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1972/05/08 第71回国会 参議院 参議院会議録情報 第071回国会 社会労働委員会 第7号
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1972/05/08 第71回国会 参議院

参議院会議録情報 第071回国会 社会労働委員会 第7号

#1
第071回国会 社会労働委員会 第7号
昭和四十八年五月八日(火曜日)
   午前十時十七分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 四月二十五日
    辞任         補欠選任
     斎藤 十朗君     塚田十一郎君
 四月二十六日
    辞任         補欠選任
     塚田十一郎君     斎藤 十朗君
     加藤  進君     小笠原貞子君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         矢山 有作君
    理 事
                玉置 和郎君
                丸茂 重貞君
                大橋 和孝君
                小平 芳平君
    委 員
                石本  茂君
                上原 正吉君
                川野辺 静君
                斎藤 十朗君
                高橋文五郎君
                徳永 正利君
                橋本 繁蔵君
                山下 春江君
                須原 昭二君
                田中寿美子君
                柏原 ヤス君
                中沢伊登子君
   国務大臣
       厚 生 大 臣  齋藤 邦吉君
   政府委員
       厚生大臣官房審
       議官       柳瀬 孝吉君
       厚生省環境衛生
       局長       浦田 純一君
       厚生省医務局長  滝沢  正君
       厚生省児童家庭
       局長       穴山 徳夫君
       労働省労働基準
       局安全衛生部長  北川 俊夫君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        中原 武夫君
   説明員
       農林省食品流通
       局消費経済課長  堤  恒雄君
       農林省食品流通
       局食品油脂課長  籾山 重廣君
       林野庁職員部長  野崎 博之君
   参考人
       日本油脂協会会
       長        吉井 泰次君
       日本油脂協会専
       務理事      高井 祥平君
       日本油脂協会理
       事事務局長    東森  宏君
       日本油脂協会技
       術委員会委員長  永富  清君
       千葉ニッコー株
       式会社社長    尾川 数馬君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○社会保障制度等に関する調査
 (食用油の熱媒体混入問題に関する件)
 (厚生行政の基本施策に関する件)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(矢山有作君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 去る四月二十六日、加藤進君が委員を辞任され、その補欠として小笠原貞子君が選任されました。
    ―――――――――――――
#3
○委員長(矢山有作君) 社会保障制度等に関する調査を議題といたします。
 まず、食用油の熱媒体混入問題について調査を進めます。
 本件につきましては、本日はお手元に配付いたしております名簿の方々を参考人として御出席をいただいております。
 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、本委員会の調査のため御多忙のところを御出席いただきまして、まことにありがとうございました。
 それでは、これより質疑に入るわけでございますが、各参考人におかれましては、それぞれのお立場で忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。
 この際、吉井参考人、尾川参考人から発言を求められておりますので、順次これを許します。吉井参考人。
#4
○参考人(吉井泰次君) それでは一言ごあいさつ申し上げます。
 私は、ただいま油脂協会の会長の職にある吉井でございますが、日本油脂協会といたしましては平素から、食用油の品質管理はもちろんでありますが、特に衛生管理という面については十分留意してまいったわけでございます。特に先年カネミ油症事件以来は、わが協会の中に技術員の特別委員会を設けまして、この種の問題に対しては積極的に取り組み対処してまいりました。ところがこのたび、まことに不幸なことには、千葉ニッコー株式会社におきましては脱臭工程中の熱媒体が漏洩するというような、前回と同様な事故が発生いたしまして、各方面にまことに多大な御心配をおかけ申したことにつきましては、はなはだ遺憾に存じます。同時に社会に、皆さま方に多大の不安を惹起いたしましたことにつきましては、当会といたしましてもまことに申しわけなく存ずる次第でございます。
 私ども油脂製造業は、申すまでもなく国民の栄養上必須の食品産業でありまして、食品の衛生上、安全性の確保は何をおいても果たすべき私は最大の社会的の責任であると思います。
 今回の事件を契機といたしまして、あらゆる角度からさらに再検討を加えまして、さらには企業の社会的責任を一そう高揚しまして、製造の工程、品質管理の基準並びにその体制をさらに再検討を重ねまして、万全なる体制を整備いたしまして、製品の安全性の確立には私ども万難を排して協会をあげて努力し、今後かかる事故の絶滅を期するかたい決意で今後臨んでまいりたいと思いますので、よろしくお願いを申し上げます。
 最後に、一言補足的に報告申し上げますが、これは決して私ども協会の責任のがれとか、そういうことではありませんが、このたびの千葉ニッコーさんにしろ、前回の先年のカネミさん株式会社にしろ、たまたま私どもの油脂協会の会員でない企業でございまして、いわばアウトサイダー的な存在でありまして、今後かような企業の、要するに協会のメンバー外の企業の方々に対して、どのようなわれわれが働きかけなり一そうの協力をしていくかということにつきましては、関係当局の十分の御指導を仰ぎながら、私どもさらに一そうの努力を傾けてまいりたいと思います。
 以上若干申し上げまして、おわびかたがたお話し申し上げました。
 以上でございます。
#5
○参考人(尾川数馬君) 私、千葉ニッコー株式会社の社長をしております尾川でございます。
 このたび、食用油精製工場の脱臭装置の故障に関連いたします当社の不始末から、広く一般消費者の方々に大きな不安と混乱を巻き起こしまして、また関係御当局並びに関係各方面にたいへんな御迷惑をおかけしましたことはまことに申しわけなく、おわびのことばもございません。このような事件を起こしました当社の社会的責任を痛感いたしまして深く反省をいたしております。ここに深くおわびを申し上げる次第でございます。
#6
○委員長(矢山有作君) それでは、これより質疑を行ないます。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#7
○田中寿美子君 今回のこの事件の非常にホットなところで、私参考人の御出席をお願いしたがったんでございますけれども、ちょうど連休が間にはさまってしまいまして、その間に厚生省から回収したものの検査の結果、ビフェニールは検出せずという発表がございました。であるから全部白だというふうに、私はそれほど安心はできないと思っているわけなんです、実は厚生省、農林省当局の対応策、今後のやり方、指導、監督、それを私、相当重点的に御質問したいと思いましたけれども、ちょうどこの事件がこういう経過をたどっているいま、日本油脂協会の幹部の皆さん、さらに千葉ニッコーの社長さんがおいでくださいましたので、少し落ちついていろいろとお伺いをしたいと思います。
 それは今後、先ほどお話がありましたように、食用油というのは国民の栄養上非常に重要なものでございますし、かつてカネミのあの事件が起こって、それ以後のその教訓を十分取り入れていなかったという非常に重大なことがありますので、今後こういうことを繰り返してはいけないと思いますから、直接食用油製造に当たっていらっしゃいます皆さんからの決意も伺い、さらに関係している当局からも私はいろいろと決意を伺いたいと思っております。
 最初に、千葉ニッコー尾川社長さんにお伺いしたいんですが、この事件が起こってからのおたくの対応のしかたというのはたいへん緩慢であったし、それからいろいろと真実でないことを発表なさったわけでございますね。それで、何か私、なぞに包まれた感じがするのでございます。で、先ほど日本油脂協会の会長さんの御説明で、千葉ニッコーは日本油脂協会から見ればアウトサイダーであるというお話がございました。それで、まずどういう組織に関連していらっしゃるか。全然メーカーの間の組織には入っていらっしゃらないのかということと、それからJASの認定工場にされているわけなんですがね。日本油脂協会のアウトサイダーではあるけれどもJASの認定工場ですね。農林省は認定しているわけなんです。そこのところは一体どういうふうにして、いつごろ、どういう条件が整っていてJASの工場に認定されたのか。社長さんからまずお伺いしたいと思います。
#8
○参考人(尾川数馬君) ちょっと事件の経過につきまして、一通り要点だけ御説明したいと存じますが……。
#9
○田中寿美子君 ええ。
#10
○参考人(尾川数馬君) 今回の事件の経緯につきまして要点のみ申し上げます。
 三月の十五日午前十一時半ごろ、精製係長がダウサムボイラーの液位に異状を認めましたが、漏れている個所は確認できませんでした。その後、脱臭塔外のパイプラインと地下ピットを点検しましたが異状がなかったので、注意しながら運転を続行いたしました。
 それから、十六日午前九時半ごろになりまして、係長は脱臭スカム――これは蒸留物でありますが、脂肪酸回収かんから発生する蒸気に異臭を感じました。これが熱媒体臭であると判定いたしましたので直ちに運転を停止いたしました。脱臭塔内の油を全部処理し終わりましたのは十一時三十分ごろでありました。運転停止後、製品タンクからサンプルを取りまして、分析依頼のため日本興油の水島工場の担当者あて送付をいたしました。
 引き続き、当該製品油を出荷すべきかどうかを検討することとし、製品油を脱臭のドロップタンクから採取いたしまして、蒸留法による官能テストを行なった結果、立ち会った者全員が異臭を感知せず、製品油は風味良好と判定いたしました。
 他方、その他の条件につきましても検討を行ないました結果、脱臭塔の構造と運転条件及び熱媒体の蒸発温度等からして、熱媒体が漏れても製品油には残留しない。つまり、中で漏れた場合、熱媒体はガス状であり、蒸発温度以上の油に接触しても、液化して油中に残ることはない。
 以上のような判断と前記のテストの結果を総合して、出荷をすることにしたわけでございます。
 十七日に脱臭塔内を点検しましたところ、第二段のトレイのコイルに経一ミリ程度のピンホール一個があることが確認されましたので、直ちに修理にかかりました。
 経緯がちょっと長くなりますので、ただいまの質問に直接お答えいたしまして、後ほど御質問ございましたら、そのつどまた御報告いたしたいと思います。
 JASの認定につきましては、――その前に、団体に加入していないということでございます。これは私どもの工場が、会社が一昨年、四十六年の十一月に創立いたしまして、十二月から営業を開始いたしました。その際、日本興油株式会社というのが私どもの親会社にあたりますが、これはもちろん日本油脂協会に加入しております。私どものところは直接加入はいたしておりません。したがってほかの団体にも加入はいたしておりません。JASの認定につきましては、昭和四十四年の秋に私どもの会社の、工場の前身であります日本油糧株式会社というのがございまして、ここで認定をされました。それから四十六年秋、十一月に千葉ニッコーと社名が変更になりまして、そのまま引き継いだわけでございます。
 以上でございます。
#11
○田中寿美子君 いま経過の御説明いただきましたことは、私たちもいろいろなものに報道されていることで承知しております。そして時間の制限がございますから、その辺は少し略していただいて、いま日本興油は日本油脂協会に入っている会社で、それの子会社ということでございますね。おたくのほうの資本の系列は日本興油と丸紅というふうに伺っているんです。どのぐらいの資本で、人数六十人ぐらいというふうに私は報道されているので知っておりますが、その六十人ぐらいの従業員のほかに下請者がいるのかどうか。荷物を運んだりする、そういうのが入っているのかどうか。それがどのぐらいいるのかということと、もう一点は先ほどの御説明にもありましたけれども、最初に何係長さんでしたか、係長さんがダウサムボイラーの異常に気がついたのは臭気によってですかね、一般には働いている人の告発とか、そういうふうに言われているんですが、一体どうやって気がついたのか、そこのところの状況がどうもはっきりしませんのですが、その係長さんが異常を認める前にだれか従業員がおかしいというふうに言い出したのですか。それとも臭気を感じるようになったのはどこのところで臭気を感じたのかを伺いたい。
#12
○参考人(尾川数馬君) 私どもの会社は先ほど申しました昭和四十六年の十一月に創立いたしまして、資本金は一千万円でございます。この構成は日本興油株式会社が八〇%、丸紅株式会社が二〇%ということになっております。従業員は現在六十三名でございます。仕事の内容は、業務の内容は食用油脂の受託生産を行なっております。これは主として日本興油の受託生産でございます。
 それから、下請でございますが、これは六十三名のほかに荷づくり関係で下請を大体六、七名常時使っております。それ以外はございません。
 それからダウサムボイラーの異常についてでございますが、これは経過を一通り申し上げないとちょっとわからないかと思いますが、これは事故の発生の時点でございまして、この際、そういう異常がありまして運転をとめたわけでございます。そのあと出荷をいたしております。これは現在定められておりまするルールによりますれば、そういう事故のありましたときは直ちにこれを停止いたしまして、製品の回収その他必要な措置をとるということになっておりますのを、当社におきましてそのルールどおりに実行しなかったということが最大の問題であろうかと存じます。
 このあと事件が表面化しました経過につきましては市民の告発というようなことを聞いておりますが、実際はよくわかりません。
 以上でございます。
#13
○委員長(矢山有作君) ちょっと速記とめて。
  〔速記中止〕
#14
○委員長(矢山有作君) 速記起こして。
#15
○田中寿美子君 現在警察が告発しておりますか、どうですか。
#16
○参考人(尾川数馬君) 四月の十六日に県衝生部の告発によりまして現在取り調べを受けております。取り調べは現在行続中でございます。
#17
○田中寿美子君 ですから、警察の取り調べで詳しいことが話されていると思いますので、私はそういうことを伺うわけじゃなくて、なぜこういうことを伺うかと申しますと、食用油を製造する工程について私はいままでのやり方について反省し、改善しなければならないことがあると思うからでございますのと、同時に、臭気を従業員が気がつくような状況に作業環境がもしあったとしたらこれは重大なことだと、その辺のこともあるからなんです。それでその辺は一応もう少しあとにいたしまして、おたくのほうでは熱媒体の塔ですね、あの中に熱媒体を入れてあるそのタンクの目盛りですね、その目盛りは年に何回とかちゃんと点検をしていらっしゃったんでしょうか、どうでしょうか。
#18
○参考人(尾川数馬君) ダウサムボイラーの、熱媒体のボイラーの点検でございますが、これは運転中日常点検を行なっております。一番大きな点検のポイントとしまして液の変化というものをこれは常に運転中は見ておるわけでございます。
#19
○田中寿美子君 そうすると三月九日にもうそこ目減りし始めたというのでしょう。三月十五日までわからなかったというのはどういうわけですか。目盛りというのは私はこれからの設備もそういうことは重大だと思うんですけれども、毎日わかるようにしなければいけないし、外からもどっかで自動的にわかるようにしておかなければいけないと思うのですが、そういう装置がなかったわけでございますか。それとも点検を怠っていたんでしょうか。
#20
○参考人(尾川数馬君) ボイラーの液の液位計というのがありまして、一目でわかるわけであります。これの変化は運転の状況によりまして常に若干の変化はあるわけでございます。ただ、それが異常であるかどうかという判定でございますが、通常ボイラーの、普通のボイラーと同じような構造でございますが、パイプの途中で部外に、外に漏れることは往々にしてあるわけでございます。そういうこともありまして、まず液の変化を知った場合に、その異常の有無を点検するわけでございます。で、塔内に漏れるということは、これはそうめったにあることでございませんけれども、そういう場合には脱臭塔の外へこれが出てくるわけでございます。したがって、それが最も確認の手段ということになります。漏洩そのものは、漏れるところは外にもたくさんありますので、脱臭管の中に漏れたということは、これだけでは確認できないわけでございます。
#21
○田中寿美子君 私ちょっと千葉にきのう行ったんですがね。それで聞いたところによりますと、排水蒸気に臭気があって、それを働いている人が感じたというふうなことを聞いたんですが、そうすると、その排水というのは、あの中はすごい蒸気が立っているわけですね。それでパイプがずいぶんゆれ動いて、そして十カ所ぐらいひびが入っているということを発表されておりますね。その排水蒸気の中にビフェニールのにおいがするというようなことはどうやって起こるんですか。
#22
○参考人(尾川数馬君) 排水蒸気というのは、ちょっと違うかと思いますが。
#23
○田中寿美子君 排水蒸気、排水の中に、蒸気の中に。
#24
○参考人(尾川数馬君) 脱臭をいたしますときに、冷却水として水を使います。で、脱臭の内部で、要するに蒸留でございますから、蒸留された有臭物質がその冷却水とともに塔外に排出されるわけでございます。で、その排水されたものは大体脂肪酸、これはにおいの非常に強い脂肪酸でございますが、熱媒体が漏れましたときは、これと一緒になって塔外へ排出されるわけです。したがって、排水蒸気というのはそのことだと思います。
 それから、この十一カ所という修理個所のことでございますが、これは運転を停止いたしまして、点検いたしました際、穴のあいた個所は一カ所でございます。で、その際に、これはその原因がパイプの振動によって起こります接触のために摩耗が起こって穴があいたと、こういうふうに推定されますが、その修理の際に、ほかにそういう摩耗の徴候が見られるところを、この際全部一応当て板をして修理をいたしたと、こういうことでございます。漏れた個所は一カ所ということでございます。
#25
○田中寿美子君 まあピンホールは一カ所だけだけれどもね、ひびが十カ所ぐらいあったということはたいへん私は重大なことだと思うんですが。たいへん振動するらしいんですね。ですから、装置全体が問題だと思うんですけれども、まあこういうことは科学者でなければ私はわからないけれども、おたくはそのダウサムAというのを六〇%、KSK二六〇というのが四〇%まぜていらっしゃったんでございますか、そういうふうに私は新聞紙上で拝見しました。
#26
○参考人(尾川数馬君) 熱媒体の混合の問題でございますが、これは四十六年、一昨年の十一月まではダウサムのみ使用いたしておりました。で、四十六年の十一月にKSKを加えたのでございますが、この目的は熱媒体の冬期の凍結を防止する目的でございます。これはダウサムの場合流動点、これが流動の性質を失うときの温度が十二度でございます。したがって、十二度以下になりますとこれが凝固するわけでございますので、運転上、運転休止の場合非常に支障が起こるということがございまして、KSKのほうはこれが非常に低くマイナス五十度ということでございますので、これを使用すればその冬期凍結を防止することができるわけでございます。で、さらに安全性も高いということを聞いておりまして、したがって、いろいろな条件からKSKのほうがよろしいと、こういうことでこれを切りかえたわけでございます。で、当初KSK六、ダウサム四の割合を目安といたしまして混合使用いたして現在に至っております。現在の混合比率は、これは正確にはわかりませんが、推定やはりKSKが六のダウサムが四というふうに思っておりますが、これは現在調査中でございますので、正確な数字は間もなくわかると思います。
#27
○田中寿美子君 ダウサムAというのはダウケミカル、アメリカのものですね。ずっとこれを使っていらっしゃったし、それから機械もアメリカから輸入したものだと思います。KSKというのは呉羽の製品でございますね、日本のものなんです。それを混合して使うということで何か腐食を起すのじゃないかということ、これは私も化学は全くのしろうとですので、少し都立大の磯野教授のお教えを受けたわけなんですが、その両方を混合したことによって腐食作用を起こしはしないかというようなことが言われておりましたが、これは私も判断する力はございません。そこで、そういうふうにして、どういうところからわかってきたのかという点が一つなぞがあって、おたくが異常を認める前に、だれからか県衛生部のほうに知らせがあったというふうに聞いているわけです。これはある意味では職場に働いている人たちは一番よくわかるですね。そのいまの熱媒体のにおいが排水の中に入ってきたら、これは普通じゃないというふうに感じたと思うのです。そういう意味では、私は職場に働く人たちの意見というのは非常に重要に考えなければいけない。特に化学物質を扱うところでは大事だと思っているわけです。
 そこで、おたくでは衛生管理者というか、あるいは食品衛生法の中に定められている衛生管理者、あるいは労働安全衛生法の中に定められておりますところの衛生管理者、そういうようなものを置いていらっしゃるのかどうか。その人は一体どういう働きをしているのか。
#28
○参考人(尾川数馬君) ただいまの機械装置でございますが、これは半連続脱臭装置、現在一般に広く使われておるものでございますが、これは輸入ではございません。
 それから、混合した場合に腐食が起こるのではないかということにつきましては、われわれはそういう懸念はないというふうに判断しておりますが、この事故のありましたときに点検した結果においても腐食の痕跡は全然認められませんでした。
 それから、通報によって告発されたということにつきましては、においでもってそれを感知したという時点では直ちに運転をとめて修理したわけでございますが、その通報によって告発されましたのはそれから十日以上たってからでございます。したがって……
#29
○田中寿美子君 先に機械をとめたわけですか。
#30
○参考人(尾川数馬君) はい。とめて、あと修理をいたしまして、運転を続行したわけでございますが、その十日以上あとになりまして、そういうことが県のほうへわかりまして、取り調べを受けたということでございます。
 それから、衛生管理者につきましては、このように食品を製造いたしておりますところで衛生管理者を置くことは義務づけられておるわけでございますが、当社の場合、いまから反省いたしますと、その衛生管理者の機能、組織上の機能、権限というものが十分でなかった、したがって衛生管理者の機能が十分に発揮されていなかったということを反省いたしております。
#31
○田中寿美子君 だから、異常を認めたけれども、またちょっと修理して、出荷も続けていたというようなことが今度の問題の非常に重要なところだったので、それでそのことの通報を受けたということなんですね。まあそういう点では、おたくも食品を扱っていらっしゃる工場でございますから、食品衛生法の知識も持っていらっしゃると思いますので、たいへんその辺は遺憾であったと思うのですが、カネミのときのような重大なことにならなかったからこれ幸いでございますけれども、その辺はたいへん責任があると思います。
 それから、衝生管理者ですけれども、一人ですか、一人置いているわけですか。どのくらいの方ですか、地位は。
#32
○参考人(尾川数馬君) 衛生管理薪として指定しておりますのは、私どものほうの組織から言いますと、研究室に属しております品質管理の担当者でございます。たまたまこの事件の前にこの研究室長が交代をいたしまして、職制上、的確な措置をとっておりませんでした。その際、やはり職制上も十分な地位を与えておくべきだったというふうに思っております。
#33
○田中寿美子君 まあ、どうもいまのお話ですとちゃんとした衛生管理者はおらなかったような状況ですね。
 それからちゃんと点検したりしてもいなかったようだということで、まあ、ふだんの――まあおたくは中小工場の中に入るかと思いますが、そういうところでの管理というのが非常に不十分だということがよくわかったのですけれども、これはJASの認定工場としては、JASの登録格付機関というのは日本油脂協会ですね。それで日本油脂協会からの指導、あるいは農林省からの指導はどの程度受けていらっしゃいましたでしょうか。まず尾川参考人から。
#34
○参考人(尾川数馬君) JASの認定につきましては、毎月半期ごとにサンプルを取りまして、この検査を受けて実施すると、こういうことになっておりまして、品質上問題がありますればそのつど指導をいただくということになっております。
#35
○田中寿美子君 油脂協会からですか。それをなさるのはどこですか。
#36
○参考人(尾川数馬君) 油脂協会の格付機関と、そういうことでございます。
#37
○田中寿美子君 まあたいへん管理がずさんであったような気がします。これはだれでもみんな今回の事件で見ていることなんですが、もう一点私、あなたにお伺いしたいのですけれども、異状がどうもあるらしいということがわかってから、サンプルを岡山の日本興油の水島工場に送って検査をしてもらいましたね。その結果、九PPMの熱媒体が入っているというふうなことがわかったということでございましたね。それが今回厚生省の調べでは、全然そんなものがないということになっているわけなんですが、あなたのほうで九PPMというものは何であったかというふうに報告を受けていらっしゃるんですか。
#38
○参考人(尾川数馬君) この熱媒体の混入のチェックでございますが、これは大体月に一回程度、これを自社分析ができればいいわけでございますが、現在のところその設備が不足しておりまして、これを他社に依頼しておったわけでございます。で、この時点で送りましたサンプルに九PPMの値が出たという連絡を受けましたときは、もうすでに出荷をしたあとでございまして、この出荷をするときの時点の判断としましては、蒸留法によりまして、官能試験によりまして判定したわけでございます。
#39
○田中寿美子君 何ですか、その九PPMというのは、物質は。
#40
○参考人(尾川数馬君) これは熱媒体が九PPMあったと、こういうことでございます。
 これは電話で連絡を受けたわけでありますが、九PPMという数字は概略の数字でございます。
#41
○田中寿美子君 まあ、このことは厚生省に伺いたいのですが、もう少しあとにしまして、私、日本油脂協会の会長さんにお尋ねしたいのです。
 カネミ油症事件が起こって以来、ほんとうならば、ほんとうに重大な反省と同時に、食用油を製造する工程に関しても改善がされなければならなかったと思うのですが、先ほどのごあいさつに、あの事件以後、非常に重大な反省をして、そうして鋭意改善をしてきたと言われましたけれども、製造工程や何かにどういう変更をされたのですか。
#42
○参考人(吉井泰次君) 私が答えるべきなんですが、この技術的な問題で委員長が同行してまいりましたので、カネミ事件以来の設備のいろいろな問題について十分あれしておりますので、かわって発言させてもらってよろしゅうございましょうか。
#43
○委員長(矢山有作君) 永富参考人。
#44
○参考人(永富清君) カネミの事件が起きまして、農林、厚生両当局から、この熱媒体の問題について協会としてもいろいろな面で検討するようにという御指示がございました。それに基づきまして協会の技術者で油脂協会に技術委員会を設置いたしまして、そしてこの問題をいろいろ検討したわけでございます。ただいまの御質問は設備のことについてでございますが、ちょっと関連がございますから……。
#45
○田中寿美子君 設備だけでなくて、全体を。……
#46
○参考人(永富清君) よろしゅうございますね。
 それでは、一応われわれはカネミの事件につきましていろいろ報告を聞きまして、設備的にはいわゆるバッチの脱臭管と申しまして、一回一回油を入れて脱臭をして、それが終わると取り出すというような脱臭管でございまして、それの脱臭管の加熱コイルに穴があいた。で、熱媒体はこのときはカネクロールという塩化ビフェニールを使っておったという状況でございました。で、そういう判断から、当時塩素系の熱媒体というものが非常にやはり有毒性が強いということから、これは熱媒体として使用すべきでないというふうにわれわれも判断しましたし、これは農林、厚生両省からそういうものは使ってはならないという御指示を受けました。で、そういうことから、まず、熱媒体についてはこの塩化ビフェニールは一切使わない。それからほかの熱媒体につきましても、ダウサムAとかあるいはSKオイル、最近はKSKというのが出ておりますが、大体類似のものでございますが、そういうものはいずれもいわゆる有害性はございます。もちろん食品添加物にもなっておりませんので、これが食用油の中に入るということは絶対あってはならないというふうにもちろん考えております。しかし、塩素系のものに比べればその有害性というものが非常に少ないということから、この熱媒体を使わないという観点には立たなかったわけでございます。そしてまず、熱媒体についてはほかのものを使う。それから設備につきましては、いまのように、まあバッチの脱臭管というものは、もしそういう漏洩事故があったときに、これが装置の構造的にわりあいに油の中によけいそういう熱媒体が残るというようなことになります。いま最も多く、ほとんど使われております、今回の千葉ニッコーもそうでございますけれども、半連続の脱臭装置におきましては、必ずその熱媒体の加熱した部分のあとにいわゆる脱臭部分がございます。加熱コイルの入っていない脱臭部分がございまして、通常の脱臭条件であれば、その熱媒体はそこで有臭物質あるいは脂肪酸とともに全部流出いたします。そういうこともございますが、それよりもう一つ前に、加熱コイルそのものが設計上あるいは製作上あるいはその後の点検なり保守、そういうものが完全であるならば、まずそういう漏洩は起き得ないという技術的な観点に立ってわれわれとしてはそういうものの設計、製作あるいは点検というようなものを基準をつくりまして、そしてこれにまず万全を期するという立場をとったわけでございます。まあそういうことから、装置的に全く同じであるということはないわけでございまして、まあその辺はカネミのものとは若干異なるというふうに考えております。それからもう一つ、いまそういう設備が異なるということもありまして、もしこういう漏洩があったときには早期に発見できるというふうに考えておったわけでございます。で、それは先ほど申しましたように、一番早くわかるのは有臭物質として出てまいりまして、先ほどお話しのありました排水系統のほうに出てきておりますが、これは大体屋外にございまして、絶えず作業者というものはそこをやはりチェックしまして、そういうところに異常がないかということを見ておるわけでございます。ですから、まあそこににおいが出てくることがまず初めにあって、油にそういうものが残るというような状況はよほど大量にそういうものの漏洩が起きなければまずないというふうに考えておるわけでございます。しかし、それにしても、もし設備的な面に欠陥があったりあるいはそういう面の保守に十分でない場合にはまあこの漏洩というものは絶無ではないということでございますので、もし、そういうことがあったときにはそういう作業場で早くそれを見つけると、それから同時に製品の中にそういうものが入った場合の確認というものをしなくてはいかぬということで、分析方法をいろいろ検討をいたしまして、われわれとしては一応ガスクロというものを使うその時点で一つの方法を一応採用したわけでございます。
 それから先ほどお話しがありましたように、さらに現場的な簡便法として、早くそういうものを見つけるために簡便法もあわせてそのとき検討したわけでございます。しかし先ほど、漏洩があった場合に油の中には残らないと申しましたけれども、しかし、そういうものがあった場合には、これはかりに残らなくとも食用に供することは望ましくないということから、そういうものについては食用以外のものに向けるということもその時点でわれわれが「熱媒体の取扱いと管理」という一つのパンフレットをつくったわけでございますが、その中の最後に一応明記しているわけでございます。
#47
○田中寿美子君 カネミ事件でカネクロール、塩化ビフェニールは使わないようになったわけで、それにかわってビフェニールを使っているわけですね、これは商品名はいろんな名前がついていますけれども。で、これはいまおっしゃいましたように、有害であって食品の中には入れるべきではないものである、添加物としては許されておらないということを日本油脂協会の書かれているものにはみんなそう書いてある。厚生省はね、添加物として許されているという言い方をしておりますね、これは果物の包装紙なんかに関係して。とにかく口に入れては非常にあぶないものであるということ、急性毒性においてはもう塩化ビフェニールと同じように有毒なものである。そういうものを使っているのですから、まことにこれは危険な装置でございますね。食用油の中にそのパイプが入っておるわけですから、これがちょっと破れたら出てくるということがあり得るんで、全くカネミの事件のときと同じ状況の設備で、そしてある程度塩化ビフェニールよりは何分の一かの有毒性だとはいっても有毒なものを使っている、こういう状況なんですね。それが今度食品の中に、油の中に全然残らなかったかどうかというと、私はこれは言い切れないと思います。厚生省の調べたもの、回収率を私は何%か、たしか三〇%か幾らかだと思いますが、そういうものの中で検出されなかったからといって全然ないというふうには言い切れないという心配があるし、今後もそういうことが起こり得ると思うわけです。
 そこでお尋ねしたいのですがね、まず食用油をつくる工程ですね、原料から順々にどういう工程を通っているかということをちょっと説明してくださいませんか。まず原料が何であるか、たとえば大豆なら大豆でもいいですよ。そのほかいろいろな原料があると思いますが、その原料から食用油になるまでの工程ですね、これを簡単に順を追って説明していただきたいのですが。
#48
○参考人(永富清君) それでは製油の工程について簡単に申します。
 大豆に例をとって申しますと、まず大豆をふるいその他で精選いたしまして、それを……
#49
○田中寿美子君 洗うのですか。
#50
○参考人(永富清君) 精選といいましてもただふるいにかけてごみを取るわけですね。取りまして、それを予熱というか蒸気で多少あたためます。それをロールにかけましてフレーク状といっておりますけれども、薄い状態にして抽出しやすいような状態にしまして、ノルマルヘキサンという溶剤を使って油をとかし出します。
#51
○田中寿美子君 そこそこ、ノルマルヘキサンは何のために使うのですか。
#52
○参考人(永富清君) それは油を溶かすために使います。
#53
○田中寿美子君 大豆の中から……。
#54
○参考人(永富清君) はい、大豆の中から。これは抽出法というものについて申し上げているわけですね。いま大部分それでございます。その油とそれからノルマルヘキサンがまざったものをミセラと申しますけれども、それを蒸溜といいますか、蒸気で熱をかけ、最後はその油の中に直接蒸気を吹き込みますし、真空の状態にして、そういう溶剤を完全に取り出します。それからかすのほうも同様にして、かすに含まれている溶剤を同様に処理するわけですが、それは別にして、油を、溶剤を分離したものを一応原油あるいは粗油と申しております。これを大豆の場合ですと、通常若干の水分を加えますと燐脂質と申しまして、燐のこれは脂肪酸とかそういうものの化合した燐質といいますか、そういうものが油に溶けておりますので、これを水を加えまして、ある程度析出させ、遠心分離機で分けるわけでございます。これは通常脱ガム油といっております。ガムを除いた油でございます。これを通常原油として普通大豆の場合は取引されます。これを次に精製をするわけでございますが、通常は現在アルカリ精製という方法が行なわれております。そのいまの脱ガム油には有機酸が多いのですが、無機酸の場合もございますけれども、たとえば燐酸というようなものを加えまして、それから先ほどの脱ガムというか、そのガム固有の燐質とかそのほかのガム状のものがある程度は取れておりますけれども、まだ残っております。で、そういうものをさらに酸で処理して析出をさせまして、それに今度は苛性ソーダ液を加えます。そしてその燐酸も中和いたします。それからさらに油が分解してできておりまする脂肪酸というのがございます。その脂肪酸が一応苛性ソーダで石けんになるわけでございます。そうするとその石けんの中に、脂肪酸が中和されると同時に、石けんの中にそういう油に溶けているいろいろな不純物が吸着されるわけでございまして、それを遠心分離機で分けまして、その油をさらにお湯で洗浄いたします。これもまあ大体現在は遠心分離機を使って連続的にやるわけでございます。この段階でいまの燐酸はもちろん中和されておりますし、それから石けんその他も洗浄でほとんどなくなるわけでございますが、さらにそれを酸性白土というような脱色剤を使いましてろ過いたします。そうしますとそういう脱色――色素がそれに吸着されると同時に、そういう非常に微量に残っている、いまのアルカリ処理の工程で残っておりますものもそこで吸着されて、一応そういうものは完全に取れるわけでございますが、これがいわゆる脱色した油でございます。
 それで、それを次に脱臭にかけるわけでございますが、この脱臭はいろいろな装置がございますけれども、一応油を二百五十度とか六十度という温度にしまして、そして二ミリとか三ミリというような真空の状態で水蒸気を油に吹き込みます。そうしますと有臭物質とかあるいは脂肪酸とかそういうようなものが蒸気と一緒に飛んで、そこでにおいが取れるわけでございます。これを最後にろ過いたしまして、で、一応食用油になる、こういう工程でございます。
#55
○田中寿美子君 どうもありがとうございました。
 それで、いま、戦後、油をたいへんきれいにするようになったわけですね。サラダオイルなんというのはたいへん精製されてしまっておりまして、いまお聞きしておりますだけでも原料から精製された油になるまでの間にいろいろな薬品を加えているわけでございますね。で、酸を取るために――燐酸や苛性ソーダやそれから酸性白土なんかもみんな加えて脱色したり、酸を取ったり、そして最後に脱臭ということですね。たいへん手をかけているわけなんですけれども、こういう工程は戦前にはあまりやっていなかったと私思うんですね。それでゴマの油とか、まあ、私これは雑誌に載っていたのを見たんですよね、蒸気で加熱した方法をとっているところもありますね。それから直火というのですか、直接火で加熱しているメーカーもある。それはたぶん、たとえばゴマの油みたいなものはいまでもにおいがしますね、ある程度。ああいうのはこういう工程をとっていないんじゃないか。この工程は必ず色は、それはみんなさらっときれいな色に、薄い色にしたほうがいいのかどうか、こういう工程で省いてもいいものがありはしないか。つまり食品というのはあまりにもいま人工、加工され過ぎておりまして、そのために人間のからだの中にいろいろの化学物質が入り込んでくる。いまの脱色とか脱臭のあたりも、こんな工程をどうしてもとらなければならないものなのかどうか。これは日本油脂協会の方々がカネミ油症の問題以来、もしほんとうに油がどうあるべきかということを考えていただくんだったら、こんなにしないでもいい方法がありはしないか。かつてのわりあいと自然の油というものももっと食べてもいいのじゃないか。人間のからだにとってどっちがいいのかということについて私はたいへん疑問を持ったものですから、いまその工程をお伺いしたわけなんです。どうしてもこういうふうに脱色するために酸性白土を入れると、それでよけいにおいがつくでしょう。いろんなものを使ってよけいにおいがつく、それで脱臭工程をどうしてもやらなければいけない、こういうことがあるのじゃないかと思うのですが、いかがですか。
#56
○参考人(永富清君) ただいまの、先ほど申したような工程を経ない油というのも一部ございます。それはいまお話のありましたように、においのついているゴマ油、それはゴマをいりまして、そして油の中にそういう不純物が溶け込まないようにたん白その他を凝固さしてしぼって、それをろ過して使うというような油、なたねにも一部そういう油がございますが、現在そういうものは量的には非常に少なくなっております。
 それからこれほど精製しなくてもいいではないかというお話でございますけれども、やはり油もだんだんサラダ油あるいはマーガリンにしてもなまで食べるというような傾向が強くなりまして、そのためにはやはり先ほど酸性白土を使うから脱臭しなきゃならないのじゃないかというお話ですけれども、確かにここでろ過しますと、その白土臭というのはつきます。しかしそれを取るためではなくて、ほとんど油そのものにいろいろ異臭がある、そういうものを取るために脱臭するわけでございます。
 それから白土を使うのももちろん色を取るためでございますけれども、先ほど申しましたように、いろいろな前の工程の吸着というのもございます。やはり油の脱臭工程でいろいろ油の分解してできたアルデヒドとかあるいはケトンとかあるいはそのほかのものも、油そのものに含まれているようないろんなものもある程度取れるわけでございます。そういうものはむしろないほうが好ましいということでございまして、もちろん戦前あるいは戦後、いまのような精製工程を経ない油でも十分食べてきたわけでございますけれども、これはいまの世界的ないろんな状況から判断しても、現在の精製というものは品質としては好ましいというふうに考えてはおります。ただ、そこにいろいろ食品衛生上の問題が起きるならば、これに対してはそれに対処しなければならない、こういうふうに考えております。
#57
○田中寿美子君 不必要にたくさんの工程を踏み過ぎていはしないかとか、不必要にたくさんの薬品を使い過ぎていはしないかという点について私は一ぺん考えてみていただきたいと、こういうことなんです。
 たとえばスペインなんかでサラダに使うのはオリーブ油ですね。あれなんかは全くオリーブのにおいがしているわけで、ゴマの油のにおいなんていうのはみないまや忘れつつあると思うのですね。ですからある程度――その油特有のにおいというものを全部取り去ってしまったサラダオイルなんていうのは、実はあんまりさらさらし過ぎていて油らしくないと私はこのごろいつも感じているわけです。ですからそういう点もつまり今度のような問題が起こってきますと根本的に考えてみていただきたい。そしてもし消費者の嗜好がそういうふうにならされてきているとすれば、消費者に対しても、これは行政当局もそうだし、それから食用油メーカーのほうでもそういう教育もしていいんではないか、もっと、もう少し自然なものも食べる、あんまり薬品加工をし過ぎないようなものを食べるという方向にむしろ食品というのはいま考えるべきときじゃないかなというふうに思っているわけなんです。
 それで、脱臭装置なんですがね。今後どのようにしたらいいと、これまでどおりのやり方でやっていこうというふうに考えていらっしゃるのか。つまり、油の中に直接あぶない熱媒体の入ったパイプが入っていると非常に危険な状況なんですが、これに何か方法はないかということが一つ。
 それから水蒸気で、蒸気を熱して、これで脱臭することが考えられないのかどうかということです。蒸気――水だったら無害だし、安いしスラッジも出てこない。ですからこれを熱するということができないのかどうか、私ちょっと科学者に聞いてみたら六十五気圧ぐらいの蒸気だったら二百五、六十度まで出すことができるんではないかというふうなことを言っているんですがね。だから、もし蒸気ですることができるんならば、このほうがはるかに安全で安心なんではないかと思うんですが、その辺は油脂協会の方がどうお考えになりますでしょうか。
#58
○参考人(永富清君) 先ほどカネミの事件が起きたときにわれわれの考えた立場ということでお話ししたわけでございますが、まあ設備が完全であればそういう事故は起きないだろうという観点に立っていたわけですが、またこういうことが起きたと、今日においては当面の問題としてはいまこの装置をすぐ転換するということについては若干の日にちを要します。ですからやはりいままでの立場で十分なそういうあらゆる点に気をつけてこういうことが起きないようにしていくということがまず第一点でございます。
 将来の問題としてはまあ有害でない熱媒体でそう圧力のいまと同じようにかからないものがあればこれは運転上は非常にまあ便利なわけで、ぜひ、そういうものがあればそういうものを採用したいということで、従来もそれは考えておるわけですがなかなかございません。したがいまして、いま考えられるのは、ただいまお話のありましたように熱水というような非常に水を高圧で加熱しますと、まあ高熱が得られるわけです。そういうものもいまの脱臭装置にも応用することは技術的には可能だというふうに考えております。で、いまちょっとお話ございましたけれども、やはりわれわれがいま脱臭している温度が必要だとするとやはり三百度ぐらいの熱水が必要だと思います。そうなりますと大体百気圧ぐらい、で、今度はこういうものを――これは石油精製その他ではもっと高い圧のものも取り扱われておるわけでございますが、われわれとしてはそういう高圧のものはまだ取り扱ったものはございませんし、もしそういうものに今度は穴があいたとかいうようなときの爆発的なエマージェンシーという問題も一応考えておかなければならないというようなことで、その点は一つ検討しなきゃならない。あるいは電熱での加熱というようなものも新聞紙上にもちょっと出ておりましたが、これも物質的には不可能ではないかと思いますけれども、実際にそれが応用できるかどうかというような問題があろうと思います。具体的なことについてはわれわれもまだ申し上げる段階ではございませんけれども、もっと安心して、かりに間違ってもそういう食品衛生の問題が起きないという装置について検討していきたいと、こういうふうに考えております。
 それから、先ほどの発言の中で食品添加物として認められていないと申しましたのは熱媒体という総称してのことでございまして、いま認められているのはジフェニールだけでございますので、そういう意味でちょっと補足しておきます。
#59
○田中寿美子君 それで、まあ臭気を完全に取ってしまって何のにおいもない油というのは全くたよりのないものなんです、ほんとう言えば。あのサラダオイルなんというのはほんとに私いつもたよりないと思っているわけなんです。ですから、もし蒸気で温度が三百度までいかなくても、ある程度臭気を取ったというところでもいいんじゃないかということも、私はしろうとの意見ですけれどもね、いつも油を非常に食べるものですから、食べる者の側として意見を述べさしてもらっておきます。
 それからさっきのお話の中に、衛生管理者の地位が、権限が弱過ぎるというお話があったのですが、こういう問題に対して油脂協会は自主的な規制をなさる立場から今後どういうふうにやっていこうというふうな何か申し合わせでもしていらっしゃいますでしょうか。
#60
○参考人(高井祥平君) ただいまの御質問でございますが、私どもかねがねから食品衛生法においては食品衛生管理者を設け、かつまたJASのほうにおきましては格付担当者ということで、それぞれそれは資格のある者がその任に当たるわけでございます。ただ今回のことから反省いたしまして、やはりそういうまず品質管理体制というもの、あるいは衛生管理体制というものをもっと十分に強化する必要があるのじゃないか、同時に担当者の地位、権限というものをもっと上げなくちゃいけないということで、今後のそういう問題の事故が起こりますときにも直ちにそれは全社的にすぐ処置のできるような権限あるいは体制をこしらえるというふうにいたしまして、ここで私ども、日本油脂協会としましては、各工場、各社に対しまして新たにそれの点検をいたしております。あるいはそういうことで体制の強化のために組織を改正する、あるいはさらにそういう資格者の衛生管理者、あるいはそういう格付担当者の地位向上についてどういうふうに各社は処置していくかということをただいま早急に実施するように求めておりますので、これは早急に改善をいたしましていまの御質問のようなことに十分に対処できるようにしていきたいというふうに考えておる次第でございます。
#61
○田中寿美子君 厚生省も農林省ももう大いに関係あることなんでございますけれども、いまの管理者に対してこれを要請したり監督を――とっても行政がたいへん私は今回怠慢であったということが非常に大きな原因だったと思っているんですけれども、業界の自主規制自主規制といって自主規制にだけまかせておくんではなくて、十分行政の援助とか協力とか指導というものが非常に必要だと思うんですが、日本油脂協会に参加している業者というのは三十ぐらいですか、食用油を製造している工場は四百ぐらいあるというふうに聞いておりますね。ですから、油脂協会傘下じゃない、またJASの認定工場でもないものがたくさんあると思うんです。そういう中小のメーカーに対しては一体どういうふうにするべきだと、またどうしようというふうに業界ではお思いになっていらっしゃいますか。
#62
○参考人(高井祥平君) いま御指摘のように、私どもの日本油脂協会と申しますのは、現在三十社二団体でございます。それでその二団体と申しますのは、なたねの各地方に非常に零細の工場がたくさんございまして、それの団体として日本油糧工業協同組合連合会、略称で日油連と申しております、これがございますのと、それから米油関係で、これは国産の米ぬかを処理いたしますもので全国こめ油工業会というのがございますが、これが四十工場前後ございます。その二つの団体を会員といたします一そのほかに単独の会員が三十社と、三十社二団体というふうに油脂協会は構成されております。ただいまのお話の四百工場、これは厚生省さんのほうで一応登録されておる工場というふうに私どもは解釈いたしておりますが、現実に、その四百工場の中には実際に稼働しているかどうか、やはり非常に零細の工場でございますとそのときそのときに原料が入手できないというふうなことで、まあ家内工業的なものが非常に多うございますので、そういったところはそのときに応じて作業をし、そのほかにまたいろいろ副業をやっておられるというふうなことでございますので、実数からいきますれば相当減ってくるんじゃないかというふうに私ども考えております。ただしかし、そういった場合におきましても、いまの食品衛生上からいきまして、やはり精製の工場を営むところは数が非常に少のうございまして、現在私どもがJASの認定工場として五十七工場ございますが、そのうち約二十工場前後が、これが油脂協会の会員でないところでございます。そのほかの工場に若干アウトサイダーもございますが、そういったところがごく少数ございまして、そういったところの工場が精製設備を持っております。その他の大部分は、私どもは原油をつくっておるところが大部分であるというふうに解釈いたしております。そうなりますと、やはり精製の問題が起こる。脱臭とかいまのような問題が起こります場合の工場の数というのは、ずっと少ないのじゃないかというふうに考えております。ただ、食品衛生法上、やはり食品、そういう精油の油をつくる工場としましては、もちろん対象には入っておりますが、そういう面で食品衛生法に十分に、そういう私どもの会員以外あるいはJASの認定工場以外のところも十分にそれは周知、知っておかなくちゃならぬことと思いますので、この辺は農林省御当局、あるいは厚生省御当局いろいろ御指導を仰ぎまして、また私どももそれに十分にひとつ力をいたしたいというふうに存じておる次第でございます。
 なお、今回の事件発生と同時に農林省から工場の総点検、あるいはその他の御指示をいち早くいただいております。私どもも事件発生の翌日、四月十一日に緊急の正副会長会議、それから緊急の理事会を開きまして、自主的にまず工場の総点検をやろうというふうに指示をいたしました、会員のほうにいたしておりますが、同時に農林省から食品流通局長の御通達をいただき、かつ翌日には厚生省からも全国工場の総点検をすべし、これは四月十八日から一週間の予定でやれということでございまして、これにつきましても、厚生省の御指示により、かつまた私どもの油脂協会としまして、技術委員会で、さらにもう少し詳しくいろいろ点検のリストをつくりまして、それぞれに指示を与えておりまして、これの総点検は現在の段階で全部終わっております。またJASのほうの総点検も農林省から四月二十三日付でいただいておりまして、これまた格付機関並びに認定工場について総点検ということ、いま認定工場にはいろいろそういう管理体制上の問題、あるいはもっととにかくJAS項目以外の安全性ということをさらにつけ加えてやるべしというふうなことで、私どもその体制に準拠して、ただいまこれからの実施を始めておりますので、大体そういうふうなことで、私どもはただいま非常な決意を持って大改善をいたしたいというふうに考えております。
#63
○田中寿美子君 もう時間があと少しになりましたので、私は厚生省と農林省と労働省に質疑をしたい。これは業界の方が聞いていていただいてお返事いただきたいと思っておりますが、詳しく言う時間がなくなりましたけれども、厚生省、総点検をして、そして検出せずということで安全宣言をなさった。それは確信を持って、どうして安全と言えるのかということ。それから岡山の水島工場での例の九PPMですね。これは妨害物質というのは一体何であるかということ、それが一つです。それは有害な物質なんではないかどうかということですね。で、厚生省はあれは熱媒体ではなかったというふうに言っていられるんですが、それじゃ検査方法がどういうふうに違ったのか。ガスクロでは一〇PPM以下のものは熱媒体が出ないということなんですが、どういうやり方で国立衛生試験所ではやられて、そうしてそれが安全だというふうに判定なすったのか、それが一点です。
 それから二点目は、ビフェニールというものについての毒性の研究をどれだけやっていらっしゃるか。急性毒性に関しては、これはPCBと同じだというふうにいわれている。だけれども、慢性毒性ですね、これは国立衛生試験所でどの程度やって、どんな成果が出ているのかということなんです。PCBが非常に問題になったあとで、代替品としてビフェニールとか、トリフェニールとか、アルキルナフタリンですか、こういうものをみんないま使っているわけですね。ノーカーボンペーパーなんかにも使っているわけです。こういうものがもう慢性毒性が十分に立証されませんと、安全であるかどうか、どういう毒性があるのかということがわからないで、これを使うということ自体は非常に問題で、熱媒体としてだけではなくて、いろいろなものに使っておりますね。特にさっきちょっと申しましたようにフルーツペーパー、オレンジだとかグレープフルーツだとか、ミカンの青かびを防ぐために、あれに包んでいる紙はビフェニールで浸した紙であって、その包んでいる紙とミカンの間に一種の蒸気を漂わすことによって、毒を防ぐということになっているわけなんですが、こういうつまり添加物としてビフェニールを許しているのは、そういう使い方ですね。ですからミカンの皮からくっついてくる、そうしてそれが口に入るということがあり得るわけなんです。これはWHOの基準が一〇〇だから、日本は七〇PPMにしてあるというこの前の御説明でしたけれども、そういうことでいいのかどうか。ビフェニールというものを、ほんとうによく研究されているかどうかということです。
 第三点は何回も申し上げますが、食品衛生行政もう非常に貧弱、試験体制も貧弱なんですね、予算を出していただいたら、食品衛生に関して厚生省、一億九千万なんですね。こんなのはいまの時代では全く金の中に入らない、予算の中に。これほど大事な人間の食べるものに関すること、いま非常に問題たくさん起こってきているときに、飛躍的にこれはふやしてもらわないと、どうにもこうにもしようがないんじゃないか。それで食品衛生監視員なんかだって、とても手が回らないから業者の自主規制に待つよりほかないという状況の中で、しかも、さっきのお話のように、中小工場なんというところまでは、業者は自分たちの協会のアウトサイダーまでみる何も責任はないわけですね。そうしますと、たいへん重大な、これ何とかもっと飛躍的にふやさなきゃいけないと思うんです。厚生省はプロジェクトチームをつくられたらしいですが、その計画というのは、一体どういうことになっているのかということなんです。
 大体厚生省に関してはそのくらいのことと、それともう一つ脱臭装置ですね。これに関して食品衛生法十九条の十八で「厚生大臣は、食品又は添加物の製造又は加工の過程において有害な又は有害な物質が当該食品又は添加物に混入することを防止するための措置に関し必要な基準を定めることができる。」というふうになっているわけなんで、脱臭装置について先ほどからの御説明のように、いろいろと心配があるわけですね。これに関しては思い切った措置を通産省のほうに、この前厚生大臣は依頼して考えてもらいますというふうなお答えをなさったけれども、私は通産省の重工業局をチェックしてみたら、まだ何にもお話は聞いていませんということなんで、厚生省のほうでもまだ考えが定まっていらっしゃらないのかもしれませんが、業界も研究するけれども、厚生大臣はそういう装置に関してちゃんと指令を発する権限を持っているわけなんです。この辺をどうなさるのか、この四点です。
#64
○政府委員(浦田純一君) 厚生省は今回の千葉ニッコー油の事件に対しまして、さっそく、問題の熱媒体が油に含まれているかどうかということについての検査を実施したわけでございます。御存じだとは思いますが、この熱媒体の検査方法は、実は日本油脂協会あたりできめられた方法がございましたけれども、厚生省、国立衛生試験所といたしましては、より慎重を期するために新しい分析方法を今回研究して定めまして、それによって行なったわけでございます。これは非常に従来の検査方法に比較いたしまして鋭敏な方法でございます。溶媒抽出法とかりに申しておりますが、これによってやったということでございまして、さらに慎重を期するために、同一の収去検体につきましても、少なくとも最低二回以上同一の結果が出るということについてのみ国立衛生試験所といたしましては意味ありとして、必要な場合にはさらに数回同一検体について検査をいたしております。このような検査方法から、私どもといたしましては、その結果に基づきまして、一番容疑の濃いはずの三月十五日に千葉ニッコーのほうから岡山の日興水島工場に送ったと同一の検体でございますが、それについて検査した結果も含めまして、すべての検体から検出されずという結果を得たわけでございます。確かに御指摘のように、事件を起こされた当の工場側のほうで九PPMの熱媒体を検出しておるという証言がございます。普通ならば、自己に不利な証言でございますから、そちらのほうの信憑性もかなり高いということでございますが、私どもはその点に着目いたしまして、国立衛生試験所の分析を担当された技官の方二名並びに局のほうから担当の技官一名、三名を当該水島工場に派遣いたしまして、それで、水島工場で行ないました九PPMを検出したと報告のありましたと同一の方法によって、そこで実験を、検出をしていただいたわけでございます。この水島工場で行ないました方法は、日本油脂協会で定められました従来の方法によるのでございまして、名づけてアルカリ鹸化法とでも申しますか、その原理は、油の脂肪分をアルカリ分解いたしまして、油を、つまり食用の油でございますが、その油を水に溶かしまして除去してしまう方法でございます。この方法を、水島工場では少し検出方法を改善いたしまして行なったのでございますが、結論から申しますと、この検出の限界というのはかなり高いところでございまして、日本油脂協会のそのままの方法ですと一〇PPM、検出限界は一〇PPMというふうに承知しております。これに引きかえまして国立衛試で今回採用いたしました方法は、検出限界は〇・二PPMということでかなり精度の高いものでございます。そのようなことで、結局、アルカリ鹸化法では、どうも來雑物が多く入りまして、熱媒体のガスクロマトグラフィーにかけました場合のピークのあらわれ方が普通の熱媒体のあわられるピークの直前に出現いたしまして、どうもそれを見誤ったというふうな結論を、私どもは報告を受けております。御指摘の妨害物質でございますが、これは油中に含まれている本来物質か、あるいは、アルカリ鹸化法の処理過程によって生じた物質であろうと考えられます。しかし、これについては、現在なお国立衛生試験所でこの本体を究明中でございます。以上のような結果から、私どもは最も容疑の濃かった水島工場で検査されました検体も含めまして、いままで検査したすべての検体から、国立衛生試験所で採用した方法によって検出限界である〇・二PPM以下であるすなわち検出されなかったという事実から、私どもは、かりに極微量、つまり〇・二PPM以下ということになりますが、含まれているにしても、この程度であるならば油が人間に与える健康上の障害ということは考えられないというふうに結論したわけでございます。
 それから第二点のビフェニール等の毒性に関してでございますが、これは、先生御案内のように、ただいまかんきつ類に限りましてその使用を認めておるところでございます。そのビフェニールの慢性毒性試験でございますが、すでにWHOにおきましてもこの安全性が評価されておるということで、現在、アメリカ、イギリス、西ドイツ等、世界各国でレモン類等に対する使用を認めておるという状況でございます。私どもは、日本がいまかんきつ類に認めておりまする使用基準すなわち七〇PPMを限度として使用する場合には、これは、人体に対する影響はないというふうに考えておりまして、これはいままでの諸外国並びにWHOの諸検査、諸調査の結果を参考としたものでございます。
 また、KSKあるいはダウサムA等の慢性毒性に関する問題でございますが、ダウサムAにつきましては、これは諸外国の文献によりまして慢性毒性についてのいろいろなデータを得ております。時間の関係で簡略に申し上げますが、慢性毒性について、無作用量といたしましては〇・五グラム、体重一キログラム当たり週に五日ラットに与えまして影響がないということで、無作用量は〇・五グラム、体量一キログラム当たり毎日ということになります。
 それからKSKでございますが、これは東京歯科大学の衛生学教室で、ちょうどPCBの代替品としてのジ・イソプロフィルナフタレンあるいはトリイソプロフィルナフタレン等の毒性検査を進めております。これらの物質はKSKの主要成分でございます。現在まだ検査を続行中のものもございますが、いままでの結論から申しますと、六カ月間の試験でございますが、一応、二百ミリグラム・体重一キログラム当たり毎日という量が無影響・無作用量であるというふうな報告を受けております。KSKは日本で開発されたものでございますので、残念ながら、いまのところは東京歯科大学の検査が唯一のものでございますが、私どもも直接上田教授からいろいろと御説明を受けまして、これはりっぱな研究であるというふうに考えております。いずれにいたしましても、慢性毒性につきましては、従来のPCBとの比較におきましては、そういった専門の方々の御意見によりますと、かなり弱いものであるというふうに承っております。それからその他の新しい化学物質等々につきましては、確かに一部まだ毒性等について明らかでないという物質もございますが、今国会に提案中の新化学物質の規制に関する法案とが、あるいは家庭用品の安全に関する法案といったものの中でも十分に規制ができるように対処してまいりたいと考えておりますし、必要な毒性の研究につきましては今後鋭意進めてまいりたいと考えております。
 それから第四点の食品衛生法の第十九条の十八に関連しての御質問でございますが、これはもちろん厚生大臣がその権限においてやれる行為でございまして、ただ実際上の問題といたしまして、関係各省の方にいろいろと技術的な面その他について御協力願わなくちゃならないという意味合いで申し上げたものと承知いたしております。
 第三点の試験体制につきましては、現在、隣におります柳瀬審議官を中心としてプロジェクトチームの作業が進められておりますので、柳瀬審議官のほうからお聞き取りいただきたいと思います。
#65
○政府委員(柳瀬孝吉君) 食品等に関しまする試験検査体制の問題についてのプロジェクトチームを編成したことにつきまして御説明を申し上げたいと思います。
 最近、ニッコーオイル事件はもとよりのこと、いろいろと、カネミライスオイル事件とか、あるいはまた、古くは森永のドライミルク事件とか、そういう食品に関係をする国民の健康被害の問題、あるいは医薬品につきましての健康被害の問題、これもいろいろと、クロロキン等による眼障害の問題とか、あるいはコラルジル等のDH剤による肝障害の問題とか、いろいろな問題が多発しておるわけでございます。家庭用品につきましても、衣類なんかに関しまする接触性の皮膚炎の問題あるいは洗剤によりまする皮膚炎の問題とか、いろいろなそういう食品、医薬品、家庭用品、あるいは環境汚染というようなことにつきまする問題が多発しておるわけでございます。この点につきまして、こういう問題が起こってからあたふたとこれを追っかけ回すという前に、事前にそういう問題が起こらないようにするのにはどうしたらいいのか。あるいは、たとえ起きたとしてもそれに対処して迅速にこれに対応できるようなことをやるためにはどうしたらいいのかということを私ども厚生省の内部でも非常に喫緊の重要な検討すべき問題として考えてきたわけなんでございます。厚生大臣からの強い指示もございまして、このたび、こういう食品とか医薬品に関するプロジェクトチームをつくりまして、一番重要な隘路はどこにあるのかということで、これはいろいろと問題がたくさんあるわけでございますけれども、特に、この試験・検査体制の整備ということが非常に重要な問題になってきておるわけでございます。で、その点を中心にいたしましてこのプロジェクトチームは検討を続けて至急に結論を出したいということでございます。
 そこで、このプロジェクトチームも、実は、省内のいろいろな局に関係いたしておりまして、食品あるいはその添加物の問題につきましては環境衛生局、それから家庭用品の問題につきまして、今度法律案を出しておるわけでございますが、これも環境衛生局、それから医薬品の問題につきましては、その安全性の問題について薬務局、それからその副作用の試験・検査関係では国立病院等を所管しております医務局、それから試験・検査体制の中でも都道府県の衛生研究所あるいは保健所、こういうものを所管しております公衆衛生局、それから化学研究関係とかあるいは組織・機構関係を所管しております官房、こういう衛生四局及び官房にまたがっておる問題でございまして、そういう関係のある各局がこの問題に総力をあげてひとつ取っ組んでいこうと、こういうことでございます。
 それで、検討すべきおもな内容は、まず、試験・検査体制の整備でございまして、これは、国立衛生試験所なんかも当然これの整備をはからなけりゃならぬわけでございますが、国立の衛試だけを充実したら問題が解決するかというとそういうものでもございませんで、先ほど申しましたような都道府県の衛生試験所あるいは保健所あるいは国立病院あるいは民間の公益性のある試験・検査機関、こういうようなものを整備をしていかなけりゃならぬ。それから、それぞれの試験・検査機関の分担をどうするかとか、あるいは連携をどうするかとかいうような問題、それから試験・検査の技術職員の確保あるいは資質の向上と、こういうような問題、それから健康被害の事例を早期に把握をして迅速に対処できるように体制を整備する、そのほかいろいろございますが、そういうことを中心にいたしまして問題を詰めていきたいというふうに考えておりまして、大体、六月の中旬ぐらいまでには結論を出したいというふうに考えておるわけでございます。
#66
○田中寿美子君 もう小平委員の時間に食い込んでしまいましたんですけれども、いまのお答えで国立衛生試験所ではビフェニールの慢性毒性の検査というのはまだやっていないというふうに私は伺いました。製品に関してはさっきの歯科大学なんかでやっていると。で、国立衛生試験所の予算も八億ちょっとですね。私は、持論なんですけれども、食品に関する行政というのは厚生省だけじゃなくて農林もあるし、あるいは公取もありますし、一部通産に関係しておるところもあると思うんです。それで、これらの行政がばらばらでなく統一してやっていかないと、食品を中心にして統一してやっていかなければならないということを私は主張しておきたいと思います。それから食品行政の予算の非常に少ないということをこの際何べんも申し上げておきたい。
 それで、時間がなくなりましたから、農林省は私は一点だけ伺います。
 今回の千葉ニッコーもJASの認定工場だったわけなんで、それをすぐに取り消しなさいました、事件が起こったあとでね。その認定工場というものを決定する格付機関は日本油脂協会ですね、油の場合は。その油脂協会に対する指導というのか、農林省からは認定工場を決定するときの指導、その後のアフターケアみたいなもの、そんなものはどんなにしていらっしゃるのかということと、食品に関して厚生省の非常に予算が少ない。これは自民党の方よく聞いていただいて、一億九千万しかないわけですから。農林省のほうは一体食品行政に関してはどのぐらいあるのかということ、そして、今後うんとこれはふやすべきだと思うんですけれども、その辺のことを一点だけです。
#67
○説明員(堤恒雄君) お答えいたします。
 認定工場につきましては、田中先生も御案内のように、農林大臣が認定工場の技術的基準というふうなものをきめまして、施設なりあるいは品質管理の基準というふうなものを各JASの品目ごとにこまごまときめてあるわけでございまして、これに基づきまして格付機関のほうが格付業務の一部であるサンプリングなりあるいはJASマークのラベリングと、こういうふうなことについて一定の要件の中でまかしても差しつかえないというふうなことを判断したものについて、農林大臣に申請を行ないまして、農林大臣がこれを妥当と認めた場合は、これを認定工場として認めるというふうな形になっているわけでございます。事後的な指導につきましては、格付機関が、私どもの指導といたしましては、年に一回工場の調査をやって品質管理その他について指導、調査をしろというふうなことを指示しているわけでございます。それと同時に、私どもの機関でございます農林規格検査所というふうなものが全国十カ所にございますが、この機能を用いまして認定工場について指導、調査を行なわせるというふうなことをやっておりますし、さらには、最近製造工程の高度化というふうな問題がどんどん出てきておりますし、大量生産も進んできておりますので、認定工場の品質管理担当者と、こういうものを集めまして講習会等を私どものほうで実施しているというふうな措置をとっているわけでございます。それから格付機関の格付業務につきましては、私どものほうの機関でございます先ほど申し上げました農林規格検査所、こういうふうなものの機能を活用しまして、必ず年一回以上格付事業所を調査するというふうなことをやっているわけでございますし、それからJASについての消費者からの信頼というふうなものも高まってきておる現在でございますので、格付機関が相互に切磋琢磨して格付けの適正化を行なうというふうな観点から、格付機関の協議会というものを定例的に行ないまして、いろいろな問題の交換といいますか、そういうことをやらしているというふうなことでございます。
 それから予算関係でございますが、私どものほうは食品関係の事業が、たとえば畜産物であれば畜産局と、野菜関係であれば食品流通局、あるいは水産物は水産庁というふうなことで非常に多岐にわたっておりまして、そういうところにそれぞれ、額は多額じゃございませんけれども、企業の指導なりあるいは助成のための経費が計上されております。それからあと御案内のように食料品については価格の安定という問題が非常に大きな問題でございますので、価格安定のために必要ないろいろな貯蔵施設なり出荷施設なり、こういうふうなものについて助成を行なっているというふうなことでございます。非常にそういう多岐にわたるわけですが、狭義の、いわば食品産業関係の関連企業対策費というふうなことになますと、食品関係を中心とした中小企業の近代化の促進とか、それから技術開発の問題、あるいは最近のいわゆる排水等の公害対策の問題あるいは工場立地の問題、こういうふうな関係につきまして食品流通局を中心に四十八年度予算で二億八千万ほどの経費が計上されているというふうな実態になっておるわけでございます。
#68
○委員長(矢山有作君) ちょっと速記とめて。
  〔速記中止〕
#69
○委員長(矢山有作君) 速記を起こして。
#70
○田中寿美子君 じゃあ、もう最後です。せっかく労働省の方も来ていただいておりますので、今回の千葉ニッコー事件のときに、私は、農林省、厚生省関係の調査がずいぶんあったと思うんですが、労働省は一体あそこで働いている労働者の作業環境という観点からあそこへ調べに行かれたのかどうかということなんです、さっき臭気が出ていたという問題があるものですから。それでビフェニール、熱媒体に使われているそのビフェニールその他のものの毒性について、これはアメリカの調査なんですが、PCBの三分の一くらい、作業環境の場合ですね、作業濃度の場合、というふうに出ておりますね。一メートル立方に対して〇・五ミリグラム、これが工場内作業濃度の限界、これに対してビフェニールの場合は一メートル立方に対して一・五ミリグラムというふうに出ているわけですね。それで今回の場合に、あそこの作業員たちの作業環境を調べられたかどうか、昨年労働安全衛生法というのをつくって、そして化学物質を扱う労働者の作業環境を一生懸命にめんどうを見なきゃいけないということになったんですが、それがどのように生きているかということです。
 それからさっきのフルーツペーパーですが、これはフィンランドの調査によりますと、ジフェニルから、――ビフェニールと同じですね、職業病が報告されております。これは私は磯野先生から教えていただいたわけなんですが、非常に最新の報告で、一九七三年の報告で、フィンランドの状況なんですが、三十一人の、十年から十五、六年、そのフルーツペーパー、ジフェニールを紙にしませて、そしてくだものを包むあの紙をつくる作業場に働いていた労働者三十一人の調査の中から、一名死亡、それから八名中毒症状、二十二名が何らかの障害を示している。それが皮膚にかぶれなんというものは出ないんですね、カネミのときみたいに。内臓疾患で肝臓の異常、足がはれる。水腫、中枢神経の障害と、こういうようなものを起こしているというようなことが報告されているんです。ビフェニールなんというものは自然界や植物、動物には存在しないもので、これは化学物質でございますから。そういうような環境の中で働く者に対してもっと警戒してもらいたいんですが、労働省がこういうことに関して、ビフェニールなんかにはどういう規制をしていらっしゃるか、それを伺って、私、今後、これは食品そのものがわれわれすべての消費者の口から入ってくるという問題と同時に、そういう有害な物質を扱う労働者の作業環境というものをぜひ業者のほうも考えに入れていただきたいということを申し上げて終わります。
#71
○政府委員(北川俊夫君) まず第一点の監督でございますけれども、四月の十二日に私たち新聞報道によりましてこの事件を把握いたしました。直ちにその日に、所轄の監督署は千葉の監督署でございますが、千葉の監督署の監督官を派遣をいたしまして、重点を二点にしぼりました。一つは、問題になっております脱臭塔及びその付属施設が私たちの安全衛生法で規定をしております内圧容器に該当するかどうか。もう一点は、先生御指摘の健康管理の問題、この二点を調査いたしました。
 まず第一点の内圧容器に該当するかどうかは、調査いたしましたところ、陰圧の容器でございまして内圧容器には該当しない。ただ、今後こういう事故の起きないように定期の点検、それを十分励行するように、そういう指導をいたしております。
 それから、第二の健康管理の点につきましては、環境汚染については、実はいたしておりません。ただ、労働衛生管理組織そのものにつきまして一応の衛生管理者の任命等はありますけれども、発動が不十分であるというような点につきまして指示をいたしております。
 なお、環境調査につきまして能力的にも問題がございましたけれども、いたしませんでしたそのときの理由につきましては、現地からこういう報告を受けております。
 脱臭塔から臭気を取りまして、それを凝集機で冷却する場合に、地下水で、大体十八度から二十度の地下水で冷却をしておるようであります。排気の場合には、排気口におきましてその温度が三十二度から三十三度になって排出をされております。先生御承知のようにビフェニールの物性といたしまして、融点が六十九度から七十一度、沸点が二百五十四から二百五十五度ということでございますので、気化をいたしまして、職場環境が汚染されることはないというふうにそのときには判断をいたしているわけであります。ただ、その場合、先生先ほど御指摘のように、いわゆる排水の中にまじって出るにおいを、臭気を感じたという点がございますので、そういうことでの職場環境の汚染というものが若干あったのではないか、そういうふうに判断いたしております。
 それからなお、ビフェニールそのものの毒性そのものにつきましては、有害物質につきましては特定化学物質等障害予防規則、それによっていろいろの有害物質を規制をしております。現在四十八種類の有害物質を規制をいたしておりますが、ビフェニールそのものについては規制をいたしておりません。いま四十八種の有害物質を規制をいたしております一応の基準といたしましては、毒性がたいへん高い。それから労働災害事例としてそういうものがあるというようなことを一つの基準にいたしまして、日本の職業病の権威でありますところの産業衛生学会の先生方の御意見を主体にしまして、その決定をいたしております。四十八種類につきましては今後最近のような新化学物質の導入とともに、拡大の方向に私たちは努力をしていきたいと思っておりますが、ビフェニールにつきましては、先ほど御指摘のような事例等も私どもまだ十分把握をいたしておりませんので、それらの先生方の御意見を拝聴しながら今後検討をさしていただきたいと思います。
#72
○小平芳平君 それでは、たいへん長い時間にわたりましたので、せっかくおいでいただきました参考人の方に一、二点伺って私の質問を終わりたとい思います。
 初めに尾川参考人に伺いますが、先ほど来の質問に対しまして尾川参考人は、熱媒体は蒸発したと、要するに熱媒体は油の中には入っておらないのだということを答弁しておられましたし、また以前にも新聞でそのようにお話なさっているのを、報道されているのを私見たんですが、尾川さんといたしましては熱媒体は蒸発してしまって現実問題、油の中に入っているわけはない、化学的にそんなわけはないというふうにお考えなのかどうでしょうか、それが一点です。
 それからもう一つは、KSKをダウサムAと混合して使うようになったということにつきまして、KSKのほうが安全性が高いというふうにお考えなのでしょうか。先ほどちょっとそのように私聞こえたんですが、その二点についてお伺いしたいと思います。
#73
○参考人(尾川数馬君) 混入についてでございますが、これは私どもの判断で、化学的に判断をいたしまして混入はないという判断を一応したわけでございます。その化学的な判断と、それにあわせて官能テスト、両方あわせまして判断をいたしたわけでございます。
 それから熱媒体、KSKの毒性の問題でございますが、これはわれわれ専門家でありませんので確実なことはわかりませんが、熱媒体のメーカーその他のデータによりまして安全性がダウサムよりも低いということを承知しております。
#74
○小平芳平君 そうしますと、化学的に熱媒体は混入しているわけはないということで一貫しておられますと、じゃ、この油問屋から返品されたものとか、あるいは二次製品ですね、二次製品メーカーなどで大量に回収したものとか、そういうものはまた正規のルートに乗せて売るわけですか。
#75
○参考人(尾川数馬君) 回収油の処置につきましては、御当局の指示によって処理いたしたいと思っております。
#76
○小平芳平君 そうすると、厚生省は食用に使用して一向に差しつかえないという趣旨の安全宣言をしたわけですが、そうすると、いまメーカー側としては指示に従うと言われているのですが、それはそのまま消費者に売られていくわけですか、いかがでしょう。
#77
○政府委員(浦田純一君) 回収しました熱媒体が混入しているおそれのあるまあ回収いたしました油、これはやはり最終的にはその処分は県のほうのきめるところに従うことになるわけでございますが、私どもの立場といたしましては、やはり食用に供するということは好ましいことではないという立場でもって県のほうと十分に話し合いたいと思っております。つまり、当該油は工業用に用いるとかいったようなことで私どもとしては県とも十分に相談して、消費者の心理状態というものも考えた上で処分させたいというふうに考えておる次第でございます。
#78
○小平芳平君 結局、そうすると、工業用に用いる等の処置をとって食用には供しない、この回収した油は。それが一つと、それから二次製品はいかがですか。
#79
○政府委員(浦田純一君) 二次製品は、実は業者のほうの自主的な回収ということになっておりまして、やはり私どもといたしましては、業者の方の自粛ということを期待しておるわけでございます。その点につきましては、各都府県のほうとも十分に私ども相談いたしまして、どのように処置するか、できるだけやはりこういったことでもって回収した品でございますから、やはり良識的な措置をしていただくというふうにお話し合いをしていきたいと考えております。
#80
○小平芳平君 そうしますと各企業にまかせる、各企業の良心にまかせますということは、なるべく売らないようにしてほしいと。しかし、売ったものは、売りたいというものがあれば売りなさいということですか。
 それから、それに対する損害はばうなるんですか、損害は。
#81
○政府委員(浦田純一君) 二次製品につきましては、東京都あるいは千葉県あたりですね、いわゆる行政指導と申しますか、業者の方の自主的な回収ということを行なってきたわけでございます。したがいまして、まあ法律的な立場からいきますというと、確かにそれは強制はできない立場でございますが、いままでのいろいろとまあこの種の事件といいますか、それから公害のいろんなことに対する、まあ国民の皆さま方の感情といいますか、そういったようなことを考え、また業者としての当然の良識といいますか、そういったことを考える場合に、法律によらないで回収したわけでございますから、やはりその点は私はたてまえからいったら強制できないということで、実効を期待できないんじゃないかというふうな御意見もあろうかと思いますけれども、いまこの問題について業者がとってこられた態度を見ますと、十分良識的に私どもは措置していただけるというふうに考えております。
 まあ万一、その辺のところについていろいろと御意見があるようでしたら、その点は、都あるいは県を通じまして、十分にそういった業者の方々のまあ自戒を望むように指導させたいと思っております。
 それから、補償の問題でございますが、やはり千葉ニッコー油の有毒もしくは有害な物質が含まれておったという疑いですね、これはあの時点においては当然抱く疑いであったわけでございますし、そういった限りにおきましては食品衛生法の第四条違反であるという事実は動かせないわけでございます。私どもは、これは補償という問題は起こりました場合には、国の立場においてあるいは県の立場においては当然まあ合法的な行為をしたことでございますから、そういった意味では補償の責任はないというふうに考えております。
 また二次製品の補償の問題でございますが、これらにつきましては、私どもやはり県あるいは国の段階としては責任はない。どのように当事者内でお話し合いになりますか、その点については私どもは第三者的な立場というふうに考えております。
#82
○大橋和孝君 ちょっと、私関連させていただいて一問だけ厚生省に聞いてみたいと思いますが、私どもが聞いている範囲では、この検査のしかたに差があって、一方では九PPMを出しておったと、それがこっちではなかったというのは、かくかくのあれだったということで発表されておりますけれども、それは確実なもんであるかどうかということは、もっと私は検査されなければ、進められなければいけない点が残るんじゃないかと、こういうふうに理解をしておったんでありますが、ほんとうにやったところで、安全宣言を出したからには、絶対含まれてなかったということが明々白々でなければ、――どちらからいっても一点の余地もないという状態ではないんじゃないかと私は思うんですが、その点どうですか。
#83
○政府委員(浦田純一君) その点につきましては、国立衛生試験所も、また私ども当事者といたしましても、一番に慎重を期したところでございます。私どものいままで収去いたしました検体につきましての結果は、これは絶対に正しいというふうに信じております。
 それで、水島工場で九PPMを検出いたしました理由につきましては、先ほど田中委員の御質問のときにお答えいたしましたが、要はやはり水島工場での検査結果というものについて、まあ主として途中の処理方法において誤りがあったという報告を受けておりますが、私どもはその報告は正しいものと。また、なおいま全部で百四検体を収去して調べたわけでございまして、五十数検体について国立衛生試験所での検査結果では検出せずという結果でございまして、残り、いま残っておるわけでございますが、これらはいずれも三月十五日の一番容疑の濃い収去検体に比べまして、容疑のちょっと薄い検体ばかりでございます。したがいまして、これから先の見通しといたしまして、やはりダウサムあるいはKSK、これら熱媒体は検出できない、されないというふうに、かなり確実な収去のもとに、できないだろうというふうに考えております。まあ、検査の当事者を呼びまして、いろいろな点から私どもとしては疑点について問いただしてきたつもりでおります。したがいまして、万々国立衛生試験所の試験方法並びに検査の成績につきましては、間違いはなかろうというふうに考えておる次第でございます。
#84
○大橋和孝君 もう一点。試験のときに、何かあとから加えてね、一〇PPMあるいは三〇PPMというふうに加えて検査をしたと、そういうときには、検査の結果でちょっと反応に何か曇って変なものがあらわれたけれども、なかったというふうな報告も私はちょっと見たと思うのですが、そういうふうな点から考えてみまして、あなたのほうでは、そういうふうな解釈がほんとうに自信が持てるものだと、だいじょうぶなものであるというのならば、――私はまだいまの先ほどからの答弁を聞いておって、そんなものが全然含まれてないということに対して、いまの処理をされるやり方というのは何か少しあいまいなような感じがするんですが、もう少しそういう点は明確にされるべきじゃないかと思うんですが、特にそういう処理なんかをされたら補償の問題も出てくるでしょうし、いろいろな問題が出てくるということになれば、私はもっと指導というものを明確にされる必要があるだろう。どういう根拠でもって、これはこのいままでの経過あるいはまた、その処理方法に多少不安な点があるから、そういうふうにするとか、何か明確なものが出るべきだと思うのですが、その点はもう少し明示しておいてもらえませんか。
#85
○政府委員(浦田純一君) 水島工場におきます実地検証の結果でございますが、これは先生がおっしゃりましたように、こちら側であらかじめ熱媒体一〇PPMあるいは三〇PPMというものを加えた、いわば既知の検体についても調べたわけでございます。その結果は、このアルカリ鹸化法によりますと、本来の嫌疑を持っております九PPMを検出した検体、これと同様に同じところにまあ妨害物質のピークは出てまいります。それと一緒に、全然ダウサムA等を加えていない、油そのものですね、油、それを分析いたしましても、この手法でやりますというと、同じように妨害のピークが出てまいります。そういった事実。それから国立衛生試験所で、これらの既知の検体について国立衛生試験所の方法でやりますと、いずれも正しい結果が得られるという事実。
 こういったことから、私どもは結論といたしまして、水島工場の行なった検査方法、これは主として処理過程のようでございますが、これに問題ありというふうに考えております。それから妨害物質、これについてはおそらく油中に含まれておりまする本来の物質あるいはアルカリ鹸化法の処理過程によって生じた物質であるというふうに推定しておりますが、その本体については現在究明中でございますが、これはこれといたしまして、水島工場の検査方法並びに検査結果というものは誤りであって、国立衛生試験所の検査方法並びに結果は、これは信用できるというふうに結論したわけでございます。
#86
○小平芳平君 浦田局長、安全宣言を出したという段階で新聞に出た浦田局長の談話の中には、食品衛生法第四条違反の事実は消えてない、というふうに出ておりましたが、これはそのとおりですか。――そうしますと、食品衛生法第四条の違反の事実があるからには、こうした油についても、二次製品についても、一切それは補償の責任が千葉ニッコーにはないというふうに言い切っていいんですか。
#87
○政府委員(浦田純一君) 先ほどの説明、私、たしか国と県は責任がないというふうに申し上げましたけれども、この、何といいますか、原因者である、当事者である千葉ニッコーの補償というものについては触れていなかったのでございます。その点は、刑事上の問題は別といたしまして、民事上の問題としてどのようなお話し合いが行なわれるかということについては、国、県は第三者的な立場でございます、というふうに申し上げたつもりでございます。千葉ニッコーには、まあ常識的に申しまして、この問題で起こったもろもろの損害等については、私はやはり責任というものは、常識的に見た場合には、まあいろいろとやっぱり考えてもらう点があるのじゃないかというふうに個人的には考えております。
#88
○小平芳平君 それで当然だと思います。ですから、尾川参考人といたしまして、ただ蒸発してしまった、混入しているわけはない、混入するわけない、化学的にそうなんだというふうにも言い切れないものがありまして、やはりこのメーカーとしては食品衛生法第四条違反の事実があったということをお認めになりますか。お認めになると、そうした、ただ安全一本で押し切るというわけにいかなくなるのじゃないかと思いますが、いかがですか。
#89
○参考人(尾川数馬君) 私たちが判断いたしました化学的に入っていないということでもって処理したことは、このルールの上からいきまして誤りであったというふうに反省しておるわけでございます。で、食品衛生法違反であるかどうかということは、これも法の解釈その他によってなされると思いますが、私としましては、これが法律的にどうなるかということはよくわかりません。したがって間違ったことをやったことは事実でございます。
#90
○小平芳平君 それから油脂協会の方にお尋ねいたしたいことは、先ほど田中委員から詳しくお尋ねになったので繰り返しませんので、結論だけお答えいただけばいいんですが、先ほどもお話に出ましたカネミ油症のあと、四十四年四月、日本油脂協会技術委員会で「熱媒体の取扱いと管理」ということをおきめになったわけですね。で、その中の「装置に大きい変更をすることなく、」ということになりますと、田中委員が御指摘のように、絶えず危険にさらされているわけです。ですから、装置を根本から変えても安全を確保すべきであるというふうに、この四十四年の段階でそういう態度をとるべきだったのではないか。そういう点で私は、油脂協会の方のみならず、政府にも責任があると思うのです、立ち会っているのですから。ですからいま浦田局長は、政府や県には責任はないということを言っておられますが、こうしたカネミ油症という重大事故が発生した。それに対する事後対策として、四十四年四月に技術委員会が技術的な指導方針をきめた。その中に、わざわざ従来の装置を大きく変更しないでやっていってだいじょうぶなんだというような、従来の装置を変更しないまま、こういうように気をつけてやっていこうというような、その取り組む姿勢が間違っていやしないか。簡単に申しますと、もっとお金がかかろうと技術開発を急ぐとか、そういう姿勢が必要であって、油脂協会のそういう姿勢を容認していた厚生省や農林省にも私は責任があると思うのですが、協会の方、いかがですか。
#91
○参考人(永富清君) これは先ほど申しましたように、当時はわれわれがそういう管理を十分にやっていけばそれで再びこういうことは起きないという観点に立ってやったわけでございます。しかし今日、またこういう事故が起きたということで、御指摘のとおり、もっと根本的な問題を検討すべきであったというふうに考えております。
#92
○小平芳平君 そうすると、農林省は立ち合ったのですか、この技術委員会の結論に。そのときに、いま協会の方は、当時はこれでいけると思ったというのですが、当時こそこれではいかぬと、このままでは同じ事故の起きる可能性に絶えずメーカー自体がさらされていなくちゃならないわけですから。当時からそういうふうな取り組む姿勢がより安全な取り組み方でなくちゃならなかったと思いますが、農林省いかがですか。
#93
○説明員(籾山重廣君) お答えいたします。
 熱媒体の取り扱いと管理につきましては、油脂協会の中にできました技術委員会におきまして検討を加えました結果ああいった冊子ができたわけでございまして、装置に大幅な改善を行なわないでという趣旨のことを私どもから直接的に御要請したわけでございませんで、私どもの業界に対する要請は、早急に転換をはかっておきなさいということを申し上げたつもりでございます。その当時、カネミ油症の問題の発生いたしました直後でございますので、先生御指摘のとおり、装置そのものを抜本的に改造するということも当然含めての御要請をしたつもりではございますのですけれども、業界のほうの対応といたしまして、先ほどのお答えの中にもありましたように、管理あるいは点検、そういった面、あるいは早期の発見が比較的可能であるというような点から、まあ当時として次善の策として現在のダウサムAなりKSKに転換することにとどまったというふうに私は理解しておるわけでございますが、今回のような千葉ニッコー事件のようなものが発生いたしまして、その社会的に影響するものも非常に大きうございますので、今後の装置につきまして、あるいは熱媒体につきましては、先ほどから業界のほうの御決心もありましたとおり、やはり抜本的な改正をしていくという万両で検討し、研究をし、また指導してまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
#94
○小平芳平君 そうすると、四十四年の段階で、農林省は装置を根本的に変えろということを言ったにもかかわらず、業界が言うことを聞かなかったというのですが、どうですか、これは。まあそれはともかく、すみやかにメーカー自体が私は安心できないと思うのですよ。メーカー自体ももっと安心できるような技術開発なり、装置の根本的な改革というものが緊急の課題であるということを要望いたしまして、終わります。
#95
○参考人(永富清君) ただいまの「装置に大きい変更をすることなく、」ということは、一七ページにちょっとそういうことが書いてありますが、これとのもし関連ということであると、これはちょっと意味が違います。と申しますのは、先ほど申しましたように、農林、厚生両省からPCBを使うなという指示がございました。で、そのPCBにかわる熱媒体を同じこの熱媒体装置で暫定的にやるには、そういう意味のこれはことでございます、ここにもし書いてあるという意味からいくと。ですから、それは両省からの御指示があったんではなくて、そういうPCBを使うなということに対してわれわれが判断したということでございます。
#96
○委員長(矢山有作君) 尾川参考人に一つだけ単刀直入にお伺いしたいんですがね、簡単にお答えいただいたらけっこうです。
 今回の事件で、あなたのところの製品を取り扱っておる業者の中に、かなりの犠牲を受けておるというものが出ておるというようなことも聞き及んでおりますが、それらの問題について、ニッコーのほうで今後処置する意向がおありですか、どうですか。
#97
○参考人(尾川数馬君) 私といたしまして、現在のところまだ具体的にそれを考えてはおりませんが、千葉ニッコーといたしましては、今後起こる問題について誠意をもって対処いたしたいと考えております。
#98
○委員長(矢山有作君) 他に御発言もなければ、本件につきましては、本日はこの程度にとどめます。
 参考人の方々に一言お礼を申し上げます。
 本日は、長時間にわたり貴重な御意見を聞かせていただき、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして、ここに重ねて厚くお礼を申し上げます。
 午後一時三十分まで休憩いたします。
   午後零時四十三分休憩
     ―――――・―――――
   午後一時五十九分開会
#99
○委員長(矢山有作君) ただいまから社会労働委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、社会保障制度等に関する調査を議題とし、厚生行政の基本施策について調査を進めます。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#100
○小平芳平君 前回の委員会で、私は医薬品の被害者に対する救済制度について質問をいたしました。きょうは医療事故による被害者の救済制度と、それから食品中毒による被害者の救済制度というこの二点について質問したいと思います。
 そう思っているときに医療事故による被害者としまして、四月十七日町田市立中央病院で手術を受けた女性が二十九日なくなって火葬に付されたら手術用の鉗子がおなかの中から出てきたという報道がなされております。とともに、またこういう医療事故は多いと、鉗子はともかくガーゼとかピンセットがおなかの中から出てくるというようなことはしばしばあることだというふうな報道もなされております。これらの点についてひとつ最初に厚生省から御報告をいただきたい。
#101
○政府委員(滝沢正君) 御質問の町田市立中央病院の鉗子事件でございますが、これにつきましては、ただいま東京都においても調査し、なお、警察においても調査中であると承っておりますが、詳細な公式な報告は東京都からは受けておりませんので、この事実の関係につきましては新聞等の報道をもって承知している範囲でございますが、一般論として先生御指摘の、手術の場合にガーゼ、鉗子等が手術創内に残されて、それを気づかずに縫合するというようなことにつきましては過去にも国立の関係でもございましたし、私たちも事実経験いたしております。最近は特に一般的な注意といたしましては、手術に使うガーゼの枚数、鉗子の数、こういうものを事前に調査いたしまして、手術後担当者並びに補助者等がこれを数えましてその確実性を期するというのが、最近のみならずもう過去からの手術管理の常識になっておるわけでございます。そういう点が新聞報道等で承りますように、今回この病院においては一般的にはややそういう注意を怠っておったというようなことがあるわけでございますが、この点についてはわれわれも教育中からもそういう問題については十分、手術に対する標準的な手続というものを、段取りとしてそういう器具機材等についての員数の点検、その後の確認と、こういうようなことは常識になっておりましたが、ややそういう面について最近医療関係者の間に注意が十分でないというような点は、決してその数字なり何なり証拠を持っているわけではございませんけれども、一般的にはややそういう注意を怠っているという傾向があるように思うわけでございます。今回の事件につきましては、経過等につきまして若干のメモがございますが、最終的に死亡したのは北里大学でございまして、じん臓が急性に悪化したために人工じん臓を使って救命をしようとして治療に当たったわけでございますが、不幸にして死亡いたしております。この因果関係につきましては、これはなかなか問題のある点であろうと思いますし、私もここで言及できる判断を持っておりませんけれども、いずれにいたしましても手術をした病院と死亡した病院と違いがございまして、一見北里大学の死亡後の埋葬等に関係ある関係者の中で誤って鉗子等を入れたんではないかというような見方もあるようでございますが、これについては、北里大学の鉗子には全部北里大学のマークがついておるということで確認ができておりますので、おそらく手術の鉗子は町田市立中央病院における手術中の事故によるものであるというふうに思われる点が一つ明らかな点でございます。
#102
○小平芳平君 どうしてそういう報告は取れないわけですか。厚生省はもっと正確な報告を取ることはできないんですか。
#103
○政府委員(滝沢正君) 取ことができるわけでございますが、時間的にただいま東京都のほうから正式な書面としての報告が参っていないという段階でございまして、市立町田病院等における時間的な経過を追った人の動き、人の出入り、この事件をめぐってのいろいろのメモ程度は入手いたしておりますが、東京都からいずれ近く御報告があるものと思っております。報告は求めて、東京都にお願いしてございますので近く報告があると思います。
#104
○小平芳平君 厚生大臣に伺いますが、そういう事故がしばしば起きているということ、何が原因か、病気になる場合だれが病気になるか、だれが手術を受けるかわからないわけです。うっかり入院した、手術を受けた、ところが手術のあとおなかの中から鉗子が出てくる、ピンセットが出てくる、ガーゼが出てくるんじゃ、これはとんでもない、取り返しがつかないわけです。運が悪いじゃ済まされないわけです。それで私は救済制度についてお尋ねをしたいわけですが、まず第一に前提条件として、そういうことがあっては困るわけですね。ですから、教育制度なりあるいは勤務体制なりいろんな点から検討されてそうした事故が起きないことをまず前提として取り組んでいただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。
#105
○国務大臣(齋藤邦吉君) 今度の町田市立中央病院のような事件という、こういうふうな医療事故というものはほんとうにこれは発生しないようにつとめていかなければならぬ問題だと思います。こういうふうな事故がどうして発生してるのか、私も詳細よくわかりませんが、勤務体制に原因があるのか、あるいは医療従事者のいろんな不注意なり、そういうふうな問題があるのか、私はその原因はよくわかりませんが、こういうふうな事故が発生しない医療供給体制を確立することが私のつとめであると、こういうふうに考えておりますし、そうしてまた、こういう事故が起こったときに、どういうふうにしてこれを救済していくか、そういうことを検討することも――あってはならぬことでございますが、あった場合にどう救済するか、そういうこともやっぱり考えて検討をしていかなければならない問題であろうかと、かように考えております。
#106
○小平芳平君 どうも、なぜそういう事故が起きるか、訴訟件数はつかんでおられますか、最近の医療事故による訴訟件数は。
#107
○政府委員(滝沢正君) 医事紛争の訴訟という最高裁の調べによりますと、四十四年が十二月末で二百三十一件、四十五年が三百八件、四十六年が三百七十六件、それから四十七年が六月までの数字でございますが、四百件ということで、逐次増加の傾向にございます。それともう一つは、この訴訟ということになる前の段階の問題も含めまして日本医師会が各県医師会を通じまして、事件として若干訴訟というような手続を正式に踏まないものも含むわけでございますけれども、したがって、各県の報告の取り扱いに若干どうも統一性を欠きますが、千六百件、最近十年間の数字でございますが、千六百件というのがございます。それから国立の、私のほうの直轄の関係では国立病院、療養所でやはり年々増加の傾向でございまして、四十七年が二十八件、三十八年で二件というようなことでございまして、一般的に医療事故というものは増加の傾向を示しております。
#108
○小平芳平君 そういうように医療事故が増加の傾向にあるならばどこに原因があるか、その原因を早く突きとめ、早く手を打つというそれが政治じゃないですか。どうも近ごろふえてくると、ただふえてくるというのを見ているだけでは厚生省の意味がないわけでしょう。まだ訴訟に踏み切って、弁護士を立てて訴訟を起こす人はごく限られていると思うんです。私たちのところへ訴えてこられるいろんな訴えは、まだまだどれだけ多いかわからないと思う。しかし、それらの因果関係といいますか、はたして責任の所在がどこにあるかという、そういう点がはっきり究明されないままに、結局被害者は泣き寝入りしていかないわけにはいかないというようなケースがなおどれだけかたくさんあると思います。
 で、この現在のそうした医療に対する不信、その不信を持った場合ですね、はたしてあそこでもって間違えられたんじゃないかという不信を持った場合に、どういうふうな救済の方法がありますか、現在としては。
#109
○政府委員(滝沢正君) 先ほど来先生御指摘の医療事故という、まあ包括的なことばで呼んでおりますが、具体的に例になりました鉗子が腹中に置いてあったというような、もう明らかな過失と申しますか、そのようなものから非常に一般的な意味の不満というようなものにつながる、あるいは先生のおっしゃった不信と申しますか、そういうことで医師の側にも言い分があると、それからもちろん患者の側にも言い分があるというような意味のトラブルに類するものも含めまして事故というようなとらえ方をしている面もあるわけでございます。
 したがいまして、具体的には、患者のほうからそのような問題に対する事故意識を持たれた場合には、一般的にただいまそれぞれの担当の医療関係者、特にそれを直接担当した医師なりあるいは病院当局にまず不満を訴える、あるいは事故の内容を具体的に訴えるということによりまして、ただいまのところそれを救済すると申しますか、処理する方法としては、各県の医師会に医療事故の処理委員会がございまして、この背景に、医師会員が民間の保険会社に損害保険として加入いたしておりまして、それによって委員会の検討の結果、それに対する裁判以外の処理方法としては見舞い金なりあるいは弔慰金なりという形で関係者と話し合いがついた段階で処理いたしておるというようなものがございます。
 それから、もちろん予防接種のような事故についてはこの問題とは別でございまして、予防接種に対する事故については国のほうが関与いたしまして、ただいま先生御承知のとおりの処理が行なわれております。
 そのほかに、一般的には、ただいま、日本医師会が最近提案いたしております、地方医師会ごとの処理では金額にして百万程度までしか無理であるということで、だんだんこの事件の内容も複雑になり、またその補償の金額等も増大いたしてまいっておる傾向にかんがみまして、ただいまわれわれがお聞きする、――聞くところによりますと、日本医師会としては全国の医師会員を総合した一つの賠償保険制度を創設したいということで準備を進められているというふうに聞いておるわけでございます。
 で、一般的には、国民生活審議会等で御提案のように、やはりその苦情を持ち込む窓口というようなものを設置したらどうかと、あるいは裁判あるいは弁護士というような形をとらない一つの裁判、簡易な裁判形態で早く事件を処理できないかというような御提案も聞いておるわけでございますが、この点につきましては、われわれとしては前にも検討の委員会をつくって研究的にやりましたが、四十八年度、いよいよ具体的に各方面に御提案がありますし、いまお答え申し上げましたように事件も多くなり複雑になってまいりますので、これらの機構についてどのような機構をわが国において用意したらいいかということについて省内で、関係者のお集まりをいただき、省内に研究費がございます、厚生科学研究費をもってこれが検討に当たりたいという準備を進めております。
#110
○小平芳平君 現在の制度と、それからこれからつくろうという制度というふうに分けてですね、まあ現在の制度は、国には予防接種等以外には制度はないというわけですね。で、現在の制度としては日本医師会の地方別の制度が、苦情処理の制度があるということ。で、厚生省としては、単なるその調査を始めようということなのか、あるいはもう一つ日本医師会等ですでにそういう制度をやってきた経験もあるし、また厚生省としても予防接種等の経験もあるし、そういう上に立って、どのような救済制度をつくっていこうというような、大まかなそういう将来の対策をお持ちなのかどうか、それはいかがでしょう。
#111
○政府委員(滝沢正君) この問題につきましては、明らかに過失のある場合については、これはそれぞれの関係者で処理できますが、過失があるかないかの因果関係をめぐって、医療の関係というものが非常に判定がむずかしい問題がございます。したがいまして、医師会の今度の考え方の中には、医師会が直接加入、参加しない別個の第三者的法学関係者あるいは医療関係者を交えた審査会というものをお持ちになって、そこで審査の結果に従って、先ほど御説明したような相当高額なものは中央の医師会において処理したいと、こういう案のようでございます。われわれといたしましては、この医師会がやっておられるというようなことで、因果関係等をめぐって判定のできるものはいいのでございますけれども、やはりどうしても無過失と、過失があるかないかというよりも無過失に近い問題というようなものも当然医療の中には出てまいります。したがって、この医療事故を議論する関係者の中では、問題は、明らかな因果関係がつかめるものはよろしゅうございますけれども、無過失に近い、因果関係の非常に判定が困難なものの救済措置をどうするかということが、やはり一番議論の対象になりますので、この点を重点に置いた、いわゆる具体的な施策をどうするかということをお尋ねする研究班をつくって検討していただく、こういうふうに思っております。
#112
○小平芳平君 それで、それは医師会とは別に厚生省が考えようというわけですね。
#113
○政府委員(滝沢正君) この点につきましては、医師会が自主的にそのような一つの制度をお考えのようでございます。正式には発足しておらないようでございますが、その情勢を見た上で、やはり医師会が自主的にそのようなお考えをお持ちであるならば、これは相当大きな一つのシステムでございますから、これをやはりある程度重要な社会的な一つの機構として見ながら、やはり住民サイドに立って、国民がこの医療関係者のほうからのサイドで訴えてお互いに整理されるというんじゃなくて、一般的な意味で行政関係を通じたその訴えというものに対しても、何かこたえるというような窓口なり機構ができないかというようなことを含めて、総合的に御諮問申し上げて、その研究班で検討していただきたいと、こういうふうに考えておりますので、その検討の結果がどういうような形をよしとするか。外国などではかなり民間の保険会社と医師との契約によって、直接不満を訴えられた医師なりあるいは医師会の委員会なりが、それを話し合いがついたものを処理するという、いまの医師会のやり方をアメリカなどはとっている形態が多いのでございます。それからイギリスは、やはり裁判形式の一つの社会機構としてそういうものを持っておりまして、その判定によって、イギリスはいわゆるナショナル・ヘルス・サービスでございますので、そういう公的に医療を経営しておりますが、そういう面からもイギリスの機構は裁判所形式のものを持ってこれに当たっているというふうになっております。したがって、わが国の現在の医療制度なり医療保険、そういうような仕組みと、このような医療事故の処理とがどういう点がなじむか、この辺のところを行政がどこまでこれにどういう場面でこれに加わる、参加して処理するのがいいか。この辺を含めて検討していただきたい、こういうふうに思っております。
#114
○小平芳平君 まあこうした紛争を減らすということ、こうした事故をなくすということ、という点についての大臣及び局長の御答弁にはきわめてまだ積極性がないように思いますけれども、まあアメリカではイギリスではと局長説明されるように、そういうようにこの制度を持っている国があるにもかかわらず、わが国がようやくこれから検討しようという立ちおくれですね。しかし、その立ちおくれも不満ではありますけれども、とにかくいまのような趣旨で訴えている窓口をまず設ける。そして、そこで公平な審査を受けられる。したがって、一々訴訟を起こすまでもなく、ただ泣き寝入りしなくっても、そうしたルートができるということが私は非常に肝心だと思うのです。したがって、その点はそれで進めていただきたいということで、次の問題に移ります。
 次は、食品中毒による被害者救済制度ですが、これは局長も御承知のように、六十八国会で食品衛生法の一部改正のときに当社労委員会の附帯決議で、一両年のうちに救済制度を設けること、という附帯決議があるわけですが、一両年て、だいぶ日にちも月日もたってまいりましたが、現在の段階でどういう検討をされておられるか、まずお答えをいただきたい。
#115
○政府委員(浦田純一君) 食品事故によります健康被害者がすみやかに救済されるような制度を設けろということで、現在のところ、各方面からの専門家をもって構成する食品事故による健康被害者の救済の制度化研究会を設置いたしました。昨年、食品衛生法の一部改正を御審議願ったわけでございますが、その後研究費を予算に計上いたしまして、今回、この制度化研究会が設置をされたわけでございます。今後はこの研究会にお願いいたしまして、できるだけ早く結論を得て救済の制度化をはかりたいと考えております。その中身でございますが、検討事項といたしましては、やはり食品事故の分析及び薬品事故との比較あるいは諸外国の制度の研究、また救済制度の現行法体系上の位置づけ、あるいはこれに関連いたしまして無過失責任制度導入の必要性の有無、またさらに関連いたしまして補償システムの形態、たとえば賠償責任保険方式でいくかあるいは補償基金方式でいくか、あるいは両者の組み合わせかといったような点の検討、さらに補償の内容、こういったようなことについての御検討をお願いしようというふうに考えております。
#116
○小平芳平君 非常にまだ抽象的な段階のようですが、齋藤厚生大臣、食品中毒とか食品事故ということで、御承知のこのカネミ油症患者あるいは砒素ミルクの患者は、もう非常な苦しみの中に十八年とか四年というものが過ぎているわけです。ですから、もう少し、局長の答弁だと非常にこう雲をつかむような段階で、それで代々の厚生大臣は、このカネミ油症にしても砒素ミルクの患者に対しても、国が積極的な救済の手を差し伸べるべきだということに対して非常に積極的な発言をしてきたわけです。まあかといって、加害者企業がはっきりしているのですから、当然加害者企業の責任で補償すべきなんです。すべきなんですが、手っとり早く、国なり、そうした公費でまず立てかえ払いをする、そして因果関係がはっきりした場合には企業から取ればいいわけですから――というような具体的な制度をすみやかにつくっていただきたいという趣旨で再三ここで発言しているわけですが、どうもいまの段階では抽象的なんですが、いかがですか。
#117
○国務大臣(齋藤邦吉君) お述べになりましたような事例の場合は、加害者の企業というものがはっきりしておるわけでございますから、被害を受けた方々に対する救済、当然これは加害企業と申しますか、それがもうはっきりしているのですから、そのものが負担するのが当然である、私はさように考えております。ただ、こういう事案につきましては、いろいろ問題がありますから、たとえば健康診断の基準だとか、こういうことは私は国の金でやるべきだと思いますが、患者さんに対する、患者さんといいますか、被害者に対する救済は当然加害者でやる、こういう原則でございます。そこで現在訴訟になっておりまするためになかなかその救済も思うとおりにいかない、そこでお述べになりましたように、国が立てかえておいて裁判が済んだあとに会社のほうから国に払わせる、こういうやり方はどうだろう、私は非常に一つの見識ある御意見だと思います。そこでこういうふうな食品公害と申しますか、加害者がはっきりしておる場合でも、訴訟になっておるような場合に、どういうふうに救済を急いでやるか。まあ厚生省としては救済を急ぐということが一番大事な仕事でございますから、いま局長からも申し述べましたが、本年度じゅうに何とか国の制度として新しい救済制度をつくりたい、こういうふうにいま私は考えておるのでございますから、そういうふうな、いまお述べになりましたようなお考えも当然この制度化の中には私は入ってくるべきものである、かように考えております。一刻も早く救済するということが厚生省のつとめであってみれば、お述べになりましたように、かりに訴訟になっておっても、まあ国が一応立てかえてめんどうを見る、裁判が済んだあとに加害工場からその金を国がいただく、こういうふうな制度が、私はやはり一つの制度になるのじゃないか、こういうふうに考えております。したがいまして、いまお述べになりましたような御意見は十分に尊重いたしまして、制度をつくるにあたりましてそういう考え方を取り入れるように努力いたしたいと思います。
#118
○小平芳平君 いま厚生大臣がちょっと触れられました、因果関係の調査をするとか、診断基準をつくるとか、患者の認定とか、そういうことは国や県がまずやるべきだという点、私もそういう制度がいいと思うのです。公害の場合でも、地域指定、疾病の指定、患者の認定、これは公費で行なって、そして認定された患者に対しては当然企業が補償するという、まあそういう現在の公害被害者に対する救済制度はかつて厚生省がつくった制度ですから、ですから現在の厚生省としても、そうした特にこの砒素ミルクの場合でも、油症の関係でも認定が問題になっておるわけですね、争いの的になっている。特にこの油症患者の場合には、認定患者になるかならないか、同じ油を食べた五人家族で二人が認定患者で三人が認定されていないというようなケースが多数出ているわけですね。じゃ、認定されていない三人は健康なのかということになると、健康じゃない、同じような症状が起きているのだけれども、最初検診を受けた段階ではずされたままになっているというような苦情がきわめて多い、ということは、私は当委員会でも再三発言しておりますんですが、したがってそうした認定、因果関係の調査、診断基準、こうしたものは公平な立場で公費でまず行なうと、そしてしかる後、まあ患者の切り捨てをやらないように公平にその診断基準なり認定をした上で、今度は加害者が補償をするということ、これでよろしいわけですね、大臣。
#119
○国務大臣(齋藤邦吉君) そのとおりに理解をいたしております。
#120
○小平芳平君 そこで局長、まあ局長あるいは大臣から、補償と言いましても、これは私は国の予防接種による事故の補償がそもそもきわめてよくないと思うんですね。三百五十万円とか、そういう金額で過去における事故を帳消しにしてしまおうという、こういう考え方といいますか、現実に生涯保障というものがないわけでしょう。はっきり加害者は、ある企業であり、加害者は予防接種を行なったある機関なんですよ。それで被害者は一生涯からだが動かない、そういう被害を受けながら、しかもまあ補償金、何百万円の補償金ぽっきりであとはどうにもこうにもならないという、その考えはおかしいじゃないですか。そうした補償には生涯保障というものをどう取り入れるか、お考えになるか、その点はいかがです。
#121
○政府委員(浦田純一君) 補償の額の多寡ということは、まあいろいろとそれをはじき出す算出の根拠はあろうかと思います。しかし問題はやはり、まず第一に、食品の事故でございましたら食品の事故による健康被害の救済をまず第一に考える。それから、もしもその健康の被害が生涯にわたるといったようなときには、もちろんそれについてのいろいろな医療費その他諸経費というものを見ると。また、かりに健康被害があとを引きまして、病気はなおったけれども、あとたとえば仕事に差しつかえがあるとかいったようないわゆる後遺症が残ったといったような場合には、それに伴いますいろいろの生活費とかその他の費用について見ると。いろいろとまああるわけでございますが、私どもはまずこの健康被害者の救済ということにつきましては、何といいましても事故が起こったら直ちに健康の被害というものをまず食いとめる、救済する、病気をなおす、ということを最優先的に考えるべきだと思っております。そして、それからいろいろと全体的な生活の問題とかなんとかいうことにつきましては、これは先生の御説のとおりだと思いますが、その辺の具体的な額というものにつきましては、やはりいろいろと専門家の御意見も聞きながら公正妥当な立場から考えていくべきじゃなかろうかと。ただ単に補償と申しましても、一義的には健康被害の救済がまあ最優先しましょうけれども、やはり財産的な問題、あるいは精神上の慰謝の問題と、いろいろとございますので、それらにつきましては総体的に、まあ繰り返しますことになりますが、専門家の御意見も聞きながら、この制度の中でもこの考え方について検討を加えていくように、盛り込んでいくようにいたすべきではなかろうかというふうに考えております。
#122
○小平芳平君 私がいま補償に対する考え、医療事故なり薬品事故なりも同じですが、あるいは食品事故が起きた、それの補償に対する考え方は生涯保障ということですね、そういうことをひとつ念頭に入れて検討いただきたいと言っているのですが、局長は専門家の意見と言うのですが、専門家ってどういう方ですか、そういう補償の専門家なんてあるのですか。結局、国自体がそうした予防接種に対する補償についてはいまのようなとにかく予防接種の被害者はまるっきりもう十歳、十五歳、二十歳になっても親の顔すら判別できないような重症者がいるわけでしょう。そうした重症者に対して三百五十万でしたか、そうしたことで国は補償はこれで終わったということが言えるのかどうかですね、そういう生命に対する考えはおかしくないかということを言っているのですよ、いかがですか。
#123
○政府委員(浦田純一君) 先生のお説のとおりであると思います。したがいまして、そういったことを、つまり生涯にわたる生活保障と申しますか、そういったことを含めましてどのような制度、どのような方式でもって進めていくかといったことについての検討といいますか、これは今後の問題として早急にそのような制度が発足するように努力いたしたいと思っております。
#124
○小平芳平君 それじゃあよくわかりました。大臣、いまの大臣と局長の御答弁をそのまま受け取りますと非常にみんな期待をするわけです。とにかくあらかじめ立てかえてでも補償をする・生涯保障も含めて。そういうことが制度としてできると。で、私は制度、制度と言いますが、決して加害者企業の負担を軽くしろなんて毛頭言っているわけではないのです。そうした因果関係の調査、診断基準も加害者責任者がはっきりしていたら、それはとりあえず公費で立てかえて、その分まで取ってもいいと思うのです。しかし、そういう企業と――加害者と被害者が対立していたのでは十八年たっても話し合いがつかない。あるいはカネミ油症のように五年たってもさっぱりめどがつかない。したがって、大臣、そうした先ほどお話しのような制度を――食品事故に対する、それからまた先ほど申しました医療事故に対する制度をいつごろまでに目標を立ててつくってくださるか、およその目標を立てて。で、それはですね、以前の斎藤厚生大臣ですね、以前の斎藤厚生大臣も、もうカネミ油症は公害被害者に準じて救済するということは何べんも昔に発言したことですが、いまだにできてないというのが現実なんですが、ひとつ今度は調査費もついていることだし、はっきりそういう制度をつくっていただきたい。およそいつごろまでというふうにつくっていただきたい。いかがでしょう。
#125
○国務大臣(齋藤邦吉君) こういうふうな問題についてはお述べになりましたように薬の問題、食品の問題が大きな問題でございます。こういう問題につきましては、いま調査会をつくって検討いたしておりまして、私の腹づもりとしては来年の春の通常国会に出すことを目途としまして研究を進めたい、こんなふうに考えておる次第でございます。来年の春の国会に出せるかどうか、そいつはまだはっきりしませんけれども、私としては何とかその辺で解決しなければ、いつまでたってもこれ、お気の毒な方々ばかりが残っておるわけですから、私は来年の春の通常国会に提案することを目途として努力をいたす考えでございます。
#126
○小平芳平君 その点よくわかりましたが、それで、四十八年度予算を要求した段階で、四十八年度予算には調査費しか入っていなかったわけです。調査費だけでは四十八年度過ぎてからでないと具体的なお金は動かないわけです。ですから、四十九年度予算要求ということになるわけでしょうが、次は。そのときには調査費だけでなくていまの制度を提案なさるという、その裏づけの予算要求まで必ずしていただきたいということを要望いたしまして終わります。
#127
○柏原ヤス君 大臣に対して児童手当のことについてお聞きしたいと思います。
 その児童手当制度をお聞きする前に、政府が児童福祉に対してどのような姿勢でいるか、これをお聞きするわけでございます。この点については国連で決議されました児童権利宣言「人類は、児童に対し、最善のものを与える義務を負うものである」とという項目がございます。これにはわが国も賛成をしております。また、国でも児童憲章をつくり、この中にも「児童は、人として尊ばれる。」「児童は、社会の一員として重んぜられる。」「児童は、よい環境のなかで育てられる。」こういう項目もございます。また、せんだっての五月五日の「こどもの日」についてはあらためて意義を見ますと、「こどもの人格を重んじ、こどもの幸福をはかる」と、各所にたいへんけっこうな項目がうたい上げられ、これはけっこうというより当然のことでございますが、こうした理想といいますか、目標、こういうものから現実のいろいろな問題を見ますと、非常に私は理想とかけ離れているということを痛感するわけなんです。
 そこで、こうした福祉行政が児童憲章あるいは児童福祉法の第一条に特にまた項目も示されておりますが、どのようにこれを生かしていらっしゃるのか、そういう基本的な考え方を大臣にお聞きしたいと思います。
#128
○国務大臣(齋藤邦吉君) いまお述べになりましたように、児童はよき環境のもとに親の愛情とともによりよきものを与えらるべきものであると、こういう考え方につきましてはお述べになりましたとおりでございます。そういうふうな観点から児童家庭局においてもそれぞれの施策を講じてはおりますが、まだまだ私十分であるとは思っておりません。そういう問題につきましては今後とも各方面のいろいろな御注意、御意見等も承りながら前向きに解決をしていきたい、かように考えておるわけでございますが、特に私どもが多年要望いたしておりましたのは、そうした環境の中で児童手当制度というものが近代国家のうちでないのは日本だけである、こういうことに実は着目いたしまして、昭和四十六年であったと思いますが、その制度をつくりまして、昨年の一月から発足する、こういうことになったわけでございまして、これなどは私どもはほんとうに多年児童福祉の上からいって何とかこれを早くつくりたいものだということを考え、努力をいたしてまいったわけでございますが、各方面の御協力のもとにこうしたことができ上がったことは喜ばしいことだと思います。
 しかしながら、この制度はお述べになりましたように、まだできたばかりと申しますか、たったまだ発足いたしまして一年半、しかも三年計画ということでございますから、昭和四十九年度でないと一通りの完成ができない、こういうことでございます。この点は私どももほんとうに残念なことで、もう少し急いで完成をさせるべきであるとも考えておりますし、さらにまた、その内容においても諸外国に比べていまの児童手当の内容が十分であるかどうか、こういう点もやはり反省をし、検討を続けていかなければならぬ問題であろうと思います。したがって、私どもは児童福祉のためには、よりよき環境の中に子供がすくすくと育っていく、こういうことを前提として今後とも努力をいたしていかなければならぬであろうと、かように考えておるような次第でございます。
#129
○柏原ヤス君 いま児童手当のことにつきまして、あと具体的にお聞きしますが、その各憲章とか権利宣言、こういう中にあります、よい環境とか、すくすくと育てるとか、親の愛情に包まれてとかということをまた大臣がおっしゃっておりますが、そういうことばを聞きますと、もう非常に私そらぞらしいというか、現実というものを見たらば、すくすくとなんということは言えないんじゃないかしら。これ、特に感じましたのは、新聞ここに持ってまいりましたけれども、毎日毎日子供を殺して捨てている事件が出ているわけですね。大臣もごらんになっていると思いますが、この五月五日の日は、赤ちゃん捨てる・熱海の駅の清掃用のかごの中、それから次の六日の日ですね、国鉄大阪駅でコインロッカーから赤ん坊の死体発見、それから翌日七日の日には、今度は上野の駅のコインロッカーにまた嬰児の死体がある、またきょうは、中学生が赤ちゃんを生んで捨てたと、これ、毎日新聞を見ておりますと、こうした事件が毎日出ているわけですね。これは私は珍しいから新聞に取り上げられるのじゃなくて、おそらくこうした問題は各所に新聞に出ないでもあるんじゃないか、あると思います。そうした現実、こういうものを見せつけられますと、これが全部政治の責任だとは言えないと思いますけれども、特に児童福祉という問題を担当していらっしゃる厚生大臣として、これをただ新聞の記事としてごらんになっているのかどうか、特に政治責任としてどのようにこれを感じられていらっしゃるかお聞きしたいと、こう思って先ほど質問申し上げたんですけれども、その点、この現実問題に対してはいかがですか。
#130
○国務大臣(齋藤邦吉君) 確かに私どももそういう新聞を見まして、学生さんが子供を生んで生みっぱなしにする、さらにまた、いつかの新聞でございましたか、生んだ子供を押し入れの中に包んで入れて殺してしまって、自分はまたどこかに遊びに行く。なるほど、おっしゃられれば政治の責任ということも一面あるでしょうが、やはり国民のモラルですね。どういうふうに私はこれを解釈すべきものであるか、もう少しやはり生んだ以上は子供を育てるという母の責任、親の責任というもの、ほんとうにこれはどうしてこういうことがなくなってしまったんだろうか。昔も完全であったかどうかなんということを言われますと、私も何とも言いようがありませんが、ほんとうに国民のモラルというものの向上というものを政治の面においてももう少し高く掲げて宣伝、PRをすべきではないかということをしみじみ私も考えて憤りを実は感じておるわけでございます。それがみんな政治の責任、厚生大臣が悪いなんということをおっしゃるわけでもないでございましょうが、ほんとうにいまの世相というものに対しては、ほんとうに嘆かわしい、怒りに満ちたような私感じを持っております。自分の生んだ子供を自分の責任において育てる、これは人間として当然じゃないか、人倫として、という感じすら持つわけでございますが、まあ、そんなことを申しましても答弁にこれはならぬような話でございまして、私どもは、ほんとうに今後モラル向上の社会を築くように、これはもう私ども自民党が悪いとかいいとかというんじゃなしに、すべての国民が私は努力していくべきものではないだろうか、こんなふうに私感じておりますが、私どもも今後ともモラル向上のために力をいたすべきではないか、こういうふうに考えておるような次第でございます。
  〔委員長退席、理事大橋和孝君着席〕
#131
○柏原ヤス君 そこで、どうしたものかと、困ったものだというのが大臣の御答弁のようですが、そういう中で、先ほど大臣がおっしゃった児童手当が非常に日が浅く内容も不十分である、こうおっしゃった。その児童手当だけでも日が浅いから内容は充実させられないとか、日が浅いから云々なんて言っていないで、最初から法律できめられたその内容だけでも充実させればさせられると思うんですね。まあ、対象の拡大なんかも段階的にやっているなんというんじゃなくてですね。また金額もふやそうと思えばできないことはないと思うんです。そういう一つのことでいいから、厚生大臣がほんとうにねぢりはち巻きでやったという、そういうものがあって、そしてそれが直接そうした児童に及ぼしていくような、そうした熱意というか、努力というか、ほんとうにモラルを変えていくような波動を厚生大臣が起こしていくべきじゃないか、いっていただきたい。これをまず大臣にお願いして、がんばっていただきたいと思うわけでございます。
 そこで、今度は具体的に児童憲章の精神に基づいて児童手当制度がこれ実現しました。たいへんこれは喜ばしいことでございますが、内容については非常に不満が多く、これは各国並みにまでその内容を引き上げていかなきゃならないということはみないわれていることでございます。またそれに期待がかけられているわけです。この児童手当制度は私非常に政府歩消極的だと思うのですね、非常に冷たい。お金を出したがらない、こういう感じがありますので、二、三お伺いしたいと思います。
 これは厚生省の児童家庭局の所管である児童手当の制度とそれから児童扶養手当制度、この二つはいずれも法の目的は児童福祉の増進ということが掲げられているわけです。ところがこの児童手当と児童扶養手当とを比べますと、非常に格差があるわけですね。
  〔理事大橋和孝君退席、委員長着席〕
これちょっと見ますと、昭和四十六年度は児童手当が三千円、児童扶養手当は二千九百円、これが四十七年度、四十八年度とどのように金額が引き上げられていったかというと、児童手当はそのまま三千円です。ところが児童扶養手当は四千三百円から六千五百円、二・二倍に引き上げられております。それから所得制限についても、児童手当のほうは四十六年度は二百万円、児童扶養手当のほうは百八十万円という所得制限でございますが、四十七年度、四十八年度をずっと比べてまいりますと、四十八年度は児童手当は二百六十八万円、児童扶養手当のほうは六百万円というふうにたいへん格差があるわけですね、こういう比較をしてみますと。この格差の点についてお聞きしたいと思います。
#132
○政府委員(穴山徳夫君) 数字的に現在児童手当と児童扶養手当を比較いたしますと、現在先生がおあげになりましたような経過をたどっているわけでございまして、確かに児童手当が四十六年度は、たとえば手当の額でも児童扶養手当を若干上回っていたのが、四十八年度は児童手当のほうが据え置きであるにかかわらず、児童扶養手当のほうは六千五百円に引き上げられていると、あるいはまた所得制限のほうは児童手当のほうはむしろこの本人分に該当するわけでございますが、二百万円が二百六十八万円になり、児童扶養手当のほうは百八十万円が六百万円になっているというようなことで、児童扶養手当の額に比較いたしまして非常に児童手当というものが冷たくあしらわれているような感じがするではないかということではないかと思います。で、確かに私どももこの児童手当の内容自身が制度出発当初のままでいいとは決して考えておるわけではございませんで、ただ私どもがいままで去年の一月に施実になりましてから一番力を入れてまいりましたのは、何ぶん初めての制度でございますので、何とかしてこれを円滑にまたは的確に軌道に乗せていかなければいけないと、できるだけ支給対象のこぼれもないようにというようなことで、それを最大の目標にいたしまして従来いろいろとやってきたわけでございまして、幸い市町村の職員の方の非常な努力で現在はまあ順調に軌道に乗りつつあるような状態でございます。それで法律にきめられておりますように、四十九年度までの段階実施ということでございますので、私どももこの段階実施の期間、制度の完全に軌道に乗ってうまく走れるようにいたしますと同時に、段階実施というものが完成いたしました暁には、内容について格段の努力をしたいというように考えておるわけでございます。
#133
○柏原ヤス君 この児童手当と児童扶養手当との格差が非常にあり過ぎるということについてお聞きしたわけでございますけれども、児童手当が軌道に乗ってきたと、そういうお話はまたあとでお聞きしますけれども、この格差の問題をお答えいただきいたのですけれども……。
#134
○政府委員(穴山徳夫君) この三千円というような金額をきめましたのは、御承知のように昭和四十二年の家計調査というようなものを基礎にいたしまして、制度発足のときに大体こういった費用が六千円ぐらいかかるのではないかと。で、その費用を親と社会が負担し合うということで三千円という金額がきめられたやに私どもも聞いておるわけでございます。それでその後の物価の動きその他からいいまして、三千円の額がいいかといえば私どもも決してこのままでいいとは考えていないわけでありまして、やはりほかのいわゆる手当制度その他の動きと同様にこの制度についても、さらに金額の面で充実をして三千円というものを引き上げていかなければいけないということは私どもも考えております。ただ、いま申しましたように、この段階実施の段階におきまして、むしろ私どもがいままで軌道に乗せるという、制度を確定するという、確立するということに重点を置いたわけでございまして、そういった現在の三千円をどうするかということは段階実施の終了する四十九年度以降におきまして、こういった問題について考え、三千円というものをさらに引き上げるということを考えていかなければいけないんではないかというように考えております。
#135
○柏原ヤス君 児童扶養手当のほうと児童手当を比べると、金額の点では児童扶養手当のほうが二倍にもなっていますね。それから所得制限も児童扶養手当のほうは、最初は金額が低かった、きびしかったわけですね。それが非常に六百万というふうに幅を広くしているわけですね。こういうふうに児童扶養手当のほうは確かによくなってきている。児童手当のほうはそういう点、逆になっちゃったんじゃないか、比べてみてですね。この違いというものをどう考えてこういうふうにしていらっしゃるのかということをお聞きしているんですけれども。
#136
○政府委員(穴山徳夫君) しいて、児童手当と児童扶養手当が制度として性格が異なるから、たとえば片方は六千五百円であり、片方は三千円でいいというように考えておるわけではございませんで、児童手当のほうは、先ほど申しましたように、段階実施の間はこの三千円を据え置いて段階実施の期間が過ぎて、制度が確立したときにはこの三千円というものをさらに引き上げる。幾らにするかはこれからの問題でございますけれども、引き上げていかなければいけない。ただ児童扶養手当のほうは、先生御承知のように、これは毎年大体福祉年金とのバランスでもって引き上げが行なわれてきているわけでございまして、したがって現在は、四十六年度は三千円と二千九百円でありましたものが四十七年なり、四十八年になりまして、三千円と六千五百円というように、おっしゃるとおり逆転をしているわけでございます。したがって、私どももこの逆転しているのは当然だとは思っていないわけでございまして、したがって、私どもといたしましても、その段階実施が完了いたします四十九年度以降は、やはり児童扶養手当というようなほかの制度のバランスも十分に考えながら、やはりこの三千円というものの引き上げということを考えていかなければいけないというように思っております。
#137
○柏原ヤス君 私、児童手当と児童扶養手当というものを比較する場合に、比較するということがかえっておかしいんじゃないかとも考えるわけですね。またこれに、いまおっしゃったようにバランスを考えるということも、したがって私はおかしいんじゃないか。この児童手当と児童扶養手当というものは、同じように児童手当、児童扶養手当というふうに児童福祉の問題として考えられていますけれども、性格が違うと思うんですね。
 それで、お聞きしたいことは、児童手当というものは基本だ、児童全体に考えていくものだ、児童扶養手当というのは特殊な児童を対象にして考えていくものであって、児童手当という基礎の上に、それにプラスして児童扶養手当というものは考えていくべきじゃないか。いまのお話ですと、やっぱし並べて考えている、バランスを考えていくというようなふうに私理解するわけですね。その点いかがでしょうか。
#138
○政府委員(穴山徳夫君) 確かにいま私はバランスと申しましたので、ちょっと表現としてはまずかったかもしれませんが、二つの制度の考え方は先生おっしゃいますように、児童手当というのは、一般の家庭の児童の養育というようなことを考えました広い性格を持ったものでございまして、それから児童扶養手当のほうはいわゆる生別母子世帯というような特殊の状態に置かれている世帯に対しての福祉対策であるということからいいまして、性格は確かに違うと思います。私がバランスと申しましたのは、この二つを並べてというような意味ではなくて、いわゆるほかの制度がこの程度の水準までいっている。したがって児童手当というものを三千円からさらに上に考えるときにやはりほかの制度の水準がこれくらいまでいっているから、やはり児童手当の水準はここまでいかなければいけないのじゃないかというようなことをやはり考えに織り込みながら児童手当というものの額を将来は考えていかなければいけないのじゃないかというように考えるわけでございまして、バランスということばはちょっとまずかったと思いますけれども、そういうような意味で申し上げたつもりでございます。
#139
○柏原ヤス君 そこで、手当額のことについて少しお聞きいたしますが、先ほどおっしゃったように、この三千円という額はどういうふうにしてきめられたかということは先ほどお聞きいたしました。そこで、この三千円という額が調査してきめられた時点から考えますと、もう六年もたっているわけです。六年も過ぎていても、まだそのまま三千円というものは当然であるというような考え方に受け取れるわけですね。それはなぜかというと、政府の考え方は対象範囲を昭和四十九年までに段階的に拡大する。それが完了してから引き上げを検討する方針だということでございますね。だから、段階的に拡大し、それが完了してから引き上げの額は考えるんだ、段階的拡大が済むまでは三千円という金額は少しも考えないで、そのままにしておくというわけですね。私はそれはごまかしだと思うのですね。ずるい考えだと思うんです、結論的に言ってまずいのですけれども。それは段階的に拡大していくということは、もうこれは法律でちゃんときめられているわけです。当然それはしなきゃならないことです。それを段階的に拡大しているんだと、四十九年までは対象範囲を広げているじゃありませんか、そっちのほうばかり言っていて、金額のほうは向けさせないというような、そうした行き方がどうしても感ぜられるわけです。私は、六年間もそのままにして三千円というものを検討もしない、そうして、ただ範囲の段階的拡大をやっていると、それがいかにも充実さしているかのような考え方にさしているということを、たいへん冷たい態度だ、消極的だ、こういうふうに申し上げるわけなんです。その点いかがでしょうか。
#140
○政府委員(穴山徳夫君) 確かにおっしゃいますように、現在三千円にきめました基礎は昭和四十二年のときの調査をもとにいたしまして、一昨年制度をつくりますときに一応きめたものでございまして、まあこれをどのくらいまで将来上げていくかということにつきましては、ことし四十八年度におきましてもう一ぺん、いわゆる前にやりましたような調査を実施する予定でおりますので、やはりその新しい資料に基づきまして、四十九年度以降において、この金額をどの程度どうするかというようなことを検討していきたいというように考えておるわけでございます。確かに四十二年調査というのは非常に古いわけでございますが、ことしはこの調査を再調査することにいたしておりまして、それを基礎にして考えていきたいというように考えております。
#141
○柏原ヤス君 調査をしていらっしゃるというので、大いにこれに期待をかけるわけでございます。
 そこで、この三千円という手当額、これは確かに、実施した時点では喜んだ家庭が非常に多かったと思います。ところが現在は、非常に物価高で、また教育費の必要な種類というものがふえているようなんですね。こんなものまで買わせなくてもいいんじゃないかというようなものも買わせているような、非常に教育費がやはり父兄の大きな負担になっている。こういうことから考えますと、この三千円という価値はむしろ下がっている。三千円、三千円、三千円で変わってないと言いますれけども、使ってみると、この三千円というのは非常に値打ちがなくなっているんです。
 そこで、この三千円というものを、もちろん調査されるわけですけれども、現在どのくらいの価値に見ていらっしゃるのか。これは、物価指数を調べてみますと、六年間に三六%ふえている。そうしますと、この児童手当三千円は、四千二百円ぐらいになっていなければならぬ。家計支出の点を見ますと、七七%ふえておりますので、五千四百円ぐらいになる。国民所得指数から言いますと、九〇%増ですから、約六千円ぐらいに考えられるわけです。この点、これは大臣にお聞きしたいんですけれども、どのくらいの価値に見ていらっしゃるのか。
#142
○政府委員(穴山徳夫君) 確かに、三千円を据え置いておりますので、いまのいわゆる各種の指数から比べますと、ずいぶん当初の三千円という価値が下がっていることは、先生がいまお示しになりましたような数字のとおりだと思います。したがって、私どもも、ことし調査をいたしまして、そういったようなものをもとにしながら、四十九年度以降におきまして、この三千円の改善、引き上げということをやっていきたいというように考えているわけでございます。確かに、制度を考えました当時の三千円と現在の三千円というものは、その価値が相対的に下がっているということは、これはいなめないと思います。
#143
○柏原ヤス君 大臣いかがですか、この三千円に対して。
#144
○国務大臣(齋藤邦吉君) まあ、仰せのごとく、だいぶ昔に一応三千円ということにしたわけでございますから、その後物価も上がり生活事情も変わってまいっておりますから幾らが適当であるかどうかわかりませんが、そろそろこれは考え直さなければならぬ金額ではないかというふうに、私率直に感じております。三千円の価値が五千円になっているか六千円になっているかは別といたしまして、以前のままの金額でこれいくのが適当であるかどうか、少し考えなければならぬのではないか、こういうふうに考えております。
#145
○柏原ヤス君 そろそろとか、少しとかいうおことばが大臣の口から出るんですと、私は非常にがっかりするわけですね。その点、いかがでしょうか。児童手当法にも、児童を持っている家庭の生活の安定に寄与すると、こういうふうにはっきりいっているわけです。
 で、この間、小学校一年生の子供が入学したときに、どのぐらいかかったかと思って調べてみましたんです。これはほんとにごく質素な入学を迎えた子供ですけれども、三万円ぐらいかかっているわけですね。洋服も人並みのを着せる、ランドセルもしょわせる、また学校から言われているものをそれぞれそろえて、そんな金額になっているわけです。一人の小学校一年生に入る子供にこれだけかかっている。三人、四人という家庭は非常に苦しい。無理な準備をしているわけなんですね。そういう中で、三千円というのは、あまりにも児童手当としては少ないんじゃないだろうか。そういう点で、大臣が、そうした消極的な、やっと腰を上げようかとしているような、そんな御意見じゃなくて、調査ですから、その調査が大体その基礎になるんですから、このくらいは要るんだというようなそういう調査の結果をきちっと出していただくために、もう少し大臣は積極的に児童手当の金額に取り組んでいただきたいと思いますけれども、その点いかがでしょうか。
#146
○国務大臣(齋藤邦吉君) 仰せのごとく、相当物価も上がり生活水準も変わってきておりますから、実は私、率直に申しますと、これ、四十九年度、段階実施で完成なんでございますね。それでたてまえは、四十九年度も一応三千円でいこうというのが大体の既定の方針なんです。しかし、四十九年度も三千円でいくということはどうもちょっと私は疑問がある。こういうことで、これは考えなければならぬということを実は申し上げておるわけなんでございます。四十九年度も三千円で押し通せるかどうか、これはどうもちょっとむずかしいじゃないかと。これは予算要求ということになりますと、ことしの八月の末に来年の予算要求をしなければならぬわけなんです。実はまだ局長にも言うておりませんでしたが、いま幸いに調査もいたしておりますので、四十九年度も三千円で押し通せるとは私も考えておりませんので、そこでそろそろと言うたんです。そろそろということばを元気がないようにおとりになったわけなんですが、私は相当前向きに実は考えているつもりなんです。来年度の予算のことですからね、あんまり勇ましくいまから、四十八年度の予算が通ったばかりの際に勇ましく言うわけにもまいりませんので、そろそろと、こう申し上げたんですが、実は四十九年度においてもこの三千円で押し通せるとは私は考えていない。それじゃ何ぼにするかと、それはもうちょっと考えさしていただきたい、こう考えているんです。私の意は十分おくみ取りいただけると思うんです。ですから、私は、そろそろということばをつかいましたが、前向きに考えているんだということでどうか御理解を賜わりたいと思います。
#147
○柏原ヤス君 たいへんうれしい御答弁をいただきましたが、三千円よりは多くなるということですね。
#148
○国務大臣(齋藤邦吉君) 失礼いたしました。先ほどもちょっとお答えいたしましたように、四十九年度も三千円というのが既定の方針なんです。三年三段階というわけですから、前の年と違ってはおかしいじゃないかという議論があるんです。しかし、物価も相当上がっていることでもあり、生活水準も変わったことでもありますから、まあひとつ、四十九年度の予算編成の際には三千円で押し通せるとは思っていない。ということは、これより下になるということではないんですから、上になるということでございますから、私は、その三千円が五千円になるか六千円になるかは別としまして、来年も三千円で押し通そうというふうな考えは全然ない、こういうことを私、率直に申し上げておるわけでございます。
#149
○柏原ヤス君 この第六条にその制度が規定されております。これはスライド制でございますね。ですから、当然三千円が四千円なり五千円になっていかなければならない、改善されなければならない児童手当制度の内容だと私は思っています。で、児童扶養手当のほうはこういう積極的なスライド制というものの規定がないのに、最初の二倍にもなっている。スライド制がきちんと規定されている児童手当、これは上がるのが当然だ。それが上がらない。この点大臣からたいへん積極的な御意見を伺いましたが、スライド制が規定されていない児童扶養手当が上がっているんだから、規定されている児童手当は当然上げるべきだと、こういうふうに思いますが、その点いかがですか。
#150
○政府委員(穴山徳夫君) 確かに六条の二項には先生のおっしゃいましたように「すみやかに改定の措置が講ぜられなければならない。」というような規定があるわけでございまして、まあ四十九年度の予算につきまして、まだ私どもとしては考えていないわけでありますけれども、現在、ただいま大臣のおことばもございましたし、大臣の御趣旨をいただいてこれから十分に考えていきたいというように思います。
#151
○柏原ヤス君 時間がなくなりましたので、もう一点どうしてもお聞きしたいことは、児童手当の対象について、これは第三子以降というふうになっております。この第三子以降というのは、現在の日本の国の家族構成を見ますと、平均子供二人だと、三人以上となると非常に少ないですね。特に、これは厚生省がこの間発表しております第六次出産力調査、これが四十七年六月一日に行なわれて、しかも、夫婦一組の平均出生児数が初めて三児の線を割った、二児制が定着した、昭和十五年の第一次の調査では三・三九人だったのが、だんだんと減少を続けて、今回はついに一・九二人と二児制を割ったと出ております。こういうふうに、これからはほんとうに第三子という子供が非常に少なくなってくる。そういう家族構成に対して、第三子という対象は非常に効果が薄くなっていく、だんだんと。これは不満の第一点で、非常に多いわけですね。児童手当に対する不満をいろいろ調査しました中では、五八・八%が、約半分以上がこの第三子以降ということを改めてもらいたい、第二子あるいは第一子までに拡大してほしいという意見でございます。この点いかがでしょう。
#152
○政府委員(穴山徳夫君) 確かにこの第三子という制度をどうするかということは、この児童手当の制度の基本に触れる問題でございまして、非常に大きな問題であり、私どもこれから検討していかなければいけない問題だと思います。まあ、こういったような問題につきましても、現在の段階実施という期間を過ぎまして完全に制度が軌道に乗ったときには、いわゆる支給対象の問題をどうするかということも、これは私どもは検討していかなければいけない問題であるというように考えております。
#153
○柏原ヤス君 最後に、大臣に、将来第二子あるいは第一子と拡大していくお考えがあるかどうか、これをお聞きしたいと思います。
#154
○国務大臣(齋藤邦吉君) 御承知のように、児童手当の制度は四十九年度で完成するわけでございますから、今後は内容の充実、もちろん金額もございますが、そういう範囲の拡大、これはもう当然私どもつとめていかなければならぬと考えております。したがって、西欧先進諸国の児童手当並みに近づけるように今後とも努力をいたす考えでございます。
#155
○須原昭二君 さきに行なわれました齋藤厚生大臣の所信表明のお話に関連をして、きわめて抽象的になりますか、基本的になりますか、原則的になりますか、そういう問題点で実はお尋ねをいたしたいと思います。
 まず、この所信表明の冒頭でおっしゃいましたことばの中で、福祉優先の考え方が国民の各層に定着しつつある、しかも福祉国家の建設は大きな時代の流れとなってきている、このような考え方の転換期にあるということを非常に強調されておるわけであります。この点の認識については全く同感であります。そういう状態でございますから、その福祉行政を進展すべき責任にある大臣の責任の痛感がきわめて強調されている点についてもこれに敬意を払いたいと思います。ただし、その決意の動向から見て今後の問題にどう対処されていくか、そういう問題点についてまず冒頭お尋ねをいたしておきたいと思うわけでありますが、この福祉国家の建設と銘を打っておられるが、なるほど情報、ニュースあるいは新聞等、この関係においては福祉国家というきわめて抽象的な表現がいまちまたに多くなされておるわけでありますが、大臣がお考えになっておるところの福祉国家という概念、福祉国家というものはどういうようなもので、その理念についてきわめて抽象的なことになるかもわかりませんが、大臣の所感をまず冒頭に承っておきたいと思います。
#156
○国務大臣(齋藤邦吉君) 私がいろいろ申し上げておりまする社会福祉、福祉社会、そういうふうな考え方でございますが、まず第一前提として豊かな生活環境を整備する、そうした豊かな生活環境の整備ということは、これはもう厚生省だけの仕事ではない、関係各省にまたがる仕事でございますが、そういうふうな豊かな生活環境を築き、その中において生きていく個人の私どもが、障害あるいは疾病あるいは貧困、あるいは児童問題あるいは何人も避けがたい老齢という問題、こういう問題に対処するもろもろの施策を講じ、そして豊かな個人的な生活が享受できるような社会、これも抽象的かもしれませんが、私はそういう方向を目がけて、しかも具体的にはできるならば西欧先進諸国並みの社会福祉と、これを具体的目標に掲げて進んでいく、こういうふうに私は考えておる次第でございます。どうもこれも多少抽象的かもしれませんが、具体的には西欧先進諸国並みの社会を築くようにしていかなければならない、こんなふうに考えております。
#157
○須原昭二君 そこで問題は、豊かな生活環境をつくり上げていくのだ、それは個人の限界、能力あるいは努力によって行なっていく、あるいは社会全体が行なっていく、あるいは国全体の責任においてこれを行なっていく、いろいろさまざまな方法があろうかと思うわけであります。
 そこで問題になってくるのは、先ほどこの日本列島改造論と福祉の増進とどう織り込んでいくか、こういう問題が一つの大きな問題点で難航してまいりました。御案内のとおり二月八日でしたか、経済審議会の会長の木川田会長ですか、田中総理に答申をされまして、経済社会基本計画がやっとまとまったというふうに聞いております。この新長期経済計画は昭和四十八年から五十二年までのわが国の経済の目標を示すものであって、昭和四十五年五月に閣議決定をされました経済社会発展計画、これを改定されたものであると思うわけです。そこでこれには「活力ある福祉社会のために」というわざわざサブタイトルまで実はついておるわけですが、この「活力ある福祉社会のために」というサブタイトルの問題については後ほどお尋ねすることとして、当面、いま先進国並みという目標を掲げられましたけれども、日本の福祉の立ちおくれというのは、私は、最も表徴しているというものは、何といってもやはり社会保障の貧困だと思うわけであります。この社会保障の貧困であるそのバロメーター、尺度というものをはかるには、社会保障給付費の国民所得に対する比率、これを調べてみていくとよくわかるわけで、国際的なデータを比べてまいりますと、日本が六・六%に対して西ドイツが二一・八、フランスが一九・七、イタリアが一八・七%、それからイギリスが一五・〇%、アメリカが、若干下回っておりますが、八・一――これはいずれも一九六六年の実績だというふうに私たちは聞いておりますが、これよりも新しい資料があるんだったらひとつお示しをいただきたいと思うわけですが、これらの数値からいいましても、日本というものは全くおくれておる。先ほど厚生大臣は、先進国並みに早くなりたいと、こういう目標を掲げられておりますが、あまりにも離れておるというこの実態、これをどういま大臣としてはお感じになっておられますか、その感じ方をひとつお尋ねをしておきたいと思います。
#158
○国務大臣(齋藤邦吉君) 仰せのごとく、わが国の社会保障というものの中身は西欧先進諸国におくれておりますことは御指摘のとおりでございます。一九六六年のあの統計においても間違いなくそのとおりに指摘をされるわけでございます。
 そこで、実はこういうふうに日本の社会保障が中身において西欧先進諸国におくれておるのは何か――一番おくれておるのはやっぱり年金問題であるわけでございます。そこで、私どもといたしましては、今度の国会に、御承知のように、物価スライド制を背景に持った五万円年金制度というものを打ち出してまいりました。この制度が皆さま方の御協力によって成立いたしますと、もちろんこれだけではありません、そのほかの社会保障の制度の拡充ということも当然必要でございましょうが、この法律が御協力をいただいて成立いたしますと、大体において、五年後の昭和五十二年、わが国の社会保障給付費と国民所得との比率は一〇%になります。五年後に一〇%になります。そこで私は、衆議院でもお答えしたのでございますが、経済企画庁も、この法律が通ったときには間違いなく一〇%になる、これは経済企画庁もそのとおりに試算をしておるんですが、厚生大臣としてはそんなことで満足すべきではあるまい。おそらく五年の間に、もう一回年金水準の改定が、私は率直に言うんですが、あると思うんです。これは五年以内に水準の改定をやるということになっておるんです、法律的には。おそらく、私は、早まってもう一回の改定がある。なおかつそして私は、それをしなければならぬというふうに考えております。そうなってまいりますと、大体五年後に社会保障給付費は二%程度になるわけでございます。そして、そのあとの五年、これは私は、最小限度国民所得に対する比率は一五%になる――経済企画庁は一五%以上になると言っております。まあしかし、その数字、十年先のことですから私も控え目に考えておりますが、したがって、今回の年金制度の改革が行なわれ、そしてそのほかに、関連した多少の社会福祉政策が充実していけば、五年後に間違いなく一〇%になり、十年後に一五%になるということでございますので、今度の四十八年度の予算並びにこれに基づく法律というものを前提にして考えてみるならば、十年後に西欧先進諸国並みに近づくところの第一年になると、こういうのが――これは私は自信を持っているんです。ですから、その点は、私は自信をもって言えることは一〇%、一五%、十年後には西欧先進諸国並みに近づいた形になっていく、したがって四十八年度においてはこういうふうなもろもろの法律というものの制定に御協力をいただきたいんだと、こういうふうに考えておるような次第でございます。
#159
○須原昭二君 そこで、その問題については後ほどまた御討議を申し上げたいと思っておるんですが、年金の問題も提案をされてからこれはひとつ議論をしたいと思うんですが、当然その新計画はこの社会保障の充実に重点目標を入れられておるわけですが、その重点目標の課題は、いまおあげになりましたまず一つが年金の改善、それから寝たきり老人と重度心身障害者の全員収容体制の確立、それから三つ目が、いまの振替所得対国民所得比率を六・〇%から八・八%にすると、こう言っているんですね、八・八%。いま厚生大臣がおっしゃるのは一〇%、もう計画を上回ったことを言われているんですが、計画そのものは八・八%に引き上げると、こう言っているわけです。一の年金、二の老人、重症身障者の問題はまあ別途といたしまして、この三のいわゆる振替所得といえば、国から個人へ対価なくして支給されるお金のことなんで、これは政府からの移転支出ともいわれるものですね。ほぼその社会保障給付費に見合っているものであると言われておりますけれども、さきにあげた国際的に立ちおくれておるこの社会保障給付費の国民所得に対する比率からいえば、つまりあと五年で二・八%だけ、いま大臣がおっしゃるのは一〇%と、こうおっしゃるんですけれども、これでどうも食い違っているような感じがするわけなんです。はたしてこれが信感性がどうなのか、私はこの点で論議をすることの時間は避けますけれども、いずれにしても国際的水準に、計画の二・八%が正しいとするならばこれは国際的水準に追いつこうという構想であるといわれておりますけれども、これでは追いつくことは私はできないんじゃないか。二・八%と八・八%、それから一〇%のこの差というのは大きいですから、この点の違いというものについてもう一度御説明を願いたいと思います。
#160
○国務大臣(齋藤邦吉君) これはもう先生御承知のとおり、振替所得というのは国のほうから国民に転換していく所得のことでございますから、たとえて、例を引いて申しますならば、組合健保のごとき給付費は国は一文も出しておりません。したがってこれは振替所得の中には入っておりません。そういうふうなことでございます。それから厚生年金その他につきましても、総額は給付費に入りますが、国は二〇%きり保障は出しておりませんから、二〇%分は振替所得に入りますが、全体はいわゆる国民所得の中に入る、こういうことでございまして、振替え所得の国民所得に対する比率は間違いなく八・八、国の金がそれだけになる。ところが、それに対して国でない民間で出し合ってやる、たとえば一番わかりいいのは、組合健保のような金は国の金は一文も入っておりません。そういうものはいわゆる社会保障給付費の中に入るわけでございますので、その金のトータル、あるいは失業保険、労災、全部そうです。労災の金は事業主全額負担でございますから、振替所得には入っておりませんが、給付費には入るわけでございます。そういうふうなことで、八・八という振替所得は、給付費として積み重ねて計算してまいりますと、大体それよりも一・一ないし一・二多い。すなわち九・九か一〇、これがいわゆる給付費と国民所得の比率、こうなるわけでございます。その一〇%になるというのが経済企画庁の見通しでございますが、厚生大臣としてはもっと前向きに進みたいんだがと、こういうことで一一%ということを申し上げているような次第でございます。
#161
○須原昭二君 そこで従来の計画から言うと確かに振替所得の増大はただのいままでは見込み額程度の扱いであったですね。それに比べますと、今度の計画は、企画庁が国会の答弁の中でも言っておりますように、今度の計画は数字をもって明らかにしているんだ、したがって、これはいわば政府の公約としているところに特色があると、こういう発言から見ても、これは政府の公約なんだから見込みではないんだと、これは大きく私は前進と評価すべきだと思うんですけれども、ただ、それにしては数字がきわめて大ざっぱ過ぎると私は思うわけなんですが、その点はどうかということなんですが、いかがですか。
#162
○国務大臣(齋藤邦吉君) 確かにそういう御批判はあるかと思いますが、この八・八という振替所得をやります際には一つ一つ実は積み重ねて国費の変動を考えておるわけでございます。たとえば例を引いて申しますならば、国民年金について三千三百円を四十八年度に五千円、それから四十九年度に七千五百円、五十年度に一万円、こういう数字の金額、国費の分は正確にはじいておるわけでございます。
 それから厚生年金などについては、いま提案しておりまする法案が通ったという前提において計算をしておりますので、私は八・八というのは、この振替所得の分については私はそんなに流動的であるとは私自身考えておりませんし、私はそれは間違いなくいける――実はきのうもこの懇談会を開いたんですが、八・八なんというワクにとらわれないで、むしろ厚生省はもっとふやすように努力すべきじゃないかといったふうな意見も出たわけでございまして、八・八は間違いなくいけると、かように確信をいたしております。
#163
○須原昭二君 そこで、移転支出が四十七年度の実績だと四兆五千億、それから五十二年度には十二兆円にふくれ上がるということになっているわけですが、この十二兆円の内訳はまだきまっていないわけなんですね。わずかに計画期間中のできるだけ早い時期にこの社会保障の長期計画を策定すると、こういう約束がこの計画案の中にあるだけです。いまお話しございましたようにて今年度の厚生省の予算で、一千百万でしたか、一千百万の新規事業としていわゆる社会保障各部門の施策に対して長期的な視野に立って総合的な検討を行なうためにきのう初めて会合が開かれた、いわゆる社会保障長期計画懇談会、こういうふうなものがきのう発足をしたわけですが、ここでちょっとお尋ねをしておきたいんですが、この懇談会、きのう初めて第一回の会合が開かれたというわけですけれども、新聞紙上を見ますと、構成メンバーが発表されております。どういう基準に基づいてこういう会の構成メンバーをおきめになったのか、その点についての御意向を承っておきたいと思います。
#164
○国務大臣(齋藤邦吉君) この懇談会は昨日発足をいたしたわけでございますが、構成メンバーとしましてはできるだけ各方面の学識経験者ということを中心に考えてみました。
  〔委員長退席、理事大橋和孝君着席〕
したがって、労働界の経験の豊かな方々、
#165
○須原昭二君 労働界だけ先に言われる……。
#166
○国務大臣(齋藤邦吉君) これはあとでもいいんですが、(笑声)それから経済界の方々、それから経済学の学者の方々、それから未来学の――未来学という学者は、まあよく言うんですが、未来学関係の学者の方、それから御婦人の代表の方、そういう面からできるだけ広くりっぱな方々に委員になっていただくようにお願いいたしたような次第でございます。
#167
○須原昭二君 そこで私はこの間身体障害者の代表がわざわざ参考人として呼ばれたときにも各人が、その代表が言っておりましたように、やはり社会保障というものを実際に受けておる立場に立つ者の意見というものを加味してもらいたい、こういう懇談会には社会保障の対象者というものの意見をくみいれてもらいたい、こういう強い要望があったわけですが、メンバーを見てまいりますと、そういう実際体験をしておるような経験者、学識経験者というのは一人も入ってない。こういう点について私は非常に遺憾だと思うんですが、その点の意向はどういうふうにここの懇談会の中に反映されるんですか。
#168
○国務大臣(齋藤邦吉君) この懇談会は、すでに御承知のように年金問題、医療問題、それから社会福祉施設三部門にわたって長期計画の大綱をきめる、こういう考え方でございます。この懇談会で何もかもすべてきめるというのではなくて、大綱だけでございまして、それぞれの局にはそれぞれの審議会が、それぞれ専門のものがございます。そこでその専門の審議会の御意見を承りながら厚生省ベースにおけるいろいろなプロジェクトチームをつくっておりますから、そちらでそれぞれの専門の方々の御意見を聞いたものをまとめてプロジェクトチームで一つの案をつくって、そして一応、まあ原案というわけじゃありませんが、そういうものを審議の資料として提出し、そしてそういうものをもととして広い視野に立って大綱をきめていく、こういうふうにいたしたいと考えておりますので、実務的な仰せになりましたような方は直接入っておりませんが、そういう方々の御意見も十分反映させるように、特に社会福祉施設の充実についてはそうなければなりませんので、そういうふうにつとめてまいる考えでございます。
#169
○須原昭二君 そこで、先ほども第一回の初回の懇談会の話題の中にもあったというお話でございますが、計画の策定目標ですね、五年間にとどめておくのか、それとも、先ほどお話ございましたように一五%まで引き上げるというような十年計画でいくのか、ここら辺のめどといいますか、懇談会の策定の目標というものはどこら辺に置いておられるのか、これはただ五年間だけでストップして終わるのか、こういう点がまず第一点。
 それからもう一つは、五カ年計画の具体案ができるという問題は、具体的な策ですよ、いまの抽象的な五カ年計画のばく然とした計画というよりも、私たちはやはり五年間なら五年間の各年度におけるところの年次計画を積み重ねて初めて全体の計画ができ上がらなければならないと思うわけです。そうすると、八月にまず大綱をきめるという、そして十二月までにその五カ年間の計画を策定すると、こういう問題、非常に私ば疑義を感ずるわけなんですが、その点についての御説明をひとつお願いをしたいと思います。
#170
○国務大臣(齋藤邦吉君) この懇談会では、私は、十年間にわたる長期計画の御検討をお願い申し上げたいときのうも申し上げてまいりました。しかし、まず第一に五カ年計画が経済審議会のほうであるわけでございますから、さしあたりは五年の計画をつくっていただくようにお願いします。そしてそれが済んでから後期の五カ年、こういうふうに十年計画をやっぱり目途として私は進めてまいりたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
 それから後段のお尋ねでございますが、私どもとしてはできるだけ早い機会に前期五カ年間の年次別計画をつくりたいと考えておるわけでございます。ところが、年次別計画ということにあんまりとらわれていきますと、来年度の予算要求は御承知のとおり八月末までに出さなければなりませんので、一応八月の末までに五カ年間の、ラフと言うと失礼でございますが、大ざっぱな年次別の計画を八月の末までにつくっていただいて、その中から四十九年度はこの分を持っていきましょう、こうして、まず概算要求を八月の末から九月に要求をして、その予算が大体固まりますのが十二月末ごろになるわけでございますから、その機会に残りの四年分――「四年分」と申しましても、四十八年度はもうことしですから、残りの三年分ですね。三年分を今度は具体的にことしの暮れにきめる、で、最初には、ですから、八月までには一応大ざっぱな年次計画、そして、その中からまず四十九年度の概算要求をする、その概算要求がきまった時点において後期の三年度のものも年次別にかちっときめる、こういうふうな手順で進めてまいりたい、こういう意味でございます。
#171
○須原昭二君 私は、やはり長期計画があれば当然年次計画が前提でなければならぬと思うわけですね。長期計画の策定がおくれて年次計画がそのあと回しになっていくと、往々にして、私は、福祉充実だとか社会保障の充実という標語だけに終わって、実行というものがいつになるか明らかでなくなる、何かあと回しにされていくというおそれを私は持ちます。特に日本列島改造論の中へ福祉充実を盛り込んでいったわけですから、したがってそういう経過からいうと、社会保障があと回しになっていくという政治体質、これは依然として私は転換されていないのではないかというような疑念を持たざるを得ないわけです。そういう点について、計画の見通しもやはり怪しい、どうも心配だと、こういう気がしてならないわけですが、その点はひとつ明確に大臣からも御所見を承っておきたいと思うわけです。
#172
○国務大臣(齋藤邦吉君) いろいろ御心配をいただいて感謝を申し上げる次第でございますが、私どもは今回の社会福祉長期計画だけは、かちっとした年次別の計画をつくり上げていくようにしたい、かように考えております。田中内閣にとりましても、今度の計画というものは経済社会基本計画というものは社会福祉の充実ということが二つのうちの一つの大きな柱になっておるわけでございますから、私も全力を尽くしてその年次別計画を完全に遂行するというふうに努力をいたす考えでございます。
#173
○須原昭二君 そのいまの決意については、私は信頼をいたしたいと思います。ただ、要望しておきたいことは、特に厚生大臣はすでに国会の審議の中で、先ほどもおっしゃいましたけれども、五年後には昭和五十二年度の社会保障給付を国民所得の一一%にすると言われておるんですね。それから十年後には一五%まで高めると、こういう構想を明らかにされているわけです。そういう背景から懇談会の方向、これからの審議の過程の中で方向がどう出てくるか、私は疑問だと思いますが、たとえば国民所得八・八%という総ワクでたがをはめていくのか、それとも懇談会の中ではそれを一〇%、一一%上がってきても、それにこたえていくのか、ここら辺がはっきりしないと、懇談会を持った私は意義がないと思うんですよ。その点はどうかということをひとつ私はお尋ねしておきたい。八・八%の総ワクをこえて論議をしてもいいものか、いけないものか。また、こえていることがいいとしてそれをこたえる能力があるのかどうか。この答申をほんとうに前向きで受けて、これを実行されるのかどうか。ここら辺が私ははっきりさしていただかぬと懇談会つくった意義がないと思うんですが、その点はどうですか。
#174
○国務大臣(齋藤邦吉君) 八・八ということは閣議決定をいたしました総ワクの制限でございますから、私はそれをはみ出して努力しますなんということもあんまり勇ましく言うと、これ閣内不統一のようなことになるわけでございます。そこで、そんなようなことがやっぱりきのうの懇談会で早速話が出まして、大臣はしばらく黙っていなさいと、その点は。懇談会のほうでやっぱり八・八でうまくいけるかどうか、これは慎重にひとつやりましょうと。八・八のワクをこえるようなことがあっても、ひとつ懇談会としては前向きの考え方を出してもいいじゃないかと、こういう意見が非常に強く出されました。それが出たときに厚生大臣がどういう態度をとるか、いまから厚生大臣を責めなくてもいいだろうから、まあひとつ私どもは八・八などにこだわらないでひとつ努力をしましょうというふうなお話し合いでございました。私もこれはあまり閣内不統一みたいなことは申せませんが、私は厚生大臣として、内閣全体としてじゃなくて厚生大臣としてはですね、あまりこだわらないで、国民のしあわせのためならば、もちろんそのときの財政なり経済事情にもよります。これは財政が悪いときにはどうにもなりませんわけですから。けれども、私はやっぱり厚生大臣としては、できるだけ答申が出ればその答申の線を実現するように、皆さん方の御鞭撻もいただきながら努力をいたしたいと考えております。
#175
○須原昭二君 非常に前向きのきょう御答弁で、非常に私は意を強くしたと思うんです。八・八%のワクでとどまるのではなくして、自由に討議をさして、そしてそこから出た結論、答申についてはこれを前向きにとらえて、これを閣内で持ち込んで厚生大臣が正面切ってこれを実現をさしていくような、そういう努力をひとつお願いしたいと思うんですが、それはできますか。
#176
○国務大臣(齋藤邦吉君) 先ほどもお答えいたしましたように、懇談会の方々は非常に前向きの御意見をお持ちでございますから、おそらく相当な答申が私、出るんじゃないかと思います。出ました以上は、これをできるだけ実現するように努力をいたす覚悟でございます。
#177
○須原昭二君 そこで今度はサブタイトルのほうへ参りますがね、「活力ある福祉社会のために」というこの副題が、この経済社会基本計画の中に入っているわけです。「活力ある福祉社会のために」という、このあえて「活力ある」という表現ですね、この「活力ある福祉社会」とはどういうことなのか、私には疑問なんですけれども、ちょっとお教えをいただきたいと思います。
#178
○国務大臣(齋藤邦吉君) お教えを申し上げるなどという柄ではございませんし、私もどういう意味でそういうサブタイトルをつけたのか、私もよくわかりませんが、私の想像するところによりますと、従来社会福祉とか社会保障といいますと、やっぱり多少暗い感じのものであるかのごとく国民の一部には考えられがちでありました。そういうふうなことでない、やっぱりゆとりのある生活というふうなことを前向きに進めていこう。それはやっぱり全国民のエネルギーの結果でなければならぬ。こういうふうな意味で、福祉社会建設ということを目ざして、全国民が力強く進んでいこうではないか、こういうふうな気持ちが出たことばではないだろうかと、こんなふうに考えておりますし、私も社会保障というものは全国民のエネルギーが縦横に活躍できるような、そういう社会でなければならぬ、こういうふうに考えておるような次第でございます。
#179
○須原昭二君 いま、お教えをいただいたんですが、若干これね、私から言いますと、何か「活力ある」というのは、福祉というのは暗いイメージがあるんだと、豊かなということのように、明るいイメージがないんだと、こういうふうに「活力ある」というものを御定義いただいたように聞いたわけですが、実は私も不勉強でございますが、基本計画策定に対するいろいろの議事録を読ましていただいた中で、経済審議会の木川田会長ですか、この会長さんが言っていることは、福祉国家のように恩恵的に福祉が与えられるのではなく、国民全体が創造的な力を発揮し、自主的、主体的に参加しつくり上げるのが福祉社会だと。これが要するに「活力ある福祉社会」だというふうに表現をしているわけです。
 財界が中心となっておるところの日本経済調査協議会の提言もまた、福祉社会の実現にあたってはすべてを政府に依存することではなく、民間の活力と創造力を利用することが望ましいと、こう言っているわけなんです。そういう点から言うと、私は「活力ある」というこの表現というものはどういうことから出てきておるのか。この暗いとか、あるいは明るいとかという表現ではなくしてですよ、いまの表現から見ましても福祉国家を否定した福祉社会論というのが、何としてもやっぱり奇妙な構図としてここに出てくるわけです。何か私に言わしめるなら、福祉国家を否定しておるような福祉社会論、活力ある福祉社会論、福祉社会、こういうものが一つ大義的に出てきておるというような感じがしてならないわけなんです。この点はどうですか。
 どうも私は暗いとか明るいとかという表現ではなくして、その内容に一つ問題点があるんじゃないかというような気がするんですが、その点の大臣の御所見を承っておきたい。
#180
○国務大臣(齋藤邦吉君) 私は、その点はそこの木川田会長が言われたということばの中にある恩恵的なものであってはならない。確かに日本の社会保障、福祉というのは、確かに恩恵的なものから出発した。そういうようなことで多少暗い感じを皆さん一部の方々が抱いておったんじゃないかと思うのです。そういうふうな恩恵的なものであってはならぬと、全国民のしあわせのために、全国民が手をにぎり合って、そしてよりよき豊かな社会を築いていこうではないか、こういう積極的な国民のエネルギーの発散というものを意味して、私はそういう表現になっておるんではないか、こういうふうに考えております。
#181
○須原昭二君 そこでですね、いまお話がございました恩恵的ということばですけれどもですね、これもさきに労働大臣との質疑の中でも私は言ったことでありますが、福祉とは消極的には人の命の危急から救うのだと。あるいはまた積極的には人の命の存命を延ばしていくのだと、これは宗教用語なんだと。すなわち貧しさを救ってやる、恵みを与えてやる、こういう恩恵的な考え方が根強くこのことばの中に含まれておるわけである。そういう点からの問題点と、もう一つは憲法論からいう憲法二十五条で規定をされておる「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」という、いわゆる国民の生きる権利としての社会保障とこの福祉というものをどうマッチさしていくのか、ここに今日の福祉国家の転換期、課題が私はあると思うのですが、その点の大臣の所見をひとつ承っておきたいと思います。
#182
○国務大臣(齋藤邦吉君) いまお述べになりました御見識、私もまことに同感でございます。確かに、日本の社会保障ばかりじゃなくて、諸外国の社会福祉と申しますか、社会保障は、貧困救済ということから始まってまいった歴史をたどっておりますが、私どもはやっぱり新しい憲法に基づいた、そういうものを越えて、健康にして文化的な社会、人命尊重と申しますか、人間尊重と申しますか、そうした社会福祉でなければならないし、私どももそれを目ざして進んでいかなければならない、こういうふうに考えておるわけで、まことに仰せになりましたとおりと理解をいたしております。
#183
○須原昭二君 すなわち、大臣も同感をいただいたわけですが、やはり福祉国家の目標というものは社会保障の国にするのだと、こう判断をしてもいいですね。
 御返事をいただいておるようですから先に進みますが、そこで、新計画が今度、経済社会の構造変化に対して第一にうたっているのは、豊かさの偏在をあげているわけです。そして活力ある社会をつくるための制度として、そのルールの一つとして、社会的公正の尊重を掲げております。この社会的公正の尊重を掲げているという点については、これは確かに私は的を当てたものだと言えると思います。しかし、その計画のかなめであるべき社会保障やあるいは社会資本の充実ですか、あるいは物価の安定などには肝心の手が打たれないままに活力ある社会福祉論というものがまかり通っていくということは、すなわち、自主的に主体的に、端的に言うならば、自分のことは自分でやれと、こういう高福祉・高負担ということばに置きかえられていくおそれがあると私は言わざるを得ないのですが、こういう高福祉・高負担、庶民の肩に大きな負担がのしかかっていくおそれなしとし得ないと私は思うのですけれども、その点はどういうふうにお感じになっておられるか。ただ問題は、だれが負担をするかということがここで大きな課題になってくるわけです。なるほど的を射たこの社会的公正の尊重という表現から言うならば、だれが負担をするかということが一つの大きな問題点になってこなければならないわけです。したがってこれ、国民全般が平等に引き受けるというものの考え方のか。現実的には確かに、私に言わせるならば、高い利潤、高利潤をあげておるところの大企業だとかあるいは高額所得者だとか、こういうものに高負担をさせるべきだという方向の主張が、おそらく私は今日、日本の国民の一体したコンセンサスだと思うのです。そういう点から言うならば、ほんとうに政府が、厚生省が、あるいは田中内閣が真に日本の福祉国家を建設するということであるとするならば、当然私はそれはとるべき手段であると思うのです。その点は厚生大臣としてどうお考えになりますか。
#184
○国務大臣(齋藤邦吉君) 社会保障の充実のためにはその恩恵を受ける方々が応分の負担をしなければならない、これは私はそうあるべきものだと思います。ただ問題は、具体的にその負担をどういうふうに配分していくか、これはやっぱりいろいろ考えなければならぬ問題があるわけでございまして、そういう意味においていわゆる社会的公平ということが出てくるのではないか、こういうふうに考えております。したがって現実的な負担ということになりますと、いま申し述べましたような社会的公平ということを頭に描きながら、やっぱり特に社会保障における負担ということになりますれば、特にそういう点を頭に描いて考えていくべきではないか、かように私も考えております。したがって、今度の懇談会におきまして社会保障における負担の分配の問題、これなども一つの研究の大きな項目になると、こういうふうに私は考えておる次第でございます。
#185
○須原昭二君 非常に前向きの答弁をきょうはいただいておりまして、重ね重ね敬意を払いますが、その点が一番重要な問題点です。この点を特にひとつ要望を申し上げておきたいと思います。
 そこでちょっと方向を変えまして、最近ですね――きょうは基本的な問題だけにしぼっておりますけれども、ときたまひとつ新聞記事を見て、とりわけこの機会にお尋ねをしておきたいと実は思います。というのは、やはり人体実験の問題です。基本的な問題点でありますから、ひとつお尋ねをしておきたいと思うわけですが、まず最近、五月三日の新聞記事に出ておりますけれども、いわゆる山林労働者の職業病、いわゆる白ろう病に悩む高知の営林局の職員ですね。この二人、名前を具体的に申し上げますと、川村久雄さんと伊井勝さんが、「林野庁指定の国立長野病院で、四十五日間、治療の名を借りて〃人体実験〃された」こういう記事が実は出ておるわけです。白ろう病は御案内のとおり、チェーンソーを使って、山林労働者があの振動するチェーンソーを使った結果起きる職業病で、すでに職業病の認定を受けているわけですが、腕のつけ根から先がしびれてくる、血管が細くなってしまって、やはり指先がろうのように白くなって、握力が極度になくなってしまう、はしも握れなくなる、まあ治療法がはっきりしないというような話も聞いておるわけでありますが、こうした治療をするにあたって、この新聞記事によりますと、川村さんらは高知の営林局からゆっくり温泉につかりながらひとつ療養してくれ、こういうことで、昨年十月十六日から十一月の三十日まで長野国立病院に入院したのです。そうしたら院長が、「あなたたちは実験のために来てもらったのだから病院の言うとおりにしてくれ」、こういう人体実験宣言を受けているわけですね。その川村さんの入院メモによりますと、ここにも書いてありますが、初め一週間は全然温泉に入れなかった、温泉療養に行ったのに一週間は全然温泉に入れない。なぜ入れないかと言ったら、血液が濁るということで、朝食抜きで毎朝一〇ccから二〇ccの血液を採血されて、入院三日目と退院一週間前に皮下注射されたところ吐き気を催した。汗びっしょりになる発作に襲われた。十一月八日には目に薬を入れられ、二、三時間は目が見えなくなり、夕食がとれなかった。十一月二十日ごろには電気コードつきの針を肩から手にかけて十数本打たれた。右手中指がしびれ、薬指、小指と三本の指が麻痺して、行く前に使えたなたなんか使えなくなってしまった。こういう記事が出ております。なお、入院中四十五日間というものは看護婦長から外出をとめられておった。まさにモルモットのように六十数種類の実験がなされたという新聞報道が堂々と出ておるわけでありますが、はたしてこういう実態を――厚生省は国立の長野病院を、これは新聞に出たことですから、直ちに私は調査をされたと思うのですが、いつ調査をされたのか、その内容についてひとつ御報告を受けたいと思います。
#186
○政府委員(滝沢正君) 先生から御質問のただいまの事例でございますが、国立長野病院で四十六年六名、それから四十七年に六名、それぞれ長野営林局長より診断、――特に白ろう病については前々から温泉治療の効果があるのじゃないかということで、患者サイドあるいは労働組合の立場からも温泉治療を公費で見てくれ、こういう御要望があったことをわれわれ承知しておるわけでございますが、このケースは、温泉治療の調査研究の依頼を受けまして、国立長野病院が二年にわたりまして、六名ずつ受け入れて、診療に当たったことは事実でございます。必要な検査項目等につきましては、営林局からも依頼されました、いわゆる治療の効果、あるいはそういう調査研究の性格を持っておりますので、十分病院側もそれを検討して、自分のところで可能なものをということを確認した上で、患者の選定についてはもちろん営林当局が患者あるいは労働組合の方々と話し合った上でおそらくおきめになったものと思いますが、したがって、病院全体としては、先ほど新聞報道の中に院長の談話等もございましたが、これは院長がどういう表現で言ったことがそのような記載になっておるか、この点についてこまかい直接院長の私、意見を聞いておりませんが、間接的には院長はそのような誤解される言い方はしてないんだけれども、要するに検査のために協力してもらわないと、あなた方は了承の上で温泉治療というものの効果の判定という、まあ調査研究のために来ていただいたんだから協力してくれという程度のことは、これは言ったようでございますけれども、そういうような事情でございまして、いずれにしても国立長野病院は、陸軍病院時代からの上山田温泉を使いました温泉治療・リハビリテーションを中心とした病院でございますので、四十六年、四十七年の二年にわたって営林当局から御依頼を受けた、このような調査研究いたしたのでございまして、われわれの立場からも、また病院当局におきましても、決して人体実験という、まあ表現そのものをどういうふうに理解するか、いろいろあろうと思いますが、人体実験というふうには受けとっていない。私も人体実験であるというふうな、いわゆるその一般的な意味で否定的に、医療なり、その医師の態度を否定的に表現する意味の人体実験ではない。そのほか医学の上で人体実験というものをどういうふうに理解するか、こういうまあ、ことばの定義の問題は別に議論があろうかと思いますけれども、私は人体実験ではないというふうに理解しております。
#187
○須原昭二君 いま局長さんの御答弁になったことについていつ御調査願ったんですか。
#188
○政府委員(滝沢正君) 五月四日に調査いたしたんです。
#189
○須原昭二君 その五月四日時点において御調査ということですが、それは後ほどまたお尋ねをすることとして、林野庁の方お見えになりますか。――林野庁のほうに一つお尋ねしますが、高知の営林局に、この両名からの問題点で抗議もしくは損害賠償の訴えも起こすというような報道を私は現地からきょう聞いております。したがって、そういう高知の営林局からどのような御報告を受けられておるのか、この際御報告を願いたい。
#190
○説明員(野崎博之君) この問題につきまして、昨年の十二月二十日ごろに行なわれた団交の席で、いまお話になりました二名の方から、まだ手が痛む、あるいは肩が痛む、まあそういうような話が団交であったと、まあそういうことを受けまして、まあ営林局では直ちに管理医に対しまして健康診断をするように話をし、また国立長野病院に実情を照会する旨を話しております。それから、その後四十八年、ことしの三月にまた団体交渉等が行なわれまして、また症状がひどくなったという発言があったと、まあそういうことでございまして、当局では三月早々に長野病院に照会をするとともに、四月二十日には高知の日赤でございますが、そこで再度精密検査をするようにいたしております。で、まだその精密検査の結果はいまのところ判明いたしておりませんが、とにかく精密検査を受けております。
#191
○須原昭二君 いまお話を聞いておりますとね、この事実の問題は、林野庁のほうにおいても昨年の十二月にもう知っているわけですね。知っているわけですね。どうですか。十二月の団交にあったという報告を受けて、その三月云々という話もございました。すでに、ずっとこう経過をたどってまいりますと、こうすでに知っておられたわけです。そういたしますと、先ほど医務局長さんは五月四日に知った。もう数日前に知っただけなんです。やはり官公庁同士、これは全然意思の疎通がはかられておらない実態がここに暴露されておるわけなんですが、そこで、その問題点については別といたしましても、やはりこの問題は、いま医務局長がおっしゃるように、医療の内容というものは第三者がなかなかわからない点があるわけです。これは医療なのか、治療なのか、これが実験なのか、その評価が非常にむずかしいわけです。本人は六十数種類のモルモット扱いをされた、多くの実験がなされたと、こう表現をしておるわけですから、この四十五日間におけるところの本人の、二人の人たちの診療メモ、カルテというものをこれは出していただけばすぐわかることだと思うのです。この点についてやはり委員会を通じて資料の提出をひとつ求めたいと思う。おそらくこの間の千葉のチフスの事件じゃございませんが、カルテ燃やすようなことはないと思いますし、保存をしなければならないことは規定をされておりますから、この診療内容についての資料提出をひとつお願いしたいと思いますが、できますか。
#192
○政府委員(滝沢正君) 私のほうでは、五月四日毎日新聞の報道がございまして、実は、先ほど申し上げたような性格でございますから、直接国立長野病院長と長野の営林局長との間で契約を取り交わしてそういう調査研究を実施いたしておりまして、このような事例については、まあ、われわれのほうに報告は通常的にはございませんものですから、で、今度の報道によって実態を至急調べたわけでございます。したがって、調査項目につきましては、血液に関しては三十項目、尿は一項目、肝機能について四項目、末梢循環機能三項目、神経機能に二項目、骨関節レントゲン十二カ所、目について二項目、一般検査として五項目というようなことで、かなり温泉治療、しかも期間も長いのでございます。それから、先ほど例に引きました朝食抜きでというのは、やはり朝食前に調べなければならないような検査項目、血液の状態というものを調べたいためにはどうしても食事をあとにしていただくというものを表現として朝食抜きと、このようなことになろうかと思いますが、いずれにいたしましても、そのような性格でありましたものですから、病院長も、私たちのほうも、これは今後どういうふうにこれが取り扱われ、あるいはこまかい細部の患者のお気持ちなり、あるいは病院とのやりとりの間にどういうあるいはトラブルが、今後トラブルとして起こるかどうかは予測できませんが、現状の私たちの承知しておる範囲では、一般的な調査研究であって、決して人体実験というようなものではなかったというふうに理解しております。
 なお、お尋ねの診療録等について、このような事実なり項目はわかっておりますから、それについて調査研究はいずれ公表する、いわゆる学会的な公表をするかもしれませんし、あるいは営林当局なり、それから労働衛生センター等の関係者もこれに関心を持っておられますから、そういう意味で正式にこの患者の調査した結果というものは公表されるべきだと思うのです、調査研究でございますから。そういう問題も含めまして、私は資料の提出はできると思います。
#193
○須原昭二君 これはひとつ資料をなるべく早い機会に出していただきたいということをお願いして次へ進めたいと思います。
 やはり国民の基本的な人権の視点から考えてみて、現在の最近の医療行為の中で、医学実験なのか、それとも患者の治療なのかという問題が、きわめて多くの日常のニュース、報道等に多く取り上げられておるわけです。人体実験といえば、いま一番大きな話題になっているのは、臺教授の実験ですね。たまたまこの問題は、先月の二十八日、名古屋で日本精神神経学会、私の地元でございますから、実は関心を持ってこの問題点にも対処しておりました。で、臺教授のやったロボトミー手術の際に患者の脳の一部が採取された問題が、これが一つたたき台になっておるわけです。医学実験の総反省を目ざしたやはり日本精神神経学会の非常に画期的な私は集会だったと思うわけです。
 そこで、ここで従来臺教授は、実はこの二人の患者は、「手術はいやだ」と叫びながら手術室に運ばれ、治療という名のもとに脳の一部の摘出とロボトミー手術を受けて、一人は六日目、もう一人は九日目に死亡した。カルテには脳内出血の疑いが非常に高いため脊髄液を取ったところ、明らかに出血が認められた。再切開でこれが確認されたと、こう書いてあります。また、標本には幅一センチ、深さニセンチのえぐられたあとがあり、これはこの臺教授の大脳皮質の小片採取の舞台となった東京都の都立の松沢病院の吉田哲雄医師から、死亡した患者二名のカルテと脳の標本が名古屋で出された。そこでもうえらい紛争になって、紛争というか、ショッキングなことでありまして、これはもうたいへんなことだということで議論が百出したわけです。で、臺教授は現在は精神医学にとって科学的な研究が非常に重要な時代だ。なおすのがむずかしい患者が現実に目の前にいるのだ。人権の尊重には賛成だが、このことがきっかけになって科学的研究をすることが悪だという風潮がつくられていくなら患者にとっても不幸なことだと、まあこれは自己弁護しているわけですね、なお。こういう問題について私は、人体実験というものは当然最低の許容の条件があるはずだと私は思うわけです。その点についてどうお考えになっておられますか。
#194
○政府委員(滝沢正君) この問題につきましては、実はたいへん重大な問題でございますが、世界医師会という立場で、先生も御存じかと思いますが、ヘルシンキ宣言というのがございます。これは臨床研究を行なう医師に対する指針としての勧告ということでございまして、その基本原則の中に、やはり臨床研究というものは科学的に正当であるということがまず第一に認められねばならないとなっております。それから、資格のある医師その他、要するに責任ある条件のもとにこれが行なわれなければならない。それから、被験者は必ずこれに対し承知をしていなければならない、了解を与えていなければならないというような一つの原則を宣言として出しております。それが基本原則でございますが、もう一つは、先生の御指摘のように、医療と結合した、まず一般的な意味で行なわれる正しい治療と言いながら、その中に若干研究的な意味も含む、すなわち医療をやりながら臨床研究と言える範囲のものと、もう一つは、若干新しい試みなり、あるいは変わった試みをすることによるという意味で、そのケースで一般的には考えている以外の治療も加えてみる、そういうような臨床研究と、こういうものに対する医師の基本的な態度というものを示しております。これは加盟しておる世界各国の医学雑誌等にときどき掲載することによって世界各国の医師の注意を喚起し、これに基づいて問題を正当に処理していくように取り扱われております。で、わが国にはもちろんこのような人体実験に関連する、あるいは研究に対する態度というようなものの綱領なりあるいは宣言なりというものはいまだございません。この点については先般の衆議院等でも御質問がございまして、私は、学会なりあるいは行政当局ももちろんこれを推進すると申しますか、場を提供して検討することは必要と思いますが、やはりこのような問題は医療に携わる団体みずからの問題としても考えなきゃならぬし、あるいは先般学術会議等がこの問題を取り上げようとして、まあ結論は出なかったようでございますが、そのような、わが国にも、先生の例に引かれた精神病学会の例等を契機といたしまして、このような問題に対する態度というものを明確にしていくという考え方が逐次起こってまいっております。そのほか許容さるべき医学的諸実験というものでニュルンベルクの綱領というものも世界医学会において採択されておるような例があるわけでございます。
 いずれにいたしましても、人体の実験というものを許容される条件というものはやはり基本的にはある。そういうものを満たした上でこれを実験する必要がある。実験と申しますか、要するに臨床研究として、あるいは動物実験その他を含めた実験、研究として推進することによって学問の進歩に寄与していく。これには、いままでの例のように、本人の了解なし、あるいは了解を与える能力のない者には親権者の許可を得なければいけないというような基本原則も守らずにたまたまやっておるような実験例が最近特に問題になっております。広島大学のガンの実験というようなものについてもそのような点が非常に明確に指摘された問題でございます。
#195
○須原昭二君 やはり脳の小片を摘出をしたというカルテ、あるいはまたその脳の標本が出されたとき、私はそういう報道を聞いて、ほんとうに背筋に冷たいものを感じたわけですね。現に日本精神神経学会の名古屋におけるところの評議員会においても、七十二対三で圧例的多数で臺教授の行き過ぎを認めておるわけです。こういう問題点について私は、この際、はっきりしておかなければならない問題点は、医学実験か、いわゆる患者のための治療なのか、これはほんとうに基本的にいま私は人権の問題として大きな課題だと実は思うわけです。たとえば、新薬の開発についても、臨床実験なり、何も知らない人たちにうじゃうじゃ飲ませて、そしてその反応、効果を判定する。これはまさしく人権を無視している。たとえば二重盲検といって、本物とうそものと飲ませて、その評価をさせるようなことも人を偽ったことであって、これまた基本的人権を侵すことである。そういう人体実験がいまや精神病院の中においても特に隔離をされているところの精神病患者、あるいはまたわれわれの目の届かない厚い壁に囲まれているところの刑務所の中、そういうところで堂々とまかり通っていることを私たちは考えるときに、われわれ自身ですら、国民は知らず知らずのうちにモルモットのように実験台の上に供せられているのではないかという不安すら持つと私は思うのです。したがって、この際、特に臺実験について厚生大臣はどう考えられるのか。これは個人の御所見でもけっこうでございますから、ひとつ承っておきたいと思うのですが、いかがですか。
#196
○国務大臣(齋藤邦吉君) 私も専門家ではございませんが、人体実験というものは人権尊重の上からいって行なうべきものではない、かように私は考えております。
#197
○須原昭二君 そこで私は、先ほど医務局長がおっしゃいますように、いわゆるこれは非常に反復されている問題点なんです。いかにして患者の治療をするかという、その範疇の中から研究の場合と実際の治療と二つあることはよくわかります。したがって、やはりこの研究をストップせよということを私は言っているわけじゃないのです。したがって、私たちは、最低の許容条件が満たされた場合にはこれは実施をしてもいい。そこら辺の法的な問題点をきちんと処理しておかなければならないと思うわけです。
 先ほど申し上げましたように、まず第一に、やはり人権問題からいうならば、患者自身の同意をとることが  何をやってもいいというわけではございませんけれども、何をやってもいいというわけではないけれども、まず最初に、患者の同意が必要である、少なくとも患者の同意が必要であると思うけれども、その点の所見はどうですか。
#198
○政府委員(滝沢正君) 先ほど申し上げましたように、法律という形は、基本的には医師なり医学関係者の基本的な条件として、このような医道の立場からも、法律を制定されなければ守れないというようなことではなく、その点はもう医師としてのあるいは医療に従事する者の基本原則の中にあるのです。したがって、医療の人体実験とか研究に対する態度というものは、世界各国ともこれは法律事項というよりは、宣言なりあるいは綱領という形で守るべきものとしてそういう態度をとってきております。したがって、わが国も先ほどお答えいたしましたように、おそらく今度の精神病学会等の問題あるいは学術会議等の動きあるいは日本医師会がどう考えるか、まだ私、接触いたしておりませんが、このような問題についてやはり何らかの世界の宣言に、それでよろしい、それを日本国でも共通的なものとしてそれをよろしい、それを守っていこうということになるのか、新たな日本としての何か綱領なり宣言なりというような考え方が出てくるのか、その点は今後に検討される問題だと思います。いずれにしても先生のおっしゃる患者の同意ということ、しかも患者にそれを同意を与える能力のない場合については、その親権者の同意を得なければならないというのは、どこでも盛られておる基本的な条件でございます。
#199
○須原昭二君 いや、いまお話を聞いておりますと、医師の良心に従うのだと、そういうことは基本原則の中にあるんだと、あるんだということが一般通念になりながら臺教授のような問題が出てくるわけです。そういう問題に対してどう対処するかというのは行政の責任だと私は思うんです。そこを私はお尋ねをしているんで、その点に対する明確な御答弁をいただきたい。
#200
○政府委員(滝沢正君) その点については、先ほど申し上げましたように、法律の定めによってこれはよろしい、これは禁止するというような性格のものではないんじゃないだろうかというのが私のお答えした趣旨でございます。
#201
○須原昭二君 そういたしますと、
  〔理事大橋和孝君退席、委員長着席〕
やはり、こうした臺教授がやったことについては、あれは悪かったというだけで淘汰されていくものですか。どこに制約、歯どめがあるのですか、それを私はお尋ねしているのです。
#202
○政府委員(滝沢正君) 現状のわが国の医師法等に基づきます医道審議会というのがございます。これはこの刑罰を受けた場合あるいは医事関係で不正のあった場合あるいは一つの表現として「医師としての品位を損するような行為のあったときは、厚生大臣は、その免許を取り消し、又は期間を定めて医業の停止を命ずることができる。」というようなこと、これは医道審議会にはかった上やれと、こういうふうな定めがございます。したがいまして、臺教授の例が今後どういうふうに取り扱われあるいは道義的な立場だけで一つの批判を受けて、今後学会としての大きな反省の契機になったということだけで終わるのか、あるいは何か事件として今後取り上げられることになったならば、医道審議会というような場においてこの問題が取り扱われるという可能性はあるわけです。しかし、それが医道審議会というのは、基本的には事件の性格に応じて一つの処分なりあるいはそういうものが行なわれたのを受けて医師としての身分の取り扱いをどうしようかということが現行の医師法の中では定められておるというふうな理解でございます。
#203
○須原昭二君 そこで医道審議会というものがただばく然としてあって、だれが提案をするのかわからないというような表現でなくって、それは行政の責任者として医道審議会から答申されるんでしょう。かけるんでしょう。ですから、厚生省はこの臺教授がやったことに対してこの医道審議会にかける価値があるのかないのか、そういうことを私は聞いているんです。ただ、それは医師の良心だ、医師の範疇、医師の集団の中で考えればいいんだということでこれは行政がほかっておいていいものか。問題があるならば、やっぱり厚生省なり医道審議会なるものに対してこれはどうしたらいいか、かけるのは、これは当然の私は責任だと思うが、どうですか。
#204
○政府委員(滝沢正君) この問題については、学会等において先ほど来の大多数の御意見が臺教授の実験を否定されたと、この否定されたのがいわゆる医師としての品位を害するというような意味で否定されたのかあるいは実験としての行き過ぎであり、われわれとして反省しなきゃならぬ、これをこのままでよしとしとくわけにはいかないという意味の否定的の見解なのか、その程度のことでは医道審議会において医師の品位を著しくそこなったということで、われわれとしてこの医道審議会に、臺教授の今回の精神病学会としての態度を受けて、これを医道審議会にかけることにはよほど慎重に検討する必要があると思います。私は医道審議会というものがそういう何か外部の条件が整わなければ絶対発動するものではないという、決してかたくなにあるいは受け身にだけ考えておるわけではございませんが、事の性格というものをやはり十分検討した上で、この法に定められておるように、医師の品位を損するような行為があったということと、大挙教授であり研究ということに従事しておった臺教授がしかもロボトミーという精神科の医療には許されておる脳の治療方法を使って、たまたま目的なりその取り扱い方なりあるいは本人の了承なり親権者の了承を得るとか、そういう態度、いわゆる実験研究を進める態度自体に大きな反省と批判があったということを認めることはできますけれども、この問題を定められたこの条文に照らして、はたして臺教授を医道審議会にかけるべきかどうかは私は慎重に検討する必要があると思います。
#205
○須原昭二君 大臣、それは非常に慎重慎重とおっしゃいますけれども、これは非常に私は医師の品位という問題と、やはり被害者である国民の立場とはおのずから違うわけでありまして、私自身がこの記事を読み、現場の報告を聞いて非常にショックな私印象を持ったわけです。ほんとうにある標本を出され、カルテを発表された瞬間のみんなの深刻な顔というのは、まさに医師の品位の問題ではないのです。国民の側から立てば、きわめて不安なことです。こういう点を指摘をしておるのであって、そういう問題は、厚生大臣慎重だ慎重だとおっしゃいますが、この点はどういうふうに慎重を期せられますか、ひとつお尋ねをしておきたいと思います。
#206
○政府委員(滝沢正君) 委員長……
#207
○須原昭二君 いや、厚生大臣に聞いておるのです。あなたは出しゃばっていかぬよ。
#208
○政府委員(滝沢正君) いや、いまの申し上げましたように、治療方法そのものとしてはロボトミーというものは当時許されて、昭和二十六年のこれは事実でございます。今回年を経てこれが問題になったという経緯を考えますと、やはりわが国の先ほど来先生が取り上げたきょうの問題である人体実験あるいは医療に対する医師の態度、こういうもの自体の変化というものが大きく参りまして、そして今回二十何年前のこの事件というものを、当時の医療としては、医師として当然行ない得るものとして、責任ある医師が行なったその行為を、いわゆるいまの医療の立場から、あるいは医師の最近におけるいろいろの批判に対する考え方としてこれを取り上げたということでございまして、したがって時間の経緯その他も考えまして、この学会が取り上げたから即臺教授をこの条文に照らしたものとして取り扱うかどうかは、十分検討する必要があるということを申し上げたわけでございます。
#209
○須原昭二君 大臣、十分に検討することなんですか、大臣の所見を承っておきたいと思います。
#210
○国務大臣(齋藤邦吉君) 私も専門的な知識を持ち合わしておりませんが、こういう問題につきましては、これを医道審議会にかけるべきものなのか、かけるべきでないものなのか、私もいま的確な判断をすることはできませんが、十分先生の御意見等も頭に描きながら慎重に考えさせていただきたいと思います。
#211
○須原昭二君 そこで、今度は前向きにそれで慎重にひとつ考えてもらいたいと思うのです。あれだけ新聞に出て、あの報道を聞いた方々はみんな戦慄を覚えたと思うのです。ですから、私はそういうきついお話をしたんですが、いずれにしても、まず患者の同意を得るということが私は前提でなければならない。それからもし患者がそういう判断力がないとするならば、その保護者の同意を得るということ、特に精神薄弱児や精神病というものについてはこれまた家族・保護者といっても非常に複雑な面があるわけですね。まあ端的に言うならば、家族の名誉あるいはじゃま者扱いするという社会的な風潮が、これは社会施設が足らない、社会保障が充実をしていない日本の貧困の来たす現象なんだけれども、こういうじゃま者扱いをする保護者の観念からいうと、こういうものに対して同意を与える場合もあるかもわかりません。したがって、そういうものについては非常に私は慎重を期さなければならないと思うのですが、いずれにしても、やはり本人の同意を得ること、家族の同意を得ること、こういうものが私は前提条件でなくてはならぬと思うわけです。特に私は製薬の関係におきましても、新薬の薬効の再調査を見ましても、四十二年から総洗いやっているでしょう、その臨床結果はほんとうに製薬大企業が大学の教授にたよって、至るところでこの実験データを出さして、それを添付して厚生省の薬務課に出さなければ許可せぬでしょう。どこでやっているんですか。私はそういうほんとうに純粋な医学の発展のために、薬学の発展のためにそういう臨床実験なり人体実験を必要とするならば、当然私は国が指定をする、そういう機関で堂々と私は行なうべきだ。陰に隠れてそういうことをやるべきではないと思うんですが、その点はどうなんですか。
#212
○政府委員(滝沢正君) この点につきましては、薬務局からも医務局へ相談がございまして、実は前々から国立病院と大学が機能的にも、またこのような問題に対する組織的な活動の面で、大学は、それぞれの大学ではございますが、大学全体としての組織的な研究を整えるには困難な条件もございますので、前々からたとえば結核の新しい薬の開発された場合の調査研究は国立療養所、病院等を中心にしてもう二十年来結核の新しい新薬、それの結果を踏まえて、そして治療指針にこれを登載していくというような経過をたどってきております。したがいまして、この問題につきましては、先生の御趣旨のとおり、なかなか問題のあることであり、そうかといって新薬の動物実験では十分の安全性と可能性は見出せても、やはり臨床実験なしにこれを許可するということはできませんから、したがいまして、われわれはいま薬務局と医務局合同でこのような問題を処理するために国立病院等をそのような組織の中できちんと整えていくということについて検討を始めております。
#213
○須原昭二君 そこで、いずれにしても、この人体実験、医学実験のあり方、この問題は非常に重大な問題だと思うんですよ。私はことばを強いことをよく言うものですから、表現がきつく当たりますけれども、心静かに言っても、穏やかに言っても、これは問題が非常に重大な問題だと思います。ですから、それは医師の集団の皆さんが、そういう医師の良心にかけて、基本的な原則だから守るべきなんだ、当然なんだ。医師はオールマイティだ、こういっても、それはわれわれ大衆にはわかりませんよ。ですから客観的にあるところの行政の責任者がやはりこれはいい、これは悪いという判断を私は当然なさるべきではないかという感じを持っているわけです。したがって日本医師会なり各種学会等が、これは日本製薬学会なり、製薬の段階でもそうなんですが、いずれにしても、この範疇をどうするかという基本的な概念を早く日本でも樹立させるように、厚生省みずからが指導するなり、つくらなければ厚生省がそれをつくっていくぐらいの基本的な積極的な姿勢を私は示すべきだと思うのです。その点はどうですか。
#214
○政府委員(滝沢正君) この点につきましては、先般の衆議院のお尋ねでお答えしたわけでございますが、世界各国の綱領あるいは宣言等を踏まえて、そして、これがいかに国が違い、いろいろの事情が違いましても、基本的な条件というものは、この世界医師会の宣言なり綱領というものにかなり私は共通的な基本のものがあると思うのです。そういう意味で、こういうものをとらえて、行政の立場はそれを審議したり御検討願って促進する場を提供いたしたいと思いますとお答えし、なお、医師会、学会、特に学術会議等が最近はこれを取り上げようという動きがございますので、私は少なくとも行政の立場からも、みずからそれを宣言を起草しあるいはというような立場でなく、場を提供して十分それぞれの関係者に御審議願い、場合によっては、先ほど来、臺教授をどうするというのじゃなくて、医道審議会そのものもやはりわれわれの持っておるこの医道の問題について御意見を承れる場所でございますから、そういう意味で一般的な意味のこのような問題についての御意見も承りたいというふうに思います。
#215
○須原昭二君 非常に前向きであるような前向きでないような御答弁で非常に不満なんですがね。いずれにしても、科学の発展の美名のもとにとうとい人権が無視されてくる。一人や二人はこれは犠牲になっても、みんなのしあわせになれば、科学が、医学が、薬学が発展すればいいというものの解釈こそ私は排撃をすべきだと思うのです。そういう立場に立つと、何のための研究だと言わざるを得ないわけで、そういう基本的に真に守る立場に立ってやはりこの行政というものははっきりさしてもらわなければならないと思います。ですから、何べんか繰り返しておりますけれども、人体実験、医学実験、新薬に関する開発に対する臨床実験、二重盲検等々、すべてがやはり患者の同意を得ること、それでなければ保護者の同意を得ること、またその実験は指定をされた機関で行なうこと、この行政の責任者としてそのぐらいのことはきめられるでしょう。そのぐらいのこともきめられぬですか、どうですか。
#216
○政府委員(滝沢正君) 先生おっしゃったような問題についての方向をきめていくことは私もできると思います。ただ、非常に先生おっしゃった例と、私が受け取る問題とで、二重盲検の問題に本人の了承を得るというこの組み合わせば非常にむずかしい問題でございます。で、二重盲検ということが基本的には薬学、新薬の開発その他に重要な問題であることは理解しながら、しかも本人の了承を得ずにやることができないと二重盲検にはならないという問題に、この矛盾をどう処理するかというような点も含めまして、行政の可能のものとそれから十分検討しなければならぬものとを踏まえましてこれは進めなければならないと思っております。
#217
○須原昭二君 最後に大臣、非常にこれはことばが強くなって恐縮ですが、もう少し私は厚生省はこの問題をはっきり、学会に聞くのだとか学会の自主的だとか、そういうことで責任を転嫁をしておってはいけないと思うのです。やはり行政の責任者として明確なる態度を発表すべきだ。また、この問題についてはこう対処するというそういう行政的な能力を発揮する段階だと思うのです。その点の大臣の所見をひとつ承って、私も時間がきましたからやめたいと思います。
#218
○国務大臣(齋藤邦吉君) 医学、薬学の進歩は望ましいことであります。しかしながら人権を無視するということはいかなる場合においても許しがたいことであります。したがって、私はそういう問題を頭に描きながら、できることならば、そういうことが審議会の仕事にあるかどうか知りませんが、医道審議会などにおいても十分私は検討していただくべきものであると考えております。
#219
○委員長(矢山有作君) 本件に対する質疑は、本日はこの程度にとどめます。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後四時四十八分散会
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ソース: 国立国会図書館
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