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1972/09/20 第71回国会 参議院 参議院会議録情報 第071回国会 農林水産委員会 第30号
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1972/09/20 第71回国会 参議院

参議院会議録情報 第071回国会 農林水産委員会 第30号

#1
第071回国会 農林水産委員会 第30号
昭和四十八年九月二十日(木曜日)
   午前十時二十二分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 九月十八日
    辞任         補欠選任
     塩出 啓典君     山田 徹一君
 九月十九日
    辞任         補欠選任
     村田 秀三君     横川 正市君
     山田 徹一君     塩出 啓典君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    理 事
                園田 清充君
                初村滝一郎君
                工藤 良平君
                中村 波男君
                塩出 啓典君
    委 員
                梶木 又三君
                河口 陽一君
                小林 国司君
                温水 三郎君
                平泉  渉君
                堀本 宜実君
                辻  一彦君
                塚田 大願君
   国務大臣
       農 林 大 臣  櫻内 義雄君
   政府委員
       農林省農蚕園芸
       局長       伊藤 俊三君
       農林省畜産局長 大河原太一郎君
       水産庁次長    安福 数夫君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        宮出 秀雄君
   説明員
       環境庁水質保全
       局土壌農薬課長  遠藤  茂君
       厚生省環境衛生
       局乳肉衛生課長  岡部 祥治君
       通商産業省立地
       公害局鉱山課長  蓼沼 美夫君
       労働省労働基準
       局補償課長    山口  全君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○理事補欠選任の件
○農林水産政策に関する調査
 (当面の農林水産行政に関する件)
    ―――――――――――――
  〔理事初村滝一郎君委員長席に着く〕
#2
○理事(初村滝一郎君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 去る十八日、塩出啓典君が委員を辞任され、その補欠として山田徹一君が、また十九日、山田徹一君及び村田秀三君が委員を辞任され、その補欠として塩出啓典君及び横川正市君がそれぞれ選任されました。
    ―――――――――――――
#3
○理事(初村滝一郎君) 理事の補欠選任についておはかりいたします。
 委員の異動によりまして理事が一名欠員となっておりますので、この際、理事の補欠選任を行ないたいと存じます。
 理事の選任につきましては、先例により、委員長にその指名を御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#4
○理事(初村滝一郎君) 御異議ないと認めます。
 それでは理事に塩出啓典君を指名いたします。
    ―――――――――――――
#5
○理事(初村滝一郎君) 当面の農林水産行政に関する件を議題といたします。
 本件に対し、質疑のある方は順次御発言願います。
#6
○中村波男君 農林省は昭和四十六年の十二月に、畜産局長の私的な諮問機関ともいうべき飼料規格等設定委員会の議を経まして、飼料の品質改善に関する法律施行規則で、尿素及びジウレイドイソブタンを加えて飼料に指定をいたしたわけであります。私たちは、もともと尿素とジウレイドイソブタンの飼料化については、安全性について、たいへんな疑問を持っておったのでありますが、残念ながら、私たちの疑問が富山県で表面に出てきたというべきであります。御承知のように、農林省の安全宣言によりまして、その後着々と飼料化が進められ、全農においては、四月二十四日に、従来の飼料からいわゆるハイラックという名前で切りかえたわけであります。そうしますと、たいへんな被害が続出をいたしまして、十数頭が死亡または屠殺いたした。また、下痢が出る、あるいは乳量が減った。後遺症は今日なお続いておるわけであります。
 この実態について、まず農林省にお伺いしたいのは、どのようにこの問題について対処してこられたか。また、農林省としての経過並びに今日の問題点について御報告を求めたいと思います。
#7
○政府委員(大河原太一郎君) 御指摘のとおり、本年の五月から六月にかけまして、富山県の一部地域におきまして、組合系飼料を、お話ございました商品名ダイブという非たん白系の窒素化合物を、配合飼料の一部に加えました配合飼料を給与いたしました乳牛につきまして事故が起こりまして、食欲不振になり、あるいは乳量低下、お話のような下痢というような症状を呈しまして、六頭が死亡、九頭が廃用屠殺という事態が起きたわけでございます。
 で、これにつきましては、私どもといたしましては、この事故原因について早急に富山県当局の報告を求めて、それぞれの措置をとったわけでございますが、まず、これらの事故牛については、県の家畜保健衛生所において解剖検定、検査をいたすという措置がとられたわけでございますし、また、県を指導いたしましてそれからの検体の一部を国立の家畜衛生試験場に対してさらに検定を行なうような手続を進めてきておるというような点とか、あるいは関係飼料を給与いたしました全農に対しましては、その販売なり、販売の際の指導状況というようなものについても、事情を聴取いたしまして、また製造メーカーの品質管理が問題であったかどうかという点については、当該メーカー、これは三菱化成でございますが、これについての品質管理状況を詳細に聴取したわけでございます。また、名古屋の肥飼料検査所におきまして当該配合飼料の成分の分析ということを行ないまして、諸般の原因の究明と、その事故についての今後の対策に資するための措置等をとり進めておるところございます。
#8
○中村波男君 いま局長の報告にもあったように、農林省は、県の報告をとって、その上で検討したとおっしゃっている。名古屋の肥飼料検査所が分析したとおっしゃいまするけれども、あまりにも被害が続出いたしたので、県から飼料の鑑定を依頼してから初めて手をつけたというのが実態じゃないですか。私は、これだけ大問題を引き起こしておるのにかかわらず、農林省は、直接、一人も、一回も、調査に出かけておらない。先般現地調査をいたしまして、あまりにも農林省の責任の希薄さ、責任のなささ――県をはじめ地元の農協その他の畜産団体、農民等は、農林省が指定をしておるから安全なんだと信じて使ったのであります。また、今日もこの安全性について疑いを持つような発言ができない。農林省がやったのだからということで、この問題になりますと、口を緘して言わないわけであります。そういう実態から考えましても、経過からいいましても、この問題について一度も調査をしておらない。東京でメーカーからどのように事情聴取をされたか知りませんけれども、そういうことで被害の実際の状況というのを承知することには私はならないと思う。その点について、どうお考えになっておりますか、その責任をどう感じていらっしゃるか、まず明らかにしてもらいたい。
#9
○政府委員(大河原太一郎君) お話しのとおり、現地の調査をいたしまして、国がみずから調査するのが最善かと思います。で、その点について必ずしも十分ではない、不十分であるというおしかりについては私どももさように思うわけでございますが、事故が起きました以降、県の詳細な報告を受けまして、原因を究明して明らかにすることを早期に行なうことがきわめて必要であるという判断のもとに、先ほど申し上げましたように、家畜保健衛生所等、県の機関にこれの早急な解剖検定を行なってもらう、その結果をわれわれとしても承知したい。あるいはさらに中央の国立衛生試験所において、最終的にその検体を検討の上で結論を出す。さらに国立の畜産衛生試験場にも当時の給与方法等につきまして――非蛋白系の窒素化合物については、給与方法についてきわめてデリケートな点もあるので、当時の事故関係農家の飼料の給与状況あるいは飼養管理の状況というような視点からの原因の究明も判断を願うなり、あるいは県を指導いたしまして、国の名古屋肥飼料検査所に早急に当該配合飼料を持ってまいりまして、それの検査、分析を進めるというようなことで、それぞれ進めたわけでございますし、また、販売の責任者でございます系統団体のこの販売方法なり、あるいはそのえさを販売する場合の給与方法について、販売者自身の農家に対する指導はどうなっていたかというような点についてそれぞれ進めたわけでございます。
 で、御指摘のように、この種の問題につきましてやはり相当な問題であるから、したがって、現地にやはり国自身がまいって、その究明をするのが必要ではないかという点については、われわれとしては、当時の事情でほぼ、県なりあるいはそのほかの諸般の手続で、原因究明の糸口を得るものというふうに判断いたしましたので、そのような処置をとったわけでございますが、今回の事件にかんがみまして、今後、この種の飼料等を原因とする家畜の事故等については細心の注意と、それぞれの所要の万全の措置等については努力をいたしたいというように考える次第でございます。
#10
○中村波男君 いまさらくどくどと言いわけがましい御答弁をいただいても、実際には私は意味がないと思うわけです。したがいまして――私たちも一日でありましたけれども、社会党の調査団を編成いたしまして、私もその一員として現地を回ったわけであります。また、社会党、富山県連にも、前々から調査をいたすように連絡がとってありましたので、それらを集約して、簡単に私たち調査団としての見てきた経過を申し述べてみますと、共通して言えることは、第一には、えさをハイラックに切りかえてから、乳牛の中でも、分娩後の搾乳量の高いいわゆる全力疾走している乳牛が、被害を受けて廃牛になり、あるいは死亡をいたしたということがあります。二番目は、搾乳量が農家によっては、最盛時は四割ぐらい減量であったといっておりますが、平均的にいえば二割五分から三割程度に乳量は激減している。それから、あまり多くはありませんけれども、流産がある。発情をしないので種つけができない。下痢の状態というのは、二百頭以上に及んだと県も報告しておりますが、相当長期間続いたのであります。したがって、ハイラックは六月中旬に中止をいたしまして、従来から使っておったレ・プランに置きかえたのであります。しかし今日なお乳量はもとに戻らない。このことは、一過性の症状ではない、内臓に慢性的な障害を受けていると、私たちは考えるのであります。これが私は常識であり、実態であろうと思います。
 したがって、以上被害の共通点を申し上げたわけでありますが、飼料の開発者たちが公表しているダイブ入り飼料の成績が、大豆かす入り飼料に比して、ほとんど遜色がない。こういう実験結果が報告されて――言い方は、酷かもしれませんけれども、農林省は、それをウのみにして、これを認可した、飼料に加えたのではないかと私たちは大いに疑いを持っておるわけであります。もちろん、安全性について、いま断定的に申し述べる知識も私たちありませんし、また、これは二年や三年で解明できるようなものでもないと思いますので、それはそれといたしまして、とにかく給餌の方法が悪かったから被害が出たのだというのが、農林省のいまの態度だと思います。しかし、与え方が悪かったから、被害が出たというこの事実というのはおおい隠すことはできない。したがって、あとから詳しくそういう実態を申し上げまするけれども、そういう経過に照らしまして安全性という問題は、もう一度もとに戻して検討する必要があるのではないか。
 そういう観点に立ちまして、短かい期間の私たちの調査であり、また、東京都立大学の高松修先生をはじめ、これに前々から安全性に疑問を持ち、研究をしていらっしゃる学者あるいは実際農家と接触している獣医師等々の意見をいろいろと聞きまして、断定的な結論ではありませんけれども、私たちは私たちなりに、この問題についての疑問点を幾つか持っておりますから、あとから具体的に投げかけて検討の資料にもしてもらいたいし、また、見解も明らかになるものがあるならば、明らかにしていただきたい、こう思うわけであります。
 以上申し上げましたことについてお答えをまずいただきます。
#11
○政府委員(大河原太一郎君) お答え申し上げます。
 このジウレイドイソブタンを含めました配合飼料につきましては、ジウレイドイソブタンを配合飼料として認める場合におきましては、家畜生理の視点及び畜産物を通ずる安全性の視点から、当時の試験を一応検討いたしまして、その結果として認めたわけでございます。で、これについては、われわれといたしましても、当時の段階におきましては、得られるデータに基づいて責任をもって判断をしたというように考えております。先生のお話には、家畜、乳牛に対する栄養生理の問題と、それから安全性の問題と二点があるかと思うわけでございまして、その飼料として認める際におきましても、私どもは、原因を断定的に申すわけではございませんが、当時におきましても、この尿素なり尿素系飼料では乳牛の生理等から申しまして、その急激なえさの切りかえというような問題については、非常に家畜衛生上の問題があって、したがって徐々にこのえさを――この飼料の入った配合飼料に切りかえる際には、一定の期間を経過しながら切りかえるべきであるという点と、それから、他のたん白、青草とか、その他たん白の過剰を組み合わせる、飼料のたん白過剰問題を招来しないような配慮が必要であるという点については一応指導したわけでございます。で、そのようなことで、当時この飼料の諸般の特性についての使用方法の指導は一応行なっておるわけでございますが、今回の事件等もございますので、またこれについて、いろいろ、なお検討すべき点もあるというようなお話もございますので、従来のデータにさらに、専門的な立場からの御意見を承わりまして、諸般の家畜生理なり、あるいは畜産物を通ずる安全性等の問題について、万遺憾なきを期したいというふうに考えておるわけでございます。
#12
○中村波男君 条件づき使用を認めたんだ、そのためには、万全とはおっしゃいませんけれども、指導をしてきたのだと、こういう御答弁でありますが、富山県の経済連が、――全農と両方の名前になっておりますけれども。ハイラック14、ハイラック18について使い方、特徴等々についてのパンフレットがここにございます。それによりますと、まず特徴として、いろいろ書かれておりますが、「安定した蛋白資源として新開発飼料原料としてDUIBをハイラック14に一・七%、ハイラック18に三・〇%を配合しております。」こういうふうに書いておりますが、そこで、「DUIB入り乳配ですが従来の飼料と比べて特別に粗飼料の給与方法、飲水の与え方を変える必要はありません。」こういうふうに書いておるわけですね。したがって、いままでの飼料と何ら変わっておらない、与え方はそのままでよろしいということが書いてあるわけでありますが、こういう文書を農林省は事前に知っておられたのかどうか。この文書は検討していらっしゃると思いますが、こういう文書が適切な指導のパンフレットとしてよいと思っていらっしゃるのかどうか。いろいろまだ問題点がありますので、二、三拾ってみたいと思うんでありますが、「ダイブ入り飼料の使い方は従来の飼料と同じです。」と、はっきり書いておりまして、安全性についてもいろいろと書かれておるわけであります。私は、これはいわゆる誇大広告だと、こういうふうにきめつけてもよろしいのではないかというふうに考えておるわけでありますが、これに対する、まず見解を求めます。
#13
○政府委員(大河原太一郎君) 先生御指摘の富山の組合飼料のハイラックを販売する際の普及用のチラシは、私どももこれを検討さしていただきました。で、これにつきましては、私どもは、このハイラックの成分につきましては、われわれといたしましては、飼料検査の、事故後、現物の成分分析の結果におきましても、必要な成分量を確保しているというふうに判断しておりますので、飼料としての価値については、われわれとしては、その価値を認めるものというふうに考えております。ただ、その使用方法につきまして、相当な注意と申しますか、農家に対する注意のもとに、これを使用するという点についての適切な表示というものなり、あるいは普及というものが、必ずしも十分でなかったというふうに考えるわけでございまして、御指摘のチラシ等を読みますと、これについて、農家が一挙に、急激に、また、他の飼料の粗飼料との組み合わせ等についてはそう念頭に置かないで、直ちに切りかえるというようなことによって、いろいろな問題を惹起する可能性があるものというふうに考えております。
#14
○中村波男君 新しく飼料に加えた立場からいえば、安全性について問題があるなどという答弁はできないと思いますから、まあ、ダイブそのものの安全性については、また別の機会にゆっくりと議論をいたしたいし、見解も承りたいんでありますが、現実の問題として、たいへんな被害が出ておる。したがって、この被害が出たことに対する今後の対策というものが、早急に検討をされなければならぬと思うわけです。
 全農の話によりますと、富山県の被害にこりまして、一応製造販売を中止したと、しかし、九州においては、肉牛の育成用として九州一円にダイブ五%入りを使わせておる。聞くところによると、月間単品にして七十キロ、配合にいたしますと千四百キロぐらいになるようでありますが、使っておるようであります。これに対する、いわゆる「県連部長会議資料」というのをいただいたんでありますが、これにも「安全性についても勿論確認されております。」こういうふうに書いておる。まだ事故が出ておらないようでありますが、しかし、富山におきましても、食わせたあくる日から被害が出たのも若干あるようでありますが、やはり死んだという期間というのは、二十日なり一ヵ月なり四十日かかっておる。乳牛と肉牛との生理的な違いというのもあるようであります。乳牛はデリケートとということをいわれておるのであります。
 しかし、私は、富山の実態から見て肉牛であるから絶対安全だというふうに言い切れるかどうか。そういうことを考えますと、農林省として飼料に加えたというメンツにとらわれずに、これは原点に立ち戻って、早急に検討をされるべきであると思います。そのためには、まず私は、結論から私の要望を申し上げますが、今回の被害の実態、事故の実情というものを、つまびらかにしない中からは次の対策は生まれてこない。ですから、電話で連絡を受けて、それをもとにして、私たちに、農林省としての事故原因について、という報告書をいただいておりますが、これによりましても「青刈牧草によるたん白質の過剰と飼料中の全窒素にしめる非たん白態窒素の割合の過剰」とか、配合過多である場合には嗜好性が低下するとか、こういうふうに、いろいろ書いておりますが、これは、これを使った農家の実態というのは、必ずしも同じでないわけです。いわゆる牧草、なま草等をほとんど使っていない農家でも被害が出ておるわけであります。
 したがって、一番私は問題にいたさなければならぬと思いますのは、尿素中毒であるとは考えられないと断定しておるわけです。尿素中毒ではないと断定されることについての根拠をまず承りましょう。
#15
○政府委員(大河原太一郎君) 「いわゆる」ということばをつけさしていただきますが、いわゆる尿素中毒はアンモニアの急激な発生によりまして、それによってきわめて短日間に、反すう動物が斃死するという現象を尿素中毒というふうに判断しておるわけでございます。で、なかなか――中毒につきましては、専門的な立場の見解を承知いたしますと、その原因が、病理組織的その他の点から、その血液だとか、内臓の中とかその他に中毒原因物質が確定、はっきり検出される場合以外は、中毒というふうには断定しにくいというふうに相なっておるわけでございまして、富山県におきます家畜保健衛生所の剖検、解剖検定によりましても、その辺の中毒物質の検定が、それをつかめないために、中毒的な疾患だとか、中毒症状類似のものというような専門的な判断をしておるわけでございます。したがいまして、われわれはその点について、その専門の立場から出た意見について申し上げておるわけでございます。
#16
○中村波男君 具体的にお尋ねしたいと思うんでありますが、富山県から提出を願いました「死廃牛の明細」というのがここにありますが、これによりますと、病名として、中毒性疾患類似あるいは中毒性の疑いがあり、こういうように病名として書かれておるわけであります。そこで、もう一つ、ことばの内容を深めておきたいと思うんでありますが、農林省として、尿素中毒とは言い切れないけれども、とにかくハイラックを食わせたために、飼料による中毒だというふうには言えるのか、言えないのか、その点明らかにしていただきたい。
#17
○政府委員(大河原太一郎君) お答え申し上げますが、中毒ということばの使い方もいろいろあると思いますけれども、ハイラックを使用するし、さらに他のえさとの関係あるいは急激に切りかえというようなことによりまして、牛の状態が消化障害なり、あるいは栄養的なアンバランス等が重なりまして、このような事故を引き起こしたという点については否定するものではございません。
#18
○中村波男君 厚生省おいでいただいておりますね。――二頭は、いわゆる食肉センターで解剖をいたしておられるようでありますが、このおもなる剖検所見、あるいは病名について御調査をいただいておりますれば、この機会に御報告をいただきたいと思います。
#19
○説明員(岡部祥治君) 先生御指摘のものは六月の二十日と六月の二十二日に富山の食肉センターに搬入されたものと思います。まず、六月の二十日の分につきましては、肉あるいは実質臓器等に全身性の出血斑があるというようなことから、精密検査の結果、一応中毒症の疑いということで全部廃棄をいたしております。それから六月の二十二日の分につきましては、むしろ中毒症状ということよりも病理あるいは細菌学的検査によりまして、敗血症がございました。その敗血症状がございますために、廃棄をしろということで全部廃棄をいたしております。
#20
○中村波男君 私、そういう点では全くのしろうとでありますからお聞きするわけでありますが、何に中毒したかということは、簡単に結論が出せないまでも、解剖をしてその症状というものを見れば、これは中毒症であるか、ないかということは、はっきり断定のできないものもあるかもしれませんけれども、断定できる。そういう状態ではないかと思うわけでありますが、この報告によりますと、全部が全部、断定的な病名にはなっておらない。食肉センターの病名だけは「中毒様疾患」というふうに書いてありますが、その点ひとつしろうとでありますから、わかりやすく教えていただきたいと思うわけです。
#21
○政府委員(大河原太一郎君) 必要がございますれば、さらに専門的な立場からの関係課長からお答えさしていただきます。
 先ほども先生の御質問に対する御答弁で申し上げましたように、中毒と言う場合においては、原因物質が胃とか臓器とかあるいは血液等にはっきり確認される場合に、従来の剖検的所見では中毒というふうにしております。現に富山県の家畜保健衛生所の剖検によりましても、中毒的な疾患または類似のものということについては、そういうそれぞれの個体については、そういう報告も出しておるわけでございまして、その点について、必ずしも中毒を否定しているというわけではございません。いわゆる尿素中毒というような急激にくるものではないし、また、原因物質がその剖検の際には確認できなかったという意味で、中毒的疾患ないしは類似のものというように、家畜保健衛生所の剖見の報告でも、そうなっておるというふうに承知しておるわけであります。
#22
○中村波男君 私がこの問題をしつこく尋ねますほんとうの意図は、獣医さんが見たまま自分の剖見として言えないような雰囲気、そういうもののあることをおそれるからであります。個々に会って聞きますと、獣医師さんは明らかに中毒症ですと、こう言う。これは、一人や二人でない。私が会った獣医さんは言われたのであります。それを裏づけるように、その後御報告をいただいておるわけでありますが、八月の十八日と十九日に、新潟県の柏崎市で、農林省家畜衛生試験場の北陸支場で、北信越の家畜保健衛生所の病性鑑定研修会というのが開かれた。その研修会において、富山県の西部と東部の家畜保健衛生所のそれぞれの責任者が出席をされまして、富山県におけるいわゆる飼料の事故等について報告をされたようであります。もちろん、病理組織標本、剖見所見、事故経過等について、文書あるいは実物が提示されておるようであります。それに報告された方は、これは中毒だと断定しておられる。「しかし、この中毒だということは、外に漏れては困るので秘密にしてもらいたい。したがってそれらの文書はあとから回収をさせてもらいたい。」と。これを否定されるのでありますれば、次の機会に、ここに出席をした方を、本委員会に出席願いまして証言を願ってもよろしいと思っております。
 こういう点から言いまして、安全性を確認して飼料として認めたのであるから、いささかでも安全性について疑いの持たれるような言動、あるいは症状に対する解剖結果というものを、そのまま言えないというような、だれが圧力を加えたかというようなものではなくて、何かそこに暗いもののあることを私は感じておるのであります。そういう、隠そうとする中からは、ほんとうの責任所在というのは出てこない。したがって、農林省の家畜衛生試験場なりの専門の技師を現地に派遣をされまして、いわゆる病理組織の標本等もあるはずでありますから、また獣医の実際の解剖所見というのを把握されまして、どこに原因があったかとかということについての究明をしてもらいたい。どうですか、その点については。
#23
○政府委員(大河原太一郎君) お答え申し上げます。
 第一点の事実関係でございますが、これにつきましては、私どもが承知しております限りにおきましては、北陸の管内の家畜保健衛生所の病理担当者の検討会が北陸支場、お話しの家畜衛生試験場北陸支場でございました際に、標本のプレパラートを富山県の西部家畜保健衛生所の担当者が持ってまいりまして、その内蔵その他について、中毒様疾患の病変の説明の材料にこれを使ったということは事実であるようでございますが、しかし、それぞれの関係から、この問題についての事実に対してことさらに、これを秘匿するというようなことから、そのような事実が行なわれたというふうには私どもは承知しておらないわけでございます。おそらく、専門の立場の人たちでございますので、各種の複合要因等も考えられるので、必ずしも現在では尿素的中毒と最終的に断定できる事態ではないという判断から、そのような事実があったのではないかと思うわけでございますが、お話しのとおり、本問題につきましては、われわれが、このダイブを飼料として認めた立場にこだわりまして、今回の中毒的症状原因の問題、その他事故原因について事実を明らかにすることを怠るというようなことは許されないところでございまして、現に、すでに富山県の保健衛生所から来ました検体等も家畜衛生試験場において検討中でございますが、お話しのような現地に専門家を派遣いたしまして、専門的な結論がすみやかに出るような努力も、当然いたすべきものと思っております。
#24
○工藤良平君 関連。
 私は先ほどから議論を聞いておりますけれども、農林省の配合飼料に対する態度というものが、私は、どうもはっきりしないような気がいたします。
 私も七月の初めに畜産問題で議論をいろいろいたしましたけれども、その際にも、私ども大分県でも奇形児やあるいは死・流産が非常に発生しておるということをかねてからお聞きをいたしましていろいろ調査をいたしたわけでありますけれども、その点についても、配合飼料そのものの原因ではなくて、やはりそれを与える過程の中における、いろいろな複合的な原因ということではないかということを農林省としては言ってきたようでありますけれども、先ほどから議論を聞いておりましても、私は、やっぱりこの配合飼料に対する根本的な検討というものが、農林省の場合に必要ではないか、こういうことに非常に疑問を持つわけです。
 で、この前も協同飼料が出しております配合飼料の中で、成分比についてはその表示が行なわれているけれども、その原料の内容表示がなされていない。この点について私は非常に大きな疑問を持つということを申し上げてきたわけで、その後、農林省としても検討して、何らかの措置をしたいということは言っておりますけれども、そういうところに私は非常に大きな手抜かりがあるような気がするわけであります。今回のこのハイラックスの問題にいたしましても、このダイブそのものは、かつて三菱化成が肥料として開発をしたものだというふうに私どもは聞いているんですけれども、そういうものが家畜に実際に与えられた場合に、一体どうなるのかという疑問は、当然、これは起こってくる問題ではないかと思うんですが、そういう点から、やはり農林省の指定にする過程の中における根本的な問題があるような気が私はするわけです。そういう点に対して、具体的に、じゃ一体、どこで、どういう形でそういうものを詳細に検討され、いろいろなデータを集めて、これでよろしいという安全性のレッテルを張っているのかどうか。その点も非常に大きな疑問を持つわけですが、その点、もう少し詳しく、ひとつ御説明いただきたい。
#25
○政府委員(大河原太一郎君) お答え申し上げます。
 先生の御質問には数点の問題の御指摘があるようでございます。
 で、第一点の、昨年、南九州から千葉、その他関東まで、起こりましたあの牛の死・流産、奇形児の問題につきましては、われわれも当委員会でも申し上げましたように、これは一過性の病変から、えさや飼養管理、その他ではなくて、ウイルス的症状が明白になっておりまして、その二、三種類、子牛等からも採取されましたウイルスについて最終の同定を急いでいるというのが現段階でございます。
 で、第二の点については、大分における事故等は、これはペレットのカビというような問題が原因であるというふうにわれわれは承知しております。
 で、最後のお話しでございます飼料の家畜生理に対する安全性と、それから今日最も問題になっております畜産物を通ずる人体に対する安全性、この問題が大きな問題でございますが、この点については、畜産局におきましては、飼料規格等設定委員会というところで、外部の専門学者なり内部の試験研究機関の技術者を集めまして、その両方からの、大学とか試験研究機関その他の実験結果を見まして、それによって飼料として認めるべきだという判断をしておるわけでございまして、先ほど中村先生から御指摘がございました四十六年の下期にこれを認めた際におきましても、そのようなデータに基づく検討を、当時としては十分いたして、飼料として指定したつもりでございます。
 それから先生御指摘の成分表示等の問題でございます。この点については、現在の飼料の品質改善に関する法律では、成分表示を配合飼料に義務づけているのみでございます。この点については、いろいろ実態に即した御意見がございます。配合飼料は飼料原料が多岐にわたりまして、代替性もあるということで、容器等に原料等を一々表示するのについて実際上の問題もあるという点もあるわけでございますが、やはり今後は原料の表示を的確に行なわせるということで、制度の検討ももちろん必要ですが、とりあえずは農林省としては、指導でその点についての実現を期したいということで、ただいま準備を進めておるところでございます。
#26
○中村波男君 牛や豚の奇病についても時間があれば後ほどただしておきたいと思っておったんですが、たまたま工藤委員から指摘がありましていま答弁があったわけでありますが、去る七月の十二日に当委員会で私も質問を申し上げたわけでありまして、その質問に対して、大河原畜産局長は、豚の奇病の原因は単なる黄色ブドウ球菌、コリネバクテリウムによるもので、これは多頭飼育に伴い畜舎内に敷きわらを敷かないでコンクリート床で飼育するという問題から、かいようを起こし、さらに関節炎を引き超こすという事例が大部分であります、という答弁をいただいたわけであります。しろうとの悲しさで、その答弁で、次の質問が続いておらなかったわけでありますが、それ以来、牛、豚の奇病というのは全国的にいま広がりつつある。農林省の最近の情勢をお聞きいたしますと、大体、終息したというようなお話でありますが、しかし、私たちは終息したとは思っておらない。それで、特に重大な関心を持ちまして、私たちの知る範囲の専門家の意見等も聞いたわけであります。
 そこで、大河原畜産局長の答弁で矛盾をしておるといいますか、納得のいかない点は、単なる細菌による関節炎と見ておられまするけれども、生後四日ないしは五日ぐらいのもの、そして細菌が検出されない関節炎の病豚を何と証明されるのか。また、コンクリート床ですることによって発生すると言われまするけれども、前肢ひざ関節部や後肢飛節部の関節炎はどこでどうしてするというのだろうか。幾多の私は疑問があると思うんですね。したがって、ウイルス説をとっていらっしゃいまするけれども、それだけではないという感じがいたしてならないわけであります。だから、終息したからこの問題についてはまあまあだと、ほっとしておるというような、そういう態度ではなくて、徹底的にやはり究明をして、いわゆる飼料による、こういう奇病が出てきておるのではないかという疑問にこたえるだけのデータ、また、病理学的な見解というのを疫学的にも明らかにされる責任があるんじゃないか。だから、いま奇病が減ったなどという認識の中に、この研究、調査を打ち切られるというようなことは、あってはならぬと思いますので、それらに対する畜産局の態度をこの機会にお聞きしておきます。
#27
○政府委員(大河原太一郎君) お答え申し上げます。
 前々の先生の御質問に対しまして、私が豚の奇形問題等についてお答え申し上げましたのは愛知県下等に超こっております豚の奇形児の問題につきまして、現地から、個体を前後八頭、国の家畜衛生試験所に持ってまいりまして、その結果の一つの報告を申し上げたわけでございます。それからまた、その際も申すべきであったんでございますが、各種の奇形については一代雑種の豚の肥育等が大部分でございまして、遺伝的な問題とか発ガンの問題もあるわけでございまして、それらについてはなお検討を要するという問題があるわけでございまして、現に豚の奇形のほうは――ただいま終息したというのは例の死・流産でございます、牛の。これはわれわれとしてもはっきり終息したというふうに考えられるわけでございますが、豚の奇形問題等についてはなおその点が出ておることは確かでございます。したがいまして、これにつきましても、おしまいに先生がお話し申し上げましたように、その原因の究明等については専門的な立場から最大限の努力をもって結論を出しまして、今後の対策を打ち立てていくという点について、行なうべきことは当然かと考えるわけでございます。
#28
○中村波男君 ハイラック、いわゆるダイブによる乳牛の事故について、とうていしろうとで判断はできないものですから、東大農学部の森敏先生に解析をしていただいたのでありますが、時間もありませんから、全部は読み上げませんけれども、森先生は死因については、このように見ておられるわけであります。「この配合飼料ハイラックスの中のダイブが尿素換算で最低一%含有されているとする。そしてこのハイラックスを一頭の乳牛が一日平均最低五キログラム食べるとすると、この乳牛はイソブチルアルデヒドを一日に三十グラム摂取したことになる。
 一方LD50(致死になる投薬)から計算してみると、この一頭の乳牛の体重を二百キログラムと仮定すると、LD50(致死になる投薬)に達する量は3.7(g)×200(kg)=740grとなるつまり七百四十グラムが死ぬか生きるかの境目の摂取量である。ところで一日三十グラム摂取しているわけであるから740(gr)÷30(gr)=24.6日<25日すなわちこの乳牛は約二十五日で死線をさまようことになる。もちろん経口一回投与でなく連続投与であるから、イソブチルアルデヒドは代謝されて無毒化されるものもあるであろうから、したがって約一ヵ月が死と生の境目のころと見てみよう。
 実際には食べ始めてから二週間後に乳牛が二頭死んでいる。また一ヵ月ごろに十頭近くが死亡寸前で屠場に送られている。
 そして下痢症のものが二百頭近くいる。これらの事実は上記の計算の結果によく一致する。特にハイラック18を与えたほうがハイラック14を与えたものより症状がひどいということはダイブの含有量が前者に多く、尿素換算で三%ぐらい含まれているのではないかと思われる。したがってその場合は以上の計算結果よりも、イソブチルの急性毒性が強くあらわれてくるものと解される。
 以上のように、今回の乳牛の死因はイソブチルアルデヒドが原因と解される。
 なお、ダイブの合成過程で混合物が毒性を持っていたという考えも成立しないわけではないが、その場合でもイソブチルアルデヒドそのものか、イソブチル酸ぐらいのもので結局イソブチルアルデヒドの毒性に帰着するように思う。」こういう解析をされておるわけであります。
 したがって、これについて反論をいただくということも時間がかかりますので、これはこれとして、大臣に総括的な責任者の立場でただしておきたいと思うのでありますが、いま一時間程度のやりとりの中で、大体の実態というのは御承知おきいただいたと思うわけであります。したがって、最初にも申し上げましたように、まずこの原因究明を急がなければならぬと思うのであります。急ぎますと同時に、徹底的に原因を究明しないところからは、今後の対策というのは生まれてこないと思うわけであります。したがって、農林省としてしかるべき権威のある人材を編成されまして、ぜひひとつ現地調査その他解析を含めて、徹底的に調査研究するということをやっていただきたい。そのことについて大臣のお考えをお聞きしておきたいと思うわけであります。
#29
○国務大臣(櫻内義雄君) 国民の食生活の上で動物性たん白質の摂取が非常にふえておる。そういう際における畜産のあり方につきまして、安全性に万全を期することは言うまでもないと思うのであります。
 本日、ダイブ使用のハイラックの件を中心にしていろいろと御質問をちょうだいいたしました。農林省として、不十分な、不行き届きな点のございました点も、御指摘によって深く認識をするところでございます。
 ただいま御質問がございましたように、十分な調査をいたしまして、原因を究明して、今後の措置の上に万全を期することは言うまでもないことだと思います。したがいまして、先ほど畜産局長からもすみやかに専門技師の派遣等考えるということをお答え申し上げている次第でございますが、私といたしましても、専門家の諸君を現地に派遣をいたしまして、徹底的な原因究明に努力をするということは、この委員会を通じてお約束を申し上げます。
#30
○中村波男君 大臣の前向きの御答弁をいただきましたので、ぜひひとつ権威のある調査団を派遣されまして、原因究明を急いでいただきたいと思います。
 次は、四十六年の十二月に、新しい飼料として尿素とイソブチルアルデヒドを加えたわけでありますが、このイソブチルアルデヒドについての疑問というものは富山県の事故からさらに大きく明らかになってきておると思うのでありますが、私は、その前に、尿素というものの飼料というものについても大いなる疑問を持っておるわけであります。したがって、この尿素について、これまた学者等の研究意見等を総合いたしまして、問題点を指摘をして、この飼料化についても再検討を要求いたしたいと思うわけであります。
 あらゆるダイブの宣伝文書を読みましても、尿素の欠点を補うのがいわゆるダイブなんだと、こういうふうに書かれておるわけでありますが、そのことは尿素はダイブよりもより危険であるという裏づけになりはしないだろうか。そういう、客観的に見ましても、尿素の飼料化というものについては、相当危険度が高いように考えるわけであります。
 私が言うまでもなく、尿素飼料はその使い方を誤ると非常な危険な飼料である。これはだれもかれも認めておるところであります。尿素飼料は水に溶けやすく、ルーメンの中のウレアーゼ、すなわち酵素の働きですみやかに分解してアンモニアになり、その一部はバクテリアの給源となるのでありますが、多過ぎるとルーメン壁からも吸収されて、血中――いわゆる血の中にアンモニア濃度が激増し、中毒になる。その中毒が多発したために尿素飼料化は、かつて昭和二十七、八年であったと思いますが、大問題を引き起こしまして断念をした経緯があったと思うのであります。それだけがはたして問題だったのだろうかという疑問を投げかけるのであります。
 乳牛の消化と栄養の生理に関する日本の草分け的研究者として知られております梅津氏は、「乳牛の科学」という雑誌の中で、尿素の飼料的価値を論じておられますが、その中で、その問題点を整理しておられるのを申し上げてみますと、「第一胃内で蛋白質窒素及び非蛋白質窒素が経時的にいかに消長するかを調べた結果、尿素を飼料に添加して蛋白質が増量する条件としては、第一に飼料中の蛋白質があまり多くてはいけない。第二に飼料中の易分解性の」――分解のたやすい「炭水化物がある程度多い方がよい。」「微生物に限らず、生物はその栄養摂取をはじめ、その行為において本質的にむだなエネルギーを費すことを避けるようである。おそらく、アミノ酸の存在する限りにおいては、微生物は尿素から蛋白質を合成しようとしないであろう。蛋白質または、アミノ酸の少なくなった場合だけ、微生物はその隠れた能力を発揮して尿素からでも微生物蛋白を合成するであろう。」「乳を生産する乳牛は必要とする蛋白質量が大きいので、尿素飼料の応用は困難であろう。育成中の肉牛でも、尿素は〇・〇五%の濃度以上では、微生物の発育を抑制するので、投与する尿素の総量は自ら制限され」ようと指摘しておられるのであります。農林省が尿素添加量の許容基準を三%以内としているのは、上記の基準から見ると、たいへん私は大甘でないかと思うわけであります。これは少し実態として多いのではないかという疑問を持つのであります。
 ここで、微生物の発育を抑制する理由の一端を、明治大学の高橋直躬氏は、非たん白質窒素を栄養源にできるのは微生物中のバクテリア類だけで、原生動物――プロトゾアにはその能力がないと論じておられますが、すなわち一般に尿素を一%以上添加すれば、第一胃内のプロトゾアの激減を避けられないことを示唆しておられるわけであります。牛のルーメン内では、原生動物は細菌に比べはるかに少ないが、体積が大きいので、微生物たん白質量においてはほとんどひとしいのであり、その重要性は軽視できない。プロトゾアはバクテリアを栄養源の一部として摂取し、粒状物――炭水化物を摂取するなど、バクテリアとはその食性を異にする。プロトゾアの種類(属)と密度とは、当然牛の健康状態やえさの種類とともに変化し、牛の生理にとってきわめて重要な位置を占めていると考えられる。プロトゾアが牛にとって有害でマイナスの作用が大きいならいざ知らず、その有益な働きにより牛は健康を維持増進し得るのであり、その意味するところを十分反省せず、牛のプロトゾアを激減させ、その代謝を狂わせる近代畜産思想に根底的疑問を禁じ得ない、まあこう述べておられるわけであります。
 したがって、梅津氏が指摘をしておられますように、肉牛においてまず行なわれるのが常道であるわけであります。なぜなら、肉牛は一般に雄であり、分娩等による体力の消耗がなく、乳牛に比べて飼料中のたん白質含有料が少なくて済むからであります。しかし、肉牛の尿素の飼料的価値について、大成清氏は、配合飼料メーカーの立場に立っても、なお飼料的価値に疑問がないわけではないと論じておられます。同氏は、尿素は牛の成長の向上のためではなく、生産費の低下のために使用されるのであるが、大豆かす以上には発育、肉質、飼料要求率の向上は期待できず、同等またはマイナスの効果しか得られれいないデータがあるわけであります。
 ジウレイドイソブタンの試験成績表をいただいておりますが、これを見ましても、大豆その他のいわゆる濃厚飼料と比べて成績がよかったというデータは一つもないわけです。差異がない、悪影響がなかった。このことは、いわゆるアメリカの大豆の輸入規制、世界的な飼料の逼迫等々から、いわゆるやむを得ざる飼料メーカー、その他のいわゆる苦肉の策として、こういうものへの要求が出てきたと見なければならないわけです。
 また、今度ダイブを飼料に加えますいきさつというのを振り返ってみますと、さっき工藤委員も少し指摘をされたように、三菱化成が緩効性の尿素をつくったと、尿素は御承知のように、速効性でありますから、遅効性の尿素をつくった。しかし、実際に飼料として販売をしてみると、試験のように緩効性ではなかった。したがって、売れなかった。せっかく開発したのであるから、いわゆるこれを飼料化ということを思いついて、飼料化への研究が行なわれて、その結果として農林省が認めるという私は、経緯を見のがしてはならぬと思うわけであります。そういう点から見ましても、問題は、これを飼料に加えた農林省の態度について私は大きな疑問を持っておるのであります。
 そこでお尋ねいたします。農林省が新しい飼料をきめられます場合には、飼料規格等設定委員会の議を経ておきめになるのですか、いかがですか。
#31
○政府委員(大河原太一郎君) 御指摘のとおりでございます。
#32
○中村波男君 まず、この諮問機関の性格を明らかにしていただきたいと思うんでありますが、少なくとも飼料は、家畜のためにあるわけではないわけです。家畜を通じて人間の保健と栄養に役立たせるというのが私は、畜産の本来の、いや本来というよりも、今日的な問題だと思うんであります。そういうことを考えますと、特に化学飼料を認める場合には、十分なやはり試験と研究の結果、安全性が一〇〇%確認されない限りは、こういうものを認めるべきではないと思うんであります。この委員会名簿を見せていただきますと、たしか十五人名前があがっておりますが、大ざっぱな分け方をすれば、学者は六人、メーカーが六人、畜産団体の代表が三人、こういう内訳であり また ダイブの開発等の試験研究を見ましても、三菱化成とミットで行なわれておる試験もあるようであります。そういう試験のデータを基礎にして、これがよろしいという、認可という、こういうことになってきておるわけであります。お聞きすると、この諮問委員会にどんな検討をされたか、議事録を見せていただきたいと要求いたしますと、議事録なんかありませんと、口頭で説明をしてきまったんです、このような安易なきめ方、これ一つ見ても、農林省の飼料に対する姿勢というのが、いわゆるメーカー、企業に癒着しておる姿を露骨にあらわしておるのではないだろうか。――あらわしておらなければ幸いであります。こういう疑問を畜産農家が持つのも理由なしとしないと思うわけです。したがって、私は農林大臣にお考えいただきたいと思うんでありますが、飼料等を新しく認める場合には、畜産局長の私的諮問機関にはかってきめるというような、そういう手続ではいけないと思うわけです。したがって法律を改正して、公的な、だれでもが納得できるような権威のある、企業に癒着しておると疑われないような委員構成によって、厳密な試験研究の結果の上に立って認可をされるようにしてもらいたい。その点についてまず農林大臣からお考えを明らかにしていただきます。
#33
○国務大臣(櫻内義雄君) 飼料の品質改善に関する法律は、昭和二十八年四月十一日に公布をされておりまして、そのことを考えますると、相当時間的経週もございます。私がなぜそういうことを申し上げるかといいますと、きょう問題になっておりますハイラック、そして尿素を使用すると、そこに疑問があると、こういう化学的なものを使用するということについては、常識的な見方でございまするが、この法律制定当初と現在ではだいぶ違っておる、また、飼料についての問題はそういう化学物質を加えるというところに非常な問題が起きてきておるというようなことを考えまするときに、現在までの法律が不十分であるということは申し上げるまでもないことだと思います。この法律のねらいは飼料の登録、異物混入の禁止、飼料検査等を中心として飼料の品質確保をはかることとしておると思うんであります。
 今後におきましては、いまお話がございましたように、飼料から家畜、畜産物を通じての飼料の安全性の確保、飼料の添化物の適正使用の確保、新しい飼料の認定等の問題が非常に大事だと思いますが、それには現行法が必ずしも十分対応し得ておらないと、こう思うのでありまして、従来こういう大事な問題につきまして、法律上の不備については、行政指導で対応してまいりましたが、きょういろいろと御指摘をいただきまして不十分な点を認めるわけでございます。したがって、今後の検査体制の整備強化をすることはもとよりでございますが、あわせて現行法の改正につきましてもこれは積極的にいたしたいと思います。
#34
○中村波男君 積極的に改正に取り組むということでありますから、続いての質問はいたす必要はありませんが、でき得れば次の国会に提案することをめどに早急にひとつ農林省案をきめて、ぜひひとつ法律改正を行なっていただきたい、強く要求いたします。
 予定の時間がだんだんと迫ってきましたので、いろいろまだダイブについての問題点をただしたいのでありますが、時間の関係もありますから、いわゆる畜産物の中へのダイブとイソブチルアルデヒドの残留と食品衛生の問題について、いま少しただしておきたいというふうに思うわけであります。
 私が言うまでもなく、畜産物は、それを食べる消費者の健康を増進すべきものでありまして、安全でなければならないということは、これは論を待たないところであります。閣発担当者が、畜産物中にダイブ臭が残るのは避けられないと述べておられる文献を私は読んだわけであります。かりに残留物に、毒物学的心配がなくとも、本来の牛乳に含まれていない残留物が混入する危険性は避けられないというふうに思うわけであります。特に、牛乳、肉よりも、内臓のシロ、いわゆる胃腸の部分にダイブ及びイソブチルアルデヒドが多量に残留しておるという疑いを持っておる学者も相当あるわけであります。これらの畜産物には、食品衛生法第四条の有害または有毒な物質が含まれ、またはその疑いのあるもの、という禁止条項に違反して、と畜場法の人体有害のおそれのある中毒諸症の牛に相当しているのであるか、いないのであるか。厚生省もおいでいただいておりますが、先般のダイブによって死亡した、屠殺をいたした牛というのは、食品衛生法第四条あるいは、と畜場法の、いま私が指摘した事項に、これは該当するのか、しないのか。衛生食肉センターの解剖した牛については全頭廃棄をしたということでありますが、全頭廃棄ということは、これらの法律に照らして、廃棄処分をするという、こういう処置がとられたのかどうか。
 しかし、私の聞いてきたところによりますと、十分な調査でありませんから間違っておれば御指摘をいただきたいのでありますが、家畜保健衛生所で解体あるいは手がけたものについては、内臓だけは廃棄をしたけれども、その他は食肉として、いわゆる販売されておるというふうに聞いておるわけであります。したがって、いわゆる富山県の事故牛についての見解を、農林省あるいは厚生省、それぞれまず実態として明らかにしていただきたい。
#35
○説明員(岡部祥治君) 実態でございますが、先ほど御指摘のございました六月の二十日、それから二十二日に富山の食肉センターに搬入されたものにつきましては、第一例につきましては、先ほど申し上げましたように内臓その他に出血班がございました。一応中毒症状を疑いまして、これを廃棄いたしております。第二例につきましては、むしろこの中毒症状ということの疑いよりも細菌性による敗血症ということで、これらにつきましては廃棄いたしております。
 それからただいま御指摘になりました尿素の残留等につきましては、これは精密な残留調査というものはいたしておりませんが、一般的に申しまして、尿素は、いわゆるLD50というものが非常に高いものの部類に入っておりますし、また、一般的な動植物等にも若干の自然含有というものもございます。したがいまして、尿素の量のいかんにもよろうと思いますけれども、現在のところ、ダイブで飼育した肉等が、即、食品衛生法四条に該当するということは、現在の段階ではちょっと申しかねると思います。
#36
○中村波男君 農林省から答弁がないのでありますが、消費者として素朴に中毒で死んだ牛だというふうに聞きますと、これが全く安全であるかというふうには考えられないと思うんですね。したがって、いま岡部乳肉衛生課長からの御答弁によると、中毒様の屠殺牛については廃棄はしなかったというんでしょう。そうですね。
#37
○説明員(岡部祥治君) 六月の二十日に富山の食肉センターに搬入されたものにつきましては全廃棄をいたしております。
#38
○中村波男君 そうしますと、二十日に屠殺いたしましたのは、「全身臓器の著名な出血は」―ちょっと見にくいんですが、「中毒症状に類似する。」と、こういうのですね。
 それから二十二日の屠殺の中毒様疾患というのがありますね、これはどうなっておりますか。
#39
○説明員(岡部祥治君) 二十二日に搬入されましたものにつきましては、一応、これを見られました獣医師さんは、中毒症状の疑いということで持ってこられたようでございますが、解体検査の結果は、むしろより細菌学的検査の結果、敗血症状がございまして、敗血病ということで食用にすることを禁止いたしております。
#40
○中村波男君 疑問を感ずるのでありますが、病名からいえば、全身臓器の著名な出血は、中毒症状に類似するというのは廃棄にしたと、次は中毒様疾患であるけれども、廃棄にはしなかったと。その何といいますか、区分け方といいますか、境目といいますか、これは専門でないから反論ができないわけでありますが、獣医さんたちは、これは明らかに中毒症ですと言い切っておるわけです。こういうのが全く危険のない乳肉として消費者の口へ渡っていくと、そうなりますと、いうところの衛生法四条あるいは、と畜場法の条項というのを適用する基準というものは明らかにあるのか、ないのか、極端な言い方をすれば、検査員の主観でこれが廃棄にされたり、あるいは廃棄されなかったりされるんだと、ここに私は盲点があるように思うわけです。中毒症といいましても、これはいろいろあるとは思うんでありますが、そういう点が、いわゆる畜肉の検査の上に科学性あるいは医学性といいますか、疫学性と申しますか、そういうのが取り入れられる様式というのが少ないんじゃないか。いわゆる肉眼検定だと、科学的な検査というのはどれぐらい率で行なわれておるか知りませんけれども、できたら、一年間の廃棄いたしたものについて科学的な検査で廃棄したもの、あるいは肉眼といいますか、表面的検査でやったものというようなデーターを、きょうは無理でありますから、出していただければ参考になると思うのでありますが、出していただきたいと思います。そこのところに盲点と申しまするか、取り締まりの基準を欠くものがあるんじゃないか、最近のように、ほとんどの食品がよごされておるという実態を考えれば考えるほど、やはり食肉検査というものは厳密過ぎるということはないのではないかと、こういうように私は疑問を投げかけるのでありますが、いかがですか。
#41
○説明員(岡部祥治君) 先ほど申し上げました第二例のほうにつきましては、先生、私の説明が不十分だったかと思いますが、中毒症状という、中毒類似の症状というよりも、むしろ病理学的、細菌学的検査の結果、敗血症というもののほうが強いということで、敗血症という判断で、これは食用に回しておりません。廃棄にいたしております。
 それからただいま御指摘の屠畜検査につきましては、従前から、これらの問題につきましては病理解剖学的な検査ということを主体にいたしております。したがいまして、第一義的には肉眼的検査でございます。しかしながら、こういういわゆる病畜等につきましては、さらに病理組織学的あるいは細菌学的検査を行ないまして、これらに基づきまして判断をいたしておるわけでございます。したがいまして、ただいま肉眼的と、それからさらに科学的検査による廃棄の実態ということでございますが、ただいま。それは詳しい資料の持ち合わせがございませんので、あるいは時間がかかると思いますが、この屠畜検査の科学的な検査につきましては、御指摘のとおり、いろいろの問題ございますので、私どもといたしましても、単なる、もちろん肉眼的、病理解剖でアウトのものは問題ございませんが、疑いのあるものにつきましては、さらに病理学的な、あるいは細菌学的な検査を精密に行なうように指導しておるところでございます。
#42
○中村波男君 時間がきましたので、質問を終わりに近づけいたと思うのでありますが、もう一点、ダイブの嗜好性についてお尋ねをしておきたいと思うのでありますが、牛がダイブ入り飼料を喜んで食べないという酪農家がありまして、喜んで食べなかったから、したがって、従来のえさを五頭だけ――三十数頭おる中で五頭だけはダイブを食べなかったから、従来の飼料を与えた。したがって、病気にもならなかったし、死ぬことから免れた。私のほうとしては、食べてくれなかったことがたいへん幸いでしたという話が出てきたわけでありますが、メーカー側といいますか、経済連等の説明によりすまと、ハイラックは確かにくさいと。あのにおいはアンモニアのにおいてはなくて、イソブタンのにおいだと。石油のにおいがするから、牛が喜んで食べないのは当然だと、まあすなおに認めておられるようであります。
 で、三菱化成のパンフには、口に含んでも刺激臭がなく、家畜の嗜好性は良好ですと書いてあります。このような、事実を曲げた宣伝文書は、これは私は、行き過ぎではないかというふうに思うわけであります。局長は、なめてみられたことはないと思いますが、こういうこと一つとっても、全く、――長所と短所はもちろん何にでもあるわけでありますが、いわゆるごまかし宣伝が行なわれておる。このことの重要性というよりも、そういう宣伝、そういうパンフを野放しにしておくということは、行政指導の立場にある農林省としては考えてもらいたい。したがって、全農をはじめ、各メーカーのこれらに類する文書については、事実と違ったものについてはチェックするという、こういうことをぜひ今後もお考えいただきたい、こういうふうに思うわけであります。
 さらに、三菱化成当局者は、尿素飼料に比べれば、の意味であると、こういうふうにまあ逃げておりますが、ダイブのにおいがあるのは、化学的合成品だから当然ですと、しゃあしゃあと答えておるそうであります。尋ねた人は、その無責任さに全くあきれ返ったと、こう言って私に話してくれたわけであります。
 事ほどさように、その内容というのは、でたらめと申しまするか、事実と違った記載がなされておるわけであります。したがって、私が考えますのは、家畜のいわゆるえさというのは、生きものにとっては、単なる栄養成分が充足しておれば事足れりというものではないと思うんであります。重要なことは、おいしいということが必要条件でなかろうかと存じます。そのおいしさは、生きものが歴史的に獲得してきたものでありまして、その条件に適合しなければ健康を増進することにはならないのではないかと、こういうふうに私は考えます。たまたま酒井与郎氏の本を読みますと、元気のない牛を、牛の自由に放牧させる、そのことが治療法である、と書いてある。いまは、化学飼料を、あるいは配合飼料をどんどん食わせて、運動らしい運動もさせずに飼っておるというところに、いろいろな奇病が発生をしたり、あるいは新しい病気が出てくるということにつながっておるのではないかと思うわけであります。
 したがって、一言で申し上げれば、畜産局の畜産に対する姿勢、牛に例をとりますならば、牛に聞かなければ、えさの真価がわからないという、言いかえますならば、牛に聞く姿勢というものを考えないと、今度のような、いわゆるダイブそのものは安全あったかもしれないけれども、いままでの研究試験というのは、いわゆるなま草を加えた試験研究はなされておらない。そうでしょう。そこで、死んだあとに農協等が指導して歩いたことばを聞いて私は憤慨したんでありますが、なま草を食わしてはいけませんよと、水を与えてはなりませんよと。日本の酪農の大欠点は、アメリカのかさの中に飼料があるということではないでしょうか。したがって、牧野の改良、いわゆる自給飼料の対策を急がなければならぬ、粗飼料のいわゆる使用量を高めなければならぬということがいわれておるわけでありますが、牧草を食わせてならないような配合飼料というのが酪農家にとってメリットがあるのかどうか、そういう点を考えますと、単品としては安全性があるかもわからないけれども、これを実用化する場合にいろいろな問題というのがあると思うんであります。それらをひとつ十分考えていただきまして、私は、でき得るなら、尿素と、いわゆる新しくお加えになりましたジウレイド・イソブタンをやはり再検討する、安全性についてもう一ぺん農林省独自で確かめると。これをぜひひとつやっていただきたい。したがって、疑問のあるものについては、行政指導で適正な使用を含めて規制をするような、やっぱり企業に癒着しない態度というのを畜産局はみずから出してもらいたい。
 したがって、農林大臣にお願いを申し上げるわけでありますが、いまいろいろ私は指摘をいたしました。もちろんこれは、私の意見というよりも、学者、専門家の意見をかりまして、問題点を、まだまだありまするけれども、申し上げたわけであります。申し上げただけでもたいへんな内容だと思うわけであります。したがって、この安全性について再確認する意味において、許可をしたからというようなメンツにこだわらずに、ぜひひとつ再検討、安全性を確保するための体制、対策というのを確立していただきたい。いかがでしょうか。
#43
○国務大臣(櫻内義雄君) 本日の御質疑を承りまして、先ほどお答えしたように、法律上不十分な点については前向きに検討いたしたいと。これは専門的な分野が多うございまするから、早急に専門的見識のある方々による調査会でよく練りまして、そして、できるだけ、準備が整えば早く改正法をいたしたい。
 それから、検査態勢の強化、特に富山県下への専門技術者の派遣については、これはお約束どおりさっそくに実行いたしたいと思います。
 それから、最後にいろいろ御所見を承りまして、私も、本委員会を通じて申し上げておりますように、国内において飼料原料を確保したい、また、粗飼料を増産したいということも申し上げておるところでございまして、配合飼料やあるいは化学飼料に頼り過ぎて、畜産経営の本質をたがえるようなことがあってはならないということを感ずる次第でございまして、きょうのいろいろ御意見は私も念頭に置きまして今後の行政に当たってまいりたいと思います。
#44
○中村波男君 いま大臣、私が要望いたしたのにお答えをいただかなかったわけでありますが、四十六年の十二月に飼料の品質改善に関する法律施行規則で、尿素及びジウレイド・イソブタンを加えられたわけでありますが、そのジウレイド・イソブタンを配合したいわゆる三菱化成の商品名がダイブでありますが、これによって富山県でたいへんな事故を引き起こしておるわけでありますから、これをさらに安全性を農林省の独自な立場で検討して確かめると、こういうことをぜひやってもらいたい。一度告示をされたものを簡単に取り消すことはできないことはわかっております。それだけにある程度の日時は要するでありましょうけれども、検討をして間違っておらなければよろしいわけであります。間違っておるならば、取り消してもらわなければならぬと思います。そういう観点に立って前向きでひとつこの問題に取り組む姿勢があるのかどうかをお伺いしたわけであります。
#45
○国務大臣(櫻内義雄君) たいへん恐縮でございました。私、検査体制の強化とか、あるいは専門技師の派遣ということでお答えをしたような気でおりましたが、そういうことによりまして、ただいまお話の尿素、ジウレイド・イソブタン、これらについて今回起こしております問題についての原因究明を徹底的にいたしまして、御心配のような点が専門的にどのように判断されるか、これ徹底的に究明してまいりたいと、その上で善処をいたしたいと思います。
#46
○中村波男君 最後に、この機会でありますから関連してお尋ねをしておきたいと思うのでありますが、去る当委員会におきましても、畜産審議会を早急に招集されまして、開会されまして、いわゆる政策畜産価格について検討をされたい。検討をするため、すみやかに審議会を開かれたいという要望決議をいたしたわけであります。聞くところによると、衆議院においても同趣旨の決議が行なわれたようであります。いわばこれは国会の意思であるわけでありますが、したがいまして、その後、農林大臣として慎重に検討をして対処するという御答弁をいただいたわけでありますが、畜産団体をはじめ畜産審議会を開いて、もらいたいという要求は日増しに強くなっております。聞くところによると、どうしてもそういう姿勢に政府がおなりにならなければ、好むところではないけれども、市乳、いわゆる飲料乳を加工乳に回してでもいわゆる飼料値上げに対応する自衛策を講じなければならぬ、こういう動きもあるようでありますが、そういう事態を引き起こしますれば、これはたいへんな問題になってまいりますので、そういう情勢を踏まえてお考えいただきまして、ぜひひとつ決断をして審議会を開いて、適正な畜産物の政策価格というのをやはりきめてしかるべきではないか。こういうふうに私は感ずるのでありますが、その後の農林大臣の――大蔵省との関係もあろうと思いますが、御所見をこの機会に明らかにしていただけたらと思うわけであります。
#47
○国務大臣(櫻内義雄君) 衆参両院で御決議もちょうだいしておるわけでありまして、本委員会では、あるいは私詳しく申し上げなかったかと思います事が、衆議院におきまして御質問がございましたので、現在私の手元にある各種のデータからいたしますると、この値上げ要素になったものもあれば、あるいは値下がりを見ておる要素もある。いろいろあるので、ただ、この数字で私がいまいろいろこの結論を言うのでないので、やはり最近における――御質問なさっている皆さま方は、現在の状況からしていろいろ言われていることでありましょう。したがって、私が畜産審議会へ諮問をするということになりますれば、それらの前提というものが整わなければそれができにくいので、その辺だけはよく御了承をいただきまして、直近時までの各種の要素を整えてそして検討いたしたいと、こういうことをお答え申し上げておるのでございまして、そのような措置をいたしながら、これから考えてまいりたいと思うのであります。
#48
○理事(初村滝一郎君) 暫時休憩いたします。
   午後零時十六分休憩
   午後一時九分開会
  〔理事初村滝一郎君委員長席に着く〕
#49
○理事(初村滝一郎君) ただいまから農林水産委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き質疑を行ないます。質疑のある方は順次御発言を願います。
#50
○辻一彦君 きょう、私農業労働災害の問題について若干の質問を行ないたいと思います。また、若干の時間をとって卵価対策についてもお伺いしたいと思います。
 第一に、日本経済が高経済成長政策をとって、その中で農業や農村から労働力をずっと吸い上げていった。それに対応しまして機械化が急速に進んだ。また、農業内部では兼業化それから労働力の質の低下、婦人や老人が農業労働の大きな部分をになうようになる。こういう傾向の中でいろいろな動きが出ておりますが、機械化がどんどんと進むということは、逆に言えば、農業労働災害が非常にふえていくということになってもあらわれておると思います。そこで、ここ数年における農業労働災害の実態はどうか、この点農林省から伺いたいと思います。
#51
○政府委員(伊藤俊三君) ただいま先生の御指摘がございましたように、最近の農業におきます農業機械の導入というものが急テンポに進んでおります。また、ことに高性能な大型機械の導入ということがかなり進んでまいっております。また同時に、個別農作業におきます老齢化、あるいは婦女子化というようなことも、いわゆる必ずしも熟練しない労働といいますか、そういったものも多く、そういう傾向が強いということから、農作業におきますところの労働災害の発生が目立ってきておることは御指摘のとおりでございます。私ども、都道府県からの報告によりますと、四十四年度の死亡が百七十二件、重傷が千百四十二件ということになっております。四十五年が死亡が百五十一件、重傷が千三百四十五件、四十六年が死亡二百八件、重傷千七十九件という報告を受けておる次第でございます。
#52
○辻一彦君 ごく大まかな四十四年から四十六年にわたる死亡と重傷について数字を伺いました。しかし、各地における実態を見ると、これはたとえば愛媛の例でありますが、愛媛の野村町という一つの町においても、昭和四十四年に重傷が九件、耕うん機によるのが五、草刈機による手指の切断が二、わら飼料細断等によって手指を切ったのが二と、重傷九件、軽傷を入れると、軽傷だけで二十七件と、こういうように一つの、これは全国農作業安全協会がまとめられた資料でありますが、一町村を見てもこの程度の数字が出ている。また、この愛媛県全体を見ても、この数字の点からいいますと、県全体では、かなりな数字になっております。たとえば――茨城の場合でも、全県でいうと、死亡が三、重傷四十六と、こう出ておりますが、愛媛の場合には重傷が百三十六、それから四十四年で百二十三というように、各県段階を見てもかなり数字が大きい。これでも、まだ農協の共済なんかの記録を見ても、報告をされない、漏れているものが非常に多いというようにこの報告書がまとまっておるのですね。だから、実態は、いま局長がお話しになりましたように、こういう重傷が四十四年に千百四十二、四十五年千三百四十五、四十六年千七十九と、こういうような数字では私はないと、かなりたくさんの労働災害が実質的には出ていると、こういうふうに思いますが、この点については、どういう調査をされているか、お伺いいたしたい。
#53
○政府委員(伊藤俊三君) 私どものほうは、都道府県からの報告によっておるわけでございます。具体的ないろいろな事態が各地で起こっておると思いますが、必ずしも私どもがかつて入手しておりますこの数字に、あるいは若干漏れるようなものもあるかもしれないと思っておりますけれども、ただ私ども、一応都道府県からの報告を一応受けて、そして集計をいたしたものが先ほどお答え申し上げたような数字に相なっておる次第でございます。
#54
○辻一彦君 不慮の事故による死亡であるとか、重傷ですね、こういう数はいま一つ指摘しましたように、私は非常に数はかなり実態は多いと思うのですね。そういう点で、いまの点では、都道府県のまとめたのを報告を求めた程度であると、こういうことですが、具体的にもう少し詳細なこれについての調査をされる考え、用意はあるのかどうか、この点いかがです。
#55
○政府委員(伊藤俊三君) 私ども、ただいま先生が御指摘がございましたようなことを、より正確に農作業における事故の実態を把握いたしたいという考え方でございまして、明年度予算に農作業安全対策事業の一環としまして、事故調査費というものを要求をいたしたい。かように考えて、大蔵省に対して説明をいたしておる次第でございます。
#56
○辻一彦君 まあこれだけ機械が大型化し、たくさんできる中で、ふえていく労働災害に対して、来年その調査費を計上してやるというのでは、かなりおそい感じがしますが、とにかくやることは大事でありますから、これは十分ひとつ調査をしっかりやっていただきたいと思います。
 そこで、先ほどの数字に基づいても、昭和四十六年には、農業人口が六百九十万、これに対してその発表された数字でもかなりであるし、また隠れた災害を見れば、私は、かなり大きな数が農業機械による農業労働災害の問題として出ておると思うわけですね。
 そこで、その問題に、機械の労働災害に入る前に、若干一般的な農業労働における災害問題について二、三点をお伺いいたしたいと思います。
 労働省が見えておりますが、まあ、厚生省のほうに人口動態統計というのがあって、そこから若干引用してみますと、たとえば、これは昭和三十六年と四十四年というのがわりとまとめられておりますので、これを対照的に見ますと、昭和三十六年には有機物質による不慮の中毒、これが一七・九%、これが四十四年では二二・四%になっている。まあ死亡のパーセント、内訳であります。それから第二に、はしごだとか、高いところから墜落をして農村の場合に事故を起こす場合が多いのですが、これが一八・四%、四十四年では一七・四、機械によるものが三十六年度では四%と、非常にその当時は数字が低いのですが、これが四十四年では――四十一年で二四%、四十四年で二二・五%、こういうように大きくふえている。それから電気であるとか火及び可燃物の爆発、こういうものによるのが一四・五%、これは一三・四%とあまり変わりがない。不慮の溺死、水におぼれると、こういうのが四%からこれは一四%とふえております。こういうものを総計すると、大体九〇%に及ぶわけなんですが、そこでお伺いしたいのは、労働者災害補償保険法の特別加入という制度がありますが、これによって、以上の五つ六つの対象がどうなるのか。まず第一に、農業機械による事故というものは、どういう場合にこの特別加入の対象になるのか。時間が非常に限られていますから、簡単でけっこうですから、労働省にお伺いします。
#57
○説明員(山口全君) お答えします。
 労災保険制度では、先生御承知のように、雇用労働者を直接の対象として保険制度が仕組まれておるわけですが、ただいまお話のありましたように、特別加入という制度がございまして、常時労働者を使用する中小事業主、それから特定の農機械を使用する農作業従事者について保険を適用するというたてまえになっております。したがって、具体的に申し上げれば、指定された機械を使用して生じた事故、これについて保険給付をするというたてまえになっております。
#58
○辻一彦君 そこで、機械のほうは、私あとで若干論議をいたしたいと思います。
 それで、先ほど読み上げた有機物質による不慮の中毒、これは松山の例を見ても、この中毒によって直ちに一時間ほどあとに死亡した例が出ております。また、私のごく近くの身寄りでもパラチオン等を吸って、三カ月ぐらい心臓酸素テントを張って入院をしておった、重症になったと、こういう例もありますが、こういうような農薬、あるいは有機物質等による不慮の中毒等は、どういう場でこの労働災害の対象になりますか、どこもありませんか。
#59
○説明員(山口全君) 先ほどお答え申し上げましたように、一般雇用労働者であれば、農薬であろうが、有機物質その他であろうが、業務に伴う死傷あるいは疾病が生ずれば補償するということになっております。それから特別加入の面では、先ほどお答えしたように、補償の範囲が限定されておりますので、農薬散布その他有機物質による災害は直接給付の対象にならない場合が多いかと思います。
#60
○辻一彦君 じゃあ、まあこの事業主として参加をし、あるいは雇用関係にあるという、こういうのは、あとで申し上げたいと思いますが、実際は農村ではなかなかこれに該当するのはむずかしい。そうしますと、いま言った有機物質の場合も、それからはしごや、高いところから墜落をして非常に事故を起こす、これも死亡だとか骨折という事故が非常に多いんですが、こういうもの、あるいは電気やガソリンの爆発等によって起こった死亡、重症等あるいは家畜を飼っている場合ですね、牛にけられるとか、あるいは種豚の雄にきばにかけられるとか、あるいは刈り払い機――草を刈る大きなかまといいますか、こういうものを振り回しているときに、近くに子供や年寄りが連絡に来て思わぬ災難にあうとか、こういうことがかなり起こっておるんですが、いまの点から言えば事業主として払っていず、また雇用関係でない場合は、いつでもこれらは労働災害の対象にはならないと、救済の道がないということになりますか、そうなんですか。
#61
○説明員(山口全君) 私どもの農業労働者についてとった統計によりましても、先生お話のように作業行動災害。これが非常に多うございまして、三十万件中二十万件は作業行動災害。で、動力運転等によるものは八万九千となっておりますので、実際はいま先生のお話しのような災害事例が多いと思いますが、特別加入による場合には主としてこの動力運転災害という場合に限定されるので、作業行動災害の場合には補償の対象にならない例が多いということが言えようかと思います。
#62
○辻一彦君 それで、先ほど死亡、重症の数字も労働省のほうから御発表になりましたですね。これらから考えて、第一には農業機械の一部については特例等の道が開かれて、労災の対象になる道があると。しかし、今日農村において起こっているたくさんの機械以前のといいますか、そういう労働災害については、これはほとんどが対象になっていない。同じ災害が、工場や建設のたとえば土建の現場であるとか、こういうところで起これば、これらはすべて労災の大体対象になっている。しかし、同じような災害が農場や耕地の上やあるいは農業作業中に起こった場合に、これが対象にならない。こういうことは、農民が基本的に生活権を保障していくという、そういう観点から言えば、非常に大きな実際的に私は差別になると思いますが、このことについて、まず労働省どうお考えになるか、そしてあわせて農林省のお考えも局長からお伺いいたしたいと思います。
#63
○説明員(山口全君) 労災保険法は、本来、労働者の業務上災害に対して補償を行なうということを目的にしております関係上、この一般労働者に準じて、保護の必要のある特定の作業に限定して特別加入の道を設けているところであります。したがいまして、労災保険制度によって補償していくというたてまえに立つ限りにおいては、おのずから限界があるというふうに考えます。
#64
○政府委員(伊藤俊三君) 農業機械作業に従事する農業者の災害補償制度に関しましては、ただいまお話がございましたような労働者災害補償保険に特別加入の道が開かれておるのでございますが、適用対象者が自走式の農業機械等に限られておるというようなことでございます。したがって、現在労働省において、労災保険の性格を考慮しながら、私どものほうと緊密な連絡のもとに農業機械の種類とか、その危険性等の動向を勘案しながら、この制度を実態に即して運用するように、労働省と一緒に作業をいたしておるわけでございますが、今後とも私どもとしましては、農作業安全対策に格段の努力を傾注するとともに、労働省と連絡をいたしながら、農業者の災害補償に遺憾なきを期してまいりたい、かように考えております。
#65
○辻一彦君 いや、私が農林省に伺いたいのは、もうちょっと一般の労働者が高いところから落ちても、同じけがをし、死亡をしても、これは労災の対象になって、いろいろな救済の道がある。同じ仕事をし、同じようなことをやっておっても、農民の場合に、雇用関係や事業主で特別に入っておる場合は別ですが、そうでない場合には、ほとんどこの労災の災害の救済の対象にならない。こういうことは一般勤労者と農民を比べた場合に、かなり大きな差別であり、格差があることではないか。そういう格差があるとすれば、これは何とか埋める必要があると私は思うのですが、その点についてどうお考えか、伺いたい。
#66
○政府委員(伊藤俊三君) 私ども、やはり危険な農作業というものがあるわけでございますから、できるだけこういった労働災害補償制度の中に組み入れて、農家の方々が、安心して農作業に従事できるようにしていかなければならないという考え方であります。
#67
○辻一彦君 それではですね、この中に組み入れるといいますけれども、現在の労災の法改正の中では、農業事業主は百日以上常に雇用するか、一人を雇用するか、大体百日間を雇用するか、こういう条件が必要なんですね。しかし最近の農家の実態を見ると、まあ大きな地方、たとえば北海道とか、そこではこういう雇用関係があり得ると思いますが、たとえば本土のほうを見ると、いまなかなか常用、常に雇っていくということはできないし、また忙しいときに田植えに人を頼んでもなかなか手間が得られないという状況なんですね。そこで無理でも何でも機械を入れて、借金をしても機械を買い込んで、その機械の補償に出かせぎに行くと、そういう無理が逆に今度は労働災害を多くしている。こういう悪循環にもなっている。実態としてなかなかこの百日の条件を満たすような農家というものが私は非常に限られてくる。そうすれば大多数の農業従事者というものは、このワクからはずれるわけですが、こういうことは農業の今日の実態とはかなり違っておる。食い違っておると思いますが、これを一体どう局長、お考えになりますか。
#68
○政府委員(伊藤俊三君) 常用雇用期間につきましては、労働省に対しましても、なるべくこれを短縮するようなことを研究してほしいということを、要請しておるわけでございます。
#69
○辻一彦君 ちょっともう一度言ってください。
#70
○政府委員(伊藤俊三君) 雇用期間の短縮でございますですね、ただいま先生御指摘のように。そういったような点を考慮してほしいということを労働省にも要請をいたしておるということでございます。
#71
○辻一彦君 じゃ、労働省、いまの農業、農村の実態に合わして、この百日という条件を満たすのが非常に限定されてくる。そうすれば、ほとんどのいまの現行法体制の中では、これをかかえ切れないと思うのですが、これをどうお考えになっておりますか。
#72
○説明員(山口全君) ただいま御質問のありました百日間年間雇用するものというのは農業だけの例ではございませんで、労災保険法の特別加入としての条件を満たしている者は、ほかの一般中小企業全般に通じてもございまして、いずれも中小企業事業主としての要件としては年間百日雇用というものを一つの判断基準にしておるわけでございます。したがって、農業だけ別ワクで中小事業主の判断基準を設けるかどうかという問題がございますが、ただいまのところは、中小企業事業主との各業種全般に通じて百日というものを一つの基準として判断しているわけでございます。先般もやはりその議論がございまして、労働省としても、さらに百日の基準がいいかどうか検討いたします、という御返事をしておりますが、その場合においても、農業だけの特例とするか、各中小企業全般の判断基準とするか、いろいろ関連する問題があろうかと思っております。
#73
○辻一彦君 農林省として、いまの農業の実態から推して、この百日という条項が実態に合っているとお考えになっていますか、あまりこう合ってないとお考えになっていますか。いかがですか。
#74
○政府委員(伊藤俊三君) まあ実態に合っている、合っていないということよりも、やはりいま労働省は労働省なりに全般――農業以外のものも全部含めてのお考えをいま述べられたわけでございます。私どもといたしましては、農業に従事する方々、その安全の問題ということを考えまして、できるだけこういった期間のことについても考慮してほしいということをお願いしておるような次第でございます。
#75
○辻一彦君 ということは、百日ではなかなか条件が満たされない農家が多いと、だからこれを極力短縮しなければ実態に合わないと、こういう御判断ですか。
#76
○政府委員(伊藤俊三君) できるだけ適用の範囲を広くするようにお願いをいたしておる次第でございます。
#77
○辻一彦君 まあ実態から推すと、これの該当する農家の数は私はそんなに多くはなかなかならないんじゃないかと思うんですね。これは一つの、なぜ今日農業労働災害の対象になる人が少ないかという一つの問題点であろうと思います。
 それからもう一つは、さっき特定作業機の特別加入制というのが、これによって特定の作業をする場合にはこの道があると、こういうことでありました。それはその道が開かれております。しかし、自分でトラクターを動かして、そして賃労働といいますか、トラクターを持ってずっと賃耕なんかに出る場合には、私はいつもトラクターと一緒に仕事をしていると、こういうことで、特定機種によるこの道がかなりまあ該当すると思うんです。しかし、実際の農家は春先にトラクターや耕うん機を動かして土を耕して、その次には田植え機を動かして田植えをやる、それからバインダーやコンバインを動かして稲刈りをやる。その調製や、脱穀を自動でやるとか、あるいは堆肥や乾操した米を耕うん機やトレーラーで運搬するとか、さまざまな仕事をいろいろな機械を使ってやっておるわけですね。そういうのは、工業のように一つの場所に、大体きまった位置におって、一つか二つの機械をずっと扱ってやっている、こういう場合と実態が全然私は違うと思うんですよ。そうしますと、特定機種といいますか、特定な機械、指定した機械、それに従事する人については道が開けているというけれども、これも私は現実の農村の実態にはなかなか合わないのじゃないか、こう思いますが、この点について局長いかがですか。
#78
○政府委員(伊藤俊三君) 先ほどもお答え申し上げたわけでありますが、適用の対象者が自走式の農業機械、耕うん機、トラクター、収穫機などに現在限られておるわけでございます。で、私どもといたしましては、できるだけ農業機械の種類というようなものを幅を広げてほしい、最近の農業の機械の危険性等を考えながら、あるいは事故というようなことも考えながら、機械の種類の拡大というようなことにつきまして、労働省にもいろいろな御要請を申し上げておるというようなことでございます。
#79
○辻一彦君 衆議院でこの問題は論議をされておりましたが、労働省は、この農林省のそういう要請の中で、機種を具体的にどのぐらいまで広げるお考えですか。
#80
○説明員(山口全君) 先ほどから申し上げましたように、やはり農作業の業務の危険性なり、災害発生状況というものから、特に保護の必要性がある、一般の労働者に準じて保護の必要性があるものを特別加入制度の中で救済していこういうのが特別加入の考え方でございますので、おのずからその業務の範囲が明確であるという要件が必要になってまいります。一般の労働者の場合ですと、使用者の従属下にございますので、災害発生の状況というものも的確につかめますし、保険技術上も処理しやすいわけですが、農業労働の場合、そういうようないろいろな制約があることから、業務の範囲を特定機械というものに求めておると思うわけでございます。しかし、先生御指摘のように、いろいろ災害がふえてきておるということでございますので、先ほど農林省の局長お答えしていましたように、農業機械の普及状況とかあるいは災害の発生状況、こういうものについて農林省のほうに資料を御提供いただけるようにお願いしております。私どものほうも、そういういろいろ発生状況、あるいは機械の普及状況等を十分勘案した上で必要な範囲で適用範囲を広げてまいりたい、こう考えております。できるだけ早い機会に現在の指定の機械の範囲からどの程度新しい機械を指定していくかきめてまいりたいと、かように考えております。
#81
○辻一彦君 これは一つの農家で、御主人と奥さんが農業をやっている。そのとき、その家には非常に無理をしてもたくさんの機械をいまかかえていますね。トラクターから田植機、バインダーからトレーラーとか、たくさんあるんですが、一人が一つの特定の機械を賃耕といいますか、賃かせぎで外に出て専門的にこのトラクターを動かすとか、そういうものじゃなしに、たくさんの機械を一人の農民が、あるいはその配偶者である奥さんが動かしておるという、こういうことは、いま言われたように単に機種を広げてみるというようなことで解決できる問題かどうか、この点はどう考えますか。
#82
○説明員(山口全君) 農業機械の種類の範囲を拡大することによって救済される、補償の対象になる範囲はおのずからふえると思いますが、先生お話のように、それですべて機械災害によるものがこの特別加入制度によって救済されるかどうかということについては、また別問題かと思います。
#83
○辻一彦君 まあ実態から推すと、私はその機種をある程度広げても、なかなかいまの農村の農業の実態の中でたくさんいろいろな機械を持っている、ここで起こってくる機械の事故とか、そしてそれに伴う災害ですね。こういうものをカバーするということは容易でない、こういうふうに私は思います。それが第二の問題点だと思うんですね。
 もう一つは、この掛け金についても、事業主の場合ですね、これは千分の二ですが、特別機種による加入の場合には千分の五と、この高いのも一つのなかなかカバーしきれない、あるいは加入者が非常に限定されて少ない原因じゃないかとこう思いますが、これはまあ採算の問題があろうと思いますが、千分の二にできないのかどうか、この点はどうなんですか。
#84
○説明員(山口全君) 先生お話のとおり、中小事業主として加入する場合には料率は千分の二となっておりますし、特定の農機具を使用するということで加入する場合には、その作業の危険性を考慮した結果だと思いますが、千分の五になっております。現実にそれでは収支状況がどうかと見ますと、千分の二の適用の場合にかなりの赤字になっておりまして百分の百三十ぐらいな収支悪化になっております。逆に千分の五を適用している場合は、まあ災害の範囲が限定されているということから、収支はむしろよいというのが実態でございまして、そこで千分の五であることが加入を妨げておるかどうか私多少疑問ございますが、いずれにしても、収支から見ますと千分の五はやや高きに失し、千分の二のほうがむしろ低いということでございます。
 現在保険料率全般について検討を行なっておりますので、その過程でさらに明らかにしていきたい、このように考えております。
#85
○辻一彦君 この千分の五の場合ですね、一般の職場に働く労働者、勤労者のこの労災の掛け金と比べて、この千分の五というのはどういうことになりますか。全般的な数字で見て高いか低いか。どのぐらいになりますか。
#86
○説明員(山口全君) 料率は二厘から八十厘までかと思いますが、四十八に区分されております。平均料率が八厘弱でございますので、平均から比べれば五厘でも安いといえますし、二厘業種がかなりな数が、事業所数としては多いわけでございますから、それらに比べると、やや高いという関係になると思います。
#87
○辻一彦君 いまたいへんむずかしい御答弁ですが、二厘業種というのに該当する人がかなり多いということは、この農民の場合も、そこらの前後に該当する人が私は、実際の賃金の実情から推してかなり多いのじゃないかと。そういう点で一般の労働者をやはり上回らないように、あるいはそれ以下に、そういうところにこの掛け金を少なくもすべきであると思いますが、この点の検討はかなり強くされておりますか。
#88
○説明員(山口全君) ただいま二厘業種が多いと申し上げたのは、商業、サービス、卸売り、小売り、こういうのはすべて二厘業種でございますので、適用事業場の構成から見ると、二厘業種が多いということを申し上げたわけでございます。
 それから、特定作業従事者以外の、つまり一般の労働者として保険加入している場合は二厘でございますが、先ほど申し上げたように、かなり赤字になっておる、それから、いま機械を使用するということで特別加入になっているものは、五厘の適用であるかわりに、収支がよろしいということは先ほども申し上げたとおりでございます。したがって、この料率をどう扱うかということについては、ただいま検討中でございますし、明年度予算編成との関係もございますので早急に詰めておるところでございます。
#89
○辻一彦君 ちょっと数字を伺いたいんですが、農業人口が六百九十万と、この中で、どの程度実際的に農業労災のこの特例、もしくは農業者が事業主として、あるいは雇用関係で加盟しているかわかりますか。
#90
○説明員(山口全君) 一般のたてまえというか、労災保険法のたてまえから加入している者が九万三千八百二でございます。これはちょっと資料が、四十七年度はまだ整理しておりませんので、四十六年度末でございます。四十七年度の実数は近く十月に御説明できると思いますが、四十六年度末では九万三千八百二。それから、特定作業に従事しているということで加入しておる者が、同じく四十六年度末で一万一千百六十七というふうになっております。
#91
○辻一彦君 九万三千という数字は農業の事業主ですか。
#92
○説明員(山口全君) 労働者数でございます。
#93
○辻一彦君 いや、労働者数というのは農業労働をやっている方の数字ですか。
#94
○説明員(山口全君) さようでございます。
#95
○辻一彦君 合わせて、まあ十万の人が入っている、こういうことになりますが、六百九十万、約七百万に比べて十万といえば、これは数は私かなり局限されておると思う。この加入の数がまだ少ないということは、さっきあげた三点。いわゆる百人というこの実態が今日の状況に合わないのではないか。あるいはたくさんの機械を持っておるそれぞれ農家、特定業種のその加入の道だけではかかえきれないのではないか。あるいは加入の千分の五という料金が、場合によってかなり高いのではないか。こういうことが六百九十万農業人口の中の十万程度というかなり低い率になっておるのではないかと、こういうふうに私は考えますが、この点についてどういう見解を持っておられますか。
#96
○説明員(山口全君) 農業雇用者に対する労災保険の適用状況でございますが、就業構造の基本調査で見ますと、農業雇用者総数は十二万五千でございます。この十二万五千のうち、ただいま申し上げました四十六年度末で九万何がしという適用になっておりますので、雇用者総数に比べれば適用率はまあ若干落ちておりますがそう極端ではない。先生お話のとおり、雇用労働者以外の就労者に比して特別加入者数が少ないということは先生お話のとおりだと思います。
#97
○辻一彦君 その少ない理由というものは、先ほど若干の質疑を行なった三点がかなり大きな原因になっていると、こうお考えですか。
#98
○説明員(山口全君) 料率の問題もございますし、機械の範囲が限定されているということもむろんございます。さらには各適用の方式としまして、個別加入というよりは団体方式を採用しているわけでございます。保険技術上個々の加入にいたしますと、とても労災の現状の態勢では適用しかねる。現実に、一般雇用労働者であっても未適の事業場数がなお百万をこえておるわけでございまして、これらの全面適用をどうするかということについても問題にしておりますので、そういうことから農業の特別加入については団体加入方式というものをとっております。このことも加入を妨げる一つの要因になっているかとも思います。
#99
○辻一彦君 まあ、幾つかのやはりこの加入がなかなか容易に進まないという点は私は、あろうと思うんですが、この農業事業主あるいは特定農作業に従事する者と、こう区別なしに、農業者の作業従事量、こういうものに、従事量に従って当然、あるいは任意に入る。こういうことができるようなことがまあ必要なのでないか。そういう点を考えますと、単にこの機種の幅を広げるとかそういうことでは、どうもこの農村にこれからどんどんふえていく農業労働災害の問題はカバーし切れない。こういうように私は思いますが、農林省として、いまのようなこの法体系の中で、これをずっとカバーし切れるとお考えか、あるいはもう少し、これだけ機械化が進む中で災害もふえるとすれば、違った新しい法体系といいますか、法制を考えなくちゃならないと、こうお考えか、その点いかがですか。
#100
○政府委員(伊藤俊三君) 先生御指摘のように、まあこの災害補償制度でカバーされる農業者の数というのはまだかなり低いわけでございます。したがって、最近のように機械化が進む中で、農業災害というものからの安全というようなことを考えます場合には、できるだけ農業者にもこういった恩典が適用されるようにしていかなければならないことは事実でございますが、具体的にまあ機械による事故の問題、事故率の問題でありますとか、あるいはその普及のぐあいでありますとか、あるいは加入を、まあ保険制度でございますから、そういった保険制度をどういうかっこうでなじましていくかというようなこと、なかなかむずかしい点もあるわけでございます。したがいまして、私どもとしましては、当面はまず、この農業を現在の労災保険制度、こういったものの中で、でき得る限り適用の範囲を拡大していくというようなことに努力をしていかなきゃならぬというふうに考えております。
#101
○辻一彦君 その問題については、あとでもう一度、私もう一つだけ伺った上で重ねて伺いたいと思います。
 もう一ついま伺っておきたいのは、大体家族経営を中心にかなりやっているドイツ、フランス、オンダなどで、いわゆる安全知識の普及とか、基準を弘布するとか、こういうことだけじゃなしに、この条件が備わっていない機械は販売をとめるとか、あるいは検査官を地方に常駐さすとか、取り締まりの規則を制定するとか、農作業、農業機械の安全のためにいろんな法制的な措置を講じておるわけなんですね。この実態に合わせて、私はどうもこの問題はわが国では立ちおくれておるように思いますが、いま言ったドイツ、フランス、オランダあたり、ここらと比べてどうお考えになっておるか、局長いかがですか。
#102
○政府委員(伊藤俊三君) 諸外国の事例ということで先生おあげがございましたが、私どもいま持っております資料によりますと、イギリスでは農業法という法律がございまして、この法律に基づく農作業安全規則ということで、雇用主あるいは農業経営者に対して、基準に適合しない農業機械等を使用させて農業労働者を農作業に従事させることを禁止しておりますし、また、農業労働者は、この規則で禁止されている作業条件において作業することを禁止をいたしております。また、西ドイツでは、国家保険法というような法律がございまして、それに基づきまして、国が、農業保険組合に農作業の事故防止の業務を委託しまして、農業保険組合が、この法律の定めるところによりまして、災害防止規則をつくる義務を負いますし、事故防止規則はすべて監督官庁の承認が必要である。また、組合は、これに加入する事業主、被保険者がこの規則を順守しているかどうか、技術職員を雇用して監督するというような制度ができております。で、わが国におきます農業の機械化というものが西欧諸国に比べまして、かなりおくれておることは事実でございますが、最近、先ほど来申し上げますように、機械化がかなり進んできておるというわけでございまして、私どもとしましても、昭和四十年度から都道府県に補助をいたしまして、啓蒙普及活動、あるいは安全講習会というようなことを内容といたします安全対策事業を強力に実施しておりますとともに、昭和四十四年度からは、農作業安全基準、それから農業機械安全装備基準というものをきめまして、これに基づいて指導の徹底をはかっております。また、機械の安全性の向上というようなことにつきましては、農業機械化研究所に、四十五年に安全工学実験室というようなものを設け、さらに四十八年には人間工学実験室というようなものを設置しまして、機械の安全性に関する研究の強化をはかっております。また、機械の点検整備というようなことにつきましては、四十四年に定めました農業機械点検基準、それから農業機械整備施設設置基準というようなものによりまして、利用者、それから整備施設の管理者に対します指導を行なっております。また、四十四年度からは、農業機械安全整備検査モデル施設の設置につきまして助成を行なっておるようなわけでございます。またさらに、安全協会というようなものもつくりまして、そういったものに安全啓蒙指導というようなこともやらせておるというような次第でございまして、諸外国に比べれば、あるいはおくれておるような点もありますけれども、機械化の進展に伴って、安全というような問題についてわれわれは努力を払っていかなきゃならぬというふうに考えております。
#103
○辻一彦君 まあ時間の点で――もう少し伺うことがありますが、たいへん不十分ですが、時間のない点から、あと一点だけ伺ってこの問題は切り上げたいと思います。
 この機械以前の農業労働の中で起こってくる災害は、ほんとうに大きなところで雇用されている農業労働者は別として、一般の農家の家庭で、自営主、あるいはその配偶者である奥さん、あるいはその後継者、夫婦、こういう人の、機械以前に起こるいろんな労働災害は、いまの対象の法体系の中ではなかなか救われていかないと思うのですね。これが一つあります。
 もう一つは、機械化が進んでいく状況の中で、兼業化がたいへん、これは前後する関係ですが、進んでいます。極端に言うと、兼業している男子が、朝晩通勤の前後に、急いで機械を動かすという、こういう形もかなり多い。これも災害がふえてきている一つの原因になっている。さらに、労働力の質ということを最初申し上げましたが、やはり婦人とそして年配の老人が、農業労働のかなり大きな分野をになって、しかも機械を動かしている。これを見ると、ますます機械による労働災害というものは、これからどんどんふえていくんじゃないか、こういうことが考えられる。そういう中で、いま若干外国の例も聞きましたが、私は、時間があれば御紹介してもいいのですが、ドイツ等においても、かなりいろんな対策を立てて法制的にも準備をしてやっている。こういうことを比べあわせてみると、独自の法制によっていわゆる農業労働災害の問題を考えていくべきでないか。
 これは四十五年の十二月に、農業機械化審議会が農林大臣に対して行なった答申の中にも、この問題については新しい制度の創設を考えていかなくちゃならないと、こういうように答申も述べております。ここらを踏まえて、これは非常に短い時間で十分な論議ができないのでありますが、農林大臣にひとつお伺いをいたしたいのは、これからの農業労働災害の増加する可能性を考えて、これをカバーしていくために、新しい法制化によってこの問題をカバーをしていくと、こういう考え方をお持ちでないのかどうか。この一点をひとつお伺いいたしたいと思います。
#104
○国務大臣(櫻内義雄君) 先ほどから、現在の農作業の実態からいたしまして、現にある労災保険ではカバーしきれないんではないかという御指摘でございました。私、たいへんごもっともだと思うのであります。農家の農業の実態は、家族労働力を主体としている面が多うございます。あるいは、現在の兼業化の状況からして、非常な特徴ある農作業が行なわれておるというようなことを考えていきますると、おっしゃったようなわが国農業の特徴をとらえた今後の労働安全法規のようなものを、これを考える必要性があると思います。また、農業機械化審議会の進言もあることでございまして、農林省側としては、ただいまの御質問を踏まえまして、新しい労働安全法規を検討することにこれからいたしたいと、このように考えます。
#105
○辻一彦君 その中には――いまのはわかりましたが、その中には、労働災害に対する補償も含めて検討していきたいと、こういうことでありますか。
#106
○国務大臣(櫻内義雄君) 労働災害補償も含めて検討してみたいと、こう思います。
#107
○辻一彦君 これはこれから非常に大事な問題であろうと思いますので、大臣答弁の線に沿ってぜひ十分な検討をしていただいて、進めていただきたい、こう思います。
 そこで、もう六、七分の時間になりましたが、要点だけを二、三点伺いたいと思います。
 一つは、飼料の価格対策でありますが、これは、前に中村委員からも詳しい御質問がありましたので、私は要点だけにとどめたいと思います。配合飼料値上げの影響を緩和をするために飼料安定基金に大幅な特別助成を行なう必要があると思いますが、この声はいま急速に各界から非常に高まっております。畜産の状況は一つの危機状況に直面していると思いますが、こういう状況の中で農林大臣として、いろいろお話を詰めておられると思いますが、どう対処を具体的にされるのか、それはどういう金額を、また、いつごろ、さらにはそれは財政資金等によるのかどういう形で考えられるのか、もしお考えがあればこの点ひとつ伺っておきたいと思います。
#108
○国務大臣(櫻内義雄君) これはすでに公表をいたしておるところでございまして、十月から明年三月までの間に平均トン当たり三千円の補てんを安定基金に対して行なおう。ただ、その補てんをする場合に、その資金をどうするか、不足額総額で二百十一億円ということでございまするが、これは九月から価格が一万百十二円引き上げになって、九月は安定基金に対して従来の措置がございます。そこで十月からただいま申し上げたような補てんをすることにいたしたわけでありますが、そういうふうに、値上げがすでに実施されておる段階でございまするので、補てんを結論を待ってやるということについては、畜産、酪農農家の不安があるであろう。それから実際上の補てんの必要は本年内はない。そういうこともございましたので、補てんについては別途考慮する、その方法については検討する。しかし、三千円の補てんをすることについては明白にしよう、ということで決着を一応つけたと、こういうようなことでございまして、いずれこの不足額の補てんにつきましてははっきりさせたいと考えております。
#109
○辻一彦君 もう一つ、わずかな時間ですが、卵――卵価の安定対策ですね、これについて伺いたいと思います。
 まあ、卵は、戦後多くのものが上がっていく中で、物価の優等生といわれて、ずっと一個十円ぐらいの卵の値段がかなり続いて、最近は若干上がったといっても横ばいで、低い価格で押えられてきた。これは国民のたん白資源を供給するという上から非常に大きい役割りを戦後果たしてきたと思うんですね。ところが、いままでは、飼料や資材、人件費がかなり値上がりをする、こういうものを、規模を拡大する、飼養羽数を拡大するという形で吸収してきた。その羽数の拡大ももうほぼ限界にきた。そこで、さらに大幅なえさ代、飼料の値上がりと、こういう中で養鶏農家というものはいま非常な危機にあると思います。それで一つは、えさがなるべく上がらないように押えるということが第一ですが、もう一つは、卵価の安定対策といいますか、ある適正価格にこれをささえるということが必要でないか。
 そこで伺いたいのは、一つは、民間で行なっている卵価安定基金の基準価格を少なくも四十円程度上げて、引き上げてやっていく。そのためには、この卵価安定基金に国が助成するかまえ、考えが、ないのかどうか、これが一つであります。
 それからもう一つは――まあそれをひとつ伺ってからにしたいと思います。
#110
○政府委員(大河原太一郎君) お話しのとおり、配合飼料の依存率が最も高い養鶏につきましては、飼料の今回の値上がり等は最も影響が大きいわけでございます。これにつきましては、本年の六月に、春のえさ代の値上がり等を考慮いたしまして基準価格を約十円引き上げたわけでございます。今後も、来年度の末までには、来年度の基準価格、卵価安定基金の基準価格を改定いたすということでございますので、飼料の値上がりの動向なり現実の価格の動向等を見まして、適正な基準価格をきめたいというように考えております。
 なお、蛇足でございますけれども、最近、さらに本年の下期の現実の卵価水準は、需要等の動向から見まして相当強含みに幸い推移するというような動向でございまして、その点では、飼料価格の値上がりにつきまして、ある程度の吸収力を持ち得るんではないかというふうに考えております。ただし、これに対する直接助成等は、これは一つの卵価安定のあり方の基本問題でございますので、なお、畜産振興事業団によります、先生御案内のとおり、現在調整補完制度、その他液卵公社とか諸般の問題がございますので、諸制度、諸政策との関連を考慮しながら検討しなければならないというふうに考えております。
#111
○辻一彦君 大臣に伺いたいのですが、この基準価格を、いますぐには手がつけられないとしても、さっきお話のあった液卵公社の買い入れ価格、こういうもののまずワクを、幅を広げて、さらに買い入れ価格を引き上げるとか、こういうことについての所要経費を、国が助成をしてささえるという方法は、事業団が、いままでいわゆる凍結して貯蔵する卵に、倉敷料や金利を補給しておった、こういう例からも私は、考えられないかと思いますが、その点いかがですか。そういうお考えはありませんか。
#112
○国務大臣(櫻内義雄君) 結論から先に申し上げまするなら、液卵公社に対するところの助成をするということにつきましては、別段異論はございません。この買い入れ価格の引き上げについては、これは、現在の鶏卵価格安定基金の補てん基準価格、これは先ほど局長から申し上げたように、十円引き上げて、キログラム当たり百七十三円になっておるわけでございますが、これに近い価格で買い入れができることとして、必要があれば卵価の維持安定につとめてまいっておるところでございます。この基準価格につきましては、これも先ほど局長よりお答えを申し上げましたように、いずれ最近の実勢によって改定を考える。まあ、そうなると、これに関連して液卵公社の買い入れ価格も検討する必要があると、こういうことでございます。
#113
○辻一彦君 これで終わりますが、ちょっと問い方も悪かったのかもしれませんが、歯切れがどうもちょっとあまりよくないんですが、ぜひ私は――畜産振興事業団が、豚価あるいは乳価については、下限価格を割れば買いささえているわけですね。そういう意味で液卵公社のワクを広げるとか、あるいは価格を引き上げることによって、それにかわる政策機能をこれからひとつ検討して発揮をしていただきたい。
 この問題でまだ若干お伺いしたいことがありますが、たいへん時間が限られておりますから、要望だけして終わります。
#114
○塩出啓典君 私は、島根県津和野町の笹ケ谷鉱山の砒素による農地の被害の問題、これをまず最初にお尋ねしたいと思うんでありますが、答弁もできるだけひとつ簡潔にお願いしたいと思います。
 これは昨年の四月十日の予算委員会におきまして、小平議員がこの問題を取り上げたわけでありますが、御存じのように、笹ケ谷鉱山は現在廃鉱になっておりますが、かつてここでいろいろ砒素をとったわけでありますが、そのために、その周辺のたんぼが非常に砒素に汚染をされて、その結果、米がとれない。そういうような問題であります。もちろん井戸水の汚染とか、あるいは健康に及ぼす被害とか、そういうような問題もあるわけでありますが、きょうは農林水産委員会でありますので、その問題にしぼって質問をしたいわけであります。
 そこで、この昨年の四月十日の委員会におきましては、農林大臣あるいは内村局長ともに、よく調査して、できるだけ早い機会に対策を講じさせたいと思いますと。こういうように委員会で発言をしておる。それから、もうすでに一年半たっておるわけでありますが、いまだに土壌汚染防止法による砒素の指定も行なわれていないわけでありますが、その後環境庁としては、どういう作業の進捗状況であるのか。また、農林省としてはどういう試験をし、対処してきたのか。両省から御説明願いたいと思います。
#115
○説明員(遠藤茂君) お答え申し上げます。
 砒素を土壌汚染防止法の特定有害物質として、カドミウム、銅に続きまして指定をすることについては、現在その要件について十分検討いたしております。ただ、農作物の減収の観点と、また、一つは人間の健康被害、両方の問題がございますので、慎重に検討しているということでございます。
#116
○政府委員(伊藤俊三君) 私どもといたしましては、環境庁ともいろいろ連絡をとりながらやっておりますが、特に、私どもでやっております仕事としましては、汚染土壌の改善対策、事実解明のための諸調査をやっております。過去からもいろいろ試験地を設けまして、それにつきましてあるいは客土、その客土も十センチメートル客土するとか、二十センチメートル客土するとか、あるいは三十センチメートル客土するとか、あるいは湛水栽培、節水栽培、あるいは炭カルの施用というようなこと、そういうようなことを含めましてのいろいろな汚染土壌を改善するための試験的な調査というようなものを進めておるような次第でございます。
#117
○塩出啓典君 農林省にお伺いしますが、それでは大体土壌汚染防止法において砒素が指定された場合客土をする。その場合何センチ客土をすればいいかと、そういうような点についてはっきり結論は出ておるわけですか。
#118
○政府委員(伊藤俊三君) 必ずしもまだ最終的な結論は出ておるわけではございません。
#119
○塩出啓典君 大体いつごろまでに出すつもりなんですか。これはいつからこの調査やっているんですか。
#120
○政府委員(伊藤俊三君) 四十六年度からでございます。なお二、三年ぐらいかかるかもしれません。
#121
○塩出啓典君 環境庁は慎重に検討しているということでございますけれどね、環境庁が慎重にされるのは非常にけっこうなんでありますが、まあ農民の側からすれば、もうずいぶん長い間そういう苦労をしてきておる。昭和二十七年に島根県の調査で、一〇〇PPM以上の砒素がある場合にはもう米ができない。そのように、すでに二十年前に島根県庁においては、そういう調査もしているわけですね。それで、環境庁は慎重にやられるのは非常にいいわけですが、まあ、こういうことでは非常に困ると思うのですけどね。なぜその慎重になるのか、何が問題があっておそくなるのか、予算がないのか、人が足りないのか、あるいはどういうデータが足りなくて、どれだけほしいのか。そのあたり、もう少し明確にしてください。
#122
○説明員(遠藤茂君) 御指摘の指定要件につきましては、現在慎重に検討している、その中身でございますが、四十七年度までのデータ、すべてのデータを集めまして、それについて先ほど申し上げましたような作物の生育の阻害の問題、また人間の健康被害の観点から、データを十分に検討いたしているわけでございます。
 ただ、地域的な差が、土壌本来の性格とされないような要件で、非常にいろいろ問題が出ておりますので、その辺を四十八年度の資料をとらまえまして、それによってもう一度検証いたしたいということで、現在検討いたしております。
#123
○塩出啓典君 さっぱり検討、検討じゃよくわからないんですけど。大体いつごろまでにその土壌汚染防止法による指定を砒素について行なうのか。やっぱり、仕事というのはいつまでにやるという、そういう目標を立ててやらないと、検討、検討ということでは、もうあまりにも時間がかかっちゃうと思うのですよ。それはいつまでにやるつもりなんですか、その点ひとつ。
#124
○説明員(遠藤茂君) いま申し上げましたように、資料の整備され次第、公害対策審議会にかけまして、それによってきめたいと思っておりますが、目途としては本年度末ということを目標にしております。
#125
○塩出啓典君 それじゃ、まあひとつ本年度末という目標で、ひとつ少し馬力をかけて――いろいろ環境庁も、やる仕事は多いと思うのですが、しかし、これはもう歴史の古い問題ですから、ものごとの順序から言っても、これは早急にやるべきことじゃないかと思うのですね。それに力を入れてもらいたいと思うのですが。
 そこで、農林省にお尋ねしますが、土壌汚染防止法を指定をしても、あと二、三年もかかるということでは、これは砒素の指定をしても、結局このデータと申しますか、農林省としては、何センチぐらい客土すればいいかという、そういうものがはっきりしないと、これは着工できないことになると思うのですが、二、三年かかるというのは非常にのんびりしているんじゃないでしょうか。これはもう二十年前から明らかな問題なんですから。これはもう少し今年中ぐらいに結論を出すようにできないもんですか。どこに問題がありますか。
#126
○政府委員(伊藤俊三君) 私どもも鋭意この検討を進めております。ある程度のデータはございますけれども、それぞれの地区につきまして、やはり違った答えも出ておる点もございます。したがいまして、そういった点をできるだけ早く整理していかなきゃならないというように考えておるわけでございます。まあ、私どもといたしましては、水稲に被害が発生するときの土壌中の砒素濃度ということで、ある程度の目安がついておるんでありますけれども、水稲の被害発生と最も相関関係の高い砒素の形、これは亜砒酸みたいなかっこうになっている場合もあるし、砒酸になっているやつもあります。それにまた金属がついているものもある現状でありますが、そういった砒素の形が何であるか、またそれをどうやって完全に分析できるか、抽出できるかというようなこと、技術的にはまだ問題が残っておるようでございます。そういった点も検討を進めていかなきゃならぬというふうに考えております。
#127
○塩出啓典君 それはわかるのですけれども、要は、そういう砒素がどういう形態であろうとも、その土を客土をして、そしてきれいな土を入れれば米ができることはもう間違いないわけですから、それはもうすでに私がもらいました資料――これは昨年の十二月二十五日、これは中国農政局へ県から出された資料をもらったのですけれども、それによってもやはり三十センチぐらい客土すれば非常によくなる。そういうことがはっきり出ているわけなんですからね。そういう点で、そんなにむずかしいことではないと思うんですけれどもね。もう三十センチ客土すればいいということであれば、そのとおりやればいいわけですから。それを砒素の形態がどうのこうのなんというようにむずかしく考えるからそうなっちゃうんで。その点はもう少し検討して、少なくとも土壌汚染防止法に砒素が指定になるまでには、何らかの結論を出して、すぐ工事にかかれるように私はしていただきたい。このように思うんですけれども、その点どうですか。
#128
○政府委員(伊藤俊三君) ただいま客土のお話でございますが、先ほども申し上げましたが、同じ地区の客土でありましても、土地によりまして実は効果が若干違っておるような点もあるんでございます。そういったことで、客土を五センチメートルやったり、十センチメートルやったり、あるいはそれ以上やったり、どの辺が一番効果があるか。まあたくさんやればたくさんやるほどいいんだというお話もあるいはあるかもしれませんが、経済性ももちろん考えなければいけません。どの辺にやるのが一番効果があるのか。また、それは水のかけ方とか、何かそういったこととももちろん関係があることであろうかと思います、栽培のしかたでございますね。そういった点も含めての結論を出してやらなければならない、かように考えております。
#129
○塩出啓典君 じゃ、いつまでに結論を出すつもりなんですか、二、三年というのじゃなしに。
#130
○政府委員(伊藤俊三君) 先ほど申し上げましたように、まあ時間的に余裕があればいいわけでございますけれども、ある程度、環境庁のほうで基準をきめていただけば、その基準をきめ、また対策計画というものがある程度きまってくれば、その段階ではある程度の、何といいますか、事業は進めていかなきゃならぬというように考えております。
#131
○塩出啓典君 これはひとつ農林大臣ですね、特に要望しておきますが、先ほどお話がありましたように、間もなく土壌汚染防止法により砒素が指定になって、そのときに、その段階で農林省のほうで着工できない、これでは困るわけで、いままでは、農林省は土壌汚染防止法の指定がないからできないと、そのようにわれわれに説明をしてきておったわけですからね。だから、指定になればすぐ工事にも着工できるように、もう二十年前からはっきりしている問題ですから、農林大臣としてもよくその点を検討していただいて、予算が少ない、あるいは人員が少ない。そういうことであれば、そういう方面にも力を入れて推進をしていただきたい。これは農林大臣に要望したいのですが。
#132
○国務大臣(櫻内義雄君) かねてから塩出委員からこの問題をお取り上げいただき、熱心にいろいろ御指摘をちょうだいしたことは、私として非常に感謝をいたしておるわけでございますが、先ほど環境庁のほうからの御答弁がございましたように、中央公害対策審議会に対しては、本年度中に砒素を対象にする諮問をしてもらう、まあこういうことであります。したがって、ただいまの御質問は、そういう指定になれば、早急に仕事のできるように農林省において十分対策を講ずるようにと、こういうことであると思います。同時に、昨年十二月二十五日に一応島根県当局からの客土のあり方について、中・四国農政局へも考え方が出ているじゃないかということを御指摘になったわけでございまして、ただいまのような順序を踏んでまいりますれば、局長のほうからは、最初に二、三年という非常に大まかなお答えを申し上げたので、塩出委員から、それでは困る、もっと早く準備をせいと、こういうお話でございまして、私もお話はそのとおりに、一日でも早く急がなければならないという感じを持っておりまするので、農林省あるいは県に対しての指導を急ぎまして、できるだけ早く工事の実現のできますように努力をいたしたいと思います。
#133
○塩出啓典君 農林省も来年度の予算の、そういう概算要求等考えておられるわけでありますが、もしこれが年内に指定になった場合に、さっそく来年度から計画樹立あるいは着工、そういうようなことは考えているのかどうか、その点はどうなんでしょうか。
#134
○政府委員(伊藤俊三君) その場合には、それに対応した予算をとっていかなければならぬと思います。まあ、全体の中で処理できるかと思っておりますが、もし早くこれがきまれば私どものほうも、ただいま大臣からもお答えがありましたようなことで、まずとりあえずのいままでの実験の成果を踏まえながら、なるべく早くその地域に計画を立て事業を進めるように努力しなければならないという考えでおります。
#135
○塩出啓典君 私がいただきました資料では、来年度は公害防除特別土地改良事業費に三億五千六百万、小規模公害防除対策事業費に三千四百万、これだけの予算要求をしているようでありますが、その中で、これはまあそのときになってみないとわかりませんけれども、すみやかにひとつ、古い前からの問題ですから、取り上げていただきたい。このことを要望しておきます。
 それと次に、こういう土壌汚染対策のそういう土地改良事業、公害防除の事業を行なうに当たりまして、その費用負担の問題でありますが、すでにカドミウムあるいは銅は指定になりまして、すでに一部においては、そういう工事も着工をして計画は立てられているわけですが、そういう場合の費用負担が大体いままで行なっている分についてはどういうぐあいになっているのか。そしてもし笹ケ谷鉱山が周辺の農地においてそういう工事が行なわれた場合の費用負担については、どういう原則になっているのか。このあたりをひとつ簡単に御説明願いたいと思います。
#136
○説明員(遠藤茂君) 土壌汚染防止法並びに費用負担法に基づく事業者の負担の問題でございますが、カドミウムにつきましては二カ所はすでに事業者の負担割合がきまっております。なお、今後砒素が指定されまして、それに基づいて行なわれます笹ケ谷鉱山の場合でございますが、おそらく県が施行者になると思いますが、その場合に県が県の公害対策審議会の意見を聞いて事業者の負担割合をきめるということになると思います。その場合の費用負担につきましては、やはり過去に鉱業活動を行なった者でも、砒素を排出している場合は、当然にその負担をすべきであるというふうに考えております。現在、島根県では、過去の鉱業活動について調査を行なっているというふうに聞いております。
#137
○塩出啓典君 いままでの例のは話してくれましたかね。いままでの例を言ってください。いまカドミウムについての企業の負担がどの程度になっているかという……。
#138
○説明員(遠藤茂君) 現在まで二カ所ございますが、カドミウムの場合には、生野鉱山周辺地域が四分の三、それから碓氷川流域地域についても事業者負担が四分の三ということでございます。
#139
○塩出啓典君 それから県と市町村あるいは農民の負担はどうなっていますか。
#140
○説明員(遠藤茂君) 公害防止事業につきましては、事業者が四分の三を、現在までの例でございますと四分の三は事業者が出しまして、残りを国と県が出すということになっております。国が出します分につきましては、事業の種類によっていろいろでございますが、三分の二から五五%まで出すということになっております。
#141
○塩出啓典君 そこで、やはりこういう工事は非常なばく大な金額になりますので、農民の負担はもちろんのこと、町にしても、この問題の津和野町等も過疎県である島根県の町でありますけれども、この点は私よりも農林大臣のほうがはるかに詳しいと思うのでありますが、そういう点で、できるだけ地元の負担を少ないようにしていかなければいけない。このことを私は要望したいのであります。
 そこで通産省にお伺いしたいのでありますが、いまお話では、島根県の公害対策審議会におきまして、事業者がどの程度負担するか、そういうことを検討している。いずれまた結論が出ると思うのでありますが、その場合に、すでに鉱山はもう鉱業権者はいないわけですね。過去にも、いろいろ長きにわたってその当時の鉱業権者が変わっておるわけであります。そうしますと、現在、存在している会社もあれば、支払い能力のない会社もある。そういうことにやはりなってくると思うんですけれどもね。そういう場合はどうなるのか。
#142
○説明員(蓼沼美夫君) お答えいたします。
 あるいは私からよりも環境庁からお答えいただく点が多いかもしれませんが、この農用地の土壌汚染防止等に関する法律に基づいて土地改良事業が実施される場合でございますけれども、公害防止の事業費の事業者負担法によりまして、原因当事者が事業費の一部を負担するということは先生御案内のとおりでございます。この笹ケ谷鉱山に関しましては、御指摘がございましたように、約六百年前から、この鉱山の稼行が、弘安年間でございますが稼行が行なわれておりまして、昔から有名な鉱山で、それからいろいろな形で鉱物の採掘を行なっている鉱山でございます。この中で、原因企業というものが具体的に原因行為を行なった場合には、この企業がその寄与分に応じて費用を負担するということになりますので、その寄与分というものは県の公害対策審議会、ここでおそらく検討なさって、その費用をおきめになるのではないかと、このように考えております。
#143
○塩出啓典君 そうすると、六百年間というと、おそらくそういう昔のデータあまりないと思うんですね。いまどうなんですか。ここでかつて鉱業権を持った会社で、現在存在している会社というのは、たとえば日本鉱業とかその他そういう会社は何社ぐらいありますか。
#144
○説明員(蓼沼美夫君) 現在存在しておりますのは、個人は別にいたしまして、日本鉱業とそれから三菱金属鉱業、それから吉岡鉱業、この三社でございます。
 〔理事初村滝一郎君退席、理事園田清充君着席〕
#145
○塩出啓典君 そうしますと、まあ六百年の長きにわたるということであれば、その日本鉱業あるいは三菱金属鉱業あるいは吉岡鉱業等がそこで採掘をして砒素を流しておった期間というのが出てくると思うのですね。それはまあ全体ではない。それ以外にも流している期間があるわけですから、そうした場合に、結局実際原因者である事業者が四分の三負担をしろといっても、いま存在する企業というのはそのうちの一部で、結局残りは原因がわからない。そういう場合はどういうことになりますか。
#146
○説明員(遠藤茂君) やはり負担法によりますと、事業者の原因の寄与した程度に、割合に応じてということでございまして、今後、島根県が県の公害対策審議会でおきめになると思いますが、あくまでも基本的には、やはりいま申し上げたように、少なくとも砒素を排出している企業者には、それ相当の負担をさせるというふうに考えております。
#147
○塩出啓典君 そうすると、結局、原因がこの鉱山の鉱業権を持って、そこで操業をしておこった人たちであるということはわかっても、それが結局わからない場合ですね、どこのだれかわからない。そういう場合は、負担さすことはできないわけですね、現実問題として。そういう場合は、結局どうなるかという、そのあたりを答えてもらいたいんですけれどもね。
#148
○説明員(遠藤茂君) 基本的には、いま申し上げたような負担、その寄与の程度に応じてということでございますが、どうしても負担者がわからない場合には、やむを得ず何らかの別な方途で金を出すというようなことにならざるを得ないだろうというふうに思います。
#149
○塩出啓典君 何らかの別な方途で金を出すと言っても、金は天から降ってこないと思うんですけれどもね。結局どこが出すんですか、これは。
#150
○説明員(遠藤茂君) この場合でも、公害防止事業につきましては、農民に負担をかけないということがやはり望ましいことでございますので、国なり県なりがやはり負担をしてやるべきであるというふうに考えております。
#151
○塩出啓典君 そうしますと、こう理解していいわけですか。たとえば安中とか、あるいは兵庫県の場合は四分の三が事業が負担をして、そうして残りについて三割以上県が負担する、それから残りについては市町村が負担をすると、そういうことでやっているわけですが、ところが、実際いろいろ県の公害対策審議会の調査の結果、本来は四分の三が企業が負担すべきだけれども、そのうちわかっている企業は、まあたとえば四分の二だと、そうすると四分の二をその企業が負担をして、残り全体については県と市町村がそれぞれの配分に応じて負担をすると、したがって、農民には負担はかけないと、そう理解していいわけですね。
#152
○説明員(遠藤茂君) いま先生おっしゃいました中の、国と、やはり県が本来は負担をすべきではないかというふうに考えておりまして、農民にはやはり負担をさせるべきではないというふうに考えております。
#153
○塩出啓典君 そこで、この問題につきましては、要は、農民あるいはそういう過疎の財政力の弱い、そういう町に負担させるべきではない。私たちもそれを考えております。やはり大きくいえば、これは国の、通産省の許可のもとに営業してきた企業による害ですから、大きくいえば、やっぱり国が責任を持つべきではないかと思うんですね。そういう点で、その点につきましては、農民の皆さんや、あるいは町に過大の負担にならないように十分考えていただきたい。これを各省に私は要望しておきたいと思うんです。
 それで次に、実際、私も二年ぐらい前に現地へ参りまして、ちょうどそのときには、稲が成長期で、一生懸命草を取る時期でございますが、御存じのように砒素の場合は田の水を減らして全部かわかして、そうして草を取っていく。そういうことで、普通のたんぼに比べれば、はるかに労力が要る。しかも、実際に米の収穫は非常にできない。まあ先般の四十七年十二月二十五日に、島根県から中・四国農政局へ提出された資料によりますと、はなはだしい場合は、中川圃場というところなどは、大体十アール当たり五十キロしかできていなかった。まあこれは一俵にも満たないけわですね。それが三十センチ客土をして四百六十キロ、これは約八俵に近い。そういう米もとるようになっているわけで、これは逆に考えれば、砒素のために人一倍労力を費やして、そうして米はわずか一俵もできないようなそういうところもある。それが短い期間ではなしに、島根県庁の調査によれば、もう昭和二十七年においても、すでにそういうことが明らかになっているわけで、それから今日までの、あるいはそれから以前も含めて農民の皆さんの受ける被害というのは、これは非強に尽大なものがあると思うのでありますが、そういう被害というものが、それぞれその企業の活動によってできたという因果関係がはっきりしたならば、これは当然損害賠償をしなければいけない。鉱業法にはたしかそういう鉱害の補償義務というのはちゃんと明記されているわけでありますが、そういう点、通産省としてはどう考えているのか、それを伺っておきたいと思うんです。
#154
○説明員(蓼沼美夫君) 鉱害につきましては、先生御指摘のように相当、鉱山の事業活動そのものが長年の間採掘を行なった結果、鉱毒がたまって、それが鉱害になるということでございます。笹ケ谷鉱山につきましては、現在鉱業権が放棄されておりますので、休廃止鉱山の鉱害防止工事補助金という制度で、島根県が事業主体になりまして、四十七年度から防止工事をするための調査を行ないまして、近くまたその防止工事を具体的に始めるということになっておるわけでございます。
 御指摘の農作物の減収被害による損害賠償ということでございますが、これはやはり考え方としては、実際に減収を受けた方と、それからその減収の被害を与えた当事者間でお話し合いをされて、円満に解決されることをわれわれとしては期待しておりますが、もしそういうことで話し合いがつかないときには、制度の一つとして――これは幾つか制度がございますが、制度の一つとして、両当事者の申し立てがあれば、必要に応じて、鉱業法の中に和解の仲介という制度がございますので、そういう制度に乗せまして、円滑な解決をはかるために十分努力をいたしたい、このように考えております。
#155
○塩出啓典君 現在は、いわゆる鉱業権を持っている人はいないわけですけれども、過去にそれを持っていたのは現在でも三社あるわけでありますが、まあもちろん原因は長い期間にわたるわけで一がいに言えませんけれども、おそらく県のいわゆる土壌汚染防止法の費用負担の調査からすれば、どの企業がどの程度の責任があると、そういうことは明らかになってくると思うんですけれども、そういう人は過去に鉱業権を持って、いま持っていないわけでありますが、これは法的には、鉱業法から見れば、賠償の義務は存続していると考えていいわけなんですか。
#156
○説明員(蓼沼美夫君) 損害賠償の責任でございますが、鉱業法の中の損害賠償といたしまして、一般的には、その原因行為者、損害の発生した時点の原因行為者がその責に任ずということでございますが、鉱業権がすでになくなったときには、最終鉱業権者がその責に任ずということを明記してございます。ただ、農作物の場合には時効という問題がございまして、普通考え方といたしましては、年々その減収被害というものは確定するというふうに考えられるわけでございます。そうしますと、この時効の判定の問題というのが検討してみなければいけないという問題がございまして、その見地からどの鉱業権者がこの賠償の責に任ずかということは一つの問題点になると思います。
#157
○塩出啓典君 時効というのは、この百十五条に「消滅時効」というのがありまして、損害賠償請求権は、被害者が損害及び賠償義務者を知った時から三年間行わないときは、時効によって消滅する。損害の発生の時から二十年を経過したときも、同様とする。」と、こういうようにあるわけでありますが、また二項には「前項の期間は、進行中の損害については、その進行のやんだ時から起算する。」と、おそらくいまあなたが言われたのは、これは進行中だけれども、毎年毎年これは区切りをつけていくんだと、そういうことじゃないかと思うんですけれども、そうした場合に「被害者が損害及び賠償義務者を知った時から三年間行わないときは、時効によって消滅する。」という、これは具体的にはどういうことになるんですか。いまから請求してももうおそいという、三年より前のやつはもうだめだということなんですかね、これは。
#158
○説明員(蓼沼美夫君) この笹ケ谷の鉱山のケースでございますと、農作物の減収の被害ということについては、この会社によりまして、会社がいつまで、いつの時点で営業しておったか、あるいは実際のその損害を与えるような行為をしておったかという時点が問題になるわけでございますが、このケースについては、知る、知らないというその辺の認定の問題と、それから二十年という期間が、農作物の減収被害ということについて先生のおっしゃるように継続するか、あるいはもう時効として算定されるかという、その両方の考え方がございます。現在時点では減収額というのが農作物については一年ごとに確定する。つまり土壌汚染のような場合には、これは毎年累積をしていくわけでございます。ですから、ずっと継続をしていく。ただ、農作物は、その年その年で確定しているわけでございますから、これはやはり二十年時効、あるいは三年時効というのが成立するのではないか、このように考えております。
#159
○塩出啓典君 そうしますと、具体的に損害を受けていることは明らかなわけだし、それから、その鉱山から流れ出た砒素によることもほぼ明らかだ、もちろんどの会社が何%ということはわからないにしてもですね。そうした場合に、いまここでその損害賠償を請求した場合、通産省の考え方としては、企業としてはどうすべきなのか、その損害賠償に応ずることはできるのかどうなのか。あるいは三年より前のやつはもうだめなのか、その点はどうなんですか。
#160
○説明員(蓼沼美夫君) この辺は一つは実態問題が非常に大きな要素となると思います。で、現時点においてその実態を踏まえた上でいろいろ検討をしてお答え申し上げたいと思いますが、このいまの時点でちょっとはっきりしたお答えができかねるのははなはだ残念でございますけれども、お許し願いたいと思います。
#161
○塩出啓典君 損害は島根県が調査をした時点から見ても、すでに二十年たっているわけですね。そうすると、いまもし――もちろんいろいろそれは要因はあるけれども、仮定の上で、もしいま損害賠償を請求した場合、そうしてはっきり鉱山に責任があるということが明らかであった場合、二十年なら二十年分の請求ができるのか。あるいはもう三年間行なわないときは、時効によって消滅するということであれば三年分しかできないものなのか。あるいはもう一つの考え方は、ここで言っているのは、被害者が損害及び賠償義務を知ったときからということですから、いままではよく原因がわからなかった。最近になって、いまでもそれはまだはっきり鉱山に原因があるということは証明されてない。今度、県の公害対策審議会が企業に何%責任があるということがはっきりすると、その時期から三年以内であれば有効である、そういうことも成り立つと思うんですけれども、それはどちらをとるべきなのかですね。
#162
○説明員(蓼沼美夫君) 先生御指摘のように、これは事実認定の問題が一番大きな要素として入ってくるわけでございます。一般的な考え方からすれば、やはり原因行為者がおりまして、それが実際に損害を与えたというときには、この法律の賠償義務があるということで、事実認定が判断されれば、当然その鉱業権者は賠償を払わなければいけない、こういうことになっております。
#163
○塩出啓典君 そうしますと、これは先ほど一番最後の鉱業権者が責任を持つべきであるということを言ってましたけれども、農作物の被害の賠償責任は、最後じゃなしにその前にも及ぶ、それぞれの被害の原因のパーセントに応じて負担をしなければいけない、そう考えていいわけですね。
#164
○説明員(蓼沼美夫君) その事実認定によりましては、最終鉱業権者のみならず、前の鉱業権者に及ぶこともございます。
#165
○塩出啓典君 農林省としては、大体今日まで農民の皆さんがどの程度の被害を受けておるか、そういう調査はいままでやったことはあるのか、ないのか。もしなければ、やっぱりこういうのは、農林省としても調査をすべきじゃないかと、その点はどうなんですか。
#166
○政府委員(伊藤俊三君) 私どもとしまして、精細な調査というものがあるわけではございません。ただ、具体的に、ある地点につきまして、どの程度の収量があったというような被害が認められるような地域というようなものは、ある程度はわかっております。
#167
○塩出啓典君 やはり農林省というのは、農民の立場に立つわけですから、やっぱり農民がほんとうにそういう損害を受けておれば、その実情を調べて、じゃあ、ひとつこういうように損害賠償すればいい道があるんだ、そういうように私は、農民の側に立つのがやはり農林省ではないかと思うんですけれどもね。そういう点でもう島根県が調査してからでも、二十年もたっているのに、まだ損害の実態もつかめない。これはやはり農林省としても、当然その実態等は掌握をすべきではないか。これは国会でも昨年の予算委員会で論議された問題でございますので、私はこれからでも調査をして、農林省としても、その実態を掌握してもらいたい、これを要望したいのですが……。
#168
○政府委員(伊藤俊三君) 私どもといたしましては、環境庁と一緒になりまして、この地域のいわゆる土壌汚染の状況というものを把握しまして、そうしてそういったことから一体どの程度の損害が出ているかというようなことも推定をしていくということに努力はしなければならないと思います。
#169
○塩出啓典君 それでは時間もありませんので、農林大臣に特に最後に要望しておきたいのでありますが、こういう問題が非常にむずかしい問題ではあると思うんですけれども、いまだ解決をされていない。そのために純朴な農民の皆さんが長年泣き寝入りをしてきているわけでありまして、政治というのは、そういう泣き寝入り等をなくして、そうしてそういう不公平をなくしていくのが政治のつとめではないかと思いますね。まあ、そういう点でまだ事実認定において明らかでない点も多々あるわけでございますが、そういう点は今後明らかになっていくと思うのでありますが、農林大臣としても、特に農林大臣の御出身の県でもありますし、これは県でなくてもそれは当然やらなければなりませんけれども、この問題については、特に農民の側に立って、泣き寝入りすることのないように、やはり正当な公平な解決が行なわれるように努力をしていただきたい、このことを要望しておきたいと思います。
#170
○国務大臣(櫻内義雄君) かねて来この問題について熱心にいろいろ御指摘をちょうだいしておりまして、私としては、心から感謝をいたすものでございます。ただ、それだけを言っておるわけにはいきません。現実に遅々として対策も進んでおらない実情からいたしまして、ただいまの御意見のとおりに地域住民、農民の方々のことを考えまして極力善処してまいりたいと思います。
#171
○塩出啓典君 まあ通産省としても、この問題についても非常に鉱業法の運用等において、われわれもよくわからない点もあるわけでありますが、これはひとつよく通産省としても御研究いただいて、私も、また、何らかの機会にやはりこの問題をいろいろ勉強していきたい、そう思っておりますので、その点お願いしたいと思います。
#172
○説明員(蓼沼美夫君) 先生御指摘のとおり、この問題なかなかむずかしい問題でございますので、十分勉強させていただきたいと思います。
#173
○塩出啓典君 環境庁、通産省よろしいですから。どうもありがとうございました。
#174
○理事(園田清充君) 速記をとめて。
  〔速記中止〕
#175
○理事(園田清充君) 速記を起こして。
#176
○塩出啓典君 そこで、それでは農林大臣に最初に一問だけお尋ねしておきたいと思うんですけれども。実はこれから漁業補償の配分の問題について、ちょっとお尋ねするわけなんですけれども、御存じのように、最近PCBとか水銀とかあるいは埋め立てとか、そういう点で漁業組合に漁業補償金が払われる場合が非常に多いわけでありますが、ところが、その配分が、その組合内において非常にうまくいっていない。この問題はすでに前々から問題になりまして、昭和四十五年七月八日、ちょうどいまから三年前のこの当委員会におきましても、同僚の沢田実議員が名古屋港の漁業組合内の漁業補償金の配分が非常に不公平である、そういう問題を取り上げて、いろいろ今日まで水産庁としてもそれなりの努力はされてきておるわけでございますが、私たちが各地を回りまして、その努力があまり実っていない。そういうような点が非常にあるわけでありますが、そういう点について、農林大臣にはひとつその実情をよく調べていただいて、やはり非常に平和な漁村がそういう補償金の配分から、同じ人間と人間の争いを生むということは、これはどう考えてみても非常に残念なことでありますし、そういうようなことのないように、政府としても万全の対策を立てていかなければいけない。そういう点で――農林大臣も三時に行かれますので、そういう問題について、その対策をいままでやってきたことがあまり効果が出ていないわけですから、ひとつそれを踏まえた上で、前向きに検討していただきたい。あと詳細はまた水産庁の次長さんにもお話しておきますので、その点をひとつお願いしておきたいと思います。
#177
○国務大臣(櫻内義雄君) 補償金の配分についての一応通達なども出ておるのでございますが、これはまた担当者から詳細御説明を申し上げますが、ただいまお話のように、配分についてあちこちで問題のあることを私も十分承知しております。私自身の島根県においても、中海干拓補償に伴っていろいろ問題を起こし、ただ単に村内の対立でなく、訴訟問題にもなる。あるいは遺憾ながら背任と申しましょうか、司法当局の捜査の対象になるような場合も起きておるのでございまして、ただいまのお話のように、そういうようなことがないように行政上の指導もよろしきを得なければならぬ。このことは私も痛感をするところでございます。
 ただ、漁業補償という場合に、個々の漁家の漁獲量というようなものの相違があり、あるいは地域地域の事情の相違があるという、非常にむずかしい点があることは御承知のところだと思います。しかしながら、そうだからといって、配分について問題の起きることがあってはいけないのでありまするから、ただいまの御質問のように、何かすっきりした抜本的な対策を考えてまいりたいと思いますが、もとよりおろそかにしておるわけではございませんで、従来のやり方については、後刻御説明申し上げ、足らざるところは補ってまいりたいと、このように考えます。
#178
○理事(園田清充君) ちょっと速記とめて。
  〔速記中止〕
#179
○理事(園田清充君) 速記起こして。
#180
○塩出啓典君 水産庁の次長にお伺いしたいのでありますが、四十五年十一月二十一日に「漁業補償金の配分について」という通達を出されたわけでありますが、まあ私はそれなりの水産庁の努力のあらわれだと思うわけですけれども、いろいろなことがここにきめられておりますが、こういうのが実際にそのとおり行なわれておるのかどうか、そういう検査をしたことがあるのかどうか、それからはたして効果が出ているのかどうか、そういう点でどう考えておるのか、それをひとつ簡単にお願いしたいのですが。
#181
○政府委員(安福数夫君) ただいま御指摘ございました、こういった事例について具体的にどう調査しているか、こういう御質問でございますけれども、全部について悉皆調査というのはございませんけれども、各地でこういう問題がいろいろ起こっております。そういう面をわれわれ事例として報告を求めて、われわれとしては、それを検討している、そういう経緯はございます。
#182
○塩出啓典君 きょうは私は時間もございませんので、具体的な問題は次の機会として、一般論としてお尋ねするわけでありますが、先ほども訴訟までなっているという、そういうような事件もかなりあるやに聞いているのですけれどもね。いずれにしても、そういうことがあってはいけない。そういうことで、狭い漁村の中に人間と人間の争いができるということは、これは非常に残念なことであって、これをなくするように、いろんな努力をしていかなければいけないと思うのですけれどもね。そういう点で、まあこの通達は出したけれども、依然としてそういうものが多い。最近、特にそういう漁業補償金が支払われる例が多いせいでもあるわけかしれませんけれども、非常にふえているように思いますけれどもね。そういう点、やはり水産庁としては今後どうしていくのか、その点伺っておきたいと思います。
#183
○政府委員(安福数夫君) ともかくこういった漁業補償なり、まあ漁業補償に限りませんで、いろいろこういう補償がグループで、あるいは団体で交渉した結果、その内部の配分についてどうするかということをめぐりましていろいろなトラブルがあるというのは、大なり小なりあるだろうと思うのです。ただ、その場合に、われわれとして指導の一番の原則、たてまえと申しますか、それは、やはり公平であり適切である、小異はあろうと思いますけれども、大かたのコンセンサスの上に基づいた配分決定がされるべきである。そのためには、どうしてもやはり客観的な基準というものを明らかにする。それと同時に、漁業であれば、関係水域におきます関係漁民の漁業の実態、それから、いろいろな問題が起きます、そうした事件が起きるというのは、ある意味では、ボス的な一つの支配と申しますか、そういったのが補償金の若干こう先取りといいますか、そういったことをめぐっての問題が非常に暗い面を出しているわけでございますから、われわれは、この指導の中でも、そういった過去の交渉の経緯とか、あるいは漁業の実態であるとか、漁業権の実態であるとか、関係漁民の資本装備の問題、いろいろな要素があるわけですから、そういったできるだけのデータを積み上げて、それをオープンの形で討議する。そういうたてまえで、ガラス張りの中でこれをやりませんと、やはりこそこそやられますと、非常に問題になるわけでございますから、そういった面で、通達の中でも、御承知のとおりだと思いますけれども、やはり協同組合であれば総会という場合もございますから、そこで配分の委員会といったものを総会で決議して、委員を選任すると同時に、いろいろなデータを積み上げて、それに基づいた一つの客観的な配分の基準、そういったものをそこで明らかにする。一番適切であるのは、全体会議と申しますか、そういった中でそういったものを討議するのが適当だと思いますけれども、何せ組織が非常に大きいということになりますと、ある程度限定される場合もあろうと思いますので、そういった組織の中で、そういった体制の中でできるだけ客観的に、公明に、ガラス張りの中でそれが討議される、そういう趣旨で指導しているわけであります。
#184
○塩出啓典君 では、この通達の中にも、たとえば配分委員会を選んだ総会の会議録とか、あるいは配分委員会や総会の開催に支出した経費の明細書とか、組合員の同意書とか、補償金の配分受領額の受領の領収書、そういう関係書類は漁業協同組合に保存しろとか、あるいはその前には、配分の基準をまずつくって、それでやっていけとか、それからまあ客観的な資料に基づいてやれとか、そういうことが書いてある。これはやはりちゃんとやっていくということがまず第一段階として非常に必要だと思うのですけれども、これは実際漁業組合の監督というのは県がやっているわけでありますが、水産庁としても、各県を通してそういうような、きちっとこのとおり行なわれているかどうか、そういう点はやはりチェックすべきじゃないかと思うのですが、その点チェックする用意があるのかどうか。
#185
○政府委員(安福数夫君) これらの県直接というのは、監督の権限は県にございますから、県は常例検査を二年なり三年に一度やっていることもございますので、そういった機会に、そういった問題を書類検査になると思いますが、実態を検査するという機会はあろうと思います。そういった検査の結果をわれわれとしては事例としても水産庁は承知しておく必要があろうと思います。そういった面でわれわれとしてはこういうケースを先ほどもちょっと申し上げましたが、できるだけ多くの報告を求めて、その中でどういう形がいいだろうかと、こういうふうな問題も含めまして検討してまいりたい、かように思います。
#186
○塩出啓典君 これは漁政部長の名前になっているわけですけれどもね。やはりこれは別に漁政部長であろうが、水産庁長官であろうが、それはまあだれでもいいのかもしれませんけれども、問題は、やはりこれの拘束力といいますか、単なる通達であるのかどうか。やはりそういう点でもう少し重みを持たせるというのですか、拘束力というものがある程度なければいけないと思うのですけれども、そういう点でこの通達のあり方についても、ぼくは検討すべきではないかと思うのですが、その点どうなんですか。
#187
○政府委員(安福数夫君) 拘束力と申しますと、これは上級官庁としての指導通達ということになろうと思いますので、厳格には拘束力があるとは思いませんけれども、われわれとしては、この中に盛られている考え方というのが客観的にガラス張りの中でやられるということが大事だと。そのためにこういうことをやはり考慮してそういう資料なりこういう持ち方をすべきであると、こういうことを主張しているわけでございます。ただ漁政部長名であれば非常に格が軽い、こういう御指摘でございますけれども、長官通達ということになりますと、またいろいろ法律なりそういった施行を通じての長官通達というのはございますけれども、やはり漁政部の担当になっているということで、たまたま漁政部長名で出ていると思います。ただ、この場合も、先ほど御指摘ございましたが、四十五年の七月でございますか、こういう問題があったということで、一応漁政部で検討して漁政部長の名前で出ますけれども、決裁は長官まで当然とっているわけでございまして、そういった面で名前がどうであるということでわれわれは軽く見ている、こういうことではございません。ただ、今後ともこういった問題については十分検討を加えながら、こういうトラブルがないように、日本の平和のためにもこういう点はできるだけ姿勢を正すことは必要でございますから、そういう努力はしてまいりたい、このように思います。
#188
○塩出啓典君 それでは、時間がまいりましたので最後に。
 そこで私は、水産庁といたしましても、やはり強力に指導してもらいたいと思うんです。いままで私たちが遭遇したそういう事例で水産庁や県等の考え方は、ともかくこれは漁業組合内の問題だから、組合長に一任してあるんだからということで、非常にその内容に立ち入りたがらない。そういうものに立ち入らないほうが火の粉はかかってこないのでいいかもしれませんけれども、それではやはり私はいけないと思うんです。やはり組合が非常に民主的な組合であればいいですけれども、なかなかそういうわけにはいかない。そういうところにはやはり行政官庁というものは、ある程度目を通して強力な指導をしていかなければいけないんじゃないか、もちろんそこには限度はあると思うんですけれども。それをひとつ私は水産庁に強く要望したいんです。
 それともう一つは、たとえばある漁民が不満があった場合に、どこへ言っていったらいいかということですね。たとえば企業と漁民とのそういう公害問題については、公害等調停委員会とかそういうものがある。夫婦げんかの場合でも、これはやはり家庭裁判所というものがあって、裁判にかける前に何らかのそういうものがあるわけですね。ところが、この場合には結局どこにも言っていくところがないわけですね。もちろん県の水産局とか、われわれのところに言ってくるとか、あるいは水産庁に言っていくということはありますけれども、それはただ行政指導だけですからね。だから、そういう点で私は、こういうような問題が非強に多い。しかも、通達を出しても、これは改善されていない点を考えれば、ここに第三者的な漁業組合内のそういう問題に調停をする制度を設けて、ともかく漁民に不満があればそこへ言っていって、そして、その人の立ち会いのもとでやはり組合長とかと話をする。そうすれば――同じ一つの県でもあちこちそういう事例もあるわけですから、そういう話をその第三者から話してもらえば不満な人もあるいは納得する場合もあるんじゃないかと思うんです。そうすれば訴訟までいかなくても済むんじゃないか、そういうわけで、私はそういう制度を水産庁としても検討すべきではないか。そういう漁村のほんとうに平和をいつまでも保つためにも私は、そういう制度が必要ではないかと思うんですが、この二点について御意見をお聞きします。
#189
○政府委員(安福数夫君) あとのほうからお答えいたしますけれども、われわれは、こういう漁業補償の内部の配分の問題、これは本来的にはやはり関係者の問題であろう、こういうふうに私ども考えておるわけでございます。と申しますのは、やはり漁業の補償をやる場合に、それは組合であるか、グループであるか別といたしまして、そういう団体の形で原因者との間でいろいろ交渉がされる。そういうスタートを持たれるわけでございますから、それは当然その団体の中の関係者の事業の実態を反映した形で、それを認識した上で交渉される。その結果何がしかの補償金の額が決定される、その配労の問題でございますから、そこで第三者が入っていくということは非常にむずかしい。いろいろ非常に具体的なバラエティに富んだケース・バイ・ケースの問題になるわけですから、そこでやはり指導としまして、先ほど御説明申しましたように、やはりデータなり、過去の経過なり、そういうものを、関係者の位置をはっきりさせる、そういう完全な資料をできるだけ早く整えるという強力な指導をする必要があるし、それがまず第一の問題解決の一番の前提になるのではないか、このように思います。
 したがいまして、そういった資料を積み上げれば、それをガラス張りの中で討議できれば、これは、全部のコンセンサスを求めるということは、やはりだれも欲が突っ張っておりますから、そういう面で小異はどうしてもあると思いますが、しかし大かたのコンセンサスが求められれば、そういった点については納得がいくのではないか。こういうことで私自身の勘としまして、組合の決議といいますと過半数ということになりますけれども、こういった問題については先ほどもちょっと申し上げましたように、全体協議会的なそういった場でやられるということも一つの方法であろうかと思います。そういったことを通じて、できるだけ大かたのコンセンサスを得られる、そういう解決の行き方ということを強力に指導していくということが、現在われわれとして考えておることでございます。
 ただ、御指摘のようにそういうトラブルがどうしてもあるので、その場合に、第三者的な、あるいは行政機関としてそういう一つの判定をする調停機関というものをつくったらいいではないか。これは、御趣旨としては、そういうものがあれば非常にありがたいという感じもするわけでございますけれども、こういうことは非常に具体的な問題でございまして、先ほど申しますように、資料が整っていなければ、そこに持ち上げましても、またこれは問題になりますので、やはり第一義的には資料をできるだけはっきりさせるというところにわれわれは現段階では強力な指導を傾倒していくといいますか、そういった指導で、できるだけこういう問題がトラブルにならぬような強力な指導をしてまいりたい、このように考えております。
#190
○塩出啓典君 最後に、だからそういう指導をやってもらうわけですけれども、それがうまくいかないわけですから、だからそういうトラブルがないところはいいわけですが、それがあった場合には、どこか相談をしていくところがないと困るわけです。資料がそろっておれば問題がないようですけれども、そういうところは資料もそろえていないんですよ。そういうときに、調停機関のようなものが資料をある権限で寄せて、そうしてやっていくということ。私は、いま直ぐこれをつくれといっても、あなたがつくるといっても、直ぐつくれる問題ではないわけですけれども、そういう点は、水産庁としても前向きに検討してもらいたい。このことを要望して終わります。
#191
○政府委員(安福数夫君) 御指摘の点はよく私も理解できるわけでございます。したがいまして、第一義的にはやはり県が直接的な窓口になるものですから、そういった問題があれば、やはり県に申し出を願う、あるいは文書であるか、口頭であるか別としまして。そういうことを受けて県がそういう問題についてタッチしていくということはあり得ることだと思います。そういった面で現段階ではそういう指導をしてまいりたいと思いますけれども……。
#192
○塩出啓典君 検討してください検討を、そういう面で。
#193
○政府委員(安福数夫君) 今後とも、そういう御趣旨に沿うような検討なり、強力な指導は前向きの形で進めてまいりたいと思います。
#194
○理事(園田清充君) 本件に対する質疑はこの程度にとどめます。
 本日はこれにて散会いたします。
  午後三時十七分散会
ソース: 国立国会図書館
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