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1972/09/06 第71回国会 参議院 参議院会議録情報 第071回国会 商工委員会 第23号
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1972/09/06 第71回国会 参議院

参議院会議録情報 第071回国会 商工委員会 第23号

#1
第071回国会 商工委員会 第23号
昭和四十八年九月六日(木曜日)
   午前十時十七分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 八月三十一日
    辞任         補欠選任
     上田  稔君     林田悠紀夫君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         佐田 一郎君
    理 事
                剱木 亨弘君
                若林 正武君
                大矢  正君
                藤井 恒男君
    委 員
                小笠 公韶君
                林田悠紀夫君
                細川 護熙君
                安田 隆明君
                林  虎雄君
   衆議院議員
       修正案提出者   田中 六助君
   国務大臣
       通商産業大臣   中曽根康弘君
   政府委員
       公正取引委員会
       事務局長     吉田 文剛君
       通商産業省産業
       政策局長     小松勇五郎君
       通商産業省立地
       公害局長     林 信太郎君
       通商産業省基礎
       産業局長     飯塚 史郎君
       通商産業省生活
       産業局長     橋本 利一君
       中小企業庁長官  外山  弘君
       中小企業庁次長  原山 義史君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        菊地  拓君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○大規模小売店舗における小売業の事業活動の調
 整に関する法律案(内閣提出、衆議院送付)
○参考人の出席要求に関する件
○中小企業者の範囲の改定等のための中小企業基
 本法等の一部を改正する法律案(内閣提出、衆
 議院送付)
○産業貿易及び経済計画等に関する調査(工場立
 地に伴う保安問題に関する件)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(佐田一郎君) ただいまから商工委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 去る八月三十一日、上田稔君が委員を辞任され、その補欠として林田悠紀夫君が選任されました。
#3
○委員長(佐田一郎君) 大規模小売店舗における小売業の事業活動の調整に関する法律案を議題といたします。
 まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。中曽根通産大臣。
#4
○国務大臣(中曽根康弘君) 大規模小売店舗における小売業の事業活動の調整に関する法律案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明いたします。
 わが国の小売り商店数は百四十万をこえ、そこに働く人々も約四百五十万人に達しておりますが、大部分の商店はきわめて零細であるので、百貨店、スーパー等の大規模な小売り店の進出によって著しい影響を受ける場合が少なくありません。
 このため、昭和三十一年には、小売り業における当時唯一の大企業であった百貨店業を対象として、その事業活動を調整し、もって中小商業の事業活動の機会を確保することを目的として、百貨店法が制定ざれたのであります。以来十数年を経過し、一方では消費者利益確保の要請が高まるとともに、他方では百貨店以外にもスーパー、ショッピングセンター等の大規模な小売り店が出現する等、小売り業を取り巻く環境は著しく変化するに至っており、また、経済の国際化に伴い、流通業の資本自由化も強く要請されるに至っております。
 政府は、乙のような情勢の変化に対応した百貨店等の大規模な小売り店と中小小売り店との事業活動の調整のあり方について、かねてから産業構造審議会にはかっておりましたところ、昨年八月、法改正の方向について答申を受けたのであります。
 本法案は、この答申の示した方向に沿って、関係者の意見を十分聴取しつつ作成したものであり、大規模な小売り店の出現により中小小売り業者がこうむる不測の被害を未然に防止するとともに、消費者利益の確保にも十分配慮したつもりであります。
 なお、改正内容が多岐にわたったので、新法の制定、百貨店法の廃止という形式をとることといたしております。
 次に、本法案の要旨を御説明いたします。
 第一は、現行百貨店法の「中小商業の事業活動の機会の確保」という目的に、配慮事項として「消費者の利益の保護」を加えるものとしておることであります。すなわち、消費者物価の上昇、消費者欲求の多様化、高級化という社会的情勢への対応に配慮すべきことを規定したものであります。第二は、同一建物内の店舗面積の合計が基準面積をこえるものを大規模小売り店舗として公示するものとし、これに入居するすべての小売り業者を規制対象とすることとしたことであります。これにより、従来の百貨店に加えて大型スーパー、ショッピングセンター等が大規模小売り店舗内の小売り業者として把握されることとなるのであります。
 第三は、現行百貨店法が採用している許可制を届け出、審査、勧告、命令という体系に改めることとしたことであります。この新しい制度のもとでは、大規模小売り店舗において小売り業を営もうとする者の届け出があった場合には、通商産業大臣はその地域の人口の推移、中小小売り業の近代化の見通し等を勘案して審査を行ない、中小小売り業の事業活動に相当程度の影響を及ぼすおそれがあると認めるときは、店舗面積の削減、営業開始時期の繰り延べ等について勧告、命令を行なうこととし、これに違反した者に対しては、現行百貨店法の無許可営業以上の罰則を課すとともに、営業停止をも命じ得ることとしております。
 以上が、大規模小売店舗における小売業の事業活動の調整に関する法律案の提案理由及びその要旨であります。何とぞ慎重御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。
#5
○委員長(佐田一郎君) 次に、本案については衆議院において修正が加えられておりますので、この際、衆議院における修正部分について、修正案提出者衆議院議員田中六助君から説明を聴取いたします。田中衆議院議員。
#6
○衆議院議員(田中六助君) 大規模小売店舗における小売業の事業活動の調整に関する法律案の衆議院における修正につきまして御説明申し上げます。
 修正点の第一は、大規模小売店舗審議会が通商産業大臣の変更勧告等について意見を定めようとするとき、意見を聞かなければならない第七条第二項の「通商産業省令で定めるところにより申出をした者」を、「消費者又はその団体、小売業者又はその団体その他のもので通商産業省令で定めるところにより申出をしたもの」に改めることであります。
 申すまでもなく、本案は、消費者の利益の保護に配慮しつつ、大規模小売り店舗における小売り業の事業活動を調整することにより、その周辺の中小小売り業の事業活動の機会を適正に確保しようとするものであります。したがいまして、通商産業大臣が変更勧告等を行なう場合に、消費者、小売り業者等の意見が十分反映されるよう、これらのものを明記する必要があると考え、修正した次第であります。
 修正点の第二は、この法律施行の際、大規模小売り店舗において小売り業を営んでいる者は、その閉店時刻が通商産業省令で定める時刻をこえているとき、または休業日数が通商産業省令で定める日数未満であるときは、この法律の施行の日から一年以内に通商産業大臣に届け出なければならないこととし、この届け出については、変更勧告、変更命令等の規定を適用する旨の規定を附則に設けたことであります。
 原案におきましては、本法施行の際、既存の大規模小売り店舗において小売り業を営んでいる者の閉店時刻及び休業日数については、通商産業省令で定める基準を下回って変更しようとするとき以外は届け出を必要とせず、通商産業大臣の変更勧告等の対象になっておりませんが、本法制定の趣旨である周辺中小小売り業者の正常な発展及び本法の対象となる大規模小売り店舗における小売り業と既存のものとの衡平を考えますと、既存の大規模小売り店舗における小売り業の閉店時刻及び休業日数についても、通商産業省令で定める基準に照らし、一定の期間内にチェックすることが必要であると考え、修正した次第であります。
 よろしく御審議をお願い申し上げます。
#7
○委員長(佐田一郎君) 次に、補足説明を聴取いたします。小松産業政策局長。
#8
○政府委員(小松勇五郎君) 大規模小売店舗における小売業の事業活動の調整に関する法律案につきましては、ただいま大臣が申し述べましたとおりでございますが、以下その内容につきまして若干補足させていただきます。
 第一に、消費者の利益の保護についてであります。
 近年のコンシューマリズムの台頭に伴いまして、消費者利益の保護はきわめて大きな社会的要請となってきておりまして、消費者と直接接触する小売り業にとりましても、この要請にこたえることが課題となっております。本法案は、中小小売り業の事業活動の機会を確保するために大規模小売り店舗における小売り業の事業活動を調整することを目的としておりますが、調整にあたりましては消費者の利益の保護についても十分配慮し、適正な運用を行なうことが必要であります。このため、本法案におきましては、第一条の目的に消費者の利益の保護に配慮すべきことを明記するとともに、これを受けまして第十一条において、勧告、命令の運用にあたっては消費者の利益の保護に配慮すべきことを示し、運用の適正化を期することといたしております。
 第二に、調整対象の把握の方法を改めたことについてであります。
 現行百貨店法におきましては、調整対象である百貨店業を、いわば単一の企業であって、物品販売業を営む店舗の中に店舗面積が一定面積以上のものを含むものと定義し、百貨店営業の許可、百貨店業者の店舗の新増設の許可等を規定しておりますが、その後、大型スーパー等の新しい機能を持ち、かつ百貨店法の適用を受けない大型店が多数出現するに至りました。これらの新しい大型店を調整の対象に取り込むための仕組みを慎重に検討いたしました結果、本法案のようないわゆる建物主義をとることといたしました。すなわち、同一建物内の店舗面積の合計が基準面積をこえるものを大規模小売り店舗として公示するものとし、これに入居するすべての小売り業者を規制対象とすることとしたのであります。この結果、大型スーパー、ショッピングセンター等、従来百貨店法の適用を受けていなかった小売り店が、本法案の調整対象として把握されることとなりました。
 最後に、調整の方法といたしまして、届け出、審査、勧告、命令という体系をとることとしたことについてであります。
 本法案は、調整対象を百貨店、大型スーパー等のすべての大型店に拡大いたしておりますが、これらの大型店は、近代的な経営を行ない、豊富な品ぞろえと快適な店舗環境によりまして消費者欲求の充足に貢献しているという面もあり、調整にあたりましては、この点も配慮しなければなりません。また本法案においては、大型スーパーを漏れなく調整の対象に取り込むため建物主義をとった結果、寄り合い百貨店、駅ビル等に入居する中小小売り業者も一応調整の対象に含まれることとなりました。
 本法案は、中小小売り業の事業活動の機会を確保することを目的といたしておりますので、寄り合い百貨店等を許可制のもとで原則禁止とすることは適当でないと思われます。一方、中小小売り業者の事業活動の機会を確保するために必要な調整は十分に行なわなければならないことは言うまでもありません。
 以上のような諸情勢を勘案し、本法案においては、大規模小売り店舗に入居する小売り業者に届け出をさせ、通商産業大臣がその届け出内容を十分に審査し、その審査の結果中小小売り業者に相当程度の影響を与えるおそれがあると認められる場合には、大規模小売店舗審議会の意見を聞いて開店日の延期、店舗面積の削減等の勧告、命令を行なうこととしております。なお、大規模小売店舗審議会は、意見を作成するにあたっては、現行百貨店法の運用と同様、商業活動調整協議会等を通じまして地元の意向を十分に聴取することといたしております。さらに命令違反、届け出義務違反に対しては営業停止処分を行なうこととしておりますので、必要な調整は十分に行なわれることとなっております。
 以上、簡単ではございますが、この法律案の補足説明を申し上げました。よろしく御審議賜わりたくお願い申し上げます。
#9
○委員長(佐田一郎君) 以上で説明の聴取は終わりました。
 本案に対する質疑は後日に譲ります。
    ―――――――――――――
#10
○委員長(佐田一郎君) この際、参考人の出席要求に関する件についておはかりいたします。
 ただいま説明を聴取いたしました大規模小売店舗における小売業の事業活動の調整に関する法律案の審査のため、参考人の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#11
○委員長(佐田一郎君) 御異議ないと認めます。
 なお、その日時及び人選等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#12
○委員長(佐田一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ―――――――――――――
#13
○委員長(佐田一郎君) 次に、中小企業者の範囲の改定等のための中小企業基本法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。中曽根通産大臣。
#14
○国務大臣(中曽根康弘君) 中小企業者の範囲の改定等のための中小企業基本法等の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。
 中小企業施策の対象としての中小企業者に関しましては、昭和三十八年に制定されました中小企業基本法をはじめとする関係諸法律によりその範囲が定められております。これらの法律により、現在、鉱工業その他の事業を営む企業につきましては、資本金規模で五千万円以下または従業員数規模で三百人以下のいずれかの条件に該当する企業が、また、商業、サービス業を営む企業につきましては、資本金規模で一千万円以下または従業員数規模で五十人以下のいずれかの条件に該当する企業が、それぞれ中小企業者とされている次第であります。
 しかしながら、中小企業基本法の制定後すでに十年近くが経過し、この間、経済規模の拡大等、中小企業をめぐる経済情勢の変化は著しく、このような変化に対応して、現行の諸法律における中小企業者の範囲の見直しを行なうよう、これまで関係各方面から強い要望が寄せられてまいりました。なかんずく、鉱工業その他の事業を営む中小企業者の範囲につきましては、近年における資本の充実の進展を勘案して資本金基準を引き上げるべきことが、また、商業、サービス業を営む中小企業者の範囲につきましては、特に業態面で他と異なる特性を有する卸売り業を取り出して、資本金基準、従業員数基準の双方を引き上げるべきことが強く要請されてまいったわけであります。
 政府といたしましても、このような御要望に沿って中小企業者の範囲を見直すべく、一昨年以来、内閣総理大臣の諮問機関である中小企業政策審議会の場において慎重な御検討をお願いしました結果、昨年八月、「七〇年代の中小企業のあり方と中小企業政策の方向について」と題する意見具申により、本問題に関する同審議会の御意見をいただきました。本改正法案は、この意見具申の内容に沿って中小企業者の範囲を改定しようとするものでありますが、その概要は次のとおりであります。
 まず、中小企業者の範囲の改定の内容といたしましては、第一に、鉱工業その他の事業を営む企業につきまして、資本金基準を現行の五千万円から一億円に引き上げることとしております。この場合、従業員数基準は、現行どおり三百人に据え置くこととしております。
 第二に、商業、サービス業を営む企業につきましては、卸売り業を営む中小企業者の範囲を新たに定めることとし、その資本金及び従業員数の基準をそれぞれ三千万円及び百人としております。この場合、小売り業及びサービス業を営む中小企業者の範囲につきましては、資本金基準の一千万円と従業員数基準の五十人を現行どおり適用することとしております。
 このような改定のためには、中小企業者の範囲の原則的な基準を定めております中小企業基本法の規定を改正することはもとよりといたしまして、その他、個別施策の裏づけとなっております各法律中の関係規定を改める必要があります。これらの法律は、中小企業等協同組合法、中小企業近代化資金等助成法等であり、さきの中小企業基本法を含めて合計十八法律となっております。
 本改正法案は、これら十八の法律のそれぞれに本則の各一条を充てることにより、一括して改正を行ない、もって、中小企業諸施策の総合的、効率的な実施をはかろうとするものであります。
 以上がこの法律案の提案理由及び要旨であります。何とぞ慎重御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。
#15
○委員長(佐田一郎君) 次に、補足説明を聴取いたします。外山中小企業庁長官。
#16
○政府委員(外山弘君) ただいま大臣が御説明申し上げました提案理由及び要旨を補足して、簡単に御説明申し上げます。
 中小企業施策の対象となります中小企業者の範囲は、経済社会情勢の推移と関係施策の整備に伴って変化を遂げてまいりました。総じて申しますと、わが国経済規模の急速な拡大に合わせて、中小企業者の範囲もときを追って広げられてきたわけでありますが、特に、昭和三十八年の中小企業基本法の制定にあたりましては、各種施策を通じて一般的な基準となる中小企業者の範囲が定められたのであります。すなわち、このときには、それまでの施策における中小企業者の範囲を総合的に見直し、鉱工業その他の事業を営む企業につきましては、従来の一般的資本金基準である一千万円を五千万円に引き上げるとともに、従業員数基準の三百人を据え置き、また、商業及びサービス業を営む企業につきましては、従来の一般的資本金基準である一千万円を据え置くとともに、従業員数基準の三十人を五十人に引き上げることにより、中小企業基本法第二条等における現行の中小企業者の範囲を定めたのであります。
 しかしながら、中小企業基本法の制定からもすでに十年を経過し、この間、経済規模の一そうの拡大をはじめ、中小企業をめぐる経済情勢の変化は著しく、このような変化に対応して現行の中小企業者の範囲の再検討を行なうよう、中小企業関係団体等から強い要望が寄せられた次第であります。このため、政府といたしましても、昭和四十六年後半から、中小企業政策審議会の場での検討をお願いし、その結果、昨年八月の意見具申によって現行の中小企業者の範囲を改定する方向をお示しいただいたわけであります。本法律案による中小企業基本法等の改正は、この意見具申に基づいて中小企業者の範囲を改めることを目的とするものでありますが、その基礎となる考え方は次のとおりであります。
 まず、鉱工業その他の事業を営む企業に関しましては、特に現行の三百人という従業員数基準を改定する必要がないこと等の理由から、これを据え置くこととし、この従業員数基準と平均的に見合う資本金額を算出することにより、資本金基準を現行の五千万円から一億円に改めることといたします。
 次に、商業、サービス業を営む中小企業者の範囲につきましては、卸売り業が、その業態面、機能面における特色から見まして、小売り業と比較して大規模の経営とならざるを得ないことにかんがみ、これを取り出して別途の中小企業者の範囲を定めることといたします。その際、従業員数の基準としては、中小企業者となる企業の比率が小売り業等の場合とバランスすること等の点に留意して百人とし、また、この従業員数基準と平均的に見合う資本金額を算出することによって、資本金基準を三千万円とすることといたします。なお、小売り業及びサービス業を営む中小企業者の範囲につきましては、特にこれを変更する理由がないところから、従業員数基準の五十人と資本金基準の一千万円を現行どおり適用することとしております。
 以上のような中小企業者の範囲の改定に伴い、新たに中小企業者の範囲に取り込まれます企業の数を試算いたしますと、工業についておおむね五百七十、卸売り業についておおむね三千五百となっております。政府といたしましては、このような中小企業者の増加により必要となる財政資金について、本年度の予算、財投を通じて所要の配慮をいたしております。特に、小規模の企業者に対しましては、いやしくも施策の薄まりなどが生ずることのないよう十分意を用いており、本年度の新規政策として、小企業経営改善資金融資制度及び個人事業主報酬制度の創設、中小小売商業振興法案の提出など、関係施策の抜本的拡充をはかることとしている次第であります。
 以上、この法律案につきまして補足説明をいたしました。何とぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。
#17
○委員長(佐田一郎君) 以上で説明の聴取は終わりました。
 これより質疑に入ります。
 質疑のある方は御発言を願います。
#18
○林虎雄君 いま御説明になりました中小企業基本法の改定について、若干質問を申し上げたいと思います。
 ちょうどことしはこの基本法が制定されてから十年目に当たると思いますが、また中小企業庁が設置されてから二十五年になると思います。この間、中小企業行政について種々論議され、中小企業政策審議会などでこれらの中小企業政策の方向はかなりはっきりした形で打ち出されてきていると思います。この中でも中小企業の自助努力が認められておりますが、これがともすれば、従来しばしば見られましたように中小企業の優等生教育に結びつけられがちであります。政府の近代化政策にしても構造改善施策にしても、この施策に乗ってこられるのは中小企業のうちでも上位規模のものが多いと思います。零細企業は絶えず取り残されるばかりか、施策に乗ったものと乗らないものとの格差が開くばかりではないか、こういうふうに思われるわけであります。零細企業は常に苦しんでいるのが実情でありますが、このような現状の中で、何ゆえ基本法を改正して中小企業の定義を広げることをしなければならなかったのかという点について、まず大臣にお尋ねいたしたいと思います。
#19
○国務大臣(中曽根康弘君) 中小企業政策の中で零細企業が一番重要であるとおっしゃられる林委員の御主張には、私も非常に共鳴するところでございます。中小企業の中にもいろいろ千差万別ございまして、かなり知識力、経営力を持ったものもございますが、やはり底辺には膨大な零細企業群がまだうごめいておるというのが実情でありまして、中小企業の一番の重点は零細企業に置かなければならない、こういう点についてはわれわれも大いに反省し、戒めていかなければならぬと思っておるところでございます。
 しかしながら、中小企業基本法の制定によりまして中小企業者の範囲が定められてからすでに十年経過しておりまして、この間経済規模はかなり大きく変わってまいりました。それで、今日の定義改定は、このような変化を踏まえつつ関係方面からの御要望をしんしゃくして、範囲を現在の経済規模にふさわしいものに改めようとするものであります。特に鉱工業関係、あるいは問屋とか卸売りとかそういう中小企業も大いにございます。それらの中小企業の中にはかなりの資金力を必要とするというのも出てまいりまして、やはりこの程度の改定、上限を上げておくということは必要ではないかと思うのでございます。しかし、われわれがこの範囲内において行なう政策の重点は、御指摘のように、あくまでも零細企業に重点を置きまして、それをできるだけ上位に格づけするように経営改善、援助を私たちは努力してまいりたいと思っておるわけでございます。
#20
○林虎雄君 中小企業の範囲を広げることによりまして、政府の中小企業施策の恩恵を受けるといいますか、そういうものが製造業では五百ばかりの企業と四千弱の卸売り業でありますが、この中におそらく中小企業と言い得ないような、まあ玩具のあるトップメーカーなどは今度入るわけであります。メーカーの名称は申し上げませんが、御存じだと思います。このような大きな、むしろ大企業の範疇に入るべきものだと思われるものが、今度の範囲の拡大によって中小企業ということにレッテルが張られるわけでありますが、中小企業の施策を受けさせる必要がないようなものまで今度対象になるおそれもあるわけであります。このような企業では、自分の力で海外市場を開拓し、ブランドにものを言わせて国内でも販路を拡張しているという事実もございますが、こういうものまでも中小企業の範疇に入るということは少し矛盾ではないかというふうに考えますが、この点、いかにお考えになりますか。
#21
○国務大臣(中曽根康弘君) 御指摘のようなケースも若干出てくると思います。しかし、私たちの政策の一つのねらいは、零細企業からはい上がって次第に上位へ上位へと規模を拡大し、経営を充実させ、そして、いずれは零細企業も中堅企業に成長する、いずれは二部にも上場する、そして将来は一部にも入っていく、そういうような積極的な向上心をそそりながら、創意と努力によってその成果があがっていくようにしていくというのが、自由経済をたてまえとするわれわれの考え方でございます。そういう立場から、おそらくすべての企業は零細から始まっておると思うわけでございますが、零細が次第に実力をたくわえて伸びていくというかっこうにおきまして、上位のほうになったものについては、若干そういうことも出てくると思うのでございますけれども、しかし、常にそういう可能性を秘めて、努力と創意によってはさらに伸びていけるという一つの方向をつくっておくことも、われわれの経済運営、経済政策として大事なポイントではないかと思うのであります。
 そういうように実力を持って成長してきた上限に近いものにつきましては、現実にいろいろな金融であるとかそのほかの適用を行ないます場合に、緊急性あるいは実力その他から見て、中金やその他の金融その他についても当然しかるべき考慮が払わるべきである、重点は零細企業にあるという方向を申し上げましたが、そういう方面に沿って金融や援助措置というものは当然重点的に行なわるべきでありまして、そういう実力を持ってきて自分でやれるというものについてまで、それほど国が具体的施策にあたって力を入れる必要はないと、運用面におきましてそういう識別をしながら行なわしていきたい、そう思うわけでございます。一般論といたしましては、やはり一億円程度の資金というものをめどに、上限を上げまして適用範囲を広げるということは、いまの経済規模のスケールから見てやむを得ない処置ではないか、そう思うわけでございます。
#22
○林虎雄君 中小企業の範囲の拡大の問題は、かなり以前から論議されてまいった問題でありまして、定義の改定に慎重な人々が口にするのは、中小企業施策が、前にも申し上げましたように、上位規模の中小企業に傾斜するおそれがないかという点であります。資本金一億円というような、また数百人の従業員を持っておる中小企業と、全くいなかのよろず屋式のものも同じ中小企業として法律で施策を施すというところに無理があるような感じがいたすわけであります。上位規模の中小企業は、経済政策として従来どおりの施策を行なうにしても、零細企業に対しては割り切って、むしろもう少し変わった形で、たとえば社会福祉的なものを加味する必要があるのではなかろうかと、こういうふうな感じもいたすわけであります。中小企業の幅がピンからキリまでありますだけにそういう感をいだくわけであります。政府はこの点を十分に考慮をされまして、衆議院の附帯決議にもありますように、中小企業施策が上位規模に傾斜することのないような措置をするとともに、特に小規模企業に対する施策、たとえば小企業経営改善資金の融資制度などは金利をもっと大幅に引き下げるなり、あるいは事業規模を大幅にふやして零細企業に対する施策を充実すべきであろうと思いますが、この点をどのようにお考えになりますか。企業庁長官でけっこうです。
#23
○政府委員(外山弘君) 大臣からもお話がございましたように、小規模企業に対する施策の重要性ということは、私どもも強く認識しているわけでございまして、従来からも、施策の重点項目というかっこうでいろいろなことをやってきているわけでございます。たとえば、税制面について申し上げますと、いわゆる個人事業主報酬制度といったものを創設いたしまして、また、中小同族会社の留保所得加算課税制度を緩和いたしまして、そういったことによりまして税負担の軽減をはかるということをやっているわけでございますが、また、金融面におきましては、国民金融公庫の一般融資ワクの増大、あるいは中小企業振興事業団の工場共同化事業に対する融資ワクの拡大、小規模企業に対する設備近代化資金及び設備貸与制度の拡充、こういったような施策をやってまいっておるわけでございます。
 今後の定義の改定にあたりましても、御指摘のように、施策が上位にシフトするということのないように政府関係の中小企業金融機関に対しましても十分指導する。特に、御指摘の小企業経営改善資金につきましては、来年度から資金量の大幅増大、ことしは三百億円でスタートをいたしますが、来年度はもっと大幅にこれをふやしたいと考えておりますし、貸し付け期間の延長とか、貸し付け限度の引き上げといったことにつきましては抜本的な拡充をはかってまいりたい、こう考えている次第でございます。
#24
○林虎雄君 わが国の中小企業の法律体系は、中小企業基本法以下他の国に比べてかなり整備されておると思います。この点については、中小企業庁などの努力は相当に評価されていいのではないかと思いますが、しかしながら、中小企業特恵対策臨時措置法とか、小売商業調整特別措置法などのように一部の法律は、法律が施行後ほとんど運用されていないのではないか、こういうふうな感じもいたします。また、下請代金支払遅延等防止法や百貨店法のように全くざる法、これはしばしば私も質問いたしたわけでありますが、全くざる法といっても差しつかえないと思います。こういうこともまた事実であると思います。行政府である通産省としては、従来のきめのこまかい中小企業に対する幾多の法律がもっと生かされて運用される必要があると思いますが、その点についての御感想を承りたい。
#25
○政府委員(外山弘君) ただいま御指摘がございましたような法律の運用問題につきましては、そういった傾向があるということは私どもも考えないではないわけでございます。ただ、行政法規というものは、変転する経済社会の実態と社会の情勢を踏まえまして、助成を行なったり、改善を行なったり、規制をしたり、そういうようなことでございますので、実態面で予期しない変化やあるいは規制上の技術的な困難性、あるいは法律による規制の限界といったことによりまして、見方によっては、法律内容やあるいはその運用が不徹底になるという場合もあり得るというふうに考えます。しかし、われわれはこれらの諸法規を、やはり極力社会の要請にこたえて、誠実かつ適切に運用していく責任を持っているわけでございまして、各界からの要望や批判を謙虚に受けまして、今後とも法の適切な運用に最大限の努力をしてまいりたい、こう考える次第でございます。
#26
○林虎雄君 制定された当時の三十八年の際の附帯決議に、「紛争処理のための機構の整備については、早急に中小企業政策審議会に諮問し、公正且つ実行力のある機構を設けるよう考慮すること。」とあります。この附帯決議も政府は必ずしも尊重しておるとはいえないようであります。現在のところ、中小企業団体の組織に関する法律の目的に準拠するところの中央中小企業調停審議会、この審議会も、この前の政務次官会議で中小企業安定審議会に吸収合併されることがきめられているようでありますが、また、小売商業調整特別措置法の目的に準拠する調停員制度などが設けられておりますが、これらの紛争の処理の機構整備はどのようになっておりますか。
 また、基本法制定の際の質疑にもありますように、中小企業の紛争処理の機構の一元化について議論があったと思いますが、この点はどうなっておりますか、伺いたいと思います。
#27
○政府委員(外山弘君) 御指摘のように、附帯決議に基づきまして、当時、その問題を検討するため、中小企業政策審議会に調整小委員会というものが設けられまして、この問題についての検討が行なわれました結果、昭和三十九年の二月に「中小企業者と中小企業者以外の者との事業活動の調整について」の答弁がなされたことはそのとおりでございます。私どもとしましてはこの答申を踏まえまして、昭和三十九年の七月に中小企業団体の組織に関する法律の一部改正を行ない、大企業と中小企業の間の紛争処理について所要の法制整備を行なったわけでございます。
 すなわち、まず第一に、商工組合は、中小企業者以外の者が大規模な資格事業の開始また拡大をすることが、中小企業者の経営の安定に著しい悪影響を及ぼすおそれがあるとき、当該中小企業者以外の者との間で事業の停止または変更について特殊契約を締結することができるというふうな整備をいたしました。また大企業に交渉応諾義務を課したわけでございます。また第三点として、主務大臣があっせんまたは調停を行なおうとするときは、中央及び都道府県の中小企業調停審議会に諮問する、また、その審議会には専門委員を設け、さらにその審議会に関係行政機関の長に対し、資料提出要求等の権限を付与するといったような法制整備は行なったわけでございます。
 紛争処理の機構の一元化についてでございますが、現在の機構が中小企業者に関する紛争の性格、形態の相違に着目した諸制度からなっている、つまり、調停審議会の制度とかあるいは調停委員の制度といったものが、そういったことから成り立っているということにかんがみまして、私どもとしては、現在特にこれを統合するということは考えていないわけでございますが、ただいま御指摘がございましたが、今後とも制度の効率的な運用という観点から検討を加えてまいりたい、こう考える次第でございます。
#28
○林虎雄君 中小企業の数がわが国は特に多いようでありますが、その中でも零細な企業が非常に多いわけであります。中小企業施策もおのずから業種、業態に即したきめのこまかいものが必要とされるわけであります。たいへんな仕事でありますけれども、この点で必ずしも現在の法体系で十分であるといえない面もあると思います。たとえば、京都の西陣織、長野県においては木曽地方の長い伝統を持つ漆器、その他いわゆる伝統的な地場産業というものはたくさんあると思います。これらに対する施策でございますが、伝統的な産業は最近になって、いままでかなり衰微の方向を持っておりましたが、最近はどうもいわゆる手づくり品が見直されてきたといいますか、そういうような傾向の時代になってきたように感ずるわけであります。ところが、こういう手づくり品あるいは伝統的な地場産業というものが、人手不足あるいは後継者難、または労働条件の悪さというようなことで、これが需要の伸びに対しまして大きな隘路になっておるわけであります。国の施策としてこれまでほとんど施策が行なわれなかったといっても過言でないと思います。政府は、これらの産業を育成することに対してどういうお考えを持っておるか。現在のところ沖繩県等においては、芭蕉布とか琉球漆器といった地域独自の産業に対して、金融あるいは税制上の優遇措置を通じて格段の助成を行なうようになっているようでありますが、このような地域独自の産業、とりわけ伝統産業の育成、振興を全国的に取り上げるお考えはないかどうか、承りたい。
#29
○政府委員(橋本利一君) ただいま先生が御指摘になりました木曽の漆器などを含めまして、わが国には長年にわたりまして蓄積されました伝統的技術を用いまして、手づくりの品と申しますか、いわゆる民芸品を生産する産業が各地に存在しておるわけでございます。ただいま先生からの御指摘にもございましたように、近年このような産業におきましては、後継者の確保難、原材料あるいは素材の入手難、また、伝統的技術が消滅するおそれがあるといった非常に大きな問題をかかえておりまして、このまま放置してまいりますと、多くの工芸品産業が衰退するおそれがございます。さような観点から私たちといたしましても、積極的に民芸品産業を振興し育成したいと考えております。一方、これはまた産業の育成にとどまらず、国民の生活に潤いと豊かさを与える商品を確保するといった意味からいたしましても、きわめて意義のあることかと考えておるわけでございます。
 いまも御指摘ございましたように、伝統産業というのはひとり沖繩にとどまらず、全国各地におきましてそれぞれの独自の技法と素材を用いまして、きわめてユニークな特色のある製品を産出いたしておるわけでございます。当省におきましては、本年度全国の民芸品産業につきまして、その実態を把握するための調査を実施いたしました。また、学識経験者からなる委員会を設置いたしまして、その委員会の場で振興対策の方向等について検討いたしておるわけでございますので、このような実態調査の結果、あるいは検討の結果を踏まえまして、積極的に、また全国的に伝統品、伝統的な工芸品産業の振興につとめたいと考えております。
#30
○林虎雄君 中小企業の法体系で欠けるものといたしまして、中小企業が風水害などの災害を受けた場合の法的措置があげられると思います。現在のところ中小企業が台風、豪雪等の災害によって被害をこうむった場合、いわゆる激甚災害の指定を受けると、政府系の三機関から年三%の特利で融資をされることになってはおりますが、これだけでは不十分である。中小企業が風水害などの災害を受けた場合に、その損害をすばやく補償して、中小企業の経営の安定をはかることをねらいとする中小企業災害補償法というようなものを制定してほしいという要望が日本商工会議所などから出ていると思います。参考までに農業の場合は、すでに昭和二十二年に農業災害補償法が制定されておりまして、事務費とか防虫費とか等について国から補助金が出ておるわけであります。農業と同一にものを考えろとは言いませんけれども、しかし、弱小企業などでは災害などの場合に、もう立ち上がることのできないような場合も往々に見受けられるわけであります。政府は、この種の法律の制定に対してどのようなお考えを持っておるか、承りたい。
#31
○政府委員(外山弘君) 中小企業者の災害復旧をはかるためには、まず何よりも円滑な資金の確保といった点が重要であると思います。このために、先ほども先生が御指摘になりましたように、激甚災害に対するための特別な財政援助等に関する法律ということによりまして、激甚災害指定の場合には特利で融資が行なわれるということをやっているわけでございますが、そのほかにも災害関係の補償の促進といったことをはかるために、保険限度を別ワクにするとか普通保険のてん補率を引き上げる、あるいは低い保険料を適用する等、保険の特例が適用されることになっているわけでございます。また、激甚災害に指定されない場合でも、政府の関係金融機関におきまして貸し付け限度の引き上げ、あるいは貸し付け期間及び据え置き期間の延長等を内容とする特別貸し付け制度を設けて簡易迅速に融資を行なう。特に、既応の貸し付け金の償還猶予についても弾力的な取り扱いを行なっているわけでございまして、これらの措置によりまして十分資金を供給し得る態勢ができているというふうに私どもは考えているわけでございます。
 農業との比較での御指摘がございましたが、確かに農業の場合は、気象上の原因による災害が根底から経営基盤をくつがえすというふうなことが多いわけでございまして、共済制度により災害損失に対処するというふうなことをやっているわけでございますが、どうも中小企業者の場合は、やはりそれらの農業とは事情を異にしているというふうに私どもとしては考えているわけでございます。
#32
○林虎雄君 法案についてちょっと承りたいと思います。
 製造業等の場合、資本金の基準は五千万円から一億円に引き上げられておりますが、従業員数の基準は、三百人未満という現行の基準は変わっていないのでありますが、その理由はどうでありますか。従業員数は、業種の性格によりまして同じ規模の企業でも当然異なってくるのであります。いわゆる人手を多く要する労働集約型の産業は、企業の大きさの割合には従業員数は多いのであろうし、逆に装置型産業では従業員数は少なくても足りるわけであります。特に従業員数にこだわる理由は少しもないように思いますが、この点どうでありますか。従業員数の規模三百人というと、資本金規模に直すと、業種によって異なると思いますが、おもな業種別に見た場合にどのくらいになりますかどうか。
#33
○政府委員(外山弘君) 製造業の資本金基準の引き上げにつきましては、御指摘のとおり、従業員数規模を基礎としておりまして、今回の改定にあたりましては、従業員数基準は三百人のまま据え置くこととしたため、結局基本法制定時の従業員数規模を基準としていることになるわけでございます。
 基本法制定時に従業員数三百人というのを基準としたのは、一つは、基本法制定時以前に中小企業者として助成対象にされていた企業を最大限、基本法における中小企業者として取り込むため、当時、中小企業者の定義として使われていた最大の従業員数規模である三百人を採用したわけでございます。
 それからもう一つは、基本法制定時以前に、中小企業等協同組合法等におきまして、中小企業者の定義の基準として従業員数三百人以下が採用されております。三百人という数字に実定法上の根拠があったということ、これらの二点がまず第一の御質問の点に対するお答えになるかと存じます。
 それから第二に、従業員数は同規模の企業でも業種により当然異なるのじゃないか、だから、特に従業員数にこだわる理由はないのではないかという点の御指摘でございます。現行の中小企業者の定義におきまして、資本金基準と従業員数基準の双方に着目いたしまして、そのいずれかを選択できることとしている基本的な理由は、たとえば同じ製造業等の中でも資本多使用型と申しますか、資本を多く使う業種、あるいは労働多使用型と申しますか、労働力を多く使う業種といったばらつきがあることを考慮いたしまして、これらに対してなるべく平等に中小企業施策の恩典を与えようとしたからでございます。したがって、御指摘のような業種による差異に対しては、従業員数と資本金額とをともどもに勘案することによって適切な規模の企業を定義の中に位置づけられるというふうに考えられますし、資本金額あるいは従業員数のいずれかを無視しますと、逆に業種間のバランスを失する結果を生ずるのではないかというふうに考えた次第でございます。なお、従業員数基準を無視した場合には、個人企業を定義の中に位置づけることが、その尺度がなくなってしまうというふうなことも考えているわけでございます。
 それから三番目の問題といたしまして、従業員数三百人の企業の主要業種別資本金規模についてのお尋ねでございますが、従業員三百人規模に対応する資本金規模を試算いたしますと、たとえば機械工業については九千六百万円、雑貨につきましては九千百万円、食料品が一億二千八百万円、繊維は七千五百万円というふうな数字でございまして、全体として見て、おおむね一億円程度というふうに理解しているわけでございます。
#34
○林虎雄君 この中小企業の区分けについては、資本金の規模とか従業員数が用いられております。まあ何か基準がなければなりませんけれども、資本金自体は企業の正味資本の相当部分をあらわすだけでありまして、それだけで取り上げてもあまり意味が少ないのではないかというふうにも考えられる。企業規模を見るのでありますれば、企業の資産総額とか、資本でも自己資本と他人資本を加えた総資本で見たほうがよいように思いますし、自己資本だけを取り上げるにしましても、資本金のほかに利益準備金の積み立てなどがあると思います。現に、中小企業対策の恩恵を受けたいために資本金だけを低く押えている例もないことはないようであります。むしろ一般的には企業の大きさを見る場合に、年商額であらわすことが多いのではないかと思います。そのほかに利益率とか企業の大きさをあらわすには、いろいろな指標で総括的に判断されることのほうがより適切であるというふうに思いますが、企業庁としてはこれを検討するお考えはどうかということをお聞きしたい。
#35
○政府委員(外山弘君) 中小企業政策は、もとより単に組織の大小の面だけから見た中小規模の企業を対象とするのではなくて、特別の施策の投入が必要な、いわば問題性と申しますか、それを持った中小企業を対象とすべきものであるというふうな考え方であることは当然のことだと思います。したがって、法律上、施策対象としての中小企業の問題性を明らかにする、そういった意味の定義を規定することが確かに一案として考えられるわけでございます。しかし、中小企業の問題性というふうに申しましても、必ずしも一様ではない。法律の上でこれを明らかに定めることはたいへん困難な問題でございまして、また、法律を基本として行政を遂行する上でどういう規定のしかたが明白であるか、あるいは中立であるかというふうなことを考慮した場合に、現在の資本金規模とか従業員規模による定義が最も妥当ではないかと考えるわけでございます。
 わが国では、すでに中小企業政策が体系的に推進されるようになってから、一貫してこの資本金規模と従業員規模とによって中小企業が定義づけられているわけでございます。したがいまして、こうした行政の連続性という観点からも現在の定義のしかたを維持したいというふうに考えているわけでございます。御指摘の資本総額、あるいは総資本、年商額、利益率といったような指標を用いて定義することも検討に値する案と考えられますが、これらも必ずしも外形上明確にとらえにくいという問題もございます。また、好況とか不況とかいうときどきの経済の動向に大きく左右される指標であることも事実でございます。そういった点を考えますと、先ほど申しました行政の明白性と申しますか、中立性と申しますか、さらには連続性の確保、こういったような見地からは、法律上の採用としては必ずしも適切ではないというふうに考えるわけでございます。しかし、御指摘の諸点については今後も研究はしてまいりたい、こう考える次第でございます。
#36
○林虎雄君 幾度も繰り返すようでありますが、中小企業の定義は、今回の改正案が通れば製造業などの場合、資本金一億円以下または従業員数三百人以下ということで、その一方に該当すればいいことになっておりますね。しかし、石油化学など資本集約的な装置産業などの場合は、資本に比べて従業員数が少ないのが通常であります。石油化学を中小企業の対象とするのは、ちょっと持ってくるのは適当かどうか知りませんが、従来、従業員の三百人といいますと、資本で見ると相当大きな規模になると思います。三百人といえばかなり大きなものだというふうに考えられる。したがって、この資本金と従業員とどちらでもこれに該当すれば中小企業の範疇に入るわけでありますが、そういうふうに一方で考えなくて、むしろ両方を合わせた形でのほうが、どちらでもいいというよりも、資本金が七千万円であるとかあるいは従業員数が二百人であるとか、まあ、例でありますが、そういうものを合わせて、それをもって中小企業というふうに定義したほうが妥当と思うのでありますが、この点どのようにお考えでございますか。
#37
○政府委員(外山弘君) 現行の中小企業者の定義におきまして、資本金基準と従業員数基準とを「又は」の関係に置いている基本的な理由は、たとえば同じ工業の中でも、先ほども申し上げましたが、資本多使用型の業種あるいは労働多使用型の業種といったばらつきがあることを考慮いたしまして、これらに対して、なるべく平等に中小企業施策の恩典を与えようというためにこうしているわけでございます。また、一部の中小企業施策、主として団地協同組合等の組織化対策等につきましては、資本金ないし従業員数の上限を若干はみ出すような企業が参加したほうが望ましいという場合があることも、一つの考慮理由であるかと思います。このように「又は」を採用している結果、資本金ないし従業員数のいずれかが相当に大きい企業が中小企業施策の対象に入ってくるおそれがあることは事実でございます。しかし、反面、「かつ」ということにいたしますと、従業員数の小さい企業が自己資本の充実のために努力した結果、中小企業施策の恩典を受けられなくなってしまう、こういった不都合が生ずるかもしれません。中小企業者の発展性を尊重するというたてまえからは、やはり「又は」のほうが弊害が少ないんではないかというふうに考えるわけでございます。また、資本金や従業員数の規模が極端に大きい企業につきましては、中小企業金融公庫等の融資において運用上対象から排除するような配慮もしておるわけでございます。
 なお、現実問題としまして、現時点で「かつ」ということに「又は」を直しますと、そういう定義の変更をしますと、現に中小企業施策の恩典を受けている相当数の企業が、突然施策の対象からはずれるというふうなことにもなりかねない。で、中小企業経営の安定を期するという政策本来の目標から見ても必ずしも適切ではないというふうな考え方もあるわけでございまして、このようなことを勘案してみますと、中小企業者の定義としては、やはり資本金額と従業員数のいずれか一方の基準を満足すればよいという現在の定義が適切ではないかというふうに考えている次第でございます。
#38
○林虎雄君 業種によってその態様はかなり違っておると思うわけであります。業種によっては適正規模というのがあり、資本金一億円では中小企業ということになりますけれども、事実においてはむしろ大手に入るような業種も見受けられると思うわけであります。基本法第二条によりまして一応業種が載っております。「工業、鉱業、運送業その他の業種に属する事業を主たる事業として」おるものということになりますが、これだけでなくて、もう少しきめこまかく業種を検討できないものかどうか。同じこれに載っております業種によっても、同じ一億円の業種であっても、いわゆる大手の範疇に入るものもあろうかと思います。したがって、いまお尋ねしたように、もう少しきめこまかい検討というものは無理かどうか、これをお聞きしたい。
#39
○政府委員(外山弘君) 中小企業政策が非常に多岐にわたる政策から成り立っている、あるいは政策上の理念も一般的な不利の補正、あるいは中小企業構造の高度化、事業活動の機会の確保、そして、こういったことを通ずる格差の是正や従業員福祉の向上、こういったきわめて多面的なものになっているという点がございますし、また、こういった施策同士の間での関連性が強いため、その対象範囲に共通性が保たれているという必要があると思います。
 たとえば指導の政策、あるいは金融等についてはそういうことがいえると思いますが、こういうことを踏まえましてさらに行政上の明白性、中立性、こういったものを維持するという観点から申しますと、現在のような簡明な中小企業者の定義がいいのではないかと考えるわけでございますが、もちろん簡明とはいっても、各法律でそれぞれの目的に沿った独自の定義の方法が取り入れられていることもございまして、御指摘の業種との関連でも、政令の段階で若干の業種につきその特性を考慮した定義がなされております。たとえば陶磁器製造業、あるいはゴム製品製造業等の業種につきましては、中小企業近代化促進法等につきましては特別の対象をきめているわけでございまして、そういうふうに若干の業種についてはその特性を考慮した定義がなされているわけでございます。で、中小企業者の定義を実情に沿った弾力的なものにするための各種のくふうは、一応できる範囲ではなされているというふうなことになっているわけでございます。
#40
○林虎雄君 この中小企業対策の中でも、まあ従来、特に小規模企業対策が立ちおくれておるといわれておったのでありますが、今年度から中小企業庁は小企業経営改善資金融資制度を設けて十月ころから発足の予定といわれておるわけであります。この制度の創設の背景及びねらいを伺ってみたい。
 小企業経営改善資金の融資は、経営指導員等による経営改善指導を資金的に裏づけするものとしても、融資条件などでかなり問題があるように思います。まず、貸し付け限度額は百万円以内となっておりますが、この使途を考えた場合、たとえば商業などでは店舗の改装などの需要が多かろうと思います。しかしながら、百万円の資金では一体何ができるか。都会においては売り上げ増進に効果的な店舗改装ができるかどうか、きわめて疑問である。百万円ではあまりにも過小ではないかというふうに思います。
 都会の場合、購買客の感覚が洗練されているので、かなり思い切った投資をしないと改装の効果があらわれないのではないか。むしろ、改装して借金だけしょってしまう結果になるおそれもあろうと思います。昨今では、店舗改装の資金も坪二十万とか三十万とか、特に最近の物価の値上がり、木材の値上がり等でもって、百万円ではどうにもならぬのではないかというふうに思います。さらに店舗が商店街からはずれているなどの立地条件が悪い場合には、売り上げを伸ばすためにはかなり根本的な、立地条件のよいところに店を移さなければ解決できないという場合もあろうと思います。まあしかし、地価、家賃の高騰を考えても、そういう場合にも店舗の移転はまず不可能であろうというふうに考えられます。
 また、貸し付け期間が二年以内となっておりますが、実際問題として二年で固定資産投資の償却をすることは無理ではなかろうか、こう思います。中小企業庁はどういう根拠で貸し付け限度百万円、期間二年をはじき出されたのであるか、伺いたい。この法案を検討された当時は、現在のような激しい物価の値上がりが予想されなかったときかもしれませんが、現状から見まして、また今後、貸し付け限度額ワク及び期間の大幅拡大などをする必要があるように思いますが、どのようにお考えでありますか。
#41
○政府委員(外山弘君) まず第一のお尋ねでございまする小企業経営改善資金融資制度創設の背景、ねらいといった点の問題でございます。
 中小企業基本法は、小規模企業に対する金融、税制等の施策面での特段の配慮を求めております。で、小規模企業の中でも特にその大部分を占める小企業は経営内容が不安定である、あるいは業歴が浅いものが多い、特に担保、信用力が乏しいといった等の理由にかんがみまして、金融面ではきわめて困難な立場に置かれていることが一つの事情でございます。また一方、現在小企業対策の大きな柱として商工会議所、商工会を通じまして経営改善普及事業ということを行なっておるわけでございますが、この指導を受けました者に対する金融措置が必ずしも十分でないために指導の効果が薄れるとか、あるいは指導を受ける意欲が十分でないとか、そういった事態もございまして、経営改善普及事業の円滑な推進上大きな問題となっている、これが第二の問題点かと思います。こういったことを考慮いたしまして、特に小企業者に対して指導と金融というものの一体化をはかる、そして、経営改善普及事業の一そうの実効性を確保いたしまして小企業者の経営改善を促進するため、今般、こういった制度を創設したわけでございます。
 次に、この貸し付け限度百万円、期間二年というのはどういう算出根拠かというお尋ねでございますが、貸し付け限度を百万円というふうにいたしましたのは、国民金融公庫におきまする本制度の対象企業層に対する平均貸し出し金額といったものをはじきますと、約九十九万円になっている。で、百万円以下の小口資金の需要が大部分を占めているということが統計的に出てくるわけでございます。この点が一つの重要な考慮事情だったと思います。また、貸し付け期間を二年といたしましたのは、本制度の貸し付け限度が百万円以下と小口であるために、おそらく平均貸し付け金額は五十数万円になるんではないか。で、貸し付け期間を二年としても、一月当たりの平均返済金額を考えますと、小企業者の負担はそれほど、この程度で大きくはないんではないかというふうに考えたわけでございます。もちろん、先ほども御指摘がございましたように、確かに情勢の変化も逐次進んでいると思います。それからまた、本年度から始まっただけに、いまだ十分に実行上の問題点を確認していないわけでございます。しかし、ともかくもこの制度をもっと有効に小企業者のために働かせるためにも、貸し付け限度あるいは貸し付け期間につきましてもっと有利な措置を講じなければならないというふうに考えております。で、先ほども申し上げましたが、貸し付け限度は少なくとも倍ぐらいにはしなくてはいけないんじゃないか、あるいは貸し付け期間につきましても、二年では短くて、三年ぐらいに延長して据え置き期間を設けるというふうな配慮もしていかなければいけないんではないか、こう考えているわけでございまして、四十九年度の予算要求にはそういったことを強く要請してまいりたい、こう考えている次第でございます。
#42
○林虎雄君 この制度についての対象は、常時雇用する従業員が、製造業等は五人以下、商業、サービス業等は二人以下となっておりますが、従業員数を区分の基準としたのはどういうことであるか。また、五人及び二人という基準にした理由は何でありましょうか。この中に家族の従業員というものは含まれているかどうか、この点伺います。
#43
○政府委員(外山弘君) 小企業改善資金の融資対象を小企業ということで限定した理由は、一応、次のように考えているわけでございます。
 まず、中小企業のうちでも特にその大部分を占めるのが小企業でございまして、経営内容が不安定であるとか業歴が浅いとか、担保、信用力が乏しいというふうな事情にあるわけでございます。金融確保の面できわめて困難な立場に置かれている。一方、今後の経済環境の変化に対応していくためには、経営改善のための強力な施策が特に必要な企業層であるのではないかということがまず第一でございます。
 また、現在、中小企業対策の中で小企業に対しまして特にやっている制度もございまして、信用保険制度におきまする特別小口保険制度、あるいは協同組合における小組合制度、こういったような特別な施策が小企業対策としてあるわけでございますが、この制度もそれに準じて考えるのが適当であるというふうなこと、こういったような事情から小企業ということに限定してこの制度を考えたわけでございます。
 次に、お尋ねの常時雇用従業員の内容でございますが、一応、現在の小企業に対する融資機関として最も中心的な役割りをしておりまする国民金融公庫における運用と合わせることで検討しているわけでございます。これによりますと、家族従業員は、常時雇用従業員の数には含まれないことになっておりまして、まあ、それと平仄を合わせてやるのがいいのではないかと、こう考えておる次第でございます。
#44
○林虎雄君 この制度の融資については、商工会議所とか商工会の経営改善普及事業を効果あらしめるために創設されたもののようであります。したがって、この商工会議所、商工会等の窓口を通じて融資が行なわれるのでありますが、将来、この窓口を拡大してそれ以外の、つまり、商工会議所等の改善指導を受けない者でもその適用を受けられるように検討する必要があるように思いますが、その点どうお考えになっておられますか。
#45
○政府委員(外山弘君) 小企業経営改善資金融資制度は、先ほども申し上げましたように、経営改善普及事業における商工会、商工会議所の経営指導に基づき、小企業者が経営改善を行なうにあたって必要とする資金を融資するというのが、今回の背景にある基本的な考え方でございます。で、他方、こういった無担保、無保証というきわめて優遇された条件で行なわれるわけでございますので、その対象となる企業は経営指導を十分に受ける、そして経営内容、経営意欲について商工会、商工会議所が十分把握しているものであるということが必要であると思います。こういった経営改善普及事業の一環として行なう制度であるということにかんがみまして、私どもとしましては、商工会、商工会議所の経営指導を受けていない者を本制度の融資対象とするということは適切ではないというふうに考えているわけでございます。
#46
○林虎雄君 今回の改正によりますと――これは下請代金支払遅延等防止法との関係でありますが、改正によりますと、資本金五千万円以上一億円以下の親事業者と下請け関係にある資本金一千万円以上五千万円以下の下請け企業との取り引きは下請代金支払遅延等防止法の規制から除外され、その保護を受けられなくなるのではないかという懸念があります。たとえば、資本金八千万円の企業と下請関係にある資本金三千万円の企業は法の適用を受けられなくなるように思いますが、このような規模の小さな一部の下請企業が保護の対象からはずされることになるおそれはないか。この点政府は、その保護についてどのように考えられておられますか。
#47
○政府委員(吉田文剛君) 下請法は、中小企業と大企業との取引等、取引上の力の大きな差のある場合に規制する法律でございます。今度中小企業基本法が改正されますれば、資本金一千万円から一億円の事業者は、中小企業として同様に取り扱われることになりまして、従来、下請法は五千万円で親企業と下請企業を区分しておりますが、その区分の理由はなくなったわけでございます。先生おっしゃいますとおり、今回の下請法の改正がされますと、資本金五千万円をこえ一億円以下の事業者と取引しております資本金一千万円超五千万円以下の下請事業者の取引につきましては、保護の対象からはずされるということになるわけでございますが、この部分につきましては、独占禁止法の一般指定の十に優越的地位の乱用防止の規定がございます。独禁法によりまして監視、指導を強化いたしまして、下請取引の条件が悪化することのないように十分に配慮してまいりたいと思います。
 なお昨年、昭和四十七年の十二月末時点で調査したところによりますと、資本金一千万円超五千万円以下の事業者のうちで、下請取引を行なっているもの六百五十三社について調査した結果、以下申し上げますとおり、資本金一億円をこえる事業者との下請取引の比重が非常に著しく高いということでございます。その第一点は、資本金一千万円超五千万円以下の事業者で、資本金一億円超の事業者とのみ下請取引をしているものが三百二十四社、それから、資本金五千万円超一億円以下の事業者とだけ下請取引しているものが三十二社、双方の事業者と下請取引しているものは三百七社でございますが、その下請依存度は資本金一億円超に対しまして五七%、資本金五千万円超一億円以下に対しましては一六%ということになっておりまして、資本金一億円超の事業者との下請取引の比重が非常に高いということでございます。
#48
○林虎雄君 最近、景気引き締めが行なわれております。これは当然だと思いますが、その効果があらわれてきまして不況が招来するとすれば、まず初めにしわ寄せを受けるのは結局弱小企業、下請企業であろうと思います。親企業者は、不況による利益の減少を製品の原価の切り下げによって補おうとつとめるでありましょうし、それが外注単価の切り下げにはね返ってくるわけであります。ですから、下請中小企業は、人手不足による人件費の高騰など、原価の上昇にあえぎながら受注単価のほうを逆に切り下げられるというおそれは多分にあるわけであります。したがって、不況を迎えてたちまち経営に行き詰まってしまうということも想像にかたくないのであります。
 この親事業者の発注の単価の切り下げによって、下請代金支払遅延等防止法等では類似のものと比較して著しく低くなっておる。また、かつ不当に定められた場合についてのみ規制の対象になるようでありますが、実際にはその認定がむずかしいと聞いております。現行法では、規制の対象がきわめて限定的でありますので、これを救える場合は少ないのではないか、救済はなかなか容易ではないのではないかと思います。不況に対処しての一方的な親事業者の発注単価の切り下げ等に対して何らかの規制を検討しなければならないように思いますが、これは非常にむずかしい問題であります。ただ、不況になれば下請企業だけがその犠牲をしいられるということになりますが、これに対する何らかのブレーキ的な措置についてお考えがあったら承りたいと思います。
#49
○政府委員(吉田文剛君) 確かに先生おっしゃるとおり、いわゆる下請代金の買いたたきでございますが、これは下請法第四条第一項五号で「下請事業者の給付の内容と同種又は類似の内容の給付に対し通常支払われる対価に比し著しく低い下請代金の額を不当に定めること。」、これは禁止されているわけでございます。ただこの場合、単価の引き下げが業界全般にわたっております場合は適用がしにくい、されない。また「著しく低い」あるいは「不当に定め」ということの認定が確かにむずかしいという点はあるようでございます。したがって、不況期等に下請単価の切り下げというのを一律に禁止したらどうかというような考え方もございますが、そういうふうに下請単価の切り下げを一律に禁止するというようなことば、逆に下請事業者の受注量の減少であるとかその他の取引条件の悪化をもたらすというおそれもございまして、必ずしも適当ではないのではないかというふうに考えられます。むしろ下請単価というものは親事業者、下請事業者が十分に協議して、納得したところに定められるようにすることが適当ではないかと思われます。このためには下請事業者の交渉力の強化をはかる必要がございますが、下請中小企業振興法等の活用をはかって、それによって適正な下請単価というものを下請事業者、親事業者が協議して決定するというふうにすることが望ましいのではないかというふうに考えております。
#50
○林虎雄君 下請代金支払遅延等防止法について公取のお考えをちょっとお聞きしたいと思います。
 それは、前にも伺ったことがございますが、法律には、一応下請代金の支払いについて、下請業者の給付を受領した日から六十日を経過した日から支払い期日までの期間について、その日数に応じて云々というのがありますし、大体六十日以内に親事業者は下請業者にその代金を支払わなければならないということになっておりますが、これは全く空文になっておるわけですね。手形などについても、もう六十日なんという手形は全く数が少なくて、はなはだしいのは百五十日、それ以上というのもあるのが現状であります。したがって、この法律がほとんど生かされておらない。そこで、下請業者は親企業者に対して苦情を申し込めば、逆に親企業者は発注をしないというようなことから、非常に弱い立場にあるために泣き寝入りをしておると、こういう法律のあることは承知しておるけれども、実際はもう非常な長期の手形を受け取って、そうしてそれを銀行から割引をしてもらって、かろうじて経営をしておるというのが実態であります。
 これに対して中小企業庁と公取では、かつても親事業者に対して注意を通告しておりますね、二回か三回やっておると思いますが、ただそういうこの法律を実行してもらいたいというだけでもって、それだけにすぎないので、罰則規定もないために、この法律というものは全く空文のような実情になっておることは、公取においても御承知だと思います。中小企業庁はなお承知しておられると思いますが、この法律をもっと生かす、そうして下請業者がもう少し息がつけるような措置ができないものかどうか。この下請代金支払遅延等防止法に対する法の改正であるとかというようなこと、あるいは行政の積極的な指導、勧告というようなことができないものかどうか、この法律の実施の実態について、率直な御意見を企業庁と公取双方から承りたいと思います。
#51
○政府委員(吉田文剛君) 確かに先生おっしゃるとおり、支払い遅延利息という制度がございまして、下請事業者の給付を親事業者が受領した日から六十日を経過した場合には、その経過した日から支払いをするまでの期間について、その日数に応じて遅延利息を払わなければいけない、あるいはまた手形につきましては、下請代金の支払いについて手形で払った場合は、支払い期日まで、つまり給付の日から六十日までに一般の金融機関で割引を受けることが困難であるような手形を交付してはいけないというような規定がございます。
 こういう点については、従来必ずしも十分な実効をあげ得るというような措置をとられていないと思いますが、手形の点につきましては、私どものほうで強力に指導いたしまして、標準手形期間というものを繊維産業あるいは機械産業等において設けておりまして、もちろん六十日というような手形ではございません、それより長い百二十日というような標準手形制度をきめておりまして、ただこの手形についての規定の趣旨は、その六十日までに一般の金融機関に持っていけば割り引ける、しかし、その割り引けることによって下請事業者が不当に不利益を受けないというものであればよろしいという趣旨でございますので、必ずしも六十日以内の手形でなければいけないというような趣旨にはなっておりませんが、従来からこの点については強力な指導をいたしております。
 また、下請法がざる法であると、さっぱり実効があがらないじゃないかという御批判も確かにあると思います。私どもは、全力をあげて下請法の施行については従来やってまいっているわけでございます。昭和四十七年度におきましても、八千七百五十一事業所に対しまして書面調査を行ない、そのうち五百二十六事業所に対して是正措置、その内容は、勧告が四十一事業所、行政指導が四百八十五事業所というふうに、中小企業庁と協力をいたしましてかなり強力にやってきておるわけでございますが、まだまだ十分でないという点は十分に反省をしております。いま直ちにこれを改正しようということは考えておりませんが、今後とも下請事業者の保護につきまして、下請法の強力な運用、もう少し実効性のある迅速で確実な措置をとり得るよう努力をしてまいりたいというふうに考えております。
#52
○政府委員(原山義史君) ただいま公取の事務局長から御説明がございましたが、私どもといたしましても、昭和四十七年度、四月から十二月まで九千八百七十一の企業を調査いたしまして、このうち違反の疑いのある事業所数は五百五十七ございます。大体そのうちいろいろ照会等をしまして、二百四十二立ち入り検査をいたしまして、文書で警告いたしましたのが百七十くらいございます。このうち行政指導によって大体改めるというふうに解決しましたのが百三十二企業、即時の改善をいたしましたのが百二十六というふうなかっこうに相なっておりますが、今後は私ども大企業側からだけ書面調査するというふうな方向だけではなくて、下請企業自体にアンケート調査あるいは詳しく個別に聞いていくというふうなかっこうからいろいろ調査しまして、この法律の実効をあらしめるように措置したいというふうに考えておるところでございます。
#53
○林虎雄君 以上で私の質問を終わりますが、せっかく中小企業基本法の改正をし、そして中小企業者の今後のもろもろの対策を進められたのでありますが、先ほど来お尋ねしてまいりましたように、特に弱小の中小企業といいますか、小企業といいますか、零細企業といいますか、そういうものがややもすれば第二義的に、あるいは閑却されるというような例はしばしば見受けられるわけでございますので、そういう点について、一そうきめのこまかい適切な施策を衷心から希望してやまない次第でございます。
#54
○委員長(佐田一郎君) ほかに御発言がなければ、本案に対する本日の質疑はこの程度にいたします。
    ―――――――――――――
#55
○委員長(佐田一郎君) 次に、産業貿易及び経済計画等に関する調査を議題とし、質疑を行ないます。
 質疑のある方は御発言を願います。
#56
○大矢正君 私は、一般調査案件として質問を申し上げますが、その内容は、目下のところ本委員会において審議中の工場立地法に密接な関係のある内容のものでありますので、そういう点を勘案の上、御答弁を賜わりたいと思います。
 最初にお尋ねをいたしますが、高圧ガス取締法、この法律に基づきまして一般高圧ガス保安規則というものがありますが、この一般高圧ガス保安規則というものはいつ制定されたものであるか、事務当局からお答えを願いたいと思います。
#57
○政府委員(林信太郎君) お答え申し上げます。
 昭和二十六年に高圧ガス取締法ができております。で、それに基づきまして諸般の省令ができておりますが、ただいま先生から御質問の現行の省令の原形は、大体昭和四十一年五月に現行の形をとっております。なお、そのあと特に保安に関係いたします重要な省令といたしましては、四十三年に可燃性ガスの低温貯槽、いわゆるタンクでございますが、タンクに関しまして省令が追加されています。そういう状況でございます。
#58
○大矢正君 先日、テレビに通産省の塩川政務次官が出られまして、徳山における災害、そのあとの大分における住友工場の災害、
  〔委員長退席、理事劔木亮弘君着席〕
これらの問題についての対談がありました。そのときに司会者が塩川政務次官に対し、規則の中に保安距離として製造施設から境界まで二十メートルというような内容があるようでございますが、この二十メートルというものについては根拠があるのでしょうかという質問をいたしました。ところが塩川政務次官は、いや、あの内容は昭和二十六年にできた内容であって、コンビナートができるとか、あるいは今日のようなエチレンセンターのようなものができ上がる以前の内容のものであるので、当然これは直さなきゃならないんだと、こういう御発言がございました。私は自分で見、かつ聞いた内容でございますから間違いがないわけですけれども、いま局長がおっしゃいましたとおりに、この二十メートル云々という内容のものを、それを規制しております一般高圧ガス保安規則というものは昭和四十一年に制定をされたものであって、決して昭和二十六年に制定されたものではないわけですね。それをあたかも、昭和二十六年に制定された古い法律であったがために事故が起きたんだというような塩川政務次官の言い方は、所管官庁に重要な位置を占められる政務次官としての発言としてどうも残念だと、こういうことがテレビを通して国民に、あの規則は昭和二十六年の規則でございますよということを堂々と言うなどということは非常に私は問題があるように思われますが、その点、大臣いかがですか。
#59
○国務大臣(中曽根康弘君) 私はテレビを見ておりませんが、もしそういうような発言をしたとすれば勉強不足でございまして、よく注意をいたします。
#60
○大矢正君 テレビに出る政務次官がそういう誤りをおかすようなことのないように、今後ともひとつ事務局はよく勉強をしてもらうように努力をしていただきたいと思います。
 そこで、第一の問題点は、いま二十メートルの話が出ましたが、それはこの規則の中の事業所の規定の中で二十メートルという数字が出てくるわけでありますが、たとえば一、二級事業所は、製造施設から事業所の境界まで二十メートルの距離を有することというふうになっておりますが、この一、二級事業所の二十メートルという距離の根拠は一体何か、どういう根拠があってこの二十メートルでよいということになったのか。それから、今後も二十メートルでよいという判断は変わらないのか、お答えを願いたいと思います。
#61
○政府委員(林信太郎君) 一級、二級の事業所は、御案内のとおり、保安につきまして特に優秀、あるいは優秀という認定を受けたものでございます。で、この場合に適用されます民家との距離が、三級事業所の場合と同様に二十メートル以上という省令の規定になっております。したがいまして、ただいま先生が御指摘のとおり、三級事業所の場合と一、二級事業所の場合と同じような省令の規定でいいのかという問題、特に一級、二級というのは、御案内のようにコンビナートがその大きなウエートを占めております。コンビナートのような危険物が大量にありますようなものと通常の高圧ガスを取り扱います場合と同じ距離でいいのかという問題は、確かに先生の御指摘のとおりでございます。
 この二十メートルの根拠でございますけれども、実は一、二級事業所が二十メートルで安全ということではなくて、コンビナートの場合で申し上げますと、大体導入技術に始まっております。したがいまして、施設、技術の態様、あるいはそれを運転いたしますノーハウ、あるいは操作のマニュアル等々、すべて外国からそのまま受け入れるというような事情にあったのでございます。したがいまして、省令という形で何メートルというふうな記述がきわめて困難な状況にございます。そこで、保安を確保いたします見地から、現実に民家との距離を考えます場合に、可能な限りそれ以上の距離をとらせるというふうな事実上の指導をしてまいったわけでございます。で、これもケース・バイ・ケースの指導になりますので、具体的な数値上の根拠はございません。
 一般にこの二十メートルの根拠でございますが、実は類似の法体系として消防法がございますが、消防法の場合も大体十五メートル以上というふうな形になっております。で、石油精製設備というのは大部分消防法の適用を受けるのでございますが、ああいった危険物を大量集積しております場合でも、消防法に基づきます省令として十五メートルというふうな形になっております。実際民家との距離が十五メートルかと申し上げますと、相当な距離をとっております。その辺がこの二十メートルの根拠並びに実情でございます。
#62
○大矢正君 そうなってくると、これは自治省、消防庁を呼んできて、ここであなたのほうで考えておる消防法に基づく距離はどういう根拠があるのかというようなことを聞いてからでないと、正確なお答えはあなたからはいただけないということになるわけですが、それは間に合いませんからここで申しませんが、いずれにしても、先日のテレビでも出ておりまして、被害者がおりましてそれが言っておりましたが、境界線から二百メートル離れておるところの自分の住宅でも、あの事故の際に窓をあけたら、顔が熱くてとにかく窓を締めなければいられなかった、雨戸を締めなければいられなかった、しかも焼けた鉄板なんかかなり大きなものが飛んできている、それもテレビでやられておりました。境界線から二百メートルも離れていてもそれだけの激しさがあるにもかかわらず、二十メートルでよいという根拠はそれはもうすでに失われたと、そういう判断をしてさしつかえないのではないかというふうに私は考えますね。ただ何メートルがいいかということになると、それは非常にむずかしい。ある程度これは常識として、あるいは、過去における事故が起こった際に火が及ぶ範囲とか熱気の及ぶ範囲はどの程度であったとか、そういうことも、非常に簡単なことではあっても常識的に私は一つの根拠になるのではないかと思うのです。
 問題はやはり二つあると思うのです。この種の事故を起こさないための処置を保安上どういうふうにとるかという問題が根本的に一つあると思うのですね。これは起こさないことが第一ですから。それから、しかしそうはいっても、現実に出光のように起こっておりますし、あるいは、まあ異質のものではありますが、大分における住友工場のように、倉庫に入れた肥料が火災のために燃えるというようなことも現実には起こっておるわけですから、そういうものが起きた際に防災上どういう措置をとるべきかへあるいは起こることを前提にして、どういう防災上の措置をとっておくべきかという二つの問題が私はあると思うんです。そこで、先般、新聞等にも出ておりましたが、建設省がこれはもちろん研究の一つの目安として出されたものではありましょうけれども、関東大震災のような大型地震が起きた際におけるコンビナートと、それから市街地もしくは人家との距離はおおむね五百メートルぐらいが必要だと。できればもっと必要だけれども、最小限度五百メートルぐらいはやはりないと、化学工場等の周辺には大きな被害が生ずるおそれがあるので、できれば五百メートル程度の断層を、空間をと言いましょうか、そういうものをやっぱり持ったほうがいいではないか、遮断をする意味でというふうなことが出ておりますがね。これが即これからの防災上、たとえばコンビナートと民家との間の距離にそのまま適合するかどうかは別といたしまして、そういうことが政府の一つの機関であります建設省から出されているということと、今度のこの問題との関係についてはどのようにお考えを持っておられるか、お答えをいただきたい。
#63
○政府委員(林信太郎君) お答え申し上げます。
 建設省から日本都市センターに委託して作成されました、京浜臨海部防災遮断帯整備基本調査及び京浜臨海部防災遮断帯防災効果調査報告書というのが出ております。これは、大震災に備えまして京浜地区のコンビナートとの防災遮断帯として一応理想的な遮断帯の幅員を測定、推測したものでございまして、それを五百メートルとしておるわけでございます。この前提には、私ども技術的に幾つかの検討をいたしまして、いろいろ検討がなお不十分である点もございますけれども、考え方として、やはり私どもコンビナートを所管いたします者といたしましても、総合して十分考慮に入れていかなければならない問題だと考えております。
 いまの理想的な遮断帯というのは、工場から民家のほうに五百メートルのオープンスペースをとるべきである、こういう報告書でございます。私どものほうは、いろいろ立て方がなお不的確でございますけれども、たてまえとして工場側に極力空間を、距離をとっていく、こういう形で考えております。
 先ほどの二十メートルは、へいのないような場合には民家ということでございますが、コンビナートの場合には境界線からという形で計算をいたしております。したがいまして、建設省のこの報告書にいわれますオープンスペースと、私どものほうのなるべく工場の内部に施設、タンク等を引っ込ませるということが両々相まちまして、この工場の災害防止に寄与していくべき問題ではなかろうか、問題であるというふうに考えておりまして、なお建設省ともその後十分連絡をとっております。
#64
○大矢正君 具体的な話ですがね、境界線の外側にたとえばかなりの空間があると、あるいは保てるような条件で工場が立地するなら、これは問題はないと思いますね。たとえば川があるとか、それから、まあ、川じゃなくても国有地があるとか、あるいは都道府県の土地があるとかというようなことで、現実にそこに住宅なり、そういう人が住むようなものが建設される可能性がないという場合は、それはまあそれなりでけっこうですがね。しかし、現実問題としてたとえば工場の境界線がありましたら、法律上からいけば、その境界線から五十センチ離れりゃ住宅を建てる権利はあるわけです、そうでしょう。何も土地を持っている人間が家を建てる場合に、横に工場があるからといって自分のほうから家を建てないというばかなことはないんであって、へいから五十センチ離れてさえいれば、家を建てることはもう当然の権利としてこれは認められているわけですから、それは法律上も何も言えないわけですね。ですから、結局のところ人の住んでおる家とか、あるいは公共施設等々と工場の設備との距離を離そうとすれば、これは勢い理屈のいかんを問わず、この製造施設と境界線の距離を大幅にとるという以外に方法はないわけですね。いま私が申し上げたとおりに。結果としてはそうなってしまうわけです。特別な場合を除いては。川があるとか特殊の空間がある以外はですね、当然そうなるわけです。
 で、しかもまた、たとえば会社だって、ある地域を購入して、その内側にへいを回して、へいの外に何十メートルも、あるいは百メートルも百五十メートルも自分の土地がありながらそれを空閑地にして、へいはずっと前のほうにしておきますなんて、そんなばかな会社はないはずですから。自分の用地である限りは、自分の用地の限界にへいを回すなり、それに類似する一つの手段を講ずると思われますね。といたしますると、やっぱり企業自身がいかに境界線とそれから製造施設との間に距離を保つかということが、根本的に大きな問題だと私は思うんですね。
 まあ、時間もそうありませんので、こまかいことは申しませんが、大臣、そこでいかがですか、私は先般、徳山事故がありました直後に、現在審議中の工場立地法については、単にその環境保全、緑地をふやすことによって環境上土地を広げるのだ、スペースをよけいにとるのだというような趣旨だけではなしに、防災上からやはり工場立地法というものも考えるべきではないかという質問をしたんですが、たいへん残念ながら大臣は、いや、いまの法律はそこまで考えていないからそれはそれとして、別個な問題として考えざるを得ないのだという御答弁がありました。ところがこの間、公明党の峯山君が質問いたしましたら、私に対する答弁とだいぶ違いまして、やはり工場立地法の中でできる限り最大限、防災上の趣旨も盛り込まなきゃいかぬというような御答弁でですね、だいぶニュアンスが違ってきておるわけでね。貫禄の違いで私が質問するとだめだと、しかし、峯山君ならこれは貫禄があるから十分な答弁をされたのかどうかわからぬけれども、実際にどう考えておられるかですね。私は、せっかく工場立地法を審議いたしておるのでありますからして、もちろん、その工場立地法の中で実行できる部分、できない部分があるとは思いますが、またいまこの段階にきて工場立地法を修正せよ、あるいは防災に必要な事項をつけ加えよと言いましても、政府としてもなかなかむずかしかろうと思う。あらためて次期国会等においてそういうことをされるならできるでしょうけれども、国会もここまで迫ってまいりますればなかなか困難でしょう。しかし、運用上、工場立地法の中で防災措置に関してできることがあれば、最大限それを活用してやはりやるべきではないかという私の考え方がありますが、大臣、いかがでしょうか。
#65
○国務大臣(中曽根康弘君) コンビナートの保安距離に関しましては、前委員会における大矢委員の御指摘もありまして、その後私は、省として関係部局に再検討を命じて、その検討しました結果の結論をきょうは御報告申し上げたいと思いますが、御指摘の保安距離につきましては、事柄の重要性にかんがみまして、この際、最終的結論が出るまでの暫定的措置として、具体的に次のような指導を強力に行なってみたいと思っております。
 最終的な結論が出るという意味は、ただいま、本年二月より高圧ガス等保安審議会におきまして、コンビナートの総合的保安体制のあり方のうち、重要な一項目として専門の分科会を設けまして、コンビナートの保安問題についていろいろ集中的な審議を行なって、可及的すみやかに結論を得るようにいまお願いしておるところでございます。
 さらにこれに先行して、特殊法人高圧ガス保安協会の中に各界の権威を集めたコンビナート防災システム開発調査委員会、委員長は難波東大教授でございますが、これを設けて、コンビナートにおける集積の影響や設備間距離の問題、周囲環境の影響等に着眼いたしまして、いろいろな設計やら防災体制やら、コンビナートのモデル基準について科学的検討を行なっておりまして、これも本年度中に結論を見る見込みであります。そういう諸般の検討、それからさらに大規模な爆発実験も行ないまして、保安距離の拡大等について具体的な検討も急がしたいと考えておるのでございます。そういうような最終的結論が出るまでの間の暫定的措置として、具体的に次のような指導を強力に行ないたいということであります。
 新増設につきましては、エチレンセンターについて、高圧ガスの設備とそれから当該事業所の一般民家に関する境界線との距離を二百メーター以上とする等の措置をとり、本年十月以降に決定される予定の新規着工地点、四十八年度において二カ所、四十九年度において二カ所の予定でありますが、これに直ちに適用する。既設のものにつきましては、エチレンセンターについて、高圧ガス設備と一般民家との距離を百五十メーター程度とする等の措置をとる。またこれらの措置とあわせて、今回のコンビナート総点検の結果を踏まえて次のような措置を早急に実施させたいと思っております。
 それは、地域住民の安全をより一そう確保するために、民家との境界線に沿って植樹、散水施設の拡充、あるいは防護壁の設置等の措置を必要に応じて講じさせる。各種のマニュアルの整備、保安教育訓練の強化、緊急時の措置の徹底などの措置を講じさせるとともに、高圧ガス危害予防週間――本年十月に予定しています――に、コンビナート全事業所を対象に臨時に、この点を含めて保安体制の自主的点検を緊急共同防災訓練とともに実施させる、こういう予定でございます。
#66
○大矢正君 いま大臣がおっしゃられました部分の中で、既存のエチレンセンターについての高圧ガス設備と一般民家との距離を、少なくとも百五十メートル程度とらせる等の指導を行なうという御説明でありますが、この意味は、設備と一般民家ですから、境界線と設備との関係というものについては明確な内容にはなっておらぬということになりますね。その点はどうなんですか。たとえば私の手元にも一、二、三級事業所の分類があり、また提出いただいた資料の中には高圧ガス設備から民家との距離、あるいは境界線からの距離と、いろいろと書かれたものがありますが、現実にいまおっしゃられたような既存のものについては、百五十メートルというのは具体的にどういうことをさすのか。
 それから、たとえばこのこと――既存のものについて云々ということから、既存の工場の中で特に住民と話し合いをする、その他地方自治体とも話し合い等をして、これに相当する程度の距離をあけるためのまあ立ちのきその他の話し合いをせなければいけないわけですわね。そういうところが現実に起こってくるのかどうかという、二点について事務当局からお答えをいただきたい。
#67
○政府委員(林信太郎君) ただいまの御質問に補足的に御説明申し上げます。
 第一点でございますが、既存の設備の場合には、民家との距離は百五十メートル程度に指導してまいりたいということでございますので、新増設の場合の民家がございます境界線から計算してというやり方とは違うわけでございます。これはすでに工場ができ上がっておりますし、その民家も事実上存在しておりますので、なかなかむずかしい問題でございます。本来ならば、大矢先生ただいま御指摘のように、境界線からという形をとるべきでありますが、とりあえずの当面の指導目標でございますので、したがいまして、この既存の分につきましては、民家との距離という形で進めてまいりたい。
 それから第二点でございますが、こういった指導基準の変更ではございますけれども、民家との話し合いが当然起きてまいります。私ども手元に持っております資料でいろいろチェックいたしますと、相当困難なところもあろうかと思っておりますが、この辺はただいま大臣の答弁にもございましたように、極力強力に指導してまいりたいというふうに考えております。
 個所数でございますが、一般民家との距離ということで言いますと、事業所の数で四つございます。具体的には、先回の委員会で大臣から答弁がございましたように、日本石油化学の川崎、それから住友化学の大江製造所、それから三井石油化学の大竹及び岩国という四つの事業所になろうかと思っております。
#68
○大矢正君 これは局長、新設の場合の二百メートルということももちろん問題があるのですが、既存のものについては百五十メートルの空間を設けるということ、それは事業所の境界線というようなものを全然考慮に入れないで、ともかく製造施設と人家との距離、人家に面したほうの距離は百五十メートルということのようでありますが、百五十メートルあれば先日の出光の徳山事故のような場合においても、十分その安全を維持できるという体制になるということなんでしょうか、防災上不安がないということなんでしょうか。その百五十メートルという意味は、私も黙って、ああ百五十メートルでございますか、それはまあいままで二十メートルですから百五十メートル、百三十メートル延びたのですからけっこうですと言いたいところだけれども、簡単にもなかなかそうは言えない。百五十メートルは何かということをおまえは質問してこういう答弁を受けたんだが、それはおまえはどういうふうに理解したのかと言われたときに、私自身も、百五十メートルというのは何だかわからぬけれども、政府が百五十メ−トルと言ったから、現実は二十メートルだから百三十メートル延びたからいいじゃないかと言うわけにはいかぬわけで、百五十メートルというものの、たとえそれが技術上とか何とかというようなむずかしいことではなくても、大体百五十メートルあればまあよいのではないかというような意味における簡単な一つのものさしでもいいんですがね。何かないと、私も百五十メートルはけっこうでございますとは言えないので、その辺もう一度ひとつ答弁願いたいと思うのです。
#69
○政府委員(林信太郎君) お答え申し上げます。
 百五十メートルの暫定指導基準という考え方、線を出しました背景、経緯でございますが、たまたま出光事故を契機に省内に設けられました事故調査委員会に計装、化学反応、安全、あるいは捜査といったような各方面の一級の専門家が何度も会合されたわけです。そこで、前回大矢先生から御指摘もございましたが、私ども関係者がそういう問題を出して、その際に伺いました専門家の一つの定着した常識と申しますか、これは世界的にそういうものだというふうに教えられたわけでございます。
 御紹介申し上げますと、爆風によります死亡の距離が、直接爆風による死亡の距離が三十メートル、飛散物は別でございます。それから輻射熱、特に徳山の場合には冷却用のプロピレンの二百トンに余りますものが長く燃焼し続けましたので、それの輻射熱ということで周囲の民家にたいへんな不安を与えております。で、この輻射熱によります危険の限度と申しますか、それが大体百メートルぐらいだというふうに言われております。したがいまして、そういった状況を前提にしながら、いろんな委員方の意見も総合いたしまして、とりあえずの指導基準といたしまして百五十メートル程度ということにしたわけでございます。
 それから、これで防災措置はだいじょうぶだというものではございません。ただいま大臣の御答弁の中にもございましたように、境界線に植樹をするとか散水装置を設けさせるというふうな、あるいは場合によりましては防護壁を設けさせるというふうな、そういう防災施設も併用いたしまして、この周囲、民家に対する安全に万全を期してまいりたいということでございます。
#70
○大矢正君 最後にお尋ねしますが、この一般高圧ガス保安規則というものは、これはお直しになる考え方があるのかどうか。さっきから申しておりますように、これは二十メートルあればいいと書いてあるわけですから、これがある限りは、まあ通産省にさからってまで大きな企業がやるとは思われないけれども、しかし理屈から言うと、この規則がある限りは、製造施設から境界線まで二十メートルあればこれはかまいませんということにならざるを得ないわけでしょう。規則はそうだけれども、行政指導として別なことをやりますというのもちょっと矛盾した話でね。これはどうなさるのですか。
#71
○政府委員(林信太郎君) ただいまの二十メートル以上というのは省令の規定でございます。高圧ガス取締法の法律のほうには、この必要な技術基準をきめなければならないと。したがいまして、技術基準を省令でどう書くかということの問題かと思っております。二十メートルの表現に、記述につきましては、コンビナートに関しまして先ほど大臣答弁にございましたように、高圧ガス審議会の結論を待ちまして、省令は改正するつもりでおります。
#72
○大矢正君 もし、その改正をするならば、単に保安距離の問題だけではなしに、まだまだやはり純粋な意味の技術基準となるべき内容のものもあるでしょうし、それから特に指摘をしたいのは、一級事業所の場合は保安検査を三年に一回、二級事業所の場合は二年に一回、三級の場合は一年に一回。それはもちろん企業者側自身の自主保安というか、自主点検をおやりになるのでしょうけれども、三年に一回役所が点検をすりゃいいという内容は、これはどう考えても私は矛盾があるように思えてならない。それは、まあそれだけが検査だとは申しませんがね。やはりこれは最少限度一年に一度は保安検査をするような内容に改善をすべきではないかというように考えますし、またある意味で、この規則と直接関係あるかどうかはわかりませんけれども、定期的あるいは不定期でもけっこうですが、この種の問題に関して技術を有する者が、通産省独自としてこの点検をして歩くというような制度も、今後やはり考えるべきじゃないか。たとえば地方自治体にこれを委任をして、地方自治体がやるといたしましても、地方自治体としてそのような、ある程度点検できるような有能な技術者を集めるといいましても、現実的には非常に困難が伴うと私は思いますので、そういうことを含めて今後ひとつ御検討をいただきたいということを要望いたしまして、私、質問を終わりたいと思います。
#73
○理事(剱木亨弘君) 他に御発言もなければ、本日の調査はこの程度にいたします。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後零時三十六分散会
     ―――――・―――――
ソース: 国立国会図書館
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