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1949/03/14 第7回国会 衆議院 衆議院会議録情報 第007回国会 本会議 第26号
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1949/03/14 第7回国会 衆議院

衆議院会議録情報 第007回国会 本会議 第26号

#1
第007回国会 本会議 第26号
昭和二十五年三月十四日(火曜日)
 議事日程 第二十四号
    午後一時開議
 第一 資産再評価法案(内閣提出)中修正の件
 第二 所得税法の一部を改正する法律案(内閣提出)
 第三 富裕税法案(内閣提出)
 第四 資産再評価法案(内閣提出)
 第五 相続税法案(内閣提出)
 第六 法人税法の一部を改正する法律案(内閣提出
 第七 酒税法の一部を改正する法立案(内閣提出)
 第八 通行税法の一部を改正する法律案(内閣提出)
 第九 所得税法等の改正に伴う関係法令の整理に関する法律案(内閣提出)
 第十 公職選挙法案(選挙法改正に関する調査特別委員長提出)
 第十一 公職選挙法の施行及びこれに伴う関係法令の整理等に関する法律案(選挙法改正に関する調査特別委員長提出)
 第十二 漁業法の一部を改正する法律案(田渕光一君外二十名提出)
    ―――――――――――――
●本日の会議に付した事件
 日程第二 所得税法の一部を改正する法律案(内閣提出)
 日程第三 富裕税法案(内閣提出)
 日程第四 資産再評価法案(内閣提出)
 日程第五 相続税法案(内閣提出)
 日程第六 法人税法の一部を改正する法律案(内閣提出)
 日程第七 酒税法の一部を改正すす法律案(内閣提出)
 日程第八 通行税法の一部を改正する法律案(内閣提出)
 日程第九 所得税法等の改正に伴う関係法令の整理に関する法律案(内閣提出
 日程第十 公職選挙法案(選挙法改正に関する調査特別委員長提出)
 日程第十一 公職選挙法の施行及びこれに伴う関係法令の整理等に関する調査特別委員長提出)
 日程第十二 漁業法の一部を改正する法律案(田渕光一外二十名提出)
    午後一時二十七分開議
#2
○副議長(岩本信行君) 諸君、この際一言ごあいさつをさせていただきます。
 私は、今般国会議員団一行に加わりまして、一月十四日渡米の遂に上りましたが、昨十三日、山崎、淺沼、今村椎熊の四君並びに大池事務総長、島渉外課長とともに無事帰国いたしました。この際付言いたしますが、松本瀧藏君は都合がありまして十日ほど帰国が遅れることになりましたので御了承を願いたいと存じます。
 この間、五十五日にわたる国会開会中の欠席につきましては、諸君に非常な御迷惑をおかけいたしまして、まことに申訳ないと考えております。なおこの間に、皆さんより御激励とご支援をいただきましたことに対して、副議長として、また大池事務総長にかわりまして、厚く御礼を申し上げます。
 視察の結果は、得るところがきわめて多かつたことを欣快に存じております。いずれ他の機会に、同僚一行の諸君とともに具体的な報告をさせていただく機会があることとかんがえておるのでございまするが、本日はとりあえず、以上ごあいさつをさせていただいた次第であります。
    〔拍手〕
#3
○副議長(岩本信行君) これより会議を開きます。
     ――――◇―――――
#4
○副議長(岩本信行君) 日程第一、資産再評価法案修正の件は、内閣から、撤回の申出がありましたから、日程から省きます。
#5
○副議長(岩本信行君) 日程第二、所得税法の一部を改正する法律案、日程第三、富裕税法案、日程第四、資産再評価法案、日程第五、相続税法案、日程第六、法人税法案の一部を改正する法律案、日程第七、酒税法の一部を改正する法律案、日程第八、通行税法の一部を改正する法律案、日程第九、所得税法等の改正に伴う関係法令の整理に関する法律案、右八案は同一に委員会に付託された議案でありますから、一括して議題といたします。委員長の報告を求めます。大蔵委員長川野芳滿君。
    〔川野芳滿君登壇〕
#6
○川野芳滿君 ただいま議題となりました、政府提出、所得税法の一部を改正する法律案外七法律案に関して、大蔵委員会の震災の経過と結果をご報告申し上げます。
 この所得税法改正等八法律案のおのおのは、さきに第六国会において成立し、すでに実施を見たる取引高税廃止、織物消費税廃止、物品税改正、所得税の暫定改正等及び今国会に別途提出を見るべき地方税法の改正等とともに、国家、地方を通する税制の根本的改革の一環であり、その主要部分をしめるのであります。今次の税制改革は、申すまでもなく、さきに公表を見たるシヤウブ勧告の基本的原則に即応し、さらにわがくに現下の財政経済情勢に応じて調整を加えられたものでありまするが、その改革の基本的方針は、政府の説明によりますれば次のごとくであります。
 第一は、経済安定計画の基本方針に即応し、均衡予算を編成し、租税收入を確保するとともに、他面価格調整費その他の経費について大幅の削減を行い、歳出己簿の縮減による財源をもつて税制を合理化し、国民の税負担を軽減せんとする、これが国税改革の基本的方針であります。
 第二は、地方自治を強化助長し、地方団体の財源を充実せいしめるため地方税制を改正し、」特に市町村財源の充実を期し、また新たに地方財政平衡交付金制度を創設し、財政力の乏しい地方団体に対し必要なるざいげんを付與せんとする、これが地方税制改正の基調であります。
 第三は、中央地方をつうじて恒久的かつ安定的傾向の確立を目途とし、国、都道府県、市町村の税源の配分を合理化し、附加税制度を廃止し、税目の整理をはからんとするものであります。
 第四は、国税、地方税を通じて負担の公平化をはかるため、各種の税法を制定し、改正あるいは廃止し、税制の徹底的合理化をはからんとするものであります。これがため、国税にありては、一、所得税を合理化し、これを国の租税收入の根幹たらしめる。二、所得税の補完税として富裕税を創設し、また財産税を根本的に改正する。三、間接税については、さきに実施を見たる織物消費税及び取引高税の廃止、物品税の改正等に続き、三等通行税の廃止、有価証券移転税の廃止を行うとともに、酒税を調整する。四、既往におけるインフレーシヨンの結果に対し税制の根本的合理化をはかるため、個人及び法人の課税方法に調整を加える。
 第五は、税制の合理化に即応し、税務行政の方面においても、その適切な執行と納税者の協力を期待し、負担の公平化と徴税の充実をはかり、これがため、青色申告制度の採用、予定申告の前年度実績制の採用、加算税、追徴税等の改正、協議会などによる異議処理方法の改善、その他罰則の整備などをはからんとするものであります。
 次に、この八法律案の各々につきまして、その理由と内容について概略ご報告申し上げます。
 まず第一は所得税法の改正でありますが、この改正は、今次税制改正の中枢をなすものであります。まず税自体に関しては、第一に基礎控除の引上げであり、現行一万五千円を二万五千円に改めんとするものであります。第二は扶養控除の引き上げであり、千八百円の税額控除から、一万二千円の所得控除に改めんとするものであります。第三は勤労控除の引下げであり、すなわち百分の二十五、最高散漫七千五百円を、百分の十五、最高三万円に改め、事業所得者との負担の均衡をはからんといたしております。第四は税率の改訂であります。現行五百万円超百分の八十五を、五十万円超五十五に、最高限を制限せんとするのであります。第五は扶養親族範囲の拡張と合算制の縮小であります。その他不具者、医療費、災害等について特別控除を認め、また変動所得に対する平均課税をはかり、譲渡所得及び由林所得の課税方法を合理化し、損益通算及び損失の繰越し、繰りもどし制を拡大せんといたすものでありますが、またさらに徴税手続きに関しては、予定申告、青色申告、異議処理等に関して合理的制度を定めんとするものであります。
 次に法人税法改正について申し上げます。今次改正の要点は、第一に、超過所得及び清算所得に対して法人税の廃止であり、第二は、普通所得に対する法人税を百分の三十五にすえ置くとともに、農業協同組合など特別法人税を新設するとともに、同族会社の範囲を拡張し、これに対する積立金特別課税をなさんとするものであり、第四は、従前の非課税法人の收益事業に対して課税を新設せんとする等であり、その他申告納付、異議処理等に関する制度を、所得税に準じ同じく改善せんとするのであります。しかして、これら改正にあたりましての根本的観点としては、従来の法人をもつて個人から独立した別個のものと認める大陸式考え方を改めて、個人の延長、株主の集団と見る英国式考え方を採用しているのであり、この思想に基き、法人税と所得税が実質的二重課税となることを排除するとともに、また法人の負担を軽減して資本蓄積をはからんとするのであります。
 次に富裕税法案は、所得税と補完税として新税を創設せんとするのであります。すなわち、今回所得税法改正におきましては、その最低税率を、五十万円超百分の五十五に制限したのでありますが、これに対応して責任課税を充実し、税負担の修正、合理化をはからんとするのであります。すなわち本税は、課税時期たる毎年十二月末日において、本税施行地に住所または一年以上の居住を有する個人及び本法施行地に財産を有する者に対し、その財産の価格が正味五百万円を超える場合において千分の五を課し、それ以上は累進して、五千万円を超える部分について千分の三十に至る累進課税をなさんとするものであります。
 次に相続税法案について申し上げます。この法案は、相続税法の前文改正であります。現行の相続税法におきましては、相続税と、これを補完する贈與税との二本建課税をし、相続、遺族または贈與による財産の移転に際し、それまでの財産所有者の財産について総合して課税していたのでありますが、これを根本的に改めて、相続または附興により財産を取得したものに対し、取得者ごとに分割し、その一生を通じて、取得財産の累積額を標準として一本建の課税をなさんとするものであります。相続税の課税価格は、相続、遺附、贈與により取得した財産の価格の合計額にありますが、今次改正においては、非課税財産の範囲を拡張し、宗教、慈善、学術用に共するもの、政治資金等についての非課税規定を定め、また基礎控除を定め、小額控除を拡大し、配偶者控除、未成年者控除を新たに設け、その他相次相続控除、年長者控除等を定めるのであります。しかして税率は、これ等控除後の課税財産額に対し百分の二十五ないし五千万円超九〇%までの超過累進税率に改めんとするのであります。
 次に財産再評価法案について御報告申し上げます。この法律案は、資産の再評価と、再評価税と、再評価後の経理等について規定しております。過去数箇年の間におけるインフレーシヨンによる著しい物価騰貴のため、企業資産の帳簿価格と実際価格との著しい差異を生じ、資産の適正な原価償却が不可能となつている状況にかんがみ、まず評価し直して適正たる減価償却を認め、企業経理の合理化をはかるとともに、資産譲渡のしにおける名目的利益に対する所得時または法人税課税を避け、譲渡所得に対する適正課税を可能ならしめるのが再評価のもぬてきであります。しかして再評価税は、社債、預金等、債権所有者及び過去においてインフレーシヨンによる名目所得に対し効率の課税を負担した者と、これら固定資産所有者とのあいたの公平をはかるため、再評価差額に対して百分の六の税率のよつて課税しようというのであります。この再評価は、原則として本年一月一日を基準日とし、一定の期限内に行うのでありますが、法人または個人が所有する資産については、卸売物価指数、消費者物価指数に基く一定の倍率を乗じて再評価額またはその最高限を算出するのであります。しかして、法人資産及び個人に事業用減価償却資産については、シヤウブ勧告による一率強制を改め、再評価を行うかいなか、またその基準内でいかなる程度に再評価を行うかは、省勇者の任意にゆだね、企業のじつじように応じた再評価を可能ならしめようというのであります。再評価税は、減価償却資産については、原則として、法人においては三年間、個人においては原則として五年間に分納せしめ、減価償却をしない資産においては、原則として処分、譲渡、相続などのあつたとき納付せしめるのであります。次に通行税法の一部を改正する法律案における改正の要点は、まず三等の乗客に対しては、その消費に性質と租税力にかんがみ、普通運賃に対しても、また急行料金と同様の百分の二十のぜいりつの引き上げんとするものであり、あわせて徴税手続に関する若干の改正を行わんとするものであります。
 次に酒税法の一部を改正する法律案におきましては、今回税制改革の一環として、地方税たる酒消費税が廃止せられると伴い、これを酒税に統合するとともに、歳入確保などの見地から、全般的には若干の増徴を行うこととし、その酒類販売業者の指定などについて若干の改正をも行わんとするものであります。
 最後に所得税法等の改正に伴う関係法令の整理に関する法律案は、所得税法及び法人税法の改正並びに有価証券移転税の廃止に伴い、所得税等の非課税に関する関係法令の規定を整理れんとするものであります。
 これらの諸法律案は、おおむね昭和二十五年四月一日より施行せんとするものでありますが、富裕税法案は四月一日を予定する交付の日から施行し、資産再評価法案については交付の日から適用せんとするものであります。
 以上、各法律案につきその大要を申し述べたのでありますが、この税法改正の結果、昭和二十五年度の国の租税及び印紙收入予算額は四千四百四十六億円であります。これを昭和二十四年度と比較いたしますると、約七百十三億円の減少となります。さらに第六国会において可決せられた所得税の軽減、取引高税等の廃止をあわせ一体と見るときは、国税減少額は九百十三億円と相なるのであります。
 この八法律案中、所得税改正法律案外国法律案にかんしましては、二月二十四日、大蔵大臣より提案理由の説明を取得し、また相続税法案及び資産再評価法案外一法律案については、三月四日、政府委員より提案理由の説明を聴取しました。本来、三月十日に至るまで連日委員会を開き、大蔵大臣及びその他の政府委員に対し、各委員より熱心な質疑が行われ、また通行税改正法案については、特に運輸委員会との連衡審査会を開きました。また、この諸法案が重要なる歳入法案なるにかんがみ、三月二日公聴会を開催し、学界及び利害関係者等の意見をも聴取いたしました。この間の詳細なる経過は速記録を参照願うこととして、その概要に関してのみ御報告申し上げたいとぞんじます。
 まず、質疑応答のおもなるものは次のごとくであります。所得税法にかんしては、基礎控除、勤労控除、累進の限度、農家課税などの問題について質疑が行われました。すなわち、二万五千円では最低生活費にも少な過ぎる、基礎控除はもつと増額すべきではないかとの質疑に対し、政府側からは、最低生活費に食い入らないようにするのは理想であるが、財政上の必要もあり、両々あわせ考慮して二万五千円とした旨を述べられ、また勤労控除は、その把握の実際にかんがみ引下げを行うべきではないと思うがどうかのと問いに対しては、シヤウブかんこくは、事業所得との均衡上一割に削減せんとしているが、政府は、勤労所得の担税力や、経費控除のない点や、さらに捕捉資料実際問題などをあわせ考慮し、一割五分にした旨の答弁がありました。
 次に、所得税の累進率を五十万円超五五%にとどめることは妥当ではない、もつと累進すべきではないかとの問いにたいしては、所得税と住民税と富裕税等を考えるとき、高額所得者に対しては相当高度の累進率適用となるから、この程度をもつて適当と考える、また中小企業者、農業者等にも勤労控除を圧縮し基礎控除を引上げたのは、実質上勤労控除をこれらの人々にも及ぼしたものであるとの答弁がありました。農家は、減税とはいいながら、肥料の値上りで、かえつて負担がふえるのではないかとの問いに対して、主食の価格はパリテイ計算できまる、従つて大部分がはねかえつて来るとの答弁がありました。
 次に、予定申告の條項はきつ過ぎる、前年度実績以下で申告せんとする場合は政府の承認を受けねばならぬとすれば、それは実績主義となるおそれはないかとの問いに対し、大蔵大臣は、施行上十分の考慮を拙う旨の答弁をせられました。
 次に法人税はシヤウブ案では一%に対する、これを二%引上げた理由いかんとの問いに対して、大蔵大臣より、担税力ありと見て課税する、一%課税は三分の金利に当る現状から見て金利か六分程度であり、従つて税率は二%を適当とする旨の答弁があり、次に農業協同組合等を一般営利法人と同率に課税するのは妥当を欠かぬかとの問いに対して、政府側からは、沿革上の理由で差がついていたが、現段階においては一率のほうが公平である、今回は公益法人の行う收益事業に対しても課税する、また協同組合にあつては、事業の分量により割もとす配当を利益として計上しないから影響は少い、税制中に保護助長を織り込んだり補助政策に依存せしめることは望ましくないとの意見が開陳されました。
 次に所得税、法人税等共通の問題としては、加算税及び延滞金の軽減は新年度から実施することになつているが、現在の諸状況から見て、その改正を過去にさかのぼつて実施する意思はないかとの問いに対して、大蔵大臣は、一月一日にさかのぼり施行するよう準備中である、これは單行の特例法をもつて実施したい、すでに納めた人については還付することにしたいとの答弁がありました。
 次に協議団の具体的内容に関する質疑に対しては、大蔵省設置法を改正して、さしあたり国税庁及び国税局にこれを置く、全国に七十箇所を予定し、そのため人員増かの予算を計上している、協議団には民間経験者を管理として多数採用していれる、協議団を官吏とする理由は、税務は常識によらず調査によるべきであるからであると説明せられました。
 次に相続税について、相続税改正法は家族制度を考慮にいないのではないかとの質問に対し大蔵大臣より、民法で家族制度がかわつた以上、相続税附でもそれを取り入れざるを得ないと説明がありました。通行税法の改正については、前に申し上げた通り特に連合審査会を開き、二等運賃、特に汽船の二等運賃について質疑応答がくりかえされました。
 次に酒税法改正について、タバコが値下げになる際酒が値上げになるのは妥当を欠く、シヤウブ勧告は酒税收入を八百億円予定しているが、八百億円の税收を得るのに全般的に値上げをする必要はないではないかとの問いに対して、勧告は原料をふやせぬ、税率を上げるという点にある、酒税を減らすより税全体の軽減をはかり、酒税予算の見積りがえ、税率変更を考えはない旨答弁がありました。
 次に資産再評価と物価値上りとの関係についての質問に対して、大蔵大臣は、そういう点を考慮して一率を強制せず、一定倍数以下で任意にやることにきめた、従つて再評価により影響があるとは考えられないとの答弁がありました。
 次にシヤウブ氏は税法の簡明を勧告しているのに、今次の改正税法はますますむずかしくなつて来ているのではないかとの問いに対して、政府側からは、一つには公平と合理化を目的としたるため、二つには政令にゆだねることをなるべく避けたため、かくのごとく複雑になつたので、やむを得ないとの答弁がありました。
 最後に、二十四年度自然増收が多額にあるという事実つありや、またこの自然増收を物品税軽減に充てる意思なきやとの問いに対し、大蔵大臣は、法人税、酒税は増收がある、所得税は源泉課税分はある程度の自然増があるが、申告分はそれ以上自然減が出るおそれがある、もし全体として自然増收がありとしても、物品税の軽減に充てるつもりはない、それは所得税の減税に充てる、その場合改めるのは、まず基礎控除であり、次に税率であるとの趣旨が述べられました。
 次に公聴会においては、公述人九名より意見を聴取しました。そのうちおもなるものについて、要約して御報告いたします。
 まず商大教授井藤半蔵君は、現在では直接税もまた大衆課税である、直接税中心主義は恒久的制度としては意味があるが、過渡期においては、もつと間接税を重視する必要がある、超過所得税を廃止せんとする法人税改正は賛成できぬ、資産再評価において価値修正を目的とする建前からは、一率強制の方がむしろ妥当である等の意見を述べられました。
 次に商大教授都留重人君は、現在本当の所得と税務署相手の所得との間には非常な開きがある、しかもこの開きは、行政機関がかつてにコントロールし、手心を加えているのが実情であり、この事実を無視して税率体系を論ずるのは無意味である、国会は税の屈折作用を考慮に入れて税率を考え直していただきたいとの旨を述べられました。
 次に農業協同組合代表会議の黒田新一郎君は、農民の立場から、所得税の累進率五五%にとどめることは不満である、法人税については農業協同組合と営利会社との区別を認めるべきである旨をのべられ、また中小企業者の所得税に対して勤労控除がないのは不均衡である、零細起業者のため特別控除を認めるべきである、青色申告の帳簿様式は簡單化せられたいとの意見を述べられ、また酒造協会代表理事土田國太郎君は、酒税に関し、購買力の現状と密造防止の見地から酒税率は現行の七〇%に引き下ぐべきであり、また酒の種別関の均衡を保つてもらいたい旨を申し述べられました。
 また十條静止取締役金子佐一郎君は、法人性の積立金に対するに%課税は一種の資本課税であるから、とりやめられたい、再評価税のとりやめが不可能ならば、数回にわけて再評価をすることを認めていただきたい旨を述べられ、また元金全労組副委員長奧守米三郎君は、現在において直接中心主義は理論的にも技術的にも反対である旨の意見を開陳されました。
 かくて質疑を打切り、三月十一日討論に入りましたところ、北沢委員は自由党を代表して八法律案すべてに賛成する旨を述べられ、また田中委員は日本社会党を代表し、宮腰委員は民主党を代表し、河田委員は日本共産党を代表し、内藤委員は国民協同党及び農民協同党を代表して、いずれも反対する旨討論せられました。
 かくて討論を終局し、ただちに八法律案を一括して採決いたしましたところ、規律多数をもつて原案の通り可決いたした次第であります。
 以上、はなはだ簡單でございますが、ご報告申し上げます。(拍手)
#7
○副議長(岩本信行君) これより討論に入ります。川島金次君。
    〔川島金次君登壇〕
#8
○川島金次君 私は、ここに日本社会党を代表して、ただいま上程された所得税法の一部改正法律案七件の法律案に対し一括反対の意を表明せんとするものであります。
 そもそも租税制度は、一国国民所得の実態に即し公正適実であることはもちろん、いやしくも税はその国民所得との均衡を失し、ひいては国民最低生活の維持をすら困難にするがごときことは、これを絶対にさくべきひくべきであります。さきに片山内閣が賃金の改訂を実施するとともに、税制の一部改正を実施いたしましたのも、この国民所得の変動に即して、その国民所得と税制との均衡を確保せんとする努力にほかならなかつたのであります。
 去る第二次吉田内閣は、一昨年七月物価改訂以後、さらに物価の上昇を見、これがため、遂に同年末において公務員賃金ベース改訂の余儀なきに至つたことは、諸君のご承知の通りであります。もつとも、このベース改訂は、当時の物価事情、民間賃金事情を無視して、五千三百円案をもつて政府は臨んだのであります。これに対し、全公務員の切烈なる要求と、わが党の強硬なる主張に屈して、当時さすがの吉田内閣も、遂にしぶしぶながら六千三百七円案をとるに至つたのであつて、第二次吉田内閣は、その成立の当初よりいたしまして、早くも賃金政策の無能を暴露したことは、いまなお諸君のご記憶に新たなるところであります。
 いずれにいたしましても、当時の吉田内閣は、このときすでに賃金ベースの改訂と平行して移制の改正をも行い、物価と賃金と税との均衡をはかるべき当然の責任があつたのであります。しかるに政府は、このことを怠り、税制は前内閣のそのままを踏襲するといつた無為無策をもつて今日に至つたのであります。従つて、国民、ことに勤労者、農民、中小企業者等にとつては、その所得と税との均衡を失するに至つたがために、その租税負担はいよいよ加重せられ、税がますますその最低生活費に食い込むというおそるべき事態を惹起し、遂にはこの重税に耐えられずして、勤労者は、心にもなき妻子のアルバイトか、あるいは家産を売拂つて、辛うじてその生計を維持するといつた、さんたんたる窮状に追い込められ、他面一般中小企業においても、また政府の金融政策に無策と相まつて、休廃業、倒産、破産するもの続出し、農村においては随所に貴重なる耕作権を放棄する者を見る等真に憂うべき事態を惹起し、これに伴い失業者の累増となり、昨今に至つては親子心中や自殺者をも出すに至り、さらに事態を惡化せしめるに至つたのであります。かうのごときは、政府の経済諸政策の失敗と、ことに税制がまつたく国民経済を無視した政府の無策と怠慢から来た悲しむべき当然の結果でありまして、その責任重大なりといわなければなりません。(拍手)
 日本経済の安定と復興のためには、その重要かつ広汎なにない手である農民、中小企業者を含めた勤労大衆の負担をできるだけ軽減し、よつてもつてこれが最低生活の確保、企業余力の培養、実質賃金の充実に最大の努力を拂うことこそが最も喫緊の要件といわなければなりません。にもかかわらず、政府は、今回の税制の改革及びこの税制を基本として確保せんとする政府財政資金の配分においても、依然大衆負担の犠牲において独占企業と金融資本とに奉仕し、その利益を擁護せんとする資本家的反動政策を強行する以外の何ものでもないのであります。すなわち、最も大衆課税たるタバコ益金一千二百億円、酒税收入およそ一千億円をも含めた四千六百余億円の租税收入のうち、実にその二割にも相当する八百四十余億円の血税をもつて、ほとんど期限未到に属する政府債務の償還に振り向けるがごとき、まさに大衆の血税をもつて大企業と金融資本とに奉仕せんとする何よりの証拠といわなければなりません。
 さらに法人税においても、また超過利得税や累進制を廃止し、一律に三五%といたしたのみならず、はなはだしきは、この法人税をそのまま利潤を目的としない協同組合のごとき特別法人に対してもこれを適用し、あまつさえ新地方税制においても、またこれら特別法人に対して、一般法人と何ら異ならざる措置をもつて臨もうとしておるのであります。かくて、さなきだに政府のこれら協同組合に対する熱意の欠如と経済諸政策の失敗の犠牲となり、今やその経営日とともに困難をきわめんとしておる全国大半の組合は、このことによつてさらにいよいよその存立の基礎を危うくせんと、一大脅威、ひとしく狼狽をきわめておる次第であります。このこともまた、政府は口に国民負担の軽減を強行せんとすると同様に、口に協同組合の育成と健全なる発達を約しながら、その実、これら組合に対し政治的、経済的圧殺を目途とするにひとしい態度でありまして、ひつきようするに、吉田内閣の諸政策は、あげて反社会的、反勤労者的以外の何ものでもないと断ぜざるを得ないのであります。
 以上の見解に立つて、まず国民関心の焦点である所得税法の改正案を見るとき、ここにもまた驚くべき欺瞞性のあることを指摘せざるを得ないのであります。なるほど改正案は、一応基礎控除を二万五千円、扶養控除を一万二千円に引上げ、また合算課税の廃止、特別控除の設定、税率等の一連の改正を実施せんとしておるのでありますが、この程度の改正では、現下の物価、賃金、生計に実態、購買力等、国民経済の現実に照し、依然として税が定額所得者階層の最低生活を脅威すること、きわめて明白であるのであります。ことに、従来勤労控除二五%であつたものを、一挙これを一五%に引下げたごときは、いささかの弾力性もなき勤労者に、その負担の重きをしいることはなはだしいといわなければなりません。いわんや、今回政府は、国税とともに地方税法の大改革をば実施せんとしております。しかも、この地方税の改正は、住民税、固定資産税等において、新たに少くとも二倍、多きは三倍以上に及ぶ大増微を企てております。従つて、この地方税の著しい増税と、これに伴う家賃、地代等の負担はかえつて加重されること、これまたきわめて明らかなのであります。
 今、その具体的一例をあげますと、一箇年八万円、すなわち六千三百七円を少しく上まわる勤労者、扶養家族二名に例をとつてみまするに、この現行所得税およそ一万円でありますが、今回の改正によると、これがおよそ七千円となり、差引三千円、月間平均二百五十円の減税となります。しかし、この勤労者は、別途市町村民として、新たに所得割で千二百五十円、均等割りで八百円の、計二千五十円の住民税を徴收されることになります。しかもこの際、物価は現下おおむね横ばいとは申しながら、一昨年七月に比し、現に三〇%以上の値上がりを示しているにかかわらず、賃金は依然としてくぎづけであり、あまつさえ賃金の遅配・欠配が今やほとんど例外なきまでの現状において、米価は上り、電気、ガス、燃料等もそれぞれ二、三割の値上がりを見たのみならず、さらに今回は、固定資産税の実施によつて家賃の大幅引上げ必至であるのであります。といたしますれば、政府の減税による実質賃金の充実どころか、定額所得階級の生計費は、かえつて逆に膨張するであろうことも、またきわめて明々白々の事実であるのであります。問題の中小企業においても、また深刻な金詰り、はなはだしき購買力の低下は、このまま本年も当分続くものと予想されるにかかわらず、あとに申し上げるごとく、二十四年度の一方的実績主義を建前といたしますれば、ここにもまた、至るところ負担の過重を結果するであろうことが明らかであります。
 ことに、全国五百万戸の耕作農民にとつては一層に負担の過重が懸念されるのであります。すなわち、農家の負担する所得税の二十四年度の総額は、およそ四百二十億でありますが、二十五年度には、前年度繰越し予定分をふくめても二百二十億円でありますから、その間まさに二百億の減税であります。しかしながら、他高農家の最大必需品たる肥料価格は、本年七月に至り、実に七〇%の値上げが予定されております。これによつて農家が新たに負担する肥料代金は、実に二百三十七億円といわれております。しかも、これのみならず、現行家屋、地租両税の農家負担総額は五十五億余円でありまするが、新たに設定される固定資産税によると、その上、住民税のごときもまた現行の五十余億円が一挙にして七、八十億円に引上げられることが必至なのであります。従つて、今後の農民は、肥料代の大幅値上げによる巨額の負担増加を含めると、逆におよそ二百億以上の負担増加が予想されつのであります。今や農民は、ややもすれば肥料の引取りにさえ困窮し、政府のせつかくの報奨物資のごとき、これを辞退する者が続出し、その額は実に十億円に達するともいわれているのであります。かくのごとき実情にもかかわらず、政府は、これをもつて大幅の減税なりと誇張し、他向国民経済は安定せりと、うそぶいているのであります。羊頭を掲げて精肉を売るたぐいか、しからずんば耳をふさいで鈴を盗むのたぐい、まさにこのことといわなければならぬのであります。(拍手)
 さらに所得税税率の点においても、五万円以下二〇%に初まり二十万円まで、この間わずか十五万円の所得隔差に対し、実に七段階を設けて、順次五%ずつを加えて課税の徹底を図るという、いささかの彈力もなき税率であるにかかわらず、一方二十万円から五十万円、すなわち隔差三十万円に至つて初めて五%を加えて五五%とし、それのみならず、五十万円以上いかなる高額所得者に対しても、一律に五五%という税率なのでございます。このことは、実に定額所得者に最も軽いという、いわば定額所得者の犠牲において高額所得者の利益を守るものであつて、不幸へをきわまるものというべきであります。(拍手)
 さらに法人税においても、また累進的税制や、十例の超過利得課税を廃して、企業の大小、利益の大小にかかわらず一律に三五%の課税にとどめ、あまつさえ、先にも少し触れましたことく、何ら利潤を目的としない協同組合等の特別法人に対しても、これと同様の税率をもつて臨もうといたしておるのであります。このことは、中小企業や協同組合の今日最も困難をきわめているとき、その現状をまつたくむしいたしたものであるといわなければなりません。しかも、新設の富裕税においては、逆に申訳的低税率であつて、従つて税收のごときも、わずかに二十億という程度をもつてお茶を濁すという形であるなど、以上一連の税制に対し、随喜の涙をもつてこれを迎える者は、ひとり大資産者、高額所得者や大企業者、大金融資本家のみであつて、国民大衆の犠牲はいよいよはなはだしというべきであります。
 しかも、さらに問題となるのは青色申告と予定申告であります。一月実施となつた、せつかくの青色申告につき、その申告を提出したものは、法人、個人合せて、いまだ四割にすぎない。ことに個人申告に至つては、わずかに二割程度という寒心すべきありさまであります。この事実は、元来青色申告がきわめて難解であるというのもその有力な一原因でありましようが、さらに、この申告をかりに正直に行つても、結局は例によつて一方的、天くだり的更正をしいられるであろうという、政府の税務行政に対する懐疑と不信を最も端的に国民が示したものというべきであります。(拍手)また予定申告においても、今回からは前年度の実績以上の申告を要求し、万一納税者が前年度より少い申告を行う場合には、あらかじめ政府の承認を要するという、実に驚くべき規定を設けておることであります。これによりますれば、農民も業者も、現下不況いよいよ深刻にかかわらず、新年度は、少くとも前年度確定した実績と同一の所得を申告しなければならぬということを命じておるのであります。これまた国民経済の実情は無視した政府の暴挙といわなければなりません。
 次に相続税であります。政府は、この改正は我が国画期の大改正と誇称しておりますが、問題は、この改正が国民経済と民間資産に及ぼす影響の如何にあります、本改正案では、一応免税点を十五万円に引上げてはおりますが、今や政府は、全面的に資産の再評価を実施せんとしております。従つて、これによれば、零細農家や中小企業者の資産の名目価格だけは一挙に引上げられますが、実質資産の価値は少しも引上げるのではございません。従つて、免税点わずかに十五万円では、実質的定額資産者の保護にはならず、わずかな現金にも事欠く相続者にとつては、名目的引上がり資産のために、その納税額に実力以上に引上げられ、せつかくの相続財産を物納するか、もしくは処分する以外にないという窮地に追い込められて行くのであります。ことに農家の零細化が憂慮されているとき、この零細化と転落に一層の拍車をかけることとなり、国民経済の基盤をいよいよ危うくする危険なしとしないのであります。われわれは、貿易と富の集中化は、もとよりこれを排するところでありますが、いたずらな没收的課税制度や、極端な零細化もまたこれをとらないのであります。
 次に資産再評価についてであります。これに対しては、その原則にはわれわれあえて反対するものではありません。ただ、中小企業や協同組合等に対しても機械的に一律の再評価税をかけることは、意見を異にするものであります。すなわち、中小企業や協同組合ごときものにたいしましては、今日の実情に即し適正の免税点を設けるか、または低税率制を主張するものでありますが、中小企業や組合事業に誠意のない政府は、これに対しての何らの理解を示しておりませんところに、われわれが本案に賛成しがたい第一の理由があります。第二は、この再評価は任意制をとつておりますものの、再評価を実施できないときは時価による減価償却は認められぬのでありますがゆえに、結局は、いやおうなく再評価せざるを得ないものが多いこととなるでありましよう。といたしますと、中小企業はさつそく再評価税を拂わねばならず、巨額な固定資産税もとられるなど、さなきだに困難をきわめている中小企業や協同組合の多くは、まつたく立つ瀬のないジレンマに陥ることは明白なにであります。
 次に酒税についてであります。政府は、本税の改正により、他面酒類などの造石と相まつて一挙一千億、すなわち二十四年度より二百五十億の増收をはかろうとしておりますが、勤労者の低賃金、農民所得の激減等の実情に即して、むしろこの際は酒税の軽減、酒類醸造の合理化等によつて小売価格を引下げ、もつて歳入の確保を期することこそが賢明の策というべきであります。今や農村には報奨酒類の辞退が続出し、勤労者もまた、酒は飲みたいが高くて手が届かないというありさまであります。これでは、タバコのけるピースの二の舞いをふまぬとは、たれが保証できるでありましよう、しかも、われわれの看過できないのは、今回政府は、所得税において、なるほど大蔵大臣は五百億円を減じたと吹聴いたしておりますが、他面この酒税において、実に二ひよ区後十億の増微、すなわち減税の半額に近いものを、この大衆的課税によつてすりかえようとしておるのであります。実に減税政策の欺瞞と申すべきであります。
 さらに最後に申し上げたいことは、政府今次の税制改正中、今日すでに明確にされているものは、ひとり国税案のみであつて、これと密接不可分の関係にある地方税制の改正案のごときは、いまだに本国会に上程されておりません。今回の国税改正案は、地方税改正案との平行審議なくしては、国民の公正なる判断がまつたく不可能なほど重大な改正なのでありますにもかかわらず、政府とその與党は、以上の事実をことさらに無視し、理不盡にも多数をたのんで、一方的にこの国税案を国民の前に押しつけようといたしているのであります。他面予算案のごときも、予算案の骨格をなす税制改正案がいまだ委員会の審議中にもかかわらず、これまた多数をもつて押し切るなど、まつたくさたの限りというべきであるます。(拍手)よし、かくのごとき態度をもつて、予算を初めこの税制改正案を強引に押し切り得たといたしましても、これに失望し、これを冷静に批判し、このことに憤激する国民大衆を押し切ることは、必ずや不可能でありましよう。かくて、この国民的批判と反撃の力は日ならずして吉田内閣とその與党に集中され、その屋台骨を大ゆすりにゆすぶる費が来るであろうことを最後につけ加えまして、私の反対討論を終る次第であります。(拍手)
#9
○副議長(岩本信行君) 前尾繁三郎君。
    〔前尾繁三郎君登壇〕
#10
○前尾繁三郎君 私は、自由党を代表いたしまして、ただいま議題となりました所得税法の一部を改正する法律案外七税法案に対し賛成の意を表せんとするものでございます。
 これらの法律案は、申し上げるまでもなく、さきに第六国会を通過して本年一月から実施を見ました取引高税及び織物消費税の廃止、物品税の軽減とともに、シヤウブ勧告案に基いて租税負担の軽減と合理化を実現せんとするものであります。今回の改正については、その特色の第一は、收支の均衡をはかりつつ減税したことでございます。第二には、地方税の増微と平衡交付金制度の創設によつて地方財政を強化しておることであります。第三には、所得税の合理化、富裕税の創設、法人税の源泉課税主義の採用、固定資産の再評価、有価証券移転税、通行税の一部廃止などによつて負担の公平化をはかつていることでございます。第四には、直接税、ことに所得税中心主義に移行いたしまして、かつ国、道府県、市町村の間に附加税及び分與税の制度をやめまして、財源と責任の帰属を明らかにいたしました、恒久的かつ安定した新租税体系の確立を期していることでございます。第五には、青色申告制度及び実績納税制度の採用、異議申立てに対する処理方法の改善によつて税務行政の合理化に努めていることであります。
 しかし私は、次の諸点におきまして、今回の改正に対して限りなき喜びを感じ、賛意を表するものであります。
 その第一は、今回の改正では、終戰以来、いな昭和十年以来初めての減税と申しても過言でないのであります。それには、今までずいぶん野党の諸君からの反対にもかかわりませず、鋭意統制を撤廃し、行政を整理して初めて可能であつたのでありまして、戰勝国においてさえ増税の行われんとしております現在、初めての減税を断行し、ドツジ・ラインはここに第二コースに入つたことに画期的異議を有するものと思うのであります。
 第二には、今回の改正は自主性のない改正であるかのごとくに野党の諸君から指摘されているのであります。しかし、シヤウブ勧告案については、すでに勧告案が出ます前に、日本政府の意見も国民の意思も相当織り込まれているのであります。しかも、今回の改正は、勧告案に盲従することなく、基礎控除の引上げ、勤労控除の拡張、税率の引下げ、資産再評価を任意にしたことなど、重要な点に改変が試みられているのでありまして、いわゆるシヤウブの配給品ではなく、十分自主性のある法律案であることは、野党の諸君もおわかりになつていることと思うのであります。
 第三に、今回の改正は、一階層に対して特に有利、不利という、へんぱな考え方を持たず、いずれの各層に対しても最も公平に、従来不合理な点、たとえば給與所得者には、その最も苦痛であります扶養家族について一万二千円の所得控除とし、勉学中の子弟等に対して控除を拡張し、農業所得者に対しては純損失の繰越し、繰りもどしを認める、水産業者、山林業者に対しては変動所得に対する平均課税を行う等、いずれも従来非常にひどいと思われた点にメスを入れて改善しつつ、全体として弱い小所得者の負担の軽減を行つて、思いやりのある課税方法をとるていることであります。
 第四には、所得税における最高税率の制限や超過所得税の廃止によりまして、金曜意欲や生産意欲を阻害することなく、旺盛な企業精神を振興いたしまして資本の蓄積をはかる一面、富裕税の創設、相続税の税率引上げ、固定資産税等の財産課税の拡充によりまして、過度の富の集中を排除して、あくまでフエアな自由競争の基盤をつくつておるのでございまして、真に新日本再建に質するところ多いことと存ずるのであります。
 かかるがゆえに、私は今回の改正に絶大なる賛意を表するのであります。(拍手)
 次に、今回の減税総額は、昭和二十四年度の租税及び印紙收入が約五千百五十億円に対し、昭和二十五年度は四千四百四十六億円でありますから、七百十三億円に上り、さきの二百億円の減税を合せますと九百十三億円の減税となり、またシヤウブ勧告案によりは、さらに百億以上の減税となつている。また、いうまでもなく、国税、地方税合しましても三百億の減税であり、寄付金の減少を考えますれば五百億円以上の負担軽減であるにもかかわりませず、盛んに、地方税の増微によつて負担はかえつて増加するがごときことを、反対党の諸君から宣伝せられるのは、はなはだ迷惑であります。もちろん、中には負担の増加する人もありましよう。しかし、それは主として大企業者であり、それだけ中小の企業者とか農業者、勤労者の軽減になつておりますことは、数字のはつきり証明するところでありまして、この改正の性格を示しておるのであります。
 なおまた、絶対額でなく、国民所得の割合から申しましても、三兆二千五百二十億円を国民所得といたしますならば、専売益金を含む国税の比率は、二十四年度は二〇・七%でありましたが、二十五年度は一七・四%となり、地方税をいれましても、二十四年度は二五・五%でありましたものが、二十五年度は二三・二%となるのであります。国民所得の増加には問題もありましようが、率から申しましても相当負担の軽減となつておるのであります。
 次に各税法案について見ますのに、所得税につきましては、基礎控除の引上げ、税率の引下げ等によつて、昨年よりは五百六十七億円の減税となつているのでありますが、もし二十五年度の所得に現行法通りを適用すると過程いたしました場合と比較しますと、千九百億円以上の減税となつておるのであります。もちろんわれわれは、基礎控除二万五千円、扶養控除一万二千円、税率五十万円超五五%をもつて満足するものではありません。しかし、所得税中心主義の租税体系に移行しながらも、ドツジ・ライン第二コースにおいて、これだけの減税をしましたことは、むしろ特筆すべきものであり、ドツジ・ライン第三コースにおいて相当な期待えをなし得るものと考えるのであります。(拍手)それにもまして、先住者の控除とも考えられる扶養親族の拡張と、合算課税を縮小して分離課税に徹底しましたことは、一家をあげて働く人々への福音でありまして、心から喜ばしく感ずるのでございます。(拍手)
 反対の論者は、勤労控除の一割五分への圧縮を、勤労階級への圧迫であるかのごとき富を弄しているのでありますが、二割五分の控除は、終戰後の経済混乱に伴う、まつたく臨時的措置でありまして、経済が正常化されつつある今日、これを常道化しますることは当然の措置であります。ことに、シヤウブ勧告案の一割圧縮にもかかわらず一割五分としたごときは、旧套を厳守せず、さりとて理想にも走らず、まつたくその機宣を得たものと考えるのであります。(拍手)もしこれをすえ置くならば、シヤウブ勧告案の強調するまでもなく、税務の適正化は百年河清を待つこととなるでありましよう。
 勤労者に対する減税措置は、事業所得者が固定資産税の増微と附加価値税の創設されるこの際といたしましては、基礎控除の引上げと、扶養控除が一万二千円の所得控除になりましたことによつて、最も苦境にある多くの人を救うことができるのでございます。従来、勤労所得者の一番気の毒なのは、子供を数人かかえておられる中堅の人たちであります。今、月收一万円で子供三人の人について見ますれば、従来の千四十五円が四百八十三円となり、五割三分七厘の軽減となるのであります。独身者の軽減割合が、月收五千円の人で二割であつたといたしましても、大部分勤労者の窮状は救われるものと言わなければなりません。
    〔発言する者多し〕
#11
○副議長(岩本信行君) 後静粛に願います。
#12
○前尾繁三郎君(続) 予算について見ましても、申告納税者の減税が百九十九億円、すなわち一割五分であるのに対しまして、勤労所得者に対する分が三百五十六億円、二割七分になつておることによつても、いかに勤労所得者の減税になつているかが明らかなところでございます。(拍手)
 次に野党の諸君は、盛んに税率について、大所得者に有利であるがごとく言われるのであります。高い税率が結局において生産意欲、勤労意欲を阻害し、脱税を誘発していることは、お互いが十分認めているところであります。従つて、角度をかえて、捕捉しやすい富裕税なる名目的財産税をもつて補完いたしますことが賢明でありますことは、言うまでもないところであります。ただ、野党の諸君は、富裕税の税率が低いことと、收入が少いということを言つておられる。しかし、財産の〇・五%ないし三%は、所得に対しまする五%ないし三〇%であり、財産を收奪しまする実質的財産税ならばいざ知らず、従来言われて来た名目的財産税は、いずれも万分比によつて現されましたものでありまして、今回の財産税が低率であるとの非難は、まつたく当らないのであります。また現在五十万円以上の所得者の数が十万人程度でありますことから考えましても、これにかかる富裕税の收入が少ないのは当然とことでございます。
 ご承知の通り、従来の累進税率は、一年單位で非常に高い、百パーセントに近い税率が適用されておりまするために、いろいろ不都合を生じていたのでございます。これを是正せんがために、今回とられました方法は、第一は、累退税率、すなわち最高税率の制限であります。従来の累進税率と異なつて、まず生産意欲、勤労意欲を阻害しないような最高税率を設けまして、それから累次逓減する方法をとつているのであります。その第二は、家族共稼ぎの障害となつておりました合算課税の方法を廃止して、分離して課税する方法をとつておるのであります。その第三は、水産業、山林業譲渡所得等、いわゆる変動所得の平均課税の方法であります。変動所得に対しまする五箇年間の平均課税は、まつたく合理化の精益をきわめたものでありまして、農村等の負担は一段と公平化されることでございます。もとより、税率自体につきましては、まだ満足すべきものとは言われませんが、しかし、かりに野党の諸君の言われるような税率にいたしましたとしたならば、所得税は現在ほとんどゼロに近くなつてしまうでありましよう。
 所得税の課税の方法につきましては、青色申告制度の採用と、実績による予定申告納税によつて、従来の紛争を最小にとどめようとしておるのであります。これらの制度は、その運用よろしきを得れば、税務行政は著しく最善されることでありましよう。野党の諸君は、常に運用の惡く行われることを前提として議論しておられますが、その前提に立てば、いかなる制度といえども惡いにきまつておるのであります。しかし、経済が正常化されつつある今日、これらの制度は、税務の摩擦を少くすることに役立ちますことは、論より証拠、事実がはつきり証明するでありましよう。(拍手)
 次に法人税につきましては、従来の独立課税主義は二重課税なりとして、源泉課税主義を採用しておるのであります。これについては、いろいろ議論もありましよう。しかし、経済復興のために資本の蓄積を要しまする現在の日本としては、株式の民主化をはかる一面、法人に対する課税の改組を要することはあきらかでございます。さらにその結果、従来苛酷な負担となつておりました超過所得税がなくなりますことは、中小企業者にとつて非常に有利なこととなるのでございます。法人税改正が單に大資本擁護なぞとは、まつたく税の知識のない諸君の議論であります。(拍手)
    〔発言する者多し〕
#13
○副議長(岩本信行君) 御静粛に願います。
#14
○前尾繁三郎君(続) 農業協同組合に対する課税の特別措置につきましては、遺憾ながら、なくなつたのでありますが、配当されれば、それだけ所得税から控除を受けることになるから、法人の課税の建前が従来と異なつている当然の結果でありまして、負担の増加とはならないのであります。
 さらに法人、個人を通じまして待望されておりました資産の再評価が解決され、資本の食いつぶしを防止することができますことは、まことに同慶にたえません。しかも、シヤウプ勧告案の強制再評価は大きく改変せられまして、任意再評価とせられまして上に、納税につきましても、法人税の減税額を超過する部分の繰越しを認めまして、五箇年の延納をも許されることになりましたことは、ここに安心して再評価ができることであり、将来の国民経済に非常な好影響を與えるものと信ずるのであります。もとより、多少の公定価格の引上げはやむを得ますまい。しかし、いずれにしましても、任意再評価であることと、自由価格によることによつて企業の合理化が促進せられ、さしたる物価に対する影響を認められないものと見通されるのでありまして、これまた野党の諸君の議論は、経済の法則を無視したものと言わなければなりません。(拍手)
 次に相続税は、従来の増與税と相続税の二本建で増與者に課税する建前は、その構想に相当むりがありました。従つて増與税に至つては、実情に即しないため執行不能にさえ陷つていたのであります。
    〔発言する者多し〕
#15
○副議長(岩本信行君) 御静粛に願います。
#16
○前尾繁三郎君(続) 今回新たに財産の無償取得税たるの実質を備え、かつ従来の一回三千円の免税点が三万円の控除、一生を通じ五万円の控除が十五万円の控除に引上げられましたことは、実情に沿つて今後課税することができることと思うのであります。また公益事業に対しまする寄付金の免税措置は、まつたく同感にたえません。また各相続人に財産が分割せられるに従いまして負担が少くなる一面、最高税率は九〇%となつておるのでありますが、それは財産が五千万円を超えるものでありまして、過度の富の集中を排除して自由主義の基盤をつくる意味において適切なる改正と考えられるのであります。
 また酒税につきましては、シヤウブ博士の大幅引上げの勧告にもかかわりませず、二十億円程度の最小限度の増微に食いとどめ、増石によつて大幅に收入を増加しました点や、三等乗客に対する通行税を廃止しました点等は、いずれも適切にして賛意を表するものであります。
 野党の諸君の攻撃を聞いておりますと、いずれも、ためにせんとするものでありまして、ほとんど事実が曲げられておるのであります。学者、実務家のまじめな研究団体であります租税研究会においては、大体において国税の改正案に非難はございません。また過般の公聴会においても、多少反対論もありましたが、それは大体において研究不足に基くものであるのであります。
 今まで攻撃されました第一点は、今回の減税は価格調整費を削減して減税しているので、物価を騰貴せしめ、かえつて生活費を増加させ、勤労大衆を苦しめているかの論があるのでありまするが、これもまつたく誤りで、かりに減税の反面、物価が多少騰貴いたしましても、その間に補給金の支出に伴う弊害と、租税の徴收による摩擦をなくしただけでも、十分な異議があるのであります。いわんや、それ以上の経費の節約に伴つて、当然そこに減税の効果が生まれるのは明らかなことであります。また実際に標準的なものについて計算しましても、国税と地方税の総計による減税率は、生計費の負担の増加率を差引きましても、月收一万円の人で三・四%の負担軽減になつておるのであります。しかも、物価の漸落の傾向にることによりまして、実質賃金の工場は事実によつて認められるべきものと信ずるのであります。
 また、とくに反対せられる諸君は、肥料に対する補給金二百数十億の減少と、地方税の増微で最も減税されておりまする農村の負担増加となるがごときことを言われておるのでありますが、肥料の値上がりによります負担の大部分は主食であり、パリテイ計算に織り込まれているのでありますから、農村の負担とはならないのであります。従つて、これを差引計算するがごときは、まつたく錯誤もはなはだしいのであります。さらにまた地方税についても、固定資産税は増微されますが、それは絶対額が僅小であり、事業税は廃止されますから、農家の人に最も減税になることは誤りのない事実であります。いずれにいたしましても、今回の改正では、所得の少いものほど多く減税を受けるのでありますから、中小企業者が不利であるなどとは、税務知識に乏しい民衆を先導せんとするものでありまして、断じて許すべからざるのもであると思うのであります。(拍手)
 なおまた、債務償還費を削減して減税にまわすべしとの論もあります。この反対論は、ややりくつがあるかのごときものであります。しかし、昨年の今ごろは、破局的なインフレの襲来におびえ、安定価値計算すら絶唱しておられた野党の諸君として、はなはだかつてな議論であると思うのであります。ドツジ・ライン第二コースにおいて、五百億の債務償還費への繰入れはやむを得ないところであり、ドツジ・ラインの第三コースの備えて着々再建の基盤を固むべき時代でありますことは、少し道理のわかつた人には十分納得されるところであると信ずるのであります。(拍手)野党の諸君の論は、一挙にゴールに入らんとして、ころんでしまうおそれがるのであります。
 最後に、私は税務行政のあり方について申し上げたいと思います。終戰以来の税務のあり方は、遺憾ながら経済混乱を反映しまして、非常な惡循環に陷つてしまつておるのであります。経済が混乱して税金がとれないから税率を高くする、税率が高いから納税者も正直な申告ができない、申告が少いから税務官吏も威嚇的にやる、これではぐるぐるまわりでありまして、いつ果てるかわからないような、未曽有の微税の混乱を現出したのであります。孟子は、この文公に租税の問題について答えている中に、かつて言つておるのであります。「罪に陷るに及びて然る後に従つて之を刑す、是民を罔するなり」、すなわち脱税を犯したから刑罰を課する、これでは何のことはない、魚を網ですくうようなものであるというのであります。従来の税務行政は、ややこのきらいがありました。この壇上からも、しばしばこれが改善をさけばれたのであります。幸い、今回の改正につきましては、従来の日歩十銭のまたは二十銭という加算税が、日歩四銭、八銭にさげられておりますし、大蔵大臣の言明によれば、これが一月一日に遡及する法律もつくられすとのことでありまして、まことにわが意を得ているのであります。
 経済が安定の緒について、減税の第一段階を踏んだこの際、従来の惡循環を断ち切つて正しい税務行政を行う絶好の機会であります。今後は、どうぞ国民を網することなく、いやしくも威嚇的な調査や苛酷にわたる滞納処分は絶対に行わず、真に納得の行く微税をやつていただきたいのであります。のうぜいは、正直者がばかを見るようなことであつてはなりません。税務官吏の訓練によつて、担税力のあるところ十分捕捉率を高めていただかなければ、結局において再び惡循環を引起すのであります。ことに、現在共産党の諸君は、依然ほどではないにしても、なお国税犯則取締法の取締り規定に該当する疑いのある行為が、いまなおあとを絶たないのははなはだ遺憾にたえないところであります。かかる行為によつて党勢拡張の具に供していることに対しましては、断固として取締りをしていただきたいことを希望する次第であります。(拍手)
 確かに、今回の減税によりましても、納税者はまだまだ苦しい。苦しくても、あたたかみのある税務行政、税務官吏に励まされて国民が立ち上がるような税務行政こそ望ましいのであります。そうして、何といたしましても、税金を拂い得るような根本の経済施策を協力に推進することこそ税の問題の一切を解決するかぎであることを、強く政府に申し上げまして、私の賛成の討論を終りたいと存じます。(拍手)
#17
○副議長(岩本信行君) 宮腰喜助君。
    〔宮腰喜助君登壇〕
#18
○宮腰喜助君 私は、民主党を代表いたしまして、ただいま議題となつております諸税法案、すなわち所得税法の一部を改正する法律案、富裕税法案、相続税法案、資産再評価法案、酒税法の一部を改正する法律案、通行税法の一部を改正する法律案、所得税法等の改正に伴う関係法令の整理に関する法律案に対しましては反対をするものであります。
 まず最初に、所得税法の一部を改正する法律案について意見を述べます。
 先般と今回の税制改革を通じましての大きなねらいは、国税全体の税体系を直接税中心に持つて行くという考え方のようであります。申すまでもなく、近代的の租税制度は、直接税、なかんずく所得税中心主義でありまして、従つて、政府が取引高税その他の間接税を撤廃あるいは軽減し、重点を直接税に移したということそれ自体には、私も賛成であります。しかしながら、ここに考えなければならないことは、この直接税中心が最もよい、近代的な租税制度であるという根拠は、この税が最もよく国民の担税力に比例して課税し得るという点でありまして、それは必然的に次の二つの措置を伴わなければならないのであります。それは何かと申しますと、第一に、国民の多数を占める広汎な低所得者層に対しては免税の措置を講ずることであります。第二に、中所得者以上に対しては適度に累進的な税率を適用すること、以上の二点であります。もしこの二つの原則が十分に貫かれないと、所得税中心主義は、かえつて国民の担税力に逆比例し、大衆を直接的に收奪する邪惡な租税体系になつてしまうのであります。この最もよい例が現行の所得税でありまして、しかも政府の提出されておる改正案のごときは、この不合理を一層助長しておるのであります。
 まず低所得者層の免税という点より見ますと、改正案によりまして、基礎控除は二万五千円であります。給與所得者の場合は、これに一五%の勤労控除を加えましても、独身者の免税所得は年額二万九千円にすぎません。この程度の所得者階層は、現在は、ほとんどないといつてもいいくらいでありまして、大部分の低所得者階層には、免税の措置が講ぜられていないのであります。しかも、これは国税の場合のみをとつて申し上げたのでありまして、明年度から増微される地方税を考慮に入れますと、市町村民税、固定資産税、あるいは事業所得者に対する付加価値税等の課税の累進的性格よりしまして、月額六、七千円以下の低所得者に対しては、必ずや現在よりも二倍程度の租税の増微がなされるのであります。
 また皆さん方がご承知のように、青色申告の場合を見ましても、政府は親心をもつてこの制度を実施しようというお考えでありましようが、実際にこの青色申告が実施されておるかといいますと、個人の場合はわずか二%余、法人の場合は四%余になつております。実際にこの利用者が少い。これがなぜ少いかといいますと、この青色申告を整える場合の経理関係が非常にむずかしいのであります。従つて、五万円なり六万円の税を納めるような方があると仮定すれば、この人たちが税を納める場合、青色申告は非常にむずかしいというので、計理士か税務代理士にお願いして記帳しなければならない。これば結局業者の利得となりまして、国家の微税面は減少して行く危険があります。この点に関しまして、私も大蔵大臣にお願いしたのでありますが、この青色申告については、簡易な制度をとつていただかなければ非常な欠陷があり、一般の農民の方にしても、勤労者にしても困るだろうと思うのです。
 また中小工業の問題にしましても、中小工業の問題に対しましても、中小工業には勤労控除というものはありません。しかし、この中小商工業の階層の中には、左官、大工、とび職のような方があります。この人たちの実際の收入状態は、勤労者と全然かわらない收入であるにかかわらず、これを中小商工業という事業者として、税を徴收しておることであります。従つて今回改正になるところの附加価値税が、この左官や大工、とび職等にかかつて来るのであります。こういう意味合いから見まして、中小企業に対する思いやりがあるという説明でありましたが、実際は中小商工業に対する思いやりが足りないのであります。
 さらにまた、昨年の十一月ごろ、更正決定を各人に通報されて参りました。それに大して、各納税者は、これではあまりに重過ぎるというので再調査をしたのでありますが、その再調査に対して、国税庁並びに税務署は何ら意思表示をしないで、確定申告の後に意思表示をするというような態度をとつて参りました。
    〔副議長退席、議長着席〕
従つて、昨年の十一月からこの三月の確定申告のあるまでの三箇月ないし四箇月の間というものは、微税係りの方から矢の催促で督促を出して行く。従つて、これがために追徴加算税をかけられることになれば非常に痛手であるということで、むりやり自己の財産を処分して納税した人たちがあるのであります。こういうぐあいで、税の面については非常に不合理なところがあります。
 もう一つの面である所得税の税率の累進的性格という点について考えてみましよう。政府は、この改正案によつて従来の税率を改め、課税所得五十万円までは従来通り小刻みに税率を引上げ、しかも五十万円以上の大所得者に対しては税率五五%どまりという、はなはだ不可解な体系をとつておるのであります。なるほど、非常に高額の所得者に対しては富裕税を徴收するという建前になつておりますが、これは、ほんの申訳的のものにすぎません。現行制度に比べて、中小所得者の負担はほとんど軽減されていないのに、大所得者の負担が著しく軽減されておることは、何人の目にも明瞭であります。これは單に税收の確保というような逃げ口上によつて済まされることでなく、勤労者、農民、中小企業者の犠牲を上に富裕階級の利益をはかるという吉田内閣の性格を最も露骨に現しているものであります。(拍手)
 所得税が、現在のように大部分中小所得者階級の負担に帰し、しかもその最も真髄とする適度の累進性を失つておる状態においては、われわれは、政府の企図しておる直接税中心の租税制度を近代的、合理的なものとして受入れるわけには参りません。従つて私は、この五十万円の五五%どまりというような考え方では、とうていいかぬ。少くともこの五十万円を百万円まで引上げなければならないと考えまして、委員会でも、このことを再度お願いして参つたのであります。また、このような改正案によつては、今後ますます納税者と徴税当局との摩擦を強め、徴税が社会的不安を生む最大の動因とならないと、だれが保証できましようか。これが、私が本案に対して反対する根本的理由であります。
 次に、相続税法の一部を改正する法律案について申し上げます。この税は、従来の贈與税及び遺産税を一本にまとめて種々の改正を施したものでありまして、租税負担者を財産相続人または譲渡人に改めたことを初め、種々の点で従来よりも一層合理的なものになつておるところが多々あることは、私もこれを認めるのであります。しかしながら、問題となるのは、改正税率があまりにも低過ぎるという点であります。これらは、他方において所得税がもし十分に累進的性格を持ち得たならば、ともに矯正し得る点であります。従つて私は、所得税はより累進的なものとし、相続税は全般的により緩和すべきであると考えるのであります。このような政府原案には反対するものであります。
 次に、法人税法の一部を改正する法律案について簡單に意見を申し上げます。今回の改正案は、超過所得、清算所得に対する課税を廃止して普通所得一本とし、税率は現行の三五%をそのままとしており、新たに積立金に対する二%の課税がありますが、大体において、これらによつて企業の負担が相当程度軽減されているようであります。また、このほかに貸倒れ準備金を認めたり、損失の繰越し、繰りもどし、棚卸資産の経理等の面において、確かに従来より合理化されている点が多いようであります。これらは、私としても、まことにけつこうであると思いますが、問題になる点は、企業に対しては、このほかに資産再評価による課税がなされるのでありまして、これをもあわせて考えますと、法人にたいする租税收入は、昭和二十四年度予算額五百億円に比べて、明年度は五百三十一億円と、むしろ増加しているのであります。これは、さなきだに不況にあえいでいる企業に対して重大な影響を與えるものでありまして、私のはなはだ憂慮にたえないところであります。
 さらに今回の改正による重大な問題は、農業協同組合その他の特別法人に対する課税を、一般法人と同様に、旧来の二五%を三五%として扱うことにした点であります。政府の説明によりますと、従来とも特別法人に対する課税の税率は、一般法人のそれにちかづけつつあつたのであるから、これは当然の措置であるとのことでありますが、これは單なる一片の法律論にすぎず、まつたく経済の実情を無視した暴挙であるといわなければなりません。経済的基礎のきわめて薄弱である農業協同組合等は、とうていこの重圧に対抗し得るはずはありません。農村はますます不況の底に沈淪するより道はないように思われます。この点が、この改正案の最も大きな難点であります。
 次に資産再評価法案について申し上げます。私の最も心配しておりますのは、この資産再評価が、経済諸條件の均衡による新価格体系の形成と矛盾するものではないかという問題であります。すなわち、再評価を行う以上、その償却額は商品価格に繰り込まねば無意味であり、しかもその織込みは好ましくなく、また現状では不可能であります。この理由で、再評価そのものが、かえつて企業を弱体化するおそれがあり、しかも再評価に六%の課税を行うということは、一層企業に重圧を加える結果になるわけであります。法案の條文には、再評価は任意ということになつておりますが、これは最評価の倍率を企業の任意とするだけであつて、再評価すること自体は、実質的には強制となつております。それゆえ私は、政財界の現況にかんがみ、今回の再評価法案には反対いたすものであります。
 さらに酒税法の一部を改正する法律案について申し上げます。従来も、この種の税は、ほとんど課税の飽和点に達していたのでありまして、これ以上税率を引上げるということは、いかに国庫收入の要請とはいえ、しかも、シヤウブ勧告にさえ明年度の酒税收入は八百億円とされているのに、一千三十億円と、二百三十億円も上まわるような増微の仕方は、決してわれわれの賛成し得るどころではないのであります。さきにタバコの価格を引上げた結果がタバコの売れ行き不振を来し、かえつて財政收入上大きなマイナスの結果を招いているのと同一のはめに陷る懸念があると思われるのであります。
 次に通行税法の一部を改正する法律案につきましては、三等の旅客運賃並びに急行料金の免税は私も賛成するところであります。但し、ここに希望いたします点は、三等の旅客運賃が現実にこの通行税の分だけ値下がりになつて大衆の負担を軽減することであります。しかし、委員会においてもこのことが問題になつたのでありますが、船舶の二等は汽車の三等と同様でありまして、これに対する修正意見を出したのでありますが、とうとうこれは修正できなくなつたのでありまして、この意味合いから、船舶の二等を含めていただかなかつたことについて、われわれはこの法案に反対するものであります。
 最後に、所得税法等の改正に伴う関係法令の整理に関する法律案は、單なる技術的なものであり、取立てて言うほどのものではありませんが、今まで述べました諸法案の関係上、これも反対の意思表示をするほかないのであります。
 以上をもちまして私の討論を終ります。(拍手)
#19
○議長(幣原喜重郎君) 川田賢治君。
    〔川田賢治君登壇〕
#20
○河田賢治君 ただいま上程された所得税法一部改正法案外税法関係七法案に対し、私は日本共産党を代表して反対の意見を表明するものであります。
 今回の税制改革は、政府の言うがごとき税体系の合理化、負担の公平と税の軽減にあるのでは断じてない。これは吉田内閣の性格並びに政策からして明らかなことである。
 第一の反対理由は、国家財政收入の圧縮は、独占資本の負担の軽減であつて、人民大衆の負担の減少とはなつていない。勤労人民大衆は、直接税の大部分並びに間接税のほとんど全部にひとしい四千四百億を負担させられている。かかる国税における見せかけの負担軽減さえも、実は地方税の大増税によつて帳消しになり、世界で最初の惡税である付加価値税を初め、三倍半以上にはね上る固定資産税、住民税の増微で、資本家も困り、それは当然大衆の負担に転嫁されるのである。また国税の減額と政府が宣伝する八百億は、おもに価格調整費の削減八百九十二億と見合うものであり、この価格調整費の削減は、鉄鋼、電力、肥料等重要物資の消費者価格の値上げによつて、独占資本の利益擁護と、消費者の負担増加となつておるのである。すなわち、それだけ基礎資材の物価値上げとなり、それがまた主食のマル公引上げとなり、結局国民生活を圧迫する。政府は、国税は軽減、地方税はやや増加、差引相当の減税となると宣伝これ大いに努めているが、これは、右のごとくまつたくのごまかしで、国税においても、減税どころか、むしろ反対にますます苛酷な收奪が行われる。
 今や労働者は、食えない賃金のもとで、からだをすり減らしている。これらの食えない賃金からも重い税金をとり、失業者からさえも税金を取立てている。現在、一箇月の基礎控除わずか二千八十円、家族控除一千円でさえ、なおまだ免税点以下の労働者が百五十万世帯もあるという事実こそ、労働者が植民地的な賃金であると同時に、重税がどんなに無慈悲に最低生活をすら破壊しているかを証明しているのである。なぜならば、国税ではコンマ以下の免税者にさえ、地方税は遠慮容赦もなしに血税を吸い取るからである。
 農民、中小業者の場合、現在すでに税金が納められず、差押え、公売が全国的な減少となつていることは、もはや証明を要しないのである。しかも、本年度は昨年度以上の申告を強要していることは、減税を実際にやらないことを証明しているのである。しかも、不況のためにますます農家は零落し、中小企業者は倒産しつつあるのであるから、これらの落伍者に割当てられた税金は残存業者にしわ寄せせられ、結局ここにも水増し徴税の問題がある。
 一体、こんなに重い税金が拂えるだろうか。もちろん拂えない。なぜならば、農民及び中小商工業者はもちろんのこと、担当の資本家でさえも、まつたく自主性を失つた吉田内閣の諸政策によつて、経済的に崩壊の危機に瀕せんとしているからであります。このことは、最近の関税問題をとつてみても明らかである。すなわち、外国食糧や戰略物資の輸入関税の永久免除によつて、日本の農業と産業を決定的に破滅に追い込んでいるのである。この植民地化、軍事基地化政策によつて低賃金、低米価を押しつけられ、そこから起こる不況が多くの倒産を招く次第である。それを促進しているものが、まさにこの重税なのであります。
 第二の反対理由は、徴税機構の強化とフアツシヨン的徴税のやり方が問題であります。政府は、税金は税法という法律で、いわゆる厳正公平に徴收するように宣伝しておるが、こんなことは、まつたくでたらめな、おとき話である。まず税法自体が不公平な、ごまかし文句である。この不公正な、ごまかし文句を、税務官吏が都合のいいように、かつてに解釈して徴税し、天くだり更正決定、水増し申告の強要、脅迫まじりの督促、差押え、公売、これらはすべて今回の所得税法、法人税法等の法案の中に巧みに合法化されておるのである。しかも一方には、かかる惡税法によつて徴税の悲劇を続出させながら、その反面では、大企業の脱税はあとを絶ちません。しかも高級官僚が、これらの大脱税者と結んで、公然、公然の醜関係を行つておるのは明瞭であります。
 かかる現状においては、徴税機構が固められ、拡大されればされるほど、いよいよ勤労者、農民、中小業者、一般市民を收奪するフアツシヨ的弾圧機関となり、大資本家、外国独占資本の脱税を保障する機関となるのみであります。このような勤労人民大衆並びに民族資本家に対して苛烈きわまる徴税方針をとる吉田内閣が、外国人に対する税金を免除せんとしておることは、吉田内閣の赤裸々な買弁性を露呈するものであります。(拍手)納税者の青色申告に対するいわゆる総すかんは、右のごとき收奪強化の税制改革に対する勤労人民大衆の反対意思の表明であり抵抗であるのであります。
 では、こんな重税を一体何に使うのか。主として━━━━に使うことは、予算が示す通りであります。わが党は、日本を軍事的植民地化し、日本人を軍事奴隷化するための一切の税收に反対し、一、勤労所得税の即時廃止、二、所得税の免税点を四十万円とする高度累進所得税一本建、三、タバコの税金は原価と同額、四、酒、タバコの税金は原価と同額、五、地方税は住民税一本建とし、かつ大幅なる免税点引上げをし、高度累進課税制とする、六、日本産業の保護のための関税、七、外資差別待遇の反対、八、高額所得者の脱税の徹底的追及、民主的納税制度の確立、これを主張するものであります。かくしてのみ勤労人民の生活の安定向上をもたらし、日本経済の復興と平和産業の無制限拡大、日本民族の完全なる独立と自由を守り抜くことができるのであります。
 政府の提出した税制改革案は、戰争とフアツシヨへの道であり、急速なる講和の締結を妨害するものであります。よつて、わが党は反対せざるを得ないのである。以上が、わが党の反対意見であります。(拍手)
#21
○議長(幣原喜重郎君) ただいまの河田君の発言中、不穏当の言葉と聞きとられた文句があります。これは速記録を調べまして適当なる措置をとることにいたします。
 内藤友明君。
    〔「懲罰だ」「いつでも来い」と呼び、その他発言する者多し〕
#22
○議長(幣原喜重郎君) 静粛に願います。
    〔内藤友明君登壇〕
#23
○内藤友明君 私は、国民協同党と新政治協議会を代表いたしまして、ただいま委員長から報告になりました八つの法案に対しまして、反対するものであります。ここに、他の諸君が反対理由を申し述べられたことと重複を避けまして、ごく簡單にその意見を申し述べたいと思います。
 まず政府は、これらの税法によりまして国民の負担が公平になり、さらに著しく軽減されると説明されましたが、その内容を検討しますると、必ずしもさようではありません。なるほど、昭和二十五年度の予算措置におきまして、二十四年度に比べ九百十三億軽減となつておりますが、この金額は価格調整費の大幅の軽減から来るのでありまして、すなわち昭和二十四年度は二千二十二億円であつたものが、昭和二十五年度は九百億円となり、千百二十二億減となつております。ところが、この減額は物価に影響いたしまして、ために生活及び生産必需物資値上がりとなりました。
 これをもう少し具体的に申し上げますと、価格調整費のうち肥料補給金は、昭和二十四年度は三百四十億円であつたものが、二十五年度は百七十六億となりました。硫安について見ますと、二十四年度は百二十一億でありましたものが、二十五年度は四十四億になつております。これによりまして、昨年まで一トン一万二千七百九十一円の硫安が、この一月、二月は一万五千三百五十二円となりました。三月からは一万七千二百七十一円となつたのであります。さらに七月ごろから値上りになるという説明であります。これを春肥に計算すると、反当り九十七円の支出増となるのであります。ここで実は御説明をしなければならぬのは、先ほど前尾さんから、この肥料の値上りはバリテイ計算ではね返るのは、全体の農産物の三分の一であります。自家消費の分と、統制のない農作物は、はね返りません。かようにいたしまして、その收支を考慮に入れますると、税において多少減りまするが、他の支出面で、より以上増加するのであります。すなわち、右の手で與えて左の手で取上げることになるのがこれであります。(拍手)
 さらに税法をよく調べてみますると、五万円から十五万円ぐらいまでの少所得者については、一切の間接税を含めて、昭和二十四年度に比べて千分の四から百分の四ぐらいの軽減になります。しかし地方住民税は、前年度所得を課税基準といたしまするために、かえつて負担増となるのであります。もしかりに政府の言うところが正しいといたしましても、その減税は、もつぱら三十万円から五十万円以上の大所得者であるとか、あるいは超過所得廃止の恩典にあずかる大企業の法人について、より多く軽減されるのであります。これらの税法は、説明するところとは違いまして、羊頭狗肉の例に入るものといつても過言ではないのであります。
 さらに私がここで申し上げたいのは、去る七日の大蔵委員会におきまして、私は池田大蔵大臣に対しまして、この税法立案の心持、態度についてただしたのであります、当然今度の税制はそういうふうにやつておるのであります、と答えられました。なるほど、これらの税法をしさいに検討しますると、大臣のお言葉通り、各條章の中に、その思想がにじみ出ておるのであります。すなわち、五十万円以上の所得については、その税率を百分の五十五一本にしたり、大企業の法人を特に優遇したり、あるいは富裕税の税率を驚くほど過少にしたり、さらに農業者、漁業者、小市民、あるいは中小企業者が資本主義自由経済に対してその生産と生活とを防ぐ唯一の組織である協同組合の法人税を、従来の特別扱いを廃止して営利法人と同一にするなど、その他数え上げれば限りないのであります。これはいずれも自由主義思想からの資本主義経済政策に立脚しておるのであります。
 いうまでもなく、自由経済に門を入りますと、そこに展開する社会は、資本主義の経済社会であります。この社会は驚くべき魅力を持つておるのであります。とうとうと、あらゆるものを利潤の前に屈服させずにはおかない強い力を持つておるのであります。文学も教育も、さては宗教も、その本来の指名を失わしめ、ひたすら利潤追求の手段になり終らしめるのであります。ために文化はすたり、道徳は乱れ等々――しかし、これは資本主義自由経済社会のほんとうの姿を見たのでありますが、この資本主義自由経済の前に、農業や中小企業というものの運命はどうなるのか。問題は、ここにその深刻なものを見出さるるのであります。
 御承知のごとく、資本主義自由経済社会においては、資本を投下すれば投下するほど、それに御応じてその企業は発展し、農業や中小企業には、その原則は根本的に当てはまりません。農業には、報酬漸減の法則なるものが厳粛に適用されています。これは何としてもいたし方ないもので、従つて、農業本来の性質からして、農業は資本主義社会から哀れな姿で消え去るべき宿命を持つておるのであります。ことに、わが国の農業は零細な家族経営でありまして、自由経済社会から一たまりもなく葬り去られるのであります。思えば、長い間の私どもの農政運は、資本主義に圧迫され搾取され、資本主義発展の犠牲となりました農村の解放であつたのでありますが、それを、今また現実に大蔵大臣から、資本主義自由経済の基礎観念から今度の税制を立案したのでありますとのお言葉を聞きましては、感慨無量のものがあるのであります。(拍手)もはや私どもは多くを申しません。しよせん、現在の政府が農業政策を立てましても、それは一日暖めて十日冷やすことになり、結局農村は破局への道を急ぐのみであります。
 かように、ただいま討議されておりまする税制のもとにおいては、農業も中小企業も断じて救われないのであります。これが私が反対するゆえんであります。(拍手)
#24
○議長(幣原喜重郎君) 羽田野次郎君。
    〔羽田野次郎君登壇〕
#25
○羽田野次郎君 私は、農民協同党を代表いたしまして、ただいま議題となつております法人税法の一部改正法案外七法案に対しまして反対に意思を表明するものであります。すでに各党代表によりまして、それぞれ反対の論旨が述べられたようでありますし、與えられた時間の関係上、きわめて簡單に申し上げたいと存じます。わが党といたしまして、ただ農業協同組合に対する法人税について、他の営利法人と同率に課税せんとする趣旨に対しまして反対の理由を申し述べたいと存じます。
 第一に、他の営利法人と同様に取扱うべきでないという理由といたしまして、農業協同組合の経済活動が営利を目的としないということを強調しなければなりません。すなわち、そのことは、実に農業協同組合法に明白になつておるのであります。すなわち、その冒頭第一條に「この法律は、農民の協同組織の発展を促進し、以て農業生産力の増進と農民の経済的社会的地位の向上を図り、併せて国民経済の発展を期することを目的とする。」と規定してあるのであります。すなわち読んで字のごとく、国家は法律をもつて、農業協同組合に対し、かくのごとく重大な社会的責任を果たすべきを規定して、営利を目的としないことを定めておるのであります。従つて、その経済活動の本質は、国や地方団体の行う経済行為に準すべきものであります。しかもその事業は、国や公共団体が行うに適しないものを、農民みずからの力と組織によつてやれというのでありまして、国家は、これに対して特別な保護を加えないまでも、国や公共団体の経済行為に準じて取扱い、従つて、すべからく課税しないのが当然であると私どもは思うのであります。
 試みに過去を顧みますれば、戰争前におきましては、協同組合に対する非課税の原則が堅持されておつたのは御承知の通りであります。また国際的に見ましても、昨一九四九にインドにおいて開催されましたところの国際連合の食糧並びに農業機構の発起人買いにおきまして、協同組合にたいしては原則として税金を免除すべきものであることが宣言されましたのも、まつたくこの趣旨にほかならないと信じます。しかしながら、百歩を譲りまして、わが国財政の現状にかんがみまして、非課税の原則はこれを堅持しないといたしましても、営利法人とまつたく区別しないというこの法案は、何としても農業協同組合の社会的性格を頭から否定するものでありまして、断じて容認すべきものではないのであります。(拍手)
 御承知のごとく、戰争中でも、協同組合組織に対しまして課税はいたしましたけれども、特別法人税の名のもとに、その臨時税たる性格を明らかにしておるのであります。さらに、昭和二十三年の税制改革においては事業税を設け、協同組合に対して一般的に課税をされることになつたのではありますけれども、なおかつ税率の上において、協同組合と一般営利法人との間に差別を設けておるのであります。爾来二年、何らこの原理に変更を加うべき情勢の変化はないのみか、かえつて自由経済の復活に伴い、大資本の発展はますます農業を圧迫し、協同組合の社会的役割はますます重要性を加え、その公共性が高まるのみであります。しかるに、この法案は、かくのごとき農業協同組合の使命、性格、歴史をまつたく無視し、税率の差別すら廃止し、まつたく営利法人と同一に課税をなさんとするものであります。
 さらに農業協同組合の現況に至りましては、低米価政策、その他さらに反農民的諸施策強行による農民の窮迫のために、農協の運営は、まさに重大なる危機に直面しておるのが現実であります。中小企業の危機は、大蔵大臣の談話で、あまねく国民の窮迫は、中小企業に劣らざるものがあるでありましよう。それにもかかわらず、それほど国民の関心とはならず、内閣の諸公もまたこの現実を知らざるがごとくであります。いな、かえつて食糧事情の緩和等に伴いまして、農村経営の風潮おおうべくもないと私は断言したいのであります。
 われわれは、今静かに、あの歴史的な農地改革を想起し、それに続いての農業設立という一連の革命施策の理想を深く再考してみなければなりません。農地改革は、單に土地所有権の分散をやつて、それをもつて能事終れリとするものではないはずであります。その新しい土地所有関係の上に一体何を打立てようとしたのでありましようか。それは農村の民主化である。そのためには、新しく創設された自作農を育成し、その社会的、経済的地位を向上せしめてこそ民主化は推進されるはずでありますが、その施策能の社会的、経済的地位の向上は、隅々ばらばらの零細農によつては断じて可能ではない。ただ協同組合の組織によつてのみ可能であるはずであります。
 なるほど、日本民主化の促進については、吉田首相だつて、重大な講和の促進にあたりましても、民主化の促進が前提であると、しばしば言われる。しかるに、その日本民主化の基盤が農村にあることは御存じないのでありましようか。農村民主化の本拠である農協を聞きに追い込むがごときは、何という矛盾でありますか。真に民主化の促進を思うならば、農村民主化本部たる農協に対して正しい認識を持つべきである。その重大な使命を持つ農協なるにかかわらず、今や全国的に非常な経営難に陷るに際しまして、政府は何の施すところなく、全国の農協代表者が、たとえば個々の法案に対しまして、今日まで、非課税ないし一般法人より低率課税を幾たびか陳情し請願しているにもかかわりませず、これをいれない事実に徴しますれば、国策の基本であるべき民主化と農協との関連を、政府はまつたく認識しないものであると断ぜざるを得ません。(拍手)
 さらに一言付言死体ことは、一般の資本主義企業は、重役や株主のために営利されるものであります。従つて、その運営は重役専制が常態であります。いわゆる合法的な脱税のごときも尋常普通のことであると申さなければなりません。しかるに、これに反して、協同組合の運営は、ガラス張りの中における民主的運営であります。この点においても、一般法人と協同組合とは、まつたくその性格を異にするものであるといわなければなりません。これをしも同一視し、同列に置いて同一課税を行わんとするがごときは、税法の精神でありますところの公正の理念に反するもんであるといわなければなりません。
 以上の諸理由によりまして、反対の意見を表明するものであります。(拍手)
#26
○議長(幣原喜重郎君) 岡田春夫君。
    〔岡田春夫君登壇〕
#27
○岡田春夫君 税制改革が減税になるということを盛んに自由党並びに吉田政府が言つておる。しかし、予算案の説明を見ましても、なるほど国税においては七百億円減税になるということをかいてあるが、地方税が二倍、三倍になるということには一言も触れていない。こういう点について、今度の税制改革が、いかに表面減税をよそおいながらも、実質的には増税を行わんとしておるかということは明確であります。
 その具体的な例として、三月六日の予算委員会におきまして、大蔵省の某局長は、年收八万円の勤労者は、現在の税法によると一万二千円の税金がかかる、ところが、新しい税法によると、国税、地方税を合した場合において一方四千円の税金になるということを言つております。すなわち二千円の増税を、はつきり政府委員が立証いたしているのであり、こういう点からいつても、表面においては減税という看板をかかげながらも、実際にはつきりとしており、それを政府委員としても答弁せざるを得なかつたのである。私たちは、この点においても、まず第一に、今度の税制改革というものは決して現在ではなくして、最低所得者のあるいは勤労大衆に対して増税を強要するものであるという意味において、絶対に反対せざるを得ないのであります。(拍手)
 第二の問題につきまして、今度の税制改革は、勤労所得者あるいは農民、中小企業者に対して減税を行うという看板を掲げながら、実質においては大資本家、財閥の減税を行わんとしているものであります。この点においても、われわれは絶対に賛成するわけには行きません。具体的に申し上げますならば、先ほど各党の諸君からもお話のありましたように、たとえばシヤウブ勧告の税制改革と比べて、今度の政府の税制改革は、シヤウブの改革よりも、大資本家、財閥の減税の部面においては、徹底的にこのシヤウブ勧告を改めている。たとえば資本の再評価において、シヤウブ勧告によりますと三百億円の予算が計上されているにもかかわらず、今度の政府の予算案によると、資本再評価税としては、わずかにその半分の百五十億円しか計上されておらない。また法人税の減税においては、時事と比べて百十四億円の軽減を行われている。あるいは富裕税においては、これはシヤウブ勧告を形式的に実行したという形にはなつているけれども、実際に富裕税としてとられるものは、わずかに二十億円にしかすぎないのであります。こういう点から見まして、勤労大衆に対しては、減税ではなくして増税を強要しながら、一部の独占資本あるいは財閥に対しては、これは徹底的な減税を行わんとしているのであります。(拍手)
 このような形を、それではなぜ行わなければならないかというと、大資本の減税を行うことによつて外資の導入を容易ならしめんとしているのであります。言葉をかえて申しますならば、この税制改革は、この税制改革を通じて日本の経済を植民地化せんとするものであるということをいわざるを得ないのであります。(拍手)
 第三の点について、これら大資本家に徹底的な減税を行いながら、労働者、農民、中小企業者の膏血の上に立つて四千数百億の税金を取り立てて行くのでありますが、この四千数百億円の税金は、ほとんど大半が、たとえば旧債務償還に現われておるがごとく、あるいは公共事業費九百九十億円に現われておるがごとく、これらの大衆の膏血をしぼつた税金が、大資本家の擁護━━━━━━━━の性格の強いこの予算に使われており、われわれは、この点から考えましても、今度の税制改革は、明らかに日本を再建するものではなくて、日本を滅ぼすものである、国を売るものであるといわざるを得ないのであります。(拍手)その点に立つて、われわれは絶対に反対をいたします。(拍手)
#28
○議長(幣原喜重郎君) ただいまの岡田君の発言中不穏当の言辞がありますれば、速記録を取調べの上、適当の処置をとることにいたします。
 これにて討論は終局いたしました。
 これより採決いたします。日程第二ないし第九、すなわち所得税の一部を改正する法律案外七案を一括して採決いたします。八案の委員長の報告はいずれも可決であります。八案を委員長の報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#29
○議長(幣原喜重郎君) 起立多数。よつて八案とも委員長報告の通り可決いたしました。(拍手)
#30
○議長(幣原喜重郎君) 日程第十及び第十一は委員長から提出された議案でありますから、いずれも委員長の審査を省略して一括議題となすに後異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#31
○議長(幣原喜重郎君) 御異議なしと認めます。
 日程第十、公職選挙法案、日程第十一、公職選挙法の施行及びこれに伴う関係法令の整理等に関する法律案、右両案を一括して議題といたします。提出者の趣旨答弁を許します。選挙法改正に関する調査特別委員長生田和平君。
   (生田和平君登壇)
#32
○生田和平君 ただいま議題になりました公職選挙法案並びに公職選挙法の施行及びこれ伴う関係法令の整理等に関する法律案につき、提案の理由と趣旨を説明いたします。
 本法案については、第五国会において委員三十一名よりなる特別委員会が設置せられ、さらに第六国会、第七国会において同一委員会が設けられ議員審議せられたことは、皆様御承知の通りであります。本委員会における調査の経過については、かねて御報告をいたしてありますので省略いたします。以下、本法案の内容について御説明いたしたいと思います。但し、各條について御説明するには長時間を要しますから、詳細なことは報告書または速記録並びに法律案によつてごらんをお願いし、ここには最も重要なる点についてのみ申し上げたいと思います。
 現行衆議院議員選挙法に、大正十四年普通選挙法施行せられることともに設定せられたものであることは、皆様御承知の通りであります。以来幾多の修正と関係法令が設定せられました結果、以来多岐にわたり、専門家にあらざれば理解しがたきことになり、ここに総合的統一立法が要請せらるることとなつたのであります。日本国憲法には、「ここに主権が国民に存することを宣言し、」「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、」「その権力は、国民の代表者がこれを行使し、その権利は国民がこれを享受する、」と規定せられている。ここに提案せる公職選挙法は、国会における代表者を選出するにとどまらず、地方公共団体の議会に議員及び長並びに教育委員会の委員の選出にも適用せんとするものでありまして、その影響するところ広範囲にわたり、すこぶる重大なる異議を持つものであります。
 委員会は、この重責を果すためには委員各位が豊富なる熱意をもつて、並々ならぬ苦心を拂われたことは申すまでもありません。また委員会は、かかる大法案を調査し、立案し、委員会の名において国会に提出することにより、一層その責任を痛感するものであります。われわれは、憲法の明示せる国民の自由権を尊重せねばなりません、また憲法の明示する正当なる選挙を行わねばなりません、この正当なる選挙こそは、八千万国民の平等性の発露であると、かたく信ずるものであります。しかしながら、正当なる選挙を行うには秩序を維持し公正を確保する方法、制度については、各人思い思いに意見の相違がありまして、ここに立法の習慣性が伴います。
 思うに、選挙法は一種の制限法でありまして、全章ほとんど制限規定をもつてうめらてとおるともうしても過言ではありません。たとえば年齢の制限、居住期間の制限、投票による制限、選挙区制の議決、名簿調製の制限、任期の制限、立候補の制限、当選についての制限、選挙運動についての制限、選挙費用の制限等、あげて貰うべからざるものがあります。改正法は、これらの国民の自由性を基礎として、これらの制限をいかに撤廃し、または緩和し、調整するかが重大なるかぎであると考えるのであります。委員会は、以上の見地に立つて、独自の立場において従来の欠点を是正し、もしくは拝聴し、時代に即応する最もわかりやすき国民選挙法を制定いたしたのでありあます。
 この法律は、十七章、二百七十三條より構成されております。その第一條において、選挙を目的を明らかにしてあります。すなわち、この法律は日本国憲法の精神にのつとり、衆議院議員、参議院議員、地方公共団体の議会の議院及び長並びに教育委員会の委員を公選する選挙制度を確立し、その選挙が選挙人の自由に表明せる意思によつて公明かつ適正に行われることを確保し、もつて民主政治の健全なる発達を期することを目的とすると明記してあります。
 しかして、本答申案も重要なる点は選挙権、被選挙権の問題、選挙区制の問題、選挙運動の問題でありまして、選挙法中の三大要訣であると言い得るでありましよう。選挙権、被選挙権については、既往において、これが拡張に努力せられてきたのでありますが、今回の改正にあてつて、六箇月の居住要件を三箇月に短縮して、準禁治産者及び選挙犯罪以外の犯罪による刑の執行猶予中の者にも選挙権、被選挙権を與えることとし、さらに選挙制度創設以来制限し来れる自書主義を緩和し、不在投票の範囲を拡張して、投獄または少年院に收容中の者にも選挙権、非戦事件を與得ることとし、さらに選挙制度創設以来制限し来れる自粛主義を緩和し、文盲者には代理投票を認めることとし、不在投票の範囲を拡張して、投獄または少年院に收容中の者にも投票の道を開きました。これらは選挙権、被選挙権に関する拡張次号でありまして、多年にわたる宿題を一挙にして解決いたしたのであります。
 町村長及び教育委員会委員の立候補の場合における連署届出制度は撤廃して、これを簡易化し、公務員在職中の立候補制限の範囲を整備し、地方公共団体の議会の議院をついては、在職中衆参両院への立候補を制限しました。選挙区制の問題については、衆議院には全権一区がなお九県存在しておりますので、これを二分区に改正すべしとの有力なる意見があり、参議院についても区々の意見がありましたが、今回は両院とも現状のままとし、一切触れないことに意見の一致を見たのであります。
 選挙運動については、選挙は原則として自由であり構成でなければなりませんが、金のかからぬ選挙を要望せられる現状にありましては、そこに幾多の矛盾が発生して来るのであります。また法律理論と政治的、社会的実態との食い違いが至るところに見出されるのであります。従いまして、これらの調整には多くの苦心が拂われたのは当然であります。委員会としては、選挙公営を強化して選挙運動を明朗化するとともに、候補者の選挙費用の均等化をはらることとし、他方第三者の言論による自由の仲張に努めました。
 立会演説会については、候補者の代理演説の回数を増加して、五分の一を三分の一に改め、個人演説会の回数制限を撤廃し、これを自由とし、街頭演説会にあつては、候補者がいなければならぬという條件を撤廃し、これを解放しました。すなわち言論による選挙運動を大幅に緩和したのでありまして、ここにも改正法が時代に即応したる法案であることを断言し得ると信ずるのであります。
 新聞、雑誌の報道及び評論については、これを法文化し、言論の自由を認めたのでありまするが、虚偽の事項を記載し、または事実を歪曲して記載する等、表現の自由を濫用して選挙の公正を害してはんらないとの自粛を加えまして、新聞、雑誌が本来の使命を誤らざらんことを規定しました。
 戸別訪問の規定については、数箇月にわたり論議を重ねました結果、一般的には従来通りこれを禁止いたしましたが、候補者みずからが、親族、平素親交の間柄にある知己、そのた密接なる間柄にある者を訪問することはさしつかえないと規定したのでありまして、わが国の淳風美俗の精神を取り入れたものであると思うのであります。従つて、従来となえられておる個々面接とはその性格を異にするものであることを申し上げておきます。言葉をかえて言えば、適正なる選挙運動をもなし得ると御了解願いたいのであります。
 選挙運動に関する收入及び支出並びに寄付の規定については、政治資金規定法の一部を取入れ、爭訟及び罰則の規定については、おおむね現行法を取入れました。
 なお本法は五月一日から施行せられることになつておることをつけ加えて申し上げておきます。
 討論に際し、自由党を代表して千賀委員より全面的賛成の意見を述べ、社会党を代表して濱田委員より、選挙区、投票方法、立候補要項規定等その他部分的反対の意見があり、結論は本会議に譲ると述べられました。民主党を代表して並木委員より、希望意見を付して賛成の旨を述べられ、共産党を代表して立花委員より全面的な反対意見を表明せられました。
 次いで採決いたしましたところ、本案を当委員会の成案とし、これを委員会提出の法律案とすることに多数をもつて議決したにであります。
 次には、公認選挙法の施行及びこれに伴う関係法令の整理等に関する法律案につき御説明いたします。
 本法律案は、公職選挙法の立法により廃止または改正もしくは施行等の整理に伴う経過規定でありまして、三章三十二條をもつて構成せられております。
 廃止せらるべき法令は、衆議院議員選挙法、衆議院議員選挙法施行令、衆議院議員議院選挙法適行規則、選挙運動等の臨時特例に関する法律施行令、衆議院議員選挙人名簿などの臨時特例に関する法律、衆議院議員選挙法代十二條の特例に関する法律、衆議院議員選挙人名簿の臨時特例に関する件、衆議院議員選挙法第百一條ノ三第百四条ノ規定ノ適用ニ関スル件、衆議院議員選挙運動取締規則、衆議院議員選挙法、衆議院議員選挙法施行令、衆議院議員選挙法施行規則、衆議院議員選挙運動取締規則、選挙運動の文書図面等の特例に関する法律、地方公共団体の選挙の選挙運動取締規則等十六件であります。
 一部改正せらるべき法令は、政治資金規正法、地方自治法、教育委員会法、刑事訴訟法施行法、最高裁判所裁判官審査法、農地調整法、漁業法、地方自治法の一部を改正する法律、検察審査法、全国選挙管理委員会法等十條であります。
 公職選挙法の施行に伴う経過規定は十五件であります。関係法律の整理等に伴う経過規定は六件であります。
 本案について採決の結果、当委員会の成案とし、これを委員会提出の法律案をすることに議決をしたのであります。
 以上をもちまして、両案提出の理由並びに趣旨を御説明いたしました。何とぞ、すみやかに御審議の上採決せられんことを希望いたします。(拍手)
#33
○議長(幣原喜重郎君) 本案については討論の通告があります。これを許します。鈴木義男君。
    〔鈴木義男君登壇〕
#34
○鈴木義男君 私は、日本社会党を代表して、本法案に対して反対の意見を開陳するものであります。
 本法案の立案に際しましては、われわれも参議したのでありまして、その大部分については賛成するにやぶさかでないのであります。なお、その細かい点については不満足な点も少くないのでありますが、根本的な三、四の点については、われわれの意見が遂にいれられなかつたのでありまして、法律案全体として賛成いたしかねることを遺憾とせざると得ないのであります。
 私どもが不満足とする第一の点は、選挙運動費の法廷制限額をこの法律で決めておらないということであります。法案の百九十四條に、使い得べき運動費の最高限というものがきめられておるのでありまするが、それは單に抽象的に、計算の基礎、すなわち当選選挙区の定員をもつて有権者総数を除した数にある金額をかけた額というふうに規定いたしまして、その現実の金額は命令でこれを定めるということになつているのであります。これに一円をかけるか、二円をかけるか、三円をかけるか、五円をかけるかということで非常な齟齬を来すのであります。現に委員会においても、この四つの金額が問題になつたのでありまするが、結局結論を得られないというので、これを命令に譲つたのであります。しかしながら、こういう大切な点を命令に譲つてしまうということは、選挙法の大眼目でありまする点をあいまいにすることでありまして、まさに画竜点睛を欠くと信ずるのであります。
 申すまでもなく、選挙法において最も大切なことは、どうして選挙の買收を防止するか、どうしたならば安くて明朗な選挙を可能ならしめるかということにとくと思うのであります。選挙法改正の限月は、このほかにないともうしても過言ではないと思う。そのために、その選挙法は、公営の幅を十分に広げて、できるだけ候補者自身が金の支出をせぬで済むようにいたしてあるわけであります。本法案によりましても、選挙公報も無料である。ラジオの放送も無料である。立会演説会も公営の個人演説会も無料である。さらにポスターの紙まで交付する。はがきも無料で何万と交付するということになつているのである。その上、候補者自身の車馬賃、宿泊料等も計算外ということになつておるのでありますから、そのほかに金の使い道がないわけである。ゆえに、法定費用というものは最小限度にとどめてよろしえいわけであります。
 一体、議院になることが金もうけを意味しないならば、そんなに金のかかる選挙というものは、清く正しい人のとうてい耐え得るところではないはずであります。少くとも歳費や手当てが生活費の基礎になつている人々にとりましては、次の選挙しというものは、歳費を基準として、常識上妥当な額にかぎらなければならないのであります。イギリスのように、小選挙区ではありまするが、そのかわり日本のように公営が徹底しておらない国におきましても、法定制限額というものは議員の一年間の歳費よりも少ないのであります。そうして、それは厳格に守られているのである。そのくらいでなければ、とうていたびたび選挙をやることはできるものではないのであります。
 候補者をして選挙を恐れさせるということは、決して民主政治を発達せしめるゆえんではないとおもうのであります。しかして、その額は、あらかじめ法律において明確にしておいて、かつそれが厳格に守られているという保障を立てておかなければ何にもならないのであります。従来の実情にかんがみますると、この規定くらい本文に帰しているものはないのである。初めから破るつもりでつくるくらいなら、制限しない方がましであります。フエア・プレーというものは選挙界においては行われておらないというのが定評であります。わが民主政治の発達せざるゆえんであります。
 現実の法定制限額をこの法会いつできめなかつた一つの理由は、貨幣価値がまだ安定していない。物価なども将来どうなるかわからないというような点にあつたようでありまするが、来る六月の選挙に実施するのに計算ができないほど動揺しておるとはおもわれないのであります。ほうりつは、なるべくたびたび改正したくはないのでありまするが、もし貨幣価値に変動がありましたならば、そのとき、この一箇條だけ再び国会の議に付して改正すればよろしいのでありまして、手続きが多少煩瑣だというだけで、これほど大切な点を、そのときの政府、すなわち行政機関の裁量にまかせてしまうということは、非常に危険であり、われわれはとうてい賛成しかねるのであります。(拍手)これが第一点であります。
 第二に不満といたします点は、投票を自書主義にいたしまして、われわれの主張たる記号式にすることを御採用にならなかつた点であります。我が国においては、選挙の行われます都度、いかに多くの無効投票ができるかということは、御承知の通りだとおもうのであります。これは、わが国には、まだ、読むことはできるが書くことができない、めんどうくさいという人が相当おるのであります。学校にはいつたのであるが、筆紙に遠ざかつておるために、何円に一度、投票のときだけ書くというような人も相当おるのであります。ために、うそ字、誤字、他事を記入したり、投票紙をよごし、型紙で書く。一番困るのは、同姓の人が二人以上立候補しておるのに、その姓だけを書くために、一度に何千票というような無効投票が出ることであります。投票は一票といえども生かすべきものであります。それが何万、何千という無効が出るということは悲しむべきことであります。欧米各国におきましては、おおむねアルフアベツト二十六字さえおぼえておれば書ける姓名であります。それでも書くことが煩わしいというので、皆あらかじめ印刷しておいて、姓名の上に記号、すなわちしるしをつけるだけにしておるのであります。書きにくいという点では、われわれの漢字は、とうていABSの比でないことは明らかであります。
 この記号式に反対される人々は、いろいろな理由をあげられておりますが、いずれにしてもたいした理由にはならない。要するに、一度書かしたのだから、書かせる方が現在の議員のためには得だという、一種の功利主義に出ているを見るほかはないと思うのであります。この法律が記号式を採用しないということが反対の第二点であります。
 第三に不満足に思いまする点は、現行の三人ないし五人の選挙区を維持しながら、單記主義を採用して、制限連記主義を採用しないことであります。この点は理論だけから申しますならば、單記に十分な理由があります。しかし、実際論から申しますならば、対立政党の間に一挙に明確な勝敗の決を示して政局を安定させますのには、小選挙区、一人一区主義がよいことは、ほぼ定論の存ずるところであります。しかし、これは国民の政治意識の水準が相当高くなければ、他の弊害にたえないのでありまするから、わが国において早急にこれを採用するわけにも行きません。そういたしますれば、できるだけ選挙区が大きい方が公正な選挙が行われる。情実や利権によらざる候補者の出て来る可能性が多いのでございます。ゆえにわれわれは、一県一区の大選挙区を主張するのであります。
 しかし、今回は選挙区の改正には手を触れないことにいたしたのでありますから、現行中選挙区を維持いたします以上、できるだけこの制度の上で多政代表の精神を生かして政局安定に資すべきであるというのが、われわれの主張であります。それには、できるだけ同一の党派の候補者を生かすことであります。定員を三人ないし五人にしておきながら、一票しか投ぜられない現行制度では、候補者は落選をおそれて、対立政党の候補者と論争するよりは、味方臣志の間に激戦なる競争を展開する弊があることは、選挙に経験のある諸君のよく了承せらるるところであると思うのであります。この味方同士の激戰を避けて、しかも選挙民が勝たせようとする政党の候補者をできるだけ多く出す、そして政局の安定を持ち来す方策は、妥協的ではありまするが、二人ないし三人の同一政党の候補者に同時に投ずることができる制限連記式の採用のほかないのであります。これ、わが党が大選挙区制限連記を主張しておるゆえんであります。これをわれわれは委員会でも主張したのでありますが、御採用にならなかつたのであります。これ反対の第三点であります。
 その他、婦人演説会の会場の制限の緩和とか、集会所その他不在投票の緩和とか、こまかい点で異論もありますが、それらはすべて省略いたします。
 少くとも、以上三つの根本的な課題について、わが党の主張がいれられておらないのでありますから、大体において改善されたことを認めつつも、あえて反対せざるを得ない次第であります。
#35
○議長(幣原喜重郎君) 千賀康治君。
    〔千賀康治君登壇〕
#36
○千賀康治君 日程第十及び第十一に対しまして質疑討論を行いまするが、日程第十一に、第十が質疑である限り当然これはあるべきものでございますので、こちらは詳しいことは申しません。
 私は自由党を代表いたしまして最終討論を行うのでございますが、懲罰委員会が審議を完了しまして、本会議に議員提出法案として上程いたしましたこの公職選挙法案は、二百七十三條の主文と内項の附則並びに各選挙区と衆議院議員の定数及び地方区参議院議員の定数を表示した二部の別表から成立つております。大体、従前から衆参両院議員、地方公共団体の議会の議員及び長並びに教育委員会の委員を選挙する各種の法律を総合統一して、あわせて法的根拠を明確ならしめるとともに、必要な事項は勇敢に新たに取入れ、選挙人の妨げられるところなき自由意思によつて選挙が公明かつ適正に行われることを保証し、民主政治の健全なる発達を期するところにねらいを持つております。しかしながら、選挙といえば政治に関心のある国民の最大関心事でありますので、昨秋十月二十六日、第六国会において付託を受けまして以来、正式の委員会を初め、公聽会に頻する懇談会及びあまたの私的懇談会等を開催し、生田委員長以下各委員は、血のにじむ苦心さんたんの過程を踏みながら、第六国会では遂に審議未了となりましたが、辛うじて今回議了の上、本会議に成案を報告、上程の運びとはなつたものであります。
 この法案中、従来に比べ、まつたく面目を一新した点は、民主的自由の線を画期的に拡大強化したことであります。その中でも特に偉観をそえるものは、言論の自由をほとんど無制限に近く認めた点で、候補者が主催する個人演説会も、また意思を通せぬ第三者の街頭演説も無制限であります。文書においても、衆参両院議員の場合、ポスターは三千枚を最低限度として、それぞれ必要に応じ、規定により、それ以上を許すとともに、その記載事項または使用法はまつたく自由であります。また無料はがきも三万枚ないし五万枚を認め、使用法、発足手続等も完全に自由を認めております。かくのごとく、公営け長所はこれを育成し、その幅をできるだけ拡大することに努力いたしました。その他投票獲得、すなわち選挙運動のための戸別訪問は禁止いたしておりますが、候補者自身が出先で親戚、知友その他特別の関係者を訪問することは何ら制限を加えられておりません。
 次に第九十四條について若干申し添えますのは、都道府県知事と教育委員会の委員の選挙に際し、公営の供託金を当該都道府県に供託してもらうのでありまして、その全選挙費用は地方費で支弁してもらうのであります。かくては知事、教育委員等は国の事務を分担する面が相当大きいのに、その全選挙費用を地方のみに負担させるというのは、相互補導の精神から申しましても、いかがかと思われるので、なるべくすみやかなる機会において、地方庁援助のため補正予算を提出してもらうという確約ができておるのであります。
 次は百四十八條、すなわち憲法第二十一條に示されておる新聞の報道の自由を完全に認めた点であります。われわれは、一台英断をもつてこれを開放いたしました。この点は、実に長き伝統を一挙にして変革するのでありますから、各党各派から議論百出で、審議時間の過半はこの一点の論議に費したと言つても過言ではない。この法律によつて、選挙が行われるに際しまして、政党及び個人の別なく、あらゆる事実に即する正しき批判、評論が許されのであります。私は、切にこの條項の善用によつて、わが国選挙史が一段と明朗に書き改められることを熱望してやみません。
 次に、わが党がこの法律の精神を生かし、でき得る限り多数国民の意思を選挙に反映せしまようがための親心の現われのうちには、住居規定を六箇月から三箇月に引下げ、文同無策の代筆を認める等があります。
 次に、府県、市町村議会議員の現在立候補及び公務員の立候補の禁止もまた論議をされましたが、公務員にありましては、むしろ数箇月間は立候補を禁止しろという議論さえあるくらいでございます。しかしながら、市町村議会議員の場合におきましても、一人一役の思想から申しましても、わが党は、従前通りこれは禁止することが適当であると思います。
 速記投票主張の社会党案もありますけれども、敗戰直後、社会党の諸君は、アブレゲールの投票を思いのほかかき集めたので、社会党の速記に対する記憶は、おそらく甘美であつたろうと思いますけれども、一般大衆にとつては、きわめて不明瞭で、たよりない。これくらい、いやな記憶は、まだ人々の脳裡から消え去つておりません。單記無記名こそ、われわれは明朗選挙の礎であると確信をいたしております。(拍手)
 公定選挙費用の法文化もまた社会党によつて要求せられましたけれども、われわれは問題なく原案を可といたしております。すなわち、貨幣の換物価値にスライドして、そのときどきに適合する額を政府が政令で定めることを主張いたしております。本案では、その標準を、従前通りの計算方法で、單価を二円以下ないし一円以下といたしております。社会党の主張するがごとく、これを法文化してしまいますれば、いたずらにスライドの妙味を減没するばかりでなく、何も得るところはございません。まずその夢は、わが国に金本位制でも復活してからでよかろうと存じます。これは、つつしんで社会党に忠告を申し上げます。われわれは、本案と政令との運用によりまして、今のところ、衆議院議員の公定選挙費用の総額を十八万円前後、また参議院の全国区の場合は八十万円前後くらい、地方区の場合はその中間どころで適当なる調和点を求めたいと考えております。
 最後に、共産党の全面的反対について一言いたします。大体共産党―形成の根本理念が、すでに━━━━━━━革命とソ連弁護の一点以外の何ものでもなくて、あらゆる議会活動も、その一環の手段にしかすぎぬ。共産党が反対してくれることは、かえつてこの選挙が公正なるゆえんであります。この法案が、反共民主日本の創建のため、好適なものであるという自信がつきました。その傍証が固まつた次第であります。もしそれ、共産党が主張するがままに本案を修正さしたといたしますれば、一体日本の政界はどうなるでありましよう。皆さん、ソ連をごらんなさい。ソ連において、今日見るがごとく、共産党以外の立候補を禁じ、彼らに阿謖迎合する以外の言論はことごとく━━━━━━━━これを封殺し、全新聞からは報道の自由を奪い去り、虚報捏造の本拠であるアカハタや真相の活動範囲をいやが上にも増大し、国民をあげて━━━鶏小屋の中の鶏にする以外の何ものでもないでしよう。今日のコルホーズをごらんなさい。農民の供出価格の八倍で政府が配給をしていようが、また、年の収入の二箇月分を愛国公債と称して━━━━━しまつても、国民は一切口を出して言えない。世の中ができては、たいへんであります。この選挙法が、共産党の言うがままに修正をされるとすれば、この通りになつて行く危險性が多分にあるのでございます。
 そればかりではない。共産党は、わが国の治安の中枢努力である警察陣にけちをつけて、その活動を牽制し、ひたむきに暴力流血革命への一本化を邁進する以外の何ものでもないことは、あまりにも明瞭であります。見よ、野坂批判と徳田要請の暴露によりまして、流血革命、暴力革命、その党是実現のためには、まつたく夜叉鬼神と化した、この事実を否定することはできますまい。この一角から起りまするこの革命交流会を、やがて来るべき選挙に零敗せしめまして、日本共産党の賞賛曲となさねばなりません。(発言する者あり、拍手)
 われわれは、この光栄ある選挙法に双手をあげて賛成するものでございます。どうか大多数の諸君の御賛成あらんことをお願いいたします。(拍手)
#37
○議長(幣原喜重郎君) ただいまの千賀君の発言中、速記録を取調べの上不適当のところがあると認められましたら、適当の処置をとることにいたします。土橋一吉君。
    〔土橋一吉君登壇〕
#38
○土橋一吉君 公職選挙に関する二法案につきまして、私は日本共産党を代表いたしまして反対の意見を述べんとするものでございます。
 ただいま自由党の千賀君が、いろいろ共産党に対しまする誹謗的な旨辞を弄されましたが、選挙に関する法律とは何ら関係のないこのような発言をせられますることは、まつたく遺憾であります。
 まず、われわれのこの法案に対する反対の第一点は、今回の改正が選挙に関する基本的な問題には触れ得なかつたことであります。従つて、ここに提出されておりまする法案は、きわめて臨時的なものであり、かつ来るべき参議院議員の選挙の間に合せ的な、しかもきわめて不備きわまるところの法案であるということであります。日本共産党といたしましては、選挙制度に関しまするところの全国一選挙区比例代表制という基本的な方針を持つておるのでありまするが、かかる基本的な問題が、この委員会におきまして十分に審議を盡し得なかつたことは、まことに遺憾にたえないのであります。この法案は、選挙制度における基本的な原則を忘れておるところの致命的な欠陥を持つておる法案であるのであります。
 反対の第二点といたしましては、選挙運動におきまして、きわめて民主的醺躄のもとに、民主的な勢力に対する制圧を加えておるのであります。しかるにかかわらず、一方反動努力に対しましては、その温存の道を十分に開いておるということであります。そのような特徴的なものは、まず第一には、警察官が公然と選挙場なり、あるいは投票場なり、あるいは演説会場に臨んで来つのでございます。従つて、武装警官が、おそらくこのような場所には、さぞにきわうことでございましよう。しかしながら、現在警察が、すでに軍隊なきあとの軍隊的方向をたどりつつあるとき、武装警官が選挙に干渉するがごときことは、民主的選挙制度の確立のもとには断じて許されないのであります。
 次に、学生あるいは教員諸君に対しましては選挙運動を禁止いたしておりまするが、一方PTAの役員等の選挙運動に対しましては、そのまま放任をしておるのであります。その弊害は、はかることのできない弊害を持つておると思うのであります。
 なお惡質なる制限は、ただいま委員長から報告がありましたが、言論に加えられておるのでございます。法百四十八條におきまして、表面上は言論の自由を認めておるようでございまするが、あの但書を見ますると、実質上言論の自由を完全に抑圧しておるのであります。すなわち、表現の自由を濫用するという、きわめて広汎なる文字によつて、憲法が認めておりまする表現の自由を圧殺しておるのでございます。この條項をわれわれがいろいろ調べましたとき、されにプレス・コードそのものをもこの法文のうちに盛り込んでおるのであります。これはまつたく自主性を失つておる態度でありまして、かかる自主性を喪失したやり方で、憲法に保障されておりまする一切の表現の自由を剥奪せんをいたしておつのであります。
 さらに奇怪なことは、一方反動努力に対しましては最も好都合で、しかも封建的な、しかも危險きわまる方法であるところの戸別訪問を認めておるのであります。
 なおわれわれが反対するのは、この罰則強化の問題でありまするが、以上のごとく表現の自由を剥奪しながら、これを犯した者に対しましては、実に囲うな体刑をもつて臨んでおるのであります。言論機関に関しては、特に次のように加重しておるのであります。法文を読み上げますならば、「但し、新聞紙及び雑誌にあつては、なお、その編集人及び実際に編集を担当した者を罰する。」と規定しておるのであります、この條文におきて見られるがごとく、民主的努力の選挙運動に対して最も苛酷なる刑罰を用意し、民主的な勢力を圧殺せんとしておるのであります。
 次は候補者の問題でありまするが、全国二百五十万に達する国家並びに地方公共団体の公務員諸君に対しまして立候補の権利を奪つておりますことに、明らかに憲法に認められた普通選挙の精神に反するものを考えるのであります。(拍手)しかるにかかわらず、一方高級官僚なり特権官僚の諸君に対しては、辞職五日の後立候補を認めております。実際上は、在職中これらの諸君が、官の組織を利用し事前運動をするのを、公然と黙認しておる状態であります。(発言する者あり、拍手)すでにこの問題は、法案の問題を離れまして、何人の目にも、きわめて明瞭にわかる事実であります。すなわち、来るべき参議院議員選挙を控えまして、反動的、保守的なる政党を名乗る一部の高級官僚諸君がおることは、皆さんが御承知の通りであります。このような状態で、他方、長期療養患者あるいは病弱の者等が選挙権を行使することを阻害しておるのであります。
 特に私が反対をしなければならない第三点としましては、選挙の費用に関する問題でありまするが、現今、社会におきましては、八当五落という言葉が言われておるのであります、だれが一体八当五落というような、おそらく一千万円にも近い厖大な選挙運動の資金が用意できるでありましようか。一般大衆が食うか食えないかという生活をし、その日の米代にも事欠こうという昨今におきまして、八百万円以上の金をつくることは、これは不正と腐敗につながらずしてできる金ではありません。(発言する者あり、拍手)従いまして、百九十七條に、事前運動においても、立候補後においても、立候補者または出納責任者以外の関係者の支出したものは選挙資金の支出ではないと規定しております。また選挙期日後において、選挙運動の残務聖地に要した支出は選挙費用の支出ではないこう規定しておるのでありまするが、これは実施上幾らでも選挙費が使えるということであります。(拍手)
 新聞によれば、平田主税局長は、様人の政治献金には税金をかけないと言つておるのでありまするが、かくして、保守反動的な勢力に対しては、実質上選挙費用は無制限であり無課税であるということであります。(拍手)しかも、この最大の資金プールなるものは、現在の中央・地方を通ずる一兆円に達する厖大な国家予算につながる不正腐敗の選挙資金であることは、きわめて明瞭であるのであります。(発言する者あり、拍手)この事実は、かつては昭和電工問題におきまして、諸君がすでに御案内の通りであります。今やまた、五井産業事件を通じて、諸君の胸に手を当てて考えるならば、きわめて明瞭にわかることでありまして、この資金プールを握る高級官僚、それと結託する保守反動政党の諸君が、ゆたかなる選挙資金を使つて当選することでありましよう。
 しかも重要なることは、最近の著しい傾向といたしまして、国家予算、地方予算の軍事化、植民地化が明らかであるといわれておるとき、この線に連なつて出て来る当選者は、明らかに━━━━━━━━努力の代弁者であるといわざるを得ないのであります。その結果、民主的努力を代弁する者がますます議会に出ないような仕組みに、この法案は相なつておるのであります。御承知のように、グレシヤムの法則によつて恩賞は良質を敏提するということわざがございますが、おそらく来るべき参議院議員等におきまして欠陥を持つております本法案を運用するものが、また従来定評がありますところの非民主的な選挙管理委員会でありますから、その施行の後においては、その弊害と不正腐敗は想像に余りあると思います。
 思うに、かかる不備、不当なる法案が生れたことは、改正に関する委員会自体の構成にも重大な不備があつたことはもちろんでありますが、特に総合的な立場より、私は、日本全土のすべての戦場及び議会の機構を軍事基地化、植民地化の方向に奉仕するために、本案が公職選挙法として一本にまとめられておるではなかろうかと思うのでございます。これは、日本のあらゆつ機構や産業や、あるいは官庁の機構が、そのような方向に今や動かんとしておるのでございます。その先がけをなすものが本二法案であるとわれわれは断定せざるを得ないのであります。従いまして、かかる不当なる、しかも不備なる基本的な態度につきまして重大な欠陥を持つております本二法案につきまして、絶対反対の意見を表明する次第でございます。(拍手)
#39
○議長(幣原喜重郎君) 並木芳雄君。
    〔並木芳雄君登壇〕
#40
○並木芳雄君 大分討論が続きましたので、お疲れでございましようから、私は民主党を代表いたしまして、ごく簡單に、希望條件を付して賛成の討論をいたすものでございます。
 本法案は、昨年以来実に一箇年の長きにわたつて、選挙法改正に関する調査特別委員会の手によつて、われわれ議員がみずから立案をし、みずから審議を重ねて来たものでございます。そういう点におきましては、私たちは、自分の子供を育てるような、あるいは自分の女房と連れ添つて苦しいところを切り抜けて行くような気持で、何とかよい子供に育てたい、何とかよい家庭をつくろうと努力をして来たものでございますので、ただいまのような討論を聞きますと何ですか、背負い投げを食つた、非常に人情の薄い人の説いておる討論のように感じたのでございます。
 その包含するところのものは、先刻委員長から御報告がありました通り、今までばらばらになつておつたところのものを一本にまとめて、一見してわかりやすい、こういうりつぱな選挙法案をつくり上げたのでございます。おそらくこれは、私たち議員の手になるところの議員立法といたしましては前古未曽有のものであろうと思いますし、われわれは、立法の府たる議会の新面目を発揮したものと言えると思いますので、あえて自画自讃でありませんけれども、この形式的の見地から本法案に賛成するゆえんのものでございます。
 もう一つの点は、実質的の点について申し上げたいのでありますが、私たちの立場は、やはり選挙の自由と公正とが理想的には一致すべきものではございますけれども、これも先刻委員長のお話のありました通り、なかなか現実には一致いたしません。そこで、自由に対して制限を加えるとともに、選挙を公営に持つて行くという線が当然出て来つのでございまして、選挙法というものは、おのずから制限法であると言われたのは、まことに真理でございます。
 そこで私たちは、自由なる選挙をいうものが、政治意識を高揚し、民主主義を促進するためには、確かにあずかつて功のあることを十分に認めておりますけれども、やはり公正なる見地から、金持でも貧乏人でも、顔の売れている人でも新人でも、あらゆる人が公平に選挙権を行使する、あるいは誹選挙権を行使することのできるようにという見地から、私たちの立場は、やはりある程度の基本的なものに対する制限もまたやむを得ない。そうして、できるだけこれを公営に持つて行つて、お金がかからないところの選挙を断行して行きたい、そこにあつたのでございます。
 そういう見地からいたしますと、今度の公職選挙法の中にもられましたもろもろの選挙公営というものは、確かに従来のものよりも、さらに竿頭一歩を進めたと申すことができるのであります。先ほどもお話がありました通り、たとえば無料はがきのみならず、ポスターも国費で負担する。しかも選挙当日、従来は三町以内に張つてあつたポスターは、これは候補者の方でみずから撤去しなければならなかつたものを、今度は一町以内に食いとめまして、それを選挙管理委員会の方で撤去するというふうに改められたようなことも、確かに公営の前進であろうかと思うのであります。ラジオの放送にいたしましても、経歴放送の方はさらに回数をふやしましたし、あるいは選挙公報におきましては、従来字数がわずかに二百字足らずでございましたのを、五百字まではこれを拡大することができる。こういうふうにしたという点も特に取上げてよろしいかと思うのであります。立会演説会におきましては、皆様御存知の通り、ずいぶん順位が狂つておりました。一ぺんきまりますと、ある人の後にくつついて行つて、興味もなく、しかも非常に不利な立会演説が行われましたけれども、これを改めて、抽選によつて、そうしてバライエテイに富む立会演説が繰広げられるということに改められたことは、特筆してよいのではないかと思います。
 その他あげればきりがありませんが、しかも、これに対する選挙公営の分担金というものは、従来の通り二万円に食いとめてございます。これはもちろん衆議院議員の選挙の場合でざごいますが、かようにして、私たちはいろいろの例をあげますと、確かに苦しい財政のもとにおきましても、よくこそこの敗戰治下において、これだけのりつぱな選挙公営というものを断行したということについて、その選挙法の特権にあずかつた委員の一人として、まことに誇りを感じ、この法案に賛成せざるを得ないのでございます。
 最後に、さればといつて、私たちは無條件にこれに賛成することには、なお危險が伴うものでございますので、二つ、三つ特に重要なる点だけについて、私たちの行き方、希望を申し述べさせていただきたいと思います。
 その第一は、なお公営はかなり進んだとは言いましても、完全ではないのでございます。たとえば、一番費用のいる自動車、船舶あるいは拡声機、こういうようなものは、やはり自費で負担しなければならないのでございます。先ほど鈴木議員も、討論の中に、その点を指摘されましたけれども、やはり選挙費用がかさみ、その大部分は、別にやみ費用ではありませんけれども、車馬賃、自動車、トラツク、ああいうものが大きいのでありますから、私たちの立場といたしましては、さらに一歩を進めまして、こういうものに対しても選挙公営を徹底して、候補者がほんとうに一文の金もかからないような選挙に持つて行きたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
 しかしながら、これを手放しにしておきますと、今度は逆に、選挙公営で供託金が三万円、公営分担金が二万円、わずかに五万円を出しますと、実に今度の全国参議院議員選挙では、二百万円くらいに相当するところの国家の費用を使うことになります。しかも、全国の汽車賃の無料バスが出る、各府県別の無賃乗車券が出る、はがきが五万枚も出る、ポスターは二万枚ある、トラツクのガソリンはあつせんしてくれる、しかも三台は使える、さらにラヂオの放送、新聞の広告、こういつた点をあげますと、もしこれを惡用いたしまして、今までのようなセラーズ・マーケツトからバイヤーズ・マーケツトに移つて来た今日、これを自分の商売に結びつけたり、あるいは自己宣伝に結びつけたりして、わずか五万円の元手でもつて、二百万円に相当する宣伝行為をそらないとも限らないのであります。
 今度の予算を見ますと、参議院の選挙に約十億円というものを見積られております。これは定員の約四倍が立候補するということに選挙管理委員会の方で予定してございますので、かりにそういたしますと、五、六百人でこの十億円という金を割りますと、ただいま申しました二百万円という数字が出てくるのでございます。従つて、こういう方面におきまして、いかに立候補が基本的人権であるとは申しましても、濫用されましたのでは、これは国家の財政がつぶれてしまうのであります。池田大蔵大臣なんかつぶすのはわけないことです。今度六万人くらい立候補するならば、一ぺんに大蔵大臣は追加予算を出さなければならない、大蔵大臣は辞職しなければならないというむじゆんが出て来るのでございます。こういう点につきましては、今後はやはり署名によつて、一万人とか五千名とか、そういうものを得て、そうして世論の、民衆の支持によつて、りつぱな候補者を立てるというような方法が、十分考慮されなければならないのでないかと考えているのでございます。
 なお選挙区につきましても、先ほどお話がありましたが、私たちの方は、参議院全国区につきましては考究中でございます。衆議院の方では、たとえば全県一区とか五名定員というのは、やや大き過ぎるのではないか。二人または三人―三人を標準として二名または三名くらいの小選挙区制がよいのではないかという意見もありますので、選挙区の検討は今後続けてやつて参りたいと思つているものでございます。
 最後に、もう一つだけつけ加えますが、これはとりも直さず、新聞の報道と評論の自由についてでございます。先刻来討論がありましたが、私たちの立場は、やや別の意味におきまして、今度の新聞の報道と評論の自由に対しては反対なのでございます。それはもちろん、新聞雑誌の報道も評論も徹底的に自由にしたいとは思います。これはだれも依存はないと思うのでありますけれども、なお現段階におきましては、評論というものを候補者個人の評論にまで展開、拡大いたしました場合には、相当の混乱を招くのではないかということを私たちは憂えておりますので、報道は自由でよろしい、しかしながら、本来あるところの評論の自由というものは、政党に対する評論、あるいは政策綱領、こういつたものの評論にとどめて、いましばらくは個人に対する評論を制限して行く方がよいのではないかという意見なのでございます。
 私たちは、新聞協会その他から、この自由を主張される声を、よく聞いているのでございます。従いまして、大新聞あるいは大雑誌、すでに確立されたところのそういうものは、こういつた不公正な評論をするとは、ゆめ思つておりませんけれども、たまには、こういうものも出て来ます。ここに記録があります。ある大新聞でございますけれども、私たちがこの公職選挙法案を審議しておりました過程におきまして、今の特別委員は、自分たちが、この次いかにすれば当選できるかということばかり考えて選挙法を改正している、一体いつの間に国会議員はこんな腐つた根性になつたんだろう、こういう評論が出ているのであります。いつの間に腐つた根性、こういうことを言いますけれども、この評論の制限ということは、今度の国会で私たちが初めて持ち出して審議したのではありませんで、従来報道の自由だけは認められているが、評論の自由は認めておらなかつた。私たちは、むしろこれを解除せんとして努力しておつたやさきに、一体いつの間に国会議員はこんな腐つた根性になつたかという評論すら大新聞に載る現段階でございますので、よもやないとは思いますけれども、やはり評論というものは、ある程度、選挙に際しては制限をした方がいいのではないかと思うのであります。
 特に問題は、にわか新聞あるいは選挙日当の宣伝新聞であろうと思いますので、私たちは、何とかしてこの新聞というものを定義をする、あるいは新聞雑誌というものの定義を與えて、こういうものはよろしい、この定義に入つて来ないものはいけないというふうにやろうと努力をしたのでございますが、なかなかその定義がむずかしいのでございました。そこで、万やむを得ず、いましばらくの間、個人に対する評論というものは遠慮してもらいたい、こういう意見でございます。
 なお新聞雑誌の配布の方法でございますけれども、これはぜひ皆さんに、お心にとめておいていただきたいと思います。実は新聞を配ることを業とするという條文がこれにございますけれども、この「業とする」というのは、何もそれによつて生計を立てておらなくてもいいという解釈が成り立つのだそうでございます。従いまして、新しい新聞ができた。あるいは機関紙がある。その機関紙を持つて、販路拡張のために個別にこれを売り歩いて行つても、これはこの「業とする」のうちへ入つて違反にならない。あるいはまた、会員組織によつて、あるパンフレツトをつくる。新聞を作る。これもやはり違反にならないということでございますので、そういたしますと、選挙に際しては、おそらく機関紙を持つたところ、あるいは普通のにわか新聞、そういつたものが、販路を拡張することに口実をかりて軒並に売り歩いて行くのではないか、あるいは配つて行くのではないかという弊害が予見せられるのでございます。こういう点は、なお今後の研究課題になると思います。一方において文書、図画というものを嚴重に制限しておいて、候補者の名前一つ書かせないような文書、図画というものにしておいて、一方において、ここでひもが解けている。こういつた点において、私たちは、なおこの公職選挙法案というものに対しては不十分な点を感じている次第でございます。
 従いまして、この法案は、特別委員会において続いて検討する。しかして、今度の参議院議員の選挙においては、私たちは皆様とともにこれをよく観察して、改むべき点は、すみやかに選挙の後に改めるということを希望條件といたしまして、私たちの討論を終る次第でございます。(拍手)
#41
○議長(幣原喜重郎君) これにて討論は終局いたしました。
 両案を一括して採決いたします。両案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#42
○議長(幣原喜重郎君) 起立多数。よつて両案は可決いたしました。(拍手)
     ―――――・―――――
    〔石原圓吉君登壇〕
#43
○石原圓吉君 ただいま議題となりました漁業法の一部を改正する法律案に関しまして、水産委員会の審査の経過並びに結果について御報告を申し上げます。
 まず本法案は、去る二月二十日、田渕光一君外二十名より提案されたものでありまして、その内容の大要を申し上げますと、瀬戸内海海区のうち、徳島県蒲生田御岬と和歌山県日の御岬を結ぶ直線を撤去して、和歌山県田倉御岬から兵庫県淡路島生石崎に至る直線及び徳島県大磯崎から兵庫県淡路島潮崎に至る直線と変更し、すなわち瀬戸内海より紀伊水道を除いたものであります。
 その理由といたしましては、紀伊水道は事実上相当の外洋性を帶びた海面であつて、その漁業の方法において瀬戸内海とはいろいろ違つた点も多く、また紀伊水道を瀬戸内海より除いても、魚族の繁殖、保護及び漁獲の調整につきましては支障を来さないばかりでなく、かえつて効果が上るというのであります。瀬戸内海は、古くから入会関係につきましては複雑でありますが、紀伊水道においては、かような複雑性はなく、漁業の実態、海洋の状況がかなり相違しております点等を総合的に見まして、これを除外せよとのことであります。
 二月二十四日、本委員会に本案が付託されたのでありますが、その重要性にかんがみ小委員会を設置して、前後三回にわたつて愼重なる審査をいたしましたところ、瀬戸内海及び紀伊水道のそれぞれの海区の特性により、魚族の繁殖、保護の徹底を期し、かつ嚴重なる取締りにより密漁、乱獲を根絶し、できるだけ瀬戸内海にも好影響を與えて、合理的政策がまことに積極的に増産の実をあげ、漁業生産力の発展を期することができるように修正すべきであるとの小委員会の結論に基いて、本委員会は愼重なる審査をいたしたのであります。
 すなわち、修正の内容をかいつまんで申し上げますと、第一は、瀬戸内海より紀伊水道を分岐し、紀伊水道という特別海区を設けたのであります。すなわち、徳島県蒲生田御岬と和歌山県の日の御岬を結ぶ直線はそのまま存置し、新たに鳴門海峡及び紀湊海峡の線を設け、それに囲まれた区域を紀伊水道海区と規定したのであります。第二は、紀伊水道には関係県及び主務大臣より選任される者で構成する連合海区漁業調整委員会を常置することを規定したのであります。第三は、紀伊水道連動海区漁業調整委員会を瀬戸内海連合海区漁業調整委員会とは、ともに瀬戸内海・紀伊水道漁業調整事務局の管轄のもとに置き、両特別海区の漁業取締り及び繁殖、保護の調整をはかることを規定したのであります。以上が修正いたしました内容であります。
 次に、三月八日、本委員会は、本法案について修正することを討論いたしましたが、日本共産党の中西伊之助君は本法案に反対し、これに対して、平井義一君に自由党を代表して、林好次君は民主党を代表して、それぞれ本法案の修正に全幅の賛意を表する旨の発言がありました。かくて本法案の修正案に対し採決の結果、日本共産党の中西君を除くほか全員の賛成でありまして、すなわち大多数をもつて修正案通り可決したのでありますが、詳細は会議録によつて御承知を願います。
 これをもつて御報告を終ります。(拍手)
#44
○議長(幣原喜重郎君) 本案については討論の通告があります。これを許します。井之口政雄君。
    〔井之口政雄君登壇〕
#45
○井之口政雄君 私は日本共産党を代表いたしまして、本改正案に反対するものでございます。(「何でも反対じやないか」と呼ぶ者あり)まあ、ゆつくり聞いてください。
 水産委員会から一向何の法案も出て来なかつたのだが、出てきたものがこの改正法案だ。そこで、この改正法案のねらうところは何であるかということを一言申し上げてみますと、紀伊水道を瀬戸内海海区よりはずして機船底びき業者に開放し、瀬戸内海三十万漁民ののど首を押えるという法案である。(拍手)そうして、その生活のかてを奪つて、瀬戸内海全漁区の魚族うぃ根絶せしめて、まつたく破壊作用を及ぼす、こういう法案である。だから共産党は反対するのです。そこで、これからその内容をお話してあげなければいかぬ。
 まず瀬戸内海の魚族は、冬になりますと、黒潮の暖かいところの流れを求めて出て参ります。あるいは卵を生むために、紀伊水道を南の方に下つて来る。そうして、春は再び内海を目ざして、たいだの、いわしだの、ぐちだの、こういうわれわれにとつて栄養のある大きな魚が、どんどんと上つて行くわけであります。そうして、大阪湾または鳴門海峡を経て瀬戸内海にどんどん帰つて行く。これは水産試験場なんかの調査によつて明らかになつておる。和歌山、徳島の底びき業者にとりましては、紀伊水道に底びきを禁止する瀬戸内海漁業取締り規則が、この海区にまでも現在は適用される。この現状では、はなはだ都合が惡いものだから、このような改正法を出して来ておるのでありますが、これは元来、改正じやなくて、まつたく改惡です。
 昨年の九月十八日でしたか、和歌山の万波楼という料理旅館で、石原水産委員長を取巻いて――事情を聽取した。元来、これがそもそもの始まりだ。そうして、それをいよいよ国会へ持ち込んで来て、そこで国会の水産委員会にかかつたわけですが、私たちが考えてみて、北海道や東北の水産議員の皆さんまでが、どうもこういうときには公平になられないで、こういう法案に賛成なすつたというのは、どうもおかしいと思うのであります。(「瀬戸内海は鯨も入るのだよ」と呼ぶ者あり)実際、東北や北海道の水産議員さんが今やじつておいでになりますが、瀬戸内海の海区からこれをはずそうということに、まつたく血眼になつておられるように感ずるのであります。そういうことは、まつたくわれわれとして了解に苦しむ点であります。これに賛成される議員の方々、よく考えていただきたい。瀬戸内海の漁業が、やがてこのために全域にわたつて破滅せしめられるという、この重大な将来の結果について、とつくりと考えていただきたいのであります。
 現に、明石水産試験場内の内橋抜師さんが、二十数年にわたつて紀伊水道を研究しておいでになり、その結果、水道の海水の温度と比重を十分に測定いたしまして、またプランクトンや魚族の進路を十分に研究した結果、さきのような科学的結論が出ておるのであります。瀬戸内海と紀伊水道とは切つても切れない関係にあつて、これを二に切り離すことは、生きた身体を二つに切り離すようなものであることを述べておられる。
 この改惡法に対しまして、水産委員会においても、共産党のみが断固反対しておる。共産党が、これによりましても、終始一貫漁民の味方だということは明瞭であることがわかる。それと同時に、共産党が日本の漁業復興政策に確固たる方針を持つておるということ、ゆらぐことのない確固たる方針を持つておるということが、これでわかるのであります。
 自由党の方々は、水産委員会ではむりに押し切られましたけれども、現に党内には、たくさんの反対者がおいでになる。投票に参加されるのはおかしいから、投票をはずして折られる方もあるでしようが、現に反対されておる方が多いのであります。こういうような紛糾が皆さん方の党内において起るということ、これは根本的にその動機がまつたく誤つておつて、不純なものがあつたと断ぜざるを得ないように、われわれには感じられるのであります。
 すでに淡路の由良におきましては、現在のまま、今のような法律でさえも、これが犯して三十数隻の大型のもぐり底びき船がこの中へ入つて来て、地元の忠実な漁民一般との間に紛争が起つておる。しかるに、これをさらに瀬戸内海からはずしてしまつたら、ますますそういう状態を助成するだけである。海上保安庁が、濫獲するものを今でさえも防止し得ない。いわんや先になつたら、ますますそれが激しくなる一方であります。それを特別の海区にしたならば、和歌山や徳島や淡路の一部の漁業者のボスによつて、今度は公々然と濫獲をするようなことに結局において立ち至るのであります。
 昨年の十一月十二日でしたか、王置君を班長にしまして、国会の調査団を派遣されて、それを取巻いて、由良の漁民が、そぼ降る雨の中に集まりまして、悲壮な声をあげて反対された、あのことを覚えておいでになるだろうと思う。こんな法案が国会に提出されたことを聞いただけでも、瀬戸内海の漁民の方々は、もう自由党は頼むに足らぬ、敵じやというふうな考えを持つように、どんどん紛争が起つているありさまなのであります。
 そこで日本共産党は、ここで明瞭に主張いたします。第一、瀬戸内海の資源維持のために、同海区より紀伊水道を除外しないこと、第二、官僚や漁村ボスの運用のもとにあるような現在の瀬戸内海漁業取締規則を撤廃し、漁民の手による漁業秩序を完全に確立すること、以上二つの点を強調いたしまして、本案に対する反対の意思を表明いたします。(拍手)
#46
○議長(幣原喜重郎君) 玉置信一君。
    〔玉置信一君登壇〕
#47
○玉置信一君 ただいま議題となつております漁業法の一部を改正する法律案に対し、私は自由党を代表して賛成の意思を表明せんとするものでありまし。
 ただいま井之口君の反対論旨に対しては、私、後刻これを分析して反駁してみたいと思うのであります。
 この漁業法の一部を改正しようとする眼目は、先刻石原委員長の報告せられた内容によつても存知せられるごとく、紀井水道を一線として、瀬戸内海は、あの限られたる海区に各県の多数の漁民が入会い、錯綜して、それぞれの操業をいたしております関係上、漁民の間には絶えず相剋摩擦を来し、これがひいて関係の県対県の水産行政り上にも反映いたしまして、実にかんばしからざる、すなわち好ましからざる結果をもたらしておるのであります。かかる長年の宿弊を解消し一掃させて、漁民のおのおのの漁業分野において、明るく、しかも気分よく増産にいそしむところの態勢を與えてやるということは、けだし刻下喫緊の要事でなければならぬと思うのでございます。
 この対立抗争の事実につきましては、すでに定評のあるところでございますから、多くの方々は御承知のことと存じます。従来しばしば国会を訪れて陳情、請願をなされた方々、いわゆる漁民あるいは県当局者の主張せられたところの内容あるいは文書等によりまして、その深刻の度合いの深きものあることを知りまして、水産委員会は、かつて現地の調査を二回にわたつていたしたことがあるのでございます。特に昨年の十一月、小高熹郎君、林好次君その他一行七名とともに、不肖私、班長として現地の調査に派遣されたのでございますが、その際、兵庫県の県会議事堂におきまして、先ほど井之口君も言われておりましたように、兵庫、大阪、和歌山、徳島、香川、岡山の一府五県の漁民並びに県代表者諸君より、漁業種別及び県の行政上ないしは技術書の立場から、その経験に基き、あるいは科学的資料等によりまして、いろいろの意見を聽取し、懇談いたしたのでございます。その席上におきまして、各代表者の意見が対立、白熱化いたしまして、それが遂にはけんか腰のはげしい論戦となりまして、私ども、これを聞いておりますときに、日ごろの漁場における漁民同士が、いかに紛争をかもしておつたかということを、そぞろに想像することができたのでございます。
 かかる事態を、このまま、いつまでも放任しておくということは、漁民のためにもとらざるところでありますし、また漁業生産力にも多大の悪影響を及ぼすおそれがありますので、現在の日本の漁業の実情を知る私どもといたしましては、これに重大な関心を持ち、私ども一行より以前に現地を調査しておりまする水産常任委員諸君とともに、あらゆる角度からこれを検討いたしまして、当時一通りの結論を出してあつたのでございます。ただいま上程に相なつた本改正法律案は、共産党を除く各党各派一致した意見によつてこれが成案を見たものであります。
 この法案の中に盛つておりまするところの内容は、個々の漁民に対しては、あるいは満足を與える措置であるとの断定はできないかもしれませんが、しかし私は、これを大局から見まして、少くとも現在の事態に対処し、漁民みずからの構想によつて、従来の紛争を民主的に収拾、解決するの措置、これを具体的に申しますれば、紀伊水道海区の漁業調整は、関係三県の漁民代表によつて構成する連合調整委員会によつて自主的、民主的に行われる法的措置を與えることになるのであります。従いまして、劈頭に申し上げましたごとく、いわゆる漁民に明るい気分で、しかも安心して操業ができるという態勢を整えさせることになるのであります。
 私は、この法案は概して妥当なものであると思うのであります。しかも、御承知のごとく、近く実施されんといたしておりまする漁業法の立法の点から考えてみまして、すなわち漁業法立法の基調という点から考えてみますると、関係地区内における漁民の自主的漁業調整により漁業の民主化と生産力の増強発展をはかるにあるということが建前とされておるのでございます。こういう点から考えましても、私は、積極的にこうした措置を講じてやることが、むしろ現地の実情を知るわれわれの立場からして親切なる態度と思うのであります。
 また、瀬戸内海と同一の、すなわち瀬戸内海より分離して紀井水道に特別海区を設けるということは、私どもは、実は学識経験者等によつていろいろ研究をいたしてみたのであります。本来紀井水道という所は、これを海洋学的観点から検討しましても、また生物的な見地より見ても、内海にあらず外洋にあらざる中間的性格を持つておる特殊の海区であるのでございまして、純学問的あるいは純技術的判断からいたしましても、この紀伊水道を瀬戸内海と併立する特別海区とすることは、きわめて妥当であると思うのであります。
 しかも、このことにつきましては、先ほど井之口君が申されたことくに、あの神戸議事堂におきまして、私どもいろいろ意見を聞いたあとに、関係各県の水産課長が、その行政上あるいは技術上の立場から、約三時間にわたつてこの問題を研究されたのでございます。その結果が、私どもに対しまして――時間がありませんから省略いたしまするが、ここに持りておりまするこの瀬戸内海の海区図、これに線を引きまして、しかも協定されたところの文書を、このようにしたためて、私どもに提出されているのであります。従つて、この協定された内容と、ただいま提案されておりますところのこの法律案の内容とは大同小異なものでございまして、その目的、精神におきましては相通ずるものがあるのであります。
 しかるにもかかわらず、先ほど井之口君は、この紀伊水道をはずして、そうして三十有余の底びき網漁葉の密漁、濫獲にまかせておるという、かような意見を吐かれたりでありますが、私は、ほんとうに奇怪に思うのであります。むし井之口君の主張されたことは、私は実はお気の毒に考えておる。何となれば、あの諭旨というものは、まつたく瀬戸内海の現実を離れた、しかも漁業の実態に触れないところの、一夜づくりの受売り作文にすぎないのであります。(拍手)
 しかも、紀伊水道をはずすということがありますが、これは私どもも行つて、紀伊水道をはずすということに反対をいたしました。現にそこには私どもと同行された砂間君がおりますが、この修正法律案を見ますると、紀伊水道をはずすということになるておりません。先ほど委員長の説明されたことくに、徳島から淡路島を結んで和歌山の線に至るあの直線に一線を引きまして、紀伊水道に特別海区を設けるということになつておるのであります。
 しかして、この底びき網漁業の密漁、濫獲という問題は、これはこの瀬戸内海に特別海区、すなわち紀伊水道に特別海区を設けるということとは、まつたく別の問題である。今日の瀬戸内海の底びき網取締りの観点から見ましては、ちやんとあそこには、取締り区域というのが一線を画されておる。従つて、この特別海区をつくるつくらぬにかかわらず、この底びき網というものはほ今日まで密漁しておつたかもしれませんが、今後とも何らこの瀬戸内海には関係がない。侵すもりのは、これは取締りの対象となることは明らかである。なぜならば、あそこには、両方に瀬戸内海と紀伊水道の二つの特別海区ができるわけである。この特別海区を、紀伊水道と瀬戸内海の調整事務局がこれを管轄し、しかして農林大臣が両方の意見を聞いて公正の判断をし、政令でもつて、取締りのことも、あるいは蕃殖、保護のことも、みなつくられることになる。従つて、この底びき網の取締りの問題、あるいは蕃殖、保護ということについては何ら関係のないことであることを、私はよく御研究なさることを希望いたします。
 時間がありませんので、私は省略いたしますが、以上紀伊水道及び瀬戸内海の特別海区を設定し、民主的あるいは自主的に、お互い漁民が自分の力でもつてこれを調整をいたし、近く実施されるところの漁業法に基き増産にいそしむところの態勢ができるということであります以上、私は、この法案に対しまして全面的に賛成をいたし、私の討論を終る次第であります。(拍手)
#48
○議長(幣原喜重郎君) これにて討論は終局いたしました。
 採決いたします。本案の委員長の報告は修正であります。本案を委員長の報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
#49
○議長(幣原喜重郎君) 起立多数。よつて本案は委員長報告の通り決しました。(拍手)
 これにて議事日程は終了いたしました。本日はこれにて散会いたします。
    午後五時四十一分散会
ソース: 国立国会図書館
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