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1972/03/28 第71回国会 参議院 参議院会議録情報 第071回国会 公害対策及び環境保全特別委員会 第3号
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1972/03/28 第71回国会 参議院

参議院会議録情報 第071回国会 公害対策及び環境保全特別委員会 第3号

#1
第071回国会 公害対策及び環境保全特別委員会 第3号
昭和四十八年三月二十八日(水曜日)
   午後一時九分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 三月二十七日
   辞任          補欠選任
    西村 関一君      鈴木美枝子君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         大矢  正君
    理 事
                金井 元彦君
                菅野 儀作君
                杉原 一雄君
                内田 善利君
    委 員
                君  健男君
                斎藤 寿夫君
                寺本 広作君
                加藤シヅエ君
                鈴木美枝子君
                高山 恒雄君
                加藤  進君
   国務大臣
       国 務 大 臣
       (環境庁長官)  三木 武夫君
   政府委員
       科学技術庁計画
       局長       長澤 榮一君
       環境政務次官   坂本三十次君
       環境庁長官官房
       長        城戸 謙次君
       環境庁企画調整
       局長       船後 正道君
       環境庁大気保全
       局長       山形 操六君
       環境庁水質保全
       局長       岡安  誠君
       厚生省環境衛生
       局長       浦田 純一君
       水産庁次長    安福 数夫君
       通商産業省公害
       保安局参事官   田中 芳秋君
       通商産業省化学
       工業局長     齋藤 太一君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        中原 武夫君
   説明員
       環境庁企画調整
       局公害保健課長  山本 宜正君
       法務省人権擁護
       局調査課長    加藤 泰也君
       農林省農蚕園芸
       局植物防疫課長  福田 秀夫君
       農林省畜産局流
       通飼料課長    宮崎 武幸君
       労働省労働基準
       局安全衛生部計
       画課長      倉橋 義定君
       建設省道路局有
       料道路課長    高橋  力君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○公害及び環境保全対策樹立に関する調査
 (公害及び環境保全対策樹立に関する件)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(大矢正君) ただいまから公害対策及び環境保全特別委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 昨日、西村関一君が委員を辞任され、その補欠として鈴木美枝子君が選任されました。
    ―――――――――――――
#3
○委員長(大矢正君) 公害及び環境保全対策樹立に関する調査を議題とし、質疑を行ないます。質疑のある方は順次御発言を願います。
#4
○加藤シヅエ君 私は今日、石油たん白の問題で主として質疑を進めたいと思いますが、石油たん白の問題は、すでに当委員会、衆議院の公害対策委員会、それから参議院では科学技術、大蔵委員会等で委員の方々が各方面からこの問題を提起されまして、質疑を行なっておられまして、その問題が一応出尽くしたような形になっているかと思いますけれども、私は今日は、いただいた時間の中で、この石油たん白が非常に世間の人々の関心を買いました問題についての、最後の締めくくりがどういうふうになるかというような観点から質疑をいたしたいと思っております。
 この石油たん白の問題というのは、内容が、科学的な知識を持たなければ専門的に理解することのできないような内容を持った問題だと思いますけれども、その企業化というようなことがどんどんと一方では進められてまいりまして、いよいよ石油たん白が飼料に使われるというようなことになってきた。ということになりますと、消費者としては、これが飼料となって使われて、結局はそれを食した動物の肉をわれわれ人間が食べるということになってきて、その場合にどういうような危険があるのか、はたして安全なのかということは、わからないままにも非常に心配でございます。したがって消費者団体、特に主婦が強力な拒絶反応と申しますか、こういうようなことはやめてもらいたい、飼料として使うのもやめてもらいたいということを全国的に運動として展開されたわけでございます。
 しかし、その前に政府は、これが安全であるということを一応確認をしたわけでございます。したがって、企業者としては大日本インキ、鐘淵化学、そのほかたくさんの大きな企業家がこれの製造を始めようとし、あるいはすでに始めたような状態になってまいったわけでございますが、世論はこれに対して強く反発をいたしたわけでございます。したがって、その反発に対して政府がどういう態度をとられたかということが非常にまちまちでございまして、こういうまちまちな態度で対応されたということは、企業体のほうとしても非常に困ることでございましょうが、消費者のほうではいよいよ心配が度を増してくるわけでございまして、どうしても一応この製造は見送ってほしいという運動が強く広まってまいりましたので、ついに厚生省では、これを一応やめるという結論が出たわけでございます。
 しかし、厚生省がこの結論を出されるそのやり方というのが、非常にすっきりしておりません。厚生省としては、諮問機関である食品衛生調査会、これは小林芳人東大名誉教授というような方が会長になっていらっしゃるところでございますから、しろうと見では、これは非常に権威のある調査会であろうと思っているわけでございますが、それが安全だというふうに結論をお出しになった。しかしどうも納得がいかないので、これに反対する運動を起こしましたところが、齋藤厚生大臣がこれに答えて、結論は二、三年先になるといったような、一種の言いのがれ的な答弁をなすったわけでございます。
 こういうようなことになりますと、これはほんとうにやめられるのか、あるいは二、三年先になって世間の騒ぎが一応おさまったら、またこれは蒸し返してつくられるのかというような不安が、宙に浮いてしまいました。また企業体のほうとしても、相当な設備投資や何かして始めたり、あるいはすでに海外との取引も契約ができたというような状態にもなっていて、それがやめるというようなことになると、企業体のほうも非常にあわてるわけだろうと思います。そういうような、二、三年先というような齋藤厚生大臣の最初の答弁のなさり方、これに私は非常に、こういう厚生行政というものに対していよいよ世間は不信感を増すのではないか。これは業者としても、あるいは消費者としても、違う立場から非常に不信感を持ったと思います。
 それで、食品衛生法というような法律があって、それによって一応われわれの口に入るものは規制されるのだと思っておりますけれども、飼料は食品衛生法の対象外だということになりますと、特別立法を検討するというようなことをそのとき言われたということが報道されておりますが、その特別立法のほうは、いまどんなふうになっているのでございますか。まず、それを聞かせていただきたいと思います。
#5
○政府委員(浦田純一君) 飼料としての石油たん白利用につきましての問題の経過は、加藤委員のほうから御指摘のとおりでございますが、厚生省は、法律上の問題はともかくといたしまして、やはり国民の皆さま方の不安を解消しなくてはならない、安心して食生活に臨めるような体制を具備するということは、厚生省として当然考えなくてはならないことでございますので、石油たん白の、たとえ、えさとして使われる問題でございましても、この安全性についての確認をする必要があるということで、食品衛生調査会におきましては、実験段階におきまする安全性というものを認めたのでございますが、最終的に、飼料として石油たん白を利用するという場合には、まず実験段階での諸検査及びその評価に合格すること、それから工業的試作段階での諸検査及び評価に合格すること等々の、厳重な条件を付した見解が示されておるのでございまして、食品衛生調査会からの見解は、決して単純に飼料としての石油たん白の安全性を確認したものではございません。
 それを受けまして、さきの衆議院の予算委員会でございましたか、厚生大臣が答弁する中で、実際にこういった工業的試作品が出てくるのは二、三年先になるであろう、その段階でもう一度厳重に国みずからが検査いたしますという旨の発言があったわけでございますが、それはともかくといたしまして、御指摘のように、飼料でございましても究極的に人間の口にのぼる、いわゆる食物連鎖というものを通じまして人間の食物になるといったものにつきまして、いわば法律の谷間と申しますか、こういったようなこともございますので、現在、大臣からの御下命もございまして立法の準備を進めております。
 これは時間的な経過もまだ短こうございますので、いろいろな問題点の検討というところでございますが、できるだけ私どもといたしましては具体的な案を早く得まして、各省庁とも十分協議の上その成案を得まして、できるだけ早く国会のほうに提出するように努力いたしたいと考えております。
#6
○加藤シヅエ君 それでは、この調査会では今後引き続きその安全性について検討をお続けになるのでございますか。また、いろいろ実験テスト云々ということをいま御答弁で言われたのでございますが、実験テストというのはどういうことをおっしゃっていらっしゃるのですか。
#7
○政府委員(浦田純一君) 結論的に申しますと、石油たん白を企業化するということは、このような国民の皆さまの不安をまだ解消しないままに企業化するということは、企業としても選ぶべき道でないということでもって、先ほど御指摘の二は、この企業化を一切中止するということに決定したわけでございます。
 食品衛生調査会の機能からいたしまして、私どもは、食品衛生調査会はそういった問題があるときに受けて、いろいろとその安全性について検討するということでございますが、この石油たん白の問題につきましては、いまこれから先、わが国では飼料としても、もちろん食品としても、あらわれてくるという可能性はないわけでございますので、そういった立場からの検査ということは、取り上げることは現実問題としてなかろうと思います。ただ、いろいろと研究ということがございますので、そういったものについて食品衛生調査会がどのような立場で取り組むかということでございますが、食品衛生調査会の機能から考えまして、私どもは、食品衛生調査会のほうにそういったような問題が今後持ち込まれることはないであろうというふらに考えております。
#8
○加藤シヅエ君 それでは、食品衛生調査会のほうにこの問題は持ち込まれないということで、一応その安全性は疑われたままということでございますね。
 それで、企業のほうは今後ストップということで、つくらない。ということになりますと、どらも安全でないということの証明もあまりはっきり――もう少し説明がいまのところ出ておりませんから、今後またむし返しされるのじゃないかという心配は多分に残っておりますし、企業のほうとしては相当自信を持ってやってきたことだと言っておりますから、それが調査会のほうの検査で厚生省からストップされたということに対しては、決してその安全性云々という問題では企業は納得していないと思います。ただ、ストップをかけられたものに対して、世間が受け入れないという状態に対して企業はいまやめているだけで、これは安全でないというふうには納得していない。そういうような状態のままこれをやりすごすということは、これは心配がただ何年か先に、一、二年先に残されたということになると私たちは考えるわけで、その点はどうお思いになりますか。厚生省としては、人の生命を預かるということで、飼料でもこれは結局人間の口に入ってくるものという意味での特別立法ということは、早くこれをつくろうとなさらないのでございますか。
#9
○政府委員(浦田純一君) 食品衛生調査会の機能としてはということを申し上げましたのは、先ほどの答弁で、飼料は食品衛生法の適用の谷間にあるわけでございますけれども、新しく、たとえ飼料であっても間接的には食品になるというものについての安全性の規制をするための立法措置は、現在検討中でございます。したがいまして、この法律が動きますと、また法律が動くまでの間に問題が起こりますとすれば、そのような制度を考えながら、法律成立までの間を埋めなくてはならないということも考えなければなりませんが、将来の問題としては、飼料あるいは肥料等々、先ほど申しましたように間接的に人間の食品になるという可能性のあるものにつきましても、その安全性を法律をもってちゃんと規制する。その場合に、当然やはりその安全性についていろいろと御審議願う専門の制度、調査会のようなものを考えていかなくてはならないというふうに現在考えております。
#10
○加藤シヅエ君 ただいまの御答弁でわかりますことは、厚生省当局におきましては、こういう問題が起こったときに、このいま持っていらっしゃる食品衛生調査会というような機能は、企業の側が持っているいろいろの研究機関とはおよそ比べてみても劣勢なものであって、そういうようなところではたいした研究もできないし、たいした結論も、みんなが信頼できるような結論も出ないのではないか、結局、企業がやっている技術が一番・いまのところは優秀なのだというふうに企業界では思っているらしくて、そういうようなこの問題についての発言がほうぼうに発表されております。どう見ても、厚生省のいまの食品衛生調査会の機構とか、あるいはその予算、人員その他見ましても、私たちが安心できるような機構を持っていらっしゃらないと思いますので、一応企業体のほうがすぐれたものを持っているかもしれないと思うわけでございますけれども、企業体のほうがいろいろとデータを発表して安全だと言われましても、それを信用していいのか、私たちにはわかりませんです。
 今度の場合、それは信用できるのかもしれませんけれども、過去を見ましたときに、四日市の公害とか、阿賀野川水銀事件とか、あの例を見ましても、告発するほうの側のデータと企業側のデータがいつでも食い違っておりましたこと、そして企業のほうの側は、いつも企業の経済的利益を優先した態度でずっと経過しているというようなことを見ますときに、企業体が十分な厚生省よりすぐれた調査機関を持って発表なさっても、これはなかなか、いままですでにたくさんひどい目にあっている消費者の側として、信用することはできません。
 ましてチクロとか、PCBとか、サリドマイド事件とか、こういうようないろんな問題でたくさんの犠牲者をすでに出してしまった。そのときに厚生省がとられた態度というのは、やはり調査の機関というようなものが完備していないために、いつも後手後手を打っていらっしゃるし、非常に行動がおくれてしまって、特にサリドマイド事件なんか、もう返す返すも残念で、それを製作したドイツではいち早くストップしたのに、日本ではこれを六カ月間もそのままずるずるに何も手を打たない。その六カ月という間にどれだけ不幸な子供が生まれてしまったかというような、取り返しのつかない信用を落としております。この厚生行政が、いまこそもっともっと考え直していただかなくてはならないときにきているのではないかと、みんなが考えているわけだと思います。私もそう思います。
 それで、この問題について特にいろいろいま問題が出ておりますのは、こういう問題は、飼料の問題ですと通産省、それからまたあるいは場合によっては建設省というふうに、厚生省以外の役所にも非常に関係しているということも問題を非常に複雑にしてしまって、ことに消費者と一番直接に関係のあるのは厚生省のように思うものですから、そこでいろいろ消費者が判断する場合に、少しも安心ができないという問題が一つございます。
 そこで、通産省でも今度、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律案というのを出していらっしゃるのでございますが、これもやはりこういうことに対応する一つの通産省としての対応策だろうと思いますが、科学技術庁のほうでも、これに対する何かいろいろの考え方を持っていらっしゃるように聞いております。そしてその結果、いま世間で非常に新しくクローズアップされている一つの構想としては、テクノロジー・アセスメントという、アメリカで始まったこの考え方、こういうような考え方が、こういう問題が今後も絶えず起こってくることに対応するのに必要なものではないか。厚生省が食品衛生調査会をこれからいろいろやりますとか、機能を拡充しますとか幾らおっしゃっても、どうもそういうことでは間に合わないのが事実だと思いますので、このテクノロジー・アセスメントというような考え方を日本でも大いに採用していただきたいと私どもは考えるわけです。
 三木環境庁長官もおいでになりますので、長官は、いつも非常に国際的な新しい考え方や何かに対して、いち早く御理解をお示しになっていらっしゃる政治家でございますから、閣内にあって特に早くこういうような問題をとらえて、日本の場合は日本なりに、これをどういうふうに政府の機構の中に取り入れたらいいかというようなことについて、大いに努力していただきたいのでございます。
 このテクノロジー・アセスメントというのはちょっと新しいことばでございまして、私どもその内容についてはいま勉強しつつあるわけでございますが、科学技術庁のほうから出されました書面によりますと、簡単な説明が書いてございます。これは「科学技術の歩進は、物質的豊かさの面で国民生活を大きく向上させてきたが、一方では大気汚染などの自然環境の破壊、都市の過密化、人間疎外といった好ましくない副次的影響が顕在化し、これらの問題の解決が求められてきた。そのためには技術のもたらすプラス面とともにマイナス面にも着目して、それが社会に及ぼす影響を総合的に把握し、評価し、必要に応じて代替策を検討して、悪影響を最小限にくいとめるようにしなければならない。」というのが、このテクノロジー・アセスメントの説明の一番もとになる構想のようでございます。
 そして、この書面を見ますと、アメリカでは国家環境政策法の施行に引き続いて、一九七二年十月にテクノロジー・アセスメント法が法律として制定されておりまして、その機構についても詳しい機構が発表されていて、そして、ここには予算もついておりますし、またシンクタンクというようなものもついて、頭脳の集団というようなものもここについていて、ここでもって得られた結論というようなものが外部に公表されるというところが、たいへん私はいいところではないかと思うわけでございます。
 それで、いまのようにこんな石油たん白みたいな、たいへんな心配な問題が起こったときに、厚生省、政府の機構よりも業界のほうがいいものを持っている、スタッフを持っている、機構も持っているというようなことは、これはいままでさんざんひどい目にあってだまされた結果、こういうことはどうも信用がなかなかできにくくて困るわけでございますし、政府のほうが一向、いま厚生省当局の御答弁のようなああいう程度では、進歩の将来がどうも見通しがつかないような御答弁でございます。この際、副総理のお立場からしても、もっとこのテクノロジー・アセスメントというようなこうした機構を、少しも早くどういうふうに取り入れたらいいかとか、そして特にお願いしたいのは、ここでもっていろいろの権威者が集まって検討なさったこと、それからまた企業の経済的な問題、あるいは消費者の健康上の問題、あらゆる面からここで討議されたことがあとで公表されるということ、これがたいへん大切なことだと私思うのでございますが、これをどういうふうに三木長官はお考えになっていらっしゃるか、御答弁願いたいと思います。
#11
○国務大臣(三木武夫君) いま加藤委員の御指摘になりましたように、環境保全ということがいま大きな問題になっておるけれども、環境保全の第一番の項目は、あくまで有害でない食物というもの、そういう食物が供給されるということでしょうね、環境保全の出発点は。そういうことで、いろんな面で国民生活に不安を与えていることは事実ですからね。石油たん白の問題でもそうですよね。これは即、食べものではないといったって、家畜などに飼料を通じて濃縮される。家畜の体内に濃縮されれば人体に影響があるわけですから、広い意味の人間の口に入るものというものに対しては、環境保全という点からも一番にこの問題に対しては注目をしなければならぬと私は思います。
 いま政府部内においても、いろんな化学物質ができるものですから、これに対して国民生活の上において非常に不安があることは事実ですね。新規ないろいろな物質が次々にできてくる。また、消費の様相も変わってきて、昔は少なく使っておったのが大量な消費ですから、微量の場合には影響のないものが、大量に使うことによって大きな影響を与えるということがある。時代の変化もありますからね。この問題については何か新たな検討を加えなければならぬということが、閣議でも問題になったのですよ。
 そこで、いま立法のことを、石油たん白なんかに関しては、厚生省、農林省でいろいろそういう点に関連するような問題について、何か立法の必要があるのではないかという研究も進められておるようですが、でき得べくんば、そこの一つの研究といいますか、あるいはまた分析がパスすれば安心してそういうものを使えるというような、こういう問題についてはこれはひとつ考えてみなければならぬ問題ではないか。権威のある機関、そこでパスしたならば国民が安心できるというようなことについては、政府としても、いろいろな新しい化学物質についての危険性というようなものに対しては、最も用心深く政治が対処しなければならぬというので、大きな研究課題になっておるわけですから、これは内閣全体として大いにその機構というものは検討をいたしたいと考えております。
#12
○加藤シヅエ君 長官の御答弁は、どうもまだ非常にばく然としておりますので、私の伺いたいことをあまり率直にはっきりと御答弁になっていないと思います。
 問題は、いままで食品衛生調査会がいろいろ調査していらっしゃるというのは、紙の上だけでもってチェックしていらっしゃるのです。ですから、これは少しも安心できませんです。新しい物質というものは、いろいろの形のテストとか、ある程度の相当長い期間のテストとか、動物実験とか、もうあらゆる面のテストをしなければ、紙の上だけに出てきたものをチェックなさるというようなことは全く信用のできないことだということが、みんなにわかってしまったわけでございます。
 それで私は、特に今後の問題としては、いま申し上げたような新しいテクノロジー・アセスメントというようなもの、こういうような大きな機構、そしてそれに予算を入れて、それから、あちらこちらの役所にまたがっている問題を総合的にそこへ持ってくるというようなことにしていただかないと、役所のいろいろまた関係があって、結局消費者は安心ができないような状態になりますし、また企業家としても今後どういうふうにしていくか、非常に方針を立てるのに困難があるだろうと思いますし、また、一生懸命に勉強していろいろ結果が出たことが、こういうようなあいまいな態度でもって、これが安全性というものが認められないとか、二、三年先に延ばされるとか、ストップされるというような形でされるということは、こういうことを研究している頭脳人にとってもこれはたいへんな失望だろうと思うわけでございます。
 もう少し政府としてはっきりしたことを、具体的に取り上げる意思があるかないかというようなことを、もう一度はっきり聞かしていただきたいと思います。
#13
○国務大臣(三木武夫君) 私のいま抽象的にお答えしたのはまだ結論が出てないわけでありますが、これは内閣としても取り組まなければならぬ問題です。いま国立衛生研究所というのがありますが、こういうものを思い切って強化して、いま加藤さんの言われるような目的を、そういうところで果たせるようにすることも一つの方法かというように考えるのです。何らかの、やはり最高の頭脳が動員できて、そこでいま言われたような事前の調査研究ができるような研究所というものが強化される必要が私はあると思う。それには一番国立の衛生研究所というものが適当でないかということですが、これはただこの場の御答弁ではなしに、政府としても真剣に組り組んでみたいと思っております。
#14
○杉原一雄君 いま加藤委員が最終的に詰めている問題は、きわめて重大です。ところが政府の行政部内で、いま長官が発言せられたことの内容と逆行するような見解を、これは週刊雑誌ですから権威があるとかないとかいう問題も出ましょうけれども、少なくともその人の名前とカッコ書きで書いてありますから、私は、ジャーナリスト、この週刊誌を信頼したいと思います。
 それは、週刊ポストの三月三十日号でございますけれども、中心命題は「石油タンパクも造れ!終戦直後の〃飢え〃がすぐ襲う」。つまり、最近きわめて問題になっている、地球が冷たくなるとか、いろいろな冷害等がことしの夏、急激に日本の国土ないし世界を襲うであろうということが盛んに言われていることも、特に私たち心配をしている大きな問題の一つですが、農林省の、いま確かめましたら食糧研究所分析部の係官です。名前を言ってもいいですが、ちょっと遠慮しておきましょう。この方は、いま申したように、ことしはたいへん冷害で、古々米その他古米等すべてがなくなって、米びつはからっぽになるであろう、これが前提であります。だから――あとが非常に重大でありますが、「飢えからのがれる道はただ一つ、工業立国をやめることです」、これは重大な提言です。続いて、工業立国のおかげで、繁栄の虚構の中で、若者たちは日かげのモヤシのように、過保護の肥満児にそだった云々ということ等をあげながら、まかり間違えば反乱、暴動すら起こるに違いない、こういう前提に立ちながら、最終的な提言は「主婦たちが反対して、石油タンパクの製品化を阻止したけれど、あの人たちに、ほんとうの食糧危機の意識があるのだろうか。石油資源枯渇の問題はあるとしても、これによって、年間十万トンの蛋白質食糧が確保できるんですから。」こういうことで、「よしんば」と発ガン性その他のこと等も十分承知の上での発言をしているのであります。発言の場が国会ではありませんけれども、しかし、こうした週刊誌等を通じて、台所を預かる主婦の皆さんにも重大な脅威を与えているのじゃないだろうか。
 とりわけ、こうした意見が出てくるのは、いま、きょうも自民党の本部の前にはち巻き締めて、乳価を上げろあるいは飼料を確保しろという訴えを、全国から集まってしておられる姿を私は見ながら国会へ来たのでありますけれども、やはり飼料が必要なんだ、国内では足りないのだ、こういう現実がゆるぎない事実なんです。公害のずっと前のところで、わが党の田中寿美子さんが、必要悪ということをある大臣が言ったので、公害等その他は必要悪だというような表現をとらえて、非常に鋭く追及されたことが事実ありますが、必要悪、必要がいまある、飼料として。この必要が存在する限り、いま西丸氏が提起するようなこういう提起は、これは偶然ではない。しかし私たちは、長官もいまおっしゃったように、加藤委員が指摘しているとおり命に関する問題である。その辺のところを、やはりこの際こうした発言が政府部内にもあるという、今日もなおあるというこの事実をどう長官が理解し、また、こうしたことに対して今後、いま統一ある研究所の話も出ましたが、行政を進める上において相当の腹帯を締めてかからなければ、必要悪という表現でまたもや必要なる悪が行なわれるおそれがきわめて大である。
 そういう点で、加藤委員の質問も非常にそういう点を心配しながらしていると思いますから、長官のほうから重ねてこの問題についてはっきりした答弁をいただき、農林省からも来ていただいておりますから、いま自民党本部の前ではち巻きを締めている人たちに自民党の諸君が答弁をしていると思いますけれども、農林省を代表してそういう人たちに対しては、食糧は対外的に輸入をこうして、こういう問題で解決するのだ、あるいはきのう農林水産委員会で問題になりましたように、休耕田をこういうふうに活用してこうするのだ、何かそうした点について、いま飼料課長も農林省代表としてお出になっておりますので、明確にそうした農民の皆さんにもこたえることができるような飼料対策の面を明らかにしていただきたい、こう思います。
#15
○国務大臣(三木武夫君) 石油たん白のものは、鐘淵化学、大日本インキも工業化はしないということになって、この問題は製品として出回ってくるということはなくなったわけであります。
 飼料の問題は大問題ですけれども、いまの週刊誌の記事を通じての御質問ですが、こういう飼料の問題は確かに大問題であっても、これは農林省内でいろいろな意見があることはやむを得ないことですが、外部に向かって、いまの方針はもう工業化はやらないという方針がきまっておるときに、そういう見解を発表することは私は適当でない。もしそういう意見があったら、内部で意見を開陳して大いにやるべきであって、外に積極的に発表する態度というものは好ましくないと、こう考えております。
#16
○委員長(大矢正君) 速記をとめて。
  〔速記中止〕
#17
○委員長(大矢正君) 速記を起こしてください。
#18
○説明員(宮崎武幸君) お答えいたします。
 ただいまの週刊誌の記事につきまして、私ども存じておらなかったわけでございます。まあ個人的な意見であろうと存じますが、その中に言っておりますことにつきましても、農林省として考えておりますところとはいろいろ違ったところもあるようでございまして、一つは、食糧危機がいまにも訪れるのじゃないかというふうな表現でございますけれども、その点につきましてはいろいろな議論がございまして、たとえばいま、えさが非常に問題になっておりますが、このえさの問題も、いわゆる一時的なものか、あるいはこれから将来ずっとこういう問題が続くのかということにつきましても、いろいろ認識が分かれておる段階でございますので、そういった問題があるわけでございますので、いまの週刊誌のような記事につきましては、これは農林省あるいは全体の意見というふうにおとりいただいてはちょっと困るのではないかと思います。それから、石油たん白を食糧とみているような表現ではないかというふうに私は聞いたわけでございますけれども、農林省といたしましては、従来から石油たん白は、えさとしてしか考えていなかったわけでございますので、その点も若干違うのではないかと思います。
 それからさらに、飼料対策全般の問題についても御質問があったわけでございます。
 確かに去年の暮れごろから非常にえさが窮屈になりまして、値段も非常に上がっておるわけでございますが、私どもかなり長期的に考えましても、特にたん白質えさ原料と申しますか、こういったものにつきましては今後ともだんだん需給は逼迫してくるのではないかと、こういうふうに考えております。したがいまして、石油たん白というわけではございませんけれども、やはり新しいそういったたん白資源というものにつきましては、十分これは試験研究をやらねばならないということは言えるのではないかと思います。
 それからさらに、そういったものはつくらなくても、もっと何といいますか、天然の資源なりそういったものを使って、将来予想されますたん白質えさ原料の不足の問題を何とか解決できないかというふうな問題につきましては、これは端的に申しますと、たん白資源でございますから、えさの場合は大豆、大豆かす、それから魚かす、魚粉でございます。
 したがいまして、まず魚かす、魚粉につきましても、従来から国内での生産が大部分でございますが、従来とかくたとえば捨てていた部分、いわゆる魚の身だけをとりまして、頭、骨、しっぽ等を捨てるわけでございます。そういったものをなるべく捨てないで、廃棄していたものの有効利用と申しますか、未利用資源の活用と申しますか、そういったものをできるだけ進めるように施策は続けておりますし、それから大豆につきましては、これは現在国内生産につきましては、まず当面人間が食べる食用の大豆を大いに増産しようということでやっておりますし、えさに回りますのは油をしぼったかすのほうでございますので、この油用の大豆につきましては、油の含有量の関係等からなかなか国産ではできがたいということでございますので、もっぱら輸入にたよっておる。こういう状況でございますが、これにつきましても、長期的な見通しのもとで、できるだけ国内生産等についてはこれから大いに検討を続けていきたい、こういう姿勢でおるわけでございます。
#19
○加藤シヅエ君 続いて、それでは農林省から答弁していただきますが、いま杉原委員が提起されました問題、これはいますぐ飢えがくるかどうかというような、そんなに緊迫したとり方は普通常識としてはしないかもしれませんけれども、いろいろ指導方針よろしきを得なければ、いまのようなやり方、そして農林省の行政指導というようなやり方でいけば、たいへんにむずかしい状態になるのじゃないかという心配は多分にあるわけでございます。ことに、動物性たん白質の消費というものが非常にいま問題になっておりまして、若い世代の者は古い世代の者よりずっと動物性たん白質をよけいとるようになりまして、これはいいことでございますけれども、そのために飼料の問題というのが非常にクローズアップされてくるわけでございます。その飼料の問題として石油たん白は使わないということに一応なりましたのですけれども、どうも石油たん白というものの内容がどういうものなんですか、しろうとには、すぐに説明を聞いてもわかりません。ところが、いろいろのこういう化学物質には、名前のつけ方がいろいろまた違ったつけ方がございまして、全然別のような名前で呼んでくると、今度は石油たん白とは全然関係のないものなのかしらと、こう、まぎらわされるわけでございます。
 一つの例として農林省のほうに伺いますが、石油たん白は使っていない、また、使ってもこれは安全であったというように農林省では考えていらっしゃるのじゃございませんか。そこをまず伺います。
#20
○説明員(宮崎武幸君) 農林省としましては、安全であるか危険であるかという結論なり、あるいは省としましての意見は、出したことはないのじゃないかと思います。
#21
○加藤シヅエ君 結論をお出しにならないかもしれませんけれども、具体的に石油たん白の入った飼料を鶏に使わせた経験はお持ちなんでございますね。
#22
○説明員(宮崎武幸君) 石油たん白が将来のえさの資源になるであろうというふうな問題が出ましたのは、すでにだいぶ前の話でございますので、農林省としましてはメーカーの試験結果とは別に、農林省の内部におきまして、これを鶏とかそれからマウスでございますが、それに対してこれで試験はやったことはございます。そして現在も続いております。
#23
○加藤シヅエ君 その試験をやった結果は、相当安全であったということでございますか。
#24
○説明員(宮崎武幸君) 少し詳しくお答えいたしますが、四十四年から五カ年計画で、農林省の畜産試験場、それから家畜衛生試験場、それから県の試験場五県に頼みまして、共同で試験をいたしたわけでございますけれども、最初に鶏のほうの試験でございますが、これは石油たん白をえさの中に一五%まぜまして、そして一代、二代と累代試験をやりまして、四代目まで現在続いております。さらに続けていくということでございます。三代目までの結果が、聞いておるところによりますと、大体試験をやりましたのが延べ四千羽、それから出ました卵が約四万個でございますが、現在までに得られました成果では、鶏自身につきましての繁殖能力、それから病理組織的な面等、すべての点で異常が認められておりません。
 それからマウスにつきましては、これは環境庁等から予算上の御協力もいただきまして実施いたしまして、これも三年計画だったと思いますが、六百頭でしたか、現在まで五世代ぐらい、やはりこれも累代試験を実施中でございますが、現在までのところ発ガンあるいは奇型等、こういった問題は何ら異常は出ておりません。
#25
○加藤シヅエ君 農林省のほうではそういう発表をしていらっしゃるのでございますが、ここに写真がございますので、これは委員の皆さまにお目にかけるために持ってまいりました。
 この写真は、ここに書かれた名前の配合物ですか、これをえさの中に入れて食べさせた結果、鶏と豚がこんなようなひどい結果になったということが出ておりますので、これは皆さまにお回しになって見ていただきたいのでございます。とてもひどいことになって、鶏がみんな腰が抜けちゃって、そしてかたわになってしまって、結局その養鶏家はつぶれてしまったということでございます。これは実験の写真でございます。これはわが党の野々山議員が写して来られた写真でございまして、野々山議員は大蔵委員会でこの問題を取り上げていろいろ政府を御追及なすって、今日私がこちらでやるからというのでこれを参考に貸してくだすったわけで、これをやはり皆さんに御参考に見ていただいたほうがいいと思います。
 こういうふうに決して安全ではないということと、それからこれは石油たん白を使ったのではないという説明も加わっておりますけれども、いろいろのものが入っていて、そしてそこに、危険性というものはもう多分にそういうところにあるということをここで証明しているのではないかと思います。したがって、いまの農林省だけの、四千羽か五千羽の実験のテストの結果が安全だというようなことを申されましても、片方ではこういうものも出ているということを、現実の問題として私は考えていただかなくてはならないと思っております。
 それからもう一つ問題なのは、この配合したものを使ってこうなったという、その配合したものを配給しているのは非常に強力な団体でございまして、その団体が取り扱ってこれを農家に配給するということになると、ほとんどこれを使わないわけにはいかないような状態に農家は置かれてしまうという、ここに大きな問題があると思うのでございます。この問題はいまここで申したところでどうにもならないと思いますから、この機会にはこの答弁は私は保留いたしておきます。今日は伺いません。
 次に私が伺いたいことは、いま杉原理事からも申されましたように、やはり、飼料が非常に足りないというときに、石油たん白からつくる飼料というものはたいへん便利だとか、経済的にも非常に価値があるとかいうことを考え続けている方は、一般にあるわけでございます。したがって、これを海外に、――日本ではいまのところ消費団体があまりにもやかましいので、こういうような世間の非難に対抗して企業家がものを売ることはできないから、みんないまのところおりたと言っておりますけれども、海外に輸出する分にはこれは差しつかえないじゃないかというようなことで、これも一応ストップされているという形になっているそうでございますけれども、すでに二つの会社が外国と契約をしている。イタリアでございますか、それともう一つはルーマニア政府と契約をしている。これは技術の輸出として契約されているので、そのままこれは出される、こういうことになるわけでございますね。これはだれもとめない、こういうことでございますか。
#26
○政府委員(齋藤太一君) 石油たん白の製造技術の技術輸出の問題でございますが、ただいま一番技術の研究が進んでおりますのは鐘淵化学と大日本インキでございまして、ただ、両者ともまだ実験室段階でございまして、工場を建設をしたわけではございません。若干その実験室段階を動かしましてサンプルをこさえまして、サンプルを海外にこれまでに若干出したという実績がございます。
 それから技術そのものの輸出の点でございますけれども、鐘淵化学は、昨年の一月にイタリアのリッキ社という会社とすでに技術輸出契約を締結をいたしておりまして、為替管理法によりまして通産省がその認可をいたしました。それからもう一件のルーマニアに、これは相手は政府でございますけれども、大日本インキが石油たん白の技術輸出をするという契約につきまして、当事者間で仮契約が結ばれておりますが、まだ本契約に至っておりませんで、政府に対しての申請はまだ出てまいってはおりません。
 なぜ政府が、通産省がこのイタリアに対する技術輸出契約を認可をいたしたかという点でございますけれども、実は為替管理法によりますこういった技術援助契約の審査の要件は、即金で代金を受けとります場合には現在は一切自由でございまして、許可を必要といたしません。延べ払いで代金を受領いたします場合には、標準外決済ということで為替管理法に基づく許可が必要でございますが……。
#27
○加藤シヅエ君 そのことは直接関係がないから、よろしゅうございます。
#28
○政府委員(齋藤太一君) 要するに、債権回収を確実にやるという観点から実は認可をいたしたわけでございまして、技術の内容、安全性等、深く立ち入って審査をいたして認可をいたしたのではないという経緯がございます。
#29
○加藤シヅエ君 時間がまいりましたので、ちょっとだけお願いしたいのでございますが、これはすでに契約してしまった技術輸出ということで、通産省のほうではその手続について許可をしたというような答弁をしていらっしゃるわけでございますが、私はこういうような、日本でとにかくこれは害ありというふうな不安と疑問がたくさんあるという問題で、おまけにこれは人間の口にも入るということがわかっている問題でございまして、こういうものを一体輸出するということは、これは国際的な道義上非常によくないことだろうと思います。これは日本だけがやっているわけじゃなくて、ほかともこういう流通が行なわれていると思いますけれども、将来はこういうものを、お互いに自分の国でよくないということが発見されたならば、利害関係を拾てても、これは人間の安全のために、健康のために、その輸出をするということはよくないのだという考え方を持っていただかなくてはならないわけでございます。
 これは環境問題国際議員会議というものが決議をいたしているわけでございますが、その中に「環境と国際貿易」という項目がございまして、輸入品の製品規格向上を目的とする措置によって、いかなる国外への影響が予想されるかについて査定すること、それから、対外留易に不利な影響を受ける国々に対してはその施行前にあらかじめ警告すること、こういうようなことを決定しているわけでございまして、先年、OECDからも専門家の方が日本においでになって、自分の国だけ知らないで使っているものが、もうこの狭い地球の中をぐるりぐるり回って、どこの国の国民の口に有害な影響を及ぼすようなものが入るかわからないという時代だから、それぞれの国において十分に責任を持ってそれを規制してもらわなければならないということを、わざわざこの東京の、日本の国会にまで言いに来られて、私ども公害委員の者がその席に出て、そのお話を伺って具体的によくわかったわけでございます。
 いま、石油たん白がこんなに日本で問題になっているのでございますから、この輸出というものを、日本が率先してこういうものは待ったをかけて、ほんとうに安全性がだれにでも納得できるような形で証明されるまでは、こういうものは海外に輸出はしないほうがいいというような態度をきめるべきではないか。これは国際道義上非常に大切なことだと思いますが、そういうことをなさろうという気はないわけでしょうか。
#30
○政府委員(齋藤太一君) 確かに先生御指摘のように、わが国の石油たん白の技術の安全性の確認につきましては、一応実験室段階では確認が行なわれましたけれども、製造段階におきます確認はまだでございまして、そういう意味で、最終的に安全と確認されたわけではございません。したがいまして、従来私どもとしましては、この技術輸出の申請が出ます場合には、十分相手企業に、まだ日本では技術の安全性が確認されておらないということを説明をいたしまして、なおかつ、その安全性の確認は先方でするから出してほしいという要望があります場合には、相手国政府、特に厚生省当局等の御了承がある場合に限って認めるというふうな方針をとっておったのでございますけれども、ただいまのような御指摘もございますので、なおこの方針につきまして、さらに慎重に検討いたしたいと思っております。
    ―――――――――――――
#31
○委員長(大矢正君) この際、三木環境庁長官から発言を求められておりますので、これを許します。三木環境庁長官。
#32
○国務大臣(三木武夫君) 今月二十日に熊本地方裁判所において、不知火海沿岸地域の水俣病にかかる損害賠償請求事件の判決が行なわれ、被告たるチッソ株式会社の民事上の責任が明らかにされました。この判決を一つの契機として、関係者のすべてが心と力を合わせて水俣病問題の処理に全力をあげてもらいたいと私は心から願っております。
 特に、現在、補償をめぐって数個のグループに分かれている水俣病の全患者に対する補償案が早急に提案されるよう、会社側に対して申し入れたところであります。
 政府としては、不知火海沿岸地域の環境調査及び住民の健康調査を徹底的に行なうとともに、水俣病の治療方法の開発のための研究体制を強化確立するほか、地域住民の健康管理、治療、リハビリテーション等の対策を一そう充実したいと考えております。
 また、水俣湾の水銀を含むヘドロの処理については、四十八年度から、しゅんせつ、埋め立て等の事業に着手することとし、工法、施工範囲、費用の分担等について早急に熊本県と打ち合わせを行ないたいと思っております。
 私は、失なわれた生命や健康がまさに取り返しのつかないものであるという悲惨な現実を前にして、企業の公害防止に対するきびしさの欠除は言うまでもなく、さらに政治の油断に対しても深刻に反省をしている次第であります。われわれは今後絶対に、こうした悲惨な事件を二度と起こさぬよう、最善を尽くさなければならぬという決意を新たにしておる次第でございます。
    ―――――――――――――
#33
○委員長(大矢正君) 引き続き、本調査に対する質疑を行ないます。質疑のある方は順次御発言を願います。
#34
○鈴木美枝子君 先ほどから三木長官の御発言を聞いております中に、これから権威のある機関をつくる、最高の頭脳を集めるということをおっしゃいましたけれども、私は、むしろ最高の頭脳が水俣の患者を死亡におとしいれ、そしてなおかつ、これからも大ぜいの公害患者が出ていくという状態になっているんだと、なっているんじゃないかというのではなく、なっているんだということを言い切りたいのでございます。
 権威ある集まりとは、一体どういうことなんでしょうか。最高の頭脳というのは、人間の、公害のああいう若しみに対してどういう御発言なんでございましょうか。お答えください。
#35
○国務大臣(三木武夫君) 水俣病の患者の人々、この悲惨な状態というものは、いろいろテレビとか新聞を通じて、国民のひとしく何とかならないものかという感を深くした問題だと思いますが、そういう場合に、こういう神経系統を侵されたわけですから、何とかしてその苦痛というものを軽減し、あるいはまた機能をできるだけ回復するような道はないか、そのためには、最高ということは、水俣病のためにいままで研究を続けてこられた、たとえば熊本大学あるいは新潟大学、こういう人たちは水俣病と取り組んでいままでやられたわけでありますから、手がけていない人に比べたならば、そういう人たちのいままでの経験、こういうことが私の言う最高という表現の中に、ことばは適当かどうかは知りませんが、何とかその問題の深い経験を有する人たちが中心になって治療の体制を強化したいという私の心情を述べたのが、いまのようなことばでございます。ことばのよし悪しというよりも、私の考えておることは、何とかしてその病気について経験を有しておる人の頭脳を動員して、何か苦痛を軽減してあげられないかという私の心情が、そういうことばの表現になったものと御理解を願いたいのです。
#36
○鈴木美枝子君 三木長官にお願いします。いま権威ある医者の方たちを集めてというような、たいへんことばの端をぽっこり取るようでございますけれども、昭和二十八年に水俣病患者が一人発見されて、そのときは原因不明だった。水俣病患者が発見されたのは、水俣の工場付属病院で診療していらっしゃった細川博士という方、もうすでにおなくなりになりました.けれども、その一人の原因不明でわからない患者を手がかりにしまして、そして、昭和二十七年にもうすでに水俣湾で魚・貝類がたいへん死滅していて、三十一年に、その病院で細川博士が発見したのです。そのあと、あの有名なネコ。ネコもいきなりやったわけじゃなくて、まだ水銀とわからないときに、ネコ踊り病とかそういうことばも使われていたわけです。そしてそのあとで細川博士が、つまり水俣の工場付属病院ですから、いろいろな研究ができたわけでございます。汚水を利用しながら研究をしていくうちに、水俣の会社がそれをストップさせているわけですね。その大事な研究をストップさせているというようなことは、医学に対してどういうふうに考えているのでしょうか。
 厚生省の方、その事実はたぶん知っていらっしゃると思うのですけれど、お返事願いたいと思います。
#37
○委員長(大矢正君) 鈴木委員に申し上げますが、鈴木委員の要求に厚生省の要求がなかったそうで、事務当局で呼んでおらないそうでございます。
#38
○鈴木美枝子君 そうですか。それでは、それを御承知願いたいと思うのです。早くネコの実験でそれがやれたからよかったのですけれども、ネコの実験でもし発見することができなければ、水銀だということも発見できないで、まだどんどん、いまでも一万人ぐらいの患者がふえようとしているのに、まだふえるかもしれないという状態だったと思うのです。
 さっき三木長官が、たいへん医者の方たち、権威ある医者の人たちが楽に相談して研究ができていくような雰囲気をお与えになりましたけれども、そういう状態では絶対になかった。それは会社側が圧力をかけるのでしょうか、政府がそういうふうにしているのでしょうか。その点についてもお答え願いたいと思うのです。
#39
○国務大臣(三木武夫君) 鈴木さん、政府は国民の健康、生命に対して第一義的な責任を持っているわけですから、政府がそういう細川博士の実験をとめて、水俣病の発見をおくらすという意図を持つはずはないのであります。したがって、政府の圧力でそういう研究をとめさせたという事実は、私はあり得べからざることだと思います。そのときのいきさつはよく知りませんが、厚生省の政府委員が見えればもっと説明をするでしょうが、私としてはとても信じられないことで、そういうことはあろうはずはないと考えます。
#40
○鈴木美枝子君 三木長官、私は去年、今度裁判で勝ちました訴訟派、まあ六派に分かれているとおっしゃいましたとおり、その自主交渉派、去年の十月東京に参りました人たちから手紙をもらいました。そして、その方たちに東京でお目にかかりました。そのときに、二百人以上の暴力団の人があそこへ入っておりまして、傷ついた病人の方たちに、ほんとうにすなおに話す雰囲気に会社自身もありませんでしたし、そしてまた、そこでお話を聞きましたら、水俣の町に町内会でビラがまかれておりまして、この恥を外へ知らすな、東京まで知らすなと。そしてまた暴力団の人が一軒ずつのお家に入りまして、そうしてシラミつぶしにしようとしたということを、私はじかに見ましたし、聞きました。
 そういうようなことが、ほんとうに早くなおせるものをなおせない、そういう立場もとっておりましたし、それからまた昭和三十四年でございますけれども、アメリカ国立衛生研究所のカーランド博士という人が水俣へ来まして、そしてあくる年、ネコの実験で水銀とわかりましたときに、熊大の武内教授という人に手紙を出しているのです。その手紙の内容はこうです。「水銀汚染はいまや全世界で重大な問題になっている。このために各国とも研究を続けているが、いずれも動物実験の範囲であり、どの程度の水銀が蓄積されると人体に影響が出るのか、まだ十分な結果が得られていない。人間が有機水銀中毒にかかったのは、世界でも水俣と新潟だけである。水俣と新潟の有機水銀中毒の事件の研究は世界的に貴重な資料であるので、徹底的に調査研究していただきたい」。そしてまた、必要ならば費用はこのアメリカの衛生研究所から出してもいいという手紙が、熊本大の武内教授に来ております。その教授の返事がこうなんです。そういうことを協力的にやりたいけれども、政治的情勢が複雑でなかなかできない、で、これまでのとおりにやるしか方法がないんだという、そういう返事を昭和三十四年に出しているわけでございますね。
 昭和三十四年ということですから、そのころ、そんなふさがるような、世間に見せないようにしないで、早く発表するようなことを会社も政府もしてくれたら、こんな大ぜいの人が苦しまないで済んだではないかというふうに思います。その点についてひとつ、全然知らなかったとさっき三木長官はおっしゃいましたけれども、知らないでは私困ると思うので、もう少し具体的に、その過去の歴史から、将来に向かってどういうふうにするかということをおっしゃっていただきたいんです。その権威ある医者の方たちが、分裂しないでやるにはどうしたらいいのかということをおっしゃっていただきたいんです。
#41
○国務大臣(三木武夫君) 水俣病には、単に熊本大学ばかりでなしに、新潟大学もこの問題を手がけてきたわけです。鈴木さんは権威のあるということばがあまりお好きでないようで、またそれは権威とも言えないかもしれないが、そういう問題を長いこと手がけてきた人は、手がけてこない人よりもやはり問題に対する知識を持っておるわけですからね。
 私も水俣へ行きたいと思っておるわけです、国会の審議とにらみ合わせて。その前にでもいろんな人に私は来てもらって、これは全く悲惨なことですから、何とか――根本的解決はないですよ、水俣問題の。それはなぜかといったら、生命は失われておる、健康は失われておるんですから。しかし、せめても何か患者の人たちの苦痛を少なくするような方法はないか。そのためには、治療の問題というものも大きな問題ですから、それで、できるだけ水俣病に関連を持った医者の人たちと私は個別に会っておるわけです。そしていろんな知恵を借りたい。そして、できるだけ治療を中心とした水俣病の研究体制というものを強化していきたいという考え方で、そういうこともやっておるわけであります。
 過去のいきさつについて、おまえ知っておるだろうというお話ですが、私も水俣というものは非常に、何というのか、こういう悲惨なことがあり得ようかという感じで、いきさつというものを私も、詳細ではありませんけれども、一通り読んでみたのです。そして、いま御指摘の昭和三十四年という時期は、厚生省の食品衛生調査会でも有機水銀のことを指摘しておりますからね。それから経済企画庁に移って、相当な年月がたってきたのですからね。一体なぜこういうふうに時間がたったのかということに対して、私もまだその理由というものはこうだという、私自身が納得するような理由は、いま不幸にして聞いてないわけです。
 しかし、いまから思って、これは政府といいますか自治体も含めて、政治全体が反省しなければならぬと思うことは、一つには問題の深刻さというものに対する認識の浅さ、この有機水銀というものからくる人体への影響というものが、どんなに深刻なものかということに対する認識の浅さ、あるいはまたこういう時代ですから、いろいろな予測しがたいようなことが起こることに対する先見性の欠除、こういうものはやはり責められるべきものを政治も持っておると思うのです。企業はもちろんですよ。そういう点で、これはもう政治も企業も、一つのものの考え方というもの、生命、健康というものを守ることが政治の第一義的責任であるということに徹して、ものの考え方というものに対する一つの転換をする大きな契機にしなければならぬというふうに考えておるのです。その経過をおまえ語れということですが、私実際に経過は、私自身がどうしてこんなに日がたったのかと思ってふしぎに思っておるぐらいで、詳細に私は承知しておりませんから御質問に直接答えられないことは遺憾でございますが、そういう感じを持っているということでございます。
#42
○鈴木美枝子君 三木長官、私はやはり患者の人に、企業の方とは年中お会いになっているでしょうから、患者の人にほんとうにこまかくお会いになると、ほんとうに苦しみや痛みがわかるのじゃないか。苦しみや痛みがわかりますときに、国民総生産第二位というような、確かにそうなんでしょうけれども、それを大宣伝するようなことはなくなるのじゃないか。たいへん私の印象では大宣伝をしているような感じがするんです。確かに第二位でしょう。だけれど、国民生産と書いてあるからには国民が物をつくったわけです。その物を生産した国民が水俣の病気で苦しんでいる。苦しんでいることに、医療の薬さえ発見できないということは、結局は人体実験に終わって、そして世界の人の実験の材料になる可能性も、ふえてくればふえてくるほどあるような気がいたします。私はやはりあの方たちが、国民生産で努力をして、そういう働いた人たちが人体の実験にさらされるということが、ものすごくいやでございます。
 三木長官は先ほど手をお振りになりまして、企業のほうは、チッソのほうは詳しくないとおっしゃいましたけれども、どうぞ患者さんに一人ずつお会いになっていただきたいというふうに思います。そして三木長官ばかりじゃなくて、私は患者さんたちにお話をじかに聞きますと、みんな、心がないということを言います。心がなければ人間がわからないわけで、つまり、いきなり金と人間を取りかえるようなことが自分たちには屈辱を感じるということを一番言うわけでございます。
 だから、裁判に勝ったというのではなくて、この裁判を出発点にして、あと全体の人にお金をほんとうに払うという――もしチッソが払わない場合は、政府は、三木さんはお払いくださいますでしょうか。
#43
○国務大臣(三木武夫君) 御承知のように原因者が明白ですからね、チッソが原因者であると。原因者が明白な場合は、この責任は企業が負わなければいけません。これはやはり企業の一つのそれがモラルです。これだけの被害を与えて、その責任を果たすというのは、企業が社会的な存在である以上はその社会的責任を果たさなければならぬわけでありますから、補償の問題は、全患者に対してチッソが行なうべきものである、こう考えております。
#44
○鈴木美枝子君 三木長官はそれに対して助言なさいますか。払わないようなことがございましたら、払わせるというふうに助言していただけますか。
#45
○国務大臣(三木武夫君) 当然にその会社自身も、これだけの社会的な大きな批判が巻き起こっているわけですから、企業の責任を感じて、これはもう全財産をなげうってでも補償に当たるものだと私は考えますが、そういうことのない場合には、会社に対して勧告をいたすつもりであります。
#46
○鈴木美枝子君 三木長官、ありがとうございました。いまのおことばで、私はまた患者さんに会いましたら、三木長官はそう言っていらっしゃったというふうにお伝えさせていただきたいというふうに思います。
 それではどうぞよろしくお願いいたします。
#47
○杉原一雄君 二十日の日は判決があったわけですが、過ぐる二十三日にNHKで、あるお医者さんの告白を、ぽつりぽつりとおっしゃっていたのを耳にして実に感動いたしました。それは熊大の原田正純助教授です。この方は、何回か裁判所における証言台に立たれたということなんですが、証言に立ちながら、実にむなしい証言を繰り返してきたと。それは一つの犯罪であり、殺人罪である。神経をおかす病は、解決はきわめて困難である。病気の大量生産をしているのだ。放置できぬ。診断、治療は研究室から飛び出して、こんなことが起こらぬようにもっと大切な治療が必要ではないだろうかと。その意味は、察するに、いま長官がみずから発言なさったように、政治の責任、社会全体の大きな責任というふうに、原田助教授は私たちを含めての国民に訴えられたものだと実は思います。
 なおかつ、四つの公害裁判がいずれも公害会社の敗北に終わったわけです。そのうちの一つ、イタイイタイ病は私の出身県の富山に関することなんですけれども、四つとも私は身を切られる思いで、この運動あるいは結果を見守ってきた一人であります。
 四大公害訴訟で公害会社が完全に敗北したというこの時点に立って、私たちは、鈴木委員が指摘するとおり、高度成長政策、GNP第一主義等々の問題について、ひるがえって検討を加える時期が来ているのではないか。ある人は、この判決の結果は、結局、資本が科学の知識あるいは企業の秘密、さまざまな武器を利用して、武装してかまえたものであったけれども、住民は、いま鈴木委員がおっしゃったとおり、ほんとうに素手で立ち向かって戦い、かつ勝ったのであります。歴史的な意義づけから言えば、ベトナム戦争でアメリカが負けたというこの今日時点の歴史的な現実と、意義においては同一であるというようなとらえ方をもしている人がおります。私はそういう認識に立つことはきわめて当を得ているように実は思います。
 そういう判断と考え方からして長官にはまずお伺いしたいのは、あなたは長官になられてからもうすでに相当の月日を経過いたしました。長官としてこの問題に直接笛をとって指示指令された、いわゆる行政指導なさったこと、最も顕著な事例は何と何とであったか。そしてまた、いまみずから、国会の進行過程等を見ながら現地におもむくということをおっしゃっておることは、他の委員会においても発言されたそうでありますが、そのことは非常に妥当だと思いますが、大体いつごろそれを実行に移されるか。なおまた、公害・環境等の問題についての担当庁として、他の省庁に対して、長官におなりになってからどのような働きかけをしておいでになったか。これはこまかいことはお聞きしません。顕著な事例がありましたらお聞きしたいと思います。
 その次に、先年、一昨年だと思いますが、いわゆる公害国会において十四の法律、その後、悪臭防止法等を含めて公害関係の立法が形としてはかなり整うたと思います。しかし今度の判決、主文を見ましても、きわめて重大な問題提起をたくさんしております。責任の問題、無過失賠償責任の問題、あるいは時効の問題、あるいは協定無効の問題など、非常に多くの問題提起をしているわけです。この判決、司法の権威においてなされたこの判決を、私たちはもう一度あの立法当時のことに振り返って、今日施行されている法律の内容等について総点検、検討する必要があるのではないだろうか。私たちはまだ不勉強です。社会党としては直ちにそのことについて、手分けをしながら各立法について点検を行なうことを、きょうきめました。そういったことについて、政府当局も四大訴訟判決の結果に基づいて、十幾つかの公害立法について総点検をなさっていると思いますけれども、なさっておらないとするならば、今後すみやかになす意思があるかどうか。これが第二の問題です。
 第三の問題として、通産省に公害保安局がございます。私直接関係のあったことで、全国に問題を起こしました日本鉱業三日市製錬所、富山県の黒部にあるわけですが、ここからカドミを流しまして、汚染田、またはイタイイタイ病までいかなかったけれども、かなりの被害を起こし、大きな問題になりました。しかし通産省の公害保安局が、いわゆる通産行政の立場からきびしく監督し指導し、ときにはその公害害発生部門だけ全面ストップをかけて施設改善を命じました。結果的には、一昨年の八月ついに一〇〇%操業までこぎつけました。これには企業側の反省、企業側の約八億円投入した公害防除施設等の設備があったので、結果的には、いま残された汚染田の処理だけが問題であって、すでに死の川と言われた川にはアユがあるいはフナが、さまざまな魚が泳いでおります。
 そういう事実等から考えても、通産当局、行政当局が腹帯を締めて、こうした公害発生の危険のある、なかんずく化学工業、そうした工業に対して行政指導を今日までもされたと思いますけれども、ただ残念ながら、事水俣病に関する限りは、新聞論調はすべてといっていいくらいに行政当局の怠慢を指摘しております。もしここで、ここは裁判所ではありませんけれども、そうでないという行政指導の実績等があるならば、通産当局から明快に、大まかな年次とその指導の内容、それがどういう結果になったか、こうしたことを実は明らかにしていただきたいと思います。
 以上、関連でありますので質問をこれで終わります。
#48
○国務大臣(三木武夫君) 杉原委員から、水俣病に関係して、判決が行なわれて以後どういうことを具体的に指示したかという御質問ですが、私は三つの問題があると思っているわけです。これは根本的な解決は、生命とか健康というのはいまはできない、まことに取り返しのつかないあやまちをおかしているわけです。しかし、この時点においてできるだけの善後の処置をするということはわれわれの責任であると考えて、三つのことを重点に考えておるのです。一つは患者の問題であり、一つには治療体制の問題、これは患者とも関連しますが、一つにはヘドロの処理の問題。
 それで、一つの患者の問題については、熊本県知事に先般会いまして、できるだけ不知火海沿岸に広く検診をしてもらいたい。いまではある限られた地域ですから、これは天草のほうにも広げて広く検診をしてもらいたい。いままでに第一次の検診で十一万六千人の検診をした。第二次で二万八千人の検診をした。その精密検査をいまやっている最中である。そればかりでなしに、もっといままでに検診しない人たちも、不知火海の沿岸の人たちは広く検診をして不安を解消するようにしてもらいたい。これが一つ。それから、健康調査とともに環境の調査というものをいままでやっておりますけれども、もう一ぺんやはり環境調査というものも行ないたい。
 それから治療体制ですが、鈴木委員にもお答えしたように、水俣病についていろいろ長い間研究しておる学者の人もおるわけで、そういう人たちを呼びまして、治療の体制というものを確立するのにはどういう方法がいいであろうかという問題について相談をしたわけです。また、これは熊本県知事にも言ったのは、私が行く機会に、熊本大学の水俣病に関連した全教授と会わすような機会をつくってもらいたい。そして研究の体制を強化して、何とかしてその苦痛を軽減するような方法はないか。それからまた機能回復の、リハビリテーションといいますか、そういう施設もあるようですけれども、これも思い切って強化しなげりゃならぬでしょうね。こういう問題について知事とも話をしたわけです。
 ヘドロについては、いまもうすでに話し合いを始めておるのは、港湾ですから運輸省の港湾局がこれは関係をしておるわけです。港湾局長とも会って、そしてヘドロの底には水銀があるわけですから、これで第二次汚染を起こすようなことになってはいけないわけで、これを埋め立てる。しゅんせつ、埋め立て。第二次汚染を起こさないような方法というのは熊本大学の工学部でいままで研究してきて、中間答申もあるわけですが、こういう問題も参考にしながら、第二次汚染を起こさない方法というものを研究しなければならぬわけです。そういうことであのヘドロは処理したいと思うのです。いまは底のほうに沈んで、汚染が非常にひどくなっていくという傾向はないですよ。しかし、あるのですからね。あの有機水銀がたまっておる地帯というのは、人間のからだでいえばまあ病巣を持っているわけですから、これをやはり除去したい。この方法というものを、これは政府も、事業主体は熊本県にあるにしても、いろいろいままで手がけてきておるですから、政府の技術陣というものもできるだけ頭脳を動員して、そうしてこの工法をきめて、四十八年度からでも実施するようにしたい。
 この三つのものに向かって、ほかにもたくさん問題はありますよ、しかし焦点をしぼれば、この三つに対して解決の努力をすることが、この場合における善後処置の中心であると考えて、いままでに、いま言ったような面でいろいろな人に会ったり相談したりした次第でございます。
#49
○政府委員(齋藤太一君) 通産省として、チッソに対しましてどのような指導をやってきたかという御質問でございますが、昭和二十九年ごろから、この不知火海沿岸に当時奇病といわれました中枢神経症患者が出てまいりまして、なかなか原因がはっきりしなかったわけでございますが、昭和三十四年の七月に熊本大学の医学部で有機水銀中毒説が提示されまして、そういう状況でございましたので、政府としてまだ原因が確定しない状況でございましたけれども、通産省としましてはチッソに対しまして、昭和三十四年の十一月に排水処理設備を完備するように通達をいたしました。
 それを受けましてチッソは、当時非常に進んだ設備といわれましたサイクレーターという排水処理施設をつくりまして、その中に排水をためまして、水銀は底に沈でんをさせて上澄みだけを使う、こういう設備をこさえたのでございますけれども、動かしてみますと、あまり効果がなかったのであります。そこで再度、今度は工場排水を全部循環をさせまして、工場外に流さないように工場の中をぐるぐる回す、こういうような装置をつくりまして、回ってくる途中で水銀の回収装置で回収をするわけでございまして、この循環装置ができましてからは、水銀の流出量は大幅に減ったというようにいわれております。
 ただ、まだ安全ではなかったのでございますが、当時原因もまだはっきりいたしておりませんし、それから不知火海一帯が水質保全法による規制地域にもなっておりませず、また水銀の流出の基準というものも当時は政府としてきまっておらなかった状態でございまして、いわば法律的には水銀の流出につきまして何ら規制がない状態にあったわけでございます。
 いわば行政指導という形で、ただいま申しましたような循環装置等を設置させたわけでございますが、基本的にはこの水銀対策としましては、水銀を使わない製法に工場を転換させるのが最も抜本的な対策になるわけでございまして、ちょうど昭和三十年の末期に、この当時チッソがつくっておりましたいわゆる水銀触媒を使いますアセトアルデヒドという製品につきまして、従来の水銀を触媒として使いますカーバイト・アセチレン法にかわりまして、石油化学方式の、石油を原料といたしましたエチレン法アセトアルデヒドという製造技術が日本に外国から伝わってまいりましたので、これに転換をするようにすすめまして、その結果チッソは、千葉に石油化学法によるアセトアルデヒド設備を建設をいたしまして、この設備の完了、稼働に伴いまして、水俣のアセトアルデヒド製造設備を昭和四十三年に廃止をいたしました。その結果、四十三年以後は水銀を使う工場がそもそも廃止になりましたので、現在は全くこの水銀は水俣工場では使われておらない、こういう状況でございます。
#50
○杉原一雄君 答弁漏れがあるようですが、長官からのほうが適当じゃないかと思いますけれども、公害立法に対する、十四か十五ありますから、総点検はもう始めていると思うのですね、官庁の良識に訴えて。やっておいでになるか、やる気があるか、そういう点、この過去の四大判決等を基本にして検討なさるつもりがあるかどうかということを簡単に。
#51
○国務大臣(三木武夫君) 公害問題というものが日本でこれだけの社会的な関心を呼んできたのは、そう古いことではないわけです。そういう中で公害関係の立法というものは急につくられたわけでありますから、絶えず私は公害立法というものは見直しをして、時代の変化に即応したような立法にしていかなければならぬということで、いろいろな社会情勢の変化ともにらみ合わせて、絶えず総点検といいますか、それを見直すようなことをしなければならぬということを指示いたしておる次第でございます。
#52
○内田善利君 ただいま三木長官は、水俣に堆積している有機水銀のヘドロの処理を四十八年度から着手する、このように述べられたわけですが、運輸省としてはこれに対して直ちにその対策に移ると思いますが、
  〔委員長退席、理事杉原一雄君着席〕
どの程度ヘドロがどうなったらしゅんせつをやめるのか。現在水銀の環境基準は、水質汚濁防止法の排水基準と公害対策基本法による環境基準しかきまっていないわけです。ヘドロの環境基準はきまってないわけですが、このヘドロの中の環境基準はどうされるのか。これがきまらなければ、しゅんせつなどはできないと思うのですけれども、この点はどうなさるのか。
#53
○政府委員(岡安誠君) いまお話しのとおり、底質につきましては、基本法におきましても必ずしも環境基準をつくれというふうにはなっておらないわけでございます。と申しますのは、なかなか底質に含まれております有害物質等につきまして、その状態並びに性質等を明らかにするのは困難であるということもあろうかと思います。しかしながら、私どもといたしましては、水銀その他につきましては早急に、いま先生おっしゃるとおりヘドロの除去対策を実施しなければならないわけでございまして、いわば除去対策を実施する必要のある基準といいますか、そういうものをつくりたいということで、現在水質部会の分科会に諮問をいたしております。四月の末ごろには答申があろうかと思います。その答申によりまして、私どもはヘドロを処置すべき基準というものを出しまして、今後埋め立てまたはしゅんせつの事業を実施いたしたい、かように考えておるわけでございます。
#54
○内田善利君 これは水俣ばかりじゃなくて、田子の浦とか洞海湾とか、全国の堆積しているヘドロについての基準がきまるわけですね。
#55
○政府委員(岡安誠君) これは一般的に水銀その他の有害物質についての基準をつくりたいというふうに思っております。
#56
○内田善利君 ちょっと質問が前後しましたが、裁判長の判決言い渡し後、裁判長は、裁判には限界がある、公害の根本的解決は政治の努力に待つ、このように言っているわけですが、この裁判長のことばに対して、長官、どのように受けとめておられるか、聞きたいのですが。
#57
○国務大臣(三木武夫君) その裁判所の判断はもっともだと思います。訴訟を起こした患者に対して損害賠償の支払いを命じたわけでありまして、やはり公害問題ということに対する、先ほど鈴木委員の質問にも答えましたように、問題の深刻さというものに対しての認識、これは今後企業はもちろんのこと、政治全般も、いろんな予測しないことが起こり得ますからね、そういう点でこれは大きな政治の課題であるということは、裁判所の言われるとおりだと思います。
#58
○内田善利君 非常に質問が飛び飛びになって申しわけないのですが、きのう、おとといの予算委員会でこのことは質問したいと思っておりましたけれども、時間の関係でできなかったわけで、あちこち抜いて質問しますので飛び飛びになりますが、非常に認定がおそいわけですね。これはずっと水俣病の問題については何回も審議してきたわけですが、そのつど申し上げておったわけですけれども、非常に申請があってから認定がおそいわけです。昨年の三月十六日に申請している人が、まだどっちともわからない。これは審議する先生方のいろいろな問題があろうかと思いますけれども、患者にとっては一日も早く救済措置をとっていただきたい、公害病として認定していただいて、医療費その他の救済をしていただきたいと熱望しておるわけですけれども、このようにおそいわけです。その点はどのように考えておられますか。
#59
○国務大臣(三木武夫君) 先日も、熊本県知事とも私どもその問題に触れて、もう少し認定といいますか検診の時間というものが短縮できないものであろうかと。いまは認定審査会という、これは公的な機関があるわけであります。だれでも町の医者で見てというわけにはいかないのです。それにはやはりいろんな問題が、認定をされたという場合には認定されただけで済まないわけですから、いろいろこれに対して国の責任も伴ってくるわけですから、やはりこの審査会でするわけで、これは何か予算なんかの関係でもっと強化できれば、速度を速めるようなことならばわれわれとして考えるからということで、もう少し速度を速める方法を研究してもらいたいということを熊本県知事にも要請をしたのです。われわれとしてもできるだけ早いこと認定といいますか、検診の結果がわかるようにつとめてまいりたいと考えておる次第でございます。
#60
○内田善利君 公害病の認定と補償との関係ですけれども、これは切り離せない問題だと思うのですね。それで無過失賠償責任制度も、水質汚濁防止法と大気汚染防止法だけに適用される。しかも健康被害だけなんですが、これを一切、生活補償まで含めて補償すべきである、このように思うのですが、この点についてはどのようになさるおつもりでしょうか。
#61
○国務大臣(三木武夫君) いまの場合は内田委員御承知のように、公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法、これによって患者の治療費というものを中心にして救済をしておるわけです。これは社会保障的性格を帯びた立法でありますが、今度、公害の損害賠償保障制度というものをこの国会に御審議を願いたいと思って検討を加えておるわけですが、この中に水俣病というものの患者の問題を組み入れるかどうかということに対しては、まだ結論を得てないのですが、これは検討をいたしておる最中でございます。
 そういうことになれば、いま内田委員の御指摘になったような生活補償的な性格を帯びた、いわゆる名目はともかく、そういう性格を帯びた補償ができるわけですから、いまの特別措置法とは性格が違ってくるわけでありますが、それにしてもやはり原因者が負担をするという原則は、これがゆらいでまいりますと、そうして原因者でなしに全部政府がどうだというようなことになってきますと、これは世界的に見てもPPPの原則というものがあるわけで、原因者負担の原則というものが国際的な一つの原則でもありますから、だから補償はやはり加害者にやってもらう。だから損害賠償保障制度で、よし組み入れたとしても、それは会社からその費用は返還を求めざるを得ない。やはり、ある期間の一つの立てかえ払い的な性格を帯びるわけで、本格的な補償は加害者たる会社が患者に対して支払ってもらいたい。この原則は貫いていかなければならぬ。だから、つなぎとしてのことは、いま言ったようなことで十分検討をしてみたいと考えておる次第でございます。
#62
○内田善利君 生活補償も、それから土壌とか農地の被害、そういったものの補償も考えてやっていただきたいと、そのように思います。
 それから、私も判決の日には熊本に行っておりましたけれども、あの被害者の方々の悲痛なお願い、それから胎児性水俣患者のあの悲惨な姿を見まして、水俣病はここで終わらない、と。日本の水銀汚染ということはここで何とかして食いとめなければいけない。一億総水俣病と言われることもあっておるわけですけれども、日本人の髪の毛の量も世界で最高だ、そういうことを聞いております。アメリカに留学して帰ってきて、半年もすればまた水銀の量がふえる、このように聞いておりますが、こういった水銀汚染の問題。
 先ほどヘドロの問題をお聞きしたわけですが、これは環境基準をつくってしゅんせつする、対策を講ずる、こういうことですけれども、あの熊本周辺のことを考えてみましても、先日の新聞でも、有明海に水俣湾の貝と同量の水銀の汚染が出ておるということですが、その汚染源は日本合成の工場と断定、このように見出しで出ておりますが、このように水銀の汚染ではなかろうかというようなことが出ているし、また、農薬の汚染等も世界一の土壌の中の水銀量と残留農薬の量、こういうようなことでございますが、私はこの水俣病の裁判の判決を契機として、環境庁としても何らかの日本全土の水銀対策ということを講ずべきじゃないか、このように思っているのですが、この点はいかがでしょう。
#63
○国務大臣(三木武夫君) 私も内田委員と同じように、日本人の頭髪の中には世界一水銀の含有量が多いわけです。農薬というものについて、四十三年に水稲に対しての水銀の農薬を禁止して、そして四十五年に水稲以外の果樹その他に対する水銀の散布を禁止して、いまは種子の消毒というものに限られておるわけですが、しかし、やっぱり世界に比べてみると、いままでの水銀の農薬の使用というものは圧倒的に日本は多いですから、これが単にわれわれ今日生きておる者ばかりでなしに、どういう影響を将来にわたって与えるものかということは、相当深刻な問題であろう。だから土壌汚染についても、水銀の環境基準というものはわれわれとしてつくりたいわけです。これは、それをつくるまでの間にはいろいろな検討しなければならぬ問題があるが、やはり私はつくるべきものである。土壌中における水銀の問題というのは、たいへんに心配をしておるわけです。いままで農薬というものを、水銀を中心とした農薬を使ってきましたからね。ことに最近は労働力不足ということで、農薬というものは世界一日本は使ってきたのですから、その中で一番心配しておる水銀の問題というものは、いろいろな困難はあっても、一つの環境基準はつくりたいという希望のもとに研究をいたしておるということを申し上げておきます。
#64
○理事(杉原一雄君) ちょっと速記をとめてください。
  〔速記中止〕
#65
○理事(杉原一雄君) 速記を始めてください。
#66
○内田善利君 私の調査では、日本人の頭髪中のトータル水銀量は、都会、農村平均して大体六・五PPM、農村地区は八・九三PPMと非常に多くなるわけですが、外国は、スペインが三・三、アメリカが二・五七、西ドイツに至りますと〇・一〇、イギリスが一・五〇と、はるかに日本の頭髪中の水銀の量は多いわけですね。これは十七年間、フェニル酢酸水銀性の農薬をいままでに六千八百トン日本の土壌中にまいておる、こういうことなんですね。
 それから残留農薬の中の水銀ですが、農地一ヘクタール当たり残留農薬は、スウェーデンが四から五グラム、英国とフランスと西ドイツが六グラム、オランダが九グラム、これに対して日本の場合は七百三十グラムという、けた違いの残留農薬量ですね。
 ですから、水俣病はあれで終わってない。まだ日本の土壌はこのように汚染されておる。また日本人自体、身体の中にあり得べからざる水銀が、まあ少しはあってもいいことになっておるそうですけれども、あり得べからざる量の水銀がからだの中にあるということ、これはこの際、環境庁としてもまた各関係省庁としても対策を講じていただきたい。ただ公害対策基本法による環境基準、あるいは水質汚濁防止法による排出基準、水道水法による水の基準、これだけで、あとは大気汚染のほうもありません。これは労働災害ですけれども水銀蒸発による災害が起こった例もありますし、大気汚染防止法による排出基準、また、いま申し上げました土壌汚染防止法による土壌汚染の環境基準、これなどは早急に私は決定すべきじゃないかと思うのですね。この点はいかがでしょうか。
#67
○政府委員(岡安誠君) いまお話の、土壌中にあります水銀につきましては、おっしゃるとおり過去相当長い期間水銀農薬を使っておりましたので、日本の土壌には、外国に比べまして相当量の水銀があると思います。ただ、その水銀が相当硫化物になったり、また空気中に蒸発したりというような変化をしておると思います。したがって、できるだけ近い機会に現状を明らかにいたすということをまずいたしたいと思っております。
 それから、そういう土壌中の水銀と農作物との関係が、現在まで必ずしも明らかではございません。米等に水銀の量があらわれる点もございますけれども、非常に微量の例であったり、またその他がございます。それらにつきましても関係を明らかにいたしまして、やはり大量に人間が摂取した場合に危険となるような、そういうおそれのあるものにつきましては、土壌汚染防止法によりまして対策を講じたいというふうに考えております。
#68
○内田善利君 米の場合も、白米で、総水銀ですけれども、昭和二十年は〇・〇二PPMだったのが、昭和四十年になりますと〇・一四PPMと、このように非常に大きくなってきているわけですね。これは権威あるデータですから。そのように、もう米の中にもふえている。ですから食品衛生の立場から、食品の安全という立場から、厚生省はこの水銀汚染をどのように考えておられるか。厚生省見えてますか――。
 それでは通産省にお聞きしますけれども、水俣のチッソ以外の水銀を出している工場、いまクローズドシステムというのはほとんどないわけですから、使っでいる工場は全部出していると思うのですが、その量ですね、日本全国の水銀を出している量は、あるいは消費量でもけっこうですが、どのようになっているのか。そうたくさんはないと思いますけれども、教えていただきたいと思います。
#69
○政府委員(齋藤太一君) 昭和四十六年度での水銀の国内消費は六百七十ミトンでございます。そのうち、苛性ソーダの電極として使われておりますのが四百五十トンほどでございまして、無機薬品に百四トン、それから体温計等の機器類に八十六トン、その他が三十ミトン、こういう内訳になっております。
#70
○内田善利君 これは使っておる量だと思いますが、海域に排出されると想像される量はどれくらいでございますか。
#71
○政府委員(齋藤太一君) 一番水銀の消費が多いのは苛性ソーダ工場で、御承知のように塩を電解をいたしまして塩素と苛性ソーダに分けておりますけれども、その際に陰極として水銀を使っております。ただ、これは出るといたしますと、排水か、あるいは塩の不純物が出てまいります廃泥の中にまじって出ますか、あるいは気化といった問題が考えられますけれども、排水につきましては現在クローズドシステムをとっておりまして、水は循環をさせております。
 それから、どうしても排出いたします場合は、活性炭あるいはイオン交換樹脂その他の化学的な処理をいたしまして、除去をして外に出ないようにいたしておりまして、現在の水質汚濁防止法によります排水中に水銀を検出しないことという基準に合致して、外には出しておらないというふうに私どもは考えておりますし、これまでのいろいろな環境庁等によります取り締まりでの検査におきましても、違反は見当たらないようでございます。
 それから電解槽に塩を電解いたしますと廃泥が出てまいります。これは塩の不純物でございますけれども、その中に一部水銀がまじってまいりますけれども、これにつきましては、工場の中にコンクリートの槽のような、つまり地下水のしみ込まないように穴を掘りまして、それをコンクリートで固めまして、その中に堆積すると申しますか、そういう形で保存をいたしまして、外には捨てないようにいたしております。最近、海洋投棄の基準がきまりましたので、それによりまして、コンクリートでこれを固めまして三千五百メーター以上の深い海に捨てる、こういうことも現在検討中でございますが、いずれにいたしましても、水銀のまじりました廃泥は外へ出さないで構内に堆積をいたしております。
 それから気化の点でございますけれども、工場の設備の密閉化をはかりまして、全部ふたをいたしまして気化を防止いたしておりますので、環境に漏れるということはまずないというふうに考えております。
 したがいまして、どの程度に現実にそれが外に出ておるかの数字はございませんけれども、私どもとしましては出ておらないものというふうに考えております。
#72
○内田善利君 その廃泥の中には三五%ぐらい含んでいるということですけれども、またその廃泥をそのまま保管してあるということですけれども、現実に水島地区では下請の運搬がなされておる。これを持っていって捨てているわけですね。そういう事実がなされているわけですが、こういった廃泥、マッドをどうしておるのか、総点検し、またその分析もすべきであると、このように思いますが、この点いかがですか。
#73
○政府委員(齋藤太一君) 廃泥につきましてはただいま申しましたように、構内でコンクリートで回りを固めました堆積揚に置きますか、あるいは今後は廃泥そのものをコンクリートで固めまして海洋投棄をいたしますか、あるいはさらにこれは今後の技術開発でございますけれども、廃泥そのものを焼き捨てまして無害化するという技術の開発をいたしたいというふうに考えております。
 御指摘のような点は私ども聞いておりませんけれども、外に持って行って捨てておるというふうな事情がございますれば、至急に調査いたしたいと思います。
#74
○内田善利君 もう堆積揚が一ぱいになってどうしようもない状態になっていますから、持っていっていることは間違いありません。また、持っていっておりますから、この点ひとつ点検して規制していただかないと、また日本国土が汚染されていくということになりますから注意していただきたいと思います。
 それから、そういうことで水はクローズドシステムでやっておられるようですが、全化学工場、苛性ソーダの電解工場だけじゃなくて、水銀を含めでクローズドシステムの方向にいくべきであると、このように思いますが、この点はいかがでしょう。
#75
○政府委員(齋藤太一君) 御指摘のように、先般、私どものほうの産業構造審議会の化学工業部会で、昭和七十年代の化学工業のあり方というものにつきまして御検討いただきまして、答申をいただいたわけでございますが、その最大の問題はやはり公害の防止でございまして、その最も効果的な方法はクローズドシステムを採用することということに相なっておりまして、排水等につきましても、極力これを系外に出しませんで循環使用するというやり方をとり、さらに進めて無公害化という意味で、たとえばソーダ工場につきましても、いま新しい技術として出ております隔膜法という製造方法がございます。これは水銀を使わない製造方法でございますので、こういった無公害方式に生産工程をひとつ転換する、こういうことも産業構造審議会の答申に出ておるのでございまして、この答申を受けまして、排水、排煙等のクローズドシステム化、さらには、そもそも有害物質を使わない製造方法への転換、こういうことを、ソーダ工業に限りませず、その他の化学工業の分野につきましても、これから鋭意進めてまいりたいというふうに考えます。
#76
○内田善利君 それからもう一つお聞きしたいのですが、水俣病があのように昭和二十八年に患者が発生して今日に至ったわけですが、同じ熊本県で、同じ工程でアセトアルデヒドをつくっている。その触媒として水銀を使った。その場合に、これを管理する立場として、同じシステムでつくっている工場が水銀を排水していないかどうか、これは検討されたと思うのですが、この点はいかがでしょうか。
#77
○政府委員(齋藤太一君) 御指摘の日本合成の熊本工場でございますけれども、これにつきましても、私ども、水銀を使わない製法に転換することが最も抜本的な方策であろうと考えまして、チッソの水俣工場が転換しますと同じ時期ごろに、日本合成につきましても、従来のカーバイド・アセチレン法から石油化学法への転換をすすめまして、たしか昭和四十年か四十一年ごろに、水銀を使わない製法に全部転換をいたした次第でございます。
#78
○内田善利君 環境庁としては、環境の調査なりをされたでしょうか。
#79
○政府委員(岡安誠君) 日本合成が立地しております付近の河川、緑川と申しますが、これにつきまして調査をいたしております。
 まず水質でございますけれども、排水口等の調査は四十二年、それから四十六年以後はずっと詳細に調査いたしておりますけれども、いずれも水銀につきましては検出されておりません。
 それから底質でございますけれども、底質につきましては、緑川の河口並びに工場の排水口から下流五百メートルの地点等で調査をいたしております。その結果を申し上げますと、一番多い量で一・六一PPMというのが検出されておりますが、それ以外は〇・六とか〇・二とかいう程度の水銀が検出されております。
#80
○内田善利君 水俣病が云々されたのは、先ほども言いましたように二十八年から患者が出て、三十七年、八年、この間が一番問題になりましたし、四十年に入りますと、三十七年には水銀説が出たわけですから、それ以後はもうやっていないし、アセトアルデヒド工場を閉鎖したのが昭和四十年ですから、やめてしまって二年後から環境調査をしたのでは、これは排水には出てこないと思うのです。ヘドロには出てくると思うんですね。
 いま、その環境のほうの貝類とか魚類がいまやっと調査されておる。そして出てきたデータがこれなんですが、こういうことでは、先ほども行政の少し怠慢であったというような話もありましたけれども、こういうことがやはり、今度は有明海にまた水俣病患者が出てくるか出てこないか私にはわかりませんけれども、そういうことにでもなればたいへんなことじゃないか。不知火海を隔ててすぐ有明海があるわけですから、その有明海にこの緑川は注いでいるわけですから、やはりその当時から同じシステムでつくっている工場が、しかも同じ熊本県にあるわけですから、当然これは調査すべきであったと、このように思うのですが、環境庁政務次官どうでしょう。
#81
○政府委員(坂本三十次君) いま、この水俣の悲惨な体験と申しましょうか、それを契機にして、政府は姿勢を正してきびしく公害に対して規制もやらなければなりませんし、それから行政の油断といいましょうか、一部のすきもないようにやらなければならぬというて、いま、えりを正しておるわけであります。
 そういう観点からいたしますれば、そういう同じ県内に同じようなことをやっておった工場がありまして、その間におきまして厳重な規制がおくれたということにつきましては、これは残念なことだと思っております。これからはひとつ、きびしく環境基準を守らせて、そして特に底質につきましても対策を講ずるなど、今後ともひとつ油断のないように厳正な反省の上に立って対処をいたしたいと思っております。
#82
○内田善利君 この水俣湾の貝と同じ汚染度であるわけですね。そういうことから、これは早急に排水調査、あるいはヘドロの調査、環境調査をやらなければならないと、このように思うのですが、通産省としては、水銀を使っている工場の総点検はこの際やるべきじゃないかと思いますが、どのようにお考えでしょうか。
#83
○政府委員(齋藤太一君) 水銀を使用いたしております苛性ソーダ工場につきましては、設備の改善等につきましては常時監督をいたしておるところでございます。ただ、その排水等の、いわゆる水質汚濁防止法によります取り締まりは環境庁の管轄下に府県が行なわれておりますので、その府県の取り締まりにゆだねると申しますか、お願いをいたしておる状態でございます。
  〔理事杉原一雄君退席、理事金井元彦君着席〕
#84
○内田善利君 全国総点検の指示なりを与えるお考えはないですか、指導をするという考え方ですね。各県がその責にありますけれども、この際、水銀を取り扱っている工場に対して、そういう国民の安心するような方向でやっていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
#85
○政府委員(齋藤太一君) 現実に苛性ソーダの製法の非水銀法への転換問題を控えておりますので、そういった各会社の計画も個別に聞くつもりにいたしておりますが、この際、全苛性ソーダ工場にさらに厳重に水銀の取り扱いにつきまして、系外に出さないように十分警告をいたし、その万全を期したいと存じます。
#86
○内田善利君 最後に聞きますけれども、農林省としては、ウスプルンをはじめとして水銀農薬を使っているわけですけれども、これに対する考えはございませんか。
  〔理事金井元彦君退席、委員長着席〕
#87
○説明員(福田秀夫君) 御指摘のように、種子消毒に限りまだ水銀を使っております。これは、ほかに種子消毒にたえる薬がなかったことと、種子消毒剤というのが国際的にもほかにいい薬がなくて、現状では使っておりますけれども、やはり水銀でございますので、なるべく早くやめたいという気持ちでおります。それで、かわりの、非水銀で種子消毒でき、しかも作物には影響がないという薬の開発、これを積極的に進めてまいっておるところでございまして、そういうものが開発され次第、かつまたその使い方の普及をはかりながら、一日も早く水銀を含んだ種子消毒剤を駆逐したいと考えておるところでございます。
 なお、幸いにして最近二、三の化合物の検討が進みまして、二つばかり、この四十八年一月十一日付をもちまして種子消毒用の薬として新しく登録したものがございます。これもいろいろ登録申請があります農薬の中で、水銀にかわるものということで優先的に検討調査いたしまして、四十八年度の使用に間に合わせるべく一月十一日付をもって登録をしたわけでございます。ただ、こういった新しい薬が、稲に対する影響というものが使い方によって若干あるやに聞いておりますので、その辺のじょうずな使い方の普及に今後は力を尽しながら、水銀との取りかえをはかっていきたい、このように考えております。
#88
○内田善利君 水銀問題はこれで終わりますけれども、水銀を全然使っちゃいけないとは私も言いたくありませんけれども、やはりこういった健康を阻害するようなおそれのある水銀については、通産省でもクローズドシステムで製造する方法も考えておられるようでございますから、その点ひとつ、この判決を機会に対策を講じていただきたい、そのように思います。
 次は、福岡県の大牟田市の三井東圧化学大牟田工業所で農薬の人体実験を行なったことが明らかになったわけですが、その状況を労働省に質問いたしたいと思います。
#89
○説明員(倉橋義定君) ただいま御指摘がありました三井東圧化学工業所におきます人体実験に関しましてでございますが、実は昭和四十二年、同工場におきましては二四五TCPの生産をしていたわけでございますが、その後四十五年に至りまして、いろいろの問題から同物質については製造を中止しております。この間におきまして、この作業に従事しておりました労働者につきまして、健康上障害が出ております。したがいまして、その際いろいろ精密検査を実施したわけでございます。
 その後、同工場におきましては同作業を行なっていないわけでございますが、最近に至りまして、労働者、労働組合の方々の要請もございまして、従来この作業についていた労働者で健康障害等の問題があった方々につきまして特別の健康診断を実施するということで、四十名に対しまして、本年の二月におきまして健康診断を実施したわけでございます。
 その健康診断の一つにおきまして、いわゆるパッチテストというテストを含めました検査を実施いたしております。このパッチテストによりまして、いろいろ同物質の何といいますか、過敏な症状、そういうものを判断するテストでございますが、これがいわゆる人体実験というふうに報道されたわけでございます。
#90
○内田善利君 この件で、事前に本人たちに了解をとらなかったという、このことに問題があると思うのですが、要請によって実施したということですけれども、本人たちの了解をとらないでこれをやったということに問題がある、このように思うのですけれども、人権擁護の観点から、法務省、見えていますか、見解を教えていただきたいと思います。
#91
○説明員(加藤泰也君) いわゆる人体実験と申しますか、これに対しては明確な法律上の基準はまだ確立されておりません。しかしながら、科学の進歩と人権擁護と交差する場面があるわけであります。私どもとして、法体系全体並びに社会通念等から一応のこの種の基準を考えております。
 その基準と申しますのは、まず第一に実験を受ける者が、その実験の過程あるいは結果、通常の生活に支障を来たすような危険がないということが一応科学的に予測されているというか、そういうことがないという蓋然性が非常に高いということが確立されていることが一つ。第二点としましては実験を受ける者に対して、実験の目的、方法あるいは危険性等について十分説明をして、完全な自由意思に基づく承諾が必要である。第三点として、医師の、事前あるいは実験の過程、最後には事後の期間を通じて厳重な管理のもとに置くというこのこと、その三つが重要だと思います。このいずれを欠いても人権侵犯になるというふうに考えます。
 したがって、今回の三井の東圧工場における件については新聞の記事しかまだ私どもとしては知らないわけでありますが、この新聞の記載によると、従業員の承諾を得ていないという、先ほど申し上げた第二の点に明らかに背離すると考えますので、人権侵犯の疑いが濃厚だ、こう考えております。
#92
○内田善利君 労働省の見解はどうなんですか。
#93
○説明員(倉橋義定君) 労働省におきましては昭和三十三年以降、パッチテストを実施するにあたりましては――基本的には健康診断の方法の一つとして医学的にも確立されていた方法でございますので、したがいましてそれの是認を前提としておりますが、なおその実施にあたりましてはいろいろな問題が出るわけでございます。したがいまして、その実施にあたりまして、必ずパッチテストを行なう場合には経験のある医師が行なうこと、それから対象の労働者の方に対しては、必ずそのテストの目的なり反能の程度、またパッチテストによりまして起きますいろいろな注意事項、そういうものを具体的に本人に知らせまして、本人の承諾を得るなどにつきまして詳細に通達して、各事業所においてこのような指導をしてまいってきておるわけでございます。
 したがいまして、この事案が直ちに人体実験という性質のものでございませんが、かりに新聞報道等にございますように、本人の承諾なくして本テストを含めた健康診断を行なったということにつきましては、はなはだ遺憾と考えております。
#94
○内田善利君 昭和四十三年ごろから二四五TCPをつくっておるわけですね。これは林業用ですね。それから水溶の除草剤としてPCPをつくっているわけですが、それから果樹殺虫剤としてPCPソーダ。昭和四十三年からつくっていた二四五TCPというのは、あの枯れ葉作戦に米軍がベトナムで使った農薬ですけれども、これをつくったために、従業員の中から皮膚中毒の疾患者が三十五人被害があって、そのうち八人がまだ通院中だ。これは労働省は掌握しておられるかどうか。それからPCPでも三十二人が被害を受けて、二十四人がまだ治療中と聞いておりますが、これを承知しておられるかどうか。
#95
○説明員(倉橋義定君) 過去に二四五TCPを扱った者が百名程度ございまして、その間に発症いたした者三十五名ということにつきまして、また、その中でさらに現在まだ加療中の者十四名ということにつきまして承知しているわけでございます。
#96
○内田善利君 こういったことを起こしている工場でこういったPCPのような、それこそもう製造禁止しているような農薬をからだに張りつけて、労働者の方々、従業員の方々の了解を得たかどうか、その辺はいまださだかでありませんけれども、報道によれば了解を得ていないということだし、了解を得ても、こういう実験をすること自体が私はどうなんだろうと、医学的なことはわかりませんので、思うのですけれども、労働省としても監督官庁として、今後こういったことに対してどのような対策を講じていかれるおつもりなのか、お聞きしたいと思うのです。
#97
○説明員(倉橋義定君) ただいまのパッチテストでございますが、このテストを含めます健康診断を実施するにあたりましては、熊本大学の公衆医学教室の指導のもとに行なっておるわけでございます。したがいまして、この張りました化学物質につきましては、一%、二%、三%というふうな薄い希釈濃度でやっております。われわれから考えますと、この程度の濃度におきましてテストを受けることにつきましては、医学上問題はないと考えております。今後におきましては、いろいろパッチテストを実施する場合につきましては、先ほど申しました線に沿いまして、十分厳重な管理のもとに行なうよう指導の徹底をはかってまいりたいと思っております。
#98
○内田善利君 これで質問を終わりますが、こういったことは、やはり従業員の方々の了解を得てやるということがこの問題の基本じゃないかと思うのです。了解も得ないでこういう劇毒物を、一%か二%か三%か知りませんけれども、そういうものを張りつけてやるということは実験なわけですから、医学上たいしたことはないかもしれませんけれども、ないならないと、やはり従業員の方の了解を得た上で、理解を得た上でやるべきであると、このように指導していただきたい、このように思います。いかがでしょうか。
#99
○説明員(倉橋義定君) 御趣旨に沿いまして十分事業所を指導するよう、徹底をはかってまいりたいと思います。
#100
○高山恒雄君 今度の水俣病の問題について、一応判決を見ることができまして、損害賠償の点も明らかになったわけですが、私は、これは予算委員会で多くの質問者に対して、通産大臣も環境庁長官も、政府のミスであると同時に責任を痛感する、こういうふうに言っておられるわけですが、私は責任を感ずるだけではだめだと思うのですね。
 なぜかならば、二十八年にそういう事態が起こっておるにもかかわらず、一方通産省としては、三十四年にサイクレーターを使用するように浄化装置をやれ、こういう指示をしておるわけです。原因があるからそれをやったに違いないと私は思うんですよ。三十五年にさらに、それではいかぬからクローズドシステムのいわゆる排水操業をやれ、こういう指導をしておられるわけですね。しかもこの指導をするのに、これ、約七、八年かかっておるわけですよ。水銀の公害があるという事実を知りながら、これだけ長期にわたってでなければそういう操作をしなかったという点にも大きな私は責任がある、こういうふうに考えるわけです。
 といって、これは二十何年もたっておることですから、皆さんが直接その当時携わっておられたわけじゃないですけれども、まさにこれは政府に大きな責任がある。したがって、その責任をどう全うしてもらうかという点が今後に残されておる。先ほど大臣のお話しされたように、関係者に対してすみやかに事後処理をやるように、特に会社には、判決も出たことであるから、その基準に準じて六つの団体との交渉をすみやかに解決をつけるべきであると、こういうふうに申し入れをした、こう言っておられるんですがね。私はそういう問題を言っておるだけでいいのかということを痛感せざるを得ないのです。
 それはなぜかと申しますと、不幸にして、あまりにも長期の問題であったがゆえにと考えますが、同じ被害を受けておる人たちが、六つに分かれて交渉をしなくちゃならぬというこの事態ですね。いかに長期化してこういう事態が起こっておるかということを考えたときに、もう、一つの指針が出たわけです。これは損害賠償はすべきだということも出ておりますし、なお今後の生活の問題についてもどうするかということも、これは早急にやらなくちゃいかぬ問題だと私は思うのです。そういう問題をどういうふうにしてやらすのか。ただ一つの長官としての通達だけでこれが進行するのか、しないのか。こういう点を考えますときに、まさにこの原因をつくったように、やっぱり各省は、これにすべての全力を尽くした解決を何とか早くして、被害者の現在病床にもある人の優遇措置を考えにゃいかぬということにはつながってないのじゃないかという感じがするのですが、その点は次官、どうお考えになりますか。私は大臣に聞きたいのですけれども見えませんから、次官にお聞きしたいのですがね。
#101
○政府委員(坂本三十次君) 長官も、補償問題につきましては判決の出た契機、これをとらえまして、そしてもちろん行政の責任も痛感をいたします。同時に、やはり民事責任の問題でPPPの原則がございますから、この判決が出た機会に、訴訟派だけではなしに、いろいろ分かれておりまする各派の全患者に対して、すみやかな円満公平な補償が行なわれるように、会社に対してそれを申し入れておるということは長官も申し上げただろうと思うわけでございます。
 しかし、そうは申しましても、失った健康と生命というものを取り戻すということは不可能でございますから、こういうような問題につきましては、補償問題の円満な解決ということを進めると同時に、治療体制といいましょうか、いままでは不可能だと言われておりました、かつては奇病であるなどと言われておりました、最近に至りましても、熊本大学等にお願いをしておりましたけれども、なかなかまだ治療体制の確立ができておらぬのが残念ながら現状であります。そうは言っちゃおれませんので、何とかしてひとつ専門家、この道の権威の方々に御相談を申し上げて、ここで心機一転して、もう一度研究体制の確立ということについて努力を払いたい、こういうふうに思っております。
 そのほか健康管理の問題等につきまして、検診等につきましてはこれはもう申すまでもないことでございますが、特に、まだ危険なのは、底に残っておるヘドロの処理等につきましては、これは長官もいつも申し上げておりまするように、熊本県の事業ではございまするが、ひとつ四十八年度じゅうにも工事に着工して、そういう不安の除去につとめるよう全力を尽くしたい、こういうふうに思っておる次第でございます。
#102
○高山恒雄君 私は、六つの団体の自主解決を、裁判の判決も出たことであるからそれに基づいてやりなさいという一つの指示を出したと、こうおっしゃるのですが、それだけで事は足ると思われますかということをお尋ねしたいのです。いまあなたのおっしゃることは、先ほど大臣も言われました。よく聞いております、私は。しかしこの段階になって、これを早期に解決をつけなければならない状態が私はきておるのではないかと、こういうふうに見るわけです。
 そのことはなぜかと申しますと、予算委員会で森中委員の質問に対して、会社は閉鎖しないと言っています。どんなことがあっても、これは会社として責任を持ってやりますということを強く言明しております。だから、これは信じていいと私は思いますよ。思いますけれども、あなたのおっしゃるように客観情勢はそう甘くない。いろいろな新聞の報道を見ましても、たいへんな事態ではないかと、われわれしろうと目が考えたときにですね。たとえば、第一次訴訟者の判決が四十五名です。そこに三百九十六名という被害者がまだおるわけですよ。まだ鹿児島、熊本を中心とする診療をやっておるわけですね。その結論が何ぼ出るやらわからぬ。実際、場合によっては千人以上ではないか、二千人になるかもしれない、こういう不安定な状況にあるわけです。私はその結論が出るまでもなく、早期に、現在の三百九十六名の解決の促進に政府も力を入れて、何とか会社を納得させて、その基準に基づいて補償せよという促進をやるべきだと私は思うんですよ。
 一通の通達だけでものを終わるということは、先ほど通産省からお話がございましたように、結果的には、通産省が公害の事実があるということを七年も八年も放任しておいて、やらなかったところに欠陥が出ておるわけですよ。これをまたこのまま放任しておけば、一説には、ヘドロ排除のために二百億要ると言っています。そのヘドロの解決のために、かりにこの法律上でいくなら四分の三は企業家が負担しなくちゃなりません。そうすると逆に、この被害者に対する今後の補償という問題も、やっぱり二百億くらいは考えてもいいでしょう。また、ぼくはそうすべきだと思う。そうしますと、社長は閉鎖はしないと言われるけれども、実際問題から考えてみて非常に危険があるではないかということを、私は私なりに心配をするわけです。売り上げは年間二百五十億。
 一体こんな、ほっておいていいですか。次官、どうですか。一日も早く解決していかなければ、これはもう今日は厚生省と離れて環境庁のほうにすべてが移っておりますから、私は率先してやるべきだと思う。ただ済まぬ、犠牲者を出してはいかぬ、何とかその補償をせねばいかぬと言うだけではなしに、実際に乗り出してやるべきだ、そういう指導をすべきだ、私はこう考えますが、その点どうお考えになりますか。
#103
○政府委員(坂本三十次君) これは環境庁といたしましても、大臣がチッソに対しまして、そんな一片の通達というものだけではございませんで、それ以上密接な連絡をとりまして、そうしてこの判決の出た契機、これをひとつとらえて、全患者に対しましてこの判決をめどにした補償というものを、会社のほうから、この際逃げないで正々堂々と具体的に提示をするようにということを、いろいろと会社に対して話を十分伝えておるという段階でございまして、いま、ほっておくのかとおっしゃられますけれども、三木長官も、これを契機にして円満に公平な解決が一日も早く行なわれるようにという希望でございます。ですが、いま新聞などでもごらんのように、夜を徹してでも、徹夜ででも折衝をしておるというような段階がいままで続いておるわけでございまして、私どもが労を惜しむというつもりは少しもございませんけれども、これを契機にしてひとつ、会社の責任が明確になったのでありまするから、PPPの原則でもって会社はその責任を十分にここでとるべきであるということを、会社に対しても強く要求をしておる段階でございます。まだ会社は――会社の能力その他を推測をして、患者の数は何人になるかまだわかりませんし、やはりいまの段階では、誠意を尽くして堂々と会社が補償をするというような方向で、環境庁も全力をあげてこの指導その他にあたりたい、こう思うておるのがいまの段階でございます。
#104
○高山恒雄君 結果的には、判決の出た人でも実際は生活の不安というものは残るわけです。と申しますのは、これはひとつ確認しておきたいのですが、この特別措置法第二十四条に「都道府県知事は、第三条第一項の認定を受けた者が当該認定に係る疾病に関し損害賠償その他の給付を受けた場合において、これらの給付のうちに医療費等の支給に相当する給付があると認められるときは、その価額の限度において、医療費等の全部若しくは一部を支給せず、又はすでに支給した医療費等の額に相当する金額を返還させることができる。」と、こう書いてあります。補償額は出たわけです。こういうものも、この法律では、補償が出ると医療費の返還をしなくちゃならぬということになっておるわけですね。一体、こういう問題も、環境庁としては、今度の場合の補償は、それは裁判的には結論が出ていない、したがって返さにゃ返さぬでもいいと、そういうことをもっと明らかにしてやるべきじゃないかと私は思うのです。そういうことも何も触れてない。
 それからもう一つ、身体障害者に対する――普通の身体障害者ですよ、これには鉄道は半額です。それから補装具が支給されます。それから税金の優遇制があります。これは法律にはそんなのはないですよ、そういう問題も、次の生活の安定のために十分私は指導すべきだ。団体に行ってでも、政府としてその見解を明らかにしていくべきだ。たとえば今度の補償の場合は、法律にはこう出ておるけれども、治療費の一部としては認めませんなら認めませんという結論を出して、そういう返還をさせません、と。あるいはまた一方、長期にわたる、もう二十何年にわたっているんですからね、長期にわたっておる者についてはいま四十六人について認めているそうです、身体障害者法を。四十六人認めているそうです。けれども、それは税制の優遇措置も入っていない。汽車の半額制度もとっていない。たとえば水俣から医大まで行くなら、みな汽車で行くんです。半額措置もとっていない。
 そういう問題は、私はほんとうに病人に対する、いわゆる被害者に対する親切なやり方というものが、県自体で不可能な場合があるならば中央から直接出向いて、見解を明らかにして、区分を明らかにして患者に安心させるという方法をとるべきだと思うのですが、その点どうですか。
#105
○説明員(山本宜正君) お尋ねの中に二点ございますが、第一点は、判決の趣旨の中には医療費等に該当する部分がございません。したがいまして、救済法の第二十四条による返還の対象にはならないと思います。
 第二点の身障者手帳の問題でございますが、これは厚生省の所管でございますが、私のほうで調べましたところ、現在水俣沿岸の水俣病の生存患者三百三十名のうち、お尋ねのように四十六名が現在都道府県知事から身体障害者手帳が交付されております。この交付されている方につきましては、先生お尋ねでございますが、車いすというような補装具の問題、それから日常生活用具の給付、それから身障者福祉施設への収容、それから旅客運賃の割り引き、そういったような減免の措置が講じられておると聞いております。この点につきましては都道府県知事の行政でございますので、厚生省とも相談をいたしまして、その辺の指導に全きを期すようにしてまいりたいと、かように存じます。
#106
○高山恒雄君 その四十六名は聞いたんですよ。けれども、三百九十何人おるんでしょう。
 もう一つ聞きますがね。三百九十六名の現在判明しておる患者の、いわゆる重症か、軽症か、そういう調査を一体庁はやったことはあるのですか。重症患者がどのくらいおるとか、そういう調査をやったことがあるのですか。
#107
○説明員(山本宜正君) 先ほども申し上げましたように、厚生省の身体障害者福祉法による対象でございまして、私どものほうがお答えいたしますのは必ずしも適当でないと存じますけれども、それぞれの申請に基づきまして、症状の等級に応じたいろいろな措置を講じていく、こういうぐあいに聞いております。都道府県知事の権限でやっておる仕事ということでございます。
#108
○高山恒雄君 そのことは私も法律を見ておるから知っておるんですよ。都道府県知事の認可によって手帳も渡し、そういう措置をとるのですが、しかし、この際私が言いたいのは、政府としても大きな責任を背負って今日まで放置されてきたこの患者の手厚い擁護というものは、環境庁が積極的に乗り出して、そういう調査をし、四十六名じゃなくて、あとの三百数十名の人の中にはどの程度の患者の方が見えるのか、それにはいわゆる身体障害者と同じような取り扱いをしてやってもいいじゃないかとか、そういう結論を、厚生省にまかせないで環境庁がやるべきじゃないですか。大臣どうお考えになりますか。
 さっきの親切から、非常に厚生省厚生省と言われるのは私はおかしいと思うんですよ。厚生省は普通の身体障害者の適用というものについてで、公害の問題で発生している身体障害者については環境庁が全部責任を持っているわけです。そうでしょう。その環境庁がみずから患者の実態を調査して、もしその中に普通の身体障害者と同様の、たとえば税制の措置をやる、あるいは国鉄の半額制度を適用させてやる、あるいは車いす等の補装具をつくってやるとか、いろいろ問題があると思うのです。四十六名はやっているのですよ。私は、三百九十六名の実態調査を環境庁がやるべきではないか、それが環境庁の仕事ではないかと思うんですよ。大臣、どうお考えになりますか。
#109
○国務大臣(三木武夫君) これは高山さんも御存じのように、これは身体障害者福祉法に載っているわけですから、行政の立場としては縦割りになっていますから、そういう答弁であったと思いますが、これはだれかが率先してやりませんとなかなか動きませんから、厚生省と連絡をとって、そうしてできる限り待遇を、手帳を持っている人たちは同じような待遇を受けておるものと私も信じておったのですが、いま高山委員は違っておるというお話でありますから、そういう点についても厚生省と十分打ち合わせをして、できるだけ患者の側に立った措置ができるように努力をいたします。
#110
○高山恒雄君 時間が多くありませんから、私は大臣が見えたから、先ほど次官に聞いたのですけれども、もう一ぺん繰り返しますがね、非常に重要な問題は、今後の解決だと思うんですよ。むろん勧告もしておられるそうですが、大臣は大臣で、電話なりあるいは社長にお会いして、いろいろの促進をやっておられるようですが、新聞やあらゆる情報を入れてわれわれが調べた範囲内では、とてもこの問題は簡単には解決つかないのじゃないかという心配があるのです。
 それはなぜかと申しますと、障害者は障害者で補償しなくちゃいかぬ。これは原則は当然大臣のおっしゃるとおりです。これはやってもらわねばいかぬ。しかし九百六十人、水俣には従業員がおります。チッソは千五百人おります、従業員が。私は新聞の報道を見て、一体チッソはどうなるんだろうという不安があると思うのですね。しかも一説によると、処理のためにチッソが四分の三以上負担するということになれば、ヘドロの排除のために二百億ぐらいは要るのじゃないかといわれるので、そうすると百四十億要るわけですね。それから補償は第一回がここに出てきましたけれども、現在わかっているものだけで三百九十六名、さらに鹿児島、熊本、まだ検診中でありますから、これがどう出るかわかりません。これで大体概算で、新聞発表しておりますけれども百二十億と言っております。そうすると、チッソの年間の売り上げが二百数十億。そういうことから考えてみて、しかし子会社で二百億ぐらいの利潤を上げている、こういうことも言っております、いろいろ調べてみると。したがって私は間違いはないと思いますけれども、残っている千五百人の従業員の不安というものと、それからもう一つは、社長は絶対閉鎖はしませんという答弁を予算委員会の森中氏の質問に対してしております。けれども、これは代が変わるかわかりませんからね。
 そこで、ぼくは長官にお願いしておくわけですが、社長が言った言をどんなことがあっても実現させる努力を、側面から環境庁としては長官としてやるつもりがありますか、万一の場合ですよ。これはもう大事な点です。特に金融界も日興と三和ですか、二つの銀行が関係しているようでありますが、私はそういう点を明らかにして早期に、一つの基準が出た限りにおいては、解決に全力を尽くしてもらわにゃいかぬ時代が今日きておるのじゃないかということを心配しておる一人であります。一ぺん長官の見解をお聞きしたい。
#111
○国務大臣(三木武夫君) 判決が行なわれて以後、まだ社長にも会ってないのです。なぜかと言えば、新聞でごらんのように、もう連日連夜自主交渉派とやっているわけですから、そういうことで、一応ああいう自主交渉の推移を見なければ、なかなか社長としても環境庁に出向いてくる時間が取りにくいだろうということもありまして、いままだ会ってないのですが、私は一度会わなければならぬと思っておるわけです。
 その一つの問題は、企業の社会的責任というものからすれば、この水俣病、しかもそれはチッソの有機水銀であるという、原因者があまりにも明白ですからね。いろんな原因が複合しておるわけじゃないのですから、これはどうしてもその補償の責任はチッソが持たなければいけない。しかし、人間の生命、健康というものに対しては政府も重大な関心を払わなければならぬですから、政府がやらなければならぬこともたくさんあると思いますよ。しかしチッソとすれば、従業員もおることですからそれは困難だと思いますよ、困難だと思うけれども、原因をつくったものでありますから、もうあらゆる努力を、金融機関に対しても会社側として協力を求めて、関係会社にも協力を求めて、万難を排してその補償の義務を履行しながら、従業員というものが職を失なうようなことのないように、それはしてもらいたいと強く希望をしておるわけでございます。
 まだ不確定ですからね。幾らぐらいに補償費がなって、どうなるか、そしてまた会社の支払い能力もいろいろ世間には言われておりますが、社長の口からはまだ私は聞いていないわけでありますから、この段階でどうということが言えるためには材料が不足しておりますが、強く、企業が困難を克服して、そして島田社長が予算委員会で述べたように、事業を継続することが社会的責任を果たす道であろうと考えて、そういう見地から、私も社長と会ったときにも話をしたいと思っておる次第でございます。
#112
○高山恒雄君 最後に要望しておきますがね。長官としてもはっきり言えない点もあるかもしれません。けれど、国会でああいう回答をした限りにおいては、財政上困って、社長の代がかわってすぐ閉鎖したというようなことがあってはならぬと私は思うんですよ、これは。もう絶対的ですよ。
 したがって環境庁が、この六つの団体との解決を早期に測面から努力をしてもらって、経営者を納得させる。経営者を納得させりゃいいんですよ、団体よりも経営者をね。経営者を納得させて、その線を出せと。そうして事態を安定をしていって、会社がどうにもならぬと言えば、通産省は通産省の立場でまた擁護の措置もあろうと私は思うのですよ。それがない限り、通産省も手を出さぬ、労働省は、かりにいよいよ困って失業でも出るという場合でなければ手を出さぬと、こういうことになったら、大臣、たいへんですよ。したがって私は責任が、これは環境庁としては非常に重いですけれども、この処理の法律に基づいて救済する限りにおいては、私は、率先して長官にひとつやってもらう以外ない。このことを強く要望しておきます。
#113
○加藤進君 先ほどの水俣判決では、四日市判決に続いて、公害を未然に防止するために当然払うべき注意義務について、次のように述べています。「化学工場が廃水を工場外に放流するにあたっては、常に最高の知識と技術を用いて廃水中に免険物が混入していないかどうか、及び動植物や人体に対する影響のいかんについて調査研究を尽くし、その安全を確認すること、あるいはまたその安全性に疑念を生じた場合には、直ちに操業を中止するなどして必要最大限の防止措置を講じ、とくに地域住民の生命・健康に対する危害を未然に防止すべき高度の注意義務を有するものといわなければならない。」
 私はこの論告は、ただ単に一チッソやあるいは化学工場だけに向けられたものではなく、すべての企業、そして国も、公害発生のおそれのある事態に対して、この公害は未然に防止すべき義務と責任があることを強調したものと、こういうふうに当然受け取らなくてはならぬと考えますけれども、その点、長官はどのように理解されておりましょうか。
#114
○国務大臣(三木武夫君) 私も、言われるように判決を受けとめております。
#115
○加藤進君 続いて判決は「そのような注意義務を怠らなければ、その廃水の人畜に対する危険性を予見することが可能である」、こう言っています。これは、もし企業やあるいは国が人命尊重ということを第一義として取り組んでいくなら、また、そのような立場で注意義務を怠らないとするなら、公害の危険は予見できるものである、こういうことを注意しておることと思います。そして、そのために何をなさなくてはならぬかとなれば、できるだけ早く公害の状況を発見し、これを未然に防止するための最善の努力を払わなくてはならぬ。これが公害行政の基本に置かれなくてはならぬということを求めておると思いますけれども、その点についてもいかがでしょうか。
#116
○国務大臣(三木武夫君) もっともだと思います。
#117
○加藤進君 そこで、公害を未然に防止するという立場に立って行政を行なうということが、今日政府と環境庁に課せられた厳粛な義務であるとするならば、いま一刻も放置してはならないような重大な公害問題が起こっていることを私は指摘しなくてはならない。
 それは、自動車道路が今日引き起こしている公害です。道路公害が道路沿線の住民にどれだけはかりがたい被害を与えておるかということは、東京でも、大阪でも、尼崎でも、そして名古屋でも、今日至るところに起こっております。このことは新聞やテレビなどの報道陣が大きく報道しておるところであります。
 そこで私は、このような実態を環境庁はどのように把握しておられるのか、どのようにこの実態を掌握して、これに対する対策を立てようとしておられるのか、あるいは立てておられるのか、寡聞にして私はまだそのような実態調査の報告書をいただいておりません。この点について環境庁の責任ある御答弁をお願いしたいと思います。
#118
○政府委員(山形操六君) 自動車公害に関する御質問でございますが、私どもは自動車の排出ガス並びに騒音の問題と二つに関して実態を把握し、そして何らかの手を打つべくいま努力している最中でございますが、残念ながら既設の道路に関しまして、なかなか具体的な措置が十分にできません。
 しかし、まず排出ガスに関しましては、根本的には発生源のほうの、自動車自身から出す排出ガスの規制という問題に関しましては、米国のマスキー法並みのきびしい規制を実施する方針を立てております。
 それから、騒音に関しましても規制を強化して、さらに私どものねらっておりますのは、既設になってからの問題でなしに、何とか未然に道路の計画段階からこれを調査して、それが結果的に公害を発生するような状態にならないようにしたいということから、現在私どもが考えております環境アセスメントの手法開発をしよう、そして、それらに合わせて今後環境基準が守れるように早い時期からチェックしていこう、こういう考え方で目下検討を進めておる最中でございます。
#119
○加藤進君 私は、そういう一般論だけの御説明では納得しかねます。たとえば環境庁は、いま東京都でも世田谷のあの鳥山北団地、あそこにどんなような事態が起こっているのか、これは行けばすぐわかることです。尼崎でもそうです。大阪でもそうです。そして名古屋でもそうです。こういう手だてをとらないで、どうして自動車公害あるいは道路公害の被害の実態を掌握できるのでしょうか。私はその点についてきわめて大きな疑念を持っています。
 そこで、私はここに典型的な実例を一つ環境庁に聞いてもらいたい、こう思います。
 それは名古屋市南区要町四丁目、五丁目に現に起こっておる事態です。ここの住民の世帯数は二百二十戸、五百八十一人の方たちがこの二つの丁目に住んでおられます。ちょうどこの要町四丁目、五丁目の全くどまん中に名四国道が貫通しています。この名四国道は御承知のように、国道第一号線のバイパスとして自動車専用道路です。もしこの名四国道が全線開通をするときには、一体どれくらいの自動車がここを通過するであろうか。これは建設省もすでに予想を立てておられると思いますが、建設省の担当者に、一体どれくらいの自動車通過量になるのか、お聞かせ願いたいと思います。
#120
○説明員(高橋力君) 名四国道の当該地点の交通量につきましては、四十七年七月現在で約六万七千台ございます。この交通量が、昭和五十一年時点でございますが、名古屋の都市高速道路の開通が予定されております年でございますが、名四国道といたしましては、約七万四、五千台の交通量が残ると予想いたしております。ただ、この交通量の予測につきましては、名古屋の周辺の幹線道路の整備状況等によりまして、車の流れ方が若干変わることが予想されるのでございますが、いずれにいたしましても、この五十年代当初におきまして七万台を越える交通量が残るかと考えております。
#121
○加藤進君 いまでも一日の自動車交通量は約六万台だと推定されます。そこで、この名四国道沿いの、要町四丁目、五丁目の道路に面した地域の騒音が一体どれくらいに達しておるのか。この点については建設省も当然のことながら、また環境庁も知っておられて当然だと思いますけれども、その点、建設省あるいは環境庁の所見をお聞きしたいと思います。
#122
○政府委員(山形操六君) 名古屋市要町の騒音に関するデータは、市のほうからいただきましたのが昨年の十月二十日のデータでございます。実測値は、中央値をとりまして昼間八〇ホン、朝夕七八ホン、夜間七一ホンというデータでございます。それを承知しております。
#123
○加藤進君 それでは、二車線の道路ぎわの地域で環境庁の定めた騒音の環境基準というのは、一体どれくらいなんでしょうか。
#124
○政府委員(山形操六君) 環境基準値は、昼間六五ホン、朝夕六五ホン、夜間六〇ホンでございます。
#125
○加藤進君 夜間六〇ホンとおっしゃいますけれども、それは商業地域ではそうでしょうけれども、住宅地では六〇ホンでなしに五〇ホンのはずです。そうして見ますと、名古屋市やあるいは建設省が熟知しておられるような騒音の状況から見ても、この環境基準を大幅に上回っていることはもうはっきりしていますね。これは、ただいま私が資料としてお配りいたしましたそのデータでも、きわめてはっきりしておると思います。
 これは昨年の七月二十日、第一の図1の1は、午前二時四十分から同四十二分三十秒に至る二分半の騒音の記録です。また第二図は、七月十九日の二十一時から翌二十日の十一時までの五分間ごとにとった騒音の最高値、中央値、最低値のグラフです。これは間違いないと思います。しかも、この調査を担当されたのは名古屋大学の公衆衛生学教室であります。
 調査の結果では、このように騒音基準を大幅に上回っておるばかりでなしに、最高値に至っては、深夜に至るまでしばしば一〇〇ホンを越えています。そして夜九時から翌朝八時の間での騒音の最高値は、ほとんどいつも九〇ホンを越えているのです。一〇〇ホンというと一体どれくらいの状況なのか。これは建設省もよくご存じのように、電車の通っているときのガード下の騒音でしょう。こんな状況で住民が生きていかれると思いますか。こういう状況が今日、日夜にわたって要町四丁目、五丁目の住民を苦しめている。これが現状です。しかもこれは騒音だけじゃないです。振動もあります。排気ガス公害もあります。また砂ぼこりがどんどんと入ってきます。文字どおり二重三重の耐えがたい苦痛に住民があえいでいるのです。
 また、この調査にあわせまして、住民からアンケートをとったデータが出ています。このアンケートによりますと、これは名四国道から百メートルないし百五十メートル以内の百八十戸にわたって行なわれたアンケートの結果でありますけれども、これによると、住民のすべてといっていい九六%、この九六%の住民が騒音なり振動なり排気ガスなどの、一つ以上の被害を受けているということを訴えています。全部ですよ。そのうち騒音、振動、排気ガスの全部を受けていますと訴えておる被害者は、何と四八%、すなわち二軒に一軒です。二人に一人です。また六九%すなわち七割近い人たちが眠れないと言って訴えています。また六八%の人は、ものを考えることができぬと言っております。家がきしみ、壁が落ち、地震があってもわからないと言っているのです。こういう不安な訴えが相次いでいます。しかも、その中で四七%の、半数に近い人たちは、道路に面した窓はあけられないから締め切って生活しています。中には、道路ができて以来五年間、窓を一度もあけられないという家があります。これがまともな人間の生活と言えるのでしょうか。私は、この点を十分に環境庁も熟知していただきたいと思います。これくらいひどいのです。こんなところで皆さんの家族が生活するとされたら、一体どういうことになるでしょうか。
 そこで、すぐ道路わきの、花屋さんの水野五郎さんという五十九歳のお宅は、新築してまだ二年目です。ところが、もう二階の部屋は大型自動車が通るたびに一晩中がたがたです。赤ちゃんの部屋には、赤ちゃんの命を守るために空気清浄器がつけられているのです。空気清浄器なしには子供は育たぬと言っているのです。ふろの窓は一度もあけたことがなくて、まっ黒です。水野さんも、酒は全然飲まれない方ですけれども、眠るためには酒を飲まなくてはならぬと、夜酒を飲むようになりました。こんな状況です。
 森美世古さんも五十八歳です。昭和四十一年につくられたこの名四国道によって、家。家敷は追い出されました。わずか残った土地に新しい家をつくって、国道から一メートルしか離れておらないところで生活するようになりました。しかし、国道から一メートルです。あまりにもひどい騒音と振動のために、新築まぎわの家では住むことができない。とうとうあきらめて逃げ出しました。そして国道から五メートル離れた納屋にいま住んで生活しているのです。
 松永宇市さんという方がいらっしゃいます。この方は、一度騒音で目がさめるともう寝つかれない、こう言って、三日間はもうしようがないから寝ないで、四日目にやっと疲れてぐっすり眠るというのです。こんな生活が日夜続けられているのです。
 名古屋大学の医学部の中川先生は、新幹線公害についての権威の一人でありますけれども、こう言っています。六〇ホンでは眠られない人があたりまえで、八五・五%に達する。七〇ホンになると、九〇%の人は眠れないのがあたりまえというデータが国際的にも出ている。八〇ホン以上では人の生きるような環境ではない。こういうことを言っております。こうして地域住民が眠ることさえ奪われるような状況が、今日、名四国道の地域に起こっている。
 しかももう一つ、環境庁長官、この点で御注意願いたいのは、この名四国道の要町四丁目、五丁目のかいわいは、名古屋における南部工業地帯の中心にあります。そして国の指定した公害指定地域の中にあります。子供とお年寄りの七〇%は公害病ですよ。こういうさなかで名四国道という国道、国が建設した国道が貫通して通っているのです。こういう被害の状況を、国がみずからつくった国道によって与えているということです。こういう状況のもとで、さらにいま何が起ころうとしているかという問題です。私は環境庁に、こういう現状を黙認していいとお考えになるかどうか、このことだけひとつまずお聞きしておきたいと思うのです。
#126
○国務大臣(三木武夫君) 加藤委員の御指摘のように、高速道路などにおける騒音の公害というのは、これからの大きな問題だと私は思いますね。そういうことで、これからの道路のつくり方というものに対しては、いろいろ新しく研究をしなければならぬと思います。ただ道路をつけていけばいいというのではないと思うのです。騒音という問題は、これからは大問題になると思うのですね。
 そういうことで、幹線道路に対しては、都市計画法によって、道路建設に対して環境庁長官と協議することになっているわけです。今度の国土開発庁設置法の附則では、国土開発幹線自動車道については、その基本計画等について審議を行なう国土開発幹線自動車道建設審議会の委員に、国土総合開発庁長官とともに環境庁長官が加わることになっているわけなんです。だからこれからは、そういうことで開発の計画の当初からも参画できるわけですが、これは道路を建設する場合のいろんな技術的な面といいますか、工法というものはよほど研究をして、そして一つのパターンみたいのものが要るのじゃないかと思うんですね、これからの研究には。そういう点で騒音の防止というものに対しては、これが重大な問題である。静けさを求めるというのは、環境に対する要求の一番大きな問題点の一つでしょうからね。そういうことをわれわれは今後の国土開発の幹線自動車道路については注意をしていきたいが、既設の道路については、何か防音壁をつくるとか、なるべく騒音の被害を最小限度に食いとめるように、建設省に勧告するというよりいまのところ方法がないわけですが、そういう方法によって騒音の被害を最小限度に食いとめるように努力をしていきたいと考えております。
#127
○加藤進君 私の質問は、こういう現状に対して環境庁はどうお考えになっているのか、これに対する対策はどうされるのか、こういう課題を出したわけです。残念ながらその課題につきましてま……。
#128
○国務大臣(三木武夫君) 答えましょう。
#129
○加藤進君 お答えいただきたいと思います。
#130
○国務大臣(三木武夫君) 具体的には要町なども、住民の反対があって工事はストップしておるのじゃないですか、いま。
#131
○加藤進君 まあ、別の問題ですけれども。名四国道とは別問題です。
#132
○国務大臣(三木武夫君) 別ですが、そういうふうなことで、やはり騒音のある一定の環境基準をきめてあるのですから、それを上回ることは好ましくないことは明らかですから、そういうことで、ひどい地域に対しては建設省に勧告をして、騒音の被害をできるだけ軽減するような方法を講ずるように、そういう措置を特にひどい地域についてはとっていきたいというのが、御質問に対するお答えでございます。
#133
○加藤進君 それでは、この点だけ確認していいですね、とにかく政府のきめた騒音の環境基準をさえ大幅に上回っているというのが現状なんだから、少なくとも環境庁としては、これを基準以内にとどめる。そのための行政上の努力を最大限に行なう。こういうふうに理解していいと思いますが、どうですか。
#134
○国務大臣(三木武夫君) 騒音については工場の排水みたいになかなか厳格にいかない点もありますが、しかし環境基準をきめた以上は、それ以内におさめるというのが行政の目標であることは事実ですから、したがって、そういう特にひどい地域に対しては、勧告をする等の方法を講じてまいりたいと思っております。
#135
○加藤進君 その点、ぜひひとつ最大限の努力を払っていただきたいと思います。
 そこで建設省の担当の方にお聞きしますけれども、建設省は、なおこういう現状にある名四国道を中心とする地域の状況のもとで、いま計画されていることがありますね。その一つは名四国道そのものを拡幅するという、いままでの計画があります。もう一つは、その拡幅した名四国道の上に、さらに名古屋都市高速道路を建設するという計画が今日あるわけです。長官、あとでその問題に触れますけれども。
 そこで建設省にお聞きしますが、建設省は昨年の十月三十日、これは中部地方建設局でございますけれども、関係地域住民の代表との間の話し合いによって、次のようなことを約束されています。これは第一が、名四国道の拡幅はいたしません。第二、歩道は削りません。そのまま残します。第三、車歩道の間に高さ一・五メートル以上の防音壁をつくります。第四に、歩道・車道間にグリーンベルトをつくります。第五番目に、騒音、排気ガスなどの被害調査をいたしまして、これを公表いたします。こういう約束です。ところが今日まで、この中の何一つもやられておらないというのが地域住民の声です。この点についてどうでしょうか。こういう約束は、約束としてあくまでも早急に実行する、こういう確約をこの委員会においてしていただけるでしょうか。
#136
○説明員(高橋力君) ただいま名四国道におきましては、国道としての第一次段階の事業は一応終わっておる状況でございます。この名古屋の都市高速道路の二号線の工事と並行または工事が完了した段階におきまして、ただいま御指摘のございましたような問題を同時に整備してまいりたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
 現在の名四国道は、実は最終的に完成された断面ではございませんで、たとえば歩道等にいたしましても、現在二メートル五十しかありません。これは最終的には四メートル程度のものに整備される予定でございます。したがいまして、ただいま御指摘の点につきましても、その段階におきまして整備いたすという方針で現在私どもは進んでおるのでございます。
#137
○加藤進君 それじゃちょっと聞きますけれども、これはあれですか、名古屋都市高速道路ができた暁において、こういうことも逐次実行しますということですか。これは地域住民の諸君に対するきわめて大きな欺瞞ですよ。約束はそんなことじゃないです。都市高速道路の問題は無関係。名四国道の問題についてこれを処置する。こういう約束をきちっとやったのです。やって、これを今日くつがえすのですか。はっきり言ってください。
#138
○説明員(高橋力君) 実は、名四国道の中で工事をいたします場合に、現在の道路の境域の中を一部利用することになるのでございます。したがいまして、その辺の工事の進みぐあいとか、それから現道のほうの交通の流れの状況等を見まして、最も好ましい状態のときにこれらを整備していくという必要があるのでございます。と申しますのは、最初からすべてのこういう施設をやってしまった場合には、この高速二号線の工事そのものも非常にむずかしく、また、かえって車の渋滞を起こしたり、車の走行に危険な状態を起こすおそれがございます。その辺、現地のそういう状況を見ながら、その設置その他の時期は適切に判断してまいりたい、こういう意味でございます。
#139
○加藤進君 あなた、そうおっしゃいますけれどもね、拡幅はしない、こういうことはこれはできることでしょう、何も高速道路に関係なしに。拡幅はしないというのですから。歩道は削らない、これも現状のままですよ。これは守ります、と。それから、歩道と車道との間に一・五メートルの防音壁をつくる、これは何も高速道路をつくるとつくらぬとに関係ないじゃないですか、この内容は。なぜこういうようなことを一つ一つ実行できないのですか。それを全部高速道路を理由にして、高速道路とあわせてこういうことについてやりますなどというようなことは、これは地域住民をごまかした一番大きな問題ですよ。どうですか。
#140
○説明員(高橋力君) 現在、名四国道の車の走行しております車道部分につきましては、高速道路ができた段階で、多少道路の中心側のほうに路面を移動するように考えております。そういたしませんと、歩道その他の整備の実際の工事をやります場合に、交通処理上いろいろ問題があるのでございます。また、この一メートル五十の防音壁等につきましても、現在この壁の構造その他につきましても、実はもっと能率のいい構造形式がないかということで、いろいろ技術的な検討も加えているのが現状でございます。したがいまして、その辺の結論を得次第、これらの問題につきましては実行に移してまいりたい、こういうふうに考えております。
#141
○加藤進君 これ以上追及しませんが、建設省の方ね、地域の代表の方との間にしっかりとした約束事ができているのです。その約束の項目はいま申し上げたとおり。これをこの委員会の席上で変更されて、今日は私たちこう考えておりますと言ったって、これは受けられませんよ。だから、ぜひお願いしたいのは、建設省は率先して地域住民の方と話し合いをやってください、この問題について。納得させてください。これをお願いしますよ。
 長官、先ほど申し上げましたような、騒音をはじめとする振動、排気ガス、あらゆる複合公害の現状のさなかに要町の地域住民の方たちは住んでおられる。子供たちもお年寄りも七割は公害病、こういう状況のもとで、もしいま建設省の言っておられるように、名四国道の拡幅をこれからいたします、その上に名古屋都市高速道路を二階建てにしてつくります、こう言えば、そこを通過する自動車の数は圧倒的に多くなることは明らかです。自動車の数が圧倒的に多くなれば、騒音も排気ガス公害も振動もまた多くなることも、いま至るところの実例がこれを証明しています。
 私があえて一番最初に長官にただしたのは、水俣判決の一つの中心眼目は、公害を未然に防止しなくてはならぬし、防止することができる。そのためには注意義務を怠ってはならぬ。その義務とは何かといえば、公害が起こりそうな場合には、この公害を早期に発見してこれを未然に防ぐ以外にない。これが私は先ほどの判決文の中心内容だと思うのです。そこで、先ほど申し上げましたような公害の実態のある中に、なおかつ今後道路は拡幅する、道路は二階建てにする、自動車は遠慮なく通すということになったら、その地域における住民の生命、財産、権利はどうなりますか。
 私は、そこで環境庁長官に所見をお聞きしたいのでございますけれども、環境庁長官は、いま言われるような建設省の見解に対して、まあやむを得ませんという立場で考えておられるのか、このような事態は避けなくてはならぬ、環境庁としては許しがたいという立場に立ってこの問題に対処していただけるのか、その点だけひとつ明確にお答え願いたいと思います。
#142
○国務大臣(三木武夫君) 道路、これは必要なものですわね、加藤委員も御承知のように。しかし、やっぱり便利というだけではいかないですね、いまの時代は。そういう地域住民といいますか、そういう人たちのいろんな環境も守っていく責任がありますから、そういう点でこの問題は、陳情もたくさん環境庁では受けておるのですから、将来の公害防止という見地から、環境庁としてもこの問題に対しては十分な関心を持ちまして、そして道路建設に伴っていろんな公害が起こらないよう、少しきびしい態度で臨みたいと考えております。
#143
○加藤進君 そこで私は三つの提案をいたします。もちろん、グリーンベルトをつくったりあるいは防音壁をつくったりすることはいけないとは申し上げません。しかし、それは根本的な対策にならぬ。したがって騒音やあるいは振動その他の状態を、少なくとも今日の国の環境基準以下にとどめるということを方針として堅持していただけるなら、まず第一にやってもらわなければならぬのは、とりあえず自動車のスピード制限をやってもらいたい、この地域について。これは七百メートルくらいの地域です。自動車のスピード制限。そして、ここは大型トラックがたくさん通るのです。しかも深夜が多いのです。したがって深夜の大型トラックの通行制限、あるいはできるなら、これは三本の車線、三車路でございますから、この車線の制限等々の措置は、これは東京都でもちゃんとやられておるわけですから、それまでの断固とした処置をぜひともとってもらいたい、これが第一です。そういうようなことを環境庁みずからが、建設省やあるいは関係官庁に対して強く要望してほしい。まず第一にその点について御意見をお聞きしたい。
#144
○国務大臣(三木武夫君) いろいろな陳情もありますから、この実態を踏まえて、建設省、警察庁、道路公団等の関係機関と十分連絡をとって、騒音の被害をできるだけ軽減するような努力をすることにいたします。
#145
○加藤進君 ともかく今日でも公害が発生しているのですから、この手当てをしなくてはならぬという責任は政府にあり環境庁にあると思います。したがって、もしこの上に路線を拡幅したり、あるいは二階建ての高速道路をつくるというなら、私は地域住民から言いたいことがあります。つくっていただくということにすべて反対はいたしませんけれども、つくるということなら、これをつくってもなおかつ環境基準以下に公害をとどめてみせますという、科学的なしっかりしたデータを明らかにしてもらいたい。これが明らかにされない以上は、このような拡幅やあるいは高速道路計画そのものを私は白紙に戻していただきたい。これは当然やられなくてはならぬと思いますが、その点どうでしょうか。
#146
○国務大臣(三木武夫君) いま申したように、各関係をする機関いろいろありますから、そういう機関と十分連絡をとって、騒音を防止するということは、これはもう建設省だから騒音を出していいというわけでないのですから、協議をいたしまして、できる限り騒音の被害を軽減するような努力を最大限度払うことにいたします。
#147
○加藤進君 最後に第三の提案では、ともかく環境庁が、これほどひどい公害が今日起こっている、しかも新しいいわゆる道路公害、複合公害だと、こういう状況にあるときに、なおかつその実態を十分に把握しておられない。これは私は根本的な欠陥であるし、いわば行政の怠慢と言っていいと思う。そして今日、先ほど申し上げました要町の実例ばかりではなく、大阪でも東京でも尼崎でも現に起こっているのですから、この実態をしっかり掌握して、そういう公害被害の原因は何であるかということを明確にしていただいて、それによって道路公害防止の抜本的な対策をひとつ環境庁として立ててほしい。そのためには、地域住民の諸君の意見を十分に聞く、こういう雅量を持って、地域住民の納得し得るような抜本的な公害対策をぜひ早急に立ててほしい。このことを第三番目に要望しますけれども、その点はどうでしょうか。
#148
○国務大臣(三木武夫君) 道路というのは、日本全国いろいろと工事が進んでいくわけでありますから、よほど監視体制というものを強化しないと、実際問題として手が回りかねますから、この監視体制、私も環境庁長官に就任してそう長くはなっていませんが、これだけ環境問題が起こるときに、何か環境保全のための監視体制というものはよほど強化しないと、いろいろ国民の期待は大きいですからね、環境庁に対して。それが実力が伴わないということでは相すまないので、監視体制は、いまも予算はある程度ふえたようですけれども、そんな程度ではやっぱり間に合わない。監視体制というものは思い切って強化をして、全国の道路などに対しても環境破壊が行なわれていないかということを監視するぐらいの人員とか予算とかを持つようにしなければならない。しかし、いまの与えられた条件のもとで最善を尽くしたいと考えております。
#149
○加藤進君 私が心配するのは、現状がこうだからということばかりではないのです。もし日本列島改造計画が進んだら、どういうことになりますか。昭和七十年までに一万キロつくるというのでしょう。こういう事態がもし今後進行していったら、このような公害は単に一地域の問題ではない。このことだけはしっかり認識していただくということと、水俣まで行っていただくということは非常にけっこうです。ぜひともこの問題に注意を喚起した以上、ひとつ長官、名古屋の要町に一ぺん視察に来てくれませんか。その点ひとつ……。
#150
○国務大臣(三木武夫君) 各地から環境庁長官来いという要望が多いので、現在のところは水俣に行くという予定を考えておりますが……。
#151
○加藤進君 帰りでけっこうです。
#152
○国務大臣(三木武夫君) まあ、そういう問題がある地域は、私もできるだけよく見ることが適当だと思いますが、多いんですよ、要町ばかりでなしに。からだは一つですからね、そうみんなイエス、イエスというお答えをすると、約束は必ず守りたいと思っておりますから簡単なお約束はできませんが、そういう御要望が加藤委員から強くあったことだけは記憶にとどめておきます。
#153
○加藤進君 最後に一問。いま名古屋市議会が非常にこの問題でもめているのです。もめているというよりも、もう収束しました。第一、名古屋高速道路の昭和四十七年度予算は、名古屋市議会で凍結です。これは自民党も凍結に賛成したのです。もう一つあります。昨年度の高速道路計画のうち七億二千万円は、これは建設ができないために次に繰り越しですよ。こういう事態が現に起こっておることを認識してもらわなくてはいかぬ。
 建設省ね、計画だからどんどん進められると思ったら大間違いですよ。私は、もしこのような事態において、なおかつ建設省が名古屋高速道路計画を強行するということなら、それでまた地域住民の諸君も覚悟をきめますよ。つい数日前に市民大会が開かれました。これは要町ばかりじゃないです。名古屋全市域のみか、尼崎や大阪から来ていらっしゃいます。全国的な運動になることは明らかです。こういう事態を考えながら、いまに手を打つことができるのだから、ひとつやってほしい。これが私は公害を未然に防ぐという一番いい手だてではないかと、私はあえて警告して、この質問を終わります。
#154
○委員長(大矢正君) 本件に対する質疑は、本日はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。
   午後五時一分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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