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1972/07/03 第71回国会 参議院 参議院会議録情報 第071回国会 社会労働委員会 第16号
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1972/07/03 第71回国会 参議院

参議院会議録情報 第071回国会 社会労働委員会 第16号

#1
第071回国会 社会労働委員会 第16号
昭和四十八年七月三日(火曜日)
   午前十一時十五分開会
    ―――――――――――――
   委員の異動
 六月二十八日
    辞任         補欠選任
     斎藤 十朗君     渡辺一太郎君
     杉山善太郎君     藤原 道子君
 六月二十九日
    辞任          補欠選任
     渡辺一太郎君     斎藤 十朗君
    ―――――――――――――
  出席者は左のとおり。
    委員長         大橋 和孝君
    理 事
                玉置 和郎君
                丸茂 重貞君
                須原 昭二君
                小平 芳平君
    委 員
                石本  茂君
                上原 正吉君
                川野辺 静君
                君  健男君
                斎藤 十朗君
                高橋文五郎君
                寺下 岩蔵君
                橋本 繁蔵君
                山下 春江君
                田中寿美子君
                藤原 道子君
                矢山 有作君
                中沢伊登子君
                小笠原貞子君
       発  議  者  須原 昭二君
   国務大臣
       厚 生 大 臣  齋藤 邦吉君
   政府委員
       総理府統計局長  加藤 泰守君
       厚生省公衆衛生
       局長       加倉井駿一君
       厚生省援護局長  高木  玄君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        中原 武夫君
   説明員
       外務省アメリカ
       局外務参事官   角谷  清君
       文化庁文化部長  鹿海 信也君
    ―――――――――――――
  本日の会議に付した案件
○戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正す
 る法律案(内閣提出、衆議院送付)
○戦時災害援護法案(須原昭二君発議)
    ―――――――――――――
#2
○委員長(大橋和孝君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告をいたします。
 六月二十八日、杉山善太郎君が委員を辞任され、その補欠として藤原道子君が選任されました。
    ―――――――――――――
#3
○委員長(大橋和孝君) 戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 前回に引き続き質疑を行ないます。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#4
○須原昭二君 私は、戦傷病者戦没者遺族等援護法を補強する意味におきまして去る六月二十六日の当委員会において、私が発議者となりまして戦時災害援護法案の提案説明をいたしました。その際、第二次世界大戦でアメリカ軍の無差別爆撃、皆殺しといいますか、ジェノサイド、皆殺し爆撃によって一般の市民の死者は沖繩を除いて約五十万人、罹災人口は実に一千万以上と私は説明をいたしたことをいま記憶いたしておるわけですが、しかし一九四九年の四月、経済安定本部が発表いたしました戦争による死傷者は軍人軍属の死者が百五十五万五千三百八人、軍人軍族の負傷者、これは傷痍恩給受給者のみでありますが三十万九千四百二名、さらに一般国民の死者二十九万九千四百八十四人、負傷者、行方不明が三十六万八千八百三十人、総計二百五十三万三千二十四人であったと実は経済安定本部が発表いたしておるわけです。
 さらにまた、軍人軍属の戦死者に対する恩給復活、たしか一九五三年の四月の時点ではなかったかと思いますが、遺族扶助料の支給等によって厚生省の援護局が明らかにした数値はこれまた違っておりまして、軍人軍属の戦死者が二百十二万人、外地での一般市民、すなわち、沖繩を含んでおりますが、この死者が四十八万人、内地での一般市民の死亡者が五十万人、総計三百十万人、こう見ておるわけです。
 さらにまた、全国の戦災死没者遺族連合会の戦災都市空爆死没者慰霊塔記録に基づいて調査をされておりますが、これによりますと、五十万九千四百六十九人、こうなっております。米側の調査によりますと、本土大空襲において民間死亡者三十三万人余と、民間の傷害者は四十七万数千人、こう実は発表しておるわけです。
 このように実は一般市民の死傷者の数値はきわめてまちまち、きわめて不正確であるといわなければならないわけでありまして、わが国の戦争犠牲者の数がおよその推定であって正確なものではない、こういうことがこのさまざまな数値から明らかになるのでありますが、こうした統計数字がつくられたのはどこに原因があるのか、まず厚生省の御答弁をお願いをいたしたいと思います。
#5
○政府委員(高木玄君) ただいま須原先生いろいろ数字をあげられましたが、戦争犠牲者の統計数字でございますが、一般戦災者の数字につきましては、権威あるものとしては、先生が申されました昭和二十三年に当時の経済安定本部が調査の結果発表した数字が一応権威のあるものとして残っておるわけであります。そのほか一般戦災者につきましては、特に、厚生省はじめ、どこかの省におきまして調査したというようなものはございません。それから戦没者の数字でございますが、これは私どもの調査といいますか、やはり推計を含んでおりますが、一応軍人軍属が過ぐる大戦でなくなりましたのが百九十万二千三百人、それから準軍属が十八万人、合わせて二百十数万でございますが、そういった方々がなくなったであろうというふうに一応考えております。結局、こういった戦争犠牲者についてのはっきりした統計数字がないというのは、終戦直後、御承知のとおり、国土が荒廃し、国民は生活苦にあえいでおった、食糧難その他であえいでおった時期でございまして、こういった統計を行なうような余裕がなかったと、ほかになすべきことがたくさんある。とるものもとりあえず、たとえば援護行政について申しますれば、外地から引き揚げてくる引き揚げ者を何はさておき、受け入れなきゃならぬと、こういうような状況でありまして、そういったようなじっくり調査して統計をつくるというような余裕がなかったと、こういうことに起因するのじゃなかろうかと思います。
#6
○須原昭二君 いまお話しがございましたように、経済安定本部が発表した数値がきわめて権威のあるものである、こういうお話でありますが、その経済安定本部が発表いたしました一般国民の死亡者は二十九万九千四百八十四人です。しかし、先ほど申しましたように全国戦災死没者遺族連合会の調査、これは戦災都市だけの空襲死没者の慰霊塔にお祭りをしてあるところの戦没者の記録、これを調査した数字ですが、これが五十万九千四百六十九人なんです。この数値から見ても倍ぐらい誤差があるわけですね。きわめて私は、権威がある権威があるといわれておりまするけれども、実際お祭りしてある数字と半分ぐらいである。こういう点から見ますると、一般市民についての統計調査というのは全く不正確なものであるということを暴露したものだと言わざるを得ないんです。私がこれから尋ねることに対してもあなた方の答弁というのは要を得ないかもわかりませんし、また期待が不可能かもわかりませんが、この際、このようなことでは行政の責任が私はないと言わざるを得ないわけであって、明確な答弁が出てこないかもわかりませんが、まず、現在厚生省がつかんでいる戦争犠牲者、すなわち死亡者、負傷者あるいは行方不明、軍人軍属、一般市民に分けて、その数字をこの際明らかにしてもらいたいと思うわけです。時間の関係がございますからこれはあとから資料を出していただけばけっこうでありますから、これは具体的に明確にひとつ出していただきたいということを委員長を通じてお願いいたしておきたいと思うんです。
 そこで、現在生存している一般の市民の戦争犠牲者で、傷害を身に受けておる国民は全国に散在をいたしておるわけです。これについてかつて調査されたことがございますか、この点を明らかにしていただきたいと思うんです。
#7
○政府委員(高木玄君) 調査したことはございません。
#8
○須原昭二君 なぜ調査をしたことがないんです、その理由を。
#9
○政府委員(高木玄君) 一般戦災者の問題につきまして、私どもの局について申しますれば、私どもの局の所管ではないということになるわけであります。じゃ、一般戦災者はどこで所管しているのかということになりますが、これはちょっと非常にむずかしい問題でございまして、これをはっきり所管している省というのはないと思います。
#10
○須原昭二君 明確なる御答弁がない。また、期待が不可能だと言ったとおりの答弁が出てきましたよ。そういうことで援護局の任務が果たされますか。調査したことがないとするならば、これから調査する気がありますか。どうですか。
#11
○政府委員(高木玄君) 私どもがいま申しましたのは、援護局におきましては厚生省設置法に定められた所掌事務がございますが、その中に戦災者の援護の問題はないのでございます。そういう意味で申し上げたわけであります。この一般戦災者の調査の問題でございますが、現在のところ、これを全般的に調査する計画は持っておりません。ただし、先般当委員会におきまする先生の御質問に対しまして、大臣から、サンプル的調査を行なうというお話しがございましたので、その線に沿って現在検討中でございます。
#12
○須原昭二君 実は、それのために前段でお尋ねをしたわけでありますが、二月の二十七日に当委員会で私の質問に答えて厚生大臣は、この問題にいまお話しのようにお話しがありました。厚生大臣は、「せっかくの御熱心なお尋ね、御意見でございますので、私も本年度じゅうに、どっかの都市についてサンプル的に調査する」と、こう言われましたね。私は、サンプルという表現はよろしくないということを後ほど厚生大臣に申し上げたことがございますが、これはためしてみるということで、試験的であると、したがって、ほんとうに調査をやる気があるのかないのか、こういう疑念を持たざるを得ないわけです。百歩譲って、ある特定都市でもいいからどこでも、どこを指定して調査されるのか、予定されているのか、いまお話しをするとまだ検討中だと言われておりますが、もう四カ月たっているんですよ、四カ月。四カ月たってまだ検討中なんですか。どこをサンプルにして、地域を指定して、どのようにやるというようなことを四カ月もたってもまだ検討中なんですか。そういう行政の怠慢というのはわれわれは許されぬ。われわれがこういうときに、こういう委員会を通じて言わなければ前へ進まないというような態度はだめですよ。検討中とはどういうことですか。
#13
○政府委員(高木玄君) 五月の初めに、私どもの職員二名を愛知県に出張させましてこの問題の実態の把握に当たらせたのでございます。この問題は、やはり一番戦災者の問題をいま熱心に取り上げられておりますのは名古屋市でございますので、調査をするとすれば名古屋市が適当であろうというふうに考えまして、愛知県に職員を派遣したわけでございます。愛知県の実態を見たのでございますが、この身体障害者手帳の申請書台帳等の県の保管資料から空襲当時の実態を知ることは、これはきわめて困難であるということはわかったわけであります。しかし、この新たな調査を実施するにつきましては、時間の経過あるいは人口の移動、そういった問題から調査方法はきわめてむずかしいのでございます。私どもとしても、一体どういう調査をしていいのかはっきりした構想がなかなかまとまらないということでございまして、ちょうど名古屋市におきまして、七月一日現在におきまして身障者全体の実態調査を行なうという計画がございますので、この名古屋市におきます身障者全体の実態調査の結果を私どもは見せていただきまして、それに基づいてどういう調査を行なうのが適当であるかどうか検討したいと、こういう気持ちでおるわけであります。
#14
○須原昭二君 いまのお話は、私は名古屋の出身ですからよくわかっております。われわれが名古屋市に要請をして名古屋市が自主的に調査にかかっているわけです。厚生省の言う、サンプル的に厚生省が自主的にやったものではないんですよ。その点を明らかにしてください。
#15
○政府委員(高木玄君) おっしゃるとおり、名古屋市が独自でやる調査です。
#16
○須原昭二君 そうでしょう。
#17
○政府委員(高木玄君) はい。
#18
○須原昭二君 そういう、答弁をごまかしちゃだめですよ。私は、少なくとも厚生省がみずからおどり出て、そして実態を調査をしなさい、サンプル的に。百歩譲ってのサンプル的でもいいですからやりなさいと言ったのは、そういうことなんです。人のふんどしで相撲とるようなことはだめなんですよ。そこに熱意がないということなんです。私はそういうサンプル的にやるということではなくして、この際、広範な、この二十八年間置き去りになっている民間の戦争犠牲者に対してこたえる道、すなわち全国的に調査をしてください、こういうことを私は厚生大臣にお願いをいたしておるわけでありますが、そういう調査を、実態をつかむ姿勢がいまの姿勢からいってない。ほんとうに厚生大臣はそういうやる気があるのかないのか、厚生大臣の所見を承っておきたいと思います。
#19
○国務大臣(齋藤邦吉君) 私は、須原委員にお答えいたしましたように、やる考えでございます。そこで、お話のように、名古屋市が幸いに自主的に身体障害者の実態を調査する、こういうお話がございましたので、その調査の結果を待ってどういうふうな項目について、どういうふうにやったがいいか、その結論を出していいのではないか、その結論によってサンプル的な調査を進めるということが適当ではないか、こういう考え方でございまして、私は全然お約束をいたしましたことをやらぬなぞというようなことは夢にも考えておりません。
#20
○須原昭二君 そこで、いまサンプル的に調査をする予備調査として、いま名古屋のやっていることをやるというならば、少なくとも名古屋市に対して、経済的にそういう調査実費に対する補てんをする意思がありますか、どうですか。
#21
○国務大臣(齋藤邦吉君) 私どもは、実は名古屋市のやることにつきましても、相談に行ったんです。どういう項目をどういうふうにやったがいいだろうか、私どもの気持ちとしては須原委員からのお尋ねもございまして、サンプル的な調査をやらにゃならぬ、そこでどういうふうなことをやったらいいだろうか、名古屋市も非常に迷っておられました。どういうふうなことをやったらいいだろうかということで非常に迷っておりましたが、私どものほうも須原委員にお約束したことであるから、これはやらにゃならぬ、だから、それじゃあなたのほうで自主的にひとつ先にやってください、こういうことでいたしたわけでございまして、この調査に国が金を出すということについてはいまのところ考えておりませんです。
#22
○須原昭二君 これは財政的にやはり援助してもらいたいと思います。当然国がやるべき仕事なんです、これは。そこでまず、サンプル的にやる。それにしても身体障害者の団体等々を通じてやられるというお話ですけれども、たとえば油脂焼夷弾をかぶって全身ケロイド状態になっている人は身体障害者の福祉法の中で該当しておらないのです。そういう人たちまで包含をする場合に、いまの身体障害者の団体を通じたり、そういう形では実態を掌握することはできないんですよ。その点はひとつ御銘記を願っておきたいと思うのです。
 そこで、私はやる気があるならやれると思うのです。ほんとうに厚生省がこれをやらなきゃならないという不退転の決意をして臨めばできるのです。たとえば国政調査は五年おきに行なわれておりますよ。こういう調査方法でもその状況は私は掌握できると思うんですが、どうですか、総理府。
#23
○政府委員(加藤泰守君) 調査の目的が必ずしも私、はっきりわかりませんので、お答えがあるいは的を射ていないかもしれませんけれども、個々の人のリストをつくって将来その援護のために資するような調査と、こういう御趣旨でございますれば、少なくとも統計法に基づく指定統計としての国勢調査の中には入り得ないというふうに考えます。そういう御趣旨でなくて、全体の統計数字を把握するための調査であるというお話でございますれば、統計法そのものの問題としてはあるいは載るかもしれませんけれども、ただ、私のほうの国勢調査そのものの非常に膨大な資料を作成するための調査でございまして、現在、調査員の調査そのものも非常にむずかしい段階にございます。そういう意味におきまして、比較的厚生省の行政のための調査というようなことでございますれば、厚生省のほうでやっていただくのが適当ではないか、私どものように一般的な調査、これは特定の行政目的でなくて、一般的な調査をして、それが各方面の行政目的に資するような調査とはあるいはなじまないかもしれない、そういうふうに考えております。
#24
○須原昭二君 もちろん統計数値を集めるための国勢調査でありますから、具体的な名前が全部上に上ってくるとは私は思いません。しかし、各地方自治体の中においてその氏名等々というものは記録できるわけでありまして、技術的な問題があろうかと思いますが、それはひとつ厚生省と話し合ってやれば私は十分効果があがってくるものであると思います。技術的な問題についてはいろいろ御検討をいただくことといたしまして、全国でもいま名古屋のように、都道府県あるいは中小の空爆をされました都市、自治体においても調査を始めたところは、私の知ってる範囲でも四つも五つもあるわけです。厚生大臣も知っておられると思うのです。国として全国的に実態調査をされる意思はないのかどうか、あらためてお尋ねをいたしたいと思います。
#25
○国務大臣(齋藤邦吉君) この点については、先般もお答えいたしましたように、私どもとしては、戦争によって障害を受けた方々が身体障害者福祉法等によって十分な援護を受けてない、こういうふうなお尋ねから始まったわけでございますので、私どもは身体障害者福祉法の施行の上からいっても、何とか実態を把握する必要がある、こういうふうに私は考えておるわけでございまして、先ほど来お答えいたしておりますように、サンプル的にでも調査をしたい、必ずいたしたいと考えております。
#26
○須原昭二君 それ、全国的にですね、ひとつやっていただけるというような御発言がございましたから、それを期待して待ちたいと思います。早急にひとつお願いをいたしたいと思います。
 そこで、七〇年代は福祉の時代だといわれておりますし、現在上っ調子に福祉ということばが各方面でもてはやされております。こうした福祉の話がもてはやされる一つの問題点、上っ調子であるということは人間優先、福祉増進という田中内閣のやはりから手形の看板に実は福祉の幻想をまき散らしている要因があるのではないかと言わざるを得ない私は姿勢を見受けざるを得ないわけです。こうした中に、福祉の幻想と夢をぶち破る悲惨な事件が続いているわけです。一つ例をあげますると、今年の一月三十日、宇都宮市の目の不自由な老夫婦の悲惨な生活の実態があげられると思うわけで、ここに持ってきておりますが、目の不自由な老人夫婦だけの家庭で、妻が、奥さんが老衰で死亡したが、夫は一人で、歩行が困難で、近所に妻が死亡したことを知らすことができず死没後、三日間、様子を見に来た隣人に発見されたという事件がありました。この事件でさらに私は注目しなければならない問題点は、この老人は戦争中において千島で爆弾の破片を目に受けて失明した戦争犠牲者であったということなんです。厚生大臣、私が戦争障害者の援護の必要性を求めましたところ、政府は戦後一貫してこの一般市民の戦災障害者は戦争犠牲者の援護法というより一般社会保障、現在、不十分ながら行なわれておりまする身体障害者福祉法という社会保障のワクの中で考えていくと重ね重ね答弁をされております。この点は事実ですね。この老夫婦の場合、戦争犠牲者であるばかりでなくて、国が社会保障のワクという寝たきり老人、盲人という身体障害者の二重の苦難から解放されずに放置されているのではないですか。これで戦争犠牲者に対して、戦争障害者に対して何で社会保障、身体障害者福祉法のワク内で解決していくのだということがいえるのでしょうか。厚生大臣の御所見を承っておきたいと思います。
#27
○国務大臣(齋藤邦吉君) そういうお気の毒な方方が身体障害者福祉法の適用をおそらく受けてないのではないかと思うわけでございます。したがって、そういうふうな問題を具体的にとらまえながら、私どもは身体障害者福祉法、現在はまだ不十分でありましても、そういう問題をとらまえながらその中身を充実させていくというふうに私としては今後とも努力をいたしてまいりたいと、こういうふうに考えているわけでございます。
#28
○須原昭二君 中身を充実していく、この点については私も賛成であります。これは戦争犠牲者が云々という問題ではなくして、今日の身体障害者の福祉法はもっともっとやはり前進をさしていかなければならない要素をたぶんに持っておりますが、この問題点についてやはりよく財政当局から聞きますと、金の問題についてやはり至難な問題があるように私は承っております。
 そこで私はお尋ねするのですが、GNP世界第二番目です。日本は経済大国だと世界から騒がれているんです。社会保障の中身はまさに劣悪、これまた国際的にも有名なんです。わが国の経済成長率は六六年から七〇年まで欧米諸国の二倍ないし三倍なんです。一〇%から一四%の範囲で成長を続けてきているわけで、その結果、国民総生産、GNPは六〇年は十八兆円ですか、七〇年には七十二兆円、さらに七三年の経済見通しでは九十五兆二千二百四十八億円と大幅に伸びることになると大蔵省でも認めているわけです。これによって税収の見込みは大幅に私は増大するものだと思います、当然。六五年の決算の収入額を見ますると三兆四百九十六億円、七〇年の決算収入額が七兆、倍にはね上って七兆二千九百五十八億円、七二年の決算見込み額ですら九兆一千三百九億円、こういうふうに大幅に税収は上がってきておるのです。こうした経済環境の中で、いわゆる一般の戦争犠牲者に対する国家補償ができないはずが私はないと思う。私が発議者となって提案をいたしました戦時災害援護法案に盛られた施策を実施したところで、平年度約三十億円ぐらいの程度の経費ではないですか。三十億円です、たった。三十億円といえば、四次防に製作が予定されているファントム戦闘爆撃機一機分じゃないですか。このぐらいの金がどうにもならないということはどういうことなんです。厚生大臣、どうでしょう。
#29
○国務大臣(齋藤邦吉君) 仰せのごとく、国民総生産は飛躍的に伸びておるわけでございまして、世界の経済二番目の国と、こういうことにいわれておりますが、個人的な福祉という面から見れば、非常に劣っていることは私も率直に認めておるわけでございます。したがって、さればこそ先般来お答え申し上げておりますように、経済社会発展計画の中で今後五カ年計画をもって、すなわち振替所得の国民所得に対する比率を六%から八・八%までに高めようと、こういうふうな年次別な計画を目下私どもは立てておるわけでございまして、そのような数字でまいりますれば、社会保障の給付比も欧米先進諸国に非常に近づいた姿になっていけるということで努力をいたしておるわけでございます。現状は、なるほど仰せのごとく非常に劣っておりますが、そうした方向に向いてことしを契機として前進をしていこうと、こういうことでございますから、私どもの熱意のところは十分ひとつの御理解をいただきたいと思うのでございます。そういう中で、先ほど来御質問ございました身体障害者の問題などにつきましても、先般、当委員会において、非常にたくさんの項目について御指摘をいただいておるわけでございますので、そういう問題も十分頭に描きながら、できるだけの皆さん方の決議の中の項目も実現できるように今後とも大いに努力をいたしたいと考えておるわけでございます。
#30
○須原昭二君 要は政府の態度、姿勢にかかっていると私は言いたいのです。やる気があれば、国家の財政の実態からして、国家補償を実施することは不可能ではないと私は思います。国家の財政上からできないとするならば、それは経済成長に直接結びついていない支出だから、財政支出の出し惜しみだと、こう言わざるを得ないわけですね。したがって、国家の財政上からいって、補償すること、援護することが、金がない、出せないんだのではないような気も、いま答弁を聞いておって、聞くんですが、その他に理由ありますか。
#31
○国務大臣(齋藤邦吉君) これは、たびたびお答え申し上げてありますように、金があるからとかないからというのではないので、一般戦災者というものは、もう戦後二十数年もたっておることでもあり、なかなかその実態を把握することも困難であり、これに対して従来とも私どもは援護法という考え方は、国と特別な何か関係のある者を中心としていこうではないか、そういうふうなたてまえをとりながらできるだけ範囲を拡大し、援護の幅を広げていこう、こういうふうな、いままで従来からやってきた援護に対する進め方からの問題であるわけでございまして、金がないからとか何とかいうことを私申し上げておるわけでは全然ございません。
#32
○須原昭二君 いま漸次戦争犠牲者の援護については拡大をしていくんだ、この問題点については後ほどお尋ねをいたします。
 そこで、戦争犠牲者の救済の問題について、いま財政上の問題ではないんだと、たとえばその実態を掌握するのに技術的に困難だ、あるいは障害の認定に証拠が見つからない、非常にむずかしい、遺族がどこにおるのか、あるいはまたその遺族がほんとうに遺族であるのか、認定がむずかしいというような、やはり問題点が出てくるのではないか、だから私は、全国の実態調査をしてくださいというのはそこに問題があるわけです。ですから、したがって、こういう問題が戦後二十八年間も何ら統計がない、確固たるものがないというところに、私は政府側で最終的には戦後処理をサボってきたんだ、これは国の無責任と言わざるを得ないと思うんですが、その点はどうですか。
#33
○国務大臣(齋藤邦吉君) まあ、考え方によりまして、無責任と言われるならば無責任と言えるかもしれません。しかし、たてまえとして、御承知のように、国との直接関係のある方々の援護に力を入れ、一般の方々に対しては社会保障の拡充でめんどうを見ていくようにしようではないか、こういう基本の中で処理しようということで今日まで至ったわけでございますから、その点はひとつ十分御理解をいただきたいと思います。それで、一般の社会福祉の中でと申しましても、不十分な点のたくさんあることは、私はもう御指摘を待つまでもなくあるわけでございまして、今後ともそういう点については拡充をしていかなければならぬ、かように私は考えております。
#34
○須原昭二君 そこで、先ほどの問題点にまた移りますが、この戦争犠牲者のワクをどんどん広げていく、したがって、将来は民間の戦争犠牲者も包含をされていくように、いま御答弁から受け取っておるわけですが、そこで私は、この戦争犠牲者と国家の補償のあり方について具体的にひとつお尋ねをいたしてまいりたいと思うわけです。
 そこで、まず最初に、冒頭お尋ねをしたいことは、戦争犠牲者とは何かということです。戦争犠牲者の定義について、政府の見解を私は問いたい。戦争犠牲者というのはどういう定義づけをしておるのか、この点がはっきりしておらないから、次々に拡大をすればいいというような安易な問題点にすりかえられていると私は思うわけであります。ここに明確に戦争犠牲者とは何か、その定義をはっきりとしていただきたいと思います。
#35
○政府委員(高木玄君) 戦争犠牲者ということばにつきましての明確な定義はないと思います。で、戦争犠牲者と申します以上は、戦争そのものによって被害を受けた者でありましょうが、同時に、さきの大戦後の戦争犠牲者といいます場合には、戦争に負けた、つまり敗戦に伴う問題による被害を受けた方々も含んでおるわけであります。そういった意味合いから、戦争犠牲者とは何かということになりますれば、何よりもまず戦争でなくなられた、戦死された、戦没された方の御遺族であり、戦争で傷ついた戦傷病者であり、それから外地におりまして敗戦の結果、引き揚げを余儀なくされ、引き揚げの途次に倒れた方々、あるいは外地からの引き揚げ者、それから国内にありましては空襲でなくなりあるいは傷ついた方々、こういった方々が戦争犠牲者というものであろう、かように考えるわけであります。
#36
○須原昭二君 そこが間違っているんですよ。厚生省は従来慣習的に、慣用的に、この戦争犠牲者というものは主として軍人軍属、これを中心としてきたものの考え方がいまだに直っておらない、そこに問題があるわけです。ただいま提案されております、議題になっております戦傷病者戦没者遺族等援護法は軍人軍属及びほんの一部の防空従事者のみを準軍属として援護の対象としております。一般民間の戦災障害者、死没者の遺族等は不当にも除外をされておる。ここに問題があるわけで、政府が戦争犠牲者を軍人軍属に偏重している、片寄っておる証拠に、資料はやや古いわけでありますが、昭和三十一年の厚生白書にどう書いてありますか、「太平洋戦争は、すべての国民に多大の惨禍をもたらしたが、なかにも軍人・軍属として動員されて戦没した者、傷痍を受けて不具廃疾となった者は最大の戦争犠牲者というべきで、その数は二〇〇万人を超えた。」と述べております。最大の犠牲者は軍人軍属だけだったんですか。この政府の考え方、偏重がはなはだしく改むべきだと私は思うんです。その点どうですか。
#37
○政府委員(高木玄君) 現在、私どもの実施いたしておりまする遺族援護法でございますが、これは先生御存じのとおり、国との間に被用関係のある軍人軍属、あるいはそれに準ずる立場にある準軍属、こういった者につきまして、国が使用者の立場から補償している制度でございます。こういった観点から、いろいろな法制定以後の国民の要望等によりまして、この準軍属といったものの範囲を逐次拡大して援護の充実をはかってまいった、かような関係であります。したがって、これはあくまでも国との間に被用関係があるという前提が、つまりそういった国との一定の身分関係というものが前提になっておるのでございます。したがって、そういった意味合いにおきましては、一般戦災者はこの援護法では取り上げられていない、こういう関係になるわけであります。で、しからば一般戦災者というものはなぜ取り上げられなかったのか、戦後すでに二十八年になりますけれども、今日まで一般戦災者というものが、特別の援護の対策からはずれてきた、そこに一つの私は問題があり、これはやはり国との間の、そういった国家補償の立場から、国との被用関係あるいは徴兵制度の国民に義務を課した裏づけとして、そういった犠牲者に対しまして援護を行なうというたてまえをとり、片方において一般戦災者については、一般の社会保障施策の中で、その福祉の向上をはかっていく、こういうようなたてまえできたのじゃなかろうか、かように考えるわけであります。
#38
○須原昭二君 身分の関係によって差をつけたということについては、後ほど一応明らかにしましょう、あなたたちの間違っている見解を。
 そこで、軍人軍属だけを優先をさしたという問題点については、私はあくまでもこの世界大戦のあやまちをほんとうに悔い改めていない政府の姿勢、この現在の態度はつまるところ軍事優先ですよ。この思想が根底にいまなお私は生きているものと疑わざるを得ないんです。この点はどうですか、軍事優先でないですか。
#39
○政府委員(高木玄君) 軍事優先というのでなく、やはり国の国家権力によりまして、御承知のように、戦前は徴兵制度をとっていたわけでありますので、赤紙一枚で戦場に国民を連れ出して、その国民がなくなった、あるいは傷ついたということにつきまして、まず何はさておき、国が国の立場において補償責任を持つということが前提で、この恩給法なり、遺家族援護法というものができて、今日までその内容の充実をはかってきた、こういうことであろうと思います。したがいまして、援護法というたてまえをとります以上、国との特別の被用関係にない者につきましては、カバーのしようがない、こういうふうな結果になるわけでございます。
#40
○須原昭二君 今日の援護法のワク内でものを考えているから、いつまでも姿勢が変わらないわけですよ。私が戦時災害援護法案の提案をした際にも申し上げましたように、同じ敗戦国である西ドイツですら、昭和二十五年に戦争犠牲者の援護に関する法律を制定して、公務障害とは同視、同じように見ている傷病の範囲をきわめて広く規定したため、援護の手は一般ドイツ市民の犠牲者にまで行き届いているわけです。その対象は昭和二十九年現在でも実に四百十五万人、こう達しておるということは、私は提案の説明の中にも申し上げましたが、なぜ、日本は戦傷病者戦没者遺族等援護法には軍人軍属、一部の準軍属、これを対象として、一般民間の戦争犠牲者について含まなかったか、この点の理由が明らかにされなければならないと思うわけですが、どうですか。
#41
○政府委員(高木玄君) 西ドイツの場合の例が、いまあがりましたが、西ドイツの場合には、この第二次世界大戦の前までに、第一次世界大戦の結果に基づきまする援護制度といたしまして、一九二〇年に、公傷に際しての軍人及びその遺族の援護に関する法律、国家援護法といわれるものが制定されております。この国家援護法は日本でいえば恩給法、遺族援護法に当たるものでございまして、軍人軍属、準軍属、そういった方々に対する国の補償制度でございます。それと別個に一九二二年に戦争によって惹起された個人の損害の補償に関する法律、これは戦争による個人損害法というものが第一次大戦の結果制定されております。
 この第一次大戦の結果制定されました理由といたしまして、第一次大戦における東プロシアへのロシア軍の侵入、それからドイツ領域に対する敵空軍の攻撃、敵国にあるドイツ市民の抑留、こういったことによって市民の損害が考慮された、こういうことになっております。すなわち、第二次大戦前にすでにこういった戦争による個人損害法というものがあったのでございまして、戦後、この第二次大戦後におきましても、西ドイツにおきましては日本と同様に、当時の占領軍がこれらの援護法規を全部廃止して、適用を禁止したのでございますが、すでにこういった過去における一九二二年の特別立法の伝統がございますために、戦後一九五〇年につくられた連邦援護法におきましては、そういった市民に対する損害も取り入れられたのであろう、かように考えるわけです。つまり、沿革的に西ドイツにおきましてはそういう制度が第二次大戦前からあったというような一つの沿革があったと思います。
 日本の場合は一体どうなのかということになりますと、日本の場合は日清、日露以来、主要戦争はすべて国外で戦われてきております。西ドイツのようにこの第一次大戦で東プロシアにロシア軍が侵入した、そういったような経験が過去においてはなかったわけでございまして、そういった第一次大戦の結果の援護法におきましてもそういう個人の損害というような問題が起きなかった、そういったようないろいろな過去における立法の沿革の相違、そういったものもあろうかと思います。
#42
○須原昭二君 長々と西ドイツのお話を聞きましたが、地上戦でなければ、空爆だけでれば、そういうものには対象しない、そういうものの考え方があるのではないか。しかし、日本でも昭和十七年に旧戦時災害保護法、こういう法律があって、国家総動員法あるいはまた防空体制に対する防空法、こういうもので国民に義務を課して、そのかわりに保護をされておる実績はすでに私の質問の、二月二十七日ですか、それに対して資料提出を要求をして出てきた内容で、これ、ちゃんともらっているじゃないですか。日本でもちゃんと実績があるんですよ。要は、いま皆さんが固執をされているのは国と身分が明らかなものは国家補償の精神に基づいて恩給法なりあるいは今日の援護法なり、こういう手厚く措置がされております。一般国民に対しては国の身分の関係がないから、こういう理由で社会保障的な劣悪な今日の救済措置で片づけられている。ここに私は不均衡なものを考えざるを得ない。不当に差別をされておる、こう言わざるを得ないのですが、その点はどうですか。
#43
○政府委員(高木玄君) 確かに戦争中空襲被害に対してましては戦時災害保護法という立法がございました。これは終戦後廃止されまして生活保護法に吸収されたのでございます。この終戦後は軍人恩給も占領軍によりまして停止されまして、要するに、占領時代はその原因のいかんを問わず生活に困窮する者は無差別、平等に保護するのだと、こういうたてまえで戦争中、占領期間中は参ったわけであります。そういった戦時中の特別立法も軍人恩給もすべてとめられた。すべて生活困窮者は無差別、平等に保護する、こういうたてまえできたわけであります。そこで、講和発効後、独立をかちとりましてから、それではあらためてこの戦争に対処する援護立法をどうするかという問題になりましたときに、国とのそういった使用関係にある軍人軍属、準軍属に対しまする援護法規というものが整備されてきたと、こういうふうな経過をたどっているわけであります。
#44
○須原昭二君 明確にしておかなければなりませんが、この戦時災害保護法なるものが生活保護法の中へ組み入れられたと言われましたね。そういう精神でやられたんですか、これは。これは重大な発言ですよ。ばかなこと言っちゃだめですよ。
#45
○政府委員(高木玄君) 昭和二十一年九月九日の生活保護法の附則第四十四条に「救護法、軍事扶助法、母子保護法、医療保護法及び戦時災害保護法は、これを廃止する。」ということになりまして、生活保護法によって廃止したのでございますから、当然生活保護法に吸収されたと、こういうふうに考えられるわけであります。
#46
○須原昭二君 生活保護法の中へ組み入れたら遺族給与金というふうな、こういう問題はどうなったんですか。みんな消えちゃったじゃないですか。全部組み入れたとは思えませんです。
#47
○政府委員(高木玄君) 私が申し上げました意味は、先ほど申し上げましたように、占領軍の方針によってその生活の困窮の原因が何であれ、すべて生活に困った者は生活保護法で無差別に保護すると、こういうたてまえをとったために、そういった特別立法はすべて廃止されたと、生活保護法の制定に伴って廃止されたと、こういう趣旨で申し上げておるわけであります。
#48
○須原昭二君 そういう逃げ口上はいけないと言うのですよ、私は。生活が困っている人も、困っていない人もあるんですよ、戦争犠牲者の中では。生活に困っている人だけは戦争犠牲者だからこの中に入ってくる、そういう性質のものでは生活保護法というものはないんですよ。それと一緒にすりかえてはだめです。
 それから、もう一つ言わなければならないのは、やっぱり公務性の問題です。戦争犠牲者を国が援護し、国家補償としているのは軍人軍属、これはもう明らかでありますが、何よりもまずあなたたちが強調されることは、国家との身分関係が前提に立っております。私が言う、いま公務性ということを言い出しましたんですが、この公務性が先だということにあると言わなければならないわけです。しかし、この身分関係は、言うまでもなく、私は官尊民卑といいますか、官吏をたっとび、人民を卑しめる精神の上に立っている。すなわち旧憲法下の身分関係であることに大きな特徴があります。したがって、国家と直接に身分関係を有しない一般市民が完全に救済の範囲外に置かれているというのは、まさに差別をしいられてきたのであると言っても過言ではありません。こうしたものの考え方で戦争処理行政がいやしくも新憲法下――今日は新憲法ですよ。旧憲法じゃないんです。新憲法下で行なわれていることは、問題ではないか。この点はどうですか。旧憲法生きているのか、まだ。
#49
○政府委員(高木玄君) いや、旧憲法が生きているというような趣旨ではなく、要するに、戦争におきまして国の国家権力の発動によって軍人軍属あるいは準軍属として戦争公務に従事してなくなられた、あるいは傷つかれた、こういった方々を国が、国との関係におきましては、まさにそれらの人との関係におきましては国が使用者でございますから、使用者の立場から補償する、いわゆる国家補償の制度として現在の援護法が成り立っている、こういうことでございます。決して旧憲法が生きているとかどうとかということではないと思うんです。
#50
○須原昭二君 いまの答弁ではわれわれは理解できないんですよ。身分関係は旧憲法の中における国との身分関係です。いまは新しい憲法です。そういうものがずっと生きてきているんです。ここに大きな問題がひそんでおると言わなければならないわけです。
 さらに私は言わなければならない。この点は非常に不明確ですから、指摘をしておきましょう。御答弁が適切ではございません。あの戦時中においてすら、私はあの戦争というのは、私たちも戦中派でございますから経験を持っておりますが、戦争史上未曽有の近代戦であります。地上戦だけではないんです。地上戦でなくても、従来は地上戦で勝敗がきまったわけですが、日本の場合はそうではなかったんです。空から攻めてきて、敵兵が入ってこなくても負けたんじゃないですか。こういう近代戦の様相があって、したがって、国はあげて戦場も銃後もなく、国家総動員体制のもとに一億総力戦だと言ったじゃありませんか。
 たとえば、先ほどは指摘をいたしましたように、旧防空法、防空法、昭和十六年にできました、この中にこういうことが書いてあるんですよ。事前退去の禁止制限、爆撃されたら逃げてってはいけないぞ、そして応急防火の義務、火がついたら消しなさいという義務を国民に課しているわけです。その義務だけではないんです。さらにそれに加えて罰則を規定して、婦女子に至るまで総力戦に強制的に参加させたものであります。ただ赤紙で召集をされた軍人軍属だけが戦闘従事者ではなかった。この事実の認識を誤ってはならないと思うわけです。ここに明らかに私は国の責任、国家補償の当然の義務があるのではないか、この点を指摘をしておるんですが、どうですか。
#51
○政府委員(高木玄君) 私の立場でお答え申し上げることは、この戦傷病者戦没者遺族等援護法というものが、援護法が、先ほど来申しましておるように、国家補償の制度として、国との間において使用関係にある者、あるいはそれに準ずる立場にある者を補償する制度、援護する制度として実施しておるわけでございまして、その限りにおきましてはこの法律の中で一般戦災者をカバーすることはできない、こういうことでございます。したがいまして、一般戦災者につきまして特別の何らか援護を講ずるかどうか。これは一つの政策の問題でございます。それが今日まで二十八年間取り上げられないできたというところに、日本におけるいろいろな問題点が、先生のおっしゃるとおり、あり得るであろうと、こういうふうに御答弁申し上げているわけであります。
#52
○須原昭二君 私は、そうした事前退去の禁止制限だとか、あるいは緊急防火の義務、これを国民に課しておいて、そして罰則までつけて、強制して戦闘に参加をさしておきながら、それは身分がないんだから、これは別なんだと言っておるという政府の態度には、これは遺憾な問題がある。したがって、これは、こういう国氏を総動員体制に持っていった国の責任はないのかどうか、国家補償の当然の義務が私はあるのではないかということをお尋ねしているんです。大臣、当然義務が私はあると思うんですが、どうですか。ないですか。
#53
○国務大臣(齋藤邦吉君) 大東亜戦争は、私が申し上げるまでもなく、総力戦というようなことで、いろいろな義務を国民が負わされて戦争に臨んだということは、仰せのとおりでございます。そこで、そういう方々に対してどういうふうな援護をするかということでございまして、その援護のやり方については、国と特別な身分関係のある者は援護法でめんどうを見るようにいたしましょうと、そうでない一般の方々については社会保障の拡充の中でめんどうを見るようにいたしましょう。こういう法体系の中で今日まで進んでおるわけでございます。
 国が何の責任もないのか。それは確かに仰せのごとくりっぱに国としても、それだけの義務を負わしているなら責任がある。それはもう仰せのとおりでございます。しかし、そういう方々に対する援護の仕組みとしては、国と特別の関係のあった者については、援護法なり恩給法の復活というふうなことでめんどうを見るようにいたしましょう。それ以外の方々については、一般の社会保障の体系でめんどうを見ましょう。こういう体系で進んできたわけでありまして、それに対していろいろ御批判なさる、私はあり得ると思います、という意味において私はお答えをしておるわけでございます。
#54
○須原昭二君 それでは不十分だということを私は指摘をしているわけですよ。そこで、この証拠としてそういう旧防空法というものを設定をして強制をしているわけですね。それなればこそ、私が言いましたように旧戦時災害保護法というものを昭和十七年に、防空法は十六年ですね、そして旧の戦時災害保護法というのは昭和十七年に施行されているわけですよ。この金額を見ましても、別表第二に、障害給与金一人三百五十円から七百円、第三に、障害給与金は一人五百円から千円。第一に、障害扶助金は一人七百円から千五百円。第二に、遺族給与金は五百円。第三に、遺族給与金は七百円。第一に、遺族扶助金千円。第三に、打切給与金千円等々ずうっと書いてありますよね。いまの貨幣価値から見ても、戦時中における千円というのはばく大な補償額ですよ。そういう強制的に義務を課したから、したがって、こういう戦時災害保護法というものを施行して、そしてその国家が補償しているわけですよ。こういう実態を見ると、私は身分というような問題点でこれを差別するということは不当だということを言っているわけで、それを厚生大臣はいままで社会保障の体制の中でやる。こう言っておられるけれども、社会保障の、身体障害者福祉法の中では身体障害者は救われたけれども、遺族は何にも救われてないんじゃないですか。この点に矛盾はありませんか。
#55
○国務大臣(齋藤邦吉君) いま申し上げましたように、国との関係にある者については援護法でめんどうをみることにしましょう。一般人についてはいわゆる社会保障の体系の中でと、こういうことでございますが、それについては、その二つの体系の中で処理するといたしまして、援護法につきましても、防空法その他についてやはりこれは何か特別な関係があるのではないかと、こう思われる者につきましては、そのつど具体的な例を拾いながら援護法の中でめんどうを見るようにしようじゃないか。こういう範囲を拡大して今日まで努力をしておるわけでございます。ただ、問題は一般の社会保障の体系においてめんどうみると言いましても、その中身が十分でない。これは私もそうだと思います。
 先ほど来お述べになりましたような、身体障害者に対しての援護などは、身体障害者福祉法の中でめんどうを見られるではないか、こういうふうな御指摘等もいただきまして、そこで私どもはそういう方面については今後努力もいたしましょう。それから、戦争によって身体障害者になられて、福祉法の援護をみられぬ方々については、その実態ももう少し調べてみようではないか。こういうことで、サンプル調査もいたしましょうと、こういうことを私は申し上げておるわけでございます。したがって、私どもは、いろいろなそういう出発が間違いであったという政策的な立場に立っての御批判はあると思います。なぜ、ドイツのようにやれなかったのか。その当時のまあ、いろんないきさつでそういうことになったと思いますが、私どもはいまの体系の中で全部が全部りっぱに動いているなどとは一つも考えておりません。少しでもよくなるように、先ほど来申し上げておるようなサンプル調査などもやりましょうというのもです、そういう戦争によって障害を受けて、身体障害者福祉法によって援護も受けてないという方々もおるじゃないかと。なるほどそのとおりだと、それじゃあ率直に受け入れて実態もサンプル的に調べてみましょう、こういうことを申し上げておるわけでございます。
#56
○須原昭二君 まあ、若干前向きになった御答弁ですがね、さらに私はもうこの際きちんとしておかなければならない問題点があります。何と言ってもやっぱり、身分の問題ですよ。米軍が、アメリカ軍が進駐してきて連合軍の最高司令官の指令で、占領行政の名のもとにいわゆるGHQの命令で、軍人恩給法の特例に関する件、すなわち、ポツダム勅令六十八号に基づいて、すべての軍事に関するものは全面的に廃止された経過があるわけですね、先ほどもお話しのように。そして、昭和二十七年でいわゆる公務員、国との身分関係、いわゆる公務性の名のもとに、米軍が指摘した軍事関係を先に取り上げて、民間が差別されて残されておる。この事実は、私は振り返ってやはり重大な反省をしなければならない要点だと思います。まさしく平和国家を世界に宣言をした日本といたしては、恥ずべき逆行であったと私は思うのですが、その点はどうですか。大臣、どうお考えになられますか。お感じだけでいいです。
#57
○国務大臣(齋藤邦吉君) まあ、その当時の考え方としては、いまのような体系が適当であるというふうに考えてでき上がったものだと思います。しかし、まあ、いまになって、昔のことをどう思うかと、こう言われましてもね、私どもの立場としてはまあむずかしい問題でございまして、あの当時、ドイツのようなやり方がよかったのかといったふうな感じもいたします、私、率直に言うて。しかし、そういうことをいま厚生大臣の立場において、あの当時の政策は間違いであったのかなあということを、いま社労の委員会で私は申し上げるということはできないわけでございまして、しかし、いろいろな反省はいたしておるわけであります。その反省の上に立って、たとえば援護法の適用にあたっても何かしら理屈をつけてこっちのほうに持ってこれないか。たとえば、警防団の問題とかいろいろまあ拾ってきているわけでございます。それから、同時に社会保障体系の中でもできるだけ不十分な点は充実させていこう、こういうことでございますから、私の気持ちはその辺で御理解をいただきたいと思う次第でございます。
#58
○須原昭二君 リンゴの気持ちは察せよということだから、腹の中ではそう思っておられると。しかし、この場であるから差し控えたいというふうに承ります。ですから、先へ進みますが、まあ呼称されておるところの、現在の援護法の中における公務性の問題についても、全く不合理な問題点がたくさんあるわけです。公務性とこうおっしゃいますけれども、たとえば軍人軍属の場合に、援護法によると、内地にいた軍人軍属で公務外でも、特別の事情に関連して不慮の災害により負傷したり病気になったりした者にも、援護の措置がとられているんですよ。あるいは戦地、外地にいた軍人軍属の場合はもっとゆるやかで、公務とは一切関係がなく、戦闘によらない場合でも、自分自身の故意または重大な過失などによって負傷したり、あるいは病気になったときは、これら援護の対象を受けられるのである。公務性、公務性と一面であなたたちは言うけれども、こういう実態からいってもおかしいです。この点は重大な問題として公務性、公務性とおっしゃるから、私はあえてここに発言をして記録にとどめておきたいと思うわけですが、私も当時中学生でした。愛知航空機というところへ学徒動員されました。いまは愛知時計という名前に変わっておりまするが、あの空襲において一瞬のうちに数千名も、一回の爆撃で死傷者が続出したことがあります。この人は配属将校だから、この人は配属軍人だから、この人は軍属だから、この人は徴用工だから、この援護法の適用が受けられる。同じ職場で働いておっても、おまえは会社の従業員だから公務性がない。身分上の差があるからといって、身分の差によって何ら援護が受けられておらないというのが現状ですよ。こんな差別が二十八年間続いていることを私は大臣に何べんか言いますのですが、ほんとうに真剣に私は考えてもらわなければならない。沖繩が返ったら戦後は終わると佐藤前総理は言いましたけれども、沖繩が返っても戦後は終わってないんですよ。この事実を深刻に大臣は考えてもらわなければなりません。どうですか。
#59
○国務大臣(齋藤邦吉君) そういうふうな、お述べになりましたようなことが私はたくさんあると思います。そこで私どもは、一番大事なことは、そういう方々に対してできるだけ生活の安定、援護の手を差し伸べるということでなければならぬと思います。そういう意味において、いろいろな反省の上に立って、社会保障の体系なら体系、あるいは援護法なら援護法の運用の問題等々について、あたたかい態度で今後とも私は臨んでいく必要がある、かように考えておるものでございます。
#60
○須原昭二君 もう一つ私は、身分制の問題に関連をして、従来とっておられた社会保障の体制の中、いわゆる身体障害者福祉法のワク内で救済をしていくんだということをたびたびおっしゃっておられますから、私はこの際申し上げておきましょう。たとえば女子挺身隊というのがありましたね。狩り出されました。若い女性がみんな工場へ引っぱり出されました。あるいは防火の責任だといって、焼夷弾が落ちてくれば防空壕から危険を押して出てその任に当たりました。不幸にも爆撃の犠牲になって死んでいった人、あるいは生命を取りとめたものの、たとえば婦女子の中で顔面にですよ、顔じゅうに油脂焼夷弾をかぶって、著しいケロイド傷痕がいまなお残っている。こういう人たちが補償されてますか、ケロイド状態になった人たち。片目あいとったら身体障害者の一級にも二級にもならないんですよ。ましてや表面だけのケロイド状態で身体障害者の福祉法の中に何ら該当しないんですよ。大臣は援護法ではなく身体障害者福祉法というものがあるから、この社会保障の中で救済していく方針だとたびたびおっしゃっておられますけれども、こうしたケロイド、片目失眼、――両眼、両足、両手、これなら一級、二級に入りますけれども、片目失眼しただけでは該当しないんですよ。何ら補償がないんですよ。いまの身体障害者の福祉法では何ら援護の措置は手が差し伸べられません。彼女らは――当委員会は御婦人の先生方が多いからあえて私は女性の問題を取り上げたようなきらいがございますけれども、女性だけではございません。特に女性はその青春をお国のためにささげ、一生結婚もできず、人にまさる苦しみをあえて忍びながら生活苦を負わされている現況を、私はほんとうに大臣は感じてもらわなければならぬと思う。あえて私は社会保障のワク内――ワク内ということはもう禁句ですよ、こんなことは言うべきじゃないですよ。どうですか。
#61
○政府委員(高木玄君) 女子挺身隊員でございますれば、私どものほうの準軍属になるわけでございまして、その方が顔面全体にやけどでケロイド症状を起こしたということになりますと、これは私どものほうのこの等級表の第五項症に「頭部、顔面等ニ大ナル醜形ヲ残シタルモノ」というものがございますので、おそらくこれによって障害年金は受けられると、かように考えます。
#62
○須原昭二君 もらえますか。それ、はっきりしてくださいよ。
#63
○政府委員(高木玄君) 女子挺身隊員でございますればもらえます。
#64
○須原昭二君 一般は。
#65
○政府委員(高木玄君) 一般は……。これはあくまで援護法でございますので。
#66
○須原昭二君 女子挺身隊員あるいはまた徴用された女子工員。
#67
○政府委員(高木玄君) 国家総動員法に基づきまする徴用された者なら私どもの準軍属でございます。
#68
○須原昭二君 この点は詳細にあとから資料を出してください。
 そこで、もう一度私はお尋ねをしますが、これに関連をして。厚生大臣、カーチス・ルメイという人を知っていますか。
#69
○国務大臣(齋藤邦吉君) よく存じておりません。
#70
○須原昭二君 カーチス・ルメイという人は有名な人ですよ。アメリカの空軍大将です。日本にとっては重大なかかわりのある人です。大臣が御存じないから私は御説明を申し上げなければならないはめに入りましたけれども、戦時中の日本人にとってはニミッツ、マッカーサーに並ぶ「鬼畜ルメイ」といわれた男です。当時は米空軍の第二十一爆撃隊司令官だった。この東京空襲の皆殺し戦略爆撃のみならず、全日本本土の爆撃はもちろん、広島、長崎に投下した原爆の直接的な責任者です。――わかりましたか。(笑声)
#71
○国務大臣(齋藤邦吉君) わかりました。
#72
○須原昭二君 このルメイ大将に日本政府は、前佐藤総理の時代ですね、これ。昭和三十九年十二月七日の日に勲一等旭日大綬章を授章さしたという、大綬章を与えた、授章の目的は何でした、授章の理由は何ですか。日本人たくさん殺したから。
#73
○国務大臣(齋藤邦吉君) 私はその勲章のほうの所管でございませんので、存じておりません。
#74
○須原昭二君 総理府、見えるだろう。
#75
○政府委員(加藤泰守君) 私も統計局長でございますので、存じません。
#76
○須原昭二君 ルメイ大将は戦後日本の航空自衛隊の育成に協力したというのがその授章の目的だと、授章の理由だと私は聞いています。太平洋戦争末期の日本の爆撃に大きな役割りを果たし、何百万人の人に被害を与えた人に、しかもあの地球上に二回しかない原爆の投下にも深い関係があった人に勲一等旭日大綬章を与えたということは国民的感情としてもいまなお私は納得ができません。このような政府だから人間としての節操と尊厳を忘れたことができるのですよ。生活に困ったら生活保護でお情けにすがりなさい。原爆被災者も、民間の戦災障害者も社会保障の体制でお粗末ですけれどもその中で取り扱えばいいと、こういうきわめて冷淡な、おそろしくけちなことで放任している無神経が私はここにうかがわれると思う、ルメイ大将の一件から見てもですね。このような矛盾を私たちは納得ができません。これは与えたのは総理大臣ですから、佐藤榮作さんですから、所管も総理府の所管でありますから、厚生大臣の所管ではないけれども、この一つの事実を見てもおかしいなと思われませんか、厚生大臣。
#77
○国務大臣(齋藤邦吉君) その件について私は答弁する資料も持ち合わしておりませんし、資格もございませんが、私はやはり日本国民全体がしあわせになるように、ほんとうにいろいろな障害を受けておられる方々に対しましてもあたたかい援護の手を差し伸べてしあわせな生活を送っていただくようにということだけを念願して努力をいたしておるつもりでございます。
#78
○須原昭二君 そのルメイ大将が勲一等旭日大綬章を受けたその昭和三十九年十二月の七日の午後には防衛庁を訪れて、当時の三輪事務次官にあいさつをしております。そして、昭和四十年の三月十日付の朝日新聞の「天声人語」にこう書いてこの問題に触れております。「歴史の変転と皮肉を思わずにはいられぬ」、こういっております。日にちがたてばたつほど世の中、変わっていくもんだ、皮肉なもんだということですよ。だから二十八年も民間の戦災犠牲者はほかっておかれておるのですよ。これまた皮肉と言わざるを得ません。厚生大臣は、きょうはぼつぼつ前向きのような御答弁がありますから、あまり攻撃はしたくはございませんけれども、この事実からきても早急にこの問題を解決しなくてはなりませんが、その点の御所見をもう一ぺんくどいようですが、お尋ねをしておきたいと思います。
#79
○国務大臣(齋藤邦吉君) 私どもは今後とも社会保障の充実、身体障害者の福祉の充実のためには全力を尽くして努力をいたしたいと考えております。
#80
○須原昭二君 さらに、私は政府が考えている戦争犠牲者の概念の本質についてさらに私はお尋ねをしておきたいと思うんですが、現在戦後処理関係の援護法の法律は、まさに私は属人主義が貫かれておると思います。受給者は日本の国籍を持たなければならない。三十六万人――約三十六万人といわれておりまするが、朝鮮人の中においても軍役服務者があるわけです。旧植民地の軍役服務者はこれは全部除外をされているんです。たとえば援護法の対象になっても、国家の身分関係の強弱が、先ほどの勤務年限、俸給が実際の給付額を決定する大きな要素になっております。軍人軍属に対して準軍属やあるいは引き揚げ者は劣位に置かれておるわけです。また軍人軍属の中でも階級が上位であれば上位であるほど優位に立たされているわけです。たとえば端的に申し上げますが、一九七三年の一月現在で公務扶助料は兵隊さん、下級の兵隊は二十四万円です。大将、大将だと三倍以上も格差があって七十四万五千五百四十五円です。いま日本の政府は新憲法下の行政府ですよ、厚生省ですよ。戦争犠牲者の概念の本質がここにあると私は言わざるを得ないんです。その点はどうお感じになっておられますか。
#81
○政府委員(高木玄君) 先生のいまあげられました公務扶助料の兵の額と大将の額、これは確かにおっしゃるとおりでございますが、これは恩給法のほうの問題でございまして、援護法の問題ではございません。援護法におきまして、かねてから附帯決議等で御指摘をいただき、問題になっておりましたのは軍人軍属と準軍属との年金額に差等があったということであります。すなわちこれまで軍人、軍属の年金額の九割相当額――いわゆる準軍属については――であったのでございますが、これは今回のただいま御審議いただいております法案におきましては、軍人軍属と準軍属の年金額を全く同額にして、そういった身分による年金額の差というものをなくした次第でございます。
#82
○須原昭二君 恩給法に基づいても非常に私はこういう点について大きな問題点があると思うんです。戦争犠牲者に身分によって格差があるというのは非常におかしい。この点は指摘しておかなければなりません。
 さらに私は、わが国の場合、太平洋戦争のそういう侵略戦争を行なったのは国民じゃないんですよ。国家、これをやったのは国家であり政府なんです。それをいま否定してですよ、今日の新憲法下による新しい国家、新しい政府がいま新生しているということ、こういう事実を私は忘れてはならない。そうだとするならば、戦争犠牲者に対する現政府の態度は否定されたはずの旧憲法下の国家の、しかも国家の身分関係の濃淡、濃いか薄いかに基礎を置いているとするならば、現政府の言う戦争犠牲者とは、新日本国の新憲法下の国民との間に私は明らかに矛盾が起きてこなければならない、生ずるのではないかと私は思うんですが、どうですか。先ほど私は御質問したときに、そういうような身分の問題を言われましたけれども、ここであらためてお尋ねいたしましょう。旧憲法におけるところの身分が、新憲法下におけるところのこの段階において国民との感情の中に明らかに矛盾が生じてきておると私は思います。その点はどうですか。
#83
○政府委員(高木玄君) 先ほどもお答え申しましたとおり、この身分による差等というものは撤廃すべきである、かような観点から先ほどもお答えしましたように、準軍属と軍人軍属の年金額を完全に同額にする、こういう改正をした次第でございます。
#84
○須原昭二君 私は、そんなことを言っているのじゃないのです。もっと詳しく言いかえればですね、わかりやすく申し上げますよ。新憲法下の国民がなぜ税金を払って、否定されたはずの旧憲法下の国家、軍隊の職業的上級将校に厚い援護を行なわなければならないのか、その理由を明らかにされたいということです。
#85
○政府委員(高木玄君) 先生のいまおっしゃいました問題は恩給法の問題でございますので、私どもの所管外でございますので、お答えいたしかねます。
#86
○須原昭二君 御答弁がないからこの点は先へ進めていきましょう。
 私はさらに言うならば、政府の戦争犠牲者への態度は私は全くさか立ちをしていると、このことはかつてのベトナム戦争への日本のとった態度やあるいは憲法をあまり尊重しない態度がこの援護のあるいは恩給法の問題にもあらわれてきている、如実に物語っておるものである、こう言わざるを得ない。こういうことを言わんがために質問したわけです。恩給法の問題だけではないのです。この戦争犠牲者に対する問題点から見てもそういう誤りがある、こういう点を指摘をしておるわけです。その点について反論がありますか。
#87
○国務大臣(齋藤邦吉君) 恩給法なり援護法は、国と特別な関係がある方々が戦争で命をなくした、その当時における関係を認めながら援護をすると、こういうたてまえになっておるわけでございまして、これがいいとか悪いとかいう批判をすることは、私としては避けたいと思っております。
#88
○山下春江君 関連。いまのお話に関連がありますが、戦傷病者の車いすが各駅にありますが、ありますといってもないところが多いんですけれども、たとえば名古屋駅のようないろいろなところへ乗りかえるところにたった一台しかないのです。一台だものですから、もう少しふやしてもらいたいという陳情を傷痍軍人のほうから駅へやったことがあるそうですが、管理がたいへんだから、そういうものをふやす意思はありませんということだったそうですが、一台だものですから、それをつい一般の人たちが荷物をたくさん積み込んで、その荷物を押すのに使ったりなんかして、たいていないことが多いそうですが、戦傷病者も非常に老齢化しまして、そして歩行困難な人が非常に多いので、車いすを名古屋のような大きい駅、名古屋にいま一台しかございませんが、そういう主要な乗りかえのたくさんあるような駅に対してはもう少し車いすをふやしてもらいたいと、これをふやしてもらいたいと言って援護局でそれがふやせるものかどうか、私ちょっと考えつきませんけれども、非常に切実な願いがありますが、非常にみな老齢化して歩行困難な人が多くなりましたので、そういうことに対して大臣、特別の御配慮を願うわけにはいきませんでしょうか、お願いいたします。
#89
○国務大臣(齋藤邦吉君) 各駅においても車いすを備えるといったふうなことが非常に望ましいということで、最近国鉄においても非常な御配慮を実はいただいておるわけでございますが、これは傷痍軍人ばかりではなしに、一般の身体障害者の方々も含めての問題として私は解決していきたいと考えております。したがいまして、国鉄当局とも十分相談をいたしまして、国鉄のほうで予算をめんどうを見るのか、あるいは厚生省のほうで取ってきてくれというふうなことになるのか、それは別といたしまして、国鉄当局とも十分相談をいたしまして善処いたしたいと思います。
#90
○山下春江君 ありがとうございました。非常に期待しておりますから、ぜひ早急にお願いいたします。
#91
○須原昭二君 続いて、原爆被災者の問題について関連をしてお尋ねをしておきたいと思います。
 広島、長崎の原爆投下による即死者とその後五年間に原爆症でなくなった人の合計数は、いまもって正確な調査が行なわれずに推計数字にたよっているといわれておりますが、その点はどうですか。
#92
○政府委員(加倉井駿一君) 御指摘の原爆投下後五カ年間の死亡者の数字でございますが、これは報告者によりましていろいろ違った数字が出ております。たとえば広島県が内務省に報告をいたしました数字が四万六千九百二十四名、それから広島市が集計いたしましたのが八万四千三百一名、それから広島県の警察本部がまとめましたものが十万一千五百六十一名、このように三様の数字が出ております。しかしながら、私どもといたしましては、県警の本部が発表いたしました数字が最も近い数字であろうというふうに考えておりますし、また長崎県におきましては四万九千二十二名という報告が出ております。大体これが正しい数字ではないかというふうに考えておりますが、御指摘のように、これも一応推計であることにつきましては間違いございません。
#93
○須原昭二君 いま具体的な数字が出てましたけれども、これもまた推計だと、こういわれております。一般では広島二十万だとか、長崎は十万、すなわち三十万の死亡者が推計されている。これと同様に、被爆者、生存者数も約三十万人以上だとか以下だとか、こういう推計をされております。被爆以来、まあ来月で実は二十八周年を迎えるわけですが、四分の一世紀を経過をしているその中で、被爆者の皆さんはその生活の中でたいへん放射能障害だとか、家庭の崩壊だとか、さらには財産、家屋、職業、労働の場を失うという困難をかかえて非常に苦しんでいるわけです。政府は原爆被災者を原爆症と貧困の悪循環におとしいれていると言っても私は過言でない、こう言わざるを得ないんです。したがって、被爆者の被爆者団体協議会では、単なる先ほどから言われておる社会保障的な概念ではなくして、国家補償の責任を根本に据えた原水爆被害者援護法の制定を強く要望しております。これは毎年原水爆の大会が開かれるたびごとにこの問題が提起をされておるんですが、もう二十八年の記念日を実は来月迎えるわけです。これに対して政府はどのように対処されていく方針なのか、ひとつ御説明をしていただきたいと思います。
#94
○政府委員(加倉井駿一君) これも、この問題につきましても、先ほど戦災者の援護と同じような考え方に立ちまして、私どもといたしましては原子爆弾の被爆という特別な状態に置かれました者につきまして医療並びにそれに伴う特別措置の援護をするという立場でございまして、その他の問題につきましては、やはり一般の社会保障制度の中で処遇を改善していく、こういう基本的な考え方でございまして、私どもといたしましても原爆被爆者の援護についての御要望があることは十分知っておりますが、先ほど申し上げました一般的な立場から、やはり従来の特別措置を拡充していくという方針に基づきましていろいろの施策を考えております。
#95
○須原昭二君 私は、民間の戦災障害者あるいは遺族の援護をしてもらう法律をつくってもらいたい、こういうことと関連をして、原爆被災者の皆さんもこの原水爆被害者援護法の制定を強く要望しているわけです。ですから、そういう過去の行きがかりではなくして、ここで抜本的にそういうものをつくっていく意思はないかどうか。この点を聞いているわけで、厚生大臣ひとつ御所見を承りたいと思います。
#96
○国務大臣(齋藤邦吉君) 実は、この原爆被爆者について援護法をつくったらどうかという御意見のあることは、私も十分承知をいたしておるわけでございます。そこで、これについては、私も実は頭をほんとうに悩ましておるわけなんでございますが、この援護法のような国家賠償的な純粋に割り切った考え方の法律と、一般社会保障といったふうな法体系、その間のどうも中間に位置しているものではないかということを私は実は考えておるんです。世界の人類において初めて、しかもおそらく今後あってはならないと望んでおるこの原爆、それによって被害を受けられた方々の援護ということについては、やはり平和憲法を選択した日本としても国家賠償的な考えというところにはなかなか行きにくいと思いますが、一般社会保障の体系でこういうふうな、さきに御審議いただきましたような医療だけの法体系だけで十分なのかどうか、私は実は非常に悩んでおりまして、この国家賠償、社会保障、その中間的なものに位置づけることができないだろうか、もし位置づけすることができるならば何かしらの法律を考える必要があるのではないか、私は非常にこれは良心的に悩み、苦慮しておる実は問題なんでございます。で、この問題については、もう提案されましてから非常に古いいきさつのある法律でございますから、長い問題でございますから、もうできないならできない、できるなら考えてあげると、こう割り切ってあげないと、いろいろな問題を提案されている方々にも私は非常に迷いを与え、好ましいことではないんじゃないかと、こういうふうな実は考えを持っておるんです。私は、ですから、きょうは率直に申し上げておるんですが、国家賠償的なものと一般社会保障という法体系の中間的なものに位置づけることができないかどうか、それは私、国会が済みましてから真剣にこれを考えてみたいと思うんです。それでできないならできない、やるならやるということをはっきりさしてあげないと、もう長いことこうやってそれを叫び続けておられる方々にほんとうに迷惑ばかりかけて申しわけないじゃないか、こういう私はいま心境にあることを率直にお答え申し上げておきたいと思います。
#97
○須原昭二君 私の要望としては、やはり国家賠償の精神の上に立ってひとつぜひとも行なっていただきたいし、長い間待たしておるんですから、これは早急にひとつ結論を出していただきたいと思うんです。
 それに関連をして、私は厚生大臣の認識をさらに高めていただくために若干この問題を指摘をしておきたいと思うんですが、現在医療の問題だけは取り扱われております。しかし、現実の原爆被爆者たちは身体的な困難、いわゆる医療の問題でございますが、そのほかに生活上の困難、精神的な被害、肉体的精神的なハンディキャップ、こういう四つの問題点を背負っておって、その後著しい日本の経済の繁栄のもとで、戦争の傷あともあとかたもなく忘れ去った日本の一般社会の情勢の中において、その中に摩擦が生じて数々の問題点がその中で埋没しておるわけです。政府はこの四つの基本的な困難な障害者の生活の実態をどのように掌握をされているのか。どのように、どの程度につかんでおられるかということは、非常に私は疑問です。だからこそ、二十何年間も置き去りになってきたのではないかと思うわけで、私はこの際、認識を改めていただくために、さらに具体的にお話をしておきたいと思うんですが、身体的困難性の問題点では、言うまでもありませんが、白血病、再生不良性貧血症、あるいは白内障、肝臓疾患、ガン等の多発、被爆時の胎児には小頭症ですか、小頭症患者、こういうものがたくさん発生しておるわけです。微量ながら、少ない量ではございますが、長期にわたって放射能の照射を受けた人々を中心に、いわゆる原爆ぶらぶら病といいますか、無力症候群の症状が起きてきている。疲れやすいとか、あるいは全身がだるいとか、めまいがするとか、あるいは頭が重いとかいうような症状の訴えが非常に多いわけです。今日大きな問題の一つとしては、さらに被爆者の子供、孫、いわゆる二世、三世への影響などがあげられるわけです。
 あるいはさらに第二番目の生活上の困難というものは、被災地域に住む住民にとっては、家族と地域社会の消滅であったのです。その後、被災地域への非被爆者、被爆をしていない人たちの進出によって地域社会の再建が始まったが、この被災者が、被爆者が家族の再建、自己の再建はなかなか進まなかった経過があるわけです。
 あるいは精神的な被害の中であげられる問題は、自己の崩壊と再建、これが中心課題であって、たとえばリフトンという人は、「死の内の生命」という中でこういうことをいっております。被害者は、まず外からの刺激に感じなくなる「心理的な締め出し」自分一人だけ生き残ったということから「罪意識」、さらに極端には「心理的麻痺症」、こういうものにおちいって、うつろな虚無の状態である「真空状態」をうろついている、こう指摘をしております。だから、近ごろの身近な人々の接触やあるいは日常性への追求などが誘因となって、やがてその「自己再建」をされ始めるが、しかしその道は非常に険しく、「自己再建」後も原爆体験によって生じた心理上のつめあとといいますか、傷痕は残り続けているんです。したがって、原爆は被爆者の心に深く「人間荒廃」の傷あとをいつまでも残しておるといって指摘をしておるわけです。
 あるいは日本社会の摩擦の問題です。縁談だとか、あるいは就職だとか、家庭生活などの上の差別があるわけです。差別は初めこそは被爆者の身体上のハンディキャップに対する差別でありましたけれども、現在では被爆者という名のもとの非実態的な差別になって、集団総体への差別にまで進行しているわけです。
 こういう原爆被災者の実態を私は、厚生省は認識を新たにしていただかなければならないと思います。そこで、被爆者がこの国家賠償を伴う立法措置の切実な要求は戦後一貫主張してきたのですが、こういう実態を掌握をされておらない。こういう被爆者の実態を厚生省がつかんでおらないから、今日まで私は延びてきたのではないかと、こういうふうに思うわけです。戦後十二年目にして初めて制定された原子爆弾被爆者等の医療に関する法律、さらに原爆被災者特別援護措置法という法律がございますけれども、この法律が全く不十分です。原水爆被害者援護法の制定の声が大きくなってきたのですから、いま厚生大臣がおっしゃいますように、ぜひともひとつ早急に解決をしていただくようにお願いをいたしておきたいと思います。特にこの際、厚生省も認識は持っているはずです、私がこんな実態をこの席上でちょうちょうと言うまでもなく、このことはちゃんと握っているはずです。
 一九六七年に、厚生省は被爆者実態調査を発表しておりますよ、そうですね。その中に、これによると被爆者は受診率が普通の人の二倍になっている。薬代は三・六倍になっている。医療費は二・三倍になっている。身体障害率は三・八倍になっている。仕事についてない率は二・六倍になっている。日雇い労務者の率は一・五倍になっている。こういうことを厚生省の厚生白書みずからが、厚生省の被爆者実態調査みずからがもう一九六七年に発表しているんですよ。みずから政府が認めていることなんです。そういうふうに認めておきながら、今日なおずっとこの問題点が、審議だ審議だ、検討だ検討だと言うことは、私たちはまさに行政の怠慢と言わざるを得ないわけであります。私はあくまでもこれは、いま検討をされるというお話でございますが、政府は、被害者の国家賠償の私は責任がある、無視できないものだと私は理解をいたします。ぜひともひとつ、今後この問題について早急に措置をされ、少なくとも来月の早々に長崎、広島の原爆記念日がやってくるわけですが、それまでに抜本的な意見を出していただきたい、この点についてあえてひとつあらためて厚生大臣の所見を承っておきたいと思います。
#98
○国務大臣(齋藤邦吉君) 原爆被爆者は非常に特殊な精神的肉体的な、さらにまた生活上の問題、医療上の悩み、そういうものを持っておられることは私も十分認識をいたしておるつもりでございます。そういうふうなことでございますので、何かしら国家賠償的な法体系と、さらに一般社会保障体系の中間的な位置づけの中で解決することができないだろうかということを実は悩んでおるわけでございまして、できないならできないとこうはっきり私は申し上げることのほうが親切だと思うのです。そういう意味において、できるだけ早い機会に、そういう成案を得られるかどうか、得られないときにはもうこれは見込みはありませんならありませんということを私ははっきり申し上げることのほうが親切だと、かようなことを考えておるわけでございまして、できるだけ早い機会に決着をつけるように検討を続けてまいりたいと考えておる次第でございます。
#99
○須原昭二君 できるという報告ならいいんですけどね。できぬという報告は私はこの際聞きたくないんですよ。
 一九六三年に政府を相手どって被爆者が損害賠償の訴えを起こしておりますね。いわゆる原爆裁判が東京地裁でやられました。賠償請求を却下しておりますけれども、その判決文の中でこう書いてありますよ。原子爆弾の国際法への違法性が指摘をされております。二番目には、被爆者援護への国の責任を呼びかけておりますよ。こういう異例な判決文の内容、御存じでしょう。ここで明らかに国の責任を呼びかけているんですよ。言うまでもなく、国家がみずからの責任において開始された戦争です。多くの国民を死に導き、傷害を負わせ、不安な生活に追い込んだのは国の責任だということをこの判決文の中に明らかに明記をしておるのです。ですから、やるかやらないか、はっきり言うべきだということじゃなくて、やるということを私は要求しているのであって、この際、この立法府である国会及び行政府である政府によって行なわなければならない責任があります。皆さんだけの責任でなくて、われわれも国会議員としての私は責務があると思うのです。その点はどうですか。
#100
○国務大臣(齋藤邦吉君) やるかやらぬかということについて検討をするということを申し上げましたら、だいぶ御不満のようでございますが、私は率直に言うてるんです、これ。私はほんとうに心から、率直に言うてるんです。できないものを単に検討しますというようなことばかり言うておったんではほんとうにこの人たちがお気の毒なんです。そういう意味において、私は一つの案を考えまして、国家賠償的なものと社会保障体系の中の中間的な位置づけができないだろうか、そういうことを私はいま検討をしておるということを申し上げておるわけでございますから、私の意のあるところは十分御理解いただきたいと思うのでございます。
#101
○山下春江君 関連質問。いまの原爆の問題でございますが、いまから十七年前に、私が厚生政務次官をいたしておりました。その時分に二億六千万円の予算を取りまして、それがいまの広島と長崎の原爆病院になっているわけでございます。行ってみますると、全くいまいろいろ御議論がなされているとおりの、ほんとうに生きているか死んでいるかわからないような気の毒な状態がずらっと並んでおります。したがいまして、まあ、これはやっぱりもう少しその範囲を拡大して、あるいは原爆を受けていろいろな地域にちらばっている方も、その地域で医療を受けられることになっておりますけれども、しかし、お医者さまもないし機会もないし、おそらくこれは医療がないと同じことのままで苦しんでおると思いますので、どうかこれはいま御議論があっているとおりの拡大をしていただいて、そうして、厚生省でひとつ、齋藤厚生大臣のその非常な何といいましょうか、厚生的な、決断をお持ちの厚生大臣にぜひお願いをして、これはやっぱり国が責任を持ってごめんどうを見てあげるべきものだと私も思います。これ、だれが責任を持つといっても責任を持つ人がないのです。したがって、まあ、その病気をなおしてあげるということの衝にある厚生省が責任を持って、これの範囲を拡大して、そうして、原爆症状のある方に対しては全部国がめんどうを見てあげるという形をとっていただくことを私も、十七年前に非常に深い関心、いま、そのときに私に非常に強く陳情された灘尾衆議院議員、それから砂原衆議院議員――砂原衆議院議員は被爆者でございます。ついになくなられました。そういう方が非常に熱心に私を動かしていただいて、私はその予算を取ったのでございますが、思うように取れなかったけれども、たしか二億六千万取れて、それがいまの病院のもとになっておると思いますが、病院へ行ってみると、お説のとおりで、それはもう、もう少し拡大しないと、こういうふうに、生きているか死んでいるかわからないで、日本じゅうにどっかに寝ている方がまだうんとあるなと思うと、やり切れない気持ちでございますから、どうか厚生大臣は、いま御質問ありましたとおりの状況でございますので、勇気を出して、ひとつ、これは、国が引き取って治療をしてやっていただきたいことを、私も心からお願いを申し上げるものでございます。
#102
○国務大臣(齋藤邦吉君) 勇気を持って当たれと言われましても、いま直ちにこうしますということを申し上げることは私は困難だと思います、実際問題として。ですから、私は、もうほんとにこれは悩んでおる最重点の項目でございまして、その法律の体系から申しますと、国家賠償的な体系には入らないと思うんです。ただ、一般社会保障体系でいまの制度はできておるわけなんですが、それの特別法としてできておるわけなんですが、はたしてこういう社会保障体系の中でいいのかどうか。何か、私は、中間的な法律的な位置づけがあってしかるべきではないかと、こういうふうに実は考えておるんです。そこで、しかしそれを、そういうことが可能であるということをまだ結論づけるわけにもいかぬものですから、そういう問題を含めてひとつ早急に結論を出すように検討を続けまして、できるだけ早い機会に結論を出すようにいたしたいと思います。
#103
○山下春江君 大臣のお考え、ごもっともだと思いますが、その中間的な考え方ということが私のいまお願いしたい考え方の基礎でございますが、そういう気持ちをできるだけ早く結集して、この気の毒な人たちを救ってあげていただくように、勇気を出して前進していただきたいことをお願いいたします。
#104
○須原昭二君 それで、いま、厚生大臣、与党の山下議員から非常に力強い応援演説をしていただきまして、感謝をしております。やらないといえば、――気の毒だから、早くしてやらなきゃいかぬということはよくわかる。やらなかったらなおさら気の毒なことですよ。この点をひとつ銘記をしていただかなければなりません。
 それからもう一つ、記憶をたどっていただきたいと思うんですが、昭和三十九年第四十六国会においてこの「原爆被爆者援護強化に関する決議」がなされているわけですね。昭和三十九年の三月二十七日、参議院の本会議、三十九年の四月三日の衆議院の本会議――本会議ですよ、それぞれ。「原爆被害者に対する施策としては、なお十分とは認めがたい。
 よって政府は、すみやかにその援護措置を拡充強化し、もって生活の安定を図るよう努めるべきである。」という強い決議がなされているわけです。この問題も、もうはや十年を迎えているわけで、これは社会保障的な概念ではなくして、国家補償の責任を根本に据えたやはり立法化に踏み切るべきだと思います。これ以上、私は、申し上げても、答弁は進まないと思うんですが、少なくとも、やる、やらないじゃなくて、やる方向へいかなければ、やらなかったら、なおさらこれはかわいそうなことになりますよ。その点をひとつ厚生大臣、銘記をしておいていただきたいと思います。
 さらにこの際に、関連をしてお尋ねをしておきまするが、原爆被災者の援護に関する問題点で、さきに私は、ABCCの件で、アメリカ原子力委員会と学士院との間における古い契約書、新しい契約書をめぐって、それが日本の国内法であります原子力基本法、すなわち平和・民主・自主・公開の四原則との関連において非常に多くの疑義がある、この点を具体的に私は質疑をかわしたわけですが、ほとんど答弁らしいものがなく、もう立ち往生されたことは御案内のとおりです。大平外務大臣も、しばらく時間をかしていただきたい、そうして問題の本質を明らかにすると確約をされましたが、これらABCCの今後の運営に関して、厚生省あるいは外務省とが緊密な連携をもってこれに対処していくという、付帯的に厚生大臣からも言明がございました。あれからほぼ半月たっているんです。どうなっていますか、これ。半月もたっていますよ。
#105
○説明員(角谷清君) 先般の当委員会におきまして、先生から御指摘をいただきました契約書の諸点につきまして、直ちに指摘をいただきました諸点をワシントンの大使館に送りまして、米側に照会方、訓令いたしたわけでございます。で、大使館といたしましても、累次米側と折衝いたしておりまして、また当方からも催促、督促の訓令を発しておりますが、若干技術的にわたること、さらに詳細にわたる点がございまして、現時点におきましては、遺憾ながら、まだ米側から回答というものがないわけでございます。ただ、わがほうもこれは大いに督促いたしておりますので、そう遠からざるうちに回答を入手し得る見込みということに存じておりますので、なお若干の時間をいただきたいと思っておるわけでございます。
#106
○須原昭二君 この問題は、特に原爆記念日を来月迎えるわけですよ。いまや中国地方、九州、とりわけ現地であります広島、長崎においては、非常に国民の関心が高いわけです。疑念を持って凝視しているわけですよ。少なくとも、私は国会ですよ。少なくとも日本の政府じゃないですか。こんな問題点ぐらいで半月もかかって回答がない、あちらの回答の見込みがまだ立たないというようなことで、私は引き下がるわけにはいかぬのですよ。きょうは発表できない、――少なくとも次の当委員会までに明らかにされますか。私が指摘をしたように、これだけたくさんの付せんがついているわけです。この全部を出してくれと言っておるんですけれども、一つも出てこない。同時にまた、現在、あなたの手元にあるいわゆる「付録A人事政策」、「付録B契約の追加規定」、「付録C米合衆国内における活動に関する契約の追加規定」、これを「削除」と書いてあるけれども、この「削除」の分はどうしたんですかと言ったら、それは外務省が持っております、翻訳をしておりますと言っている。外務省ともあろうものが、この削除した分を資料を出しなさいと言っても、いまだにもって出てこない。ここに重大な問題がある。重大な問題があるから出さぬのでしょう。なぜ出さぬのですか、これ。アメリカに聞かなくてもいいですよ、これは。あなたたちが持っているんじゃないですか。この間は、持っております、ただいま翻訳をしていて、この時間に間に合いませんでした、こういう答弁でしたよ。なぜ出さぬですか、これを。
  〔委員長退席、理事小平芳平君着席〕
#107
○説明員(角谷清君) ただいま御指摘のございました資料A、B、Cにつきましては、これは英文で、かなり膨大なものでございまして、われわれ翻訳を一生懸命やっておるわけでございます。
 それで、Aにつきましては、翻訳を完了いたしまして、ただいま技術的なことになりますけれども、ステンシルのほうに回しておりますので、これは一両日のうちにお出しできると思います。
 また、BとCにつきましても、近日中に御提出申し上げるということにいたしたいと思っております。
#108
○須原昭二君 これは、ぜひともひとつ、アメリカに問い合わせ中ということですが、その見込みについてはあらためて聞きますけれども、いつできますか。いつまでにあちらは出すと言っているんですか。
#109
○説明員(角谷清君) いつまでとここでお約束申し上げることになりますと、また万一ということがございますので、恐縮でございますが、アメリカ側といたしましては、大体今週中には回答ができるであろうということを申しております。ただ、回答がでましても、またワシントンで行ないますので若干、東京、こちらへ来たりあるいは整理したりするのに若干の時間がかかるかと思います。いずれにいたしましても、そう遠くない将来にお答えできるということを考えております。
#110
○須原昭二君 いずれにしても次の委員会までにこれはひとつ提出を願いたい。こたえられますか。いいですか。
#111
○説明員(角谷清君) まあ、全力をあげて努力いたしたいと思います。
#112
○須原昭二君 そこで、もう総括的にこの問題点に入りますが、現在、審議中のこの戦傷病者戦没者遺族等援護法には非常に問題点が多いということをいままで私は討議の中で指摘をいたしてまいりました。総括して申しますと、何よりも国家との身分関係が前提となっている。しかも、その身分関係は言うまでもなく旧憲法下の身分であるということに大きな特徴がありました。国家と身分関係にあっても、恩給法の九条第一項の第二号に従い、死刑または無期または三年をこえる懲役または禁錮刑に処せられたときはその資格を失することになっております。帝国陸海軍の軍旗はためくもとに旧陸海軍の刑法で刑に処せられた者は除かれることになっておる。反戦主義者で旧軍刑法に触れて処刑された者は適用されていない。戦時中に日本国籍でなかった者はたとえ軍人軍属でも適用されていない。一般市民の犠牲者の一つの極であるいわゆる広島、長崎の原爆被害者の問題でも、広島、長崎の原爆被災者は一般空襲や沖繩のような地上戦闘と同一次元に属する部分と、はみ出している部分と、こういう両面があるわけですね。旧憲法下ですら戦時災害保護法で一般市民の空襲の被害に対しては扶助及び給与金の給付が行なわれたことを皆さんにお伝えをいたしました。こういう実績があります。これらを考えあわせますと、援護法は基本的において大きな私は矛盾を残したまま進行している、実施されている、こう言わざるを得ないわけです。すなわち、平和憲法下におけるところの現政府の戦争犠牲者に対する考え方は、当然現在の国民の心情なり、さらには平和の理念に貫かれた今日の憲法の前文と第九条から考えれば、太平洋戦争で戦争指導部の犠牲者になったのは、一般市民こそ真の意味の私は戦争犠牲者ではないか、こう言わざるを得ないんですが、その点はどうですか。
  〔理事小平芳平君退席、委員長着席〕
#113
○国務大臣(齋藤邦吉君) 仰せのごとく、現在の援護法につきましては、いろいろ私、問題のある点は十分理解をいたしておるつもりでございます。そういう点については逐次範囲を拡大するなり、その趣旨をいかすようにしていかなければならぬと考えておるわけでございますが、須原委員のように、初めから、おまえたちの考え方は間違っているではないかと、本末転倒ではないかと、こういうお尋ね、これは私は政策の意見としてりっぱな御意見だと実は先般来拝聴をいたしておるわけでございます。しかしながら、いまになって、これを昔に戻すというわけにもまいりませんもんですから、須原委員の仰せになったような気持ちを生かしながら、範囲の拡大につとめると同時に、一般の社会福祉のほうにおいても大いに努力をしていくと、こういうことでなければならぬと、かように考えておるような次第でございます。
#114
○須原昭二君 そこで、日本の憲法はこれらの多くのやっぱり民間の戦争犠牲者をはじめとした、その血と涙の上に成り立っていると私は思うんです。再びこのような戦争の犠牲者にならぬという決意を深く戒めておるのが今度のこの憲法の精神だと思うわけです。そういう立場から言うならば、今日の援護法というものは実は全くさか立ちをしていると言わなければならないわけでありまして、この際、提案されておる援護法の一部改正に私はけちをつけるわけではございません。反対をするものではない。やめよというわけではないんですが、それ以前に、直ちに原爆被災者の叫ぶ原水爆被害者援護法を制定すべきである。さらに私が発議をいたしました一般民間の戦争犠牲者に対しても戦時災害法を制定すべきである、こういう点を強調して、この二時間余り質疑をしてきたわけです。そして、この真の意味の戦争犠牲者というものはすべて国家補償の精神に基づいて援護されることがほんとうの私は戦後処理であり、これができない以上、戦後は終わらないと思います。この点はどうですか。戦後は終わりますか、このままでも。
#115
○国務大臣(齋藤邦吉君) 戦後は終わったという言い方につきましてもまあいろいろな御意見はあると思いますが、須原委員のようなお考えならばまさしくそういう御意見は私は成り立つと思います。しかし、それはそれといたしまして、私どもは、何べんもお答えいたしておりますように、いまの援護法だけで十分だとも考えておりませんし、いろんな、たとえば原爆被爆者の問題もあります。いろんな問題もありますので、今後とも私どもはいろいろな問題を真剣に考え、努力をいたしてまいりたいと考えております。
#116
○須原昭二君 そこで、私が提案をいたしました戦時災害援護法と同じ趣旨からなる請願書がたくさん出ております。たとえば私たちの党から言うならば、私をはじめ矢山さん、大橋さん、藤原道子さん、それから田中寿美子さん、みんな出ております。公明党の小平さん、それから民社党の中沢さん、そして共産党の小笠原さん、みんな各党から出ております。非常に私は敬意を払うわけでありますが、丸茂理事さんからも出ております。石本さんからも出ております。川野辺さんからも出ております。こんな調子で出されていると、私は、ほんとうに先生方の御理解に心からこの席上を通じて敬意と感謝を示したいと思います。ほんとうにこれは全会派がこれ、もうみんないいというんですから、これは成立したと一緒だと私は思うんです。これほど与党を通じて全会派が一致をして請願が出てくるというような法案は私はないと思うんです。こういう現実をとらえて大臣は立法化をされる意思があるかどうか、この点を最後に私は確かめておきたいと思うわけです。どうですか。
#117
○国務大臣(齋藤邦吉君) こうした一般被災者に対する援護法をつくれという国民の声のあることは十分承知いたしておりますし、そうした声が与野党を通じて請願となって出ておることも私は十分理解をいたしておるわけでございます。しかしながら、いま直ちに一般被災者についての援護法を国家賠償的な考え方でつくれと、こう言われましても、いますぐなかなか、はい、わかりましたと申し上げる段階ではないわけでございます。御承知のようにいまから二十何年前にこういうふうな法体系のもとに、いろんな援護の問題の施策を進めてまいっておるわけでございますから、あの当時の政策論争としてならいざ知らず、二十数年たった今日、いますぐこういうふうな国民の声もあるから、すぐやれと、こう言われましても、すぐやりますと、こういう御返事はできませんが、御意見のあるところは十分検討さしていただきたいと、かように考えております。
#118
○須原昭二君 きょうの席上ではやる、やらないこれこそ、やるやらないの問題で、明快な回答ができないかもわかりません。しかし、この当委員会におけるところの空気を察していただいて、これは早急にひとつ結論を出していただくよう要望して質問を終わりたいと思います。
#119
○委員長(大橋和孝君) 本案に対する質疑は、午前中はこの程度にとどめます。
 午後二時半程度まで休憩をいたします。
   午後一時十九分休憩
     ―――――・―――――
   午後五時二十一分開会
#120
○委員長(大橋和孝君) ただいまから社会労働委員会を再開いたします。
 戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案、戦時災害援護法案、両案を一括議題とし、質疑を行ないます。
 質疑のある方は順次御発言を願います。
#121
○中沢伊登子君 この法律案は毎年改正が出てまいりますので、いままでにも何べんも御質問をしたり、各委員が質問をしておりますので、重複を避ける意味で、私の質問、たいへん簡単な質問でございますけれども、答弁はきちっと答弁をしていただきたいと思います。
 まず初めに、今度の改正案で準軍属の年金額が軍人軍属と同額になりましたね。ところが弔慰金とか遺族一時金は同額になっていないのはなぜでございましょうか。
#122
○政府委員(高木玄君) 弔慰金とか遺族一時金というような給付は弔慰等のために一時金として支出されるのでございまして、したがって生活上の援護を目的として支給される年金とは性質が違うわけでございます。そういった点からいたしまして、これを軍人軍属の額と同じにするというやつは考えてないわけでございます。また、今後この弔慰金、遺族一時金をもらう人の数はそれほど多数ないわけでございまして、何といいましても生活を援護する意味の生活援護の資金としての年金は、これはもう軍人軍属とそろえなければならぬことは前からの懸案でございますから、これを実現したわけでございます。
#123
○中沢伊登子君 けさほど来、須原委員からじゅんじゅんとして、同じように戦争に行ったんだから、その階級で云々するべきではない、こういうようなことを盛んに言っておられたのですが、今後はこういう問題も私は当然同額にしていくのがほんとうではないか。特にその額が一ぺんに五十万円の、百万円のというのではなくて、五万円とか、三万円とか、あるいは十万円とか、七万円とか、こういうことですね。ですから、これはやっぱり当然同一にしてもいいのではないか、このように思いますが、それはいかがですか。
#124
○政府委員(高木玄君) 過去にさかのぼるのではなく、今後のものについて同額にしろという御趣旨のように承りました。その点については十分に検討させていただきます。
#125
○中沢伊登子君 それではその次の問題、特別給付金の額を六十万円としましたね、これは妻に対して。それから父母に対しては三十万円としたその根拠は何ですか。
#126
○政府委員(高木玄君) 今回の特別給付金の問題につきましては、昨年、厚生大臣の私的な諮問機関といたしまして、遺族等特別給付金問題懇談会というものを設けまして、妻に対する特別給付金が切れますので、それをあといかがいたしましょうかということで御相談申し上げたわけでございます。その結果、この特別給付金制度は引き続き存続すべきである、そしてまたその金額も、特別給付金制度発足以後の経済情勢の変化等を考慮して、今日の社会通念から見て妥当な額にすべきである、こういう御意見をいただいたわけでございます。この特別給付金制度が発足いたしましたのが昭和三十八年でございまして、そういった懇談会の御趣旨をそんたくいたしまして、考えますと、当時の一人当たり国民所得、昭和三十八年度の一人当たり国民所得が二十一万四千三百八十六円、昭和四十七年度の一人当たり国民所得の見込みでございますが、これが六十八万七千二百六円。そういたしますと三・二一倍というふうになっております。それから個人消費支出、これを見比べますと、一人当たりの個人消費支出は昭和三十八年度が十四万八千七百五十三円。それに対しまして、昭和四十七年度の一人当たり個人消費支出の見込みが四十五万六千九百四十四円でございまして、三・〇七倍ということに相なります。それから普通恩給の改善率、これを見てまいりますと、昭和三十八年度を一〇〇といたしますと、昭和四十七年度は二三〇、それから昭和四十八年度の改正を見ますと二八四と、二・八四倍、これもほぼ三倍ということに相なります。こういった点を総合勘案いたしまして、従前の額の三倍に増額するのが大体適当なんじゃなかろうかということで、二十万円のものを六十万円というふうにいたしたわけでございます。
#127
○中沢伊登子君 これもちょっと私ども考えますと、父母が妻の半分ですね。そうすると、父母というのは私もう相当の年をとっている感じがいたします。もう年をとった人というのはそう働けないわけですね。年金で生活をする。そうなりますと、私は父母に対する特別給付金というのですか、これはもう少し上げてしかるべきではないか。言うならば、ほんとうは理想からいえば妻と同じくらいにしてもいいんじゃないか、こんな感じがするのですけれども、その点いかがですか。
#128
○政府委員(高木玄君) 父母の点につきましては、いま大体平均年齢が七十八歳でございます。で、御承知のとおり、父母は非常に高齢になっておられます。そこで、前の制度もそうでございましたけれども、妻のほうは、これは十年償還の国債をお渡しする。で、父母のほうは五年償還の国債をお渡しする。したがいまして毎年受け取る金額は六万円で、同額なのでございます。その点の御配慮はしてあります。
#129
○中沢伊登子君 はいわかりました。先ごろ、日中国交回復が実現をいたしましたね。で、この間、厚生省でお祭りをされたんですが、中国から遺骨が帰ってまいりましたね。今後も中国から遺骨が帰ってくると思います。あるいはそれを収集に行ったり、また現地で遺霊を行なう、こういうようなことが今後まだ続けられるのかどうか、その点をお伺いしたいと思います。
#130
○政府委員(高木玄君) 中国におきまする遺骨の問題でございますが、昔の満州、現在の東北地区でございますが、ここにおきましては終戦前後に軍、民合わせて約二十五万人の方がなくなられたというふうになっております。それで、その遺骨の大部分が未処理でございます。また、ビルマ戦線の一環としての雲南地区に約四千人の戦没者がございます。この方々の御遺骨も未処理でございます。そういった点がございますので、この戦没者の遺骨の収集あるいは現地遺霊というような問題につきましては、これは長年の懸案事項になっておりますが、この日中国交正常化が実現いたしましたので、こういった問題について今後促進に努力しなきゃならぬと、かように考えております。しかしこの日中間には、御承知のとおり、過去におきまする不幸な戦争との関連で、中国のほうの国民感情というものも十分に考慮してものごとを進めなければならないと存じますので、このいま申しました遺骨の収集なりあるいは遺霊巡拝というような問題につきましては、外交ルートを通じまして中国側の意向を尊重しつつ、ねばり強く話し合ってものごとを進めていかなきゃならぬのじゃなかろうかと、かように考えているような次第でございます。今回、中国側におきまして収集し、保管してくだすっておりました八百九十九柱の遺骨を政府派遣の訪中団にお渡しいただいたわけでございますが、この方々につきましては、さっそく厚生省におきまして追悼式を行ない、遺骨の引き取り先の判明しておられる方々に遺骨を伝達した次第でございます。私どもとしては今後もこの遺骨の収集の問題あるいは遺霊の問題、墓参の問題、こういった問題につきましては、十二分に外務省と連絡いたしまして、折衝してまいりたいと思います。
#131
○中沢伊登子君 戦後もう二十八年にもなるわけですから、いろんな点に配慮をされて、さらにこの遺骨の収集とか現地遺霊、こういったことにはこれからもさらに努力をしてほしいと要望をいたしておきます。
 それからいまもお話がありましたように、日中国交回復が実現したために中国地域のほうに残留者がまだたくさんおられますね。その方々が国交が回復したからということで、一時帰国をしたいと希望している方がたくさんあるように伺っておりますが、この人たちが一時帰国をしたいと申し出たときには、そういった旅費や滞在費の援助をなされるかどうか、どのように考えていらっしゃいますか。
#132
○政府委員(高木玄君) 先般、訪中団として山口政務次官が中国へ参られまして、向こうの要路の方とお話しされましたときも、向こうの方々は日本の現在中国におられる方が永住を希望されるのも歓迎すると、それから帰国をされるならそれもけっこうですと、それから永住を希望する方で一時帰国を希望するならばそれも認めるようにしたい、こういうふうに言っておられたそうであります。したがいまして現在、私どももこの一時帰国、里帰り、この問題につきましては、その里帰りを希望する方々の数なり時期なりそういった問題につきまして中国側と話し合いがつきますれば、おそらくこれらの方々は自費による帰国は非常にむずかしいと思いますので、何とか、帰国旅費につきまして国費で負担するというような方途を講じたいと、かように考えておる次第でございます。
#133
○中沢伊登子君 地元のことを申し上げてたいへん恐縮なんですけれども、兵庫県に海外同友会という団体がございます。これはおそらく厚生大臣は御存じだろうと思いますが、この団体がいまぜひともやりたい問題が二つございます。その一つは引揚者センターを設立したいということです。これについては従前にありました神戸市の移民センター、もっと何かおもしろい名前を使っておりましたがね、いまは引揚者センターといっておりますが、今度は反対にこの移民センターを引揚者センターとして使用をしたいと、こういっているわけです。長らく海外に働いて敗戦にあった引揚者、その人たちの悲惨さあるいは恐怖と飢えの連続でありましたので、こういう人たちが祖国の敗戦で敵国人という名前のもとで祖国の戦争責任の十字架をいままで負わされてまいりました。そこで今度帰国を希望する人たちがいまのお話のとおりたくさんあるといたしますが、この人たちが日本の社会復帰に必要な基礎知識、ずいぶん長いこと向こうにおられますから、その基礎知識を得るために日本語の勉強とか、あるいは貨幣価値がずいぶん変わっておりますから貨幣の問題あるいは生活訓練の場としてこの引揚者センターの建設を希望しておられるんです。この方たちのいろんな資料を読みますと、すでに齋藤大臣にも要請をされたとこの通信には書いてございます。大臣はこれに対してどのようなお答えをされましたか。どのように、これからこれに対処をされますか、お伺いをしたいと思います。
#134
○国務大臣(齋藤邦吉君) 兵庫県海外同友会から引き揚げ者のセンター建設の要望のあることは承っておりますが、郵便で送ったということは聞いているんですが、私、実はまだ見ておりません。
#135
○中沢伊登子君 そうですか。この資料によりますと、三月十二日及び二十日、齋藤邦吉厚生大臣に次のとおり要請するという、こういう通信文が来ているわけです。ごらんにならなかったですか。これは遺骨をお祭りをしたり何かするのに、兵庫県知事も出席しておられます。それから前の郵政大臣の三池信先生、そういう方も、それから原健三郎代議士ですね、地元でございますから、こういった方も出席されたようにこの資料には書いてあるわけです。まだ御存じございませんですか。
#136
○政府委員(高木玄君) この兵庫県海外同友会が引き揚げ者センターを神戸に建設したいという希望を持っておられるということは承っておりますが、今後におきまする引き揚げの主たるものは中国からの引き揚げだろうと思います。現在のところでは私どものほうで承知いたしておりますのは、三百人程度帰国を希望しておられる方々がおられると、こういう状況でございますが、ことしの状況を見てまいっておりますと、現在までに中国からは、本年の六月末までに十世帯二十二名の方が帰国しておられます。しかし、これも突然香港に出てこられまして、香港から航空機を利用して帰ってくるということで、帰り方が非常に散発的なんでございます。まとまって集団的に帰ってくるのではなく、一世帯ずつぽこっと香港に出てきましてそこから帰国してくる、こういう状況でございますので、現在のような散発的な引き揚げが続いております状況でございますと、引き揚げセンターをつくるというところまでちょっと踏み切れないという状況でございます。
 それからまた、この種の施設をつくるといたしましても、地元の兵庫県当局の御意向等も確かめてみなければなりませんので、こういった点も含めまして検討さしていただきたいと思います。
#137
○中沢伊登子君 それでも自民党さんの前の郵政大臣をされたような方だの、労働大臣をされた原代議士なんかが出席しておられることですから、これはもう少し政府のほうと御一緒にいろいろ話し合いをして詰めていただいて、向こうから帰ってきた方で一番困るのはやはりことばのようですね。横井さんのように二十何年間かほら穴にいても日本語を覚えていらしたという方もありますけれども、貨幣価値なんかもすっかり変わっておりますので、ずいぶんまごつかれると思います。ですから、そこら辺はお話をまたこれから詰めていただいて、できれば、新しくつくるならば相当のお金が要りますけれども、幸いに移民センターを利用したい、こういうことですから、兵庫県とも連絡をとって、こういう引き揚げてこられる方がさんざん日本の敗戦を外地について苦労をなめてこられたのですから、その辺はもう少しあたたかい思いやりをしてやっていただきたい、このように思います。
 それからまた、韓国にも残留していらっしゃる方が相当あるわけですね。この間、韓国に被爆者の調査に私どもの友だちが行ってまいりました。韓国に帰っておられる方で、被爆を受けて向こうに帰っておられる方、こういう方がいまあそこに……、さっきから資料を持ってこようと思ったのですが、いつ始まるかわからないので部屋によう帰れなかったのですけれども、そういう調査にも行っておりますけれども、厚生省としては、そういう調査はなさらなかったのでしょうか。
#138
○政府委員(高木玄君) お尋ねは、韓国の在住の邦人の調査でございますか。
#139
○中沢伊登子君 韓国人で広島で原爆を受けて、被爆をされて向こうに帰った人です。
#140
○政府委員(高木玄君) 原爆被爆者で韓国に帰っておられた方の調査をしているかどうか、この問題につきましては公衆衛生局のほうでそういう調査をしておりますかどうか、ちょっと確かめてお返事させていただきたいと思います。
#141
○中沢伊登子君 それでは、私のほうからまたその資料をお届けしますから、こういう方にも漏れなく心を配ってあげていただきたい。むしろ私どもは、少しお金を持ち寄ってでも、そこに被爆者センターをつくるんならば何とかお助けをしたいと、こういうふうなことも寄り寄り相談をしているわけですから、政府のほうがこういう調査もまだあんまりやっていないということは、私、これ少し手落ちじゃないかという感じがするんです。いずれ私のほうに資料がございますから、それまたお届けいたしますが、ひとつ御配慮いただきたいと思います。
 それから次に、各種の相談員の手当額なんかについてお尋ねをしてみたいと思います。厚生行政の中で老人や身体障害者、重度心身障害児、こういう方のお世話をしたりなんかするのに家庭奉仕員というのがございますね。あるいは家庭相談員、婦人相談員、母子相談員、民生委員、いろんな相談員の方がいらっしゃるわけです。それに続きまして戦傷病者相談員というのもございます。戦没者遺族相談員もございます。身体障害者相談員、精神薄弱者相談員、これだけの相談員として女性も働いていらっしゃるし、まあ民生委員なんというのは男性もいらっしゃるわけですけれども、そのような中で、きょうの御質問を申し上げる問題は、戦傷病者相談員、これは四十七年に比べて今年度は九百四十名ふえておりますね、人数が。ところが、この人たちの手当、これが月額五百円でございます。最近のこの激しい物価高の中で、ボランティアといいますか、それにしても、タクシーに乗っても五百円ではあんまり少な過ぎるではないですか。あんまりばかにしたような手当ではなかろうかと思います。そもそも初めは千円を要求されたんですね。ところがこれが落とされて五百円になっております、非常勤だからということかもしれませんけれども。しかも、これは昭和四十年以来据え置きになっているわけです。少しこれも厚生行政が国民の善意におんぶをしていると、こういうふうに思いますが、この前も私、原爆のときにこういうようなお話を申し上げたし、かねがね少し厚生行政というのはさか立ちをしていて、とにかく国民の善意にあんまりおんぶし過ぎておる、こういうことではいまにいろんな福祉施設なんか、そういうところから福祉行政がくずれてくるんじゃないかということをしばしば私申し上げているわけですが、戦没者遺族相談員、これも同様に手当は五百円です。これは昭和四十五年以来据え置きになっているわけですね。そしてこの戦没者遺族相談員というのはいま千四百十名おるわけですが、私は、これは人数をふやすんなら、戦傷病者の相談員よりも戦没者の遺族の相談員のほうをもっと数をふやすべきではないか、こういうふうに考えているわけですが、以上の点についてお答えをいただきたいと思います。
#142
○政府委員(高木玄君) 戦傷病者相談員、戦没者遺族相談員、この私どもの局で所管しておりまする二つの相談員の謝金につきましてはおっしゃるとおり月額五百円でございまして、御指摘のとおりきわめて低い額でございます。これらの相談員の方々、いずれも民間の篤志家でございまして、非常に甘えるとおしかりを受けるんでありますが、謝金のいかんにかかわらず、戦傷病者なり戦没者遺族等の相談に応じていただける方々でございまして、現実には戦傷病者相談員は戦傷病者の方々の中から選ばれているケースが多いし、それから戦没者の遺族相談員も遺族の方々が相談員になっておられるケースも多いわけでございまして、いわば自分たちが相談員であると同時に戦傷病者であり遺族である、こういう立場での親身の御相談をいただいているわけでございますが、しかし、御指摘のとおり、月額五百円というのはきわめて私ども低額だと思いますので、今後とも、この相談員制度を円滑に運営していきますためにも、この増額については精一ぱい努力さしていただきたいと思います。
 それから員数でございますが、本年の予算におきまして戦没者遺族相談員のほうを九百四十名から千四百十名に五割増ししたわけでございます。戦傷病者の相談員のほうは九百四十人のままでございます。これは遺族のほうはもう戦傷病者よりもずっと人数が多いのでございますので、こちらのほうの遺族のほうの相談員を五割ふやした、こういう経緯でございます。
#143
○中沢伊登子君 その五百円という月額をこれから少しふやす努力をされるのですが、それは大蔵省がうんと言わないのですか、それとも厚生省が要求をされないのですか、どっちですか。
○政府委員(高木玄君)厚生省は要求いたしました。いたしましたが、ことしの予算の経過を顧みますと、先ほど申されました身体障害者相談員、精神薄弱者相談員、これがいままで月額三百円であったものを戦傷病者なり戦没者遺族の相談員並みに五百円に引き上げるというのが手当面での改善であり、それから、私どものほうもことしは戦没者遺族の相談員の数をふやすということは非常に遺族会の要望が強かったものですから、こっちに重点を置いたと、こういう結果でございまして、明年は御指摘の五百円の金額の引き上げのほうに、社会局のほうの所管の相談員と共同歩調をとって努力したいと、かように考えます。
#144
○中沢伊登子君 それでは時間がございませんから、その程度にさしていただきます。
 続いて、須原委員が戦時災害援護法というのを提案をされておられますので、そこで、須原委員に御質問申し上げたいのですが、先生が発議者となられたこの法律案について、予算はどのくらい入用だと考えておられますか。
#145
○須原昭二君 お答えをいたしたいと思います。どのぐらいこの法律を施行されたらお金がかかるか、この法案の末尾にも書いてございますように、「この法律施行に要する経費は、平年度約三十億円の見込みである。」と、こう明記してありますが、まだ概数といたしまして、大体、おなくなりになった方々が約五十万人として、遺族給付金を五十万円、十年国債で支給することにいたしておるわけでありまして、この経費が年間約二十五億円、さらに障害者に対する障害年金、傷病者に対する療養の給付など、あるいはまた遺族に対する弔慰金その他合わせまして大体約五億円、計三十億円を推計をいたしておるわけでありまして、この問題点につきましては、まあ、率直に申しまして、ファントム戦闘爆撃機一機分であるといわなければなりません。したがって、今日の経済成長のさなかにありまして、特に日本の国の税収の見込みというのは実は七〇年の決算では七兆円、さらに七二年の決算の見込み額にいたしますと九兆円、すばらしい税収をあげておるわけでありますから、当然、このようなささいな金は支出できるものである、こういうように私たちは考えておるわけであります。
#146
○中沢伊登子君 先生の発議されたこの援護法には、けさほど来、盛んに先生が質問をされておられた原爆被爆者も入れるのか入れないのか、お答えいただきたい。
#147
○須原昭二君 お答えをいたします。
 この援護法の中に原爆被爆者を入れるかどうか、この問題点につきましては、私はおおむね、この本法の適用の中に入るものである、こういうふうに解釈をいたしております。ただし、被爆二世、被爆三世、いわゆる子供さん、孫さんにまではこれを被災者の中に入れるものではない、間接的な者は入れない、こういうふうに解釈をいたしております。
#148
○中沢伊登子君 齋藤厚生大臣ね、先ほど来、いろいろやりとりをしていらした中で、私もこの間の原爆被爆者の法律案について御質問を申し上げるときに、実は原爆の被爆者の会に私は行ってまいりまして、そこでいろいろ話も聞いたり、調べてきたりしてこの間御質問申し上げたわけです。そのときに、その原爆の被爆者の人たちのことばで、齋藤厚生大臣は、この被爆者の問題についていままでの大臣以上に一番熱意を持っているように私どもは伺っております、ですからこの際齋藤厚生大臣のいらっしゃる間にぜひとも援護法をつくってほしいんですと、こういうお話がございました。先ほど山下春江先生からもいろいろアドバイスのような、御質問のようなお話がございましたが、これはぜひとも先ほど来のお話の前向きのお考えをひとつ、齋藤厚生大臣の間によい方向を見つけ出してあげていただきたい。被爆者の皆さんがますます老齢化していく、そして、たいへんさみしい気持ちをいま持っておられますから、その点をくれぐれも前向きに考えていただきますようにお願いを申し上げたいと思います。
 それから須原先生にもう二、三点お伺いしますが、援護法に準じてというところがございますね。それはどの範囲まで入るのか、お答えください。
#149
○須原昭二君 この法律は民間戦災者の援護を行なうものでありますが、原則として軍人軍属を対象といたしておりまする現下の援護法と同じ内容の給付を行なうことといたしておるわけです。ただ、違っておる点を二、三点申し上げておきたいと思うのですが、一つは遺族に対する援護については、現下の援護法では年金給付でありますが、本法案では一時金五十万円の支給、国債発行、こういうことになっておるということが第一点です。
 第二点の違いは、そのような一時金の給付をとっておりまするけれども、遺族に自活能力があるかないか、こういう支給の条件は撤廃をする、こういうことが第二番目です。
 第三番目の違い、相違点は、遺族の範囲といたしましては、入夫婚姻による妻の父母等はこれを除外をいたしておるわけでありまして、以上、大体三つが相違をいたしておる点だと思っております。
#150
○中沢伊登子君 こういうことをお伺いしたのは、先ほど来愛知県が一番こういう問題に熱心だ、こう言われておりますけれども、私も兵庫県であちこち歩きますとね、もうこういったような一般の空襲にあわれた人やなんかが、いま先生の発議されたこういう問題についてずいぶん要望があるわけです。私どもも再三承ってまいりますけれども、それを調べてみますと、こういう人たちは救われない、たいへん残念な返事を書かなければならない例が実は兵庫県でもずいぶんあるわけでございまして、できることならば、私どももこういう点で、もう少し前向きにお答えができるような返事を書きたい、こう思っているものですから、お伺いしているわけですが、それではけさほど少しやりとりがあったようですが、空襲にあった人はどのくらいあるのですか、お調べになってごらんになりましたか。
#151
○須原昭二君 この問題点では、今朝来の私の質疑の中でもきわめて抽象的で明確な御答弁がございませんでしたが、すでに御案内のとおり、一九四九年四月の経済安定本部が発表いたしましたこの数値が一番根拠がある、こうおっしゃっておられます、政府としては。一般国民の死亡者が二十九万九千四百八十四名、負傷者行方不明三十六万八千八百三十名、総計二百五十三万三千二十四名、こういうふうに数字が出ておるわけでありますが、私たちの推計といたしましては、全国戦災者死没遺族連合会の戦災都市空爆による死没者の慰霊塔の中に納めてある記録に基づく調査によりますと、死亡者だけでも五十万九千四百六十九名という数字が出ておるわけです。したがって、こういう数字からまいりますると、総計二百五十三万三千二十四名というのは大体半分ぐらいではないか、したがって五百万ぐらいが適用者になってくるのではないかというふうに私たちは感じております。
 なお、この問題点については、法律の附則第一条に「この法律は、公布の日から起算して一年をこえない範囲内において政令で定める日から実施をする。」と、こういうことに明記をいたしておるわけでありまして、この一年間に鋭意努力をして実態を調査をして、その詳細な数を把握をいたしたい、かように考えておるものであります。
#152
○中沢伊登子君 最後に、その実態調査をするとすれば、それはその費用はどこが持つのですかね。
 それからなぜもっと早くこれをやらなかったか、お答えいただきたいと思います。
#153
○須原昭二君 この実態調査の費用につきましては、私たちはこの法律をつくり上げた基本のものの考え方は、あの戦災、民間の戦争による犠牲者というものは国の責任においてあのような障害を受けたあるいは死亡せざるを得なかった、なくなった。こういう観点に立ちましていわゆる国家補償の精神に基づいて立案をいたしておるわけです。したがって、当然この実態調査の費用は国が負担をすべきものである、このように考えておるわけであります。
 なお、本法案の措置がおくれた理由につきましては、先ほどから私が質問をいたしましたように、従来政府というものが旧憲法下の国家との身分関係、これに執着をして、すなわち、軍人軍属等、こういう身分制にこだわってまいられた。したがって、一般戦災者に対しては援護の手が差し伸べられなかった。しかもこの問題点につきましては、昭和三十九年、衆議院本会議、あるいは参議院の本会議において、この援護の問題について強い決議がなされておるにもかかわらず、遅々として政府はこれを取り上げない。したがって、思いあまってここに提案をいたしたものでありまして、どうぞ皆さんの御賛同を心からお願いをいたしたいと、かように思っておる次第であります。
#154
○中沢伊登子君 どうもありがとうございました。
#155
○政府委員(高木玄君) 先ほど中沢先生の御質問に対しまして、公衆衛生局から返事が参りましたので申し上げたいと思います。
 広島で韓国人が何人被爆したか調査したものはない。韓国居住の被爆者の数もわからない。韓国原爆被害者援護協会、これは韓国内の民間団体でございますが、その協会では、韓国内にいる被爆者は二万人と称しているそうでございます。
 それから韓国内の被爆者の状況を調査したものも現在ないそうでございますが、人道的な立場から、韓国政府の意向もくんで、その救済につきまして、外務省を中心に、関係各省でその検討をしておりますが、おそらく救済につきましては、医療協力等が内容になるであろうと、こういう答弁が参りましたので御報告いたします。
#156
○中沢伊登子君 ありがとうございました。
#157
○小笠原貞子君 最初に、お断わりしたいと思います。時間を三分の一に短縮するようにというお申し出でございまして、私も長いばかりが能じゃないと思いますので、私のできるだけの能力を発揮いたしまして、短くつめるつもりでおりますけれども、少々延びました点については特段の御配慮をいただいて、質問をさせていただきたいと思います。
 まず最初に、文化庁のほう、いらしていますか。――お伺いをいたしますけれども、宗教法人靖国神社、現在は一宗教法人であって、戦前のような特権的な存在ではない、単なる一宗教法人だということを確認したいと思いますが、そのとおりでよろしゅうございますか。
#158
○説明員(鹿海信也君) いま御質問のとおりでございまして、現在の靖国神社につきましては、終戦後、神社の国家管理制度の廃止によりまして、昭和二十一年二月、宗教法人令に基づく宗教法人とみなされました。次いで、宗教法人法の施行に伴いまして昭和二十七年九月、東京都知事からの規則の認証を受けて登記をいたしまして、宗教法人法上の宗教法人、単立法人という性格でございます。
#159
○小笠原貞子君 援護局のほうにお伺いしたいと思います。四十六年の二月十七日、二十二日、二十四日、そして三月の一日、三日、九日、合計六日間、各都道府県の援護関係職員の研修会が行なわれました。場所は靖国神社でなすっていらっしゃいますけれども、この会場費はどこがお払いになっていらっしゃいますでしょうか。
#160
○政府委員(高木玄君) ただいまお尋ねのとおり、昭和四十六年二月から三月にかけまして、六回に分けまして、各般の調査業務に関するブロック会議を開催いたしました。それで、会議費でございますが、会場として靖国神社の一室を利用したため、靖国神社側が会場費を請求しませんのでして、結果において無料になっております。
#161
○小笠原貞子君 その研修会のあと、靖国神社の前の割烹の「大周楼」というところでお酒と料理が出て参加者のもてなしが行なわれたということですけれども、西村調査課長はそのとき出席されていたでしょうか。また、局長、出席されていたでしょうか。
#162
○政府委員(高木玄君) 調査したところでは、当時の局長も西村課長も出席しておりません。
#163
○小笠原貞子君 それでは、そのほかの関係の方で出席なすっていた方、いらっしゃいますか。
#164
○政府委員(高木玄君) 調査課の職員が各ブロックの会議ごとに一ないし二名出席していたかのように聞いております。
#165
○小笠原貞子君 それでは、このときのお酒と料理代などの接待費、これは厚生省がお払いになりましたのでしょうか。もし、お払いになったとしたら、どれくらいかかりましたでしょうか。また、厚生省でなければ、それは先ほどのように靖国神社のほうで負担なすったのでしょうか。
#166
○政府委員(高木玄君) 会議の終了がおそくなったために、靖国神社付近の割烹旅館におきまして夕食を靖国神社から提供されたというふうに聞いております。
#167
○小笠原貞子君 それでは確認いたしますけれども、この会議について靖国神社が会場費と、そして夕食代−料理代を負担したと、こういうわけでございますね。それは厚生省からのお申し入れがあったのか、それとも靖国神社の御好意でそういうことになったのか、どちらでしょうか。
#168
○政府委員(高木玄君) 靖国神社側の御好意でございます。
#169
○小笠原貞子君 それでは確認します。会場費、料理代、靖国神社が負担した、その申し出は靖国神社からである、これを確認させていただきまして、よろしゅうございますね。
#170
○政府委員(高木玄君) けっこうでございます。
#171
○小笠原貞子君 次に、日本基督教会の牧師さんのほうから祭神名簿から抹消してくれという要求が靖国神社のほうに出された、その問題について御承知でいらっしゃいますでしょうか、文部省。
#172
○説明員(鹿海信也君) 宗教関係の新聞等によりまして間接的には承知いたしております。
#173
○小笠原貞子君 間接的ではちょっと討論になりませんので、御存じないといけませんから読んでみますが、これは宗教法人靖国神社の代表役員あて宗教法人日本基督教会の代表役員であり議長である山田滋さんという方から靖国神社に申し入れが出ております。これは、「宗教法人日本基督教会は、第二〇回大会(総会)の決議により、宗教法人靖国神社が日本基督教会の教師栗田巧、小川亮、武長敬三、東山武を祭神として祀っていることを拒否し、祭神名簿から抹消されるよう要求します。
 なお、この要求に対するご回答は、宗教法人靖国神社代表役員の名によって、3月15日までにいただきたく申し添えます。」、こういうものなんでございます。これは写しをとってまいりました。
 それでは、これに対して靖国神社がどういう回答をしてきたかということも御存じないでしょうか。
#174
○説明員(鹿海信也君) 間接的には承知いたしております。
#175
○小笠原貞子君 それでは、これも靖国神社からの回答を写してまいりました。「拝啓 時下益々御清安之段大慶に存じ上げます。
 扨て二月二十五日附文書を以て当神社祭神名簿から抹消の御要求がありましたが、当神社御創建の由緒及び伝統に鑑み、御申出に沿うことは出来ません故御諒承下さるやう、この段回答申上げます」。靖国神社宮司の筑波さんから先ほどの代表役員の山田滋さんに出ております。
 こういうように、靖国神社は祭神名簿からキリスト者である牧師さんの祭神であるということを抹消してくれということに対して拒否をしてきておりますけれども、同じような抹消要求がキリスト者遺族の会からも出ております。それは四牧師の場合、本人はもちろん牧師ですからクリスチャンですし、また遺族の方々も熱心なクリスチャンです。で、靖国神社は御承知のように神道でございます。で、キリスト教でないことは明白なことだと思います。本人は牧師で、遺族もキリスト教徒、その遺族の意思に基づいて日本基督教会の総会で祭神名簿から抹殺してくれと要求しているわけなんですけれども、これに対して靖国神社が拒否をするという、こういう拒否の回答をするということは憲法二十条の「信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。」という信教の自由を踏みにじっている態度だと考えざるを得ないわけですけれども、その点についてどうお考えでいらっしゃいましょうか。
#176
○説明員(鹿海信也君) むずかしい問題でございますが、御承知のとおり、戦後の宗教行政は政教分離の原則にのっとりまして宗教団体の信仰の内容と申しますか、教義――その教えの中身でございますが――には私ども宗教行政は立ち入らないことになっております。
 したがいまして、今回の事例についてみますと、靖国神社が祭神をどうきめるかは宗教団体である靖国神社の信仰の内容にかかわることだと考えるわけでございます。また一方、日本基督教会からの祭神名簿抹消の要求も、これも宗教団体としての日本基督教会の信仰の内容に基づくものでございまして、信仰の内容を異にしますこの宗教団体相互間の信仰内容の違いに関することでございますので、私ども行政当局としてこれの是否という判断につきましては関与すべきことではないと、このように考えるわけでございまして、この両者の話し合いによって解決さるべきことではなかろうかと、このように存じております。
#177
○小笠原貞子君 これはいろいろお立場上むずかしいことがあるかもしれませんけれども、そんなむずかしく考えなくても、道義的にもおかしいじゃないかというのが一般の通念になっていると思うのです。信教の自由ということが特に宗教者にとってはどんなに大切なものか、そのことを考えたときに、本人は牧師であり、遺族も信者、そしてキリスト教の立場で祭っていきたいのに、その魂を靖国神社のほうに一方的に祭ってしまうということは、まさに魂まで奪われてしまうというような結果になって、まことにこれはたいへんなことだというふうに私は考えられるのですけれども、これはあとで厚生省のほうとも関係がございますので、こういう問題について大臣として御見解はいかがでいらっしゃいましょうか。
#178
○国務大臣(齋藤邦吉君) ただいま文部省からもお答えがございましたように、政教分離でございまして、靖国神社は靖国神社の教義にしたがって戦争でなくなられた方々をお祭りしておる、こういうことでございまして、私のほうからとやかく批判めいたことを申し上げる筋のものではない、かように考えております。
#179
○小笠原貞子君 それでは文部省のほうにお伺いします。
 戦前、靖国神社は他の宗教団体に比べてどういうような特権が与えられていましたでしょうか。
#180
○説明員(鹿海信也君) 終戦までは陸軍省、海軍省共管の別格官幣社として祭祀を行ないまして、職員もそれぞれの身分に応じまして奏任待遇あるいは判任官待遇の処遇を受けまして、また経費の一部として陸軍省、海軍省から供進金が支出されていたと、このように承知いたしております。
#181
○小笠原貞子君 そういうような特権が、終戦後、昭和二十年十二月十五日、占領軍の総司令部命令として、神道指令といわれる「国家神道、神社神道に対する政府の保障、支援、保全、監督並びに弘布の廃止に関する件」という中で廃止されております。その廃止された理由については、こう書かれているわけです。「神道の教理並びに信仰を歪曲して、日本国民を欺き、侵略戦争へ誘導するために意図された軍国主義的並びに過激なる国家主義的宣伝に利用するが如きことの再び起こることを防止するため」云々と、こういう理由によって、神道指令でこれがこういう特権を与えてはいけないということになっているわけです。靖国神社は、総司令部が指摘しましたように、まさに侵略的、軍国主義的な思想の高揚に大きな役割りを果たしたということは、これは現実、証明できる歴史的なものだと思います。戦後、こういうことに対して国民の批判が集中いたしましたのも、これもまた当然のことだと思います。自民党は、今国会にまたまた靖国神社法案を五回にわたって提出していらっしゃる。これが靖国神社をめぐる歴史とそして現状という点から考えれば、ここに大きな問題があるというふうに考えざるを得ないわけなんです。こういうことは一応私の考えとして申し上げておきたいと思います。
 で、それでは、たとえばこういう問題がなぜ起こるのか。そこには厚生省の姿勢がまだきちっとしていないというところに大きな問題があると思うんです。信教の自由を侵すということはもう歴然としているわけですから、なぜこんなことが起こるのか、具体的になぜ起こるかという背景について質問をさせていただきますけれども、昭和四十八年の三月二十八日付の調査第一〇〇号という通知がございます。これによりますと、靖国神社の依頼に基づき、旧陸軍関係戦没者調査を本年もされるということになっておりますけれども、これは毎年されておりますのでしょうか、援護局のほうからお答えいただきます。
#182
○政府委員(高木玄君) 厚生省の援護局、それから都道府県の援護担当の主管課、これらにおきましては、もとの陸海軍省の保有しておりました陸海軍の軍人軍属に関する人事関係の記録を引き継いでおります。したがいまして、そういった点から旧陸海軍の戦没者の身上に関する各般の問い合わせなり調査の依頼があるわけでございまして、そういった依頼がございます場合には、それが戦没者の処遇上適当と認められますときには、そういった調査の依頼に応ずることにいたしておるわけでございまして、ただいま御指摘の靖国神社のほうからのこの戦没者に関する調査の依頼は、そういった趣旨におきまして援護局として応じておるわけでございます。
#183
○小笠原貞子君 おっしゃったとおりだと思いますけれども、これは個々の、個人個人の問題についての調査ではなくて、靖国神社を通して全国的な調査ということになるわけでございますね。
#184
○政府委員(高木玄君) 靖国神社を通してではなく、私どものほうで靖国神社から依頼を受けまして、その依頼に応じて、戦没者に関する調査を、靖国神社の依頼に応じてしていると、こういうことでございます。
#185
○小笠原貞子君 昭和四十六年二月二日付厚生省援護局長通知援発第一一九号というのが出ております。各都道府県知事あてでございます。これは「靖国神社合祀事務協力について」と、「それに関する諸通知は、廃止する。」となっているわけですけれども、この「援発第三〇二五号」と、関連通知を廃止したと、いままでの通知を廃止したという理由はどういう理由でございますか。
#186
○政府委員(高木玄君) 先ほどお答え申しましたように、援護局におきましては、遺族援護のたてまえからいたしまして、従前からもとの陸海軍関係の戦没者等に関する調査依頼につきまして事務処理を行なってまいっておったのでありますが、戦後二十五年を経過いたしました昭和四十五年ごろから、遺族会あるいは戦友団体、個人、そういった方々から戦没者に関する調査依頼が著しく増加してまいりましたのに伴い、それら新しい事態に対応するために新たに調査事務処理要領を定めたのが昭和四十六年二月二日の通達でございます。「援発第一一九号」という援護局長の通達でございます。で、その際に靖国神社の合祀に関する調査依頼につきましては、その事務を概了したことでもございますし、従来の局長通知を廃止したのでございます。
#187
○小笠原貞子君 この「援発第三〇二五号」の通達というのの中身を見ますと、やはりずいぶん問題があると思います。「靖国神社合祀事務協力要綱」、「(事務協力についての基本観念)」というのが第一番目に書かれているわけですけれども、「復員業務関係諸機関は、法令に基くその本然の事務の限界において、かつ、なし得る限り好意的な配慮をもって、靖国神社合祀事務の推進に協力する。」と、「なし得る限り好意的な配慮をもって」、「合祀事務の推進に協力する。」という点。また、三番目には、「協力事務の主体は、戦没者の身上事項の調査に関する事務とする。その外、合祀通知状の遺族への交付についても、事情の許す限り神社に協力するものとする。」と、こういう中身が入っておりますね。
#188
○政府委員(高木玄君) いまおっしゃられたとおりの中身が入っております。
#189
○小笠原貞子君 この通知が出されましたのは、三重県の津市の地鎮祭の違憲訴訟判決というのが問題になっておりまして、まあ、この津市の地鎮祭に神官が出てくるというようなことは、これは憲法上問題があるというので、信教の自由をめぐって非常に大きな議論が出ていたときなんです。この四十六年五月十四日の直前に、前の通知が廃止されているわけです。この通知は、先ほども言いましたように、憲法第二十条第一項「信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。」、これの憲法違反に、厚生省が非常に好意的に積極的にやれというような指示で、厚生省がまさに手をかしていたことになるというような意見も出てくるかと思います。特定宗教の祭りに協力したということで廃止されたものだというふうに見ることができると思うのですけれども、この第三〇二五号にそういう疑義があるということは率直にお認めになるでしょうか。
#190
○政府委員(高木玄君) この通達を廃止しましたのは、先ほど申しましたように、戦後二十五年たって、非常に調査あるいは照会事項がふえてきた新しい事態に対応して、そういった前の通達を廃止して、新たな事態にふさわしい、そういう要領をつくったということでございます。なお、この昭和三十一年の通達についてのお話でございますが、当時靖国神社の合祀事務が非常におくれておりまして、遺族の方々が非常にそれに不満を持ち、この合祀事務の促進について遺族の方々が非常に強い要望を出しておられたのでございます。したがいまして、私どもとしては靖国神社の依頼に応ずることが遺族援護の上からも妥当なことであると、かように考えた次第でございます。
#191
○小笠原貞子君 いまの答弁ちょっとおかしいと思うんですね。靖国神社がもしもほんとうに一宗教法人であるということで、政府が関係がなければ靖国神社の合祀事務がおくれているからということを理由にしてこれに積極的に協力をするということは先ほどからの考え方の中では成り立たない論議だと思うんですね。そういうこと矛盾をお感じになりませんか。
#192
○政府委員(高木玄君) 靖国神社の合祀事務がおくれていることに遺族の方々が非常に不満を持たれまして、この合祀事務を促進してほしいというのが遺族の方々の強い要望でございました。私どもは遺族の方々の援護、これはもう私どもの所管でございますので、遺族援護の上からも、そういった靖国神社の調査依頼に応ずることが妥当である、かように考えたということでございます。
#193
○小笠原貞子君 いろいろ遺族の方々から御希望やなんかがあろうかと思います。またそれに対して、たとえば財政的な生活を補償するというような援助を当然しなければならないかもしれません。しかし靖国神社という一宗教団体、一神社のその合祀祭がおくれるからといってそれに援助しなければならないという考え方は、口では遺族のために要求があったからやったといわれるけれども、まさにそのことが憲法二十条の、ある宗教団体に特権を与える、援助を与えるということに即つながっていくんじゃないですか。
#194
○政府委員(高木玄君) 私どもは、この調査依頼に応じたことが憲法第二十条に違反するものとは考えておりません。先ほど申しましたように私どもの局なり県の援護担当課は、もとの陸海軍の軍人軍属に関する人事関係の記録を保有、整備しておるわけでございまして、それに関する調査依頼がございました場合には、その調査依頼が戦没者等の処遇につきまして適当だと認められる場合には、それに応ずるというたてまえをとっております。これは、この四十六年の通達をごらんいただけばわかりますように、個人であれ民間の団体であれ、その調査依頼についてはすべて応じるたてまえをとっているわけでございます。それが戦没者の処遇について適当であると認められる場合には応ずると、こういうたてまえをとっているわけでございます。そして、靖国神社の調査依頼につきましてもそれが適当である、調査依頼に応ずることが適当であるというふうに考えて応じたものでございまして、決して憲法第二十条の違反というふうには考えておりません。
#195
○小笠原貞子君 厚生省の援護局としてはそういうふうにお考えになるということはおっしゃるとおりかもしれません。じゃあ法制局でもそういうふうな見解を持っていらっしゃるんでしょうか。それをお確かめになったことありますか。おたくのほうの関係だけではなくて、自分の立場からの主張ではなくて、客観的に見て、法制局でもそういう見解を持っていらっしゃるんでしょうか。
#196
○政府委員(高木玄君) 本件につきましては、法制局の見解を伺っておりません。
#197
○小笠原貞子君 じゃあ、一応その問題は保留にしていきたいと思います。しかし、どういうふうに弁解されても、一宗教団体である靖国神社に、業務を担当している厚生省だからといって、それに積極的に具体的に援助をしているということは、まさにこれは憲法に抵触する問題だというふうに、これが大きな、いま世論にもなっておりますし、当然そういうふうに考えるのがまともで、すなおな考え方だと思うのですけれども、厚生大臣はこれについてどういう見解をお持ちでいらっしゃいますでしょうか。
#198
○国務大臣(齋藤邦吉君) 御承知のように、旧陸海軍人のいろいろな身分上の資料は、厚生省が引き継いでいるわけでございます。しかも、戦没者の身分等に関する資料は、厚生省にきりないわけでございます。よその省にはどこにもないということでございますから、私どもは、そう憲法違反なんというむずかしいことを、実は考えたことは夢にもございません、率直に言いまして。これは靖国神社だけじゃなしに、そのほかの民間団体からも、なくなられた方々のいろんな資料を持っているのは厚生省でございますから、厚生省に対してそういう資料を提供してもらえないかという依頼があれば、私はどなたにも必要があれば――必要がないところから言われても、これはちょっとおかしいでしょうが、必要がございますれば、私のほうは提供する、私は、やっぱり役所というものはこれ以外にありませんから、そういうふうな資料の提供を求められれば、私は応じて差しつかえない。したがって、靖国神社はなくなられた方々の霊を祭るということでございまして、そちらのほうから合祀の関係上、戦没者の方々の資料をひとつ提供してもらえぬかという、こういう要請があれば、私のほうから積極的に上げますよというのじゃなくて、向こうの要請に応じて資料を提供するということであれば、私は憲法上、違反といったふうなことはないものだと解釈をしておりますが、宗教法人の所管省である文部省のほうからまた有権的な解説をお願いしてもけっこうでございましょうが、私のほうでは、資料を私のほうから積極的に上げますからお使いください、こういうのではないので、合祀の関係上資料を提供していただけませんかという依頼におこたえする、私はいいことじゃないかと思います。
#199
○小笠原貞子君 だいぶ、だめを押していらっしゃるところを見ると、あまり自信がなさそうで、それは次また詰めていきたいと思いますけれども、それでは、現在出されております通知についてお伺いしたいと思います。
 昭和四十七年二月二十八日付援護局調査課長より都道府県民生主管部局長への通知、「調査第五四号」でございますけれども、靖国神社から依頼され、旧陸軍関係戦没者身分調査の依頼通知というものが出されているわけですけれども、これはお手元にお持ちでいらっしゃいますか。
#200
○政府委員(高木玄君) 援護局調査課長の通達だと思いますが、手元にございます。
#201
○小笠原貞子君 先ほどいろいろ援護局のほうに調査してほしいというような依頼があったときにこたえるというふうに、当然のことだとおっしゃってましたけれども、それじゃこれまで靖国神社以外の宗教法人から依頼されて、個人じゃなくてですよ、宗教法人から依頼されて、靖国神社の場合のように全国的な調査というようなことをなすったことがおありでしょうか。
#202
○政府委員(高木玄君) 靖国神社以外の宗教法人から調査の依頼はまだ受けておりません。受けたことはございません。
#203
○小笠原貞子君 私が言いたいのは、個人的にいろいろこういう人について調査してほしいというような依頼があったときは、その担当の局としてお出しになるのは当然のことだと思います。で、いま伺いますと、全然そういう宗教法人からこういう依頼を、調査の依頼をされたことがないということでございますし、私がちょっと調べたところでは、PL教団からの調査依頼というのがあったときに、これを拒否されたということも伺っているわけなんです。こういうふうなことで、やはり靖国神社という一つの宗教法人から依頼されて全国的に調査され、いろいろその事務に協力されたというところに私は問題があるんじゃないかと思うわけなんですけれども、その点はいかがお考えでしょうか。ほかの宗教法人からは全然来てない、来ていても、それはあるときには拒否されたと、個人的な調査ではないと、宗教法人から来て、そして全国的に調査網を張って調査なさるという問題についてどうお考えになりますか。
#204
○政府委員(高木玄君) 靖国神社以外の宗教法人から調査依頼を受けたことはございません。したがって、PL教団からの調査依頼もございませんし、したがって、拒否された云々と言われましても、調査依頼がそもそもございませんので、その点、御了承願いたいと思います。
#205
○小笠原貞子君 それでは、靖国神社という一宗教法人から依頼されていろいろ協力したということだけははっきりしたと思います。
 それでは、このいま言いました「調査第五四号」でございますけれども、この調査課長通知の中の2の(2)の項、これはどういう内容になっていますでしょうか。「ただし、次に掲げるものの裁定があったものを除く。」ということになって、具体的に「ア、イ、ウ、エ」と出ているわけですけれども、これは一体どういう内容になっていますでしょうか。
#206
○政府委員(高木玄君) ここに「ア、イ、ウ、エ」というふうにいろいろ条文を引用してございますが、この条文の内容をごく簡単に申し上げますと、軍人軍属、あるいは準軍属が公務上の負傷、あるいは疾病にかかって、その負傷または疾病以外の事由でなくなったという場合でございます。
 それからいま一つは、「ウ」と「エ」でございますが、これは外地における公務によらない死亡者でございます。したがいまして、この靖国神社からの調査依頼がまいっております戦没者は、戦死または戦病死者でございまして、それ以外のものを、昔の陸軍では平病死といっておりますが、平病死は含まないと、こういうことでございます。
#207
○小笠原貞子君 初めの「ア」と「イ」は平病死だということはわかりましたけれども、この「ウ」と「エ」という項、これを調べてみますと、わかりやすく言うと、敵前逃亡だとか、自殺された方というのがここに含まれると解釈してよろしゅうございますか。
#208
○政府委員(高木玄君) いわゆる刑死あるいは自殺でございます。
#209
○小笠原貞子君 そうしますと、祭祀としてお祭りするのに、平病死年金をもらっている人とか、敵前逃亡、いま言われた自殺などの人については、調査しなくてよろしいというのがこの内容になっているわけでございますね。そうですね。――これは靖国神社からの御意向で、こういうものは除くということになっていたのでしょうか。
#210
○政府委員(高木玄君) 靖国神社からの依頼の内容がそうなっているわけでございます。
#211
○小笠原貞子君 それじゃ、こういうようにいろいろこまかい御調査をなさるわけですけれども、この調査の方法についてお伺いしたいと思いますが、たとえば調査票などというものは厚生省のほうで御用意なさるのでしょうか。それとも靖国神社が調査依頼をするときに、靖国神社がその調査票を持って厚生省にお願いする、また、その費用について靖国神社が出すから調査してくれというようなことになっているのでしょうか。
#212
○政府委員(高木玄君) この調査票の用紙は靖国神社側で調製して持ち込んできているようです。
#213
○小笠原貞子君 で、それでは靖国神社が用意した調査票に各都道府県の自治体職員が記入をして、そして厚生省に集める、そして集まったものを靖国神社に渡すというわけですね。
#214
○政府委員(高木玄君) 旧陸軍関係は、死没者の原簿が各都道府県で保管しておりますので、各都道府県がその原簿から転記して厚生省に送付し、厚生省から靖国神社に渡す、こういうことになっております。
#215
○小笠原貞子君 靖国神社は、その名簿に基づいて祭神名簿をつくって毎年合祀するという順序になるわけですね。
#216
○政府委員(高木玄君) さようでございます。
#217
○小笠原貞子君 大体いまお伺いしたので、私の言いたい内容というのがどこにあるのかというのがおわかりになったのじゃないかと思いますけれども、ずっといままでの質問と討議の中ではっきりする第一の問題は、厚生省は、古い通知は問題があるので、これは廃止した、そして新しい通知に書き直した。しかし、実際上の運営というのは何ら前の通知の内容と変わっていない。ただ、文章上たいへんまずい――「なし得る限り好意的な配慮をもって、」などというのはちょっとまずいというように、ことばの上では配慮されて、そして通知を廃棄して新しい通知になすっているけれども、やっていらっしゃる業務というものは全く前と変わっていないというふうに思われますけれども、いかがでございますか。
#218
○政府委員(高木玄君) 先ほどもお答え申しましたように、靖国神社の合祀事務というものは、概要、おおむね終わっております。で、新しく戦没者として認定される者、あるいは未帰還者の特別措置法によって死亡措置を講じた者、こういった者につきまして今日では調査していると、こういうことでございます。
#219
○小笠原貞子君 それは、一ころに比べたらだんだんそういう業務が少なくなってくるというのは当然なことだと思うんです。しかし、私が言いたいのは、昔はそういう事務がたくさんあったけれどもいまは少なくなったというような問題じゃなくて、そういう事務そのものを、厚生省の中で、職場の中で、そういうものを業務としてやっているというところに一つ大きな問題があるんじゃないかということなんです。
 それからまた、もう一つの問題点は、厚生省の立場で、国会や、また審議されて成立した法律という問題について、これを無視してやっていくという権限があるのかどうかという点なんです。と申しますのは、国会では援護法が毎年のように改正されて、そして対象として、平病死年金、それからまた、いわゆる敵前逃亡、自殺者などもやはりこれは戦争の犠牲者であるという立場で援護の対象にされたわけでございますね。そうすると、厚生省としては、当然、そういうふうに援護法が改正されて援護の対象となると、国のために尽くした人なんだという立場に立って、これを守らなければならないというふうに私は考える。それが当然の義務だと思うんです。それは運用上も法律としても当然のことだと思うんです。ところが、全く靖国神社の立場の考え方で、戦没者に対する、敵前逃亡、それから自殺、平病死、これは除いてくれという、靖国神社の主観でございますね。「臣民ただ皇室の御為めに身を献げて忠勇事にしたがい、死してもまた護国の神たらんことを期す。」と。これは靖国神社誌に出ていましたけれども、だから、こういうものが祭神として、神様としての資格があるんだということなんですね。つまり、自決せざるを得ないというような人たちも、やはり、そのときに戦争に引きずられて、そしてあの戦争への間違った教育のもとでお国のためということで、ついに自決せざるを得なくなったということなわけでしょう。そうすれば、靖国神社がこれは忠勇な臣民と認めないというようなことで、それらの戦没者に対して差別をしているということがはっきり言えると思うわけなんですね。そうすると、厚生省としては、援護法の拡大によって、そういう人たちも国のために尽くしたんだということで対象を拡大されてきたわけでしょう。それなのに、靖国神社の、忠勇たる臣民……、神としての資格がないということでこれは除いてくれというような調査の依頼だと。全くこれは靖国神社の言いなりで特定の宗教的態度にまさに厚生省は手をかしていると。こういうことは、大きく言えば国会と法律を無視している。まさに、これはちょっと大きな問題だと私は考えざるを得ないわけなんですが、厚生省、局長の責任としてどういうふうにこのことをお考えになりますか。
#220
○政府委員(高木玄君) どういう方を祭神としてお祭りするかは靖国神社御自身がきめられることで、私どものそれは関知しないところでございます。私どもは、靖国神社の依頼に応じて、いつも依頼の内容のものを調査している、これだけのことでございまして、靖国神社の祭祀基準というものがおそらくあるんだと思いますが、それは靖国神社御自身がおきめになって、その基準に基づいた調査を依頼してきていると、こういうことでございます。
#221
○小笠原貞子君 それでは全く靖国神社の言いなりになって、それは靖国神社の考え方だからと、まさに靖国神社の言いなりにどういうことがあろうとなすってきたと、これからもどんなことが申し出られようと靖国神社の要求であればそのとおりやると、こういうことですね。
#222
○政府委員(高木玄君) 先ほども申しましたとおり、私どもは靖国神社に限らず、民間の個人であれ団体であれ私どもの保有しております資料に基づきまして戦没者なり、もとの陸海軍人についての身上についての調査、照会等の依頼がありました場合には、それが適当なものであります限りにおきましては協力しているわけでありまして、これはもう何も靖国神社だけに特別のことをしているというわけではございません。
#223
○小笠原貞子君 靖国神社に限り特別のことをしていないとおっしゃるけれども、靖国神社しか来てないんでしょう。靖国神社しか来てないとさっきおっしゃったんでしょう。そして、その中身は靖国神社そのものの言いなりになっているということは事実ですよね。これは、まさに私が先ほどから言うように憲法二十条に当然ひっかかってくる。特定の宗教法人靖国神社の依頼で国と自治体のお金を使っているわけでしょう。そして、全国的な調査をなさると。その結果、個人の信教の自由も侵していやだというのに祭るなんて言うんでしょう。こんなことが許されていいんですか。これはまさに憲法上からいっても二重に私は間違っていらっしゃるんじゃないかと、そう思うわけなんです。いかがでございますか。
#224
○政府委員(高木玄君) 先ほどお答えしましたように、靖国神社以外の宗教法人からは私どものほうに調査の依頼がまだ来ておりません。参りましたならば、もし、靖国神社以外の宗教法人が参りましたら、内容が適当であれば、私どもは調査に応ずるということでございます。
#225
○小笠原貞子君 それじゃ、内容が適当だったから、こういうふうな靖国神社の思惑によって、こういうものは除去せいということについて内容が適当だったと御判断なすったわけですね、いまの答弁では。
#226
○政府委員(高木玄君) 内容と申しますか、その調査の依頼がありましたときに、その調査の依頼に応ずることが戦没者の処遇上適当であると、こう判断した場合には、その調査に応ずるということでございます。
#227
○小笠原貞子君 戦没者の処遇に応ずると言うけれども、その戦没者自身がキリスト教で神社に入りたくないと言っているんですよ。そして、その御家族もクリスチャンだからそんなところに入れてほしくないと言っているんです。戦没者を大事にするんだったら、そんなことを要求されたときにおかしいと思われるだろうし、また、敵前逃亡だ、平病死だ、これ差別するっていうことも、これが適当だと思われたからこそ、これをうのみにして言いなりになすったんじゃないんですか。
#228
○政府委員(高木玄君) 合祀にあたって遺族の同意を必要とするかどうかというようなことは祭神御自体に関することでございまして、それは靖国神社自身の問題でございます。私どものそれは関知するところではございません。私どもは、靖国神社から、戦没者についてこういうものを調査してほしいという依頼があり、それが適当だと思いますので調査に応じていると、こういうことでございます。
#229
○小笠原貞子君 それでは押し問答、水かけ論になりますから確認しておきます。援護法では対象を拡大して、こういう平病死の人たちや、また敵前逃亡、自殺の方々もお国のために犠牲になられたんだからといって援護の対象にしている、しかし靖国神社は靖国神社の主観によってこれは神様に値しないと、ここで差別している、しかしそれは靖国神社の考え方だから、それは関知しないと、そして、これも適当な調査だということで厚生省はこれに御協力なすったということがはっきりするわけですね。
#230
○政府委員(高木玄君) どういう方を祭神として合祀するか、これは靖国神社御自身がおきめになることだというふうにお答え申し上げているわけでございます。
#231
○小笠原貞子君 幾らことばの上で美しくおっしゃっても実際の問題はやはり靖国神社の言いなりで差別をし、そして信教の自由を押えているという靖国神社のやり方に全く言いなりになって協力していらっしゃるということはこれは動かしがたい事実だと思います。
 それでは、この問題、もうここで終わりにしますけれども、じゃ、もう一つの問題、先ほど言いましたね。靖国神社で会合をしたと、そしてお酒やお料理の接待を靖国神社から出していただいていると、これはまさにちょっとおかしいとお思いになりませんか。援護局長、大臣、靖国神社の申し出だからといってごちそうになって、それで当然だと、やってやったんだから当然だとお思いになるわけですか。
#232
○政府委員(高木玄君) 靖国神社側は、おそらく合祀事務について調査に協力していただいているという趣旨から儀礼的な意味で謝意を表したんだと思いますが、このような靖国神社側から夕食を提供を受けたということは適当とは思いません。したがいまして、今後はそういうことは絶対ないように厳に戒めます。
#233
○小笠原貞子君 大臣。
#234
○国務大臣(齋藤邦吉君) 靖国神社側の好意による儀礼的なものであったと私は理解をいたしております。しかし、好ましいことかと言われれば、私も好ましいことではないとはっきり申し上げることができると思います。
#235
○山下春江君 ちょっと関連。いま小笠原委員から敵前逃亡、敵前逃亡というおことばがたくさん出ましたが、それが靖国神社に祭ってあるのはおかしいではないかということがございましたが、それは確かに小笠原……。
#236
○小笠原貞子君 それは祭ってないんです。
#237
○山下春江君 祭ってないのはおかしいではないかというお話がございましたが。
#238
○小笠原貞子君 祭ってないのがおかしいというんじゃなくて、差別することがおかしいと、それのよしあしは……。
#239
○山下春江君 そこで、それについては敵前逃亡とみなされる方の中で、森林の中で猛獣に食われて死んだかあるいは餓死したか病死したかわかりませんが、それは全部戦死したということで、新たな法律をこしらえて、この人たちを家庭裁判所の判決を経て靖国神社に祭るという法律をいまから十七年前につくりまして、だから、あなたが言われる敵前逃亡のような方も、たとえば武装解除されて、戦列に並んでいた、隣の先輩が肩をたたいて、おまえは補助憲兵をしていたからつかまると二十年食うぞ、いまのうちにこの列を離れて何とかして帰れ、こう言われて、二十六の青年ですけれども、二十一から軍服を着ているからおとなの気持ちでいたが、初めて子供に返って、おかあさん、ぼくは海を泳いででも帰るよ、と言って、そこら町にいたらつかまるから、山の中に入ったりいろいろなことをしてそれは死にました。まあ死んだでしょう。それがそのような目にあって死んでも、これは厚生省がつけた名前でしょうが、現地復員という名前をつけたんです。現地で復員したからもう一切日本の法律は関係なく、現地で一般市民になったという処遇をしたので、それは、そんなことはかわいそうじゃないか、二軒並んでいて一軒の家の子供は鉄砲のたまで死んだから靖国神社に祭られた、隣りの未亡人の家の子供は、いまの敵前逃亡をしたという、そういうことで恩給ももらえない、靖国神社でもない、何でもないということでは、同じ熱烈な気持ちで行った青年たちにそういう差別をつけてはかわいそうではないかというので、厚生省にちゃんと法律があります。それも事情がわからないから、家庭裁判所の判決があったらば、それは戦死として靖国神社に祭るという法律がちゃんと日本にあるんです。ですから、いまのあなたの差別して祭らないというのはおかしいじゃないかというのは、祭られております、間違いございません。
#240
○小笠原貞子君 たいへん詳しい具体的な御意見を承ったのですけれども、私が申し上げているのは、そういう人を差別しているから悪いということについての評価は全然していないわけなんです。ただ、いま先生はそういう人さえもお祭りしている、それは法律で、十七年前ですか、できた。そうおっしゃっていますけれども、そうすれば、なお問題が出てくるわけですね。そういう法律があるとすれば、こういうものを除いてくださいという靖国神社からの依頼が出ておりますのは四十七年二月二十八日、去年のことなんです。もしも、そういう法律が先生のおっしゃったことを信頼してあるとすれば、そうするとまさに厚生省はそういう法律違反を要求している靖国神社の言いなりになっているという、また問題は大きい一つの重大な問題なんですけれども、その辺どうなんでしょうか。
#241
○国務大臣(齋藤邦吉君) これは山下先生、思い違いじゃないかと思うのでございまして、靖国神社にどなたを祭れなんという法律はございません。靖国神社はすべて教義――独特の宗教法人でございますから独特の教義に基づいてどなたを神として祭るかということは靖国神社自身がおきめになることでございます。したがって、敵前逃亡の方々が援護法の改正等によりまして援護を受けるようになりましても、その方を祭るかどうか、それは靖国神社みずからがきめることでございますが、そんなことに対して国が、こういう援護法の適用を受けるようになったのでございますから、靖国神社のほうで差別しないでお祭りください、なんということを言うたらたいへんなことです、むしろ。それこそ、政教分離、これこそ政教分離というものだと思います。
#242
○小笠原貞子君 そこまでわかっているんだったら、そしたら、遺族の方々だとか援護のためという名目で公金を使って全国的に調査してというようなところまで手をお染めになるのは間違いだということにつながっていくんじゃないですか、大臣のいまの御趣旨は。
#243
○国務大臣(齋藤邦吉君) これは援護局長からたびたび申し上げてありますように、靖国神社はなくなられた方々の霊を祭るという社会通念で出ておるわけでございまして、遺家族の方々の処遇の上からいっても私は適当なものと考えておるわけでございます。しかも、靖国神社だけじゃございません。そのほかの団体等からも御要請がございますれば、必要に応じ資料を提供する、こう私は申し上げておるだけでございます。事実、そういうものはないというだけでございます。
#244
○小笠原貞子君 私は、未来のことを言っているのじゃなくて、現実に靖国神社からの要求しかないという立場に立って、こういうところに具体的にそういう援助を、公金を使いそして公の事務としてやっているということについて、少しそこのところはおかしいんじゃないかというのが私の言っている筋なんです。先ほどから何度も強調なさいますように、靖国神社が独自に靖国神社の立場でお祭りになるというようなことであれば、それは私は靖国神社の立場として当然だと思うんですね。そうすれば、独自に調査して、そして独自に遺族の方とお話し合いをなすって、そして祭神にするかしないかというのをおきめになればいいのに、そこに厚生省が積極的に援助をするという名目で、具体的には靖国神社の問題に相当深入りしていらっしゃるということを言わざるを得ないわけなんです。だから私は、こういうような調査通知というものを出されて、そして全国的にこれを役所の立場でするというようなことは、当然やめていただきたいと思います。
 それからまた、時間がないから続けて、重ねて言いますけれども、先ほどおっしゃっていた四十六年度に何回か接待を受けられた、これはおかしいというふうにお認めになったわけですけれども、そうしたら、それは悪かったというんで済ますのか、それともそのことについてはけじめをつけて、当然そのときにはどれぐらいかかったと、お払いになるおつもりはあるのか、その辺はどうなんですか。
#245
○政府委員(高木玄君) 先ほどお答えしましたように、おそらく靖国神社側の好意といいますか、それによる儀礼的なものだったと思います。しかし好ましいことではございませんので、今後そういったことが絶対ないように戒めます。
#246
○小笠原貞子君 いままではいいんですか。しようがないの。――御好意だったからということであれば、幾らだって御好意なんですね。御好意だからいただきます、といえば、いままでの汚職、腐敗みんな御好意でやられているのですよ。くれなん言ってもらった人はいないのですよ。向こうから持ってきたと。そういう姿勢がいままで大きな問題になってきたし、ここのところで、やはり何と言われようとも、靖国神社と厚生省の立場というものはものすごく癒着しているということをはっきり私は言わざるを得ないわけですね。御好意だからいただきました、今後はやめます。それで済むものですか。こういうような、具体的に言えば全くひどい癒着ぶりが、この靖国神社問題の背景として、そこに何があるかということが大きないま問題になって論議されるような状態になったと私は考えざるを得ないわけなのです。全くそれについて何にも反省もないと、こうおっしゃるのですか。もし、それならそれでけっこうでございます。また次の問題にいたします。
#247
○政府委員(高木玄君) 先ほど申しましたように、この会議におきまして、夕食の提供を受けましたことは先方の好意による儀礼的なものだと思いますけれども、好ましくないので、以後は絶対にそういうことがないように厳重に注意いたします。
#248
○小笠原貞子君 おかしいと思わないところにおかしいところがあるのですね。大臣どうですか。
#249
○国務大臣(齋藤邦吉君) 私も先ほど申し上げたとおりでございまして、好ましいことではございませんから、大いに反省をいたしまして、今後はさようなことのないように戒めてまいります。
#250
○委員長(大橋和孝君) 他に御発言もなければ、両案に対する質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
#251
○委員長(大橋和孝君) 御異議ないと認めます。
 本日はこれにて散会いたします。
   午後六時五十六分散会
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ソース: 国立国会図書館
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