムとの関係、昭和石油とシエルとの関係、これらの事実を見まして、国産原油の九〇%を占める帝国石油のごときは、政府の所有株を売り拂つて、ことごとく外資導入方向に今進んでおります。すなわち、日本が石油をあり余るほど輸入しながら、これが日本の再建に使われないで、外国の軍備拡張競争のために使われているのではないだろうか。(拍手)
 同様なことは、造船や海運業についても言うことができます。今もつて、日本の船舶が外国航路につくことはできません。そのために、現在わが国の所有船舶率は戰前の五〇%以下であるにもかかわらず、国内航路は船舶が過剰となつて、船員は失業し、造船業者は船舶のダンピングを行わざるを得ない窮状にあります。ところが不可解なことには、最近、アメリカの過剰船舶の中で一番採算の不利だと言われているリバテイ型とかビクトリー型の輸送船五十隻をチヤーターして、これによつて外国航路就航を復活しようとする計画があると伝えられております。これについては、皆さん方も御存じのように、造船業者も、海運業者も、労働者も反対しております。これでは、高いチヤーター料を拂つて外国船を借りるために、日本の造船業そのものをつぶしているのではないだろうか。(拍手)
 そのほか、鉄鋼の場合でも、外国資本への隷属が強行されております。原料並びに販売市場の不自然な制約のために、日本鉄鋼業そのものが存立を危くしていることは、皆さんがよく御存じのはずです。機械産業またしかり。繊維産業においても、同様な状態が今現われようとしている。
 今まで私の述べた具体的事実は、これは無数の事実の中の、ただ一部分にすぎません。つまり、日本産業の構造が、外資の進出によつて、軍事的、植民地的な性格に再編成されつつある事実を示すものであります。(拍手、「ソ連は外資によつて復興したじやないか」と呼び、その他発言する者あり)
 さらに肥料の問題についても同じような現象が現われている。御存じのように、今日本の農業は、燐安肥料が欠乏しているために、いもち病に悩まされております。(「いもち病がわかるか」と呼び、その他発言する者あり)一体なぜこの肥料が足りないかといえば、輸出しているからだ。なぜこの貴重な肥料を輸出するかといえば、外国の食糧を輸入しなければならないからだと言つている。しかも、四百五十億円の大金を、わざわざ外国食糧輸入のために、日本は補給金として使つております。もしこの大金を、日本農業の再建のために、生産力の増強のために使えれば、どれだけ助かるかしれない。(拍手)これだけの金がもし使えたならば、日本の農業の自立という可能性も生まれて来ている。(発言する者あり)一体、どうしてこのようなことが許されているのか。私は、この問題について大蔵大臣、農林大臣の見解を聞きたいのであります。
 さらに見返り資金の問題でありますが、大蔵大臣は、この見返り資金は打出の小づちと言われた。ところが、この見返り資金の運営は、まつたく自主性を失つております。この問題について、第五回国会で、政府提出の対日援助見返資金特別会計法案の審議にあたつて、わが党がすでに指摘し、また警告したところでありますが、われわれが憂慮したところが、そのまま今起つております。すなわち、大蔵大臣は打出の小づちの柄を持つていないのである。まつたく管理権を大蔵大臣は失なつておるのであります。政府は、法律通りに、これを自主的に運用する努力をすべきであるが、今日の状態を見ますと、ただ大蔵大臣は、一歩讓り、二歩讓り、すべてを今失なおうとしている。大蔵大臣は、いかにしてこの見返り資金運営の自主権を回復する方策を持つておられるか、これを私はお聞きしたい。(拍手)
 さらに外貨予算について一言申し上げたいと思う。外貨予算の審議は、国会の及ばないところにあります。しかも外債は、優先的にこの外貨予算から支拂われる。すなわち、この外貨予算を握る者が日本の対外收支を握り、日本の経済の死命を制するものであります。それにもかかわらず、国会がこれを審議し得ないばかりでなく、外貨予算の地域別や商品別の金額区分については、内閣も総理大臣も知らされていないといううわさがあります。はたしてそうであるかどうか。これは明らかに、日本経済の独立性が完全に踏みにじられているという事実を示すものではないであろうか。(拍手)これに対して、私が大蔵大臣にお聞きしたいのは、外貨貿易に関して、政府は單に商品名のみを発表しておるにとどまるが、この議場から、その地域別、商品別、金額を明示する義務があると私は考える。これについてお答えを願いたい。
 以上述べたように、見返り資金と外貨予算の運営について、政府は自主性をまつたく放棄しております。同様に、日銀政策委員会及び財閥解体と称する持株会社整理委員会並びにカルテル禁止と称する公正取引委員会、これらの運営上の自主権もまた放棄して、これらの機関は、あげて外国金融資本の下請機関として運営されております。(発言する者あり、拍手)このようにして、このような機関を通じて、直接間接に、大なり小なり、わが国産業の約八五%は、外国金融資本の支配のもとに置かれようとしておるのであります。(発言する者あり、拍手)このようにして、わが国の全経済が外国資本に隷属化されて、一路軍事産業の下請としての役割を背負わされておると言つてもさしつかえない。(発言する者あり、拍手)
 従来、日本の輸出貿易について、外国からしばしば、労働力のダンピングと惡評されて来ております。これについて、先刻総理大臣は、日本がダンピングできるのは日本が強力であるからだと言われた。(発言する者あり)これほど私は総理大臣としてまつたく資格を失つた答弁はないと思う。なぜ日本がダンピングしなければならないのか。これは、日本の資本主義自体が、他の進んだ資本主義よりも低いから、力が弱いから、低資金で、労働者をしぼるだけしぼつて、安い商品を外囲にダンピングしなければならない。強いからではなくて、弱いからだ。総理の言つていることは、明らかにダンピングを礼賛して、再びこのダンピングを行つて行こう、こういう下心を持つておるとしか言えない。(拍手)しかし、私の申し上げたいことは、現在では、日本の経済そのものは、わが国民全体がダンピングされておるのであります。(発言する者あり、拍手)そのために、国民大衆の生活が、人間的水準を維持できないばかりでなく、資本家も、もはや合理化の限度にぶつかつております。以上のような重大な事実を総理はどう見るか。また、これに対する安本長官の見解を私はお伺いしたい。
 日本の隷属化は、経済の面だけではありません。政治の面でも、文化、国民生活、あらゆる分野において現われておる。(発言する者あり)ポツダム宣言の原則を蹂躙するようなことが、体系的に、系統的に実行されておる。たとえば、この国会――この国会の自主性がどんな状態にあるか、皆さん方がよく御存知のところ。また、天皇制時代の勅令のように、ポツダム政令が、国会を無視して、しばしば発布されておる。(発言する者あり)予算案はどうしてつくられたか。先ほど北村君も言われましたように、税制改革案は一体だれがつくつたか。これを見たときに、私は、日本の経済だけではない、日本の国民生活全般にわたつて、このような隷属的な状態が現実に起つておることを、われわれ日本民族の一人として真劍に考えなければならぬことと思う。(発言する者あり、拍手)
 次に私は、講和の問題について総理大臣にお聞きしたい。
 以上に述べたように、日本が隷属化されておるというこの諸事実は、要するに日本が実質的に急速に植民地化しつつあることを示すものであります。吉田総理は、これらの事実を一つ一つ積み上げて、総理の好きなデフアクト・ピース、すなわち事実上の講和を、国民の気づかない間に実現しようとしているものであります。このようなやり方は、きわめて危險である。なぜならば、講和会議が開かれたときには、すでにこの隷属の事実がつくり上げられてしまつてある。そのときには、もう手遅れです。われわれは、公然たる講和よりも、むしろ、このような隠密の間に行われるところの事実上の單独講和がさらに重要であることを、私はここで強調しなければならない。(拍手)われわれは、ことし開かれるか来年開かれるか分からないこの講和会議が、今当面の問題ではなくて、現在日々吉田内閣によつてつくり上げられているこの事実上の單独講和、これとわれわれは闘うことによつて、初めてわれわれの理想とする全面講和に達することができる。(発言する者多し)
 吉田総理は、全面講和は望ましいと言われている。しかし、今日まで吉田総理のいろいろの委員会において発言されたところ、また吉田内閣の実質上の外務大臣と言われた岡崎君などは、公然と、新聞や雑誌の上で單独講和を主張されております。この單独講和とは何かと言えば、事実上の講和、今日総理が行いつつあるところの事実上の單独講和、これを合法化し、永久化するのが、これがいわゆる單独講和である。従つて、單独講和は現状よりも一歩も前進するものではない。むしろ現状を固定化するという意味において後退である。また單独講和と全面講和との相違は、決して参加国の数の問題ではない。性格の問題である。性質の問題である。單独講和は、講和を締結した少数国に日本を永久に依存させるものである。従つて、吉田総理が、前国会で、参議院で述べられたように、單独講和を積み重ねて全面講和に行くということは絶対にできないのであります。これは、ただ單独講和を合理化そうという口実にすぎない。
 先ほど、社会党の三宅君、民主党の北村君、これらの両君が、党を代表して、單独講和に反対して、全面講和に賛成された。この両党の全面講和賛成について、全面的にわれわれは敬意を表するものであります。(拍手)全面講和は、アメリカ、イギリス、ソ連、中国、この四大国の協力を基礎とした世界各国との講和であります。そして、これによつて日本の完全な独立と平和が保障されるものであります。全面講和以外の講和は、講和ではありません。(拍手)わが国民は、全面講和以外の講和を求めない。ただ、外国資本の力によつて自己の利益と地位を保とうとする少数の者だけが單独講和の陰謀を持つている。こういう分子を、世間では売国奴と言つております。(拍手、「売国奴とはだれだ」「懲罰だ」と呼び、その他発言する者多し)
 吉田総理は、施政演説の中で、全面講和は望ましいが、しかしこれは連合国がきめるものなので、わが国としては、いかんともしがたい、つまり、われわれ国民は黙つて寝て待つていろ、こう吉田総理は言つておるのであります。確かに、無條件降伏をした日本は、連合国に対して講和條件を提出することはもちろんできません。しかしながら、この無條件降伏とは、全面講和を規定するポツダム宣言に対しての無條件降伏であります。これこそが、わが国民が熱望する講和であります。この要求をまとめ、これを連合国側に伝えることは、われわれにもできるはずであります。
 今、わが日本が全面講和を実現するにあたつては、講和の問題について国民が盛んに論議し、輿論を起し、全国民の一致した要望をまとめることが必要であります。(拍手)これを連合国の輿論に反映させなければならない。これが全面講和を獲得する一つの重大なかぎであります。この国民の要望を指導し、その先頭に立つて闘うのが、わが国の総理大臣の役目である。ところが、総理大臣の施政演説を聞いて、おそらく全国民は、これにまつたく失望した。講和は、日本国民は黙つて待つておれと言う。そうではない。真に日本の国を憂うる者は、全面講和の国民運動の先頭に立つ、これが総理大臣の果すべき義務である。(拍手)
 この全面講和について、いろいろの新聞社の輿論調査を見ましても、国民の圧倒的な者は、全面講和を要望しておる。それだけではない。世界の輿論も日本の全面講和を望んでおる。最近の世界の情勢は、この方向に動いているのであります。たとえば、イギリスの最近の中国新政府の承認の問題、新しい中国、ソ連、これらの動きは、明らかにこれらの国が対日講和の早期締結を要望しているのであります。
    〔発言する者多し〕
#28
○仮議長(庄司一郎君) お静かに願います、――お静かに願います。
#29
○野坂參三君(続) またアメリカ、ソ連両国の間にも、講和予備会議の方式について妥協案が出されているという報道さえある。これらの新しい世界の情勢は、單独講和に唯一の期待をかけている吉田一派にとつても大きな打撃であります。(拍手)世界の動きは、吉田総理の行こうとする方向とは別の方向に動いて来ておる。
 吉田総理は、世界の情勢について、きわめて楽観的なことを申された。施政演説の中で、こう言われておる。「わが政治経済の安定は、連合国の好意と期待とをもつて迎えられ、対日講和の機運は醸成しつつある。」、しかし、このような楽観論は、総理自身がこれをくつがえしております。たとえば、十一月二十一日、外務委員会で、この吉田総理兼外務大臣は、こういうふうに国際情勢についてお答えがある。読んでみます。「ヨーロツパの一部では、いまなお日本に対して決していい感情ではないそうであります。と申すと、これはあまり新聞に書いていただきたくないが、」これは総理大臣がそういつているのであります。「日本に対して決して好意ばかりを持つている国はそうたくさんないと承知して、はなはだ悲観しております。」、これが総理大臣の見解である。三日前の施政演説では、この壇上から、世界は日本に対してきわめて好意的な態度をとつておる。しかし、わずか二箇月前に、彼は、そうではない、世界の輿論は日本に反しておると、はつきり言つておるではないか。
 しかしながら、私の申し上げたいことは、この世界の輿論は、日本の反動勢力に対して風向きが悪いが、しかし、日本の民主勢力に対して、あくまでもこれを支援しようとしておる。このことは、世界の輿論が、全面講和に対して新しい有利な條件をつくり上げつつあるといつて、さしつかえないのであります。私は、この意味からして、吉田総理は、全面講和の国民運動を起すについて、彼は賛成であるか、あるいはこれに参加する用意があるか、これをお聞きしたい。
 このような日本の現状と、吉田総理のやり方に対して、すべての愛国者は、文字通り憤激しておる。民自党の内部にもこの国民の声が反映しているものと私は信ずる。今や、日本の民族は有史以来の危機にありますが、この危機を打開するためには、現在複雑にして困難な條件のもとに置かれております。だが、このことを衷心より認識して、われわれは一大勇猛心を呼び起して、一切を投げ出して奮起しなければならないときに立つておるといつてよろしい。しかし、この戰いは、日本の民族が独立して闘つているのではない。全世界の民主勢力は、われわれを支持し激励しております。
 吉田総理は、過日の民自党大会で、講和に臨む国内態勢を整備しなければならないと言われている。まことにけつこうなことです。しかし、吉田総理の講和態勢とは、実は單独講和の講和態勢の整備である。このような態勢は、われわれ国民の要望する講和の態落勢ではない。われわれは、全面講和に対する国内再編成だけが真の講和の態勢であるということができる。
 それでは、いかにして全面講和の態勢を整えるか。それは一言で言えば、ポツダム宣言の嚴正な実施である。ポツダム宣言は、アメリカ、イギリス、ソ連、中国、この四大国の協調を要求し、日本の完全な独立を保障しております。ポツダム宣言は、日本の非軍事化を要求し、民主化の徹底を要求し、日本の自力による平和産業の発展を保障しております。ポツダム宣言は、日本に平和と民主政府ができたあかつきには、連合国軍のすみやかなる撤退を約束しております。ポツダム宣言は、單独講和ではなくて全面講和を要求しております。ところが、吉田総理の今日実行しておることは、ポツダム宣言の直接、間接の違反である。蹂躪である。だが、われわれは、ポツダム宣言の原則を守り、これを着々実現することに全力をあげなければならない。これが日本民族の生きる唯一の道であります。
 そのために、当面われわれは、次のような諸政策の実現のために、労働者、農民、中小業者、まじめな資本家諸君、その他すべての愛国者が大同団結し、また世界のすべての平和愛好国並びに人民と手を握つてこの大目的を実現せねばならぬし、また実現することができるのであります。その意味において、われわれは、当面次の諸政策を提唱したい。
 第一に、ポツダム宣言の嚴正実施を基本とする全面講和の促進、完全な自主権の回復、講和締結後すみやかなる全占領軍の撤退、第二には、四大国の協力を基礎とする全世界の平和愛好諸国による安全の保障、第三には、いかなる口実によるにせよ、軍事基地化絶対反対、第四には、ポツダム、カイロ、ヤルタの諸協定による領土の帰属問題の解決、第五には、わが産業と農業を外国への隷属から守るための保護政策の確立、第六には、中国、ソ連その他世界各国との自由貿易、平和的商船隊の建設、第七には、軍事的でない平和的な公共事業による災害復旧、農業生産力の維持培養、失業の防止と救済、第八には、平和産業と貿易の発展による国民生活の安定と向上、第九には、民主的自由の確立、この綱領は、一党一派の綱領ではありません。真の愛国者の綱領であります。これは社会党、民主党その他の野党だけではなく、與党内の愛国者にも当然賛成さるべき綱領であります。わが共産党は、この綱領のもとに諸君と手を握る用意がありますが、総理大臣はいかなる見解をお持ちになるか、これを私は最後にお聞きをしたい。(拍手)
#30
○仮議長(庄司一郎君) ただいまの野坂君の発言中不穏当の言辞があれば、速記録を取調べの上、適当の処置をとることといたします。
    〔国務大臣吉田茂君登壇〕
#31
○国務大臣(吉田茂君) お答えをいたします。
 まず第一に、INSの電報で、陸軍次官が三千万ドルを軍事基地に支出する――沖縄の軍事基地に支出するということと承知いたします。第二には、壱岐、対馬等に軍事基地を持つということでありますが、いずれにしても、新聞の報道云々を種にしての御質問であります。政府としては、そういう交渉は受けておりません。(拍手)また横須賀に軍事基地を設けるというお話も、これまた政府は公式の交渉を受けておらないのみならず、その痕跡もいまだ認めておりません。(拍手)
 また自主権についてのお話でありますが、これは先ほどもお話いたした通りに、條約の範囲内において、條約のもとに、日本政府が内政において自主権を持つております。また、その趣旨のもとに現内閣は行政をいたしております。
 外資導入が、これが外国の植民地になるとか、あるいは外国の資本の管理のもとに置かるるとかいうようなお話でありましたが、私はそうは考えません。今日は、国際的経済協力によつて世界の繁栄を増すのが普通の考えであります。ゆえに、外国資本が導入されたから、ただちに外国資本により日本の産業が管理せらるるとか、あるいは植民地のもとに置かるるとかいうことは、これは單に推測と申すか、あるいは断定であるか、曲解であるか、いずれにしても、私の承服できないところであります。(拍手)また日本の貿易契約において、クレームがついた、それについて裁判の判決が下つても、この判決の実行ができないと言われるが、これは現状において、裁判協力の條約がない限りは、できないのがあたいまえであります。
 またダンピング云々――ダンピングの下心があつて云々というお話でありますが、私はそういう下心はないのみならず、推測のもとの断定は、はなはだ迷惑いたします。(拍手)
 それから軍事基地云々ということは、これは現に問題となつてはおらないのであります。ゆえに、私は常に申すが、仮定の問題について答弁はできない。これは討論会ではないのでありますから、われわれは、政治の実際に当つている者が、單に仮定の問題についてここにおいて論議することは、お断りいたします。(拍手)
 その他いろいろ御議論がありましたが、要するに仮定の問題か、もしくは下心を推測してのお話であつて私において答弁の義務がないと思うのであります。(拍手)
 また、さらに言葉を重ねますが、いろいろ論議があつて、私が單独講和をいたそうとする下心であるとか何とかいうお話でありますが、下心でもつて條約の締結なり国際義務を負うことはできないのであります。すべての條約の締結は議会において承認を経るということが憲法の規定であります。ゆえに、今日、秘密において軍事基地を提供するとか何とかいうような秘密外交はできないのであることは、諸君御承知の通りであります。(拍手)
    〔国務大臣池田勇人君登壇〕
#32
○国務大臣(池田勇人君) 野坂君の御質問にお答え申し上げます。
 質問の一点は、輸入補給金四百億円をやめて、それを農地改良あるいは米穀増産に使つたらどうか、こういう御意見でありますが、わが国におきましては、ただいまのところ、外国より主食を輸入しなければ不足いたしております。しかして、輸入いたします場合におきまして原価より安く国民に配給するのには、これだけの補給金がぜひ必要であるのであります。これをやめたからといつて、主食がすぐあすからふえるわけのものではございません。別途に農産増強の方法を講じておるのであります。
 第二に、見返り資金は打出の小づちといいながら、あまり出ないではないか、こういう御質問でありますが、これは見返り資金の全体をごらんくだされば、初めから予定しておりまするところの復金債の償還には予定通り出ております。予定より早く出ております。鉄道、通信の方にも出ております。直接貸付の方が予定通りに出ませんでしたが、これは十二月にも五、六十億出るし、一――三月におきまして二百億近く出る予定になつておるのであります。決して遅れてはおりません。
 なお自主性の問題でありますが、これはあなた方に御審議願いました対日援助見返資金特例会計法第六條をごらんくださいましたら、おわかりでしよう。この性質が、この金の出所がアメリカの納税者の負担であるという点から考えまして、日米政府がこれを使用するときにはアメリカの承諾を得ることになつているのであります。これは国会の議決を経たことであるのであります。
 その他税制の問題について、シヤウプの勧告案をそのままのんでいるとか、あるいは予算案について、とやこう臆測せられますが、税制、予算案については、吉田内閣、池田大蔵大臣の責任においてやつております。(拍手)従いまして、勤労控除において、基礎控除において、税率において、シヤウプ勧告案よりも、もつとやつておるではございませんか。これが吉田内閣の自主性を証明する証拠であります。(拍手)
 第三に、外貨資金のことで問題を提供せられましたが、御承知の通りに、今までは貿易特別会計でやつておりました。しかるに、昨年の十二月から、日本政府の責任において貿易が民間に移された関係上、御承知の通りに外国為替特別会計というものができたのであります。しかして外国為替特別会計には、参考書に書いてあります通りに、外貨予算まで入れておるのであります。この施行にあたりましては、内閣に審議会を設けて適当にやつておりますので、どうぞ特別会計法をごらんいただきたいと思います。(拍手)
#33
○仮議長(庄司一郎君) よろしゆうございますか。
    ―――――――――――――
#34
○倉石忠雄君 国務大臣の演説に対する残余の質疑は延期し、明二十六日定刻より本会議を開きこれを継続することとし、本日はこれにて散会されんことを望みます。
#35
○仮議長(庄司一郎君) 倉石君の動議に御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#36
○仮議長(庄司一郎君) 御異議なしと認めます。よつて動議のごとく決しました。
 本日はこれにて散会いたします。
    午後六時十分散会
ソース: 国立国会図書館
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