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1972/06/21 第71回国会 参議院 参議院会議録情報 第071回国会 社会労働委員会 第13号
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1972/06/21 第71回国会 参議院

参議院会議録情報 第071回国会 社会労働委員会 第13号

#1
第071回国会 社会労働委員会 第13号
昭和四十八年六月二十一日(木曜日)
   午前十時十九分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 六月二十日
    辞任         補欠選任
     高山 恒雄君     中沢伊登子君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         矢山 有作君
    理 事
                玉置 和郎君
                大橋 和孝君
                小平 芳平君
    委 員
                石本  茂君
                川野辺 静君
                君  健男君
                斎藤 十朗君
                高橋文五郎君
                橋本 繁蔵君
                須原 昭二君
                田中寿美子君
                柏原 ヤス君
                小笠原貞子君
   国 務 大 臣
       厚 生 大 臣  齋藤 邦吉君
       労 働 大 臣  加藤常太郎君
   政府委員
       厚生省社会局長  加藤 威二君
       厚生省児童家庭
       局長       穴山 徳夫君
       運輸省自動車局
       長        小林 正興君
       労働事務次官兼
       労働省労政局長  石黒 拓爾君
       労働省労働基準
       局長       渡邊 健二君
       労働省労働基準
       局安全衛生部長  北川 俊夫君
       労働省職業安定
       局長       道正 邦彦君
       労働省職業安定
       局審議官     中原  晁君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        中原 武夫君
   説明員
       厚生省医務局国
       立病院課長    佐分利輝彦君
       林野庁林政部長  平松甲子雄君
   参考人
       名古屋大学助教
       授        山田 信也君
       林業従業者    芝田 鶴一君
       全国山林労働組
       合患者協議会事
       務局長      前川 哲夫君
       林業労働災害防
       止協会常任理事  坂井 忠一君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○労働問題に関する調査
 (白ろう病に関する件)
 (中鉄バス株式会社の労働問題に関する件)
○社会保障制度等に関する調査
 (心身障害児・者対策の推進に関する決議の
 件)
○港湾労働法の一部を改正する法律案(内閣提
 出、衆議院送付)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(矢山有作君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 六月二十日、高山恒雄君が委員を辞任され、その補欠として中沢伊登子君が選任されました。
    ―――――――――――――
#3
○委員長(矢山有作君) 労働問題に関する調査を議題といたします。
 白ろう病に関する件について調査を進めます。
 本件につきましては、本日はお手元に配付いたてております名簿の方々を参考人として御出席をいただいております。
 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、本委員会の調査のため、御多忙のところを御出席いただきましてまことにありがとうございました。つきましては、白ろう病に関する問題について忌憚のない御所見を拝聴いたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。
 まず、それぞれのお立場から各自二十分程度の御発言を願い、そのあと委員からの質問に対しお答えをお願いいたしたいと存じます。
 それでは山田参考人にお願いいたします。
#4
○参考人(山田信也君) お手元へ配りました印刷物をごらんいただきながら御説明いたしたいと思います。
 私は、昭和三十九年以来国有林、民有林の労働者の白ろう病の問題を手がけてまいりまして、この間、私が経験しましたことを中心にお話をいたしますが、お手元に配りました資料は、その中で特に最近静岡県下で行ないました調査の結果であります。時間を節約するために、この印刷の内容を御説明しながら問題点を指摘したいと思います。
 これは本年四月行なわれました日本産業衛生学会で発表したものでございます。静岡県の天龍川、大井川の上流の奥地の海抜千メートル前後の森林で働いておりますチェーンソーを扱っている労働者の健康診断の内容になっております。一般の春、夏の定期健康診断が行なわれておりますうちで、三百六十名受診をした中のうち、チェーンソーを使ったことによって症状が出たと自覚している人たち六十名を対象にしまして、実際の受診者は五十名になっております。表の1をごらんください。ここには受診者の年齢とチェーンソーを使用した経歴と、普通に白ろう様変化といわれている指が白くなる現象を経験した者の数が示してございます。ごらんになるとわかりますように、中年から高年にかけての人々が多く、しかも、それらの人のかなりの数に手の白くなる訴えが存在しております。これは図の一でもう一回整理し直してありますが、チェーンソーを使用し始めた年齢は何歳であるかというのがグラフになっております。四十五歳前後のところが大きなピークになっております。つまり検査を受けたときも高齢者が多いわけですが、これらの人たちがチェーンソーを使用し始めた年齢が中年から高年にかけての、体力的にいえば幾らか下り坂になっている状態のところでこの機械を使い始めたという実情がうかがえます。この点は国有林などと比べれば一つの大きな違った特徴であります。農山村における労働人口の高齢化の現象がこういうことにも反映していると考えられます。
 次は労働条件ですが、一年間に何日ぐらいチェーンソーを使用しているかということを調べてみましたが、百五十から二百日前後というところが多うございます。案外数が少ないように思われますが、これらの中には農業を兼業としている人たちがございまして、それが暇になる晩秋から冬にかけて作業日数が集中しておるという特徴がございます。これは国有林とは全く逆の関係でありまして、それだけ民有林の人は寒冷にさらされる時期にチェーンソーを握る機会が多いということを意味しております。表の3は、それらの人が一日に使う機械の時間であります。四時間から八時間に及んでおります。現在国有林ではチェーンソーの一日最高使用時間は二時間と規制されておりますが、これらに比べて、民有林の人たちがいかに長い時間チェーンソーを使っているかということがわかります。また、民有林の人たちは、天候の条件がよければ朝早くから夕方おそくまで仕事にかかるというやり方をしますので、国有林のように一日一定、定められた労働時間内のチェーンソー使用というような、定まった規則というものはほとんどありません。これらは、それらの人々の個々の生活要件によって、それらの人々が自己調節をしてこのような使い方をしておるということができます。
 調査の結果ですが、(1)白ろう様変化の発生は、表1のように受診者五十名中四十一名各年齢層、各経験年層に広く分布しております。この際、五十名中四十一名というのはたいへん発症率が高いわけですが、実ば、すでに三百六十名の中から有症者が六十名選び出してありますのでこの比率はもっと下がってまいりますが、それにしましても、職業病としての発生比率はかなり高いということができます。しかも、手が白くなると普通にいわれております症状の範囲が、普通は指の第二指から第五指、親指が白くなるということはきわめて少ない例であります。国有林でもあまり多くありませんが、ところが、この場合には六名、手のひらに及ぶ者は五名、腕にまで白くなる者が一名、さらに足の指までいく者が一名という、たいへんに強い、きわ立った症状が起こっていることがわかります。こういうようなきつい症状というのは国有林ではあまり見かけることはありません。その下に非常に重症であった一例が書いてございます。四十八歳の方でチェーンソーを使用開始して三年目に肩や腕がこわばり、チェーンソーを落として足をけがをしております。五年目ごろから白ろう様変化が指から腕にまで発生するようになり、全身的に症状があらわれてまいります。チェーンソーの使用したあと、胸を裏側から刺すような痛みが起こり始めています。これは手の血管の縮みぐあいがすでに心蔵の末梢の血管にまで及んできたことを示しております。また冷えると顔がこわばってくる、食事がとりにくくなる、これは顔面の筋肉が、血管の循環障害が起こりまして、十分に動かなくなってものを食べるとこぼしてしまうというような強い症状であります。さすがに本人もこわくなりまして使用を中止しまして、それ以来集材機を扱う作業についておりますが、一向に症状は改善されません。この人は振動障害としての顕著な例でありますけれども、労災補償の適用を受けてはおりません。こういった重症例は、私がそれより五年前に木曽谷で調査を二回いたしましたが、この場合にもこのような症状が発見されております。そこに例が書いてございますが、寒冷期は、ほとんど冷えやこわばりのために労働能力を失って、ただ部屋の中で、あたたかいところにじっとすわって一冬を過ごすと、春になると少しずつ動き出す、夏でも満足には動けないというような状態の人がおります。二枚目の文章に参りますが、そこに、パーキンソン様症状を発して死亡した者一例というのがございます。これは症状だけを見ておりますとパーキンソン氏病という非常に特徴的な、手がふるえ筋肉が全身的に麻痺状態に陥りまして死亡する例がございますが、一見それにたいへん類似をした症状を呈しましたけれども、症状の経過をずっと追っておりますと、明らかにこれは振動による障害が全身的に及んだ傾向が十分にうかがうことができる、鑑別の診断をする場合たいへんむずかしい例でありまして、労働省でもこの内容についてはいろいろ検討されたようでありますけれども、一応労働者を保護するというたてまえから積極的にこの労働者に対しては労災の適用が行なわれております。静岡の県下で私が実際に扱いました例では手の変化が強く指の先がけがをしたあと腐ってくる、そこで血管を広げるために腕にきている血管を収縮させる神経を切除したという例が出ております。このような重症の例というものは国有林では見ることができません。
 二番目の神経、筋肉糸の自覚症状が表の4に示してあります。振動障害、白ろう病といわれるものの主たる自覚症状の手の白くなる、痛む、こわばる、しびれるなどのうちで、痛み、こわばり、しびれの数が手から足に及ぶまでどのくらいの範囲に存在しているかというのがそこに示してございます。手、腕、肩、かなり広く痛み、こわばり、しびれが存在しております。
 三番目に、生活と労働の中で障害となる自覚症というのがあげてございます。温度の感覚が二〇%、冷えの感覚が六四%が異常、手・指の動作障害が六〇%、腕の働きの障害が六四%、聴覚の障害が四六%、腰痛六四%、睡眠、食欲、消化などいずれかが七八%ございます。具体的なこの症状の中身を申し上げますと、たとえば手でふろの湯かげんがわかりにくい、熱いものが平気で持てる、冷たい水の感じが少ないなどという温度の感じの変化、あるいは指の動きの例で申しますと腕時計のネジが巻きにくい、シャツのボタンがはめにくい、こまかい字がうまく書きにくい、指がよくふるえるというような例がございます。それから全身的な症状では疲れやすい、もの忘れする、いらいらする、からだがふらふらする、胃の調子が悪い、息切れやどうきがして胸が苦しいことがあるというような症状も訴えられております。こういう自覚症の非常に広い範囲にわたった訴え方は、実は白ろう病として手が白くなることによってよく知られるようになりましたこの振動障害が手だけではなくて全身的な広がりを持つ病気として発展するんだということを示しております。実際に検査の所見や重症化した例などを見ましてもこうした白ろう病の全身的な疾病としての特徴をうかがうことができます。
 それでは、こういうような異常な所見を訴えた人たちが医療の上であるいは作業の上でどのような保護を受けているかということをあわせて調べてみました。これらはすべて私が面接をいたしまして、詳しく内容を問いただした例でありますが、表の6をごらんください。ここには主として手が白くなった症状を取り上げまして、あなたは現在まで何年間この手の白い状態が続いているかということを問いまして、これが一番上の項にございます。「手指白ろう様症状の継続年数」というのがございます。二年まで、四年まで、六年まで、八年まで、十年までと分けてございますが、それぞれに該当している人たちの中で労災の適用を受けている人はわずかに一名であります。先ほど述べました重症の人はこの適用を受けておりません。この受けてない理由が幾つかございますが、これはまた、ほかの方から御意見があると思いますので、私の場合は省略をいたします。それから医者にかかったかどうか。このうち一時的にかかった者が六名だけであります。継続してかかっている者は一人もありません。このような症状が進行したためにチェーンソーの使用をやめたかどうか。やめた人は二名です。一日の使用時間を自発的に短くしたという人は二名、何らかの時間規制をした人は合計四名ということになりますが、これではあまりにも数が少なすぎます。生活の上でいろいろくふうがございます。特に通勤の際に非常にからだが冷えますのでオートバイに乗って走っていたりするのを四輪にかえる、金をくめんしまして四輪の自動車を買ってからだの冷え方を防ぐ、症状の悪化を防ぐというようなことがございます。これが二例ございます。そのほかは特に変わっておりません。参考までにその下に、こういうチェーンソーを使うにあたって技術的な訓練をどのくらい受けたか、それからチェーンソーの使い方を誤れば、――これは時間の長さあるいら使い方自体が入りますが、その場合には振動病が起こるんだという話を聞いたことがあるかどうか、それを尋ねてみますと、一応技能訓練を受けた人は約半数強ございます。それから振動病の話を聞いたという人が半数弱ございます。これは以前、私が民有林で調べました状態に比べますと幾らか数の上ではふえております。また本人たちが自覚をしまして、いろいろと本を読んだりあるいは新聞などに注目をしまして自分の知識をたくわえている例がございますけれども、しかし、その内容はあまり十分であるとは言えません。こういうような調査をしてみまして、また私たちのところへ愛知県、岐阜県、静岡県、三重県から民有林の働いている人たちが個別に相談に参りまして、私の手元で、その約四十名近い人を長い年月にわたって、経過を観察しております。
 一体こういうように振動病にかかった人の経過というものはどうなるのかということについて若干触れますと、症状の初期の軽い段階のうちには使用を中止しますと一応症状は軽減してまいります。しかし、冬になると毎日のように手が白くなる、あるいは腕の力が落ちてきた、夜には手がしびれて眠っていても痛くて目がさめるというような強い症状を訴え始めた人はこの症状はチェーンソーの使用を中止しましても容易に回復いたしません。そういうような経過が何年続くか。私は現在、昭和四十年チェーンソーの使用を中止して以来他の職種に移って山で働いている人を経過を観察しておりますけれども、現在もなお、夏でも山で冷たい水に手をつけたり夕立に会うと手が白くなる、家へ帰って冷えてくるとこまかい仕事がやりにくいというようなことを訴えている人がおります。このように振動障害は一たんある段階を越えますと容易に回復しがたい病気として存在しているということが昔から指摘されておりましたけれども、わが国にあらわれてまいりましたこのような振動病の実態は全くその説明を裏書きしております。私はこのような民有林の重症の患者さんたちを見ておりまして、また、調査のたびに痛切に感じますことは、このような人たちに対する積極的な保護対策を一日も早く講じてほしいと、一日対策がおくれれば症状の固定はそれだけ進み、この人たちの労働の能力がそこなわれ、次第に年齢が進んで、老化現象があるいは進む中で、症状が全身的に多様な状態に進展する可能性もある、ぜひいろいろな方面からこれらの人に対する予防措置、治療措置、積極的な保護が加えられるように望んでおります。
 以上です。
#5
○委員長(矢山有作君) ありがとうございました。
 次に、芝田参考人にお願いいたします。
#6
○参考人(芝田鶴一君) 本日は、この委員会に白ろうに関する問題の参考人としてお招きいただいたことを厚く御礼申し上げます。
 これから申し上げますことは私の歩んできた白ろうの実態であります。諸先生方がこの点を深く御理解なさっていただき、民間林業のチェーンソー等振動機械の使用者に、私と同じ道を歩かせないように御配慮くださるよう切にお願いいたします。
 私は、昭和二十三年から四十一年七月まで木曾谷の天然木の大径木を主として伐木造材を行なってきました。その間、三十四年十月から四十一年七月までチェーンソー伐採を行ない、内容については、伐木班長として、造材石数は人の倍はやったつもりであります。なお、危険木等は雇用主の指名により伐木造材をいたし、また機械使用者の未熟者の技術指導も行なってまいりました。賃金は出来高払い制であり、何ら裏づけ保障もなく、すべての支払いがその一日のかせぎ高の中からまかなわれていたのであります。当初は、一台の機械で三人が共同作業であり、機械使用者は常に三人の労賃の責任を持っていたのであります。
 こうした中で、三十六年一月から二月の冬期間に両手指先に疼痛を感じ始めてきました。翌三十七年の二、三月には左右の第二、三指に白ろう様現象が認められてきたのであります。年とともに次第にその白くなる範囲が広がってきたのであります。さらに、四十一年七月に、作業現場か海抜千七百メートルに近い高冷地もあってか、両手がまつ白になり、手だけでなく、全身の痛みと耳鳴りのために就労不能となってしまいました。このため地元古沢医院に通院したところ、病名「職業性多発性(左・右・示中・環指)神経炎の疑」と診断され、その後二カ月間休業しました。このことについては、当南木曾町民有林でも初めてのことであり、労務係とともに松本労働基準監督署へ出頭照会、指示を求めましたが、その時点で何ら指示もなく解決されませんでした。その後、医師のチェーンソー使用不可能の指示もあり、伐木造材――出来高賃金月収約十五万くらいの仕事をやめ、国有林下請の造林作業に転職しました。このときの賃金は、日額で二千三百円となり、伐木造材時点の日額六千円以上の半分以下となったのであります。
 この造林作業の中にも、四十一年から刈り払い機が導入され、使用するようになりました。四十三年七月には、白ろうの上に難聴となり、人語の聞き取りも不可能となり、県立木曾病院にて職業性難聴と診断され、休業治療を言い渡されました。翌四十五年五月三十日、職業性難聴の症状は固定し、治療は打ち切りとなり、翌十月一日より、職業性神経炎――白ろう病で継続休業治療となり、現在も自宅で療養中であります。
 そこで、現在の私の症状は、指の白ろう現象は出ませんが、指、手首、ひじ、肩、背中、腰、足の痛みとともに頭痛もあります。なお、耳鳴りは絶えずあり、話し声などが聞き取りにくい、特に腕を動かすとき、ひじにぎくっとなる痛みがときおりある。長年の薬の服用によるせいか胃腸がとてもぐあいが悪く、四十六年十二月ごろより、からだ全体のむくみがき始めて、いまなお治療を続けているが同じような状態であり、週一回の通院や家にすわっていることさえが苦痛になってきました。一年のうち、七月と八月ぐらいで、あとの期間は朝夕こたつがなければだめであり、寒くなると全身にけいれんが始まります。いまの服装は冬のメリヤスの長袖を着ておりますし、下は冬の袴下、くつ下は二枚はいております。こうやってすわっているときも、ときどき胸苦しくなったり、からだ全体がふわっと宙に浮いていくようになり、歩いていても皆よりおくれ、胸苦しく、足がもつれることがある。そして夜よく眠れないし、寝たときも心臓の鼓動が耳に伝わってくるようになった。ある医師は治療の中で、そういった苦しみが一人で考えていくとノイローゼになっていくと言われているが、手足の白ろうや、しびれ、痛みばかりでなく、高血圧症、心臓病等の障害により一日一日が不安であります。
 次に、生活の状態でありますが、四十三年七月第一回の休業補償給付の認定額は一日約千百円、年三十六万五千円であり、四十八年六月現在一日約二千円で年七十三万であります。四十七年一月より、足のむくみ、胃腸障害で白ろう主治医に相談したところ、さっそく院内紹介状により内科で治療を始めるよう指示があり、いまなお足のむくみ、胃腸障害、胸苦しさはなおっていない。これに要する費用は体業補償給付金の中から国保適用の三割自己負担があり、一日約八十円かかります。なお、心電図その他の検査科も含めて四十七年席は約二万五千円支払いました。なお、週一回の通院治療の中で、駅までの距離が約六キロあり、バスも何もなく天候のよい日は歩くことにしているが、悪天候等でタクシーを使用した場合、一回五百円がかかり、朝は八時二十五分の列車に乗るためどうしても使用せざるを得なくなり、タクシー代については労災支給が認められておらず、自己負担となっております。
 このような中で、家族の健康が自分の突発的に出る痛みや、胸苦しさ、足のだるさ等の家庭看護、また、少ない休業補償給付金の中の食生活の低下と、内職等の疲労が重なり、医者にかかりづめであり、月に約一万くらいはかかっている。このような状態の家庭生活の中で、私がいなんだら経済的、精神的、肉体的に家族が一時的にも解放されると考えたこともしばしばありました。いまも痛いとき、苦しいときにときどきそういう考えが浮んできます。
 私たちはことしの一月に、二十三名の白ろう患者で「白ろう病をなくす会」をつくり、現在は六十人の会となり、私が会長ということに推選されましたが、集まるといつも出ることは生活の苦しさ、もっと完全な治療が受けたいなどの深刻な問題ばかりです。特に、私の経験からも言えるのですが、一人だけで苦しんだり、考えたりすればするほど病気に負けてしまうことになりますので、できるだけみんなで助け合い、励まし合っていかなければと思ってやっています。
 次のことは、私のお願いであるとともに、「白ろう病をなくす会」に参加している六十人の切実なお願いでありますとともに、きょうも働いているであろうと思う民有林労働者全員の願いでもあります。
 一つは、早期に入院、治療を含めて完全治療を実施していただきたいと思います。特に、この治療の中で温泉治療がたいへん効果があると聞いていますし、こうした治療もぜひすぐに受けられるようにしてもらいたいと思っています。また、現在の体業補償では入院生活に必要な雑費の支出などの余裕はなく、入院したくも入院できないという問題もある現状であります。まだ私は、現在全身的むくみが出ているほか、白ろう病治療のための大量の薬の服用などのため、胃腸障害もあり、このような病気はすべてチェーンソー使用に原因があるように思われてなりません。すべて自費で療養しなくてはならず、苦しい生活の上に一そう負担がかかってきています。このような白ろう病に関連すると思われる病気は労災保険で治療できるようしていただきたいと思います。なお、大桑村、岡本勇さんが白ろう病の治療中死亡しましたが、再審査の結果、その死亡原因の因果関係が証明され、遺族年金を支給されるようになりました。私たちはその疾病が生きているうちに因果関係が証明され、同じ労災保険で適用されることを切に望みます。休業補償を大幅に引き上げ、実収の一〇〇%補償と完全スライド制を実施していただきたいと思います。私の聞くところでは、国有林では実収の一〇〇%補償が最近まとまり、実施されることになったと聞いていますが、同じ病気で倒れた私たちもぜひ同じにしていただきたいと思います。以上のほか、いろいろありますが、患者として以上の三点にしぼってお願いし、先生方の深い御理解とお力添えによって、この国会期間中に具体策が確立されるようお願いする次第であります。
 以上です。
#7
○委員長(矢山有作君) ありがとうございました。
 次に、前川参考人にお願いいたします。
#8
○参考人(前川哲夫君) 前川でございます。
 まず、振動障害問題についての私の意見を述べるにあたりまして、私と、この振動障害のかかわりと申しますか、どういう形で関係をしてきたかということをごく簡単に申し上げたいと思います。
 私は、現在全国山林労働組合の事務局を担当しておるわけですけれども、この全国山林労働組合と申しますのは、民有林の労働者で組織をされております全山労という全国山林労働組合というのが一つございます。これは全国組織になっているわけですが、それと国有林の労働者で組織をされております全林野労働組合が一緒になりまして、四十二年から日本のすべての林業労働者の社会的、経済的地位向上ということを目的に結成をして今日に至っているわけです。私は四十六年まで全林野労働組合の中央役員として特に中央本部では安全衛生問題の直接の担当者ということでこの問題に携わってきたわけです。皆さんも御承知だと思いますが、四十四年の十二月に林野庁と全林野労働組合の間で結ばれた例の一日二時間あるいは三日以上使ってはいけない、月に四十時間以上の使用をさしてはいけないという協定を結ぶにあたっても直接その仕事を担当してまいりました。そういった意味では今日民有林の仲間と一緒にいろいろな生活をしてみて、実は私自身驚くことばかりなわけです。で、いまから申し上げるいろいろな問題についても、先生方にはそんなことがあるのかと、こういうふうに言われるのではないかという私自身不安すら持っています。
 で、まず、民有林労働者のそういった中で、この白ろう病問題、振動障害問題の背景になっている労働条件の問題ですが、民有林労働者には八時間労働という原則がありません。また週休日も、時間外労働の割り増し賃金も、年次有給休暇も、年末手当も退職手当もないのです。こういう労働条件というものを、私はたまたまよその組合へ行って申し上げるのですが、労働者自身がほんとうにしてくれません。こういうバックグラウンドというものがあって、その中で振動障害というものがきわめて多発をしているということを私は特に先生方に申し上げたいわけです。で、なお先生方も御承知だと思いますけれども、そのほか失業保険も政管健保もあるいは厚生年金も民有林の労働者には適用されていないわけです。適用する、そういう制度になっていないわけです。で、まさに今日のこの労働行政の分野では最も深い谷間に押し込まれているのが民有林の労働者ではないのだろうか、こういうふうに考えます。また、こういった状態になったのはどこにあったのかというふうに考えてみますと、それは、一つは、民有林の経営の状態というものがきわめて零細であるということ、それから同時にみずからが企業的に経営をするという立場でなく、財産保持的にこれを経営をしている、こういったところにそういったものを生み出した背景があったというふうに言わざるを得ないと思います。そして日雇い的な不安定雇用あるいは労働条件がきわめて悪いというような形で、いわば明治時代の労働条件というものが今日に温存をされてしまっている、オーバーな言い方ですけれども、そういうことになったものというふうに指摘をしなければならぬと思うわけです。で、これはことばをかえて言えば、民有林経営者のほとんど大多数が労務問題を経営内部の問題として見詰めて、積極的に対策を立てようとする姿勢が全くないというところにこういった結果を生み出す大きな問題点があったのだろう、こういった問題点というのは当然の結果として労働災害や職業病に対するいろいろな問題の中できわめて明確に反映をされています。どういうふうな点でそれが言えるかといいますと、四十年から四十四年にかけて、山田先生からも先ほどいろいろ説明がありましたが、あれだけ振動障害というものが問題になって、政治的にも社会的にも問題になったにもかかわらず、国有林で二時間規制の協約が締結をされ、翌年の二月二十八日付で労働基準局長通達が出ているわけですが、これが今日なお、ほとんど実施をされていない。私も全国の山を回りますので、なぜ実施をされないのかということを、経営者の皆さんや労働者の皆さんと話し合います。その中で経営者の皆さんから出てくることばは、二時間規制をしたのでは仕事にならない、経費がかさむ、人がよけいかかる、いろいろな表現があります。しかしそれらを突き詰めてみますと、まず、二時間規制をするという努力をするという姿勢ではなく、二時間規制をしないために無視するための口実をどう理由づけるか、こういうところにどうも問題の焦点があるように感じられてならないわけです。この辺に、確かに非常に零細な経営の中でたいへんな問題を含んでいますけれども、根本的な問題が私はひそんでいるというふうにこの際強調をしたいのであります。なお、そういったものをもう一歩突っ込んでいきますと、けがや職業病が発生しても労災保険をかけてある。そこでお世話になればいいじゃないか、こういうところに通じていってしまうんじゃないだろうか。この点労働省の皆さんや、あるいは直接担当主管官庁である林野庁の皆さんには、もっともっと突っ込んで、こういった問題の根本を掘り下げていただかなければならないのではないのだろうか、こういうふうに思うわけです。また、そういった面とは逆に、私自身国有林でこの問題を扱ってきて、実は、昭和四十五年二月二十八日の基準局長通達を見て驚いたのであります。その理由はどういうことなのかといいますと、世界の職業病の歴史の中でもあれだけ多数が、しかも短期間に集中して出たという歴史はないと思います。専門家の山田先生がおられますから、私の知る範囲では、ないと思います。そういうふうな重大な状態の中で、しかもそれが拡大をしていっているという最中に出された通達として、あの通達の中に事の重大性と緊急性という問題についてどうも読み取れないのです。私は、ちょっと言い過ぎかもしれませんけれども、国有林でも二時間規制をきめたのだから、この際労働省も民有林に対して何か出さなきゃ都合が悪いじゃないのか、こんな気分で出された通達ではないんだろうかと、こう言いたいぐらいなわけです。事実、この問題をめぐって昨年いろいろなところで話をし、たとえば奈良の基準局の皆さんとも話をしたわけですが、奈良の基準局の皆さん、現在一生懸命やっておられますけれども、昨年の段階で、正直に言われたことは、奈良では労働者も使用者も振動障害はないと、こういうふうに言っている。だからあの通達を業者に一応監督署を通じて伝えはしたけれども、その後何もしておりませんと、こういう話でした。また、私どもは奈良にないということはあまりふしぎだということで、あとから意見を述べられます林業災害防止協会の坂井さんのところにお願いをして、ぜひ坂井さんのところで健診をなさるにあたって奈良県をその対象地に入れていただきたい、こうお願いをして検査をしてみた結果、ないどころか、ほかの県と劣らない、むしろよけいと言っていいぐらいの数字が、結果が出てくるのです。こういった面からも非常にいまの行政分野におけるこの問題に対する取り組みというのは私はきわめて弱いし、問題を持っていると、こういうふうに考えています。同時に、この国会でこうしたことを繰り返し先生方に御検討いただかなければならないことになったということについては、私たちみずからのやっぱり運動の不足という点も深く反省をしています、力不足という点について。しかしいま、先生方に、この機会にお願いしたいことは、この振動障害の対策について、単にチェーンソーによる振動によって発生をするんだから、あるいはこの振動をどうするか、防止をどうするかという狭い分野でこの問題に取り組んでいただいても私は実効は上がらないだろうと、こういうふうに私の経験の中から申し上げたいわけです。それはどうなのかというと、林業労働者の労働と生活条件全般について抜本的にメスを入れてみる。そして、労働と生活条件全般のかかわり合いの中で総合的に振動障害対策についてどういうふうに位置づけてこれを推進するのかという、こういった視点でこの問題に立ち向かわない限り根本的な解決にはならないというふうに思います。やはりそのためには今日の不安定の雇用を解消し、生活のできる賃金、もちろん出来高払い制度の廃止というようなことも考えなければならないですし、また、年末手当、夏期手当、いま夏期手当ということが一般的にいわれるわけですが、林業労働者にないわけですから、そういったものも人並みにという、そういった条件というものをどうしても確保すると同時に、老後の安定のための社会保障、いわば厚生年金の適用、そういったことも真剣に考えなければならないのだろう、そういったこととの総合的なかかわり合いの中でこの問題についての対策が必要なんではないだろうか。そういった場合に何が問題になるかといえば、私は、今日の雇用の仕組み、あるいは経営の零細性、こういった問題があるわけですから、そういった点をどうするのかというやはり措置が必要だろうと思います。そういった観点で林業労働者の状態を見てみますと、特に最近、木材の異常な値上がり、そういったことがあげられていますけれども、林業労働力の減少という問題をめぐっての対策をどうするかということが一つあろうと思います。林業白書では一年間に一五%というたいへんな減少を示しているというふうにいっていますが、たとえば日本の三大林業の一つといわれている奈良県の吉野林業の中心地である川上村というところがあります。この川上村において昭和四十六年にまとめられた「川上村の経営の基本に関する構想」という資料があるわけです。この資料を見てみますと、昭和二十五年に千六百人いた林業労働者が四十五年の国勢調査では九百人になり、このままの推移で昭和六十年度を展望したときに、百三十人しか残らないだろうと川上村は判断をしております。川上村の林地というのは非常にすばらしい林地が二万六千三百五十ヘクタールあるわけですから、いまの八百人程度の労働力でもなお不足をするわけです。それが百三十人になるわけですから、もはや吉野林業は崩壊する以外にないということに立ち至るのだろうと思います。これは日本の林業の中で最も収益の高い経営をやっている吉野林業でこういう状況ですから、日本林業自体が昭和六十年には全く立ち行かなくなるということを川上村の経営の基本構想というのは明らかにしているのではなかろうか、こういうふうに私は思っています。そういった面では林野庁も林業労働者の確保のためと称して森林組合の労務班の育成だとかいうことをだいぶ前からやっています。しかし、これは私どもが見る限りにおいては単なる林業労働者の自主的な集団をつくって、森林組合の作業の下請をやらせている。直接的に森林組合がそれを、みずから雇用して責任を持って仕事をしていくという体制には全体的になっていないわけです。こういったようなものを幾らつくってみたところでこれが根本的な林業発展のための労働力の確保ということにならないことは明らかです。むしろ、こういった労務班的な下請組織をつくるんでなく、林業経営者を一つの組織にきちっとまとめて通年雇用を前提として地域の森林政策を総合的に組んで雇用関係を明らかにし、雇用安定をはかっていく、こういった制度というものを大胆に打ち出してやっていかなければいかぬのではないだろうか。このことがない限りやはり林業労働力対策が生まれてきませんし、あわせて林業労働者がいま苦しんでいる白ろう病の問題も解決をしないというふうに私は考えるわけです。そうして、そういった面を考えていきますと、いずれにしろ先生方の努力によって林業労働法的なものの必要というものが出てくるのではないだろうか。この点の追求を、今日の林業のいろいろな制度の問題も含めて考えていただきたいものだ、こういうふうに強く感じています。そういった総体的な考え方と、この次には、若干今後の行政上の問題に対する考え方について述べたいわけですが、先生方のいろいろな御指摘もあって、労働省が本年の三月十四日に再度基準局長通達を出しているわけですが、私はあれを見て、特に「認定事務の促進」という項の中で「客観的資料の整備」などをするという事項があるわけです。しかし、私どもが林業地帯を回って、監督署にも必ずおじゃまをするようにしているわけですが、そこで見る状態というのはどうかと言いますと、林業地帯における監督署には通常監督官が多いところで三名です。二名のところもだいぶあります。監督官が二名だということはどういうことを意味しているかというと、監督署長と一課長が監督官であって、あとは監督官はいないということです。そういったところを回って、たとえば労災保険の適用事業所の数がどのくらいあるかといいますと、通常二千から三千あります。二千も三千も持っている事業所を三人の署長と一課長という監督官の皆さんがどう回るのかと。ですから、山の労働者は監督官の顔を生涯見ずにほとんど終わってしまうわけです。また、職員の数もどんどん減少していますから、御承知のように五%削減という問題がありますが、労働省の削減率はなお高いようですから、こういった山間地帯にある監督署の建物はりっぱでも、中は人がいないという状態が生まれています。そういうところで、どうして、こういった具体的な資料整備なり何なりが今日できるのでしょう。文書で出すことは可能であっても、これは実態が伴っていないというふうに私は指摘をしなければならぬと思うわけです。
 で、いずれにしろ、またこれをあわせて国有林の振動障害の問題で、林野庁いろいろ努力をしてまいりました。しかし、林野庁が自分の企業の中でやった努力を外部にどれだけやったのか、直接の主管官庁として、民有林に。私は各県の林政課やそういったところを回っていろいろ聞き合わせる中で、林野庁が具体的にそういった指導を、国有林でエネルギーを使ったと同じような立場でやったというふうにはどうしても受けとれないのです。ですから、労働行政の面でも林野行政の面でも全く行政はこの振動障害の問題についてなでて過ぎただけにすぎないのではないだろうかというふうに強く問題を感じています。
 そういったいろいろな問題がありますので、こういった点では、ぜひ先生方のほうでも、もっとほんとうに現地の実態に即応した行政のあり方、そういったことについても御検討をお願いをしたいと思います。
 ちょっと長くなりましたが、あとは、そういった前提に立って、具体的な幾つかの点について意見を述べたいと思うわけですが、その第一番目は、早期健診の実施であります。これも労働安全法では、採用時の健康診断であるとか、定期健康診断であるとか、有害業務従事者の特殊健康診断であるとかが義務づけをされております。しかし、私どもが回った限りで健康診断がきちっとされている事業所というのはないのです。また、これは奈良県や北海道でも基準局のほうにお願いをして、どうしてもそういうことがされていないものですから、労働安全衛生法六十六条の四項に基づいて基準局長がそういった健康診断をするように指示をしてくれというお願いをしています。しかしこれも実現をしていません。理由として幾つかあるようですが、その中の一つに、林業労働者の雇用の状況がどうもその制度を適用するのにふさわしくないというか、若干の問題があるというか、疑義があると、そういったようなことが一つの理由にされているようです。この点も私どもにはきわめてわからないのであります。そういった面で、何とかしたいと思ってもできないわけですから、やはり国みずからが健診車を配置をするとか、そして山の中でなかなか受診をするところまで出るのもたいへんですから、やっぱり現地にそういった施設を向けて、そして必ず全体が健診が受けれるような方法というものを何とか講じていただきたいものだ。そうでもしない限り、今日の山の労働者の生活の中では完全にこの振動障害の健診を受けるということは困難ではないんだろうか、こういうふうに強く感じるわけです。それからもう一つは、この健診にあたって、林業労働者というのはかなりの事業所を移動して歩きますから、健康手帳制度というようなものも御検討いただいて、事業所が移ってもその一つの健康手帳を見れば、その人の、ずっと経歴なり、あるいは振動機械をどういうふうに使ったか、今後どういうふうにしなきゃいかぬのかということが明らかになるというふうな制度も、常用労働者と若干趣が違いますから、必要ではないんだろうか、こういうふうに感じています。
 二番目は、完全治療の実施であります。私の前に柴田さんから、柴田さんの状態が具体的に出されていますが、私は、何とか早期発見、早期完全治療という体制を確立していただきたい。で、実はことしの四月の二十二日から五月の八日まで、ILOの木材産業三者構成技術会議がありまして、私もその労働側の一員として参加をしてきたわけですが、国際的にもこの問題が非常に論議になりまして、そこでの結論は、とにかくしびれなり痛みなり、異常が訴えられたらすぐに入院治療を完全にして回復をさしてしまう。そのこと以外にきめ手はないと、治療の面では。こういうふうにほぼいわれています。また、そういうことを現に具体的に実施をしている国もあるわけです。そういった点では温泉治療その他が芝田さんからも出ましたが、私も同感です。そういった点を積極的に取り入れて、完全治療をはかっていただきたい、こういうふうに考えるわけです。
 あとは生活保障の問題、これは柴田さんからもありましたし、国有林の労働者がかなり前進をした、こういったことも明らかになりましたので、そういった点からもぜひ考えていただきたい。民有林の労働者の場合には、もう、たとえば労災保険で六〇%の賃金が補償になるわけですけれども、休業補償ということになるわけですが、それ以外何もありません。普通国家公務員ですと、それに一〇%なり二〇%の療養援護金というのがあります。民間企業では一〇〇%賃金を補償するのは常識になっています、この種の問題で。しかし、民有林の場合はゼロなわけですから、六〇以外何もないわけですから、その生活の苦しさというのはきわめてたいへんなものです。そういった意味では、ぜひとも生活が維持できるような条件というのを整えるために、やはり実収額を補償していく、こういう基本原則をぜひ確立をしていただきたい。もし、これが確立できないとすれば、入院治療や何かを認めても、生活の問題があってなかなか入院さえできない。入院をすれば、これは寝巻きを買うとか、いろんな問題で雑費が要るわけですから、それを出すことが家族の生活を脅かすということに、今日追い込まれているわけです。こういった点を、私はぜひ解決をしていただきたいものだと、こういうふうに思うわけです。
 同時に、今後の問題として、予防上の問題として、機械の改良と、あるいは振動の強度がどうなっているかということを明らかに、国が責任を持って公示をするというような制度を確立していただきたい。一般の業者はチェーンソーの上にコップに水を入れて、それでそのエンジンをかけて水がこぼれないから振動がないんだというようなことで売り歩いています。これはまさに科学的にはおかしな話でして、そのことは何の意味もないと思います。また国有林で、私がおった時代に、直接作業している人たちにどっちの機械が振動が強いかということで、使わせて感触を確かめてみました。労働者は振動の強い機械のほうが、これのほうが振動が少ないと思うというふうに答えるのです。それは重量がその機械のほうが軽かったという問題なんです。ですから、この機械は改良されたいい機械だと、こう言われても、それをうのみにするしかないのです。林野庁は、こういった機械について全部測定をした経緯があります。しかし、私どもとの交渉の中で、これは外部に出してもらっては困る、こういうことで、外部に出すことを禁じているわけです。そういうような状態では、何の基準をもって労働者が自分の健康を守るために、改良されたいい機械を選択をしたらいいのかということは、今日、できないでいるのが実態なわけです。この点はきわめて、私は、緊急の問題だというふうに申し上げざるを得ないと思います。それから同時に、機械の問題では、外国へ行ってもよくいわれるわけですが、日本人の体格に合った、そして日本の作業の条件にあった国産のチェーンソーをなぜ日本はつくらぬのかという問題の提起を受けます。これはいまの日本の技術、あるいは日本の経済力をもってすれば、こんなものをやるのは、私は、きわめて簡単なことだと思います。こういった点も積極的にいろいろ対策を立てていただきたい。業者まかせの機械の改良ということは、まさに労働者を保護するという、そういった具体的な精神がその中に反映をされていないことのあらわれだというふうに申し上げざるを得ないと思うわけです。
 それから最後に、労災掛け金のメリット制との問題で、それでなくても林業労働者は健診を受けて認定をされますと賃金が下がります。あるいは職種変えをしますと、芝田さんの場合のように、六千円から二千三百円に賃金が下がるのです。生活の問題がありますから、健診を、異常を持っている、異常が出ている人は受けることすら、おそれています。それだけでなく、仕事に使われないという危険を持っています。それを踏み切って健診を受け、労災の申請を実はやったところがあるわけです。ところが、業者のほうで、その書類に判を押さないというケースが出たわけです。なぜなのかというふうに言ったところが、実は、あなたは私のところにきてほんの短期間しかたっていないと、しかし、あなたが、いまあなたたちがここでこの労災の認定をすることによって労災の掛け金はぐんと上がってしまいますと、俗にいうメリット制の問題です。その業者の方に言わせれば、ほかでさんざん機械を使ってきて、そして悪くなり、たまたま自分のところで健診を受けて認定をする。認定をするために判を押したら、おれが全部かぶらなきゃいかぬという、こんな不合理ないじゃないかと、まさにそのとおりだと思います。で、そういうところで、最終的には監督署に判を押さないものを出せば、監督署のほうでそこから判をとるからと、こういうことで落ちついていますけれども、私どもには割り切れない問題です。きわめてこれも小さな問題ですけれども、私は、いまの制度の中の矛盾だろうと思います。
 いろいろ長いこと申し上げましたけれども、いずれにしろ、ほんとうに福祉の面でも、労働行政の面でも、深い谷間に入っている林業労働者の問題について、今後とも先生方の一そうのひとつ御検討と御協力を重ねてお願いして、私の意見を終わりたいと思います。
#9
○委員長(矢山有作君) 次に、坂井参考人にお願いいたします。
#10
○参考人(坂井忠一君) 林業労働災害防止協会の坂井でございます。
 当協会は、労働災害防止団体法に基づきまして設立されたものでございます。したがいまして、林材業関係の労働災害防止のための事業主団体でございまして、現在、約四万人の会員を擁しております。その事業活動は、林材業関係の労働災害防止の規程の設定、普及、会員に対する労働災害の防止に関する技術的な事項について指導及び援助を行なうことと相なっておるのでございます。したがいまして、当協会は、白ろう病問題を最重点問題といたしましてこれを取り上げ、それが対策の樹立と、その実施に取り組んでまいったものでございます。
 本日は、当協会が中心として行なってまいりました白ろう病対策に触れつつ、私の意見を申し述べてまいりたいと存じます。’
 林材業界といたしましては、チェーンソー作業につきまして、機械の改良、作業時間の規制、健康診断の実施等の諸対策が講ぜられ、改善が進められておりますが、いまなお、白ろう病の発症が見られますことは、誠に遺憾であると存じております。私どもといたしましても、一歩でも前進となる対策を一日も早く講じ、一人でも多くの方々を白ろう病から守りたい気持ちが一ぱいでございます。
 林材業を経営しております事業主の方々も、関係労働者を白ろう病から守るよう、それぞれの実情に応じ、努力いたしておりますが、当協会といたしましても、毎年の事業計画で白ろう病防止対策を重点として取り上げてまいってきたのであります。本年度におきましても、健康診断の実施、確保を重点として事業計画を策定し、その実施に努力をいたしておるのでございます。また、各都道府県に設置されております支部におきましても、それぞれの地域の実態に即応した白ろう病防止対策を計画的に進めておるのでございます。
 御承知のとおり、白ろう病の防止対策は、機械の改良、作業方法の改善、健康管理の徹底に大別されると思います。
 まず、機械面の改善といたしましては、防振装置の取りつけと、機械そのものの改善でございますが、機械そのものの改善は、近年、相当に進歩を見ておりますが、なお一そうの改良が望まれるのでございます。このような開発を促進してまいりますのには、政府の積極的な助成が強く要望されてやみません。また、振動測定法を確立することや振動に関する抑制値を示すことなどが不可欠であると考えられます。この面での研究の進展に、当協会といたしましても非常に関心を持ち、その成果を期待しているところでございます。
 次に、作業方法の改善につきましては、昭和四十五年二月、労働省より「チェンソー使用に伴う振動障害の予防について」という通達が出されましたのですが、当協会におきましてもこの普及、徹底をはかっております。その一例として「チェンソー取扱について」というテキストを作成いたしまして、伐木造材士に対する特別の教育講習会等で活用いたしております。このほか、機関誌「協会報」あるいは「林材安全」等にこれを掲載し、一般会員は申すまでもなく、事業場に配付し、指導啓蒙いたしておるのでございます。ちなみに、これらの啓蒙指導の冊子を持ってまいっておりますが、これはわれとしては二十数万の労働者に対して、無料で漏れなく配付いたしておるのでございます。チェーンソーの使用時間は、一日二時間以内とされております。現在、労働者をはじめ、関係者は十分これを承知しているにもかかわらず、これが必ずしも徹底していないという実情にあります。この背景には、出来高払いという賃金の形態や雇用の実態などのむずかしい問題があります。これが改善は、なかなか困難だと思いますが、私どもといたしましては、労使双方に呼びかけ、この障害を漸次克服いたしまして、本通達の趣旨の徹底と励行を期したいと考えておりるものでございます。
 三番目の健康管理につきましては、前記の通達に示されたとおり、健康診断の実施につきましても、協会は、労働省からの委託を受けて健康診断の機会に恵まれない、これらの山間僻地の労働者に対する巡回健康診断を、毎年、定期的に行なってまいっております。ただ、振動障害によって発症いたしますこの者たちの健康診断のやり方等については、医学的に見まして、さらに検討を要する点がありましたので、昭和四十六年六月、労働省の委託を受けまして、振動障害検診委員会を発足いたしまして、これが検討に着手をいたしてまいったのでございます。この委員会は労働科学研究所の三浦豊彦先生を委員長として、本日御出席の山田信也先生ほか大学の研究機関の医師並びに労災病院の専門医の方々を中心として委員に委嘱いたしまして、これまで十数回にわたりまして検討を進めてまいったのでございます。その間、試験的に「健康診断実施要領」が作成せられまして、昭和四十七年九月よりこの要領に基づきまして全国七道府県十六カ所において伐木造材作業に従事する技能労働者五百三十五名の健診を実施いたしたのであります。その結果に基づきまして、検査の区分、健診項目あるいは検査方法等の内容についてさらに検討を加え、現在委員会において最終的に取りまとめを進めている段階でございます。先日、労働省からこの健診要領の結論の取りまとめを急ぐようお話もございましたので、来たる七月二十日の本委員会においては、「民間林業振動工具取扱い作業者に対する健康診断要領」の成案を得て労働省に対して報告ができるよういたしたいと、かように考えておるのでございます。また、引き続きまして、健康管理区分についてもただいま審議をお願いいたしておるのでございますが、この秋までには結論を出していただき、これもまた、労働省に御報告いたしたいと考えておるのでございます。
 以上、これらの結果によりまして、健康管理の方式が定まれば、当協会といたしましてもその普及徹底をはかるとともに全力をあげてその実施体制づくりを考えております。
 林業労働者の検診は地域的に分散し、医療の手が伸びないことが実施上の隘路でもありますので、この面につきましても重要な課題として取り上げたいと存じております。また、医療の指針も今度の成果をもとにいたしまして検討を進め、確立をはかりたいと思っておるものでございます。白ろう病は先ほど申し上げましたとおり、林業におきましては重大な社会問題であると考えまして重点的にこれと取り組んでまいりますが、その前提として林業経営の近代化が強く要請されるのでございます。その面でも国の積極的な施策を期待するゆえんのものでございます。これらの施策と相まちまして、白ろう病対策の充実をはかってまいる所存でございます。
 以上簡単でございますが、参考人としての所見を終わりたいと存じます。
#11
○委員長(矢山有作君) ありがとうございました。
 それでは、本件につきまして質疑のある方は順次御発言を願います。
#12
○大橋和孝君 先ほどから患者さんあるいはまた治療をしておられる先生、いろいろなまのお話を承りまして、私非常に感銘深く拝聴したわけでございます。
 まず、私ちょっと芝田参考人にお尋ねをいたしたいわけですが、あなたはずいぶんこの病気で苦しまれまして、十二年間もその間その病気と戦ってこられたわけでありますが、この中であなたが経験されてどんな治療が、そしてまたその効果がどんなふうにあったか。現在はまたほんとうに、まだ聞いてみますと、しばらく立っておっても苦しくなるし、いろんな症状をいま、先ほどから伺いましたが、やはりこれはたいへんな問題で、病人さんの側から一体いまどういうことを一番やってほしいなと思われますのか、その辺のところをちょっと聞かしていただきたい。
 それからもう一点は、生活の問題を先ほどおっしゃいまして、国有林のほうではほとんど一〇〇%の補償がされておるのに、あなたのほうでは何だか請負で一カ月十万円だと。すると、そこの中ではチェーンソーは自分持ちだということで、これに四〇%ぐらい機械のほうに使われるとすると、あとの六〇%でありますから、六万の六〇%ですから三万六千円、こんなような状態では、これはとても生活がしにくいだろうと思うんですが、この生活状態はいま一体どんなふうにしていらっしゃるか、もう少しちょっと伺っておきたい。
 同時に、また、あなたと同じような人がたくさんいらっしゃるでしょうから、こういう方々が一体どういうふうになさっていらっしゃるのか。また、この行政の面ではかなり行き届いておりませんから、そういうことに対しても非常なあれがあるだろうと思います。こういうことをちょっとお伺いしたいと思いますし、最後にあなたがおっしゃいましたこの予防の面、治療の面、生活保障の面といろいろあるわけで、もうこういう病気が起こらぬためには、私と同じような病気を起こさぬようにしてほしいということでございましたが、私は、これについてはひとつ労働省なりあるいはまた病院課長さんもおいでになっておりますから、こういう問題については非常に気の毒な人がこういうふうにいらっしゃるわけですね、十何年もやっていらっしゃるわけですから。労働省のほうとしては一体こういう方々にどうするのか。ことに民間のほうに対しては、三万六千円ぐらいのそれで生活をせいと言っておいたら、やはりこれは十分な治療ができないですから、ますます悪くなって悪循環をして、こういう人たちは最後には死に追い込まれていくという形になるんじゃないか。特に先ほどから聞いていると、心臓が悪くなってくるとか、難聴がくるだとか、非常に苦しい状態が、全身症状が出ているわけですね。私はこれはいままで認定の基準からいっても肩から先だけだというようなことでやられているわけですから、そういう点から考えると、これはもうかなり進んだ人もあると、私はびっくりして聞いているわけですが、こういう面からしますと、やはりこれはゆるがせにできない問題ですね、人権の上からいっても。そういうところをひとつ省の側からもちょっと御意見を伺っておきたい、こういうふうに思います。
#13
○参考人(芝田鶴一君) 治療のことですが、いま行なっている治療は、薬投薬とひじと肩と痛い直接な部分に薬物の局部注射を一週間に一ぺんずつ左右交互に。服用の薬は毎日やっています。そのほかに内科のほうのお薬として、朝食後すぐ飲むのと、一日三回飲むのと、ずっと続けております。中には、薬だけ飲んで、ひじ、肩の局部注射をやらなくて、静脈に注射をしている患者さんもいます。
 補償の額についてですが、先ほど申し述べたように、当初の基本的の算定賃金が安いために、スライド制を適用されても、なおかつ現在実際に民間あるいは国有林で労働をしている人の賃金の六割にしかならないということで、スライド制は統一された労働省の賃金算定基準によって上げられて、二〇%上がれば二〇%上げるということで、常にあとからあとから追いかけてくる。実際には現在の諸物価の高騰であって、すぐその日から物価が上がっているんだ。公共料金も上がっているんだ。しかし、自分たちの手元に支給していただける賃金の上昇の割合というものは、その人たちの賃金が上がって、それを全国平均を出して、それからでなければ上がってこないということで、一つ一つあとからあとからと追いかけてくる現状であります。
 次に、同じ患者たちのことでありますが、同じ患者たちも、当初は、先ほど説明しましたが、種々の白ろう現象であったということはみな感じたことでありますけど、現在に至って二年、三年、五年、十年とたってくるうちに、手の白くなる症状もありますし、また休業している者はそういう寒冷作業もしないがために、白ろうは減ってきます。しかしそれが、私たちの考えでは、血管とか神経をやられておるために、それにつながった部分にいろんな面で白ろうが出てきています。まして毎日、毎日、三百六十五日飲んでいる薬は限定され、その中で胃が悪くなって、お医者さんにこの薬を飲むとどうしても胃が悪くなると言っても、もうそれはきめられたものであって、それ以上どうしようもないと、それ以上のことをするんだったら、あなた自分でよその医者へ行ってやりなさいということで、それが先ほど述べたことで、自己負担、国民保険で直すよりしようがないという結果になってきておるわけです。
#14
○政府委員(渡邊健二君) 労働省がどういうふうに考えておるかというお尋ねでございますので、お答えを申し上げます。
 私ども白ろう病につきましては、これはかねてから業務上の疾病ということにいたしております。したがいまして、震動作業に従事しておられました方が医者から白ろう病であるという診断をお受けになりますれば、これは業務上の疾病といたしまして、労災保険を適用いたすことに相なっておるわけでございまして、そういう場合にはどういう治療をするかということはこれは労災におきましては一切制限をいたしておりませんで、医師の方が必要とお認めになれば、入院等も一切制限をいたさずに認めております。
 それから、あるいは先ほどいろいろお話がございました温泉治療などにおきましても、労災におきましては医者が温泉治療が必要であるという認定があれば、温泉治療が労災から出ることになっておりまして、すべて治療方法につきましては医者の必要と思われる治療をいたすことにいたしております。治療につきましては一切の制限的な取り扱いをいたしておりません。すべてお医者さんの判断によってやっておるわけでございます。
 それから、そういう治療を受けられる方の休業補償が六割で少ないではないかというお話でございます。これにつきましては、労災は現行法におきましては休業補償は白ろう病だけではなしに、すべての負傷、疾病を通じまして、休業補償は六割ということに相なっております。これは基準法の災害補償が六割となっておることと見合っております。それからまた、ILOの条約等におきましても、一時的労働不能に対しては標準的労働者についての賃金の六割を補償するというのが標準になっておりますので、一応国際的な基準にも合致しておると考えております。
 しかしながら、ただいまもお話ありましたように、いろいろそれにつきましては、こういう場合の休業補償の引き上げ等について御要望もございます。そこで、私どもといたしましては、ことしの一月、労災保険審議会に対しまして労災保険全般の再検討をお願いいたしまして、現在、労災保険審議会では基本問題懇談会というのを設けられまして、鋭意御検討をいただいております。その中では、こういう補償の引き上げの問題あるいはただいまもお話がありました現行のスライド制の問題等々も検討の中身になっておりますので、私どもそれらの結果をいただきますならば、それを尊重して、今後労災の内容の改善につとめたいと、かように考えおるところでございます。
#15
○説明員(佐分利輝彦君) 現在、白ろう病の治療方法といたしましては、的確なものがございません。ビタミンとか血管拡張剤などの薬物療法、ジアテルミーとか温泉療法などの理学的療法、その他若干の外科的療法があろうかと存じますが、的確なものがございません。したがいまして、薬物療法にいたしましても、あまり強い薬を長期にわたって大量投与するというのはかえって悪い影響が出てくるものと思われます。そういう意味では理学的療法などは非常にマイルドないい治療法の一つではないかと思われるわけでございます。要するに、白ろう病の治療方法についても早急に研究をしなければならないわけでございますが、厚生省といたしましても、昭和四十年ごろから研究費の交付について若干の配慮をいたしてまいりました。また、一時は科学技術庁の特別研究促進調整費の獲得等についても御援助をしてきたところでございます。
 そこで今後の問題でございますが、厚生省自身の研究といたしましては、五十一年に大阪にオープンいたします国立循環器センターの研究所において白ろう病は主として血管系統の疾患でございますので、担当させようと考えておりますが、それまでの間は近くオープンいたします東京第一病院の難疾患センターの研究所あたりで各大学とか他の研究機関とのネットワークで研究を推進していけばどうであろうかと考えている次第でございます。
#16
○大橋和孝君 いまの補償の問題は、国有林のほうではいろいろ積み上げて一〇〇%になっておるわけです。民間等ではそれだけの差が、がたっとあるということは、これはやはり労働省のいままでのやり方はもう少し配慮すべきじゃないかと思います。その点はひとつまたあとからここで質疑しますから、残しておきます。
 それから今度は、山田先生にお伺いしたいと思うんですが、先ほど、いろいろお話を承りましたが、国有林の労働者と民間の労働者との間に、労働条件が民間のほうが非常に圧倒的に劣悪であるということも御指摘になりましたが、認定患者は、国有林労働者のほうがむしろ、そういう非常に悪い、劣悪な条件に民間があるのにもかかわらず、実際に認定された患者はいまのお話にもありましたように国有林の労働者のほうが多くて、民間の労働者のほうが非常に少ない。これは法的に救済されていない部分が私は非常にあるのじゃないかというふうに聞いておったわけでありますが、また、この国有林と民有林の労働者をずっと見ておいでになりました先生の立場から、この認定に匹敵するような民有林の労働者は一体どれくらい推定されるかということをひとつ聞かしていただきたい。
 それからまた、震動障害は現在の認定基準になっているところを見ますと、肩から手までの障害に限られているような形であるのですが、先ほどからの話を聞きますと、病理機序からは非常にいろいろなところに波及してくるのだろうと思う。全身のしびれだとか、能の血管障害だとかあるいは心臓のほうにもいろいろ影響してくるというような形で相当くるわけでございましょうが、こういうところの認定基準の基礎を根本的に変えなければいかぬのじゃないかというふうなことも考えておりますが、先生の御意見をちょっと伺っておきたい。
 それから、この治療方法ですが、現段階で先ほど病院課長さんもおっしゃっておりましたが、なかなかまだ十分でないというお話で、その体制も確立されていない、こういうふうに思います。また、先生のお話を聞いておりますと、温泉療法なんかの効果が非常にあるとお話になりましたが、むしろいまの状態では、もっともっとこれをせなきゃならぬと思います。こういう点で、これについてはひとつ病院課長さんのほうからもお話を承りたいが、先生からの御意見も伺っておきたい。
 それから、ソ連におきましては、サナトリウムなんかでこの林務に関係している労働者の療養状態が非常に進んでいるやに私は聞いておりまして、私、ソビエトに行きましたときにも、ソチあたりでの療養所あたりでは、特別にそういう方々にはあれをしているようなところも見せてもらいましたが、こういう点についてお気づきの点があれば、ひとつ指摘をしていただいて、やはりこの取り組み方にあれをしていただかなければならぬと思います。病院課長のほうでも、こういうふうな問題どういうふうに把握していらっしゃるかもちょっと聞いておきたい。
 それから北海道大学でございますか、登別温泉の療養所で斎藤教授が三年にわたってパラフィンなんかを使って試験的に療法を行なっておられる。道庁もその方法を採用したというようなことも聞いているわけであります。また、最近のリハビリの治療の中にはパラフィンなんかの療法が広く使われているわけでありますけれども、こういうことに対しての様子をひとつ聞かしていただきたい。こんなふうに思うわけです。
#17
○参考人(山田信也君) まず第一点、民有林の労働者には認定の対象になる人々がどのくらいいると推定されるかということですが、これはきわめて困難であります。と言いますのは、民有林の労働者をある地域全員を対象にして健診を行なうということが困難だからであります。それは民有林労働者は、生活上の問題があって、健診日に作業を中止して出てくるということを極端にきらう人もおりますので、受診率が非常に悪いという事態が起こります。したがって、先ほど私が申し述べました静岡の例の場合でも、ある一定の症状を持った人の中で強い積極的な関心を持った人が集まってくるという傾向がどうしてもあらわれてまいります。したがって、そこにあらわれてくる発症の比率というものは、全体の集団から比べると高く出てまいります。これらをまわりの人たちの状況を見合わせながら推しはかっていく方法がございますが、それはチェーンソーを何年握ったら障害が出始めるかという推定を、事実を調査しておきまして、国有林で行なわれている、国有林の場合は全員調査がほとんど可能で、ずっと行なわれておりますが、これと比較をしてみるわけであります。国有林の場合には、営林署によりましてはチェーンソーを扱っている人の九〇ないし一〇〇%近いような人にまで症状を訴えるようなところもございますが、やめていきますと、新しい人が入りますと、その署の発症率は全体としては減ったことになります。やがては、いつかは発症率は一〇〇%近くなってしまうようなところも実際には出ております。民有林の場合には、こういうことを合わせて推定しておりまして、現在少なくともすぐに治療をしなければならないのではないかと推定されるような人が低めに見積もっても三割ぐらいはいるのではないかということが議論されております。しかし、これも推定の範囲でありまして、場所によってはもっと多い例が出てくる可能性があります。場所によってはもっと低い例が出てくる可能性があります。国有林などの例を参考にしましても、寒冷がきびしいこと、あるいは雨天などの作業があること、あるいは湿度が高いこと、それから山が険しいこと、木が太いこと、いろいろな条件が重なって、地域別に見ましたときの発症率というのは非常に差がございます。しかし、それでも全国を通算しますと、約一万五千近い国有林の労働者の中に訴えを持っている人が約五千人近い、実際に現在認定されている人は千名をこえているわけであります。そうしますと、民有林の場合に少なくとも二割から三割は要治療者がいまいるということは推定してもそれほど差はないだろうと考えております。
 それから、なぜ民有林の認定が少ないのか、これは一つには、先ほど前川参考人が述べられました中にございましたが、労働者が受診をする機会に恵まれないということが一つございます。で、山間で医療機関が近くにないということ、また山の開業医の先生方が、この病気について積極的に診断を下す自信を持っておられない場合に、職業性のものとしてこれを扱って、労災の申請をする積極的な手続きをされない、故意にされないのではなくて、なしがたいという場合もございます。そういうような幾つかの問題が重なって、現実には明らかに振動障害として白ろう病としての症状を備えておりながら、申請をしていないという労働者がたくさんいる。国有林のように組織されて、労務管理上も、あるいは労働組合も組織されている、両方の立場からの問題提起が行なわれるところは拾い上げることがやさしいわけですけれども、民有林の場合はそれがきわめて困難であるという事態が背景にあると思います。
 それから二番目の認定の基準の基礎でありますが、これは正直に申しまして、私たち学者、研究者がこれは振動障害だと思って意見を出すことが行政上の認定のレベルでどうなっているかについては、正直に申しまして、わからない面があります。私たちは幾つか診断書を書きますが、採用される場合とされない場合がございます。過去には保留になった例が幾つか私も経験しております。最近では私が出します例はほとんど保留がなくなっておりますけれども、ほかの地方の先生方の話を聞いてみますと、診断書に添えて意見書を提出しまして、半年たって、あるいは一年近くたってもなお保留になっている例がございます。特に症状が出始めましてからかなり曲折を経ました例などでは、地元の監督署がその判定を下すのにちゅうちょがございまして、実際に認定されるまでの間にかなりの時間がかかる、あるいはその間にその労働者が職を変わってしまうというような問題もございます。認定の基準の中で、私は特にここで申し上げておきたいことは、振動障害は、先ほど申しましたように、全身にわたって起こる病気であるために、ただ手が白くなるということだけを問題にしては現実的ではないということでございます。先ほど厚生省の病院課長の方が、振動障害は血管系が中心であるという考え方から、血管系のセンターに治療の問題を提起をするということを申されましたが、私は振動障害はそのような理解では十分に治療をすることができないと考えております。それは現実に国有林の例を見れば明らかでありますが、国有林では寒冷に対する保護、たとえば朝のオートバイ通勤はやめて専用の通勤バスにする、あるいは小屋でたき火が十分とれるような条件をつくる、いろいろ労使の側で話がありまして、以前に比べれば改善された面が幾つか出てまいりました。その結果、明らかに手が白くなるという症状はパーセンテージの上では減っている部分が幾つか出ております。しかし、それでは神経系の症状は改善されているか、決してそうではありません。私は、一番最初に問題になりました岐阜県の恵那郡付知町の付知国有林におきまして、通勤バスを利用している現在の労働者が、かつてオートバイで走っておりましたが、そのかつてオートバイで走っておった昭和四十年のときのデータと、一昨年通勤バスで通うようになってからの症状がある程度やわらいだときのテストをいたしました。明らかに通勤時における手の温度の低下は防がれております。白ろう様変化の発生は防がれております。しかしながら、それらの人の神経系の症状は明らかに進展しております。これは現在学界でもいろいろ議論されておりまして、次第に皆さん方が認められてきたところでありますが、寒冷からの保護が一定の段階で進むに従って、目に見えて白ろう様の変化が減りつつある。しかし、振動を受ける時間というのは、物理的に確実に累積されているわけでありまして、それの影響による神経系や筋肉系の影響は確実に症状が進展している、そのようなタイプの病状へ移行しつつある、こういう意見が述べられるようになりました。この点については、認定をされる場合の症状の広がりの範囲についての考え方は、絶えずそういう学会でも提起されている問題について検討を加えながら、労災補償の適用の際の判定の基準を絶えず吟味し直していただきたいと思っております。
 三番目、治療方法の問題についてですが、治療の方法について最も重要なのは、保温対策が一つであります。これはたとえば寒冷期に仕事を離すだけでもかなりの効果があらわれます。もしこの時期に温泉療法などを行ないますならば、その効果は大きくなるであろうということが予測されます。しかし、残念ながら、きわめて組織的に取り組まれた国有林の場合、入院の治療に関しては人事院の側からこれは協議するという制限が当初ございました。そのために、重症な人たちをすみやかに入院治療させまして、その効果を明らかにして、入院治療の場合の温泉併用がどのような効果を持つかということを全国的に研究するという希望が研究者の側に非常に強くございましたが、必ずしもこれを自由に行なうことができませんでした。もっと早い時期に、大々的に国有林における重症者をそのような入院治療、温泉治療によって治療方法を研究する対策を進めておりますと、私は今日、もう少し進んだ知見が得られたのではないかと考えて残念に思っております。指摘されました労働省の側では、この治療について特別な制限はなく、医師が必要とするならば温泉治療を認めるという意見が述べられましたが、私が扱いました民間の労働者の場合にも温泉治療を適用した例がございます。これは明らかに功を奏します。しかも、それは冬季であればあるほど効果が大きくあらわれます。これは血管の拡張による循環状態の良好さと、また神経や筋の緊張がやわらぎまして、ほかの薬物投与にまさりまして大きな効果をあらわします。もし、この際にあわせて理学的な療法を行ないますならば、筋や神経の慢性的な異常状態を回復させる上で大きな効果を持っている。これは北海道の登別の温泉で行なわれた例でも、あるいは久留米大学の方が宮崎の病院で行なわれた例を見ましてもその効果は明らかであります。
 五番目に、最後にソ連における治療の例についてですが、振動病の研究は世界の中でソビエトが最も群を抜いてすぐれております。これは他の職業病の場合、各国それぞれ特徴を持って研究を進めておりますが、理由は明確ではありませんが、ソビエトの場合には振動病に関しては群を抜いております。昨年、私は林業関係の招きで向こうへ参りまして、研究機関の人たちやあるいは医療機関の人たちといろいろ検討をしてまいりました。その内容を幾らか参考にして話をさせていただきますと、ソビエトではわが国における振動障害で手のしびれあるいは痛みが初期にあらわれた段階がすでに入院の適用であります。手が白くなるという状態はもうすでにかなり進んだ状態だと判断しております。手が白くなって、それが一年も二年も続くような状態が進めば、これは治癒不能になるおそれがある病気だという考え方をかたく持っております。そうして、この治癒不能になる以前に、いかにすばやく治療するかということが振動病治療の基本である、それ以外の手おくれの治療というものはきわめて効果が薄いということを指摘しております。これは私たちが実際にわが国で経験しました例でもかなり重症の人に対して手厚い幾つかの治療を試みてみましても、五年、六年とたちましても容易に回復してこないという実例を見ておりまして、私たちも全くこの病状の分類については同感をしております。そういう点から、あくまでも重症者の治療ということはあわせて行なわなければなりませんが、初期段階における治療というものについての方針を明確にしておかないと、いたずらに病状を遷延さしてしまう。そして治癒不能になった人をあれこれとめんどうを見なければならない。しかも容易に回復しがたい、こういうことになってしまうのではないかと心配しております。
#18
○説明員(佐分利輝彦君) 理学的療法は温泉を使うものと温泉を使わないものとがあるわけでございますが、温泉を使わない場合にも主として温熱を与えて新陳代謝を促進するということではないかと思います。そういう意味でパラフィンを使ったり、こう泥を使ったりあるいは超短波を使ったりいろんな方法があるわけでございまして、北大のパラフィンを使った療法について、私は文献を詳細に検討しておりませんけれども、従来の経験からいたしましても、理論的にも実際的にもかなりの効果があるのじゃないかと考えております。
 また、次にソ連の治療方法の研究でございますが、これはただいま山田助教授から詳しい御報告がございました温泉サナトリウムにつきましては、そのようなものが日本にもできれば非常にけっこうでございますけれども、現状において国立病院でも十六の温泉を持った病院を持っております。国立療養所のほうも一つ、二つはあるわけでございますし、また、各組合あるいは各省の保養所、こういったものには温泉を持ったものがかなりあるわけでございますから、そういうものを有効に使っていけばいいんじゃないかと考えております。
 なお、最後に、先ほど山田助教授から白ろう病を血管障害としてとらえて循環器センターの研究でやるのはおかしいというお話がございましたが、循環器センターの研究ももちろん血管を出発点として研究いたしますが、それを起こしてまいります全身の状態、ホルモンの状態、神経の状態あるいは新陳代謝の状況、そういったものを総合的に研究するところでございますので、念のために申し添えておきます。
#19
○大橋和孝君 いま山田先生からのお話を聞いて、まあ、労働省も厚生省も林野庁のほうも十分認識をしてもらえたと思うのですが、この白ろう病の取り組みは、やはりごく初期にやらなければいかぬというソビエトの方式ですね、こういうのは私は一ぺん、皆さんのほうで、各省でしっかり受けとめてもらわなければならない問題だと思うのですよ。ですから、これは病院の貴重な意見を拝聴しましたが、これはいままで、当然言われていることなんで、やらなければならないことですが、いろいろこの早期健診ということを非常に怠っているので、それで大反省をして、そうして、即刻これはやってもらわなければならない問題だと感じるわけなんですが、よろしくお願いしたいと思います。
 それから時間がありますから私、ちょっと簡単にお伺いしたいわけでありますが、前川参考人に対してちょっとお尋ねをしたいのでありますが、まず第一の問題は、やはり私は民間の労働者と、それから、いま非常にこういう問題に対して劣悪な状態に置かれておる、格差が非常に大きいと、いまお話を承っておりますと、林業の労働法なんかも制定をして、そうして民間林業そのものに働く人たちに対する特別なこういう措置立法をしなければいけないのじゃないかというような御意見があったわけですが、これは私も前々からそういうように思っておりまして、民間の労働者の条件をどこでどう直していくか、こういう問題は非常にむずかしい問題で、あちらこちらで、この前の質疑のときにも山守制度というところに原因があるのじゃないかと私は指摘して、考慮していただくと、また、御返事をいただくようにお願いしておったと思うのですが、そういう点から申しましても、やはり働いている労働者をどうしていくかという、そこのところに立った一つの法律がないと、なかなか民間のほうは手が回りにくいということで、ほうっておかれる私は危険性が非常に多い、それがいままで、こういうことになったので、私は、これはほんとうに責任問題であり、労働省としましても、林野庁としましても、これはほんとうに一ぺん、いままでの間違いをここで反省をして取り組んでもらわなければならないと思う。
 それからもう一つの問題点は、労働安全衛生法ですね、これは採用時とか、定期診断とか、あるいはまた特殊健診、こういう有害職業に対しての。こういう問題について規定がありまして、当然これは十分行なわれていなければならないはずの問題でありますが、実際行なわれていない、こういう問題についてもひとつ御指摘をいただいているところでありますが、なお一そう、ひとつこれをどういうふうにあれするか、お考えを伺っておきたい。同時にこういう問題について労働省は一体どう思っているのか、林野庁はどう思っておられるのか、ひとつお話を承っておきたいと思います。
 特にまた、雇用の仕組みの実態と問題点、非常にこれが問題になっていると思うのでありますが、先ほどのように有期労働、あるいは日雇い労働という形態が事業者側の脱法行為を容易にせしめるような原因がたくさんある。事業主が責任を持って雇用する状態にするためには一体どうしたらいいのか、これの問題が民間では非常に大きな問題になると思うのですよ。これはまた、前川参考人からも御意見をちょっと承っておきたいし、また、労働省なりあるいはまた林野庁でどうこれを受けとめているかもひとつ聞かしていただきたい。
 それから、社会保険の未適用者も非常に多いのですね。そして、先ほどの患者さんの柴田さんのほうからの御意見もありましたが、非常に何と申しますか、労災として取り扱われないで保険として取り扱われている分がたくさんある。こういうようなことなんかも御指摘がありましたように、しかも社会保険すら入っていないという人があるということになれば、これはたいへんな問題だと思うのですが、その点についても御意見を触れていただきたいと思います。
 それから奈良県の、私、これも実態調査に回らしてもらって、川上村の話も聞かしていただいて、私その事情を見まして、つくづく御意見を聞いておって、そう思ったのでありますが、省力化あるいはまた下降気味といわれておるけれども、この省力化が進められている現況であるので人を節約し、機械を尊重するやり方は自然破壊をもたらしかねないわけであります。林業労働者の特殊性からいって、労働集約化がむしろ好ましいんじゃないかと、私は、こういうふうに思って帰ったんですが、この問題についても、ひとつ労働省側からも私はちょっと伺っておきたい。
 それから今度は行政体制でありますけれども、この林業地域の労働基準監督署では、監督官の巡回は一体どれくらいになっているのか。労働省にちょっと伺いたいと思うのですが、非常にこれが完全に行き届いておるとなればいまのような状態が起こらなかったのじゃないかと思うのです。とにかく、私、実際に調査しに行きましたところでは、こういう監督署にはほんとうにそれをやる監督官がいないわけですね。そうして、そこで非常に大きなあれがあるわけですから、そういう体制がほとんどできてない。たくさんの林業場があるのに、そうしてまた、労働者があっちこっちに散らばっているのにかかわらず、そこを監督している監督署というのは大きな守備範囲で人もいないという。これは私は労働省のむしろ怠慢じゃないか。それがこういう状態を起こしているんじゃないか。これは労働省ばかりではなくて、林野庁にもあろうと思いますが、こういう問題は非常に大きな問題だと思います。
 それから、労働省のほうでは労働安全衛生法の違反を見のがして、通達も無視されているような行政体制を私は見てまいったわけでありますが、こういう問題に対してはひとつどういうふうに取り組むのか、こういうふうなこともひとつ一ぺんこの際反省事項として、当面する緊急対策の中でやられていなければならぬことではないかと思うのであります。
 それから健診の問題でありますが、機械の安全性について、いま前川参考人のほうから非常に指摘がございました。日本人の働く状態に合わせて機械の改良をすべきではないかと、それからまた、これはフィンランドの例だとか、いろいろあるようでございますが、私は、この間も質疑の中でそれを申し上げたのですが、ほんとうに今の機械文明の状態から考えて、真にやろうと思えばこれはできる話なんですね。こういう振動の病気そのものは、振動に触れなかったら起こらないわけですから、もう少しボタンを押えてやれば、遠隔操作もできるようなものもできないということでもなかろうし、あるいはまたその状態に合わせたものをもう少し開発すれば、残酷なこういう病人さん、白ろう病というような病人さんをたくさんつくることが、もうそこで根本的に解消できるという面もあるわけですから、この機械の安全性というものをもう少し確認する、あるいはまた改良する問題はたいへんな問題だというふうに思います。
 それから、先ほどちょっとお話の中にありましたメリットの問題ですね。民間ではわりあいにそういうことが敏感だろうと思うのです。そこで病人を認定してもらうと、そこの業者の側が責任を持ってメリットをかけられるわけでありますから、それはどうしても掛け金がふえるから、まあなるべくということになるわけでございますから、こういう点なんかももう少し一ぺん、労働省の中では根本的に考え直さないと、結局だれが一番困るかというと患者さんですね、これは。だから、そういうところで変なものがつかないようなものを根本的に洗ってもらわなければならないのじゃないだろうかと思う。私は、特にここで労働省なんかに話を聞きたいのは、いま話を聞いておると、どこで、この病気をチェックするかというと、やっぱり早期診断ですね。これが一番問題で、早くこれを掘り起こして適当な措置をすれば、あとから非常に困るような状態はなくなるわけですから、そんなことがわかっているのにこれ、なぜできないのか。だからして、私は、労働安全衛生法上の採用時に健康診断をし、定期的にこれをやるということは、これはもう当然行なわれるべきというように法律でこれは規定されていますね。
 それからまた、有害なものに対しての特別なあれなんかも必要なときは全部やれるというのですが、一体、いま労働省なんかは必要なものは何と考えているのか。どういう条件のときに必要と見てやっているのか。そういうことが、もう少し早期発見というところに焦点を合わされておったならば、そういうことをどんどんとやっていけばこんなものはたくさん未然に、あるいはまたごく初期のときに発見ができたら――このような残酷な方々が病気で一生苦労しなきゃならぬ、いま山田先生からも御指摘がありましたように、重症になってなおらぬようになってから手当を始める、そこで認定患者を認定するんだと、認定基準も肩から手の先までだというようなことでやられているところに、私はほんとうに大きな欠陥があると思うのです。ちょうど労働大臣もおいでくださったのですが、言うならば、労働省の責任でこういう患者もできているんじゃないかというふうなことも考えられるわけでありまして、この点なんかは、ひとつ徹底的に一ぺん考え直してもらいたいと思うことをひとつ労働省側にもお願いをいたしたいと思うわけであります。
 それからまた、巡回の健康診断の車ですね。巡回健康診断車といいますか、そういうふうな診断車を、やはりこれはあちらこちらに散らばっている山の中でありますから、そんなものなんかもちゃんとこしらえてこれをやらなければならぬし、これはいろんな面で徹底的にやってもらわなければならない、こういう点があるわけです。ですから、これをひとつやってもらわなければどうしてもならない。
 それからもう一つ最後には、機械の改良ですね、先ほどおっしゃいました。この機械の改良なんかもどういうふうに取り組むのか。これは林野庁のほうでひとつ適確な作業を進め、また労働省のほうにおいても、この安全性の面からどう指導するかということで、私は機械の改良というものをすっかり変えてしまってもらいたい。少なくとも振動によって人体がおかされないようなものに改良しようと思ったら改良できる。これはしないのであって、できないのではない、私はこういう理解をしております。ですから、これは早急にやることを、どういうふうにしていくかということをもうちょっと具体的に示してもらわないと、きょうせっかく参考人に来ていただいていろんな話を聞きながらも十分なことにならないわけですから、私はここでひとつその気がまえを聞いて、それからまた見通しはいつごろまでにそういうことをやる、それまでについては予算をどれくらいつけるというふうな形まで積極的に取り組んでもらえば、治療の面におきましても、機械の改良の面におきましても短時日にできる問題じゃないかというふうに思いますので、とにかく、世界に先んじて、日本のいまの経済からいえば、りっぱなチェーンソーそのものの機械の改良をして、ああ日本ではこういうりっぱなものができたと世界に誇り得るようなことが私はやればできると思いますから、その点についてのひとつ気がまえを聞いておきたいと思います。
#20
○参考人(前川哲夫君) まず、いまの民間林業労働者、民有林労働者の労働条件、まあ労働と生活条件の問題に抜本的にメスを入れるべきだという点について申し上げ、いま大橋先生から、その点について再度意見を求められたわけですが、私はやはりいまの民間林業の、民有林の所有構造、これをそう簡単にいじれるものではないと思っています。そうしていきますと、どうしてもいまの条件の中では労働者の職場というのはきわめて小さなところに分散をしてしまうわけですから、これを計画的に地域の森林計画なり何なりというものをきちっと立てて、その計画のワクの中に雇用政策というものも織り込んでいくという、こういう基本というものを一本貫くという決意というものをきちんと持たなければこの問題は解決をしないのではないか。これはある意味で所有そのものに一定の、自分の都合のいいときに切りたいとか、いろんな面では制約は加わるわけですけれども、むしろいまの状態で放置をしていたら労働力が全くなくなってしまって自分の山の価値もなくなるという、そういう場面に山を持っておられる皆さんも行き着くわけですし、また、国の立場から見ても、今日の木材資源というものを海外にきわめて多量に依存をしているわけですが、これは今日がピークであってむしろだんだんに減っていくだろう。そういう中で国内資源をどう活用していくかという、こういった観点で総合的にこの問題をとらえて、仕事とそこで働く人の問題ということをしっかり位置づけるという、そういう立場での検討が必要ではなかろうか。いま具体案と言われても、非常にむずかしい問題ですし、私どもの頭の中で完全に整理がついていないわけです。
 大まかな点で申し上げれば、以上の点について申し上げれると思うわけです。
 あといろいろございましたが、機械の安全性の問題については、具体的に林野庁に資料があるはずだ、しかしこれが全く外部に出ていない。確かに、それには振動の測定方法がいろいろあるし、どの方法をとるべきだということで明確な基準がない。あるいは、それを明らかにすれば、振動の強い機械についてはだれもが買わなくなる。いろいろ影響が出てくることは事実です。しかし、そういうところで問題をとらえて、おいておくことによって、実際にその機械を使っている人間が今日どうなってきたのかという、この点をきちんと考え直していただきたい。あるものは、私は公開をすべきだと、こういうふうに強く申し上げたいわけです。
 それからもう一つは、大橋先生のほうから機械の問題に関連をして、むしろ林業の場合は労働集約的な産業としてこれを推進をすべきでないかという御意見があったわけですが、私は全く同感でございます。いまの自然保護の問題だとかあるいは環境の問題であるとかいろんな問題をめぐって林業というのがいろいろな面で話題になっています。その根本はどこにあるのかといえば、むしろ労働集約的な産業から資本集約的な産業に移行しようとする過程の中でああいった問題がきわめて端的な姿であらわれてきたというふうに言わざるを得ないと思うわけです。山というのはもともと生きものなわけですから、愛情を持ってしっかり育てていく、そのことが基本にならない限り、これはいい山ができるはずがありませんし、そういった意味では、大型機械を条件を無視して大量にぶち込んで企業性だけ追及していくというやり方では、これはもうたいへんなことになることは火を見るより明らかだろうと。そういった点で、よりきめのこまかい人手をかけていいものをつくっていく。同時に、極端に言うなら、いまからの林業というものの考え方を改めていかなきゃいかぬのじゃないだろうか。いままでは林業によって木材を生産をして、そこから利潤を上げていく、それがもう林業の最大の目的だったと言ってもいいような、こういう立場から、むしろ環境の問題だとか、あるいは国土保全の問題だとか、そういったものを優先をさせて、森林から出る木材というものが、いわば全くのもうけものだったと言えばちょっと言い過ぎですけれども、そんなところまで大幅に考え方を変えていかなければ、日本の森林の破壊、そして、そこにいる労働者のいろいろな処遇問題なり雇用の条件を具体的に切り変えていくというようなことは私はできないのではないんだろうか。まあ、そういった思い切った発想の転換といいますか、そういったものが今日必要なのではないんだろうか、こう強く感じています。
 あと社会、健康保険が全く適用されてない、あるいは厚生年金が適用されてない。実際にいまの林業後継者、林業労働者として山にいる人たちの平均年齢というのは、地域的によってはかなり違いますが、奈良県の場合なんかはもう五十歳になってます。十代の人なんていうのは全くないんですね。二十代がたまにある。しかも女の人が三〇%をもう越しているという、過去三ちゃん農業とこういうふうにいわれましたが、そういう姿に林業もなっているわけです。いまそういった面も考えて、やはり林業労働者の将来というものに希望を持たせるという意味からいきますと、そういう条件ですから、いまから厚生年金を適用してもこれはもうおそ過ぎるわけです。いまから二十年から二十五年の被保険者期間を得ようとすれば死んでしまうわけですから。そういうことも前提にしながら、この部分では抜本的に、やっぱり特別措置にも踏み切っていくというふうな体制をとらなければ、実際には効果があがらないという、そういうきわめて追い詰められた状況にあるということを申し上げておきたいわけです。
#21
○委員長(矢山有作君) 労働省は。
#22
○政府委員(渡邊健二君) まず、健診の問題でございますが、安衛法にも雇い入れ時の健康診断、その後の定期的な健康診断の規定がございますし、さらに法令の規定以上に四十五年の通達によりまして、私どもはチェーンソー使用労働者については少なくとも六カ月に一回、雇い入れ時のほか六カ月に一回健康診断をするようにという通達を出しまして、それを励行させるようつとめておるところでございます。ただ、先生も御指摘ございましたように、これらの労働者は山間僻地におりますためになかなかその受診の機会がない、あるいは下までおりてくるのをいやがるといったようなことで十分に実施をされておらないのでございます。そこで労働省といたしましては、できるだけ健診が実際に行なわれるような条件をつくりますために、前々から巡回健康診断を林業災防協会に委託をいたしまして毎年実施をいたしております。健診車も、労働省自身は持っておりませんが、そういう巡回健康診断の際には健診車等によって相当現地まで入りまして巡回健康診断をするように、毎年委託をして林災防等に行なわせておるわけでございまして、今後とも、これらの対策を充実いたしまして、実際に健康診断が確実に実施されますよう、できるだけつとめてまいりたいと、かように思っております。
 なお、健診項目につきましても、四十五年の通達では一応項目の規定をいたしておりますが、これは決して根本的なものでない、十分なものと考えておりませんので、林災防の、山田参考人等もお入りになっておられます振動障害検診委員会におきまして現在健診項目等について御検討を願っておるところでございまして、近くその御結論をいただけると聞いておりますので、御結論をいただければ、それを尊重いたしまして、一そう有効な健診を実施するようにいたしたいと、かように考えております。
 それから、先ほどのお話の中でも、労災を使っていない者がいるじゃないかというお話がございました。これは林業労働者につきましては労災は全部適用になっておりますので、白ろう病という職業に基づく疾病であれば請求してくれば労災が出るわけでございます。
#23
○大橋和孝君 ほかの病気もか。
#24
○政府委員(渡邊健二君) 業務上の疾病は労災が出ます。
 それから先ほどお話しがございました余病などにつきましては、どこまでが余病かと、業務上の疾病と因果関係のある余病だというふうに医者が認定されますればその関連した病気までも含めて出しておりますが、全く、人院中に、ほかの、その病気と関係のない病気にかかられました場合には、これは業務上としてそこまで治療はできませんけれども、業務上の疾病に関連して発生したと医者が認定されましたものにつきましては労災から出ることになっておるわけでございます。ただ、労働者等の方々の中には十分御承知なくて、先ほどのお話のように国保などにかかっておられる方がございますので、ことしの三月に通達を出しまして、林業労働者の方に一そう労災の適用があるということを周知させるようにということと、それから医者に白ろう病だと認定された労働者は、積極的に労災によって治療を受けられるように指導するようなことも流しておりまして、できるだけ、先ほどから参考人の方々もお話しがございますように、早期発見、早期治療をしていただくように私どもつとめておるところでございます。
 それからメリット制の問題の御質問があったわけでございます。メリット制につきましては、林業などで申しますと、白ろう病もございますが、そのほかのいわゆる災害、けがでございますが、これも林業はほかの業務に比べまして非常に災害率の高い業種でございます。したがいまして、メリット制等があることが、事業主が少しでもこういう災害を発生することを少なくしようという努力を喚起する効果が私どもあると思っております。ただ、メリット制がありますために、白ろう病と医者が認定されてもそれに事業主が判こを押さないといったような問題がありますれば、事業主の判こがなくても、労働者から申請がございますれば、私どもは事情を調べて、それは間違いなく振動作業に従事していた労働者であるということがわかれば、これは業務上の疾病として認定をするようにいたしておりますので、事業主がそういう態度をとりました場合にも、労働者の方は業務上の疾病であるということであれば、積極的にその保険給付の申請をしていただくようにお願いしたいと、かように思うわけでございまして、労働省といたしましては事業主の判こがあるなしにかかわらず、実際を調べまして、適用のある者は業務上の認定をするようにいたしておるわけでございます。
 それから、林業地帯の監督の問題でございます。これにつきましては、確かに私ども監督官、いまの数字で十分だと思っておりません。全体的に監督官は私ども十分でないと思っておりますので、毎年監督官の増員につきましては予算要求の際に定員増を極力要求をいたしておるわけでございます。まあ、ことしもそういうことで監督官及び安全衛生専門官合わせまして八十五人の増員があったわけでございますが、もちろん、この程度で全国の増加しつつある事業場に対しては十分だと思っておりませんので、今後とも、何とか努力をいたしまして、監督官の増員の確保に努力をいたしたい、さように考えております。
 それから、またその間におきましては、できるだけ効果的に、効率的に監督が行なわれますように、たとえば、自動車その他の機動力等を監督署まで全部配置いたしまして、できるだけ少ない監督官で有効な監督ができますよう、そういうことについてもつとめておるところでございます。
#25
○説明員(平松甲子雄君) 林業労働災害補償の件につきましては、林業の特殊性ということがございまして、先生なり参考人の方々から御指摘がございましたように、制度としてはかなりりっぱなものがあると、それが林業経営が零細であるということのために、あるいは季節性に左右されるというようなことのために、その制度が十分生かされないというふうなことになっておるということでございまして、私どもも、林業の所有規模から申しますと五ヘクタール以下が九〇%というような零細経営でございますから、そういうような零細経営で林業経営が行なわれるということでございますと、伐採にも計画性がない。それに就労される労働者の方も通年雇用を確保するということはむずかしい、事業所を移らなければならぬ。そういうようなことから、せっかくのけっこうな労災制度が適用にならないというようなことになろうと考えられるものでございますから、できるだけ、森林施業につきまして計画性を導入する。しかも、その計画性の導入も個人施業ということでなしに共同施業というようなことにいたしまして、零細性を克服するというような形のものにしていきたいということで、今回森林法の改正を国会にお願いをいたしておるわけでございますが、その中の一項目として共同計画制度を折り込んでおるということが一つあるわけでございます。
 それから、林業経営基盤が弱体であるということもございますので、三十七年から第一次林業構造改善をやったわけでございますけれども、四十八年からまた、第二次構造改善事業に取り組むというようなことで、そういう面についての欠陥を是正するというふうな施策を進めてまいりまして、林業経営ができるだけ計画的に、ある程度の規模を持って、しかもそれに従事する労働者の方ができるだけ通年就労ができるようにというふうな形で、だんだん改善されていくということをねらっておるわけでございます。
 また、労働力対策といたしましては、労働力の就労通年化というものの直接的な助成制度というものを、最近予算措置を講じて実行しておるところでございます。
 振動病対策についての直接的なお話を申し上げますと、林業関係でいま申し上げましたような助成事業をやります場合には、防振装置のついたチェーンソーに限定するというふうな通達を四十一年にすでに施行したところでございまして、その後、四十五年に、先ほど先生からもお話のございました、労働省からの通達が出ましたので、その順守方について都道付県知事なりあるいは経営者の団体なりというところに通達を出して順守についての注意を喚起いたしたところでございます。
 まあ、監視体制でございますが、私どもといたしましては、民有林については、直接出先を持っておりませんので、先ほどの通達にも見られますように、都道府県にお願いをするということで、労働省の出先のほうと力をあわして、そういうふうな形のものがより効果を上げるようにというふうな形で考えてまいりたいというふうにしておるわけでございます。それから、林業機械の改善でございますが、この点につきましては私どもは林業関係につきましては林業試験場を特っております。また、国有林の中で機械化センターというものを持っておりまして、林業機械の改善に取っ組んでおるということでございまして、私どもが承知いたしております限りでも、チェーンソーについては振動性が相当減少しておる。かような意味においてはかなり改善が見られておるが、まだまだ十分ではないと、かようなことでございますので、さらに積極的に取っ組んでまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
#26
○大橋和孝君 ちょっと資料をいただきたいので、――いま先ほどから話のありましたその機械ですね。機械に関して、いろいろな機械の調査をしておられるわけでありますが、そういう検査結果をひとつ聞かしてもらうということと、それから治療の上においてもあるいはまた、予防の上からも、いろいろなところに便利というものがあると思いますから、その資料を私どものところまで出してください。
#27
○説明員(平松甲子雄君) ただいま、先生御要求の資料は後刻調製いたしましてお手もとに提出いたします。
#28
○須原昭二君 私は、六月の十四日、この社労で、この白ろう病の問題については二時間くらい御質問をいたしましたから、大要は避けたいと思いますが、同時に大橋委員からもお話がございましたから、若干漏れた点だけ、また参考にさらに認識を深めたい点を御質問いたしたいと思います。
 まず、山田先生にお尋ねをしたいんですが、お話を聞いておりますと、チェーンソーの約半分五〇%、刈り払い機の使用者で約三〇%が訴え者であり、機械使用者の約九%、約一割に近い人が認定患者だということであります。お話しのように、これだけたくさんの認定患者がある。一割もあるということは、日本はもちろん、世界的にも職業病として例を見ないものであると実は思うわけで、そこで、何か白ろう病というものは林業労働者だけにあるというような認識が高いわけでありますが、この間も委員会で、実は鉄鋼の労働者の中に、あるいはまた建設業の労働者の中にも振動工具がたくさんあるわけでありまして、そういう実態について調査をしたのか。実はどのくらい認定患者があるのかといったら、若干、若干という労働省の報告なんです。若干、若干ではだめなんで、実態調査をしなさいと私は強く要求をしたんですが、実は先生のほうでもいろいろとお調べになっておることがございましたら、この際、御見解を賜わっておきたいと思います。これが第一点です。
 それから第二点は、認定基準を広げようということなんですが、いまも大橋委員からお話がございましたように、現在の医学では完全な治療法がないのだと、認定基準は常時白ろう症状になっているものであって、痛みだとか初期の症状であるしびれ、痛みの段階ではあまり適用されるか、されないか、先ほども議論がございましたように、これはお医者さんのケース・バイ・ケースという政府のほうから答弁がこの間ありましたけれども、労働基準局がまたそのまん中に入っておくれておるということでありますが、この認定基準を改定をして、やはりなおる段階、いわゆる初期の段階で認定をするということが好ましいという意見をこの間指摘をいたしたわけです。したがって、これは政府のほうに聞きたいんですが、医学通念上結論が出てないから、したがってこの専門医等の意見を聞いて、いま取り扱い方について検討しているんだ。そのときに、私、質問を申しおくれたんですが、どういう方々の意見を聞いておられるのか、この際明らかにしていただきたいと思います。
 それから、山田先生にさらにお尋ねをいたしておきたいことは、一般、特殊の健診を問わず、管理医が行なうことになっておるんですが、特に、特殊健診については衛生管理規程に沿った実施がきわめて不可能なところが多いわけであります。実施可能なやはりもよりの病院で委嘱をして行なうというのはどうだろうか。特に専門医ルートの確立というのが、いま緊急の私は課題だと思うんです。その点について現状と、もしこれからの対策上感じられていることがございましたら、ひとつ御発表をいただきたいと思います。
 さらに、民有林の問題で私は坂井常務理事さんにちょっとお尋ねをいたしておきたいと思うのですが、いま事業内容のお話を聞きました。四万の業者で結成をされておる防止協会だそうでありますが、実は、これは政府から補助金をもらっておる面と、会費、まあ、会費といいますか、業者が負担をしている会費のような形と、両面あると思うのですが、会費がどれだけで、そして、いま一つは、政府からどれだけ補助金を受けてやっておられるのか、その点が第一点です。
 それから、やはり民有林労働者に対する健康診断の義務づけ、あるいは前川さんがおっしゃいましたような、たとえば林業労働者の手帳と登録制の問題、機械はやはり業者持ちに義務づけていく、こういう問題が私は非常に重要な問題でありまして、さらに時間制限の問題についても、四十五年の二月ですか、通達が出ておるんですけれども、実際は前川さんがおっしゃいましたように全然守られていない、私も現地を見てまいりましたけれども。そういう対策をやはりやっておられる出先は、実は、林業労働災害防止協会だというふうに私たちは聞いているわけでありまして、私たちとしては林業労働法をこの際制定をして、そういう諸般の規制なり、義務づけなりが必要だと思うんですが、この点については、この間労働大臣も林災防とのお話し合いでこれから進めていきたいと、こういうような御答弁がございました。したがって、林災防としてはどのような一お考え方を持っておられるのか、この際、明らかにしていただきたいと思うのです。出来高払い作業の禁止の問題も含めて、ひとつお尋ねをいたしておきたいと思います。
 それから、いま一つは、機械の改良の問題でございますが、いかに機械を改良しても、やはり労働者が民有林の場合は持参、自分で持って仕事に行くと、こういう形であっては古い機械を使わざるを得ない。この現況に実はあるわけでありまして、こういう点について助成措置をとれと、こう言って、この間、労働大臣を責めたわけですが、労働大臣は、まあ、助成というのは、金融をあっせんをするという段階からちょっと出なかったのですね。ですからその点ですね、防止協会のほうとしては金だけもらっても、金だけ、融資をしていただくだけでは今日ではだめではないかというような感じがするわけです。やはり古い機械から新しい、無振動といいますか、障害が出てこないようないい機械に切りかえていくためには、金融の措置だけでは私はならない。やっぱり抜本的に助成措置を講ずべきだと思うのですけれども、その点は、林災防協会としてはどうお感じになっておられますか。そういうことについて政府に対して要求されたことがあるかどうか、この点をお尋ねをいたしたいと思います。時間の関係がございますから――この間二時間もいろいろ質疑をいたしておりますから、感じたところだけお尋ねをいたしておきたいと思います。
#29
○参考人(坂井忠一君) お答え申し上げます。
 林災防の予算の規模でございますが、昭和四十八年度の収支予算の規模は二億八千六百六十九万七千円となっておるのであります。その内容は、会費収入、事業収入で約一億八千万円をまかなっておる。それから国庫補助金が九千三百十一万二千円、これは決定して内示を受けておるのであります。その他受託事業収入として約千五百万円程度を見込んでおるのでありますが、これはまだ未確定のものでございまして、やがてこれらの事業を行なう上に労働省から決定内示があろうかと思うのでありますが、これらを見込みまして大体二億八千六百万円に相なるのでございます。
 次に、出来高払いの問題についてお話がございましたが、労使の契約の内容でございまして、作業の内容とかあるいは規模等によりまして、その請負とかあるいは出来高払いの差異があろうかと思います。私どもの協会の業務の内容から見まして、実態の把握は十分できないことをまことに申しわけないと、かように考えておるのであります。
 さらに機械の問題でございますが、ただいまは、医療体制が確立してまいりますれば、今後このチェーンソー機械の検査等に四十九年度から具体的に入りたいと、かように考えまして、予算等につきまして、四十九年度の要求として目下労働省に新規事業計画としてかなりの予算をお願いする考えで概算要求をつくりつつある現状でございます。
#30
○参考人(山田信也君) まず、他の産業にこのような問題があるかという最初の質問ですが、実は、林業に振動病、白ろう病が出始める前から、すでに古くからは鉱山に振動病の存在がよく知られておりまして、特に、昭和三十年の暮れから四十年にかけてレッグ式さく岩機が導入されるようになりましてからは、鉱山における振動病はかなり頻発しております。おそらく詳しく調べますならば林業を上回るような例が鉱山によっては存在しております。私が承知しております岐阜県の神岡鉱山には、レッグ式さく岩機を取り扱っておる労働者の約六割は白ろう病変化を生じているということが文献上すでに報告されております。それから実際に私が名古屋地方で個々の症例で扱っておりましたり、学会で発表されたような例で承知しておりますのは、鉄鋼関係におけるでき上がった鋳物の表面のばり取り作業などはかなり重症の振動障害を現実に生み出して、学会にもそれが某工場と称して報告されております。また金属加工産業におきましては、大型のグラインダーを使っております職場には振動病が出ていることは間違いありません。私が実際に経験しました一例では、四日市市にあります日立製作所の下請の鋳物工場に出ました大型グラインダーの振動病がございました。これは解雇されまして訴訟が起こりました。労働基準監督署が認定を控えておりますうちに裁判において職業病が確定するという、ちょっと変わったケースが起こりましたけれども、そういうような問題も出ております。したがって、林業における振動病の取り組みは、他の産業に埋もれておりましたこのような振動病をいま表に出す機運がだんだんと強くなってまいりました。しかしながら、それは林業におけるほど十分ではないと言うことができると思います。この点については、この社会労働委員会の全体の仕事として、林業以外にもぜひ御注目をいただきたいと思います。
 それから特殊健診の実施について有効な方法ということですが、先ほどからもいろいろ述べられましたように、山間僻地で行なう健診については、かなり人を配置をしまして、機械も健診車などに備えつけまして巡回をするという措置をとりませんと、現在のところ、私たちもいろいろ林災協やその他の団体から委託をされまして健診に出向きますけれども、このような健診のしかたは長続きがいたしません。やはり公的なサービス機関としての職業病健診システムというものが必要であります。これは何も白ろう病に限ったことではなくて、あらゆる産業における職業病問題として常に学界や研究者の中から、公的サービス機関の充実をはかれという要望が常に学界でも論議されておりますが、その方法を、特に山林の場合には、早急に実施をしていただきたいというふうに思います。
 それから、機械の改良の問題について少し意見を述べさせていただきたいのですが、私は、医師としてしばしば意見を求められます場合には、治療のことについて意見をよく求められます。しかし、医者が治療の問題で登場するときはすでに手おくれであります。むしろ、私たちは本来的には、このような機械を使ったらどのような障害が起こるであろうかということを予告し、警告する立場において医者としての仕事をなすべく求められることのほうがはるかに意義があると思っております。そういう点で言いますならば、実は、白ろう病の問題についての、私がここで参考人として意見を述べますことは、それ自体がすでに今日の日本の振動障害対策の手おくれを物語っております。私は、労働衛生の立場から、いろいろな現実に使われている機械を見ておりまして、人間の使う機械としての不適切性を備えた代表的な機械の一つだと考えております。それは、動力を備えた機械の本体を、取っ手をつけて人間がささえるということの意味は、直接手に動力の影響が加わるということであります。本来ならば、このような動力はどこか他の部分に固定をされまして、人間は操作をするという形で直接的な影響を避けるのが本来の考え方であります。しかし、山間のように機械を移動させる上の困難があったり、据えつけの上で問題がある場合には、いかにして据えつけ機械に近い機械をつくるかということがくふうされなければなりません。しかし、現在わが国で使われておりますチェーンソーのことごとくはこのような据えつけ式の方式や、あるいはエンジンを手でささえる場合の困難は条件、からだの上の負担を改善するという点では大きな立ちおくれを見せております。ソビエトで使われております機械は、これらの機械とは全く構造を異にしております。で、機械の本体はかなり下のほうにございまして、取っ手はちょうど自転車に乗ったときのように腰の前に手がついておりまして、したがって労働者は腰をじょうずに左右に使うことによって機械をあやつることができます。これはソビエトが機械改良の上で最も誇っている点でありまして、労働者にいかに無理ない姿勢で作業をさせるかということを最大のくふう点として改良したのだということを申し述べています。そのために、ソ連では、みずからの国でつくった基準をさらにきびしく改善しまして、最初につくった機械を御破算にするほどのきびしい基準を設けました。改良には今日もなお努力を続けております。しかし、残念ながらわが国で使われております機械は、その多くはアメリカの製品であるマッカラーチェーンソー−と西ドイツの製品でありますスチールチェーンソーがその主流をなしております。私は、ソ連に行きましたときに、日本で使われているチェーンソーについて、われわれはその機械改良の構造上学びたい問題があるかもしれないので説明をしてほしいということを質問されました。私は、日本でよく使われているチェーンソーという向こうの質問がありましたので、スチールとマッカラーの話をいたしました。そうしたら、即座に向こうから、それは外国製品であって日本のチェーンソーではないと言われました。私は正直に申しまして、たいへん恥じ入りました。なぜならば、そのような利点を持った国産品がないからであります。先ほどから委員の方も参考人の方も述べられましたように、日本の国力や今日の産業技術の進歩をもってなぜ日本人のからだに適した機械が改良されていないのかと、このような重症患者まで出したチェーンソーの問題点をなぜ早急に解決すべくそういう方法がとられないのかということを、非常に私自身、日本の人間の一人として深く恥じ入りまして、こちらへ帰ってまいりましてからも、それを私は繰り返して主張してまいりました。先ほど、医者が治療で登場するのは手おくれだと申しました。私は、技術的な面での改良が、先ほど林野庁からいろいろ努力をされていると指摘をされましたけれども、率直に言えば、私たちの立場から人間工学的に見て現在の機械改良の努力はまだまだ足りないと痛切に感じております。そのような点についても、国としての積極的な努力をぜひ払っていただきたいと考えております。
#31
○政府委員(渡邊健二君) 最初に、認定基準をつくることについて専門家の意見を聞いているということだが、どういう専門家かというお尋ねでございますが、これにつきましては、山田参考人もお入りになっておられます林災防の振動障害検診委員会というところで、現在診断項目、それから診断結果の分析、評価などについて御検討をいただいておりますので、そういうものが出ますれば、それが認定基準の重要な参考になるだろうと思って、その結果をいただくのをお待ちしておるわけでございますが、この委員会は、労働科学研究所の副所長の三浦豊彦さんが委員長になっておられまして、そのほか名古屋大学の山田参考人のほかに、岐阜大学教授の館先生、北海道大学の渡部先生、関西医大の細川先生、それから青森労災病院副院長の藤田先生、福島労災病院の外科部長の黒河内先生、関東労災病院の整形外科部長の鈴木先生、山陰労災病院の副院長の新宮先生、山口労災病院院長の石田先生、等々の専門家がこの委員会のメンバーに入っておられるわけでございます。
 それからもう一つのお尋ねの、改良された機械に対する補助金を考えないかというお尋ねの問題でお答えいたします。機械につきましては、先ほどからいろいろお話が出ておりますように、現在日本ではまだ、この機械ならというものがございません。そういう一つの規格もまだできておらないわけでございまして、これについてはいろいろ研究をいたしておるわけでございますが、そういうこれならという規格ができましたならば、その規格に適合する機械につきまして、事業主がそういうものに機械を買いかえる場合については安全衛生融資の対象にするようにしたいと考えておりますが、先生から補助金等も考えろというお話もございますので、今後、将来の予算につきまして、そういう点についても検討してみたいと考えております。
#32
○須原昭二君 いま、お話を聞いて、山田先生から神岡鉱山は六割そういう症状訴え者があると、こういう現実を見ますと、この間の答弁だと若干名だとか、どうも労働省は、この林業労働者でも、これだけ問題になっているところでも、実態を掌握をあまりされていない。とりわけ民有林においてはもうほとんどノータッチのような形になっているわけですね。いま、鉱山の話、あるいは鉄鋼の話であまたな事例が出てきたわけですが、さっそく労働省は全産業に対してこの実態をつかんでいただく、これが緊急な、私は課題だと思います。そして、適切なひとつ処置をとっていただきたいと要望しておきます。
 それから、この間も人事院は医学通念上結論が出ていないとして、まあ、専門医の皆さんの意見を聞いて取り扱いの検討をしているんだと、私はいつまでにその結論を出すのかと、これはよく政府の皆さんは、何々に諮問してある、だからその答申が出てきたらやりましょうと、どうも、労働大臣、笑っておられるけれども、いつもだれかに、隠れみのに渡しちゃって、そこから出てこないからなかなかやらないというような答弁が出てきておるのが多いんです。したがって、これはちょうど、きょう山田先生もおいでになりますから、早くひとつ答申を出していただくようにしていただきたいと、実は思います。
 それから、さらに、林災防の坂井さんにお尋ねをいたしますが、先ほどのお話を聞いておりますと、業務の内容が、どうもお役所と同じような通達、宣伝ぐらいにとどまっているような感じがしてならないわけです。それは、一つは、私は、その制度上の問題もさることながら、四万の業者が入っておられる。四万の業者に従事をしておるところの労働者はどうつかんでおられるのか、林災防として。そういう点が私は欠けておるような気がしてならないわけです。とりわけ、林災防の協会の運営の中に、はたして労働者の代表等々がその中に入っているのかどうか。その点についても、私は多少疑問を持たざるを得ないのですが、この労働者の、やはり意向というものを林災防の中に積極的に吸い上げるようなお気持ちはないのかどうか。その点を付随してお尋ねをいたしておきたいと思います。
#33
○参考人(坂井忠一君) ただいまのお話にお答えいたします。
 実は、定款によりまして、私のほうには労働者代表として参与、林野の組合の委員長を二名置いておるのであります。われわれとして業務の運営上、常に労働組合の意見等も十分尊重し、またお聞きいたしまして、業務の運営の万全をはかりたいと、かように考えておるのであります。
#34
○政府委員(渡邊健二君) 林業以外にも鉱山であるとかあるいは建設であるとか等々につきまして振動障害が出ておる例は承知いたしておりますが、前回もお答え申し上げましたように、全体的な状況をまだ十分把握いたしておりませんので、早急にそれらの実態把握につとめたいと、かように考えております。
#35
○川野辺静君 本日はこの病気にたいへん御熱心に取り組んでいらっしゃいます山田先生、そしてまた患者でいらっしゃるお立場の芝田参考人、それぞれまたこういったものに対していろいろと対策を練っていらっしゃるそれぞれの参考人の皆さんからいろいろとお話を伺いまして、たいへんに心を打たれ、また参考にさせていただきました。今後の問題にたいへんに参考になると思います。ありがとうございました。
 つきましては、もう時間もございません。その上大橋、須原委員、それぞれの委員からいろいろ御質問が出まして、そのお答えでいろいろ承知することができましたので、ただ、私は簡単に山田先生に、先ほど労災適用者がたいへんに少ない、この表を拝見いたしましても一名でございます。こういったものの理由について、それをちょっと伺わせていただきたいと思います。
 それから、この就労者が就労前に訓練を受ける者、また受けない者、それぞれは自由なんでございましょうか。またその訓練を受けた者と受けない者によってあとの発病あるいは病気の程度等の変化がございましょうか。これはまた先生の医学的なデータなど、もしあれでしたらちょっとお知らせいただきたいと思います。
 なお、先生は先ほどこの病気に対しましては積極的にいろいろ対策が必要だというお話で、そのとおりだと思いますが、いままでのお話の中でもこういったことが大切だと、いまの須原委員の御質問に対しても機械の取り扱い等についていろいろお話がございましたが、この際、ほんとうにどうしてもこれだけはこの白ろう病に対してやっておかなければならないんだという先生の御意見を伺わしていただきたいと思います。
 それから、前川参考人にお伺いしたいんですが、前川参考人いろいろ御研究の結果、この病気の早期健診の実施が必要だし、また健康手帳も入り用だし、完全治療が必要だし、生活保障が必要だという四点を御強調なさいましたけれども、そういうことにつきまして、いままでどのような手をお打ちになっていらしたか、そして、手をお打ちになった場合に、それに対してどのような反応があったか、なかったかということを伺いたいと思います。
 それともう一つ、これは労働省でございますけれども、病気につきましては、もちろん現在ではどんな病気も、この病気だけでなく、予防が必要だということはもうそのとおりですけれども、特に、この白ろう病に対しまして予防対策とか、それから初期治療などにつきまして、この職業病というのは、とかくほかの公害問題でもそうですけれども、結果が出てからあわてるわけなんですけれども、その初期治療につきましてどのようなお考えをお持ちになっていらっしゃるか、それだけを伺わしていただいて終わりたいと思います。どうぞよろしく。
#36
○参考人(山田信也君) 労災適用がこの表上で一人しかないということですが、私も正直言ってびっくりいたしました。それは皆さんが白ろう病のことをうすうすは知っているけれども、そのこわさを十分に承知していない。だからやれるうちはやるという考え方がまだあると思うんです。一緒に同行しました医者は、知らないことほどこわいものはないと言いましたけれども、かなりテレビや新聞などにも繰り返し繰り返し宣伝をされましても、まだそのことをよく理解していない人たちがいるということ、これは確かに山の奥で十分な教育ができないわけですけれども、いつまで自分の手がもつかと言いながらやっている人たちがいる。これは生活苦や医者がいないということもありましょうけれども、一つには、やはりチェーンソーを使うということが持っている危険性を十分にその教育の段階ではっきりさしていないということが一つあると思います。私のところへ参りました山の労働者ですが、子供が学校で先生から――山林でチェーンソーを使っているというのは、小学校の三年か四年ぐらいの社会科で出てくるわけですけれども、これを使うと白ろう病になるということが最近わかってきたのだという話をしたのですね。その話を聞いて、子供が、うちのおとうさんは白ろう病でないかといっておとうさんに話をした。その話を聞いて、その労働者はこれはいかぬと思って私のところへたずねてきた、こういう事例がございました。ですから、そういう基本的な白ろう病に対する認識の問題と、それから近くに相談できるお医者さんがいない困難さ、それから労災ということについての十分な認識がない、こういうようなことが相重なっているのではないかと思っております。その点はいろいろ啓蒙を、一般的な啓蒙ではなくて、具体的な事例についての努力をしていただかないとこの点はなかなか克服できないのではないかと思っております。
 それから訓練の問題ですが、これはむしろほかの団体の関係の方のほうがよく御存じかもしれませんが、私が衛生の立場からわかっていることは、訓練を受けている内容にもよりますが、一番大きな問題は、やはり機械の扱い方と、機械を使う時間の長さの問題であります。機械を扱う場合に、特に民有林の場合には、目立てが十分でなかったり、装備点検が十分でないために、もっと振動を減らすことができるのに、大きな振動の機械を使っているという事例がございます。この点は技能訓練というものの重要性を物語っております。それからこの際に、先ほど申しましたように、この機械というものは、人間が使うという点では、非常に危険な要素を持っている機械だということを、はっきりと教育をしておく必要がある。そのようなことを言えば、みんなこわがって使わぬのではないかというふうな話になるかもしれませんけれども、しかしそれだったら使わぬほうがいいわけです。その点も教育の中にしっかりと入れておく、そうしなければ時間の問題について何べん通達を流しましても、いわゆる生活に追われて、機械の使い方についてのくふうもできないということになるのではないか、これは技術訓練と初期の講習という中でもっと徹底させる必要がある。それから講習は任意に受けるのか、強制で受けるのかということですが、これはむしろ林災協のほうからお答えいただくほうがいいかと思いますが、私が直接会った労働者に聞いた範囲では必ずしも強制ではない。私たちは、このような機械を扱う人には免許証を発行するようにということを前から言っております。それで、きわめて高速で一分間に六千回転ののこぎりの歯が回っているわけですから、ちょっとへたをすればもう手足を切ります。中には肩を切って、非常にあぶないところで血管が助かったというような例だってあるわけです。かなり熟達した労働者でも、ときどき地形の不利からそういう事故を起こす場合があります。したがって、機械の危険性という点だけ見ましても、やはり免許証を与えるようなシステムをとって、その際に教育を徹底するというような考え方は、私はこれは実行に移すことはむずかしくないと思っております。ぜひこれを実現していただきたいと思っております。
 それから今日の時点で、これだけはぜひやってほしいということは何かと御質問ですが、まず重症者の治療については徹底的にやってほしいということ、それから早期診断はもちろんであります。それからこれと劣らずに、もっと力をさいてほしいと思いますのは、やっぱり人間が使うのにふさわしい機械をつくるという考え方を徹底さした機械改良にもっとたくさんのお金を使ってやってほしいということです。それをぜひお願いをしたいと思います。
#37
○政府委員(渡邊健二君) 白ろう病の予防と早期治療のお尋ねの問題でございますが、白ろう病の予防につきましては、私どもも何とか有効な予防をいたしたいと考えまして、四十五年の二月に専門家の委員会の御意見に従いまして予防につきましての通牒を出しております。その中におきましては、チェーンソーの選定については、作業条件に合致したバーの長さのもので、軽量で振動の少ない機種を選べとか、あるいは防振装置がつけられていないものについてはそういう装置をつけるようにといったようなこと。あるいはチェーンソーの整備につきましては、いま山田参考人からもお話がございましたが、チェーンソーの目立てとかチェーンの張り方など、そういうものについて正しい取り扱いをせいとか、あるいはチェーンソーの操作につきましては、ひじを曲げて切断位置にからだを近づけるようにし、左右ほぼ同じ重さになるようにチェーンを保持して、ひざを曲げた無理のない姿勢でやるようにと、そういった操作の問題。それから操作時間につきましては、一日二時間以内、いかもそれも連続操業を避けるようにせいというような時間規制の問題。さらに健康診断につきましては、雇い入れの際のほか、六カ月に一回健康診断をするようにといったような指導をいたしておるところでございます。
 なお、さらにそれがなかなか十分に守られない、実効をあげない点がございますので、ことしの三月にはまた追加の通牒をいたしまして、特に健康診断の実施を確保して早期発見につとめるようにということ。それから健康診断等で白ろう病と診断を受けた労働者に対してはすみやかに医師にかかって、その指示に従って適正な治療を行なうように基準監督署において指導をするようにということ。それから、その治療につきましても、適正な治療が行なわれるように、あらかじめ地域ごとに当該疾病の治療に適した医療機関を基準局、監督署で把握しておいて、療養を必要とする労働者から相談あるいは照会があった場合には、それに対して適切な指導を行なえるように処置しろといったような指導を重ねてこの三月にも通達をいたしたところでございまして、これらをできるだけ末端の事業主あるいは末端の個々の労働者にまで徹底させるように今後つとめてまいりたいと考えているところでございます。
#38
○参考人(前川哲夫君) それでは、お尋ねのありました私たちの取り組みの経過について若干申し上げたいと思います。
 私たちは、現在全国山林労働組合患者協議会に参加をしている民有林の労働者なんです。民有林労働者全体から見ますと七%程度でございます。ですから、九三%ぐらいは未組織の状態で、労働組合もなければ特定の雇用者もない、いわば、きわめて不安定な状態にあるという、そういう状態にあります。そこで、私たちが取り組んでいますのは、まず、自分の問題なんだから、自分の命は大事にしようじゃないか、ここのところを――非常に原則的なことなんてすけれども――組合員の人たちと十分話すようにしています。そういう中で、おれも不安だから、ぜひ何とか健診を受けたい、こういうふうに、たとえば奈良県の吉野郡地方で意見が出てまいりました。奈良県の内部でその受診を引き受けてくれるところがないわけです。そうしますと、関西医大なり、あるいは山口大学なり京大なり、そういうところの先生たちを組合の経費でお願いをしまして、そして、何十人かの労働者を健診をして、それを地域に訴えながら、監督署やあるいは基準局に対して何とかこれを積極的にやってくれと、まあ、非常に苦しい経済の中でそういった努力をしてまいっています。で、特に先ほども申し上げたんですが、そういう中で、これ以上財政的にも持ち切れないので、全然健康診断がやられませんから、労働安全衛生法の六十六条の四項に基づいて、ひとつ基準局長が業者に診断をしろという命令を出してくれ、こういうお願いまでしています。しかし、そのお願いは今日なおかなえられてないのです。そのお願いがかなえられない理由が私にはわからないわけです。それは聞くところによれば、公式に文書で回答をお願いしているわけですが、文書の回答がございません。口頭で非公式にあった回答では、山林労働者の雇用の現在の状態、あっちこっち動くとか、あるいは先ほど基準局長さんは六カ月に一ぺんやりなさいと、こう言いますが、六カ月以内で動く労働者がいるわけですね、中には六カ月、一年という人たちもいますけれども。そういう人たちはだれがその経費を出してやるのかという問題など出てきますから、法律の部分だけで、机の上で考えるようにとられても、これは、この法律が林業の実際の現場でどう適用されるのかということが全く先ほどのお答えの中にないわけです。現にその林業地帯の基準局も、監督署もそのことについて具体的にどういうふうにしてくれるのかという態度が出ないわけです。こういう状態で私どもは困っているわけです。
 以上のような状態ですから、さらに、そういった面を解決をするために、いま、各県本部のあるところでは使用者団体の皆さんと、それから、もちろん坂井さんの下部組織である林業災害防止協会の支部の団体、あるいは森林組合、それに木材協同組合、それから県であるとか基準局であるとか、あるいは私たちの県本部も含めて、振動障害をなくすための特別の対策委員会の設置をお願いをしております。二、三カ所できてまいりました。しかし、そこでもなお問題になることは、どうそれをだれが責任を持って具体的に進めるのかということで、県のほうも金の問題がありますし、業界の皆さんにもその問題があるようです、まして私たちは解決できない問題ですから。いずれにしろ、何べんか会合を持っても具体的に進まないというのが今日の実情なわけです。それと、生活保護の問題や、そういった点でも特に林業が中心の地方自治体、特にこれは町村段階が多いわけですけれども、町村段階の理事者の皆さんがやはり自分の町が将来に向かって発展をしていくためには、林業を発展させるよりないという町がずいぶんあります。たとえば最近の例ですと、和歌山県の古座川という町がありますし、北海道の置戸という町がありますが、そういうところでは町が身銭を切って林業労働者にいささかでもボーナスが渡るような共済制度を町の責任でやろうか、こういうふうな状況まで動いてきています。先ほど、林野庁の林政部長さんのほうから、通年雇用対策のために補助金を出していると、こういうふうに言っています。これは森林組合労務班だけに出されているのでありまして、一般の造材やそういうところで働いている労働者は、たとえば奈良県議会の場合には、ぜひ奈良県の労働者にもそれを適用してくれということで県議会の決議を満場一致でして、三回も四回もお願いに来ていますけれども、だめだの一言で実現をしないのです。また、金額も一億そこそこの金なんですね、二十万もいる林業労働者に向かって。ですから、やっているということは間違いありませんけれども、それは私に言わせれば、二階から目薬以上効果のないしろものだというふうに言わざるを得ないと思うんです。それと、そういった点では、生活の問題も、いずれにしろ、賃金の絶対額が低いわけですし、先ほども申し上げましたように、年末手当も夏期手当も退職手当も何もないわけですから、しかも仕事が非常に無計画で安定した仕事がない。そうなってきますと、一部で起こっているのは、山のあるところは石があります、川がございますから。川の石を取っては悪いということはわかっているんだけれども、食えないからしようがないといって、川の石を盗むというような残念ながら状態まで追い込まれたところもあり、そういったことをどういうふうにいま私たちが組織としてなくしていくのか、その道をとるのか、それとも林業から離れるのかという、そういうきびしい二者択一を迫られるという状況まで追い込まれているわけです。そういう中での運動でございますので、先生方にこういうふうにやっていますというふうに、はっきりお答えをできないことをたいへん残念に思いますが、私どもの気持ちでは、許されるいまの最大限のことをやっていると、こういうふうに考えている次第です。
#39
○川野辺静君 ありがとうございました。
#40
○委員長(矢山有作君) 本件につきましては、本日はこの程度にとどめます。
 この際、参考人の方々に一言お礼を申し上げます。
 本日は長時間にわたり貴重な御意見をお聞かせいただき、まことにありがとうございました。委員会を代表して、ここに重ねて厚くお礼を申し上げます。
 午後一時四十分まで休憩いたします。
   午後一時二十分休憩
     ―――――・―――――
   午後一時五十三分開会
#41
○委員長(矢山有作君) ただいまから社会労働委員会を再開いたします。
 社会保障制度等に関する調査中、心身障害者対策に関する件を議題といたします。
 この際、私から、各派の御賛成を得まして心身障害児・者対策の推進に関する決議案を提出いたします。案文を朗読します。
   心身障害児・者対策の推進に関する決議(案)
      (参議院社会労働委員会  昭和四十八年六月二十一日)
  障害者福祉施策の基本理念と方向づけを示す基本法が制定されてから三年を経過したが、具体的な対策の内容については、いまだ福祉国家の名実を兼ね備える段階に達しているとはいえない。このような現状にかんがみ本委員会は、障害児・者福祉に関係する各界の意見の聴取、現地調査を通じて集中的に本問題を審議してきた。そして国及び地方公共団体の責務と国民連帯において、自立の可能性を持つ障害者に対しては生活上の便宜と働く場を優先的に提供し、自立不可能な重度障害者には人間として生きる可能性を最大限度に引き出すための対策を保証することによつて、障害児・者の人権を尊重するという福祉原則を確立して、対策にとりくむ姿勢の転換と予算および人員の確保について根本的な検討を加える必要があることを確認した。
  政府は、本委員会の結論を尊重し、以下の事項を早急に実現するよう努力すべきである。とくに、緊急に予算の裏付けを必要とする事項については、政府が四十九年度の予算編成にあたつて最善の努力をはらうことを期待する。
       記
 第一 心身障害児・者の人権尊重施策について
  1障害児・者の教育を受ける権利を保障するため就学の猶予および免除の制度は早急に廃止し、義務教育の完全実施にふみきるとともに、高等教育への道を完全に開くこと。
  2人は、地域社会の一員として生活する。したがつて、障害児・者の施設も地域社会の重要な構成要素として位置づけ、地域社会のなかで障害児・者がそのところを得て生活していける施策に重点をおくこと。
  3障害児・者に対する正しい理解をはばむ記述を教科書から削除するとともに特殊°ウ育という用語の改善をはかること。
  4障害児・者施策の立案および施設の運営にあたつては、障害者や直接介護にあたる職員の意見を十分に反映させるよう配慮して、障害児・者の施策および施設が障害児・者自身のためのものになるよう措置すること。
  5障害者の基本的権利である投票権を確保するため、在宅投票制度の実施を検討すること。
 第二 社会的自立を促進する対策について
  1車いすの障害者にとつては、自動車は足のかわりであり、行動の機動性に欠けるその他の障害者にとつてもハンディキャップを補う重要な道具であるから、できるだけ運転免許を与えることによつて自立を促進する姿勢をもつて運用にあたること。
  2一般交通機関の利用の便をはかるため、鉄道、電車、バスのほかタクシーについて、障害者の負担を軽減する措置の拡充を検討するとともに、障害者が利用しやすいような構造の改善をはかり、あわせて障害者が利用しやすい制度の創設を検討すること。
  3公共建築物、道路、駐車場、住宅等、都市の諸施設の構造を改善し、障害者の住みよい生活環境と都市づくりを推進すること。
  4リハビリテーションを促進するため、当面、国立および公的病院においてリハビリテーションの供給ができるよう緊急にその充実をはかるとともに、専門職員の身分確立と養成確保をはかり、診療報酬点数の面からも所要の改善措置を講ずること。
  5精神薄弱児の生活能力を得るために必要な早期訓練についても公費医療の交付を考慮すること。
  6雇用が困難とされている中度ないし重度の障害者および脳性マヒを伴う障害者の適職開拓に努力を払うこと。
  7障害等級の格付けにあたつて、外形的な機能障害の少ない脳性マヒ障害者、内部障害者が不利に扱われることのないよう基準の改定を急ぐこと。
  8障害者の雇用の法的義務を強化するとともに、その雇用率をさらに引き上げることについて検討すること。
  9障害者を一定率以上に多く雇用する企業に対して、国庫の補助および金融上の優遇措置を拡充し、公けの仕事の優先発注の措置を講ずること。なかんずく、重度障害者を雇用する企業に対しては、さらに特段の優遇措置を講ずること。
  10障害者の心身の機能の特性を活かせるような仕事については、障害者が優先して行なえるような制度を検討すること。
  11補装具および補助具の開発、改良などの研究を促進し、その支給および修理については、全額公費負担とすることを目途として、障害児・者の負担軽減をはかること。
 第三 働くことのできない在宅の重度障害者対策について
  1扶養者にもたれかかつて周囲に気兼ねしながら生きていく重苦しさから解放された生活ができるよう、所得保障の充実に努めること。
  2外出困難な重度障害者に対する電話サービスの重要不可欠な役割を十分認識し、電話の利用に関する負担の軽減措置を講ずること。
  3在宅の重度障害者に対して、定期的に訪問健診による健康管理を行ない、必要に応じて入院措置をとるようにすること。
  4手当の大幅な増額などケースワーカー(相談員を含む)の処遇を抜本的に改善するとともに、ホームヘルパーの身分を確立する方策を検討すること。
 第四 重症心身障害児・者対策について
   重症心身障害児・者を適切に介護、療育するために次の改善をはかる必要がある。
  1施設収容を必要とする在宅重症児・者全員が入所できるよう施設整備を促進すること。
  2施設入所児童の状況にかんがみ、その適切な介護が行なえるよう、施設職員の確保をはかるとともに、その待遇その他労働条件の改善をはかるため次の措置を講ずること。
   (1)重症児施設にたいする重症加算を、重症児一対介護職員一の定数が確保できる水準の額にまで引き上げること。
   (2)動く重症児、とくに体の大きい重症児、年令の高い重症児など介護に骨のおれる重症児が入所できるよう条件整備を急ぐとともに、現にこれらの重症児が入所している施設については、腰痛症にかかつた職員が十分安心して治療に専念できるよう職場環境を改善すること。
   (3)給与の大巾な改善(大巾な手当の附加も含める)措置を講ずること。
   (4)年次有給休暇が完全にとれるようにするなど労働基準法に定める労働者の諸権利が行使できる態勢をつくるとともに、労働時間の短縮、週休二日制の採用、福利厚生施設の改善をはかること。
  3民間の重症児施設に対して特別の運営補助(医療費、指導費その他に)を考慮すること。
  4施設に入所中の重症児・者に対する教育の確立を促進すること。
  5在宅重症心身障害児・者の療育者の一時的事故に対処するための救急的な緊急入園措置制度の確立、在宅児について療育費をカバーする特別手当の支給等在宅重症心身障害児・者について適切な療育が行なわれるよう必要な措置を考慮すること。
 第五 医療費の無料化について
   重度の障害児・者については、無料で医療が受けられる措置を講ずるようつとめること。
 第六 発生予防と研究開発
   障害児・者発生の医学的、社会的要因の究明と、その発生予防、治療、リハビリテーション等について研究する体制を整備するとともに、必要な研究費を確保すること。
  右決議する。
 本決議案を本委員会の決議とすることに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#42
○委員長(矢山有作君) 御異議ないと認めます。
よって、さよう決定いたしました。
 ただいまの決議に対し、齋藤厚生大臣、加藤労働大臣からそれぞれ発言を求められておりますので、順次これを許します。齋藤厚生大臣。
#43
○国務大臣(齋藤邦吉君) 心身障害児・者対策の推進についてのただいまの本委員会の決議につきましては、関係各省とも十分緊密な連絡をとり、その御趣旨を尊重いたし、今後とも一そう努力をいたしたいと存じます。
#44
○委員長(矢山有作君) 加藤労働大臣。
#45
○国務大臣(加藤常太郎君) ただいま御決議がありましたことにつきましては、決議の御趣旨を十分尊重いたしまして、関係省庁間で緊密な連携をとりつつ、その実現に努力いたしてまいる所存であります。
    ―――――――――――――
#46
○委員長(矢山有作君) 休憩前に引き続き、労働問題に関する調査を議題といたします。
 中鉄バス株式会社の労働問題について調査を進めます。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#47
○須原昭二君 いま委員長からお話がございましたように、岡山県下において公共的なバス運行を業とする、聞くところによりますると民営で大体岡山の何か九〇%のシェアを支配をする中鉄バスの株式会社の不当労働行為について 若干お尋ねをいたしたいと思います。とりわけ、時間の制約がございますから、どうぞひとつ政府当局におかれましても、要を得た御答弁をいただきたいと実は思います。まずもってお願いいたしておきたいと思います。
 そこで、この中鉄バスは、私たちも現地へ参りましていろいろ調べてまいりましたけれども、違法な間引き運転、欠便というものがたびたび地域住民に大きな迷惑をかけておる。しかも、過疎地帯における中鉄バスの欠便は地方住民の足を奪い、今日深刻な社会問題となっていることは運輸省としても当然御存じだと思います。特に、私はここに資料を持ってきておりまするけれども、ずうっと欠便が続いております。
 最近のやつを御紹介をいたしますと、これは総社営業所の所管をする欠便調査ですが、五月五日九本、二百二・九キロということですね。五月六日十本欠便があります。五月八日これまた十本。さらに、五月九日は四本、五月十日は四本、五月十一日は八本、五月十二日は五本。
 それから勝山営業所。一つの営業所だけだと思ったら、そうではなくして、勝山営業所の欠便が五月五日が七本、六日、八日がおのおの一本。五月九日は六本ですね。五月十二日は五本。五月十三日六本。こんな状態で欠便が多いわけです。
 当然ですね、これは地方住民の足を奪うことは言うまでもありませんが、昭和四十六年ごろ岡山県の美作地域において中鉄バスの運行について地方住民の皆さんが、「住民の足を守る美作地区協議会」を結成されたことを私は聞いておるわけです。当然、この問題についても運輸省の御記憶のところであろうと思いますが、中鉄バスは私鉄の労働組合がストを解除したのちの昭和四十五年十一月一日から昭和四十六年の四月三十日の間にも引き続きバスの一部路線について一方的にバスの運行を休止したり間引き運転したりしたため、バス利用者が集まって住民の足を守る運動が起きておるということを聞いております。これは道路運送法違反としてもちろん告発をされて、昭和四十六年六月二十四日、岡山の簡易裁判所から罰金刑に処せられておるということですが、確かなんですか。この点まずイエスかノーか。
#48
○政府委員(小林正興君) そういった事実につきましては、当時……
#49
○須原昭二君 あるか、ないかでいい。
#50
○政府委員(小林正興君) 承知いたしております。
#51
○須原昭二君 承知しておる。額の問題については、たしか私は五万円だと思いますが、間違っておったらあとから御報告を願いたいと思います。
 そこで、この件について広島陸運局から中鉄バス株式会社に対して行政処分を科したと、こういうふうに私たちは聞いておりますが、昭和四十六年十二月二十四日、処分ということだそうですが、具体的にどのような処分をされましたか。
#52
○政府委員(小林正興君) 昭和四十六年十二月二十四日に広島陸運局長が道路運送法に基づきまして輸送施設の使用停止命令を出しております。その対象の車両は四両で、二十五日間の使用停止になっております。
#53
○須原昭二君 昭和四十六年に会社の一方的な欠便に対して五万円の罰金、そしていま行政罰をしたと、こういうふうに聞くわけですが、その後、なお、いま私が列記をしたのは二つの営業所の最近の事例でございますが、その他の営業所においてもたぶん多くの問題があろうかと思います。こうした事例を見ますると、その後も反省も何もないんじゃないか。現在もなおバスの運行というものが、公共性というものが無視された欠便、間引き運転が行なわれていると言って私は過言でないと思うわけです。この結果、先ほども申しましたように、岡山県下の約九〇%のバスの路線を独占している関係上、これを利用する通勤客などは重大な関心事です。バスダイヤには当然きょうも走るべきバスが来ない。停留所に待っておるところの通勤客は、仕事に時間的な制約をされるお客さんというのは、もう待っていることはできないわけです。来るのが来ると思っておったら来ない。しかたなくタクシーを拾ってその場をしのぐ、不当な支出を余儀なくされておるわけでありまして、住民の声を聞くとですね、中鉄バスのこの運行ダイヤっていうのはあまり、あってなきに等しい、あっても全く信用できないという不信感が非常に強いわけです。公共的なバス事業の運行の実態に対してはげしい憤りの声を私たちは現地で聞いてまいりました。
 そこで、道路運送法の第十八条には「(事業計画の変更)」という項目がございまして、業者が運行ダイヤなど事業計画を変更するときには、運輸大臣の許可を受けなければならないというふうに明らかに規定をされております。運行ダイヤがあってもそのとおり、運行実施ができないような、こうした札つきの会社の事業計画の許可にあたって、許可審査にぬかりがあるのではないかと私は思うんですが、その点はどうか。さらに、このような常習犯の会社の存在は私は許すべきではない、こんな感じが非常に現地へ行って私は感じてまいったわけでありますが、その点についての運輸省の見解を尋ねていきたいと思います。
#54
○政府委員(小林正興君) バス事業は、ただいま先生御指摘のとおり、事業計画といたしまして、運行系統あるいは運行ダイヤというものをあらかじめ設定し、これを公示いたしまして事業の運営をいたしておるわけです。したがいまして、ただいま御指摘のような欠便が出るというようなことにつきましては、地元利用者の方々にきわめて不便をかけるといいますか、迷惑をかけるということに相なるわけでございます。したがいまして、この事業計画どおり運行すべき義務がバス事業者にあることは当然でございます。私どもは、そういった観点から、バス事業が適正に運営されるように行政指導し、あるいは先ほど申し上げましたような、長期にわたって路線が休止されておったというようなことで、先ほどのようなきつい行政処分をいたしておるわけでございます。
#55
○須原昭二君 長期にわたって運行が停止をされておったということで、――当然のことです。あたりまえのことです。しかし、その日その日に起きてくるような、このような欠便の問題について、停留所に立っておる乗客の気持ちになってごらんなさい。こうした問題は軽く感じておるんですか。
#56
○政府委員(小林正興君) 最近起こっております欠便の状態につきまして、先般、春闘でいろいろ労使紛争があったわけでございますが、その当時、陸運局・陸運事務所で実態をつぶさに調査させたわけでございます。その結果、ただいま一部御指摘がございましたけれども、中鉄バス会社全体といたしまして二百六十一便の欠便が四月四日から五月二十二日までの間にあった。その中身を私どもも重大な関心を持ちまして、その原因をつぶさに検討いたしたわけでございます。五月四日にそのうち、百一便というものが総社という一営業所所管のダイヤで欠便が起こっておったと、この点につきまして、詳細に調査いたしましたところ、四月二十七日の労働争議の余波が当時まだ及んでおりまして、大量に就労を拒否しておったという事実があったようでございます。
 それから、先ほど御指摘の五月五日九便、あるいは五月六日十便という先生の御指摘につきましては、これも一件一件原因を調査いたしましたが、乗務員が直前になって乗務を拒否する、あるいは欠勤届けを出すと、こういうことで起こった問題でございます。
#57
○須原昭二君 その大量乗務をしなかったと言いますけれども、実は山ネコストをやった人たちは、運転者はあまり多くないんですよ。あとでこれは御指摘をいたしましょう。
 そこで、たびたび重なっているわけです、こういう欠便は。そんな緊急なときにみんなとまったということではない。毎日ずっと行なわれているんです。そういうことをあなたたちはほかっておくのかということを私は聞いているわけです。ここに持ってきておりますが、昭和四十八年六月八日付ですよ、まだ二週間前です。この読売新聞の岡山版の冒頭に「「許せぬ中鉄バスの間引き運転」」「連日タクシー通勤」、皆さんのように公用車でお通いの方には気持ちがわからんですよ。そのトップの中で、記事の中でこう書いてあるんですね。七段記事の大々的な報道をされている。運輸省知っておられますか、こういうこと。
#58
○政府委員(小林正興君) その新聞報道につきましては私も当時拝見はいたしております。
#59
○須原昭二君 そこで、この住民が怒って岡山地検に告発している。その利用者の告発した代表者の一人、農業を営む田坂さんはこう言ってるんですね。「これまで何度も会社、陸運事務所などに訴えているが、一向に直らない」、したがって、思い余ってここで「告発した。」と言っている。あなたのいまの答弁は、たまたま何かストライキのようなことがあって大挙欠便が出たとおっしゃいますけれども、こういう民間人は連日見ているんです。「利用者は、毎日どの便が間引きされるかもわからず、通勤するものにとって大変迷惑だ。バスの公共性ばかりでなく、利用者のことが無視されているとしか思えない。早くなんとかしてほしいというのが利用者全員の声だ」とそこに、記事に書いてあるでしょう。このようなことが事実とするならば、会社も会社だけれども、それを取り締まっている、行政指導しておるところの陸運行政の怠慢のそしりは私は避けられぬ、責任をどう感じますか。
#60
○政府委員(小林正興君) 私どもは利用者の立場からその足を守るというために運輸行政をやっておるわけでございますから、先生御指摘のとおりの欠便があるということは、きわめて重大な問題でございます。したがいまして、私どもといたしましては、きわめて厳正な態度でこの問題に対処いたしておるわけで、その結果が先般の営業停止でございますし、あるいはこの問題につきまして、最終的には事業の免許を取り消さなければならぬというようなことすら考えておるわけでございます。しかしながら、いま一番問題なのは、やはりほかのタクシー、トラックというような機関と違いまして、他に代替の輸送機関がない、最後の足でございます。したがいまして、伝家の宝刀であるところの事業停止あるいは免許の取り消しというような強硬な手段に出る前に、経営指導を積極的に行ないまして、こういった欠便が起こらないように、指導を強化するということが最も大事なことだと思っております。
#61
○須原昭二君 何か遠いお話のようですけれどもね、実は二、三日前、まだ調べておりますよ、六月十七日には勝山の営業所では五便、六月の十八日、まだ二、三日前です、二便、どんどん続いているのです。田坂さんの利用者の代表の告発に対して、いまおっしゃったように、陸運事務所当局は、五月の争議の際に間引き運転を指摘されて、「早速会社側に口頭で改善を指示した」と、運行欠便の過去に前科を持っている中鉄バスに対して、単なる、もうこの段階に至っては、口頭によるところの行政指導では私はおかしいと思う。新聞記事によると、千田事務所長は「いぜん守られていないならば問題だ。調査して訴えが事実ならば、」――「調査して訴えが事実ならば、」なんて、まだ「ならば、」というような認識では、実際監督をしているかどうかということを疑わざるを得ない。したがって、事実ならば、確保命令を出したいというようなことを言っておられます。現在なお依然として間引き運転が行なわれておる。この現実に立って考えたときに、もう口頭の改善指示だとか確保命令というようななまやさしいものであっては私はならぬと思うのです。聞くところによりますると、この会社の社長さん、プライバシーのことを言うと非常に恐縮でありますが、社長さんは前総理大臣、佐藤栄作さんが仲人なんです。だから、ちまたの住民の皆さんに聞いてごらんなさい。あの人は元総理大臣が仲人やったから、まあぺーぺーの職員が言ったって言うこと聞けへん、これはどうやってやったらいいだろうかというのが一般利用者の痛切な声なんだ。そういう背景があれば、法を曲げても、いかに住民の怒りがあろうとも、これを押し切っていくというような経営のあり方に対しては、私たちはどうしても理解ができません。免許を取り消すというような強硬手段を私は当然とるべきだ、このように思いまするけれども、所見を承っておきたいと思います。
#62
○政府委員(小林正興君) 確保命令を出しまして、なお確保されない場合に、これは当然免許取り消しという行政処分があり得るわけでございます。私どもは、その免許取り消しという最高の死刑に当たる行政処分をいたすということは、これはそれをやることによって事態が解決され、地元の方々の足が守られるということであるならば、そういった強硬手段に出ることについて何ら逡巡するところではないわけでございます。
 問題は、タクシーとかあるいはトラックというように、他にいろいろ輸送機関がある場合には、一タクシー事業者がこのような法律違反を犯しているというような事態がありました場合には、私どもは免許の取り消しという最高の処分をいたしたこともあるわけでございます。しかしがら、バス事業は御承知のとおりの状況でございますので、やはりそういった時点にはむしろ積極的に地元の足が確保されるような輸送体制というようなものが、公営であると民営であるとを問わず、そういった輸送体制がつくられなければ、やはりこういった伝家の宝刀も抜くわけにまいらないわけでございまして、私どもはそういった点について、やはり足を守るという観点から指導をしていきたいと思っております。
#63
○須原昭二君 ここで指摘をいたしておきますが、これは私どもが現地へ行ったときに、陸運事務所の所長、陸運局長も同席をしてもらいました。いろいろ事情聞きますと、陸運事務所の所長が、人手がないからしようがないわというようなことをぼくたちの前で言っているのですよ。経営者の代弁をしているような形。この姿というものをわれわれは見のがすわけにはまいりません。この新聞の中に、ごらんください、読売新聞の中に神吉常務取締役はこう言っておるのですね、「毎日ではないが当日の勤務者が急に病欠したりした場合、他の営業所から代替運転手を回しても、なおかつ人手が足りないとやむをえず欠便にすることがある。」、「やむをえず」ですよ。これだけ出ておっても「やむをえず」ですか。これと同じようなことを陸運事務所の所長がわれわれに言って弁護しておるというのが形なんです。しかし、皆さんにお尋ねをしますが、人手確保の困難性を理由にしていると言いますが、人手が確保できないようでは公共的なバスの運行は遂行できないのは当然ですよ。中鉄バスの経営者は公共性の事業の認識がないのか、それとも人手を確保するような重要な問題である事業の遂行能力がないのか、いずれかと言わざるを得ないと思うのです。その点はどうです。
#64
○政府委員(小林正興君) この欠便問題は非常に重大な問題でございますので、私どもも各日別にその欠便が起こった原因ということを報告させているわけでございますが、現在までに調査した段階では、先ほど来申し上げましたように、直前に病気等で欠勤届けを出される場合がほとんどでございます。こういった問題につきまして、同業の他社におきましては、予備運転手というものを置いて、そうして、それに振りかえて乗務させるということでございます。したがって、そういう観点から予備運転手を豊富に持てるかどうか、こういう意味で全体としての人員不足があるかどうか、こういうことが一つ大きな問題だろうと思います。こういった点からは当然十分な予備運転手が持てるように会社が必要な措置を講ずるというようなことが一つ重大な問題だと。しかし、もう一つの点は、いま申し上げましたような運行管理と申しますか、労務管理というようなものをもっと強化していただいて、そういう直前に欠勤するというような勤務体制というようなものはやはり非常にまずいわけでございますから、こういった点についての労務管理、運行管理の強化ということが必要ではないかと思っております。
#65
○須原昭二君 その予備運転手の確保というのはどうなっているのか、その点を一ぺん御報告を願いたいということ。人手確保が困難だと、こう経営者も言い、陸運事務所の所長も言っておるわけですから、じゃあ、中鉄バスが従来ずっと調べてまいりましたら、ここ七年間一度も運転手の公募――公募ですよ、公募したことがない、こう聞いていますが、ほんとうですか。
#66
○政府委員(小林正興君) 運転手の募集等についてどういう、公募をとるかどうか、私どもとしては現在承知いたしておりません。
#67
○須原昭二君 その予備運転手の数、実態について、さらにこの公募した問題点について私どもはないと聞いているんですが、公募しなければ集まってきませんよ。やみで連れてきたらこれは職安法違反になりますよ、労働省に聞くまでもございませんから言いませんが。その点は明確にあとで報告を出していただきたいと思います。
 問題は、七年間に一度も運転手を公募しないと同じように、人手確保、運転手の定着性を確保するという唯一の手段は何といっても、いまあなたはちょっと労務管理といわれましたけれども、そうではなくして、労働条件の改善が最も重要な問題点だと私は思います。労働条件の改善ですよ。労働条件が劣悪なところに人手確保が困難な理由があるのではないかと私は思うのですが、この点はどうつかんでおられますか。
#68
○政府委員(小林正興君) これは労使間で労働協約としていろいろ勤務時間の問題あるいは賃金の問題がきまってくるかと思いますが、私どもも側面的にそういった点につきましても調査をいたしておるわけでございます。現在、手元にございます資料で見ますと、労働賃金の面という点について著しく中鉄バスが条件が悪いという実態はございません。また、労働時間等につきましても同業他社と比較して特に劣悪であるという資料はございません。
#69
○須原昭二君 この会社の労働条件はどうなっているか、これはいま御答弁をいただいたのですが、そういうことになりますと、私は、この会社は労働条件の問題ではなくして、労使環境が悪いということに実はなってくると言わなければなりません。過去から現在にかけて労使紛争がひんぱんに起きておる。ここに私は問題があるかもわかりませんが、その原因はどこにあるのか、労働省はどう掌握されておりますか。
#70
○政府委員(石黒拓爾君) 中鉄バスの労使関係につきましては、四十二年でございましたか、以来、組合が二つに分裂しているということが労使関係を一そう複雑にしているという実態がございます。一般に労使関係が中鉄バスの場合は非常にうまくいっておるとは言えないという状況でございます。
#71
○須原昭二君 正常にいっていないという御答弁でございますから、その点についてここに一つ疑義がございますから、お尋ねをしてまいりたいと思います。
 まず、この中鉄バス株式会社の特質は、やはり先ほど運輸省に指摘をしたように、ずさんなバス運行の管理、これだけではないわけです。会社及びその職制と第二組合である中鉄バス労働組合とが結託をして、第一組合の私鉄中国地方労働組合中鉄支部に対して、これまで数々の不当労働行為を加えているなど、労使関係の基本的な問題に全く経営者が無理解であるというところに重大な私は欠陥を現地調査をして感じてまいりました。
 中鉄バス株式会社は、中鉄支部労組、すなわち第一組合が昭和四十四年十月から四十五年の五月まで行なわれたストライキに対して、スト破りの目的で第二組合に非常手当を全員に支給しております。この事実については、第一組合から岡山の地方労働委員会に不正労働行為として申し立てが行なわれ、昭和四十七年九月五日地労委は第一組合の主張を認めて、会社側の主張を退けております。そうですね。間違いありませんね。その事実は。
#72
○政府委員(石黒拓爾君) 私どものほうの調査では、日付は四十七年九月十一日でございますが、それ以外の点はおっしゃったとおりでございます。
#73
○須原昭二君 私の日付が間違いかもわかりませんが、その問題については別といたしましても、退けたことは事実だと。そこで、会社側はこの地労委の命令書を不服として、さらに中央労働委員会に再審査を申請した。しかしこれもまた昭和四十七年十二月十三日、中央労働委員会はこの再審査申し立てを棄却したと言っております。この点は事実ですか。
#74
○政府委員(石黒拓爾君) いまおっしゃいましたのは、二つの事件がややごっちゃになっているように思います。同種の問題につきまして、岡山地労委は四十五年十一月に不当労働行為の成立を認めた命令を出しております。それに対して中労委は、四十七年十二月二十八日に再審査申し立てを棄却する命令を出しております。しかし、先ほど御指摘がありました四十七年九月十一日の地労委の命令につきましては、中労委に九月に再審査申し立てがあり、中労委において目下審理中であるという状況でございます。
#75
○須原昭二君 昭和四十七年十二月十三日、そこへ持ってきた命令書です。棄却されたものであると私は思いますが、間違いありませんか。
#76
○政府委員(石黒拓爾君) 四十七年十二月十八日の中労委の命令は、四十五年十一月三十日付岡山地労委の命令に対する再審査申し立てを棄却したものでございます。
#77
○須原昭二君 私はその点を言ってるんです。これは、次官ね、地労委の段階でだれが見ても私は不当労働行為であると考えられるわけです、この段階で。それをあえて中央労働委員会まで再審査の請求を出すようなものの考え方、これはこの事実を見ていただければよくわかるわけです。常識で、中労委へ持っていったってしようがないというのが、これは一般第三者の認識ですよ。それをあえてまた中央労働委員会へ持っていくというような会社側の傲慢な態度、近代的な労使関係の確立について全く無理解、まさに無能力は私はめずらしい会社の幹部だと、こう思わざるを得ないんですけれども、こうした会社のものの考え方、姿勢に対して労働省は労働行政に携わるものとしてどのように考えられているのか、まず所見を承っておきたいと思います。
#78
○政府委員(石黒拓爾君) 先ほど申し上げましたように、中鉄バスは組合が分裂しておることもあり、労使関係が非常に不安定な要素がございます。こういった点は特に公益事業を営むものとして非常に憂慮にたえないところでございまして、会社側と職員と関係組合等が十分話し合い、常識をもってすみやかに安定した健全な労使慣行を確立してもらいたいものだと切望いたしております。
#79
○須原昭二君 私は、きょうは二つのまん中に入ってあんたにやってくれと言っているんじゃないんですよ。労働省として、このような事態をどうするのか、お互いに信頼をしてやりなさいといりような答弁を私は聞こうと思って聞いたわけじゃないんです。どうされますかということを聞いているんです。
#80
○政府委員(石黒拓爾君) 労働省としては、原則として労使関係の内容には介入しないというのが原則でございます。それが必要な場合には、不当労働行為であれば地労委、あるいはあっせん、調停というような紛争の具体的解決につきましてもこれまた地労委、中労委というものがあるわけでございまして、労使自治という原則は私ども労政行政の大原則として考えております。しかしながら、同時にわれわれとしては、労働法規が正確に順守せられ、そして労働法規の精神に沿った健全な労使関係が育成されるということを切望しております。そのためには労働教育というようなことで、労働法の精神等をいろいろ普及せしめたり、あるいは場合によりましては、非公式な立場でもってそれぞれ労使関係者に接触するということもございますが、まあそういったようなことでございます。
#81
○須原昭二君 それは労使の関係については介入すべきではないと思います。しかし、労働法等々関連法について、規則なり何かに違反をしたり、おそれがあるときには、当然ぼくは労働省として、それは行政指導のワク内でやるべきことはたくさんあると思うんです。その点を私はお尋ねをしておるわけであります。まあ、個々の問題についてひとつ見解を聞いてまいりたいと思います。
 まず、私鉄から分離したバス労働組合・第二組合が結成されたのは昭和四十二年六月の四日でありますが、その結果、第二組合と会社側は、会社側と第一組合との間に締結をされている諸規定を準用することに同意しております。したがって、会社と第一、第二両組合とは中身が同じ労働協約を締結されている。しかし、スト期限中には、第二組合の労働組合の全員にストに参加をしないために非常手当を支給するということは、私は賃金の支払いの差別である、正当な労働者の権利としての労働争議を抑圧をし、第一組合の切りくずしをはかった策ではないかと思うんですけれども、この感じ方は別としても、この点は違法ではないでしょうか。どうですか。
#82
○政府委員(石黒拓爾君) 私ども具体的な事件につきまして、それが不当労働行為であるとかないとか、判定をする立場にはございません。一般的な法解釈として、組合法の正確な解釈はこうであるということは、必要に応じ普及徹底をはかっておる点でございます。
 ただいま、御質問のございました中鉄バスの点につきましても、私どもの立場はそうでございますが、ただこの問題につきましては二回にわたって地労委の命令が出ており、また中労委の命令も一件出ており、またもう一件が近く出るということでございまして、私どもは労使関係の実態を踏まえた労働委員会の命令というものが順守されることを切望いたしております。
#83
○須原昭二君 どうも労働省は法規に照らしてものを判断していただけばいいんです。だから、非常手当を支給していることが、同じ労働協約を結びながら片一方には非常手当を出し、片っ方には出さないというものの行為というものは、法には違反をしませんかと聞いているんです。その点の判断を局長にお尋ねをしているわけです。
#84
○政府委員(石黒拓爾君) 一般論といたしまして、二つの組合がありましたときに、片っ方に手当を出し、片っ方に手当を出さないということは、もちろん差別待遇に相なりまして、不当労働行為に相なります。具体的な事件については労働委員会の命令が順守されることを希望するということでございます。
#85
○須原昭二君 そう言えば一回で済むんです。
 中鉄バスは、昭和四十三年二月四日予定されたストに備えて、第二組合に対して第一組合のストに同調しないように協力を求めております。その前日に第二組合は会社側に、まず組織として会社に協力をする、第一項。第二項は、組合員個々が協力するかどうか責任が持てないが、何らかの手当を出してくれば、それに対する説得がしやすい。三項目は、手当額は二十四時間ストの場合は三千円を希望する、こういうような第二組合から会社側に要求を行なっております。これに対して会社側は、第二組合との団交の結果、今後これを慣例としないという条件づきで二月四日のストで一千円、二月十一日のストで二千円の非常手当を支給しておる。もちろん二月四日のストは中止しておるにもかかわらず、第二組合には千円渡しているのだ、こういう協約を結んでいた。こうした労働協約はかなり不当労働行為の色彩が私は非常に強いと思いますけれども、これも一般論になるかもわかりませんが、答弁は。こういう事態が事実であるとするならば、局長はどう御判断をいただきますか。
#86
○政府委員(石黒拓爾君) 先ほども申し上げましたように、正当な理由がなく二つの組合の片方にだけ手当を出して、片方に手当を出さないということは、当然不当労働行為でございます。正当な理由になるかどうかという、具体的判定は、地労委、中労委の判定に待つものでございます。
#87
○須原昭二君 ここに持ってきております、いま見ていただきましたこの命令書、中労委と地労委、この二つの命令書によって、会社側と第二組合の癒着関係はかなり私は明確になっていると思う。当然これは大きな問題ですから、ですから局長も内容をつぶさに読んでおられると思いますけれども、この癒着関係が非常に強いように私は思いますが、労働省としてはどう見解を持っておられますか。
#88
○政府委員(石黒拓爾君) 実は私、それをまだ正確に全部は読んでおりません。しかし、概要は承知いたしております。その中におきまして、バス労といわれる組合のほうは、会社と協力して共存共栄の立場をとる、会社の行なう公益的な業務に協力することが自分たちの方針であるということを、労働委員会に対しましても、はっきり述べておるようでございます。
#89
○須原昭二君 労働省としては同じ一つの企業の中で二つの組合があって紛争しておるという事態をいいと思っておられますか。
#90
○政府委員(石黒拓爾君) これはもちろん私どもがいつも悩まされるのはそういうケースが非常に多うでごいまして、そういういわゆる組合の分裂状態というのは、私どもとして好ましくない状態であると思っております。
#91
○須原昭二君 そういたしましたら、第一と第二とこれが統一できるように話し合うように、労使関係の正常化へ持っていくように努力するということは、これは労働省が関知しないところですか。
#92
○政府委員(石黒拓爾君) 私どもとしては、抽象的に組合の統一を非常に希望しております。しかし、その組合が分立しているいろいろなケースがございまして、たとえば、先年来問題になりました四団体の統一というような問題もございます。統一といってもいろいろなケースがございまして、組織問題というのは労働組合存立の基本問題でございます。したがって、私どもは一般的に望ましい姿ということは、大いに普及徹底いたしたいと存じますが、具体的な個々の組合の組織問題には、労働省としては介入いたさない方針でございます。
#93
○須原昭二君 そこで、運輸省の方は何か御用事があるようでありまして、この機会にお尋ねをして決意だけ聞いておきたいと思いますが、やはり経営者に対して人手不足だ、いろいろ言われております。さっきからお話がございましたように労働条件、労働者の待遇状態は他の企業と比べてあまり変わりはない、悪くはない、こうおっしゃいましたね。ないとするなら、人手が足らないということか、あるいは労使の関係で、こういう複雑な問題があるから条件が悪くなっているのか、こういう問題が側面にある。このバス運行の会社としての事業内容からいって、それが弊害になってくるとするならば、運輸省としても、この企業に対して正常な労使慣行をつくるように、そういう行政指導を私は労働省とともにやるべきだと私は思うのですが、その点はどういう御決意ですか。
#94
○政府委員(小林正興君) 御指摘のとおり、中鉄でいま欠便が起こる根本問題としましては、先ほど先生の御指摘がありましたとおり、全体としての乗務員の数が若干足りないのではないかということが一つの問題でございます。
 それから、近隣の会社と比べましても、全体の数あるいは労働条件というようなものについて大差ないといたしました場合の勤務の体制と申しますか、労務管理といいますか、そういったことについて、これを改善強化する必要があるのではないかというふうに考えています。
 さらに、それの根本原因ということになりますと、運輸省といたしましては、にわかに判断あるいは意見を持ちにくいわけでございますが、あるいは組合が分立しておるとか、組合と会社とのいわゆる労使関係が正常でないということも、そのもとの原因としてあるいはあろうかと思いますが、そういったことについて、直接タッチすることはできませんが、一般論といたしましては、そういうことがもとの原因にあるようでもございますので、そういった点を含めて直接には運行管理あるいは労務管理、勤務体制というものについて、事故あるいはこういった欠便による利用者への不便が来たさないように、強力に指導すべき立場にあるわけでございますので、そういった点につきまして、現在でも現地に陸運局長を通じまして指導いたしておりますが、今後も、それを一そう強めていきたい。中央でも絶大な関心を持ってこの問題に今後対処してまいりたいと思っております。
#95
○須原昭二君 運輸省のお方に、時間の制約があるようですから、最後にお願いしておきますが、やはり現地へ参りまして、われわれ利用者の皆さんとの話を聞いてまいりますと、先ほど、プライバシーの問題を言いましたけれども、何か指導すべきあるいは監督すべき陸運事務所と、このバス会社との経営者に癒着があるんじゃないか。あの社長さんの仲人さんが佐藤さん、前総理大臣だと、だから、どうも言ったって、やっぱりだめじゃないだろうか、こういう気持ちが住民の中に非常に強いわけです。それ以上にそういう背景があるならば、き然たる私は態度をとらなければならないと思う。私たちが、この陸運事務所の所長さんに会ったときにも、なぜ欠便が多いんだ、いや人手が足らぬですからと、経営者が言うようなことを局長が言っているんですよ。この事実一つを見ても、どうもわれわれも第三者で行って、初めて聞いても、何かやっぱり大衆が思っておるような感情を持たざるを得ない。どんな背景があろうとも、どんな立場にあろうとも、やはり法規に照らしていけないことはいけない、そういう点を明確にしなければ、住民の不信感というものは私は一掃できないと思うんですから、どうぞひとつ、この中鉄バスに対する運輸行政の立場から監督・指導、これは明確にひとつしていただきたい。この欠便の問題、人手不足を補う問題等々ございますが、その点は実態をひとつ御報告を願いたいと思います。現実がどうなっているか、将来どうするのか、欠便と間引きの問題をどうするか。もし、それが不可能とするならば、この路線をやめさせるとか、縮小計画をするとか、この中鉄バスの今後の運営のあり方と現状と、これからの将来のあり方についての方針を早く出していただいて、経過について、そして、これからの事後対策についての処置のあり方について、明確になりましたらひとつ御報告をいただきたい、委員会へ。ぜひともひとつ要望してきょうは御時間が一時間くらいというお話を聞いておりますから、けっこうでございますからお帰りをいただきたい。
#96
○政府委員(小林正興君) 先ほど来申し上げておりますとおり、厳正な態度で監督、指導をいたしまして、こういった欠便の起こらないよう強力に指導してまいりたいと思います。
#97
○須原昭二君 ひとつ報告だけはお願いいたしておきたいと思います。
 そして今度労働省のほうへまた戻りますが、ことしも春闘が行なわれました。ことしの去る四月の三十日、二十四時間ストの中で、鉄大手と同額の一万四千七百円の賃上げを会社側が回答してきたのでありますが、その中で第二基本給的な手当、基準外賃金と思われるような額三千五百円が入っていることに対して、これまた、第二組合だけに払ったわけです、第一組合は不満として、さらに五月四日、五月五日とストライキを打つ予定だったけれども、五月四日の午前五時三十分にスト中止命令を指示をしております。第一回の回答をいかにするかということで、実はスト指令を解除して職場討議に入ることをきめて、平常どおり勤務体制に入ったと私は現地で聞いたわけですが、その後第一組合と第二組合の間で就労をめぐっていざこざが起きました。この事実は皆さんもすでに運輸委員会でも指摘をされたことですから労働省は御案内だと思いますが、その後の経過と五月四日の第二組合の違法的なスト、私は違法性ストと言いたい。さらにはヤマネコストと言ったほうがいいかもわかりませんが、こういうストについて第一組合から五月十八日岡山の地労委に対して意見書が出されておりますが、その点の事実は知っておられますか。これに対してどう対処されましたか。
#98
○政府委員(石黒拓爾君) 五月四日にバス労に所属する従業員の集団的な就労拒否があった事実は承知いたしております。これが労調法三十七条による予告義務の違反として三十九条に該当するかどうかという点は、ただいまの労働組合側からの意見書というようなこともあり、地労委において目下検討中でありますが、去る十四日の地労委の総会におきましてなお結論が出ず、引き続き検討するということになっておると承知しております。
#99
○須原昭二君 第二組合が行ないました、私が言うならばヤマネコストといいますか、この違法性は認められますか。
#100
○政府委員(石黒拓爾君) この問題につきましては、現に地労委が三十九条の請求権を発動するかどうかということで審議中でございまして、私どもがそれに対して地労委としてこれは告発すべきであるとかすべきでないということを申し上げる立場にはちょっといまございませんので、御了承を願います。
#101
○須原昭二君 この問題点は後ほどまたやりましょう。
 第二組合であるバス労はふだん第一組合の正当なストに対しても中傷をあびせていることはもういろいろな資料でおたくは御案内だと思いますが、会社側との相互関係において、昭和四十二年六月四日の日の深夜に岡山市の楠石荘というところで十名ぐらいで結成された経過があるそうです、私も聞いてきたんですけれども。本年五月四日に結成された第二組合のバス労が、安全運転が確保されていないという理由で就労を拒否をしているわけです。この点は御存じですか。
#102
○政府委員(石黒拓爾君) 私どもも、安全性が保障されないからということで就労を拒否した者があるというふうに聞いております。
#103
○須原昭二君 第二組合もそう言っておると思いますと、今度は当日のストに対して会社側の職制、たとえば岡山の営業所の次長の佐伯さんという人なんか、あたかも第一組合が就労を妨害したんだと、そういううその宣伝をバス利用者にずっと普及宣伝をしている事実が乗客の訴えの中からも明らかにされております。すなわち、第二組合の就労拒否の責任を何か第一組合にすりかえている行為を職制がやっていることは、まさしく私は客観的に見て会社と第二組合との癒着関係がここに明らかであると言わざるを得ないのです。また、第二組合が安全運転の困難性を理由として就労を拒否したということでありますが、私の調査によりますと、五月四日のヤマネコストの前夜、第二組合員は倉敷市王子ヶ丘にある倉敷レーヨンの三親寮に次々と乗用車で集まっているわけです。そして、バス労の労働組合の組織防衛会議だというような集会を催して、その後、酒を飲んで酒盛りが行なわれている。飲んだんですから、酔っぱらって運転できませんから、四日の正午前に三親寮を出て岡山市の新西大寺の旅館に移ったという事実が判明してまいりました。この王子ヶ丘から始発の乗務地まで近いところでも一時間かかる、遠いところは二時間以上もかかる、乗用車で行ってもです。こういう乗務につけないところで、そういう状態ですから、当然四日の五時三十分から六時三十分ごろの勤務につけないのは、物理的に不可能なんです。こういうことの事実から見ますると、こうしたことで安全運転の困難性というのはおかしいわけで、安全運転の困難性の就労拒否の実態というのは、そういう第一組合が妨害するから就労できないというのではなくして、そういうところへ行って酒を飲んで、帰ってくる時間がかかって就労につけないということでもあり、まあ寝不足で、深酒によって生理的な現象から自分自身が安全運転の危険性を感じたのではないかというわけなんですが、こうした会社側と先ほど会社側が言ってきたこと、第二組合が言っておること、この二つを合わせ、そして、現実に彼らがやってきたことを考えますと、労使の関係というものはまさにただれていると言わざるを得ない、癒着があると言わざるを得ないのですが、これは抽象的な答弁ではなくして、もし、私が言ったことが正しいとするならば第三者として見たときに、労働省はどうお感じになりますか、この事実を。その所見をひとつものの見方でいいですから、お感じ方でいいですから、感想でもいいですから、ひとりお示しをいただきたいと思います。
#104
○政府委員(石黒拓爾君) 私、五月四日の就労拒否の事件につきましての具体的な事実は、須原先生のように詳細には存じておりません。しかし、およそ公益事業であるバス運行に当たる者が就労すべき日の前日にべろんべろんに酔っぱらっちまって、そして就労できないというようなことは、これは非常に責任感を欠いた行為でもありますし、会社側としてもそういう行為に手助けをすることはなすべきことではないと思っております。
#105
○須原昭二君 そこで、この第二組合の、私に言わせればヤマネコストは、その問題点でありますが、百歩を譲って安全運転の困難性の理由を私は認めたといたしましても、先ほどおっしゃるように、ストというものは労働関係調整法によって規制されております。第二組合のストは第七条に規定したスト行為と私は見られないと思うのですが、私が言ったことが正しいという仮定の上でけっこうですから、この調整法から見てスト行為と見られますか。
#106
○政府委員(石黒拓爾君) この事件につきましては、もちろんバス労と、それから第一組合それぞれに異なる言い合をいたしておりますので、私として、こういう事実があったらばどっちの組合がよくないというふうな批評は、この際申し上げることは避けさしていただきたいと思います。
#107
○須原昭二君 避けていただいては非常に困るのですがね。これは明確にやはり法規に書いてあるのですから、三十七条には公益事業のストは、労働委員会、労働大臣または都道府県知事に少なくとも十日前までに通知しなければならないことになっております。第二組合の就労拒否、ストは十日前までに通知されてないのです。通知されていないとするならば、この労働関係調整法の違法ストというべきであると私は思うのですが、その点はどうですか。
#108
○政府委員(石黒拓爾君) 争議行為を行なう場合に予告をしなければならない、予告しなければ労調法上違法のストライキになるという点は先生の御指摘のとおりでございます。ただ、具体的な事件について、それを組合ないしは争議団の統一意思に基づく争議行為であるか、あるいはほかに理由があるのか、ないしは各個人個人がかってに拒否したのがたまたま一緒になったか、その辺は事実認定の非常に微妙なところであろうかと存じまして、そういう点は地労委において慎重に審議をしてもらいたいと思っております。
#109
○須原昭二君 この地労委から当然決裁が出ると思うのですが、出た場合にこれはきちんと守られるという保証がありますか。
#110
○政府委員(石黒拓爾君) 労調法の三十七条は一種の親告罪を定めたものでありまして、地労委の三十九条に基づく請求がなければ検察当局は労調法違反の疑いにおける捜査、起訴ということはやらないということでございまして、地労委の請求は検察庁に向けてされるわけでございます。
#111
○須原昭二君 この点についても重大な関心を持ってひとつ労働省も監視をしていただきたいと思います。
 そこで、さらに私は、ことしの春闘において、今後の第一組合と中鉄バス株式会社との間において労使間のあり方などについて五項目にわたる内容の確認事項がありますね。実はここに持っておりますから、御参照いただきたいと思います。ごらんいただけばわかりますように、日付は昭和四十八年四月二十八日となっているのでありますが、中鉄バス株式会社取締役社長藤田正蔵さんですか、それから私鉄中国地方労働組合中国鉄道支部執行委員長磯島康夫さんとの間で正式に調印された四月三十日に取りかわされています。この取りかわされている確認書は、私は労働協約と見るのが正しいと思うのですけれども、労働省の見解をまずその文書の面からひとつお願いをしたいと思います。
#112
○政府委員(石黒拓爾君) この件につきましては、実は運輸委員会でも御質問がございましたが、労働協約は労働組合法十四条によりまして「労働条件その他に関する労働協約は、」という簡単な規定しかございません。労働条件の基準を定めるものが労働協約であることは明らかでございますけれども、そのほかの点につきまして、どの程度までが労働協約で、どの程度から先が労働協約にならないという境目は非常に引きにくいものでございます。学説、判例等もこの点につきましては非常にはっきりいたしておりません。今回の四月二十八日付の確認事項につきまして、個別の人事に関する処置の約束になっております。これを労働協約というかどうかというのは、私は、実はまだよく確信を持ったお答えができません。ただ、これは労働協約であるといたしましても、継続的な労働条件をきめたものではございませんから、いわゆる直律強行性、規範的効力というものは有しない、いわゆる債務的部分に属するものでございます。協約であるかないかの実益といたしましては、労働条件の基準という規範的部分につきましては、協約であるか、単なる契約であるかによって非常に効力が違いますが、こういう債務的部分のみを定めた合意につきましては、協約であるかないかによる法律効果の違いは期間の定めの問題だけでございます。しかも、これは一回の行為によって終了する合意でございますので、三年をこした期間を定めちゃいかぬとか、あるいは期間の定めがなければ九十日の予告で解約できるというような規定の適用する余地がおそらくないのじゃなかろうかというふうに考えますので、私といたしましては、協約であるか契約であるかちょっと断定しかねるけれども、いずれにしても法律効果においては同じものではなかろうかというように考えております。
#113
○須原昭二君 労組法の第十四条、労働協約の効力の発生、これは解説書を見ますると、労働協約は、書面を作成し、当事者、すなわちここでいうならば中鉄バス株式会社の取締役社長、これは代表者ですから、経営者の。それから私鉄中国地方労働組合中国鉄道支部、こう代表者がある。当事者双方が署名または記名捺印しなければ労働協約として効力を発生しない、こう実は書いてある。こうした要件が備わっておれば、たとえ内容がどのようなささいな問題点であろうとも、いかに大きな問題点であろうとも、私は労働協約という名称でなくても、たとえば協定だとかあるいは覚え書きとか約束だとか、こういう名前であっても私は労働協約としての効力を持つと思いますが、労働協約としての効力の問題について、効力を持つかどうか、この点をひとつ局長から明確に御答弁をいただきたい。
#114
○政府委員(石黒拓爾君) 先生のおっしゃるとおり、形式要件は満たしております。内容要件を満たすものかどうであるかということにつきましては確信は実は私ないわけでございますが、効力といたしましては、いわゆる労働協約における債務的部分と同様の効力がある。したがって、協約であるか、契約であるか、しいて割り切らなくとも効力ははっきりしておるというふうに考えます。
#115
○須原昭二君 労働協約といえるかいえないかわからないけれども、労働協約の効力としては認められると、ちょっと私は理解に苦しむわけですが、この点はひとつ明確にしていただきたいと思うんです。たとえ確認事項といっても労働協約として同じ条件が具備されておれば、協約とみなしても私はいいのではないか。細部の問題であろうと、内容の大、中、小はこれは別として、やはり効力はあると私は断定せざるを得ないんですが、あらためてもう一度、ぼんくらの私でもわかるようにひとつ御説明いただきたい。
#116
○政府委員(石黒拓爾君) 確認事項とかあるいは覚え書きとか名前のいかんにかかわらず、内容と形式によって労働協約であるかどうかがきまるということは御指摘のとおりでございます。労働協約の内容条件といたしましては、労働条件の基準を定めるのが労働協約であることは非常にはっきりしておる。「労働条件その他に関する労働協約は、」とはっきり書いてある、この「その他」というのがどの範囲であるかということが実はあまりというか、全然はっきりしておりません。労使関係、労働関係に全然関係のないものであれば「その他」には入らないであろう。ただし、相当関係のあるものについて「その他」に含めるかどうかということについては、その境界線を論じた判例あるいは学説というものを私ども承知しておらないわけでございます。しかしながら、この効力につきましては、労働組合法の十六条でございましたか、労働協約に定める労働条件の基準に反する労働契約は無効とするという、いわゆる直律強行性の規定がございます。これは労働条件の基準に関するものだけで協約として最も重要な効力でございますが、労働条件の基準に関するものだけでございますので、労働協約中のいわゆる債務的部分と属せられるものにつきましては、この直律強行性の規定の適用はない。そうするとその債務的部分のみからなる労働協約というものは労働協約としての特有の効力というものは期間の定める点を除きましては特有の効力というものはないわけでございます。したがって、先ほどから申し上げておりますように、協約であるというふうにお考えいただいて間違いであるとは全然私、申しておりませんですが、協約であるにしろ、契約であるにしろ、その法的効力としては同じ結果になるというふうに考えております。
#117
○須原昭二君 要するに、相互で結んだ約束事は効力はあるということでいいんですね。
 そこで前に進んでまいりますが、これで論議をしておりましても時間がきてしまいますから。しかし、この問題について、実は会社側は五月十日付けで突如として廃棄通告を一方的にしてきているわけですね、御案内のとおりに。廃棄通告の理由を私もここに持ってきておりますが、五項目の事項を確認しましたが、これは四月二十七日午前九時二十分から午後十一時四十分までの長時間にわたり、貴組合や外部団体等百数十名に取りかこまれ、大ぜいしてつるし上げられるなどしてその強迫状態のもとに耐えかねて確認させられたもので、当方の真意をうたったものではありません。よって取り消しをすることにいたしますと、こういうまあ、破棄通告文がきているわけです。
 そこで、私は事実を、実態を調べてまいりました。第一の皆さんの話も、第二から出ておるところの文書におけるいろいろの覚え書きも見ましたところ、四月二十七日のいわゆる団体交渉はですね、他の組合の団体交渉でも、これは労務行政をずっとやってみえられた局長さんはおわかりのように、時としては団体交渉というものはエキサイトして声が大きくなったりあるいは机をたたいたり、あるいは労使関係が激しく言い合いをする場合は間々あることなんです。その点はよくおわかりだと思うのですが、ただ、ここで言っている確認事項の大要が最終的にまとまったのは四月の二十七日の午後七時より休憩をとりながら小委員会で、会社側四人と組合側二人で内容の意見一致を見たものである。この点は御存じですね。――まあ頭を縦に振っておられますから御案内だと思いますから、さらにこの確認書の書面が正式にできて双方が取りかわしたのはこの二十七日の団体交渉の席上じゃないんですよ、ね。四日間経由した四月三十日なんですね。しかも会社の社長の応接室で会社側が三人、組合側三人が話し合って、和気あいあいで握手して、そして、その調印をしているわけです。しかもこの、いま見ていただいておわかりのように、会社側が自分の便せんを使い、しかも自分のところの職員にタイプをたたかして、自分でつくってきて、そして、これを組合側に提示して判を押してください、いこうじゃありませんかと、こう言ってでき上がったものですよ。もし、強迫状態で行なわれたとするならば、そのときに、二十七日が強迫状態であったというなら、そのときに捺印することを、みずからタイプをたたいて提示するというようなことはなかろうと実は私は思います。事実経過からいって。これは、このときに会社側は強迫状態だったからいやだと、こういうなら話がわかるんですがね。さらにまた、この確認事項を取りかわした四月三十日からさらに四日間たった五月四日には、賃金問題におけるところの最高のトップ会談、いわゆる社長と委員長との間に二時間にわたる話し合いが、会談が持たれておるわけですね。このときにも会社側確認書の話――破棄をするとかというようなことは一言も触れておらないんです。これは会社側は認めておることです。こうしたことを考え合わせてみますると、会社が言う強迫というようなものは私はでっち上げであると、何らの根拠もない、あとからこじつけだと、こう言っても私はいいと思うのでありますが、私の言うことについて無理があるのでしょうか、これ。
#118
○政府委員(石黒拓爾君) 先生御指摘の点につきまして、私どもそれは全然違いますというようなことを申し上げるつもりは全くございません。ただ、労働協約であるか合意であるか、いずれにしてもこの確認事項の有効、無効、その無効の争点が強迫であったかどうかというところが争点でございまして、このようなことにつきまして、私どもがこの事実認定をし効力の判定をする立場にはないことも御了承いただきたいと存じます。
 ただ、私どもといたしましては、強迫というのが、一般の商業上の取引なんかの強迫というのは、たとえば告訴するぞ、裁判に持ち出すぞと言っただけでもって強迫になったなんという事例もあるやに承知しておりますが、労使関係における、交渉における強迫というのは、たとえばもう言うことを聞かなければストライキやるぞ、といったようなことは決して強迫にはならない。それから団体交渉というものがとかくやや荒れがちであるということも考慮に入れなければならない。強迫の成立を立証することは非常にむずかしい場合が多いだろうと思っております。
#119
○須原昭二君 さらにもう一つつけ加えておきますが、会社側の破棄通告書を見ますると、交渉が長時間にわたったことを理由の一つにあげていますね。この、今回の確認事項、しかし、この団交が長時間になった理由というのは、これは現地の出先からおたくは聞いておられるかどうかわかりませんけれども、今回の確認書の第一項に出てくるこの沼田さんというお方との関係が非常に重大なかかわり合いがあるわけです。この第二組合員に事実関係を究明するために、沼田さんの問題を究明するために話し合ってた。しかし、会社側はこの人間を、重要な人物でありますが、これを五時間も実はかくまっておったという事実があるわけです。そういう事実からして、この辺からして時間が延びてしまったということはもう御報告を聞いておられると思うんですけれども、こういう点からいっても、会社側がいうそんな長時間にわたったという理由には、私はみずからつくったことであって、第一組合の責任ではないと思うわけです。
 さらにこの際聞いておかなければなりませんが、労働法の十五条、労働協約の期限が、労働協約が強迫によって失効したそういう事例は少ないと思うんですけれども、この点についてあったら、ひとつ御説明願いたいと思う。
#120
○政府委員(石黒拓爾君) 労働協約が強迫によって取り消されて失効したという事例は、御指摘のごとく非常に少ないと私ども承知しております。裁判に出ました事例は、昭和二十五年、神戸地裁の判決のある淡路産業事件だけであると私ども承知しております。
#121
○須原昭二君 その一件しかないということも私たちも確かめました。御案内のとおり、いま御指摘がありました昭和二十五年七月十一日神戸地裁、その中にこう書いてあるわけです。たとえば会社幹部の家族が強迫され、会社側交渉委員が軟禁されたり、つるし上げられたり無理やり会社側が協約の締結を承認させられるような場合、これが判例なんですね。その点を確認して、さらに進めてまいりたいと思うんですが、この会社側が労働協約を一方的に五月十日に突如として破棄通告を出してきた基本的な問題点は、今後の団交でも、その後の団交でも会社側が明確にしているように、確認書の交換を取りきめた四月二十七日の団交が強迫状態に置かれていたのだから、すなわち、それはどういうことだというと、民法の九十六条にいう詐欺、強迫による意思表示であって無効であるというところに彼らの理由の根拠があるわけです。民法九十六条にいう詐欺、強迫による意思表示の無効性とはどんな場合に具体的にあるのか、この点が私は、これは問題になってくると思うのです。この点はどうですか。
#122
○政府委員(石黒拓爾君) これにつきまして、先ほど申し上げました淡路産業事件というのは古い事件でございますので、具体的にどういう行為が行なわれたので、裁判所が強迫と認めたか。いま先生がお読みになった判決内容以外には私ども承知しておりません。学説におきましては、民法九十六条でございますか、強迫による取り消しということは労働協約についても成立するというのが通説でございます。その要件を論じたものは比較的少のうございます。しかし、労働協約の場合には、普通の団体交渉の場合は普通の場合と違うんだから、そう簡単に強迫が成立するというものではないというような説が多うございまして、私どもも先ほど申し上げましたようにストライキの威迫なんていうものを強迫と考えているというわけにはいきませんで、非常に慎重を要するものと考えております。
#123
○須原昭二君 労働協約の失効の問題について、いわゆる労働問題について民法九十六条の条項を出してきたところに私は問題があると思うんですが、これが百歩譲って民法九十六条の強迫の意思表示の無効性を彼らが言うならば、それはその根拠をやっぱり明らかにしなければいけない。そこで、私が調べてまいりましたけれども、実は二件ありますよ、二件。この民法九十六条による強迫によって判例が二つ出ております。大正五年の五月八日と昭和十一年の十一月二十一日の大審院判例があります。これをちょっと読んでまいりますと、他人に畏怖の念を生ぜしめ意思表示させるために害悪を加うべきことを告知し、それが違法と認められることをいうと、すなわち強迫の故意、被強迫者の表意を予期した、あらかじめ知ったということを要すると、実はこの判例が明記をしておるわけです。そういたしますと、会社側はこれをじゅうりんして無効を一方的に宣言しておるわけですが、この判例の解釈から言うならば、会社側の解釈は無理である、成立しないと私は思うんですけれども、その点はどうでしょう。
#124
○政府委員(石黒拓爾君) 最高裁判決は、「「強迫に因る意思表示」の要件たる強迫ないし畏怖については、明示若しくは暗黙に告知せられる害悪が客観的に重大なると軽微なるとを問わず、苟くもこれにより表意者において畏怖した事実があり且右畏怖の結果意思表示をしたという関係が主観的に存すれば足りる」というふうにいわれておるわけでございます。しかし、これは一般の契約についての判例でございまして、たとえば無期限ストライキをやるぞということを告げられたらば畏怖したと、ストライキの畏迫に対して会社側が畏怖したからやむを得ず判こをついたんだというようなことがあっても、私はこれは強迫にはならないと思うのでございます。したがって、この一般の契約についての大審院判決というものを協約の取り消しの場合にそっくりそのままあてはめるのはちょっと無理があるのじゃなかろうかと私は考えます。
#125
○須原昭二君 そういたしますと、この確認事項の問題について民法をたてにして強迫があったからやめだというわけにはまいらない、無理だと、こういうふうに私は解釈してもいいですか。
#126
○政府委員(石黒拓爾君) それはちょっと違いますので、私どもは判決は一件しかございませんが、学者の学説をずっと調べましたらば、協約論を論じた学者は、いずれも強迫による場合には取り消すことができるんだというふうに言っておりますので、これは一応通説と言ってよろしいんじゃないかと思います。ただ、強迫の成立要件というものは一般の商取引なんかの場合とは非常に違う、団体交渉、争議行為という労働者の行為における強迫というものは、単に軽微な害悪であっても、相手方がそれに畏怖を感じればそれで強迫なんだというように簡単に強迫は成立するものではないだろう。強迫の成立要件は、労使関係の場合には非常にむずかしい問題があるだろうと思っております。
#127
○委員長(矢山有作君) ちょっと聞きたいんですがね。あなたの解釈を前提にしてものを考えた場合、四月の二十七日の日に相当激しい団体交渉があったと仮定をしても、それから二十八日、二十九日と二日間を経過して三十日に労使双方それぞれ三人の代表が談笑のうちに話し合いが行なわれたと、そして、その席に、会社側のほうから、みずから会社側の用せんに会社の文書課のタイプで四月二十七日の日に確認された事柄を打って、そして判こをついて、これでよろしゅうございますかというて持ってきて、ああそれはそれでいいということで判こついたというのが事実経過なんですね。そういう事実経過を踏まえた上で会社側が主張しておる強迫というものが成り立つと考えられるのか考えられぬのかという、あなたの個人の見解を求めておきたいと思うんです。
#128
○政府委員(石黒拓爾君) 委員長からのお尋ねでございますが、労働省あるいは労政局という立場におきましては、特定の法律行為の構成要件、事実認定をするという権限あるいは法律上有効、無効ということを認定する権限というものは全くございません。しかしながら、いま御指摘になったような事情もあることは私どもも聞いております。先ほど来申し上げておりますように、労使関係の合意についての強迫の成立というものは非常にきびしく解しなくちゃならぬ。きびしくという意味は、そうたやすく強迫を認定すべきではないと考えております。須原先生並びに委員長のおっしゃいました要素というものは強迫が成立したかどうかを、しかるべき有権的機関が認定する場合に非常に有力な根拠の一つになるだろうと考えております。
#129
○委員長(矢山有作君) 石黒労政局長、この有権的な判断というのはまた別な場所で行なわれるでしょう、それぞれの機関でね。しかしここでせっかくこういう議論がなされておるわけだから、そんなに四角四面に逃げるのでなしに、あなたとしては、そういう一応状況設定したわけだから、その状況設定の上に立ってあなたの判断はどうなりますかということは、別に答えてもあなたの立場を害することはないと思うのだね。
#130
○政府委員(石黒拓爾君) 労政局長というのは権限というのは何もないわけでございます。けれどもその言動というのは非常に影響力が強うございます。(笑声)そこで、個人としてそれは無効であるけれども、労政局長の立場ではそうは言えないとかなんとかいうふうな使い分けというのはこれはむずかしうございまして、私が先ほどから申し上げておりますことでおおむねお察しはつくだろうと思いますので、この辺でひとつ御勘弁を……。
#131
○委員長(矢山有作君) 察しがつくだろうという一言で察しよう。
#132
○須原昭二君 察していただけばわかるとおっしゃいましたから、まあ察していきます。
 そこで、やっぱりいままで私は民法上の強迫の概念、あるいは労働法上の強迫の概念、それぞれの構成について、これは質疑をしてきたのですが、どう私がどちらから見ても、えこひいきをするわけではないけれども、冷静にこれまで調査をしてきて、だいぶ時間がかかって、日にちがたっているわけですが、どう考えてもこの労働組合と会社とが締結をした、約束によって取りかわされた確認事項五項目というのは、私は労働法上の労働協約になるものである。労政局長は何かどこかで準協約――協約に準ずるというようなことばも使ったというようなことを仄聞をいたしておりますが、いずれにしても私は客観的に見て労働協約として認めてもいいと断定せざるを得ないのです。そういうことと、もう一つは、確認書を会社側が正当な理由なくして、いま察しをせよとおっしゃいましたから、察しをして考えますと、正当な理由なくして、一方的に突如として破棄した、こういうことに私は感じられます。したがって、これまた民法九十六条を志向して主張される会社側のこの主張というものには妥当性がない、こう断ぜざるを得ないのです。この問題がやはりいま、岡山県における、いわゆる九〇%の路線を支配的に独占をしておる中鉄バスの経営をめぐって、労使の間に大きな問題が出てきておるわけです。一民間企業の中で労使双方ががたがたやっていることについてはそんなに私は影響はないと思う。少なくともこの中鉄バスというのは公営企業ですよ。このがたがたやっていることが、ひいてはいろいろこの地域住民の皆さんが協議会をつくり、告発をしたり、こういう問題に波及をしているわけです。この公共性を考えるときに、一刻も早くこの正常な労働慣行に、軌道に乗せていくということが最も重要な問題点だと思うのですけれども、そういう点について何か労働省は労使の関係だからそれは労使で話し合っていけばいいんだ、介入すべきではないというような消極的な態度をとられるところに私はきわめて遺憾な感じがしてならないわけですが、その点は労働大臣どうですか。
#133
○国務大臣(加藤常太郎君) いろいろ専門家の労政局長と須原議員と問答しております中に、まあ、これは労働省の権限、地労委との関係、もう私から申し上げなくても、須原議員も専門家でありますので、よく御存じだと思います。しかし、いろいろ質問の中に、何だかんだ、社長がどうだこうだと、私は、労働省はさようなことは毛頭考えません。しかし、やはり権限その他について、できないことはまあできない、これはいたし方ないと思いますが、不当労働行為のあったことも間違いない。確認書の問題、並びにまあ就労の拒否の問題、これはまあ、いろいろ法律問題から考えても慎重に判断し、また相当、これに対する明確な労働省の方針だけぐらいは打ち立ててもこれはいいと思うんであります。地労委の問題に対しまして、いまこれを、見解を述べられないという労政局長の話もごもっとも、しかし、いまお説のように、私も中国バスは対岸でありますので、よく任務の重要性も知っております。そういう点から地域住民の生活に重要な役割りがあると、その公益的な機関がいつまででも、もうすったもんだとやることは、政府としてもこれは考えなくちゃならぬと、こういう立場がありますので、労働省のほうは、まあ労務のほうの管理でありますが、やはり会社自体は何て言ったって運輸省でありますから、運輸省ももう少し、こう真剣にこれに対して考えなくちゃならぬのは、これはもう須原議員のお説のとおりでありますから、県当局並びに運輸省にも私、連絡をとりまして、早く解決するようにすることが、これがまあ、答弁のための答弁でなく、だれがどうであろうが、そんなことは私はもう全然考えませんので、これに対しまして、緊密なる連絡をとって、できるだけ早くこれが解決に邁進するように、行政的な私は対処をいたしたい本心であります。
#134
○須原昭二君 非常にものわかりのいいような御答弁をいただいたんですが、どうも明確な点が一つ抜けておるわけですよ。私がこれまで時間をかけて申し上げてきたことは、客観的に冷静に見てきても、この確認事項というのは、あの事実経過、二十七日、三十日、そして四日、さらに十日の破棄通告に至る事実経過から見ても、これは会社側の言っておることはちょっと無理だと。
 それから、これは確認事項という問題についても、労働協約に適当するものであると、そういう問題から考えれば、この問題が有効か無効か、あるいはまたこれは一方破棄がいいのか悪いのか、こういうことをめぐって労使の紛争がさらに拡大をし、その問題がひいては公共事業としてバスの運行が停滞をしたり、あるいはさまざまの陸運行政に大きな欠陥を抱いているわけでありまして、やはり当面、私が考えるところ、会社側にこの確認事項を守らせることが私は緊急な課題だと思うんです。この確認事項を守らせることが事態の収拾の一番近道なんです。この点を踏まえて私は厳重にひとつ行政指導をやっていただきたい。いま労働大臣は、幸いにして、運輸省と労働省とが話し合って、ひとつ閣内の中でもトップでひとつ話をしていただくと、こういう話を聞いて、若干ちょっとここら辺が気が楽になったような気持ちがするわけですけれども、やはり私は、政府が、労働者の立場に立って労働省というのはやるということをこの前もよく言われました。じゃ、経営者のほうは、ひとつ通産省を代行してでもけっこうですから、ここら辺でトップ会談でこの事態の収拾に政府の中において責任を持って私は処理すべきだと、こう実は思います。そういうことをひとつ処理をしていただきたいと同時に、ぜひともその結果について私は報告をしていただきたいと思いますが、どうでしょう。
#135
○国務大臣(加藤常太郎君) まあ、いまごらんのように、事務当局ともよく相談いたしまして、確認書の問題がすかっと――須原議員からも、この問題がはっきりすれば協約問題で当然この問題が解決するのに有益だと。この問題なかなか地労委でもむずかしい、裁判所、いろいろ法律の研究家でもなかなかこの問題は、もうここは特に専門家でありますので、こういうようないろいろの難解の点もありますが、しかし、やはり労働行政をあずかる役所でありますので、須原議員のような方向に持っていくように大いに検討し、またいまの行政的な面で主務官庁の運輸省と御相談すると、これはまあ、さっそく私から運輸大臣ともよく相談いたします。ここでなかなかかような問題は、まあ、あまり無理をしてまたかえってこじれてもいけませんので、政治的によくこの点を、十分わかっておりますので、これに対する対処をいたしたいと思います。ただ、協約の問題ここでさっそく大臣としてお答えすると、私、法律のほうはまあ弱いほうで、研究はいたしておりますが、なかなかこれ、むずかしい難解の点もありますが、いま局長から言ったように、ややこうだというような話の程度でありますが、もう一そう、よく検討いたしたいと思います。
#136
○須原昭二君 ひとつこんな問題はあまりおたくたちが消極的な態度をとられることがかえって地方住民の疑惑をますます助長することですよ。個人的な会社の社長さんの背景についてちょっと触れましたけれども、そういう認識が強いんですよ。だから、政府に言ったって、どこに言ったってこれはだめだと、争うところにいって争わなければしようがないんじゃないかという意向が地方住民、バス利用者に強いんですよ。ですから、そういう事態を認識されて、政府も、ただこの国会の討議だけじゃなくて、やはり労働省も、本庁から一ぺん現地を調査をしていただきたい。運輸省もその一陸運事務所の下からの報告だけを待っているのじゃなくて、運輸省みずからがやはり現地へ行って調査をする。そういう中からいま言う、労働大臣が言う政治的にこの事態を収拾することが私は当然必要だと思うのです。ぜひそういうことを、いま頭を下げておられますから、ぜひそういう方向で進めていただくと同時に、この事態を一刻もおくらかすことが、岡山県下におけるところのこのバスの利用者における問題というのは解決しないわけです。ですから、ぜひとも私たちは重大な関心を持っておりますから、政府は、当然この運輸行政の立場からいい、あるいは労働行政の立場からいって、最高の責任を持って、私はこれはこの際処理すべきだ。その報告をこちらへ出してもらう。出さなければ、私たちも現地へ行ってあれだけ調べてきた以上、やはりこの席上へひとつ社長も呼び、労働者も呼び、あるいは第二組合も呼んでもよろしいです。そしてさらに地域の住民もひとつ参考人に呼んで、ここでやはり究明せざるを得ません。その点だけは、ここに委員長を通じて特に私は銘記をしておいていただきたいと思うわけですが、そういう気持ちで、この場だけ通れば、この社労委員会の討議だけ済めばあとはどうでもいいんだというものの考え方に立つおそれがありますから、私は食いどめをしておきたい。どうですか。
#137
○国務大臣(加藤常太郎君) まあ、あまり抗弁するのは私好まぬのでありますけれども、いまの須原議員が、だれが仲人だとか、そんなことは、これはもうやめた人のことで、地方でよくその話があるんでありますが、これはもう地方のうわさであって、労働行政並びに運輸行政でも、さようなことは考えておりません。これだけはもうはっきりと私は答弁できます。地方でよくそんなことを言うのでありますが、藤田社長も、私一回や二回ではありません、何十回も会ってよく知っております。まあ両備の関係その他でも、これは須原議員、ちょっとこれは思い過ごし、言い過ぎで、地方でそういううわさはありますが、決して運輸省もさようなことは考えておらないと思います。そういう意味で御趣旨の点をよく考えて対処いたします。
#138
○委員長(矢山有作君) 加藤労働大臣のほうは何か解決に前向きに取り組まなければならぬという意欲があるようなんですが、どうも労政局長の話を聞いておると、みずから労働省の任務を放棄したような話ばっかりに聞こえるのですよ。私は、いままでのやりとりを聞いておって、確認書の破棄ということが非常に無理があるんじゃないかと、強迫ということを理由にして破棄することは無理があるんじゃないかということは、あなたも大体言外に言われておると思うんですね。ところが、その確認書をめぐって労使間の紛争が解決しない。これをほっておけばさらに大きな紛争に発展するおそれがある。そういう事態においては、その確認書の効力の問題を有権的に、最終的に決着をつけるのが地労委だ、中労委だ、裁判所だという議論の前に、やはり労使間の正常化をなるべくはかって、問題の紛争の拡大を防ぐようにしなければならぬというのが労働省のやはり仕事じゃないんですかね。それをしても、その有権的な解釈はやる立場でないとか、どうとかこうとか言っておるんでは、私は労働省がみずからの役目を放棄することになると思うんですがね。だからこれは法律解釈として、どうこうという立場もさることながら、それを踏まえながら、むしろ政治的に少し労働省が問題を考えられるべきじゃないですか。どうなんですかね。労政局長の見解を聞いておきたい。
#139
○政府委員(石黒拓爾君) この事件の筋の通った円満な解決は私ども切望しておるところでございます。岡山県内の事案でございますから、直接の責任は県当局でございますが、私どもといたしましては地労委の進行状況もにらみあわせ、また県当局とも緊密な連絡をとり、そして運輸省とも十分連絡をいたしまして、この事件のすみやかな解決のために私どもがお手伝いできるところがあれば全力をあげてやりたいと考えております。
#140
○委員長(矢山有作君) 本件につきましては、本日はこの程度にとどめます。
    ―――――――――――――
#141
○委員長(矢山有作君) 港湾労働法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。加藤労働大臣。
#142
○国務大臣(加藤常太郎君) ただいま議題となりました港湾労働法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
 港湾労働法は、港湾運送に必要な労働力の確保と港湾労働者の雇用の安定その他福祉の増進をはかるため、一定数の日雇い港湾労働者を登録し、優先的に雇用せしめるとともに、港湾労働者の雇用の調整を行なうことを目的として、昭和四十年に制定されたものであります。
 最近におきましては、コンテナ輸送の増大等港湾における輸送革新が著しく進展し、港湾労働力に対する需要に大きな変化が見られますが、港湾荷役における波動性に伴う臨時的な労働力需要の充足について、日雇い港湾労働者に依存しなければならないという事情は、法制定当時と基本的には変わっておりません。このような事情にもかかわらず、登録日雇い港湾労働者の就労状況は逐年悪化しており、港湾労働法の目的とする港湾労働者の雇用の安定にとって好ましくない事態を招いております。
 このときにあたり、昨年十一月には港湾調整審議会から、また、本年一月には中央職業安定審議会から、それぞれ労働大臣に対して、今後の港湾労働対策に関する建議が提出されたのであります。
 政府といたしましては、これらの建議の趣旨を尊重し、港湾労働対策を一そう強化するため、港湾労働法を改正する必要があると考え、中央職業安定審議会にはかり、その答申に基づいて、この法律案を作成し、提案した次第であります。
 次に、その内容の概要を御説明申し上げます。
 第一に、事業主が共同して登録日雇い港湾労働者の雇用機会の確保その他雇用の安定をはかるようにするため、港湾労働協会を設立することであります。港湾労働協会は、港湾ごとに事業主を会員として設立される地区協会とこれらの地区協会を会員とする中央協会の二種類としております。
 地区協会は、労働大臣が定める港湾雇用調整計画に即応して、日雇い港湾労働者の登録、登録日雇い労働者の紹介、訓練、雇用機会の確保等の業務を行なうこととしております。また、中央協会は、会員に対する指導及び援助等の業務を行なうこととしております。
 第二に、港湾労働者の雇用の調整を適正かつ円滑に行なうため、港湾労働者の雇用の規制を強化することであります。
 その一は、六カ月以内の季節求人については登録日雇い港湾労働者をもつて充足させるため、六カ月以内の期間を定めて雇用させる港湾労働者も日雇い港湾労働者として取り扱うこととしております。
 その二に、日雇い港湾労働者の雇い入れ秩序を確立するため、天災等の場合を除いて、地区協会あるいは公共職業安定所の紹介によらないで日雇い港湾労働者を使用することを禁止することとしております。
 その三は、登録日雇い港湾労働者の雇用の安定をはかるため、事業主が港湾労働法の適用されていない他の港湾で使用している労働者を登録日雇い港湾労働者の就労状態が悪化した港湾において臨時に使用することを禁止できることとしております。
 その四は、常用港湾労働者の雇用状態の改善をはかるため、雇用された日から六カ月以内に離職した常用港湾労働者についても、その雇用期間に応じて、事業主から納付金を徴収することとしております。
 以上のほか、この法律案におきましては、港湾雇用調整計画の的確かつ円滑な実施のため事業主に対して必要な勧告等を行なうことができることとする等、所要の規定を設けております。
 以上この法律案の提案理由及びその概要につきまして御説明申し上げました。
 何とぞ御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
#143
○委員長(矢山有作君) 以上で政府側の趣旨説明聴取は終わりました。
 これより質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#144
○大橋和孝君 ただいま説明がありました港湾労働法の改正案について御質問をしたいと思うのでありますが、先ほど説明の中にもありましたように、港湾労働法が制定されましたのは昭和四十年でありまして、その以後に、この港湾調整審議会が設立されて、いろいろ審議をされ、また建議も出ているところであります。昭和四十五年の十一月に総理府の共同雇用の理念の答申から始まりまして、昭和四十六年には全港湾と日本港運協会との中央交渉が行なわれて、そうして就労保障体制をめぐりまして、団交まではこの政府の態度が登録日雇い港湾労働者に対する不安定就労を克服して一定の就労確保をはかるように見えておったことは事実であります。それにまた引き続いて、昭和四十七年の十一月における総理府港湾調整審議会における共同雇用の体制の確立というこの問題提起も前回の答申を受け継ぐものとして一定の評価をされるようなものであるというのもこれは事実であるわけであります。まあ、魅力のある港湾労働をつくることがわが国の港湾の重要な政策であるとなっておる。それは総理府港湾調整審議会の提唱にかかるものであったということでありますが、引き続いて運輸省、労働省両省が港湾労働の時間短縮、あるいはまた労働条件の改善が緊急な課題であるということから、労働時間短縮問題につきまして、港湾の政策の最重点策となってきた。これもまたいままでの経過から事実であります。この動きは、日本の過酷な港湾労働の実態が労働組合によって次第に明らかにされたこととあわせて、労働力の不足に悩むところの関係業界と政府が、港湾の将来を見越して、ようやく労働時間短縮に取り組む決意をあらわしてきたからであろうと思うわけであります。
 全港湾と日港協といいますか、これが十数回にわたっての団交を重ねまして、そして御存じのように三・二二協定――三月二十二日協定というのが結ばれたわけであります。これは、いま私が申しましたような背景の上でできてきたというその事情も周知の事実だろうと思うわけであります。これを日港協が調印後一カ月たたないうちに、賃金の春闘の中でいろいろストライキもあったとはいわれますけれども、いままで、こうしていろいろ積み重ねられた背景には非常に大きな意味を持つところのこの三・二二協定というものを破棄してしまう。で、白紙に戻すと一方的な言明をして、さらに中央で団交も一切開かない、こういうことも言明している。あるいはまた、いままでいろいろ労使間で積み重ねられた労使慣行上から見るならば、非常に荒っぽい一方的な通告だと、こういうことはわれわれ常識からしたらとてもとても行なわれるものじゃないということがこれ、実は行なわれているわけですね。そして、あまつさえいろいろな協定そのものも全部破棄されてしまう、こういうようなことになっておるわけであります。これはほんとうにもう道理にかなわないことであるばかりでなく、近代的な労使関係の樹立に対しては逆行するものであります。先ほど、大臣の説明の中にもそういうことが前提だといって今度の法改正があるわけでありますが、それがこういうふうな一方的な方法で、この近代的な労使関係というものの樹立に対して逆行するようなことがどんどん行なわれていく、これは非常に私ども聞き捨てならないことであるし、こういうことがほんとうに重大な港湾労働の中で行なわれていいのかどうか、これはもうほんとうに国民ひとしくひんしゅくしておるところじゃなかろうかというふうに思うわけであります。
 全港湾は日本のすべての港湾労働者を代表した港湾の将来を考えてここに結成をされておるわけでありますが、この実際の状態を見ますと、これは千差万別の労働条件のもとにおかれておる労働者が、こうした重要性を考えながら、組織されたものであるということは御存じのとおりでありますが、全国的な中央労使団体交渉の必要もいまのような形で非常にばらばらになっておる港湾労働からいえば、最もその中央でそういうことをすることが意味深いことでありまして、中央の団交というものは非常に大きく位置づけられているだろうと思うんであります。また、一方ILOのほうから見ましても、近く成立するであろう港湾労働近代化条約の示すところから見ましても、これはもう実に当然なことでございます。したがいまして、この中央団交の早期の開催あるいはまた持続団交の精神でもってこれをすべての問題解決のために話し合いを始めることは最も必要だろうと思うのであります。ことにこの三・二二協定の白紙宣言を撤回し、あるいはまた、すべての協定あるいは協約を再確認して有効なものにしていくと、あるいはまた、労使間の正常化のために努力をし、中央の団体交渉を早期に開いていくと、こういう方向が最も私は必要だろうと思いますが、この点につきましてひとつ御見解を聞いておきたい。
#145
○国務大臣(加藤常太郎君) この港湾労働の改正問題、これはあとから政府委員なり私から言いますが、この問題もさりながら、何と言ったって労使関係の正常化が港湾労働行政上打開を要する最も重要な問題であろうと思います。そういう意味で、三・二二協定が四月二十五日にやめたと、これは相互の信頼の点から言っても問題であり、労使が正常的に話し合いを何にもせぬで、これは打ち切りと、これでは法律改正をやったっていろいろな運営がうまくいきません。そういう意味でこの問題に対しましては労働省といたしましてはこの問題を特に重要視いたしまして、五月二日に前後四回にわたりまして労使双方から事情の聴取を行なうとともに、労働省のほうから示唆いたしまして、ひとつ団交再開に役立つような方向に進めというので、事務折衝を、五月の二十九日にトップ会談で事務折衝を行なわれて、中央団交の再開についていつでも労使が話し合いができるという確認はとれたんでありますが、その後、われわれ労働省から見ましても確認したが、どうも、もうひとつ何だかぐずぐずしているような感じがいたしまして、ちょうど衆議院がこの港湾労働法が通る前に、衆議院のほうの要望もありますので、十一日に労使関係を役所へ、事務次官が労政局長でもありますので、事務次官が正式に呼びまして、この事態の早期解決を要請いたしまして、労使とも最大限の努力を払うと、そして問題の解決もいたしましょうと、近い将来にやりましょうと、こういうことを確認いたしましておりますが、やはり一ぺんこじれたことでありますので、今後ともこの問題は役所が立ち会ったのでありますから、なお一そう、これに対しまして対処いたしますが、見通しは決して悪くありません。だんだんよくなりつつありますし、この関係もよくするように労働省はこれは善処いたします。この点、この次は私がひとつ労使関係に入ってやろうと思っておるのでありますが、今後ますますこの点については努力は払うつもりで、詳細につきましては政府委員からなお一そう説明させます。
#146
○政府委員(道正邦彦君) ただいま労働大臣からお答え申し上げましたとおりでございまして、港湾労働に問題があると、このまま放置するならば、日本の港湾、特に六大港が壊滅するということは私どもも危惧いたしまするし、労使関係者、船主や荷主等含めまして関係者の一致した見通しでございました。これをどうやって解決するかということにつきまして、かねてより審議会その他の場で検討がなされておったのでございますが、御承知のように、昨年来、港湾調整審議会――総理府に置かれておりますが、そこの場で労使関係者がかなり時間をかけ、かっかなり激しい議論のやりとりもございまして、結論といたしまして、今回御提案申し上げておりますような内容で法律を改正すべきであるということとあわせまして、しかしながら同時に、近代的な労使関係を確立するということでなければならないと、これは法律事項で必ずしもございませんので、今度の改正案には直接関係はないわけでございますけれども、その二つを大きな柱として建議がまとめられております。で、私どもといたしましては、そういう危機意識に基づきまして、労使関係者がほんとうに何とかしなきゃいかぬということで御検討いただきました。その結果、いままで必ずしも近代的でございませんでした港湾労働の労使の間におきまして団交も正式に行なうということで、昨年来労使交渉が進められております。で、その協定は、まあ一冊の本になるぐらい、すでに積み上げが行なわれております。中でも、先生御指摘の三月三十二日のいわゆる三・二二協定、これは時間の短縮あるいは深夜業の廃止等を内容といたしまする、世界の港にもほとんど例を見ないような画期的な内容の協定が結ばれたわけでございまして、私ども 労使関係者がここまで信頼関係を回復し、港湾労働の近代化・合理化のために努力をされたということで、実は心から喜んでおった次第でございます。そういう基盤があれば、今回の改正も運営がうまくいくということで非常に喜んでおったのでございますけれども、春闘の賃金交渉等々のもつれもあったようでございまするけれども、現在は三・二二協定はまあ一応たな上げだというようなことになっております。で、それでは私どもは困るわけでございまするし、そういう労使関係であれば、幾ら法律を改正いたしましてもうまくいくはずがございません。そういう趣旨から、本来、労使関係の問題ではございますけれども、行政当局としてできる限りの努力はすべきであるということで、大臣の御指示もございましたので、労政局長ともども、私ども直接間接に労使に働きかけまして、協定の順守、再確認をしていただくように労使に呼びかけてまいりました。長くなりまして恐縮でございまするけれども、いろいろ曲折はございましたけれども、基本的に労使双方とも中央のトップレベルでこの問題を解決していこうという機運は出てきております。そう遠くない将来に私は中央のレベルでこの問題を再確認し、三.二二協定が基本的に順守されるということで解決を見るものと心から期待しておるわけでございます。
#147
○大橋和孝君 なかなか、とうとうと御説明を聞きますと、さも、と思いますけれども、その中を一ぺん考えてみないと、ただ、おじょうずな御説明にふわっと乗ってしまっていくわけにはこれはまいらぬと思うわけであります。
 事実から言いますと、先ほど道正安定局長がおっしゃられましたように、一冊の大きな本になるほど、いままでから労使の間で団交をしながら積み重ねて積み重ねて、そしてだんだんまいりまして、そして三・二二の協定というものができたわけです。ところがこの次のあと、春闘でちょっとストライキとかなんとかいうことになったら、一ぺんにそれはパアにするという、そして、しかもいままでからやられてきた一番大事な中央の団交まで一切やと。いままでいろんな協定があったけれども、それをみなだめだということがぽんと打ち出されるというところが、私はいままでの努力の経過から考えまして、どうも納得いかないわけですね。だから、そういうことがやれるような状態というのが私は異常じゃないか。こういう異常さがありましたら、何ぼいまのような、局長がおっしゃるようにりっぱな一部改正をやりましても砂上の楼閣になるのじゃないか。これはそこのところの問題をここでひとつ究明しなければ、ただ単に、いま言った、いいきざしになった、そうですか、ありがとうございます、ということではこれは相ならぬと思うわけですね。それからまた、そういうような何かがあるなら、またひっくり返りゃせぬかということがあり得るわけですから、私は労働省として、港湾労働のむずかしさ、そんなことはもう十分御案内でございましょうし、われわれもいろんなところで実地も見せてもらっているし、その間、重ねられたそれだけの努力のものが一片の――一カ月くらいしかたっていないわけですよ。三月の二十二日から四月の二十五日ですから、一カ月余りだ。そのときにぽんとパアになっちゃって、それ言われたらもうがたがたになってしまうのだ。こういうことになっては私はどうもふに落ちないのですね、これが。だから私はそういうところを一体労働省等はどう把握をしておられて、どういう点をどうしていけばそれがもう今後一切起こらないのだという、その観点はどういうふうに見ていらっしゃるか、はっきりしておいていただかないと、ちょっと軌道に乗りましただけではとてもとても私はこれはたいへんなことだと。一つもこれは改善されないと。われわれが一生懸命にこの法改正に対して協力をしても、ほんとうにおっしゃるような砂上の楼閣ですぐひっくり返っちゃうと。あんなの、法律出たけれども、きょうからやめちゃうといわれたら、これは法治国家でありながら、法が出ても法が守られないということが起こるのじゃないかと、こういう経過で積み重ねのすべての協約を破棄していくくらいですから。だから、ぼくはその力はどこにあるのだと、どうしたらいいんだということをもう少しわかりやすく説明していただきたい。
#148
○政府委員(道正邦彦君) おっしゃるとおりでございます。で、労使関係がほんとうに信頼関係を面復して近代化されない限り、法律は砂上の楼閣になるに私もきまっていると思います。そういう意味で、労使間の信頼関係の回復、これが、私は是が非でもこの際必要であると。で、港湾労働の労使関係というのは船内あり沿岸あり、非常に複雑でございます。で、私ども仄聞いたしておりますところにおきましては、中央の交渉を具体的に各港ごとに、船内、沿岸等に下げていく場合にいろいろの部面で影響が違うわけでございます。当面、一番問題になっております部門は船内関係でございます。で、先般主要港の船内関係の労使の話し合いが持たれまして、この三・二二協定の一番問題になっておりますのは深夜業の禁止の、廃止の問題でございますが、その点については中央団交に、何と申しますか戻すという方向で話がきまり、労使それぞれ態度を近日中に協議をされると。で、その結果によりまして近日中に中央団交を再開されるというふうな見通しのようでございます。で、私はぜひそういう方向で中央団交が一日も早く再開され、円満に話し合いがついて、三・二二協定が順守されると、再確認がされるということを心から期待いたしておりまするし、同時に行政当局としても側面からなすべきことがあればしてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
#149
○大橋和孝君 いま私、聞きましたことは、主体は一体、こう積み重ねてこうできてきたものが、一ぺんにぽんと破棄されると。そこらの力はどうなんですか。そういうことはまだこれからも起こりはせぬですか。それがまだどうも私ははっきりつかめていない。
#150
○政府委員(道正邦彦君) 先ほど申し上げましたように、過去一年来かなりひんぱんに労使間の交渉が持たれております。それで先生が御指摘のように全部パーにするということは使用者側も言っておらないわけでございます。三・二二協定はパーだということで、たとえば港湾労働の法の審議と並行いたしまして、この法律制定の際に労使がどういう態度で臨むかということを去年の九月二十五日に協定いたしております。これは労使双方ともパーだということは言っておらぬわけでございます。三月二十二日の協定のなかんずく深夜業の点が一番問題になっております。これが一番問題になるのが船内関係でございます。船内関係はいろいろ事情があるけれども、各港ごとのしかも船内だけの問題としてでなく、中央団交の問題に戻そうじゃないかという話し合いになってきておりますので、私はその問題が決着すれば労使関係は信頼関係を回復し正常化するものというふうに考えております。その点につきましては去る六月十二日の衆議院の社労の席で、参考人として出席をされました使用者側の代表も言明されているところでございます。私どもがいろいろ集めておりまする情報から見ましても、近い将来に解決するものということを期待して私は間違いでないように考えております。
#151
○大橋和孝君 私が言っているのは、あなたが期待していられる側はそうらしいと思いますけれども、われわれしろうと目では一つも期待できぬわけだね。一番あなたはその深夜問題が、船内問題が重点だと言われておりますけれども、それじゃ普及したところに対して響きますね。ですから、これはそういうことが一方的にできるという力関係というか、そういうようなことが、ほんとにもうこれは私ども常識外にあるというような感じがしますので、そういう点からいったら、その話さえ一ぺん戻ればもうこれで永久にこうした団交なりあるいはまた、これからの労使関係がほんとに近代化していくんだというふうにとられないわけでしょう。あなた自身でもそういうことを言っていますけれども、これが片づいてもまだその緒につくというだけで今後そういうことが起こらないということはあんた保証できますか。保証できぬでしょう、こんなところで。それをぼくはもう少しどこに問題があり、どこを改正すべきだとか、どうするべきだということのある程度の方針を持たなんだら、ただ、このことさえ話し合いしてもらえばもうそれでずっといけると、それが近代化関係だというふうには受け取れないわけですよ。近代化関係にしていくために今度の法律もしょうとされていることはわかりますよ。わかりますけれども、そのもとっこが何もあれがとれてなかったら、いまあなたがおっしゃったような砂上楼閣じゃないですか。だから私はそこのところをもう少し、論議する前に、私はこの法案を論議する前に一度そういうことなんかをしっかりと話し合いができないんだら、こんなことをつくってみても砂上楼閣で、何でここで時間を費やして議論せんならぬかという私は観点を持つわけです。だから労使関係をもっと詳しく私もこういう公の席上で言いにくいことまでみな知っているわけです。そういうことから踏んまえたらそんな軽い答弁で、こうしていきますよと、話し合ったらもうそれでいけますよというような形では済まされぬわけなんですよ。だから、そこらのところをやっぱりあなた方は労働省の側から立ったらどうなんだということを見きわめてそうして言われることばだったら私は了解いたします。しかし、それがなくて、みなそのまんまにしておいて、なかなかそこまで入れたら話がこんがらがるからというような形では、まだまださまざま、次々来るわけですね、これは。だからこんなのをやって、われわれ一生懸命議論してみても、これは法律がほんとに近代化になり、ほんとに私がいま申し上げたようにこういう港湾労働のほんとに私はあるべき姿だというふうな形にしようと思うんですから、ほんとうに近代的な日本の港湾の労働者の関係は非常にいいものだと、快適なものだということにしなきゃいかぬ、働いている人たちも非常に喜んでどんどん来てもらうようにしなきゃならぬ、いまじゃなかなか人が足らないわけですね、こんなことをやっておれば。ですから、私は、そういう観点でこれを議論しなければ、このせっかくの改正案だけれども、それに実が入らぬわけです。だからそこのところを私は聞いているわけですから、もう少しわれわれに自信の持てるような答弁をいただきたいですね。
#152
○政府委員(道正邦彦君) 先ほどもお答えいたしましたように、港湾労働の労使関係というのは非常にむずかしい労使関係の一つであろうと思います。いままでは率直に申しまして団体交渉もそう円滑に行なわれておらなかったわけでございます。しかしながら、港湾労働をこのまま放置するならば、港湾労働は壊滅すると、これは労使双方にとって放置できたい、のみならず船社、荷主その他関係者から見ましても放置できない問題であるということで、昨年来、関係者がそれこそ積極的に、議論のやりとりはかなり激しいものがございましたけれども、港湾労働の危機を回避するという意識におきましては関係者が全く意見が一致いたしておりまして、そういうことでございますので、私は、基本的に一年前とそれ以前との比較におきましては比較にならないほど労使関係は前進したというふうに考えて私はいいと思います。したがいまして、基本的に私は労使関係はいままでの労使関係と違って近代化の方向に大きく前進したというふうに考えております。その基本的な認識につきましては、私は労使とも現段階においても変わりはないと思います。ただ三月二十二日の深夜業の廃止の問題が一番ネックになりまして御承知のような状況にあるわけでございますので、私はその問題が解きほぐれていくならば、私は昨年来一年間にわたって労使が積み上げてこられた信頼関係は十二分に回復する余地があると、根っこまでこわれてくちゃくちゃになっているというふうには私は判断しないわけでございます。しかしながら、労使関係は生きものでございまするし、今後の事態は関心を持って見守っていかなきゃなりません。で行政当局としてやることに限界もあろうかと思いまするけれども、可能な限り側面から労使関係の近代化に役立つようにできる限りの努力をしたい、そういうことで、私は近日中に労使関係が信頼関係を回復し、一年来つちかってこられた新しい労使間の信頼関係が再び確立されることを心から信じておるものでございます。
#153
○委員長(矢山有作君) 安定局長ね、どうも話がすっきりせぬね。あなた、労使関係がいまの状態ではこの法律ができても役立たずだと、砂上の楼閣だと、こう言っておられるわけですね。そういう状態の中でこの法律をあなた、審議しろってどうなんだ、これ。まず、この法律をつくったときに、この法律の実施の実効が期せられるような労使関係を全力をあげて確立された後にこの法律を審議してくださいと言うなら話はわかるよ。ところが頭から労使関係不正常な状態の中でこの法律ができても実効が期せられないなんて言っておって、これを審議しろなんてそんなばかな話はないですよ。だから、これは私の委員長としての判断で言うなら、労使関係をまず、正常化さして、そうして労使関係正常化いたしました、この法律を審議していただいて、法律が成立した暁には労使関係正常化の上に立って実効が期せられます、こういうことにならなければあなた審議しろと言うのは委員会なめた話ですよ。
#154
○政府委員(道正邦彦君) 御指摘のとおりでございまして、港湾労働法の一部改正についての建議を昨年の十一月の十七日にいただいておるわけでございますが、その中に第六といたしまして「労使関係の近代化」という項目がうたってございます。「港湾労働問題の解決の途は、労使関係の近代化があってはじめて可能となるものである。それには、労使、とくに使用者またはその団体が港湾産業の置かれている立場とその社会的責任の重大さを正しく認識し、その上に立って労使問題を自ら主体性をもつて解決していくという考え方と姿勢が必至である。」ということでございます。そういう立場から考えますと、過去一年間にわたりまして労使関係当事者の御努力によりまして、いままでにないような労使関係の近代化がはかはれたわけでございます。それは私は画期的な事実だと思います。それがいまの事態がもうどうにもならぬような、破局的な現状にあるならば、これは私はおっしゃるように、それが解決してからではないかという御議論になろうかと思いますけれども、私どもの判断では、労使関係の改善というのは、日ならず必ず行なわれるという前提で申し上げているわけでございます。御指摘のように、労使関係が不正常にしておかしい状況にあるならば、これは私は意味がないことになると、そういう点の御指摘はそのとおりだと思いますけれども、私どもの見通しといたしましては、近日中に労使関係は必ず改善される。そのためにわれわれとしても努力するということを申し上げているわけでございます。
#155
○大橋和孝君 安定局長、そんなことを言っているとこれは全然もう通らないわけです。そんなら、これは私は実際見てきての話ですが、これは一たん、こういうふうになって行なわれているならば、日港協でどんな協定をして、これを下におろしても、今度はその業者のほうが、幹部の言うことなんかはもう統制力がないんだと、そして、その労働問題については全くそういう力がない。そして、むしろ言っていることは、ある業者の代表の人なんかは協定書なんかは、これは書いたもので破るもんや、吐いたつばはちょっと飲み込めぬけれども、書いたものは破れるのだ、こんなことまで言っておるという話も出ているわけです。こういうようなことが、やぶれかぶれの話では、あなたがいまちょっときざしがきざしがといってたって、なかなかこれはうまくいかない。そのほかたくさんあるわけなんですよ。これはもう地区協会のほうでいろいろ労働省からの話もあって、そしてこの保障なんかの問題も出てまいりますけれども、これは職安のほうでいままでやってこられた、この公権力をこういう業者に渡すわけですから、これは今度は、しばらく待っておれと、それでもういままでは職安のほうでやっておられたから黙って見ておったけれども、もうこれからはこちらができる、生殺与奪の権は持つのだから、そのときは今度はひとつやるからしばらく待ってよう、こういうふうなことを言って、手配師の方面でそういうことが言われていることも、巷間たくさんあるわけですね。こういうような事柄を考えてみると、あなたがいまおっしゃっているように、きざしだきざしだということだけではうまくいかぬわけですよ。ですから、少なくとも、この労使が円満団交ができて、そして中央の段階できちっと正常化して、そして、この労使関係が正常化するということが最も必要なことなんですよ。あなたも言っていらっしゃるでしょう、その中でそういうことをしなければいかぬということを。これはしかしできてないのですから、いま大臣の話を聞きましたから、もう数日を出ずしてできるというのですから、この次のこの港湾審議は一週間先ですね。もうひとつそこらまでにそういう効果をあらわしてもらって、われわれもそういう正常化の中で一ぺんこれは気持ちよく審議をさしていただく。それまで私は審議をちょっと保留をさしていただいて、きょうこんな押し問答をしておってもいかへんと思うんですから。時間も時間だし、その一週間ぐらいでひとつやろうじゃないですか。
#156
○政府委員(道正邦彦君) 先ほど来、日ならずして港湾労使の関係が改善されるというふうに申し上げましたのは、あてずっぽうでそういう……
#157
○大橋和孝君 あんた、二、三日と言うておるじゃないか、あすか、あさってと議事録を調べてみたら衆議院で言うておるじゃないか。二、三日のこっちゃと言うておる。
#158
○政府委員(道正邦彦君) 気持ちとしては、あすにもあさってにもということを、そういうふうにはっきり申し上げてございます。それで、われわれとしては一日も早くということでございますけれども、労使の関係者のいろいろの事情もあるようでございますので、なるべく早い機会にということで、われわれの気持ちとしては、あすにもあさってにもというふうにお答えを衆議院でしたわけでございます。その気持ちはいまでも変わっておりませんが、要するに、こじれた労使関係を、私どもも及ばずながら側面からお手伝いをいたしまして、トップレベルの会談をすでに持っております。トップの話し合いにおきまして三・二二協定は守っていこうではないかということが、トップ同士で話し合われておりますので、われわれはそれに期待をしてもいいということで申し上げているわけでございますので、その点だけはひとつ御了解いただきたいと思います。
#159
○国務大臣(加藤常太郎君) 大橋議員のお話よくわかりますが、この問題は法治国家でありますから、国民もそう思っておりますが、いま労働行政が、港湾行政が特に行き詰まっておると、これはいままでは荷主が責任がなかったというので、いろいろな手配師のやみ雇用、これはもううまく言いたいのでありますが、いま言えないようにちょっと行き詰まっております。そういう関係から、この法律改正案がやはり一番時宜に適して一番いいと思います。それには、まあ前提として労使関係の話し合い、しかし、労使関係の話し合いができなければ、この法案審議せぬとなったらこれはもうできぬと思います、片一方が無理言って。それでありますから、これは労使というのは、やはり双方が理解してやっていくと、これに対しましては私はもう重大な決意を持っておりまして、いかなることがあっても、事業主には無理をいっても押えつける、これは、内容はあとからまだ御審議いただきますが、いろいろな認可規定とか、欠格条項とかいろいろ問題を入れまして、それにまた労働行政として、それ以上に、法律が通ったって、うまくいくかいかぬかだって、あとのやり方によっていかようにもなるのであります。しかし、しからばこのまま放任したら労使関係はよくなるかといえば、これはたいへんなことになります。そういう意味で、いま大橋さんの言われることを聞くと、これはちょっと一理あるのでありますが、そうしたら、これはもう結局組合のほうが横に寝たら片一方は横に寝る、こうなったらこれはできません。ほんとうに行き詰まって行き詰まって、どうにもこうにもならぬというかっこうになりますので、はなはだ私はざっくばらんに申し上げますが、法案のほうは審議は審議を進める、片一方のほうも両者とも双方でよく話し合って、これに対する労使関係のほうを改善する。せいぜい三・二二の問題はもうパーだ、こんなむちゃな話、これはありません。そういうことでこのほうはこのほうでやります。私、先ほど言ったように、社労の通る前にわしが会うと言ったのでありますが、なかなか役所というのは、大臣が会ったらひょっとおかしくなったら困るというのでとめるのでありますが、これはこんなことを申しますと、もう私は、特に重大決意をいたしておりまして、何でわしに会わさぬのやと、こういうぐあいで、私は積極的に労使の関係、日本の港湾の行政の重要性、もうただ、片一方のほうは、今度この法律が通ったらピーというようなこれはよく聞くのであります。聞くけれども、さようなことは絶対に私はささない、こういうような確信も持っておりますので、いま言ったように、大橋さんこれ、ここでもうそれが解決せぬだったら審議せぬとなったらこれは妥結ができません。大体。もういろいろ立場がありまして、これは私は役人でありませんので、いろいろなあうんの呼吸を知っておりますので、やはり審議のほうはしてもらうし、片一方は片一方でいく、これははなはだ大臣から申し上げるのはいかがかと思いますが、私、思っておったことをぱっぱっと言うたちで、その点……。これはもう放任したら、もう通らなかったら、これはたいへんなことになって行き詰まり、こうなりますので、はなはだことばを返すようでありますが、ひとつ、団体の交渉のほうの三・二二の問題もやると、いかなんだったら、私が中へ入りますから、そういう意味で十分善処するし、法案の審議も、もうここでやめた、こういうようなことは、これは言わないようにひとつお願いいたします。
#160
○委員長(矢山有作君) 本案につきましては、本日はこの程度にとどめます。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後四時三十分散会
ソース: 国立国会図書館
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