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1972/09/20 第71回国会 参議院 参議院会議録情報 第071回国会 公害対策及び環境保全特別委員会 第18号
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1972/09/20 第71回国会 参議院

参議院会議録情報 第071回国会 公害対策及び環境保全特別委員会 第18号

#1
第071回国会 公害対策及び環境保全特別委員会 第18号
昭和四十八年九月二十日(木曜日)
   午前十時四十分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 九月二十日
    辞任         補欠選任
     林田悠紀夫君     寺下 岩蔵君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         森中 守義君
    理 事
                金井 元彦君
                君  健男君
                杉原 一雄君
                内田 善利君
    委 員
                青木 一男君
                斎藤 寿夫君
                菅野 儀作君
                田口長治郎君
                寺下 岩蔵君
                原 文兵衛君
                安井  謙君
                渡辺一太郎君
                加藤シヅエ君
                沢田 政治君
                小平 芳平君
                高山 恒雄君
                沓脱タケ子君
   衆議院議員
       公害対策並びに
       環境保全特別委
       員長       佐野 憲治君
       公害対策並びに
       環境保全特別委
       員長代理理事   島本 虎三君
   国務大臣
       国 務 大 臣
       (環境庁長官)  三木 武夫君
       通商産業大臣   中曽根康弘君
   政府委員
       環境庁長官官房
       長        信澤  清君
       環境庁長官官房
       審議官      橋本 道夫君
       環境庁企画調整
       局長       城戸 謙次君
       環境庁大気保全
       局長       春日  斉君
       環境庁水質保全
       局長       岡安  誠君
       水産庁長官    荒勝  巖君
       通商産業省立地
       公害局長     林 信太郎君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        中原 武夫君
   説明員
       大蔵省主計局主
       計官       藤仲 貞一君
       通商産業大臣官
       房審議官     江口 裕通君
       運輸省港湾局技
       術参事官     大久保喜市君
       海上保安庁警備
       救難部海上公害
       課長       阿部 雅昭君
       建設省道路局本
       州四国連絡橋公
       団監理官     金岡  登君
       自治省財政局財
       政課長      石原 信雄君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○公害健康被害補償法案(内閣提出、衆議院送
 付)
○瀬戸内海環境保全臨時措置法案(衆議院提出)
    ―――――――――――――
  〔理事杉原一雄君委員長席に着く〕
#2
○理事(杉原一雄君) ただいまから公害対策及び環境保全特別委員会を開会いたします。
 公害健康被害補償法案を議題といたします。
 前回に引き続き質問を行ないます。質疑のある方は順次御発言を願います。
#3
○君健男君 最近、公害に対しますいろいろの施策、まあ十分とは申し上げられないかもしれませんけれども、着々と進行していることはまことにけっこうなことと存じます。ただ、いわゆる公害といいますと、表現は適当かどうかわかりませんが、あたかもにしきの御旗のごとく、公害に反するような発言が禁じられるような空気は非常に遺憾ではないか。たとえば、先般、日本国じゅうの沿岸の魚が危険であるというような印象を少なくとも国民に与えたことは事実でありまして、これは厚生省の発表が悪いのか、あるいは環境庁関係の発表が悪いのか、あるいはマスコミの取り上げ方が悪いのか、原因については問うところではございませんですが、関係者は非常に慎重に取り扱うべきものではないかというふうに考えております。
 そこで、まずお伺いいたしたいと思いますが、この法律が公正に運用されまして国民の信頼を受けるというためには、私は、公害病の認定の問題が非常に大きな問題であろう。現在の医療体制あるいは公衆衛生の体制で十分環境庁としてやっていく自信があるのかどうか、その点についてお伺いいたしたいと思います。
#4
○政府委員(城戸謙次君) 公害病の認定の問題につきましては、先生御指摘のように、非常に専門的、総合的な判断が必要でございますので、私どもとしましては、地元の大学医学部あるいは医師会等の御協力を得て進めているわけでございますが、最近、特に熊本で水俣病認定申請患者が急増して、精密検査等の体制が十分追いつかない、こういうような事態も生じているわけでございます。したがいまして、今後の被害者の認定問題をより円滑に進めてまいるために、一そう関係者の御協力を得られるように、関係各県ともいま相談して、体制づくりにつとめているところでございます。
#5
○君健男君 体制づくりを努力されることはまことにけっこうでございますが、なかなかこの公害の専門家、これは臨床並びに検査すべてを含めまして、急に専門家がふえるわけじゃございませんで、何年かかるか、相当年数を待たなければできない。そういう関係上、たとえば数千人の疑いの患者が出たという場合に、スクリーニングというような方法をお考えになったことがあるのか、ないのか。たとえば毛髪検査を一様にやってみて、どうするとか、こうしないとか、そういうことを考慮されたことがあるのか、ないのか、ちょっとお伺いいたします。
#6
○政府委員(橋本道夫君) いま先生の御指摘のあったようなことにかなり近いような問題が、現在、有明海沿岸におきます健康調査の中でだんだん実行されてきているわけでございます。環境庁の研究費におきましても、環境汚染の人間に及ぼす影響ということで、従来の大気汚染とか水銀、カドミウムということだけじゃなく、スクリーニングを確立すべきであるということで、鋭意研究をこの二、三年の間に進めておるわけでございます。
#7
○君健男君 まだ学問的に確定した方法はないと思いますけれども、どういう方向にそういう点が研究されているか、若干お漏らし願いたいと思います。
#8
○政府委員(橋本道夫君) 具体的な問題といたしましては、大気汚染のほうでございますと、いろいろの有害物質で、たとえば鉛であるとかそういう有害物質の問題がいろいろ指摘されておるわけです。海洋汚染調査によっても問題が提起されておりますが、そういうものの影響という問題につきまして、従来、非常に問題になったところだけをさがしておったわけでございますが、そのときに非常に苦慮いたしましたのは、一体正常値がどの辺であるかということが、なかなか見当がつかない。どういうところが平均で、どういうところまで分布をしているかということがわからないということでございます。従来労働衛生の分野では、明らかな中毒の判断基準、つまり診断条件というのはさまっておりましたが、現在、環境汚染で問題といたしておりますところは、むしろ明らかな中毒というところまでいってはおそいので、そこの手前の、健康障害と健康の間、あるいは健康障害とはいえ不健康という状態で疾病との間、というような問題をどういうぐあいに扱うかが、一番問題となったわけでございます。そういう点で、たとえば尿中の鉛であるとか、あるいは血中の鉛であるとか、あるいは頭髪中の鉛というようなものをいろいろ調べるというようなこともやっておるわけでございます。そのほか、分解のむずかしい物質につきましても研究を最近始めておるところでございます。
#9
○君健男君 今回の補償法が公布されますと、前の健康被害特別措置法が廃止になるわけでありますが、前の措置法によって認定された患者と今後行なわれる認定の患者と、どういう関係になりますか。
#10
○政府委員(城戸謙次君) 従来の健康被害救済特別措置法で認定されました患者は、この法律により認定された患者とみなされる、かようになります。
#11
○君健男君 御答弁によりますと、措置法による認定患者と補償法による認定患者は同一の取り扱いだ、こういうことになるわけでありますが、そこで私非常に問題が複雑になるのではないかと考えますが、実は御承知のように、措置法におきます認定患者というのは、緊急医療のために、疑わしきものを含めた、むしろ疑わしきものを広く集めたというのが措置法の認定患者です。これが即補償法の認定患者ということになりますと、それがいわゆる七つの補償につながってくる。こういう矛盾についてはどのようにお考えですか。
#12
○政府委員(城戸謙次君) これは形式的な法律的な問題と実体の問題だと思いますから、後者につきましては橋本審議官から答弁をしてもらうことにしましで、まずこの法律でどういうぐあいに考えているかということにつきまして申し上げたいと思います。
 先生御指摘のように、この法律は当然、従来の特別措置法のような社会保障制度の補完的措置とは違ってまいりまして、民事責任を踏まえました補償制度であるという性格を持っているということは、そのとおりでございます。ただその場合、どこが違っているかということでございますが、私どもとしましては、前提としての、公害患者であるかどうかという認定につきましては全く差をつけていない。つまり、この制度におきます因果関係と従来の特別措置法上におきます因果関係とは、制度的には全く同じと考えておるわけでございます。したがって、旧法による認定患者は新法による認定患者とみなすという形で整理をしておるわけでございまして、そういう点におきまして、従来の因果関係はその性質から見て非常に甘くて、今度は非常にきついと、こういうような整理をいたしていないわけでございます。違います点は、いまおっしゃったように給付の内容が、従来のような医療費の自己負担分だとか、あるいは医療手当、介護手当に限られるのでなしに、むしろ逸失利益を中心としまして、慰謝料的要素を加味した種々の給付の種類を設けている。あるいは財源につきましても、企業の社会的責任によります任意供出ではなしに、原因者負担の原則で強制徴収できるようにしている。したがって、その中には給付に対する公費によるつっかえというような混乱は全然ない、こういうことに整理しておる。そういう点は違いますが、因果関係につきましては全く同じ性質ということでございます。
 なお、疑わしいものが含まれているじゃないかということにつきましては、これは医学的問題でございますから、橋本審議官からお答え申し上げます。
#13
○政府委員(橋本道夫君) いま基本的な考え方につきましては局長から御説明がございましたが、この因果関係をどういうぐあいに扱うかという問題でございますが、これは法律の付則にもございますように、その患者を引き継ぐという法律でございますので、救済法の場合とこの法律との間に考え方には相違がないということが、立法の過程で法制局において確認されたわけでございますが、御指摘の問題は、四大公害事件というものにつきましてどういうぐあいにこれを扱うかということで、関係大学あるいは厚生省、いろいろな調査がございまして、それによって、まず裁判に先立ち政府の見解というものを出される、また、そのような考え方を基礎として救済法というものが運用されてまいる、その過程において裁判の判決というものが出まして、医学上の知見と法律上の知見とをいかに関連づけるかというようなことが、次第に社会に固まってきたというぐあいに私どもは考えておるわけでございます。
 御指摘の問題は、水俣病の問題に関しましてのいろいろな御議論があろうかというぐあいに考えますが、この水俣病につきましては、概念的には、明らかに水俣病である、あるいは疑わしい、あるいは否定できない、あるいは全然水俣病ではない、概念的にそういうぐあいな分け方をしている場合が多いというように、私どもも実際水俣病のことを扱っておられます専門の学者の方からも伺っておりますが、この問題に関しまして、四十六年八月の不服審査に対する裁決書というものが出まして、医学的に異論がある場合に、一体行政上どういうぐあいにこれを扱うのかということにつきましての政府としての方針を明らかにしたわけでございます。
 医学的には、これは先生もよく御承知のように、科学的な知見というものは非常に限られたものでございますし、どうしてもわからないところは残るということもございます。医学の専門の分野によって、ものの受けとり方、考え方が違うということは当然あるわけでございますが、医学的な知見が全部完全に一致しなければ行政上のアクションがとれないということではないということにつきましての、いろいろの具体的な事例が次第にここ数年来重なりまして、その中で最もはっきりあらわれましたものが、四十六年八月のこの裁決書であろうというぐあいに考えております。
 この裁決書の運用につきましては、裁決書に引き続きまして、四十六年九月二十九日に環境庁の公害保健課長通牒というものが出ておりまして、その中で、特にこの部分は大事なことだと思いますが、「認定申請人の示す症状の全部または一部が「有機水銀の経口摂取の影響によるものであることを否定し得ない」とするかどうかについては、裁決書および次官通知の趣旨に従い、水俣病に関する高度の学識と豊富な経験を基礎とすべきものであり、この医学的判断をもとに都道府県知事が認定に係る処分を行なう」ということでございまして、高度の医学的な知見が基礎になるということは、これはもう重要な原則でございます。その上に立って、その中で若干の異論があるという場合が起こるわけでございますが、法律と行政といたしましては、都道府県知事が認定をそこで行なって、患者として認めるかどうかということをきめるのだということを、この公害保健課長通牒で言っておるわけでございます。この点につきましては、中央公害対策審議会の医療分科会におきましても、きわめて慎重な活発な議論が行なわれました。やはり、医学的にわかったこととわからないことということが、認定審査会の専門の先生方におっしゃっていただくことである。行政府としての責任は、知事が認定をするということでとる。この点につきましては昨日も御説明いたしましたが、そのような判断に立って現在行なわれておるところでございます。
 特に、大石長官が国会の御答弁の中で、この部分につきまして、どういう程度のものを行政上扱うのかという場合に、五%か一〇%程度ちょっとあやしいということだけで拾い上げるということをいっておるのではないのだという趣旨のことをおっしゃいまして、五〇ないし六〇%はそうらしいが、まだ十分な症状がそろっていないというような場合に、どう扱うかということの行政上の決断が求められる問題だというようにいわれておるわけでございます。そういう点で、あくまでも問題はケース・バイ・ケースに判断されるべきものでございますので、画一に申すことはできませんが、原則としては、次官裁決の趣旨と、その後の公害対策審議会におきます医療分科会の答申ということを基調にして、ケース・バイ・ケースに慎重な判断をとっていきたいというぐあいに考えておるわけでございます。
#14
○君健男君 御説明のように、法律上の整理はそういうふうな取り扱いで因果関係は十分ではないか、あるいは医学的に高度に判断されたものということで、私は基本的には一応反対を申し上げるものではないのでありますが、若干そこにあいまいな、トラブルが起きる可能性があることでちょっと心配しているものであります。
 といいますのは、大石長官はむしろ積極的に、これは緊急医療なんだから、これは人道問題だ、医療なんだから、疑わしいものもできるだけ広くというお考えであったようであります。これは答弁はいろいろありますが、要するに「とりあえず緊急を要する医療面の給付というものをやろうという趣旨でございますので」「疑わしき者というものも広く救う必要があるというような考えで運営をいたしております。」と、こういう答弁であります。したがって、救済法による場合には、とにかくちょっとでも怪しいというのはみんな医療はただにしてやるんだ、少くともこういうふうな強いニュアンスがあったことは事実であります。したがって次官通達で、これは補償の対象にはならぬということを、わざわざ民事上のあれにはならぬというふうに断わってあるぐらいです。したがって、それを即この法律にもぐし込むというのは、要するに、広く疑しきものも今度ぶち込んで、補償の対象ということに逆になるような感じを受けるわけですね。その辺の考えをお聞きしたい。
#15
○政府委員(城戸謙次君) 確かに次官通達の中では、その認定に関する行政処分が直ちに民事上の損害賠償責任の有無を確定するものではない、こういうことを言ってございます。これは御承知のように、民事上の損害賠償責任ということになりますと、因果関係におきましても、特別措置法におきます制度的な因果関係と違いまして、厳密な相当因果関係を要求されることもございますが、そのほか、特に故意過失を要件とするとか――これは無過失立法以前でございまして、逆に以前でございますから問題もございまして、民事上の不法行為による損害賠償責任の有無と、この制度における認定とは違うんだということをいっただけでございまして、先ほど申し上げましたように、この新法と現在の特別措置法との関係では、全くそういう制度的因果関係を前提として認定をしていくという上におきましては、同じ考えを持っておるものでございます。
#16
○君健男君 そういたしますと、今度の認定患者でも、いわゆる緊急医療というたてまえから、疑わしき患者も広く認定をするということになるわけですか。
#17
○政府委員(城戸謙次君) 疑わしきというのは、先ほど橋本審議官から申し上げましたように、通俗的な意味で疑わしいというのじゃなしに、医学的な意味として疑わしいということでございまして、正確にはこの次官通達に表現してございますが、そういう意味の患者を今度は認定するかということでございますが、私ども、制度的な因果関係は同じでございますから、従来の次官通達の精神に沿って今後も新しい法律で運用さるべきである、こう考えておるわけでございます。
#18
○君健男君 私は現実問題として、従前の認定患者の中に、先ほど大石長官が五%とか六〇%とかという、かなりいいかげんな表現のお話があったという話も聞きましたけれども、それこそそういういいかげんな考え方から見ると、患者とは思われないようなケースが現実にある。これはあるのです。どこを根拠として高度の医学というか、そういう点はいまの医学でははっきりしない面がある。しかし、実際問題として非常に担当される皆さん、めんどうですよ、それは。とことんいって、ほんとうにわからぬ、疑いというのは非常に濃厚だけれどもわからないという例もあるとは思いますけれども、しかし、従前はかなりいいかげんに行なわれておったような印象を受ける。
 といいますのは、あとで有明海の問題についてもいろいろ詳しくお伺いいたしたいと思いますけれども、その点を非常に慎重におやりにならないと、私は将来この問題を解決するためには、この補償法案、あるいはいろいろの解決の方法があります、法律化されておるにもかかわらず、さらにまたおそらく自主交渉というものが非常に行なわれるおそれがあるのじゃないかということを私心配しているものでありまして、そういう不明確な点を残しておくために、むしろ、裁判に訴えるとか、あるいはこの法律に基づいて訴えるとか、あるいはその他の法律上の措置を患者が願い出るということでなしに、あくまでも、昔のいい意味における示談ということになるわけでしょうけれども、いわゆる自主交渉ですね、それが集団的に行なわれる。非常に圧力的な集団的な行為になっていく。
 しかも、私ども心配するのは、そこの中に含まれる患者は、ほとんど前の新認定患者であり、疑わしきものを広範囲にできるだけ入れた、と。いまの御説明と前の大石長官の説明とは、若干矛盾していると思う、はっきり読み上げますれば。ただ、それは法律施行のときの気持ち、疑わしくともとにかく医療というものは一日も早くしなければいかぬのだから、早くやらなければいかぬという考えで特別措置法が行なわれたということについても、私は文句を言うわけじゃございません、当然のことだと思いますけれども、いまの法律と即同じだということについては、これはやはり今後十分検討されて、経過的なことの検討があってもいいのじゃないか。そうでないと非常に弊害を、あるいは混乱を残すおそれがある。いわゆる認定患者には、きわめて疑わしき患者が入ってくる。これだけは現実の問題として非常に心配いたしております。法制上の整理の問題ということよりも、現実問題として非常に私は心配をいたしておるのであります。これについてお話を承りたいと思います。
#19
○政府委員(橋本道夫君) 先生の御指摘ございましたように、この制度を運営する上において行なわれた認定というものが、社会的に信頼があるということが私はきわめて必要なことであるというぐあいに考えております。そういう点におきまして、現在水俣の患者さんの診断におきまして、約千七百名の人がたまっているという事態は何か上申しますと、やはり精密検査をきっちりするというところでなかなかそれがはけない。これが第一問の先生の御質問の中で、はたしてそれが処理できる自信があるかという御質問とも関連のあることでございますが、その問題と両方関連のある、きわめて現実的にはむずかしい問題であるということでございます。そういう意味におきまして、現在の水俣病の認定というものにおきましても、認定患者さん方にとりましては、この千七百人の人が待っているということは、これは非常に大きな問題であるということと存じますと同時に、やはりこの認定につきましては社会的にも信頼のあるというものをきっちりしなければいけないということは、私どもも重々感じております。
 今回の法案におきましては、四十三条の中に「補償給付の額についての他原因の参酌」という規定が入っております。これは医療について分けられる場合には、併存症の場合だけが分けられる、続発症は当然にこの中に含まれるということになるわけでございますが、障害補償費あるいは遺族補償費というような問題になりますと、他の原因が明らかにし得る、その貢献度を明らかにし得るという場合には、当然にこの法律の四十三条の規定によって、その割合に応じた障害補償費の給付がなされるということでございます。もちろん、このことは医学的にきわめてむずかしいことであろうということを医学の専門家からも指摘をされておりますが、しかし、医学的には、このようなものも法律論理と組み合わせてはっきり設けておく必要があるのではないかというぐあいに考えて、今回の法案はこの措置をしておるわけでございます。
#20
○君健男君 私最初申し上げましたように、非常に公害となると、どこか週刊誌に出ておりましたが、熊大の教授がこれは公害でないという発表をするためには命をかけるような勇気が要ったと、こう言うのです。とにかく公害患者でないらしいぞと言うと、わあっとやられるという環境があるわけですね、現実問題。それで、そういう日本国中の魚が危険だと言わんばかりのたいへんな間違いを起こして、これは国民が勘違いしたといえばそれまでですが、そういうふうにほとんどの国民が勘違いするような経過が起きたわけです。こういう点について、私は非常に大きな注意を払わなければいけないと思うわけです。
 それで、ちょっと関連してお伺いいたしますのは、第三水俣病の問題でありますが、熊本の研究班の十人の患者というのは、全部六十歳以上だと聞いておりますが、間違いございませんでしょうか。
#21
○政府委員(橋本道夫君) 六十歳以上ではなしに、たしか五十歳以上ではなかったかと思いますが、従来の水俣病と違って若い人がいない、すべて高齢者であるということは研究班の報告の中にございました。もしも五十歳という記憶が間違っていれば、あとで訂正いたしますが、私の記憶ではそうなっております。
#22
○君健男君 いずれにしても高齢者。五十歳以上になると、私どもは五十肩とか四十肩といって大体しびれたりしますから、大体ひびが入っているわけです。十名はそういう人たちだけであった。しかも何か聞くところによると、その十名の患者は毛髪検査もレントゲン検査もしてなかったということですが、ほんとうでしょうか。
#23
○政府委員(橋本道夫君) 御指摘のありました有明海沿岸のケースにつきましては、対照地域であるということから発見されたケースでございまして、毛髪につきましての水銀分析はやっていなかったようでありますが、エックス線検査として椎骨の検査は行なわれておったと……。
#24
○君健男君 全部十人ともですか。
#25
○政府委員(橋本道夫君) 十人ともやっております。レントゲン検査につきましては、十人とも椎骨エックス線の検査をしておるということでございます。
#26
○君健男君 私は全部をエックス線検査をしておらないと聞いておったのですが、それは間違いございませんでしょうか。毛髪検査は全部しておられなかったことは事実のようでありますが。こういうことは、いわゆる熊大の研究班ともあろうものが、しかも専門家の寄り集まりという人が集まって、毛髪検査もしない、環境検査もやってない、何もやってないで、しかも五十以上の人を調べて、水俣病に似ている、だから有明海は危険だぞ、こういうような発表になったと私は聞いておるのですが、そうでございましょうか。
#27
○政府委員(橋本道夫君) この研究班の発表を正確に読みますと、「有明地区で、定型的水俣病と全く区別できない患者が五名あり、一応水俣病と同様とみられるものが三名、さらに水俣病の疑いと同じようにみられるものが二名あって、保留されたものが九名ある。現在の魚類メチル水銀含有量からの発症は考えにくいが、疫学的調査から有明地区の患者を有機水銀中毒症とみうるとすれば、過去の発症と見るとしても、これは第二の新潟水俣病に次いで、第三の水俣病ということになり、その意義は重大であるので、今後この問題は解決されねばならない。」ということとでございまして、研究班としては、水俣病であるという断定をした報告書は書いておらないということと私どもは解しておるわけでございます。
#28
○君健男君 もちろん断定できるわけじゃございませんで、それは当然でありますが、いまの「みうるとすれば」というのは、何でございますか、ちょっとその前を読んでください。
#29
○政府委員(橋本道夫君) 「現在の魚類メチル水銀含有量からの発症は考えにくいが、疫学的調査から有明地区の患者を有機水銀中毒とみうるとすれば、過去の発症と見るとしても、これは第二の新潟水俣病に次いで、第三の水俣病ということになり、その意義は重大であるので、今後この問題は解決されねばならない。」と。「みうるとすれば」という表現でございます。
#30
○君健男君 水銀含有量も少ないと書いてありましたね。それはそれとして、疫学上見得るとすればという仮定ですね。だから、疫学上関係ないということでしょう。調査してないわけでしょう。これは全然仮定の事実をいわれているわけですね。いろいろやった、これがもし疫学上水俣病患者と見得るとすれば、これは危険だぞ、こういう表現になりますね。これは全く国民をあざむく発表じゃないか。仮定の事実を加えて、そうなると水俣病の疑いがある、こういう発表なんですね。こういうことで有明海全体が非常に危険だというような印象を与える。その前には、日本国じゅうの魚が危険だというような印象を与えた。これは環境庁が悪いというのじゃないですよ。決して誤解していただきたくないので、これは法律そのものがいかぬと申し上げているのじゃないですけれども、私は、そういう非常にまぎらわしいことがよく行なわれて、たいへんな結果が出ているということを確認したいために申し上げているのですが、そのように疫学上何々云々見得るとすればというようなことは、これは注意をして、やるべきじゃないでしょうか。どうなんでしょうか。
#31
○政府委員(橋本道夫君) これは学問研究のことでございまして、学者が独自に判断すべきことであるというぐあいに考えます。
#32
○君健男君 そうすると先般の熊大の医学部という問題が出てくる。学問上の論争であるなら何を言ってもいい、それは、公害について国民を非常に惑わすものであってもかまわないのだということは、どこかでチェックすべきじゃないか。したがって私は、熊大の医学部できめた、これはけしからぬ、医学部長ないし大学の権威において学者の発言を押えつけたじゃないかという議論があるそうでありますが、私はそうじゃない。とにかくその疑いがあると言い出した教授自体が、よく見ますと、おれは疑いがあるといったのじゃない、断定したのでもない、こういう弁明をして、現在のところ水俣病だという根拠はむしろ薄い、そういうふうに本人が言ったので何とかと、いろいろ週刊誌に書いてございますけれども、そういう学問的な論争はわれ関せずということは、一般論ならいいのですけれども、公害となるとそれでは済まぬのじゃないか。
 新潟県におきましては、十年以上前の話ですが、新潟大学のある方が米に放射性が発見されたという発表をしまして、新潟県じゅうたいへんな大騒動を起こしたことがあります。あとでいろいろ本ものの学者がやったところが、自然放射能であった、カリ肥料をたくさん使ったために。こういうことが、要するに学問上の論争だからわれ関せずということは、これはもう学問の研究は自由ですからやむを得ないとは思いますけれども、やはり国民に即重大な影響を与えるものは、少しあやしいということで少なくとも世間に発表し大々的に取り上げられるということは、非常に私は国民の利益に反することだと、こう思うのでありまして、こういう点、公害についてはちょっと考慮すべきではないか。純学問上のことだからおれは知らぬぞということでは済まないのじゃないか。それがきっかけとなってたいへんな騒ぎが起き、行政上の仕事にもかかっているわけですから。その点、重ねてお願いします。
#33
○政府委員(城戸謙次君) 先生おっしゃることはよくわかるわけでございますが、あくまでこれは学問の研究の問題、あるいはその発表の問題でございまして、私どもとしましては、その関係の学者の良識に待つというほかないわけでございます。あるいはまた、そういうものが出ました場合、政府側におきまして、それに対してコメントができるようないろいろの研究なりデータをそろえておくことも必要かと思いますが、基本的には、学者の良心に待つことではないかとこう思っております。
#34
○君健男君 結論的には、そういうことについて基本的に私は反対を申し上げるものではございませんけれども、ただ最近、私は、非常に行き過ぎがあったために、じゃないかと思うのですが、少し平静化してきた。過熱的ということばがいいかどうか、わかりませんけれども、公害に対しまして少し落ちつきを見せてきた。非常によい傾向ではないか。公害については、それこそ大資本だとかそんなことを頭に置かないで、許されない公害は断固として、だれであろうと直させなければいかぬ問題であります。これは大資本とかなんとか、すぐそういうことばを使う方もありますけれども、私はそういう考えはおかしいと思う。大であろうが小であろうが、公害については峻厳なる態度をとるべきものであろうと思います。
 それがためには、非常に大きな試行錯誤といいましょうか、学問の自由というが、私は学問の自由とまでは言われないと思う。疫学上見得るとすれば、毛髪の検査をしなくとも水俣病の疑いがあるということは、きわめてこれは学者として私は問題にならないと常識上考えておるわけですが、そういう面について、私は確かに軽々に環境庁としてコメントを出すわけにはまいらないと思いますけれども、あるいはいろいろの行政上の措置、いろいろの大学の専門家を網羅するとか、そういうことの機会において発表させるとか、何か間接的な方法をもってやるなりして、そういうきわめて国民に大きな害を及ぼすようなことだけでも早急に対策を今後立てていただきたいと思うわけであります。現実問題として非常にそういう大きな弊害が起きているわけでございますので、その点よろしくお願い申し上げたいと思います。
 それから、全部関連している問題でありますが、今後公害病の認定につきまして、たとえば純医学上完全にきめることはできないけれども、知事の行政分野として、認定することがあるわけでございますね。そういう際はどういう程度のものを、要するに、医学と関係のない純然たる行政上の措置として知事が認定するという、そういうケースについて御説明をお願いしたい。
#35
○政府委員(橋本道夫君) いま申しましたのは、医学とは関係なしにということではございませんで、高度の主治医の判断と、認定審査会におられますいわゆる専門の先生方の御意見、まずそれを基調とするということは、これは根本原則でございます。ですから、関係なしにというわけではございません。しかし、学問の分野では、ここまではわかっているが、ここから先は言えないということは絶えずつきまとうわけであります。そのわからないというところがあるので行政上の判断がとれないということが、過去の公害の悲惨な被害を招いたということは、これは事実でございます。そういう点で、全くこの判断は私はケース・バイ・ケースの問題だと思いますが、次官の通達にあったこの基本的な考え方、公害保健課長の通達の中にあった基本的な考え方を踏まえまして、そのときそのときの医学の進歩というものを考えました上で、ケース・バイ・ケースに判断されるべきものではないか。ですから、一がいにどこまでのものと、はっきりした何か原則的なことでこれを答弁せよということについては、きわめてむずかしいことであろうというように思っております。
#36
○君健男君 その点について私も大体わからないわけじゃないのでありますが、やはり何といいましても、いままでのニュアンスと、先ほどちょっと読み上げました大石長官の発言、これはだれが見ても、緊急医療のために大幅に感情を入れた、こういうことばになっているのですよ、継ぎ合わせますと。大事なところを除くという意味じゃなくて、「疑わしき者をできるだけ拾ってあげたいという気持ちからあのような判断をいたしたわけでございます。」と。それから「公害問題の特殊性に着目いたしまして、とりあえず緊急を要する医療面の給付というものをやろうという趣旨でございますので、したがいまして、この認定につきましては、先ほど長官も」――これは船後さんの答弁ですけれども、「長官も申し上げましたとおり、疑わしき者というものを広く救う必要があるというような考えで運営をいたしております。」というのですね。だから、これが即今度のものに入るということと、厳重なる高度のいわゆる審査会における判断というものと、多少ニュアンスは違うのじゃないか。
 そうなりますと、疑わしき者も医療だから全部十ぱ一からげにやってやるのだというような印象のいままでの特別措置法と、どうしても私はニュアンスが違うような感じがするし、当然、いまのような高度の医学上の問題で決定するということに私はなるべきものだと思うのです。そういたしますと、なかなかいままでのような簡単な認定ができなくなるし、そうすると、早急な医療という緊急避難的な意味が若干薄れてくるのではないかと私は考えるのです。それも、当局としてそういう説明はできないというお立場もわからぬわけじゃないけれども、どうも私はニュアンスが違うような気がいたしますが、その点ひとつ、もう一ぺん詳しく御説明いただいて、この辺で私の質問を終わりたいと思いますので、お願いいたします。
#37
○政府委員(城戸謙次君) さっきお話しましたことの繰り返しになるわけでございますが、新しい法律と現行法とではその目的に差があること、これは先生のおっしゃるとおりでございます。ただ、それではどういう制度的な因果関係をその中に盛り込むかという点につきましては、現行法と新法とでは全く同じ立て方をとっているわけでございまして、大気汚染あるいは水質汚濁の影響による疾病ということでございます。したがって、認定をいたします場合、その患者が現行法で認定される場合と新法で認定される場合と、その間に差があるべきではないと思っているわけでございます。そういう意味合いにおきまして、現在の法律につきまして出してございます事務次官通達が、そのまま新しい法律の、影響によるかどうかの認定等に適用される、こう思うわけでございます。ただ、新しい法律と現行法とで違いますのは、給付の内容だとか、あるいはその財源だとか、あるいはまた原因者から損害賠償等がなされた場合の、すでに行なわれた制度的給付を返還させるかどうかだとか、こういう点に、当然目的が違いますから差はあるわけでございますが、制度的因果関係という点におきましては全く同一であるという点だけを重ねて御答弁申し上げておきたいと思います。
#38
○君健男君 繰り返しはやめますが、いずれにしても私は完全に納得しておらないのですよ、ほんとうを言いますと。これはしかし、無理はない。あなた方のやり方が悪いと私は責めているわけじゃないけれども、経過上私はやむを得ないことだと思うのです。違うのだと、こうなかなかここでおっしゃるわけにはいかないと私も思います。しかし、これは私の個人の考え方でそういうふうに受け取っているわけであります。
 いずれにいたしましても、この公害というものは何か大資本批判とかそういうふうに、いままで執拗に持っていかれたような私は疑いを持っているのです。しかし、だんだん正しくなってきた。したがって私は、環境庁に今後も大いに勇敢に強く出ていただきたいし、いささかも甘やかすことはないのでありますけれども、有機水銀についても十二分な御配慮をひとつ今後ともお願い申し上げたいと思います。
 以上で私の質問を終わります。どうもありがとうございました。
  〔理事杉原一雄君退席、理事金井元彦君着席〕
#39
○小平芳平君 間もなく通産大臣が来られるそうですから、それまで、きのうの漏れた点について若干質問をいたしたいと思います。
 基本的に、私としましても、現に被害者が発生している、患者が発生している、こうした患者被害者は完全に救済すべきだ、完全な救済措置が必要だということは当然心得ているわけです。ただ現段階で、こうした問題の多い法案を、しかもきわめて審議時間の少ない、ここで、はたして成立することが可能なのかどうか、ものごとがそのことによって好転していくのかどうかという点に大きな疑問を持っていて質問をしているわけであります。そういう点をひとつ踏まえて御答弁いただきたいと、このように思います。
 初めに、先ほど君委員からも、いろいろ認定審査についての問題点が提起されておりますが、認定審査、主治医と審査会と、この関係についてどのように運営されますか。
  〔理事金井元彦君退席、香具長着席〕
#40
○政府委員(橋本道夫君) 主治医と認定審査会の問題でございますが、患者さんはまず主治医から、あなたはこういう病気である、それが、指定地域の中で指定疾病にかかっておるということが、まず第一段階として行なわれます。そこで主治医が診断をいたしまして、その主治医の診断書を添えて、患者さんは認定審査会にその請求を始めるわけでございます。
 その場合の請求に二つございまして、一つは病気の認定という問題と、障害の補償に関する認定でございます。その場合に、主治医がどの程度までの所見をつけてこられるかという問題がございます。そのためには、慢性疾患でございますので、どの程度長い期間を見ておられるかという問題と、もう一つは、主治医の方がどの程度まで検査を御自身のところでおやりになれるか、あるいは御自身の身の回りのところで検査施設を使っておやりになれるか、こういう問題がございます。
 そういうことでございまして、現在の認定審査会の実情を見ておりますと、診断面とそのほかの所見というのは、あまり多くのものを実はお願いをいたすことができないわけでございます。なるべく簡素化してくれという御要望が、主治医の側の方にはあるわけでございます。診断面につきまして、これらの主治医の御意見を非常に重んずることは全く当然のことでございますが、どういうぐあいにそれを評価をしていくか。評価と申しますと、障害の程度であるとかそういう問題になりますが、そういう問題になりますと、やはり客観的な検査をしなければいけない。その検査をする場合に、主治医御自身が施設を持っておられる場合には、これはその検査のデータを使うということが起こりますが、主治医御自身がお持ちでない場合、別のところで検査をするという場合にどうするかという問題がございまして、これは私どもは別のところで検査するところを特定しようという考え方は持っておりませんが、どうしても施設の能力として、公的なものか、あるいは医師会の共同の検査施設か、あるいは非常に能力のある私的病院というようなところになろうかと思います。そういうことでございますので、主治医の意見を重んずるということは、これは大原則でございますが、障害の評価ということになりますと、どこで検査をするか、それをどのようなぐあいに認定審査会が扱われるかというところの要素も、大きく入ってくるということを申し上げておきたいと思います。
#41
○小平芳平君 先ほどの君委員の提起された問題も、結局、専門医療機関の問題だと思うのですね。これは城戸局長も先回、水俣病について熊本県の審査会が非常に多くの件数をかかえておられる、それに対して審査会の委員を増員するだけでははたしてどうだろうか、むしろ主治医のそうした診断が肝心だということ。そこで、いまお答えのように、主治医の診断が尊重されることが大原則だと。しかし、認定審査をするにあたって、はたしてどう評価するか、どう判断するかということ、それにはやはり専門医師の養成、また医師の確保、医療機関の確保ということが一つの前提になると思います。これは直接環境庁でそういうことができるのかどうか、その点はいかがですか。
#42
○政府委員(橋本道夫君) いま御指摘の問題は最も根本的な問題でございまして、従来は、問題の起こった地域の医師会の方々とか、あるいは大学の先生、あるいは中央のその分野での専門の先生の御尽力を願って、それで現在までの体系をやってきたわけでございますが、まだ十分なものでございません。その点をどういうぐあいにこれから固めていくかということは、きわめて大きな問題であると思いますが、ことしにおきましても、医師会の方々にそういう正しい知識を持っていただくということはきわめて必要でございますので、日本医師会でもそのような研修をしていただくというようなこともございますし、また、公衆衛生の医師がそのようなものを正しく理解している必要があるということ、これも一つございます。住民の生活の最も身近なところにいるのは、保健所の医師というのは最も身近なところにおるわけでございまして、公衆衛生におきましても、そのようなことに特に意を用いたコースを開いていただいておるという状態でございます。また私ども、いままで厚生省からの御連絡によりますれば、この法律で設けられますメディカルセンターでございますか、その中に公害医療の部門を設けてやっていこうということで、非常に積極的に考えておられるということでございます。また水俣の問題につきましては、現在、研究のセンターということについてどうかという準備が進められ始めているという段階でございます。
#43
○小平芳平君 ここで水俣病の場合はセンターというふうに、まあ前進しようという点、また、過去よりも前進してきた点についてはそうだと私も考えますが、いかにせん、この公害にかかわる健康被害というものに対する専門的な研究、それから治療方法の解明といいますか、研究といいますか、そういう点は、いま程度の御答弁程度のものしかありませんか。どうですか。
#44
○政府委員(城戸謙次君) 水俣病の問題が特に触れられておりますので申し上げますが、水俣に関しましては、先般も公害保健課長が現地へ参りまして、県のほうといろいろ打ち合わせをやっているわけでございます。それで、特に認定審査会の審査の問題に対しまして、どういうぐあいにして今後促進していくかという点につきましては、やはり前提として精密検査が非常におくれている。精密検査の場合、これはだれでもよければ、いろいろ協力のしかたもあるわけでございますが、特に審査会の先生方の強い意向もございまして、相当の専門的知識を持った人だけに限って精密検査を実施していきたいという御意向が強いようでございます。
 そうしますと、おのずから人的な限界がありますので、そういう点もありまして、市立病院に付設している検診センター等も必ずしも十分機能していない面があるわけでございます。むしろ、そういう精密検査体制を今後どう確立していくかという点でございまして、これに関連しまして、私どもとしまして、厚生省の国立病院あるいは療養所の陣容等をできるだけ協力させたいということで、厚生省にもその点を依頼し、県と接触をとるようにやっておりますが、その場合、病院側からは、むしろ先生おっしゃったような意味での専門的な研修を前提としてやってもらいたいという希望も出ております。こういうことをどういうぐあいに今後かみ合わせて、認定を促進していくかという点につきまして、さらに努力してまいりたいと思っています。
 それとの関連で、水俣病のセンターにつきましては、特に研究及びいまのような精密検査を含みます診療ということを中心とした機関を考えてもらいたいという要望が、現地から出ているわけでございます。これにつきましても、近く専門家からなる懇談会を発足させて、具体的検討に入りたいと思っているわけでございます。
#45
○小平芳平君 まあ前進ではありましょうけれども、これは厚生省のほうがもっと医療制度そのもの、あるいは医療基本法というような構想も、かつては国会に提案しながら、また引っ込めたりしたりしておりますから、そういう点、ひとつ政府部内の調整をとりながら、公害に対する専門的な研究をもっと強く進めていただきたいということを要望いたします。
 それから補償給付の種類、ずっと幾つかあげられておりますが、この補償給付の種類と、それから水準、これが実態に合うかどうかが問題だと思うのですね。今度の健保改正で、政管健保の場合、たとえば埋葬料が三万円になったということはもう何年ぶりの、それこそ十倍以上に引き上げた改正になっているわけです。そういう時代おくれな給付では意味をなさないわけですから、各給付につきまして、全体として毎年改定される方針かどうか、いかがですか。
#46
○政府委員(城戸謙次君) この中で障害補償費等の基礎月額をきめてやっていくもの、これにつきましては、当然そのベースに置きます労働者の賃金水準が変わりますので、毎年考えていきたいと思っています。また実費弁償的なものにつきましても、これは物価等の変動がありますから、できるだけ毎年改定するという方向でやってまいりたいと思っています。
#47
○小平芳平君 ということは、すべてを毎年変えていくということですか。
#48
○政府委員(城戸謙次君) 基本的にはそういう考え方でございます。
#49
○小平芳平君 それから、定期的な補償給付は毎月支払われるような体制になりますか。
#50
○政府委員(城戸謙次君) これは、定期的な給付は月を単位として支給されるものでございますが、実際の支払いにつきましては、事務的な点もございまして、十一条できめてございますように、二カ月に一度支払うという体系をとっておるわけでございます。衆議院の附帯決議でも、できるだけ毎月払えるように検討せよという条項もございますが、これは事務的な自治体の能力からいたしまして、現在ではできないと、こう考えております。
#51
○小平芳平君 二カ月に一回ならできる、毎月はできないということですか。
#52
○政府委員(城戸謙次君) さようでございます。一部の自治体におきまして毎月やっているところも独自の制度としてございますが、実際問題としまして、これだけ大きな給付をやります場合には、むずかしいというのが関係者の意見でございます。
#53
○小平芳平君 衆議院の決議にもありますように、そう生活にゆとりのある人ばかりではないわけですから、定期的なものは毎月支払えるように事務体制を整備していただくことが肝心だと、このように考えます。
 それから、公害保健福祉事業、これは、立案された環境庁としては、相当新しいといいますか、一つの今度の補償法案の肝心なところだというふうに思っておられるでしょうが、もう少し具体的にお答えをいただきたい。
#54
○政府委員(城戸謙次君) これは四十六条でございまして、一部衆議院で修正がなされておりますが、私どもとしましては、これは二つの体系があるわけだと思っておるわけでございます。その前段は、被認定者の健康を回復させ、その回復した健康を保持させ増進させるという、被認定者を中心とした施策でございます。二番目は、指定疾病による被害を予防するために必要な事業、この二つを公害保健福祉事業ということで考えているわけでございます。
 どういう事業があるかということでございますが、これは衆議院の修正では、リハビリテーションに関する事業と転地療養に関する事業を例示してございますが、なおいろいろのことが地域々々のニードに応じて考えられるわけでございまして、そのどういうものをやるかにつきましては、都道府県知事あるいは政令市長のほうで立案をして、環境庁長官の承認を受けてやる、こういうぐあいになるわけでございます。実は、これをもっと具体化することができればよかったわけでございますが、この法律の作業にかかって以来非常に期日がございませんで、そこまで十分なる詰めができておりません。いま自治体のほうでもいろいろ要望等を調査しておりますから、その線に沿ってさらに具体化してまいりたいと思っております。
#55
○小平芳平君 補償のほうは全額加害者負担で、それから保健福祉事業のほうは公費と企業の半々ということですか、どうしてそこで公費を半分出すわけですか。
#56
○政府委員(城戸謙次君) この公害保健福祉事業、いま申し上げました二つの体系の中で、そのいずれにおきましても、従来の形では、国なり地方公共団体が公共的な事業としてやってきた面がたくさんございます。たとえば病院だとか、リハビリテーションのための施設だとか、いろいろなことがあるわけでございます。特に後段の疾病を予防するための施設というのは、また今後とも公共団体中心の行政のレベルでやっていかなければならぬことが多々あるわけでございます。
 ただ、私どもこの事業を行ないます場合、その二つはなかなか分離できないのじゃないか、公害病患者だけの病院あるいはリハビリテーション施設ということが、なかなかむずかしいというような場合もあり得るわけでございまして、この二つを一体としてとらえまして公害保健福祉事業といたしますかわりに、その中に国なり地方公共団体のほうからも経費を一部負担する、こういう体系をとったわけでございまして、完全なる補償給付とその点が違っているわけでございます。
#57
○小平芳平君 そこで、公費負担が半額入る上に、事務費は全額公費負担ということは、そうした経費は加害者負担が原則なわけでしょう。要するに、公害発生源において完全な救済と原状回復につとめるということが原則なわけでしょう。ですから、一たんは公費負担しても、それは今度は加害者から回収するということが原則ではありませんか。
#58
○政府委員(城戸謙次君) 私ども、補償給付に要する経費につきましては、先生おっしゃったような線で考えているわけでございますが、この制度におきまして、事務費あるいはいまの公害保健福祉事業につきましては、公費を導入するということを考えているわけでございます。この制度を全く企業だけの制度として、自発的な制度としてやっていく分におきましてはそういうことを考える必要はございませんが、やはり公的制度として定型化していくというからには、それだけ国なり自治体なりの責任ということもあるわけでございますから、その現在の法律に書いてありますような事務費についての一部負担あるいは公害保健福祉事業についての負担ということは、決して基本的に事業者責任の原則ということにもとるものではないと、こう考えております。
#59
○委員長(森中守義君) 速記をとめて。
  〔速記中止〕
#60
○委員長(森中守義君) 速記を起こして。
#61
○沓脱タケ子君 本法案について、審議の過程でいろいろ意見が出ているわけですが、私は、実施をする期日ですね、制定後一年以内にということに法案はなっておりますけれども、実際上、実情はどうかといいますと、どうしても早く実施をしてほしいというのが、関係府県あるいは地方自治団の切なる要望になっておるというふうに考えるわけです。先日の参考人の意見聴取のときにも、横浜の方が、すみやかにということを何回もおっしゃっておられましたけれども、そのとおりだと思いますので、そういう点について、これは下部の実情では、たいへん無理をしてやっていて、特に来年の四月一日からは当然この制度が実施されるであろうというふうなことが予定されて、金が集められているというふうな中では、どうしてもそういった点を配慮して、一日も早く実施ができるということを考えていただかなければならないのではないかというふうに思いますが、その点についてだけお伺いをしたい。
#62
○国務大臣(三木武夫君) これは一年以内ということになっておりますが、いま御指摘のように、地方においては一日も早く実施してもらいたいという要望が強いわけでございますから、その一年以内をできるだけ、いま何月ということはちょっと申し上げられませんが、それを早めて実施をしたい、そのためにいろいろな政令の制定も進めたいと考えております。
#63
○委員長(森中守義君) 速記をとめて。
  〔速記中止〕
#64
○委員長(森中守義君) 速記を起こして。
#65
○小平芳平君 昨日、三木長官にはいろいろ質問いたしまして、公害に対する企業のあるべき基本姿勢、あるいは政府のあるべき基本姿勢について、三木長官からはずいぶん積極的な答弁をいただきましたが、直接その任に当たる通産大臣に、あらためて御所見を承りたい。三項目にまとめて質問いたしますので、お答えをいただきたいと思います。
 第一は、すでに発生している患者を救済する措置は必要なことです。しかし、原点は、公害をなくすことが原点であるべきはずです。あの公害国会で多くの法案が成立をいたしました。そのことによってどれだけ公害が減ってきたか。それはことしになってからも、水銀、PCB汚染等が大問題化して、そうして直接健康被害を受け、あるいは漁業者は漁業にも出られないというような、全国的な被害を受けたわけです。したがって、この公害をなくするという原点に立って、立地規制、操業規制、あるいは汚染物質の総量規制、こういうような点について具体的な御答弁をいただきたい。
#66
○国務大臣(中曽根康弘君) 無公害社会の建設ということを、通産省は省としての政策の第一項目、重点政策の中の筆頭に実は掲げておりまして、そういう面から諸般の努力を継続してきたところでございます。しかし、遺憾ながら過去の蓄積の問題がございまして、過去の蓄積された水銀やPCB等の汚染というものの処理がまだ十分にいかない、そういう問題がありまして、御存じのような御迷惑をおかけしていることは、はなはだ遺憾な事態でございます。しかし、できるだけ早期にそれらの問題も環境庁等と連絡をとりまして処理して、過去からの影響を早く絶滅する、そして歌規のもの、現在やっているもの等につきましては、これは国のきめた基準を厳格に守らせ、それが達成するに従って基準をさらに強めていく、そういう形で規制を段階的にきびしくして、無公害社会建設に向かっていきたいと思っておるところです。
 それで、将来の問題等につきましても、今度工場立地法という法律を通していただきまして、それによりまして諸般の規制を事前に行なう、そういうことにした次第でございます。この工場立地法が施行されますと、かなり将来の問題については有効に作用していくのではないかと思っております。
 それから総量規制の問題でございますけれども、総量規制の問題は、なかなか科学的にはまだむずかしいところがございまして、一体、容量をどういうふうに規定するか、その容量の中における公害関係のパーセンテージの問題、それから各業種別にそれをどういうふうに振り分けていくか、あるいはそれをどういうふうに測定していくか、そういうような問題について、まだ科学的な研究が解決していないところがあるわけでございます。それらの問題もできるだけ早期に科学的に解明していきまして、そして総量規制をできるだけ早くやれるように、私たちも努力していきたいと考えておる次第でございます。
#67
○小平芳平君 場合によっては操業の一時中止とか、短縮とか、そういう点についてはいかがですか。
#68
○国務大臣(中曽根康弘君) これは公害規制の関係諸法規がございますから、それに抵触するおそれがある事態が出てさましたら、おのおの法規を根拠にいたしまして、操業の一部削減、あるいは情勢によっては停止、そういう措置ももちろん可能でありますし、その事態が出てくれば、われわれとしても措置をするつもりでおります。
#69
○小平芳平君 アメリカの例をとるまでもなく、空気にしても水にしても、五年先、十年先の目標をきめて、それまでにあらゆる可能な技術を開発をして達成するという目標を立てることが必要だと思うのですが、いかがですか。
#70
○国務大臣(中曽根康弘君) 同感でございます。でありますから、この間うち問題になりましたNOxの問題につきましては、年限をきめて、目標をきめて、そして努力させようとしておるところでございます。
#71
○小平芳平君 それでは第二の問題としまして、そうした通産省の方針にもかかわらず、いまなお多数の公害たれ流しが続いているという点、具体例をあげると切りがありませんし、時間がありませんので一々申し上げませんが、ただ一つ、具体的に昨日問題提起いたしましたのは、休廃止鉱山です。休廃止鉱山は、四十六年から国が三分の二、県が三分の一で工事を進めるということになっておりますが、第一、国の監督のもとで鉱山は採掘されてきた。しかし、それが休廃鉱になった現段階では、地域住民に無限の鉱害を、これから何十年か何百年か続く無限の鉱毒を流し続けている、こういうような状況について、根本的な対策を至急立てるべきだということについてはいかがですか。
#72
○国務大臣(中曽根康弘君) 休廃止鉱山の処理につきましては、国はもとより、関係都道府県におきましても知事さんから非常な御陳情もありまして、われわれも順次政策を強めてきたところでございます。それで、大体地方が中心になって工事を行なうことにシステム的にはなっておりますが、費用の三分の二を国が補助する休廃止鉱山鉱害防止費補助金制度によって現在は進めておるところでございます。今回、金属鉱物探鉱促進事業団というのを金属鉱業事業団といたしまして、この鉱害関係を行なえるようにいたしまして、この事業団が、補助金工事の実施にあたっては必要な事前調査、資料の収集、測量並びに技術指導等行なわせるように改革いたしまして、地方公共団体の負担軽減も、事業上金属鉱業事業団がかなり肩がわりしてやれるような、そこまでもいまやろうとしておるところでございます。
 いままでの休廃止鉱山の工事補助金を見ますと、四十六年度は八千七百万、四十七年度は二億三千二百万、四十八年度は七億、来年は十三億三千四百万円要求しておるところでございます。今後とも休廃止鉱山につきましては、政策を強めていきたいと考えております。
#73
○小平芳平君 どうも、局長にあれほどきのう説明したのに、大臣によく通じて、ないようですが、その事業団は休廃止鉱山にはいますぐ適用にならないわけでしょう。したがって、問題はこの費用負担を国がもっと持つべきだということを言っているのです。
#74
○政府委員(林信太郎君) ただいま大臣の御答弁申し上げましたとおりでございますが、補足させていただきたいと思います。
 ただいま小平先生御指摘のように、無権者の場合に、国が補助金という形で府県が主体でやっておりますが、それでは迅速に事が運びかねておるという実情でございます。その点は昨日、三木長官から御答弁がありましたような趣旨に私どものほうも同感でございます。大臣のいまの御答弁も、そういう内容のものであると私どもは了解しております。
#75
○小平芳平君 きのうの三木長官の答弁は、国が三分の二負担ということに固執する必要はない、事業は県が行なうにしましても、もっと国の負担をふやすことで相談しますということですので、ひとつ通産大臣、そういう趣旨で御検討いただきたいと思います。
 それから最後に三番目としまして、公害発生企業は賦課金だけ出せばいい、それはそんなことはないと言われるでしょうけれども、何といっても国のつくった制度、国のつくった法律に基づいて賦課金を出しているわけです。そうすると、今後は公害に対する企業の責任を追及された場合、あるいは直接交渉とか訴訟とか、いろいろなケースが起きてきた場合にも、とにかくわが社は国のきめた制度によって賦課金を負担しております、この範囲でまずやってください、こういうふうになって、企業の責任が明確を欠いてしまう。それで、こうして公害闘争が激しくなってきた、企業が責任のがれのためにこうした制度をつくって、一つ一つの企業が直接加害者企業として浮き彫りされないで済むのじゃないかということをおそれるわけですが、これについてお答えいただきたいと思います。
#76
○国務大臣(中曽根康弘君) この補償法に基づく賦課金を払ったからといって、企業は公害に対して免罪符をもらったものではないとわれわれは考えております。そういうような被害が出れば、この補償法の内容と同時に、企業自体は並行してやはり責任も持ち、被害者のめんどうも事態に応じてやらなければならない。これでもうすべて終わりだという考えはとっておりません。
#77
○杉原一雄君 実は九月十六日に、水俣病で非常に苦しんでおいでになった方、松本俊郎さん、五十六歳、平均年齢でいえばまだ二十年のよわいを残しながら、自殺をされた。しかも、この方は水俣病患者と認定された方で、なおかつ自主交渉の先頭に立って、みずからの力で問題を打開すべく努力された方であります。ところが、「世間さまにはずかしい」あるいは「仲良くしなさい」、これは家族に対しての呼びかけですが、「迷惑をかけた」、こうしたことを走り書きにノートに残しながらなくなられました。松本さんと一緒に自主交渉でがんばりました川本輝夫さんが、たぶんそれはなおる見込みがないとあきらめたのだろう、こう述懐しております。
 でありますから、いまここで公害健康被害補償法案の論議をやっているわけですが、きのうの論争の中で、原状に復帰することこそほんとうの意味の被害補償じゃないか、こういう論議があったことを中曽根通産大臣も胸にしみながら、次の問題が実は起こっているわけです。それは、これからひとつ無公害社会をつくる、だが、残念ながら過去の蓄積がございますので、にわかに問題解決ができないことはまことに残念に思う、と。ところが、小平さんが指摘されたように、現在もなおかつ、たれ流しその他の多くの問題を起こしている工場等があるわけです。あなたの所管の中で問題を起こしているわけです。
 きょう、はからずも非常に小さい記事で「朝日」が書いているのに、チッソの株が七十円に値上がりしたそうです。これは朝日の経済欄の「情報ファイル」というところに載っているわけですが、こうした七十円をどう見るかということで記者諸君が分析を試みているわけですが、ここに、何といいますか、ヤマタノオロチみたいな企業の回復力といいますか、おそろしい力が存在しておるわけです。そういう評価のしかたもあるが、それを別な観点から見ると、これはたいへん盗人もたけだけしいなというような見方も成立すると思うのです。これが日本の企業の全体をあらわすものとは思いませんが、所管の企業の中にそういう企業が存在するということ。でありますから、松本さんの自殺と、このチッソの株が奇妙な株高になったという現象との間に、私は一連の大きな今日的な、根本にひそんでいるおそろしいものを実は感じます。
 田中さんが列島改造論で、福祉は天から降るものでない、経済成長なくして福祉はあり得ないというようなことを堂々とお述べになっておるわけです。こうした経済成長論、経済に対する考え方、私はこれは大きな問題だと思いますが、いまそのことについて議論をするいとまがございません。ただ、現在時点の問題として、もう一つ私が身ぶるいをする思いがするのは、公害が輸出されているという事実が指摘されております。それはタイ国のメナム川に水銀が、日本とタイとの合弁会社の中から堂々と流されている。しかも、言いわけは、タイ国の規制基準よりもはるかにシビアにやっているので、やむを得ぬじゃないかといったような開き直り方を実はしているわけですが、これは日本の今日の事情から考えれば、許さるべきことじゃない。タイ国だからたれ流してもいいじゃないかというような考え方が、やはり資本輸出の中に、そうしたものを計画する側の中に存在するというところに、あなたがいま所管する通産行政の中にたいへんな問題がひそんでいるじゃないかということを、これは答弁を求めようとは思いません、そういうことを念頭に置いて、先ほどの小平先生とのやりとりを私実は聞いておったわけです。
 私から指摘するまでもなく、公害基本法の中では、まず事業者の責務が第三条できつくうたわれております。加えて、第四条では国の責務もうたわれているわけです。原点はここらから出発すべきだと思いますが、いまあえて通産大臣に明確な決意表明をいただきたいのは、これから私が申します分は、杉原個人の問題ではありません、党独自の問題ではなくして、この法案の、いよいよあと残された二人の質問を終えて結論を出したいと思いますが、それにあたって通産当局の決意を明らかにしたいということで、実は理事会で相談をしたことをいま代表して、文書を読みながら申し上げます。その中から最終的には通産大臣の決意表明をいただきたい。事の次第によっては――これは委員長の言明でありますが、事の次第によっては、理事会でもう一度この法案に対する最終処理の決意を固めたいと、こういうことでございますので、その辺を念頭に置いてお聞き取りいただき、最終的な決断をいただきたいと思います。
 通産行政の過去の歩みとして、一つ、終戦後の物資の確保、増産体制の確立。二番目に、昭和三十年代における技術革新・生産設備の大型化、スクラップ・アンド・ビルド政策による設備投資の推進、コンビナートの形成。三番目には、水俣、四日市をはじめとする工業都市における公害の激発。四番目に、新産業都市、工業整備特別地域の形成。五番目に公害の全国化ということになります。
 そこで次の、公害状況と通産行政との関連では、一つ、三十年代後半に特に公害状況が顕現化し、深刻な事態になったにもかかわらず、公害規制はいつでもあとを追い。そして二点として、公害規制法の立法は、三十年代においてはわずかにばい煙規制法、水質保全法のみであった。三点として、公害が激化しながらも、公害をなくする努力が通産行政の中では積極的に行なわれず、常に住民からの突き上げによって消極的に対処してきた。四番目に、資源の利用、消費、廃棄物の処理・無害化など生産と環境保全の一貫した体系を考えずに、生産第一主義を推進してきた。五番目には、公害発生源たる企業に対して、環境保全に関する企業倫理の確立の指導を怠った。六番目に、その結果、全国的に公害をまん延させる。七番目に、特に通産行政と企業の癒着が指摘された。第六十四国会、いわゆる公害国会の衆議院で社会党石橋書記長の指摘した、四日市石原産業の施設の増設認可にあたって、通産省の出先機関が企業の違法行為を認めたばかりでなく、違法行為に手をかした事件は、癒着の典型的な例である。八番目に、通産官僚の企業への天下りはその後もあとを絶たない。このような状態で、公害防止、規制のための真の行政が進められるかどうかはなはだ疑わしい。
 でありますから、その見解の上に立って、今後の通産行政のあり方について、第一点、まず環境保全を生産第一主義に優先させ、地域住民の生活環境の保全、健康の保護をはかることを行政の本旨とすべきこと。二番目に、住民の完全な納得がなければ企業の立地をさせないこととすべきこと。三番目に、企業の倫理を確立し、企業みずからが公害を出さない努力をするよう、きびしい姿勢で行政に当たること。公害企業に対しては、場合によっては、金融、税制、立地、操業制限等についてきびしい制裁を課するなどの方策もとるべきこと。四番目に、ローマクラブが指摘したように、将来の資源の枯渇、環境保全の観点から、資源多消費型産業、公害発生型産業の立地を制限し、無公害型産業へ転換するなど、産業構造を根本的に変えるべきではないだろうか。そうして、通産行政の今後十年ないし二十年の長期展望に立って、方針を確定すべきときであると思うが、どうか。
 以上の点について大臣の所信をお伺いしたいと思います。
#78
○国務大臣(中曽根康弘君) いま御指摘になりました各項目を拝聴いたしまして、御指摘の点が、遺憾ながら当たっていると思う点が少なくございません。この点は、われわれの政治または行政の足らざるところであると深く反省しておる次第でございます。特に水俣病等を見ますと、昭和三十四年熊本大で指摘して以来の経過を見てみますと、行政が十全でなかったという点が深く反省されるのであります。こういうようなことが今日の時点において行なわれてはいないか、将来において行なわれる可能性がなくはないかという点をわれわれもきびしく点検いたしまして、ああいうような過失を再び起こさないようにしなければならないと、そう思っておるところでございます。
 ただいま御指摘の第一点の環境保全の問題、生産第一主義を改めよというお考えは全く同感でございまして、通産行政自体を、私着任以来福祉優先、国民福祉のための通産行政という考えに立ちまして、今議会におきましても、通産省の機構の大改革をやりまして、国会でも御承認いただいて、そういうような機構の改革と人事の刷新を実はやって、そういう新しい航路に向かって通産省を出発させようと思って、いまスタートしたところでございます。
 第二番目の立地の問題につきましては、住民の納得を得るということは非常に重要なことでございます。今度国会を通過させていただいた工場立地法は、この点の御期待にこたえることができると思います。これはかなりきびしい規制をかけてございまして、これから新規工場をつくるという場合には、公害問題を離れて工場立地はあり得ない、環境との調和を離れて新しい工場はつくれない、そういう規制条件を整えておるところでございます。また、その中にも、住民の要望等を聴取するというところもございます。
 それから第三番目の企業の自律の問題、企業の倫理性の問題、この点につきましては、これはわれわれが申し上げるまでもなく、当然企業としてやるべきことでございまして、最近、企業が社会的責任を打ち出してきているところは、これはもとより当然でございますけれども、その言っていることを実行させるために、通産局やその他の機関を通じて各現場現場ごとに、その社会的責任を遂行しているかどうか監視してまいりたいと思っております。
 第四番目に、取り締まり、制裁の問題でございますが、法規に違反するような措置をやったものについては、法規に基づいて容赦なくやるつもりであります。今日、公害問題というものは民族的課題でございまして、このときに思い切ったことをやっておかないと、禍根を千年に残す危険性もございます。しかし、その基準それ自体は、もちろん科学的な根拠に立った基準でなければなりません。国会を通過させていただいた諸法規に基づいて、きめられた基準についてはきちんきちんと守らせるように私たちは厳格にこれを行ない、違反したものはそれに基づく制裁を容赦なく加えていく考え方でおります。
 最後にローマクラブの報告に基づく諸般の措置でございますけれども、確かにこれは日本国のみならず、全世界的な、いわば地球上に住んでいるものの共通の課題として登場してきつつあるように思います。先ほどの御指摘の中で、公害を輸出しているのではないかという御指摘がございましたが、この点についても、われわれは海外にいる企業について、もちろんその国その国によって公害の基準というものはございます。環境あるいは人口の密度その他によって基準はございましょうけれども、必ずしもその基準に甘んじるというものではないだろうと私は思います。最大限の努力をして、その基準というものは最低の措置であると考えなければならぬ、そういうように心得ております。
 なお、省資源あるいは公害防止ということを産業政策の基本にするということも同感でございまして、七〇年代の通商産業政策の方向について産構審の諮問と答申を得ておりますが、そこでもその点が強く指摘されておりまして、われわれはその道を順守しつつ、産業構造の改革に向かって進んでまいるつもりでございます。
#79
○委員長(森中守義君) ちょっと私から。非常に重要な点がありますから一点だけお尋ねをしておきます。
 いまさらでもありませんけれども、現在の規制法というのは、大気汚染防止法は環境庁所管、それから水質汚濁防止法は環境庁所管、海洋汚染防止法は環境庁、運輸省共管、下水道法が建設省、廃棄物の処理及び清掃に関する法律は厚生省、環境庁、大体要約すればこういうものなんです。現行法のもとにおける規制法ですね。ですから、いま杉原理事から申し上げましたように、今回のこの補償法というものが、いろいろな識者の意見がある。中には、被害者に対する補償であって原状回復等を目的としたものでない、つまり一面補償であり、全面補償になっていない、こういうきわめて峻烈な意見もある。ですから、いまのようなことがどうしても側面として今回の法案にセットされないとうまくないのじゃないか、こういう見解を私は持っている。
 しかし具体的に、いま通産大臣が言われますように、今回の工場立地法がまさにその側面を補うものであるという御趣旨のようですが、残念ながら工場立地法の全部を私はきわめておりません。また、付託された委員会が違いますので、その辺のことは必ずしも私の言うことは適当でないかわかりませんが、今回の工場立地法が少なくとも将来にわたるものであったにしても、過去のものをどうするか、現実に存在する加害工場に対してどうするかという、この辺のことがはっきりしないのですね。
 そこで、いま私どもの頭の中にありますのは、なるほど通産大臣は、それら工場に対して改善命令を出されるというようなことが、いわば最高のものになると思います。かたがた環境庁長官が、設置法の一般規定といいましょうか、あるいは一般原則として勧告権というものをお持ちになっている。ですから、通産大臣に勧告が出される、その報告を求められるということが、おおむねこの辺の一つの仕切りになる程度にとどまっている。さて、こういう程度のものでいいのか、悪いのか。
 ですから、私はまず第一点としては、環境庁長官が設置法上の権能としての勧告、これは環境庁の伝家の宝刀として、しばしば抜くべきものであるかどうかという議論があるでありましょう。しかし、通産大臣が言われる、今回の工場立地法によってこれは絶滅の方向に向かうのだ、新しい船出をするのだと言われるけれども、過去のものに対してどうするかという、その点が明確でない。むろん、今回の工場立地法というものが、通産大臣のおことばによれば、およそ公害というものはこれでとらえられる、全部捕捉するんだという御所見のようですけれども、必ずしもそのことがどんぴしゃり当てはまるかどうかということは、私はかなり疑問がある。未来のものと現在までのもの、この使い分けをこの際は考えなければならぬと思うのです。ですから、改善命令が出されて、びしびしと取り締まると、こう言われるのですが、だれが、どういう方法によって、そういうものが摘発をされていく体制がとられていくのか。残念ながら、改善命令は出した、企業者の良識と善意に期待するという以外に、いま正確な答えは出てこないと思うのです。
 そうなりますと、環境庁の固有の権能として、勧告権は縦横無尽に機宜に応じて発動されても私はいいと思いますし、また勧告をされたものが、すべからく行政上の拘束力を持つのか、あるいは尊重という程度にとどまるのか、この辺は他の勧告権の中にも非常に問題がありますけれども、そういう勧告ということが、いわば現在期待し得る既存の公害に対しての歯どめ以外に考えられない、こういう気がしてしかたがないのです。ですから、工場立地法という将来のものに対しての歯どめ、いままでのものに対してはどうされるのか、その辺のお考えをひとつ明らかにしてもらいたいのと、環境庁長官がお持ちになっている勧告権というものは、どういうときに、どういう認識のもとに発動されていくのか、この辺のことをこの機会に伺っておきたいわけです。
 それと、いま一つ通産大臣に、先般、例のつなぎ資金というものが全国の自治体に出されましたね。これの実績を私の郷里の熊本に見てみますると、あまり実績があがらない、期待したほど申し込みがない、こういうことのようですね。その内容をずっと吟味していきますと、当初この問題のときに提起をした、つまり国民金融公庫等が金融ベースでこの処理をするならばきわめて困難になるであろう、借り入れる人もないであろう、こういうことを主張したわけですが、そのとおりになっている。たとえば、行商へのつなぎ資金が一応通達で約束されておりながら、立ち売りやっている人たちに、仕入れ伝票を持ってこいという実際問題として不可能に近いような条件が付されている。この程度のものであれば非常に条件がむずかしいので借りないほうがかえっていいというようなことが、かなり広がってきておりまして、熊本県の実態からしても、該当者が相当多数に及びながら、実際処理されている件数というものは、ほとんどその率において一%ないしは一・五%程度にとどまっておるようであります。ですから、この通達の本旨というものは何であるか、窓口機関における金融ベースを中心にしておるのとは、どうもおよそかけ離れた現状になっておるわけです。
 ですから、これはこんなことを言えばずいぶん意地の悪い言い方だというような受け取り方になりましょうけれども、あれは、ほうはいとしてわき起こった被害補償に対する世論操作であり、鎮静剤をやったのじゃないか、ほんとうに政府はやる気があったのかどうなのか、こういう意見がやっぱり地方にあります。また今回のこの補償法も、ある意味では世論操作であり、世論鎮静のためにやったのではないかという、こういう批判等も実はそろそろ生まれ始めた今日でございますので、このつなぎ資金の実際の状態というものをどういうぐあいに把握され、いま私が申し上げる事実を基礎に踏まえたならば、どういう処理をなさるのか。
 前段と後段、二つのことについてお尋ねを申し上げておきたい。
#80
○国務大臣(中曽根康弘君) 先ほどのつなぎ資金の問題につきましては、あの当時、厚生省から基準のようなものが発表されて、非常なショックを受けて、そのために関係業者の売れ行きがばったりとまったりして、なりわいにも差しつかえるような情勢が起きまして、国会の先生方からも非常に強い御指摘がありまして、政府としては行政措置でとりあえず一定の基準をきめて、結局は無利息のお金をお貸しする。それで国民金融公庫を通じて、たしか二百五十億円のワクを特に増配して設定したわけでございます。
 いまお話を承りますと、なるほどそういうことがあるかもしれぬという気がいたします。行商をしている人とか末端でやっていらっしゃる方々が、国民金融公庫へ行っていろいろ手続するということは、いままでの国民金融公庫のやり方から見れば、寄りつけないようなことがあるかもしれません。そういうことが原因でいままでの申請が少なかったということがあるとすれば、これは迷惑を受けておる人が実際はかなりあるわけでございますから、よく県当局に実情を調べてもらいまして、それによって機宜の措置をとりたいと思っております。
#81
○国務大臣(三木武夫君) いまの環境庁設置法の中の勧告権、環境の保全に関して必要と認めるときは行政の長に対して勧告することができるということになっておりますから、これは必要に応じて活用したいと思っております。現在までのところは、新幹線、航空機騒音に対しての運輸大臣に対する勧告の実例があるばかりでありますが、こういう権限を持っておるわけでありますから、今後は必要に応じて勧告権は活用したいというのが私の意見でございます。
#82
○委員長(森中守義君) 午後一時三十分より再開することとし、暫時休憩いたします。
   午後零時二十八分休憩
     ―――――・―――――
   午後一時五十五分開会
#83
○委員長(森中守義君) ただいまから公害対策及び環境保全特別委員会を再開いたします。
 公害健康被害補償法案を議題といたします。
 休憩前に引き続き質疑を行ないます。質疑のある方は順次御発言を願います。
#84
○杉原一雄君 午前の質問のまくらに申したように、松本俊郎さんの死は、この法を審議している私たちにとっては非常にきびしい告発だと受け取っております。そういう理解の上に立ってこの法案に対する質問を行ない、かつ若干の意見を申し述べて、与えられた時間、質疑を終わりたいと実は思っているわけです。
 松本さんの死を厳粛に受け取ると同時に、先ほど申し上げたように、君さんに言わせれば大資本とはおかしいとおっしゃるのだが、もちろん中小資本を含めて企業サイド、企業の側が公害発生の主たる犯人であるということは、これはもはや常識であります。ところが、その資本はヤマタノオロチのようにあらゆる力を持っておりまして、われわれが片方の首を切れば次の首をまた有効に生かすという形で、われわれ大衆には非常にえげつない考え方を強引に進めてきた経過等もあるわけだし、今後ともそのことが非常に危惧されるわけで、この法案が施行されれば、小平委員が言われるように、これは免罪符になるおそれがあるというような指摘なども、私はただ形容詞ではないと思います。
 特に、最近の資本の動きを見ますと、全く資本投機時代という学者の表現がどんぴしゃり当たるような、資本が農地を大量に買い占め、また株式が法人によって買い占められていく、まさに資本投機時代だと言われるわけですが、そういう資本の動き、経済の機構等々から考えると、公害問題に対処する側の行政当局は、今後ともかなり苦労の要ることだと思いますが、それは単なる個人の努力にとどまることなく、法そのものが相当きびしい法でなければいけないのではないか。そういう観点から、この法をわれわれが扱う場合に、十二分の議論をし、警戒をし、今後の行政当局の運営についても格段の決意を要請したいと思います。
 そこで、実は皆さんの手元にも参っておると思いますが、水俣病患者家族東京交渉団の方等からわれわれの手元に上がりました見解ないし陳情、そういったものを中心にしながら、若干私は、その方たちを代弁するのじゃなくて、その方たちの意見の集約されている点を一、二指摘して、それに対する私の答えを通して、そうした皆さんの不安、疑惑と不満にこたえるような形で議論をしていきたいと実は思うわけです。
 法案の中身でございますが、第一点は、補償金等給付を受ける場合の被害者の認定の問題で非常に差別が起こるのじゃないか、事と次第によっては、被害者でありながら切り捨てられるのじゃないか、こういう問題提起が実はあるわけです。それは、法案そのものをわれわれが見た場合に、法案の中にきわめて抽象的な用語がたくさん出てくるわけです。たとえば第二条等においては、相当範囲にわたる著しい汚染による疾病が多発している地域ということになりますと、この「範囲」の問題、「著しい汚染」あるいは「多発」ということばなど、すべて抽象的であって、常識にまかせるという結果になるかもしれませんが、そのことが、結果的にはやはりおこぼしになる。特に先般の藤野参考人が非特異性疾患の問題について、どこでもゼンソクが起こる、そういう場合に、これは公害の被害者だと認定する場合にかなり問題が起こるだろう、こういう指摘をされた。私そのとおりだと思います。だが、この点について政令段階あるいはこの法の施行にあたっての、環境庁のそれにこたえる心がまえと申しますか、そういうことは心配しなくてもいい、年寄りの冷水だと、こういうことばであるならば、確信あるそういう点についての明解な答弁を実は求めたい。これはきのうの各委員の質問が、やはりその点にかなり集中的に出ておりますので、私は一面総括する意味でもう一度確認をしていきたい、こう思います。
#85
○政府委員(城戸謙次君) ただいま御指摘の点、私ども実は今後法律を運営する場合に、一番気をつけていかなければならないところだと思っているわけでございまして、当然、地域の指定におきましてもあるいは認定におきましても不公平のないように、この法律の第一条の目的に書いてあるところに従った制度の運営ができまするよう努力してまいりたいと思っております。
 ただ、その中に、いまお述べになりました第一種地域にかかる指定地域、指定疾病の問題に関しましては、これが藤野参考人も言われたように、どこにでも通常ある非特異的疾患でございますだけに、その指定をいたします場合、汚染の状況あるいは疾病の多発状況から見まして、一般そこらにあるものと相当違った高いレベルでないと実際に指定ができないということは、当然そうなるわけでございまして、その辺をどういう基準で指定していくかということにつきましては、今後審議会段階で、できるだけ客観的な基準をもって臨みますように詰めてまいりたいと思っておるわけでございます。
#86
○杉原一雄君 法律でございますから、指定地域の外にそういう人がかりに生活した場合に、これに対して特に、特異疾患ならば別ですが、非特異性疾患の場合にそれを被害者として認定することができるかできないか、その点非常に心配になるわけで、お互いに生活をするものでございますから、家庭事情その他で移動されることはあたりまえのことでございますので、その辺のところ。特にそのことが、結果的には法文の中では相当期間ということばにひっかかってくると思うわけです。相当期間ということばの取り扱いの問題、いわゆる生活の本拠、生活のあり方、こうしたものと患者との関係、こうしたことについて、第一種指定地域だと思いますが、指定地域外の人たちについて何らかの認定ができる証拠物件等がそろえられれば、それは政令段階で認知するということも弾力的にあり得るのかどうか、その辺のところをひとつ明確にしてほしいと思います。
#87
○政府委員(城戸謙次君) この問題につきましても藤野参考人からもお話がございましたが、第一種地域にかかる非特異的疾患につきましては、ある人をとりまして、これが公害によるものであるか、あるいはそうでないものであるかということを診断することは不可能だという前提に立っているわけでございます。したがって、その指定疾病にかかっており、しかも指定地域内に居住あるいは通勤しているという外形的な標準をとらえまして、公害による疾病であると認定をする制度を一つの約束事としているわけでございます。ただ、現在の特別措置法と比べますと、暴露要件につきましてもいろいろな点で今度は実態に沿うように改善をしているわけでございまして、たとえば第一種地域である四日市から川崎市に住所を移した場合、通算して一定の定める期間以上であれば暴露要件を満たす者にするとか、通学通勤につきましても同じようなこと、それから居住と通学通勤等との通算を認めるとか、いろいろな点で暴露要件について実態に沿うように改善をいたしております。
 ただ、いま先生御指摘のように、全く指定地域外に住んでおりまして、その人が公害病であるかどうかということを具体的に診断できるかどうかということになりますれば、それは不可能であるというのが私どもの見解でございます。
#88
○杉原一雄君 その次、大きく第二点で問題提起されていることは、補償費は値切られる、それはきのうもきょうも各委員とも言っておられることであり、大臣からもかなり明確な答弁をいただいておるわけですが、もう一度確認をしたいと思います。
 障害補償費のことなんですが、これがいままでの質疑応答のやりとりの中では、労働者の平均賃金、それから労災の六割ということで、中間八割、こういうのが今日の答弁の集約だと思いますが、わがほうの各委員の要求は、そうじゃなくて一〇〇%、こういう要求が実は出ておるわけですが、その辺のところについて再度環境庁長官の見解を当委員会に明示していただきたいと思います。
#89
○国務大臣(三木武夫君) 中公審からの答申もあるわけでございますが、八割というのは、まだそういう明確な形において率をきめたわけではないわけでございます。衆議院、参議院における委員会の審議等も踏まえて、今後できる限りその給付の金額を高めるように努力をしていきたい。少なくとも八割を下るようなことはない。これ以上何とか給付の金額を高めることができぬか、いろいろ検討をいたしたいという考えでございます。
#90
○杉原一雄君 たしか、きのう沓脱さんの質問の中で出たのじゃなかったかと思いますが、医療機関の問題、つまり治療の方法等についての問題でありますが、われわれがよく例にあんま、はりということばを使いますけれども、こうした東洋医学による場合はこれは適用除外という答弁のように受け取っておりますが、はたしてそうであったか、ぼくはちょっと聞き漏らしたわけですが、その点を確認していただいて、もし私の仮説が成立するならば、そのような場合に対する考慮が今後ともあり得ないのかどうか、その辺のところをお聞きしたいと思います。
#91
○政府委員(城戸謙次君) この私どものほうの法律によります診療方針、診療報酬は、いずれ中央公害対策審議会にはかりまして環境庁長官がきめる、こういうことになっておりますので、ただいまの点につきましては、その決定の段階でいろいろ論議を詰めてまいりたいと思っております。
 この間申し上げましたのは、健保での扱いについて申し上げたわけでございまして、健康保険につきましては、医者だとか歯科医だとか、あるいは薬剤師だとか、こういうものと扱いを異にしまして、例外的にあんま、はり、きゅうが医療上必要である、施術が必要であるという場合に、医者の同意がありました場合に、しかも保険者のほうから同意を得て実施する、これは療養費払いとして実施をする、こういう体系になっているということを申し上げたわけでございまして、私どもとしましてはさらに今後検討してまいりたいと思います。
#92
○杉原一雄君 これもまた数回にわたってそれぞれの委員から質問があったわけですが、慰謝料の問題ですが、答弁も私は覚えております。再度その慰謝料の問題について、法四十六条の公害保健福祉事業とかそうしたこと、児童手当その他、そういうことで一応そこには含まれているという理解のしかたをするような答弁をいただいておるわけですけれども、本来のそれぞれの裁判闘争においてかちとったものとは若干距離があるような気がいたします。そういう点では、それをもっと慰謝料的な性格を給付内容等に含めていく、あるいは法四十六条の問題が、よりほんとうに被害者には今後の原状復帰へのそれに近づける有力な布石になる内容を含んだものであるかどうか、これは若干衆議院では例示をされたようでもありますが、そうしたことについての環境庁の構想がもしあるならば、お聞かせをいただきたい。
 言うなれば、慰謝料的な性格をもっと生かしていただきたいし、拡大し内容を充実してほしい。しかもそれは法四十六条で公害保健福祉事業云々と、こうありますけれども、例示されたものはほんの一、二にとどまっているわけですが、環境庁では、今日までたどりついた討論といいますか、意見集約がその程度にとどまっているのかどうか。もう少し突き進んで、その点やりたい、やりますといったようなことなどあり得るのかどうか。その辺のところを、先ほどの自殺行為等も私念頭に置いて、これはただごとではないというふうに思っておるだけに、環境庁の考え方に期待をかけるわけですが、御答弁をいただきたいと思います。
#93
○政府委員(城戸謙次君) 慰謝料の問題についての基本的考えは、中公審の答申の中にありますように、慰謝料問題は基本的には民事訴訟にゆだねることとするけれども、本制度にもある程度慰謝料の要素を織り込み、制度全体の中でどのようにその要素を生かすかという方向で検討し、給付の種類なり給付水準をきめていく、こういうぐあいになっているわけでございます。先生のお話ございましたように、児童補償手当あるいは遺族補償等の中には慰謝料的要素が非常に多く入るわけでございまして、私どもは、いまの御指摘のような点もございますので、そういうものが十分生かされて制度全体のレベル等もきめられるように努力してまいりたいと思っておるわけでございます。
 もう一つ御指摘の公害保健福祉事業につきましては、実はこの法案を提出しますまでに、十分地方のニードがどういうものがあるかということを詰める余裕がございませんでしたから、具体的なものをここに出していないわけでございまして、衆議院の修正の段階で、リハビリテーションに関する事業と転地治療に関する事業が例示としてあげられておる程度でございます。これは実は地方によりまして、非常にこういう関連の事業の実施状況というものが違うわけでございますから、地方のニードに合った一番必要なものをその地方地方においてやっていきたいと思っておりまして、その共通的なものを拾いまして政令で定めていくわけでございまして、御指摘のように、非常にこの法律では重要な位置づけをさるべきであるという御指摘でございますから、大いに今後その辺のニードにつきましての勉強をしますし、それを具体化するように努力してまいりたいと思っております。
#94
○杉原一雄君 その次は、大体いまや常識になっているわけですが、公害問題を考える場合に、PPPの原則ということはもう常識になってしまっているわけですね。そのPPPの原則に即応してこの法案が立案されていると思いますけれども、必ずしもそうではない点があるのじゃないか。そういう点で、賦課金の問題はあとはいたしまして、たとえばこの法案に即応して組織されるいろいろな事業でありますが、それは事務費等はもちろん政府、自治体がやる、公費でまかなう、このことは論議の中で問題はなかったかと思いますが、福祉事業を進める場合に、企業共同負担が全体の二分の一であって、自治体と政府が四分の一・四分の一ですか、そういう事業費の構成になっているかに伺いますが、そうなると、そこらあたりはPPPの原則を少し越えているのじゃないか。自治体、政府というのは公器でございますから、そういう批判が出てくるわけですけれども、その辺のところをどう環境庁では割り切っておいでになるのか。補償費はもちろん企業共同負担でございますから、これはその原則を正直に守られていると思いますが、その点、極言する者に言わせれば、それは全く加害者、企業側を救済するような法案でないだろうか、こういうきびしい批判も実は出ているくらいでありますから、その辺のところをすっきりと解明をしていただきたいと思います。
#95
○政府委員(城戸謙次君) これは前提となりますPPPの考え方でございまして、国際的にはOECDの閣僚理事会で去年の五月二十六日にきまりまして、各国に勧告されたものがPPPといわれているわけでございます。ただ、その具体的な適用につきましてはいろいろ問題点もございますから、現在ではさらに経済専門家小委員会で二度ほど論議され、環境委員会に上がってきている段階でございまして、そのOECDを中心とします国際的なPPPの問題に関連しましては、ここで考えられておりますようないわば損害の補償というものは、その中心になってきてないわけでございます。ただ、いまその小委員会から報告されています中では、汚染者が汚染の被害に支払いをするということをPPPは意味するわけではないが、この原則のもとに各国政府が汚染者に残存被害費用を負担させてもよいという程度の表現になっております。ただ私どもは、日本におきます汚染者負担の原則について非常に強い要望もございますから、できるだけこれを貫く方向で努力しているわけでございます。
 ところで、いまの四十六条でございますが、先ほどもお答えいたしましたが、これは二つの体系からなっております。一つは、被害者の健康を回復させ、回復した健康を保持させ及び増進させるという被害者の福祉増進でございます。認定患者の福祉増進でございます。それからもう一つは、指定疾病による被害を予防するための事業でございまして、この二つがこの体系になっておりますが、特に、前者につきましてもそういう要素はございますが、後者につきましては、今後とも国なり自治体なりが中心になって行政として進めていかなければならぬ面が多々あるわけでございます。たとえばリハビリテーションの施設にしましても、医療施設にしましても、この公害保健福祉事業があるから国なり自治体はもう一切やらなくてもいいと、こういうかっこうになるわけではございません。そういうこともございまして、この公害保健福祉事業を考えます場合には、この第一の体系のものと第二の体系のものと一体となってやるという場合も多々あるわけでございますから、ここに公費は二分の一、その二分の一の中の半分を国、半分を県なり市が持つ、こういうかっこうに整理したわけでございます。実際に病院なりリハビリ施設をつくりました場合も、公害被害者だけでなしに、その他の人も一緒に入って運用されるという形のものが多いかと思うわけでございます。
#96
○杉原一雄君 少しいままでの質問の流れとは違いますけれども、御承知のように九月の四日に、四日市の全市にわたる公害病認定患者の救済をねらいとする四日市公害対策協力財団、これが設立を認可されたわけですが、これは他山の石ということになるかもしれませんが、いま問題になっているこの財団の構成とか事業内容とか、それに伴う必要な経費の割り出し、負担割合の問題とか、それから給付の内容等、そうした問題等についてそちらのほうに手元に資料があれば、いまぼくが申し上げたような項目に即してお答えをいただけたらと思います。この法案とは非常に大小は違うけれども、性格、内容等においてはかなり似たものがあります。どうせまた、このことについては環境庁の見解も必要とするわけですが、一面また非常に強い反対もあったことは御承知のとおりでございます。そういうことを踏まえながら、環境庁が入手しているこの協力財団の全体構造について一応御披露いただきたいと思います。
#97
○政府委員(城戸謙次君) これはいま先生御指摘のように、九月の四日に知事が許可をした民法三十四条によります財団法人でございます。出損企業は十八企業と聞いております。それで給付としましては、私どもの給付と非常に関係深いような構成に確かになっているわけでございまして、ただ、いわば過去分が入っているという点が非常に違っておる点でございます。
 体系的に申し上げますと、一つは死亡弔慰金でございまして、これは公害病によって死亡しました場合一千万、公害病以外で死亡しました場合に、入院中の者が五百五十万、入院外の十五歳以上の者が四百五十万、入院外の十五歳未満が二百万から四百五十万までの間で今後具体化していく、こういうことになっております。他方、年金でございますが、年金につきましては、入院、通院によりまして五つのクラスに分かれております。ただ、このランクづけにつきましては仮置きであって、今後さらにもっと詰めていくという話に聞いております。で、それを男女別、それから年齢階層別に割りまして、十五歳未満につきましては、児童手当という名前によりまして年金の支給がなされるということで、それぞれ月額が記載されております。それで、その分を将来にわたって給付をいたしますわけでございますが、と同時に、過去の分としまして、遡及分として年金の一時払いがされるということになっております。それから、なおまた見舞い金を別途一時金としまして、認定患者となってからの期間によって三段階に分けて、八十万、九十万、百万支給される、こういう形になっております。それから認定患者が死亡したときは、死亡弔慰金の額からすでに支払われた分を差し引いて、遺族に一括支払われるという形になっております。
 私どもは、こういう制度ができまして、本法が施行される以前に、問題がありました四日市で財団の手によって給付が行なわれるということは非常にけっこうだと思っているわけでございまして、今後はこの法律がスタートしました場合には、本法の給付と同じ性格のものにつきましては、その給付の限度の範囲で本法に吸収されるというのが、地元のほうの考え方の基本であると聞いております。ただ、たとえば公害病以外の原因で死亡した者にかかる弔慰金だとか、いろいろなもので残るものがあり得るわけでございまして、こういう点につきましては今後さらに詰めてまいる必要があろうかと思います。
#98
○杉原一雄君 いま環境庁のほうで紹介されたものは、大体私もそのとおりだと思うのですが、ただ、先ほどちょっと漏らしたように、どうして反対の声があがるかというところに問題があるわけじゃないか。その反対の声は、同時に、いまわれわれが審議している法案に対する抗議の声でも共通した問題があると思うのです。だから、一つはやはり金で始末をつけるという思想がこの制度の中に流れていたのじゃないか。現に流れているのじゃないか。また、まだ未解決の問題等を持っている自主交渉の側の人たちが企業の側に交渉にいきますと、どうせ財団ができるのだから、そこで始末をするということで逃げるといいますか、逃げ腰どころか、かえって向きを変えて交渉団につらく当たってくる向きもあったのじゃないかということ等もあり、もう一つの批判は、発生源に対する対策が、これができたことによって手を抜くというような憂いもなきにしもあらず、こういう批判を伺っているわけですが、環境庁へはそうした声は上がっておりませんか。
#99
○政府委員(橋本道夫君) いま先生の御指摘のございました点は、環境庁のほうに地方自治体からも話を聞いております。また、患者側のほうとも直接会いまして、全部つぶさに伺っております。
 患者の側からこの制度に対しましてございました問題点としては、患者さんのグループのほうは損害賠償として払えということをおっしゃっておられるわけですが、企業の側は損害賠償ということではなしに、この財団で社会的責任を果たすという意味で出すというところに考え方の相違がございました。もう一点は、企業側は財団の構想を患者側に説明をするということをしたわけでございますが、患者さんのほうからその財団構想に対する意見を聞くということの、しっかりした機会を設けなかったということがございます。そういう点、いろいろほかにもございまして、原状回復が不十分であるというような問題、あるいは加害責任が明確にされていないという問題そういうものがございましたが、両者の話し合いをどういうぐあいに持っていくかというところで一番問題がございまして、環境庁としましては、やはり企業側が患者側の要望を聞くべきであったということで再三指導もいたしましたし、自治体も非常な努力をいたしましたが、ついに最後に至るまでこれは会うことがなく、県、市がその間に立って非常な努力をされて、患者さんとしては最終的な満足を得ることではございませんでしたが、現段階では、この制度によってやむなくしぶしぶ認めるというような姿になったというように私どもは承っております。
 患者さんの側の方も、この話がまとまりましたあとで直接環境庁にお見えになりまして、そこの事情をるるお話になり、また、私どもの今回のこの制度に対しまして、一つは加害責任というものをもっと明らかにするべきであった、あるいは原状回復の原則が貫かれていない、あるいは政令に委任しているところが非常に多い、あるいは損害に対する補償というところで、慰謝料の問題あるいは給付基礎月額の問題、療養手当の給付額等の問題、あるいは公害保健事業に関する問題というようなことにつきまして、大臣のところに直接お見えになりまして陳情書を提出し、つぶさに説明をされたというような事情がございます。
#100
○杉原一雄君 法案関係は最後にもう一つだけお伺いしますが、賦課金ですね。法で言いますと、第四章費用云々というところ、納付金、それから第二節の汚染負荷量賦課金の問題等でありますが、本法で見る限りにおいては抽象的ですから、私らもちょっと判断できないわけでありますが、これは政令段階に落とされるわけですが、その政令段階でこれをどういう方向で作業をお進めになろうとしているのか、その方向だけでも若干お聞きしたいと思うのです。
 たとえば賦課料率の決定等にあたっては、これはもちろん政令に移行する事項なんですが、それについても地域指定の規定をするとか、また同じ発生源の問題でも、会社、工場のように固定している場合もありましょうし、車のように動く場合もありましょうから、そうした問題等について、賦課金を今後徴収する場合の、環境庁の政令段階でこれを決定される大体の考え方というものを、もしあれば御披露いただきたい。それで、私はそれに対して云々することはちょっと無理かもしれませんが、とりあえず、いま申し上げたように、固定発生源の場合、移動発生源の場合、そうした場合等について技術的にもかなりいろいろむずかしいところもありましょうし、問題点もありますから、きょうの委員会のこの段階で披露できる範囲の考え方、そうした点、もし披露できるものがあれば御披露いただいて、われわれ今後、法案の将来についてじっとその点注目をしておきたいと思いますから、おおよそのアウトラインを明らかにしてほしいと思います。
#101
○政府委員(橋本道夫君) 御質問の費用の負担の問題でございますが、費用の負担の考え方としまして、四十九条にございますように、この中核だけを申し上げますと、「協会が徴収する汚染負荷量賦課金のほか、別に法律で定めるところにより徴収される金員をもって充て」ということでございまして、これは汚染負荷量賦課金と、別に法律に定めるところにより徴収される金ということによりまして、第一種地域の補償給付に要する費用及び第一種地域の公害保健福祉事業の二分の一に関する費用、また、賦課金を徴収するための特殊法人に要する費用の一部というものがまかなわれるという形になっております。
 この場合に、汚染負荷量賦課金というものをどういうぐあいに考えておるかということにつきましては、第五十二条以降にいろいろございますが、簡略に申し上げますと、汚染負荷量賦課金は第一種のものでございますから、大気汚染物質を発生させる施設を有しておる事業場に対してかかってくるということでございます。その場合にどういうとらまえ方をしているかと申しますと、まず、一つの事業場としてどれだけのガスの排出量を出しておるかという事業場の把握のしかたをするという立場をとっております。どうしてこのような立場をとったかと申しますと、これは工場の公害の管理者を設置をするという法律が通産省所管の法律の中にございまして、その法律の中で、管理者を設置すべき事業場の規模といいますのは、事業場単位の排ガス量できめておるということでございますので、これが最も全体として把握をしやすいということの考えから、この排ガスの総量というものをつかまえることにいたしております。
 その場合に、大きいものから小さいものまであるわけでございますが、この汚染負荷量賦課金といいますものは、ある程度以上大きなものに対して賦課をするということでございますので、その結果、すそ切りが起こってくるということでございます。このすそ切りをいたす場合に、救済法の指定地域の場合と、救済法の指定地域に隣合わせておって、それにもろに影響を及ぼしておるような場合、もしくは現在かなり汚染をしておる。救済法の地域に至ってないが汚染をしておるというようなカテゴリーの地域と、現在問題はない、また将来もこれは防止されていって問題はないと思われるが、そこに非常に大きな施設がある、そのような場合があるわけでございまして、すそ切りの規模を例で申し上げますと、北海道とか九州の南ということになりますと、きわめて大きな事業場だけがひっかかってくる。しかしながら、この救済法の指定地域あるいはそれにもろに影響を及ぼすようなところでは、相当こまかいところの施設までこの対象とするという考え方を持っております。
 そのような施設をとりまして、今度はそれに対しまして年間の排ガス総量、その中に健康に有害な影響を及ぼすと見られる汚染物質をどれだけ放出しておるかという量を把握するようにいたしております。これにつきましては、現在の大気汚染防止法の体系ということによって、硫黄酸化物については現在はっきりつかまえられるという体系がございますし、窒素酸化物につきましては、いま直ちにははっきりつかまえられませんが、これは全体放出総量という計算はできるというような段階でございますが、この汚染物質の総量を、政令できめる汚染物質を年間どれだけ排出しているかという量を次に把握をいたします。
 そうしてそれに対しまして、その汚染負荷量というものをかけます。これは年間一立米の硫黄酸化物を放出しておるものには幾らの賦課金をかけるか、このような賦課料率でございます。この賦課料率につきましても、やはり政令できめた地域の区分に応じて差を設けるということでございまして、これは大体私どもの構想では、三段階ぐらいに分けて賦課料率をきめてはどうだろうかというような、これは全く素案でございますが、そのように考えておりますが、これは先ほど申し上げました救済法の指定地域と、それにもろに影響を及ぼす地域、そのほかの汚染地域と、あとは問題のないところというところに分けまして、救済法と直接関係のあるところは非常に重くし、そうでないところは軽くするという形を考えております。
 この場合に配慮を要しますのは、指定地域の企業にできるだけ重くかけるということが必要でございまして、半分ほどの金をよそから持ってくるということでは、指定地域の企業の責任が非常に軽くなるということでございますので、大半の金をこの指定地域及びそれにもろに影響を及ぼす地域に所在する企業にかけるという方向で検討しておるということでございます。これにつきましては、本年度の予算をもちまして、七月三十一日現在で、通産省の御協力を得まして、全国の大気汚染関係のばい煙発生施設をつぶさに調査いたしておりまして、それによりまして、いま申し上げましたような、どこですそ切りをするか、あるいはその区分をどうするか、あるいは賦課料率をどうするかということにつきましての最終的な成案を得たいというぐあいに考えております。
 以上申し上げましたのが、固定発生源に関する汚染負荷量賦課金でございますが、大体全体の汚染物質の放出量を概算いたしますと、約七割は大きな固定発生源によって放出されておるということが、私どもの排出係数の推算によって明らかになっております。あと残りの三割というものの中の半分強は、自動車による排気ガスでございます。あとの半分弱は、民生分もしくは零細な発生源あるいは家庭分というようなものになっております。
 これをどういうぐあいにとるかということでございまして、特に自動車はきわめて大きな問題でございますし、指定地域のところでも問題になりました窒素酸化物につきましては、きわめて大きな貢献度があるということでございますので、私どもはそれをぜひとも取り入れたいということでございましたが、自動車にどういうぐあいに賦課をするか、その場合に油にかけるか、あるいは自動車にかけるかということで、これは非常な論議がございまして、御承知のように現在の税制の体系におきましても、五つ以上の税制が大体自動車と油にかかっているわけでございまして、それのみでも非常に複雑である、それとどういうぐあいに調整をするかということもございまして、何ぶんこの法案のまとまりましたのが六月中旬になったものでございますから、結局そこの問題の決着をつけるには、四十九年度の予算のときに、予算に決着をつけて予算関係法案としてこれをきめるということをやる以外には調整のしようがない、特に税制とも非常にからむ問題であるということになりましたので、先ほど申し上げました第四十九条の「別に法律で定めるところにより徴収される金員をもって充て」という表現になったわけでございます。
#102
○杉原一雄君 なるほど検討中ということでございますから、そうしたことについて、あれこれ批判がましいことなり突っ込んだ質問をすることも差し控えるべきだと思いますので、承っておく程度にとどめたいと思います。
 法案の最後の段階ですが、これも御承知のように、法が百五十条ある、さらにまた附則があるという、加えて政令が五十四だと思いますが、きわめて多くの政令が受けて立つという関係、法と政令との相互関係というものが異例の状態だと思うのです。でありますから、いよいよ政令をつくる作業段階に入るということになると、われわれがきのうからきょうにかけていろいろ質問し、長官の決意表明も実はいただいているわけですが、そうしたわれわれの主張なり要望等をも政令段階でも十分くんでいただいて、その御努力をいただきたいと思いますが、あわせて、私たちが政令段階につらを突っ込んだり、手を入れたり足を入れたりするわけにいきませんが、できるだけ学者なりあるいは特に被害者関係の皆さん等の実情、そうした人たちの意見を聞き合わせながら政令作業を進められていくことを、法令関係の質問の最後の結びに申し上げておきたいと思います。
 もう一つ、これはちょっと別件でございますけれども、ついででございますから。
 先般、水俣へ私たち調査団が行ったわけですが、帰って当委員会に報告を実はしておるわけです。ただ、その中で、その後どうなったかという非常に心配ごとが一つあるわけです。小高い丘から、チッソからたれ流されている工場に近い入り海がございます、その入り海のところを見ながら、高山委員はあそこへネットを張って、魚を釣ったり食ったり自由にしたらどうだと、こういうその時点におけるプランを発表されて、また一面、そんなことできるものかという漁師の意見もあったわけですが、多くの意見は埋め立てたらどうだという意見も実はあったので、ただ当時、われわれがしろうととして高いところから見た湾の姿、そこにおるたくさんの船の状況等も見ながら考えておったわけですが、その後このことが、埋め立ての方向で作業が県及び国の間において話し合いながら進められているのかどうか、その辺まずお聞きしたいと思います。
#103
○説明員(大久保喜市君) お答えいたします。
 水俣の港湾の区域における海底に堆積している有害物質を含んだヘドロ、これの始末につきましては、これはこれまでも御答弁申し上げる機会がございましたのですが、現在のところ、熊本県が中心になりまして、その有害物質を含んだヘドロの分布状況を調べてまいったわけでございます。それをベースにしまして、どのような方法でこれを封じ込めるかということにつきまして、技術的な検討を県が中心になり検討してまいりました。もちろん、県だけでは技術的に十分でないという面もございますものですから、私どもの出先の第四港湾建設局も技術的な協力をいたしまして、検討を進めてまいったわけでございます。
 それで、大体濃度の濃いところの範囲はやはり囲い込んで、もう封じ込めてしまうしかないであろうということで、素案的な計画をつくったわけでございますけれども、その後の調査の結果、どうも当初考えていた封じ込めようとしておりました範囲内だけでは十分でないような面も出てまいりまして、現在なお第四港湾建設局と熊本県で、技術的な措置につきまして検討中の段階でございます。
 それで、たいへんこれまでお答え申し上げましたやり方に比べまして、時間がたっているのに一向に形にあらわれてこないではないかという点が非常に関係の方々に不安を与えておるということが憂慮されますので、鋭意、早いことこの計画を確立したいということで努力をしておるわけでございますが、何ぶんにもいろいろと賦存状況、それから工法にしましても、いまちょっと御指摘のございましたような、魚が出入りしないように網を張ってしまえというような御意見等もございましたが、実際にはそういうことは事実上困難でございますし、極力、急いで一刻も早く封じ込める手だてを講じたいと考えている次第でございます。
#104
○杉原一雄君 計画段階ですから、立ち入った質問はこれ以上できないかもしれませんけれども、計画並びに実施の推進力になっていく母体、それは地方自治体、県と国と協力という形になるのか、その主体はどこにあるのか。計画並びに実施の主体。
 それからもう一つは、当然先を読みますと費用がかかりますからね、その費用の問題をどういうように、どこが負担をしていくか、その点答えられない段階かもしれませんが、それは法とかいろいろなものを考えれば答えられると思います。だから、その辺のことを二点だけ最後にお聞きしておきたいと思います。
#105
○説明員(大久保喜市君) 計画並びに実施の主体は、この公害対策という事柄自体からいたしまして、私どもといたしましては、地方公共団体が主体になりまして計画をし、この実施を推進していくのが最も妥当であるというふうに考えているわけでございます。その理由は、公害対策の事業ということになりますと、単なる土木的な工作物をつくる、それで何がしかの形をつくっていくというようなものではございませんで、その付近の住民の方々、その空間を利用する方々がどのような影響を受けるかということもしさいに配慮いたしまして、その地域の方々が納得のいくような、安心できるようなやり方で計画をし進める必要があるわけでございます。そういう点からいたしますというと、やはりその地域の事情を全般的に把握しておりますのは地方公共団体でございますので、地方公共団体が主体になってやるのが最も好ましいと考えておるわけでございます。
 なお、港湾につきましては、港湾法そのものが地方自治を尊重した行政の仕組みになっておりますので、私どもはそういう意味合いで港湾管理者が主体になってやるということを希望しているわけでございます。それで、先ほども申しましたように、港湾管理者自体として能力に限界もあろうと思われますので、足らぬ面を国といたしましてはバックアップする。港湾管理者がそういう事業を計画し推進していきやすいように、バックアップするということを考えている次第でございます。
 費用の負担の点につきましては、公害の事業者費用負担法という法律もございますし、それからその事業者負担以外の公的なサイドで負担しなければならない、言うなれば地方公共団体が負担しなければならない部分につきましては、われわれ俗称かさ上げ法と称しておりますが、財政上の特別措置法がございまして、それに基づいて国が補助するという道も講じられている次第でございます。
#106
○杉原一雄君 御無理な注文をするかもしれませんが、大体決断を下し、いよいよ着工ということになるのは、向こうでは漁民その他から待たれているわけですから、それはいつごろに大体目標を設定して、しかも費用の分担その他についても、若干いま考え方を聞きましたが、どれくらいかかるのですか。私は現場見てきましたが、しろうと考えで判断のつかないことですけれども、専門家から見ればわかると思うのですが、どれくらいかかるものか。その点明確にしていただいてこの質問を終わります。
#107
○説明員(大久保喜市君) まず、私どもも一刻も早く封じ込める工事に着工したいということで、かねがね環境庁長官の御指示もいただきまして、早くかかることを、いわゆる工程計画を立てておったわけでございます。その当初の目標といたしましては年度内には着手したいということで、そこに一つの目標を置きまして、そこへ到達するまでの手順の案をつくりまして、県ともその方向で作業を進めてきたわけでございます。現在のところ、若干当初考えておりましたスケジュールよりおくれぎみでございます。と申しますのは、ただいま申しましたように、調査の結果その範囲が、有害物質の含まれているヘドロの分布の状況が、計画立案の時点のデータより新しいものを加えますと少し変わってきておりますので、若干おくれております。しかし、鋭意、当初の目標どおりにいたしたいということで努力いたすつもりでございます。
 それから費用の額につきましては、ただいまも申しましたような事情で、具体的にどういう範囲を封じ込めるかというその計画がしっかり固まっておりませんものですから、いまの段階でどのくらいというような、ここではっきり申し上げられるような数字を現在持ち合わせておりません。しかし、やはり工事の途中においても二次公害を起こさないように、また、やり上げたあとにおいても有害物質が流れ出さないようにというような配慮をしてやりますためには、相当の費用を覚悟しなければならないということで、事業者費用負担という議論をいたしますにつきましても、事業費総額を早く出しませんと、関係者もなかなか動きにくいという感じがいたしますので、その点、早く概算工費だけでも出したいというふうに考えておる次第ございます。
#108
○小平芳平君 内田委員が他の委員会で質問中のため、ちょっと問題を分けておったものですから、たいへん飛び飛びになって申しわけないのですが、一、二点質問をいたします。
 三木長官、非常に食品の被害あるいは農薬の被害、あるいは医療による被害、そういう被害がたくさん発生していることは御承知のとおりだと思います。特に私はカネミ油症の問題につきましても、カネミ油症の患者の方々と一緒に環境庁にも厚生省にも行ったことがありますし、また、前の環境庁長官は、公害に準じた制度をつくりますということも再三発言しておられますし、また厚生大臣もみな、何人かの厚生大臣が、カネミ油症に関して公害に準じた制度をつくりますと、そういうことを言ってきたわけであります。しかし、今回の法案には入らない。そういうところに非常な失望感を持つのが一つであります。この点はいかがですか。
#109
○政府委員(城戸謙次君) ただいま御指摘の点でございますが、今回の法案は、公害対策基本法にあります公害による健康被害を対象としたものでございます。御指摘のような食品の製造過程でいろいろ問題が生じた場合、あるいは医薬品の副作用、こういうものによります被害も現にいろいろあるわけでございまして、これにつきましては、厚生省のほうで現在研究会を設けて検討いたしております。私どもとしましても、できるだけ早くそういう措置がとられますように、厚生省にも要望してまいりたいと思っております。
#110
○小平芳平君 そういう答弁はもう何十回と聞いているのですが、いまだに、被害者の方は悲惨な生活に追いやられている。カネミ油症の場合で申しますなら、長崎県の五島列島の一番西の果ての島、そういうところで集団的に患者が発生している。そして、これについては加害企業がはっきりしているわけです。加害企業というのは、今回の法案のように多数の企業が分担金を出すのではなくて、一企業による被害です。それはカネミもそうだし、森永のミルク中毒もそうだし、はっきりと加害者は一企業です。こうしたことを、とにかく厚生省に早くやらせますということだけしか言えないものかどうか。本気で政府がこの救済に当たる気持ちがあるのかないのか。もう一つはっきりしていただきたい。
#111
○国務大臣(三木武夫君) 私も、御指摘になっておるような問題に非常に心を痛めておるわけでございまして、食品とか医療品に対する安全確保という問題は非常に大きな問題で、来年度の予算には厚生省も、食品、医療の安全センターというようなものを要求しておるということを聞いております。そして安全の確保について一段と行政の面から監視を厳重にしていく。いろいろな新しいものが、薬品にしても食品にしても出てきますから、そういうことをわれわれもぜひやってもらいたいと思っております。
 それと、いま御指摘のような食品による被害、これはどうも、この損害賠償補償法案というものは公害ということで、食品の公害というものをこの中に入れるということには少し――体系としていわゆる公害基本法にいう公害でないものですからね。私どもも、これは一つの制度化するためには法律も要るわけですから、ぜひ来年度はこれを制度化してもらいたいと、強く政府としてもこういう考え方を持っておるわけでございますから、これは厚生省を督励して、そういうことに持っていきたいと考えております。
#112
○小平芳平君 来年度には制度化するように厚生省を督励してくださるという、その御答弁に御期待いたします。それから制度化する場合には、やはり今回の法案との関連で、今回の法案の衆議院、参議院を通じて指摘された問題点、こういう点もひとつよく参考にしていただきたいと思います。
 次に、今回の法案は健康被害に限るということであります。健康被害に限るとしましても、大気と水だけでいいのかどうか。騒音についてはどう考えますか。
#113
○政府委員(橋本道夫君) 今回の法案は、御指摘のように大気汚染防止法の関係と水質汚濁防止法関係の健康被害だけを対象にいたしておりまして、騒音を対象にいたしておりません。これは審議会の答申の中でも騒音の問題が出まして、その場合に騒音による公害といいますのは、確かに健康な生活が阻害される、あるいは健康被害というふうな事態があるのではないかということにつきましては、これは大体意見が同じなわけでございますが、どういう範囲内を健康被害とするか、非常にむずかしい問題がございまして、今回のこの法案におきましては、指定疾病というものにかかっておられる方を対象として損害を補償するという形をとっておりますが、騒音の場合に、それでは指定疾病というような疾病が何かできるかということになりますと、それは現在の学問では、騒音の被害としてどの病気を指定疾病とするというところには、実は学問はそこのところまでは至っていない。確かに健康被害ではあるが、指定疾病というところまでにはいけないというところの問題があるわけでございます。そういう問題で、少しこの法案とは性格を異にするという問題が一つありました。
 もう一つは、騒音の公害で最も激しい問題は、航空機騒音という問題がございます。これにつきましては航空機騒音防止法というのがございまして、御承知のようにその中でいろいろ損失補償をいたしておる。そういう中に生活妨害的な要素が若干入っておることも事実でございます。そういうような、騒音にはきわめて明白な原因者というものがあるわけでございますから、航空機の騒音に対して航空機騒音防止法というものがあるので、その中で将来どういうぐあいに扱うかという問題があるのではないかということと同様なことが、この新幹線というような非常に明らかな発生源がある、それによって大きな公害があるということに対しては、やはり航空機騒音と同じような対応をとるべきではないかというような考えに立ちまして、今回の法案からは騒音が落ちたというようなことでございます。
#114
○小平芳平君 そうすると、新幹線騒音に対しては補償制度をつくるということですか。
#115
○政府委員(橋本道夫君) 私どものほうの審議会の中で、補償制度をつくるべしというところまでの意見としては、答申としてはいただいておりませんが、航空機騒音につきましては、非常に現在その点に頭を悩ましておられるということも承っておりますし、健康被害をいかに扱うかということを、前よりもはるかに積極的な御検討をしておられるというように私どもは聞いております。
 新幹線の問題につきましても、やはり病気という指定はなかなかできないことだろうという議論は出されておるやに聞いておりますが、非常に病気にかかった方々が療養に困るというような問題がある。そういうものに対してどのように対応するかということにつきましては、国鉄当局は従来よりも積極的な考え方を持って検討に当たっておられるというように私どもは承っております。
#116
○小平芳平君 第一、騒音に対して健康被害があるのか、ないのか。環境庁で出された騒音規制法の解説によりますと、だいぶ健康被害が指摘されております。第一から第七、七番目はその他ですが、動物での奇形発生率増加というふうに指摘されております。したがって、いまの橋本審議官のお答えだと、何ができないのですか、指定疾病ができないということですか。指定疾病ということにできないというのですが、それは何の都合かわかりません、了解できませんが、騒音によって健康被害があるかないかだけ、ひとつはっきりお答えください。
#117
○政府委員(春日斉君) 橋本審議官のただいまお答え申し上げましたこととそれほど違うわけではございませんが、騒音の人体に及ぼす影響、健康に及ぼす影響と申しますものは、かなりむずかしい判定基準が必要だと思うわけでございますが、一番簡単な騒音による人体被害と申せば、一〇〇ホンあるいは九〇ホンでもよろしいと思いますが、その程度が連続して数時間あるというような場合には一時的な聴力低下を来たす、こういったことははっきりいたしておるわけで、これは明らかに騒音による健康障害であると規定することができようかと思います。
 ところが、それ以下の七〇ホン、八〇ホンあるいは五〇ホン、ものによっては四〇ホン、こういった段階で健康被害と申しますのは、まず第一に不快感、それから会話の妨害、それから作業能率の低下というかっこうであらわれてくるであろうと思います。それから睡眠妨害ですね。ところが、これらはいずれもかなり、なれという現象が入ってまいります。これは人によってなれの程度も違いますし、そういった点からいたしますと、何十ホン以上になりますと必ず不快感が出る、睡眠妨害が起こるというふうに規定することはきわめてむずかしくなってまいります。それから血圧の変動でございますとか、あるいは血球のいろいろな諸成分の変動でございますとか、あるいはホルモンの関係、そういったものが騒音によって、ある場合には異常に多くなり、ある場合には低くなるという報告も確かにございますけれども、これはむしろごく短い、しかもかなり高い音に対しての動物実験的あるいは人体実験的なものでございます。
 なれというような感覚的な現象を加味いたしました場合には、なかなか健康被害はこうであると、こういうふうに言うことができないのではなかろうかと思います。それから、低い騒音であっても長く継続すれば、これが一種のノイローゼというものにもなるであろうということは、容易に私どもも想像はつきますが、それがどの程度になるとそういったものが出るか、これもまた、なれあるいは個人差が非常に大きいというところで問題がある。こういうことで、橋本審議官の申しましたように非常にむずかしい問題があるということだろうと思います。
#118
○小平芳平君 労災では難聴として認めていることは御承知ですね。
 三木長官に伺いますが、騒音に対する取り組みですね、先ほど橋本審議官が述べられるように、新幹線の騒音に対する補償を含めて、国鉄当局が研究しているというのはおかしなものでね、加害者ですから。だから、もっとやはり環境庁が環境問題として取り組むことができるか、できないか。特に東京では環状七号線ですね、この周辺住民の問題が新聞にも大きく取り上げられて提起されておりますし、単なるそういう航空機騒音だけじゃなしに、新幹線とか自動車高速道路とかいう点についての環境問題として取り組まれるかどうか。それのまた健康被害に対する救済制度は考えられないかどうか。いかがですか。
#119
○国務大臣(三木武夫君) 人体に対しての健康被害はあるということだと思うのです。ただ、その判定にむつかしさがある。その健康に対しての影響を否定することは、私はできないと思います。しかし、これを一つの補償問題と結びつけるためには、環境庁だけでは――騒音対策というものか根本的にいえば一番大事ですからね、それだから、運輸省であるとか国鉄であるとか、そういうふうな各省とも連絡をとりながら、環境庁としてもこれは環境の保全という面からいったら責任があるわけではございますから、われわれのほうでも研究費も置いてあるわけです、新幹線とか高速道路に対する騒音の実態調査費というものも置いてあるわけでございますから、これはわれわれがイニシアチブをとって、そしてこの問題は研究をいたします。
#120
○小平芳平君 特に新幹線の補償について、そういう健康被害があるということがはっきりしている、それに対する補償について国鉄にやらせておくという手はないと思いますね。だから、そういう制度はひとつ積極的に環境庁長官のほうで推進していただきたいが、いかがですか。
#121
○国務大臣(三木武夫君) 私もそのように考えております。
#122
○小平芳平君 それから、今回の法案は健康被害に限られておりますが、財産被害についてはどうですか。
#123
○国務大臣(三木武夫君) これは衆議院の予算委員会で御質問があって私が答えましたことは、まず健康被害について、こういう制度は初めてのことであるから、この制度というものを一応制度化して、その次に生業の補償という問題に取り組みたい、まず軌道に乗せないと、間口を一ぺんに広げても、生業被害というものはなかなか判定にむずかしい点がありますから、これを軌道に乗せた後には生業被害に取り組みたいというお約束をしているわけですから、これが軌道に乗りますれば生業補償の問題と取り組んで、赤潮その他、今度の水銀汚染でもそうでありますが、生業被害というものは非常に現実の問題として大きな問題を提起しておるわけですから、この問題に取り組みたいと考えております。
#124
○小平芳平君 これも城戸局長のほうですか、生業被害は。それは場合によってはきわめて加害者、被害者がはっきりしておりまして、むしろ健康被害のような認定とか、まあそういう作業も必要かもしれませんが、とにかく今回の水銀の場合でもPCBの場合でも、きわめて加害者、被害者というものがはっきりしている場合があるわけですね。また、複合的な場合もあるわけです。そういう点、健康被害が出発したらということですが、およその見通しはありませんか。
#125
○国務大臣(三木武夫君) この問題は、私が閣議で発言をしまして、結局、こういう制度というものを円滑に運営するためには、農林省が中心になったほうがいいという私は意見です。これは農作物とかあるいはまた水産業に対する被害が主になりますから。そして農林大臣にこれを制度化してもらいたいという公式な発言をしまして、農林大臣も、承知いたしました、制度化する上に努力をいたしますということになっておりまして、その後も閣議のそういうやりとりだけではなくして、農林省に対しても水産庁などに対しても、これを制度化するための検討を進めてもらいたいということを督促しているわけです。また、農林省としてもその必要を感じておりますから、われわれとして、直接われわれ環境庁がやらないにしても、環境汚染からくる問題でありますから、われわれがイニシアチブをとって、これを制度化するために努力をいたしたいと思っております。
#126
○小平芳平君 それでは最後に何点か質問いたしますから、城戸局長、まとめて答えてください。
 今回の法案が成立しますと、保険診療からはずされるわけですね。これはそういう答弁があったし、またそうなっておりますが、そうすると、認定前の医療費はどうなるか、それが一つです。橋本審議官でもけっこうですから。
 それから休業補償、療養中の生活についての考えは、どう組み立てられているか。
 それから介護手当、差額ベッド、こういうものは実費が支給されるのかどうか。
 以上三点です。
#127
○政府委員(橋本道夫君) このうちの一部について私お答えいたします。
 まず最初の、保険以外の公害医療ができるわけでございます。御質問のございました認定前の医療費をどうするかということでございますが、認定は申請のときにさかのぼるということでございますので、いまのところ、その医療費は、認定されますと、申請した日にさかのぼったところまでの医療費が出るということでございます。その間健保のほうから出していたとなりますと、健保の制度とこの制度の調整ということになりまして、健保のほうがこの制度のほうに求償するというような問題を、制度との調整という問題でこの法律では処理をする、そういう形になっております。
 それから第三番目の介護手当でございますが、介護加算という形でここに入っておりますものは、これは介護をする人がついてもつかなくても、重症の方に特別の加算をするということでございまして、実費そのものという考え方を基本にしているものではございません。重度加算といったほうが適切ではないかと思われるものでございますが、この給付の性質としては、介護加算という形にしまして障害補償金に加算をする、あるいは児童補償手当に加算をする、そういう形になるわけでございます。
 その患者さんに介護を実際するという問題のことでございますが、そこの問題といたしましては、私どもはやはり公害医療の特質というものがあるのではないかというぐあいに考えておりまして、健康保険でも非常に大きな問題になっておりますが、看護付き添いに要する費用というところの問題を、本制度として公害患者に対して医療の面と社会的な面とから考慮して、何とか実情に合うようなものにいたしたいというような考え方のもとに、この医療の中での看護付き添いということの報酬体系というものを、できるだけよいものにつくりたいというぐあいに考えております。
 もう一つは差額ベッドの問題でございますが、健康保険の医療とは別のものでございますが、現在の医療の差額ベッドのすべての問題を解消することは、これは不可能であるというぐあいに考えておりますが、公害病患者に対する医療という観点から見て、医学的社会的にこれは当然ではないかと考えられるもの、例を申し上げますと空気清浄化病棟というようなものがございまして、これは実体的には差額ベッドなんです。普通の病室料金のほかに、空気清浄化の作業が加わりますので、これに対して幾ばくかの差額を徴収しているという、ごくわずかでございますが、私もこの例を存じておりますが、そういうものについては、当然にこれはその中でめんどうを見るようにすべきではないか。あるいは公害病の患者さんの病状から見て、医師がどうしてもこの人は個室で分離療養しなければできないというような問題が中にはあると思うのですが、そういうような場合には、その方々の差額という問題を何とかこの制度で立てていこうということを考えていくというぐあいに考えております。そういう意味で、差額ベッドのすべてを解消するということは不可能でございますが、公害医療の特性を考えまして、できるだけ実態に合うような制度をつくるということをねらいといたしまして、中央公害対策審議会の意見を聞いて細部を定めたいというぐあいに考えております。
#128
○政府委員(城戸謙次君) ただいま御質問の中の休業中の補償でございますが、これは私どもの障害補償費がこれに当たるわけでございます。労災の場合には、休業補償給付と障害補償給付に分かれておりますが、この法律の場合は内部的疾患を主として扱うわけでございますので、二つを区別せずに障害補償として支払う、こういう体系になっております。
#129
○委員長(森中守義君) 速記をとめて。
  〔速記中止〕
#130
○委員長(森中守義君) 速記を起こして。
 午後四時二十分までを予定として休憩いたします。
   午後三時十九分休憩
     ―――――・―――――
   午後四時四十七分開会
#131
○委員長(森中守義君) ただいまから公害対策及び環境保全特別委員会を再開いたします。
 この際、委員の異動について御報告いたします。
 本日、林田悠紀夫君が委員を辞任され、その補欠として寺下岩蔵君が選任されました。
    ―――――――――――――
#132
○委員長(森中守義君) 休憩前に引き続き、公害健康被害補償法案を議題といたします。
 別に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#133
○委員長(森中守義君) 御異議ないと認めます。
 沓脱君から委員長の手元に修正案が提出されております。修正案の内容はお手元に配付のとおりでございます。
 この際、本修正案を議題といたします。
 沓脱君から修正案の趣旨説明を求めます。
#134
○沓脱タケ子君 私は、日本共産党を代表して、公害健康被害補償法案に対するわが党の修正案の提案理由とその説明を行ないます。
 原案は、公害に苦しめられている国民の要求をある程度反映しており、加害企業の民事責任を前提とした損害を補償する制度のない現状に比べれば、一歩前進と言えます。しかし、原案は、加害企業の責任を明確にし、企業がみずからの負担においてすべての損害賠償及び損害の回復を完全かつすみやかに行なうという点からすれば、多くの弱点を含んでおります。
 したがって、原案は、できるだけ早い時期に抜本的に改める必要がありますが、原案の弱点を若干改めるための最小限の措置として、ここに本修正案を提出した次第であります。
 以下、修正案の概要を説明いたします。
 一、地域、疾病及び認定基準等は政令で定めるとあるのを、一定の基準に従って都道府県知事及び政令で定める市の長が定めると改める。
 二、健康被害に対する補償給付の種類に、慰謝料及び移転補償費を加え、介護加算額の水準について何ら規定していないので、労働者の平均的な賃金を基準として定めると規定する。
 三、補償給付は、本法施行後に限って行なうとあるものを、公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法及び地方自治体の条例等によって認定を受けている者に対しては、認定時にさかのぼり、本法案に定めるすべての補償給付相当額の給付を行なう。
 四、公害保健福祉事業の種類として、定期的精密検査、完全治療の研究施設、症状に応じた教育施設、職業訓練施設、健康回復施設等を例示し、これらの事業を「行なうものとする」とあるのを「行なわなければならない」と改める。
 五、補償給付の制限及び給付額の減額についての規定を削除する。
 六、公害保健福祉事業費一都道府県等の事務費に対する公費負担及び公害健康被害補償協会への政府の補助についての規定を削除し、すべて企業に負担させる。
 七、本法の施行期日は、公布の日から一年をこえない範囲内とあるのを、四十九年四月一日と改める。
 八、政府が騒音、振動等による健康被害を補償する制度をすみやかに設けることを規定する。
 九、政府が公害による財産被害を補償する制度をすみやかに設けることを規定する。
 以上、慎重に御審議の上、すみやかに可決されるようお願いいたします。
#135
○委員長(森中守義君) 別に御発言もないようですから、これより原案並びに修正案について討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
#136
○杉原一雄君 私は、日本社会党を代表して反対討論をいたします。
 九月の十六日に、水俣病の患者であり自主交渉の先頭に立ってがんばりました松本俊郎さんが、五十六歳のよわいをもってついに鉄道自殺をなさったわけですが、走り書きのノートの中に「世間さまにはずかしい」「仲良くしなさい」「迷惑をかけた」このようなことばを残して死んでいかれたわけですが、私は自主交渉といい、公害等に対するいわゆる公害被害者の非常にきびしい告発だと受けとめたいと思います。つまり、われわれは公害被害者の対策として原状復帰がぎりぎりの目標だと思いますが、それが松本さんの死をもって不可能であることを証明したわけであります。そのような原点に立ちながら、この法案を今日まで審議をしてまいりました。しかし、この法案は次の四点にわたってきわめて不確実であり、適正を欠く憂いすら存在すると判断するからであります。
 第一点は、被害者の認定の問題でありますけれども、いわゆる指定地域等々の今後の政令段階に移される過程の中でも、被害者の差別ないし切り捨て等が容赦なく行なわれるおそれを感ずるからであります。
 第二点は、補償費は値切られるような危険が存在し、かつ医療の対象などはかなり要望はいたしましたけれども、今後の作業の中で限定されるおそれが多分に存在いたします。とりわけ補償の問題では、四大裁判あるいは自主交渉等で戦いとった慰謝料等々についての理念と具体的な給付の内容の点におきましても、まだ不十分といわざるを得ないのであります。
 第三点は、企業負担のことでございますけれども、法には負担のことは規定されておりますけれども、まだまだPPPの原則、つまり加害者が経費については全責任を負うという趣旨主張が完全に貫かれていない点が存在すると思います。
 次に第四点は、法は百五十条、政令が五十四、このような形でこの法案がいよいよ公布実施される運びになると想定されますけれども、そのことの中に、この法が持っている不安定性が存在すると思います。
 そういう点等々、種々検討した結果、本法案については、党を代表して反対の意を表明せざるを得ないのであります。
#137
○小平芳平君 私は、公明党を代表して、ただいま議題となっております公害健康被害補償法案並びに沓脱委員提案の修正案に反対の意見を申し述べます。
 いまの日本の現状は、公害認定患者、多くの被害者のほか、さらにカネミ油症患者等数多くの被害者が発生しております。したがいまして、一刻も早く完全な救済制度のできることを待望することは言うまでもありません。しかし、今回提案の補償法案になぜ反対しなければならないか、その理由を以下五点にわたって簡単に申し述べます。
 第一に、公害絶滅の姿勢がはたして期待できるかどうかという点であります。今日まで公害立法はたくさんできておりますが、はたしてどれだけの実際の効果があったかという点を顧るときに、この救済法ができることによってはたして公害絶滅がどれだけ進むかどうか。この点が第一点であります。
 第二に、企業責任があいまいにされるおそれがあるのではないか。企業は国の制度、国の法律を守って賦課金を出しておるということを口実にして、責任のがれをされることが考えられます。
 第三には、地域指定、疾病の指定、患者の認定等の段階で被害者が差別されたり、あるいは除外されたり、あるいは除外されたりするおそれがあるという点であります。
 第四には、肝心なことが政令に委任され、補償が低く押さえられるというようなおそれがあるからであります。
 第五には、審議日数があまりにも少なすぎる。特に、被害者の実情やなまの声を十分に反映できる、そういう制度をすみやかにつくるべきであります。
 以上の理由から、原案並びに、沓脱委員提案の修正案にも遺憾ながら賛成できない理由を申し述べました。
#138
○沓脱タケ子君 私は、日本共産党を代表して、公害健康被害補償法案に対する態度を表明いたします。
 現在、公害による健康被害の救済制度としては、公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法に基づくものがありますが、これは認定患者に医療費、医療手当及び介護手当を支給するにすぎず、その費用についても、企業はわずか二分の一を、しかも寄付として負担するというきわめて不十分かつ不徹底なものであります。したがって、抜本的な損害賠償保障制度を設けることは、被害者を中心とする国民の強く要求するところでありました。この被害者の要求、特にいわゆる四大公害裁判における被害者住民の勝訴及びこれに基づく住民運動の発展に押されて、政府は今回今国会に本法案を提出したのであります。
 本法案は、民事責任を前提として損害を補償する制度を設けようとするもので、補償内容は、現行の公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法に基づいて支給される医療費等に見合うもののほか、障害補償費、遺族補償費及び葬発料などとなっており、新たに公害保健福祉事業を行なうことになっています一また、その費用についても福祉事業費及び事務費については一部公費負担となっていますが、補償給付については、別途法律によるもののほかは企業からの強制徴収金によるものとなっており、公費負担になっておりません。これらは現行制度に比べますとかなりの前進であります。
 しかしながら、被害者住民の要求や四大公害裁判の判決とそれにもとずく対企業交渉の成果、そして日本共産党・革新共同が、すでに衆議院に提案している抜本的な公害対策基本法案に規定しているように、加害企業の責任を明確にし、企業がみずからの負担においてすみやかにすべての公害被害の完全な原状回復及び補償を行なうという観点から見るならば、不十分なものであります。
 具体的に申しますと、一、大気汚染、水質汚濁以外による健康被害及び財産生業被害は対象にならない。二、適用範囲、給付水準などはすべて政令にゆだねられている。三、法施行前の被害は対象にならない。四、企業は福祉事業費、事務費を一部しか負担しないなどであります。
 日本共産党は、これらすべてを抜本的に改めることを主張してまいりました。しかし、この改正のために補償制度の発足が大幅におくれ、現行救済制度のままで推移することは、広範な被害者住民の要望にこたえるものでないと信ずるものであります。
 ゆえに、日本共産党は、本法案の持つ不十分さを改善するため、すでに現実的な修正案を提案しており、その実現を委員の皆さま方に重ねてお願いを申し上げるとともに、本法案に対しましても賛成をするものであります。
#139
○委員長(森中守義君) 他に御発言もなければ、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#140
○委員長(森中守義君) 御異議ないと認めます。それではこれより採決に入ります。
 まず、沓脱君提出の修正案を問題に供します。
 沓脱君提出の修正案に賛成の方の挙手を願います。
  〔賛成者挙手〕
#141
○委員長(森中守義君) 少数と認めます。よって、沓脱君提出の修正案は否決されました。
 次に、原案全部を問題に供します。
 本案に賛成の方の挙手を願います。
  〔賛成者挙手〕
#142
○委員長(森中守義君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
#143
○杉原一雄君 私は、ただいま可決されました公害健康被害補償法案に対し、自由民主党、日本社会党、公明党、民社党、日本共産党、以上五党共同提案による附帯決議案を提出いたします。
   公害健康被害補償法案附帯決議案
  公害対策の要諦は発生の予防にあることにかんがみ、政府は、今後の産業立地政策を公害病の絶滅、生活環境保全を優先する思想に立脚し、この際抜本的に転換すべきである。いやしくも、公害を発生する企業に対しては、各般にわたるきびしい規制・制裁の措置をとるとともに、産業の立地については、住民の意思を十分尊重すべきである。
  また、公害発生の原因となる資源多消費型産業、公害発生型産業については、立地の規制、誘導の施策をさらに強め、産業構造を長期展望に立って改めることが緊要の課題であって、これを果断に実施すべきである。
  とくに、産業立地の指導監督の衝にあたる行政当局が、その責任を深く認識し、環境保全に関する企業論理の確立について、強力な指導を行なうべきである。
  なお、これらの施策にあたって、環境庁長官に与えられている勧告権の有効な権限行使が公害防止の実をあげることを強く期待する。
  政府は、以上のような基本姿勢に立って、本法の施行にあたっては、次の諸点につき、適切な措置を構ずることによって、公害による被害者保護の一層の充実を図るべきである。
 一、第一種指定地域における企業の立地及び操業の規制強化並びに総量規制方式の導入を含めて、発生源対策の強化に万全を期すること。
 二、地域の指定にあたっては、すべての公害病患者が救済されるよう適正な指定を行ない、疾病の指定については、続発症をも含めて、広く対象に加えるよう検討するとともに、窒素酸化物等疾病原因となる有害物質についての検討をすすめること。
 三、公害健康被害認定審査会の認定審査にあたっては、主治医の診断が尊重されるよう配慮すること。
 四、患者の認定審査を円滑にすすめる前提として、健康調査・診断の体制を早急に整備すること。そのために、公害病専門医師の養成、確保の措置を講ずるよう努力すること。
 五、認定の更新については更新時期の周知徹底をはかるとともに、障害程度の変更のない者については、申請手続きを簡素化するなど、被認定者の利便に万全を期すること。
 六、慰謝料については、公害裁判判例にみられるように、これが公害病患者に対する補償の重要な要素であることにかんがみ、本制度においても補償給付の内容の充実を図るよう積極的に検討すること。
 七、補償給付の種類について今後検討を加えるほか、その給付水準については、裁判判例で示された水準を参酌するとともに、補償費算定の基礎となる労働者の賃金水準を全指定地域の賃金水準を考慮して定めるよう検討すること。
 八、療養の給付及び介護加算については、費用の実態に即した給付ならびに額の設定を行なうことによって、被害者に超過負担させないよう配慮するとともに、夜間往診及び附添看護について医学的・社会的に妥当と認められるものをとり入れるよう配慮すること。
 九、児童補償手当、療養手当及び葬祭料については、実情に即した適正な額となるようにするとともに、物価水準の変動等に応じてすみやかに改定すること。
 十、定期的補償給付については、可能な限り毎月支払えるよう事務体制を整備し、必要な人員確保等について検討すること。
 十一、被認定者等に対する補償給付の制限等に関する規定は、その運用にあたっては、公害事象の特殊性にかんがみ、いやしくも被害者保護の本旨にもとることのないよう、とくに慎重を期すること。
 十二、公害保健福祉事業については、被害者の健康回復、公害病の発生予防を効果的に行なえるよう、地域の実情に即した事業の実施を推進すること。
 十三、給付の実施主である都道府県知事等の事務費については、超過負担がないよう十分な措置をとること。
 十四、賦課金徴収については、汚染原因者の責任が不明確にならないよう原因者負担の原則の徹底をはかること。
 十五、騒音、振動等による健康被害の実態を把握し、被害補償制度の樹立を検討するとともに、農・漁業及び関連事業の生業被害についても早急に補償制度の確立をはかること。
 十六、本法による補償給付と生活保護における収入認定との関係については、公害被害者の実態と特殊性を十分に配慮して、その調整を検討すること。
 十七、本法にもとずく政令の制定にあたっては、国会における論議をふまえ、被害者保護の趣旨がそこなわれることのないよう十分に留意すること。
 十八、本法の施行は、できるだけ早い時期とするよう努力すること。
 十九、この法律は、公害患者に対する最低限の補償措置である点にかんがみ、いやしくも、被害者の発生源者に対する損害賠償の自主交渉及び訴訟について、抑制となることのないよう、特段の配慮をすること。
    右決議する。
 御賛同のほど、よろしくお願いします。
#144
○委員長(森中守義君) ただいま杉原君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行ないます。
 本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
  〔賛成者挙手〕
#145
○委員長(森中守義君) 全会一致と認めます。よって、杉原君提出の附帯決議案は、全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
 ただいまの決議に対し、三木環境庁長官から発言を求められておりますので、この際、これを許します。三木長官。
#146
○国務大臣(三木武夫君) ただいま御決議になりました全会一致の附帯決議については、その趣旨を体して十分努力をいたす覚悟でございます。
#147
○委員長(森中守義君) なお、本審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#148
○委員長(森中守義君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ―――――――――――――
#149
○委員長(森中守義君) 瀬戸内海環境保全臨時措置法案を議題といたします。
 まず、衆議院公害対策並びに環境保全特別委員長佐野憲治君から趣旨説明を聴取いたします。佐野君。
#150
○衆議院議員(佐野憲治君) ただいま議題となりました瀬戸内海環境保全臨時措置法案につきまして、その提案の趣旨を御説明申し上げます。
 古来、瀬戸内海は澄みきった水、変化に富んだ海岸線など比類のない美しさを世界に誇る景勝地として、また漁業資源の一大宝庫として、その恵沢を国民がひとしく享受してきたところであります。
 しかるに、近年瀬戸内海沿岸地域における工業生産が推進され、水は濁り、海岸は埋め立てられ、このまま放置すれば美しい瀬戸内海は永久に失なわれてしまうことをおそれるのであります。
 このような事態に対して、美しい瀬戸内海をわが国のかけがえのない宝として後世の人々に残すためには、一刻も早く抜本的な対策を講ずる必要があり、このため、政府に瀬戸内海の環境保全のための総合的な計画をすみやかに樹立させるとともに、その計画が策定されるまでの間における当面の措置として本法律案を提出した次第であります。
 以下、この法律案の内容を申し上げます。
 第一に、瀬戸内海の環境の保全に関する基本となるべき計画の策定については、瀬戸内海の環境保全の重要性にかんがみ、政府は、すみやかに、瀬戸内海の水質の保全、自然景観の保全等を内容とする瀬戸内海の環境の保全に関する基本となるべき計画を策定しなければならないことといたしております。
 第二に、排出水の排出規制の強化については、瀬戸内海並びにこれに接続する河川等に排出される産業排水に係る汚濁負荷量を昭和四十七年当時の二分の一程度に減少させることを目途として、関係府県ごとの汚濁負荷量の限度を定め、関係府県は三年以内に当該限度まで段階的に減少させることを旨として、水質汚濁防止法に基づく上乗せ排出基準を定めなければならないこととしております。
 第三に、特定施設の設置等については、関係府県の区域において特定施設を設置し、またはその構造、排出水の量等を変更しようとするときは、府県知事の許可を受けなければならないこととし、許可にあたっては事前に環境に対する影響調査を実施させるとともに、その結果を縦覧に供し、広く利用関係人の意見を求めるなど工場の立地を強く規制することとしております。
 第四に、埋め立て等については、関係府県知事は公有水面埋立法に基づく免許または承認を与えるにあたって瀬戸内海の特殊性に十分配慮し、瀬戸内海の環境保全の万全を期することとしております。
 第五に、国及び地方公共団体は、下水道及び廃棄物の処理施設の整備、汚でいのしゅんせつ、水質監視測定施設の整備等の事業の促進につとめるとともに、国はこれら事業に対し、必要な財政上の援助等につとめなければならないこととしております。
 第六に、政府は、赤潮発生防除技術の開発等の瀬戸内海の環境保全のための技術開発につとめなければならないこととし、さらに瀬戸内海浄化のための大規模プロジェクトの設定、排出水の規制に関し量規制の導入及び赤潮、油等による漁業被害者の救済について必要な措置を講ずることとしております。
 第七に、瀬戸内海の環境の保全に関する重要事項を調査審議するため、環境庁に瀬戸内海環境保全審議会を置くこととしております。
 なお、この法律は、施行の日から起算して三年をこえない範囲内で別に法律で定める日に失効することとしております。
 以上がこの法律案の提案の趣旨であります。
 何とぞ、御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
#151
○委員長(森中守義君) これより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言を願います。
#152
○沢田政治君 この法案が議院立法でございますので、恒例と常識によってそれぞれのサイドで英知を集めた法案だと思いますので、私はこの法案に立ち入った質問はこの際控えたいと思いますが、要は、この法案ができて、実際にこれを実効をあげ得るか、あげ得ないかということは、かかって行政官庁の責任だと思います。でありますから、まず環境庁にお伺いしたいわけでありますが、今日、瀬戸内海が死の海になった、こう言われておることのよって来たるほんとうの原点といいますか、ゆえんというのはどこにあるのか、どういう現状認識をされておるのか。まず、その点についてお伺いをいたしたいと思います。
#153
○政府委員(岡安誠君) 瀬戸内海の汚濁の原因は何かという御質問でございますが、それは一つには、昭和三十年代の後半以降、瀬戸内海周辺におきまして急速な産業の発展がありましたということに伴いまして、廃棄物が瀬戸内海に流入をしたこと、これを第一にあげざるを得ないと思っております。それから第二番目には、やはり瀬戸内海の特殊性と申しますか、あそこの水が、外洋との出入りが三カ所に限られておる。非常に水の交換が悪く、停滞性水域であるというようなこと、これが第二番目の理由であるというふうに実は考えております。
 そういう二つの理由によりまして、ほかの水域より以上に瀬戸内海が非常に汚濁の程度を進めておるというふうに私どもは考えております。
#154
○沢田政治君 工場がふえたことは決定的な原因であります。それと、内海でありますから、海流の環流というものは外洋とかそういう海と違って、なかなか流れがそう新しく変わらぬ。それは物理的な一つの事実であって、私はそれを聞いているのじゃない。工場がふえたという一つの理由が、行政的にはこれはどうしてふえてきたのか、どこに行政的に欠陥があったのか。私はやはりこの根を追及しなければ、消極的な、たとえばいまの汚濁負荷量を二分の一にするといっても、これはまだまだそういう根がたくさんできたならば総量としてふえていくわけでありますから、その根を断ち切らなくてはならぬ。こういう前提に立っておるわけでありますから、あそこに工場がどんどんふえてきた、この行政的な欠陥というものは一体どこにあるのか、これを私どもは追及しなくてはならぬし、そこまで触れなければ、私は瀬戸内海の昔に返るという姿はないと思うのであります。その点はどう考えていますか。
#155
○政府委員(岡安誠君) 先ほどの御質問で、瀬戸内海の特に汚濁が進行した理由ということで御質問があったので、そうお答えしたわけでございますが、瀬戸内海において特に産業の立地がふえた、特に稠密化したという理由は、やはりあそこの歴史的な背景もございます。産業の中心的なところが非常に多くあるということと、それから内海の特殊性からいいまして、交通その他の便が非常によかったというようなところもございます。そういうことから、これは歴史的な原因もございますけれども、あの周辺に産業がきわめて多数かつ稠密に立地をしたということが言えるのではなかろうかと考えております。
#156
○沢田政治君 瀬戸内海がもう死の海になることは、結果論でありますが、なるべくしてなったと思います。たとえば粗鋼生産、鉄の生産一つをとらえても、日本全体の七〇%をあそこで生産しておるわけですね。しかも、日本鋼管福山工場ですか、これなんかは一年間に千二百万トンぐらい生産するのじゃないですか。つまり、日本の総生産の中の瀬戸内海で占める粗鋼の生産は六千六百二十万トン、これは西独の全量よりもはるかに多いし、フランスの全量よりもはるかに多いわけであります。さらにはまた石油をとっても、日本の四四%が瀬戸内海で精製されるわけです。死の海になることはこれは当然であります。
 そこで、このよって来たるゆえんというものは、行政的な大きな欠陥というものは、工場が多くできたと同時に、工場が多くできる素地をつくった行政のミスというのは、無制限に埋め立てさせたということであります。瀬戸内海は公有水面であります。私の海じゃないのであります。この公有水面を、しかも、いまの公有水面埋立法によって、これは大正十年にできた法律ですよ、これによってめちゃくちゃに埋め立てさせた。免許権者は知事であります。そうして建設大臣がこれを認める。運輸大臣がこれを認める。こういうことでありますから、当然、なるべくして今日のような悲惨な、無残な状況を現出させたと私は思うのであります。こういう矛盾に対してどういうお考えですか。
#157
○国務大臣(三木武夫君) これはやはり全体として言えることだと思うのですが、高度経済成長というのですか、とにかく成長というものを目ざして昭和三十年代から、ことに重化学工業ということを中心として非常な急速な発展を遂げた。そのことがいま言ったような環境とのバランスを失ってきたわけでありますから、そういう反省の上に立って、この高度経済成長の経済政策というものは、国民の福祉を目標にした経済政策に転換をしなければならぬということで、御承知のように、いままでの高度経済成長一点ばりの経済を国民福祉を目標とした経済に切りかえるということに政府も努力しておることは、過去の高度経済成長政策に対する反省の立場であります。
#158
○沢田政治君 今日、瀬戸内海がどのような状態になっておるかということは、もうすでに環境庁も御承知のとおりだと思います。瀬戸内海国立公園管理事務所、これは環境庁の所管でしょう。かつては厚生省の所管でありましたね、いま環境庁に移っておるわけでありますが。この報告書をちょっと見ましても、「瀬戸内海は、戦後沿岸部の相次ぐ埋め立てと干拓で浅海漁場は失われ、干拓、埋立地は汚染源に一転した。これ以上埋立てを国として強力に規制しなければ、瀬戸内海の自然は守れない」――きわめて当然のことを言っているわけですね。要は、いまの議員立法の法案と同時に、やはり埋め立てをさせない、これ以上ふやしてはいかぬ、発生源をふやさぬ、こういうところがなければ、この議員立法の趣旨というものも生きてこないと思います。
 ところが、今度の、過般参議院を通過し、埋立法が成立したわけでありますが、この埋立法は、五十ヘクタール以上で運輸大臣並びに建設大臣が認可を与えたときには、環境庁長官の意見を聞かなければならぬということであります。同意権じゃありません。意見を聞くだけであります。もちろん、今度の改正においては、免許条件には自然を破壊しないという一項がついておりますが、これもきわめて抽象的なものであります。免許権者が知事でありますから、なかなかこれは守りにくいと思います。なぜ、この際もう少し環境庁長官が、特に環境庁が同意権を主張しなかったかということであります。
 やはり何といっても縦割り行政でありますから、建設省は、土地が足りない、土地が足りないと言っているのだから土地をふやそうとするし、また運輸省はいろいろな施設 そこにつくりたいということであるし、これは縦割りの行政だからそうなっていくと思います。環境保全をするという守護役は、何といっても私は環境庁でなければならぬと思います。それを今度は意見を聞く程度ですね。こういうことで環境庁ははたして守れるかどうかということです。これは意見を言いっぱなしでありますから、私はもう少し明確に強い姿勢を出してほしいと思います。
 しかも今度の埋立法の改正の中で議論になったことは、こんな大正十年時代の法律で、何とか土地をふやそう、土地をほしい者には公の海を埋め立てて私有権を与えていこうということは、もう古い。であるから抜本的な改正が必要であるということが、それぞれの党から全部出されているわけです。したがって、最も近い将来に抜本的な改正を国会に提出するということを建設大臣が約束をしておるわけでありますから、その際に三木環境庁長官が、少なくとも環境を守り、あるいはまた生活環境を守るのは私は環境庁しかないと思っていますから、当然並列でやはり同意する、認可を与える立場を主張してもらいたいと思うのです。いかがですか。
#159
○国務大臣(三木武夫君) 意見を聞くというのは、機械的に意見を徴するということだけの立法の精神ではないと思います。したがって、われわれが同意できないというものに対して、実際問題として埋め立てはできないと思います。それでも強行する場合には、勧告権を行使するつもりであります。環境を守るという立場に立って、これはこの法律によっても、十分環境保全のための一つの法的根拠はあり得るという考えでございます。
#160
○沢田政治君 それは、三木環境庁長官のように良心的な方が永久不変に環境庁長官でおる場合には、意見といっても圧殺されないで、副総理でありますからにらみもきくし、そういうことだと思いますが、しかし、あなたがいつまでもやってるわけにはいかぬでしょう。そういうことで、やはり生産公害というものは現代社会における必要悪だという方向にウエートを置く人も、出てこないとも限らぬと思います。これは人が運用するわけでありますからね。その際に、何といっても法律的に明確に、環境庁長官の同意がなければ生産第一の埋め立てはできぬのだという歯どめが必要だと思います。この点は私は強調しておきます。
 さらにまた、環境庁としては、私の調査では、昭和三十五年には瀬戸内海における埋め立て面積は千百七十七ヘクタール、それが何と昭和四十五年には、約十五倍に当たる一万七千四百八十九ヘクタール、膨大にふえたわけですね。これが瀬戸内海を死の海にさせた元凶なわけですよ。しかもなお、今後運輸省なんかが考えておる計画によりますと、さらにもう七万ヘクタール、瀬戸内海を埋め立てようという計画が着々進行しておるわけであります。でありますから、三木長官、この七万ヘクタールを、いまあなたが答弁されたような趣旨によって、簡単にこれを認めない、こういう立場をここで表明していただきたいと思います。
#161
○国務大臣(三木武夫君) すでに免許のあったものは別でありますが、新たなる免許は、できるだけこれは抑制していこうという強い態度で臨むわけでございます。
#162
○高山恒雄君 この法案は議員立法として提案されておるのでありますが、その法案の内容においても第一にあげておられますのは、この環境の保全を重要視して「政府は、すみやかに、瀬戸内海の水質の保全、自然景観の保全等を内容とする瀬戸内海の環境の保全に関する基本となるべき計画を策定しなければならない」ということが強く主張されておるわけです。そこで私は、何といってもこの水質の保全、先ほど答弁もありましたように、瀬戸内海を中心とする下水の立ちおくれというのは、日本全国から見て、大都市としてはほんとうに立ちおくれている。これが社会公害と申しますか、水質を汚濁しておるといっても過言ではないのじゃないかと思います。なお、いま御指摘がございましたように、新しく埋め立てして産業の集約をはかったという点にも原因があることは十分承知はいたしております。それ以外に、下水の問題が立ちおくれておるということが大きな原因だと私は思うのであります。
 そこで、これは下水事業センターが現在ある程度全国的な規模に基づいてやろうとしておられますが、一番重要な点は、この瀬戸内海の地域における下水を事業センターとしてはどういうふうに考えておるのか、また、政府としてもどういう指導のもとにこれをやろうとしておられるのか、その点をまずお聞きしたいと思います。
#163
○説明員(金岡登君) 私、本州四国連絡橋公団の監理官をしておりますので、下水の関係につきましては担当者が来ておりませんので……。
#164
○高山恒雄君 それじゃ長官にお聞きしたいと思うのですが、私はこの下水の問題、幹線のみに対する補助が大体二分の一ですか、ところが、幹線だけでは下水は完備しないのです。ほとんどがこれは受益者負担になるわけです。こういう問題を解決してやらないと、先ほどの答弁にもありましたように、瀬戸内海の海水は一向に移動しないということをみずから答弁しておられるわけです。したがって、下水道の完備をやろうとするならば、もう少し緊急の措置として、これらについて政府は真剣に取り組んでやるべきだと思う。そういう姿勢がなければ、いかに立法化してみてもその効をなさない、こういう不安を持つわけですが、環境庁の立場からそういう面の主張を強くしてもらう必要があると思うのですが、大臣の意見をまず聞きたいと思います。
#165
○国務大臣(三木武夫君) 私も高山委員と同じような意見で、建設省に対しても――これは下水道の整備をしなければ、河川にしても海域にしても、浄化するといっても浄化のしようがありません。いままでは目につかないですから、下水道の整備は、はなやかでないけれども、日本の環境整備のためには、下水道というものをこの際大きく取り上げて積極的に取り組まなければだめだということで、建設省とも連絡をとりまして、新しい五カ年計画を発足する相当大きな予算要求をしているわけであります。そして補助率も、御指摘のように、いまのような補助率ではどうしたって事業を進捗させるわけにいきませんから、補助率アップ、また下水道の予算を思い切って拡大する。これは環境庁自身の予算だと思って、この下水道の整備については、特に明年度の予算編成に関しては私は力を入れたいという決意でございます。
#166
○高山恒雄君 もう一つは、これもいま御質問がありましたが、運輸省にお聞きしたいのです。各自治体では、まだ相当の埋め立てをしようという計画がなされております。これも環境庁発足以来十分の検討をしておられると思いますが、いまだにその結論が出ないようであります。したがって、こういう問題を速急に解決をつけて、いま埋め立てようとしておる各自治体の問題を、今後どういうふうに処理をしていこうかという点について、計画があるのかないのか。先ほど御質問がありましたように、公有水面埋立法案も通過いたしました。ところが、地方自治体がこれをやめなければ、依然として環境は破壊されていくというおそれがあるわけです。こういう点についてはその後どうなっておるのか、お聞きしたいと思います。
#167
○説明員(大久保喜市君) 先生の御指摘のとおり、埋め立て等を行なうにあたりましては、環境の問題を慎重に考えなければならないことは当然でございまして、そういう趣旨からいたしましても、今回この国会におきまして港湾法の改正をお願いいたしたわけでございますが、これも認めていただきまして、港湾行政そのものにおきまして環境問題について在来以上に前向きに取り組むということを、新しい港湾法に盛り込んだわけでございます。したがいまして、各港湾管理者におきましては、この改正された港湾法の精神を旨といたしまして行政を展開していただけるものと期待しているわけでございますし、また、そのように私どもも港湾管理者の行政をお手伝いをしてまいりたいと思うわけでございます。
 しかしながら、現在のこの改正された港湾法それ以前におきまして、個々の港湾管理者が立てた計画がございます。それで、この港湾計画の立案につきましても、重要港湾以上につきましては、港湾審議会で空間利用の計画を十分検討することになっておりまして、これも最近では、この港湾計画を審議するにあたりましては、環境庁の御意見も審議会のメンバーとしてお伺いするという仕組みになってございます。そういう点で逐次改善されておりますけれども、それ以前に立てられた計画もちろんございます。しかし、その計画を具体的いたしますにあたりましては、埋め立てを例にとりますと、埋め立てをやります際には埋め立ての免許をとらなければなりませんが、その埋め立ての免許につきましては、この国会におきまして公有水面埋立法の改正がなされまして、これも相当に、いわゆる在来以上に環境問題を配慮することが法定されたわけでございます。これまでは運用の面で環境問題を考えておったわけでございますが、法律事項に相当環境の面が強く打ち出されたということでございますので、この公有水面埋立法の趣旨に沿いまして、環境問題はきびしくチュックされることになろうと思うわけでございます。また、そうしなければならないと考えているわけでございます。
 それで、瀬戸内海につきましては、御指摘のように、ことに出入り口の少ない海域でございますので、環境問題を特に慎重に考える必要があろうと思いますが、しかし、公共用地の造成とか公害対策のためにやらなければならない、あるいはその地域のためにどうしてもやらなければならない埋め立てもあろうかと思います。しかし、極力これを抑制していく、必要最小限にとどめるという配慮は当然しなければならないと考えますので、その点、先ほど三木大臣がお答えになられましたような趣旨を体しまして、私ども対処してまいりたいと考えておる次第でございます。
#168
○高山恒雄君 大臣、この問題ももっと詳しく聞きたいのですけれども、時間があまりありませんからお聞きしないで、私の見解を述べておきたいと思うのです。
 実際問題として、現在の通産省の考え方は、基幹産業の原料輸入、製品輸出に対してはどうしても沿岸でなければならぬ、こういう基本的なものを私は持っておると思うのです。したがって、内陸にそういう建設をしようとは考えてないと思うのです。そうなると、今後石油の保有量を確保しようとするならば、もし一年間の保有をしようとするならば、多くの地域の開発をしなければならぬということになるのであります。原油を持ってくるのについて、輸送の関係上どうしても沿岸がほしいということになるのです。そうしますと、これも田中総理が言われておるように、知識産業に切りかえるといいますけれども、実際問題として日本産業構造をどうするかという基本的なものがきまってこない限り、現在の瀬戸内海地域におけるところの、まだ埋め立てしようというその基本の原則はくずれないのです。このくずれないところに問題があるわけですよ。
 それで、われわれ至るところで建設省なり環境庁に質問しますと、いま調査中ですとか、できるだけ環境保全の立場からやめさせますとか、こういう御答弁をなさっておりますけれども、産業自体の構造をどうするかという基本的な問題が解決つかない限り、私はこの問題は解決つかないという考え方を持つわけです。これは環境庁の立場から、環境庁だけを攻めるわけじゃありませんけれども、大臣として見えておりますから、どうしてもそういう基本的な原則を、知識産業ということで内陸に今後持っていく産業をどういうものにするのか、あるいは日本の保有石油は一年分置くのか、あるいは半年にするのか、現在の二カ月ぐらいでいくのか、そういう問題を根本的に解決をつけない限り、この問題は解決つかない問題だ、したがって瀬戸内海のこうした法案をつくってみても、実際に政府がやる気があるのか、ないのかによって、この法律が生きもするし、死にもするわけです。こういう点についてどうお考えになっておるか、お聞きしたいと思います。
#169
○国務大臣(三木武夫君) 従来のような重化学工業を中心とした日本の産業構造は、二つの点から制約を受ける。一つは資源の確保であります。そんなに日本だけが世界の、中東の石油だって大部分日本が輸入をするというようなことは、これはできることではないわけです。いろいろと産油国においても生産の制限でもしようかというような動きがあります。資源の制約を受ける。また、国内においては公害問題等ですね。これだけなかなか産業立地にも困るような状態でありますから、いまのような重化学工業を中心とした産業構造というものは、国際的にも国内的にも大きな制約を受ける。いやおうなしに日本の産業構造というものは、もう少し資源を使わない、あるいは公害のないような産業に切りかえていかざるを得ないと思います。一ぺんにこれはできないですよ。通産大臣も先ほど来て、産業構造を改革していくということを言われておりましたが、これは計画的にそういう方面に行かざるを得ないと思います。それにしても、石油だってこれは二カ月ぐらいのものですからね、やはり石油の備蓄というものも必要になってくる。
 しかし私は、瀬戸内海の環境保全ということが問題になったのは、いまにして瀬戸内海の環境保全ということにみなが力を入れなければ、永久に瀬戸内海はきれいな海としては返ってこない、もうおそ過ぎるかもしれぬけれども、まだ、いまから決意を新たにしてやれば可能性があるということで、イデオロギー、党派を越えてこういうような法案が国会に提出をされたわけですからね。だから、もうこれ以上瀬戸内海は、それは産業としては集約すれば利便はあるでしょうけれども、それじゃ環境保全はできぬ。むしろ瀬戸内海の産業というものは他に疎開をすべきような状態です。これ以上いろいろな重化学工業を中心として瀬戸内海に次々に工場の誘致が行なわれるというならば、こんな法律を出したところで意味はないですから、だから埋め立てのごときも、いろいろの例外もあるけれども、原則的には認められないんだ、ある例外に限って認められるんだということでなければ、認められるのが原則で認められないのは例外だという考えではないと思う。原則的にはもう認められないんだ、しかしやむを得ない場合に、それはいろいろあるでしょう、公害防止の施設のための埋め立てもあるでしょうから、例外としてそういうことが認められるんだというぐらいの考えで、この産業立地あるいはまた埋め立てなどに対して対処していかなければ瀬戸内海の浄化はできない。こういうことで、この法案の趣旨を体して瀬戸内海をもう一ぺんきれいな海にするために、われわれとしても努力をいたさなければならぬと考えておる次第でございます。
#170
○高山恒雄君 終わります。
#171
○沓脱タケ子君 瀬戸内海の汚染というのは全くとどまるところなくたいへん深刻化し、また広域化して、最近では赤潮の頻発というふうな事能までも再三にわたって起こっております。まさに、瀬戸内海の環境保全問題というのは、関係地域住民あるいは関係地方団体の緊急切実な解決の迫られている重要な課題であります。今回、本法案が議員立法として提案をされるという段階になりまして、私はいまも高山委員が御質疑の中で言われましたように、本法案が生きるか死ぬかというのは、まさに政府当局の決意いかんにかかっておるというふうに思いますので、その点について若干お聞きをしておきたいと思うわけです。
 法案の十五条では「国は、前条の事業を実施する者に対し、財政上の援助、必要な資金の融通又はあっせんその他の援助に努めなければならない。」というふうに財政的な義務づけが明記されているわけです。すでにいままでも審議の中で明らかになっておりますように、瀬戸内海の汚染の原因というのは、瀬戸内海海域における埋め立て、工場立地、特に重化学工業地帯としての工場立地、あるいは下水道の非常に不備なための汚濁水のたれ流し、それから産廃物質の投棄、そういった点が非常に大きな原因になっておるということは、もうすでに明らかなところでございます。一つ一つについて実はお伺いをしたいのでございますけれども、限られた時間でございますので、ごく具体的にお伺いをしたいのですが、そういった財政的な義務づけを法律でなされておりますけれども、具体的にどういうふうにやっていくかという基本的なかまえ、まずこれについてお伺いをしておきたいと思います。
#172
○国務大臣(三木武夫君) この第十四条に規定をしてあるものの中には、たとえば下水道にしましても補助率というものを上げなければならない。あるいはまた廃棄物の処理施設についてもいろんな財政的援助の要する場合もあると思います。それから、水質の監視とか測定などに対しても、環境行政としてこれは必要な面でありますから、そういうふうな、ここにあげられているようなことは、全部が全部でないけれども、政府が補助のような形で財政援助をすることが事業の円滑な進捗に寄与する場合が多いと思いますから、そういう規定となったものだと考えておる次第でございます。
#173
○沓脱タケ子君 環境庁長官がそういうかまえをおっしゃっていただいたのですけれども、具体的には、たとえば下水道という場合だと建設省ですね、建設省はこういう法案が出されて、どういうかまえをおとりになるか。大臣がきておられないから、ちょっと無理だとは思いますけれども、どなたがお出になっているのかわかりませんが、建設省としてはどうなのかという点、総括的な御意見が伺えるなら伺いたい。
#174
○政府委員(岡安誠君) 実は、これは建設省がお答えすべき事柄だと思いますけれども、環境庁にも予算の調整権その他がございまして、下水道予算等につきましては、建設省とも御相談をしながら予算要求をお願いしているわけでございます。具体的には、先ほど長官からもお答えしたと思いますけれども、政府としましては、来年度から従来の下水道整備の第三次の計画を、途中ではございますが、改めまして、第四次計画を発足させる。普及率といたしまして現在なお二〇%そこそこの普及率でございますけれども、新しい四次計画では、五十三年だと思いますけれども、五カ年間の最終の段階ではこれを五〇%まで上げる、さらに、六十年度におきましては、大体これを人口普及率で八〇%までにするというような目標を定めまして予算を要求いたしたい。さらに、現在までいろいろ問題ございます補助率につきましては飛躍的な増大をはかるというようなことを考えまして、現在予算要求をいたしておる状況でございます。
  〔委員長退席、理事杉原一雄君着席〕
#175
○沓脱タケ子君 かわってお答えをいただきましたので、それじゃ下水道の関係のお話も出ましたので、そのことでちょっと具体的にお聞きをしておきたいのですが、地方団体ではそれぞれそういった下水道整備、汚濁水の処理について、かなり心をくだいて計画等をつくっているわけです。具体的には、たとえば大阪府では今年の六月に、どこの川にも魚が泳ぐ水に、どこの海も漁場となる水にという目標を定めて、抜本的な環境管理計画というものをつくっております。ところが、この計画の中で、下水道整備というのが重要な一つの柱になっている。ここで問題になっておる重大な隘路というのは、財政問題だというふうに言われているわけです。
 すでに関係各府県の知事・市長会議の要望書が提出をされておりますけれども、この要望書によりますと、下水道の補助率のアップを強く要求をしてきてまいっております。これは御承知かと思いますが、これでは、流域下水道が現在二分の一の補助率だ、これを何とかして四分の三にしてほしい、公共下水道を十分の四から四分の三にしてほしいという具体的な要求が出ておりますけれども、これは担当官おいでになっておったら、おわかりだったら、どうなっているか、特に四十九年度の概算要求等も終わっている段階ですから、具体的にはどうなっているか、ひとつお聞かせをいただきたい。
#176
○国務大臣(三木武夫君) その点は、先般も建設省と打ち合わせをしたので、知事会議の要望に沿うた予算要求になっておると思いますが、建設省のほうから係官がきておってお答えをできればいたしますが、私の承知する限りでは、知事会議の要望の線に沿うた予算要求になっておると承知しております。
#177
○説明員(金岡登君) 私、本州四国道路連絡橋公団の監理官をしておりまして、下水道は担当しておりませんので、詳細についてはお答えいたしかねます。
#178
○沓脱タケ子君 ちょっとお願いをしておいたつもりだったのですけれども、おいででないそうですから、大蔵省の方がおいでだということですから、そのほうが元締めだからよくおわかりだと思いますので、具体的にどうなっていますか。
#179
○説明員(藤仲貞一君) お答えいたします。
 下水道の補助率の引き上げにつきましては、四十九年度概算要求の一環といたしまして、建設省から、流域下水道につきましては四分の三、公共下水道につきましては三分の二という引き上げの要求がまいっております。ただいまの段階では非常にお答え申し上げにくい問題ではございますけれども、私どもの立場といたしましては、いろいろの角度からこれは検討を要する問題ではなかろうかと思っております。
 まず第一に、下水道整備を促進する上においてこれをどう考えるか。それから第二には、国、地方を通ずる財政の問題としてこれをどのように考えるか。あるいは第三に、公共事業の補助体系の中でこれをどう考えるか。第四には、これは公共事業の中の、いずれにしましても資源配分の問題に相なりますので、このような関係からこの問題をどう考えるか。いずれにいたしましても、投資規模を今回五カ年計画を改定いたしまして相当拡大いたします。その上に非常に大幅な補助率の引き上げの要求がございますので、急激な国費の負担の増加に相なることは明らかでございまして、このような点から、私どもといたしましては、四十九年度予算編成の問題といたしまして、公共事業費全体のあり方と関連いたしまして検討いたしたいと、かように考えております。
  〔理事杉原一雄君退席、委員長着席〕
#180
○沓脱タケ子君 大蔵省がそうおっしゃると困るんですがね。建設省もやるということで予算要求をしておる。環境庁長官も積極的な姿勢を示していただいておる。大蔵省がこれを、ちょっとそう一ぺんにはいきません、慎重に検討しないとというふうに言われると、そこではたと行き詰まるというふうに思うわけですが。
 私は、少なくとも瀬戸内海の汚濁防止と同時に、都市環境の整備とあわせて下水道事業等については、当然両側面の役割りを持っている事業だと思うわけです。そういった点で、特にこういった特別な時限立法がわざわざ制定をされようとしているという中では、これは関係各省がかまえて姿勢が統一されないと実現できないというふうに思うのですが、その点では、これは大蔵省も担当官だけでしょうからそれ以上無理だと思いますけれども、ひとつ三木長官、ぜひそういった点でせっかくの立法が実を結べるように、予算化については格段のお力添えをしていただかなければ間に合わないのじゃないかというふうに思いますが、その点についてもう一度御見解を伺っておきたいと思います。
#181
○国務大臣(三木武夫君) まあ大蔵省はいつでもああいうふうに慎重に言うのがくせで(笑声)。しかし、やはり来年度の予算は政府がきめるわけでありますから、下水道整備というものは大きな柱にしたいということでございますから、極力努力をいたしたいと考えております。
#182
○沓脱タケ子君 下水道にあわせて、関連しますので、十九条に赤潮の問題が出ておりますが、これは赤潮についての被害者救済等について触れられておりますが、やはり瀬戸内海の汚濁の中で赤潮被害というのがたいへん深刻化してきておるのが現状でございます。そういう点で、赤潮を防いでいくというためには、どうしても窒素や燐というふうな汚染物質の規制というのが何よりも必要だというふうに考えるわけです。それは定説になっておるわけですが。このためには、どうしても下水道の第三次処理施設の建設というのが不可欠な条件です。瀬戸内海の実情から見ますと、燐、窒素等の大量の汚濁水を放流している地域、そこではどうしても第三次処理施設というのを早急につくらないと、本法案の精神というのは生かされないというふうに思いますが、そういった点で、これも地方団体からは、早急にやるために全額国庫負担にしていただきたいというふうに要請が出ておるようでございますけれども、それについてはどうでしょうか。
#183
○政府委員(岡安誠君) やはり瀬戸内海の富栄養化というものが赤潮の発生の原因であろうと私ども考えております。富栄養化の原因は、先生御指摘のとおり窒素並びに燐の過多というのが問題でございます。現在、水質汚濁防止法では窒素も燐もまだ規制の対象にいたしておりません。と申しますのは、なかなかそれを除去する技術がむずかしいということもありまして、対象にいたしておらないのでございますけれども、ただ、私どもの考え方といたしまして、むずかしいものを両方一ぺんにカットするということはなかなかむずかしい。たとえば燐を非常にカットをする、そういたしますと、バランスがくずれまして赤潮の発生等が防げるであろうというような学説もございます。で、むしろ燐のカットのほうが方法としてもやさしいということも言われておりますので、そのような方向で進みたいと思っておりますが、停滞水域におきます燐の過多のおもな原因はやはり家庭下水、特に家庭下水の中の洗剤の燐というふうに言われております。問題は、洗剤におきますビルダーとしての燐を除去すること、並びに先生御指摘のとおり下水道の処理におきます第三次処理の導入ということが必要だというふうに考えまして、第四次の下水道整備計画の中におきましても第三次処理というものをできるだけ大幅に取り上げていただくように、これは建設省にお願いをいたしておる、また、それに対します補助率等につきましても十分配慮していただくようにお願いしております。
#184
○沓脱タケ子君 建設省関係者おいででないものですから、これ以上ちょっとお聞きできないわけですけれども、私ども都市の実情を知っておりますが、たとえば大阪市あたりのたいへん汚濁のひどい地域でも、第三次処理施設というのは一カ所もございません。現在の下水道処理場というものを見ましても、第二次の処理施設というのも全部にでき上がっておらない。現在がまだ第二次のいわゆる高級処理施設の建設中であるという段階になっている。ところが、瀬戸内海保全を考える場合には、どうしても早急に第三次の超高級処理施設をつくらざるを得ないという情勢にあるというあたりを、これは実現方にはどうしても金がかかるわけですが、そういった点で、地方団体が意欲的にそれをやり得るような保障というものを政府がおとりにならないと、この法案がせっかく通過できても、空文になるようなおそれというのは十分にあると思うのです。その点を重ねて要望申し上げておきたい。
 それから、最後にもう一つの重点であります産廃物質の処理、特に海洋投棄の問題について、これは現状がどうで、どういうふうにやっていくかという方針について簡潔にお伺いしたいと思います。
#185
○政府委員(岡安誠君) 産業廃棄物の海洋投棄につきましては、汚水として出るもののほかに、スラッジ等の処分の問題がございます。現在、海洋汚染防止法、廃棄物の処理及び清掃に関する法律等によりまして、問題となるような廃棄物は瀬戸内海のような沿岸には捨てられないというような規制にはなっておりますが、問題は、そういう法律の基準を犯しまして捨てられるという問題があるわけでございます。私どもは、なるべくそういう廃棄物は原則陸上処理をさせるということに、これも法律でもそういうふうになっておりますので、そういうことにもってまいりまして、あとは法律の網をくぐって捨てる者に対する監視の強化ということ以外にはあるまいというふうに考えております。今後そういう体制の整備に向かって努力をいたしたいと、かように考えます。
#186
○沓脱タケ子君 時間がありませんから多くを申し上げませんが、産廃物質の問題については、これは規制を強化するというだけで解決がつくという実情ではないというふうに私は考えております。と言いますのは、それぞれの企業が、産業廃棄物の処理について必ずしも適確な処理ができるという体制にいまはない。これは技術的にもそうでございますし、施設もきわめて不十分です。そういった状況の中では、当然いやおうなしに不法投棄というものが海洋になされる、なされざるを得ないという情勢にある。そういった点を解決していくためには、処理技術の開発の問題から出発して、施設の問題等を含めて、ほんとうに不法投棄をしなくてもよいという条件をつくり上げるということなしには、これは規制を強化したというだけではどうにもならない。それこそ、夜陰に乗じて海洋投棄にこっそりとどんどん出るというふうなこと、これは防止できません。いまの御答弁だけではこの面はきわめて不十分だというふうに思いますので、そういった私が申し上げたような点の強化についても、あわせてやっていただけるかまえがおありなのかどうか、それをあらためて重ねてお聞きをしておきたい。
#187
○政府委員(岡安誠君) おっしゃるとおり、先ほど私が申し上げましたとおり、廃棄物の処理は原則として陸上処理ということを私どもは指導いたしておりますけれども、技術の問題のほかに、物理的な問題があることは事実でございます。そこで私ども考えておりますのは、産業廃棄物でも、いろいろ問題となる物質はわりあい少なくて、問題とならないような廃棄物が相当あるということもございますので、海面の埋め立て等につきましても、そういう産業廃棄物の処理、これが環境に汚染を来たさないような方法であるならば、これはやはり埋め立てを認めたほうがいいのではなかろうかということも実は考えております。
 それから問題は、技術的な開発のほかに、物理的な問題を処理しなければならないということもございますので、これは住民の方々の同意を得なければならないと思いますけれども、共同的な完全な処理場をつくる。それについてはやはり住民も同意をしていただくという方向でなければ、どうしても物理的にパンダをするということから不法投棄が行なわれるということになりはしないかというふうに実は考えております。したがって、私どもは各企業に対しまして規制を強化することのほかに、適当な処理場を確保してやるということを、ぜひこれは地方公共団体とも共同いたしまして進めたいというふうに思っております。
#188
○沓脱タケ子君 最後に、これは法案にも出されておりますけれども、汚濁水の、従来は濃度規制なんですけれども、今度は量規制を実施するという、量規制の導入というようにうたわれておりますけれども、いよいよそれをやらなければ、幾ら薄められて薄まった段階で濃度が低くても、その量全体が多ければ瀬戸内海の汚濁というものはとまりようがございませんので、水質についての総量規制、これをどうしても実施に踏み切らなければならないということが、これは不即不離の形で出てきている問題だというふうに思いますが、水質についての総量規制、これを法改正をやって行なうという場合に、いつごろ、どのように実施に踏み切っていくか、これが一番重要な問題点ではないかというふうに思いますので、その点を最後にお聞きをしておきたい。
#189
○政府委員(岡安誠君) 実は、いま御提案になっております瀬戸内海環境保全臨時措置法案は、これは実質的な量規制を瀬戸内海水域において行なおうというようなことになっているわけでございます。実質的なと申しましたのは、完全に各企業の排水口におきまして量規制を行なうというようなことにはなっておらないという意味におきまして、形式的に完全ではございませんけれども、しかし、瀬戸内海の環境容量というものをある程度想定をいたしまして、それに向かいましてCODの汚濁負荷量を漸減をしていくというような形になっておりますので、私どもは、この法律は実質的な総量規制を瀬戸内海において実施するものというふうに考えております。
 このような実質的な総量規制の実施というものにつきましては、昭和五十年度には瀬戸内海のほか東京湾、伊勢湾、それから内陸部におきましては琵琶湖、霞ケ浦、諏訪湖等の主要な水域につきましては、実質的な総量規制を実施いたしたいというふうに考えております。ただ、形式的な総量規制の問題は、法律改正も必要ではございますけれども、何よりも先に各企業の排水口におきましてメーターを取りつけて、質並びに量を同時に測定をし、これを記録をしておくというようなことが可能でなければ法律をもって強制するわけにはまいりません。私どもはそういうような技術開発を促進をいたしまして、それがめどがつきますれば、法律をもって強制ができる量規制に踏み切るというふうなことを考えておりまして、これはちょっと五十二、三年ごろになるのではなかろうかというふうに考えております。
#190
○内田善利君 初めに、十八日にパリでOECDが理事会を開いて、水銀の規制を勧告しているわけです。特にこの中で、紙・パルプ産業におけるすべての水銀化合物の使用の禁止という項目がありますが、この項目について、日本では水銀法を隔膜法にかえるということでございますが、私は特に岩国地域が汚染されているその原因の一つに、やはり紙・パルプ産業において水銀を使用してきたということが原因であると思うのです。あそこは山陽パルプですか、もうすでに隔膜法に切りかえたのか、まだ水銀法でやっているのか。その切りかえはどのようになっているのか。この点をまずお伺いしたいと思います。
#191
○説明員(江口裕通君) 御指摘のように、紙・パルプ産業におきましては、過去におきましてはカビを防ぐための防ばい剤ということで、若干水銀を使っておったことがあるようでございます。しかしながら、現在におきましては水銀は使っておりません。
 それからなお、水銀法の問題につきましては、先般衆参両院でお答え申し上げましたように、完全なクローズドシステムを導入いたしますし、四十九年の年央におきましては六割、六五%の隔膜法転換を行ないます。さらに五十二年末をもちまして、全量隔膜法に転換するという方針で臨んでおります。
#192
○内田善利君 現在水銀は使っていないということですが、ことしの八月、水産庁の委託調査で、岩国沖は瀬戸内海の中でも特にひどいように思うのです。徳山湾もそうですが、岩国沖でもひどい。これは水産庁の委託調査ですが、山口県の発表によりますと、岩国水域のヒイラギから最高一一〇PPMのPCBです。同水域は八魚種について規制する必要がある、このように山口県は発表しておりますが、ことしの一月から三月までの水産庁の調査では、ボラから最高七九PPMのPCB、その後、東洋紡の岩国工場が汚染魚を買い取ったその中で、最高が一一〇PPM、非常に最高値が高いのですが、平均値でも、岩国水域は三百二十一検体のうち、これは水産庁の委託調査ですが、平均四五PPMという非常に大きな汚染状況なわけです。これに対しては、水産庁はこの発表に基づいてどのような対策を講じられたのか、水産庁にお聞きしたいと思います。
#193
○政府委員(荒勝巖君) ただいま御指摘になりました岩国地区の水銀関係でございますが、確かに先般の環境庁主催の推進会議におきまして、岩国が問題水域であるということで、魚の水銀についての汚染状況の調査をいたしておりますが、ただいまの段階におきまして集計が全部でき上がっておりませんので、まだ、ただいま御指摘の水銀の実情につきましては発表いたしておりません。これはたぶん県のほうの調査によられる公表といいますか、数字ではなかろうかというふうに推測する次第でございます。
 それからPCBの系統につきましては、先般、ことしの五月に私のほうで岩国地先の水域につきまして発表させていただきましたが、そのときはいわゆる魚介類、水質、底質含めて約二百検体の調査をいたしましたが、そのときに、ボラ等につきましては、ただいま御指摘のように、この岩国地先におきまして、〇・三PPMから七九PPMの相当高い濃度のPCBの残留値が出ております。そのほかの魚介類につきましても、アナゴ等にも五ないし、〇PPMのPCBが検出されている、こういうふうに御理解願いたいと思います。これは通産省との共同の調査で、東洋紡の工場からPCBが出されたのではなかろうか、こういうふうに判断している次第でございます。
#194
○内田善利君 私は水銀のほうはあとからお聞きしたいと思ったのですが、PCBにしても水銀にしても、岩国沖は非常に汚染度が他地域に比べて濃いわけですけれども、これらに対する対策ですね、特に岩国沖、それから徳島湾、こういったところは特別な対策が必要だと思うのですけれども、環境庁は特別に対策は講じておられないのかどうか。
#195
○政府委員(岡安誠君) 水銀、PCBの汚染につきましては、先ほど申し上げましたとおり、全国的な総点検を現在いたしております。これは水質のみならず、プランクトン、魚介類、それから水銀、PCB発生工場の調査等をいたしておりますので、特に徳山湾につきましては、問題九水域の中に入っておる関係上、早期にこれを調査を完了するということで、いま急いでもらっているわけでございまして、九月末ごろには結果が出てくるというふうに考えております。それにつきましては、環境庁におきまして環境調査の分科会で検討いたしまして、現状並びに原因を明らかにしたいというふうに考えております。
 岩国沖等につきましては、全国総点検の一環に入っておりますけれども、多少その調査結果がまとまるのはおくれると思いますけれども、おそくとも今年度中にはやはりデータを出してもらいまして、結論を明らかにし、対策を早急に講じていくというような段取りで進めております。
#196
○内田善利君 それから通産省にもう一回お聞きしますけれども、パルプ工場のCODですね、これが非常にいままで規制が高くて、一三五〇PPMということで、それこそチョコレートの色みたいな廃水が排出されておったわけですけれども、これを一二〇PPMまで下げるということですが、パルプ工場でそれが可能なのかどうか。見通しはどうなのか。この点はどうでしょうか。
#197
○説明員(江口裕通君) 御指摘のとおり、CODの発生負荷量の一番多いのは、何と申しましても紙パルプ産業でございます。具体的に申しますと、特に山陽パルプあるいは大王製紙というようなところに過去においてそういう問題がございました。それにつきましては、現在、当省といたしまして厳重に指導をいたしております。
 先般、私も実は現地を見てまいりましたのでございますが、山陽パルプにおきましては、現在六〇〇PPM程度であったと思います。これは決して十分な値ではございません。それから、ちなみに過去において問題のありました大王製紙が、一二〇PPMになっておったと思います。これは基準値は一二〇でございますが、少なくとも山パルあたり等につきましては、極力そこへもっていくようにやらせる。具体的には、そういたしますと、たとえば技術的になりますが、DSPというような人絹用のパルプをつくっておりましたが、それを実は転換をいたしまして、BKP、クラフトパルプに転換をしなければならないというような、会社としてはかなり大きな問題が出てくると思いますけれども、そういうことはあえて甘受してもらいまして、極力規制値を満足するという方向で臨んでもらいたいということで、現に指導しておるところでございます。
#198
○内田善利君 その次にお聞きしたいことは、今度海上保安庁では、総動員をされて、海洋汚染防止法の実情を調査されたわけですが、その中で海域別では、監視体制が強化された東京湾、伊勢湾では昨年より減少したが、瀬戸内海では二三%増の三百八十二件で、全国一の油による汚染状況であったと、こういう状況でございますが、海上保安庁の調査の結果を教えていただきたいと思います。
#199
○説明員(阿部雅昭君) 先般、海上公害につきまして一斉取り締まりを実施いたしましたが、その結果を発表いたしますと同時に、最近の海洋汚染の状況についてということで、ことしの一月から六月までの各地域の汚染の状況についての統計もまとまりましたので、あわせて発表いたしました。
 ただいま先生御指摘がございました海域別の汚染件数というものを、大きな海域に分けまして、たとえば北海道沿岸、本州東岸、東京湾、本州南岸、伊勢湾、大阪湾、瀬戸内海、九州沿岸、日本海の沿岸、あと沖繩方面というような形に大きく分けまして数字をつかんでおるわけでございますが、東京湾が百三十九件、これは昨年の一月から六月までの数字と比べまして三八%減っておる数字になっております。伊勢湾は百二十件で二四%減ったという数字になっております。それから大阪湾、これは瀬戸内海は大きいので、大阪湾だけを特に抜き出して書いてございますが、大阪湾は二百五十三件、二〇%増、瀬戸内海は三百八十二件、二三%の増といったような数字がことしの一月から六月までの調査の結果でございます。
#200
○内田善利君 瀬戸内海がこのように東京湾あるいは伊勢湾に比べて汚染度が激しくなっておるのは、やはり内海であるという関係だと思うのですが、これによって瀬戸内海保全法ができますが、私は、油を流さない、流させないというきびしい規制がなければ、いつまでも汚染は増すばかりだと、このように思うのです。聞くところによりますと、北太平洋は目に見えない薄い油の膜がおおって、温度が五度ぐらい上がっている。そういうふうに、海は油が表面をおおってしまっているということなんですね。瀬戸内海も油がずっと表面をおおって温度が上昇している、こういうことなんですが、こういうこともやはり魚の育成その他に非常に大きな影響を与えておる。
 それと赤潮ですけれども、赤潮も、先ほど燐とか窒素も原因であるということでしたが、こういった赤潮対策ということがまだなされない、またその方法がよくわからない、そういったことで赤潮も増加しているということですが、こういった赤潮対策、それから油による汚染対策、この点についてはどのように環境庁はお考えになっておりますか。
#201
○政府委員(荒勝巖君) ただいま御指摘のように、昨年でございますが、瀬戸内海で異常な赤潮の発生を見まして、養殖ハマチ等につきまして相当な被害を生じておりまして、その場合におきましては、さしあたり天災融資法を発動いたしまして、被害漁民に対しまして三分資金の融資を行なった次第でございますが、この問題は、今後瀬戸内海がきれいになるまでの間は、瀬戸内海の独得の一つの海上汚染の現象といたしまして、ハマチ等の養殖魚に対しまして赤潮が重大な悪影響を及ぼすのではなかろうかと、こういうふうに水産庁としては判断いたしておりまして、これにつきましては四十九年度、明年度予算におきまして、赤潮対策ということで、赤潮につきましての技術的な一種の解毒方法といいますか、そういった問題の水域の水質をきれいにするいろいろな技術試験等を行ないますとともに、特に救済対策といたしまして、漁業共済制度というものがございますので、これの特約条項という形で法律を改めまして、この赤潮による漁民の救済につきましては漁業共済制度で救済していく、その負担金等につきましては、漁民に御迷惑をかけないという方向で検討してまいりたいと、こういうふうに考えておる次第でございます。
 それからもう一つ、油の汚染につきましても、非常に年々、先ほど海上保安庁から御発表がありましたように、油の汚染につきまして日本の沿岸各地区で事故を見ておる次第でございますが、原因者が明確な油の被害の場合につきましては、あくまで原因者負担の原則で相当あちらこちらでこの問題が片づいておるわけでございますが、やはり夜陰にまぎれて油を放棄するとか、あるいはそのほかの事故によりまして原因者が明確でないというものが相当出ておりまして、これが漁民の救済対策として非常に問題が多く発生しておりますので、これにつきまして、私たちといたしましても、原因者のあるものについてはあくまで原因者負担の原則で漁民に賠償金を払っていただくという線で、原因者の明確でないものにつきまして、これが大体いまのところ年間約十億円ぐらいの被害というふうに報告されておりますので、この原因者不明の油の加害につきましては別途法律なり予算制度を設けまして、何らかの形で漁民に救済資金の基金をふだんからつくっていったらどうかということで、関係各省とただいま相談をしている最中でございます。
#202
○内田善利君 海上保安庁の調査によりますと、特に瀬戸内海、九州が目立って汚染されておるということなんですが、海洋汚染防止法が施行になりまして、それまでは瀬戸内海に屎尿投棄が行なわれていたわけですけれども、私も海上保安庁の船に乗せてもらって投棄状況を一ぺん見に行ったことがあります。あんなに捨てられたのでは瀬戸内海が汚染されるのは当然だと思いました。それで、海洋汚染防止法が成立しまして屎尿不法投棄はなくなったと思いますけれども、この点はどのようになっておりますか。
#203
○政府委員(岡安誠君) 屎尿の海洋投棄は、現在海洋汚染防止法によりまして、指定海域以外は投棄できないということになっておりまして、瀬戸内海は御承知のとおり、沿岸から非常に近いところばかりでございますので、ことしの四月以降は全面的に投棄は禁止されております。これはできるだけ早い機会に陸上処理をさせるということにいたしておりますが、暫定的には、それぞれの関係市町村が船をチャーターいたしまして、相当遠いところに、大体黒潮の流れの外側のほうに投棄をするというのが現状でございます。
#204
○内田善利君 船が四国沖まで持っていければいいですけれども、いまの船の状態では不十分であるということなんですが、私の教えてもらったのによりますと、四十八年の四月一日海洋汚染防止法施行以前には、大体毎日三千キロリッターぐらい瀬戸内海に投棄されておったわけですね。四十七年度は二千二十二キロリッター・毎日です。四十六年度が二千九百七キロリッター・毎日、四十五年度が二千九百五十五と、こういう屎尿が投棄されておったわけですが、海洋汚染防止法施行以降は、室戸岬あるいは潮岬沖で推定投棄量が千六百六十一キロリッター・毎日ということで、非常に少ないわけですね。ですから、どこかで処分されているのじゃないかと、このように勘ぐるわけですけれども、聞くところによりますと、四国沖まで持っていく船が非常に少ない、こういうことを聞いておりますが、こういうことはないのかどうか。海上保安庁によりますと、そういうことはないのかどうか、こういう点お聞きしたいと思います。
#205
○説明員(阿部雅昭君) 屎尿につきましても、現在、廃棄物の排出に使用する船舶につきましては、海洋汚染防止法で海上保安庁の登録を受けなければならないということになっておりまして、屎尿投棄をする船も、その仕事に常用する場合は海上保安庁の登録を受けております。現在屎尿投棄船として登録を受けている船は百四十六隻、それに産業廃棄物と兼用しているような船も若干ございます。約百五十隻の船が屎尿排出船としての登録を受けておりまして、これらが先ほどお話ございました、ことしの四月一日からは十五海里以遠というところで投棄しているわけでございますが、特に問題となります海域では、さらに遠い海域へ捨てに行っているというようなことでございまして、海上保安庁としても、そういうきめられた、あるいは協定された投棄海域に持っていくようにということで、現在監視をいたしておるわけでございます。
 どの程度違反があるかという点は、われわれいつもチェックするように努力いたしておりますが、先般の一斉取り締まりの際、伊勢湾の沖合い十五海里に至らない海域で一隻、屎尿を不法投棄していた船が現にございまして検挙いたしております。われわれといたしましては、屎尿を投棄する船が禁止海域に投棄しないよう、今後とも一そう監視なり取り締まりを強めてまいりたいというふうに考えております。
#206
○政府委員(岡安誠君) 瀬戸内海に対します屎尿投棄は、先生お話しのような経過でもって、禁止の直前は二千キロリットルから三千キロリットルの間ぐらいは捨てていたわけでございます。それを急に切りかえたわけでございますが、各県相談をいたしまして、当該市町村につきましては連合いたしまして、船の建造ができない場合にはチャーターをするというようなかっこうでもって、外洋船をチャーターいたしまして、特に投棄に影響のある高知県、和歌山県等と相談をいたしまして投棄場所を定め、確実にこれが指定された場所に投棄されるような監視措置も備えるというような約束でもって現在投棄がなされております。
 なお、そういう遠洋のへ投棄も期限つきでございまして、なるべく早い機会に陸上処理に切りかえるというようなことになっておりますので、各県とも、陸上処理の施設の整備というものを現在急いでいるというのが現状でございます。
#207
○内田善利君 自治省お見えになっておりますか。昨年とことしは急に屎尿の投棄が少なくなっているわけですね。だから、計算上からいけば陸上で処理されているということになるわけですが、そういった下水道が急に完備するとは思えないのですけれども、陸上処理に対する施策、これはどのようになっておりますか。
#208
○説明員(石原信雄君) 陸上処理の方法としましては、最も理想的な姿は下水道終末処理施設において処理するわけでありますが、それができない場合においては海上投棄、それも不可能な場合においては山林等にいわゆる埋め立てといいますか、そういった処理もなされておるわけです。そこで、自治省といたしましては、廃棄物処理施設の整備、これはごみと屎尿消化槽との両方あるわけですが、四十八年度におきましては、これらの起債の増額と充当率の引き上げなどによって財源手当をいたしております。ただ、ただいま御指摘の、本年四月から規制されたことによって急に海上投棄量が減った分がどのように処理されているかという点は、私どものほうではつまびらかにいたしておりません。
#209
○内田善利君 いろいろまだ質問したいことがございますが、以上で終わりますが、やはりこういった瀬戸内海環境保全措置法が成立しましたならば、ひとつもうこれ以上瀬戸内海はよごさないというふうにしなければ、私はここまできた汚染はまだまだ進むのじゃないかと、このように思います。やはり総量規制にするにしても、これは一つの規制であって、公害を出すことを許した上の規制でございますから、汚染物質を出してもよろしいという――よろしいとまではいきませんけれども、一応出すものを規制するという、濃度規制にしても総量規制にしてもそういう規制でございますから、完全に公害がなくなるとは思えないわけですけれども、これ以上瀬戸内海が汚染しないような措置をとっていただきたいと要望いたしまして、私の質問を終わります。
#210
○委員長(森中守義君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。
 これより討論に入ります。
 別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
 瀬戸内海環境保全臨時措置法案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。
  〔賛成者挙手〕
#211
○委員長(森中守義君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#212
○委員長(森中守義君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後六時四十一分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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