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1972/09/19 第71回国会 参議院 参議院会議録情報 第071回国会 公害対策及び環境保全特別委員会 第17号
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1972/09/19 第71回国会 参議院

参議院会議録情報 第071回国会 公害対策及び環境保全特別委員会 第17号

#1
第071回国会 公害対策及び環境保全特別委員会 第17号
昭和四十八年九月十九日(水曜日)
   午前十一時三十九分開会
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         森中 守義君
    理 事
                金井 元彦君
                杉原 一雄君
                内田 善利君
    委 員
                斎藤 寿夫君
                菅野 儀作君
                寺本 広作君
                林田悠紀夫君
                原 文兵衛君
                加藤シヅエ君
                沢田 政治君
                小平 芳平君
                高山 恒雄君
                沓脱タケ子君
   衆議院議員
       公害対策並びに
       環境保全特別委
       員長       佐野 憲治君
   国務大臣
       国 務 大 臣
       (環境庁長官)  三木 武夫君
   政府委員
       環境庁長官官房
       長        信澤  清君
       環境庁長官官房
       審議官      橋本 道夫君
       環境庁企画調整
       局長       城戸 謙次君
       環境庁大気保全
       局長       春日  斉君
       環境庁水質保全
       局長       岡安  誠君
       通商産業省立地
       公害局長     林 信太郎君
       建設省河川局次
       長        川田 陽吉君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        中原 武夫君
   説明員
       大蔵省主税局税
       制第一課長    伊豫田敏雄君
       厚生省環境衛生
       局食品化学課長  小島 康平君
       林野庁社会局保
       護課長      山崎  卓君
       林野庁業務部長  辻 良四郎君
       通商産業省立地
       公害局鉱山課長  蓼沼 美夫君
       労働省労働基準
       局労災管理課長  石井 甲二君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○議案の撤回に関する件
○公害健康被害補償法案(内閣提出、衆議院送
 付)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(森中守義君) ただいまから公害対策及び環境保全特別委員会を開会いたします。
 この際、議案の撤回についておはかりいたします。
 瀬戸内海環境保全法案について、発議者塩出啓典君外一名から撤回の請求がありました。
 本案の撤回を許可することに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#3
○委員長(森中守義君) 御異議ないと認めます。
 よって、瀬戸内海環境保全法案は撤回を許可することに決定いたしました。
    ―――――――――――――
#4
○委員長(森中守義君) 公害健康被害補償法案を議題といたします。
 この際、本案の衆議院における修正部分について、衆議院公害対策並びに環境保全特別委員長佐野憲治君から説明を聴取いたします。佐野委員長。
#5
○衆議院議員(佐野憲治君) ただいま議題となりました内閣提出の公害健康被害補償法案に対する衆議院における修正の趣旨について御説明申し上げます。
 修正点の第一点は、補償給付の制限に関する第四十二条の規定を削除することであります。これを削除いたしましたのは、公害による健康被害者に重大な過失がある場合は具体的な事例としては考えられないということと、より一そう被害者の保護に徹するためであります。
 修正点の第二点は、公害保健福祉事業に関する第四十六条の規定に、例示としてリハビリテーション及び転地療養に関する事業を加えることであります。これは、本制度において補償給付と並んで重要な柱である公害保健福祉事業について、その内容の明確化をはかったものであります。
 なお、その他所要の条文の整理を行ないました。
 以上であります。
#6
○委員長(森中守義君) 次に、政府から補足説明を聴取いたします。城戸企画調整局長。
#7
○政府委員(城戸謙次君) 公害健康被害補償法案につきまして、提案理由を補足して御説明申し上げます。
 第一に、この法律の救済の対象となる者の範囲についてでありますが、指定地域において指定疾病にかかっているなど一定の要件を満たすものとして都道府県知事等が認定した者等としております。
 このうち指定地域につきましては、認定の方法や費用の徴収の方法との関係から、第一種地域及び第二種地域の二種類の指定地域を設けることとしております。第一種地域とは、事業活動その他の人の活動に伴って相当範囲にわたる著しい大気の汚染が生じ、その影響による疾病、すなわちぜんそく等の非特異的疾患が多発している地域をいい、第二種地域とは、大気の汚染または水質の汚濁の原因である物質との関係が一般的に明らかであり、かつ、当該物質によらなければかかることがない疾病、すなわち水俣病、イタイイタイ病などの特異的疾患が多発している地域をいうこととしております。
 第二は、認定の方法についてでありますが、まず第一種地域に係る指定疾病にかかっていると認められる者の認定は、その者の申請に基づき、都道府県知事等が公害健康被害認定審査会の意見を聞いて、一定期間第一種地域に住所を有していたか、通勤をしていたか等の要件に該当する者について行なうこととしております。
 次に、第二種指定地域に係る指定疾病にかかっていると認められる者の認定は、その者の申請に基づき、都道府県知事等が公害健康被害認定審査会の意見を聞いて、当該疾病がその第二種地域に係る大気の汚染または水質の汚濁の影響によると認められるときに行なうものとしております。
 また、認定は、指定疾病の種類に応じて政令で定める期間内に限りその効力を有するものとし、有効期間の満了前になおる見込みがないときは、その認定の更新を申請することができることとしております。
 なお、政令で定める指定疾病については、有効期間の定めをしないこととしております。
 第三は、給付の種類についてでありますが、療養の給付、障害補償費、遺族補償費、遺族補償一時金、児童補償手当、療養手当及び葬祭料の七種類の補償給付を行なうこととしております。
 まず、療養の給付は、公害医療機関において現物給付として行なうことを原則としており、療養の給付を行なうことが困難であると認めるとき、または緊急その他やむを得ない理由により公害医療機関以外の医療機関で診療等を受けた場合においてその必要があると認めるときは、療養の給付にかえて療養費を支給することができるものとしております。
 なお、公害医療機関の診療方針及び診療報酬は、環境庁長官が中央公害対策審議会の意見を聞いて定めることとしております。
 次に、障害補償費は、児童補償手当の支給の対象となる児童を除き指定疾病による障害の程度が一定の状態にある者に対して、その障害の程度に応じて支給するものとし、その額は、労働者の賃金水準その他の事情を考慮して環境庁長官が定める障害補償標準給付基礎月額に、その者の障害の程度に応じた率を乗じて得た額としております。
 また、障害補償費の支給を受けている者は、その指定疾病による障害の程度につき、指定疾病の種類に応じて一定期間ごとに都道府県知事等の診査を受けなければならないこととしております。
 なお、指定疾病による障害の程度が重度である場合には、これに介護加算を行なうこととしております。
 次に遺族補償費は、指定疾病に起因して死亡した者の遺族に対して支給することとし、その額は労働者の賃金水準、死亡した者が死亡しなかったとすれば通常支出すると見込まれる経費その他の事情を考慮して環境庁長官が定める遺族補償標準給付基礎月額に相当する額としております。
 なお、遺族補償費を受けることができる遺族は、被害者の配偶者、子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹であって、被害者の死亡の当時または認定の申請の当時その者によって生計を維持していたものとすることとしております。
 次に遺族補償一時金は、被害者が指定疾病に起因して死亡した場合において、その死亡の時に遺族補償費を受けることができる遺族がない場合に、一定の者に対して支給するものとし、その額は、その死亡した被害者の遺族補償標準給付基礎月額に相当する額に、一定の月数を乗じて得た額としております。
 次に児童補償手当は、指定疾病による障害が一定の程度にある児童を対象として、その児童を養育している者に対して、その障害の程度に応じた一定の額を支終することとしております。
 なお、指定疾病による障害の程度が重度である場合には、これに介護加算を行なうこととしております。
 次に療養手当は、指定疾病について療養を受けており、かつ、その病状が一定の程度にある者に対して、その病状の程度に応じた額を支給することとしております。
 最後に、葬祭料は、被害者が指定疾病に起因して死亡したときに、その葬祭を行なう者に対して一定額を支給することとしております。
 第四は、公害保健福祉事業についてでありますが、公害による被害者に対する救済は何よりもまずそこなわれた健康を回復することが重要でありますので、指定疾病によりそこなわれた被害者の健康を回復させ、その回復した健康を保持させ、及び増進させる等被害者の福祉を増進させるとともに、被害を予防するために必要な事業を行なうこととしております。
 第五は、本制度に必要な費用についてでありますが、まず、ぜんそく等の非特異的疾患に係る被害者に対する補償給付の支給に要する費用につきましては、汚染負荷量賦課金を充てるほか、別に法律で定めるところにより徴収される金員をもって充てることとしております。
 このうち、まず汚染負荷量賦課金について申し上げますと、汚染負荷量賦課金の納付義務者は、大気汚染防止法に規定するばい煙発生施設等のうち、大気の汚染の原因である一定の汚染物質を排出するものが設置される工場または事業場で、地域の別に応じた一定規模以上のものを設置している事業者とし、その額は、各物質ごとの単位排出量当たりの賦課金額にそれぞれの前年の年間総排出量を乗じて得た額の合計額としております。なお、この単位排出量当たりの賦課金額は、汚染負荷量賦課金の総額として当該年度において必要であると見込まれる金額と各物質の前年における総排出量とを基礎として当該物質による大気の汚染の状況に応じた地域の別に従い、政令で定めることとしております。
 次に、別に法律で定めるところにより徴収される金員についてでありますが、非特異的疾患に係る汚染原因者としては、前述の汚染負荷量賦課金の納付義務者のほかに、自動車等の移動発生源等があり、これらについてもその汚染寄与に応じた何らかの費用負担の仕組みが必要ではありますが、これらの汚染物質の排出量を個々に測定して、費用を徴収することは制度技術上不可能に近いために、賦課金や税金等の各種の手法を含め、公正かつ効率的な費用徴収方式を確立する必要があります。しかしながら、本法案の立案の段階におきましてはその具体的な成案を得るには至らず、しかも、税金等の方式を含めて具体的な費用徴収方式をきめるにあたっては、税制、財政制度との関連において検討する必要がありますので、これを別の法律で定めることとしたものであります。
 次に、水俣病等の特異的疾患に係る被害者に対する補償給付の支給に要する費用につきましては、特定賦課金をもって充てることとしておりますが、その納付義務者は、原因物資を排出した大気汚染防止法に規定するばい煙発生施設及び特定施設並びに水質汚濁防止法に規定する特定施設の設置者としております。
 なお、この特定賦課金については共同納付の道を開くこととしております。
 第六に、賦課金の徴収及び納付に関する機構でありますが、汚染負荷量賦課金及び特定賦課金の徴収を行なうとともに、都道府県に対する納付金の納付等を行なう組織として、特殊法人である公害健康被害補償協会を設置することとしております。
 なお、協会には、協会の業務の運営に関する重要事項を調査審議するため、評議員二十人以内で組織する評議員会を置くこととしております。
 第七に、不服申し立てについてでありますが、認定または補償給付の支給に関する処分に不服がある者は、その処分をした都道府県知事等に対し、異議申し立てをすることができることとし、さらに不服がある場合には、公害健康被害補償不服審査会に対して審査請求をすることができることとしております。
 また、賦課徴収等に関して協会がした処分に不服がある者は、環境庁長官及び通商産業大臣に対して、行政不服審査法による審査請求をすることができることとしております。
 第八に、この法律の施行期日でありますが、公布の日から起算して一年をこえない範囲内において政令で定める日から施行することとしております。
 第九に、この法律の制定に伴い、公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法は廃止することとし、同法による認定を受けている者を、この法律による認定を受けた者とみなす等これに伴う所要の経過措置を講ずることとしております。
 また、この法律の附則におきましては、中央公害対策審議会の委員を増員する等この法律の施行に伴う所要の措置を定めることとしております。
 以上が、公害健康被害補償法案の提案理由の補足説明であります。
#8
○委員長(森中守義君) この際、杉原君から発言を求められております。これを許します。
#9
○杉原一雄君 公害健康被害補償法が、ようやくきのう衆議院で可決決定を見て本院に回付されたわけでありますが、顧みますと、六月の十九日に国会に提出されたこの時点から、すでにこの法案の審議について、前途きわめて予測困難な状況に立たざるを得なかったと思うのであります。とにかく七十一国会は、五月二十日で終了しておるはずであります。でありますから、閣法として議会に提出される場合は、二月中に、どんなに譲歩しても五月二十日以前にこれが提出され、審議されねばならなかったものでありますが、会期延長の段階において、六月十九日これが提出された。このことについての環境庁の経過並びに考え方、それを明らかにしていただきたいと思います。
 と申しますのは、最近、委員長の手元、私たち委員のところには、にわかにきびしい抗議と申し入れの内容を持った陳情書がどんどん回ってまいります。そうしたものを一通り目を通しますと、その中に貫かれている一本の考え方があります。それは、少なくとも、ごく最近第三水俣病が発生いたしました。日本列島全体の中から吹き上げるような水銀汚染の問題が提起され、住民運動が各地にほうはいとして起こりました。それはもちろん、きのうきょうの問題ではありませんけれども、そうした一七の住民運動に対する、麻薬の役割と言うのは失礼でありますが、水をかけるような任務をこの法案に内包しているのじゃないだろうか、そうした政府に対する不信、かつまた今日まで公害問題に対応してきた企業の姿勢の中に、住民の不信や不安がつのるばかりである。
 こういう状況下であったわけですが、その状況の中で、この法案の提出がおくれ、なかんずく、参議院がきょうから審議を始めても、わずかにきょうを含めて九日間、これでは慎重審議などと言えるものではありますまい。そうしたことをわれわれがいま十分かみしめながら、きょうの補足説明等を伺いながら、とりあえず審議に入ったわけでありますから、私たち自身もこの法案に対して冒頭から不信と疑惑を持っているわけであります。そういう点で、やむにやまれざる環境庁の事情等がありますならば、本委員会を通じて釈明をし、あるいは経過についての報告をいただければと思います。
#10
○国務大臣(三木武夫君) 杉原委員の御指摘のように、この法案の国会提出がおくれたということに対して、おしかりを受けるのは当然だと思うのであります。
 何ぶんにも、この損害補償法案は、諸外国においてもこういう立法の例というのはないわけです。それだけ日本が公害問題が大問題であるという証拠でもあると思いますが、そういうことで、参考にするというような立法例は外国にもございませんし、国内においても、多少似通ったものはあるにしても、こういう百五十条という膨大な法律でもございますし、初めて日本が手がけるという法律でもあるわけですから、この法案を提出しようという決意をして作業をしてみると、いろいろな疑問が出てくるわけであります。
 しかも、各省庁と関連することが多いわけですから、こういう調整にも手間どって、普通から言えば、これは次の通常国会にと言うような考えもないわけではなかったのですが、考えてみれば、この公害問題というものは、多数の公害による健康の被害を受けておる人たち全部が全部、裁判でものを決定するということは事実上できないし、それには相当な時間もかかるし、また、いまの特別措置法では、国民健康保険における自己負担分だけを見るという非常に限られた救済的な措置しかありませんので、現にたくさんな公害病の患者があって、そういう人たちを一日も早く救済をするということが目下の急務である。だから、次の国会を待ってというようなそういう時間的余裕を持つよりかは、非常に差し迫って国会に提出したわけでございますが、そういう必要性を議員各位に御理解を願って、まことに恐縮ですけれども、短時間ではあっても密度の高い御審議曹通じて、一日も早くこういう法案を具体化するような手順を進めることが、公害病患者の人々に対して必要であるという認識で、おしかりを受けることを覚悟しながら、その事情を御賢察願って御審議を願いたいということで提出をいたしたわけでございます。
#11
○委員長(森中守義君) これより本案に対する質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言を願います。
#12
○加藤シヅエ君 ただいま杉原委員の発言に対しまして、三木長官の御答弁を承りまして、この国会で私どもが非常に短い期間にこれほど重要な法案を審議しなければならない、その立場についての御説明があったわけでございます。これはたいへん無理なことだと私どもも思っております。しかし、公害の対策とか、自然環境の保全とかいうようなことは、時間がよけいたてばたつほど事柄が悪くなる場合も多いので、そういう意味では早く法律をつくるということは意義があると思います。
 しかし、この法律の内容を拝見いたしておりますと、この法律をおつくりになるたてまえが、これはもう全然取り締まり法案みたいな法律であって、長官も、それから初代の環境庁長官もいつもおっしゃっていらっしゃることは、環境庁の仕事というのはあくまでも国民の立場に立って、国民の利益、福祉を擁護していくための役所であるということをおっしゃっていらっしゃるわけでございます。それでこの法律がはたしてそういう立場に立っているかどうか、そのことを考えますときには、一番目につきますのは、指定とか認定とか、そういうような政府、行政者に対して公害対策に都合のいい指定、認定というような基準をきめて、それによってふるいにかけてしまう、ここから漏れてしまった患者はどうなるのだろうか、こういうような問題が大きくここで浮び上ってまいります。
 したがいまして、実際に公害病に苦しんでいらっしゃる方々の陳情は、いずれも、どうかこういう法律を通さないでくれという陳情が来ているわけでございます。しかし、私どもの党だけが幾ら反対してみても通ってしまう、衆議院でも通ってしまったわけでございまして、そういうようなことではたいへん困ると思いながら、これを審議しながら、そういう患者の方々の訴えに対して、どれだけ認定とか指定とかいう、そうしたふるいにかけるようなやり方をより少なくしていくことができるか、また、そういうものを政府のほうで考えられた意味というのはどういうところにあるのか、そのことから詳しく具体的に伺ってまいりたいと思います。
 最初に伺いますのは、この法律をおつくりになる動機の中に、これは四大公害裁判というのがございまして、その前後から被害者の方々が長い間の苦しみの爆発というような形で加害者と思われる企業に対して押し寄せていったり、長い間すわり込みをしたり、いろいろな問題があったと思います。また、環境庁長官もたびたび、そういうような長時間にわたる果てしのないような陳情に対して、それにお立ち合いにならなければならなかった、そういうようなたいへんな御苦労、ほかのお役所では考えられないような御苦労を経験していらっしゃると思います。したがいまして、これではならぬというわけで、それに対する対策にはどんな手を打ったらいいのだろうかというようなことから、この法律ができたように見えてしかたがないわけでございます。
 これは政府もそうでありますし、また、この被害を与えていた加害者側の企業もずいぶんと、平たいことばでいえばひどい目にあっていらっしゃると思います。長い間会社を封鎖されたり、毎日毎日たくさんの陳情者が押しかけたり、混乱におちいったり、ずいぶん不愉快な思いをなさったと思います。そしてテレビなどで、そのつどこれは国民一般の目に触れたのでございますけれども、企業者の代表と目される方が土下座をして、そして被害者にあやまらなければならなかったというような場面もたくさんございました。このような場面だけを見ておりますと、何かあれはちょっと行き過ぎではないかというような感じも起こらないわけではないと思います。そこには一定の常識で通用するようなマナー以上のものがあって、マナーは欠けていたと思います。しかし、そういうようなところまで爆発してしまったというその根底を考えますときには、私はやはりその被害者の方々の立場に立って、どんな方法で陳情なさろうとも、どんなに被害者の方々が怒りに燃えていて、いつまでたってもその怒りが回復できないというような、そのほんとうの理由がどこにあったかということを考えてみますならば、長官も始終おっしゃるように、環境庁は国民の立場に立つ役所であるという、その立場に相変らず立っていただかなくてはならない。
 長官は、この法律をおつくりになるときに、ほんとうにこれは国民の立場に立っているとお思いになりますか。それとも、少なくとも文面にあらわれたところでは、これは取り締まりにいろいろ都合のいいことを、認定とか指定とかいうことばでもってやっていらっしゃるのではないか。それについてまずお伺いいたします。
#13
○国務大臣(三木武夫君) 私のところへは、この法案に反対であるという陳情は、私はいままでに受けなかったのです。いろいろ不備なところは直してもらいたいという点はございましたけれども、こういう制度が早くできることを望んでおる陳情であったわけです。
 それというのも、いまの制度というものは、先ほど申したように健康保険の自己負担分だけを特別措置法で見るというのですからね。これでは一つも生活をしていく場合の生活費というようなものは出てこないわけです。だから、そういう点で私は、公害病にかかられておる人にいろんな御不満はあるけれども、現状よりベターであるということは、これはもう否定することはできない。ただ、そこを一つの国の制度として、一つの型で、法律で全国一円にするわけですから、この制度の持つ一つの型があるわけですから、その点ではいろいろ指定というものも起こってまいりますし、何か加藤さんの言われるような、個々の公害病患者全部に適用できないではないか、地域指定もあるしというようないろいろ御批判もあると思いますけれども、制度としてそれを定着させていこうとするときには、一応のやはり基準というものも要るということでこういう法案の骨子になったわけでございますが、私は現状よりも、この法律ができることによって、公害病患者の救済になるということはもう固く信じておるわけでございます。
 ただ、この法案には二十一の附帯決議を受けた、そういうことで、今後この損害補償法案というものは、いろいろな不備な点は是正をしていかねばならぬ面が起こると思います。そういうことで附帯決議の中にも、政令にゆだねることが多いわけですから、政令の内容についての国会の附帯決議ということになっておる面もございますし、あるいは法律の改正を将来に考えなければならぬ面も含まれていると思いますが、とにかく、いまでは裁判による以外には、まあ個々に話し合いがつけば別ですよ、つかない場合は裁判によらなければ解決をしないというわけですから、これには非常な時間もかかるし、訴訟ということになると、なかなか一般の公害病患者の方に訴訟はなじんでもおりませんしね。だから、いろいろな不備な点はあるにしても、現状よりこれは公害病患者の人々に対する救済としての目的は達成できることは、間違いないと信じておる次第でございます。
#14
○加藤シヅエ君 長官は、実際の健康被害にかかっていらっしゃる方々からこの法律に対して反対の陳情を受けなかったとおっしゃっていらっしゃいますけれども、私どもはたくさん受けておりますし、また、実際の患者さん自身が、わざわざ国会まで来て陳情していらっしゃる、そういう方たちの話もいろいろ聞いております。またニュースによりますと、昨晩はある場所で、反対のための被害者の方々の大きな集会が持たれたというようなこともございまして、被害者の方々が、長官に早くに被害者としてのこの法律に対する意見をお述べになる機会があれば、なおよかったと思いますけれども、それがなかったことは残念に思います。
 しかし、長官、考えていただけば、被害者というものは非常に弱い立場に立っているわけでございます。方々に散らばってもおりますし、第一自分の健康が被害を受けているわけで、じょうぶな者のように思うように動けないのでございます。また陳情をしに行くにも、お高い交通費や宿泊費を払わなくては行かれない。そういう非常に不利は条件の中から陳情に行くということは容易なことでなくて、それでいろいろの情報などを受けられるのがおそくなった理由なんかもあったかもしれませんで、ついにこの法律が提案されてしまう前に長官に対して、じかに被害者の方の意見が述べられなかったことは非常に遺憾に思いますけれども、それは、そういう弱い立場にいる方々であればしかたがなかった。
 それで、一方においてやはりその被害者の方々はこの法律に決して満足していらっしゃらないということは、よく覚えていていただきたいのでございます。したがいまして、将来この解釈の上で、認定、指定というふうなことをなるべく狭くしていくというやり方もございましょうし、これをできるだけ広くしていくというやり方もあるかと思うのでございます。そういうところで、ほんとうに被害者の立場に立ってあんばいをしていただきたいと思います。
 そこで伺ってまいりますが、きょうの補足説明の中にございましたが、「第一種地域に係る指定疾病にかかっていると認められる者の認定は、その者の申請に基づき、都道府県知事等が公害健康被害認定審査会の意見を聞いて」というのでございますが、この審査会というのは中央にあって、また地域ごとにいろいろつくるという、そういうことになるのでございますか。そして、もし地域ごとにつくるというのならば、どういうふうにしておつくりになって、その内容はどういうふうになっていて、審査会の委員を選ぶ場合にはどういうような基準でお選びになるか。そして、どなたがそれを最後に決定なさるか。それを聞かせていただきます。
#15
○政府委員(城戸謙次君) ただいまの審査会でございますが、この法律では四十五条に規定してございます。それで、これは今回の衆議院におきます修正によりまして、四十五条が二つに分かれまして、四十四条と四十五条に分かれております。
 この二つの条項によりますと、審査会が置かれますのは都道府県あるいは政令市でございます。審査会の委員は十五人以内で組織するわけでございますが、本来審査会の任務としまして、これは法律をずっとごらんいただくとわかりますが、従来の審査会の機能とやや違いまして、単に認定をするだけではございませんで、いろいろ任務が広くなっておる。特に障害補償給付をやります場合の障害の程度の認定だとか、あるいは指定疾病に起因して死亡した場合の起因性の認定だとか、いろいろな問題がこの審査会の審査の範囲に入ってくるわけでございますので、単に医者だけでなしに、法律を専攻した人、あるいはこういう障害等級の決定に専門的な知議を持たれる方、こういう方を含めまして十五人以内で組織していただく、かようになるわけでございます。審査会は当然知事なり市長に意見を言う機関でございますので、最終的な認定なり給付の決定というのは、知事なり政令市長の責任において行なう、こうなるわけでございます。
#16
○加藤シヅエ君 そういたしますと、その地域の知事が最後にきめるわけでございますね。そこにやはり大きな問題があるのではないかと思います。そこの土地に住んでいる者は知事さんの行政管轄の中におりますので、知事さんと意見のあまり合わないようなことを言ったりするような人は、知事さんからあまり喜ばれないだろうと思います。そういうような場合に、意見が対立しているようなときに、対立している意見の人もそこ含めるかどうか、そういうことも考えていただかたくてはなりませんし、また、十五人のうちで医者がどのぐらいで、それから学識経験者というのがどのぐらいで、どういうふうな割合に割り振るのでございますか。それも聞かせていただきます。
#17
○政府委員(城戸謙次君) 委員会の構成として私どもが一応考えておりますのは、医師は大体十人、従来の審査会のメンバーの範囲でございます。あと五人が、ただいま申し上げましたそのほかの方で構成する、こういうぐあいに考えておるわけでございます。もちろん審査会のメンバーの選定にあたりましては、当然いろいろな角度から審議ができますように、十分慎重に考えていただかなければならぬと、こう思っております。
 ただ、ただいまお話ございました知事におろしました点につきましては、これは公害行政自身も、これまでの大体の行政の方向としましても、全部知事あるいは政令市長におろせという方向づけでやっておりますし、特に被害者救済の問題は地域の実態と密接に関連しておりますので、これに十分通じておられる知事なり政令で定める市長が、こういうような認定あるいは決定の業務に当たっていただくということが一番適切であろうと考えて、そういうような体系をとっておる次第でございます。
#18
○加藤シヅエ君 医師が大部分でございますけれども、この医師の判断も、ずいぶん一つの病気に対しても違った御意見があるらしいのでございますね。いままで阿賀野川の事件、それから水俣でも、現在でも水俣病の原因についての反対意見をずっと持ち続けていらっしゃる大学教授なんかもおありになるようでございます。そういうような場合には、どんなふうな割合でもって組織なさるのでしょうか。
#19
○政府委員(橋本道夫君) いま御指摘のございました点は非常に、この法案を組みますときに、医学の専門家のグループとの話し合いで問題になったところでございます。医師の方がいろいろな専門分野を持っておられるわけでございまして、やはり専門分野からのものの見方が違うとか、あるいは研究上の目のつけ方が違うとか、いろいろそういう問題がございます。
 医学の方々の最初の御意見では、医学のほうから公害病ときめつけることは不可能であるという御意見でございました。どういうぐあいにしてそのようなものと法律とを結びつけるかというところを、実は最も苦慮いたしました。医学の人たちの御趣旨としましては、医学としての立場からはこういうぐあいに言えるということは、医師の専門家個々別々に自由にこれは述べますということでございます。わからないところがあれば、わからないところがある、と。こういうことでございます。意見が一致していれば、これは一番問題ございません。意見の一致していないときには、その委員会の名前で全部決定するというようなことを押しつけてくれるなという議論でございまして、そのときになりますと、これはどう判断するかということは行政の責任でやってくれということが、医学専門家の御意見でございます。
 そういうことでございまして、明らかにそうだという場合もございますし、あるいは非常に疑わしいという場合もございますし、あるいは否定し切れないというような場合もございます。これは違うというものもございますが、やはり現在水俣の場合も、実例をいろいろ聞いておりますと、明らかになった点は問題ございません。疑わしい点も、これもまず問題なく入っておるというわけでございますが、そのあとの問題になりますと、どの程度のコンセンサスがあるかということで、あとはやはり法律を持つ行政の責任者として決断をしなければ、それを医学の者にすべて言わせるということは不可能であるということが、この審議会のときの非常な問題になったポイントでございまして、この審査会の構成と知事の責任ということはそういうぐあいに考えております。
#20
○加藤シヅエ君 いまの御説明でたいへんに内容が明らかになってまいりました。確かに、医学の立場に立つ方は正確度というものを非常にきびしく追求しなくてはなりませんから、一〇〇%でない場合に断定的な意見を下すということはなされないことだと思います。最後は行政権がこれを決定するということなんでございますね。
 その場合に、なるべく広く、医者がこの地域でこういう原因で公害病であるかどうかということをいま審査しているけれども、どうもこれは疑わしいという、その疑わしいというのが非常に多いような場合、それでも被害者自身が非常にからだの健康障害があらわれていて、悩んでいて、苦しんでいて、医者によく説明ができなかったり、あるいは単なる外部からの診断の結果では患者のほんとうの痛みとか苦しみとかを的確にとらえることができない、そういうような場合には、これはもう幅広く、行政権がそこで最後の決定をなさるなら、医者が非常に疑問だというような点数をつけている場合でも本人が実際に苦しんでいる場合には、それは認定の中に入れるというような方向になさるのかどうか、それを聞かせていただきます。
#21
○政府委員(橋本道夫君) この法律は被害者の保護の法律でございますので、極力そういうものの考え方をすべきであるということは、私どもも全くそのとおりに考えております。ただ、その場合に、これはそうではないかという議論の程度が一体どの程度であるかというところは、非常にむずかしいところでございます。そこのところの一番むずかしい問題に対しまして、いままでの先例といたしまして、水俣病の不服審査に対する次官通牒というのがございまして、この疑わしいものを救うという考え方でございますが、それに対しましては、大石長官が国会で御答弁なさっておられますように、疑わしいものは救うということは、少しでも疑いがあれば救うということではない、医学の場合には、少なくとも五〇か六〇をこえるぐらいの高さのものでなければなかなかそこまではいけない、一〇%かそこらの程度の疑わしいというときには、それを扱うことはできないという大石長官の国会の答弁という考え方と次官裁定に出た考え方ということが、この本法案の中にも引き継がれてきているというぐあいに考えているわけでございます。
#22
○加藤シヅエ君 大石前長官は御自分がお医者さんでございますから、長官としての医学的な発言にもたいへんに権威があると私どもは思っております。しかし、やはりたくさんの患者の場合には、さっき私が申し上げたように、医師にはどうしても判定してもらえないような、しかし確かに自分はこういう原因でもって被害者になっているというような場合もあり得ると思いますので、その辺はもっと基準の範囲というものをできるだけ広げて、最後の行政者はそういうような取り扱いをするという方針でぜひいっていただきたいという、これは私の希望意見をここで述べておきます。
 その次に、定期的に診断を受ける。一たん指定を受けた被害者患者が何回かまた診断を受けて、なおっているとか、なおっていないとかということをそこできめられる。それはどういう病気の場合に、どのような症状の場合に、どのくらいひんぱんに診断を受けなくてはいけないのか、その辺もちょっと聞かせていただきます。
#23
○政府委員(橋本道夫君) いま御質問のございました点につきましては、この法律におきましては、疾病の種類ごとに有効期間を定めるということでございます。有効期間をどういうぐあいに定めるかということにつきましては、中央公害対策審議会の中の、この部会の専門の委員会において御審議を願うということにいたしておりますので、まだ具体的な数字としては決定しておりませんが、ここの中にございますように、なおる見込みがたいというような場合には、無期の認定というものを設けるというものも入っております。そういう形のものでございまして、基本的には有期認定でございますが、その患者さんがなおる見込みがたいというときには、一生この制度はついていくということを、まず第一点として申し上げたいと用います。
 それからその次に、有期の認定ということでございますが、有期の認定をします場合に、期間というものが定められるわけでございますが、初めの審査の段階におきまして、これはとうていその期間の中でなおる見込みがないという場合に、子の病気の症状に応じて期間をその患者についてきめることができるという条項が法律上ございます。そういうものがございます。
 もう一点は、有期の期間が終わりましたときに、なおかつ現在までなおらない、まだこの疾病の状態が続くという場合には、審査ということばがございまして、これは診断書で患者さんはこうこういう状態であるということの意見を言うことによってさらに認定を更新していくという形になりますが、その場合に必要に応じて診断をあらためて受けていただくこともあるというぐあいな形に、この法律の構成としてはなっておるわけでございます。
#24
○加藤シヅエ君 そうすると、最初認定を受けますと、非常に重症の場合には、生涯お気の毒ながらなおる見込みがないから生涯という期間に認定される。そうでなくて比較的軽症な場合には、一年とか何年とか最初からその患者は言われるのでございますか。そして一年なら一年ときめられたときに、もう一ぺん診断を受けるのでございますか。
#25
○政府委員(橋本道夫君) 基本の考え方はそのような考え方でございます。病気の種類に応じて期間を定めるという形になっております。
#26
○加藤シヅエ君 そこで、もうこの方は有効期間が切れたというふうな判定を下されるか、あるいはまだこれは継続して補償を受けなければならないというふうに判定されるかということは、その患者の立場に立てば、これは非常に重要な問題だと思います。その場合に、医者がどういうふうな診断をお下しになりますか。医者の診断の側からいえばこれはもうなおっているのだというような場合がある。けれども、患者の自分の苦痛、どこか自覚症状というようなものの場合には自分はなおっていないのだというような、そういう場合というものはよくあると思うのです。そういうような場合にはどういうふうになさるのですか。
#27
○政府委員(橋本道夫君) やはり、基本的には一般的な医学の常識ということで病気の診断は行なわれるものであるということを、私ども原則であると考えています。ただ、その結論に対して、その結論は主治医の診断書としてまず認定審査会に出されてくるわけでございますが、審査会がどのようにそれを判断するかというところの問題が一つございますが、当然に主治医の御意見を重んずるということがあるわけでございます。主治医の御意見を重んずると同時に、審査会として検査をしなければならないというときには、やはり検査をできるという条項が中に入っております。
 審査会の処分に対して患者さんが不服があったという場合、自分はまだ病気である、しかるに認定審査会で自分は却下されたということになった場合には、これは不服審査の規定がございまして、まず都道府県知事に、あるいは政令市の場合には政令市の長にこの不服審査を出しまして、自分はまだ患者であると思うが、認定審査会で落とされたのはどういうわけであるかというような、不服審査の規定によって審査をされる。その都道府県知事の段階で話がつけばそれはけっこうでございますが、そこでつかない場合には、中央に設けられます公害健康被害の不服審査会というものを設けることになっておりますので、そこの段階、不服審査会においてさらに審査をされて最終的な決定をされる。その審査に対してさらに不服な場合には民事上の裁判を起こせる。こういう形になります。
#28
○加藤シヅエ君 最後には民事上の裁判までいかなくてはならないということになると、これは普通、患者の立場からそこまでなかなか持ち越していくということはたいへんなことで、泣き寝入りになる場合もあるのじゃないかということを私は心配いたします。そして裁判の場合には弁護人というのがつきます。そして公判ということになります。しかし、いま橋本審議官からのおことばでは、審査会のほうに一々話すとか、あるいは都道府県の行政者のほうに話すとかいうふうなときには、一対一の立場で話すというときには、非常に患者は弱いと思います。十分に意を尽くして説明することができない場合も非常に多いと思うのです。そういうような場合には、一々裁判まで持っていくというようなことをしないで、だれか患者の側に立っていろいろ弁護してあげる、立場をよく説明してあげるというような人をここへ一人つけるというようなこと、お考えになったらいいのじゃないでしょうか。
#29
○政府委員(橋本道夫君) いま先生の御指摘のありましたような患者さんの立場というのは、私どもはこれは非常に慎重に、よく考えなければならないというぐあいに考えております。御指摘のございましたような問題、私先ほどちょっと言い誤りましたが、民事上の裁判ではございませんで、どうしても行政上の処分が不服であるという場合に、行政処分に対する裁判でございまして、これは先ほどの私の話は訂正いたします。そういうことはもう万々ないようにしたいというぐあいに私ども考えております。
 行政不服審査会の委員は六名でございまして、その委員の六名の任命にあたりましては、両院の同意を得て内閣総理大臣が任命をするということでございますので、当然に国会の先生方の合意を得られた公正な委員がなられるということによって、患者さんのサイドのものも十分これは考えられるのではないかと思います。なお、前回の救済法のときにおきまして、水俣の不服審査のときに、やはり行政のトップとしましては非常にその点に配慮をいたしまして、患者さんたちの訴えというものを現地に参って調査をしたという実績もあるということも、この点はおくみ取りを願いたいと思います。
#30
○加藤シヅエ君 それから医療の給付についてでございますが、これはたびたび問題になっておりますけれども、こういうような公害病、ことに水俣病とかイタイイタイ病とか、そのほか神経に関係した病気の場合には、薬とかいうものによらないで、いわゆる物理療法と申しますか、民間の施術者というような、指圧とかマッサージとか、そういうものを非常に必要といたしますし、また、そういうものを十分に与えられますと回復も早いし、非常に苦痛もやわらげられるわけでございますが、そういうものを、今後行なう給付という中にどういうふうに盛り込んでいかれますか、それを伺います。
#31
○政府委員(城戸謙次君) ただいまのあんま、マッサージあるいは指圧、こういう者の行ないます施術、こういうものをどう取り入れていくかということでございますが、これは現在健康保険の制度におきましては、保険医療を取り扱うものとしてこういう人を位置づけることでなしに、具体的なケースにつきまして、患者の病名、症状から見て、医師の同意があり、施術の必要があると認められるものについて、保険者が承認する場合に限って療養費払いとして認められる、こういうシステムになっているわけでございます。
 そこで、私どもの今度の新しい法律によります療養の給付でございますが、その場合には、その性格なり特色から考えまして、健康保険の例によることなしに、診療報酬につきましては環境庁長官が定める、こうなっているわけでございますので、この報酬につきまして中央公害対策審議会に諮問した段階でよく検討いたしまして、どういう形のもので取り入れれば十分患者さんのために役立つかということを考えてまいりたいと思っているわけでございます。
 なお、たとえば現在の水俣病の場合には、先般の協定の中では、これは医療の中でなしに、別途基金の中から出せる道を開くということで、現存の段階では医療として見られるもののほかに、基金のほうから出しましたものでこういう施術を受けられるように措置されているところでございます。
#32
○加藤シヅエ君 それでは障害補償の問題を伺います。
 「障害補償費の額は、被認定者の障害補償標準給付基礎月額に相当する額にその者の障害の程度に応じた政令で定める率を乗じて得た額とする。」云々ということがあるのでございます。これは労災の場合には六〇%とか、それからこの間の四大公害裁判では一〇〇%というような判決が下ったというようなことを聞いておるのでございますが、この障害補償標準でございますけれども、これは労働者、まあ男性の場合には全国基準とか何とかというような算定の基準になるものがあるわけでございます。ところが、家庭の主婦であるとか、あるいはもう長い間職から離れている老人とか、そういうような場合にはどういうことを基準にして算定なさるのか。
 特に私、非常に問題にしたいのは、家庭の主婦の場合なんでございます。これは交通災害なんかにあった場合にも、男性でございますと、死んだ場合でもあるいはもう再起不能になった場合にも、この人が将来どのくらいのお金が取れるかというような計算が出ますけれども、女の場合にはゼロなんていう扱いをされてしまう。家庭の主婦なんていうのはゼロなんです。何にも基準がない。男女が平等になっているという時代に、こんなおかしなやり方って一体あるものかしら。家庭の主婦は、主婦がいなければ家族が生活することができないわけです。男性が外でもってかせぐこともできないわけです。そういうような重要な役割りが、ただよそからもらう賃金というそういう算定方式に乗らないというそれだけで、主婦というものは非常にこの場合は不利な立場に立たされるのではないか。老人の場合もそうかと思います。そのことをちょっと伺います。
#33
○政府委員(城戸謙次君) 障害補償費でございますが、これはいま先生御指摘のように、その者の障害補償標準給付基礎月額を基礎としまして、障害の程度に応じて支給されるということでございますが、その場合、いまお話ございましたように、対象者が賃金労働者だけでなしに、無職の老齢者もおれば、家庭の主婦の場合もある。非常に多種多様にわたるわけでございます。したがって、個々の人の賃金ということを前提としますと非常に問題がむずかしくなりますので、一定の定型化を行ないまして、全労働者の平均賃金をもとにいまの標準給付基礎月額を定めまして、これに障害の程度に応じて一定の率をかける、こういう形を考えているわけでございます。条文で申しますと二十六条のところにそれがございまして、「基礎月額は、労働者の賃金水準その他の事情を考慮して、政令で定めるところにより、環境庁長官が、中央公害対策審議会の意見をきいて定める。」と、かようにかっているわけでございます。したがって全労働者の男女別、年齢階層別の平均賃金を一番基礎としまして算定をしている、こう考えているわけでございます。
#34
○加藤シヅエ君 私伺いたいのは、賃金というものに関係のない家庭の主婦は、それじゃ労働者に準じるのですか。
#35
○政府委員(城戸謙次君) いま申し上げましたように、家庭の主婦の場合には当然賃金というものがないわけでございますから、これは本来は賃金ではじくことはできないわけです。したがって、そういう方も賃金労働者も老齢者も全部一緒にしまして定型的な給付を行なおうとする場合には、これは四日市の裁判にもその事例があるわけでございますが、全労働者の平均賃金をもとに考えていくというのが一番合理的でございますので、さようなことをこの法律の中で制度化しているわけでございます。
#36
○加藤シヅエ君 それじゃ、賃金をもらっていない主婦もその中に含まれるということですか。
#37
○政府委員(城戸謙次君) そのとおりでございます。
#38
○委員長(森中守義君) 午前中の質疑はこの程度にとどめ、午後一時四十分まで休憩いたします。
   午後零時三十八分休憩
     ―――――・―――――
   午後一時五十二分再開
#39
○委員長(森中守義君) ただいまから公害対策及び環境保全特別委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き質疑を行ないます。質疑のある方は順次御発言を願います。
#40
○小平芳平君 午前中の加藤委員の最初の質疑に対して三木長官は、この法案に対する被害者の直接の反対の声は聞いてないというふうに言っておられましたが、九月十二日の当委員会で参考人の方の御意見をお聞きしました。そのときには、イタイイタイ病対策協議会会長の小松さん、水俣病市民会議会長の日吉さん、これらの被害者の会を代表する方が強く反対意見を述べておられたことを、一体、当日出席していた政府側の人は長官に報告をしなかったのかどうか。それから、同じ日に資料として委員に配付されたこの要望書、四日市の公害病認定患者の会等の各団体から出ている反対の陳情、要望書が当日配付されましたが、そういうことを長官に報告しなかったのかどうか。それからまた、昨日は文京区民センターポールで会合が行なわれ、そうした多くの被害者の方を代表する団体が、衆議院通過に抗議するという決議をしておられる。公害基金加害者救済制度を許さない、こういう決議をしておられるようなことについても御存じなかったのかどうか。いかがですか。
#41
○国務大臣(三木武夫君) 私の加藤委員に申し上げたことばが足りなかった点があるかもしれませんが、公聴会等においてはそういう意見も出たようでございますが、私に直接会いにこられまして、この制度そのものに反対であるという陳情を私直接は受けたことがなかった。最近では、数日前に四日市地区の公害病の患者の方も見えまして、いろいろな注文は受けましたけれども、むしろこの制度を制度化されて、その上に立って四日市で財団等もできましたから、それをどう調整するかというようなお話で、制度そのものに反対するというような声ではなかった。私なども、大気汚染防止法の一部改正のときに、損害賠償を保障する制度について検討を加えてすみやかに必要な措置をとれというようなことを、国会の意思として附則にまでお入れになっておるから、これは国会全体の意思を体して、少し時間は足りないけれども、皆さんの御審議を促進していただいて、一日も早くこれを制度化することが国会の意思にも沿うゆえんだと思ってしたわけでございまして、ほかに公聴会等いろいろ意見もあったことは事実でございますが、私が直接会った中には、制度そのものに反対という陳情を直接受けたことはなかったということでございまして、全部何もなかったという否定ではない。私に関する限りのことを申し述べたのでございます。多少ことばが足らなかった点があると思います。
#42
○小平芳平君 この制度につきまして、そういう国会の意思ということもありますが、要するに原因者、公害の加害者に対する問題点は、完全な賠償責任をとることと、それから公害防止の義務を履行するということ、こうした根本がはずれていたのでは、それこそこの制度に対する――今回提案されている制度に対する問題点は後ほど一つ一つ具体的に質問をいたしますが、基本的に、これは日弁連の四十八年二月二十八日中間報告に対する意見書ですが、原因者に対し完全な賠償責任、完全な公害防止義務、これを負わせることこそ先決だ、大前提だということ、それからまた九月十二日、先ほど申しました参考人の意見をお聞きした委員会で立教大学の淡路助教授が述べておられた、公害をなくすことが原点であるはず、一方で公害発生を許しながら一方で救済制度を立てるということにその矛盾があり無理があるということ、こういう点については三木長官はどうお考えですか。
#43
○国務大臣(三木武夫君) それは私もそう思います。公害をなくするということが問題の原点で去る。しかし現実に、いろいろ公害防止に対しての努力の不足もありましょうし、あるいはまた科学的な究明といいますか、そういう問題に対するまだ研究の進んでいないことからくる場合もあるでしょうし、現実に公害病が存在するわけですからその人に対してどうするか。それは裁判というものが一番完全な形における損害の賠償ということになるわけでしょうけれども、しかし、みなが裁判ということにも、実際問題として現実には容易でないし、現存する公害病患者の人たちに対して何とか救済の制度というものがあるほうが、公害病患者の人々のためにはなるという判断をしたわけでございます。
 もちろん、そういう損害の補償のような事態が起こらぬように、公害を根本からなくすることが大前提であるということに対しては、全くそのとおりだと思うのでございます。だから、こういう制度をつくったからといって、公害防止に対して熱意を少なくするというようなことは断じて許されぬことであり、むしろこういう制度ができたことが企業の免罪符になるようなことがあっては、これは全く立法の精神を踏みにじるものですから、ますます公害防除に対しては、根本から公害をなくするということについて一段と政策を強化していきたいと思っております。
#44
○小平芳平君 いま長官が御答弁の意味において、私はこの審議の過程で、一体通産省としては企業に対してどういう態度で臨むかということで、強く私は通産大臣の出席を要求いたしますが、委員長、よろしく。
#45
○委員長(森中守義君) わかりました。
#46
○小平芳平君 そこで、これはもうずいぶん言い古されてきていることでありますが、概略三点だけ長官にお尋ねしますが、これで一方においては現実に発生した被害者の補償制度をつくるとともに、他方ではきびしく公害規制をするという点では、たとえば企業の立地規制、四日市ではあれだけの訴訟が起きて大問題になりながら、なおかつ新しく埋め立てをし、新しく工場を建てようというようなことがあったわけですが、そうした企業の立地規制あるいは操業規制の強化、あるいはこれも言われてきたことですが、総量規制、こういうような点について、具体的にこの健康被害補償制度とともに、こういうふうに政府も企業も公害絶滅に力を尽くすということを明らかにしていただきたい。
#47
○国務大臣(三木武夫君) 結局は環境庁とすれば、環境の容量といいますか、これが環境行政の中心になるわけですので、いろいろ工場の増設をしたり埋め立てをした場合に、そのことがどういう影響を環境全体に与えるかということから、これに対して環境庁としての態度をきめるということが環境行政であろうと思うのです。そうなってくれば、いまのような濃度規制ばかりでは、薄めればいいというようなことでは、それは環境の保全ということにならないわけですから、どうしてもこの濃度に対して総量を掛け合わした、排出量を掛け合わせた形の総量規制という、そういうことで企業に割り当てていくということでなければ、規制の科学的な根拠というのはないわけですから、いまその作業を盛んにやっておるわけであります。
 できれば今年度中にできないかというのが、私が事務当局に言っておる私の指示であります。なかなか今年度、少しはそれをこえるかもしれぬがということです。実際の事務当局の意見は。しかし何とか、いまお話しのような立地規制でも、そういう科学的な根拠でこれ以上工場を建てればこれだけの環境容量をこえるではないか、こういうことになりますので、どうしても総量規制ということに早く踏み切らなければいかぬということで作業を進めておるので、この損害賠償の補償制度ができたから公害防止に対する政策をゆるめるという考えはございません。ますます強化して、こういう損害賠償補償制度というものの発動する地域とか件数とかいうものは、できるだけ少なくするように持っていかなければならぬと考えております。
#48
○小平芳平君 そうした基本的な姿勢は了解できます。ただ、私はここで、それでは具体的に、何年も前から、田中角榮通産大臣のころから私たちが何回も提起してきた休廃止鉱山、現実にもう鉱山は休鉱か廃鉱になっている、鉱業権者もないという、これなどは当然国が鉱毒防止をやるべきはずなのに、全然進んでない。
 それに入る前に環境庁から、島根県の笹ケ谷鉱山関係の公害認定はどうなったか、お答えいただきたい。
#49
○政府委員(城戸謙次君) 笹ケ谷鉱山につきましては、慢性砒素中毒と思われる患者が死亡者二名を含め七名おる、それから慢性砒素中毒と疑われる者が五名おるという報告を島根県から受けておりますけれども、現在、同県におきまして環境調査のデータ等を補完した報告書を作成しているところでございますので、私どもとしましては、この報告書を受け取り次第、これまでの例にならいまして、専門家から成ります砒素による健康被害検討委員会の意見を聞いて、救済法の指定地域等に関する結論を至急出したい、こう思っております。まだ報告書は参っておりませんので、あとわずかな期間でございますから、それを受け取りました上で正式に乗り出したいと、こう思っております。
#50
○小平芳平君 この笹ケ谷関係の慢性砒素中毒のほうは、すでに鉱山は昭和二十四年から廃鉱になっておるのです。もう二十四年も昔のことなんです。その二十四年前の時点、あるいは一番鉱山が栄えていた当時の時点で慢性砒素中毒の調査をやったならば、どれほど被害者が発生していたかはかり知れないと思うのです。いまはすでになくなった人が多数いらっしゃるわけです。二十四年前に廃鉱になったわけですから。そういうのを、通産省はどうしてもっと責任を持って鉱毒防止をやらないのか。
 具体的にそれでは北上川の上流の松尾鉱山、この松尾鉱山の場合でも、露天掘りをやったあとが自然発火して絶えず煙が出ている。まず地球上にこんな所があるかと思うくらい、この狭い日本の国にこんな露天掘りの廃鉱のあとが、自然発火して絶えず燃え続けているというような現状。しかも、そこから流れ出る廃水はどのくらい汚濁されていると思いますか。その汚濁の現状なり対策をお答えいただきたい。
#51
○政府委員(林信太郎君) お答え申し上げます。
 松尾鉱山につきましては、すでに会社が倒産いたしておりまして、鉱業権が消滅いたしておるわけでございます。したがいまして、鉱業権がございますと、鉱山保安法の鉱害防除責任が鉱業権が消滅後も、五年間は防除義務を遡及して命令することができるわけでございます。あるいは先般成立を見ました金属鉱業等鉱害対策特別措置法の適用も可能でございますが、会社が倒産消滅しておるというふうな状況でございます。したがいまして、現在その鉱害防止対策につきましては、環境庁を中心に北上川清流化対策関係各省連絡会が設けられておりまして、その場で総合的な対策の検討をしていただいておる段階でございます。さらに現地におきましても、地元の関係機関で構成されております北上川水系水質汚濁対策連絡協議会、この中に学識経験者によります恒久対策専門委員会が設けられておりまして、地元なりに抜本策について検討を進めている現状でございます。通産省といたしまして、こういった方向の一環といたしまして、可能な限り最善を尽くしまして、抜本的な発生源対策に従来からもつとめてまいっておるわけでございます。
 ただいま先生御指摘の酸性汚染問題でございますが、この防止のために緊急対策といたしまして、四十七年度におきまして百十二メートル坑、これは坑口がつぶれますと水がそこに出ないというおそれのあるところでございますので、これが浸水による落盤によって坑口閉鎖というような事態が起こらないようにするための、水路の切りかえ工事をいたしております。
 それから第二番目に、ただいま御指摘の自然発火問題でございますが、長くかなり規模の大きい露天掘りをやってまいった関係でございますが、自然発火を防止する必要がございます。応急の覆土工事をやっております。四十八年度におきまして、引き続きこの露天掘りあとの覆土工事は続けておりますし、なお他の排水路の保全工事、あるいは不要になっております坑口があいたままで、これが一般のハイカー等があやまって入る危険がございますので、こういったところの坑口閉鎖といった事業をそれぞれ進めておりまして、十一月には完成する予定になっております。
 事業所の関係のところは、私どものほうで以上のような形でやっておりますが、それ以外のところにつきましては、それぞれ関係省庁で検討あるいは調査、あるいは実施していただいておる状況でございます。
#52
○小平芳平君 中心は環境庁だということですが、水質保全局長、これは北上川の上流の赤川という川ですが、PHなり鉄分なりがどのくらい出ていると思いますか。
#53
○政府委員(岡安誠君) PHの状況を申し上げますと、昨年からことしにかかりましてだいぶ変化をいたしております。まず坑口でございますけれども、坑口におきまして、昨年の六月が非常にひどくて、一を切るというような状況でございましたけれども、最近に至りまして、ことしの七月の末ぐらいには一・五というような数字になっております。坑口のPHの状態が改善されたということもある関係と思いますけれども、下流の天狗橋、富士見橋等におきましてもPHは改善されておりまして、出口といいますか、北上の本流のほうに合した後の四十四田ダム、これを一応の目標にいたしておりますけれども、その目標の四というのが最近は相当上回りまして、六・六五というような数字も示しております。この関係は、先ほど応急的な工事につきまして通産省から御報告がありましたけれども、そのような影響なのか、その他天候のことが必ずしも明らかでございませんが、最近は確かにPHは改善をされております。
 それから鉄というお話でございますが、鉄のほうの資料はちょっとございませんで、砒素がちょっと問題なので砒素について申し上げますけれども、砒素につきましてはやはり相当出ておりまして、環境基準は〇・〇五PPMでございますけれども、坑口並びに下流の船田橋のところぐらいまでは環境基準をオーバーするような砒素が検出されております。しかし本流に入りましては、すでに環境基準は達成されておるというような状態でございます。
#54
○小平芳平君 鉄は排水口で水の中から八六〇PPM、それからズリの中では六・二%、四・二%という鉄です。そうすると、これは鉱石みたいなものじゃないですか。どうですか。
#55
○政府委員(林信太郎君) 通常の鉄鉱石の場合は、採掘しておりまするのが三〇くらい以上でございます。特に国内はほとんど鉄鉱石が枯渇しておりまして、ほとんどが海外でございますが、海外の場合には大体原鉱石で五〇以上くらい、それを精鉱にいたしまして六五からあるいは七〇近くというふうな鉄分の含有の状況になっております。
#56
○小平芳平君 それはそうでしょう。それでなければこれを持っていって精錬したほうがいいですからね。要するに、露天掘りのあとのズリを分析すると、鉄が六・二%あるいは四・二%、砒素が四〇〇PPMあるいは四三PPMというようなぐあいに、それが露天掘りしたあとにそのままになっているわけだ。
 それで何か対策をするというのですが、あれもやっています。これもやっていますといいますけれども、結論としては私は二つ申し上げますから。それは、国が責任をもって許可をし安全管理をした鉱山でしょう。鉱毒だけを地域住民に押しつけて、そうして鉱毒を流しほうだいということは、三木長官のさっきの発言と全然違う、やっていることが。そういう国のやるべきことすらやらないで、それで三木長官が、総量規制します。公害防止はますますきびしくしますと言われても、地域住民としては承知できない。まして被害者が納得できるわけがありません。そういう意味でも、私は通産大臣に強く出席を要求しましたが、どうしました。
#57
○政府委員(林信太郎君) ただいまの御指摘の、国が監督をしてきたのにもかかわらずこういう事態になっているのは、まさに国の責任ではないかという御指摘でございますが、現在の鉱山監督の規定は、公害防除の問題と、それに鉱山稼行に伴います賠償責務と、二つ問題がございまして、前者は鉱山保安法によって行なわれ、後者は鉱業法によって行なわれております。
 公害防除につきましては、鉱業権を持っておる者の責任でございます。鉱業権が消滅いたしましたあとは、原因行為をやった者の責任になります。しかも、消滅いたしましても、五年以内にその原因者に対しまして必要な公害防除の命令を出せることになっております。ただ松尾鉱山の場合は、御案内のとおり、あるときには硫黄の不足でたいへんにいんしんをきわめた鉱山でございますし、労務者住宅等も当時としてはたいへんモダンな鉄筋スタイルのものを建てたりしてやったわけでございますが、いろいろな情勢の変化で非常に硫黄鉱山が凋落いたしまして、ついに倒産というふうな形になってしまったわけでございます。そういたしますと、鉱山保安法で鉱害防除義務を追及する形が、相手が消滅する、こういうふうな事態になっております。こういう形では放置できない大問題でございますので、四十六年から府県がこの工事主体になりまして、費用は国が三分の二を持つ、あと残り三分の一は府県というふうな形で、休廃止鉱山の鉱害防除工事補助金制度というものを国として設けました。これによって措置をしていく、こういうふうな考え方をとっています。
 それから第二番目の賠償の問題でございますが、これは鉱業法に厳密な規定がございまして、すでに昭和十五年に、鉱山というのは昔から非常に問題がございました関係で、無過失賠償責任の条文が入っております。損害発生時の鉱業権者が原因者であろうとなかろうと、その賠償責任を負うというかっこうになっております。鉱業権が移転いたしますと、それを移転を受けた者がみな連帯責任で賠償責任に当たるという規定になっております。もし鉱業権が消滅してしまったあとで損害が発生いたしました場合には、最終の鉱業権者がこの損害賠償義務を負うというふうなかっこうになっております。
#58
○小平芳平君 そういうことを尋ねているのではないのです。四十六年から始まった県が主体となって補助金を受けて工事をするというのが、おかしいと言っているのです。松尾鉱山もそうですが、そのほかの廃鉱についても一体どれだけの資金が要りますか。さしあたって松尾鉱山でいうなら、あの露天掘りあとの埋め戻し、それから、いま中和処理のための沈でんの施設がありますが、これは古いです。もっと完全な中和処理のための施設をつくるべきであるという、そういうことを国が責任を持ってやるのが当然ではないかと言っているのです。いまの法律がこうなっている、ああなっている。その法律を変えなくちゃいけないじゃないですか。鉱毒だけは流しほうだい、そしてこの監督は絶えず通産省が――それはおかしいじゃないかと言っているんですよ。どうですか。
#59
○政府委員(岡安誠君) ちょっと、全体的なお話を私どもから申し上げたいと思います。
 北上川、特に赤川関係の対策につきましては、私ども関係省庁寄りまして、現在二段階に対策を講ずるということにいたしております。一つは応急的な対策でございまして、これは先ほど通産省のほうから御報告があったと思いますけれども、四十七年度から着手いたしました坑道関係の開さく整理の工事、それから露天掘りのあと地につきましての覆土工事がございます。開さく工事はすでに完了いたしましたし、露天掘りのほうは大体全体で二億一千万円程度の工事費を予定しておりますが、一部四十七年度で実施し、残りは四十八、四十九年度二カ年間で、これは先生から御指摘がございましたけれども、通産省のほうの三分の二の補助金の事業でもってやることにいたしております。それからあと鉱滓の堆積覆土工事でございますが、これは全体で三十三万立方メートルぐらいでございますので、事業費も約六億六千万円くらいの見当をいたしております。これは四十九年度以降実施いたしたい。これも一応現在の予定では、通産省の補助金で実施をいたしたいというふうに思っております。
 それから炭カル投入その他の中和処理場の新設関係でございますが、これは建設省のほうの直轄河川維持修繕費または直轄河川環境整備事業というものでやっておると思うのでありまして、現在炭カル投入の中和処理対策につきましては、毎年約二億八千万程度の事業費でもって継続いたしております。それから新しい中和処理場の建設と同時に、それとセットになります新しく赤川に沈でんダムをつくるという工事でございまして、これは大体十四億ぐらいの工事を予定しておりまして、これは建設省のほうで四十九年度からまず調査を開始しまして、できれば五十年度に着手をいたしたいというふうに考えております。それと並行しまして、河川から水が浸透いたしまして、これが地中で化合しましてPHを下げるということもございますので、既存河川、赤川とか赤沢川の河道をコンクリートで舗装するということが必要だというふうに考えまして、この事業費は大体約十五億でございますが、これは四十八年度から全体設計を立てまして、一部事業に着手いたしたということで、これも建設省の所管でやっております。
 以上は大体応急的な措置でございまして、私どもはやはりこの上流におきまして一般的な地下水浸透を防止しなければ、土が洗われまして、PHが下がるということになると思っております。これはきわめて本格的な工事になるわけでございますが、地下水浸透防止対策のための基本的な調査を四十八年度、本年度から実施をするということで、環境庁の予算を建設省に移しておきまして、約二千万円の費用でもって本年度総合的な調査並びに対策の樹立をはかるということにいたしておりまして、これで計画ができますれば本格的な工事、どういうことになりますかわかりませんけれども、相当大規模な工事を実行いたしたい、かような考え方で現在対処いたしておる次第でございます。
#60
○小平芳平君 三木長官、それは国も県もあるいは各省、環境庁、通産省、建設省、何もやってないと私は言っているわけじゃないんです。そういう調査あるいは計画あるいは工事もあることは承知しております。ただ、こうした大規模な廃鉱はきわめて早く処理する必要もある。そういう意味から、県工事で国が補助をするのだからと言っているよりも、もう一つ私は国が責任を持ってやるべきだということをかねがね主張しているのですが、いかがです。
#61
○委員長(森中守義君) ちょっと速記をとめて。
  〔速記中止〕
#62
○委員長(森中守義君) 速記を起こして。
#63
○国務大臣(三木武夫君) 事業主体というよりも、負担分ということが一番現実では問題になる。いま国は三分の二ということになっておるわけですけれども、大規模な事業になるという場合には、県としてもたいへんなことでもあり、また、その企業はその時代においてはやはり国のために国の必要を満たしたわけでしょうから、そういうことで、この三分の二というのはここで私がお答えするわけにはいきませんが、関係各省庁とも相談をしまして、何か三分の二というものをもう少し国の負担をふやせないかということは、研究をいたすことをお約束いたします。
#64
○小平芳平君 あまりこればかりやっておるわけにいきませんし、健康被害のほうをやらなければいけませんので、もう一つだけ、静岡県南伊豆町の一条川流域二十五ヘクタールのたんぼが完全につぶされておりますが、これはどうなっておりますか。これもまさしく廃鉱です。
#65
○政府委員(林信太郎君) 南伊豆町には、ただいまお話のございました一条川と青野川がございまして、その周辺に小松野鉱山、南中鉱山、奥山鉱山、それから青野鉱山、四鉱山ございます。このうち小松野鉱山がすでに廃止いたしておりまして、あとの三鉱山が休止鉱山でございます。したがいまして、廃止鉱山につきましては、ただいま問題になりました国が三分の二持ちまして行ないますこの補助金制度の適用で、県が主体になって防除工事をやっていただく。それから残りの三鉱山は休止でございますけれども、鉱業権者がおりますので、先般成立を見ました金属鉱業等鉱害対策特別措置法の適用によって防除工事をやってまいりたいということでございます。なお、一条川の中流に一条鉱山が稼動中でございますが、これは現在ろう石をやっておりまして、ろう石をとりまして粉砕、漂白、精製いたしまして、白土と申しますか、製紙に潤滑剤、光沢を出すために使われております。これも実は汚濁水の問題がございますが、東京監督部で調べましたところでは基準値内になっておるという状況でございます。
#66
○小平芳平君 三木長官、いまのところも、一条川流域二十五ヘクタールというたんぼはほとんどつぶれているのです。荒れ地にしてあるのです。何かに転換しようということで、いまその何かを模索中の段階なんです。それからいま局長の答弁の青野川を含めますと、九十ヘクタールにわたって水田転作特別事業、河川改修、そういうものを計画せざるを得なくなっている。そういう実情にあります。まだ私たちが実際に問題提起した廃鉱をあげればたくさんありますが、とてもそれはやっておられませんが、要するに、鉱毒をそのまま流して対策は遅々として進んでいない。ですから、国の三分の二負担なんということは直ちに検討していただきたいということを私は強く要請いたします。
 それから次に、もとへ戻りまして今回の救済法案につきまして、第一の問題点は、加藤委員も先ほど質問しておられましたが、認定制度、これが、参考人の意見の中にも線引きというのがきわめて問題だ、結局線引きで落とされてしまう、あるいはランクづけで低い金額に押えられてしまうということが現制度できわめて問題だということを述べておられたのですが、今回はこれを改めようという姿勢がおありかどうか、現在の認定制度ではきわめて不備であるということを参考人が述べておられた、その現在の認定制度を改めようという考えがあるかないか、それが第一点です。
 それからもう一つは、光化学スモッグの被害のような場合、結局地域指定がなければ救済はできないわけでしょう、今回の制度で。光化学スモッグの被害はこのままに放置していくのかどうか。その二点についてお尋ねしたい。
#67
○政府委員(橋本道夫君) いま御質問のございました認定制度でございますが、まずこの法律の中にございます第一種の地域、つまり大気汚染による非特異性の疾患というものにつきましては、これは慢性気管支炎とか、あるいは気管支ぜんそく、あるいは肺気腫という病気は、大気汚染の地域でなくとも一定の割合ございます。そういうわけで、この患者さんは大気汚染の影響によるものだときめることは医学的にはできないのだということが、医学のほうの基本の立場でございます。そういう問題では私どもはこの患者の救済ということはできませんので、どうにかしてこの問題を法律上の制度として救うにはどうしたらいいかということで、この法律の中では、指定地域を定める、そうしてその中で指定疾病にかかっている患者さんで、曝露の条件に合うという三つの条件がそろえば、この制度による給付を受ける対象となり得るというような条件を設けるということで、医学的には踏み切れないところを、この法律で制度的に踏み切る方向に持っていくということをいたしたわけでございます。
 これは従来の救済法の経験及びその後の裁判の判例あるいは科学の進歩というものを基礎にしまして、このような制度を設けたわけでありまして、従来の救済法の場合と実体的にはほぼ同じ考え方でございますが、ただ、いま申し上げましたように、法律上の因果関係を制度的にとりきめをする仕組みという形ではっきり打ち出したということにつきましては、従来とは変わっております。ただ、いま申し上げましたように、そのような条件がなければ公害病ときめ得ないという問題でございますので、どうしても線引きということはこれは避けられないということでございます。ただ、その線引きをいたしますときの条件が何かということでございまして、この条件につきましては、汚染の程度ということが一つと、もう一つは慢性気管支炎等の有症率、どの程度の人がそのような症状を持っているかというような条件、この二つが非常に大きな条件になりますが、そのほか、どの程度呼吸器系の疾患でお医者さんにかかっておるかという受診率等も参考にいたしまして、そしてこの線引きをするということでございまして、きわめてむずかしい問題でございますが、何とか公害病の患者さんというものをこの制度上取りきめをして救おうということで、このような法律の体系をとったというわけでございます。
 その中で、前の指定地域の問題と今度の指定地域の問題とでは、何か少し変わったところがあるかという御質問でございますが、まず一点申し上げたいのは、従来の公害健康被害救済特別措置法、これは四十四年末に成立いたしまして、四十五年からこの地域指定が始まり、現在まで地域指定が順次広まってきたところでございます。この中で大気汚染のケースを見ますと、これは四日市とか大阪とか尼崎とかあるいは川崎というような、非常な大工業地帯で汚染の激しいところというところを対象としてとっておりまして、このようなものをとったという根拠は、四日市の公害問題及び大阪西淀におけるいろいろな影響調査等を基礎にしてとったわけでございますが、そのときの汚染の条件を何でとっておったかと申しますと、これは硫黄酸化物が一番主体になりまして、それから浮遊粉じんを参考といたしております。これは三十九年以来の影響調査の知見というものを最大限に活用いたしましてやったわけでございますが、四十五年から四十八年まで順次地域指定の拡大されてきた場所をながめてみますと、この最初の地域指定をされた要件と四十八年に地域指定をされた要件を客観的に比べてみますと、むしろ四十八年に指定された地域指定の要件のほうが、若干汚染の程度ではゆるいというところが入っておるわけでございます。そういう問題がございますので、本制度の地域指定をやるというときには、四十五年から四十八年の間、指定地域になっているところがあるわけでございますが、その中に、四十八年に地域指定をしたところの基準で考えてみると、昔の汚染の状態を振り返って評価をしてみればそれにはまるというところが、従来地域指定をしたところの周辺にあるということは当然考え得ることでございますので、過去の汚染の状態にさかのぼってみて、四十八年に至るまでの指定条件と不均衡のないような形でこれを是正をしたいという考え方を一点持っております。
 もう一点は、参考人の先生からも御意見のあったことでございますが、窒素酸化物の問題でございます。窒素酸化物の問題につきましては……
#68
○小平芳平君 簡単に結論だけ言ってください。
#69
○政府委員(橋本道夫君) 窒素酸化物の問題につきましては、これは汚染の測定のデータがまだ非常に少のうございます。少のうございまして、どういうぐあいに窒素酸化物だけの汚染を取り入れるかということにつきましては、今後一、二年の検討をした上でこれを中に組み込むという方向でいたしたい、そういうぐあいに考えておるわけでございます。光化学スモッグは、窒素酸化物による大気汚染の範囲をどうきめるかということによってこれに対処し得るのではないかということで、光化学スモッグの被害についてもこの制度の対象とし得るかいなかについて検討を加えたい、そのように考えております。
#70
○小平芳平君 そんなに一人で長くしゃべっていると、次に進まないじゃないですか。要するに、実体的にはさして変わりないということならば、結局変わりないということじゃないですか。いや、違う点もいま述べられましたから、こういうふうに変えるというところだけ言ってくれればいいんです。
 そうすると、結局、光化学スモッグの場合は窒素酸化物の研究の上で取り上げよう、現時点では入らない、こういうことですね。
#71
○政府委員(橋本道夫君) 窒素酸化物の問題につきましては、現時点ではすぐさまは無理でございますが、取り上げるという方向で検討を加えるということでございます。
  〔委員長退席、理事金井元彦君着席〕
#72
○小平芳平君 これは長官、考え方としまして、参考人の方もそういう意見を述べておられたですが、水質汚濁あるいは大気汚染も、出発は地域指定でやったわけですが、しかしだんだん汚染が激しくなってきて全国一律規制ということになった。したがって、この救済法を考える場合も指定疾病、指定地域というものが原則のようですが、そうした局地的なものではだんだん済まなくなるのが公害の傾向ではないかということについて、どう考えられますか。
#73
○政府委員(城戸謙次君) ただいま審議官から御説明申し上げました点の中で、いまの御質問に関連します点は、この指定地域というのは、特に大都市地域につきましては本質的な問題でございまして、どこにでもある疾病についてこれを公害病ということで救済するからには、どうしてもそこに一つ線を引かなければならない。これが規制立法におきまして指定地域制をはずしたのと本質的に違う点でございます。ただ、その線を引くにつきましては、できるだけ合理的に引いてまいりたいというのが私どもの気持ちでございます。
#74
○小平芳平君 何かおしまいのほうがはっきりしませんが。
#75
○政府委員(城戸謙次君) 本質的に指定地域をはずしたらどうかということが含みにおありじゃないかと思いますが、これは救済をいたします場合、公害病の救済であります以上、どこにでもある非特異的疾患につきまして、指定地域という制度をはずして救済をするということは不可能でございます。したがって、指定地域はこの制度に不可分に結びついているということを前提としまして、ただ指定地域の指定のしかたにつきまして、これまで問題があれば是正すべきものは是正していく。できるだけ改善してまいりたい。その内容につきましては、先ほど橋本審議官から御説明したような点でございます。
#76
○小平芳平君 それから、これも加藤委員の質問に答えておられましたが、補償費はどうやって算定するのですか、あるいはその考え方は、平均賃金の何割という考えですか。
#77
○政府委員(城戸謙次君) 障害補償費につきましては、認定患者が指定疾病になりましたことによって一定の障害状態にある、その場合に、障害補償標準給付基礎月額というのをもととしまして、それに障害の程度に応じて支給していくということを考えているわけでございます。
 この基礎月額をきめます点でございますが、この点は特にこの救済の対象者が、賃金労働者だとか家庭の主婦だとか無職の老齢者だとか非常に多種多様にわたりますために、一定の定型化を行なうものでございまして、労働者の男女別、年齢階層別平均賃金その他の事情をしんしゃくして、環境庁長官が中央公害対策審議会の意見を聞いて定めるということになっておりまして、これは条文でまいりますと二十六条に規定しているところでございます。
 給付レベルにつきましては、中公審の答申があります段階でいろいろと議論のあったところでございますが、最終的には、公害裁判の判決に見られる水準だとか社会保険諸制度の水準などを踏まえまして、公害被害の特質、本制度における因果関係についての考え方、慰謝料的要素等を総合的に勘案して、結果的には、全労働者の平均賃金と社会保険諸制度の給付水準の中間になるような給付額を設定することが妥当である、こういう答申をいただいているわけでございます。私どもそういう基本に立って、今後この法律が通りました上で、さらに中央公害対策審議会に諮問しまして検討してまいりたいと思っております。
#78
○小平芳平君 慰謝料はどうなんですか。
#79
○政府委員(城戸謙次君) この法律におきましては、この目的が第一条に書いてありますように「大気の汚染又は水質の汚濁の影響による健康被害に係る損害を填補するための補償を行なう」ということでございますから、その補償という内容には、当然逸失利益等の財産的被害のほかに、慰謝料がその中に考えられておるということでございます。
 ただ、この慰謝料をじかにそれでは出したらどうかという御意見もございますが、私どもとしましては、こういう二つのものを踏まえまして、給付の種類とか程度ということを考えているわけでございます。慰謝料につきましても、中公審の答申におきましては、最終的には、慰謝料は基本的には民事訴訟にゆだねることとするが、本制度にもある程度慰謝料の要素を織り込み、制度全体の中で要求をどういうように生かすかという方向で給付の種類なり給付水準を定めるのだと、こういう答申になっているわけでございます。したがって、別個の項目として慰謝料を立てるというのじゃなしに、こういう給付水準なり給付の種類の中に慰謝料的要素を織り込んである、こういうぐあいに御了承いただきたいと思います。
#80
○小平芳平君 全労働省の平均賃金の何割ともおっしゃらなかったのですが、八割ですか。
#81
○政府委員(城戸謙次君) その中間に定めるということが妥当だという答申でございますので、労災の給付水準六〇%と裁判の給付水準をかりに一〇〇としました場合は、八〇%になる、こういうことでございますが、八〇%というものが、じかに中公審の答申に入っているわけではございません。私ども一応その中間ということをめどに、今後中公審の御意見を聞きながら検討してまいりたい、こう思っているわけでございます。
#82
○小平芳平君 四日市の判決等では、はっきりと慰謝料が入っているわけでしょう。結局その中間をとって八割程度ということは、要するに、すでに四大訴訟も判決の金額が違うでしょう、そのどれをとるのですかということにもなるし、それは今度はいつ改定をしていくのですか。要するに、判決の金額といっても三年五年たつうちに、こうしたインフレ傾向の時代にまたたく間に低い金額になっていくでしょう。それはいつ改定するのですか。
  〔理事金井元彦君退席、委員長着席〕
#83
○政府委員(城戸謙次君) これは私どもは基礎月額をきめるのをどうするかということにつきましては、毎年定めてまいりたいと、こう思っています。賃金水準が動きますので、毎年それは考えてまいりたいと思っております。もちろん裁判の場合は判決は一時金で出ますので、その中に将来の物価の上昇その他がどう織り込めるかという問題につきましては、これは私どもの問題ではございませんが、そう先の物価とか何とかということを織り込むということは非常に困難だと思います。私どもの場合には定期的給付でございますから、毎年賃金水準を考えながら改定してまいりたい、こういうふうなぐあいになるわけでございます。
#84
○小平芳平君 毎年変えていく。それから地域間あるいは各個人間の格差というものがあるのですか、ないのですか。
#85
○政府委員(城戸謙次君) 個人間の格差というのは、実は個人個人に逸失利益等を算定しまして給付額をきめるわけではございませんので、あくまで標準化してまいりたい。したがって男女別、年齢階層別の平均賃金を基礎としてきめていきたいと、こう思っておるわけでございます。さっきも加藤先生からも御質問がございましたが、したがって家庭の主婦というような場合にも、実際の収入はなくても、その平均賃金に見合ったものに障害の程度に応じた率を乗じたのが給付額となってまいるわけでございます。
#86
○小平芳平君 はっきりしませんが、男女別、年齢階層別の賃金を当てはめて、それでどういうふうに――個人差かあるのですか、ないのですか。地域差があるのですか、ないのですか。
#87
○政府委員(城戸謙次君) 地域差はございません。それから個人個人による差はございません。ただ男女別の差はございますし、当然年齢階層別の差はございます。年齢階層は当然逸失利益に非常に密接な関係がございますので、年齢階層別の差はあります。したがって、ある年齢層に属する男あるいはある年齢層に属する女、この人につきましてはどなたでも同じ金額が基礎になりまして、ただ、個々人によって障害の程度が違います。したがって障害の程度に応じまして、それも一〇〇%の場合もありますし、それ以下の場合もある、こうなるわけでございます。
#88
○小平芳平君 そうすると、小さい子供や、すでに働けないお年寄りはどうなんですか。
#89
○政府委員(城戸謙次君) 非常に小さい子供さんの場合には、いわゆる逸失利益というものが裁判上認められておりませんので、私ども障害補償費の給付対象にはいたしておりません。これは別途、児童補償手当のほうで給付をするということになっているわけでございます。その年齢につきましては、大体十五歳を境に考えてまいりたいと思っております。お年寄りの場合、これも厳密にいいますと逸失利益がどのくらいあるかという問題もございますが、私どものほうとしましては、年齢階層別に区切りますから、一番年寄りの方におきましても、ある程度の逸失利益を見込みました上で定型化した給付が支給される、かようになるわけでございます。
#90
○小平芳平君 裁判の判決の結果の金額というものは、ある一つの限度を示したのであって、それだけで公害そのものは解決されてないわけですよ。公害被害者の健康は何らもとへ戻ってないわけでしょう。しかも、その判決の結果の中間をとって八割といって、それを減らそうという、そして、物価が上がるにつれて給付額もふえるというわけですが、要するに原状回復ということですね、あるいは原状回復が全く不可能な場合は生涯保障ということについてどう考えますか。
#91
○政府委員(城戸謙次君) 原状回復ということは、この場合は疾病でございますから、医療給付を行ないまして、できるだけ健康を回復していただくということが中心になるわけでございまして、直接的には医療給付があるわけでございますが、そのほかに公害保健福祉事業という体系が別途ございまして、条文では四十六条にございますが、この中で、できるだけそういうような施策を取り入れてまいりたいと思っておるわけでございます。
#92
○小平芳平君 生涯保障。
#93
○政府委員(城戸謙次君) 障害補償というのは、先ほどもおっしゃいました障害補償給付のことだと思いますが……。
#94
○小平芳平君 いや、一生涯です。
#95
○政府委員(城戸謙次君) 一生涯保障でございますか――。当然この法律によります給付は、一生涯の保障になるわけでございます。年金的、定期的な給付でございますから、生きておられる限り給付されますし、なくなられたあとは遺族補償費あるいは遺族補償一時金が支給される、こういう体系になるわけでございます。
#96
○小平芳平君 そういうことになればなおさら、先ほど述べられたような水準のきめ方にはきわめて不満ですね。結局、ある金額を出して、あなたはこういう障害が幾らだから幾らというふうにラングづけされていくわけでしょう。ですから裁判の金額が、判決の金額が、これで被害者は十分生涯保障されるという金額じゃないわけですよ。それを満額として、八割にするということ自体がおかしいじゃないですか。
#97
○政府委員(城戸謙次君) 先ほどからお話しているとおりでございまして、一つの定型的給付としてこういう給付を考えます場合、ほかの類似の制度との比較をしながら、公害の特殊性だとか慰謝料の問題だとか、こういうものを考えて、先ほど来給付水準をこういうところに持っていきたいと申し上げているわけでございます。もちろん、多ければ多いにこしたことはないわけでございますけれども、こういうような一つの制度的給付でやります以上、特にまたこの制度にありますような一つの因果関係の類推をして制度をつくり上げていきます以上、そこにおのずから限度もあるということは御了承いただきたいと思うわけでございます。
#98
○小平芳平君 それは限度がありましょう。限度がありましょうが、先ほど来申しますように、まず公害をなくすことが一つと、もう一つは、企業が責任を持って補償するということです。企業が分担金だけ出せば、あとはどうなるのですか。そういうような企業の姿勢では相ならぬでしょう。
#99
○政府委員(城戸謙次君) そういうことで、私どもの制度としましては一つの制度的な給付をいたすわけでございますから、それでもどうしても御不満だという方は、やはり民事訴訟によって争っていただくというほかはなくなるわけでございまして、私どもとしましては給付のレベルその他につきましても、今後の審議会の審議等を通じて、できるだけひとつ御審議があった点を踏まえまして、各種の給付の条件あるいはレベル、こういうことにつきまして考えてまいりたいと思っているわけでございます。
#100
○小平芳平君 いまの点について三木長官からひとつ御答弁いただきたいのですが、私が申しますことは、長官は最初に公害をなくす姿勢について述べられましたが、その公害をなくす姿勢とともに、企業の責任、それが事業活動をやっているのだから少々の被害はしようがないのだ、公害だ公害だといって、生産がなくなったら困るじゃないか、あるいは分担金を、お金を、賦課金を出したから、あとは文句があるなら訴訟をやってくれというふうになったのでは、この健康被害者の補償というものが一つの隠れみのにされてしまうということをおそれてお尋ねしているわけです。
#101
○国務大臣(三木武夫君) まだ八割ときめたわけではないのです。ずいぶんこれに対しては衆議院の委員会等においても、八割よりもっと給付率を上げろという声が強くあったわけですが、とにかくしかし制度としてやろうというわけでありますから、たとえば全然収入のない人でも、あるいは主婦で働いてない人も、逸失利益とはいいますけれども俸給生活、賃金の生活をしていないわけですから、収入がないわけですね。それでもその年齢の全国の平均賃金、これによって毎月年金のような形で給付がいくわけですからね。そうなってくると、何かこう制度的にしたときには、まあ八割というのも一つの考えられる数字かなあというふうには考えておるわけです。これはしかし、これから中公審で検討をいたすわけでございますが、そういうことで、できるだけ――しかしまあ最低八割と思っておるんですよ。できればできるだけふやすにこしたことはないけれども、いま言ったようなことがあって、これを制度とし一つの型にはめていく場合には、やはりその程度が適当ではないかという考えを持っておりますけれども、なお十分中公審でこれは検討を願いたいと思っております。
#102
○小平芳平君 城戸局長、これも加藤委員に対する御答弁で、認定に不服の者は行政訴訟を起こすわけですか、それはその場合、認定ということに対する、その訴訟で争えますか、どういうことになるんですか。
#103
○政府委員(城戸謙次君) 訴訟の場合二つあるわけでございます。一つは、このような給付に関係なしに民事上の訴訟を起こされる場合が一つと、もう一つは、先ほど橋本審議官が御説明いたしましたように、一定の不服審査の過程を経ました上で、なお都道府県知事なりあるいは市長のきめました認定だとか給付の額の決定だとか、こういうものに不服があります場合に、訴訟で争うという場合がもう一つあるわけでございます。双方ともできるわけでございます。
#104
○小平芳平君 三木長官、先ほどの企業は責任をどうとるかという点についても、私は通産大臣にもとくと質問したい点なんですが、いまの局長の答弁でも、訴訟を起こせばいい、あるいは自主交渉すればいいということを答弁されますけれども、また、この補償法案自体が行政訴訟やその余地を閉ざしているわけではありません、自主交渉の余地を閉ざしているわけではありませんが、ある規模の企業が全部ふだんからというか、要するに地域指定になればお金を出すわけでしょう。そうすると実際上はこれで責任は終わったんだ、要は自分の分担すべきお金はもう出したのだから、それ以上の自主交渉とか、訴訟で争うというようなことは企業としては受け付けない、と。いや法律はできるようになっているといっても、実際上は企業は自分が責任を持って前面に出てやるということがなくなるのじゃないですか。いかがですか。
#105
○国務大臣(三木武夫君) これはもうこの制度ができたからといって、訴訟は受け付けないといったって企業がその訴訟を受け付ける相手ではないわけです。裁判所でありますから、それはそういうことはないと思いますよ。しかし実際問題として訴訟は、なかなかやはり各人がみんな訴訟に訴えるということは容易でないことと、それと因果関係が証明できないような場合がありますね、大気汚染なんかの場合。そういうときにはなかなか訴訟といいましても、だれを相手に訴訟するかという問題もあって、実際に公害の被害を受けながら泣き寝入りをしなけりゃならぬ。特別措置法の救済はありますけれども、それは医療費の自己負担分でしょう。そういう点で、いろんな不満な点もあるにしても、これはやっぱり一つの大きな前進ではないかという考え方があるわけですよ。そういうことで、何にもいままでこういうものは、私も運輸大臣のときに自動車の損害賠償をやったことがあるのですが、全然性質が違いますからね、ほんとうの新たなる立法ですから、これは実施してみていろいろな改良を加えていかなければならぬ面があるということです。しかし、これができたからといって、もうその企業が公害に対して負担をしておるから公害防除に対しては少し手を抜いてもいいということは断じて許さない。ますますこれができてもその規制に対しては強化していくつもりです。そういうことで、そういう意味の御心配は起こらないような環境行政をやるということは、これはかたくお約束いたします。
#106
○小平芳平君 では、私はきょうの質問はこれまでにしまして、また通産大臣の出席を求めて残りの分はしたいと思います。
#107
○委員長(森中守義君) 小平君の質問は若干留保いたしまして、次回にお願いすることにいたします。
#108
○沢田政治君 公害健康被害補償法案について質問をするわけでありますが、全くの一年生でございます。したがって、質問ということになるかどうかわかりません。これは質かつ問いでありますが、問いのほうが多くなると思いますが、その点は理解しながら、御答弁をじょうずにしていただきたいと思います。
 三木環境庁長官が、この法案ができたことによって企業に対して一種の免罪符を与えるものであってはならぬと、こういうことを強調されておるわけであります。私もその意味においては、その言においておや全く同感であります。が、しかし、私はこの法案とても、長官も述べられておるように完全無欠ではない、非常に穴が多いということを指摘せざるを得ません。その内容はあとで申し上げることとして、ただ、私はこの法案を審議するにあたって、この法案もないよりはいいじゃないか、一歩前進じゃないかと、こう言っておられますが、私はその前に、この法案があること自体が不名誉だと思うのです。本来ならばこういう法案を必要としない社会、自然環境、生活環境であるのが最もあるべき姿の原点だと思っておるわけであります。
 これは余談になりますが、去年の総選挙の際に、公害問題が日本列島改造論と同じような位置において国民にたいへんな話題を提供したわけであります。その際に、これはある政党と申しておきますが、ある政党の方が、日本が公害だ公害だと言っているけれども、日本ほど公害の立法がたくさんある国はないじゃないか、救済法がある国はないじゃないか、これこそは日本の善政の最たるものであるというように、どういうように取り違えたか、むしろ公害立法があることを誇りにしておる方もおるわけですね。これは個人のサイドで言っておるわけでありまして、私はその責任を云々するわけではありませんが、私はこういう法案があること自体が、ここまで国の行政が国民の生活環境や自然環境を破壊してきたという恥ずべき現実の証左だと思うわけであります。そういう意味でありますから、本来ならばこの法案が一日も早く解消してしまう、なくしてしまうということこそが望ましいという前提に立っているわけでありますが、その点の認識はいかがでしょうか。
#109
○国務大臣(三木武夫君) 私もさように考えるものであります。やはり、こういうような公害病の患者救済に対するいろいろな立法を次々に必要とすることは、名誉なことではないと思っておるわけでございます。しかし、現実にはそういう必要もある。現実に必要があるという事実に政府が目をつぶるわけにはいかないだろう。そうなってきたら何らかの救済措置を講ずることもまた政治の任務である。こういうことでこの法案を御審議を願っておるわけでございます。
#110
○沢田政治君 それから三木大臣が午前中に、もちろんこの法案については数々の不備があるだろう、まあしかしながらとりあえずこれで出発したいんだと、しかも、この法案に対して反対陳情ということは私の聞く限りにおいてはないと思うと、私の聞き違いかどうかはわかりませんが、表現のあやは別として、そういうことを言っておるわけでありますが、私のところには、おそらく全部の議員の方に来ておると思いますが、これは何十団体ですか、大きい団体が連名で、この法案をもっと時間をかけて審議してほしいんだ、しかも公害に苦しむ者は、学者も公害というのはこういうものである、科学的なメカニズムはこうなるとかいって因果関係を究明するかもわからぬけれども、当面一番深刻に考えているのは、苦しんでおる公害患者であるんだ、であるから、公害患者がどういうように苦しんでおるのか、何を望んでおるのかということをまず把握すべきじゃないか、それすらの機会も与えずに、ないよりましだということで法案をつくられたのでは、これはたいへんなことになる。これは認定のやりようによっては、公害患者の中に大きな差別がつくことになる可能性もあるわけであります。こういうことを憂慮しておることが一つと、もう一つは、むしろこの法案があることによって、将来、この法案にたよっちゃおられぬと民事訴訟に踏み切った場合でも、この法案というものが一つの最高限度になって判定を下される可能性がありはしまいかという憂慮も、私どもに対する反対陳情の中に入っておるわけであります。
 でありますから、先ほど大臣が言われましたように、あまりいい法案じゃないけれども、これで出発したほうがいい、関係者はだれも反対したという覚えはないと、こう言っておられますが、私はこの内容を読みませんし団体も読みませんが、おそらく大臣のほうにもこれぐらいのことは入っていると思うのです。それをかえって意識しつつも、そういう事実はないと、法案を早く通したいということをおもんぱかって言っているのかどうかわかりませんがね。ほんとうに、もっと慎重を期してもらいたいという声が大臣の耳に入っておりませんか。また、この法案を起草する事務当局のほうもこういう事実を知りませんか。これは私のみによこしたのじゃないと思います。そのほかにもありますよ、いろいろな要望書とか陳情書が。どうですか。
#111
○国務大臣(三木武夫君) 先ほどの御質問にも答えたのですが、私に直接会って、こういう制度それ自体をつくることに対して反対の意見を述べられた方はないと思います。公聴会等にも反対の意見を述べられた方があるようでありますが、私が直接会った限りにおいてはそういう意見はなかった。現に四日市の公害病の患者の方々が来られて、これが制度化されるということを前提に立っていろいろな注文を承ったわけでございます。
 ことに、これは大気汚染防止法の一部改正が行なわれたときに、附帯決議じゃないんですね。法律の附則で、損害賠償保障制度というものをすみやかに制度化せいということを附則の中に入れてあるわけですから、これは国会全体の意思としてそれを受けまして、できるだけ「すみやかに」と書いてあるわけですから、それを制度化することが国会の御意思に沿うゆえんであるということで、この制度化を促進することがよろしいということで努力をしたわけなんです。
 私が申しておるのは、これは完全なものではない、初めての制度であるから、これを実施してみて、いろいろな不備な点は将来において補っていきたいと。しかし私は、これはたいしたものじゃないとは申しておるのでないんですよ。これはやはり相当な前進であるというふうに考えておるので、そんなにたいした法案でもないけれども出しておるというようなものではない。現在考えられる限りにおいて、これを現実に具体化する場合においては一番考え方としては最良の考え方でこの法案をまとめたということは、これは間違いのないことでございます。
#112
○沢田政治君 私、冒頭に申し上げましたように、この内容もこれは重要です。しかしながら、その内容以前に、どうしてこれに該当する人を出さぬかということも、私どものやはり任務であり行政の任務だと思います。そういう前提で、法案以外のことを聞くと思われるかもわかりませんけれども、この法案も重要でありますが、この法案が出てこざるを得ない背景というものもあわせて指摘しなければ、この法案を審議する意義は私ないと思います。
 そこで、先ほど小平委員も聞いておりましたが、休廃止鉱山、この点を質問したわけでありますが、私の記憶では、明治になる以前は鉱山の私企業というものはなかったと思います。これは盗掘したら別として、盗掘しない限りは、封建領主が、郷士が、いずれにしても権力が、地下資源というものを掌握しておったし支配しておったと思います。また、私のまだ短い経験でも、武家三百年の政治、またそれ以前もあるわけでありますが、それから明治維新になった際にも即これは民営にならなかったわけであります。官山と称して明治政府が、憲法下の政府がこれを経営しておった時代があるわけであります。それが引き継がれ引き継がれて今日の民営になったわけでありますが、権力側、特に封建的な権力は別としても、近代政治になった場合でも、やはり国というものも休廃止鉱山にはその歴史的な背景においてはある程度の接点があったことは、これはまぎれない歴史の事実だと思うわけであります。
 そういう意味で最近の私企業、初めから私企業のためにやった場合とちょっとこれは違うわけであります。そう言ったとしても、私はやはり公害の企業責任というものはこれは毫も動かすべきじゃないと思いますが、そういう歴史的な背景というものも加味しなければならぬと思います。なぜならば、公害源を一核も早く断ち切るという前提に私は立っておるわけであります。三分の二でまだ金があるとかないとか言っているうちに、公害はどんどんたれ流されてくるわけでありますから、そういう意味で休廃止鉱山の一つの戸籍といいますか、履歴といいますか、完全に民営であった、あるいはまた官山あるいは権力側にあってそのまま二百年三百年前に放棄された鉱山、それからまた国あるいは権力がこれを営業して、その後に民営にされた鉱山、こういうものの鉱山歴というものは一体洗ってみていますか、どうですか。
#113
○説明員(蓼沼美夫君) お答えいたします。
 先生御指摘の鉱山の問題でございますが、御承知のように非常に歴史的に古い、それから種類も多いということでございまして、おもな鉱山につきましては、大体、あるいは場合によっては数百年前から稼行している、あるいは徳川幕府時代に幕府が自身で稼行している、それから明治になってからそれが民営に移管されたというようなものは、データ的にとり得るものは相当でございますけれども、全鉱山につきまして、しかも掘り始めましてから数年あるいは十年ぐらいで実際に採掘もいたさずにやめてしまうようなものも非常に数多くございますので、おっしゃったような意味での戸籍分けは十分いたしておりません。
#114
○沢田政治君 いまの鉱区権設定の先願主義ということを、こういう公害の現状にかんがみ改むべきだと私は思います。といいますのは、これは公害と関係があるからです。だれでも日本国民たる者が日本国土に、たとえば何と何と何を何%含有したものを発見した、おれの鉱区にしたいと届けたならば先願主義でこれは完全に認めるわけですね。でありますから、投機的な対象にもなるし、無資力な者がそれをやって、転売、転売、最後はもうあとはわからなくなったという、今日のようなあと始末だけはだれかにやってくれ、その被害というものは国民に集中される、こういうことはいかぬと思います。でありますから、これはやはり厳重に未来永劫に自分が始末をしますというものでなければ私はいかぬと思います。こういう公害の現況にかんがみ、現在のような先願主義、こういうものを改めるべきだと思いますが、いかがですか。
#115
○政府委員(林信太郎君) ただいま先生御指摘の、鉱山の場合の私企業の性格が、歴史的に見まして一般の製造工事等とは違うという点は、確かに歴史的に事実でございます。私どもも鉱山行政を担当しておりますと、そういうことは多くの方方から伺っております。ただ現在、鉱業法あるいは鉱山保安法という条件のもとで一般民間企業としてやっておりますので、その責任のとらせ方につきまして、やはり法的な安定性、あるいは責任範囲も法的に確定しなければならぬというふうな現実処理の問題が起こってまいりますので、冒頭に御指摘のような特殊性を具体的に制度として入れることについて、非常にわれわれも苦悩しておる次第でございます。ただ、そういう考え方は、先般成立を見ました金属鉱業等鉱害対策特別措置法といったような特別な法律、あるいは石炭関係に見られますような特別立法等で国のそういった考え方が相当程度反映されておるのではないかというふうに考えております。
 それから、ただいまの先願主義の問題でございますが、先生の御指摘のような弊害も確かにあろうかと思っております。ただ、それではどういうやり方でやるかということになりますと、これはまた非常にむずかしい問題でございます。そこで、先願主義はとっておりますけれども、これは能力のない者がかってに無責任な稼行をして、あと始末を十分しないで逃げることのないように、具体的に探鉱あるいは採掘をやります際に施業案をとっております。これは事こまかに具体的な計画規模なりあるいはやり方なり、あるいは方法なり、あるいは施設の種類、そういうものをとっております。これが鉱山部及び鉱山保安監督局がそれぞれ両方府県の知事と協議をいたしまして、適確な施業案にしていくということで、いまの問題をまず事業計画の段階で押える。かつ、それと同時に鉱山保安規則によってそういうことのないように十分配慮をする。こういう形で先願主義から起きてまいります弊害を排除するような仕組みになっておるわけです。
#116
○沢田政治君 休廃止鉱山については一日でも二日でも私は質問したい内容がありますが、あなた、そういうことを言っていますが、施業案というのは、認可される際、こういうことで公害防止をしますよという操業しておるときの操業態様あるいは公害防止の手法とか、そういうものが盛られておるだけであって、鉱業権を放棄して五百年たったならばどうか、百年たったならばどうかというところまでは施業案は触れておらぬわけですよ。であるから、将来に禍根を残すということですよ。
 私はこれを議論しません。議論しませんが、公害防止事業団法ですか、これもあるようですが、ただ私はここで提言だけしておきます。
 国が経営して民営に移ったものについては何分の幾らと言わんで、国が責任があったのだから、これは国費をもって早急に鉱害復旧をすべきだと思うのです。その他の純然たる民営でやったものは、これは譲るわけにはまいりません。これはある企業が利潤追求のために鉱害源をつくったのだから、無資力は別としても、資力があったならばあくまでも企業負担にすべきだと思っています。これは私の提言として申し上げておきます。通産省はそれでけっこうです。
 そこで、農林省来ていますか――。農林省で、私何回も本会議でも指摘したことがあるし、予算委員会でも指摘したことがあるわけでありますが、公害は、疑わしきは使わず、使用させず、つくらずというのが一番賢明な方法なんです。これは鉄則だと思います。ところが、これは民間じゃないんですよ、公害といいますと何か民間が発生源になるようでありますが、これは政府自体、国自体もある場合は非常に疑わしい方法をとっていると思います。それは林野庁で、枯殺剤ですか、枯葉剤ですか、植物がある一定の年限まで生長するまで昔はかまで下刈りをしたわけですね、一緒に育つので日陰になるし、生長がおくれますので。これは下刈りと称しておるようでありますが、この労力とか経費を削減するために、合理化のために枯葉剤を使う。殺鼠剤を使う。しかも一ころはこの枯殺剤というのは、アメリカがベトナム侵略に使った、あの森林を枯れさすあれと同じような薬を使ったことがありますね。まさに公害を守るべき行政の一番の国が使ったことがあるんですよ。いまは薬は変わっていると思いますが、そういうような枯殺剤、殺鼠剤を使っておるかどうか。やめなさいということを私どもは主張したことがあるわけであります。青森県の北限のサルもどんどん減っていく。サルに生体的な反応を起こすのだから、人間にも回ってくることはこれは明らかであります。いかに合理化したいか人件費を節約したいかわかりませんが、人間の命が中心になって当委員会で議論しているのでしょう。でありますから、いま枯殺剤、枯葉剤、殺鼠剤、ああいうものはどういうことになっていますか。
#117
○説明員(辻良四郎君) いま林業関係で、先生からお話のありました除草剤あるいは野鼠を退治する殺鼠剤等につきまして、使用の現況を申し上げます。
 除草剤につきましては、主としてササ生い地でございますが、ネマガリザサ等のはえておるそのササ生い地に対しまして、塩素酸塩系の薬を使っております。この薬の使用にあたりましては、もちろん御指摘のありました生物に対する影響等も十分考慮いたしまして、そういうような害のないような方法をとって使用いたしております。また、あわせまして、自然環境保全等につきましても同じような留意をいたしておるわけでございます。
 一例を申し上げますると、たとえば水源地の上流であるとか、あるいは農地、牧場、人家に近いところ、そういうようなところではこういう薬は使っておらないわけでございます。また、現在使っておりますヘクタール当たりの原体量は七十ないし百キログラムでございまして、こういうような程度であるならば、すでに厚生省からも見解をいただいておりますが、そうした使用方法であれば保健衛生上一般国民に悪影響を及ぼすとは考えられない、こういう厚生省の見解等もいただいておるわけでございます。
 また殺鼠剤、ネズミに対する薬でございますが、これにつきましては、現在使っておりますのは燐化亜鉛三%を含む粒剤を使っております。これもこの原体の急性経口毒性は、ラットのLDで五〇というふうになっておりますが、われわれのほうでまいておりますのをヘクタール当たりで換算いたしますと、それが三〇ぐらいの程度でございますので、そういう毒性の生じない程度のものをまいておるわけでございます。
 いずれにいたしましても、そういう生物等に与える影響が極力ないように、また、かつ、いまのノネズミでございますと、特に今年は大量の発生が予測等で予想されておりますので、ノネズミの発生によりましてせっかく植栽した木がまた被害にあうということもどうしても防がなければならぬ、そういう意味で最小限度の、かつそういう影響を与えないような場所、方法等を考慮して慎重に散布しておるわけでございます。
#118
○沢田政治君 最後に厚生省に聞きたいわけでありますが、食品公害、これは農薬公害もそうでありますが、相当問題になってくると思いますね。
 いま農林省側の答弁では、厚生省でもこれだけならいいだろうと言っているから被害を与えない程度に使用していますなんていったって、厚生省は国民の命を保証するだけの科学的な能力はありませんよ。厚生省が言われた薬を飲んで、サリドマイド児とかいろいろな奇病が出てきているでしょう。そんなに無能力なところが保証したから使うなんてのは、これはとんでもない話だと思うのです。だから、政府としては科学的に完全に――「だいじょうぶだろう」ということじゃいかぬですよ、絶対にこれはだいじょうぶだと証明されるまでは使うなということですよ。自分で疑わしいものを使って、民間に使うなということは言えませんでしょう。
 しかもその証拠には、その山の向こうに耕地がない、そういう谷川からさえも魚の奇形魚が出てきている現実をどう見ますか。これはその薬のためだと私は証明できませんよ。そのためでないという証明も、現時点でできないでしょう。であるならば、少なくとも国の行政は、こういう疑わしいものは使うべきじゃないと思います。農林省でもそうでしょう。いままで農薬を、水銀とかいろいろな薬を使わして、バレイショも食われないということで一騒ぎして今度はそれを中止、ということはたくさんあるでしょう。だから、科学的に証明できない、臨床的に証明できないものは、厚生省がこう言ったからとかどうとかいうことで、人の命を厚生省は保証できませんよ、これはね、疑わしいものは使うべきじゃないと思います。
 でありますから、これは押し問答になるのでここではやめますが、いまどれだけの食品添加物、たとえば防腐剤、酒も、みそも、しょうゆも腐らぬのだから、これはたいへんなものです。しかも、肺ガンとたばこは因果関係があるということは、これはもう何というか、医学的に立証されているわけです。私はたばこも一つの公害だと思いますよ。ぼくもたばこを吸うからでかいことは言えませんが、これなんかも、いまのうちから専売局が対策を講じ、吸うな吸うなと。つくらなければ吸えませんからね、ちょっと苦しみますけれども。そこまで私はやかましくしなくちゃいかぬと思いますね。でありますから、別にきょうそれを聞くのが主たる目的じゃありませんが、どれだけの疑わしい食品添加物があって、将来どういうようにこれを規制していくのか、厚生省が見えられましたら一言御見解をお聞きしたいと思います。
#119
○説明員(小島康平君) 先生御指摘のように、数年前から食品公害ということばでいろいろな化学薬品が食品に使われております問題点につきまして、国会、当委員会におきましてもいろいろと御指摘をいただいているわけでございまして、厚生省といたしましては、この問題につきまして、昭和三十八年に、当時食品化学課という新しい課を設けまして、これを担当することになったわけでございまして、実は昭和三十九年から、先ほど御指摘のありました農薬の問題、それからその二年前、昭和三十七年から食品添加物の問題というようなものを、安全性という面からいろいろと検討をいたしまして、実は当時から比較いたしますと、添加物につきましても、世界的ないろいろな資料の集収あるいは国立衛生試験所におきます試験結果等を参考にいたしまして、約四十の食品添加物というものを整備いたしまして、現在では日本におきます食品添加物、たとえば色素などで申しましても世界的にも数の一番少ない国になっておるわけでございまして、そういった面では先生御指摘のように、厚生省といたしましては、学問的な立場から食品の安全という観点に立ちまして、ぜひともこういったものについては厳重な規制をいたしてまいりたいというふうに考えております。
 それで、実はそういった問題もございまして、昨年の八月に食品衛生法が改正になりました際に、衆参両院で超党派の御決議をいただきまして、食品添加物の安全性については常時点検を怠らないように、また、その使用というものは極力押えていくようにというようなことをおきめいただきましたので、私どももその線に沿って今後とも努力してまいりたいと考えております。
 具体的に申し上げますと、先ほど先生が、酒も、みそも、しょうゆも腐らないというお話ございましたが、たとえば日本酒につきましては、明治時代からサリチル酸という防腐剤を使っておったわけであります。これにつきましても、国税庁のほうと御協議をいたしまして、完全にサリチル酸の使用をやめるというところまでまいっておるのであります。現在の酒は、保存をきちんとしていただかないと腐る酒になったわけでございます。
 こういった面は、今後とも、私どもとしては食品の製造工場の衛生状態の向上、あるいは国民生活の中における食品の流通の変化、こういったものの進歩に合わせまして、できるだけ先生御指摘のように、そういったものを使わないで済む場合はできるだけ使わない、また使う場合にも、十分な安全性が確保されるということを考えまして、今後の行政を進めてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
#120
○沢田政治君 その点はあとに譲ります。
 それで、私考えるに、障害補償費一つをとっても、しょうがないから救ってやろうというような思想がどうしても流れているというような気がしてならぬわけですよ。これは私のひがみかどうかわかりませんが。といいますのは、全労働者の平均でしょう。これは全労働者の平均をとるか、規模五人以上とるか、十人以上とるか、三十人以上とるか、五十人以上とるかによって、その賃金の水準というものはずっと変わってくることは当然です。規模五十人以上ということになりますと、労働者も一つの集団をなしていますから、当然労働者の権利としていろいろ要求もするし、生活を守ろうということで賃金要求もするし、当然その差がついてくるわけです。全国平均ということになると、家内工業の一人で内職している人も入っておるわけで、これは水準が下がることは当然であります。なぜこれを全国の労働者平均にしたのか、これは私非常に疑わしいと思います。
 たとえば労働者であるならば、これは労働者の平均賃金、事故発生前三カ月の平均賃金が労災法のたてまえになっていますね。それはいい悪いは別としても、労働者の場合は、労働を提供しよう、どれだけの労働力を評価するかという一つの契約によってこれは成り立っているわけであります。でありますから、職業病にかかったとか、あるいはまた事故を起こして災害にあった場合には、もちろん労働者に責任がないにしても、ある程度の雇用関係という、自分もある程度そういう危険もあろうということを予見しながら契約を結んでいると思います。予見しない人もあるかもわかりませんが、その点は非常に違うわけですね。
 ところが、公害の場合は、そこにただ単に住んでいるというだけです。自分の意思というものは一%も入っていない。全く他の責任によって自分が不幸な立場にならざるを得ない。こういう場合において、なぜ全労働者平均というきわめて低位なものを持ってきておるかということです。したがって、この障害補償というものの意味が、性格というものが、一体何であるかということであります。生活保障を意味するのか、失われたものに対する金銭的な償いなのか。先ほど、この補償の手心によっては、慰謝料さえも入っているなんて拡大解釈するにおいておや。とんでもない話だと思います。
 私は率も論じますよ、率も論ずると同時に、なぜその基礎をこう低くとったのかということです。これは技術的に決してむずかしいことはありません。この前衆議院では、資料がなかったとかどうとか言っておりますが、とろうと思えば資料もとれるし、統計もできますよね。なぜこれを低く不当に評価したか。しかも労働者の場合には、若干手足にけがをしても、八時間の労働に見合う賃金で損失分を補償するという性格でしょう。ところが公害患者の場合には、二十四時間苦しまなくちゃならぬというこの一つの現実を、なぜ最低の基準をとるかということは、どう説明しようとも、私自身はこれは理解に苦しむわけであります。どういう要素で、技術的な要素か性格的な要素かどういう要素でこれを全国で一番低い、しかも内職の方々まで含めたような賃金の水準に持ってきたのか、この点について明確に答弁願いたいと囲うのです。
#121
○政府委員(城戸謙次君) 先ほどから御答弁申し上げておりますように、この制度の対象となります方々には、当然賃金労働者もあるわけでございます。しかし、そのほかに家庭の主婦だとか老齢者等、多種多様な方々がおられるわけでございますから、どうしてもこれを定型化を行なわなければならぬ、こういうぐあいになるわけでございます。その定型化を行ないます場合、当然男女別、年齢階層別の賃金ということが一番合理的でございますので、そういう形のものをとらなければなりませんが、その際に、私どもで考えられます統計としましては賃金構造基本統計調査だけがあるわけでございます。たとえば毎月勤労統計等になりますと、年齢階層別がないとかいろいろな問題点がございますので、賃金構造基本統計調査によって全国労働者の男女別、年齢階層別の賃金で補償していきたい。したがって、その万が主婦の場合でも、当然それに見合ったレベルの補償を受けられる、こうなるわけでございます。
 この全国労働者の平均賃金をとるということにつきましては、これは実は四日市の裁判で原告側の請求の中にそういうのがあるわけでございまして、裁判所におきましても、公害事件の特殊性から見て、それをとるということには十分なる理由がある、特にそういうことで定型化をしていくことが一番適当である、こういうことが判決の中に入っているわけでございますので、私どもはそういうことを考えているわけでございます。もちろん、この法律の条文の上ではその統計調査を使うということになっておりませんが、ともかく、そういうことで平均賃金を便って、その上において標準の月額をきめていきたい、こう思っているわけでございます。
#122
○沢田政治君 裁判がそういう例をとったから、その裁判にこれを合わせなくちゃならぬという理由はないと思います。裁判は一つの法律に基づいてこれは判断するのであって、いまこの法律がまさに新しくきめようという段階に、逆算して司法がこうやったから立法までこうだというのは、私はこれはさか立ちの議論だと思うのです。でありますから、公害というものをどう見るか、その補償というものをどういうふうにつくるべきかということは、私は政治の問題だと思います。裁判がこうであったから、この基準をここに求めたなんということとは、私は議論としては成り立たぬと思います。しかも、二十四時間苦痛である。ましてや本人に責任がない。イタイイタイ病のように非常に不治の病だ。しかも家族まで苦痛を感じる。しかもこれはもうお嫁にももらい手ないというほど、イタイイタイ病にかかったなんといったら、常識的に公害の実態がわからぬいなかの人なんかは、これは遺伝じゃないかなんて、こう考える人もあるわけですよ。そういうように、どの面から見ても悲惨なこれらのものを、雇用契約をしておる労働者よりもはるかに低い水準に置くというのは、私は、裁判の例をとってここにこれを求めたという理由にならぬと思いますよ。大臣どうですか。しようがないから救ってやろう、むずかしいから全国平均とってやろうと、こういうことぐらいしか私はもう言いようがないと思うんですね。理屈になりませんよ、いま言ったようなことは。
#123
○国務大臣(三木武夫君) 先ほども申しましたように、これは全然収入のない人も全国の平均賃金でカバーしていこうと、毎月働いて収入を得てない人もカバーしていこうというわけであります。また、児童に対しても補償をしようということであります。そういうので、機械的にただこういう制度をつくって、そうしてそれに対して補償すればいいというわけではなくして、制度化するわけでありますから、一つの型に入れなければならぬ。そういうので、いま言ったような収入のない人も、あるいはまた児童に対する補償費なども入れて、そういう逸失利益というような考えよりも一歩進めてこれを制度化していくのには、できるだけ範囲を広げたいという配慮もあったわけで、なるべくこれを低く押えようという配慮ばかりではないわけです。そういうことで、できるだけ合理的に入れられるようなものは補償費の中に入れようという配慮はいたしたわけでございます。
#124
○沢田政治君 私は、これは生計費すら認めない水準になっておると思うのです。というのは、衆議院で島本さんもこれは議論しておったようですが、たとえば米価を決定する際に、米価のいまの決定方式は、生産費所得補償方式ということで決定しておるわけであります。経費はどれだけかかるか、その所得をどう見るか、これは全国平均五人規模の労働者のあれを見ているわけですね。それが生計費に当たるかどうかは別として、それを生計費だと称するならば、それ以下であるから、当然生計費さえも見てないという論理になるわけですね。こういう矛盾があります。しかし、これはいい悪いを議論しておってもここでは決着はつきませんから、将来の課題として考えてほしいと思います。
 それから先ほども八〇%の例が引き合いに出されましたが、なるほど労災法は六〇%であります。ところが労災法の六〇%は、あれは最低ですよ。それ以上とって悪いということじゃありませんね。でありますから、ほとんどの労働組合と名のつくようなところは、八〇%以上みんな補償させているわけです。窯業とか鉱山とか石炭とか、こういうところにじん肺患者という職業病患者が、これも一生なおらぬという病気のようですが、あるわけでありますが、それなんかはほとんど大手のほうは一〇〇%ですね。死ぬまで補償をとっているわけです。それから見まするならば、この八〇%というものも、労災法と他の社会保険の中間をとったということになっているわけでありますが、これも将来検討すべきことじゃないですか。現状の八〇%がいいかどうか。これでよしとされたならば、私はたいへんだと思いますよ。どうですか、この点について。
#125
○政府委員(城戸謙次君) この問題につきましては、いずれにしましても、この法律が成立しました暁におきまして、「中央公害対策審議会の意見をきいて定める。」と、うなっているわけでございまして、この制度をつくる前に中公審から答申がありましたところではそういうことになっているということを、私どもとして先ほど来御説明申し上げておるわけでございまして、今後さらに検討はいたしたいと思っております。
#126
○沢田政治君 この法律でいう障害補償というのは、これはどういうものに当たるのですか。どういうものといいますと、労働者災害補償保険法の場合は、大体分けてみて、休業補償、そうして障害補償がありますね、療養補償、遺族補償、こういうようにあるわけでありますが、休業補償は、当然、けがをして働けなくなった場合にはその賃金の相当分を補償するのだから、これはわかります。片一方においては休業中は休業しながら、病気をなおすためにかかるので、賃金補償ですね。労災法にいう障害補償は、病状がなおるか固着した、そしてなおかつ障害が起こった場合は十四等級に分けてこれを補償するという制度が、この障害補償なわけであります。でありますから、この法律でいう障害補償というのは、つまり労災法にいう休業補償と障害補償を含めたような性格のものですか。この性格づけ、ちょっと私にはわからぬわけであります。
#127
○政府委員(城戸謙次君) これは労災法のほうでいきましたら、先生いま御指摘のように、休業補償ないし障害補償の給付に相当するわけでございます。障害補償給付は、負傷ないし疾病が治癒したときに身体に障害が残った場合に給付されますし、その以前が休業補償でいくわけでございますから、それぞれに相当する、こう思っていただいてけっこうだと思います。
  〔委員長退席、理事金井元彦君着席〕
#128
○沢田政治君 合わせたものですね。そうしますと、先ほど申し上げましたように、労災法の障害補償の場合は十四等級に分けていますね。これはいい悪いは別として、きわめてこまかいのです。したがって、この基準査定によってあまりトラブルは起きません。全然起こらぬとは思いませんが、もう明白に医学的に、指一本、関第一つまで等級で分けていますので、一〇〇%満足かどうかわかりませんが、この種のトラブルはないと思います。
 ところが、今度のこの障害補償の振り分けといいますか、基準というものをどういうように設けますか。ここでは、疾病による障害の程度が一定の状態にあるものに対して、その障害程度に応じて支給するものとしというのは、おそらく中央公害対策委員会かなんかで議論するか、政令できまるかと思いますが、私は、こういう内容をはっきりしないで、ここで認めてくれと言われても、不安を感ぜざるを得ないんですよ。特にこの法律ほど政令政令という法律はないんです。言うなれば、政府一任法案であると言っても私は言い過ぎじゃないと思います。すべてのこまかい詰めは全部政令になっているわけですね。一体、労災法の十四等級におけるものと同じように、どういう段階に分けて、どういう症度に応じて、合併症、兼発症、こういうものはどういうようにするつもりですか。これが明確でなければ、私が冒頭に申し上げたように、またこの反対の陳情の中にあるように、患者内において大きな差別をつくるというような禍根を残すから私は聞いておるわけです。いま知っておる範囲内、考えられる範囲内において、どういうような分け方をどういう基準によってやるか、ここである程度明確にしてもらわなければこれは審議のしようがないと思います。
#129
○政府委員(橋本道夫君) いま御質問のございました障害補償の等級の問題でございますが、一番先例のないものは、実は大気関係の患者について先例がないということがむずかしゅうございまして、そこで私どもは、四日市の裁判の判決におきまして等級を、全然障害のないものと三〇%ロス、五〇%ロス、一〇〇%ロスというものを分けて患者の等級というのをきめております。そういうことで、そこにございました佐川鑑定書の考え方というものを基調にして検討いたしたい、こういうぐあいに考えております。
 今年度、調査研究費をもちまして、いまスタートをし始めているところでございますが、一つは佐川鑑定書でやられましたように、症状のいろいろのグレーディングを設けるということでございます。いろいろ出血があるとか、呼吸困難とか、症状のグレーディング、第二番目が機能テストということでございまして、これは佐川鑑定書におきましても、肺機能検査でグレードをつけております。この点につきましては、従来じん肺法等にも先例があるわけでございますが、そのような肺機能検査の客観的指標ということでございます。それからもう一つの問題といたしましては、実際どの程度に日常生活やあるいは働くことに困難があるのかという点についての問題がございます。これはあくまでも等級をきめるための調査としまして今年やろうといたしておりますが、この最後の状態につきましては、公衆衛生の関係の方が、患者さん御自身あるいは家族、あるいは職場というところでいろいろお話を聞いて、この症状区分と、それから機能と、それから日常生活、あるいは働くことの困難な状態、この三つをもちまして等級を分けたい。その分ける考え方は、現在のところ一応、四日市の判決にありましたようなその等級の分け方というものを参考として、今年度の調査を基礎として最終的にきめたい、このように考えておるわけでございます。
#130
○沢田政治君 合併症とか兼発症とか、こういう場合はどうなりますか。たとえば、じん肺法では管理一、管理一の二ですか、二、三、四までありますね。それで管理四のものは、純然たるじん肺の場合のみ補償の対象になりますね。休業の対象になりますね。しかし、管理一の一は、これは全然どうでもないというものだから、これはしようがありませんですね。痕跡があっても、心肺機能とかそういうものに関係がないのは管理一の二だったと思いますが、その管理一の二以上が合併症の場合には補償対象になるわけです。でありますから、これは相当高齢な方も、ぜんそくなんかにかかって老弱とぜんそくと重なるわけですから、これは医学的に何%が何の影響だかわかりませんが、こういう合併症の場合、しかもこれは公害患者で健康を害しているという者は当然適用の対象になるべきだ、私は無条件でなるべきだと思いますが、そういう場合まで詰めていますか。
#131
○政府委員(橋本道夫君) いま御指摘の問題でございますが、合併症と一般に言われているものの中に二つございまして、一つは続発症というものと、一つは併存症でございます。
 本制度におきましては、この続発症というものは当然に指定疾病と因果関係を持ちながら発生しているものであるということでございまして、続発性そのものを特に差別をするということはございません。しかし、併存症といいますものは、何ら汚染との因果関係の関連なしに起こっているということでございますので、この併存症の部分をこの制度において補償として見るということは、基本原則として入れないということでございます。具体的な問題としてどういう程度にその割合が分けられるかという議論がございますが、その点につきましては、他原因の参酌規定というものが本法にございまして、それが明らかにこの原因と分けられる場合には、その貢献度においてグレードをきめるというぐあいに考えております。
 いま先生からじん肺のケースがございましたが、私どもは、じん肺と大気汚染との関係、関係はいろいろあるかと思いますが、現在の段階におきましては、じん肺の場合と相当重さの程度が違うということを考えております。むしろ職業病の場合のほうが重いのではないかということを考えておりまして、この場合には、公害患者の評価について、裁判で行なわれたものが私どもとしても一つのよりどころとして考えるべきではないかということでございますが、検討いたしますときの専門家の中には、当然労働衛生の人も入ってまいりますので、ことしの調査の結果を踏まえて、じん肺の上での経験も出るであろうかと思われますが、公害問題の特性を踏まえて症状区分をつけたい、それによるいろいろ管理をどうするかという問題も、むしろ指導の問題としてこれを扱いたい、そういうぐあいに考えております。
#132
○沢田政治君 認定委員会といいますか、審査会というのか何かありますね。これには医者ですね、医学的な専門の知識を有する者、法律的な知識を有する者となっておりますが、なぜこれに公害患者の代表を入れなかったかということです。大体利害が相対立するものは三者構成が常識です。たとえば中央労働基準審議会の委員も三者構成になっているのでしょう。でありますから、この場合公害の代表、一番苦痛を感ずるのは、損をしておるのは、医者でもなければ法律家でもない、当該公害患者なんですね。これを入れなかった理由は、公害病にはかかっているんだけれども、公害のメカニズムなんかおまえらにわかるかというような、何か疎外したような感じだと思うんですよ。一番苦痛とか病状等を知っているのは、ぼくは患者だと思うんですね、これをなぜ入れなかったのか、これはどういうわけですか。
#133
○政府委員(城戸謙次君) 先生おっしゃっている審査会あるいは委員会というものは、二つあると思います。一つは公害健康被害認定審査会、これは四十五条の規定にございます。これの関係。もう一つは、今度中央公害対策審議会の委員を改めまして、十名ふやしてこの関係の仕事をやっていただく委員を新たに委嘱するようになりますが、その関係で二つあろうかと思います。
 私どもは、まず第一点の認定審査会のほうは、先ほどからお話ししていますように、現在の特別措置法に比べますと、非常に専門技術的な面から御審議いただく問題がふえているわけでございまして、したがって、そういう専門家を入れまして十五名ということを考えているわけでございまして、その際もっと大きな審査会ということも考えられますけれども、やはりいろんな運営の規模からいきまして十五名程度が限度だということで、十五名ということにいたしております。この点は、たとえば水俣の審査会等につきましても、いかにして今後能率的に熊本県で審査を進めるかということでいろいろ相談しましたが、やはり審査会の規模としましては、これをふやすということで対処するということはうまくいかないということでございますので、十五名と押えまして、その中にできるだけさっきお話ししましたような医者あるいは法律の専門家、補償問題につきましての専門家、補償といいますか、障害の程度の判定等の専門家を入れましてやっていきたい、こう思っておるわけでございます。これはそういう専門的な人の審査会でございますから、私ども、この中にそういう患者を入れるという議論は直接出てこないのじゃないかという考えを持っております。
 他方、中央公害対策審議会のほうのメンバーでございますが、これにつきましては衆議院でも御質問ございまして、患者そのものを入れるということになりますと、いろいろとまたあれがございますから、患者の立場も理解できる方を入れるということで、大臣から御答弁申し上げているところでございます。
#134
○沢田政治君 公害の場合は、補償もやっぱり発生源というものにさかのぼらざるを得ないと思いますね。先ほど小平委員から光化学スモッグの問題も出ましたが、窒素酸化物を研究して将来考えたいということですが、いずれにしても光化学スモッグの大きなウエートを占めている原因は自動車にあることは、これは事実であるわけです。そういうことでありますから、負担をする場合、これはどこが原因か、自動車を使った人間に原因があるのか、つくったほうに原因があるのか。石油から出ているから石油までさかのぼらなければならぬわけですね。私はこの場合の発生源というのは、自動車と石油両方にあると思います。そうでしょう。使った者に責任があるということになったら、スモン病とかサリドマイド児なんか、これは飲んだ人に責任があることになるでしょう、つくった人に責任がないということになると。やはりそういう公害源を使用させたり、またそれを使用させるようにしむけたところに一番のさかのぼった原因があると私は思うわけです。
 そういうことだから、なぜ原燃料の賦課金方式をとらなかったかということです。というのは、いまの道路法によって道路財源のほとんどを自動車から重量税というかっこう、ガソリン税というかっこうで取っているでしょう。自動車のために道路をつくるから取るかどうか別としても、いずれにしても石油というものが中心になって、それぞれの媒介体によって公害になるのだから、石油がその罪を免れることは私はできないと思います。自動車をつくると公害の拡大再生産になる。そのほうには金を使うけれども、そのための被害者にはそういう税金を使わないということは、論理としてこれは矛盾していると思うのです。でありますから、原燃料の賦課方式をとらなかったことはどういう理由なのか。将来これを検討する必要があると思います。ここで未来永劫に取らないということではないと思いますが、これは税法上もいろいろむずかしい問題もありますね。ガソリンの場合非常に税金が重いので、その中から一部、いまの道路に使っているものから一部取るのかどうか別として、これにもやはり応分の費用負担をさせて、因果関係からいっても当然だと思いますが、その点は三木大臣どうですか。私の質問はこれで終わるわけですが。
#135
○国務大臣(三木武夫君) これは新しい立法事項にゆだねたわけですが、正直に申してこれは結論が出なかったのです。いろいろな問題があったわけです。それは石油に対しての税制が非常に錯綜しておりまして、この予算編成期に整理をしたい、そういうものとにらみ合わせて、この法案に関連をする財源も考えたいということで法律にゆだねたのですが、いま沢田委員の言われたことも非常に傾聴に値する問題を含んでおると思いますが、予算編成を通じて、この問題はみなの納得のいくような形で解決をしたいと思っております。
#136
○高山恒雄君 大臣にお聞きしたいと思いますが、この公害健康被害の補償法案ですが、先ほど各委員の方から御質問がございましたが、非常に今日の日本の現状から考えてみて、生命にかかわる公害の問題ですからこれは重要なことは言うまでもございません。その重要な法案が、延長国会の六月十九日ですか、これが提出されたということについてはわれわれも不服を持っております。それと同時に、この法案の内容を検討させてもらいますと、大体衆議院で八十日かかっております。公害特別委員会には法案は何もなかったのです。衆議院で八十日もかからなくてはならないほど重要な法案だと私も思うのです。したがって大臣もおっしゃったように、附帯決議も二十一ですか、相当ついております。私は法律で、この政令で定めるという五十四という異例なものが今後の問題に付せられておるという点については、納得いかないですね。
 だから、われわれが質問しますのについて、みんな同じような質問をいたしますけれども、だれが考えてみても、この法案を見て不安を感じざるを得ないのですよ。政府を信頼しないことはありませんよ、信頼はしますが、しかし五十四という政令で定めようとされる問題は、一体何を基準にして、どういう結果で、しかも患者が納得いくような法案をつくろうとしておられるのかどうかという、ワクをおつくりになっただけですよ。こういう立場からいって、いま参議院にきても、あと余すところわずか審議日数というのは八日かそこらしかありません。その中に二日の休日がございます。これでこの問題を上げようなんというようなことは、これはもうおそらくどの先生方もお伺いになっているかもしらぬけれども、まさにこの重要な法案をあまりにも軽視しておるのじゃないかと、私は自分で検討しながらそういうことを感じたわけです。
 しかも、この五十四という政令を定めようとされる基本的な考え方ですね、たとえて申しますならば、いままでの先生もある程度の指摘をされました点がある、私も指摘を申し上げますが、そういう指摘した問題をほんとうに真剣に取り組んで是正される意思があるのか、ないのか。それがなければ私は審議する価値ないと見ておるんですよ、この問題は。どうしてもこれはこの審議過程における発言を尊重して織り込んでいくというその姿勢がない限り、この法案の審議をやってもあまり効果がないと、こういうことすら私は考えるわけですが、大臣どうですか。衆議院で八十日もかかり、参議院のわずかな日数でいまこの法案を審議しようといたしておるのでありますが、姿勢をひとつまずお聞かせ願いたいと思います。
#137
○国務大臣(三木武夫君) 衆議院の場合は、その日数が全部この法案の審議にあてられたわけではありませんが、しかし、いろいろと問題を指摘されたことは事実でございます。それが附帯決議として、二十一の附帯決議と相なったわけでございます。また、附帯決議ばかりではなしに、委員会の審議を通じて、いろいろ政令にゆだねられておる事項について委員会の意向というものを承ったわけでございます。参議院における御審議等も、いろいろとこの法案に対しての御批判なり御要望なりを承ることになると思いますが、そういうものを体して、そして政令をきめるような場合には、できるだけ附帯決議並びに委員会の審議を踏まえて政令をきめたいと考えておる次第でございます。
#138
○高山恒雄君 大臣、衆議院も参議院も、公害特別委員会というのは法案はこれ初めてです。ほかにあったとおっしゃるけれども、法案ないんですよ。何にもないんですよ。これだけですよ。だから私は、提案されて以後、衆議院でどうして八十日かかったかというなら、私は政府の促進が足らなかったのじゃないか、これを申し上げたいです。ほかに法律があれば、これは大臣のおっしゃることも私はよく理解ができます。けれども、公害特別委員会というのは、法案が出たのはこれが初めてなんです。それで八十日かかっておるわけですね。だから、そういう点では十分なる審議の促進もなされなかったのではないかと、こう考えておるんですよ。といって、また先ほど私が申しましたように、全く細部にわたる点は政府を信頼してオーケーする以外ないというような法案のために、微に入り細にわたり質問が出たのかと私は考えておりますが、その点では私は大臣の弁解は了とはできません。これは一つしか法律がないのですから、もっとすなおな気持で弁解願いたいと思うのです。この問題追及はいたしませんが。
 そこで私も細部に入りたいと思うのですが、時間が限られておりますから……。この法案が通過しました結果は、御承知のように第二条ですか、参照条文の中にありますように、「政令で定める市」と書いてありますが、「横浜市、川崎市、新潟市、富士市、名古屋市、四日市市、大阪市、豊中市、尼崎市、及び北九州市」と、こういうふうに指定がございます。こういう指定がその地域だという一つの線が引いてあるわけです。そこで大気汚染になるものは、あるいはまた水質にしても、御承知のように川で魚が死んだとかいうことはもうたびたびありますね。したがって、大気汚染でも水質の永濁の指定でも、実際問題として環境庁としては、事前にある程度の調査をして、線を引き直そうとする意志があるのかないのか。ある程度認定患者が出なければそれを変更しないという考え方なのかどうか。もし患者が出てからこの法律だけを適用する、補償のみに適用するということであるならば、これはこの法律をつくってもだめです。そういう点をひとつお聞かせ願いたいと思うのです。
#139
○政府委員(城戸謙次君) ただいまの点でございますが、これも一種地域の場合と二種地域の場合と若干違うかと思いますが、いずれにしましても、前提としましては疾病と環境汚染との因果関係が明らかになるということが必要になるわけでございます。
 特に第一種地域におきましては、非特異的な疾患ということでございまして、私どもはこれを個別的に因果関係を立証するということは非常に困難でございますから、指定地域、指定疾病、それから曝露要件と、この三つを前提として、これを満たした場合に因果関係があるということに取りきめをして給付したいと、こう考えておるわけでございます。したがいまして、患者が多発していない状態におきまして地域を指定するということは、これはそういう制度の取り組みとして不可能ではないかと思っております。
  〔理事金井元彦君退席、委員長着席〕
 それから第二種の場合におきましても、当然疫学的な調査によりまして、公害病の発生ということを通常把握してまいる手順になるわけでございまして、私どもとしては特に第二種については、十分なる今後の公害発生の防止をすることによりまして対処するほかないと考えておりますが、もし問題がありますれば、できるだけすみやかに環境調査、必要に応じまして健康調査をしました上で、地域指定をできるだけすみやかにしていく、こういうことにつとめる以外にないのじゃないか。
 したがって、先生御指摘の点につきましては、総括的に申し上げますと、お気持としましてはよくわかりますが、やはり地域の指定ということは、一定の疾病の多発ということを前提としなければ技術的にはできないと、かようなことになろうかと思うわけでございます。
#140
○高山恒雄君 したがって、この条文のとおりだと私は思うのですが、病気が発生しなければ、たとえば水質に規定以上の公害が出ても線引きの該当にはならぬのだと、こういう指摘をされておるわけです。病人が出てから初めてそれを委員会にかけて検討して、そうして線引きを変えていくのだと、こういうことのいま答弁をされているわけですが、そこで一番問題になりますのは、いわゆる普通の、現在線引きがしてあるその地域の外で、たとえば大気汚染等は、一カ月のうち二十日間は東南の風が吹いておる。それは線引き以外だと。そこから認定患者が出た。これは普通の地域の医師にみてもらったところが、認定患者だと、これはもう公害のためにそれだけの病人が出たのだということになった場合、それはもう線引きを変える以外にないと思うのです。そういう場合に、これは該当しないわけでしょう。だから、やはり事前に検討をするということはどこかに道が開けていなければ、何の防止にもならぬのじゃないかという私は見解を持つわけです。
 そういう点は、それはもう病人が出て、普通の医師から公害病だと認定されて、その認定された患者をもう一ぺん中央の審議会の医者に見てもらって、そこで確かに認定間違いありませんと、こういうことにならなければその地域の選定をしないということになれば、これこそまさに複雑だと私は思うんですが、その点はどうですか。
#141
○政府委員(城戸謙次君) ただいまの点でございますが、特に第一種地域にかかわる疾病についての御指摘でございますので申し上げますが、第一種地域にかかわる疾病につきましては、これは非特異的疾患ということでございますから、全然公害がないところでもあるわけでございます。したがって、これをこの制度の対象としてとらえるには、その疾病が通常の地域よりも相当多発をしているところをとらえまして地域を指定し、この制度を適用していこうと、こういう考え方でございますから、私どもとしまして、そういう多発しているというレベルに該当するところをすみやかに把握して、指定地域にして給付をしていくということにはつとめなければならぬと思いますが、通常のところよりも少しでも高い地域ということはこれは困難だということ、それからまた通常の地域で生じている患者と、疾病が多発している、公害の影響がある場合に発生する患者と、これを見分ける方法があるかと申しますと、同じ慢性気管支炎につきまして、あるいはぜんそくにつきまして、これを見分けるということはできないということが医学の研究グループの報告でございますので、私どもとしましては、やはりそういう方法でその多発のレベルで考えていく、あるいはその前提となる汚染のレベルで考えていく。そのどういうところを指定するかということにつきましては、今後専門的な方々に御検討いただいた上で一定の基準をきめて指定を次々にしていきたい、こう考えておるわけでございます。
#142
○高山恒雄君 先ほど合併症に関する点は沢田さんから御質問がありましたからやめますが、騒音の公害を入れなかったということはどういうことですか。特に、ノイローゼ的な病人が発生していることはもう皆さんも御承知のとおり。せめてこれを入れるべきだと私は思いますが、なぜ入れなかったのですかね。
#143
○政府委員(橋本道夫君) 騒音の問題につきましては、健康な生活が阻害されている、あるいは健康被害にあたるのではないかということにつきましては、確かにそのような理解が一般的であろうかと思います。ただ、この補償法案におきましては、健康被害を対象として、その疾病というもので区別のできる人の損害を補償するという形になっておりまして、現在この騒音の場合に、どのような疾病が騒音のために起こっているのかというのは実は非常にむずかしいことで、この点につきましては、いま大気局のほうでもいろいろ騒音の影響調査をしているわけでございますが、国際的にもなかなか、職業病としてはございますけれども、一般環境の中で騒音の影響によってこのような病気が生じたということにつきましては、まだ固まった考えはないということでございますので、この対象からはずしております。
 ただ騒音の問題につきましては、航空機騒音の場合には航空機騒音防止法という中で、生活妨害につきましての補償規定があるという問題がございます。しかし発生源は、航空機につきましても新幹線につきましても、きわめて明白なものが構にあるということでございますので、非常にはなはだしい騒音問題といいますと、これは当然に航空機とか新幹線とかということが出てまいりますから、航空機騒音防止法の中における損失補償のような形でこれを処理すべきではないか。本法案におきましては、大気汚染防止法と水質汚濁防止法におきまして、それにかかわる健康被害についての無過失責任が規定されましたので、その二つにかかわるところの健康被害としての疾病を対象として取り上げたというのが実情でございます。
#144
○高山恒雄君 それは現実を把握しておられないかもしれませんが、九〇ホンから九五ホンというような騒音でノイローゼになっている人はたくさんおりますよ。私はそのテープレコーダーまでもらっているんですがね、実際問題として。このためにノイローゼぎみになって、他の病気を併発したというような患者がありますよ。当然私はこれを入れるべきだと考えておりますが、今後検討するということですから、その点については追及はいたしません。
 それから光化学スモッグによる影響は、発育時期の幼児、いわゆる児童等における将来の問題も考えてみますと重大な問題だと思うのです。そういう問題をどういうふうにお考えになっておるのか、それも明記してありません。したがって、この法律から見る光化学スモッグに対する考え方をどういうふうにお考えになっておるか。これはもう大気汚染には間違いないのですから、その点はどうなのか、ひとつお聞きしたいと思います。
#145
○政府委員(橋本道夫君) 光化学スモッグの問題につきましては、現在光化学スモッグとして測定をされておるオキシダントの高いときに、非常に激しい反応を起こして倒れる子供たちがいるということは、これはもう明らかな事実でございます。
  〔委員長退席、理事金井元彦君着席〕
その問題がどの程度光化学スモッグに関係しているのかという点につきましては、大気局のほうが影響調査をしておられますが、私どもはそのような起こっているという事実に着目して、どういうぐあいに本制度の中に将来取り込むことができるだろうかという検討をいたしたいという考えでございまして、この問題はSOと違いまして、窒素酸化物の関係が非常に入ってまいります。拡散の範囲等にも相違がございますので、先ほどお答えいたしましたように、ここ一、二年のうちに窒素酸化物の汚染と影響と、現在まで起こっておりますところの光化学スモッグによる被害児童の、この補償法というような観点から見た場合の問題というようなものを鋭意詰めまして、積極的に検討いたしたいというふうに考えております。
#146
○高山恒雄君 それからもう一つお聞きいたしますが、この被害補償の問題では多くの先生方が御質問なされましたから、私は同じ補償でも別の面から御質問申し上げてみたいと思いますが、たとえば川崎市は公害地域として指定されております。線引きにしてあります。そこには居住はしておりませんけれども、工場はその線引きの中で働いておる。そうして、もしその人が公害病ということであっても労災を適用するのか、健康保険を適用するのか、この点はどうなのか。公害に認定されてもそれで措置するのか、しないのか。その点の考え方をお聞きしたいと思います。
#147
○政府委員(城戸謙次君) 指定地域内の工場で働いております労働者が、所定の曝露期間、この場合には通勤の期間になるわけでございますが、これを満たしまして、指定疾病にかかって認定申請してきた、こういう場合におきましては、当然本法の対象となるわけでございます。ただ本法では、一般的にこの制度の補償給付の要件と他の制度の給付の支給を受けるに同一の事由について該当する場合があり得るということを考慮しまして、第十四条におきまして、政令で法令を指定しまして二重給付の調整を行ない、最終的には本制度から費用を負担する、こういう仕組みを考えているわけでございます。
 いま御指摘のような場合、地域汚染の影響によりまして健康被害が生じたということである場合にも、労災保険のほうで対象になるかどうか。これはむしろ労災保険制度上の認定の問題でございますが、これが対象になると考えました場合に、これをいま申し上げました十四条の政令で定める法令の中に入れて、労災保険法を入れるかどうかということにつきましては、今後さらに労働省のほうと十分話し合いをしてまいりたいと思っております。指定されますれば、いま申し上げましたように、当然にこちらのほうの給付が優先しまして、全部の費用はこちらの制度の負担になる、こうなるわけでございます。
  〔理事金井元彦君退席、理事杉原一雄君着席〕
#148
○高山恒雄君 私は労災に入れろということを主張するわけじゃないんです。いずれに認定をするのかということをお聞きしたいのです。
 これは労働省関係、来ていますか――。かりに現在指定地域とされておる地域で、私が申しましたように居住所は指定地域ではない、働くところは少なくとも指定地域であるという場合、私は今日までの事態から考えてみると、これはやっぱり労災で適用しておるのではないかということを考えるわけですが、この点ではそういう実績があるのかないのか、お聞きしたいと思います。
#149
○説明員(石井甲二君) 労災保険の場合におきましては、御承知のように個別企業の使用者責任を背景とした制度でございます。したがいまして、その業務に起因した、いわば相当因果関係のある疾病を業務上とするというのが労災保険の基本的な原則でございます。したがいまして公害の、いま先生が御指摘になりましたような事案につきましても、それがたとえば公害という指定があって、それが労災の場合どうなるかという御質問でだと思いますけれども、それが具体的に業務に起因した状態において発生したものである場合には当然労災の適用になる、こういうことでございます。そのあとでの調整は、ただいま環境庁のほうから申し上げたとおりでございます。
#150
○高山恒雄君 業務上関係のあるものについては、あなたのおっしゃるように労災を適用しておるわけですよ。したがって、私はいままでは全部労災で処理しておるのではないかという心配をしておるわけです。いわゆる職業病と称するもの、そういう考え方であるならば、労災の今日の六〇%の補償というようなことは、これは決して日本全体の労働組合にしても承認しておるわけじゃありませんので、これは一〇〇にせよという強い要望も今日出ております。先ほど八〇という意見も出ておりましたが、そのとおりでありまして、そこで私はこの点はもっとはっきりしておくべきだと思うのです。そういう大気汚染の地域にある工場は、工場から出るじんあい、あるいはまた大気の汚染、この両方の公害を受けて、そうして医者の認定は公害病あるいは職業病といいますか、そういう認定が出るだろうと思うのです。そういう場合は少なくとも公害病の一つとして取り扱うべきだ、そうしなければいかぬと私は思うのです。そうしなければ、ただ居住だけを中心にして、そうして公害病でない、これは労災的なものであるという、その認定のしかたは誤りではないか、こういう見解を持つわけですが、これはひとつ大臣、どうお考えになっていますか、お聞きしたいと思います。
#151
○国務大臣(三木武夫君) これはやはり指定地域で働いておって、よその地域から通勤しておっても、この法案の適用は当然に受けるのがいいという考え方でございます。
#152
○高山恒雄君 この補償の問題ですがね、大方の先生から御質問が出ましたから、私はもうあえてする必要はないと思いますけれども、私の見解をひとつ述べてみたいと思うのです。先ほど八〇ではどうか、その基準なるものは全国男女賃金の平均を基礎にして、それから算出して基準をつくっていこう、標準を出そう、こういうお考えのようでありますが、
  〔理事杉原一雄君退席、理事金井元彦君着席〕
この労災にしてもあるいは健康保険にしましても、実際問題として組合健康保険は八〇%の補償をしておるわけです。それは障害手当、そのほかに付加給付を二〇%。八〇%の給付はしておるわけですよ。先ほどこれも沢田委員が申しましたように、公害はみずからの不注意でも何でもないわけですね。実際の国の政策であり、かつまた企業から出る公害のために、大気の汚染であり水質の汚染として出てくるわけです。そういう公害を外から受けた者が一〇〇%の補償を受けないということは、これはおかしいと思うのです。先ほど申しますように、健康保険ですら、みずから自分の不注意で病気した人もありましょう、けれども八〇%の補償をしておるわけですよ。公害というものは私は一〇〇%の補償をする価値のあるものであり、またすべきだと、こういうふうに考えるわけですが、この点についてはどうお考えになっておるか、考え方をお聞きしたいと思います。
#153
○政府委員(城戸謙次君) これは先ほど来お答えしていますとおりでございまして、私どもとしましては、各社会保険等諸制度の定型的な給付の水準を踏まえまして、しかも公害の特質ということを十分考えた上で検討してまいったわけでございますが、現在のところ、この法律をつくります段階での中央公害対策審議会からの答申の中におきましては、社会保険諸制度から全労働者の平均賃金との中間的なレベルの給付額が適当だという御意見をいただいておるわけでございまして、したがってそういうような御答弁申し上げているわけでございまして、さらにこの法律が通りました上で、中公審に正式に意見を聞いてきめることになるわけでございます。
  〔理事金井元彦君退席、理事杉原一雄君着席〕
#154
○高山恒雄君 いや、先ほどの答弁と何も変わらぬですがね。私が申しましたように、健康保険ですら八〇%の補償をしておるという現実に立ち、片やいまの労災保険は六〇%ですけれども、これは低くて問題になりません。これはもう遠からず私は八〇なり八五になると思いますが、いま強く組合員もそういう要求をいたしておりますから。したがって、こういう問題は全国の平均の補償でなくて、その地域における平均とかいうようなとり方をして、やっぱり生活の一つの基準になるわけですからね、たとえば九州地域の一部と東京地域における公害の患者の生活程度は、ある程度変わるわけですよ。そういうものを全国の男女の平均をとって、その中でまた何十%という規制をするということは、これはほんとうの公害の補償にならないですよ。その地域におけるところの労働者の賃金なりを標準にして、そうして補償をしていく。これは一〇〇%補償するのだ、こういうことにすべきだと私は思うのです。
 したがって、どの先生も心配しておられるように、全国平均というのは安くなることはさまっております。だれが考えてみても。その中の八〇%なんという構想を描いておられるということになれば、これは全くこの反対意見がありますように、公害のたれ流しをしておる人の擁護のためにこの法律はつくったのじゃないかという指摘をされてもやむを得ないと思うのです。そうじゃなくして、環境庁としては、あくまでも公害を受けたその患者に対して一〇〇%の補償をするのだ、それは全経営者の責任において、今度はそういうことになるのですから、経営者の責任において一〇〇%の補償をすべきだ、こういうふうに私は強くこの点を要望しておきますが、そういう面にひとつ努力をしてもらいたいと思います。大臣、この点はどうですかね。
#155
○国務大臣(三木武夫君) いま高山委員の御指摘のように、患者の人たちはその地域社会で住んでいるのですから、全国平均水準だけでは何か片手落ちな感じを私もいたすわけです。だから全指定地域の賃金水準をも考慮してこれはきめるようにしたいと思っております。
#156
○高山恒雄君 その点、大臣、ぜひ実現してもらいたいと思うのです。
 そこで、参照条文の中の第三条ですが、三条の第一項の「政令で定める法令は、次に掲げる法律とする。」と、こうなっておりますが、船員保険法、日雇労働者健康保険法、国家公務員、公共企業体職員等の共済組合法、地方公務員共済組合法、労働基準法、労働災害補償保険法、船員法、日本学校安全会法、これが政令で定める一つの基準となるわけですね。これで満たされない場合は、一月につき日数が七日をこえるものは、前号に掲げるものを除いてとしてありますが、一月につき五千円を別途支給するということですが、この点の説明をもっとはっきりしておいていただけませんか。
#157
○政府委員(城戸謙次君) ただいま先生御指摘の参照条文は、おそらく現行の健康被害救済特別措置法の条文でございまして、新しい制度には直接関係がないところじゃないかと思いますが。
#158
○高山恒雄君 これは関係ないですか、この第三条は。ちょっと質問しますがね、私はこう考えたのですが、これに基づいて医療制度のものは全部解決をはかっていく、それで満たされないものは、今度の新しい法律でそれにプラスをして完全補償をするんだということになるのではないかと思うが、その点どうです。別ですか、これは。
#159
○政府委員(城戸謙次君) この法令に書いてございますのは、これは現行の特別措置法の関係でございまして、先ほどの新しい法律の十四条の関係で政令で指定する法律とは直接関係ございません。この関係は今後検討しまして、たとえば労災保険法をその中へ入れるかどうかということにつきましては、今後の政令で検討して、もし労働省のほうで御異議なければそういうぐあいにしてやっていきたい、こう思っておるわけでございます。
#160
○高山恒雄君 そうすると、現行法のこれは、この法律は全然関係しないできめておるんだと、こういう考え方ですか。たとえば日雇労働者健康保険法の問題にしましても、私が聞きたいのは、日雇い労務者に対しては傷病手当というのはないですね。そういうないものも今後やっぱり検討してやらないと、医療制度においては全部各保険の医療制度を軸にしております。したがって、それで満たされないものは補償するということになっておるはずです。だから、そういう点をどうお考えになっておるのかと思って私はお聞きしたいのです。この点が非常に、政令で定めるとおっしゃるけれども、われわれの疑問を抱く点なんです。これはもう全然この法案とは別個なんで、現行法だけをここにあげたにすぎない、こういうお考えなのか。
#161
○政府委員(城戸謙次君) いま先生おっしゃったように、この現行法のいま御指摘の条項とは何も関係ございません。私どもの考えとしましては、当然この法律が優先しまして、すべてこの法律で給付をしていこうという考えでございますが、ただ同じ事項につきまして、他の法令で給付の規定があります場合、二重給付になるということになりますと問題がございますから、その点だけを調整していきたい。それを政令に委任しているわけでございまして、その政令に指定されれば当然こちらのほうから給付が行なわれ、すべての費用の負担は本制度から全部持たれる、こうなるわけでございます。
#162
○高山恒雄君 そうすると、もう一つ念のために聞きますが、現在ある多くの健康保険は一つも利用しないでもいいんだと、この法律はこの法律によって全部の治療費は補償していく。その上に慰謝料は慰謝料として別に考えるんだと、こういう考え方をしてもいいのですか。
#163
○政府委員(城戸謙次君) 医療費につきましては、当然従来は社会保障制度の補完的な制度ということで、社会保険制度でいろいろ持ちます残りの自己負担分だけをこちらで給付していたわけでございますが、今後はそうじゃございませんので、全額こちらの制度が医療費を持っていく、こういうかっこうになるわけでございます。いまの慰謝料の問題はちょっと性質違いまして、これは慰謝料がこの給付の中にいかように入っているかという問題でございますから、ちょっと別なんでございますが、医療費につきましてはかように考えておるわけでございます。
#164
○高山恒雄君 そうすると、健康保険はいろいろ多種多様にあるけれども、それは適用しないで、この法律で全部補償していく、こういうふうに考えておるんだと、こういうふうにとってもいいですね。
 そこで私はもう時間がありませんから最後にいたしますが、これは労働省も関係があるのですが、労災の問題について明らかにしておいてもらいたいと思うんです。と申しますのは、労災は、三十七年を一〇〇といたしますと四五%の増になっておるわけです。非常に労災災害者が多い。それだけふえておるわけです。年金を適用しておる者が六万五千二百五十四人、これは四十六年の資料ですけれども、これもこれだけふえておるわけです。ところが、これをいまの標準にしてもらっては困るということなんです。
 と申しますのは、労災は非常に日本の場合は立ちおくれて、六〇%の補償ということになっておりますが、先ほどもお話が出ましたように、内容においては八〇も八五も支給させておる事実があるわけです。だから、この六〇をいつまでもほっておくというわけにはいかないのです。これが今日の現状です。そういうものをもつとつまびらかに調査をしていただいて、先ほど申しますように、せめてこの公害による補償なるものは、安心して治療ができ生活ができるという補償の立場から、私はしっこく申し上げますが、大臣、何とかしてこれは一〇〇までの補償をするという考え方を基本に持っていただきたい。いろいろ審議会で結論が出ましょう、八〇という先ほどの審議会の意見も出ておるというお話がございますけれども、いろいろなものを調査した結果に基づいて、少なくとも公害はみずからなくさなくちゃいかぬというたてまえからも、私は一〇〇を補償するという前提をくずしてはならないと、こういうふうに考えるわけですが、強い要望としてひとつ最後に大臣の考え方をお願いしたいと思うんです。
#165
○国務大臣(三木武夫君) 労災の実態もよく調べます。中公審の答申も中間という――八〇%というようなことは言ってないわけです。われわれその中間といえば八〇%ぐらいが水準になるということで衆議院の段階における委員会の審議にも申し上げたのですが、これはできるだけ給付の金額を高めることが患者の救済にもなりますから、今後これはできる限り給付水準を高めるように努力をすることにいたしたいと思います。
#166
○高山恒雄君 労働省ですがね、いま労災の問題に触れましたけれども、いま大臣も見えておりませんけれども、これは少なくとも現実は八〇から八〇以上の支給をしておるわけですよ。こういう時代にマッチしないような、六〇という考え方はもうこの際改めるということで、ぜひひとつ大臣なんかに主張していただいて改正の方向に進んでもらいたいと思います。強く要望いたしておきます。――考え方をちょっと。
#167
○説明員(石井甲二君) 労災保険のいままでの経過をたどってみますと、四十五年の法改正によりまして、現在のILO百二十一号条約の水準、すなわち国際水準には達しております。ただ最近のように、この公害法もそうでございますし、また公害裁判あるいは自賠等からいたしまして、非常にこの水準についての御要望が多いこともまた事実でございます。したがいまして労働省としましては、本年の一月に労災保険基本問題懇談会というものを労災審議会の内部に設けまして、現在まで相当精力的な審議を続けております。その中で、当然いま先生御指摘のような給付水準の問題が中心でございまして、いずれにせよ、私どもといたしましても早急に結論を出していただくようにお願いをしてございますし、また現に審議も進んでおりますので、そのような方向で努力をいたしたいというふうに考えております。
#168
○高山恒雄君 終わります。
#169
○沓脱タケ子君 私は、本法案を審議するにあたりまして痛切に感じておりますことは、先ほどから各委員からもいろいろと御意見が出ておりましたように、公害たれ流しで、片方では依然として病人がふえているという状態をそのまま続けておって、そして公害病患者救済法をつくろうという関係にあるわけです。基本的には公害を防除し、原状復帰が厳格にやれるという条件の中で、これが前提として、片方では公害患者の救済もやられていくということが最も望ましいというふうに考えるわけですが、これは法案が出てきたけれど、片方は依然としてまだたれ流しが続いているという事態のままだというのはきわめて遺憾だ、これは長官も先ほどおっしゃいましたけれども、どうしても公害防除、環境の原状復帰という点について力を入れなければ、ごくわずかの公害患者の救済措置をしたところで基本的な解決方法ではない、また基本的な解決方法にはならないということを痛切に感じるわけでございます。それじゃどうかというと、そういう状況であるにもかかわらず、公害被害者の苦しみはたいへんなものです。したがって、御承知のようにそれぞれの地方自治体で、患者の実情等にかんがみて、非常に困難な状況を押して現状で一定の措置をやり始めているというふうなこともまた現実の姿であるわけです。そういった中で、地方団体が先に踏み出さざるを得ないというところまで追い込まれてきているという点では、これは本法案の提案というのは、むしろ逆におそきに失したといううらみが一方にはある。しかし同時に、やっと出てきたこの法案というのが、これは私も法案審議でいろいろと勉強させていただきましたけれども、肝心かなめの重要事項というのは、五十四項目全部政令事項だと、これでは審議はやれませんです。たいへんやりにくい。したがって、衆議院でもたいへんな論議がかわされたであろうということが予測にかたくないわけです。
 そういう状況の中で、どうしてもこれは基本的な姿勢というものをはっきりしていただくということなしには、法案を審議していくという点では私ども納得しがたい点が多々残りますので、その点では何といいましても、すでに一定の基準として明らかにされておる公害のいわゆる四大裁判、この判決を生かす内容というものが基本的な立場でなければならないのじゃないか。それからもう一つは、加害企業の加害責任、これを明確にしていき、同時に完全補償をさせるということを原則的な立場にして、この法案の特に政令事項になっておる諸決定については、そういう基本的立場を貫くということがきわめて重要ではないかというふうに思うわけですけれども、その点について、まず最初に長官の御見解をお聞きしておきたいと思うわけです。
#170
○国務大臣(三木武夫君) いま御指摘になることは、私もさように考えておるわけでございます。やはりこういう救済のための法案を提出する前に、公害をなくする努力というものがなされることが、これはもう一番の大前提になる。したがって、こういう救済の法案は出てまいりましたがゆえに、公害防止に対しての政策的な推進というものをいささかも手控えするようなことは断じてないわけです。これは全国的にも環境の調査をいまやっておりますが、多年にわたって蓄積された汚染物質というものを全国的にこれは除去してやろう。そうしてこれ以上汚染させないために、いろいろな環境の基準というものを強化していく、総量規制も含めて規制を強化していく。また下水道の整備など、これは来年度から本格的に取り組みたいと考えておるわけでございます。自然環境についても、いま全国的な自然環境の調査を行なって、自然環境に対する重要の度合いというものをひとつ地図の上に明らかにしよう、そうして自然環境の破壊というものを防いでいきたいということで、この法案の提出、これはこういう損害補償に対する法案の提出をされましたが、これもまた現実に患者がおるわけですから、この救済は政治として解決をしなければならぬが、一方において、根本にさかのぼって公害問題をなくしていく努力を一そう推進をしたいと考えておるわけでございます。
 また、この法案は、いま申したように、こういう法案というのはないのですよ、日本の全体の法律の体系の中で。したがって、これはなかなかこの調整をするにつきましても苦労したことは事実であります。完全無欠なものとは私どもは思ってないわけです。しかし、これが大きなやはり公害のために苦しんでおられる人々に対する、救済というものに対する一つの方向を出したことは事実であります。したがってこの法案を、さらにいろいろな不備な点が出てくると思いますが、これはできるだけ今後において是正をしまして、そうして公害というものが、各委員の御指摘のように、ある工場に働いていて労働災害を受けるのとはまた違って、何にも関係のない者が被害を受けるわけでありますから、これはほかの被害とはだいぶ性質の違うものであるということにかんがみて、との法案というものが、いろいろ委員会の御審議等も体して、できるだけ理想的なものに近づけていきたいという考えでございます。
#171
○沓脱タケ子君 公害防除対策について、これは長官はああいうふうにおっしゃられたので、それならということでお聞きをしたいわけですが、これは限られた時間でございますから、きょうはそれを譲りまして、提案されている法案について具体的な問題に入っていきたいと思うのです。
 まず最初に、地域指定関係の問題についてお聞きをしたいのですが、これは大気汚染を中心にしてお聞きをしていきたいと思います。地域指定というのは、先ほどからの御説明の中でも、本法案の適用というのは指定地域と指定疾病と曝露要件だと、その重要な一つの要素である指定地域、この指定地域の指定をどういう方針で行なうかというのは一つの重要な要件だと思いますので、その点についてどういうふうな方針でやっていくのか。それから汚染物質の種類についてはどういうふうに扱っていくのかということについて、まずお聞かせをいただきたい。
#172
○政府委員(橋本道夫君) 第一の指定地域は、先生の御指摘のように大気汚染関係の問題でございまして、この指定地域をどういう方針でやっていくかという点につきましては、まず従来の救済法の指定地域という実績がございますので、これを踏まえてやるという部分が一つございます。従来の指定地域間で指定地域の条件に若干の相違があるという点の不均衡は、是正するということを考えなければならないというぐあいに思っております。
 もう一点は、窒素酸化物につきましては、従来の指定地域の要件には入っておりませんでした。従来の指定地域になっておりますところは、実態的には硫黄酸化物も窒素酸化物も高いところでございますが、しかし現在の段階では、多くの場所では硫黄酸化物のほうはだいぶ下がってきております。そういう点で、従来と違えて過去の分を振り返るということを極力やってみて、不均衡是正をはかりたいという考え方を持っております。それから窒素酸化物の点につきましては、これは測定体制が整い影響調査が全部できておりましたら相当なことができると思いますが、何ぶん窒素酸化物の測定体制に踏み出しましたのは四十六年度以降ぐらいのところでございまして、現在世界的にも非常にデータが不足しておるということでございますので、ここ一、二年の間に早急に窒素酸化物を積極的に取り入れるという観点で、指定地域の基準を新たにそういう観点から洗い直していくということでございます。SCが低くても窒素酸化物の高いところはどういうぐあいにしていくかということで私どもは対応いたしていきたいと思っております。
#173
○沓脱タケ子君 それで、いま窒素酸化物のお話が出て、これは調査ができておらないというふうな状況で、すぐそれが汚染物質の要件として入れられないということは、やはりいまの時点では一つの重大問題だというふうに思うんですね。
 そういう点でちょっと聞いておきたいのですけれども、これは実は私、長いこと大阪市会におったという関係もありまして、大阪市でもずいぶんやかましく言っておりましたけれども、いまだに窒素酸化物については等濃度線さえ出ないのですね。その程度の検査体制でしかないという状況なんです。これは実情ですよ、いい悪いは別として。ですから、窒素酸化物がいま大気汚染の中で占める割合、人体に及ぼす影響の割合からいって決して軽視できない段階にきておって、しかも調査の実態がよくわからないというのでは、これはせっかく法律ができてもたいへんだというふうに思うのです。率直に。そういう点でどういうふうに強化していくか、これはちょっと具体的にお聞かせをいただきたいわけです。
 私ども、しろうとなりに聞いておりましても、大気汚染、特に窒素酸化物の測定では、硫黄酸化物と違って工場から出る分、自動車から出る分、両方はからなければいかぬ。そうなってくると、大気中の工場から排出する分については高さが違うのですね、観測点が。自動車から出てくる排ガス、窒素酸化物をはかる高さというのは一メートルか一メートル半くらい、人間の吸う高さというあたりが測定点になる。工場から出てくるのは十三メートルか十五メートル、そのあたりですね。ということになると、同じ地点ではかるといっても二カ所測定点が要るというふうなぐあいになるわけです。ところが、いま硫黄酸化物は一定の調査ができ上がっておって、窒素酸化物はさっぱりだという状況なので、しかも法案が成立をさせられるというふうな状況が近づいているという段階では――近づいているかどうかこれはわかりませんけれども、とにかく会期末が近づいておるわけです。だからそういう点では、急速にこの体制をどのように具体的に強化するか、このことが非常に重要じゃないかというふうに思いますので、その点についてお聞かせを願いたい。
#174
○政府委員(春日斉君) いま先生のお尋ねは、わが国におきます大気汚染監視体制の現状いかんということが中心だろうと思いますので、総論的に、まずその体制から申し上げてまいりますと、御指摘のように、確かに私どもが大気汚染監視測定体制をしいたころに比べまして、ここ数年、光化学反応によるオキシダントのような、二次汚染物質による第二の大気汚染という問題が出てまいったわけでございますから、量的のみならず質的に大気汚染というものは非常に複雑化してきた。
 それにいかに対応するか、またわれわれはどうして現状に対応しているかということを御説明申し上げますと、私どもといたしましては、大体国設の大気汚染測定網と、それから地方の大気汚染監視測定体制の、この二つに分けておるわけでございまして、まず第一に、国設の大気汚染測定網でございますけれども、これは先生御指摘のように、いままで大気汚染物質として規制の対象になっていたものだけやっておったのでは、窒素酸化物みたいに、ことし初めて規制の対象になって環境基準も排出基準もつくられたものですが、ですから、対象になっていない物質についてはある意味では無力なんですね、地方の場合は。だから国としてはできるだけ現在規制の対象になっていないものも含めて、大気汚染のあり方を全国的な視野で、国として直接把握しておこう、こういうことでつくってまいったわけでございますが、はからずも、これが全国で十五カ所あるわけでございます。したがって、十五カ所の国設の大気汚染測定網の中には、この窒素酸化物の経年的な変化はまさに把握してあるわけでございます。そういう意味で国としての、何と申しますか、国設大気測定局を設置してきたねらいは、一つは当たっておると思います。それから自動車排出ガスにつきましても、これは国設の自動車排出ガス測定局というのは都内に三カ所ばかり設けております。もちろんこれは地方でも最近どんどんふえてまいりまして、百九十カ所、自動車排ガスを中心とした自動車排出ガス測定局はできておるわけでございます。県が八十六カ所、政令市が百四カ所。
 それからもう一つ、国の行なっております大気測定局といたしましては、日本列島全域の大きなバックグラウンドデータを握るために、私どもは四十八年度、ことしから初めて石狩平野の野幌と関東平野の筑波の二カ所に国設の環境大気測定局を設けているわけで、この意義につきましてはいま御説明する時間もございませんが、そういうものも、一応長い視野に立ってこれは今後どういうふうに役に立てていくかという問題でございます。
 そこで、地方大気汚染監視測定体制と申しますかネットワークを申し上げてみますと、これは現在四十八年四月一日現在でございますが、都道府県の段階で四百四測定局、それから政令市、いわゆる施行令の第十三条できめた政令市でございますが、この中で三百九十九局、計八百三測定局が置かれてまいったわけでございます。これは急速にここ数年の間に測定局がふえてまいりました。それからこれを補完する意味で、移動測定局というものもふえてきております。現在県が三十七、政令市が十七、計五十四台、これはもちろん窒素酸化物についても測定しておるわけでございます。そして窒素酸化物、これをしからば地方測定局でどれくらい現在やれるようになったか。八百三すべて窒素酸化物やっておるとは確かに申せませんので、窒素酸化物について申しますと、現在二百二十九ステーションがあるということでございます。自動車の排出ガス測定局で百二十四局が窒素酸化物をやっておる、こういうことでございます。
 そのほか大気汚染の広域監視測定網でございますとか、あるいは気象庁で全地球的な視野で行なっておるような、やはり大気のバックグランド汚染の測定局等も二カ所ばかりございます。そういったところが現状でございます。
 確かに先ほど御指摘があったように、窒素酸化物の測定局というものは少なかった、データがいまのところごく限られておるけれども、どんどんふえてまいっております。経年的には、前からいたしておりました国設のステーション十五カ所がデータを持っておる、こういう現状です。
#175
○沓脱タケ子君 たいへん丁寧な御答弁をいただいたのですが、ちょっと時間が限られているので、できるだけ端的にお願いをしたいのです。これは法律制定にあたって要件になりますので、非常に大事だと思って特にお尋ねをしたのです。
 私は、窒素酸化物の測定についての技術水準の問題それから政府の予算措置の問題、これは急速にやらなければならぬのではないかというふうに思うのですけれども、これはどうですか。
#176
○政府委員(春日斉君) 御指摘のとおりでございます。
#177
○沓脱タケ子君 御指摘のとおりというのは、やりますのでございますか。やるのかやらぬのか聞いている。
#178
○政府委員(春日斉君) やるつもりです。
#179
○沓脱タケ子君 それから指定地域を指定する方針ですね、従来の指定地域を引き継ぐという問題以外に、新たに指定地域を指定していく方針について、時間がないからちょっとまとめて申し上げますけれども、これは汚染度と有症率、それから受診率、そういうものを基準にしてきめるというふうなお話でございますけれども、これを実施段階でどうしていくのかというのが、これはだいぶ中央で考えているのと地方の汚染の実態というのが違うのです。たとえば、ことしになって行なわれた大阪市の受診調査というのは、大阪全市の中の八行政区を調査をしたデータを見てみますと、汚染度には差があるけれども、受診率にはほとんど差がないというふうな状況になっておるというのが、これはデータですが、出ているわけです。そういうことになってくると、何と何とを基準にしておやりになるのかということ、これは指定地域になるかならぬかというのは、この法律ができ上がっても、適用されるか、されないかの境目になるわけですから、どうするのかという点について、ちょっと念のためにお聞きしておきたい。
#180
○政府委員(橋本道夫君) 方針の問題でございますから簡潔に申し上げますと、まず地方独自にやっておったところを、過去をどうするかという問題に取り組まねばならないということが一点と、非常に新しい問題としましては、自動車の排気ガスのみによって起こっている汚染地帯をどう扱うかという問題がございます。
 それから、どういうぐあいにそれをやるかという御質問でございますが、汚染度と、面接調査による有症率と受診率と、この三つをわれわれいままではかっておりますが、この中で受診率といいますのは、実は相当医療機関の分布とかそういうもので影響されまして、どの程度これに使えるかという点では問題のある場合も中に見られます。しかし、まだ捨てがたいものがあるというものがございますので、汚染率、有症率、受診率をやります。そのうちで、汚染度と有症率は、SO2と、それからイギリスのBMRCでやっております質問表とは、実にきれいな相関を持っておるということは事実でございますので、それをいままでたよりにしてきたわけでございますが、そういうことでSO2の過去のデータ、大阪におきましては、おそらく過去のSO2のデータのほうが一番問題ではないかと、そういうぐあいに思っております。そういうことで、その過去のデータをどこまで洗えるかということと、それから大阪市自身が医師会の参加を得て調べておりますもの、大阪府の成人病センターが調べておるものがございますから、既存のものを極力生かすということも考えていきたいと思いますが、ある程度のものはどうしても調査をしなければならぬのではないかというぐあいに考えておるわけでございます。
#181
○沓脱タケ子君 当然調査をしてもらっていいと思うのですがね。調査について、それじゃどうなっているのかということですが、四十八年度の予算執行ではどうなのか。たとえば四十八年度、これはあなたのほうにお聞きした資料ですけれども、公害準備室では四十八年度調査費二千二百万円、公害保健課、これは現行措置法の関係のところですね、公害保健課では千八百万余り予算化されておる。これは調査やっていますか。執行状態、具体的に。
#182
○政府委員(橋本道夫君) 現在、この金額につきましては先生の御指摘のとおりでございまして、予算といたしましては、おのおの六地区ずつということでございます。大体四十平方メートルぐらいのところを一地区といたしております。一という意味ではございません。
 この中で具体的に問題になりますのは、東京、大阪をいかに扱うかということが一番問題になっております。この調査につきまして、東京都のほうとはすでに打ち合わせを重ねておりますが、近くこれは具体的にどうするかということまでいくと思います。大阪市のほうとは話はある程度いたしておりますが、具体的にまだどこの地域を調査するというところまでにいっておりません。これは東京都がどの程度まで食い込むかという問題と、大阪市をどの程度までわれわれの予算で見られるかという問題がございますので、いずれか一方固めてかからないと、全体の動きがとれないというような状態でございます。国会が終わりましたら早急にこの方面の作業を進めたい、そういうぐあいに考えております。
#183
○沓脱タケ子君 ちょっと、私の開きぞこないかもしれませんけれども、東京都と話が進んでおって、東京が間もなくやれる。それで東京がきまらぬとどのくらいの規模でどのくらいの予算を使うかわからぬから、たとえば大阪はそのあとでないとというのですが、これは予算の問題と違うと思うのです。法律を提案してきている以上は、いま公害患者がどういう状況になって、どういうふうに分布されておって、どこを指定してこの法律を適用しなければならないかというのが、やはり行政責任だと思うので、当然そういう中では、これは両方合わせても四千万そこそこですからね、両方一緒に使うのか、別々に使うのか、知りませんけれども、合わせても四千万そこそこですから、足りなければふやしてでも全部必要なところは調査をするということでなければ、これは私は法律を審議しているけれども、実際に実施段階では一体いつになったらやってもらえるのかということになって、また不信の種ができるというふうに思うのですけれども、その点はどうですか。
#184
○政府委員(橋本道夫君) いま先生の御指摘になったことは、私どもも全くもっともな問題であるというぐあいに存じております。そういう点で、東京都のお話をいたしましたが、これは近い関係でよく話をしておるということでございまして、大阪市のデータにつきましても、先ほどお話になりました八地区のデータとかそういうものは実は集めております。集めてわれわれ、中で検討いたしております。実施するのに一体これだけでできるかという議論がございますが、東京都も大阪市も、みずからの予算で相当なものをやろうという積極的な意欲は私どものほうにも表明いたしておりますので、国と地方で協力することによって、極力先生の御指摘のような問題は起こらないようにいたしたいと、そういうぐあいに考えております。
#185
○沓脱タケ子君 地方自治体では、住民から相当突き上げが激しいですから、何とか早いこと手をつけたいと思っているのです。ところが、もう一つ環境庁ははっきりせぬから、さっぱりどないにもならぬというのが率直な意見のようですよ、これは。だからその点では、あなたのほうは金を出して、やれと言うたらやれるんでしょう。仕事をするのは地方団体がやるのだから。そんなこと簡単だと思う。やる気になったら簡単にやれるし、東京は近いから相談できるけれども大阪はというけれども、大阪を呼んだらよろしい。三時間で来れる。ちょっと話がはっきりしなさ過ぎるので、これは法案を提起してくる以上、そのことが並行してついて歩かないと、私たちは信頼しにくいと思うのです。そういう点では具体化をやっていただけますか。
#186
○政府委員(橋本道夫君) いま先生から御指摘のありましたように、極力御指摘のあったようにテンポを早めていたしたいと、そういうぐあいに考えます。
#187
○沓脱タケ子君 関連いたしまして、指定地域を行なっていく場合に、これは大気系公害被害者救済法指定地域連絡協議会という十都市の要望書が環境庁へいっていると思いますけれども、これにもこう書いてあるんですね。「新制度の地域指定にあたっては、広域的に見直しをされたい」「とくに現在地方公共団体が独自に、種々の事情で地域を指定し、患者救済を実施している地域は住民感情が非常に強いので、格段の配慮を図られたい」というふうにいわれております。
 また汚染の実態も、これはたくさんの事例を持っておりませんけれども、たまたま私の手元にあります昭和四十六年度の硫黄酸化物高濃度全国汚染都市番付というようなのが出ておりますが、そういう中を見ましても、大阪は特に悪いのですが、十八カ所の番付に十カ所大阪が入っているというのはひどいんですが、そういう状況になっておるというふうなこと、それから人体影響調査を見ましても、呼吸器症状有症率の他地域との比較表ということで出ておるのを見ますと、たとえば大阪市で平林地区というところは男女が一〇・〇です。川崎の指定地域が八・一です。それから豊中、これも指定地域ですが、一〇・〇というふうなことになって、いま申し上げた三カ所のうち二カ所は指定地域に現在の特別措置法ではなっておる。一カ所は該当していない。こういうふうな汚染状況というのが出てきているわけだし、人体影響も出てきている。
 こういう中では、法律施行にあたっては、当然いまの特別措置法は右から左へ移行するといたしましても、同時に、いわゆるBMRC方式での調査を環境庁ではおやりになるのでしょうけれども、その場合に、その限られた地域だけやるというのでなくて、広域的に見直すということでなければ本来の法の趣旨というのは生かされない。つまり公害患者を救済するということにはならないのではないかというふうに思いますが、その点についてはどうですか。
#188
○国務大臣(三木武夫君) 特別措置法で地域指定になっておるところは、これは当然移るわけですが、それ以外の地域についても、本法の施行を機会に見直したいと思っております。
#189
○沓脱タケ子君 見直していただくということになりますと、これはたいへんありがたいのですが、特に私はこの際申し上げておきたいと思いますのは、現行法での国の指定地域というのは十二カ所ですね。自治体が独自の指定地域をつくって特別の措置を自治体独自でやっているというのが、十八カ所か九カ所あるわけです。こういう事態になっているというのは、一体なぜなんだろうかということなんです。というのは、どうしても地方団体というのは、被害者の実情あるいは汚染の実情、実態、住民の要求というものが具体的にわかるというふうなことで、先行してきているのじゃないかというふうに思うわけですけれども、そういう点で、法律運用についての指定地域の指定の権限、これは地方団体あるいは都道府県知事あるいは指定都市の市長というふうなところが持つほうが、現状に適合しているのではないかというふうに思うのですけれども、その点はいかがでしょうか。
#190
○政府委員(城戸謙次君) この点につきましては、徴収も全国から画一的にやるわけでございまして、一定の基準に従いまして、やはり国がきめていく、こういう体制のほうがよろしいと思います。ただ、御指摘のような点は十分踏まえまして、指定にあたりましていろいろ矛盾が生じないように精力的にやってまいりたいと思っております。
#191
○沓脱タケ子君 現在地方団体が独自にやっている十八カ所か九カ所のところ、これは新しい法律に適用していく場合にどういうふうに進めていかれるか、その点についてお伺いをしておきたいと思います。
#192
○政府委員(城戸謙次君) これは二つあると思います。
 一つは、地方独自にやっておられるところを今後調査をしまして、それが指定地域になるかどうかという問題でございます。これにつきましては、さっき大臣からもお答えしましたように、既存の地域、あるいはこういうところを含めまして、できるだけ広範な調査をしてまいりたいと思っておるわけでございます。
 第二番目は、こういうところでやっていますいろいろな給付が、それでは指定地域になりました場合、新しい制度にどう引き継がれるかという問題でございますが、基本的には、これは地方独自でやっておられる地方の側において判断いただくことでございますが、大多数のところにおきましては、この制度が発足するまでのつなぎの制度であるということでございますので、本制度に給付内容が同じものにつきましては吸収されていくと考えるわけでございます。ただ、それぞれの地方によりましていろいろとこの制度からはみ出したところもございますので、そういうものは地方独自の形で残っていくものもあろうかと思いますが、大ざっぱに言いますと、そういうことになろうかと思います。
#193
○沓脱タケ子君 私は、政府の指定地域と地方団体の指定地域がダブって、それから被害者に対する処遇が先行しているという場合については、これは別の問題なんです。地域が全然違うという問題、離れている問題ですね、たとえば水島は政府の指定地域じゃないですね。そういうところは一体どういうふうに具体化するか。当然、地方団体が苦労してやっているところなんだから、法律制定と同時にそういうところは適用するべきだというふうに考えますが、そういう点についてはどういうふうに進めていくかというのは一つのやっぱり重点だと思う。それはどですか。
#194
○政府委員(橋本道夫君) 法律が発足いたしましたら自動的にそれを吸収していくということは、これは不可能でございまして、やはり私どものほうで自治体のいままでの調査のデータをよく見まして、そして十分なものがあればそれをそのままにほとんど使えるものがあるかと思いますが、ない場合には、どの程度過去にさかのぼった議論ができるかということを詰めてみて、適否を判断したいというぐあいに考えております。
#195
○沓脱タケ子君 それは当然そうなんですが、二年も三年もかかっては困ると思いますね。片方では法律を適用される、片方は調査が進まぬからまだだというふうなことになると、これはたいへんなんで、その辺はできるだけ早期にそういう調査が必要な場合にも実施をして、地方団体が苦労してやっているところはできるだけ法律を早く適用して指定地域にするということが必要であろうと思う。そういう点についてはひとつ考えて、具体化を急いでいただきたい。
 もう一つ、認定患者としての要件である指定疾病について、いまは四つの慢性疾患だけが大気関係では該当疾患になっているわけですが、具体的には、やはり大気汚染による急性症状、先ほどから光化学スモッグなども出ておりましたが、それもその一つの重大な一例だと思うのですけれども、そういう急性症状の適用というのをこの際考えるべきではないかというふうに思いますが、いかがですか。
#196
○政府委員(橋本道夫君) 指定疾病として、急性の症状を持つ病気がどの程度入るかということにつきましては、専門委員会の御検討を経てから私ども、最終的な方針を決定いたしたいと思いますが、従来の御意見では、急性の病気を第一次的に指定疾病として取り上げていくことについては、きわめて問題があるという専門家の御意見でございます。ただ、問題といたしまして、続発症という形で、現在指定疾病にかかっている患者さんが、いろいろそのような呼吸器系の急性の症状を起こすということを続発症として拾い上げられないかということにつきましては、積極的に検討いたしてまいりたいと、そういう考えでおります。
#197
○沓脱タケ子君 時間が残り少なくなってきましたので、あと補償給付について若干お聞かせをいただきたいと思います。
 だいぶん補償給付は各委員から御質疑が出ておりますので簡単にしておきたいと思うのですが、期せずしてどの方からも出ております。いわゆる障害補償給付ですね。八〇%だというふうな話が出ておって、これはどう考えても一〇〇%があたりまえではないか、そうしてプラス慰謝料何十%かをつけるのがあたりまえではないかというのが、これは被害者の立場としては当然の主張だと思うのです。
 先ほどから御答弁を伺っておりますと、因果関係が必ずしも不分明だというふうなことが一つの要素になっているようですけれども、大気汚染の因果関係、これは大企業が一つか二つ、でんとそばにあるのは非常にはっきり因果関係はわかります。しかし大部市では、どこのどれとどれが原因者、加害者かわからぬというふうな状況というのはざらにあるわけですけれども、それじゃ因果関係がそれで不分明かというと、そうじゃないのです。なぜかといいますと、大気関係の公害患者というのは、空気の正常な地域へ移転した場合には、子供のぜんそく性気管支炎やぜんそくというのはなおるのです。あるいはおとなの慢性気管支炎は、まあ肺気腫になったらなおらないでしょうけれども、汚染地域を離れて生活をすればなおるという事実があるわけです。この事実がはっきりしている以上、因果関係は明確だ。戻ってきたらまた発病する。こういう関係になっているわけですし、当然本人の責任での疾患ではないわけですから、全国平均水準の賃金基礎月額というようなものがもとになるということでは、これが低いという問題になっておるわけなんです。当然私、そうだと思うのです。
 ここで冒頭に申し上げた公害裁判の判決を生かすという立場を基本的に踏まえるということが最も必要なところは、ここだと思います。少なくとも一〇〇%の障害補償給付はやるべきだ。そうして、金だけもらったら被害者はそれで済んだのと違うんですよ。苦しい思いをし、痛い目をしているわけです。そういったものに対する慰謝料が別途考えられるということがどうしてもなくちゃならないというふうに考えますが、これは長官、八〇%にきめたわけではないんだということを先ほどから繰り返し繰り返し御答弁になっておられますが、この点をほんとうに踏まえていただきませんと、せっかくの法律が加害企業を免罪にする役割りしか果たさぬというふうに言われてもやむを得ないと思います。そこが非常に重大な点だと思いますが、再度御見解をお伺いをしておきたいと思います。
#198
○国務大臣(三木武夫君) いま御答弁を申し上げましたように、たとえば全国平均の賃金水準というのを、地域社会の賃金水準等も考慮して補償金額をきめるように努力をしたいということを高山委員にもお答えをしたわけです。また八割という点も、これは中公審の答申などもありますが、これを今後さらに中公審に対していろいろ諮問をすることになるのですが、できるだけ給付の金額を上げられるように努力をしたい。いま幾らという約束はできませんが、そういう気持ちでこの問題に対処していきたいと思っております。
#199
○沓脱タケ子君 これは、最高限の問題がいままで論議されてきた。それがさらに障害の程度に応じてランクをつけるということになっておるわけです。何段階かに。この問題について、これはたいへんだと思うのですが、先ほどどういうふうにランクをつけるかという御説明がありましたが、私は一番心配をいたしますのは、その一ランクか、二ランクか、三ランクか、それぞれのランクに被害者本人が認定をされたときに、本人が了解できるというふうな内容でなければならぬ。このことが一番必要だと思うんです。そういうことでなければ実施段階で地方自治体では紛争の種になると思う。せっかくの法律が紛争の種をまくようなことになると思うのですが、その点についてはどうですか。どういうふうにランクをつけて、だれでもわかるようにできるかどうか。
#200
○政府委員(橋本道夫君) 御指摘の問題は一番大事なところでございます。一番また御本人が納得されるかというと、これはきわめてむずかしい点でございますが、私どもは与えられた時間の中でいまの最大限の努力をいたしまして、先生方の御議論を通じまして、その出たものを十分説明をして、それの運用についてできるだけ円滑にいくようにしたい、そういう努力をいたしたいと思っております。
#201
○沓脱タケ子君 続きまして、児童補償手当という項があるわけですね。児童補償手当という項目も、これは政令事項になっておるので、一体どの程度の補償を考えておられるかという点なんです。これをお伺いしたい。といいますのは、御承知のように、大気関係の被害者の中では半数以上、六割以上が十二歳以下の子供というふうなことになっておるわけです。子供たちが発病しますと、子供自身の身体の発育、それから学業、これは学校も休ませなければなりませんから、当然学業もおくれるわけです。身体の発育も阻害されるというふうなことが、将来の進学等に非常に大きな影響を与えて、その子供の一生に重大な影響を与えるというのが、私ども西淀川におりまして、まのあたり見てきているわけですけれども、そういう点で児童補償手当という項目が立てられたということは非常に歓迎をしているわけですが、中身がどうなるのかという点が非常に気になるので、その点を明確にしておいていただきたいと思います。
#202
○政府委員(城戸謙次君) 児童補償手当は、政令で定める年齢に達しない児童の、指定疾病による障害の程度が一定以上になっておる場合に、その養育者に支給されるものでございますが、障害の程度につきましては、私どもとしましては日常生活の困難度を基準に、大体二ないし三程度の等級に区分していきたいと思っておるわけでございます。
 その場合、最も重度の場合には介護加算が加わるということになっておるわけでございますが、このレベルをどうするかということ、障害の程度をどのように区分するかということ、これはいずれもまだ、この制度に一つきましての中公審の答申を受けました段階では十分なる議論も出てまいっておりません。と申しますのは、当初、児童補償手当なるものは中間報告ではなかったわけでございまして、その後いろいろ各方面の御意見もございましてこれを入れたわけでございますので、今後その辺はさらに詰めてまいりたいと思っておるわけでございます。
#203
○沓脱タケ子君 具体的に少しもわからんのですけどね。政令事項でランクをつけてという話だけで、中身は、たとえば障害児童手当、子供一カ月どの程度の手当が出るかということがまだわからんのですか。
 少なくとも子供が発病したということになりますと、いまの家族構成の中ではどういうことになってくるかというと、大体夫婦共働きというのが通常の家庭なんですね、いま、勤労者の家庭では。ところが、子供が発病する、ぜんそく発作を起こす。そうしたら奥さんがどうしても休んで子供のめんどうを見なければならない。おかあさんの収入が明らかにダウンするわけです。そういう状況と、子供の発育の阻害、学業の阻害というのがプラスされるというのが、実質的な損害をこうむる姿だという点をはっきりと認識をいただいて、児童補償手当の内容を豊かにしていただかなければならぬ。介護加算は当然のことです。子供が発病したら介護が要ります。だから当然のことなんですが、そういう状況にあるんだということの御認識の上でやってもらわなければならぬというふうに思いますが、どうでしょう。
#204
○政府委員(城戸謙次君) いまおっしゃったようなことを十分考慮して、きめてまいりたいと思っておるわけでございます。
 ただ、これは児童の場合は、いわゆる逸失利益というのは裁判の場合はないわけでございまして、したがって、いろいろ御議論はございますが、補償給付の体系から申しますと、慰謝料というものがこういうところにあらわれているということで児童補償手当をつくったわけでございまして、そのレベルにつきましては、今後十分詰めてまいりたいと思っております。
#205
○沓脱タケ子君 関連をいたしまして、これは全然項目にないのですけれども、私どもは大気汚染の被害地におってよくわかるのですが、これはどうしても移転補償費という項目を立てなければならないのではないかというふうに思うのです。具体例を申し上げますと、大体私、西淀川の実態を見てみますと、昭和四十年に十二万五千の人口があった。それが昨年の十二月には十万三千まで減っている。そういう状況です。そういう中で、公害認定がされる前後というのはたいへんな大気汚染の状況でございましたから、どんどん流出して郊外へ出ていかれたわけですね。そういう人たち、出ていける人たちがどんどん出ていくというふうな中で、最近になって移動していくという人は、もうがまんがならなくて移動をしていっているわけです。というのは、大気汚染状況というのは原状回復をしませんからね。たとえば子供が三人あって、三人ともぜんそくになったといったら、もうそ銭金にかえられないということで、移転をしなければならない。
 私の身近における人たちで、こういう人があります。三人持っている子供が全部ぜんそくになってしまった。たまたま公団住宅に居住をしていた。そこで公団住宅へ頼んで、奈良県の団地へ移転をさせてもらった。そうしたら、移転してから以後、私は半年目ぐらいに聞いたのですけれども、一ぺんも発作は起こらない。ところが、秋になって、子供だから、学友がおるからということでもとの小学校の秋の体育祭にやってきた。そうしたら、その晩に帰ったらまた発作が起こったというふうな状況なんです。
 そういうことで、移転をするというふうな人たちというのはずいぶんあるわけですが、そのことによってずいぶん損害をこうむっているわけです。どういうふうに損害をこうむっているか、具体的にちょっと申し上げますと、この西淀川の公団住宅というのは、昔建った住宅で非常に家賃が安い。たまたま四千七百五十円のところにおった。それで、奈良の鶴舞団地というところへ頼んで移してもらった。これはまだ安くて一万三千円ですが、その家賃差額、一万足らずですね。そして、これは御夫婦働いておられて、御主人のほうは企業から交通費は出るけれども、奥さんのほうは交通費は自前らしいのですが、月に五千二百円の交通費が要る。それから通勤時間が往復三時間という状況になっておるわけです。ですから、移転費を除きまして、いままでの出費よりも一万八千三百五十円、一カ月に固定経費として余分にかかるということを申しているわけです。その上に移転費用というのがやっぱり要るわけですね。
 それからもう一人の人は、これは二人の子供のうち二人とも、ちょうど生まれて七カ月目の赤ちょんがぜんそく発作を起こして、がまんがならぬということで、この人も公団住宅にたまたまおったので、京都の男山団地へ移転をした。これは家賃が五千五百円のところだったのが、二万一千円になった。この人は家業が、西淀川で旋盤を三台ほど置いて小さな零細企業をやっておる人なんで、車で通っているわけです。仕事の関係もあるので。ガソリン代等を含めて月に交通費が二万三千円、それで、行った先が西淀川よりも物価がだいぶ高いというわけですね。そういう物価高の問題は除きましても、家賃、交補費の固定経費だけで三万八千円程度、月々余分に経費がかかるというふうなこと。それ以外に言えば、保育所へ入れたくても保育所が近くにない。いままで西淀川では入れておったというふうなことで、ずいぶん被害をこうむっておるという話が具体的に出ております。
 そういう点では本来、法の精神からいいますと、環境を復元するということが前提であって、移転をするということはこれは原則ではないと思います。しかし現状では、幾らそれが原則だと言うておっても、清浄な空気にすぐに回復しないんですから、がまんがならぬという人たちはどんどんそういうことになっていて、かなり大きな恨みを持っています。どうにもならない、仕事の都合も悪くなる、子供たちにとってもぐあいが悪いけれども一、健康にはかえられないということで皆引っ越しているわけです。そういった点で、移転補償というふうな点を考えられないものかどうかという点について御見解を伺っておきたいと思います。
#206
○政府委員(城戸謙次君) ただいまの点につきましては、先般の参考人の御意見の中にも逆の御意見もあったわけでございますし、この点十分考え方が固まってないような気がいたします。今後の問題としてこういう点は検討したいと思っておるわけでございます。
#207
○沓脱タケ子君 この間参考人が言われたのは、法理論の立場で言われたと私は理解をしておるので、実情は御存じなかろうと思います。これはぜひ御検討いただきたい重要な項目だというふうに思います。
 それからもう一つ、補償給付に関連して、これは参考人もおっしゃっておられましたし、当然だとおっしゃっていた遡及の問題ですね。ほかの問題と違いまして、公害被害者というのは、法律ができたときから被害者ができるのじゃなくて、加害企業が害を加えているとき、あるいは発病したときから被害者なんですからね。法律の制定とは無関係に被害者という実情に置かれていると思います。そういう点で、被害者の発症時にさかのぼって補償給付をするべきだというふうに思いますが、その点についてはどうでしょうか。
#208
○政府委員(城戸謙次君) これは、さかのぼる問題については二つ問題があります。一つは、それが要するに相手方に利益を与える場合、これは問題ないわけでございます。参考人が、もちろん問題ないとおっしゃったのはその点であるわけでございまして、ただ、さかのぼって給付をするとなりますと、当然相手方に義務を課する、すなわち徴収の問題が起こるわけでございまして、この点につきましては法律的にもいろいろ問題があると思うのでございます。また、その際も御指摘になりました、技術的にさかのぼって認定できるか、あるいは障害の等級、あるいは死亡した場合の起因性を認定できるか、こういう技術的な問題もあるだろう、こういうお話もその際あったと思います。
 私ども問題としますのはその二点でございまして、従来の法律どれを調べましても、少なくともその損害自身は、この法律施行後あるいは指定地域に参りますと指定地域指定後ということでないとまずいわけでございまして、ただ、その損害の発生する行為につきましてはさかのぼって見ておる例がございますが、そういう点でこの法律のような体系に整理をいたしたわけでございます。
#209
○沓脱タケ子君 それで遡及について、私この間参考人の医学担当の藤野先生の御意見も聞きましたけれども、これは当然発症時だということは、論理的にそうなんですね。しかし、それを認定するというのはむずかしいという点があろうと思います。で、少なくとも、一歩譲りまして現行法の認定患者というのはさかのぼれる、現行法での認定患者、これは発症時にさかのぼっても少しも困難はないわけですね。患者はわかりますからね。いっ、何年何月何日に認定されたというのはわかるわけですから、少なくとも現行措置法の認定までの遡及というのはそう困難じゃないというふうに思いますが、全体として遡及は困難であるというふうに判断をされる場合でも、現行措置法の認定患者の認定時に遡及するという点についてはどうでしょう。
#210
○政府委員(城戸謙次君) ただいま私問題があると申しました二つのうち一つについての御質問でございますが、他のほうは保留しまして、その技術的問題としましては、特に認定時にさかのぼることの困難性としまして、現在の特別措置法におきましては単なる認定でございまして、障害等級等は何らきめていないわけでございます。そういう点で一つ困難性がある。あるいはもし死亡の場合には、指定疾病に起因した死亡、起因性の認定、こういう点に問題があると思うわけでございます。ただ、これがかりに技術的に可能だとしましても、過去にさかのぼって費用を関係者から徴収するということにつきましては問題がありますので、私どもとしましては、全体として損害の発生は少なくともこの法律施行後であるということでございまして、ただその費用の徴収等はさかのぼって、たとえば第一種地域、第二種地域の場合にはさかのぼってやるというようなことも、法律の中に織り込んであるわけでございます。
#211
○沓脱タケ子君 これは困難だ、困難だと言うていたらできないわけですが、被害者に対する完全補償をやらせるという基本的な立場からいいましたら、被害者は当然遡及を要求しますよ。しかも論拠があります。ちゃんと現行法の認定患者である、死んだ人が何人おる、はっきりしているんですよ。だから全部に適用するのがもしむずかしければ、死亡者だけだったらどうだろうかとか、やる気になって検討すれば何ぼでも遡及できますよ。当然これは遡及を行なうべきだと思うのですが、全体として検討をするということが困難であっても、部分的にでも遡及を当然考えるべきだと思うのです。その点どうですか。地方自治体では死亡者だけでも遡及するというふうなことだってやっていますよ、実際には。そんな、地方団体でやれていることを国がやれぬというはずがないと私は思うのです。やる気があるか、ないかにかかっている。はっきりしているのだから。認定患者の死亡者は何人だというのは、はっきりしていますよ。制度が確定すれば、当然これは遡及して適用するべきだというふうに思いますが、長官、御意見をお伺いしておきたいと思うのです。
#212
○国務大臣(三木武夫君) この問題は、すぐにそういう趣旨に沿うということは私即答できないと思います。これは過去にさかのぼるということになりますれば、いま局長から話があったいろいろな困難な問題もあるし、また、加害者から強制徴収するわけですから、そういうのもやはり遡及ということになってくる。そういう点というものを考えてみる必要がある。新しい制度で、そうして強制徴収としてやるわけですから、だからそのお心持ちはよくわかりますけれども、制度としてする場合には、これはよほど検討しなければ、前向きの御答弁というものはちょっとできかねる次第でございます。
#213
○沓脱タケ子君 もう一つ補償給付との関係でお聞かせをいただきたいのは、生活保護法との関係です。認定患者で生活保護受給者の場合、これはどのように対処するか。環境庁、どうですか。公害認定患者で生活保護受給者という場合、収入認定の問題がからんでくるわけですけれども、そういう条件の方というのはかなりあるので丸。どういうふうに対処されるお考えなのか、まず環境庁の御意見をお伺いしたいと思います。
#214
○政府委員(城戸謙次君) これは環境庁の意見というよりも、従来とも、公害裁判の場合等それを収入認定するかどうかということは、厚生省の指導のもとにそれぞれの個々の実施機関によってやっているわけでございますので、私どもとしては特に申し上げるよりも、むしろ厚生省サイドからこういう点をお聞かせいただきたいと思います。
#215
○沓脱タケ子君 厚生省、どうですか。
#216
○説明員(山崎卓君) この補償給付と生活保護法との関係でございますが、御案内のとおり、生活保護法は補足性の原則というのがございまして、他法優先、利用し得る他法他施策がありました場合に、その他法他施策を活用して、なおかつ厚生大臣の定める最低生活基準より以下になる場合に生活保護法を発動する、こういう制度でございます。したがいまして、他法他施策の性格が最低生活の中身とどういうふうにからんでくるかという点が、いろいろあるわけでございます。先生御案内と思いますけれども、この附則十条によりまして廃止されまする中にあります医療手当とかあるいは介護手当とか、特に介護手当あたりは、それだけの必要なものをお払いになって、その領収書を持っていった場合にそれをお払いするというような給付であったようでございますので、そういうものにつきましては収入認定をいままでいたしておりませんし、医療手当につきましても、その性格等につきまして収入認定をいたしておらなかったということは事実でございます。したがいまして、そういうようないままでの取り扱い、いろいろの制度とのからみ合いがございますわけですけれども、この法案におきまする精神、あるいは政令その他でいろいろ定まってまいりますが、そういうことにつきまして、環境庁のほうと今後十分よく詰めてひとつ決定してまいりたい、こういうふうに思います。
#217
○沓脱タケ子君 これはたいへん重要な問題でして、生活保護受給者が三万円余り生活保護でお金をもらっている。今度公害病認定患者になりまして、それから障害補償給付を三万五千円もらったということになりますと、生活保護が切られるわけです。そうしたら、公害病にかかってろくに働けないものだから、ずいぶん貧しい暮らしをして生活保護を受給しておる。せっかく法律ができても潤わないという結果が出てくる。法の趣旨が生かされないというふうな結果が出てくるわけです。そういう点で、これは補足性の原理というのは知らないわけじゃないのですけれども、公害健康被害補償法というのは特殊な法律ですから、そういった法の趣旨を生かすというたてまえからいえば、これは何らか特例を考えられなければならないのではないかというふうに思うので、特にお聞かせを願ったわけですが、厚生省の課長さんはそれはそれ以上言えないと思いますが、それで環境庁の御見解をと申し上げたのはそこなんです。
#218
○国務大臣(三木武夫君) これは厚生省ともよく相談をしまして、生活保護を受けておる人たちの境遇は非常に気の毒な立場にあるわけですから、この点は厚生省と十分今後打ち合わせてまいりたいと思います。
#219
○沓脱タケ子君 それでは、もう持ち時間超過をいたしましたので、最後に簡単な問題二つだけお聞かせをいただきたい。
 一つは、公害病患者に対する診療報酬はどのように扱うかという問題、それからその診療報酬は、医療機関に対しては課税の対象としてはどういう扱いになるかという点、これをお聞かせ願いたい。
#220
○政府委員(城戸謙次君) この診療報酬の考え方としましては、現在の特別措置法だとか、あるいは各種の社会保障の保険制度等でとられております「健康保険の例による」という考えのものと、それから労災保険に見られるように、政府と地元医師会等の協定によって健康保険の体系と別に考えられているものと、二つに分かれております。そのほかに自賠法の体系では、診療報酬については特に規定はございません。私どもとしましては、この制度の性格なり、扱います特殊な分野にかんがみまして、むしろ労災保険と同じように、健保の体系と別に考えていきたいということに整理してございまして、環境庁長官が審議会の意見を聞いて定めてまいるということになっているわけでございます。
 税法との関係はこれは大蔵省のほうで……。
#221
○説明員(伊豫田敏雄君) ただいま御説明ございましたように、健保の体系とは別の体系の診療報酬ということになっておりますので、現在、租税特別措置法二十六条にございます。二%の必要経費算入という特例の適用は、考えておりません。
#222
○沓脱タケ子君 そういうことになるので、診療報酬についてはこれは長官が中公審の意見を聞いて別途きめるということですが、ほんのちょびっとくらい健保の水準より上がっても、租税特別措置法の対象からはずされるというと実質収入は下がるのです。そういうことを考慮された上で、診療報酬の体系というのは、決定をされるときに十分参酌をしていただきたい。そうでないと医療機関は歓迎しませんよ。手続などの手数もかかりますし、事務量もふえるというふうな上に、特別措置からはずされるということになりますと、たいへんなことになるという状況があります。
 それから、そのこととあわせて医療の水準ですね、現在の医学で必要と認められるすべての医療を、治療方針、医療内容というものを適用するかどうか、その点をお伺いをして終わりたいと思います。
#223
○政府委員(橋本道夫君) 診療報酬の点につきましては、いま先生の御指摘のような問題があると私ども考えておりまして、本年度の調査におきまして、公害病患者に対する、現在特別措置法によって行なっています社会保険体系の医療というものをつぶさに洗っております。それで実態をつかまえたいということでございます。もう一点、これは日本医師会に調査研究を委託をいたしまして、この公害病という立場から、医療をする上において現行の健康保険制度ではどうもこの点が問題があるというような、こういう治療は認められていないとか、そういうものがもしあるとすればそれは何かということを、現在扱っている公害患者さんの実態に即して調査をしてほしいということで、現在日本医師会とその点は話をしておるところでございます。
 公害病患者に医学的社会的に、常識的に考えてこれは必要だと思われるものは、極力生かしていくというような方向で診療報酬というものは考えるべきではないだろうかというような考え方でございますが、具体的には中公審で御審議を願うということにいたしております。
 それから、いろいろ治療の限定するかということですが、私どもは特殊な治療指針を設けるというような考え方は、現在のところ持っておりません。
#224
○理事(杉原一雄君) 本案に対する質疑は本日はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。
   午後六時三分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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