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1972/09/12 第71回国会 参議院 参議院会議録情報 第071回国会 災害対策特別委員会 第13号
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1972/09/12 第71回国会 参議院

参議院会議録情報 第071回国会 災害対策特別委員会 第13号

#1
第071回国会 災害対策特別委員会 第13号
昭和四十八年九月十二日(水曜日)
   午後一時四十三分開会
    ―――――――――――――
   委員の移動
 九月十二日
    辞任         補欠選任
     松本 英一君     成瀬 幡治君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         秋山 長造君
    理 事
                古賀雷四郎君
                中村 英男君
                上林繁次郎君
    委 員
                梶木 又三君
                久保田藤麿君
                佐藤  隆君
                柴立 芳文君
                濱田 幸雄君
                八木 一郎君
                成瀬 幡治君
                宮之原貞光君
                星野  力君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        村田 育二君
   参考人
       東京大学理学部
       教授       浅田  敏君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○参考人の出席要求に関する件
○災害対策樹立に関する調査
 (地震対策に関する件)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(秋山長造君) ただいまから災害対策特別委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 本日、松本英一君が委員を辞任され、その補欠として成瀬幡治君が選任されました。
    ―――――――――――――
#3
○委員長(秋山長造君) 参考人の出席要求に関する件についておはかりいたします。
 地震対策に関する件について、本日の委員会に東京大学理学部教授浅田敏君を、また、来たる十四日の委員会に東京都立大学人文学部教授詫摩武俊君及び東京大学工学部助教授伊藤滋君を参考人として出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○委員長(秋山長造君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ―――――――――――――
#5
○委員長(秋山長造君) 次に、災害対策樹立に関する調査を議題とし、地震対策に関する件について調査を行ないます。
 先ほど決定されました参考人の方の御出席を願っておりますので、これより参考人の方から御意見を承ることにいたします。
 この際、参考人の方に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は御多忙中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。地震対策につきましては今日各方面に広く関心を持たれ、その対策を要望されておりますことは御承知のとおりであります。本委員会におきましても、この機会に参考人の方から忌憚のない御所見等をお伺いし、地震対策の参考に供したいと存じますので、よろしくお願いいたします。
 なお、議事の進め方といたしましては、初めに参考人から御意見を述べていただき、引き続いて委員の質疑にお答えしていただくことにいたします。
 それでは浅田参考人お願いいたします。
#6
○参考人(浅田敏君) 浅田でございます。
 きょうは日本にどういう地震が起こるかということと、それから、そういう地震の起こることは予知できるであろうか、そういうことはどういう状態にあるのであろうかということについて申し上げたいと思っております。で、お手元に資料として差し上げてあります順番に従ってお話し申し上げたいと思います。
 地震予知はまだ正直のところ実用化したという段階には達しておりません。しかし、この十年、二十年前に比べますと非常に進歩しておりまして、先の見込みは非常に明るいというべき状況でございます。地震予知の事情はいまどうであるか、あるいは日本ではどういう地震が起こるのかということについてお話し申し上げるのでありますけれども、まず最初に、一つの例といたしましてマナグアの地震について申し上げたいと思います。で、御存じのようにマナグアというのは中南米の都会でございまして、まあ非常に小さい地震だったんですけれども相当の損害が起こったわけでございます。これはあとから考えればという面もあるのでございますけれども、もう地震が起こるにきまっているところに起こったんだと、もう地震というものはいかにも起こりそうな場所に起こるという感じのする典型的な例ではないかと思います。たとえば、これは太平洋沿岸にあるのでございますけれども、火山がありまして、その火山は一直一線の上に並んで地図上にあるわけでございます。ところが、その火山の一直線はマナグアの付近で食い違っておりますですね。これはおそらくは、最初は一直線上にあったのが何らかの地殻構造をつくる力のためによじ切れてこういうふうに食い違ったのではないかと考えるわけでございますけれども、ここでその余震などの観測をしてみますと、余震は図でおわかりのとおりほとんど一直線の上に乗っております。ということは、この大地震を引き起こした断層面はこの都会を突っ切っているということでございまして、その断層を地質的観察で調べて書き込んだ図面が右下にございますが、まさにこの都会は断層の上にある、もう地震が起こるにきまっているところにあったというわけでございます。おそらく地震学、地球物理学に関して一流の国でありましたら、こういうところに地震が起こることは前から気がつかれていただろうと思います。で、この地震は非常に小さな地震でございまして、その震度の等震度線を見ますと一キロぐらい、一番震度の高いところは直径一キロぐらいの範囲に入っております。これはもう非常に小さな地震である証拠でございまして、非常にこわれやすい建物ばっかしあったのではないかという推測もできます。おそらく日本にあるような、日本の標準でつくった建物でありましたらそれほどの被害は起こらなかったのではないかと、マナグアの地震についてそういうことがわかるわけでございます。
 それでは日本の地震はどうであろうかということでございますけれども、これはもうすでに有名な話でございますが、日本は太平洋岸に大きな地震がございます。それと日本海岸にもやはり大きな地震がございます。たとえば太平洋岸の地震というものは海溝、海の深いところでございますね、それに沿って起こっておりまして、一番東のほうはアラスカの地震が起こりまして、アリューシャンの地震、それからカムチャッカから千島、それから日本の三陸沖とか関東地震とか、あるいは南海道地震、それから琉球のほうにも大きな地震が起こります。そういうふうに大きな地震が起こっております。で、日本に起こる地震をもう少し詳しく見ますと、太平洋岸の非常に大きな地震、つまりこの大きな地震のほかに日本海岸にもっと小さな地震がございます。あるいは内陸にもございますが、内陸の地震や日本海岸の地震は都会地に近い場合が多いので、被害としては決して小さくなりません。たとえば太平洋岸の地震は根室沖の地震もこれに書き加えてあります。これはいずれ起こることはわかっておりましたし、昔にも起こったので、この地図は根室沖の地震より前につくられたものですけれども、すでに書き加えてあるわけでございます。この図の大きさと地震の大きさはほぼ比例ずるとお思いになってけっこうなんですけれども、新潟の地震のまるよりはだいぶ大きいにもかかわらず被害はそれほどはない、こういうことになっております。
 で、地震というものはいろいろな証拠がございまして、一ぺん起こったところにまた起こるのです。でありますから、たとえば関東地震も何回も起こるおそらくは何十回もすでに起こっておりますし、あるいは地質時代まで考えるともっと何百回も起こっておるのかもしれませんし、三陸沖地震にしましても十勝沖地震にしましても、もう地質時代まで考えれば数え切れないほど起こっておるのであります。内陸の地震についても同じわけでありまして、たとえばここに男鹿地震とか新潟地震とか善光寺地震とか福井地震とか、あるいは丹後、但馬の地震、鳥取地震等書き込んでございますけれども、こういう地震もやはり同じ場所に何回も起こる地震でございます。そういうことはかなり自信を持って申し上げていいことなんでございます。でありますから、もしその地震の起こった場所をこういうふうにしるしをつけていきますと、いずれまた地震が起こるところというのはわかるわけです。そうしますと、この地図ははなはだ不完全であるというべきでありまして、被害を生じる地震の場所、あるいはその地震の起こる場所はもっとずっと多いはずなんでありまして、この図をつくったときにはわかっていなかったり、あるいは歴史上あまり古いものは書き込まなかったりというわけであります。といいまして、小さい、といってもマグニチュードが七ぐらいでございますけれども、都会地のそばに起これば大被害を起こすという地震は日本じゅうべた一面にあるわけではございません。ですから、日本の中だって地震のことは心配しなくてもいいというところもほんとうは一ぱいあるわけでございます。で、心配しなければいけないところと心配しなくてもいいところの区別をちゃんとつけておきませんと、経済の問題にいたしましてもつまらないわけであります。で、そういうことがどこまでわかっているかということをこれから申し上げたいと思うのです。
 繰り返しのことをもう一度申し上げたいと思いますが、たとえば南海地震の例が一番おしまいの表に出してありますが、その南海地震であると思われておる地震は天武十三年――西暦六八四年、八八七年、一〇九九年、一三六一年、一六〇五年一七〇七年、一八五四年、一九四六年、これだけ起こっております。これを見ますと、百年とか二百年、三百年ぐらいの間隔で起こっております。この間隔は、あるいは昔のほうは見のがしているのもあるのかもしれませんが、百年とか二百年の間隔で南海地震が起こっているということは、こういうふうに歴史を見れば非常にはっきりわかります。関東地震については歴史上これほどはっきりしないのでありますが、それでも関東大地震の前に元禄の地震――一七〇三年に起こっている地震は関東地震に似ておるといわれております。こういうふうに太平洋岸の地震は百年とか二百年とか三百年の間隔で起こっております。たとえば、この百年間に日本に発生した地震の表が書いてございますが、三陸沖の地震は一八九六年に起こりまして、それから一九三三年に起こっております。これはもっと間隔が短い。いずれにしましても、太平洋岸の地震は場合によっては数十年あるいは百年あるいは二、三百年で起こるということがわかっております。
 こういうふうに申し上げますと、すぐ六十九年周期というような周期の問題が出てまいりますが、地震というものは本質的に繰り返して起こるものである、こう申し上げていいのでありますけれども、周期というものは、たとえば三日周期であるとか五年周期であるとか、もっとずっとはっきりしたものをいうのでございまして、あえて申し上げれば、地震というものは本質的に繰り返すけれども周期的ではないのである、こう申し上げておいたほうがいいと思うんです。ですから、地震発生の周期性を論ずることはもう非常に大体の話であると思って差しつかえないのでありまして、たとえば何十何年というような見かけの周期が出ますことは、まさにその統計の処理上の問題であるというふうに考えたほうがよろしいのであります。それよりは、次に地震はいつ起こるかという、もっと統計的でない方法ですね、微視的と申しますかそういうつまり一つ一つ因果関係を調べて観測して、いつ起こるということをきめるようにしたほうがはるかに実際的なわけでございますし、地震予知の目的も、決して統計的にいつごろ起こるということではなくて、いつごろ起こるということをはっきりきめることが目的でございます。
 太平洋の地震は数十年から二、三百年で繰り返すということを申し上げたわけでありますが、それでは内陸の地震とか日本海岸に起こる小さい――小さいといってもマグニチュード七・五ぐらいですから、都会地に起これば何千人という方がなくなることもございます。そういう地震はどういう繰り返し周期で起こるのかという問題でありますけれども、これは最近の活断層の研究その他から、数百年または千数百年に一回ぐらいの割合で起こるのであるというふうな結論になりつつあります。こういうふうに間隔が広いのでありますから、歴史上に地震は繰り返し起こるということはもうほとんど確信を持って言えるのでございますけれども、歴史上に二回あらわれている例は必ずしも多くない。ことに、非常に昔のことでございますから、もう歴史上の文献でぼやけているのではないかと思います。でありますから、たいてい一回しかないものも多いわけです。今度逆に最近一回起こったらもう数百年は安心と言っていいのであると、ある確信を持って申し上げますがこの確信は時代とともに強まるものであろうと、学者としての確信は強まるものであろうと思っています。いまは一〇〇%言えるかといわれますと九九%ぐらいと、こう申し上げるのでありますけれども、そのわけはあとで申し上げます。
 ですけれども、原則として一ぺん起こったら、あと何百年起こらないんだから安心であると言っていいわけでありますから、さっきべた一面に起こるのではないと申し上げました、その地震の起こらない場所のほかに、すでに起こってしまったところも含まれるわけでございます、その安心の中に。でありますから、これを裏返しますと、歴史上一ぺんも地震の起こっていないところにいきなり起こる危険性もあるわけであります。それはどこだというのが地震予知の目的でありますけれども、こっちのほうが非常に安心ならないわけであります。
 それから九九%と申し上げましたのは、地震というものには身分相応の広がりがございます。たとえばマグニチュード八の地震は、その震源の大きさは百キロ四方であると大まかにお考えになればよろしいのであります。マグニチュード七の地震の領分は三十キロ四方であると、こういうふうにお考えになればよろしいのでありますが、たとえば、あるところにマグニチュード七の地震が起こります。これはもう安心だと思いましても、すぐその隣に、何しろこの領分は三十キロぐらいでございますから、四十キロ隣にまた同じぐらい大きいのが起こるかもしれないということもないとは言えませんので、そうすると、ないと言ったのにあったではないかというふうな話の筋になってしまいます。でありますから、そういうことについての研究は進めなければならないわけでございますね。これも地震予知の研究の一つの問題だと思います。
 もう一度申しますけれども、地震というものは必ず繰り返して同じ場所に起こる。もう少し先まで申しますと、大地震、あるいはこれは小地震でもそうなのでございますけれども、断層をつくる。断層の見えない地震は、それが地面の下に隠れているのにすぎないのであります。でありますから被害を生じるような大地震で適当な浅さの地震には断層が見えるわけでございます。また何百年かあるいは太平洋岸ならば何十年か二、三百年たつと、またその同じ断層面が破壊して、ほぼ同じ場所に地震が起こると、こういう理屈でございます。
 東京は日本の首都でございますし、あらゆる重要な機能が備わっておりますので、東京の地震というものは非常に重大な意味を持つものであります。それでありますから、たとえば南関東地方は特別の観測をする地域として指定されているわけでございます。
 東京にはどういう地震が起こるかという問題でございますけれども、いまの知識では、二種類の地震が東京に被害を生じさせるということになっております。その一つは有名な関東大地震で、一九二三年――大正十二年に起こった地震でございます。で、この前の関東地震はどれかといいますと、それは元禄十六年――一七〇三年でありますから、二百二十年前に起こった地震が関東地震の前の地震ではないかといわれております。でも、さっき申し上げましたように、地震というものは本質的に周期ではありません。繰り返しますけれども、周期ではありませんので、この前のが二百年前でしたから、この次のも二百年あとというふうに結論するわけにはまいりません。
 関東大地震というものはどういう地震かということについてちょっと御説明申し上げたいと思いますけれども、それは「5」と書いた図面をごらんになれば、関東大地震についてはこういうふうにして地震学的に研究されるわけです。関東地震が起こったあとの地殻変動が――コントールですね同じ分量だけ地殻が上昇したり下がったりしたところを等高線の形でかいてございます。これは一八八九年に測量したものと一九二五年に測量したものの差でございます。これを見ますと、房総半島の先は一メートル五十センチ高くなっております。丹沢山のほうは逆に低くなっております。
 で、最近、断層の理論と申しますけれども、つまり弾性論のうちのある部門にこの十年来そういうものが発達しまして、ある断層面を考えたときに、そのために生じる地表の変形を計算することができるようになったのでございます。その例がまん中に書いてございますけれども、そのいろいろな計算をしまして、実際の関東地震と一番似ているものをとりますと、結局関東地震というものの断層は、相模湾の中にその断層が地表にあらわれる部分がありまして、それから三十度か四十五度の角度で東京のほうに向かって深く入っていく。横の長さが数十キロで、縦の長さが百キロあまりという、そういう断層がすなわち関東大地震の震源であるということになっております。つまり、こういう断層面は決して一度にできるものではございませんで、その一部から割れはじめて数十秒かかってその断層面の割れ目が進行して、いま申し上げたように、長さが百何十キロ、東京のほうに深く入っていく横の幅が数十キロ、それが三十度か四十度の角度で東京のほうに深みに入っております。そういう断層面が形成される。それが関東大地震でありまして、実はこの断層は、相模湾の中に一種の海溝のようなものがございまして、それが、その断層が地表にあらわれているもののあらわれであるということになっております。これの断層の続きは陸のほうにもありまして、国府津から松田のほうにかけて御旅行なされば、その付近の地形をごらんになれば、あるいは断層のようなものが――つまり山ですね、片側に山が盛り上がっている景色が見えるわけでございますけれども、そこにつながっているのであります。ただ、関東大地震のときには陸の部分は決してずれませんでした。海の中の部分だけがズレを地表面――まあ海の底ですから目で見るわけにはいきませんけれども、地表面にあらわしておる。元禄の地震はやはり同じような部分に断層ができたのであると考えられておりますが、もうちょっと大きかったのではないか、あるいはもうちょっと房総沖のほうまではい出ていたのではないか、こう考えられております。この地震は、ですから東京の真下の地震ではございません。震源から東京までけっこう離れておりますので、真下の地震というわけではございません。ですから、東京の山の手などでは木造家屋でこわれたものはあまりなかったわけでございます。そのかわり湘南地方では、かなりよくできている木造家屋もやられたわけであります。湘南地方のほうが震度が強かったわけであります。もしまた、いずれの日か必ず起こるのでありますけれども、次の関東地震が起こると、またそれと同じような形に湘南地方の木造家屋はつぶれるのであります。ただし、東京の山の手はつぶれない。ですから、東京は火災だけが問題になる、大げさにいいますと、そういうことになるのでございます。
 東京には実はもう一つ地震がございまして、それは東京の下町の真下に起こる地震です。これは規模が非常に小さいのでございまして、たとえば安政二年――一八五五年の地震がそれであると、こういわれております。この地震は、被害の起こった範囲が直径二十キロくらいですから、関東地震よりはずっと小そうございます。――このときは当時の市民が七千人なくなったそうです。そのほかに、たとえば明治二十七年にやはり東京に多少の被害の起こった地震がありました。ただこれは、安政の地震の再来、同じ地震であるかどうかは私にはちょっとわからないのでございます。
 それじゃこの二つの地震が予知できるであろうかという問題になりますが、たとえば国土地理院では、房総半島とか三浦半島とか伊豆半島、大島にかけて精密ひずみ測量ということをしております。その結果によりますと、地震というものは、しょせん地殻がゆがみまして、その破壊の限度まで達してから断層ができて起こるものでございますけれども、まだいますぐ次の関東地震が起こるというほどはゆがんでないと、私は大体そう感じております。なぜ、感じておりますと申し上げて、そう信じておりますと申し上げないかと申しますと、やはり地震予知というようなものは研究の途上でありまして、もう一〇〇%の自信を持ってだいじょうぶであるとか、あぶないとか申し上げることはまだできない状態であるからでございます。ただ、あと五年たつとか十年たてば、こういうことはもっとずっと確信を持って申し上げられるようになるんだと考えております。ですから、まだ関東地震はひまがあるのではないか。ということは、決してその地震の対策をないがしろにしていいということではございませんが、そういうふうに感じております。
 それでは東京直下の地震はどうであろうかといいますと、このほうについては、科学的な方法であぶないとかあぶなくないとかきめることが、まだほとんど全くできない状態にございます。ですから、つまりそういう測定のデータがないわけでございます。つまり下町はどろも厚いですし、ですから測量もできませんし、あるいは光を使う測量などは、空中の状態もいろいろありまして、ほかのところほどうまくいきませんでしょうし、たとえば日本で地震予知がだんだんできてくるにいたしましても一番むずかしいものの一つだと思っております。でも、考え方としてはいろいろな考え方がございます。安政二年――一八五五年の七千人の人のなくなった地震は、もちろんいま起こればもっと大被害が生じますが、これは実は内陸の地震と同じであって千年に一ぺんのくちかもしれないという想像もできます。しかし、この場所は太平洋に近いところでございますし、そうきめつけてしまうことは、やはりいまの学術の知識ではできません。それから千年に一回のくちでかりにあるとしましても、この地震は小さい地震ですから、すぐ隣に同じような、小さいけれども東京のそばに地震の場所があるかもしれないわけです。で、考えますに、地震予知がだんだんできるようになりましても、この地震が一番最後に残ってしまうのではないかというふうにばく然と感じております。
 結局、それでは地震の予知ということはどういうふうな状態にあるのかという、目次でいいますと五番に入るわけでございますが、まず地震の起こる場所を知るべきである。そうしますと、それはある程度わかっております。さっきお目にかけた地図で、たとえば太平洋岸では、どこにどういう地震が起こるということもわかっておりますしこの前はいつ起こって、その前はいつ起こったということもわかっているわけです。内陸の地震もこの数十年あるいは百年ぐらい、あるいはもうちょっと前に起こったところは、すでにこれもわかっているわけでございます。しかし、さっき申し上げたことをもう一度申し上げますと、歴史上一ぺんも起こってないところにそういう地震が起こる可能性があります。もし、それが都会地のそばですと非常な被害を猛じるわけでございます。内陸の地震は、もし都会地の真下で起こりますと関東地震とは非常に違いまして、一番震源に近いところの木造家屋などは数秒でつぶれてしまうのであるという話を聞いたこともございます。そういうわけでございますから、地震がどこに起こるかということを少なくとも前から知っておきたいわけでございます。たとえば三番の図でございますけれども、これは根室沖に地震が起こるといわれたことの根拠が書いてございます。いまの地震学では、大地震が起こる何年か、あるいは何十年か前にその場所には地震が起こらなくなってしまうと、この数年来だんだんいわれてきた問題がございまして、たとえば一九六一年から一九七〇年までの気象庁がきめた震源を地図上に書いたのがございます。それで、点線で場所を示してあります。そこには地震が一つも起こっておりません。これが根室に地震が起こるであろうといわれた根拠の一つでございます。その場所には、今度は右下の地図をごらんになればおわかりのように、余震が全部起こりまして、ほかのところと違わないようになってしまった、つまり地震が空白であるといわれた地域は余震が起こって、地震の起こり方に関しては何の特徴もないところになってしまったわけでございます。でありますから、たとえば地震の震源を非常によく調べまして、そこが空白であるというところに目をつけるというのもその地震が起こる場所をきめる一つの方法であります。それから第三次地震予知計画によりまして精密ひずみ測量というものが日本じゅうに行なわれることになっております。五年に一ぺん行なわれることになっておりますが、それによって地殻のゆがみの状況がわかりますから、場所の見当をあるいはつけることができる。それからもう一つは、さっき申し上げました活断層でございますが地質学的観測によりまして活断層の地形を調べますと、ともかく第一近似といたしましてその活断層のところは地震の起こる候補地になるわけでございます。そのようにして地震の起こる場所というものの見当はつけることができるようになっております。
 ただ、問題は非常に残っておるのであります。たとえば測地も、あとから、これは地震の前兆を示していたんだと気がついた例は幾つもございます。たとえば四枚目の紙をごらんになりますと、左のほうに、新潟地震の発生前の水準測量の結果が出ておりまして、これはいまから考えてみますと明らかに新潟地震の前兆現象を示しておったわけでございます。ですから、これぐらい変化が大きいと、測量を繰り返すことによって何か見当をつける可能性があるわけでございます。それから右のほうの上には、各大学に付属しております微小地震観測所の結果を集大成したのが、縮尺の関係でよく見えませんけれども、一つの点がそれぞれ地震に対応するものでございます。これを見ますと、新潟地震の余震はまっ黒になって出ております。どういうことがわかるかといいますと、たとえば活断層でも地震を発生している、その上に地震が発生している活断層もあれば発生していない活断層もあるということがわかっております。いまの知識では、その発生しているほうは一応安、心であるが、発生してないほうが心配であるということになっております。その空白の地域は、この地図では一がいに申せませんが、空白と思われるところ、たとえば、新聞などにも報道されました酒田の場合はやはり空白ですが、しかし、それ以外に一ぱい空白がありますが、ほんとうに地震が起こる準備ができてそれで空白になっているのか、それとも、地震がほんとうに起こらないからどだい地震が起こらないから空白なのかという問題をまだ解決しなければならないわけでございます。このように、地震予知に関しては非常にいろいろな見当がついてまいっておりますけれども、解決しなければならない問題はあっちこっちにあるわけでございます。この中でやや、こっけいなことは、微小地震が起こってないように見えるところがございますけれども、そういうのは各大学の境目ということになっておりまして、たとえば東北と関東あるいは関東と近畿の間というふうにあまりない。これは必ずしもほんとうにないのではなくて、観測網がゆがんでいるからないのでございます。ですから、これは気象庁のような目的の観測にだんだん移さなければ地震予知の目的は達せられないわけでございます。ただ、気象庁には非常にまだ問題がございまして、右下の図に二つ――これは地震の垂直の分布でございますけれども、上は気象庁が九年間かかって得た結果でございます。下は大学付属の微小地震観測所が一年間で得た結果でございます。でありますから、そういうふうに高感度の観測をするということは、いまの気象庁の観測網の十倍の速さでデータを蓄積することができるということを非常に端的に示している図でございます。
 で、場所のことは、いま申し上げましたように測地のことや地震の空白地域のことや、あるいは活断層のことで見当をつけてまいりますが、それでは地震の起こる時期の予知でございます、それをどうするかということであります。測地というものは非常に信用されておりますが、新潟のような例は比較的珍しい例でございまして、たとえば測地というものは本質的に五年間に一回するというようなことですから、五年に一回観測をいたしますと十年以上の精度で時期をきめることはできないという、これは理屈の上でそうなるのでございますけれども、そういうことがあります。それではもう少し頻度をふやせばどうであろうかと申しますと、たとえば頻度をふやした場合、日本じゅう頻度をふやすわけにはまいりませんので、たまたま非常にいいところ、つまり大きな変化が起こっておるところですととらえることができる場合もありますけれども、そうでないと変化が少ないために誤差を生ずる。あるいは南関東の異常隆起と三年前にいわれたものはこういうものではないかと考えておる人もおります。それから地殻変動の連続観測という方法がございますが、これは非常にいい方法なのでありますが、残念ながら基礎的な研究がまだ十分にできておりませんので、ほんとうは地殻変動連続観測の観測網を日本じゅうに持つべきでありますが、いますぐといいますと、解決しなければならない問題が残っておる。それからたとえば、これは日本以外の国では井戸の水位とか、ラドンとか、あるいは電磁気、地球磁気の変化を観測する、これはみんな見込みのあることでございます。で、理屈の上からも見込みがあるのが当然であると、いまはそういうふうに思われておりますが、日本では井戸の水位というのはあまり行なわれておりません。つまり雨が降るからだめだという考え方が非常にあります。それからラドンのほうは、ラドンのことをやっていらっしゃる方が非常に少ないので、ほとんどいないので、地震予知のためにまだ組織化されていない状況でございます。
 最近非常なホープになりましたのは――一番下に書いてありますVpと申しますのはP波の速度、VsというのはS波の速度という意味でございますけれども、地震波の縦波の速度の変化によって地震の時期を予知するということが急速に発達してまいりまして、その実例が第六図に示してあります。第六図の一番上は、この発見の本家にあたるソ連の結果でございますが、そういう地震波の速度を時間につれてグラフに書いてありまして、ソ連ではこの地域に関する限りわかるのであると、こういわれております。それから二番目は日本での追試の一例でございまして、これは一九六三年に長野県にマグニチュード五ぐらいの地震が起こりまして、その前の変化をあとから見たわけでございます。この種の研究はほとんど全部があとから地震の予知はできたはずだという形になるのでございますけれども、これは時間とともに縦波の速度の変化があらわれまして、一九六八年の五月ごろから異常があらわれまして、百日間続いたあとで地震が起こっております。このような追試は最近非常に行なわれておりまして、日本でもアメリカでも――ソ連のことはまだ情報があまりございませんが、幾つか行なわれておりまして、やった人の五〇%の人はうまくいった、つまり、あとからですけれども、地震予知あるいは地震発生の前兆現象をつかまえたと、こう言っております。日本でもこのほかに幾つかの地震があとからやってみてうまくいっておりまして、かなりの大地震でもうまくいくのではないかという結果が出つつあります。ただ、これは大部分気象庁の観測網を使って、あとからデータを追試しておるわけであります。さっき地震の大きさのことを申し上げました。たとえばマグニチュード七の地震の大きさは三十キロ四方ぐらいだというわけでございますけれども、気象庁の観測網の間隔から考えますと必ずしもそう理想的な密度ではございませんのでむしろ全部が全部うまくいかないほうがあるいは当然なのです。そういうわけで、この一番見込みのある方法は、これから、いままでのことはもう少し調べればもう少し成功例――実はわかったはずだという結果が出てくると思いますけれども、これからしばらくの間、各大学の付属の微小地震観測網に、現実に進行しつつある変化がとらえられるのではないかと、そういうことを非常に望んでおるわけでございます。あるいは非常に理想的にいえば、あと数年の間にそういうものが一つぐらいうまく観測網にひっかかってくれるのではないかという希望的観測を持っております。
 地震予知というものは非常にまだ研究的な要素が濃い。それから、わかったように思っても自信が持てないとか、あるいは全然見当のつかない現象もまた一緒にわかってしまうということがありますので、非常に研究的に進めていかなければならないことでございますけれども、そうあと三十年も五十年も研究だけで済まされるものでないことは、日本に起こるかもしれないいろいろな中地震でも、マグニチュード七ぐらいの中地震でも大被害を生じる、つまりそういう意味では大地震がいろいろ起こるのであると考えられますから、そういうふうに考えているわけにはいかないわけでどうしても地震予知のことを具体化して、できるように進めていかなければならない。そのことについて最後に少し、まだ個人的な考えでございますけれども申し上げたいと思います。
 地震にいま関係して、地震予知に関係しておりますところは、国土地理院と気象庁と各大学――大学と申しましても地震に関係しますのは地球物理と申すところの一部でございまして、戦後新しくできた大学には物理や地質はございますけれども地球物理はほとんどないのでありますから、いわゆる旧制といってもいまは区別ないわけですけれども、昔からある大学だけです。それから防災センターとか緯度観測所とか地質調査所とかが部分的に分担しておるわけでございます。で、研究的なものですから大学は非常に重大な役目を持っておりまして、これまで大学でした研究の結果こういうふうに進んできたということも一ぱいあるわけです。ただ、大学というところはあくまで研究をするところですから、定常的な仕事はあんまりじょうずではないと私自身は非常に感じております。そういうことはもう国土地理院とか気象庁とかにはとうてい及ばない。たとえば国土地理院とか気象庁とかは非常にいい仕事をなさっておりまして、無理をしないで着実に進んでおります。といって、新しい進歩も取り入れてないわけではない。やっぱり着実に進歩もしている。大学のほうは、予算の割合には仕事をし過ぎて、あとで息が切れたりなんかいたします。非常にそういう意味ではあぶなつかしく見えるわけです。まあ研究ですから大学の力は無視することはできませんけれども、そういう定常的な事業のほうに移すように持っていかなければならない状況にあると私は感じております。国土地理院というところもその測量を非常に熱心にやっておりまして、地震の予知のことを非常に熱心にやっております。ただ、さっき申しましたように、ここでしていることは測地に限られるわけでございます。地震観測は気象庁が元来エキスパートでありまして、非常に長い間、何十年という間、一定のペースで観測を続けているわけであります。こういうデータは非常に貴重なことになっておるわけでありますが、非常に正直に遠慮なく言わせていただきますと、気象庁が地震課だけしかないということは、地震学者の一人として非常に不満に思っております。地震課には三十五人、人がおるそうですが、そのうち二十人ぐらいの方は事務的なことをしているそうですから、技術的なことに関係している方は十五人。気象庁は、あとは研究所に地震研究部長というのが一人おりまして、数人一二、三人の方がおります。これは非常に心細い。大学も地球物理のたとえば助教授以上は日本じゅうでたぶん四五十人いると思いますが、地震予知に関係しているのはそんなに多くないわけです。地球物理もいろいろなことがございまして、全員が地震予知をやったからといって地震予知が進むわけではない。そういうことはかえって地震予知に供給する栄養を少なくすることになるかもしれないわけであります。でありますから、大学のほうも実はそう大ぜい人がいるわけではない。気象庁のほうがそういうふうにまた地震課だけしかないということは非常に心細いと私は感じております。ということはなぜかと申しますと、いま地震予知の最大のホープは、さっき申し上げてその実例をお目にかけました地震波の速度を着目して、それによって時期を予報することです。私自身はこれに非常に望みをかけておりまして、見込みがあると考えております。そのためには、ある種の非常に能率的な大規模な全国の観測網をつくらなければならないのでありますし、その観測網は全部コンピューターによって自動処理をしなければならない。少なくともそういうふうにしなければ、研究的な地震予知は別としまして、日本の国土を何といいましょうか、これだけ地震の起こるところにわれわれ住んでおるのでございますから、日本の国土を管理するというべきか、あるいは安全の監視をするというべきか、そういうシステムはできないのでありまして、そういうシステムをつくるためには、そのルーチン観測のエキスパートである気象庁の地震関係をもう少しふやすといいますか、力を入れていただきたいと、こういうふうに思っております。
 これで大体の私の話は終わりますが、もう一度簡単に申しますと、地震の起こる場所というのは歴史上起こったところその他で大体わかるのである。しかし、歴史上一ぺんも起こってないところでも地震は起こるかもしれない。それもいろいろな方法によってわからせるように努力すればそれなりの見込みはある。それから地震の起こる時期も、地震波速度の変化によって小さい地震なら数日、中くらいな地震なら数ヵ月、一番大きい地震なら一、二年の精度であるいは予知できるのではないかという望みを私自身は非常に強く持っております。そのためには国土地理院による測量、これはもう非常に熱心に続けてもらわなくちゃならないのでありまして、そういうところに十分な予算をもってしたいだけやってもらいたいと思っておりますけれども、もう一つ気象庁地震課が管轄すべき全国的な観測網の整備、それを即時自動処理というべきですね、そういうものを建設していかなければならない。そのためには、もう少し気象庁の地震のほうに力を入れていただきたいと私自身は考えております。そういうふうにすれば、あと十年とかあるいは時間の予言は微妙ですけれども、すでに見込みがあるということは否定できない状況に現在でもなっておるのですから、あと観測網がちゃんとできれば、非常に加速されるわけです、データの集積は。でありますから、想像以上に早い時期に的確な地震予知が完成するのではないか。非常にそういう意味ではよいバラ色の幻想――幻想ではないと思います。見通しといったほうがいいのでありますけれども、そういうふうに考えております。簡単でございますけれども、これで終わりといたします。
#7
○委員長(秋山長造君) ありがとうございました。
 それではこれより参考人に対し質疑を行ないます。
 質疑のおありの方は順次御発言願います。
#8
○梶木又三君 ちょっと一つだけ。新潟の水準測量ですね、これちょっとどういうふうに読むんですか、測点から真東のほうに。
#9
○参考人(浅田敏君) これはこういうふうなんです。この左の図面に道がかいてございますね、これが水準路線で、この上のいろいろな点の上がり下がりを何回か測量してはかったわけです。たとえば一九〇〇年に測量しまして、次に一九三二年――三二年か三年に測量しますと、ここにかいてある点で、その前よりどれだけ上がったかということがわかります。それをかき込んでいったわけでございます。
#10
○梶木又三君 わかりました。これは年限なんですね。
#11
○参考人(浅田敏君) はい。横軸が年限で縦軸が前の測量との差でございます。
#12
○梶木又三君 いまのに関連しまして、新潟のあの地震と地盤沈下でガスのくみ取りですね、あれとの関係というのは全然新潟地震とは無関係なんですか。
#13
○参考人(浅田敏君) 私は関係ないと思います。地盤の沈下というものは、ある深さより浅いところの現象でありまして、地震はもっとずっと広い範囲の現象でありますので、関係ないと考えております。
#14
○古賀雷四郎君 ちょっとお伺いしますけれどもむずかしくてよくわかりませんけれども、南千葉ですか、房総半島で測地をやった結果、非常に地表面の変動が大きいというお話がございましたね先ほど先生のお説を聞いておりますと、関東に地震の起こる可能性はかなり先のことだというような印象を受けたのですが、測地が誤測とかいろいろな問題に基づくものもあるからというお話もあったので、その辺の関係はどうなっているのか正確におわかりだったら教えていただきたいと思います。
#15
○参考人(浅田敏君) 私はこういうふうに考えております。地殻変動というものは非常に少しずつ進むものでございますので、たとえば五年たってはかってみればその差がはっきりするわけです。しかし、たとえば三ヵ月ごとにはかってみますと上がったり下がったり、上がったり下がったりするわけです。それがたまたまこの水準器を見るときの空気のゆらぎだったのか、あるいはたまたま雨が降って――その標石と申しますけれども、その高さの基準になる埋めてある石の高さが変わったのか、そういうことが全部含まれると思うのです。結局、房総中部の隆起は、そのあとに時間がたてばたつほど大きくなっていくような性質のものではなくて、もしほんとうにあったとしても、一年ぐらいちょっとあらわれてまた消えてしまう房総半島の全体の方向は、やはり房総の先が沈んでいくという傾向でございますね。それは数年たてばたつほどますますはっきりしてきましたけれども、まん中の房総中部の異常隆起といわれたものは、それほどはっきりしなくなった、こういう意味で、もしあれが関係した地震だとしますと、さっき申し上げました地震の大きさとのぐあいから、マグニチュード七ぐらいだと思うのですけれども、どうもそういうことではなさそうだと、こういうのがいまの考えでございます。それでさらに申し上げますと、関東地震で一メートル五十センチ上がりまして、それはだんだんだんだん下がってくるのです。だんだんだんだん下がって、あるいはその半分下がったときとか、あるいは八割下がれば次の関東地震が起こるのであると、こういうふうに地質学者たちは地質的現象を観察して、昔からそうであったと、こういうふうに言っております。それから房総の異常隆起につきましては外国の人が、あそこは地震が起こると言いましたので、新聞紙上御存じだと思いますけれども、やはりほうっておくのはよろしくないので、各大学の人がこの九月から房総とか三浦半島の先端付近とか、いろいろなところに地震計を置きまして、さっき申し上げましたP波の速度の異常について調べておくことになっております。
#16
○古賀雷四郎君 測地問題に関連するのですが、そうすると測地というのは、地震に関連してはやはり五年間ぐらいのある程度の時期をおかないと地震に対する予知問題とかいろいろな問題は予測できないというようなことになるわけでございますか。
#17
○参考人(浅田敏君) 全体の変化がゆるいときにはそうだと思いますし、測地の専門家もそういうふうに言っております。しかし、たとえば新潟地震のさっきお見せしました例は、こういうのをうまくつかまえれば、一年ごとにやれば非常によくわかるわけでございますね。ですから、そういう場合もないわけでは決してないのだと考えております。
#18
○八木一郎君 最後の結論で、あと十年もすればかなり見込みのある予知観測の実りに希望がつなげると、それには現在の気象庁や大学のままではいけない、その充実、具体的にいえば、いまの倍にするとか、そういうような、荒っぽい話ですけれども、御見当がありましたらお聞かせいただきたい。このままいって十年というのではないようでしたから、何か内容を充実しなければいかぬ、人の数でいえばどういうことになるでしょうか。
#19
○参考人(浅田敏君) こういうことを申しますときに、私の見積もりはいつも小さ過ぎる癖がございますので、もうちょっと大きく申し上げたほうがあるいはいいのかもしれませんけれども、思い切って、たとえば気象庁は十倍とか二十倍とか、あるいは課が一つということが非常に問題になるのだと考えております。つまり私が十年たてば見込みがあると言うことには条件がついておりまして、観測網が完成することによって想像以上に加速されるであろうと、必ずしもギャンブルではありませんので、何がしかの理由はあるわけですが少なくとも観測網が完成することによって非常に加速されるだろう。それは大学では、部分的にはともかく日本全国を扱うことはできませんので、日本全国のそういう地震観測網を扱えるところはやはり気象庁しかないのではないかと考えております。そうだとしますと、つまり何倍になればというよりは、考え方を変えなければいけないのではないかと思っております。たとえば、あまりよそのりっぱな役所のことを申し上げるのは気がひけるのでありますけれども、地震学者としては、それだけりっぱな観測網といいますと、かなりりっぱなものですから、相当の訓練した人と、あるいはそういう観測網を仕上げるまでの訓練期間、練習期間というものがありますから、まあ相当の規模の組織をつくり上げていかないと、そういう観測網は動かないのではないかと思っております。大学のほうですが、私は理学部に属するのでありますけれども、地震研究所のほうが御存じのような事情にありますので、非常に確かに能率が落ちているわけであります。ただ、大学というところは、やっぱり研究をするところで、ルーチンの事業をするところではございませんから、何十倍にふやしたからといって、能率が何十倍にあがるとは思わない、二倍とか三倍とか、つまりオーダーの違わない程度で充実するということが大事なのではないかと思っております。
#20
○星野力君 いまのことに関連いたしますが、地震予知の研究のレベルですね、外国の進んだところなんかと比べて日本はどうなのかという問題とまた国家として、予知の研究あるいは調査の施設を比較したらどんなふうになるか、地震の多い国なのか。
#21
○参考人(浅田敏君) 非常に簡単にお答えしにくいことがありますですね。たとえばいまの速度変化によって地震予知をするということはソビエトで行なわれたことです。日本でもそういう研究がなかったわけではありませんけれども、実らなかったわけです。それから、それはたぶんこういうわけであろうという理屈のほうはアメリカの人が考えたわけです。このアメリカの人が考えたことは、いろいろ考えてみましたら、たとえばアメリカでは岩石破壊の実験が前から行なわれていたそういう裏づけがあったから考えついたんだと、いまこういうふうに考えております。ですから、日本は必ずしも予算が少ないからというような、通り一ぺんのことは申せないのではないかというふうに考えているので、といって修身みたいなことを申し上げて、地震学者の心がけがいいとか悪いとか言うのも困るんで、やっぱりそういうことは社会全体とか、あるいは国とか、政府とか、そういうものの状態と非常に微妙にからみつつ成長していくものだと思います。ですから、日本は日本以上のことはできないと、こういうことになるんですけれども、それでは日本のレベルはどうかといいますと、これはやはりかなり高いレベルでありまして、たとえば外国でどういうことが発見されても、一時間あれは内容は理解できると――ちょっと変な言い方ですけれども、全然ついていけない、お手あげだということは全然ないんで、もし外国で何か発見されたらすぐついていけますし、もし、たとえば日本で観測網が非常に整備したら、やはり自然科学でございますから、そういう観測網というものがもとになるのでありまして、そういうものが貧弱なら幾ら机の上でがんばってもだめなので、そういうものが整備したら、非常に速いスピードで追い抜くと、こういうことも非常にあり得ることです。ですから決してそうおくれているとは思えませんが、観測網のこと、いろいろな役所のことその他、これは学会の状態と全部からみ合っているので、たとえば学会だけ取り出して、進んでいるとかおくれているとか論じるのは必ずしも適切でないと思いますけれども、決しておくれてはいませんと申し上げていいと思います。
#22
○星野力君 もう一つ、国の施設の問題との比較はどうですか、二つお聞きしたんですが。
#23
○参考人(浅田敏君) 施設の問題ですね、気象庁の観測網が、つまりこの半年、一年で非常な、大げさにいえば地震予知については革命があったわけです。それが昔の考えに基づいているわけです気象庁の観測網は。ですから、その昔の考えによれば、かなりりっぱな観測網であると、かなりと申し上げていいんですが、新しい感覚によればかなりとは申せない。たとえば外国でいいますと、カリフォルニアのカリフォルニア工業大学というところに地震研究所がありますが、そこだけ三百個の地震計を適切な範囲――かなり広い範囲ですけれど、全部ばらまいて、それを全部中央処理して観測をする設備をつくりつつあるそうです。これはカリフォルニア全部で日本と同じくらいに広さがあるわけですけれども、カリフォルニア大学はそのうちの何分の一かだと思いますけれども、かなり大きなことをわずか一大学でやっているわけでございますから、気象庁のいまの施設は十分とは言えない。大学の施設はどうかといいますと結論からいいますと、これは非常に十分であるとか、りっぱなものであるとかは言えませんけれども、全く収拾がつかないほど貧困であるとは言えないと思います。ただ大学の人は、来たお金のわりに欲ばって仕事をしようとしますもので、そういう意味で、つまり施設の足りないところを労力で補っているという点がありますから、もっと大学の施設も非常に進歩することが非常に望ましいと申し上げたいと思います。
#24
○八木一郎君 ちょっと雲をつかむようでわからない、全くしろうとでわからないですけれども、さっきの御質問に続いて、何といいますか、まあ新しい感覚で近代的な観測網を充実するために必要な条件を満たすと、こういうことについて、何か御提言でもありそうな気がするわけですけれども、ちょっとそういう要件が満たされなければ、その期待する五十年から先にということにつながらないように思いますものですから……。
#25
○参考人(浅田敏君) 五十年と申しません、十年とさっき申し上げました。
#26
○八木一郎君 ええ、十年――どういういろんな条件を満たせばいいのかということがわからないものですからお教えいただきたいと、こういうことですが。
#27
○参考人(浅田敏君) 非常にもう思ったことを遠慮なく申しますと、国土地理院からいいますと、非常にいい仕事をしていると思います。ですからまず国土地理院のしたいだけ仕事をしてもらう。予算は値切らない。ああいうふうに事業をする官庁というのは、できないような予算は請求しないという印象を受けておりますので、請求する以上できるんだと思うのです。こちらの希望といたしましては、それ以上にやってもらいたいと思うので、もうちょっと頻度を上げた場合――さっきほんとうの現象か、あるいは誤差によごされた現象かわからないと申し上げましたけれども、そういう意味の研究も、ぜひ進めてもらいたいと思っております。
 大学には測地関係の研究というのはないんです。いまはもうなくなっておるのでございます。ですけれども、ほんとうはまだあるので、そういう研究もぜひ国土地理院にしてもらいたいと感じております。
 あとは、気象庁はもう非常な、はっきりすればもう部を四つも五つもつくって、地震研究所も地震研究部に三、四人人がいるというようなことをやめて、もう幾つも部をつくって、ぜひやってもらいたいと思うのです。そうでなければ、さっき申し上げたような近代的な観測網を処理することはできないだろうと思います。で、そういうところが気象庁のようなルーチンをする役所にございませんと、大学で幾ら研究して部分的なことがわかってきても、それを実用にかえることは大学ではできないのですから、しかも大学でそういうことがわかってくるのは案外早いのではないかという予感がいたしますので、いまから五年たってもまだ地震課が一人で何か仕事をしているとしたらこれはもうまさに地震予知の完成を五年おくらしたこととほとんど同じではないかというふうに考えております。ちょっと、どうも非常にかってなことを言い過ぎたような傾向でございますけれども、そう感じております。
#28
○八木一郎君 ありがとうございました。
#29
○古賀雷四郎君 大学の、たとえば地球物理学ですか、地震関係の方の養成の問題はいかがでございましょうか。
#30
○参考人(浅田敏君) 地球物理で、東大の地球物理は二十人学生をとっております。幸いにしてどの大学でも、教養学部から地球物理に入るのは、ある程度かなり点がよくないと入れないので、学生の質はかなりいいと考えております。で、いまは地球物理といってもいろんなものがございまして、惑星間空間もそうですし、気象学もそうですし、いろんなものがございます。それから人によっては、このごろは新聞記者になる方もあるし、もっと極端なのは商社員になる人すらいますが、たとえばその地震予知、そういうような各官庁とか、あるいは大学もですけれども、整ってきて入の需要が多くなれば、そういうものはいく人がふえるので満たせる状態にあると考えております。
#31
○古賀雷四郎君 もう一つは、観測網の強化の問題ですけれども、たとえば全国的な観測網を張るとすれば、問題は、かなり金が要るだろうと思います。たとえば地震の起こる場所の予知が空白地帯とかいろんな問題があるのだが、そういったところに主体的に観測網を張りめぐらすのか、そういった点のお考えはいかがでしょうか。
#32
○参考人(浅田敏君) それはやはり具体的な手順があると思いまして、私の個人的な考えでは、いま大学の持っております微小地震観測網を――その地元の人ですから、いろんなことを知っておりますから、それをたとえばテレメートリングを使うとか、あるいは適当の大きさの計算機を入れて、その計算機で処理する前段階までいかせるとか、そういうふうに進めていくとともに、それをそのまま気象庁につなげるという形に進んでいくのが一番いいのではないかと考えております。ですから、全く見当つきませんが、適当な手順を踏んでいけば非常な巨額の金を一時に要しないで非常に調子よく進んでいく方法もあるのではないかと考えております。
#33
○委員長(秋山長造君) 私ちょっとお伺いしますが、ごく通俗的な御質問で恐縮ですけれども、最近御承知のように、マスコミ関係を中心に大地震近しという感じがずいぶん強いわけですがね、こういうことに最近急になってきたのは、やはり何か学問的な根拠のようなものがあって、そこから出発しているんだろうと思うんですがね、その辺はどういうふうにお考えになりますか。
#34
○参考人(浅田敏君) いろんなことがあると思うんですけれども、やはり地震の危険性ということは否定できないわけです。たとえば根室に起こるであろうといわれておりまして、それはまさにそこに起こったわけです。幸いに陸地から遠いものですから被害は少なかったわけです。でありますから、たとえばここに起こるぞと言われると起こるという実績が一つできたとまあ考えられます。それから、もう最近の地震のブームには、もちろん、なくなった河角先生の六十九年説も関係しているかもしれません。しかし、だんだん進んでいきますと、たとえばいま問題になっているのは、東京は精密ひずみ測量が行なわれておりますけれども、まだ東京だけ、ほかは行なわれてないわけですが、ただ御前崎の付近などは測量の結果のある解釈では非常にゆがんでるのではないかと思われる傾向があるわけです。まだこの付近から日本海までひずみ測量みたいなものを実施しつつあるのだそうですけれども、もし、ここがほんとうにゆがんでいるとしたら、さっき私が差し上げました二番という図に御前崎の付近はクエスチョンマークをつけてありますけれども、ここにも地震が起こるのであるということを考えなければならない。で、非常に正直いいますと、もしここに起こるとすると、私としては新幹線に乗るのもこわいと思うわけです。これは非常に正直な話なんです。ですから、それはぜひどうにかして決着をつけなくちゃいけないので、国土地理院ではそういう測量をしておるそうでありますから、その結果を見ればもう少し検討が進むと思いますし、あるいは、それでもしあぶなければ、科学研究費でも申請しまして、海底地震計などをこの付近に入れて、さっき申し上げたような異常があるかないかということを調べてみたいと感じております。
 それから、たとえば新聞に出ておりました酒田付近ですね、ここは空白地帯になっておりますがまだ何しろ観測網が荒いので何にも言えませんけれども、あるいは、ここはもしかしたら異常があるのではないかというかすかな疑いがあるものでございますから、これは東北大学が調べようとしております。そういうふうにだんだん学問が進んでいきますと、いままでなら気がつかなかったことまで気がついてまいりますので、それがどうしてもおもてに聞かれたとき出てしまうと、あるいは、といってそれ以上的確な予報ができるような状態にないものですから、そういうことが出てしまうと、新聞などの書き方によっては、だんだん度がひどくなって、避難用の袋まで町会で世話するというようなことになるのではないかと思います。しかし、私個人としては関東地震はまだないだろうと考えております。が、これらも決して権威ある機関できめたわけじゃないんで、私個人の印象ですけれども、しかし日本全体から見ますと地震はないんであると言って安心して、すましていい状態ではないと考えております。
#35
○委員長(秋山長造君) 先ほどもお話を聞いておりまして、いわゆる関東大震災のようなものはさしあたって起こるとは学問的に考えて思えない。しかし、東京の下町地震ですか、安政の地震程度の下町地震ですね、これは起こるおそれがないとはいえないと。しかも、その被害ということになれば、これは必ずしもいずれが大きいか小さいかということは一がいに――小規模の地震であっても、下町地震のようなものが起これば被害はずいぶん出るだろうというようなお話だったと思うんですが、大体そういうお考えですか。
#36
○参考人(浅田敏君) そうでございます。関東大地震については何がしかの学術的な根拠があるわけです、精密ひずみ測量が行なわれておりますので。あるいは地震観測も、さっき申し上げましたように行なわれますし、この次の関東地震が起こるころには予報ができるようになっているのではないかと、まあ希望的に考えておりますけれども下町の地震については何も申し上げる根拠がないので、私の知っておることは安政のときにそういう地震があって七千人の被害者が出たということを知っております。それから、その地震はやや深いところに起こるらしい、つまり地表に断層が出るような状況ではないということ、それもわかっております。そうしますと、ますますもって地表からの観測で見当をつけることがむずかしい。これもシベリアのまん中でそういう地震が起こるのならばまだ見込みがありますけれども、東京のようなところでは、つまり地球物理学的には汚染されていると言ったらいいかもしれません、そういう表現が適切かどうかわかりませんけれども、観測できないので。ですから、あるかもしれないということ以外には何とも申し上げる根拠はないわけです。
#37
○星野力君 先生、先ほど申されましたクエスチョンマークが二つついておる御前崎周辺の問題ですね、これは、先生の御意見では、特にここは力を入れて調査する必要があるのではないかというふうにお聞きしたんですけれども、先生は新幹線のことを申されましたけれども、新幹線だけじゃなしに、ここには浜岡にかなり大きな原子力発電所がいま建設されようとしておるわけでございますから、そういう点からもちょっとお聞きしたいんですが。
#38
○参考人(浅田敏君) いまここが疑問を持たれているのは測地の結果なんです。ある解釈をしますと、ここは非常に押されているように見えるんですが、基準のとり方を変えますとそれほどにも見えないというわけで、国土地理院の方に伺いますと、日本海から御前崎のほうにかけてずうっと測量をしているから、その結果が近いうちに出る、そうすれば、ほんとうに縮んでいるのかどうかもつとはっきりわかる、もしある程度縮んでいるとしたら、やはりあらゆる手段を尽くして、あるいは海底地震計も使って早く取り組まないといけないのではないかと私は考えております。その国土地理院の結果を見れば、やや安心するか、急いで取り組むかという、その程度の決断はつくと思っております。
#39
○委員長(秋山長造君) 他に御発言もないようですから、参考人に対する質疑は終了いたしました。
 浅田参考人には、御多忙中のところ本委員会に御出席をいただき、貴重な御意見をお述べいただき、ありがとうございました。厚くお礼申し上げます。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後三時十分散会
ソース: 国立国会図書館
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